(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】三量体ポリペプチドおよびがん治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240305BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240305BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240305BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240305BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240305BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240305BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240305BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240305BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240305BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240305BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K14/78
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/12
A61P35/00
A61K38/16
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K48/00
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554071
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2022055707
(87)【国際公開番号】W WO2022184937
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523337421
【氏名又は名称】レアダルティス、ソシエダッド リミターダ
【氏名又は名称原語表記】LEADARTIS, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス バジナ、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】コンプテ グラウ、マルタ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
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4B065BA02
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084CA53
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC752
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体であって、各単量体ポリペプチドが、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、ホモ三量体化ドメイン、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域を含む、三量体ポリペプチド複合体に関する。本発明はまた、がんの治療における使用のための、上記三量体ポリペプチド複合体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体であって、
各単量体ポリペプチドが、
a)V
HドメインがV
Lドメインに対してN末端側にある、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、
b)XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIE
XVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIE
XV)およびそれらの機能的に等価な改変体からなる群から選択される、ホモ三量体化ドメイン、および
c)腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域
を含む、
三量体ポリペプチド複合体。
【請求項2】
3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体であって、
各単量体ポリペプチドが、
a)CDRが配列番号1または配列番号42、配列番号2または配列番号43、配列番号3または配列番号44、配列番号4または配列番号45、配列番号5または配列番号46、および配列番号6で表される配列、またはそれらの機能的に等価な改変体を含む、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、
b)XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIE
XVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIE
XV)およびそれらの機能的に等価な改変体からなる群から選択される、ホモ三量体化ドメイン、および
c)腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域
を含む、
三量体ポリペプチド複合体。
【請求項3】
前記抗4-1BB特異的アゴニストscFvが、ヒト化されているか、またはヒト化VLドメインおよび/または部分ヒト化VHドメインを提示する、請求項1または2に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項4】
前記抗4-1BBアゴニストscFvが、配列番号19で表される配列を含む、請求項3に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項5】
前記腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域が、前記ホモ三量体化ドメインに対してC末端に位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド。
【請求項6】
前記腫瘍関連抗原が、EGFRである、請求項1から5のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項7】
EGFRに特異的に結合可能なポリペプチド領域が、抗体である、請求項6に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項8】
抗EGFR抗体が、ヒト化抗EGFR(huEGFR)単一ドメイン抗体(VHH)である、請求項7に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項9】
前記ヒト化抗EGFR(huEGFR)単一ドメイン抗体(VHH)が、配列番号28で表される配列を含む、請求項8に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項10】
前記抗4-1BBアゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、前記ホモ三量体化ドメインおよび/または前記腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域が、直接連結されているか、またはスペーサーを介して連結されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項11】
前記スペーサーが、1~18残基を有するフレキシブルリンカーである、請求項10に記載の三量体ポリペプチド。
【請求項12】
前記単量体の少なくとも1つが、前記三量体ポリペプチドの検出および/または精製に適したタグをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド。
【請求項13】
前記単量体ポリペプチドが、配列番号 または配列番号で表される配列を含む、請求項1または2に記載の三量体ポリペプチド。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の三量体ポリペプチドの一部を形成する少なくとも1つの単量体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列番号または配列番号で表される配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項14または15のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
請求項1から13のいずれかに記載の三量体ポリペプチド、請求項14または15のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、または請求項17に記載の宿主細胞と、免疫チェックポイントブロッカーとを含む、組み合わせ物。
【請求項19】
前記免疫チェックポイントブロッカーが、PD-L1阻害剤である、請求項18に記載の組み合わせ物。
【請求項20】
前記PD-L1阻害剤が、PD-L1抗体である、請求項19に記載の組み合わせ物。
【請求項21】
前記PD-L1抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブからなる群から選択される、請求項20に記載の組み合わせ物。
【請求項22】
前記免疫チェックポイントブロッカーが、PD-1阻害剤である、請求項18に記載の組み合わせ物。
【請求項23】
前記PD-1阻害剤が、ペムブロリズマブまたはニボルマブである、請求項22に記載の組み合わせ物。
【請求項24】
請求項1~13のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド、請求項14または15のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の宿主細胞、または請求項18~23のいずれか一項に記載の組み合わせ物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項25】
がんの治療における使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド、請求項14または15のいずれかに記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の宿主細胞、請求項18~23のいずれか一項に記載の組み合わせ物、または請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記がんがEGFR陽性である、請求項25に記載の使用のための三量体ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、組み合わせ物、または医薬組成物。
【請求項27】
前記がんが、結腸直腸がん、乳がん、膵臓がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、頭頸部がんおよび肺がんからなる群から選択される、請求項26に記載の使用のための三量体ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、組み合わせ物、または医薬組成物。
【請求項28】
前記乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり、前記肺がんが小細胞肺がんである、請求項27に記載の使用のための三量体ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、組み合わせ物、または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療学の分野に関し、より具体的には、コラーゲンホモ三量体化ドメインによって形成される三量体ポリペプチド複合体である治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体(mAb)を用いた免疫応答の調節は、がん免疫療法に対する最も有望なアプローチの1つである。おそらく最もよく知られているのは、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)阻害経路のmAb媒介遮断であり、これにより、T細胞におけるPD-1媒介免疫抑制シグナル伝達を阻止し、アネルギー性腫瘍浸潤T細胞にエフェクター機能を回復させることができる。PD-1/PD-リガンド1(PD-L1)軸遮断は、幅広いがんにおいて長期にわたる持続性応答を示しているが、その有効性は、患者の10~30%に限られている。別の免疫療法アプローチは、アゴニストmAbによる4-1BBなどの共刺激受容体の刺激に関する。CD137としても知られる4-1BBは、TNF受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであり、さまざまな白血球サブセット上に誘導され得る。4-1BBは、4つの細胞外システインリッチドメイン(CRD)および1つの細胞内シグナル伝達ドメインを有するI型単回膜貫通型受容体である。T細胞上では、4-1BBは、T細胞受容体(TCR)を介した活性化後に発現される。その天然リガンド[4-1BB-リガンド(4-1BBL)、TNFSF9]またはアゴニストmAbと結合すると、T細胞の増殖およびエフェクター機能を増強し、T細胞枯渇を阻止し、プログラム細胞死から保護し、記憶細胞分化を促進し、これにより腫瘍特異的T細胞の持続性がサポートされ得る。抗4-1BBアゴニストmAbは、前臨床がんモデルで検討され、さまざまな低免疫原性腫瘍の排除を促進することが示されている。しかしながら、腫瘍外毒性が、完全長抗ヒト4-1BBの臨床開発に対する大きな障害となっている。抗hu4-1BBヒトIgG4ウレルマブ(BMS-663513)は、用量依存性の肝毒性を引き起こし、2例の死亡に関与した。その後の研究で、より低用量であれば肝毒性は軽減されるが、その代償として有効性が低下することが明らかになった(Segal NH.ら、2017)。抗hu4-1BBヒトIgG2ウトミルマブ(PF-05082566)は、ウレルマブと比較して安全性プロファイルが改善されているが、4-1BBアゴニストとしての効力も低い(Chester C.ら、2018)。
【0003】
4-1BB共刺激に関連する抗腫瘍活性を保持しながら、Fc-FcγR相互作用に関連する腫瘍外毒性を回避するための新たな戦略が、積極的に模索されている。これらのアプローチは、4-1BB共刺激を、腫瘍微小環境および流入領域リンパ節に限定することを目的としている。EGFR(上皮増殖因子受容体)(Compte M.ら、2018)またはCEA(癌胎児抗原)(Mikkelsen K.ら、2019)などの腫瘍関連抗原(TAA)およびマウス4-1BBをアゴニスト様式で標的とする、Fcフリー腫瘍特異的トリマーボディが最近報告されている。両トリマーボディとも、インビトロでは強力な共刺激分子であり、EGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディは、免疫適格マウスにおいて、腫瘍浸透性の増強および強力な抗腫瘍活性を示した一方で、IgGベースの4-1BBアゴニストに関連する全身性サイトカイン産生およびT細胞媒介性肝毒性を緩和した(Compte M.ら、2018)。さらに最近、肝臓特異的ヒトEGFRトランスジェニック免疫適格マウスにおいて、抗4-1BBアゴニストIgGの全身投与は、非特異的な免疫刺激および肝毒性を引き起こしたが、FcフリーEGFR特異的4-1BBアゴニストトリマーボディで治療したマウスでは、そのような免疫関連の有害作用は観察されなかったことが開示された(Compte M.ら、2020)。
【0004】
したがって、腫瘍標的化治療のために、重篤な副作用を伴わずに効果的な免疫刺激を可能にする新たな戦略が、当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本発明は、3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体であって、
各単量体ポリペプチドが、
a)VHドメインがVLドメインに対してN末端側にある、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、
b)XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびそれらの機能的に等価な改変体からなる群から選択される、ホモ三量体化ドメイン、および
c)腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域
を含む、
三量体ポリペプチド複合体に関する。
【0006】
第2の態様において、本発明は、3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体であって、
各単量体ポリペプチドが、
a)CDRが配列番号1または配列番号42、配列番号2または配列番号43、配列番号3または配列番号44、配列番号4または配列番号45、配列番号5または配列番号46および配列番号6で表される配列、またはそれらの機能的に等価な改変体を含む、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、
b)XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびその機能的に等価な改変体からなる群から選択される、ホモ三量体化ドメイン、および
c)腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域
を含む、
三量体ポリペプチド複合体に関する。
【0007】
第3の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチドの一部を形成する少なくとも1つの単量体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0008】
第4の態様において、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0009】
第5の態様において、本発明は、本発明によるベクターを含む宿主細胞に関する。
【0010】
第6の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、または本発明による宿主細胞と、免疫チェックポイントブロッカーとを含む、組み合わせ物に関する。
【0011】
第7の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞、または本発明による組み合わせ物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0012】
第8の態様において、本発明は、がんの治療における使用のための、本発明による三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組み合わせ物、または本発明による医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ヒト化Fcフリー腫瘍標的化4-1BBアゴニストトリマーボディ(4-1BB
N/CEGFR)の設計および特性評価。(a)SAXSにより決定された、4-1BB
N/CEGFRの遺伝子配置およびドメイン構造、および溶液中の配置を示す模式図。(b)SAXSエンベロープ内での4-1BB
N/CEGFRに対応するモデルの剛体フィッティング(薄灰色で着色されている)。各鎖はブルー、マゼンタおよびシアンで着色されている。(c)4-1BBNおよび4-1BB
N/CEGFRトリマーボディ(1および5nM濃度)と固定化hu4-1BBとの間の相互作用(上パネル)、および抗huEGFR ATTACKおよび4-1BB
N/CEGFRトリマーボディ(1および5nM濃度)と固定化huEGFRとの間の相互作用(下パネル)を示す、BLIから得られた実験に基づくセンサーグラム(黒線)および計算に基づくセンサーグラム(赤線)。計算曲線に用いた動態速度定数を表Vに示す。(d)溶液中の固定化hu4-1BBとhuEGFRの両方への同時結合は、4-1BBL
N/CEGFR(緑)では示されたが、4-1BB
N(黒)では示されなかった;5nMのいずれかのトリマーボディをまず固定化hu4-1BBに結合させ、その後、バイオセンサーを10nMのhuEGFRに移動させた。
【
図2】4-1BB
N/CEGFRトリマーボディは、huEGFR発現細胞およびシグナル1の存在下で、インビトロでのT細胞共刺激を有意に増強する。CHO細胞およびCHO
huFcγRIIb細胞におけるhuFcγRIIb(CD32)発現のフローサイトメトリー分析(a)、ならびに3T3細胞および3T3
huEGFR細胞におけるhuEGFR発現のフローサイトメトリー分析(b)。PEコンジュゲート化アイソタイプ対照mAbと共にインキュベートされた細胞を、灰色で塗りつぶしたヒストグラムで示す。蛍光強度(横軸)を相対細胞数(縦軸)に対してプロットした。数字は平均蛍光強度(MFI)を示す。Jurkathu4-1BB細胞を、10倍漸増濃度の4-1BB IgG、ウレルマブ、4-1BBNまたは4-1BB
N/CEGFR抗体の存在下で、CHO細胞またはCHO
huFcγRIIb細胞(c)および3T3細胞または3T3huEGFR細胞(d)と共培養し、37℃で6時間後に発光を測定した。データは、未刺激のJurkat
hu4-1BB細胞から得られた値に対する誘導倍率として示した。代表的な用量-濃度曲線を示し、平均値±SD(n=3)で表す。有意性は、独立スチューデントt検定により決定した。健常ドナーから単離したPBMC(e)およびT細胞(f)(1.5×10
5/ウェル)を、照射された3T3細胞または3T3
huEGFR細胞と、5:1のE:T比で共培養した。抗huCD3 mAb(0.05μg/ml)の存在下または非存在下で、抗hu4-1BBアゴニスト抗体(4-1BBIgGまたは4-1BB
N/CEGFR)および対照を10倍連続希釈で添加し、72時間後のIFNγ分泌を分析した(平均値±SD、n=3)。有意性は、独立スチューデントt検定により決定した。(g)3T3
huEGFR細胞およびMDA-MB-231細胞におけるhuEGFR発現(上パネル)またはhuPD-L1発現(下パネル)のフローサイトメトリー分析。PEコンジュゲート化アイソタイプ対照mAbと共にインキュベートした細胞を、灰色で塗りつぶしたヒストグラムで示す。(h)照射されたEGFR+PD-L1-細胞(3T3
huEGFR)またはEGFR+PD-L1+細胞(MDA-MB-231)(3×10
4細胞/ウェル)を、抗PD-L1単独または4-1BB
N/CEGFRとの組み合わせの存在下で、抗huCD3 mAb(0.05μg/ml)で活性化されたhuPBMCと、5:1のE:T比で共培養した。無細胞上清を、72時間後にIFNγについてELISAにより測定した。データは平均値±SD(n=3)で示す。有意性は、独立スチューデントt検定により算出した。3つの独立した実験のうち、1つの代表的な実験を示した(aおよびc)。初代細胞を用いた場合、少なくとも3人の異なるドナーを試験した。
【
図3】4-1BB
N/CEGFRトリマーボディは、ヒト化マウスモデルにおいて、有意な腫瘍成長抑制を示した。(a)
89Zr-4-1BB
N/CEGFRのi.v.投与後の血漿中%ID/ml対時間で表した薬物動態プロファイル。データは平均値±SD(n=2~6)で示す。(b)Rag2
-/-IL2Rγ
nullマウスに、HT29腫瘍細胞をs.c.播種し、新鮮単離huPBMCをi.p.播種し、腫瘍が直径約0.4cmに達した時点で、平均腫瘍サイズおよびSDが同程度の群(n=7~8/群)に無作為に割り付け、PBS、CEA
Nまたは4-1BB
N/CEGFRトリマーボディ(4mg/kg)の5回のi.p.注射で、または4-1BB IgG(4mg/kg)の3回のi.p.注射で処置した。c)各群のマウスの平均腫瘍体積増加を表す。データは平均値±SDで示す。有意性は、多重比較検定のためのボンフェローニ補正で調整した一元配置分散分析により決定した。(d)NSCLC PDX TP103におけるIHCによるhuEGFR発現の分析。(e)NSGマウスに、予め増幅されたTP103の小断片をs.c.播種し、腫瘍が直径約0.5cmに達した時点で、平均腫瘍サイズおよびSDが同程度の群(n=6~7/群)に無作為に割り付け、新鮮単離huPBMCをi.p.注射した。マウスを、PBSまたは4-1BB
N/CEGFRで処置した。(f)各群のマウスの平均腫瘍体積増加を表す。データは平均値±SDで示す。有意性は、独立スチューデントt検定により決定した。いずれのインビボアッセイにおいても、毒性をモニターするためにマウスの体重を週1回測定し、苦痛の徴候および/または10~15%の体重減少があれば、マウスを安楽死させた。PBS処置マウスおよび4-1BB
