(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】炭化水素含有流体の熱分解のための反応器および方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/12 20060101AFI20240305BHJP
C01B 3/28 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B01J8/12 301
C01B3/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556997
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2022056534
(87)【国際公開番号】W WO2022194775
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021202465.3
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523350291
【氏名又は名称】ティッセンクルップ ウーデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】ThyssenKrupp Allee 1 45143 Essen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アントヴァイラー,ニコライ
【テーマコード(参考)】
4G070
4G140
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AA03
4G070AB06
4G070BB21
4G070CA03
4G070CA25
4G070CB17
4G070CB18
4G070DA21
4G140DA03
4G140DB03
(57)【要約】
本発明は、少なくとも水素含有流体を少なくとも製造するための、炭化水素含有流体の少なくとも熱分解のための反応器および方法に関する。反応器は、反応器ケーシングと、反応器ケーシング内に配置された反応器シャフトと、反応器シャフトを反応器ケーシングから少なくとも熱的にシールするために反応器ケーシングと反応器シャフトとの間の反応器ライニングと、を有し、反応器シャフトは、断面において少なくとも四角形の形状を有し、熱エネルギーを発生させるための少なくとも1つのそれぞれの電極は、反応器シャフトの2つの対向する側壁に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水素含有流体(41)の少なくとも製造のための炭化水素含有流体(40)の少なくとも熱分解のための反応器(1)であって、
前記反応器(1)が、反応器シェル(2)と、前記反応器シェル(2)内に配置された反応器シャフト(3)と、を有し、少なくとも前記反応器シェル(2)に対する前記反応器シャフト(3)の熱シールのための反応器ライニング(4)が、前記反応器シェル(2)と前記反応器シャフト(3)との間に配置され、
前記反応器シャフト(3)が、断面において少なくとも四角形の形状を有し、熱エネルギーの発生のための少なくとも1つの電極(10、11、12、13、14、15)が、前記反応器シャフト(3)の2つの互いに対向する側壁(30、31、32、33)の各々に配置される、
ことを特徴とする反応器(1)。
【請求項2】
前記反応器(1)の垂直長手方向(L)から見て、互いに対向する前記電極(10、11、12、13、14、15)が、前記反応器シャフト(3)の中央に少なくとも部分的に配置される、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の反応器(1)。
【請求項3】
前記反応器シャフト(3)の前記2つの互いに対向する側壁(30、31、32、33)の各々に配置された、熱エネルギーの発生のための少なくとも2つ以上の電極(10、11、12、13、14、15)があり、前記反応器(1)の垂直長手方向(L)から見て、前記反応器シャフト(3)の側壁(30、31、32、33)1つ当たりの前記電極(10、11、12、13、14、15)の少なくとも1つが、前記反応器シャフト(3)の中央に少なくとも部分的に配置されるか、または側壁(30、31、32、33)1つ当たりの前記電極(10、11、12、13、14、15)の各々が、前記反応器シャフト(3)の中央の少なくとも上方または下方に配置される、
ことを特徴とする、
請求項1または2に記載の反応器(1)。
【請求項4】
前記電極(10、11、12、13、14、15)が、少なくとも一部で断続的に均一であって、断面にわたって見られる電場を生成するように配置される、
ことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項5】
前記反応器(1)が、反応器ヘッド(5)および反応器底部(6)を有し、前記反応器ヘッド(5)および前記反応器底部(6)が各々、少なくとも流体または固体、特に粒子を導入または排出することができる少なくとも断続的に閉鎖可能な供給開口部および排出開口部を有し、移動床を形成するために、粒子(50)が少なくとも断続的に前記反応器ヘッド(5)を通って前記反応器シャフト(3)に連続的に導入される、
ことを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項6】
前記電極(10、11、12、13、14、15)が、前記反応器シャフト(3)を通って移動する前記移動床の前記粒子(50)の移動方向に対して少なくとも部分的に直交して整列した電場を生成するように配置される、
ことを特徴とする、
請求項5に記載の反応器(1)。
【請求項7】
少なくとも水素含有流体(41)の少なくとも製造のための炭化水素含有流体(40)の少なくとも熱分解のための方法であって、前記炭化水素含有流体(40)が、粒子(50)からなる反応器(1)の移動床に向流で前記反応器の反応器シャフト(3)に供給され、
前記移動床または前記炭化水素含有流体(40)の少なくとも前記粒子(50)が、前記反応器シャフト内に配置された熱エネルギーの発生のための電極(10、11、12、13、14、15)によって、800~1600℃、好ましくは800~1400℃の範囲内の規定温度まで加熱される、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記方法が、請求項1から6のいずれか一項に記載の反応器(1)内で実施される、
ことを特徴とする、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記移動床の前記粒子(50)が、前記反応器(1)の反応器ヘッド(5)から前記反応器(1)の反応器底部(6)まで前記反応器(1)の垂直長手方向(L)に重力的に下方に移動する、
ことを特徴とする、
