(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 23/06 20060101AFI20240305BHJP
F02D 41/38 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F02B23/06 R
F02B23/06 D
F02D41/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557809
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2022073115
(87)【国際公開番号】W WO2022262275
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110669898.1
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521272506
【氏名又は名称】▲い▼柴動力股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WEICHAI POWER CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】197 A,East Fushou Street High-Tech Development Zone Weifang,Shandong 261061,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】譚 旭光
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 斌
(72)【発明者】
【氏名】▲トン▼ 徳輝
(72)【発明者】
【氏名】周 鵬
(72)【発明者】
【氏名】劉 曉▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】谷 允成
(72)【発明者】
【氏名】程 旭
【テーマコード(参考)】
3G023
3G301
【Fターム(参考)】
3G023AA07
3G023AB05
3G023AC05
3G023AD02
3G301HA02
3G301JA01
3G301MA29
(57)【要約】
燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびエンジンを開示し、該燃焼システムの制御方法は、インジェクタ(10)は、第1回のメイン噴射および第2回のメイン噴射を間隔をおいて行い、インジェクタは、第1回のメイン噴射の時に燃油を第1弧状リッジ(3)に噴射するステップと、インジェクタは、第2回のメイン噴射の時に燃油を第2弧状リッジ(6)に噴射するステップと、を含む。2つの弧状リッジを有する燃焼室を採用するとともに、インジェクタを介してそれぞれに2つの弧状リッジへ燃油のメイン噴射を行うことにより、各弧状リッジが割り当てる燃油の量を小さくすることを保証でき、単一の弧状リッジ箇所に燃油が多く集まることを回避可能であり、油ジェットの先端が壁に衝突する噴流速度場に対する弧状リッジの改善作用の発揮に有利であり、それに、2つの弧状リッジが2回のメイン噴射の燃油をガイドし配分することにより、シリンダのオイルとガスとの分布の強化を便利にさせ、シリンダチャンバ内の空気の利用率を向上させ、燃焼効率を向上させ、さらにエンジンの熱効率を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、シリンダと、インジェクタ(10)とを含み、前記ピストンは、前記シリンダのシリンダチャンバ内を摺動して位置し、前記ピストンの頂部に、前記シリンダチャンバに連通する燃焼室が設けられており、前記燃焼室の側壁は、間隔をおいて設けられた第1弧状リッジ(3)および第2弧状リッジ(6)を有し、前記第1弧状リッジ(3)および前記第2弧状リッジ(6)はともに燃焼室内へ突出する燃焼システムの制御方法であって、前記インジェクタ(10)は、第1回のメイン噴射および第2回のメイン噴射を間隔をおいて行い、それに、前記インジェクタ(10)は、前記第1回のメイン噴射の時に燃油を前記第1弧状リッジ(3)に噴射するステップと、前記インジェクタ(10)は、前記第2回のメイン噴射の時に燃油を前記第2弧状リッジ(6)に噴射するステップと、を含み、前記第1回のメイン噴射、前記第2回のメイン噴射の燃油噴射の速度がともに設定速度以上である、
ことを特徴とする燃焼システムの制御方法。
【請求項2】
前記インジェクタ(10)が第1回のメイン噴射を行う場合、前記ピストンは前記シリンダ内で上り、それに、前記シリンダチャンバ内の気体を圧縮可能であり、前記インジェクタ(10)が第2回のメイン噴射を行う場合、前記ピストンは前記シリンダ内で下る、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項3】
