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特表2024-511079抗セラミド抗体による創傷治癒の強化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】抗セラミド抗体による創傷治癒の強化
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240305BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240305BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P17/02
C07K16/18 ZNA
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557734
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 US2022020385
(87)【国際公開番号】W WO2022197703
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/161,758
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン-ケタリング キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】508007514
【氏名又は名称】ボード オブ トラスティーズ オブ ミシガン ステイト ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF TRUSTEES OF MICHIGAN STATE UNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】522023761
【氏名又は名称】メモリアル ホスピタル フォー キャンサー アンド アライド ディジージズ
(71)【出願人】
【識別番号】399026731
【氏名又は名称】スローン - ケタリング・インスティテュート・フォー・キャンサー・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】コールスニック リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブシク ジュリア
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、創傷の治癒を改善又は加速するための組成物及び方法を提供する。様々な実施形態では、本方法は、抗セラミド抗体及び抗体断片の使用を含む。いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、糖尿病性創傷である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷を治療又は予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
創傷の治癒を強化することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
前記創傷が、慢性創傷又は糖尿病性創傷である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記創傷が、慢性創傷である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記創傷が、糖尿病性創傷である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
投与の経路が、局所投与、病巣内投与、皮下投与、経皮投与、筋肉内投与、静脈内投与、及び非経口投与からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記投与の経路が、局所投与である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記投与の経路が、静脈内投与である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、単回用量として投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、2回以上の用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
連続用量の投与が、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、又は少なくとも1週間離される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記投与の持続時間が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は少なくとも4週間である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の炎症段階の間に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の増殖段階の間に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の再形成段階の間に投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、抗体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、一本鎖可変断片(scFv)である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、対照創傷と比較して、創傷治癒を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、又は少なくとも70%強化する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
創傷治癒の強化が、創傷後10日目、20日目、又は30日目の前記創傷の全表面積の死亡によって測定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記創傷治癒の強化が、創傷後10日目に測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記創傷治癒の強化が、前記創傷の全表面積の50%、70%、90%、95%、又は100%の減少を達成するのにかかる時間の死亡によって測定される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記創傷治癒の強化が、前記創傷の全表面積の95%の減少で測定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、前記創傷の1つ以上の症状の発症前に投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、前記創傷の1つ以上の症状の発症後に投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、
a)前記VHが、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、YNYPRDGSTKYNEKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHCDR2と、GFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含み、
b)前記VLが、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むLCDR2と、QQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記VHが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、6B5抗体である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、6B5scFvである、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、
a)前記VHが、NYWMH(配列番号33)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、AIYPGDSDTSYNQKFKG(配列番号34)のアミノ酸配列を含むHCDR2と、LYYGYD(配列番号35)のアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含み、
b)前記VLが、KSSQSLIDSDGKTFLN(配列番号36)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、LVSKLDS(配列番号37)のアミノ酸配列を含むLCDR2と、WQGTHFPYT(配列番号38)のアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記VHが、配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号40のアミノ酸配列を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、2A2抗体である、請求項1~24及び29~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、2A2scFvである、請求項1~24及び29~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、
a)前記VHが、配列番号1及び43から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、配列番号44~47から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR2と、GFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR3と、を含み、
b)前記VLが、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR2と、QQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR3と、を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記HCDR1が、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記HCDR2が、YNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記HCDR1が、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記HCDR2が、YNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記HCDR1が、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記HCDR2が、YNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記HCDR1が、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記HCDR2が、YNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記HCDR1が、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記HCDR2が、YNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記HCDR1が、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記HCDR2が、YNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記HCDR1が、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記HCDR2が、YNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記HCDR1が、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記HCDR2が、YNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記VHが、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記VHが、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記VHが、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記VHが、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記VHが、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
前記VHが、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記VHが、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項49】
前記VHが、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項50】
前記VHが、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項51】
前記VHが、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項52】
前記VHが、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項53】
前記VHが、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項54】
前記VHが、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項55】
前記VHが、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項56】
前記VHが、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、前記VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項33に記載の方法。
【請求項57】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化6B5(h6B5)抗体である、請求項33~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、h6B5scFvである、請求項33~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHが、配列番号48のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHが、配列番号48のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号55のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHが、配列番号49のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHが、配列番号49のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号54のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHが、配列番号50のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHが、配列番号50のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号54のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHが、配列番号51のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、前記VHが、配列番号52のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化抗体である、請求項59~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化scFvである、請求項59~66のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月16日に出願された継続米国仮出願第63/161,758号であり、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する記載
