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特表2024-510976BKウイルスに対する中和モノクローナル抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】BKウイルスに対する中和モノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240305BHJP
   C12N 15/37 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240305BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240305BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/37
C12N15/63 Z
C07K16/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 S
A61P31/20
A61P37/06
A61P13/12
A61P13/10
A61P25/00
A61P13/02
A61P9/00
A61P1/04
A61P27/02
A61K31/365
A61K31/52
A61K31/706
A61K31/436
A61K38/13
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555528
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 US2022020050
(87)【国際公開番号】W WO2022192740
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/160,678
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】513321467
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディシン アット マウント サイナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】モラン トーマス エム.
(72)【発明者】
【氏名】クラウス トーマス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】デューティー ジェームズ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】トルトレッラ ドメニコ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA44
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA68
4C084ZA81
4C084ZB08
4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BA51
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086CB07
4C086CB22
4C086EA04
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZB08
4C086ZB33
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA50
4H045BA70
4H045BA71
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書において、BKウイルスを含めたポリオーマウイルスのVP1を標的とするモノクローナル抗体が提供される。また、1種または複数種の抗体を用いてポリオーマウイルス感染を処置するかまたは予防する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCDR1、HCDR2、およびHCDR3の3つの相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3の3つのCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a) HCDR1が、SEQ ID NO: 1、9、17、25、33、41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、145、153、161、169、または177のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(b) HCDR2が、SEQ ID NO: 2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98、106、114、122、130、138、146、154、162、170、または178のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(c) HCDR3が、SEQ ID NO: 3、11、19、27、35、43、51、59、67、75、83、91、99、107、115、123、131、139、147、155、163、171、または179のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(d) LCDR1が、SEQ ID NO: 4、12、20、28、36、44、52、60、68、76、84、92、100、108、116、124、132、140、148、156、164、172、または180のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(e) LCDR2が、SEQ ID NO: 5、13、21、29、37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、141、149、157、165、173、または181のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;かつ
(f) LCDR3が、SEQ ID NO: 6、14、22、30、38、46、54、62、70、78、86、94、102、110、118、126、134、142、150、158、166、174、または182のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含む、
単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、第2の抗体が、第1の抗体のCDR配列の少なくとも1つとは異なるCDR配列を少なくとも1つ含む、組成物。
【請求項3】
(a)
HCDR1がSEQ ID NO: 1を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 2を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 3を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 4を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 5を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 6を含む;
(b)
HCDR1がSEQ ID NO: 9を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 10を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 11を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 12を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 13を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 14を含む;
(c)
HCDR1がSEQ ID NO: 17を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 18を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 19を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 20を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 21を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 22を含む;
(d)
HCDR1がSEQ ID NO: 25を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 26を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 27を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 28を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 29を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 30を含む;
(e)
HCDR1がSEQ ID NO: 33を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 34を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 35を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 36を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 37を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 38を含む;
(f)
HCDR1がSEQ ID NO: 41を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 42を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 43を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 44を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 45を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 46を含む;
(g)
HCDR1がSEQ ID NO: 49を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 50を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 51を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 52を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 53を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 54を含む;
(h)
HCDR1がSEQ ID NO: 65を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 66を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 67を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 68を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 69を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 70を含む;
(i)
HCDR1がSEQ ID NO: 73を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 74を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 75を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 76を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 77を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 79を含む;
(j)
HCDR1がSEQ ID NO: 81を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 82を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 83を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 84を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 85を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 86を含む;
(k)
HCDR1がSEQ ID NO: 89を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 90を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 91を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 92を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 93を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 94を含む;
(l)
HCDR1がSEQ ID NO: 97を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 98を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 99を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 100を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 101を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 102を含む;
(m)
HCDR1がSEQ ID NO: 105を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 106を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 107を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 108を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 109を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 110を含む;
(n)
HCDR1がSEQ ID NO: 113を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 114を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 115を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 116を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 117を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 118を含む;
(o)
HCDR1がSEQ ID NO: 121を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 122を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 123を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 124を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 125を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 126を含む;
(p)
HCDR1がSEQ ID NO: 129を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 130を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 131を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 132を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 133を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 134を含む;
(q)
HCDR1がSEQ ID NO: 137を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 138を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 139を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 140を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 141を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 142を含む;
(r)
HCDR1がSEQ ID NO: 145を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 146を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 147を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 148を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 149を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 150を含む;
(s)
HCDR1がSEQ ID NO: 153を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 154を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 155を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 156を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 157を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 158を含む;
(t)
HCDR1がSEQ ID NO: 161を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 162を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 163を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 164を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 165を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 166を含む;
(u)
HCDR1がSEQ ID NO: 169を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 170を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 171を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 172を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 173を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 174を含む;または
(v)
HCDR1がSEQ ID NO: 177を含み、
HCDR2がSEQ ID NO: 178を含み、
HCDR3がSEQ ID NO: 179を含み、
LCDR1がSEQ ID NO: 180を含み、
LCDR2がSEQ ID NO: 181を含み、かつ
LCDR3がSEQ ID NO: 182を含む、
請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
請求項3に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、第1の抗体が、請求項3の(a)~(v)に記載の抗体のいずれかを含み、かつ第2の抗体が、第1の抗体からなるものではない、組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、
第1の抗体が、請求項3の(a)~(v)に記載の抗体のいずれかを含み、かつ
第2の抗体が、請求項3の(a)~(v)に記載の抗体のいずれかを含み、かつ第1の抗体からなるものではない、
組成物。
【請求項6】
重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a) VHが、SEQ ID NO: 7、15、23、31、39、47、55、63、71、79、87、95、103、111、119、127、135、143、151、159、167、175、または183のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;かつ
(b) VLが、SEQ ID NO: 8、16、24、32、40、48、56、64、72、80、88、96、104、112、120、128、136、144、152、160、168、176、または184のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含む、
単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
請求項6に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、第2の抗体が、(a) 第1の抗体のVH配列の少なくとも1つとは異なるVH配列を少なくとも1つ含むか、または(b) 第1の抗体のVL配列の少なくとも1つとは異なるVL配列を少なくとも1つ含む、組成物。
【請求項8】
(a) VHがSEQ ID NO: 7を含み、かつVLがSEQ ID NO: 8を含む;
(b) VHがSEQ ID NO: 15を含み、かつVLがSEQ ID NO: 16を含む;
(c) VHがSEQ ID NO: 31を含み、かつVLがSEQ ID NO: 32を含む;
(d) VHがSEQ ID NO: 39を含み、かつVLがSEQ ID NO: 40を含む;
(e) VHがSEQ ID NO: 47を含み、かつVLがSEQ ID NO: 48を含む;
(f) VHがSEQ ID NO: 55を含み、かつVLがSEQ ID NO: 56を含む;
(g) VHがSEQ ID NO: 63を含み、かつVLがSEQ ID NO: 64を含む;
(h) VHがSEQ ID NO: 71を含み、かつVLがSEQ ID NO: 72を含む;
(i) VHがSEQ ID NO: 79を含み、かつVLがSEQ ID NO: 80を含む;
(j) VHがSEQ ID NO: 87を含み、かつVLがSEQ ID NO: 88を含む;
(k) VHがSEQ ID NO: 95を含み、かつVLがSEQ ID NO: 96を含む;
(l) VHがSEQ ID NO: 103を含み、かつVLがSEQ ID NO: 104を含む;
(m) VHがSEQ ID NO: 111を含み、かつVLがSEQ ID NO: 112を含む;
(n) VHがSEQ ID NO: 119を含み、かつVLがSEQ ID NO: 120を含む;
(o) VHがSEQ ID NO: 127を含み、かつVLがSEQ ID NO: 128を含む;
(p) VHがSEQ ID NO: 135を含み、かつVLがSEQ ID NO: 136を含む;
(q) VHがSEQ ID NO: 143を含み、かつVLがSEQ ID NO: 144を含む;
(r) VHがSEQ ID NO: 151を含み、かつVLがSEQ ID NO: 152を含む;
(s) VHがSEQ ID NO: 159を含み、かつVLがSEQ ID NO: 160を含む;
(t) VHがSEQ ID NO: 167を含み、かつVLがSEQ ID NO: 168を含む;
(u) VHがSEQ ID NO: 175を含み、かつVLがSEQ ID NO: 176を含む;または
(v) VHがSEQ ID NO: 183を含み、かつVLがSEQ ID NO: 184を含む、
請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項8に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、第1の抗体が、請求項8の(a)~(v)に記載の抗体のいずれかを含み、かつ第2の抗体が、第1の抗体からなるものではない、組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、
第1の抗体が、請求項8の(a)~(v)に記載の抗体のいずれかを含み、かつ
第2の抗体が、請求項8の(a)~(v)に記載の抗体のいずれかを含み、かつ第1の抗体からなるものではない、
組成物。
【請求項11】
単離された抗体またはその抗原結合断片であって、BKウイルスVP1タンパク質に結合した際に、該抗体が、SEQ ID NO: 529の以下の残基:S80、D82、R83、またはR170の少なくとも1つに結合し、かつ該抗体が、BKウイルスVP1のシアル酸との結合をブロックする、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
