(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ウイルスフィルタおよびウイルス濾過方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240305BHJP
B01D 61/18 20060101ALI20240305BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 501H
B01D61/18
B01D63/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557213
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022056989
(87)【国際公開番号】W WO2022195010
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520481714
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・オペレーションズ・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】クローディア・トリンダーデ・ヌネス
(72)【発明者】
【氏名】マルティーナ・ロレンツェッティ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006HA42
4D006JA05A
4D006JA25A
4D006MA03
4D006MA08
4D006MA22
4D006MA25
4D006PA04
4D006PB09
4D006PB19
4D006PB20
4D006PB43
4D006PB55
4D006PB70
4D006PC38
4D006PC41
(57)【要約】
本発明は、生物学的サンプルの簡単かつ迅速な濾過を提供し、それによってサンプルを同じ装置または異なる装置で分析することができる。好ましい一例では、ウイルスとウイルスから分離する必要がある他の生物学的物質を含むサンプルの濾過に特に有用な膜フィルタ12が使用される。フィルタ膜/膜フィルタ12を組み込んだラテラルフローデバイス10も開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ膜(12)と、
試験ラインおよび制御ラインを含むキャリア膜(16)であって、前記フィルタ膜(12)と流体連通しているキャリア膜(16)と、
前記キャリア膜(16)と流体連通している吸収性パッド(14)であって、ラテラルフローデバイスが受動的毛管作用を利用して動作する吸収性パッド(14)と、
を備えたラテラルフローデバイス(10)において、
前記フィルタ膜は、
第1の多孔質層であって、100nmを超える第1の直径を有するランダムに配向された細孔を有する第1の多孔質層と、
第1の多孔質層に隣接し、約20~100nmの約1ミクロン未満の範囲の第2の直径を有する細孔を有する第2の多孔質層と、
を備えている、ラテラルフローデバイス(10)。
【請求項2】
当該ラテラルフローデバイスが、前記フィルタ膜(12)および前記キャリア膜(16)と流体連通するサンプルパッド(20)をさらに備えている、請求項1に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項3】
前記フィルタ膜の前記第2の多孔質層が前記サンプルパッドと接触している、請求項2に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項4】
当該ラテラルフローデバイスが、フィルタ膜(12)および前記キャリア膜(20)と流体連通する結合パッド(14)をさらに備えている、請求項1~3のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項5】
当該ラテラルフローデバイスが、サンプルパッドおよび前記キャリア膜と流体連通する結合パッド(14)をさらに備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項6】
当該ラテラルフローデバイスが免疫分析用である、請求項1~5のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項7】
フィルタハウジングと、
フィルタ膜(12)と、
を備えたシリンジフィルタにおいて、
前記フィルタ膜は、
第1の多孔質層であって、100ミクロンを超える第1の直径を有するランダムに配向された細孔を有する第1の多孔質層と、
前記第1の多孔質層に隣接し、約20nm~約1ミクロン未満の範囲の第2の直径を有する細孔を備えた第2の多孔質層と、
を備えている、シリンジフィルタ。
