(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】リサイクルポリマー組成物及びその方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20240305BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240305BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20240305BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240305BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20240305BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240305BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240305BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240305BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240305BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CER
C08L23/08
B33Y40/10
B33Y70/00
B29C64/357
B29C64/314
B33Y80/00
B29C64/118
B29C64/153
C08J11/10 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555620
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 IB2022020004
(87)【国際公開番号】W WO2022189864
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー・ミラー・マクローリン
(72)【発明者】
【氏名】ハディ・モハンマディ
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・ケイ・シング
(72)【発明者】
【氏名】アナ・パウラ・デ・アゼレード
(72)【発明者】
【氏名】ネイ・セバスティアン・ドミンゲス・ジュニオル
(72)【発明者】
【氏名】ムリーロ・ラウアー・サンソン
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AB26
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4J002BB061
4J002EE046
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4J002FD196
(57)【要約】
方法は、架橋ポリマー及び触媒を加工処理して、溶融加工処理操作時にビトリマーを形成する工程を含み、前記の架橋したポリマーが、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組みあわせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む。方法は、架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーを、非架橋ポリマーの加工処理温度よりも高い温度において混合して、ポリマー組成物を形成するステップを含むことができ、ここで、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーのそれぞれが、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組みあわせを含み、かつ、架橋ポリマーが、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーを合わせた合計に対して少なくとも15質量%の量で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋されたポリマー及び触媒を加工処理して、溶融加工処理操作中に動的な架橋をされたポリマーを形成するステップを含む方法であって、前記架橋ポリマーが、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む、方法。
【請求項2】
溶融加工処理操作中に非架橋ポリマーがさらに存在し、前記非架橋ポリマーが、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
架橋されたポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーを、前記非架橋ポリマーの加工処理温度よりも高い温度において混合してポリマー組成物を形成するステップを含む方法であって、
前記架橋されたポリマー及び前記非架橋ポリマーのそれぞれが、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含み、かつ、
前記架橋されたポリマーは、前記架橋されたポリマーと前記非架橋ポリマーの合計に対して少なくとも15質量%の量で存在する、方法。
【請求項4】
前記架橋されたポリマーが予め加工処理されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合が連続式又はバッチ式混合装置中で行われる、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、非架橋ポリマーのマトリックス相、及び動的な架橋をされたポリマーの分散相を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋されたポリマーがエチレン酢酸ビニルコポリマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エチレン酢酸ビニルが、ASTM D1238に準拠して、190℃において2.16kgで測定して、0.1~300g/10分の範囲のメルトフローを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エチレン酢酸ビニル共重合体が、5~80質量%の範囲の酢酸ビニル含有量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記非架橋ポリマーが未使用ポリマーである、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非架橋ポリマーがエチレン酢酸ビニルコポリマーである、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記非架橋ポリマーが、エチレン、酢酸ビニル、及び分岐したビニルエステルのターポリマーである、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、金属塩、金属酸化物、金属アルコキシド、金属アクリレート、金属アセチルアセトネート、金属水素化物、金属ハロゲン化物、及び金属水酸化物からなる群から選択される金属塩である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が、ボレート、ジアミン、ジオール、二酸、二無水物、及びそれらの組み合わせから選択され、請求項13に規定する触媒と組み合わせて使用することができる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記混合の前に、前記架橋されたポリマーを粉砕するステップをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記架橋されたポリマーが、1~100000ミクロン、好ましくは5~100ミクロンの範囲の粒径を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー組成物に、充填剤、繊維、エラストマー、可塑剤、加工助剤、離型剤、潤滑剤、染料、顔料、酸化防止剤、光安定剤、及び難燃剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を添加するステップをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー組成物を、発泡剤、促進剤、及び硬化剤と混合するステップをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー組成物を発泡させるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー組成物の成形操作をさらに含む、請求項1~19のいずれかに一項に記載の方法。
【請求項21】
