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特表2024-510986銅表面を修飾すること、並びに/又はヘテロ芳香族シラン化合物を使用することにより、銅と有機材料との間において接着強度を増大させるための、また、ハロー及び楔形空間形成を低下させるための方法
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  • 特表-銅表面を修飾すること、並びに/又はヘテロ芳香族シラン化合物を使用することにより、銅と有機材料との間において接着強度を増大させるための、また、ハロー及び楔形空間形成を低下させるための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】銅表面を修飾すること、並びに/又はヘテロ芳香族シラン化合物を使用することにより、銅と有機材料との間において接着強度を増大させるための、また、ハロー及び楔形空間形成を低下させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
C23C26/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555629
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022056360
(87)【国際公開番号】W WO2022189644
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21162439.0
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティーナ・ベロヴァ-マグリ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニ・アッカーマン
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ミヒャリク
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ハールマン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・トームス
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・リュッツォフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・クナウプ
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ・ケーニヒスマン
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB01
4K044BB03
4K044BC04
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、銅、銅合金又は酸化銅の表面と有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、銅合金若しくは酸化銅の表面と、有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための、及び/又は改善した楔形空間挙動のための方法であって、
(i)基材を用意する工程であり、前記基材の少なくとも1つの面に銅、銅合金又は酸化銅を含む、工程、
続いて、以下の少なくとも1つの工程
(i-c)前記基材を処理して、少なくとも1つの面に酸化銅を含む基材を得る工程であり、前記酸化銅が、銅(I)及び銅(II)を90:10以上(mol/mol)の比、好ましくは95:5以上(mol/mol)の比、より一層好ましくは98:2以上(mol/mol)の比で含み、最も好ましくは前記酸化銅が、本質的に酸化銅(I)からなる、工程並びに/又は
(ii)前記基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I);
【化1】
(式中、
環構造
【化2】
は、
【化3】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、
Aは、NH、N(NH2)及びSからなる群から選択され、
Zは、
【化4】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる工程であり、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う場合、工程(ii)の前に工程(i-c)を行う、工程、
(iii)有機材料を適用する工程
を含み、
但し、式(I)の前記シラン化合物中の前記環構造
【化5】
が、
【化6】
である場合、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う、方法。
【請求項2】
工程(i-c)が、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、少なくとも1種の錯化剤を含む水性アルカリ溶液と接触させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i-c)における前記水性アルカリ溶液が、7.5から14.0の範囲の、好ましくは10.0から14.0の範囲のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i-c)が、浸漬塗布として適用され、接触時間が、40s以上であり、好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、40sから900sであり、より好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、60sから500sであり、より一層好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、90sから450sである、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(i-c)が、噴霧塗布として適用され、接触時間が、10s以上であり、好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、20sから200sであり、より好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、30sから150sである、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項6】
(ii)基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I)
【化7】
(式中、
環構造
【化8】
が、
【化9】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、
Zは、
【化10】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(iii)において適用される前記有機材料が、有機ポリマーである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機材料が、工程(iii)において、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも接触した箇所に前記有機材料を積層することにより適用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)が行われる場合、工程(ii)を実施する前に、以下の工程:
(i-a)前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、エッチングクリーニング溶液、好ましくは1種以上の酸及び/又は1種以上の酸化剤を含有するエッチングクリーニング溶液、より好ましくは無機酸及び過酸化物の混合物を含有するエッチングクリーニング溶液と接触させる工程
を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)が行われる場合、工程(ii)を実施する前に、以下の工程:
(i-b)前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、好ましくは無機酸、好ましくは硫酸を含む(好ましくは第2の)エッチングクリーニング溶液と接触させる工程
を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をすすぐ工程が行われ、前記銅、銅合金又は酸化銅が、好ましくは水ですすがれる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を乾燥させる工程が行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をベークする工程が行われない、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(iii)の後で、追加の工程:
(iv)前記基材及び前記有機材料に、142℃から420℃の範囲の、好ましくは145℃から300℃の範囲の、より好ましくは150℃から220℃の範囲の温度で熱処理を施す工程
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をすすぐ工程が行われ、前記銅、銅合金又は酸化銅が、好ましくは水ですすがれる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅、銅合金又は酸化銅の表面と有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための、また、ハロー及び楔形空間形成を低下させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)基材の生成に使用される、セミアディティブ法のビルドアップシークエンスにおいて、キータスクの1つは、自然の接着力が本質的にない隣接した層の間に、強い接着結合を形成することである。ここでの基本的課題は、最終製品の性能に悪影響を及ぼすことなく、ビルドアップ層又は最終的なはんだマスクコーティングに使用される銅トレースと誘電体材料との間に強い結合を形成することである。
【0003】
以前、最も普通に使用されていた接着促進剤系では、銅表面の高度な粗化が生じ、この粗面は、次いで誘電体材料(例えば有機樹脂系)及び銅トレースとの機械的結合を形成するキーとして作用し得る。しかし、除去される銅を最小量にするために、銅表面積における最大の増加に基づくこのタイプの系は、現在ではもはや許容できない。導体の特徴が小さくなるにつれて、望ましいライン及び空間許容性(space tolerance)まで信頼性が高い構造を形成するのはより一層難易度が高くなり、ひいては、高度な粗面化に基づく接着促進工程を導入することは全く望ましくない。
【0004】
更に現在、シグナルインテグリティと粗面化との間に強い関係がある5G系の出現により、第2の課題に直面している。電気シグナルの周波数及びデータ転送速度が増加すると、電気シグナルの経路が銅トレースの最外皮に移動する。明らかに、ビルドアップ層との接着力を増大させるために、この「皮」が高度に粗化されている場合、シグナルの一部が損失する、又は遅くなる危険性がはるかに高く存在する。そのようなある損失により、次いで必要とされる高周波数範囲で動作する能力も損なわれる。
【0005】
これらの課題を克服するために、銅表面をエッチング及び/又は粗化することなく、両方の材料の間における接着が増大する銅表面及び/又は誘電体材料を処理するための方法を開発することが望ましい。
【0006】
ヘテロ芳香族シラン化合物は、電子部品の製造に、詳細には、例えば更なる加工工程のための調製物として、銅表面及び有機材料の表面を処理するための表面処理溶液に頻繁に利用される。
【0007】
US2016/0368935A1は、アゾールシラン化合物、及びアゾールシラン化合物を使用した表面処理溶液、表面処理方法並びにその使用に関する。
【0008】
JP2018016865Aは、シラン化合物を含有するトリアゾール表面処理剤を開示する。
【0009】
JP2014240522Aは、銅表面処理液体、表面処理方法、及びその利用に言及している。
【0010】
JPH06279461Aは、プリント回路用の銅張積層板に使用される銅箔のための表面処理剤に言及している。
【0011】
