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特表2024-511032単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法
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  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図1
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図2
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図3-3A
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図4
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図5
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図6
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図7
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図8
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図9
  • 特表-単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/707 20230101AFI20240305BHJP
   H04N 25/47 20230101ALI20240305BHJP
   H04N 25/773 20230101ALI20240305BHJP
   H01L 31/107 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
H04N25/707
H04N25/47
H04N25/773
H01L31/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557095
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 IB2022052486
(87)【国際公開番号】W WO2022195549
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021000006728
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッラ,フェデリカ アルベルタ
(72)【発明者】
【氏名】ザッパ,フランコ
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリーニ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】マドニーニ,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ブロンツィ,ダニーロ
【テーマコード(参考)】
5C024
5F149
【Fターム(参考)】
5C024CX03
5C024CY17
5C024CY47
5C024EX13
5C024GX14
5C024GY31
5C024GY45
5C024HX17
5C024HX23
5C024HX28
5C024HX29
5C024JX09
5C024JX46
5F149AA07
5F149XB38
(57)【要約】
本発明は、単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベントの検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法に関する。システム(100)は、ピクセル(10)の少なくとも1つのアレイ(M;MM)を備え、そのそれぞれは、光検出器(12)と、デジタル信号(Sd、...、Sd)を出力するフロントエンド電子機器(14)とを備える。システム(100)はさらに、アレイ(M;MM)の各ピクセル(10)に1つずつの複数のデジタル/アナログ変換器(21)と、アナログ加算器ノード(22)と、総合アナログ-デジタル変換器(24)と、を含む、少なくとも1つのイベント検出電子機器(20)を備える。複数のデジタル/アナログ変換器(21)は、それぞれのピクセル(10)から来るデジタル信号(Sd、...、Sd)を対応アナログ信号(Sa、...、Sa)に変換するように構成され、対応アナログ信号(Sa、...、Sa)は、振幅と持続時間で量子化される。アナログ加算器ノード(22)は、デジタル-アナログ変換器(21)から来るアナログ信号(Sa、...、Sa)を加算し、それによって合計アナログ信号(Sa)を得るように構成されている。総合アナログ-デジタル変換器(24)は、アナログ加算器ノード(22)に動作可能に接続された、少なくとも1つの第1比較器(25)および第2比較器(26)を備える。第1比較器(25)は、アナログ加算器ノード(22)の出力信号(Sout)を、同時計数時間窓内での、第1所定値以上のピクセル数のトリガに対応する第1閾値(TH)と比較するように構成されている。第2比較器(26)は、アナログ加算器ノード(22)の出力信号(Sout)を、同時計数時間窓内での、第2所定値以上のピクセル数のトリガに対応する第2閾値(TH)と比較するように構成されている。第1比較器(25)及び第2比較器(26)は、時間同時計数窓内で、アレイ(M;MM)への入射光子数がトリガされたピクセル(10)の第1値又は第2値以上になるとイベント検出を可能にするように、アナログ加算器ノードの出力信号(Sout)がそれぞれ第1閾値(TH)又は第2閾値(TH)を超えるとデジタル信号(Sd1F、...、SdyF)を出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピクセル(10)の少なくとも1つのアレイ(M;MM)を備える、光子(F)のイベントを検出するシステム(100)であって、各ピクセル(10)は、光検出器(12)、及びデジタル信号(Sd、...、Sd)を出力するフロントエンド電子機器(14)を備え、
前記システムは、少なくとも1つのイベント検出電子機器(20)を備え、前記少なくとも1つのイベント検出電子機器(20)は、
-前記アレイ(M;MM)の各ピクセル(10)に1つずつの複数のデジタル-アナログ変換器(21)であって、各複数のデジタル-アナログ変換器(21)は、それぞれの前記ピクセル(10)から来る前記デジタル信号(Sd、...、Sd)を、対応アナログ信号(Sa、...、Sa)に変換するように構成され、前記対応アナログ信号(Sa、...、Sa)は振幅及び持続時間で量子化される、複数のデジタル-アナログ変換器(21)と、
-前記複数のデジタル-アナログ変換器(21)が動作可能に接続されたアナログ加算器ノード(22)であって、前記アナログ加算器ノード(22)は、前記デジタル-アナログ変換器(21)から来る量子化アナログ信号(Sa、...、Sa)を加算して合計アナログ信号(Sa)を取得するように構成された、アナログ加算器ノード(22)と、
-前記アナログ加算器ノード(22)に動作可能に接続された少なくとも1つの第1比較器(25)及び第2比較器(26)を備える総合アナログ-デジタル変換器(24)と、
を備え、
前記第1比較器(25)は、前記アナログ加算器ノード(22)の出力信号(Sout)を、時間同時計数窓内での、第1所定値以上のピクセルの数のトリガに対応する第1閾値(TH)と比較するように構成され、
前記第2比較器(26)は、前記アナログ加算器ノード(22)の前記出力信号(Sout)を、時間同時計数窓内での、第2所定値以上のピクセルの数のトリガに対応する第2閾値(TH)と比較するように構成され、
前記第1比較器(25)及び前記第2比較器(26)は、前記時間同時計数窓内で前記アレイ(M;MM)への入射光子数が前記第1所定値又は前記第2所定値以上になるとイベント検出を可能にするように、前記アナログ加算器ノードの前記出力信号(Sout)がそれぞれ前記第1閾値(TH)又は前記第2閾値(TH)を超えると、デジタル信号(Sd1F、...、SdyF)を出力するように構成される、
システム(100)。
【請求項2】
前記第1閾値(TH)は、1以上のピクセル(10)の数のトリガに対応し、前記第2閾値(TH)は、2以上のピクセル(10)の数のトリガに対応する、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
ユーザによって設定された時間同時計数光子(F)の閾値(THtot)に達するとデジタルイベント信号(Sdevent)を生成するように構成された出力ブロック(28)を、好ましくはマルチプレクサ(28)を、さらに備える、請求項1又は請求項2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記アレイ(M;MM)の各ピクセル(10)は、前記イベントデジタル信号(Sdevent)の生成時に、トリガされたピクセル(10)のアドレス(Ip、...、IP)を共通アドレスライン(L)に送信するように構成されたイベント駆動型読み取り電子機器(14)を備える、請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項5】