前記インジェクタ(10)が第1回のメイン噴射を行う場合、前記インジェクタ(10)の油噴射孔は前記第1弧状リッジ(3)の中心位置に向いており、それに、前記インジェクタ(10)の油噴射孔と前記第1弧状リッジ(3)の中心との間のピッチをL
1とし、前記インジェクタ(10)の油噴射孔が燃油を噴射する速度をV
1とし、前記第1回のメイン噴射が噴射する燃油の着火遅れ期間をt
1とし、t
1=L
1/V
1である、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項4】
前記インジェクタ(10)が第2回のメイン噴射を行う場合、前記インジェクタ(10)の油噴射孔は前記第2弧状リッジ(6)の中心位置に向いており、前記インジェクタ(10)の油噴射孔と前記第2弧状リッジ(6)との間のピッチをL
2とし、前記インジェクタ(10)の油噴射孔が燃油を噴射する速度をV
2とし、前記第2回のメイン噴射が噴射する燃油の着火遅れ期間をt
2とし、t
2=L
2/V
2である、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項5】
前記第1弧状リッジ(3)の中心と前記第2弧状リッジ(6)の中心との間の垂直ピッチはH
1に等しくなり、前記インジェクタ(10)の第1回のメイン噴射時の前記ピストンの位置と前記インジェクタ(10)の第2回のメイン噴射時の前記ピストンの位置との間の変位はH
2に等しくなり、H
1=H
2である、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項6】
前記インジェクタ(10)が第1回のメイン噴射を行うことと、第2回のメイン噴射を行うこととの間の期間に、前記インジェクタ(10)は燃油の噴射を継続し、それに、前記インジェクタ(10)の燃油噴射の速度が前記設定速度よりも小さい、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の燃焼システムの制御方法を実施するための燃焼システムであって、
シリンダチャンバを有するシリンダと、
前記シリンダの前記シリンダチャンバ内を摺動して位置し、頂部に、前記シリンダチャンバに連通する燃焼室が設けられているピストンであって、前記燃焼室の側壁は、間隔をおいて設けられた第1弧状リッジ(3)および第2弧状リッジ(6)を有し、前記第1弧状リッジ(3)および前記第2弧状リッジ(6)はともに燃焼室内へ突出するピストンと、
前記燃焼室内へ油を噴射するためのインジェクタ(10)と、
前記インジェクタ(10)の燃油噴射の速度を制御するための制御システムであって、前記インジェクタ(10)が燃油を設定速度以上で前記第1弧状リッジ(3)に噴射するように制御可能であり、かつ前記インジェクタ(10)が燃油を設定速度以上で前記第2弧状リッジ(6)に噴射するように制御可能である制御システムと、を含む、
ことを特徴とする燃焼システム。
【請求項8】
前記第1弧状リッジ(3)は前記第2弧状リッジ(6)よりも前記燃焼室の中心に近く、それに、前記第2弧状リッジ(6)は前記第1弧状リッジ(3)よりも前記燃焼室の頂面に近い、
ことを特徴とする請求項7に記載の燃焼システム。
【請求項9】
前記第1弧状リッジ(3)は、前記燃焼室の垂直断面内に第1円弧(2)をなし、前記第2弧状リッジ(6)は、前記燃焼室の垂直断面内に第2円弧をなし、前記第1円弧(2)の半径をR
1とし、前記第2円弧の半径をR
2とし、R
1=2R
2~3R
2である、
ことを特徴とする請求項7に記載の燃焼システム。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の燃焼システムを含む、
ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年06月17日にて中国特許庁に提出され、出願番号が202110669898.1であり、発明名称が「燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびエンジン」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が援用されることで本出願に結合される。
【0002】
本発明はエンジンという技術的分野に関し、特に燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびエンジンに関する。
【背景技術】
【0003】