【請求項8】
第1の多孔質層であって、100ミクロンを超える第1の直径を有するランダムに配向された細孔を有する第1の多孔質層と、
前記第1の多孔質層に隣接し、約20nm~約1ミクロン未満の20~100nmの範囲の第2の直径を有する細孔を備えた第2の多孔質層と、
を備えている、フィルタ膜(12)。
【請求項9】
フィルタ膜(12)と、
試験ラインおよび制御ラインを含むキャリア膜(16)であって、前記フィルタ膜(12)と流体連通しているキャリア膜(16)と、
前記キャリア膜(16)と流体連通している吸収性パッド(18)であって、ラテラルフローデバイスが受動的毛管作用を利用して動作する、吸収性パッド(18)と、
を備えたラテラルフローデバイス(10)において、
前記フィルタ膜は、
表面層および非対称基礎構造を備え、前記表面層が20nm~500nmの厚さを有し、細孔サイズが約20nm~約1ミクロンの範囲であり、前記非対称基礎構造は、約20nm~約500nmの厚さを有し、100nm~約1ミクロンの範囲の孔径を有している、ラテラルフローデバイス(10)。
【請求項10】
当該ラテラルフローデバイスは、前記フィルタ膜および前記キャリア膜と流体連通するサンプルパッドをさらに備えている、請求項9に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項11】
前記フィルタ膜の第2の多孔質層が、前記サンプルパッドと接触している、請求項10に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項12】
当該ラテラルフローデバイスが、前記フィルタ膜(12)および前記キャリア膜(16)と流体連通する結合パッド(14)をさらに備えている、請求項9~11のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項13】
当該ラテラルフローデバイスが、サンプルパッドおよび前記キャリア膜と流体連通する結合パッドをさらに備えている、請求項9~12のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項14】
当該ラテラルフローデバイス(10)が免疫分析用である、請求項9~13のいずれかに記載のラテラルフローデバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ウイルスフィルタおよびウイルス濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポイントオブケア(POC)検査の出現により、ユーザーが簡単かつ迅速に実行できる便利な診断製品を開発することがますます重要になっている。このニーズが生じたのは、医療従事者が従来の医療現場以外の現場で検査を実施する必要があり、診断検査の実施に与えられる時間を最小限に抑えて迅速に結果を求める必要があるためである。数分で診断結果が提供されるため、医療機関はウイルス性疾患などの病気を特定し、できるだけ早く患者を治療することが可能である。
【0003】
ポイントオブケア診断検査は、全血や尿などの生体サンプルに対して頻繁に実行される。生体サンプル中の細胞および粒子状物質は、試験装置内の流体の流れを妨げ、その結果、生体液中の分析物の測定を損なう可能性がある。
【0004】
例えば、血液中では赤血球が分光測定に干渉する可能性があり、ヘマトクリットが変化すると、所定の血液量に含まれる血漿の量も変化する。これらの問題を克服するために、赤血球を血漿から分離して、より明確で均一なサンプルを作成できるようにする。唾液や尿のさまざまな成分についても同様である。
【0005】
それにより、生物学的サンプルから細胞、粒子状物質、または破片を濾過して除去するデバイスは、サンプルに対して実行される分析手順の品質を向上させ得る。
【0006】
例えば、ウイルスの濾過、分離、単離は、血液由来のウイルス感染症の制御やウイルス研究にとって重要な問題である。膜ベースの技術は、その効率性、導入の容易さ、費用対効果の高さから、ウイルスを含む生体材料の分離に有用な方法として認識されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/023135号
【特許文献2】国際公開第2019/060390号
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0327649号
【特許文献4】国際公開第2015/048244号
【特許文献5】米国特許第9333481号
【特許文献6】米国特許出願第17/067,528号
