(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】アルケンキノン化合物および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07C 205/46 20060101AFI20240305BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20240305BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240305BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240305BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240305BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20240305BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240305BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240305BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240305BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240305BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240305BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240305BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240305BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20240305BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240305BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240305BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240305BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240305BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240305BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240305BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240305BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C07C205/46 CSP
A61K31/122
A61P1/00
A61P1/02
A61P1/16
A61P3/04
A61P9/06
A61P9/04
A61P9/10 101
A61P11/00
A61P11/06
A61P17/02
A61P17/06
A61P17/14
A61P9/12
A61P9/14
A61P25/02
A61P25/28
A61P25/16
A61P31/12
A61P31/04
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P37/00
A61P37/02
A61P35/04
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557723
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2022021714
(87)【国際公開番号】W WO2022204381
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ストラウブ, アダム シー.
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン, ブルース エー.
(72)【発明者】
【氏名】ショップファー, フランシスコ ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206CB27
4C206CB28
4C206EA01
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA01
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4C206ZA96
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4C206ZB11
4C206ZB13
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC19
4H006AA01
4H006AB21
4H006AB22
4H006AB23
4H006AB24
4H006AB25
4H006AB26
4H006AB27
4H006AB28
4H006AB29
4H006AC23
(57)【要約】
CYB5R3活性を増大させ、脈管機能を改善し、CVDにおけるレドックスバランスを回復させることによって炎症を制限する新たな薬理学的治療が、本明細書で開示される。1つの実施形態において、キノン含有部分に共役したニトロアルケン基を含むアルキル鎖を含む化合物が、本明細書で開示される。本明細書でまた開示されるのは、治療上有効な量の、本明細書で開示される化合物を、心血管疾患を有するか、有すると疑われるか、または発生させるリスクにある被験体に投与する工程を包含する、方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
【化22】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
前記化合物は、
【化23】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、
【化24】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、
【化25】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
以下:
【化26】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項6】
以下:
【化27】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項7】
以下:
【化28】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項8】
以下:
【化29】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項9】
以下:
【化30】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項10】
以下:
【化31】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
aは、0~9であり、bは、1であり、cは、0~9である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項11】
以下:
【化32】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項12】
以下:
【化33】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項13】
前記電子吸引基は、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、F、-Brなど)、フルオロメチル(-CF
3)、フルオロアルキル、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO
2R)、スルホネート(SO
3R)、1級、2級および3級アンモニウム(-NR
3
+)、またはニトロ(-NO
2)であり、ここで各Rは、独立して、水素、メチル、C
2~C
6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり得る、請求項1、5、6、7、8、9、11または12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
前記電子吸引基は、ニトロである、請求項1、5、6、7、8、9、11または12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである、請求項1、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
治療上有効な量の、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を、心血管疾患を有するか、有すると疑われるか、または発生させるリスクにある被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
被験体において心血管疾患を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与し、それによって、前記心血管疾患を処置する工程を包含する、方法。
【請求項18】
被験体において心血管疾患を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、ニトロアルケン基を含むアルキル鎖を含む化合物を投与し、それによって前記心血管疾患を処置する工程を包含し、ここで前記ニトロアルケン基を含むアルキル鎖は、キノン含有部分に共役される、方法。
【請求項19】
被験体においてレドックス不均衡と関連する疾患または状態を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与し、それによって前記レドックス不均衡と関連する疾患または状態を処置する工程を包含する、方法。
【請求項20】
被験体に請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を投与し、それによって、前記被験体においてCYB5R3活性を増強する工程を包含する、方法。
【請求項21】
被験体において炎症促進遺伝子であるIL-1β、VCAM-1、ICAM-1 CCL5、CCL20またはCXCL10と関連する炎症状態または疾患を阻害するための方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与し、それによって、前記炎症状態または疾患を処置する工程を包含する、方法。
【請求項22】