従来のディーゼルエンジンの燃焼組織方式は主に、拡散燃焼を主要な方式とし、燃焼速度は、オイルとガスとの混合速度に大きく制限される。なお、現段階の高圧コモンレールディーゼルエンジンはいずれも1回のメイン噴射を採用し、単回の高圧噴射の巻き込み作用は主に霧化領域で発生され、油ジェットの中段で巻き込み作用が弱くなり、オイルとガスとの混合効果が悪く、それに、1回のメイン噴射に合わせた燃焼室のほとんどは、単段階弧状リッジ構造を採用し、油ジェットの先端に配分された燃油量が多く、特に弧状リッジ箇所に燃油が多く集まり、油ジェットの先端が壁に衝突する噴流速度場に対する弧状リッジの改善作用を効果的に発揮することができない。それに、エンジンの回転数が高いため、4ストロークエンジンに対して、オイルとガスとの混合の組織のための時間が非常に短く、単回のメイン噴射の噴射において発生した噴流および液滴は、壊れて霧化させた後、適時に燃焼室内で拡散して空気と均一な混合気を形成するのが難しく、これにより、燃焼過程の急速な進行を制限し、エンジンの電力出力をさらに制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、関連技術における燃焼システムが通常、単回のメイン噴射を採用し、オイルとガスとの十分な混合に不利になる課題を解決するように、燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一方、本発明は、燃焼システムの制御方法を提供し、該燃焼システムは、ピストンと、シリンダと、インジェクタとを含み、前記ピストンは、前記シリンダのシリンダチャンバ内を摺動して位置し、前記ピストンの頂部に、前記シリンダチャンバに連通する燃焼室が設けられており、前記燃焼室の側壁は、間隔をおいて設けられた第1弧状リッジおよび第2弧状リッジを有し、前記第1弧状リッジおよび前記第2弧状リッジはともに燃焼室内へ突出し、燃焼システムの制御方法は、前記インジェクタは、第1回のメイン噴射および第2回のメイン噴射を間隔をおいて行い、それに、前記インジェクタは、前記第1回のメイン噴射の時に燃油を前記第1弧状リッジに噴射するステップと、前記インジェクタは、前記第2回のメイン噴射の時に燃油を前記第2弧状リッジに噴射するステップと、を含み、前記第1回のメイン噴射、前記第2回のメイン噴射の燃油噴射の速度がともに設定速度以上である。
【0006】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、前記インジェクタが第1回のメイン噴射を行う場合、前記ピストンは前記シリンダ内で上り、それに、前記シリンダチャンバ内の気体を圧縮可能であり、前記インジェクタが第2回のメイン噴射を行う場合、前記ピストンは前記シリンダ内で下る。
【0007】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、前記インジェクタが第1回のメイン噴射を行う場合、前記インジェクタの油噴射孔は前記第1弧状リッジの中心位置に向いており、それに、前記インジェクタの油噴射孔と前記第1弧状リッジの中心との間のピッチをL1とし、前記インジェクタの油噴射孔が燃油を噴射する速度をV1とし、前記第1回のメイン噴射が噴射する燃油の着火遅れ期間をt1とし、t1=L1/V1である。
【0008】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、前記インジェクタが第2回のメイン噴射を行う場合、前記インジェクタの油噴射孔は前記第2弧状リッジの中心位置に向いており、前記インジェクタの油噴射孔と前記第2弧状リッジとの間のピッチをL2とし、前記インジェクタの油噴射孔が燃油を噴射する速度をV2とし、前記第2回のメイン噴射が噴射する燃油の着火遅れ期間をt2とし、t2=L2/V2である。
【0009】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、前記第1弧状リッジの中心と前記第2弧状リッジの中心との間の垂直ピッチはH1に等しくなり、前記インジェクタの第1回のメイン噴射時の前記ピストンの位置と前記インジェクタの第2回のメイン噴射時の前記ピストンの位置との間の変位はH2に等しくなり、H1=H2である。
【0010】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、前記インジェクタが第1回のメイン噴射を行うことと、第2回のメイン噴射を行うこととの間の期間に、前記インジェクタは燃油の噴射を継続し、それに、前記インジェクタの燃油噴射の速度が前記設定速度よりも小さい。
【0011】
他方、本発明は、上記のいずれの方案における燃焼システムの制御方法に用いられる燃焼システムを提供し、該燃焼システムは、
シリンダチャンバを有するシリンダと、
前記シリンダの前記シリンダチャンバ内を摺動して位置し、頂部に、前記シリンダチャンバに連通する燃焼室が設けられているピストンであって、前記燃焼室の側壁は、間隔をおいて設けられた第1弧状リッジおよび第2弧状リッジを有し、前記第1弧状リッジおよび前記第2弧状リッジはともに燃焼室内へ突出するピストンと、