N/CEGFR処置マウス由来の組織切片におけるCD4+およびCD8+細胞(g)またはFoxP3+細胞(h)のパーセンテージ(平均値±SD、n=4~5)。有意性は、独立スチューデントt検定により算出した。(i)CD4およびCD8の代表的なIHC染色を示す。腫瘍は、(c)に示した実験から終了時に採取した。(j)PBS、4-1BB IgG、および4-1BB
N/CEGFRで処置したマウスの肝臓の代表的な組織切片のH&E染色。スケールバーを示す。(k)4週目に、マウスのヒトIFNγ血清レベルを調べた(平均値±SD、n=4)。有意性は、独立スチューデントt検定により算出した。
【
図4】4-1BB
N/CEGFRと完全長PD-L1遮断抗体との併用は、ヒト化MDA-MB-231 TNBC異種移植モデルにおいて、腫瘍縮小を誘導する。(a)NSGマウスに、MDA-MB-231腫瘍細胞をs.c.播種し、新鮮単離huPBMCをi.p.注射し、腫瘍が直径約0.2cmに達した時点で各群に無作為に割り付け(n=5~6/群)、PBSで、または4-1BB
N/CEGFRまたはアテゾリズマブを単独でまたは併用して処置した。(b)各群のマウスの平均腫瘍体積増加を表す。データは平均値±SDで示す。マウスの体重は週1回測定し、苦痛の徴候および/または10~15%の体重減少が認められた時点で、マウスを安楽死させた。有意性は、多重比較検定のためのボンフェローニ補正で調整した一元配置分散分析により決定した。(b)に示した実験から終了時に採取した腫瘍切片のサイトケラチン(CK)+細胞のパーセンテージ(c)および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のCD4/CD8比(d)。データは平均値±SD(n=4~6)で示す。有意性は、独立スチューデントt検定により算出した。(e)サイトケラチン、CD4およびCD8について、H&E染色および免疫組織化学的染色を行った試料の代表的な低倍率画像を示す。併用療法群では、TNBC細胞の部分的または完全な免疫介在性根絶(IME)が認められた2つの代表的な標本を示す。
【
図5】抗hu4-1BB IgGのタンパク質構造(a)、および抗hu4-1BBトリマーボディの遺伝子配置(b)およびタンパク質構造(c)を示す模式図。SAP3.28抗体由来の可変領域は緑色で、マウス定常ドメインは薄灰色で表す。scFvベースのN末端トリマーボディ(4-1BB
N)遺伝子構築物は、ヒトTIE
XVIIIドメイン(水色のボックス)にフレキシブルリンカー(濃灰色のボックス)を介して接続されたSAP3.28 scFv遺伝子(VH-リンカー-VL)を含む。精製および免疫検出のためにFLAG-strepタグ(薄橙色のボックス)を付加した。矢印は転写の方向を示す。
【
図6】4-1BB IgGおよびウレルマブの結合アッセイ。プラスチック固定化hu4-1BBに対する4-1BB IgG(a)およびウレルマブ(b)の抗原力価測定ELISA。データは平均値±SD(n=3)で表す。漸増濃度の4-1BB IgGまたはウレルマブの存在下で固定化hu4-1BBLに結合する可溶性hu4-1BBの競合ELISA(c)。hu4-1BB結合のパーセンテージは、(競合する抗4-1BB抗体存在下でのAbs
450nm÷可溶性hu4-1BB単独でのAbs
450nm)×100で表す。データは平均値±SD(n=3)で示す。それぞれ飽和濃度のウレルマブ(d)または4-1BB IgG(e)の存在下での固定化hu4-1BBに対する可溶性4-1BB IgG(d)またはウレルマブ(e)の競合ELISA。表示データは平均値±SD(n=3)で示す。
【
図7】4-1BBNおよび4-1BB
N/CEGFRトリマーボディの構造的特性評価。(a)精製4-1BBNおよび4-1BB
N/CEGFRの還元SDS-PAGE。4-1BB
N(b)および4-1BB
N/CEGFR(c)のSEC-MALS分析。黒線は、UV吸光度(左軸)、赤線は、測定されたモル質量(右軸)に対応する。(d)4-1BBN(黒線)および4-1BB
N/CEGFR(赤線)の円偏光二色性スペクトル。(e)それぞれ210nmおよび213nmでの円偏光二色性楕円率の変化により測定した、4-1BBN(黒線)および4-1BB
N/CEGFR(赤線)の熱変性。
【
図8】4-1BBNトリマーボディの溶液中での配置のSAXSによる分析。第一原理的に決定された4-1BB
NのSAXSエンベロープの剛体オーバーレイ。作成されたモデル(各鎖はブルー、マゼンタおよびシアンで着色されている)は、エンベロープ(薄灰色で着色されている)にフィットする。
【
図9】実験上および理論上のSAXS散乱。6mgml
-1濃度での実験上の散乱曲線(ドット)およびモデルから計算された理論上の散乱(滑らかな曲線)。図は、4-1BB
N(a)および4-1BB
N/CEGFR(b)の正規化二体間距離分布関数P(r)を示す。データはわかりやすくするために垂直方向にオフセットされている。a.u.は任意単位。
【
図10】4-1BB
N/CEGFRトリマーボディの種特異性。4-1BB
N/CEGFRは、プラスチックに固定化された精製マウス(mo)EGFR、カニクイザル(cy)EGFRおよびhuEGFR(a)に、ならびにcy4-1BBおよびhu4-1BBに、そしてmo4-1BB(b)にははるかに低い程度に、濃度依存的に結合した。データは1つの代表的な実験の平均値±SD(n=3)で表す。
【
図11】細胞表面に発現したhu4-1BBおよびhuEGFRに対する4-1BB
N/CEGFRの結合。4-1BB IgGを対照として用いた。Y軸は細胞数を示し、X軸は蛍光強度を表し、対数目盛で表した。3つの独立した実験のうち、1つの代表的な実験を示す。
【
図12】EGFR媒介シグナル伝達に対する4-1BB
N/CEGFRトリマーボディの効果。(a)A431細胞増殖の阻害。細胞を、指示用量の4-1BB
N/CEGFR、4-1BB IgG、セツキシマブ(陽性対照)またはリツキシマブ(陰性対照)で処理した。処理72時間後に、生存細胞を3連で測定し、未処理の対照に対してプロットした。結果は平均値±SD(n=3)で表す。有意性は、独立スチューデントt検定により評価した。(b)EGFRリン酸化の阻害。細胞を、EGFまたはビヒクルでの10分間刺激の4時間前に、100nMの各抗体と共にプレインキュベートした。EGFRのリン酸化状態は、ウェスタンブロッティングにより評価した。
【
図13】対照抗体の共刺激活性。Jurkathu4-1BBレポーター細胞を、10倍漸増濃度のマウスIgG1アイソタイプ(moIgG1)、ヒトIgG4アイソタイプ(huIgG4)または抗CEA scFvベースのトリマーボディ(CEAN)の存在下で、3T3または3T3
huEGFR細胞(a)およびCHOまたはCHO
huFcγRIIb細胞(b)と共培養し、37℃で6時間後に発光を測定した。データは、未刺激のJurkat
hu4-1BB細胞から得られた値に対する誘導倍率として示す。3つの独立した実験のうち、1つの代表的な実験を示す(平均値±SD、n=3)。有意性は、独立スチューデントt検定により算出した。
【
図14】ヒト初代細胞における共刺激試験。ヒトPBMC(1.5×10
5/ウェル)(a)または単離T細胞(1.5×10
5/ウェル)(b)を、照射された3T3細胞または3T3
huEGFR細胞と、5:1のE:T比で共培養した。抗huCD3 mAb(0.05μg/ml)の存在下または非存在下で、moIG1アイソタイプまたはCEANトリマーボディを10倍連続希釈で添加し、72時間後にIFN-γ分泌を分析した。3つの独立した実験のうち、1つの代表的な実験を示す。データは平均値±SD(n=3)である。有意性は、独立スチューデントt検定により算出した。
【
図15】4-1BB
N/CEGFRトリマーボディの血清安定性。プラスチック固定化hu4-1BB(a)またはhuEGFR(b)に対するELISAを、ヒト血清中37℃で異なる時間インキュベートした後に行った。各時点での平均値±SD(n=3)を示す。
【
図16】p-SCN-Bn-デフェロキサミン(Df)とのコンジュゲーション後の4-1BB
N/CEGFRの構造的および機能的特性評価。(a)非コンジュゲート化4-1BB
N/CEGFRおよびp-SCN-Bn-デフェロキサミンとのコンジュゲーション後(Df-1BB
N/CEGFR)の還元SDS-PAGE。(b)プラスチック固定化hu4-1BBおよびhuEGFRに対するELISAによる4-1BB
N/CEGFRおよびDf-1BB
N/CEGFRの機能的特性評価。データは平均値±SD(n=2)で表す。
【
図17】PBSまたは4-1BB
N/CEGFRトリマーボディで処置したEGFR+NSCLC PDXを有するhuPBMC駆動型ヒト化NSGマウスにおけるCD3+およびFoxP3+TIL免疫染色の代表的な画像。腫瘍は、
図3Cに示した実験から終了時に採取した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、幅広いヒト腫瘍に対して抗腫瘍活性を示すとともに、免疫チェックポイントブロッカーとの相乗効果を示す、腫瘍特異的4-1BBアゴニストトリマーボディを開発した。このアプローチは、Fc媒介有害反応を回避しながら、ほとんどのがん患者において応答を惹起する方法を提供し得る。
【0015】
さらに、本発明者らは、腫瘍特異的4-1BB-アゴニストトリマーボディのアゴニスト特性も研究した。一般に、抗4-1BB-アゴニストmAbは、強アゴニストまたは弱アゴニストのいずれかに分類することができる。強アゴニスト(例えば、ウレルマブ)は、FcγR媒介架橋なしにシグナル伝達活性化を誘導することができるが、弱アゴニスト(例えば、ウトミルマブ)は、4-lBBシグナル伝達を有意に誘導するためにFcγR媒介架橋を必要とする(Qiら,Nat Commun.,2019;10:2141)。SAP3.28抗体由来の二価(IgG)抗hu4-1BB抗体(国際特許出願WO2017077085)は、4-1BBシグナル伝達を誘導するためにFcγRIIbの存在に依存しており、したがって、弱アゴニストとして分類することができる。本発明者らは、hu4-1BBレポーティング細胞株を用いて、本発明による腫瘍特異的4-1BBアゴニストトリマーボディが、追加の架橋なしに4-1BBシグナル伝達活性を示すことを観察した。4-1BBに特異的な二量体抗体を本発明のように三量体抗体に改変することによって、FcγRIIb発現細胞により架橋された抗体によって達成される活性を有意に上回るアゴニスト活性の増大がもたらされるという示唆は、当技術分野において存在しなかったので、これは明らかに予想外であった。
【0016】
従って、第1の態様において、本発明は、3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体(本発明の第1のTPC)であって、
各単量体ポリペプチドが、
a)VHドメインがVLドメインに対してN末端側にある、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、
b)XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびそれらの機能的に等価な改変体からなる群から選択される、ホモ三量体化ドメイン、および
c)腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域
を含む、
三量体ポリペプチド複合体に関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体(第2のTPC)であって、
各単量体ポリペプチドが、
a)CDRが配列番号1または配列番号42、配列番号2または配列番号43、配列番号3または配列番号44、配列番号4または配列番号45、配列番号5または配列番号46および配列番号6で表される配列、またはそれらの機能的に等価な改変体を含む、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、
b)XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびそれらの機能的に等価な改変体からなる群から選択される、ホモ三量体化ドメイン、および
c)腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域
を含む、
三量体ポリペプチド複合体に関する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「三量体ポリペプチド複合体」または「TPC」という用語は、非共有結合的に結合した3つの単量体ポリペプチドの複合体を指す。各単量体ポリペプチドは、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましい実施形態において、TPCはホモ三量体であり、これは複合体の3つの単量体またはサブユニットが同一であることを意味する。別の好ましい実施形態において、TPCはヘテロ三量体であり、これは複合体の3つの単量体またはサブユニットの少なくとも1つが他の2つと異なることを意味する。より好ましい実施形態において、TPCはホモ三量体である。
【0019】
抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)
本明細書で使用される場合、「抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)」という用語は、4-1BBに特異的に結合し、その刺激を誘導することができる単鎖抗体フラグメント(scFv)を指す。
【0020】
CD137またはTNFRS9としても知られる「4-1BB」は、本明細書で使用される場合、活性化誘導共刺激分子に関する。4-1BBには、確認されたリガンドが1つしかなく[4-1BB-リガンド(4-1BBL)、TNFSF9]、これは、マクロファージ、活性化B細胞、および樹状細胞に発現する。4-1BBがそのリガンドまたはアゴニスト抗体と結合すると、T細胞増殖、サイトカイン産生、および細胞溶解エフェクター機能を促進し、リンパ球をプログラム細胞死から保護する。さらに、NK細胞上の4-1BBの結合により、サイトカイン放出(IFNγを含む)および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)が増強される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「単鎖可変フラグメント」という用語は、適切なペプチドリンカーにより結合された可変軽鎖領域および可変重鎖領域を含み、遺伝的に融合された単鎖分子として形成された、遺伝子工学によって改変された分子を指す。上記フラグメントは、例えば、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2および3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2および3、重鎖可変領域(VH)、または軽鎖可変領域(VL)などの、重鎖および/または軽鎖抗原結合部位を保持する免疫グロブリン分子の一部である。抗体フラグメントには、周知のFab、F(ab’)2、FdおよびFvフラグメントのほか、1つのVHドメインまたは1つのVLドメインからなるシングルドメイン抗体(dAb)が含まれる。VHドメインとVLドメインは合成リンカーを介して連結され得、VH/VLドメインが分子内で対合するか、またはVHドメインとVLドメインが別々の単鎖抗体構築物によって発現される場合には分子間で対合して、一価の抗原結合部位を形成する、さまざまなタイプの単鎖抗体設計が形成され得る。
【0022】
「特異的結合」または「特異的に結合する」または「結合する」とは、他の抗原よりも高い親和性で4-1BBまたは4-1BB内のエピトープに結合する分子を指す。典型的には、アゴニストは、結合の平衡解離定数(KD)が約1×10-8M以下、例えば約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、または約1×10-12M以下である場合に、典型的には、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合のKDよりも少なくとも100倍小さいKDで、「特異的に結合する」。KDは、標準手順を用いて測定され得る。しかしながら、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントは、他の関連抗原、例えばヒトまたはサル、例えばMacaca fascicularis(カニクイザル、cyno)、Pan troglodytes(チンパンジー、chimp)またはCallithrix jacchus(コモンマーモセット、マーモセット)などの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得る。単一特異性抗体が1つの抗原または1つのエピトープにのみ特異的に結合するのに対し、二重特異性抗体は2つの異なる抗原または2つの異なるエピトープに特異的に結合する。
【0023】
本発明のTPCの一部を形成する抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントは、4-1BBの天然リガンドによって誘導される、抗体が結合する4-1BBの少なくとも1つの生物活性を誘導する能力を有する。例示的なアゴニスト活性としては、NF-κB、AKT、p38MAPK、およびERK経路を活性化するためのTRAF1およびTRAF2を介したシグナル伝達誘導が挙げられ、これはサバイビン、Bcl-2、Bcl-XL、およびBfl-1をコードする生存遺伝子の発現を誘導し、アポトーシス促進性Bimの発現を減少させる。4-1BBは、T細胞の増殖、エフェクター機能の獲得、生存、およびT細胞記憶の発達に関与している。抗4-1BB抗体がアゴニストであるか否かを決定するための適切なアッセイは、実施例2に示されており、EGFRを標的とする抗体がT細胞共刺激を増強する能力を決定することからなる。
【0024】
当業者であれば、単鎖抗体フラグメントが4-1BB特異的であるか否かを、当技術分野で公知のいくつかのアッセイによって知ることができる。当業者であれば、抗4-1BB特異的単鎖抗体フラグメントがアゴニストであるか否かを、当技術分野で公知のいくつかのアッセイによって知ることができる。
【0025】
好ましい実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6で表される配列を含むCDR配列またはそれらの機能的に等価な改変体によって定義される。
【0026】
「機能的に等価な改変体」という用語は、本明細書に開示されるCDRの機能的に等価な改変体に適用可能な等価であるように、本発明のホモ三量体化ドメインに関連して以下に定義される。
【0027】
好ましい実施形態において、CDRは、配列番号1または配列番号42、配列番号2または配列番号43、配列番号3または配列番号44、配列番号4または配列番号45、配列番号5または配列番号46、および/または配列番号6の配列と、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0028】
「相補性決定領域(CDR)」とは、抗体における「抗原結合部位」である。CDRは、種々の用語を用いて定義され得る:(i)相補性決定領域(CDR)は、VH内に3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)およびVL内に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)存在し、配列多様性に基づく(Wuら(1970)J Exp Med 132:211-50)(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)。(ii)「超可変領域」、「HVR」、または「HV」は、VH内に3つ(H1、H2、H3)およびVL内に3つ(L1、L2、L3)存在し、ChothiaとLesk(Chothiaら(1987)J Mol Biol 196:901-17)によって定義されたとおり、構造において超可変性である抗体可変ドメインの領域を指す。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準的な付番および定義を提供している。CDR、HV、およびIMGTの記述間の対応は、(Lefrancら(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77)に記載されている。本明細書で使用される「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」および「LCDR3」という用語には、本明細書に特に明記されていない限り、上記のKabat、ChothiaまたはIMGTのいずれかの方法によって定義されたCDRが含まれる。
【0029】
本発明の抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14の配列を示すフレームワーク領域(FR)またはそれらの機能的に等価な改変体によって代替的に定義される。
【0030】
好ましい実施形態において、FRには、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および/または配列番号14の配列と少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される「フレームワーク領域」は、可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)の足場として機能する、VLまたはVHのいずれかの可変ドメインの一部に関する。本質的には、CDRのない可変ドメインである。
【0032】
好ましい実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニストscFvは、ヒト化されているか、またはヒト化VLドメインおよび/または部分ヒト化VHドメインを提示(display)する。特定の実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニストscFvは、配列番号19で表される配列を含む。
【0033】
「ヒト化された抗体、単鎖抗体フラグメント、またはVL、VHドメイン」とは、抗原結合部位が非ヒト種由来であり、可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列由来である、抗体、単鎖抗体フラグメント、またはVLまたはVHドメインを指す。ヒト化抗体は、フレームワークが発現ヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン生殖系列遺伝子配列の正確なコピーではない場合があるため、フレームワークに置換を含む場合がある。
【0034】
本発明によれば、抗体または単鎖抗体フラグメントは、ヒト個体における免疫原性を低減するために「ヒト化」することができる。ヒト化抗体は、モノクローナル抗体療法の安全性および有効性を向上させる。ヒト化の一般的な方法の一つは、任意の適切な動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター)においてモノクローナル抗体を産生させ、その定常領域をヒト定常領域に置き換えるものであり、この方法で操作された抗体は「キメラ」と呼ばれる。別の一般的な方法は、非ヒトV-FRをヒトV-FRに置き換える「CDR移植」である。CDR移植法では、CDR領域を除くすべての残基がヒト由来である。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体はヒト化されている。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体はキメラである。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体はCDR移植されている。ヒト化は、抗体の全体的な親和性を低下させるか、ほとんど影響しない場合もあれば、ヒト化後にその標的に対する親和性を向上させる場合もある。特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を10%高める。特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を25%高める。特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を35%高める。特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を50%高める。特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を60%高める。特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を75%高める。特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を100%高める。親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて適切に測定される。
