(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】カスタム小線源治療キャリアを作成するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 36/12 20060101AFI20240305BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20240305BHJP
A61M 36/14 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20240305BHJP
【FI】
A61M36/12
A61N5/10 U
A61M36/14
A61P35/00
A61K41/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557721
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2022021033
(87)【国際公開番号】W WO2022198100
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523357371
【氏名又は名称】ジーティー メディカル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コール、ヘイディ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッチマン、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、アダム
【テーマコード(参考)】
4C082
4C084
【Fターム(参考)】
4C082AA05
4C082AE05
4C084AA11
4C084NA05
4C084ZB261
(57)【要約】
カスタム放射性シードキャリアは、特定の患者のための放射線治療プランのキャリア仕様により精確に合致するように、術前及び/又は術中に作成される。3Dプリンタ、射出成形システム、機械加工コンポーネント、又はバイオプリンタ等の、1又は複数のキャリア仕様コンポーネントを利用して、カスタムキャリアを形成してよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも腫瘍空洞サイズ及び形状及び放射線線量を含む治療仕様を受け取る段階;
前記治療仕様に基づいてキャリア構成を決定する段階、前記キャリア構成は、少なくとも第1のカスタムキャリアについて、キャリア形状及び放射性シード数量を示す;
少なくとも前記キャリア構成に基づいて、1又は複数のカスタムキャリアコンポーネントを使用してカスタムキャリアを生成する段階、前記カスタムキャリアコンポーネントは、3Dプリンタ、射出成形システム、機械加工コンポーネント、又はバイオプリンタのうちの1又は複数を含む;
少なくとも前記キャリア構成において示された前記放射性シード数量に基づいて、前記治療仕様において示されたシード位置に従って前記カスタムキャリアに1又は複数の放射性シードを挿入する段階;
特定の哺乳動物の空洞への植え込みのために前記カスタムキャリアを提供する段階
を備える方法。
【請求項2】
前記キャリア構成は、放射性シード強度及び放射性シードの向きをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも腫瘍空洞サイズ及び形状及び放射線線量を含む治療仕様を受け取る段階;
前記治療仕様に基づいてキャリア構成を決定する段階、前記キャリア構成は、少なくとも第1のカスタムキャリアについて、キャリア形状及び放射性シード数量を示す;
少なくとも前記キャリア構成に基づいて、カスタムモールド構成を決定する段階;
3Dプリンタに前記カスタムモールド構成を提供する段階;
前記3Dプリンタによって作成されたカスタムモールドを使用してカスタムキャリアを形成する段階;
少なくとも前記キャリア構成において示された前記放射性シード数量に基づいて、前記カスタムキャリアに1又は複数の放射性シードを挿入する段階;
前記カスタムキャリアを凍結乾燥する段階;
前記カスタムキャリアを殺菌する段階;及び
植え込み場所への前記カスタムキャリアの移送を開始する段階、前記カスタムキャリアは、特定の哺乳動物の空洞への植え込みのために特別に設計されている
を備える方法。
【請求項4】
前記カスタムキャリアは、矩形である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記カスタムキャリアは、球形である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記カスタムキャリアは、前記腫瘍空洞を反映した形状及びサイズである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
前記球形のカスタムキャリアは、約1~7センチメートルの直径を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記カスタムキャリアは、前記特定の哺乳動物の前記空洞に植え込まれる複数のより小さなカスタムキャリアに分離されるように構成されている、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項9】
前記分離は、切断デバイスを用いて実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カスタムキャリアは、前記カスタムキャリアが分離されるように構成されている位置を示す1又は複数のマーキングを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記カスタムキャリアを前記凍結乾燥する段階は、前記カスタムキャリアの面積を約20パーセントよりも大きく減少させる、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記カスタムキャリアは、水和すると膨張するように構成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水和は、生理食塩水又は体液によって提供される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記キャリア構成は、放射性シード強度及び放射性シードの向きをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも腫瘍空洞サイズ及び形状及び放射線線量を含む治療仕様を受け取る段階;
前記治療仕様に基づいて所望のキャリア構成を決定する段階、前記所望のキャリア構成は、少なくとも第1のカスタムキャリアについて、キャリア形状及び放射性シード数量を示す;
既に作成されて植え込みのために利用可能である最も緊密にフィットするキャリアを決定する段階、前記最も緊密にフィットするキャリアは、利用可能なキャリア構成を有する、及び
前記利用可能なキャリア構成と前記所望のキャリア構成との比較に基づく、前記最も緊密にフィットするキャリアが満足なものでないとの決定に応じて、1又は複数のカスタムキャリアコンポーネントを使用してカスタムキャリアを生成する段階、前記カスタムキャリアコンポーネントは、3Dプリンタ、射出成形システム、機械加工コンポーネント、又はバイオプリンタのうちの1又は複数を含む;又は
