(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】多層耐火性シート
(51)【国際特許分類】
B32B 5/00 20060101AFI20240305BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240305BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240305BHJP
【FI】
B32B5/00 Z
B32B9/00 A
B32B7/022
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554918
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2022070494
(87)【国際公開番号】W WO2022192820
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】カン ビョン サム
(72)【発明者】
【氏名】カフカ ダリウシュ ブロジミエシュ
(72)【発明者】
【氏名】デンブロスキー クリス
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AC03B
4F100AC05A
4F100AC05B
4F100AH06B
4F100AH08B
4F100AK01A
4F100AK10B
4F100AK25B
4F100AK47A
4F100AK52B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA22A
4F100CA22B
4F100DG02A
4F100DG10A
4F100DG12B
4F100DG15A
4F100EH41A
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100GB31
4F100GB41
4F100JA03A
4F100JH01
4F100JJ02
4F100JJ03B
4F100JJ07
4F100JK02A
4F100JK08A
4F100JL11
4F100YY00B
(57)【要約】
シートは、不織フィラメント状基材と、不織フィラメント状基材の少なくとも1つの表面に接触する無機耐熱層とを含み、この場合、(i)不織フィラメント状基材は、40~80重量パーセントの均一に分散された雲母と、20~60重量パーセントのアラミド材料とを含み、アラミド材料は、アラミドフロック又はパルプ、それらの組み合わせ及びポリマーバインダーの形態であり、(ii)耐熱層は、85~99重量パーセントの小板と、1~15重量パーセントの接着促進剤とを含む。シートは、電気絶縁火炎及び熱バリアである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織フィラメント状基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に接触する無機耐熱層とを含むシートであって、
前記基材は、40~80重量パーセントの均一に分散された雲母と、20~60重量パーセントのアラミド材料とを含み、前記アラミド材料は、アラミドフロック又はパルプ、それらの組み合わせ及びポリマーバインダーの形態であり、
前記基材は、第1の方向に少なくとも3ポンド/インチの湿潤引張り強度を有し、前記第1の方向に対して横方向である第2の方向に少なくとも2ポンド/インチの湿潤引張り強度を有し、第1の方向に少なくとも7ポンド/インチの乾燥引張り強度を有し、前記第1の方向に対して横方向である第2の方向に少なくとも3ポンド/インチの乾燥引張り強度を有し、少なくとも0.25ポンド/インチの少なくとも1つの表面からの表面剥離値、0.025~0.25mmの厚さ、0.60~1.3g/ccの密度、及び15~350gsmの乾燥面積重量を有し、
前記耐熱層は、85~99重量パーセントの小板と、1~15重量パーセントの接着促進剤とを含み、
前記シートは、電気絶縁火炎及び熱バリアであるシート。
【請求項2】
前記基材は紙である、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記基材の前記アラミド材料の前記ポリマーバインダーは、アラミドフィブリドを含む、請求項1に記載のシート。
【請求項4】
前記無機小板は、バーミキュライト、粘土、モンモリロナイト、雲母、タルク、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載のシート。
【請求項5】
前記耐熱層は、15~50gsmの乾燥面積重量を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項6】
前記耐熱層は、10重量パーセント以下の残留水分含有量を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項7】
前記耐熱層の接着促進剤は、シラン、アクリル、シロキサン、塩素化又は非塩素化ポリオレフィン、リン酸エステル又はラテックスである、請求項1に記載のシート。
【請求項8】
前記基材の前記アラミド材料は、40~70重量パーセントのアラミド繊維と30~60重量パーセントのポリマーバインダーとを含む、請求項1に記載のシート。