【0035】
ホモ三量体化ドメイン
本明細書で使用される場合、用語「ホモ三量体化ドメイン」とは、単量体間の非共有結合的三量体化を担う領域を指す。本発明のTPCのホモ三量体化ドメインは、XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびそれらの機能的に等価な改変体からなる群から選択される。
【0036】
本明細書に開示される場合、XVIII型コラーゲンまたはXV型コラーゲンの単量体は、三量体化特性が、天然コラーゲン分子の三量体化特性と比較して維持されている限り、互いに同一であっても異なっていてもよい。特定の実施形態において、単量体の少なくとも1つは、他の2つとは異なる。好ましい実施形態において、3つの単量体は互いに同一であり、好ましくは、XVIII型コラーゲンまたはXV型コラーゲンの3つの単量体である。
【0037】
一実施形態において、XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメインは、配列番号15からなるかまたは配列番号15を含む。別の実施形態において、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメインは、配列番号16からなるかまたは配列番号16を含む。別の実施形態において、XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメインは、配列番号17からなるかまたは配列番号17を含む。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、配列番号18を含むヒト化ホモ三量体化ドメインXVIII型コラーゲンである。
【0038】
本明細書中で使用される「それらの機能的に等価な改変体」とは、天然に存在するXVIII型コラーゲンまたはXV型コラーゲンのTIEXVIIIおよび/またはTIEXVの機能的に等価な改変体、すなわち、天然のXVIII型コラーゲン分子またはXV型コラーゲン分子と比較して、三量体化特性に実質的な程度にまで悪影響を及ぼすことなく、アミノ酸配列に改変を加えた改変体を包含することを意図する。上記改変には、1個以上のアミノ酸の他のアミノ酸への保存的(または非保存的)置換、1個以上のアミノ酸の挿入および/または欠失が含まれるが、天然のXVIII型コラーゲンタンパク質またはXV型コラーゲンタンパク質の三量体化特性は、実質的に維持される、すなわち、改変体は、生理的条件下で、同じ配列を有する他のペプチドと三量体を形成する能力(素質)を維持するものとする。
【0039】
好ましくは、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVの改変体は、(i)1つ以上のアミノ酸残基が、保存アミノ酸残基または非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)で置換され、このような置換アミノ酸が、遺伝コードによってコードされていてもいなくてもよい、ポリペプチド、(ii)1つ以上の修飾アミノ酸残基、例えば置換基結合によって修飾された残基が存在する、ポリペプチド、(iii)類似mRNAの選択的プロセシングによって生じるポリペプチド、および/または(iv)ポリペプチドフラグメントである。フラグメントには、元の配列のタンパク質分解切断(多部位タンパク質分解を含む)によって生成されたポリペプチドが含まれる。改変体は、翻訳後に修飾されたものであっても化学的に修飾されたものであってもよい。このような改変体は、当業者には明らかなはずである。
【0040】
当業者であれば、本発明のポリペプチドをコードする2つのヌクレオチド配列の対応する配列同一性を決定するために、コドン縮重、保存的アミノ酸置換、およびリーディングフレームの位置決定を考慮することによって、ヌクレオチド配列の同一性の値を適切に調整し得ることを認識するであろう。
【0041】
本発明の文脈において、「保存的アミノ酸変化」および「保存的アミノ酸置換」は、本発明において同義語として用いられる。「保存的アミノ酸置換」とは、類似の側鎖を有する残基の交換可能性を指し、タンパク質の機能を変化させないサイレント変化をもたらす、天然アミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸の、類似の側鎖を有する別のアミノ酸(複数可)での置換を意味する。天然アミノ酸配列内のアミノ酸の保存置換基は、天然に存在するアミノ酸が属する群の他のメンバーから選択され得る。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンが挙げられ;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群としては、セリンおよびスレオニンが挙げられ;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群としては、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられ;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群としては、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンが挙げられ;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群としては、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが挙げられ;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群としては、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンが挙げられ;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群としては、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが挙げられ;そして硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群としては、システインおよびメチオニンが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態において、好ましい保存的アミノ酸置換は、バリン-ロイシン、バリン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、アスパラギン酸-グルタミン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。従って、本発明は、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVの機能的に等価な改変体であって、1つ以上の保存的アミノ酸置換の結果として得られる配列を有する、1つ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する改変体を指す。置換が、非修飾配列の機能と比較してその機能を変化させない修飾ポリペプチドにおけるサイレント変化をもたらすように、ポリペプチド配列中の1つ以上のアミノ酸を、類似の電荷および極性を有する少なくとも1つの他のアミノ酸で置換することができることは、当技術分野において周知である。
本発明は、上記のさらに提供されたポリペプチド配列が、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVと同一または類似または同等の機能を有する限り、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVによって与えられる配列と比較して、保存置換または非保存置換のいずれかの結果として、および/または配列の挿入または欠失のいずれかの結果として、1つ以上のアミノ酸が異なる任意のポリペプチド配列を指す。
【0042】
「コドン縮重」とは、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えることなくヌクレオチド配列の変動を可能にする、遺伝コードにおける相違を意味する。当業者であれば、所与のアミノ酸残基を特定するためにヌクレオチドコドンを使用する際に、特定の宿主細胞によって示されるコドンバイアスを十分承知している。したがって、宿主細胞における遺伝子の異所性発現のためには、そのコドン使用頻度がコドン使用頻度表に記載の宿主細胞のコドン使用頻度に近くなるように遺伝子を設計または合成することが望ましい。
【0043】
2つ以上のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の文脈における「同一性」、「同一」または「同一性パーセント」という用語は、いかなる保存的アミノ酸置換も配列同一性の一部とみなさずに、最大一致となるように比較およびアライメント(必要であればギャップを導入して)を行った場合に、同一であるか、または同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチド残基の指定のパーセンテージを有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。同一性パーセントは、配列比較ソフトウェアまたはアルゴリズムを使用して、または目視検査によって測定され得る。アミノ酸またはヌクレオチド配列のアライメントを得るために使用することができるさまざまなアルゴリズムおよびソフトウェアが、当技術分野において公知である。
【0044】
配列同一性のパーセンテージは、2つの最適にアライメントされた配列を、比較ウィンドウにわたって比較することにより決定され得る。アライメントされた配列は、ポリヌクレオチド配列であってもポリペプチド配列であってもよい。2つの配列の最適なアライメントのために、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の一部は、参照配列(挿入または欠失を含まない)と比較して、挿入または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでいてもよい。配列同一性のパーセンテージは、比較される両方の配列中に同一のヌクレオチド残基または同一のアミノ酸残基が出現する位置の数を決定して、マッチした位置の数を求め、次いで、マッチした位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを求めることによって算出される。2つのポリペプチド配列間または2つのポリヌクレオチド配列間の配列同一性は、例えば、対比較のためのデフォルトパラメータのセット(アミノ酸配列比較用:ギャップ生成ペナルティ=8、ギャップ伸長ペナルティ=2;ヌクレオチド配列比較用:ギャップ生成ペナルティ=50;ギャップ伸長ペナルティ=3)を使用して、NeedlemanとWunsch(J.Mol.Biol.48:443-453,1970)の方法に基づくGenetics Computer Group,Inc.製のWISCONSIN PACKAGEバージョン10.0-UNIXにおけるギャッププログラムを使用することによって、あるいはBLOSUM62マトリックス(HenikoffとHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915-10919,1992)および対比較のためのデフォルトパラメータのセット(ギャップ生成コスト=11、ギャップ伸長コスト=1)を使用して、BLAST2.2.1ソフトウェアスイート中のTBLASTNプログラムを使用することによって決定され得る。
【0045】
ポリペプチド間の配列同一性のパーセンテージおよびそれらの対応する機能は、例えば、BLAST、FASTA、およびSmith-Watermanを含む、例えば、クエリ配列をタンパク質データベースと比較するために利用可能なさまざまな相同性に基づく検索アルゴリズムを使用して、決定され得る。BLASTXおよびBLASTPアルゴリズムは、タンパク質の機能情報を提供するために使用され得る。機能割り当ての信頼性を評価するために、多くの値が調べられる。有用な測定値としては、「E値」(「hit_p」とも表記される)、「同一性パーセント」、「クエリカバレッジパーセント」、および「ヒットカバレッジパーセント」が挙げられる。BLASTでは、E値(すなわち期待値)は、データベース検索において偶然に生じると予想される、生のアライメントスコア(S)と同等以上のスコアを有する異なるアライメントの数を表す。したがって、E値が低いほど、より有意なマッチとなる。データベースのサイズは、E値計算における要素であるため、GenBankなどの公開データベースに対してBLAST検索を行うことで得られるE値は、一般に、いかなるクエリ/エントリのマッチについても、時間の経過とともに増加している。したがって、ポリペプチド機能予測の信頼性に関する基準を設定する際に、「高い」BLASTXマッチは、トップBLASTXヒットのE値が1E-30未満であるとみなされ;中程度のBLASTXは、E値が1E-30~1E-8であるとみなされ;そして低いBLASTXは、E値が1E-8より高いとみなされる。同一性パーセントとは、BLASTアルゴリズムによってアライメントされた配列部分の長手方向に沿って存在する、完全にマッチしたアミノ酸残基のパーセンテージを指す。ポリペプチド機能予測の信頼性に関する基準を設定する際に、「高い」BLASTマッチは、トップBLASTヒットに対して少なくとも70%の同一性パーセントを有するとみなされ;中程度の同一性パーセントの値は、35%~70%であるとみなされ;低い同一性パーセントは、35%未満であるとみなされる。タンパク質の機能割り当てにおいて特に興味深いのは、E値、同一性パーセント、クエリカバレッジおよびヒットカバレッジの組み合わせの使用である。クエリカバレッジとは、BLASTアライメントで表示されるクエリ配列のパーセントを意味し、ヒットカバレッジとは、BLASTアライメントで表示されるデータベースエントリのパーセントを意味する。本発明によって機能的に包含されるポリペプチドを定義する目的で、ポリペプチドの機能は、配列番号15、配列番号16、配列番号17または配列番号18などのタンパク質ホモログの機能から推定され、本発明のポリペプチドは、(1)hit_p<1e-30または同一性%>35%かつクエリカバレッジ>50%かつヒットカバレッジ>50%、あるいは(2)hit_p<1e-8かつクエリカバレッジ>70%かつヒットカバレッジ>70%のいずれかとなるポリペプチドである。
【0046】
TIEXVIIIの機能的に等価な改変体には、配列番号15の配列と、配列番号17の配列と、または配列番号18の配列と、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列も含まれる。
【0047】
TIEXVの機能的に等価な改変体には、配列番号16の配列と少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列も含まれる。
【0048】
機能的に等価な改変体が三量体を形成する能力は、当業者に公知の従来の方法によって決定され得る。例えば、簡単な例として、機能的に等価な改変体が三量体を形成する能力は、標準的なクロマトグラフィー技術を用いて決定され得る。したがって、評価対象の改変体を適切な三量体化条件下に置き、最終的に形成される複合体(三量体)が変化しないように、非変性条件下で複合体を標準的なクロマトグラフィーアッセイにかける。改変体が適切に三量体化すると、複合体の分子サイズは改変体1分子の分子サイズよりも3倍重くなる。複合体の分子サイズは、分析遠心分離、質量分析、サイズ排除クロマトグラフィー、沈降速度などの標準的な方法を用いて明らかにすることができる。
【0049】
TIEXVIIIおよび/またはTIEXVは、任意の被験体、好ましくは、マウス、ラット、サル、ヒトなどの哺乳類に由来し得る。好ましい実施形態において、TIEXVIIIはヒトに由来する。別の好ましい実施形態において、TIEXVはヒトに由来する。別の好ましい実施形態において、TIEXVIIIは、マウスXVIII型コラーゲンに由来する。別の好ましい実施形態において、TIEXVは、マウスXV型コラーゲンに由来する。より好ましい実施形態において、TIEXVIIIは、マウスXVIII型コラーゲンの小さなホモ三量体化ドメインである。
【0050】
TIEXVIIIおよび/またはTIEXVは、他の三量体ポリペプチド複合体(TPC)の中でも、機能的に活性な単一特異性および二重特異性の三価N末端TPC、三価C末端TPC、単一特異性および二重特異性の三価N/C末端TPC;ならびに単一特異性および二重特異性の六価単鎖N/C末端TPCを作製するために使用され得る。さらに、リガンド結合ドメインとしてのシングルドメイン(VHH)抗体を有するか、または成長因子(例えば、VEGF)を有する、機能的に活性な単一特異性C末端TPCの作製にも使用され得る。したがって、特異性と価数の異なる組み合わせを有する、単一特異性または多重特異性(例えば、二重、三重、四重特異性など)の多価(例えば、三価、四価、五価または六価)の組換え分子が容易に作製され得る。特定の実施形態において、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVは、単一特異性TCPを作製するために使用される。好ましい実施形態において、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVは、単一特異性または二重特異性TCPを作製するために使用される。
【0051】
腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域
本発明によるTPCは、単一特異性であり得る、すなわち、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域を含むが、腫瘍細胞の表面に存在する腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な1つ以上のポリペプチド領域も含み得る。この結果、4-1BBに結合してアゴニスト作用を発揮する領域および腫瘍関連抗原に結合するポリペプチド領域を含む、二重特異性抗体が得られる。腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域を含む、TPC内の単量体の数は、1つ、2つまたは3つのいずれでもよいことが理解されよう。好ましい実施形態において、単量体ポリペプチドの1つは、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域を含む。別の好ましい実施形態において、単量体ポリペプチドのうちの2つは、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域を含む。別の好ましい実施形態において、3つの単量体ポリペプチドは、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域を含む。
【0052】
「特異的結合」という用語は、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントのアゴニストに関して上記で詳細に定義されており、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域に等しく適用される。典型的には、抗体はおよそ10-7M未満、例えばおよそ10-8M未満、10-9M未満または10-10M未満あるいはさらに低い親和性(KD)で結合する。用語「KD」または「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。典型的には、本発明の抗体は、例えばBIACORE装置の表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して決定されるように、およそ10-7M未満、例えばおよそ10-8M未満、10-9M未満または10-10M未満あるいはさらに低い解離平衡定数(KD)で抗原に結合する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「腫瘍関連抗原」または「TAA」という用語は、患者のがんの状態または種類を、適切な免疫療法製品またはレジメンと適合させることができる、任意の抗原を意味する。TAAは、がん細胞自体が発現している場合もあれば、腫瘍に関連する新生血管または他の間質など、腫瘍の非がん性成分と関連している場合もある。腫瘍細胞によって発現され、免疫エフェクター機構の標的として機能することが可能な腫瘍抗原の中には、タンパク質、一般的には糖タンパク質、ペプチド、炭水化物、および糖脂質が含まれる。腫瘍関連抗原の非限定的な例としては、AFP(アルファ(α)-フェトタンパク質)、AIM-2(黒色腫には存在しないインターフェロン誘導性タンパク質2)、ART-4(T細胞によって認識される腺癌抗原4)、BAGE(B抗原)、BCMA、CAMEL(黒色腫上のCTL認識抗原)、C16a、CD19、CD20、CD22、CD30、CD3、CD40、CD33、CD123、VEGF、IL-6、MUC-1、エンドグリン、DLL、B7-H3、CEA(癌胎児性抗原)、DAM(分化抗原黒色腫)、Ep-CAM(上皮細胞接着分子)、ErB3、FAP、gpA33、Her2、IGF-1R、CD-5、FAP、MAGE(黒色腫抗原)、MART-1/Melan-A(T細胞によって認識される黒色腫抗原-1/黒色腫抗原A)、MC1R(メラノコルチン1受容体)、MET、MUC-1、NY-ESO-1(ニューヨーク食道扁平上皮癌1(New York esophageous 1))、OA1(眼白子症1型タンパク質)、P-カシェリン、PD-L1、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、SART-1、-2、-3(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1、2、3)、サバイビン-2B(イントロン2保持サバイビング(surviving))、TRP(チロシナーゼ関連タンパク質)が挙げられる。抗原は、腫瘍細胞の表面で発現されてもよく、または分泌されてもよい。好ましい実施形態において、抗原は細胞表面抗原である。潜在的な腫瘍抗原に対する患者の血清抗体の存在は、当業者であれば、例えばSEREX(組換え発現クローニングによる抗原の血清学的同定)を用いて判定することができ、SEREXでは、腫瘍細胞由来のcDNAライブラリーと血清を反応させることにより、標的抗原が同定される。
【0054】
一実施形態において、TAAはEGFRである。
【0055】
別の実施形態において、TAAはCEAである。
【0056】
一実施形態において、TAAに特異的に結合可能な領域は、上記TAAに対するアゴニスト能を有さない。
【0057】
一実施形態において、TAAに特異的に結合可能な領域は、抗体であり、より好ましくは、「単鎖抗体、ナノボディまたは「非免疫グロブリン剤」である。この用語は、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントの文脈において上記で定義されており、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域にも同様に適用可能である。
【0058】
好ましい実施形態において、TAAに特異的に結合可能なポリペプチド領域は、ホモ三量体化ドメインに対してN末端またはC末端に位置する。好ましい実施形態において、TAAは、ホモ三量体化ドメインに対してC末端に位置する。
【0059】
好ましい実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントに特異的に結合可能な分子が、ホモ三量体化ドメインに対してN末端に位置する場合には、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な分子は、ホモ三量体化ドメインに対してC末端に位置する。別の好ましい実施形態において、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域が、ホモ三量体化ドメインに対してC末端に位置する場合には、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントは、ホモ三量体化ドメインに対してN末端に位置する。
【0060】
好ましい実施形態において、腫瘍関連抗原は、上皮成長因子受容体(EGFR)である。本明細書で使用される場合、用語「上皮成長因子受容体」または「EGFR」は、細胞外タンパク質リガンドの上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーに対する受容体である、膜貫通タンパク質である。これは、シグナル伝達経路ならびに細胞の成長および生存を調節し、EGF分子に対する親和性を示す、チロシンキナーゼを指す。受容体のErbBファミリーは、4つの密接に関連するサブタイプ:ErbB1(上皮成長因子受容体[EGFR])、ErbB2(HER2/neu)、ErbB3(HER3)、およびErbB4(HER4)、ならびにそれらの改変体(例えば、Humphreyら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990,87:4207-4211)のような欠失変異体EGFR)からなる。EGFRに結合することが可能な分子の非限定的な例としては、天然リガンドの上皮成長因子(EGF)、ベタセルリン(BTC)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、アンフィレギュリン(AR)、エピレギュリン(EPR)、トランスフォーミング増殖因子-α(TGF-α)、およびエピジェン(EPG)が挙げられる。一実施形態において、EGFRに特異的に結合可能な分子は、アゴニスト能を有さない。好ましい実施形態において、EGFRはヒトである。