各ピクセル(10)の前記イベント駆動型読み取り電子機器(14)は、ピクセル状態サンプリングブロック(16)、アドレス書き込みブロック(17)、及び前記アドレスライン(L)の状態を監視するブロック(18)を備え、前記ピクセル状態サンプリングブロック(16)、前記アドレス書き込みブロック(17)及び前記ブロック(18)は、グローバルプルアップ抵抗(Rpull-up)を備えるオープンドレインシリアルポート(19)と通信する、請求項4に記載のシステム(100)。
【請求項6】
n個を超えずn個だけのピクセル(10)がトリガされていることを確認するために、前記時間窓内でトリガされたピクセル(10)の数(n)に1単位増やした数と等しい数(n+1)のアドレスは、前記共通アドレスライン(L)に送信される、請求項4又は請求項5に記載のシステム(100)。
【請求項7】
アレイ(M)に分割されたマザーアレイ(MM)を備え、前記アレイ(M)の前記イベント検出電子機器(20)は、シームレスなカスケード接続で互いに接続され、カスケード接続の最後のイベント検出電子機器(20)は、前記出力ブロック(28)に接続される、請求項3から請求項6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記アレイ(M)の前記イベント検出電子機器(20)のカスケード接続は、Hツリーフラクタル再帰的分岐を有する経路で続く、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項9】
各ピクセル(10)の前記光検出器(12)は、SPADである、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項10】
光子イベントを検出する方法であって、前記方法は、並列に実行される以下のステップ、
-少なくとも1つのピクセルアレイ(M;MM)の1つ又は複数のピクセル(10)への光子の衝突に応じて少なくとも1つのデジタル信号(Sd、...、Sd)を生成するステップ(201;301)と、
-それぞれのトリガされたピクセルから来る前記デジタル信号(Sd、...、Sd)を対応アナログ信号(Sa、...、Sa)に変換するステップ(202;302)であって、前記対応アナログ信号(Sa、...、Sa)は振幅及び持続時間で量子化される、変換するステップ(202;302)と、
加算するステップ(203;303)であって、アナログ加算器ノード(22)で量子化アナログ信号(Sa、...、Sa)を加算し、アナログ合計信号(Sa)を取得する、加算するステップ(203;303)と、
前記アナログ信号が2つの閾値をそれぞれ超えると前記アナログ加算器ノード(22)の出力信号(Sout)を少なくとも2つのデジタル信号(Sd1F、...、SdyF)に変換するステップ(204;304)と、
を含み、
アナログ-デジタル変換ステップ(204;304)は、少なくとも以下のステップ、
-前記アナログ加算器ノード(22)の前記出力信号(Sout)を、時間同時計数窓内での、第1所定値以上のピクセルの数のトリガに対応する第1閾値(TH)と比較するステップと、
-前記アナログ加算器ノードの前記出力信号(Sout)を、時間同時計数窓内での、第2所定値以上のピクセルの数のトリガに対応する第2閾値(TH)と比較するステップと、
-前記時間同時計数窓内で前記アレイ(M;MM)への入射光子数が前記第1所定値又は前記第2所定値以上になるとイベント検出を可能にするように、前記アナログ加算器ノード(22)の前記出力信号が第1閾値又は第2閾値を超えるとそれぞれデジタル信号(Sd1F、...、SdyF)を生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記第1閾値(TH)は、1以上のピクセル(10)の数のトリガに対応し、前記第2閾値(TH)は、2以上のピクセル(10)の数のトリガに対応する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アレイ(M:MM)のピクセル(10)を選択的にアクティブにし、入射光子を感知するようにする初期のステップ(200;300)を含み、前記方法は、ユーザによって設定された閾値(TH、...、TH)の超過を確認するステップ(205;305)と、
前記閾値(TH、...、TH)を超えていない場合(205:NO;305:NO)、以下のステップ、
-少なくとも1つのピクセルアレイ(M;MM)の1つ又は複数のピクセル(10)への光子(F)の衝突に応じて少なくとも1つのデジタル信号(Sd、...Sd)を生成するステップ(201;301)と、
-変換するステップ(202;302)であって、それぞれのピクセルから来る前記デジタル信号(Sd、...Sd)を対応アナログ信号(Sa、...Sa)へと変換し、前記対応アナログ信号(Sa、...Sa)は振幅及び持続時間で量子化される、変換するステップ(202;302)と、
-加算するステップ(203;303)であって、アナログ加算器ノード(22)で前記アナログ信号(Sa、...Sa)を加算し、アナログ合計信号(Sa)を取得する、加算するステップ(203;303)と、
-前記アナログ加算器ノード(22)の出力信号(Sout)を少なくとも2つのデジタル信号(Sd1F、...、SdyF)に変換するステップ(204;304)と、
を実行することを継続することと、
そうでない場合(205:YES;305:YES)、前記アレイ(M;MM)のピクセル(10)を非アクティブにするステップ(206;306)と、
をさらに含む、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ユーザによって設定された光子(F)の時間同時計数閾値(THtot)に達するとデジタルイベント信号(Sdevent)を生成するステップ(207;307)をさらに含む、請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記デジタルイベント信号(Sdevent)の生成時に、トリガされたピクセル(10)のアドレス(Ip1、...、IPb)を共通アドレスライン(L)に送信するステップ(208;308)をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
-少なくとも1つのピクセルアレイ(M;MM)の1つ又は複数のピクセル(10)への光子(F)の衝突に応じて少なくとも1つのデジタル信号(Sd、...Sd)を生成するステップ(301)と、
-変換するステップ(302)であって、それぞれのトリガされたピクセルから来る前記デジタル信号(Sd、...Sd)を対応アナログ信号(Sa、...Sa)へと変換し、前記対応アナログ信号(Sa、...Sa)は振幅及び持続時間で量子化される、変換するステップ(302)と、
-加算するステップ(303)であって、アナログ加算器ノード(22)で量子化アナログ信号(Sa、...Sa)を加算し、アナログ合計信号(Sa)を取得する、加算するステップ(303)と、
-前記アナログ加算器ノード(22)の出力信号(Sout)を少なくとも2つのデジタル信号(Sd1F、...、SdyF)に変換するステップ(304)と、
を含む前記ステップは、マザーアレイ(MM)が分割された全ての前記アレイ(M)で繰り返され、
前記アレイ(M)の前記少なくとも2つの出力デジタル信号(Sd1F、...、SdyF)は、前記マザーアレイ(MM)が終わるまで、シームレスなカスケード構成による後続のアレイ(M)へと送信され、
前記マザーアレイ(MM)の前記少なくとも2つの出力デジタル信号(Sd1F、...、SdyF)は、出力ブロック(28)に送信され、前記出力ブロック(28)は、ユーザによって設定された時間同時計数光子(F)の閾値(THtot)に達するとデジタルイベント信号(Sdevent)を生成する、
請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光子検出システムの技術分野に関する。特に、本発明は、単一光子イベント及び少なくとも2光子の時間同時計数イベント(time coincidence event)の検出、位置特定、及び信号伝達のためのシステム及び方法に関する。
【0002】
本発明は、医療画像化、蛍光画像化、分光法、量子顕微鏡法、飛行時間(time-of-flight:ToF)の直接および間接的測定、および光を使用した物体距離検出(Light Detection and Ranging or Laser Imaging Detection and Ranging(光検出と測距、又はレーザ画像検出と測距):LiDAR)に特に適用可能であるが、これらに限定されない。たとえば自動運転車、測地学、高度測定などでの応用に使用される。
【背景技術】
【0003】
近年、多くの科学技術分野で光子検出において最先端の性能を提供できるデバイスに対する需要が高まっているため、光検出の分野は大幅な進歩を遂げている。
【0004】
非常に弱い光信号を検出する必要がある場合、単一光子検出器、例えば、単一またはSPAD(Single-Photon Avalanche Diode(単一光子アバランシェダイオード))アレイとして構成されたSPAD光検出器、またはSiPM(シリコン光電子増倍管)光検出器を使用することが知られている。
【0005】
SPAD光検出器は基本的にpn接合で構成されており、アバランシェ電圧よりも高い電圧で逆分極される(ブレークダウン)。光子がSPADに衝突すると、電子正孔対(electron-lacuna pair)が生成され、非常に急速(数百ps)に電荷が増倍するアバランシェプロセスが引き起こされ、(ミリアンペアオーダーの)巨視的な電流信号が出力される。この動作領域はガイガーモードとして定義される。SPADの静止状態と、電流信号の立ち上がりエッジと一致するアバランシェ増倍のトリガとの間の経過時間が、光子の到着時間を記録する。