【請求項9】
ASTM D-149-20に従って試験した場合、20kV/mmの最小絶縁破壊強度を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項10】
前記基材は、ASTM D-828-16e1に従って試験した場合、任意の方向に2.5パーセントを超える破断伸びを有する、請求項1に記載のシート。
【請求項11】
前記基材は、ASTM D-3394-16に従って試験した場合、任意の方向に300℃で1パーセント以下の収縮を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項12】
請求項1に記載のシートを含む航空機用の熱及び音響ブランケット。
【請求項13】
請求項1に記載のシートを含む電池保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層と無機耐熱層とを含む多層耐火性シート及びその多層耐火性シートの作製方法に関する。好ましくは、基材層は、紙である。
【背景技術】
【0002】
Fayらの米国特許第6,322,022号明細書では、輸送、特に航空機用の耐溶け落ち性システム(burn-through resistant system)を開示している。
【0003】
Tomkins及びVogel-Martinの米国特許第6,670,291号明細書では、火炎バリア用途のための積層シート材料を記載している。
【0004】
Goughらの米国特許第5,667,886号明細書では、基材層、コーティング層及び柔軟な接着剤層を有する複合シートを記載している。基材層は、ポリエステルフィルムであることが好ましい。コーティング層は、鉱物、好ましくはバーミキュライトを含む。
【0005】
Kawkaの米国特許第9,441,326号明細書は、第1及び第2の表面を有する耐炎性湿式不織紙と、耐炎性湿式不織紙の少なくとも1つの表面に隣接する無機耐熱層を含む層状シートに関しており、この場合、無機耐熱層は、15~50gsmの乾燥面積重量を有し、耐炎性湿式不織紙の無機耐熱層と表面との間の結合強度は、0.25ポンド/インチ~0.8ポンド/インチであり、基材は、40~70重量パーセントのアラミド繊維と30~60重量パーセントのポリマーバインダーとを含み、親水性であり、150シェフィールド単位(Sheffield unit)以下の少なくとも1つの表面における平滑度、0.025~0.175mmの厚さ、及び0.60~1.1g/ccの密度を有する。
【0006】
Kangの米国特許出願公開第2020/0259144号明細書では、セル間の電池絶縁として有用な積層体を教示しており、この積層体は、絶縁領域及び周縁封止領域を有し、絶縁領域は、以下の順序で:アラミド材料と雲母とを含む第1の外側紙層と、無機短繊維のフェルト又は紙を含む内側層と、アラミド材料と雲母とを含む第2の外側紙層と、を含み、周縁封止領域は、内側層がなく、第1の外側紙層と第2の外側紙層とを互いに接着することによって形成され、周縁封止領域は、絶縁領域の周縁の周囲に延びる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
安全に取り扱うことができ、その後、電気絶縁火炎及び熱バリア(electrically insulating flame and thermal barrier)などの用途のための多層シートに加工できる形態で薄い無機耐熱層を提供する製品及び方法に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
シートは、不織フィラメント状基材と、不織フィラメント状基材の少なくとも1つの表面に接触する無機耐熱層とを含み、この場合、
不織フィラメント状基材は、40~80重量パーセントの均一に分散された雲母と、20~60重量パーセントのアラミド材料とを含み、アラミド材料は、アラミドフロック又はパルプ、それらの組み合わせ及びポリマーバインダーの形態であり、
不織フィラメント状基材は、第1の方向に少なくとも3ポンド/インチの湿潤引張り強度を有し、第1の方向に対して横方向である第2の方向に少なくとも2ポンド/インチの湿潤引張り強度を有し、第1の方向に少なくとも7ポンド/インチの乾燥引張り強度を有し、第1の方向に対して横方向である第2の方向に少なくとも3ポンド/インチの乾燥引張り強度を有し、少なくとも0.25ポンド/インチの少なくとも1つの表面からの表面剥離値、0.025~0.25mmの厚さ、0.60~1.3g/ccの密度、及び15~350gsmの乾燥面積重量を有し、
耐熱層は、85~99重量パーセントの小板(platelet)と、1~15重量パーセントの接着促進剤とを含み、
シートは、電気絶縁火炎及び熱バリアである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
「シート」及び「積層体」という用語は、交換可能に使用されることができる。
【0011】
図1は、基材層11と、基材層に堆積された無機耐熱層12とを含む多層シート10の断面図を示す。好ましい基材材料は、紙などの高強度繊維湿式堆積不織布である。
【0012】
基材
耐炎性高強度基材は、
図1の16及び17でそれぞれ示される第1及び第2の表面を有する。
【0013】