請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記電極(10、11、12、13、14、15)が、前記反応器シャフト(3)を通って移動する前記移動床の前記粒子(50)の移動方向に対して少なくとも部分的に直交して整列した電場を生成する、
ことを特徴とする、
請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の熱統合ゾーン(W1)、反応ゾーン(R)、加熱ゾーン(B)、および第2の熱統合ゾーン(W2)が、前記反応器シャフト(3)内に形成され、その個々のゾーンが、前記反応器(1)の垂直長手方向(L)から見て、前記反応器(1)の前記反応器底部(6)から前記反応器(1)の前記反応器ヘッド(5)に進み、連続しており、一部で少なくとも部分的に重なり合っている、
ことを特徴とする、
請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱分解が、少なくとも前記反応ゾーン(R)または前記加熱ゾーン(B)で起こる、
ことを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化水素含有流体(40)が、前記加熱ゾーン(B)を既に通過し、前記炭化水素含有流体(40)に向流で移動する前記移動床の前記粒子(51)によって、前記第1の熱統合ゾーン(W1)で既に少なくとも予熱されている、
ことを特徴とする、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応器シャフト(3)に入る前記移動床の前記粒子(50)が、前記移動床の前記粒子(50)に向流で流れ、前記炭化水素含有流体(40)から生じ、前記加熱ゾーン(B)を既に通過して炭素を放出した、加熱された水素含有流体(41)によって、前記第2の熱統合ゾーン(W2)で既に少なくとも予熱されている、
ことを特徴とする、
請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記移動床内の炭素含有粒子(51)が、前記反応器(1)の前記反応器底部(6)を介して前記反応器シャフト(3)から排出される、
ことを特徴とする、
請求項7から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも水素含有流体の少なくとも製造のための炭化水素含有流体の少なくとも熱分解のための反応器および方法に関し、反応器は、反応器シェルと、反応器シェル内に配置された反応器シャフトとを有し、反応器シェルと反応器シャフトとの間には、少なくとも反応器シェルに対する反応器シャフトの熱シールのための反応器ライニングが配置されている。本発明はさらに、少なくとも水素含有流体の製造のための少なくとも炭化水素含有流体の熱分解のための方法に関し、炭化水素含有流体は、粒子からなる反応器の移動床に向流で反応器の反応器シャフトに供給される。
【背景技術】
【0002】
化学産業において、例えば鉱油留分の分解または天然ガスもしくはナフサの改質において生じることが知られている強力な吸熱反応は、十分な化学的分解を可能にするために、特に500℃~1700℃の範囲の温度を必要とすることが基本的な知識である。この理由は、平衡変換の熱力学的限界である。炭化水素の熱分解はまた、特に800~1600℃の範囲の高温を必要とする。特にメタン熱分解についても、熱力学的平衡および反応速度のために、非常に短い時間内に、有利には50%を超える十分に高い転化率を達成するために、そのような高温が必要とされる。
【0003】
従来技術は、熱分解方法を可能にするための高温の提供を示す異なる解決策を開示している。例えば、米国特許第2,389,636号明細書および米国特許第2,600,07号明細書、ならびに米国特許第5,486,216号明細書および米国特許第6,670,058号明細書は、熱媒体として固体床の使用を記載している。しかしながら、これは、接着、凝集および摩耗の範囲内で表面効果の不利な発生をもたらし得ることに留意されたい。
【0004】
熱源としての酸化的方法は、例えば独国特許第600 16 59T号明細書または米国特許第3,264,210号明細書に記載されている。酸化的方法の直接的な使用の欠点は、例えば、反応ゾーンへの外来物質の導入、ひいては生成物の汚染である。また、炭素が望ましくない方法で焼失するか、または反応物質流も同様に燃焼するリスクがある。
【0005】
米国特許第2,799,640号明細書または独国特許第1 266 273号明細書はそれぞれ、電気熱源を開示している。ここでの欠点は、反応ゾーンの不均一な加熱であると考えられるが、電気的入熱のこの不安定性は、熱分解、特に水素および熱分解炭素(CH4<->C+2H2)の生成のためのメタンの熱分解における反応空間内の不均一性をもたらす。
【0006】
メタンの熱分解は、約1000℃の温度領域および最大40バールの圧力内で速度論的および熱力学的に有利な方法で起こる高度に吸熱性の反応である。水素(H2)に加えて、熱クラックによって熱分解炭素(C)も生じ、これはさらなる価値のある生成物である。水素および熱分解炭素は、有利にはさらに処理されるかまたはさらに使用され、輸送燃料として、または他の駆動システム、プラントもしくは産業の部門における燃焼燃料として役立つ。
【0007】
粒子の床、特に炭素粒子の床も熱分解に使用され、メタンガスなどの炭素含有ガスがその上で熱分解するという基本的な知識と考えることができる。特に抵抗加熱による熱の電気的入力は、有利には反応エンタルピーの提供に適している。
【0008】
炭素床が使用される場合、例えば電極または電極対の使用を介して反応空間に導入される電流は、この床を通って流れ、粒子床の電気抵抗のために熱エネルギーに放散される。電気抵抗は、床の粒子と低転写領域との間の接触点から生じるが、炭素粒子は高い導電率を有する。反応空間の加熱ゾーンへの本質的に均一な熱の入力は、反応空間の全断面積にわたって部分的に少なくとも断続的に均一な電気抵抗を必要とする。しかしながら、電流がより低い電気抵抗の領域で優先的に流れるように、異なる電気抵抗を有する経路が常に発生することが知られている。結果として、これらの領域における熱分解炭素の堆積が増加し、その結果、より低い抵抗のこれらの経路に沿って抵抗がさらに減少する。その結果、局所的なホットスポット、電気抵抗の局所的な急激な低下、閉塞、および最終的に加熱の失敗をもたらす不均一性が生じる。社内の研究では、既知の反応器、特に既知の反応器形状(特に既知の反応空間形状)および既知の熱分解方法、例えばメタンが、反応空間内の中央配置で炭素形成をもたらし、前記形成は、少なくとも部分的に垂直長手方向に反応空間に沿って中央に延在することが示されている。この炭素形成は、合体した炭素粒子からなる。これは、行われた熱分解が反応空間の断面全体にわたってではなく、主に反応空間の中心でのみ行われたことを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第2,389,636号明細書
【特許文献2】米国特許第2,600,07号明細書
【特許文献3】米国特許第5,486,216号明細書
【特許文献4】米国特許第6,670,058号明細書
