(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】最適化されたホイールアーチライニングを備えるホイールアーチ
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20240305BHJP
B32B 1/00 20240101ALI20240305BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B60R13/08
B32B1/00 Z
B32B5/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555690
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2022055976
(87)【国際公開番号】W WO2022189477
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021202349.5
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512099884
【氏名又は名称】オートニアム マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Autoneum Management AG
【住所又は居所原語表記】Schlosstalstrasse 43, CH-8406 Winterthur, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン グレベール
(72)【発明者】
【氏名】ダビド シモン
(72)【発明者】
【氏名】パスカリーヌ ブレジョン
(72)【発明者】
【氏名】レティシア ラングルネ
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BB29
3D023BD25
3D023BE06
4F100AK03C
4F100AK04C
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4F100JL16
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
自動車用のホイールアーチ(1)であって、自動車の車両ホイールのためのホイールアーチ(1)を少なくとも部分的に画定するホイールアーチハウジング部品(7)を備え、かつ、ホイールに面するホイールアーチハウジング部品(7)の面に配置されていて、この面に沿って少なくとも部分的に延びるホイールアーチライニング(4、5、6)を備えており、ホイールアーチライニングが、少なくとも1つの支持層(4)及び1つの繊維層(6)を備え、支持層が、ホイールに面するホイールアーチライニングの外側を形成し、繊維層が、ホイールアーチハウジング部品と支持層との間に配置されており、支持層及び繊維層が、互いに熱的に結合してホイールアーチライニングとなり、繊維層の面の少なくとも50%が、ホイールアーチハウジング部品と接触している、上記ホイールアーチ(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のホイールアーチ(1)であって、前記自動車の車両ホイールのための前記ホイールアーチ(1)を少なくとも部分的に画定するホイールアーチハウジング部品(7)を備え、かつ、前記ホイールに面する前記ホイールアーチハウジング部品(7)の面に配置されていて、この面に沿って少なくとも部分的に延びるホイールアーチライニング(4、5、6)を備えており、前記ホイールアーチライニング(4、5、6)が、少なくとも1つの支持層(4)及び1つの繊維層(6)を備え、前記支持層(4)が、前記ホイールに面する前記ホイールアーチライニング(4、5、6)の外側を形成しており、前記繊維層(6)が、前記ホイールアーチハウジング部品(7)と前記支持層(4)との間に配置されており、前記支持層(4)及び前記繊維層(6)が、互いに熱的に結合して、ホイールアーチライニング(4、5、6)となり、前記繊維層(6)の面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%が、前記ホイールアーチハウジング部品(7)と接触している、前記ホイールアーチ(1)。
【請求項2】
前記繊維層(6)が、前記ホイールアーチハウジング部品(7)に面する前記繊維層(6)の面に配置されている保護層を備えることを特徴とする、請求項1に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項3】
前記ホイールアーチライニング(4、5、6)が、前記支持層(4)と前記繊維層(6)との間に配置されている第3層(5)を備え、前記第3層(5)が、フィルムとして形成されており、好ましくは、単位面積当たり重量が5~200g/m
2であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項4】
前記支持層(4)及び/又は前記繊維層(6)が、吸音特性を備えており、前記繊維層(6)、前記任意選択的な第3層(5)、及び前記支持層(4)が、遮音特性を一緒に有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項5】
前記ホイールアーチライニング(4、5、6)内の個々の層が、可変の厚さ、密度及び/又は単位面積当たり重量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項6】
