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特表2024-511067訓練された免疫を調節するための化合物およびその使用方法
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  • 特表-訓練された免疫を調節するための化合物およびその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】訓練された免疫を調節するための化合物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/03 20060101AFI20240305BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240305BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C07K5/03 ZNA
A61K38/05
A61K45/00
A61P35/00
C07K16/28
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557668
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022021035
(87)【国際公開番号】W WO2022198101
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/163,428
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523355975
【氏名又は名称】トレインド セラピューティクス ディスカバリー,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】502375437
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディスン アット マウント シナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ヘンリクス マリー
(72)【発明者】
【氏名】ホーブン,フリーク ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ジェナビーク,バス ヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ソンイェンス,セルゲ ヘンドリクス マティス
(72)【発明者】
【氏名】ミュルダー,ウィレム エム.ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA33
4C084BA34
4C084BA36
4C084CA59
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA51
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
式(I)の化合物、ならびに式(I)の化合物を含む組成物およびその使用が、本明細書で提供される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アリール、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、C9~30脂肪酸鎖、-Y-N(R11)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C16~30脂肪酸鎖、-(CR1010-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(R10)(OR)-アルキレン-OR、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
は、C8~30脂肪酸鎖または-C(O)-C16~30脂肪酸鎖であり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;RがC9~30脂肪酸鎖である場合、Rは-Hである)。
【請求項2】
式(I)の化合物が、式(IA):
【化2】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、-Hまたはベンジルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が、-Hである、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’がそれぞれ-Hである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がアルキルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
がメチルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
およびRが、両方とも-Hである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Yが、-C(O)N(R)(R)で任意選択で置換されたアルキレンである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Yが、-CH-または
【化3】
である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Yが、-CH-である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、-Y-トリアゾリル-Lである、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
式(I)の化合物が、式(II):
【化4】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は-N-であり、Xは-C-であり;もしくは、Xは-C-であり、Xは-N-である)
である、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
式(I)の化合物が、式(IIA):
【化5】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Yが、C1~6アルキレンである、請求項13または14に記載の化合物。
【請求項16】
が、-Hである、請求項13から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
Lが、C8~30脂肪酸鎖、-CH-C(O)-W、-CH-O-C(O)-W、-CHCH-N-CHCH-C(O)-NR11-CHCH-NR11-C(O)-W)、および-CHCH-N-(CHCH-C(O)-W)からなる群から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
Lが、C12~18脂肪酸鎖である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Lが、-CH(CHCH-CHである、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
Wが、C8~30脂肪酸鎖である、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
Wが、C8~30アルキルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Wが、C12~18脂肪酸鎖である、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
Wが、C12~18アルキルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項24】
Wが、
【化6】
である、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
およびRX’が、それぞれ独立して-C8~30脂肪酸鎖である、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
およびRX’が、それぞれ独立して-C8~30アルキルである、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
およびRX’が、それぞれ独立してC12~18脂肪酸鎖である、請求項24に記載の化合物。
【請求項28】
およびRX’が、それぞれ独立して-C12~18アルキルである、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
およびRX’が、両方とも-(CHCH-CHである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
Wがコレステロール:
【化7】
である、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
Wが、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、およびリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるリン脂質である、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
Wが、構造:
【化8】
を有するリン脂質
(式中、
Q1、YQ2、およびYQ3は、それぞれ独立してアルキレンであり、RおよびRX’は、それぞれ独立して、少なくとも15個の炭素を有する脂肪酸鎖である)
である、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
およびRX’が、それぞれ独立してC15~20アルキルまたはC15~20アルケニルである、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
Wが、構造:
【化9】
を有するリン脂質、またはその薬学的に許容される塩
(式中、RおよびRX’は、それぞれ独立してC8~30脂肪酸鎖である)
である、請求項31に記載の化合物。
【請求項35】
およびRX’が、それぞれ独立してC12~18脂肪酸である、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
前記脂肪酸が飽和である、請求項34または35に記載の化合物。
【請求項37】
およびRX’が、両方とも-(CHCH-CHである、請求項34に記載の化合物。
【請求項38】
が、-C(H)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30脂肪酸である、請求項1から11に記載のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
が、-CHCH-O-P(O)(OH)-O-CH-C(H)(OR)-CH-ORである、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
からなる群から選択される、請求項1から39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項41】
高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子を含むナノ生物学的組成物であって、前記ナノ粒子は式(I):
【化11】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、脂肪酸鎖、-Y-N(R)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-Y-N(R)-C(O)-R、-Y-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルである)
を含む、ナノ生物学的組成物。
【請求項42】
高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子を含むナノ生物学的組成物であって、前記ナノ粒子は請求項1から40のいずれか一項に記載の化合物を含む、ナノ生物学的組成物。
【請求項43】
前記HDL由来ナノ粒子が1つまたは複数のリン脂質を含む、請求項42または43に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項44】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリンまたは他のセラミド、リン脂質含有油、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、およびそれらの組合せからなる群から独立して選択される、請求項43に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項45】
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)からなる群から選択されるリン脂質、ならびに1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(MHPC)、および1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC)からなる群から選択されるリゾ脂質を含む、請求項41または42に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項46】
前記HDL由来ナノ粒子が、apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物を含む、請求項41から45のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項47】
前記HDL由来ナノ粒子が、1つまたは複数のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、ステロールエステル、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項41から46のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項48】
前記HDL由来ナノ粒子が、コレステロールをさらに含む、請求項41から47のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項49】
前記HDL由来ナノ粒子が、1つまたは複数のリン脂質とコレステロールを、約1:0.05~約1:0.25の範囲のモル比で含む、請求項48に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項50】
前記HDL由来ナノ粒子が、1つまたは複数のリン脂質とコレステロールを、約1:0.2の範囲のモル比で含む、請求項49に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項51】
前記HDL由来ナノ粒子が、ナノディスクまたはナノスフェアである、請求項1から50のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項52】
前記ナノディスクまたは前記ナノスフェアの直径が約8nm~約400nmである、請求項51に記載のナノ生物学的組成物。
【請求項53】
請求項1から40のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項54】
それを必要とする患者における細胞増殖障害を処置するための方法であって、治療有効量の請求項41から52のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項55】
前記細胞増殖障害が、がんである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記がんが、膀胱がん、血管がん、骨がん、脳のがん、乳がん、子宮頸がん、胸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、眼のがん、頭部がん、腎臓がん、肝臓がん、リンパ節がん、肺がん、口腔がん、頸部がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、咽頭がん、甲状腺がん、尿路上皮がん、および子宮がんからなる群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記がんが、乳がん、前立腺がん、黒色腫、結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、および神経膠芽腫からなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項54から57のいずれか一項に記載の方法であって、併用療法として抗がん薬を前記ナノ生物学的組成物と同時投与することをさらに含む、前記方法。
【請求項59】
それを必要とする患者における敗血症を処置するための方法であって、治療有効量の請求項41から52のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項60】
前記患者が、肺、腹部、腎臓、または血流の細菌、ウイルスまたは真菌感染に関連する敗血症を有する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ナノ生物学的組成物が、静脈内または動脈内に投与される、請求項54から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
それを必要とする対象においてNOD2受容体を活性化するための方法であって、治療有効量の請求項41から52のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項63】
請求項41から52のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物を製造するためのプロセスであって、
a)脂質膜を形成するのに効果的な条件下で、i)請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物;ii)1つもしくは複数のリン脂質;任意選択で、iii)1つもしくは複数のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、もしくはステロールエステル、またはそれらの組合せを含む疎水性マトリックス;および任意選択でiv)コレステロールを含む前記脂質膜を形成するステップ;ならびに
b)前記脂質膜を溶媒に溶解して脂質溶液を形成するステップ;請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物を含むHDL由来ナノ粒子を形成するのに有効な条件下で、前記脂質溶液をapoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物と接触させるステップを含む、前記プロセス。
【請求項64】
請求項63に従って調製されたナノ生物学的組成物。
【請求項65】
請求項41から52のいずれか一項に記載のナノ生物学的組成物を含むキット。
【請求項66】
前記抗がん薬がチェックポイント阻害剤である、請求項52に記載の方法。
【請求項67】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、およびそれらの組合せから選択される、請求項67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月19日出願の米国特許仮出願第63/163,428号に対する優先権を主張し、その開示はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:TRAI_005_00US_SeqList_ST25.txt、記録日:2021年3月17日、ファイルサイズ105キロバイト)。
【背景技術】
【0003】
免疫系は、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、がんなどの主要な疾患の病態生理学において重要な役割を果たしている。しかし、現在開発されている免疫療法戦略のほとんどは、サイトカインなどのエフェクター分子、または獲得免疫系からの細胞であるTリンパ球のいずれかに焦点を当てている(Mulder et al. Nat. Rev. Drug Discov. 2019, 18(7), 553-566; Pardoll et al. Nat Immunol., 2012, 13, 1129-1132)。自己免疫疾患および自己炎症疾患では、抗サイトカイン療法により生物活性サイトカインを中和することができるが、がん患者に最もよく使用される免疫療法にはチェックポイント阻害薬の適用が含まれる。自然免疫系には記憶力がないと長い間考えられていたが、最近の研究では、自然免疫細胞が代謝的およびエピジェネティックな再配線を受け、抗腫瘍効果の発揮に関与している「訓練された免疫」と呼ばれるプロセスで機能プログラムを調整していることが示されている(Buffen et al., 2014, PLoS Pathog. 10, e1004485; Netea et al., J. Leukoc Biol. 2017, 102, 1323-1332)。
【0004】
TLR、NOD2、デクチン1およびインフラマソームを含む一連のパターン認識受容体(PRR)は、訓練された免疫を促進するために関与することができる。加えて、インビトロ研究では、BCG、およびペプチドグリカンおよびβ-グルカンを含む他のいくつかのPAMPおよびDAMPが、訓練された免疫促進剤として治療的に利用できることが実証されている。しかし、訓練された免疫を調節する分子のインビボでの治療的利用は、関連する骨髄細胞およびその前駆細胞を標的とする毒性、免疫関連有害作用、および生物学的利用能の低さによって妨げられてきた。
【0005】
自然免疫系に関与し、がん、ならびに欠陥のある訓練された免疫によって引き起こされる他の疾患および状態を処置するために訓練された免疫を調節する治療剤およびその組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
実施形態では、本明細書で提供されるのは、式(I):
【0007】
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、C9~30脂肪酸鎖、-Y-N(R11)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C16~30脂肪酸鎖、-(CR1010-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(R10)(OR)-アルキレン-ORZ’、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
およびRZ’は、それぞれ独立してC8~30脂肪酸または-C(O)-C16~30脂肪酸鎖であり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;RがC9~30脂肪酸鎖である場合、Rは-Hである)
である。
【0008】
実施形態では、式(I)の化合物は、式(IA):
【0009】
【化2】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、R、R、R、R、R、R55、R5’、R55’、R33、R33’、R44、R44’、R、およびRは、本明細書で定義される)
である。
【0010】
実施形態では、式(I)の化合物は、式(IB):
【0011】
【化3】
である。
(式中、R、R、R、R、およびRは、本明細書で定義される)
【0012】
実施形態では、式(I)の化合物は、式(II):
【0013】
【化4】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、R、R、R、R、R5’、R、Y、X、X、R、Lは、本明細書で定義される)
である。
【0014】
実施形態では、式(II)の化合物は、
【0015】
【化5】
、またはその薬学的に許容される塩
(式中、R、R、R、R、R5’、R、Y、X、X、およびLは、本明細書で定義される)
である。
【0016】
実施形態では、式(I)の化合物は、式(IIA):
【0017】
【化6】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、R、R、R、R、R5’、R、Y、X、X、L、およびRは、本明細書で定義される)
である。
【0018】
実施形態では、式(IIA)の化合物は、
【0019】
【化7】
である。
(式中、R、R、R、R、R5’、R、Y、X、X、およびLは、本明細書で定義される)
【0020】
実施形態では、本開示は、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子を含むナノ生物学的組成物を提供し、ナノ粒子は式(I);
【0021】
【化8】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、脂肪酸鎖、-Y-N(R)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-Y-N(R)-C(O)-R、-Y-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;Rは、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルである)
を含む。
【0022】
実施形態では、本開示は、それを必要とする患者における細胞増殖障害、または敗血症を処置するための方法であって、本明細書に開示される化合物またはナノ生物学的組成物の治療有効量を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例24の表8の項目A~FのHDL由来ナノ粒子のクライオ-TEM写真を示す。50nmのバーは、6枚の写真すべてに当てはまる。
図2】実施例23の製剤1の製剤A~Fにおけるナノ粒子のDLS決定Z平均直径およびPDI値である。
図3】実施例25に記載のNOD2活性化アッセイにおける試験品目濃度の関数としてのOD値を示すグラフである。
図4】A~Eは、実施例26に記載の研究に関する腫瘍増殖曲線を示す。
図5】A~Cは、実施例27に記載の研究に関する腫瘍増殖曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
便宜上、本明細書、実施例および特許請求の範囲で使用する特定の用語をここに収集する。別段の定義がない限り、本開示で使用する技術用語および科学用語はすべて、本開示が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0025】
本開示全体を通して、種々の特許、特許出願および刊行物を参照する。これらの特許、特許出願および刊行物の開示は、本開示の日付の時点で当業者に既知の現況技術をより完全に説明するために、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。本開示は、引用された特許、特許出願、および刊行物と本開示との間に矛盾がある場合に、優先されるものとする。
【0026】
数値の直前にある「約」という用語は、当技術分野において許容される程度の変動のプラスまたはマイナスの範囲を意味する。実施形態では、本開示の文脈で別段の指示がないか、またはそのような解釈と矛盾しない限り、「約」という用語は、その値の10%を包含し、例えば、「約50」は45~55を意味し、「約25,000」は22,500~27,500を意味する、などである。例えば、「約49、約50、約55、~」などの数値の列挙では、「約50」は、前後の値の間の間隔の半分未満に及ぶ範囲、例えば、49.5以上52.5未満を意味する。さらに、「およその値未満」または「およその値より大きい」という句は、本明細書で提供される「約」という用語の定義を考慮して理解されるべきである。
【0027】
本発明で使用する場合、「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わず、合理的な利益/リスク比に見合う、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに好適な、それらの化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0028】
「塩」には、塩基として機能する化合物と、無機もしくは有機酸とを反応させて塩を形成したもの、または酸として機能する化合物と、無機もしくは有機塩基とを反応させて塩を形成したものが含まれる。「塩」には、活性薬剤の誘導体が含まれ、活性薬剤は、その酸付加塩または塩基付加塩を作製することによって修飾される。好ましくは、塩は薬学的に許容される塩である。このような塩としては、薬学的に許容される酸付加塩、薬学的に許容される塩基付加塩、薬学的に許容される金属塩、アンモニウム塩およびアルキル化アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。酸付加塩には、無機酸および有機酸の塩が含まれる。好適な無機酸の代表的な例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。好適な有機酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、グリセロリン酸塩、ケトグルタル酸塩などが挙げられる。塩基付加塩としては、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸、例えば、リジンおよびアルギニンジシクロヘキシルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩などが挙げられる。アンモニウム塩およびアルキル化アンモニウム塩の例としては、アンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基の例としては、リジン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミン、コリンなどが挙げられる。薬学的に許容される塩およびそれらの製剤を調製するための標準的な方法は当技術分野で周知であり、例えば、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”, A. Gennaro, ed., 20th edition, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PAを含む様々な参考文献に開示されている。
【0029】
本明細書で互換的に使用される「担体」もしくは「ビヒクル」という用語は、担体、賦形剤、アジュバント、および希釈剤、またはそれらのいずれかの組合せを包含し、ある器官もしくは体の一部から別の器官もしくは体の一部への薬剤の運搬または輸送に関与する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例として、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくはカプセル化材料を意味する。当業者に既知のアジュバント、賦形剤および希釈剤に加えて、担体には有機および無機の性質のナノ粒子が含まれる。
【0030】
例えば、実施形態では、本開示は、活性薬剤(例えば、式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(IIA)、(IIA-1)、(IIA-2)または表1の化合物)の送達媒体としてナノ粒子担体(例えば、HDL由来ナノ粒子)を提供する。実施形態では、薬剤はナノ粒子担体内にカプセル化される。他の実施形態では、薬剤はナノ粒子担体の表面に結合している。薬剤とナノ粒子担体の会合は、非共有結合、および送達ビヒクルの内部に薬剤を捕捉することなどを含む様々な手段によって達成することができる。実施形態では、会合は十分に安定であるため、薬剤は、処置対象の標的部位に送達されるまで送達ビヒクルと会合したままである。
【0031】
本明細書で使用される「医薬組合せ」、「治療的組合せ」または「組合せ」という用語は少なくとも2つの治療活性薬剤を含む単一剤形、または併用療法で使用するための、少なくとも2つの治療活性薬剤を一緒にまたは別々に含む別個の剤形を指す。併用療法の投与には、同一または異なる経路を介した、同一または異なる組成物および/または組合せでの、逐次、同時、または連続的投与が含まれる。例えば、一方の治療活性薬剤をある剤形に製剤化し、他方の治療活性薬剤を単一のまたは異なる剤形に製剤化してもよい。例えば、1つ目の治療活性剤は固形経口剤形に製剤化してもよく、2つ目の治療活性剤は非経口投与用の溶液剤形に製剤化してもよい。実施形態では、併用療法は、任意選択で、1つもしくは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤、非医薬活性化合物、および/または不活性物質を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、「細胞増殖を特徴とする障害」または「細胞増殖を特徴とする状態」という語句には、がん、良性および悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。がんおよび腫瘍の例としては、膀胱、血管、骨、脳、乳房、子宮頸部、胸部、大腸、子宮内膜、食道、目、頭部、腎臓、肝臓、リンパ節、肺、口、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、結腸直腸、皮膚、胃、睾丸、喉、甲状腺、尿路上皮、および子宮のがんまたは腫瘍増殖が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
特定の疾患または障害に関する「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語には、その疾患もしくは障害の予防、および/または疾患もしくは障害の症状および/または病理の軽減、改善、寛解または抑止が含まれる。一般に、本明細書で使用される用語は、疾患または状態の症状を寛解、緩和、軽減、および除去することを指す。本明細書に記載される候補化合物は、製剤または医薬中に治療有効量で存することができ、これは、ある特定の細胞(例えば、がん細胞)のアポトーシス、ある特定の細胞の増殖の減少などの生物学的影響を引き起こす、あるいは敗血症などの疾患もしくは状態の症状を寛解、緩和、軽減、または除去することにつながる可能性のある量である。この用語はまた、細胞増殖速度の低下もしくは細胞増殖の中断(例えば、腫瘍増殖の遅延もしくは停止)、または増殖中のがん細胞の数の減少(例えば、腫瘍の一部もしくは全部の除去)を指す場合もある。
【0034】
本明細書で使用される「患者」または「対象」という用語には、すべての哺乳動物が含まれ、より具体的にはヒトが含まれる。本明細書に記載の方法は、ヒト治療および獣医学への応用の両方に有用であり得る。一実施形態では、対象はヒトである。
【0035】
本明細書で使用される場合、「予防」または「予防すること」は、所与の疾患または障害に罹患するリスクの低下を指す。例えば、疾患に曝露され得るか、またはその素因があり得るが、まだ疾患の症状を経験もしくは表示していない対象において、疾患の臨床症状の少なくとも1つを発症させないこと。
【0036】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、疾患もしくは他の望ましくない医学的状態を処置するために対象に投与される場合、その疾患もしくは状態に関して有益な効果をもたらすのに十分である化合物もしくは治療活性薬剤の量を意味する。治療有効量は、選択された化合物または治療活性薬剤のタイプ、疾患もしくは状態およびその重症度、ならびに処置を受ける患者の年齢、体重などに応じて変化するであろう。
【0037】
「任意選択の」または「任意選択で」とは、その後に説明される事象または状況が発生してもよく、または発生しなくてもよいことを意味し、説明には、この事象または状況が発生する例および発生しない例が含まれる。例えば、「任意選択で置換されたアリール」には、以下に定義する「アリール」および「置換アリール」の両方が含まれる。1つもしくは複数の置換基を含有する任意の基に関して、そのような基は、立体的に非実用的、合成的に実行不可能、および/または本質的に不安定な置換もしくは置換パターンを導入することを意図したものではないことは、当業者には理解されるであろう。
【0038】
特許請求の範囲は任意選択の要素を除外するように起草される場合があることが、さらに留意される。したがって、この記述は、請求項の要素の記載または「否定的な」限定の使用に関連した、「単独で」、「のみ」などの排他的な用語を使用するための先行根拠として機能することを目的としている。
【0039】
値の範囲が列挙される場合、その範囲内の各値および部分範囲を包含することが意図される。例えば、C~Cアルキルは、C、C、C、C、C、C、C1~6、C1~5、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~5、C2~4、C2~3、C3~6、C3~5、C3~4、C4~6、C4~5、およびC5~6アルキルを包含することを意図している。
【0040】
本明細書で使用される「アシル」という用語は、RC(O)-基、限定されないが、例として(アルキル)-C(O)-、(アルケニル)-C(O)-、(アルキニル)-C(O)-、(アリール)-C(O)-、(シクロアルキル)-C(O)-、(ヘテロアリール)-C(O)-、および(ヘテロシクリル)-C(O)-、であって、ここで、基はカルボニル官能基を介して親分子構造に結合しているものを指す。実施形態では、これは、アシルのカルボニル炭素と、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキルもしくはヘテロアリール部分の鎖または環原子の総数を指すC1~10アシルラジカルである。例えば、C-アシルは、カルボニルと他の3つの環原子または鎖原子を有する。
【0041】
「アルキル」または「アルキル基」は、完全に飽和した、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖である。実施形態では、アルキル基は、1~30個の炭素原子を含む。実施形態では、アルキル基は1~12個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残部に結合している。例えば、1~12の任意の数の炭素原子を含むアルキルが含まれる。最大12個の炭素原子を含むアルキルはC~C12アルキルであり、最大10個の炭素原子を含むアルキルはC~C10アルキルであり、最大6個の炭素原子を含むアルキルはC~Cアルキルであり、最大5個の炭素原子を含むアルキルはC~Cアルキルである。C~Cアルキルには、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキル(すなわち、メチル)が含まれる。C~Cアルキルには、C~Cアルキルについて上に記載されたすべての部分が含まれるが、Cアルキルも含まれる。C~C10アルキルには、C~CアルキルおよびC~Cアルキルについて上に記載されたすべての部分が含まれるが、C、C、CおよびC10アルキルも含まれる。同様に、C~C12アルキルには、前述のすべての部分が含まれるが、C11およびC12アルキルも含まれる。C~C12アルキルの非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、sec-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、t-アミル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、およびn-ドデシルが挙げられる。本明細書で特に明記しない限り、アルキル基を任意選択で置換することができる。実施形態では、「アルキル」は直鎖状炭化水素である。実施形態では、「アルキル」は分岐鎖状炭化水素である。
【0042】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」は、完全に飽和した、直鎖状または分岐鎖状の二価炭化水素鎖を指す。実施形態では、アルキレン基は、1~12個の炭素原子を有する。C~C12アルキレンの非限定的な例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレンなどが挙げられる。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残りの部分に結合し、単結合を介して基に結合する。分子の残りの部分および基へのアルキレン鎖の結合点は、鎖内の1つの炭素または任意の2つの炭素を介することができる。本明細書で特に明記しない限り、アルキレン鎖を任意選択で置換することができる。
【0043】
