(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学素子及び光学機器
(51)【国際特許分類】
C03C 3/095 20060101AFI20240305BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C03C3/095
C03C3/097
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558201
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2022070075
(87)【国際公開番号】W WO2022199203
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202110308615.0
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU GUANG MING GUANG DIAN GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.359,Sec.3,Chenglong Avenue,Long quan yi District,Chengdu,Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】毛 露路
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼ 良振
(72)【発明者】
【氏名】匡 波
(72)【発明者】
【氏名】馬 赫
(72)【発明者】
【氏名】馬 志遠
(72)【発明者】
【氏名】楊 発茂
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
4G062DA06
4G062DB01
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4G062KK10
4G062MM02
4G062NN01
4G062NN15
4G062NN32
(57)【要約】
本発明は光学ガラスを提供し、前記光学ガラスは重量%で以下の成分を含む: SiO2:55~70%、B2O3:2~18%、ZnO:1~20%、La2O3+Y2O3+Gd2O3:4~30%、Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2:0.5~20%、Li2O+Na2O+K2O:3~15%、(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/(Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2)は1.0~13.0である。合理的な成分設計により、本発明で得られた光学ガラスは、所望の屈折率とアッベ数を有すると同時に、紫外線透過率が高く、耐紫外線照射性能が優れる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: SiO
2:55~70%、B
2O
3:2~18%、ZnO:1~20%、La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3:4~30%、Ta
2O
5+Nb
2O
5+TiO
2+ZrO
2:0.5~20%、Li
2O+Na
2O+K
2O:3~15%、(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/(Ta
2O
5+Nb
2O
5+TiO
2+ZrO
2)は1.0~13.0である。
【請求項2】
重量%で以下の成分をさらに含む、請求項1に記載の光学ガラス: BaO+SrO+CaO+MgO:0~15%、及び/又はAl
2O
3:0~5%、及び/又はF:0~3%、及び/又は清澄剤:0~1%、前記清澄剤はSb
2O
3、SnO、SnO
2、CeO
2、Cl、Brの一種又は複数種である。
【請求項3】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: SiO
2:55~70%;B
2O
3:2~18%、ZnO:1~20%、La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3:4~30%、Ta
2O
5+Nb
2O
5+TiO
2+ZrO
2:0.5~20%、Li
2O+Na
2O+K
2O:3~15%、BaO+SrO+CaO+MgO:0~15%、Al
2O
3:0~5%、F:0~3%、清澄剤:0~1%、前記清澄剤はSb
2O
3、SnO、SnO
2、CeO
2、Cl、Brの一種又は複数種である。
【請求項4】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/(Ta
2O
5+Nb
2O
5+TiO
2+ZrO
2)が1.0~13.0、好ましくは(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/(Ta
2O
5+Nb
2O
5+TiO
2+ZrO
2)が2.0~10.0、より好ましくは(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/(Ta
2O
5+Nb
2O
5+TiO
2+ZrO
2)が3.0~7.0である。
【請求項5】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:La
2O
3/Nb
2O
5が3.5~15.0、好ましくはLa
2O
3/Nb
2O
5が5.0~14.0、より好ましくはLa
2O
3/Nb
2O
5が7.0~13.5である。
【請求項6】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/SiO
2が0.07~0.35、好ましくは(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/SiO
2が0.08~0.3、より好ましくは(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/SiO
2が0.1~0.25である。
【請求項7】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:(B
2O
3+Al
2O
3)/SiO
2が0.05~0.4、好ましくは(B
2O
3+Al
2O
3)/SiO
2が0.08~0.35、より好ましくは(B
