(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン免疫複合体、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/30 20060101AFI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240305BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240305BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240305BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
A61P35/00
A61P37/02
A61K47/54
A61P35/04
A61P15/00
A61K39/395 T
A61K31/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558212
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022021985
(87)【国際公開番号】W WO2022204536
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519211672
【氏名又は名称】ボルト バイオセラピューティクス、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラント, ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】クディルカ, ロマス
(72)【発明者】
【氏名】サフィナ, ブライアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD60
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA14
4C085AA25
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086BC32
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZA81
4C086ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA50
4H045GA21
(57)【要約】
本開示は、1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン誘導体にコンジュゲーションによって連結された抗体を含む、式Iの免疫複合体を提供する。本発明はまた、反応性官能基を含む2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン誘導体中間体組成物を提供する。このような中間体組成物は、リンカーまたは連結部位を介した前記免疫複合体の形成に適した基質である。本発明は更に、前記免疫複合体を用いてがんを治療する方法を提供する。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン部分にリンカーによって共有結合され、式I:
【化1】
を有する抗体、またはその薬学的に許容される塩を含み、
Abは、PD-L1、HER2、CEA及びTROP2から選択される標的に結合する抗体である、抗体であり、
pは、1~8の整数であり、
X
2及びX
3は、独立して、結合、C(=O)、C(=O)N(R
5)、O、N(R
5)、S、S(O)
2、及びS(O)
2N(R
5)からなる群から選択され、
R
1a、R
1b及びR
2は、独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル、及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択されるか、またはR
1a及びR
1bは、5員または6員のヘテロシクリル環を形成し、
R
3は、
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O)*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O)O-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-S(O
2)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-O-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
6~C
20アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
6~C
20アリール)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-NR
5-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-O-*;及び
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*からなる群から選択され、
アスタリスク*は、リンカーLの結合部位を示し、
または、R
2及びR
3は一緒になって、5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、
R
5は、独立して、H、C6~C
20アリール、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリールジイル、C
1~C
12アルキル、及びC
1~C
12アルキルジイルからなる群から選択されるか、または2つのR
5基は一緒になって、5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、
R
5aは、C
6~C
20アリール及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択され、
Lは、
-C(=O)-PEG-;
-C(=O)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-C(=O)-PEG-O-;
-C(=O)-PEG-O-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N
+(R
6)
2-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O);
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-N(R