前記利用可能なキャリア構成と前記所望のキャリア構成との比較に基づく、前記最も緊密にフィットするキャリアが満足なものであるとの決定に応じて、カスタムキャリアを生成することなく前記最も緊密にフィットするキャリアの回収を開始する段階
を備える方法。
【請求項16】
前記治療仕様において示されたシード強度を有する複数の放射性シードを選択する段階;及び
前記複数の放射性シードを、前記治療仕様において示された位置及び向きに植え込む段階
をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも腫瘍空洞サイズ及び形状及び放射線線量を含む治療仕様を受け取る段階;
前記治療仕様に基づいて所望のキャリア構成を決定する段階、前記所望のキャリア構成は、カスタムキャリアについて、キャリア形状及び放射性シード数量を示す;
前記カスタムキャリアの植え込みが実行される外科手術が閾値時間よりも少なく離れているかどうかを決定する段階、及び
前記外科手術が閾値時間よりも少なく離れているとの決定に応じて、既に作成されて植え込みのために利用可能な最も緊密にフィットするキャリアを決定する段階、前記最も緊密にフィットするキャリアは、前記所望のキャリア構成に最も近い利用可能なキャリア構成を有する、及び、前記最も緊密にフィットするキャリアの回収を開始する段階;又は
前記外科手術が閾値時間未満だけ離れていないとの決定に応じて、1又は複数のカスタムキャリアコンポーネントを使用して前記所望のキャリア構成を有するカスタムキャリアの生成を開始する段階、前記カスタムキャリアコンポーネントは、3Dプリンタ、射出成形システム、機械加工コンポーネント、又はバイオプリンタのうちの1又は複数を含む
を備える方法。
【請求項18】
植え込みの前に、前記カスタムキャリアを殺菌する段階
をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記治療仕様において示されたシード強度を有する複数の放射性シードを選択する段階;及び
前記複数の放射性シードを、前記治療仕様において示された位置及び向きに植え込む段階
をさらに備える、請求項17又は18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、小線源治療(brachytherapy)において使用される放射性シードキャリアのカスタマイゼーションの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の腫瘍は、サイズ、位置、及び正常な組織へのそれらの湿潤量が非常に変化しやすく、このように総じて腫瘍が変化しやすいことから、画一的なアプローチで治療することが困難である。さらに、腫瘍及び/又はデバルキング時に形成される空所(void)の範囲は、手術室において露呈するまでわからない。したがって、腫瘍又は腫瘍床を有効に治療するのに必要な選択肢は、かなり多様である必要がある。
【0003】
小線源治療は、腫瘍内又はそれにすぐ隣接する位置のいずれかに放射線源を配置することを伴う。それは、多くの身体部位のがんの有効な治療を提供する。小線源治療は、集学的がんケアの一環として、費用対効果の高い治療を提供する。小線源治療は、婦人科悪性腫瘍を治療する場合等に、体腔内であるか;食道又は肺癌を治療する場合等に、管腔内であるか;皮膚のがんを治療する場合等に、外表面であるか、又は、頭頚部、胸部、肺、軟組織、婦人科系部位、肝臓、前立腺、及び皮膚の、様々な中枢神経系腫瘍並びに頭蓋外腫瘍を治療する場合等に、間質内であってよい。
【発明の概要】
【0004】
明細書において説明されるシステム、方法、及びデバイスはそれぞれ複数の態様を有し、そのうちの1つも、単独でその望ましい属性を担うものではない。本開示の範囲を限定することなく、複数の非限定的な特徴をここで簡単に説明する。
【0005】
本明細書においては、患者の腫瘍空洞の周りでの補助放射線治療を提供するためのカスタム放射性シードキャリアを製造するための方法及び装置が論じられる。カスタムキャリアは、患者治療プランのキャリア仕様に基づいて、カスタムキャリアのためのモールドを生成するようにプログラムされた3Dプリンタを使用して作成され得る。その後、モールドは、コラーゲン(例えば、ヒト由来又はウシ由来)及び/又は別の生体吸収性材料が充填されて、カスタムキャリアを形成し得る。その後、1又は複数の放射性シードが、キャリアに埋め込まれてよく、キャリアは、凍結乾燥され(lyophilized)(例えば、フリーズドライされ(freeze dried))、殺菌され、腫瘍空洞内に配置されるためにキャリアが準備された外科手術センターに発送されてよい。いくつかの実施形態において、射出成形を用いて、カスタム放射性キャリアを作成するためのカスタムモールドが作成されてよい。いくつかの実施形態において、バイオプリンタを用いて、患者治療プランに基づいてカスタマイズされたコラーゲンの層を印刷すること等によって、カスタムキャリアを印刷してよい。これら及び他の実施形態が、明細書においてさらに詳細に論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の原理は、以下の図面を参照すれば明らかになり、ここで、類似の参照符号は類似の構成要素を示す。
【0007】
【
図1】小線源治療において使用されるカスタムキャリアを作成するのに使用可能なデバイスのシステムの高次図である。
【0008】
【
図2】カスタムキャリアを作成するための例示的なデバイス及び方法を示している。
【0009】
【
図3】患者のためのスケジュールされた小線源治療プロセスの前に実行され得るカスタムキャリアを製造する方法の1つの例を示すフローチャートである。
【0010】
【
図4】カスタム装填キャリアを生成するための術中プロセスの1つの実施形態を示すフローチャートである。
【0011】
【
図5A】立方体形状キャリアのアレイを生成するためのカスタムキャリアモールドの斜視図である。
【
図5B】立方体形状キャリアのアレイを生成するためのカスタムキャリアモールドの上面図である。
【0012】
【
図5C】
図5A及び
図5Bの例示的なモールドを使用して生成され得る一連のカスタムキャリアの一例である。
【0013】
【
図6A】半球形キャリアのアレイを生成するための別のカスタムキャリアモールドの斜視図である。
【
図6B】半球形キャリアのアレイを生成するための別のカスタムキャリアモールドの上面図である。
【0014】
【
図7A】上部及び下部を含むカスタムキャリアモールドの斜視図である。
【
図7B】上部及び下部を含むカスタムキャリアモールドの側面図である。
【0015】
【0016】
【
図8A】球形の縦溝付きキャリアを生産するように構成された別のカスタムモールドの斜視図である。
【0017】
【
図8B】
図8Aのモールドを用いて作成されたカスタムキャリアの側面図である。
【0018】
【
図8C】
図8Bに示されているカスタムキャリアの断面の断面図である。
【0019】
【
図9A】別のカスタムキャリアモールドの斜視図である。
【
図9B】別のカスタムキャリアモールドの側面図である。
【0020】
【