2O
3+Al
2O
3)/SiO
2が0.1~0.3である。
【請求項8】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO
2が0.01~0.25、好ましくは(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO
2が0.01~0.2、より好ましくは(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO
2が0.02~0.15、さらに好ましくは(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO
2が0.02~0.1である。
【請求項9】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/B
2O
3が0.3~6.0、好ましくは(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/B
2O
3が0.4~5.0、より好ましくは(La
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3)/B
2O
3が0.5~3.0である。
【請求項10】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス: SiO
2:56~68%、好ましくはSiO
2:57~67%、及び/又はB
2O
3:4~16%、好ましくはB
2O
3:5~15%、及び/又はZnO:2~16%、好ましくはZnO:3~12%、及び/又はLa
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3:5~20%、好ましくはLa
2O
3+Y
2O
3+Gd
2O
3:7~15%、及び/又はTa
2O
5+Nb
2O
5+TiO
2+ZrO
2:1~15%、好ましくはTa
2O
5+Nb
2O
5+TiO
2+ZrO
2:2~10%、及び/又はLi
2O+Na
2O+K
2O:5~14%、好ましくはLi
2O+Na
2O+K
2O:6~13%、及び/又はBaO+SrO+CaO+MgO:1~15%、好ましくはBaO+SrO+CaO+MgO:1.5~10%、より好ましくはBaO+SrO+CaO+MgO:1.5~8%、及び/又はAl
2O
3:0~4%、好ましくはAl
2O
3:0~3%、及び/又はF:0~2%、好ましくはF:0~1%、及び/又は清澄剤:0~0.8%、好ましくは清澄剤:0~0.5%、前記清澄剤はSb
2O
3、SnO、SnO
2、CeO
2、Cl、Brの一種又は複数種である。
【請求項11】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:La
2O
3:4~25%、好ましくはLa
2O
3:6~20%、より好ましくはLa
2O
3:7~14%、及び/又はGd
2O
3:0~8%、好ましくはGd
2O
3:0~7%、より好ましくはGd
2O
3:0~5%、及び/又はY
2O
3:0~10%、好ましくはY
2O
3:0~8%、より好ましくはY
2O
3:0~5%、及び/又はNa
2O:2~15%、好ましくはNa
2O:4~14%、より好ましくはNa
2O:5~13%、及び/又はK
2O:0~8%、好ましくはK
2O:1~6%、より好ましくはK
2O:2~5%、及び/又はLi
2O:0~5%、好ましくはLi
2O:0~4%、より好ましくはLi
2O:0~3%である。
【請求項12】
前記成分がFを含まない、及び/又はMgOを含まない、及び/又はCaOを含まない、及び/又はLi
2Oを含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項13】
前記光学ガラスの屈折率n
dが1.51~1.58、好ましくは1.52~1.57、より好ましくは1.53~1.56、及び/又はアッベ数v
dが55~65、好ましくは56~63、より好ましくは57~60である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項14】
前記光学ガラスのτ
365nmが99.0%以上、好ましくは99.2%以上、より好ましくは99.4%以上、さらに好ましくは99.5%以上、及び/又はΔτ
365nmが5.0%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項15】
前記光学ガラスの耐水安定性D
Wが2類以上、好ましくは1類、及び/又は耐酸安定性D
Aが3類以上、好ましくは2類以上、より好ましくは1類、及び/又は屈折率温度係数dn/dtが8.0×10
-6/℃以下、好ましくは7.0×10
-6/℃以下、より好ましくは6.0×10
-6/℃以下、及び/又は結晶上限温度が1300℃以下、好ましくは1280℃以下、より好ましくは1250℃以下、さらに好ましくは1230℃以下、及び/又は気泡度がA級以上、好ましくはA
0級以上、より好ましくはA
00級、及び/又はストライプがC級以上、好ましくはB級以上、及び/又はΔn
d値が5×10
-6以下、好ましくは3×10
-6以下、より好ましくは2×10
-6以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれ一項に記載の光学ガラスで製造される、ガラスプリフォーム。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いて製造されるか、または、請求項16に記載のガラスプリフォームを用いて製造される、光学素子。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の光学ガラスを含む光学機器、及び/又は請求項17に記載の光学素子を含む光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスに関し、特に屈折率が1.51~1.58、アッベ数が55~65の光学ガラス、及びそれから製造される光学素子と光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、320~400nm帯域の紫外線は、お札の偽造防止、食品包装、金属探査、血液分析、紫外線パッケージ、紫外線フォトリソグラフィ、紫外線露光システムなどの分野で広く応用されている。半導体製造分野の急速な発展に伴い、紫外線パッケージ、紫外線フォトリソグラフィ及び紫外露光システムの精度に対する要求はますます高まりつつある。紫外線フォトリソグラフィ機対物レンズシステムを例にとると、高精度な効果を実現するため、数枚から十数枚の異なる屈折率とアッベ数の大口径レンズを組み合わせる必要がある。320~400nm帯域の紫外線光学システムにおいて、高い透過率と高い耐照射特性が必要である。フォトリソグラフィや露光などの高精度光学システムを例にとると、より高い収率を得るためには、キロワット級又はそれより高出力の紫外線を使用する必要があり、このような高出力の下で、ガラス材料は良好な耐紫外線照射性能を備えなければならない。ガラスが紫外線帯域照射下で透過率が低下すると、ガラスの発熱が激しくなり、レンズグループの屈折率の逸脱及び曲面の変形が発生し、結像効果が低下する。