【特許文献7】米国特許出願公開第2017/0115287号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、生物学的サンプルの簡単かつ迅速な濾過を提供し、それにより、サンプルは同じ装置または異なる装置で分析され得る。好ましい一例では、ウイルスとウイルスから分離する必要がある他の生物学的物質を含むサンプルの濾過に特に有用な膜フィルタ(membrane filter)が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の様々な実施形態によるラテラルフローデバイスを示す。
【
図2】
図1に示すようなラテラルフローデバイスで使用され得るさまざまなコンポーネント構成/材料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[定義]
本明細書で使用される場合、「マイクロ細孔」とは、膜/層における、開口部、オリフィス、ギャップ、導管、通路、チャンバ、または溝を指し、マイクロ細孔またはマイクロチャネルは、少なくとも単一の標的因子(例えば、細胞、細菌、ウイルス、生物学的粒子、微生物など)の通過または分析を可能にする十分な寸法である。マイクロ細孔は、複数の標的物質の通過または侵入を可能にし得る。本明細書で使用するとき、「マイクロ」は一般に、マイクロメートルスケールの寸法を指す。
【0011】
本明細書で使用される場合、「ナノ細孔」とは、膜/層における、開口部、オリフィス、ギャップ、導管、通路、チャンバ、または溝を指し、ナノ細孔またはナノチャネルは、単一の標的物質の通過を妨げる寸法または構成である。本明細書で使用される場合、「ナノ」は一般に、ナノメートルスケールの寸法を指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、「細孔(pore)サイズ」は、文脈が別段の指示をしない限り、一般に、マイクロ細孔またはナノ細孔の幅を指す。本明細書で使用される「マイクロ」とは、マイクロメートルスケールの寸法を指す。本明細書で使用される場合、「サブミクロン」とは、約100nmを超えて約1ミクロン(μm)未満を指す。
【0013】
本発明は、生物学的サンプルの簡単かつ迅速な濾過(フィルタリング)を提供し、それによりサンプルは同じ装置または異なる装置で分析され得る。好ましい一例では、ウイルスとウイルスから分離する必要がある他の生物学的物質とを含むサンプルの濾過に特に有用な膜フィルタが使用される。
【0014】
[膜フィルタ]
膜ベースの技術は、その効率性、導入の容易さ、費用対効果の高さから、ウイルスを含む生体材料の分離に有用な方法として認識されている。ウイルスの濾過(フィルタリング)には、いくつかの種類の膜が使用される。例えば、マイクロ濾過(microfiltration:MF)膜は、適切な条件下で静電相互作用が存在するため、膜上での比較的高い流束(flux)とウイルスの良好な保持を示す。より小さい細孔サイズのウルトラ濾過膜(Ultrafiltration membranes)もウイルスの分離に使用される。
【0015】
一実施形態では、本発明に従って使用されるウイルスフィルタは非対称であり、段階的な多孔度を有するサブミクロン、ミクロンまたはナノの多孔質高分子膜構造のいずれか1つ以上を含み、つまり、膜の一方の主面から他方の主面に向かって段階的に細孔径が変化し、細孔径は、例えば、約10nm~約100ミクロンの範囲である。好ましくは、細孔サイズは、約20nm~約100ミクロン、好ましくは約20nm~約50ミクロン、好ましくは約20nm~約10ミクロン、好ましくは約20nm~約1ミクロン、好ましくは約20nm~約1ミクロン、好ましくは約40nm~約100ミクロン、好ましくは約40nm~約50ミクロン、好ましくは約40nm~約10ミクロン、好ましくは約40nm~約1ミクロン、好ましくは約40nm~約0.5ミクロン、好ましくは約80nm~約100ミクロン、好ましくは約80nm~約50ミクロン、好ましくは約80nm~約10ミクロン、好ましくは約80nm~約1ミクロン、好ましくは約80nm~約0.5ミクロン、好ましくは 約100nm~約100ミクロン、好ましくは約100nm~約50ミクロン、好ましくは約100nm~約10ミクロン、好ましくは約100nm~約1ミクロン、好ましくは約100nm~約0.5ミクロン、好ましくは 約200nm~約50ミクロン、好ましくは約200nm~約10ミクロン、好ましくは約200nm~約1ミクロン、好ましくは、例えば約200nm~約999nm等の約200nm~約1ミクロン未満の範囲である。最も好ましくは、細孔径分布がサブミクロンの範囲であることが好ましい。
【0016】