【0061】
好ましい実施形態において、EGFRに特異的に結合可能なポリペプチド領域は、抗体である。
【0062】
「抗体」は、広義の意味であり、マウス、ヒト、ヒト化およびキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗体フラグメント、二重特異性また多重特異性抗体、二量体、三量体または多量体抗体、単鎖抗体、シングルドメイン抗体、抗体ミメティック、および必要な特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾構造を含む、免疫グロブリン分子を含む。「全長抗体分子」は、ジスルフィド結合によって相互接続されている2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)で構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインで構成される)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)で構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)が散在している、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシル末端へ以下の順序で配列された、3つのCDRおよび4つのFRセグメントで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。免疫グロブリンは、重鎖定常領域のアミノ酸配列によって、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5つの主要クラスに割り当てられ得る。IgAおよびIgGは、アイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4にさらに細分類される。いずれの脊椎動物種の抗体軽鎖も、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なる型、すなわちカッパ(κ)およびラムダ(λ)のいずれかに割り当てられ得る。
【0063】
好ましい実施形態において、抗EGFR抗体は、scFv、ナノボディまたは抗体ミメティックである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「単鎖抗体」という用語は、遺伝的に融合された単鎖分子として形成された、適切なペプチドリンカーによって結合された可変軽鎖領域および可変重鎖領域を含む、遺伝子工学によって改変された分子を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ナノボディ」という用語は、単一の単量体の可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである、シングルドメイン抗体(sdAb)を指す。抗体全体と同様に、特異的抗原に選択的に結合することが可能である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「抗体ミメティック」という用語は、抗体と同様に、抗原に特異的に結合することができるが、必ずしも抗体と構造的に関連していない、任意の化合物を指す。「ミメティック」の化合物には、機能活性に必要な化合物の化学構造が、その化合物の立体構造を模倣する他の化学構造で置き換えられた化合物が含まれる。ミメティックの例としては、ペプチド主鎖が1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されたペプチド性化合物(例えば、James,G.L.ら(1993)Science 260:1937-1942を参照)、または、鎖伸長またはヘテロ原子組み込みを含む、天然のペプチド主鎖のアミド結合アイソスターおよび/または修飾を用いてペプチド二次構造を模倣するオリゴマーが挙げられ;その例としては、アザペプチド、オリゴカルバメート、オリゴ尿素、β-ペプチド、γ-ペプチド、オリゴ(フェニレンエチニレン)、ビニル性スルホノペプチド、ポリ-N-置換グリシン(ペプトイド)などが挙げられる。ペプチドミメティック化合物を調製するための方法は、当技術分野において周知であり、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,17.2章,F.Choplin Pergamon Press(1992)に詳述されている。
【0067】
別の好ましい実施形態において、抗EGFR抗体は、ナノボディである。
【0068】
別の好ましい実施形態において、EGFR抗体は、抗EGFR(huEGFR)シングルドメイン抗体(VHH)である。より好ましい実施形態において、抗EGFR(huEGFR)シングルドメイン抗体(VHH)ヌクレオチド配列は、配列番号20で表される配列を含む。別の好ましい実施形態において、抗EGFR(EGFR)シングルドメイン抗体(VHH)CDR配列は、CDR1(配列番号25)、CDR2(配列番号26)、CDR3(配列番号27)である。別の好ましい実施形態において、抗EGFR(huEGFR)シングルドメイン抗体(VHH)FR配列は、FR1(配列番号21)、FR2(配列番号22)、FR3(配列番号23)、FR4(配列番号24)である。
【0069】
別の好ましい実施形態において、EGFR抗体は、ヒト化抗EGFR(huEGFR)シングルドメイン抗体(VHH)である。より好ましい実施形態において、ヒト化抗EGFR(huEGFR)シングルドメイン抗体(VHH)は、配列番号28で表される配列を含む。別の好ましい実施形態において、抗EGFR(huEGFR)シングルドメイン抗体(VHH)CDR配列は、CDR1(配列番号33)、CDR2(配列番号34)、CDR3(配列番号35)である。別の好ましい実施形態において、抗EGFR(huEGFR)シングルドメイン抗体(VHH)FR配列は、FR1(配列番号29)、FR2(配列番号30)、FR3(配列番号31)、FR4(配列番号32)である。
【0070】
別の好ましい実施形態において、腫瘍関連抗原は、癌胎児性抗原(CEA)である。本明細書で使用される場合、CEACAM1、BGP1、BGPI、CD66a、BGPとしても知られる「癌胎児性抗原」または「CEA」という用語は、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1を指す。上記タンパク質をコードするヒト遺伝子は、Ensemblデータベースにアクセッション番号ENSG00000079385で示されている。
【0071】
ホモ三量体化ドメイン、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントおよび腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域の間のリンカー領域。
本発明によるTPCを形成する単量体ポリペプチドの異なるエレメントは、互いに直接連結されていてもよく、アミノ酸スペーサーまたはリンカーを介して接続されていてもよい。
【0072】
一実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)、ホモ三量体化ドメイン、および/または腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域は、直接接続されている。別の実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)と、ホモ三量体化ドメインは、直接接続されている。別の好ましい実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)と、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域は、直接接続されている。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインと、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域は、直接接続されている。別の好ましい実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)と、ホモ三量化ドメインと、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域は、直接接続されている。
【0073】
別の実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単抗体フラグメント(scFv)、ホモ三量体化ドメイン、および/または腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域は、アミノ酸リンカーまたはスペーサーによって接続されている。別の実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)と、ホモ三量体化ドメインは、アミノ酸リンカーまたはスペーサーによって接続されている。別の好ましい実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)と、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域は、アミノ酸リンカーまたはスペーサーによって接続されている。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインと、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域は、アミノ酸リンカーまたはスペーサーによって接続されている。
【0074】
別の実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント(scFv)のアゴニストは、アミノ酸リンカーを介してホモ三量化ドメインに接続され、ホモ三量化ドメインは、アミノ酸スペーサーによって腫瘍関連抗原に特異的に結合可能なポリペプチド領域に接続されている。
【0075】
本明細書に開示される場合、スペーサーは、適切な長さおよび特徴のペプチドを接続または連結する挿入物である。一般に、上記スペーサーは、上記ドメイン間のヒンジ領域として機能し、個々のドメインの三次元形態を維持しつつ、それらが互いに独立して動くことを可能にする。この意味で、好ましいスペーサーは、この動きを可能にする構造的延性または柔軟性を特徴とするヒンジ領域であろう。スペーサーの長さは変えることができ、典型的には、スペーサーのアミノ酸数は、100個以下のアミノ酸、好ましくは50個以下のアミノ酸、より好ましくは40個以下のアミノ酸、さらにより好ましくは30個以下のアミノ酸、さらにいっそう好ましくは20個以下のアミノ酸である。
【0076】
あるいは、適切なスペーサーは、マウスIgG3の上部ヒンジ領域の10アミノ酸残基の配列に基づくことができ、これは、コイルドコイルによる二量体化抗体の生成に使用されており(Pack P.およびPluckthun,A.,1992,Biochemistry 31:1579-1584)、本発明によるスペーサーペプチドとして有用であり得る。これはまた、ヒトIgG3または他のヒトIgサブクラス(IgG1、IgG2、IgG4、IgMおよびIgA)の上部ヒンジ領域の対応する配列であり得る。ヒトIgの配列は、ヒトにおいて免疫原性であるとは予想されない。本発明に使用することができる追加のスペーサーとしては、アミノ酸配列GAP、AAAのペプチドが挙げられる。
【0077】
特定の実施形態において、上記スペーサーは、構造的柔軟性を有するペプチド(すなわち、柔軟な連結ペプチドまたは「フレキシブルリンカー」)であり、グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される2つ以上のアミノ酸を含む。別の特定の実施形態において、スペーサーは、アミノ酸残基、特に、GlyおよびSerの繰り返し、またはアミノ酸残基の任意の他の適切な繰り返しを含むペプチドである。実際上は、いかなるフレキシブルリンカーでも、本発明によるスペーサーとして使用することができる。
【0078】
好ましい実施形態において、スペーサーは、フレキシブルリンカーである。より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、1~18残基の間である。さらにより好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、5残基、15残基、17残基、または18残基であり、好ましくは15残基である。
【0079】
より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、少なくとも1残基、少なくとも2残基、少なくとも3残基、少なくとも4残基、少なくとも5残基、少なくとも6残基、少なくとも7残基、少なくとも8残基、少なくとも9残基、少なくとも10残基、少なくとも11残基、少なくとも12残基、少なくとも13残基、少なくとも14残基、少なくとも15残基、少なくとも16残基、少なくとも17残基、または少なくとも18残基である。さらにより好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、15残基長である。
【0080】
好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント、または腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域のいずれかに、直接連結されている。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域に、直接連結されている。好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント、またはフレキシブルリンカーを介して腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域のいずれかに、直接連結されている。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメント、およびフレキシブルリンカーを介して腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域に、直接連結されている。
【0081】
より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、少なくとも1残基、少なくとも2残基、少なくとも3残基、少なくとも4残基、少なくとも5残基、少なくとも6残基、少なくとも7残基、少なくとも8残基、少なくとも9残基、少なくとも10残基、少なくとも11残基、少なくとも12残基、少なくとも13残基、少なくとも14残基、少なくとも15残基、少なくとも16残基、少なくとも17残基、または少なくとも18残基である。より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、17および/または18残基長である。さらにより好ましい実施形態において、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントは、18残基長のリンカーを介してホモ三量体化ドメインに連結されており、かつ/または腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域は、16残基長のリンカーを介してホモ三量体化ドメインに連結されている。
【0082】
好ましい実施形態において、18残基長のリンカーは、配列番号47である。別の好ましい実施形態において、16残基長のリンカーは、配列番号36である。
【0083】
好ましい実施形態において、TPCの少なくとも1つの単量体は、三量体ポリペプチドの検出および/または精製に適したタグをさらに含む。タグの非限定的な例としては、タグペプチドなどのアフィニティー精製タグが挙げられ;上記タグの例示的で非限定的な例としては、ポリヒスチジン[ポリ(His)]配列、得られた融合タンパク質を免疫親和性クロマトグラフィーによって精製するために使用され得る抗体によって認識可能なペプチド配列、例えば、熱ウイルスのヘマグルチニンに由来するエピトープ、c-mycタグ、Strepタグなどが挙げられる。別の好ましい実施形態において、TPCの複数の単量体は、三量体ポリペプチドの検出および/または精製に適したタグをさらに含む。
【0084】
特定の実施形態において、3つの単量体ポリペプチドのそれぞれが、1つのアフィニティー精製タグを含み、上記タグが互いに異なる場合(例えば、アフィニティー精製タグ「a」、「b」および「c」であって、タグ「a」は物質Aに結合することによって認識され、タグ「b」は物質Bに結合することによって認識され、タグ「c」は物質Cに結合することによって認識される)、対応する物質(A、BおよびC)に対して親和性を示す本発明のそのようなTPCのみを選択的に回収できるように設計された3工程のアフィニティー精製手順に供される。上記アフィニティー精製タグは、直列で直接融合させることもでき、あるいは、切断可能リンカー、すなわち、酵素的または化学的手段によって特異的に切断可能なアミノ酸配列を含むペプチドセグメント(すなわち、認識/切断部位)を介して単量体ポリペプチドに融合させることもできる。特定の実施形態において、上記切断可能リンカーは、エンテロキナーゼ、Arg Cエンドプロテアーゼ、Glu Cエンドプロテアーゼ、Lys Cエンドプロテアーゼ、第Xa因子などのプロテアーゼによって切断可能なアミノ酸配列を含み、あるいは、別の特定の実施形態において、上記切断可能リンカーは、例えば、メチオニン残基を切断する臭化シアンなどの化学試薬、または任意の他の適切な化学試薬によって切断可能なアミノ酸配列を含む。切断可能リンカーは、その後にアフィニティー精製タグの除去が望ましい場合に有用である。
【0085】
好ましい実施形態において、3つの単量体ポリペプチドは、同一のアフィニティー精製タグを含む。タグは、単量体の任意の位置、特に、ホモ三量体化ドメインに対してC末端またはN末端に配置され得る。より好ましい実施形態において、タグは、抗4-1BB特異的アゴニスト単鎖抗体フラグメントのN末端にある。より好ましい実施形態において、タグは、His6-mycタグまたはstrep-Flagタグである。より好ましい実施形態において、タグは、配列番号37のflapタグ、および/または配列番号38のStrepIIタグである。
【0086】
別の好ましい実施形態において、単量体は、三量体ポリペプチドの循環半減期を増加させる部分をさらに含む。本発明によれば、「半減期」は、体内の化合物の濃度または量が、所与の濃度または量の半分に減少するのに必要な期間である。半減期は「開始点」として選択された濃度または量とは全く無関係であるため、所与の濃度または量は、観察時間中に観察された最大値である必要はなく、投与開始時に存在する濃度または量である必要もない。
【0087】
治療的投薬にとって最適ではない半減期プロファイルを増加させるための非限定的な戦略は、当業者に公知であり、これらとしては、薬理学的に活性なペプチドまたはタンパク質と、天然に存在する半減期の長いタンパク質またはタンパク質ドメインとの遺伝子融合(例えば、Fc融合、トランスフェリン融合、またはアルブミン融合);薬理学的に活性なペプチドまたはタンパク質と、不活性なポリペプチド、例えば、XTEN(組換えPEGまたは「rPEG」としても公知)、ホモアミノ酸ポリマー(HAP;HAP化)、プロリン-アラニン-セリンポリマー(PAS;PAS化)、またはエラスチン様ペプチド(ELP;ELP化)との遺伝子融合;薬理学的に活性なペプチドまたはタンパク質と、繰り返し化学部分、例えば、PEG(PEG化)またはヒアルロン酸との化学的コンジュゲーションによって流体力学的半径を増加させること;ポリシアリル化により、薬理学的に活性なペプチドまたはタンパク質を融合する負電荷を著しく増加させること;あるいは、ヒトGG βサブユニットなどの天然タンパク質の半減期を延長することが知られている、負に荷電し、高度にシアリル化されたペプチド(例えば、カルボキシ末端ペプチド[CTP;絨毛性ゴナドトロピン(CG)β鎖のもの])を目的の分子と融合させること;生物活性タンパク質に、ペプチドまたはタンパク質結合ドメインを付着させることで、HSA、ヒトIgG、またはトランスフェリンなどの通常長い半減期のタンパク質と非共有結合的に結合させること;ペプチドまたは低分子と、ヒトIgG、Fc部分、またはHSAなどの半減期の長いタンパク質との化学的コンジュゲーションが挙げられる。
【0088】
好ましい実施形態において、半減期は、TPC循環半減期を増加させる任意の部分を含まない三量体ポリペプチドと比較して、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%増加され得る。
【0089】
TPCの循環半減期を増加させる役割を果たす部分は、TPCの単量体のうちの1つ、TPCの単量体のうちの2つ、または3つのTPC単量体に存在し得る。さらに、TPCの循環半減期を増加させる役割を果たす部分は、単量体のN末端、単量体のC末端、ホモ三量体化ドメインに対してN末端、またはホモ三量体化ドメインに対してC末端に存在し得る。
【0090】
別の好ましい実施形態において、三量体ポリペプチドの循環半減期を増加させる部分は、アルブミンフラグメントまたはアルブミン結合部分である。
【0091】
「結合部分」という用語は、異なるエピトープまたは抗原結合ドメインとは独立して、抗原またはエピトープに特異的に結合するドメインを指す。結合部分は、ドメイン抗体(dAb)であってもよく、または非免疫グロブリンタンパク質スキャフォールド、例えば、CTLA-4、リポカリン、SpA、アドネクチン、アフィボディ、アビマー、GroEl、トランスフェリン、GroESおよびフィブロネクチンからなる群から選択されるスキャフォールドの誘導体であるドメインであってもよく、これは、天然リガンド以外のリガンドに結合する。好ましい実施形態において、上記部分は、血清アルブミンに結合する。
【0092】
前述のすべての用語および実施形態は、本開示にも同様に適用可能である。
【0093】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
別の態様において、本発明は、本発明の三量体ポリペプチドの一部を形成する少なくとも1つの単量体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基を有する一本鎖または二本鎖ポリマーを指す。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、リボヌクレオチド塩基を有する。好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基を有する。より好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、本発明による三量体ポリペプチドの一部を形成する単量体ポリペプチドの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つをコードする。
【0095】
好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする配列に対して5’位にあり、かつ上記配列と同じオープンリーディングフレーム内にある、シグナル配列をコードする配列をさらに含む。本明細書で使用される場合、「シグナル配列」または「シグナルペプチド」という用語は、細胞内で合成されたタンパク質を分泌経路に向かわせる、比較的短い長さの、一般には5~30アミノ酸残基のペプチドを指す。シグナルペプチドは、通常、二次アルファヘリックス構造をとる一連の疎水性アミノ酸を含む。加えて、多くのペプチドは、タンパク質がその輸送に適したトポロジーをとるのに寄与し得る、正電荷を帯びた一連のアミノ酸を含む。シグナルペプチドは、そのカルボキシル末端に、ペプチダーゼによって認識されるモチーフを有する傾向があり、ペプチダーゼはシグナルペプチドを加水分解して、遊離シグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生成させる能力がある。シグナルペプチドは、目的のタンパク質が適切な位置に到達すると、切断され得る。任意のシグナルペプチドが、本発明で使用され得る。好ましい実施形態において、シグナル配列は、オンコスタチンMのシグナル配列である。
【0096】