【0006】
したがって、SPAD光検出器は光子トリガセンサのように動作し、単一の光子を無数の電子とギャップからなる巨視的な電流に変換する。
【0007】
従来技術によるSPAD光検出器のアレイは、通常、複数の相互に独立したピクセルを備え、各ピクセルは、SPAD光検出器、読み出し(リードアウト)またはフロントエンド電子機器(アナログまたはデジタル)、および該当する場合には、SPADに到着する光子の数を数えるように、又は、例えば、基準同期に関して各光子の飛行時間を測定することによって、到着時刻のタイムスタンプを実行するように構成された付加的な電子機器を備える。
【0008】
各ピクセルの出力は完全にデジタル処理され、読み出しノイズの影響を受けないSPAD光検出器の利点を維持し、光信号の(光子計数による)強度および/または(光子の到着時間を測定することによる)波形に関する情報を効果的に提供する。
【0009】
SPAD光検出器のアレイは、通常、各ピクセルの行ごとのスキャンによって読み取られる。これにより、光子が衝突した空間情報(x,y)、つまり、アレイのトリガされたピクセルの位置を保持することが可能になる。例えば、各ピクセルのカウンターが既知の順序で読み取られるため、2次元の2D強度マップ、つまり検出された光子の位置(x,y)と数、または3次元の3Dマップ、つまり検出された光子の位置(x,y)と到着時間tまたはアレイのピクセルからのオブジェクトまでの距離z、を再構築することが可能になる。
【0010】
SPAD光検出器のアレイの出力は通常、デジタルバスであり、所定のフレームレートでピクセルコンテンツ(検出された光子の数やその到着時間など)を提供する。
【0011】
SPADアレイには、読み出しノイズに対する耐性と空間解像度、つまり光子が衝突したアレイのピクセルの位置に関する情報を保存できるという利点があるにもかかわらず、いくつかの欠点がある。
【0012】
第一に、これらのアレイは完全にデジタルであるため、アレイに当たる光子の時間同時計数または時間相関の現象を検出できない。この問題は通常、アレイの各ピクセルに、光子にタイムスタンプを付けるように構成されたタイミング電子機器を組み込むことによって解決される。そして、検出された光子のタイムスタンプが処理され、検出された光子の同じタイムスタンパを持つピクセルが識別される。
【0013】
その結果、SPADアレイの各ピクセルにはかなり複雑なタイミング電子機器が必要となり、アレイのフィルファクター、つまりピクセルの全領域に対するSPADのアクティブな光子感受性領域の比率が損なわれる。データの後処理ステップも必要である。
【0014】
第二に、固定周波数フレームの取得は、光子束が低い状況での適用では不利である。これは、システムが無駄なデータ、例えば、入射光子の証拠のないフレームまたは有用なデータのないピクセルが多いフレームなど、で過負荷になり、消費電力、送信されるデータ量、処理されるデータ量、したがって読み出しチャネルの帯域幅、記憶メモリの利用可能性、マイクロプロセッサの必要な検索および記憶作業などに悪影響を及ぼすからである。これらのタイプの適用では、予想されるイベント(事象)が(後工程ではなく)チップ上で直接検出できる場合には、イベント駆動型の読み出しアプローチを使用するのが便利である。イベントは、例えば、1つのピクセルでの1つの光子の検出、2つの異なるピクセルでの2つの光子の同時検出、またはN個の異なるピクセルでのN個の光子の検出などである。
【0015】
単一光子イベントを検出し、空間解像度を維持し、イベントによって駆動されるように構成されたSPADアレイについては、例えば、C. Niclass、M. Sergio、およびE. Charbonによる2006年第32回欧州ソリッドステート回路会議議事録(Proceedings of the 32nd European Solid-State Circuits Conference)556~559ページ「A CMOS 64×48 Single Photon Avalanche Diode Array with Event-Driven Readout」、C. Niclass、M. Soga、H. Matsubara、S. Kato、およびM. Kagamiによる2013年IEEEソリッドステート回路ジャーナル(IEEE Journal Of Solid-State Circuits)Vol.48、No.2の559~572ページ「A 100-m Range 10-Frame/s 340×96-Pixel Time-of-Flight Depth Sensor in 0.18-μm CMOS」、およびA. Berkovich、T. Datta、およびP. Abshireによる2015年IEEE回路およびシステムに関する国際シンポジウム(ISCAS)(IEEE International Symposium on Circuits and Systems)の1110~1113「A scalable 20×20 fully asynchronous SPAD-based imaging sensor with AER readout」に記載されている。
【0016】
SiPMは、単一のピクセルのように動作するマイクロセルのアレイで構成されるアナログ光検出器である。各マイクロセルにはクエンチング抵抗を備えたSPADが含まれており、SPADの出力とアレイ全体に共通のノードとの間に接続されている。クエンチング抵抗により、光子がマイクロセルに衝突したときに生成される電子正孔対によって生成されるアバランシェ増倍を止めることが可能となる。このようにして、マイクロセルはその後の光子の入射を迅速に検出できるようになる。
【0017】
SiPMの出力信号は通常、単一のアナログ電流によって与えられる。このアナログ電流は、各マイクロセルの出力アナログ電流の合計に等しく、光子の検出によって発生するため、SiPMの全てのマイクロセルに入射する光子の数の関数となる。
【0018】
SiPMには、すべてのSPADのアクティブ領域の合計によって与えられる大きなアクティブ領域を提供できるという利点と、何個の光子が個別または同時に異なるマイクロセルを駆動したか、つまり、光子数分解、に関する情報を提供できるという利点がある。実際、出力アナログ電流の振幅を測定することによって、光検出器に同時に(またはほぼ同時に)衝突した光子の数を知ることができる。
【0019】
したがって、SiPMはイベント駆動型の検出器であり、1つ以上のSPADがトリガされたときのみアナログ電流を供給し、光子の同時計数(photon coincidence)、つまり、いくつかの光子がいくつかの複数のマイクロセルにほぼ同時に衝突したときの検出に特に適している。
【0020】
ただし、SiPMには多くの利点があるにもかかわらず、主にアナログの性質に関連した多くの欠点がある。
【0021】
実際、SiPMは高い読み出しノイズの影響を受ける。さらに、どのSPADに光子が当たったかを知ることはできないため、検出された光子に関連付けられた空間情報(x,y)が失われる。この理由により、SiPMは単一のピクセルとして動作する。さらに、共通ノードが寄生容量と漏れ電流で過負荷になり、到着時間と検出された光子の数を正確に決定することが困難になるため、SiPMは簡単には拡張可能(つまり、増加し続けるマイクロセルの数まで拡張可能)ではない。さらに、サイズが大きくなるにつれて伝播遅延が発生し、光検出器に同時に入射する複数の光子の同時計数を正確に検出する能力が制限されることになる。
【0022】
例えば、A. Munteanらによる2018年IEEE原子核科学シンポジウムおよび医用イメージングに関する国際会議(NSS/MIC)議事録(IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference Proceedings)の1~3ページ「Fully Integrated State-of-the-Art Analog SiPM with on-chip Time Conversion」に、単一光子イベントを識別するように構成された拡張可能なアナログSiPMについて記載されている。
【0023】
読み出しノイズを除去または低減するために、デジタルSiPMがよく使用される。デジタルSiPMでは、各マイクロセルにクエンチング抵抗の代わりにデジタルフロントエンド回路が設けられ、アバランシェ増倍がSPADでトリガされるたびにデジタル信号を生成する。一方、制御ロジックはアバランシェを抑制し、所定の時間後にSPADを再アクティブ化する。各マイクロセルのデジタル出力は単一のデジタルノード、通常はOR論理ポート、に送信され、最初に検出された光子と同期したデジタル信号を生成する。
【0024】
アナログSiPMと同様に、デジタルSiPMは単一ピクセルのように動作し、アレイのどのSPADが入射光子によってトリガされたかについての空間情報を提供しない。
【0025】
マイクロセルのアレイ全体またはマイクロセルのマクロ領域内の光子の同時計数イベントを識別するように構成されたデジタルSiPMは、例えば、T. Frach,G. Prescher,C. Degenhardt,R. de Gruyter,A. Schmitz及びR. Ballizanyによる2009年IEEE原子核科学シンポジウム国際会議(NSS/MIC)記録(IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record)の1959~1965ページ「The digital silicon photomultiplier - Principle of operation and intrinsic detector performance」に記載されている。
【0026】