論文「Corrosion protection of copper with 3-glycidoxypropyltrimethoxysilane-based sol-gel coating through 3-amino-5-mercapto-1,2,4-triazole doping」、Journal of Research on Chemical Intermediates、第42巻、第2号、1315から1328頁、2015年は、銅表面上にゾル-ゲルコーティングを形成することによる、中性媒体における銅の腐食保護についての研究を開示している。これは、銅における、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールをドープした、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランベースのゾル-ゲル(3-glydidoxypropyltrimethoxysilane-based sol-gel)コーティングが、銅へのチオレート結合を形成すると開示している。
【0012】
WO2019/243180は、アゾールシラン化合物、その合成、また、それぞれの溶液及び表面処理における使用を開示している。
【0013】
WO2020/178146は、金属、金属合金又は金属酸化物の表面と、有機材料の表面との間において接着強度を増大させるための方法における、アゾールシラン化合物の使用を開示している。
【0014】
WO2019/058773Aは、テトラゾールシラン、テトラゾールシランを合成するための方法、及び表面処理におけるテトラゾールシランの使用を開示する。
【0015】
JP2016169300A(JP6436819B2)は、ケイ素を含まない2,4-ジアミン-置換トリアジンを開示している。
【0016】
2,4,6-トリアミン-置換トリアジンは、Chem. Eur. J. 2009年、15、6279~6288頁及びJP2017002402A(JP6370836B2)で開示されている。エポキシ樹脂におけるその使用は、JP6392273で開示されている。
【0017】
「The role of oxide structure on copper wire to the rubber adhesion」、Applied Surface Science、第161巻、355~364頁、2000年では、ミリメートルの大きさの銅ワイヤーのゴムへの接着を調査した。結合は、酸化銅の硫黄との反応に左右される。
【0018】
「Reliability prediction in electronic packages using molecular simulation」、Electronic Components and Technology Conference、1314~1317頁、2005年は、エポキシ成形コンパウンド(EMC)と酸化銅との間における相互反応の分子動力学(MD)シミュレーションを開示する。
【0019】
接着強度は、接着層が銅、銅合金又は酸化銅の表面に結合することによる物理的及び化学的強度に関連する。
【0020】
接着強度に関連する別の態様は、楔形空間形成(wedge void formation)の回避である。これは、積層、硬化及びレーザー処理の典型的なプロセス工程の後で、基材と積層板との間の界面に、デスミア及び還元工程後、楔状の構造が形成されることを意味する。これらのいわゆる楔形空間は、積層板の剥離を促進するので望まれない。楔形空間は、多くの場合、基材への化学伝播を指し示すドリル穴周囲のハロー環(ブラインドマイクロビア)として既に公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】US2016/0368935A1
【特許文献2】JP2018016865A
【特許文献3】JP2014240522A
【特許文献4】JPH06279461A
【特許文献5】WO2019/243180
【特許文献6】WO2020/178146
【特許文献7】JP2016169300A
【特許文献8】JP6436819B2
【特許文献9】JP2017002402A
【特許文献10】JP6370836B2
【特許文献11】JP6392273
【特許文献12】WO2019/243180
【特許文献13】US2020/0399290
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】「Corrosion protection of copper with 3-glycidoxypropyltrimethoxysilane-based sol-gel coating through 3-amino-5-mercapto-1,2,4-triazole doping」、Journal of Research on Chemical Intermediates、第42巻、第2号、1315から1328頁、2015年
【非特許文献2】Chem. Eur. J. 2009年、15、6279~6288頁
【非特許文献3】「The role of oxide structure on copper wire to the rubber adhesion」、Applied Surface Science、第161巻、355~364頁、2000年
【非特許文献4】「Reliability prediction in electronic packages using molecular simulation」、Electronic Components and Technology Conference、1314~1317頁、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明の目的は、上記で言及されている問題に基づき、銅表面及び/又は誘電体材料を処理するための方法であって、好ましくは銅表面のエッチング及び/又は粗化することなく、両方の材料の間における接着を増大させる方法を提供することであった。
【0024】
上記のように、接着強度、並びに楔形空間形成に関する欠点を呈さない方法を提供することは、追加のタスクであった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記で言及されている目的は、銅、銅合金若しくは酸化銅の表面と、有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための、及び/又は改善した楔形空間挙動のための方法であって、
(i)基材を用意する工程であり、基材が少なくとも1つの面に銅、銅合金又は酸化銅を含む、工程、
続いて、以下の少なくとも1つの工程
(i-c)基材を処理して、少なくとも1つの面に酸化銅を含む基材を得る工程であり、酸化銅が、銅(I)及び銅(II)を90:10以上(mol/mol)の比、好ましくは95:5以上(mol/mol)の比、より一層好ましくは98:2以上(mol/mol)の比で含み、最も好ましくは酸化銅が、本質的に酸化銅(I)からなる、工程、並びに/又は
(ii)基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I)
【0026】
【化1】
【0027】
(式中、
環構造
【0028】
【化2】
【0029】
は、
【0030】
【化3】
【0031】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、Aは、NH、N(NH2)及びSからなる群から選択され、
Zは、
【0032】
【化4】
【0033】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)p-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる工程であり、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う場合、工程(ii)の前に工程(i-c)が行う、工程、
(iii)有機材料を適用する工程
を含み、
但し、環構造
【0034】
【化5】
【0035】
が、式(I)のシラン化合物において、
【0036】
【化6】
【0037】
である場合、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う、
方法により解決される。
【0038】
独自の実験により、銅、銅合金又は酸化銅と有機材料との間における接着強度は、銅、銅合金又は酸化銅をエッチング又は顕著に除去することなく、増大できることが驚くべきことに示された。銅、銅合金又は酸化銅の相対表面積(RSAI)が増大する一方、平均の表面粗さ(Ra)は増加しないことが示され得る。言い換えれば、工程(i)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の平均の表面粗さは、工程(i)のスタートと比較して実質的に同一である。これにより、いくつかの公知の方法、詳細には、粗化により全体の表面積を増大させる目標を有するエッチング方法に勝る本発明の方法が区別される。したがって、本発明の方法は、好ましくは非エッチング方法である。
【0039】
工程(i)において、銅、銅合金又は酸化銅が、銅、銅合金又は酸化銅回路部品を含み、好ましくは銅、銅合金又は酸化銅回路部品である、本発明の方法が好ましい。そのようなケースでは、銅、銅合金又は酸化銅回路部品は、構造化される。これは、好ましくは、有機材料が、同一面の非導電(好ましくは有機)領域並びに導電性銅、銅合金又は酸化銅領域で同時に曝露することを意味する。これは、本発明の方法に関して最も好ましい。
【0040】
工程(i)において、銅、銅合金又は酸化銅が、基材に少なくとも1つの層を形成する、本発明の方法が好ましい。上記のように、この層又はこれらの層は、回路部品を構造化し得、形成し得、又はそれであり得る。
【0041】
工程(i)において(及び/又は好ましくは工程(ii)の後で)、銅、銅合金又は酸化銅回路部品が、100μm以下、好ましくは75μm以下、より好ましくは55μm以下のライン幅を有するラインを含む、本発明の方法が好ましい。いくつかのケースでは、工程(i)において(及び/又は好ましくは工程(ii)の後で)、銅、銅合金又は酸化銅回路部品が、30μm以下、好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下のライン幅を有するラインを含む、本発明の方法が好ましい。
【0042】
工程(i-c) - 酸化銅(I)の形成を含む方法
銅(II)と比較して銅(I)含有量が高い酸化銅表面は、良好な接着挙動を呈しながら、平坦な(又は滑らかな)表面を同時に呈することが驚くべきことに見出された。これは、典型的なパラダイムが、「表面が粗いほど接着が良好である」ため、意外である。上に記載されている理由のため、粗い表面は、強く要望される電子用途に求められない。
【0043】
したがって、根底にある問題は、銅、銅合金又は酸化銅の表面と、有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための、及び/又は改善した楔形空間挙動のための方法であって、
(i)基材を用意する工程であり、基材が少なくとも1つの面に銅、銅合金又は酸化銅を含む、工程、
続いて
(i-c)基材を処理して、少なくとも1つの面に酸化銅を含む基材を得る工程であり、酸化銅が、銅(I)及び銅(II)を90:10以上(mol/mol)の比、好ましくは95:5以上(mol/mol)の比、より一層好ましくは98:2以上(mol/mol)の比で含み、最も好ましくは酸化銅が、本質的に酸化銅(I)からなる、工程、
(iii)有機材料を適用する工程
を含む、方法を提供することにより解決できることが見出された。
【0044】
本発明の酸化銅(I)表面は、工程(i-c)が、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、1種以上の錯化剤を含む水性アルカリ溶液と接触させることによって行われる場合、得られることを見出した。
【0045】
したがって、好ましくは、工程(i-c)は、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、1種以上の錯化剤を含む水性アルカリ溶液と接触させる工程を含む。
【0046】
本発明の方法のアルカリ性溶液は、水性アルカリ溶液である。本発明に関連して、「水性」は、溶液が水を含むことを表す。酸化性溶液の合計体積50vol%超、好ましくは70vol%以上、より好ましくは80vol%以上、より一層好ましくは90vol%以上、最も好ましくは95vol%以上が水である、本発明の方法に利用される溶液が好ましい。最も好ましくは、溶液は、水を含むが、但し、水が単なる溶媒であることを条件とする。
【0047】
「アルカリ性」という用語は、溶液は、7超の、好ましくは9以上の、より一層好ましくは11以上の、最も好ましくは12.5以上のpHを有することを意味する。本発明の方法の工程(i-c)において、pHが、8から14の範囲、より好ましくは9から14の範囲、より一層好ましくは10から14の範囲、更により一層好ましくは11から14の範囲、最も好ましくは12から14の範囲である、溶液が好ましい。
【0048】
アルカリ性pHを得るために、溶液は、水酸化物イオンを、溶液の合計体積に対して、好ましくは0.1mol/Lから2.0mol/Lの範囲の、好ましくは0.2mol/Lから1.8mol/Lの範囲の、より一層好ましくは0.3mol/Lから1.6mol/Lの範囲の、更により一層好ましくは0.4mol/Lから1.5mol/Lの範囲の、最も好ましくは0.5mol/Lから1.2mol/Lの範囲の濃度で含む。そのような濃度により、好ましくは強アルカリ性の酸化性溶液、例えばpH13以上が生じる。
