(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】高速同調可能な集積型レーザー用チップ上の電気的に同調可能な光共振器
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20240305BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20240305BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20240305BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/0225
G02B6/12 371
G02B6/125
G02B6/12 301
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555689
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2021056338
(87)【国際公開番号】W WO2022188990
(87)【国際公開日】2022-09-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512022631
【氏名又は名称】エコール・ポリテクニーク・フェデラル・ドゥ・ローザンヌ (ウ・ペ・エフ・エル)
【氏名又は名称原語表記】ECOLE POLYTECHNIQUE FEDERALE DE LAUSANNE (EPFL)
(71)【出願人】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】キッペンベルク トビアス
(72)【発明者】
【氏名】バーヴェ スニール
(72)【発明者】
【氏名】ティアン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リーメンスバーガー ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】リハチョフ グリゴリイ
(72)【発明者】
【氏名】シッダールタ アナット
【テーマコード(参考)】
2H147
5F173
【Fターム(参考)】
2H147AA02
2H147AB04
2H147AB15
2H147AB16
2H147AC14
2H147BD01
2H147BD03
2H147BE15
2H147EA02A
2H147EA06D
2H147EA09D
2H147EA13C
2H147EA14A
2H147EA14C
5F173AB33
5F173AB44
5F173AB50
5F173AR03
5F173AR06
5F173MA10
5F173MB03
5F173MC15
5F173MF02
5F173MF12
5F173MF25
5F173MF28
5F173SA08
5F173SA22
5F173SA26
(57)【要約】
本発明は、高速で平坦な作動応答を有する部品のための電気的に同調可能なフォトニック共振器デバイスに関するものであって、-レーザー光を結合するための光インターフェースを有する少なくとも1つの光導波路;-光共振器材料、特にSi
3N
4からなる導波路を含み、少なくとも1つの光導波路を介して結合されたレーザー光が結合される、少なくとも1つの光共振器;-少なくとも1つの光共振器に少なくとも部分的に機械的応力を印加する少なくとも1つのピエゾアクチュエータ;ここで、少なくとも1つの光共振器、少なくとも1つのピエゾアクチュエータ及び少なくとも1つの光導波路は、フォトニック共振器デバイスの共通基板上にモノリシックに集積されており;-少なくとも1つのピエゾアクチュエータのAC動作によって引き起こされる1つ又は複数の振動の機械的モードを減衰するように構成された機械的モード抑制手段;を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-レーザー光を結合するための少なくとも1つの光インターフェース(22、23)を有する少なくとも1つの光導波路(21)、
-光共振器材料、特にSi
3N
4からなる導波路を含む少なくとも1つの光共振器(24)であって、前記少なくとも1つの光導波路(21)を介して結合されたレーザー光が少なくとも1つの光共振器(24)に結合され、
-前記少なくとも1つの光共振器(24)に少なくとも部分的に機械的応力を印加する少なくとも1つのピエゾアクチュエータ(25)であって、前記少なくとも1つの光共振器(24)、前記少なくとも1つのピエゾアクチュエータ(25)及び前記少なくとも1つの光導波路がフォトニック共振器デバイス(2)の共通基板上にモノリシックに集積されており、
-前記少なくとも1つのピエゾアクチュエータ(25)のAC動作によって引き起こされる振動の1つ以上の機械的モードを減衰するように構成された機械的モード抑制手段、
を備える、高速かつ平坦な作動応答を有するレーザー部品(1)のための電気的に同調可能なフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項2】
-二酸化ケイ素の上層を有するシリコン基板を提供するステップ;
-前記光共振器材料の選択的エッチング及び/又は成膜、特に薄膜蒸着(thin-film deposition)を用いて前記光共振器(24)の光学構造の形成するステップ;
-前記光学構造を埋めるための二酸化シリコンを成膜するステップ;
-前記光共振器(24)の前記光学構造の少なくとも一部に前記ピエゾアクチュエータ(25)を形成するために、特に薄膜蒸着を用いてピエゾ材料を堆積するステップ、
を備えるMEMSプロセスによって形成される、請求項1に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項3】
前記光共振器(24)は、ループ共振器、リング共振器、レーストラック共振器、又は前記導波路が共振器内面を囲む閉回路を有する任意の共振器等の円形共振器であり、前記光共振器(24)の前記導波路は、それぞれの結合領域内の少なくとも1つの光導波路に結合されており、前記ピエゾアクチュエータ(25)は、前記結合領域を覆う又は除外する、請求項1又は2に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項4】
前記ピエゾアクチュエータ(25)は、前記フォトニック共振器デバイス(2)の表面上において平面的であり、前記共振器内面の少なくとも90%を覆うように配置された内側ピエゾアクチュエータ構造(25b)を有する、請求項3に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項5】
前記平面的な内側ピエゾアクチュエータ構造(25b)の外縁は、
-完全に前記共振器内面の内側にある;
-前記光共振器(24)の前記導波路を部分的に覆う;及び
-前記光共振器(24)の前記導波路に重なるように前記共振器内面の外側に配置される、
の何れかである、請求項4に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項6】
前記ピエゾアクチュエータ(25)は、前記光共振器(24)の前記導波路を少なくとも部分的に囲む外側ピエゾアクチュエータ構造(25c)を有し、前記外側ピエゾアクチュエータ構造は、
-前記共振器内面の内側にある内縁を有する;
-前記光サーキュレータ(24)の前記導波路を覆う;及び
-前記共振器内面の外側にある内縁を有する、
の何れかである、請求項3に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項7】
前記ピエゾアクチュエータ(25)は、前記内側ピエゾアクチュエータ構造(25b)と、ギャップにより離間された外側ピエゾアクチュエータ構造(25c)とを有し、前記ギャップは、
-前記共振器内面の内側にある;
-少なくとも部分的に前記光共振器(24)の前記導波路を覆う;及び
-前記共振器内面の外側にある、
の何れかである、請求項3に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項8】
前記ピエゾアクチュエータ(25)は、特にAl又はMoからなる下側電極層と、特にAlN、SrドープAlN又はPZTからなるピエゾ材料層と、特にAl又はMoからなる上側電極層とを有する、請求項1~7の何れかに記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項9】
前記光共振器(24)は、三次(Kerr)非線形性、及び異常又は正常な共振器分散を有する共振器材料からなる、請求項1~8の何れかに記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項10】
前記機械的モード抑制手段は、前記フォトニック共振器デバイス(2)の基板(S)上に配置され、前記ピエゾアクチュエータ(25)の横方向に変位した少なくとも1つのダミーピエゾアクチュエータ(27)を含む、請求項1~9の何れかに記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのダミーピエゾアクチュエータ(27)は、前記ピエゾアクチュエータと同一の形状及び/又はサイズ及び/又は方向を有する、請求項10に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項12】