「アルケニル」または「アルケニル基」は、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖を指す。実施形態では、アルケニル基は、1~30個の炭素原子を含有する。実施形態では、アルケニル基は、2~12個の炭素原子を含有し、1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合を有し、例として、2~8個の炭素原子の直鎖状または分岐鎖状基であり、本明細書ではC~Cアルケニルと呼ばれる。各アルケニル基は、単結合によって分子の残部に結合している。2~12の任意の数の炭素原子を含むアルケニル基が含まれる。最大12個の炭素原子を含むアルケニル基はC~C12アルケニルであり、最大10個の炭素原子を含むアルケニルはC~C10アルケニルであり、最大6個の炭素原子を含むアルケニル基はC~Cアルケニルであり、最大5個の炭素原子を含むアルケニルはC~Cアルケニルである。C~Cアルケニルには、Cアルケニル、Cアルケニル、Cアルケニル、およびCアルケニルが含まれる。C~Cアルケニルには、C~Cアルケニルについて上に記載されたすべての部分が含まれるが、Cアルケニルも含まれる。C~C10アルケニルには、C~CアルケニルおよびC~Cアルケニルについて上に記載されたすべての部分が含まれるが、C、C、CおよびC10アルケニルも含まれる。同様に、C~C12アルケニルには、前述のすべての部分が含まれるが、C11およびC12アルキルも含まれる。C~C12アルケニルの非限定的な例としては、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソ-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、7-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、4-ノネニル、5-ノネニル、6-ノネニル、7-ノネニル、8-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル、4-デセニル、5-デセニル、6-デセニル、7-デセニル、8-デセニル、9-デセニル、1-ウンデセニル、2-ウンデセニル、3-ウンデセニル、4-ウンデセニル、5-ウンデセニル、6-ウンデセニル、7-ウンデセニル、8-ウンデセニル、9-ウンデセニル、10-ウンデセニル、1-ドデセニル、2-ドデセニル、3-ドデセニル、4-ドデセニル、5-ドデセニル、6-ドデセニル、7-ドデセニル、8-ドデセニル、9-ドデセニル、10-ドデセニル、および11-ドデセニルが挙げられる。本明細書で特に明記しない限り、アルキル基を任意選択で置換することができる。
【0044】
「アルキニル」または「アルキニル基」は、直鎖状または分岐鎖状炭化水素鎖を指す。実施形態では、アルキニル基は、1~30個の炭素原子を含有する。実施形態では、アルキニル基は、2~12個の炭素原子を含有し、1つもしくは複数の炭素-炭素三重結合を有し、例として、2~8個の炭素原子の直鎖状または分岐鎖状基であり、本明細書ではC~Cアルキニルと呼ばれる。各アルキニル基は、単結合によって分子の残りの部分に結合している。2~12の任意の数の炭素原子を含むアルキニル基が含まれる。最大12個の炭素原子を含むアルキニル基はC~C12アルキニルであり、最大10個の炭素原子を含むアルキニルはC~C10アルキニルであり、最大6個の炭素原子を含むアルキニル基はC~Cアルキニルであり、最大5個の炭素原子を含むアルキニルはC~Cアルキニルである。C~Cアルキニルには、Cアルキニル、Cアルキニル、Cアルキニル、およびCアルキニルが含まれる。C~Cアルキニルには、C~Cアルキニルについて上に記載されたすべての部分が含まれるが、Cアルキニルも含まれる。C~C10アルキニルには、C~CアルキニルおよびC~Cアルキニルについて上に記載されたすべての部分が含まれるが、C、C、CおよびC10アルキニルも含まれる。同様に、C~C12アルキニルには、前述のすべての部分が含まれるが、C11およびC12アルキニルも含まれる。C~C12アルケニルの非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルなどが挙げられる。本明細書で特に明記しない限り、アルキル基を任意選択で置換することができる。
【0045】
「アリール」は、水素、6~18個の炭素原子、および少なくとも1つの芳香環を含む炭化水素環系であって、単結合によって分子の残部に結合しているものを指す。本発明の目的のために、アリールは、単環式、二環式、三環式、四環式環系、または他の多環式環系であり得、縮合もしくは架橋環系を含むことができる。アリールとしては、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレアデン、ピレン、およびトリフェニルに由来するアリールが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で特に明記しない限り、アリールを任意選択で置換することができる。
【0046】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、式-R-Rの基を指し、Rは、上記で定義されたアルキレン基であり、Rは、上記で定義された1種または複数のアリール、例えば、ベンジル、ジフェニルメチルなどである。本明細書で特に明記しない限り、アラルキル基を任意選択で置換することができる。
【0047】
「カルボシクリル」、「炭素環式環」または「炭素環」は、環を形成する原子がそれぞれ炭素である環構造であって、単結合によって分子の残部に結合しているものを指す。炭素環式環は、環内に3~20個の炭素原子を含むことができる。炭素環式環には、本明細書で定義されたアリール、ならびにシクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルが含まれる。本明細書で特に明記しない限り、カルボシクリル基を任意に置換することができる。
【0048】
「シクロアルキル」は、炭素原子および水素原子のみからなる安定な非芳香族単環式または多環式の完全飽和炭化水素を指し、縮合環系、スピロ環式環系、または架橋環系を含むことができ、3~20個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残部に結合している。単環式シクロアルキルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。多環式シクロアルキルには、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが含まれる。本明細書で特に明記しない限り、シクロアルキル基を任意に置換することができる。
【0049】
「シクロアルケニル」は、炭素原子および水素原子のみからなり、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有する安定な非芳香族単環式または多環式炭化水素を指し、縮合環系、スピロ環式環系、または架橋環系を含むことができ、3~20個の炭素原子を有し、好ましくは3~10個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残部に結合している。単環式シクロアルケニルには、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロクテニルなどが含まれる。多環式シクロアルケニルには、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニルなどが含まれる。本明細書で特に明記しない限り、シクロアルケニル基を任意選択で置換することができる。
【0050】
「シクロアルキニル」は、炭素原子および水素原子のみからなり、3~20個の炭素原子を有し、1つまたは複数の炭素-炭素三重結合を有する安定な非芳香族単環式または多環式炭化水素を指し、縮合環系、スピロ環式環系、または架橋環系を含むことができ、単結合によって分子の残部に結合している。単環式シクロアルキニルには、例えば、シクロヘプチニル、シクロオクチニルなどが含まれる。本明細書で特に明記しない限り、シクロアルキニル基を任意に置換することができる。
【0051】
「ヘテロシクリル」、「複素環式環」または「複素環」は、2~12個の炭素原子ならびに窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子からなる安定な3~20員の芳香族または非芳香族環を指す。複素環は、芳香族(ヘテロアリール)または非芳香族であり得る。本明細書で特に明記しない限り、ヘテロシクリルは、単環式、二環式、三環式、四環式環系または他の多環式環系であり得、これは、縮合環系、スピロ環式環系、または架橋環系を含むことができ;ヘテロシクリル中の窒素、炭素または硫黄原子を、任意選択で酸化させることができ;窒素原子を任意選択で四級化させることができ;ヘテロシクリルを、部分的または完全に飽和させることができる。そのようなヘテロシクリルの例としては、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、ビオチニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、ホモピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、チオピラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピロリジン-2-オニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、および1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で特に明記しない限り、ヘテロシクリル基を任意に置換することができる。
【0052】
「ヘテロアリール」は、水素原子、1~13個の炭素原子、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子、および少なくとも1つの芳香環を含む5~20員の環系を指す。本開示の目的のために、ヘテロアリールは、単環式、二環式、三環式または四環式であり得、これは、縮合または架橋環系を含むことができ;ヘテロアリールは、芳香環に縮合した1つもしくは複数の非芳香環(例えば、シクロアルキルまたはヘテロシクリル)を含有してもよい。ヘテロアリール中の窒素、炭素または硫黄原子を、任意に酸化させることができ;窒素原子を任意に四級化させることができる。例としては、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1-オキシドピリジニル、1-オキシドピリミジニル、1-オキシドピラジニル、1-オキシドピリダジニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、およびチオフェニル(すなわち、チエニル)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で特に明記しない限り、ヘテロアリール基を任意選択で置換することができる。
【0053】
「ヘテロアリールアルキル」は、式-R-Rの基を指し、Rは、上記で定義されたアルキレン鎖であり、Rは、上記で定義されたヘテロアリールである。本明細書で特に明記しない限り、ヘテロアリールアルキル基を任意に置換することができる。
【0054】
本明細書で使用される「置換された」という用語は、上記の基(すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、カルボシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロアリールなど)のいずれかを意味し、少なくとも1つの水素原子は、非水素原子、限定されないが、例として、F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン原子;ヒドロキシル基、アルコキシ基、およびエステル基などの基における酸素原子;チオール基、チオアルキル基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホキシド基などの基における硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミド、およびエナミンなどの基における窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、およびトリアリールシリル基などの基におけるケイ素原子;ならびに種々の他の基における他のヘテロ原子、などへの結合によって置き換えられている。「置換された」とは、1つまたは複数の水素原子が、高次結合(例えば、二重結合または三重結合)によって、オキソ、カルボニル、カルボキシル、およびエステル基における酸素;ならびにイミン、オキシム、ヒドラゾン、およびニトリルなどの基における窒素などのヘテロ原子に置き換えられている上記の基のいずれかを意味する。例えば、「置換された」は、1つまたは複数の水素原子が、NR、NRC(=O)R、NRC(=O)NR、NRC(=O)OR、NRSO2R、OC(=O)NR、OR、SR、SOR、SO、OSO、SOOR、=NSO、およびSONR、で置き換えられている上記の基のいずれかを含む。「置換された」とは、1つまたは複数の水素原子が、C(=O)R、C(=O)OR、C(=O)NR、CHSO、CHSONR、で置き換えられている上記の基のいずれかを意味する。前述において、RおよびRは同じかまたは異なっており、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリール、および/またはヘテロアリールアルキルである。「置換された」とはさらに、1つまたは複数の水素原子が、アミノ、シアノ、ヒドロキシル、イミノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリール、および/またはヘテロアリールアルキル基によって置き換えられている、上記の基のいずれかを意味する。加えて、「置換された」とは、2つの水素原子がそれぞれ結合によって置き換えられて、水素が結合した原子を含有する縮合環系を形成している上記の基のいずれかを意味する。さらに、前述の置換基のそれぞれを、また、上記の置換基の1つまたは複数で、任意に置換することができる。
【0055】
本開示の化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含有し、したがって、幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーなどの立体異性体として存在してもよい。本明細書で使用される「立体異性体」という用語は、すべての幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、立体炭素原子の周囲の置換基の配置に応じて、記号「R」または「S」で示すことができる。本開示は、これらの化合物の種々の立体異性体およびそれらの混合物を包含する。立体異性体にはエナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物は、命名法において「(±)」で示される場合があるが、当業者であれば、構造が暗示的にキラル中心を示す場合があることを認識するであろう。実施形態では、エナンチオマーまたは立体異性体は、対応するエナンチオマーを実質的に含まずに提供してもよい。
【0056】
実施形態では、化合物は、(S)-異性体と(R)-異性体のラセミ混合物である。他の実施形態では、本明細書において、混合物の個々の化合物が主に(S)-または(R)-異性体配置で存在する化合物の混合物が提供される。例えば、化合物混合物は、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%またはそれ以上を超える(S)-エナンチオマー過剰率を有する。他の実施形態では、化合物混合物は、約55%~約99.5%超、約60%~約99.5%超、約65%~約99.5%超、約70%~約99.5%超、約75%~約99.5%超、約80%~約99.5%超、約85%~約99.5%超、約90%~約99.5%超、約95%~約99.5%超、約96%~約99.5%超、約97%~約99.5%超、約98%~約99.5%超、約99%~約99.5%超、またはそれ以上の(S)-エナンチオマー過剰率を有する。他の実施形態では、化合物混合物は、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%またはそれ以上を超える(R)-エナンチオマー純度を有する。いくつかの他の実施形態では、化合物混合物は、約55%~約99.5%超、約60%~約99.5%超、約65%~約99.5%超、約70%~約99.5%超、約75%~約99.5%超、約80%~約99.5%超、約85%~約99.5%超、約90%~約99.5%超、約95%~約99.5%超、約96%~約99.5%超、約97%~約99.5%超、約98%~約99.5%超、約99%~約99.5%超、またはそれ以上の(R)-エナンチオマー過剰率を有する。
【0057】
本開示の化合物の個々の立体異性体は、不斉中心もしくは立体中心を含有する市販の出発物質から合成的に、またはラセミ混合物の調製に続いて当業者に周知の分割方法によって調製することができる。これらの分割方法は、以下のように例示される:(1)エナンチオマー混合物のキラル補助基への結合、得られたジアステレオマー混合物の再結晶もしくはクロマトグラフィーによる分離、および補助基からの光学的に純粋な生成物の遊離;(2)光学活性な分割剤を利用した塩形成;または(3)キラルクロマトグラフィーカラムでの光学エナンチオマーの混合物の直接分離。立体異性体混合物は、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩錯体としての化合物の結晶化、またはキラル溶媒中での化合物の結晶化などの周知の方法によって、その成分立体異性体に分割することもできる。立体異性体は、周知の不斉合成法によって、立体異性的に純粋な中間体、試薬、および触媒から得ることもできる。
【0058】
幾何異性体も本開示の化合物中に存在し得る。本開示は、炭素-炭素二重結合の周囲の置換基の配置または炭素環の周囲の置換基の配置から生じる種々の幾何異性体およびそれらの混合物を包含する。炭素-炭素二重結合の周囲の置換基は、「Z」または「E」配置にあるものとして指定され、「Z」および「E」という用語は、IUPAC規格に従って使用される。特に明記しない限り、二重結合を示す構造には、E異性体とZ異性体の両方が含まれる。
【0059】
炭素-炭素二重結合の周囲の置換基は、「シス」または「トランス」と呼ばれることもあり、「シス」は二重結合の同じ側の置換基を表し、「トランス」は二重結合の反対側の置換基を表す。炭素環の周りの置換基の配置は、「シス」または「トランス」として示される。「シス」という用語は、環の平面の同じ側にある置換基を表し、「トランス」という用語は、環の平面の反対側にある置換基を表す。置換基が環の平面の同じ側と反対側の両方に配置されている化合物の混合物は、「シス/トランス」と示される。
【0060】
本明細書に開示される化合物は、互変異性体として存在する場合があり、たとえ1つの互変異性構造のみが示されているとしても、両方の互変異性形態が本開示の範囲に包含されることを意図している。
【0061】
本明細書で使用される場合、「同位体変異体」という用語は、1つまたは複数の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を含むことを意味する。このような化合物は、例えば、分析ツール、生物学的アッセイにおけるプローブ、または治療剤として有用であり得る。例えば、化合物の「同位体変異体」は、例えば、重水素(HまたはD)、炭素13(13C)、窒素15(15N)などの1つまたは複数の非放射性同位体を含み得る。このような同位体置換が行われた化合物では、以下の原子は、存在する場合には変化する可能性があり、例えば、水素はH/D、炭素は13C、窒素は15Nになる可能性があり、そのような原子の存在および配置は当業者の範囲内で決定することができることが理解される。同様に、本発明は、例えば、得られた化合物が薬物および/または基質の組織分布研究に使用され得る場合、放射性同位体による同位体変異体の調製を含んでもよい。放射性同位体トリチウム、すなわち、H、および炭素-14、すなわち、14Cは、これらの組込みの容易さおよび素早い検出手段の点からこの目的に対して特に有用である。さらに、ポジトロン発光同位体、例えば、11C、18、15Oおよび13Nなどによって置換された化合物を調製することもでき、基質受容体占有率を調べるための陽電子放射断層撮影法(PET)実験において有用であり得る。
【0062】
本明細書で使用される「トリグリセリド」という用語は、グリセロールおよび3つの脂肪酸から誘導されるエステルを意味する。脂肪酸は同じであっても異なっていてもよい。本明細書においてトリグリセリドを説明するために使用される表記は、以下で脂肪酸を説明するために使用される表記と同じである。脂肪酸は任意の順序でグリセロール分子に結合することができ、例えば、任意の脂肪酸がグリセロール分子の任意のヒドロキシル基と反応してエステル結合を形成することができる。例えば、非限定的な例では、トリグリセリドは、以下の脂肪酸:C18:1、C14:1、C16:1、多価不飽和、および飽和の任意の組合せを有するグリセロールを含むことができる。C18:1脂肪酸のトリグリセリドは、トリグリセリドの脂肪酸成分がC18:1脂肪酸に由来する、またはそれに基づくことを単に意味する。すなわち、C18:1トリグリセリドは、グリセロールと、それぞれ18個の炭素原子を有する3つの脂肪酸とのエステルであり、各脂肪酸は1つの二重結合を有する。同様に、C14:1トリグリセリドは、グリセロールと、それぞれ14個の炭素原子を有する3つの脂肪酸のエステルであり、各脂肪酸は1つの二重結合を有する。同様に、C16:1トリグリセリドは、グリセロールと、それぞれ16個の炭素原子を有する3つの脂肪酸のエステルであり、各脂肪酸は1つの二重結合を有する。C18:1脂肪酸のトリグリセリドとC14:1および/またはC16:1脂肪酸の組合せは、以下を意味する:(a)C18:1トリグリセリドをC14:1トリグリセリドもしくはC16:1トリグリセリド、またはその両方と混合する;あるいは(b)トリグリセリドの脂肪酸成分の少なくとも1つは、C18:1脂肪酸に由来するか、またはそれに基づき、他の2つは、C14:1脂肪酸および/またはC16:1脂肪酸に由来するか、またはそれに基づく。
【0063】
「脂肪酸」という用語および同様の用語は、飽和または不飽和の長い脂肪族尾部を有するカルボン酸を意味する。「長い脂肪族尾部」および「脂肪酸鎖」という用語は、本明細書では互換的に使用される。脂肪酸および脂肪酸鎖はエステル化されてリン脂質およびトリグリセリドになり得る。本明細書で使用される場合、脂肪酸鎖長には、C4~C30(例えば、C6~C30)、飽和または不飽和、シスまたはトランス、非置換または置換、分岐鎖または非分岐鎖炭化水素鎖が含まれる(例えば、脂肪酸鎖長には、C4~C30(例えば、C6~C30)、飽和または不飽和、シスまたはトランス、非置換または1~6個の側鎖で置換されたものが含まれる)。例えば、実施形態では、脂肪酸鎖の例としては、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、またはC30の飽和または不飽和、シスまたはトランス、非置換または置換炭化水素鎖が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和脂肪酸および脂肪酸鎖は、炭素原子間に1つまたは複数の二重結合を有する。飽和脂肪酸および脂肪酸鎖には二重結合が含まれない。実施形態では、脂肪酸は、炭素原子を表す大文字「C」、その後に脂肪酸の炭素原子の数を表す数字、その後にコロンおよび脂肪酸中の二重結合の数を表す別の数字によって本明細書に記載される。例えば、C16:1は、1つの二重結合を有する炭素原子16個の脂肪酸、例えば、パルミトレイン酸を示す。この表記におけるコロンの後の数字は、脂肪酸内の二重結合の位置を示すものでも、二重結合の炭素原子に結合した水素原子が互いにシスであるかどうかを示すものでもない。この表記の他の例としては、C18:0(ステアリン酸)、C18:1(オレイン酸)、C18:2(リノール酸)、C18:3(α-リノレン酸)、およびC20:4(アラキドン酸)が挙げられる。
【0064】
「ステロール」という用語、例えば、これに限定されないが、コレステロールも、本明細書に記載の方法および化合物において利用することができる。ステロールは、C-3にヒドロキシル基のみを含有し、他の官能基を含有しない動物性または植物性ステロイドである。一般に、ステロールは27~30個の炭素原子、および5/6位に、場合によっては7/8、8/9または他の位置に1つの二重結合を含有する。これらの不飽和種の他に、他のステロールは、水素化によって得られる飽和化合物である。好適な動物ステロールの一例はコレステロールである。応用の観点から好ましい好適なフィトステロールの典型例は、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、および好ましくはシトステロールまたはシトスタノール、より具体的にはβ-シトステロールまたはβ-シトスタノールである。言及したフィトステロールの他に、それらのエステルが好ましくは使用される。エステルの酸成分は、式(CA-I):RI CO-OH (CA-I);(式中、RI COは、2~30個の炭素原子およびOおよび/または1、2もしくは3個の二重結合を含有する、脂肪族の直鎖状または分岐鎖状アシル基である)に対応するカルボン酸に戻る場合がある。典型例は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、共役リノール酸(CLA)、リノレン酸、エレオステアリン酸(elaeosteric add)、アラキン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸およびエルカ酸である。
【0065】
「リン脂質」という用語は、2つの疎水性脂肪酸「尾部」、およびリン酸基からなる親水性「頭部」からなる両親媒性化合物を指す。2つの成分はグリセロール分子によって結合されている。リン酸基は、コリン、エタノールアミン、またはセリンなどの単純な有機分子で修飾することができる。コリンは、化学式R-(CH-N(CHを有する必須の生物活性栄養素を指す。リン酸化部分がR-の場合、それはホスホコリンと呼ばれる。
【0066】
本明細書で使用される「リゾ脂質」には、非限定的な実施形態において(アシル、単鎖)、例として1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MHPC)、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC)、および1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SHPC)が含まれる。
【0067】
「アポリポタンパク質A-I」または「アポA-I」、また「アポリタンパク質A1」または「apoA1」という用語は、ヒトにおいてAPOAI遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0068】
詳細な説明
従来、脊椎動物の免疫系は2つの部分に細分される。第1の部分である自然免疫は、感染に対する初期反応を数分~数時間以内にもたらす。その細胞成分には、ナチュラルキラー(NK)細胞、自然リンパ球(ILC)、および単球、マクロファージ、および好中球などの食細胞が含まれる。自然免疫系は、パターン認識受容体(PRR)による病原体または内因性のいずれかの危険シグナルの認識を通じて引き起こされ、迅速な防御の第一線として作用する。病原体関連分子パターン(PAMP)を検出すると、PRRは自然免疫応答を開始し、この応答には、抗原提示、共刺激、およびサイトカイン排出によるその後の適応免疫系の活性化が含まれる。加えて、PRRは、損傷関連分子パターン(DAMP)も認識し、非感染性炎症反応を引き起こす。感染に対する応答の第2段階には、免疫系の第2の部分である適応応答が含まれ、この応答では、Tリンパ球およびBリンパ球が病原体を特異的に認識し、増殖し、その病原体に対して活性化される。これらの細胞は、その特異的感染に関する免疫学的記憶も構築する。適応免疫系応答の特異性は、リンパ球レベルでの免疫グロブリン遺伝子の組換えによって媒介される。免疫学的記憶は、以前に遭遇した抗原に対する(一次応答のみと比較して)より迅速かつ定量的に優れた免疫応答をもたらす。自然免疫系には記憶力がないと長い間考えられていたが、最近の研究では、自然免疫細胞が代謝的およびエピジェネティックな再配線を受け、事実上の自然免疫記憶と考えられる「訓練された免疫」と呼ばれるプロセスで機能プログラムを調整していることが示されている。
【0069】
訓練された免疫は、骨髄、脾臓および血液中の骨髄細胞およびそれらの前駆細胞および幹細胞の一次損傷後、再刺激に対する代謝的およびエピジェネティックな再配線によって引き起こされるサイトカイン分泌の増加によって明らかになる、二次的な長期的な過剰反応性によって定義される。訓練された免疫(自然免疫記憶とも呼ばれる)は、骨髄性自然免疫細胞の二次刺激による再刺激後の長期的な応答性の増加(例えば、高いサイトカイン産生)によっても定義され、骨髄および脾臓中のこれらの細胞またはそれらの前駆細胞および幹細胞を刺激する一次傷害によって誘導され、エピジェネティックな、代謝的、および転写的再配線によって媒介される。
【0070】
訓練された免疫は、骨髄中の前駆細胞への訓練特性の誘導を通じて調節および維持され、その結果、血流中の骨髄細胞の寿命を超える持続的な再プログラミングがもたらされる。訓練された免疫は、培養骨髄細胞において様々な「訓練剤」を使用して誘導することができるが、その全身的な誘導には骨髄前駆細胞の関与が必要である。
【0071】
一態様では、本開示は、ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン含有タンパク質2(NOD2)を活性化する化合物(例えば、式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(IIA)、(IIA-1)、(IIA-2)または表1)の化合物を提供する。本開示は、本開示の(例えば、式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(IIA)、(IIA-1)、(IIA-2)または表1の)化合物を含むナノ粒子担体(例えば、HDL由来ナノ粒子)を含むナノ生物学的組成物も提供する。ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン含有タンパク質2(NOD2)を活性化する本開示の(例えば、式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(IIA)、(IIA-1)、(IIA-2)または表1の)化合物を含む本開示のナノ生物学的組成物は、骨髄傾向(bone marrow proclivity)を示すように設計される。これらのナノ材料は、訓練された免疫を促進するために(例えば、静脈内に)投与することができる。訓練された免疫を治療的に誘導することは、例えば、敗血症および感染における免疫麻痺の克服、細胞増殖障害(がんなど)の処置、免疫応答の増強などに使用を見出す場合がある。
【0072】
化合物
実施形態では、本開示は、式(I):
【0073】
【化9】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、脂肪酸鎖、-Y-N(R)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-Y-N(R)-C(O)-R、-Y-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルである)
を提供する。
【0074】
実施形態では、本開示は、式(I):
【0075】
【化10】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、C9~30脂肪酸鎖、-Y-N(R11)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C16~30脂肪酸鎖、-(CR1010-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(R10)(OR)-アルキレン-ORZ’、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
およびRZ’は、それぞれ独立してC8~30脂肪酸鎖または-C(O)-C16~30脂肪酸鎖であり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;RがC9~30脂肪酸鎖である場合、Rは-Hである)
を提供する。
【0076】
式(I)の化合物の実施形態では、化合物は、式(IA):
【0077】
【化11】
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、C9~30脂肪酸鎖、-Y-N(R11)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C16~30脂肪酸鎖、-(CR1010-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(R10)(OR)-アルキレン-ORZ’、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
およびRZ’は、それぞれ独立してC8~30脂肪酸鎖または-C(O)-C16~30脂肪酸鎖であり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;RがC9~30脂肪酸鎖である場合、Rは-Hである)
を有するものであり、またはその薬学的に許容される塩である。
【0078】
実施形態では、式(I)の化合物は、式(IB):
【0079】
【化12】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0080】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Yは、-C(O)N(R)(R)で任意選択で置換されたアルキレンである。実施形態では、Yは、-C1~6アルキレンである。実施形態では、Yは、-CH-である。実施形態では、Yは、-CH-または
【0081】
【化13】
である。実施形態では、Yは、
【0082】
【化14】
である。実施形態では、Yは、
【0083】
【化15】
である。
【0084】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、-Y-トリアゾリル-Lである。
【0085】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、コレステリル部分、または少なくとも17個の炭素を含む少なくとも1つの脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Rは、コレステリル部分を含む。実施形態では、Rは、少なくとも17個の炭素を含む少なくとも1つの脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Rは、少なくとも17個の炭素を含む少なくとも2つの脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Rは、少なくとも2つのC17脂肪酸鎖を含む。実施形態では、C17脂肪酸鎖は、ステアリン酸またはオレイン酸から誘導される。実施形態では、C17脂肪酸鎖は、ステアリン酸から誘導される。実施形態では、C17脂肪酸鎖は、オレイン脂肪酸から誘導される。実施形態では、Rは、ステアリン酸から誘導される2つのC17脂肪酸鎖を含む。
【0086】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、少なくとも16個の炭素を有するアルキル基である。式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、少なくとも16個(の炭素)を有するアルケニルル基である。式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、少なくとも18個の炭素を有するアルキル基である。式(I)の化合物の実施形態では、Rは、少なくとも18個の炭素を有するアルケニル基である。
【0087】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、C9~30脂肪酸鎖である。式(I)の化合物の実施形態では、Rは、-C9~30アルキルまたはC9~30アルケニルである。実施形態では、Rは、-C9~30アルキルまたはC9~30アルケニルであり、ただし、Rは、-C9~30アルキルの場合、Rは-Hである。式(I)の化合物の実施形態では、Rは、-C9~30アルキルである。実施形態では、Rは、-C9~30アルキルであり、Rは-Hである。式(I)の化合物の実施形態では、Rは、-C9~30アルケニルである。実施形態では、Rは、-C15~30アルキル基である。実施形態では、Rは、-C15~30アルキル基であり、Rは-Hである。実施形態では、Rは、-C15~30アルケニル基である。実施形態では、Rは、-C17~19アルキルである。実施形態では、Rは、-C17~19アルキルであり、Rは-Hである。実施形態では、Rは、-C17~19アルケニルである。実施形態では、Rは、-C18アルキル基である。実施形態では、Rは、-C18アルキル基であり、Rは-Hである。実施形態では、Rは、-C18アルケニル基である。
【0088】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、
【0089】
【化16】
である。
【0090】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、
【0091】
【化17】
である。
【0092】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、
【0093】
【化18】
であり、Rは-Hである。
【0094】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、-Y-N(R11)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-ORである。
【0095】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C16~30脂肪酸鎖である。実施形態では、Rは、-C(H)(C(O)NH)-Cアルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30脂肪酸である。実施形態では、Rは、-C(H)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30脂肪酸である。
【0096】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C16~30アルキルである。実施形態では、Rは、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30アルキルである。実施形態では、Rは、-C(H)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30アルキルである。実施形態では、Rは、-C(H)(C(O)NH)-Cアルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30アルキルである。式(I)の化合物の実施形態では、Rは、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C16~30アルキルであり、Rは、アルキレン-アリール(例えば、ベンジル)である。実施形態では、Rは、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30アルキルであり、Rは、アルキレン-アリール(例えば、ベンジル)である。実施形態では、Rは、-C(H)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30アルキルであり、Rは、アルキレン-アリール(例えば、ベンジル)である。実施形態では、Rは、-C(H)(C(O)NH)-Cアルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30アルキルであり、Rは、アルキレン-アリール(例えば、ベンジル)である。
【0097】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、-(CR1010-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(R10)(OR)-アルキレン-ORである。式(I)の化合物の実施形態では、Rは、-CHCH-O-P(O)(OH)-O-CH-C(H)(OR)-CH-ORZ’である。実施形態では、RおよびRZ’は、それぞれ独立してC12~20アルキルまたは-C(O)-C16~30脂肪酸鎖である。実施形態では、RおよびRZ’は、それぞれ独立してC18アルキルまたは-C(O)-C17アルキルである。実施形態では、RおよびRZ’は、それぞれ独立して-C16~30アルキルである。実施形態では、RおよびRZ’は、両方とも-C17アルキルである。