前記繊維層(6)が、35mm以下の最大厚さを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項7】
完成部品における前記繊維層(6)が、27mm以下の最大厚さを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項8】
完成部品における前記繊維層(6)が、20mm以下の最大厚さを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項9】
前記ホイールアーチライニング(4、5、6)が通気性であり、好ましくは空気抵抗が500~6000レイリー、好ましくは空気抵抗が1500~4000レイリーであることを特徴とする、請求項1に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項10】
前記支持層(4)が剛性であり、単位面積当たり重量が500~1400g/m
2、好ましくは500g/m
2~1200g/m
2、特に好ましくは最大600~1000g/m
2であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項11】
前記繊維層(6)は、坪量が400~1600g/m
2、好ましくは坪量が500~1200g/m
2、より好ましくは坪量が600~1000g/m
2であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項12】
前記第3層(5)が、熱可塑性材料、好ましくは、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン又はポリオレフィンをベースとする熱可塑性材、さらに好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン又はTPUをベースとする熱可塑性材料を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項13】
前記繊維層(6)又は前記支持層(4)が、マトリックス繊維及びバインダ繊維を含み、前記マトリックス繊維は、短繊維又は連続フィラメント、好ましくは熱可塑性材料をベースとする短繊維又は連続フィラメント、さらに好ましくは合成、鉱物又は天然起源である短繊維又は連続フィラメントであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のホイールアーチ(1)を具備している自動車。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のホイールアーチライニング(4、5、6)を製造する方法であって、下記を含む、方法:
(a)形成ツールにおいて、第1繊維層(6)、支持層として設けられている第2層(4)、及び、特に、これらの層の間に配置される第3フィルム層(5)を設けること;並びに
(b)前記工程(a)によって設けられた複数の層の一段階熱形成をすること。
【請求項16】
第3フィルム層(5)が、前記第1繊維層(6)と前記第2層(4)との間に設けられており、前記形成が、下記の2つの副工程(b.1)及び(b.2)を含む、請求項15に記載の方法:
(b.1)蒸気及び空気に透過性でありかつ前記第1繊維層(6)に面する成形ツールの壁に配置されている開口を通して、前記第1繊維層(6)、前記フィルム層(5)及び前記第2層(4)を水蒸気に暴露すること、ここで、前記水蒸気が、一方では、前記第1繊維層(6)が固化して材料結合を形成し、他方では、前記繊維層(6)を通過した後の前記第3層(5)に対する前記水蒸気の蒸気圧が前記第2繊維層(4)を圧縮するのに充分であるような温度及び蒸気湿潤度及び蒸気圧を有している;
(b.2)蒸気及び空気に透過性でありかつ前記第2層(4)に面する型の壁に配置されている開口を通して、前記第2層(4)を水蒸気に暴露すること、ここで、前記水蒸気が、前記第2層(4)が固化して材料結合を形成しかつ前記支持層(4)が形成されるような温度及び蒸気湿潤度及び蒸気圧を有している。
【請求項17】
前記第3フィルム層(5)が、前記蒸気暴露(b.1)によって空気に対して透過性になることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
蒸気暴露を、最大15バール(15×10
5Pa)、好ましくは1~12バール(1~12×10
5Pa)、好ましくは7~11バール(7~11×10
5Pa)の圧力行う、請求項15又は16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールアーチハウジング部品(7)及び最適化されたホイールアーチライニング(4、5、6)を備えるホイールアーチ(1)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、ホイールケース又はホイールハウジングとしても知られているホイールアーチは、自動車の車両ホイールのための収容領域を少なくとも部分的に画定する。ホイールアーチは、通常、車体における凹部によって形成される。ホイール軸のための通路に加えて、センサ、ケーブル又は締め具のためにホイールアーチにおいていくつかのさらなる開口を有する。ホイールアーチは、ホイールアーチライニングを含んでいてよい。
【0003】
自動車の車両エンジンからの騒音に加えて、車両タイヤからの回転騒音もまた、道路交通における主な騒音源であることが周知である。発生する騒音を抑制するために、本体とホイールとの間にホイールアーチを設けることが一般的な慣例であり、これにより、運転席及び周囲領域の両方に関してこの騒音を低減することが可能である。
