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特表2024-510949EBV関連疾患又は状態の治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】EBV関連疾患又は状態の治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20240305BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 31/12 20060101ALN20240305BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240305BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20240305BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20240305BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P35/00
A61P7/00
A61P37/06
A61P37/04
A61P7/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P37/02
A61P25/00
A61K31/7105
A61K31/155
A61K31/4245
A61K31/47
A61K31/136
G01N33/569 Z
A61P31/12
C12N15/113 130Z
C12Q1/04
C12Q1/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554304
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2022055647
(87)【国際公開番号】W WO2022184930
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21161105.8
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21208340.6
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523338439
【氏名又は名称】ウニヴェルシタット・バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ヘス
(72)【発明者】
【氏名】ボジャナ・ミュラー-デュロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】グレン・バンツーク
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QQ52
4C084AA17
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA14
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4C084ZA022
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA551
4C084ZA552
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZC202
4C086AA01
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4C086EA16
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA02
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4C086ZA96
4C086ZB07
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4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZC20
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4C206MA75
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA51
4C206ZA55
4C206ZA66
4C206ZA96
4C206ZB07
4C206ZB08
4C206ZB09
4C206ZB15
4C206ZB26
4C206ZC20
(57)【要約】
本発明は、EBV感染に関連する疾患及び状態の治療及び予防に関する。特に、本発明は、EBV感染に関連する疾患及び状態の治療及び予防のためのIDO1阻害剤の使用を対象とする。本発明は、EBV感染に関連する疾患及び状態の発症のリスクを予測するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるエプスタイン・バーウイルス(EBV)関連疾患又は状態を治療する方法における使用のためのインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害剤。
【請求項2】
IDO1阻害剤が、小分子IDO1阻害剤、ワクチン、又はshRNAである、請求項1に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項3】
小分子IDO1阻害剤であり、ヒドロキシアミジン、1-(4-アリールシクロヘキサ-1-イル)プロパンアミド、インドール及び[5,6]-縮合複素環式芳香族化合物、フェニルイミダゾール、1,2-ジアミノ-及び1-ヒドロキシ-2-アミノ置換芳香族化合物、並びにそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項4】
ヒドロキシアミジン又はその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項5】
エパカドスタット(INCB024360)又はその薬学的に許容される塩である、請求項4に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項6】
1-(4-アリールシクロヘキサ-1-イル)プロペンアミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項7】
リンロドスタット(BMS 986205)又はその薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項8】
1,2-ジアミノ若しくは1-ヒドロキシ-2-アミノ置換芳香族化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項9】
KHK2455又はその薬学的に許容される塩である、請求項8に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項10】
EBV関連疾患又は状態が、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、伝染性単核球症(IM)又は腺熱、慢性活動性EBV(CAEBV)、血球貪食症候群(HPS)、血球貪食性リンパ組織球症、免疫性溶血性貧血、EBV関連がん、免疫不全、及びEBV関連自己免疫疾患から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項11】
EBV関連疾患が、PTLD又はIM、好ましくはPTLDである、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項12】
EBV関連がんが、リンパ腫、好ましくはB細胞に由来するものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項13】
EBV関連がんが、免疫芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、NK細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、及び原発性滲出性リンパ腫から選択されるリンパ腫、又は上咽頭癌及び胃癌から選択される癌腫である、請求項12に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項14】
免疫不全が、毛細血管拡張性運動失調症、ITK欠損、X連鎖リンパ増殖性疾患(XLP)、ウィスコット・オルドリッチ症候群、CD27欠損、XMEN病(MAGT1欠損)、コロニン1a欠損、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、MST1変異(STK4欠損)、オーメン症候群、ディジョージ症候群、活性化PI3K-δ症候群、WHIM症候群、CTPS1欠損、MCM4欠損、ZAP70欠損、及びNF-κB1ハプロ不全から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項15】
EBV関連自己免疫疾患が、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、及び炎症性腸疾患から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項16】
方法が、対象における移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を予防する工程を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のためのIDO1阻害剤。
【請求項17】
それを必要とする対象における請求項1から16のいずれかに規定のEBV関連疾患又は状態を治療する方法であって、請求項1から16のいずれかに記載の、治療有効量若しくは予防有効量のIDO1阻害剤又は請求項1から16のいずれかに記載のIDO1阻害剤を含む組成物を対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項18】
対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法であって、
a)対象からの試料中のIDO1を発現しているEBV感染B細胞(IDO1+EBER+B細胞)の存在を検出する工程、及び/又は
b)対象からの試料中のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路(KP)活性化の1つ又は複数の分子指標を検出する工程
を含み、試料中、IDO1+EBER+B細胞が検出される場合、及び/又は試料中、NADデノボ生合成につながるKP活性化の1つ若しくは複数の分子指標が検出される場合、対象が、EBV関連疾患又は状態のリスクを有する、方法。
【請求項19】
それを必要とする対象におけるEBV関連疾患又は状態を治療するための方法であって、治療有効量又は予防有効量のIDO1阻害剤を対象に投与する工程を含み、対象が、
a)対象からの試料中のIDO1を発現しているEBV感染B細胞(IDO1+EBER+B細胞)の存在を検出する工程、及び/又は
b)対象からの試料中のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路(KP)活性化の1つ又は複数の分子指標を検出する工程
により、EBV関連疾患又は状態を発症するリスクを有すると決定され、
試料中、IDO1+EBER+B細胞が検出される場合、及び/又は試料中、NADデノボ生合成につながるKP活性化の1つ若しくは複数の分子指標が検出される場合、対象が、EBV関連疾患又は状態のリスクを有する、方法。
【請求項20】
NADデノボ生合成につながるKP活性化の分子指標が、対照レベルと異なる、試料中の1つ又は複数のKP代謝産物の濃度である、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
1つ又は複数のKP代謝産物が、L-トリプトファン(L-TRYP)であり、試料中のL-TRYPの濃度が対照レベルよりも低いとき、対象が、EBV関連疾患又は状態のリスクを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
NADデノボ生合成につながるKP活性化の分子指標が、キノリン酸(QUIN)/L-TRYPの濃度比であり、QUIN/L-TRYPの濃度比が対照レベルよりも大きいとき、対象が、EBV関連疾患又は状態のリスクを有する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項23】
c)対象からの試料中のEBV量を決定する工程を更に含み、
試料中のEBV量が、血液中約5,000コピー/μg DNA以上、及び/又は約1,000コピー/100μl血漿以上のEBV DNA量であるとき、対象が、EBV関連疾患又は状態のリスクを有する、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
EBV関連疾患又は状態が、リンパ腫、好ましくはPTLDである、請求項18から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
対象が、移植患者である、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EBV感染に関連する疾患及び状態の治療及び予防を対象とする。特に、本開示は、EBV感染に関連する疾患及び状態の治療及び予防のためのIDO1阻害剤の使用を対象とする。本開示は、EBV感染に関連する疾患及び状態の発症のリスクを予測するための方法も対象とする。
【背景技術】
【0002】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、主にB細胞及びヒト上皮細胞に感染するγ-ヘルペスウイルスである。ヘルペスウイルスの顕著な特徴は、その宿主において、生涯にわたる感染(潜伏感染)を容易に確立する能力であり、EBVは主にBリンパ球で潜伏感染を確立する。潜伏状態では、ヘルペスウイルスは通常、疾患を引き起こさない。血清有病率に基づくと、成人の95%が世界中でEBVを保有している。このウイルスは発がん性が十分に確立されており、ヒトのがんのすべての1%に関連しており、リンパ増殖性疾患、炎症性免疫調節異常、上皮がんから自己免疫疾患まで、幅広い疾患を引き起こす可能性がある(Farrell, P. J. (2019) Annu. Rev. Pathol. Mech. Dis. 14、29~53頁; Wald A.及びCorey L. (2007) Herpesviruses; Biology、Therapy and Immunoprohylacis、Cambridge University Press; Zhang, T.ら(2014) Pathology-Research and Practice 210、69~73頁)。
【0003】
一次感染は主に小児期に起こり、無症状であるが、一次感染が思春期に起こると伝染性単核球症(IM)として現れる場合もある。IMは、EBV感染時の最も一般的な臨床症状である。
【0004】
EBVのライフサイクルは、前潜伏期、潜伏期、及び溶解期の3種の異なる段階を包含する。ナイーブB細胞に感染すると、ウイルスはデノボ合成を誘導しないが、潜伏遺伝子とともにウイルス溶解遺伝子のサブセットを発現する前潜伏期を開始する。この段階で、EBV DNAは、抑制的なエピジェネティックなシグネチャーパターンを獲得し、すべての溶解遺伝子だけでなく、ある特定の潜伏遺伝子も、最終的にサイレンシングされる。転写のエピジェネティックなシャットオフのこのプロセスは、感染後約10~14日で完了し、感染の潜伏期がこれに続く。
【0005】
ウイルスは、遺伝子の小さなサブセットの発現を特徴とするエピソーム状態で潜伏したままである。潜伏感染細胞で発現するウイルス遺伝子の異なるセットは、ウイルスマイクロRNA及び長鎖ノンコーディングRNA等のノンコーディング転写物とともに、EBNA(エプスタイン・バー核抗原)及びLMP(潜伏期膜タンパク質)と呼ばれる。
【0006】
周期的に、ウイルスは、メカニズムを通して潜伏状態から再活性化することがあるが、そのメカニズムは不明である。この感染の溶解期では、EBVのすべての溶解遺伝子(>80遺伝子)が発現し、強力なウイルスDNA複製が起こり、子孫となるウイルス粒子が産生される。免疫能力のある宿主では、CD4+及びCD8+T細胞、特に細胞傷害性CD8+T細胞が、このプロセスを制御するのに有効である。対照的に、免疫低下患者(例えば、幹細胞又は臓器移植後、自己免疫又はがんの治療を受けた患者において、HIV/AIDS又は免疫不全の設定において)では、再活性化が臨床的に著しく、バーキットリンパ腫(BL)及びホジキンリンパ腫(HL)等のリンパ腫の発症につながり、例えば血球貪食症候群として現れるEBV関連免疫調節異常に関連している。
【0007】
造血幹細胞移植(HSCT)又は固形臓器移植(SOT)中の免疫抑制療法は、EBV関連悪性腫瘍に強く関連している。移植後の最も致命的なリスクの1つは、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)の発症である。PTLDのほとんどの症例がB細胞リンパ腫であり、5%までがT細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、又はホジキン様リンパ腫である。EBVは、PTLDの状態形成、特に初期の病状において、主要な役割を果たしている。初期のPTLDは、通常、移植後の最初の1年以内に報告され、症例の大多数が最初の6か月以内に起きている。HSCTにおける発生率は、移植の種類及び免疫抑制の度合いに応じ1%~11%に及び、生着後2~3か月でピークに達する。SOTの期間中、発生率は0.5%~20%に及び、移植の種類及び免疫抑制レジメンにも左右され、発病の中央値は6か月である。腎移植片、骨髄移植片、及び幹細胞移植片のレシピエントは、PTLDの頻度が低く(1%以下)、心臓-肺/肺移植片又は腸移植片のレシピエントは、PTLDの頻度が最も高い。小児患者は、移植前にEBV無感作であることが多く、EBV陽性移植片からウイルスを獲得するリスクを有するため、PTLDを発症するリスクが最も高い。
【0008】
更に、免疫不全は、毛細血管拡張性運動失調症、ITK欠損、X連鎖リンパ増殖性疾患(XLP)、ウィスコット・オルドリッチ症候群、CD27欠損、XMEN病(MAGT1欠損)、コロニン1a欠損、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、MST1変異(STK4欠損)、オーメン症候群、ディジョージ症候群、活性化PI3K-δ症候群、WHIM症候群、CTPS1欠損、MCM4欠損、ZAP70欠損、及びNF-κB1ハプロ不全を含むがこれらに限定されない、EBV感染の重篤でしばしば致命的な経過に関連している。免疫不全は、ウイルスの再活性化及びEBV感染Bリンパ球の制御されない増殖を促進し、EBV関連リンパ増殖性疾患の最終的な発症を促進する。
【0009】
EBV感染時のさらなる合併症は、慢性活動性EBV(CAEBV)を含み、これは、見かけ上は免疫能力のある人間における、長引くIM様症状及び末梢血EBV DNA量の上昇を特徴とする稀な症候群である。CAEBの予後は一般に不良で、HSCTが唯一の根治療法である。更に、EBV感染は、血球貪食症候群(HPS)、血球貪食性リンパ組織球症、及び免疫性溶血性貧血をもたらし得る。
【0010】
EBV感染は、長期のウイルス保菌の免疫病理学的結果として生じる可能性がある様々な自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患)にも関連している。
【0011】
EBV関連腫瘍が、臨床的に免疫能力のある宿主において更に生じることがある(例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫(BL)、胃癌、上咽頭癌、T/NK細胞リンパ腫)。
【0012】
IMの療法は、症状を緩和することに重点を置く。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、炎症、頭痛、及び筋肉痛を低減するために与えられる(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、及びアセトアミノフェン)。
【0013】
