(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】液冷式内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01P 3/02 20060101AFI20240305BHJP
F02F 1/10 20060101ALI20240305BHJP
F02F 1/38 20060101ALI20240305BHJP
F02F 1/36 20060101ALI20240305BHJP
F02F 1/14 20060101ALI20240305BHJP
F02F 1/16 20060101ALI20240305BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20240305BHJP
F02B 19/08 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F01P3/02 H
F02F1/10 A
F02F1/10 B
F01P3/02 Q
F02F1/38 B
F01P3/02 M
F02F1/36 B
F02F1/10 D
F02F1/14 D
F02F1/16 Z
F02F1/24 A
F02B19/08 A
F02B19/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556797
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 AT2022060075
(87)【国際公開番号】W WO2022192930
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597083976
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL LIST GMBH
【住所又は居所原語表記】HANS-LIST-PLATZ 1,A-8020 GRAZ,AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ザップ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルター,ユルゲン
【テーマコード(参考)】
3G023
3G024
【Fターム(参考)】
3G023AB01
3G023AB05
3G023AD23
3G024AA03
3G024AA05
3G024AA27
3G024CA05
(57)【要約】
本発明は、ファイヤデッキ(4)から離間された第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)を備え、およびシリンダヘッド(2)の前記ファイヤデッキ(4)に隣接し、および中間デッキ(18)によって前記第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)から離間されている第二のヘッド部分冷却チャンバ(17)を備えるヘッド冷却チャンバ(15)を備えた、トップダウン冷却コンセプトを有するシリンダヘッド(2)であって、前記第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)と前記第二のヘッド部分冷却チャンバ(17)が、前記中間デッキ(18)内の流路(21)によって、中央コンポーネント(19)の領域内で流体的に相互接続されているシリンダヘッドと、前記シリンダブロック(3)内に配置され、および前記シリンダヘッド(2)の前記ファイヤデッキ(4)内の第一の流路(34)によって、および供給流路(35)によって前記第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)に接続されている主送給流路(32)と、前記シリンダヘッド(2)の前記ファイヤデッキ(4)内の第二の流路(36)によって前記第二のヘッド部分冷却チャンバ(17)に流体的に接続されているブロック冷却ジャケット(41)とを備えている液冷式内燃機関(1)に関する。本発明によれば、冷却を改善するために、前記ブロック冷却ジャケット(41)は、前記ファイヤデッキ(4)の近傍にあり、および前記第二の流路(36)が通じている第一のブロック部分冷却ジャケット(29)と、前記第一のブロック部分冷却ジャケット(29)から離間され、および前記ファイヤデッキ(4)から遠く離れている第二のブロック部分冷却ジャケット(30)とを有し、前記第一のブロック冷却ジャケット(29)は、前記第二の流路(36)に直径方向に対向している第三の流路(37)によって、前記第二のブロック冷却ジャケット(30)に流体的に接続され、および前記第二のブロック部分冷却ジャケット(30)は、前記シリンダブロック(2)内に配置されている主放出流路(33)に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ軸(8)およびクランクシャフト軸によって画定される長手方向のエンジン面(9)の異なる側に配置されている吸気側(6)および排気側(7)を有し、