【0098】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、-Y-N(R)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-ORである。実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、C8~30アルキルまたは-C(O)-C8~30アルキルである。実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、C12~20アルキルまたは-C(O)-C11~20アルキルである。実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、C18アルキルまたは-C(O)-C17アルキルである。実施形態では、RおよびRは、両方とも-C(O)-C17アルキルである。
【0099】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルからなる群から出現ごとに独立して選択される。
【0100】
式(I)、(IA)、または(IB)の化合物の実施形態では、Rは、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルからなる群から出現ごとに独立して選択される。
【0101】
実施形態では、式(I)の化合物は、式(II):
【0102】
【化19】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は-N-であり、Xは-C-であり;もしくは、Xは-C-であり、Xは-N-であり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アリール、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、およびアリールは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、
は、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルである)
である。
【0103】
実施形態では、式(II)の化合物は、
【0104】
【化20】
である。
【0105】
実施形態では、式(II)の化合物は、式(II-1)
【0106】
【化21】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0107】
実施形態では、式(II-1)の化合物は、
【0108】
【化22】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0109】
実施形態では、式(II)の化合物は、式(II-2):
【0110】
【化23】
の化合物である。
【0111】
実施形態では、式(II-2)の化合物は、
【0112】
【化24】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0113】
実施形態では、式(I)の化合物は、式(IIA):
【0114】
【化25】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は-N-であり、Xは-C-であり;もしくは、Xは-C-であり、Xは-N-であり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アリール、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、およびアリールは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、
は、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルである)
である。
【0115】
実施形態では、式(IIA)の化合物は、
【0116】
【化26】
である。
【0117】
実施形態では、式(IIA)の化合物は、式(IIA-1)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0118】
【化27】
【0119】
実施形態では、式(IIA-1)の化合物は、
【0120】
【化28】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0121】
実施形態では、式(IIA)の化合物は、式(IIA-2)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0122】
【化29】
【0123】
実施形態では、式(IIA-2)の化合物は、
【0124】
【化30】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0125】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Yはアルキレンである。(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Yは、C1~6アルキレンである。実施形態では、Yは、C1~5アルキレンである。実施形態では、Yは、C1~3アルキレンである。実施形態では、Yは、-C(O)N(R)(R)で任意選択で置換されたアルキレンであり、RおよびRは、本明細書で定義される。実施形態では、Yは、-CH-である。実施形態では、Yは、
【0126】
【化31】
である。実施形態では、Yは、
【0127】
【化32】
である。
【0128】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Rは、水素、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択される。
【0129】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Rは、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択される。
【0130】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、およびアリールは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されている。
【0131】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、RおよびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成している。
【0132】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Rは、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルである。
【0133】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Rは-Hである。
【0134】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物のいくつかの実施形態では、Rは、アルキル、アリール、またはアルキレン-アリールである。実施形態では、アリールは任意選択でアルキルで置換される。
【0135】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アリール、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択される。
【0136】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Rは、-Hまたはベンジルである。式(I)の化合物の実施形態では、Rは、-Hである。実施形態では、Rは、ベンジルである。
【0137】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、R、R、およびR5’はそれぞれアルキルである。
【0138】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Rは、アルキルである。実施形態では、Rは、メチルである。
【0139】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Rは、-Hである。実施形態では、Rは、-Hである。実施形態では、RおよびRは、両方とも-Hである。
【0140】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、R10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ-Hである。
【0141】
式(I)、(II)、(IA)、(IB)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、コレステリル部分、または少なくとも13個の炭素を含む少なくとも1つの脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Lは、コレステリル部分を含む。実施形態では、Lは、少なくとも13個の炭素を含む少なくとも1つの脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Lは、少なくとも15個の炭素を含む少なくとも2つの脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Lは、少なくとも1つのC17脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Lは、少なくとも2つのC17脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Lは、C17アルキルまたはC17アルケニルから独立して選択される少なくとも1つの脂肪酸鎖を含む。実施形態では、Lは、C17アルキルまたはC17アルケニルから独立して選択される少なくとも2つの脂肪酸鎖を含む。実施形態では、C17脂肪酸鎖は、ステアリン酸またはオレイン酸から誘導される。実施形態では、C17脂肪酸鎖は、ステアリン酸から誘導される。実施形態では、C17脂肪酸鎖は、オレイン脂肪酸から誘導される。実施形態では、Lは、ステアリン酸から誘導される2つのC17脂肪酸鎖を含む。
【0142】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択される。
【0143】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、C8~30脂肪酸鎖、-CH-C(O)-W、-CH-O-C(O)-W、-CHCH-N-CHCH-C(O)-NR11-CHCH-NR11-C(O)-W)、および-CHCH-N-(CHCH-C(O)-W)からなる群から選択される。
【0144】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、C8~30脂肪酸鎖である。実施形態では、LはC8~30アルキルまたはC8~30アルケニルである。実施形態では、LはC15~20アルキルまたはC15~20アルケニルである。
【0145】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、または-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)である。
【0146】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、-アルキレン-C(O)-Wである。実施形態では、Lは、-C1~6アルキレン-C(O)-Wである。実施形態では、Lは、-CH-C(O)-Wである。
【0147】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、-アルキレン-O-C(O)-Wである。実施形態では、Lは、-C1~6アルキレン-O-C(O)-Wである。実施形態では、Lは、-CH-O-C(O)-Wである。
【0148】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)である。実施形態では、Lは、-C2~6アルキレン-N-(-C2-6アルキレン-C(O)-NR11-C2~6アルキレン-NR11-C(O)-W)である。実施形態では、Lは、-CH-CH-N-(CH-CH-C(O)-NR11-CH-CH-NR11-C(O)-W)である。
【0149】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)である。実施形態では、Lは、-C1~6アルキレン-N-(C1~6アルキレン-C(O)-W)である。実施形態では、Lは、-CH-CH-N-(CH-CH-C(O)-W)である。
【0150】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Lは、C18脂肪酸鎖である。実施形態では、LはC18アルキルまたはC18アルケニルである。実施形態では、Lは、-CH(CHCH-CHである。
【0151】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールである。
【0152】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、C8~30脂肪酸鎖である。実施形態では、WはC8~30アルキルまたはC8~30アルケニルである。実施形態では、WはC8~30アルキルである。実施形態では、WはC8~30アルケニルである。実施形態では、WはC12~18脂肪酸鎖である。実施形態では、WはC12~18アルキルまたはC12~18アルケニルである。実施形態では、WはC12~18アルキルである。実施形態では、WはC12~18アルケニルである。実施形態では、WはC18脂肪酸鎖である。実施形態では、WはC17脂肪酸鎖である。実施形態では、WはC17アルキルまたはC17アルケニルである。実施形態では、WはC17アルキルである。実施形態では、WはC17アルケニルである。実施形態では、Wは-(CHCH-CHである。実施形態では、Wは、少なくとも15個の炭素を含む脂肪酸鎖である。実施形態では、Wは、少なくとも18個の炭素を含む脂肪酸鎖である。実施形態では、Wは、少なくとも17個の炭素を含む脂肪酸鎖である。実施形態では、Wは、少なくとも18個の炭素を含む脂肪酸鎖である。
【0153】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、
【0154】
【化33】
である。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立して脂肪酸鎖である。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立して、少なくとも15個の炭素を含む脂肪酸鎖である。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立して、少なくとも17個の炭素を含む脂肪酸鎖である。いくつかの実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立して-C8~30脂肪酸鎖である。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立して-C8~30アルキルまたは-C8~30アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、両方とも-C8~30アルキルである。実施形態では、RおよびRX’は、両方とも-C8~30アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC12~18脂肪酸鎖である。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立して-C12~18アルキルまたは-C12~18アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、-C12~18アルキルである。実施形態では、RおよびRX’は、-C12~18アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC17脂肪酸鎖である。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC17アルキルまたはC17アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、C17アルキルである。実施形態では、RおよびRX’は、C17アルケニルである。実施形態では、C17鎖は、それぞれ独立してステアリン酸またはオレイン酸から誘導される。実施形態では、C17鎖は、ステアリン酸から誘導される。実施形態では、C17鎖は、オレイン酸から誘導される。実施形態では、RおよびRX’は、両方とも-(CHCH-CHである。
【0155】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、ステロールである。
【0156】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、コレステロールである。
【0157】
【化34】
【0158】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、およびリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるリン脂質である。実施形態では、Wはホスファチジルコリン(PC)である。実施形態では、Wはホスファチジルグリセロール(PG)である。実施形態では、Wはホスファチジルセリン(PS)である。実施形態では、Wはホスファチジルエタノールアミン(PE)である。実施形態では、Wはホスファチジン酸(PA)である。実施形態では、Wはリゾホスファチジルコリンである。
【0159】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、
【0160】
【化35】
である。
(式中、
Q1、YQ2、およびYQ3は、それぞれ独立してアルキレンである)実施形態では、YQ1はC2~6アルキレンであり、YQ2およびYQ3はそれぞれ独立して-C1~3アルキレンである。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立して、少なくとも15個の炭素を有する脂肪酸鎖であり、または特定の実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立して、少なくとも17個の炭素を有する脂肪酸鎖である。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC8~30脂肪酸鎖である。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC8~30アルキルまたはC8~30アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC15~30アルキルまたはC15~30アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC15~20アルキルまたはC15~20アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC17アルキルまたはC17アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、両方とも-(CHCH-CHである。
【0161】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、
【0162】
【化36】
である。
【0163】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、Wは、
【0164】
【化37】
またはその薬学的に許容される塩である。
(式中、RおよびRX’は、それぞれ独立してC8~30脂肪酸鎖である)実施形態では、脂肪酸は飽和している。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC8~30アルキルまたはC8~30アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC15~20アルキルまたはC15~20アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、それぞれ独立してC17アルキルまたはC17アルケニルである。実施形態では、RおよびRX’は、両方とも-(CHCH-CHである。
【0165】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rである。
【0166】
(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物の実施形態では、RおよびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルである。
【0167】
実施形態では、本開示は、
【0168】
【化38-1】
【0169】
【化38-2】
からなる群から選択される化合物、
またはその立体異性体(例えば、そのアルファまたはベータアノマー、あるいはその互変異性体)を提供する。
【0170】
実施形態では、本開示は、:
【0171】
【化39】
からなる群から選択される化合物、
またはその立体異性体(例えば、そのアノマー、またはそのアノマーの混合物)を提供する。
【0172】
実施形態では、本開示は、式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(IIA)、(IIA-1)、(IIA-2)の化合物、またはその立体異性体を提供する。
【0173】
実施形態では、本開示は、式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(IIA)、(IIA-1)、(IIA-2)の化合物、またはそのジアステレオマーもしくは互変異性体を提供する。
【0174】
実施形態では、表1から選択される1つまたは複数の化合物を、本明細書で提供する。
【0175】
実施形態では、表1から選択される化合物の1つまたは複数の薬学的に許容される塩を、本明細書で提供する。
【0176】
実施形態では、表1から選択される1つまたは複数の化合物、立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を、本明細書で提供する。
【0177】
【表1-1】
【0178】
【表1-2】
【0179】
【表1-3】
【0180】
【表1-4】
【0181】
【表1-5】
【0182】
ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン;N-(N-アセチルムラモイル)-L-アラニル-D-アルファ-グルタミニル-N-[(7R)-4-ヒドロキシ-4-オキシド-10-オキソ-7-[(1-オキソヘキサデシル)オキシ]-3、5,9-トリオキサ-4-ホスファペンタコス-1-イル]-L-アラニンアミド(MTP-a-DPPEまたはミファムルチド):分子量:1238ダルトン。CLogP=10.59(非帯電)および4.80(負に帯電)。ミファムルチド(CAS番号[83461-56-7])を文献手順に従って調製した(例えば、D. E.; Wade, R. (1985) J Label Compd Radiopharm. 22 (1): 29-35. doi:10.1002/jlcr.2580220105)。この分子の親油性は、生理学的環境ではCLogP4.80で比較的低い。
【0183】
N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン-6-O-ステアロイル(MDP-C18[mur])分子量:759ダルトン。CLogP=5.39(非帯電)および1.39(負に帯電)。MDP-C18[mur](CAS番号[60398-08-5])を文献手順に従って調製した(例えば、Matsumoto K. et al. (1981) Infect Immun. 32(2):748-58)。この分子の親油性は生理学的環境ではCLogP1.39と低いため、HDL由来ナノ粒子への確実な組み込みを保証するには十分である可能性が低い。
【0184】
ロムルチド(CAS番号[78113-36-7])分子量:887ダルトン。CLogP=3.90(非帯電)および0.61(負に帯電)で親油性を有する(生理学的環境ではCLogP0.61である)。この化合物の親油性は低く、帯電分子のCLogPは0に近くなる。
【0185】
ムラブチド(CAS番号[74817-61-1])分子量:549ダルトン。CLogP=-1.53(非帯電)でCLogP値は負である。この分子は、CLogP値が0未満であるため、親水性である。
【0186】
実施形態では、本開示の化合物(例えば、式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(IIA)、(IIA-1)、(IIA-2)または表1)は、ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン含有タンパク質2(NOD2)を活性化する。
【0187】
アノマーおよび開環/閉環構造
実施形態では、本開示の分子は、ムラミル糖基のアノマーヘミアセタール炭素に-OH置換基を担持し、すなわち、R=Hの場合、アノマー異性体アルファおよびベータの両方が本開示の化合物に含まれることが理解される。
【0188】
さらに、R=Hであるこれらの場合、そのような分子は(水性環境において)実際には閉環異性体および開環構造の両方で存在することが当技術分野で知られている。再度、開環異性体および閉環異性体の両方が本開示の化合物に含まれることが理解される。
【0189】
以下の非限定的な例において、上の構造はアルファおよびベータアノマーを示し、下の構造は一般的なアノマー閉環構造(左)および開環構造(右)を示す。
【0190】
【化40】
【0191】
分子量
本発明の化合物は、好ましくは、500ダルトン超、700ダルトン超、950ダルトン超、または1,200ダルトン超の分子量を有する。
【0192】
本発明の化合物は、好ましくは、10,000ダルトン未満、5,000ダルトン未満、2,500ダルトン未満、または1,750ダルトン未満の分子量を有する。
【0193】
疎水性
本開示の化合物は、特定の実施形態では、本質的に疎水性である。疎水性は、CLogP値の計算によって推定することができる。これは、例えばPerkin ElmerのChemDrawまたはChemDraw Professional(v18)などのソフトウェアプログラムで実行することができる。化合物のCLogP値が高いほど、化合物の疎水性は高くなる。
【0194】
実施形態では、本開示の化合物は、約1より高い、約3より高い、約5より高い、約7より高い、約9より高い、または約11より高いCLogP値を有する。
【0195】
CLogP値は、分子のn-オクタノール/水分配係数(Log Po/w)を表し、LogP値、すなわち実験によって評価された値とは対照的に計算値である。したがって、CLogP値はLogP値からずれる場合がある。しかし、重要なことに、CLogP値は分子の親油性間を適切に比較する。CLogP値は、非帯電状態または帯電状態のいずれかの分子について評価することができる。これは、カルボン酸(-COOH)またはリン酸(-OP(O)OH-O-)基を有する分子など、イオノゲン基を有する分子の場合に当てはまる。生理学的pH(約7.4)では、これらの特定の基は脱プロトン化され、したがって帯電する。また、アルキル(化)アミン基は生理学的pHで帯電し、この場合はプロトン化によって帯電する。
【0196】
生理学的pHでは、本発明の分子は、20未満、または15未満、または10未満のCLogP値を有する。さらに、生理学的pHでは、本発明の分子は、3より高い、または4より高い、または5より高い、または5.5より高いCLogP値を有する。
【0197】
ナノ生物学的組成物
本明細書では、ナノ粒子担体および本開示の1つまたは複数の化合物(本明細書または表1に開示されているような(I)、(IA)、(IB)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物など)を含むナノ生物学的組成物を提供する。
【0198】
実施形態では、本開示の化合物は、ナノ粒子担体中で製剤化することができ、ナノ粒子担体としては、コロイド分散系、例としてポリプレックス、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質ベース系、例えば水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、脂質ナノカプセル、リピドイド、急速除去脂質ナノ粒子(reLNP)、マイクロおよびナノエマルジョンなど、HDL由来ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、例えばポリ(乳酸-グリコール酸共酸)(PLGA)ナノ粒子、例としてPLGAマイクロスフェア、ポリ(ラクチド)(PLA)ナノ粒子、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)ナノ粒子、ポリ(ブチルシアノアクリレート)(PBCA)ナノ粒子、デンドリマー(demdrimers)、ハイパーブランチポリグリセロール(HPG)ナノ粒子、PEG-ポリアスパラギン酸ミセルナノ粒子、カチオン性ポリマー、例えばポリ(L-リジン)、ポリエチレンイミン(PEI)、DEAE-デキストラン、ポリ(アミノエステル)(PBAE)およびキトサンなど、シクロデキストリンナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、ウイルス様粒子(例えば、主にウイルス構造タンパク質で構成されるが、感染性がない、または感染力が低い粒子)、ペプチド、またはタンパク質ベースの粒子、例としてアルブミンナノ粒子、ナノワイヤ、金ナノ粒子、磁性ナノ粒子、コアシェルナノ粒子、カーボンナノチューブ、ナノ結晶、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0199】
実施形態では、本開示の化合物は、それらのそれぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,567,434号明細書、米国特許第5,552,157号明細書、米国特許第5,565,213号明細書、米国特許第5,738,868号明細書、米国特許第5,795,587号明細書、米国特許第10,485,884号明細書、米国特許出願公開第2018/0263907号明細書、米国特許出願公開第2016/0317647号明細書、米国特許出願公開第2019/0290593号明細書、米国特許出願公開第2020/0253884号明細書、米国特許出願公開第2020/0376146号、および国際公開第2018/071549号パンフレットに記載されているものなどのナノ粒子担体中で製剤化することができる。
【0200】
実施形態では、ナノ粒子担体は、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子である。高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、例えば、小分子免疫調節化合物の治療指数を改善し、および/または自然免疫細胞特異的送達を与える送達媒体として想定されている。自然免疫細胞(骨髄、血液、および/または脾臓の骨髄細胞、骨髄前駆細胞、造血幹細胞など)に対する標的特異性を付与することにより、HDL由来ナノ粒子にカプセル化されたまたは組み込まれた治療剤を、集中的かつ局所的様式で体積させることができる。実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物を含む。実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、apoA-Iを含む。
【0201】
ヒトapoA-Iは、当技術分野で既知の任意の方法によって単離または調製することができる。実施形態では、ヒトapoA-IはヒトHDLから単離される。別の既知の方法は、例えば大腸菌(E. coli)生物中での組換えタンパク質発現によるapoA-Iの合成を含む。細菌内で発現させる場合、apoA-Iは、N末端メチオニンまたはホルミルメチオニンを含んでもよい。メチオニン基の存在は、当技術分野で既知の質量分析(MS)法によって評価することができる。タンパク質配列中のメチオニンの位置は、当技術分野でも既知のように、apoA-Iの消化後、その後のMSによるペプチド混合物の分析によって評価することができる。
【0202】
実施形態では、その変形のいずれかを含む、apoA-Iの精製は、当技術分野で既知の任意の方法(例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換カラム、沈殿などの使用)を含み得る。産生方法には、タンパク質の精製が可能になるアフィニティータグの使用を含む場合または含まない場合があり、このようなタグは、ヒトapoA-Iの同一性を復元するために精製後に除去する必要がある。
【0203】
実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、ApoA-1Milanoを含む。
【0204】
適切なapoA-I模倣ポリペプチドは、表2(配列番号256~263、および342~346)または配列番号1~341に示される配列を有することができる。
【0205】
【表2】
【0206】
実施形態では、apoA-I模倣物はDWLKAFYDKVAEKLKEAF(配列番号256)である。実施形態では、apoA-I模倣物はAc-DWLKAFYDKVAEKLKEAF-NH(配列番号257)である。実施形態では、apoA-I模倣物はAc-DWFKAFYDKVAEKFKEAF-NH(配列番号260)である。
【0207】
実施形態では、apoA-I模倣物は、任意選択でN末端においてアセチル化され、または任意選択でC末端においてアミド化される。実施形態では、apoA-I模倣物は、N末端においてアセチル化される。実施形態では、apoA-I模倣物は、C末端においてアミド化される。実施形態では、apoA-I模倣物は、N末端においてアセチル化され、C末端においてアミド化される。実施形態では、本開示のHDL由来ナノ粒子は、1つまたは複数のリン脂質を含む。C4~C30までの鎖長の範囲、飽和または不飽和、シスまたはトランス、非置換または1~6個の側鎖で置換された、およびリゾ脂質の添加がある場合もしくはない場合の、すべてのリン脂質は、本明細書に記載されるナノ粒子での使用が企図される。さらに、他の合成変異体および他のリン脂質頭部基を有する変異体も企図される。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質を含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、リン脂質およびリゾ脂質を含む。
【0208】
本組成物において使用することができるリン脂質の非限定的な例としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)が挙げられる。実施形態では、ホスファチジン酸/エステル(PA)を使用することができる。
【0209】
実施形態では、リン脂質またはリゾ脂質は、以下のうちの1つまたは複数である:DDPC CAS-3436-44-0 1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DEPA-NA CAS-80724-31-8 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-リン酸(ナトリウム塩)、DEPC CAS-56649-39-9 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DEPE CAS-988-07-2 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DEPG-NA 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(ナトリウム塩)、DLOPC CAS-998-06-1 1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DLPA-NA 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-リン酸(ナトリウム塩)、DLPC CAS-18194-25-7 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DLPE 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DLPG-NA1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(ナトリウム塩)、DLPG-NH4 1 ,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(アンモニウム塩)、DLPS-NA 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、DMPA-NA CAS-80724-3 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-リン酸塩(ナトリウム塩)、DMPC CAS-18194-24-6 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DMPE CAS-988-07-2 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DMPG-NA CAS-67232-80-8 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(ナトリウム塩)、DMPG-NH4 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(l-グリセロール)(アンモニウム塩)、DMPG-NH4/NA 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(lグリセロール)(ナトリウム/アンモニウム塩)、DMPS-NA 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、DOPA-NA 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-リン酸(ナトリウム塩)、DOPC CAS-4235-95-4 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DOPE CAS-4004-5-1 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DOPG-NA CAS-62700-69-0 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(ナトリウム塩)、DOPS-NA CAS-70614-14-1 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、DPPA-NA CAS-71065-87-7 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-リン酸(ナトリウム塩)、DPPC CAS-63-89-8 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DPPE CAS-923-61-5 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DPPG-NA CAS-67232-81-9 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(l-グリセロール)(ナトリウム塩)、DPPG-NH4 CAS-73548-70-6 1,2-ジパルミトイルsn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(アンモニウム塩)、DPPS-NA 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、DSPA-NA CAS-108321-18-2 1,2-ジステアロイル-sngグリセロ-3-リン酸(ナトリウム塩)、DSPC CAS-816-94-4 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DSPE CAS-1069-79-0 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DSPG-NA CAS-67232-82-0 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(ナトリウム塩)、DSPG-NH4 CAS-108347-80-4 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)(アンモニウム塩)、DSPS-NA 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、EPC 卵-PC、HEPC水素化卵-PC、HSPC水素化大豆PC、LYSOPC MYRISTIC CAS-18194-24-6 l-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、LYSOPC PALMITIC CAS-17364-16-8 l-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、LYSOPC STEARIC CAS-19420-57-6 l-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、ミルクスフィンゴミエリン、MPPC l-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ3-ホスホコリン、MSPC l-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、PMPC 1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、POPC CAS-26853-31-6 l-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、POPE 1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、POPG-NA CAS-81490-05-3 l-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)、PSPC 1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、SMPC 1-ステアロイル-2-ミリストイル-snグリセロ-3-ホスホコリン、SOPC 1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、SPPC1-Sテアロイ1-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン。いくつかの好ましい実施形態では、リン脂質の非限定的な具体例としては、以下が挙げられる:ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、大豆レシチン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウリロリルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)、およびそれらの混合物。