前記成形操作が、射出成形、圧縮成形、スチームチェスト成形、超臨界発泡、及び積層造形からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー組成物をフィラメントとして押し出すステップをさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記フィラメントが、1.5~3mmの範囲の直径を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマー組成物をペレットとして押し出すステップをさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の方法によって製造される熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項26】
90℃より高い温度における貯蔵弾性率の時間依存性が、ニート組成物に対してシフトする、請求項25に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項27】
非架橋ポリマーのマトリックス相;及び
前記マトリックス相中に分散された、架橋されたポリマー及び触媒を含む動的な架橋をされたポリマー
を含む、請求項25又は26に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項28】
請求項25~27のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項29】
前記物品が、靴のミッドソール、ホットメルト接着剤、ガスケット、ホース、ケーブル、ワイヤー、シーリングシステム、コンベアベルト、フォクシングテープ、NVH材、防音材、屋根材、及び工業用床材からなる群から選択される、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
前記の成形された物品が、0.1~0.4g/ccの範囲の密度を有する、請求項28又は29に記載の物品。
【請求項31】
前記物品が、前記の動的な架橋をされたポリマーなしに非架橋ポリマーから形成された参照物品と同等の破断点応力及び破断伸び、硬度、圧縮永久歪、耐衝撃強度、密度、引裂強さ、弾性、耐摩耗性を有する、請求項28~30のいずれか一項に記載の物品。
【請求項32】
前記物品が、60~70の範囲のショアA硬度、7MPaより大きな破断強度、250%より大きな破断伸び、35%より小さな圧縮永久歪(NBR10025,方法B,22時間,70℃)を有する(NBR 13756-1996に準拠して)、請求項28~31のいずれか一項に記載の物品。
【請求項33】
請求項25~27のいずれか一項に記載のポリマー組成物の層を順次印刷するステップを含む、印刷物品の製造方法。
【請求項34】
前記の順次の印刷が、
標的物の表面上に、ポリマー組成物を含む粉末の層を堆積させるステップ;及び
前記ポリマー組成物を溶融させ、かつ焼結させるステップ、
を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記の順次の印刷が、
溶融したポリマー相の層を順次堆積させるステップであって、前記の溶融したポリマー相が前記ポリマー組成物を含む、
請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマー組成物を含むポリマーフィラメントを溶融して、溶融したポリマー相を形成するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
請求項33~36のいずれか一項に記載の方法によって形成された物品。
【請求項38】
ポリマー組成物を再加工処理する方法であって、
請求項25~27のいずれか一項に記載のポリマー組成物を、熱可塑性ポリマーの溶融温度又は軟化温度より高い温度で再加工処理する工程を含み、ここで、再加工処理の後で、動的機械分析によって測定して、再加工処理前のポリマー組成物と比較して、ポリマー組成物がその溶融温度より高い温度でその初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも40%を維持している、方法。
【請求項39】
前記加工処理を少なくとも2回追加で繰り返すステップをさらに含み、ここで、前記の繰り返される再加工処理の後、ポリマー組成物が、再加工処理前のポリマー組成物と比較して、動的機械分析によって測定して、その溶融温度より高い温度で初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも40%を維持している、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリサイクルポリマー組成物(recycled polymer composition)及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン酢酸ビニル(EVA)は、軽量かつ非常に高い靱性、高い弾性、及び高い圧縮永久歪みを有する発泡体(フォーム)を製造するために広く使用されている。EVAフォームは要求の厳しい用途、例えば、ランニングシューズのミッドソール、並びに、自動車及び建設用途、例えば、内装パッド、カーペットの下敷き、ガスケットなどにおいて応用されている。EVAシューズのミッドソール及びその他のフォーム用途に必要とされるポリマー構造は、3次元ネットワークであって、これは隣接するポリマー分子を架橋することによって生成される。
【0003】
動的に架橋されたポリマーネットワーク(dynamically crosslinked polymer networks)は、性能、特性、及び耐久性のバランスを提供する。しかし、永久ネットワークを高性能フォームのための材料選択において優れた候補にしているのと同じ特性が、困難な環境上の課題をもたらしている。ひとたび形成されるとこれらのネットワーク構造は、従来の再加工又はリサイクル方法の使用を可能にするための、溶融、流動、又は溶解をしない。
【0004】
永久ネットワークの処理時に生成される産業スクラップは、二次原料として製造プロセスへと完全に再導入することはできず、架橋されたポリマーからの産業廃棄物の少量部分のみが粉砕され、かつ充填剤として再導入される。同様に、永久架橋ポリマーから製造された耐用年数が終了した部品は、限定されたリサイクルの選択肢、例えば、低価値の材料しか生成しないエネルギーの大きな粉砕操作しかない。その結果、かなりの割合の産業スクラップ及び使用済み部品が、環境廃棄物として蓄積される。
【0005】
顕著な環境への影響に加えて、共有結合により架橋したEVA発泡体は溶融によって再加工することができないという事実は、製造業者にとって多大なコストをもたらす。この多量の廃棄物が、一次材料の利用率を制限し、かつ廃棄物を処理するためのコストを生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
架橋されたポリマー(架橋ポリマー)、特に架橋された発泡体EVA(架橋されたEVAフォーム)の再加工処理を可能にする技術が必要とされている。
【0007】
[概要]
この概要は、詳細な説明において以下でさらに説明する概念の選択を導入するために提供する。この概要は、特許請求の範囲に記載した主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また、特許請求の範囲に記載した主題の範囲を制限するための助けとして使用されることも意図していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの側面では、本明細書において開示されている実施形態は、架橋されたポリマー(架橋ポリマー)及び触媒を加工処理(processing)して、溶融加工処理操作中に動的架橋ポリマー(動的に架橋されたポリマー, dynamic crosslinked polymer)を形成する工程を含む方法に関し、その架橋ポリマーは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組みあわせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む。
【0009】
別の側面では、本明細書に開示されている実施形態は、架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーを、非架橋ポリマーの加工処理温度よりも高い温度において混合してポリマー組成物を形成させる工程を含む方法に関し、ここで、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーの各々が、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含み、かつ、架橋ポリマーが、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーを合わせた合計に対して少なくとも15質量%の量で存在する。
【0010】