前記共通基板(S)上に配置された前記少なくとも1つのダミーピエゾアクチュエータ(27)は、前記ピエゾアクチュエータ(25)に対して、前記共通基板(S)の横方向の縁部の一方の方向に向かって横方向に変位している、請求項10又は11に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項13】
前記機械的モード抑制手段は、前記共通基板(S)のアポダイゼーションを含み、前記共通基板(S)は、互いに平行でない少なくとも2つの辺を有し、特に前記共通基板(S)は、平行な辺を有しない、請求項1~12の何れかに記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項14】
前記機械的モード抑制手段は、前記曲げモードの第1固有周波数が1MHzを超え、かつ前記バルクモードの第1固有周波数が3MHzを超えるように、前記共通基板(S)のサイジングを含み、前記共通基板の少なくとも1つの寸法は、特に2mm未満である、請求項1~13の何れかに記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項15】
前記機械的モード抑制手段は、前記共通基板(S)上に、バルクモード及び/又は曲げモードの機械的振動減衰を提供する1つ又は複数の追加構造を提供することを含む、請求項1~14の何れかに記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項16】
前記機械的モード抑制手段は、前記共通基板(S)の1つの表面上に1つ又は複数の凹部(41)及び/又は前記共通基板(S)の1つの表面上に1つ又は複数の隆起部を含む、請求項15に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項17】
前記1つ又は複数の追加構造は、前記共通基板(S)の裏面上に少なくとも1つの波形(44)を含み得る、請求項15又は16に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項18】
同調ユニットが、前記共通基板(S)上又は前記共通基板(S)と別個に設けられ、前記同調ユニットは、前記ピエゾアクチュエータ(25)及び前記ダミーピエゾアクチュエータ(27)を、位相がずれた状態で、特に逆位相で駆動するように構成される、請求項10又は11に記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【請求項19】
-レーザー光を提供するために配置されるレーザー装置(3);
-前記レーザー装置(3)は、前記フォトニック共振器デバイス(2)の光導波路(21)と結合され、前記レーザー装置(3)と前記フォトニック共振器デバイス(2)との間でレーザー光を伝搬させ、前記レーザー部品(1)のセルフインジェクションロック動作(self-injection-locking operation)を可能にする、請求項1~18の何れかに記載のフォトニック共振器デバイス(2)、
を含むレーザー部品(1)。
【請求項20】
同調ユニットが、前記レーザー部品(1)の同調を可能にするため、前記レーザー装置(3)に対して可変駆動電流を供給し、前記ピエゾアクチュエータ(25)に対して可変アクチュエータ駆動AC電圧を供給するように構成される、請求項19に記載のレーザー部品(1)。
【請求項21】
FMCW LiDAR用途における、請求項19又は20に記載のレーザー部品(1)の使用。
【請求項22】
-レーザー光を結合するための少なくとも1つの光インターフェースを有する少なくとも1つの光導波路(21)、
-光共振器材料、特にSi
3N
4からなる導波路を含む第1の光共振器(241)であって、前記少なくとも1つの光導波路を介して結合されたレーザー光が前記第1の光共振器に結合され、
-光共振器材料、特にSi
3N
4からなる導波路を含む第2の光共振器(242)であって、前記第1の光共振器(241)及び前記第2の光共振器(242)が導波路部分を介して光学的に結合され、前記第1の光共振器(241)及び前記第2の光共振器(242)が異なる自由スペクトル領域を有し;
-前記第1の光共振器(241)及び前記第2の光共振器(242)に少なくとも部分的に機械的応力を加える第1のピエゾアクチュエータ(251)及び第2のピエゾアクチュエータ(252);
-前記導波路を前記第2の光共振器(242)と光学的に結合する遅延導波路(52);
-ここで、前記第1の光共振器(241)及び前記第2の光共振器(242)、前記第1のピエゾアクチュエータ(251)及び前記第2のピエゾアクチュエータ(252)、並びに前記少なくとも1つの光導波路及び前記遅延導波路(52)は、フォトニック共振器デバイスの共通基板(S)上にモノリシックに集積されており;
-前記少なくとも1つのピエゾアクチュエータのAC動作によって引き起こされる振動の1つ以上の機械的モードを減衰するように構成された機械的モード抑制手段、
を備える、Vernierフィルタデバイス(50)として形成された請求項1~18の何れかに記載のフォトニック共振器デバイス(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック共振器、特に、モノリシック集積における応力光学的作動(stress-optical actuation)を有するフォトニック共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーは、分散ファイバセンシング、コヒーレントLiDAR、高スペクトル効率コヒーレント通信、又はマイクロ波フォトニクスに至る幅広い技術的及び科学的応用において不可欠である。これらの応用の要件は、低位相雑音と高周波俊敏性である。周波数俊敏性は重要な要件であり、例えば、ファイバグレーティングにレーザーをロックしたり、キャリア回復の位相を調整したり、タイトな位相ロックを実現したりする。
【0003】
過去10年間で、異種集積化レーザーの開発は、データセンター相互接続に現在商業的に使用されているCMOS互換性の高集積化レーザー光源の新しいクラスをもたらした。基本的に、レーザーの線幅、すなわち位相雑音は、低損失レーザー空洞が本質的に低位相雑音を許容することを規定するSchawlow-Townes線幅制限によって与えられる。これまで、小型半導体レーザーの最小レーザー位相雑音は、非常に限られた周波数敏捷性を有する、低損失フォトニック光波回路に結合された離散結晶共振器又はゲインチップによるセルフインジェクションロックによって達成されている。
【0004】
高い敏捷性を達成する上での主な困難は、共振器/キャビティ内の長い光子寿命を維持しながらレーザー線幅を狭める効果をもたらす共振器/キャビティの高速周波数同調にある。
【0005】
シリコン上の窒化シリコン(Si3N4)のようなプロセス技術はますます利用可能になっており、単一デバイスにおける光学部品のモノリシック集積化をさらに可能にする。これは、集積型フォトニックデバイス、例えば、位相ノイズが最も低いレーザーデバイスのバッチ生産を可能にする。
【0006】
しかし、集積型フォトニックデバイスは、多くの場合、低周波数の同調性に問題があり、その結果、周波数の敏捷性が欠如する。従来、例えばWarren Jin他、“Piezoelectrically tuned silicon nitride ring resonator”,Optics EXPRESS Vol. 26,No 3,February 5,2018で知られているように、ピエゾアクチュエータを用いた幾何学的変形によって同調されるSi3N4リング共振器が知られている。ここでは、フォトニックリング共振器と圧電素子がシリコン基板上にモノリシックに集積されており、低閉じ込めシリコン窒化物ベースのリング共振器構造において、全FSRにわたって超低電力同調が可能である。
【0007】
文書:Hao Tian他,“Hybrid integrated photonics using bulk acoustic resonators”,Nature Communications,2020は、Si3N4導波路ベースの集積型フォトニックデバイスを開示している。マイクロ波周波数音響光学変調は、フォトニックスタックにおける高倍音バルク音響波共振を励起することによって行われる。この作動(actuation)は、Si3N4マイクロリング共振器の上に直接配置されたAlNピエゾアクチュエータによって実行される。
【0008】
本明細書では、本発明の技術的背景を示す以下の先行技術を特に参照する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Jean Armstrong,“OFDM for optical communications”,Journal of lightwave technology 27,189-204,2009年
【非特許文献2】H Bostick,“A carbon dioxide laser radar system”,IEEE Journal of Quantum Electronics 3,232-232,1967年.