6)-PEG-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-;及び
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-からなる群から選択され、
R
6は、独立して、HまたはC
1~C
6アルキルであり、
PEGは、式:-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-を有し、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、
Glucは、式:
【化2】
を有し、
PEPは、式:
【化3】
を有し、AAは、天然もしくは非天然アミノ酸側鎖から独立して選択されるか、またはAA及び隣接する窒素原子のうちの1つ以上は5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示しており、
Cycは、F、Cl、NO
2、-OH-、OCH
3及び構造:
【化4】
を有するグルクロン酸選択される1つ以上の基で任意選択で置換されている、C
6~C
20アリールジイル及びC
1~C
20ヘテロアリールジイルから選択され、
R
7は、-CH(R
8)O-、-CH
2-、-CH
2N(R
8)-及び-CH(R
8)O-C(=O)-からなる群から選択され、R
8は、H、C
1~C
6アルキル、C(=O)-C
1~C
6アルキル及び-C(=O)N(R
9)
2から選択され、R
9は、独立して、H、C
1~C
12アルキル及び-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-OHからなる群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR
9基は一緒になって、5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、
yは2~12の整数であり、
zは0または1であり、
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール及びヘテロアリールジイルは、独立してかつ任意選択で、F、Cl、Br、I、-CN、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH=CH
2、-C-CH、-C-CCH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、-CH
2CH
2OH、-C(CH
3)
2OH、-CH(OH)CH(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CH
2OH、-CH(OH)CH
2OH、-CH
2CH
2SO
2CH
3、-CH
2OP(O)(OH)
2、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2CF
3、-CH
2CHF
2、-CH(CH
3)CN、-C(CH
3)
2CN、-CH
2CN、-CH
2NH
2、-CH
2NHSO
2CH
3、-CH
2NHCH
3、-CH
2N(CH
3)
2、-CO
2H、-COCH
3、-CO
2CH
3、-CO
2C(CH
3)
3、-COCH(OH)CH
3、-CONH
2、-CONHCH
3、-CON(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CONH
2、-NH
2、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、-NHCOCH
3、-N(CH
3)COCH
3、-NHS(O)
2CH
3、-N(CH
3)C(CH
3)
2CONH
2、-N(CH
3)CH
2CH
2S(O)
2CH
3、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH
3、-NHC(=NH)NH
2、-NHC(=O)NH
2、-NO
2、=O、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2OCH
3、-OCH
2CH
2OH、-OCH
2CH
2N(CH
3)
2、-O(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
mCO
2H、-O(CH
2CH
2O)
nH、-OCH
2F、-OCHF
2、-OCF
3、-OP(O)(OH)
2、-S(O)
2N(CH
3)
2、-SCH
3、-S(O)
2CH
3、及び-S(O)
3Hから独立して選択される1つ以上の基で置換される、免疫複合体。
【請求項2】
前記抗体は、PD-L1に結合する抗原結合ドメインを有する、抗体コンストラクトである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項3】
前記抗体は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブ、またはこれらのバイオシミラーまたはバイオベターからなる群から選択される、請求項2に記載の免疫複合体。
【請求項4】
前記抗体は、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する、抗体コンストラクトである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項5】
前記抗体は、トラスツズマブ及びペルツズマブ、またはこれらのバイオシミラーまたはバイオベターからなる群から選択される、請求項4に記載の免疫複合体。
【請求項6】
前記抗体は、CEAに結合する抗原結合ドメインを有する、抗体コンストラクトである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項7】
前記抗体は、ラベツズマブ、またはそのバイオシミラーまたはバイオベターである、請求項6に記載の免疫複合体。
【請求項8】
前記抗体は、TROP2に結合する抗原結合ドメインを有する、抗体コンストラクトである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項9】
前記TROP2抗体は、モノクローナル抗体である、請求項8に記載の免疫複合体。
【請求項10】
R
1a及びR
1bは、任意選択で置換されたC
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から独立して選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項11】
R
1aは任意選択で置換されたC
6~C
20アリールであり、R
