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特表2024-511036電気手術器具熱量計及び電気手術器具の電磁力出力を測定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】電気手術器具熱量計及び電気手術器具の電磁力出力を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240305BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20240305BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/18
G01K1/14 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557201
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022056752
(87)【国際公開番号】W WO2022194895
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】2103841.9
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリーンハル,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー
【テーマコード(参考)】
2F056
4C160
【Fターム(参考)】
2F056CL08
4C160JK03
4C160KK13
4C160KK70
(57)【要約】
本発明は、発電機によって給電される電気手術器具の電磁エネルギー出力を測定するための電気手術器具熱量計に関し、この電気手術器具熱量計は、電磁放射線を吸収するように構成された吸収材料を収容するための熱量計セルと、吸収材料の温度を測定するように構成された少なくとも1つの温度センサと、電気手術器具によって放射された電磁放射線が吸収材料によって吸収されるような位置に電気手術器具を保持するように構成された支持構造体とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機によって給電される電気手術器具の電磁エネルギー出力を測定するための電気手術器具熱量計であって、
電磁放射線を吸収するように構成された吸収材料を収容するための熱量計セル、
前記吸収材料の温度を測定するように構成された少なくとも1つの温度センサ、及び
前記電気手術器具によって放射される電磁放射線が前記吸収材料によって吸収されるような位置に前記電気手術器具を保持するように構成された支持構造体、
を含む、前記電気手術器具熱量計。
【請求項2】
熱量計基部をさらに含み、任意選択で、前記熱量計セルは前記熱量計基部に取り付けられる、請求項1に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項3】
前記熱量計セルは、前記熱量計基部に取り付けられたセルハウジング、前記セルハウジングに解放可能に取り付けられるように構成されたアタッチメント、及び前記吸収材料を受け入れて前記セルハウジング内に配置されるように構成されたセル容器を含む、請求項2に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項4】
前記セルハウジング及び/または前記セル容器は前記吸収材料に熱絶縁を与える、及び/または前記少なくとも1つの温度センサは前記セル容器内及び/または前記セル容器上に配置される、請求項3に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項5】
前記熱量計セルは、前記セルハウジングに取り付けられる第一電気コネクタ、及び前記アタッチメントに取り付けられ、前記少なくとも1つの温度センサと電気的に接続している第二電気コネクタを含み、任意選択で、前記セルハウジングへの前記アタッチメントの挿入は、前記第二電気コネクタを前記第一電気コネクタに接続する、請求項3または4に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項6】
前記熱量計セルは、前記熱量計セルを閉じるための蓋をさらに含み、任意選択で、前記蓋は、前記電気手術器具を前記吸収材料に挿入するための通路を含む、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具熱量計。
【請求項7】
前記吸収材料は液体または粉体であり、前記電気手術器具熱量計は、前記液体または前記粉体を撹拌するためのスターラーをさらに含み、任意選択で、前記スターラーは前記蓋に取り付けられる、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具熱量計。
【請求項8】
前記スターラーを動かすためのモータをさらに含み、任意選択で前記セルハウジングは前記モータを支持するためのモータブラケットをさらに含み、さらに任意選択で前記蓋は前記モータの運動を前記スターラーに伝達するための伝達装置を含む、請求項7に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項9】
前記吸収材料は液体または粉体であり、前記電気手術器具熱量計は、前記液体または前記粉体を撹拌するために前記熱量計セルを動かすように構成されたスターラーモータをさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項10】
前記吸収材料は固体であり、任意選択で前記少なくとも1つの温度センサは前記固体吸収材料内に配置される、請求項1から6のいずれか1項に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項11】
前記支持構造体は、前記熱量計基部によって支持され、
任意選択で、前記支持構造体は、
前記電気手術器具を直立位置に保持するための器具ガイドクランプ、及び
前記器具ガイドクランプを支持するためのスタンドであって、前記熱量計基部に取り付けられる、前記スタンド、
を含む、請求項2から10のいずれか1項に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項12】
前記電気手術器具の器具先端部を前記吸収材料内に繰り返し一貫して配置することを容易にするためのデプスゲージ機構をさらに含み、
任意選択で前記デプスゲージ機構は、
前記電気手術器具に取り付けられることができ、前記通路の直径よりも大きい外径を有するデプスゲージクランプ、及び
前記電気手術器具の前記繰り返し一貫した位置内で前記電気手術器具の遠位端部と前記蓋の上面との間の距離に対応する深さを有するデプスゲージソケット、
を含む、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具熱量計。
【請求項13】
前記デプスゲージソケットは、前記熱量計基部上に配置される、請求項12に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項14】
前記少なくとも1つの温度センサの測定に基づいて前記電気手術器具の前記電磁エネルギー出力を計算するように構成されたコントローラをさらに含み、
任意選択で、
前記コントローラは前記モータを制御するようにさらに構成される、及び/または
前記電気手術器具熱量計は少なくとも1つの制御コネクタを含み、前記少なくとも1つの制御コネクタは、前記コントローラと前記発電機との間に電気接続を設け、前記コントローラと前記発電機との間に電子通信をもたらすように構成される、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具熱量計。
【請求項15】
前記電気手術器具の前記電磁エネルギー出力の放出及び/または前記吸収材料の前記温度の前記測定を制御するために、前記コントローラ及び/または前記発電機に接続可能な外部ユーザインタフェースをさらに含む、請求項14に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項16】
前記コントローラに接続可能で、かつ前記発電機に接続可能な自動試験装置システムをさらに含み、任意選択で、前記自動試験装置システムは、自動熱量測定を実行するために前記コントローラ及び前記発電機と通信するように構成される、請求項14に記載の電気手術器具熱量計。
【請求項17】
前記セル容器内に配置される戻り電極であって、任意選択で電気的に接地される、前記戻り電極、及び/または
前記熱量計セル内に配置され、電磁放射線を検出するように構成された放射線検出器、及び/または
前記電気手術器具熱量計の周囲の周囲空気の温度を測定するように構成された周囲空気温度センサ、
をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具熱量計。
【請求項18】
前記電気手術器具の前記器具先端部の周囲に配置されるように構成され、電磁放射線の照射時に物性を局所的に変化させるように構成される感熱性充填材料をさらに含み、任意選択で、前記感熱性充填材料は、前記電磁放射線の強度及び/または持続時間に応じて物性を局所的に変化させるように構成される、先行請求項のいずれかに記載の電気手術器具熱量計。
【請求項19】
発電機によって給電される電気手術器具の電磁エネルギー出力を測定するための方法であって、
a)電気手術器具熱量計の熱量計セル内に所定量の吸収材料を充填することであって、前記吸収材料は電磁放射線を吸収するように構成される、前記充填することと、
b)前記電気手術器具によって放射された電磁放射線が前記吸収材料によって吸収されるような位置に前記電気手術器具を配置することと、
c)所定のタイムスパンの間、前記吸収材料内に電磁放射線を放射するように前記電気手術器具を操作することと、
d)前記吸収材料の温度変化を測定することと、
e)前記測定された温度変化に基づいて、前記電気手術器具によって放射された前記電磁放射線のエネルギーを計算することと、
というステップを含む、前記方法。
【請求項20】
前記ステップb)は、器具先端部をデプスゲージソケットに挿入することと、デプスゲージクランプが前記デプスゲージソケットの開口部と接触するように前記デプスゲージクランプを前記電気手術器具に取り付けることと、前記熱量計セルを蓋で閉じることと、前記デプスゲージクランプが前記蓋に当接するまで、前記器具先端部を前記蓋の通路に挿入することと、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップb)は、支持構造体を使用して、前記電気手術器具を前記熱量計セルに対して固定関係に保持することをさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップb)は、前記電気手術器具の導波管のエネルギー出力ポートを前記吸収材料の近くに配置することを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップc)は、前記吸収材料の前記温度が実質的に平衡温度に達した後に実行され、任意選択で、前記温度変化は前記実質的に平衡温度に関して記録される、請求項19から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記吸収材料は液体または粉体であり、前記方法は、前記熱量計セル内で前記液体または前記粉体を撹拌することをさらに含む、請求項19から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ステップc)及び前記ステップd)は、開始信号を受信した後に自動的に実行され、任意選択で、前記電気手術器具熱量計のコントローラ及び前記発電機は相互に接続され、さらに任意選択で、前記開始信号は、前記コントローラ及び/または前記発電機に接続される外部ユーザインタフェースによって、または前記コントローラ及び/または前記発電機に接続される自動試験装置システムによって発生する、請求項19から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ステップd)は前記ステップc)の前記実行を検出するために使用される、及び/または
前記熱量計セル内の電磁放射線の存在は検出され、任意選択で、前記ステップc)、前記ステップd)及び/または前記ステップe)の前記実行は、前記検出された電磁放射線の強度が所定の閾値を上回る場合に停止される、または禁止される、及び/または
前記ステップe)の前記計算は前記電気手術器具熱量計の周囲の周囲空気の温度、スターラーが前記液体または前記粉体を撹拌することによって導入される前記エネルギー、及び/または前記電気手術器具の前記熱吸収にさらに基づいている、請求項19から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
感熱性充填材料は前記電気手術器具の前記器具先端部の周囲に配置され、前記電気手術器具が操作され、または前記ステップb)及び前記ステップc)が実行され、前記電気手術器具の前記器具先端部の放射パターンは、前記器具先端部によって放射された前記電磁放射線の前記照射によって誘起される前記感熱性充填材料の物性の局所的な変化によって識別される、請求項19から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップe)の前記計算は、前記感熱性充填材料の比熱容量及び/または前記感熱性充填材料の前記質量にさらに基づいている、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機によって給電される電気手術器具の電磁力出力を測定するための電気手術器具熱量計に関する。さらに、本発明は、発電機によって給電される電気手術器具の電磁力出力を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの手術に対する最新のアプローチには、内視鏡、腹腔鏡、またはその他のCreo Medical Ltd.CROMA(商標)発電機に代表され、単に「発電機」と省略されることが多いマイクロ波電源、及びCreo Medical Ltd.MicroBlate(商標)に代表され、単に「器具」もしくは「電気手術器具」と省略されることが多い手術器具を用いて送達される、通常10W~1000Wのマイクロ波電力の使用が含まれるが、これに限定されない。