PTLD治療は、困難な場合がある。その目的は、移植臓器の機能を維持しながらPTLDを治癒させることである。第一選択治療は、免疫抑制薬物療法を可能な限り低用量に減らすことである。免疫抑制の低減が十分でない場合、追加的治療が必要になるかもしれない。過剰増殖性CD20+B細胞を枯渇させる、CD20に対するキメラモノクローナル抗体であるリツキシマブが、治療選択肢として可能である。前述の療法がうまくいかない場合、CHOP化学療法が追加療法として選択される(ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン)。リツキシマブとCHOP化学療法を組み合わせることもでき、R-CHOPとして知られている。時折、PTLDを治療するために手術又は放射線療法を使用する場合もある。養子T細胞療法は、EBV特異的T細胞を用いた治療を含み、他の治療選択肢に応答しなかった患者で使用される。いくつかの標的薬物が、PTLDを治療する有効性について臨床試験で研究されており、細胞シグナル遮断薬、例えばイブルチニブ、イデラリシブ、プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ、放射免疫療法、例えば90Y-イブリツモマブチウキセタン、チェックポイント阻害剤、例えばペムブロリズマブ及びニボルマブ、並びに抗体-薬物コンジュゲート、例えばブレンツキシマブベドチンを含む。これらの治療モダリティは、制御されないEBV感染及びCAEBVに関連する免疫不全のために使用することもできる。
【0014】
EBV特異的ワクチン又はEBV特異的抗ウイルス薬は、患者の治療のために現在まで承認されていない。
【0015】
EBV、EBV感染、及びEBVに関連する疾患又は状態を標的とする治療法の必要性が、当技術分野において依然として存在する。特に、EBV感染及びEBV感染の拡大のメカニズム並びにそのようなプロセスに関連する疾患又は状態を標的とする治療法の必要性が、当技術分野において依然として存在する。本開示は、本明細書に記載の疾患に対する改善された治療戦略を更に提供する。本開示は、感染の期間中のEBV及びそのライフサイクルを標的とする治療戦略も提供する。
【0016】
対象がEBV感染に関連する疾患又は状態を発症するリスクを有するかどうかを予測するための方法の必要性も、当技術分野において依然として存在し、特に対象がEBV感染に関連する疾患又は状態、特にPDLTを発症するリスクを有するかどうかを予測するための改善された方法、例えば感度及び/又は特異性が改善された方法の必要性が、当技術分野において依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2010005958
【特許文献2】WO2015070007
【特許文献3】WO2017079669
【特許文献4】WO2017152857
【特許文献5】WO2017129139
【特許文献6】WO2017106062
【特許文献7】WO2017002078
【特許文献8】US20160333009
【特許文献9】WO2017024996
【特許文献10】WO2016027241
【特許文献11】WO2018140831
【特許文献12】WO2017181849
【特許文献13】WO2016073770
【特許文献14】WO2016073738
【特許文献15】WO2016073774
【特許文献16】WO2016071283
【特許文献17】WO2016026772
【特許文献18】WO2014081689
【特許文献19】WO2015173764
【特許文献20】WO2016181348
【特許文献21】WO2016181349
【特許文献22】WO2015082499
【特許文献23】WO2015150097
【特許文献24】WO2016071293
【特許文献25】WO2017133258
【特許文献26】WO2017007700
【特許文献27】WO2016161960
【特許文献28】WO2017034420
【特許文献29】WO2016024233
【特許文献30】WO2012142237
【特許文献31】WO2014159248
【特許文献32】WO2016051181
【特許文献33】WO2016169421
【特許文献34】WO2016165613
【特許文献35】WO2016037026
【特許文献36】WO2016059412
【特許文献37】WO2017140274
【特許文献38】WO2017075341
【特許文献39】WO2017149469
【特許文献40】WO2017134555
【特許文献41】WO2013069765
【特許文献42】US2013065905
【特許文献43】US20150352106
【特許文献44】WO2017010106
【特許文献45】WO2015002918
【特許文献46】WO2015006520
【特許文献47】WO2015031295
【特許文献48】WO2014150646
【特許文献49】WO2014150677
【特許文献50】WO2016210414
【特許文献51】WO2016161269
【特許文献52】WO2016161279
【特許文献53】WO2016161286
【特許文献54】WO2017051353
【特許文献55】WO2017051354
【特許文献56】WO2017139414
【特許文献57】WO2014186035
【特許文献58】WO2016201354
【特許文献59】WO2017149150
【特許文献60】US2018353483
【特許文献61】US2017081671
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Farrell, P. J. (2019) Annu. Rev. Pathol. Mech. Dis. 14、29~53頁
【非特許文献2】Wald A.及びCorey L. (2007) Herpesviruses; Biology、Therapy and Immunoprohylacis、Cambridge University Press
【非特許文献3】Zhang, T.ら(2014) Pathology-Research and Practice 210、69~73頁
【非特許文献4】Cheong, J, E.ら(2018) Expert Opinion on Therapeutic Patents、2018、28:4、317~330頁
【非特許文献5】Phan, T.ら(2020) Cancer Gene Ther 27:3~4、 235~245頁、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30824815/
【非特許文献6】Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton, Pa.、1985、1418頁
【非特許文献7】Journal of Pharmaceutical Science、66、2 (1977)
【非特許文献8】Physicians Desk Reference、第62版、Oradell、NJ: Medical Economics Co.、2008
【非特許文献9】Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、第11版、McGraw-Hill、2005
【非特許文献10】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Baltimore、MD: Lippincott Williams & Wilkins、2000
【非特許文献11】The Merck Index、第14版、Whitehouse Station、NJ:Merck Research Laboratories、2006
【非特許文献12】Clin Microbiol Rev. 2010 Apr; 23(2):350~366頁
【非特許文献13】Hislop, A. D.ら(2007) Annu Rev Immunol 25、587~617頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の態様では、本発明は、対象におけるエプスタイン・バーウイルス(EBV)関連疾患又は状態を治療する方法における使用のためのインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害剤を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、本明細書に定義されるEBV関連疾患又は状態を治療する方法であって、本明細書に定義される治療有効量若しくは予防有効量のIDO1阻害剤又は本明細書に定義されるIDO1阻害剤を含む組成物を対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、対象における本明細書に定義されるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】キヌレニン経路(KP)及び連結されたNAD+デノボ生合成の模式的概要を示す図である。
図2A】B細胞のEBV感染がキノリン酸(QUIN)の蓄積とL-トリプトファン(L-TRYP)及びNAD+の枯渇とをどのように引き起こすかを示す図である。実験スキームを示し、B細胞をEBVに感染させるか、又は同量の予め熱で不活性化させたEBV(h.i.EBV)に曝露させた。
図2B】B細胞のEBV感染がキノリン酸(QUIN)の蓄積とL-トリプトファン(L-TRYP)及びNAD+の枯渇とをどのように引き起こすかを示すグラフである。EBV感染初代ヒトB細胞対h.i.EBV曝露初代ヒトB細胞(n=6)における代謝産物存在量を示すボルケーノプロットを示す。
図3A】B細胞のEBV感染がキヌレニン経路をどのように誘導するかを示す図である。非感染B細胞、EBV感染B細胞、及びh.i.EBV曝露B細胞における、トリプトファン代謝遺伝子をコードする転写物の24及び96hpiでの相対発現を示すヒートマップを示す(n=6)。
図3B】B細胞のEBV感染がキヌレニン経路をどのように誘導するかを示す図である。初期EBV感染期(96hpiまで)並びにリンパ芽球様細胞株(LCL)の増殖中の全体のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、キヌレニナーゼ(KYNU)、3-ヒドロキシアントラニル酸3,4-ジオキシゲナーゼ(HAAO)、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT)、及びNAD+合成酵素(NADSYN)の存在量の代表的なウェスタンブロットを示す。
図3C】B細胞のEBV感染がキヌレニン経路をどのように誘導するかを示すグラフである。初期EBV感染期及びLCL増殖中のB細胞における、β-チューブリンに対して正規化した酵素IDO1、KYNU、QPRT及びNADSYNの発現を示す(n=4)。
図3D】B細胞のEBV感染がキヌレニン経路をどのように誘導するかを示すグラフである。示した感染前及び感染後5時点での、バルクB細胞におけるL-TRYP(TRPとも称される)、L-KYNU(KYNとも称される)、QUIN、及びL-KYNU/L-TRYPとQUIN/L-TRYPとの比、並びにNAD+の代謝産物存在量を示し、リンパ芽球様細胞株(LCL)と比較した。データは、示した個々のデータポイント(n=6独立実験)の15平均値として表し、両側スチューデントt検定を使用して比較する。
図3E】B細胞のEBV感染がキヌレニン経路をどのように誘導するかを示す図である。均一な13C-標識トリプトファン(U-13C11-TRP)を使用した、キヌレニン経路及び連結されたNADデノボ生合成経路へのトレーサー取込みの概略図を示す。
図3F】バルクB細胞の感染後示した時点での、及びLCLにおける、全タンパク質に対して正規化した13C-標識KYN(m+10)(左上パネル)及びQUIN(m+7)(左下パネル)、並びに全細胞NAD+(右上パネル)及びNADH(右下パネル)への13C-TRP(m+11)取込みを示すグラフである。データは、中央値及び範囲、n=4独立実験として示す。
図4】LCMS/MSにより測定した固形臓器移植レシピエントにおけるL-TRYP、L-KYNU、及びQUIN血清中濃度を示すグラフである(各n=10)。L-KYNU/L-TRYP及びQUIN/L-TRYP比は、単一代謝産物存在量に基づいて算出した。
図5】EBV誘導性IDO-1活性が、B細胞増殖にどのように必要であるかを示すグラフである。初代B細胞のEBV感染後0日目に添加したビヒクル又は異なるBMS-986205濃度の存在下で増殖を分析した(n=2)。非感染細胞及びh.i.EBV感染細胞は、内部標準となった。増殖は、感染後8日に、cell trace violetベースのアッセイを使用してフローサイトメトリーにより分析した。
図6A】EBV誘導性IDO-1活性が、B細胞形質転換にどのように必要であるかを示すグラフである。初代B細胞のEBV感染後0日目に添加したビヒクル、10μM BMS-986205、10μM BMS-986205/50μM L-KYNU、又は10μM BMS-986205/500μM NaMNの存在下で分析した形質転換効率アッセイを示す(n=3)。形質転換効率は、感染後5週間に分析し、添加した感染多重度(MOI)に対してプロットした。
図6B】EBV誘導性IDO-1活性が、B細胞形質転換にどのように必要であるかを示すグラフである。初代B細胞のEBV感染後0日目に添加したビヒクル、100μM エパカドスタット、100μM エパカドスタット/500μM NaMN、又は100μM エパカドスタット/100μM L-KYNUの存在下で分析した形質転換効率アッセイを示す(n=3)。形質転換効率は、感染後5週間に分析し、添加した感染多重度(MOI)に対してプロットした。
図6C】1dpiでの、IDO1のsiRNAを介したノックダウン後に定量し、スクランブルsiRNA処理(対照siRNA)と比較した、EBVを介したB細胞形質転換効率(感染多重度(MOI)1での)を示すグラフである。データは、対照siRNAに対して(1に設定)、示した個々のデータポイント(n=4独立実験)の中央値として表し、両側スチューデントt検定を使用して比較する。
図7A】STCコホートからの固形臓器移植レシピエント(SOT)において「EBV関連」として報告されたPTLD病変のEBV状態を、EBER in situハイブリダイゼーションにより7/10腫瘍で示す画像である。
図7B】固形臓器移植レシピエントのPBMCにおけるEBER+IDO1+B細胞のフローサイトメトリーゲーティング戦略を示すグラフである。
図8A】(i)EBV再活性化なし(EBVなし、n=10)、(ii)移植後最初の18か月において少なくとも1度EBV PCR陽性(EBV、n=10)、(iii)生検で確認されたEBV陽性移植後リンパ増殖性障害(PTLD、n=10)の固形臓器移植レシピエントのPBMCにおける染色したEBVコード化RNA(EBER)及びIDO1を示すグラフである。>2EBER+IDO1+B細胞/μl血液の検出を陽性のカットオフと定義した。PTLD診断前の試料のみを分析に含め、カイ二乗検定を使用して群を比較した(上図)。移植前(t0)及び移植後6か月(t6)のEBER+及びEBER+IDO1+B細胞の割合を示す代表的なフローサイトメトリードットプロット。
図8B】移植後の血清中L-TRYP濃度(左上)、QUIN(右上)、及びL-KYNU(右下)並びに移植後の血清中QUIN/L-TRYP(左中)及びL-KYNU/L-TRYP(左下)比を示すグラフである。PTLD群について、PTLD診断前の試料のみを含めた。バイオリンプロットは、中央値±IQR及び範囲を示し、データは、両側スチューデントt検定により比較した。
図8C】「EBVウイルス量」、EBER+IDO1+B細胞の数、及び血清中QUIN/L-TRYP比、並びにこれら3つの測定の組合せのROC評価を示すグラフである。
図9】EBV感染のヒト化マウスモデルにおけるIDO1遮断の実験デザインを示す図である。
図10】感染の7日前(d-7、ベースライン)及び感染後2日目及び7日目に質量分析法により評価した、ビヒクル対照(上パネル、n=4匹)又はエパカドスタット200mg/kg(下パネル、n=7匹)で処置したヒト化マウスにおける血清中L-TRYP及びL-KYNUレベル並びに血清中L-KYNU/L-TRYP比を示すグラフである。データは、箱ひげ(中央値、IQR及び範囲)として示し、両側スチューデントt検定により比較する。
図11A】ビヒクル処置(塗りつぶしのバー、n=10)及びエパカドスタット処置マウス(白いバー、n=9)における、感染後(pi)2~5週間のウイルス量の曲線下面積(AUC)として示した血液中のウイルス量を示すグラフである。データは、示した個々の測定値からの中央値として示し、両側スチューデントt検定を使用して比較する。
図11B】ビヒクル処置(塗りつぶしのバー、n=10)及びエパカドスタット処置マウス(白いバー、n=8)における、感染後5週間に評価した脾臓中のウイルス量を示すグラフである。示した個々の測定値からの中央値を示し、両側スチューデントt検定を使用して比較する。
図12A】ビヒクル処置(塗りつぶしのバー、n=10)及びエパカドスタット処置マウス(白いバー、n=9)における、感染後0週目~5週目の末梢血中のCD8+/CD4+T細胞比を示すグラフである。示した個々の測定値からの中央値を示し、両側スチューデントt検定を使用して比較する。
図12B】ビヒクル処置マウス(塗りつぶしのバー、n=10)及びエパカドスタット処置マウス(白いバー、n=8)における、5wpiの脾臓中のCD8+T細胞の絶対数を示すグラフである。データは、中央値として示し、両側スチューデントt検定を使用して群を比較した。
図12C】ビヒクル処置(塗りつぶしのバー、n=9)及びエパカドスタット処置マウス(白いバー、n=7)における、屠殺の日に評価した脾臓中のCD8+/CD4+比を示すグラフである。示した個々の測定値からの中央値を示し、両側スチューデントt検定を使用して比較する。
図13A】腫瘍負荷の巨視的評価:ビヒクル処置マウス対エパカドスタット処置マウス(各n=10匹)における、EBV陽性腫瘍2個以上(赤色)、EBV陽性腫瘍1個(橙色)、及び腫瘍なし(灰色)のマウスの割合を示すグラフである。カイ二乗検定を使用して群を比較した。
図13B】ヘマトキシリンとエオシン(HE)(左パネル)及びEBER FISH(右パネル)とで染色した、ビヒクル処置マウス(上パネル)及びエパカドスタットで処置したマウス(下パネル)からの腫瘍(腫瘍サイズ)の代表的な組織像を示す画像である。
図13C】腫瘍負荷、ビヒクル処置マウス対エパカドスタット処置マウス(各n=10匹)における、微視的に評価したEBV陽性腫瘍2個以上(赤色)、EBV陽性腫瘍1個(橙色)、及び腫瘍なし(灰色)のマウスの割合を示すグラフである。カイ二乗検定を使用して群を比較した。P値は、*P≦0.05、**P≦0.001、***P≦0.0001、****P≦0.0001として示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に記載の発明は、部分的には、新たに感染したB細胞において潜伏感染を確立する能力におけるEBVの代謝脆弱性の同定に基づいている。
【0024】
一過性のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)発現は、B細胞の初期EBV感染に関連する特徴的な代謝適応として同定された。このIDO1発現は、具体的にEBNA-2を介して、ウイルスによって引き起こされることが判明した。重要なことに、新たにEBV感染したB細胞における初期の一過性のIDO1活性が、EBVがB細胞の潜伏感染を確立する能力の代謝的要件として同定された。特に、発明者らは、EBNA2-EBF1を介するEBV駆動性IDO1活性が、EBV感染B細胞におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)デノボ生合成を促進し、これがB細胞形質転換を支持し、駆動することを同定している。したがって、初期のEBV感染B細胞におけるIDO1活性を阻害することにより、EBV駆動性B細胞形質転換を効率的に抑制することができる。初期のEBV感染B細胞におけるIDO1活性を阻害することにより、B細胞増殖も抑制することができる。
【0025】
したがって、例えばIDO1阻害剤を用いたIDO1活性の阻害は、新たにEBV感染したB細胞がEBVにより潜伏感染されて形質転換する(すなわち、不死化する)のを防ぐことために使用することができる。
【0026】
不完全に制御されたEBV感染は、溶解性感染成分(lytic infection component)に由来するEBVビリオンによる感染を介する潜伏性EBV感染B細胞プールの拡大が連結しており、多くの疾患に関連している。一方で、EBVの一次感染(例えば、伝染性単核球症)は、血漿/血清中の豊富な感染単位(EBVビリオン)、溶解性感染成分、並びに重篤で長引く臨床徴候及び症状に関連する可能性がある。原発性免疫不全(例えば、XLP)の患者では、一次EBV感染が致命的となることがある。他方では、一度潜伏感染し、ウイルスと免疫系の間のバランスが確立されると、免疫不全(原発性と続発性の両方)又は免疫抑制が、溶解性感染成分を含むウイルスの再活性化を促進する。EBVビリオンが溶解性感染成分を介してそれまでに感染していなかったB細胞に広がると、潜伏感染B細胞プールの拡大を促進し、それが再び両方の免疫性の病状を促進し、EBV関連リンパ増殖性疾患の進展(例えば、良性の多クローン性リンパ増殖性疾患から悪性のリンパ増殖性疾患へ)を促進しうる。
【0027】