【0210】
実施形態では、リン脂質は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)であり、リゾ脂質は1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(MHPC)である。
【0211】
実施形態では、リン脂質は1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)であり、リゾ脂質は1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC)である。
【0212】
実施形態では、本組成物が2つ以上のタイプの脂質(リン脂質、またはリゾ脂質など)を含む(または本質的にそれらからなる、またはそれらからなる)場合、2のタイプのリン脂質の重量比は、約1:10~約10:1、例えば約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1~約10:1の範囲であり、それらの間のすべての値および範囲を含む。
【0213】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子はDMPCおよびMHPCを含み、DMPC対MHPCの重量比は、約1:10~約10:1、約2:1~約4:1、約1:1~約5:1、約2:1~約5:1、約6:1~約10:1、約7:1~約10:1、約8:1~約10:1、約7:1~約9:1、または約8:1~約9:1の範囲であってもよい。DMPC対MHPCの重量比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1または約10:1であってもよく、それらの間のすべての値および範囲を含む。
【0214】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子はPOPCおよびPHPCを含み、POPC対PHPCの重量比は、約1:10~約10:1、約2:1~約4:1、約1:1~約5:1、約2:1~約5:1、約6:1~約10:1、約7:1~約10:1、約8:1~約10:1、約7:1~約9:1、または約8:1~約9:1の範囲であってもよい。POPC対PHPCの重量比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1または約10:1であってもよい。
【0215】
実施形態では、本開示のナノ粒子中のリン脂質は、二本鎖ジアシルリン脂質と単鎖アシルリン脂質/リゾ脂質の混合物を含む(またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる)。
【0216】
実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物、およびリン脂質を含む。実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物、リン脂質、および式(I)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物を含む。
【0217】
実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、i)apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物;ii)リン脂質;iii)リゾ脂質、およびiv)コレステロールを含む。実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、i)apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物;ii)リン脂質;iii)リゾ脂質、iv)コレステロール、および式(I)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物を含む。
【0218】
実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、i)apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物;ii)リン脂質;およびiii)コレステロールを含む。実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、i)apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物;ii)リン脂質;iii)コレステロール、および式(I)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物を含む。
【0219】
実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、i)apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物;ii)リン脂質;iii)リゾ脂質、iv)疎水性マトリックスコア、およびv)コレステロールを含む。実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、i)apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物;ii)リン脂質;iii)リゾ脂質、iv)疎水性マトリックスコア、v)コレステロールおよび式(I)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物を含む。
【0220】
実施形態では、高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、i)apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物;ii)リン脂質;iii)リゾ脂質、iv)トリグリセリド、v)コレステロールおよび式(I)、(II)、(II-1)、(II-2)、(II-A)、(IIA-1)または(IIA-2)の化合物を含む。
【0221】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子の構造および特性(例えば、粒径、剛性、粘度、充填量など)は、疎水性マトリックスを組み込むことによって改変することができる。本明細書で使用される場合、疎水性マトリックスは、ナノ生物学的製剤のコア、充填剤、または構造修飾剤を指す。好適な疎水性マトリックス分子の非限定的な例としては、トリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、ステロールエステル、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0222】
例えば、本明細書に開示されるナノ粒子中に1つもしくは複数のトリグリセリドおよび/または1つもしくは複数のポリマーが含まれると、ナノ粒子サイズ(例えば、約10nmから100nm超まで)、および形状(円盤状から球状まで)の調節を促進することができる。それにより、HDL由来ナノ粒子のサイズ、剛性、粘度も、充填量および生体内分布に影響を与える場合がある。非限定的な例において、リン脂質およびapoA-Iを含むHDL由来ナノ粒子は、約10nm~約50nmの直径を有し得、疎水性マトリックス分子(トリグリセリドなど)を加えると、HDL由来ナノ粒子が約10nmの最小値から少なくとも約30nmまで膨潤する。さらにトリグリセリドを加えると、HDL由来ナノ粒子の直径を、それらの間のすべての値および範囲を含んで、少なくとも50nm、少なくとも75nm、少なくとも100nm、少なくとも150nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、および最大400nmまでさらに増加させることができる。
【0223】
当技術分野で既知の任意の好適な合成または天然の脂肪酸もしくは脂肪酸エステルは、本開示のHDL由来ナノ粒子での使用が企図される。使用される脂肪酸の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:アラキドン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ラウリン酸、sad、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミン酸(Palmic acid)、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、デカノイン3種、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ジラウリン、1-Sunsoft767、ラウロカプラム(1-ドデシル-アザ-シクロヘプタン-2-ケトン)、アシルカルニチン、アシル基コリンまたはC~C10arrcostab(ミリスチン酸イソプロピルIPMなど)、モノグリセリド、ジグリセリドまたはその薬学的に許容される塩。
【0224】
当技術分野で既知の任意の好適な合成または天然トリグリセリドは、本開示のHDL由来ナノ粒子での使用が企図される。使用されるトリグリセリドの非限定的としては、以下のものが挙げられる:トリカプリリン、トリステアリン、トリオレイン、トリパルミチン、1,2-ジパルミトオレイン、1,3-ジパルミトオレイン、1-パルミト-3-ステアロ-2-オレイン、1-パルミト-2-ステアロ-3-オレイン、2-パルミト-1-ステアロ-3-オレイン、トリリノレイン、1,2-ジパルミトリノレイン、1-パルミト-ジリノレイン、1-ステアロ-ジリノレイン、1,2-ジアセトパルミチン、1,2-ジステアロ-オレイン、1,3-ジステアロ-オレイン、トリミリスチン、トリラウリンおよびその組合せ。好適なトリグリセリドは、未処理の形態で本発明の組成物に加えることができる。追加的または代替的に、好適なトリグリセリドを含有する油および/または加工油を組成物に加えてもよい。油の非限定的な例としては、ココナッツ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、パーム種子油、綿実油、パーム油、菜種油、ヒマワリ油、鯨油、大豆油、落花生油、亜麻仁油、トール油、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0225】
疎水性ポリマーまたはポリマーは、ヒトへの使用が承認されている(すなわち、生体適合性があり、FDAが承認している)ポリマーの群から選択することができる。このようなポリマーとしては、例えば、以下のポリマー、そのようなポリマーの誘導体、コポリマー、ブロックコポリマー、分岐ポリマー、およびポリマーブレンドが挙げられるが、これらに限定されない:ポリアルケンジカルボキシレート、ポリ無水物、ポリ(アスパラギン酸)、ポリアミド、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリアルキレンカーボネート(PC)を含むポリカーボネート、脂肪族ポリエステルおよびポリエステルアミドを含むポリエステル、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリグリコリド(PGA)、ポリイミンおよびポリアルキレンイミン(Pl、PAI)、ポリラクチド(PLA(ポリ乳酸)、PLLA、PDLLA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリ(L-リジン)、ポリメタクリレート、ポリペプチド、ポリオルトエステル、ポリ-p-ジオキサノン(PPDO)、(疎水性)修飾多糖類、ポリシロキサンおよびポリアルキルシロキサン、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、および生分解性ポリアルキルシアノアクリレート。
【0226】
本開示のHDL由来ナノ粒子の実施形態では、ナノ粒子担体へのコレステロールの添加により、組成物が安定化し、捕捉効率が改善される。典型的には、HDL由来ナノ粒子は、リン脂質に対して(例えば、DMPCに対して)約1mol%~約100mol%のコレステロール、例えばその間のすべての範囲および値を含む、約1mol%、約2mol%、約3mol%、約4mol%、約5mol%、約6mol%、約7mol%、約8mol%、約9mol%、約10mol%、約11mol%、約12mol%、約13mol%、約14mol%、約15mol%、約16mol%、約17mol%、約18mol%、約19mol%、約20mol%、約21mol%、約22mol%、約23mol%、約24mol%、約25mol%、約26mol%、約27mol%、約28mol%、約29mol%、約30mol%、約35mol%、約40mol%、約45mol%、約50mol%、約55mol%、約60mol%、約65mol%、約70mol%、約75mol%、約80mol%、約85mol%、約90mol%、約95mol%~約100mol%のコレステロールを含む(すなわち、コレステロールとリン脂質(例えば、DMPC)の1:1mol/mol混合物)。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、約1mol%~約30mol%のコレステロールを含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質に対して約15mol%~約25mol%のコレステロールを含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質に対して約20mol%のコレステロールを含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質に対して約10mol%~約35mol%のコレステロールを含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質に対して約15mol%~約30mol%のコレステロールを含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質に対して約15mol%~約25mol%のコレステロールを含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質に対して約28mol%~約23mol%のコレステロールを含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質に対して約20mol%~約27mol%のコレステロールを含む。
【0227】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子はコレステロールを含まない。実施形態では、HDL由来ナノ粒子中のコレステロール:リン脂質のモル比は、約0.025:1、約0.05:1、約0.075:1、約0.1:1、約0.125:1、約0.15:1、約0.175:1、約0.2:1、約0.225:1、約0.25:1、約0.275:1、約0.3:1、約0.325:1、約0.35:1、約0.375:1、約0.4:1、約0.425:1、約0.45:1、約0.475:1または約0.5:1であり、それらの間のすべての値を含む。コレステロール:リン脂質のモル比は、約0:1~約0.5:1の範囲、例えば、約0:1、約0.025:1、約0.05:1、約0.075:1、約0.1:1、約0.125:1、約0.15:1、約0.175:1、約0.2:1、約0.225:1、約0.25:1、約0.275:1、約0.3:1、約0.325:1、約0.35:1、約0.375:1、約0.4:1、約0.425:1、約0.45:1、約0.475:1~約0.5:1の範囲であり、それらの間のすべての範囲を含む。実施形態では、コレステロール:リン脂質のモル比は、約0.05:1~約0.25:1の範囲である。実施形態では、コレステロールのモル比は、約0.2:1である。
【0228】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、1つまたは複数のリン脂質とコレステロールを、約1:0.05~約1:0.25の範囲のモル比で含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、1つまたは複数のリン脂質とコレステロールを、1:0.2のモル比で含む。
【0229】
実施形態では、コレステロールの重量パーセンテージは、ナノ粒子、脂質、または組成物の約0%(w/w)~約15%(w/w)の範囲であり、例えば、約1%(w/w)、約1.5%(w/w)、約2%(w/w)、約2.5%(w/w)、約3%(w/w)、約3.5%(w/w)、約4%(w/w)、約4.5%(w/w)、約5%(w/w)、約5.5%(w/w)、約6%(w/w)、約6.5%(w/w)、約7%(w/w)、約7.5%(w/w)、約8%(w/w)、約8.5%(w/w)、約9%(w/w)、約9.5%(w/w)、約10%(w/w)、約10.5%(w/w)、約11%(w/w/)、約11.5%(w/w)、約12%(w/w)、約12.5%(w/w)、約13%(w/w)、約13.5%(w/w)、約14%(w/w)、約14.5%(w/w)~約15%(w/w)の範囲である。実施形態では、コレステロールの重量パーセンテージは、ナノ粒子、脂質、または組成物の約0%(w/w)~約15%(w/w)の範囲であり、例えば、約1%(w/w)、約1.5%(w/w)、約2%(w/w)、約2.5%(w/w)、約3%(w/w)、約3.5%(w/w)、約4%(w/w)、約4.5%(w/w)、約5%(w/w)、約5.5%(w/w)、約6%(w/w)、約6.5%(w/w)、約7%(w/w)、約7.5%(w/w)、約8%(w/w)、約8.5%(w/w)、約9%(w/w)、約9.5%(w/w)、約10%(w/w)、約10.5%(w/w)、約11%(w/w/)、約11.5%(w/w)、約12%(w/w)、約12.5%(w/w)、約13%(w/w)、約13.5%(w/w)、約14%(w/w)、約14.5%(w/w)~約15%(w/w)の範囲である。実施形態では、重量パーセンテージは、リン脂質に対するコレステロールの重量パーセンテージである。実施形態では、コレステロールの重量パーセンテージは、組成物の約1~10%コレステロール(w/w%)の範囲である。コレステロールの重量パーセンテージは、組成物の約2~8%コレステロール(w/w%)の範囲である。実施形態では、コレステロールの重量パーセンテージは、組成物の約3.5~7.5%コレステロール(w/w%)の範囲である。実施形態では、コレステロールの重量パーセンテージは、組成物の約5~10%コレステロール(w/w%)の範囲である。実施形態では、コレステロールの重量パーセンテージは、組成物の約3.6(w/w%)である。実施形態では、コレステロールの重量パーセンテージは、組成物の約7.2(w/w%)である。実施形態では、コレステロールの重量パーセンテージは、組成物の約5.9(w/w%)である。
【0230】
実施形態では、ナノ粒子のサイズおよび循環時間は、例えば、脂質対APOA1の比、および脂質対ポリマーまたは脂質対トリグリセリドの比を制御することによって調節することができる。
【0231】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、約5:1~1000:1の比(例えば、モル基準で)、例えば、約5:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、約100:1、約110:1、約120:1、約130:1、約140:1、約150:1、約160:1、約170:1、約180:1、約190:1、約200:1、約210:1、約220:1 約230:1、約240:1、約250:1、約260:1、約270:1、約280:1、約290:1、約300:1、約310:1、約320:1、約330:1、約340:1、約350:1、約360:1、約370:1、約380:1、約390:1、約400:1、約410:1、約420:1、約430:1、約440:1、約450:1、約460:1、約470:1、約480:1、約490:1、約500:1、約510:1、約520:1、約530:1、約540:1、約550:1、約560:1、約570:1、約580:1、約590:1、約600:1、約610:1、約620:1、約630:1、約640:1、約650:1、約660:1、約670:1、約680:1、約690:1、約700:1、約710:1、約720:1 約730:1、約740:1、約750:1、約760:1、約770:1、約780:1、約790:1、約800:1、約810:1、約820:1、約830:1、約840:1、約850:1、約860:1、約870:1、約880:1、約890:1、約900:1、約910:1、約920:1、約930:1、約940:1、約950:1、約960:1、約970:1、約980:1、約990:1~約1000:1のリン脂質:apoA-IまたはapoA-I模倣物を含み、それらの間のすべての部分範囲と値が含まれる。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、約10:1~1000:1の比(例えば、モル基準で)のリン脂質:apoA-IまたはapoA-I模倣物を含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、約70:1~125:1の比(例えば、モル基準で)のリン脂質:apoA-Iを含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、約5:1~10:1の比(例えば、モル基準で)のapoA-I模倣物を含む。
【0232】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、重量比約2:1~3:1のリン脂質:apoA-IまたはapoA-I模倣物を含む。
【0233】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、リン脂質(例えば、DMPC)に対して約、または少なくとも約0.1mol%~約100mol%の式Iの化合物を含み、例えば、約または少なくとも約0.1mol%、約または少なくとも約0.5mol%、約または少なくとも約0.75mol%、約または少なくとも約1%mol%、約または少なくとも約2mol%、約または少なくとも約3mol%、約または少なくとも約4mol%、約または少なくとも約5mol%、約または少なくとも約6mol%、約または少なくとも約7mol%、約または少なくとも約8mol%、約または少なくとも約9mol%、約または少なくとも約10mol%、約または少なくとも約11mol%、約または少なくとも約12mol%、約または少なくとも約13mol%、約または少なくとも約14mol%、約または少なくとも約15mol%、約または少なくとも約16mol%、約または少なくとも約17mol%、約または少なくとも約18mol%、約または少なくとも約19mol%、約または少なくとも約20mol%、約または少なくとも約21mol%、約または少なくとも約22mol%、約または少なくとも約23mol%、約または少なくとも約24mol%、約または少なくとも約25mol%、約または少なくとも約26mol%、約または少なくとも約27mol%、約または少なくとも約28mol%、約または少なくとも約29mol%,~約または少なくとも約30mol%、約または少なくとも約35mol%、約または少なくとも約40mol%、約または少なくとも約45mol%、約または少なくとも約50mol%、約または少なくとも約55mol%、約または少なくとも約60mol%、約または少なくとも約65mol%、約または少なくとも約70mol%、約または少なくとも約75mol%、約または少なくとも約80mol%、約または少なくとも約85mol%、約または少なくとも約90mol%、約または少なくとも約95mol%~約または少なくとも約100mol%の式Iの化合物を含み(化合物とリン脂質(例えば、DMPC)の1:1mol/mol混合物)、その間のすべての範囲および値を含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、リン脂質に対して約10mol%~約30mol%の式Iの化合物を含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子はリン脂質に対して約12mol%~約25mol%の化合物を含む。
【0234】
実施形態では、ナノ粒子サイズは、直径約5nm~約500nmの範囲であり、例えば、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm~約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm 約160nm、約170nm、約180nm、約190nm、約200nm、約210nm、約220nm、約230nm、約240nm、約250nm、約260nm、約270nm、約280nm、約290nm、約300nm、約310nm、約320nm、約330nm、約340nm、約350nm、約360nm、約370nm、約380nm、約390nm、約400nm、約410nm、約420nm、約430nm、約440nm、約450nm、約460nm、約470nm、約480nm、約490nm~約500nmの範囲であり、それらの間のすべての範囲および値を含む。実施形態では、ナノ粒子サイズは約50nm未満である。実施形態では、ナノ粒子サイズは、約50nm~約100nm、または約5nm~約30nmである。実施形態では、ナノ粒子サイズは、動的光散乱(DLS)によって測定される。実施形態では、循環へのアクセスが制限されている組織内の免疫細胞を標的とするために、血中半減期が長く、サイズが小さい(<50nm)ナノ粒子を使用することができる。実施形態では、十分に灌流された組織内の免疫細胞を標的とするために、血中半減期が短く、サイズが大きい(約100nm)ナノ粒子を使用することができる。これらの組織には、脾臓、肝臓、腎臓、肺、および骨髄が含まれる。
【0235】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、円盤形状である。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、球形である。実施形態では、HDL由来ナノ粒子の形態は、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって視覚化される。
【0236】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、長さ約5~約100nmであり、例えば、長さ約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm~約100nmであり、その間のすべての範囲および値を含む。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、長さ約10nm~80nmである。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、長さ約15nm~50nmである。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、約10nmより長い、または約15nmより長い。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、約1nm~10nmの厚さを有し、例えば、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm~約10nmの厚さを有し、それらの間のすべての範囲および値を含む。実施形態では、HDL粒子の厚さは、約1~10nm、または2~7nm、または3~6nmである。実施形態では、寸法(例えば、長さおよび厚さ)は、クライオTEMによって記録される。実施形態では、HDL粒子は、クライオTEMによるとミミズ状の形態を有する。
【0237】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、直径約5nm~約50nmの円盤形状であり(例えば、動的光散乱(DLS)によって測定される)、例えば、直径約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約40nm~約50nmであり、それらの間のすべての部分範囲および値を含む。実施形態では、ナノディスクは直径約5nm~約30nmである。
【0238】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、直径約10nm~約400nmの球形であり(例えば、動的光散乱(DLS)によって測定される)、例えば、直径は約10nm、約15nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約190nm、約200nm、約210nm、約220nm、約230nm、約240nm、約250nm、約260nm、約270nm、約280nm、約290nm、約300nm、約310nm、約330nm、約340nm、約350nm、約360nm、約370nm、約380nm、約390nm~約400nmであり、それらの間のすべての値および範囲を含む。実施形態では、ナノスフェアは直径約15nm~約250nmの間である。実施形態では、ナノスフェアは、直径約30nm~約100nmの間である。
【0239】
HDL由来ナノ粒子の安定性は、DLS測定を実行することによって評価することができる。実施形態では、HDL由来ナノ粒子は、例えばDLSにより、少なくとも約1週間、または少なくとも約2週間、または少なくとも約5週間安定である。
【0240】
実施形態では、ナノ生物学的組成物は、それを必要とする患者において過剰反応性自然免疫応答を促進する。実施形態では、過剰反応性自然免疫応答は、少なくとも約7~約30日間促進される。実施形態では、過剰反応性自然免疫応答は、少なくとも30~100日間促進される。実施形態では、過剰反応性自然免疫応答は、100日を超えて最長3年間促進される。実施形態では、ナノ生物学的組成物は1回投与され、過剰反応性自然免疫応答が少なくとも30日間促進される。実施形態では、ナノ生物学的組成物は、複数回投与レジメンの各日において少なくとも1日1回投与され、過剰反応性自然免疫応答は、少なくとも30日間促進される。
【0241】
生成方法では、均一なサイズのHDL由来ナノ粒子、または濾過を行わないか、もしくは様々なサイズのHDL由来ナノ粒子を調製し、生成後のステップでそれらを再び合わせることによってのいずれかで、不均一なサイズのHDL由来ナノ粒子の混合物を調製することができる。HDL由来ナノ粒子のサイズが大きいほど、より多くの薬物を組み込むことができる。しかし、より大きなサイズ、例えば、>120nmでは、処置を受けている患者の組織へのHDL由来ナノ粒子の拡散を制限、妨害、または遅延させる場合がある。より小さなHDL由来ナノ粒子は、粒子ごとにそれほど多くの薬物を保持しないが、訓練された免疫の影響を受ける骨髄、血液、もしくは脾臓、または他の局所組織、例えば、骨髄、血液および/または脾臓などの骨髄細胞、骨髄前駆細胞、および造血幹細胞(生体内分布)にアクセスすることができる。
【0242】
単回投与またはレジメンでナノ粒子サイズの不均一な混合物を使用すると、自然免疫の過剰反応性を即時に低下させることができ、同時に、数日、数週間、数か月、および数年続く可能性がある自然免疫の過剰反応性を永続的かつ長期的に軽減することができ、ナノ生物学的製剤は、造血幹細胞(HSC)、骨髄共通前駆細胞(CMP)、ならびに骨髄細胞、例として単球、マクロファージ、およびその他の短命循環細胞の代謝、エピジェネティック、およびインフラマソーム経路を逆転、修飾、または再調節している。
【0243】
実施形態では、HDL由来ナノ粒子の最大充填能は、HDL由来ナノ粒子の内部の容積を薬物-充填スフェロイドの体積で割ることにより決定することができる。
粒子:2.2nm~3.0nmのリン脂質壁を有する100nmの球形粒子を想定しており、内径94nmで、体積(大)@4/3n(r)3となる。
薬物:スティミュレータ(STIMULATOR)を12×12×35オングストローム、または1.2×1.2×3.5nmのシリンダーとして想定し、複数薬物分子シリンダーは、例えば7または9などでは、半径1.75nm、体積(小)@4/3n(r)3の直径3.5nmのスフェロイドを想定する。
最大充填能(計算値):100nm粒子内に3.5nmのスフェロイドが約487k。
【0244】
製剤
医薬品として利用される場合、本開示の化合物およびHDL由来ナノ粒子は、典型的には、医薬組成物の形態で投与される。そのような組成物は、製薬分野において周知の方式で調製することができ、少なくとも1つの活性化合物を含む。実施形態では、医薬組成物は、本開示のナノ生物学的組成物および薬学的に許容される担体を含む。
【0245】
一般に、本発明の化合物は、薬学的に有効な量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、処置を受ける状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、および反応、患者の症状の重症度などを含む、関連する状況を考慮して、医師によって決定されることになる。
【0246】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、眼内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、脳脊髄液に直接、気管内、および経鼻を含む様々な経路によって投与することができる。意図する送達経路に応じて、本発明の化合物は、好ましくは、注射用もしくは経口用組成物のいずれかとして、または膏薬として、ローションとしてまたはパッチとして、すべて経皮投与用に製剤化される。実施形態では、組成物は、静脈内または動脈内に投与される。
【0247】
経口投与用の組成物は、バルク液体溶液もしくは懸濁液、またはバルク粉末の形態をとることができる。しかし、より一般的には、正確な投与を容易にするために、組成物は単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象および他の哺乳類用の単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、好適な医薬賦形剤と共同して、所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性材料を含む。典型的な単位剤形としては、予め充填され、予め計量された液体組成物のアンプルもしくはシリンジ、または固体組成物の場合には丸剤、錠剤、カプセルなどが挙げられる。このような組成物において、本明細書に記載の化合物は、通常、微量成分(約0.1~約50重量%、または好ましくは約1~約40重量%)であり、残りは、所望の剤形を形成するのに役立つ種々のビヒクルまたは担体および加工助剤である。
【0248】
経口投与に好適な液体形態としては、緩衝剤、懸濁化剤および分散剤、着色剤、香料などを含む好適な水性または非水性ビヒクルを挙げることができる。固体形態には、例えば、以下の成分:微結晶性セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;または、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバーなどの香味剤のいずれか、または類似の性質の化合物を含めることができる。
【0249】
注射用組成物は、典型的には、注射用滅菌生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、または当技術分野で知られている他の注射用担体に基づいている。前述のように、このような組成物中の活性化合物は典型的には微量成分であり、多くの場合約0.05~10重量%であり、残りは注射用担体などである。
【0250】
経皮組成物は、典型的には、活性成分を含有する局所軟膏またはクリームとして製剤化され、一般に、約0.01~約20重量%、好ましくは約0.1~約20重量%、好ましくは約0.1~約10重量%、より好ましくは約0.5~約15重量%の範囲の量である。軟膏として製剤化される場合、活性成分は典型的に、パラフィン系または水混和性軟膏基剤のいずれかと組み合わせる。あるいは、活性成分は、例えば水中油型クリーム基剤を用いてクリームに配合してもよい。このような経皮製剤は当技術分野で周知であり、一般に、活性成分または製剤の皮膚浸透の安定性を高めるための追加の成分を含む。このような既知の経皮製剤および成分はすべて、本発明の範囲内に含まれる。
【0251】
本明細書に記載のナノ粒子は、経皮デバイスによって投与することもできる。したがって、経皮投与は、リザーバまたは多孔質膜タイプ、または固体マトリックスの種類のいずれかのパッチを使用して達成することができる。
【0252】
経口投与用、注射用または局所投与用組成物のための上記の成分は、単に代表的なものである。他の材料および処理技術などは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th edition, 1985, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaの第8部に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0253】
注射の場合、本明細書に記載のナノ粒子は、注射用リポソーム溶液、徐放性ポリマー系などの形態で、注射用生理食塩水で提供することができる。
【0254】
本明細書に記載のナノ粒子は、持続放出性形態で、または持続放出性薬物送達システムから投与することもできる。代表的な持続放出性材料の説明は、Remington's Pharmaceutical Sciencesに見出すことができる。
【0255】
方法
例えば、敗血症および感染における免疫麻痺、細胞増殖障害(がんなど)、ならびに訓練された免疫の欠陥によって引き起こされる他の疾患および状態を含む、免疫関連疾患および状態に罹患しやすい、またはそれに罹患している対象を処置する方法が本明細書で提供される。
【0256】