【0003】
外科医のコマンドでは、マイクロ波電力は、標的部位の臨床アウトカム、例えば、組織の焼灼/凝固または切断(切除または切開)に影響するために、連続波(CW)としてか、最大数分間の短パルスのバースト中かいずれかで発電機によって供給される。一貫した手術効果を達成するには、器具によって放出される電力量がその設計仕様に準拠していることを知る必要がある。発電機によって供給され、負荷不整合または接続不良などによって実際に反射されて発電機に戻る電力量を動的に監視することが可能であるが、現在、手術器具先端部で放出される電力量を測定する容易に利用できるいかなる手段もない。例えば、接続ケーブルの電気結合に未知の損傷がある、または何らかの他のばらつきがある可能性がある。また、器具の製造中の材料のばらつきにより、器具に組み込まれるマイクロ波の減衰(損失)が指定のものよりも高くなり得る、または低くなり得ると、おそらく標的組織ではなく接続ケーブルの望ましくない加熱が引き起こされる可能性がある。これらの場合、手術器具が標的組織に一貫性のない電力レベルを送達し、外科医に望ましくない影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
最も一般的には、本発明は、発電機によって給電される電気手術器具の電磁エネルギー出力を測定するために使用されることができる電気手術器具熱量計を提供する。さらに、本発明は、熱量計を使用して電気手術器具の電磁エネルギー出力を測定する方法を提供する。
【0005】
手術自体の最中に器具が発する電力を検出する直接的な方法はないが、本明細書に記載のマイクロ波手術器具熱量計を製造ならびに検証及び妥当性確認(V&V)演習中に使用して、器具組立体が設計値どおり、機能していること、または術後の状況で機能した可能性が高いことを確保し得ることが提案される。
【0006】
一般的に使用されるマイクロ波暗室装置に代表されるような、規則的な自由空間アンテナの性能を測定するのに利用できる方法は数多くあるが、マイクロ波電気手術で使用される器具は、吸収性の非空気媒体(通常は体組織)に電力を送達する器具に依存する。体組織は主に水からなり、マイクロ波電力を容易に吸収する。これはマイクロ波電気手術が基づいている原理である。ただし、この損失の多い媒体(水)に放出された電力の全吸収は、規則的な自由空間アンテナパターン測定が機能しないことを意味する。自由空間では、器具先端部は組織内にある場合と比べて大きいインピーダンス不整合を提示する可能性があり、放出された電力は組織に接触している場合とは根本的に異なる。また、自由空間では、アンテナの放射パターンはファーフィールドパターンによって主に決定されるが、損失の多い媒体では、特に媒体への電力の容量結合によって、ニアフィールドパターンがより有意になる。
【0007】
ここでは、マイクロ波電力を既知の持続時間、液体中に懸架された器具に印加する際の液体の温度上昇を測定するために、水またはその他の液体系の熱量計を組織アナログとして構築し、製造及びV&Vアクティビティをサポートすることが提案される。既知の質量の液体に電力が供給される持続時間を測定し、または把握し、その後液体の温度上昇を測定することにより、液体の比熱容量を使用してこれを変換し、液体に送達されるエネルギー量、及び器具によって送達される平均電力を推定することが可能になる。これにより、限定ではないが、以下のような定量的な性能分析が容易になる:
シミュレートされた性能データと器具との比較、
発電機と器具の遠位端部との間でどれだけの電力が失われているかを理解することによる器具の改善、
製造プロセスの信頼性を確保するためのバッチチェック、
器具の使用中に欠陥がないかどうかを計測する、術後の器具の品質検査、
破壊的または非破壊的な器具の研究及び開発、
一般的な妥当性確認及び検証、
Creo Medical Kamaptive(商標)プロトコルなど、業界標準及びプロプライエタリ制御プロトコルによる電気手術器具の自動試験、
他のメーカーの代替技術または競合技術との比較分析、
多様な電磁周波数を同時か順次かいずれかで送達し得る器具の測定、及び/または
器具の放射パターン表面上の様々な点で伝達される電力量を評価する、器具先端部の周囲にある感熱性材料または電磁場感応材料との組み合わせ。
【0008】
市販されている様々なタイプの熱量計には、主にボンブ熱量計及び反応熱量計がある。ボンブ熱量計は、食品などの物質の燃焼を制御し、温度上昇を測定することによって、それらのような物質の熱量を測定する。反応熱量計もまた、温度変化を測定することによって、化学反応による電力の出力を測定する。これらのバージョンの熱量計はどちらも、電気手術器具の電力の出力を測定することには特に適していない。ただし、様々なタイプ及びサイズの器具に、専用に設計された電気手術器具熱量計は、器具自体による熱吸収を考慮しており、自動試験のために(ネットワーク接続などにより)遠隔制御されることができる。
【0009】
電気手術器具熱量計は、発電機によって給電される電気手術器具の電磁エネルギー及び/または電力の出力を測定するために設けられる。電気手術器具熱量計は、熱量計セル、少なくとも1つの温度センサ、及び支持構造体を含む。熱量計セルは、吸収材料を収容するように構成され、この吸収材料は、電気手術器具によって放射される電磁放射線を吸収するように構成される。少なくとも1つの温度センサは、吸収材料の温度、特に吸収材料の一時的な変化を測定するように構成される。支持構造体は、電気手術器具によって放射される電磁放射線が吸収材料によって吸収されるような位置に電気手術器具を保持するように構成される。一実施形態では、この位置は、電気手術器具によって放射される電磁放射線の大部分、全部、またはかなりの部分が吸収材料によって吸収されること、例えば、電気手術器具によって放射される全部の電磁放射線が、この吸収材料によって完全に吸収されることを確保する。
【0010】
電磁エネルギー出力は、電気手術器具によって放射される電磁放射線のエネルギーに対応する。電磁力出力は、標的部位の組織を治療するために電気手術器具によって放射される電磁放射線の電力である。電磁力出力は、電磁エネルギー出力を電磁放射線の放射時間で除算したものである。電気手術器具熱量計は、電磁エネルギー出力及び/または電磁力出力を測定するように構成され得る。
【0011】
電磁放射線は、高周波放射線、及び/またはマイクロ波放射線、mm波放射線、及び/または赤外放射線であってもよい。電磁放射線のエネルギーは、発電機によって発生し、例えば同軸ケーブルなどの1つまたは複数のケーブルによって、電気手術器具に伝達される。したがって、発電機は電磁力を発生するための電源であり、電気手術器具は電磁力を標的部位に放出する。発電機、電気手術器具、及び/またはケーブルは、電気手術装置を形成することができる。上で論じたように、電磁力は組織を凝固させる、または切断するために使用され得る。
【0012】
電気手術器具は、体腔に挿入されることができるスコープ装置であってもよい。特に、電気手術器具の遠位端部は、標的組織を治療するために体腔に挿入され得る。この場合、電気手術器具は器具先端部を含んでもよく、この器具先端部では、所望の治療効果を得るために、電磁力が標的部位の標的組織内に放出される、または伝達される。あるいは、電気手術器具は導波管を含んでもよく、この導波管は、皮膚組織など、治療すべき組織より上に配置されるエネルギー出力ポートを有する。電磁放射線は、導波管のエネルギー出力ポートを出ると、治療される組織に衝突することで、所望の治療効果が得られる。
【0013】
電気手術器具熱量計は、電気手術器具から放射される電磁放射線を吸収し、それを熱に変換するための装置である。それによって、温度変化が誘起されると、測定され、電気手術器具によって放出されたエネルギー及び/または電力が計算される。
【0014】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は熱量計基部を含み、そこではさらに任意選択で、熱量計セルは熱量計基部に取り付けられる。
【0015】
熱量計基部は、ハウジングを含むことができ、電気手術器具熱量計の他の構成要素が取り付けられる基部構造体を形成する。ハウジングは、電気手術器具熱量計の外面に設けられることができる。熱量計基部及び/またはハウジングは、プラスチック材料または金属から作製され得る。
【0016】
熱量計セルは、電気手術器具によって放射される電磁放射線を吸収するために設けられる吸収材料を受け入れて収容するように構成される。吸収材料の熱容量は、既知である必要があり、電気手術器具の電磁力出力を計算するために使用される。
【0017】
吸収材料は、液体、固体粒子の粉体(例えば、粒状材料)、固体、気体及び/またはプラズマであってもよく、またはそれらを含んでもよい。液体は、電気手術器具によって通常放出される周波数範囲内で良好な吸収特性、及び熱量計の測定に有益な熱容量を有するため、吸収材料の好ましい実施形態であり得る。以下では、理解を容易にするために、「液体」への言及は、該当する場合、吸収材料を一般的に指すものとして理解されよう。
【0018】
マイクロ波周波数での動作では、液体の種類は適切な純度の水であってもよい。液体の選択はいずれか1種類に限定されないが、その器具が通常使用される組織のインピーダンスと同様である種類のものである必要がある。赤外線エネルギーを送達する器具を使用する場合、赤外光を高度に透過させることを可能にする純水ではなく、適切な赤外線吸収物質をセル容器に充填させることが適している場合がある。同様に、器具が約400kHzの低周波数のRF電力を送達する必要がある場合、導電性の生理食塩水を使用することが適している場合がある。
【0019】
熱量計セルは、熱量計基部に永久的または解放可能に固定されてもよい。例えば、熱量計セルはハウジングの穴またはソケット内に配置される。熱量計セルは開口部を有し、そこから液体を熱量計セルに挿入することができる。熱量計セルの全体的な構成は、ビーカーまたはカップのものであってもよい。
【0020】
熱損失が電気手術器具の電磁力出力の測定に悪影響を与えるため、熱損失を低減させるために熱量計セルを熱絶縁してもよい。換言すれば、電気手術器具によって放射される電磁放射線の吸収によって誘起される温度変化が、熱量計セルの熱損失によって著しく歪められないように、熱量計セルの熱絶縁を設ける。
【0021】
液体の温度を測定するために、1つまたは複数の温度センサを設ける。温度センサは液体に接触していてもよい。様々な異なる種類の温度センサ、例えばサーミスタまたは他の熱変換器を使用することができる。温度センサは、液体の温度を連続的に測定するように構成され得る。
【0022】
支持構造体は、電気手術器具によって放射される電磁放射線が熱量計セル内の液体によって吸収されるような位置に、電気手術器具を保持及び/または支持するように構成される。任意選択で、電気手術器具によって放射される電磁放射線は、液体によって完全にまたはほぼ完全に吸収される。この目的のために、支持構造体は、電気手術器具を解放可能に保持及び/または支持するように構成され得る。これは、測定中、電磁放射線を放射する電気手術器具の部分が液体内または液体の真上に位置決めされる位置で、電気手術器具が支持構造体に取り付けられることを意味する。例えば、支持構造体は、器具先端部が液体中に完全に挿入されるような方法で電気手術器具を保持する。電気手術器具が導波管を含む場合、エネルギー出力ポートは、エネルギー出力ポートで放射される実質的にすべての電磁放射線が液体に衝突するように、支持構造体によって液体の近く、または液体に接触して位置決めされる。エネルギー出力ポートは導波管内の開口部であってもよい。この導波管開口部は、導波管内を伝播する電磁放射線に対して材料が透過性であるカバーで覆われてもよい。
【0023】
任意選択の実施形態では、熱量計セルは、熱量計基部に固定して、または永久的に取り付けられるセルハウジング、セルハウジングに解放可能に取り付けられるように構成されたアタッチメント、及び液体を受け入れるように構成されセルハウジング内に配置されるセル容器を含む。
【0024】
セルハウジング、アタッチメント及びセル容器は、互いに挿入されることができるように互いに同心であってもよい。一般に、熱量計セルの構成要素は、互いに同軸で挿入されることができるように同心であってもよい。
【0025】
セルハウジングは、アタッチメントを保持するためのレセプタクルとして機能する。セルハウジングは、ハウジング内の止まり穴またはソケットであってもよく、流体を密封してもよい。セルハウジングは、アタッチメントをセルハウジングに解放可能に取り付けるための取り付け手段を含んでもよい。このアタッチメントはまた、セルハウジングの取り付け手段と係合する、対応する取り付け手段を含んでもよい。セルハウジングは、ハウジングの表面から突出してもよく、またはハウジングと同一平面にある。
【0026】
アタッチメントは、アタッチメント及びセルハウジングがユニタリ構成要素を形成するように、セルハウジングに永久的に固定されてもよい。しかしながら、セルハウジングはアタッチメントから係脱可能であってもよい。セル容器を含むアタッチメントは、セルハウジングに挿入され得る。
【0027】
アタッチメント及び/またはセル容器は、レセプタクル、ビーカー、またはカップとして形成され得、アタッチメント及びセル容器の両方の自由開口部が共通の外面を形成するように、セル容器がアタッチメントに挿入される。任意選択で、セル容器及びアタッチメントはそれらの間にギャップを画定し、接続領域を介した熱伝達を低減させるためにセル容器とアタッチメントとの間の接続領域は小さい。例えば、セル容器はその開口部に、アタッチメントの内側カラーと係合する外側カラーを有する。内側カラー及び外側カラーは外周部全体の周囲に延在し、アタッチメントとセル容器との間の唯一の接続を形成することができる。あるいは、内側カラー及び外側カラーは、外周部に沿った1つまたは複数の区間にわたってのみ延在する。例えば、内側カラー及び外側カラーは、互いに対向して配置された2つの接続手段を含む。
【0028】
セル容器は、アタッチメントの頂部の内側に永久的に設置され得、電気手術器具によって加熱される既知の固定質量の液体を保持する。セル容器は、液体から吸収される熱エネルギー量を減らすために、質量が小さくてもよい。また、防水性であり、液体を遮断し、放射線によって周囲に散逸される熱エネルギーの量を減らすことができる。真空フラスコ構成も同様に使用されることができるが、耐久性、低熱質量、及び剛性のため、機械的に薄いプラスチック絶縁材料が好ましい。アタッチメント及び/またはセル容器は、電気手術器具によって放射される電磁放射線及び/熱放射線を熱量計セル内に封じ込めるための反射性内面を有してもよい。