【0004】
ホイールアーチ(10)を画定するためのホイールアーチハウジング部品(12)を備えるそのようなホイール設備(ここではホイールアーチ(10)として言及される)は、独国特許出願公開第102018128163号明細書に記載されている。記載されているホイールアーチハウジング部品(12)は、ホイールアーチライニングに相当する吸音減衰デバイス(20)を有しており、音透過性の、有孔かつ/又は膜様の保護デバイス(22)をその外側に、すなわち、ホイールに面する側に設けられている。保護デバイス(22)の主な機能は、保護デバイス(22)を通しての異物物質の侵入を防止することである。
【0005】
現在、業界において、迷惑な音声周波数での騒音を最小限にするために、かつ、石又は破片がホイールアーチとホイールアーチライニングとの間にトラップされることを防止するために、このような減衰デバイスとホイールアーチハウジング部品との間に空隙が必要であるという見解がある。
【0006】
欧州特許第1902904号明細書は、外部要素(20、34)と剛性構造部材(10、24)との間の空隙(18、26)を画定する構造のための減音部品であって、実質的気密層、及び、剛性構造部材(10、24)と実質的気密層との間に設けられた減音複合体(12、28、30)を備えており、減音複合体(12、28、30)が少なくとも2つの層(14、16;28、30)によって形成されており、空隙(18、26)が、吸音複合体(12)と、外部要素(20、34)及び2cmを超える厚さを有する剛性構造部材(10、24)間の選択される部材との間に残存している、上記部品を記載している。
【0007】
しかし、本体における空隙及び開口の組み合わせは、車両の乗員室において有害であり騒音公害となる。回転騒音は、ホイールアーチライニングによって一部のみが吸収及び低減され、依然として、本体において空隙及び開口を介して乗員室に到達し得る。
【0008】
内部調査では、回転騒音及び駆動騒音が、特に後部座席において特に迷惑であると把握されていることが示されている。しかし、周囲領域についての道路交通騒音を低減する要求はますます厳しくなっており、車両の外側及び内側の両方で駆動騒音を低減する代替的なホイールアーチライニングを必要としている。
【0009】
現在のホイールアーチライニングによる別の問題は、その複雑な構造であり、これは、多数の層に起因して多段階の製造方法を余儀なくさせる。このことは、製造技術が自動車工業の典型的なサイクルタイムに影響されるという事実に起因している。これを保証するために、様々な層が個々の方法工程において交互に蓄積される。
【0010】
ホイールアーチはそれ自体が複雑な構造であり、かかる構造は、可動部へのその近接に起因して、トリム部の高度な適合精度を必要とし、また、利用可能な設置空間の使用に最も高い要求を出す。この設置空間が、様々な機能的取り付けに起因して不均一な形状である場合が多く、また、幾何学的に複雑な構造を有するという事実に、特別な注意が払われなければならない。この理由のために、設置空間の理想的な使用がなされないことが慣習となっており、ホイールアーチ及びホイールアーチライニング間で不均一に目立つ空隙が許容されている。残存する空隙は、クラッド部品の複雑さを低減するが、それでもなお、騒音低減の有効性を低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、自動車の乗員室及び外部環境の両方において騒音を低減する、代替的なホイールアーチライニング(4、5、6)又はかかるライニングを備えるホイールアーチ(1)を提供することである。さらに、かかるホイールアーチライニング(4、5、6)を製造するための方法が提供される。
【0012】
この課題は、独立特許請求項の主題によって解決される。本発明の有利なさらなる実施形態を、従属特許請求項、以下の詳細な説明及び図の特徴によって開示する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるホイールアーチ(1)は、車室の内側及び車両の外側の両方の騒音放射を一緒に低減するホイールアーチハウジング部品(7)及びホイールアーチライニング(4、5、6)を備える。ホイールアーチライニング(4、5、6)は、少なくとも1つの繊維状支持層(4)及び1つの繊維層(6)を備える。好ましくは、フィルム又は接着剤層の形態の第3層(5)は、繊維状支持層(4)と繊維層(6)との間に配置されている。
【0014】
特に、本発明は、自動車の車両ホイール用のホイールアーチ(1)を少なくとも部分的に画定するためのホイールアーチハウジング部品(7)を備え、かつ、ホイールに面するホイールアーチハウジング部品(7)の面に配置されていて、この面に沿って少なくとも部分的に延びるホイールアーチライニング(4、5、6)を備える、自動車用のホイールアーチ(1)に関し、ホイールアーチライニング(4、5、6)は、少なくとも1つの支持層(4)及び繊維層(6)を備え、支持層(4)が、ホイールに面するホイールアーチライニング(4、5、6)の外側を形成し、繊維層(6)が、ホイールアーチハウジング部品(7)と支持層(4)との間に配置されており、支持層(4)及び繊維層(6)が、互いに熱的に結合して、ホイールアーチライニング(4、5、6)となり、繊維層(6)の面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%が、ホイールアーチハウジング部品(7)と接触している。
【0015】
本明細書において、本発明の文脈における、用語「接触」は、対象の2つの層又は部品間の摩擦接合が存在することを意味する。