【0003】
屈折率が1.51~1.58、アッベ数が55~65の光学ガラスは、中国の光学ガラス分類基準に基づいてバリウムクラウンガラスに属し、従来技術のバリウムクラウンガラスは紫外線帯域での透過率がフォトリソグラフィの使用要求よりはるかに低く、特に最も一般的に使用されている365nm帯域は、照射後のガラスの透過率が激しく低下し、なかなか紫外線照射装置には使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、紫外線透過率が高く、耐紫外線照射性能に優れる光学ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は次のとおりである。
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: SiO2:55~70%、B2O3:2~18%、ZnO:1~20%、La2O3+Y2O3+Gd2O3:4~30%、Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2:0.5~20%、Li2O+Na2O+K2O:3~15%、(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/(Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2)は1.0~13.0である。
【0006】
さらに、重量%で以下の成分をさらに含む、前記光学ガラス: BaO+SrO+CaO+MgO:0~15%、及び/又はAl2O3:0~5%、及び/又はF:0~3%、及び/又は清澄剤:0~1%、前記清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2、Cl、Brの一種又は複数種である。
【0007】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: SiO2:55~70%、B2O3:2~18%、ZnO:1~20%、La2O3+Y2O3+Gd2O3:4~30%、Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2:0.5~20%、Li2O+Na2O+K2O:3~15%、BaO+SrO+CaO+MgO:0~15%、Al2O3:0~5%、F:0~3%、清澄剤:0~1%、前記清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2、Cl、Brの一種又は複数種である。
【0008】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (La2O3+Y2O3+Gd2O3)/(Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2)は1.0~13.0、好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/(Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2)が2.0~10.0、より好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/(Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2)が3.0~7.0である。
【0009】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: La2O3/Nb2O5は3.5~15.0、好ましくはLa2O3/Nb2O5が5.0~14.0、より好ましくはLa2O3/Nb2O5が7.0~13.5である。
【0010】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (La2O3+Y2O3+Gd2O3)/SiO2は0.07~0.35、好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/SiO2が0.08~0.3、より好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/SiO2が0.1~0.25である。
【0011】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (B2O3+Al2O3)/SiO2は0.05~0.4、好ましくは(B2O3+Al2O3)/SiO2が0.08~0.35、より好ましくは(B2O3+Al2O3)/SiO2が0.1~0.3である。
【0012】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO2は0.01~0.25、好ましくは(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO2が0.01~0.2、より好ましくは(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO2が0.02~0.15、さらに好ましくは(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO2が0.02~0.1である。
【0013】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (La2O3+Y2O3+Gd2O3)/B2O3は0.3~6.0、好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/B2O3が0.4~5.0、より好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/B2O3が0.5~3.0である。