【0049】
1種以上の水酸化物イオン源、好ましくは1種の水酸化物イオン源を含む溶液が好ましい。
【0050】
好ましい水酸化物イオン源は、無機水酸化物、有機水酸化物、又はそれらの混合物である。無機水酸化物は、好ましくは水酸化アンモニウム及びアルカリ性水酸化物からなる群から選択され、好ましくは水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される。好ましい有機水酸化物は、水酸化アルキルアンモニウム、好ましくは水酸化テトラアルキルアンモニウム、より好ましくは水酸化テトラメチルアンモニウムである。
【0051】
水性アルカリ溶液は、1種以上の銅錯化剤を含む。錯化剤は、典型的には、アルカリ性溶液を銅表面に適用した場合に可溶化し、錯化銅イオンの役割を果たし、これにより不溶性水酸化銅の形成を回避する。典型的には、銅イオンに対する錯化剤は、そのような水酸化物の形成を防止する、又は少なくとも著しく低下させる。したがって、アルカリ性溶液が、錯化銅イオンに対する1種以上の錯化剤、好ましくは少なくとも1個のカルボン酸基及び少なくとも1個のヒドロキシル基を含む1種以上の錯化剤を更に含む、本発明の方法が好ましい。
【0052】
アルカリ性溶液において、1種以上の錯化剤が、糖、好ましくは単糖類を含む、本発明の方法がより好ましい。
【0053】
錯化銅イオンに対する1種以上の錯化剤が、グルコン酸及び/又はその塩を含み、最も好ましくは、アルカリ性溶液における唯一の錯化銅イオンに対する錯化剤が、グルコン酸及び/又はその塩である、本発明の方法がより一層好ましい。
【0054】
アルカリ性溶液において、1種以上の錯化剤が、アルカリ性溶液の合計体積に対して、5mmol/Lから400mmol/Lの範囲の、好ましくは10mmol/Lから300mmol/Lの範囲の、より好ましくは15mmol/Lから200mmol/Lの範囲の、より一層好ましくは20mmol/Lから100mmol/Lの範囲の、更により一層好ましくは25mmol/Lから80mmol/Lの範囲の、最も好ましくは30mmol/Lから60mmol/Lの範囲の合計濃度を有する、本発明の方法が好ましい。前述の濃度は、好ましくは前述の好ましい錯化剤、最も好ましくはグルコン酸及びその塩に適用可能である。
【0055】
工程i-cにおいて、水性アルカリ溶液の温度が、20℃から80℃の範囲、好ましくは25℃から75℃の範囲、より好ましくは30℃から70℃の範囲、より一層好ましくは35℃から65℃の範囲、最も好ましくは40℃から60℃の範囲である、先行する請求項のいずれかの方法。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、これは、工程(i)において使用される水性アルカリ溶液が、亜塩素酸ナトリウム又は酸化剤を更に含有する場合、好ましい。
【0057】
工程(i-c)は、浸漬塗布として適用され得ることを見出した。浸漬塗布は、溶液が、銅、銅合金又は酸化銅が浸漬される浴の形態で用意されることを意味する。40s以上の接触時間が好ましいことを更に見出した。好ましくは、工程(i-c)における接触時間は、40sから900sであり、より好ましくは、工程(i-c)における接触時間は、60sから500sであり、より一層好ましくは、工程(i-c)における接触時間は、90sから450sである。
【0058】
代替として、工程(i-c)は、噴霧塗布として適用され得ることを見出した。噴霧塗布は、溶液が、噴霧ディスペンサー中に移され、次いで銅、銅合金又は酸化銅に噴霧されることを意味する。10sの接触時間で既に良好な結果が得られることを更に見出した。したがって、10s以上の接触時間が好ましい。好ましくは、工程(i-c)における接触時間は、20sから200sであり、より好ましくは、工程(i-c)における接触時間は、30sから150sである。
【0059】
工程(II) - シラン化合物を適用する工程を含む方法
本発明の別の実施形態によれば、上記で言及されている目的は、銅、銅合金又は酸化銅の表面と、有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための、及び/又は改善した楔形空間挙動のための方法であって、
(i)基材を用意する工程であり、基材が少なくとも1つの面に銅、銅合金又は酸化銅を含む、工程、
続いて
(ii)基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I)
【0060】
【化7】
【0061】
(式中、
環構造
【0062】
【化8】
【0063】
は、
【0064】
【化9】
【0065】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、
Aは、NH、N(NH2)及びSからなる群から選択され、
Zは、
【0066】
【化10】
【0067】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)p-Tを表し、
独立して、pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる、工程であり、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う場合、工程(ii)の前に工程(1-c)を行う、工程
(iii)有機材料を適用する工程
を含む、方法により解決される。
【0068】
工程(ii)における接触させる工程は、浸漬塗布として適用され得る。浸漬塗布は、溶液が、銅、銅合金又は酸化銅が浸漬される浴の形態で用意されることを意味する。
【0069】
代替として、工程(ii)は、噴霧塗布として適用され得る。噴霧塗布は、溶液が、噴霧ディスペンサー中に移され、次いで銅、銅合金又は酸化銅に噴霧されることを意味する。
【0070】
代替として、工程(ii)は、コーティング塗布、例えばバーコーティング、スピンコーティング及びカーテンコーティングとして適用され得る。
【0071】
本発明による方法は、好ましくは、5℃から60℃、より好ましくは10℃から40℃、より一層好ましくは20℃から30℃の温度にて行われる。
【0072】
トリアジンシラン化合物
本発明の方法の一実施形態は、上記で定義されている特定のトリアジンシラン化合物に言及する。多くのケースでは、YがNH及びN(NH2)、好ましくはNHを表す本発明のトリアジンシラン化合物が好ましい。他のケースでは、YがSを表す本発明のトリアジンシラン化合物が好ましい。この両方で、窒素を含むYは、SであるYと比較して好ましい。
【0073】
Xが、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)oNH2、SH、SCH3又はOCH3を表し、oが、2から12の範囲の整数であり、好ましくはNH2、NH(NH2)、NH(CH2)oNH2、SH又はSCH3であり、oは、2から12の範囲の整数であり、より好ましくはNH2である、本発明のトリアジンシラン化合物が好ましい。
【0074】
式(II)
【0075】
【化11】
【0076】
(式中、
mは2から10の範囲の整数であり、
nは1から10の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)p-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
の化合物である、本発明のトリアジンシラン化合物がきわめて好ましい。
【0077】
式(IIa)及び(IIb)
【0078】
【化12】
【0079】
の化合物が特に好ましい。
【0080】
代替として、式(III)
【0081】
【化13】
【0082】
(式中、
mは2から10の範囲の整数であり、
nは1から10の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)p-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
の化合物である、本発明のトリアジンシラン化合物がきわめて好ましい。
【0083】
式(IIIa)
【0084】
【化14】
【0085】
の化合物が特に好ましい。
【0086】
本発明に関連して、ある変数と組み合わせた「独立して~である」という用語(又は同様の表現)は、第1の化合物におけるそのような変数に対する選択された特徴が、第2の化合物における同一の変数の選択された特徴から独立していることを表し、また、ある化合物が、同一の変数を少なくとも2回を含有する場合、互いに独立して選択され、ひいては異なっていることがある。この原理は、他の「独立して」という用語に同じく適用される。
【0087】
テトラゾールシラン化合物
本発明の方法の一実施形態は、上記で定義されている特定のテトラゾールシラン化合物に言及する。多くのケースでは、本発明の式(IV)
【0088】
【化15】
【0089】
(式中、
nは1から10の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)p-Tを表し、
独立して、pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のテトラゾールシラン化合物が好ましい。
【0090】
式(IVa)
【0091】
【化16】
【0092】
の化合物である、本発明のテトラゾールシラン化合物がきわめて好ましい。
【0093】
トリアゾール/チオジアゾールシラン化合物
本発明の方法の一実施形態は、特定のトリアゾール又は上記で定義されているチオジアゾールシラン化合物に言及する。多くのケースでは、式(V)
【0094】
【化17】
【0095】
(式中、
Xは、NH2、NH(NH2)、NH(NHU)、NH(CH2)oNH2、SH、SCH3、OCH3、NHU又はSUを表し、
Yは、NH、N(NH2)、N(NHU)又はSを表し、
Uは、独立して、CH2-CH(0H)-CH2-O-(CH2)n-Si(0R)3を表し、
Rは、独立して(CH2-CH2-O)p-Zであり、
独立して、
nは1から10の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Zは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のトリアゾール又はチオジアゾールシラン化合物が、好ましい。
【0096】
好ましくは、Xは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)oNH2、SH、SCH3又はOCH3を表し、oは、2から12の範囲の整数であり;好ましくはNH2、NH(NH2)、NH(CH2)oNH2、SH又はSCH3を表し、oは2から12の範囲の整数であり;より好ましくはNH2を表す。
【0097】
本発明のチオジアゾール又はトリアゾールシラン化合物がきわめて好ましい
式(Va)又は(Vb)
【0098】
【化18】
【0099】
の化合物である。
【0100】
シラン化合物の合成
トリアジンシラン化合物の合成は、内部参照番号P21/002を有する同時係属中の出願で開示されており、これは、参照により組み込まれる。
【0101】
トリアゾールシラン/チオジアゾール化合物の合成は、WO2019/243180で開示されており、これは、参照により組み込まれる。
【0102】
テトラゾールシラン化合物の合成は、US2020/0399290で開示されている。
【0103】
本発明の更なる目的は、テトラゾールシラン化合物の代替合成方法を提供することであった。
【0104】
本発明は、式(IV)のテトラゾールシラン化合物のための合成方法にも関する:
式(IV)
【0105】
【化19】
【0106】
(式中、
nは1から10の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)p-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のテトラゾールシラン化合物のための合成方法であって、
合成方法は、以下の工程
(i)式(III)
【0107】
【化20】
【0108】
の化合物を得る工程、
(ii)式(VII)
【0109】
【化21】
【0110】
(式中、
nは1から10の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)p-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物を得る工程、
(iii)溶媒中で、式(VI)の前記化合物を、前記シラン化合物と反応させ、その結果上記で定義されている式(IV)の化合物が生じる工程、及び
(iv)任意選択で、工程(iii)で得られた式(IV)の化合物を加水分解し、その結果、Rの少なくとも1つが、(CH2-CH2-O)m-Zであり、m=0及びZ=Hである工程
を含む、方法。
【0111】
上記で言及されているものに関して、本発明のテトラゾールシラン化合物(好ましくは、好ましいと記載されている)は、好ましくは本発明の合成方法に同じく当てはまり、例えばきわめて好ましい本発明のテトラゾールシラン化合物に関する。