実施形態では、本開示は、細胞増殖障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、本開示の化合物(式Iの化合物など)を含む高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子を含む治療有効量のナノ生物学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。実施形態では、本明細書で提供される化合物、組成物は、訓練された免疫を誘導することによってがんを処置するのに有用である。
【0257】
実施形態では、細胞増殖障害は、がんである。実施形態では、がんは、以下のがんのうちの1つまたは複数である:進行性悪性腫瘍、アミロイドーシス、神経芽細胞腫、髄膜腫、血管外皮腫、多発性脳転移、多形性膠芽腫、膠芽腫、脳幹神経膠腫、予後不良悪性脳腫瘍、悪性神経膠腫、再発性悪性神経膠腫、未分化星状細胞腫、未分化乏突起神経膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、デュークスCおよびD結腸直腸がん、切除不能結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、核型急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、悪性胸水中皮腫症候群、腹膜癌、乳頭状漿液性腺癌、婦人科肉腫、軟部組織肉腫、強皮症、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球症、平滑筋肉腫、進行性骨化性線維異形成症、ホルモン不応性前立腺がん、切除ハイリスク軟部組織肉腫、切除不能肝細胞癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無痛性骨髄腫、卵管がん、アンドロゲン非依存性前立腺がん、アンドロゲン依存性ステージIV非転移性前立腺がん、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌、および平滑筋腫。実施形態では、がんは、膀胱がん、血管がん、骨がん、脳のがん、乳がん、子宮頸がん、胸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、眼のがん、頭部がん、腎臓がん、肝臓がん、リンパ節がん、肺がん、口腔がん、頸部がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、咽頭がん、甲状腺がん、尿路上皮がん、および子宮がんからなる群から選択される。実施形態では、がんは、乳がん、前立腺がん、黒色腫、結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、および神経膠芽腫からなる群から選択される。実施形態では、がんは転移性である。実施形態では、がんは、化学療法または放射線に対して難治性または抵抗性であり、特にサリドマイドに対して難治性である。
【0258】
実施形態では、がんは、膀胱がん、血管がん、骨がん、脳のがん、乳がん、子宮頸がん、胸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、眼のがん、頭部がん、腎臓がん、肝臓がん、リンパ節がん、肺がん、口腔がん、頸部がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、咽頭がん、甲状腺がん、尿路上皮がん、および子宮がんからなる群から選択される。
【0259】
実施形態では、がんは、乳がん、前立腺がん、黒色腫、結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、および神経膠芽腫からなる群から選択される。
【0260】
実施形態では、本開示は、敗血症を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、本開示の治療有効量のナノ生物学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。実施形態では、患者は、肺、腹部、腎臓、または血流の細菌、ウイルスまたは真菌感染に関連する敗血症を有する。
【0261】
本開示の化合物および本明細書に開示されるそれらの担体は、免疫応答を増強するために使用することができる。したがって、免疫応答を誘導する方法であって、免疫原性組成物を対象に投与することを含み、組成物は、(i)少なくとも1つの抗原および(ii)本明細書に開示される化合物を、任意選択でHDL由来ナノ粒子またはリポソームなどのナノ粒子担体中に含む、方法が、本明細書に開示される。
【0262】
抗原は、典型的には病原体由来であるが、がんを有する対象由来のネオ抗原も使用することができる。例示的な病原体抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫、または酵母に由来し得る。態様では、抗原は病原体から分泌されたものであってもよい;例えば、外毒素または内毒素であってもよい。
【0263】
ウイルスの例としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、チクングニア、デング、インフルエンザ、エボラ、エプスタイン・バール、ハンタ、肝炎(例えば、A型、B型、C型、D型、E型肝炎)、CMV、HPV(例えば、HPV1-18の1つまたは複数)、コロナウイルス(例えば、SARS、MERS、COVID-19)、ポリオ、狂犬病、ジカが挙げられる。細菌の例としては、コレラ菌(cholerae)、大腸菌(E.coli)、サルモネラ菌種、淋菌(N. gonorrheae)、髄膜炎菌(N. meningitidis)、化膿性連鎖球菌、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ブルセラ・ボルツス(Brucella bortus)、およびリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)が挙げられる。
【0264】
抗原は、例えば、グリコシル化ペプチドを含むポリペプチド、または炭水化物であり得る。態様では、免疫原性組成物は、抗原、典型的には核酸から転写および/または翻訳されるポリペプチドをコードする核酸を含み得る。核酸は、DNAであってもRNAであってもよく、またはDNAもしくはRNAの誘導体であってもよい。一般的なRNA誘導体は、安定性および/または発現を強化するための分子への共有結合修飾を含む。態様では、ポリペプチドをコードする核酸は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどのプラスミドまたはウイルスベクター内にあってもよい。
【0265】
態様では、投与は予防的であってもよい;例えば、病原体にさらされる前に対象をワクチン接種することであってもよい。他の態様では、投与は処置であってもよい;例えば、がんに罹患している対象においてネオ抗原を保有する腫瘍に対する免疫応答を誘導することであってもよい。実施形態では、ナノ生物学的組成物を、骨髄、血液および/または脾臓中の骨髄細胞、骨髄前駆細胞、および造血幹細胞に薬物の蓄積を生成するために、2回以上の用量を含む処置レジメンで患者に投与する。
【0266】
実施形態では、ナノ生物学的組成物は、静脈内または動脈内に投与される。
【0267】
注射用量レベルは、すべて約1~約120時間、特に24~96時間で、約0.1mg/kg/時間~少なくとも10mg/kg/時間の範囲である。適切な定常状態レベルを達成するために、約0.1mg/kg~約10mg/kg以上の事前負荷ボーラスを投与することもできる。最大総用量は、体重40~80kgのヒト患者の場合、約2g/日を超えることはないと予想される。
【0268】
経口用量レベルは、本発明の化合物の約0.01~約20mg/kgの範囲であり、その間のすべての範囲および値を含む。例えば、用量レベルは、約0.1~約10mg/kg、または約1~約5mg/kgの範囲である。
【0269】
経皮用量は、一般に、注射用量を使用して達成される血中レベルと同等またはそれよりも低い血中レベルを提供するように選択される。粘膜部位に好適な投与方式も本明細書で想定されており、限定するものではないが、肛門内スワブ、浣腸、経鼻スプレー、および肺粘膜に送達するためのエアロゾル化または気化化合物および/または組成物が含まれる。当業者は、疾患または状態によって最も深刻な影響を受ける、疾患または状態を有する患者の器官または組織部位を含む、様々なパラメータに基づいて適切な送達モデルを選択するであろう。
【0270】
本発明の化合物は、単独の活性薬剤として投与することができ、または、同一もしくは類似の治療活性を示す他の化合物を含む1つもしくは複数の追加の薬剤と組み合わせて投与することができ、そのような組合せ投与が安全かつ有効であると判断されている。実施形態では、追加の薬剤はチェックポイントタンパク質の阻害剤である。実施形態では、本明細書で提供される方法は、併用療法として抗がん薬をナノ生物学的組成物と同時投与することをさらに含む。
【0271】
本明細書に記載の化合物または組成物は、キットで提供することができる。いくつかの実施形態では、キットは、(a)本明細書に記載の化合物、または本明細書に記載の化合物を含む組成物(この場合、例えば、化合物は本明細書に記載のNOD2修飾薬であり得る)、および任意選択で(b)情報資料を含む。情報資料は、本明細書に記載の方法および/または本明細書に記載の方法のための本明細書に記載の化合物もしくは組成物の使用に関連する、説明、指示、マーケティングまたは他の資料であり得る。実施形態では、情報資料は、化合物の生成に関する情報を含むことができる。実施形態では、情報資料は、化合物を投与する方法に関する。実施形態では、情報資料は、本明細書に記載の方法を実行するための好適な方式で、例えば、好適な用量、剤形、または投与方式(例えば、本明細書に記載の用量、剤形、または投与方式)で、本明細書に記載の化合物または組成物を投与するための説明書を含むことができる。実施形態では、情報資料は、本明細書に記載の化合物を好適な対象、例えばヒト、例えば本明細書に記載の障害を有する、またはそのリスクのあるヒトに投与するための説明書を含むことができる。
【0272】
キットは、本明細書に記載の化合物または組成物を含有する組成物用の1つまたは複数の容器を含むことができる。実施形態では、キットは、組成物および情報資料用の別個の容器、仕切り板または区画を含有する。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、または注射器に収容することができ、情報資料はプラスチックのスリーブまたはパケットに収容することができる。実施形態では、キットの別個の要素を、単一の分割されていない容器内に収容する。例えば、組成物は、ラベルの形態の情報資料が取り付けられたボトル、バイアル、または注射器に収容する。実施形態では、キットは、複数(例えば、パック)の個々の容器を含み、それぞれの容器は、本明細書に記載の化合物または組成物のうちの1つまたは複数の単位剤形(例えば、本明細書に記載される剤形)を収容する。例えば、キットは、複数の注射器、アンプル、ホイルパケット、またはブリスターパックを含み、それぞれが本明細書に記載の化合物の単一単位用量を含有する。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、湿気の変化または蒸発に対して不透過性)、および/または遮光性であってもよい。
【0273】
本開示のナノ生物学的組成物を製造するためのプロセスも本明細書で提供され、このプロセスは、
a)脂質膜を形成するのに効果的な条件下で、i)本開示の化合物;ii)1つもしくは複数のリン脂質;任意選択で、iii)1つもしくは複数のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、もしくはステロールエステル、またはそれらの組合せを含む疎水性マトリックス;および任意選択でiv)コレステロールを含む脂質膜を形成するステップ;ならびに
b)脂質膜を溶媒に溶解して脂質溶液を形成するステップ;本開示の化合物を含むHDL由来ナノ粒子を形成するのに有効な条件下で、脂質溶液をapoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物と接触させるステップを含む。
【0274】
実施形態では、本明細書に開示される方法に従って調製されるナノ生物学的組成物が、本明細書に提供される。
【実施例
【0275】
本明細書に記載の治療薬剤およびそれを含むナノ粒子は、有機合成の当業者によって既知または市販の出発材料および試薬から調製することができる。
【0276】
材料および方法
すべての化学物質は民間の供給元から購入し、特に指定がない限り、さらに精製することなく使用した。N-メチルモルホリンを再蒸留し、110℃から112℃までの画分を収集した。コレステロールアジドアセテートを、1-アジドオクタデカンと同様に、既知の手順(RSC Adv. 2015, 5, 12094)に従って合成した。乾燥溶媒は、MBRAUN溶媒精製システム(MB-SPS)を使用して取得した。トルエンは、使用前に4Åモレキュラーシーブ上で乾燥させた。アルゴン雰囲気下で行われる反応に使用されるガラス器具は、使用前にヒートガンで乾燥させた。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Merckの60-F254シリカゲルプレートを使用して実行し、254nmのUV光、過マンガン酸塩染色および/またはモリブデン酸セリウム(CeMo)染色によって視覚化した。順相および逆相自動カラムクロマトグラフィーは、Biotage Sfar Silica, Buchi FlashPure ID Silica、またはBuchi FlashPure ID C18カラムを使用するBiotage Isolera OneまたはGrace Reveleris X2フラッシュクロマトグラフィーシステムで実行した。溶出勾配は、カラム容量(CV)で指定する。非安定化THFを、水/THF勾配に使用した。
【0277】
NMRスペクトルは、Bruker 400 MHz Ultrashield分光計(1H NMRの場合は400MHz)で記録した。使用した重水素化溶媒を、それぞれの場合に示す。化学シフト(δ)はppmで表され、溶媒の残留ピークを指す。ピーク多重度はs:一重線;d:二重線;t:三重線;dt:三重線の二重線;ddt:三重線の二重線の二重線;td:二重線の三重線;tt:三重線の三重線;q:四重線;ABq:AB四重線;dq:四重線の二重線;qd:二重線の四重線;sept:七重線;m:多重線;bs:ブロード一重線、と省略される。マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量スペクトルは、マトリックスとして、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)またはtrans-2-[3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-2-プロペニリデン]-マロノニトリル(DCTB)を使用して、PerSeptive Biosystems Voyager DE-PRO分光計で取得した。ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)測定は、Shimadzu AOC-20iオートインジェクターを備えたShimadzu GC-17Aガスクロマトグラフ、Shimadzu GCMS-QP5000ガスクロマトグラフ質量分析計、およびPhenomenex Zebron ZB-35カラム(l=30メートル、ID=0.25mm、膜厚=0.25μm)で行った。水/アセトニトリル勾配を使用した高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC-ESI-MS)実験は、2xLC-20ADポンプ、DGU-20A3デガッサー、SIL-20ACオートサンプラー、SPD-M20A PDA、およびThermoScientific LCQフリートMSを搭載したShimadzuのセットアップで実行した。カラム:Phenomenex Kinetex 5um EVO C18 100Å LC(50×2.1mm)。勾配:水/MeCN(+0.1%ギ酸)5~100%MeCN、0.300mL/分。エレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用して、MS検出用の電荷を生成した。水/THFまたは水/MeOH勾配を使用したHPLC-MSおよびHPLC-ELSD実験は、Shimadzu LCMS-8045を搭載したShimadzu Nexera-iLC-2040C 3D Plus上で実行した。カラム:Alltech Alltima C18(150×3.2mm;5um;no.88383)。勾配:水/THF(+0.1%TFA)または水/MeOH(+0.1%TFA)、0.400mL/分。このHPLCセットアップは、ELSD(蒸発光散乱検出)と組み合わせて使用した。
【0278】
あるいは、HPLC-MS(SIM)およびHPLC-ELSDを、溶出液AからBまでの勾配を使用して、Phenomenex Kinetex5マイクロメートルEVO C18 100A LCカラム(50×2.1mm)上で実行し、A=0.1v/v%ギ酸を含むHO中の20mM NHHCO、およびB=2-プロパノール/MeCN/HO 85:15:5であり、これも20mM NHHCOおよび0.1v/v%ギ酸を含む。
【0279】
略語
HPLC=高速液体クロマトグラフィー;ELSD=蒸発光散乱検出;ESI-MS=エレクトロスプレーイオン化質量分析;SIM=選択されたイオンモード;NMR=核磁気共鳴。
【0280】
【化41】
【0281】
MDP=ムラミルジペプチドムラミル(またはN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン)CAS[53678-77-6]。標準的なペプチド合成に従って調製したか、または商業的供給源から購入した。
【0282】
NHS=N-ヒドロキシスクシンイミド;DiCまたはDIC=N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド;EDC=N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(塩酸塩を使用);PyBOP=(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート);SPPS=固相ペプチド合成。
【0283】
TEA=トリエチルアミン;THF=テトラヒドロフラン;MeOH=メタノール;DMF=ジメチルホルムアミド;FA=ギ酸;TFA=トリフルオロ酢酸。
【0284】
ビルディングブロック
DSPE-アジドアセテート(DSPE-CO-CH-N
【0285】
【化42】
(2R)-3-(((2-アミノエトキシ)(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)プロパン-1,2-ジステアレート(260mg、0.35mmol)、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル2-アジドアセテート(D.J. Vugts et al., Bioconjugate Chem. 2011, 22, 2072-2081によって調製済み;87mg、0.35mmol、1当量)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(184μL、1.1mmol、3当量)をクロロホルム(2mL)中で合わせた。混合物を50℃で1時間撹拌し、その間に白色の懸濁液が透明になった。クロロホルム(200mL)を加え、有機層を1M HCl(100mL)で2回穏やかに洗浄した。MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空中で溶媒を除去した後、化合物を、クロロホルム中5%~40%MeOHの溶出勾配を使用するカラムクロマトグラフィー(フラッシュSiO)で精製した。これにより、純粋なDSPE-アジドアセテート(244mg、0.29mmol、84%)を、白色固体として得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3/CD3OD 9:1): δ = 5.23 (dt, J = 9.0, 4.6 Hz, 1H), 4.35 (dd, J = 12.0, 3.7 Hz, 1H), 4.22-3.99 (m, 5H), 3.95 (s, 2H), 3.53 (t, J = 5.1 Hz, 2H), 2.33 (q, J = 7.6 Hz, 4H), 1.61 (td, J = 7.4, 4.2 Hz, 4H), 1.48-1.16 (m, 56H), 0.88 (t, J = 6.7 Hz, 6H). 13C-NMR (101 MHz, CDCl3): δ = 173.7, 173.4, 168.3, 69.7, 69.6, 66.1, 66.0, 65.2, 62.1, 52.5, 40.01, 39.95, 34.3, 34.2, 34.1, 32.1, 29.9, 29.80, 29.7, 29.62, 29.59, 29.50, 29.47, 29.46, 29.4, 29.30, 29.26, 25.00, 24.97, 24.9, 22.8, 14.2. 31P-NMR (162 MHz, CDCl3): δ = -0.48. MALDI-TOF MS: m/z C43H83N4O9Pの計算値830.59; 実測値 [M+Na]+ 853.62, [M-H+2Na]+ 875.58.
【0286】
MDP-プロパルギル
【0287】
【化43】
50mLの丸底フラスコに、MDP(0.113g、0.23mmol、1.00当量)を充填した。この材料を乾燥DMF(約1.5mL、0.15M)に溶解し、フラスコをアルゴンでパージした。
【0288】
EDC.HCl(0.066g、0.34mmol、1.50当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.050g、0.068mL、0.39mmol、1.70当量)および4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(0.0028g、0.023mmol、0.10当量)を加え、得られた透明な溶液を室温で5分間撹拌した。次に、プロパ-2-イン-1-アミン(0.018g、0.021mL、0.32mmol、1.40当量)をシリンジで加えた。撹拌を室温で続けた。21時間の反応時間後、LC-MS(水/MeOH)により、MDP出発材料が完全に変換されたことを確認した。反応混合物を真空中で濃縮し、粗生成物を黄色のガラスとして得た。この材料を自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);生成物:C18-シリカ1:100;検出:200~400nm)により、水/MeOH90/10~82/18で溶出して2回精製した。純粋な画分を凍結乾燥し、純粋な生成物を白色固体として得た(0.050g、41%)。
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ 5.16 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 4.42 - 4.23 (m, 3H), 3.95 (t, J = 2.3 Hz, 2H), 3.94 - 3.57 (m, 5H), 3.52 - 3.39 (m Hz, 1H), 2.58 (t, J = 2.6 Hz, 1H), 2.33 - 2.26 (m, 2H), 2.25 - 2.13 (m, 1H), 2.00 - 1.85 (m, 4H), 1.45 - 1.33 ppm (m, 6H). 13C NMR (100 MHz, MeOD) δ 175.26, 174.83, 173.89, 173.06, 172.08, 91.01, 79.15, 78.92, 76.68, 71.86, 70.83, 70.21, 63.35, 61.22, 54.13, 52.66, 49.48, 31.54, 28.11, 27.10, 23.85, 21.46, 18.31, 16.21 ppm. HPLC-MS (水/MeCN): t (生成物) = 0.76および1.02分. 実測値: m/z = 512.08 [M-H2O+H]+; 552.33 [M+Na]+(陽モード); 325.17 [M-ムラミル]- (陰モード).
【0289】
MDP(Bn)
【0290】
【化44】
MDP(Bn)は、ガラスフリットフィルター底部を備えた100mLのガラス反応容器内で標準的なSPPS法を使用して合成した。ガラスフリットフィルターに通して一定のアルゴン流を適用することによって反応混合物の十分な撹拌を確保し、一方で過剰な試薬および洗浄溶液を真空濾過によって除去した。粗MDP(Bn)を自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);生成物:C18-シリカ1:200;検出:200~400nm)により、水/MeCN+0.1%ギ酸90/10~82/18で溶出して2回精製した。純粋な画分を凍結乾燥し、純粋な生成物を綿毛状の白色材料として得た(0.309g、67%)。
1H NMR (400 MHz, DMF-d7) δ 8.18 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.15 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.75 (d, J = 6.5 Hz, 1H), 7.53 - 7.28 (m, 6H), 7.11 - 7.03 (m, 1H), 4.86 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 4.76 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 4.72 - 4.56 (m, 1H), 4.51 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 4.47 - 4.32 (m, 3H), 4.01 (ddd, J = 10.7, 8.4, 3.5 Hz, 1H), 3.83 (dd, J = 11.6, 2.2 Hz, 1H), 3.78 - 3.61 (m, 3H), 3.60 - 3.40 (m, 1H), 2.39 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.24 - 2.12 (m, 1H), 1.97 - 1.83 (m, 4H), 1.40 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.34 ppm (d, J = 6.7 Hz, 3H). 13C NMR (100 MHz, DMF-d7) δ 174.30, 173.74, 173.60, 172.82, 170.19, 138.47, 128.58, 127.93, 127.79, 97.05, 80.16, 77.36, 73.94, 70.66, 68.61, 61.76, 53.64, 52.59, 49.41, 35.63, 30.57, 30.47, 27.78, 22.65, 19.05, 18.04 ppm. HPLC-MS (水/MeCN): t(生成物) = 3.11分. 実測値: m/z = 583.08 [M+H]+.
【0291】
MDP(Bn)-プロパルギル
【0292】
【化45】
アルゴン雰囲気下で、5mLの丸底フラスコにMDP(Bn)(0.110g、0.19mmol、1.00当量)を充填した。この材料を乾燥DMF(0.5mL)に溶解した。PyBOP(0.127g、0.25mmol、1.30当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.049g、0.066mL、0.38mmol、2.00当量)を加えると、無色透明の溶液が得られた。混合物を室温で5分間撹拌した。次に、プロパ-2-イン-1-アミン(0.021g、0.024mL、0.38mmol、2.00当量)を加え、得られた淡黄色混合物を室温で撹拌した。2時間の反応時間後、反応混合物を真空中で濃縮し、粗生成物をベージュ色の粘着性固体として得た。この材料を自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);生成物:C18-シリカ1:100;検出:200~400nm)により、水/MeCN90/10~80/20で溶出して精製した。純粋な画分を凍結乾燥し、純粋な生成物を白色固体として得た(0.096g、82%)。
1H NMR (400 MHz, DMF-d7) δ 8.25 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 8.20 - 8.15 (m, 2H), 7.75 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.51 - 7.28 (m, 6H), 7.08 - 7.03 (m, 1H), 5.47 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 4.86 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 4.76 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 4.63 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 4.51 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.47 - 4.27 (m, 3H), 4.05 - 3.95 (m, 3H), 3.83 (ddd, J = 11.5, 5.7, 2.2 Hz, 1H), 3.75 - 3.61 (m, 3H), 3.54 - 3.46 (m, 1H), 3.04 (t, J = 2.5 Hz, 1H), 2.32 - 2.26 (m, 2H), 2.21 - 2.11 (m, 1H), 1.95 - 1.83 (m, 4H), 1.39 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.34 ppm (d, J = 6.8 Hz, 3H). 13C NMR (100 MHz, DMF-d7) δ 173.79, 173.59, 172.74, 171.93, 170.19, 138.47, 128.58, 127.93, 127.80, 97.05, 81.35, 80.16, 77.36, 73.94, 72.14, 70.63, 68.62, 61.76, 53.65, 52.94, 49.38, 35.63, 32.21, 30.47, 28.31, 28.25, 22.66, 19.01, 18.06 ppm. HPLC-MS (水/MeCN): t (生成物) = 3.35分. 実測値: m/z = 620.17 [M+H]+.
【0293】
樹脂上MTP-b
【0294】
【化46】
樹脂上MTP-bは、ガラスフリットフィルター底部を備えた100mLのガラス反応容器内で標準的なSPPS法を使用して合成した。ガラスフリットフィルターに通して一定のアルゴン流を適用することによって反応混合物の十分な撹拌を確保し、一方で過剰な試薬および洗浄溶液を真空濾過によって除去した。カップリング後の最後の洗浄を行った後、樹脂を再度DCM(2×20mL)で洗浄し、アルゴン流中で乾燥させた。材料は-20℃で保存した。TFA/TIPS/水 95/2.5/2.5(0.1mL、10分)を使用して試料を樹脂から切断し、HPLC-MS(水/MeCN)でチェックした。HPLC-MS(水/MeCN):t(生成物)=3.65分。実測値:m/z=874.42[M+H](正モード)。m/z=918.08[M+HCOO](負モード)。
【0295】
MTP-b-N3
【0296】
【化47】
PEフリットを備えた20mLのPEシリンジに樹脂上MTP-b(429mg、およそ0.15mmolのMTP-b)を充填し、樹脂をDMF(12mL)中で30分間膨潤させた。樹脂を、DMF(12mL)中の2%ヒドラジン水和物溶液で15分間2回処理した。濾過後、樹脂をDMF(4×12mL)で1分間洗浄した。DMF(12mL)中のCuSO・5HO(0.6mg、2.4μmol、1.5mol%)、イミダゾール-1-スルホニルアジドHCl塩(170mg、0.77mmol、5当量)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.34mL、1.9mmol、12当量)の溶液を樹脂に加え、ビーズを室温で24時間撹拌した(わずかな過圧を時々解放した)。濾過後、樹脂をDMF(5×12mL)で1分間洗浄し、ジクロロメタン(4×10mL)で1分間洗浄した。次いで、樹脂をTFA/TIPS/HO 95:2.5:2.5(4mL)中で2時間、切断に供した。濾過後、樹脂をTFA(4mL)で5分間洗浄した。合わせたTFA濾液を真空中で濃縮した(TFAエステルの形成を避けるために温度をできるだけ低く保った)。HO中の5%~60%MeCNの溶出勾配(両方とも0.1%TFAを含む)を使用する自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);検出:λ=200nm)によって、不純な化合物を得た。これを、HO中の26%~35%MeCNの溶出勾配(両方とも0.1%TFAを含む)を使用するRP-HPLCでさらに精製し、凍結乾燥後に白色のふわふわした固体として純粋な生成物(37.5mg、51μmol、34%)を得た。1H-NMR (400 MHz, DMF-d7/D2O 9:1): δ = 8.45 (t, J = 9.1 Hz, 2H), 8.26 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.99 (d, J = 6.5 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 2.8 Hz, 2H), 7.64-7.45 (m, 5H), 7.31 (d, J = 17.2 Hz, 2H), 5.82 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.03 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 4.93 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.68 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.63-4.46 (m, 4H), 4.19 (dd, J = 10.7, 3.6 Hz, 1H), 4.00 (dd, J = 6.8, 6.3 Hz, 1H), 3.92-3.79 (m, 3H), 3.66 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 3.52 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.53 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.37 (dtd, J = 16.5, 7.9, 4.3 Hz, 1H), 2.10 (s, 3H), 2.09-1.93 (m, 2H), 1.88-1.55 (m, 5H), 1.58 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 1.52 (d, J = 6.7 Hz, 3H). 13C-NMR (100 MHz, DMF-d7/D2O 9:1): δ = 174.9, 174.24, 174.17, 174.00, 173.93, 173.14, 173.06, 172.9, 172.8, 170.90, 170.8, 138.2, 128.6, 127.9, 127.8, 96.8, 80.0, 77.3, 73.7, 70.3, 68.6, 61.5, 53.6, 53.5, 53.2, 53.13, 53.10, 52.7, 52.6, 51.2, 49.4, 49.3, 32.1, 31.7, 28.5, 28.2, 23.2, 22.53, 22.48, 18.9, 17.80, 17.76. ESI-MS: m/z C32H49N9O11の計算値735.36; 実測値 [M+H]+ 736.25, [M+Na]+758.42.
【0297】
DSG4-ニトロフェニルカーボネート
【0298】
【化48】
25mLの丸底フラスコに、クロロホルム(6.5mL、約0.15M)中の市販の[(2S)-3-ヒドロキシ-2-オクタデカノイルオキシプロピル]オクタデカノエート(0.601g、0.96mmol、1.00当量)の溶液を充填した。ピリジン(0.122g、0.125mL、1.54mmol、1.60当量)を加え、得られた透明な溶液を氷水で冷却した。次に、固体の4-ニトロフェニルクロロホルメート(0.252g、1.25mmol、1.30当量)を少しずつ加えた。淡黄色の反応混合物を室温で一晩撹拌した。アルコールが完全に変換されたことを、H NMR (CDCl)によって確認した。続いて、反応混合物をMeOH(100mL)中で沈殿させ、ガラスフィルターで濾過することにより収集した。材料をMeOH(合計30mL)およびEtO(合計10mL)で洗浄し、30℃の真空オーブン内で乾燥させた。生成物(0.713g、94%)を、白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.29 (d, J = 9.1 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 9.1 Hz, 2H), 5.38 (p, J = 5.2 Hz, 1H), 4.50 (dd, J = 11.7, 3.9 Hz, 1H), 4.41 - 4.32 (m, 2H), 4.22 (dd, J = 12.0, 5.6 Hz, 1H), 2.35 (dt, J = 9.8, 7.5 Hz, 4H), 1.68 - 1.58 (m, 4H), 1.37 - 1.17 (m, 56H), 0.88 ppm (t, J = 6.7 Hz, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 173.24, 172.92, 155.35, 152.29, 145.56, 125.36, 121.76, 68.33, 66.97, 61.63, 34.16, 34.03, 31.93, 29.71, 29.68, 29.64, 29.49, 29.37, 29.29, 29.13, 29.07, 24.87, 22.70,14.12 ppm.
【0299】
2,3,5,6-テトラフルオロフェニルステアレート
【0300】
【化49】
トリエチルアミン(2.8mL、5当量)を、DCM(10mL)中の塩化ステアロイル(1.26g、4.2mmol)およびテトラフルオロフェノール(0.72g、1.04当量)の溶液にゆっくりと加えると、直ちに白色沈殿が形成された。不均一な反応混合物をさらに2時間撹拌し、25mLのDCMで希釈し、水(50mL)、0.1M HCl(2×50mL)で抽出し、MgSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。得られた固体を50mLのジエチルエーテルに再溶解し、1M NaHCO(50mL)、0.1M HCl(50mL)、水(50mL)およびブライン(2×50mL)で再度抽出した。有機相をMgSO4(少量の活性炭を添加)で乾燥させ、蒸発乾固させた。得られた粗材料をクロロホルムに再溶解し、シリカプラグ上にフラッシュし、再度蒸発乾固させて、1.2g(67%)の所望の化合物を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.98 (tt, J = 9.9, 7.0 Hz, 1H), 2.66 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.78 (p, J = 7.4 Hz, 2H), 1.26 (s, 28H), 0.88 (t, J = 6.7 Hz, 3H) ppm. 19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ -139.21 (ddd, J = 24.0, 11.8, 7.8 Hz), -153.03 - -153.20 (m). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 169.56, 147.23 (m), 144.74 (m), 141.94, 141.86 (m), 139.41 (m), 129.78 (m), 103.01 (t), 33.42, 31.92, 29.69, 29.65, 29.61, 29.54, 29.39, 29.36, 29.14, 28.85, 24.78, 22.68, 14.09 ppm.
