(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】多能性幹細胞に特異的なマーカー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240305BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20240305BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240305BHJP
C12Q 1/6855 20180101ALI20240305BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240305BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20240305BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20240305BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240305BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240305BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240305BHJP
C12N 5/073 20100101ALN20240305BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240305BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C12Q1/04 ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6855 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6874 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/06
G01N33/50 P
G01N33/68
C12N5/073
C12N5/10
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555126
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 US2022019127
(87)【国際公開番号】W WO2022192131
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510003830
【氏名又は名称】フジフィルム セルラー ダイナミクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】バーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スミス スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ストラウス アン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045CB01
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4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、多能性幹細胞に特異的なマーカーを提供する。特定的には、本開示は、多能性幹細胞により選択的に発現される核酸及びポリペプチドマーカー、並びにかかるマーカーを検出することにより1つ又は複数の多能性幹細胞の存在及び/又は不在を検出するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞を検出するための方法であって、前記方法は、
(a)複数の細胞を含有する目的サンプルを得ることと、
(b)前記目的サンプルを解析して少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現を検出することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が前記目的サンプル中で検出されたときに前記目的サンプルが多能性幹細胞を含有すると決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記目的サンプルが誘導多能性幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的サンプルが胚性多能性幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記目的サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、ドロップレットディジタルポリメラーゼ連鎖反応(dd-PCR)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記技術が、マイクロアレイ解析又は次世代シーケンシングを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
多能性幹細胞を検出するための方法であって、前記方法は、
(a)複数の細胞を含有する目的サンプルを得ることと、
(b)前記目的サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された前記発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプルは多能性幹細胞を実質的に含有しない、ことと、
(d)ステップ(b)で検出された前記発現レベルが前記参照発現レベルより高いときに前記目的サンプルが多能性幹細胞を含有すると決定することと、又はステップ(b)で検出された前記発現レベルが前記参照発現レベル以下であるときに前記目的サンプルが多能性幹細胞を実質的に含有しないと決定することと、
を含む、方法。
【請求項10】
サンプル中の多能性幹細胞の数を定量するための方法であって、前記方法は、
(a)複数の細胞を含有する目的サンプルを得ることと、
(b)前記目的サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された前記発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、前記少なくとも1つの参照サンプルは多能性幹細胞を含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプル中の細胞は実質的にすべて多能性幹細胞である、ことと、
(d)ステップ(c)での前記比較に基づいて前記目的サンプル中の多能性幹細胞の量を計算することと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記目的サンプルが誘導多能性幹細胞を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記目的サンプルが胚性多能性幹細胞を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記目的サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記目的サンプルが誘導多能性幹細胞を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記目的サンプルが胚性多能性幹細胞を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記目的サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
治療用産物中の残留iPSCを検出するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)iPSCから産生された治療用産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプルを解析して少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現を検出することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が前記サンプルで検出されたときに前記治療用産物が残留iPSCを含有すると決定することと、
を含む、アッセイ。
【請求項24】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項23に記載のアッセイ。
【請求項25】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項23に記載のアッセイ。
【請求項26】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項23に記載のアッセイ。
【請求項27】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項25に記載のアッセイ。
【請求項28】
治療用産物中の残留iPSCの数を定量するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)iPSCから産生された治療用産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された前記発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、前記少なくとも1つの参照サンプルはiPSCを含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプル中の細胞は実質的にすべてiPSCである、ことと、
(d)ステップ(c)での前記比較に基づいて前記治療用産物中の残留iPSCの数を定量することと、
を含む、アッセイ。
【請求項29】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項28に記載のアッセイ。
【請求項30】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項28に記載のアッセイ。
【請求項31】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項28に記載のアッセイ。
【請求項32】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項30に記載のアッセイ。
【請求項33】
治療用産物中の残留iPSCを検出するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)iPSCから産生された治療用産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された前記発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプルは多能性幹細胞を実質的に含有しない、ことと、
(d)ステップ(b)で検出された前記発現レベルが前記参照発現レベルより高いときに前記治療用産物が残留iPSCを含有すると決定することと、又はステップ(b)で検出された前記発現レベルが前記参照発現レベル以下であるときに前記治療用産物が残留iPSCを実質的に含有しないと決定することと、
を含む、アッセイ。
【請求項34】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項33に記載のアッセイ。
【請求項35】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項33に記載のアッセイ。
【請求項36】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項33に記載のアッセイ。
【請求項37】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項35に記載のアッセイ。
【請求項38】
異なる分化時間で治療用産物中の残留iPSCの数を定量するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)治療用産物の第1のサンプルを得ることであって、前記第1のサンプルは第1の分化時間で又は前記分化の開始前に得られ、前記第1のサンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)異なる分化時間で前記治療用産物の少なくとも1つの追加サンプルを得ることであって、前記少なくとも1つの追加サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(c)(a)及び(b)で得られた前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(d)ステップ(c)での前記測定に基づいて異なる分化時間で前記治療用産物中のiPSCの数を定量することと、
を含む、アッセイ。
【請求項39】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項38に記載のアッセイ。
【請求項40】
ステップ(c)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項38に記載のアッセイ。
【請求項41】
ステップ(c)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項38に記載のアッセイ。
【請求項42】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項40に記載のアッセイ。
【請求項43】
分化産物の純度を決定するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)分化産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された前記発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、前記少なくとも1つの参照サンプルはiPSCを含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプル中の細胞は実質的にすべてiPSCである、ことと、
(d)ステップ(c)での前記比較に基づいて前記サンプル中のiPSCの量を計算することにより前記分化産物の純度を決定することと、
を含む、アッセイ。
【請求項44】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項43に記載のアッセイ。
【請求項45】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項43に記載のアッセイ。
【請求項46】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項43に記載のアッセイ。
【請求項47】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項45に記載のアッセイ。
【請求項48】
分化産物の純度を決定するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)分化産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された前記発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプルは多能性幹細胞を実質的に含有しない、ことと、
(d)ステップ(c)での前記比較に基づいて前記サンプル中のiPSCの量を計算することにより前記分化産物の純度を決定することと、
を含む、アッセイ。
【請求項49】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項48に記載のアッセイ。