膜の製造方法に応じて、膜フィルタは、等多孔性、階層的、非対称の段階的膜(graded membranes)になり得る。等多孔質段階的膜は、表面層と非対称な基礎構造(substructure)を備えている。表面層は、さまざまな厚さを有し得る。例えば、表面層は、約20nm~約500nm、好ましくは約50nm~約300nm、好ましくは約50nm~100nm(nmまでのすべての値およびそれらの間の範囲を含む)の厚さを有し得る。表面層は、表面層の深さ全体に延在する複数の細孔を有する。細孔は、円筒形および立方体の形状などの形態を有し得る。細孔は、例えば、20nm~約1ミクロン未満、例えば100nm、nmまでのすべての値およびそれらの間の範囲を含むサイズ(例えば、直径)を有し得る。少なくとも1つの表面層は、単純なふるい(sieve)を形成するために規則正しいアレイ状の多孔質層を含み得る。
【0017】
少なくとも 1つの表面層は、ある範囲の細孔密度を有し得る。好ましくは、表面層は等多孔性である。「等多孔性」とは、細孔が狭い細孔サイズ分布を有することを意味する。例えば、細孔サイズ分布は、対数正規分布フィットによって得られる分散係数σ/μとして定義され、狭い細孔径分布は0.3未満(例えば、0.01までのすべての値およびそれらの間の範囲を含む、0.1~0.3)である。様々な例において、細孔径分布は0.1、0.15、0.2、0.25、または0.3である。
【0018】
非対称基礎構造はまた、ある範囲の厚さを有し得る。例えば、非対称基礎構造層は、約20nm~約500nm、好ましくは約50nm~約300nm、好ましくは約50nm~100nm(nmまでのすべての値およびその間の範囲を含む)の厚さを有し得る。表面層は、表面層の深さ全体に延在する複数の細孔を有する。細孔は、円筒形および立方体の形態などの形態を有し得る。細孔は、40nm~約1ミクロン未満、例えば100nm~999nmの間(nmまでのすべての値およびそれらの間の範囲を含む)のサイズ(例えば、直径)を有し得る。
【0019】
ナノメートルからマイクロメートルまでの複数の長さスケールにわたって連続的(つまり、アクセス可能な)階層的多孔性を備えたポリマー材料は、加工の容易さと比較的高い表面積を維持しながら、細孔を介した物質の効率的な輸送の可能性と、機械的に堅牢な構造とを提供する。
【0020】
等多孔質膜の製作方法は、ブロック共重合体セルフアセンブリ(block copolymer self-assembly)と非溶媒誘起相分離(SA+NIPS=SNIPS)の組み合わせから製作される方法を含めて、当技術分野で知られている。SNIPS由来のフィルムは、化学的に異なるブロック共重合体から製造されるため、例えば、「ミックスアンドマッチ」アプローチ、つまり、膜がキャストされる元のポリマー溶液に、対応する個々のブロック共重合体を単純にブレンドするだけである。
【0021】
表面層の形態は、部分的にはマルチブロック共重合体セルフアセンブリの結果であると考えられる。この層の形態は、キャスト条件(casting conditions)(例えば、フィルム周囲の環境の流量、フィルム周囲の環境の水(湿度)/溶媒濃度、蒸発時間、キャスト速度、ゲート高さなど)およびキャスト溶液(casting solution)の組成(例えば、ポリマーのモル質量、化学的性質、濃度、キャスティング溶媒または溶媒の混合物)に依存する。
【0022】
等多孔質膜を製作する方法は、例えば、国際公開第2019/023135号、国際公開第2019/178045号、国際公開第2017/189697号、国際公開第2019/060390号、米国特許出願公開第2017/0327649号、および国際公開第2015/048244号から見出すことができる。スピノーダル分解誘起マクロ相およびメソ相分離とリンスによる抽出(SIM2PLE)と呼ばれる別の方法では、階層的細孔は、ブロック共重合体と低分子量添加剤の混合物中での溶媒蒸発によって引き起こされるスピノーダル分解とミクロ相分離の組み合わせによって生成される(Dorin et al., Chem. Mater. 2014, 26, 339-347)。その他の方法は、トラックエッチングを含む非対称高分子膜を製造する(Lee A, Elam JW, Darling SB (2016) Environ Sci Water Res Technol 2:17-42. doi:10.1039/C5EW00159E; Khulbe KC, Matsuura T, Feng C (2015) TIn: Thakur VK, Thakur MK (eds) Handbook of polymers for pharmaceutical technologies, structure and chemistry. Wiley, New Jersey, United States, pp 33-66)、レーザーアブレーション(Pazokian H, Jelvani S, Barzin J et al (2011) Opt Commun 284:363-367 doi:10.1016/j.optcom.2010.08.058)、並びに、上記およびKhorsand-Ghayeni et al., (11 Oct 2016) Polym. Bull. DOI 10.1007/s00289-01601823-z and Wang Z, Sun L, Wang Q et al (2014) Eur Polym J 60:262-272. doi:10.1016/j.eurpolymj.2014.09.015; Barzin J, Madaeni SS, Pourmoghadasi S (2007) J Appl Polym Sci 104:2490-2497. doi:10.1002/app.25627に記載された位相反転を含む。