被験体に、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を投与し、それによって、前記被験体において平均動脈圧を減少させる工程を包含する、方法。
【請求項23】
被験体に、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を投与し、それによって、前記被験体において脈圧を減少させる工程を包含する、方法。
【請求項24】
被験体に、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を投与し、それによって、前記被験体において内皮細胞機能障害を逆転させる工程を包含する、方法。
【請求項25】
被験体において鎌状赤血球症を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与し、それによって、前記鎌状赤血球症を処置する工程を包含する、方法。
【請求項26】
被験体において疾患または状態を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与し、それによって、前記疾患または状態を処置する工程を包含し、ここで前記疾患または状態は、動脈壁硬化、全身性高血圧および肺高血圧、鎌状赤血球症、駆出率が低下した心不全、駆出率が保たれた心不全、動脈狭窄、血管瘤(vascular aneurysm)、肥満症、神経変性障害、皮膚障害、関節炎、血管炎、熱傷、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、狼瘡、ライム病、痛風、敗血症、高体温、潰瘍、腸炎、骨粗鬆症、ウイルス感染症もしくは細菌感染症、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、慢性肺傷害、呼吸窮迫、肺炎症、肺の線維症、喘息、後天性呼吸窮迫症候群、煙草誘発性肺疾患、肉芽腫形成、肝臓の線維症、移植片対宿主病、術後炎症、血管形成術後の冠血管および末梢血管再狭窄、ステント留置もしくはバイパスグラフト、急性白血病および慢性白血病、Bリンパ球白血病、新生物疾患、動脈硬化症、心筋炎症および線維症、乾癬、免疫不全、播種性血管内凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、がんの転移もしくは増殖、養子免疫療法、再灌流症候群、放射線による熱傷、または脱毛症である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月25日出願の米国仮特許出願第63/166,058号(この出願は、本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
政府支援の承認
本発明は、National Institutes of Healthによって授与された助成金R01HL128304、R01HL133864、R01HL14825、P01HL103455、R01HL132550、R01DK112854、およびR01GM125944の下で、政府支援を得て行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
American Heart Associationの統計によれば、米国において死亡者3人に1人が、心血管疾患(CVD)に関連しており、およそ3512億ドルの支出額がかかっている。心血管疾患の開始および進行に共通する要素は、酸化剤(すなわち、スーパーオキシド、過酸化水素、および酸化剤-窒素酸化物反応の下流の生成物)による細胞シグナル伝達経路構成要素の特定の、通常は可逆的なレドックス改変として規定される、還元および酸化(レドックス)シグナル伝達の不均衡である。心臓および血管では、レドックスシグナル伝達は、いくつかの生理学的プロセス(例えば、興奮収縮連関、血管拡張)を調整し、幅広い一連の病態生理学的な、およびホメオスタシスの、またはストレス応答経路に関与する。
【0004】
心血管レドックスシグナル伝達に関与する酸化剤は、NADPHオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ミトコンドリア電子伝達鎖脱共役、一酸化窒素(NO)シンターゼおよび一連の他の金属タンパク質を含む多くの供給源に起源があり得る。FDA承認薬(例えば、降圧薬およびコレステロール降下薬)は、患者においていくらかの治療的利益を示したが、多くの患者が、進行性のCVD、類似の末端臓器機能障害および顕著な死亡率を被り続けることは明らかである。これは、さらなる新規なかつ有効な治療が必要とされ、新薬標的が特定されるべきであることを示す。NADHシトクロムb5レダクターゼ3(CYB5R3)は、レドックスバランスを維持する重要な酵素である。CYB5R3(他にメトヘモグロビンレダクターゼとして公知)は、そのNADHドメインから電子を、シトクロムb5(CYB5)を経て電子受容体へと移動させるその能力に関して認識されているフラボタンパク質である。CYB5R3は、血管のおよび他の細胞に;ミトコンドリア外膜、小胞体および形質膜の細胞質ゾル側に広く位置する。膜に結合したCYB5R3は、ヘム還元、脂肪酸の伸長および脱飽和、補酵素Q(CoQ)還元、コレステロール生合成、および肝臓における薬物代謝を含め、いくつかの機能的に重要な生物学的反応を調整する。CYB5R3の可溶性のスプライスされた(N末端の33アミノ酸の喪失)形態は、赤血球のメトヘモグロビンを還元する。ヒト集団では、CYB5R3において40を超える遺伝的多型が特定されている。特に興味深いのは、膜CYB5R3の150位に等価な、可溶性タンパク質の117位でのミスセンス改変体である。ここでそのアミノ酸スレオニンは、セリン残基に代わりに使用される(改変体# rs1800457)。これは、アフリカ系の個体において高頻度の遺伝的改変体であり(23% マイナーアレル頻度)、これは高負荷のCVDに耐える集団である。この遺伝的改変体は、白人の1%未満において見出される。心血管系におけるCYB5R3の機能は、生理学的に重要である。CYB5R3は、VSMCへのNO拡散を制御して、小動脈および細動脈内皮細胞におけるヘモグロビンαのレドックス状態を調整する。CYB5R3は、sGCヘム鉄を還元することによって、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)をその生理学的リガンドNOへと感作し、従って、血管平滑筋細胞における細胞内cGMPレベルの制御機序として機能する。成体心筋細胞におけるCYB5R3の条件的欠失(conditional deletion)は、酸化的ストレスを増大し、CoQレベルを減少させ、ヘム鉄酸化を促進し、NOシグナル伝達を減少させる。これは、CYB5R3発現および活性が、心臓の健康状態にとって極めて重要であることを確認する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約
本明細書で開示されるのは、以下:
【化1】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0006】
本明細書で開示されるのは、以下:
【化2】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0007】
本明細書で開示されるのは、以下:
【化3】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0008】
本明細書で開示されるのは、以下:
【化4】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0009】
本明細書で開示されるのは、以下:
【化5】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0010】
本明細書で開示されるのは、以下:
【化6】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0011】
本明細書で開示されるのは、以下:
【化7】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
aは、0~9であり、bは、1であり、cは、0~9である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0012】
本明細書で開示されるのは、以下:
【化8】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0013】
本明細書で開示されるのは、以下:
【化9】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0014】
本明細書でまた開示されるのは、治療上有効な量の、本明細書で開示される化合物を、心血管疾患を有するか、有すると疑われるか、または発生させるリスクにある被験体に投与する工程を包含する、方法である。
【0015】
本明細書でまた開示されるのは、被験体において心血管疾患を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、本明細書で開示される化合物を前記被験体に投与し、それによって、前記心血管疾患を処置する工程を包含する、方法である。
【0016】
本明細書でまた開示されるのは、被験体において心血管疾患を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、ニトロアルケン基を含むアルキル鎖を含む化合物を投与し、それによって前記心血管疾患を処置する工程を包含し、ここで前記ニトロアルケン基を含むアルキル鎖は、キノン含有部分に共役される、方法である。
【0017】
本明細書でまた開示されるのは、被験体においてレドックス不均衡と関連する疾患または状態を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、本明細書で開示される化合物を前記被験体に投与し、それによって前記レドックス不均衡と関連する疾患または状態を処置する工程を包含する、方法である。
【0018】
本明細書でまた開示されるのは、被験体に本明細書で開示される化合物を投与し、それによって、前記被験体においてCYB5R3活性を増強する工程を包含する、方法である。
【0019】
本明細書でまた開示されるのは、被験体において炎症促進遺伝子であるIL-1β、VCAM-1、ICAM-1 CCL5、CCL20またはCXCL10と関連する炎症状態または疾患を阻害するための方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、本明細書で開示される化合物を前記被験体に投与し、それによって、前記炎症状態または疾患を処置する工程を包含する、方法である。
【0020】
本明細書でまた開示されるのは、被験体に、本明細書で開示される化合物を投与し、それによって、前記被験体において平均動脈圧を減少させる工程を包含する、方法である。
【0021】
本明細書でまた開示されるのは、被験体に、本明細書で開示される化合物を投与し、それによって、前記被験体において脈圧を減少させる工程を包含する、方法である。
【0022】