一実施形態では、基材は、40~80重量パーセントの均一に分散された雲母と、20~60重量パーセントのアラミド材料とを含む紙であり、アラミド材料は、アラミドフロック又はパルプ、それらの組み合わせ及びポリマーバインダーの形態である。雲母材料とアラミド材料は、
図1のそれぞれ13と14に示されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、紙基材のアラミド材料成分は、40~70重量パーセントのアラミド繊維と、30~60重量パーセントのバインダーとを含む。別の実施形態では、基材のアラミド成分は、40~55重量パーセントのアラミド繊維と、45~60重量パーセントのバインダーとを含む。好ましいバインダーは、メタアラミドである。
【0015】
火炎下での基材の亀裂形成、収縮、及び膨張が最小限であることから分かるように、基材が火炎条件下で必要な寸法安定性を提供するには、基材中に少なくとも約40重量パーセントの雲母が必要であると考えられる。また、70重量パーセントを超える雲母の量は、防火性及び寸法安定性の観点からは有用であるが、基材中の雲母の量が70重量パーセントを超えて増加すると、基材は、雲母を放出させる(shed)傾向がより大きくなると考えられており、従っていくつかの用途では、雲母の量が70重量パーセントを超えると、強度が望ましくないレベルに低下する可能性がある。
【0016】
均一に分布した雲母とは、雲母が基材層の厚さ全体に均一に分布できること、又は雲母が層の一方の面により近い基材内の集中した平面ゾーン全体に均一に領域的に分布できることを意味する。この定義には、最終的な積層構造の望ましい性能を提供するために雲母が十分に分散していることが暗示されている。
【0017】
雲母は、白雲母又は金雲母又はこれらのブレンドを含み得、焼成雲母又は未焼成雲母であり得る。本明細書で使用される場合、「焼成雲母」とは、天然雲母を通常800℃を超える、場合によっては950℃を超える高温に加熱することによって得られる雲母を意味する。この処理により、水及び不純物が除去され、雲母の耐熱性が改善される。焼成雲母は、通常、フレーク粒子の形態で使用され、白雲母タイプの雲母が好ましい。本明細書で使用される場合、「未焼成雲母」は、好ましくは均質化及び精製して欠陥及び不純物を取り除いた本質的に高純度の自然形態である雲母を意味する。未焼成雲母は、天然雲母フレークのより大きいサイズのために非常に多孔性の雲母層を形成することができる。基材のための好ましい雲母は、未焼成雲母よりもその誘電特性及びコロナ耐性が改善されているため、焼成雲母である。
【0018】
例示的な紙基材は、両方とも以下DuPontと称する、DuPont de Nemours Inc.,Wilmington,DEから入手可能なNomex(登録商標)T818又はNomex(登録商標)T819である。
【0019】
本発明で使用される基材の厚さは、耐火性シートの最終用途又は所望の特性に依存するが、全体的に高い柔軟性と可能な限り低い重量を提供するために、厚さは、典型的には1~10ミル(0.025~0.250mm)、又は3~8ミル(0.075~0.203mm)、又は更には3~6ミル(0.075~0.127mm)である。基材の厚さが1ミル未満、特に水で飽和した場合、基材がより弱く、寸法安定性が低下するなど、望ましくない特徴が生じることになるであろう。10ミルを超える厚さを有する基材では、望ましくない重量と剛性を付加することになるであろう。
【0020】
いくつかの実施形態では、基材は、0.60~1.3g/cc、より好ましくは0.60~1.1g/cc、又は0.65~0.95g/cc、又は更には0.70~0.85g/ccの密度を有する。基材密度が0.60g/cc未満では、基材の他の特性と相まって、より弱く過度に開いた構造などの望ましくない特徴が生じることになるであろう。0.60g/ccを超える基材密度には、カレンダー加工又は適切なプレス機でのプレスを含むがこれらに限定されない、適切な緻密化プロセスによる更なる緻密化を必要とする。いくつかの実施形態では、基材は、緻密化プロセス中に少なくとも280℃の温度、又は更には330~360℃の温度に曝される。特に基材の緻密化が少なくとも280℃の温度で行われる場合、基材の密度が高いほど、より薄く機械的により強い基材が可能になる。
【0021】
緻密化された基材の表面平滑性が向上すると、その表面からの剥離値が低くなるが、このような基材が必要な場合、耐熱層に接着促進剤を組み込むことにより、剥離値が許容レベルまで上がる。
【0022】
いくつかの実施形態では、基材の基本重量(面積重量)は、15~350gsm、又は60~240gsm、100~200gsm、又は更には20~70gsmである。
【0023】
基材の表面と耐熱層との間の結合強度(表面剥離値)は、少なくとも0.25ポンド/インチ、より好ましくは少なくとも0.80ポンド/インチ、又は更には少なくとも1.00ポンド/インチである。
【0024】
基材は、第1の方向に少なくとも3ポンド/インチの湿潤引張り強度を有し、第1の方向に対して横方向である第2の方向に少なくとも2ポンド/インチの湿潤引張り強度を有する。別の実施形態では、基材は、第1の方向に少なくとも15ポンド/インチの湿潤引張り強度を有し、第1の方向に対して横方向である第2の方向に少なくとも5ポンド/インチの湿潤引張り強度を有する。好ましい実施形態では、第1の方向は、基材の面内の長手方向、即ち、基材のロールが作られた方向である。これは、機械方向とも知られている。第2の方向は、場合により幅方向として知られている。湿潤引張り強度とは、水で飽和した後の基材の引張り強度を意味する。第1の方向の湿潤引張り強度が3ポンド/インチ未満である場合、基材にのしかかる重量と基材にかかる張力により、耐熱層コーティングのプロセス中に基材が頻繁に破損する危険性が高い。