【0112】
工程(iv)は、任意選択であり、本発明の方法の工程(iii)で得られた化合物を加水分解するために、少なくとも多少の水の存在を含む。好ましくは、そのような水は、工程(iii)の後に、追加の工程、例えば工程(iv)で添加される。そのような化合物が望ましい場合(m=0及びZ=H)、工程(iv)は任意選択ではない。
【0113】
工程(iii)において、溶媒が、有機溶媒を含み、より好ましくは、1種以上の有機溶媒であり、最も好ましくは、1種以上の水混和性有機溶媒である、本発明の合成方法がきわめて好ましい。
【0114】
多くのケースにおいて、
工程(iii)において、溶媒が、グリコールエーテル及びその混合物からなる群から選択され、好ましくは
-HO-(CH2-CH2-O)p-T
(式中、
pは、1、2、3又は4であり、好ましくは1又は2であり、
Tは、C1からC5アルキル、好ましくはC3からC5アルキルを表す)
及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、より一層好ましくは
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される、1種以上の溶媒である、本発明の合成方法が好ましい
【0115】
一般的に、グリコールエーテルは、上記で定義されているアルコールより好ましい(理由については、上記の文を参照されたい)。したがって、本発明の合成方法のそれぞれは好ましい。
【0116】
工程(iii)において、溶媒が、水を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の合成方法(詳細には以前に記載されている)が好ましい。
【0117】
好ましくは、工程(iii)において、溶媒が、1種以上の有機溶媒であり、本発明の方法の工程(iii)の後で、本発明による混合物が得られる(混合物については、上記の文を参照されたい)。本発明の混合物に関して前述のものは、本発明の合成方法に同じく当てはまる。
【0118】
式(VI)の化合物の、式(VII)の化合物に対する合計モル比が、1:0.7から1:1.3の範囲、好ましくは1:0.80から1:1.2の範囲、より好ましくは1:0.9から1:1.2の範囲、最も好ましくは1:0.95から1:1.05の範囲である本発明の合成方法が好ましい。合計モル比が1:0.7より著しく低い場合、未反応の遊離体が合成生成物に多く存在しすぎ、望ましい化学種は、テトラゾール及びシラン部分を含むテトラゾールシラン化合物であるため、これは望ましくない。この原理は、好ましくは本発明の混合物、本発明の保存溶液及び本発明のワーキング溶液に同じく当てはまる。
【0119】
工程(iii)において温度が50℃から100℃の範囲の、好ましくは60℃から90℃の範囲である、本発明の合成方法が好ましい。
【0120】
工程(i)において、式(III)のテトラゾール化合物が懸濁液として得られる、本発明の合成方法が好ましい。これは、少なくとも1種の溶媒中で、式(III)のテトラゾール化合物を懸濁し、その結果、前記テトラゾール化合物及び前記少なくとも1種の溶媒が、前記懸濁液を形成することが好ましいと意味する。そのため、少なくとも1種の溶媒が、1種以上の有機溶媒であり、好ましくは1種以上の水混和性有機溶媒であることが好ましい。きわめて好ましくは、前記懸濁液を形成するために利用される少なくとも1種の溶媒は、工程(iii)に利用される溶媒と同一である。最も好ましくは、式(III)のテトラゾール化合物は、C1からC4アルコール、グリコールエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは
- C1からC3アルコール、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びそれらの混合物、好ましくは1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物、
- HO-(CH2-CH2-O)p-T
(式中、
pは、1、2、3又は4であり、好ましくは1又は2であり、
Tは、C1からC5アルキル、好ましくはC3からC5アルキルを表す)
及びその混合物からなる群から選択され、より好ましくは
メタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくはジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される、1種以上の溶媒中で懸濁される。
【0121】
工程(iii)において、反応させる工程を、1時間から48時間、好ましくは3時間から30時間、より好ましくは5時間から24時間実行する、本発明の合成方法が好ましい。
【0122】
シラン化合物、及び適用可能な場合は、シランオリゴマーが混合物として存在し得る、本発明による方法が好ましい。或いは、1種超の化合物、混合物として存在し得る。典型的には、有機溶媒は、可溶性を促進する。したがって、本発明は、
(a)- 1種以上のシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、及び/又は
- 1種以上のシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、
(b)- 1種以上の有機溶媒
を含む、好ましくはそれらからなる混合物にも言及する。
【0123】
本発明の混合物が、ハロゲン化物イオンを実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明による方法が好ましい。
【0124】
本発明に関連して、対象(例えば化合物、材料等)を「実質的に含まない」という用語は、前記対象が、本発明の意図した目的に影響を与えず、全く存在しない、又はきわめてわずかな、また妨げにならない量(規模)で(まで)しか存在しないことを表す。例えば、そのような対象は、例えば回避できない不純物として、意図せず添加又は利用されることがある。「実質的に含まない」は、好ましくは、混合物の総質量に対して(前記混合物について定義されている場合)、0(ゼロ)ppmから50ppm、好ましくは0ppmから25ppm、より好ましくは0ppmから10ppm、より一層好ましくは0ppmから5ppm、最も好ましくは0ppmから1ppmを表す。0ppmは、それぞれの対象が全く含まれないことを表し、これが最も好ましい。この原理は、本発明の他の態様、例えば本発明の保存溶液(以下の文を参照されたい)及び本発明のワーキング溶液(やはり以下の文を参照されたい)に同じく当てはまる。
【0125】
前記混合物において、本発明のシラン化合物及び本発明のオリゴマーを合わせたすべての合計量は、前記混合物の総質量に対して5wt.-%から30wt.-%の範囲であり、好ましくは、8wt.-%から26wt.-%の範囲であり、より好ましくは、12wt.-%から24wt.-%の範囲であり、より一層好ましくは、15wt.-%から23wt.-%の範囲であり、最も好ましくは、17wt.-%から21wt.-%の範囲である、本発明の方法が好ましい。
【0126】
混合物の1種以上の有機溶媒が、アセトン、1,3-ジオキソラン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、プロパ-2-エン-1-オール、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ブトキシエタノール、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、N-メチル-2-ピロリドン、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、ガンマ-ブチロラクトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イプシロン-カプロラクトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロチオフェン-1-オキシド、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、スルホラン、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む、本発明の方法が好ましい。
【0127】
混合物の1種以上の有機溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む、本発明の方法がきわめて好ましい。
【0128】
いくつかのケースでは、混合物の1種以上の有機溶媒が、グリコールエーテルからなる群から選択される、好ましくはジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む、本発明の方法混合物がきわめて好ましい。
【0129】
本発明は、
(a)- 本発明による1種以上のシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、及び
- 任意選択で、本発明による1種以上のシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、
(b)- 任意選択で水、
(c)- 1種以上の水混和性有機溶媒
を含む保存溶液であり、但し、水が存在する場合、pHが9以上である、保存溶液にも言及する。
【0130】
好ましくは本発明の保存溶液は、ハロゲン化物イオンを実質的に含まない、好ましくは含まない。いくつかのケースでのみ、ハロゲン化物イオンを意図的に添加することにより、好ましくは塩化物イオンを意図的に添加することにより、ハロゲン化物イオンが存在することが好ましい。
【0131】
溶液において、本発明によるすべてのシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)及び本発明によるすべてのシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)を合わせた合計量が、保存溶液の総質量に対して、0.2wt.-%から30wt.-%の範囲であり、好ましくは、0.5wt.-%から28wt.-%の範囲であり、より好ましくは、0.7wt.-%から25wt.-%の範囲であり、より一層好ましくは、0.8wt.-%から22wt.-%の範囲であり、最も好ましくは、0.9wt.-%から20wt.-%の範囲である、本発明の保存溶液が好ましい。
【0132】
上に記載されている保存溶液は、任意選択で水を含有する。保存溶液がアルカリ性であり、水が、保存溶液の総質量に対して、10wt.-%から80wt.-%の範囲の、好ましくは15wt.-%から78wt.-%の範囲の、より好ましくは20wt.-%から76wt.-%の範囲の、より一層好ましくは33wt.-%から74wt.-%の範囲の、最も好ましくは38.6wt.-%から70wt.-%の範囲の合計量で存在する、本発明の保存溶液が好ましい。
【0133】
保存溶液は、1種以上の水混和性有機溶媒を含有する。そのような有機溶媒は、それぞれのシラン化合物及びそのオリゴマーの必要性とされる可溶性を、特に、それらが相対的により高い濃度(例えば15wt.-%まで、及びおよそ15wt.-%、上記の文を参照されたい)で存在する場合に促進する。したがって、前記溶液において、1種以上の水混和性有機溶媒が、保存溶液の総質量に対して、5wt.-%から89.5wt.-%の範囲の、好ましくは10wt.-%から84.2wt.-%の範囲の、より好ましくは14wt.-%から79wt.-%の範囲の、より一層好ましくは18wt.-%から65.5wt.-%の範囲の、最も好ましくは24wt.-%から59wt.-%の範囲の合計量で存在する本発明の保存溶液が好ましい。
【0134】
多くのケースでは、水の総質量が、すべての水混和性有機溶媒の総質量より少ない、本発明の保存溶液が好ましい。
【0135】
上記で言及されているように、前記保存溶液は、水が存在する場合、アルカリ性である。本発明に関連して、これは、pHが9以上であることを意味する。溶液が、9.6以上のpHを有し、好ましくはpHが、10.5から14の範囲であり、より好ましくはpHが、11から14の範囲であり、最も好ましくはpHが、12から14の範囲である、本発明の保存溶液が好ましい。pHが、pH9を著しく下回る場合、シラン化合物及びそのオリゴマーの可溶性は、望ましくない沈殿点までにさえ低下する。酸性pHは、本発明のシラン化合物及びその対応するオリゴマーの濃度が相対的に高い多くのケースにおいて、そのようなpHで沈殿が観察されたため、保存目的に好適ではない。WO2019/243180から、アゾールシランでは、pHが13を著しく上回る場合、アゾールシラン化合物の望ましくない相分離及び分解が頻繁に観察されることが公知である。対照的に、このトリアジンシラン溶液は、高いpH値で良好な相安定性を呈する。
【0136】
更に、このシラン溶液は、良好な安定性を呈し、すなわち、広範な温度ウィンドウで相分離及び分解を呈さない。詳細には、そのような溶液は、-5℃から50℃で安定である。