請求項11に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、第1の抗体が、請求項11に記載の抗体を含み、かつ第2の抗体が、第1の抗体からなるものではない、組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、
第1の抗体が、請求項11に記載の抗体を含み、かつ
第2の抗体が、請求項11に記載の抗体を含み、かつ第1の抗体からなるものではない、
組成物。
【請求項14】
単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a) 該抗体が、BKウイルス血清型1のVP1を含むウイルス、BKウイルス血清型2のVP1を含むウイルス、BKウイルス血清型3のVP1を含むウイルス、およびBKウイルス血清型4のVP1を含むウイルスによる感染を阻害することが可能であり、ここで、ウイルスによる感染を阻害することが可能な抗体が、以下の段階:
(i) 該ウイルスを該抗体または対照タンパク質と接触させる段階;
(ii) 該ウイルスを標的細胞とインキュベートする段階;
(iii) 段階(ii)の終了時における、該ウイルスに感染している標的細胞の割合か、または標的細胞に存在するウイルスのRNAもしくはDNAの量を決定する段階
を含む方法によって決定された、ウイルスによる標的細胞の感染を阻害する抗体であり、ここで、該抗体の非存在下での、感染している標的細胞の量かまたはウイルスのRNAもしくはDNAの量と比較して、該抗体の存在下で、該ウイルスに感染している標的細胞の割合がより少ないこと、または標的細胞に存在する疑似ウイルスのRNAもしくはDNAの量がより少ないことを決定することが、該ウイルスによる感染の阻害を示し;かつ
(b) 該抗体が、BKウイルス血清型1のVP1、BKウイルス血清型2のVP1、BKウイルス血清型3のVP1、およびBKウイルス血清型4のVP1に存在するエピトープに結合することが可能である、
単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
請求項14に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、第1の抗体が、請求項14に記載の抗体を含み、かつ第2の抗体が、第1の抗体からなるものではない、組成物。
【請求項16】
請求項14に記載の抗体を2種以上含む組成物であって、
第1の抗体が、請求項14に記載の抗体を含み、かつ
第2の抗体が、請求項14に記載の抗体を含み、かつ第1の抗体からなるものではない、
組成物。
【請求項17】
最大で約10-7 M;最大で約10-8 M;最大で約10-9 M;最大で約10-10 M;最大で約10-11 M;最大で約10-12 M;および最大で10-13 Mからなる群より選択される、BKウイルスVP1タンパク質からの解離定数(KD)を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
重鎖フレームワーク領域HFR1、HFR2、HFR3、HFR4、および軽鎖フレームワーク領域LFR1、LFR2、LFR3、LFR4をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
HFR1領域が、SEQ ID NO: 185、193、197、205、213、226、234、241、250、または269のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR2領域が、SEQ ID NO: 186、194、198、206、214、223、227、232、242、または253のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR3領域が、SEQ ID NO: 187、195、199、207、215、219、224、228、233、235、243、251、254、258、259、262、265、267、または270のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR4領域が、SEQ ID NO: 188、200、208、220、229、236、244、または271のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR1領域が、SEQ ID NO: 189、201、209、237、245、255、または260のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR2領域が、SEQ ID NO: 190、202、210、216、221、225、230、238、246、261、263、または272のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR3領域が、SEQ ID NO: 191、196、203、211、217、222、230、239、247、249、252、256、264、266、268、または273のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、かつLFR4領域が、SEQ ID NO: 192、204、212、218、240、248、または257のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
前記抗体が、重鎖定常(CH)ドメインおよび軽鎖定常(CL)ドメインをさらに含み:
(a) 該CHドメインが、IgG定常ドメイン、IgG1定常ドメイン、IgG2定常ドメイン、IgG2a定常ドメイン、IgG2b定常ドメイン、IgG2c定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、IgA定常ドメイン、IgA1定常ドメイン、IgA2定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgM定常ドメイン、およびIgE定常ドメインからなる群より選択され、かつ、SEQ ID NO: 274~290のうちの1つに対して最少で90%の配列同一性を有する配列を含み;かつ
(b) 該CLドメインが、Igκ定常ドメインおよびIgλ定常ドメインからなる群より選択され、かつSEQ ID NO: 291~301のうちの1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、
請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、人為操作された抗体、ヒト抗体、単鎖抗体(scFv)、または抗体断片である、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
低下したグリコシル化を有するか、グリコシル化を有しないか、または低フコシル化されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項24】
薬学的に許容される担体がヒスチジンまたは糖を含む、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
糖がスクロースである、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片を複数種含む薬学的組成物であって、該組成物中の該抗体の少なくとも0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、5%、またはそれより多くが、α2,3結合型シアル酸残基を有する、薬学的組成物。
【請求項27】
請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片を複数種含む薬学的組成物であって、いずれの抗体もバイセクト型Glc-NAcを含まない、薬学的組成物。
【請求項28】
凍結乾燥物として調製されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物。
【請求項29】
BKウイルス感染を中和する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体または組成物の有効量、および任意で治療剤を投与する段階を含む、方法。
【請求項30】
必要とする患者が、BKウイルス感染またはBKウイルス血症を有すると診断されている、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
BKウイルスもしくはJCウイルスに関連する異常を処置する、または該異常が生じる可能性を低下させる方法であって、
それを必要とする対象に、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体または組成物の有効量、および任意で治療剤を投与する段階を含み、かつ、
該異常が、移植拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、腎症、BKVAN、出血性膀胱炎(HC)、進行性多巣性白質脳症(PML)、小脳顆粒細胞障害(granule cell neuronopathy)(GCN)、間質性腎疾患、尿管狭窄症、血管炎、大腸炎、網膜炎、髄膜炎、免疫再構築症候群(IRIS)である、
方法。
【請求項32】
前記抗体が、注射または注入によって投与される、請求項29または31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体または組成物が、注射または注入の前に再構成される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
治療剤が免疫抑制剤である、請求項29または31に記載の方法。
【請求項35】
免疫抑制剤が、一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、プリン合成阻害剤、カルシニューリン阻害剤、またはmTOR阻害剤である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
免疫抑制剤が、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ミコフェノール酸ナトリウム、アザチオプリン、タクロリムス、シロリムス、またはシクロスポリンである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
治療剤が追加の抗VP1抗体である、請求項29または31に記載の方法。
【請求項38】
請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片をコードする、核酸。
【請求項39】
請求項38に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項40】
請求項39に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項41】
抗体または抗原結合断片を作製するためのプロセスであって、請求項40に記載の宿主細胞を培養する段階、および培養物から抗体を回収する段階を含む、プロセス。
【請求項42】
標識されている請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、診断用試薬。
【請求項43】
標識が、放射性標識、フルオロフォア、発色団、イメージング剤、および金属イオンからなる群より選択される、請求項42に記載の診断用試薬。
【請求項44】
ドナーの臓器を受ける移植レシピエントにおいて、移植拒絶のリスクを低下させる方法であって、
(i) ドナーの臓器に存在するBKウイルスの血清型を決定する段階、
(ii) ドナーの臓器に存在するBKウイルスの血清型を中和する請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体または組成物を、選択する段階、および
(iii) 選択された抗体を、注射または注入によって移植レシピエントに投与する段階
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. § 119(e)のもとで、2021年3月12日に提出された「BKウイルスに対する中和モノクローナル抗体(NEUTRALIZING MONOCLONAL ANTIBODIES TO BK VIRUS)」との名称を有する米国特許仮出願第63/160,678号の恩典を主張するものであり、該仮出願の全開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
EFS-Webを介してASCIIテキストファイルとして提出された配列表
本出願には配列表が含まれており、該配列表はEFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出されていて、かつその全体が参照により本明細書に組み入れられる。該ASCIIバージョンは2022年3月11日に作成されたものであり、「I0526.70009WO00SEQGJM」との名称を有し、かつ521バイトのサイズである。この声明により、該配列表は本明細書の一部を構成する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
BKウイルス(BKV)はdsDNAポリオーマウイルスであり、該ウイルスは、腎移植後のポリオーマウイルス関連腎症(polyomavirus-associated nephropathy)(PyVAN)、および同種造血幹細胞移植後のポリオーマウイルス関連出血性膀胱炎(polyomavirus-associated hemorrhagic cystitis)(PyVHC)の、原因病原体である。BKウイルスは遺伝学的に異なる複数の遺伝子型からなり、該遺伝子型は血清型における差異を生じさせ得る。PyVANおよびPyVHCはいずれもほぼ、免疫が抑制されている患者においてのみ発症するものであり、かつ、現時点での唯一のその処置法は免疫抑制の減弱であるが、これは生着不全のリスクを劇的に増大させる。BKウイルス性疾患を処置するための新規なアプローチは、がん治療および臓器移植の分野を含めた当技術分野において、歓迎すべき前進となり得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要
本開示は、いくつかの局面において、BKウイルス性疾患を処置するための、単離された抗体および抗原結合断片を提供する。理論に拘束されるものではないが、ある特定の局面において、本明細書に開示される単離された抗体および抗原結合断片は、カプシドタンパク質VP1に結合し、それにより、該タンパク質の、宿主細胞上のシアル酸モエティとの相互作用を阻害し、そしてウイルス感染を防止することによって、BKウイルスを中和する。BKウイルス感染はありふれたものであるが、健康な個人では自己限定性であり、感染した個人は、ウイルスの複製を制限する抗体を産生する。免疫不全の状態、これはたとえば、AIDSなどといった病態の発症の後、または、たとえばがん処置の過程もしくは臓器移植後などにおける、免疫抑制剤での処置の後などであるが、個人がこのような免疫不全の状態になると、抗体の喪失または免疫系の正常な機能の喪失によって、BKウイルスのより大規模な複製が可能になる。この無制御なBKウイルス複製は、膀胱炎、腎症、尿道狭窄症、および大腸炎を含めた、多数の有害作用を引き起こす。したがって、モノクローナル抗体を用いたBKウイルス複製の阻害とは、免疫不全の個人および免疫抑制療法を受けている個人においてウイルスによる発病を予防する有用な方法を、提起するものである。
【0005】
さらに、BKウイルスには4種類の異なる血清型が同定されており、かつ、BKウイルスのある1種類の血清型を含む腎臓を、該血清型に対して特異的な抗体を有しないレシピエントに移植することは、移植拒絶を引き起こす可能性がある。したがって、提供された腎臓に存在するBKウイルスの血清型を同定すること、ならびに、該血清型に特異的な抗体を、移植の前、最中、および/または後に、予定されるレシピエントへと投与することは、移植拒絶のリスクを低下させる方法の1つとして役立つものである。加えて、本明細書に提供されるいくつかの抗体、または抗体のいくつかの組み合わせは、最大で全4種類の血清型のBKウイルスが含まれる、複数の血清型のBKウイルスを中和するものであり、かつしたがって、そのような抗体、または抗体のそのような組み合わせは、BKウイルス感染の血清型が不明の場合であっても、BKウイルスの複製を防止または制限するのに有用である。
【0006】
いくつかの局面において、本開示は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3の3つの相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の3つのCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、ここで:
(a) HCDR1は、SEQ ID NO: 1、9、17、25、33、41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、145、153、161、169、または177に対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(b) HCDR2は、SEQ ID NO: 2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98、106、114、122、130、138、146、154、162、170、または178に対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(c) HCDR3は、SEQ ID NO: 3、11、19、27、35、43、51、59、67、75、83、91、99、107、115、123、131、139、147、155、163、171、または179に対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(d) LCDR1は、SEQ ID NO: 4、12、20、28、36、44、52、60、68、76、84、92、100、108、116、124、132、140、148、156、164、172、または180に対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(e) LCDR2は、SEQ ID NO: 5、13、21、29、37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、141、149、157、165、173、または181に対して少なくとも90%の配列同一性を含み;かつ
(f) LCDR3は、SEQ ID NO: 6、14、22、30、38、46、54、62、70、78、86、94、102、110、118、126、134、142、150、158、166、174、または182に対して少なくとも90%の配列同一性を含む。
【0007】
いくつかの局面において、本開示は、さらに2種の抗体を含む組成物を提供し、ここで第2の抗体は、第1の抗体のCDR配列の少なくとも1つとは異なるCDR配列を少なくとも1つ含む。
【0008】
いくつかの態様において、本明細書に提供される単離された抗体または抗原結合断片は、CDR配列の以下のセットを含む:
(a) HCDR1が、SEQ ID NO: 1もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 2もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 3もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 4もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 5もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 6もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(b) HCDR1が、SEQ ID NO: 9もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 10もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 11もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 12もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 13もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 14もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(c) HCDR1が、SEQ ID NO: 17もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 18もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 19もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 20もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 21もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 22もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(d) HCDR1が、SEQ ID NO: 25もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 26もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 27もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 28もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 29もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 30もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(e) HCDR1が、SEQ ID NO: 33もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 34もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 35もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 36もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 37もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 38もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(f) HCDR1が、SEQ ID NO: 41もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 42もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、