別の側面では、本明細書で開示されている実施形態は、溶融加工処理操作中に架橋ポリマー及び触媒を加工処理することによって動的な架橋をされたポリマーを形成することによって製造される熱可塑性ポリマー組成物に関し、その架橋されたポリマーは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む。
【0011】
別の側面では、本明細書で開示されている実施形態は、架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーを、非架橋ポリマーの加工処理温度よりも高い温度において混合することによりポリマー組成物を形成することによって製造される熱可塑性ポリマー組成物に関し、ここで、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーのそれぞれは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含み、かつ、架橋ポリマーは、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーの合計に対して、少なくとも15質量%の量で存在する。
【0012】
さらに別の側面では、本明細書に開示されている実施形態は、溶融加工処理操作中に架橋ポリマー及び触媒を加工処理して動的架橋ポリマーを形成することによって製造される熱可塑性ポリマー組成物を含む物品に関し、ここで、架橋ポリマーは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む。
【0013】
さらに別の側面では、本明細書に開示されている実施形態は、架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーを、非架橋ポリマーの加工処理温度よりも高い温度で混合することによって製造される熱可塑性ポリマー組成物を含む物品に関し、ここで、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーのそれぞれは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含み、かつ、架橋ポリマーは、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーの合計に対して少なくとも15質量%の量で存在する。
【0014】
さらに別の側面では、本明細書に開示されている実施形態は、溶融加工処理操作中に架橋ポリマー及び触媒を加工処理することによって製造される動的架橋ポリマーを形成することによって製造されるポリマー組成物の層を順次印刷する工程を含む、印刷された物品を製造する方法に関し、架橋ポリマーは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む。
【0015】
さらに別の側面では、本明細書に開示されている実施形態は、架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーを非架橋ポリマーの加工処理温度よりも高い温度において混合することによって製造されるポリマー組成物の層を順次印刷することを含む、印刷された物品を製造する方法に関し、ここで、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーのそれぞれは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含み、かつ、架橋ポリマーは、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーの合計に対して少なくとも15質量%の量で存在する。
【0016】
さらに別の側面では、本明細書に開示されている実施形態は、溶融加工処理操作中に架橋ポリマー及び触媒を加工処理して動的架橋ポリマーを形成することによって製造されるポリマー組成物を再加工処理することを含む、ポリマー組成物を再加工処理する方法に関し、架橋ポリマーは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む。この再加工処理は、熱可塑性ポリマーの溶融温度又は軟化温度より高い温度であり、再加工処理後、ポリマー組成物は、動的機械分析によって測定して、再加工処理前のポリマー組成物と比較して、その溶融温度より上での初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも40%を維持している。
【0017】
さらに別の側面では、本明細書に開示されている実施形態は、ポリマー組成物を再加工処理する方法に関し、その方法は、架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーを、非架橋ポリマーの加工処理温度よりも高い温度において混合することによってポリマー組成物を形成することによって製造されたポリマー組成物を再加工処理する工程を含み、ここで、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーのそれぞれは、ビニルエステル、C2~C12オレフィン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含み、かつ、架橋ポリマーは、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーの合計に対して少なくとも15質量%の量で存在する 。この再加工処理は、熱可塑性ポリマーの溶融温度又は軟化温度より高い温度であり、再加工処理後、ポリマー組成物は、動的機械分析によって測定して、再加工処理前のポリマー組成物と比較して、その溶融温度より上での初期貯蔵弾性率プラトーの少なくとも40%を維持している。
【0018】
特許請求の範囲に記載した主題の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付している特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】
図4は、反応性押出し後の様々なサンプルの熱応答を示している。
【
図5】
図5は、反応性押出し後の様々なサンプルの熱応答を示している。
【
図6】
図6は、170℃における粘弾性応答を示している。
【
図7】
図7は、170℃における粘弾性応答を示している。
【
図8】
図8は、170℃における粘弾性応答を示している。
【
図9】
図9は、170℃における粘弾性応答を示している。
【
図10】
図10A及び10Bは様々なサンプルの応力緩和結果を示しており、
図10Aは応力緩和挙動の強さを実証しており、
図10Bは正規化した応力緩和を表す。正規化したグラフ中の横線は、正規化した弾性率が1/eの値に達する位置を示している。
【
図11】
図11A及び11Bは様々なサンプルの応力緩和結果を示しており、
図11Aは応力緩和挙動の強さを実証しており、
図11Bは正規化した応力緩和を表す。正規化したグラフ中の横線は、正規化した弾性率が1/eの値に達する位置を示している。
【
図12】
図12A及び12Bは様々なサンプルの応力緩和結果を示しており、
図12Aは応力緩和挙動の強さを実証しており、
図12Bは正規化した応力緩和を表す。正規化したグラフ中の横線は、正規化した弾性率が1/eの値に達する位置を示している。
【
図13】
図13はサンプルを再加工処理した結果を示している。
【
図14】
図14はサンプルを再加工処理した結果を示している。
【
図15】
図15はサンプルを再加工処理した結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示されている実施形態は、ポリマー組成物及びそのようなポリマー組成物を形成する方法に関する。ポリマー組成物は、触媒の存在下での架橋ポリマーの再加工処理により動的架橋ポリマーを形成することによって形成することができる。特に、再加工処理を受けるそのような架橋ポリマーには、オレフィン、ビニルエステル、又はそれらの組み合わせから形成されたポリマーが含まれ得る。実施形態はまた、得られるポリマー組成物が多相構造を有することができるように、架橋ポリマー及び触媒と組み合わされた非架橋ポリマーを含んでもよい。
【0021】
動的架橋ポリマー(動的な架橋がされたポリマー)とは、「イオン性の又は共有結合による適応可能なネットワーク」ともよばれる動的架橋システムを指し、これは化学的に架橋されたポリマーの一種であり、このポリマーにおいては、外部刺激(温度、応力、pHなど)が結合交換反応を引き起こし、それによって、結合及び架橋の数を一定に保ちながらネットワークトポロジーの変更を可能にする。動的架橋ポリマー中に存在する動的結合は、連関した交換反応を受けることができ、それによってネットワークトポロジーが変化することができ、結合の総数がその時間内に一定であり、常にかつ全ての温度において変動しないけれども、材料が応力を緩和しかつ流動する。動的架橋ポリマーは、周囲温度においては架橋した材料の特性(高い耐薬品性、優れた機械的特性)を示す一方で、高めた温度においては熱可塑性材料として加工処理又は再加工処理(再処理)することができる。
【0022】