【0014】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: SiO2:56~68%、好ましくはSiO2:57~67%、及び/又はB2O3:4~16%、好ましくはB2O3:5~15%、及び/又はZnO:2~16%、好ましくはZnO:3~12%、及び/又はLa2O3+Y2O3+Gd2O3:5~20%、好ましくはLa2O3+Y2O3+Gd2O3:7~15%、及び/又はTa2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2:1~15%、好ましくはTa2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2:2~10%、及び/又はLi2O+Na2O+K2O:5~14%、好ましくはLi2O+Na2O+K2O:6~13%、及び/又はBaO+SrO+CaO+MgO:1~15%、好ましくはBaO+SrO+CaO+MgO:1.5~10%、より好ましくはBaO+SrO+CaO+MgO:1.5~8%、及び/又はAl2O3:0~4%、好ましくはAl2O3:0~3%、及び/又はF:0~2%、好ましくはF:0~1%、及び/又は清澄剤:0~0.8%、好ましくは清澄剤:0~0.5%、前記清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2、Cl、Brの一種又は複数種である。
【0015】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: La2O3:4~25%、好ましくはLa2O3:6~20%、より好ましくはLa2O3:7~14%、及び/又はGd2O3:0~8%、好ましくはGd2O3:0~7%、より好ましくはGd2O3:0~5%、及び/又はY2O3:0~10%、好ましくはY2O3:0~8%、より好ましくはY2O3:0~5%、及び/又はNa2O:2~15%、好ましくはNa2O:4~14%、より好ましくはNa2O:5~13%、及び/又はK2O:0~8%、好ましくはK2O:1~6%、より好ましくはK2O:2~5%、及び/又はLi2O:0~5%、好ましくはLi2O:0~4%、より好ましくはLi2O:0~3%である。
【0016】
さらに、前記成分がFを含まない、及び/又はMgOを含まない、及び/又はCaOを含まない、及び/又はLi2Oを含まない、前記光学ガラス。
【0017】
さらに、前記光学ガラスの屈折率ndが1.51~1.58、好ましくは1.52~1.57、より好ましくは1.53~1.56、及び/又はアッベ数vdが55~65、好ましくは56~63、より好ましくは57~60である。
さらに、前記光学ガラスのτ365nmが99.0%以上、好ましくは99.2%以上、より好ましくは99.4%以上、さらに好ましくは99.5%以上、及び/又はΔτ365nmが5.0%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。
【0018】
さらに、前記光学ガラスの耐水安定性DWが2類以上、好ましくは1類、及び/又は耐酸安定性DAが3類以上、好ましくは2類以上、より好ましくは1類、及び/又は屈折率温度係数dn/dtが8.0×10-6/℃以下、好ましくは7.0×10-6/℃以下、より好ましくは6.0×10-6/℃以下、及び/又は結晶上限温度が1300℃以下、好ましくは1280℃以下、より好ましくは1250℃以下、さらに好ましくは1230℃以下、及び/又は気泡度がA級以上、好ましくはA0級以上、より好ましくはA00級、及び/又はストライプがC級以上、好ましくはB級以上、及び/又はΔnd値が5×10-6以下、好ましくは3×10-6以下、より好ましくは2×10-6以下である。
【0019】
上記の光学ガラスで製造される、ガラスプリフォーム。
【0020】
上記の光学ガラス、又は上記のガラスプリフォームで製造される、光学素子。
【0021】
上記の光学ガラス、及び/又は上記の光学素子を含む、光学機器。
【発明の効果】
【0022】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。合理的な成分設計により、本発明により得られる光学ガラスは、所望の屈折率とアッベ数を有するとともに、紫外線透過率が高く、耐紫外線照射性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変形して実施することが可能である。さらに、適宜省略はあるものの、記載を繰り返すことによって本発明の主旨が限定されるものではなく、以下では、本発明の光学ガラスを単にガラスと称することもある。
【0024】
[光学ガラス]
以下に、本発明の光学ガラスの成分の範囲について説明する。本説明書において、各成分の含有量および合計含有量は、特に指定のない限り、重量パーセント(wt%)で表すものとする。すなわち、各成分の含有量、合計含有量は、酸化組成物に換算するガラス物質の総重量に対する重量パーセントで表すことである。ここでいう「酸化物組成物に換算した」とは、本発明の光学ガラスの組成物の原料として用いた酸化物、錯塩、水酸化物等が溶融時に分解して酸化物に変換された場合の酸化物物質の総重量を100%とした場合のことである。
【0025】
具体的には、本明細書に記載されている数値範囲には、上限値および下限値が含まれ、「以上」および「以下」には端点値、ならびに範囲に含まれるすべての整数および分数が含まれ、範囲が限定されている場合に記載されている具体的な値に限定されるものではない。本明細書で「及び/又は」と呼ばれるものは包括的であり、例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、またはAとBの両方を意味する。
【0026】
<必須成分とオプション成分>
SiO2とB2O3は本発明のガラスの主要なネットワーク形成体成分であり、この2種類のネットワーク形成体成分により形成される強固な構造は、紫外光の高透過率と優れた化学安定性を実現する基礎である。SiO2の含有量が55%未満の場合、365nmにおけるガラス透過率が低く、99.0%以上に達することが困難である。これはフォトリソグラフィーレンズ、露光機プリズムなどの光路が長く、照度要求が高い紫外線光学システムに対しては致命的である。したがって、SiO2の含有量の下限値は55%、好ましくは、下限値は56%、より好ましくは、下限値は57%である。SiO2の含有量が70%を超えると、ガラスの屈折率は設計要求を満たすことが困難になり、ガラスはより高い温度で溶融する必要があり、より高い溶融温度下でガラス液のるつぼに対する浸食が指数関数的に拡大し、鉄(Fe)イオン、白金(Pt)イオンなどの紫外線帯域に対して強い吸収効果のあるイオンの含有量が急速に上昇し、かえって紫外線の透過率、特に365nmにおける透過率が急速に低下する。また、SiO2の含有量が高すぎると、ガラスの高温粘度が過大になり、光学均一性、気泡度、ストライプなどが設計要件を満たすことが困難になる。したがって、SiO2の含有量の上限値は70%、好ましくは、上限値は68%、より好ましくは、上限値は67%である。