シリンダブロック(3)に隣接するファイヤデッキ(4)を用いたトップダウン冷却コンセプトを有するシリンダヘッド(2)と、
前記ファイヤデッキ(4)から離間されている第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)と、
前記シリンダヘッド(2)の前記ファイヤデッキ(4)に隣接し、かつ中間デッキ(18)によって前記第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)から離間されている第二のヘッド部分冷却チャンバ(17)と、を備えたヘッド冷却チャンバ(15)であって、
前記第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)および前記第二のヘッド部分冷却チャンバ(17)が、少なくとも中央コンポーネント(19)の領域内において、少なくとも一つのトランスファダクト(21)によって互いにフロー接続されているヘッド冷却チャンバ(15)と、を有し、
前記シリンダブロック(3)内に配置され、かつ前記シリンダヘッド(2)の前記ファイヤデッキ(4)内に第一のフロートランスファ(34)を介して前記第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)に接続されている主送給流路(32)と、供給流路(35)と、を有し、
前記シリンダヘッド(2)の前記ファイヤデッキ(4)内で、少なくとも一つの第二のフロートランスファ(36)を介して前記第二のヘッド部分冷却チャンバ(17)にフロー接続され、かつシリンダライナ―(31)を少なくとも部分的に包囲する、少なくとも一つのブロック冷却ジャケット(41)を有する、液冷式内燃機関(1)、特に大きなエンジンであって、
前記ブロック冷却ジャケット(41)は、
前記ファイヤデッキ(4)に面し、および前記第二のフロートランスファ(36)が通じている第一のブロック部分冷却ジャケット(29)と、
前記第一のブロック部分冷却ジャケット(29)から離間され、かつ前記ファイヤデッキ(4)から離れて対向して前記第一のブロック部分冷却ジャケット(29)の側に配置されている第二のブロック部分冷却ジャケット(30)と、を有し、
前記第一のブロック冷却ジャケット(29)は、前記シリンダ軸(8)に関して、前記第二のフロートランスファ(36)に対して直径方向に配置された少なくとも一つの第三のフロートランスファ(37)、によって前記第二のブロック冷却ジャケット(30)にフロー接続され、および
前記第二のブロック部分冷却ジャケット(30)は、前記シリンダブロック(2)内に配置された主放出流路(33)に接続されていることを特徴とする、液冷式内燃機関。
【請求項2】
前記第三のフロートランスファ(37)と前記第二のフロートランスファ(36)は、前記長手方向のエンジン面(9)の異なる側に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関(1)。
【請求項3】
前記第一のフロートランスファ(34)は、前記長手方向のエンジン面(9)に関して、前記主送給流路(32)と同じ側に、好ましくは、前記排気側(7)に配置されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の内燃機関(1)。
【請求項4】
前記第一のフロートランスファ(34)は、前記長手方向のエンジン面(9)に関して、前記第二のフロートランスファ(36)と同じ側に、好ましくは、前記排気側(7)に配置されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項5】
前記主送給流路(32)は、前記主放出流路(33)とシリンダヘッドシーリング面(5)との間に配置されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項6】
前記二つのブロック部分冷却チャンバ(29、30)は、前記シリンダ軸(8)に関して上下に配置され、前記第一のブロック部分冷却ジャケット(29)は、前記第二のブロック部分冷却ジャケット(30)とシリンダヘッドシーリング面(5)との間に配置されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項7】