【0025】
基材は、第1の方向に少なくとも7ポンド/インチの乾燥引張り強度を有し、第1の方向に対して横方向である第2の方向に少なくとも3ポンド/インチの乾燥引張り強度を有する。乾燥引張り強度とは、周囲温度と湿度、典型的には、相対湿度48~52パーセント及び22~24℃で調整された紙の引張り強度を意味する。TAPPI T-402 sp-08は、紙、板紙、及びパルプ製品向けにおける周囲条件を規定する例示的な仕様である。
【0026】
後続のプロセス工程を通じてコーティングされた基材を適切に取り扱うことを確実にするために、特にロールのたるみ及び伸縮を防ぐために巻き取り中にしっかりとしたロール形成を確実にするために、第1の方向で少なくとも7ポンド/インチの乾燥引張り強度が必要である。
【0027】
いくつかの実施形態では、基材は、第1の方向に少なくとも20ポンド/インチ、及び第2の方向に少なくとも10ポンド/インチの乾燥引張り強度を有する。
【0028】
他の実施形態では、基材は、ASTM D-828-16e1に従って試験した場合、任意の方向に2.5パーセントを超える破断伸びを有する。
【0029】
更に他の実施形態では、基材は、ASTM D-3394-16に従って試験した場合、任意の方向に300℃で1パーセント以下の収縮を有する。
【0030】
紙基材のアラミド繊維は、メタアラミド、パラアラミド、又はそれら2つの組み合わせであり得る。
【0031】
アラミド繊維の寸法安定性により、片面湿潤に曝された場合、基材が少なくとも2分間平坦(即ち、湿気に関連したしわ及びたたみ目がない)を保持する能力が維持されることが確実になる。
【0032】
アラミド繊維の高温特性により、基材が150℃の温度に少なくとも10分間曝され得る場合、処理工程中の基材の熱的及び機械的安定性が確実になる、即ち、150℃の温度に少なくとも10分間曝された場合、基材の寸法は変化しないことが確実になる。
【0033】
紙基材のアラミド繊維は、フロック、パルプ、又はそれらの組み合わせの形態であり得る。本明細書で使用される場合、アラミドという用語は、アミド(-CONH-)結合の少なくとも85パーセントが2つの芳香環に直接結合しているポリアミドを意味する。アラミドには添加剤を使用できる。実際、10重量パーセントと同量までのその他のポリマー材料をアラミドとブレンドできること、又はアラミドのジアミンを10パーセントと同量のその他のジアミンで置き換えられた、又はアラミドの二酸塩化物を10パーセントと同量のその他の二酸塩化物で置き換えられたコポリマーを使用できることが判明した。
【0034】
フロックは、一般に、連続的に紡績されたフィラメントを特定の長さの断片に切断することによって作製される。フロックの長さが2ミリメートル未満の場合、一般に短すぎて基材に適切な強度を提供できず、フロックの長さが25ミリメートルを超えると、均一な湿式堆積基材ウェブを形成することが非常に困難になる。直径が5マイクロメートル未満、特に3マイクロメートル未満のフロックは、十分な断面均一性及び再現性を持って作製することが困難である。フロックの直径が20マイクロメートルを超えると、軽量から中量までの基本重量の均一な基材を形成することが非常に困難である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「パルプ」という用語は、軸(stalk)、及びそこから全体的に延びるフィブリルを有するフィブリル状材料の粒子を意味し、この場合、軸は、全体的に円柱状であり、直径が10~50マイクロメートルであり、フィブリルは、直径はほんのわずか数分の1マイクロメートル又は数マイクロメートル、及び長さは10~100マイクロメートルを計測する、軸に全体的に結合している細い毛状部材である。アラミド繊維フロックは、炭素繊維フロックと同様の長さである。メタアラミド繊維とパラアラミド繊維の両方が適しており、DuPontから商標名Kevlar(登録商標)及びNomex(登録商標)で、並びにTeijin Twaron,Conyers,GAから商標名Twaron(登録商標)で入手可能である。
【0036】
異なる熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を、本発明の基材のポリマーバインダーとして使用することができる。これらの樹脂は、フィブリド(fibrid)、フレーク、粉末、及びフロックの形態で供給され得る。本明細書で使用される場合、「フィブリド」という用語は、長さと幅が100~1000マイクロメートル、厚さが0.1~1マイクロメートルであることが知られている、小さいフィルム状の本質的に二次元の粒子の非常に細かく分割されたポリマー生成物を意味する。バインダー樹脂の好ましいタイプは、アラミド、ポリイミド、フェノール、及びエポキシである。しかしながら、他のタイプの樹脂も使用することができる。
【0037】