1つ又は複数の実施形態によれば、再加工処理できない架橋ポリマーを、触媒及び任意の非架橋ポリマーとともに混合又は加工処理することができる。このような混合又は加工処理は、例えば押出機内で行われ、架橋ポリマーを動的架橋ポリマーへと変換し、それによって架橋ポリマー中の永久的共有結合架橋を適応可能なネットワークに変換することができる。有利なことには、本開示の実施形態は、ポリマー組成物へのスクラップ又はリサイクルされた架橋材料の増大した組み込みを可能にし、それによって廃棄物の量を低減することができる。さらに、高度に架橋されたポリマーを組み込んだそのようなポリマー組成物は、特定の用途に対して望ましい破断点引張伸び、破断点引張応力、曲げ弾性率、及び/又はアイゾット耐衝撃性などの所望の特性を、例えば非架橋ポリマーの量、種類、特性を変更することによって依然として有し得ることが想定される。1つ以上の実施形態において、本ポリマー組成物(架橋した場合)は、架橋ポリマー単独の特性と少なくとも同等又はそれ以上の1つ以上の特性を有し得る。しかしながら、いくつかの用途では、その特性が架橋ポリマー単独の特性よりも低いことが許容される(または望ましい)場合があることも想定される。さらに、ポリマー組成物から形成された物品は、動的架橋ポリマーなしで非架橋ポリマーから形成されたものと同等の破断点応力及び伸び、硬度、圧縮永久歪み、衝撃強度、密度、引裂強度、弾性、耐摩耗性などを有し得る。すなわち、非架橋ポリマーのマトリックス内に動的架橋ポリマーを含めることは、物品の特性に悪影響を及ぼさない。
【0023】
<架橋ポリマー(架橋したポリマー)>
議論したように、本開示の実施形態は、その中に組み込まれる予め架橋されたポリマーの組み込みを増やすことを可能にしうる。
【0024】
1つ以上の実施形態において、架橋ポリマーは、C2~C12オレフィン類、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステルなど;及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマーを含む。したがって、例えば、架橋ポリマーには、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンを含めたポリエチレン;ポリプロピレン、エチレン及び/又はプロピレン系コポリマー、例えば、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン酢酸ビニル、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/アクリレートコポリマー;及びポリ(酢酸ビニル)などのポリマー類を含み得ることが想定される。オレフィン及びビニルエステル(1又は複数種)のコポリマーにおいて、ビニルエステル(1又は複数種)はコモノマーとして、1、5、10、15、18、又は20%の下限から、25、40、60、又は80%の上限までの範囲の量で存在しうることが想定される。1つ以上の特定の実施形態において、酢酸ビニルをモノマー又はコモノマーとして使用することができる。
【0025】
架橋ポリマーは、分岐したビニルエステルコモノマー(エチレン単独と組み合わせてコポリマーを形成するか、あるいは、エチレン及び酢酸ビニルと組み合わせてターポリマーを形成する)を含み得ることも想定されている。このようなコポリマー及びターポリマーは、米国特許出願第17/063,488号明細書に記載されており、その全体を参照により本明細書に援用する。例えば、そのような分岐したビニルエステルモノマー(分岐ビニルエステルモノマー)には、下記一般構造(I)を有するモノマーが含まれ得る:
【化1】
式中、R
4及びR
5は、合計で6又は7の炭素数を有する。しかしながら、米国特許出願第17/063,488号明細書に記載されているその他の分枝ビニルエステルを使用できることも想定される。
【0026】
本明細書に記載したポリマー組成物を形成する架橋ポリマーに言及する場合、ポリマーは、触媒を添加する前に架橋され(永久的な共有結合を含む)、触媒の存在下での加工処理に続いて、架橋ポリマーの永久的架橋が、動的な架橋をされたシステム、すなわち動的架橋ポリマーへと変換されることが意図されている。
【0027】
1つ又は複数の実施形態において、架橋ポリマーは予め加工処理されており、したがって、架橋ポリマーは、触媒と混合/加工処理される前に、共有結合架橋の形成をもたらす1つ又は複数の事前の加工処理工程を受けていることを示しており、加工処理工程は、例えば、オートクレーブ中、熱風トンネル中、UV照射、発泡、溶融加工処理、射出成形、又は圧縮成形などでの架橋が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、1つ又は複数の実施形態において、架橋ポリマーは1種以上の添加剤又は充填剤と予めコンパウンドされていてもよく、あるいは別の態様では、そのような追加の成分のない架橋ポリマーであることができる。したがって、1つ又は複数の実施形態では、架橋ポリマーはリサイクル樹脂、例えば、消費者が使用した後の樹脂、産業で使用した後の樹脂、あるいは、共有結合架橋が存在するために再加工処理に使用できないスクラップ材料である。一般に、ひとたびそのような架橋が形成されると、これらのネットワーク構造は、従来の再加工処理又はリサイクル方法の使用を可能にするための溶融、流動、又は溶解をしない。例えば、1つ又は複数の特定の実施形態では、架橋ポリマーは、EVAミッドソール靴の成形からのスクラップであるか、又はリサイクルされた靴底であり得る。したがって、例えば、そのような予め加工処理された架橋ポリマーは、前もって成形又は押出しされていてもよく、その後のスプルー、ランナー、フラッシュ、不合格部品などは粉砕または細断され、架橋ポリマーを動的架橋ネットワークへと変えるための触媒と混合される。
【0028】
さらに、架橋ポリマーは、他の工業的製造プロセスから、架橋の存在によって再利用できないスクラップ又はリサイクル品として生じる可能性があることも理解される。しかし、本実施形態は、永久的な架橋を新しいクラスのビトリマー(vitrimer)で置き換えて、特定の環境条件下でトポロジカル再配列を受けることができるポリマーネットワークを生成することによって、架橋したポリマーネットワークを一緒に保持する共有結合の永続的な性質に関連する技術的障壁を克服している。
【0029】
1つ又は複数の実施形態において、架橋ポリマー、例えばスクラップポリマーは、ポリマー組成物の少なくとも5質量%、10質量%、15質量%、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、又は少なくとも50質量%を構成し、ポリマー組成物には、架橋ポリマー、触媒、及び任意選択により場合によっては1つ又は複数の非ポリマー添加剤のみからなる組成物、すなわち、非架橋ポリマーを含まないポリマー組成物が含まれる。
【0030】
<触媒>
1つ以上の実施形態において、架橋ポリマーは、上述した動的架橋のための交換反応を促進する触媒と組み合わされる。1つ以上の実施形態において、触媒は、金属塩、金属酸化物、金属アルコキシド、金属アクリレート、金属アセチルアセトネート、金属水素化物、金属ハロゲン化物、及び金属水酸化物からなる群から選択される金属塩である。そのような金属としては、塩基性金属、アルカリ土類金属、遷移金属、及び希土類金属、例えば、亜鉛、スズ、モリブデン、バナジウム、銅、タングステン、マグネシウム、コバルト、カルシウム、チタン、カリウム、リチウム、ナトリウム、ニッケル、アルミニウム、鉛、鉄、及びジルコニウムが挙げられる。
【0031】
1つ又は複数の実施形態において、触媒は、ボレート(borate)、ジアミン、ジオール、二酸(diacid)、二無水物(dianhydride)、及びそれらの組み合わせから選択される。1つ以上の実施形態において、これらの触媒は、前述した金属塩触媒と組み合わせて使用してもよい。
【0032】
1つ以上の実施形態において、触媒は、架橋ポリマーに対して2モル%より多い量で存在する。架橋ポリマー、並びに非架橋ポリマー内に動的架橋を作り出し、それら2つの間に架橋を形成するために十分な量で触媒を添加することが望ましい場合がありうることが想定される。
【0033】
<非架橋ポリマー>
【0034】
1つ以上の実施形態において、非架橋ポリマーは、C2~C12オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセンなど; ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステルなど;及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種のモノマーを含む。したがって、例えば、非架橋ポリマーには、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンを含めたポリエチレン;ポリプロピレン、エチレン及び/又はプロピレン系コポリマー、例えば、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン酢酸ビニル、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/アクリレートコポリマー;及びポリ(酢酸ビニル)などのポリマーが含まれうることが想定される。オレフィンとビニルエステル(1又は複数)とのコポリマーにおいて、ビニルエステル(1又は複数)は、コモノマーとして、5、10、15、18、又は20%の下限から、25、40、60、又は80%の上限の範囲の量で存在する。1つ以上の特定の実施形態において、酢酸ビニルをモノマー又はコモノマーとして使用することができる。エチレン酢酸ビニルは、ASTM D1238に準拠し、190℃において2.16kgで測定して、0.1~300g/10分の範囲のメルトフローを有し得る。