前記第三のフロートランスファ(37)は、前記吸気側(6)に配置されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項8】
前記主放出流路(33)は、前記シリンダブロック(3)内の前記排気側(7)に、前記主送給流路(32)に隣接して配置されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項9】
前記第一のフロートランスファ(34)および/または前記第二のフロートランスファ(36)は、前記排気側(7)に配置されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項10】
前記第二のヘッド部分冷却チャンバ(17)が、前記シリンダライナ(31)の領域において、前記シリンダ軸(8)の方向で見て分かるように、前記中央コンポーネント(19)の周りの内側のリング部分(22)と外側のリング部分(28)とを有し、前記内側のリング部分(22)と前記外側のリング部分(28)が、少なくとも一つの排気弁ブリッジ(24)の領域において、および/または少なくとも一つの吸気弁/排気弁ブリッジ(26)の領域において、少なくとも一つの半径方向の流路(23、25)を介して互いにフロー接続されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項11】
前記中間デッキ(18)内の少なくとも一つのトランスファダクト(21)は環状構造であり、好ましくは、前記中間デッキ(18)内の前記トランスファダクト(21)は、前記中央コンポーネント(19)を環状に包囲していることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項12】
前記シリンダヘッド(2)は、単一のシリンダヘッドとして設計されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項13】
前記内燃機関(1)は、特にアクティブまたはパッシブプレチャンバを用いて自己点火または火花点火されるように設計されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の内燃機関(1)。
【請求項14】
前記冷却剤が、前記内燃機関(1)の前記排気側(7)の前記シリンダブロック(3)内の主送給流路(32)に供給され、そこから第一のフロートランスファ(34)および供給路(34)を介して該第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)に案内されて、該排気路(13)の周りを流れて、該過程でそれらを冷却し、
その後、中央コンポーネント(19)の領域内の少なくとも一つのトランスファダクト(21)を介して、前記第二のヘッド部分冷却チャンバ(17)の前記内側のリング部分(22)に案内され、そこから、排気弁ブリッジ(24)および/または排気弁/吸気弁ブリッジ(26)の領域内の少なくとも一つの半径方向の流路(23)を介して、外側のリング部分(28)に案内され、そこから、前記排気側(7)に配置された少なくとも一つの第二のフロートランスファ(36)を介して前記第一のブロック部分冷却ジャケット(29)に案内され、
前記冷却剤は、前記ファイヤデッキ(4)に面する前記シリンダライナ(31)の上方領域の周りを流れながら、前記排気側(7)から前記吸気側(6)に案内され、前記吸気側(6)の第三のフロートランスファ(37)を介して前記第二のブロック部分冷却ジャケット(30)に案内され、そして、前記ファイヤデッキ(4)から離れて対向する前記シリンダライナ(31)の下方領域の周りを流れながら、前記シリンダブロック(3)の前記排気側(7)に配置された主放出流路(33)に案内されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の内燃機関(1)を冷却するための方法。
【請求項15】
前記冷却剤は、前記長手方向のエンジン面(9)を横切って延在する少なくとも四つの通路(S1、S2、S3、S4)内での、前記第一のヘッド部分冷却チャンバ(16)への前記流入と、前記主放出流路(33)を通る前記流出との間で、前記ヘッド冷却チャンバ(15)および前記ブロック冷却ジャケット(41)を通って案内され、好ましくは、少なくとも二つの通路(S3、S4)は、具体的には、前記シリンダブロック(3)内で、前記長手方向のエンジン面(9)に交差することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ軸およびクランクシャフト軸によって画定される長手方向のエンジン面の異なる側に配置されている吸気側および排気側を有し、シリンダブロックに隣接するファイヤデッキを用いたトップダウン冷却コンセプトを有するシリンダヘッドと、該ファイヤデッキから離間されている第一のヘッド部分冷却チャンバと、該シリンダヘッドの該ファイヤデッキに隣接し、および中間デッキによって該第一のヘッド部分冷却チャンバから離間されている第二のヘッド部分冷却チャンバとを備えたヘッド冷却チャンバであって、前記第一のヘッド部分冷却チャンバと前記第二のヘッド部分冷却チャンバが、少なくとも中央コンポーネントの領域内において、前記中間デッキ内の少なくとも一つのトランスファダクトによって互いにフロー接続されているヘッド冷却チャンバとを有し、前記シリンダブロック内に配置され、および前記シリンダヘッドの前記ファイヤデッキ内の第一のフロートランスファを介して前記第一のヘッド部分冷却チャンバに接続されている主送給流路と供給流路とを有し、前記シリンダヘッドの前記ファイヤデッキ内で、少なくとも一つの第二のフロートランスファを介して前記第二のヘッド部分冷却チャンバにフロー接続されている、少なくとも一つのブロック冷却ジャケットを有する液冷式内燃機関、特に大きなエンジンに関する。
【0002】
また、該本発明は、このような内燃機関を冷却するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オーストリア特許第515143(B1)号明細書および同第503182(A2)号明細書は、それぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックを有する液冷式内燃機関であって、該シリンダヘッドが、いわゆるトップダウン冷却コンセプトに従って、そこを通ってフローが生じる、上下に配置された二つの部分冷却チャンバを有する液冷式内燃機関について記載している。該二つの部分冷却チャンバは、中間デッキによって互いに離間され、および少なくとも一つのトランスファダクトを介して、中央に配置されたインジェクタスリーブの領域において、互いにフロー接続されている。冷却剤は、該シリンダブロック内のインレット流路を介して供給され、該シリンダブロック内の該シリンダを包囲する冷却チャンバを通って流れて、該ファイヤデッキおよび供給流路内のフロートランスファを介して該シリンダヘッドの上方の部分冷却チャンバに直接供給される。その結果、該冷却剤は、上部から底部へ該シリンダヘッドを通って流れ、言ってみればまず、該上方の部分冷却チャンバに供給され、その後、該上方の部分冷却チャンバを通って流れ、該少なくとも一つのトランスファダクトを介して、該下方の部分冷却チャンバに流れ、そこで、該冷却剤は、弁ブリッジの領域において、半径方向の冷却ダクトを介して内部から外部へ半径方向に案内され、最後に、横方向に配置された放出流路を介して再び該シリンダヘッドから離れる。
【0004】
オーストリア実用新案第005039(U1)号明細書は、ディストリビュータダクトと、冷却剤用の捕集ダクトとを有する、液冷式内燃機関用のシリンダブロックであって、該ディストリビュータダクトが、該シリンダブロックの側壁の領域において、該捕集ダクトの上に配置され、および該ディストリビュータダクトが、供給ダクトを介して、第一の冷却チャンバにフロー接続されている、液冷式内燃機関用のシリンダブロックについて記載している。該シリンダブロックのシリンダヘッド接続面は、各シリンダに対して、該第一の冷却チャンバからオーバフロー流路を介して該シリンダヘッドに続く少なくとも一つのオーバフロー開口と、該シリンダヘッドから冷却剤用のコレクタダクトに続く少なくとも一つの放出開口とを有し、該オーバフロー開口と該放出開口が、長手方向のエンジン面の異なる側に配置されている。該第一の冷却チャンバは、少なくとも一つのトランスファ開口を介して該ディストリビュータダクトに接続されている、シリンダライナの周りのクランクケースの方向においてそれに隣接している第二の冷却チャンバにフロー接続されている。
【0005】
オーストリア特許第501008(A2)号明細書は、該クランクケース内の該シリンダ周辺に冷却ジャケットを有し、該シリンダヘッド内に上下に配置された少なくとも二つの冷却チャンバを備えた個々のシリンダヘッドを有し、該クランクケースの該冷却ジャケットと、該シリンダヘッドの下方の冷却チャンバは、シリンダ毎に該シリンダの周囲に不均一に配置された四つのトランスファ開口を介して互いに接続されている、液冷式内燃機関について記載している。インレット分配チャンバと、該冷却剤用のリターン捕集チャンバは、一つのクランクケース側壁に沿って配置されている。該インレット分配チャンバは、シリンダ毎の少なくとも一つの接続ダクトを介して、該クランクケースの該冷却ジャケットに接続され、各接続ダクトは、該冷却ジャケットに対して径方向に開口している。該リターン捕集チャンバは、該シリンダヘッドの該下方の冷却チャンバに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】オーストリア特許第515143(B1)号明細書