【0027】
適量のB2O3はガラスの屈折率を高め、ガラスの構造を強化し、ガラスの耐紫外線照射性能を向上させることができる。B2O3の含有量が18%を超えると、ガラス液のるつぼに対する浸食が急速に上昇し、紫外線の透過率が急速に低下する。B2O3の含有量が2%未満の場合、ガラスの溶融が困難になる。したがって、B2O3の含有量は2~18%、好ましくは4~16%、より好ましくは5~15%である。
【0028】
Al2O3はガラス内部構造の緊密性を高め、ガラスの紫外線透過率と化学安定性を向上させることができるが、その含有量が5%を超えると、ガラス内部に結石が発生しやすくなり、ガラスの内在品質が低下する。したがって、Al2O3の含有量は、5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下に限定される。
【0029】
SiO2、B2O3とAl2O3のいずれもガラスネットワークを形成することができ、本発明者らは大量の実験研究を重ねた結果、上記3種類のネットワーク形成体成分が共存する場合、ガラスの構造が複雑に変化し、ガラスの高温粘度と化学安定性などの性能も変わることを見出した。いくつかの実施形態において、(B2O3+Al2O3)/SiO2の値を0.05~0.4以内に制御することにより、ガラスが優れた化学安定性を有するとともに、高温粘度が大きくなるのを防止することができる。したがって、(B2O3+Al2O3)/SiO2の値は、好ましくは0.05~0.4、より好ましくは0.08~0.35、さらに好ましくは0.1~0.3である。
【0030】
BaO、SrO、CaOとMgOはアルカリ土類金属酸化物であり、従来のバリウムクラウンガラスにはガラスの屈折率を高めるためのBaOが多く含まれており、これはバリウムクラウンガラスという品種の由来でもある。本発明者らは研究を重ねた結果、アルカリ土類金属酸化物はガラスの屈折率と安定性を向上させることができるが、緊密性の高いガラス構造を得ることができず、ガラスの紫外線透過率と化学安定性が比較的低いことを見出した。本発明のガラスにおいて、アルカリ土類金属酸化物の合計含有量BaO+SrO+CaO+MgOが15%を超えると、ガラスの紫外線透過率が大幅に低下する。したがって、本発明におけるアルカリ土類金属酸化物の合計含有量BaO+SrO+CaO+MgOは0~15%である。また、BaO+SrO+CaO+MgOが1%未満の場合、ガラスの安定性改善効果が顕著ではなく、ガラスの結晶傾向が増加し、これはサイズの大きいガラス(例えば幅330mm以上、厚さ30mm以上のガラス)の成形に非常に不利である。したがって、本発明におけるアルカリ土類金属酸化物の合計含有量BaO+SrO+CaO+MgOは、好ましくは1~15%、より好ましくは1.5~10%、さらに好ましくは1.5~8%である。アルカリ土類金属酸化物の種類選択については、好ましくはBaO及び/又はSrOがガラス安定性の改善に最も有利であり、より好ましくはBaOであり、さらに好ましくはCaO及び/又はMgOを含まないことである。
【0031】
従来のバリウムクラウンガラスは大量のアルカリ土類金属酸化物を使用することでガラスの屈折率を向上させており、発明者らは大量の実験研究を重ねた結果、いくつかの実施形態において、(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO2の値が0.25を超えると、ガラスの屈折率は設計要求を達成しやすいが、ガラス構造が破壊され、不純物順位が増加し、紫外線透過率が急速に低下することを見出した。したがって、本発明における(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO2の値は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.15以下、よりさらに好ましくは0.1以下である。また、(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO2値を0.01以上にすることにより、ガラスの安定性及び化学安定性の低下を防止することができる。したがって、(BaO+SrO+CaO+MgO)/SiO2値は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上である。
【0032】
適量のZnOを添加することでガラスのネットワーク構造を強化し、ガラスの屈折率と紫外線透過率を向上させることができる。ZnOの含有量が20%を超えると、ガラスの分相傾向が増加し、紫外線透過率が逆に低下し、ストライプが設計要求を満たすことが困難になる。また、ZnOの含有量が1%未満の場合、ガラスの紫外線透過率を高める効果が顕著ではなく、ガラス表面の張力が増大し、気泡が排除しにくく、気泡度は設計要求を満たすことが困難になる。したがって、ZnOの含有量は1~20%、好ましくは2~16%、より好ましくは3~12%である。
【0033】
La2O3、Gd2O3、Y2O3は高屈折率低分散酸化物であり、ガラスに添加することで急速にガラスの屈折率を上昇させ、ガラスの分散を調節することができる。本発明者は大量の研究を重ねた結果、La2O3、Gd2O3、Y2O3のいずれもガラスの中で強い集積性があり、ガラス構造の安定性を高めることができ、屈折率を高めると同時にガラスの紫外線透過率を高めることができることを見出した。また、適量に添加することでガラスの耐紫外線照射能力を高め、ガラスの粘度を下げることができ、ガラスの溶融、清澄と成形をより容易にし、より高い光学均一性、気泡度、ストライプを得るのに有利である。しかし、La2O3、Gd2O3、Y2O3の含有量が多すぎると、ガラスは特に結晶化しやすくなり、さらにガラスセラミックス化も発生する場合がある。したがって、本発明におけるLa2O3、Gd2O3、Y2O3の合計含有量La2O3+Y2O3+Gd2O3は4~30%、好ましくは5~20%、より好ましくは7~15%である。
【0034】