【請求項50】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項48に記載のアッセイ。
【請求項51】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項48に記載のアッセイ。
【請求項52】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項50に記載のアッセイ。
【請求項53】
iPSC集団の分化能を評価するための方法であって、前記方法は、
(a)iPSC集団の第1のサンプルを得ることであって、前記第1のサンプルは前記iPSCの分化が誘発される前に得られ、前記第1のサンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記iPSC集団の少なくとも1つの追加サンプルを得ることであって、前記少なくとも1つの追加サンプルは前記iPSCの分化が誘発された後に得られ、前記少なくとも1つの追加サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(c)(a)及び(b)で得られた前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(d)ステップ(c)で検出された前記異なるサンプルからの発現レベルを互いに及び/又は参照発現レベルと比較することにより前記iPSC集団中のiPSCの分化能を評価することと、
を含む、方法。
【請求項54】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
iPSC集団の多能性を評価するための方法であって、前記方法は、
(a)iPSC集団のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された前記発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、前記少なくとも1つの参照サンプルはiPSCを含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプル中の細胞は実質的にすべて、分化する能力のあるiPSCである、ことと、
(d)ステップ(c)での前記比較に基づいて前記iPSC集団中のiPSCの多能性を評価することと、
を含む、方法。
【請求項59】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
iPSC集団の多能性を評価するための方法であって、前記方法は、
(a)iPSC集団の第1のサンプルを得ることであって、前記第1のサンプルは前記iPSCの分化が誘発される前に得られ、前記第1のサンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記iPSC集団の少なくとも1つの追加サンプルを得ることであって、前記少なくとも1つの追加サンプルは前記iPSCの分化が誘発された後に得られ、前記少なくとも1つの追加サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(c)(a)及び(b)で得られた前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(c)で検出された前記異なるサンプルからの発現レベルを互いに及び/又は参照発現レベルと比較することにより前記iPSC集団中のiPSC細胞の多能性を評価することと、
を含む、方法。
【請求項64】
前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
治療用産物中の残留iPSCを検出するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【請求項69】
前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、請求項68に記載のアッセイキット。
【請求項70】
治療用産物中の残留iPSCを検出するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【請求項71】
治療用産物中のiPSCの数を定量するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【請求項72】
前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、請求項71に記載のアッセイキット。
【請求項73】
治療用産物中のiPSCの数を定量するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【請求項74】
分化産物の純度を決定するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【請求項75】
前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、請求項74に記載のアッセイキット。
【請求項76】
分化産物の純度を決定するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【請求項77】
iPSC集団の分化能を評価するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【請求項78】
前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、請求項77に記載のアッセイキット。
【請求項79】
iPSC集団の分化能を評価するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【請求項80】
iPSC集団の多能性を評価するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【請求項81】
前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の前記発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、請求項80に記載のアッセイキット。
【請求項82】
iPSC集団の多能性を評価するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は、参照により本願にその全体が組み込まれる配列表を含有する。
【0002】
本開示は、一般的には、多能性幹細胞に特異的なマーカーに関する。特定的には、本開示は、多能性幹細胞により選択的に発現される核酸及びポリペプチドマーカー、並びに1つ又は複数のかかるマーカーの存在及び/又は不在を検出することにより1つ又は複数の多能性幹細胞の存在及び/又は不在を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多能性幹細胞(PSC)は、in vitroで無制限セルフリニューアル能(すなわち、未分化状態で無期限分裂能)を呈するとともに、早期胚の3つの一次胚細胞層を表す細胞型(すなわち、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉)への分化能を有すると一般に認識されている。これらの3つの胚葉になることができることから、PSCは、それにより成体生物のすべての細胞型を生み出すことができる。Thomson et al.(Science,1998;282:1145-1147)を参照されたい。環境条件及び/又は細胞シグナリング経路の変化などの特定状況下では、PSCは、セルフリニューアルサイクルから出て3つの胚葉に由来する特化細胞型に分化する。
【0004】
初期には、PSCは、胚(胚性幹細胞ESC)に由来するものであったが、より最近では、PSCは、リプログラミング因子の発現により成体(体性)細胞から産生可能であることが示された。Takahashi et al.(Cell,2006,126(4):663-76)を参照されたい。誘導性PSC(iPSC)と称されるこうしたPSCは、リプログラミング因子をコードするジェネティック材料を体細胞に送達して体細胞から多能性状態への逆戻りをトリガーすることにより、一般に産生可能である。そのため、iPSCは、ESCの実用性を制限する倫理的及び技術的制約(たとえば、患者マッチ細胞系の産生)のない重要なPSC源となる。
【0005】
iPSCなどのPSCは、その多能性の結果として、たとえば、医学的及び科学的研究、薬剤発見、細胞療法、再生医学、並びに組織工学の分野で重要である。PSCが続いて特化細胞に分化される用途では、たとえば、組織工学では、いずれのPSCも分化プロセス後に残留するかを決定できることが望ましい。例として、細胞療法製品及び工学操作組織では、かかる細胞はin vivoで奇形腫を形成する可能性(すなわち、腫瘍原性)があるので、残留未分化PSCの存在は品質管理課題となる。
【0006】
PSCの存在を検出するための確立された技術としては、表現型多能性アッセイ(たとえば、in vivoでの胚様体形成、奇形腫形成)、さらにはPSCに関連する分子マーカーの検出を含む分子多能性アッセイが挙げられてきた。しかしながら、この目的に使用されるPSCで差次的発現される多くのマーカーはまた、分化細胞でもなんらかの有意発現レベルを示すので(とはいえ、異なる発現レベル及び/又は異なる発現パターンで)、より大きな派生組織細胞集団内で少数の残留PSCを検出するには問題があり、取組みが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、PSCでユニークに発現されるマーカー遺伝子のサブセットを提供することにより、以上に記載の技術上の制約に対処する。それゆえ、これらのマーカー遺伝子は、たとえば、主として分化PSC由来細胞集団中の少数の残留未分化PSCをはじめとする少数のPSCであってもその存在を検出するための分子マーカーとして有用である。本開示の非限定的実施形態としては、下記のものが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]多能性幹細胞を検出するための方法であって、前記方法は、
(a)複数の細胞を含有する目的サンプルを得ることと、
(b)前記目的サンプルを解析して少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現を検出することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が前記目的サンプル中で検出されたときに前記目的サンプルが多能性幹細胞を含有すると決定することと、
を含む、方法。
【0009】
[2]目的サンプルが誘導多能性幹細胞を含む、[1]に記載の方法。
【0010】
[3]目的サンプルが胚性多能性幹細胞を含む、[1]に記載の方法。
【0011】
[4]前記目的サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[1]に記載の方法。
【0012】
[5]ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルの測定により検出される、[1]に記載の方法。
【0013】
[6]ステップ(b)で、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルの測定により検出される、[1]に記載の方法。
【0014】
[7]前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、ドロップレットディジタルポリメラーゼ連鎖反応(dd-PCR)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[5]に記載の方法。
【0015】
[8]前記技術がマイクロアレイ解析又は次世代シーケンシングを含む、[7]に記載の方法。
【0016】
[9]多能性幹細胞を検出するための方法であって、前記方法は、
(a)複数の細胞を含有する目的サンプルを得ることと、
(b)前記目的サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプルは多能性幹細胞を実質的に含有しない、ことと、
(d)ステップ(b)で検出された発現レベルが前記参照発現レベルより高いときに前記目的サンプルが多能性幹細胞を含有すると決定することと、又はステップ(b)で検出された発現レベルが前記参照発現レベル以下であるときに前記目的サンプルが多能性幹細胞を実質的に含有しないと決定することと、
を含む、方法。
【0017】
[10]サンプル中の多能性幹細胞の数を定量するための方法であって、前記方法は、
(a)複数の細胞を含有する目的サンプルを得ることと、
(b)前記目的サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、前記少なくとも1つの参照サンプルは多能性幹細胞を含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプル中の細胞は実質的にすべて多能性幹細胞である、ことと、
(d)ステップ(c)での比較に基づいて前記目的サンプル中の多能性幹細胞の量を計算することと、
を含む、方法。
【0018】
[11]目的サンプルが誘導多能性幹細胞を含む、[9]に記載の方法。
【0019】
[12]目的サンプルが胚性多能性幹細胞を含む、[9]に記載の方法。
【0020】
[13]前記目的サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[9]に記載の方法。
【0021】
[14]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[9]に記載の方法。
【0022】
[15]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[9]に記載の方法。
【0023】
[16]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[14]に記載の方法。
【0024】
[17]目的サンプルが誘導多能性幹細胞を含む、[10]に記載の方法。
【0025】
[18]目的サンプルが胚性多能性幹細胞を含む、[10]に記載の方法。
【0026】
[19]前記目的サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[10]に記載の方法。
【0027】
[20]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[10]に記載の方法。
【0028】
[21]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[10]に記載の方法。
【0029】
[22]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[20]に記載の方法。
【0030】
[23]治療用産物中の残留iPSCを検出するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)iPSCから生産された治療用産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプルを解析して少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現を検出することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が前記サンプルで検出されたときに前記治療用産物が残留iPSCを含有すると決定することと、
を含む、アッセイ。
【0031】
[24]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[23]に記載のアッセイ。
【0032】
[25]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[23]に記載のアッセイ。
【0033】
[26]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[23]に記載のアッセイ。
【0034】
[27]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[25]に記載のアッセイ。