【特許文献2】オーストリア特許第503182(A2)号明細書
【特許文献3】オーストリア実用新案第005039(U1)号明細書
【特許文献4】オーストリア特許第501008(A2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高熱負荷領域からの十分な放熱は、特に高出力の大きなエンジンにとって大きな関わりがあるが、従来技術による解決策によって常に保証されているわけではない。
【0008】
したがって、該本発明の目的は、わずかな製造努力によって、冒頭で述べたタイプの内燃機関における高熱負荷領域の最良で均一な冷却を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
冒頭で述べたタイプの内燃機関からスタートして、このことは、該ブロック冷却ジャケットが、該ファイヤデッキに面し、および該第二のフロートランスファが通じている第一のブロック部分冷却ジャケットと、該第一のブロック部分冷却ジャケットから離間され、および該ファイヤデッキから離れて対向して該第一のブロック部分冷却ジャケットの側に配置された第二のブロック部分冷却ジャケットとを有し、該第一のブロック冷却ジャケットが、該シリンダ軸に関して、該第二のフロートランスファと直径方向に対向して配置されている、該シリンダブロック内の少なくとも一つの第三のフロートランスファによって該第二のブロック冷却ジャケットにフロー接続され、および該第二のブロック部分冷却ジャケットが、該シリンダブロック内に配置された主放出流路に接続されているという点において、該本発明に従って実現される。
【0010】
該第三のフロートランスファが、該第二のフロートランスファに直径方向に対向して配置されるため、該第一のブロック冷却ジャケットは、該シリンダの二つの直径方向に対向する長手方向の側を通って流れる。具体的には、該第一のブロック部分冷却ジャケットが該シリンダライナの大部分を包囲している該本発明の一つの実施形態の変形例において、すなわち、180°以上、および好ましくは完全な巻き角により、該シリンダライナの周りの広範なフローと、該シリンダヘッドに対向する該シリンダの上方領域からの効果的な放熱とが実現される。
【0011】
好ましくは、該第三のフロートランスファと該第二のフロートランスファは、該長手方向のエンジン面の異なる側に配置される。このことは、該長手方向のエンジン面に対して横方向の該シリンダライナの周りのフローを可能にする。具体的には、該第三のフロートランスファが該吸気側に配置されることを実現することができる。
【0012】
該本発明の一つの実施形態は、該第一のフロートランスファが、該長手方向のエンジン面に関して、該シリンダ軸の方向で見て分かるように、該主送給流路の上の、好ましくは、該主送給流路と同じ側に配置されることを実現することができる。この結果、該冷却剤は、最短の実行可能な経路を介して、該シリンダヘッドの第一のヘッドスペース内に直接流れる。
【0013】
具体的には、この場合、該主送給流路を、該シリンダ軸の方向で見て分かるように、該主放出流路とシリンダヘッドシーリング面との間に配置することができる。このことは、コンパクトな構成を可能にする。具体的には、該主放出流路が、該シリンダブロック内の該排気側の該主送給流路に隣接して配置されている場合、良好な放熱を実現することができる。
【0014】
好ましくは、該第一のフロートランスファは、該長手方向のエンジン面に関して、該第二のフロートランスファと該同じ側に配置される。したがって、該第一のヘッド部分冷却チャンバへの冷却剤の流入と、該シリンダヘッドの該第二のヘッド部分冷却チャンバからの冷却剤の流出は、該長手方向のエンジン面の該同じ側、すなわち、該排気側で生じる。
【0015】
該シリンダライナの最適で均一な冷却のためには、該二つのブロック部分冷却チャンバが、該シリンダ軸に関して上下に配置され、該第一のブロック部分冷却ジャケットが、該第二のブロック部分冷却ジャケットと該シリンダヘッドシーリング面との間に配置される場合が有利である。この場合、該第一のブロック部分冷却ジャケットおよび/または該第二のブロック部分冷却ジャケットが、該シリンダライナを少なくとも大部分を、好ましくは完全に包囲している場合が有利である。
【0016】
該弁ブリッジの熱応力を大きく受ける領域からの適切な放熱を確実にするために、該本発明の一つの実施形態の変形例は、該下方の第二のヘッド部分冷却チャンバが、内側のリング部分と外側のリング部分が、排気弁ブリッジの領域において、および/または吸気弁/排気弁ブリッジの領域において、少なくとも一つの半径方向の流路を介して互いにフロー接続されている状態で、該シリンダライナの領域において、該シリンダ軸の方向で見て分かるように、該中央コンポーネントの周りの内側のリング部分と外側のリング部分とを有して備えている。