【0301】
合成アプローチ
第1のアプローチ。本発明の化合物は、出発反応物であるMDPまたはMDP(Bn)を使用することによって調製することができる(上記参照)。これらの分子は、グルタミン酸(Glu)ビルディングブロックに由来する官能性カルボン酸基を有する。COOH基により、親油性基を含むアミン官能性反応物へのコンジュゲーションが可能になる。このような親油性基は、例えばC18部分、例えばステアリン酸、オレイン酸、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアミンもしくはオレイルアミンに由来するもの;、またはステロール部分、例えばコレステロールに由来するものであり得る。飽和直鎖状親油性部分が好ましく、コレステロール由来の部分も好ましい。特に有用なビルディングブロックは、DSPE([1069-79-0])またはDOPE([4004-05-1])などのPEリン脂質であり;これらの分子はすでにアミン官能性である。混合アシルPE-リン脂質も有用であり得る(例えば、16:0~18:1PE、または18:0~18:1PE、または18:0~16:0PE)。別の有用なビルディングブロックは、コレステロールである。さらに他の有用なビルディングブロックは、ジグリセリド、例として1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロール(18:0DG[51063-97-9])または1-2-ジオレオイル-sn-グリセロール(18:1DG[24529-88-2])である。混合アシルジグリセリドも、使用することができる(例えば、16:0~18:1DG、または18:0~18:1DG、または18:0~16:0DG)。PE-リン脂質およびジグリセリドは、2つの親油性鎖を有しており、このようなビルディングブロックは、このアプローチで好ましくは使用される。
この第1のアプローチを、実施例10~19に示す。
【0302】
第2のアプローチ。特に好適な代替モジュラーアプローチでは、銅触媒によるアジド-アルキン環化付加(「クリック反応」)を使用して、MDP(またはMTP)反応物を親油性反応物に接続させる。ここでは、アジド(-N)またはアルキン(-C≡C-H)官能基を有するMDP、MDP(Bn)、MTPまたはMTP(Bn)ビルディングブロックを使用する。このような分子の非限定的な例は、MDP-プロパルギル、MDP(Bn)-プロパルギルまたはMTP-b-Nである(上記参照)。銅-触媒クリック反応では、これらの分子は、親油性基を含むアルキン官能性分子またはアジド官能性分子と結合することができる。クリック反応を使用すると、モジュール式で簡単に調製することができ、安定なアジドまたはアルキン官能性中間体が標的となる。これにより、中間体の簡単な分離および保存が可能になる。さらに、銅-触媒クリック環化付加反応は、水性環境(例えば、THF/水もしくはtBuOH/水など)または水性二相液体/液体溶媒の組合せ(例えば、ジクロロメタン/水など)中で実行することができ、最も良好に実行することができる。これらの反応媒体では、親水性MDP(またはMTP)反応物(Bn基の有無にかかわらず)と親油性反応物の両方が好都合に溶解し、コンジュゲーションの容易さおよび反応収率が大幅に向上する。このクリックアプローチでは、アジドまたはアルキン反応物に含まれる親油性基は、C14、C16、またはC18部分、例として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ミリストレイン酸、ステアリルアルコールもしくはアミン、パルミチルアルコールもしくはアミン、ミリスチルアルコールもしくはアミン、オレイルアルコールもしくはアミン、パルミトレイルアルコールもしくはアミン、ミリストレイルアルコールもしくはアミン;またはステロール部分、例えばコレステロールに由来するもの、であり得る。飽和直鎖状親油性部分が好ましく、コレステロール由来の部分も好ましい。特に有用なビルディングブロックは、C14、C16および/もしくはC18部分を含むPE-リン脂質、混合アシルPE-リン脂質、ジグリセリド(DG)または混合アシルジグリセリド、およびコレステロールである。2つの親油性鎖を含むか、またはコレステリル基を含む親油性アジドまたはアルキン反応物が好ましい。
この第2のアプローチを、実施例1~9に示す。
【0303】
どちらのアプローチも、MDPまたはMDP(Bn)のグルタミン酸単位に結合した追加のアミノ酸単位の導入が可能になることに留意されたい。好適なアミノ酸単位は、L-リジンまたはL-アラニンに由来するものである。追加のアミノ酸単位が接続されると、MDP(ムラミルジペプチド)部分は、Bn基を有する場合または有しない場合のいずれかで、MTP(ムラミルトリペプチド)部分に変換される。実例は、実施例9~10、13~15、および17~18に示されている。
【0304】
[実施例1]
MDP-C18の合成[クリック](1)
【0305】
【化50】
分子量:825ダルトン。CLogP=4.15。
この合成は、Cuクリック型反応の一般条件を示す。
【0306】
5mLバイアルにMDP-プロパルギル(0.011g、0.02mmol、1.00当量)を充填した。これに、L-アスコルビン酸(0.4M水溶液、104μL、41.5μmolのアスコルビン酸、2.00当量)を加えた。得られたわずかに不透明な溶液に、DCM(0.8mL)中の1-アジドオクタデカン(0.012g、0.04mmol、2.00当量)の溶液を加え、続いて硫酸銅(II)五水和物水溶液(0.2M、104μL、20.8μmol Cu、1.00当量)を加えた。次いで、二層反応混合物を室温にて1400rpmで撹拌し、淡黄色/緑色のエマルジョンを得た。16時間後、反応混合物をN2流中で濃縮し、粗生成物を薄茶色のスラッジとして得た。この材料をクロロホルム/MeOH4:1に溶解し、セライトに含浸させた(90mg、充填比約1:5)。自動カラムクロマトグラフィー(生成物:シリカ1:500;検出:200~400nm)により、クロロホルム/MeOH/水90/9/1~70/27/3で溶出して精製を行い、生成物(0.005g、31%)を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ 7.64 - 7.61 (m, 1H) , 5.33 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 4.58 - 4.21 (m, 7H), 3.85 - 3.46 (m, 6H), 2.35 - 2.26 (m, 2H), 2.23 - 2.08 (m, 1H), 2.06 - 1.84 (m, 6H), 1.42 - 1.36 (m, 6H), 1.35 - 1.22 (m, 30H), 0.88 ppm (t, J = 6.8 Hz, 3H). 13C NMR (100 MHz, MeOD) δ 175.75, 174.66, 174.04, 173.58, 171.91, 144.63, 122.53, 91.00, 76.01, 71.84, 71.18, 67.16, 61.98, 54.15, 52.98, 50.67, 34.78, 32.20, 32.03, 30.34, 29.80, 29.76, 29.72, 29.65, 29.52, 29.46, 29.12, 27.49, 26.60, 22.83, 22.79, 22.69, 19.34, 16.95, 16.57, 14.15 ppm. HPLC-MS (水/MeCN): t (生成物) = 5.64分. 実測値: m/z = 825.33 [M+H]+.
【0307】
[実施例2]
MDP-DSPEの合成[クリック](2)
【0308】
【化51】
分子量:1361ダルトン。CLogP=11.56(非帯電)および5.78(負に帯電)。
【0309】
MDP-プロパルギル(24.4mg、46μmol)を、0.4Mアスコルビン酸(0.24mL、2当量)に溶解し、ジクロロメタン(0.5mL)中のDSPE-アジドアセテート(38.5mg、46μmol、1当量)の溶液を加えた。激しく撹拌しながら、0.2M CuSO・5HO(0.24mL、1当量)を加え、二相系を室温で19時間激しく撹拌した。溶媒を真空中で除去し、緑色を帯びた固体を、クロロホルム中(45%MeOH+5%HO)で終了するクロロホルム中20%~50%MeOHの溶出勾配を使用するカラムクロマトグラフィー(フラッシュSiO)に供した(かなりの量の化合物は、HOの添加後にのみ溶出される)。これにより不純な生成物が得られ、これを自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);生成物:C18-シリカ1:200;検出:λ=210nm)で、HO中THF25%~70%の溶出勾配を使用してさらに精製した。これにより、凍結乾燥後に純粋な生成物(19.5mg、14μmol、31%)を、白色のふわふわした固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3+MeOD) δ 7.93 (s, 1H), 5.29 - 5.22 (m, 2H), 5.16 (s, 2H), 4.51 - 4.41 (m, 4H), 4.38 - 4.25 (m, 2H), 4.20 (dd, J = 12.1, 6.8 Hz, 1H), 4.05 - 3.89 (m, 4H), 3.88 - 3.77 (m, 2H), 3.77 - 3.63 (m, 6H), 3.55 - 3.42 (m, 3H), 2.34 (q, J = 7.3 Hz, 6H), 2.22 (dddd, J = 18.4, 13.5, 8.4, 5.7 Hz, 1H), 1.98 (d, J = 5.7 Hz, 4H), 1.93 (s, 0H), 1.62 (q, J = 6.4 Hz, 5H), 1.46 - 1.36 (m, 6H), 1.28 (s, 61H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 6H). 4.9および4.6ppmの間のピークはH2Oピークとの重なりのため見えない. MALDI-TOF MS: m/z C65H118N9O19Pの計算値1359.83; 実測値 [M+Na]+ 1382.83, [M-H+2Na]+ 1404.84. HPLC-MS (H2O/THF, 勾配: 65-95% THF): t (生成物) = 2.33分; m/z = 1360.80 [M+H]+ (SIMモード).
【0310】
[実施例3]
MDP-cholの合成[クリック](3)
【0311】
【化52】
分子量:999ダルトン。CLogP=5.04。
【0312】
MDP-プロパルギル(25mg、47μmol)を、0.4Mアスコルビン酸(0.24mL、2当量)に溶解し、ジクロロメタン(0.5mL)中のコレステロールアジドアセテート(26.6mg、57μmol、1.2当量)を加えた。激しく撹拌しながら、0.2M CuSO・5HO(0.24mL、1当量)を加え、二相系を室温で17時間激しく撹拌した。H2O/ブライン1:1(50mL)を加え、青みを帯びた水層をクロロホルム/MeOH2:1(5×20mL)で抽出した。合わせた有機層を、NaSOを使用して乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去した。得られた無色の固体を、クロロホルム中6%~20%のMeOHの溶出勾配を使用するカラムクロマトグラフィー(フラッシュSiO)を繰り返して精製した。これにより、THF/HOから凍結乾燥した後、純粋な生成物(24.4mg、24μmol、52%)を、白色のふわふわした固体として得た。1H-NMR (400 MHz, THF-d8/D2O 95:5): δ = 7.81 (s, 1H), 5.28 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 5.16 (s, 2H), 5.10 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 4.59-4.46 (m, 1H), 4.46-4.16 (m, 5H), 3.75-3.17 (m, 6H), 2.26 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 2.20 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.12-1.99 (m, 1H), 1.98-1.69 (m, 8H), 1.58-1.33 (m, 5H), 1.32-1.23 (m, 7H), 1.18 (s, 5H), 1.13-0.97 (m, 4H), 0.94 (s, 3H), 0.84 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.77 (dd, J = 6.6, 1.4 Hz, 8H), 0.61 (s, 3H). 13C-NMR (100 MHz, THF-d8/D2O 95:5): δ = 175.2, 174.9, 173.7, 173.4, 171.9, 166.6, 165.1, 139.6, 122.4, 91.0, 78.7, 76.7, 75.4, 72.0, 70.2, 61.1, 56.8, 56.2, 54.0, 52.6, 50.5, 50.2, 49.5, 42.2, 39.8, 39.4, 37.7, 36.8, 36.4, 36.1, 35.8, 34.4, 31.9, 31.8, 29.6, 28.1, 27.9, 27.5, 27.4, 22.5, 22.2, 22.1, 21.9, 20.9, 18.8, 18.7, 18.2, 16.8, 13.5, 11.3. MALDI-TOF MS: m/z C51H82N8O12の計算値998.60; 実測値 [M+Na]+ 1021.58. HPLC-MS (H2O/THF, 勾配: 65-95% THF): t (生成物) = 2.20分; m/z = 999.60 [M+H]+(SIMモード).留意点:THF-d8/DO 95:5は、NMR特性評価に最適な溶媒の組合せであることが判明した。それにもかかわらず、スペクトルには重複があり、非常に複雑である。したがって、統合は暫定的なものである。
【0313】
[実施例4]
MDP-DSPE2の合成[クリック](4)
【0314】
【化53】
分子量:2192ダルトン。
【0315】
[実施例5]
MDP-Chol2[クリック]
【0316】
【化54】
分子量:1669ダルトン。CLogP=15.31。
【0317】
[実施例6]
MDP-DSG[クリック](6)
【0318】
【化55】
分子量:1238ダルトン。CLogP=12.45。
【0319】
[実施例7]
MDP(Bn)-DSPE[クリック](7)
【0320】
【化56】
分子量:1451ダルトン。CLogP=13.85(非帯電)および8.06(負に帯電)。
【0321】
Cu-クリック反応の一般条件に従って、MDP(Bn)-プロパルギル(0.028g、0.045mmol、1.00当量)およびDSPE-アジドアセテート(0.039g、0.047mmol、1.05当量)を一晩反応させた。反応中に、一部の材料が沈殿し、白色の懸濁液/エマルジョンが生じた。その後、反応混合物をクロロホルム/MeOH1:1で希釈した。得られた透明な溶液をセライトに含浸させた(約200mg、充填率1:3)。含浸された粗生成物を最初に自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);生成物:C18-シリカ1:200;検出:ELSDおよびUV200~400nm)により、水/THF60/40~20/80で溶出して精製した。合わせた生成物画分を凍結乾燥し、次に、自動カラムクロマトグラフィー(順相(シリカ);生成物:シリカ1:300;検出:ELSD)により、クロロホルム/MeOH/水90/9/1~75/22.5/2.5で溶出して、再度精製した。純粋な画分を真空中で濃縮し、水/THF70/30に溶解し、凍結乾燥した。このようにして、白色のふわふわした固体として純粋な生成物(0.027g、41%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3+MeOD 1:1) δ 7.99 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.90 (s, 1H), 7.43 - 7.23 (m, 5H), 5.24 (m, 1H), 5.13 (s, 2H), 4.93 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 4.73 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 4.51 (d, J = 12.0 Hz, 2H), 4.48 - 4.40 (m, 2H), 4.37 - 4.15 (m, 3H), 4.05 - 3.89 (m, 5H), 3.86 - 3.73 (m, 2H), 3.71 - 3.53 (m, 3H), 3.49 - 3.42 (m, 2H), 2.37 - 2.28 (m, 6H), 2.25 - 2.11 (m, 1H), 2.05 - 1.89 (m, 4H), 1.67 - 1.56 (m, 4H), 1.52 - 1.19 (m, 72H), 0.89 ppm (t, J = 6.8 Hz, 6H). 13C NMR (100 MHz, MeOD) δ 174.97, 174.73, 173.93, 173.66, 173.57, 173.46, 171.92, 166.34, 137.16, 128.28, 128.09, 127.84, 124.43, 96.38, 79.09, 76.52, 72.55, 70.40, 69.75, 69.28, 63.66, 63.44, 62.56, 61.14, 53.18, 52.60, 52.13, 49.45, 40.52, 34.62, 34.12, 33.96, 31.81, 31.73, 29.57, 29.53, 29.43, 29.41, 29.23, 29.21, 29.03, 29.00, 27.12, 24.82, 24.77, 22.52, 22.20, 18.70, 16.75, 13.69 ppm. MALDI-TOF: m/z C72H124N9O19P + 2Na+-H+の計算値: 1494.85 [M+2Na-H]+; 実測値: 1494.94. HPLC-MS (水/THF, 勾配: 55-95% THF): t (生成物) = 5.09分; m/z = 1450.9 [M+H]+および1472.9 [M+Na]+ (SIMモード).
【0322】
[実施例8]
MDP(Bn)-cholの合成[クリック](8)
【0323】
【化57】
分子量:1089ダルトン。CLogP=6.83。
【0324】
Cu-クリック反応の一般条件に従って、MDP(Bn)-プロパルギル(0.030g、0.048mmol、1.00当量)およびコレステロールアジドアセテート(0.025g、0.053mmol、1.10当量)を一晩反応させ、白色のエマルジョンを得た。次いで、反応混合物を真空中で濃縮し、セライト(150mg)に含浸させた。含浸された粗生成物を自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);生成物:C18-シリカ1:200;検出:200~400nm)により、水/THF70/30~15/85で溶出して精製した。合わせた生成物画分を凍結乾燥し、次に自動カラムクロマトグラフィー(順相(シリカ);生成物:シリカ1:350;検出:ELSD)により、クロロホルム/MeOH 96/4~86/14で溶出して再度精製した。純粋な画分を真空中で濃縮し、純粋な生成物を白色固体として得た(0.028g、53%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3+MeOD 1:1) δ 7.78 (s, 1H), 7.39 - 7.28 (m, 5H), 5.38 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 5.16 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 4.93 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.70 (d, J = 11.8 Hz, 2H), 4.56 - 4.37 (m, 3H), 4.30 (dt, J = 8.9, 4.4 Hz, 1H), 4.27 - 4.17 (m, 2H), 4.02 (dd, J = 10.1, 3.6 Hz, 1H), 3.93 - 3.67 (m, 24H), 3.67 - 3.53 (m, 3H), 3.40 (d, J = 3.2 Hz, 0H), 2.44 - 2.32 (m, 2H), 2.27 (td, J = 7.1, 3.7 Hz, 2H), 2.12 (dtd, J = 14.9, 7.5, 4.3 Hz, 1H), 2.07 - 1.74 (m, 8H), 1.72 - 1.42 (m, 5H), 1.38 (dd, J = 13.0, 7.0 Hz, 7H), 1.34 - 0.94 (m, 13H), 0.92 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 0.87 (dd, J = 6.6, 1.8 Hz, 6H), 0.69 ppm (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3+MeOD 1:1) δ 175.17, 174.60, 173.71, 173.62, 171.76, 166.21, 145.18, 139.13, 137.21, 128.65, 128.37, 128.25, 124.35, 123.47, 96.91, 79.14, 76.83, 76.49, 72.44, 69.79, 61.63, 56.82, 56.28, 53.17, 52.57, 51.14, 50.14, 49.78, 42.45, 39.84, 39.65, 38.01, 36.97, 36.68, 36.32, 35.93, 34.85, 32.02, 31.97, 29.81, 28.34, 28.14, 27.74, 27.58, 24.39, 23.95, 22.87, 22.80, 22.77, 22.61, 21.16, 19.34, 18.98, 18.80, 16.90, 11.94 ppm. MALDI-TOF: m/z C58H88N8O12+Na+の計算値: 1111.64 [M+Na]+; 実測値: 1111.65. HPLC-MS (水/THF, 勾配: 65-95% THF): t (生成物) = 2.79分; m/z = 1089.70 [M+H]+ (SIMモード).
【0325】
[実施例9]
MTP-b-C18[invclick](9)の合成
【0326】
【化58】
分子量:1058ダルトン。CLogP=5.68。
【0327】
MTP-b-N3(26mg、35μmol)およびプロプ-2-イン-1-イルステアレート(11.3mg、35μmol、1当量)を、THF(0.36mL)に懸濁し、0.4Mアスコルビン酸(0.18mL、2当量)を加えて、透明な溶液を得た。プロパ-2-イン-1-イルステアレートを、既知の手順を使用して調製した。激しく撹拌しながら、0.2M CuSO・5HO(0.18mL、1当量)を加え、混合物を室温で激しく撹拌した(最初にゲル化が起こったが、穏やかに加熱すると黄色の溶液が得られた)。1時間後、HPLC-MS(THF/HO)は出発化合物の不存在を示し、不透明な溶液を凍結乾燥した。粗生成物をクロロホルム/MeOH2:1からセライトに吸着させ、クロロホルム中10%~25%MeOHの溶出勾配を使用するカラムクロマトグラフィー(フラッシュSiO)に供した。同様の勾配を使用してカラムクロマトグラフィーを繰り返し、THF/HOから凍結乾燥した後、純粋な生成物(31.5mg、30μmol、84%)を、白色のふわふわした固体として得た。1H-NMR (400 MHz, THF-d8/D2O 4:1): δ = 7.92 (s, 1H), 7.31 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.23 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.15 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 5.04 (s, 2H), 4.74 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 4.63 (d, J = 12.2 Hz, 1H), 4.40 (d, J = 12.2 Hz, 1H), 4.31-4.15 (m, 6H), 3.96 (dd, J = 10.5, 3.6 Hz, 1H), 3.66 (d, J = 3.2 Hz, 2H), 3.59-3.45 (m, 3H), 2.22 (dt, J = 15.3, 7.7 Hz, 4H), 2.09 (tt, J = 12.9, 6.0 Hz, 1H), 1.87-1.70 (m, 6H), 1.64-1.54 (m, 1H), 1.47 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.32 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.28 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.18 (s, 30H), 0.78 (t, J = 6.6 Hz, 3H). 13C-NMR (100 MHz, THF-d8/D2O 4:1): δ = 175.5, 174.9, 174.8, 173.73, 173.66, 173.2, 171.7, 142.3, 137.8, 128.1, 128.0, 127.4, 124.3, 96.6, 80.0, 77.3, 72.8, 69.1, 68.8, 60.9, 57.2, 53.2, 53.1, 52.2, 49.7, 49.5, 33.6, 31.8, 31.5, 30.9, 29.7, 29.54, 29.50, 29.4, 29.24, 29.20, 29.0, 27.7, 22.54, 22.49, 21.9, 18.6, 16.9, 13.5. MALDI-TOF MS: m/z C53H87N9O13の計算値1057.64; 実測値 [M+Na]+ 1080.63, [M+K]+ 1096.65. HPLC-MS (H2O/THF, 勾配: 65-95% THF): t (生成物) = 2.15分; m/z = 1058.60 [M+H]+ (SIMモード).
【0328】
[実施例10]
MTP-b-C18(10)の合成
【0329】
【化59】
分子量:976ダルトン。CLogP=5.31
【0330】
PEフリットを備えた10mLのPEシリンジに、樹脂上MTP-b(137mg、およそ0.0493mmolのMTP-b、1.00当量)を充填した。樹脂を、DMF(5mL)中で30分間膨潤させた。次に、樹脂を、DMF(10mL)中の2%ヒドラジン水和物溶液で15分間2回処理した。ヒドラジン溶液を除去し、樹脂をDMF(4×5mL)で洗浄した。次に、DMF/DCM(1+1mL;約0.075M)中のステアリン酸2,3,5,6-テトラフルオロフェニル(0.064g、0.15mmol、3.00当量)および4-メチルモルホリン(0.030g、0.033mL、0.30mmol、6.00当量)の溶液を加えた。ビーズを室温で一晩撹拌した。その後、上清を除去し、樹脂を、DMF/DCM50/50(4×5mL)およびDCM(2×5mL)で洗浄した。次いで、樹脂をTFA/TIPS/水 95/2.5/2.5(200μL)で1時間処理した。濾液を収集し、樹脂を追加の切断カクテルで洗浄した。合わせた濾液を真空中で濃縮し、粗生成物を白色固体として得た。この材料を、THF/水溶液(95/5)からセライトに含浸させた(200mg、充填比1:4)。含浸された粗生成物を自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);生成物:C18-シリカ1:250;検出:ELSD)により、水/THF50/50~10/90で溶出して精製した。合わせた生成物画分を凍結乾燥し、次に、自動カラムクロマトグラフィー(順相(シリカ);生成物:シリカ1:500;検出:ELSD)により、ジクロロメタン/MeOH90/10~70/30で溶出して、再度精製した。純粋な画分を真空中で濃縮し、生成物を白色固体として得た(0.016g、33%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3+TFA-d3) δ 7.40 - 7.24 (m, 5H), 4.94 - 4.89 (m, 1H), 4.71 - 4.65 (m, 1H), 4.57 - 4.17 (m, 6H), 4.03 - 3.74 (m, 4H), 3.38 (bs, 2H), 2.60 - 2.22 (m, 5H), 2.30 (s, 1H), 2.11 - 1.55 (s, 11H), 1.50 - 1.17 (m, 36H), 0.87 ppm (t, J = 6.6 Hz, 3H). HPLC-MS (水/MeCN): t (生成物) = 5.64分. 実測値: m/z = 976.33 [M+H]+ (陽モード); 1020.25 [M+HCOO]-(陰モード).
【0331】
[実施例11]
MDP-C18の合成(11)
【0332】
【化60】
分子量:744ダルトン。CLogP=4.79。
【0333】
MDP(10mg、20μmol)、オクタデシルアミン(5.2mg、0.95当量)、NHS(2.4mg、1当量)およびEDC-HCl(7.9mg、2当量)を、DMF(0.7mL)中で50℃にて3時間中で撹拌した。続いて、反応混合物を室温まで放冷し、さらに16時間撹拌した。得られた分散液を40℃に加熱して、沈殿した固体をすべて再溶解し、その後、5mLのエーテルで沈殿させた。収集した沈殿物をエーテルでさらに2回洗浄し、乾燥させ、次いで脱塩水に懸濁し、遠心分離によって収集し、脱塩水に再懸濁し、再び遠心分離によって収集した。得られた固体を凍結乾燥してすべての水を除去し、13.8mg(96%)の所望の化合物を白色粉末として得た。1H NMR (400 MHz, DMF-d7) δ 8.31 (d, J = 7.7 Hz, 副異性体), 8.23 (d, J = 8.0 Hz, 主異性体), 8.12 (d, J = 7.9 Hz, 副異性体), 8.09 (d, J = 7.6 Hz, 主異性体), 7.96 (d, J = 6.6 Hz, 副異性体), 7.90 (d, J = 6.5 Hz, 主異性体), 7.77 (m, 1H), 7.47 (m, 1H), 7.10 (m, 副異性体), 7.01 (m, 主異性体), 6.86 (d, J = 6.0 Hz, 副異性体), 6.74 (dd, J = 4.1, 1.2 Hz, 主異性体), 5.44 - 5.29 (m, 1H), 5.16 (t, J = 3.7 Hz, 主異性体), 4.79 (t, J = 6.1 Hz, 副異性体), 4.60 (dd, J = 8.2, 6.0 Hz, 副異性体), 4.57-4.22 (m, 4H), 3.93-3.57 (m, 5H), 3.45 (m, 1H), 3.13 (m, 2H), 2.42-2.07 (m, 3H), 2.00-1.78 (m, 4H), 1.56 - 1.07 (m, 38H), 0.88 (m, 3H) ppm.13C NMR (101 MHz, DMF-d7) δ 174.25, 174.20, 173.93, 173.89, 172.75, 172.56, 172.07, 172.02, 171.76, 170.11, 96.92, 91.66, 82.46, 79.55, 77.39, 77.00, 72.97, 71.30, 70.95, 62.05, 57.49, 54.49, 53.16, 53.03, 49.54, 39.26, 32.55, 32.05, 29.83, 29.49, 28.62, 28.41, 27.18, 22.86, 22.76, 22.73, 19.19, 17.80, 17.62, 13.93 ppm. ESI-MS: m/z 743.50 (計算値), 実測値 744.42 (M+H+), 788.33 (M-FA-).