本出願に関連する配列表は、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表のコンピュータ可読形式のコピー:ファイル名:CERA_020_00US_SeqList_ST25.txt、記録日:2021年3月16日、ファイルサイズ約31.7キロバイト。
【0003】
本開示は、創傷を治療若しくは予防するための、又は創傷治癒、例えば、糖尿病性創傷治癒の強化のための抗セラミド組成物、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
糖尿病は、米国の2910万人を含む、世界中の3億4000万人が罹患している。糖尿病患者の合併症は、創傷の治癒不能であり、その結果、2010年に米国で73,000回の下肢切断が行われた。
【0005】
糖尿病患者では、高血糖は、長期にわたる慢性炎症、循環不良、及び神経障害の引き金となる。これらの因子の組み合わせは、創傷治癒プロセスを遅らせ、更には停止させる。この分野での広範な研究にもかかわらず、糖尿病性創傷の治癒障害の根底にある機構は多因子であり、あまり理解されていないままである。
【0006】
糖尿病性創傷の標準的な治療としては、創傷の清拭、抗生物質による感染の治療、及び下肢からの体重圧の低減又は排除が挙げられる。しかしながら、創傷治癒を加速するための、特に糖尿病性創傷のための、安全かつ効果的な治療の必要性は未だ満たされていない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】経時的な創傷治癒の代表的な写真を示す。各行は、示された実験群における特定の病巣部位の画像を示す。
図1B】経時的な創傷治癒の代表的な写真を示す。各行は、示された実験群における特定の病巣部位の画像を示す。
図2】経時的な各実験群における創傷治癒の平均速度を示す。Y軸は、創傷のサイズを示し、各創傷の開始時のサイズを1として正規化する。X軸は、日数を示す。「D+A2A」は、糖尿病性+2A2群であり、「C+A2A」は、対照+2A2群である。
図3A】治療間の差を示す棒グラフを示す。図3Aは、10日後の創傷サイズを示す棒グラフであり、創傷サイズは、初期の創傷サイズに対して正規化された%として表される。
図3B】治療間の差を示す棒グラフを示す。図3Bは、各実験群において、マウスが95%の治癒を達成するのにかかった平均日数を示す棒グラフである。
図4】経時的な各実験群における創傷治癒の平均速度を示す。Y軸は、創傷のサイズを示し、各創傷の開始時のサイズを1として正規化する。X軸は、日数を示す。
図5A】それぞれ各実験群について、マウスが25%の治癒を達成するのにかかった平均日数を示す棒グラフである。
図5B】それぞれ各実験群について、マウスが50%の治癒を達成するのにかかった平均日数を示す棒グラフである。
図5C】それぞれ各実験群について、マウスが75%の治癒を達成するのにかかった平均日数を示す棒グラフである。
図5D】それぞれ各実験群について、マウスが90%の治癒を達成するのにかかった平均日数を示す棒グラフである。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、本開示は、創傷を治療又は予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
一態様では、本開示は、創傷の治癒を強化することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷又は糖尿病性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、糖尿病性創傷である。
【0011】
いくつかの実施形態では、投与の経路は、局所投与、病巣内投与、皮下投与、経皮投与、筋肉内投与、静脈内投与、及び非経口投与からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、投与の経路は、局所投与である。いくつかの実施形態では、投与の経路は、静脈内投与である。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、単回用量として投与される。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、2回以上の用量で投与される。いくつかの実施形態では、連続用量の投与は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、又は少なくとも1週間離される。いくつかの実施形態では、投与の持続時間は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は少なくとも4週間である。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、創傷治癒の炎症段階の間に投与される。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、創傷治癒の増殖段階の間に投与される。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、創傷治癒の再形成段階の間に投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、抗体である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、一本鎖可変断片(scFv)である。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、対照創傷と比較して、創傷治癒を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、又は少なくとも70%強化する。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷後10日目、20日目、又は30日目の創傷の全表面積の死亡によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷後10日目に測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷の全表面積の50%、70%、90%、95%、又は100%の減少を達成するのにかかる時間の死亡によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷の全表面積の95%の減少で測定される。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、創傷の1つ以上の症状の発症前に投与される。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、創傷の1つ以上の症状の発症後に投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、YNYPRDGSTKYNEKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHCDR2と、GFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含み、VLは、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むLCDR2と、QQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、6B5抗体である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、6B5scFvである。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、NYWMH(配列番号33)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、AIYPGDSDTSYNQKFKG(配列番号34)のアミノ酸配列を含むHCDR2と、LYYGYD(配列番号35)のアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含み、VLは、KSSQSLIDSDGKTFLN(配列番号36)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、LVSKLDS(配列番号37)のアミノ酸配列を含むLCDR2と、WQGTHFPYT(配列番号38)のアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号40のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、2A2抗体である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、2A2scFvである。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号1及び43から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、配列番号44~47から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR2と、GFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR3と、を含み、VLは、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR2と、QQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR3と、を含む。いくつかの実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2は、YNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2は、YNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2は、YNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2は、YNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2は、YNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2は、YNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2は、YNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2は、YNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLは、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化6B5(h6B5)抗体である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、h6B5scFvである。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号53のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号55のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号49のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号53のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号49のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号50のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号53のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号50のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号51のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号53のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号52のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号53のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化scFvである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
概要
本開示は、創傷治癒を強化するための組成物及び方法に関する。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体及びその抗原結合断片(例えば、scFv)の組成物、並びに創傷の治療又は予防における使用方法が提供される。いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、糖尿病性創傷である。かかる組成物及び方法は、以前に糖尿病性創傷の別の治療に失敗した患者において糖尿病性創傷の治療に使用され得る。
【0023】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数の参照を含む。
【0024】
本明細書で使用されるように、「及び/又は」という用語は、別段の指定がない限り、「及び」又は「又は」のいずれかを意味するように本開示で使用される。
【0025】
本明細書全体にわたって、文脈上他に要求されない限り、「含む(comprise)」という語句、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」という変形語は、述べられた要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群を包含するが、任意の他の要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群を除外しないことを暗に示すことが理解されるであろう。
【0026】
本出願で使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は、同等語として使用される。本出願で使用される任意の数字は、約/およその有無にかかわらず、関連技術分野の当業者によって理解される任意の通常の変動をカバーすることを意味する。特定の実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、別段の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り(そのような数値が可能な値の100%を超えるか、又は可能な値の0%未満である場合を除く)、記載された参照値のいずれかの(それよりも大きいか、それよりも小さい)方向に10%以下に入る値の範囲を指す。