【0016】
好ましい実施形態において、第3層(5)は、支持層(4)と繊維層(6)との間に配置されており、フィルム又は接着剤層として設計されている。この第3層(5)は、ホイールアーチライニング(4、5、6)内の層の熱的結合を改良し、かつ、音響特性にさらに良い影響を与え得る、なぜなら、気流抵抗が目標値に調整されるからである。
【0017】
さらに好ましい実施形態において、繊維層(6)は、ホイールアーチハウジング部品(7)に面する面において、保護層、例えば、薄い不織布又は薄いテキスタイル層を有する。保護層の厚さは、好ましくは1mm以下である。この保護層は、少なくとも部分的に繊維層(6)に広がり、本体に面する面を保護する機能を有する。追加の保護層を設けることは、ホイールアーチハウジング部品(7)が開口を有している領域において特に有利である。
【0018】
ホイールアーチライニング(4、5、6)は、熱成形プロセスによって製造される。このプロセスにおいて、ホイールアーチライニング(4、5、6)の全ての層(支持層(4)、任意選択的な第3層(5)、繊維層(6)、及び任意選択的な保護層)が、プレス型において、一緒に結合して形成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明によるホイールアーチ(1)の構造を模式的に示す。
【
図2A】
図2Aは、支持層2を備えるホイールアーチハウジング部品(1)を示す。
【
図2B】
図2Bは、支持層2を備えるホイールアーチハウジング部品(1)を示す。
【
図2C】
図2Cは、支持層2を備えるホイールアーチハウジング部品(1)を示す。
【
図2D】
図2Dは、支持層2を備えるホイールアーチハウジング部品(1)を示す。
【
図3】
図3は、それぞれ同じSUVに装着された、本発明によるホイールアーチと比較される最新のホイールアーチにおける音響測定の結果を示す。
【
図4】
図4は、それぞれ同じSUVに装着された、本発明によるホイールアーチと比較される最新のホイールアーチにおける音響測定の測定セットアップを示す。
【
図5】
図5は、それぞれ同じSUVに装着された、本発明によるホイールアーチと比較される最新のホイールアーチにおける音響測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ホイールアーチハウジング部品(7)
本発明による自動車用のホイールアーチ(1)は、ホイールアーチハウジング部品(7)を含む。この部品は、ホイールアーチ(1)を少なくとも部分的に画定するように設計されている。ホイールアーチハウジング部品(7)は、ホイールアーチ(1)の部品としてのその機能において、自動車の車両ホイールのための収容領域を少なくとも部分的に画定する。ホイールアーチ(1)の部品としてのホイールアーチハウジング部品(7)は、車体の部分的領域を形成することができ、又は、車体に接続する独立部分を表すことができる。ホイールアーチハウジング部品(7)は、さらに、自動車のフェンダに直接隣接していてよい。
【0021】
ホイールアーチハウジング部品(7)は、金属又は非金属材料から形成され得る。また、ホイールアーチハウジング部品(7)は、ホイールに面している側又はホイールから離れて面している側のいずれかに、吸音層、好ましくは噴霧されたプラスチック又は減衰層を含み得る。
【0022】
ホイールアーチライニング(4、5、6)
ホイールアーチライニング(4、5、6)は、支持層(4)、繊維層(6)、及び、好ましくはさらに、支持層(4)と繊維層(6)との間に配置されている第3層(5)を含む。層(4)及び(6)並びに任意選択的な層(5)は、互いに実質的に結合している。
【0023】
支持層(4)は、バインダ繊維を含む繊維混合物を好ましくは含む。好ましくは、二成分繊維、例えば、コ-ポリエステルシース及びポリエステルコアによる繊維、又はポリプロピレン繊維が、バインダ繊維として使用される。例えば、支持層(4)は、二成分バインダ繊維及びポリエステル短繊維の混合物から作製されている。繊維ブレンド中のバインダ繊維の割合は、好ましくは25~50重量%の範囲である。
【0024】
層の熱成形の際、最も低い溶融温度を有するバインダ繊維又はバインダ繊維部分が溶融され、残存する繊維が一緒に結合して、繊維間及び層間にも材料結合を形成する。形成後、支持層は、本質的に剛性であり、ホイールアーチライニング(4、5、6)の外層を形成する。外面は、ホイールアーチから離れて面していて、組み立てられた状態でタイヤに面する。
【0025】
好ましくは、支持層(4)は、圧縮繊維マットの形態である。この場合、繊維マットは、例えば、梳綿、クロスラップ及び/又は穿刺によって、繊維、好ましくは二成分の連続フィラメントから作製され、プロセスの結果として圧縮される。また、穿刺前に、熱的な前圧密が行われ得る。圧縮並びに支持層(4)の圧密は、泥及び水に対して堅牢な面、並びに、ストーンチッピングに対する耐性を結果として生じさせるが、当該層は、なおも、騒音吸収に充分なオープン孔を有する。
【0026】
好ましくは、支持層(4)は、600g/m2~1400g/m2、特に好ましくは12002g/m以下及びさらに好ましくは800g/m2以下/800g/m2を超える坪量を有する。好ましくは、支持層(4)は、好ましくは繊維マットとして設計されており、一定の厚さ及び一定の坪量を有する。しかし、車両の空間的要求に応じて、支持層(4)はまた、異なる厚さであるが一定の単位面積当たり重量を有することもでき、又は、異なる単位面積当たり重量で異なる厚さを有することもできる。このことは、形成プロセスの対応する変形によって調整され得る。好ましくは、厚さは、1mm~7mm、より好ましくは3mm~5mmである。