【0334】
[実施例12]
MDP-DSPEの合成(12)
【0335】
【化61】
分子量:1223ダルトン。CLogP=12.96(非帯電)および7.18(負に帯電)。
【0336】
MDP(14mg、29μmol)、NHS(5.6mg、1.7当量)、およびDIC(7.3mg、2当量)を0.9mLのDMF中で2時間撹拌して、MDPを活性化した。得られた混合物を、TEA(9mg、3.1当量)を含む2.7mLのtert-ブタノール中のDSPE(17mg、0.8当量)の分散液に50℃で加え、その温度で3.5時間撹拌した。得られた混合物を蒸発乾固し、得られた材料をカラムクロマトグラフィー(SiO、CHCl/MeOH/HO、70/30/5、5:4:1および勾配95/5/0~60/40/0)によって繰り返し精製して、水/THFから凍結乾燥した後、所望の化合物6mg(21%)を白色のふわふわした材料として得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3/CD3OD 5:) δ 5.29 (d, 主異性体), 5.24 (m, 1H), 4.54 (d, 副異性体), 4.47 (m, HDOにより不明瞭), 4.41 (dd, HDOにより不明瞭), 4.31 (m, HDOにより不明瞭), 4.19 (dd, 1H), 4.00-3.90 (m, 異性体の混合物), 3.87-3.75 (m, 異性体の混合物), 3.72 (m, 1H), 3.63 (m, 1H), 3.53-3.30 (m, CD3ODにより不明瞭), 2.37-2.26 (m, 5H), 2.25-2.10 (m, 2H), 2.10-1.92 (m, 4H), 1.61 (m, 4H), 1.50-1.15 (br.m, 62H), 0.88 (t, 6H) ppm. 31P-NMR (162 MHz, CDCl3/CD3OD 5:1) δ 0.14 (br.m) ppm. 13C-NMR (101 MHz, CDCl3/CD3OD 5:1) δ 174.63, 174.00, 173.27, 173.08, 172.92, 172.89, 171.34, 90.19, 75.19, 71.09, 70.18, 69.73, 69.65, 63.24, 62.76, 61.86, 60.84, 53.13, 52.04, 48.77, 48.19, 39.71, 33.48, 33.32, 31.29, 31.14, 28.91, 28.87, 28.76, 28.74, 28.57, 28.54, 28.37, 28.34, 26.44, 24.14, 24.10, 21.88, 21.78, 18.35, 15.98, 13.14 ppm. MALDI-MS: m/z 1221.77 (計算値), 実測値 1220.82 (M-H-), 陰モード. HPLC-ELSD (C18, 65-95% THF/H2O): アルファおよびベータ異性体のため単一ピーク+肩.
【0337】
[実施例13]
MTP-b-DSGの合成(13)
【0338】
【化62】
分子量:1361ダルトン。CLogP=15.05。
【0339】
PEフリットを備えた20mLのPEシリンジに、樹脂上MTP-b(0.291g、およそ0.11mmolのMTP-b、1.00当量)を充填した。樹脂を、DMF(5mL)中で30分間膨潤させた。次に、樹脂を、DMF(5mL)中の2%ヒドラジン水和物溶液で15分間2回処理した。ヒドラジン溶液を除去し、樹脂をDMF(4×5mL)で洗浄した。次に、クロロホルム(4mL)中のDSG4-ニトロフェニルカーボネート(0.249g、0.32mmol、3.00当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.081g、0.110mL、0.63mmol、6.00当量)の溶液を加えた。ビーズを室温で一晩撹拌した。その後、明るい黄色の上清を除去し、樹脂をクロロホルム(3×5mL)、MeOH(3×5mL)、および再びクロロホルム(2×5mL)で洗浄した。樹脂をTFA/TIPS/水 95/2.5/2.5(5mL)で45分間処理した。上清を氷冷ジエチルエーテル(100mL)に撹拌しながら注入すると、白色の凝集物がゆっくりと形成された。この切断と沈殿の手順を2回繰り返した。個体を使い捨てPEフィルターで濾過することにより収集し、粗生成物を白色固体として得た。この材料を、クロロホルム/MeOH(1:2)溶液からセライト(250mg、充填比1:2.5)に含浸させた。含浸された粗生成物を自動カラムクロマトグラフィー(逆相(C18);生成物:C18-シリカ1:150;検出:200~400nm)により、水/THF60/40~0/100で溶出して精製した。合わせた生成物画分を凍結乾燥し、次に、自動カラムクロマトグラフィー(順相(シリカ);生成物:シリカ1:250;検出:200~400nm)により、クロロホルム/MeOH95/5~60/40で溶出して再度精製した。純粋な画分を真空中で濃縮し、生成物を白色固体として得た(0.030g、21%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3+MeOD) δ 7.39 - 7.27 (m, 5H), 5.25 (p, J = 5.3 Hz, 1H), 4.89 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 4.73 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 4.50 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 4.42 - 4.31 (m, 2H), 4.31 - 4.19 (m, 4H), 4.15 (dd, J = 11.9, 6.2 Hz, 2H), 4.10 - 3.97 (m, 1H), 3.87 - 3.75 (m, 2H), 3.72 - 3.53 (m, 3H), 3.12 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.37 - 2.27 (m, 6H), 2.26 - 2.13 (m, 1H), 1.93 (s, 3H), 1.92 - 1.74 (m, 2H), 1.71 - 1.56 (m, 6H), 1.56 - 1.47 (m, 2H), 1.43 (d, 7.0 Hz, 3H), 1.40 (d, 7.0 Hz, 3H), 1.36 - 1.19 (s, 56H), 0.89 ppm (t, J = 6.7 Hz, 6H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3+MeOD) δ 175.80, 174.79, 174.30, 173.86, 173.76, 173.44, 173.25, 171.70, 156.58, 137.07, 128.36, 128.14, 127.95, 96.52, 79.36, 76.83, 72.38, 69.48, 69.43, 69.37, 62.50, 62.29, 61.30, 53.52, 53.24, 51.71, 49.46, 40.33, 34.13, 33.97, 31.82, 31.29, 31.08, 29.58, 29.54, 29.52, 29.41, 29.39, 29.25, 29.20, 29.18, 29.09, 29.01, 28.98, 28.16, 24.80, 24.77, 22.88, 22.55, 22.35, 18.61, 16.89, 13.77 ppm. HPLC-MS (水/ THF, 勾配: 55-95% THF): t (生成物) = 6.20分. 実測値: m/z = 1360.9 [M+H]+および1382.9 [M+Na]+ (SIMモード).
【0340】
[実施例14]
MTP(Bn)-a-DPPE(14)の合成
【0341】
【化63】
分子量:1328ダルトン。CLogP=12.88(非帯電)および7.09(負帯電)
【0342】
ビルディングブロック(CBz)-Ala-DPPE
N-CBz保護L-アラニン(390mg、1.7mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(222mg、1.89mmol、1.1当量)をクロロホルム(6mL)に溶解し、ほぼ透明な溶液を得た。N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC;0.32mL、2.0mmol、1.2当量)を加え、混合物を室温で40分間撹拌した(1分後、溶液は濁り、25分後、1H-NMRは完全な変換を示した)。次に、この溶液を、クロロホルム(12mL;DPPEを還流下で溶解し、トリエチルアミンを低温で加えた)中の1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE;1.06g、1.5mmol、0.9当量)およびトリエチルアミン(600μL、0.71mmol、2.5当量)を含有する60℃の溶液に加えた。得られた透明な溶液を60℃で1時間撹拌した(溶液は透明なままであり、1時間後のH-NMRは完全な変換を示した)。クロロホルム(360mL)を加え、有機層を0.1M HCl(100mL)で穏やかに洗浄した。有機層を、NaSOを使用して乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去した。クロロホルム中の2%~30%メタノールの溶出勾配を使用するカラムクロマトグラフィー(フラッシュSiO)により、部分的にトリエチルアミンで汚染された表題化合物を得た。不純な画分をクロロホルムに溶解し、有機層を0.1M HClで穏やかに洗浄した。有機層を、NaSOを使用して乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去した。これによりトリエチルアミンが効果的に除去され、純粋な画分を合わせて、純粋な生成物(1.22g、1.4mmol、91%)を無色のワックス状固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 8.06 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.47-7.22 (m, 6H), 5.15 (dq, J = 8.3, 4.6 Hz, 1H), 5.01 (q, J = 12.6 Hz, 2H), 4.28 (dd, J = 12.0, 3.2 Hz, 1H), 4.11 (dd, J = 12.1, 7.0 Hz, 1H), 4.06-3.92 (m, 3H), 3.82 (q, J = 6.4 Hz, 2H), 3.33-3.18 (m, 2H), 2.27 (dt, J = 12.8, 5.0 Hz, 4H), 1.50 (q, J = 6.9 Hz, 4H), 1.32-1.16 (m, 51H), 0.85 (t, J = 6.7 Hz, 6H). 31P-NMR (162 MHz, DMSO-d6): δ = -1.4.
【0343】
ビルディングブロックAla-DPPE
二口丸底フラスコ中で、(CBz)-Ala-DPPE(308mg、0.34mmol)およびPd/C(374mg、10%Pd、予め湿らせたDegussa/Evonikタイプ)を、クロロホルム/エタノール1:2(36mL)中で混合した。フラスコを排気し、Arを再充填することを3回繰り返した。Hバルーンを取り付け、フラスコを、3回、排気し、Hを再充填し、混合物をH正圧下、室温で3時間撹拌した。溶液をセライトで濾過し、エタノール、クロロホルム/エタノール1:1およびクロロホルムで十分に洗浄した。合わせた濾液を蒸発乾固し、得られた化合物をクロロホルム/エタノール2:1(90mL)に溶解し、NaSOを使用して乾燥させた。溶液をセライトで濾過し、クロロホルム/エタノール2:1で十分に洗浄した。濾液を蒸発乾固させて生成物(224mg、0.29mmol、86%)をわずかに黄色を帯びたワックス状固体として得、これには微量のPdが含まれていた。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 8.60 (br, 1H), 8.08 (br, 2H), 5.15 (br, 1H), 4.28 (d, J = 13.2 Hz, 1H), 4.12 (dd, J = 6.9 Hz, 1H), 4.00 (m, 2H), 3.88 (m, 2H), 3.80 (br, 1H), 3.09 (br, 1H), 2.35-2.23 (m, 4H), 1.50 (br, 4H), 1.41-1.14 (m, 51H), 0.85 (t, J = 6.6 Hz, 6H). 31P-NMR (DMSO-d6): δ = -1.4.
【0344】
MTP(Bn)-a-DPPE(14)
MDP(Bn)(20.0mg、34μmol)およびAla-DPPE(26.2mg、34μmol、1.0当量)をDMAc(0.3mL)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(24μL、0.14mmol、4当量)中で混合して、PyBOP(22mg、41μmol、1.2当量)を連続的に加えた。得られた懸濁液を50℃で1時間撹拌した後、混合物はほぼ透明になった。揮発性物質を真空中で除去し(オイルポンプ、45℃)、混合物をクロロホルムで1回フラッシュした。クロロホルム中の15%~40%メタノールの溶出勾配を使用するカラムクロマトグラフィー(フラッシュSiO)に続いて、これを自動カラムクロマトグラフィー(逆相C18;製品:C18-シリカ1:200;検出:λ=200~220nm)を、HO中の30%~80%THFの溶出勾配を使用して行った。これにより、凍結乾燥後に生成物14(8.0mg、6μmol、18%)を、白色のふわふわした固体として得た。HPLC-MS: t[生成物]=3.92分;m/z=1327.80[M+H](SIMモード)。HPLC-ELSD:t[prod]=3.48分;99.2%の相対ピーク面積。
【0345】
[実施例15]
MTP-a-chol
【0346】
【化64】
分子量:1018ダルトン。CLogP=5.64。
【0347】
N-(2-アミノエチル)-コレステロールカルバメートビルディングブロック。
【0348】
【化65】
20mLのDCM中のコレステロールクロロホルメート(0.95g、2.1mmol)の溶液を、30mLのDCM中のエチレンジアミン(2mL、14当量)の溶液に約2時間かけてゆっくりと加えた。反応をさらに30分間進行させ、その後、反応混合物を蒸発乾固させた。得られた白色材料をカラムクロマトグラフィー(SiO、CHCl/MeOH/ギ酸78:20:2)によって精製し、720mg(72%)の所望の化合物を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.46 - 5.27 (m, 1H), 4.99 (br. s, 1H), 4.50 (br.m, 1H), 3.22 (q, J = 5.6 Hz, 2H), 2.82 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.43 - 2.19 (m, 2H), 2.06 - 1.75 (m, 5H), 1.64 - 0.80 (m, 35H), 0.68 (s, 3H) ppm. 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 156.41, 139.83, 122.47, 74.31, 56.68, 56.13, 50.00, 43.63, 42.30, 41.79, 39.73, 39.51, 38.57, 36.99, 36.56, 36.18, 35.79, 31.90, 31.87, 28.22, 28.17, 28.00, 24.28, 23.82, 22.81, 22.55, 21.03, 19.33, 18.71, 11.85. MALDI: m/z = 472.40 (計算値), 実測値: 495.39 (M+Na+).顕著なピークがm/z=369.37で観察され、これはMALDIで形成された3.4脱離生成物に起因すると考えられる(NMRでは観察されない)。
【0349】
このビルディングブロックは、アミド化を介してN-Boc-L-アラニン(CAS[15761-38-3])に結合することができ;次に、Boc基を脱保護することができ;最終的に、形成されたアミン官能性分子はMDPと結合して、MTP-a-cholに到達する。
【0350】
[実施例16]
MDP(Bn)-chol
【0351】
【化66】
分子量:1037ダルトン。CLogP=7.69。
【0352】
N-(2-アミノエチル)-コレステロールカルバメートビルディングブロック(実施例15を参照)は、アミド化を介してMDP(Bn)に結合し、分子MDP(Bn)-cholに到達することができる。
【0353】
[実施例17]
(MTP-a-DSPE)
【0354】
[実施例18]
(MTP(Bn)-a-DSPE)
【0355】
[実施例19]
(MDP(Bn)-DSPE)
【0356】
【化67】
MTP-a-DSPE:MWは1294ダルトンである。CLogP=12.70および6.92(非帯電および帯電)。
MTP(Bn)-a-DSPE:MWは1384ダルトンである。CLogP=14.99および9.21(非帯電および帯電)。
MDP(Bn)-DSPE:MWは1313ダルトンである。CLogP=15.25および9.46(非帯電および帯電)。
【0357】
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE;CAS[1069-79-0])は、アミド化を介してN-Boc-L-アラニン(CAS[15761-38-3])に接続することができ;次に、Boc基を脱保護することができ;最後に、形成されたアミン官能性分子は、MDPに結合してMTP-a-DSPEに到達するか、MDP(Bn)に結合してMTP(Bn)-a-DSPEに到達する。
【0358】
あるいは、DSPEをアミド化を介してMDP(Bn)に結合させて、分子MDP(Bn)-DSPEに到達することができる。
【0359】
[実施例20]
親油性研究
本開示の例示的な化合物のClogP値を、Perkin Elmer ChemDraw Professional、バージョン18.0.0231(4029)ソフトウェアを使用して評価した。結果は約4.15~18.28の値を示す。約7.4の生理学的pH(すなわち、COOHおよびPOH基が帯電する)では、本発明の2つの分子は4~5の間のCLogP値を有し、3つは10~20の間の値を有し、残りの分子は5~10の間の値を有する。
【0360】
実験的には、同じ溶出勾配を使用してHPLCを実行することによって、分子の親油性を比較することもできる。カラムの疎水性C18材料との親和性がより高い分子は親油性がより高く、その結果保持時間がより長くなる。以下の表は、本発明の実施例分子(項目1~4)は、比較例分子(項目5および6)と比較して保持時間が長く、従ってより親油性であることを示している。
【0361】
方法:HPLC-MS(SIM)およびHPLC-ELSDを、溶出液AからBまでの同じ勾配を使用して、Phenomenex Kinetex5マイクロメートルEVO C18 100A LCカラム(50×2.1mm)上で実行し、A=0.1v/v%ギ酸を含むHO中の20mM NHHCO、およびB=2-プロパノール/MeCN/HO 85:15:5であり、これも20mM NHHCOおよび0.1v/v%ギ酸を含む。
【0362】
【表3】
【0363】
[実施例21]
水溶解度研究
本開示の化合物を、低濃度を適用して、PBS緩衝液および水中での溶解度について試験した。
【0364】
最初に、化合物をバイアルに秤量し、PBS緩衝液(NaCl、KCl、NaHPO、KHPO中にそれぞれ137、2.7、10および1.8mM、pH=7.4)を加え、そうして完全に溶解した場合の濃度は0.2mg/mLになる。試料を振とうし、1時間放置し、再度振とうした後、室温(RT)での溶液の外観をチェックした。次に、試料を37℃の水浴で1分間加温し、再度溶液の外観をチェックした。以下の表に結果をまとめる。
【0365】
試験した化合物のいずれも、室温でも37℃でもPBSに自然に溶解しない。対照的に、試験した比較例の化合物は、これらの条件下で自然に溶解した。試料溶液をヒートガンでさらに処理しても、項目4、5、および6は溶解しなかったが、項目2および3では、室温まで冷却した後に濁った溶液が得られた。
【0366】
【表4】
【0367】
次に、化合物を秤量し、クロロホルム/メタノールに溶解した。溶液をバイアル内で乾燥させて、材料の膜を形成した。バイアルを真空に置き、微量の有機溶媒を除去した。完全に溶解した場合に化合物の濃度が0.3mMになるように脱塩水を加えた(0.3mMはMW=1000ダルトンの化合物の0.3mg/mLに相当する)。バイアルを水浴中で短時間超音波処理し、一晩放置し、再度超音波処理した(室温で超音波処理)。溶解度を評価するために、室温での溶液の外観をチェックした。以下の表に結果をまとめる。
【0368】
本開示の試験した化合物のいずれも、室温で水に自然に溶解しない。対照的に、試験した比較例の化合物は、これらの条件下で自然に溶解した。
【0369】
【表5】
【0370】
最後に、比較例1および2を、PBS(0.01M、pH=7.4)および1mg/mLのレベルでの脱塩水中での溶解度に関しても試験した。上の2つの表に示されているのと同じ結果が、この濃度で見出された。
【0371】
総合すると、これらの結果は、本発明の一連の化合物が、0.2mg/mL(およびそれより高い)ほどの低濃度ではPBSまたは水に自然に溶解しないことを示す。対照的に、比較例の材料はPBSまたは水に可溶であり、少なくとも0.2mg/mL、さらには1mg/mLほどの高濃度で透明な溶液を与える。
【0372】
開示された化合物は水溶液中での溶解度が低いため、それらの物理化学的特性は、安定なHDL由来のNPを生成する際に特定の用途が見出される。理論に束縛されるものではないが、開示された化合物は、NPへの固定を改善し、漏れを低減し、より優れた安定性および保存寿命を有する生成物を提供すると考えられる。
【0373】
[実施例22]
増強酸化試験による分解
酸化による分子の急速な分解を実現し、生体内でのより遅い酸化現象を模倣するために、参照化合物MDPおよびMDP(Bn)、ならびに実施例7からのBn置換化合物(すなわち、MDP(Bn)-DSPE[クリック]および実施例14(すなわち、MTP(Bn)-a-DPPE)を、水中の12%過酸化水素と混合し、80℃で4時間加熱した。
【0374】
得られた反応混合物を、MDPおよびMDP(Bn)試験溶液の場合はアセトニトリルおよび水(1:1)で、またはMDP(Bn)-DSPE[クリック]およびMTP(Bn)-a-DPPE溶液の場合は、0.1%ギ酸および20mMギ酸アンモニウムを含むiPrOH、アセトニトリル、および水(40:7.5:52.5)で希釈する。4つの希釈試料をHPLC-MSで分析した。参考として、4つの出発材料をまた、HPLC-MS、ならびにMDP-DSPE[クリック]およびMTP-a-DPPE(すなわち、Bn置換試験分子に対する脱ベンジル化参照化合物)によって分析した。
【0375】
4つの試験溶液すべてについて、影響を受けなかった出発化合物を追跡した。さらに、質量+14、+16、+28、+30、および+32の複数の誘導体が見出され、CHからCO部分(+14)へ、およびC-HからC-OH部分(+16)への酸化、およびこれらの酸化事象の組合せが示されている。試験したMDP(Bn)-DSPE[クリック]およびMTP(Bn)-a-DPPE化合物を、主にBn基の安息香酸基(+14)への酸化とその後の安息香酸の加水分解(-104)によって分解させた。これは、分解生成物として脱ベンジル化MDP-DSPE[クリック]およびMTP-a-DPPE化合物が主に存在することによって証明された:HPLCでの補強保持時間と、MSでの補強質量(開始時化合物と比較して-90)が見出された。
【0376】
結果は、本発明の化合物中のBn基がインビボ酸化分解の最も高い傾向を有することを示している。Bnの酸化および切断の後、定型的MDPまたはMTP基が形成され、これらの基は、当技術分野で知られている他のMDP/MTPと同様の方法でインビボで分解する。
【0377】
[実施例23]
ナノ生物学的合成
方法1-膜
リン脂質、(プロ)ドラッグ、および任意のトリグリセリドまたはポリマーを(典型的にはクロロホルム、エタノールまたはアセトニトリルに)溶解する。次に、この溶液を真空下で蒸発させて、成分の膜を形成する。続いて、緩衝液を加えて膜を水和し、ベシクル懸濁液を生成する。リン脂質、(プロ)ドラッグ、および任意のトリグリセリドまたはポリマーを(典型的にはクロロホルム、エタノールまたはアセトニトリルに)溶解する。この溶液は、有機溶媒が完全に蒸発してベシクル懸濁液が生成されるまで、撹拌しながら穏やかに加熱した緩衝液に注入または滴加する。
【0378】
AまたはBを使用して生成されたベシクル懸濁液に、アポリポタンパク質A-I(apoA-I)(apoA-IはすでにB中に存在することもできることに留意)-変性を避けるために滴下して使用を加え、外部の氷水浴を使用して完全に冷却しながら、チップソニケーターを使用して、得られた混合物を30分間超音波処理する。ナノ生物学的製剤およびその他の副産物を含有する得られた溶液を、ナノ生物学的製剤の推定サイズに応じて分子量カットオフを有するザルトリウスビバスピンチューブに移す(通常、カットオフ10,000~100,000kDaのビバスピンチューブを使用する)。溶媒量の約90%がフィルターを通過するまでチューブを遠心分離する。その後に、残りの溶液の体積とほぼ同じ体積の緩衝液を加え、体積のほぼ半分がフィルターを通過するまでチューブを再度回転させる。これを2回繰り返した後、残りの溶液をポリエーテルスルホン0.22pmシリンジフィルターに通し、最終的なナノ生物学的溶液を得る。
【0379】
方法2-マイクロフルイディクス
代替アプローチでは、リン脂質、(プロ)ドラッグおよび任意のトリグリセリド、コレステロール、ステリルエステル、またはポリマーを(典型的にはエタノールまたはアセトニトリルに)溶解し、シリンジに充填する。さらに、リン酸緩衝生理食塩水中のアポリポタンパク質A-I(apoA-I)の溶液を、第2のシリンジに充填する。マイクロフルイディクスポンプを使用し、両方のシリンジの内容物を、マイクロボルテックスプラットフォームを使用して混合する。ナノ生物学的製剤およびその他の副産物を含有する得られた溶液を、粒子の推定サイズに応じて分子量カットオフを有するザルトリウスビバスピンチューブに移す(通常、カットオフ10,000~100,000kDaのビバスピンチューブを使用する)。溶媒量の約90%がフィルターを通過するまでチューブを遠心分離する。その後に、残りの溶液の体積とほぼ同じ体積のリン酸緩衝生理食塩水を加え、体積のほぼ半分がフィルターを通過するまでチューブを再度回転させる。これを2回繰り返した後、残りの溶液をポリエーテルスルホン0.22pmシリンジフィルターに通し、最終的なナノ生物学的溶液を得る。
【0380】
方法3-マイクロフルイダイザー
本発明による別の方法では、マイクロフルイダイザー技術を使用して、ナノスケールアセンブリおよび最終的なナノ生物学的組成物を調製する。マイクロフルイダイザーは、液中ジェット原理に基づいて動作する、小さな粒径の材料を調製するための装置である。ナノ粒子を得るためにマイクロフルイダイザーを操作する際、プレミックス流は、高圧ポンプによって、プレミックスを2つの流れに分割するセラミックブロック内のチャネルシステムからなるいわゆる相互作用チャンバーを通過することになる。精密に制御されたせん断力、乱流力、およびキャビテーション力が、マイクロフルイダイゼーション中に相互作用チャンバー内で生成される。2つの流れが高速で再結合してせん断が生じる。こうして得られた生成物をマイクロフルイダイザーに再循環させて、ますます小さな粒子を得ることができる。従来の粉砕プロセスと比較したマイクロフルイダイゼーションの利点には、最終生成物の汚染が大幅に減少すること、製造スケールアップが容易であることが含まれる。
【0381】
製剤1
以下の表は、HDL由来ナノ粒子製剤の調製に関する詳細を提供する。最初に、DMPC、コレステロールおよび本発明の化合物を、所与のモル比でエタノール(項目A、BおよびD)またはエタノール/DMSO4/1(項目C、EおよびF)に溶解し、一方、タンパク質apoA-1を、PBS緩衝液(pH=7.5)に別々に溶解した。これらの製剤では、適用されたapoA-Iの重量は、DMPCの重量と相関していた。有機溶液を、PBS緩衝溶液と、T字接合(T-junction)混合によって一緒にすることによって混合した。
【0382】
得られた溶液の精製をTFF(タンジェンシャルフロー分画(tangential flow fractionation))によって実行し、それによって有機溶媒を除去し、ナノ粒子をPBSに溶解した。NP溶液の濃縮を、スピンフィルター遠心分離によって実行した。最後に、HDL由来ナノ粒子溶液を0.2マイクロメートルのAcrodisk PESフィルターで濾過した。
【0383】
最終HDL由来ナノ粒子溶液は、使用した化合物(実施例2、3、7、8および13)、DMPCおよびコレステロールの典型的な回収率が80%を超えた。回収率は、HPLC(化合物について)、および当技術分野で知られているアッセイ(DMPCおよびコレステロールについて)を使用して決定した。最終HDL由来ナノ粒子溶液の濃度は、化合物中約2~4mg/mLであった。
【0384】
【表6】
【0385】
動的光散乱(DLS)によって評価されるナノ生物学的製剤の安定性。
項目A~Fの製剤を、8週間にわたるDLSによって特徴付けた。実施例2、3、7および13の製剤中のナノ粒子は、それぞれ約20、30、20および45nmのZ平均(強度加重平均流体力学的サイズ)直径を有していた。これらのナノ粒子の寸法は時間の経過とともに一定のままであり、粒径の分散(PDI)も一定のままである。未充填粒子(項目A)も、時間の経過とともに安定であった(直径約30nm)。実施例8の製剤中のナノ粒子は、2週の時点から5週の時点までに、約50から約225nmまで増大する直径を示した。5週の時点で、寸法は安定化していた。他の処理条件を使用すると、この実施例8の材料も安定な10~50nmサイズの粒子に配合できる可能性が最も高い。
【0386】
製剤A~Fのナノ粒子のDLS決定Z平均直径およびPDI値を図2に示す。
【0387】
チップ超音波処理製剤A:DSPC([816-94-4];2.7mg)、コレステロール(0.26mg)および化合物(0.46mg)を、クロロホルム/メタノール(9:1)を用いてガラスバイアル中で溶解した。溶媒をアルゴンガス流により除去し、得られた膜を真空中で>1時間乾燥させた。apoA-IPBS溶液(6mL)をバイアルに加え、続いて5分間超音波浴処理し、37℃で20分間インキュベートし、次に10分間チップ超音波処理した。得られた分散体を遠心分離して、より大きな凝集物を除去した。上清をVivapin20限外濾過ユニット(カットオフ10kDa)に移し、およそ1mLの体積までスピンダウンした。得られた分散液をPBSで希釈し、1mLまでスピンダウンし、この手順を2回繰り返した。最後に、PBSを使用して体積を2mLに希釈して、所望のナノ粒子溶液を得た。
【0388】
チップ超音波処理製剤B:DMPC(2.7mg)、コレステロール(0.30mg)および化合物(0.57mg)を、クロロホルム/メタノール(9:1)を用いてガラスバイアル中で溶解した。溶媒をアルゴンガス流により除去し、得られた膜を真空中で>1時間乾燥させた。PBS(6mL)中のペプチド-2F(apoA-I模倣物18量体;表2の配列257)の溶液をバイアルに加え、続いて5分間超音波浴処理し、37℃で20分間インキュベートし、次に5分間チップ超音波処理した。得られた分散体を遠心分離して、より大きな凝集物を除去した。上清をVivapin20限外濾過ユニット(カットオフ10kDa)に移し、およそ1mLまでスピンダウンした。得られた分散液をPBSで希釈し、1mLまでスピンダウンし、この手順を2回繰り返した。最後に、PBSを使用して体積を2mLに希釈して、所望のナノ粒子溶液を得た。
【0389】
T字接合製剤C:DMPC、コレステロールおよび化合物をエタノールに溶解し、一方、apoA-1をPBS緩衝液(pH=7.5)に溶解した。T字接合混合を適用して、有機溶液を緩衝溶液と混合した。得られた溶液の精製をTFF(タンジェンシャルフロー濾過)によって実行し、それによって有機溶媒を除去した。試料をスピン-濾過により濃縮した。最終HDL由来ナノ粒子溶液は、化合物、DMPC、およびコレステロールの典型的な回収率が75%を超えた。最終HDL由来ナノ粒子溶液の濃度は、化合物中約2~4mg/mLであった。
【0390】
【表7】
【0391】
*apoA-Iまたは2F-ペプチドは、mg対mgホスホコリンPCで使用される;**apoA-Iはmg対mg化合物で使用される;#数平均直径。
【0392】
上記の実施例は、DMPCの代わりにDSPCを使用できること(例えば、POPCも使用できる)、apoA-Iの代わりにペプチド模倣物を使用できること、および高レベルの本開示の化合物を組み込むことができることを強調している。さらに、例えばT字接合混合またはマイクロフルイディクス混合の代わりに、処理技術としてチップ超音波処理を使用することもできる。