【特許文献5】独国特許第600 16 59T号明細書
【特許文献6】米国特許第3,264,210号明細書
【特許文献7】米国特許第2,799,640号明細書
【特許文献8】独国特許第1 266 273号明細書
【発明の概要】
【0010】
既知の反応空間および既知の熱分解方法における不均一性の発生の原因、および結果として既知の反応器の加熱概念の失敗は、本出願人による社内調査の主題であった。反応空間の壁面積対反応空間の反応容積部の比が高いため、顕著な半径方向温度プロファイルが存在することが見出されている。反応空間の中央のより高い温度は、より高い転化率、すなわち床の粒子上の炭素のより高い堆積をもたらし、その結果、メタンガスなどの炭素含有ガスからの炭素のより大きな堆積をもたらす。その結果、この領域の電気抵抗が低くなり、結果として、より低い電気抵抗の領域における関連する優先的な電流の流れが生じる。
【0011】
したがって、本発明の目的は、既知の反応器および熱分解方法における上記の欠点を少なくとも部分的に改善することである。特に、本発明の目的は、少なくとも炭化水素含有流体の熱分解のための反応器および方法であって、単純かつ安価な方法で、反応器シャフトの断面(反応空間)にわたって反応器シャフトの本質的に均一な加熱を可能にし、その結果、部分的に少なくとも断続的に均一であり、部分的に対応する少なくとも断続的に均一な抵抗を有する電場の生成および維持を可能にする、反応器および方法を提供することである。
【0012】
上記目的は、少なくとも請求項1の特徴を有する炭化水素含有流体の熱分解のための反応器、および少なくとも請求項7に記載の特徴を有する炭化水素含有流体の熱分解のための方法によって達成される。本発明のさらなる特徴および詳細は、従属請求項、明細書および図面から明らかになるであろう。本発明の反応器に関連して記載される特徴および詳細は、当然ながら、本発明の方法に関連しても適用可能であり、その逆もまた同様であり、それにより、本発明の個々の態様に関連する開示に関して、代替的な主題を常に参照するか、または代替的な主題を参照することができる。さらに、本発明の方法は、本発明の反応器を用いて実施することができる。
【0013】
少なくとも水素含有流体の少なくとも製造のための炭化水素含有流体の少なくとも熱分解のための、本発明の反応器は、反応器シェルと、反応器シェル内に配置された反応器シャフトと、を有する。少なくとも反応器シェルに対する反応器シャフトの熱シールのための反応器ライニングは、反応器シェルと反応器シャフトとの間に配置される。本発明によれば、反応器シャフトは、断面において少なくとも四角形の形状を有し、熱エネルギーの発生のための少なくとも1つの電極が、反応器シャフトの2つの互いに対向する側壁の各々に配置される。電極によって生成された電気エネルギーが反応器の外部環境に放出されないように、反応器ライニングが電気絶縁にも役立つことがさらに考えられる。本発明の文脈における流体は、気体または液体を意味するとも理解される。したがって、炭化水素含有流体は、例えば、メタン(メタンガス)、天然ガスまたは青色ガスであり得る。したがって、本発明の文脈における「炭化水素含有流体」という用語は、熱分解法によって炭素および水素に解離することができる炭化水素を含有するすべての流体(気体/液体)を意味すると理解される。反応器の反応器シェルは、有利には、環状/円形断面の形状を有する。これは、特に高圧に耐えるために有利である。しかしながら、反応器シェルは、反応空間とも呼ばれ得る反応器シャフトと比較して、同様に少なくとも四角形断面の幾何学的形状、特に有利には反応器シャフトの幾何学的形状に一致する形状を有することも考えられる。反応器シャフトはまた、有利には、矩形断面の幾何学的形状、特に正方形の幾何学的形状を有することができる。しかしながら、反応器シャフトが多角形、特に五角形以上の多角形形状の断面を有することも考えられる。特に有利には、反応器シャフトの断面で見て、互いに平行で対向する少なくとも2つの対向する壁、特に反応器シャフトの内壁がある。部分的に少なくとも断続的に均一な電場、特に本質的に均一な電場を生成するための電極は、反応器シャフト内のこれらの平行で互いに対向する壁に配置される。有利には、電極はまた、互いに対向しており、すなわち、反応器シャフトの長手方向に見て同じ高さにある。特に有利には、電極は、反応器シャフトの側壁の内側に配置される。電極の配置は、有利には、移動床、特に粒子床の粒子の直接電気抵抗加熱を提供する。反応器シャフトの四角形、特に長方形、特に正方形の幾何学的形状および対応して記載された電極の配置は、相互に対向する電極間の部分において少なくとも断続的に均一な電位場の生成を可能にする。加えて、これにより、物質の流れに関して何らかの滑りが生じること、および関連する変換の減少が防止される。
【0014】
移動床の粒子は、0.5mm~20mm、好ましくは1mm~10mmのサイズを有することが考えられる。炭化水素含有流体の熱分解方法は、有利には、1bar~50bar、好ましくは5bar~30barの圧力で行われる。ここで生成される温度は、主に800℃~1600℃、好ましくは1000℃~1400℃である。
【0015】
一実施形態では、反応器の垂直長手方向に見て、相互に対向する電極は、少なくとも部分的に反応器シャフトの中央に配置される。これは、各反応器の少なくとも一部が反応器の(理論上の)中心線(長手方向の反応器の中点/長手方向断面で見た)に接触しているか、またはそれまで延在する一方で、それぞれの電極の残りの部分は、この理論上の中心線の下または上に存在する反応器シャフト領域に配置されることを意味する。より具体的には、それぞれの電極は、反応器のヘッドに面する反応器シャフトの一部分または反応器の底部(ベース)に面する反応器シャフトの領域に配置されることが考えられる。しかしながら、代替的に、それぞれの電極は、反応器シャフトのちょうど中央に(長手方向に/長手方向断面で見て)配置されることも考えられる。あるいは、反応器の垂直長手方向から見て、電極対の電極のいずれも、反応器シャフトの壁または側壁の少なくとも部分において反応器シャフトの中央に配置されていないことが考えられる。代わりに、電極は、反応器シャフト壁においてこの理論中心線の下方または上方に存在する反応器シャフト領域にのみ配置される。
【0016】
一実施形態では、反応器シャフトの2つの互いに対向する側壁のそれぞれに配置された熱エネルギーを生成するための少なくとも2つ以上の電極がある。有利には、反応器シャフトの長手方向に見て同じ高さに配置された相互に対向する電極の2つが常に存在し、これらの電極は電極対、特に相互に対向する電極対を形成する。より具体的には、反応器内に多数の電極対を配置することが考えられる。ここでの電極は、多種多様な異なる幾何学的構成を有することができる。したがって、電極対の電極は、四角形、特に長方形または正方形の構成を有することが考えられる。円形、楕円形/楕円形または多角形の電極も同様に考えられる。メッシュ電極とも呼ばれるメッシュの形態で電極を使用することも可能である。電極の幾何学的形状および構成は、本発明の文脈において規定された形状に限定されるべきではない。しかしながら、電極対の両方の電極が互いに同一であるが少なくとも同等の幾何学的形状を有する場合に有利である。さらに、反応器内、特に反応器シャフトの側壁で使用される電極対がそれぞれ互いに異なる形状を有する場合も可能である。これは、結果として生じる電界の差および反応器シャフトの異なる高さ領域における関連する異なる熱入力に関して有利であり得る。反応器シャフト内の複数の電極対の使用または配置は、有利には、異なる軸方向温度ゾーンの確立を可能にする。したがって、移動床の粒子材料の異なる抵抗特性の場合、磁場パラメータによる温度の制御された調整が可能であることが有利である。