別の態様において、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、細胞、好ましくは、真核細胞において、少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現するために使用される複製DNA構築物を指す。発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存する。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核生物宿主に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルスに由来する発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、公知の細菌プラスミド、例えばpCR1、pBR322、pCR3.1、pCMV3、pMB9およびそれらの誘導体を含めた大腸菌由来のプラスミド、より広い宿主範囲のプラスミド、例えばM13および繊維状一本鎖DNAファージなどが挙げられる。これらのベクターは、形質転換プロトコル中に外来DNAが組み込まれたクローンを最初に選択するために使用される選択可能マーカーを発現するための追加の独立したカセットを含んでもよい。発現ベクターは、好ましくは複製起点を含む。発現ベクターは、1つ以上の多重クローニング部位を含むこともできる。
【0098】
発現ベクターはまた、細菌におけるベクター増幅に必要な、原核生物における複製起点を含んでもよい。さらに、発現ベクターは、細菌に対する選択遺伝子、例えば、抗生物質、例えば、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールなどに対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子を含むこともできる。発現ベクターはまた、1つ以上の多重クローニング部位を含むこともできる。多重クローニング部位は、1つ以上のユニークな制限部位を含むポリヌクレオチド配列である。制限部位の非限定的な例としては、EcoRI、SacI、KpnI、SmaI、XmaI、BamHI、XbaI、HincII、PstI、SphI、HindIII、AvaI、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0099】
本発明のベクターで発現されるポリヌクレオチド(1つまたは複数)、および本発明の発現ベクターの調製に必要なRNAまたはDNA構築物は、一般的な実験マニュアル、例えば、「Molecular cloning:a laboratory manual」(Joseph Sambrook,David W.Russel編,2001,第3版,Cold Spring Harbor、ニューヨーク)または「Current protocols in molecular biology」(F.M.Ausubel,R.Brent,R.E.Kingston,D.D.Moore,J.A.Smith,J.G.SeidmanおよびK.Struhl編,第2巻,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,ニューヨーク,N.Y.,2006年9月更新)に記載されている従来の分子生物学的方法によって得ることができる。
【0100】
別の態様において、本発明は、本発明によるベクターを含む宿主細胞に関する。
【0101】
「宿主細胞」という用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的子孫も指すように使用される。突然変異または環境的影響のいずれかにより、後代においてある種の改変が生じ得るため、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではない場合があるが、それでもなお本明細書で使用される用語の範囲に含まれる。宿主細胞は、任意の原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫または植物細胞)であり得、これは、本発明の核酸を適切な発現ベクターに挿入すること、そのベクターを用いて適切な宿主細胞を形質転換すること、およびその宿主細胞を、本発明のTPCを構成する単量体ポリペプチドのポリペプチド部分の発現を可能にする条件下で培養することを含めた、従来の遺伝子工学的手法によって調製され得る。本発明の核酸は、誘導プロモーターまたは構成的プロモーターであり得る適切なプロモーターの制御下に置かれ得る。発現系に応じて、ポリペプチドは、宿主細胞の細胞外相、ペリプラズム、または細胞質から回収され得る。
【0102】
適切なベクター系および宿主細胞は、当業者に利用可能な膨大な文献および資料によって証明されるように、当技術分野において周知である。本発明はまた、ベクターの構築および宿主細胞における本発明の核酸の使用に関するものでもあるので、以下に、そのような使用に関連する一般的な考察および本発明のこの態様を実施する際の特定の考慮事項を提供する。
【0103】
一般に、本発明の核酸の最初のクローニング、および本発明のベクターの構築には、原核動物が好ましい。例えば、下記のより具体的な開示において言及される特定の株に加えて、大腸菌K12株294(ATCC番号31446)、大腸菌B、および大腸菌X1776(ATCC番号31537)などの株を、例として挙げてもよい。当然ながら、これらの例は、限定的なものではなく、例示的なものであることを意図している。
【0104】
原核生物は、効率的な精製およびタンパク質のリフォールディング戦略が利用可能なことから、発現にも利用され得る。前述の株、ならびに大腸菌W3110(F-、λ-、原栄養株、ATCC番号273325)、枯草菌(Bacillus subtilis)などの桿菌、またはネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)もしくはセラチア・マルセッセンス(Serratia marcesans)などの他の腸内細菌、および種々のシュードモナス種が使用され得る。
【0105】
一般に、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは通常、複製部位、および形質転換細胞において表現型選択を提供し得るマーキング配列を有する。例えば、大腸菌は、典型的には、大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される。pBR322プラスミドは、アンピシリン耐性およびテトラサイクリン耐性の遺伝子を含んでおり、従って、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322プラスミド、または他の微生物プラスミドまたはファージはまた、発現のために微生物が使用できるプロモーターを含むか、または含むように改変されなければならない。
【0106】
組換えDNA構築において最も一般的に使用されるこれらのプロモーターとしては、B-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系、およびトリプトファン(trp)プロモーター系が挙げられる。これらは最も一般的に使用されているが、他の微生物プロモーターも発見され、利用されており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細が公開されているので、当業者であれば、それらをプラスミドベクターと機能的にライゲートすることが可能である。原核生物に由来するある種の遺伝子は、それら自体のプロモーター配列から大腸菌において効率的に発現する場合があり、人工的な手段で別のプロモーターを付加する必要がない。
【0107】
原核生物に加えて、酵母培養物などの真核微生物を使用してもよい。真核微生物の中では、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiase)または一般的なパン酵母が、最も一般的に使用されるが、他の多くの株も一般的に利用可能である。サッカロミセスにおける発現には、例えばプラスミドYRp7が一般的に使用される。このプラスミドは、既にtrp1遺伝子を含んでおり、トリプトファン中で増殖する能力が欠如した酵母の突然変異株、例えばATCC番号44076またはPEP4-1に対する選択マーカーを提供する。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在は、トリプトファン非存在下での増殖によって形質転換体を検出するための有効な環境を提供する。
【0108】
酵母ベクターにおける適切なプロモーティング配列としては、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖系酵素、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどのためのプロモーターが挙げられる。適切な発現プラスミドを構築する際には、これらの遺伝子に関連する終止配列も、発現ベクター内の発現させたい配列の3’側にライゲートさせて、mRNAのポリアデニル化および終止を提供する。
【0109】
増殖条件によって転写が制御されるという付加的な利点を有する他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ-2、イソチトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、および前述のグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびラクトースの利用を担う酵素のためのプロモーター領域である。酵母適合性のプロモーター、複製起点および終止配列を含む任意のプラスミドベクターが適している。
【0110】
微生物に加えて、多細胞生物に由来する細胞の培養物も、宿主として使用され得る。原則としては、脊椎動物培養物由来かまたは無脊椎動物培養物由来かに関わらず、任意のこのような細胞培養が実行可能である。しかしながら、脊椎動物細胞への関心が最も高く、培養(組織培養)における脊椎動物の増殖は、近年、日常的な手順となっている。このような有用な宿主細胞株の例は、VEROおよびHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、ならびにW138、BHK、COS-7、ヒト胚腎臓(HEK)293、およびMDCK細胞株である。加えて、バキュロウイルス-昆虫細胞発現系は、組換えタンパク質および抗体を産生させるために広く使用される。
【0111】
このような細胞のための発現ベクターは、通常、(必要に応じて)複製起点、発現させる遺伝子の前方に位置するプロモーターを、任意の必要なリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列と共に含む。
【0112】
哺乳動物細胞における使用のために、発現ベクターにおける制御機能は、しばしば、ウイルス性材料によって提供され、例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス(CMV)、および最も頻繁にはシミアンウイルス40(SV40)に由来する。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、両方とも、SV40ウイルスの複製起点も含むフラグメントとしてウイルスから容易に得られるので、特に有用である。HindIII部位からウイルスの複製起点に位置するBglI部位に向かって伸長するおよそ250bpの配列が含まれていれば、より小さいか、またはより大きいSV40フラグメントも使用され得る。さらに、所望の遺伝子配列に通常関連するプロモーターまたは制御配列を利用することも可能であり、しばしば望ましいが、そのような制御配列が宿主細胞系に適合することが条件である。
【0113】
複製起点は、例えば、SV40または他のウイルス(例えば、ポリオーマ、アデノなど)に由来し得る、外来起源を含むベクターの構築によって提供されてもよく、または宿主細胞の染色体複製機構によって提供されてもよい。ベクターが宿主細胞の染色体に組み込まれる場合は、後者で十分であることが多い。
【0114】
本発明のTPCを構成する単量体ポリペプチドの作製に際して、例えば、ポリペプチドに非タンパク質性機能を導入することによって、材料を適切なリフォールディング条件に付すことによって(例えば、WO94/18227号に示唆されている一般に適用可能な戦略を用いることによって)、または単量体の望ましくないペプチド部分(例えば、最終生成物中で望ましくない発現増強ペプチドフラグメント)を切断することによって、ポリペプチドをさらに処理する必要がある場合がある。
【0115】
上記の議論の観点から、本発明の上記TPC、または本発明のTPCを構成する上記単量体ポリペプチドを組換え的に作製する方法もまた、宿主細胞または細胞株において本発明の核酸を有し、かつ/または複製することが可能なベクターであるので、本発明の一部である。本発明によれば、発現ベクターは、例えば、ウイルス、プラスミド、コスミド、ミニ染色体、またはファージであり得る。
【0116】
本発明の別の態様は、本発明の核酸を有し、かつ複製可能な、上記に記載の方法において有用な形質転換細胞(すなわち、本発明の宿主細胞)であり、宿主細胞は、細菌、酵母、または原生動物などの微生物であってもよく、あるいは真菌、昆虫細胞、植物細胞、または哺乳動物細胞などの多細胞生物に由来する細胞であってもよい。細胞はまた、トランスフェクトされていてもよい。
【0117】
本発明のさらに別の態様は、本発明のTPCを構成する単量体ポリペプチドまたはそのポリペプチド部分を産生する安定な細胞株に関し、好ましくは、この細胞株は、本発明の核酸を有し、かつ発現する。特に興味深いのは、哺乳動物細胞株HEKおよびCHOに由来する細胞である。
【0118】
前述のすべての用語および実施形態は、本発明のこの態様にも同様に適用可能である。
【0119】
治療上の組み合わせ
別の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、または本発明による宿主細胞と、免疫チェックポイントブロッカーとを含む、組み合わせ物に関する。
【0120】
「組み合わせ物」とは、組成物中での、「タンクミックス」などの単一活性化合物の別個の製剤から構成される組み合わせ混合物中での、および連続的に、すなわち数時間または数日などの適度に短い期間で1つずつ適用されるか、または同時投与で適用される場合の単一有効成分の組み合わせ使用での、本発明の三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、または本発明による宿主細胞と、免疫チェックポイントブロッカーとのさまざまな組み合わせを意味する。
【0121】
本発明の三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、または本発明による宿主細胞と、免疫チェックポイントブロッカーとの組み合わせ物は、その同時投与、個別投与、または連続投与のために処方され得る。このことは、2つの化合物の組み合わせが、
- 同じ医薬製剤の一部であり、2つの化合物が常に同時に投与される組み合わせとして
- 同時投与、連続投与、または個別投与の可能性をもたらす物質の1つをそれぞれ含む2つのユニットの組み合わせとして
投与され得ることを意味する。
【0122】
特定の実施態様において、本発明の三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、または本発明による宿主細胞は、免疫チェックポイントブロッカーとは独立して(すなわち、2つのユニットで)、しかし同時に投与される。
【0123】
別の特定の実施態様において、本発明の三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、または本発明による宿主細胞が最初に投与され、次いで、免疫チェックポイントブロッカーが別個にまたは連続して投与される。
【0124】
さらに別の特定の実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーが最初に投与され、次いで、本発明の三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、または本発明による宿主細胞が、別個にまたは連続して、定義されたとおりに投与される。
【0125】
さらに、化合物は、同一または異なる剤形で、あるいは同一または異なる投与経路によって投与される(例えば、一方の化合物は局所投与され得、他方の化合物は経口投与され得る)。好適には、両方の化合物は経口投与される。
【0126】
本明細書で使用される「免疫チェックポイントブロッカー」または「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫応答の過程でT細胞受容体(TCR)の抗原認識を制御するための一種のシグナルであるチェックポイントと呼ばれるタンパク質を阻害する分子群に関する。免疫チェックポイントは、自己寛容を維持し、自己免疫を阻止し、二次的な組織損傷を最小限に抑えるために免疫応答の持続期間および程度を制御するのに極めて重要な、免疫系の抑制性制御因子である。これらの免疫チェックポイントは、腫瘍細胞上または腫瘍微小環境内の非形質転換細胞上でしばしば過剰発現され、免疫系が効果的な抗腫瘍反応を開始する能力を損なわせる。これらの分子は、適応免疫応答を下方調節または阻害する「ブレーキ」として効果的に機能し得る。従って、これらの分子は、がん細胞が患者の免疫系を回避することを阻止するのに有用な薬剤である。抗腫瘍免疫破壊の主要な機構の一つは、「T細胞枯渇」として知られ、これは、抗原への慢性的な曝露によって、抑制性受容体の上方制御が引き起こされることに起因する。これらの抑制性受容体は、制御不能な免疫反応を阻止するための免疫チェックポイントとして機能している。
【0127】
PD-1、および共抑制性受容体、例えば、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、BおよびTリンパ球減衰因子(BTLA;CD272)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン-3(Tim-3)、リンパ球活性化遺伝子-3(Lag-3;CD223)などは、しばしばチェックポイント制御因子と呼ばれる。これらは、細胞外情報が、細胞周期の進行およびその他の細胞内シグナル伝達プロセスを進めるべきか否かを決定できるようにする、分子「ゲートキーパー」として機能する。
【0128】
免疫チェックポイントの阻害は、DNA、RNAまたはタンパク質レベルでの阻害によって行われ得る。いくつかの実施形態において、阻害性核酸(例えば、dsRNA、siRNAまたはshRNA)を用いて、阻害性分子の発現を阻害することができる。他の実施形態において、免疫チェックポイントの阻害剤は、阻害性分子に結合するポリペプチド、例えば、可溶性リガンド、または/抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。
【0129】
ある態様において、チェックポイント阻害剤は、生物学的治療薬または小分子である。好ましい実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、抗体である。別の態様において、チェックポイント阻害剤は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質、またはそれらの組み合わせ物である。
【0130】
「抗体」という用語は、本発明のこの態様にも同様に適用可能なものとして、以前に定義されている。
【0131】
さらなる態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDLl、PDL2、PDl、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはそれらの組み合わせから選択されるチェックポイントタンパク質を阻害する。さらなる態様において、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDLl、PDL2、PDl、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはそれらの組み合わせから選択されるチェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。B7ファミリーリガンドとしては、B7-1、B7-2、B7-DC、B7-H1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6およびB7-H7が挙げられるが、これらに限定されない。免疫チェックポイントブロッカーには、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160およびCGEN-15049の1つ以上に結合し、その活性を遮断または阻害する、抗体、またはその抗原結合フラグメント、その他の結合タンパク質、生物学的治療薬、または小分子が含まれる。例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-Llモノクローナル抗体(抗B7-Hl;MEDI4736)、MK-3475(PD-1ブロッカー)、ニボルマブ(抗PDl抗体)、CT-011(抗PDl抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDLl抗体)、BMS-936559(抗PDLl抗体)、MPLDL3280A(抗PDLl抗体)、MSB0010718C(抗PDLl抗体)、およびイピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害剤)が挙げられる。チェックポイントタンパク質のリガンドとしては、PD-Ll、PD-L2、B7-H3、B7-H4、CD28、CD86およびTIM-3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
特定の実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、およびCTLA-4アンタゴニストから選択される。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))、イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))、およびペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ(抗PD-1抗体、オプジーボ(登録商標)、Bristol-Myers Squibb);ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体、キイトルーダ(登録商標)、Merck);イピリムマブ(抗CTLA-4抗体、ヤーボイ(登録商標)、Bristol-Myers Squibb);デュルバルマブ(抗PD-L1抗体、イミフィンジ(登録商標)、AstraZeneca);アベルマブ(抗PD-L1抗体)およびアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体、テセントリク(登録商標)、Genentech)から選択される。
【0133】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、ランブロリズマブ(MK-3475)、ニボルマブ(BMS-936558)、ピディリズマブ(CT-011)、AMP-224、MDX-1105、MEDI4736、MPDL3280A、BMS-936559、イピリムマブ、リルマブ(lirlumab)、IPH2101、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、およびトレメリムマブからなる群から選択される。
【0134】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、抗PD-1抗体であるREGN2810(Regeneron);PD-1に結合する抗体であり、CT-011としても知られるピディリズマブ(CureTech);完全ヒトIgG1抗PD-L1抗体であり、MSB0010718Cとしても知られるアベルマブ(バベンチオ(登録商標)、Pfizer/Merck KGaA)である。
【0135】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、T細胞免疫グロブリンムチン含有タンパク質-3(TIM-3)の阻害剤である。本発明で使用され得るTIM-3阻害剤としては、TSR-022、LY3321367およびMBG453が挙げられる。
【0136】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、特定のT細胞およびNK細胞上の免疫受容体である、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(すなわち、TIGIT)の阻害剤である。本発明で使用され得るTIGIT阻害剤としては、抗TIGITモノクローナル抗体であるBMS-986207(Bristol-Myers Squibb)(NCT02913313);OMP-313M32(Oncomed);および抗TIGITモノクローナル抗体(NCT03119428)が挙げられる。