本開示は、したがって、部分的には、EBV関連疾患又は状態の治療のための薬理学的介入のための新規標的の同定に関する。具体的には、本開示の方法は、B細胞の潜伏EBV感染の予防、ひいては不完全に制御された又は制御されないEBV感染に関連する疾患の治療に関わる。特に、本開示は、溶解性成分を伴う不完全に制御された又は制御されないEBV感染に関連する疾患(すなわち、少なくとも部分的に、EBVが潜伏感染を確立する非感染B細胞へのEBVビリオンの広がりにより支えられている疾患)を治療又は予防するための、IDO1を標的とする治療手法を提供する。発明者らは、in vivoでのIDO1の阻害が、どのようにEBVウイルス血症を抑制し、CD8+T細胞の過剰増殖を防ぎ、B細胞リンパ腫の発症を減らすのかを示した。IDO1阻害が、EBV感染又はウイルス量に効果を示すことは、これまでに述べられていない。
【0028】
本明細書に記載の組成物及び方法は、いくつかの変形において、EBV感染B細胞におけるキヌレニン経路活性化及びIDO1発現が、固形臓器移植レシピエントにおけるEBV関連リンパ腫の発症に先行するという知見に更に関する。
【0029】
EBV陽性B細胞におけるIDO1発現、若しくはNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ若しくは複数の分子指標、又はそれらの組合せを検出することは、したがって、対象における本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態、特にEBV関連リンパ増殖性疾患を発症するリスクを予測するためのマーカー(1つ又は複数)として使用することができる。発明者らは、どのようにしてこれらのマーカーを、例えば対象におけるEBV量を決定することによる、対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための確立された方法と組み合わせて使用して、特に、そのような方法の感度及び/又は特異度を向上させる、対象における本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するため方法の精度を向上することができるかも示している。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、組成物、方法、及び材料の好ましい実施形態を本明細書に記載する。
【0030】
すべての刊行物、特許及び特許出願は、その中のあらゆる図面及び付録を含めて、個々の刊行物、特許若しくは特許出願、図面、又は付録のそれぞれが、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれることが具体的に且つ個別に示された場合と同じ程度に、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0031】
本明細書における、任意の先行刊行物(又はそれに由来する情報)、又は任意の既知の事項への言及は、その先行刊行物(又はそれに由来する情報)又は既知事項が、本明細書が関する技術分野(field of endeavour)における共通の一般知識の一部を形成していることの認容、又は承認、又は示唆のいかなる形態でもなく、そのようにとらえられるべきではない。
【0032】
IDO1阻害剤
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)は、ヒトにおけるトリプトファン分解の主要経路であるキヌレニン経路(KP)の第1段階で律速段階を触媒する細胞内酵素である(図1を参照のこと)。これは、局所トリプトファン(L-TRYP)濃度を枯渇させ、L-キヌレニン(L-KYNU)を含む下流代謝産物の濃度を増大させる。IDO1に加えて、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ2(IDO2)又はトリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)もこの反応を触媒する。TDOは、主に肝臓に発現しているが、IDO1は、いくつかの種類の免疫細胞を含む様々なヒト組織に発現している。
【0033】
IDO1は、腫瘍微小環境(TME)におけるがん細胞及び抗原提示樹状細胞により過剰発現される。TMEにおけるIDO1活性の増強は、局所L-トリプトファンを枯渇させL-キヌレニンを産生し、これがT細胞アネルギーを誘導し、免疫系による腫瘍制御を抑制する。IDO1は、がん細胞による免疫監視の回避に重要な役割を果たしていると文献に記載されている。そのため、IDO1シグナル伝達経路は、がん免疫療法の開発の標的となっている。
【0034】
IDO1阻害剤は現在、がん治療の臨床研究で研究されている。そのような研究から得られた最も見込みのあるデータは、IDO1阻害剤と、T細胞においてプログラム死1(PD-1)経路を阻害するペムブロリズマブ及びニボルマブ等の免疫チェックポイント阻害剤との組合せに関する。
【0035】
対照的に、本開示は、部分的に、B細胞におけるEBV誘導性IDO1発現を、初期感染過程におけるウイルス駆動性代謝適応として同定したことに関する。具体的には、新たに感染したB細胞におけるNAD+デノボ生合成を促進する、EBVが誘導する一過性のIDO1活性は、潜伏EBV感染を確立するための代謝的要件である。
【0036】
IDO1活性の薬理学的阻害は、例えば本明細書に記載のIDO1阻害剤を用いて、EBV駆動性B細胞形質転換を効率的に抑制することができる。EBV感染又はウイルス量に対するIDO1阻害の効果は、これまで報告されていない。発明者らは、IDO1活性の薬理学的阻害が、in vivo、特に血液中のEBV量をどのように減少させるかを示した。IDO1活性の薬理学的阻害は、急性又は不完全に制御されたEBV感染に関連する免疫調節異常の特徴である、in vivoでのCD8+T細胞の増殖を、特に末梢血において低減する又は防ぐことも示されている。発明者らは、IDO1活性の薬理学的阻害が、in vivoで腫瘍負荷、具体的にはEBV+腫瘍負荷をどのように減らすかも示している。
【0037】
IDO1阻害剤は、当技術分野で公知である(参照により本明細書に組み込まれる、Cheong, J, E.ら(2018) Expert Opinion on Therapeutic Patents、2018、28:4、317~330頁を参照のこと)。
【0038】
本明細書に開示のIDO1阻害剤の例は、以下の文書に開示のIDO1阻害剤を含み、これらすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
小分子阻害剤
WO2010005958、WO2015070007、WO2017079669、WO2017152857、WO2017129139、WO2017106062、WO2017002078、US20160333009、WO2017024996、WO2016027241、WO2018140831、WO2017181849、WO2016073770、WO2016073738、WO2016073774、WO2016071283、WO2016026772、WO2014081689、WO2015173764、WO2016181348、WO2016181349、WO2015082499、WO2015150097、WO2016071293、WO2017133258、WO2017007700、WO2016161960、WO2017034420、WO2016024233、WO2012142237、WO2014159248、WO2016051181、WO2016169421、WO2016165613、WO2016037026、WO2016059412、WO2017140274、WO2017075341、WO2017149469、WO2017134555、WO2013069765、US2013065905、US20150352106、WO2017010106、WO2015002918、WO2015006520、WO2015031295、WO2015006520、WO2014150646、WO2014150677、WO2016210414、WO2016161269、WO2016161279、WO2016161286、WO2017051353、WO2017051354、WO2017139414、WO2014186035、WO2016201354、WO2018140831
ワクチン
WO2017149150
shRNA
Phan, T.ら(2020) Cancer Gene Ther 27:3~4、235~245頁。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30824815/
【0040】
A)小分子IDO1阻害剤
現在、臨床開発中の小分子IDO1阻害剤がいくつかある。本明細書に開示のIDO1阻害剤は、以下又はその薬学的に許容される塩のいずれか1つから選択されうる。
【0041】
(1)臨床候補エパカドスタット等のヒドロキシアミジン
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、ヒドロキシアミジン部分を含むIDO1阻害剤でありうる。
【0042】
エパカドスタットは代表例であり、WO2010005958、WO2015070007及びWO2017079669、US2018353483に記載されている。エパカドスタットが関与する臨床試験は、NCT03361865、NCT03374488、NCT03182894、NCT03322540、NCT03291054、NCT03361228、NCT02364076、NCT03217669、NCT03322566、NCT03832673、NCT04231864、NCT03516708、NCT03325465、NCT03432676、NCT03196232、NCT02298153、NCT03358472、NCT03463161、NCT03328026、NCT03491579、NCT01685255、NCT01961115、NCT03342352、NCT03310567、NCT03402880、NCT03006302、NCT02752074、NCT03444649、NCT03238638、NCT03592407、NCT03348904、NCT03823131、NCT03085914、NCT02042430、NCT03414229、NCT03602586、NCT03347123、NCT02318277、NCT03532295、NCT01604889、NCT01982487、NCT02862457、NCT02327078、NCT03322384、NCT02575807、NCT01822691、NCT02959437、NCT03493945、NCT02118285、NCT02166905、NCT02178722、NCT01195311、NCT03277352、NCT02785250、NCT02559492、NCT03589651、NCT03471286、NCT04463771、NCT04586244、及びNCT03707457を含む。
【0043】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、
式Iの化合物:
【0044】
【化1】
【0045】
又はその薬学的に許容される塩(式中、R1は、NH2又はCH3であり、R2は、Cl、Br、CF3、CH3、又はCNであり、R3はH又はFであり、nは、1又は2である)でありうる。
【0046】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2017152857、WO2017129139、WO2017106062、及びWO2017002078に開示のエパカドスタット誘導体でありうる。
【0047】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、US20160333009(Gilead社)に開示のIDO1阻害剤でありうる。
【0048】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2017024996(Hengrui Medicine社)に開示のIDO1阻害剤、好ましくは、例えばNCT03208959に開示のHTI-1090でありうる。
【0049】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2016027241、WO2018140831に開示のIDO1阻害剤、好適にはRG-70099(Curadev社/Roche社)でありうる。
【0050】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、
【0051】
【化2】
【0052】
又はそれらの薬学的に許容される塩のいずれか1つから選択されうる。
【0053】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、エパカドスタット(上記の構造18)、HTI-1090、RG-70099、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択されうる。
【0054】
好ましい態様では、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、エパカドスタット若しくはその誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩である。
【0055】
(2) BMS-986205及びその他
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、1-(4-アリールシクロヘキサ-1-イル)プロペンアミドでありうる。
【0056】
BMS-986205(リンロドスタット(Linrodostat)は代表的な例であり、WO2017181849、WO2016073770、WO2016073738、及びWO2016073774に記載されている。BMS-986205が関与する臨床試験は、NCT03936374、NCT03378310、NCT03312426、NCT03374228、NCT04106414、NCT03695250、NCT03329846、NCT03362411、NCT03792750、NCT03247283、NCT03661320、NCT03346837、NCT03192943、NCT02658890、NCT03386838、NCT03417037、NCT03519256、NCT04007588、NCT03854032、NCT04047706、NCT03459222、NCT02996110、NCT02750514、NCT02935634、及びNCT03335540を含む。
【0057】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、式:
【0058】
【化3】
【0059】
の化合物又はその薬学的に許容される塩でありうる。
【0060】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2016071283及びWO2016026772(IOMet社)に開示のIDO1阻害剤でありうる。
【0061】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2014081689(Vertex社)に開示のIDO1阻害剤でありうる。
【0062】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、
【0063】
【化4】
【0064】
又はそれらの薬学的に許容される塩のいずれか1つから選択されうる。
【0065】
好ましい実施形態では、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、BMS-986205(上記の構造69)若しくはその誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩である。
【0066】
(3)臨床候補インドキシモド及びPF-06840003等のインドール類及び[5,6]複素環アレーン
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、インドール及び[5,6]-縮合複素環式芳香族化合物でありうる。インドキシモド(1-メチル-D-トリプトファン、下記の構造1)は、代表的な例であり、NewLink Genetics社により開発された。インドキシモドは、がんの治療として臨床開発が進んでいる。しかし、インドキシモドはIDO1阻害剤ではなく、IDO1酵素活性を阻害しないことも認められている。インドキシモドが関与する臨床試験は、NCT01560923、NCT02835729、NCT02502708、NCT02077881、NCT03301636、NCT00739609、NCT02073123、NCT02460367、NCT01042535、NCT01792050、NCT03372239、NCT03852446、NCT00567931、NCT04049669、NCT02052648、NCT01191216、NCT01302821、NCT04755608、NCT03165318、NCT04379674、及びNCT02913430を含む。
【0067】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2015173764に開示のインドール-3-イル-ピロリジン-2,5-ジオン、又はWO2016181348及びWO2016181349に開示の臨床候補PF-06840003(EOS-200271、下記の構造2)でありうる。PF-06840003が関与する臨床試験は、NCT02764151を含む。
【0068】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2015082499(IOMet社)に開示の4-(インドール-3-イル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジンでありうる。
【0069】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2015150097に開示のインドール-2-カルボキサミドでありうる。
【0070】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2016071293、WO2017133258に開示のインダゾール類、WO2017007700及びWO2016161960に開示のイミダゾ[1,5-a]ピリジンを含みうる。
【0071】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2016024233及びWO2017034420に開示の[1,2]-オキサキソロ[5,4-b]ピリジン([1,2]-Oxaxolo[5,4-b]pyridine)でありうる。
【0072】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、
【0073】
【化5】
【0074】
又はそれらの薬学的に許容される塩のいずれか1つから選択されうる。
【0075】
(4)臨床候補ナボキシモド(navoximod)等の4-フェニルイミダゾール類(4-PI)
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、4-フェニルイミダゾール(4-PI)でありうる。臨床候補ナボキシモド(下記の構造29)は、WO2012142237(Newlink社)に開示されている代表的な例である。ナボキシモドが関与する臨床試験は、NCT02471846及びNCT02048709を含む。
【0076】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2014159248及びWO2016051181に開示の異性体イミダゾールインドール(imidazoleindole)でありうる。
【0077】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2016169421(Hengrui Medicine社)に開示のN-[(4-ピラゾール-4-イル)フェニル]ピペリジン置換イミダゾールイソインドール(imidazoleisoindole)誘導体でありうる。
【0078】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2016165613(Innogate Pharma社)に開示の架橋二/三環式基で置換されたイミダゾールイソインドールでありうる。
【0079】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2016037026(Merck社)に開示のナボキシモドの誘導体でありうる。
【0080】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2016059412(Redx Pharma社)に開示のIDO1阻害剤でありうる。
【0081】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2017140274に開示のIDO1阻害剤でありうる。