本発明者らは大量の実験研究を重ねた結果、紫外線透過率の向上において、La2O3はY2O3より優れ、Y2O3はGd2O3より優れ、ガラスの耐紫外線照射性能の向上においてLa2O3はGd2O3よりやや優れ、Gd2O3はY2O3より優れることを見出した。したがって、本発明におけるLa2O3の含有量は、ガラスの紫外線透過率、耐紫外線照射性能及び耐結晶などの性能を考慮して、好ましくは4~25%、より好ましくは6~20%、さらに好ましくは7~14%、Y2O3の含有量は、好ましくは0~10%、より好ましくは0~8%、さらに好ましくは0~5%、Gd2O3の含有量は、好ましくは0~8%、より好ましくは0~7%、さらに好ましくは0~5%である。
【0035】
本発明者らは大量の実験研究を重ねた結果、いくつかの実施形態において、(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/SiO2の値が0.35を超えると、ガラスの安定性と耐結晶性が低くなり、さらにガラス液の流動中にセラミックスが形成される場合もあることを発見した。(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/SiO2の値が0.07未満の場合、ガラスの1400℃での粘度は400ポアズを超え、高い粘度で生産するときに気泡度とストライプは設計要求を満たすことが困難になり、ガラスの紫外線透過率も設計要求を達成しにくくなる。さらに重要なことに、ガラスの構造は緩むようになり、ガラスの耐紫外線照射性能は低下する傾向がある。したがって、好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/SiO2の値は0.07~0.35、より好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/SiO2の値は0.08~0.3、さらに好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/SiO2の値は0.1~0.25である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/B2O3の値が6.0を超えると、ガラスの耐結晶性が低くなり、(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/B2O3の値が0.3未満の場合、ガラスの化学安定性が劣化し、紫外線透過率が低下する。したがって、好ましくは(La2O3+Y2O3+Gd2O3)/B2O3の値は0.3~6.0、より好ましくは0.4~5.0、さらに好ましくは0.5~3.0である。
【0037】
Ta2O5、Nb2O5、TiO2、ZrO2は高屈折高分散酸化物であり、ガラスに添加することでガラスの耐紫外線照射性能を高めることができると同時に、ガラスの屈折率と分散を高めることができる。本発明において、Ta2O5、Nb2O5、TiO2、ZrO2の合計含有量Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2を0.5%以上にすることで上記の効果を得ることができ、好ましくはTa2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2が1%以上、より好ましくは2%以上である。また、Ta2O5、Nb2O5、TiO2、ZrO2はガラスの中で紫外線透過率を下げる作用があり、Ta2O5、Nb2O5、TiO2、ZrO2の合計含有量Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2が20%を超えると、ガラスの紫外線透過率、特に365nmにおける透過率が設計要求を満たすことが困難になる。したがって、Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2は20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。
【0038】
ガラス生産過程において、ガラスの結晶上限温度が1300℃を超えると、ガラス液は溶融炉の各接続段階で詰まりやすく、ガラスの透過率、内在品質及びストライプなどが設計要求を達成できなくなる。本発明者らは大量の実験研究を重ねた結果、いくつかの実施形態において、La2O3、Y2O3、Gd2O3の合計含有量La2O3+Y2O3+Gd2O3とTa2O5、Nb2O5、TiO2、ZrO2の合計含有量Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2との割合(La2O3+Y2O3+Gd2O3/(Ta2O5+Nb2O5+TiO2+ZrO2)を1.0~13.0以内、好ましくは2.0~10.0以内、より好ましくは3.0~7.0以内に制御することにより、ガラスの結晶上限温度を下げるとともに、ガラスの紫外光透過率と耐照射性能を高めることができることを見出した。
【0039】
いくつかの実施形態において、La2O3/Nb2O5の値を3.5~15.0以内、好ましくは5.0~14.0以内、より好ましくは7.0~13.5以内に制御することにより、ガラスの耐紫外線照射性能とガラスの安定性が最適になる。
【0040】
Li2O、Na2O、K2Oはアルカリ金属酸化物であり、本発明においてガラスの高温粘度を下げ、自由酸素を提供してガラスのネットワーク構造を強化し、ガラスの紫外線透過率を高めることができる。ガラスネットワーク構造の強化効果から見ると、含有量が合理である場合、Na2OとK2Oの強化効果が最も強いが、K2OはNa2Oよりもガラスの化学安定性を低下させる能力が強いため、K2Oの含有量をより厳格に制御する必要がある。Na2OとK2Oの含有量が高すぎると、生産工程内でガラス原材料が多く揮発し、屈折率の安定性に関しては設計要求を満たすことが困難になり、ガラスの安定性も低くなる。したがって、好ましくはNa2Oの含有量は2~15%、より好ましくは4~14%、さらに好ましくは5~13%、好ましくはK2Oの含有量は0~8%、より好ましくは1~6%、さらに好ましくは2~5%である。
【0041】
アルカリ金属酸化物であるLi2Oは高温粘度を下げる能力が最も高く、高温粘度が設計要求を満たさない場合、少量のLi2Oを添加することができるが、その含有量が5%を超えると、ガラスの結晶化が深刻であり、ガラスの成形粘度が小さく、厚いサイズの成形要求を満たすことが困難である。したがって、Li2Oの含有量は5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下に限定され、さらに好ましくはLi2Oを含まないことである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、Li2O、Na2O、K2Oの合計含有量Li2O+Na2O+K2Oが3%未満の場合、ガラスの屈折率温度係数が急速に上昇し、ガラスレンズは同じ温度変化範囲内での屈折率の変化がより大きくなり、光学システムの結像品質が急速に低下する一方で、ガラスは良好な気泡度を実現することができない。Li2O+Na2O+K2Oが15%を超えると、ガラスの安定性が急速に低下し、ガラスの構造が緩み、耐紫外線照射性能が低下する。したがって、好ましくはLi2O+Na2O+K2Oは3~15%、より好ましくは5~14%、さらに好ましくは6~13%である。