【0017】
また、反応器の垂直長手方向から見て、反応器シャフトの側壁当たりの電極の少なくとも1つは、少なくとも部分的に反応器シャフトの中央に配置されるか、または側壁当たりの電極の各々は、少なくとも反応器シャフトの中央の上方または下方に配置される。より具体的には、反応器シャフト内に2つ以上の電極対を配置する場合、少なくとも1つの電極対は、この電極対の各電極の少なくとも一部が反応器シャフトの(理論上の)中心線と接触するように反応器シャフトの中央領域に配置される(反応器シャフトの長手方向に見て)。これは、中間電極対または外側電極対のうちの1つであってもよい。または、電極対はそれぞれ、理論中心線より上または前記理論中心線より下にあるか、または少なくとも1つの電極対が前記理論中心線より上および下に配置されるように前記理論中心線を構成し、電極対のいずれも、特に1つの電極対の電極は、この理論中心線と接触しない。
【0018】
有利には、電極は、これらの電極が断面で見たときに本質的に均一な電場、特に部分的に少なくとも断続的に均一な電場を生成するように配置される。この電場(電位場)は、有利には、反応器シャフトの幅および深さ(領域)全体にわたって水平に延在する。
【0019】
一実施形態では、反応器は、反応器ヘッドおよび反応器底部を有し、これは反応器ベースとも呼ばれ得る。反応器ヘッドおよび反応器底部はそれぞれ、少なくとも間欠的に閉鎖可能な供給開口部および排出開口部を有し、この供給開口部および排出開口部を通して、少なくとも気体または液体などの流体、および/または固体、特に粒子を導入または排出することができ、移動床の生成のために、粒子が反応器ヘッドを通して少なくとも間欠的に反応器シャフトに連続的に導入される。移動床ではなく、流動床を使用することも考えられる。移動床は、有利には、粒子、特に炭素含有粒子を反応器内、特に反応器の反応器シャフト内に輸送し、有利には、それらを反応器シャフトを通って移動/輸送し、反応器ヘッドから反応器底部に進む。有利には、移動床または床の粒子は、重力駆動および/または重量測定方式で反応器シャフトを通って移動する。次いで、移動床の粒子は、反応器シャフトに導入された炭化水素含有流体中の炭素を取り込み、有利には反応器底部を介して反応器シャフトからそれを輸送する。メタンの熱分解の場合、粒子は加熱され、メタンは加熱された粒子上で優先的に分解する。一部はまた、中間容積部内で分解され、記載された方法で排出される。炭素または炭素含有粒子の連続的な外側への輸送は、部分的に少なくとも断続的に均一である所望の電界の維持、およびその結果、少なくとも反応器シャフトの加熱ゾーンにおける熱の本質的に均一な分布を確実にする。供給開口部および排出開口部は、有利には、反応させる物質または熱分解によって既に炭素が除去されたガスの連続的な導入または排出を可能にする。
【0020】
電極は、これらが、反応器シャフトを通って移動する移動床の粒子の移動方向に対して少なくとも部分的に直交して整列した電場を生成するように配置されることがさらに考えられる。有利には、電極は、反応器シャフト内のそれらの配置のために、すなわち相互に同一の高さにある反応器シャフトの2つの相互に対向する側壁上のそれらの配置のために、移動床、特に移動床の粒子の移動方向に完全に直交して整列した電場を生成する。移動床は、上述したように、上部から下方に、すなわち、移動床の粒子が反応器シャフトに導入される反応器ヘッドから、反応器ベースとも呼ばれ得る反応器底部まで、反応器シャフトを通って移動する。次いで、移動床の粒子は、対応する出口開口部を介して反応器シャフトから排出される。移動床の粒子に対する電界の直交整列に基づいて、移動床の粒子の均一な加熱が有利に行われ、その結果、これらの粒子は、反応器シャフトの断面方向に見た平面全体にわたって炭素含有流体から炭素を取り込むのに役立つことができる。これにより、局所的なホットスポットの発生が有利に回避される。
【0021】
本発明の第2の態様では、少なくとも炭化水素含有流体、例えば気体または液体の熱分解、少なくとも水素含有流体、例えば気体または液体の製造のための方法が特許請求されている。本発明によれば、炭化水素含有流体は、粒子からなる反応器の移動床に向流する反応器の反応器シャフト(反応空間とも呼ばれる)に供給される。本発明によれば、少なくとも移動床または炭化水素含有流体の粒子は、反応器シャフト内に配置された熱エネルギーを発生させるための電極によって、800~1600℃、好ましくは800~1500℃、より好ましくは800~1400℃の範囲の規定温度まで加熱される。より具体的には、移動床の粒子または炭化水素含有粒子のいずれかまたは両方、すなわち移動床の粒子および炭化水素含有流体は、電極によって生成された電気エネルギーによって加熱(上昇)されることが考えられる。有利には、熱分解、すなわち約800℃以上の温度で炭化水素含有流体からの炭素および水素の解離が起こる。有利には、電極は、特に粒子床または移動床の粒子などの電気抵抗と主に関連して、電気エネルギーが熱エネルギーに放散されるという点で熱を発生させる。
【0022】
有利には、本方法は、本発明の第1の態様による、すなわち前述のタイプの反応器内で行われる。したがって、本発明の第1の態様に関して、すなわち本発明の反応器に関して詳述されている特徴は、ここで完全に参照される。
【0023】
移動床の粒子は、反応器の反応器ヘッドから反応器の垂直長手方向に反応器の反応器底部まで、重量測定、特に重力駆動方式で下方に移動することが考えられる。したがって、移動床の粒子は、反応器ヘッド内の1つまたは複数の供給開口部を通って反応器シャフトに供給され、反応器シャフトを通って反応器底部の方向に移動する。反応器底部は、有利には1つまたは複数の排出開口部を有し、この排出開口部を通って、有利にはここでは炭素を含む粒子が反応器シャフトから引き出される。
【0024】
有利には、反応器シャフト内、特に反応器シャフトの側壁または内壁に配置された電極は、少なくとも部分的に、有利には全範囲にわたって、反応器シャフトを通って移動する移動床の粒子の移動方向に直交して整列した電場を生成する。したがって、電界は、断面方向に見て、本質的に水平に延在する。一方、粒子は、長手方向または長手方向断面方向に見て、反応器シャフトを通って本質的に垂直に移動する。これは、有利には、少なくとも反応器シャフトの加熱ゾーン内で移動床の少なくとも粒子を本質的に全範囲にわたって加熱することを可能にし、反応器シャフト内の局所的なホットスポットの形成を回避するか、または少なくとも打ち消す。