HCDR3が、SEQ ID NO: 43もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 44もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 45もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 46もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(g) HCDR1が、SEQ ID NO: 49もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 50もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 51もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 52もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 53もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 54もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(h) HCDR1が、SEQ ID NO: 65もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 66もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 67もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 68もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 69もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 70もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(i) HCDR1が、SEQ ID NO: 73もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 74もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 75もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 76もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 77もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 79もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(j) HCDR1が、SEQ ID NO: 81もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 82もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 83もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 84もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 85もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 86もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(k) HCDR1が、SEQ ID NO: 89もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 90もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 91もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 92もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 93もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 94もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(l) HCDR1が、SEQ ID NO: 97もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 98もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 99もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 100もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 101もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 102もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(m) HCDR1が、SEQ ID NO: 105もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 106もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 107もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 108もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 109もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 110もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(n) HCDR1が、SEQ ID NO: 113もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 114もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 115もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 116もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 117もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 118もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(o) HCDR1が、SEQ ID NO: 121もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 122もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 123もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 124もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 125もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 126もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(p) HCDR1が、SEQ ID NO: 129もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 130もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 131もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 132もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 133もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 134もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(q) HCDR1が、SEQ ID NO: 137もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 138もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 139もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 140もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 141もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 142もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(r) HCDR1が、SEQ ID NO: 145もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 146もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 147もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 148もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 149もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 150もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(s) HCDR1が、SEQ ID NO: 153もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 154もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 155もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 156もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 157もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 158もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(t) HCDR1が、SEQ ID NO: 161もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 162もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 163もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 164もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 165もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 166もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;
(u) HCDR1が、SEQ ID NO: 169もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 170もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 171もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 172もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 173もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 174もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む;または
(v) HCDR1が、SEQ ID NO: 177もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR2が、SEQ ID NO: 178もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、HCDR3が、SEQ ID NO: 179もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR1が、SEQ ID NO: 180もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、LCDR2が、SEQ ID NO: 181もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含み、かつLCDR3が、SEQ ID NO: 182もしくはその少なくとも90%の配列を有する配列を含む。
【0009】
いくつかの局面において、本開示は、さらに2種の抗体を含む組成物を提供し、ここで第1の抗体は、先行する段落に記載の(a)~(v)の抗体のいずれかを含み、かつ第2の抗体は、第1の抗体からなるものではない。
【0010】
いくつかの態様において、第1の抗体は、上の段落に記載の(a)~(v)の抗体のいずれかを含み、かつ第2の抗体は、(a)~(v)の抗体のいずれかを含み、かつ第1の抗体からなるものではない。
【0011】
いくつかの局面において、本開示は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、ここで:
(a) VHは、SEQ ID NO: 7、15、23、31、39、47、55、63、71、79、87、95、103、111、119、127、135、143、151、159、167、175、または183に対して少なくとも90%の配列同一性を含み;かつ
(b) VLは、SEQ ID NO: 8、16、24、32、40、48、56、64、72、80、88、96、104、112、120、128、136、144、152、160、168、176、または184に対して少なくとも90%の配列同一性を含む。
【0012】
いくつかの局面において、本開示は、先行する段落に記載の抗体を2種以上含む組成物を提供し、ここで第2の抗体は、(a) 第1の抗体のVH配列の少なくとも1つとは異なるVH配列を少なくとも1つ含むか、または(b) 第1の抗体のVL配列の少なくとも1つとは異なるVL配列を少なくとも1つ含む。
【0013】
本明細書に提供される単離された抗体または抗原結合断片のいくつかの態様において:
(aa) VHはSEQ ID NO: 7を含み、かつVLはSEQ ID NO: 8を含む;
(bb) VHはSEQ ID NO: 15を含み、かつVLはSEQ ID NO: 16を含む;
(cc) VHはSEQ ID NO: 31を含み、かつVLはSEQ ID NO: 32を含む;
(dd) VHはSEQ ID NO: 39を含み、かつVLはSEQ ID NO: 40を含む;
(ee) VHはSEQ ID NO: 47を含み、かつVLはSEQ ID NO: 48を含む;
(ff) VHはSEQ ID NO: 55を含み、かつVLはSEQ ID NO: 56を含む;
(gg) VHはSEQ ID NO: 63を含み、かつVLはSEQ ID NO: 64を含む;
(hh) VHはSEQ ID NO: 71を含み、かつVLはSEQ ID NO: 72を含む;
(ii) VHはSEQ ID NO: 79を含み、かつVLはSEQ ID NO: 80を含む;
(jj) VHはSEQ ID NO: 87を含み、かつVLはSEQ ID NO: 88を含む;
(kk) VHはSEQ ID NO: 95を含み、かつVLはSEQ ID NO: 96を含む;
(ll) VHはSEQ ID NO: 103を含み、かつVLはSEQ ID NO: 104を含む;
(mm) VHはSEQ ID NO: 111を含み、かつVLはSEQ ID NO: 112を含む;
(nn) VHはSEQ ID NO: 119を含み、かつVLはSEQ ID NO: 120を含む;
(oo) VHはSEQ ID NO: 127を含み、かつVLはSEQ ID NO: 128を含む;
(pp) VHはSEQ ID NO: 135を含み、かつVLはSEQ ID NO: 136を含む;
(qq) VHはSEQ ID NO: 143を含み、かつVLはSEQ ID NO: 144を含む;
(rr) VHはSEQ ID NO: 151を含み、かつVLはSEQ ID NO: 152を含む;
(ss) VHはSEQ ID NO: 159を含み、かつVLはSEQ ID NO: 160を含む;
(tt) VHはSEQ ID NO: 167を含み、かつVLはSEQ ID NO: 168を含む;
(uu) VHはSEQ ID NO: 175を含み、かつVLはSEQ ID NO: 176を含む;または
(vv) VHはSEQ ID NO: 183を含み、かつVLはSEQ ID NO: 184を含む。
【0014】
いくつかの局面において、本開示は、さらに2種の抗体を含む組成物を提供し、ここで第1の抗体は、先行する段落に記載の(aa)~(vv)の抗体のいずれかを含み、かつ第2の抗体は、第1の抗体からなるものではない。
【0015】
いくつかの態様において、第1の抗体は、上の段落に記載の(aa)~(vv)の抗体のいずれかを含み、かつ第2の抗体は、(aa)~(vv)の抗体のいずれかを含み、かつ第1の抗体からなるものではない。
【0016】
いくつかの局面において、本開示は、単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、ここで、BKウイルスVP1タンパク質に結合した際に、抗体は、SEQ ID NO: 529の以下の残基:S80、D82、R83、もしくはR170の少なくとも1つに結合するか、またはSEQ ID NO: 529に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列のうちの対応する残基に結合し、かつ抗体は、BKウイルスVP1のシアル酸との結合を阻害するかあるいはブロックする。さまざまな態様において、単離された抗体または抗原結合断片は、該単離された抗体または抗原結合断片の非存在下での、BKウイルスのシアル酸との結合のレベルと比較して、BKウイルスのシアル酸との結合を、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも4%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または最大で100%阻害する。
【0017】
いくつかの局面において、本開示は、さらに2種の抗体を含む組成物を提供し、ここで第1の抗体は、先行する段落のいずれかに記載の抗体のいずれかを含み、かつ第2の抗体は、第1の抗体からなるものではない。
【0018】
いくつかの態様において、第1の抗体は、上の段落に記載の抗体のいずれかを含み、かつ第2の抗体は、上の段落に記載の抗体のいずれかを含み、かつ第1の抗体からなるものではない。
【0019】
いくつかの局面において、本開示は、単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、ここで、
(a) 該抗体は、BKウイルス血清型1のVP1を含むウイルス、BKウイルス血清型2のVP1を含むウイルス、BKウイルス血清型3のVP1を含むウイルス、およびBKウイルス血清型4のVP1を含むウイルスによる感染を阻害することが可能であり、ここで、ウイルスによる感染を阻害することが可能な抗体は、以下の段階:
(i) ウイルスを抗体または対照タンパク質と接触させる段階;
(ii) ウイルスを標的細胞とインキュベートする段階;および
(iii) 段階(ii)の終了時における、ウイルスに感染している標的細胞の割合か、または標的細胞に存在するウイルスのRNAもしくはDNAの量を決定する段階
を含む方法によって決定された、ウイルスによる標的細胞の感染を阻害する抗体であり、ここで、該抗体の非存在下での、感染している標的細胞の量かまたはウイルスのRNAもしくはDNAの量と比較して、該抗体の存在下で、ウイルスに感染している標的細胞の割合がより少ないこと、または標的細胞に存在する疑似ウイルスのRNAもしくはDNAの量がより少ないことを決定することが、ウイルスによる感染の阻害を示し;かつ
(b) 該抗体は、BKウイルス血清型1のVP1、BKウイルス血清型2のVP1、BKウイルス血清型3のVP1、およびBKウイルス血清型4のVP1に存在するエピトープに結合することが可能である。
【0020】
いくつかの局面において、本開示は、さらに2種の抗体を含む組成物を提供し、ここで第1の抗体は、上の段落に記載の抗体(たとえば、(a)~(v)または(aa)~(vv)に指定される抗体)のいずれかを含み、かつ第2の抗体は、第1の抗体からなるものではない。
【0021】
いくつかの態様において、第1の抗体は、上の段落に記載の抗体(たとえば、(a)~(v)または(aa)~(vv)に指定される抗体)のいずれかを含み、かつ第2の抗体は、上の段落に記載の抗体のいずれかを含み、かつ第1の抗体からなるものではない。
【0022】
本明細書に提供される抗体または抗原結合断片のいくつかの態様において、抗体は、最大で約10-7 M;最大で約10-8 M;最大で約10-9 M;最大で約10-10 M;最大で約10-11 M;最大で約10-12 M;および最大で10-13 Mからなる群より選択される、BKウイルスVP1タンパク質からの解離定数(KD)を有する。
【0023】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、以下をさらに含む:重鎖フレームワーク領域HFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4;ならびに軽鎖フレームワーク領域LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4。
【0024】
いくつかの態様において、HFR1領域は、SEQ ID NO: 185、193、197、205、213、226、234、241、250、または269のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR2領域は、SEQ ID NO: 186、194、198、206、214、223、227、232、242、または253のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR3領域は、SEQ ID NO: 187、195、199、207、215、219、224、228、233、235、243、251、254、258、259、262、265、267、または270のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR4領域は、SEQ ID NO: 188、200、208、220、229、236、244、または271のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR1領域は、SEQ ID NO: 189、201、209、237、245、255、または260のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR2領域は、SEQ ID NO: 190、202、210、216、221、225、230、238、246、261、263、または272のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR3領域は、SEQ ID NO: 191、196、203、211、217、222、230、239、247、249、252、256、264、266、268、または273を含み、かつLFR4領域は、SEQ ID NO: 192、204、212、218、240、248、または257のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、重鎖定常(CH)ドメインおよび軽鎖定常(CL)ドメインをさらに含み、ここで:
(a) CHドメインは、IgG定常ドメイン、IgG1定常ドメイン、IgG2定常ドメイン、IgG2a定常ドメイン、IgG2b定常ドメイン、IgG2c定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、IgA定常ドメイン、IgA1定常ドメイン、IgA2定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgM定常ドメイン、およびIgE定常ドメインからなる群より選択され、かつSEQ ID NO: 274~290のうちの1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または最大で100%の配列同一性を有する配列を含み;かつ
(b) CLドメインは、Igκ定常ドメインおよびIgλ定常ドメインからなる群より選択され、かつSEQ ID NO: 291~301のうちの1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または最大で100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0026】
いくつかの態様において、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、人為操作された抗体、ヒト抗体、単鎖抗体(scFv)、または抗体断片である。
【0027】
いくつかの態様において、抗体は、低下したグリコシル化を有するか、グリコシル化を有しないか、または低フコシル化されている。
【0028】
いくつかの局面において、本開示は、抗体または抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、ヒスチジンまたは糖を含む。いくつかの態様において、糖はスクロースである。
【0029】
いくつかの局面において、本開示は、抗体または抗原結合断片を複数種含む組成物を提供し、ここで、組成物中の抗体の、最少で0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、5%、またはそれより多くは、α2,3結合型シアル酸残基を有する。
【0030】
いくつかの局面において、本開示は、抗体または抗原結合断片を複数種含む組成物を提供し、ここで、いずれの抗体もバイセクト型Glc-NAcを含まない。
【0031】
ある態様において、薬学的組成物は凍結乾燥物として調製される。
【0032】
いくつかの局面において、本開示は、BKウイルス感染を中和する方法を提供し、該方法は、抗体の有効量、または抗体を含む組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、該必要とする対象は、BKウイルス感染またはBKウイルス血症を有すると診断されている。
【0033】
いくつかの態様において、本開示は、BKウイルスもしくはJCウイルスに関連する異常を処置する、または該異常が生じる可能性を低下させる方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に、抗体の有効量、または抗体を含む組成物の有効量を投与する段階を含み、かつ、該異常は、移植拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、腎症、BKVAN、出血性膀胱炎(HC)、進行性多巣性白質脳症(PML)、小脳顆粒細胞障害(granule cell neuronopathy)(GCN)、間質性腎疾患、尿管狭窄症、血管炎、大腸炎、網膜炎、髄膜炎、免疫再構築症候群(IRIS)である。
【0034】
いくつかの態様において、抗体は注射または注入によって投与される。いくつかの態様において、抗体または組成物は、注射または注入の前に再構成される。
【0035】
これらの局面および態様、ならびに他の局面および態様は、本明細書においてより詳細に説明される。本開示のいくつかの例示的な態様の説明は、例示することのみを目的として提供されるのであって、限定することを意味するものではない。さらなる組成物および方法もまた、本開示に包含される。
【0036】
いくつかの態様において、治療剤は免疫抑制剤である。いくつかの態様において、免疫抑制剤は、一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、プリン合成阻害剤、カルシニューリン阻害剤、またはmTOR阻害剤である。いくつかの態様において、免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ミコフェノール酸ナトリウム、アザチオプリン、タクロリムス、シロリムス、またはシクロスポリンである。
【0037】
いくつかの態様において、治療剤は、追加の抗VP1抗体である。
【0038】
いくつかの局面において、本開示は、上の段落に記載される抗体または抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
【0039】
いくつかの局面において、本開示は、核酸を含むベクターを提供する。
【0040】
いくつかの局面において、本開示は、ベクターを含む単離された宿主細胞を提供する。
【0041】
いくつかの局面において、本開示は、抗体または抗原結合断片を作製するためのプロセスを提供し、該プロセスは、宿主細胞を培養する段階、および培養物から抗体を回収する段階を含む。
【0042】
いくつかの局面において、本開示は、標識されている抗体または標識されている抗原結合断片を含む、診断用試薬を提供する。いくつかの態様において、標識は、放射性標識、フルオロフォア、発色団、イメージング剤、および金属イオンからなる群より選択される。
【0043】
いくつかの局面において、本開示は、ドナーの臓器の提供を受ける移植レシピエントにおいて、移植拒絶のリスクを低下させる方法を提供し、該方法は以下の段階を含む:(i) ドナーの臓器に存在するBKウイルスの血清型を決定する段階、(ii) ドナーの臓器に存在するBKウイルスの血清型を中和する抗体または該抗体を含む組成物を、選択する段階、および(iii) 選択された抗体を、注射または注入によって移植レシピエントに投与する段階。
【0044】