【0043】
少量のF(フッ素)はガラスの紫外線透過率と耐紫外線照射能力を高めることができる。Fの含有量が3%を超えると、ガラスの溶融過程で大きく揮発され、ガラスの屈折率が不安定になり、ガラスの光学均一性は設計要求を満たすことが困難になり、生産環境と操作者の健康にも危害をもたらす。したがって、Fの含有量は3%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下に制御される。いくつかの実施形態において、ガラスの紫外線透過率と耐紫外線照射性能に余裕があれば、よりさらに好ましくはFを含まないことである。
【0044】
本発明において、清澄剤としてSb2O3、SnO、SnO2、CeO2、Cl、Brの一種又は複数種の成分を0~1%添加することにより、ガラスの清澄効果を高めることができ、好ましくは清澄剤の含有量が0~0.8%、より好ましくは0~0.5%である。好ましくは、Sb2O3を清澄剤として添加し、Sb2O3の含有量が1%を超えると、ガラスの紫外線透過率が低下する。
【0045】
<含まれるべきでない成分>
本発明のガラスにおいては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の遷移金属の酸化物は、単独又は複合的に少量に含まれる場合でも、ガラスが着色され、可視光領域における特定の波長が吸収され、本発明の可視光透過効果を弱めるので、特に可視光領域の波長透過率を要求する光学ガラスは、実際には含まないことが好ましい。
【0046】
Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeの酸化物は、近年、有害な化学物質として使用を制御する傾向にあり、ガラスの製造工程だけでなく、加工工程及び完成品の処置に至るまで、環境保護への取り組みが必要である。そのため、環境への影響を重視する場合は、不可避な混入以外は、それらを含まないことが好ましい。これにより、光学ガラスは実際に環境を汚染する物質を含まなくなる。したがって、本発明の光学ガラスは、特殊な環境措置を講じなくても、製造、加工及び廃棄が可能である。
【0047】
環境に配慮するため、本発明の光学ガラスは、As2O3及びPbOを含まないことが好ましい。
【0048】
本明細書に記載されている「加えない」、「含まない」、「0%」という用語は、この成分を本発明のガラスの原料として意図的に添加しなかったことを意味する。しかし、ガラスを製造するための原料及び/又は設備として、意図的に添加されていない不純物や成分が、最終的なガラス中に少量または微量に存在することがあり、それらも本発明の特許の対象となる。
【0049】
以下では、本発明の光学ガラスの特性について説明する。
【0050】
<屈折率とアッベ数>
光学ガラスの屈折率(nd)とアッベ数(νd)は、GB/T 7962.1-2010 に規定された方法に従って試験されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)の下限値は1.51、好ましくは、下限値は1.52、より好ましくは、下限値は1.53であり、いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)の上限値は1.58、好ましくは、上限値は1.57、より好ましくは、上限値は1.56である。
いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)の下限値は55、好ましくは、下限値は56、より好ましくは、下限値は57であり、いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)の上限値は65、好ましくは、上限値は63、より好ましくは上限値は60である。
【0052】
<耐水安定性>
光学ガラスの耐水安定性(DW)(粉末法)はGB/T 17129に規定された方法で試験されている。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐水安定性(DW)は2類以上、好ましくは1類である。
【0054】
<耐酸安定性>
光学ガラスの耐酸安定性(DA)(粉末法)はGB/T 17129に規定された方法で試験されている。
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐酸安定性(DA)は3類以上、好ましくは2類以上、より好ましくは1類である。
【0055】
<屈折率温度係数>
光学ガラスの屈折率温度係数(dn/dt)は、『GB/T 7962.4-2010』で規定された方法に従って、40~60℃範囲内の光学ガラスの屈折率温度係数(dライン dn/dt relative(10-6/℃))を測定する。
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの屈折率温度係数(dn/dt)は8.0×10-6/℃以下、好ましくは7.0×10-6/℃以下、より好ましくは6.0×10-6/℃以下である。
【0056】
<365nmにおける内部透過率τ365nm>
本発明の光学ガラスの紫外線透過率は365nmにおける内部透過率で表示され、365nmにおける内部透過率(τ365nm)は『GB/T7962.12-2010』に規定されている方法に従って測定し、ガラス試料の厚さは10mmである。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明光学ガラスの365nmにおける内部透過率(τ365nm)は99.0%以上、好ましくは99.2%以上、より好ましくは99.4%以上、さらに好ましくは99.5%以上である。
【0058】
<365nmにおける内部透過率耐紫外線照射減衰性能>
光学ガラスの耐紫外線照射性能はΔτ365nmで表示され、すなわち、365nmにおける内部透過率耐紫外線照射減衰性能であり、その試験方法は以下の通りである。『GB/T7962.12-2010』に規定されている方法に従って365nmにおける試料の原始内部透過率τ365nm-1を測定し、次に高圧水銀ランプを用いて照射し、ガラス表面の電力密度は1W/cm2である。2時間照射後に『GB/T7962.12-2010』に規定されている方法に従って365nmにおける内部透過率τ365nm-2を再測定し、2回の測定値の差τ365nm-1-τ365nm-2は、すなわちこの波長におけるガラスの減衰であり、ガラス試料の厚さは10mmである。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの365nmにおける内部透過率耐紫外線照射減衰性能(Δτ365nm)は5.0%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。