【0029】
セルハウジング及び/またはアタッチメントは、金属及び/または軽量プラスチック材料から作製され得る。
【0030】
任意選択の実施形態では、セルハウジング及び/またはセル容器は液体の熱絶縁を設ける。
【0031】
熱絶縁は、例えばアタッチメントとセル容器との間の空間を真空にする、上述の真空フラスコ構成によって設けられてもよい。あるいは、セル容器とアタッチメントとの間の空間に熱絶縁材料を充填してもよい。
【0032】
複数の異なるサイズのセル容器はそれぞれが同じアタッチメントによって支持されるように設けられることも可能である。このようにして、電気手術器具のサイズ及びエネルギー放出に合わせて選択される液体量を収容するようにセル容器のサイズを選択することができ、異なるサイズのセル容器をそれぞれアダプタによってセルハウジングに挿入することができる。これにより、様々なタイプの電気手術器具の測定が単純化される。
【0033】
任意選択の実施形態では、少なくとも1つの温度センサをセル容器内及び/またはセル容器上に配置する。
【0034】
温度センサは、このセンサが液体と接触するようにセル容器の内面の上に露出して配置されてもよい。あるいは、温度センサが液体内に配置されるように、温度センサはセル容器によって支持されてもよい。任意選択で、セル容器によって画定される空間内に分散される2つ以上の温度センサが設けられる。複数の温度センサが存在すると、液体が均一な温度分布であるかどうかを検出することが可能であるため、温度測定の精度が向上する。
【0035】
温度センサは電気温度センサであってもよく、温度センサへの電気接続を設けるためのワイヤを含む。ワイヤは、セル容器及びアタッチメントによって画定される空間内に延在することができる。例えば、温度センサは、温度センサの1つの側が液体と接触し、温度センサのもう1つの側がワイヤに接続され、セル容器及びアタッチメントによって画定された空間に対向するように、セル容器の壁内に配置される。
【0036】
任意選択の実施形態では、熱量計セルは、セルハウジングに取り付けられた第一電気コネクタと、アタッチメントに取り付けられ、少なくとも1つの温度センサと電気的に接続している第二電気コネクタとを含み、任意選択で、アタッチメントのセルハウジングへの挿入により、第一電気コネクタの第二電気コネクタを接続する。
【0037】
第一電気コネクタはソケットであってもよく、第二電気コネクタはプラグであってもよく、またはその逆であってもよい。第一電気コネクタはセルハウジングの底面内に配置され得、第二電気コネクタもアタッチメントの底面内に配置され得る。アタッチメントをセルハウジングに挿入すると、第二電気コネクタは第一電気コネクタに接続される、または挿入される。任意選択で、第一電気コネクタ及び第二電気コネクタは、セルハウジングとアタッチメントとの間の機械的接続、任意選択で、セルハウジングとアタッチメントとの間の唯一の機械的接続も設ける。
【0038】
第一電気コネクタと後述するコントローラとの間の電気接続を設けるために、ワイヤを第一電気コネクタに接続してもよい。第二電気コネクタを、1つまたは複数のワイヤを介して温度センサに電気的に接続し得る。
【0039】
任意選択の実施形態では、熱量計セルは、熱量計セルを閉じるための蓋をさらに含み、任意選択で、蓋は、電気手術器具を液体中に挿入するための通路を含む。
【0040】
蓋は、セル容器またはセル容器及びアタッチメントの開口部のみを閉じるように構成されてもよい。例えば、蓋は、セル容器、またはセル容器及びアタッチメントの組み合わせの上に配置されてもよい。好ましくは、蓋は基部部分及び外壁を有し、閉位置では外壁はセル容器及び/またはアタッチメントを取り囲み、基部部分はセル容器及びまたはアタッチメント上に載置される。この場合、外壁は(さらに)ハウジング及び/またはセルハウジング上に載置されてもよい。
【0041】
任意選択で、蓋は、熱容量の低い材料から作られる、及び/または反射面を含む。さらに、熱絶縁効果を高めるために蓋は中空であってもよい。これらの態様は、熱量計セルからの熱の損失を減らすのに役立つ。少なくとも1つの温度センサまたはいくつかの温度センサは蓋によって支持されてもよく、例えば、1つまたは複数の温度センサは蓋に直接または間接的に接続されてもよい。熱量計セル上に蓋を置くと、温度センサが液体中に浸される。この実施形態は、少なくとも1つの温度センサと1つのコントローラとの間の電子接続が蓋を通して配索され得るため、熱量計セルに第一及び第二電気コネクタを必要としない。代わりに、第一及び第二電気コネクタは、ハウジング上で、かつ蓋上に配置されてもよい。例えば、蓋が熱量計セル上に置かれる場合、第二電気コネクタは第一電気コネクタに挿入される。
【0042】
好ましくは、電気手術器具の電力出力は、熱量計セル上で蓋をした状態で測定される。したがって、蓋は、電気手術器具が通過できる通路を含んでもよい。任意選択で、通路の寸法は、その途中の通路の内面と電気手術器具の外面との間にギャップがない、またはわずかしかないように、電気手術器具の寸法に対応する。複数の蓋を設けることができることによって各蓋は異なる寸法の通路を有し、それにより各蓋の通路は測定すべき電気手術器具にアライメントされることができる。
【0043】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、液体を撹拌するためのスターラーをさらに備え、任意選択でスターラーは蓋に取り付けられる。
【0044】
スターラーは、液体内で発生した熱を均一に分散させるために設けられる。例えば、スターラーは器具先端部によって発生した熱を液体の周囲に分散させ、熱ポケットの形成を防ぐ。スターラーは、液体を垂直方向及び水平方向の両方で混合することができるだけでなく、液体から奪う熱エネルギーの量を減らすために質量が小さくてもよく、液体に与えられる摩擦エネルギーが測定されるエネルギーと比較して重要ではないほど十分に速度が低くてもよい。ソフトウェア及び較正を通じて、熱量計は最終的な電力及びエネルギーの結果から液体に与えられる機械的摩擦エネルギー成分を較正して減算することができるため、全体の測定がより正確になることができる。
【0045】
スターラーは、硬いヘリカルワイヤまたは小型インペラであってもよい。他のタイプのスターラーには、磁気結合スターラーまたは超音波スターラーが含まれるが、これらに限定されない。全体の熱質量、及び液体に与えられる摩擦運動エネルギーを最小にするという目的で、好ましい実施形態では軽量の機械的スターラーを使用することができる。
【0046】
スターラーは蓋によって支持されてもよい。したがって、スターラーは蓋に対して回転し得る。蓋は、スターラー、特にスターラーの軸を回転可能に支持するための手段を含んでもよい。スターラーは、通路からオフセットにあるが、スターラーが電気手術器具によって発生した熱を分散させるように通路に十分近くにあるように配置されることができる。
【0047】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、スターラーを動かすためのモータを含む。
【0048】
モータは電気モータであってもよく、スターラーを回転させるための回転運動を発生してもよい。モータは、モータによって発生する熱が液体の温度を上昇させないような位置に配置され得る。この目的のために、モータを熱絶縁材料で覆うことができる。
【0049】
任意選択の実施形態では、セルハウジングは、モータを支持するためのモータブラケットをさらに含む。
【0050】
モータブラケットはセルハウジングの外面上に配置されてもよい。モータブラケットは、電気モータをセルハウジングに取り付けるための任意の手段であり得る。
【0051】
任意選択の実施形態では、蓋は、モータの運動をスターラーに伝達するための伝達装置を含む。
【0052】
例えば、伝達装置は、モータの回転を伝達して、スターラーを回転させてもよい。伝達装置は、電気モータの回転をスターラーの軸に伝達するための1つ以上のギヤ、コグ、及び/またはベルトドライブを含んでもよい。代替または追加的に、伝達装置は、スターラーへのモータの磁気結合を含む。伝達装置は、モータの回転をスターラーに磁気的に結合することができる。伝達機構が外部から見えないように伝達機構を蓋内に収容してもよい。
【0053】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、液体または粉体を撹拌するために熱量計セルを動かすように構成されたスターラーモータをさらに備える。
【0054】
スターラーモータは電気モータであってもよく、熱量計基部に取り付けられてもよい。この場合、スターラーモータは熱量計セル全体を回転させてもよく、及び/または動かしてもよい。別の実施形態では、スターラーモータは、セルハウジングに取り付けられてもよく、アタッチメント、したがってセル容器を回転させるように構成されてもよい。この場合、アタッチメントはスターラーモータに解放可能に結合され得る。例えば、アタッチメントをセルハウジングに挿入する場合、アタッチメントは、スターラーモータの軸などのスターラーモータに結合される。別の実施形態では、スターラーモータの軸に取り付けられるスピニングディスクが設けられる。熱量計セル、アタッチメント、またはセル容器自体は、スピニングディスクに(例えば、解放可能に)取り付けられてもよい。例えば、スピニングディスクは、熱量計セル、アタッチメント、またはセル容器をスピニングディスクに解放可能に締結するための1つまたは複数のファスナを含んでもよい。
【0055】
例えば、スターラーモータは、セルハウジング内のアタッチメントを回転させることができる。しかしながら、スターラーモータは、熱量計セルを振盪させる、撹拌する、または前後方向の運動など、空間的に動かすように構成されてもよい。スターラーモータは、直線力または回転力(トルク)を発生し得る。
【0056】
セル容器は、セル容器の運動を液体の運動に変換する撹拌手段を含んでもよい。撹拌手段は、セル容器の運動に対して定常である1つ以上の撹拌する物体を含むことにより、撹拌する物体に対してセル容器内の液体が動いた結果、液体が撹拌される。例えば、撹拌する物体は蓋に取り付けられており、パドルの形状を有していてもよい。温度センサは、撹拌する物体上に配置されてもよい。代替または追加的に、撹拌する物体はセル容器に取り付けられてもよい。例えば、セル容器は、セル容器の内面から液体中に突出する突出部を含んでもよい。さらに代替または追加的に、撹拌手段はセル容器の形状によって設けられる。例えば、セル容器は、セル容器の回転により、液体が撹拌されるように、回転非対称な形状を有してもよい。セル容器は、セル容器が動いているときに液体を撹拌するランプ形状の底面(例えば、段差を形成する)を有してもよい。
【0057】
液体は、電気手術器具自体によって撹拌されてもよい。この目的のために、電気手術器具は液体中に挿入され、例えば支持構造体によって、熱量計セルの運動に対して定常に保持される。この場合、熱量計セルの運動により、液体の運動が誘発され、液体が電気手術器具に対して動くと、液体が撹拌される。
【0058】
蓋は、熱量計セル、特にアタッチメント及びセル容器が蓋に対して動く(回転する)ことができるように、熱量計基部に取り付けられることができる。蓋は、熱量計セル、特にアタッチメント及びセル容器と接触していない場合があり、蓋に対する熱量計セルの運動または回転を可能にする。
【0059】
任意選択の実施形態では、支持構造体は熱量計基部によって支持される。
任意選択で、支持構造体の全体または支持構造体の部分を熱量計基部に永久的に固定してもよい。したがって、支持構造体は電気手術器具熱量計の一部を形成する。これにより、熱量計セルでは支持構造体間に固定関係を有することが可能になり、液体中または液体上での電気手術器具の配置が単純化される。支持構造体は、熱量計基部のハウジングに固定されてもよい。あるいは、支持構造体は、熱量計基部に固定されなくてもよく、または熱量計基部に解放可能に固定されてもよい。
【0060】
支持構造体は、熱量計セル内の液体中または液体上に電気手術器具を配置及び/または支持するように構成及び/または制御されるロボットアームを含んでもよい。
【0061】
任意選択の実施形態では、電気手術器具を直立位置に保持するために器具ガイドクランプが設けられる。
【0062】
器具ガイドクランプは、電気手術器具を解放可能に支持または保持するための手段である。器具ガイドクランプは、電気手術器具の一部と解放可能に係合することができるクランプまたはブラケットを含むことができる。器具ガイドクランプは、電気手術器具の向きを維持するために、及び/または測定中に電気手術器具を支持するために設けられる。特に、支持構造体の器具ガイドクランプは、測定中に電気手術器具を液体中または液体上に保持するための唯一の機械的手段であり得る。あるいは、電気手術器具のケーブルまたは可撓性部分を支持するために器具ガイドクランプが設けられている間、器具先端部は、後述する別の機械的手段によって保持されてもよい。
【0063】
任意選択の実施形態では、器具ガイドクランプを支持するためのスタンドが設けられ、任意選択でスタンドは熱量計基部に取り付けられる。
【0064】
スタンドは、熱量計基部、特にそのハウジングから突出するロッド、バー、またはポールであってもよい。スタンドは垂直方向の向きを有してもよい。器具ガイドクランプはスタンドから水平方向に突出する場合がある。器具ガイドクランプは、スタンドに係脱可能に固定されるように構成されてもよい。例えば、器具ガイドクランプは、様々な高さでスタンドに取り付けられることができる。スタンド及び器具ガイドクランプはブームを形成してもよい。
【0065】
器具ガイドクランプは、2つの取り付け部分を含んでもよく、第一取り付け部分は、電気手術器具を器具ガイドクランプに解放可能に固定するためのものであり、第二取り付け部分は、器具ガイドクランプをスタンドに解放可能に固定するためのものである。
【0066】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、液体中での電気手術器具の器具先端部の繰り返し可能な一貫した配置を容易にするためのデプスゲージ機構をさらに備える。
【0067】
デプスゲージ機構は、液体に対して電気手術器具を精密に位置決めするために使用され得る。したがって、デプスゲージ機構により、電気手術器具が熱量測定を受けるたびに、電気手術器具を同じ位置に位置決めすることが可能になる。これにより、電気手術器具のエネルギー/電力出力の比較可能な測定が容易になる。換言すれば、デプスゲージ機構は、電気手術器具の正確な位置決めを容易にする。