上述の概要は、本明細書に開示される技術の、態様、利点、特徴、および用途のいくつかを、非限定的な様式で例示することを意図している。本明細書に開示される技術の、他の態様、利点、特徴、および用途は、詳細な説明、図面、実施例、および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1:BKウイルスに対するモノクローナル抗体の作製、単離、および評価。BKウイルスのVP1、VP2、およびVP3をコードするDNAが、初回免疫感作としてマウスに投与され、その後、BKウイルスのVP1、VP2、およびVP3を含む疑似ウイルスが、ブースター用量としてマウスに投与された。脾細胞はSp2/0細胞と融合されてハイブリドーマが形成され、該ハイブリドーマは培養されて抗体が産生され、そしてモノクローナル抗体がハイブリドーマ上清から単離された。単離されたモノクローナル抗体は、さまざまな血清型のVP1タンパク質を含む疑似ウイルスに対する中和活性について、単独かまたは他の抗体との組み合わせのいずれかで評価された。
図2図2:VP1発現細胞との結合を示す、免疫感作された動物の血清のフローサイトメトリー。フローサイトメトリーによる血清の解析:EXPI293F細胞(Invitrogen)には、BKの遺伝子型1または遺伝子型4のVP1が、VP2およびVP3とともに、3-1-1の比でトランスフェクトされた。48時間後、細胞は洗浄され、そして洗浄後、免疫感作されたマウスの血清(1:200、1:1000、1:5000)を用いて染色され、そして、アロフィコシアニンがコンジュゲートされたヤギ抗マウスγ鎖特異的二次抗体(Jackson Immunoresearch)と30分間インキュベートされた。細胞は再度洗浄され、そして50 ul PBS中に再懸濁されて、ハイスループットフローサイトメーター(HTFC)(Intellicyt)において解析された。
図3図3:BKで免疫感作されたVelocimmuneマウスの血清による、疑似ウイルスの中和。293 TT細胞は96ウェルプレートにプレーティングされ、そして24時間後、マウス血清の希釈物、および疑似ウイルス-GFPとインキュベートされ、そしてRTで15分間インキュベートされた。細胞は72時間培養され、そしてPsV感染細胞は、感染のリードアウトとしてGFPを用いて、フローサイトメトリーによって可視化された。
図4図4:選択された上清のEC50中和力価の推定。上清中のmAbの濃度はOctetを用いて算出され、そして、ウイルス遺伝子型のそれぞれを中和するのに必要なタンパク質の量が決定された、そして該量はpMとして表示されている。感染は、感染細胞におけるGFPの発現によって決定された。結果は、EC50 pM(PsV感染の50%を阻害する濃度)として表現されている。x軸に沿って左から右へ向かう矢印は、4本の棒から構成されるクラスターのそれぞれにおける棒の順序が、左から右に向かう方向で、凡例の順序に対応していることを示す。
図5図5:精製されたモノクローナル抗体を用いたEC50中和。中和活性を有することが示されている上清由来の抗体は、プロテインAカラムにおいて精製され、PBS中に再懸濁され、そして、BKの遺伝子型1、2、3、および4の疑似ウイルスの293TT細胞への感染を中和することについて試験された。結果は、EC50 pM(PsV感染の50%を阻害する濃度)として表現されている。感染は、感染細胞におけるGFPの発現によって決定された。x軸に沿って左から右へ向かう矢印は、4本の棒から構成されるクラスターのそれぞれにおける棒の順序が、左から右に向かう方向で、凡例の順序に対応していることを示す。
図6図6:コンパレーター抗体と比較した、全4種類の遺伝子型に対するmAbの中和力価。精製された交差中和mAbは、293TT細胞を用いたPsV感染アッセイにおいて、PsVのそれぞれの遺伝子型の中和について試験された。感染は、感染細胞におけるGFPの発現によって決定された。x軸に沿って左から右へ向かう矢印は、4本の棒から構成されるクラスターのそれぞれにおける棒の順序が、左から右に向かう方向で、凡例の順序に対応していることを示す。
図7図7:部分的中和抗体の組み合わせは、BKの全4種類の遺伝子型からの保護をもたらすことが可能である。混合物はmAbのペアを含んでおり、かつ各混合物は、BK遺伝子型1、2、3、または4の疑似ウイルスの293TT細胞への感染を中和することについて試験された。結果は、EC50 pM(PsV感染の50%を阻害する濃度)として表現されている。感染は、感染細胞におけるGFPの発現によって決定された。これらの結果は、表9においても再掲されている。x軸に沿って左から右へ向かう矢印は、4本の棒から構成されるクラスターのそれぞれにおける棒の順序が、左から右に向かう方向で、凡例の順序に対応していることを示す。
図8A図8A:交差中和mAbの、選択された変異を有する遺伝子型1のVP1との結合。記載される変異を有するVP1、または未変異のVP1が使用されて、293TT細胞がトランスフェクトされ、そして、結合の変化がフローサイトメーターによって決定された。色付きの線は、変異が、記載されるファミリーの抗体の結合に影響を及ぼしたことを示す。ファミリーC、H、J、K、およびLが示されている。コンパレーター抗体は完全にヒト抗体であり、かつ結合は別の二次抗体を用いて同定される。x軸に沿って左から右へ向かう矢印は、5本の棒から構成されるクラスターのそれぞれにおける棒の順序が、左から右に向かう方向で、凡例の順序に対応していることを示す。
図8B図8B:ファミリーC、H、J、K、およびLのモノクローナル抗体が標的とする、BKウイルスVP1上のエピトープの位置。
図9-1】図9:抗体を含む選択された上清の、中和解析およびフローサイトメトリー解析。表の上部は、それぞれの血清型由来のVP1を発現する4種類の疑似ウイルスの、モノクローナル抗体を含む上清による中和を示すとともに、BKウイルスの異なるVP1血清型をコードする4種類の核酸のうちの1種類をトランスフェクトされた細胞のフローサイトメトリー解析であって、トランスフェクトされた該細胞を、同じ型の上清を用いて染色することによるフローサイトメトリー解析をも示す。中和についての数字は、上清が中和アッセイに使用された際の、感染細胞のパーセントを表す。フローサイトメトリーについての数字は、BK I~BK IVのVP Iをトランスフェクトされたかまたはモックをトランスフェクトされた細胞であって、上清を用いて染色された細胞の、MFI(中央値)を表す。表の下部においては、上清が、その結合プロファイルの類似性によって分類されている。これらの結果は、未知のタンパク質濃度を有する、未希釈の培養上清を用いて実施されている。
図9-2】図9-1の続きの図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ある特定の態様の詳細な説明
定義
本明細書において使用される場合、「抗体」とは、非共有結合的に、可逆的に、かつ特異的な様式で、対応する抗原に結合することが可能である、免疫グロブリンファミリーのポリペプチドを指す。たとえば、天然のIgG抗体は、ジスルフィド結合によって互いに連結された2つの重鎖(H鎖)および2つの軽鎖(L鎖)を少なくとも含む、四量体である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてはVHと略される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてはVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるさらに保存された領域が散在している領域へと、さらに細かく分割することが可能である。VHおよびVLはいずれも、3つのCDRと4つのFRとから構成されており、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、宿主の組織または因子との結合を媒介し得るものであり、該組織または因子には、免疫系のさまざまな細胞(たとえばエフェクター細胞)、および古典的補体系の第1成分(C1q)が含まれる。
【0047】
抗体には、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科動物の抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(たとえば、本開示の抗体に対する抗Id抗体が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。抗体は、任意のアイソタイプ/クラスのものであってよく(たとえば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、または任意のサブクラス(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のものであってもよい。
【0048】
本明細書において使用される場合、「相補性決定ドメイン」または「相補性決定領域」(「CDR」)とは、VLおよびVHの超可変領域を、互換性をもって指す。CDRは、抗体鎖における、標的タンパク質に結合する部位であり、これは、そのような標的タンパク質に対する特異性を提供する。ヒトのVLまたはVHのそれぞれには、3つのCDR(CDR1~CDR3、N末端から順に番号付けられている)が存在しており、これらは可変ドメインの約15~20%を構成している。CDRは、それらの領域および順序によっても参照され得る。たとえば、「VHCDR1」または「HCDR1」は両方とも、重鎖可変領域の第1のCDRを指す。CDRは、標的タンパク質のエピトープに対して相補的な構造であり、かつしたがって、結合特異性の直接的な要因である。VLまたはVHの残りの領域である、いわゆるフレームワーク領域は、アミノ酸配列のそれほど大きくはない変動を示す(Kuby, "Immunology" 第4版第4章、W.H. Freeman & Co., ニューヨーク、2000)。
【0049】
CDRの位置およびフレームワーク領域の位置は、当技術分野において周知のさまざまな定義、たとえば、Kabat、Chothia、およびAbMなどを用いて、決定することが可能である(たとえば、Johnson et al., Nucleic Acids Res., 29:205-206 (2001); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987); Chothia et al., Nature, 342:877-883 (1989); Chothia et al., J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992); Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol., 273:927-748 (1997)を参照されたい)。抗原結合部位の定義はまた、以下においても記載されている:Ruiz et al., Nucleic Acids Res., 28:219-221 (2000); およびLefranc, M. P., Nucleic Acids Res., 29:207-209 (2001); MacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732-745 (1996); およびMartin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268-9272 (1989); Martin et al., Methods Enzymol., 203:121-153 (1991); およびRees et al., Sternberg M. J. E. (編) "Protein Structure Prediction"中の141-172、Oxford University Press, オックスフォード (1996))。Kabatの番号付けスキーム、およびChothiaの番号付けスキームが組み合わされている場合には、いくつかの態様において、CDRは、KabatのCDRの一部であるか、ChothiaのCDRの一部であるか、または両方の一部であるアミノ酸残基に対応する。たとえば、いくつかの態様において、CDRは、VH、たとえば哺乳動物VH、たとえばヒトVHにおける、アミノ酸残基26~35位(HC CDR1)、50~65位(HC CDR2)、および95~102位(HC CDR3);ならびにVL、たとえば哺乳動物VL、たとえばヒトVLにおける、アミノ酸残基24~34位(LC CDR1)、50~56位(LC CDR2)、および89~97位(LC CDR3)に、対応する。
【0050】
軽鎖および重鎖は両方とも、構造的相同性の領域と機能的相同性の領域とに分割される。「定常」および「可変」との用語は、機能に関して使用される。これに関し、軽鎖部分の可変ドメイン(VL)および重鎖部分の可変ドメイン(VH)の両方が抗原認識および特異性を決定することが、理解されるであろう。一方、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2、またはCH3)は、重要な生物学的特性を、たとえば、分泌、経胎盤通過性、Fc受容体との結合、補体との結合等を、付与する。慣例により、定常領域ドメインの番号は、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から該ドメインが遠ざかるにつれて増える。N末端は可変領域であり、かつC末端は定常領域である;CH3ドメインおよびCLドメインは実際に、重鎖のカルボキシ末端ドメインおよび軽鎖のカルボキシ末端ドメインを、それぞれ含む。
【0051】
本明細書において使用される場合、「抗原結合断片」とは、抗原のエピトープと特異的に相互作用する(たとえば、結合によって、立体障害によって、安定化/不安定化によって、空間分布によって、相互作用する)能力を保持する、抗体の1つまたは複数の領域を指す。結合断片の例には以下が含まれるが、これらに限定されない:単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv(disulfide-linked Fv)(sdFv)、Fab断片、F(ab')断片、VLドメインとVHドメインとCLドメインとCH1ドメインとからなる1価の断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む2価の断片;VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の1つのアームのVLドメインとVHドメインとからなるFv断片;VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., Nature 341:544-546, 1989);ならびに抗体の、単離された相補性決定領域(CDR)または他のエピトープ結合断片。
【0052】
さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるものであるが、合成リンカーによって、組み換え方法を用いてそれらドメインを連結することが可能であり、ここで該合成リンカーは、VL領域とVH領域とがペアをなして1価の分子を形成している1本のタンパク質鎖として、それらドメインを作製することを可能にするものである(これは単鎖Fv(「scFv」)として知られている;たとえば、Bird et al., Science 242:423-426, 1988; およびHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883, 1988を参照されたい)。そのような単鎖抗体もまた、「抗原結合断片」との用語に包含されることが意図される。これらの抗原結合断片は、当業者に公知の慣用の技術を用いて入手され、かつ該断片は、インタクトな抗体と同じ様式で、有用性に関してスクリーニングされる。
【0053】
抗原結合断片はまた、以下に取り入れることも可能である:シングルドメイン抗体、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、ナノボディ、イントラボディ(intrabody)、ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、v-NAR、およびビス-scFv(bis-scFv)(たとえば、Hollinger and Hudson, Nature Biotechnology 23:1126-1136, 2005を参照されたい)。抗原結合断片は、たとえば、フィブロネクチンIII型(Fn3)(フィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載する、米国特許第6,703,199号を参照されたい)などといった、ポリペプチドに基づくスキャフォールドに移植することが可能である。
【0054】
抗原結合断片は、相補的な軽鎖ポリペプチドとともに抗原結合領域のペアを形成するタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)のペアを含む一本鎖分子に、取り入れることが可能である(Zapata et al., Protein Eng. 8:1057-1062, 1995; および米国特許第5,641,870号)。
【0055】
本明細書において使用される場合、「モノクローナル抗体」とは、抗体および抗原結合断片を含むポリペプチドであって、実質的に同一なアミノ酸配列を有するかまたは同じ遺伝学的供給源に由来する、ポリペプチドを指す。この用語には、分子1種類の組成である、抗体分子の調製物もまた含まれる。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して単一の結合親和性および親和性を示す。
【0056】
本明細書において使用される場合、「ヒト抗体」には、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体が含まれる。さらに、抗体が定常領域を含む場合、該定常領域もまた、そのようなヒト配列、たとえば、ヒト生殖系列配列、もしくはヒト生殖系列配列の変異バージョンに由来するものであり、または抗体は、ヒトフレームワーク配列の解析から得られたコンセンサスフレームワーク配列を含み、これはたとえば、Knappik et al., J. Mol. Biol. 296:57-86, 2000に記載されている)。
【0057】
本開示のヒト抗体は、ヒト配列がコードしていないアミノ酸残基(たとえば、ランダム変異導入もしくは部位特異的変異導入によってインビトロで導入された変異、もしくは体細胞変異によってインビボで導入された変異、または、安定性もしくは製造を支援するための保存的置換)を含み得る。
【0058】
本明細書において使用される場合、「ポリペプチド」および「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーを指す。該用語は、アミノ酸ポリマーであって、その1つまたは複数のアミノ酸残基が、それに対応する天然のアミノ酸の人工的な化学的模倣体である、アミノ酸ポリマーに適用されるとともに、天然のアミノ酸ポリマーおよび非天然のアミノ酸ポリマーにも適用される。別途指定されない限り、ある特定のポリペプチド配列は、保存的修飾されたそのバリアントをも、暗黙的に包含する。
【0059】
本明細書において使用される場合、「BKウイルス」および「BKV」は、ポリオーマウイルス科(family Polyomaviridae)、オルソポリオーマウイルス属(genus Orthopolyomavirus)のメンバーの1つを指す。ポリオーマウイルスは、20面体であってノンエンベロープ型である2本鎖DNAウイルスであり、およそ5,000塩基対のゲノムを有する。BKウイルスはおよそ40~45 nMの直径を有する(Bennett et al., Microbes and Infection. 2012:14(9):672-683)。
【0060】
本明細書において使用される場合、「JCウイルス」および「JCV」は、ポリオーマウイルス科、オルソポリオーマウイルス属のメンバーの1つを指す。JCウイルスは、BKウイルスに近縁であり、かつこれもまた、20面体であってノンエンベロープ型である2本鎖DNAウイルスであり、およそ5,000塩基対のゲノムを有する。JCウイルスはおよそ40~45 nMの直径を有する(Johne et al., Arch. Virol. 2011; 156(9):1627-1634)。
【0061】
本明細書において使用される場合、「血清型」とは、ウイルスのサブセットであって、該サブセットのウイルスによって引き起こされる免疫応答によって定義される、ウイルスのサブセットを指す。所与の血清型のウイルスに曝露された際に、宿主、たとえばマウスまたはヒトなどは、該ウイルスに結合しかつ同じ血清型の他のウイルスにも結合するが、異なる血清型の他のウイルスに必ずしも結合するわけではない抗体を、産生する。ウイルスの血清型は、該ウイルスを、既知の各血清型のウイルスへの応答において産生された抗体と接触させること、およびどの抗体が該ウイルスに結合したかを決定することによって、決定することが可能である。血清型1への応答において産生された抗体が、検討中のウイルスに結合する場合、該ウイルスは、血清型1のウイルスであると言われる。
【0062】
配列同一性は、本明細書に記載される方法を用いて決定することが可能であり、これはたとえば、BLAST、ALIGN、CLUSTAL、CLUSTALW、または当技術分野において公知の別のアラインメントソフトウェアもしくはアラインメントアルゴリズムを用いて、2つの配列をアラインすることなどである。参照アミノ酸配列に対するパーセント(%)配列同一性とは、最大のパーセント配列同一性が達成されるように、配列をアラインしそして必要であればギャップを導入した後で、参照アミノ酸配列中のアミノ酸と同一である、候補配列中のアミノ酸のパーセンテージを指す。候補アミノ酸配列(A)とアミノ酸配列(B)との間のパーセント配列同一性は、以下のようにして算出され得る:%配列同一性 = X/Yの100倍、ここでXとは、アラインメント後の、Bにおける対応する位置のアミノ酸と同一である、Aにおけるアミノ酸の数であり、かつYとは、Bにおけるアミノ酸の総数である。いくつかの態様において、アミノ酸配列は、参照配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む。
【0063】
本明細書において使用される場合、「中和」とは、宿主細胞のウイルス感染を阻害することを指し、これはウイルス遺伝子の発現が存在しないことによって証明される。いかなる理論にも拘束されるものではないが、ある特定の抗体による中和のメカニズムには、ウイルスカプシドタンパク質と細胞表面受容体との相互作用をブロックすること、または、ウイルスゲノムが宿主細胞の核に送達される前の侵入および輸送のプロセスの、任意のステージを妨害することが含まれ得る。
【0064】
本明細書において使用される場合、「対象」とはヒトおよび非ヒト動物を指す。非ヒト動物には、たとえば哺乳動物および非哺乳動物といった、全ての脊椎動物が含まれ、これはたとえば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などである。
【0065】
本明細書において使用される場合、任意の疾患または異常を「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、またはそれらの「処置(treatment)」との用語は、1つの局面において、該疾患または異常を改善すること(すなわち、該疾患の進行を、またはその臨床症状の少なくとも1種を、遅延または停止または低下させること)を指す。別の局面において、「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、または「処置(treatment)」とは、患者が認識できない可能性があるものを含めた物理的パラメーターの少なくとも1つを、軽減または改善することを指す。さらなる別の局面において、「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、または「処置(treatment)」とは、疾患もしくは異常を物理的に調整すること(たとえば、認識可能な症状の安定化)、疾患もしくは異常を生理的に調整すること(たとえば、生理的パラメーターの安定化)、またはそれら両方の、いずれかを指す。
【0066】
「生じる可能性を低下させる」との表現は、疾患、感染、または異常の、発症または発生または進行を遅延させることを指す。
【0067】
「治療的に許容される量」または「治療的有効用量」との用語は、所望の結果(すなわち、腫瘍サイズの低下や、腫瘍増殖の阻害や、転移の予防や、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、もしくは寄生生物感染の阻害や、またはそれら感染の予防)を生じさせるのに十分な量を、互換性をもって指す。いくつかの局面において、治療的に許容される量は、望ましくない副作用を誘導せず、それを引き起こすこともない。治療的に許容される量は、最初に低用量を投与すること、および次に、所望の効果が達成されるまで、該用量を徐々に増加させることによって決定され得る。本開示の分子の「予防的有効投薬量」または「治療的有効投薬量」とはそれぞれ、ポリオーマウイルス感染に関連する症状を含めた疾患の症状の、発症を予防し得るもの、または該症状の重症度の低減をもたらし得るものである。
【0068】
抗体
本開示は、いくつかの局面において、たとえばBKウイルスといったポリオーマウイルスのVP1に結合する、単離された抗体および抗体断片(たとえば抗原結合断片)を提供する。抗体とは、B細胞が発現する、B細胞受容体の可溶型であり、これは、エピトープまたは抗原に結合することが可能である。抗体が、非共有結合的な様式で、たとえば水素結合を介するなどして、エピトープまたは抗原に非一過性に結合する場合、該抗体は、エピトープに結合することが可能である。結合の正確な強さは、抗体の構造と、検討中のエピトープまたは抗原とに応じて変化する。抗体がエピトープまたは抗原に結合するかどうかを決定する方法は、当技術分野において周知である。
【0069】
いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは複数の重鎖、および1つまたは複数の軽鎖を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は2つの重鎖および2つの軽鎖を含み、ここで、第1の軽鎖は、ジスルフィド結合によって第1の重鎖と連結されており、第2の軽鎖は、ジスルフィド結合によって第2の重鎖と連結されており、かつ第1の重鎖および第2の重鎖は、ジスルフィド結合によって連結されている。重鎖は、いくつかの態様において、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメイン(VH)と、1つまたは複数の定常ドメイン(CH)とを含む。軽鎖は、いくつかの態様において、CDRを含む可変ドメイン(VL)と、1つまたは複数の定常ドメインとを含む。
【0070】
いくつかの態様において、抗体の構造は、CDR、VHドメイン、および/またはVLドメインのアミノ酸配列によってある程度決定され、かつその結果、抗体があるエピトープまたは抗原に結合可能であるかどうかも、該アミノ酸配列によってある程度決定される。抗体をコードする核酸配列およびしたがって抗体のアミノ酸配列は、B細胞の発生の過程で決定され、その結果、任意の2つのB細胞は、多くの場合、異なるアミノ酸配列を有する抗体を発現することとなる。B細胞は、骨髄において造血幹細胞から発生し、その過程において該細胞のゲノムは再構成を受けて、これはVHドメインをコードする核酸配列およびVLドメインをコードする核酸配列の形成をもたらす。VHドメインをコードする核酸配列を形成する再構成の前には、造血幹細胞のゲノムは、複数の重鎖可変(V)セグメント、複数の重鎖多様性(D)セグメント、および複数の重鎖連結(J)セグメントを含んでいる。B細胞の発生の過程において、その染色体は、ある1つのDセグメントとある1つのJセグメントとの間のDNAが該染色体から切除されて、該Dセグメントと該Jセグメントとを含むDJ複合体が形成されるように、再構成される。次に該染色体は、ある1つのVセグメントとDJ複合体との間のDNAが該染色体から切除されて、該VセグメントとDJ複合体とを含むVDJ複合体が形成されるように、再構成される。VLドメインをコードする核酸を形成する再構成も同様の様式で行われるが、VLドメインをコードする核酸がある1つのVセグメントとある1つのJセグメントとを含む一方でDセグメントは含まない点が異なっており、かつしたがって、VLドメインをコードする核酸の形成は、ある1つのVセグメントとある1つのJセグメントとからVJ複合体を形成するという、1回の再構成ステップしか必要としない。この再構成の前には、造血幹細胞のゲノムは、複数の軽鎖可変(V)セグメントおよび複数の連結(J)セグメントを含んでいる。重鎖VDJ複合体の形成の後で、軽鎖の複数のVセグメントおよび複数のJセグメントを含む染色体は、ある1つのVセグメントとある1つのJセグメントとの間のDNAが切除されて、VJ複合体が形成されるように、再構成される。