【0025】
一実施形態では、第1の熱統合ゾーン、反応ゾーン、加熱ゾーン、および第2の熱統合ゾーンが、反応器シャフト内に形成される。反応器の垂直長手方向に見て、反応器の反応器底部(反応器ベースとも呼ばれる)から反応器の反応器ヘッドまで進む個々のゾーンは、連続しており、部分において少なくとも部分的に重なる。より具体的には、重なり合うゾーンおよび/または重なり合わずに互いに隣接するゾーンが存在する。加熱ゾーンは、主に電極が配置されている反応器シャフトの領域に形成される。加熱ゾーンおよび反応ゾーンは、少なくとも部分的に重なることが考えられる。これは逆に、反応、すなわち解離、特に炭化水素含有流体からの炭素の分離が、加熱ゾーンの外側、特に反応ゾーンで少なくとも部分的に既に行われていることを意味する。個々のゾーンは、図面の説明において、以下で再び詳細に説明される。
【0026】
有利には、熱分解は、少なくとも反応ゾーンまたは加熱ゾーンで行われる。より具体的には、熱分解、すなわち炭化水素含有流体、特にガスの分解、したがって炭化水素含有流体からの炭素の分離は、反応ゾーンまたは加熱ゾーンのいずれかまたは両方のゾーンで起こることが考えられる。有利には、熱分解は、上述のように、2つのゾーンの重複領域で行われる。
【0027】
炭化水素含有流体は、加熱ゾーンを既に通過して炭化水素含有流体と向流で移動する移動床の粒子によって、第1の熱統合ゾーンで既に少なくとも予熱されていることがさらに考えられる。より具体的には、炭化水素含有流体は、反応器底部(反応器ベースとも呼ばれる)を介して、特に少なくとも1つの供給開口部を介して反応器シャフトに導入、特に吹き込まれる。したがって、炭化水素含有流体は、反応器基部から進行して、反応器シャフトを通って実質的に垂直方向に反応器ヘッドまで上方に移動する。炭化水素含有粒子のこの流れは、反応器ヘッドから反応器シャフトを通って反応器底部に向かって本質的に垂直下方に移動する移動床の粒子の流れに対向する。反応器シャフトを通る移動床の粒子の経路上で、粒子は、第1の熱統合ゾーンに到達する前に、少なくとも加熱ゾーンを既に通過し、その加熱ゾーン内の熱/熱エネルギーを吸収している。次いで、移動床の粒子が第1の熱統合ゾーン内の炭化水素含有流体と出会うと、移動床の粒子は炭化水素含有流体に熱(熱エネルギー)を放出する。その結果、第1の熱統合ゾーンでは、炭化水素含有流体は、加熱ゾーンに到達する前に既に予熱されている。炭化水素含有流体は、第1の熱統合ゾーンにおいて600~800℃の温度に予熱されることが考えられる。第1の熱統合ゾーンを通る流れの間に少なくとも800℃の温度が達成される場合、反応ゾーンはこの温度を超えて形成され、そこで炭素は炭化水素含有流体から分離され、移動床の粒子上に堆積される。したがって、炭化水素含有流体の熱分解は、移動床の粒子によってもたらされる熱エネルギーのために発生する反応ゾーンで既に開始する可能性がある。同様に、反応器の反応器シャフトに導入される炭化水素含有流体は、進入前に既に予熱されており、その結果、予熱された形態で反応器シャフトに流入することが考えられる。ここで、炭化水素含有流体を、例えば600℃以下、有利には800℃未満の温度に予熱することが考えられる。その結果、予熱された炭化水素含有流体を反応器シャフトに導入した後に、反応ゾーンの開発を加速することが結果的に可能である。特に、予熱された炭化水素含有流体は、予熱されていない炭化水素含有流体よりも、第1の熱統合ゾーンで少なくとも800℃の温度までより迅速に加熱することができる。800℃の熱分解温度の達成による反応ゾーンのより迅速な開発に基づいて、熱分解は、結果的に、(予熱された形態で導入されていない炭化水素含有流体の場合の熱分解と比較して)より迅速に行うこともでき、その結果、熱分解プロセス全体をよりエネルギー効率的またはエネルギー効率的な方法で実行することができる。しかしながら、反応器の外側または少なくとも反応器シャフト(反応空間)の外側で炭化水素含有流体を予熱する場合、熱分解が反応器シャフト内で起こることを可能にするために、800℃の温度(熱分解温度)に到達しないか、それを超えないことを保証する必要がある。
【0028】
有利には、反応器シャフトに入る移動床の粒子は、移動床の粒子に向流で流れ、炭化水素含有流体から生じ、加熱ゾーンを既に通過し、炭素を放出した加熱された水素含有流体によって、第2の熱統合ゾーンで既に少なくとも予熱されている。したがって、第2の熱統合ゾーンは、反応器ヘッドから反応器の反応器底部の方向に見て、加熱ゾーンの上流のゾーンである。少なくとも反応ゾーン内で、有利には加熱ゾーン内でも炭素を分離する炭化水素含有流体は、次いで、対応する熱(熱エネルギー)を反応ゾーンから導入し、最終的には加熱ゾーンから第2の熱統合ゾーンにも導入する水素含有流体として、第2の熱統合ゾーンを通って流れる。次いで、この熱エネルギーは移動床の粒子に伝達され、これは有利には非予熱形態で反応器シャフトに導入される。その結果、移動床の粒子は、これらが加熱ゾーンに到達する前に、水素含有流体の熱エネルギーによって第1の熱統合ゾーンで既に予熱されている。
【0029】
一実施形態では、移動床内の炭素含有粒子は、反応器の反応器底部を介して反応器シャフトから排出される。移動床の粒子は、粒子を洗浄する、すなわち炭素の粒子を除去する、または炭素含有粒子をさらなる処理のためにさらなる化学プロセスに送る下流プロセスに送られることが考えられる。移動床の粒子の少なくとも一部は、生じた反応のためにサイズに関して成長する。成長した粒子、特に大きな粒子は主にプロセスから排出されるが、サイズが変化していない、特に実質的に変化していないままの小さな粒子は再循環される。成長した(大きな)粒子の少なくとも一部が粉砕および/または粉砕され、特に粉砕され、これらの粉砕された粒子がプロセスにフィードバックされることがさらに考えられる。
【0030】
本発明の第1の態様による反応器について既に記載されているすべての利点は、記載されている方法において生じる。
【0031】
上記で指定された特徴および以下でまだ説明されていない特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、指定された特定の組み合わせだけでなく、他の組み合わせまたは単独でも使用可能であることは明らかであろう。
【0032】
本発明の反応器および本発明の方法の実施形態は、図面を参照して以下に詳細に説明される。図面は、それぞれ概略的な形態で以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の反応器の一実施形態の断面側面図である。
【
図2】
図1に示す本発明の反応器の実施形態の断面上面図である。
【
図3】本発明の反応器の一実施形態の電極の配置の断面正面図である。
【
図4】本発明の反応器の一実施形態の電極のさらなる配置の断面正面図である。
【
図5】本発明の反応器の一実施形態の電極のさらなる配置の断面正面図である。
【
図7】本発明の方法を例示するための本発明の反応器の一実施形態の例示的な温度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