図9C】別の例示的なカスタムキャリアモールドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特定の好ましい実施形態及び例が下に開示されているが、発明の主題は、具体的に開示された実施形態を超えて他の代替的な実施形態及び/又は使用、及びそれらの修正形態及び均等物にまで拡張する。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲は、以下に記載された特定の実施形態のいずれによっても限定されない。例えば、本明細書中に開示された任意の方法又は処理において、その方法又は処理の複数の作用又は複数の動作は、任意の適切な順序で実行されてもよく、必ずしもいずれの特定の開示された順序にも限定されるものではない。様々な動作は、その特定の実施形態を理解する上で役立ち得るように、順に、複数の別個の動作として説明され得る;しかしながら、説明の順序はこれらの動作が順序依存的であることを示唆すると解釈されるべきではない。さらに、本明細書中に説明される複数の構造、複数のシステム、及び/又は複数のデバイスが、統合された複数の構成要素として、又は別個の複数の構成要素として具現化されてもよい。様々な実施形態を比較することを目的として、これらの実施形態の特定の態様及び利点が説明される。必ずしも、全てのそのような態様又は利点は、任意の特定の実施形態によって実現される必要はない。したがって、例えば、様々な実施形態は、本明細書中でも教示又は示唆され得るように、複数の他の態様又は利点を必ずしも実現せずに、1つの利点又は一群の利点を本明細書中で教示されたごとく実現又は最適化する形で、実施されてもよい。
【0022】
例示の実施形態を下で説明する。明確性の利益のために、実際の実施態様の全ての特徴が本明細書において説明されているわけではない。任意のそのような実際の実施形態の発展において、実施態様によって様々であるシステム関連及びビジネス関連の制約の遵守等の、開発者の特定の目的を達成するために、多数の実施態様固有の決定がなされるはずであることが、当然ながら理解される。
[用語]
【0023】
本明細書において論じられるシステム及び方法の理解を促進するために、複数の用語を下で説明する。明細書において使用されているこれらの用語及び他の用語は、提供された説明、それらの用語の通常かつ慣例的な意味、及び/又はそれぞれの用語についての任意の他の示唆される意味を含むように解釈されるべきであり、そのような解釈は、それらの用語の文脈と一貫する。したがって、下の説明は、これらの用語の意味を限定せず、例示的な説明を単に提供するものである。
【0024】
腫瘍:細胞の無制御な進行性の増殖から生じる組織の異常成長。腫瘍は、良性又は悪性であり得る。
【0025】
腫瘍床:腫瘍が存在する患者(例えば、ヒト又は他の哺乳動物)の解剖学的領域(術前腫瘍床)、及び/又は、腫瘍が外科的に除去された頭蓋腔等の、外科的に除去された腫瘍の周囲領域(術後腫瘍床)。腫瘍の外科的除去の後であっても、患者の残存する腫瘍床は、腫瘍細胞を含み得る。
【0026】
治療領域:1又は複数の放射線送達デバイス(例えば、下で論じられるキャリア)等からの、放射線の送達目標である解剖学的領域。治療領域は、腫瘍又は腫瘍床の解剖学的領域等の、放射線送達デバイスが配置される位置の下方及び/又はその周りの組織を含んでよい。
【0027】
治療表面:治療領域に放射線を送達するために放射線送達デバイスが配置されることになる、治療表面それ自体及び/又は治療表面の下方の組織等の、患者(例えば、ヒト又は他の哺乳動物)の解剖学的表面。治療表面は、腫瘍床又は任意の他の解剖学的表面の一部であってよい。例えば、腫瘍床が外科的に形成される場合、治療表面は、腫瘍床の露出した表面全体、そのような露出した表面の一部、又は、腫瘍床及び周囲組織領域の露出した表面全体を含んでよい。
【0028】
小線源治療:放射線送達デバイスが、身体の治療表面に直接及び/又はその近傍に、例えば、身体の表面に直接、身体の内部に、又は腫瘍床内等に配置される放射線治療。例えば、小線源治療は、頭蓋又は婦人科悪性腫瘍等において、体腔内であるか;食道又は肺癌等において、管腔内であるか;皮膚のがん等において、外側であるか;及び/又は、頭部、頸部、肺、軟組織、婦人科系部位、直腸、肝臓、前立腺、及び陰茎の、様々な中枢神経系腫瘍並びに頭蓋外腫瘍の治療等において、間質内であってよい。
【0029】
シード:腫瘍及び/又は腫瘍床に放射線を送達するように構成された放射性物質。シードは、円筒形、円錐形、球形、ピラミッド形、立方体、プリズム、矩形プリズム、三角形プリズム、及び/又は、これらの任意の組み合わせ、又は他の形状等の、様々な形状及びサイズであってよい。シードは、明細書において一般に円筒形であるものとして言及されているが、本明細書において論じられる様々なシステム及び方法において、任意の他の形状又はサイズのシードを代替的に使用してよい。シードは、例えば、Cs131、Ir192、I125、Pd103等の複数の放射性成分のうちの1又は複数の任意の組み合わせを含んでよい。シードは、放射性物質を部分的に又は完全に包囲する保護外殻を含んでよい。シードは、放射線源の1つの形態である。本明細書において使用される「放射線源」という用語は、一般に、単独(例えば、1つのシード)であるか又はキャリア(例えば、埋め込まれた放射性シードを有するタイルキャリア)に埋め込まれるか又は別様に取り付けられた放射性シード(又は、放射線を発する他の物体)を指す。
【0030】
キャリア(Carrier):放射性シードを保持又は含有する基材。1又は複数のシードを含有するキャリアが、放射線送達デバイスである。キャリアは、コラーゲン等の、1又は複数の生体吸収性材料等の様々な物質を含んでよい。したがって、これらの生体吸収性材料は、生分解性であるか、又は、数週間又は数ヵ月の期間等を経て、経時的に哺乳類組織に自然に吸収される。キャリアは、任意の残存する悪性組織を治療すべく、腫瘍が除去された領域の周囲の治療表面に放射エネルギーを提供するため等に、腫瘍床に永久的に植え込まれるように構成されてよい。キャリアは、様々な物質で構成され、様々な形状及びサイズを取ることができる。様々なサイズ、形状、構成等を有するキャリア等の例示的なキャリアが、以下の特許及び特許出願に含まれており、そのそれぞれは、参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に援用される:
● 「線量カスタマイズ可能な小線源治療キャリア及び腫瘍の治療におけるその方法」と題する、2014年7月2日に出願された米国特許出願第14/322,785号、すなわち現在の米国特許第8,876,684号、及び
● 「線量カスタマイズ可能な小線源治療キャリア及び腫瘍の治療におけるその方法」と題する、2014年3月17日に出願された米国特許出願第14/216,723号、すなわち現在の米国特許第9,492,683号。
● 「カスタム小線源治療キャリア」と題する、2021年3月19日に出願された米国特許出願第63/163583号。
【0031】
タイルキャリア(Tile Carrier)(「タイル(Tile)」とも称される):実質的に平面であり、腫瘍床に配置された場合に2次元の平面幾何形状を概ね維持するタイプのキャリア。タイルの材料に依拠して、タイルは、腫瘍床により良好に適合すべく、曲がることによってタイルが変形できるように柔軟であってよい。例えば、本質的にコラーゲン(及び/又は他の柔軟材料)を含むタイルの場合、タイルは、治療表面内又は上に配置されると(及び/又は治療表面に対して押された場合に)術後腫瘍床等の治療表面の形状に適合するように実質的に曲がり得る。