【0035】
[28]治療用産物中の残留iPSCの数を定量するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)iPSCから生産された治療用産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、前記少なくとも1つの参照サンプルはiPSCを含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプル中の細胞は実質的にすべてiPSCである、ことと、
(d)ステップ(c)での比較に基づいて前記治療用産物中の残留iPSCの数を定量することと、
を含む、アッセイ。
【0036】
[29]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[28]に記載のアッセイ。
【0037】
[30]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[28]に記載のアッセイ。
【0038】
[31]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[28]に記載のアッセイ。
【0039】
[32]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[30]に記載のアッセイ。
【0040】
[33]治療用産物中の残留iPSCを検出するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)iPSCから生産された治療用産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプルは多能性幹細胞を実質的に含有しない、ことと、
(d)ステップ(b)で検出された発現レベルが前記参照発現レベルより高いときに前記治療用産物が残留iPSCを含有すると決定することと、又はステップ(b)で検出された発現レベルが前記参照発現レベル以下であるときに前記治療用産物が残留iPSCを実質的に含有しないと決定することと、
を含む、アッセイ。
【0041】
[34]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[33]に記載のアッセイ。
【0042】
[35]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[33]に記載のアッセイ。
【0043】
[36]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[33]に記載のアッセイ。
【0044】
[37]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[35]に記載のアッセイ。
【0045】
[38]異なる分化時間で治療用産物中の残留iPSCの数を定量するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)治療用産物の第1のサンプルを得ることであって、前記第1のサンプルは第1の分化時間で又は分化の開始前に得られ、前記第1のサンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)異なる分化時間で治療用産物の少なくとも1つの追加サンプルを得ることであって、前記少なくとも1つの追加サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(c)(a)及び(b)で得られたサンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(d)ステップ(c)での測定に基づいて異なる分化時間で前記治療用産物中のiPSCの数を定量することと、
を含む、アッセイ。
【0046】
[39]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[38]に記載のアッセイ。
【0047】
[40]ステップ(c)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[38]に記載のアッセイ。
【0048】
[41]ステップ(c)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[38]に記載のアッセイ。
【0049】
[42]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[40]に記載のアッセイ。
【0050】
[43]分化産物の純度を決定するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)分化産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、前記少なくとも1つの参照サンプルはiPSCを含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプル中の細胞は実質的にすべてiPSCである、ことと、
(d)ステップ(c)での比較に基づいて前記サンプル中のiPSCの量を計算することにより分化産物の純度を決定することと、
を含む、アッセイ。
【0051】
[44]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[43]に記載のアッセイ。
【0052】
[45]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[43]に記載のアッセイ。
【0053】
[46]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[43]に記載のアッセイ。
【0054】
[47]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[45]に記載のアッセイ。
【0055】
[48]分化産物の純度を決定するためのアッセイであって、前記アッセイは、
(a)分化産物のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプルは多能性幹細胞を実質的に含有しない、ことと、
(d)ステップ(c)での比較に基づいて前記サンプル中のiPSCの量を計算することにより分化産物の純度を決定することと、
を含む、アッセイ。
【0056】
[49]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[48]に記載のアッセイ。
【0057】
[50]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[48]に記載のアッセイ。
【0058】
[51]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[48]に記載のアッセイ。
【0059】
[52]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[50]に記載のアッセイ。
【0060】
[53]iPSC集団の分化能を評価するための方法であって、前記方法は、
(a)iPSC集団の第1のサンプルを得ることであって、前記第1のサンプルは前記iPSCの分化が誘発される前に得られ、前記第1のサンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)iPSC集団の少なくとも1つの追加サンプルを得ることであって、前記少なくとも1つの追加サンプルは前記iPSCの分化が誘発された後に得られ、前記少なくとも1つの追加サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(c)(a)及び(b)で得られたサンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(d)ステップ(c)で検出された異なるサンプルからの発現レベルを互いに及び/又は参照発現レベルと比較することにより前記iPSC集団中のiPSCの分化能を評価することと、
を含む、方法。
【0061】
[54]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[53]に記載の方法。
【0062】
[55]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[53]に記載の方法。
【0063】
[56]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[53]に記載の方法。
【0064】
[57]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[55]に記載の方法。
【0065】
[58]iPSC集団の多能性を評価するための方法であって、前記方法は、
(a)iPSC集団のサンプルを得ることであって、前記サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)前記サンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(b)で検出された発現レベルを参照発現レベルと比較することであって、前記参照発現レベルは、少なくとも1つの参照サンプル中の前記少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより得られたものであり、前記少なくとも1つの参照サンプルは複数の細胞を含み、前記少なくとも1つの参照サンプルはiPSCを含み、且つ前記少なくとも1つの参照サンプル中の細胞は実質的にすべて、分化する能力のあるiPSCである、ことと、
(d)ステップ(c)での比較に基づいて前記iPSC集団中のiPSCの多能性を評価することと、
を含む、方法。
【0066】
[59]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[58]に記載の方法。
【0067】
[60]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[58]に記載の方法。
【0068】
[61]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[58]に記載の方法。
【0069】
[62]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[60]に記載の方法。
【0070】
[63]iPSC集団の多能性を評価するための方法であって、前記方法は、
(a)iPSC集団の第1のサンプルを得ることであって、前記第1のサンプルは前記iPSCの分化が誘発される前に得られ、前記第1のサンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(b)iPSC集団の少なくとも1つの追加サンプルを得ることであって、前記少なくとも1つの追加サンプルは前記iPSCの分化が誘発された後に得られ、前記少なくとも1つの追加サンプルは複数の細胞を含有する、ことと、
(c)(a)及び(b)で得られたサンプル中で少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、ことと、
(c)ステップ(c)で検出された異なるサンプルからの発現レベルを互いに及び/又は参照発現レベルと比較することにより前記iPSC集団中のiPSC細胞の多能性を評価することと、
を含む、方法。
【0071】
[64]前記サンプル中の前記複数の細胞が、細胞混合物、細胞アグリゲート、又は組織の形態である、[63]に記載の方法。
【0072】
[65]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することにより検出される、[63]に記載の方法。
【0073】
[66]ステップ(b)で、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、前記マーカー遺伝子によりコードされる発現タンパク質のレベルを測定することにより検出される、[63]に記載の方法。
【0074】
[67]少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が、dd-PCR、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量PCR、定量RT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーションアッセイ、及び次世代シーケンシングからなる群から選択される技術を含むプロセスにより検出される、[65]に記載の方法。
【0075】
[68]治療用産物中の残留iPSCを検出するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【0076】
[69]前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、[68]に記載のアッセイキット。
【0077】
[70]治療用産物中の残留iPSCを検出するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【0078】
[71]治療用産物中のiPSCの数を定量するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【0079】
[72]前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、[71]に記載のアッセイキット。
【0080】
[73]治療用産物中のiPSCの数を定量するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【0081】
[74]分化産物の純度を決定するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【0082】
[75]前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、[74]に記載のアッセイキット。
【0083】
[76]分化産物の純度を決定するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【0084】
[77]iPSC集団の分化能を評価するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【0085】
[78]前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、[77]に記載のアッセイキット。
【0086】
[79]iPSC集団の分化能を評価するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【0087】
[80]iPSC集団の多能性を評価するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出するのに好適な少なくとも1つの試薬を含み、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する、アッセイキット。
【0088】
[81]前記試薬が、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子である少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することのできる核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、[80]に記載のアッセイキット。
【0089】
[82]iPSC集団の多能性を評価するためのアッセイ試薬であって、前記試薬は、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを特異的に検出することができ、前記少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現し、
前記試薬は、核酸、プローブ、又は1つ以上のプライマーを含む、アッセイ試薬。
【0090】
参照による組込み