前記燃焼室内へ油を噴射するためのインジェクタと、
前記インジェクタの燃油噴射の速度を制御するための制御システムであって、前記インジェクタが燃油を設定速度以上で前記第1弧状リッジに噴射するように制御可能であり、かつ前記インジェクタが燃油を設定速度以上で前記第2弧状リッジに噴射するように制御可能である制御システムと、を含む。
【0012】
燃焼システムの好ましい技術案として、前記第1弧状リッジは前記第2弧状リッジよりも前記燃焼室の中心に近く、それに、前記第2弧状リッジは前記第1弧状リッジよりも前記燃焼室の頂面に近い。
【0013】
燃焼システムの好ましい技術案として、前記第1弧状リッジは、前記燃焼室の垂直断面内に第1円弧をなし、前記第2弧状リッジは、前記燃焼室の垂直断面内に第2円弧をなし、前記第1円弧の半径をR1とし、前記第2円弧の半径をR2とし、R1=2R2~3R2である。
【0014】
さらに一方、本発明は、いずれの上記方案に記載の燃焼システムを含むエンジンを提供する。
【0015】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本発明は、燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびエンジンを提供し、該燃焼システムの制御方法は、インジェクタは、第1回のメイン噴射および第2回のメイン噴射を間隔をおいて行い、それに、インジェクタは、第1回のメイン噴射の時に燃油を第1弧状リッジに噴射し、かつ燃油が跳ね返って飛び散ることが可能であるステップと、インジェクタは、第2回のメイン噴射の時に燃油を第2弧状リッジに噴射し、かつ燃油が跳ね返って飛び散ることが可能であり、第1回のメイン噴射、第2回のメイン噴射の燃油噴射の速度がともに設定速度以上であるステップと、を含む。2つの弧状リッジを有する燃焼室を採用するとともに、インジェクタを介してそれぞれに2つの弧状リッジへ燃油のメイン噴射を行うことにより、各弧状リッジが割り当てる燃油の量を小さくすることを保証でき、単一の弧状リッジ箇所に燃油が多く集まることを回避可能であり、油ジェットの先端が壁に衝突する噴流速度場に対する弧状リッジの改善作用の発揮に有利であり、それに、2つの弧状リッジが2回のメイン噴射の燃油をガイドし配分することにより、シリンダのオイルとガスとの分布の強化を便利にさせ、シリンダチャンバ内の空気の利用率を向上させ、燃焼効率を向上させ、さらにエンジンの熱効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例におけるピストンの燃焼室およびインジェクタの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の技術案は、添付の図面を結合して以下に明瞭かつ完全に記載されるが、記載された実施例は全ての実施例ではなく本発明の実施例の一部である。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をすることがない前提で得られるすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0018】
本発明の記載において、用語「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」などが指示する方位又は位置関係は図面に基づいて示された方位又は位置関係であり、単に本発明の記載及び記載の簡略化の便宜上のものであり、言及された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを示したり暗示したりすることを意図するものではなく、従って、本発明を制限するものと理解されるべきではないことを説明する必要がある。さらに、用語「第1」および「第2」は、目的の記載だけで使用されており、相対的な重要性を意味または示唆するものと理解されるべきではない。用語「第1位置」および「第2位置」は2つの異なる位置であり、それに、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」および「頂部」であることは、第1特徴が第2特徴の直上および斜め上にあることを含み、または、単に第2特徴よりも第1特徴の水平高さが高いことを示す。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」および「底部」であることは、第1特徴が第2特徴の直下および斜め下にあることを含み、または、単に第2特徴よりも第1特徴の水平高さが低いことを示す。
【0019】