【非特許文献3】Alan Rogers,“Distributed optical-fibre sensing”,Measurement Science and Technology 10,R75,1999年
【非特許文献4】Ezra Ip他,“Feedforward carrier recovery for coherent optical communications”,Journal of Lightwave Technology 25,2675-2692,2007年
【非特許文献5】RI MacDonald,“Frequency domain optical reflectometer”,Applied Optics 20,1840-1844,1981年
【非特許文献6】Deepak Uttam and B Culshaw,“Precision time domain reflectometry in optical fiber systems using a frequency modulated continuous wave ranging technique”,Journal of Lightwave Technology 3,971-977,1985年
【非特許文献7】Christoforos Kachris他,“A survey on optical interconnects for data centers”,IEEE Communications Surveys & Tutorials 14,1021-1036,2012年
【非特許文献8】Minh A Tran,Duanni Huang,and John E Bowers,“Tutorial on narrow linewidth tunable semiconductor lasers using si/iii-v heterogeneous integration”,APL photonics 4,111101,2019年
【非特許文献9】Klaus-J Boller他,“Hybrid integrated semiconductor lasers with silicon nitride feedback circuits”,in Photonics,Vol. 7 (Multidisciplinary Digital Publishing Institute,2020年 p. 4.
【非特許文献10】Elijah Dale他,“Ultra-narrow line tunable semiconductor lasers for coherent lidar applications”,in Imaging Systems and Applications (Optical Society of America,2014年 pp. JTu2C-3.
【非特許文献11】Jeff Hecht,“Lidar for self-driving cars”,Optics and Photonics News 29,26-33,2018年
【非特許文献12】David Marpaung,Jianping Yao,and Jose Capmany,“Integrated microwave photonics”,Nature photonics 13,80-90,2019年
【非特許文献13】Guang-Hua Duan他,“Hybrid iii-v on silicon lasers for photonic integrated circuits on silicon”,IEEE Journal of selected topics in quantum electronics 20,158-170,2014年
【非特許文献14】Tin Komljenovic他,“Heterogeneous silicon photonic integrated circuits”,Journal of Lightwave Technology 34,20-35,2016年
【非特許文献15】David Thomson他,“Roadmap on silicon photonics”,Journal of Optics 18,073003,2016年
【非特許文献16】Arthur L Schawlow and Charles H Townes,“Infrared and optical masers”,Physical Review 112,1940,1958年
【非特許文献17】Charles Henry,“Theory of the linewidth of semiconductor lasers”,IEEE Journal of Quantum Electronics 18,259-264,1982年
【非特許文献18】W Liang他,“Ultralow noise miniature external cavity semiconductor laser”,Nature communications 6,1-6,2015年
【非特許文献19】Anatoliy A Savchenkov他,“Application of a self-injection locked cyan laser for barium ion cooling and spectroscopy”,Scientific Reports 10,1-7,2020年
【非特許文献20】Brian Stern,Xingchen Ji,Avik Dutt,and Michal Lipson,“Compact narrow-linewidth integrated laser based on a low-loss silicon nitride ring resonator”,Optics letters 42,4541-4544,2017年
【非特許文献21】Duanni Huang他,“High-power sub-khz linewidth lasers fully integrated on silicon”,Optica 6,745-752,2019年
【非特許文献22】Youwen Fan他,“Hybrid integrated inp-si 3 n 4 diode laser with a 40-hz intrinsic linewidth”,Optics express 28,21713-21728,2020年
【非特許文献23】Pablo Marin-Palomo他,“Microresonator-based solitons for massively parallel coherent optical communications”,Nature 546,274-279,2017年
【非特許文献24】Gar-Wing Truong他,“Accurate frequency referencing for fieldable dual-comb spectroscopy”,Optics express 24,30495-30504,2016年
【非特許文献25】Guy Millot他,“Frequency-agile dual-comb spectroscopy”,Nature Photonics 10,27-30,2016年
【非特許文献26】I Debecker他,“High-speed cavity ringdown spectroscopy with increased spectral resolution by simultaneous laser and cavity tuning”,Optics express 13,2906-2915,2005年
【非特許文献27】Junqiu Liu他,“Monolithic piezoelectric control of soliton microcombs”,Nature 583,385-390,2020年
【非特許文献28】Martin HP Pfeiffer他,“Photonic damascene process for integrated high-q microresonator based nonlinear photonics”,Optica 3,20-25,2016年
【非特許文献29】Junqiu Liu他,“Ultralow-power chip-based soliton microcombs for photonic integration”,Optica 5,1347-1353,2018年
【非特許文献30】Hao Tian他,“Hybrid integrated photonics using bulk acoustic resonators”,Nature communications 11,1-8,2020年
【非特許文献31】NM Kondratiev他,“Self-injection locking of a laser diode to a high-q wgm microresonator”,Optics Express 25,28167-28178,2017年
【非特許文献32】Xiaopeng Xie他,“Phase noise characterisation of sub-hertz linewidth lasers via digital cross correlation”,Optics Letters 42,1217-1220,2017年
【非特許文献33】P Feneyrou他,“Novel development for fmcw lidar”,in Applications of Lasers for Sensing and Free Space Communications (Optical Society of America,2018年 pp. SM3H-2.