【0137】
本発明に関連して、pHは、25℃の温度を基準としている。
【0138】
本発明のアルカリ性保存溶液において、アルカリ性pHは、好ましくは少なくとも1種のアルカリ性水酸化物を利用することにより、最も好ましくは水酸化ナトリウムを利用することにより得られる。
【0139】
アルカリ性pHは、保存溶液において、相対的に高い濃度の前記シラン化合物及びそのオリゴマーをそれぞれ可能にするだけではない。これにより、モノマー状態の本発明のシラン化合物が更に堅固に維持され、本発明のシランオリゴマーの形成が著しく低下する。しかし、そのようなオリゴマーが本発明のアルカリ性保存溶液中で形成される場合、これは、典型的には迅速に加水分解されて、アルカリ性pHのため、モノマー形態を形成する。本発明の保存溶液では、これが望ましい。
【0140】
前記溶液において、本発明によるすべてのシラン化合物の総質量が、本発明によるすべてのシランオリゴマーの総質量より高い、本発明の保存溶液が好ましい。
【0141】
いくつかのケースでは、本発明によるすべてのシラン化合物の総質量の少なくとも80wt.-%で、好ましくは少なくとも90wt.-%で、最も好ましくは少なくとも95wt.-%でZがHであり、pが0である、本発明の保存溶液が好ましい。これは、保存溶液において、シラン化合物が、SiOH-基を含むその加水分解形態に最も存在することを意味する。
【0142】
上記で言及されている保存溶液は、詳細には、本発明の1種以上のシラン化合物を運搬及び/又は保存するのに好適である。しかし、例えば、電子部品の製造における表面処理液として、前記化合物を利用するために、それぞれのワーキング溶液が好ましい。したがって、本発明は、2から14の範囲のpHを有するワーキング溶液に更に関し、
溶液は、
(a)- 本発明による1種以上のシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、及び/又は
- 本発明による1種以上のシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、
(b)- 任意選択で水、
(c)- 1種以上の水混和性有機溶媒を含み、
前記ワーキング溶液において、本発明によるすべてのシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)及び本発明によるすべてのシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)を合わせた合計量は、ワーキング溶液の総質量に対して、10wt.-%以下である。
【0143】
本発明のワーキング溶液が特に好ましいが、但し、前記ワーキング溶液は、本発明による少なくとも1種のシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)を含む。これは、新たに調製したワーキング溶液で特に好ましい。
【0144】
上記の用語「10wt.-%以下」は、0wt.-%を含まない。これは、前記合計量が常に>0wt.-%、好ましくは少なくとも0.1wt.-%であることを意味する。
【0145】
前記ワーキング溶液において、本発明によるすべてのシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)及び本発明によるすべてのシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)を合わせた合計量が、ワーキング溶液の総質量に対して、0.1wt.-%から6wt.-%の範囲であり、好ましくは、0.2wt.-%から5wt.-%の範囲であり、より好ましくは、0.3wt.-%から4wt.-%の範囲であり、より一層好ましくは0.4wt.-%から3.7wt.-%の範囲であり、最も好ましくは、0.5wt.-%から3.5wt.-%の範囲である、本発明のワーキング溶液が好ましい。
【0146】
独自の実験により、本発明による1種以上のシラン化合物、及び本発明による1種以上のシランオリゴマーの個々の存在は、経時的に変動することが示された。新たに調製したワーキング溶液では、典型的には、本発明のシラン化合物の総質量は、本発明のシランオリゴマーの総質量より高い。しかし、経時的にワーキング溶液を利用すると、場合により、前記シランオリゴマーの総質量が、前記シラン化合物の総質量より高くなる時点までさえ、前記シランオリゴマーの総質量が大幅に増加する。更に、本発明のワーキング溶液の取扱いは、前記化合物及びオリゴマーの総質量それぞれにも影響を与える。例えば、ワーキング溶液利用中の著しいドラッグアウト(drag out)及び対応する新たなワーキング溶液の補給は、典型的には、シラン化合物vs.シランオリゴマーに関して定常状態を引き起こす。
【0147】
最も好ましくは、本発明のワーキング溶液は、
- 本発明による1種以上のシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、及び
- 本発明による1種以上のシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)を含む。したがって、少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のオリゴマーを含むそれぞれのワーキング溶液が、最も好ましい。
【0148】
本発明のワーキング溶液は、2から14の範囲のpHを有する。pHが、3.5から14の範囲の、より好ましくは4.0から13.5の範囲の本発明のワーキング溶液が好ましい。
【0149】
前記溶液において、水が、ワーキング溶液の総質量に対して、5wt.-%から90wt.-%の範囲の合計量で、好ましくは10wt.-%から85wt.-%の範囲の合計量で、より好ましくは15wt.-%から80wt.-%の範囲の合計量で存在する、本発明のワーキング溶液が好ましい。
【0150】
本発明のシラン化合物及び本発明のシランオリゴマーを、本発明のワーキング溶液に十分に可溶化するために、1種以上の水混和性有機溶媒が存在する。前記溶液において、1種以上の水混和性有機溶媒が、ワーキング溶液の総質量に対して、5wt.-%から90wt.-%の範囲の合計量で、好ましくは10wt.-%から85wt.-%の範囲の合計量で、より好ましくは15wt.-%から80wt.-%の範囲の合計量で存在する、本発明のワーキング溶液が好ましい。
【0151】
上記で言及されているように、本発明に関連して、本発明のシラン化合物並びに本発明のシランオリゴマーは、最初に、ハロゲン化物を含まない。これは、一方では、ハロゲン原子を含有する遊離体が利用されないので、前記化合物及びオリゴマーがそれ自体、ハロゲン化物原子をそれぞれ含まないこと、また一方では、ハロゲン化物イオンが直近の合成環境に存在しないことを意味する。しかし、いくつかのケースでは、本発明のワーキング溶液は、正確に定義された量のハロゲン化物イオンを含むことが好ましい。したがって、いくつかのケースでは、
(d)- ハロゲン化物イオン、好ましくは塩化物イオンを更に含む本発明のワーキング溶液が好ましい。
【0152】
しかし、他のケースでは、本発明のワーキング溶液は、塩化物イオンを実質的に含まない、好ましくは含まないことが好ましく、より好ましくはハロゲン化物イオンを実質的に含まない、好ましくは含まない。
【0153】
1種以上の水混和性有機溶媒は、本発明の保存溶液及び本発明のワーキング溶液の両方に存在する。1種以上の水混和性有機溶媒が、C1からC4アルコール、エーテル、グリコールエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは
- C1からC3アルコール、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びそれらの混合物、好ましくは1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物、
- HO-(CH2-CH2-O)p-T
(式中、
pは、1、2、3又は4であり、好ましくは1又は2であり、
Tは、C1からC5アルキル、好ましくはC3からC5アルキルを表す)
及びその混合物からなる群から選択され、より好ましくは
メタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、より一層好ましくはジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される水混和性有機溶媒を含む、本発明による保存溶液(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、又は本発明によるワーキング溶液(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)が好ましい
【0154】
上記で定義されている水混和性有機溶媒は、本発明の合成方法に同じく当てはまる(以下の文を参照されたい)。
【0155】
各ケースでは、グリコールエーテルは、アルコールより好ましい。グリコールエーテルにより、典型的には、前記アルコールと比較して改善した安定化が得られる。更に、アルコールは一般に、グリコールエーテルと比較して低引火点を呈し、このため、火災危険の観点からアルコールは潜在的に危険となる。相対的に高い引火点は、発火を防止するために通常望ましい。したがって、グリコールエーテルは、典型的には望ましい可溶性、安定性及び安全性を示す。この原理は、好ましくは、本発明の混合物、本発明の保存溶液及び本発明の合成方法に同じく当てはまる(以下の文を参照されたい)。
【0156】
本発明によるすべてのシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)及び本発明によるすべてのシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)が、前記保存溶液及び前記ワーキング溶液それぞれにおける、すべてのシラン化合物及びオリゴマーの総質量の少なくとも70wt.-%に相当し、好ましくは少なくとも80wt.-%に相当し、より好ましくは少なくとも90wt.-%に相当し、より一層好ましくは少なくとも93wt.-%に相当し、最も好ましくは少なくとも95wt.-%に相当し、更に最も好ましくは少なくとも98wt.-%に相当する、本発明による保存溶液(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、又は本発明によるワーキング溶液(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)が好ましい。本発明によるものを除き、他のシラン化合物、又はオリゴマーは存在しないことが最も好ましい。これは、シラン化合物及びシランオリゴマーを合わせた絶対合計量(正に上記の文で定義されている)が、きわめて好ましくは該当するが、但し、他のシラン化合物及びシランオリゴマーが、本発明の保存溶液及び本発明のワーキング溶液にそれぞれ存在しないことを意味する。
【0157】
本発明によるすべてのシラン化合物(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)及び本発明によるすべてのシランオリゴマー(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)が、前記保存溶液及び前記ワーキング溶液それぞれにおいて、少なくとも1個のケイ素原子を含むすべての化合物の少なくとも51mol-%に相当し、好ましくは少なくとも60mol-%に相当し、より好ましくは少なくとも70mol-%に相当し、最も好ましくは少なくとも80mol-%に相当し、更に最も好ましくは少なくとも90mol-%に相当する、本発明による保存溶液(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)、又は本発明によるワーキング溶液(本文全体に記載されている、好ましくは、好ましいと記載されている)が更に好ましい。
【0158】
本発明による方法のため、銅と有機材料との間における接着強度(例えば剥離強度)は、いかなるエッチングクリーニング工程も使用せずに増大し得る。しかし一部のケース、とりわけ銅表面の表面粗さが、回路の品質に影響を与えないケースは、更なるエッチングクリーニング工程が行われ得る。このケースでは、銅と有機材料との間における接着強度は、更に一層増大し得る。
【0159】
本発明による方法であって、工程(ii)を実施する前に、以下の工程:(i-a)前記銅、銅合金又は銅酸化物の少なくとも一部を、エッチングクリーニング溶液、好ましくは1種以上の酸及び/又は1種以上の酸化剤を含有するエッチングクリーニング溶液、より好ましくは無機酸及び過酸化物の混合物(好ましくは硫酸及び過酸化水素の混合物)を含有するエッチングクリーニング溶液と接触させる工程を更に含む、方法が好ましい。
【0160】
本発明によれば、これは、酸化剤が過酸化物である場合、より好ましくは過酸化物が過酸化水素である場合、好ましい。
【0161】
本発明によれば、これは、エッチングクリーニング溶液が、酸及び/又は1種以上の酸化剤に加えて、腐食防止剤を含む場合、好ましい。