本明細書でまた開示されるのは、被験体に、本明細書で開示される化合物を投与し、それによって、前記被験体において内皮細胞機能障害を逆転させる工程を包含する、方法である。
【0023】
本明細書でまた開示されるのは、被験体において鎌状赤血球症を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、本明細書で開示される化合物を前記被験体に投与し、それによって、前記鎌状赤血球症を処置する工程を包含する、方法である。
【0024】
本明細書でまた開示されるのは、被験体において疾患または状態を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、本明細書で開示される化合物を前記被験体に投与し、それによって、前記疾患または状態を処置する工程を包含し、ここで前記疾患または状態は、動脈壁硬化、全身性高血圧および肺高血圧、鎌状赤血球症、駆出率が低下した心不全、駆出率が保たれた心不全、動脈狭窄、血管瘤(vascular aneurysm)、肥満症、神経変性障害、皮膚障害、関節炎、血管炎、熱傷、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、狼瘡、ライム病、痛風、敗血症、高体温、潰瘍、腸炎、骨粗鬆症、ウイルス感染症もしくは細菌感染症、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、慢性肺傷害、呼吸窮迫、肺炎症、肺の線維症、喘息、後天性呼吸窮迫症候群、煙草誘発性肺疾患、肉芽腫形成、肝臓の線維症、移植片対宿主病、術後炎症、血管形成術後の冠血管および末梢血管再狭窄、ステント留置もしくはバイパスグラフト、急性白血病および慢性白血病、Bリンパ球白血病、新生物疾患、動脈硬化症、心筋炎症および線維症、乾癬、免疫不全、播種性血管内凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、がんの転移もしくは増殖、養子免疫療法、再灌流症候群、放射線による熱傷、または脱毛症である、方法である。
【0025】
前述は、添付の図面を参照しながら進められる、以下の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1。ヘム酸化を逆転させ、酸化剤を除去し、チオールを酸化から保護し、炎症促進性メディエーターの生成を阻害し、組織保護遺伝子発現を活性化するように設計された新規な低分子である、キノンが連結したニトロアルケン(Q-NA)の概念設計。これらの後者2つの多面的な作用は、NFkB依存性遺伝子発現の阻害およびKeap1/NRF-2調整性遺伝子発現の活性化を介して起こる。CoQ
0(ピンク色)は、不活性ヘム部分を還元し、活性酸素種形成を制限するように作用する。ニトロアルケン含有置換基へのCoQ
0の共役(青色)は、NRF-2活性化を介する抗酸化剤および修復遺伝子のアップレギュレーション、NFkB阻害を介する炎症促進遺伝子の阻害、システイン付加を介して酸化からのチオールのブロックを可能にする。Q-NAのその多面的な作用は、レドックス不均衡と関連する疾患において細胞および臓器ホメオスタシスを回復させることが意図される。
【0027】
【
図2】
図2a~2c。 CYB5R3による酸化されたミオグロビンの還元は、(
図2a)オレイン酸または(
図2b)Q-OA(CoQに連結されたオレイン酸)によって影響を及ぼされない。Q-NAは、(
図2c)ミオグロビンのCYB5R3還元を増強した。エラーバーは、S.E.M.であり、n=3である。
【0028】
【
図3】
図3a~3c。
図3a)実験設計を示す模式図。
図3b)p値に基づいて変化した上位50の遺伝子のmRNAプロフィール。
図3c)Q-NAによって特有に調整される遺伝子のmRNA発現プロフィール(n=5)。
【0029】
【
図4】
図4a~4b。 炎症促進性タンパク質VCAM-1およびICAM-1のウェスタンブロット分析(
図4a)ならびにビヒクル(DMSO)、Q-NA(5μM)、リポポリサッカリド(1μg/mL)およびQ-NA(5μM)+リポポリサッカリド(1μg/mL)で処理したヒト大動脈内皮細胞に由来する炎症性遺伝子IL-6、MCP-1、IL-1beta、VCAM-1、ICAM-1、CCL5、CCL20、およびCXCL10(
図4b)。エラーバーは、S.E.M(一元配置ANOVAによって計算したp値)を示す。
【0030】
【
図5】
図5a~5c。
図5a)Q-NAありまたはなしで処置した高血圧の2個の無傷の腎臓、1個の腎動脈をクリップしたマウスモデルでの平均動脈圧のΔ変化。
図5b)ビヒクルまたは2用量のQ-NAで処置した2個の腎臓、1個のクリップのマウスでの脈圧のΔ変化。
図5c)コントロール野生型、2個の腎臓、1個のクリップのマウスまたはQ-NAで処置した2個の腎臓、1個のクリップのマウスの、アセチルコリンへの大動脈弛緩応答。エラーバーは、S.E.M(一元配置もしくは二元配置ANOVAによって計算したp値)を示す。
【0031】
【
図6】
図6a~6d。
図6a。Q-NA(25mg/kg)で2週間にわたるトランスジェニック鎌状赤血球マウス処置の実験設計を示す模式図。
図6b。正常C57B/L6マウス(AA、左列)、鎌状赤血球マウス(SS、中央の列)およびQ-NA処置の2週間後の鎌状赤血球マウス(SS+Q-NA)の血液学。
図6cおよび6d。内皮細胞依存性血管拡張薬アセチルコリンおよび内皮細胞非依存性血管拡張薬ニトロプルシドナトリウムの投与後にQ-NAで2週間処置した鎌状赤血球マウスのエキソビボ肺動脈弛緩応答。
【0032】
【
図7】
図7a~7e。
図7a。改変されたニトロアルケンキノン誘導体の模式図。
図7b~e。ヘムオキシゲナーゼ-1(Hmox-1)、増殖分化因子-15(Growth differentiation factor-15)(GDF-15)、Kruppel様因子2(KLF-2)およびスフィンゴシン1ホスフェートレセプター3(spingosine 1 phosphate receptor 3)(S1pr3) mRNA発現に関して、Q-NA、BenzoQ-NA、NapthoQ-NAおよびAnthraQ-NAを比較する構造-活性関係性。
【0033】
【
図8】
図8。Q-NAは、LPSありおよびなしでのRPS/RPL遺伝子誘導を誘導するためにCYB5R3を必要とする。
【0034】
【
図9】
図9。NO
2-OAおよびQ-NAは、大動脈内皮細胞におけるRSP/RPL遺伝子転写の多様な効果を刺激する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
用語法
用語および方法の以下の説明は、本化合物、組成物、および方法をよりよく記載するために、ならびに本開示の実施において当業者をガイドするために提供される。本開示において使用される用語法が、特定の実施形態および例を記載する目的に過ぎず、限定であることが意図されないことはまた、理解されるべきである。
【0036】
「投与」とは、本明細書で使用される場合、被験体への別の個人による投与または被験体による自己投与を含む。
【0037】
「アルケニル」とは、炭素および水素のみを含み、共役されていてもされていなくてもよい1個またはこれより多くの二重結合を含む環式の、分枝状の、または直鎖の基に言及する。アルケニル基は、置換されていなくてもよいし、置換されていてもよい。「低級アルケニル」基は、1~6個の炭素原子を含む。
【0038】
用語「アルキル」とは、1~24個の炭素原子の分枝状または非分枝状の飽和炭化水素(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなど)に言及する。「低級アルキル」基は、1~6個の炭素原子を有する飽和した分枝状または非分枝状の炭化水素である。好ましいアルキル基は、1~4個の炭素原子を有する。アルキル基は、1個またはこれより多くの水素原子が、ハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシル、アリール、アルケニル、またはカルボキシルのような置換基で置換されている「置換されたアルキル」であり得る。例えば、低級アルキルまたは(C1-C6)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、3-ペンチル、またはヘキシルであり得る; (C3-C6)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルであり得る; (C3-C6)シクロアルキル(C1-C6)アルキルは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2-シクロプロピルエチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、または2-シクロヘキシルエチルであり得る; (C1-C6)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペントキシ、3-ペントキシ、またはヘキシルオキシであり得る; (C2-C6)アルケニルは、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルであり得る; (C2-C6)アルキニルは、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、または5-ヘキシニルであり得る; (C1-C6)アルカノイルは、アセチル、プロパノイルまたはブタノイルであり得る; ハロ(C1-C6)アルキルは、ヨードメチル、ブロモメチル、クロロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、2-クロロエチル、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、またはペンタフルオロエチルであり得る; ヒドロキシ(C1-C6)アルキルは、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、1-ヒドロキシペンチル、5-ヒドロキシペンチル、1-ヒドロキシヘキシル、または6-ヒドロキシヘキシルであり得る; (C1-C6)アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、またはヘキシルオキシカルボニルであり得る; (C1-C6)アルキルチオは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ、またはヘキシルチオであり得る; (C2-C6)アルカノイルオキシは、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、またはヘキサノイルオキシであり得る。
【0039】
「アルキニル」とは、炭素および水素のみを含み、別段言及されなければ、代表的には1~12個の炭素原子を含み、1個またはこれより多くの三重結合を含む環式の、分枝状のまたは直鎖の基に言及する。アルキニル基は、置換されていなくてもよいし、置換されていてもよい。「低級アルキニル」基は、1~6個の炭素原子を含むものである。
【0040】