【0027】
「試料」という用語は、分析及び/又は修飾を受ける生物学的組成物(例えば、細胞又は組織の一部)を指す。いくつかの実施形態では、試料は、対象から直接得られるという点で「一次試料」であり、いくつかの実施形態では、「試料」は、例えば、特定の成分を除去するため、及び/又は目的の特定の構成成分を単離若しくは精製するための一次試料の処理の結果である。
【0028】
「対象」という用語は、例えば、哺乳動物などの動物を含む。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、霊長類である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、ウシ(cattle)、ヒツジ、ヤギ、ウシ(cow)、ブタなどのような家畜、又はイヌ及びネコなどの飼育動物である。いくつかの実施形態では(例えば、特に研究の文脈において)、対象は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、又は近交系ブタなどのブタである。本明細書では、対象及び患者という用語は、互換的に使用される。いくつかの実施形態では、対象は、新生児、若年者、又は成人であり得る。哺乳動物対象が特に興味深い。本方法で治療され得る哺乳動物種には、イヌ及びネコ、ウマ、ウシ、ヒツジなど、並びに霊長類、特にヒトが含まれる。動物モデル、特に小型哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギなど)は、実験研究のために使用され得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」、又は「緩和すること」という用語は、治療的治療又は予備的/予防的治療のいずれかを指す。治療を受ける個体における疾患の少なくとも1つの症状が改善するか、又は治療が個体における進行性疾患の悪化を遅らせるか、又は追加の関連疾患の発症を予防することができる場合、治療は、治療的である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、特定の生理学的効果をもたらすために必要な薬剤又は組成物の量を指す。特定の薬剤の有効量は、質量/体積、細胞の数/体積、粒子/体積、(薬剤の質量)/(対象の質量)、細胞の数/(対象の質量)、又は粒子/(対象の質量)など、薬剤の性質に基づいて多様な方法で表され得る。特定の薬剤の有効量はまた、半数効果濃度(EC50)として表されてもよく、これは、参照レベルと最大応答レベルとの間の中間値である特定の生理学的応答の大きさをもたらす薬剤の濃度を指す。
【0031】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン(Ig)分子の可変領域に位置する少なくとも1つのエピトープ認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、又はポリペプチドなどの特異的標的に結合することができるIg分子を指す。本明細書で使用される場合、この用語は、無傷のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体、及びその抗原結合断片を包含する。例えば、天然免疫グロブリン分子は、2つの重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドから構成される。重鎖ポリペプチドの各々は、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの間の鎖間ジスルフィド結合によって軽鎖ポリペプチドと会合して、2つのヘテロ二量体タンパク質又はポリペプチド(すなわち、2つの異種ポリペプチド鎖から構成されるタンパク質)を形成する。次いで、2つのヘテロ二量体タンパク質は、重鎖ポリペプチド間の追加の鎖間ジスルフィド結合によって会合して、免疫グロブリンタンパク質又はポリペプチドを形成する。
【0032】
本明細書で使用される「抗原結合断片」という用語は、目的の抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する免疫グロブリン重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むポリペプチド断片を指す。この点で、本明細書に記載の抗体の抗原結合断片は、セラミドに特異的に結合する抗体からの可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)配列の1、2、3、4、5、又は6つ全てのCDRを含み得る。抗原結合断片としては、全長抗体の一部、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv断片、ミニボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(dAb)、一本鎖可変断片(scFv)、抗体断片から形成される多重特異性抗体、及び必要な特異性の抗原結合部位又は断片を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された構成などの一般にその抗原結合又は可変領域を含むタンパク質が挙げられる。本開示の特定の実施形態では、無傷の抗体ではなく、抗原結合断片を使用して、組織貫通又は腫瘍貫通を増加させる。他の実施形態では、抗原結合断片は、血清半減期を増加させるように更に修飾される。
【0033】
「Fc領域」又は「Fcドメイン」は、細胞上のFc受容体及び/又は補体のC1q構成成分に結合することができ、それによって抗体のエフェクター機能を媒介する抗体の部分に対応するか、又はそれに由来するポリペプチド配列を指す。Fcは、タンパク質結晶を容易に形成する抗体の断片である「結晶性断片」を表す。タンパク質分解消化によって最初に記載された異なるタンパク質断片は、免疫グロブリンタンパク質の全体的な一般構造を定義することができる。文献で元々定義されているように、Fc領域は、ジスルフィド結合によって会合され、各々がヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体タンパク質である。しかしながら、より最近では、この用語は、CH3、CH2、及び第2のそのような鎖とジスルフィド連結二量体を形成するのに十分なヒンジの少なくとも一部からなる一本鎖モノマー構成成分に適用されている。したがって、文脈に応じて、「Fc領域」又は「Fcドメイン」という用語の使用は、本明細書では、二量体形態、又は二量体タンパク質を形成するために会合する個々のモノマーのいずれかを指す。免疫グロブリンの構造及び機能の概説については、Putnam,The Plasma Proteins,Vol.V(Academic Press,Inc.,1987),pp.49-140、及びPadlan,Mol.Immunol.31:169-217,1994を参照されたい。本明細書で使用される場合、Fcドメインという用語は、天然に存在する配列のバリアントを含む。
【0034】
「免疫グロブリン定常領域」又は「定常領域」という用語は、免疫グロブリン(例えば、CH1、CH2、CH3)の1つ以上の定常ドメインの一部又は全てに対応するか、又はそれらに由来するペプチド又はポリペプチド配列を指す。特定の実施形態では、定常領域は、CH1ドメインを含まない。特定の実施形態では、定常領域を構成する定常ドメインは、ヒトである。
【0035】
「軽鎖可変領域」(「軽鎖可変ドメイン」又は「VL」とも称される)及び「重鎖可変領域」(「重鎖可変ドメイン」又は「VH」とも称される)という用語は、それぞれ、抗体軽鎖及び重鎖からの可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)及び「フレームワーク領域」(FR)として知られる、別個の明確に定義された部分領域で構成される。
【0036】
「免疫グロブリン軽鎖定常領域」(「軽鎖定常領域」又は「CL」とも称される)という用語は、抗体軽鎖からの定常領域である。
【0037】
「免疫グロブリン重鎖定常領域」(「重鎖定常領域」又は「CH」とも称される)という用語は、抗体重鎖からの定常領域を指す。CHは、CH1、CH2、及びCH3(IgA、IgD、IgG)、又はCH1、CH2、CH3、及びCH4ドメイン(IgE、IgM)内の抗体アイソタイプに応じて、更に分割可能である。
【0038】
「F(ab)」という用語は、酵素パパインによるIgG分子のタンパク質分解切断から生じるタンパク質断片のうちの2つを指す。各F(ab)は、VH鎖及びVL鎖の共有ヘテロ二量体を含み、無傷の抗原結合部位を含む。各F(ab)は、一価の抗原結合断片である。「Fab」という用語は、F(ab’)2に由来する断片を指し、Fcの小部分を含有し得る。各Fab’断片は、一価の抗原結合断片である。
【0039】
「F(ab’)2」という用語は、酵素ペプシンによるタンパク質分解切断によって生成されるIgGのタンパク質断片を指す。各F(ab’)2断片は、2つのF(ab’)断片を含み、したがって、二価の抗原結合断片である。
【0040】
「Fd断片」は、VH及びCH1ドメインを含む。
【0041】
「Fv断片」は、天然抗体分子の抗原認識及び結合能力の多くを保持するが、Fab内に含まれるCH1及びCLドメインを欠く抗原結合部位を含む非共有結合性VH::VLヘテロ二量体を指す。Inbar et al.(1972)Proc.Nat.Acad.Sci.USA69:2659-2662、Hochman et al.(1976)Biochem15:2706-2710、及びEhrlich et al.(1980)Biochem19:4091-4096。いくつかの実施形態では、Fv断片は、IgMの優先的なタンパク質分解切断、及びまれに生じるIgG又はIgA免疫グロブリン分子によって産生され得る。しかしながら、Fv断片は、当該技術分野で既知の組換え技術を使用して、より一般的に誘導される。
【0042】
「dAb断片」(Ward et al.,Nature341:544 546,1989)は、VHドメインを含む。
【0043】
「一本鎖単鎖抗体」又は「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の融合タンパク質であり、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで連結される。リンカーは、柔軟性のためにグリシン、溶解性のためにセリン又はトレオニンが豊富であってもよく、VHのN末端とVLのC末端とを接続してもよく、又はその逆を接続してもよい。scFvは、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。本開示では、抗体又は抗体断片又はその使用のいずれかの言及は、scFv分子及びその使用を含むことが意図される。
【0044】
「ミニボディ」とは、CH3ドメインに接続したscFvを含む融合タンパク質を指し、本明細書にも含まれる(S.Hu et al.,Cancer Res.,56,3055-3061,1996)。例えば、Ward,E.S.et al.,Nature341,544-546(1989)、Bird et al.,Science,242,423-426,1988、Huston et al.,PNAS USA,85,5879-5883,1988)、PCT/US92/09965、WO94/13804、P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90 6444-6448,1993、Y.Reiter et al.,Nature Biotech,14,1239-1245,1996、S.Hu et al.,Cancer Res.,56,3055-3061,1996を参照されたい。
【0045】
「ダイアボディ」という用語は、VHドメイン及びVLドメインが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用して単一のポリペプチド鎖上に発現され、それにより、これらのドメインを別の鎖の相補性ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作製する、二重特異性抗体を指す(例えば、Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-48(1993)及びPoljak et al.,Structure2:1121-23(1994)を参照されたい)。
【0046】
「ナノボディ」又は「単一ドメイン抗体」という用語は、単一単量体可変抗体ドメインからなる抗原結合断片を指す。ナノクローン法は、B細胞の自動化された高スループット選択に基づいて、所望の標的に対するナノボディを生成するための方法である。(WO2006/079372を参照されたい)
【0047】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に生じる可能性のある変異を除いて、同一である。
【0048】
本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であり、鎖の残りが、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるモノクローナル抗体、並びに所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を指す。
【0049】
「一本鎖可変断片」又は「scFv」という用語は、免疫グロブリンの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の融合タンパク質を指し、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで接続されている。Huston et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA85(16):5879-5883。リンカーは、VHのN末端とVLのC末端とを接続してもよく、又はその逆を接続してもよい。自然に凝集されるが、化学的に分離された、軽鎖及び重鎖ポリペプチド鎖を、抗体V領域から、抗原結合部位の構造と実質的に同様の三次元構造に折り畳まれるscFv分子に変換するための化学構造を識別するための多くの方法が記載されている。例えば、Huston et al.に対する米国特許第5,091,513号及び同第5,132,405号、並びにLadner et al.に対する米国特許第4,946,778号を参照されたい。
【0050】
本明細書で使用される場合、「CDR」という用語は、免疫グロブリン(抗体)分子の「相補性決定領域」を指す。CDRは、抗体において、抗体がその特異的抗原に結合する可変ドメインの部分である。可変ドメインごとに3つのCDR(すなわち、軽鎖の可変ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びに重鎖の可変ドメイン内のCDR1、CDR2、及びCDR3)が存在する。可変ドメイン内では、CDR1及びCDR2は、ポリペプチド鎖の可変(V)領域に見出され、CDR3は、軽鎖領域の場合にはVJ、重鎖領域の場合にはVDJの組換えによってコードされるため、最大の可変性を示す。
【0051】
「単離された抗体」は、(1)天然状態でそれに伴う他の天然で会合する抗体を含む、天然で会合する構成成分と会合していないか、(2)同じ種由来の他のタンパク質を含まないか、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるか、又は(4)天然には存在しない抗体である。