【0082】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2017075341(Scifluor Life Sciences社)、WO2017149469、及びWO2017134555に開示のIDO1阻害剤でありうる。
【0083】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、
【0084】
【化6】
【0085】
又はそれらの薬学的に許容される塩のいずれか1つから選択されうる。
【0086】
(5)臨床候補KHK2455を含む、1,2-ジアミノ置換及び1-ヒドロキシ-2-アミノ置換アレーン
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、以下の臨床試験:NCT04321694、NCT03915405、及びNCT02867007に開示の臨床候補KHK2455(協和発酵キリン社)等の2-アルコキシ-3-アミノキノキサリン(2-alkyoxy-3-aminoquinoxaline)の誘導体でありうる。
【0087】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、オルトアリールメトキシ及びスルホンアミドで置換されたキノキサリン、又はWO2013069765、US2013065905、US20150352106及びWO2017010106に開示のIDO1阻害剤のいずれかでありうる。
【0088】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2015002918に開示の1-アルコキシ-2-ウレイド-ビフェニル、WO2015006520、WO2015031295、及びWO2015006520に開示のアリール-1,2-ジアミン、WO2014150646、WO2014150677、及びWO2016210414に開示のウレイドモノアリール-1,2-ジアミン、並びにWO2016161269、WO2016161279、及びWO2016161286(BMS社)に開示のモノアリール-1,2-ジアミンでありうる。
【0089】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2017051353及びWO2017051354(GSK社)に開示のIDO1阻害剤でありうる。
【0090】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2017139414(InventisBio社)に開示のアリール-1,2-ジアミンでありうる。
【0091】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、WO2014186035(Curadev社)に開示のオルト-ジアミノ置換フロ[2,3-c]ピリジン又はチエノ[2,3-c]ピリジンでありうる。
【0092】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、
【0093】
【化7】
【0094】
又はそれらの薬学的に許容される塩のいずれか1つから選択されうる。
【0095】
(6)その他
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、臨床試験NCT03844438に開示のLY-01013(Luye Pharma Group社)、臨床試験NCT03364049に開示のMK-7162(Merck & Co社)、WO2016201354に開示のGBV-1028、TPST-8844(Tempest Therapeutics Inc社)、BGB-5777(BeiGene社)、IOM2983(Merck/IOMet社)、RG-70099(Curadev/Roche社)、及びHTI-1090(SHR9146)(Jiangsu HengRui Medicine Co., Ltd.社)から選択されうる。
【0096】
「小分子」という用語は、例えば、合成、リコンビナント、又は天然に存在する化合物等の、合成、半合成、又は天然に存在する無機若しくは有機分子を含む数多くの生物学的及び化学的分類を包含する。「小分子」は、分子量が約5kD未満、約4kD未満、約3kD未満、約2kD未満、約1kD未満、又は約0.5kD未満の物質も指す。小分子は、多数の潜在的治療化合物を含むコンビナトリアル小有機分子ライブラリーから得ることができる。このような「コンビナトリアル化学ライブラリー」又は「リガンドライブラリー」は、IDO1活性を阻害する所望の特徴的な活性を示す特定の化学種又はサブクラスのこれらのライブラリーメンバーを同定するために、個別にスクリーニングする、又はプールでスクリーニングすることができる。
【0097】
本発明は、本明細書に記載のIDO1阻害剤の塩を含む。本明細書で使用される場合、「塩」は、既存の酸又は塩基部分をその塩形態に変換することにより親化合物が修飾された、開示化合物の誘導体を指す。塩の例は、アミン等の塩基性残基の鉱酸(例えばHCl、HBr、H2SO4)又は有機酸(例えば酢酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸)塩、カルボン酸等の酸性残基のアルカリ(例えばLi、Na、K、Mg、Ca)又は有機(例えばトリアルキルアンモニウム)塩等を含むが、これらに限定されない。本発明の塩は、従来の化学的方法により、塩基性又は酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離の酸又は塩基の形態を、水中若しくは有機溶媒中、又はその2つの混合物中で、化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル(ACN)等の非水性媒体が好ましい。
【0098】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、上述の「塩」のサブセットを含み、それは、例えば、無毒の無機又は有機酸から形成される親化合物の従来の無毒性塩である。好適な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985、1418頁及びJournal of Pharmaceutical Science、66、2 (1977)に見いだされ、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適であり、妥当な利益/リスク比に見合ったこれらの化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書で使用される用語である。
【0099】
本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤は、当業者により理解される定義に従ったIDO1阻害剤でありうる。好ましい態様では、IDO1阻害剤は、当技術分野で公知のアッセイによりIDO1酵素活性を阻害する、本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤等の分子でありうる。好ましい態様では、IDO1阻害剤は、IDO1に結合して当技術分野で公知のアッセイによりIDO1酵素活性を阻害する、本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤等の分子でありうる。IDO1阻害剤は、以下のIDO1結合特性:
(i)可逆的であり競合的な阻害剤、
(ii)不可逆的阻害剤
のいずれか1つ又は複数を有する、本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤等の分子、好ましくはIDO1酵素活性を阻害する本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤でありうる。
【0100】
好ましくは、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、エパカドスタット等のIDO1の可逆的であり競合的な阻害剤である。
【0101】
好ましくは、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、BMS-986205等のIDO1の不可逆的阻害剤である。
【0102】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、約1μM以下、好ましくは約100nM以下、好ましくは約10nM以下、好ましくは約1nM以下のIC50でIDO1酵素活性を阻害することができる。
【0103】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、細胞ベースのアッセイにおいて、約100μM以下、好ましくは約10μM以下、好ましくは約1μM以下、好ましくは約100nM以下、好ましくは約10nM以下、好ましくは約1nM以下のIC50でIDO1活性を阻害することができる。
【0104】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、TDOに対して、IDOと結合するのに少なくとも10倍の選択性、好ましくはTDOに対して、IDOと結合するのに少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、又は100倍、好ましくは少なくとも100倍の選択性を示すことができる。
【0105】
IDO1阻害剤は、IDO1酵素活性を阻害し、
a)本明細書に記載のアッセイにより、B細胞、好ましくはEBV感染B細胞におけるL-TRYPからL-KYNUへの変換を阻害する、
b)本明細書に記載のアッセイにより、B細胞、好ましくはEBV感染B細胞におけるNADデノボ生合成につながるKP活性化を阻害する、
c)本明細書に記載のアッセイにより、B細胞増殖、好ましくはEBV誘導性B細胞増殖を阻害する、
d)本明細書に記載のアッセイにより、B細胞形質転換、好ましくはEBV誘導性B細胞形質転換を阻害する、又は
e)、上記のa)~d)のいずれか1つ又は複数、好ましくは、上記のa)、b)、c)、及びd)である、本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤等の分子、好ましくは本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤でありうる。
【0106】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、B細胞におけるL-TRYPからL-KYNUへの変換を阻害することができる。好ましくは、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、EBV感染B細胞、好ましくは初期のEBV感染B細胞におけるL-TRYPからL-KYNUへの変換を阻害することができる。L-TRYP及びL-KYNUレベルは、当技術分野で公知及び本明細書にも記載の方法、例えば質量分析法(例えばLCMS/MS)により分析することができる。或いは、L-TRYP及びL-KYNUレベルは、ELISA又は任意の他の好適なアッセイを使用して検出され得る。本明細書に開示のIDO1阻害剤は、B細胞、好ましくは初期のEBV感染B細胞におけるL-TRYPからL-KYNUへの変換を阻害することができる本明細書に開示のIDO1阻害剤のいずれか1つでありうる。
【0107】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、B細胞におけるNADデノボ生合成につながるKP活性化を阻害することができる。本明細書に開示のIDO1阻害剤は、EBV感染B細胞、好ましくは初期のEBV感染B細胞におけるNADデノボ生合成につながるKP活性化を阻害することができる。B細胞におけるNADデノボ生合成につながるKP活性化は、当技術分野で公知及び本明細書に記載の方法、例えば、i)好ましくは対象のB細胞における、本明細書に開示のキヌレニン経路活性化に関与する1つ若しくは複数のタンパク質又はタンパク質をコードする遺伝子転写物の発現又は上方調節、ii)好ましくは対象のB細胞における、本明細書に開示の1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度、iii)本明細書に開示の1つ又は複数のKP代謝産物比、並びにiv)好ましくは対象のB細胞における、L-TRYP由来炭素原子のL-KYNU、QUIN、及び/又はNADへの取込みの指標から選択される、本明細書に記載のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標を検出することにより分析することができる。
【0108】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、B細胞増殖を阻害することができる。好ましくは、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、EBV誘導性B細胞増殖を阻害することができる。B細胞の増殖は、例えば市販のCell trace増殖キット(例えば、CFSE増殖キット)を使用して、当技術分野で公知の方法により分析することができる。或いは、増殖は、市販の細胞増殖キット(例えば、BrdU取込みアッセイ)又は任意の他の好適なアッセイを使用して決定することができる。好適には、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、本明細書に記載のアッセイにおいて、約100μM以下、約50μM以下、約20μM以下、約15μM以下、約10μM以下、約5μM以下、約1μM以下、又は約100nM以下、好ましくは約10μM以下のIC50でB細胞増殖を阻害することができる。本明細書に開示のIDO1阻害剤は、B細胞増殖、好ましくはEBV誘導性B細胞増殖を阻害することができる、本明細書に開示のIDO1阻害剤のいずれか1つでありうる。
【0109】
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、B細胞形質転換を阻害することができる。好ましくは、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、EBV誘導性B細胞形質転換を阻害することができる。形質転換は、当技術分野で公知の方法、例えば、形質転換効率アッセイを使用して分析することができる。このアッセイでは、B細胞を細胞培養プレートに播種し、ウイルス濃度を上げて感染させる。IDO1阻害剤を感染直後に加えることができる。5週間のインキュベーション期間の後、LCL増殖が陽性のウェル数を数える。或いは、任意の他の好適なアッセイを使用することができる。好適には、本明細書に開示のIDO1阻害剤は、本明細書に記載のアッセイにおいて、約200μM以下、約150μM以下、約100μM以下、約50μM以下、約20μM以下、約15μM以下、約10μM以下、約5μM以下、又は約1μM以下、好ましくは約100μM以下又は約10μM以下の濃度でB細胞形質転換を阻害することができる。本明細書に開示のIDO1阻害剤は、B細胞形質転換、好ましくはEBV誘導性B細胞形質転換を阻害することができる、本明細書に開示のIDO1阻害剤のいずれか1つでありうる。
【0110】
一態様では、本明細書に開示のIDO1阻害剤、好ましくはIDO1酵素活性を阻害する本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤は、B細胞、好ましくは本明細書に記載の初期のEBV感染B細胞におけるL-TRYPからL-KYNUへの変換を阻害することができ、B細胞増殖、好ましくは本明細書に記載のEBV誘導性B細胞増殖を阻害することができる。
【0111】
一態様では、本明細書に開示のIDO1阻害剤、好ましくはIDO1酵素活性を阻害する本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤は、B細胞、好ましくは本明細書に記載の初期のEBV感染B細胞におけるL-TRYPからLKYNUへの変換を阻害することができ、B細胞形質転換、好ましくは本明細書に記載のEBV誘導性B細胞形質転換を阻害することができる。
【0112】
一態様では、本明細書に開示のIDO1阻害剤、好ましくはIDO1酵素活性を阻害する本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤は、B細胞増殖、好ましくは本明細書に記載のEBV誘導性B細胞増殖を阻害することができ、B細胞形質転換、好ましくは本明細書に記載のEBV誘導性B細胞形質転換を阻害することができる。
【0113】
一態様では、本明細書に開示のIDO1阻害剤、好ましくはIDO1酵素活性を阻害する本明細書に開示の小分子IDO1阻害剤は、B細胞、好ましくは本明細書に記載の初期のEBV感染B細胞におけるL-TRYPからL-KYNUへの変換を阻害することができ、B細胞増殖、好ましくは本明細書に記載のEBV誘導性B細胞増殖を阻害することができ、B細胞形質転換、好ましくは本明細書に記載のEBV誘導性B細胞形質転換を阻害することができる。
【0114】
B)ワクチン
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、ワクチンでありうる。代表的な例は、WO2017149150に開示のIO102(IO-Biotech社)である。アジュバント及びIDO1の免疫原性断片、例えば、IDO1の配列の最大25個の連続したアミノ酸からなる免疫原性断片を含む免疫療法組成物。
【0115】
C)shRNA又はsiRNA
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、核酸分子、例えばIDO1を標的とするshRNA又はsiRNAでありうる。代表的な例は、Phan, T.ら(2020) Cancer Gene Ther 27:3~4、235~245頁(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30824815/)に開示のshIDO-ST(Tara Immuno-Oncology社; City of Hope)又はUS2017081671に開示のshRNAでありうる。
【0116】
siRNAは、Hs_INDO_11(SI03115567)、Hs_INDO_10(SI03093503)、Hs_INDO_9(SI03026254)、及びHs_INDO_6(SI02627954)(Qiagen社)を含む。
【0117】
組成物
本明細書に開示のIDO1阻害剤は、組成物、例えば本明細書に記載のIDO1阻害剤及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として提供することができる。治療用組成物又は医薬組成物は、担体(carrier)、ビヒクル(vehicle)、賦形剤、担体(carriers)、又はビヒクル(vehicles)等の他の成分を含んでもよい。
【0118】
本明細書に記載の組成物は、医薬組成物を含むが、これに限定されない。「医薬組成物」は、化合物又は薬物の哺乳動物、例えばヒトへの送達のために当技術分野で一般に許容される1つ又は複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤との組成物の製剤を指す。特定の実施形態では、医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤で製剤化されたIDO1阻害剤を含みうる。所望により、組成物は、所望の治療効果が達成される限り、例えば、核酸、タンパク質、小分子、又は薬学的に活性な薬剤、補助療法等の他の薬剤とも組み合わせて投与されうることも理解されよう。
【0119】
特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の治療有効量のIDO1阻害剤若しくはその誘導体を有する薬学的に許容される製剤、又は1つ若しくは複数の薬学的に許容される担体(添加剤)、他の活性剤、及び/若しくは希釈剤で製剤化されたIDO1阻害剤のプロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物、若しくは互変異性体を含むことができる。
【0120】
「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適であり、妥当な利益/リスク比に見合ったそれらの化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤」は、ヒト又は家畜に使用することが許容されるとして医薬品承認機関、例えば米国食品医薬品局により承認されているあらゆるアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、又は乳化剤を制限なく含む。例示的な薬学的に許容される担体は、糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース;トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;及び医薬製剤で用いられる任意の他の適合性物質を含むが、これらに限定されない。