【0017】
具体的には、該中央コンポーネントの良好な冷却は、該中間デッキにおける少なくとも一つのトランスファダクトが、該中央コンポーネントを環状に包囲している場合に実現することができる。
【0018】
該内燃機関は、好ましくは、アクティブまたはパッシブプレチャンバを用いた、すなわち、いわゆるプレチャンバ火花点火(pre-chamber spark ignition:PCSI)シリンダヘッドを用いた自己点火または火花点火としてデザインすることができる。
【0019】
該本発明の一つの実施形態によれば、該シリンダヘッドは、単一のシリンダヘッドとしてデザインされる。しかし、原理的には、該本発明がマルチシリンダヘッドに利用されることを阻止するものはない。
【0020】
さらに、記載されている目的は、該冷却剤が、該内燃機関の該排気側の該シリンダブロック内の主送給流路に供給され、そこから第一のフロートランスファおよび供給路を介して該第一のヘッド部分冷却チャンバに案内されて、該排気路の周りを流れ、該過程においてそれらを冷却し、その後、該中央コンポーネントの該領域内の少なくとも一つのトランスファダクトを介して、該第二のヘッド部分冷却チャンバの該内側のリング部分に案内され、そこから、排気弁ブリッジおよび/または排気弁/吸気弁ブリッジの該領域内の少なくとも一つの半径方向の流路を介して、外側のリング部分に案内され、そこから、該排気側に配置された該少なくとも一つの第二のフロートランスファを介して該第一のブロック部分冷却ジャケットに案内され、該冷却剤は、該ファイヤデッキに面する該シリンダライナの上方領域の周りを流れながら、該排気側から該吸気側に案内され、該吸気側の第三のフロートランスファを介して該第二のブロック部分冷却ジャケットに案内され、そして、該ファイヤデッキから離れて対向する該シリンダライナの下方領域の周りを流れながら、該シリンダブロックの該排気側に配置された主放出流路に案内されるという点において、該本発明による内燃機関を冷却するための上述した方法によって解決される。
【0021】
該本発明の一つの実施形態によれば、該冷却剤は、具体的には、該シリンダブロック内に、好ましくは、該長手方向のエンジン面に交差する少なくとも二つの通路を備えた、該エンジンの該長手方向を横切って延在する少なくとも四つの通路内での、該第一のヘッド部分冷却チャンバへの該流入と、該主放出流路を通る該流出との間で、該ヘッド冷却チャンバおよび該ブロック冷却ジャケットを通って案内されることが実現される。したがって、該シリンダヘッドと該シリンダブロックはそれぞれ、該長手方向のエンジン面に対して横方向に位置合わせされた二つの通路を通って流体が流され、その結果、最適に冷却される。通路は、ここでは、該ヘッドおよびブロック冷却チャンバを通る該流路の二つの180°の迂回路間の実質的に連続する熱伝達面として定義される。
【0022】
該本発明は、概略的に示す図面に示された非限定的で例示的な実施形態を参照して、以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図2において線I-Iによって示されているような該本発明による内燃機関の長手方向の部分を示す。
【
図2】該第二のヘッド部分冷却チャンバを、
図1における線II-IIによる断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、該本発明による液冷式内燃機関1を、さらに詳しく図示されていないクランクシャフト軸に垂直な長手方向部分で概略的に示す。該内燃機関1、例えば大きなエンジンは、プレチャンバ火花点火(pre-chamber spark ignition:PCSI)を用いて自己点火または火花点火することができる。
【0025】
該内燃機関1は、シリンダヘッド2のファイヤデッキ4の領域において互いに接続されている、該シリンダヘッド2、例えば、単一のシリンダヘッドと、シリンダブロック3とを有している。
図3は、シリンダヘッド2およびシリンダブロック3を有する単一のシリンダとしてデザインされた、該本発明による内燃機関1の概略図を示す。
【0026】
参照数字5は、シリンダヘッド2とシリンダブロック3との間のシリンダヘッドシーリング面を示す。該内燃機関1の吸気側6および排気側7は、さらに詳しくは図示されていない該クランクシャフトと、シリンダ軸8とによって画定される、長手方向のエンジン面9の異なる側に配置されている。
【0027】
例えば単一のシリンダヘッドとしてデザインされている該シリンダヘッド2は、吸気路12が、吸気弁10を介して燃焼室14に、および排気弁11を介して排気路13にフロー接続可能になっている状態で、二つの吸気弁10と、二つの排気弁11とを有している。しかし、該シリンダヘッド2は、マルチシリンダヘッドとしてもデザインすることができる。