【0052】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列由来の1つ以上の可変領域及び定常領域を有する全ての抗体を含む。好ましい実施形態では、可変ドメイン及び定常ドメインの全ては、ヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全なヒト抗体)。これらの抗体は、以下に記載されるように、様々な方法で調製され得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ヒト化」という用語は、元の非ヒト抗体の抗原結合特性を保持する、非ヒト種に由来する抗体又はその抗原結合断片を指す。いくつかの実施形態では、抗体の結合断片(例えば、軽鎖及び重鎖可変領域、Fab、scFv)は、ヒト化される。非ヒト抗原結合断片は、CDRグラフティングとして知られる技術(Jones et al.,Nature321:522(1986))、並びに「再成形(reshaping)」(Verhoeyen,et al.,1988 Science239:1534-1536、Riechmann,et al.,1988 Nature332:323-337、Tempest,et al.,Bio/Technol1991 9:266-271)、「超キメラ化(hyperchimerization)」(Queen,et al.,1989 Proc Natl Acad Sci USA86:10029-10033、Co,et al.,1991 Proc Natl Acad Sci USA88:2869-2873、Co,et al.,1992 J Immunol148:1149-1154)、及び「ベニアリング(veneering)」(Mark,et al.,“Derivation of therapeutically active humanized and veneered anti-CD18 antibodies.”In:Metcalf BW,Dalton BJ,eds.Cellular adhesion:molecular definition to therapeutic potential.New York:Plenum Press,1994:291-312)を含むその変形法を使用してヒト化することができる。非ヒト源に由来する場合、ヒンジ領域及び定常領域ドメインなどの抗体の他の領域もヒト化することができる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、当該技術分野で周知の経路を使用して投与されるときに、一般的にアレルギー又は他の重篤な有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。連邦若しくは州政府の規制機関によって承認されているか、又は動物、より特定的にはヒトにおいて使用するための米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に列挙されている分子実体及び組成物は、「薬学的に許容される」と考えられる。
【0055】
「予防する」、「防止」、及び「防止的に」という用語は、疾患の発症前(例えば、疾患の特定の症状の発症前)の化合物、例えば、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片の投与を指す。疾患を予防することは、疾患が発生する可能性を低減すること、疾患の発症を遅延させること、長期的な症状を緩和すること、又は疾患の最終的な進行を遅延させることを含み得る。
【0056】
本明細書中、「特異的に結合する」という用語は、混合物中に存在する他の構成成分又は抗原に顕著に結合しない一方で、少なくとも105-1の結合親和性(Ka)で標的抗原に結合する抗体又はその抗原結合断片の能力を指す。本明細書における抗セラミド抗体への言及は、セラミドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列の間、又は2つ以上のポリペプチド配列の間の関係を指す。1つの配列中の位置が、比較配列の対応する位置において同じ核酸塩基又はアミノ酸残基によって占有されている場合、配列は、その位置で「同一」であると言われる。配列同一性の割合は、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列中に発生する位置の数を決定して、同一の位置の数を得ることによって計算される。次いで、同一の位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数で除算し、100を掛けて、配列同一性の割合を得る。配列同一性の割合は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定される。ポリヌクレオチド配列の比較ウィンドウは、例えば、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000個以上の核酸長であり得る。ポリペプチド配列の比較ウィンドウは、例えば、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300個以上の核酸長であり得る。比較のために配列を最適にアラインメントするために、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、参照配列が一定に保たれている間に、ギャップと称される付加又は欠失を含み得る。最適なアラインメントは、ギャップがあっても、参照配列と比較配列との間に可能な最大数の「同一の」位置を生成するアラインメントである。2つの配列間の「配列同一性」の割合は、2004年9月1日の時点でNational Center for Biotechnology Informationから入手可能であったプログラム「BLAST2Sequences」のバージョンを使用して決定することができ、そのプログラムは、プログラムBLASTN(ヌクレオチド配列比較用)及びBLASTP(ポリペプチド配列比較用)を組み込んでおり、Karlin and Altschul(Proc.Natl.Acad.Sci.USA90(12):5873-5877,1993)のアルゴリズムに基づいている。「BLAST2Sequences」を利用する場合、2004年9月1日の時点でデフォルトパラメータであったパラメータを、ワードサイズ(3)、オープンギャップペナルティ(11)、伸長ギャップペナルティ(1)、ギャップドロップオフ(50)、期待値(10)、及びマトリックスオプションを含むがこれらに限定されない任意の他の必要なパラメータに使用することができる。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列が、互いに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する場合、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列は、「実質的に類似した配列同一性」又は「実質的な配列同一性」を有するとみなされる。
【0058】
「血管新生」は、新しい血管の形成を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「創傷」という用語は、組織への損傷を指し、急性、亜急性、遅延型又は治癒が困難な創傷、及び慢性創傷を含むが、これらに限定されない。損傷は、外傷、暴力、事故、手術、疾患によるものであってもよい。創傷は、膜(皮膚など)の裂創又は破損に起因して起こり、通常はその下にある組織に損傷を与える可能性がある。創傷は、ベッドでの静養の延長からの圧迫傷によって引き起こされる場合がある。慢性創傷は、糖尿病を含むがこれらに限定されない疾患、肝臓、腎臓、若しくは肺の疾患を含むがこれらに限定されない内臓の疾患、がん、又は治癒プロセスを遅らせる任意の他の状態によって引き起こされる場合がある。いくつかの実施形態では、創傷は、この段落に記載の因子の組み合わせによって引き起こされる場合がある。創傷は、局所的な場所で、又は内部的に起こる場合がある。創傷は、開いた創傷であっても閉じた創傷であってもよい。創傷としては、例えば、糖尿病性創傷又は潰瘍、火傷、切開部、切除部、裂創、擦過傷、穿刺又は貫通創傷、外科的創傷、挫傷、血腫、粉砕損傷、及び潰瘍が挙げられる。
【0060】
「糖尿病性創傷」という用語は、糖尿病状態、例えば、I型又はII型糖尿病に少なくとも部分的に起因する糖尿病対象において生じる創傷を指す。糖尿病性創傷は、下肢に生じることが多い(例えば、糖尿病性の足の創傷)。
【0061】
「創傷治癒の強化」又は「創傷治癒の加速」という用語は、互換的に使用され、対照群と比較した、治療群における創傷治癒プロセスの改善を指す。
【0062】
抗セラミド抗体、抗体断片、及び誘導体
本開示は、創傷治癒の強化のための、又は創傷を治療若しくは予防するための、抗セラミド抗体及びその抗原結合断片に関する。いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、糖尿病性創傷である。
【0063】
セラミドは、ワックス状脂質分子のファミリーである。セラミドは、スフィンゴシン及び脂肪酸から構成される。セラミドは、脂質二重層の主要脂質の1つであるスフィンゴミエリンを構成する構成成分脂質であるため、真核細胞の細胞膜内に高濃度で見出される。セラミドは、細胞の分化、増殖、及びプログラム細胞死(PCD)を調節することを含む、様々な細胞シグナル伝達に関与する。生体活性脂質として、セラミドは、アポトーシス、細胞成長停止、分化、細胞老化、細胞移行及び接着を含む多様な生理機能に関与している。セラミド及びその下流代謝産物の役割は、がん、神経変性、糖尿病、微生物病態、肥満、及び炎症を含むいくつかの病理学的状態においても示唆されている。
【0064】
例示的な抗セラミド抗体の配列及び特性は、米国特許公開第2010/0239572号及び同第2017/0335014号にも開示されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。例示的な抗セラミド抗体の配列を表1に提供する。しかしながら、任意の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、開示される方法及び用途に従って用いられ得る。
【表1】


【0065】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化6B5(h6B5)である。いくつかの実施形態では、h6B5抗体又はその抗原結合断片は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、h6B5抗体の配列は、2020年3月18日に出願された米国仮出願第62/991,232号に提供され、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。h6B5抗体又はその抗原結合断片の各CDRの配列は、本明細書全体で開示され、以下の表2にまとめられている。
【表2】
【0066】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、組換え抗体、又は合成抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗原結合抗体断片は、前述のうちのいずれか1つの抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗原結合抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片、dAb断片、ダイアボディ、scFvなどである。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体及びその抗原結合断片は、組換えDNA技術を使用して産生される。組換えタンパク質の発現及び精製のための手順は、当該技術分野において十分に確立されている。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、一本鎖可変断片(scFv)である。いくつかの実施形態では、scFvは、2A2、h2A2、6C8、7B10、9H10、h6B5、又は6B5抗体のCDR配列及び/又は可変鎖配列を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、米国特許公開第2010/0239572号に記載されているように、2A2抗体又はその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、米国公開第2017/0335014号に記載されているように、6B5抗体又はその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、本開示のh6B5抗体又はその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、scFvである。いくつかの実施形態では、scFVは、表1に開示される抗体のうちのいずれかのCDR配列を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、2A2のCDR配列を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、6B5のCDR配列を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、h6B5のCDR配列を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、h2A2の可変重鎖及び軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、6B5の可変重鎖及び軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、h6B5の可変重鎖及び軽鎖配列を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、任意の免疫グロブリンアイソタイプを有する。免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgG、及びIgMを含むがこれらに限定されない、一般的に知られているアイソタイプのいずれかに由来するものであってもよい。IgGアイソタイプは、以下の特定の種において、サブクラスに分けられる。ヒトにおけるIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4、及びマウスにおけるIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、Fc領域に1つ以上の修飾を含む。特定の修飾は、所望のエフェクター機能又は血清半減期を提供し得る。いくつかの実施形態では、適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合した裸の抗体は、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を介して、又は補体依存性細胞傷害性(CDC)の補体を動員することによって、又は標的細胞上の結合抗体を認識し、その後、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、又はいくつかの他の機構において標的細胞の食作用を引き起こす1つ以上のエフェクターリガンドを発現する非特異的細胞傷害性細胞を動員することによって、細胞傷害性を誘導することができる。副作用又は治療上の合併症を最小限に抑えるために、エフェクター機能を排除又は低減することが望ましい場合、特定の他のFc領域が使用され得る。抗体のFc領域は、FcRnに対する結合親和性を増加させ、したがって血清半減期を増加させるように修飾することができる。あるいは、Fc領域をPEG又はアルブミンにコンジュゲートして、血清半減期、又は所望の効果をもたらすいくつかの他のコンジュゲーションを増加させることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、検出可能な標識又はタグを含む。例示的な検出可能な標識としては、蛍光性タグ、親和性タグ、放射性同位体、発光マーカー、粒子標識、発色団、リン酸マーカー、及び酵素標識が挙げられる。例示的な蛍光性標識としては、GFP、RFP、及びYFPが含まれる。例示的な酵素標識としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼが挙げられる。例示的なペプチドタグとしては、Hisタグ、MBP、及びストレプトアビジンが挙げられる。
【0071】
検出手段は、選択された標識によって決定される。標識又はその反応生成物の外観は、標識が粒子状であり、適切なレベルで蓄積する場合には、肉眼を使用して、又は分光光度計、ルミノメーター、蛍光光度計などの機器を使用して、又はELISA若しくはウエスタンブロットによって、達成することができる。
【0072】
創傷治癒
一態様では、本開示は、創傷治癒の強化のための方法及び組成物を提供する。一態様では、本開示は、創傷を治療又は予防するための方法及び組成物を提供する。
【0073】