【0393】
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)の単離ヒトapoA-Iを、以前に記載された手順(Zamanian-Daryoush et al., 2013)に従ってヒトHDL濃縮物(Bioresource Technology)から単離した。要約すると、臭化カリウム溶液(密度:1.20g/mL)を濃縮物の上部に層状にし、超遠心分離によって精製HDLを得た。精製画分をクロロホルム/メタノール溶液に加えて脱脂した。得られた乳状溶液を濾過し、apoA-I沈殿物を一晩乾燥させた。タンパク質を6M塩酸グアニジン中で再生させ、得られた溶液をPBSに対して透析した。最後に、apoA-IPBS溶液を0.22pmフィルターで濾過し、タンパク質の同一性および純度を、ゲル電気泳動およびサイズ排除クロマトグラフィーによって確認した。
【0394】
[実施例24]
HDL由来ナノ粒子製剤のクライオTEM測定
それぞれ実施例2および実施例7の分子化合物、すなわち、MDP-DSPE[クリック]およびMDP(Bn)-DSPE[クリック]を、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC;(CAS[18194-24-6])およびAPO-A1と一緒に、およびさまざまな量のコレステロールと一緒に配合して、HDL由来ナノ粒子製剤を作成した。以下の表は、使用したDMPC、化合物、およびコレステロール成分の相対モル量を示している。APO-A1は、本発明の化合物(mg単位)の2倍の量(mg単位)で使用した。処理された製剤の動的散乱データ(DLS)も示されている:記録された直径および括弧内の誤差は、数平均DLSデータに基づいている。粒子の寸法におけるDLS記録多分散度も示されている。
【0395】
【表8】
【0396】
製剤:DMPC、コレステロールおよび化合物をエタノール(項目A、CおよびE)またはエタノール/DMSO(項目B、D、F)に溶解し、一方、apoA-1をPBS緩衝液(pH=7.5)に溶解した。T字接合混合を適用して、有機溶液を緩衝溶液と混合した。得られた溶液の精製をTFF(タンジェンシャルフロー濾過(tangential flow filtration))によって実行し、それによって有機溶媒を除去した。試料をスピン-濾過により濃縮した。最終HDL由来ナノ粒子溶液は、使用した化合物(実施例2および7)、DMPCおよびコレステロールの典型的な回収率が75%を超えた。回収率は、HPLC(化合物について)、および当技術分野で知られているアッセイ(DMPCおよびコレステロールについて)を使用して決定した。最終HDL由来ナノ粒子溶液の濃度は、化合物中約2~4mg/mLであった(実施例2または7)。
【0397】
図1は、項目A~FのHDL由来ナノ粒子について記録されたクライオ-TEM写真を示す。50nmのバーは、6枚の写真すべてに当てはまる。0%コレステロールを使用すると、球形の円盤状粒子が主に観察される(AおよびB;サイズは約5~10nm)。10%のコレステロールを適用すると、ほとんどの場合、わずかに拡張したディスク(CおよびD、長さ約5~25nm、厚さ約5nm)が示される。20%コレステロールを使用すると、明らかに伸びたミミズ状の粒子が示される。これらのミミズ状の粒子の長さは、約20~約50nmであり、厚さは約5nmである(写真C)。写真Fでは、ミミズの長さは約50~100nmであり;この場合も、厚さは約5nmである。Fでは、ミミズ状の粒子が凝集してより大きなスタックになることも観察される。
【0398】
結果は、HDL由来ナノ粒子の粒子寸法を、製剤のコレステロール含有量(CとE、およびDとFを比較)を使用して制御できることだけでなく、化合物の親油性および/または本発明の化合物の式(I)におけるRの位置の置換によっても制御できる(明確:EとFを比較;あまり明確ではない:Dでは粒子がCよりも少し伸びているように見える)ことを強調している。
【0399】
方法:試料を処理する直前に、Cressington208カーボンコーターを使用して、200メッシュのレース状カーボン支持銅グリッド(Electron Microscopy Sciences)を40秒間表面プラズマ処理した。次に、3μLのHDL由来ナノ粒子試料溶液をグリッドに移した。次に、自動ガラス化ロボット(FEI Vitrobot MarkIV)を使用して、液体エタン中でのプランジガラス化により、試料溶液の薄膜をグリッド上でガラス化した。処理された膜は、測定が行われるまで保存した。調製した膜のクライオ-TEMイメージングは、電界放出電子銃(field emission gun)(FEG)、ポストカラム型Gatanイメージングフィルター(モデル2002)、およびポストGIF2k×2kGatan CCDカメラ(モデル794)を搭載したクライオTITAN顕微鏡(Thermo Fisher)で実行した。
【0400】
[実施例25]
インビトロNOD2活性化アッセイ
本開示された化合物によるヒトNOD2(hNOD2)の刺激を、HEK-Blue(商標)hNOD2細胞(Invitrogen)におけるNF-κBの活性化を監視することによって研究した。50,000個のHEK-Blue(商標)hNOD2細胞を、平底組織培養プレート内のHEK-Blue(商標)検出培地に播種した。濃度範囲の試験品目(DMSO溶液(17.8mmol/L)から最初に脱塩水、次にPBSで所望の濃度に希釈した化合物)を、組織培養プレート内の細胞に加えた。細胞を、37℃にて5%COで一晩インキュベートした。翌日、上清をELISAプレートに収集し、分光光度計を使用して620nmでODを測定した。
【0401】
このアッセイにおけるシグナルは、その後NF-κBおよびAP-1を活性化し、SEAPの産生をもたらすリガンドによるNOD2刺激に基づいている。次いで、SEAPのレベルをHEK-Blue(商標)検出培地(Invitrogen)を用いて決定した。SEAPによる培地中の基質の加水分解により紫/青色が生じ、これを吸光度マイクロプレートリーダーで測定した。OD値を、試験品目の濃度に基づいてマッピングし、図3に示す。アッセイ性能は、ムラミルジペプチド(CAS番号[53678-77-6])を使用して検証した。
【0402】
本発明の試験化合物(API)はすべて、NOD2を活性化することができる。実施例2、3および7の化合物の効力は同等である。実施例8および13の化合物もNOD2を活性化することができるが、その程度は実施例2、3および7の化合物よりも低いようである。
【0403】
[実施例26]
B16F10マウスモデルにおける(i)HDL由来ナノ粒子および(ii)免疫チェックポイント阻害の組合せ活性
製剤のインビボ研究1。
これらのインビボ研究のための製剤は、T字接合混合、その後のタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって調製した。処理および精製手順は、クライオ-TEM測定用の製剤で強調されているとおりに適用した(表8)。
【0404】
使用した化合物は、実施例2、3、7、8および13のものであった(すなわち、これらの実施例材料は、インビボ研究のこれらの説明では一括してAPIと呼ばれる)。投与される5つの製剤については、以下の成分の相対比を使用した。
【0405】
【表9】
【0406】
プロトコールおよび結果
実施例APIのパネルは、B16F10同系マウス腫瘍モデルにおいて免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせてその抗腫瘍活性についてスクリーニングされたHDL由来ナノ粒子(またはナノ生物学的製剤、NB)に配合した。この目的のために、B16F10マウス黒色腫細胞を、10%FBS(Gibco)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)で培養した。注射の日に細胞を採取し、0.5%FBSを含むPBSに生細胞1×10個/mLで再懸濁した。計数中に、トリパンブルー溶液、0.4%(Gibco)を使用して、細胞の生存率をチェックした。実験の開始時に、0.5%ウシ胎児血清(FBS)を補充した100μL PBS中の1×10個のB16F10腫瘍細胞を、7週齢の雌型C57BL/6マウス(The Jackson Laboratory)の脇腹に皮下注射した。
【0407】
腫瘍接種の7日後、マウスを、同様の平均群サイズを有する群に無作為化した(n=10)。群の平均腫瘍サイズは3.26mmであった。無作為化後、マウスの耳を切り込み、体重測定した。その後、用量を計算し、アリコートに分注した。アリコートに分注した用量を、使用するまで4℃で保存した。
【0408】
研究は以下から構成された:PBS対照群、免疫チェックポイント阻害剤群(CI)および6つの処置群。免疫チェックポイント阻害剤で処置したマウスは、2、4、8日目に、200μgの抗CTLA-4(クローン、9H10、BioXcell)および/または200μgの抗PD-1(クローン、RMP1-14、BioXcell)の用量を使用して腹腔内注射を受けた。処置群は、実施例2の化合物から調製したNB、実施例3からのNB、実施例7からのNB、実施例8からのNB、実施例13からのNBと、上記の免疫チェックポイント阻害剤療法(CI)とを組み合わせたものから構成されていた。処置群の投与量は、0日目、2日目、および4日目において、当該約9mgMDP/kg(またはNBに含まれるそれぞれのAPIの約27mg/kg)であった。
【0409】
腫瘍増殖曲線を図4A~Eに示し、各グラフにおいて同じPBSおよびCI群をマッピングすることにより、グラフ間の比較が可能になっている。
【0410】
PBS処置動物、または免疫チェックポイント阻害剤単独で処置された動物は、腫瘍増殖阻害を示さなかった。併用療法で処置した動物の群はすべて腫瘍増殖阻害を示し、腫瘍増殖阻害は、実施例2のNB(図4A)、実施例7のNB(図4C)または実施例8のNB(図4D)が併用療法の一部である群で最も顕著であった。
併用療法に関する上記の結果は、適用された90mol%のDMPCに対して10mol%のコレステロールを含有する適用製剤で得られたものであったこと、したがって、これらの粒子の寸法はおよそ5~最大10nm(図1のクライオ-TEMパネルCおよびDを参照のこと)であったこと、に留意されたい(上記の表を参照のこと)。
【0411】
[実施例27]
B16F10マウスモデルにおけるナノ生物学的製剤の単剤活性
これらのインビボ研究のための製剤は、T字接合混合、その後のタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって調製した。処理および精製手順は、クライオ-TEM測定用の製剤で強調されているとおりに適用した(表8)。以下の表は、HDL由来ナノ粒子を調製するために使用した成分の相対比を示している。
【0412】
【表10】
【0413】
プロトコールおよび結果
2つのAPI(実施例2および実施例7の化合物)を使用して、一連の異なるHDL由来ナノ粒子製剤(またはナノ生物製剤;ナノ生物学的製剤;NB)を生成し、それらの効力を決定した。得られたナノ生物学的製剤は、B16F10同系マウス腫瘍モデルにおける単剤抗腫瘍活性についてスクリーニングした。この目的のために、B16F10マウス黒色腫細胞を、10%FBS(Gibco)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)で培養した。注射の日に細胞を採取し、0.5%FBSを含むPBSに生細胞1×10個/mLで再懸濁した。計数中に、セルカウンターおよびアナライザー(Casy)を使用して、細胞の生存率をチェックした。実験の開始時に、0.5%ウシ胎児血清(FBS)を補充した100μL PBS中の1×10個のB16F10腫瘍細胞を、7週齢の雌型C57BL/6Jマウス(Charles River)の脇腹に皮下注射した。
【0414】
腫瘍接種の7日後、マウスを、同様の平均群サイズを有する群に無作為化した。群は8~10匹のマウスから構成されていた。群の平均腫瘍サイズは6.33mmであった。無作為化後、マウスの尾部に数字の入れ墨を入れた。その後、用量を計算し、アリコートに分注した。アリコートに分注した用量を、使用するまで4℃で保存した。
【0415】
研究は以下から構成された:PBS対照群、および5つの処置群:実施例2のNB(製剤項目1、3および4)および実施例7のNB(製剤項目2および5)。処置群の投与量は、0日目、2日目、および4日目において、当該約3mgMDP/kg(またはNBに含まれるそれぞれのAPIの約9mg/kg)であった。腫瘍サイズは、研究期間中の設定された時間に測定した。腫瘍増殖曲線を図5A~Cに示し、各グラフにおいて同じPBS群をマッピングすることにより、グラフ間の比較が可能になっている。実施例2のNB(製剤項目1)は別として、すべてのナノ生物学的製剤は、PBS対照群と比較して腫瘍増殖の減少を明らかに示した。実施例2(図5A)および実施例7(図5B)の両方について、20mol%のコレステロールを含むナノ生物製剤が、最も優れた性能を示した。図5Cは、実施例2のNBが実施例7のNBよりわずかに優れていることを示している(それぞれ項目4および5の製剤を使用する)。
【0416】
図5Aでは、10mol%のコレステロールを含有する実施例2の製剤(上記表の項目1)は、わずかな単剤活性を示した(PBSと比較)。驚くべきことに、比較すると、20mol%のコレステロールを含む実施例2の製剤(上記の表の項目3および4)は、非常に増強された腫瘍抑制を示す。実施例7の製剤についても、これを見ることができる(図5B)。明らかに、形成された粒子の寸法は、調製されたHDL由来ナノ粒子の活性において決定的な役割を果たす:10%コレステロール製剤は、5~10nmの寸法を有する球状またはわずかに伸長した円盤状粒子を与え、一方、20%コレステロール製剤では、長さ約15~50nm、厚さ約5nmの細長いミミズ状の粒子が得られる(図1のパネルCとEを比較、クライオTEMデータ)。
【0417】
開示されたHDL由来ナノ粒子は、ある特定の寸法を有しており、これらの特徴は、安定で強力なHDL由来NPを生成する際に特定の用途が見出される。理論に束縛されるものではないが、開示されたHDL由来ナノ粒子によって、細胞に対するMDP(またはMDP(Bn)またはMTPもしくはMTP(Bn))部分の(多価)提示が改善され、それらの効力が劇的に改善されると考えられる。
【0418】
実施形態
1. 式(I):
【0419】
【化68】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、C9~30脂肪酸鎖、-Y-N(R11)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-C(R10)(C(O)NH)-アルキレン-N(R11)-C(O)-C16~30脂肪酸鎖、-(CR1010-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(R10)(OR)-アルキレン-OR、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
は、C8~30脂肪酸または-C(O)-C16~30脂肪酸鎖であり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;RがC9~30脂肪酸鎖である場合、Rは-Hである)。
【0420】
2. 式(I)の化合物が、式(IA):
【0421】
【化69】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である、実施形態1に記載の化合物。
【0422】
3. Rが、-Hまたはベンジルである、実施形態1または2に記載の化合物。
【0423】
4. Rが、-Hである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物。
【0424】
5. R10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’がそれぞれ-Hである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の化合物。
【0425】
6. Rがアルキルである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の化合物。
【0426】
7. Rがメチルである、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物。
【0427】
8. RおよびRが、両方とも-Hである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の化合物。
【0428】
9. Yが、-C(O)N(R)(R)で任意選択で置換されたアルキレンである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物。
【0429】
10. Yが、-CH-または
【0430】
【化70】
である、実施形態9に記載の化合物。
【0431】
11. Yが、-CH-である、実施形態10に記載の化合物。
【0432】
12. Rが、-Y-トリアゾリル-Lである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の化合物。
【0433】
13. 式(I)の化合物が、式(II):
【0434】
【化71】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は-N-であり、Xは-C-であり;もしくは、Xは-C-であり、Xは-N-である)
である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の化合物。
【0435】
14. 式(I)の化合物が、式(IIA):
【0436】
【化72】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である、実施形態13に記載の化合物。
【0437】
15. Yが、C1~6アルキレンである、実施形態13または14に記載の化合物。
【0438】
16. Rが、-Hである、実施形態13~15のいずれか1つに記載の化合物。
【0439】
17. Lが、C8~30脂肪酸鎖、-CH-C(O)-W、-CH-O-C(O)-W、-CHCH-N-CHCH-C(O)-NR11-CHCH-NR11-C(O)-W)、および-CHCH-N-(CHCH-C(O)-W)からなる群から選択される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の化合物。
【0440】
18. Lが、C12~18脂肪酸鎖である、実施形態17に記載の化合物。
【0441】
19. Lが、-CH(CHCH-CHである、実施形態17に記載の化合物。
【0442】
20. Wが、C8~30脂肪酸鎖である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物。
【0443】
21. Wが、C12~18脂肪酸鎖である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物。
【0444】
22. Wが、
【0445】
【化73】
である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物。
【0446】
23. RおよびRX’が、それぞれ独立して-C8~30脂肪酸鎖である、実施形態22に記載の化合物。
【0447】
24. RおよびRX’が、それぞれ独立してC12~18脂肪酸鎖である、実施形態22または23に記載の化合物。
【0448】
25. RおよびRX’が、両方とも-(CHCH-CHである、実施形態24に記載の化合物。
【0449】
26. Wが、コレステロール:
【0450】
【化74】
である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物。
【0451】
27. Wが、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、およびリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるリン脂質である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物。
【0452】
28. Wが、構造:
【0453】
【化75】
を有するリン脂質である、実施形態27に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
(式中、RおよびRX’は、それぞれ独立してC8~30脂肪酸鎖である)
【0454】
29. RおよびRX’が、それぞれ独立してC12~18脂肪酸である、実施形態28に記載の化合物。
【0455】
30. 脂肪酸が飽和である、実施形態28または29に記載の化合物。
【0456】
31. RおよびRX’が、両方とも-(CHCH-CHである、実施形態28に記載の化合物。
【0457】
32. Rが、-C(H)(C(O)NH)-Cアルキレン-N(R11)-C(O)-C17~30脂肪酸である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の化合物。
【0458】
33. Rが、-CHCH-O-P(O)(OH)-O-CH-C(H)(OR)-CH-ORである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の化合物。
【0459】
34.
【0460】
【化76-1】
【0461】
【化76-2】
【0462】
【化76-3】
【0463】
【化76-4】
からなる群から選択される、実施形態1~33のいずれか1つに記載の化合物。
【0464】
35. 高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子を含むナノ生物学的組成物であって、ナノ粒子は式(I):
【0465】
【化77】
またはその薬学的に許容される塩
(式中、
は、-Hまたは-C(O)-Rであり;
およびRは、それぞれ独立して、-H、アルキル、アルキレン-アリール、-C(O)-アルキル、および-C(O)-アリールからなる群から選択され;
、R、およびR5’はそれぞれアルキルであり;
およびR11は、それぞれ独立して-Hまたはアルキルであり;
は、脂肪酸鎖、-Y-N(R)-C(O)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、-Y-N(R)-C(O)-R、-Y-O-P(O)(OH)-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、または-Y-トリアゾリル-Lであり;
Yはアルキレンであり;
Lは、脂肪酸鎖、-アルキレン-C(O)-W、-アルキレン-O-C(O)-W、-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-NR11-アルキレン-NR11-C(O)-W)、および-アルキレン-N-(アルキレン-C(O)-W)からなる群から選択され;
Wは、脂肪酸鎖、-O-アルキレン-C(H)(OR)-アルキレン-OR、リン脂質、またはステロールであり;
およびRは、それぞれ独立してRまたは-C(O)-Rであり;
10、R22、R33、R33’、R44、R44’、R55、およびR55’はそれぞれ独立してHまたはRであり;
は、脂肪酸鎖であり;
前述の各アルキル、アルキレン、アルキレン-アリール、アリール、およびトリアゾリルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換されており、Rは、ハロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ヒドロキシル、-N(R)(R)、-C(O)N(R)(R)、-N(R)C(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-OC(O)R、-C(O)OR、-C(O)R、-COH、-NO、-SH、S(O)(式中、Xは0、1、または2)、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびRからなる群から出現ごとに独立して選択され;
およびRは、水素、アルキル、ハロアルキル-C(O)R、および-C(O)ORからなる群から出現ごとに独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、Rで任意選択で置換された複素環を形成しており;
は、1つもしくは複数のフルオロで任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニルである)
を含む、ナノ生物学的組成物。
【0466】
36. 高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子を含むナノ生物学的組成物であって、ナノ粒子は実施形態1~34のいずれか1つに記載の化合物を含む、ナノ生物学的組成物。
【0467】
37. HDL由来ナノ粒子が1つまたは複数のリン脂質を含む、実施形態35または36に記載のナノ生物学的組成物。
【0468】
38. リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリンまたは他のセラミド、リン脂質含有油、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、およびそれらの組合せからなる群から独立して選択される、実施形態37に記載のナノ生物学的組成物。
【0469】
39. 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)からなる群から選択されるリン脂質、ならびに1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(MHPC)、および1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC)からなる群から選択されるリゾ脂質を含む、実施形態35または36に記載のナノ生物学的組成物。
【0470】
40. HDL由来ナノ粒子が、apoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物を含む、実施形態35~39のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物。
【0471】
41. HDL由来ナノ粒子が、1つまたは複数のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、ステロールエステル、またはそれらの組合せをさらに含む、実施形態35~40のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物。
【0472】
42. HDL由来ナノ粒子が、コレステロールをさらに含む、実施形態35~41のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物。
【0473】
43. HDL由来ナノ粒子が、1つまたは複数のリン脂質とコレステロールを、約1:0.05~約1:0.25の範囲のモル比で含む、実施形態42に記載のナノ生物学的組成物。
【0474】
44. HDL由来ナノ粒子が、1つまたは複数のリン脂質とコレステロールを、約1:0.2の範囲のモル比で含む、実施形態43に記載のナノ生物学的組成物。
【0475】
45. HDL由来ナノ粒子がナノディスクまたはナノスフェアである、実施形態1~44のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物。
【0476】
46. ナノディスクまたはナノスフェアの直径が約8nm~約400nmである、実施形態45に記載のナノ生物学的組成物。
【0477】
47. 実施形態1~34のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【0478】
48. それを必要とする患者における細胞増殖障害を処置するための方法であって、治療有効量の実施形態35~46のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物を患者に投与することを含む、方法。
【0479】
49. 細胞増殖障害が、がんである、実施形態48に記載の方法。
【0480】
50. がんが、膀胱がん、血管がん、骨がん、脳のがん、乳がん、子宮頸がん、胸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、眼のがん、頭部がん、腎臓がん、肝臓がん、リンパ節がん、肺がん、口腔がん、頸部がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、咽頭がん、甲状腺がん、尿路上皮がん、および子宮がんからなる群から選択される、実施形態49に記載の方法。
【0481】
51. がんが、乳がん、前立腺がん、黒色腫、結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、および神経膠芽腫からなる群から選択される、実施形態49に記載の方法。
【0482】
52. 実施形態48~51のいずれか1つに記載の方法であって、併用療法として抗がん薬をナノ生物学的組成物と同時投与することをさらに含む、方法。
【0483】
53. それを必要とする患者における敗血症を処置するための方法であって、治療有効量の実施形態35~46のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物を患者に投与することを含む、方法。
【0484】
54. 患者が、肺、腹部、腎臓、または血流の細菌、ウイルスまたは真菌感染に関連する敗血症を有する、実施形態53に記載の方法。
【0485】
55. ナノ生物学的組成物が、それを必要とする患者において過剰反応性自然免疫応答を促進する、実施形態48~54のいずれか1つに記載の方法。
【0486】
56. 過剰反応性自然免疫応答が、少なくとも約7~約30日間促進される、実施形態55に記載の方法。
【0487】
57. 過剰反応性自然免疫応答が、少なくとも30~100日間促進される、実施形態55に記載の方法。
【0488】
58. 過剰反応性自然免疫応答が、100日を超えて最長3年間促進される、実施形態55に記載の方法。
【0489】
59. ナノ生物学的組成物は1回投与され、過剰反応性自然免疫応答が少なくとも30日間促進される、実施形態55に記載の方法。
【0490】
60. ナノ生物学的組成物が、複数回投与レジメンの各日において少なくとも1日1回投与され、過剰反応性自然免疫応答が、少なくとも30日間促進される、実施形態55に記載の方法。
【0491】
61. ナノ生物学的組成物を、骨髄、血液および/または脾臓中の骨髄細胞、骨髄前駆細胞、および造血幹細胞に薬物の蓄積を生成するために、2回以上の用量を含む処置レジメンで患者に投与する、実施形態48~58のいずれか1つに記載の方法。
【0492】
62. ナノ生物学的組成物が、静脈内または動脈内に投与される、実施形態48~61のいずれか1つに記載の方法。
【0493】
63. それを必要とする対象においてNOD2受容体を活性化するための方法であって、治療有効量の実施形態35~46のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物を対象に投与することを含む、方法。
【0494】
64. 実施形態35~46のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物を製造するためのプロセスであって、
a)脂質膜を形成するのに効果的な条件下で、i)実施形態1~34のいずれか1つに記載の化合物;ii)1つもしくは複数のリン脂質;任意選択で、iii)1つもしくは複数のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、もしくはステロールエステル、またはそれらの組合せを含む疎水性マトリックス;および任意選択でiv)コレステロールを含む脂質膜を形成するステップ;ならびに
b)脂質膜を溶媒に溶解して脂質溶液を形成するステップ;実施形態1~34のいずれか1つに記載の化合物を含むHDL由来ナノ粒子を形成するのに有効な条件下で、脂質溶液をapoA-IまたはapoA-Iのペプチド模倣物と接触させるステップを含む、プロセス。
【0495】
65. 実施形態64に従って調製されたナノ生物学的組成物。
【0496】
66. 実施形態35~46のいずれか1つに記載のナノ生物学的組成物を含むキット。
【0497】
67. 前記抗がん薬がチェックポイント阻害剤である、請求項52に記載の方法。
【0498】
68. 前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、およびそれらの組合せから選択される、請求項67に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024511067000001.app
【国際調査報告】