【0023】
別の実施形態では、膜フィルタは、二重層膜であって、1つの層にはデプスフィルタ(depth filter)として機能するミクロンサイズの細孔の3次元メッシュを有し、もう1つの膜にはナノメートルの単純なふるいを有し、これらを組み合わせて単一のフィルタとして機能する2つの異なる膜を備え、それにより二重層膜を形成し得る。これらの膜のそれぞれは、当技術分野で知られている任意の方法によって作成され得る。例えば、デプスフィルタ層は、米国特許第9333481号に記載されているように製造され得る。
【0024】
単純なふるい層の例としては、Ulbricht, M.,「高度な機能性高分子膜」Polymer 47 (2006), pp. 2217-2262が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
好ましい二重層膜は、一般に、第1の多孔質層と、第1の多孔質層に隣接する第2の多孔質層とを含む。第一の多孔質層は、細胞全体や破片などのより大きな生物学的成分を詰まらせることなく捕捉するサイズと特性を備えている。第1の多孔質層の細孔は一般に、ランダムな配向と100nmを超えるサイズを有する。ランダムな配向により、使用中にフィルタが詰まる傾向が軽減される。第2多孔質層は第1多孔質層に隣接して配置され、一般に20~100nmの範囲内のより小さい細孔直径を有する。Yang他の2006 Adv. Mater., 18, 709-712 doi: 10.1002/adma.200501500を参照。第2の多孔質層の孔径は、特定のウイルスが孔を通過できるように選択され得る。この実施形態では、膜材料は、血液分離器、例えば、VF2、GF/DVA、MF1、またはFusion5を含む第1の層と、第1の層と接着され、フォトリソグラフィー技術を使用して正確な寸法に作られる第2の層とを含み得、これは、2020年10月9日に出願された「接線流カセット-HFエミュレーション」と題する米国特許出願第17/067,528号に記載されており、この参照により本明細書に組み込まれる。半導体製造技術を応用した技術を用いて多孔質高分子膜を製作する技術は、米国特許出願第17/067,528号に記載されている。これらの技術は、孔径を正確な寸法に制御することを可能にし、本発明の実施形態による膜フィルタの第2の層を製作するために使用することができ、必要に応じて、20~100nmの間、50~100nmの間、50~100nmの間、または80~100nmの間の孔径が含まれる。
【0026】
好ましくは、細孔サイズは、約20nm~約100ミクロン、好ましくは約20nm~約50ミクロン、好ましくは約20nm~約10ミクロン、好ましくは約20nm~約1ミクロン、好ましくは約20nm~約0.5ミクロン、好ましくは約40nm~約100ミクロン、好ましくは約40nm~約50ミクロン、好ましくは約40nm~約10ミクロン、好ましくは約40nm~約1ミクロン、好ましくは約40nm~約0.5ミクロン、好ましくは約80nm~約100ミクロン、好ましくは約80nm~約50ミクロン、好ましくは約80nm~約10ミクロン、好ましくは約80nm~約1ミクロン、好ましくは約80nm~約0.5ミクロン、好ましくは約100nm~約100ミクロン、好ましくは 約100nm~約50ミクロン、好ましくは約100nm~約10ミクロン、好ましくは約100nm~約1ミクロン、好ましくは約100nm~約0.5ミクロン、好ましくは約40nm~約50ミクロン、好ましくは約40nm~約10ミクロン、好ましくは約40nm~約1ミクロン、好ましくは約40nm~約0.5ミクロン、好ましくは約80nm~約100ミクロン、好ましくは約80nm~約50ミクロン、好ましくは約80nm~約10ミクロン、好ましくは約80nm~約1ミクロン、好ましくは約80nm~約0.5ミクロン、好ましくは約100nm~約100ミクロン、好ましくは、約100nm~約50ミクロン、好ましくは約100nm~約10ミクロン、好ましくは約100nm~約1ミクロン、好ましくは約100nm~約0.5ミクロンの範囲である。最も好ましくは、好ましい細孔径分布はサブミクロンの範囲である。
【0027】