【0137】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)の阻害剤である。本発明で使用され得るLAG-3阻害剤としては、BMS-986016およびREGN3767およびIMP321が挙げられる。
【0138】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、OX40アゴニストが挙げられる。現在臨床試験中のOX40アゴニストとしては、PF-04518600/PF-8600(Pfizer);GSK3174998(Merck);MEDI0562(Medimmune/AstraZeneca);MEDI6469;およびBMS-986178(Bristol-Myers Squibb)が挙げられる。
【0139】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、CD137(4-1BBとも呼ばれる)アゴニストが挙げられる。CD137アゴニストの非例示的で非限定的な例としては、ウトミルマブ(PF-05082566、Pfizer)およびウレルマブ(BMS-663513、Bristol-Myers Squibb)が挙げられる。
【0140】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、CD27アゴニストが挙げられる。CD27アゴニストとしては、バリルマブ(varlilumab)(CDX-1127、Celldex Therapeutics)が挙げられる。
【0141】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)アゴニストが挙げられる。現在臨床試験中のGITRアゴニストとしては、TRX518(Leap Therapeutics);GWN323;INCAGN01876(Incyte/Agenus)、MK-4166(Merck)、およびMEDI1873(Medimmune/AstraZeneca)が挙げられる。
【0142】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS、CD278としても知られる)アゴニストが挙げられる。ICOSアゴニストの例示的で非限定的な例としては、MEDI-570(Medimmune);GSK3359609(Merck);およびJTX-2011(Jounce Therapeutics)が挙げられる。
【0143】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、キラーIgG様受容体(KIR)阻害剤が挙げられる。KIRの例示的で非限定的な例としては、リリルマブ(IPH2102/BMS-986015、Innate Pharma/Bristol-Myers Squibb);IPH2101(1-7F9、Innate Pharma);およびIPH4102(Innate Pharma)が挙げられる。
【0144】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、CD47とシグナル調節タンパク質α(SIRPa)との相互作用を阻害するCD47阻害剤が挙げられる。CD47/SIRPa阻害剤の例示的で非限定的な例としては、ALX-148(Alexo Therapeutics)、TTI-621(SIRPa-Fc、Trillium Therapeutics;CC-90002(Celgene);およびHu5F9-G4(Forty Seven,Inc.)が挙げられる。
【0145】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、CD73阻害剤が挙げられる。CD73阻害剤の例示的で非限定的な例としては、MEDI9447(Medimmune;およびBMS-986179)が挙げられる。
【0146】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、インターフェロン遺伝子刺激因子タンパク質(STING、膜貫通タンパク質173、またはTMEM173としても知られる)のアゴニストが挙げられる。STINGのアゴニストの例示的で非限定的な例としては、MK-1454(Merck);およびADU-S100が挙げられる。
【0147】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、CSF1R阻害剤が挙げられる。CSF1R阻害剤としては、ペキシダルチニブ(PLX3397、Plexxikon;およびIMC-CS4(LY3022855,Lilly)が挙げられる。
【0148】
本発明で使用され得る免疫チェックポイントブロッカーとしては、NKG2A受容体阻害剤が挙げられる。NKG2A受容体阻害剤の例示的で非限定的な例としては、モナリズマブ(IPH2201、Innate Pharma)が挙げられる。
【0149】
好ましい実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、PD-L1阻害剤である。
【0150】
本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、CD274、PDCD1L1、B7-H、B7-H1、PDCD1LG1、PDL1、B7H1としても知られ、プログラム死リガンド1を指す。上記タンパク質をコードするヒト遺伝子は、Ensemblデータベースにアクセッション番号ENSG00000120217で示されている。
【0151】
PD-L1に結合する小分子は、WO2015034820号に開示されている。これらの化合物は、オルト置換ビフェニル部分構造を含む三環芳香族構造からなる。これらの化合物の生物学的活性は、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイによって確立された。このような化合物の代表例は、BMS-8およびBMS-202である。
【0152】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、YW243.55.S70、MPOL3280A、MEOI-4736、MSB-0010718C、またはMOX-1105から選択される抗PD-LI結合アンタゴニストである。MOX-1105は、BMS-936559としても知られ、W02007/005874号に記載されている抗PD-LI抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634号に記載されている抗PD-LIである。
【0153】
好ましい実施形態において、PD-L1阻害剤は、PD-L1抗体である。
【0154】
より好ましい実施形態において、PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブからなる群から選択される。
【0155】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、PD-L1に結合するヒトFe最適化IgG1モノクローナル抗体であるMDPL3280A(Genentech 1 Roche)である。MOPL3280AおよびPD-L1に対する他のヒトモノクローナル抗体は、米国特許第7,943,743号および米国特許公開第20120039906号に開示されている。本発明の組み合わせ物のための免疫チェックポイントブロッカーとして有用な他の抗PD-L1結合剤としては、YW243.55.S70(W02010/077634号を参照)、MDX-1105(8MS-936559とも呼ばれる)、およびW02007/005874号に開示された抗PD-L1結合剤が挙げられる。
【0156】
別の好ましい実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、PD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、MSB0010718Cである。MSB0010718C(A09-246-2とも呼ばれる;MerckSerono)は、PD-L1に結合するモノクローナル抗体である。
【0157】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、PD-1に対する抗体である。PD-1は、プログラム細胞死1受容体(PD-1)に結合して、その受容体が抑制性リガンドPDL-1に結合するのを阻止し、宿主の抗腫瘍免疫応答を抑制する腫瘍の能力を無効にする。
【0158】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、MDX-1106、Merck3475またはCT-011から選択される抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、免疫調節薬は、AMP-224などのPD-1阻害剤である。
【0159】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、PD1に結合するヒト化IgG1kモノクローナル抗体であるピディリズマブ(CT-011;Cure Tech)である。ピディリズマブおよび他のヒト化抗PD-1モノクローナル抗体は、W02009/101611号に開示されている。
【0160】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。ニボルマブの代替名には、MOX-1106、MOX-1106-04、ON0-4538、またはBMS-936558が含まれる。ニボルマブは、PD-1を特異的に遮断する完全ヒトIgG4モノクローナル抗体である。ニボルマブ(クローン5C4)およびPD-1に特異的に結合する他のヒトモノクローナル抗体は、US8,008,449号、EP2161336号およびW02006/121168号に開示されている。
【0161】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントブロッカーは、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブである。ペムブロリズマブ(ラムブロリズマブ、MK-3475、MK03475、SCH-900475またはKEYTRUOA(登録商標)とも呼ばれる;Merck)は、PD-1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である。ペムブロリズマブおよび他のヒト化抗PD-1抗体は、Hamid,O.ら(2013)New England Journal of Medicine 369(2):134-44、US8,354,509号、W02009/114335号、およびW02013/079174号に開示されている。
【0162】
本明細書に開示される組み合わせ物の免疫チェックポイントブロッカーとして有用な他の抗PD1抗体としては、AMP514(Amplimmune)、およびUS8,609,089号、US2010028330号、および/またはUS20120114649号に開示される抗PD1抗体が挙げられる。
【0163】
本発明の組み合わせ物の別の好ましい実施形態において、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはニボルマブである
【0164】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞、または本発明による組み合わせ物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0165】
本発明によるTPC、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞、または本発明による組み合わせ物は、被験体へのその投与に適したビヒクルを含む医薬組成物の一部とすることができ、そのような場合、TPC、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組み合わせ物は、その目的に適した医薬剤形で被験体に投与され、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルを含むことになる。したがって、特定の実施形態において、TPC、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組み合わせ物は、有効成分としてのTPC、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組み合わせ物に加えて、少なくとも1つのビヒクル、好ましくは薬学的に許容されるビヒクルを含む医薬組成物の一部となる。「ビヒクル」という用語には、一般に、有効成分と共に投与される任意の希釈剤または賦形剤が含まれる。好ましくは、上記ビヒクルは、被験体へのその投与のための薬学的に許容されるビヒクルであり、すなわち、規制機関、例えば、欧州医薬品庁(EMA)、米国食品医薬品局(FDA)などによって承認されたビヒクル(例えば、賦形剤)であるか、または動物、より具体的にはヒトにおける使用のために一般に認められた薬局方(例えば、欧州薬局方、米国薬局方など)に含まれる。
【0166】
TPC、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、またはそれらの組み合わせ物は、投与のために、任意の適切な媒体中に溶解され得る。有効成分が溶解、懸濁され得るか、または有効成分とエマルジョンを形成し得る媒体の非限定的な実例としては、水、エタノール、水-エタノール混合物または水-プロピレングリコール混合物など、石油由来の油、動物油、植物油、または合成油を含めた油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、有機溶媒、例えば、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチルエステル、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。
【0167】
同様に、使用直前に、経口または非経口投与用の液体形態調製物に変換されることが意図される、医薬組成物の固体形態調製物も含まれる。このタイプの液体形態としては、溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。有効成分のさまざまな医薬剤形、使用されるビヒクル、およびその製造方法に関する概説は、例えば、Tratado de Farmacia Galenica,C.Fauli i Trillo,Luzan 5,S.A.de Ediciones,1993およびRemington’s Pharmaceutical Sciences(A.R.Gennaro編)、第20版、Williams & Wilkins PA,USA(2000)に記載されている。
【0168】
非限定的な様式において、TPC、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組み合わせ物のための投与経路としては、とりわけ、経口経路、胃腸経路、鼻腔内経路、または舌下経路などの非侵襲的な薬理学的投与経路、および非経口経路などの侵襲的な投与経路が挙げられる。特定の実施形態において、TPCは、非経口経路(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、髄腔内など)により、医薬剤形で投与される。「非経口経路による投与」は、注射によって目的の化合物を投与することからなる投与経路と理解されるため、注射器および針の使用を必要とする。非経口穿刺には、注射針が到達する組織によって、筋肉内(化合物が筋肉組織内に注射される)、静脈内(化合物が静脈内に注射される)、皮下(皮膚の下に注射される)、および皮内(皮膚の層間に注射される)という異なるタイプがある。髄腔内経路は、血液脳関門を十分に通過しない薬物を中枢神経系に投与するために用いられ、それによって、薬物が脊髄を取り囲む空間(髄腔内空間)に投与される。好ましい実施形態において、投与は、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、または髄腔内投与である。
【0169】
医学的使用
別の態様において、本発明は、がんの治療における使用のための、本発明による三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組み合わせ物、または医薬組成物に関する。
【0170】
あるいは、本発明は、本発明による三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞、組み合わせ物、または本発明による医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、がんを治療するための方法に関する。
【0171】
あるいは、本発明は、がんの治療のための医薬の調製のための、本発明による三量体ポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞、組み合わせ物、または本発明による医薬組成物に関する。
【0172】
本明細書中で使用される場合、「治療」という用語は、罹患しているがんに対する感受性を終結させる、改善する、または低減することを目的とする任意のタイプの療法を指す。したがって、「治療」、「治療する」、およびこれらに相当する用語は、薬理学的または生理学的に所望の効果を得ることを指し、ヒトを含む哺乳動物におけるがんの任意の治療を対象とする。その効果は、障害および/またはそれに起因する有害作用の完全なまたは部分的な予防を提供するという点で、予防的であり得る。言い換えれば、「治療」には、(1)疾患を阻止すること、例えばその発症を止めること、(2)障害または少なくともそれに関連する症状を中断または終息させ、患者がもはや疾患またはその症状に苦しむことがないようにすること、例えば、失われた機能、欠如した機能、または欠陥のある機能を回復または修復することによって疾患またはその症状を退行させること、または非効率的なプロセスを刺激すること、あるいは(3)疾患またはそれに関連する症状を軽減、緩和、または改善することが含まれ、ここで、軽減とは、例えば、炎症、疼痛、呼吸困難、または自力で動くことができないなどのパラメータまたは症状の大きさを少なくとも低減させることを指す広い意味で使用される。
【0173】
本明細書に開示されるように、「がん」および「腫瘍」という用語は、未制御の細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態に関する。がんの例としては、副腎、骨、脳、乳房、気管支、結腸および/または直腸、胆嚢、消化管、頭頸部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、神経組織、膵臓、前立腺、副甲状腺、皮膚、胃、および甲状腺のがんが挙げられるが、これらに限定されない。がんの他の例としては、腺がん、腺腫、基底細胞がん、子宮頸部異形成および上皮内がん、ユーイング肉腫、類表皮がん、巨細胞腫、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforma)、毛様細胞腫瘍、腸管神経節腫、過形成角膜神経腫瘍、膵島細胞がん、カポジ肉腫、平滑筋腫、白血病、リンパ腫、悪性カルチノイド、悪性黒色腫、悪性高カルシウム血症、マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor)、髄様がん、転移性皮膚がん、粘膜神経腫、骨髄異形成症候群(myelodisplastic syndrome)、骨髄腫、菌状息肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、骨原性肉腫およびその他の肉腫、卵巣腫瘍、褐色細胞腫、真性多血症(polycythermia vera)、原発性脳腫瘍、小細胞肺腫瘍、潰瘍性および乳頭状の両方のタイプの扁平上皮がん、セミノーマ、軟部肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、腎細胞腫瘍または腎細胞がん、細網肉腫(veticulum cell sarcoma)、およびウィルム腫瘍が挙げられる。がんの例としては、星状細胞腫、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫または神経膠芽腫、腎細胞がん(RCC)、肝細胞がん(HCC)、および膵神経内分泌がんも挙げられる。
【0174】
本発明による三量体ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、組み合わせ物、または医薬組成物は、限定されるものではないが、乳腺腫瘍、心臓腫瘍、肺腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、脾臓腫瘍、腎臓腫瘍、膀胱腫瘍、頭部腫瘍、頸部腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、脳腫瘍、膵臓腫瘍、皮膚腫瘍、骨腫瘍、骨髄腫瘍、血腫、胸腺腫瘍、子宮腫瘍、精巣腫瘍および肝臓腫瘍などの任意のがんまたは腫瘍の治療に有用である。
【0175】
さまざまな実施形態において、治療される患者のがんは、転移性がんであるか、あるいは第一、第二、または第三選択治療に対して難治性の難治性および/または再発性がんである。別の実施形態において、治療は、第一、第二、または第三選択治療である。本明細書で使用される場合、「第一選択」または「第二選択」または「第三選択」という語句は、患者が受ける治療の順序を指す。第一選択治療レジメンは、最初に行われる治療であり、第二選択治療または第三選択治療は、それぞれ、第一選択療法後または第二選択治療後に行われる。したがって、第一選択治療は、ある疾患または状態に対する最初の治療である。がん患者の場合、一次治療は、手術、化学療法、放射線療法、またはこれらの併用療法となり得る。第一選択治療は、当業者には一次療法または一次治療とも呼ばれる。典型的には、患者が第一選択療法に対して良好な臨床応答を示さなかったか、亜臨床応答しか示さなかったか、または第一選択治療が中止されたという理由で、次の化学療法レジメンが患者に施される。この文脈では、「化学療法」は、古典的な細胞毒性化学療法だけでなく、分子標的療法および免疫療法も包含するその最も広い意味で使用される。
【0176】
好ましい実施形態において、がんは、EGFR陽性である。
【0177】
別の好ましい実施態様において、がんは、免疫チェックポイントも陽性であり、その阻害剤が、上記がんの治療に使用される本発明の組み合わせ物に含まれている。免疫チェックポイントの例示的で非限定的な例は、先に記載されており、本発明のこの態様にも同様に適用可能である。より詳細には、がんは、PD-L1陽性である。
【0178】
「陽性」という用語は、EGFRを指すために本明細書で使用される場合、腫瘍またはがん中のEGFRの「量」または「レベル」が、非陽性腫瘍または正常細胞において観察されるものよりも高いことを示す。発現レベルは、当業者に公知の、また本明細書にも開示されている方法によって、測定され得る。「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に、生体試料中のバイオマーカーの量を指す。「発現」とは、一般に、情報(例えば、遺伝子がコードする情報および/またはエピジェネティックな情報)が、細胞内に存在しかつ機能する構造体へと変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、またはさらにはポリヌクレオチド修飾および/またはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指す場合もある。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチド修飾体および/またはポリペプチド修飾体(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾体)のフラグメントもまた、それらが選択的スプライシングよって生成された転写物または分解された転写物が起源であるか、または、ポリペプチドの翻訳後プロセシング(例えば、タンパク質分解による)が起源であるかに関わらず、発現されたと見なされるべきである。「発現遺伝子」には、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後にポリペプチドに翻訳されるもの、およびRNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されないもの(例えば、トランスファーRNAおよびリボソームRNA)も含まれる。
【0179】
「発現の増加」、「発現レベルの増加」、「レベルの増加」、「発現の上昇」、「発現レベルの上昇」または「レベルの上昇」は、例えば、疾患または障害(例えば、がん)を有さない単一または複数の個体、内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)、または患者の群/集団に由来する試料中のバイオマーカーの発現レベルの中央値などの対照と比較して、個体におけるバイオマーカーの発現の増加またはレベルの増加を指すために、互換的に使用される。
【0180】