【0035】
非架橋ポリマーは、分岐したビニルエステルコモノマー(エチレン単独と組み合わせてコポリマーを形成するか、又はエチレン及び酢酸ビニルと組み合わせてターポリマーを形成するため)を含み得ることも想定される。そのようなコポリマー及びターポリマーは、米国特許出願第17/063,488号明細書に記載されており、その全体を参照により本明細書に援用する。例えば、そのような分岐したビニルエステルモノマーには、下記の一般構造(I)を有するモノマーが含まれうる:
【化2】
式中、R
4及びR
5は合計で7の炭素数を有する。
【0036】
1つ以上の実施形態において、非架橋ポリマーは、ポリマー組成物の85質量%未満、80質量%未満、75質量%未満、又は50質量%未満を構成する。
【0037】
架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーを組み合わせると、得られるポリマー組成物は、動的架橋ポリマーの分散相が存在する非架橋ポリマーのマトリックス相を有する多相となり得る。さらに、混合又は加工処理条件に応じて、動的架橋ポリマーが分散相の表面上、マトリックス相中、及びその2つの相の間の界面に形成され得ることも想定される。
【0038】
<任意選択による添加剤>
【0039】
本開示のポリマー組成物はまた、架橋ポリマー、触媒、及び任意選択により場合によって非架橋ポリマーに加えて、1つ以上の任意選択による添加剤、例えば、以下に限定されないが、充填剤、発泡剤、発泡促進剤、硬化剤、架橋剤、フリーラジカル開始剤、エラストマー、可塑剤、加工助剤、離型剤、潤滑剤、染料、顔料、抗酸化剤、光安定剤、難燃剤、又はポリマー組成物において剛性と弾性のバランスを変えるためのその他の添加剤、例えば、繊維、充填剤、及びその他の補強要素を含みうる。いくつかの実施形態において、そのような添加剤の1つ又は複数は、架橋ポリマーと触媒の最初の混合又は溶融加工処理中に添加することができ、一方、1つ又は複数の実施形態においては、そのような添加剤の1つ又は複数は、後続のプロセスステップにおいて配合され得る。
【0040】
本開示によるポリマー組成物は、関連する活性化温度を低下させることによって発泡剤の作用を強化又は開始する1つ又は複数の発泡促進剤(キッカーとしても知られる)を含み得る。たとえば、選択した発泡剤が170℃より高い温度、たとえば220℃以上の温度において反応又は分解し、活性化温度まで加熱すると周囲のポリマーが分解する場合、発泡促進剤を使用しうる。発泡促進剤には、選択された発泡剤を活性化することができる任意の適切な発泡促進剤が含まれ得る。1つ以上の実施形態において、適切な発泡促進剤としては、カドミウム塩、カドミウム-亜鉛塩、鉛塩、鉛-亜鉛塩、バリウム塩、バリウム-亜鉛(Ba-Zn)塩、酸化亜鉛、二酸化チタン、トリエタノールアミン、ジフェニルアミン、スルホン化芳香族酸、及びそれらの塩等が挙げられる。本開示の特定の実施形態によるポリマー組成物は、1つ以上の発泡促進剤のうちの1つとして酸化亜鉛を含み得る。 いくつかの実施形態では、ポリマー組成物自体に加えて、又はポリマー組成物自体に代えて、発泡促進剤をエラストマーEVA組成物中に含めることができる。
【0041】
本開示によるポリマー組成物は、発泡ポリマー組成物及び発泡体(フォーム)を製造するために1つ又は複数の発泡剤を含むことができる。発泡剤には、固体、液体、又は気体の発泡剤が含まれ得る。固体発泡剤を利用する実施形態においては、発泡剤を粉末又は顆粒としてポリマー組成物と組み合わせることができる。
【0042】
本開示による発泡剤には、ポリマー加工処理温度において分解して、発泡ガス、例えば、N2、CO、CO2などを放出する化学発泡剤が含まれうる。化学発泡剤の例として、有機発泡剤を挙げることができ、有機発泡剤にはヒドラジン類、例えば、トルエンスルホニルヒドラジン、ヒドラジド類、例えば、オキシジベンゼンスルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4'-ジスルホン酸ヒドラジドなど、硝酸塩、アゾ化合物、例えば、アゾジカルボンアミド、シアノ吉草酸、アゾビス(イソブチロニトリル)、及びN-ニトロソ化合物、及びその他の窒素ベースの材料、並びに当技術分野で知られている他の化合物を挙げることができる。
【0043】
無機化学発泡剤としては、炭酸塩、例えば、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどを挙げることができ、これらは単独で使用されるか、あるいは弱い有機酸、例えば、クエン酸、乳酸、又は酢酸と組み合わされてもよい。
【0044】
本開示によるポリマー組成物は、組成物の物理的特性及び加工性を調整するために1つ又は複数の可塑剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、本開示による可塑剤として、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ビス(n-ブチル)(DNBP)、フタル酸ブチルベンジル(BZP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジ-n-オクチル(DOP又はDNOP)、フタル酸ジ-o-オクチル(DIOP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP)、フタル酸ジ-n-ヘキシル、トリメリット酸トリメチル(TMTM)、トリメリット酸トリ-(2-エチルヘキシル)(TEHTM-MG)、トリメリット酸トリ(n-オクチル,n-デシル)、トリメリット酸トリ(ヘプチル,ノニル)、トリメリット酸n-オクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHA)、アジピン酸ジメチル(DMD)、アジピン酸モノメチル(MMAD)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジブチル(DBS)、ビエルノール(VIERNOL)などのアジピン酸のポリエステル、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸ジイソブチル(DIBM)、安息香酸エステル、エポキシ化大豆油、n-エチルトルエンスルホンアミド、n-(2-ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド、n-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミド、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリブチル(TBP)、グリコール/ポリエステル、トリエチレングリコールジヘキサノエート、3gh)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ポリブテン、アセチル化モノグリセリド;クエン酸アルキル、クエン酸トリエチル(TEC)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸アセチルトリヘキシル、クエン酸ブチリルトリヘキシル、クエン酸トリヘキシルo-ブチリル、クエン酸トリメチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ニトログリセリン、ブタントリオールトリニトレート、ジニトロトルエン、トリメチロールエタントリニトレート、ジエチレングリコールジニトレート、トリエチレングリコールジニトレート、ビス(2,2-ジニトロプロピル)ホルマール、ビス(2,2-ジニトロプロピル)アセタール、2,2,2-トリニトロエチル2-ニトロキシエチルエーテル、鉱油、及びその他の可塑剤並びに高分子可塑剤の1つ以上を挙げることができる。特定の実施形態では、1つ又は複数の可塑剤のうちの1つは鉱油であることができる。
【0045】