【0027】
繊維層(6)は、支持層(4)と比較して低い密度及び硬さを有する。好ましくは、マトリックス及びバインダ繊維の繊維混合物によるエアレイド繊維マットが使用される。繊維層(6)は、支持層(4)とホイールアーチハウジング部品(7)との間に存在する空間を実質的に満たす。繊維層(6)の表面積の少なくとも50%以上、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%が、繊維層(6)に面するホイールアーチハウジング部品(7)の面と接触している。
【0028】
好ましい実施形態において、繊維層(6)は、ある割合の自己圧着繊維を有するマトリックス繊維ブレンドを含む。好ましくは、この割合は、繊維の10~70重量%である。繊維層(6)のためのさらに好ましい繊維混合物は、10~40重量%のバインダ繊維、10~70%のリサイクル繊維及び/又は10~70%の自己圧着繊維から構成されており、繊維の合計量は100重量%である。自己圧着繊維及びこれらの割合は、当業者に公知であり、例えば、独国特許第19517348(C1)号明細書、独国特許第19517350(C1)号明細書に記載されている。かかる繊維は、例えば、スパイラル、オメガ又はヘリックスの形態で存在する。
【0029】
ホイールアーチライニング(4、5、6)の側部領域において、繊維層(6)は、圧縮された形態で存在し、支持層(4)に実質的に結合している。ホイールアーチライニングのこの領域は、ホイールアーチハウジング部品(7)に摩擦により結合している。繊維層(6)は、そのため、支持層(4)の面に対して垂直に測定された、異なる厚さT、密度及び坪量を有する。ホイールアーチハウジング部品(7)と支持層(4)との間の非常に複雑な形状に起因して、繊維層(6)は、したがって、高度に圧縮可能であるように設計されなければならない。必然的に、このことは、音の吸収にも貢献する。
【0030】
繊維層(6)の最大厚さTは、騒音吸収、重量及びコスト間の最適な妥協を付与するように好ましくは選択される。いくつかの領域において、ホイールアーチハウジング部品(7)に面する支持層(4)の面とホイールアーチハウジング部品(7)との間の距離は45mm以上である。この距離を完全に満たす厚さを有する繊維層(6)を付与することは、有利ではない、なぜなら、一方では、支持層(4)とホイールアーチハウジング部品(7)との間の空間(8)は、繊維材料によって実際に完全に満たされているが、これには、より高い材料消費に起因してより高いコスト及び重量が付随するからである。したがって、繊維層(6)の最大厚さは、空間の幾何形状に応じて、好ましくは最大35mm、例えば、20~35mmである。
【0031】
実際に、繊維層(6)の厚さが、空間を完全に満たす目的でさらに増加されるとすると、ホイールアーチライニング(4、5、6)の音響特性において、あったとしてもほんの少しの改良が達成され得るが、同時に、これにより、ホイールアーチライニング(4、5、6)の、及び、これによるホイールアーチ(1)のコスト及び重量の不必要な増加が伴うこととなる。
【0032】
支持層(4)とホイールアーチハウジング部品(7)との間の最大距離が35mm未満、好ましくは27mm未満、より好ましくは20mm未満であるとき、繊維層(6)は、互いに面している支持層(4)及びホイールアーチハウジング部品(7)の2つの面の間の空間が100%満たされるように、すなわち、繊維層(6)及びホイールアーチハウジング部品(7)がこれらの全面にわたって互いに接触するように設計される。
【0033】
最大距離が35mm超、好ましくは27mm超、さらに好ましくは20mm超である領域においては、このことは、音響的又は他の理由で必要ではなく、より高いコストに関連し得る、繊維層(6)での材料消費を単に増加させるだけである。いずれの場合においても、繊維層(6)は、その面、又は、存在する場合には保護層の面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは80%が、ホイールアーチハウジング部品(7)と、すなわち、繊維層(6)に面するホイールアーチハウジング部品(7)の面と接触するように設計される。
【0034】
典型的には、空間(8)は、繊維層(6)とホイールアーチハウジング部品(7)との間に、すなわち、ホイールアーチハウジング部品(7)と支持層(4)との間が最大距離である領域に残存する。空間(8)の内側の空気は、部品の外側の空気と接続されていないため、ホイールアーチライニング(4、5、6)の騒音低減効果は維持される。繊維層(6)とホイールアーチハウジング部品(7)との間の、その面の少なくとも50%を超えての接触は、空間をシールさせる。対照的に、従来技術のホイールアーチは、ホイールアーチハウジング部品とホイールアーチライニングとの間の連続ギャップを常に有する。このギャップを介して、騒音がホイールアーチハウジング部品(7)の励振に直接つながり、ひいては、車室における騒音公害の増加につながる。
【0035】
繊維層(6)の構成要素に関しては、原則として、支持層(4)のためのものと同じ出発物質が使用され得る。繊維層は、両方が、バインダ繊維及びマトリックス繊維、例えば、短繊維又は連続フィラメント繊維を含む。使用される繊維は、合成、鉱物又は天然起源のものであっても、かかる繊維の混合物であってもよい。繊維は、新たに製造された繊維、又はリサイクル若しくは再使用された材料、又は再使用されたベース材料からさらに新たに製造された繊維であってよい。当然ながら、これらの繊維の混合物を使用することもできる。
【0036】