「動物」とは、生きている多細胞の脊椎のある生物(例えば、哺乳動物および鳥類を含むカテゴリー)に言及する。用語哺乳動物は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、用語「被験体」とは、ヒトおよび非ヒト被験体(鳥類および非ヒト哺乳動物を含む)の両方を含む。例証的な非ヒト哺乳動物としては、動物モデル(例えば、マウス)、非ヒト霊長類、コンパニオンアニマル(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(例えば、ブタ、ヒツジ、ウシ)、ならびに飼い慣らされていない動物(例えば、大型のネコ科動物)が挙げられる。用語被験体は、生物の生活環の中のステージにかかわらず該当する。従って,用語被験体は、生物に依存して(すなわち、生物が哺乳動物または鳥類(例えば、家禽または野鳥)にかかわらず)、子宮内または胚内の生物にあてはまる。
【0041】
用語「共投与(co-administration)」または「共投与すること(co-administering)」とは、本明細書で開示される化合物と、同じ全体の期間内に少なくとも1つの他の治療剤または治療との投与に言及し、正確に同じ瞬間の投与を要求しない(しかし、共投与は、その正確に同じ瞬間の投与を含む)。従って、共投与は、同じ日にあっても、異なる日にあっても、同じ週にあっても、異なる週にあってもよい。いくつかの実施形態において、2またはこれより多くの薬剤または治療の共投与は、同時である。他の実施形態において、第1の薬剤/治療は、第2の薬剤/治療の前に投与される。当業者は、使用される種々の薬剤または治療の投与の製剤および/または経路が変動し得ることを理解する。共投与のための適切な投与量は、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの実施形態において、薬剤または治療が共投与される場合、それぞれの薬剤または治療は、それらの投与単独に関して適しているものより低い投与量で投与される。従って、共投与は、薬剤または治療の共投与が、潜在的に有害な(例えば、毒性の)薬剤の必須の投与量を下げる、および/または潜在的に有害な(例えば、毒性の)薬剤の投与頻度を下げる実施形態において特に望ましい。「共投与」または「共投与すること」は、活性薬剤および/またはそれらの代謝産物の両方が同時に被験体の中に存在するように、被験体への2またはこれより多くの活性薬剤の投与を包含する。共投与は、別個の組成物での同時の投与、別個の組成物での異なる時間での投与、または2もしくはこれより多くの薬剤が存在する1つの組成物での投与を含む。
【0042】
用語「被験体」とは、ヒトおよび非ヒト被験体(鳥類および非ヒト哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(例えば、ブタ、ヒツジ、ウシ)、ならびに飼い慣らされていない動物(例えば、大型のネコ科動物)を含む)の両方を含む。用語被験体は、生物の生活環の中のステージにかかわらず該当する。従って,用語被験体は、生物に依存して(すなわち、生物が哺乳動物または鳥類(例えば、家禽または野鳥)にかかわらず)、子宮内または胚内の生物にあてはまる。
【0043】
「置換された」または「置換」とは、ある分子またはR基の水素原子の、1もしくはこれより多くのさらなるR基での置換に言及する。別段定義されなければ、用語「必要に応じて置換された(optionally-substituted)」または「必要に応じた置換基(optional substituent)」とは、本明細書で使用される場合、1個、2個、3個、4個もしくはこれより多くの基、好ましくは1個、2個もしくは3個、より好ましくは1個もしくは2個の基でさらに置換されていてもよいし、されていなくてもよい基に言及する。上記置換基は、例えば、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6アルコキシアリール、ハロ、C1-6アルキルハロ(例えば、CF3およびCHF2)、C1-6アルコキシハロ(例えば、OCF3およびOCHF2)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、二置換されたアミノ、アシル、ケトン、アミド、アミノアシル、置換されたアミド、二置換されたアミド、チオール、アルキルチオ、チオキソ、スルフェート、スルホネート、スルフィニル、置換されたスルフィニル、スルホニル、置換されたスルホニル、スルホニルアミド、置換されたスルホンアミド、二置換されたスルホンアミド、アリール、arC1-6アルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され得、ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリル、ならびにこれらを含む基は、さらに必要に応じて置換され得る。N-複素環の場合の必要に応じた置換基はまた、C1-6アルキル、すなわち、N-C1-3アルキル、より好ましくはメチル、特にN-メチルが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0044】
「治療上有効な量」とは、特定された薬剤の量であって、その薬剤で処置されている被験体において所望の効果を達成するために十分な量に言及する。理想的には、薬剤の治療上有効な量は、上記被験体において実質的な細胞毒性効果を引き起こすことなく、上記疾患または状態を阻害または処置するために十分な量である。薬剤の治療上有効な量は、処置されている被験体、病気(affiction)の重篤度、および治療用組成物の投与様式に依存する。
【0045】
「処置」とは、疾患または病的状態が発生し始めた後に、その疾患または病的状態の徴候または症状を改善する治療介入に言及する。本明細書で使用される場合、疾患または病的状態を参照して、用語「改善すること(ameliorating)」とは、処置の任意の観察可能な有益な効果に言及する。有益な効果は、例えば、感受性の被験体において上記疾患の臨床症状の開始の遅れ、上記疾患のいくつかのもしくは全ての臨床症状の重篤度の低減、上記疾患のよりゆっくりとした進行、上記被験体の全身の健康状態または幸福における改善によって、または上記特定の疾患に対して特異的な、当該分野で周知の他のパラメーターによって証明され得る。語句「疾患を処置すること」とは、例えば、疾患のリスクにある被験体において、疾患の完全な発生を阻害することに言及する。疾患または状態を「防止すること」とは、疾患の徴候を示さないか、あるいは病理もしくは状態を発生させるリスクを減少させるかまたは病理もしくは状態の重篤度を減少させる目的で、ごく初期の徴候を示す被験体への組成物の予防的投与に言及する。
【0046】
「薬学的組成物」は、1もしくはこれより多くの非毒性の薬学的に受容可能な添加剤(キャリア、希釈剤、および/もしくは佐剤を含む)、および必要に応じて他の生物学的に活性な成分と一緒に、本開示の化合物のうちの1またはこれより多くのもののある量(例えば、単位投与量)を含む組成物である。このような薬学的組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA(第19版)の中で開示されるもののような標準的な薬学的製剤化技術によって調製され得る。
【0047】
用語「薬学的に受容可能な塩またはエステル」とは、例えば、無機酸および有機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸などが挙げられるが、これらに限定されない)の塩を含む従来の手段によって調製される塩またはエステルに言及する。本開示の化合物の「薬学的に受容可能な塩」はまた、カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛)から、および塩基(例えば、アンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルタミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド)から形成されるものを含む。これらの塩は、標準的手順によって、例えば、遊離酸と適切な有機塩基もしくは無機塩基とを反応させることによって調製され得る。本明細書に記載される任意の化合物は、代わりに、その薬学的に受容可能な塩として投与され得る。「薬学的に受容可能な塩」はまた、遊離酸、塩基、および双性イオン形態を含む。適切な薬学的に受容可能な塩の説明は、Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use, Wiley VCH (2002)に見出され得る。本明細書で開示される化合物がカルボキシ基のような酸性の官能基を含む場合、そのカルボキシ基の適切な薬学的に受容可能なカチオン対は、当業者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、四級アンモニウムカチオンなどを含む。このような塩は、当業者に公知である。「薬学的に受容可能な塩」のさらなる例に関しては、Bergeら, J. Pharm. Sci. 66:1 (1977)を参照のこと。
【0048】
治療的使用に関しては、上記化合物の塩は、対イオンが薬学的に受容可能であるものである。しかし、薬学的に受容可能でない酸および塩基の塩はまた、例えば、薬学的に受容可能な化合物の調製および精製における使用が見出され得る。
【0049】
上記で言及されるとおりの上記薬学的に受容可能な酸および塩基付加塩は、治療上活性な非毒性の酸および塩基付加塩(これらから上記化合物が形成し得る)を含むことが意味される。上記薬学的に受容可能な酸付加塩は、都合のよいことには、上記塩基形態をこのような適切な酸で処理することによって得られ得る。適切な酸は、例えば、無機酸(例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸または臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸などの酸);または有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわち、エタンジオン酸)、マロン酸、コハク酸(すなわち、ブタンジオン酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸(すなわち、ヒドロキシブタンジオン酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモ酸などの酸のような)を含む。逆に、上記塩形態は、適切な塩基で遊離塩基形態へと処置することによって変換され得る。
【0050】
本開示の化合物のプロドラッグはまた、本明細書で企図される。プロドラッグは、インビボでの生理学的作用(例えば、加水分解、代謝など)を経て、被験体への上記プロドラッグの投与後に活性化合物へと化学的に改変される活性化合物または不活性化合物である。用語「プロドラッグ」は、本文全体を通じて使用される場合、薬理学的に受容可能な誘導体(例えば、エステル、アミドおよびホスフェート)を意味し、その誘導体の得られたインビボでの生体内変化生成物が、本明細書で開示される化合物において規定されるとおりの活性薬物である。プロドラッグは、好ましくは、優れた水溶解度、増大されたバイオアベイラビリティーを有し、活性なインヒビターへとインビボで容易に代謝され得る。本明細書で記載される化合物のプロドラッグは、上記改変が、慣用的な操作によってまたはインビボでのいずれかで、その親化合物へと切断されるような方法において、上記化合物に存在する官能基を改変することによって調製され得る。プロドラッグを作製および使用することに関与する適切性および技術は、当業者によって周知である。エステルが関わるプロドラッグの一般的考察に関しては、Svensson and Tunek, Drug Metabolism Reviews 165(1988)およびBundgaard, Design of Prodrugs, Elsevier (1985)を参照のこと。