本開示によるポリマー組成物は、1つ又は複数の無機充填剤、例えば、タルク、ガラス繊維、大理石ダスト、セメントダスト、粘土、カーボンブラック、長石、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、ケイ酸粉末、ガラス微小球、マイカ、金属酸化物粒子及びナノ粒子、例えば、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、無機塩粒子及び無機ナノ粒子、例えば、硫酸バリウム、珪灰石(ウォラストナイト)、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、多面体シルセスキオキサンオリゴマー(POSS)、リサイクルEVA、及びその他のリサイクルゴムを含んでもよい。本明細書で定義されているように、リサイクルEVAは、成形又は押出成形などの少なくとも1つの加工処理方法を受けた再粉砕材料から誘導されていてもよく、その後のスプルー、ランナー、バリ、不合格部品などは粉砕され又は細断される。本開示の実施形態によれば、そのようなリサイクル材料は触媒と組み合わされて、動的架橋ネットワークを有する本明細書に記載されたポリマー組成物を形成するが、追加のリサイクルEVA又はその他のポリマーを、その後のコンパウンド工程において充填剤として添加できることも想定される。
【0046】
<加工処理>
【0047】
1つ以上の実施形態において、架橋ポリマー、触媒、及び任意選択により場合によって非架橋ポリマーは、溶融加工処理操作を受けて、動的な架橋をされたポリマー及び特許請求の範囲に記載したポリマー組成物を形成する。具体的には、架橋ポリマー、触媒、及び任意選択により場合によって非架橋ポリマーを、昇温した温度において混合して架橋ポリマーの粘度を低下させ、かつ、動的架橋反応速度を高めることができる。例えば、架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマーの混合物は、非架橋ポリマーの加工処理温度よりも高い加工処理温度を受けて、ポリマー組成物を形成することができる。すなわち、混合物は、非架橋ポリマーの融点又は軟化点のいずれかよりも高い温度にさらされうる。温度は、それがポリマーの分解温度を超えない限り、選択した加工処理操作に必要な要件に従って選択されるべきである。非晶質非架橋ポリマーの軟化点は、ASTM D-1525に準拠したビカット法によって決定され、かつ、半結晶性の非架橋ポリマーの融点はDSCによって測定される。
【0048】
1つ又は複数の実施形態において、本開示によるポリマー組成物は、連続又は不連続押出を使用して、あるいは連続又はバッチ混合で調製されうる。方法は、単軸、二軸、又は多軸押出機を使用することができ、いくつかの実施形態では100℃~270℃の範囲の温度、いくつかの実施形態では140℃~230℃の範囲の温度で使用することができる。いくつかの実施形態では、原材料(架橋ポリマー、触媒、及び非架橋ポリマー)が、押出機に同時又は順次、主フィーダー又は二次フィーダー中へ添加される。他の実施形態では、ニーダー、カレンダー、又は他の内部ミキサーが使用されてもよい。
【0049】
本開示に従ってポリマー組成物を調製する方法は、架橋ポリマー、触媒、及び任意選択により場合によって非架橋ポリマーを押出機内で混合するステップ;架橋ポリマーを触媒とともに溶融押出して動的架橋ポリマーを形成するステップ、及び任意選択により場合によってはそのような動的架橋ポリマーを非架橋ポリマー内に分散させるステップ;及び、ポリマー組成物のペレット、フィラメント、又は粉末を形成するステップという一般的なステップを含みうる。
【0050】
有利には、本開示のプロセスは、架橋ポリマー及び触媒をプロセスに(例えば、押出機の第1の端において)一定かつ連続的に添加されることができ、かつ形成されたポリマー組成物がプロセスの終わり(例えば、押出機の第2の端において)で一定かつ連続的に形成されうるように連続的でありうる。すなわち、プロセスから形成されたポリマー組成物が(押出機の第2の端において)生じると同時に、追加の架橋ポリマー及び触媒がプロセス(押出機の第1の端において)に添加される。
【0051】
1つ又は複数の実施形態において、架橋ポリマー、特にスクラップ又は成形部品から得られる架橋ポリマーは、より小さな粒子に砕かれることができる。そのようなサイズの低下は、1つ以上の実施形態において、触媒とともに架橋ポリマーを押し出したときに起こり得ることが想定される。しかし、サイズ低下の少なくとも一部は、より大きなスクラップ片を、押出機中へ容易に供給でき及び/又は押出しプロセスにおいて、触媒によって反応して動的な架橋をするために十分な表面積を有する粒子へと、砕く(grinding)、粉砕する(milling)、又はその他の方法で細断する前の段階において起こり得ることも想定される。例えば、サイズの低下、及び動的な架橋を受けた後、架橋ポリマーは、1、5、10、15、20、30、40、50、又は100ミクロンのいずれかの下限、及び100、500、1000、5000、10000、又は100000ミクロンのいずれかの上限の粒子サイズを有していてよく、ここで、任意の下限を任意の上限と組み合わせて用いることができる。
【0052】
1つ以上の実施形態において、動的な架橋をする際、90℃より高い温度における貯蔵弾性率の時間依存性は、ニート(neat)組成物と比較してシフトする。組成物の時間依存性は、正規化された緩和が初期値(G0,プラトー弾性率) に対して1/eに達する時間として決定できる。正規化された緩和弾性率の値は、貯蔵弾性率データへの指数関数的減衰フィッティングによって得ることができる。プラトー弾性率はt=0秒でのフィッティングに対応し、これはG0ともよばれる。
【0053】
動的な架橋を考慮すれば、本開示の実施形態はまた、架橋したポリマー(架橋ポリマー)の組成物の再加工処理にも関する。1つ以上の実施形態において、使用される化学物質の固有の特性により、架橋ポリマー配合物は、初期架橋プロセスにおいてバージンポリマーに適用される同様の加工処理を使用して再加工処理又はリサイクルされ得る。スクラップ又は耐用年数が終了した部品は、二次原料としてなお有用な方法で、加工性又は特性の許容可能な低下を伴いつつ、所望する操作において材料を供給することができるように、再粉砕又はその他の必要なプロセスをうける。その目的は、一般に、再加工処理パラメータが、最初の製造プロセスにおいて使用されたものと同様であることである。有利には、ポリマー組成物は再加工処理されることができ、かつ、ポリマー組成物の特性は、再加工処理の直前と比較して実質的に維持されることができる。具体的には、1つ以上の実施形態において、再加工処理後、ポリマー組成物は、再加工処理前のポリマー組成物と比較して、動的機械分析によって測定して、その溶融温度より高い温度で、初期貯蔵弾性率の少なくとも40%のプラトーを維持する。
【0054】
再加工処理が繰り返し(複数のサイクルを通じて)行われることも想定される。1つ又は複数の実施形態において、3サイクルの再加工処理後又は5サイクルの再加工処理後など、繰り返しの再加工処理後、ポリマー組成物は、再加工処理前のポリマー組成と比較して、動的機械分析によって測定して、その溶融温度より上で、初期貯蔵弾性率の少なくとも40%のプラトーを維持する。
【0055】
本発明の方法によって調製されるポリマー組成物は、射出成形、発泡、圧縮成形、スチームチェスト成形、超臨界成形、積層造形などを含めた、製造した物品を生産するための、様々な成形プロセスに適用可能な顆粒の形態であってもよい。
【0056】
1つ以上の実施形態において、ポリマー組成物は、いくつかの実施形態において、積層造形プロセスにおいて使用しうる押出フィラメント又は顆粒(あるいはペレット)として配合され得る。
【0057】
一般に、商業的に利用可能な積層造形技術の例には、押出ベースの技術、例えば、熱溶融フィラメント製造法(MJF)、溶融堆積モデリング(FDM)、又はフリーフォーミング、並びにその他の技術、例えば、電子写真(EP)、ジェッティング、選択的レーザー焼結(SLS)、高速焼結(HSS)、粉末/バインダージェッティング(BJ)、及びバット光重合(液槽光重合)が含まれる。これらの手法のそれぞれのためには、3Dパーツのデジタル表現は、最初に複数の水平レイヤーにスライスされる。それぞれのスライスされたレイヤーに対して、ツール・パスが生成され、これが、所定のレイヤーを印刷するための、具体的な積層造形システムのための指示がなされる。本発明のポリマー組成物に特に適し得る特定の積層造形技術には、例えば、溶融フィラメント製造及び粉末床融着(SLS、HSS、及びBJ)技術が含まれる。
【0058】
熱溶融フィラメント製造法においては、押出ヘッドがプラスチックフィラメントを加熱して、制御されたパターンでノズルを通して印刷基板上に押し出されるポリマー溶融物を生成する。その材料を堆積して、連続層を形成する。フィラメントは、例えば、1.0~4.0mmの直径を有することができ、これには、1.5~3mmの範囲の直径、例えば1.75mm又は2.85mmの直径を有するフィラメントが含まれる。
【0059】