【0071】
いくつかの態様において、本開示は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3の3つの相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3の3つのCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。本明細書に提供される抗体のCDRの代表的なアミノ酸配列は表1に示されており、ヌクレオチド配列は表5に示されている。いくつかの態様において、
(a) HCDR1は、SEQ ID NO: 1、9、17、25、33、41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、145、153、161、169、または177のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(b) HCDR2は、SEQ ID NO: 2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98、106、114、122、130、138、146、154、162、170、または178のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(c) HCDR3は、SEQ ID NO: 3、11、19、27、35、43、51、59、67、75、83、91、99、107、115、123、131、139、147、155、163、171、または179のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(d) LCDR1は、SEQ ID NO: 4、12、20、28、36、44、52、60、68、76、84、92、100、108、116、124、132、140、148、156、164、172、または180のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
(e) LCDR2は、SEQ ID NO: 5、13、21、29、37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、141、149、157、165、173、または181のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;かつ
(f) LCDR3は、SEQ ID NO: 6、14、22、30、38、46、54、62、70、78、86、94、102、110、118、126、134、142、150、158、166、174、または182のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含む。
【0072】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 1を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 2を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 3を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 4を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 5を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 6を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0073】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 9を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 10を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 11を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 12を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 13を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 14を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0074】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 17を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 18を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 19を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 20を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 21を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 22を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0075】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 25を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 26を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 27を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 28を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 29を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 30を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0076】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 33を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 34を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 35を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 36を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 37を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 38を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 41を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 42を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 43を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 44を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 45を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 46を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 49を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 50を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 51を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 52を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 53を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 54を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 65を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 66を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 67を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 68を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 69を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 70を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 73を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 74を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 75を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 76を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 77を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 79を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0081】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 81を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 82を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 83を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 84を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 85を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 86を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0082】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 89を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 90を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 91を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 92を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 93を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 94を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0083】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 97を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 98を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 99を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 100を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 101を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 102を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0084】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 105を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 106を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 107を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 108を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 109を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 110を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0085】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 113を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 114を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 115を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 116を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 117を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 118を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0086】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 121を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 122を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 123を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 124を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 125を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 126を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0087】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 129を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 130を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 131を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 132を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 133を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 134を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0088】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 137を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 138を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 139を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 140を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 141を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 142を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0089】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 145を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 146を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 147を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 148を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 149を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 150を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0090】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 153を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 154を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 155を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 156を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 157を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 158を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0091】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 161を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 162を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 163を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 164を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 165を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 166を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0092】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 169を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 170を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 171を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 172を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 173を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 174を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0093】
いくつかの態様において、HCDR1はSEQ ID NO: 177を含み、HCDR2はSEQ ID NO: 178を含み、HCDR3はSEQ ID NO: 179を含み、LCDR1はSEQ ID NO: 180を含み、LCDR2はSEQ ID NO: 181を含み、かつLCDR3はSEQ ID NO: 182を含むか、またはこれらは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0094】
本開示は、いくつかの局面において、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。いくつかの態様において、VHは、SEQ ID NO: 7、15、23、31、39、47、55、63、71、79、87、95、103、111、119、127、135、143、151、159、167、175、または183のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含み;かつVLは、SEQ ID NO: 8、16、24、32、40、48、56、64、72、80、88、96、104、112、120、128、136、144、152、160、168、176、または184のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 7を含み、かつVLはSEQ ID NO: 8を含む。
【0095】
いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 15を含み、かつVLはSEQ ID NO: 16を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 31を含み、かつVLはSEQ ID NO: 32を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 39を含み、かつVLはSEQ ID NO: 40を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 47を含み、かつVLはSEQ ID NO: 48を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 55を含み、かつVLはSEQ ID NO: 56を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 63を含み、かつVLはSEQ ID NO: 64を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 71を含み、かつVLはSEQ ID NO: 72を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 79を含み、かつVLはSEQ ID NO: 80を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 87を含み、かつVLはSEQ ID NO: 88を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 95を含み、かつVLはSEQ ID NO: 96を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 103を含み、かつVLはSEQ ID NO: 104を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 111を含み、かつVLはSEQ ID NO: 112を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 119を含み、かつVLはSEQ ID NO: 120を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 127を含み、かつVLはSEQ ID NO: 128を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 135を含み、かつVLはSEQ ID NO: 136を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 143を含み、かつVLはSEQ ID NO: 144を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 151を含み、かつVLはSEQ ID NO: 152を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 159を含み、かつVLはSEQ ID NO: 160を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 167を含み、かつVLはSEQ ID NO: 168を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 175を含み、かつVLはSEQ ID NO: 176を含む。いくつかの態様において、VHはSEQ ID NO: 183を含み、かつVLはSEQ ID NO: 184を含む。他の態様において、VHまたはVLは、前述の配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0096】
いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、重鎖フレームワーク領域および/または軽鎖フレームワーク領域を含む。フレームワーク領域とは、VHドメインまたはVLドメインに存在するアミノ酸配列であって、CDRとは区別され、かつVHドメインまたはVLドメインの形成を支援する、アミノ酸配列である。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、重鎖フレームワーク領域HFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4、ならびに軽鎖フレームワーク領域LFR1、LFR2、LFR3、ならびにLFR4を含む。本明細書に提供される抗体のフレームワーク領域の代表的なアミノ酸配列は、表2に示されている。いくつかの態様において、HFR1領域は、SEQ ID NO: 185、193、197、205、213、226、234、241、250、または269のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR2領域は、SEQ ID NO: 186、194、198、206、214、223、227、232、242、または253のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR3領域は、SEQ ID NO: 187、195、199、207、215、219、224、228、233、235、243、251、254、258、259、262、265、267、または270のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、HFR4領域は、SEQ ID NO: 188、200、208、220、229、236、244、または271のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR1領域は、SEQ ID NO: 189、201、209、237、245、255、または260のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR2領域は、SEQ ID NO: 190、202、210、216、221、225、230、238、246、261、263、または272のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、LFR3領域は、SEQ ID NO: 191、196、203、211、217、222、230、239、247、249、252、256、264、266、268、または273を含み、かつLFR4領域は、SEQ ID NO: 192、204、212、218、240、248、または257のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、1つもしくは複数の重鎖CHドメイン、および/または1つもしくは複数のCLドメインを含む。CHドメインおよびCLドメインは免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、それらはいずれも複数のβストランドを含む。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、3個、4個、5個、6個、7個、または8個のCHドメインを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のCHドメインは、IgG定常ドメイン、IgG1定常ドメイン、IgG2定常ドメイン、IgG2a定常ドメイン、IgG2b定常ドメイン、IgG2c定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、IgA定常ドメイン、IgA1定常ドメイン、IgA2定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgM定常ドメイン、およびIgE定常ドメインからなる群より選択される。重鎖CHドメインの代表的なアミノ酸配列は、表3に提供されている。2つの抗体は同一のVHドメインおよびVLドメインを有し得、かつしたがって、同じエピトープまたは抗原に結合し得るが、該2つの抗体は異なるCHドメインを含み得、かつしたがって、構造が異なり得る。B細胞の表面上のB細胞受容体または抗体がエピトープまたは抗原に結合した後、B細胞は最初の活性化状態となるが、この時、前駆体mRNAを転写する段階であって、IgMのCHドメインをコードする核酸配列およびIgDのCHドメインをコードする核酸配列がVHドメインをコードする核酸配列の下流に位置する前駆体mRNAを転写する段階を皮切りに、可溶型抗体の発現が開始される。前駆体mRNAのプロセシングの過程で、IgMのCHドメインをコードする核酸配列またはIgDのCHドメインをコードする核酸配列が、VHドメインをコードする核酸配列に隣接するように、前駆体mRNAがスプライシングされ、その結果、該mRNAの翻訳により、IgMまたはIgDの重鎖が産生される。抗体のアイソタイプとは、抗体のCHドメインを指す(たとえば、IgGのCHドメインを有する抗体は、IgGアイソタイプを有する)。抗体をコードする核酸配列を含む、B細胞のゲノムは、1つまたは複数のCHドメインをコードする核酸配列の切除をもたらす再構成を受け得、その結果、別のCHドメインをコードする核酸配列が、VDJをコードする核酸の下流に位置する最初のCHドメインをコードする核酸となる。したがって、この様式で再構成されたゲノムを有するB細胞によって産生された抗体は、IgMまたはIgDとは異なるアイソタイプのものであり、これはたとえば、IgG、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、IgG4、IgA、IgA1、IgA2、またはIgEなどである。
【0098】
いくつかの態様において、1つまたは複数のCLドメインは、Igκ定常ドメイン、およびIgλ定常ドメインからなる群より選択される。重鎖CHドメインの代表的なアミノ酸配列は、表4に提供されている。マウスおよびヒトを含めたいくつかの動物種においては、ゲノムは、Igκ遺伝子座およびIgλ遺伝子座と称される2つの遺伝子座を含み、これらは、VLドメインをコードする核酸配列を形成する再構成が可能である。B細胞の発生の過程において、再構成は、Igκ遺伝子座またはIgλ遺伝子座において、ある1つの軽鎖Vセグメントをある1つの軽鎖Jセグメントの隣に配置するように行われ、そして、再構成によるVLドメインの産生が成功した場合、発現する軽鎖は、IgκCLドメインまたはIgλCLドメインをそれぞれ含む。
【0099】
いくつかの態様において、1つまたは複数のCHドメインは、SEQ ID NO: 274~290のうちの1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは2つのCLドメインを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のCLドメインは、SEQ ID NO: 291~301のうちの1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
本開示は、いくつかの局面において、単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、ここで、BKウイルスVP1タンパク質に結合した際に、抗体は、SEQ ID NO: 529の以下の残基:S80、D82、R83、またはR170の少なくとも1つに結合し、かつ抗体は、BKウイルスVP1のシアル酸との結合をブロックする。BKウイルスVP1タンパク質の配列の一例は、アクセッション番号P03088として提供されており、これを、SEQ ID NO: 529として改めて掲載している。タンパク質の所与の残基に抗体が結合するかどうかは、当技術分野において公知である、エピトープマッピングを行う多くの方法によって決定され得、これはたとえば、X線共結晶構造解析、または変異導入マッピングなどである(たとえば、King et al. Methods Mol Biol. 2018. 1785:13-27、およびDavidson et al. Immunology. 2014. 143(1):13-20を参照されたい)。X線共結晶構造解析とは、抗原に結合している抗体を結晶化し、そして、抗体と抗原との間の相互作用を可視化するためにX線解析を使用する、というプロセスである。抗体が抗原に結合する位置は、その後、この可視化から観察することが可能である。変異導入マッピングは、タンパク質、たとえばVP1などの改変型を作製し、そして、未改変のタンパク質と比較して、改変型のタンパク質に、抗体がどのくらい好ましく結合するかを決定するプロセスを指す。たとえば、ある抗体が、SEQ ID NO: 529に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質に結合するが、該抗体が、同じアミノ酸配列において80位のセリン(S80)がアラニンに置換されているアミノ酸配列を有するタンパク質に結合しない場合、該抗体はS80残基に結合する、と言われる。
【0101】
本開示は、いくつかの局面において、単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、ここで、
(a) 該抗体は、BKウイルス血清型1のVP1を含むウイルス、BKウイルス血清型2のVP1を含むウイルス、BKウイルス血清型3のVP1を含むウイルス、およびBKウイルス血清型4のVP1を含むウイルスによる感染を阻害することが可能であり、ここで、ウイルスによる感染を阻害することが可能な抗体は、以下の段階:
(i) ウイルスを抗体または対照タンパク質と接触させる段階;
(ii) ウイルスを標的細胞とインキュベートする段階;
(iii) 段階(ii)の終了時における、ウイルスに感染している標的細胞の割合か、または標的細胞に存在するウイルスのRNAもしくはDNAの量を決定する段階
を含む方法によって決定された、ウイルスによる標的細胞の感染を阻害する抗体であり、ここで、該抗体の非存在下での、感染している標的細胞の量かまたはウイルスのRNAもしくはDNAの量と比較して、該抗体の存在下で、ウイルスに感染している標的細胞の割合がより少ないこと、または標的細胞に存在する疑似ウイルスのRNAもしくはDNAの量がより少ないことを決定することが、ウイルスによる感染の阻害を示し;かつ
(b) 該抗体は、BKウイルス血清型1のVP1、BKウイルス血清型2のVP1、BKウイルス血清型3のVP1、およびBKウイルス血清型4のVP1に存在するエピトープに結合することが可能である。
【0102】
BKウイルスによる細胞の感染は、BKウイルスのVP1が、細胞表面上のシアル残基(たとえば、α2,8結合型シアル酸)に結合することから開始される。シアル残基との結合の後で、ウイルス粒子を含むエンドソームがエンドサイトーシスにより形成され、その後、VP1を含むカプシドが脱殻して、細胞質へのウイルスの侵入が容易になる。抗体が、ウイルスVP1タンパク質上のエピトープと結合することで、VP1の機能が妨害され得る。たとえば、抗体が結合するエピトープのアミノ酸が、シアル酸との結合に必要である場合、結合した抗体による立体障害は、抗体が結合しているVP1が、宿主細胞の表面に結合することを防止し得る。あるいは、抗体の結合によって脱殻プロセスが阻害され得、その結果、エンドサイトーシスを経たウイルス粒子は、細胞質に侵入できなくなる。
【0103】
抗体が、所与のVP1タンパク質を含むウイルス、または所与の血清型のVP1タンパク質を含むウイルスによる感染を阻害するかどうかの決定は、当技術分野において公知である多数の方法のうちの1つによって達成され得、これはたとえば、ウイルスまたは疑似ウイルスの中和アッセイなどである。疑似ウイルスとは、細胞に感染することが可能であるが、該細胞において複製することも新しいウイルス粒子を産生することもできないウイルスであり、これは多くの場合、該ウイルスが、新しいウイルス粒子を産生するのに必要な核酸を少なくとも1つ欠いていることによる。
【0104】
疑似ウイルスは、関心対象のウイルスと同じウイルスタンパク質を含み得、かつ任意で、たとえば緑色蛍光タンパク質などのレポータータンパク質をも含み得、これは、標的細胞に感染する疑似ウイルスの能力を当業者が測定することを可能にする。たとえば、疑似ウイルスは、ある定義された期間にわたり、標的細胞の集団とインキュベートされ得る。該期間の後で、感染細胞の数または割合が、当技術分野において公知である多数の方法のうちの1つによって、測定され得る。たとえば、疑似ウイルスが、レポータータンパク質、たとえば緑色蛍光タンパク質などを含む場合、GFPが存在する細胞の数が、フローサイトメトリーによって測定され得、そしてこれが、感染細胞の割合を算出するために使用され得る。ウイルスがレポータータンパク質を含む場合には、関心対象のウイルスの感染力を測定するために、同様のアプローチが使用され得る。あるいはウイルスが標的細胞とインキュベートされた後であって、かつ、残った非感染ウイルス粒子が標的細胞の表面から除去された後で、標的細胞に存在するウイルスDNAまたはウイルスRNAの量が、PCRまたはRT-qPCRによって定量され得る。
【0105】
関心対象の抗体または抗原結合断片が、所与のタンパク質を含むウイルス、たとえば所与の血清型のVP1タンパク質を含むウイルスなどによる感染を阻害するかどうかの決定は、先行する段落に記載のものと同様のアプローチによって達成され得、そのようなアプローチには、ウイルスまたは疑似ウイルスを標的細胞とインキュベートする段階の前に、ウイルスまたは疑似ウイルスを抗体または対照タンパク質に接触させるという、第1の段階が追加されている。対照タンパク質とは、該ウイルスまたは該疑似ウイルスに結合することが知られていないタンパク質を指す。対照タンパク質の非限定的な例には、ウシ血清アルブミンが含まれ、かつ、関心対象の抗体と同じアイソタイプの抗体であって、該ウイルスまたは該疑似ウイルスに存在しないエピトープまたは抗原に結合する抗体も含まれる。
【0106】
抗体が感染を阻害するかどうかを決定するため、ウイルスまたは疑似ウイルスを抗体と接触させた際の、感染している標的細胞の割合が、ウイルスまたは疑似ウイルスを対照タンパク質と接触させた際の、感染している標的細胞の割合と、比較される。あるいは、そのような両方の場合において、ウイルスまたは疑似ウイルスとインキュベートした後に、標的細胞に存在するウイルスのRNAまたはDNAの全量が、測定され得る。ウイルスまたは疑似ウイルスを抗体と接触させた際の感染細胞の割合またはウイルスのRNAもしくはDNAの全量が、対照タンパク質と比較して低い場合、該抗体は、該ウイルスまたは疑似ウイルスによる感染を阻害する、と言われる。
【0107】
本開示は、いくつかの局面において、BKウイルスVP1タンパク質との結合に関して、ハイブリドーマによって産生された抗体と競合する、単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。ハイブリドーマを作製するための方法、およびハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である("Antibody Methods and Protocols", Methods in Molecular Biology 第901巻、2012, 第7章: 117)。手短に述べると、動物由来の、たとえばマウスまたはヒト由来のB細胞は、不死化された骨髄腫細胞と混合され、そして電場を印加され、その結果、B細胞は骨髄腫細胞と融合し得、B細胞によってコードされる抗体を産生することが可能な不死細胞である、ハイブリドーマが作製される。個々のハイブリドーマクローンは、単離され得、増殖され得、かつ保存され得る。1つのハイブリドーマ細胞に由来するクローン系列を培養することによって、モノクローナル抗体が作製されることとなり、ここで、培養物中の各抗体は、実質的に同一のアミノ酸配列を含む。
【0108】
いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、最大で約10-7 M;最大で約10-8 M;最大で約10-9 M;最大で約10-10 M;最大で約10-11 M;最大で約10-12 M;および最大で10-13 Mからなる群より選択される、BKウイルスVP1タンパク質からの解離定数(KD)を有する。エピトープまたは抗原からの抗体の解離定数KDは、速度が、エピトープまたは抗原に対する抗体の親和性の尺度であることを指し、KDが小さいほど、エピトープまたは抗原に対して親和性が高いことを表す。抗体、および所与のエピトープまたは抗原に関し、KDは、溶液中の抗体分子の半分がエピトープまたは抗原と結合する時の、抗体の濃度として定義される。エピトープまたは抗原に対する抗体のKDを測定する方法は、当技術分野において周知である(たとえば、Pichler et al. J. Immunol. Methods. 1997; 201(2):189-206を参照されたい)。
【0109】
いくつかの態様において、抗体は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。「モノクローナル抗体」との用語は、同じ遺伝学的供給源に由来しており、かつしたがって実質的に同一のアミノ酸配列を有する、タンパク質またはポリペプチドを指す。
【0110】
いくつかの態様において、抗体は、キメラ抗体またはその抗原結合断片である。キメラ抗体とは、異なる遺伝学的供給源由来のアミノ酸配列を含む抗体である。いくつかの態様において、キメラ抗体は、マウス由来のアミノ酸配列、およびヒト由来のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、キメラ抗体は、マウスに由来する可変ドメイン、およびヒトに由来する定常ドメインを含む。
【0111】
いくつかの態様において、抗体は、ヒト化抗体またはその抗原結合断片である。ヒト化抗体とは、ヒトに由来する定常ドメインおよびフレームワーク領域を含む抗体である。いくつかの態様において、ヒト化抗体は、非ヒト動物に由来する1つまたは複数のCDRを含む。CDRが由来し得る非ヒト動物の非限定的な例には、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、および非ヒト霊長類が含まれる。
【0112】
いくつかの態様において、抗体は人為操作された抗体である。人為操作された抗体とは、非ヒト供給源、たとえばマウスなどに由来する抗体であって、抗体の所望の特徴を改善するために、たとえば、抗体が対象に投与された際に安定性を増大させるかまたは免疫原性を低下させるために、1つまたは複数の置換がなされている抗体を指す。いくつかの態様において、置換は、低リスク位置(たとえば、溶媒に曝露されるが、抗原との結合または抗体の構造に寄与しない位置)において行われる。そのような置換は、所望のエピトープまたは抗原に結合する抗体の能力に影響を及ぼすことなく、抗体を投与した後で該抗体に対する免疫応答が対象において生じるリスクを軽減する(たとえば、Studnicka et al. Protein Eng. 1994. 7(6):805-814を参照されたい)。
【0113】
いくつかの態様において、抗体は単鎖の抗体または抗原結合断片である。単鎖抗体または単鎖可変断片(scFV)とは、1つのタンパク質またはポリペプチドを形成するように、たとえば合成リンカーなどによって互いに連結されたVHドメインとVLドメインとを含む、タンパク質またはポリペプチドである(たとえば、Bird et al., Science. 242:423-426, 1988; およびHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883, 1988を参照されたい)。
【0114】
いくつかの態様において、抗体は抗体断片または抗原結合断片である。抗体断片とは、抗体に由来する、タンパク質またはポリペプチドである。抗原結合断片とは、抗体に由来するタンパク質またはポリペプチドであって、それが由来する抗体と同じエピトープまたは抗原に結合することが可能な、タンパク質またはポリペプチドである。
【0115】
いくつかの態様において、抗体は、低下したグリコシル化を有するか、グリコシル化を有しないか、または低フコシル化されている。グリコシル化とは、糖、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、またはグリカンのモエティの、分子との、たとえばポリペプチドまたはタンパク質などとの、共有結合を指す。これらの糖モエティまたはグリカンモエティは、通常、B細胞による分泌の前に、翻訳後の様式で抗体に結合する。低下したグリコシル化を有する抗体とは、それと実質的に同一のアミノ酸配列を有する抗体がたとえばマウスまたはヒトにおいてインビトロまたはインビボでB細胞によって産生された場合に典型的に結合している数よりも少ない、結合している糖モエティまたはグリカンモエティを有するものである。グリコシル化を有しない抗体とは、結合している糖モエティやグリカンモエティを有しないものである。低フコシル化されている抗体とは、それと実質的に同一のアミノ酸配列を有する抗体がたとえばマウスまたはヒトにおいてインビトロまたはインビボでB細胞によって産生された場合に典型的に結合している数よりも少ない、フコシル残基を有するものである。
【0116】
抗体を含む組成物、およびその使用
本開示は、いくつかの局面において、本明細書に記載される抗体および/または抗原結合断片を2種以上含む組成物を提供する。いくつかの態様において、第2の抗体は、第1のCDR配列のCDR配列の少なくとも1つとは異なるCDR配列を少なくとも1つ含む。抗体の構造は、6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)の組み合わせによってある程度決定され、かつ、抗体が所与のエピトープまたは抗原に結合可能であるかどうかも、該組み合わせによってある程度決定される。したがって、CDRの少なくとも1つが異なる2つの抗体は、構造が異なっており、かつ別々のエピトープまたは抗原に結合することが可能であり得る。
【0117】
いくつかの態様において、第2の抗体は、第1の抗体のVH配列の少なくとも1つとは異なるVH配列を少なくとも1つ含む。いくつかの態様において、第2の抗体は、第1の抗体のVL配列の少なくとも1つとは異なるVL配列を少なくとも1つ含む。抗体の構造は、VHのアミノ酸配列とVLのアミノ酸配列との組み合わせによって決定され、かつ、抗体が所与のエピトープまたは抗原に結合可能であるかどうかも、該組み合わせによって決定される。したがって、VH配列か、VL配列か、またはそれら両方が異なる2つの抗体は、構造が異なっており、かつ別々のエピトープまたは抗原に結合することが可能であり得る。
【0118】
本明細書に提供される抗体および/または抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物として製剤化されてよい。薬学的に許容される賦形剤もまた、製剤中に組み込まれてよく、かつこれは、当技術分野において公知である任意の賦形剤(たとえば担体)であってよい。非限定的な一例には、以下が含まれる:水、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、単糖、二糖、多糖、炭化水素油、脂肪および油、ワックス、脂肪酸、シリコーン油、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ならびに、そのような賦形剤の、水ベースの混合物およびエマルションベースの混合物。いくつかの態様において、薬学的に許容される賦形剤は、ヒスチジンまたは糖を含む。いくつかの態様において、薬学的に許容される賦形剤は、糖を含む。いくつかの態様において、薬学的に許容される賦形剤は、スクロースを含む。
【0119】
薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野において公知であり(たとえば、Remington, "The Science and Practice of Pharmacy"(第21版、Lippincott Williams and Wilkins, フィラデルフィア、ペンシルベニア州)および"The National Formulary"(American Pharmaceutical Association, ワシントンD.C.)を参照されたい)、かつ、以下を含む:糖(たとえば、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトール)、デンプン、セルロース調製物、リン酸カルシウム(たとえば、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、およびリン酸水素カルシウム)、クエン酸ナトリウム、水、水性溶液(たとえば、生理食塩水、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース・塩化ナトリウム注射液、ラクトリンゲル注射液)、アルコール(たとえば、エチルアルコール、プロピルアルコール、およびベンジルアルコール)、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール)、有機エステル(たとえば、オレイン酸エチルおよびトリグリセリド)、生分解性ポリマー(たとえば、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(酸無水物))、エラストマーマトリックス、リポソーム、マイクロスフェア、油(たとえば、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、綿実油、およびラッカセイ油)、ココアバター、ワックス(たとえば坐剤ワックス)、パラフィン、シリコーン、タルク、ならびにシリシレート(silicylate)。本発明の薬学的組成物において使用される、薬学的に許容される賦形剤はそれぞれ、製剤中の他の成分と適合性であるという意味で、「許容される」ものでなくてはならず、かつ、対象に対して有害であってはならない。選択された剤形と意図される投与経路とに適した賦形剤は、当技術分野において周知であり、かつ、選択された剤形と投与方法とに許容される希釈剤または担体は、当技術分野における通常の技能を用いて決定することが可能である。
【0120】
従来の賦形剤、たとえば、あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液状ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤などに加えて、賦形剤には以下が含まれるが、これらに限定されない:リピドイド(lipidoid)、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コア-シェル型ナノ粒子、ペプチド、タンパク質、DNAまたはRNAがトランスフェクトされた細胞(たとえば、対象に移植するためのもの)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体、およびそれらの組み合わせ。
【0121】
本明細書に提供される抗体または抗原結合断片の投与経路には、たとえば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、または鼻腔内の経路が含まれる。したがって、いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片を含む組成物は、静脈内送達、筋肉内送達、腹腔内送達、皮下送達、または鼻腔内送達のために製剤化され得る。
【0122】