【0051】
用語「プロドラッグ」はまた、上記プロドラッグが被験体に投与される場合に、本発明の活性な親薬物をインビボで放出する任意の共有結合されたキャリアを含むことが意図される。プロドラッグはしばしば、溶解度およびバイオアベイラビリティーのような活性薬剤医薬に対して増強された特性を有することから、本明細書で開示される化合物は、プロドラッグ形態において送達され得る。従って、本開示の化合物のプロドラッグ、プロドラッグおよびこのようなプロドラッグを含む組成物を送達する方法がまた、企図される。本開示の化合物のプロドラッグは、代表的には、上記改変が慣用的な操作においてまたはインビボでのいずれかで切断され親化合物を生じるような方法で上記化合物に存在する1またはこれより多くの官能基を改変することによって調製される。プロドラッグは、ホスホネートおよび/またはアミノ基を有する化合物であって、インビボで切断されて、それぞれ、相当するアミノ基および/またはホスホネート基を生じる任意の基で改変されたものを含む。プロドラッグの例としては、アシル化されたアミノ基および/またはホスホネートエステルもしくはホスホネートアミド基を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例において、プロドラッグは、低級アルキルホスホネートエステル(例えば、イソプロピルホスホネートエステル)である。
【0052】
本開示の化合物の保護された誘導体がまた、企図される。本開示の化合物とともに使用するための種々の適切な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis; 第3版; John Wiley & Sons, New York, 1999において開示される。
【0053】
概して、保護基は、分子の残りの部分に影響を及ぼさない条件下で除去される。これらの方法は、当該分野で周知であり、酸加水分解、水素化分解などが挙げられる。1つの好ましい方法は、エステルの除去(例えば、遊離ホスホネートを生じるために、Lewis酸条件を使用する(例えば、TMS-Br媒介性エステル切断における)ホスホネートエステルの切断)を含む。第2の好ましい方法は、保護基の除去(例えば、適切な溶媒系(例えば、アルコール、酢酸などまたはその混合物)中で炭素担持パラジウムを利用する水素化分解によるベンジル基の除去)を含む。t-ブトキシベースの基(t-ブトキシカルボニル保護基を含む)は、適切な溶媒系(例えば、水、ジオキサンおよび/または塩化メチレン)中の無機酸または有機酸(例えば、HClまたはトリフルオロ酢酸)を利用して除去され得る。アミノおよびヒドロキシ官能化アミノ(hydroxy functions amino)を保護するために適した別の例示的な保護基は、トリチルである。他の従来の保護基は公知であり、適切な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis; 第3版; John Wiley & Sons, New York, 1999と相談して当業者によって選択され得る。アミンが脱保護される場合、その得られる塩は、遊離アミンを生じるために容易に中和され得る。同様に、酸部分(例えば、ホスホン酸部分)が正体を現す場合、化合物は、酸化合物またはその塩として単離され得る。
【0054】
本開示の化合物の特定の例は、1またはこれより多くの不斉中心を含み得る;従って、これらの化合物は、異なる立体異性形態において存在し得る。よって、化合物および組成物は、個々の純粋なエナンチオマーとして、または立体異性体の混合物(ラセミ混合物を含む)として提供され得る。ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、実質的にエナンチオマーとして純粋な形態(substantially enantiopure form)において(例えば、90% エナンチオマー過剰、95% エナンチオマー過剰、97% エナンチオマー過剰またはさらに99%より高いエナンチオマー過剰において(例えば、エナンチオマーとして純粋な形態において))合成されるか、または実質的にエナンチオマーとして純粋な形態にあるように精製される。
【0055】
本開示の化合物は、少なくとも1個の不斉中心または幾何中心、cis-trans中心(C=C、C=N)を有し得る。別段特定されなければ、上記構造の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ、メソ、回転および幾何異性体が意図される。上記化合物は、単一の異性体として、または異性体の混合物として単離され得る。上記化合物の全ての互変異性体がまた、本開示の一部として考慮される。本開示の化合物はまた、その化合物の中に存在する原子の全ての同位体を含む。その同位体としては、重水素、トリチウム、18Fなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0056】
概要
CYB5R3活性を増大させ、脈管機能を改善し、CVDにおけるレドックスバランスを回復させることによって炎症を制限する新たな薬理学的治療が、本明細書で開示される。1つの実施形態において、キノン含有部分に共役したニトロアルケン基を含むアルキル鎖を含む化合物が、本明細書で開示される。
【0057】
化合物、薬学的組成物、および使用方法
例証的な化合物としては、以下が挙げられる:
(A)以下のようなキノン含有化合物:
【化10】
ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
mは、1~10であり;
nは、3~15である。
【0058】
ある特定の実施形態において、Xはニトロである。
【0059】
ある特定の実施形態において、Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである。
【0060】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
【0061】
る特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0062】
(B)以下のようなナフトキノン含有化合物:
【化11】
ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である。
【0063】
ある特定の実施形態において、Xはニトロである。
【0064】
ある特定の実施形態において、Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである。
【0065】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
【0066】
ある特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0067】
(C)以下のようなラパコール含有化合物:
【化12】
ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である。
【0068】
ある特定の実施形態において、Xは、ニトロである。
【0069】
ある特定の実施形態において、Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである。
【0070】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
【0071】
ある特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0072】
(D)以下のようなアトバコン含有化合物:
【化13】
ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である。
【0073】
ある特定の実施形態において、Xは、ニトロである。
【0074】
ある特定の実施形態において、Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである。
【0075】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
【0076】
ある特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0077】
(E)以下のようなパルバコン含有化合物:
【化14】
ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である。
【0078】
ある特定の実施形態において、Xは、ニトロである。
【0079】
ある特定の実施形態において、Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである。
【0080】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
【0081】
ある特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0082】
(F)以下のようなベンジルメナジオン含有化合物:
【化15】
ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
CおよびDは、各々独立して、HもしくはCH
3であり;
mは、1~10であり;
nは、3~15である。
【0083】
ある特定の実施形態において、Xは、ニトロである。
【0084】
ある特定の実施形態において、Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである。
【0085】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
【0086】
ある特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0087】
(G)以下のようなイソプレノイド含有化合物:
【化16】
ここでaは、0~9であり、bは、1であり、cは、0~9である。
【0088】
(H)以下のようなベンゾキノン含有化合物:
【化17】
ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である。
【0089】
ある特定の実施形態において、Xは、ニトロである。
【0090】
ある特定の実施形態において、Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである。
【0091】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