本明細書に引用されている特許、刊行物、及び特許出願はすべて、あたかも各個別の特許、刊行物、又は特許出願が具体的且つ個別的に明示されてその全体があらゆる目的で参照により組み込まれるがごとく参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
本特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面付きの本特許又は特許出願公開のコピーは、必要料金を支払って要求すれば官庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】純iPSCサンプル、純フォトレセプター前駆体(PRP)細胞サンプル、及び異なるiPSC:PRP比を含有するiPSC/PRP混合物でのマーカー遺伝子LNCPRESS2、AC009446.1、及びAL117378.1の発現の検出を描く。マーカー遺伝子の発現は、細胞サンプルからcDNAを調製してから続いてドロップレットデジタルPCR(dd-PCR)を行うことにより測定された。
【0093】
【
図2】純iPSCサンプル、純網膜色素上皮(RPE)細胞サンプル、及び異なるiPSC:RPE比を含有するiPSC/RPE混合物でのマーカー遺伝子LNCPRESS2、AC009446.1、及びAL117378.1の発現の検出を描く。マーカー遺伝子の発現は、細胞サンプルからcDNAを調製してから続いてドロップレットデジタルPCR(dd-PCR)を行うことにより測定された。
【0094】
【発明を実施するための形態】
【0095】
本明細書で用いられる用語は、特定実施形態のみを記載することを目的とするものであり、限定を意図するものではないものと理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、とくに文脈上明確に規定されない限り、複数の指示対象を含む。そのため、たとえば、「a cell(細胞)」への言及は、1つ以上の細胞を含む。
【0096】
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者が通常理解しているものと同一の意味を有する。本明細書に記載のものに類似した又は等価な他の方法及び材料が本発明に有用でありうるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。
【0097】
本明細書で用いられる場合、「対象」、「個体」、又は「患者」は、本明細書では互換的に用いられ、限定されるものではないが、ヒト並びに非ヒト霊長動物を含む他の霊長動物、たとえば、アカゲザル、チンパンジー、並びに他の有尾及び無尾サル種、農場動物、たとえば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマ、飼育哺乳動物、たとえば、イヌ及びネコ、実験動物、たとえば、ウサギ、マウス、ラット、及びモルモット、飼育、野生、及び狩猟トリを含むトリ、たとえば、ニワトリ、シチメンチョウ、並びに他の家禽、アヒル及びガチョウ、その他を含めて、脊索動物門(Chordata)のいずれかのメンバーを意味する。この用語は、特定の年齢又は性別を表さない。そのため、この用語は、成体、若齢、及び新生個体、さらには男性及び女性を含む。いくつかの実施形態では、細胞(たとえば、多能性幹細胞をはじめとする幹細胞、プロジェニター細胞、又は組織特異的細胞)は、対象に由来する。いくつかの実施形態では、対象は非ヒト対象である。
【0098】
本明細書で用いられる場合、「細胞培養物」は、制御条件下で成長させた細胞を意味する。初代細胞培養物は、生物から直接摂取された初回継代培養前の細胞、組織、又は器官の培養物である。細胞は、細胞成長及び/又は分裂を促進する条件下で成長培地中に配置したとき、培養状態で拡大され、より大きな細胞集団をもたらす。細胞を培養状態で拡大したとき、細胞増殖率は、多くの場合、細胞の数を2倍にするのに必要な時間量(倍加時間という別名で知られる)により測定される。
【0099】
本明細書で用いられる場合、「フィーダー層」は、幹細胞の増殖を支持するために使用可能な非増殖性細胞層を意味する。フィーダー層の生成のためのプロトコルは、当技術分野で公知であり、インターネット上で、たとえば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)により維持されている国立幹細胞資源(National Stem Cell Resource)ウェブサイトで利用可能である。
【0100】
本明細書で用いられる場合、「分化」は、多能性幹細胞や他の幹細胞などの非特化細胞が成熟細胞に特有の特化された構造上及び/又は機能上の特徴を取得するプロセスを意味する。本明細書で用いられる場合、「拡大する」又は「増殖する」は、細胞分裂により細胞培養物中の細胞数を増加させるプロセスを意味しうる。本明細書のある特定の実施形態では、拡大相又は増殖相の間、細胞は、分化して成熟細胞を形成することはなく、分裂してより多くの(未分化)細胞を形成する。
【0101】
本明細書で用いられる場合、「胚様体」は、多能性幹細胞の3次元アグリゲートを意味する。これらの細胞は、内胚葉、中胚葉、及び外胚葉の3つの胚葉の細胞への分化を起こすことが可能である。複合細胞接着の確立及び胚様体マイクロ環境内のパラクリンシグナリングを含めて、3次元構造は、分化及び形態形成を可能にする。
【0102】
本明細書で用いられる場合、「幹細胞」は、セルフリニューアル能、すなわち、その非最終分化状態を維持しつつ数多くの細胞分裂周期を遂行する能力を有する細胞を意味する。幹細胞は、全能性、多能性、多分化能性、寡能性、又は単能性でありうる。幹細胞は、たとえば、胚性、胎性、羊膜、成体、又は誘導多能性の幹細胞でありうる。
【0103】
本明細書で用いられる場合、「多能性幹細胞」(PSC)は、無期限に自己再生して成体生物のいずれかの他の細胞型に分化する能力を有する細胞を意味する。一般的には、多能性幹細胞は、免疫不全(SCID)マウスに移植したときに奇形腫を誘発する能力のある、3つの胚葉すべての細胞型に分化する能力のある(たとえば、外胚葉性、中胚葉性、及び内胚葉性の細胞型に分化可能である)、且つPSCに特有の1つ以上のマーカーを発現する、幹細胞である。胚性幹細胞(ESC)やiPSCなどのPSCにより発現されたかかるマーカーの例としては、Oct4、アルカリ性ホスファターゼ、SSEA-3表面抗原、SSEA-4表面抗原、nanog、TRA-1-60、TRA-1-81、SOX2、及びREX1が挙げられる。本開示の範囲内のPSCは、たとえば、胚性幹細胞(ESC)又は誘導多能性幹細胞(iPSC)でありうる。
【0104】
本明細書で用いられる場合、「誘導多能性幹細胞」(iPSC)は、非多能性細胞、典型的には体性細胞から人工的に派生された多能性幹細胞型を意味する。いくつかの実施形態では、体性細胞はヒト体性細胞である。体性細胞の例としては、限定されるものではないが、真皮線維芽細胞、骨髄由来間葉細胞、心筋細胞、ケラチノサイト、肝細胞、胃細胞、神経幹細胞、肺細胞、腎細胞、脾細胞、及び膵細胞が挙げられる。体性細胞のそのほかの例としては、免疫系の細胞、たとえば、限定されるものではないが、B細胞、樹状細胞、顆粒球、先天性リンフォイド細胞、巨核球、単球/マクロファージ、ミエロイド由来サプレッサー細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、胸腺細胞、及び造血幹細胞が挙げられる。
【0105】
iPSCは、体性細胞で因子(本明細書ではリプログラミング因子といわれる)の1つ又は組合せを発現して又はその発現を誘導して体性細胞をリプログラムすることにより発生されうる。iPSCは、胎性、出生後、新生、若年、又は成体の体性細胞を用いて発生可能である。いくつかの場合には、体性細胞を多能性幹細胞にリプログラムするために使用可能な因子としては、たとえば、Oct4(Oct3/4)、Sox2、c-Myc、並びにKlf4、Nanog、及びLin28が挙げられる。いくつかの実施形態では、体性細胞は、少なくとも2つのリプログラミング因子、少なくとも3つのリプログラミング因子、又は少なくとも4つのリプログラミング因子を発現して、体性細胞を多能性幹細胞にリプログラムすることにより、リプログラムされうる。細胞は、たとえば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びセンダイウイルスベクターをはじめとするベクターを用いてリプログラミング因子を導入することにより、リプログラムされうる。代替的に、リプログラミング因子を導入するための非ウイルス技術としては、たとえば、mRNAトランスフェクション、miRNA感染/トランスフェクション、PiggyBac、ミニサークルベクター、及びエピソームプラスミドが挙げられる。iPSCはまた、たとえば、CRISPR-Cas9ベース技術を用いて、リプログラミング因子を導入することにより又は内因性プログラミング遺伝子を活性化することにより、発生されうる。
【0106】
本明細書で用いられる場合、「胚性幹細胞」は、胚組織、好ましくは胚盤胞又は桑実胚の内細胞塊、任意に細胞系として逐次継代されたものに由来する胚性細胞である。この用語は、好ましくは胚の残りの部分を破壊することなく胚の1つ以上の割球から単離された細胞を含む。この用語はまた、体性細胞核移入により産生された細胞も含む。ESCは、たとえば、精細胞と卵細胞との融合、核移入、又は単為発生により産生された接合体期、割球期、又は胚盤胞期の哺乳動物胚から産生又は派生可能である。ヒトESCとしては、限定されるものではないが、MAO1、MAO9、ACT-4、No.3、H1、H7、H9、H14、及びACT30胚性幹細胞が挙げられる。模範的多能性幹細胞としては、胚盤胞期胚の内細胞塊(ICM)に由来する胚性幹細胞、さらには卵割期胚又は桑実期胚の1つ以上の割球に由来する胚性幹細胞が挙げられる。これらの胚性幹細胞は、体性細胞核移入(SCNT)、単為発生、及び雄性発生を含めて、受精により又は無性手段により産生された胚性材料から発生可能である。PSC単独では、すべての胚外性組織(たとえば、in vivoでの胎盤又はin vitroでの栄養芽細胞)に寄与する潜在能力を欠如するので、子宮に移植したときに胎子又は成体動物になることができない。
【0107】
本明細書で用いられる場合、「野生型」、「天然に存在する」、及び「非修飾」という用語は、天然に存在する典型的な(又は最も一般的な)形態、外観、表現型、又は株、たとえば、天然源に存在しそれから単離可能な細胞、生物、ポリヌクレオチド、タンパク質、マクロ分子複合体、遺伝子、RNA、DNA、又はゲノムの典型的な形態を意味するものとして本明細書で用いられる。野生型の形態、外観、表現型、又は株は、意図的修飾前の起源親の働きをする。そのため、変異、バリアント、工学操作、組換え、及び修飾の形態は、野生型の形態ではない。
【0108】
「単離された」とは、例として、たとえば、マーカー分子を含めて、細胞、ポリヌクレオチド、又はポリペプチド分子が言及されたとき、指示分子がその分子が天然で見いだされる生物体から分離されたディスクリートなものであること及び/又は同一型の他の生物学的マクロ分子の実質的不在下で存在することを意味する。ポリヌクレオチドに関する「単離された」という用語は、天然で通常それに会合している配列を全体的若しくは部分的に欠く核酸分子、又は天然に存在する通りであるがそれに会合している異種配列を有する配列、又は染色体から解離された分子のことである。
【0109】
本明細書で用いられる場合、「精製」という用語は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%の当該分子が存在することを意味する。
【0110】
「工学操作」、「遺伝子工学操作」、「遺伝子修飾」、「組換え」、「修飾」、「天然に存在しない」、及び「非ネイティブ」という用語は、生物又は細胞のゲノムの意図的人的マニピュレーションを意味する。これらの用語は、本明細書に定義されるようにゲノム編集を含むゲノム修飾の方法、さらには遺伝子発現又は不活性化を改変する技術、酵素工学操作、指向進化、知識ベース設計、ランダム変異誘発方法、遺伝子シャフリング、コドン最適化などを包含する。遺伝子工学操作の方法は、当技術分野で公知である。
【0111】
本明細書で用いられる場合、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語はすべて、ヌクレオチドのポリメリック形を意味する。本明細書で用いられる場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、線状形のときに1つの5’末端及び1つの3’末端を有し1つ以上の核酸配列を含みうるヌクレオチドのポリメリック形を意味する。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)、それらのアナログ、又はそれらの組合せでありうるとともに、いずれの長さであってもよい。ポリヌクレオチドは、いずれかの機能を発揮しうるとともに、各種二次及び三次構造を有しうる。これらの用語は、天然ヌクレオチドの既知のアナログ並びに塩基、糖、及び/又はホスフェート部分が修飾されたヌクレオチドを包含する。特定ヌクレオチドのアナログは、同一塩基対合特異性を有する(たとえば、AとTとの塩基対のアナログ)。ポリヌクレオチドは、1つの修飾ヌクレオチド又は複数の修飾ヌクレオチドを含みうる。修飾ヌクレオチドの例としては、フッ素化ヌクレオチド、メチル化ヌクレオチド、及びヌクレオチドアナログが挙げられる。ヌクレオチド構造は、ポリマーをアセンブルする前又はその後に修飾されうる。重合に続いて、ポリヌクレオチドは、たとえば、標識性成分又は標的結合性成分とのコンジュゲーションを介して、追加的に修飾されうる。ヌクレオチド配列には、非ヌクレオチド成分を組み込みうる。これらの用語はまた、合成の、天然に存在する、及び/又は天然に存在しない、且つ参照ポリヌクレオチド(たとえば、DNA又はRNA)と類似の結合性を有する、修飾された骨格残基又は連結を含む核酸を包含する。かかるアナログの例は、限定されるものではないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA(商標))(Exiqon,Inc.,Woburn,MA)ヌクレオシド、グリコール核酸、ブリッジ核酸、及びモルホリノ構造を含む。ペプチド核酸(PNA)は、ポリヌクレオチドホスフェート-糖骨格がフレキシブルプソイドペプチドポリマーに置き換えられた核酸の合成ホモログである。ヌクレオ塩基は、ポリマーに連結される。PNAは、高い親和性及び特異性でRNA及びDNAの相補的配列にハイブリダイズする能力を有する。ポリヌクレオチド配列は、とくに指示がない限り、従来の5’→3’方向で本明細書に提示される。
【0112】
本明細書で用いられる場合、「配列同一性」は、各種加重パラメーターを有するアルゴリズムを用いて第1のポリヌクレオチド又はポリペプチドと第2のポリヌクレオチド又はポリペプチドとを比較したときのヌクレオチド塩基又はアミノ酸のパーセント同一性を一般に意味する。2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の配列同一性は、限定されるものではないが、GENBANK(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)及びEMBL-EBI(www.ebi.ac.uk.)をはじめとするサイトでワールドワイドウェブを介して利用可能な各種方法及びコンピュータープログラム(たとえば、Exonerate、BLAST、CS-BLAST、FASTA、HMMER、L-ALIGNなど)により配列アライメントを用いて決定可能である。2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド配列間の配列同一性は、各種方法又はコンピュータープログラムの標準デフォルトパラメーターを用いて一般に計算される。2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の高度の配列同一性は、多くの場合、参照ポリヌクレオチド若しくはポリペプチド又はクエリー配列の長さにわたり約90%の同一性~100%の同一性、たとえば、参照ポリヌクレオチド若しくはポリペプチド又はクエリー配列の長さにわたり約90%以上の同一性、約91%以上の同一性、約92%以上の同一性、約93%以上の同一性、約94%以上の同一性、約95%以上の同一性、約96%以上の同一性、約97%以上の同一性、約98%以上の同一性、又は約99%以上の同一性である。配列同一性はまた、2つの配列の一部分のみがアライン可能である場合、2つの配列のオーバーラッピング領域に対して計算可能である。