【非特許文献34】Tobias Herr他,“Temporal solitons in optical microresonators”,Nature Photonics 8,145,2014年
【非特許文献35】Hairun Guo他,“Universal dynamics and deterministic switching of dissipative kerr solitons in optical microresonators”,Nature Physics,2016年
【非特許文献36】Junqiu Liu他,“Photonic microwave generation in the x- and k-band using integrated soliton microcombs”,Nature Photonics,2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い俊敏性を達成する上での主な困難の1つは、共振器内の長い光子寿命を維持しつつ、レーザー線幅の狭小化効果を提供する共振器の迅速な周波数同調にある。
【0012】
本発明の目的は、低雑音アプリケーションをさらに提供しつつ、ストレス光学効果を適用することによって周波数変調のための高い同調帯域幅を可能にするピエゾベースの光同調を有する集積型フォトニック共振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、請求項1に記載の集積型フォトニック共振器デバイス及び他の独立請求項に記載のレーザー部品用光学装置により解決されている。
【0014】
好ましい実施形態は、従属するサブクレームに示されている。
【0015】
第1の態様によれば、レーザー部品のためのフォトニック共振器デバイスは、
-レーザー光を結合するための光インターフェースを有する光導波路、
-光共振器材料、特にSi3N4からなる導波路を含む少なくとも1つの光共振器であって、前記光導波路を介して結合されたレーザー光が前記少なくとも1つの光共振器に結合される、少なくとも1つの光共振器、
-前記少なくとも1つの光共振器に少なくとも部分的に機械的応力を印加する少なくとも1つのピエゾアクチュエータ;前記少なくとも1つの光共振器、前記少なくとも1つのピエゾアクチュエータ及び前記光導波路が前記フォトニック共振器デバイスの共通基板上にモノリシックに集積されており、
-前記少なくとも1つのピエゾアクチュエータのAC動作によって引き起こされる振動の1つ以上の機械的モードを減衰させるように構成された機械的モード抑制手段、
を備える。
【0016】
上記のフォトニック共振器は、FMCW LiDAR又はマイクロ波フォトニクスのような異なる用途の集積型レーザーで使用できるコンパクトな集積型デバイスを提供してもよい。
【0017】
上記のフォトニック共振器デバイスは、cm又はサブcmスケールの光路長を有するコンパクトな誘電体共振器として形成される。前記フォトニック共振器は、リング又はループ共振器のような円形共振器、Fabry-Perot共振器(線形共振器)等を備えてもよい。
【0018】
前記共振器は、幾何学的変形を達成するために誘電共振器に機械的応力を加えるようにピエゾアクチュエータと結合される。当該幾何学的変形によって誘起される前記共振器の有効経路が変化することにより、前記ピエゾアクチュエータを制御することによって前記共振器を同調できるようになる。
【0019】
特に、フォトニック共振器デバイスは、ピエゾアクチュエータの同調動作によってフォトニック共振器デバイスに適用される振動の1つ以上の機械的(輪郭)モードを受動的又は能動的に減衰させることができる機械的モード抑制手段を含む。集積型フォトニック共振器デバイスの機械的モードは、その面内寸法によって定義される。これは、フォトニック共振器デバイスが共通基板上に集積されている場合に特に問題となる。最小化された寸法により、ピエゾアクチュエータの高周波動作は、共振による共通基板の機械的振動を引き起こす可能性がある。
【0020】
フォトニック共振器デバイスの光共振を同調するために、ピエゾアクチュエータのAC動作が開始される。AC動作は、用途に応じて三角形又は鋸歯状にしてもよい。例えば、三角形信号はLiDARアプリケーションに使用されてもよく、鋸歯状はVernierベースのレーザーの連続的な同調に使用されてもよい。これは、作動応答(actuation response)が平坦化されるとともにチャープ非線形性(chirp non-linearity)を最小化できるように、抑制される機械的モードを誘導する。FMCW LiDARコンポーネントで使用される場合、平坦化された作動伝達関数(flattened actuation transfer function)はチャープ非線形性(chirping non-linearity)を最小化できる。
【0021】
基本的に、平坦化された作動応答は、厳密な周波数ロックが必要なアプリケーションに有益である。例えば、FMCW LiDARアプリケーションは、高いスペクトル純度(high spectral purity)と大きなチャープ範囲(large chirping range)を持つ、非常に線形なチャープ光信号を必要とする。これは、広い周波数範囲にわたるピエゾアクチュエータの同調によって達成できる。
【0022】
フォトニック共振器デバイスは、
-二酸化ケイ素の上層を有するシリコン基板を提供するステップ;
-前記光共振器材料の選択エッチング及び/又は成膜を用いて前記光共振器の光学構造を形成するステップ;
-前記光学構造を埋めるための二酸化シリコンを成膜するステップ;
-前記光共振器の前記光学構造の少なくとも一部に前記ピエゾアクチュエータを形成するために、ピエゾ材料を堆積するステップ
を含むMEMSプロセスによって形成されてもよい。
【0023】
光共振器材料及び/又はピエゾ材料は、基板上に薄膜蒸着されてもよい。
【0024】
さらに、上記のMEMSプロセスは、ウェハスケールに適用されてもよく、これにより、バッチ処理に寄与する。
【0025】
一実施形態によれば、前記光共振器は、ループ共振器、リング共振器、レーストラック共振器、又は導波路が共振器内面を囲む閉回路を有する任意の共振器のような円形共振器であってよく、ここで、前記光共振器の前記導波路は結合領域内で光導波路に結合され、前記ピエゾアクチュエータは結合領域を覆うか、又は除外する。
【0026】
特に、前記ピエゾアクチュエータは、前記フォトニック共振器デバイスの表面上において平面的であり、前記共振器内面の少なくとも90%を覆うように配置された内側ピエゾアクチュエータ構造を有してもよい。
【0027】
前記平面的な内側ピエゾアクチュエータ構造の外縁は、
-完全に前記共振器内面の内側;
-前記光共振器の前記導波路を部分的に覆う;と
-前記光共振器の前記導波路に重なるように前記共振器内面の外側に配置される、
の何れかであってもよい。