【0032】
カスタムキャリア(Custom Carrier):球形の形状等の1又は複数の平面でない表面を有するか又は球形部分等を有するキャリアである。カスタムキャリアの例として、下で述べられる球形キャリア、ゴアキャリア、及びスターキャリア、並びに本明細書において論じられる他のカスタムキャリアが挙げられる。カスタムキャリアは、任意の寸法で非対称であるか、及び/又は、任意の所与の形状(例えば、空洞の構成)に適合するように構成されてよい。
【0033】
球形キャリア(Spherical Carrier)(又は「ガンマスフィア(GammaSphere)」):軸の周りの実質的に放射状対称な本体。球形キャリアは、球形部分から延びる先細り部分等の、非球形部分も含んでよい。球形キャリアの他の変形の例が、「カスタム小線源治療キャリア」と題する、2021年3月19日に出願された米国特許出願第63/163583号において論じられており、これは、参照によりその全体があらゆる目的で援用される。
【0034】
ゴアキャリア(Gore Carrier)(「ゴア(Gore)」とも称される):3次元であり、有効なインプラントに必要な幾何形状を維持しながら腫瘍床に適合するタイプのキャリア。いくつかの実施形態において、ゴアは、最初は平面であり、類似の形状の腫瘍空洞に配置され得る半球形表面等を形成するように、3次元形状を取るように再構成される。ゴアキャリアは、「線量カスタマイズ可能な小線源治療キャリア及び腫瘍の治療におけるその方法」と題する、2014年7月2日に出願第14/322,785号として出願された米国特許第8,876,684号においてさらに論じられており、これは、参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0035】
スターキャリア(Star Carrier)(「スター(Star)」又は「アームベースキャリア(arm-based carrier)」とも称される):手術空洞又は同様の空間に構成及び配置された場合に適合性のある3次元形状を取り、有効なインプラントに必要な幾何形状を維持しながら治療環境に適合するタイプのキャリア。しかしながら、いくつかの実施形態において、スターキャリアは、比較的平坦な腫瘍又は腫瘍床領域を覆うように、それらの初期平面状態において使用されてよい。スターキャリアは、「線量カスタマイズ可能な小線源治療キャリア及び腫瘍の治療におけるその方法」と題する、2014年3月17日に出願第14/216,723号として出願された米国特許第9,492,683号においてさらに論じられており、これは、参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0036】
ローダー:キャリアへのシードの注入等を介した、キャリアにおける放射性シードの配置を補助するデバイス。ローダーは、明細書において「装填デバイス」とも称され、キャリアを適所に保持し、シードをキャリア中の精確な位置に配置するために送達デバイス(例えば、針又は注射器)をキャリア中にガイド等するように、複数の構成要素を有してよい。「ローダー特許」は、「線量カスタマイズ可能な小線源治療キャリアを装填するための装置」と題する、2012年4月30日に出願された米国特許出願第13/460,809号、すなわち現在の米国特許第8,939,881号、及び、「放射性シードをキャリアに装填するための装置及び方法」と題する、2015年4月24日に出願された米国特許出願第14/696,293号を指し、これらは、それぞれ参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に援用され、ローダーの複数の実施形態を説明している。明細書においてさらに論じられるように、ローダーは、人間の操作者等によって手動で操作されてもよいし、又は、自動化プロセスを使用してキャリアにシードを装填できるように完全に自動化されてもよい。代替的に、ローダーは、部分的に自動化されており、部分的に手動操作を要求するように構成されてよい。
【0037】
遮蔽材:放射性粒子を吸収、反射、及び/又は散乱させること等によって、放射性粒子の移動を制限する任意の材料。本明細書において使用される「遮蔽」という用語は、一般に、放射線を吸収、反射、又は別様にブロックする遮蔽材等によって、放射線が対応する遮蔽材を通過して出ることを防ぐ任意のメカニズムを指す。本明細書において論じられる様々な実施形態において、様々な形態の遮蔽材が使用されてよい。例えば、遮蔽材は、粒子、ワイヤ、ロッド、シリンダー、バー、シート、液体、溶液、発泡体の形態、又は、放射線吸収及び/又は反射特性を有する材料が可能である任意の他の形態であってよい。遮蔽材は、一般に、特定の遮蔽材によって提供される、放射エネルギー(1又は複数の放射線源から発せられる)の遮蔽量である遮蔽率を提供する。同様に、複数の遮蔽材及び絶縁シートを含む遮蔽層が、関連付けられた遮蔽率を有し、これは、その内部の遮蔽(及びおそらくは非遮蔽)材の組み合わせに依拠する。いくつかの応用に関して、臨床上の必要性等に基づいて、25%、50%、75%、90%、95%、98%、又は何等かの他の遮蔽パーセンテージの遮蔽率を提供する絶縁シートが所望され得る。本明細書において論じられるように、材料組成、形状、サイズ、寸法等は、遮蔽材の遮蔽能力に影響を与え得る。単一の遮蔽材によって提供され得るよりも高い遮蔽パーセンテージが所望ましい応用(例えば、臨床上の必要性に基づく)に関して、複数の遮蔽材を、1又は複数の遮蔽層又は絶縁シートにおいて組み合わせて使用してよい。
【0038】
高Z材料:20よりも大きい原子番号の任意の元素又はそのような材料を含有する合金。
【0039】
ホットキャリア:放射性である材料が装填されたキャリア。
【0040】
コールドキャリア:放射性シードの装填前のキャリア等の、放射性である材料が装填されていないキャリア。
【0041】
線量測定:組織又は臓器における放射線吸収線量(ラド)の測定及び量的記述のプロセス。
【0042】
治療仕様:患者のために作成された治療プラン等に基づく、特定の患者のためのカスタム放射性シードキャリアの選択及び/又は製造において有用な任意の情報。治療仕様は、空洞サイズ、空洞形状等のような、カスタムキャリアが使用される腫瘍空洞に関する情報を含んでよい。治療仕様は、患者の治療表面に対して実現されるべき所望の放射線の線量も含んでよい。いくつかの実施態様において、治療仕様は、キャリアの好ましいサイズ、形状、材料等の指示のような、さらなる詳細を含んでよい。
[例示的なカスタムキャリアシステム]
【0043】
図1は、小線源治療において使用されるカスタムキャリアを作成するのに使用可能なデバイスのシステムの高次図である。
図1の実施形態において、治療プラン作成システム110は、特定の患者又は他の哺乳動物のための小線源治療の治療プランを決定する。治療プランは、例えば、患者からの腫瘍の除去後に残る腫瘍空洞の治療表面に投与するように放射線腫瘍医が規定した放射線線量を示してよい。治療プラン作成システム110は、カスタムキャリアシステム120に治療仕様115を提供する。治療仕様115は、例えば、治療空洞及び/又は治療表面(例えば、放射性キャリアを受け取る空洞の表面)の形状及びサイズ、並びに、提供されるべき所望の放射線線量に関する情報を含んでよい。放射線線量は、除去された腫瘍に最も近い治療表面の部分におけるより高い線量、及び除去された腫瘍から遠い治療表面の部分におけるより低い線量を示すため等に、治療表面の異なる領域についての複数の線量指示を含んでよい。