フィブリドは、典型的には、ポリマー溶液をポリマー溶液の溶媒と混和しない液体の凝固浴に流し込むことによって作成される。ポリマー溶液の流れは、ポリマーが凝固するにつれて激しい剪断力と乱流に曝される。本発明のフィブリド材料は、メタアラミド又はパラアラミド或いはそれらのブレンドから選択することができる。より好ましくは、フィブリドは、メタアラミドである。
【0038】
好ましい一実施形態では、フィブリドの形態の繊維とポリマーバインダーを一緒にスラリー化して混合物を形成し、これをワイヤースクリーン又はベルトにおいて紙に変換することができる。アラミド繊維及びアラミドフィブリドから紙を形成する例示的なプロセスについては、Tokarskyの米国特許第4,698,267号明細書及び米国特許第4,729,921号明細書、Heslerらの米国特許第5,026,456号明細書、Kirayogluらの米国特許第5,223,094号明細書及び米国特許第5,314,742号明細書を参照されたい。
【0039】
紙が形成されると、所望の空隙率及び/又は見掛け密度までカレンダー加工され得る。
【0040】
無機耐熱層
無機耐熱層12は、基材の少なくとも1つの表面16又は17に隣接している。耐熱層は、15~50gsmの乾燥面積重量及び10重量パーセント以下の残留水分含有量を有する。いくつかの実施形態では、耐熱層は、20~35gsmの乾燥面積重量、及び5重量%以下、又は更には3重量%以下の残留水分含有量を有する。残留水分は、層を25℃、及び相対湿度50%で安定させた後に測定される。
【0041】
耐熱層は、85~99重量パーセントの量で存在する
図1の15として示される無機小板と、1~15重量パーセントの量で存在する
図1の18として示される接着促進剤とを含む。いくつかの実施形態では、接着促進剤は、1~10重量パーセント又は1~7重量パーセントの量で存在する。他の実施形態では、接着促進剤は、2.5~5重量パーセントの範囲で存在する。耐熱層はまた、製造中の小板分散物の不完全な乾燥から生じる少しの残留分散剤を含むことができる。
【0042】
耐熱層は、7.0~76マイクロメートル、より好ましくは7.0~50マイクロメートルの厚さを有する。好ましくは、耐熱層は、V-0のUL94火炎分類を有する。隣接する小板が重なっている耐熱層の機能は、火炎と高温ガスを透過しないバリアを提供することである。無機小板は、モンモリロナイト、バーミキュライト、雲母、タルク、及びそれらの組み合わせなどの粘土であり得る。好ましくは、無機小板は、約600℃、より好ましくは約800℃、最も好ましくは約1000℃で安定である(即ち、燃焼、溶融、又は分解しない)。バーミキュライトが、好ましい小板材料である。バーミキュライトは、多層結晶として自然界で見出される水和アルミノケイ酸マグネシウム雲母状鉱物である。バーミキュライトは、典型的には、理論酸化物に基づいて、(乾燥)重量で、約38~46パーセントのSiO2、約16~24パーセントのMgO、約11~16パーセントのAl2O3、約8~13パーセントのFe2O3、及び残りの一般に酸化物、K、Ca、Ti、Mn、Cr、及びBaを含む。「剥離された」バーミキュライトは、化学的に又は熱で処理され、結晶の層が膨張して分離され、高アスペクト比のバーミキュライト小板が得られるバーミキュライトを指す。適切なバーミキュライト材料は、Specialty Vermiculite Corp.(SPV),Enoree,SCから商標名MicroLite及びMicroLite HTS-XEで入手可能である。代替供給源は、Dupre Minerals,Newcastle-under-Lyme,UKのMicashield(登録商標)分散物である。
【0043】
個々の小板の厚さは、典型的には約5オングストローム~約5,000オングストロームの範囲であり、より好ましくは約10オングストローム~約4,200オングストロームの範囲である。小板の最大幅の平均値は、典型的には約10,000オングストローム~約30,000オングストロームの範囲である。個々の小板のアスペクト比は、典型的には100~20,000の範囲である。
【0044】
好ましくは、小板は、15~25マイクロメートルの平均直径を有する。いくつかの他の実施形態では、小板は、18~23マイクロメートルの平均直径を有する。
【0045】
好ましい実施形態では、耐熱層は、10~50℃の温度で、0.25~2Nのカチオン濃度のカチオンに富む水溶液との接触から生じるカチオンを更に含む。カチオン性溶液との接触は、耐熱層を基材と組み立てて耐火性シートを作製する前に行われる。このカチオン処理により、流体に曝されたときの耐熱層の安定性が向上する。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、耐熱層は、層に更なる機械的強度を与えるために、軽量の開織り織物スクリム(open weave fabric scrim)によって強化されることができる。スクリムは、耐熱層に敷設される、又は耐熱層と基材層の間に配置されることができる。スクリムは、典型的な例である、ガラス、綿、ナイロン、又はポリエステルを用いて、天然繊維、有機繊維、又は無機繊維から作製されることができる。ガラス繊維スクリムが、特に好ましい。スクリムは、織物構造又は編物構造であり得、典型的な面積重量は、1平方メートル当たり40グラムを超えない。
【0047】