【0028】
さらに、前記ピエゾアクチュエータは、前記光共振器の前記導波路を少なくとも部分的に囲む外側ピエゾアクチュエータ構造を有してもよく、前記外側ピエゾアクチュエータ構造は、
-前記共振器内面の内側にある内縁を有する;
-前記光サーキュレータの前記導波路を覆う;及び
-前記共振器内面の外側にある内縁を有する、
の何れかである。
【0029】
あるいは、前記ピエゾアクチュエータは、前記内側ピエゾアクチュエータ構造と、ギャップにより離間された外側ピエゾアクチュエータ構造の両方を有してもよく、この場合、前記ギャップは、
-前記共振器内面の内側にある。
-少なくとも一部は前記光共振器の前記導波路を覆っている;及び
-前記共振器内面の外側
の何れかである。
【0030】
一実施形態によれば、前記ピエゾアクチュエータは、特にAl又はMoからなる下側電極層、特にAlN、SrドープAlN、又はPZTからなるピエゾ材料層、及び特にAl又はMoからなる上側電極層を形成してもよい。
【0031】
さらに、前記光共振器は、3次(Kerr)非線形性、及び異常又は正常な共振器分散を有する共振器材料から形成されてもよい。
【0032】
本発明によれば、前記機械的モード抑制手段は、前記フォトニック共振器デバイスの基板上に配置され、前記ピエゾアクチュエータの横方向に変位した少なくとも1つのダミーピエゾアクチュエータを含む。
【0033】
また、前記ピエゾアクチュエータ及び前記ダミーピエゾアクチュエータは、プッシュプル構成(push-pull configuration)のために、上述したように、前記内側ピエゾアクチュエータ構造及び前記外側ピエゾアクチュエータ構造が前記ギャップにより離間されて配置されてもよい。この配置は、曲げモードをキャンセルするために差動駆動されてもよい。
【0034】
特に、前記少なくとも1つのダミーピエゾアクチュエータは、前記ピエゾアクチュエータと同一の形状及び/又はサイズ及び/又は方向を有してもよい。
【0035】
前記共通基板上に配置された前記少なくとも1つのダミーピエゾアクチュエータは、前記ピエゾアクチュエータに対して、前記共通基板の横方向の縁部の一方の方向に向かって横方向に変位していてもよい。
【0036】
代替的又は追加的に、前記機械的モード抑制手段は、前記共通基板のアポダイゼーション(apodization)を含んでいてもよく、ここで、前記共通基板は、互いに平行でない少なくとも2つの辺を有し、特に、前記共通基板は、平行な辺を有しない、及び/又は多角形である、及び/又は異なる長さの辺を有する。特に、前記共通基板は、非平行な側面を有する不規則な多角形として形成されてもよい。
【0037】
さらに、前記機械的モード抑制手段は、前記曲げモードの第1固有周波数が0.5~5MHzを超え、前記バルクモードの第1固有周波数が2~10MHzを超えるように、前記共通基板のサイジングを含んでもよい。
【0038】
一実施形態によれば、前記機械的モード抑制手段は、バルク及び/又は曲げ及び/又はHBARモード(HBAR:High-Overtone Bulk Acoustic Resonator)の機械的振動減衰を提供する1つ又は複数の追加構造を前記共通基板上に提供することを含んでもよい。
【0039】
特に、前記1つ又は複数の追加構造は、前記共通基板の裏面上に少なくとも1つの波形を含んでもよい。
【0040】
さらに、前記共通基板は、300μm未満の厚さまで薄くしてもよい。好ましくは、50μmから250μmの基板厚さを提供してもよい。
【0041】
特に、前記機械的モード抑制手段の前記追加構造は、前記共通基板の1つの表面上に1つ以上の凹部及び/又は前記共通基板の1つの表面上に1つ以上の隆起部を含んでいてもよい。
【0042】
同調ユニットは、前記共通基板上又は前記共通基板と別個に設けられてもよく、ここで、前記同調ユニットは、前記ピエゾアクチュエータ及び前記ダミーピエゾアクチュエータを位相がずれた状態で、特に逆位相で駆動するように構成される。
【0043】
さらに別の態様によれば、レーザー光を供給するために配置されたレーザー装置と上記のフォトニック共振器デバイスとを備え、前記レーザー装置が前記フォトニック共振器デバイスの前記光導波路と結合され、前記レーザー装置と前記フォトニック共振器デバイスとの間でレーザー光が伝搬され、レーザー部品のセルフインジェクションロック動作を可能にするレーザー部品が提供される。
【0044】
同調ユニットは、前記レーザー部品の同調を可能にするため、前記レーザー装置に対して可変駆動電流を供給し、前記ピエゾアクチュエータに対して可変アクチュエータ駆動AC電圧を供給するように構成されてもよい。
【0045】
さらなる態様によれば、Vernierフィルタ装置として形成されたフォトニック共振器デバイスは、
-レーザー光を結合するための光インターフェースを有する少なくとも1つの光導波路、
-光共振器材料、特にSi3N4からなる導波路を含む第1の光共振器であって、前記少なくとも1つの光導波路を介して結合されたレーザー光が前記第1の光共振器に結合される第1の光共振器、
-光共振器材料、特にSi3N4からなる導波路を含む第2の光共振器であって、前記第1の光共振器及び前記第2の光共振器が導波路部分を介して光学的に結合され、前記第1の光共振器及び前記第2の光共振器が異なる自由スペクトル領域を有し;
-前記第1の光共振器及び前記第2の光共振器に少なくとも部分的に機械的応力を加える第1のピエゾアクチュエータ及び第2のピエゾアクチュエータ;
-前記導波路と前記第2の光共振器を光学的に結合する遅延導波路;
-ここで、前記第1の光共振器及び前記第2の光共振器、前記第1のピエゾアクチュエータ及び前記第2のピエゾアクチュエータ、並びに前記少なくとも1つの光導波路及び前記遅延導波路は、前記フォトニック共振器デバイスの共通基板上にモノリシックに集積されており;
前記少なくとも1つのピエゾアクチュエータのAC動作によって引き起こされる1つ又は複数の振動の機械的モードを減衰するように構成された機械的モード抑制手段、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0046】
実施形態は、添付図面と共により詳細に説明される。
【
図1】
図1は、DFBレーザー及びフォトニック共振器デバイスを含むレーザー部品の概略図を示す。
【
図2】
図2は、フォトニック共振器2の断面図である。
【
図3】
図3a~
図3fは、CMOSプロセスを用いた集積化フォトニック共振器デバイスの製造工程を示す。
【
図4】
図4a及び
図4bは、それぞれ、内側ピエゾアクチュエータ構造を有するピエゾアクチュエータの上面図及び断面図を示す。
【
図5】
図5a及び
図5bは、それぞれ、重なっている内側ピエゾアクチュエータ構造を有するピエゾアクチュエータの上面図及び断面図を示す。
【
図6】
図6a及び
図6bは、それぞれ内側及び外側ピエゾアクチュエータ構造を有するピエゾアクチュエータの上面図及び断面図を示す。