【0068】
例えば、デプスゲージ機構は、電気手術器具の器具先端部以外の部分が液体中に浸されていない間に、器具先端部が液体中に完全に浸されるような方法で、電気手術器具を位置決めすることを可能にする。換言すれば、デプスゲージ機構によって、器具先端部のみが液体と接触するように電気手術器具を位置決めすることが可能になる。
【0069】
任意選択の実施形態では、デプスゲージ機構はデプスゲージクランプを含み、このデプスゲージクランプは、電気手術器具に取り付けられることができ、通路の内径よりも大きい外径を有する。任意選択で、デプスゲージ機構はデプスゲージソケットをさらに含み、このデプスゲージソケットは、電気手術器具の繰り返し可能な一貫した位置で、電気手術器具の遠位端部と蓋の上面との間の距離に対応する深さを有する。
【0070】
デプスゲージクランプは、電気手術器具に解放可能に取り付けられることができるブラケット、シリンダまたはクランプであってもよい。デプスゲージクランプを電気手術器具に取り付けるための機構は、器具ガイドクランプの機構と同様であってもよい。デプスゲージクランプは、電気手術器具が蓋の通路に挿入されるときにデプスゲージクランプが蓋に当接するように、電気手術器具の直径を増大させる。
【0071】
外径及び内径は、それぞれデプスゲージクランプ及び通路の断面内の最長延長部を指し得る。換言すれば、デプスゲージクランプの外形寸法は、デプスゲージクランプを通路に挿入することができないような寸法である。そのため、デプスゲージクランプは、電気手術器具を通路に挿入する際のストッパとして機能する。したがって、電気手術器具の遠位端部から電気手術器具に取り付けられたデプスゲージクランプの位置の間の距離によって、電気手術器具が液体中にどの程度深く挿入されるかが決定される。換言すれば、デプスゲージクランプの電気手術器具への取り付け点によって、液体への電気手術器具の挿入深さが決定される。
【0072】
取り付け点は、止まり穴であり得るデプスゲージソケットを使用することによって確実に決定されることができる。この目的のために、電気手術器具の遠位端部がデプスゲージソケットの底面に当接するまで、電気手術器具の遠位端部がデプスゲージソケットに挿入される。次に、デプスゲージクランプがデプスゲージソケットの外面に当接するような方法で、デプスゲージクランプが電気手術器具に取り付けられる。つまり、デプスゲージソケットの深さ(デプスゲージソケットの底面とデプスゲージソケットの外面との間の距離)は、液体に対する電気手術器具の正確な位置では、電気手術器具の遠位端部と蓋の外面との間の距離に対応する。
【0073】
異なる電気手術器具の器具先端部が異なる長さを有する可能性があるため、複数のデプスゲージソケットが設けられ得ることにより、各デプスゲージソケットは、特定の種類の電気手術器具に対するデプスゲージクランプの正確な位置決めを示す。
【0074】
任意選択の実施形態では、デプスゲージソケットは熱量計基部上に配置される。
デプスゲージソケットは、熱量計基部のハウジング内またはハウジング上に配置され得る。代替または追加的に、デプスゲージソケットは熱量計基部の外部にあってもよい。例えば、中実部品内に様々な穴を開けて、複数のデプスゲージソケットを設ける。
【0075】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、少なくとも1つの温度センサの測定に基づいて電気手術器具の電磁エネルギー出力を計算するように構成されたコントローラをさらに備える。
【0076】
コントローラは、電気手術器具熱量計を制御し、それによって検出された結果を分析するための1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のメモリ、及び/またはさらなる電気コンポーネントを含み得る。コントローラは、熱量計基部に取り付けられてもよく、任意選択で熱量計基部のハウジング内に配置されてもよい。しかしながら、コントローラは、電気手術器具熱量計に接続された外部コンピュータであってもよい。
【0077】
コントローラは、上述のように少なくとも1つの温度センサに接続され得る。任意選択で、電気手術器具熱量計は、コントローラに接続される、ディスプレイ及び/またはユーザインタフェース(例えば、1つ以上のボタン、ダイヤル、及び/またはスイッチ)を含む。コントローラはディスプレイを制御してもよく、ユーザインタフェースから入力を受信する。例えば、セル容器に充填される液体の量及び液体の熱容量は、ユーザインタフェースを使用して入力され得る。ディスプレイは、電気手術器具の電磁力出力を表示するために使用され得る。
【0078】
ユーザディスプレイは、例えば、20×4文字の英数字またはグラフィカル表示であってもよく、装置の動作パラメータ、あらゆる測定結果だけでなく、装置の操作方法に関する簡単な命令を表示することができる。ユーザインタフェースは、美観上または操作上のニーズに応じて、タッチセンサ式スクリーンに任意選択で組み込まれることができる。
【0079】
コントローラは、マイクロコントローラ及び電子回路を含む場合があり、動作パラメータの設定、電力送達のタイミング、及び温度測定の順序決定、ユーザインタフェースコマンドへの作用、制御コネクタへの作用及び制御コネクタとの間での制御イベントの生成、スターラーモータのタイミング及び速度の制御、ならびにユーザに表示されるまたは伝えられるすべての情報のフォーマットの変換を含むが、これらに限定されない熱量計の動作のすべての態様を、ソフトウェアを通じて制御する。
【0080】
コントローラは、電気手術器具の電磁力出力を計算するためのソフトウェアコードなどの計算ルーチンを実行するように構成され得る。この計算は、電気手術器具によって放射された電磁放射線の吸収によって誘起される液体の温度変化に基づいていてもよい。この温度変化は、温度センサによって測定されてもよく、コントローラに転送されてもよい。コントローラは、それに応じて温度センサを制御することによって、温度測定を開始及び/または終了することができる。電磁力出力の計算には、セル容器内の液体の量、及び液体の熱容量も考慮することができる。どちらのパラメータも、ユーザインタフェースを使用して入力されることができる。あるいは、これらのタイプの情報をコントローラに電子的に転送することもできる。さらに別の実施形態では、セル容器内の液体の量及び液体の熱容量は、コントローラに格納されてもよく、異なる測定間で変更されない。計算の詳細については後述する。
【0081】
任意選択の実施形態では、コントローラはモータを制御するように構成される。
この目的のために、コントローラをモータに電気的に接続して、電気モータの運動を制御することができる。例えば、測定を開始すると、コントローラは電気モータの運動を開始する。さらに、コントローラは電気モータの運動速度を変更してもよい。
【0082】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、コントローラを発電機に電気的に接続するように構成された少なくとも1つの制御コネクタを含む。
【0083】
制御コネクタは、熱量計基部のハウジングに取り付けられることができ、1つまたは複数のワイヤによってコントローラに接続される。制御コネクタにより、コントローラと発電機との間の電気及び/または電子接続を設けることが可能になる。したがって、発電機及びコントローラが相互に電子的に通信することが可能である。例えば、コントローラは、電気手術器具の意図された電磁力出力、及び/または電気手術器具によって液体中に電磁放射線が放射されるタイムスパンを取得することができる。前者の情報は、電気手術器具熱量計を使用して測定された電磁力出力と比較され得る。後者の情報は、電磁力出力を計算するために使用され得る。
【0084】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、電気手術器具の電磁力出力の放出及び/または液体の温度の測定を開始するために、コントローラ及び/または発電機に接続可能な外部ユーザインタフェースをさらに備える。
【0085】
外部ユーザインタフェースは、フットスイッチまたは他のタイプのスイッチであってもよい。外部ユーザインタフェースを使用して測定期間を開始することができる。外部ユーザインタフェースは、その作動時に開始信号を発生し得る。
【0086】
外部ユーザインタフェースは、例えば制御コネクタ及び/またはさらなるコネクタを介して、発電機及び/またはコントローラに接続され得る。開始信号は、発電機によって受信されてもよく、例えば所定のタイムスパン、電磁力の発生を促す。代替または追加的に、開始信号はコントローラによって受信されてもよく、液体の温度の記録を開始するようにコントローラを促す。
【0087】
しかしながら、開始信号が発電機によって受信されてコントローラに転送されること、または開始信号がコントローラによって受信されてコントローラと発電機との間の上述の接続を介して発電機に転送されることも可能である。つまり、外部ユーザインタフェースは発電機かコントローラかいずれかにのみ接続されることができる。
【0088】
さらに任意選択の実施形態では、外部ユーザインタフェースによって発生した開始信号は、発電機によってのみ受信され得、受信されると、電磁力出力の発生が開始される。コントローラは温度変化を決定するように構成され得、そのためコントローラは、測定のために外部開始信号を必要としないが、電気手術器具の動作を決定することができる。
【0089】
外部ユーザインタフェースは、測定の単純な開始メカニズムを提供する。さらに、外部ユーザインタフェースにより、発電機の動作及び電気手術器具熱量計の動作を調整することが可能になる。
【0090】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、コントローラに接続され、発電機に接続可能な自動試験装置システムをさらに含むことができ、任意選択で、自動試験装置システムは、自動熱量測定を実行するためにコントローラ及び/または発電機と通信するように構成される。
【0091】
発電機及び電気手術器具熱量計は、例えば有線イーサネット(登録商標)、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、USB、または通信プロトコルをサポートするシリアル接続によって、自動試験装置(ATE)システムに接続されてもよい。このプロトコルは、例えば、一般的に使用されている、汎用インタフェースバス(GPIB)もしくはSCPI(Standard Commands for Programmable Instruments:プログラム可能計測器用命令規格)、またはCreo Medical Kamaptive(商標)プロトコルなどのプロプライエタリプロトコルであってもよい。
【0092】
自動試験装置システムは、自動熱量測定を操作するコンピュータ及び/またはサーバを含むことができる。例えば、自動試験装置システムは、自動熱量測定の一例である電気手術器具の電力出力を繰り返し測定することができる。さらに、自動試験装置システムは、熱量測定のために流体中に異なるタイプの電気手術器具を配置することができる支持構造体のロボットまたはロボットシステムを制御することができる。
【0093】
この動作モードにより、妥当性確認及び検証の調査などでは、信頼性及び再現性を評価するために使用されることができる、無人のプログラムされた測定が容易になる。
【0094】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は戻り電極をさらに含み、この戻り電極は、セル容器内に配置され、任意選択で、電気的に接地される。
【0095】
電気手術器具熱量計は、バイポーラ器具及びモノポーラ器具と同様に使用されることができる。バイポーラ器具の場合、電気戻り経路または電磁カウンタポイズは、通常、接続する同軸ケーブルの外側シールド、または器具先端部組立体内の別個の電極である。モノポーラ操作の場合、液体と器具先端部との間を導電性接触させるために、セル容器の内側に戻り電極を配置することができる。モノポーラ戻り電極が回路に接続されている場合、バイポーラ器具はモノポーラモードでも使用されることができる。モノポーラ戻り電極は、銅、銀もしくは金などの薄箔を含んでもよく、または導電性コーティングとしてセル容器の表面上に析出してもよい。
【0096】
戻り電極の電気的接地は、ハウジングに、または熱量計基部が配置される表面に接続され得る戻り電極に接続されたワイヤによって達成され得る。あるいは、戻り電極は、コントローラ及び/または温度センサに給電するための電源ラインの接地接点に接続されてもよい。
【0097】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は放射線検出器をさらに備え、この放射線検出器は、熱量計セル内に配置され、電磁放射線を検出するように構成される。
【0098】
放射線検出器は、電気手術器具によって放射される放射線の帯域幅内の電磁放射線を検出することができる任意の検出器であり得る。例えば、放射線検出器は、高周波放射線またはマイクロ波放射線を検出するように構成されてよい。放射線検出器はコントローラに電気的に接続されてもよい。
【0099】
放射線検出器は、セルハウジング内、アタッチメント内、またはセル容器内に配置されてもよい。好ましくは、放射線検出器はセル容器内の液体より上に配置される。
【0100】
放射線検出器は、電気手術器具によって放射された放射線が液体に完全に吸収されたかどうかを検出するために設けられる。例えば、器具先端部が液体に完全に挿入されていない場合、放射線は、すべて液体に吸収されるわけではないため、液体の加熱に寄与する。代替または追加的に、電気手術器具は、発電機で発生する電磁放射線の電力が器具先端部で放射される電力に対応しないように、電磁放射線を放射する漏れを含んでもよい。したがって、電磁変動の検出は、測定アーチファクトを示す。
【0101】
コントローラは、放射線検出器によって検出された放射線の強度が特定の閾値を超える、いかなる測定値も破棄するように構成されることができる。代替または追加的に、コントローラは、電気手術器具が放射した電磁放射線によってユーザに潜在的な危険を示す特定の安全閾値を、検出された放射線の強度が超える場合、熱量計の測定を防止または停止するように構成され得る。
【0102】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、電気手術器具熱量計の周囲の温度を測定するように構成された周囲空気温度センサをさらに備える。