【0113】
2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の中度の配列同一性は、多くの場合、参照ポリヌクレオチド若しくはポリペプチド又はクエリー配列の長さにわたり約80%の同一性~約90%の同一性、たとえば、参照ポリヌクレオチド若しくはポリペプチド又はクエリー配列の長さにわたり約80%以上の同一性、約81%以上の同一性、約82%以上の同一性、約83%以上の同一性、約84%以上の同一性、約85%以上の同一性、約86%以上の同一性、約87%以上の同一性、約88%以上の同一性、又は約89%以上の同一性であり、ただし90%未満である。
【0114】
2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の低度の配列同一性は、多くの場合、参照ポリヌクレオチド若しくはポリペプチド又はクエリー配列の長さにわたり約50%の同一性~75%の同一性、たとえば、参照ポリヌクレオチド若しくはポリペプチド又はクエリー配列の長さにわたり約50%以上の同一性、約60%以上の同一性、約70%以上の同一性であり、ただし75%未満の同一性である。
【0115】
本開示は、既知又は参照のポリヌクレオチド若しくはポリペプチド配列(たとえば、既知又は参照のマーカーポリヌクレオチド配列或いは既知又は参照のマーカーポリペプチド配列)又はクエリー配列に対して100%未満の同一性を有しうるポリヌクレオチド及びポリペプチド、たとえば、分子マーカーを企図する。
【0116】
本明細書で用いられる場合、「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」、又は「ハイブリダイズすること」は、水素塩基対合を介して単一の二本鎖分子(DNA/DNA、DNA/RNA、RNA/RNA)を形成するように2つの相補的一本鎖DNA又はRNA分子を組み合わせるプロセスである。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、典型的には、ハイブリダイゼーション温度及びハイブリダイゼーション緩衝液の塩濃度により決定され、たとえば、高温及び低塩は、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件を提供する。異なるハイブリダイゼーション条件の塩濃度範囲及び温度範囲の例は、以下の通り:高ストリンジェンシー、おおよそ0.01M~おおよそ0.05M塩、Tmよりも5℃~10℃低いハイブリダイゼーション温度、中ストリンジェンシー、おおよそ0.16M~おおよそ0.33M塩、Tmよりも20℃~29℃低いハイブリダイゼーション温度、及び低ストリンジェンシー、おおよそ0.33M~おおよそ0.82M塩、Tmよりも40℃~48℃低いハイブリダイゼーション温度である。二本鎖核酸配列のTmは、当技術分野で周知の標準的方法により計算される(たとえば、Maniatis,T.,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press:New York(1982)、Casey,J.,et al.,Nucleic Acids Research 4:1539-1552(1977)、Bodkin,D.K.,et al.,Journal of Virological Methods 10(1):45-52(1985)、Wallace,R.B.,et al.,Nucleic Acids Research 9(4):879-894(1981)を参照されたい)。Tmを推定するアルゴリズム予測ツールはまた、広く利用可能である。ハイブリダイゼーションの高ストリンジェンシー条件は、典型的には、標的配列に相補的なポリヌクレオチドが主として標的配列にハイブリダイズし非標的配列に実質的にハイブリダイズしない条件を意味する。典型的には、ハイブリダイゼーション条件は、中ストリンジェンシー、好ましくは高ストリンジェンシーである。
【0117】
本明細書で用いられる場合、「相補性」は、核酸配列が(たとえば、カノニカルワトソン・クリック塩基対合を介して)別の核酸配列との水素結合を形成する能力を意味する。相補性パーセントは、第2の核酸配列との水素結合を形成可能な核酸配列中の残基のパーセンテージを表す。2つの核酸配列が100%の相補性を有する場合、2つの配列は、完全に相補的である。すなわち、第1のポリヌクレオチドの連続する残基はすべて、第2のポリヌクレオチド中の同数の連続する残基に水素結合する。
【0118】
本明細書で用いられる場合、「結合」は、マクロ分子間(たとえば、タンパク質及びポリヌクレオチド間、ポリヌクレオチド及びポリヌクレオチド間、タンパク質及びタンパク質間など)の非共有結合性相互作用を意味する。かかる非共有結合性相互作用はまた、「会合」又は「相互作用」ともいわれる(たとえば、第1のマクロ分子が第2のマクロ分子と相互作用する場合、第1のマクロ分子は非共有結合的に第2のマクロ分子に結合する)。結合性相互作用のいくつかの部分は、配列特異的でありうる(「配列特異的結合」、「配列特異的に結合する」、「部位特異的結合」、及び「部位特異的に結合する」という用語は、本明細書では互換的に用いられる)。結合性相互作用は、解離定数(Kd)により特徴付け可能である。「結合性親和性」は、結合性相互作用の強度を意味する。結合性親和性の増加は、より低いKdに相関する。
【0119】
本明細書で用いられる「遺伝子」は、エクソン及び関連レギュラトリー配列を含むポリヌクレオチド配列を意味する。遺伝子は、イントロン及び/又は非翻訳領域(UTR)をさらに含みうる。
【0120】
本明細書で用いられる場合、「作動可能に連結された」という用語は、互いに機能的関係に配置されたポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を意味する。たとえば、レギュラトリー配列(たとえば、プロモーター又はエンハンサー)が、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドの転写をレギュレートするか又はそのモジュレーションに寄与する場合、レギュラトリー配列は、ポリヌクレオチドに「作動可能に連結されている」。作動可能に連結されたレギュラトリーエレメントは、典型的には、コード配列に隣接する。しかしながら、エンハンサーは、プロモーターから数キロ塩基以上分離されていたとしても機能可能である。それゆえ、いくつかのレギュラトリーエレメントは、ポリヌクレオチド配列に隣接せずにポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されうる。同様に、翻訳レギュラトリーエレメントは、ポリヌクレオチドからのタンパク質発現のモジュレーションに寄与する。いくつかの実施形態では、作動可能に連結されたエレメントは、互いに異種でありうる。
【0121】
本明細書で用いられる場合、「発現」は、たとえば、メッセンジャーRNA(mRNA)又は他のRNA転写物(たとえば、構造性又はスキャフォールディングRNAなどの非コード)をもたらす、DNA鋳型からのポリヌクレオチドの転写を意味する。この用語はさらに、転写されたmRNAがペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳されるプロセスを意味する。転写物及びコードポリペプチドは、総称して「遺伝子産物」として参照されうる。発現は、ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、真核細胞でmRNAをスプライスすることを含みうる。
【0122】
「コード配列」又は選択ポリペプチドを「コードする」配列は、in vitro又はin vivoで適切なレギュラトリー配列の制御下に配置されたときに転写(DNAの場合)されポリペプチドに翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5’末端の開始コドン及び3’末端の翻訳停止コドンにより決定される。転写終止配列は、コード配列の3’側に位置しうる。
【0123】
本明細書で用いられる場合、「相補的DNA(cDNA)配列」は、一般的には逆転写を介して、RNA鋳型から合成されたDNA配列を意味し、第1鎖cDNA分子、第2鎖cDNA分子、又は第1鎖及び第2鎖cDNAの両方を含有する二本鎖cDNA分子を含みうる。所与のRNA鋳型(たとえば、mRNA転写物など)に対する「対応する相補的DNA(cDNA)配列」は、RNA鋳型を逆転写することから生じうるDNA配列を意味する。
【0124】
本明細書で用いられる場合、「モジュレートする」という用語は、性質、活性、機能、又は物理的分子の数量、程度、又は量の変化を意味する。遺伝子発現の「モジュレーション」は、遺伝子活性化及び遺伝子抑制の両方を含む。モジュレーションは、標的遺伝子の発現により直接的又は間接的に影響を受けるいずれかの特性を決定することによりアッセイ可能である。かかる特性としては、たとえば、RNA若しくはタンパク質レベル、タンパク質活性、産物レベル、遺伝子の発現、又はレポーター遺伝子の活性レベルの変化が挙げられる。
【0125】
本明細書で用いられる場合、たとえば、本開示のマーカー遺伝子の「異なる」又は「改変された」発現レベルは、測定可能に異なる、好ましくは統計的に有意な(たとえば、発現をアセスするために採用されたアッセイの標準誤差に帰属可能でない)差である。いくつかの実施形態では、たとえば、コントロール又は参照サンプルと比較したときの目的サンプル中の本開示のマーカー遺伝子の遺伝子発現レベルの差は、たとえば、解析される遺伝子発現や解析技術などに依存して、たとえば、2倍差超、5倍差超、10倍差超、20倍差超、50倍差超、75倍差超、100倍差超、250倍差超、500倍差超、750倍差超、1,000倍差超、5,000倍差超、10,000倍差超、25,000倍差超、50,000倍差超、75,000倍差超、100,000倍差超、250,000倍差超、500,000倍差超、750,000倍差超、1,000,000倍差超、2,500,000倍差超、5,000,000倍差超、7,500,000倍差超、10,000,000倍差超、50,000,000倍差超、100,000,000倍差超、250,000,000倍差超、500,000,000倍差超、750,000,000倍差超、1,000,000,000倍差超、5,000,000,000倍差超、又は10,000,000,000倍差超でありうる。
【0126】
本明細書で用いられる「ベクター」及び「プラスミド」は、細胞内に遺伝子材料を導入するためのポリヌクレオチド媒体を意味する。ベクターは、線状又は環状でありうる。ベクターは、好適な宿主細胞でベクターの複製を行う能力のある複製配列(たとえば、複製起点)を含有可能である。好適な宿主のトランスフォーメーションの際、ベクターは、宿主ゲノムとは独立して複製及び機能するか又は宿主ゲノムにインテグレートすることが可能である。ベクター設計は、とりわけ、意図された使用及びベクター用の宿主細胞に依存し、特定の使用及び宿主細胞に対する本発明のベクターの設計は、当技術分野の技術レベル内である。4つのメジャータイプのベクターは、プラスミド、ウイルス性ベクター、コスミド、及び人工染色体である。多くの場合、ベクターは、複製起点、マルチクローニング部位、及び/又は選択可能マーカーを含む。発現ベクターは、発現カセットを含みうる。「組換えウイルス」とは、たとえば、ウイルスゲノム又はその一部分への異種核酸構築物の追加又は挿入により遺伝子改変されたウイルスを意味する。
【0127】
本明細書で用いられる場合、「発現カセット」は、宿主細胞での選択ポリヌクレオチドの発現を促進するように選択ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたレギュラトリー配列を含む、組換え法を用いて又は合成手段により生成されたポリヌクレオチド構築物を意味する。たとえば、レギュラトリー配列は、宿主細胞での選択ポリヌクレオチドの転写又は宿主細胞での選択ポリヌクレオチドの転写及び翻訳を促進可能である。発現カセットは、たとえば、宿主細胞のゲノムにインテグレート可能であるか、又は発現ベクターを形成するようにベクター中に存在可能である。
【0128】
本明細書で用いられる場合、「~」という用語は、所与の範囲の端値を包含する(たとえば、約1~約50ヌクレオチドの長さは、1ヌクレオチド及び50ヌクレオチドを含む)。
【0129】
本明細書で用いられる場合、「アミノ酸」という用語は、アミノ酸アナログ、修飾アミノ酸、ペプチドミメティック、グリシン、及びD又はL光学異性体を含めて、天然及び合成(非天然)のアミノ酸を意味する。
【0130】
本明細書で用いられる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、互換性があり、アミノ酸のポリマーを意味する。ポリペプチドは、いずれの長さであってもよい。それは分岐状又は線状であってもよく、それは非アミノ酸が介在していてもよく、且つそれは修飾アミノ酸を含んでいてもよい。これらの用語はまた、たとえば、アセチル化、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、ペグ化、ビオチン化、架橋、及び/又は(たとえば、標識性成分又はリガンドとの)コンジュゲーションを介して修飾されたアミノ酸ポリマーも意味する。ポリペプチド配列は、とくに指示がない限り、従来のN末端からC末端の方向で本明細書に提示される。ポリペプチド及びポリヌクレオチドは、分子生物学分野のルーチン技術を用いて作製可能である。
【0131】
本明細書で用いられる「融合タンパク質」及び「キメラタンパク質」という用語は、天然では単一タンパク質中に一緒に存在しない2つ以上のタンパク質、タンパク質ドメイン、又はタンパク質断片を接合することにより作り出された単一タンパク質を意味する。融合タンパク質は、エピトープタグ(たとえば、ヒスチジンタグ、FLAG(登録商標)(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)タグ、Mycタグ)、レポータータンパク質配列(たとえば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質)、及び/又は核酸配列結合性ドメイン(たとえば、DNA結合性ドメイン又はRNA結合性ドメイン)を含みうる。
【0132】
本明細書で用いられる「部分」は、分子の一部分を意味する。部分は、機能基でありうるか、又は(たとえば、共通の構造的側面を共有する)複数の機能基を有する分子の一部分を記述しうる。「部分」及び「機能基」という用語は、典型的には、互換的に用いられるが、「機能基」は、より具体的には、なんらかの共通の化学的挙動を含む分子の一部分を意味する。「部分」は、多くの場合、構造記述として用いられる。
【0133】
「有効量」又は「治療有効量」の組成物又は作用剤、たとえば、本明細書に提供される工学操作組織という用語は、所望の応答を提供するのに十分な量の組成物又は作用剤を意味する。かかる応答は、該当する特定疾患に依存するであろう。例として、いくつかの実施形態では、たとえば、1つ以上の症状、疾患、又は欠損を処置するために、対象に投与される分化細胞又は組織をPSCから産生することが望ましい。
【0134】
本明細書で用いられる「トランスフォーメーション」は、挿入に使用される方法にかかわらず、宿主細胞への外因性ポリヌクレオチドの挿入を意味する。たとえば、トランスフォーメーションは、直接取込み、トランスフェクション、感染などによることが可能である。外因性ポリヌクレオチドは、エピソームなどの非インテグレートベクターとして維持されうるか、又は代替的に宿主ゲノムにインテグレートされうる。
【0135】
iPSCを産生するための方法
【0136】
本開示は、部分的には、PSCの存在を検出するための方法に関する。本明細書のある特定の実施形態では、PSCは、主としてPSC由来分化細胞の集団に存在する残留未分化PSCである。
【0137】