【
図7】
図7a~
図7cは、矩形の共振器デバイス2上の異なる曲げモードを示す。
【
図8】
図8は、ピエゾアクチュエータ構造を制御ユニットで制御する構成を示す。
【
図9】
図9は、従来の単一ピエゾアクチュエータ構成と差動ピエゾアクチュエータ構成の測定応答の例を示す。
【
図11】
図11a及び
図11bは、バルク機械的モードを抑制するためのフォトニック共振器デバイスの表面構造の例を示す。
【
図13】
図13a及び
図13bは、光共振器を用いたVernierフィルタの構成を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の好ましい実施形態は、ピエゾアクチュエータを有するフォトニックリング発振器を使用し、異なる種類の機械的モード抑制手段を有するFMCWレーザー装置に基づいて、以下に説明される。
【0048】
図1は、DFBレーザー3(レーザー装置)と光学的に結合されてモノリシックに集積されたフォトニック共振器デバイス2を使用して、種類又は性質の異なる部品(heterogeneous component)を形成するレーザー部品1を示す。レーザー部品1は、DFBレーザーパワーに基づいて動作スキームが単一CWレーザー領域(つまり、セルフインジェクションロック)からソリトンマイクロコム形成領域(soliton microcomb formation regime)に遷移できるように、レーザーセルフインジェクションロックを介して動作してもよい。
【0049】
DFBレーザー3は、フォトニック共振器デバイス2に光学的に結合された光導波路32を有するDFBレーザー光源31を含む。レーザー光の結合は、フォトニック共振器デバイス2の側縁を介してもよい。レーザー光源31は、DFBレーザー光源31の出力周波数及び出力パワーを調整する制御装置5によって制御されてもよい。
【0050】
DFBレーザー3装置は、チップベースの半導体レーザーを備えてもよい。光導波路32は、端部が半導体レーザーの出力に光学的に結合された線形導波路であってもよい。光導波路32は、Si3N4又はSiO2等から形成されてもよい。
【0051】
フォトニック共振器デバイス2は、モノリシックに集積化され、単一の基板上に形成される。基板は、Si又はSiO2から形成されることが好ましいが、他の材料を適用することもできる。
【0052】
さらに、
図2は、フォトニック共振器デバイス2の断面図を示す。
【0053】
フォトニック共振器デバイス2は、フォトニック共振器デバイス2の基板Sの側面に第1の光インターフェース22及び第2の光インターフェース23を有する導波路21が配置された共通基板Sを含む。第1の光インターフェース22、第2の光インターフェース23は、直線導波路21の場合は反対側に位置することができ、導波路21がU字型の場合は同じ側に位置していてもよい。
【0054】
フォトニック共振器デバイス2の基板Sの寸法は、約1mm×1mm~3mm×3mmであり、好ましくは2mm×2mm程度である。
【0055】
レーザー部品1では、DFBレーザー3の光導波路32が第1の光インターフェース22に結合されており、DFBレーザー3が出射したレーザー光をフォトニック共振器デバイス2に入射させ、レーザー光をDFBレーザー3に誘導してセルフインジェクションロック動作を可能にする。
【0056】
導波路21には、円形共振器24(光共振器)が光学的に結合されている。円形共振器24は、SiO2層中にSi3N4で形成されたフォトニックリング共振器として例示的に形成されている。このようなリング共振器導波路構造は、約150~300μmの直径と400μmから650μmの間の光路長(円周)を有してもよい。また、円形共振器24、は楕円形共振器又は他のループ構造のようなリング形状から逸脱する他の構成を有してもよい。また、30μm~1mの光路長を有する螺旋状構造も可能である。
【0057】
光導波路21及び円形共振器24は、DFBレーザー3から出射されたレーザー光を導く役割を果たし、SiO2層に埋め込まれ、SiO2層の表面には、円形共振器24の少なくとも一部に近接して平面ピエゾアクチュエータ25が配置されている。基本的に、ピエゾアクチュエータ25は、円形共振器24の幾何学的変形を与えてその光学特性を調整することにより、応力光学的調整を可能にする役割を果たす。一般に、円形共振器24は、三次(Kerr)非線形性と異常な共振器分散を有する共振器材料で作られてもよい。Si3N4のような誘電体材料を用いると、Q0>1×107の高い共振器品質を達成することができる。
【0058】
図3a~3fに示すように、集積化フォトニック共振器デバイス2は、CMOSプロセスを用いて製造してもよい。
【0059】
プロセスステップは、
図3a~3fに示すように、SiO
2の最上層62を有するシリコン製の基板61から始まる。フォトレジスト63とリソグラフィを使用するパターニング工程を適用することにより、最上層62に凹部64を形成する領域を選択することができる。
図3bに示す凹部64は、ドライエッチングとリフロープロセスによって形成される。
【0060】
図3cに示すように、凹部64は、導波路21及び/又は円形共振器24の材料として適したSi
3N
4又は他の光学/誘電活性材料65で充填される。
【0061】
活性材料の堆積後、表面は
図3dに示すように平坦化され、
図5eに示すように、基板61上の構造物の表面にSiO
2が堆積される。したがって、誘電体/フォトニック構造物はSiO
2層に覆われる。
【0062】
このように形成されたフォトニック共振器の上に、ピエゾアクチュエータの垂直スタックが堆積される。このスタックは、例えばAl又はMoのような金属の下側電極層66、例えばAlN又はPZTのようなピエゾ材料の2番目の層67、及び例えばAl又はMoのような金属の上側電極層68によって形成されてもよい。
【0063】
このように形成されたフォトニック共振器デバイスは、極薄ピエゾアクチュエータを形成することを可能にする。これは、数MHzまでの非常に高い周波数でピエゾアクチュエータを動作させることを可能にする。例えば、ピエゾ材料の2番目の層67の厚さは、約50nm~1500nm、好ましくは800nm~1200nmである。
【0064】
このように形成されたピエゾアクチュエータ25の活性化により、基板上及び円形共振器24の構造上に機械的応力を印加することができ、これにより幾何学的変形が生じる。
【0065】
実質的に、
図4a(上面図)及び
図4b(断面図)の構成に示されるように、ピエゾアクチュエータ25は、円形共振器24の内部セクション内に位置する外縁25aを有する円形共振器24(上面図)の内面(導波路構造の少なくとも一部によって囲まれた平面)の形状及びサイズで形成された内側ピエゾアクチュエータ構造25bを有していてもよい。したがって、上面から見た場合、円形共振器24の内縁24aとピエゾアクチュエータ25の外縁25aとの間のギャップ26は、一定であってもよく、変化してもよい。