本発明の記載において、特に明確に規定または限定しない限り、用語「取付」、「連結」、「接続」は、広義的に解釈するべきであり、例えば、固定的接続であってもよいし、着脱可能な接続、または一体的な接続であってもよく、機械的接続であってもよいし、電気的接続であってもよく、直接的連結であってもよいし、中間媒体を介した間接的連結であってもよく、2つの素子の内部の連通であってもよいことを説明する必要がある。当業者にとって、具体的な状況に応じて本発明における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0020】
以下に、本発明の実施例を詳細に記載する。前記実施例の一例が図面に示されるが、同一または類似する符号は、常に、相同又は類似の素子、又は、相同又は類似の機能を有する素子を表す。以下に、図面を参照しながら記載される実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するためにのみ用いられ、本発明を限定するものと理解されてはならない。
【0021】
図1に示すように、本実施例は燃焼システムを提供し、該燃焼システムは、シリンダと、ピストンと、インジェクタ10と、制御システムとを含む。
【0022】
シリンダはシリンダチャンバを有し、ピストンはシリンダのシリンダチャンバ内を摺動して位置し、ピストンの頂部に、シリンダチャンバに連通する燃焼室が設けられており、ピストンは、クランクシャフト等の駆動により、シリンダ内に往復運動を行うことができる。
【0023】
燃焼室の側壁は、間隔をおいて設けられた第1弧状リッジ3および第2弧状リッジ6を有し、第1弧状リッジ3および第2弧状リッジ6はともに燃焼室内へ突出する。具体的には、燃焼室の構造は
図1に示すように、燃焼室は大体w形燃焼室であり、
図1は、燃焼室の断面の半分のみを示し、それは、頂平面9、テーパの底面1、および頂平面9と底面1とを接続する環状の側壁を有し、側壁は具体的に、下から上へ順次設けられた主円弧面2、第1弧状リッジ3、第1斜面4、移行円弧5、第2弧状リッジ6、第2斜面7、およびスロート移行面8を含み、底面1、主円弧面2、第1弧状リッジ3、第1斜面4、移行円弧5、第2弧状リッジ6、第2斜面7、スロート移行面8、および頂平面9は順次相接し接続され、それに、主円弧面2は内へ凹んで設けられ、第1弧状リッジ3は第2弧状リッジ6よりも燃焼室の中心に近く、それに、第2弧状リッジ6は第1弧状リッジ3よりも燃焼室の頂面に近い。本実施例では、燃焼室の奥行き方向に沿って第1弧状リッジ3は第2弧状リッジ6よりも燃焼室の中間に近く、好ましくは、第1弧状リッジ3は、燃焼室の垂直断面内に第1円弧2をなし、第2弧状リッジ6は、燃焼室の垂直断面内に第2円弧をなし、第1円弧2の半径をR
1とし、第2円弧の半径をR
2とし、R
1=2R
2~3R
2である。このように設置すると、第1弧状リッジ3の油受け面積は大きくて真ん中にあり、燃油を燃焼室の各位置に跳ね返すことを便利にさせ、燃焼室の頂部、中部、および底部の空気と十分に混合することができる。
【0024】
インジェクタ10は、燃焼室内へ油を噴射するためのものであり、制御システムは、インジェクタ10の燃油噴射の速度を制御するためのものであり、制御システムは、インジェクタ10が燃油を設定速度以上の速度で第1弧状リッジ3に噴射するように制御可能であり、かつインジェクタ10が燃油を設定速度以上の速度で第2弧状リッジ6に噴射するように制御可能である。インジェクタ10は、オイルポンプにより燃油を供給し、制御システムは、コントローラおよび調節弁を含むことが可能である。調節弁は、給油ポンプとインジェクタ10との接続管路に設けられ、調節弁はコントローラに接続され、コントローラは、流れる燃油の流速を調節弁により調節し、さらにインジェクタ10から噴出される燃油の速度を制御することができる。理解するように、インジェクタ10が燃油を設定速度以上の速度で噴射する場合、インジェクタ10がメイン噴射を行っていることを表し、燃油をプリセット速度よりも小さい速度で噴射する場合、インジェクタ10がプレ噴射を行っていることを表す。2つの弧状リッジを有する燃焼室を採用するとともに、インジェクタ10を介してそれぞれに2つの弧状リッジへ燃油のメイン噴射を行うことにより、各弧状リッジが割り当てる燃油の量を小さくすることを保証でき、単一の弧状リッジ箇所に燃油が多く集まることを回避可能であり、油ジェットの先端が壁に衝突する噴流速度場に対する弧状リッジの改善作用の発揮に有利であり、また、燃油の液滴が空気と十分に混合することにも有利である。
【0025】