1bはHである、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項12】
R
1a及びR
1bは、5員または6員のヘテロシクリル環を形成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項13】
X
2及びX
3のそれぞれは結合であり、R
2及びR
3は、C1~C8アルキル、-O-(C
1~C
12アルキル)、-(C
1~C
12アルキルジイル)-OR
5、-(C
1~C
8アルキルジイル)-N(R
5)CO
2R
5、-(C
1~C
12アルキル)-OC(O)N(R
5)
2、-O-(C
1~C
12アルキル)-N(R
5)CO
2R
5、及び-O-(C
1~C
12アルキル)-OC(O)N(R
5)
2からなる群から独立して選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項14】
X
2は結合であり、R
2はC
1~C
12アルキルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項15】
X
3はOであり、R
3は-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*である、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項16】
R
3は-CH
2CH
2CH
2NH-である、請求項15に記載の免疫複合体。
【請求項17】
Lは-C(=O)-PEG-C(=O)-である、請求項15に記載の免疫複合体。
【請求項18】
LはPEGを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項19】
nは10であり、mは1である、請求項18に記載の免疫複合体。
【請求項20】
AA
1及びAA
2は、天然に存在するアミノ酸の側鎖から独立して選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項21】
隣接する窒素原子を有するAA
1またはAA
2は、5員環プロリンアミノ酸を形成する、請求項20に記載の免疫複合体。
【請求項22】
AA
1及びAA
2は、H、-CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2(C
6H
5)、-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NHC(NH)NH
2、-CHCH(CH
3)CH
3、-CH
2SO
3H、及び-CH
2CH
2CH
2NHC(O)NH
2からなる群から独立して選択される、請求項20に記載の免疫複合体。
【請求項23】
AA
1は-CH(CH
3)
2であり、AA
2は-CH
2CH
2CH
2NHC(O)NH
2である、請求項22に記載の免疫複合体。
【請求項24】
式Ia:を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【化5】
【請求項25】
R
1aは、任意選択で置換されたC
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル、及びC
1~C
20ヘテロアリールから選択される基である、請求項24に記載の免疫複合体。
【請求項26】
R
1aはピリミジニルまたはピリジルである、請求項25に記載の免疫複合体。
【請求項27】
X
2は結合であり、R
2はC
1~C
12アルキルである、請求項24に記載の免疫複合体。
【請求項28】
R
3は-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*である、請求項24に記載の免疫複合体。
【請求項29】
X
3-R
3-Lは、
【化6】
からなる群から選択され、波線はNへの結合点を示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体。
【請求項30】
LはPEGを含む、請求項29に記載の免疫複合体。
【請求項31】
nは10であり、mは1である、請求項30に記載の免疫複合体。
【請求項32】
表2a及び表2bから選択される2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物。
【請求項33】
抗体と、表2a及び表2bから選択される2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物とのコンジュゲートによって調製される、免疫複合体。
【請求項34】
治療上有効な量の請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体と、薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項35】
治療上有効な量の請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体をそれを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療するための方法であって、前記がんは、膀胱癌、尿路癌、尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、及び乳癌から選択される、前記方法。
【請求項36】
前記がんは、TLR7及び/またはTLR8アゴニズムによって誘発される炎症誘発性応答に感受性である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記乳癌は、トリプルネガティブ乳癌である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記メルケル細胞癌は、転移性メルケル細胞癌である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記がんは、胃食道接合部腺癌である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
請求項1~9のいずれか一項に記載の式Iの免疫複合体を調製する方法であって、請求項32に記載の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカーは、前記抗体とコンジュゲートされている、前記方法。
【請求項41】
膀胱癌、尿路癌、尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、及び乳癌から選択される、がんを治療するための請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月26日出願の米国仮特許出願第63/166,710号に対する優先権の利益を主張し、それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。上記ASCIIコピーは、2022年3月25日に作成され、名称は17019_015WO1_SL.txtであり、サイズは85,369バイトである。
【0003】
本発明は概ね、1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン分子にコンジュゲートされた抗体を含む、免疫複合体に関する。
【背景技術】
【0004】
アクセスできない腫瘍に到達するために及び/またはがん患者や他の対象の治療の選択肢を拡大するために、抗体ならびに樹状細胞/骨髄細胞アジュバントを送達するための新しい組成物と方法が必要とされている。本発明は、そのような組成物及び方法を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は概ね、1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン誘導体にコンジュゲーションによって連結された抗体を含む、免疫複合体に関する。本発明は更に、反応性官能基を含む2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン誘導体中間体組成物に関する。そのような中間体組成物は、免疫複合体の形成に適した基質であり、抗体は、リンカーによって、式:
【化1】
を有する2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン部分の4位に共有結合され得、
R
3は、リンカーLに結合している。3H-ベンゾ[b]アゼピン構造の位置は、IUPAC規則に従って番号付けした。X
2-3及びR
1-3置換基は、本明細書に定義される。
【0006】
抗体は、PD-L1、HER2、TROP2及びCEAからなる群から選択される標的に結合する。
【0007】
本開示は更に、疾病、具体的にはがんの治療における、そのような免疫複合体の使用に関する。
【0008】
本発明の一態様は、1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン部分に共有結合しているリンカーに共有結合している抗体を含む、免疫複合体である。
本発明の別の態様は、2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物である。
【0009】
本発明の別の態様は、1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン部分へのコンジュゲーションによって連結された抗体を含む、治療上有効な量の免疫複合体を投与することを含む、がんを治療するための方法である。
【0010】
本発明の別の態様は、がんを治療するための1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン部分へのコンジュゲーションによって連結された抗体を含む、免疫複合体の使用である。
【0011】
本発明の別の態様は、1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンを抗体とコンジュゲーションさせることによって免疫複合体を調製する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
これより本発明の特定の実施形態を詳細に参照するが、それらの例は、添付の構造及び式に例証されている。本発明は、列挙される実施形態と併せて説明されるが、それらは、本発明をこれらの実施形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。逆に、本発明は、すべての代替形、修正形、及び同等物を網羅することが意図されており、それらは、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る。
【0013】
当業者であれば、本発明の実施に使用することができる、本明細書に記載されるものに類似または同等である多くの方法及び材料を理解するであろう。本発明は、決して記載される方法及び材料に限定されるものではない。
【0014】
定義
「Toll様受容体」及び「TLR」という用語は、病原体関連分子パターンを認識し、自然免疫における重要なシグナル伝達要素として機能する、高度に保存された哺乳類タンパク質のファミリーのメンバーを指す。TLRポリペプチドは、ロイシンリッチリピートを持つ細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及びTLRシグナル伝達に関与する細胞内ドメインを含む、特徴的な構造を共有している。
【0015】
「Toll様受容体7」及び「TLR7」という用語は、一般公開されているTLR7配列(例えば、ヒトTLR7ポリペプチドのGenBankアクセッション番号AAZ99026またはマウスTLR7ポリペプチドのGenBankアクセッション番号AAK62676)に少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上の配列同一性を共有している核酸またはポリペプチドを指す。
【0016】
「Toll様受容体8」及び「TLR8」という用語は、一般公開されているTLR7配列(例えば、ヒトTLR8ポリペプチドのGenBankアクセッション番号AAZ95441またはマウスTLR8ポリペプチドのGenBankアクセッション番号AAK62677)に少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上の配列同一性を共有している核酸またはポリペプチドを指す。
【0017】
「TLRアゴニスト」は、TLR(例えば、TLR7及び/または)に直接的または間接的に結合すして、TLRシグナル伝達を誘導する物質である。TLRシグナル伝達の検出可能な差異は、アゴニストがTLRを刺激または活性化するのを示している可能性がある。シグナル伝達の差異は、例えば、標的遺伝子の発現の変化、シグナル伝達成分のリン酸化の変化、核因子-γB(NF-γB)などの下流要素の細胞内局在の変化、特定の成分(IL-1受容体関連キナーゼ(IRAK)など)と他のタンパク質もしくは細胞内構造との関連の変化、またはキナーゼなどの成分(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)など)の生化学的活性の変化として現れる可能性がある。