【0066】
さらに、平面ピエゾアクチュエータ25の外縁25aは、上面から見た場合、ギャップ26を有する円形共振器24の導波路構造の内縁24aに沿って延びていてもよい。ギャップサイズは、0~10μmであってもよい。
【0067】
さらに、
図5a(上面図)及び
図5b(断面図)の構成に示されるように、内側ピエゾアクチュエータ構造25bの外縁25aは、少なくとも部分的に円形共振器24の導波路と重なり、これにより、内側ピエゾアクチュエータ構造25bは、円形共振器24の長さ/円周の少なくとも90%を超える範囲にわたって円形共振器24を覆う。重なり25fは、円形共振器24の導波路構造の外縁24aを延長してもよい。重なりサイズは0~10μmであってもよい。
【0068】
代替的に、又は追加的に、
図6a(上面図)及び
図6b(断面図)に示されるように、ピエゾアクチュエータ25の外側ピエゾアクチュエータ構造25cは、内側ピエゾアクチュエータ構造25bを囲むように形成され、外側ピエゾアクチュエータ構造25cの内縁25dは、円形共振器導波路に沿って延びていてもよい。外側ピエゾアクチュエータ構造25cの内縁25dは、円形共振器導波路の外縁から、可変又は等しい幅のギャップ25g、例えば0~10μmの間で離間していてもよく、又は部分的又は完全に円形共振器導波路24と重なっていてもよい。
【0069】
ピエゾアクチュエータ25の内側及び外側ピエゾアクチュエータ構造25b,25cの両方が設けられている場合、ピエゾアクチュエータのギャップ25eが形成される。これにより、ピエゾアクチュエータ25の内側及び外側ピエゾアクチュエータ構造25b,25cのプッシュプル動作(push-pull operation)がバルク及び/又は曲げモードをキャンセルすることができる。
【0070】
基本的に、円形共振器24に対する、ピエゾアクチュエータ又は内側及び/又は外側ピエゾアクチュエータ構造25b,25cの位置並びにギャップ25eのサイズ及び位置は、円形共振器の線形同調率(MHz/V)の感度を変化させるために使用されてもよい。
【0071】
また、上面から見た場合、内側ピエゾアクチュエータ構造25bが少なくとも部分的に円形共振器24を囲む、又は重なる、又は覆うバンド構造を形成することなく、外側ピエゾアクチュエータ構造25cが設けられてもよい。
【0072】
ピエゾアクチュエータギャップ25eは、円形共振器24の導波路上に延在してもよく、又は実質的に円形共振器24の内部又は円形共振器24の外部(ここで、内側ピエゾアクチュエータ構造は円形共振器と重なる)に延在してもよい。ピエゾアクチュエータギャップ25eは、基本的に共振器導波路の近くに位置し、ピエゾアクチュエータギャップ25eの外縁又は内縁から共振器導波路の外縁又は内縁までの距離は10μm以下である。
【0073】
共振器導波路に導かれるレーザー光の変調のために、ピエゾアクチュエータはAC制御信号によって駆動される。2つのピエゾアクチュエータ構造25b及び25cは、円形共振器24の上部に効率的に幾何学的変形を印加して共振器デバイス2の適切な同調を可能にするために、同位相又は逆位相(逆極性を適用することによって)で動作してもよい。
【0074】
同調のために、ピエゾアクチュエータ25は、レーザー部品1を同調するための、同調ユニットから印加される三角形波形又は任意の波形を有するAC制御信号ASに従って動作する。例として、
図1に示すように、チャープ非線形性を最小化するには、平坦化された作動伝達関数が必要である。
【0075】
AC動作モードで駆動されると、ピエゾアクチュエータ25は共振周波数によって引き起こされる多数の機械的モードに影響を及ぼす。多くの機械的モードは比較的低い共振周波数で発生するため、同調中にピエゾアクチュエータ25のAC動作を妨げる可能性があり、レーザー部品1のタイトな周波数ロックに影響を及ぼす実質的なチャープ非線形性をもたらす可能性がある。したがって、横定在波(transverse standing waves)によって基本的に曲げモードとして発生する機械的モードを抑制する必要がある。
図7a及び
図7bは矩形の共振器デバイス2の異なる曲げモードを示し、
図7cは矩形の共振器デバイス2のバルクモードを示す。
【0076】
機械的モードの抑制を可能にするため、共振器デバイス2に様々な機械的モード抑制手段を適用してもよい。
【0077】
図8に示すように、ダミーピエゾアクチュエータ27が、円形共振器24に結合されたピエゾアクチュエータ25に隣接して配置されてもよい。好ましくは、必ずしもそうではないが、ダミーピエゾアクチュエータ27は、前述の構成の何れかを有することができるアクティブピエゾアクチュエータ25と同じ形状及びサイズを有し、アクティブピエゾアクチュエータ25を製造するために使用されるのと同じプロセスステップを使用して円形共振器24に隣接して製造される。
【0078】
ピエゾアクチュエータ25及びダミーピエゾアクチュエータ27は、プッシュプル構成のために、上述のように、内側ピエゾアクチュエータ構造25b及び外側ピエゾアクチュエータ構造25cがギャップ25eによって離間されるように、それぞれ配置されてもよい。
【0079】
ピエゾアクチュエータ25の作動中、2つのピエゾアクチュエータ25,27は、フォトニック共振器デバイス2の基板の機械的励起をキャンセル/補償するために、同時にすなわち同じ周波数と同じ振幅であるが逆位相で、駆動される。その結果、円形共振器24に作用するこの応力光学効果(stress optical effect)は、主にアクティブピエゾアクチュエータ25によって決定される。したがって、共振器デバイス2の作動応答における有害な機械的共振を効果的に減衰又は抑制することができる。
【0080】
図8の設定に示されているように、ピエゾアクチュエータ25,27のAC制御信号ASは、等しく(同じ周波数及び振幅で)かつ逆位相であるように選択されてもよい。AC制御信号の動作周波数範囲は0.01~10MHzであってもよい。
図8によれば、AC制御信号ASは、可変AC制御信号ASを生成する無線周波数発生器28によって提供されてもよい。可変位相シフタ29を設けて、AC制御信号ASに位相シフトを付与し、位相シフトAC制御信号AS’を得てもよい。曲げモードの効果的な遠方界の相殺的干渉(far-field destructive interference)のために、可変位相シフタ29を用いて、アクティブ及びダミーピエゾアクチュエータ25,27の位相を調整してもよい。可変位相シフタ29は、AC制御信号ASの動作周波数に応じて、位相シフトAC制御信号AS’を生成してもよい。
【0081】
振幅は、両方のピエゾアクチュエータ25,27上で実質的に同じとなるように、高周波発生器28によって制御されてもよい。高周波発生器28の使用は、曲げモードをキャンセルすることができるが、バルク輪郭モード(the bulk contour modes)には影響を及ぼさない。