最先端のSiPMアレイ、すなわち、各ピクセルがアナログまたはデジタルのSiPMで構成されるアレイも知られている。このようなアレイの例は、M. Perenzoni,D. Perenzoni及びD. Stoppaによる2017年IEEEソリッドステート回路ジャーナルVol.52、No.1の151~160ページ「A 64×64-Pixels Digital Silicon Photomultiplier Direct TOF Sensor With 100-MPhotons/s/pixel Background Rejection and Imaging/Altimeter Mode With 0.14% Precision Up To 6 km for Spacecraft Navigation and Landing」、及びA. Carimattoらによる2018年12月IEEEソリッドステート回路レターVol.1、No.12の241~244ページ「Multipurpose, Fully Integrated 128×128 Event-Driven MD-SiPM With 512 16-Bit TDCs with 45-ps LSB and 20-ns Gating in 40-nm CMOS Technology」で知られている。
【0027】
欧州特許第3341755号明細書(EP3341755B1)には、隣接するピクセルの同時相互作用が非常に狭い同時計数窓内で発生した場合にその相互作用を記録するように構成された光子計数装置が記載されている。この装置は、遠く離れたピクセル間の相互作用を検出できず、空間情報を提供しない。
【0028】
欧州特許出願公開第3502636号明細書(EP3502636A1)には、光子の時間同時計数イベントをカウントおよびタイムスタンプするための解決策が記載されている。この解決策は、SiPM光検出器に非常に似ており、複数の光子の時間同時計数イベントに関する空間情報は提供しない。
【0029】
上述のアナログのみまたはデジタルのみの検出器の欠点を克服する試みとして、アナログ-デジタルの混合システムが提案されている。
【0030】
米国特許出願公開第2019/0259792号明細書(US2019/0259792A1)には、SPADアレイにおける2つ以上の光子の時間同時計数を検出するためのアナログデジタル混合システムが記載されている。この混合システムは単一の共通加算器ノードを有し、これはアレイ内のピクセル数を大幅に制限し、全体的な信頼性とノイズ耐性が損なわれる。さらに、アレイの全てのピクセルは、SiPMに似た単一の全体的な検出器として動作するため、入射光子の空間情報は保存されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】欧州特許第3341755号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3502636号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0259792号明細書
【発明の概要】
【0032】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することにある。
【0033】
具体的には、本発明の目的は、ノイズに対する耐性を維持しながら、所定の時間窓内での、単一光子イベント及び少なくとも2つの光子の時間同時計数イベントの両方をオンチップで直接検出するように構成された、光子を検出するためのシステムおよび方法を提供することにある。
【0034】
本発明の目的はまた、データ送信、処理、および記憶におけるボトルネックを最小限に抑えながら、検出信号を処理するための計算リソースを最適化できる、光子を検出するためのシステムおよび方法を提供することにある。
【0035】
本発明の目的はまた、光子の検出においてピクセルアレイの空間解像度を維持するように、すなわち、光子が検出された位置に関する空間情報を提供するように構成された、光子を検出するためのシステムおよび方法を提供することにある。
【0036】
本発明の目的はまた、システムの性能を損なうことなくシステムを拡張できるようにする、モジュール式の光子を検出するためのシステムを提供することにある。
【0037】
本発明のこれらおよび他の目的は、本説明の不可欠な部分を形成する添付の特許請求の範囲の特徴を組み込んだ光子を検出するためのシステムおよび方法によって達成される。
【0038】
第1の態様によれば、本発明は、少なくとも1つのピクセルアレイを備える、光子のイベントを検出するシステムを対象とし、各ピクセルは光検出器と、デジタル信号を出力するフロントエンド電子機器とを備える。
【0039】
さらに、検出システムは、少なくとも1つのイベント検出電子機器を備え、イベント検出電子機器は、
-アレイの各ピクセルに1つずつの複数のデジタル-アナログ変換器であって、各デジタル-アナログ変換器は、それぞれのピクセルから来るデジタル信号を対応アナログ信号に変換するように構成され、対応アナログ信号は振幅と持続時間で量子化される、複数のデジタル-アナログ変換器と、
-複数のデジタル-アナログ変換器が動作可能に接続されたアナログ加算器ノードであって、アナログ加算器ノードは、デジタル-アナログ変換器から来るアナログ信号を加算し、それによって合計アナログ信号を取得するように構成されている、アナログ加算器ノードと、
-アナログ加算器ノードに動作可能に接続された少なくとも1つの第1比較器及び第2比較器を備える総合アナログ-デジタル変換器と、
を含み、
第1比較器は、アナログ加算器ノードの出力信号を、時間同時計数窓内での、第1所定値以上のピクセルの数のトリガに対応する第1閾値と比較するように構成され、
第2比較器は、アナログ加算器ノードの出力信号を、時間同時計数窓内での、第2所定値以上のピクセルの数のトリガに対応する第2閾値と比較するように構成され、
第1比較器及び第2比較器は、時間同時計数窓内でアレイへの入射光子数が第1所定値又は第2所定値以上になるとイベント検出を可能にするように、アナログ加算器ノードの出力信号がそれぞれ第1閾値または第2閾値を超えると、デジタル信号を出力するように構成される。
【0040】
この特性の組み合わせ、特に光子検出のデジタル及びアナログの混合処理の連鎖がシステム内に存在することにより、単一光子イベントと複数光子の時間同時計数イベントのオンチップでの位置特定及び信号伝達を提供しながら、SPADに特有のノイズ耐性を維持することができる、光子を検出するシステムが得られる。さらに、読み出しはイベント駆動であるため、システムは、単一光子イベントまたは2つ以上の光子の時間同時計数イベントが検出された場合にのみ、出力データを、例えば外部(オフチップ)電子機器に送信し、その結果、イベント発生のシグナリングが駆動され、有用なデータのみがオフチップ電子機器に信号伝達されて送信されるため、システムレベルでのリソースの最適化が行われる。
【0041】
一実施形態では、第1閾値は、1以上のピクセル数のトリガに対応し、第2閾値は、2以上のピクセル数のトリガに対応する。
【0042】
一実施形態では、システムは、ユーザによって設定された時間同時計数の光子の閾値に達すると、イベントの検出を示すデジタル信号を生成するように構成された出力ブロックを、好ましくはマルチプレクサを備える。
【0043】
一実施形態では、アレイの各ピクセルは、イベント検出信号の生成時に、トリガされたピクセルのアドレスを共通アドレスラインに送信するように構成されたイベント駆動型読み取り電子機器を備える。
【0044】
一実施形態では、各ピクセルのイベント駆動型読み取り電子機器は、ピクセル状態サンプリングブロック、アドレス書き込みブロック、及びアドレスラインの共通状態を監視するためのブロックを備え、すべてのブロックは、グローバルプルアップ抵抗を備えるオープンドレインシリアルポートと通信する。
【0045】
一実施形態では、多数のアドレス、例えば時間窓内でトリガされたピクセルの数以上のアドレスが共通アドレスラインに送信される。これにより、アレイ内のピクセルの空間解像度を維持できるという利点がある。
【0046】
一実施形態では、システムはアレイに分割されたマザーアレイを備え、アレイのイベント検出電子機器はシームレスなカスケード接続で互いに接続され、カスケード接続の最後のイベント検出電子機器は出力ブロックに接続される。信号再生の追加の段が好適に回避され、マザーアレイのモジュール構造により、ピクセル及びマザーアレイの拡張性(スケーラビリティ)も確保される。
【0047】
一実施形態では、アレイのイベント検出電子機器のカスケード接続は、Hツリーフラクタル再帰的分岐を有する経路で続く。
【0048】
一実施形態では、アナログ加算器ノードはトランスインピーダンス増幅器を備える。
【0049】
一実施形態では、各ピクセルの光検出器はSPADである。
【0050】
第2の態様によれば、本発明は、光子を検出する方法にも向けられており、方法は、以下のステップ、
-少なくとも1つのピクセルアレイの1つ又は複数のピクセルへの光子の衝突に応じて少なくとも1つのデジタル信号を生成するステップと、
-それぞれのトリガされたピクセルから来るデジタル信号を、振幅と持続時間で量子化される対応アナログ信号に変換するステップと、
-アナログ加算器ノードで量子化アナログ信号を加算し、アナログ合計信号を取得する、加算するステップと、
-アナログ加算器ノードの出力信号を、アナログ信号がそれぞれの2つの閾値を超えた場合にそれぞれハイ論理値となる少なくとも2つのデジタル信号に変換するステップと、
を含み、
アナログ-デジタル変換ステップは、少なくとも以下のステップ、