【0092】
ある特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0093】
(I)以下のようなアントラキノン含有化合物:
【化18】
ここで
Xは、電子吸引基であり;
Yは、Yが結合される前記アルキル鎖の酵素的ω末端ヒドロキシル化、酸化および短縮化を阻害する末端基であるか、またはYは、Hであり;
AおよびBは、各々独立して、HもしくはCH
3であるか、またはAおよびBは一緒になって、シクロプロピルを形成し;
mは、1~10であり;
nは、3~15である。
【0094】
ある特定の実施形態において、Xは、ニトロである。
【0095】
ある特定の実施形態において、Yは、H、ジメチル、トリメチル、シクロプロピル、またはアルキニルである。
【0096】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
【0097】
ある特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0098】
用語「電子吸引基」は、当該分野で認識されており、価電子を隣りの原子から誘引する置換基の傾向を示す。すなわち、上記置換基は、その隣りの原子に関して電気陰性である。実施形態は、任意の公知の電子吸引基を含む。例えば、電子吸引基としては、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハライド(-Cl、F、-Brなど)、フルオロメチル(-CF3)、フルオロアルキル(-CFnH2-nR)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホネート(SO3R)、一級、二級および三級のアンモニウム(-NR3
+)、およびニトロ(-NO2)が挙げられ得るが、これらに限定されず、ここで各Rは、独立して、水素、メチル、C2~C6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり得る。いくつかの実施形態において、上記電子吸引基は、少なくとも約0.2のσを有する強力な電子吸引基であり得る。ある特定の実施形態において、上記電子吸引基は、双極子を形成し得る。例えば、特定の実施形態において、上記電子吸引基は、ニトロ、アンモニウムまたはスルホニルであり得る。
【0099】
ある特定の実施形態において、上記化合物は、
【化19】
であり、ここでmは、1~10であり、nは、3~15である。
【0100】
ある特定の実施形態において、mは、5~9である。
ある特定の実施形態において、nは、5~9である。
【0101】
例証的な化合物としては、以下が挙げられる:
【化20-1】
【化20-2】
【0102】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、レドックス不均衡および/または炎症シグナル伝達と関連する疾患または状態を処置または防止するために使用され得る。種々の実施形態において、疾患または状態は、動脈壁硬化、全身性高血圧および肺高血圧、鎌状赤血球症、駆出率が低下した心不全、駆出率が保たれた心不全、動脈狭窄、血管瘤(vascular aneurysm)、肥満症、神経変性障害、皮膚障害、関節炎、血管炎、熱傷、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、狼瘡、ライム病、痛風、敗血症、高体温、潰瘍、腸炎、骨粗鬆症、ウイルス感染症もしくは細菌感染症、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、慢性肺傷害、呼吸窮迫、肺炎症、肺の線維症、喘息、後天性呼吸窮迫症候群、煙草誘発性肺疾患、肉芽腫形成、肝臓の線維症、移植片対宿主病、術後炎症、血管形成術後の冠血管および末梢血管再狭窄、ステント留置もしくはバイパスグラフト、急性白血病および慢性白血病、Bリンパ球白血病、新生物疾患、動脈硬化症、心筋炎症および線維症、乾癬、免疫不全、播種性血管内凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、がんの転移もしくは増殖、養子免疫療法、再灌流症候群、放射線による熱傷、または脱毛症であり得るが、これに限定されない。
【0103】
例えば、ある特定の実施形態において、開示される化合物は、動脈壁硬化(arterial stiffness)、全身性高血圧および肺高血圧、駆出率が低下した心不全、駆出率が保たれた心不全、腎臓の狭窄、糸球体硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、血栓症、または鎌状赤血球症を含む心血管疾患を処置または防止するために使用され得る。
【0104】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、CYB5R3活性を増強し得る。
【0105】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、脈管機能の調節/血圧調整と関連する疾患または状態を処置または防止するために使用され得る。
【0106】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、腎臓または肺のような他の器官系に影響を及ぼす鎌状赤血球症誘導性血管傷害と関連する疾患または状態を処置または防止するために使用され得る。
【0107】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、炎症性の状態または疾患(特に、炎症促進遺伝子であるIL-1β、VCAM-1、ICAM-1 CCL5、CCL20およびCXCL10と関連するもの)を阻害し得る。
【0108】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、被験体において平均動脈圧を減少させ得る。
【0109】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、被験体において脈圧を減少させ得る。
【0110】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、内皮細胞機能障害を逆転し得る。
【0111】
ある特定の実施形態において、上記被験体は、抗CVD薬剤または抗炎症剤での処置を必要とするか、またはそれを必要とすると認識されている。上記被験体は、抗CVD薬剤または抗炎症剤での処置に適しているとして選択され得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される方法は、処置を必要とする被験体に、薬学的組成物(例えば、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療上有効な量の、本明細書で開示される化合物のうちの1またはこれより多くのものを含む組成物)を投与することを含む。上記化合物は、経口的に、非経口的に(皮下注射(SCまたはデポー-SC)、静脈内(IV)、筋肉内(IMまたはデポー-IM)、胸骨内注射または注入技術を含む)、舌下に、鼻内に(吸入)、髄腔内に、局所に、眼科的に、または直腸に投与され得る。上記薬学的組成物は、従来の非毒性の薬学的に受容可能なキャリア、佐剤、および/またはビヒクルを含む投与量単位製剤において投与され得る。上記化合物は、好ましくは、適切な薬学的調製物(例えば、経口投与のための錠剤、カプセル剤、もしくはエリキシル剤、または非経口投与のための無菌液剤もしくは懸濁剤)へと製剤化される。代表的には、上記で記載される化合物は、当該分野で周知の技術および手順を使用して、薬学的組成物へと製剤化される。
【0113】
いくつかの実施形態において、本開示の化合物(検出可能な標識またはカーゴ部分に連結された化合物を含む)のうちの1またはこれより多くのものが、薬学的組成物を調製するために、適切な薬学的に受容可能なキャリアと混合されるかまたは組み合わされる。本明細書で提供される化合物の投与に適した薬学的キャリアまたはビヒクルは、特定の投与様式に適していることが公知の任意のこのようなキャリアを含む。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, The University of the Sciences in Philadelphia, 編者, Lippincott, Williams, & Wilkins, Philadelphia, PA, 第21版(2005)は、本明細書で開示される化合物の薬学的送達に適した例示的な組成物および製剤を記載する。さらに、上記化合物は、組成物中の唯一の薬学的に活性な成分として製剤化されてもよいし、他の活性成分と組み合わされてもよい。
【0114】
上記化合物を薬学的に受容可能なキャリアに混合または添加すると、その得られる混合物は、溶液、懸濁物、エマルジョンなどであり得る。リポソーム懸濁物はまた、薬学的に受容可能なキャリアとして適している場合もある。これらは、当業者に公知の方法に従って調製され得る。得られる混合物の形態は、意図される投与様式および選択されたキャリアまたはビヒクル中での上記化合物の溶解度を含む多くの要因に依存する。上記化合物が不十分な溶解度を示す場合、可溶化のための方法が使用され得る。このような方法は公知であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような共溶媒を使用すること、Tween(登録商標)のような界面活性剤を使用すること、および水性炭酸水素ナトリウム中での溶解が挙げられるが、これらに限定されない。上記化合物の誘導体(例えば、塩またはプロドラッグ)はまた、有効な薬学的組成物を製剤化するにあたって使用され得る。本開示の化合物はまた、それらを、身体からの急速な排除に対して保護するキャリアとともに調製され得る(例えば、時限放出製剤またはコーティング)。このようなキャリアとしては、制御放出製剤(例えば、微小被包化送達システムが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0115】
本開示の化合物および/または組成物は、複数または単一の用量容器の中に封入され得る。上記化合物および/または組成物はまた、例えば、使用のためにアセンブルされ得る構成要素部分を含むキットの形態で提供され得る。例えば、本開示の化合物のうちの1またはこれより多くのものは、凍結乾燥形態で提供され得、適切な希釈剤が、使用前に組み合わせるための分離された構成要素として提供され得る。
【0116】
活性化合物は、処置される被験体に対する望ましくない副作用の非存在下で治療上有用な効果を発揮するために十分な量において薬学的に受容可能なキャリア中に含まれる。治療上有効な濃度は、処置される障害に関する公知のインビトロモデルおよびインビボモデルシステムにおいて上記化合物を試験することによって経験的に決定され得る。いくつかの例では、上記化合物の治療上有効な量は、上記化合物が投与される障害の少なくとも1つの症状を減少させるかまたは改善する量である。代表的には、上記組成物は、単一投与量の投与のために製剤化される。薬物組成物中の活性化合物の濃度は、上記活性化合物の吸収、不活性化および排出速度、投与スケジュール、ならびに投与される量、ならびに当業者に公知の他の要因に依存する。