繊維層(6)では、ポリエステル繊維の繊維ブレンド、例えば、最大45%の二成分バインダ繊維との繊維ブレンドが好ましくは使用される。好ましくは、繊維層(6)におけるバインダ繊維の溶融温度は、支持層(4)のものよりも高い。好ましくは、繊維層(6)のバインダ繊維の溶融温度は、少なくとも175℃である。
【0037】
好ましい実施形態において、繊維層(6)は、最大30%の圧着繊維をさらに含み得る。これらの繊維は、繊維層(6)の弾力を増加させ、当該層の弾力性を促進する。驚くべきことに、低い密度、好ましくはポリエステル繊維の使用、及び任意選択的には圧着繊維の組み込みを組み合わせることで、支持層(4)とホイールアーチハウジング部品(7)との間のほぼ全空隙を満たすように使用され得る高度に吸収性の繊維層(6)を結果として生じさせる。この配置は、空隙が常になければならないホイールアーチ(1)において良好な吸音を達成するという、専門家の間での予想とは相反している。
【0038】
好ましくは、マトリックス繊維は、4~10デシテックスの線密度(10,000メートル当たりのグラム)を有する。さらに好ましい実施形態において、4.4デシテックスの二成分バインダ繊維が使用される。好ましくは、マトリックス繊維及びバインダ繊維は、実質的に等しい線密度を有しており、良好な、すなわち、均一な繊維混和性を必然的に伴う。
【0039】
好ましくは、繊維層(6)は、400g/m2~1600g/m2、好ましくは500g/m2~g/1200m2、特に好ましくは600~1000g/m2の坪量を有する。任意選択的な第3層(5)は、フィルム又は接着剤層の形態であってよく、支持層(4)と繊維層(6)との間に配置されている。
【0040】
第3層(5)
好ましくは、フィルム層(5)は、多層、特に三層である。この三層配置において、外層は、層(4)及び(6)間のバインダ機能を有する。単一層構成では、1つの層がかかるバインダ機能を有する。バインダ機能は、特に、この目的のために設けられた層(複数可)が製造の際に溶融するという事実によって達成される。当該三層設計において、中間層は、製造方法の際に実質的に無傷なままであり、閉鎖されたバリアを形成する。
【0041】
さらなる実施形態において、フィルム層(5)は、製造プロセスの際に孔を形成するように設計され、この場合、当該層は、自身の空気抵抗を有する。
【0042】
第3層(5)は、好ましくは、熱可塑性材料、例えば、ホモ又はコポリマーによってフィルム又は箔の形態で形成される。ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン又はポリオレフィンをベースとする熱可塑性材料がさらに好ましく、ポリプロピレン又はポリエチレンがさらに好ましい。かかるフィルムは、当業者によく知られている。例として、ポリアミド、ポリプロピレンから作製される、又はポリエステルをベースとするフィルムが挙げられる。多層フィルムが使用されるとき、使用されるポリマーは異なる溶融温度を有しており、その結果、少なくとも1つのフィルム層が溶融して、互いに隣接する層(4、6)を結合することとなる。好ましくは、フィルム層(5)は、全体に孔を有する。このことは、例えば、熱成形プロセスの際の熱蒸気への暴露によって達成され得る。この実施形態において、箔層(5)はまた、ホイールアーチライニング(4、5、6)の騒音低減効果にも有意に寄与する。上記から分かるように、本発明によるホイールアーチ(1)において、支持層(4)及び繊維層(6)は、好ましくは第3層(5)を介して互いに実質的に結合している。
【0043】
より高い空気抵抗を有する支持層(4)、その自身のさらなる空気抵抗を有するフィルム又は箔、及び、最適な空間を利用する繊維層(6)を合わせることにより、遮音と吸音とのバランスが最適化されたホイールアーチライニング(4、5、6)を製造することができる。
【0044】
驚くべきことに、本発明によるホイールアーチライニング(4、5、6)は、予期されるよりも高い遮音を示すが、吸音が依然として存在する。遮音の増加及び空隙の基本的な排除により、車両の内側の騒音の低減を結果として生じさせるが、吸音性のホイールアーチライニングは、車両の外側の騒音を低減する。回転騒音のいくらかは、ホイールアーチライニング(4、5、6)によってさらに直接吸収される。
【0045】
ホイールから離れて面する支持層(4)の面及びホイールの方向に面するホイールアーチハウジング部品(7)の面は、上記に説明されているように繊維層(6)によって主に満たされる空隙を一緒に形成する。繊維層(6)は、好ましくはフィルム又は接着剤層(5)によって支持層(4)に結合される。
【0046】
繊維層(6)は、したがって、可変の密度及び/又は可変の坪量のいずれかを有する。可変の坪量を得るために、例えば、欧州特許第264088号明細書に記載されている、繊維を繊維ストリームの形態で型に堆積させる繊維注入プロセスが好ましくは使用される。
【0047】
ホイールアーチライニング(4、5、6)の外側からホイールまでの最小の距離は、特にカーブにおける安全走行に基づいて、自動車メーカーによって特定される。
【0048】
好ましい実施形態において、繊維層(6)の厚さは、ホイールアーチライニング(4、5、6)が、広い領域(ホイールアーチハウジング部品(7)の表面積の50%以上にわたってホイールアーチハウジング部品(7))に摩擦により結合するようになっている。ホイールアーチハウジング部品(7)との組み立ての前のホイールアーチライニング(4、5、6)における繊維層(6)の厚さは、そのため、広い領域にわたって、組み立て後の支持層(4)に面するホイールアーチハウジング部品(7)の面とホイールアーチハウジング部品(7)に面する支持層(4)の面との間のギャップよりも大きい。この領域において、繊維層(6)及びホイールアーチハウジング部品(7)は、次いで互いに摩擦ロックされ、繊維層(6)は、圧縮された状態で存在する。このことは、特に、ホイールアーチ(1)の側部領域における場合のことであり、内部の方向への騒音に対するさらなるシーリングを結果として生じさせる。