本開示は、たとえば、ヒト体性細胞をはじめとする体性細胞からのiPSC細胞の生成を企図する。体性細胞は、たとえば、ヒト及び非ヒト霊長動物を含む他の霊長動物、たとえば、アカゲザル、チンパンジー、並びに他の有尾及び無尾サル種、農場動物、たとえば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマ、飼育哺乳動物、たとえば、イヌ及びネコ、実験動物、たとえば、ウサギ、マウス、ラット、及びモルモット、飼育、野生、及び狩猟トリを含むトリ、たとえば、ニワトリ、シチメンチョウ、並びに他の家禽、アヒル及びガチョウ、その他を含めて、ヒト又は非ヒト動物に由来しうる。いくつかの実施形態では、体性細胞は、角質化性上皮細胞、粘膜性上皮細胞、外分泌腺上皮細胞、内分泌細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、筋細胞、血液及び免疫系の細胞、神経細胞及びグリア細胞をはじめとする神経系の細胞、色素細胞、並びに造血幹細胞をはじめとするプロジェニター細胞から選択される。体性細胞は、十分に分化(特化)されたものでありうるか、又は十分な分化に至らないものでありうる。例として、体性幹細胞をはじめとするPSCでない未分化プロジェニター細胞及び最終分化成熟細胞を使用可能である。体性細胞は、成体細胞及び胎性細胞をはじめとするいずれかの年齢の動物からのものでありうる。
【0138】
体性細胞は、哺乳動物起源でありうる。同種異系細胞は、たとえば、細胞がin vivoで移植に使用される場合、使用可能である。いくつかの実施形態では、iPSCは、対象に対してMHC/HLAマッチではない。いくつかの実施形態では、iPSCは、対象に対してMHC/HLAマッチである。たとえば、iPSCを用いて再生医療での使用のためのPSC由来細胞を産生する実施形態では、体性細胞は、処置される対象から又は対象のものと同一若しくは実質的に同一のHLA型を有する別の対象から得られうる。体性細胞は、たとえば、核リプログラミング前に培養可能であるか、又は単離後に培養せずにリプログラム可能である。
【0139】
たとえば、体性細胞にリプログラミング因子を導入するために、たとえば、SV40、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(HSV及びEBVを含む)、シンドビスウイルス、アルファウイルス、ヒトヘルペスウイルスベクター(HHV)(たとえば、HHV-6及びHHV-7)、レトロウイルスなどのウイルスに由来するベクターを含めて、ウイルス性ベクターが使用されうる。レンチウイルスとしては、限定されるものではないが、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヒツジビスナウイルス(VISNA)、及びヤギ関節炎-脳炎ウイルス(CAEV)が挙げられる。レンチウイルス性ベクターは、非分裂性細胞に感染する能力があり、in vivo及びin vitroの両方で核酸配列の遺伝子移入及び発現のために使用可能である。ウイルス性ベクターは、抗体などの結合剤又は特定リガンド(例として、特定細胞型上又は特定細胞型内のレセプター又はタンパク質を標的とするため)へのエンベロープタンパク質などのウイルスタンパク質の連結により特異的細胞型を標的とすることが可能である。
【0140】
いくつかの実施形態では、レンチウイルス性ベクターなどのウイルス性ベクターは、宿主細胞のゲノムにインテグレート可能である。こうして移入された遺伝子材料は、次いで、宿主細胞内で転写されタンパク質に可能な限り翻訳される。他の実施形態では、宿主細胞のゲノムにインテグレートされないウイルス性ベクターが使用される。
【0141】
ウイルス遺伝子送達システムは、RNAベース又はDNAベースウイルス性ベクターでありうる。エピソーム遺伝子送達システムは、たとえば、プラスミド、エプスタイン・バーウイルス(EBV)ベースエピソーム性ベクター、酵母ベースベクター、アデノウイルスベースベクター、シミアンウイルス40(SV40)ベースエピソーム性ベクター、ウシパピローマウイルス(BPV)ベースベクター、又はレンチウイルス性ベクターでありうる。
【0142】
体性細胞は、当業者に公知の方法を用いて誘導多能性幹細胞(iPSC)を産生するためにリプログラム可能である。当業者であれば、誘導多能性幹細胞を簡単に産生可能である。たとえば、米国特許出願公開第2009/0246875号明細書、米国特許出願公開第2010/0210014号明細書、米国特許出願公開第2012/0276636号明細書、米国特許第8,058,065号明細書、同第8,129,187号明細書、及び米国特許第8,268,620号明細書(それらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0143】
一般に、単独、組合せ、又はトランス活性化ドメインとの融合のどれかで誘導多能性幹細胞を作り出すために使用可能なリプログラミング因子としては、限定されるものではないが、下記遺伝子:Oct4(Oct3/4、Pou5f1)、Sox(たとえば、Sox1、Sox2、Sox3、Sox18、若しくはSox15)、Klf(たとえば、Klf4、Klf1、Klf3、Klf2、若しくはKlf5)、Myc(たとえば、c-myc、N-myc、若しくはL-myc)、nanog、又はLIN28の1つ以上が挙げられる。これらの遺伝子及びタンパク質の配列の例として、下記アクセッション番号:マウスMyoD、M84918、NM_010866、マウスOct4(POU5F1)、NM_013633、マウスSox2、NM_011443、マウスKlf4、NM_010637、マウスc-Myc、NM_001177352、NM_001177353、NM_001177354マウスNanog、NM_028016、マウスLin28、NM_145833、ヒトMyoD、NM_002478、ヒトOct4(POU5F1)、NM_002701、NM_203289、NM_001173531、ヒトSox2、NM_003106、ヒトKlf4、NM_004235、ヒトc-Myc、NM_002467、ヒトNanog、NM_024865、及び/又はヒトLin28、NM_024674が提供される。また、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有するものを含めて、それらに類似した配列が企図される。いくつかの実施形態では、Klf4、c-Myc、Oct3/4、Sox2、Nanog、及びLin28の少なくとも3つ又は少なくとも4つが利用される。他の実施形態では、Oct3/4、Sox2、c-Myc、及びKlf4が利用される。
【0144】
iPSCの産生のための模範的リプログラミング因子としては、(1)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc(Sox2は、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、若しくはSox18に置換え可能であり、Klf4は、Klf1、Klf2、若しくはKlf5に置換え可能である)、(2)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、SV40ラージT抗原(SV40LT)、(3)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6、(4)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、HPV16 E7(5)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、HPV16 E6、HPV16 E7、(6)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、Bmi1、(7)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、Lin28、(8)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、Lin28、SV40LT、(9)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、Lin28、TERT、SV40LT、(10)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、SV40LT、(11)Oct3/4、Esrrb、Sox2、L-Myc(EsrrbはEsrrgに置換え可能である)、(12)Oct3/4、Klf4、Sox2、(13)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、SV40LT、(14)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPV16 E6、(15)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPV16 E7、(16)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPV16 E6、HPV16 E7、(17)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、Bmi1、(18)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28、(19)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28、SV40LT、(20)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28、TERT、SV40LT、(21)Oct3/4、Klf4、Sox2、SV40LT、又は(22)Oct3/4、Esrrb、Sox2(EsrrbはEsrrgに置換え可能である)が挙げられる。
【0145】
iPSCの調製時及び調製後、細胞は、たとえば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM F12培地、イーグル最小必須培地、F-12K培地、イスコフ改変ダルベッコ培地、ノックアウトDMEM、又はRPMI-1640培地を含めて、細胞型に依存して好適な培養培地で培養可能である。また、哺乳動物血清による細胞培養培地の補充が企図される。かかる血清の例としては、ウシ胎仔血清(FBS)、ウシ血清(BS)、仔ウシ血清(CS)、ウシ胎仔血清(FCS)、新生仔ウシ血清(NCS)、ヤギ血清(GS)、ウマ血清(HS)、ヒト血清、ニワトリ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清(RS)、血清代替物、及びウシ胚液が挙げられる。たとえば、細胞は、約5%~約15%又はそれ以上、たとえば、約20%、約25%、又は約30%を含めて、約0.5%~約5%又はそれ以上の合計血清(たとえば、FBS)又は血清代替物濃度で単離及び/又は拡大可能である。
【0146】
最適成長及び拡大のために、痕跡元素を細胞に供給する追加サプリメントもまた、使用可能である。かかるサプリメントとしては、インスリン、トランスフェリン、ナトリウムセレン、及びそれらの組合せが挙げられる。これらの成分は、塩溶液、たとえば、限定されるものではないが、ハンクス平衡塩溶液、アール塩溶液、抗酸化サプリメント、MCDB-201、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-エタンスルホン酸(HEPES)、ニコチンアミド、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸-2-リン酸、さらには追加アミノ酸に含まれうる。かかるアミノ酸としては、限定されるものではないが、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-システイン、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イノシトール、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリンが挙げられる。
【0147】
また、細菌、マイコプラズマ、及び真菌の汚染を軽減するために、典型的には、細胞培養に抗生物質も使用される。かかる抗生物質又は抗真菌性化合物としては、たとえば、ペニシリン/ストレプトマイシン、アンホテリシン、アンピシリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、マイトマイシン、マイコフェノール酸、ナリジクス酸、ネオマイシン、ナイスタチン、パロモマイシン、ポリミキシン、ピューロマイシン、リファンピシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、タイロシン、及びゼオシンが挙げられうる。
【0148】
任意に、ホルモンもまた、細胞培養に使用可能であり、ホルモンとしては、限定されるものではないが、Dアルドステロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、デキサメタゾン、ベータエストラジオール、ヒドロコルチゾン、インスリン、プロラクチン、プロゲステロン、ソマトスタチン/ヒト成長ホルモン(HGH)、チロトロピン、チロキシン、及びL-チロニンが挙げられる。ベータ-メルカプトエタノールもまた、細胞培養培地に補充可能である。
【0149】
また、細胞培養培地に補充するために、細胞の型及び分化細胞の運命に依存して、脂質及び脂質担体も使用可能である。かかる脂質及び担体としては、なかでもとくに、限定されるものではないが、シクロデキストリン、コレステロール、アルブミンにコンジュゲートされたリノール酸、アルブミンにコンジュゲートされたリノール酸及びオレイン酸、非コンジュゲートのリノール酸、アルブミンにコンジュゲートされたリノール酸-オレイン酸-アラキドン酸、非コンジュゲートの及びアルブミンにコンジュゲートされたオレイン酸が挙げられうる。アルブミンは、脂肪酸フリー製剤で同様に使用可能である。
【0150】
培養状態の細胞は、懸濁状態又は固形担体へ装着状態のどちらかで、たとえば、細胞外マトリックス成分及び合成ポリマー又はバイオポリマーに装着して維持可能である。固形担体への装着を増強するのに有用な追加因子としては、たとえば、I型、II型、及びIV型コラーゲン、コンカナバリンA、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、フィブロネクチン様ポリマー、ゼラチン、ラミニン、ポリ-D及びポリ-L-リシン、マトリゲル、トロンボスポンジン、及び/又はビトロネクチンが挙げられる。
【0151】
iPSCの培養物はまた、たとえば、表皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、白血病阻害性因子(LIF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、及びそれらの組合せを含めて、iPSCを未分化形で残留させる細胞性因子を含有する可能性がある。
【0152】
iPSCは、典型的には、ヒト胚性幹細胞(hESC)の特徴的形態を提示し、多能性因子NANOGを発現する。十分にリプログラムされたヒト細胞を同定するために、胚性幹細胞特異的表面抗原(SSEA-3、SSEA-4、TRA1-60、TRA1-81)もまた、使用されうる。そのほか、機能レベルで、ESCやiPSCなどのPSCはまた、3つの胚性胚葉すべてから系列に分化しin vivoで(たとえば、SCIDマウスで)奇形腫を形成する能力を実証する。
【0153】
PSCを分化させるための方法
【0154】
本開示はさらに、ESC及びiPSCをはじめとするPSCを分化(特化)細胞に分化させることと、次いで、たとえば、本明細書に記載のマーカー遺伝子を用いて分化細胞から残留PSCを区別することと、を企図する。
【0155】
PSCは、部分的に又は十分に特化された細胞、たとえば、造血プロジェニター、赤血球、Bリンパ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ、及び血小板、神経プロジェニター、ニューロン、たとえば、アドレナリン作動性又はドーパミン作動性ニューロン、運動ニューロン、末梢ニューロン、アストロサイト及びオリゴデンドロサイト、マイクログリア、色素上皮細胞、皮膚細胞、及び内耳細胞、吸収性細胞、杯細胞、パネート細胞、及び腸内分泌細胞、肝細胞、膵プロジェニター細胞、インスリン産生性細胞、胆管細胞、肺胞上皮細胞、及び腸上皮細胞、毛包の基部に存在し毛包及び表皮の両方を生み出すケラチノサイト、心筋細胞、心プロジェニター、心外膜細胞、骨格筋細胞、骨格筋芽細胞、血管内皮細胞をはじめとする内皮細胞、肝細胞、骨細胞、軟骨細胞、腎プロジェニター細胞、及び腎上皮細胞、間葉幹細胞、内胚葉関連組織の細胞、網膜色素上皮細胞、及びフォトレセプター前駆体細胞などを含めて、いずれかの目的細胞型に分化させることが可能である。多能性幹細胞を分化させるための方法は、当技術分野で公知である。