【0117】
いくつかの例では、約0.1mg~1000mgの開示される化合物、このような化合物の混合物、またはその生理学的に受容可能な塩もしくはエステルは、単位投与形態において、生理学的に受容可能なビヒクル、キャリア、賦形剤、結合剤、保存剤、安定化剤、フレーバーなどと配合される。それらの組成物または調製物中の活性物質の量は、示される範囲における適切な投与量が得られるようなものである。用語「単位投与形態(unit dosage form)」とは、ヒト被験体および他の哺乳動物のための単位投与量として適切な、物理的に分離した単位をいい、各単位は、適切な薬学的賦形剤と関連して、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性物質を含む。上記薬学的組成物は、注射用流体、経口送達流体(例えば、液剤または懸濁剤)、鼻送達流体(例えば、エアロゾルもしくは蒸気としての送達のため)、半固体形態(例えば、局所用クリーム剤)、または固体形態(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)のような投与量単位形態にあり得る。
【0118】
いくつかの例では、上記組成物は、単位投与形態(各投与量は、約1mg~約1000mg(例えば、約2mg~約500mg、約5mg~50mg、約10mg~100mg、または約25mg~75mg)の上記1またはこれより多くの化合物を含む)において製剤化される。他の例では、上記単位投与形態は、約0.1mg、約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mgの本開示の化合物を含む。
【0119】
本開示の化合物または組成物は、単一用量として投与されてもよいし、時間間隔で投与されるようにいくつかのより小さい用量へと分割されてもよい。治療用組成物は、単一用量送達において、長期間にわたる連続送達によって、反復投与プロトコールにおいて(例えば、1日に複数回、毎日、毎週、または毎月の反復投与プロトコールによって)投与され得る。正確な投与量、タイミング、および治療の継続時間は処置されている疾患の関数であり、公知の試験プロトコールを使用して経験的に、またはインビボまたはインビトロでの試験データからの外挿によって決定され得ることが理解される。濃度および投与量の値がまた、緩和されるべき状態の重篤度に伴って変動し得ることは注記されるべきである。さらに、特定の被験体に関しては、投与量レジメンは、個体のニーズおよび上記組成物の投与を管理または監督する個人の専門的な判断に従って経時的に調節され得ること、ならびに本明細書で示される濃度範囲は例示に過ぎないことが理解される。
【0120】
懸濁物として経口投与される場合、これらの組成物は、薬学的製剤の分野において周知の技術に従って調製され、かさを付与するための微結晶性セルロース、懸濁化剤としてのアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウム、粘性増強剤としてのメチルセルロース、および甘味料/矯味矯臭剤を含み得る。即時放出錠剤として、これらの組成物は、微結晶性セルロース、リン酸二ナトリウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよびラクトースならびに/または他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および滑沢剤を含み得る。経口投与が望ましい場合、上記化合物は、代表的には、上記化合物を胃の酸性環境から保護する組成物中に提供される。例えば、上記組成物は、胃の中でその完全性を維持し、腸の中で活性化合物を放出する腸溶性コーティング中で製剤化され得る。上記組成物はまた、制酸剤または他のこのような成分と組み合わせて製剤化され得る。
【0121】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用キャリアを含み、錠剤へと圧縮され得るか、またはゼラチンカプセル剤へと封入され得る。経口治療投与の目的で、上記活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれ得、錠剤、カプセル剤、またはトローチ剤の形態において使用され得る。薬学的に適合性の結合剤および佐剤物質は、上記組成物の一部として含められ得る。上記錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または類似の性質の化合物のうちのいずれかを含み得る: 結合剤(例えば、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない);賦形剤(例えば、微結晶性セルロース、デンプン、またはラクトース);崩壊剤(例えば、アルギン酸およびコーンスターチが挙げられるが、これらに限定されない);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない);流動促進剤(gildant)((例えば、コロイド性二酸化ケイ素が挙げられるが、これらに限定されない);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);および矯味矯臭剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはフルーツ香料)。
【0122】
投与量単位形態がカプセル剤である場合、それは、上記のタイプの物質に加えて、液体キャリア(例えば、脂肪油)を含み得る。さらに、投与量単位形態は、投与量単位の物理的形態、例えば、糖および他の腸溶性作用物質のコーティングを改変する種々の他の物質を含み得る。上記化合物はまた、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェハ、チューイングガムなどの構成要素として投与され得る。シロップ剤は、上記活性化合物に加えて.甘味剤としてのスクロース、ならびにある特定の保存剤、色素および着色剤、ならびにフレーバーを含み得る。
【0123】
経口投与される場合、上記化合物は、経口投与の通常の投与形態において投与され得る。これらの投与形態は、錠剤およびカプセル剤の通常の固体単位投与形態、ならびに液体投与形態(例えば、液剤、懸濁剤、およびエリキシル剤)を含む。上記固体投与形態が使用される場合、それらは、上記化合物が1日に1回のみまたは2回投与される必要があるように持続放出タイプのものであることが好ましい。いくつかの例では、経口投与形態は、被験体に、1日に1回、2回、3回、4回、またはこれより多くの回数、投与される。さらなる例では、上記化合物は、単一用量または分割用量において1~1000mg/kg 体重の投与量範囲においてヒトへと経口投与され得る。1つの例示的な投与量範囲は、単一用量または分割用量において経口で0.1~200mg/kg 体重である(例えば、経口で0.5~100mg/kg 体重)。経口投与に関しては、上記組成物は、約1~1000mgの活性成分(特に、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、750mg、800mg、900mg、または1000mgの活性成分)を含む錠剤の形態において提供され得る。しかし、任意の特定の患者に対する具体的な用量レベルおよび投与頻度は、変動し得、使用される具体的化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身的な健康状態、性別、食事、投与様式および時間、排出速度、薬物併用、特定の状態の重篤度、ならびに治療を受けている宿主を含む種々の要因に依存することが理解される。
【0124】
注射可能な液剤または懸濁剤はまた、適切な非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒(例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液もしくは等張性塩化ナトリウム溶液)、または適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤(例えば、無菌かつ無刺激の不揮発性油(合成モノグリセリドもしくはジグリセリド、および脂肪酸(オレイン酸を含む)を含む)を使用して製剤化され得る。非経口、皮内、皮下、または局所投与のために使用される液剤または懸濁剤は、以下の構成要素のうちのいずれかを含み得る:無菌希釈剤(例えば、注射用水、食塩溶液、不揮発性油、天然に存在する植物性油(例えば、ゴマ油、ココナツ油、ラッカセイ油、綿実油など)、または合成脂肪性ビヒクル(例えば、オレイン酸エチルなど)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールおよびメチルパラベン);抗i酸化剤(例えば、アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));緩衝液(例えば、アセテート、シトレート、およびホスフェート);ならびに張度の調節のための作用物質(例えば、塩化ナトリウムおよびデキストロース)。非経口調製物は、ガラス、プラスチック、または他の適切な材料から作製されたアンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量バイアル中に封入され得る。緩衝液、保存剤、抗酸化剤などは、必要な場合に組み込まれ得る。
【0125】
静脈内に投与される場合、適切なキャリアとしては、生理食塩水、リン酸緩衝化食塩水(PBS)、および濃化剤および可溶化剤(例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれらの混合物)を含む溶液が挙げられる。組織に標的化されたリポソームを含むリポソーム懸濁物はまた、薬学的に受容可能なキャリアとして適切であり得る。
【0126】
上記化合物は、非経口的に、例えば、IV、IM、デポー-IM、SC、またはデポー-SCによって投与され得る。非経口的に投与される場合、約0.1~約500mg/日(例えば、約1mg/日~約100mg/日、または約5mg/日~約50mg/日)の治療上有効な量が送達され得る。デポー製剤が1ヶ月に1回または2週間ごとに1回の注射のために使用される場合、上記用量は、約0.1mg/日~約100mg/日、または約3mg~約3000mgの毎月用量であり得る。
【0127】
上記化合物はまた、舌下に投与され得る。舌下に与えられる場合、上記化合物は、IM投与に関して上記で記載される量において、1日に1~4回与えられるべきである。
【0128】
上記化合物はまた、鼻内に投与され得る。この経路によって与えられる場合、適切な投与形態は、鼻スプレーまたは乾燥散剤である。鼻内投与に関する上記化合物の投与量は、IM投与に関して上記に記載される量である。鼻のエアロゾルまたは吸入によって投与される場合、これらの組成物は、薬学的製剤の分野において周知の技術に従って調製され得、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、食塩水中の液剤として調製され得る。
【0129】
上記化合物は、髄腔内に投与され得る。この経路によって与えられる場合、適切な投与形態は、非経口的投与形態であり得る。髄腔内投与に関する上記化合物の投与量は、IM投与に関して上記で記載される量である。