【0018】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子またはその断片からの抗原結合領域(相補性決定領域(CDR)を含む)を含む、ポリペプチドを指す。「抗体」という用語は、具体的には、所望される生物学的活性を示す、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成され、各対は、ジスルフィド結合によって接続される、1つの「軽鎖」(約25kDa)及び1つの「重鎖」(約50~70kDa)を有する。各鎖は、免疫グロブリンドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは、例えば、軽鎖及び重鎖の可変ドメインまたは領域(それぞれVL及びVH)、軽鎖及び重鎖の定常ドメインまたは領域(それぞれCL及びCH)など、サイズと機能によって様々なカテゴリーに分類される。各鎖のN-末端は、抗原認識を主に担う、パラトープと称される、約100~110個以上のアミノ酸の可変領域、すなわち抗原結合ドメインを画定する。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεとして分類され、そして、これらの重鎖によって、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEという免疫グロブリンの分類が定められる。IgG抗体は、4つのペプチド鎖で構成される約150kDaの大きな分子である。IgG抗体は、約50kDaの2つの同一のクラスγ重鎖と約25kDaの2つの同一の軽鎖を含み、したがって四量体の四次構造を含む。2つの重鎖は互いに結合され、それぞれジスルフィド結合によって軽鎖に結合されている。得られた四量体は2つの同じの半分部分を持ち、これらが一緒になってY字型の形状を形成する。枝分かれした両端には、同じの抗原結合ドメインが含まれている。ヒトには4つのIgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)があり、血清中の存在量の順に名前がつけられている(つまり、IgG1が最も豊富である)。通常、抗体の抗原結合ドメインは、がん細胞への結合の特異性と親和性において最も重要である。
【0019】
「二重特異性」抗体(bsAb)は、2つの異なるエピトープをがんに結合する抗体である(Suurs F.V.et al(2019)Pharmacology&Therapeutics201:103-119)。二重特異性抗体は、免疫細胞に係合して腫瘍細胞を破壊し、ペイロードを腫瘍に送達することができ、及び/または腫瘍シグナル伝達経路を遮断することができる。特定の抗原を標的にする抗体は、特定の抗原を標的にする少なくとも1つの抗原結合領域を有する二重特異性または多重特異性抗体を含む。いくつかの実施形態では、標的モノクローナル抗体は、腫瘍細胞を標的とする少なくとも1つの抗原結合領域を有する二重特異性抗体である。そのような抗原としては、メソテリン、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、HER2、TROP2、CEA、EGFR、5T4、ネクチン4、CD19、CD20、CD22、CD30、CD70、B7H3、B7H4(08Eとしても公知)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、グリピカン3、RG1、フコシルGMl、CTLA-4、及びCD44(WO2017/196598)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
特定の抗原を標的にする抗体は、特定の抗原を標的にする少なくとも1つの抗原結合領域を有する二重特異性または多重特異性抗体を含む。いくつかの実施形態では、標的モノクローナル抗体は、腫瘍細胞を標的とする少なくとも1つの抗原結合領域を有する二重特異性抗体である。そのような抗原には、CD47、SIRPα、デクチン-2、PD-1、及びPD-L1が含まれる。
【0021】
「抗体コンストラクト」とは、(i)抗原結合ドメイン及び(ii)Fcドメインを含む、抗体または融合タンパク質を指す。
【0022】
「免疫複合体」という用語は、リンカーを介してアジュバント部分に共有結合している抗体コンストラクトを指す。免疫複合体は、標的抗原が結合している間に、活性アジュバント部分を標的とした送達を可能にする。
【0023】
「アジュバント」は、アジュバントに曝露された対象において免疫応答を誘発することができる物質を指す。「アジュバント部分」という用語は、本明細書に記載されるように、例えばリンカーを介して抗体コンストラクトに共有結合されるアジュバントを指す。アジュバント部分は、抗体コンストラクトに結合している間、または対象への免疫複合体の投与後の抗体コンストラクトからの切断(例えば、酵素的切断)後に免疫応答を誘発することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、結合剤は、抗原結合抗体「断片」であり、これは、抗体の少なくとも抗原結合領域単独で、または一緒になって抗原結合コンストラクトを構成する他の構成成分と共に含む、コンストラクトである。多くの異なる種類の抗体「断片」は当技術分野で公知であり、例えば、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋により結合した2つのFab断片を含む2価の断片である、F(ab’)2断片、(iii)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)穏やかな還元条件下でF(ab’)2断片のジスルフィド架橋の切断から得られる、F(ab’)断片、(v)ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、ならびに(v)2つのドメインが1つのポリペプチド鎖として合成されることを可能にする合成リンカーによって結合されたFv断片の2つのドメイン(つまり、VL及びVH)からなる1価の分子である、単鎖Fv(scFv)を含む。
【0025】
抗体または抗体断片は、より大きなコンストラクトの一部、例えば、抗体断片の追加の領域へのコンジュゲートまたは融合コンストラクトの一部であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗体断片は、本明細書に記載されるようにFc領域に融合することができる。他の実施形態では、抗体断片(例えば、FabまたはscFv)は、例えば、膜貫通ドメインへの融合(任意選択で介在するリンカーまたは「ストーク」(例えば、ヒンジ領域)により)及び任意選択の細胞間シグナル伝達ドメインへの融合によって、キメラ抗原受容体またはキメラT細胞受容体の一部であり得る。例えば、抗体断片は、t細胞受容体のγ鎖及び/またはδ鎖に融合され、PD-L1を結合するT細胞受容体様コンストラクトを提供し得る。更に別の実施形態では、抗体断片は、CD1またはCD3結合ドメイン及びリンカーを含む二重特異性T細胞誘導(BiTE)の一部である。
【0026】