いくつかの実施形態では、後続の処理中に接着層への結合を強化するために耐熱層に穴が開けられる。穿孔の程度は、実験によって決定される。好ましくは、火炎バリア特性の低下を防ぐために、個々の穿孔は、最大寸法が2ミリメートルを超えてはならない。好ましい実施形態では、個々の穿孔は、少なくとも10ミリメートルの間隔をあけるべきである。穿孔の形状は、重要ではない。適切な穿孔には、円、正方形、長方形、楕円形、及び山形が含まれる。
【0048】
本発明の文脈において、接着促進剤は、耐熱層と基材の間の結合強度(接着強度)を増加させる材料である。接着促進剤はまた、無機耐熱層自体内の凝集力も強化する、即ち、耐熱層の小板間の接着力を強化する。任意の適切な接着促進剤を使用することができる。例示的な材料には、オリゴマーシランなどのシラン、アクリル、シロキサン、塩素化及び非塩素化ポリオレフィン、リン酸エステル及びラテックスが含まれる。帯電したラテックスが、特に適している。接着促進剤の量が耐熱層の約15重量パーセントを超えると、火炎バリアとしての耐熱層の有効性が低下する危険性があり、加えて、火炎に曝された際にガスが発生する場合に、毒性及び煙濃度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0049】
多層シートの形成方法
層状シートを形成し、続いて後続の処理を行う方法は、以下の工程:
(i)7~25重量パーセントの非水性成分を含む均一に混合された水性スラリーを形成する工程であって、非水性成分は、無機耐熱小板と接着促進剤とを更に含み、無機耐熱小板は、85~99重量パーセントの量で存在し、接着促進剤は、1~15重量パーセントの量で存在する工程と、
(ii)スラリーを基材の1つの表面に堆積させて層状シートを形成する工程と、
(iii)耐熱層中の残留水分含有量が10重量%以下になるまで、層状シートを80℃~110℃の温度で乾燥する工程と、を含む。
【0050】
非水性成分がスラリーの11.5重量パーセントを超える場合、紙に堆積する前にスラリーを脱空気(脱気)することが好ましい。これにより、空気の滞留による欠陥が軽減される。
【0051】
好ましくは、スラリーの非水性成分含有量が7.0~8.5パーセントであり、所望のコーティング重量が27gsm以上である場合、コーティングは、複数の工程で塗布される。例えば、30gsmの合計コーティング重量は、それぞれ15gsmの耐熱材料を提供するスラリーを2回塗布することによって、又は10gsmで3回塗布することによって達成することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、層状シートは、耐熱層中の残留水分含有量が3重量パーセント以下になるまで、80~110℃の温度で乾燥される。いくつかの他の実施形態では、この方法は、耐熱層中の残留水分含有量が10パーセント未満になった後、工程(iii)の乾燥温度を150~180℃に上昇させる任意の工程を含む。
【0053】
好ましくは、非水性成分は、10~20重量パーセントのスラリーを含む。いくつかの実施形態では、特にスロットダイが使用される場合、非水性成分は、10~13重量パーセントのスラリーを含む。他の実施形態では、ナイフオーバーロール(knife-over-roll)コーティングが使用される場合、非水性成分は、15~20重量パーセントのスラリーを含む。
【0054】
好ましくは、層状シートは、湿潤したとき、2パーセント以下の収縮を有する。
【0055】
基材を非水性成分材料でコーティングする前に、基材は、より良好な湿潤を促進するために処理されていてもよい。このような処理の例は、プラズマ又はコロナ処理である。
【0056】
好ましくは、耐熱小板は、5A~5000Aの粒子厚さ及び15~25マイクロメートルの平均直径を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、シートは、ASTM D-149-20に従って試験した場合、20kV/mmの最小絶縁破壊強度を有する。
【0058】
多層シートの使用
多層耐火性シートの用途の1つは、航空機用の熱管理用途のための火炎バリア層としてである。このような用途の例は、米国特許第8,292,027号明細書に記載されているような熱音響ブランケットである。
【0059】
別の用途は、熱及び電気絶縁管理並びに火炎バリア保護を提供する電池保護システムとしてである。この用途の例は、米国特許出願公開第2020/0259144号明細書に記載されている。
【0060】
更なる用途も考えられ得る。
【0061】
試験方法
基材の湿潤引張り強度は、TAPPI T456 om-10 水で飽和した紙及び板紙の引張り破断強度(Tensile Breaking Strength of Water-saturated Paper and Paperboard)(「湿潤引張り強度」)に従って測定した。
【0062】
基材の乾燥引張り強度は、TAPPI T494 om-06 紙及び板紙の引張り特性(Tensile Properties of Paper and Paperboard)(一定速度の伸長装置を使用)に従って測定した。
【0063】
基材の表面平滑度は、TAPPI T538 om-08 紙及び板紙の粗さ(Roughness of Paper and Paperboard)(シェフィールド法(Sheffield Method))に従って測定した。
【0064】
シート及びシートの構成層の厚さは、ASTM D-374-16に従って測定した。