本明細書に提供される薬学的組成物のいくつかの態様において、組成物中の抗体の少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、または少なくとも5%は、α2,3結合型シアル酸残基を有する。抗体はグリコシル化されていてよく、この場合、糖またはグリカン、たとえばシアル酸などが、抗体のアミノ酸残基に共有結合し得る。たとえばα2,3結合などによるシアル酸残基の結合を含めた、抗体のグリコシル化は、抗体の機能に影響を及ぼし得る(たとえば、Thomann et al. Bioanalysis. 2019. 11(15):1437-1449を参照されたい)。
【0123】
本明細書に提供される薬学的組成物のいくつかの態様において、いずれの抗体も、バイセクト型N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を含まない。バイセクト型N-アセチルグルコサミンは、β1,4結合型GlcNAcが、コアのβ-マンノース残基に結合しているという、N-グリコシル化である。バイセクト型GlcNAcによるタンパク質のグリコシル化は、細胞接着および腫瘍の発達を含めた多くの生物学的プロセスに、影響を及ぼすことが示されており、かつ、バイセクト型GlcNAcの存在は、エピトープもしくは抗原に結合する抗体の能力、またはウイルスを中和する抗体の能力に、影響を及ぼし得る(たとえば、Thomann et al. Bioanalysis. 2019. 11(15):1437-1449を参照されたい)。
【0124】
本明細書に提供される薬学的組成物のいくつかの態様において、組成物は凍結乾燥物として調製される。凍結乾燥またはフリーズドライとは、組成物を凍結し、その後、凍結した組成物から氷が昇華可能であるように、低温かつ低圧で凍結した組成物を乾燥させることによって、組成物から水を除去するプロセスである。昇華後に残った、乾燥した形態の組成物が、凍結乾燥物である。
【0125】
抗体をコードする核酸を含む、ベクターおよび細胞
本開示は、いくつかの局面において、本明細書に提供される抗体または抗原結合断片をコードする核酸を提供する。いくつかの態様において、核酸は、本明細書に提供されるCDRか、VHドメインか、VLドメインか、CHドメインか、CLドメインか、重鎖か、または軽鎖をコードする配列を含む。いくつかの態様において、核酸は、本明細書に提供されるCDR、VHドメイン、VLドメイン、CHドメイン、CLドメイン、重鎖、または軽鎖のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、核酸配列は、細胞における発現のためにコドン最適化されている。コドン最適化された核酸とは、該核酸の未改変型と同じアミノ酸配列をコードするが、該アミノ酸配列を有するタンパク質を産生させるために使用される宿主細胞または宿主生物において好まれるコドンを使用するように改変されている、核酸である。宿主細胞または宿主生物は、たとえば原核細胞または真核細胞であってよく、これはたとえば、酵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎293(HEK-293)細胞、または大腸菌(E. coli)細胞などである。
【0126】
いくつかの局面において、本開示は、本明細書に提供される抗体かまたはその抗原結合断片をコードする核酸を含むベクターを提供する。いくつかの態様において、ベクターは、本明細書に提供されるCDRか、VHドメインか、VLドメインか、CHドメインか、CLドメインか、重鎖か、または軽鎖をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、本明細書に提供されるCDR、VHドメイン、VLドメイン、CHドメイン、CLドメイン、重鎖、または軽鎖のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む。本明細書に提供される抗体またはその断片をコードする核酸を発現させるために、さまざまなベクターが使用可能である。ベクターは、抗体またはその断片をコードする核酸配列を含む、DNAベクターまたはRNAベクターであってよく、これはたとえば、プラスミド、細菌人工染色体(bacterial artificial chromosome)、ヒト人工染色体(human artificial chromosome)、またはmRNAなどである。いくつかの態様において、ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターの非限定的な例には、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター、SV40ウイルスベクター、MPSVベクター、エプスタイン・バーウイルスベクター、およびバクテリオファージベクターが含まれる。抗体またはその断片をコードする核酸配列を、発現ベクター中にクローニングする方法は、該ベクターを用いて抗体またはその断片を作製する方法と同じく、当技術分野において周知である(たとえば、Spidel et al. J Immunol Methods. 2016. 439:50-58を参照されたい)。
【0127】
本明細書に提供される抗体またはその断片を発現させるためのベクターはまた、1つまたは複数の調節エレメントをも含んでよく、これはたとえば、該抗体または断片をコードする核酸に機能的に連結されている、プロモーターなどである。プロモーターは構成的プロモーターであってよく、これは、それに連結されている核酸配列の発現を構成的に駆動する。プロモーターは誘導性プロモーターであってよく、これは、ある特定の条件下、たとえば、ある特定のヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、または他の分子の、細胞における存在、非存在、または濃度などといった条件下でのみ、機能的に連結されている核酸配列が発現するように、該配列の発現を調節する。
【0128】
いくつかの局面において、本開示は、本明細書に提供される抗体またはその抗原結合断片をコードするベクターを含む、単離された宿主細胞を提供する。宿主細胞は原核細胞であってよく、これはたとえば、大腸菌細胞などである。宿主細胞は真核細胞であってよく、これはたとえば、酵母(たとえば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎293(たとえば、HEK-293、HEK-293A、HEK-293T)細胞、ハイブリドーマ細胞、または昆虫細胞などである。宿主細胞の選択は、使用されようとする特定のベクター、抗体の所望の特徴、およびタンパク質の発現プロセスの局面を含めた、多数の因子に応じて変化し得る。たとえば、ヒト細胞は、いくつかのウイルスベクターに対して、たとえばレンチウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどに対してより許容性であり、一方で昆虫細胞は、バキュロウイルスベクターに対してより許容性である。加えて、真核細胞とは異なり、原核細胞が発現するタンパク質においては翻訳後修飾はそれほど生じないため、大腸菌細胞において同じ核酸配列を発現させると、ヒト細胞または酵母細胞で発現させた同じ抗体よりも低下したグリコシル化を有する抗体の産生がもたらされ得る。
【0129】
1つの局面において、本開示は、本明細書に提供される抗体またはその抗原結合断片をコードするベクターまたは核酸配列を含む宿主細胞を用いて該抗体または抗原結合断片を作製するプロセスを、提供する。宿主細胞を用いて抗体を作製する方法は、当技術分野において周知である(たとえば、Frenzel et al. Front Immunol. 2013. 4:217を参照されたい)。手短に述べると、宿主細胞は、a.) 宿主細胞の生存および/または増殖に適切であることを可能にし、かつb.) 抗体または抗原結合断片をコードする核酸配列を発現することを可能にする培地において、培養される。たとえば、核酸配列が誘導性プロモーターに機能的に連結されている場合、プロモーターを誘導し、そして抗体または抗原結合断片をコードする核酸配列の発現を駆動するために、試薬が培地に添加され得る。抗体または抗原結合断片をコードする配列を含む核酸またはベクターが、選択可能マーカーをも含む、たとえば、抗生物質または選択剤に対する抵抗性をコードする配列などをも含む場合、抗生物質または選択剤を添加することで、抗体または抗原結合断片を産生可能な細胞の生存が促進される。宿主細胞が培養された際に、該細胞は抗体または抗原結合断片を発現し、該抗体または抗原結合断片は、細胞外の培地へと分泌される。所望の培養期間の後で、培地は細胞と分離され得、そして、当技術分野において公知の方法を用いて、たとえばカラムに基づく精製法などを用いて、所望のタンパク質が培地から精製され得る。
【0130】
治療用途および診断用途
本開示は、いくつかの局面において、それを必要とする対象に、本明細書に提供される抗体または抗原結合断片、および任意で治療剤を投与することによって、BKウイルス感染を中和する方法を提供する。有効量は治療的有効量とも称され得、これは、対象において所望の臨床結果(たとえばウイルスロードの低下)が達成される量(たとえば用量)を指す。有効量は、少なくとも部分的には以下に基づいている:標的組織、標的細胞型、投与手段、阻害剤の物理的特徴、組成物の他の成分、ならびに他の決定因子、たとえば、対象の、年齢、体重、身長、性別、および全体的な健康状態など。対象は哺乳動物であってよく、これはたとえば、ヒト、非ヒト霊長類(たとえば、アカゲザル、チンパンジー)、またはげっ歯類(たとえば、マウスもしくはラット)などである。いくつかの態様において、対象はヒト対象である。
【0131】
いくつかの態様において、対象は、BKウイルス感染またはBKウイルス血症を有すると診断されている。BKウイルス感染とは、対象の臓器または解剖学的部位、たとえば、腎臓、肝臓、または血液などの、1つまたは複数において、BKウイルス粒子が存在することを指す。BKウイルス血症とは、対象の血中にBKウイルス粒子が存在することを指す。
【0132】
いくつかの局面において、本開示は、ドナーの臓器の提供を受ける移植レシピエントにおいて、移植拒絶のリスクを低下させる方法を提供し、該方法は以下の段階を含む:(i) ドナーの臓器に存在するBKウイルスの血清型を決定する段階、(ii) ドナーの臓器に存在するBKウイルスの血清型を中和する、抗体、その抗原結合断片、または抗体もしくはその抗原結合断片を含む組成物を、選択する段階、および(iii) 選択された抗体を、注射または注入によって移植レシピエントに投与する段階。ウイルスの血清型を決定する方法は、当技術分野において公知である(Pastrana et al. Plos Pathog. 2012. 8(4):e1002650)。ウイルスの調製物が複数調製され、各調製物は、ある特定の血清型のウイルスに結合する抗体と接触し、そして各抗体がウイルスに結合するかどうかが決定される。抗体が、ある血清型のウイルスに結合し、かつ検討中のウイルスにも結合する場合、該ウイルスは、該血清型に属すると言われる。ドナーの臓器に存在するBKウイルスの血清型を決定する目的で、ドナーの臓器の一部がサンプリングされてBKウイルスが単離されるが、該BKウイルスはその際、血清型決定のために速やかに調製されてよく、または、ドナーの臓器に存在するウイルスの血清型を決定する前に、インビトロで複製させてもよい。
【0133】
いくつかの態様において、方法は、治療剤を対象に投与する段階をさらに含む。いくつかの態様において、治療剤は免疫抑制剤である。いくつかの態様において、免疫抑制剤は、一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、プリン合成阻害剤、カルシニューリン阻害剤、またはmTOR阻害剤である。いくつかの態様において、免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ミコフェノール酸ナトリウム、アザチオプリン、タクロリムス、シロリムス、またはシクロスポリンである。いくつかの態様において、治療剤は、追加の抗VP1抗体である。
【0134】
いくつかの局面において、本開示は、BKウイルスもしくはJCウイルスに関連する異常を処置する、または該異常が生じる可能性を低下させる方法を提供し、該方法は、本明細書に提供される抗体の1種または複数種を対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、異常は、移植拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、腎症、BKVAN、出血性膀胱炎(HC)、進行性多巣性白質脳症(PML)、小脳顆粒細胞障害(GCN)、間質性腎疾患、尿管狭窄症、血管炎、大腸炎、網膜炎、髄膜炎、または免疫再構築症候群(IRIS)である。いくつかの態様において、方法は、治療剤を投与する段階をさらに含む。いくつかの態様において、治療剤は免疫抑制剤である。いくつかの態様において、免疫抑制剤は、一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、プリン合成阻害剤、カルシニューリン阻害剤、またはmTOR阻害剤である。いくつかの態様において、免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ミコフェノール酸ナトリウム、アザチオプリン、タクロリムス、シロリムス、またはシクロスポリンである。いくつかの態様において、治療剤は、追加の抗VP1抗体である。
【0135】
本明細書に提供される方法のいくつかの態様において、抗体は注射または注入によって投与される。注射による投与とは、抗体または抗原結合断片が、装置を介して対象に送達されるプロセスである。注射により、組成物は、筋肉へと(筋肉内)、腹腔の中へと(腹腔内)、または皮膚の下へと(皮下)、送達され得る。注入による投与とは、たとえば針またはカテーテルなどによって、ある期間にわたって制御された様式で、抗体または抗原結合断片が対象に送達されるプロセスである。注入により、組成物は、血流へと(静脈内)、または皮膚の下へと(皮下)、直接送達され得る。
【0136】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、注射の前に再構成される。再構成は、抗体の粉末製剤に、液体か、ゲルか、または他の賦形剤を添加することによって、注射または注入による投与に適した液体を調製することを伴う。
【0137】
いくつかの局面において、本開示は、標識されている抗体または標識されているその抗原結合断片を含む、診断用試薬を提供する。標識されている抗体とは、標識、たとえば原子、イオン、または分子などが、共有結合またはイオン結合によって該抗体に連結されている、抗体である。いくつかの態様において、標識は放射性標識である。放射性標識とは、その存在が、放射線に感受性である物質(たとえば、ラジオグラフィ用フィルム)を被曝させることによって検出され得るような、放射性である原子、イオン、または分子である。いくつかの態様において、標識はフルオロフォアである。フルオロフォアとは、光によって励起されることが可能であり、かつ、第1の波長の光による励起の後で、第2の波長の光を放出することが可能である、分子である。発色団もまた、第1の波長の光による励起の後で、第2の波長の光を放出する分子であり、ここで、放出される光は可視スペクトル内にある。いくつかの態様において、標識はイメージング剤である。イメージング剤は造影剤とも称され、これは、対象における対象におけるその存在および位置が検出可能であるように、X線、ガンマ線、電波、または放射性粒子の形態で、エネルギーを放出する。いくつかの態様において、標識は金属イオンである。
【0138】
(表1)抗体の相補性決定領域、可変重鎖ドメイン、および可変軽鎖ドメインのアミノ酸配列
【0139】
(表2)抗体のフレームワーク領域のアミノ酸配列
【0140】
(表3)アイソタイプごとの抗体重鎖定常領域の配列
【0141】
(表4)アイソタイプごとの抗体軽鎖定常領域の配列
【0142】
(表5)抗体の相補性決定領域、可変重鎖ドメイン、および可変軽鎖ドメインのヌクレオチド配列
【0143】
(表6)抗体のフレームワーク領域のヌクレオチド配列
【0144】
配列
【実施例
【0145】
実施例1:
序論
BKウイルスはポリオーマウイルスファミリーのメンバーであり、かつ、進行性多巣性白質脳症(PML)の原因病原体であるJCウイルスに、最も近縁である。BKはノンエンベロープ型のds DNAウイルスであり、以下の3つの機能的領域を有する:大型T細胞抗原(large T cell antigen)および小型T細胞抗原(small T cell antigen)をコードする初期ウイルス遺伝子領域(early viral gene region)(EVGR)、カプシドタンパク質であるVP1、VP2、およびVP3、ならびに非構造的なアグノタンパク質(agnoprotein)をコードする後期ウイルス遺伝子領域(late viral gene region)(LVGR)、ならびに、ノンコーディング制御領域(NCCR)。カプシドタンパク質であるVP1は、ウイルスおよびウイルス様粒子(VLP)の両方において見いだされるものであり、これは、標的細胞との結合に必須であって、かつ中和抗体の標的である(2)。BKウイルスの感染は人口のおよそ80~90%で生じており、そのほとんどは幼少期に生じる(2)。初感染の後、損なわれていない免疫を有する個人においてはウイルスはほぼ無症状であるが、持続感染または潜伏感染として腎尿路に存在し続ける。ウイルスは血中で検出可能ではないが、一部の個人においては、ウイルスは尿中に排泄される(ウイルス尿症)。免疫が抑制されている患者においては、30~60%が尿中にウイルスを排泄し、その半分では非常に高レベルである(>7 log10 c/ml)。高度なウイルス尿症患者の半分は、ウイルス血症(血漿中にあるBK DNA)を発症する。腎移植後のPyVAN、および同種造血幹細胞移植後のポリオーマウイルス関連出血性膀胱炎(PyVHC)は、BKウイルスの再活性化に関連する、まだ対処されていない医学的ニーズを表している。BKウイルスの複製は、腎移植患者の30~50%において生じ、7~8%は移植片機能不全および/または移植片喪失に至る(3)。血中のBKPyVは、診断のための第1の方法となっており、かつ、BKPyV-DNAのレベルが1 mlあたり粒子103個を超えると、PyVANの可能性が示唆され、これが104/mlを上回ると、PyVANと推定される(2, 4, 5)。ウイルスDNAのそのようなレベルが、腎機能の変化とともに観察された場合、唯一の処置法は、免疫抑制療法を減弱することである(5)。造血幹細胞移植患者においては10~25%がPyVHCを発症し、これは、疼痛、出血、閉塞、および、いくつかの症例では腎不全を、もたらす(6, 7)。
【0146】
レシピエントがPyVANを発症しやすくなる、いくつかの因子が報告されている。ドナーにおいて、尿のウイルスレベルが高いこと、または血清中でウイルスに対する抗体の力価が高いことは、レシピエントのPyVANの発症についてのリスク因子である(3, 8-10)。人口中では、I、II、III、およびIVという4種類の遺伝子型のウイルスが見いだされているが、Iは最もまん延しており(60~80%)、かつIVはその次に広まっている(10~20%)。これらの遺伝子型/血清型は、血清学的に異なっている(11)。ドナーの遺伝子型は、ほとんどの場合に感染の要因である(2)。BK複製/ウイルス血症が早期に出現することは、急性移植片拒絶のリスクを増大させる(12)。重要なことに、移植片のレシピエントが、ドナーの臓器に見いだされるウイルス遺伝子型に対する抗体を欠いている場合(8-10)、またはドナーとレシピエントとの間でウイルス遺伝子型のミスマッチがある場合、ウイルス血症およびPyVANを発症するリスクは増大する(2, 3)。ドナーにおける高い抗体力価(高いウイルスロードを示す)と、レシピエントにおける低いかまたはミスマッチの抗体力価との組み合わせは、有意なリスク因子である(3, 8)。Solisらによる168名の移植患者についての前向き研究(3)において、該文献の著者らは、ドナー株に対する中和抗体の力価が高いと、ウイルスによるBKウイルス血症のリスクを極めて顕著に低下させたことを示し、かつ、抗体力価が1 log10上昇するごとにリスクが50%低下したことを示している。遺伝子型のミスマッチがリスクを有意に増大させるという観察は、疾患の予防において、抗体が主要な役割を果たしていることを裏付けるものであり、かつ、該観察は、PyVANのリスクを低下させるために、モノクローナル抗体が予防的/治療的に利用され得ることを示すものである(2, 3, 8)。今回の試験の目標は、BKウイルスの全4種類の遺伝子型を中和可能なmAbを作製すること、またはそれを達成可能な組み合わせを見いだすことであった。
【0147】
結果
BKウイルスを中和するモノクローナル抗体の作製
免疫感作および血清試験:BKウイルスに対するmAbを作製するため、VelocImmuneマウス(13)は、さまざまなBKV遺伝子型のVP1タンパク質をコードするcDNAの、多様な組み合わせを用いて免疫感作された(表7)。さまざまなBK血清型に対する抗体を生じさせるために、概して3回の免疫感作レジメンが利用された。VelocImmuneマウスは、ヒトのVh鎖およびVl鎖、ならびにマウスのFcドメインからなるキメラ免疫グロブリンをコードする。これらのキメラ免疫グロブリンは、単純なクローニングステップによって、完全にヒトのものとすることが可能である(13)。多様な遺伝子型のVP1のcDNAを利用した免疫感作戦略は、さまざまなBKV遺伝子型を広く中和するmAbを増やすためのものであった。免疫感作の後で、各動物の血清が採取され、そして該血清は、VP1をトランスフェクトされたEXPI293F細胞において、フローサイトメトリーによって解析された。BK1由来およびBK4由来のVP1との血清の結合は、図2に示される。動物の血清は、続いて、遺伝子型I、II、III、およびIV由来のVP1を用いて作製された疑似ウイルスの中和に関して試験された(図3)。
【0148】
(表7)BKウイルスを中和するモノクローナル抗体を作製するための免疫感作戦略
【0149】
ハイブリドーマの作製:免疫感作されたマウスであって、その血清が、さまざまなBK疑似ウイルスに対する堅固な交差中和活性を有することが証明されたマウスが、ハイブリドーマを作製するために選択された。動物9、動物12、および動物14の脾臓は、Sp2/0細胞と融合され、選択培地を有する培養皿にプレーティングされ、そして12~14日後に、Hamilton/Stem Cell EzPickを用いて個々のクローンが採取された。2日後、上清は、4種類のVP1のそれぞれをトランスフェクトされた細胞である、BK-VP1トランスフェクト293TT細胞において、フローサイトメトリーによってスクリーニングされ、そして陽性クローンが、BK I、BK II、BK III、およびBK IVの遺伝子型に対する疑似ウイルス中和アッセイにおいて、さらに評価された。全4種類の遺伝子型、3種類、2種類、または1種類の遺伝子型に結合しかつそれらを中和する抗体が、同定された。疑似ウイルスの中和は、以下のようにして実施された:表の上部は、中和および結合の両方について試験された、4種類の遺伝子型のそれぞれのVP1に対する、選択された上清の応答を示す。表中の中和についての数字は、抗体での処理時の、感染細胞のパーセントを表す。表中のフローサイトメトリーについての数字は、BK I~BK IVのVP Iをトランスフェクトされたかまたはモックをトランスフェクトされた細胞に結合する抗体の、MFI(中央値)を表す。表の下部においては、上清が、その結合プロファイルの類似性によって分類されている。これらの結果は、未知のタンパク質濃度を有する、未希釈の培養上清を用いて実施されている。これらの結果は、1回希釈された未知の濃度のハイブリドーマ上清を表す。予備的なスクリーニングにおいて活性を有することが示された抗体を産生するハイブリドーマを増殖させ、そして、Octet Red 96において無標識タンパク質のバイオレイヤー干渉法を用いて、アイソタイプを一致させた標準対照と比較することで、抗体のおおよその濃度が測定された。予測されたタンパク質濃度に基づいて、上清は、疑似ウイルスの中和について試験され(図4)、そしておおよそのEC50が決定された。
【0150】
広く交差中和する抗体の選択:
上清の多くが、BK I、BK II、BK III、およびBK IVの遺伝子型の疑似ウイルスの感染を阻害したが、精製された免疫グロブリンを用いたその後の実験においては、その多くは、200 ng/ml未満の濃度で試験された場合に、効率良く全4種類の遺伝子型を効果的に中和することができなかった。全ての陽性クローンのアイソタイプが決定され、そして、IgGクラスの抗体が精製され、そして該抗体は、全4種類の遺伝子型の中和について試験され、そして、それぞれについてEC50値が算出された。図5は、3回の別個の融合に由来する精製された交差中和抗体のパネルのEC50値を示す。いくつかのmAbは、低いpM濃度で広い交差中和を示す一方で、他のmAbは、2種類または3種類の遺伝子型を中和する。1000を上回るEC50は、非中和とみなされる。
【0151】
中和についての既知の候補治療抗体との比較
全4種類の遺伝子型を中和する精製されたモノクローナル抗体は、疑似ウイルス中和アッセイにおいて、治療用候補であることが知られている対照mAb(BKコンパレーター)と比較された(図6)。mAbのほとんどは、中和に関してコンパレーターmAbと同様であるかまたはそれより優れている。
【0152】
BKウイルスを中和する候補mAbの一覧
表8は、4回の別個の融合から採取されたmAbであって、疑似ウイルスアッセイによって測定された際に、いくつかの、または全てのBK遺伝子型を中和するmAbの、概要を示す(図7も参照されたい)。抗体は、ほぼ全てがIgG2aおよびIgG2bであって、1つのみIgG1である。これらは、9種類の独特な配列ファミリーとなっている。列挙される抗体は全て、それらの配列ファミリー内で独特である。比較のために、コンパレーター抗体のEC50を含めている。
【0153】
(表8)BKウイルスに対して作製された中和抗体の概要
【0154】
変異VP1を用いたエピトープマッピング
VP1において、標的細胞との結合のために利用されると考えられている領域は、アミノ酸70~85位である。170位付近のアミノ酸を利用するエピトープについての報告もいくつか存在する(14)。エピトープ特異性を評価するため、遺伝子型1のVP1を発現する変異体プラスミドが構築された。これらのVP1発現プラスミドは、80位、82位、83位、もしくは170位に1か所の変異を有しているか、または未変異であった(ESD)。これらのベクターを用いてトランスフェクトされた細胞は、挿入された変異がmAbの結合を変化させたかどうかを決定するために、フローサイトメトリーにおいて使用された。図8Aに示されるように、結合特性の変化は、フローサイトメトリーによって、野生型VP1がトランスフェクトされた細胞を、変異体プラスミドがトランスフェクトされた細胞と比較して、同定することが可能である。結合の低下は、同じ遺伝学的ファミリーの全てのメンバーで観察可能であるが、その程度が異なる点は、その結合に関与する重要なアミノ酸を示すものである。ファミリーHは、ファミリーLと同じく、アミノ酸82位における変更によって最も影響を受ける。ファミリーKは、80位における変更によって最も影響を受ける一方で、ファミリーJは、R170がAに変換された場合に、結合の顕著な低下を示す。
【0155】
異なる遺伝学的ファミリー由来の部分的交差中和抗体を用いた、交差反応性中和抗体(2B9)の補完。