【0028】
図1は、該シリンダヘッド2内および該シリンダブロック1内の冷却室および流路を部分的に概略的に示す。いわゆるトップダウン冷却コンセプトが用いられている。該本開示の文脈において、このようなコンセプトは、特に、該シリンダヘッド2内の冷却剤フローが、該シリンダブロック3または該ファイヤデッキ4の方向に向けられることを意味すると理解されたい。換言すると、冷却剤は、該シリンダ軸8に沿った方向において、該ファイヤデッキ4または該シリンダブロック3から離れた領域から、該ファイヤデッキ4または該シリンダブロック3へ案内され、それにより、特に、高い熱負荷に曝される該ファイヤデッキ4において高い冷却効果を実現することができる。
【0029】
該トップダウン冷却コンセプトを有する該シリンダヘッド2は、中間デッキ18によって互いに離間されている、上方の第一のヘッド部分冷却チャンバ16および下方の第二のヘッド部分冷却チャンバ17を備えたヘッド冷却チャンバ15を有している。すなわち、該上方の第一のヘッド部分冷却チャンバ16は、該シリンダ軸8に沿った方向で図を見て分かるように、該下方の第二のヘッド部分冷却チャンバ17よりもさらに該シリンダブロック3から離れている。該上方の第一のヘッド部分冷却チャンバ16と該下方の第二のヘッド部分冷却チャンバ17は、例示的な実施形態において、該中間デッキ18内の少なくとも一つのトランスファダクト21を介して、該シリンダヘッド2内に配置された受入スリーブ20内に配置されている中央コンポーネント19の領域において、互いにフロー接続されている。該中央と言う用語は、ここでは、特に該シリンダ軸8に関して、中央コンポーネント19は、可能な限り該シリンダ軸8に近接して、または該シリンダ軸8内に配置されるように理解すべきである。該コンポーネント19は、具体的には、ディーゼル内燃機関の場合においては、燃料噴射装置によって、または、ガソリン内燃機関においては、プレチャンバ点火ユニットによって構成することができる。
【0030】
トップダウン冷却コンセプトを有するシリンダヘッド2においては一般的であるが、冷却剤は、上部、すなわち、該シリンダヘッド2の該ファイヤデッキ4から離れている領域から、底部、すなわち、該ファイヤデッキ4に近い領域まで該シリンダヘッド2を通って流れる。それにより、該冷却剤は、該上方の第一のヘッド部分冷却チャンバ16に供給されて、該排気路13を冷却しながら、該第一のヘッド部分冷却チャンバ16内を流れて、該中央コンポーネント19の該領域において、該シリンダ軸8の近傍に配置された該トランスファダクト21を介して、該ファイヤデッキ4に隣接する該下方の第二のヘッド部分冷却チャンバ17に到達し、該冷却剤は、内側のリング部分22から、二つの排気弁間に配置された排気弁ブリッジ24の領域における半径方向の流路23を介して、および必要に応じて、吸気弁10と排気弁11との間の該吸気弁/排気弁ブリッジ26の領域における半径方向の流路25を介して、および/または該二つの吸気弁10間の半径方向の流路27を介して、外側のリング部分25へ流れる。
図2は、該第二のヘッド部分冷却チャンバ17の形状を、該吸気弁10と排気弁11の位置が示されている状態で、該シリンダ軸の方向における平面図(像平面は、該シリンダヘッドシーリング面5に平行である)で示す。排気弁シートの周りの最適な冷却は、該内側のリング部分22から該径方向の流路23、25、27を介した該第二のヘッド部分冷却チャンバ17の該外側のリング部分28への該フローによって実現される。
【0031】
該シリンダブロック3は、乾式または湿式にすることができる、該シリンダライナ31の周りの上方の第一のブロック部分冷却ジャケット29および下方の第二のブロック部分冷却ジャケット30を有する。該第一のブロック部分冷却ジャケット29は、該第二のブロック部分冷却ジャケット30と該シリンダヘッドシーリング面5との間に配置されている。該シリンダライナ31上のそれらの構成において、該第一のブロック部分冷却ジャケット29と、該第二のブロック部分冷却ジャケット30は、互いに離間されている。換言すると、第一のブロック部分冷却ジャケット29と第二のブロック部分冷却ジャケット30は、該第二のブロック部分冷却ジャケット30が、該ファイヤデッキ4から離れて面している該第一のブロック部分冷却ジャケット29の側に配置されている状態で、該シリンダライナ31に沿って互いに離間されて該シリンダライナ31上に設けられている。さらに、冷却剤用の主送給流路32および主放出流路33は、該主送給流路32が、該主放出流路33と該シリンダヘッドシーリング面5との間に配置されている状態で、該排気側7で、該シリンダブロック3内に一体化されている。