-アナログ加算器ノードの出力信号を、時間同時計数窓内での、第1所定値以上のピクセル数のトリガに対応する第1閾値と比較するステップと、
-アナログ加算器ノードの出力信号を、時間同時計数窓内での、第2所定値以上のピクセル数のトリガに対応する第2閾値と比較するステップと、
-時間同時計数窓内でアレイへの入射光子数が第1所定値又は第2所定値以上になるとイベント検出を可能にするように、アナログ加算器ノードの出力信号が第1閾値又は第2閾値を超えた場合にそれぞれデジタル信号を生成するステップと、
を含む。
【0051】
一実施形態では、第1閾値は1以上のピクセル数のトリガに対応し、第2閾値は2以上のピクセル数のトリガに対応する。
【0052】
一実施形態では、この方法は、アレイのピクセルを選択的にアクティブにし、入射光子を感知するようにする初期のステップを含み、方法は、ユーザによって設定された閾値の超過を確認するステップと、
閾値を超えていない場合、以下のステップ、
-少なくとも1つのピクセルアレイの1つ又は複数のピクセルへの光子の衝突に応じて少なくとも1つのデジタル信号を生成するステップと、
-それぞれのピクセルから来るデジタル信号を、振幅及び持続時間で量子化される対応アナログ信号に変換するステップと、
-アナログ加算器ノードでアナログ信号を加算し、それによってアナログ合計信号を取得する、加算するステップと、
-アナログ加算器ノードの出力信号を少なくとも2つのデジタル信号に変換するステップと、
を実行することを継続することと、
そうでなければ、閾値を超えた場合、アレイ内のすべてのピクセルを、再び入射光子を感知するようにアクティブにするのを所望されるまで非アクティブにするステップと、を含む。
【0053】
一実施形態では、方法は、ユーザによって設定された光子の時間同時計数閾値に達すると、イベントの検出を示すデジタル信号を生成するステップをさらに含む。
【0054】
一実施形態では、方法は、イベント検出信号の生成時およびピクセルが非アクティブ化されている間、トリガされたピクセルのアドレスを共通アドレスラインに送信するステップをさらに含む。
【0055】
一実施形態では、方法は、アレイに分割されるマザーアレイに適用され、マザーアレイが分割されるすべてのアレイに対して並行して実行される以下のステップ、
-少なくとも1つのピクセルアレイの1つ又は複数のピクセルへの光子の衝突に応じて、少なくとも1つのデジタル信号を生成するステップと、
-それぞれのピクセルから来るデジタル信号を、振幅と持続時間で量子化される対応アナログ信号に変換するステップと、
-アナログ加算器ノードでアナログ信号を加算し、それによってアナログ合計信号を取得する、加算するステップと、
-アナログ加算器ノードの出力信号を少なくとも2つのデジタル信号に変換するステップと、
を含み、
アレイの少なくとも2つの出力デジタル信号は、マザーアレイが終わるまで、シームレスなカスケード構成による後続のアレイへと送信され、
マザーアレイのハイ論理値の少なくとも1つのデジタル出力信号は、出力ブロックに送信され、出力ブロックは、ユーザによって設定された時間同時計数光子の閾値に達するとイベントデジタル信号を生成する。
【0056】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明は、非限定的な例として提供され、添付の図面に示される特定の例を参照して以下に説明される。これらの図面は、本発明の様々な態様および実施形態を示し、様々な図面における構造、構成要素、材料および/または同様の要素を示す参照符号は、必要に応じて同様の参照符号で示される。
【0058】
図1図1およびその一部の図1Aは、それぞれ、従来技術による全デジタルSPAD光検出器のアレイと、詳細なアレイの各ピクセルの構成とを概略的に示す。
図2図2およびその一部の図2Aは、それぞれ、従来技術による全アナログSiPM光検出器と、詳細なアレイの各マイクロセルの構成とを概略的に示す。
図3図3およびその一部の図3Aは、それぞれ、本発明による光子のイベントを検出するシステムと、詳細なアレイの各ピクセルの構成とを概略的に示す。
図4図4は、図3のシステムのイベントを検出するためのイベント電子機器の想定される実施形態の回路図を示す。
図5図5は、本発明による、アレイへのシステムのモジュール分割とマザーアレイのレベルまでのイベント検出電子機器の繰り返しの概略図を示す。
図6図6は、本発明による光子のイベントを検出するためのシステムの想定されるモジュール構造の概略図を、基本ブロックまたはアレイの回路図とともに示す。
図7図7は、図5の光子イベントを検出するシステムのモジュールアレイ分割のイベント検出電子機器のHツリーフラクタル再帰的分岐によるルーティングの概略図を示す。
図8図8は、本発明によるイベント駆動型読み出し電子機器を概略的に示す。
図9図9は、単一ピクセルアレイシステムの場合における、本発明による光子のイベントを検出する方法のステップのフローチャートを示す。
図10図10は、モジュールアレイ構造を有するシステムの場合における、本発明による光子のイベントを検出する方法のステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明はさまざまな修正および代替構成が可能であるが、説明のために提供されるいくつかの実施形態について以下に詳細に説明する。
【0060】
いずれの場合も、本発明を記載された特定の実施形態に限定する意図はなく、逆に、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内にあるすべての修正、代替および同等の構造を網羅することを意図していることを理解されたい。
【0061】
したがって、以下の説明では「例えば(e.g.)」、「等(etc.)」、「又は(or)」の使用は、別段の指示がない限り、制限のない非排他的な代替手段を示す。「また(also)」の使用は、別段の指示がない限り、「含むがこれに限定されない」ことを意味する。「含む(include)/備える(comprise)」の使用は、別段の指示がない限り、「含む/備えるがこれらに限定されない」ことを意味する。
【0062】
図1を参照すると、従来技術によるSPAD光検出器のアレイが示されている。
【0063】
参照符号1で示されるアレイは、多数の相互に独立したピクセル2を備える。各ピクセル2は、SPAD光検出器3と、フロントエンド電子機器4と、例えばそれぞれのSPAD3上での光子Fの到着時間を測定するように構成された時間-デジタル変換器(time-to-digital converter:TDC)5からなる処理電子機器と、を備える。
【0064】
上記したように、光子FがSPADに衝突すると、電子正孔対が生成され、これにより電荷のアバランシェ増倍が引き起こされ、巨視的な電流が生成される。この電流は、フロントエンド電子機器4によってデジタル信号に変換される。したがって、各ピクセル2は、SPAD3での光子Fの到着時間を示すデジタル出力Ud...Ud(bはデジタル出力のビット数を示す)を生成し、デジタル出力Ud…Udは、アレイ1の出力に位置されるバスに送信される。
【0065】
代わりに、図2は、従来技術によるSiPM光検出器を示す。
【0066】
概して参照符号6で示されるSiPM光検出器は、マイクロセル7のアレイを備える。各マイクロセル7は、アレイ1を参照して上記したSPAD3と完全に同様のSPAD光検出器8をクエンチング抵抗Rと直列に備え、その機能は、上記したように、光子がマイクロセル7のSPAD8に衝突したときに生成される電子正孔対によって生成されるアバランシェ増倍を停止すること、およびマイクロセル7が新しい入射光子を検出できるようにすることである。特に、クエンチング抵抗Rは、各SPAD8と共通ノード9との間に接続され、共通ノード9は、すべてのSPAD8に対する単一の共有加算器ノードとして機能する。したがって、SiPM6の出力は、光子Fが当たったすべてのマイクロセル7の出力アナログ電流Ua、...、Uaのアナログ合計和Uatotとなる。
【0067】
図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態による光子のイベントを検出するためのシステムが示されている。
【0068】
概して参照符号100で示されるシステムは、ピクセル10のアレイMを備え、各ピクセルは、以下にさらに詳細に説明するように、光検出器12、好ましくはSPAD、と、フロントエンド電子機器14と、アレイの光子によってトリガされたピクセルの空間位置に関する情報を提供するように構成されたイベント駆動型読み出し電子機器15を含む。
【0069】
以下では、SPAD光検出器について言及するが、説明する内容は、目的に適している限り、異なるタイプの光検出器にも適用されることが理解される。たとえば、SPADの代替として、出力情報をデジタル化した後、アナログ光検出器(線形検出器としても知られる)を使用することもできる。
【0070】
SPAD12が光子Fに当たった各ピクセル10は、それぞれのSPAD12のアクティブ化と同期してデジタル信号Sd、...、Sd(xはアレイMに存在するSPADの数を示す)、及び当たったピクセル10のアドレスIp、...、Ip(bはアドレスのビット数を示す)を出力する。当該アドレスはアドレスラインLに送信される(図8参照)。
【0071】
以下に詳細に説明するように、システム100の出力は、単一光子イベントの検出および2つ以上の光子の時間同時計数の検出の多数のデジタル信号であり、好ましくは、好ましくは数ナノ秒程度の事前定義された時間窓内でトリガされたピクセルのアドレスをアドレスラインLで提供する。
【0072】