【0044】
図1の例において、カスタムキャリアシステム120は、治療仕様115を受け取って処理し、治療仕様115を満たす1又は複数のカスタムキャリアのための仕様を決定するように構成されたキャリア仕様コンポーネント121を備える。キャリア仕様コンポーネント121は、明細書において一般にカスタムキャリア構成又はキャリア構成と称される治療仕様115を満たすベストフィット(best fit)のキャリア(例えば、キャリアサイズ、形状、材料、シード数量、シード強度等)を自動的に決定するように構成されたソフトウェアを含んでよい。いくつかの実施形態において、キャリア構成の作成をガイドするために使用されるベストフィットパラメータが、ソフトウェアプロバイダーによって、治療プランナによって、及び/又は、小線源治療処置を実行している外科医によって定義され得る。そのようなベストフィットパラメータは、キャリアのより少ない又はより多い数量、キャリアのより小さな又はより大きなサイズ、放射性物質線量の範囲、放射性シードの強度、放射性シードの数量、放射性シードの位置又は向きに関するプレファレンス、カスタムキャリアのための材料に関するプレファレンス、及び/又は任意の他のパラメータを含んでよい。いくつかの実施形態において、治療仕様115に同様のパラメータが含まれてよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、治療仕様115がキャリア仕様コンポーネント121によって自動的に分析されて、例えば、キャリアの数量、これらのキャリアの形状及びサイズ、各キャリアに関する放射性シードの数量、各キャリア内の放射性シードの位置等を示す、キャリア構成を決定してよい。したがって、キャリア仕様コンポーネント121は、治療プラン作成システム110を使用する放射線腫瘍医等の治療プランナが、カスタムキャリア構成の生成をカスタムキャリアシステムに任せながら、所望の治療仕様を簡単に提供することを可能にする。いくつかの実施形態において、治療プランナ(例えば、及び治療プラン作成システム110上で使用される治療プラン作成ソフトウェア)は、特定の治療プランのためのキャリア構成の選択を可能にするように構成されてよい。したがって、そのような実施形態において、キャリア構成は、治療仕様115の一部として又は治療仕様115の代わりに含まれてよい。
【0046】
キャリア仕様コンポーネント121がキャリア構成を決定すると、カスタムキャリアコンポーネント122は、カスタムキャリアを作成する。実施形態に応じて、カスタムキャリアコンポーネント122は、様々なキャリア製造ハードウェア、ソフトウェア、及び材料を含んでよい。例えば、キャリア仕様コンポーネント121は、カスタムキャリアコンポーネント122に命令を自動的に送信してよく、これがさらには次に、受け取ったカスタムキャリア構成に基づいてカスタムキャリアを自動的に作成してよい。
【0047】
図2は、カスタムキャリアの作成においてカスタムキャリアコンポーネント122によって利用され得る例示的ないくつかのデバイス及び方法を示している。3Dプリンタ210、射出成形システム220、及び機械加工コンポーネント230のそれぞれは、まず、カスタムモールドを製造するように構成されており、これは、その後、モールドを使用してカスタムキャリアを作成するために使用可能である。
【0048】
例えば、3Dプリンタ210は、1又は複数のキャリアモールドの固有の印刷詳細を示すキャリア構成の一部又は全てを受け取ってよい。印刷詳細は、既知のファイルタイプ、例えば、ステレオリソグラフィーファイルフォーマット(STL)等でのモールド(又は複数のモールド)を記述するコンピューター支援設計(CAD)情報を含んでよい。印刷詳細は、プラスチック、金属、又は他の好適な材料等の材料の指示をさらに含んでよい。いくつかの実施態様において、カスタムキャリアコンポーネント122は、複数の3Dプリンタにアクセスし、印刷詳細に基づいて、新規の印刷ジョブのために3Dプリンタのうちの1つを選択する。
【0049】
1つの例として、キャリアモールドは、生体吸収性材料がキャビティ内に配置され、上部及び下部が一緒に接合された場合に、キャリア構成において規定された寸法を有するキャリアが生成されるようなサイズの1又は複数のキャビティをそれぞれ有する下部及び上部を有してよい。例えば、
図7A及び
図7Bは、
図7Cのカスタムキャリア730を成形するように構成されたカスタムモールド700を示している。カスタムキャリアコンポーネント122が3Dプリンタ210を含む実施形態において、カスタムモールド700の上部710T及び下部710Bは、同時印刷で又は順に次々に、3Dプリンタによって印刷されてよい。
図7Aに示されているように、上部710Tは、半球形キャビティ720Tを有し、下部710Bは、同様の半球形キャビティ720Bを有する。有利には、カスタムモールド700の上部710T及び下部710Bが、
図7Bの側面図におけるように位置合わせされて一緒に配置された場合、キャビティ720T及び720Bは球形キャビティを形成する。したがって、球形キャリア730を形成するように、コラーゲン又はその誘導体等の生体吸収性材料がキャビティ内部に配置されてよい。
図2を参照すると、成形コンポーネント215は、キャリア材料をキャビティ720に導入し、(例えば、
図7Bに示すような)キャビティ内部でのキャリア材料の乾燥、硬化、及び/又は固化のためにモールドを閉じ、及び/又は、開いてキャビティ720内部から成形されたカスタムキャリア730を取り出す自動化及び/又は手動デバイスを含んでよい。
【0050】
射出成形システム220が、3Dプリンタ210と同様に使用されてよい。例えば、射出成形システム220は、射出成形処理を介して
図7Aに示すものと同様のモールドを作成してよい。したがって、成形コンポーネント225は、射出成形システム220を使用して製造されたモールドを使用してカスタムキャリアを作成するように、成形コンポーネント215と同様に機能してよい。
【0051】
機械加工コンポーネント230が、3Dプリンタ210及び/又は射出成形システム220と同様に使用されてよい。例えば、機械加工コンポーネント230は、カスタムキャリアを作成するために使用可能なキャビティを形成するために基材内に空所をフライス加工、ドリル加工、切削、リーマで加工等してよい。例えば、機械加工コンポーネント230は、平面基材(例えば、金属、木製、プラスチック等)の複数の部分を除去して、
図7Aのモールド部分710T及び710B等の基材における半球形キャビティを作成してよい。成形コンポーネント235は、成形コンポーネント215及び225と同様に機能して、その後、1又は複数のキャリアの生産において機械加工されたモールドを使用してよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、成形コンポーネント210、220、230のうちのいずれかは、内部球形キャビティを有するキュービクル構造体等の単一構造体モールドを生成してよい。そのような実施形態において、粘性キャリア材料が球形キャビティに射出され得るように、モールドの外表面からキャビティまで延びる1又は複数の射出路がモールドに含まれてよい。