より好ましい実施形態において、がんは、結腸直腸がん、乳がん、膵臓がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、頭頸部がんまたは肺がんである。別のより好ましい実施形態において、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは小細胞肺がんである。
【0181】
文献目録
- Compte M,Harwood SL,Munoz IG,Navarro R,Zonca M,Perez-Chacon Gら「腫瘍を標的とした三量体4-1BBアゴニスト抗体は、全身毒性を伴わずに強力な抗腫瘍免疫を誘導する」Nat Commun 2018;9:4809.
- Compte M,Harwood SL,Martinez-Torrecuadrada J,Perez-Chacon G,Gonzalez-Garcia P, Tapia-Galisteo Aら、症例報告:「EGFR標的化4-1BBアゴニスト三量体は、ヒトEGFRを肝臓に発現させたトランスジェニックマウスにおいて肝毒性を誘発しない 1」Front Immunol 2020;11:614363.
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***
【0182】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらは単に例示であって本発明の範囲を限定するものではないとみなされるべきである。
【実施例】
【0183】
材料および方法
マウス
マウスNOD.Cg-PrkdcSCIDIL2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)雌性マウスは、Charles Riverから提供され、Hsd:胸腺欠損Nude-Foxn1nu雌性マウスは、Envigo RMS SPAIN S.L.から提供され、129S4-Rag2tm1.1Flv Il2rgtm1.1Flv/J(Rag2-/-IL2Rγ欠損)雌性マウスは、CIMAの動物施設で飼育した。動物は、12時間明期/12時間暗期の1日サイクルで、特定の病原体を含まない条件下で飼育し、滅菌水および餌を自由摂取させた。すべての動物実験手順は、RD1201/2005の下でスペインの法律で施行されている欧州連合指令86/609/EECおよび勧告2007/526/ECに準拠した。動物実験プロトコルは、参加機関(IDIPHISA、imas12、CIEMATおよびCIMA)の各動物実験倫理委員会により承認され、国際医学団体協議会(CIOMS)により制定された「動物を用いた生物医学研究のための国際指導原則」に記載されたガイドラインを厳守して実施された。実験研究プロトコルは、さらに地方自治体の承認を得ている(PROEX094/15、108/15、076/19および166/19)。
【0184】
抗体および細胞株
実験に使用した市販の抗体を表Iに記載する。
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
組換え的に作製された抗体を表IIに記載する。
【0189】
【0190】
HEK293(CRL-1573)細胞、MDA-MB-231(HTB-26)細胞、A431(CRL-1555)細胞、NIH/3T3(CRL-1658)細胞およびCHO-K1(CCL-61)細胞は、American Type Culture Collectionから入手し、DMEM完全培地(DCM)と呼ばれる、2mMのL-グルタミン、10%(vol/vol)熱不活性化ウシ胎仔血清(FCS)(Merck Life Science)、および抗生物質(100ユニット/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン)(すべてLife Technologies製)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Lonza)中で、湿度、5%CO2中、37℃で培養した。huEGFRを発現するNIH/3T3細胞(3T3huEGFR)(Estrada C.ら、1992)は、A.Villalobo博士(IIBm、マドリッド、スペイン)の好意により提供された。hu4-1BB発現HEK293細胞株(HEK239hu4-1BB)は、発現ベクターpCMV3-Flag-TNFRSF9(SinoBiological)を用いたトランスフェクションにより作製し、500μg/mLのG418(Life Technologies)を用いてDCM中で選択した。ヒトFcγRIIb(CD32)を発現するCHO-K1細胞は、Promega(#JA2251)から入手した。細胞株は、Mycoplasma Plus(商標)プライマーセット(Biotools B&M Labs)を用いたPCRにより、マイコプラズマ汚染がないことを日常的にスクリーニングした。
【0191】
発現ベクターの構築
SAP3.28scFvベースのN末端トリマーボディを作製するために、FLAG-strepII-SAP3.28HL(VH-リンカー-VL)scFvをコードするDNAフラグメントをGeneart AGが合成し、HindIII/NotIとして、発現ベクターpCR3.1-MFE23N(Cuesta AM.ら、2009)にサブクローニングし、pCR3.1-FLAG-strepII-SAP3.28HL-N-myc/Hisを得た。C末端のmyc/Hisタグ配列は、Fw-CMVおよびStop-XbaI-Revプライマー(表III)を用いて、プラスミドからPCRによって除去した。
【0192】
【0193】
Flag-strepII-SAP3.28HL scFv遺伝子を、ヒトXVIII型コラーゲン由来のホモ三量体化(TIEXVIII)ドメインおよび抗ヒトEGFRシングルドメイン抗体(VHH;EGa1)(Schmitz KRら、2013)を含むベクターにHindIII/NotIとしてサブクローニングし、二重特異性トリマーボディ発現ベクターpCR3.1-FLAG-strepII-SAP3.28HL-N18/C18EGa1を得た。すべての配列を、プライマーFwCMVおよびRvBGHを用いて検証した(表III)。
【0194】
組換え抗体の発現および精製
HEK293細胞を、リン酸カルシウム沈殿法によって、適切な発現ベクターを用いてトランスフェクトし、500μg/mLのG418を含むDCM中で選択して、安定な細胞株293-SAP3.28Nおよび293-SAP3.28N/CEGa1を作製した。条件培地を回収し、AKTA Prime plusシステム(Cytiva)を用いたStrep-Tactin(登録商標)精製システム(IBA Lifesciences)を用いて精製した。精製抗体を、PBS+150mMのNaCl(pH7.0)に対して4℃で一晩透析し、還元条件下でSDS-PAGEにより分析し、4℃で保存した。精製抗体を、Pierce’sリムルスアメボサイト溶解物(LAL)発色エンドトキシン定量キットにより、製造業者の仕様書(Thermo Fisher Scientific)に従って、エンドトキシンレベルをテストした。精製抗体ストックのエンドトキシンレベルは、LALテストにより0.25EU/ml未満であった。
【0195】
ウエスタンブロット法
タンパク質試料を、10~20%トリス-グリシンゲル上で、還元条件下で分離し、ニトロセルロース膜(Thermo Fisher Scientific)上に転写し、抗FLAGまたは抗Strep-tagII mAbを用いて探索し、続いて、DyLight800コンジュゲート化ヤギ抗マウス(GAM)IgGと共にインキュベートした。タンパク質バンドの可視化および定量分析を、Odyssey(登録商標)赤外イメージングシステム(LI-COR Biosciences)を用いて行った。
【0196】
ELISA
マウス(mo-)、カニクイザル(cy-)およびhu4-1BB-ヒトIgG1 Fcキメラ(R&D Systems、#937-4B、#9324-4B、#838-4B)(5μg/ml)、または、mo-、cy-およびhuEGFR-ヒトIgG1 Fcキメラ(R&D Systems、#1280-ER、#10366-ER、#344-ER)(5μg/ml)を、Maxisorp ELISAプレート(NUNC Brand Products)上に4℃で一晩固定化した。200μlのPBS+5%BSA(Merck Life Science)で洗浄およびブロッキングした後、100μlの精製タンパク質溶液を添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBS+0.05%Tween-20で3回洗浄し、100μlの抗FLAGまたは抗Strep-tagII mAbを添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを上記のように洗浄し、100μlのHRPコンジュゲート化GAM IgG(GAM-HRP)を各ウェルに添加した。その後、プレートを洗浄し、OPD(Merck Life Science)を用いて発色させた。組換えHisタグ付きhu4-1BB(Sino Biological、#10014-H08H)(3μg/mL)を4℃で一晩固定化し、ウェルを洗浄およびブロッキングし、抗hu4-1BB抗体を10倍連続希釈にて3連で添加し、平衡結合曲線を得た。1時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、それぞれHRPコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG(GAH-HRP)(1:1000)またはGAM-HRP(1:1000)と共にインキュベートした。プレートをTMB(Merck Life Science)を用いて発色させ、450~570nmで吸光度を測定した。競合ELISAでは、ウェルをhu4-1BBLヒトIgG1 Fcキメラ(Abcam、#ab217567)(5μg/mL)で、4℃で一晩コートした。プレートを洗浄し、前述のようにブロッキングした。組換えHisタグ付きhu4-1BB(1μg/mL)を、漸増濃度(0~10μg/mL)のウレルマブまたは4-1BB IgG(SAP3.28 IgG)と共に30分間プレインキュベートした後、その混合物を、hu4-1BBLでコートしたウェルに3連で移し、1時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、Tetra-His mAb(αHis4)と共に、次いでGAM-HRP(1:1000)と共に、1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、TMBを用いて発色させた。両方の抗hu4-1BB mAbのエピトープ結合をさらに評価するために、Hisタグ付きhu4-1BBを、Maxisorp ELISAプレート上に4℃で一晩固定化した(3μg/mL)。上記のように洗浄およびブロッキングを行った後、ウレルマブまたは4-1BB Igを、飽和となるようにあらかじめ決定した濃度である10μg/mLで1時間、3連で添加した。ウェルを洗浄した後、前の工程で使用しなかったもう一方の抗体を、1μg/mLでウェルに添加した。1時間後、プレートを洗浄し、100μlのGAM-HRPまたはGAH-HRP(1:000)を各ウェルに添加した。その後、プレートを洗浄し、TMBを用いて発色させた。
【0197】
質量分析
2μlのタンパク質試料を、ZipTip(登録商標)C4マイクロカラム(Merck Millipore)を用いて脱塩し、0.5μlのSA(シナピン酸、[70:30]アセトニトリル:トリフルオロ酢酸0.1%中10mg/ml)マトリックスを用いてGroundSteel massive 384 target(Bruker Daltonics)上に溶出した。Autoflex III MALDI-TOF/TOF分光計(Bruker Daltonics)を、リニアモードで、以下の設定で使用した:5000-40000Thウィンドウ、リニアポジティブモード、イオン源1:20kV、イオン源2:18.5kV、レンズ:9kV、120ナノ秒のパルスイオン抽出、最大1000Mrまでの高ゲーティングイオン抑制。質量較正を、タンパク質1標準較正混合物(Bruker Daltonics)を用いて外部で行った。データ取得、ピークのピーキングおよびその後のスペクトル分析を、Flex Control 3.0およびFlex Analysis 3.0ソフトウェア(Bruker Daltonics)を使用して行った。
【0198】
サイズ排除クロマトグラフィー-多角度レーザー光散乱(SEC-MALS)
静的光散乱測定は、DAWN-HELEOS光散乱検出器およびOptilab rEX示差屈折率検出器(Wyatt Technology)にインラインで接続されたSuperdex 200 Increase 10/300 GLカラム(Cytiva)を使用して25℃で行った。カラムの排除体積は8.6mLであり、いずれの注入においても吸光度は観察されなかった(凝集タンパク質は観察されなかった)。カラムを、ランニング緩衝液(PBS+150mMのNaCl、0.1μmでろ過)を用いて平衡化し、SEC-MALSシステムを、同じ緩衝液中1g/LのBSAの試料を用いて較正した。次いで、ランニング緩衝液中1.1g/Lの2種類のトリマーボディのそれぞれ100μLの試料を、0.5mL/分の流速でカラムに注入した。データの取得および分析は、ASTRAソフトウェア(Wyatt Technology)を用いて行った。報告されたモル質量は、クロマトグラフィーピークの中央に相当する。同一または類似の条件下での1g/LのBSA試料における多数の測定値に基づき、モル質量の実験誤差はおよそ5%であると推定している。
【0199】
円偏光二色性
円偏光二色性測定は、Jasco J-810分光偏光計(JASCO)を用いて行った。スペクトルを、PBS+150mMのNaCl中0.1g/Lのタンパク質試料について、0.2cm光路長の石英キュベットを用いて25℃で記録した。5~95℃の熱変性曲線を、同じタンパク質試料およびキュベットについて、1℃/分の速度で温度を上昇させ、210nm(4-1BBN)または213nm(4-1BBN/CEGFR)での楕円率の変化を測定することによって記録した。
【0200】
小角X線散乱(SAXS)
SAXS実験を、Diamond Light Source(ジドコット)のビームラインB21で行った。タンパク質を濃縮し、データ収集前に4℃で調製した。3mg/mlおよび6mg/mlの濃度の4-1BBNおよび4-1BBN/CEGFRの試料40μlを、50mMのTris(pH7.5)+150mMのNaClで構成されるランニング緩衝液を使用して、インラインのAgilent 1200 HPLCシステムを介してShodex Kw-403カラムに4℃で送達した。連続的に溶出する試料を、X線波長1Å、および試料から検出器(Pilatus 2M)までの距離3.9mを使用して、10秒の取得ブロック中で300秒間露光した。データは、0.032<q<3.695Å-1の運動量移動範囲をカバーした。試料の溶出直前に記録されたフレームを、タンパク質散乱プロファイルから減算した。Scatterソフトウェアパッケージ(www.bioisis.net)を使用して、データ、緩衝液の減算、スケーリング、統合、および試料の放射線損傷の可能性のチェックを分析した。3mg/mLの4-1BBNに対応するデータセットは、凝集のためそれ以上分析できなかった。Rg値を、非常に小さな角度q<1.3/Rgと仮定するGuinier近似を用いて計算した。最大粒子分布Dmaxおよび距離分布を、GNOMによる散乱パターンから計算し、形状の推定を、DAMMIF/DAMMINを用いて行い、これらのプログラムはすべて、ATSASパッケージに含まれていた(Petoukhov MV.ら,2012)。インタラクティブで作成されたPDBに基づくモデルを、プログラムRaptorXを用いて得たテンプレートに基づいて、2つの抗体について作成した。このモデルの実空間の散乱プロファイルを、プログラムFoXSを用いて計算した。
【0201】
バイオレイヤー干渉法を用いた動態研究
適切な抗体と固定化抗原との間の相互作用を、Octet RED96システム(Fortebio)でバイオレイヤー干渉法を用いて調べた。精製した抗原、hu4-1BBおよびhuEGFR(R&D)を、標準的なアミン反応性化学を用いてAR2Gバイオセンサー上に固定化した。簡単には、バイオセンサーをEDCおよびs-NHSで活性化した後、pH5.0の10mM酢酸緩衝液中5μg/mLの抗原溶液中で30分間インキュベートし、その後エタノールアミンでクエンチした。すべての結合研究は、動態緩衝液(PBS+0.1%BSA+0.05%Tween20)を用いて行った。4-1BBNおよび4-1BBN/CEGFRとhu4-1BBとの相互作用を調べるために、1nMおよび5nMの抗体をhu4-1BB固定化バイオセンサーと2時間インキュベートし、その後、解離を動態緩衝液中で2時間測定した。4-1BBN/CEGFRおよびATTACK抗体とhuEGFR固定化バイオセンサーとの相互作用には、同じ抗体濃度および時間長を用いた。溶液中の固定化hu4-1BBおよびhuEGFRに対する4-1BBNおよび4-1BBN/CEGFRのタンデム結合は、5nMのいずれかの抗体、または動態緩衝液のみを、2連のhu4-1BB固定化バイオセンサーに1時間結合させ、続いて1時間解離させることによって調べた。次いで、2連のバイオセンサーの一方を、動態緩衝液中10nMのhuEGFRに導入し、もう一方は動態緩衝液中で維持した。1時間の二次結合の後、二次解離を1時間測定した。
【0202】
インビトロ4-1BB依存性NF-κB活性化アッセイ
活性化核因子κB(NF-κB)の4-1BB依存性活性化アッセイは、製造業者の使用説明書に従って、thaw-and-use(T&U)GloResponse(商標)NFκB-luc2/4-1BB Jurkat細胞(Promega,#JA2351)を用いて行った。全般的なアッセイを行うために、1×105のJurkat細胞/ウェルを、白壁96ウェルプレート(Merck Life Science)中のAssay Buffer(RPMI+1%FCS)中に播種した。抗4-1BBアゴニストおよびコントロール抗体を10倍連続希釈で添加した。ヒトEGFR陰性細胞(3T3)またはEGFR陽性細胞(3T3huEGFR)、およびCHO-K1細胞(CHO)またはヒトFcγRIIbを発現するCHO-K1細胞(CHOhuFcγRIIb)(2×104細胞/ウェル)を添加し、Jurkat4-1BB細胞を37℃で6時間刺激した。Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を添加し、Tecan Infinite F200プレート読み取りルミノメーター(Tecan Trading AG)を用いてルシフェラーゼ活性を評価した。実験は3連で行い、データを非刺激細胞から得られた値に対するx倍の誘導として報告した(平均値±SD)。データは、GraphPad Prismフィッティングソフトウェア6.01を用いて分析し、プロットした。
【0203】
EGFRを介した細胞増殖およびシグナル伝達の阻害
A431細胞を96ウェルプレート中のDCM中に播種した。24時間後、培地を、等モル濃度(0.19~50nM)のセツキシマブ、リツキシマブ、4-1BBN/CEGFRまたは4-1BB IgGを含むDMEM+1%FCSに交換し、72時間インキュベートした。生存率は、CellTiter-Glo発光アッセイ(Promega、#G7570)を用いて評価した。実験は3連で行った。EGFRシグナル伝達の研究では、A431細胞をDMEM1%FCS中で一晩飢餓状態にした後、0.1μMのセツキシマブ、リツキシマブ、4-1BBN/CEGFRまたは4-1BB IgGの存在下、無血清DMEM中で4時間インキュベートし、続いて25ng/mLのヒトEGF(MiltenyiBiotec GmbH、#130-097-749)と10分間インキュベートした。試料を、12%トリス-グリシンゲル上で、還元条件下で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、ブロッキングし、ウサギ抗ヒト蛍光体-EGFR(Tyr1068)mAbとインキュベートした後、IRDye800-ロバ抗ウサギ抗体とインキュベートした。同時に、ローディング対照として抗β-アクチンマウスmAbを添加し、続いてIRDye700-ロバ抗マウスIgGを添加した。タンパク質バンドの可視化および定量分析は、Odysseyシステムを用いて行った。
【0204】
ヒトPBMCおよびT細胞の単離
健常ドナー由来の細胞は、アフェレーシス手順(Neron S.ら、2007)後に回収された小型白血球除去チャンバー(LRSチャンバー)から単離した。LRSチャンバー内容物を滅菌チューブ内に流し、最大50mlまでのPBSでリンスし、Ficoll-Paque(Cytiva Life Sciences)を用いた密度勾配遠心(2000rpm、室温で20分)によってhuPBMCを単離した。ACK溶解緩衝液(Life Technologies)を添加して残留赤血球(RBC)を除去し、huPBMCを洗浄し、計数し、所望の最終濃度に再懸濁した。ヒトT細胞は、Pan T細胞単離キット(ヒト)(Milteny Biotech、#130-096-535)を用いて、製造業者の使用説明書に従って精製した。細胞を洗浄し、計数し、所望の最終濃度に再懸濁した。
【0205】
ヒトPBMCおよびT細胞活性化アッセイ
ヒトPBMCまたは単離T細胞(1.5×105細胞/ウェル)を、10%FCSおよび50μMのβ-メルカプトエタノール(Life Technologies)を補充したRPMI中で平底96ウェルプレートに3連で播種し、45Gy照射された標的細胞(3T3または3T3hEGFR)と、エフェクター/標的比5:1で共培養した。抗hu4-1BBアゴニスト抗体および対照は、0.05μg/mlの抗huCD3(OKT3)mAbの存在下で、10倍連続希釈で添加した。72時間後、無細胞上清を、サイトカイン分泌についてELISAにより分析した。照射されたEGFR+PD-L1細胞(3T3huEGFR)またはEGFR+PD-L1+細胞(MDA-MB-231)(3×104細胞/ウェル)を、抗PD-L1(アテゾリズマブ)単独(10μg/ml)または4-1BBN/CEGFR(1μg/ml)との組み合わせの存在下で、0.05μg/mlの抗huCD3で活性化されたhuPBMC(1.5×105細胞/ウェル)と共に播種した。無細胞上清を、72時間後にIFNγについてELISA(Diaclone、#851560005)により測定した。
【0206】
フローサイトメトリー
hu4-1BBを発現している細胞(2.5×105細胞/ウェル)を、精製抗体(3μg/ml)と氷上で1時間インキュベートし、洗浄後、抗FLAG mAbと氷上で30分間インキュベートし、PEコンジュゲート化F(ab’)2 GAM IgG抗体で検出した。M.Glennie(サウサンプトン大学、英国)の好意により提供された精製抗hu4-1BB IgG1 mAb(クローンSAP3.28)を、対照として用いた。ヒトFcγRIIbの発現を調べるために、細胞を、抗huCD32 mAbおよびPE-GAM-F(ab’)2とインキュベートした。huEGFRおよびhuPD-L1の細胞表面発現は、3T3、3T3hEGFRおよびMDA-MB-231細胞について、PEコンジュゲート化抗huEGFRおよびAPCコンジュゲート化抗huPD-L1 mAbとインキュベートした後に分析した。試料は、MACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec GmbH)で分析した。試料ごとに最低20,000件のイベントを取得し、FCS Express V3ソフトウェア(De Novo Software,グレンデール,カリフォルニア州,USA)を用いてデータを評価した。
【0207】
血清安定性
精製された4-1BBNおよび4-1BBN/CEGFRを、60%ヒト血清中、37℃で4日間インキュベートした。試料は、実験終了まで、様々な時点で-80℃で凍結し、hu4-1BBおよびhuEGFRへの結合活性をELISAにより分析した(上記の通り)。結合活性の減衰パーセンテージに対応する時間を計算するために、0時間での試料の結合活性を100%とした。
【0208】
4-1BB
N/C
EGFRのコンジュゲーションおよび
89
Zr標識
4-1BBN/CEGFR(1mg)を、p-SCN-Bn-デフェロキサミン(Macrocyclics)と、以前に報告された方法(Vosjan MJ.ら、2010)を用いてコンジュゲート化した。ジルコニウム-89(89Zr)(T1/2=78.4時間、β+=22.6%;1Mシュウ酸中約2.7GBq/mlで市販)は、Cyclotron VUから入手した。89Zrを用いたDf-4-1BBN/CEGFRの放射性標識を、以前に記載された従来の方法を用いて達成し、PD-10カラム(Life Technologies)で精製した(Vosjan MJ.ら、2010)。放射性標識収率(RCY)は、使用された全放射能のうちそれぞれの収集画分で回収された放射能%として決定し、経過時間に対する減衰に関して測定値を補正した。89Zr放射能の決定は、最近報告された換算係数(またはダイヤル設定係数)(Garcia-Torano E.ら、2019)を用いて、線量校正器VDC-405(Veenstra Instruments)を使用して行った。放射化学的純度(RQP)は、全放射能のうち所望の放射性医薬品形態中に存在する放射性核種の放射能の%として定義され、インスタント薄層クロマトグラフィー(ITLC)により分析した。実験は3連で行った。