【0121】
組成物を製剤化する方法は、当業者には公知であり、以下に記載されている: Physicians Desk Reference、第62版、Oradell、NJ: Medical Economics Co.、2008; Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、第11版、McGraw-Hill、2005; Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Baltimore、MD: Lippincott Williams & Wilkins、2000;及びThe Merck Index、第14版、Whitehouse Station、NJ: Merck Research Laboratories、2006;これらのそれぞれは、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
組合せ
本明細書に記載のIDO1阻害剤は、1つ又は複数の追加の治療剤又はモダリティと組み合わせて投与することができる。
【0123】
本明細書に記載の組成物は、有効量のIDO1阻害剤を単独で、又は1つ若しくは複数の他の治療剤若しくはモダリティと組み合わせて含むことができる。組成物は、単独で又は本明細書に開示の疾患に対する他の既知の治療と組み合わせて投与されうる。例示的な治療剤又はモダリティは、免疫抑制剤、例えばカルシニューリン阻害剤(例えばタクロリムス及びシクロスポリン);mTOR阻害剤(例えばシロリムス);プリン拮抗薬、IL2R拮抗薬、副腎皮質ステロイド(例えばメチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン)、抗増殖剤(例えばミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム、アザチオプリン、シクロホスファミド);
抗炎症剤及び鎮痛剤、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、イブプロフェン、ナプロキセン、及びアセトアミノフェン;PTLDに対する治療剤、例えばリツキシマブ;CHOP化学療法(ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);リツキシマブ及びCHOP化学療法(R-CHOP);細胞シグナル遮断薬、例えばイブルチニブ、イデラリシブ;プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ;放射免疫療法、例えば90Y-イブリツモマブチウキセタン;チェックポイント阻害剤、例えばペムブロリズマブ及びニボルマブ;及び抗体-薬物コンジュゲート、例えばブレンツキシマブベドチン;抗ウイルス剤、例えばガンシクロビル、バルガンシクロビル、アシクロビル;
がん治療法、例えば放射線療法、化学療法、移植、免疫抑制剤療法、免疫療法、ホルモン療法、光線力学的療法;免疫不全療法及び自己免疫療法を含む。
【0124】
治療
本発明は、本明細書に記載の疾患又は状態を治療する方法における使用のための、本明細書に記載のIDO1阻害剤又はそれを含む組成物を提供する。
【0125】
本発明は、本明細書に記載の治療有効量若しくは予防有効量のIDO1阻害剤又は本明細書に記載のIDO1阻害剤を含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、本明細書に記載の疾患又は状態を治療する方法も提供する。本開示は、本明細書に記載の疾患又は状態を治療するための医薬の製造における本明細書に記載のIDO1阻害剤の使用も提供する。
【0126】
本明細書に記載のいずれのIDO1阻害剤又は組成物も、本明細書に記載のいずれの方法においても使用することができる。
【0127】
「治療すること」「治療」等の用語は、一般に、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味するために本明細書で使用される。その効果は、疾患若しくは状態を完全に若しくは部分的に予防するという点では予防的であり、並びに/又は疾患若しくは状態及び/若しくは疾患に起因しうる副作用の部分的な治癒若しくは完全な治癒という点では治療的でありうる。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物における疾患又は状態のあらゆる治療を網羅し、疾患、障害、若しくは状態を改善すること(すなわち、疾患、障害、若しくは状態又はそれらの臨床症状の少なくとも1つの発症を遅延させる又は停止させる又は低減すること);患者が識別できない可能性のあるものを含む少なくとも1つの身体的パラメーターを緩和若しくは改善すること;疾患、障害、又は状態を、身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメーターの安定化)、又はその両方で調節すること;或いは疾患、障害、若しくは状態、又はそれらの臨床症状の1つ若しくは複数の発病若しくは発症若しくは進行を予防する若しくは遅延させることを含む。
【0128】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの症状を改善する」という語句は、対象が治療を受けている疾患又は状態の1つ又は複数の症状を減少することを指す。治療を受ける疾患又は状態は、本明細書に開示の疾患又は状態のいずれか、好ましくは移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、伝染性単核球症(IM)若しくは腺熱、慢性活動性EBV(CAEBV)、血球貪食症候群(HPS)、血球貪食性リンパ組織球症、免疫性溶血性貧血、EBV関連がん、免疫不全対象におけるEBV関連疾患若しくは状態、又はEBV関連自己免疫疾患から選択されうる。一態様では、疾患はPTLDであり、改善される1つ又は複数の症状は、リンパ節症、発熱、疲労、体重減少、寝汗、及び全身倦怠感を含むが、これらに限定されない。一態様では、疾患はIMであり、改善される1つ又は複数の症状は、首及び腋窩におけるリンパ節症、疲労、発熱、脾臓の軟化及び膨れ、頭痛、扁桃腺の腫れ、並びに皮膚発疹を含むが、これらに限定されない。
【0129】
本明細書で使用される場合、「予防する」及び類似の語、例えば「予防された」「予防すること」等は、疾患又は状態の発生又は再発の可能性を予防する、阻害する、又は低減するための手法を示す。これは、疾患若しくは状態の発病若しくは再発を遅延する、又は疾患若しくは状態の症状の発生若しくは再発を遅延することも指す。本明細書で使用される場合、「予防」及び類似の語は、疾患又は状態の発病又は再発の前に、疾患又は状態の強度、影響、症状、及び/又は負荷を低減することも含む。
【0130】
IDO1阻害剤の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重等の因子、並びに個体において所望の応答を誘発するための薬剤によって異なりうる。治療有効量は、薬剤の治療上有益な効果が薬剤のいかなる毒性又は有害な効果をも上回る量でもある。「治療有効量」という用語は、対象(例えば、患者)を「治療」するのに有効な量を含む。
【0131】
「予防有効量」は、所望の予防的結果を達成するのに有効なIDO1阻害剤の量を指す。予防的用量は、疾患の前又は初期段階の対象に使用されうるため、予防有効量は治療有効量よりも少なくすることができる。
【0132】
本明細書に記載の対象を治療する方法は、本明細書に記載の治療有効量若しくは予防有効量のIDO1阻害剤又は本明細書に記載のIDO1阻害剤を含む組成物をそれを必要とする対象に投与する工程を含みうる。本明細書に記載される組成物は、1つ又は複数の固体、半固体、ゲル、若しくは液体、又はそれらの組合せとして投与されうる。例えば、IDO1阻害剤は、静脈内投与のために液体剤形に、或いは経口投与のために単一の錠剤若しくはカプセル剤として、又は1つ若しくは複数の錠剤、カプセル剤、又は他の剤形の組合せとして、個々に製剤化されてもよい。具体的な量/投与レジメンは、個体の体重、性別、年齢、及び健康;製剤、IDO1阻害剤の生化学的性質、生物活性、生物学的利用能、及び副作用、並びに完全な治療レジメンにおける薬剤の数及び同一性によって異なる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「投与すること」、「投与する」又は「投与」という用語は、1つ又は複数の化合物又は組成物を対象に非経口的に、経腸的に、又は局所的に送達することを指す。非経口投与の説明的な例は、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内注射及び注入を含むが、これらに限定されない。経腸投与の説明的な例は、経口、吸入、経鼻、舌下、及び直腸投与を含むが、これらに限定されない。局所投与の説明的な例は、経皮及び膣内投与を含むが、これらに限定されない。
【0134】
投与は、本明細書に記載のIDO1阻害剤若しくは組成物及び1つ若しくは複数の追加の治療剤を含む組成物若しくは製剤の投与、又はIDO1阻害剤若しくは組成物及び1つ若しくは複数の追加の治療剤の別個の製剤の本質的に同時、連続、又は別個の投与を含みうる。
【0135】
EBV関連疾患及び状態
数多くの疾患及び状態が、EBV感染に関連している。
【0136】
一態様では、本明細書に記載の疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるEBV関連疾患又は状態を治療する工程を含みうる。一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、対象におけるEBV関連疾患又は状態を治療する方法における使用のためのものである。好ましくは、疾患又は状態は、EBV感染に関連している。一態様では、本明細書に記載の疾患又は状態を治療する方法は、根本的なEBV感染を治療する工程を含む。
【0137】
本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、以下のいずれか1つ又は複数に関連している疾患又は状態を含みうる:
a)対象における不完全に制御された又は制御されないEBV感染、
b)対象における溶解性EBV成分を伴う潜伏EBV感染、
c)対象におけるEBVに潜伏感染されたB細胞リンパ球の制御されない増殖、
d)末梢血CD8+T細胞の増殖。
【0138】
好適には、EBV関連疾患は、EBV関連リンパ増殖性疾患、好ましくはEBV関連リンパ腫、好ましくはPTLDである。
【0139】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、対象における末梢全血又は血漿EBV DNA量を測定することにより、EBV関連疾患又は状態として疾患又は状態を同定することができる。EBV DNA量は、当技術分野で公知の技法を使用して測定することができる。例えば、in vitroでのEBV感染B細胞の自発的な増殖、EBVコード化小分子RNA(EBV-encoded small RNA)(EBER)プローブを使用したin situハイブリダイゼーション(ISH)、及び/又は定量的PCR(qPCR)アッセイ、例えばBALF5 qPCRを、試料中のEBV量を決定するために使用することができる。好ましくは、qPCRが試料中のEBV量を決定するために使用される(Clin Microbiol Rev. 2010 Apr; 23(2):350~366頁)。好ましい態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、血液中約5,000コピー/μg DNA以上の対象におけるEBV DNA量、及び/又は約1,000コピー/100μl血漿以上のEBV DNA量に関連する疾患又は状態を含む。好ましい態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、経時的に増加する対象におけるEBV DNA量に関連する疾患を含む。
【0140】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるEBVウイルス量を減少させる工程、好ましくは血液又は脾臓中のEBVウイルス量を減少させる工程、好ましくは血液中のEBVウイルス量を減少させる工程を含む。本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるEBVウイルス量の経時的な増加を抑制する工程を含みうる。
【0141】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるB細胞形質転換、好ましくはEBV誘導性B細胞形質転換を阻害又は抑制する工程を含む。B細胞形質転換は、当技術分野で公知の方法、及び本明細書に記載のアッセイにより、対象において測定することができる。一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、EBVによるB細胞の潜伏感染を阻害、抑制、又は予防する工程を含む。
【0142】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるB細胞増殖、好ましくはEBV誘導性B細胞増殖を阻害又は抑制する工程とを含む。B細胞増殖は、当技術分野で公知の方法、及び本明細書に記載のアッセイにより、対象において測定することができる。
【0143】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるCD8+T細胞の増殖を低減又は防ぐ工程、好ましくは末梢血CD8+T細胞の増殖を低減又は防ぐ工程を含む。
【0144】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、対象におけるEBV陽性(EBV+)細胞、好ましくはEBV+B細胞により特徴付けられる疾患又は状態である。EBV陽性細胞は、例えば対象から得られた試料中のEBV陽性B細胞を検出するために、EBVコード化小分子RNA(EBER)プローブ(EBER+B細胞)を使用したin situハイブリダイゼーション(ISH)等の、当技術分野で公知の技法を使用して、対象において検出及び測定することができる。好適には、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるEBV陽性細胞、好ましくはEBV+B細胞の数を減少させる工程を含む。
【0145】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、対象のEBV陽性細胞、好ましくはEBV+B細胞におけるIDO1発現(IDO1+)により特徴付けられる疾患又は状態である。EBV陽性細胞におけるIDO1発現は、例えば対象から得られた試料中のIDO1+EBV陽性B細胞を検出するために、本明細書に記載のフローサイトメトリーベースの蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ等の当技術分野で公知の技法を使用して、対象において検出及び測定することができる。好適には、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるIDO1+EBV陽性細胞の数を減少させる工程及び/又は対象におけるEBV陽性細胞、好ましくはEBV陽性B細胞におけるIDO1の発現を減少させる工程を含む。EBV陽性細胞におけるIDO1発現は、例えば対象から得られた試料中のIDO1+EBV陽性B細胞を検出するために、本明細書に記載のフローサイトメトリーベースの蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ等の当技術分野で公知の技法を使用して、対象において検出及び測定することができる。
【0146】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、本明細書に記載の対象における、好ましくは、対象のB細胞における、NADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標により特徴付けられる疾患又は状態である。分子指標は、
i)好ましくは対象のB細胞における、本明細書に開示のキヌレニン経路活性化に関与する1つ若しくは複数のタンパク質又はタンパク質をコードする遺伝子転写物の発現又は上方調節、
ii)好ましくは対象のB細胞における、本明細書に開示の1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度、
iii)本明細書に開示の1つ又は複数のKP代謝産物比、並びに
iv)好ましくは対象のB細胞における、L-TRYP由来炭素原子のL-KYNU、QUIN、及び/又はNADへの取込みの指標の1つ又は複数から選択されうる。
【0147】
IDO1活性がT細胞又はB細胞におけるNADデノボ生合成を促進することは、これまでに述べられていない。静止状態のB細胞では、キヌレニン経路活性化に関与する遺伝子はスイッチが入っておらず、キヌレニン経路活性化に関与するタンパク質は、発現していない。一態様では、NADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標は、本明細書に開示の対象、好ましくは対象由来のB細胞における、キヌレニン経路活性化に関与する1つ若しくは複数のタンパク質及び/又はキヌレニン経路活性化に関与するタンパク質をコードする1つ若しくは複数の遺伝子転写物の発現又は上方調節である。キヌレニン経路活性化に関与するタンパク質は、IDO1、キヌレニナーゼ(KYNU)、3-ヒドロキシアントラニル酸3,4-ジオキシゲナーゼ(HAAO)、及びキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT)、好ましくはIDO1、KYNU、HAAO、及びQPRT、好ましくはIDO1及びQPRT、好ましくはIDO1から選択されうる。KP活性化に関与するタンパク質の発現又は上方調節は、当技術分野で公知及び本明細書に記載の技法を使用して、例えばウエスタン又は免疫ブロット分析により分析することができる。KP活性化に関与するタンパク質をコードする遺伝子転写物の発現又は上方調節は、当技術分野で公知及び本明細書に記載の技法を使用して、例えばRNAシークエンシング又は定量的PCRにより分析することができる。KP活性化に関与する遺伝子及び/又はタンパク質の発現又は上方調節は、対象から得られた試料、例えば血液試料又は生検試料、好ましくは血液試料、好ましくは末梢血試料、好ましくは末梢血単核球(PBMC)試料において分析することができる。対象から得られた試料におけるKP活性化に関与する遺伝子及び/又はタンパク質の発現又は上方調節は、対照レベル、例えばタンパク質若しくは転写物の正常な生理的濃度、又は対照試料、例えば、本明細書に開示のEBV関連疾患若しくは状態を有していない又はEBV関連疾患若しくは状態のリスクがない対象からの試料中の濃度と比較することができる。
【0148】
一態様では、NADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標は、本明細書に開示の対象、好ましくは対象からのB細胞における1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度である。KP代謝産物は、L-TRYP(本明細書ではTRPとも称される)、L-KYNU、QUIN、及びNAD+から選択されうる。静止状態のB細胞では、L-KYNU及びQUINは検出不可能である。1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度は、当技術分野で公知及び本明細書に開示の技法、例えば液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)又はELISAアッセイを含むメタボローム解析を使用して分析することができる。1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度は、対象から得られた試料、例えば血液試料又は生検試料、好ましくは血液試料、好ましくは末梢血試料において分析することができる。試料は、血清試料又は末梢血単核球(PBMC)試料でありうる。対象から得られた試料中の1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度は、対照レベル、例えばKP代謝産物の正常な生理的濃度、又は対照試料、例えば本明細書に開示のEBV関連疾患若しくは状態を有していない又はEBV関連疾患若しくは状態のリスクがない対象からの試料、又はEBVが陰性のB細胞の試料若しくは静止状態のB細胞の試料中のKP代謝産物の濃度と比較することができる。KP代謝産物は、その濃度が対照レベル未満であるL-TRYP、その濃度が対照レベルを上回るL-KYN、その濃度が対照レベルを上回るQUIN、及び/又はその濃度が対照レベルを上回るNADでありうる。