【0049】
必要に応じて、好適なパッチが、摩耗に対して局所的に材料を保護するために、面における開口を有する領域において適用され得る。代替的には、繊維フリース又はテキスタイル層が、繊維層上に適用され得る。
【0050】
ホイールアーチライニング(4、5、6)は、好ましくは通気性であり、好ましくは500~6000レイリー(Rayl)の空気抵抗、好ましくは1500~4000レイリーの空気抵抗を有する。
【0051】
ホイールアーチ製造方法(1)
ホイールアーチライニング(4、5、6)は、ホイールアーチに設置/付着されるときに、ホイールアーチハウジング部品(7)の実質的に全面が、ホイールアーチライニング(4、5、6)の繊維層(6)と、好ましくは繊維層の表面積の少なくとも50%と、好ましくは当該表面積の少なくとも65%と、好ましくは当該表面積の少なくとも80%と接触するように概して形成される。
【0052】
繊維層(6)、フィルム(5)及び支持層(4)並びに任意選択的に存在する保護層は、圧縮成形によって1つの工程で一緒に押圧されて仕上げの形状となり、全ての層が、材料結合によって互いに結合する。このプロセスにおいて、繊維層(6)の厚さは、特に、複雑な空間に対応する所要の三次元形状に従って調整される。
【0053】
本発明は、支持層(4)、繊維層(6)、及び、フィルム又は箔として設計される第3層(5)を備える、本発明によるホイールアーチライニング(4、5、6)を製造するための好ましい方法にさらに関する。当該プロセスにおいて、ホイールアーチライニング(4、5、6)は、形成型に存在する第1繊維層(6)から開始して、支持層(4)として設けられている第2層(4)及びこれらの層の間に任意選択的に配置されるフィルム層(5)を単一熱成形する工程において形成される。
【0054】
一実施形態において、上記形成工程は、下記の少なくとも2つの副工程(b.1)及び(b.2)を含む:
(b.1)蒸気及び空気に透過性でありかつ第1繊維層(6)に面する成形ツールの壁に配置されている開口を通して第1繊維層(6)、フィルム層(5)及び第2層(4)を水蒸気に暴露すること、ここで、水蒸気は、一方では、第1繊維層(6)が固化して材料結合を形成し、他方では、繊維層(6)を通過した後の第3層(5)に対する水蒸気の蒸気圧が第2繊維層(4)を圧縮するのに充分であるような温度及び蒸気湿潤度及び蒸気圧を有している;
(b.2)蒸気及び空気に透過性でありかつ第2層(4)に面する型の壁に配置されている開口を通して第2層(4)を水蒸気に暴露すること、ここで、水蒸気は、第2層(4)が固化して材料結合を形成しかつ支持層(4)が形成されるような温度及び蒸気湿潤度及び蒸気圧を有している。
【0055】
また、製造方法は、空気に透過性になることができる第3層(5)を結果として生じる。
【0056】
好ましくは、蒸気暴露が、最大15バール(15×105Pa)、より好ましくは1~12バール(1~12×105Pa)、特に7~11バール(7~11×105Pa)の圧力で実施される。
【0057】
ホイールアーチライニング(4、5、6)を製造する熱成形方法の際に、層(4、5、6)が実質的に結合し、支持層(4)が圧縮されて、可撓剛性支持層(4)を形成する。支持層(4)の圧縮は、空気に透過性である、ホイールに面するホイールアーチライニング(4、5、6)の面における圧縮層を生成する。ホイールアーチライニング(4、5、6)はまた、泥除けでもあり、したがって、最小の安全限界でホイールに面する直接の面として適合するのに好適である。
【0058】
図1は、本発明によるホイールアーチ(1)の構造を模式的に示す。
【0059】
ホイールアーチライニング(4、5、6)は、吸音特性を有する本質的に剛性の支持層(4)を備える。支持層(4)はまた、ホイールアーチから離れて又はタイヤに向かって面しているその面により、石の衝突などの外的な機械的影響に対する保護も与える。
【0060】
図1から分かるように、空間は、ホイールアーチハウジング部品(7)と支持層(4)との間にホイールアーチライニング(4、5、6)の一部として存在する。この空間は、繊維層(6)によって主に満たされる。
【0061】
好ましい実施形態において、ホイールアーチライニング(4、5、6)は、第3層(5)を含む。この第3層は、支持層(4)と繊維層(6)との間のフィルム又は接着剤層として配置されている。
【0062】
図2A~Dは、支持層2を備えるホイールアーチハウジング部品(1)を示す。ホイールアーチハウジング部品(7)の内面(不可視)及びこれに面する支持層の面は、
図2B~2Dから分かるように、異なる幾何学形状及び異なる断面を有する空間を一緒に形成する。
【0063】
断面は、ホイールアーチ(1)が構成しなければならない複雑な空間分布を示す。各車両がその自身の空間制限を有しており、個々の解決策を必要とする。本発明によるホイールアーチ(1)は、利用可能な空間を完全に利用させるはずである。
【0064】
図3~5は、それぞれ同じSUVに装着された、本発明によるホイールアーチと比較される最新のホイールアーチにおける音響測定の結果又は測定セットアップ(
図4)を示す。
【実施例】
【0065】