「システイン変異抗体」とは、抗体の1つ以上のアミノ酸残基がシステイン残基で置換されている抗体である。システイン変異抗体は、抗体工学法により親抗体から調製することができる(Junutula,et al.,(2008b)Nature Biotech.,26(8):925-932;Dornan et al.(2009)Blood114(13):2721-2729;米国特許第7521541号;同第7723485号;同第2012/0121615号;WO2009/052249)。システイン残基は、操作されたシステイン部位での反応性システインチオール基を介した抗体へのTLRアゴニストなどのアジュバントの部位特異的コンジュゲーションを提供するが、免疫グロブリンの折り畳み及びアセンブリーを妨害しないか、または抗原結合及びエフェクター機能を変化させない。システイン変異抗体は、免疫複合体の均一な化学量論(例えば、単一の操作された変異システイン部位を有する抗体における抗体1つ当たり最大2つのTLRアゴニスト部分)により、TLRアゴニストリンカー化合物にコンジュゲートすることができる。TLRアゴニスト-リンカー化合物は、システイン変異抗体の遊離システインチオール基と特異的に反応する反応性求電子基を有する。
【0027】
「エピトープ」とは、抗原結合ドメインが結合する抗原の任意の抗原決定基またはエピトープ決定基(すなわち、抗原結合ドメインのパラトープで)を意味する。抗原決定基は通常、アミノ酸または糖の側鎖などの分子の化学的に活性な分子の表面基群からなり、通常、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。
【0028】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。Fc受容体には3つの主要なクラス:(1)IgGに結合するFcγR、(2)IgAに結合するFcαR、及び(3)IgEに結合するFcεRがある。FcγRファミリーには、FcγI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16A)及びFcγRIIIB(CD16B)などのいくつかのメンバーが含まれる。Fcγ受容体はIgGに対する親和性が異なり、IgGサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)に対する親和性も異なる。
【0029】
本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイント阻害剤」という語句は、免疫チェックポイント分子の活性を阻害する任意の調節剤を指す。免疫チェックポイント阻害剤には、免疫チェックポイント分子結合タンパク質、小分子阻害剤、抗体(免疫チェックポイントタンパク質を標的とする少なくとも1つの抗原結合領域を有する二重特異性抗体及び多重特異性抗体、例えば、免疫チェックポイントタンパク質のみを標的としない二重特異性抗体または多重特異性抗体、ならびに二重免疫調節剤(同時に2つの免疫調節標的を標的とする)(阻害標的の遮断、抑制細胞の枯渇、及び/またはエフェクター細胞の活性化をもたらす);腫瘍標的免疫調節剤(腫瘍抗原及びCD40または4-1BBなどの共刺激分子を標的とすることにより、腫瘍浸潤免疫細胞に強力な共刺激を誘導する);NK細胞リダイレクト剤(腫瘍抗原及びCD16Aを標的とすることにより、NK細胞を悪性細胞にリダイレクトする);またはT細胞リダイレクト剤(腫瘍抗原及びCD3を標的とすることにより、T細胞を悪性細胞にリダイレクトする)である抗体を含む)、抗体誘導体(Fc融合、Fab断片及びscFvを含む)、抗体薬物複合体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、アプタマー、ペプチド及びペプチド模倣物が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で参照される核酸またはアミノ酸配列の「同一性」は、対象の核酸またはアミノ酸配列を参照する核酸またはアミノ酸配列と比較することによって決定され得る。同一性パーセントは、最適に整列された対象の配列と最長の配列の長さ(すなわち、対象の配列または参照配列のいずれかの長さ、いずれか長い方)で割った参照配列との間で同じ(すなわち、同一)であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数である。配列のアラインメント及び同一性パーセントの計算は、利用可能なソフトウェアプログラムを用いて実行することができる。そのようなプログラムの例としては、CLUSTAL-W、T-Coffe、及びALIGN(核酸及びアミノ酸配列のアラインメントのため)、BLASTプログラム(例えば、BLAST2.1、BL2SEQ、BLASTp、BLASTnなど)、及びFASTAプログラム(例えば、FASTA3x、FASTM及びSRESEARCH)(配列アラインメント及び配列相似性検索のため)が挙げられる。配列アラインメントアルゴリズムはまた、例えば、Altschul et al.,J.Molecular Biol.,215(3):403-410(1990),Beigert et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.Usa,106(10):3770-3775(2009),Durbin et al.,eds.,Biological Sequence Analysis:Probalism Models of Proteins and Nucleic Acids,Cambridge,UK(2009),Soding,Bioinformation,21(7):951-960(2005),Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25(17):3389-3402 1997)及びGusfield,Algorithms on Strings,Tree and Sequences,Cambridge University Press,Cambridge UK(1997))に開示されている。配列の同一性パーセント(%)は、例えば、100×1[(同一位置)/min(TGA,TGB)]として計算することもでき、TGA及びTGBは、TGA及びTGBを最小化するアラインメントにおけるペプチド配列A及びBの残基数と内部ギャップ位置の合計である。例えば、Russell et al.,J.Mol Biol.,244:332-350(1994)を参照のこと。
【0031】
結合剤は、抗原結合部位を一緒に形成するIg重鎖及び軽鎖の可変領域ポリペプチドを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域のそれぞれは、フレームワーク領域により連結された3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を含むポリペプチドである。結合剤は、Ig重鎖及び軽鎖を含む、当技術分野で公知の様々な種類の結合剤のいずれかであり得る。例えば、結合剤は、抗体、抗原結合抗体「断片」、またはT細胞受容体であり得る。