システム100はまた、以下で詳細に説明するように、時間同時計数窓内でアレイM全体に分布する2つ以上の光子の時間同時計数イベントおよびオンチップの単一光子イベントを検出するように構成されるイベント検出電子機器20を含む。システム100によって検出される時間同時計数光子の数は、ユーザによって随時設定される。
【0073】
イベント検出電子機器20は、本質的に、アレイMのピクセル10間で共有される検出器ノードを構成し、光子F(単一光子イベント)または複数の光子F(複数光子の時間同時計数イベント)がいつ、それぞれ、1つ又は複数のSPAD12を駆動したかを識別し、その結果、それぞれのピクセル10のそれぞれの出力デジタル信号Sd、...、Sdが生成される。
【0074】
トリガされたSPAD12は、アレイM内のどこにでも存在し得、それによって光子Fの時間同時計数イベントの検出はアレイM全体にわたって無差別に発生し、したがって隣接するピクセル10、アレイMの一部、または任意の想定されるピクセル10のグループに限定されない。
【0075】
図4に詳細に示されているように、イベント検出電子機器20は、アレイMの各ピクセル10に1つずつの互いに並列に接続された複数のデジタル-アナログ(D/A)変換器21と、複数のデジタル-アナログ変換器21に動作可能に接続されたアナログ加算器ノード22と、アナログ加算器ノード22に動作可能に接続された総合アナログ-デジタル(A/D)変換器24と、を備える。
【0076】
SPAD12に光子Fが衝突したピクセル10のデジタルフロントエンド電子機器14の出力デジタル信号Sd、...、Sdは、それぞれの量子化アナログ信号Sa、...、Saを出力する、複数のデジタル-アナログ変換器21のそれぞれのデジタル-アナログ変換器21に、例えば電圧制御電流発生器(すなわち、MOSトランジスタ)に、入力として提供される。
【0077】
図2を参照して上述した既知のタイプのSiPM光検出器とは異なり、量子化アナログ信号Sa、...、Saは、SPAD12によって生成される電流ではなく、調整可能な持続時間および振幅を有する明確に定義された信号である。これにより、信号振幅を電子ノイズ限界を十分に上回る値に設定できるため、図1を参照して説明した、SPAD光検出器のアレイに特有の読み出しノイズに対する耐性が維持されるという利点がある。
【0078】
デジタル-アナログ変換器21の量子化出力アナログ信号Sa、...、Saは、フィードバック抵抗Rを備える演算増幅器23を備える、好ましくはトランスインピーダンス増幅器(transimpedance amplifier:TIA)の形態を有するアナログ加算器ノード22への入力として提供される。具体的には、デジタル-アナログ変換器21から来る単一の量子化アナログ信号Sa、...、Saは、アナログ加算器ノード22で加算され、同様に量子化されたアナログ合計信号Saを生成する。
【0079】
同時計数窓の持続時間は、信号Sd、...、Sdの(プログラム可能な)持続時間と、したがってSa、...、Saの(プログラム可能な)持続時間と、一致し、好ましくは数ナノ秒程度である。同時計数窓内で同時に検出された光子のみが、複数光子の時間同時計数イベントとして検出され得る、合計がSaとなる信号Sa、...、Saとなる。
【0080】
デジタル信号Sd、...、Sdの持続時間、したがって量子化アナログ信号Sa、...、Saの持続時間、及びそれに対応して時間同時計数窓の持続時間が、アナログ加算器ノード22におけるアナログ合計信号Saの振幅に応じて調整されると、時間同時計数窓内で同時にトリガされたピクセル10の数を区別することが可能である。
【0081】
この目的のために、アナログ合計信号Saは、トランスインピーダンス増幅器TIAによって出力アナログ信号Soutに変換され、出力アナログ信号Soutが総合アナログ-デジタル変換器24に入力される。
【0082】
具体的には、総合アナログ-デジタル変換器24は、アナログ合計信号Saの振幅に応じて、したがって対応する時間同時計数窓内で、光子イベントの数を識別するように構成された、第1比較器25及び第2比較器26を備える。
【0083】
より具体的には、第1比較器25は、第1の値以上のピクセル10の数Nの同時トリガに対応する第1閾値THを有し、図示の例ではN≧1である一方、第2比較器26は、第2所定値以上のピクセルの数Nの同時トリガに対応する第2閾値THを有し、図示の例ではN≧2である。
【0084】
アナログ加算器ノード22の出力アナログ信号Soutは、第1比較器25および第2比較器26においてそれぞれ第1閾値THおよび第2閾値THと比較される。
【0085】
したがって、Sout>THである場合、すなわちトランスインピーダンス増幅器TIAの出力アナログ信号Soutが第1閾値THを超える場合、これは1以上のピクセル10の数の同時トリガに対応しており、第1比較器25は、時間同時計数窓内の少なくとも1つの光子イベントを示す、デジタル信号Sd1Fを出力する。Sout>THでもある場合、すなわち、トランスインピーダンス増幅器TIAの出力アナログ信号Soutが第2閾値THも超える場合、これは2以上のピクセル10の数の同時トリガに対応しており、第2比較器26は、時間同時計数窓内の少なくとも2つの光子の時間同時計数イベントを示す、ハイ論理値デジタル信号Sd2Fを出力する。
【0086】
換言すれば、出力アナログ信号Soutが第1閾値THを超えるが閾値THを超えない場合、単一光子イベントを示す1つのデジタル信号Sd1Fのみが生成されるが、出力アナログ信号Soutが第1閾値TH及び第2閾値THの両方を超える場合、少なくとも2つの光子同時計数イベントを示す、ピクセル10によって生成されたデジタル信号Sd、...、Sdと同じ持続時間を有する2つの信号Sd1F、Sd2Fが生成される。システム100の出力デジタル信号は、ユーザによって設定されるデジタルイベント信号Sdeventであって、第1閾値THの超過(少なくとも1つの光子イベントの検出)または第2閾値THの超過(少なくとも2つの光子の時間同時計数イベントの検出)に対応するデジタルイベント信号Sdeventであり、出力ブロック28によって生成される(図7参照)。
【0087】
図示された実施形態では2つの比較器が記載されているが、イベント検出電子機器20は、2つよりも多い数の比較器を備え、それぞれの比較器は、最大THまで増える閾値を有し、nは、検出したい同時計数光子の数であり(想定される実施形態では、閾値は1とnの間のすべての値を含む)、本発明の保護の範囲内に含まれる。この場合も、システム100の出力デジタル信号は、ユーザが設定した閾値の超過に対応するものとなる。当然のことながら、これはアレイMの非アクティブ領域の占有の増加とエネルギー消費の増加につながる。
【0088】
図5から図7は、モジュール式でスケーラブルな構造を有する、光子イベントを検出するためのシステム100を示す。このような場合、システム100は、複数のアレイMに分割されたマザーアレイMMを備え、各アレイMには自機のイベント検出電子機器20が設けられ、イベント検出電子機器20はシームレスにカスケード接続で互いに接続される。
【0089】
より具体的には、図5を参照すると、マザーアレイMMのアレイMは、対応するデジタル信号Sd、...、Sdを生成し、これらの信号は、入力としてそれぞれのイベント検出電子機器20に送信される。各イベント検出電子機器20内で、デジタル信号Sd、...、Sdは、デジタル-アナログ変換器21によって対応するアナログ信号Sa、...、Saに変換され、これらの信号は、それぞれのアナログ加算器ノード22で加算される。各アナログ加算器ノード22の出力アナログ信号Soutは、入力としてそれぞれの総合アナログ-デジタル変換器24に送信され、総合アナログ-デジタル変換器24は、多数のデジタル信号Sd1F、...、SdyFを出力し(ここで、yは、生成された出力信号の数を示す)、それぞれは、総合アナログ-デジタル変換器24のそれぞれの比較器の閾値の超過に対応する。閾値を超えるためには、トリガが同時に発生する必要がある。つまり、ユーザが設定した時間窓内でトリガが発生する必要があり、その持続時間はデジタル信号Sd、...、Sdの持続時間と、したがってアナログ信号Sa、...、Saの持続時間と一致する。
【0090】
各イベント検出電子機器20の出力デジタル信号Sd1F、...、SdyFは、そして、マザーアレイMMが終わるまで、入力として別のイベント検出電子機器20へとカスケードで送信される。
【0091】
イベント検出電子機器20のカスケード接続の端部で、出力ブロック28は、イベントの発生時にデジタルイベント信号Sdeventを生成する。これは、マザーアレイMM全体で少なくともTHtot個の同時計数光子に達すると理解され、ここでTHtotは、ユーザにより設定された時間同時計数光子の数に対応する閾値である。出力ブロックは、例えば、カスケード接続の最後のイベント検出電子機器20の正しい出力信号を選択する、マルチプレクサ28によって実装され得る。一例として、マルチプレクサ28の出力信号Sdeventは、第1閾値THの超過(少なくとも1つの光子イベントの検出)に対応する信号、又は第2閾値THの超過(少なくとも2つの時間同時計数光子のイベントの検出)に対応する信号であってもよい。
【0092】
モジュール式でスケーラブルなシステム100の特に好ましい実施形態が図6および図7に示されている。
【0093】
システム100は、好ましくはCMOS技術で作られた、96×96ピクセルのマザーアレイMMを備える。マザーアレイMMのピクセル数10は、システム100の電子機器の良好な性能を確保しながら、最大数のSPAD12を有するように選択された。もちろん、96×96ピクセルのマザーアレイMMに関する以下の記載は、異なるサイズのマザーアレイにも当てはまる。
【0094】