本発明による膜フィルタは、シートの形態で、ラテラルフローデバイス(例えば、イムノアッセイ(immunoassay))の構成要素として、またはシリンジフィルタ内に提供され得る。
【0028】
[ラテラルフローデバイスの応用]
一態様では、膜フィルタ12は、ラテラルフローイムノアッセイなどのラテラルフローデバイス10で使用される。好ましくは、イムノアッセイは、膜フィルタを通過できる特定のウイルスを検出するように設計される。ラテラルフローデバイスは、フィルタ膜12と、テストラインおよびコントロールラインを含むキャリア膜16であって、フィルタ膜12と流体連通しているキャリア膜16と、キャリア膜16と流体連通する吸収性パッド(例えば、芯(wick)18)とを備え、ラテラルフローデバイスは受動的な毛細管現象を利用して動作する。ラテラルフローデバイス10はまた、サンプルパッド20および/または結合パッド(conjugate pad)14を含み得る。膜フィルタは、好ましくは、
図1の構造を有するラテラルフローデバイス内のサンプルパッドと接触して、或いは、サンプルパッドの代わりに配置される。
【0029】
膜層12は、好ましくは、より小さい細孔がサンプルパッドと接触する下向きの配向で配置され、より大きなランダム細孔がサンプルパッドと接触する部分の上に配向されるように配置される。ラテラルフローデバイスは、液体サンプル中の標的分析物の有無を検出することを目的としている。従来、一連の液体導管、例えば多孔質紙または焼結ポリマー片などの毛細管パッドが支持体上に形成される。既知の構成は、スポンジとして機能し、過剰なサンプル液体を保持する第1のサンプル液体受容要素を含む、様々な液体導管要素を使用する。浸漬されると、液体は結合放出パッド(conjugate release pad)として知られている第2の要素に伝播し、そこでは、製造業者は、いわゆる結合された、通常は溶解可能なマトリックス中に乾燥した形式の生物活性粒子を保管し、このマトリックスには、標的分子と粒子の表面に固定化されたその化学的パートナーとの間で化学反応を引き起こすための試薬(reagent)が含まれる。サンプルが粒子を溶解すると、分析物が粒子に結合する反応が起こる。通常、第2の試薬、例えば、結合パッドに沿って特定の距離、または第3の要素上に配置された変色試薬は、分析物が結合した粒子を捕捉して検査結果を提供するために使用される。第3の試薬、例えば液体経路に第2の試薬よりもさらに遠い色変化試薬は、すべての粒子を捕捉するために使用されることが多いため、液体サンプルが第2の試薬を通過して伝播したことを確認するためのコントロールとして使用される。本発明による有用なラテラルフローアッセイの例としては、2015年3月17日に出願された「ラテラルフロー試験の改良に関する」米国特許出願公開第2017/0115287A1号(米国特許第10,551,381号:Yen C.W. et al.. Lab Chip. 2015;15:1638-1641. doi: 10.1039/C5LC00055F and Koczula and Gallota, (2016) Essays Biochem;60(1):111-120 doi: 10.1042/EBC20150012)に記載されているものが挙げられる。
【0030】
第2および第3の試薬の反応ゾーンを通過した後、液体サンプルは、廃棄物容器として機能する最終多孔質芯材料要素(final porous wick material element)18に入る。
【0031】
診断用ウイルスワクチンのアッセイと用途には、
- 治療戦略を決定する
- 病気の経過と予想される結果を予測する
- ウイルス蔓延の可能性を予測する
- 感受性のある個人の特定とワクチン接種を可能にする
- 世界中でのウイルスの動きを追跡する
等の多くの利点があるが、これらに限定されない。
【0032】
感染患者のウイルスを特定する方法は、
- 理想的には、敏感で、具体的で、迅速である必要がある。
- 診断(Dx)検査の一般的なターゲット:ウイルスタンパク質(抗原)、ウイルスゲノム、および/または抗ウイルス抗体。
- 患者のサンプル(血液、喉の綿棒)から直接検出するように設計されたものもあり、例えば、ラテラルDxフローアッセイ。
- 疫学研究には、低コスト、高スループットのモダリティの使用を必要とする大規模なサンプルコホート(sample cohort)が含まれ得る。
【0033】