【0103】
周囲空気温度センサは、熱量計基部上、特にそのハウジング上または内部に配置されることができる。周囲温度センサは、電気手術器具熱量計の周囲に露出する場合がある。
【0104】
周囲温度センサによって検出された温度により、液体から液体の周囲への熱伝達による液体内のエネルギー損失を定量化することが可能になる場合がある。このタイプの熱損失が液体の温度と周囲の温度との間の温度差に依存しているため、周囲の温度を知ることは測定精度の向上に役立つ場合がある。この目的のために、コントローラは、電気手術器具熱量計の周囲の温度に基づいて、電気手術器具によって放出されるエネルギーまたは電力を計算するように構成され得る。この目的を達成するために、周囲空気温度センサをコントローラに電子的に接続することができる。周囲温度は、連続して測定されてもよく、または液体温度の測定の特定の時点で測定されてもよい。
【0105】
空気周囲温度センサは、長期間にわたって精密な温度測定値を捕捉することができ、電気手術器具熱量計の環境に関するデータを記録する機能を示す。周囲空気温度センサを追加すると、測定プロセス全体または測定プロセス後に補正係数を適用して、低温の周囲環境でのより急速な冷却を考慮することが可能になるため、結果の精度が向上することができる。
【0106】
任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計は、感熱性充填材料をさらに含んでもよく、この感熱性充填材料は、電気手術器具の器具先端部の周囲に配置されるように構成され、電磁放射線の照射時に物性を局所的に変化させるように構成され、任意選択で、感熱性充填材料は、電磁放射線の強度及び/または持続時間に応じて物性を局所的に変化させるように構成される。
【0107】
感熱性充填材料には、熱量計に電力を送達する前に、器具の放射先端部の周囲に配置されることができる感熱性ゲル、テープ、及び/または他の材料インジケータが含まれる場合がある。これは、器具の幾何学的形状の周囲のエネルギー輪郭の分布に関する情報を提供する可能性があり、これは器具を治療に使用する際の重要な特徴である。
【0108】
この材料は、加熱すると色が変化するタイプのものであってもよく、またはゲル状態から固体状態に変化するものであってもよく、または例えばワックスの場合には、その逆であってもよい。このような材料が使用される場合、熱量計の計算には、材料インジケータの比熱容量及び質量を考慮することを可能にする追加の項も含まれる場合がある。熱量計液体の質量に比べて材料が薄い、または軽量である場合、追加の材料インジケータの加熱を考慮する必要がない場合がある。
【0109】
感熱性充填材料は円筒として形成され得、この円筒内に器具先端部を、感熱性充填材料のスリーブが器具先端部の周囲に配置されるように挿入することができる。
【0110】
吸収材料として液体の代わりに粉体(または粒状材料)を用いてもよい。粒子の粒径及び/または形状は、例えばスターラーを使用することによって、及び/または熱量計セルを回転させることによって粉体を撹拌することができるようなものであってもよい。換言すれば、粉体は、液体の流動特性と同様または同等の流動特性を有し得る。粉体の材料の例は、鉄フェライト、導電性カーボンブラック、グラファイト、カルボニル鉄、及び/またはカーボンナノチューブである。平均粒径は、100nmから780nmの間であってもよく、任意選択で100nm、240nm、400nm、または780nmであってもよい。一般に、平均粒径は、電気手術器具によって放射される電磁放射線の波長に適合するように選択され得る。任意選択で、粉体は、好ましい負荷インピーダンスを達成するために変動し得る個々の成分の混合物である。指定のインピーダンスまたは材料の整形を得るために、セラミックまたはプラスチックなどの損失の多くない放射線透過材料を導入して、粒子を固体として保持することもできる。
【0111】
固体の形態の吸収材料は、器具先端部を受け入れるための材料ソケットを含むことができる。例えば、複数の固体が設けられ、各固体はセル容器内に受け入れられるように形成されるが、異なるタイプの電気手術器具を受け入れるための異なるサイズ及び/または形状のソケットを含む。吸収材料が固体である場合、スターラーは設けられない。複数の温度センサを設けて、固体吸収材料内の温度変化、または任意選択で温度プロファイル/分布/勾配を精密に測定することができる。測定された温度勾配を使用して、固体が受ける電磁エネルギーまたは電力をモデル化/計算/決定することができる。この実施形態では、固体内の温度分布の測定の精度を高めるために、少なくとも1つの温度センサを固体吸収材料内に配置することができる。この目的のために、固体吸収材料は、温度センサをコントローラに接続するためのコネクタを含んでもよい。固体吸収材料には、マイクロ波減衰器及びマイクロ波暗室で使用されるような放射線吸収材料(RAM)(例えば、鉄フェライト、導電性カーボンブラック、グラファイト、カルボニル鉄、及び/またはカーボンナノチューブの均質混合物)及び/またはメタマテリアルが含まれてもよい。
【0112】
任意選択の実施形態では、吸収材料はメタマテリアル及び少なくとも1つの吸収体を含み、メタマテリアルは電磁放射線を少なくとも1つの吸収体に導波するように構成され、少なくとも1つの吸収体は電磁放射線を吸収するように構成される。
【0113】
例えば、周期構造体またはスプリットリング共振器を使用したメタマテリアル構造体を用いて、電磁放射線をより小さい熱吸収体に導波する、または集束させることができると、その質量が減少することができることにより、その温度が所与の電力出力に対して有利に上昇し、測定するのに必要な時間が短縮されることができる。さらなる利点は、無菌環境を維持するのに有益となり得る固体吸収体と器具との密接な接触の必要がなくなるようにメタマテリアル構造体を製造することができることである。
【0114】
吸収体は、固体吸収材料に関して説明されたものと同じ材料から作製されることができる。1つまたは複数の吸収体の質量及び/または体積は、メタマテリアルの質量及び/または体積よりも小さい。吸収体はメタマテリアル内に配置されてもよい。メタマテリアルの外側形状は、セル容器に挿入されるように形成されてもよい。メタマテリアルは、器具先端部を受け入れるためのソケットを含んでもよい。メタマテリアルを設けることにより、ソケットは、特定のタイプの器具先端部に専用に適合されない場合がある。むしろ、ソケットは、複数の異なる器具先端部を受け入れるように構成された形状及び寸法を有してもよい。すなわち、器具先端部がソケット内にある場合、器具先端部の外面がソケットの内面から少なくとも1mm、例えば少なくとも2mmまたは5mmだけ離隔されるように、ソケットは器具先端部よりも大きくてもよい。
【0115】
少なくとも1つの温度センサは、少なくとも1つの吸収体の内部または近くに配置され得る。このようにして、温度センサは吸収体内の温度変化を精密に測定することができる。
【0116】
任意選択で、吸収材料は気体及び/またはプラズマを含み、これらは、電気手術器具が放射する電磁放射線によって点火されてもよく(例えば、アークを発生させてもよく)、及び/または維持されてもよい(例えば、持続されてもよい)。蓋は、熱量計セルを気密式で密閉するように構成され得る。
【0117】
本発明はまた、上述のような電気手術器具熱量計及び上述のような電気手術装置を備える組立体にも言及する。
【0118】
発電機によって給電される電気手術器具の電磁エネルギー及び/または電力出力を測定するための方法は、以下のステップ、a)電気手術器具熱量計の熱量計セルに所定量の吸収材料を充填するステップと、b)電気手術器具によって放射される電磁放射線(例えば、その大部分、または全部、またはかなりの部分)が吸収材料によって吸収される(例えば、完全に吸収される)ような位置に電気手術器具を配置するステップと、c)所定のタイムスパンにわたって電気手術器具を操作して、吸収材料内に電磁放射線を放射するステップと、d)吸収材料の温度変化を測定するステップと、e)測定温度の変化、熱量計セル内の液体の量、及び/または電磁放射線が発生するタイムスパンに基づいて、電気手術器具によって放射される電磁放射線のエネルギー及び/または電力を計算するステップとを含む。
【0119】
上述の方法は、上述の電気手術器具熱量計と併せて使用されることができる。特に、電気手術器具熱量計に関連して説明された特性、特徴、及び/または有利な効果は、電気手術器具の電磁力出力を測定するための方法にも同様に適用することができる。
【0120】
上述されたように、電気手術器具の電磁力出力の計算は、液体による電磁放射線の吸収によって誘起され、検出された温度変化(これは少なくとも1つの温度センサを使用して測定される)、熱量計セル内の液体の量(これは一定量の液体を供給することによって、及び/または熱量計セルに供給される液体の量を秤量することによって決定され得る)、及び電磁放射線が電気手術器具によって発生して放射されるタイムスパン(このパラメータは発電機で設定されてもよい)という3つの主なパラメータに基づいている。これら3つの主なパラメータに基づいた計算は、液体のエネルギー損失(液体の冷却など)が液体の加熱に比べてかなり長期間で起こり、電気手術器具によって放出される全電力が液体に完全に吸収されると仮定する。
【0121】
これらのパラメータの一部は、カロリー熱量計測定の短いタイムスパンには有効である場合がある(例えば、冷却によるエネルギー損失は短期間では重要ではない場合がある)。他のパラメータは、カロリー測定値を較正することによって調整されることができる。
【0122】
任意選択の実施形態では、ステップb)は、器具先端部をデプスゲージソケットに挿入することと、デプスゲージクランプがデプスゲージソケットで開口部と接触しているようにデプスゲージクランプ付き電気手術器具を取り付けることと、熱量計セルを蓋で閉じることと、デプスゲージクランプが蓋に当接するまで、器具先端部をリード線の通路に挿入することとを含む。
【0123】
ステップb)は、支持構造体を使用して電気手術器具を熱量計セルに対して固定関係に保持することをさらに含むことができる。
【0124】
任意選択の実施形態では、ステップb)は、電気手術器具の導波管のエネルギー出力ポートを液体より上または液体の近くに配置することを含む。
【0125】
このステップは、電気手術器具が導波管を含むことによって、エネルギー出力ポートが液体の真上または液体に配置される場合に実行されることができる。
【0126】
ステップc)は、液体の温度が実質的に平衡温度に達した後にのみ実行されることができ、任意選択で、実質的に平衡温度に関する温度変化が記録される。
【0127】
平衡温度は、好ましくは、長期間後に液体が沈降する温度である。例えば、平衡温度は、周囲空気温度が一定であると仮定した場合の周囲温度に対応する。
【0128】
以前に記録された温度の標準偏差が所定の閾値を下回る場合、実質的に平衡温度に達するとみなされることができる。代替または追加的に、液体温度と周囲空気温度との間の差が特定の閾値を下回る場合、液体は実質的に平衡温度に達していると決定される。
【0129】
液体の温度は、スターラーまたは電気手術器具を挿入すると変化する可能性がある。さらに、以前の熱量計測定後から十分な時間が経過した場合、液体の温度は実質的に平衡温度に達していないことがある。実質的な平衡温度の決定は、液体への電気手術器具の挿入後、または以前の熱量計測定後、所定の時間が経過した後にのみ熱量計測定が実行されることができる制御によって置き換えられることができる。
【0130】
任意選択の実施形態では、この方法は、熱量計セル内の液体を撹拌するステップをさらに含む。この目的のために、上述のスターラーを使用してもよい。
【0131】
さらに任意選択の実施形態では、ステップc)及びd)は、開始信号を受信した後に自動的に実行され、任意選択で、電気手術器具熱量計のコントローラ及び発電機は相互に接続され、さらに任意選択で、開始信号は、コントローラ及び/または発電機に接続される外部ユーザインタフェースによって、またはコントローラ及び/または発電機に接続される自動試験装置システムによって発生する。
【0132】
あるいは、ステップd)は、ステップc)の実行を検出するために使用される。この実施形態では、熱損失による温度における変化よりも速い液体の温度における変化の検出を使用して、電気手術器具が液体中に電磁放射線を放射したと決定する。この実施形態では、コントローラが電気手術器具の作動を決定することができるため、コントローラと発電機との間の接続を設ける必要はない。
【0133】
任意選択の実施形態では、熱量計セル内の電磁放射線の存在が検出され、検出された電磁放射線の強度が所定の閾値を上回る場合、任意選択でステップc)、d)、及び/またはe)の実行が停止される、または禁止される。この目的のために、上述のような放射線検出器を使用することができる。
【0134】
任意選択の実施形態では、ステップe)の計算はさらに、電気手術器具熱量計の周囲の温度、液体中に液体を撹拌するスターラーによって導入されるエネルギー、及び/または電気手術器具の熱吸収に基づいている。
【0135】
任意選択の実施形態では、感熱性充填材料が電気手術器具の器具先端部の周囲に配置され、電気手術器具が操作され、またはステップb)及びc)が実行され、電気手術器具の器具先端部の放射パターンが、器具先端部によって放射された電磁放射線の照射によって誘起される感熱性充填材料の物性の局所的な変化によって識別されるようなものである。
【0136】
感熱性充填材料は、熱量測定の前に器具先端部に取り付けられることができる。感熱性充填材料は、器具先端部の放射パターンに関する情報を取得するために使用される。これは、液体によって吸収される、つまり電気手術器具によって放出される全体のエネルギーを決定することができる熱量計測定を使用して決定されることができない。一方、感熱性充填材料を使用して、器具先端部から放出される全体のエネルギーまたは電力を決定することはできない。したがって、感熱性充填材料及び電気手術器具熱量計は補完的な測定ツールである。
【0137】
計算ステップe)はさらに、感熱性充填材料の比熱容量及び/または感熱性充填材料の質量に基づいてもよい。
【0138】
これらのパラメータは、感熱性充填材料によって吸収されるエネルギーの量、つまり液体の加熱に寄与しないエネルギーの量を決定するために使用されることができる。この態様は、感熱性充填材料の熱と液体との間で平衡に達することができないような、液体の温度変化が短期間のみ記録される場合に特に関連する。ただし、感熱性充填材料の質量が小さい場合、この態様は無視されてもよい。