【0162】
本発明による方法であって、工程(ii)を実施する前に以下の工程:(i-b)前記銅、銅合金又は銅酸化物の少なくとも一部を、(好ましくは第2の)エッチングクリーニング溶液と接触させる工程を更に含む、方法が好ましい。工程(i-a)の後で工程(i-b)を実行するケースでは、使用されるエッチングクリーニング溶液は、第2のエッチングクリーニング溶液である。以前のエッチングクリーニング工程なしで工程i-bを実行するケースでは、使用されるエッチングクリーニング溶液は、第1のエッチングクリーニング溶液である。
【0163】
本発明によれば、第2のエッチングクリーニング溶液は、鉄(III)塩又は鉄(III)錯体を含み、より好ましくは、第2のエッチングクリーニング溶液は、硫酸鉄(III)(Fe2(SO4)3)、塩化鉄(III)(FeCl3)、臭化鉄(III)(FeBr3)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3)、酢酸鉄(III)(Fe(OC(O)CH3)3)、(Fe(OH)3)、又はそれらの混合物を含み、より一層好ましくは第2のエッチングクリーニング溶液は、硫酸鉄(III)(Fe2(SO4)3)を含む。第二鉄イオンは、好ましくは、1から100g/l、好ましくは1から50g/l、より好ましくは1から30g/lの範囲の濃度で含有される。
【0164】
代替として、本発明によれば、第2のエッチングクリーニング溶液は、無機酸を含み、より好ましくは第2のエッチングクリーニング溶液は、硫酸、塩酸又はそれらの混合物を含み、より一層好ましくは、第2のエッチングクリーニング溶液は、硫酸を含む。
【0165】
本発明によれば、典型的な銅、銅合金又は銅酸化物の除去は、工程i-a中に2μm未満であり、好ましくは、除去は、0.1μmから1.5μmのものであり、より好ましくは、除去は、0.2μmから1.2μmのものであり、より一層好ましくは、除去は、0.4μmから1.1μmのものであり、最も好ましくは、除去は、0.5μmから1.0μmのものであり、生じた平均の表面粗さRaは、最高で100nmである。
【0166】
本発明によれば、典型的な銅、銅合金又は銅酸化物の除去は、工程i-b中に、20nm未満であり、生じた平均表面粗さRaは、最大10nm、好ましくは、最大5nmである。
【0167】
本発明による方法であって、工程(ii)を実施する前に以下の工程:(i-c)前記銅、銅合金又は銅酸化物の少なくとも一部を、溶液、好ましくは水酸化ナトリウム溶液と接触させる工程を更に含む、方法が好ましい。これは、溶液が銅錯化剤を含有する場合、好ましい。
【0168】
本発明のいくつかの実施形態では、これは、工程i-cに使用される溶液が、亜塩素酸ナトリウム又は酸化剤を更に含有する場合、好ましい。工程i-cに使用される溶液における、亜塩素酸ナトリウム又は酸化剤の使用は、工程i-bにおいて、鉄(III)塩若しくは鉄(III)錯体が使用されない場合、又は本発明による方法中、工程i-bが行われない場合、とりわけ好ましい。
【0169】
工程(i-a)、(i-b)及び(i-c)の順序は、変動し得る。本発明による方法は、以下の順序:(i-a)、(i-b)、(i-c)又は(i-a)、(i-c)、(i-b)又は(i-b)、(i-a)、(i-c)又は(i-b)、(i-c)、(i-a)又は(i-c)、(i-a)、(i-b)又は(i-c)、(i-b)、(i-a)で実行され得る。順序(i-a)、(i-b)、(i-c)が好ましい。本発明による方法において、工程(i-a)、(i-b)、(i-c)の1つも行われない、それらの1つ又は2つが行われることも可能である。
【0170】
工程(iii)で適用される有機材料が有機ポリマーである、本発明による方法が好ましい。
【0171】
工程(iii)で適用される有機材料が、有機材料を、銅、銅合金又は銅酸化物の少なくとも接触した箇所に積層することによるものである、本発明による方法が好ましい。
【0172】
工程(iii)の後で、追加の工程:(iv)基材及び有機材料に、142℃から420℃の範囲の、好ましくは145℃から300℃の範囲の、より好ましくは150℃から220℃の範囲の温度で熱処理を施す工程を含む、本発明による方法が好ましい。
【0173】
工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で及び/又は工程(i-c)の後で、銅、銅合金又は銅酸化物の少なくとも一部をすすぐ工程が行われ、銅、銅合金又は銅酸化物が、好ましくは水ですすがれる、本発明による方法が好ましい。これは、工程(ii)の後で、すすぐ工程中に使用される水が、2から14、好ましくは4から10の範囲の、より好ましくは5から9の範囲の、より一層好ましくは6から8の範囲の、最も好ましくは6.5から7.5の範囲のpH-値を有する場合、好ましい。
【0174】
工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で及び/又は工程(i-c)の後で、銅、銅合金又は銅酸化物の少なくとも一部を乾燥させる工程が行われる、本発明による方法が好ましい。
【0175】
代替として、工程(ii)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をベークする工程が行われない、本発明による方法が好ましい。ベークする工程を回避することにより得られた試料は、ベークする工程を施した試料と比較した場合、改善したハローの形成につながることが示され得る(以下のTable 4(表4))。
【0176】
本発明による方法であって、
以下の工程:
(i)基材を用意する工程であり、基材が少なくとも1つの面に銅、銅合金又は酸化銅を含む、工程、
(i-a)任意選択で、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、エッチングクリーニング溶液、好ましくは1種以上の酸及び/又は1種以上の酸化剤を含有するエッチングクリーニング溶液、より好ましくは無機酸及び過酸化物の混合物を含有するエッチングクリーニング溶液と接触させる工程、並びに任意選択で、続いて銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を(好ましくは水で)すすぐ工程、
(i-b)任意選択で、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、第2のエッチングクリーニング溶液と接触させ、第2のエッチングクリーニング溶液が、好ましくは硫酸鉄(III)及び/又は硫酸を含む工程、及び任意選択で、続いて銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を(好ましくは水で)すすぐ工程、
(i-c)任意選択で、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、アルカリ性溶液と接触させる工程、及び任意選択で、続いて銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を(好ましくは水で)すすぐ工程、
(ii)前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I)
【0177】
【化22】
【0178】
(式中、
環構造
【0179】
【化23】
【0180】
は、
【0181】
【化24】
【0182】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、Aは、NH、N(NH2)及びSからなる群から選択され、
Zは、
【0183】
【化25】
【0184】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)P-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物と接触させる工程であり、
但し、環構造
【0185】
【化26】
【0186】
が、式(I)のシラン化合物において
【0187】
【化27】
【0188】
である場合、工程(i-c)及び(ii)の両方を行い、
任意選択で、続いて銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を(好ましくは水で)すすぐ、工程、
(iii)有機材料を適用し、その結果、工程(ii)の間に、トリアジンシラン化合物及び/又はトリアジンシランオリゴマーと接触した銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、適用された有機材料と接触させる工程、
(iv)任意選択で、基材及び有機材料に、142℃から420℃の範囲の、好ましくは145℃から300℃の範囲の、より好ましくは150℃から220℃の範囲の温度で熱処理を施す工程
をこの順で含む、方法がとりわけ好ましい。
【0189】
基材が非導電性基材であり、且つ/又は有機材料が非導電性有機材料、好ましくは非導電性有機ポリマーである、本発明による方法が好ましい。
【0190】
方法が、工程(i-c)及び(ii)の両方を含む、本発明による方法が好ましい。したがって、銅、銅合金又は酸化銅の表面と、有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための、及び/又は改善した楔形空間挙動のための方法であって、
(i)基材を用意する工程であり、基材が少なくとも1つの面に銅、銅合金又は酸化銅を含む、工程
続いて
(i-c)基材を処理して、少なくとも1つの面に酸化銅を含む基材を得る工程であり、酸化銅が、銅(I)及び銅(II)を90:10以上(mol/mol)の比、好ましくは95:5以上(mol/mol)の比、より一層好ましくは98:2以上(mol/mol)の比で含み、最も好ましくは酸化銅が、本質的に酸化銅(I)からなる、工程、並びに
(ii)基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I)
【0191】
【化28】
【0192】
(式中、
環構造
【0193】
【化29】
【0194】
は、
【0195】
【化30】
【0196】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、
Aは、NH、N(NH2)及びSからなる群から選択され、
Zは、
【0197】
【化31】
【0198】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)P-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる工程であり、工程(ii)の前に工程(i-c)を行う、工程
(iii)有機材料を適用する工程
を含む、方法が好ましい。
【0199】
工程(ii)において、基材の少なくとも一部を、(a)式(I)のシラン及び(b)少なくとも1種のアミノ酸の両方と接触させる方法が最も好ましい。
【0200】
実施形態
A.銅、銅合金又は酸化銅の表面と、有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための、及び/又は改善した楔形空間挙動のための方法であって、
(i)基材を用意する工程であり、基材が少なくとも1つの面に銅、銅合金又は酸化銅を含む、工程
続いて、以下の少なくとも1つの工程
(i-c)基材を処理して、少なくとも1つの面に酸化銅を含む基材を得る工程であり、酸化銅が、銅(I)及び銅(II)を90:10以上(mol/mol)の比、好ましくは95:5以上(mol/mol)の比、より一層好ましくは98:2以上(mol/mol)の比で含み、最も好ましくは酸化銅が、本質的に酸化銅(I)からなる、工程並びに/又は
(ii)基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I)
【0201】
【化32】
【0202】
(式中、
環構造
【0203】
【化33】
【0204】
は、
【0205】
【化34】
【0206】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、Aは、NH、N(NH2)及びSからなる群から選択され、
Zは、
【0207】
【化35】
【0208】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)P-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる工程であり、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う場合、工程(ii)の前に工程(i-c)が行う、工程、
(iii)有機材料を適用する工程
を含み、
但し、環構造
【0209】
【化36】
【0210】
が、式(I)のシラン化合物において、
【0211】
【化37】
【0212】
である場合、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う、方法。
【0213】