本発明による4つのホイールアーチを実現し、従来技術の仕様に従って製造される、通常取り付けられる標準のホイールアーチライニングの代替としての、欧州市場において現在利用可能なオフロード車両(以下、簡潔に「SUV」と称する)に取り付けた。音響試験を実施して、本発明によるホイールアーチライナーの有用性を、目的の測定によって実証した。
【0066】
本発明によるホイールアーチライニングは、支持層(4)、繊維層(6)及びこれらの間の通気性中間体フィルム(5)からなった。支持層(4)は、40重量%のPET/CoPET二成分バインダ繊維及び60重量%のPETステープル短繊維からなる繊維ブレンドから作製した。充分な硬さを与えるために、支持層(4)を800g/m2付近の坪量を有するものを選択し、圧縮して3mmとした。中間体フィルム(5)は、60g/m2の坪量を有する通気性フィルムからなった。そして、繊維層(6)は、30重量%のPET/CoPET二重バインダ繊維、30重量%の自己圧着PET繊維、及び40重量%のPETリサイクル短繊維からなった。繊維層(6)の坪量は、領域にわたって略一定であり、約550g/m2であった。この低い坪量は、自己圧着繊維の使用と一緒になって、繊維層(6)を特に柔軟かつ弾性にする。
【0067】
本発明による4つのホイールアーチのそれぞれにおいて、繊維層(6)を、取り付ける領域において支持層(4)とSUVホイールアーチハウジング部品(7)との間の空間を満たすように三次元的に形作り、最大で約20mmの最大厚さとした。その柔軟性及び弾性のおかげで、繊維層(6)は、支持層(4)とSUVホイールアーチハウジング部品(7)との間の空間の非常に複雑な形状によく適応することができた。SUVにおける組み立ての際に、本発明による4つのホイールアーチのそれぞれが、その表面積の少なくとも約85%を超えてホイールアーチハウジング部品(7)と接触していることが分かった。
【0068】
SUVに通常取り付けられる一連のホイールアーチライニングは、最新技術の仕様に従って実現される。実際に、これらは、支持層からなり、支持層の、ホイールアーチハウジング部品に面する面には、吸音性材料からなる2つのパッチが結合している。支持層は、PP繊維(45重量%)及びPET繊維(55重量%)の混合物からなり、坪量が約1200g/m2であり、厚さが一定の約4mmである。各吸収性パッチは、薄い不織布で包まれているPET繊維層からなる。吸収性パッチの坪量は、その面領域にわたって略一定であり、約400g/m2である。吸収性パッチの全体の厚さは一定であり、約10mmである。さらに、吸収性パッチは、矩形形状を有しており、ホイールアーチハウジング部品に面する支持層の面の約40%を被覆する。
【0069】
吸収性パッチは、これらの一定の厚さ及びこれらがホイールアーチハウジング部品に面する支持層の面の一部のみを被覆するという事実に起因して、この空間の複雑な形状には全く適応せず、当該空間を非常に部分的にのみ満たす。SUVに一般に取り付けられている従来技術のホイールアーチライニングでは、吸収性パッチとホイールアーチハウジング部品との関連する接触は無く、又は事実上無い。したがって、最新の技術によると、空隙は、ホイールアーチの全面にわたってホイールアーチライニングとホイールアーチハウジング部品との間にある。
【0070】
音響試験を、シャシーダイナモメータを備える半無響室においてSUVを用いて実施した。2つの異なる操作条件を検討した:50km/時での一定の速度及び約35km/時から95km/時への加速。
【0071】
乗員室における騒音を、助手席後部右側での耳の位置で測定した。これらの位置を選択したのは、後部座席の位置がタイヤ騒音に関して非常に重要であることが知られているからである。
図3は、SUVに標準の従来技術のホイールアーチを装着したとき(破線、「2」と記されている)及びSUVに本発明によるホイールアーチを装着したとき(実線、「1」と記されている)の、これらの2つの位置における音圧レベルの平均値の比較を示す。これらのデータを50km/時の一定の速度で測定した。分かるように、SUVにおける本発明によるホイールアーチライニングの取り付けは、タイヤ騒音に最も関連すると知られている特に630Hz~1600Hzの周波数範囲において、SPLスペクトルの有意な低減を達成する。
【0072】
外部騒音を、
図4に示すように配置された3つの位置で測定した(測定位置を
図4においてM1、M2及びM3と標識する)。これらの3つの位置は、車両の長手方向の軸線に平行であって、この軸線から7.5mの距離にある線に沿って配置され、当該距離は、外部騒音が、欧州において現在施行されている自動車の外部騒音についての規則ECE-R51.03に従って測定されなければならない同距離に相当する。
【0073】
図5における破線は、約35km/時から約95km/時への加速の際の、標準の従来技術のホイールアーチライニングを装着したSUVについて3つの外部マイクロホンにおいて測定した音圧レベルの平均値を示す。実線(
図5)は、本発明によるホイールアーチライニングを装着したSUVのものと同じ大きさを示す。分かるように、調査した全速度範囲にわたって、ほぼ1dB(A)の低減が達成されている。
【0074】
これらの結果は、本発明によるホイールアーチが、従来技術の解決策と比較して、内部及び外部騒音の有意な低減を付与することを示している。このことは、従来技術において通常仮定されていることとは対照的に、ホイールアーチライニング(4、5、6)とホイールアーチハウジング部品(7)との間の空隙の存在が部品の音響性能に有害であり得ることを認識することによって達成された。支持層(4)とホイールアーチハウジング部品(7)との間の空間が満たされるように三次元において繊維層(6)を形成することにより、有意な音響的利点が達成され得る。
【国際調査報告】