ファミリーC由来の抗体であるモノクローナル抗体2B9は、変異によるいかなる変更によっても有意な影響を受けなかった。該抗体は一見して独特であるため、その活性が、さまざまなファミリー由来の抗体によって補完され得るかどうかを決定するために、混合実験がセットアップされた(表9)。ベースラインとして、個々のmAbのそれぞれは、アイソタイプを一致させた無関係のモノクローナル抗体(M2)と混合され、そして希釈が実施された。ファミリーD由来の部分的交差中和抗体(2A10、これは遺伝子型Iを中和しない)を追加しても、2B9による中和は改善されなかった。しかしながら、6E1(これはIおよびIVのみを中和する)が、2A10(これもまた部分的交差ニュートラライザーである)と混合された場合、これらは互いに補完し合って、全4種類の遺伝子型に対する強力な中和をもたらす。6E1が2B9に添加されると、2B9単独を上回って、BK1およびBK4に対する中和が改善され、これは、両者が干渉し合うことなしに、互いに相乗作用を生じさせることが可能なことを示す。より重要なことはおそらく、6E1と2B9との組み合わせが、BK1およびBK4において2つの中和エピトープを同時にカバーするという事実であり、したがってこれは、抗体の選択圧から生じるエスケープ変異のリスクを大幅に低下させる。
【0156】
(表9)中和抗体を組み合わせることで、中和作用を改善するための補完が可能である
【0157】
異なる遺伝学的ファミリー由来の部分的中和抗体の補完
異なるファミリー由来の部分的ニュートラライザーの混合物は、全4種類の遺伝子型のVP1由来の疑似ウイルス粒子の中和について試験された(表10)。ファミリーLのmAbである6H12は、BK3およびBK4を十分に中和できない。しかしながら、ファミリーD由来の2A10、これはBK2、BK3、およびBK4を中和する一方でBK1を十分に中和できないものであるが、この2A10と混合された場合、全4種類の遺伝子型が強力に中和される。ファミリーH由来の9G9(BK3およびBK4を十分に中和できない)が、ファミリーDまたはファミリーEのいずれかと混合された場合、強力な交差中和が達成される。同様の結果は、ファミリーG由来のmAbとファミリーD由来のmAbとが混合された場合にも観察される。これらのデータは、これらの抗体が由来するファミリーが、ウイルス上の、異なっているが独特な部位に結合し、それにより、該ファミリーの協調的な作用が可能となることを示すものである。個々のファミリーのそれぞれが、ある特定のエピトープ領域に結合すると仮定すると、ファミリーHの9G9は、おそらく、該ファミリーの最も強力な交差中和抗体である15C10と同じ部位に結合する。これが正しければ、15C10と、2A10または2F11のいずれかの混合物は、非常に強力な混合物を構成するはずであり、かつこれは、エスケープ変異体がインビボで出現することをブロックするように作用し得る。
【0158】
(表9)部分的中和抗体を組み合わせることで、BKの全4種類の遺伝子型からの保護を提供可能である
【0159】
考察
United Network for Organ Sharingによれば、米国(アメリカ合衆国)では2018年に、21,167件の腎移植および836件の膵腎移植が実施された。世界保健機関(World Health Organization)によれば、全世界で毎年70,000件の移植が実施されている。WHO(世界保健機関)によれば、米国では毎年23000件の骨髄移植が実施されており、かつ全世界では50,000件の骨髄移植が実施されている。造血幹細胞移植患者においては10~25%がPyVHCを発症し、これは、疼痛、出血、閉塞、および、いくつかの症例では腎不全を、もたらす(6, 7)。NIDDKによれば、間質性膀胱炎は、毎年、300万~800万人の女性および100万~400万人の男性に影響を及ぼしている。BKウイルスの複製は、腎移植患者の30~50%において生じ、7~8%は移植片機能不全および/または移植片喪失に至る(3)。血中のBKPyVは、BKPyV-DNAのレベルとともに、診断のための第1の方法となっている(2, 4, 5)。BKウイルス血症は、PyVANの発症の1~12週前に出現する。1 mlあたり104超のコピーを有する血液試料は、推定PyVANを示すものである。移植後にこのレベルのウイルス血症を有する患者は、免疫抑制を減弱することによって、および薬剤、たとえばレフルノミドなどを投与することによって、処置されるが、移植片拒絶のリスクは上昇する(46%は喪失)。
【0160】
IVIGの投与を受けた患者の試験は、移植患者でのBK感染の制御における、抗体の重要な役割を裏付けるものである。Vuらの試験においては、不応であった患者(持続性ウイルス血症 >104)は、静脈内免疫グロブリン(IVIG)での処置を受けた(15)。標準治療後に持続性ウイルス血症および推定PyVANを有している30名の移植患者が、IVIGの投与を受けた。27名の患者は、血液からのウイルスの消失を示し、かつ移植片の喪失は1例のみであった(IVIGに不応であった患者において)。IVIGを用いる他のいくつかの試験は、該観察を裏付けるものであり、かつウイルス血症の制御を証明するものであった(16-18)。加えて、ポリオーマウイルスの動物モデルにより、IgG抗体が、感染を制御可能であること、および腎症を予防可能であることが示されている(19)。
【0161】
PyVANのための実行可能な処置として抗体療法を使用することのさらなる裏付けは、Solisら(3)による168名の移植患者についての前向き研究からもたらされており、該文献の著者らは、ドナーが保持しているBKの株に対する内在性中和抗体の力価が高いと、ウイルスによるBKウイルス血症のリスクを極めて顕著に低下させ、抗体力価が1 log10上昇するごとにリスクが50%低下したことを示している。この試験および他の試験において報告されているように、ドナーとレシピエントとの間のウイルス遺伝子型のミスマッチは、PyVANのリスクを有意に増大させる(2, 3, 8)。これらの観察は、疾患の予防において、抗体が主要な役割を果たしていることを裏付けるものであり、かつ、該観察は、PyVANのリスクを低下させるために、モノクローナル抗体が予防的に利用され得ることを示すものである。まだ対処されていないこのニーズに応えるため、CTADは、単独で、または組み合わせで、既知のBKウイルス遺伝子型の全てを中和することが可能である抗体について、大規模なパネルを開発した。これらの抗体は、ウイルス力価を低下させるために、予防的または治療的に利用され得るものであり、かつ、該抗体は、提供された組織を保護するためにも利用され得る可能性がある。
【0162】
100種類超のmAbが同定され、そしてこれらは、全4種類のBK遺伝子型に対して試験された。4種類の異なる遺伝学的ファミリーに由来するmAbが、BK遺伝子型の全4種類を中和することが見いだされた。
【0163】
最近、腎移植片感染の予防についてBK中和mAbの有用性を決定するための、第II相臨床試験が開始された。該試験において使用されているモノクローナル抗体の配列は利用可能であって、かつ該抗体が遺伝学的に作製された。この抗体はコンパレーターと称されて、抗体の相対的な有効性を決定するための標準として使用された。コンパレーターは非常に良好であったが、本出願の抗体の多くは、ボード全体にわたって、特に遺伝子型IVに対して、より優れた中和を示した。企業の再編のため、該臨床試験は最終的に中止された(ClinicalTrials.govの識別子:NCT03456999)。
【0164】
HIVまたはエボラといった病原体に対する抗体を用いる臨床試験は抗体のペアを利用するが、これは、そうすることが、1種類の抗体による中和を回避するウイルス変異体についてのリスクを低下させる、という推定に基づいている。そのような抗体「カクテル」は、ウイルスの結合タンパク質上のオーバーラップしない部位に結合する、抗体のペアを用いて試験される。1種類のファミリー由来の抗体は、CDRにおけるわずかな変化、または他の場所での体細胞変異に起因するわずかな変化を有する、同じ遺伝学的エレメントを使用しているため、それら抗体は、タンパク質上のオーバーラップする部位に結合する可能性がある。抗体がVP1のどこに結合するのかを同定するために、ウイルスの結合に関与することが報告されているさまざまな位置において、VP1の変異体が作製された。トランスフェクション後にVP1を発現する細胞との結合に対する、変異の影響について、各ファミリーのメンバーはフローサイトメトリーによって試験された。最も強力なニュートラライザーのいくつかを有するファミリーHは、VP1におけるD82Eという変更によって、結合の低下を示した。この変更は、ファミリーのメンバーである9G9で最も明白であり、これは部分的交差ニュートラライザー(BK1およびBK2に対しては強力であり、かつBK4に対してはそれほど強くない)でしかないものの、該変更によって顕著に影響を受けた。ファミリーKの交差中和抗体である7H8は、S80A変異がVP1に組み込まれた場合に結合の低下を示した。興味深いことに、ニュートラライザーの最大のファミリーであるファミリーJは、R170A変異がVP1に加えられた場合に顕著に影響を受けた。この変異は、結合部位と考えられる部位(アミノ酸70~85位)から離れているように見受けられるが、VP1のこの領域が何らかの形でウイルスの結合に関与していることが、他者によって報告されている。最後に、ファミリーLもまた、VP1におけるD82Eという変更によって結合の低下を示した。コンパレーター抗体は、82位または83位のいずれかにおける変更によって、結合の低下を示す。これらの観察および他の観察を踏まえ、mAbの混合物が中和の増強を示すかどうかを決定するために、補完試験が行われた。2B9は、部分的ニュートラライザーである2A10と混合された場合に、能力は改善されなかったが、能力を喪失することもなかった。これは、該2つの抗体がおそらく異なる部位に結合することを示す。2B9は、6E1と混合された場合に、BK1およびBK4に対する中和の改善を示した。2A10および6E1という2つの部分的ニュートラライザーでは、増強は示されなかったが、抗体を混合することによるいかなる負の影響も存在しなかった。
【0165】
強力な交差ニュートラライザーを用いて補完を示すことは困難であったため、部分的交差ニュートラライザーを混合するように実験が設計された。6H12(ファミリーL)は2A10(ファミリーD)と混合され、これは、いずれか単独では観察されなかった、並外れた交差中和をもたらした。6E1(ファミリーG)は、2A10と混合された場合に、全遺伝子型に対して並外れた活性を示した。9G9は、強力な交差ニュートラライザーである15C10が含まれるファミリーHのメンバーであるが、9G9が、2A10(ファミリーD)または2F11(ファミリーE)と混合された場合、顕著な交差中和活性が示された。このデータは、よりいっそう強力な中和を達成するために、ファミリーHのメンバー、たとえば15C10などが、2A10または2F11と混合され得ることを示し、かつそのような組み合わせが、ある状況において生じ得るエスケープ変異体を防止する可能性があることをも示すものである。このタイプについてのさらなる実験が進行中である。
【0166】
これらの抗体の主たる用途は、腎移植の前にレシピエントに施されて、宿主内での拡散を予防することによってウイルスロードを低下させる、という予防的処置としてのものであり得る。これらの抗体はまた、すでに発症したPyVANの症例においても、治療的に有効であるはずである。理想的な抗体は、全てのBK遺伝子型を中和可能であるものであろう。そのような抗体は、移植前にドナーおよびレシピエントにおいて遺伝子型を同定する必要性を、失わせ得る。遺伝子型IおよびIVが症例のほとんどを占めているが、世界的に見れば、遺伝子型の順位は変動し得る(2)。さらに、Solisらの腎移植試験においては、27%のDNAウイルス陽性患者および19%のDNAウイルス陰性患者が、2種類または3種類の遺伝子型に対する中和抗体を有していたが、これは、複数の遺伝子型への感染が、以前に考えられていたよりも一般的であることを示し得る(3)。理想的には、互いに補完し得るmAbのペアが、理想的な対処法であり得る。
【0167】
方法および材料
動物、細胞、試薬
VelocImmuneマウスはRegeneron Pharmaceuticals社によって提供されており、かつこれは、記載されているように、その抗体においてヒトの可変軽鎖および可変重鎖を発現する(13)。HEK-293TTはNIHのChris Buck氏から贈与されたものであり、EXPI293FおよびトランスフェクトシステムはInvitrogenから購入したものであった。
【0168】
免疫感作
VP1、VP2、およびVP3のための発現プラスミドは、エレクトロポレーションを用いた免疫感作のために使用された。マウスの群は、さまざまなプロトコルを用いて免疫感作され、そして、BK I、BK II、BK III、およびBK IVの疑似ウイルスに対する中和抗体の最も高い血清力価を示すマウスが、融合のために選択された。免疫感作のために使用された遺伝子型は、表7に示される。BK疑似ウイルス調製物を用いたブーストは、融合の3~4日前に、アジュバントなしでIP投与された(表7)。
【0169】
フローサイトメトリー解析
EXPI293F細胞には、BKのVP1-I、VP1-II、VP1-III、およびVP1-IVのいずれかの遺伝子型が、VP2およびVP3とともに、3:1:1の比でトランスフェクトされた。48時間後、細胞は透過処理され、洗浄され、そして、免疫感作されたマウスの血清(1:200、1:1000、1:5000)か、ハイブリドーマクローン由来の上清か、または0.5% BSA含有PBS中の精製されたmAbを用いて1時間染色された。PBS/BSA中での2回の洗浄後、細胞は、アロフィコシアニンがコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch)と30分間インキュベートされた。細胞は1X PBSで洗浄され、そして50 ul PBS中に再懸濁されて、HTFC(Intellicyt)において解析された。
【0170】
疑似ウイルスの作製
BK疑似ウイルスは、2:1:1:1の比の、VP1を発現するプラスミド、VP2を発現するプラスミド、VP3を発現するプラスミド、およびGFPレポーターベクターを、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトされたHEK-293TT細胞から作製された。トランスフェクションの48時間後、細胞は、1 mlのPBSあたり細胞およそ1億個として回収され、PBSを用いて1回洗浄され、そして0.5% Triton X-100およびRNアーゼA/T1カクテル(Ambion)を添加することによって溶解された。溶解物は37度で一晩インキュベートされ、そして細胞溶解物は5,000×gで遠心された。疑似ウイルス粒子は、イオジキサノール(Optiprep、Sigma)の27-33-39%の段階勾配を用いた、300,000 x g、3.4時間、16度の超遠心によって単離された。Optiprepカラムからの画分は、SDS-PAGEを用いてVP1/VP2/VP3を検出するために解析された(11, 20)。
【0171】
疑似ウイルス中和アッセイ:
BK I、BK II、BK III、およびBK IVの疑似ウイルスの中和は、以下のように実施された:15,000個のHEK-293 TT細胞が、96ウェルプレートにプレーティングされた。翌日、ハイブリドーマ上清(または示されている場合には、精製された抗体)と、完全DMEM中で希釈されたBK I、BK II、BK III、およびBK IVの疑似ウイルス(30~60%の感染力として力価測定されている)とが、室温で15分間プレインキュベートされた。50 ulの新鮮な完全培地が、ab/PsV混合物とともに細胞に添加され、そして72時間培養される。PsV感染細胞は、蛍光顕微鏡観察によって可視化され、そして該細胞は、トリプシンとのインキュベーションおよび洗浄の後に、感染のリードアウトとしてGFPを用いて、HTFC(Intellicyt)を使用してフローサイトメトリーによって解析される。
【0172】
ELISA
ELISAによって抗体の結合を測定するため、96ウェルプレートは、4度で一晩かけて、PBS中で2 ug/mlの精製された疑似ウイルスでコートされ、そして、抗体を含む溶液を添加する前に、PBS-0.5% BSAを用いて30分間ブロッキングされた。室温での90分間のインキュベーションの後でプレートは洗浄され、重鎖に特異的なHRP連結ヤギ抗マウスIgGが添加されて60分間おいてから、洗浄され、そして基材が添加された。プレートは、45分後にマイクロプレートリーダー(BioTek Synergy)で405 nmにおいて読み取られた。
【0173】
ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマの作製のため、ブーストされた動物から脾臓が摘出され、そしてこれはSP2/0骨髄腫細胞と融合される。Sp2/0細胞は、融合前に幹細胞培地A中で3日間増殖させ、そして脾臓細胞と混合されるが、これらは両方とも、無血清DMEMを用いることで、無血清状態で洗浄されている。Sp2/0細胞は脾臓細胞と1:5の比で混合され、そしてPEG 4000(EMD、ドイツ)の50%溶液を1 ml添加することによって融合される。細胞混合物は、幹細胞回収培地(培地C)中で一晩インキュベートされ、洗浄され、そして半固体の選択培地、培地D;Stem Cell Technology)にプレーティングされる。個々のクローンは、Hamilton/Stem Cell EzPickロボットを用いて、10~12日後にプレートから単離され、そして幹細胞培地Eを含む96ウェルプレートに加えられた。48時間後、上清はロボットによって回収され、そして、ELISA、フローサイトメトリー、または中和アッセイのため、プレートに加えられた。
【0174】
ハイブリドーマのスクリーニング
最初のスクリーニングは、上で詳述したように、BKIおよびBKIVの両方由来のVP1をトランスフェクトされたHEK-293細胞における、ハイスループットフローサイトメトリーを用いて実施された。手短に述べると、上清は細胞混合物に添加され、そして透過処理後に、ヤギ抗マウスIgG(重鎖に特異的)APC(Jackson)を添加することによって、抗体の結合が同定された。陽性の上清は、4種類のサブタイプのうちの1種類のみを発現するHEK-293細胞を用いる、同様のフローサイトメトリー実験によって確認された。いくつかの場合においては、上清はまた、2 ug/mlのBKI、BKII、BKII、またはBKIVの疑似ウイルスでコートされたELISAプレートにも移された。上清(未希釈)は、BKウイルスの全4種類の遺伝子型を用いた疑似ウイルス中和アッセイにおいて、中和に関してスクリーニングされた。結合と中和との間には、強力であるが完ぺきではない相関が存在していることに、注意が払われるべきである。
【0175】
VP1への変異導入
VP1への変異導入はまず、VP1の予測される中和ドメインに位置する4つの部位における部位特異的変異導入によって実施されて、4種類の別々の変異体が作製された。変異のために選択された該部位は、全BKのVP1の間である程度の変動を示した位置であり、変異体のために選択された特定の残基は、該位置における、他で報告された残基であった。これらの部位は、以下を含んでいた:42位(L>Q)、60位(D>N)、73位(E>Q)、および82位(D>E)。部位特異的変異導入は、QuickChange II部位特異的変異導入キット(Agilent Technologies)を用いて、製造元が提供するプロトコルにしたがって実施された。手短に述べると、部位特異的変異導入は、フォワード(5'-3')プライマーおよび相補的な(3'-5')リバースプライマーであって、変異させる残基の翻訳に対応するであろう1塩基の変更を有する各部位を取り囲むプライマーを設計することによって、実施された。この変更された塩基は、それぞれのプライマーセットのほぼ中央に位置し得る。該プライマーから開始されるフォワードPCRおよびリバースPCRが、1塩基のミスマッチを許容する条件を用いて、BKのVP1を含む変性させた発現プラスミドにおいて実施された。メチル化されている鋳型鎖は、DPN1によって消化されて、組み込まれた変異を含む、新規に合成されたプラスミド鎖のみが残された。新規に合成されたプラスミド鎖は再アニールされ、そしてその後、ニックの修復および増幅のため、コンピテント大腸菌の形質転換に供された。野生型VP1と比較しての、モノクローナル抗体の結合の変化を評価する実験の後で、各変異体は、結合の低下に基づいて、フローサイトメトリーによってランク付けされた。82位は、モノクローナル抗体のほとんどに対して大きな影響を示したため、この潜在的なエピトープをさらに解明する目的で、82位の残基を取り囲む、さらに2種類の変異体が、80位におけるアラニン置換(S>A)および83位におけるアラニン置換(R>A)によって作製された。さらに、170位における第6の変異体もまた、アラニン置換(R>A)によって作製された。この位置は、VP1の既知の結合ドメインの外に位置する推定上の中和エピトープにおける重要な残基として、以前に報告されている。これらの上記3種類の変異体はデノボDNA合成によって作製され、そして哺乳動物発現ベクターであるpcDNA3.1(Genscript)にクローニングされた。
【0176】
アイソタイピング
陽性ハイブリドーマのアイソタイプは、市販のアイソタイピングキット(BD Pharmingen、カタログ番号550487)を用いて決定された。IgG抗体のみがさらに試験された。
【0177】
モノクローナル抗体の定量
Mabは、Octet Red96(ForteBio、Sartorius)において、無標識でのバイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて定量された。手短に述べると、プロテインAまたはプロテインGのいずれかにコンジュゲートされた、光学上の能力を有するバイオセンサーは、mabを含む上清中に浸漬された。上清は未希釈で測定され、かつ条件培地で1:10に希釈されて測定され、そして、100 ug/ml~1.56 ug/mlの範囲にわたる1:2希釈シリーズにおいて条件培地で希釈されたアイソタイプ標準と、比較された。標準曲線は、当初の結合の傾きに対する5パラメーターロジスティック(5PL)用量反応曲線フィッティングモデルを用いて、ForteBioデータ解析ソフトウェアv.10(ForteBio)において解析された。Mabの濃度は、その後、標準曲線から算出される。希釈された試料は、それぞれの希釈係数を適用した後で、未希釈の試料と比較された。総濃度は、希釈された試料および未希釈の試料からまとめて平均された。
【0178】
モノクローナル抗体の精製
BKウイルスVP1に対して陽性である抗体を産生するハイブリドーマは、培地Eにおいて2日間増殖させ、そして無血清ハイブリドーマ培地(Gibco、ThermoFisher)へと移された。ハイブリドーマ由来の無血清上清は、プロテインA HiTrapカラムまたはプロテインG HiTrapカラム(GE)を使用したAktaクロマトグラフィーシステム(GE)において、FPLCを用いて精製された。
【0179】
参考文献
【0180】
等価物および範囲
特許請求の範囲においては、冠詞、たとえば「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」などは、相反するように指定されない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、1つを、または1つより多くを意味し得る。群の1つまたは複数のメンバーの間に「または」を含む請求項または説明は、相反するように指定されない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、該群のメンバーのうちの1つ、複数、または全てが、所与のものまたは所与のプロセスに存在しているか、用いられるか、あるいは関連している場合に、成立しているものとみなされる。本開示には、群のメンバーのうちの1つだけが、所与のものまたは所与のプロセスに存在しているか、用いられるか、あるいは関連している態様が含まれる。本開示には、群のメンバーの複数または全てが、所与のものまたは所与のプロセスに存在しているか、用いられるか、あるいは関連している態様が含まれる。
【0181】
さらに、本開示には、列挙されている請求項の1つまたは複数由来の、限定、要素、節、および記述用語の1つまたは複数が、別の請求項に導入されているものである、全てのバリエーション、全ての組み合わせ、全てのおよび順列が包含される。たとえば、ある別の請求項に従属している任意の請求項を、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見いだされる限定の1つまたは複数を含むように、改変することが可能である。要素が一覧として示されている場合(たとえば、マーカッシュ群のフォーマット)、該要素の部分群のそれぞれもまた、開示されているのであり、かつ、群から任意の単数または複数の要素を除くことが可能である。概して、本開示が、または本開示の局面が、ある特定の要素および/または特徴を含む、と称される場合、本開示のいくつかの態様は、または本開示のいくつかの局面は、そのような要素および/もしくは特徴からなるか、またはそのような要素および/もしくは特徴から本質的になることが、理解されるべきである。簡潔にすることを目的として、それらの態様は、本明細書において、そのとおりの言葉で具体的に記載されているわけではない。「含む(comprising)」および「含む(containing)」との用語は、非限定的であることが意図されており、かつ、追加の要素または追加の段階を含めることを容認することにもまた、注意されたい。範囲が示される場合、別途指定されない限り、そのような範囲における端点が含まれる。さらに、別途指定されない限り、あるいは文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現される値は、範囲の下限の単位の10分の1に至るまで、本開示のさまざまな態様において規定される範囲の内の、任意の特定の値または任意の特定の部分範囲とみなすことが、文脈が明確に他を指定していない限り可能である。
【0182】
本出願は、さまざまな特許公報、さまざまな公開特許公報、さまざまな学術論文、およびさまざまな他の刊行物を参照しており、これらの全ては参照により本明細書に組み入れられる。組み入れられた参考文献の任意のものと、本明細書との間で、不一致のある場合には、本明細書に従うものとする。加えて、先行技術の範囲内にある、本開示の任意の特定の態様はいずれも、請求項の任意の1つまたは任意の複数から、明示的に除外され得る。そのような態様は当業者に知られていると考えられるため、そのような態様は、除外される旨が本明細書において明示的に記載されていないとしても、除外され得る。本開示の任意の特定の態様は、先行技術の存在と関連していてもいなくても、理由のいかんを問わず、任意の請求項から除外することが可能である。
【0183】
当業者であれば、本明細書に記載される特定の態様の多数の同等物を認識するであろう、または当業者であれば、通常実施している程度の実験法を用いて、そのような同等物を確認することができるであろう。本明細書に記載される本発明の態様の範囲は、上述の説明に限定されることが意図されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されるものである。添付の特許請求の範囲に定義される本開示の精神または範囲から逸脱することなく、本説明に対してさまざまな変更および改変がなされ得ることを、当業者であれば理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9-1】
図9-2】
【配列表】
2024510976000001.app
【国際調査報告】