自然な創傷治癒は、明確に定義された段階で起こる。急性の皮膚創傷は、皮膚及びその下にある組織の完全性及び機能を回復させる生物学的プロセスにおいて、1~3週間で治癒し得る。かかる傷は、皮膚に対する擦り傷、擦過傷、切り傷、擦り剥け、切開部、裂傷、又は打撲の結果であり得る。
【0074】
創傷は、創傷の深さに応じて、以下の4つのグレードのうちの1つに分類され得る。i)グレードI:上皮に限定された創傷、ii)グレードII:真皮内に延びる創傷、iii)グレードIII:皮下組織内に延びる創傷、及びiv)グレードIV(又は全層創傷):骨が露出する創傷(例えば、大転子又は仙骨などの骨圧覚点)。「中間層損傷(partial thickness wound)」という用語は、グレードI~IIIを包含する創傷を指し、中間層損傷の例としては、圧迫傷、静脈性潰瘍、及び糖尿病性創傷又は潰瘍が挙げられる。「深創傷」という用語は、グレードIII及びグレードIVの創傷の両方を含むことを意味している。
【0075】
自然な創傷治癒は、主に3つの主要な時系列に従って生じる。これらの配列の各々は、特定の細胞活性によって特徴付けられ、修復プロセスの進行を集合的に管理し、サポートする多数の調節シグナル(正及び負の両方)によって制御される。したがって、以下は、以下のように区別される。
(a)炎症期、
(b)増殖期(肉芽期及び上皮化期を含む)、並びに
(c)再形成期。
【0076】
炎症期である第1期は、血管が破裂するとすぐに始まり、これは、主にフィブリン及びフィブロネクチンで構成され、暫定的なマトリックスを構成する血栓(血液凝固)の形成を引き起こす事象である。このマトリックスは、部分的に病巣部を埋め、損傷を受けた領域内で、創傷の除去を確実にするために動員される炎症性細胞の移行を可能にする。血小板はまた、治癒プロセスに関与する細胞を動員することを可能にする因子(例えば、サイトカイン及び/又は成長因子)を放出する。この期間は、病巣部位における多数の炎症細胞(多形核細胞、マクロファージ)の浸潤及び活性化を特徴とし、これは、生物を任意の外来微生物から保護し、また、創傷を洗浄又は拭き取る。
【0077】
第2期は、肉芽組織の発達に対応する。まず、線維芽細胞の移行及び増殖による損傷のコロニー形成が観察される。次に、健康な血管からの内皮細胞の移行が、損傷を受けた組織の血管形成、又は血管新生を可能にする。肉芽組織では、線維芽細胞が活性化され、アクチンマイクロフィラメントによって提供される顕著な収縮特性を有する筋線維芽細胞に分化し、したがって、創傷の収縮を可能にする。マイクロフィラメントは、タンパク質、α平滑筋アクチンを介して発現される。これらの筋線維芽細胞は、病巣部の治癒につながる肉芽組織の形成及び収縮において重要な役割を果たす。その後、ケラチノサイトが創傷の縁部から移行し、次に分化し、表皮の再建につながる。肉芽組織のこの発達期は、病巣部の炎症の一般的な状態の事前の低下、多形核好中球が徐々に消失、及び「修復」マクロファージを含むマクロファージの出現に続いて開始される。炎症期から増殖/修復期へのこの遷移は、炎症の収束期として知られている。
【0078】
プロセスの第3期は、新しく形成された組織が元の組織の初期の特徴及び特性をとるように、機能的組織を再構築することを目的とした再形成段階である。細胞外マトリックスの一部は、プロテアーゼ(本質的にマトリックスメタロプロテアーゼ及びエラスターゼ)によって消化され、細胞外マトリックスの再編成が観察される。肉芽組織内で優勢であるIII型コラーゲンは、真皮の主要なマトリックス構成成分であるI型コラーゲンに徐々に置き換えられる。成熟期の終了時に、線維芽細胞、筋線維芽細胞、及び血管細胞は、増殖及び/又は活性の低下を経験する。次いで、過剰な細胞は、細胞外マトリックスの同時再形成を伴って、アポトーシスによって死亡する。
【0079】
通常の期間内に創傷が治癒しない場合、「慢性創傷」と考えられる。例えば、慢性創傷は、治癒するのに2週間よりも長く、3週間よりも長く、4週間よりも長く、5週間よりも長く、6週間よりも長く、6週間よりも長く、7週間よりも長く、8週間よりも長く、9週間よりも長く、10週間よりも長く、11週間よりも長く、12週間よりも長く、3ヶ月間よりも長く、4ヶ月間よりも長く、5ヶ月間よりも長く、又は6ヶ月間よりも長くかかり得る。いくつかの実施形態では、慢性創傷は、創傷の出現から始まる3、4、5、6、7、8、9、又は10週間の期間後に治癒を開始しない。
【0080】
慢性創傷の場合、創傷は、治癒の段階のうちの1つで弱まるか、又は治癒の正常な段階を通って進行しない場合がある。慢性創傷は、例えば、1)長期にわたる炎症期、2)遅発性又は欠損性の細胞外マトリックス(ECM)、及び3)停滞又は減少した上皮化速度のうちの1つ以上によって少なくとも部分的に特徴付けられる創傷を含み得る。慢性創傷は、1ヶ月間などの比較的短い期間存在していてもよいか、又は数年間にわたって存在していてもよい。本明細書に記載の組成物及び方法は、慢性創傷の治癒を開始させ、強化することができる。
【0081】
慢性皮膚創傷としては、皮膚潰瘍、褥瘡、圧迫傷、糖尿病性創傷(例えば、糖尿病性潰瘍及び褥瘡)、並びに他の皮膚障害が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、慢性創傷は、糖尿病性創傷、静脈潰瘍、動脈潰瘍、圧潰瘍、及び血管炎性潰瘍から選択される。いくつかの実施形態では、慢性創傷は、糖尿病性創傷である。
【0082】
慢性皮膚創傷は、任意のサイズ、形状又は深さであってもよく、正常な健康な皮膚色素と比較して、変色したように見えることがある。慢性皮膚創傷は、出血するか、腫れるか、化膿性分泌物若しくは他の液体を浸透させるか、疼痛を引き起こすか、又は患部の動きを困難にするか、若しくは患部の動きに痛みを伴う可能性がある。慢性皮膚創傷は、感染し、体温が上昇し、乳白色、黄色、緑色、又は茶色の膿又は分泌物が発生する可能性がある。分泌物は無臭であるか、又は刺激的な臭いを有していてもよい。感染した場合、慢性皮膚創傷は、触ると赤いか、柔らかいか、又は暖かい可能性がある。
【0083】
慢性皮膚創傷は、糖尿病、血液供給不良、低血中酸素、低血圧に起因して血流が減少する状態、又は血管の閉塞、遮断、又は狭窄を特徴とする状態によって引き起こされ得る。酸素供給不足は、特定の血液、心臓、及び肺疾患、並びに/又は喫煙によって引き起こされる可能性がある。慢性皮膚創傷はまた、組織内の腫脹又は圧力の増加、又は創傷領域への一定の圧力など、皮膚に対する繰り返しの外傷の結果である場合がある。慢性皮膚創傷は、免疫系の弱体化又は損傷によっても引き起こされる場合がある。免疫系の弱体化又は損傷は、年齢の上昇、放射線、栄養不良、及び/又は抗がん薬若しくはステロイドなどの薬物療法によって引き起こされる場合がある。慢性皮膚創傷は、細菌、ウイルス、若しくは真菌の感染、又は異物の存在によっても引き起こされる場合がある。
【0084】
糖尿病対象における損傷後の創傷治癒障害は、主要な臨床的問題を表し、長期の入院及び顕著な医療費を生じさせる。全ての非外傷性切断の3分の2は、糖尿病性創傷が先行している。糖尿病性創傷の治癒障害は多因子であり、ケモカインの産生の減少、血管新生の減少、及び異常な炎症応答を特徴としている。
【0085】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、これらの糖尿病性創傷の治癒の不存在が、グルコースの増加した生物学的利用能と少なくとも部分的に関連付けられると考えられる。これにより、皮膚の肥厚化、又は神経障害及び動脈症につながる顕著な酸化ストレスなどの多数の生理学的変化及び代謝的変化が起こる。動脈症及び神経障害は、慢性化のための2つの主要な危険因子であり、したがって、糖尿病性創傷、より詳細には糖尿病性足部創傷の治癒の遅延である。褥瘡、静脈潰瘍、動脈潰瘍又は混合潰瘍などの最もよく知られた種類の慢性非糖尿病性創傷は、同じ病理に由来しない。例えば、静脈不全は、形成、慢性化、したがって静脈潰瘍の治癒の遅延の原因である。褥瘡は、それらに関する限り、皮膚組織への過度かつ長期の圧力及び摩擦に続く虚血及び再灌流のサイクルの後に生じる創傷である。
【0086】
いくつかの主要な問題は、糖尿病対象における正しい創傷治癒シーケンスを中断させる。治癒の第一の遅延は、炎症期から生じ、炎症期から増殖期への移行が中断される。炎症期は、治癒に不可欠な期間であるが、一時的なものでなければならない。炎症の収束は、治癒の他の期間の開始を条件付ける重要なポイントである。この動的事象は、炎症性細胞(多形核好中球)の消失及びマクロファージの出現を伴う。次に、走化性及び血管新生性抗炎症メディエーターが生成され、これは特に、肉芽期の重要な細胞である線維芽細胞の移行及び分化を可能にする。前述の対象の場合のように、この炎症期の中断は、炎症期の異常な延長を引き起こし、創傷の慢性化を引き起こし、それによって治癒の全ての後続の段階を遅らせる。最後に、創傷塞がりの期間は、特に上皮形成中に遅延されるか、又は更には、ほとんどの場合、起こらない。
【0087】
創傷治癒におけるセラミド及びASMの役割
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、セラミドリッチプラットフォーム(CRP)の形成は、例えば、慢性創傷又は糖尿病性創傷の場合に、創傷治癒の困難さに寄与する、微小血管内皮病態の基礎となることが企図される。
【0088】
スフィンゴ脂質は、膜マイクロドメインの主要な構成成分を表し、セラミド濃縮マイクロドメインは、炎症性サイトカインシグナル伝達のための前提条件であるようである。酸スフィンゴミエリナーゼ(ASM)及び中性スフィンゴミエリナーゼ(NSM)は、スフィンゴ脂質代謝の主要な調節酵素であり、炎症誘発性セラミドに対してスフィンゴミエリン加水分解を促進する。ASMは、炎症性サイトカインシグナル伝達における重要な初期応答因子である。
【0089】
内皮組織損傷は、細胞膜の外細胞小葉における膜損傷及び酸性スフィンゴミエリナーゼ依存性セラミド形成を引き起こす。損傷後の組織損傷の発生の間、CRP依存性アポトーシスは、フィードフォワードプロセスを表す可能性が高い。免疫媒介性組織損傷において、細胞溶解性T細胞はまた、効率的な細胞殺傷に必要な標的細胞上のCRPを誘発する。このプロセスの中断は、免疫媒介性組織損傷の更なる進化を防止し、堅牢で耐久性のある組織修復プロセスの開始をもたらす。
【0090】
抗セラミド抗体又はその抗原結合断片の投与は、血管内皮恒常性を回復させ、血液と組織との間のシグナル伝達の調節、造血細胞の輸送、非血栓性血流の維持、免疫及び炎症応答の促進、並びに損傷後の線維症を誘発することなく恒常性修復及び再生をもたらす。更に、セラミドリッチプラットフォームは、主に損傷した細胞に存在するため、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片の系統的な送達は、正常な組織に影響を与えることなく、損傷した組織に局所的に作用し得るため、潜在的に広い治療指数を提供する。
【0091】
薬学的組成物、投与経路、投薬量、及び投薬スケジュール
いくつかの実施形態では、本開示は、創傷治癒の強化、又は創傷を治療若しくは予防するための抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を含む薬学的組成物を提供する。
【0092】
投与のために、本開示の抗体又は断片(例えば、抗セラミド抗体及びその抗原結合断片)は、薬学的組成物として製剤化され得る。薬学的組成物は、(i)抗セラミド抗体又はその抗原結合断片と、(ii)薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含み得る。抗セラミド抗体若しくはその抗原結合断片、及び/又はscFvを含む薬学的組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための既知の方法に従って製剤化されてもよく、それによって、治療用分子は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤との混合物中で組み合わされる。好適な担体、希釈剤又は賦形剤は、当業者に周知である。(例えば、Gennaro(編集)、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,19th ed.1995)を参照されたい。)製剤は、1つ以上の賦形剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質損失を防止するためのアルブミンなどを更に含み得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、経口単位剤形、静脈内単位剤形、鼻腔内単位剤形、坐剤単位剤形、皮内単位剤形、筋肉内単位剤形、腹腔内単位剤形、皮下単位剤形、又は局所剤形といった剤形のうちの1つで製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、局所剤形で製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、静脈内剤形で製剤化されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、局所投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片の局所薬学的組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて製剤化されてもよい。局所組成物のための剤形の非限定的な例は、粉末、スプレー、泡、ゼリー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、坐剤、及びリポソーム調製物を含む。剤形は、活性成分の持続放出のために粘膜接着性ポリマーとともに製剤化され得る。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、及び必要とされる可能性のある防腐剤、緩衝剤、又は噴射剤と混合してもよい。局所製剤は、活性成分を、局所乾燥製剤、液体製剤、クリーム製剤、及びエアロゾル製剤で一般的に使用される従来の薬学的希釈剤及び担体と組み合わせることによって調製することができる。軟膏及びクリームは、例えば、好適な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加した水性又は油性の基剤とともに製剤化されてもよい。かかる基剤は、水及び/又は液体パラフィンなどの油、又はピーナッツ油又はヒマシ油などの植物油を含み得る。基剤の性質に従って使用され得る増粘剤には、軟パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、羊毛脂、水素化ラノリン、蜜蝋などが含まれる。ローションは、水性又は油性ベースで製剤化されてもよく、概して、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、香料などのうちの1つ以上も含む。粉末は、任意の好適な粉末基剤、例えば、タルク、ラクトース、デンプンなどを用いて形成され得る。液滴は、1つ以上の分散剤、懸濁剤、可溶化剤なども含む水性基剤又は非水性基剤とともに製剤化され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、軟膏、ペースト、クリーム及びゲルはまた、賦形剤、例えば、動物性及び植物性脂肪、油類、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はそれらの混合物を含有し得る。粉末及びスプレーはまた、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有し得る。スプレーは、クロロフルオロ炭化水素などの通常の噴射剤、並びにブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を追加で含有することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、薬学的に許容される担体、並びに以下の第2の薬理学的薬剤である局所麻酔剤(例えば、リドカイン、プリロカインなど)、局所抗炎症剤(例えば、ナプロキセン、プラモキシカムなど)、コルチコステロイド(例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾンなど)、かゆみ止め剤(例えば、ロペラミド、ジフィレノキサレートなど)、二価及び三価の金属イオン(例えば、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、ランタン、セリウム、亜鉛など)を含む、末梢感覚ニューロンの活性化を妨害する薬剤、鎮痛剤、滑沢剤、酵母系製品(例えば、凍結酵母、酵母抽出物など)、殺精子剤、再上皮化を促進することが知られている成長促進及び/若しくは創傷治癒促進剤(例えば、血小板由来成長因子(PDGF)、インターロイキン-11(IL-11)など)、抗菌剤(例えば、ネオスポリン、硫酸ポリミキシンB、バシトラシン亜鉛など)、粘膜付着剤(例えば、セルロース誘導体など)、Goodman and Gilman,The Pharmacological Basis of Therapeuticsに定義されるような凍結防止剤(例えば、コロイド状ビスマス、ミソプロストール、スクラルファートなど)、又はメタノールのうちの少なくとも1つとともに製剤化され得る。
【0097】
本明細書に記載の抗セラミド抗体及びその抗原結合断片は、1つ以上の投与経路によって対象に投与することができる。可能な投与経路としては、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、心房内、関節内、非経口、鼻腔内、肺内、経皮、髄腔内、経口、局所、及び病巣内経路によるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、投与経路は、局所投与、病巣内投与、皮下投与、経皮投与、筋肉内投与、静脈内投与、及び非経口投与からなる群から選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗セラミド抗体及びその抗原結合断片、又はその薬学的組成物の投与は、局所投与を含むか、又は局所投与からなる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗セラミド抗体及びその抗原結合断片、又はその薬学的組成物の投与は、病巣内投与を含むか、又は病巣内投与からなる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗セラミド抗体及びその抗原結合断片、又はその薬学的組成物の投与は、皮下投与を含むか、又は皮下投与からなる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗セラミド抗体及びその抗原結合断片、又はその薬学的組成物の投与は、経皮投与を含むか、又は経皮投与からなる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗セラミド抗体及びその抗原結合断片、又はその薬学的組成物の投与は、筋肉内投与を含むか、又は筋肉内投与からなる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗セラミド抗体及びその抗原結合断片、又はその薬学的組成物の投与は、静脈内投与を含むか、又は静脈内投与からなる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗セラミド抗体及びその抗原結合断片、又はその薬学的組成物の投与は、非経口投与を含むか、又は非経口投与からなる。
【0099】
予防及び治療目的のために、抗セラミド抗体及びその抗原結合断片は、単一ボーラス送達で、長期間にわたる連続送達(例えば、連続経皮送達)を介して、又は反復投与プロトコル(例えば、毎時、毎日、毎週、毎月、又は毎年)で対象に投与することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、治療有効量の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。上で定義される治療有効用量、投薬量、又は量は、特定の生理学的効果、例えば、創傷の1つ以上の症状の予防若しくは緩和、又は創傷治癒の強化をもたらすのに必要な抗セラミド抗体又はその抗原結合断片の量を指す。本文脈における治療有効投薬量の決定は、典型的には、動物モデル研究の後のヒト臨床試験に基づいており、モデル対象における創傷の発生若しくは重症度を顕著に低減するか、又は創傷治癒を強化する有効投薬量及び投与プロトコルを決定することによって導かれる。本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、投与される他の医薬、治療が予防的であるか又は治療的であるか、並びに組成物自体の特異的活性及び個体において所望の応答を誘発するその能力を含む、多くの異なる因子に応じて変化する。典型的には、投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するように、すなわち、安全性及び有効性を最適化するように調整される。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片の用量は、約0.1μg~100mg/kg、又は1μg/kg~約50mg/kg、又は10μg~5mg/kgである。いくつかの実施形態では、有効量の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、約1μg/kg~約20mg/kg、約10μg/kg~約10mg/kg、又は約0.1mg/kg~約5mg/kgである。本明細書に記載の抗セラミド抗体及びその抗原結合断片はまた、単回用量又は2回以上の用量として与えられる、体重1キログラム当たり約0.001~約10ミリグラム(mg)(mpk)の投薬量で投与されてもよい。ヒト成人患者への投与のために、治療有効量は、1用量当たり0.2mg~800mgの範囲の用量で投与されてもよく、これには、限定されないが、1用量当たり0.2mg、1用量当たり0.5mg、1用量当たり1mg、1用量当たり5mg、1用量当たり10mg、1用量当たり25mg、1用量当たり100mg、1用量当たり200mg、及び1用量当たり400mgが含まれ、1回以上の用量は、一連の治療で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗セラミド抗体及びその抗原結合断片の1日総投薬量は、約1mg~約2g、約100mg~約1.5g、又は約200mg~約1200mgの範囲であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片の用量は、創傷の表面積の約0.1μg/cm2~100mg/cm2、又は1μg/cm2~約50mg/cm2、又は10μg/cm2~5mg/cm2である。いくつかの実施形態では、有効量の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、約1μg/cm2~約20mg/cm2、約10μg/cm2~約10mg/kgcm2、又は約0.1mg/cm2~約5mg/cm2である。本明細書に記載の抗セラミド抗体及びその抗原結合断片はまた、単回用量又は2回以上の用量として与えられる、創傷の1平方センチメートル(cm2)当たり約0.001~約10ミリグラム(mg)の投薬量で投与されてもよい。ヒト成人患者への投与のために、治療有効量は、1用量当たり0.2mg~800mgの範囲の用量で投与されてもよく、これには、限定されないが、1用量当たり0.2mg、1用量当たり0.5mg、1用量当たり1mg、1用量当たり5mg、1用量当たり10mg、1用量当たり25mg、1用量当たり100mg、1用量当たり200mg、及び1用量当たり400mgが含まれ、1回以上の用量は、一連の治療で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗セラミド抗体及びその抗原結合断片の1日総投薬量は、約1mg~約2g、約100mg~約1.5g、又は約200mg~約1200mgの範囲であり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗セラミド抗体、その抗原結合断片、又はそれを含む組成物は、約0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、又は50mg/mLの濃度で製剤化されてもよい。濃度は、0.1~1mg/mL、1~5mg/mL、5~10mg/mL、又は10~50mg/mLであり得る。いくつかの実施形態では、開示される抗体、断片又は組成物は、約0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、又は1mgの用量で投与されてもよい。用量の体積は、約0.005mL、0.01mL、0.02mL、0.03mL、0.04mL、0.05mL、0.06mL、0.07mL、0.08mL、0.09mL、又は0.1mLであり得る。
【0104】
本明細書に記載の抗セラミド抗体及びその抗原結合断片は、1日の異なる時間に投与することができる。一実施形態では、用量は、夕方に投与することができる。別の実施形態では、用量は、朝に投与することができる。投薬量は、例えば、複数の毎週、隔週、毎月、又は毎年の投与を含む、単回又は複数回の投与で投与され得る。いくつかの実施形態では、単回用量の抗セラミド抗体又は抗体断片を、それを必要とする対象に投与する。いくつかの実施形態では、患者は、2回以上の用量の抗セラミド抗体治療を受けてもよい。いくつかの実施形態では、患者は、2回以上の用量の抗セラミド抗体治療を受けてもよく、連続用量は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、又は少なくとも1週間離される。いくつかの実施形態では、患者は、2回以上の用量の抗セラミド抗体治療を受けてもよく、連続用量は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は少なくとも3ヶ月間の期間離される。いくつかの実施形態では、2回以上の用量は、それを必要とする患者に、約1週間~約2週間、約2週間~約4週間、約1ヶ月間~約2ヶ月間、約2ヶ月間~約4ヶ月間、又は約1ヶ月間~約6ヶ月間の期間離されて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、投与の持続時間は、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、又は少なくとも5年間である。いくつかの実施形態では、投与は、障害の臨床症状をモニタリングすることによって示されるように、不規則に行うことができる。
【0105】
抗セラミド抗体及びその抗原結合断片を含む薬学的組成物の投薬量は、標的部位で所望の濃度を維持するために、主治医によって変化させることができる。より高い濃度又はより低い濃度を、送達モードに基づき選択することができる。抗セラミド抗体又はその抗原結合断片は、対象の生涯の間の任意の時点で投与されてもよい。投与は、創傷治癒の炎症段階、増殖段階、再形成段階、又はそれらの組み合わせの間に行われてもよい。いくつかの実施形態では、投与は、創傷治癒の炎症段階の間に行われる。いくつかの実施形態では、投与は、創傷治癒の増殖段階の間に行われる。いくつかの実施形態では、投与は、創傷治癒の再形成段階の間に行われる。
【0106】
治療方法及び使用
いくつかの実施形態では、本開示は、対象において創傷を治療するか、予防するか、又は緩和する方法であって、対象に、治療有効量の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、糖尿病性創傷である。
【0107】
いくつかの実施形態では、本開示は、創傷の治癒を強化することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象に、治療有効量の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、糖尿病性創傷である。
【0108】
対象
本明細書に開示される方法による治療のための対象には、創傷(例えば、糖尿病性創傷)を有するか、又はそれを発症するリスクがある対象が含まれる。創傷(例えば、糖尿病性創傷)を有する対象は、早期段階又は後期段階の疾患を有し得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、対象は、創傷(例えば、糖尿病性創傷)のための1つ以上の治療を以前に受けたことがあるが、以前の治療に応答しなかった対象である。このような実施形態では、「応答しなかった」とは、以前の治療が創傷(例えば、糖尿病性創傷)の緩和及び/又は改善に失敗したことを示す。いくつかの実施形態では、以前の療法は、いくつかの結果を示している可能性があるが、所望のパフォーマンスを達成していないか、又はいくつかの期間の後に有効性を示すのを停止している可能性がある。
【0110】
治療の読み出し(Treatment Readouts)
創傷治癒は、様々な手段によって測定することができる。いくつかの実施形態では、創傷治癒は、創傷の全表面積の変化によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒は、創傷の主軸の長さ(長さ及び幅)の変化によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒は、創傷中心からの創傷マージン距離によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒は、創傷の周囲の変化によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒は、周囲に対する表面積の(S/P)比の変化によって測定される。これらのパラメータの評価は、多様な方法、例えば、コンピュータ支援型面積測定によって行うことができる。いくつかの実施形態では、創傷治癒の程度は、これらのパラメータのうちのいずれか1つの初期値と比較した経時的な値の割合によって表される。
【0111】
抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を用いて創傷治癒を強化する方法が提供される。このような治療の有効性は、いくつかのパラメータに基づいて特徴付けられ、評価され、測定され、及び/又はモニタリングされ得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、改善は、特定の程度の創傷治癒を達成するための時間の減少によって測定される。例えば、対照群の創傷が治癒するのに25日かかり、治療群の創傷が治癒するのに20日しかかからない場合、創傷治癒は、そのような測定によって20%強化/加速される。いくつかの実施形態では、改善は、予め設定された時点での創傷治癒の相対的な程度の増加によって測定される。例えば、創傷後20日目に、治療群が平均50%程度の創傷治癒(例えば、全表面積によって測定される場合)を達成し、上述の群が平均40%程度の創傷治癒しか達成していない場合、創傷治癒は、そのような測定によって25%強化/加速される。当業者であれば、適切な対照群(例えば、対照創傷)を容易に認識するであろう。いくつかの実施形態では、対照創傷は、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片(例えば、特許請求の範囲に列挙されるもの)を除いて、同一の治療を受ける。いくつかの実施形態では、対照創傷は、標準ケア治療を受ける。全ての場合において、対照群への言及は、列挙された特性(例えば、強化された創傷治癒)が、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片の使用の結果であることを示すことを意味する。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、予め設定された程度での創傷治癒パラメータのうちの1つに従って創傷を改善するのにかかる時間の減少によって測定される場合、対照創傷と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%(全ての範囲及びその間の部分範囲を含む)、対象における創傷治癒を強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも10%強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも20%強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも30%強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも50%強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも70%強化する。