同じ機能および動作モードを有する要素には、
図1~
図7中で同じ符号がそれぞれ与えられている。
【0035】
図1は、本発明の反応器1の一実施形態の断面側面図を概略的に示す。より具体的には、これは、本発明の反応器1の一実施形態の縦断面である。
図2は、
図1に示す本発明の反応器1の実施形態の断面上面図を示す。より具体的には、
図2は、
図1に示す中心線Mに本質的に沿って延在する、
図1に示す本発明の反応器1の実施形態の断面図を示す。その結果、反応器1は、
図2に従って中央、すなわち中央で切断される。したがって、以下、
図1および
図2をまとめて説明する。反応器1は、断面が円形の幾何学的形状を有し、長手方向Lにタワーのように延在する反応器シェル2を有する。反応器シェル2は完全に閉じられており、その結果、断面が円形の閉じられた反応器シェル壁20を有する。反応器シェル2または反応器シェル壁20内には、反応器シャフト3が配置される。反応器シャフト3は、断面が四角形、特に正方形であり、長手方向Lにタワーのように延在する幾何学的形状を有する。その結果、反応器シャフト3は、少なくとも4つの側壁30、31、32、33、特に反応器シャフト壁30、31、32、33を含む。側壁30、31、32、33のうちの少なくとも2つ、特に第1の側壁30および第3の側壁32は、互いに平行に位置する。反応器シャフト3は、その結果、化学反応、特に炭化水素含有流体、主に炭化水素含有ガスの熱分解が起こる反応容積部34を有する反応空間である。反応器シャフト3、特に、反応器シャフト3の側壁30、31、32、33と、反応器シェル2、特に、反応器シェル壁20との間に、反応器ライニング4が設けられる。この反応器ライニング4は、有利には、円周方向および長手方向Lにおいて反応器シャフト3と反応器シェル2との間に完全に延在する。反応器ライニング4は、主に、反応器シャフト3の反応容積部34に導入される熱エネルギーから反応器シェルを遮蔽する役割を果たす。さらに、
図1および
図2は、合計6つの電極10、11、12、13、14、15を示し、これらは、反応器シャフト3上、より具体的には、反応器シャフト3の第1の側壁30上および第3の側壁32上に配置される。したがって、3つの電極10、12、および14が第1の側壁30に配置され、3つのさらなる電極11、13、および15が第3の側壁32に配置される。好適には、断面方向に見て、それぞれの電極10、11、12、13、14、15は、側壁30、32の全幅にわたって延在する。第2の側壁31および第4の側壁33は、主に電極を有していない。それぞれ対向電極10、11、12、13、14、15は、電極対101、102、103を形成する。例えば、電極10および11は、第1の電極対101、電極12および13、第2の電極対102、ならびに電極14および15、第3の電極対103を形成する。有利には、長手方向Lに見て、電極対101、102、103のそれぞれの電極10、11、12、13、14、15は同じ高さにある。符号Mは、中心線の特徴を示す。したがって、この(理論上の)中心線Mは、長手方向Lに見た反応器1の中央、特に反応器シャフト3の中央を画定する。電極10、11、12、13、14、15は、主に、特に中心線Mの近傍の領域に配置されている。特に
図1に示すように、電極10および11からなる少なくとも第1の電極対101は、部分的に中心線と接触する。対照的に、電極12、13から構成される第2の電極対102および電極14、15から構成される第3の電極対103は、特に中心線Mと反応器ヘッド5との間に延在する反応器シャフト3の一部分において、中心線Mの上方、すなわち反応器1の反応器ヘッド5の方向にシフトされる。対照的に、中心線Mから反応器底部6の方向に延在する反応器シャフト3の部分は、さらなる電極対を有さない。長手方向Lに延在する反応器シャフト3の高さに関して、反応器シャフト3内の電極10、11、12、13、14、15の配置は、個別に設計されてもよく、加熱ゾーンおよび結果として生じる反応ゾーンの所望の位置によって決定される。より具体的には、電極10、11、12、13、14、15の位置決めは、それに応じて、加熱ゾーンが中心線Mに対して反応器シャフト3の上部領域に形成されるか下部領域に形成されるかにも依存する。電極10、11、12、13、14、15のこの可変の位置決めは、例えば、以下の
図3、
図4、および
図5にも示されている。
【0036】
図3、
図4および
図5はそれぞれ、本発明の反応器1の一実施形態における電極の配置の断面正面図を示す。
【0037】
図3に示すように、ここで使用される3つの電極対101、102、103は、第2の電極対102の電極が少なくとも部分的に(理論上の)中心線Mと接触し、その結果、少なくとも1つの部分で反応器シャフト3の中央に配置されるように、反応器シャフト3内に配置される。次いで、残りの電極対101および103は、中心線Mから距離を置いて反応器シャフト3内に配置される。したがって、第1の電極対101の電極は、中心線Mと反応器底部6との間の反応器シャフト3の領域、すなわち、中心線Mに対して下方の領域に配置され、第3の電極対103の電極は、中心線Mと反応器ヘッド5との間の反応器シャフト3の領域、すなわち、中心線Mに対して上方の領域に配置される。
【0038】
図4に示すように、2つの電極対101および102のみの配置も考えられ、電極対101、102のいずれも、特にそれぞれの電極対101、102のいずれの電極も、部分的にさえ理論中心線Mと接触しない。代わりに、第1の電極対101の電極は、中心線Mと反応器底部6との間の反応器シャフト3の領域、すなわち、中心線Mに対して下方の領域に配置され、第2の電極対102の電極は、中心線Mと反応器ヘッド5との間の反応器シャフト3の領域、すなわち、中心線Mに対して上方の領域に配置される。
【0039】
図5に示すように、ただ1つの電極対101による構成も考えられる。この場合、この電極対101のそれぞれの電極は、少なくとも部分的に(理論上の)中心線Mと接触し、有利には、この中心線Mを横切って、中心線Mと反応器ヘッド5との間に形成された反応器シャフト3の上部領域内に、同様に中心線Mと反応器底部6との間に形成された反応器シャフト3の下部領域内に延在する。電極対101の電極は、主に、電極対101のそれぞれの電極のより大きな面積が反応器シャフト3の上部領域にあるように配置される。したがって、電極対101の電極、すなわち電極対101は、中心線Mに対して見て上部に向かってわずかにオフセットして配置される。
【0040】
電極対101、102、103ごとの電極の代替的な位置および代替的な数の電極対101、102、103が考えられる。これは、3つより多くの電極対101、102、103を反応器シャフト3内に配置することも可能であることを意味する。しかしながら、反応器シャフト3内の電極対101、102、103の数および位置以外も変化してもよい。
【0041】