本実施例はさらに、燃焼システムの制御方法を提供し、該燃焼システムの制御方法は、上記燃焼システムによって実施されることができる。具体的には、該燃焼システムの制御方法は、インジェクタ10は、第1回のメイン噴射および第2回のメイン噴射を間隔をおいて行い、それに、インジェクタ10は、第1回のメイン噴射の時に燃油を第1弧状リッジ3に噴射し、かつ燃油が跳ね返って飛び散ることが可能であるステップと、インジェクタ10は、第2回のメイン噴射の時に燃油を第2弧状リッジ6に噴射し、かつ燃油が跳ね返って飛び散ることが可能であり、第1回のメイン噴射、第2回のメイン噴射の燃油噴射の速度がともに設定速度以上であるステップと、を含む。2つの弧状リッジが2回のメイン噴射の燃油をガイドし配分することにより、シリンダにおけるオイルとガスとの分布の強化を便利にさせ、シリンダチャンバ内の空気の利用率を向上させ、燃焼効率を向上させ、さらにエンジンの熱効率を向上させる。
【0026】
他の実施例では、燃焼室の弧状リッジはさらに、3つ以上設けられてもよい。3つの弧状リッジを例として、燃焼室はさらに、第1弧状リッジ3および第2弧状リッジ6とともに間隔をおいて設けられた第3弧状リッジを有してもよく、それに、第3弧状リッジは燃焼室へ外へ凸となり、インジェクタ10がピストンの運動期間で、3回のメイン噴射を間隔をおいて行い、かつ3回のメイン噴射の油ジェットがそれぞれに3つの弧状リッジに落ちるように制御し、オイルとガスとの混合効果をさらに強めることができる。
【0027】
また、インジェクタ10が第1回のメイン噴射を行う場合、ピストンはシリンダ内で上り、それに、シリンダチャンバ内の気体を圧縮可能であり、インジェクタ10が第2回のメイン噴射を行う場合、ピストンはシリンダ内で下っても良い。このように、ピストンの上る運動、下る運動の対称性に十分に適用され、燃油の落下点位置を細分化し、2つの弧状リッジの分流作用、および跳ね返って飛び散る作用を十分に発揮することができる。好ましくは、第1弧状リッジ3の中心と第2弧状リッジ6の中心との間の垂直ピッチはH1に等しくなり、インジェクタ10の第1回のメイン噴射時のピストンの位置とインジェクタ10の第2回のメイン噴射時のピストンの位置との間の変位はH2に等しくなり、H1=H2である。このように、インジェクタ10の油噴射孔の向きを調整する必要がないように保証でき、ピストンの上る、下る過程において、燃油を2つの弧状リッジに正確に噴射することができる。
【0028】
また、インジェクタ10が第1回のメイン噴射を行うことと、第2回のメイン噴射を行うこととの間の期間に、インジェクタ10は燃油の噴射を継続し、それに、インジェクタ10の燃油噴射の速度が設定速度よりも小さくてもよい。このように設置すると、シリンダチャンバ内のオイルとガスとの混合の均一性をさらに促進することができる。
【0029】
また、
図1に示すように、インジェクタ10が第1回のメイン噴射を行う場合、インジェクタ10の油噴射孔は第1弧状リッジ3の中心位置に向いており、それに、インジェクタ10の油噴射孔と第1弧状リッジ3の中心との間のピッチをL
1とし、インジェクタ10の油噴射孔が燃油を噴射する速度をV
1とし、第1回のメイン噴射が噴射する燃油の着火遅れ期間(ignition delay)をt
1とし、t
1=L
1/V
1であり、このように設置すると、燃油がインジェクタ10から噴出された後、時間t
1経過すると第1弧状リッジ3と接触し、燃油が飛び散った後に急速燃焼期に入り、後続の燃油の第1弧状リッジ3での飛び散り効果に影響を与えることがない。燃油の着火遅れ期間について、温度、油質等によって調節制御されることができる。
【0030】
また、インジェクタ10が第2回のメイン噴射を行う場合、インジェクタ10の油噴射孔は第2弧状リッジ6の中心位置に向いており、インジェクタ10の油噴射孔と第2弧状リッジ6との間のピッチをL2とし、インジェクタ10の油噴射孔が燃油を噴射する速度をV2とし、第2回のメイン噴射が噴射する燃油の着火遅れ期間をt2とし、t2=L2/V2である。このように設置すると、燃油がインジェクタ10から噴出された後、時間t2経過すると第2弧状リッジ6と接触し、燃油が飛び散った後に急速燃焼期に入り、後続の燃油の第2弧状リッジ6での飛び散り効果に影響を与えることがない。
【0031】
本実施例はさらに、上記方案における燃焼システムを含むエンジンを提供する。
【0032】
明らかに、本発明の上記実施例は、本発明の実施形態への限定ではなく、本発明を明瞭に説明するために行われた例示に過ぎない。当業者にとって、上記説明を基礎としてさらに他の異なる形態の変化や変更を行うことができる。ここでは、全ての実施形態を一つずつ列挙する必要がないし、不可能である。本発明の要旨と原則にのっとる様々の修正、等同交替、および改良などが本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【0033】
1 ・・・底面
2 ・・・主円弧面
3 ・・・第1弧状リッジ
4 ・・・第1斜面
5 ・・・移行円弧
6 ・・・第2弧状リッジ
7 ・・・第2斜面
8 ・・・スロート移行面
9 ・・・頂平面
10 ・・・インジェクタ
【国際調査報告】