【0130】
上記化合物は、局所的に投与され得る。この経路によって与えられる場合、適切な投与形態は、クリーム剤、軟膏剤、またはパッチである。局所的に投与される場合、例証的な投与量は、約0.5mg/日~約200mg/日である。パッチによって送達され得る量は制限されることから、2またはこれより多くのパッチが使用され得る。
【0131】
上記化合物は、坐剤によって直腸に投与され得る。坐剤にとって投与される場合、例証的な治療上有効な量は、約0.5mg~約500mgの範囲に及び得る。坐剤の形態において直腸に投与される場合、これらの組成物は、上記薬物と、通常の温度では固体であるが、直腸腔では液化および/もしくは溶解して、上記薬物を放出する適切な非刺激性の賦形剤(例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールの合成グリセリドエステル)とを混合することによって調製され得る。
【0132】
正確な投与量および投与頻度は、レトロウイルス感染、疾患、および関連障害の治療において熟練されている投与する医師または他の臨床医に周知であるように、投与される特定の化合物、処置されている特定の状態、処置されている状態の重篤度、特定の被験体の年齢、体重、全身的な身体状態、ならびに個体が摂取している可能性のある他の薬物療法に依存することは、当業者に明らかであるはずである。
【実施例】
【0133】
実施例
CoQ
0に共役される改変されたニトロ化脂肪酸(Q-NAと称される)を、合成した(
図1)。Q-NAは、細胞内で多面的な作用を有する。第1に、CoQ基は、ヘム鉄(酸化剤の標的)を還元し、酸化剤形成を低減し、CYB5R3活性を増大させる。第2に、ニトロアルケン含有置換基へのCoQ
0の共役は、NRF-2を介して抗酸化剤経路を活性化するという追加の利益を提供する。そのレドックス特性に加えて、Q-NAは、細胞、特に、内皮細胞および心筋細胞によって迅速にかつ効率的に取り込まれ得る脂溶性の疎水性種である。なぜなら脂質はそれらの主なエネルギー源だからである。
【0134】
方法:
ニトロアルケン-キノン化合物の合成 - Wangらによる近年の報告(Tetrahedron. 2014;70(47):9029-32)は、ラジカル脱炭酸カップリングを介するアルキルカルボン酸およびユビキノンの直接的共役に関する単純かつ簡単な方法を記載する。市販のQ0(2,3-ジメトキシ-5-メチル-p-ベンゾキノン)を、硝酸銀およびニトロ-オレイン酸(9-、10-ニトロオクタデカ-9-オイック酸の混合物)またはオレイン酸(オクタデカ-9-オイック酸)と、アセトニトリル-水溶液中の過硫酸ナトリウムの存在下で反応させ、次いで、2~3時間加熱した。その得られた溶液を抽出および洗浄し、続いて、減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーによってその粗製生成物を精製した。最終生成物を、1H、13C核磁気共鳴画像化法(nuclear resonance imaging)によって同定した。
【0135】
他の化合物の合成:
【化21-1】
【化21-2】
【化21-3】
【0136】
結果:
Q-NAは、CYB5R3活性を増強する。
組換えCYB5R3を、ニトロ-オレイン酸、CoQに連結したオレイン酸またはQ-NAと、酸化ミオグロビンとともにインキュベートした。NADH刺激は、その反応を開始し、ミオグロビン還元を示す吸光度変化をモニターした。Q-NAは、ミオグロビンヘム還元を増大させたのに対して、他の化合物は、効果を有しなかった(
図2)。Q-NA単独は、ミオグロビン還元に対して効果を有しなかった。これは、Q-NAがCYB5R3活性を増強することを示す。
【0137】
遺伝子発現プロファイリングから、オレイン酸(OA)、ニトロ-オレイン酸(NO2-OA)およびキノン共役オレイン酸(Q-OA)とは対照的に、Q-NAに曝したヒト大動脈内皮細胞において差次的かつ特有の遺伝子発現プロフィールが明らかにされる。
【0138】
遺伝子発現に対するQ-NAの影響を評価するために、本発明者らは、培養したヒト大動脈内皮細胞(HAEC)に対してRNAseq分析を行った。そのようにするために、HAECを、ビヒクル(DMSO)、5μM オレイン酸(OA)、5μM ニトロ化オレイン酸(NO
2-OA)、5μM キノン共役オレイン酸(Q-OA)または5μM キノン共役ニトロオレイン酸(Q-NA)とともに6時間インキュベートした。処理後、HAECを溶解し、mRNAを単離し、RNAseq分析に供した。ヒートマップは、p値(中央のヒートマップ)またはQ-NAによって特有に調整された遺伝子発現の変化(右のヒートマップ)に基づいてソートした上位50個の遺伝子における変化を示す(
図3)。これらの結果は、Q-NAが、他のニトロ化脂質および非ニトロ化脂質と比較して、同様におよび特有に遺伝子発現プロフィールを調節することを示す。
【0139】
Q-NAは、炎症シグナル伝達を緩和する。
Q-NAが抗炎症作用を発揮するか否かを試験するために、本発明者らは、HAECを、ビヒクル(DMSO)、5μMのQ-OA、N
2OAまたはQ-NAとともに、1μg/mLのリポポリサッカリドありおよびなしで同時処理して、炎症を誘導した。
図4aに示される結果は、Q-NAが、炎症促進性タンパク質VCAM-1およびICAM-1の誘導を緩和することを実証する。まとめると、これらの結果は、Q-NAが抗炎症作用を発揮することを実証する。Q-NAが炎症促進遺伝子の転写に影響したか否かを決定するために、本発明者らは、ビヒクル(DMSO)、5μMのQ-OA、1μg/mLのリポポリサッカリドおよび5μMのQ-OA+1μg/mLのリポポリサッカリドで処理したヒト大動脈内皮細胞に対してRNAseq分析を行った。本発明者らは、Q-NAが、IL-1β、VCAM-1、ICAM-1 CCL5、CCL20およびCXCL10 mRNA発現を抑制したが、IL-6発現もMCP-1発現も抑制しないことを見出した(
図4b)。
【0140】
Q-NAは、2個の腎臓、1個の腎動脈クリップマウスモデルにおいて平均動脈圧、脈圧を減少させ、内皮機能を改善する。
【0141】
本発明者らは、C57Bl/6マウスにおいて高血圧および大動脈壁硬化をもたらす、高塩(4%)、2個の腎臓、1個の腎動脈クリップマウスモデルを最近確立した。このモデルを使用して、本発明者らは、無線遠隔測定ユニットを埋め込んで、血圧を測定した。高血圧表現型を確立して2週間後、本発明者らは、10または50mg/kgのQ-NAを、2週間にわたって2日に1回腹腔内注射することを介して、Q-NAを注射した。(
図5a)に示される結果は、高用量および低用量両方のQ-NAが、血圧および脈圧(大動脈壁硬化の指標)を減少させることを示す(
図5b)。2週間後に動物を屠殺し、大動脈環(aortic rings)を、脈管機能試験に供した。
図5cに示される結果は、低用量および高用量両方のQ-NAが、内皮機能障害を完全に逆転させることを実証する。これらの結果は、Q-NAが、2個の腎臓、1個のクリップのマウスモデルにおいて、平均動脈圧および脈圧を減少させ、血管保護作用を発揮することを実証する。
【0142】
Q-NAは、鎌状赤血球症マウスにおいて、貧血を逆転させ、内皮細胞および平滑筋細胞機能を改善する。
【0143】
Q-NAが、鎌状赤血球症(SCD)において貧血および脈管機能に影響するか否かを決定するために、本発明者らは、キメラSCDマウスを、2週間にわたって2日に1回、25mg/kgのQ-NAで処置した(
図6a)。正常C57Bl/6マウス(AA/C57)のベースライン、血液学を、
図6b、左列に示す。Q-NA処置前のSCDマウスからのベースライン血液学を、
図6bの中央列に示し、Q-NAの2週間後を右列に示す。赤血球およびヘモグロビンの増大は、貧血の逆転を示す。本発明者らはまた、2週間のQ-NAで処置したSCDマウスの内皮機能(
図6c)および平滑筋機能(
図6d)における有意な改善を見出した。
【0144】
改変されたキノン誘導体は、遺伝子発現プロフィールに影響する。
【0145】
改変されたキノン誘導体が、Hmox1、GDF-15、KLF-2およびS1pr3の遺伝子発現プロフィールに影響したか否かを試験するために、本発明者らは、benzoQ-NA、napthoQ-NA、およびanthraQ-NAを合成した。構造-活性関係性は、キノン誘導体が、Hmox1、GDF-15、KLF-2およびS1pr3の遺伝子発現プロフィールを差次的に調節することを示す(
図7)。
【0146】
Q-NAは、リポポリサッカリドありおよびなしでリボソームタンパク質SおよびL(RPS/RPL)遺伝子発現を調整するために、CYB5R3を必要とする。
【0147】
Q-NAが、リポポリサッカリドの存在下または非存在下で遺伝子発現を調整するためにCYB5R3発現を必要とするか否かを試験するために、ヒト大動脈内皮細胞を、非標的化(nt-RNA)またはCYB5R3 siRNAで72時間にわたってトランスフェクトした。次いで、細胞を、5μM Q-NAで処理した。2時間後に、細胞を1μg/mLのリポポリサッカリドで4時間処理した。次いで、細胞を溶解し、バルクRNA配列決定分析のためにRNAを収集した。本発明者らは、Q-NAがリポポリサッカリドの存在下および非存在下でRPS/RPL遺伝子ファミリー発現を調節するために、CYB5R3発現が必要であることを見出した(
図8)。
【0148】
NO
2-OAおよびQ-NAは、RPS/RPL遺伝子転写に対して多様な効果を刺激する。
ヒト大動脈内皮細胞を、ビヒクル(ジメチルスルホキシド(DMSO))、5μMのNO
2-OA、または5μM Q-NAで刺激した。6時間の刺激後、細胞を溶解し、RNA配列決定を行った。結果は、NO
2-OAが、Q-NA処理と比較して、RPS/RPL遺伝子発現に対して反対の効果を引き起こしたことを示す(
図9)。
【0149】
まとめると、これらの結果は、新規なキノン共役ニトロアルケン含有化合物が、1)CYB5R3活性を増大させる、2)内皮遺伝子プログラムを特有に活性化する、3)炎症を緩和する、4)2個の腎臓、1個の腎動脈クリップのマウスモデルにおいて平均動脈圧および脈圧を減少させ、内皮細胞機能障害を逆転させる、5)Q-NAは、鎌状赤血球症において貧血および内皮/平滑筋機能障害を逆転させる、6)改変されたキノン誘導体は、Hmox1、GDF-15、KLF-2およびS1pr3の遺伝子発現プロフィールに影響する、7)Q-NAは、リポポリサッカリドありおよびなしでRPS/RPL遺伝子発現を調整するために、CYB5R3を必要とする、ならびに8)NO2-OAおよびQ-NAは、RPS/RPL遺伝子転写に対して多様な効果を刺激する、ことを実証する。これらの結果は、Q-NAが、CYB5R3の発現を通じて、高血圧、大動脈壁硬化、および鎌状赤血球症に対する保護を提供することを示唆する。
【0150】
本開示の発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、例証される実施形態は本発明の好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定するとは解釈されるべきでないことが認識されるべきである。
【国際調査報告】