いくつかの実施形態では、創傷治癒パラメータは、創傷の全表面積、創傷の周囲、創傷のS/P比、又は創傷中心からのマージン距離である。いくつかの実施形態では、創傷治癒パラメータは、創傷の全表面積である。いくつかの実施形態では、予め設定された程度は、約30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の減少である。いくつかの実施形態では、予め設定された程度は、50%である。いくつかの実施形態では、予め設定された程度は、95%である。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷の全表面積の50%の減少を達成するのにかかる時間の死亡によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷の全表面積の95%の減少を達成するのにかかる時間の死亡によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷の完全な塞がりを達成するのにかかる時間の死亡によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、糖尿病性創傷である。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、創傷治癒パラメータのうちの1つに従って予め設定された時点での創傷治癒の相対的な程度の増加によって測定される場合、対照創傷と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、又は少なくとも10倍(全ての範囲及びその間の部分範囲を含む)、対象における創傷治癒を強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも10%強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも20%強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも30%強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも50%強化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、創傷治癒を少なくとも70%強化する。いくつかの実施形態では、創傷治癒パラメータは、創傷の全表面積、創傷の周囲、創傷のS/P比、又は創傷中心からのマージン距離である。いくつかの実施形態では、創傷治癒パラメータは、創傷の全表面積である。いくつかの実施形態では、予め設定された時点は、創傷後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日目である。いくつかの実施形態では、予め設定された時点は、創傷後1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、又は20週目の終了時である。いくつかの実施形態では、予め設定された時点は、創傷後10日目である。いくつかの実施形態では、予め設定された時点は、創傷後20日目である。いくつかの実施形態では、予め設定された時点は、創傷後30日目である。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷後10日目の創傷の全表面積の死亡によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷後20日目の創傷の全表面積の死亡によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷治癒の強化は、創傷後30日目の創傷の全表面積の死亡によって測定される。いくつかの実施形態では、創傷は、慢性創傷である。いくつかの実施形態では、創傷は、糖尿病性創傷である。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示の治療は、皮膚に対するものなどの表在性創傷の治療に有効である。いくつかの実施形態では、本開示の治療は、外傷又は手術に起因して生じ得る創傷などの内傷の治療に有効である。
【0116】
いくつかの実施形態では、治療は、損傷(例えば、創傷)が生じた後に施される。いくつかの実施形態では、本開示の治療は、創傷を引き起こす可能性のある活動に着手する前、又は外科的手技の前などに、予防的に投与される。
【実施例
【0117】
実施例1:糖尿病のマウスモデルにおいて、抗セラミド抗体は、創傷治癒を加速する。
糖尿病性創傷治癒に対する抗セラミド抗体の効果を研究するために、標準化されたパンチ生検ベースのマウス表面創傷モデルを、MSUのコア施設で使用した。
【0118】
この研究では、マウスを以下の4つの実験群に分けた。
(a)1)抗セラミド抗体2A2を適用した糖尿病マウス(6匹の動物)(糖尿病性+2A2)、
(b)2)抗セラミド抗体2A2を含まない糖尿病マウス(6匹の動物)(糖尿病性)、
(c)3)抗セラミド抗体2A2を適用した対照マウス(3匹の動物)(対照+2A2)、
(d)4)抗セラミド抗体2A2を含まない対照マウス(5匹の動物)(対照)。
【0119】
創傷を、5mmの生検針によって、対照(非糖尿病性)の上背部に、及びSTZ誘発性糖尿病SKH1無毛マウスの上背部に導入し、1mgの2A2抗セラミド抗体又はビヒクル対照(PBS)のいずれかを4日ごとにIV注射することによって注射した。創傷後0、1、4、8、10、12、13、16、20、及び25日目の創傷部位の代表的な写真を、図1A図1Bに示す。
【0120】
図2は、経時的な病巣部のサイズによって表される、各実験群における創傷治癒の平均速度を示す。病巣部サイズを正規化するために、各症例の病巣部の元のサイズを1に設定した。糖尿病マウス及び非糖尿病マウスの両方において、2A2抗体の適用は、創傷治癒プロセスを加速し、この効果は、糖尿病マウス群において、より顕著であった。
【0121】
図3Aは、10日目の元の創傷サイズに対する%として計算された平均創傷塞がりを示す。対照群及び糖尿病群の両方で、2A2を注射したマウスでは、PBSビヒクル対照を注射したマウスよりも、10日後に、より大きな程度の創傷塞がりが達成された。
【0122】
図3Bは、各実験群でマウスが(元の創傷サイズと比較して)95%の創傷塞がりを達成するのにかかった平均日数を示す。糖尿病マウス群では、2A2抗体の適用は、95%の治癒を達成するのにかかる時間の長さを顕著に短縮した。
【0123】
全体的に、この研究は、抗セラミド抗体の適用が、創傷、特に糖尿病性創傷の治癒を顕著に加速することを実証する。
【0124】
研究プロトコル:
実施例1で実施される動物試験のプロトコルを以下に示す。
【0125】
研究目的:ストレプトゾトシン(STZ)誘発性I型糖尿病を受けている雄SKH1マウスに4日に1回静脈内(IV)投与した場合の創傷治癒に対する抗セラミド抗体2A2の効果を調べること。
【0126】
体重が20~25gの雄SKH1マウスを、およそ2週間かけて慣れさせた。動物を、対照(C)及び糖尿病誘発(D)マウスに分けた。糖尿病は、5日間連続してストレプトゾトシン(体重1kg当たり65mg)を腹腔内注射することによって作り出した。最後の注射から2週間後、足背静脈から採取された血液の液滴から血糖を測定し、1dl当たり300mgを超える血糖値によって糖尿病を確認した。体重減少、多尿症、水及び食物の摂取を毎日モニタリングし、動物の臨床状態に基づいてNPHインスリン注射(0~2単位/日)を提供した。創傷は、糖尿病が確認された後、前述のように導入された。
【0127】
動物を、ビヒクル又は2A2のIV注射治療のために2つの群に無作為に分けた。
【0128】
治療は、創傷導入の日に開始した。創傷が完全に治癒するまで(約30日)、4日ごとにIV投与を継続した。対照(C)動物に、糖尿病動物と同じ日に創傷を生成し、ビヒクル又は2A2のIV注射治療のために2つの群に無作為に分けた。IV治療は、創傷生成の日に開始した。創傷が完全に治癒するまで(約15日)、4日ごとに投与を継続した。2A2抗体のIV用量は、4日ごとに1mg/マウス25gであった。
【0129】
写真としての創傷測定は、手術直後に撮影し、その後一日おきに撮影し、治癒時間率を算出した。実験終了時に、創傷を切除し、固定し、真皮層の厚さ、マトリックス堆積、再血管形成、免疫細胞浸潤について分析した。
【0130】
実施例2:更なる実験的検証。
実施例1で実施した実験を、追加のマウス対象で繰り返した。この実験からの結果を、表3~6並びに図3及び5A~Dに提供する。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0131】
図4は、経時的な各実験群における創傷治癒の平均速度を示す。Y軸は、創傷のサイズを示し、各創傷の開始時のサイズを1として正規化する。X軸は、日数を示す。
【0132】
図5A~Dは、それぞれ各実験群について、マウスが25%、50%、75%、及び90%の治癒を達成するのにかかった平均日数を示す棒グラフである。
【0133】
この実験は、創傷治癒、特に糖尿病性創傷の統計的に顕著な加速における抗セラミド抗体によるマウスの治療を更に検証する。
【0134】
実施例3:局所抗体投与
実施例1~2に記載される創傷治癒の抗体治療加速は、創傷の場所における局所化されたセラミドシグナル伝達効果に起因すると考えられる。したがって、本開示の抗セラミド抗体及び/又はその抗原結合断片の局所投与は、実施例1~2に記載されるのと同様の効果を示すことが予想される。これらの抗体及び抗原結合断片の効果を、マウスなどの動物モデルで試験する。実験は、抗体がローション、セーブ(save)、又は当業者に既知の他の局所製剤を介して局所的に投与されることを除いて、実施例1~2に記載される実験と同様に実施される。実施例1~2に記載されるものと同様に実施される別の実験では、創傷は、抗体又はその抗原結合断片の皮下注射を介して治療される。イミプラミンなどの他のセラミドシグナル伝達阻害剤の局所投与を、実施例1及び2の方法に従って、創傷治癒に対して試験する。抗体及び/又はその抗原結合断片(又はイミプラミン)で治療された創傷は、対照動物及び/又は糖尿病動物における創傷治癒を加速/改善することが期待される。
【0135】
実施例4:内傷
追加の確認実験は、内傷を強化/加速する現在開示されている治療の能力を実証するために実施される。対照及び糖尿病対象に内傷を与え、ビヒクルを用い/用いずに、又は本開示の抗セラミド抗体若しくはイミプラミンで治療された対象において、内傷からの治癒が経時的に追跡される、モデル動物で実験が行われる。治癒は、ソノグラム、MRI、CT、又は外科的手段による視覚的評価を含む、当業者に既知の技術のいずれかを介して追跡される。
【0136】
実施例5:開示された抗体及びその抗原結合断片の更なる検証
本開示は、2A2抗体の検証実験を通じて、抗セラミド抗体及び/又はその抗原結合断片の効果を例示する。実施例1~2の実験は、本明細書に開示される追加の抗体及び抗原結合断片のうちのいずれか1つ、又はセラミドに結合するか、又はセラミドリッチプラットフォームの形成を阻害することができる他の抗体/抗原結合断片を使用して繰り返される。例えば、実施例1~2に記載の創傷治癒実験は、6b5マウス(US2019-0389970、これは参照により本明細書に組み込まれる)、並びに6b5ヒト化(PCT/US2021/022914及びその対応する米国仮出願第62/991,232号、これらの両方は参照により本明細書に組み込まれる)、抗体及びその断片を使用して繰り返される。
【0137】
更なる付番された実施形態
本発明の更なる実施形態は、以下の付番された実施形態で提供される。
【0138】
実施形態1.創傷を治療又は予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を対象に投与することを含む、方法。
【0139】
実施形態2.創傷の治癒を強化することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片を対象に投与することを含む、方法。
【0140】
実施形態3.創傷が、慢性創傷又は糖尿病性創傷である、実施形態1又は2の方法。
【0141】
実施形態4.創傷が、慢性創傷である、実施形態1又は2の方法。
【0142】
実施形態5.創傷が、糖尿病性創傷である、実施形態1又は2の方法。
【0143】
実施形態5.1 創傷が、外部創傷である、実施形態1又は2の方法。
【0144】
実施形態5.2 創傷が、内部創傷である、実施形態1又は2の方法。
【0145】
実施形態5.3 創傷が、内皮組織上にある、実施形態1又は2の方法。
【0146】
実施形態6.投与の経路が、局所投与、病巣内投与、皮下投与、経皮投与、筋肉内投与、静脈内投与、及び非経口投与からなる群から選択される、実施形態1~5.3のうちのいずれか1つの方法。
【0147】
実施形態7.投与の経路が、局所投与である、実施形態6の方法。
【0148】
実施形態8.投与の経路が、静脈内投与である、実施形態6の方法。
【0149】
実施形態9.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、単回用量として投与される、実施形態1~8のうちのいずれか1つの方法。
【0150】
実施形態10.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、2回以上の用量で投与される、実施形態1~8のうちのいずれか1つの方法。
【0151】
実施形態11.連続用量の投与が、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、又は少なくとも1週間離される、実施形態10の方法。
【0152】
実施形態12.投与の持続時間が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は少なくとも4週間である、実施形態10又は11の方法。
【0153】
実施形態13.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の炎症段階の間に投与される、実施形態1~12のうちのいずれか1つの方法。
【0154】
実施形態14.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の増殖段階の間に投与される、実施形態1~13のうちのいずれか1つの方法。
【0155】
実施形態15.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の再形成段階の間に投与される、実施形態1~14のうちのいずれか1つの方法。
【0156】
実施形態16.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、抗体である、実施形態1~15のうちのいずれか1つの方法。
【0157】
実施形態17.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態1~15のうちのいずれか1つの方法。
【0158】
実施形態18.本方法が、対照創傷と比較して、創傷治癒を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、又は少なくとも70%強化する、実施形態1~17のうちのいずれか1つの方法。
【0159】
実施形態19.創傷治癒の強化が、創傷後10日目、20日目、又は30日目の創傷の全表面積の死亡によって測定される、実施形態18の方法。
【0160】
実施形態20.創傷治癒の強化が、創傷後10日目に測定される、実施形態19の方法。
【0161】
実施形態21.創傷治癒の強化が、創傷の全表面積の50%、70%、90%、95%、又は100%の減少を達成するのにかかる時間の死亡によって測定される、実施形態18の方法。
【0162】
実施形態22.創傷治癒の強化が、創傷の全表面積の95%の減少で測定される、実施形態21の方法。
【0163】
実施形態23.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷の1つ以上の症状の発症前に投与される、実施形態1~22のうちのいずれか1つの方法。
【0164】
実施形態24.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷の1つ以上の症状の発症後に投与される、実施形態1~22のうちのいずれか1つの方法。
【0165】
実施形態25.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、