B.工程(i-c)が、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、
1種以上の錯化剤;好ましくは、少なくとも1個のカルボン酸基及び少なくとも1個のヒドロキシル基を含む1種以上の錯化剤;より好ましくは、糖、好ましくは単糖類を含む1種以上の錯化剤;より一層好ましくは、グルコン酸及び/又はその塩を含む、錯化銅イオンに対する1種以上の錯化剤;最も好ましくは、グルコン酸及び/又はその塩である、アルカリ性溶液における錯化銅イオンに対する唯一の錯化剤を含む水性アルカリ溶液と接触させる工程を含む、実施形態Aによる方法。
【0214】
C.工程(i-c)における水性アルカリ溶液が、7.5から14.0の範囲の、好ましくは10.0から14.0の範囲のpHを有する、実施形態Bによる方法。
【0215】
D.工程(i-c)が、浸漬塗布として適用され、接触時間は、40s以上であり、好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、40sから900sであり、より好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、60sから500sであり、より一層好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、90sから450sである、実施形態B又はCによる方法。
【0216】
E.工程(i-c)が、噴霧塗布として適用され、接触時間が、10s以上であり、好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、20sから200sであり、より好ましくは、工程(i-c)における接触時間が、30sから150sである、実施形態B又はCによる方法。
【0217】
F.以下の工程
(ii)基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I)
【0218】
【化38】
【0219】
(式中、
環構造
【0220】
【化39】
【0221】
は、
【0222】
【化40】
【0223】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、Zは、
【0224】
【化41】
【0225】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)p-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる工程を含む、実施形態AからEのいずれかによる方法。
【0226】
G.工程(iii)において適用される有機材料が、有機ポリマーである、実施形態AからFのいずれかによる方法。
【0227】
H.工程(iii)において適用される有機材料が、有機材料を銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも接触した箇所に積層することによるものである、実施形態AからGのいずれかによる方法。
【0228】
I.工程(ii)が行われる場合、工程(ii)を実施する前に、以下の工程
(i-a)前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、エッチングクリーニング溶液、好ましくは1種以上の酸及び/又は1種以上の酸化剤を含有するエッチングクリーニング溶液、より好ましくは無機酸及び過酸化物の混合物を含有するエッチングクリーニング溶液と接触させる工程を更に含む、実施形態AからHのいずれかによる方法。
【0229】
J.工程(ii)が行われる場合、工程(ii)を実施する前に、以下の工程:
(i-b)前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、(好ましくは第2の)好ましくは無機酸、好ましくは硫酸を含むエッチングクリーニング溶液と接触させる工程を更に含む、実施形態AからIのいずれかによる方法。
【0230】
K.工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をすすぐ工程が行われ、銅、銅合金又は酸化銅が、好ましくは水ですすがれる、実施形態AからJのいずれかによる方法。
【0231】
L.工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を乾燥させる工程が行われる、実施形態AからKのいずれかによる方法。
【0232】
M.工程(ii)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をベークする工程が行われない、実施形態AからKのいずれかによる方法。
【0233】
N.工程(iii)の後で、追加の工程:
(iv)基材及び有機材料に、142℃から420℃の範囲の、好ましくは145℃から300℃の範囲の、より好ましくは150℃から220℃の範囲の温度で熱処理を施す工程を含む、実施形態AからMのいずれかによる方法。
【0234】
O.工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をすすぐ工程が行われ、銅、銅合金又は酸化銅が、好ましくは水ですすがれる、実施形態AからNのいずれかによる方法。
【0235】
P.工程(ii)における接触時間が、5秒から30分、好ましくは7秒から20分、より好ましくは10秒から10分、より一層好ましくは12秒から5分、最も好ましくは15秒から120秒である、実施形態AからOのいずれかによる方法。
【図面の簡単な説明】
【0236】
図1】アルカリ性処理溶液中における異なる浸漬時間の後での、処理した銅箔の上面SEM画像(異なる倍率2500倍及び5000倍で)を示す図である。
図2】異なる加工工程後:初期、ディファレンシャルエッチング(Differential Etch)DE後、アルカリ性処理後及びアルカリ性処理+シランコーティング後における、銅箔のAFM調査から得られたRa及びRSAI値を示すグラフである。
図3】DSCVでのそれぞれの電位範囲の積分による、異なるアルカリ性処理時間後に銅箔に形成され、nm単位で判定された酸化銅の厚さを示すグラフである。
図4】銅箔でのアルカリ性表面処理時間によるCu2OシグナルのFTIR斜入射測定-ピーク積分を示すグラフである。積分は、683~616cm-1にわたって行われる。
図5】アルカリ性溶液で処理し(300s浸漬)、シランでコーティングしたCuパネルのSTEM画像である。a)3つの異なる領域で行われる酸化物粒子のEDS分析を示す図である。少量の一部元素は顕微鏡に由来している:Mo→TEM-試料ホルダー;Al、Zr→EDX検出器、Pt、Ga→FIB調製、Fe、Co、Pb→TEMカラム。b)200mVでのSTEM画像、ナノビーム回折(NBD)ラインスキャン。
図6】ハロー測定の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0237】
本発明は、以下の非限定的な実施例により更に説明される。
【実施例
【0238】
式(IV)のテトラゾールシラン化合物の合成
式(IV-a)
【0239】
【化42】
【0240】
のテトラゾールシラン化合物の合成
4.92g(57.8mmol)の2H-テトラゾール-5-アミンを、84.3mlのジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE)に懸濁した。この懸濁液を、80℃に加熱した。この温度にて、13.67g(57.8mmol)の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加した。反応混合物を80℃にて15hr保持した。
【0241】
その後、DEGBE中のおよそ20wt.-%の濃度の反応生成物を得た。このようにして得られた生成物を、更なる精製なしで利用した。
【0242】
ESI-MSにより、ケイ素原子に接続する3個のメトキシ基を含む化合物の形成が確認される。更に、それぞれのメトキシ基の代わりに、1、2又は3つのDEGBE部分を含む化合物も識別された。
【0243】
試料調製
試料(それぞれ、いくつかの同一の試験片を含む)を、以下のように調製した。
【0244】
Table 1(表1)は、次いで以下に詳細に記載されている反応工程の概観を示す。
【0245】
【表1】
【0246】
工程(i)
銅表面を有する銅箔(150mm×75mm×35μm、社内でメッキした)を使用した。単純化した研究室条件下で、基材を伴わない銅箔を実施例に使用した。
【0247】
楔形空間及び又はハローの調査では、メッキした銅パネルを使用した。
【0248】
調製条件は、以下の通りである:
電解メッキ銅タイプ:
箔(接着試験)
パネル(楔形空間)
電解質:
Cupracid AC
メッキパラメーター:
103分
1.5A/dm2=35μm メッキ銅厚さ
【0249】
工程(i-a):
銅箔の銅表面を、30℃にて、25ml/l Hyperflash 25、50ml/l H2SO4 50%及び65ml/l H2O2 35%により処理して、0.5又は1μmエッチング深さを達成した。エッチングクリーニング後、エッチングクリーニングした銅表面を水でおよそ30秒すすぎ、任意選択で乾燥させた。結果として、エッチングクリーニングし、すすいだ銅表面を得た。
【0250】
工程(i-b):
銅箔の銅表面を、5vol%硫酸を使用することにより室温にて20~30秒クリーニングした。
【0251】
工程(i-c):
基材の銅表面を、水性アルカリ溶液(50℃、浸漬、300秒又は50℃、噴霧、30秒)で処理した。処理後、すべての銅箔の処理した銅表面を、冷水でおよそ30秒ですすいだ。
【0252】
工程(ii):
基材の銅表面を、トリアジンシラン化合物及び溶媒を含有するコーティング溶液中に25℃にて60秒浸した。水が存在する場合、コーティング溶液のpHは、7であった(トリアゾール及びテトラゾールシラン)(必要があれば硫酸で調整した)、又は13.5(トリアジンシラン)までであった。詳細は、Table 2(表2)に示されている。
【0253】
その後、銅箔すべての生じた銅表面を、水でおよそ30秒すすぎ、乾燥させた。結果として、シラン処理し(silanized)、乾燥させた銅箔の銅表面を得た。
【0254】
工程(ii-a):
銅箔を、次いで130℃にて30分アニーリングして、残留する水分を表面から除去した。注記:この熱処理工程は、ベークする工程としても公知である。銅表面を含有するこれらの基材に、続いてビルドアップフィルムを積層する工程を施した(以下の文を参照されたい)。
【0255】
工程(iii):
積層する工程では、絶縁フィルム(Table 2(表2)を参照されたい)を、クリーンルームにおいて、20から25℃の範囲の室温及び50から60%の相対湿度で、真空積層装置を使用することによりすべての試料の銅箔に真空積層した。
【0256】
真空積層の条件は、以下の通りであった:100℃、真空:3hPaで30秒、圧力:0.5MPaで30秒。
【0257】
積層後、積層した銅表面を得た。
【0258】
【表2】
【0259】
表面形態
表面形態は、電界放射型走査電子顕微鏡法(FESEM)によって測定した。FEI社NOVA Nanolab 600及びFEI社Helios Nanolab 660顕微鏡を使用して、表面並びにFIB調製した断面を調査した。
【0260】
SEM
走査電子顕微鏡法(SEM)画像は、異なる時間における、工程(i-c)の後の表面構造における変化を示す(図1)。30sで、表面に酸化物粒子が形成された(試料1)。工程(i-c)による処理が長いほど、Cu表面は、「平坦」になり、これは、酸化物粒子の成長によって引き起こされる。
【0261】
AFM
原子間力顕微法(AFM)を使用して、各試料に対する表面粗さを測定し、表面を20μm×20μmの測定ウィンドウ5つで撮像した。平均の粗さRA及び相対表面積の増大RSAIを計算した。図2は、粗さが、アルカリ性処理によりどれほど増大するか、及びシランの適用後変化せずに留まるかを描写する。
【0262】
酸化銅の特徴付け
DSCV
酸化銅の特徴付けは、二重掃引サイクリックボルタンメトリー(Double-Sweep-Cyclic-Voltammetry)(DSCV)によって行われた。適用された方法は、酸化Cu定量に使用した。最初のスキャン中に、酸化第二銅及び酸化第一銅をCuに還元し、対応するカソード電流を得た。3回目のスキャン中にバックグランド電流を、最初のスキャンと同一のカソード方向で測定する。これらは、対応する酸化Cu化学種の還元に必要とされる電荷の量を計算するために、最初のスキャンのカソード電流から引かれる。実験は、LiCl(4M)溶液中において、RT、電位範囲:-0.5から-1.6V(vs Ag/AgCl(3M KCl)、スキャン速度100mV/s、スキャン#3にて行った。
○スキャン速度100mV/sでは、
黒四角 CuO:-0.5から-1.08V(vs Ag/AgCl(3M KCl))
黒四角 Cu20:-1.08から-1.3V(vs Ag/AgCl(3M KCl))
○酸化物層の厚さ(d)nmは、Faraday法を使用して計算した:
【0263】
【数1】
【0264】
A=0.95cm2