粉体床溶融結合技術(powder bed fusion technique)は、液体樹脂又は溶融樹脂に代えて、造形領域において粉末材料を使用する。たとえば、選択的レーザー焼結(SLS)では、レーザーを使用して粉末の層を選択的に焼結させ、これがその材料を一体に焼結させる。このプロセスは、次に構築(ビルド)が完了するまで、レイヤーごとに繰り返される。オブジェクトが完全に形成されたら、取り出す前に機械内に置いたまま冷却させる。高速焼結(HSS)では、ポリマー粉末の薄い層を堆積させ、その後、インクジェットプリントヘッドが、焼結が必要な粉末の表面に赤外線(IR)吸収液(あるいはトナーパウダー)を直接堆積させることによって製造が行われる。その全体の造形領域(ビルド領域)が次に赤外線ランプなどのIR放射源によって照射されて、印刷された流体がそのエネルギーを吸収し、次にその下にある粉末を溶融させて焼結させる。このプロセスは、ビルドが完了するまでレイヤーごとに繰り返される。SLS及びHSSは粉体床融合結合法の例として詳述されている一方、ポリマー組成物は、その他の粉末床溶融結合法、例えば、選択的加熱焼結法(SHS)、選択的吸収焼結法(SAS)、選択的抑制焼結法(SIS)、及びバインダージェッティングにおいて使用するために適用することができる。そのような粉末床溶融結合法において、ポリマー組成物は、30~90ミクロンの範囲の例示的な粒度分布d50、最大150ミクロンまでのd90、及び少なくとも10ミクロンのd10を有する粉末として提供され得る。
【0060】
1つ又は複数の実施形態では、物品は、靴のミッドソール;ホットメルト接着剤、ガスケット、ホース、ケーブル、ワイヤー、シーリングシステム、コンベアベルト、フォクシングテープ、NVH材、防音材、屋根材、及び工業用床材からなる群から選択される。多層物品の実施形態においては、層の少なくとも1つが本開示のポリマー組成物を含むことが想定される。
【0061】
上述したように、ポリマー組成物から形成された物品は、動的架橋ポリマーなしに非架橋ポリマーから形成された物品と同等である応力及び破断伸び、硬度、圧縮永久歪み、耐衝撃強度、密度、引裂強度、弾性、耐摩耗性などを有し得る。すなわち、非架橋ポリマーのマトリックス内に動的架橋ポリマーを含めることは、物品の特性に悪影響を及ぼさない。
【0062】
発泡物品である実施形態については、そのような発泡物品は、ASTM D792に準拠して、0.2~0.6g/cm3の範囲の密度、例えば、0.45g/cm3以下、0.43g/cm3以下、0.42g/cm3以下、0.41g/cm3以下、0.40g/cm3以下、0.38g/cm3以下、0.35g/cm3以下、0.32g/cm3以下、又は0.30g/cm3以下の密度を有し得る。
【0063】
本開示の1つ以上の実施形態による発泡物品は、JIS K7312によって決定して、15、20、25、30、又は35のいずれかの下限から、40、45、50、55、又は60の上限の範囲のアスカーC硬度を有することができ、この場合、任意の下限を任意の上限と組み合わせることができる。
【0064】
本開示の1つ以上の実施形態による発泡物品は、ASTM D2632によって決定して、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、又は少なくとも70%の弾性を有し得る。
【0065】
本開示の1つ以上の実施形態による発泡物品は、5Nの荷重で測定してISO 4649:2017により決定して、150mm3以下、140mm3以下、130mm3以下、120mm3以下、110mm3以下、100mm3以下、75mm3以下、50mm3以下の摩耗を有し得る。
【0066】
本開示の1つ以上の実施形態による発泡物品は、70℃、1時間で、PFI法(Pirmesens-ドイツ国のPFI「Testing and Research Institute for the Shoe Manufacturing Industry」)を使用することによって決定して、3%以下、2.8%以下、2.5%以下、2.3%以下、又は2.0%以下の収縮を有し得る。
【0067】
本開示の1つ以上の実施形態による発泡物品は、23℃、25%ひずみ、22時間に対し、ASTM D395によって方法Bを使用して決定して、15%未満、12%未満、10%未満、又は8%未満の圧縮永久歪を有し得る。
【0068】
本開示の1つ以上の実施形態による発泡物品は、50℃、50%ひずみで、6時間に対し、ASTM D395によって方法Bを使用して決定して、50%未満、45%未満、40%未満、又は35%未満の圧縮永久歪を有し得る。
【0069】
本開示の1つ以上の実施形態による発泡物品は、ASTM D624によって決定して、少なくとも3N/mm、少なくとも3.5N/mm、少なくとも4N/mm、少なくとも4.5N/mm、又は少なくとも5N/mmの引裂強度を有し得る。
【0070】
本開示の1つ以上の実施形態による発泡物品は、ABNT-NBR 10456によって決定して、少なくとも2.5N/mm2、少なくとも3.0N/mm2、少なくとも3.5N/mm2、少なくとも4.0N/mm2、又は少なくとも4.5N/mm2の結合強度を有し得る。
【0071】
コンパクト物品である実施形態については、コンパクト物品の1つ又は複数の実施形態は、NBR 13756-1996に準拠して、60~70の範囲のショアA硬度、7MPaより高い破壊強度、250%より大きな破壊伸び、35%より小さな圧縮永久歪み(NBR 10025,方法B,22時間、70℃)を有し得る。
【0072】
1つ以上の特定の実施形態において、ポリマー組成物は靴のミッドソールを形成するために使用することができ、かつ、ポリマー組成物を形成するために使用される架橋ポリマーは、EVAスクラップ、例えば、スプルー、ランナー、バリ、不合格部品、並びに靴のミッドソールの成形作業からの同様のものであってよく、それらは粉砕又は細断される。粉砕されたEVAスクラップは、押出機内で、触媒、及び任意選択により場合によって未使用のEVAと混合されて、本明細書に記載されているポリマー組成物を形成することができる。そのポリマー組成物は、したがって、靴のミッドソールを形成するために使用することができる。
【実施例】
【0073】
試験方法
<ノッチ付きアイゾット耐衝撃性>
ノッチ付きアイゾット衝撃試験は、ASTM D256:プラスチックのアイゾット振り子耐衝撃強度を決定するための標準試験方法、方法A(Standard Test Methods for Determining the Izod Pendulum Impact Resistance of Plastics, Method A)に従って、Ceast Resil 25 Digital Pendulum Unit, Model 6545で実施した。振り子能力:特記しない限り2.0ジュール。サンプルサイズ:寸法 ノッチの深さ:0.1インチ、サンプルタイプごとに試験される試験片の数:5(最小)、試験温度: 試験中、サンプルは室温23℃であった。
【0074】
<曲げ弾性率>
3点曲げ試験の試験は、ASTM D790、手順Aの原理を適用するブルーヒル・ユニバーサル・ソフトウェア(Bluehill Universal software)を用いるInstron 3366ユニットで実施した。ASTM D790,手順A-非強化及び強化プラスチック並びに電気絶縁材料の曲げ特性、手順A。ひずみ速度:下記の結果を参照されたい、クロスヘッド速度:下の結果を参照されたい、サンプルサイズ:厚さ0.125インチ×長さ5.0インチ、保持間隔(サポートスパン):2インチ、タイプごとに試験する試験片の数: 各ひずみ速度において5個、3点曲げ試験の結果の試験条件: 速度は0.05インチ/分、スパン2.0インチ。
【0075】
<引張特性>
引張試験は、ASTM D638のプラスチックの引張特性の原理を適用するブルーヒル・ユニバーサル・ソフトウェア(Bluehill Universal software)を用いるInstron 3366ユニットで実施した。10kNのロードセルを使用した。ひずみ値を決定するために、ロングトラベル伸び計を使用した。クロスヘッド速度:2.0インチ/分、サンプルサイズ: ASTM タイプIドッグボーン、サンプルゲージ長さ:2.0インチ。
【0076】
<動的機械解析>
単一カンチレバー固定具を備えたAnton Parr MCR 501を使用して、動的機械分析を実施した。
【0077】
<示差走査熱量測定>
動的な架橋をされたネットワークの形成を説明するために、熱応答を、示差走査熱量計(DSC)であるTA Instruments社製のQ200装置によって測定した。
【0078】
DSC法:
第1の加熱ステップにおいて、サンプルを10℃/分の加熱速度で160℃まで加熱した。温度を160℃で一定に保った。次いで、サンプルを10℃/分の速度で-20℃まで冷却し、-20℃において1分間平衡化させた。2番目の加熱ステップでは、サンプルを10℃/分の加熱速度で 160℃まで加熱し、160℃で1分間保持し、次に10℃/分の速度で30℃まで冷却した。
【0079】
せん断レオロジー
せん断レオロジー試験は、以下の手順で行った:最初に、周波数掃引、その後すぐに時間掃引、そして次にさらに周波数掃引。ポリマー組成物に対する触媒の考えられる影響を理解するために、異なる熱サイクルの後、かつ異なる周波数で、サンプル間の比較を実施した。すべての試験は、TA Instruments社の動的剪断振動レオメーター(Dynamic Shear Oscillatory Rheometer)DHR3において、直径25mm、ギャップ1mmの平行プレートアクセサリーで、窒素(N2)雰囲気中、170℃において実施した。
【0080】
試験条件-最初:628.32から0.75rad/sまでの周波数掃引、線形粘弾性領域(LVR)内での変形。時間掃引は、LVRで1rad/sにおいて60分間実施した。2番目の周波数掃引は、LVR内で628.32から0.06rad/sまで実施した。