【0139】
電気手術器具のエネルギー/電力出力の計算では、液体中に浸された器具先端部の質量及び比熱容量を含むことも可能である。電気手術器具自体が熱を受け、液体を効果的に冷却する。したがって、電気手術器具が吸収する熱量を考慮することにより、熱量測定をより精密に行うことができる。
【0140】
次に、本発明の実施形態は、例として以下の添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1】電気手術装置の斜視図を示す。
図2】電気手術器具熱量計の斜視図を示す。
図3図1の電気手術装置の電気手術器具と組み合わせた図2の電気手術器具熱量計の斜視図を示す。
図4】電気手術器具熱量計の熱量計セルの断面図(左)及び斜視図を示す。
図5】熱量計セルのセル容器の斜視図を示す。
図6】熱量計セルのセル容器の別の実施形態の斜視図を示す。
図7】熱量計セルのアタッチメントの斜視図を示す。
図8】電気手術器具熱量計のスターラーの2つの実施形態の斜視図を示す。
図9】電気手術器具熱量計の蓋の上面斜視図を示す。
図10図9の蓋の底面斜視図を示す。
図11】デプスゲージソケット(左)及び電気手術器具に取り付けられたデプスゲージクランプ(右)の斜視図を示す。
図12】電気手術器具熱量計の上面図を示す。
図13】電気手術装置、電気手術器具熱量計、外部ユーザインタフェース、及び信号ケーブルの斜視図を示す。
図14】第二接続構成での電気手術装置、電気手術器具熱量計、外部ユーザインタフェース、及び信号ケーブルの斜視図を示す。
図15】第三接続構成での電気手術装置、電気手術器具熱量計、及び外部ユーザインタフェースの斜視図を示す。
図16】電気手術装置、電気手術器具熱量計、及び自動試験装置システムの斜視図を示す。
図17】液体の温度の一時的な変化に関する熱量測定の様々なフェーズを描く図を示す。
図18】電気手術器具の電磁力出力を測定する方法のブロック図を示す。
図19】セル容器内の液体の上に配置された電気手術器具の別の実施形態の斜視図を示す。
図20】電磁放射線の放射前(左)及び放射後(右)、図1の電気手術器具の器具先端部の周囲に配置された感熱性充填材料の断面図を示す。
図21】電気手術器具熱量計の別の実施形態の分解図を示す。
図22】固体吸収材料の断面図(左)及び斜視図を示す。
図23】吸収材料の別の実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0142】
図1は、発電機12、ケーブル14、及び電気手術器具16を含む電気手術装置10の斜視図を示す。発電機12は、無線周波数範囲及び/またはマイクロ波範囲内の交流(AC)電圧を発生するように構成される。AC電圧は、ケーブルコネクタ20を使用してケーブル14を接続することができる発電機出力18に存在する。発電機12はさらに、発生した電圧の周波数及び/または振幅を設定することができる発電機インタフェース22を含む。発電機インタフェース22はタッチスクリーンであってもよい。電圧は、連続波(CW)として、または最大数分の期間の短パルスのバースト中に発生することができる。
【0143】
電気手術器具16は、体腔に挿入されることができるスコープ装置として構成されてもよい。図1に示される電気手術器具16は、体内の標的部位まで前進する器具先端部24を有することができる。器具先端部24は、電磁放射線を放射するように構成される。換言すれば、器具先端部24は、発電機12によって発生した電圧に対応する電磁放射線を放射する。器具先端部24は、モノポールアンテナ及び/またはダイポールアンテナを含み得る。器具先端部24によって放射される電磁放射線は、体内の標的部位における組織の切除/凝固または切断(摘出または伸展)に使用される。
【0144】
ケーブル14は、同軸ケーブルであってもよく、電気手術器具16を発電機12に接続するために設けられる。この目的のために、ケーブルコネクタ20を使用して、ケーブル14を電気手術器具16及び/または発電機12に接続し得る。ケーブル14は、発電機12によって発生したAC電圧/電流を伝送するように構成される。換言すれば、ケーブル14は、無線周波数範囲及び/またはマイクロ波周波数範囲内の周波数を有するAC電流を伝送するように構成される。
【0145】
図2に示される電気手術器具熱量計30は、熱量計基部32、熱量計セル34、及び支持構造体36を含む。任意選択で、電気手術器具熱量計30は、ディスプレイ38、ユーザインタフェース40、モータ42、制御コネクタ44、デプスゲージ機構46、コントローラ48、スターラー50、及び/または蓋52を含む。
【0146】
熱量計基部32は、ハウジング54を含むことができ、電気手術器具熱量計30の様々な部分を支持するためのさらなる構成要素を含むことができる。熱量計基部32は、テーブルまたは平坦な表面上に配置されるように構成されてもよい。熱量計のハウジング54は、実験器具に使用される標準的な構造体、例えば、成形プラスチックの計器盤及びパネルを備えた折りたたみ式板金のものであってもよい。ハウジング54は、以下に列挙される電気手術器具熱量計30のすべての構成要素を収容することができる。
【0147】
熱量計セル34は、図4に示されるように3つの同心の構成部品、(外側)セルハウジング56、(内側)セル容器58、及びアクセスを容易にするためにより小さいセル容器58をより大きいセルハウジング56の内側に機械的に固定するために使用される取り外し可能なアタッチメント60を含むことができるが、必要に応じて、あらゆるまたはすべての部品を単一部品に組み合わせることができる。
【0148】
セルハウジング56は、熱量計基部32及び/またはハウジング54に永久的に取り付けられてもよく、セル容器58を収容するアタッチメント60を保持するためのレセプタクルとして機能する。それはまた、少なくとも1つの温度センサ66用のアタッチメント60上に嵌合する第二コネクタ64と接触するための第一コネクタ62を含んでもよい。
【0149】
セル容器58は、アタッチメント60の頂部の内側に永久的に設置され得、電気手術器具16によって加熱される既知の固定質量の吸収材料110を保持する。吸収材料110は、液体、固体粒子の粉体(例えば粒状材料)、固体、気体、及び/またはプラズマであってもよい。以下では、本発明の実施形態の説明は、吸収材料110の一例としての液体に関する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。液体の代わりに、固体粒子の粉体、固体、気体及び/またはプラズマを使用してもよい。
【0150】
セル容器58は、液体から吸収される熱エネルギー量を減らすために、質量が小さくてもよい。また、防水性であり、液体を遮断し、放射線によって周囲に散逸される熱エネルギーの量を減らす。真空フラスコ構成も同様に使用されることができるが、耐久性、低熱質量、及び剛性のため、機械的に薄いプラスチック絶縁材料が好ましい。
【0151】
セル容器58は、異なる位置における液体の多様な温度測定を提供するために使用される小型サーミスタまたは他の熱変換器を含むことができる、少なくとも1つの温度センサ66(図5及び図6を参照)の構成を含む。例えば、セル容器58の対向する端部に別個の温度センサ66を配置すると、電気手術器具熱量計30は、全体の電力測定の精度に影響する可能性のある熱ポケットの形成を防止するために液体が十分に混合されているかどうかを識別することが可能になる。全体の測定精度(後述する)にも寄与する可能性がある周囲空気温度を測定して考慮するために、さらなる温度センサを熱量計基部32またはアタッチメントの内部または外部に配置することもできることに留意されたい。単一温度センサ66を使用することも可能である。
【0152】
取り外し可能なアタッチメント60またはキャリヤを使用して、機械的支持を与え、軽量のセル容器58及びその温度センサ接続部68を保持する。このようにして、アタッチメント60は、潜在的に壊れやすいセル容器58及びその温度センサ接続部68を取り扱う際に注意を払う必要なく、セル容器58及びその内容物の(熱量計基部32からの)簡単な取り外しを可能にする。アタッチメント60の底部には、セルハウジング56内で嵌合する第一コネクタ62を介して温度センサ66を熱量計基部32内のコントローラ48に接続する第二コネクタ64がある。これらは、操作の便宜のために、ばね状コネクタまたは他の嵌合しやすいコネクタであってもよい。
【0153】
アタッチメント60はさらに、熱量計セル34内に可能な限り多量の熱を保持するために、絶縁されてもよく、絶縁材料から作製されてもよく、またはアルミ箔もしくはアルミニウム被覆されたプラスチックなどの熱反射体を含んでもよい。
【0154】
図7に見られるように、セル容器58用のアタッチメント60は、1つ以上のワイヤなどの温度センサ接続部68、及びセルハウジング62の第一コネクタ62と嵌合する第二コネクタ64を含むことができる。
【0155】
必要に応じて、一部の外科手術では組織に少量のエネルギーを送達する必要があるが、他の手術では組織に大量のエネルギーを送達するためにより大型の電気手術器具16が使用される。セル容器58を運搬するためのアタッチメント60及び第二コネクタ64の標準化されたインタフェースの使用により、様々な電気手術器具16に適するように合わせられ得る様々な液体体積の使用が容易になる。体積の小さい液体はエネルギーの低い測定に使用されてもよく、体積の大きい液体はエネルギーの高い測定に使用されてもよい。
【0156】
電気手術器具熱量計30は、バイポーラ電気手術器具16及びモノポーラ電気手術器具16と同様に使用されることができる。バイポーラ電気手術器具16の場合、電気戻り経路または電磁カウンタポイズは、通常、接続する同軸ケーブル14の外側シールド、または器具先端部24内の別個の電極である。モノポーラ動作の場合、図6に示されるように、戻り電極70は熱量計セル34(特にセル容器58)の内側に配置され、液体と器具先端部24との間を導電性接触させる。またバイポーラ電気手術器具16は、モノポーラ戻り電極70が回路に接続されていれば、モノポーラモードで使用されてもよい。戻り電極70は、銅、銀、もしくは金などの薄箔から構築されてもよく、または導電性コーティングとしてセル容器58の表面上に析出してもよい。
【0157】
マイクロ波周波数での通常動作では、セル容器58に挿入される液体の種類は、適切な純度の水であってよい。液体の選択はいずれか1種類に限定されないが、その電気手術器具16が通常使用される組織のインピーダンスと同様である種類のものである必要がある。赤外線エネルギーを送達する電気手術器具16を使用する場合、赤外光を高度に透過させることを可能にする純水ではなく、適切な赤外線吸収物質をセル容器58に充填させることが適している場合がある。同様に、電気手術器具16が約400kHzの低周波数のRF電力を送達する必要がある場合、導電性の生理食塩水を使用することが適している場合がある。すべての電気手術器具16及び電源周波数が同じ単一セル容器58の使用に適しているとは限らず、アタッチメント60の使用により、様々な適切なセル容器58及び適切な液体の使用が容易になる。
【0158】
スターラー50は、器具先端部24からの熱をセル容器58の内側の液体の周囲に分散させ、熱ポケットの形成を防止する。スターラー50は、液体を垂直方向及び水平方向の両方で混合することができるだけでなく、液体から奪う熱エネルギーの量を減らすために質量が小さくてもよく、液体に与えられる摩擦エネルギーが測定されるエネルギーと比較して重要ではないほど十分に速度が低くてもよい。ソフトウェア及び/または較正を通じて、電気手術器具熱量計30は最終的な電力及びエネルギーの結果から液体に与えられる機械的摩擦エネルギー成分を較正して減算することができるため、全体の測定がより正確になることができる。
【0159】
典型的なスターラーのタイプを図8に示す。第一タイプ(左に図示)は硬いヘリカルワイヤであり、第二タイプ(右に図示)は模型ボートに見られるような小型インペラである。他のタイプには、磁気結合スターラーまたは超音波スターラーが含まれてもよいが、これらに限定されない。全体の熱質量、及び液体に与えられる摩擦運動エネルギーを最小にするという目的で、本発明の好ましい実施形態では、示されるように、単純な軽量の機械的スターラーを使用することができる。
【0160】
蓋52は係脱可能または可動であり、その一実施形態は図9及び図10に示されている。蓋52は、セルハウジング56の頂部上に位置し、モータ42がスターラー50を回転させるためのギヤ、コグ及び/またはベルトドライブ構成要素を含み得る伝達装置(図9及び図10には示されていない)を収容する。スターラー50は、蓋52に回転可能に取り付けられる。
【0161】
蓋52は内部が中空であってもよく、セル容器58の絶縁に役立つエアポケットを形成することができる。蓋52の底部は、セル容器58の頂部として機能することができる。
【0162】
蓋52は通路72を含むことができ、この通路を通して電気手術器具16を液体に挿入することができる。通路72には、電気手術器具16を保持することを支援し、そのうえ通路72を通る熱エネルギーの損失を減らすためのグロメットがあってもよい。後述されるデプスゲージクランプ74は、蓋52の頂部上に位置し、電気手術器具16を通路72に通して正しい深さに保持することができる。蓋52の凹部または他の要素は、デプスゲージクランプ74に密着してもよい。
【0163】
モータ42は、セルハウジング56に固定されたモータブラケット76に取り付けられ得る電気モータである。モータ42はハウジング54内に配置されるため、図2及び図3では見えない。モータ42のモータ軸のみがハウジング54から突出する。モータ軸は、蓋52に取り付けられており、液体を撹拌するスターラー50を回転させるコグ及び/またはベルトドライブシステムを含んでもよい。
【0164】
モータ42の代替位置は、蓋52自体の上であってもよいが、好ましい実施形態では、ハウジング54の外側に電気接続部が出ないようにモータ42が1つの側に置かれている位置である。
【0165】
モータの速度は、電流制限、シャフト回転検知、及び/または精密で段階的な角度制御によって、適切な混合速度に影響するように切り替えられてもよく、または変動してもよい。この制御は、モータ42が電気的に接続されているコントローラ48によって実行されることができる。
【0166】
ディスプレイ38は、例えば、20×4文字の英数字またはグラフィカル表示を含み得、電気手術器具熱量計30の動作パラメータ、任意の測定結果、及び/または装置の操作方法に関する簡単な命令を表示することができる。