図6に示すように、電極10、11、12、13、14、15はまた、異なる幾何学的構成を有してもよい。例えば、四角形、特に長方形の電極18、19の使用と同様に、メッシュ電極16または円形電極17の使用が考えられる。電極16、17、18、19のサイズも異なっていてもよい。例えば、矩形の大面積電極19の寸法は、少なくとも2つ、特に3つ以上の矩形電極18のサイズを本質的に包含するようなものであってもよく、したがって、電極対を形成するために、反応器シャフト内に単独でまたは同じ幾何学的形状の電極19と共に配置されてもよい。反応器シャフト3内の複数の電極対101、102、103の使用または配置は、有利には、異なる軸方向温度ゾーンの確立を可能にする。したがって、移動床の粒子材料の異なる抵抗特性の場合、電界パラメータによる温度の制御された調整が有利に可能である。
【0042】
図7は、本発明の方法を説明するための本発明の反応器1の実施形態の例示的な温度プロファイルを示す。
図7の温度プロファイルは、例えば
図1および
図2に示すように、反応器1の基本的な構造と併せて説明される。温度は、温度プロファイルのx軸上にプロットされる。一例として指定されたしきい値は、800℃および1500℃である。長手方向Lにおける反応器シャフト3の軸方向範囲は、y軸上に示されている。
図7に示す熱発生は、本発明の反応器1のシャフト3の反応容積部34内で起こる。炭化水素含有流体40は、ここには示されていない反応器底部6の入口開口部/供給開口部を介して反応器シャフト3、特に反応器シャフト3の反応容積部34に導入され、移動床の粒子50は、ここには示されていない反応器ヘッド5の入口開口部/供給開口部を介して導入される。炭化水素含有流体40は、反応器底部6から反応器ヘッド5の方向に進行して反応器シャフト3を通って流れる。移動床の粒子50は、反応器ヘッド5から反応器シャフト3を通って反応器底部6の方向に進む反対方向に移動する。炭化水素含有流体40は、反応器シャフト3に入る前に既に予熱されていてもよい。可能な温度は800℃未満、特に本質的に約600℃である。しかしながら、炭化水素含有流体40は、予熱なしで反応器シャフト3に導入されることも考えられる。本質的に同時に、移動床の粒子50も反応器シャフト3内に導入され、反応器シャフト3を通って反応器底部6に至る途中で、第2の熱統合ゾーンW2、加熱ゾーンB、反応ゾーンRおよび第1の熱統合ゾーンW1を通って移動する。加熱ゾーンBと反応器ヘッド5との間に形成される第2の熱統合ゾーンW2において、移動床の粒子50は、反応器シャフト3内で予熱される。これは、加熱ゾーンBから来る加熱された水素含有ガス41から移動床の粒子50に伝達される熱エネルギーの伝達によって達成され、これは、ここには示されていない反応器ヘッド5内の出口開口部/排出開口部を介して反応器シャフト3から出る。その結果、第2の熱統合ゾーンW2では、気相から固相への熱/熱エネルギーの統合が有利に行われる。水素含有ガス41は、反応器シャフト3に導入された炭化水素含有流体40の熱分解の結果として形成される反応生成物である。熱分解は、有利には反応ゾーンRで、少なくとも部分的に加熱ゾーンBでも、有利には(また)反応ゾーンRと加熱ゾーンBの重複領域で行われる。熱分解、すなわち炭化水素の熱的な炭素および水素成分への解離、結果として炭化水素含有流体40からの炭素の分離を引き起こすために、約800℃の最低温度が必要である。この最低温度は、有利には、第1の熱統合ゾーンW1を通過した後に既に達成されている。この第1の熱統合ゾーンW1では、熱エネルギーは、反応器底部6への途中で加熱ゾーンBを通って既に移動した移動床の積載粒子51から、加熱ゾーンBの方向に流れる炭化水素含有流体40に伝達される。その結果、第1の熱統合段階W1では、固相から気相への熱/熱エネルギーの統合が有利に行われる。炭化水素含有流体40が加熱ゾーンBに近づくほど、移動床の積載粒子51を介した熱エネルギーの一定の吸収のために、それらはより暖かくなる。移動床の積載粒子51は、本発明の文脈において、炭化水素含有流体40から炭素または炭素原子を既に取り込んだ粒子を意味すると理解される。炭素は、主に移動床の粒子50の上および間に堆積される。この堆積は、反応器シャフト3を通って重力的に移動する移動床または移動床の床の電気抵抗特性に影響を及ぼす。少なくとも四角形の反応器シャフト3内の例として
図1に示す電極10、11、12、13、14、15の配置、および結果として生じる電位場、ならびに移動床の流れ方向により、移動床または移動床の粒子50は、新しい粒子材料を加熱ゾーンBに移動させ、その結果、上述の抵抗特性に対する悪影響を防止する。本発明の文脈における加熱ゾーンBは、電極10、11、12、13、14、15が少なくとも部分的に、有利には完全に配置または配置されるゾーンを意味すると理解される。より具体的には、電極10、11、12、13、14、15は、それらの熱入力のために、加熱ゾーンBを生成する。電極10、11、12、13、14、15は、有利には、移動床の粒子50の流れを妨げない。約800℃の炭化水素含有流体の加熱に達すると、結果として熱分解プロセスが開始し、反応ゾーンRが形成される。これは、炭化水素含有流体40の炭素が、粒子50の方向に、または移動床の少なくとも部分的に既に積載粒子51の方向に移動することを意味する。したがって、この化学反応プロセスは、移動床の積載粒子51の熱エネルギーによる炭化水素含有流体40の加熱のみによって、加熱ゾーンBの上流、したがって電極10、11、12、13、14、15によって形成されるゾーンに到達する前に進行することもできる。加熱ゾーンB内では、移動床の粒子50、したがって炭化水素含有流体40も、有利には1200℃~1700℃の最高温度まで加熱される。この加熱ゾーンB内では、本質的にすべての炭素が炭化水素含有流体40から移動床の粒子50に移動するまで、熱分解が進行する。残っているのは、水素含有流体41および移動床の積載粒子または少なくとも部分的に積載粒子51である。したがって、炭化水素含有流体40が加熱ゾーンBをまだ完全に流れていなくても、化学反応が既に完了していることも考えられる。したがって、反応ゾーンRは、加熱ゾーンBの全長をさらに包含するのではなく、加熱ゾーンBと部分的にのみ重なることも考えられる。
【符号の説明】
【0043】
1 反応器
2 反応器シェル
3 反応器シャフト
4 反応器ライニング
5 反応器ヘッド
6 反応器底部
10、11、12、13、14、15 電極
16 メッシュ電極
17 円形電極
18 四角形/矩形電極
19 四角形大電極
20 反応器シェル壁
30、31、32、33 反応器シャフト壁/側壁
34 反応容積部
40 炭化水素含有流体
41 水素含有流体
50 移動床の非積載粒子
51 移動床の積載粒子
101、102、103 電極対
B 加熱ゾーン
L 長手方向
M 中心線
R 反応ゾーン
W1 第1の熱統合ゾーン
W2 第2の熱統合ゾーン
x、y 軸
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水素含有流体(41)の少なくとも製造のための炭化水素含有流体(40)の少なくとも熱分解のための反応器(1)であって、