【0156】
PSCを検出するためのマーカー
【0157】
本開示は、たとえば、サンプル中の1つ又は複数の多能性幹細胞の存在及び/又は不在を確認するために使用可能な、多能性幹細胞に特異的なマーカーの検出を企図する。特定的には、本開示は、多能性幹細胞により選択的に発現される核酸及びポリペプチドマーカー、並びに1つ又は複数のかかるマーカーの存在及び/又は不在を検出することにより1つ又は複数の多能性幹細胞の存在及び/又は不在を検出するための方法に関する。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現が検出及び/又は測定される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマーカー遺伝子は、下記:AC009446.1(配列番号1)、AL117378.1a(配列番号2)、AL117378.1b(配列番号3)、AL117378.1c(配列番号4)、及びLNCPRESS2(配列番号5)から選択されるヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する。いくつかの実施形態では、以上のマーカーの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は5つが検出されうる。
【0159】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマーカー遺伝子は、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して100%未満の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する。例として、本明細書で企図されるのは、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の配列同一性、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも91%の配列同一性、少なくとも92%の配列同一性、少なくとも93%の配列同一性、少なくとも94%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する少なくとも1つのマーカー遺伝子の検出である。いくつかの実施形態では、以上の変異体配列の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つが検出されうる。
【0160】
本開示のマーカーは、個別に、組合せで、逐次的に、並行して、同時に、及び/又はPSCに特異的であってもなくてもよい他のマーカー、たとえば、分化細胞でも発現されるがPSCと比較して異なる量若しくは異なる発現パターンであるマーカーなどとの関連で、検出されうる。
【0161】
いくつかの実施形態では、配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現を測定及び/又は検出することに加えて(並びに/或いは配列番号1~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の配列同一性、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも91%の配列同一性、少なくとも92%の配列同一性、少なくとも93%の配列同一性、少なくとも94%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現を測定及び/又は検出することに加えて)、PSCに特異的な少なくとも1つの追加マーカーが検出及び/又は測定されうる。
【0162】
いくつかの実施形態では、PSCに特異的であるとともに検出及び/又は測定されうる少なくとも1つの追加マーカー遺伝子は、下記:AC106875.1a(配列番号6)、AC106875.1b(配列番号7)、AL138720.1a(配列番号8)、AL138720.1b(配列番号9)、AL353052.1(配列番号10)、AL392023.1(配列番号11)、AL591742.2(配列番号12)、AP002856.2(配列番号13)、C11orf86(配列番号14)、CCDC172a(配列番号15)、CCDC172b(配列番号16)、CCDC172c(配列番号17)、CCDC172d(配列番号18)、DPPA5(配列番号19)、FOXI2(配列番号20)、LINC01194a(配列番号21)、LINC01194b(配列番号22)、LINC01194c(配列番号23)、LINC01194d(配列番号24)、SLC52A3a(配列番号25)、SLC52A3b(配列番号26)、SLC52A3c(配列番号27)、及びTCL1B(配列番号28)から選択されるヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する。
【0163】
いくつかの実施形態では、PSCに特異的であるとともに検出及び/又は測定されうる少なくとも1つの追加マーカー遺伝子は、配列番号6~28からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して100%未満の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する。例として、本明細書で企図されるのは、配列番号6~28からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の配列同一性、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも91%の配列同一性、少なくとも92%の配列同一性、少なくとも93%の配列同一性、少なくとも94%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む対応する相補的DNA(cDNA)配列を有する転写物を発現する少なくとも1つの追加マーカー遺伝子の検出である。
【0164】
いくつかの実施形態では、追加の以上のマーカー又はその変異体配列の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、又は少なくとも23が検出されうる。
【0165】
いくつかの実施形態では、以上に列挙された1つ以上のマーカーの発現は、たとえば、組成物、溶液、細胞アグリゲート、細胞サスペンジョン、又は組織でPSCの存在を決定するために測定される。
【0166】
ある特定の実施形態では、組成物、溶液、細胞アグリゲート、細胞サスペンジョン、組織など、複数の細胞での1つ以上のマーカーの発現は、コントロール又は参照サンプルによる同1つ以上のマーカーの発現と比較される。コントロール又は参照サンプルは、組成物、溶液、細胞アグリゲート、細胞サスペンジョン、組織など、複数の細胞を含有しうる。コントロール又は参照サンプルは、たとえば、複数のPSC、たとえば、ESC、iPSC、又は両方を含有するもの(たとえば、陽性コントロール)でありうる。追加的又は代替的に、コントロール又は参照サンプルは、たとえば、複数の非PSC、たとえば、特化細胞又は非最終分化非PSCを含有するもの(たとえば、陰性コントロール)でありうる。いくつかの実施形態では、コントロール又は参照サンプルは、PSCを実質的に含有しない。いくつかの実施形態では、コントロール又は参照サンプルは、PSCを含有しない。いくつかの実施形態では、コントロール又は参照サンプル中の唯一の細胞又は実質的に唯一の細胞は、PSCである。「PSCが実質的にない」とは、サンプル中のPSCの量がアッセイ条件下で検出限界以下であることを意味する。「コントロール又は参照サンプル中の実質的に唯一の細胞は、PSCである」とは、サンプル中の非PSCの量がアッセイ条件下で検出限界以下であることを意味する。
【0167】
いくつかの実施形態では、目的サンプル中の本開示の1つ以上のマーカーの発現レベルは、規格化データを用いてコントロール又は参照値と比較される。規格化は、たとえば、1つ以上の参照遺伝子又は遺伝子産物、たとえば、未分化細胞及び分化細胞間で及び/又は異なる条件下で定常的に発現されるものと理解される遺伝子の発現レベルに基づきうる。発現データの規格化はまた、グローバル遺伝子発現パターンに基づきうる。本明細書で企図される他のデータ規格化方法としては、たとえば、グローバルランクインバリアントセット規格化(GRSN)、相互相関規格化(Xcorr)、ノンパラメトリック変数選択及び近似(NVSA)、カーネル密度加重loess規格化(KWDL)、カーネル密度分位規格化(KDQ)、繰返しランク順規格化(IRON)、最小バリアントセット規格化(LVS)、修正最小バリアントセット規格化(LVSmiR)、インバリアント規格化、HMM支援規格化(HMM)、生物学的スケーリング規格化(BSN)、サポートベクトル回帰(SVR)、インバリアントセット規格化(ISN)、スパイクイン標準、加重lowess規格化(wlowess)、加重サイクリックloess規格化(wcloess)、サブセット分位規格化(SQN)、loessm、一般化プロクルステス(GPA)解析、ロバストマルチアレイ平均(RMA)、クロス規格化(CrossNorm)、インフォーマティブクロス規格化(ICN)、グローバルメジアン、及びdChipが挙げられる。
【0168】
ハイスループットRNA/cDNAシーケンシング用途、たとえば、RNA-seqでは、規格化は、遺伝子長、シーケンシング深度、又は両方に基づきうる。例として、規格化発現データは、RPM(100万マップリード当たりのリード数)、RPKM(100万マップリード当たりの1キロ塩基当たりのリード数)、TPM(100万当たりの転写物数)、又はFPKM(100万マップリード当たりの1キロ塩基当たりの断片数)として表されうる。
【0169】
マーカー発現は、転写分子(たとえば、mRNA)又はタンパク質の発現を検出するための多種多様な周知の方法のいずれかによりアセスされうる。かかる方法の非限定的例としては、分泌、細胞表面、細胞質、又は核タンパク質の検出のための免疫学的方法、タンパク質精製法、タンパク質機能又は活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法、及び核酸増幅法が挙げられる。
【0170】
ある特定の実施形態では、本開示のマーカーの発現は、マーカー遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)発現のレベルを決定することにより測定可能である。かかるmRNA分子は、生物学的サンプル、たとえば、細胞含有組成物、細胞含有溶液、細胞アグリゲート、細胞サスペンジョン、組織などから単離、派生、又は増幅可能である。かかるmRNAは、直接解析可能であるか、又は例として、さらなる解析のためにそれに対応するcDNA分子の合成及び使用が可能である。
【0171】
組織又は細胞からRNAを単離するとき、組織又は細胞を培養物から取り出した後で遺伝子発現のいかなるさらなる変化も防止することが重要でありうる。発現レベルの変化は、撹乱、たとえば、ヒートショック又はリポ多糖(LPS)若しくは他の試薬による活性化の後で迅速に変化することが知られている。そのほか、組織及び細胞のRNAは、急速に分解された状態になりうる。それゆえ、いくつかの実施形態では、得られた組織又は細胞は、解析前、保存されうるか又はたとえば迅速にフリーズされうる。
【0172】
RNAは、さまざまな方法により、たとえば、グアニジウムチオシアネートライシスに続いてCsCl遠心分離により組織又は細胞サンプルから抽出可能である(Chirgwin et al.,1979,Biochemistry 18:5294-5299)。単一細胞由来のRNAは、単一細胞からcDNAライブラリーを調製するための方法に記載のように、たとえば、Dulac,C.(1998)Curr.Top.Dev.Biol.36,245、及びJena et al.(1996)J.Immunol.Methods 190:199に記載のように得ることが可能である。RNA抽出のための他の方法及びキットは、当技術分野で周知である。
【0173】
単離されたRNAサンプルはまた、特定種に関して富化可能である。たとえば、ポリ(A)+RNAは、RNAサンプルから単離されうる。一般的には、かかる精製は、mRNA上のポリ-Aテールの利点を活用する。例として、ポリ-Tオリゴヌクレオチドは、mRNAに対する親和性リガンドの働きをするように固定されうる。この目的に合ったキットは、市販されており、たとえば、MessageMakerキット(Life Technologies,Grand Island,N.Y.)である。
【0174】
いくつかの実施形態では、RNA集団は、たとえば、1つ以上のマーカー配列を含むある特定の配列に関して特異的に富化されうる。富化は、たとえば、cDNA合成及び鋳型指向in vitro転写に基づいてプライマー特異的cDNA合成又は複数の線形増幅ラウンドにより行うことが可能である(たとえば、Wang et al.(1989)PNAS 86,9717、Dulac et al.,(上記)、及びJena et al.,(上記)を参照されたい)。
【0175】
単離されたRNAは、特定種又は配列が富化されていようがなかろうが、さらに増幅可能である。たとえば、RNAがmRNAである場合、RT-PCRなどの増幅プロセスを利用してシグナルが検出可能になるように又は検出が増強されるようにmRNAを増幅可能である。かかる増幅プロセスは、たとえば、組織又は細胞サンプルが小サイズ又は小体積である場合、とくに有益である。
【0176】
マーカー遺伝子の発現の検出を支援するために、各種増幅及び検出方法を使用可能である。たとえば、さらなる解析(たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応、RT-PCR)の前にmRNAをcDNAに逆転写することは、本開示の範囲内である。本明細書で利用可能な他の公知の増幅方法としては、限定されるものではないが「NASBA」又は「3SR」技術、Q-ベータ増幅、鎖置換増幅、標的媒介増幅、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自己保持配列複製(SSR)、及び転写増幅が挙げられる。
【0177】
核酸配列を検出、特徴付け、及び/又は定量するための方法、並びにmRNA発現を検出、特徴付け、及び/又は定量するための方法は、当業者に公知であり、例としては、限定されるものではないが、PCR手順、RT-PCR、定量PCR又はRT-PCR、ノーザンブロット解析、差次的遺伝子発現、RNA保護アッセイ、マイクロアレイ解析、ハイブリダイゼーション法、遺伝子発現逐次解析(SAGE)、ディジタルバーコード定量アッセイに基づくハイブリダイゼーション、マルチプレックスRT-PCR、ディジタル液滴PCR(ddPCR)、qRT-PCR、qPCR、UV分光法、DNAシーケンシング、RNAシーケンシング、次世代シーケンシング、たとえば、RNAseq、分岐DNAシグナル増幅を利用したライセートベースハイブリダイゼーションアッセイ、たとえば、QuantiGene 2.0 Single Plex、及び分岐DNA解析法が挙げられる。
【0178】
たとえば、DNAシーケンシング及びRNAシーケンシングのための核酸シーケンシング技術の非限定的例としては、マキサム・ギルバートシーケンシング、サンガーシーケンシング(すなわち、チェーンターミネーション)、合成シーケンシング(SBS)、シーケンシングバイライゲーション、パイロシーケンシング、単一分子リアルタイムシーケンシング、MiSeqシーケンシング、大規模パラレルシグネチャーシーケンシング(MPSS)、ポロニーシーケンシング、454シーケンシング、ナノポアシーケンシングが挙げられる。本開示はまた、限定されるものではないが、次世代シーケンシング技術を包含する。
【0179】