【0032】
図1に示す該例示的な実施形態において、該シリンダライナ31は、該第一および第二のブロック部分冷却ジャケット29、30を構成する二つの別々の環状空間29a、30aが、該シリンダライナ31と該シリンダブロック3との間に形成されている状態の湿式構造である。この関連で、該シリンダライナ31は、シーリングリング40を有するカラー31aを有し、該カラーは、該シリンダブロック3の合わせ面にぴったり適合し、このため、該第一のブロック部分冷却ジャケット29と該第二のブロック部分冷却ジャケット30との間に液密分離領域42を形成する。
【0033】
該主送給流路32は、該シリンダヘッド2の該ファイヤデッキ4内の第一のフロートランスファ34を介して該第一のヘッド部分冷却チャンバ16におよび供給流路35にフロー接続されている。該第二のヘッド部分冷却チャンバ17は、該ファイヤデッキ4内の第二のフロートランスファ36を介して該第一のブロック部分冷却ジャケット29に接続されている。該第二のブロック部分冷却ジャケット30は、該主放出流路33に接続されている。該第一のブロック部分冷却ジャケット29は、第三のフロートランスファ36を介して該第二のブロック部分冷却ジャケット30に接続されている。該第三のフロートランスファ37は、該シリンダブロック3内において、該シリンダライナ31からオフセットされて延在している。
【0034】
該第一のフロートランスファ34、該第二のフロートランスファ36、該主送給流路32および該主放出流路33は該排気側7に配置され、該第三のフロートランスファ37は、該シリンダ軸8に関して、該第二のフロートランスファ36に対して本質的に直径方向に配置されている。
【0035】
冷却液は、該内燃機関1の該排気側7の該シリンダブロック3内において、該主送給流路31を介して該内燃機関1に供給される。該冷却液は、この主送給流路32から、該第一のフロートランスファ34と、例えば、該シリンダ軸8に平行に形成されている該供給流路35とを介して該上方の第一のヘッド部分冷却チャンバ16に流入し、該排気路13の周りを流れて、該過程においてそれらの流路を冷却する。次に、該冷却液は、該中央コンポーネント19の該領域において、少なくとも例えば環状のトランスファダクト21を介して、該下方の第二のヘッド部分冷却チャンバ17の該内側のリング部分22に案内され、およびこれから二つの排気弁11の間の該排気弁ブリッジ24の該領域において、および/または排気弁11と吸気弁10との間の少なくとも一つの排気/吸気弁ブリッジ26の該領域において、少なくとも一つの半径方向の流路23を介して、該シリンダ39のシリンダ縁部38の領域において、該外側のリング部分28に案内される。該冷却液は、該外側のリング部分28から、該排気側7に配置された該第二のフロートランスファ36を介して、該シリンダライナ31をジャケット状に包囲する、該シリンダブロック3の該上方の第一のブロック部分冷却ジャケット29に案内され、その後、該シリンダヘッドシーリング面5に隣接する該シリンダライナ31の該上方領域の周りを流れながら、該排気側7から該吸気側6に案内される。該冷却液は、該第一のブロック部分冷却ジャケット29と該第二のブロック部分冷却ジャケット30との間の該吸気側6に配置された該第三のフロートランスファ37を介して、該シリンダライナ31をジャケット状に包囲している該下方の第二のブロック部分冷却ジャケット30に案内され、および該シリンダライナ31の該下方領域の周りを流れて、該シリンダブロック3の該排気側7に配置された該主放出流路33に案内され、該冷却液は該内燃機関1から放出され、および例えば、図示されていない冷却液ラジエータに供給される。該第一のブロック部分冷却ジャケット29と該第二のブロック部分冷却ジャケット30は、連続して(順次)流れる。該第三のフロートランスファ37は、例えば、該シリンダブロック3内に配置されたオーバフロー流路によって形成することができる。
【0036】
このようにして、該上方の第一のヘッド部分冷却チャンバ16への流入と、該主放出流路33を通る流出との間で、該冷却液は、該長手方向のエンジン面9に対して横方向に延在する少なくともいくつかの、例えば四つの通路S1、S2、S3、S4において、該長手方向のエンジン面9と交差する該シリンダブロック3における少なくとも二つの通路S3、S4において、該ヘッド部分冷却チャンバ16および該ブロック冷却ジャケット41を通って案内される。ここで、通路は、該ヘッド15およびブロック冷却チャンバ41を通る流路の二つの180°迂回路間の実質的に連続する熱伝達面を示す。
【0037】
このようにして、熱的にクリティカルな領域の効率的な冷却が、該シリンダヘッド2および該シリンダブロック3の両方において実現される。
【国際調査報告】