【0060】
<結晶上限温度>
温度勾配炉法を用いてガラスの耐結晶性を測定し、ガラスを180mm×10mm×10mmの試料に作製し、側面を研磨し、温度勾配(10℃/cm)のある炉内に入れて最高温度領域の温度が1400℃まで昇温し、4時間保温した後、取り出して室温まで自然冷却し、顕微鏡下でガラスの結晶状況を観察し、結晶が確認された時の最高温度を、すなわちガラスの結晶上限温度とする。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの結晶上限温度は1300℃以下、好ましくは1280℃以下、より好ましくは1250℃以下、さらに好ましくは1230℃以下である。
【0062】
<気泡度>
光学ガラスの気泡度は『GB/T 7962.8-2010』に規定された方法に従って測定し、等級付ける。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスの気泡度はA級以上、好ましくはA0級以上、より好ましくはA00級である。
【0064】
<ストライプ>
光学ガラスのストライプ試験方法は以下の通りである:点光源とレンズで構成されたストライプメータを用いて、標準試料を最も縞が見えやすい方向から比較し、表1の規定に従って4等級に分けられる。
【0065】
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスのストライプはC級以上、好ましくはB級以上である。
【0067】
<光学均一性>
光学ガラスの光学的均一性は、1枚のガラス試料の各部分の屈折率偏差の最大値Δndで表示し、『GB/T 7962.2-2010』に規定された試験方法に従って試験されている。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのΔnd値は5×10-6以下、好ましくは3×10-6以下、より好ましくは2×10-6以下である。
【0069】
[光学ガラスの製造方法]
本発明の光学ガラスの製造方法は以下の通りである:炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物の一般原料と従来の工程で製造され、常法により混合した後、調製した炉材を1200℃~1600℃の溶融炉(白金、石英坩堝など)に投入して溶融する。その後、清澄、攪拌、均一化して、気泡及び未溶解物質のない均質な溶融ガラスを得るとともに、この溶融ガラスを金型に入れて鋳造し、焼きなましする。当業者であれば、実際の必要に応じて、原料、製法およびプロセスパラメータを適宜選択することができる。
【0070】
[ガラスプリフォーム及び光学素子]
直接滴下成形や研磨加工、又は熱プレス成形などのプレス成形加工方法を用いて、作製された光学ガラスでガラスプリフォームを製造することができる。すなわち、直接精密滴下成形により溶融光学ガラスを精密なガラスプリフォームに製造するか、研削や研磨などの機械加工によりガラスプリフォームを製造するか、光学ガラスを使用してプレス成形用のプリフォームブランクを作製し、このプリフォームブランクを熱プレス加工して研磨し、ガラスプリフォームを作製することができる。なお、光学プリフォームの製造手段は上記手段に限定されないことを説明されたい。
【0071】
上記のように、本発明の光学ガラスは、各種光学素子及び光学設計に有用であり、特に本発明の光学ガラスからブランクを形成し、このブランクを用いて熱プレス成形、精密プレス成形等を行い、レンズ、プリズム等の光学素子を作製することが好ましい。
本発明の光学プリフォーム及び光学素子は、いずれも上記本発明の光学ガラスから形成されている。本発明の光学プリフォームは、光学ガラスが備えている優れた特性を有し、本発明の光学素子は、光学ガラスが備えている優れた特性を有し、光学的価値の高いさまざまなレンズ、プリズム等の光学素子を提供することができる。
【0072】
レンズの例としては、レンズ表面が球面または非球面の凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのさまざまなレンズが挙げられる。
【0073】
[光学機器]
本発明の光学ガラスにより作製された光学素子は、写真装置、撮像装置、投影装置、表示装置、フォトリソグラフィ装置、車載装置及び監視装置等の光学機器の製造に用いることができる。
【実施例】
【0074】
<光学ガラス実施例>
本発明の技術的解決策をさらに明確に説明するために、以下の非限定的な実施例を提供する。
本実施例は、上記光学ガラスの製造方法を用いて、表2~表3に示す成分を有する光学ガラスを得る。また、各ガラスの特性を本発明に記載の試験方法により測定し、その結果を表2~表3に表した。
【0075】
【0076】
【0077】
<ガラスプリフォーム実施例>
光学ガラスの実施例1~13で得られたガラスは、研磨加工手段、又は再熱プレス成形、精密プレス成形などのプレス成形手段を用いて、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの様々なレンズ、プリズムなどのプリフォームを製造する。
【0078】
<光学素子実施例>
上記ガラスプリフォームの実施例で得られたこれらのプリフォームをアニールし、屈折率などの光学特性が所望の値に達するようにガラス内部の応力を低下させながら屈折率を微調整する。
【0079】
次に、各プリフォームを研削し、研磨し、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのさまざまなレンズ、プリズムを作製する。得られた光学素子の表面には反射防止膜を塗布することもできる。
【0080】
<光学機器実施例>
上記光学素子の実施例で製造された光学素子は、光学設計により、1つまたは複数の光学素子を用いて光学部品または光学コンポーネントを形成することにより、撮像装置、センサ、顕微鏡、医薬技術、デジタル投影、通信、光学通信技術/情報伝送、自動車分野における光学/照明、フォトリソグラフィ技術、エキシマレーザ、ウエハ、コンピュータチップ及びこのような回路及びチップを含む集積回路及び電子デバイスに用いることができる。
【国際調査報告】