【0167】
ハウジング54の背面には、電気手術器具熱量計30を発電機12などの外部電子装置に結合されることを可能にする1つまたは複数の制御コネクタ44があってもよい。様々な制御モードを実行し得ることにより、電気手術器具熱量計30(特にコントローラ48)が発電機12を制御する、または発電機12が熱量計測定プロセスを制御してトリガする。代替または追加的に、熱量測定を開始するための開始信号を発生するために、電気手術システムで一般的に使用されるようなフットペダルシステムなどの外部ユーザインタフェース78を発電機12または制御コネクタ44に取り付けることができる。制御コネクタ44は、電気手術器具熱量計30及び/または発電機12の完全または部分的な遠隔制御を可能にする自動試験装置システム80に接続されることができる。自動試験装置システム80は、自動熱量測定を提供するためのソフトウェアを収容するサーバ及び/またはコンピュータを含むことができる。
【0168】
可撓性制御オプションを提供する重要な態様は、発電機12からのマイクロ波電源が、ユーザによって操作されるのではなく、電気手術器具熱量計30によってオンにされることを可能にすることであり、これにより、測定のタイミングでのヒューマンエラーが低減する。様々な制御オプションについては、以下でさらに説明する。制御コネクタ44は、ハウジング54内に延在するワイヤを介してコントローラ48に接続され得る。
【0169】
ユーザインタフェース40は、ディスプレイ38と並んで前面計器盤上に設けられることができる1つ以上のユーザコマンドキーを含むことができる。ユーザインタフェース40により、ユーザは、熱量計動作のすべてのパラメータを設定し、制御することが可能になる。ユーザインタフェース40は、美観上または操作上のニーズに応じて、タッチセンサ式スクリーンに任意選択で組み込まれることができる。
【0170】
熱量計基部32はコントローラ48を含んでもよく、このコントローラは、マイクロコントローラ及び電子回路(図示せず)を含むことができ、動作パラメータの設定、電力送達のタイミング、及び温度測定の順序決定、ユーザインタフェースコマンドへの作用、制御コネクタ44への作用及び制御コネクタとの間での制御イベントの生成、モータ42のタイミング及び速度の制御、ならびにユーザに表示されるまたは伝えられるすべての情報のフォーマットの変換を含むが、これらに限定されない熱量計動作の1つ、いくつか、またはすべての態様を、ソフトウェアを通じて制御する。コントローラ48はハウジング54内に配置されているため、外部からは見えない(図2及び図3の破線を参照)。
【0171】
支持構造体36は、スタンド82及び器具ガイドクランプ84を含み得る。支持構造体36、特にスタンド82は、熱量計基部32に取り付けられることができる。しかしながら、支持構造体36は、熱量計基部32とは別個の構成要素であってもよい。
【0172】
スタンド82は、ロッド状または他の支持構造体を含むことができ、これは、電気手術器具16を保持することを支援し、そのうえ安全のために熱量計基部32にクランプで咬持されることもできる。器具ガイドクランプ84は、スタンド82の頂部の近くに取り付けられることができる。スタンド82は、電気手術器具16及び器具ガイドクランプ84に垂直方向及び側方向の両方の安定性を与える。
【0173】
器具ガイドクランプ84は、スタンド82と組み合わされて、図3に示されるように、熱量計セル34の内側の液体内で直立して中央及び側方向に位置している電気手術器具16を保持する。任意選択のデプスゲージクランプ74、及び/または電気手術器具16自体のさらなるクランプ機構は、通路72内では必要な場合、使用中の電気手術器具16の種類に応じて追加の安定性を与えることができる。また、様々な器具を収容するために、器具ガイドクランプ84の構造に変形形態があってもよい。例えば、腹腔鏡器具は、内視鏡器具(直径2mm)と比較して短く、直径が太く(5mm)、硬いシャフトを含む。器具ガイドクランプ84及びスタンド82は、電気手術器具16を熱量計基部32上または外の複数の位置に自由に揺動させるように調整されることができ、例えば、電気手術器具16は、最初にデプスゲージ機構46を使用して正しい動作深さにアライメントされることができる。
【0174】
デプスゲージ機構46は、セル容器58の内側、従って液体内に器具先端部24の正確な(繰り返し一貫した)垂直配置を容易にするために、熱量計基部32上(特にハウジング54上)に設けられてもよい。正確な位置決めは、再現性を維持し、器具頂部24からの電磁放射線が熱量計セル34から漏れないことを確保するために重要である。好ましい実施態様は、図11に示されるように、二部分機構を使用することである。
【0175】
デプスゲージ機構46の第一部分は、ハウジング54内の較正されたデプスゲージソケット86であり、これは、使用前に、器具先端部24を一時的に受け入れ、蓋52の頂部からセル容器58の中央までの距離に適合する深さを有する。
【0176】
デプスゲージ機構46の第二部分はデプスゲージクランプ74であり、これは、電気手術器具16の周囲に環装するカラー、クランプまたはシリンダであってもよく、咬持したときに器具先端部24が前述のデプスゲージソケット86の深さだけその基部から突出するように調整される。これにより、液体中での一貫した動作深さが保たれる。デプスゲージクランプ74に締め付け機構を取り付け、使用中に滑動しないことを確保することができる。図11は、ハウジング54に取り付けられたデプスゲージソケット86と、電気手術器具16に取り付けられたデプスゲージクランプ74とを示した。
【0177】
さらに、デプスゲージソケット86は、スタンド82からセル容器58の中心と同じ半径で離されていてもよく、その結果、図12に示されるように、スタンド82を通路72及びデプスゲージソケット86より上で前後にねじることができる。
【0178】
これに代えて、代替のデプスゲージ機構46が使用されることができ、例えば、セル容器58内にプラットフォームを作製するように、またはロボット器具の配置の完全もしくは部分自動化方法によって、または光もしくは超音波センサによってなど、単一部分システムが使用される。
【0179】
さらに代替のデプスゲージ機構46を器具ガイドクランプ84及びスタンド82内の締め付け機構に組み込んでもよく、これは別個の器具デプスゲージクランプ74が必要ないことを意味する。
【0180】
デプスゲージ機構46の変形形態は、それが洗浄のために取り外し可能であるためのもの、または無菌環境を保つために使い捨てユニットと交換可能なものである。
【0181】
電気手術器具熱量計30の液体部分を主電源から安全な距離に保つために、電気手術器具熱量計30は、AC主電源から低電圧電力変換器に給電されてもよい。例えば、240V ACから9V DCの電源アダプタを使用することができる。
【0182】
電気手術器具熱量計30の内部(特にハウジング54の内部)に設置され、液体から主電源までの距離を長くする内部充電式バッテリを含むオプションが検討される。そのうえこれにより、装置はより可動性になることが可能になる。バッテリによって給電される場合、電気手術器具熱量計30は、非アクティブ期間を検出し、それ自体をオフにして、バッテリ電力を節約する、自動電源オフ機能を含んでもよい。
【0183】
電気手術器具熱量計30は、様々な測定タイプを得る利点を提示するいくつかの可撓性モードで動作するように接続されることができる。
【0184】
図13は、電気手術器具熱量計30が発電機12によってトリガされる状況を示す。信号ケーブル88は、発電機12から電気手術器具熱量計30(特に、制御コネクタ44)に接続される。さらに、外部ユーザインタフェース78は、発電機12に接続される。このモードでは、発電機12は、外部ユーザインタフェース78からのユーザコマンド(開始信号)に応答して、適切なトリガ信号を電気手術器具熱量計30に送信して、測定プロセスを開始して停止することができる。この測定モードは、手術中に経験した状態を模倣するのに特に有用である。
【0185】
図14では、信号ケーブル88は電気手術器具熱量計30から発電機12に接続され、外部ユーザインタフェース78は電気手術器具熱量計30に接続される。このモードでは、電気手術器具熱量計30は、外部ユーザインタフェース78からのユーザコマンドに応答して、トリガ信号を発電機12に送信し、電力送達プロセスを開始して停止することができる。この接続モードは、電力送達の応答時間を測定することに有用である場合がある。発電機12はまた、外部ユーザインタフェース78を使用せずに、電気手術器具熱量計30のユーザインタフェース40からトリガされてもよい。
【0186】
図15では、電気手術器具熱量計30及び発電機12はいずれの信号ケーブル88によっても全く接続されていない。ここで、電気手術器具熱量計30の特徴は、コントローラ48が、平均温度レベル(または実質的に平衡温度)及び統計的分散と比較して急激な温度上昇を検出し、それに応答するようにプログラムされ得ることである。この自動検出動作モードは、使用を単純にするために特に有用である。
【0187】
図16では、発電機12及び電気手術器具熱量計30は、例えば有線イーサネット、Wi-Fi、Bluetooth、USB、または通信プロトコルをサポートするシリアル接続によって、自動試験装置(ATE)システム80に接続されてもよい。このプロトコルは、例えば、一般的に使用されている、汎用インタフェースバス(GPIB)もしくはSCPI(Standard Commands for Programmable Instruments:プログラム可能計測器用命令規格)、またはCreo Medical Kamaptive(商標)プロトコルなどのプロプライエタリプロトコルであってもよい。
【0188】
この動作モードにより、妥当性確認及び検証の調査などでは、信頼性及び再現性を評価するために使用されることができる、無人のプログラムされた測定が容易になる。
【0189】
本発明の任意選択の実施形態では、電気手術器具熱量計30のパラメータは、セルフプロビジョニングシステムを使用して、例えば、ユーザによって、または取り付けられた電気手術器具16を識別することができる無線周波数識別(RFID)もしくは光学式バーコードスキャナなどのスキャナによって入力されるコード番号を使用して、入力されてもよい。この種の自動操作は、特に妥当性確認及び検証の演習において、人為的なエラーを減らすのに有益である。
【0190】
電気手術器具熱量計30はまた、例えば、熱量計セル34の内部に、電磁放射線検出器90を備えてもよい。放射線検出器90によって高レベルの電磁放射線のいずれかが検出されると、ユーザに警告し、電力送達を停止することができる(適切に接続されている場合)。電気手術器具熱量計30の精度は、器具先端部24からの電力の液体へのほぼ100%の吸収に依存しており、吸収されないあらゆる電力は不正確な結果を生じるものとみなされるべきである。
【0191】
電気手術器具30の電磁力出力方法について説明する。
まず、セル容器58に液体を正しい深さまたは質量まで充填する。これは、いくつかの方法で、例えば、係脱されたセル容器58及びアタッチメント60内に液体を注ぐときにその液体の重さを量ることによって、またはセル容器58自体にマーク付けされたレベルまで充填することによって達成されることができる。高度な実施形態では、電気手術器具熱量計30が外部供給源からその液体を供給して補充することを可能にするように、自己充填バルブ及び注入口/排出口システムが取り付けられてもよい。別の高度な実施形態では、追加された液体の重量を測定するために、電子または機械的なフォースゲージを熱量計セル34の構成要素に組み込むことができる。
【0192】
上述の実施形態では、高度な特徴なしで、ユーザは、ユーザインタフェース40上の設定パラメータに、またはネットワーク接続コマンドによって、液体の質量及び液体の種類を単純に入力することができる。
【0193】
ここで、ユーザは、充填されたセル容器58及びアタッチメント60をセルハウジング56内に導入し、蓋52及び伝達装置を熱量計セル34の頂部上に固定することができる。
【0194】
次にユーザは、図11に示されるように、デプスゲージクランプ74及びデプスクランプソケット86を使用して、突出する器具先端部24がセル容器58の正しい深さに設置されることを確保することができる。
【0195】
ここで、デプスゲージクランプ74が取り付けられている電気手術器具16は、スタンド82及び器具ガイドクランプ84を使用して、電気手術器具熱量計30上に配置される。器具先端部24は通路72を通ってセル容器58に挿入され、デプスゲージクランプ74は蓋52と接触して位置決めされる。
【0196】
後に、電気手術器具16を無菌環境中で使用する必要がある場合、係脱可能なセル容器58、アタッチメント60及び蓋52は、新しい無菌ユニットと容易に交換され得るため、無菌状態を維持するための補助手段とみなされる。
【0197】
ユーザが適切なパラメータを設定した後、本発明は電力及びエネルギーの測定を行う準備が整う。
【0198】
図17は、マイクロ波電力が電気手術器具16に印加されるときに行われる温度測定の誇張された図、ならびにこれらの測定が計算されたエネルギー及び電力にどのように関係するかを示す。測定プロセスには4つの別個の動作フェーズが示されている。
【0199】
整定期間:スターラー50をオンにして液体を混合し、連続するサンプル間と、様々な温度センサ66からとの両方のその温度を等しくする。
【0200】
準備期間:電気手術器具熱量計30、特にコントローラ48は、温度測定における分散が十分に低いことを検出し、信頼できる開始温度を示す温度平衡に達していると推定する。電気手術器具熱量計30が進行する準備ができているという信号がユーザに提示される。
【0201】
電力送達または加熱期間:マイクロ波エネルギーは電気手術器具16に供給され、液体に吸収される。電力送達は、連続して、固定レベルで、可変レベルのものとして、またはバースト中に行われることができる。これらの詳細は、発電機12で設定されることができる。
【0202】
計算:電気手術器具熱量計30によるコマンドか検出かいずれかによって(例えば、信号ケーブル88を使用して)電力送達が停止され、冷却曲線が確立されることができる。計算は、既知の比熱容量を有する既知の量の液体における既知の時間内での温度上昇を測定する形式を取る。冷却曲線は、主に負の指数形式のものである。
【0203】