次に、マザーアレイMMは12×12ピクセルのアレイM12に分割された。各アレイM12のピクセル10は、上記され、図4を参照して説明されたタイプのそれぞれのイベント検出電子機器20に接続されている。
【0095】
したがって、各アレイM12のイベント電子機器20は、アレイM12の各ピクセル10に1つずつの複数のデジタル-アナログ変換器21と、アレイM12のすべてのピクセル10に共通のアナログ加算器ノード22と、アナログ加算器ノード22に動作可能に接続された総合アナログ-デジタル変換器24と、を備える。もちろん、マザーアレイMMは、異なるピクセル数を有するアレイMに分割され得る。
【0096】
上述したように、マザーアレイMMの各アレイM12のイベント検出電子機器20は、それぞれのデジタル-アナログ変換器21を通じて、光子が当たったピクセル10の出力デジタル信号Sd、...、Sdを、振幅と強度が量子化された対応アナログ信号Sa、...、Sa(その持続時間は、時間同時計数窓の持続時間を決定する)に変換できる。当該量子化アナログ信号Sa、...、Saは、アナログ加算器ノード22で加算され、アナログ合計信号Saが得られる。アナログ合計信号Saは、その後、出力アナログ信号Soutに変換される。
【0097】
そして、最後のアナログ-デジタル変換が総合アナログ-デジタル変換器24で実行され、アナログ-デジタル変換器24の1、2、...、nのそれぞれの比較器の閾値の、時間同時計数窓内での超過に対応する多数のハイ論理値デジタル信号Sd1F、...、SdyFが生成される。
【0098】
アナログ加算器ノード22においてすべての量子化アナログ信号Sa、...、Saを加算するために、デジタル-アナログ変換器21(例えば、電圧制御電流発生器を用いて実装され得る)が並列に接続され、したがって、相互に接続された生成器の数に比例した信号を生成する。
【0099】
さらに、アレイM12の大きさは、加算器ノード22における寄生容量Cparが、アナログ合計信号Saの、及び出力アナログ信号Soutの高速電子処理及び高速立ち上がり/立ち下がりエッジを可能にするように十分小さいことを保証するように選択される。このようにして、タイミング情報、すなわち時間同時計数窓の持続時間およびアナログ-デジタル変換器24の閾値を超える時点、は損なわれない。
【0100】
上述したように、マザーアレイMMを構成するアレイは、それぞれのイベント検出電子機器20がシームレスなカスケード構成によって動作可能に接続されるような方法で互いに接続され得る。
【0101】
非限定的な例として、図7に示すように、再び上述の12×12ピクセルのアレイM12に分割された96×96ピクセルのマザーアレイMMを参照すると、4つの12×12ピクセルのアレイM12から来るデジタル信号Sd1F、...、SdyFは、4つの12×12ピクセルのアレイM12の合計から生じる24×24ピクセルのアレイM24のイベントの検出のために、電子機器20のアナログ加算器ノード22において加算され得る。
【0102】
完全に類似した方法で、4つのアレイM24から来るデジタル信号Sd1F、...、SdyFは、4つの24×24ピクセルのアレイM24の合計から生じる48×48ピクセルのアレイM48のイベントの検出のために、電子機器20のアナログ加算器ノード22において加算され得、マザーアレイMMのイベントを検出するために、図7のマザーアレイMMの中心に位置する電子機器20まで続く。
【0103】
最後に、アレイマザーMMのイベント検出電子機器20は、マルチプレクサ28に動作可能に接続され、マルチプレクサ28は、例えばTH、TH、...THの中から選択される、ユーザによって設定された閾値THtotに等しい時間窓内での多数の同時計数光子の検出時にデジタルイベント信号Sdeventを出力する。
【0104】
これらのピクセル数の選択は、アレイM(この例ではアレイM12)における漏れ電流と寄生容量の問題と、デジタルからアナログ及びアナログからデジタルへのカスケード変換の全体の段数との間の調整の結果であり、これにより、イベントと対応出力信号Sdeventの生成との間に遅延が発生し、これは段数の関数である。
【0105】
具体的には、システム100のマザーアレイMMのアレイM間の信号の伝播における不一致及び遅延を最小限に抑えるために、アレイMのイベント検出電子機器20間のシームレスなカスケード接続のために、Hツリーフラクタル再帰的分岐を有するルーティングが実行された。
【0106】
このようなHツリーフラクタル再帰的分岐は、図7に明確に示されており、各12×12ピクセルのアレイM12のイベント検出電子機器20は、12×12ピクセルのアレイM12の中心に配置され、同様に、各24×24ピクセルのアレイM24のイベント検出電子機器20は、24×24ピクセルのアレイM24の中心に配置され、各48×48ピクセルのアレイM48のイベント検出電子機器20は、各48×48ピクセルのアレイM48の中心に配置され、以下同様である。
【0107】
このようにして、各イベント検出電子機器20を後続のイベント検出電子機器20に接続するすべての経路を同一にでき、異なる時間遅延(skew:スキュー)の影響を受けないようにできるという利点がある。実際、Hツリー形状は、カスケードイベントの検出のための、各総合アナログ-デジタル変換器24(その位置がどこであれ)の出力から電子機器20のデジタル-アナログ変換器21の入力までの経路を等化する。
【0108】
Hツリーの枝に沿って伝わる信号は、総合アナログ-デジタル変換器24の比較器の出力デジタル信号である。これにより、電子ノイズの影響をより受けにくいデジタル信号のみを長い経路(抵抗的及び容量的に)上で好適に伝播することが可能になる。
【0109】
アレイMのイベント検出電子機器20が、又はモジュール式でスケーラブルな構造を有するシステム100の場合においてマザーアレイMMが分割されたアレイMのイベント検出電子機器20のカスケードが、少なくとも1つの光子イベント又は2つ以上の光子時間同時計数イベントを検出したとき、光子Fが当たったピクセル10のみがそのアドレスを伝達する。これにより、不必要なデータにリソースを浪費することなく、トリガされたピクセルの空間座標のみを提供できるという利点がある。
【0110】
この目的のために、図8に詳細に示すように、アレイMの、又はモジュール式でスケーラブルな構造を有するシステム100の場合にはマザーアレイMMが分割されたアレイMの、すべてのピクセル10が共有アドレスラインLに接続される。
【0111】
非限定的な例として、アドレスラインL上のピクセル10の通信は、CAN(Controller Area Network:コントローラエリアネットワーク)またはIC(Inter Integrated Circuit:集積回路間)シリアルバス通信プロトコルと同様の「ゼロウィン(zero-win)」シリアル通信プロトコルに基づくことができる。具体的には、最も低いアドレスを有するトリガされたピクセル10が、最初にアドレスラインLを制御し、そのアドレスを出力する。他のトリガされたピクセル10は、キューに入れられて順番にアドレスラインLを制御する。
【0112】
各ピクセル10の読み出し電子機器15は、3つの主なブロック、すなわち、ピクセル状態サンプリングブロック16、アドレス書き込みブロック17、及びアドレスラインLの状態を監視するブロック18を備え、すべてがグローバルRpull-up抵抗を備えたオープンドレイン(又はオープンコレクタ)シリアルポート19と通信する。オープンドレイン解決策は、ピクセル10の1つがその出力を導通状態にすると、アドレスラインLをローレベル(論理レベル0)にし、出力が非アクティブになると、アドレスラインLはグローバルプルアップ抵抗Rpull-upによってハイレベル(論理レベル1)に戻される。
【0113】
サンプリングブロック16は、好ましくは、1ビットレジスタを備えたサンプラを備え、ピクセル10の状態、すなわちピクセル10がトリガされているか否かをサンプリングするように構成される。
【0114】
書き込みブロック17は、好ましくは、例えば10ビットのシフトレジスタを備え、アドレスラインL上でトリガされたピクセル10のアドレスIp、...、Ipをシリアルに書き込むように構成される。
【0115】
監視ブロック18は好ましくは、アドレスラインLの状態を監視する有限状態機械によって構成され、アドレスラインLが別のトリガされたピクセル10のアドレスIp、...、Ipの書き込みで忙しい場合、書き込みは中断され、後続のデータ転送で繰り返される。
【0116】
具体的には、各ピクセル10は、そのアドレスの0に等しいビットを通信する必要がある場合にオープンドレインシリアルポート19をアクティブにし、代わりに1に等しいビットを通信する必要がある場合には、オープンドレインシリアルポート19を非アクティブのままにし、グローバルプルアップ抵抗Rpull-upがアドレスラインLを1にする。ピクセル10が1を通信している間に、(オープンドレインシリアルポート19をアクティブにして)別のピクセル10が0を通信する場合、第1ピクセル、つまり1を通信していたピクセルは、アドレスラインLが別のピクセル10によって0になったことを認識し、そのアドレスの通信が停止される。その結果、第2ピクセル10、すなわち0を通信したピクセル10は、そのアドレスが第1ピクセル10によっていかなる形でも変更されることなく、それ自体でアドレスラインLを引き受ける。
【0117】
モジュール式でスケーラブルなシステム100の場合、読み取り目的で、マザーアレイMMをアレイM(例えば、24×24ピクセルのアレイ、イベント検出目的で定められたアレイMの大きさとは必ずしも一致しない)に分割するという選択により、好適には、小型トランジスタを使用しながら、特定のクロック周波数でアドレスを通信できる時間内に、共有データラインを論理レベル1又は論理レベル0に設定することが可能である。