【0081】
応力緩和
応力緩和測定は、25mmの平行プレート固定具を備えたAres G2レオメーターを使用して行った。ギャップは1.5mmに設定した。ひずみは1%(線形範囲内)に設定した。5Nの軸力を加えた。試験は各サンプルについて4通りの温度(100℃、120℃、150℃、及び170℃)のそれぞれにおいて実施した。
【0082】
粉砕されたEVAスクラップとEVA及び動的架橋剤との溶融/混合
エラストマーネットワークは、亜鉛/カルボン酸塩を加えた粉砕EVAスクラップとともにエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)の反応押出をすることによって製造した。 従来のEVA(Braskem社の市販グレードHM728,VAc含有量28%,メルトインデックス(190℃/2.16kg=6g/10分)を、粉砕した過酸化物架橋したEVAスクラップ及び亜鉛ジカルボン酸塩とともに、Theysohn TSK 21 mm 二軸押出機中で溶融/混合した。押出条件及び機械的特性をそれぞれ表2及び表3にまとめてある。
【0083】
架橋したEVAスクラップフォーム(発泡体)を市販ミッドソール製造業者から入手し、190℃で作動する押出機を使用して粉砕して微粒子を形成させた。
【0084】
典型的なミッドソール組成物は、EVAポリマー、CaCO3などの無機塩(1~5質量%)、アゾジカルボンアミドなどの発泡剤(2~3質量%)、及びジクミルペルオキシド硬化剤(0.5~2質量%)を含む。粉砕されたスクラップの粒度分布は、Malvern社製の Mastersizer装置を使用するレーザー回折によって測定した。平均粒径は約300ミクロンであった。
【0085】
実施例1及び2は、動的架橋剤が添加されていない粉砕EVAスクラップを用いて押出されたEVAを示している。実施例2及び3は、EVA及び粉砕EVAスクラップの混合物とともにジアクリレート亜鉛を用いた押出成形の効果を示している。実施例4及び5は、EVA及び粉砕EVAスクラップの混合物とともにアセチル酢酸亜鉛を用いた押出成形の効果を示している。
【0086】
【0087】
【0088】
得られた押出混合物を水浴中で冷却し、ペレットとして集めた。ペレット化したサンプルのサブセットを対流式オーブン内で60℃において少なくとも8時間乾燥させ、次に、ASTM法に従って成形して棒状試験体(test specimen bars)を製造した。機械的特性を、ASTMの手順を使用して測定し、その結果を表3に報告してある。
【0089】
本発明の組成物が、熱可塑性プラスチック用の従来の(標準的な)射出成形法を使用して容易に加工処理されたという事実は、それらの溶融加工性を示している。
【0090】
【0091】
動的機械解析
EVAをZn/カルボン酸塩と混合したときのエラストマーネットワークの形成を実証するために、単一のカンチレバー形状を使用して、成形したプラーク(17.5mm×13.95mm×1.5mm)について動的機械分析を行った。サンプルを150℃において5分間平衡化し、次に、温度を3.00℃/分で50℃まで上昇させた。
【0092】
図1~3に示されているように、15~30℃の温度範囲で観測された貯蔵弾性率及びtanδ値は、EVAにカルボン酸亜鉛塩を添加することがエラストマー応答を増大させることを明確に示している。25℃におけるモジュラス値を下の表4に報告している。
【0093】
【0094】
示差走査熱量測定
EVAをZn/カルボン酸塩とブレンドした際のエラストマーネットワークの形成をさらに説明するために、DSCを使用して、反応押出後のEVAスクラップブレンド物の熱応答を測定した。
図4によれば、加熱及び冷却サイクル後の2番目の融解について、融解曲線が報告されている。EVAスクラップを含むすべてのブレンド物についての融解ピークは、EVA対照サンプルについての融解曲線と類似している。30%のスクラップを含ませることは、より広いピークをもたらすが、ピーク溶融温度を大きくはシフトさせない。
【0095】
図5に示されている、粉砕EVAスクラップを含むサンプルの冷却曲線は、2つの明確な結晶化ピークを示しており、1つはEVA対照と同じ温度において示し、もう1つは粉砕スクラップに起因しうる、より高い温度において示している。
【0096】
亜鉛ジアクリレート(ジアクリル酸亜鉛)又は亜鉛アセチルアセトネート(アセト酢酸亜鉛)を粉砕したスクラップ及びEVAとともに押し出した場合、より低いほうの温度の結晶化ピークは顕著により低い温度へとシフトする。ブレンドしていないEVA HM728は、約54℃にTcピークを有し、また、粉砕スクラップをブレンドしたEVAは、約52℃にTcピークを有する。亜鉛ジアクリレート又は亜鉛アセチルアセトネートとともに押出したサンプルは、約43℃(10℃近いシフト)にTcピークを有する。このシフトは、Znジアクリレート又はZnアセチルアセトネートのいずれかを用いて押し出したときのEVA/スクラップブレンド物の架橋を示唆している。
【0097】
せん断レオロジー
図6~9に示すように、小角振動せん断(SAOS)を使用して、より高い温度における粘弾性応答を測定した。170℃において、
図7に示されているZnジアクリレートを含むサンプルは、
図6に示されている、スクラップのみを含むサンプルよりも大幅に低いクロスオーバー周波数を示した。Znジアクリレートを含むサンプルはまた、
図9に示されているように、スクラップのみを含むサンプルよりも大幅に低いtanδピークを示した。これらの観察は、EVAの融点のはるかに上でエラストマー挙動を示しており、これは、架橋ネットワークが形成されていることを示している。
【0098】
応力/緩和の測定
本発明のネットワークが動的に架橋されており、したがって、温度上昇などの刺激に応答してモルフォロジーを変えることができることを実証するために、応力緩和測定を実施した。
【0099】
試験したサンプルは、実施例2、実施例4、及び実施例6において上述した本発明の組成物だった。
【0100】
図10、11、及び12に示されている応力緩和の結果は、貯蔵弾性率(G’)が試験した各温度において時間に依存することを示している。本発明の各材料について、G’=G’(t)であり、G’(t)の値は、各EVA/スクラップ組成物について10,000秒以内にG(t=0)の50%未満まで低下する。G(t=0)の値は、データへの指数関数的減衰フィッティングによって得られた。緩和モジュラスはt=0秒でのフィットに対応し、これはG
0ともいわれる。
【0101】
再加工処理試験
本発明の組成物が加熱及び溶融によって再加工できることを示すために、押し出されたペレットを、下の表に列挙した条件を使用してカーバープレス(Carver press)で複数回プレスした。サンプルの厚さを制御するために0.6mmの厚さの真鍮の型を使用して、ペレットサンプルを鋼板の間でプレスした。最初のプレス工程の後、そのフィルムを冷却し、小片に切断し、再度プレスして第2のフィルムを形成した。その第2のフィルムを小片に切断し、プレスして第3のフィルムを形成した。各プレスの後、動的機械分析のためにフィルムのサンプルを集めた。
【0102】
【0103】
本発明のサンプルは、各プレス後に滑らかで均一なフィルムをもたらし、このことは組成物が流動して型の形状をとることを実証している。
【0104】
プレスされたフィルムの粘弾性応答は、張力固定具を備えたTA Instruments社製のレオメーターを使用して動的機械分析(DMA)温度掃引によって測定した。サンプルの寸法は、0.6mmの厚さ、7mmの幅、及び22~26mmの長さだった。ひずみの振幅は 15ミクロン、周波数は1Hz、及び加熱速度は3℃/分だった。
【0105】
弾性率及び貯蔵弾性率の値は、温度の関数として報告される。
図13~15に示されているように、本発明の組成物は、約20℃~約80℃の範囲の温度にわたってプラトー貯蔵弾性率を示す。3つの加工処理工程の後、本発明の組成物のプラトー弾性率は、その初期値の少なくとも半分を保持しており、これを最初のプレス後のE’の値とする。
【0106】
上記では、ほんの数例の実施形態のみを詳細に説明したが、当業者であれば、本発明から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることが容易に理解されるであろう。したがって、そのような修正はすべて、特許請求の範囲で定義される本開示の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲において、ミーンズ・プラス・ファンクション条項は、列挙された機能を実施するものとして本明細書に記載されている構造、及び構造的等価物だけでなく、等価な構造もカバーすることを意図している。したがって、釘は円筒面を使用して木製部品を固定するのに対し、ネジは螺旋面を使用するという点で、釘とネジは構造的に同等ではないかもしれないが、木製部品を固定する環境では、釘とネジは同等の構造でありうる。請求項が、関連する機能とともに「のための手段」をいう文言を明示して用いている場合を除いて、いずれの請求項のいずれの限定についても35 U.S.C. セクション112 (f)によらないことが、本出願人の明示による意図である。
【国際調査報告】