【0082】
図9に、従来の1つのピエゾアクチュエータ構成(ダミーピエゾアクチュエータなし)及び差動ピエゾアクチュエータ構成(ダミーピエゾアクチュエータあり)の例示的に測定された機械的応答を示す。差動アクチュエータ構成(太線)は、1つのピエゾアクチュエータ構成(細線)と比較して、1MHz以下の周波数で機械的モードの振幅を効果的に減少させ、それによって主に遠方界の相殺的干渉により曲げモードをキャンセルすることが明確にわかる。
【0083】
機械的モード抑制からのさらなる手段として、集積型フォトニック共振器デバイス2のための基板の形状をアポダイズしてもよい。曲げモードが横定在波によって比較的低い共振周波数の多数の機械的モードを形成する一方で、縦定在波(longitudinal standing waves)によって振動が引き起こされるバルク機械的モードは、共振器デバイス基板の形状を形成することによって除去することができる。バルク機械的モードの強度及び/又は数は、基板が、少なくとも2つの対向する辺が互いに平行でない非矩形形状を備えている場合に、著しく低減することができる。基本的には、平行な辺の長さを短くした各形状が有効である。例として、
図10a~10bに、フォトニック共振器基板の異なる形状を示す。
【0084】
例えば、基板は、不規則な長さの辺を有する多角形であってもよい。特に、共通基板は、平行ではない辺を有する不規則な多角形として形成されてもよい。
【0085】
フォトニック共振器基板Sのこのようなアポダイゼーションは、1つのピエゾアクチュエータ構成及び差分ピエゾアクチュエータ構成に適用されてもよく、これにより、ピエゾアクチュエータ25の作動中のバルク機械的モードの実質的な減少をもたらすことができる。
【0086】
さらに、機械的振動の減衰は、テープを貼り付けたり、キャリアプレート上に基板を接着する等の基板上に減衰手段を適用することによって得ることができる。
【0087】
さらに、
図11a及び
図11bに例示的に示すように、フォトニック共振器デバイス2の表面の構造化は、バルク機械的モードをさらに抑制することができる。フォトニック共振器デバイス2の基板の表面又は裏面上の凹構造は、機械的振動が反射及び散乱され、それによって共振モードを弱める更なるエッジを生成するのに役立つ可能性がある。
【0088】
図11a及び11bに示すように、1つ以上の凹部41として形成された機械的モード抑制構造は、基本的に、活性構造、例えば、円形共振器24、導波路21及びピエゾアクチュエータ25、の周りにランダムに配置してもよく、これにより、ピエゾアクチュエータ25の活性構造と共振器デバイス2の残りの部分との振動結合が実質的に低減される。凹部は、基板Sの外縁(辺)に平行ではない曲線状又は直線状の縁部で形成してもよい。これにより、機械的モード抑制構造の外側で作用する共振モードの活性構造への結合が低減される。凹部41の深さは、基板Sの平均厚さの1~10%の間、好ましくは2~6%であってもよい。好ましくは、1つ以上の凹部の側壁は、基板の表面と鋭いエッジを形成し、ここで、1つ以上の凹部の側壁と基板の表面との間の角度は、60°以上120°以下、好ましくは80°以上100°以下であってもよい。
【0089】
代替的に、又は凹部(41)に加えて、1つ以上の隆起部を基板Sの表面に、対応して、形成してもよく、これはまた、機械的振動を散乱させるのに役立つ内部エッジを形成し得る。隆起部の高さは、基板Sの平均厚さの1~10%の間、好ましくは2~6%であってもよい。好ましくは、1つ以上の隆起部の側壁は、基板の表面と鋭いエッジを形成し、ここで、1つ以上の隆起部の側壁と基板の表面との間の角度は、60°以上120°以下、好ましくは、80°以上100°以下であってもよい。
【0090】
さらに、又は代替的に、基板Sの裏面に波形44を設けてもよい。波形44は、少なくとも共振器導波路24に対向する裏面の領域に形成される。波形は、基板の全厚さの1~10%の間、好ましくは2~6%の間の平均深さと、基板Sの全厚さの1~10%の間、好ましくは2~6%の間の平均粗さ(average roughness)とを有する。基本的に、波形44は、0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1の、平均粗さと平均深さとの間のアスペクト比を有する。
【0091】
図13a及び13bは、Vernierフィルタデバイス50を提供するフォトニック共振器デバイスの2つの実施形態を示す。
【0092】
示されたVernierフィルタデバイス50は、第1及び第2の共振器241及び242を有する。2つの共振器241,242は、第1の共振器241が第2の共振器242よりも長い光路長を有する異なる光路長を適用することによって得られる異なる自由スペクトル領域FSRで形成される。
【0093】
第1の共振器241は、導波路210と光学的に結合される。導波路は、反射型半導体光増幅器51と光学的に結合され得る第1の光インターフェース220を有する。反射型半導体光増幅器51は、5~30%、好ましくは約10%の反射率を有してもよい。
【0094】
また、遅延導波路52は、導波路210と光学的に結合される。遅延導波路52は、螺旋状に形成された部分を有してもよい。遅延導波路52の第1の端部521は、第2の共振器242に結合され、第2の端部522は、導波路210に結合されてもよい。遅延導波路52は、スイッチング時間が光子の往復時間(photon round trip time)よりも短い場合に動作を可能にする光路長をそれらの端部間に提供することができる。
【0095】
第1の共振器241は導波路210に結合され、第1の共振器241と第2の共振器242は短い導波路部分53を介して光学的に結合される。
【0096】
第1及び第2のピエゾアクチュエータ251及び252は、それぞれ2つの共振器241,242の上に配置され、高速、双方向、低ヒステリシス同調を達成する。これは、レーザー波長を慎重に選択することを可能にし、また、外部フィードバックによってレーザー特性を再構成する道を開く。
【0097】
図13bに示される第2の構成では、反射型半導体光増幅器51の反射率は80~98%、好ましくは95%であってもよく、第2の端部522にはインターフェース230が設けられ、RSOAの後面から直接又はインターフェース230からの出力光を使用する機会を提供する。中間部523は、導波路210に光学的に結合される。
【0098】
フォトニック共振器デバイスのピエゾアクチュエータ及びダミーピエゾアクチュエータの構造に関する異なる実施形態は、Vernierフィルタデバイス50に同様に適用することができる。さらに、フォトニック共振器デバイスに関連して説明される機械的モード抑制手段は、Vernierフィルタデバイス50に同様に適用することができる。
【国際調査報告】