【0118】
本発明によるシステム100は、n+1個のアドレス、すなわち、ユーザが検出したい時間窓内の同時計数光子Fの数nに1を加えたものに等しい数のアドレスを通信するように構成されており、イベントが正確にn個の光子の同時計数イベント(この場合、有効なアドレスはn個だけになる)であるか、n個を超える光子の同時計数イベント(この場合、有効なアドレスはn+1個になる)であるかを後工程で識別できる。
【0119】
例えば、ユーザが2つの光子の時間同時計数を知りたい場合、システムはアドレスラインLで3つのアドレスを通信する。実際には、一対の時間同時計数光子Fの位置を検出するためには、同時計数光子の割合が低いことを考慮すると、原理的には2つのアドレスIp,...,Ipで十分であるが、例えば、周囲の光から又は入射光なしにトリガされたイベントから来る、スプリアスな光子の想定される割合が高いことを考慮すると、2つ以上のアドレス、例えば3つのアドレスを有することが好ましい。これは、スプリアスなイベントによって測定が無効になっているかどうかを確認するためである。換言すれば、測定は、第3アドレスがどのピクセルアドレスでも想定され得ない値に対応する(つまり、有効なアドレスではない)場合にのみ有効であり、これは、時間同時計数窓内でスプリアスな第3イベントが発生していないことを意味する。
【0120】
100MHzの基準クロックを考慮すると、アレイMからの、またはモジュール式でスケーラブルなシステム100の場合はマザーアレイMMが分割された各アレイMからの、データが読み取られる最終メモリバンクへのアドレスデータの転送は、約330ns必要である(10ビットアドレスで考慮)。この期間中、アレイM又はマザーアレイMMのアレイが非アクティブであるため、これは、いわゆる「デッドタイム」と呼ばれる。換言すれば、ピクセル10のすべてのSPAD12は非アクティブ化され、新たな入射光子Fを検出できない。これは、各ピクセルの状態(1がアクティブであり、0がアクティブではないことを示す単一のビットを用いる)を伝達することからなる標準的なアプローチでアレイを読み取る「デッドタイム」よりも大幅に改善されている。例として、96×96ピクセルのアレイM96及び100MHzの基準クロックの場合、アレイ全体のスキャンには92600nsかかるであろう。
【0121】
図9を参照して、本発明の好ましい実施形態による光子を検出する方法について説明する。この方法は、上述し、図3、4、及び8を参照して説明した単一アレイ検出システム100を使用して実行される。
【0122】
この方法はステップ200で始まり、アレイMのピクセル10は、選択的にアクティブ化され、すなわち、ピクセルは、選択的に光子を検出できるようにされる。
【0123】
したがって、この方法は、一連のステップ201、202、203、204、205を含み、これらのステップは、ピクセルが次のステップ206で非アクティブ化されるまで、ピクセルがトリガされるたびに連続的に実行されるか、又は、様々なピクセルによって並行して実行され得る。
【0124】
次に、方法はステップ200からステップ201に進み、その間に、光子Fが衝突したアレイMのピクセル10の数に等しいn個の、多くのデジタル信号Sd、...、Sdが生成される。
【0125】
ステップ201から、方法は次のように進む。
-ステップ202に進み、アレイMの出力デジタル信号Sd、...、Sdは、アレイMのイベント検出電子機器20の対応するデジタル-アナログ変換器21に入力され、それらの信号は、対応量子化アナログ信号Sa、...、Saに変換される。
-ステップ202からステップ203に進み、デジタル-アナログ変換器21の量子化された出力アナログ信号Sa、...、Saは、アレイMのイベント検出電子機器20のアナログ加算器ノード22に入力され、それらの信号は加算され、アナログ合計信号Saが得られ、これも量子化される。
-ステップ203からステップ204進み、アナログ加算器ノード22の出力アナログ信号Soutは、総合アナログ-デジタル変換器24によって、(たとえば、1光子、...,n光子による)それぞれの閾値の超過に対応する多数のデジタル信号Sd1F、...、SdyFに変換される。
【0126】
具体的には、アナログ加算器ノード22の出力アナログ信号Soutのアナログ-デジタル変換のステップは、出力アナログ信号Soutを、少なくとも第1閾値TH、例えば1以上のN個のピクセル10のトリガに対応するTHと、同時計数時間窓内の、2以上のN個のピクセル10のトリガに対応する第2閾値THと、イベント検出電子機器20の総合アナログ-デジタル変換器24の第1比較器25及び第2比較器26でそれぞれ比較することからなる。
【0127】
方法はステップ205に進み、ユーザによって設定された閾値を超えているかどうかを確認し、超えている場合(ステップ205:YES)、方法はステップ206に進み、アレイMのピクセル10が非アクティブ化される、すなわち、入射光子の影響を受けなくなり、ステップ201から205の並列実行が中断される。そうでない場合(ステップ205:NO)、方法はステップ201から205の実行が継続される。
【0128】
方法は、ステップ206からステップ207に進み、時間同時計数窓内での、ユーザによって設定された閾値THtotに等しい数の光子の検出に対応する、イベントシグナリングSdeventのデジタル信号が生成される。
【0129】
方法は、ステップ207からステップ208に進み、トリガされたピクセル10は、自機のアドレスを共通アドレスラインLに送信する。
【0130】
方法は、ステップ208からステップ200に戻り、アレイMのピクセル10がすべて再びアクティブ化される。
【0131】
図10を参照して、本発明の代替的な実施形態による光子を検出する方法について説明する。方法は、上述し、図5から図8を参照して説明したモジュール式でスケーラブルなバージョンの検出システム100を使用して実行される。
【0132】
方法はステップ300で始まり、マザーアレイMMのピクセル10が選択的にアクティブ化される。
【0133】
したがって、方法は、マザーアレイMMを分割した各アレイMを提供し(図10では、各アレイは、同一の連結されたブロックの並置によって示されている)、マザーアレイMMが終わるまでカスケードで処理を進める、一連のステップ301、302、303、304、305を提供し、これらのステップはピクセルがトリガされるたびに継続的に実行され、次のステップ306でピクセルが非アクティブ化されるまで、様々なピクセルによって並行して実行され得る。
【0134】
方法はステップ300からステップ301に進み、その間に、光子Fが衝突したアレイMのSPAD12の数に等しいn個の、多数のデジタル信号Sd、...、Sdが生成され、その結果、それぞれのピクセル10がトリガされる。
【0135】
ステップ301から、方法は次のように進む。
-ステップ302に進み、アレイMの出力デジタル信号Sd、...、Sdは、アレイMのイベント検出電子機器20の対応デジタル-アナログ変換器21に入力され、それらの信号は対応量子化アナログ信号Sa、...、Saに変換される。
-ステップ302からステップ303に進み、デジタル-アナログ変換器21の量子化された出力アナログ信号Sa、...、Saは、アレイMのイベント検出電子機器20のアナログ加算器ノード22に入力され、それらの信号は加算され、アナログ合計信号Saが得られ、これも量子化される。
-ステップ303からステップ304に進み、アナログ加算器ノード22の出力アナログ信号Soutは、総合アナログ-デジタル変換器24によって、それぞれの閾値の超過に対応する多数のデジタル信号Sd1F、...、SdyFに変換される。
【0136】
具体的には、アナログ加算器ノード22の出力アナログ信号Soutのアナログ-デジタル変換のステップは、出力アナログ信号Soutを、少なくとも第1閾値TH、例えば1以上のN個のピクセル10のトリガに対応するTHと、同時計数時間窓内の、2以上のN個のピクセル10のトリガに対応する第2閾値THと、イベント検出電子機器20の総合アナログ-デジタル変換器24の第1比較器25及び第2比較器26でそれぞれ比較することからなる。
【0137】
方法はステップ305に進み、ユーザによって設定された閾値を超えているかどうかを確認し、超えている場合(ステップ305:YES)、方法はステップ306に進み、マザーアレイMMのピクセル10が非アクティブ化され、ステップ301から305の並列実行が中断される。そうでない場合(ステップ305:NO)、ステップ301から305の実行が継続される。
【0138】
方法は、ステップ306からステップ307に進み、時間同時計数窓内での、ユーザによって設定された閾値THtotに等しい数の光子の検出に対応する、イベントシグナリングSdeventのデジタル信号が生成される。
【0139】
方法は、ステップ307からステップ308に進み、トリガされたピクセル10は、自機のアドレスを共通アドレスラインLに送信する。
【0140】
方法は、ステップ308からステップ300に戻り、マザーアレイMMのピクセル10が再びアクティブ化される。
【0141】
上記の説明から、上記した光子を検出するシステムおよび方法が提案された目標を達成できることは明らかである。
【0142】
したがって、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の保護範囲を超えることなく、図面を参照して説明された解決策に変更および変形を加えることができることは、当業者には明らかである。
図1
図2
図3-3A】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】