a)VHが、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、YNYPRDGSTKYNEKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHCDR2と、GFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含み、
b)VLが、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むLCDR2と、QQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0166】
実施形態26.VHが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、実施形態1~25のうちのいずれか1つの方法。
【0167】
実施形態27.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、6B5抗体である、実施形態1~26のうちのいずれか1つの方法。
【0168】
実施形態28.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、6B5scFv抗体である、実施形態1~26のうちのいずれか1つの方法。
【0169】
実施形態29.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、
a)VHが、NYWMH(配列番号33)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、AIYPGDSDTSYNQKFKG(配列番号34)のアミノ酸配列を含むHCDR2と、LYYGYD(配列番号35)のアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含み、
b)VLが、KSSQSLIDSDGKTFLN(配列番号36)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、LVSKLDS(配列番号37)のアミノ酸配列を含むLCDR2と、WQGTHFPYT(配列番号38)のアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0170】
実施形態30.VHが、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号40のアミノ酸配列を含む、実施形態1~29のうちのいずれか1つの方法。
【0171】
実施形態31.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、2A2抗体である、実施形態1~24及び29~30のうちのいずれか1つの方法。
【0172】
実施形態32.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、2A2scFvである、実施形態1~24及び29~30のうちのいずれか1つの方法。
【0173】
実施形態33.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、
a)VHが、配列番号1及び43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、配列番号44~47からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR2と、GFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるHCDR3と、を含み、
b)VLが、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR2と、QQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるLCDR3と、を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0174】
実施形態34.HCDR1が、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2が、YNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0175】
実施形態35.HCDR1が、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2が、YNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0176】
実施形態36.HCDR1が、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2が、YNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0177】
実施形態37.HCDR1が、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2が、YNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0178】
実施形態38.HCDR1が、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2が、YNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0179】
実施形態39.HCDR1が、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2が、YNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0180】
実施形態40.HCDR1が、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2が、YNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0181】
実施形態41.HCDR1が、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、HCDR2が、YNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0182】
実施形態42.VHが、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0183】
実施形態43.VHが、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0184】
実施形態44.VHが、配列番号48に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0185】
実施形態45.VHが、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0186】
実施形態46.VHが、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0187】
実施形態47.VHが、配列番号49に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0188】
実施形態48.VHが、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0189】
実施形態49.VHが、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0190】
実施形態50.VHが、配列番号50に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0191】
実施形態51.VHが、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0192】
実施形態52.VHが、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0193】
実施形態53.VHが、配列番号51に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0194】
実施形態54.VHが、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号53に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0195】
実施形態55.VHが、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号54に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0196】
実施形態56.VHが、配列番号52に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、VLが、配列番号55に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態33の方法。
【0197】
実施形態57.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化6B5(h6B5)抗体である、実施形態33~56のうちのいずれか1つの方法。
【0198】
実施形態58.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、h6B5scFv抗体である、実施形態33~56のうちのいずれか1つの方法。
【0199】
実施形態59.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHが、配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0200】
実施形態60.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHが、配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号55のアミノ酸配列を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0201】
実施形態61.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHが、配列番号49のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0202】
実施形態62.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHが、配列番号49のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号54のアミノ酸配列を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0203】
実施形態63.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHが、配列番号50のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0204】
実施形態64.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHが、配列番号50のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号54のアミノ酸配列を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0205】
実施形態65.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHが、配列番号51のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0206】
実施形態66.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含み、VHが、配列番号52のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~24のうちのいずれか1つの方法。
【0207】
実施形態67.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化抗体である、実施形態59~66のうちのいずれか1つの方法。
【0208】
実施形態68.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化scFvである、実施形態59~66のうちのいずれか1つの方法。
【0209】
実施形態69.創傷を治療又は予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、イミプラミン又はその塩を対象に投与することを含む、方法。
【0210】
実施形態70.創傷の治癒を強化することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、イミプラミン又はその塩を対象に投与することを含む、方法。
【0211】
実施形態71.創傷が、慢性創傷又は糖尿病性創傷である、実施形態70又は71の方法。
【0212】
実施形態72.創傷が、慢性創傷である、実施形態70又は71の方法。
【0213】
実施形態73.創傷が、糖尿病性創傷である、実施形態70又は712の方法。
【0214】
実施形態74.投与の経路が、局所投与、病巣内投与、皮下投与、経皮投与、筋肉内投与、静脈内投与、及び非経口投与からなる群から選択される、実施形態70~73のうちのいずれか1つの方法。
【0215】
実施形態75.投与の経路が、局所投与である、実施形態74の方法。
【0216】
実施形態76.投与の経路が、静脈内投与である、実施形態74の方法。
【0217】
実施形態77.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、単回用量として投与される、実施形態70~76のうちのいずれか1つの方法。
【0218】
実施形態78.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、2回以上の用量で投与される、実施形態1~8のうちのいずれか1つの方法。
【0219】
実施形態79.連続用量の投与が、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、又は少なくとも1週間離される、実施形態78の方法。
【0220】
実施形態80.投与の持続時間が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は少なくとも4週間である、実施形態78又は79の方法。
【0221】
実施形態81.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の炎症段階の間に投与される、実施形態70~80のうちのいずれか1つの方法。
【0222】
実施形態82.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の増殖段階の間に投与される、実施形態70~81のうちのいずれか1つの方法。
【0223】
実施形態83.抗セラミド抗体又はその抗原結合断片が、創傷治癒の再形成段階の間に投与される、実施形態70~82のうちのいずれか1つの方法。
【0224】
参照による組み込み
本明細書で引用される全ての引用文献、文献、刊行物、特許、特許公開、及び特許出願は、あらゆる目的に関して、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書に引用される任意の引用文献、文献、刊行物、特許、特許公開、及び特許出願の言及は、それらが有効な先行技術を構成する、又は世界のどの国でも一般的な知識の一部を形成するという認識、又はいかなる形態の示唆ではなく、そのようにみなされるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
【配列表】
2024511079000001.app
【国際調査報告】