次世代シーケンシング技術の非限定的例としては、たとえば、Ion Torrent、Illumina、SOLiD、454、固相大規模パラレルシグネチャーシーケンシング、可逆色素ターミネーターシーケンシング、及びDNAナノボールシーケンシングが挙げられる。ディジタルバーコード定量アッセイには、BeadArray(Illumina)、xMAPシステム(Luminex)、nCounter(Nanostring)、分子ハイスループットゲノミクス(HTG)、BioMark(Fluidigm)、又はWafergenマイクロアレイが含まれうる。アッセイには、DASL(Illumina)、RNA-Seq(Illumina)、TruSeq(Illumina)、SureSelect(Agilent)、バイオアナライザー(Agilent)、及びTaqMan(ThermoFisher)が含まれうる。
【0180】
一般的には、PCRは、(i)核酸サンプル又はライブラリー内の特異的遺伝子又は配列へのプライマーの配列特異的ハイブリダイゼーション、(ii)熱安定性DNAポリメラーゼを用いたアニーリング、伸長、及び変性の複数ラウンドが関与する後続増幅、(iii)適正サイズのバンドに対するPCR産物のスクリーニングで構成される遺伝子増幅の方法を記述する。使用されるプライマーは、重合の開始を提供するのに十分な長さ及び適切な配列のオリゴヌクレオチドである。すなわち、各プライマーは、増幅されるゲノム座の鎖に相補的になるように特異的に設計される。遺伝子のmRNAレベルは、逆転写(RT)PCRにより及び定量RT-PCR(QRT-PCR)又はリアルタイムPCR法により決定可能である。RT-PCR及びQRT-PCRの方法は、当技術分野で周知である。模範的マーカー遺伝子の核酸配列は、本明細書に定められる。それゆえ、当業者は、それぞれのマーカー遺伝子のmRNAレベルを決定するために本開示の配列に基づいて適切なプライマーを設計可能である。
【0181】
核酸及びリボ核酸(RNA)分子は、当技術分野で周知のいくつかの手順のいずれかを用いてサンプルから単離可能であり、選ばれる特定単離手順は、特定生物学的サンプルに適切なものとする。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の試薬(たとえば、核酸プローブ)の1つ以上は、検出可能標識を含みうる、及び/又は(たとえば、化合物を検出可能生成物に変換する反応を触媒することにより)検出可能シグナルを発生する能力を含みうる。検出可能標識は、たとえば、光吸収性色素、蛍光性色素、又は放射性標識を含みうる。検出可能標識、それを検出する方法、それを試薬(たとえば、抗体及び核酸プローブ)に組み込む方法は、当技術分野で周知である。
【0183】
いくつかの実施形態では、検出可能標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電磁気学的、放射化学的、又は化学的手段、たとえば、蛍光、化学蛍光、若しくは化学発光、又はいずれかの他の適切な手段により検出可能な標識が含まれうる。検出可能標識は、一次標識(この標識は、直接検出可能部分を含むか若しくは直接検出可能部分を生成する部分を含む)、又は二次標識(この検出可能標識は、たとえば、二次及び三次抗体を用いて免疫学的標識化で広く行われているように、別の部分に結合して検出可能シグナルを生成する)でありうる。検出可能標識は、共有結合性又は非共有結合性手段により試薬に連結可能である。代替的に、検出可能標識は、たとえば、リガンド-レセプター結合対配置を介して試薬への結合を達成する分子又は他のかかる特異的認識分子を直接標識することにより連結可能である。検出可能標識には、限定されるものではないが、放射性同位体、生物発光性化合物、クロモフォア、抗体、化学発光性化合物、蛍光性化合物、金属キレート、及び酵素が含まれうる。
【0184】
いくつかの実施形態では、本開示の複数のマーカーの発現レベルは、同時に(たとえば、マルチプレックスアッセイ)又はパラレルに決定可能である。
【0185】
他の実施形態では、本開示のマーカー遺伝子に関連する遺伝子発現産物(タンパク質)を検出してPSCの存在を決定しうる。かかる検出技術は、当業者に公知であり、例としては、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、ウェスタンブロット、FACS、放射免疫学的アッセイ(RIA)、サンドイッチアッセイ、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、免疫組織学的染色、免疫電気泳動、免疫沈降、及び免疫蛍光(抗体やタンパク質結合剤などの検出試薬を用いる)が挙げられる。
【0186】
いくつかの実施形態では、本開示は、サンプル中のPSC、たとえば、ESC若しくはiPSC又は両方の存在を検出するための方法に関する。いくつかの実施形態では、サンプルは、細胞含有組成物、細胞含有溶液、細胞アグリゲート、細胞サスペンジョン、又は組織である。ある特定の実施形態では、サンプルは、主に非PSC細胞を含有する。そのほかのさらなる実施形態では、サンプル中の細胞は、主としてPSCよりも分化した状態の細胞、たとえば、特化細胞などであり、本方法は、組成物中に存在するPSCの存在及び/又は量を決定する。さらなる実施形態では、サンプル中の細胞は、主としてPSCの分化により産生されたPSCよりも分化した状態の細胞である。例として、PSCよりも分化した状態の細胞は、たとえば、フォトレセプター前駆体(PRP)細胞又は網膜色素上皮(RPE)細胞でありうる。そのため、本明細書に記載の方法は、PSCの分化(たとえば、特化細胞の産生)のプロセス後の残留PSCを含めて、組成物中のPSCを検出及び/又は定量するために使用可能である。
【0187】
いくつかの実施形態では、目的サンプル(たとえば、細胞含有組成物、細胞含有溶液、細胞アグリゲート、細胞サスペンジョン、又は組織)は、目的サンプル内の細胞で本開示のマーカーの1つ以上の発現を検出することにより、その中のPSCの存在を決定するために試験される。いくつかの実施形態では、目的サンプル中の1つ以上のマーカーの決定された発現レベルはまた、目的サンプル中のPSCの存在又は不在を確認するために、例として、PSCを含有していないことが知られている参照サンプルからの1つ以上のマーカーの発現レベルと比較される。
【0188】
他の実施形態では、目的サンプル(たとえば、細胞含有組成物、細胞含有溶液、細胞アグリゲート、細胞サスペンジョン、又は組織)中のPSCの数は、目的サンプルで本開示のマーカーの1つ以上の発現レベルを初期に測定することにより定量される。次いで、目的サンプル中の1つ以上のマーカーの検出された発現レベルは、たとえば、参照サンプル中の細胞がすべてPSCである参照サンプルからの1つ以上のマーカーの発現レベルと比較されうる。他の実施形態では、次いで、目的サンプル中の1つ以上のマーカーの検出された発現レベルは、(サンプル中の全細胞を基準にして)既知の割合のPSC細胞を含有する参照サンプルからの1つ以上のマーカーの発現レベルと比較される。例として、合計細胞に対するPSCの割合は、たとえば、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下、0.01%以下、0.001%以下、0.0001%以下、0.00001%以下、0.000001%以下、0.0000001%以下、0.00000001%以下、0.000000001%以下、又は0.000000001%以下でありうる。
【0189】
そのため、目的サンプル中の本開示のマーカーの1つ以上の測定された発現レベルと、PSCのみ含有する(又はサンプル中の全細胞を基準にして既知の割合のPSCを含有する)参照サンプルからの1つ以上のマーカーの発現レベルと、を比較することにより、目的サンプル中のPSC細胞の割合を決定することが可能である。
【0190】
以上の方法に従って、目的サンプルがPSCを含有していないと決定された場合、その決定が行われうる。そのほか、目的サンプルが細胞培養物又は組織培養物から得られた場合、この決定に基づいて、培養物中の細胞又は組織をさらに拡大又は増殖させうる。
【0191】
そのほか、目的サンプルが、たとえば、対象への投与のための細胞組成物又は工学操作組織に関する場合、細胞又は組織は、この決定に基づいて、投与前にさらなる拡大又は増殖ステップを行って又は行わずに、投与されうる。
【0192】
他の実施形態では、本開示のマーカーの1つ以上の発現は、単一細胞レベルで検出及び/又は定量可能である。すなわち、本開示のマーカーの1つ以上の発現は、単一PSCで検出及び/又は定量可能である(たとえば、単一細胞解析)。単一細胞解析は、たとえば、単一細胞の単離後に実施可能である(たとえば、段階希釈、マイクロマニピュレーション、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション、FACS、マイクロフルイディクスなどの当技術分野で公知の方法により)。そのほか、本開示は、目的サンプルが複数の他の(非PSC)細胞の中に単一PSCのみ含有しうるとともに本開示のマーカーの1つ以上の発現がその単一PSCで検出及び/又は定量可能である実施形態を包含する。
【0193】
本開示の他の一態様は、少なくとも1つの本明細書に記載のマーカー遺伝子の発現の解析のためのキット、組成物、又はデバイスに関する。一実施形態では、企図されるのは、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを決定するように選択された少なくとも1つのプライマー及び/又はプローブを含む、少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現の解析のためのキット、組成物、又はデバイスである。いくつかの実施形態は、複数のマーカー遺伝子の発現レベルを決定するように選択された少なくとも10プライマー及び/又はプローブ、少なくとも30プライマー及び/又はプローブ、少なくとも50プライマー及び/又はプローブ、又は少なくとも100プライマー及び/又はプローブを含むキット、組成物、又はデバイスに関する。
【0194】
「プローブ」という用語は、mRNAなどのヌクレオチドに特異的に結合しうるとともに数塩基~数百塩基の長さを有するRNAやDNAなどのヌクレオチド断片を意味する。プローブは、特異的mRNAの存在若しくは不在又は発現レベルを決定しうるように、放射性同位体で標識されうる。プローブは、オリゴヌクレオチドプローブ、一本鎖DNAプローブ、二本鎖DNAプローブ、RNAプローブなどの形態で構築されうる。
【0195】
「プライマー」という用語は、相補的鋳型との塩基対合相互作用を行うことが可能であり且つ鋳型鎖を複製するための出発点の働きが可能である、遊離3’ヒドロキシル基を有するショートヌクレオチド配列を意味する。プライマーは、好適な緩衝液中で且つ好適な温度で重合用試薬(たとえば、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素)及び4つの異なるヌクレオシド三リン酸の存在下でDNA合成を開始可能である。
【0196】
「ヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを意味し、とくに記載がない限り、ヌクレオチド、は、天然ヌクレオチドのアナログ及び修飾糖又は塩基を含むアナログを含みうる。
【0197】
プローブ又はプライマーは、ホスホルアミダイト固形担体法又は他の広く知られている方法を用いて化学合成されうる。これらのヌクレオチド配列はまた、当技術分野で公知の各種方法を用いて修飾されうる。かかる修飾の例としては、メチル化、カプセル化、1つ以上のネイティブヌクレオチドのそのアナログによる置換え、及びヌクレオチド間修飾、たとえば、非荷電コンジュゲート(たとえば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメートなど)又は荷電コンジュゲート(たとえば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)への修飾が挙げられる。
【0198】
プローブ又はプライマーは、10ヌクレオチド以上の長さを有しうるか、又は20ヌクレオチド以上の長さを有しうる。プローブ又はプライマーは、100ヌクレオチド以下、90ヌクレオチド以下、80ヌクレオチド以下、70ヌクレオチド以下、60ヌクレオチド以下、50ヌクレオチド以下、40ヌクレオチド以下、30ヌクレオチド以下、又は25ヌクレオチド以下の長さを有しうる。
【0199】
キットはまた、キットの成分を用いて本方法を実用するための説明を含みうる。本方法を実用するための説明は、好適な記録媒体上に一般に記録される。たとえば、説明は、紙やプラスチックなどの基材上にプリントされうる。説明は、添付文書としてキット中に又はキット若しくはその成分の容器のラベリングに(たとえば、パッケージング又はサブパッケージングに関連して)存在しうる。
【実施例】
【0200】
実験
本発明の非限定的実施形態は、下記実施例に例示される。用いられる数(たとえば、量、濃度、パーセント変化など)に関して正確を期すための努力がなされているが、若干の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。これら実施例は、単に例示を目的として与えられているにすぎず、本発明者が本発明の各種実施形態とみなす範囲を限定することが意図されるものではないことが理解されるべきである。各実施例に定められる下記ステップのすべてが必要とは限らず、各実施例のステップの順序が提示された通りでなければならないわけでもない。
【0201】
実施例1
PSC特異的マーカーの検証
3つのマーカー遺伝子(LNCPRESS2、AC009446.1、及びAL117378.1)は、それらがPSCで差次的発現されるかどうかを決定するために解析された。この目的のために、これらの3つのマーカー遺伝子に対する配列特異的プローブ及びプライマーは、各マーカー遺伝子に対応する相補的DNA(cDNA)を特異的に検出できるように設計及び合成された。これらのプローブ及びプライマーを用いて、これらの3つのマーカー遺伝子の発現は、次の通りドロップレットディジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)により測定された。
【0202】
合計RNAは、iPSC、網膜色素上皮(RPE)細胞、又はフォトレセプター前駆体(PRP)細胞のどれからも抽出された。次いで、cDNAは、逆転写反応により調製され、得られたcDNAサンプルは、BioRad(登録商標)QX200ディジタルPCRプラットフォームを用いてddPCRに付された。
【0203】
1セットの実験では、iPSC及びPRP細胞から得られたcDNAサンプルを個別に解析し、さらには各種の異なる比(1:100、1:1000、1:10000、1:100000、及び1:1000000)で混合一体化してiPSC:PRP cDNAのさまざまな比で段階希釈を行った後に解析した。純iPSCサンプルに対しては、シグナル飽和が原因で、試験された他のサンプルと比較してcDNAサンプルの1/100希釈を使用した。結果は、
図1に示される。
図1に示されるように、試験された3つのマーカー遺伝子(LNCPRESS2、AC009446.1、及びAL117378.1)の各々は、段階希釈の結果により確認されるように、iPSC細胞では特異的に発現されたが、PRP細胞では特異的に発現されなかった。
【0204】
第2のセットの実験では、iPSC及びRPE細胞から得られたcDNAサンプルを個別に解析し、さらには各種の異なる比(1:100、1:1000、1:10000、1:100000、及び1:1000000)で混合一体化してiPSC:RPE cDNAのさまざまな比で段階希釈を行った後に解析した。純iPSCサンプルに対しては、シグナル飽和が原因で、試験された他のサンプルと比較してcDNAサンプルの1/100希釈を使用した。結果は、
図2に示される。
図2に示されるように、試験された3つのマーカー遺伝子(LNCPRESS2、AC009446.1、及びAL117378.1)の各々は、段階希釈の結果により確認されるように、iPSC細胞では特異的に発現されたが、RPE細胞では特異的に発現されなかった。
【0205】
3つのマーカー遺伝子(LNCPRESS2、AC009446.1、及びAL117378.1)は、たとえば、(iPSC細胞から産生された)RPE又はPRP細胞を主に含有するサンプルなどのサンプルで、PSCの存在を特異的に検出するために使用可能であることが、これらの結果から立証される。
【0206】
【配列表】
【国際調査報告】