M(CuO)=79.59g/mol
M(CU2O)=143.19g/mol
p(CuO)=6.31g/cm3
p(Cu2O)=6.00g/cm3
z=2
F=96485C/mol
【0265】
測定は、酸化Cu(II)が、全体の時間にわたり「ゼロ」レベルで留まることを示す。対照的に;酸化Cu(I)は増加する(図3)。
【0266】
FTIR
斜入射ユニットを用いるフーリエ-変換赤外分光法(FTIR)を使用して、基材表面を特徴付けた。アルカリ性処理中の表面酸化物状態の変化を評価した。(図4)
【0267】
EDS
試料の元素分析は、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を使用して実行した。走査透過電子顕微鏡法(STEM)のためにラメラを調製し、EDX測定に更に使用した。詳細は、図5a)からc)、及びそれぞれの説明に示されている。
【0268】
EDS分析を、酸化物粒子の3つの異なる領域で行った
CuのOに対する比が2対1であることを見出し、アルカリ性溶液により形成された酸化物粒子は、Cu2Oの性質であることが指し示される。
【0269】
HRTEM
高分解能透過電子顕微鏡法(HRTEM)モードからのナノ-ビーム回折(NBD)測定は、日常的な歪み解析に最も好都合な技術である(簡単な実験セットアップ、ナノメートル空間分解能及び高い測定感度(std.dev.約0.1%))。
【0270】
ラインスキャンは、9つの位置における酸化物粒子の高さに沿って行った。得られたパターンがすべてほぼ同一である→粒子の高さに沿って同一の品質の酸化物が予想される。
【0271】
剥離強度試験による接着評価:
積層後に得られた、選択された試料で、剥離強度を判定した:
(1)初期、
(2)96時間のHAST後(HAST条件:130℃、85%rh、HASTチャンバ:EHS-221M)。
(3)12サイクル後、IRリフロー(熱信頼性、温度ピークが260℃のはんだ付けプロセスのシミュレーション)
【0272】
剥離強度を決定するために、リジッド基板(rigid board)が絶縁フィルムに面するように、それぞれの銅箔をリジッド基板(銅箔と同一の大きさ)に接着することにより、いくつかの帯状切片を各試験片から調製した。結果として、構造的に強化された絶縁フィルムを有する銅表面を得た。
【0273】
得られた、構造的に強化された絶縁フィルムを有する銅表面を、次いでオーブン中で硬化させた:GL102材料を有する銅表面、200℃にて90分、及びGX-T31材料を有する銅表面、190℃にて90分。
【0274】
その後、構造的に強化された絶縁フィルムを有する各銅表面を、前記帯状切片にスライスした(10×100mm、Bugardドリリング/ルーティング)。
【0275】
帯状切片を、剥離力測定機(Roell Zwick社Z010)にかけて、銅表面を、構造的に強化された絶縁フィルムのそれぞれから離層するために必要な剥離強度を個々に評価した(角度:90°、速度:50mm/分)。典型的には、離層を回避するために必要な剥離強度が高いほど、接着が良好であった。
【0276】
試料1から15の剥離強度は、以下の表3に示されている。
【0277】
【表3】
【0278】
実験は、本発明の実施例が、ここでは剥離強度として表現される、良好な接着強度を呈することを示す。
【0279】
ハロー及び楔形空間の評価
試料調製:
ハローを評価するために、それぞれの絶縁フィルムを銅パネルに接着することにより銅試料を調製した。結果として、構造的に強化された絶縁フィルムを有する銅表面を得た。
【0280】
得られた、構造的に強化された絶縁フィルムを有する銅表面を、次いでオーブン中で2ステップにて半硬化させた:GL102材料を有する銅表面、130℃にて30分、続いて175℃にて30分;及びGX-T31材料を有する銅表面、100℃にて30分、続いて170℃にて30分。
【0281】
積層及び半硬化工程を完了した後で、銅パネルをUV-レーザー処理して、ブラインドマイクロビア(BMV)をドリリングした。その後、基材にデスミア及び還元条件工程を施した。詳細には、これらは、Securiganth MV Sweller(Atotech社)を用いた、アルカリ性条件下でのスウェラー(sweller)処理;Securiganth MV Etch P(Atotech社)を用いた、アルカリ性条件下での過マンガン酸塩処理、及びSecuriganth MV Reduction Conditioner(Atotech社)を用いた、酸性条件下での還元コンディショナー(reduction conditioner)処理を含んでいた。各工程の後で、試料を水ですすいだ。
【0282】
積層材料は、楔形空間及びハローで約10μm、また、接着を調査するケースでは35μmの厚さをそれぞれ呈する。
【0283】
測定:
1)ハロー評価
基材は、光学顕微鏡により測定した(倍率200倍;Table 4(表4)を参照されたい)。ハロー測定を描写する写真は、図6で見出され得る。
【0284】
調査した試験ブラインドマイクロビア(BMV)は、レーザードリリング技術を利用することにより、表面処理し及び味の素ビルドアップフィルム(ABF; Ajinomoto Build up Film)が積層された試験ビヒクル上に試験グリッドとして製造した。ハローのデータは、上記のデスミアプロセス全体(スウェラー、過マンガン酸塩、還元コンディショナー)を通して、調製した試験ビヒクルを送付した後で取得可能である。
【0285】
ハロー測定は、カメラ(CCD)で補助した光学顕微鏡法により行われる。これにより、顕微鏡は、落射照明モードで動作させなければならない。すべての画像生成は、暗視野(DF)フィルターの設定を使用することにより実行されなければならない。約200倍の倍率が、典型的には使用される。
【0286】
完全に処理した試験ビヒクルを、測定テーブルに確実に配置し、BMVキャプチャーパッドは、光学焦点としてセットしなければならない。CCD曝露時間は、ハローの境界の最大可能コントラストに調整しなければならない。これにより、キャプチャーパッドは、できるだけ明るく出現させるべきである。
【0287】
ビアホール(又は清浄なキャプチャーパッド)、ハロー状に見える境界の内側(最も内側)及び外側(最も外側)の可視直径を測定し、図6に従って記録した。次に実際のハロー値は、以下の関係式を使用することにより計算できる。
1.外側ハロー(μm)=(最外部直径(μm)-ビアホールの直径(μm))/2
2.内側ハロー(μm)=(ハローの内径(μm)-ビアホールの直径(μm))/2
【0288】
典型的には、このプロセスは、ランダム試験ビアで少なくとも3回繰り返して、統計的報告を最小限にすることができる。
【0289】
【表4】
【0290】
最良の結果は、工程(i-c)と、T-Eシランを含む工程(ii)の組合せで得られた。
【0291】
実験は、本発明の実施例が、ここではハローの大きさとして表現される楔形空間の形成の回避に関して、良好な挙動を呈することを示す。
【0292】
2)楔形空間の評価
更に、基材に集束イオンビーム(FIB)カット及び後続の走査電子顕微鏡法(SEM)測定を施した。この方法により、楔形空間としても公知のブラインドマイクロビア(BMV)の近辺における銅接着の分析が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、銅合金若しくは酸化銅の表面と、有機材料の表面との間における接着強度を増大させるための、及び/又は改善した楔形空間挙動のための方法であって、
(i)基材を用意する工程であり、前記基材の少なくとも1つの面に銅、銅合金又は酸化銅を含む、工程、
続いて、以下の少なくとも1つの工程
(i-c)前記基材を処理して、少なくとも1つの面に酸化銅を含む基材を得る工程であり、前記酸化銅が、銅(I)及び銅(II)を90:10以上(mol/mol)の比で含む、工程並びに/又は
(ii)前記基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I);
【化1】
(式中、
環構造
【化2】
は、
【化3】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、
Aは、NH、N(NH2)及びSからなる群から選択され、
Zは、
【化4】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる工程であり、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う場合、工程(ii)の前に工程(i-c)を行う、工程、
(iii)有機材料を適用する工程
を含み、
但し、式(I)の前記シラン化合物中の前記環構造
【化5】
が、
【化6】
である場合、工程(i-c)及び(ii)の両方を行う、方法。
【請求項2】
工程(i-c)が、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、少なくとも1種の錯化剤を含む水性アルカリ溶液と接触させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i-c)における前記水性アルカリ溶液が、7.5から14.0の範囲のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i-c)が、浸漬塗布として適用され、接触時間が、40s以上である、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(i-c)が、噴霧塗布として適用され、接触時間が、10s以上である、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項6】
(ii)基材の少なくとも一部を、
(a)少なくとも1種の式(I)
【化7】
(式中、
環構造
【化8】
が、
【化9】
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
X及びYは、NH2、NH(NH2)、NH(CH2)ONH2、SH、SCH3及びOCH3からなる群から独立して選択され、
Eは、-S-、-NH-及び-NH-(CH2)m-NH-からなる群から選択され、
Zは、
【化10】
からなる群から選択され、
mは2から12の範囲の整数であり、
nは1から12の範囲の整数であり、
oは2から12の範囲の整数であり、
Rは、独立して、(CH2-CH2-O)-Tを表し、
独立して、
pは、0、1、2、3又は4であり、
Tは、H又はC1からC5アルキルを表す)
のシラン化合物、又は
(b)少なくとも1種のアミノ酸、又は
(a)及び(b)の混合物
と接触させる工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(iii)において適用される前記有機材料が、有機ポリマーである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機材料が、工程(iii)において、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも接触した箇所に前記有機材料を積層することにより適用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)が行われる場合、工程(ii)を実施する前に、以下の工程:
(i-a)前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を、エッチングクリーニング溶液と接触させる工程
を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)が行われる場合、工程(ii)を実施する前に、以下の工程:
(i-b)前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をエッチングクリーニング溶液と接触させる工程
を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をすすぐ工程が行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部を乾燥させる工程が行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)の後で、銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をベークする工程が行われない、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(iii)の後で、追加の工程:
(iv)前記基材及び前記有機材料に、142℃から420℃の範囲の温度で熱処理を施す工程
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)の後で、工程(i-a)の後で、工程(i-b)の後で、及び/又は工程(i-c)の後で、前記銅、銅合金又は酸化銅の少なくとも一部をすすぐ工程が行われる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】