【0053】
バイオプリンタ240を使用して、キャリア仕様コンポーネント121によって作成されたキャリア構成に基づくカスタムキャリアを生成してもよい。バイオプリンタ240は、モールドを必要とすることなく、例えば、カスタムキャリアの形状のバイオインク(例えば、液体コラーゲン又は同様の生体吸収性材料)の層を印刷し得る。例えば、
図7Cのキャリア730は、印刷が完了すると除去され得る、球形キャリアの下側部分に印刷された支持体等を伴って、キャリア構成に従ってバイオプリントされてよい。いくつかの実施形態において、バイオプリンタ240は、キャリアの上半分が完全に印刷されたときにキャリア内で放射性シードが中央に位置するように、キャリアが約半分印刷されたとき等に、部分的に印刷されたキャリア内部に放射性シードを挿入するように構成されてよい。いくつかの実施形態において、バイオプリンタ240は、バイオプリンタ240からの信号等に応答して、部分的に印刷されたキャリアに適切な時間に放射性シードを挿入するシード挿入デバイスと連携して動作してよい。
【0054】
図1に戻ると、凍結乾燥コンポーネント124は、カスタムキャリアを任意選択で凍結乾燥させる。凍結乾燥処理は、カスタムキャリアをフリーズドライさせる処理を一般に実行する。いくつかの実施形態において、カスタムキャリアの凍結乾燥は、実行されなくてよい。
【0055】
次に、シード装填コンポーネント126は、装填されたキャリアがベストフィットの治療仕様115を集合的に提供するように、キャリア構成において示されたように、カスタムキャリアに放射性シードを装填する。シード装填コンポーネント126は、ローダー特許において説明されているものを含む、装填デバイス及び技術の様々な組み合わせ等を用いる、自動化及び/又は手動シード装填処理を含んでよい。
【0056】
キャリアに放射性シードが装填された状態で、殺菌コンポーネント128が、装填された(又は「ホット」)キャリアを任意選択で殺菌する。ホットキャリアは、その後、外科手術センター130に移送され、そこで患者の腫瘍空洞に植え込まれる。
【0057】
図3は、患者のためのスケジュールされた小線源治療プロセスの前に実行され得るカスタムキャリアを製造する方法の1つの例を示すフローチャートである。1つの実施形態において、
図3の処理は、カスタムキャリアシステム120によって実行されてよく、これは、治療プラン作成システム110及び/又は外科手術センター130の遠隔にあり得る。他の実施形態において、処理の複数の部分は、治療プラン作成システム110及び/又は外科手術センター130によって実行されてよい。実施形態に応じて、
図3の方法は、より少ない又は追加のブロックを含んでよく、ブロックは、示されているものとは異なる順序で実行されてよい。
【0058】
ブロック310から開始して、治療プラン作成システム110等から、治療仕様が受け取られる。上で述べたように、治療仕様は、規定された線量、カスタムキャリアが配置される空洞のサイズ及び/又は形状等の空洞仕様を含んでよい。他の実施形態において、治療仕様は、異なる又は追加の情報を含んでよい。
【0059】
ブロック320に進むと、治療仕様に基づいて、1又は複数のキャリアの構成が決定される。例えば、キャリア構成は、特定の患者のための治療仕様を満たすようにカスタムキャリアコンポーネント122(
図1)によって決定された1又は複数のキャリアのそれぞれの構成を示してよい。キャリア構成は、1又は複数のキャリアの数量、形状、サイズ等、並びに、カスタムキャリアに挿入される放射性シードの数量、強度、位置等のような放射性シード仕様を含んでよい。例えば、キャリア構成は、複数のキャリアのそれぞれについて、キャリアの形状及びサイズ(キャリアの複数の形状及びサイズを含んでよい)、並びに、キャリアのそれぞれについての放射性シードの数量、強度、及び位置(キャリア毎に異なり得る)を示してよい。いくつかの実施形態において、キャリア構成は、キャリア構成に従った腫瘍空洞内のキャリアのそれぞれの適切な位置及び向きを示すユーザ可読ビジュアライゼーション(例えば、外科手術センターがアクセス可能なウェブページ又はPDF等の、カスタムキャリア及び/又は電子ユーザインタフェースとともに送信され得る印刷文書)を含む。
【0060】
次に、ブロック330において、カスタムキャリアの植え込みが実行される外科手術が閾値時間よりも少なく離れているか否かが決定される。閾値時間は、決定されたキャリア構成に従ってカスタムキャリアを確実に製造し、対応する外科手術センターにカスタムキャリアを移送するために必要な時間であってよい。いくつかの実施形態において、カスタムキャリアの製造には、6時間、12時間、1日、2日、3日等のような所定の最小時間が要求される。いくつかの実施形態において、製造時間は、カスタムキャリアの数、カスタムキャリアモールドの数、放射線線量、キャリア構成を実装するための材料の利用可能性、及び/又はカスタムキャリアを製造するために要求される時間に影響を与え得る任意の他の因子等の、他の因子に依拠する。さらに、例えば、外科手術センターへのカスタムキャリアの移送は、固定時間であってもよいし、又は、外科手術センターにおけるカスタムキャリア製造施設からの距離に応じて変化してもよい。したがって、閾値時間は、複数の因子に依拠して変化し得る。
【0061】
スケジュールされた外科手術が、外科手術センターへのカスタムキャリアの予想される配達(例えば、現在の日時+カスタムキャリアの製造及び配達に要する閾値時間)の前にある場合、外科手術センターにおけるキャリアの準備を早めるために、キャリア目録にアクセスする代替的な処理が実行されてよい。例えば、ブロック340において、システムは、自動的に及び/又は手動で利用可能なキャリア目録にアクセスし、これは、カスタムキャリア製造施設及び/又は他のキャリア保管施設に保管されたキャリアの様々なサイズ、形状、材料を含んでよい。したがって、システムは、カスタムキャリアシステム120よりも外科手術センターにより近い場合がある施設を含む複数の施設における目録にアクセスしてよく、そうして、外科手術センターへのキャリアの移送のために要する時間がより少なくなり得る。
【0062】
次に、ブロック350において、システムは、利用可能な目録から、決定されたキャリア構成に最も緊密にフィットする(closest fit)キャリアを決定する。(ブロック330において決定されたように)カスタムキャリアが外科手術に間に合うように生成され得ないので、ブロック320において決定されたキャリア構成を厳密には満たさないキャリアが、様々な組み合わせで分析されて、治療仕様をそれでも満足に提供する代替的なキャリア構成を特定し得る。
【0063】
代替的に、ブロック330において、決定されたキャリア構成に従ってカスタムキャリアを生成する時間が十分にあるとシステムが決定する場合、方法は、ブロック360に進み、ここで、1又は複数のカスタムキャリアがキャリア構成に合致するように形成される。いくつかの実施形態において、
図1において論じられているような、このカスタムキャリア製造処理は、
図2に示されているもの等の1又は複数のカスタムキャリアコンポーネント122を使用する。
【0064】