【0065】
シートの寸法安定性は、片面が湿潤に曝された場合、及びFAA及びTPP試験で直面する火炎温度に曝された場合、少なくとも2分間、平らに保持するその能力、即ち関連するしわ又はたたみ目がないことに基づいて評価した。評価は、「低」、「中」、又は「高」であった。
【0066】
耐熱層の乾燥面積重量(基本重量)は、耐熱層でコーティングする前の基材の重量を測定し、シートの重量を測定し、シートの重量から基材の重量を差し引くことによって得た。使用された標準は、ISO 536(1995)坪量の決定(Determination of Grammage)、TAPPI T 410 紙及び板紙の坪量(Grammage of Paper and Paperboard)(単位面積あたりの重量(Weight per Unit Area))又はASTM D-3776-96であった。
【0067】
基材の密度は、基材の厚さと基本重量の測定値に基づいた計算値である。
【0068】
耐熱層の水分含有量は、ISO 287 (1985) 水分含有量の決定-オーブン乾燥法(Determination of Moisture Content-Oven Drying Method)に従って測定された。
【0069】
シートの難燃性は2つの方法で評価された:
(i)Title 14 CFR,Part 25-Subpart D,§25.855 Cargo or Baggage Compartments,Appendix F, Part III, paragraph (a)(3)。これは、以降FAA試験と呼ばれる。
(ii)ASTM D1408 - 1987 直火法による衣料用材料の遮熱性能の標準試験方法(Standard Test Method for Thermal Protective Performance of Materials for Clothing by Open-Flame Method)(TPP)。この試験の主な特徴は、2cal/秒の熱流束(炎50パーセント/輻射50パーセント)で950℃の火炎であり、試料を直接火炎に5分間曝露して、FAA試験中に火炎バリア複合シートに及ぼされる必要な熱機械的応力レベルを再現することである。試料には、火炎が試料の平面を浸透できることなく、試料の下面に当たる直接火炎に曝されるのに耐えるその能力に基づいて、合格/不合格のスコアが割り当てられている。
【0070】
絶縁破壊強度は、ASTM D-149-20に従って試験した。
【0071】
耐熱層と基材の間の結合強度は、2つの層の分離の容易さによって評価され、「良好」、「より良好」、「最良」、又は「不良」に分類された。耐熱膜層の露出面に結合された強化基材の助けを借りずに基材から耐熱層の任意の実質的な部分を除去する実用的な方法がなかった場合、結果は、良好、より良好、又は最良の範疇にあるとみなされた。評価における更なるプラスの要因は、かなり曲げた後でも無機耐熱材料が基材の表面に結合したままであるかどうかであった。
【実施例】
【0072】
以下の実施例では、特に示されない限り、全ての部及びパーセントは、重量によるものであり、全ての度は、摂氏である。本発明に従って調製される実施例は、数値で示される。対照又は比較例は、文字で示される。
【0073】
実施例1
固形分15パーセントに濃縮され、固形分5重量パーセントの帯電ラテックス接着促進剤を含むバーミキュライト分散物を、固定ギャップコーティング(fixed gap coating)システムを使用して厚さ5ミルのメタアラミド紙にコーティングして、メタアラミド紙に耐熱層を形成した。メタアラミド紙は、DuPontのNomex(登録商標)T818であり、バーミキュライト分散物は、Dupre MineralsのDM217であった。T818紙は、雲母小板と、メタアラミド繊維フロックと、フィブリドの形態のポリマーバインダーとを含んだ。
【0074】
この紙は、148gsmの基本重量、1.13g/ccの密度、機械方向での52N/cm及び幅方向での38N/cmの乾燥引張り強度を有した。コーティングされた紙は、バーミキュライト層の水分含有量が5パーセント未満になるまで、空気浮上式オーブン(air flotation oven)にて160℃を超えない温度で15分間乾燥させた。耐熱層の乾燥コーティング重量は、32gsmであった。シートの厚さは、0.15mmであった。結合強度は、「より良好」と評価された。寸法安定性は、「高」と評価された。
【0075】
2層シートは、FAA試験を受けた。バーミキュライト層側が火炎に曝されたとき、試料は、火炎伝播に対して良好な耐性を示し、バーミキュライト層が、効果的な火炎バリアとして機能した。TPP難燃性試験に従って試験した場合、シートは5分後に火炎が浸透しなかった。どちらの試験も「合格」として記録された。
【0076】
実施例2
この実施例は、接着促進剤の量が固形分の3重量パーセントであったことを除いて、実施例1と同様の方法で調製した。耐熱層の重量は、30gsmであった。
【0077】
結合強度は、「良好」、TPP試験は、「合格」と判断された。寸法安定性は、「高」と評価された。
【0078】
比較例A