前記反応器(1)が、反応器シェル(2)と、前記反応器シェル(2)内に配置された反応器シャフト(3)と、を有し、少なくとも前記反応器シェル(2)に対する前記反応器シャフト(3)の熱シールのための反応器ライニング(4)が、前記反応器シェル(2)と前記反応器シャフト(3)との間に配置され、
前記反応器シャフト(3)が、断面において少なくとも四角形の形状を有し、熱エネルギーの発生のための少なくとも1つの電極(10、11、12、13、14、15)が、前記反応器シャフト(3)の2つの互いに対向する側壁(30、31、32、33)の各々に配置される、
ことを特徴とする反応器(1)。
【請求項2】
前記反応器(1)の垂直長手方向(L)から見て、互いに対向する前記電極(10、11、12、13、14、15)が、前記反応器シャフト(3)の中央に少なくとも部分的に配置される、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の反応器(1)。
【請求項3】
前記反応器シャフト(3)の前記2つの互いに対向する側壁(30、31、32、33)の各々に配置された、熱エネルギーの発生のための少なくとも2つ以上の電極(10、11、12、13、14、15)があり、前記反応器(1)の垂直長手方向(L)から見て、前記反応器シャフト(3)の側壁(30、31、32、33)1つ当たりの前記電極(10、11、12、13、14、15)の少なくとも1つが、前記反応器シャフト(3)の中央に少なくとも部分的に配置されるか、または側壁(30、31、32、33)1つ当たりの前記電極(10、11、12、13、14、15)の各々が、前記反応器シャフト(3)の中央の少なくとも上方または下方に配置される、
ことを特徴とする、
請求項1または2に記載の反応器(1)。
【請求項4】
前記電極(10、11、12、13、14、15)が、少なくとも一部で断続的に均一であって、断面にわたって見られる電場を生成するように配置される、
ことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項5】
前記反応器(1)が、反応器ヘッド(5)および反応器底部(6)を有し、前記反応器ヘッド(5)および前記反応器底部(6)が各々、少なくとも流体または固
体を導入または排出することができる少なくとも断続的に閉鎖可能な供給開口部および排出開口部を有し、移動床を形成するために、粒子(50)が少なくとも断続的に前記反応器ヘッド(5)を通って前記反応器シャフト(3)に連続的に導入される、
ことを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項6】
前記反応器ヘッド(5)および前記反応器底部(6)が各々、少なくとも粒子を導入または排出することができる少なくとも断続的に閉鎖可能な供給開口部および排出開口部を有する、
ことを特徴とする、
請求項5に記載の反応器(1)。
【請求項7】
前記電極(10、11、12、13、14、15)が、前記反応器シャフト(3)を通って移動する前記移動床の前記粒子(50)の移動方向に対して少なくとも部分的に直交して整列した電場を生成するように配置される、
ことを特徴とする、
請求項5
または6に記載の反応器(1)。
【請求項8】
少なくとも水素含有流体(41)の少なくとも製造のための炭化水素含有流体(40)の少なくとも熱分解のための方法であって、前記炭化水素含有流体(40)が、粒子(50)からなる反応器(1)の移動床に向流で前記反応器の反応器シャフト(3)に供給され、
前記移動床または前記炭化水素含有流体(40)の少なくとも前記粒子(50)が、前記反応器シャフト内に配置された熱エネルギーの発生のための電極(10、11、12、13、14、15)によって、800~1600
℃の範囲内の規定温度まで加熱される、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記移動床または前記炭化水素含有流体(40)の少なくとも前記粒子(50)が、前記反応器シャフト内に配置された熱エネルギーの発生のための電極(10、11、12、13、14、15)によって、800~1400℃の範囲内の規定温度まで加熱される、
ことを特徴とする、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、請求項1から
7のいずれか一項に記載の反応器(1)内で実施される、
ことを特徴とする、
請求項
8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記移動床の前記粒子(50)が、前記反応器(1)の反応器ヘッド(5)から前記反応器(1)の反応器底部(6)まで前記反応器(1)の垂直長手方向(L)に重力的に下方に移動する、
ことを特徴とする、
請求項
8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電極(10、11、12、13、14、15)が、前記反応器シャフト(3)を通って移動する前記移動床の前記粒子(50)の移動方向に対して少なくとも部分的に直交して整列した電場を生成する、
ことを特徴とする、
請求項
8から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の熱統合ゾーン(W1)、反応ゾーン(R)、加熱ゾーン(B)、および第2の熱統合ゾーン(W2)が、前記反応器シャフト(3)内に形成され、その個々のゾーンが、前記反応器(1)の垂直長手方向(L)から見て、前記反応器(1)の前記反応器底部(6)から前記反応器(1)の前記反応器ヘッド(5)に進み、連続しており、一部で少なくとも部分的に重なり合っている、
ことを特徴とする、
請求項
8から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記熱分解が、少なくとも前記反応ゾーン(R)または前記加熱ゾーン(B)で起こる、
ことを特徴とする、
請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記炭化水素含有流体(40)が、前記加熱ゾーン(B)を既に通過し、前記炭化水素含有流体(40)に向流で移動する前記移動床の前記粒子(51)によって、前記第1の熱統合ゾーン(W1)で既に少なくとも予熱されている、
ことを特徴とする、
請求項
13または
14に記載の方法。
【請求項16】
前記反応器シャフト(3)に入る前記移動床の前記粒子(50)が、前記移動床の前記粒子(50)に向流で流れ、前記炭化水素含有流体(40)から生じ、前記加熱ゾーン(B)を既に通過して炭素を放出した、加熱された水素含有流体(41)によって、前記第2の熱統合ゾーン(W2)で既に少なくとも予熱されている、
ことを特徴とする、
請求項
13から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記移動床内の炭素含有粒子(51)が、前記反応器(1)の前記反応器底部(6)を介して前記反応器シャフト(3)から排出される、
ことを特徴とする、
請求項
8から
16のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】