ブロック360において製造されたカスタムキャリア又はブロック350において目録から選択された標準的なキャリアを用いて、方法は、続いてブロック370に進み、ここで、上記キャリア構成又は標準的なキャリアが使用された場合には代替的なキャリア構成によって決定された放射性シードがキャリアに装填される。上で述べたように、シードの装填は、ローダー特許において論じられているもの等の、様々な方法によって実行されてよい。
【0065】
次に、ブロック380において、装填されたキャリアは、任意選択で殺菌され、植え込みのために医療施設に発送される。実施形態に応じて、装填されたキャリアの移送は、カスタムキャリア(例えば、UPS、FedEx、USPS等)によって実行されてもよいし、又は、医療デバイス及び/又は放射性物質の配達においてカスタマイズする専用のチャーター配達サービスであってもよい。
【0066】
図4は、カスタム装填キャリアを生成するための術中プロセスの1つの実施形態を示すフローチャートである。例えば、
図4の処理は、手術室及び/又は外科手術センターの近隣施設等において、患者が腫瘍除去外科手術を受けている間に実行されてよい。したがって、
図4の処理は、早期の選択及びカスタムキャリアの使用を可能にする。実施形態に応じて、
図4の方法は、より少数又は追加のブロックを含んでよく、ブロックは、示されたものとは異なる順序で実行されてよい。
【0067】
ブロック410から開始して、外科施設にいる(又はこれとコンタクトを取っている)外科医、腫瘍医、及び/又はその他の人が、患者のための治療仕様を受け取るか及び/又は決定する。例えば、いくつかの実施態様において、治療仕様は、カスタムキャリアが同じ外科的処置中に植え込まれ得るように、腫瘍が除去される間にリアルタイムで及び/又は腫瘍が除去されたすぐ後に決定される。
【0068】
ブロック420において、例えば上で論じたブロック320と同様に、カスタムキャリア構成が決定されてよい。いくつかの実施形態において、ブロック420におけるカスタムキャリア構成は、術中処理中に利用可能なカスタムキャリアコンポーネント122を用いて可能であるキャリア構成を提供するように限定されてよい。
【0069】
次に、ブロック430において、現在の外科的処置での使用に利用可能な標準的なキャリアを決定するために、利用可能なキャリア目録がアクセスされる。例えば、外科施設に位置するキャリア、及び、外科施設の近傍内にある他のキャリアが、利用可能な標準的なキャリア目録に含まれてよく、デフォルトの時間に設定されるか及び/又は外科チームによってカスタマイズされてよい閾値時間(例えば、20分、40分、60分、2時間等)内に外科施設にそれらを送達することができるようになっている。
【0070】
ブロック440に進むと、決定されたキャリア構成及び治療仕様を実現する決定された利用可能な目録から最も緊密にフィットするキャリア及び/又は放射性シードが選択される。その後ブロック450において、外科チームが植え込みを進めるためにその最も緊密にフィットするものが満足なものであるか否かが決定される。いくつかの実施形態において、決定された最も緊密にフィットするものに関する要約情報が、評価及び最も緊密にフィットするものが治療仕様を満たすか否かの決定のために外科チームに提供される。いくつかの実施形態において、システムは、ブロック450において、治療仕様の様々なパラメータにおける閾値許容差等に基づいて、最も緊密にフィットするものが満足なものであるか否かを自動的に決定してよい。
【0071】
ブロック450において、最も緊密にフィットするものが満足でないと決定された場合、キャリア構成に合致するように、無菌で1又は複数のカスタムキャリアが形成され得る、例えば、外科施設それ自体においてバイオプリントされ得る。例えば、バイオプリンタ240を参照しながら上で論じられたプロセスは、外科施設において実行されてよい。代替的に、カスタムキャリアを生成するために、キャリア構成に合致するカスタムキャリアの製造のためにすぐに使用可能なカスタムモールドを機械加工する機械加工処理等の、他のキャリアコンポーネントが用いられてよい。
【0072】
ブロック450において、最も緊密にフィットするものが満足するものではないと決定された場合、方法は、続いてブロック470に進み、ここで、最も緊密にフィットするキャリア構成、及び/又は、シード強度、シード数量等のような他の治療仕様を満たすように、目録からのベストフィット放射性シードが目録からの既存のキャリアに装填される。代替的に、ブロック460においてカスタムキャリアが形成された場合、ブロック470において、これらのカスタムキャリアに、キャリア構成に合致する決定されたシードが装填される。いずれの場合にも、装填されたキャリアは、ブロック480においてすぐに植え込むために利用可能である。
【0073】
図5Aは、36の立方体形状キャリアのアレイを生成するためのカスタムキャリアモールド500の斜視図であり、
図5Bは、その上面図である。モールド500は、カスタムキャリアコンポーネント210、220、230のうちのいずれかによって生成されてよい。例示的なカスタムキャリアモールド500は、生体吸収性材料を受け取り、成形して、立方体形状のキャリアにするように構成された、36のキャビティ510を有する。いくつかの実施形態において、生体吸収性材料がキャビティ510内に配置され、適用可能な場合は、乾燥、硬化、及び/又は固化させられる。乾燥又は硬化させた後、適用可能な場合は、カスタムキャリアがモールド500から落ちるようにキャリアモールド500を反転させること等によって、キャリアがキャビティ510から取り出されてよい。いくつかの実施形態において、成形処理の一環として、36のキャビティを有するモールド500に対して実質的に鏡映対称である上部モールド(図示せず)がモールド500に取り付けられてよい。
図5Cは、
図5A及び
図5Bの例示的なモールドを使用して生成され得る一連のカスタムキャリアの一例である。
【0074】
図6Aは、36の半球形キャリアのアレイを生成するための別のカスタムキャリアモールド600の斜視図であり、
図6Bは、その上面図である。モールド600は、カスタムキャリアコンポーネント210、220、230のうちのいずれかによって生成されてよい。示されているように、モールド600は、生体吸収性キャリア材料を受け取って、成形して、半球形キャリアにするように構成された半球形キャビティ610を有する。いくつかの実施形態において、半球形モールド600を用いて製造されたキャリアのそれぞれは、球形キャリアを形成するように他方の半球形キャリアに取り付けられてよい。さらに、第2の半球形キャリアの取り付け前に、第1の半球形キャリアの中央部に放射性シードが配置されて、それにより、結果として得られる球形キャリアの中央部に放射性シードが埋め込まれてよい。同様のシード埋め込み技術が、
図5の立方体形状キャリア等の他の形状のキャリアとともに使用されてよい。他の実施形態において、モールド600に対して実質的に鏡映対称である上部モールド(図示せず)がモールド600に取り付けられて、完全な球形キャリアの成形を可能にし得る。
【0075】
上で論じられたように、
図7A及び
図7Bは、上部及び下部を含むカスタムキャリアモールド700を示している。モールド700は、例えば、カスタムキャリア製造処理の一環として、カスタムキャリアコンポーネント210、220、230のうちのいずれかによって生成されてよい。実施形態に応じて、任意の数量のカスタムキャリア(例えば、