【0209】
薬物動態研究
6週齢の雌性無胸腺ヌードマウスに、PBS中242.35kBq(14μg)の89Zr標識4-1BBN/CEGFRをi.v.注射(尾静脈)した。薬物動態研究では、血液試料をヘパリン処理チューブに採取し、3000rpmで10分間遠心分離して血漿を得た。血漿中の放射能濃度は、1mLあたりの注入量パーセント(%ID/mL)として算出し、注入後の時間に対してプロットした。放射能の血漿中濃度対時間は、非線形回帰を用いたコンパートメント法により解析した(Brown AM.ら、2001)。薬物動態パラメータの初期推定値は、アドインプログラムPKSolver(Zhang Y.ら、2010)による曲線ストリッピング法を用いて計算した。赤池情報量規準(AIC)を用いて、最適コンパートメントモデルを決定した。血液クリアランス(Cl血液)は、以下の関係を用いて血漿クリアランス(Cl血漿)から推定した:Cl血液=Cl血漿/BP(式中、BPは血液対血漿比である)。
【0210】
ヒト化大腸がん細胞株由来異種移植(CDLX)モデル
HT29細胞(1×106個)を、6週齢のRag2-/-IL2Rγ欠損雌性マウスの背側腔にs.c.移植し、続いて新鮮huPBMC(1×107細胞/マウス)をi.p.注入した。腫瘍成長を、週3回のノギス測定によってモニターし、腫瘍が直径約0.4cmに達した時点で、マウスを治療のために無作為に割り付けた(n=7~8/群)。測定は、治療割り付けを盲検化された研究者が、無作為の順序で行った。3日ごとに5回のCEANまたは4-1BBN/CEGFRトリマーボディ(4mg/kg)のi.p.注射、または1週間ごとに3回の4-1BB IgG(4mg/kg)のi.p.注射を行って、マウスを治療した。MDA-MB-231細胞(2×106個)をPBSに再懸濁し、マトリゲル(30%)と混合した。細胞を、6週齢のNSG雌性マウスの右脇腹背側にs.c.移植し、続いて新鮮単離huPBMC(1×107細胞/マウス)をi.p.注射した。腫瘍成長は、週3回のノギス測定でモニターした。担がんマウス(直径0.2cm)を無作為に4群に分け(n=5~6/群)、研究者は治療割り付けを盲検化された。3日ごとに5回の4-1BBN/CEGFRトリマーボディ(4mg/kg)のi.p.注射、または1週間ごとに3回のPD-L1 IgG(4mg/kg)のi.p.注射を、単独または併用して行い、マウスを治療した。毒性をモニターするために、マウスの体重を週2回測定した。苦痛の徴候および/または10~15%の体重減少が認められた時点で、マウスを安楽死させた。
【0211】
ヒト化患者由来異種移植(PDX)モデル
この研究では、予め増幅された肺PDX TP103を、組織型、遺伝的背景(EGFRおよびTP53変異)、およびhuEGFR細胞表面発現に従って選択した(Quintanal-Villalonga A.ら、2019)。腫瘍を約50mm3の断片に切断し、麻酔下の6週齢のNSG雌性マウスの背側腔に小さな切開からs.c.移植した。腫瘍成長を、3~4日ごとのノギス測定によってモニターし、腫瘍が直径約0.5cmに達した時点で、マウスを平均腫瘍サイズおよびSDが同程度の群(n=6~7/群)に無作為に割り付け、健常ドナー由来の新鮮単離huPBMC(1×107細胞/マウス)をi.p.注入した。3日ごとに4-1BBN/CEGFR(4mg/kg)を5回i.p.注射して、マウスを治療した。毒性をモニターするために、マウスの体重を週1回測定した。体重減少が10~15%以上になった場合、腫瘍サイズが任意寸法で直径1.0cmに達した場合、腫瘍が潰瘍化した場合、またはマウスに苦痛の徴候が認められた場合、マウスを安楽死させた。
【0212】
免疫組織化学的検査
免疫組織化学染色は、ホルマリン固定、パラフィン包埋した試料の4μm厚切片で行った。スライドを、Bond(商標)自動化システム(Leica Microsystems)を用い、製造業者の使用説明書に従って、表Iに記載したマウスmAbと共にインキュベートした。核は、ハリスヘマトキシリンで対比染色した。
【0213】
統計分析
統計分析は、GraphPad Prismソフトウェアのバージョン6.0を用いて行った。通常、インビトロ実験は3連で行い、値を、少なくとも3つの別々の実験のうちの1つからの平均値±SDとして示している。有意差(P値)は、正規分布を仮定した両側独立Studentのt検定を適用して判別した。P値は、各実験の対応する図に示した。EC50は、非線形回帰曲線(対数アゴニスト対正規化応答-可変応答)を用いて算出した。平均腫瘍体積は、散布図を用いて平均値±SDとして各群について示した。治療群間の差異を評価するため、多重比較検定のためのボンフェローニ補正により調整した一元配置分散分析(ANOVA)によってP値を決定した。
【0214】
実施例1.4-1BBアゴニストヒト化トリマーボディの作製および特性評価
抗hu4-1BBトリマーボディは、hu4-1BB CRD-1に結合する抗hu4-1BBアゴニストSAP3.28 mAb(
図5a)(WO/2017/077085)に由来するscFvコード遺伝子を用いて作製した。SAP3.28 IgG(以下、4-1BB IgGと呼ぶ)は、ヒト化VLドメイン、および抗原結合を保持するためにマウスFR3領域を保存する部分ヒト化VHドメイン、およびマウスIgG1のFc領域を提示する、キメラ分子である(WO/2017/077085)。CRD-1のN末端を認識するウレルマブ(Chin SM.ら、2018)と同様に、4-1BB IgGは、hu4-1BB受容体/hu4-1BBL相互作用を遮断しない(
図6a~c)。さらに、本発明者らは、4-1BB IgGとウレルマブのエピトープがオーバーラップしていないことを示した(
図6dおよびe)。本発明者らは、SAP3.28 scFvをヒトXVIII型コラーゲン由来のホモ三量体化(TIEXVIII)ドメインにフレキシブルリンカーを用いて融合させることによって、SAP3.28 scFvベースの抗hu4-1BB N末端トリマーボディ(4-1BBN)を設計し(
図5bおよびc)、抗EGFR EGa1 V
HH抗体(Schmitz KR.ら、前掲書2013)を4-1BBNのC末端に融合させて4-1BB
N/CEGFRと呼ばれる構築物を作製することによって、二重特異性トリマーボディを設計した(
図1a)。両トリマーボディとも、安定にトランスフェクトされたHEK293細胞由来の条件培地から、Strep-Tactinアフィニティークロマトグラフィーによって、純度95%を超えるタンパク質収率(それぞれ3.5mg/Lおよび4.5mg/L)で精製された(
図7a)。質量分析(MALDI-TOFを使用、図示せず)により、精製抗体中にシグナル配列が存在しないことを確認した。4-1BB
Nおよび4-1BB
N/CEGFRの両方に対するSEC-MALS実験から、それぞれモル質量が111kDaおよび160kDaの主要なピークが得られ(
図7bおよびc)、これらは三量体分子と一致している。モル質量が217kDaおよび340kDaのより小さな体積の微小ピークは、他のトリマーボディで以前に観察されたように(Compte M.ら、2018)、三量体の二量体の存在を示している。円偏光二色性測定は、顕著なbシート構造および協同的な熱変性(Tm=約60℃;
図7dおよびe)を示している。小角X線散乱(SAXS)を用いて、両トリマーボディの三次元構造を調べた。4-1BB
Nトリマーボディは、平坦な分布を示し、中央に明確なTIEXVIIIコアがあり、scFvsが車輪のスポークのように同一平面上に部分的に伸長している(
図8および9;表IV)。
【0215】
【0216】
【0217】
4-1BB
N/CEGFRトリマーボディは、4-1BBNと同じ平面構造を維持し、それに加えて、小さなサイズのEGFR VHHドメインが4-1BB scFvsの間に散在しており、6枚刃の手裏剣に似ている(
図1b;
図9;表IV)。バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて、hu4-1BBに結合する4-1BBNおよび4-1BB
N/CEGFR、ならびにhuEGFRに結合する4-1BB
N/CEGFRおよび抗EGFR ATTACK抗体(Harwood SL.ら、2017)の会合および解離速度を測定した(
図1c)。
【0218】
二重特異性ATTACK抗体は、3つのEGFR結合VHH抗体と1つのCD3結合scFvを組み合わせたタンデムトリマーボディフォーマット(Alvarez-Cienfuegos A.ら、2016)を進化させたものである(Harwood SLら、前掲、2017)。すべての相互作用は、高い親和性(低いピコモルKD値)であり、バイオセンサー表面に提示された抗原に対するトリマーボディの機能的三価性を示していた(表V)。これらの三価抗体によるhuEGFR結合の動態は、以前の研究(Compte M.ら、前掲、Harwood SLら、前掲)と一致している。補足実験では、4-1BB
Nおよび4-1BB
N/CEGFRを、まずバイオセンサー表面に固定化されたhu4-1BBにロードし、次いで、そのバイオセンサーを、huEGFRを含む緩衝液中に移動させた。4-1BB
N/CEGFRは、4-1BB
Nとは異なり、固定化hu4-1BBに結合したまま可溶性huEGFRに結合することが可能であり、その二価性および両方の抗原に同時に結合する能力をさらに確認した(
図1d)。さらに、4-1BB
N/CEGFRは、マウス(mo-)、カニクイザル(cy-)およびhuEGFRに結合し(
図10a)、cy4-1BBおよびhu4-1BBにも結合したが、mo4-1BBへの結合ははるかに低かった(
図10b)。細胞状況でのhu4-1BBおよびhuEGFRを検出する能力を、フローサイトメトリーで分析した。4-1BB
N/CEGFRトリマーボディは、野生型HEK293(EGFR+)細胞、細胞表面にhu4-1BBを発現するようにトランスフェクトされたHEK293細胞(HEK293hu4-1BB)、およびhuEGFRを発現しているマウス3T3細胞(3T3huEGFR)に結合したが、野生型3T3細胞には結合しなかった(
図11)。一方、4-1BB IgGは、HEK293hu4-1BB細胞にのみ結合した(
図11)。4-1BB
N/CEGFRの多価結合をさらに評価するために、本発明者らは、A431細胞における増殖およびEGFRリン酸化を阻害するその能力を研究した(Schmitz KR.ら、前掲)。4-1BB
N/CEGFRおよびEGF競合的阻害剤であるセツキシマブ(Li S.ら、2005)の両方とも、抗ヒトCD20リツキシマブおよび親4-1BB IgGとは異なり、用量依存的にA431の増殖を阻害し(高用量の両抗体では、等モル用量の対照抗体と比較して、それぞれP=0.003およびP=0.0005)(
図12a)、EGFRリン酸化も阻害した(
図12b)。
【0219】
実施例2.FcフリーEGFR標的化4-1BBアゴニストヒト化トリマーボディは、EGFR発現細胞の存在下でT細胞共刺激を有意に増強する
3種のSAP3.28由来抗体およびウレルマブのアゴニスト活性を、細胞表面にhu4-1BB、およびNF-κB応答エレメントで駆動されるルシフェラーゼレポーターを構成的に発現するNF-κB-luc2/4-1BB Jurkat細胞(JurkatNF-κB)を用いて評価した。Jurkat
NF-κBレポーター細胞を、huFcγRIIb(CHO
huFcγRIIb)またはhuEGFR(3T3
huEGFR)を安定に発現している標的細胞、および陰性対照として非トランスフェクトCHO細胞または3T3細胞と共培養し;細胞表面のhuFcγRIIbおよびhuEGFRの発現を、フローサイトメトリーにより実証した(
図2aおよびb)。次いで、二価(4-1BB IgGまたはウレルマブ)または三価(4-1BB
Nまたは4-1BB
N/CEGFR)の抗hu4-1BB抗体の滴定物を共培養細胞に添加した。標的細胞表面にFcまたはEGFRを介した抗体架橋が存在しない場合(すなわち、非トランスフェクトCHO細胞または3T3細胞との共培養の場合)、4-1BB IgGは、試験したすべての濃度で、未処理のJurkat NF-κB細胞に対してほとんどまたは全く誘導を示さず、抗hu4-1BBトリマーボディは両方とも約10倍の誘導を示し、ウレルマブは約20倍の誘導を示した(
図2cおよびd)。FcγRIIbを介した架橋が存在する場合(すなわち、CHOhuFcγRIIbを標的細胞として用いた場合)、4-1BB IgGは、26倍の誘導(P=0.0008)でNF-κBの用量依存的な活性化を誘導し、ウレルマブの誘導はさらに40倍(P=0.003)に増加した(
図2c)。トリマーボディはどちらも、FcγRIIbを介した誘導の増加は示さなかった(
図2c)。トリマーボディを介した4-1BBシグナル伝達は、標的細胞がhuEGFRを発現すると有意に増強され(P=0.0008)、NF-κBルシフェラーゼレポーター活性が40倍増加した(
図2d)。4-1BB IgG、ウレルマブ、および4-1BBNによる誘導は、huEGFRの発現に影響されなかった(
図2d)。陰性対照抗体のmoIgG1、huIgG4、およびCEAを認識するトリマーボディであるCEANは、活性化を示さなかった(
図13aおよびb)。次に、本発明者らは、健常ドナー由来のhuPBMCまたはT細胞を用いて、照射された3T3または3T3
huEGFR細胞と共培養した場合のIFNγ分泌に対する抗hu4-1BB抗体の効果を、最適以下の用量の抗huCD3 mAbが存在する場合と存在しない場合の両方で調べた。4-1BB
N/CEGFRトリマーボディは、huPBMCまたはT細胞をEGFR+細胞と共培養した場合にのみ、IFNγ分泌に対して用量依存的な活性化効果を示し;EGFR-細胞では、誘導は観察されなかった(
図2eおよびf)。これらの条件下では、4-1BB IgGおよびCEANの効果は最小限であり、EGFR発現とは無関係であった(
図2e;
図14)。これらのデータは、4-1BB
N/CEGFRが、TCR/CD3複合体を介した最初のシグナル伝達(シグナル1)を必要とする、強力なEGFR依存性T細胞共刺激およびIFNγ分泌を誘導することを示している。その後、huPBMCを、4-1BB
N/CEGFRおよびPD-L1遮断抗体アテゾリズマブの存在下で、照射されたEGFR+PD-L1-(3T3
huEGFR)細胞またはEGFR+PD-L1+(MDA-MB-231)細胞と共培養した(
図2g)。最適以下の用量の抗huCD3 mAbと併用すると、4-1BB
N/CEGFRトリマーボディは、IFNγ分泌を有意に増強した(P=0.0007 3T3
huEGFR細胞;P=0.0002 MDA-MB-231細胞)(
図2h)。4-1BB
N/CEGFR存在下でhuPBMCをMDA-MB-231細胞と共培養した場合、アテゾリズマブの添加により、IFNγレベルが有意に増加した(P=0.02)(
図2h)。
【0220】
実施例3.89Zr標識4-1BB
N/C
EGFRトリマーボディの薬物動態
4-1BB
N/CEGFRトリマーボディは、ヒト血清中37℃で4日後、その最初の結合活性をほぼ100%保持した(
図15aおよびb)。4-1BB
N/CEGFRトリマーボディをp-SCN-Bn-デフェロキサミン(Df)でキレート化しても、SDS-PAGEの遊走パターンは変化せず、結合活性も低下しなかった(
図16aおよびb)。放射性標識後の精製[
89Zr]Zr-Df-4-1BB
N/CEGFRのRCY(放射性標識収率)およびRQP(放射化学的純度)は、それぞれ40%および95%であった。AIC値は、[
89Zr]Zr-Df-4-1BB
N/CEGFRの1コンパートメントおよび2コンパートメントについて、それぞれ10.97および-22.66であったたため、4-1BB
N/CEGFRトリマーボディの体内動態は、2コンパートメントモデルによってよりよく説明された(表VI)。
【0221】
【0222】
静脈内投与後の[
89Zr]Zr-Df-4-1BB
N/CEGFRの排出は二相性であり、半減期は急速な分布相で7.3時間、緩やかな分布相で66.8時間であった(
図3a)。定常状態での分布容積は66.5mL(2.63L/Kg)、血漿クリアランスは0.97mL/時間(37.6mL/Kg/時間)であった。血液対血漿比が0.62であったことから、得られた血液クリアランス値は、心拍出量(マウスでは21.7L/Kg/時間)と比較して非常に低く(0.062L/Kg/時間)、これは一般に、低用量レジメンで用いる薬剤を開発する上で望ましい値である(Toutain PL.ら、2004)。
【0223】
実施例4.FcフリーEGFR標的化4-1BBアゴニストヒト化トリマーボディの抗腫瘍活性
本発明者らは、huPBMC駆動ヒト化イムノアバター(immunoavatar)マウスモデルにおいて、4-1BB
N/CEGFRトリマーボディの抗腫瘍活性について試験した。Rag2
-/-IL2Rγ
nullマウスにhuPBMCを腹腔内(i.p.)注射し、次いでヒトHT-29 CRC細胞を皮下(s.c.)接種した(
図3b)。移植されたヒトT細胞は活性化され、異種移植対宿主病(xGVHD)と呼ばれるプロセスである病原性異種反応性を生じるが(Nervi B.ら、2007)、移植されたヒトT細胞は治療薬による調節が可能であり、免疫調節戦略を試験するための貴重なモデルである(Carroll RG.ら,2008、Mutis T.ら,2006、Sanmamed MF.ら,2015)。腫瘍が直径約0.4cmに達したマウスを、
図3bに示すように、3/4日間隔で5回のトリマーボディ(CEA
Nまたは4-1BB
N/CEGFR)のi.p.注射、または週3回の等モル用量の4-1BB IgGで治療した。用量および治療スケジュールは、CRCの免疫適格モデルにおいて抗mo4-1BBアゴニストを用いて実施されたもの(Compte M.ら、前掲)と同様に設計した。4-1BB
N/CEGFR治療群は、未治療群(P=0.01)およびCEAN治療群(P=0.004)と比較して、有意に遅い腫瘍成長を示した(
図3c)。特に、ヒト化4-1BB
N/CEGFRトリマーボディは、4-1BB IgGに匹敵する抗腫瘍活性をインビボで示した(
図3c)。
【0224】
次に発明者らは、EGFR+NSCLC PDXを有するhuPBMC駆動ヒト化NSGマウスモデル(TP103、
図3dおよびe)においても抗腫瘍効果が生じるか否かを明らかにしようとした。
図3fに示すように、4-1BB
N/CEGFR治療マウスは、対照群と比較して腫瘍成長が抑制された。腫瘍成長制御の改善は、TIL浸潤パターンの有意な変化を伴った。両群とも、腫瘍細胞巣を取り囲み関与しているCD3+Tリンパ球のびまん性浸潤が認められた(
図17)。PBS処置マウスでは、CD4+T細胞が多く、CD4/CD8比は2.8であった(
図3g~i)。4-1BB
N/CEGFR治療群では、CD8+T細胞数の有意な増加(P=0.04)が認められ、同時にFoxp3+細胞数の減少(P=0.01)も認められた(
図3g~i;
図17)。
【0225】
本発明者らは、4-1BB IgGまたは4-1BB
N/CEGFRトリマーボディ(6mg/kg)を週1回3週間投与し、1週間後に安楽死させた、huPBMC駆動ヒト化NSGマウスにおける毒性プロファイルを比較した。肝臓の組織学的研究により、4-1BB IgG治療がxGVHDを悪化させることが明らかになった。各治療群の代表的なマウスにおける肝浸潤の詳細を
図3jに示すが、IgGベースの4-1BBアゴニストで治療した群では広範囲の血管周囲単核細胞浸潤を示している。次に本発明者らは、屠殺時に採取した血清試料中のヒトIFNγ濃度を調べた。4-1BB IgG治療は、4-1BB
N/CEGFR治療よりもIFNγレベルを有意に増加させたが(P=0.001)、そのレベルはPBS処置マウスと同程度であった(
図3k)。
【0226】
実施例5.4-1BB
N/C
EGFRとアテゾリズマブの併用は腫瘍退縮を誘導する
4-1BB
N/CEGFRとPD-L1ブロッカーアテゾリズマブの併用による治療の可能性を、ヒトEGFR+PD-L1+MDA-MB-231(
図2g)TNBC異種移植片を有するhuPBMC駆動ヒト化NSGマウスにおいて検討した(
図4a)。アテゾリズマブ単剤療法は、腫瘍成長を約60%抑制することができ、一方、4-1BB
N/CEGFR単剤療法は、腫瘍成長を約90%抑制した(
図4b)。アテゾリズマブと4-1BB
N/CEGFRの併用は、腫瘍成長のさらなる抑制をもたらした(
図4b)。PBS処置群では、サイトケラチン(CK)を強く発現し、密なリンパ球浸潤を伴う(
図4cおよびd)腫瘍性多形細胞の大きな巣が観察された。重要なことは、4-1BB
N/CEGFR単剤療法群(P=0.04)および併用療法群(P=0.0002)では、アテゾリズマブ単剤療法群よりも、CK+細胞のパーセンテージが有意に低かったことである(
図4c)。併用療法では、6匹中5匹のマウスでCK+細胞のパーセンテージが最大でも30%であり、1匹のマウスではTNBC細胞が完全に根絶された(
図4e)。この腫瘍量の減少は、4-1BB
N/CEGFR治療群におけるCD8+T細胞の割合の有意な増加と関連していた(P=0.03およびP=0.04)(
図4dおよびe)。
【0227】
実施例6.Compteら(Nature Communications,2018,doi:10.1038/s41467-018-07195-w)に開示された1D8抗4-1BB ScFvを含む4-1BB
N/C
EGFR抗4-1BBトリマーボディに対するSAP3.28抗4-1BB ScFvを含む4-1BB
N/C
EGFRトリマーボディの薬物動態特性の改善
1D8N/CEGa1の薬物動態研究を、1D8N/CEGa1トリマーボディを1mg/kgで単回静脈内(i.v.)注射した雌性CD-1マウス(n=24)および免疫適格Balb/C雌性マウス(n=24)において実施した。各群3匹のマウスから、5分、15分、30分、1時間、3時間、6時間、24時間、および48時間に血液試料を採取した。遠心分離後に血清を採取し、-20℃で保存した。血清の抗体濃度を、プラスチック固定化m4-1BB(3μg/ml)に対するELISAによって分析した。洗浄およびブロッキング後、異なる時点の血清を添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化抗FLAG mAb(1μg/ml)(M2;カタログ番号ab49763、Abcam)(1:1000希釈)を添加した。洗浄後、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)を用いてプレートを発色させた。薬物動態パラメータは、Prismソフトウェア(GraphPad Software)を用いて算出した。
【0228】
CD-1マウスでは、1D8N/CEGa1の循環半減期は16.1時間であった(表2)。1D8N/CEGa1の血清中半減期は、マウスの遺伝的背景の影響を受けず、BALB/cマウスでも同様の薬物動態プロファイルが観察された(表3)。
【0229】
【0230】
【0231】
SAP3.28N/CEGa1の薬物動態研究を、PBS中242.35kBq(14μg)(0.56mg/kg)の89Zr標識SAP3.28N/CEGa1トリマーボディをi.v.注射(尾静脈)した6週齢の雌性無胸腺ヌードマウスにおいて実施した。薬物動態研究のために、血液試料をヘパリン処理チューブに採取し、3000rpmで10分間遠心分離して血漿を得た。血漿中の放射能濃度は、1mLあたりの注入量パーセント(%ID/mL)として算出し、注入後の時間に対してプロットした。放射能の血漿中濃度対時間は、非線形回帰を用いたコンパートメント法により解析した。薬物動態パラメータの初期推定値は、アドインプログラムPKSolverによる曲線ストリッピング法を用いて計算した。赤池情報量規準(AIC)を用いて、最適コンパートメントモデルを決定した。血液クリアランス(Cl血液)は、以下の関係を用いて血漿クリアランス(Cl血漿)から推定した:Cl血液=Cl血漿/BP(式中、BPは血液対血漿比である)。
【0232】
静脈内投与後の[89Zr]Zr-Df-SAP3.28N/CEGa1の排出は二相性であり、半減期は急速な分布相で7.3時間、緩やかな分布相で66.8時間であった(表4)。定常状態での分布容積は66.5mL(2.63L/kg)、血漿クリアランスは0.97mL/時間(37.6mL/kg/時間)であった。血液対血漿比が0.62であったことから、得られた血液クリアランス値は、心拍出量(マウスでは21.7L/kg/時間)と比較して非常に低かった(0.062L/kg/時)。
【0233】
【0234】
上記の比較データに示されるように、SAP3.28抗4-1BB ScFvの存在を特徴とする本発明による4-1BBN/CEGFRトリマーボディの半減時間は、Compteら(Nature Communications,2018,doi:10.1038/s41467-018-07195-w)に開示された1D8抗4-1BB ScFvを含む4-1BBN/CEGFR抗4-1BBトリマーボディの半減時間よりもはるかに長い。これら2つの抗体の半減期の差は、急速な分配相では約7倍、緩やかな分配相では約4倍である。この差は、両抗体の特性評価に使用された薬物動態アッセイの方法論的な違いのみに起因するものとは考えられないほど顕著である。本発明による抗体のより長い半減期は、明らかに予想外のものであり、高い半減期値は、低用量レジメンで投与される予定の薬剤にとって望ましい特性であるため、先行技術の抗体よりも有利である。
【配列表】
【国際調査報告】