【0149】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のL-TRYPの濃度は、約55μM以下、約50μM以下、約45μM以下、約40μM以下、約35μM以下、約30μM以下、好ましくは約40μM、又は約15μM~55μM、好ましくは約30μM~50μM、好ましくは約35μM~45μMである。一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくはB細胞試料中のL-TRYPの濃度は、静止状態のB細胞の試料中のL-TRYPの濃度未満である。
【0150】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、L-KYNUであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のL-KYNUの濃度は、約200nM以上、約250nM以上、約300nM以上、約350nM以上、約400nM以上、約450nM以上、約500nM以上、約550nM以上、若しくは約600nM以上、又は約200nM~700nM、好ましくは約250nM~650nM、若しくは約250nM~500nMである。一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、L-KYNUであり、対象からの試料、好ましくはB細胞試料中のL-KYNUの濃度は、静止状態のB細胞の試料中のL-KYNUの濃度より高い、0より高い、又は検出可能である。
【0151】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、QUINであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のQUINの濃度は、約250nM以上、約300nM以上、約350nM以上、約400nM以上、約450nM以上、約500nM以上、又は約200nM~500nM、好ましくは約250nM~500nM、約300nM~500nM、若しくは約400nM~500nMである。一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、QUINであり、対象からの試料、好ましくはB細胞試料中のQUINの濃度は、静止状態のB細胞の試料中のL-QUINの濃度より高い、0より高い、又は検出可能である。
【0152】
本明細書に開示の2つ以上のKP代謝産物の存在量又は濃度は、1つ又は複数のKP代謝産物濃度比を決定するために使用することができる。一態様では、NADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標は、本明細書に開示の対象、好ましくは対象からのB細胞における1つ又は複数のKP代謝産物比である。KP代謝産物比は、その比が対照レベルを上回るL-KYNU/L-TRYP、及び/又はその比が対照レベルを上回るQUIN/L-TRYPでありうる。
【0153】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物比は、L-KYNU/L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくはB細胞試料中のL-KYNU/L-TRYPの比は、0より大きい。一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物比は、L-KYNU/L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のL-KYNU/L-TRYPの比は、約3以上、4以上、又は5以上である。
【0154】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物比は、QUIN/L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくはB細胞試料中のQUIN/L-TRYPの比は、0より大きい、約1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、又は6以上、好ましくは約4以上である。一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物比は、QUIN/L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のQUIN/L-TRYPの比は、約15以上、約20以上、約25以上、約30以上、約35以上、又は約40以上である。
【0155】
上記のように、NADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化に関与する遺伝子は、静止状態のB細胞、特にEBVに感染していないB細胞ではスイッチが入っていない。一態様では、NADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標は、本明細書に開示の対象、好ましくは対象からのB細胞における、L-TRYP由来炭素原子のL-KYNU、QUIN、及び/又はNADへの取込みの指標であり、好ましくは対象からのB細胞においてL-TRYP由来炭素原子は、NAD+及び/又はNADHに取り込まれる。L-TRYP由来炭素原子のL-KYNU、QUIN、及び/又はNADへの取込みは、当技術分野で公知及び本明細書に記載の技法を使用して、例えば均一に標識したトリプトファン(U-13C11-トリプトファン)を使用した同位体トレーサー研究により分析することができる。L-TRYP由来炭素原子のL-KYNU、QUIN、及び/又はNADへの取込みは、対象から得られた試料、例えば血液試料又は生検試料、好ましくは血液試料、好ましくは末梢血試料、好ましくは末梢血単核球(PBMC)試料において分析することができる。
【0156】
好ましい態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、本明細書に記載の対象のEBV陽性細胞、好ましくはIDO1+EBV+B細胞におけるIDO1発現(IDO1+);及び好ましくは対象のB細胞における、本明細書に記載のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標、好ましくは本明細書に開示のキヌレニン経路活性化に関与する1つ若しくは複数のタンパク質又はタンパク質をコードする遺伝子転写物の発現又は上方調節により特徴付けられる疾患又は状態である。本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、本明細書に開示の対象、好ましくは対象からのB細胞における1つ又は複数のKP代謝産物比、好ましくは本明細書に開示のQUIN/L-TRYPにより更に特徴付けることができる。
【0157】
別の好ましい態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、本明細書に記載の対象のEBV陽性細胞、好ましくはIDO1+EBV+B細胞におけるIDO1発現(IDO1+);本明細書に記載のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標、好ましくは対象のB細胞における、好ましくは本明細書に開示のキヌレニン経路活性化に関与する1つ若しくは複数のタンパク質又はタンパク質をコードする遺伝子転写物の発現又は上方調節;並びに血液中約5,000コピー/μg DNA以上の対象におけるEBV DNA量、及び/又は約1,000コピー/100μl血漿以上のEBV DNA量により特徴付けられる疾患又は状態である。本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、本明細書に開示の対象、好ましくは対象からのB細胞における1つ又は複数のKP代謝産物比、好ましくは本明細書に開示のQUIN/L-TRYPにより更に特徴付けることができる。
【0158】
試料は、当技術分野で公知の方法により対象から得ることができる。試料は、臨床医により疾患の臨床パラメーターに基づいて診断された本明細書に開示の疾患に罹患している対象、又は本明細書に開示の疾患若しくは状態の1つ若しくは複数の症状を示す対象から得ることができる。本明細書に開示の方法のいずれかによれば、試料は、血液試料、好ましくは末梢血試料、例えば血清試料又は末梢血単核球(PBMC)試料;又は生検試料でありうる。
【0159】
対照レベルは、分子指標の正常な生理的濃度、又は対照試料、例えば本明細書に開示のEBV関連疾患若しくは状態を有していない又はEBV関連疾患若しくは状態のリスクがない対象からの試料、好ましくは末梢血単核球(PBMC)試料、好ましくは対照対象からのB細胞又は静止状態のB細胞の試料中の分子指標の濃度でありうる。好適には、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路(KP)活性化の1つ又は複数の分子指標を、対照レベル、好ましくは分子指標の正常な生理的濃度に戻す工程を含む。
【0160】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、EBV感染を含む。EBV感染は、一次EBV感染、潜伏EBV感染、又は溶解性EBV成分を伴う潜伏EBV感染でありうる。好適には、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、EBV感染を、例えば対象におけるEBV DNA量を低減することにより、又は対象におけるB細胞形質転換、好ましくはEBV駆動性B細胞形質転換を抑制することにより治療する工程を含む。
【0161】
本明細書に記載の疾患又は状態を治療する方法は、一次EBV感染を治療する工程を含みうる。好適には、本明細書に記載の疾患又は状態を治療する方法は、伝染性単核球症(IM)又は腺熱、慢性活動性EBV(CAEBV)、血球貪食症候群(HPS)、血球貪食性リンパ組織球症、及び免疫性溶血性貧血を治療する工程を含みうる。
【0162】
本明細書に記載のIDO1阻害剤又はそれを含む組成物は、IM、CAEBV、HPS、血球貪食性リンパ組織球症、及び免疫性溶血性貧血から選択される一次EBV感染を治療する方法において使用することができる。
【0163】
一態様では、一次EBV感染を治療する方法は、EBV感染の最初の臨床徴候が生じたときに、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物を投与する工程を含む。本明細書に記載のIDO1阻害剤は、EBVナイーブB細胞が潜伏感染されるのを防ぎ、したがって潜伏感染細胞のプールの拡大を制限することができる。
【0164】
移植患者は、免疫抑制薬物療法の過程中に移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を発症するリスクを有する。
【0165】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、PTLDを含む。本明細書に記載の疾患又は状態を治療する方法は、対象におけるPTLDを治療する方法を含みうる。好ましくは、EBV関連疾患を治療する方法は、移植患者におけるPTLDを治療する工程を含む。
【0166】
EBV無感作の移植患者、典型的には小児患者は、EBV陽性同種移植片からの一次EBV感染のリスクを有する。一態様では、本明細書に記載の疾患又は状態を治療する方法は、対象における一次EBV感染を予防する方法を含みうる。一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、対象、好ましくはEBV無感作の患者、好ましくはEBV無感作の移植患者における一次EBV感染を予防する方法における使用のためのものである。一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、EBV無感作移植患者における一次EBV感染又はPTLDを予防する工程を含む。
【0167】
対象がPTLDを発症するリスクは、移植の種類及び免疫抑制レジメンに依存しうる。
【0168】
移植は、造血幹細胞移植(HSCT)又は固形臓器移植(SOT)でありうる。移植は、腎、骨髄、幹細胞、心臓、肺、及び腸移植、好ましくは心臓、肺、又は腸移植の1つ又は複数から選択されうる。様々な態様では、移植患者は、同種移植を受ける。
【0169】
様々な態様では、移植患者は、1つ又は複数の免疫抑制剤、例えばカルシニューリン阻害剤(例えばタクロリムス及びシクロスポリン);mTOR阻害剤(例えばシロリムス);プリン拮抗薬;IL2R拮抗薬;副腎皮質ステロイド(例えばメチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン);抗増殖剤(例えばミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム、アザチオプリン、シクロホスファミド)から選択される1つ又は複数の免疫抑制剤を受けることができる。高い投与量の免疫抑制剤は、PTLDのより高いリスクに関連している。免疫抑制剤の投与量範囲は、当技術分野で公知であり、個々の患者において監視することができる。
【0170】
本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、任意選択で1つ又は複数の追加の治療剤又はモダリティと組み合わせて、移植を必要とする対象に投与することができる。一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、移植を必要とする対象に、移植手順に関連する免疫抑制レジメン、例えば当技術分野で公知又は本明細書に記載の免疫抑制剤のいずれかと同時に投与することができる。
【0171】
本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、任意選択で1つ又は複数の追加の治療剤と組み合わせて、移植を必要とする対象に、移植を受ける前に、移植を受けるのと同時に、及び/又は移植を受けた後に投与することができる。
【0172】
数多くのがんが、EBV感染に関連している(Farrell, P. J. (2019) Annu. Rev. Pathol. Mech. Dis.14、29~53頁; Wald A.及びCorey L. (2007) Herpesviruses)。
【0173】
一態様では、本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、対象におけるEBV関連がんを含む。一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、対象におけるEBV関連がんを治療する方法における使用のためのものである。EBV関連がんは、EBVに潜伏感染されたB細胞リンパ球の制御されない増殖により特徴付けることができる。EBV関連がんは、EBV陽性(EBV+)がん、例えばEBV陽性細胞により特徴付けられるがん、例えばがん細胞の約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%以上がEBV陽性であり、好ましくはがん細胞の約90%超がEBV陽性でありうる。がん細胞は、入手し、例えばEBER in situハイブリダイゼーションにより検出する等、当技術分野で公知の方法によりEBVについて試験することができる(Zhang, T.ら(2014) Pathology-Research and Practice 210、69~73頁を参照のこと)。
【0174】
EBV関連がんは、リンパ腫、好ましくはB細胞に由来するもの、又は癌腫から選択されうる。好ましい態様では、EBV関連がんは、リンパ腫、好ましくはB細胞に由来するものである。一態様では、EBV関連がんは、EBV駆動性リンパ腫である。
【0175】
EBV関連がんは、例えば免疫抑制状態の人における免疫芽球性リンパ腫;例えばマラリアが頻発する地域におけるバーキットリンパ腫;ホジキンリンパ腫;NK細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;及び原発性滲出性リンパ腫から選択されるリンパ腫でありうる。
【0176】
EBV関連がんは、上咽頭癌及び胃癌、好ましくは胃癌から選択される癌腫でありうる。
【0177】
一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、それを必要とする対象におけるEBV関連がんを治療する方法における使用のためのものである。好適には、EBV関連がんは、免疫芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、NK細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫から選択される。
【0178】
一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、対象におけるEBV関連疾患又は状態を治療する方法における使用のためのものであり、EBV関連疾患又は状態は、本明細書に記載のEBV関連がんであり、その方法は、対象における腫瘍負荷を減らす工程、好ましくは、EBV+腫瘍負荷を減らす工程及び/又はEBVにより引き起こされるリンパ腫形成を減らす工程を含む。
【0179】
数多くの免疫不全が、EBV感染の重篤でしばしば致命的な経過に関連している。免疫不全は、EBV再活性化、EBV感染Bリンパ球の制御されない増殖、及びEBV関連リンパ増殖性疾患の最終的な発症を促進する。
【0180】
本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、免疫不全対象における疾患又は状態を含みうる。一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、免疫不全対象におけるEBV関連疾患又は状態を治療する方法における使用のためのものである。
【0181】
免疫不全対象におけるEBV関連疾患又は状態は、毛細血管拡張性運動失調症、ITK欠損、X連鎖リンパ増殖性疾患(XLP)、ウィスコット・オルドリッチ症候群、CD27欠損、XMEN病(MAGT1欠損)、コロニン1a欠損、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、MST1変異(STK4欠損)、オーメン症候群、ディジョージ症候群、活性化PI3K-δ症候群、WHIM症候群、CTPS1欠損、MCM4欠損、ZAP70欠損、及びNF-κB1ハプロ不全から選択されうる。
【0182】
一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、免疫不全対象における、毛細血管拡張性運動失調症、ITK欠損、X連鎖リンパ増殖性疾患(XLP)、ウィスコット・オルドリッチ症候群、CD27欠損、XMEN病(MAGT1欠損)、コロニン1a欠損、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、MST1変異(STK4欠損)、オーメン症候群、ディジョージ症候群、活性化PI3K-δ症候群、WHIM症候群、CTPS1欠損、MCM4欠損、ZAP70欠損、及びNF-κB1ハプロ不全から選択されるEBV関連疾患又は状態を治療する方法における使用のためのものである。
【0183】
数多くの自己免疫障害が、長期のEBVウイルス保菌の免疫病理学的結果に関連している。
【0184】
本明細書に記載のEBV関連疾患又は状態は、対象におけるEBV関連自己免疫疾患又は状態を含む。一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、対象におけるEBV関連自己免疫疾患又は状態を治療する方法における使用のためのものである。
【0185】
EBV関連自己免疫疾患又は状態は、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、及び炎症性腸疾患から選択されうる。
【0186】
一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、及び炎症性腸疾患から選択されるEBV関連自己免疫疾患又は状態を治療する方法における使用のためのものである。
【0187】
対象
対象が、そのような治療から、生物学的に、医学的に、又は生活の質において利益を得る場合、対象は治療を必要とする。治療は、典型的には、本明細書に記載の治療有効量又は予防有効量のIDO1阻害剤又は組成物を投与する医師により実施される。好ましくは、対象は、ヒト対象である。例えば、対象は、臨床医により疾患の臨床パラメーターに基づいて診断された本明細書に開示の疾患に罹患している可能性がある。対象は、本明細書に開示の状態、例えば、本明細書に開示の疾患又は状態の1つ又は複数の症状に関連するが、疾患診断のための1つ又は複数の臨床パラメーターを必ずしも満たしていない状態に罹患している可能性がある。
【0188】
好ましい態様では、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、対象は、EBV感染を有する。好ましい態様では、対象は、EBVに潜伏感染されている。対象におけるEBV感染は、当技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。
【0189】