比較例Aは、DuPontから以前に(formerly)入手可能な製品であるNomex(登録商標)XF20であった。Nomex(登録商標)XF20は、基材と耐熱層とを含む2層の耐火性シートである。ASTM D-374に従って測定した場合、シートの公称厚さは、6ミルであった。基材層は、ASTM D-3776-96に従って測定した場合、42gsmの公称基本重量を有する5ミルのNomex(登録商標)413紙であった。この製品は、Kawkaの米国特許第9,316,342号明細書に更に記載されている。耐熱層は、ASTM D646-13に従って測定した場合、30gsmの公称基本重量を有した。
【0079】
このシートは、FAAとTPPの両方の可燃性試験に合格した。結合強度は、「不良」と評価された。寸法安定性は、「中」と評価された。
【0080】
比較例B
この実施例は、Kangの米国特許出願公開第2020/0259144号明細書の実施例1に従って調製され、以下に簡単に説明される。
【0081】
Morgan Advanced Materials,Augusta,Georgiaから入手可能なNomex(登録商標)T818紙の第1及び第2の外層、並びにSuperwool(登録商標)Plus 332-E紙の内層を有するシートを作製した。T818紙の厚さは、3ミル(0.076mm)であった。Superwool(登録商標)Plus 332-E紙は、アルカリアースシリケートウール及びアクリル系バインダーから作製され、約40ミル(1.0mm)の測定厚さを有した。
【0082】
シートは、TPP試験に合格したが、シート構成要素の厚さが比較的厚いため、シートの柔軟性が乏しく、即ち硬すぎて、シートの湾曲を必要とする用途での使用には適していなかった。寸法安定性は、「高」と評価された。
【0083】
比較例C
この例は、基本重量180gsmの6ミル(0.152mm)のT818紙のみからなった。試料は、FAA燃焼試験(FAA flame test)に不合格であった。寸法安定性は、「高」と評価された。
【0084】
比較例D
この例は、公称厚さ8ミル(0.20mm)及び公称基本重量240gsmを有するT818紙のみからなった。
試料は、FAA燃焼試験に不合格であった。寸法安定性は、「高」と評価された。
【0085】
比較例E
この例は、公称基本重量298gsmの10ミル(0.25mm)のT818紙のみからなった。試料は、FAA燃焼試験に不合格であった。寸法安定性は、「高」と評価された。
【0086】
比較例F
バーミキュライト層を、スロットダイコーティングシステムを使用して、グレードML963HSとしてSPVから入手可能な固形分10.8重量パーセントのバーミキュライト分散物を、厚さ10.8ミルの親水性RagKraft紙に堆積させることによって形成した。後に剥離紙として機能するこの紙は、Cottrell Paper Company,Rock City Falls,NYからブランドDPT30Rとして入手した。コーティングされた紙を、無機耐熱層の水分含有量が5パーセント未満になるまで、空気浮上式オーブンにて110℃を超えない温度で15分間乾燥させた。差次的な乾燥温度を、上部(バーミキュライト側)と下部(剥離紙側)に適用した。上部側の乾燥プロファイルは、49度で5分、60度で5分、及び71度で5分であった。下部側の乾燥は、99度で15分間維持された。耐熱層の公称乾燥コーティング重量は、30gsmであった。
【0087】
最終的なシート積層体は、5ミルのT818 Nomex(登録商標)紙を、RagKraft剥離紙のバーミキュライト側に接着的に結合させることによって作製した-その上に無機耐熱層が形成された。接着剤は、公称乾燥面積重量22gsmを有する難燃性溶剤系の熱可塑性接着剤タイプRK35502Kであり、Dunmore Corporation,Bristol,PAから入手した。接着剤は、グラビアラミネーターを介して塗布した。結合した構造を周囲温度及び圧力下で72時間硬化させた。硬化したら、RagKraft剥離紙を取り除いた。シートの厚さは、0.17mm、面積重量は、210gsmであった。
【0088】
このシートは、FAAとTPPの両方の可燃性試験に合格した。結合強度は、「最良」と評価された。寸法安定性は、「高」と評価された。
この例では許容可能な結果が得られたが、他の特徴により、実施例1又は実施2ほど望ましい選択肢とならなかった。このような特徴は、シートの重量が重くなること、火災事故の際に燃える材料が増えること、更なる火災、接着剤の使用による煙及び毒性(FST)の問題、接着剤に残留する溶剤による炎上リスク、及び接着剤を組み込む更なる加工工程である。
【0089】
比較例G
この例は、T818紙を、また同じくDuPontの雲母を含まない5ミルのNomex(登録商標)タイプ411紙に置き換えたことを除き、比較例Fに従って調製した。試料は、TPP試験とFAA試験の両方に合格したが、FAAプロトコルからの試験試料は、暴露後に亀裂が発生したことが判明し、次善(sub-optimal)であると判断された。結合強度は、「最良」の範疇にあると評価された。火炎暴露時の寸法安定性は、「中」に過ぎなかった。
【0090】
比較例H
この例は、5ミルのNomex(登録商標)411基材の代わりに、205gsmの基本重量を有する23ミルのNomex(登録商標)411紙を使用したことを除いて、比較例Gに従って調製した。寸法安定性は、「低」と評価された。この試料は、FAA試験に不合格であった。
【0091】
試験結果を以下の表1にまとめる。
【0092】
*は、予測結果を示す。
【0093】
【国際調査報告】