単純に記録された最高温度及び最低温度を使用して温度上昇を計算することが可能であるが、本発明はより正確な方法を使用することもできる。3つの曲線、a)準備測定値に適合する直線または負の指数曲線、b)比較的急速な電力送達測定値のほぼ直線的な傾き及び切片、及び/またはc)計算期間測定値に適合する直線または負の指数曲線を確立することができる。
【0204】
これらの曲線の互いとの、そしてコントローラ48による正確なタイムスタンプによって洗練される交点により、より多くのデータを最終計算に含めることが可能になり、熱量計ソフトウェアによる計算が容易になることができる。
【0205】
次の式を熱量計ソフトウェアの基礎として使用して、器具によって送達されるエネルギー及び電力の量を計算する。
【0206】
Q=ΔT×M×C (式1)
ΔTは、摂氏またはケルビン単位の温度変化である。Mは液体の質量(グラム単位)であり、Cは液体の熱容量(Jkg-1-1単位)である。これらを乗算すると、ジュール単位で追加される熱エネルギーが得られる。これをエネルギーが供給されたタイムスパン(秒単位のt)で除算すると、平均電力入力値(ワット単位のP)が得られる。
【0207】
P=Q/t (式2)
例:200gの水に30秒間電力を印加すると、温度が摂氏2度(またはケルビン)上昇する。
2(K)×0.20(kg)×4184(Jkg-1-1)=1673.6(J) (式3)
1673.6(J)/30(s)=55.787(W) (式4)
プロトタイプの制御及び測定システムは、Arduino(商標)プロセッサを使用して実装され、C++でコーディングされてもよい。図18に示されるように、コードは7つの異なるフェーズ、ブロックまたはステップに分割される。
【0208】
ステップS1は、ディスプレイ38がオンになり、モータ42がテストされる開始フェーズである。さらに、このフェーズでは、使用される液体の質量、液体の熱容量、及び実験時間を設定することができることにより、電気手術器具熱量計30は、より適応可能になり、異なる液体及びそれらの液体の体積を使用することが可能になる。
【0209】
ステップS2は、電気手術器具熱量計30が以前の温度測定値の標準偏差を得ることができる冷却フェーズである。さらに、モータ42をオンにして、熱エネルギーが液体中に均等に分配されるようにスターラー50を回転させる。
【0210】
ステップS3では、ステップS2で求めた標準偏差が設定値以下であるかどうかを決定する。はいの場合、方法はステップS4に進み、準備ステージに移る。標準偏差が設定値を上回る場合、プロセスは、ステップS2に戻り、標準偏差が設定値以下になるまで繰り返される。
【0211】
ステップS4は、準備フェーズに対応し、ステップS5での加熱フェーズに移行する前のプロセスの一時停止として機能する。ステップS5に移行するために、ユーザは、ゴーボタンを押下してもよく、及び/または外部ユーザインタフェース78を作動させる。
【0212】
ステップS5の加熱フェーズでは、発電機12がオンになり、初期温度の平均が開始タイムスタンプと共に少なくとも1つの温度センサ66によって記録される。設定時間に達すると加熱フェーズは終了する。このフェーズ中に、リセットボタンを保持する場合、試験は通常より早く終了し、電気手術器具熱量計30は開始フェーズ(ステップS1)に戻る。電気手術器具熱量計30は、初期温度及び最終温度の平均を取り、誤差を低減させようとする。
【0213】
設定された持続時間の後の冷却中に、ステップS6の記録(または計算)フェーズに入り、そこでモータ42をオフにし、合計時間及び平均最終温度を記録する。
【0214】
ステップS7の計算フェーズでは、電気手術器具熱量計30は、記録されたデータを使用して、器具から水に入力される電力及びエネルギーを計算する。これらの値は画面に表示される。その後、もう一度ゴーを押下することでプロセスを繰り返す(プロセスがステップS2に移行する)か、リセットを押下することで開始画面に戻る(プロセスがステップS1に移行する)かいずれかができる。
【0215】
電気手術器具熱量計30は、長期間にわたる精密な温度測定値を捕捉することができ、それ自体の環境に関するデータを記録する機能を提示する。周囲空気温度センサ92を追加すると、測定プロセス全体または測定プロセス後に補正係数を適用して、低温の周囲環境でのより急速な冷却を考慮することが可能になるため、結果の精度が向上することができる。周囲空気温度センサ92は、図2及び図3に示されるように電気手術器具熱量計30の周囲に露出して配置されてもよく、またはハウジング54の内部に配置されてもよい。周囲空気温度センサ92は、任意選択でコントローラ48に接続され、温度センサ66と同様の温度センサであってもよい。
【0216】
電気手術器具熱量計30は、特に様々なスターラー速度及びスターラー形状を有するスターラー50によって供給される機械的エネルギーに応じた液体の温度における上昇を測定することもできる。補正係数は、測定中にスターラー50によって供給される機械的エネルギーを推定することによって形成され、その結果の精度を向上させることができる。この近似は、例えばコントローラ48に格納されたアルゴリズムに基づいて、コントローラ48によって実行されることができる。この目的のために、コントローラ48は現在のモータ速度を読み取ることができる。
【0217】
コントローラ48は、電気手術器具16が液体中に導入される前及び後の温度測定値に適合する曲線を確立するように指令され得ることにより、電気手術器具16の器具材料によって吸収される熱エネルギーの量の推定が可能になる。これを測定結果に追加して、その精度を向上させることができる。様々な電気手術器具16は、それぞれ様々な補正係数を必要とし得、例えばパラメータのセルフプロビジョニング(上記を参照)を使用した後に、自動的に適用されてもよい。
【0218】
いくつかの電気手術器具16は、単一より多い電磁周波数を同時か、順次かいずれかで送達することができる。例えば、Creo医療用CROMAシステムは、最大60Wの5.8GHzマイクロ波電力と、最大200WのRF電力との両方を同時に送達することができる。電気手術器具熱量計30は、電気手術器具16の器具先端部24を介して液体組織アナログに送達されるすべての電磁力の組み合わされた出力を測定することができる場合がある。この場合、液体の適切な選択は、放射エネルギー、伝導エネルギー、及び容量結合エネルギーを容易に吸収する生理食塩水である。
【0219】
代替の蓋52を設けること、または蓋を全く設けないことによって、組織表面の処置に使用されることができる、例えば閉口、開口した端部のある、または充填された、剛性または可撓性のマイクロ波またはmm波導波管アプリケータ94など、様々なより大型の電気手術器具16を収容することができる(図19を参照)。導波管アプリケータ94は、通常、同軸ケーブルよりも大きく平らな表面積を呈し、図19に示されるように、熱量計の液体に導波管アプリケータ94を浸すのではなく、その液体の表面に保持する必要がある場合がある。導波管アプリケータ94は、アンテナ98が配置される導波管96を含むことができる。アンテナ98は、ケーブル14に接続され、マイクロ波及び/またはmm波の放射線を導波管96内に放射する。放射された放射線は、エネルギー出力ポートの一例である導波管開口部100で導波管96を出る。熱量測定の場合、導波管開口部100は、放射された電磁放射線の大部分、好ましくは放射された電磁放射線のすべてが液体によって吸収されるように、液体の真上に配置される。
【0220】
電気手術器具熱量計30は、感熱性ゲル、テープ、または他の材料インジケータなどの感熱性充填材料102と組み合わせて使用されることもできる。感熱性充填材料102は、電気手術器具熱量計30に電力を送達する前に、器具先端部24の周囲に配置されることができる。感熱性充填材料102は、電気手術器具16を治療に使用する際に重要な特徴である、器具先端部24の幾何学的形状の周囲のエネルギー輪郭の分布に関する情報を提供することができる。感熱性充填材料102は、加熱すると色が変化するタイプのものであってもよく、またはゲル状態から固体状態に変化するものであってもよく、または例えばワックスの場合には、その逆であってもよい。感熱性充填材料102が使用される場合、熱量計の計算には、感熱性充填材料102の比熱容量及び質量を考慮することを可能にする追加項も含まれ得る。熱量計液体の質量に比べて感熱性充填材料102の材料が薄い、または軽量である場合、追加の材料インジケータの加熱を考慮する必要がない場合がある。図20は、器具の放射パターンを示すために熱指標材料を使用した一例を示す。
【0221】
電気手術器具熱量計30は、無菌環境での操作に適している係脱可能なセル容器58及びアタッチメント60を有することができる。器具の性能が電気手術器具熱量計30によって測定され、その後、例えばインビボ操作などの無菌環境で使用される場合、係脱可能な液体セル34を使用し、係脱可能なデプスゲージソケット86及び蓋52を含むことにより、無菌状態の保持が容易になる。
【0222】
電気手術器具熱量計30は、電気手術器具16のロボット配置、メモリカードまたはネットワークサーバへのデータロギング、結果及び命令の音声出力を含む可聴アラーム、バッテリ電源またはDC/主電源で使用する場合の自動電源オフ、バルブ、ポンプ、チューブ類及びヒートシンクの組み合わせによって温かくなりすぎた液体の自動補充、インターネットリンクを介したリモートサービス及びデータ取得、熱量計セル34内の液体の質量を測定する方法、例えば電子天秤、ならびに電気手術器具16及び蓋52の正しい配置を検出するためのマイクロスイッチを含むがこれらに限定されない、そのユーザビリティまたは精度を向上させることができる他の様々な機械的特徴を含んでもよい。
【0223】
図21は、熱量計セル34内の液体の撹拌が異なる方法で達成される電気手術器具熱量計32のさらなる実施形態を示す。電気手術器具熱量計32の他のすべての特徴は、特に明記しない限り、他の実施形態に関連して説明したものと同じであり得る。
【0224】
この実施形態では、スターラー50を回転させるためのモータ42は存在しなくてもよい。代替または追加的に、熱量計セル34を動かすように構成されるスターラーモータ104が設けられる。図21に示される実施形態では、スターラーモータ104は、セル容器58を回転させるための回転運動を発生する。実際には、スターラーモータ104は、セル容器58が連結されるアタッチメント60を回転させることができる。この目的のために、スピニングディスク106がスターラーモータ104の軸に取り付けられる。アタッチメント60及び/またはセル容器58は、セル容器58を回転させるためにスピニングディスク106に配置され、解放可能に取り付けられる。スターラーモータ104は、モータ42のものと同様の特徴及び/または特性を含んでもよい。特に、スターラーモータ104は、コントローラ48によって制御され得る。この実施形態では、蓋52は、より単純な構成を有し得るように、伝達手段を備えていなくてもよい。
【0225】
セル容器58内の液体を撹拌するために、セル容器58と共に動かない撹拌手段108を設けてもよい。例えば、撹拌手段108は、熱量計基部32に対して定常であってもよい。蓋52は、熱量計セル34が蓋52に対して動く(回転する)ことができるように、熱量計セル34から離隔して配置されてもよい。あるいは、蓋52がセル34に物理的に連結するが、蓋52とセル34との間の相対運動を容易にすることも可能にする、1つまたは複数の軸受要素が含まれてもよい。撹拌手段108は蓋52に取り付けられてもよい。撹拌手段108はパドルを含んでもよい。撹拌手段108は、動いているセル容器58内で動いている液体に対して相対的に動き、撹拌手段108は液体を撹拌する。温度センサ66はまた、蓋52に取り付けられてもよい。電気手術器具16は、動いている熱量計セル32に対して動かないように配置される。したがって、温度センサ66及び/または電気手術器具16は、熱量計セル32が動いているときに液体を撹拌することもできる。
【0226】
図22に示される実施形態は、固体、例えばマイクロ波減衰器及びマイクロ波暗室で使用されるような放射線吸収材料(RAM)を含む吸収材料110の別の実施形態に関する。RAMの製造に使用される一般的な材料は、鉄フェライト、導電性カーボンブラック、グラファイト、カルボニル鉄、またはカーボンナノチューブの均質混合物である。固体吸収材料110は、セル容器58の内部形状に対応する外部形状を有する。特に、固体吸収材料110の一方の直径は、固体吸収材料110をセル容器58に密接に挿入することができるように、セル容器58の内径よりわずかに小さい。
【0227】
固体吸収材料110は、電気手術器具12の器具先端部24を受け入れるための材料ソケット112を含む。材料ソケット112の形状は、器具先端部24の形状に適合される。任意選択で、複数の固体吸収材料110は設けられ、各固体吸収材料110は、同じ外部形状を有するが、材料ソケット112の形状が異なる。各固体吸収材料110は、異なるタイプの電気手術器具12を受け入れるように適合される材料ソケット112を有する。
【0228】
任意選択で、固体吸収材料110は、少なくとも1つの温度センサ66を含む。好ましくは、固体吸収材料110による温度勾配の測定を可能にする複数の温度センサ66が設けられる。温度勾配は、器具先端部24によって放射される電磁放射線の吸収によって生成される。測定された温度変化及び/または温度勾配は、吸収された電磁エネルギーまたは電力を決定するために使用され得る。さらに、温度勾配により、器具先端部24の放射輪郭を決定することが可能になる。
【0229】
図23に示される実施形態は、メタマテリアル114及び吸収体116を含む吸収材料110の別の実施形態に関する。メタマテリアル114は(図23の矢印によって示されるように)器具先端部24によって放射される電磁放射線を吸収体116に導波する、または集束させるように構成される。吸収体116が電磁放射線を吸収すると、吸収体116が加熱される。この温度変化は、吸収体116内に配置され得る温度センサ66を使用して測定される。メタマテリアル114は、セル容器58に挿入される形状に作られてもよく、器具先端部24を受け入れるためのソケットを含む。しかしながら、この実施形態では、ソケットは、器具先端部24に適合する形状に作られなくてもよい。実際、エアギャップは、器具先端部24とメタマテリアル114との間に配置され得る。メタマテリアル114の導波特性により、放射された電磁放射線の基本的にすべてを吸収体116に向けることが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】