好ましい態様では、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、対象は、長期EBV感染を有する。対象は、EBV感染を約6か月以上、約9か月以上、約1年以上、約2年以上、約3年以上有しうる。
【0190】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、対象は、血液中約5,000コピー/μg DNA以上及び/又は約1,000コピー/100μl血漿以上のEBV DNA量を有しうる。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、本明細書に記載の治療を必要とする対象におけるEBV DNA量は、経時的に増加しうる。EBV DNA量は、当技術分野で公知の技法を使用して測定することができる。
【0191】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、対象は、EBV陽性B細胞;IDO1を発現しているEBV陽性B細胞;及び/又は本明細書に開示のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路(KP)活性化の1つ若しくは複数の分子指標;好ましくはIDO1及びNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路(KP)活性化の1つ又は複数の分子指標を発現しているEBV陽性B細胞を有する。
【0192】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、治療を必要とする対象は、免疫低下対象、及び好ましくは本明細書に記載のEBV感染を有する対象でありうる。一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、免疫低下対象、好ましくは本明細書に記載のEBV感染を有する対象におけるEBV関連疾患を治療又は予防する方法における使用のためのものである。
【0193】
様々な態様では、免疫低下対象は、原発性免疫不全又は続発性免疫不全を有する対象でありうる。続発性免疫不全は、栄養障害、老化、特定の薬物療法(例えば、化学療法、疾患修飾性抗リウマチ薬、免疫抑制薬、グルココルチコイド)並びに水銀及び他の重金属、農薬、並びにスチレン、ジクロロベンゼン、キシレン、及びエチルフェノール等の石油化学製品等の環境毒素から生じうる。続発性免疫不全は、がん、特に骨髄及び血液細胞のがん(例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫)及び感染症、例えば慢性感染症、特にHIV、SARS-COV、及び麻疹等のウイルス感染症等の疾患により引き起こされる可能性がある。続発性免疫不全は、様々なホルモン障害及び代謝障害、例えば貧血、甲状腺機能低下症、及び高血糖症から生じうる。
【0194】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、本明細書に記載の治療を必要とする対象は、本明細書に開示の疾患のいずれかの症状を示す対象、好ましくは、本明細書に記載のEBV感染を有する対象及び/又は本明細書に開示の疾患のいずれかの診断を有する対象、好ましくは本明細書に記載のEBV感染を有する対象でありうる。
【0195】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、本明細書に記載の治療を必要とする対象は、PTLDの診断を有する対象でありうる。PTLDの診断は、例えば、ほとんどの病変が悪性B細胞を示す生検組織の組織学的検査、腫大したリンパ節又は局所性の塊を示すCT画像、代謝活性の増加した(PET陽性(PET avid))病変を同定するPETスキャンの1つ又は複数に基づく、当技術分野で公知の方法に従うものでありうる。
【0196】
一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、免疫低下対象、好ましくは1つ又は複数の免疫抑制薬を受けている対象におけるPTLDを治療又は予防する方法における使用のためのものである。一態様では、対象は、EBV無感作である可能性があり、治療は好ましくはPTLDの予防を含む。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、本明細書に記載の治療を必要とする対象は、PTLDの1つ又は複数の症状、例えばリンパ節症、発熱、疲労、体重減少、寝汗、及び全身倦怠感から選択される1つ又は複数の症状を示す対象でありうる。
【0197】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、本明細書に記載の治療を必要とする対象は、IMの診断を有する対象でありうる。IMの診断は、当技術分野で公知の方法に従うものでありうる。
【0198】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、本明細書に記載の治療を必要とする対象は、IMの症状、例えば首及び腋窩におけるリンパ節症、疲労、発熱、脾臓の軟化及び膨れ、頭痛、扁桃腺の腫れ、並びに皮膚発疹から選択される1つ又は複数の症状を示す対象でありうる。
【0199】
EBV関連疾患又は状態のリスクを予測する方法
発明者らは、EBV感染B細胞におけるIDO1発現、及び好ましくは血清中の本明細書に記載のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の分子指標が、in vivo、特に移植患者におけるリンパ腫の発症にどのように先行するのかを示した。これらのマーカーは、対象における本明細書に開示のEBV関連疾患又は状態の発症のリスク、好ましくは対象が本明細書に開示のEBV関連疾患又は状態、好ましくはリンパ腫を発症するリスクが高いかどうかを予測するために使用することができる。発明者らは、どのようにしてこれらのマーカーを、例えば対象におけるEBV量を測定することによる、疾患のリスクを予測するための確立された方法と組み合わせて使用して、疾患のリスクを予測するためのそのような方法の精度を向上することができるかも示した。この方法は、例えば移植レシピエントにおけるEBV監視の確立されたガイドラインにおいて、確立された監視及び介入戦略を改善するために使用することができる。
【0200】
一態様では、対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法であって、
a)対象におけるIDO1を発現しているEBV感染細胞(IDO1+EBV+細胞)、好ましくはB細胞(IDO1+EBV+B細胞)の存在を検出する工程、及び/又は
b)対象におけるNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標を検出する工程を含む方法が提供される。
【0201】
対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法は、
c)対象におけるEBV量を決定する工程を更に含みうる。
【0202】
IDO1+EBV+細胞の存在は、当技術分野で公知及び本明細書に開示の方法により、対象において検出することができる。好適には、IDO1+EBV+細胞の存在は、対象から得られた試料中で検出することができる。例えば、試料中のEBV+細胞の存在を検出するために、EBVコード化小分子RNA(EBER)プローブ(EBER+B細胞)を使用したin situハイブリダイゼーション(ISH)を使用することができる。好ましくは、試料中のIDO1+EBV+細胞、好ましくはB細胞の存在を検出するために、本明細書に記載のフローサイトメトリーベースの蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを使用することができる。一態様では、対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法は、対象におけるIDO1を発現しているEBV感染細胞(IDO1+EBV+細胞)、好ましくはIDO1+EBV+B細胞の存在を検出する工程を含む。
【0203】
好適には、試料は、血液試料、好適には末梢血試料、好適には末梢血単核球(PBMC)試料である。一態様では、試料中、2 IDO1+EBV+細胞/μl血液以上が検出される場合、好ましくは試料中、2 IDO1+EBV+B細胞/μl血液以上が検出される場合、対象は、本明細書に開示のEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを有する。
【0204】
KP活性化の分子指標は、本明細書に開示のKP活性化の分子指標のいずれか、例えば、i)好ましくは対象のB細胞における、本明細書に開示のキヌレニン経路活性化に関与する1つ若しくは複数のタンパク質又はタンパク質をコードする遺伝子転写物の発現又は上方調節、ii)好ましくは血清中の、本明細書に開示の1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度、iii)好ましくは血清中の、本明細書に開示の1つ又は複数のKP代謝産物比、並びにiv)好ましくは対象のB細胞における、L-TRYP由来炭素原子のL-KYNU、QUIN、及び/又はNADへの取込みの指標の1つ又は複数でありうる。
【0205】
一態様では、KP活性化の分子指標は、好ましくはL-TRYP、L-KYNU、QUIN及びNADから選択される、本明細書に開示の1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度である。KP活性化の分子指標は、対象から得られた試料中の1つ又は複数のキヌレニン経路(KP)代謝産物の存在量又は濃度を、当技術分野で公知及び本明細書に開示の技法を使用して、例えば液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を含む質量分析法により又はELISAアッセイにより分析することにより検出することができる。好ましくは、対象から得られた試料中の1つ又は複数のKP代謝産物の存在量又は濃度は、対照レベルと比較される。好ましくは、試料は、血液試料、好ましくは、血清試料である。KP活性化の分子指標は、本明細書に開示の対照レベルと異なり、好ましくはその差が統計的に有意である、対象からの試料中の1つ又は複数のKP代謝産物の濃度でありうる。
【0206】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のL-TRYPの濃度は、約55μM以下、約50μM以下、約45μM以下、約40μM以下、約35μM以下、約30μM以下、好ましくは約40μM、又は約15μM~55μM、好ましくは約30μM~50μM、好ましくは約35μM~45μMである。
【0207】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、L-KYNUであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のL-KYNUの濃度は、約200nM以上、約250nM以上、約300nM以上、約350nM以上、約400nM以上、約450nM以上、約500nM以上、約550nM以上、若しくは約600nM以上、又は約200nM~700nM、好ましくは約250nM~650nM、若しくは約250nM~500nMである。
【0208】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物は、QUINであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のQUINの濃度は、約250nM以上、約300nM以上、約350nM以上、約400nM以上、約450nM以上、約500nM以上、又は約200nM~500nM、好ましくは約250nM~500nM、約300nM~500nM、若しくは約400nM~500nMである。
【0209】
本明細書に開示の2つ以上のKP代謝産物の存在量又は濃度は、1つ又は複数のKP代謝産物濃度比を決定するために使用することができる。一態様では、NADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標は、本明細書に開示の対象、好ましくは対象からのB細胞における1つ又は複数のKP代謝産物比である。KP代謝産物比は、その比が対照レベルを上回るL-KYNU/L-TRYP、及び/又はその比が対照レベルを上回るQUIN/L-TRYP、好ましくはQUIN/L-TRYPでありうる。
【0210】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物比は、L-KYNU/L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のL-KYNU/L-TRYPの比は、約3以上、4以上、又は5以上である。
【0211】
一態様では、1つ又は複数のKP代謝産物比は、QUIN/L-TRYPであり、対象からの試料、好ましくは血清試料中のQUIN/L-TRYPの比は、約15以上、約20以上、約25以上、約30以上、約35以上、又は約40以上である。
【0212】
好ましい態様では、対象における本明細書に開示のEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法は、a)本明細書に記載の対象におけるIDO1を発現しているEBV感染細胞(IDO1+EBV+細胞)、好ましくは対象からの試料中のB細胞(IDO1+EBV+B細胞)の存在を検出する工程、及びb)本明細書に記載のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標、好ましくは本明細書に開示の対象における、好ましくは対象からの血清試料中の1つ又は複数のKP代謝産物比、好ましくは本明細書に開示のQUIN/L-TRYP濃度の比を検出する工程を含む。
【0213】
EBV量は、当技術分野で公知及び本明細書に記載の技法を使用して測定することができる。例えば、in vitroでのEBV感染B細胞の自発的な増殖、EBVコード化小分子RNA(EBER)プローブを使用したin situハイブリダイゼーション(ISH)、及び/又は定量的PCR(qPCR)アッセイ、例えばBALF5 qPCRを、試料中のEBV量を決定するために使用することができる。好ましくは、qPCRが試料中のEBV量を決定するために使用される。好適には、試料は、血液試料、好適には末梢血試料、好ましくは末梢血単核球(PBMC)試料である。一態様では、試料中のEBV量が血液中約5,000コピー/μg DNA以上及び/又は約1,000コピー/100μl血漿以上のEBV DNA量であるとき、対象は、本明細書に開示のEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを有する。
【0214】
別の好ましい態様では、対象における本明細書に開示のEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法は、a)本明細書に記載の対象におけるIDO1を発現しているEBV感染細胞(IDO1+EBV+細胞)、好ましくは対象からの試料中のB細胞(IDO1+EBV+B細胞)の存在を検出する工程、b)本明細書に記載のNADデノボ生合成につながるキヌレニン経路活性化の1つ又は複数の分子指標、好ましくは本明細書に開示の対象における、好ましくは対象からの血清試料中の1つ又は複数のKP代謝産物比、好ましくは本明細書に開示のQUIN/L-TRYP濃度の比を検出する工程、並びにc)対象におけるEBV量を決定する工程を含み、好ましくは末梢血試料中、2 IDO1+EBV+B細胞/μl血液以上が検出される場合、血漿試料中のQUIN/L-TRYP濃度比が約15以上であるとき、及びEBV DNA量が血液中約5,000コピー/μg DNA以上又は約1,000コピー/100μl血漿以上であるとき、対象は、本明細書に開示のEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを有する。
【0215】
好ましい態様では、EBV関連疾患又は状態は、リンパ腫、好ましくはEBV駆動性リンパ腫又はPTLDである。
【0216】
一態様では、対象は、移植対象又は免疫抑制薬物療法を受けている対象である。対照試料は、移植又は免疫抑制薬物療法を受ける前に対象から得ることができる。試料は、移植又は免疫抑制薬物療法を受けた後の同一の対象から得ることができる。一態様では、試料は、移植を受けてから18か月後まで、例えば移植から6か月後又は移植から12か月後に対象から得ることができる。好ましくは、EBV関連疾患又は状態は、PTLDである。
【0217】
本明細書に開示の対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法は、in vitro又はex vivoで実施することができる。
【0218】
対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法は、本明細書に開示のEBV関連疾患又は状態、好ましくはEBV関連がん、好ましくはリンパ腫、好ましくはB細胞に由来するリンパ腫、好ましくはPTLDを発症する対象のリスクを予測するために使用することができる。
【0219】
一態様では、本明細書に開示の対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測するための方法は、本明細書に開示の、より標的化された治療の方法を提供するために使用することができる。本発明により、臨床医は、本明細書に開示の患者若しくは対象の特定のサブセットの監視を増やすこと及び/又はこれらに対するより積極的で最適な予防介入若しくは治療を提供することが可能になる。
【0220】
好ましい態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、本明細書に記載の対象におけるEBV関連疾患又は状態を治療する方法における使用のためのものであり、その方法は、対象を治療する前に、本明細書に開示の方法により、対象におけるEBV関連疾患又は状態を発症するリスクを予測する工程を更に含む。様々な態様では、対象におけるEBV関連疾患又は状態を治療する方法は、EBV関連疾患又は状態を予防する工程を含む。好ましくは、EBV関連疾患又は状態は、リンパ腫、好ましくはEBV駆動性リンパ腫又はPTLDである。一態様では、EBV関連疾患又は状態は、PTLDであり、その方法は、PTLDを予防する工程を含む。好ましくは、対象は、移植対象である。一態様では、本明細書に記載のIDO1阻害剤又は組成物は、対象におけるEBV関連疾患又は状態を治療又は予防する方法における使用のためのものであり、対象は、
a)2 IDO1+EBV+B細胞/μl血液以上を含む末梢血、
b)約55μM以下のL-TRYPの血漿中濃度、
c)約15超の血漿中QUIN/L-TRYP濃度比、
d)約5,000コピー/μgのDNA以上の血液中のEBV DNA量、及び
e)約1,000コピー/100μl以上の血漿中のEBV DNA量の1つ又は複数を有する。
【0221】
本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載のすべての特徴、及び/又はそのように開示される任意の方法のすべての工程は、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで上記の態様のいずれかと組み合わせてもよい。具体的には、本明細書に記載の活性剤及び組成物のいずれも、記載の治療方法のいずれにも使用することができる。ありとあらゆるそのような組合せが、本発明の一部を構成するとして明確に想定されている。
【実施例
【0222】
(実施例1)
EBV感染及びB細胞代謝
EBVによるB細胞の感染がその代謝にどのように影響するかを調べるために、トランスクリプトーム及びメタボロームプロファイリングを実施した。
【0223】
具体的には、ナイーブB細胞(CD27-IgD+)を健康な血液ドナー(HD)のバフィーコート調製物から精製し、スピノキュレーション(spinoculation)により、およそ10の感染多重度(MOI)に相当する、各実験において≧98%の感染細胞が得られるように最適化した濃度で、EBV野生型株B95-8に感染させた。熱で不活性化させたEBV(h.i. EBV)は、病原体関連分子パターン(PAMP)を介したB細胞の非感染関連活性化の対照として機能し、野生型株B95-8と同じ濃度で添加された。次いで、EBVに感染後0、24、及び96時間(hpi)で、又はh.i. EBVに曝露後、0、24、及び96時間で、それぞれB細胞を分析した(図2A、実験スキーム)。24時間と96時間の時点は、前潜伏EBV感染の異なる時期を表し、24hpiでは表現型の変化及び機能的変化に先行する広範な転写変化が認められる。96hpiでは、B細胞は、リンパ芽球様表現型を獲得し、高度に活性化し、増殖を開始する。これは、8~12時間毎の細胞倍加及び先行する形質転換により特徴付けられる前潜伏感染期である。本発明者らは、感染したB細胞が細胞周期に入り、過剰増殖期を開始するためには、96hpiで著しい代謝適応が必要であるという仮説を立てた。
【0224】