本発明によるウイルスフィルタ膜および診断検査は、SARS-CoV-2、SARS(2003)、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスA、インフルエンザ(例えば、インフルエンザA)、ジカ熱、デング熱、チクングニア熱、西ナイルウイルス、日本脳炎、HIV、H1N1、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、単純ヘルペス1型ウイルス(HSV-1)、黄熱病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、並びに、それらのすべての亜種を含むがこれらに限定されないウイルスの検出に使用され得る。本発明のウイルスフィルタ膜の孔径は、ウイルス標的を生体サンプルの他の成分から分離できるように選択される。特定のフィルタの細孔サイズと範囲を選択するときに考慮すべきウイルス粒子サイズの例は、例えば、ポリオウイルスの粒子サイズであり、アデノウイルスおよびインフルエンザAウイルスの粒子サイズの範囲である約88~110nmの間である。HIV-1ウイルスの粒子サイズは120~150nmの範囲であるが、HSV-1ウイルス粒子の粒子サイズは約125nm、EBVウイルス粒子は約140nmである。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明によるウイルスフィルタおよび診断検査は、約70nm~約110nmの範囲のウイルス粒子サイズを有するSARS-CoV-2の生物学的サンプルにおける検出のための診断検査での使用に適している。
【0035】
本発明によれば、生体サンプルは、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、喀痰、唾液、固形組織サンプル、皮膚スワブサンプル、喉スワブサンプル、生殖器スワブサンプルを含むがこれらに限定されない、任意の体液または組織を含む群から選択される。
【0036】
[その他のウイルス濾過用途]
本発明の膜フィルタは、
・生物医薬品および臨床応用、例えば、
治療用タンパク質の製造におけるウイルス除去
mAb製造の下流処理における最終精製ステップ
予防ワクチンおよび遺伝子治療の製造のためのウイルスの精製
・微生物による水質のモニタリング
・空気浄化
等を含むがこれらに限定されない他のウイルス濾過設定において有用である。
【0037】
[膜フィルタのその他の用途]
本発明の膜フィルタは、様々な粒子(生物および無生物の両方)の分離に有用である。一般的な分離には、真核細胞および原核細胞(ウイルスや真菌の胞子および種子の寸法に至るまで)、土壌、排気ガス、金属微粒子が含まれる。本発明の膜フィルタは、細胞分子の分離にも適している。
【0038】
例えば、膜フィルタの性能を評価するには、一般的な分離テストとして、さまざまなサイズのポリスチレンビーズやポリデキストランなどの分子を使用してフィルタをテストする。ほとんどの分離は、均一なサイズの細孔膜であってもサイズの範囲があるため、プロファイルがS字状になる。例えば、重要な性能の「成功」は、非常にシャープなサイズカットオフ輪郭に加えて、膜を貫通する(空気と水の)流れの関係に対し十分に規定された圧力である。
【0039】
1つの好ましい実施形態では、本発明のフィルタの向きにより、特定の設定での使用が容易になる。例えば、ウイルスの存在を検出するためのラテラルフローアッセイと関連してフィルタが使用される場合、フィルタは、細孔勾配のより大きな細孔が疑わしいウイルスを含む生物学的サンプルを受容するように向けられる。次にウイルスはフィルタを通過し、ラテラルフローアッセイのサンプルパッドを通過する前に濃縮される。フィルタの向きは、標的生物種がフィルタを通過して、例えばラテラルフローアッセイストリップ上に通過する意図に応じて利用される。
【0040】
[実施例]
実施例1:ウイルス診断アッセイで使用するためのさまざまなフィルタのテスト
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0041】
本明細書で参照される特許および科学文献は、当業者が利用できる知識を確立するものである。本明細書で引用されるすべての引用特許および公開または未公開の引用特許出願は、その全体がこの参照により組み込まれる。本明細書で引用される他のすべての出版された参考文献、文書、原稿、科学文献なども、この参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0042】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して特に図示および説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態およびその詳細にさまざまな変更を加えることができることが当業者には理解されるであろう。また、本明細書で説明する実施形態は必ずしも相互に排他的ではなく、したがって、様々な実施形態の特徴を本発明にしたがって、全部または一部を組み合わせることができることも理解されたい。
【符号の説明】
【0043】
12 膜フィルタ
14 結合パッド
16 キャリア膜
18 芯
20 サンプルパッド
【手続補正書】