図7Aの実施形態に示されているような1つのカスタムキャリアから、
図5及び
図6の実施形態における36のカスタムキャリア、又はそれよりも多く)を成形するように構成されたカスタムキャリアモールドが、カスタムキャリア成形のために作成及び使用されてよい。
【0076】
図8Aは、球形の縦溝付きキャリア830(
図8B及び
図8C)を生産するように構成された別のカスタムモールド800を示している。モールド800は、例えば、カスタムキャリア製造処理の一環として、カスタムキャリアコンポーネント210、220、230のうちのいずれかによって生成されてよい。この例において、カスタムモールド800は、組み合わされたキャビティ820T及び820Bの形状を有するキャリアを生産するように、下部810Bに取り付けられるように構成された上部810Tを含む。参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に援用される「カスタム小線源治療キャリア」と題する、2021年3月19日に出願された米国特許出願第63/163583号において説明されているように、キャリアに縦溝を付けることは、キャリアの外面上の縦溝を介して空洞に/から流体(例えば、空気又は液体)を送達及び/又はドレナージできること等の、様々な利点を提供し得る。他の実施形態において、任意の他の形状又はサイズのキャリアが、本明細書において論じられたカスタムキャリア処理を用いて生成されてよい。
【0077】
図9A及び
図9Bは、別のカスタムキャリアモールド900を示しており、これは、例えば、カスタムキャリア製造処理の一環として、カスタムキャリアコンポーネント210、220、230のうちのいずれかによって生成されてよい。例示的なモールド900は、下部910Bの高さよりも小さい高さを有する上部910Tを含む。例えば、1つの実施形態において、下部910Bは、組み合わされたモールド900の合計高さの60%(例えば、1cmのモールド高さのうちの0.60cm)を構成し得、上部910Tは、組み合わされたモールドの合計高さの40%(例えば、1cmのモールド高さのうちの0.40cm)を構成する。この実施形態において、モールドには、結果として得られる球形キャリアの中央高さに配置されるシード挿入路930が含まれる。この実施形態において、モールド900は、シード装填デバイスとしても機能し、これは、流路930内への、及びさらにはモールド900内部に形成されたキャリアの生体吸収性材料内へのシード導入デバイス(例えば、針、プッシュロッド等)の導入を通して達成され得る。いくつかの実施形態において、モールド内部に装填された(例えば、「ホット」)キャリアを有するモールド900は、キャリアの発送コンテナとしても機能してよく、これが外科手術センターに移送されてよく、そこでホットキャリアがモールド900から取り出される。
【0078】
図9Cは、上部910T及び下部910Bを有する別の例示的なカスタムキャリアモールドである。この実施形態において、カスタムキャリアは、1又は複数の放射性シードの埋め込みのために、挿入デバイス(例えば、針又はプッシュロッド)をカスタムキャリアの特定の部分内にガイドするように構成された複数のシード挿入路930A~930Fを有する。例えば、
図9Cのカスタムキャリアモールドにおいて作成された球形キャリアには、(シード挿入路930B~Fを介して)外縁位置において、及び/又は、(シード挿入路930Aを介して)中央位置において、放射性シードが装填されてよい。いくつかの実施形態において、上部910Tは、カスタムキャリアの上側外縁部におけるシード挿入のために配置された同様のシード挿入路を有してよい。
【0079】
本明細書において論じられた実施形態のいずれにおいても、カスタムキャリアモールドは、カスタムキャリアへのマーキングを可能にするように構成されてよい。例えば、上部910Tの内表面は、テクスチャ加工されてよく(例えば、リブが付いている等で不均一)、下部910Bの内表面は、テクスチャ加工されていない(例えば、平滑である)。したがって、この例示的なカスタムキャリアモールドを用いて作成された任意の球形キャリアの上部は、モールドから取り出されると、球形キャリアの下部と区別するために触覚的マーキング(視覚的に識別可能でもあり得る)を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、マーキングは、キャリア730又は830等のカスタムキャリアに作成後に加えられてよい。例えば、シード位置、向き、強度、遮蔽(例えば、巻かれたシード遮蔽材)、及び/又はカスタムキャリアの他の特性を示すため等に、キャリア表面上でのパッド印刷を介して、1又は複数の視覚的マーキングがカスタムキャリアに加えられてよい。
【0081】
マーキングは、視覚的及び/又は触覚的であってよく、治療表面に接触する(又はそれに最も近づく)べきであるカスタムキャリアの近位部を示してよい。代替的に、マーキングは、治療表面から最も遠く離れているべきであるカスタムキャリアの遠位部分を示してよい。マーキングは、放射性シードの位置の間等の、カスタムキャリアを切断できる場所を示す切断又は切り取り線を含んでもよい。いくつかの実施態様において、マーキングは、カラーコードスキームを使用して又はカスタムキャリアの表面上に数値放射線強度(例えば、Gy単位)を印刷等して、カスタムキャリアに埋め込まれた各放射性シードの位置、及び/又は、放射性シードのそれぞれの強度を示してよい。同様に、マーキングは、キャリアの遠位部分を示すため等に、遮蔽の位置を示してよい。
[他の実施形態]
【0082】
条件付きの文言、とりわけ、「できる」、「得る」、「よく」、又は、「よい」等は、別段の定めがない限り、又は、使用される文脈において別様に理解される場合を除き、一般に、特定の実施形態が、特定の特徴、要素及び/又はステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図する。したがって、そのような条件付きの文言は、特徴、要素及び/又はステップが何らかの方式で1又は複数の実施形態に必要であること、又は、これらの特徴、要素及び/又はステップが任意の特定の実施形態に含まれるか又は実行されるべきであるかをユーザ入力又はプロンプトを伴って又は伴わずに決定するロジックを1又は複数の実施形態が必ず含むことを示唆するようには、一般に意図されていない。
【0083】
上で説明される実施形態に、多くの変形及び修正が加えられ得ることが強調されるべきであり、それらの要素は、他の許容可能な例に含まれるものと理解される。全てのそのような修正及び変形は、明細書において本開示の範囲内に含まれることが意図されている。前述の説明では、本発明の特定の実施形態を詳述している。しかしながら、前述の説明が、文書としていかに詳細に見えても、本発明は多くの態様で実施可能であることが理解されよう。上でも述べたように、本発明の特定の特徴又は態様を説明する場合における特定の用語の使用は、その用語が関連付けられている本発明の特徴又は態様の任意の固有の特性を含むように限定されるように、その用語が明細書において再定義されることを示唆するものと解釈されるべきではない。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその任意の均等物に従って解釈されるべきである。
【国際調査報告】