単一代謝産物存在量の分析により、トリプトファン代謝(キヌレニン経路)の代謝産物であるキノリン酸(QUIN)が、最も特異的に変化した代謝産物として同定された。96hpiでは、EBV感染B細胞において、h.i.EBV曝露B細胞と比較してトリプトファン(L-TRYP)及びNAD+レベルが減少した一方で、QUINが最も上方調節された代謝産物であった(図2B)。これは、EBV感染によるキヌレニン経路(KP)の活性化を示唆した。IDO1及びQPRTがその律速酵素となるKPの活性化は、L-TRYPを順次QUINに異化し、これは、いくつかの細胞では、NADデノボ生合成に更に利用することができる(図1)。NAD+存在量の減少は、NADを補充するための、B細胞のEBV感染における初期のキヌレニン経路活性化と適合するが、これはB細胞ではこれまでに報告されていない。
【0225】
メタボロームデータと合致して、RNAシークエンシングは、NADデノボ生合成に関与する遺伝子転写物が4dpiで上方調節していることを明らかにした。EBVに感染したナイーブB細胞、又は熱で不活性化させたEBVにより活性化させたナイーブB細胞からのRNAそれぞれを、感染後/活性化後0、1、及び4日に製造業者のプロトコールに従いnucleospin RNAキット(Macherey-Nagel社)を使用して、単離した。RNAシークエンシングは、Admera Health社により実施された。リードはSTAR(バージョン2.5.2a)を用いてヒトゲノム(UCSCバージョンhg38分析セット、http://genome.ucsc.edu)に整列させた。RNA-seq分析は、96hpiで、EBV感染B細胞は、IDO1、QPRT、HAAO及びKYNUの遺伝子転写物を上方調節させ、特にIDO1及びQPRTを4倍まで上方調節させたことを明らかにした(図3A)。囲まれた領域は、上方調節遺伝子転写物の群を表す。注目すべきことに、IDO1タンパク質レベルは96hpiで最も高く、その後急激に低下したのに対し、QPRTタンパク質は細胞の形質転換を通して維持された(図3B図3C)。対照的に、NADサルベージ(ニコチンアミド(NAM)からのNAD再生))及びプレイス・ハンドラー経路(Preiss-Handler pathway)(ニコチン酸(NA)からのNAD生成)に寄与する転写物は、上方調節されなかった(図3A)。
【0226】
次に、本発明者らは、キヌレニン経路代謝産物であるトリプトファン(L-TRYP)、L-キヌレニン(L-KYNU)、キノリン酸(QUIN)及びNAD+の存在量を、EBV感染B細胞の増殖が観察される感染後28日間を通して長期的に定量した。並行して、樹立されたリンパ芽球様細胞株(LCL)も評価した。
【0227】
13C-標識及び非標識NAD+、NADH、QUIN、L-TRYP、及びL-KYNU試料を、エレクトロスプレーイオン化源を備えたAPI 5500 Qtrap質量分析計(Sciex社、MA、USA)に接続した四液(quaternary)超高速クロマトグラフィーシステム(島津社、京都、日本)を使用して、標的化液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LCMS/MS)により分析した。
【0228】
細胞内L-TRYPレベルは1及び4dpiで一過性に低下したが、感染後7日目には感染前のレベルに回復しており、L-TRYPからキヌレニンへの異化が早期に加速したことを示唆した(図3D、左上パネル)。これに対応して、L-KYNU及びQUINは最初の7dpiで一過性に増加し、L-KYNUのピークはその下流代謝産物であるQUINのピークに先行した(図3D、上段中央及び右パネル)。
【0229】
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)は、トリプトファン異化の第1段階で律速段階を触媒する(図1)。IDO1活性の確立された尺度として、L-KYNU/L-TRYP比は4dpiで一過性に増加し(図3D、左下パネル)、QUIN/L-TRYP比も1~7dpiで増加した(図3D、下段中央パネル)。NAD+は、着実に増加して、感染後7日目あたりでプラトーに達した(図3D、右下パネル)。IDO1タンパク質存在量は、B細胞におけるEBV感染のこの初期前潜伏期のQUIN/L-TRYP比を正確に反映していた。注目すべきことに、2つの他のトリプトファン分解酵素であるIDO2及びTDOは、発現していなかった(データは示さない)。
【0230】
本発明者らのオミックスデータ発見プラットフォームから得られた知見と一致して、L-KYN/L-TRYP比の増加が検出され、IDO1活性の上昇によりL-TRYPのL-KYNへの異化の加速が証明された(図3D)。
【0231】
EBV感染B細胞がNADデノボ生合成に関与していることを検証するため、均一に標識したトリプトファン(U-13C11-トリプトファン)を使用した同位体トレーサー研究を実施した(図3E)。13C11-トリプトファンの存在下、EBV感染B細胞を感染後0日目から培養すると、4~7dpiの間に、トリプトファン由来重炭素原子がL-KYNU及びQUINに取り込まれ、その後取込みは検出されなくなったことから、感染後初期のB細胞における一過性のキヌレニン経路の活性化という仮説が更に支持された(図3F、左パネル)。トリプトファン由来炭素は、総細胞NAD+プール及びNADHプールの両方にも寄与した(図3、右パネル)。
【0232】
これらのデータを合わせて、初期のEBV感染B細胞におけるキヌレニン経路の一過性の活性化を特定した。キヌレニン経路の活性は、感染後初期のIDO1発現及びL-TRYPの消費の加速により特徴付けられ、NADデノボ生合成を促進するL-KYNU及びQUINの一時的な増加をもたらした。
【0233】
(実施例2)
免疫抑制におけるキヌレニン経路(KP)
免疫抑制は、潜伏感染細胞に対する免疫制御の低下によるEBV再活性化に関連している。したがって、免疫抑制状態の個体におけるKP活性の証拠があるかどうかを調査するために、前向きスイス移植コホート研究(prospective Swiss transplant cohort study)(STCS)に登録されている固形臓器移植(SOT)レシピエントにおいて、KP代謝産物を長期的に定量した。研究参加者は、EBV免疫制御の範囲を反映し、完全制御から臨床的に関連性のあるその損失まで、3つのカテゴリーに階層化した。具体的には、本発明者らは、(i)移植から開始して18か月の観察期間を通して、血漿中にEBV DNAが検出されなかったSOTレシピエント(n=10)、(ii)18か月の移植後観察期間において血清中にEBV DNAが繰り返し観察され、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)の証拠がなかったSOTレシピエント(n=10)、及び(iii)移植から18か月以内にEBV DNAが繰り返し観察され、PTLDの発症が生検で証明されたSOTレシピエント(n=10)からの血漿試料を長期的に試験した。本発明者らのin vitroでの知見と合致して、L-KYNU/L-TRYP及びQUIN/L-TRYP比は、コホート(i)から(ii)へ、そしてコホート(ii)から(iii)へと再び増加した(図4)。
【0234】
(実施例3)
細胞増殖
B細胞のEBV感染による一過性のIDO1発現が、潜伏感染のための代謝的要件であるかどうかを探るために、本発明者らは、第1段階の薬理学的IDO1遮断に関連してEBV駆動性B細胞増殖を監視した。
【0235】
バルクB細胞をCellTrace(商標)Violet(細胞増殖キット、ThermoFisher社)で染色し、その後上述のようにEBV B95-8に感染させた。増殖は、IDO1阻害剤で増殖した細胞(感染後少なくとも1回は増殖した細胞)の数/ビヒクル対照で増殖した細胞の数を決定することにより評価した。
【0236】
重要なことに、不可逆的IDO1阻害剤であるBMS-986205を0hpiで添加すると、EBV駆動性B細胞増殖が用量依存的に阻害された(図5)。これらのデータは、EBV誘導性IDO-1活性が、B細胞増殖に必要であることを示す。
【0237】
(実施例4)
一過性のIDO1発現及びB細胞のEBV感染
B細胞のEBV感染による一過性のIDO1発現が、潜伏感染(ひいてはB細胞形質転換)のための代謝的要件であるかどうかを探るために、特注のアッセイを開発し、薬理学的IDO1遮断に関連してEBV駆動性B細胞形質転換を監視した。
【0238】
バルクB細胞を、LCM-10培地中最終濃度1×106個細胞/mlで96ウェル丸底プレートに播種し、EBV B95-8の濃度を上げながら(MOI 1×103~1×10-4)スピノキュレーションにより感染させた。スピノキュレーションの直後に、L-キヌレニン10~100μmolとNaMN 250μmolを含むか含まない、最終濃度で10μMリンロドスタット、10μMエパカドスタットを補充したLCM-10培地で細胞を覆った。感染後5週間に、形質転換の形態学的変化を示したウェルの数を数え、MOIでのウイルス濃度に対するLCL増殖について陽性のウェルの割合としてプロットした。
【0239】
重要なことに、不可逆的IDO1阻害剤であるBMS-986205を0hpiで添加すると、EBV駆動性B細胞形質転換が効率的に抑制され、初期のIDO1発現及び活性が、B細胞形質転換の代謝的要件であることを強く支持した。
【0240】
EBV誘導性IDO1活性が、EBV駆動性B細胞形質転換のために必要であることを確認するため、本発明者らは次に、IDO-1の下流の代謝産物がEBVの形質転換能力を回復できるかどうかを評価した。実際、L-KYNUを添加すると、EBVのB細胞潜伏感染能力が部分的に回復したが、NAD+の直接的な前駆体であるNaMNは、この能力を完全に回復させた(図6A)。実際、NaMNを添加すると、ビヒクルと比較して形質転換効率がわずかに増加した。これらのデータは、EBV潜伏感染/B細胞形質転換の代謝的要件として、NAD+デノボ生合成を促進する、初期のEBV感染B細胞における初期の一過性のIDO-1活性の重要性を証明した。L-KYNUがEBVの形質転換効率を部分的にしか回復させなかったという観察結果は、QPRTがこの生物学的システムにおけるNAD+デノボ生合成へのフラックスにおける重大な障壁となっていることを表している。
【0241】
BMS-986205を使用して得られた知見を更に強固なものにするために、本発明者らは、別のIDO1阻害剤であるエパカドスタットも試験した。同様に、EBV感染と同時に(すなわち0hpiに)エパカドスタットを添加すると、EBV感染B細胞の形質転換が効率的に抑制された(図6B)。この設定でも、NaMNを同時に添加すると、阻害剤の存在下でB細胞の形質転換が完全にレスキューされた(図6B)。
【0242】
更に、EBV感染B細胞におけるIDO1誘導のsiRNAを介した阻止も、形質転換を抑制した(図6C)。
【0243】
まとめると、これらのデータは、悪性B細胞の形質転換の必要条件である、B細胞における潜伏感染を確立するプロセスにおけるEBVの代謝脆弱性を特定した。具体的には、本発明者らは、IDO1の活性化がこのプロセスに決定的であることを示す。IDO1の薬理学的遮断は、EBVがB細胞において潜伏感染を確立するのを、したがってB細胞形質転換を駆動するのを非常にわずかに妨げた。NAD+前駆体L-KYNUを添加すると、EBVがIDO1遮断されたB細胞を形質転換する能力が部分的に用量依存的にレスキューされたが、直接的なNAD+前駆体であるNaMNは、IDO1遮断を完全にレスキューすることができた。
【0244】
したがってこれらのデータは、IDO1が初代B細胞のEBV形質転換において重要な役割を果たしていることを実証する。したがってIDO1阻害剤は、ナイーブB細胞がEBVに感染するのを予防し、新たに感染したB細胞が潜伏感染されるのを予防し、EBV感染細胞の形質転換を抑制するために使用することができ、したがって様々なEBVに関連する病状を治療又は予防することができる。
【0245】
(実施例5)
EBV駆動性IDO1活性のin vivoでの関連性
潜伏B細胞感染に関連する病状の発症におけるEBV駆動性IDO1活性のin vivoでの関連性を調査するために、本発明者らはまず、前向きスイス移植コホート研究(STCS、www.stcs.ch)を利用した。STCSは、スイスのすべての固形臓器移植(SOT)レシピエントを臨床的に監視し、バイオサンプリングする大規模な共同研究である。このコホートから、移植後6~18か月に診断された、組織学的に立証されたEBV関連PTLDを有する10人の患者が同定された。これら10症例のうち7症例からの腫瘍生検試料を独自に再評価し、EBV陽性PTLDであることを確認した(図7A)。臨床的詳細は、table S2(表1)に示す。
【0246】
【表1】
【0247】
注目すべきことに、PTLDを発症した移植レシピエント10人中3人が、移植時にはEBV血清陰性であり、EBV血清陽性のドナーから臓器を受けていた。PTLDの証拠がない対照患者(n=20)は、年齢、性別、移植臓器、及びクレアチニンレベルについて症例と一致させ、2群に階層化した: (i)移植後18か月以内に、ウイルス症候群がなくEBV再活性化が記録されていない参加者(EBV再活性化なし、n=10)、及び(ii)6~18か月の移植後観察期間内に検出可能なEBV DNA試料が1つ以上あった(すなわちPTLDのリスクを有するが、リンパ腫の証拠はない)患者(EBV再活性化、n=10)。全研究参加者について、移植前(t0)並びに移植後6か月(t6)及び12か月(t12)の血清及び末梢血単核球(PBMC)試料が入手可能であった。「EBV再活性化」対「EBV複製なし」は、すべての参加者について、凍結PBMCからのBALF5 qPCR分析により再評価して確認した(データは示さない)。EBV感染B細胞(すなわちEBVコード化RNA陽性-EBER+)におけるIDO1発現を試験するために、フローサイトメトリーベースの蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを開発した(図7B)。
【0248】
eBioscience社からのPrimeFlow RNAアッセイキットに付属の試薬を使用して、製造業者の説明に従ってフロー-FISHサイトメトリーを実施した。簡潔に述べると、患者試料あたり2~10×106個の凍結PBMCを、抗CD19(BioLegend社、HIB19)及び細胞生死判別色素(Invitrogen社、LIVE/DEAD(商標) Fixable Dead Cell Stain Kit)で染色した。次いで、細胞を4℃で30分間固定し、透過処理した。試料を抗IDO1抗体(Cell signaling社、D5J4E)及び引き続いてヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen社)でそれぞれ4℃で30分間インキュベートした。2回目の固定工程を実施し(室温で1時間)、EBER標的プローブを40℃で2時間ハイブリダイズさせた。シグナルは、前増幅工程、その後の増幅工程(それぞれ4℃で1.5時間)、及び製造業者から提供された蛍光で標識したプローブを用いたハイブリダイゼーション(40℃で1時間)を経て増幅した。FlowJoソフトウェアバージョン10.8.0を使用して、図6Bに記載したように細胞をゲーティングした。
【0249】
IDO1+EBER+B細胞は、非再活性化からの移植後試料20個のうち0個(0%)で、EBV再活性化移植レシピエントからの20試料のうち1試料(5%)で検出された(IDO1+EBER+B細胞の検出限界は、2個細胞/μl血液であった)。対照的に、PTLD患者では、IDO1+EBER+B細胞は、リンパ腫の診断前に得られた16試料中6試料(37.5%)で検出された(図8A)。
【0250】
次に、L-TRYP、L-KYNU、及びQUINの血清中存在量を、Vanquish Horizon超高速液体クロマトグラフィーシステムに連結したQ Exactive Plus orbitrap(両方ともThermo Fisher Scientific社から)を使用して、質量分析法により分析した。
【0251】
L-TRYPレベルは、両方の対照群からの試料と比較してPTLD前の試料で有意により低く、リンパ腫の診断に先行してトリプトファン消費が増加していることを示唆している(図8B、左上パネル)。QUINレベルは、両方の対照群からの試料と比較してPTLD前の試料でより高く(図8B、右上パネル)、L-KYNUレベルは、両方の対照群からの試料と比較してPTLD前の試料で高かった(図8B、右下パネル)。
【0252】
キヌレニン経路活性化を示すQUIN/L-TRYP比は、対照試料と比較してPTLD前の試料で有意により高く(図8B、左中央パネル)、したがってリンパ腫の発症を予測するマーカーとなった。L-KYNU/L-TRYP比も、対照試料と比較してPTLD前の試料でより高かった(図8B、左下パネル)。
【0253】
図8Cは、確立されたリスク因子である循環EBV量/存在量(PCRにより評価)と比較して、いかにしてEBER+IDO1+末梢血B細胞数及び血清QUIN/L-TRYP比もまた対象におけるPTLDリスクのマーカーとして使用することができるかを示す。ROC曲線分析は、1)循環EBV存在量(PCRにより評価)、2)EBER+IDO1+末梢血B細胞数、及び3)血清QUIN/L-TRYP比のこれら3つのマーカーの組合せが、いかに性能を高め疾患リスクのより正確な予測因子となるかを示す(図8C)。循環EBER+IDO1+B細胞及びキヌレニン経路の活性化は、EBV駆動性PTLDに先行し、リンパ腫形成におけるEBV駆動性IDO1活性の役割の連想的証拠を提供した。
【0254】
(実施例6)
in vivoでのEBV駆動性免疫調節異常及びリンパ腫形成におけるIDO1の役割
次にEBV感染のヒト化マウスモデルを使用して、EBV駆動性免疫調節異常及びリンパ腫形成におけるIDO1の役割を直接的に調べた。簡潔に述べると、NSGマウス(Jackson Laboratory社、Bar Harbor、ME、USA)にヒト造血前駆細胞を出生の直後に注射し、ヒト免疫系構成要素の再構築を3~4か月齢で確認した(データは示さない)。ヒト化NSGマウスに高用量EBV(105感染単位)を感染させる3日前に、エパカドスタットによるIDO1阻害又はビヒクル対照処置をi.p.で開始し、in vitroのEBV感染B細胞において初期に検出されたIDO1の一過性発現により指示された治療レジメンである2週間、又は実験期間中維持した(図9、実験スキーム)。エパカドスタットを介したIDO1阻害の有効性は、トリプトファン及びL-キヌレニン血漿中レベルを定量することにより確認した(図10)。EBVウイルス量は、感染後2週目、3週目、4週目、及び5週目の全血からのDNA調製物、及び屠殺の日の脾臓で、保存されたEBV BamHI-W断片を検出するために改変プライマー(5'-CTTCTCAGTCCAGCGCGTTT-3'と5'-CAGTGGTCCCCCTCCCTAGA-3')及び蛍光性プローブ(5'-FAM CGTAAGCCAGACAGCAGCCAATTGTCAG-TAMRA-3')を用いたTaqmanリアルタイムPCRを使用して評価した。試料は3連で分析し、CFX384 TouchリアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)で実行した。製造業者の推奨に従い、全血からのDNAはNucliSENS EasyMAG System(Biomerieux社)を用いて抽出し、脾臓組織からのDNAは、DNeasy Blood and Tissueキット(QIAGEN社)を使用して単離した。
【0255】
IDO1阻害マウスでは、血液EBV量(溶解性寄与と潜伏性寄与を区別しない)がビヒクル処置対照動物と比較して効率的に減少した(図11A)。感染後5週間で、脾臓のウイルス量は、境界線上で減少したままであった(図11B)。ウイルス量に対する効果は、実験期間中IDO1阻害剤で処置したマウスで観察されたが、感染後2週間だけ処置したマウスでも観察された(データは示さない)。急性EBV感染は、高度に活性化した炎症表現型を有するCD8+T細胞の明確な増殖を引き起こす(Hislop, A. D.ら(2007) Annu Rev Immunol 25、587~617頁)。高力価EBV感染ヒト化マウスでは、この免疫調節異常が大きな原因となって、感染後5週目が倫理的エンドポイントとなる。注目すべきことに、末梢血CD8+T細胞の増殖は、エパカドスタットで処置したヒト化マウスで防がれた(図12A及び図12B)。脾臓のCD8+/CD4+T細胞比も、エパカドスタット処置マウスでは変化しないままであった(図12C)。したがって、IDO1阻害は、急性又は不完全に制御されたEBV感染の特徴である免疫調節異常事象を予防した。EBV駆動性B細胞腫瘍形成に対するIDO1阻害効果は、巨視的腫瘍負荷を定量するときと、微視的評価を使用するときの両方で、等しく明らかであった(図13A図13B、及び図13C)。したがって、IDO1を阻害することは、in vivoでの免疫代謝介入に非常に有効なものであり、免疫調節異常を予防し、EBVにより引き起こされるリンパ腫形成を減少させる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
【配列表】
2024510949000001.app
【国際調査報告】