【提出日】2023-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ膜(12)と、
試験ラインおよび制御ラインを含むキャリア膜(16)であって、前記フィルタ膜(12)と流体連通しているキャリア膜(16)と、
前記キャリア膜(16)と流体連通している吸収性パッド(14)であって、ラテラルフローデバイスが受動的毛管作用を利用して動作する吸収性パッド(14)と、
を備えたラテラルフローデバイス(10)において、
前記フィルタ膜は、
第1の多孔質層であって、100nmを超える第1の直径を有するランダムに配向された細孔を有する第1の多孔質層と、
第1の多孔質層に隣接し、約20
から約1ミクロン未満の範囲の第2の直径を有する細孔を有する第2の多孔質層と、
を備えている、ラテラルフローデバイス(10)。
【請求項2】
当該ラテラルフローデバイスが、前記フィルタ膜(12)および前記キャリア膜(16)と流体連通するサンプルパッド(20)をさらに備えている、請求項1に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項3】
前記フィルタ膜の前記第2の多孔質層が前記サンプルパッドと接触している、請求項2に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項4】
当該ラテラルフローデバイスが、フィルタ膜(12)および前記キャリア膜(
16)と流体連通する結合パッド(14)をさらに備えている、請求項1~3のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項5】
当該ラテラルフローデバイスが、サンプルパッドおよび前記キャリア膜と流体連通する結合パッド(14)をさらに備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項6】
当該ラテラルフローデバイスが免疫分析用である、請求項1~5のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項7】
フィルタハウジングと、
フィルタ膜(12)と、
を備えたシリンジフィルタにおいて、
前記フィルタ膜は、
第1の多孔質層であって、100ミクロンを超える第1の直径を有するランダムに配向された細孔を有する第1の多孔質層と、
前記第1の多孔質層に隣接し、約20nm~約1ミクロン未満の範囲の第2の直径を有する細孔を備えた第2の多孔質層と、
を備えている、シリンジフィルタ。
【請求項8】
第1の多孔質層であって、100ミクロンを超える第1の直径を有するランダムに配向された細孔を有する第1の多孔質層と、
前記第1の多孔質層に隣接し、約20nm
から約1ミクロン未満の
範囲、好ましくは、20~100nmの範囲の第2の直径を有する細孔を備えた第2の多孔質層と、
を備えている、フィルタ膜(12)。
【請求項9】
フィルタ膜(12)と、
試験ラインおよび制御ラインを含むキャリア膜(16)であって、前記フィルタ膜(12)と流体連通しているキャリア膜(16)と、
前記キャリア膜(16)と流体連通している吸収性パッド(
14)であって、ラテラルフローデバイスが受動的毛管作用を利用して動作する、吸収性パッド(
14)と、
を備えたラテラルフローデバイス(10)において、
前記フィルタ膜は、
表面層および非対称基礎構造を備え、前記表面層が20nm~500nmの厚さを有し、細孔サイズが約20nm~約1ミクロンの範囲であり、前記非対称基礎構造は、約20nm~約500nmの厚さを有し、100nm~約1ミクロンの範囲の孔径を有している、ラテラルフローデバイス(10)。
【請求項10】
当該ラテラルフローデバイスは、前記フィルタ膜および前記キャリア膜と流体連通するサンプルパッドをさらに備えている、請求項9に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項11】
前記フィルタ膜の第2の多孔質層が、前記サンプルパッドと接触している、請求項10に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項12】
当該ラテラルフローデバイスが、前記フィルタ膜(12)および前記キャリア膜(16)と流体連通する結合パッド(14)をさらに備えている、請求項9~11のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項13】
当該ラテラルフローデバイスが、サンプルパッドおよび前記キャリア膜と流体連通する結合パッドをさらに備えている、請求項9~12のいずれか一項に記載のラテラルフローデバイス(10)。
【請求項14】
当該ラテラルフローデバイスが免疫分析用である、請求項9~13のいずれかに記載のラテラルフローデバイス(10)。
【国際調査報告】