【0032】
「バイオシミラー」とは、例えば、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標)、Genentech,Inc.)、デュルバルマブ(IMFINZI(商標)、AstraZeneca)及びアベルマブ(BAVENCIO(商標)、EMDSerono、Pfizer)などの以前に承認されたPD-L1標的化抗体コンストラクト;トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)、Genentech、Inc.)及びペルツズマブ(PERJETA(商標)、Genentech、Inc.)などの以前に承認されたHER2標的化抗体コンストラクト;またはラベツズマブ(CEA-CIDE(商標)、MN-14、hMN14、Immunomedics)CAS登録番号219649-07-7)などのCEA標的化抗体と同様の活性特性を有する、承認された抗体コンストラクトを指す。
【0033】
「バイオベター」とは、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ及びラベツズマブなどの以前に承認された抗体コンストラクトの改善である、承認された抗体コンストラクトを指す。バイオベターは、以前に承認された抗体コンストラクトに対して1つ以上の修飾(例えば、変更されたグリカンプロファイル、または固有のエピトープ)を有することができる。
【0034】
「アミノ酸」とは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に組み込むことができる任意のモノマー単位を指す。アミノ酸には、天然に存在するα-アミノ酸とその立体異性体、及び非天然(天然に存在しない)アミノ酸とその立体異性体が含まれる。所与のアミノ酸の「立体異性体」とは、分子式及び分子内結合が同じであるが、結合及び原子の三次元配置が異なる異性体(例えば、l-アミノ酸及び対応するd-アミノ酸)を指す。アミノ酸は、グリコシル化(例えば、N-結合型グリカン、O-結合型グリカン、ホスホグリカン、C-結合型グリカン、またはグリピケーション)または脱グリコシル化することができる。アミノ酸は、本明細書では、広く知られている3文字の記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字の記号のいずれかによって表され得る。
【0035】
天然アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたもの、及びそれらのアミノ酸が後で修飾されたもの(例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート及びO-ホスホセリン)である。天然に存在するα-アミノ酸としては、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。天然に存在するα-アミノ酸の立体異性体としては、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リシン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(Dプロ)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-トレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
天然に存在するアミノ酸には、シトルリン(Cit)などの翻訳後修飾によってタンパク質に形成されたものが含まれる。
【0037】
非天然(天然に存在しない)アミノ酸には、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣物、合成アミノ酸、N-置換グリシン、及び天然アミノ酸と同様に機能するL-またはD-配置のN-メチルアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。「アミノ酸類似体」とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造(すなわち、水素と結合している炭素、カルボキシル基、アミノ基)を有するが、側鎖基またはペプチド主鎖が修飾されている非天然アミノ酸、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムであり得る。「アミノ酸模倣体」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
【0038】
「連結部位」とは、化合物や材料中の2つ以上の部分を共有結合させる官能基を指す。例えば、連結部位は、アジュバント部分を免疫複合体の抗体に共有結合させる役割を果たすことができる。
【0039】
「連結部位」とは、化合物や材料中の2つ以上の部分を共有結合させる官能基を指す。例えば、連結部位は、アジュバント部分を免疫複合体の抗体に共有結合させる役割を果たすことができる。連結部位をタンパク質及び他の材料に接続するための有用な結合には、アミド、アミン、エステル、カルバメート、尿素、チオエーテル、チオカルバメート、チオカーボネート、及びチオ尿素が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
「二価」とは、2つの官能基を連結するための2つの結合点を含む、化学部位を指す。多価連結部位は、更なる官能基を連結するための追加の結合点を有することができる。二価ラジカルは、接尾辞「ジイル」で示され得る。例えば、二価連結部位には、二価ポリ(エチレングリコール)、二価シクロアルキル、二価ヘテロシクロアルキル、二価アリール、及び二価ヘテロアリール基などの二価ポリマー部位が含まれる。「二価シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基」とは、分子または材料中の2つの部分を共有結合させるための2つの結合点を有するシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基を指す。シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、置換型または非置換型であり得る。シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1つ以上の基で置換することができる。
【0041】
波線
【化2】
は、特定の化学部位の結合点を表す。特定の化学部位に2本の波線
【化3】
が存在する場合、化学部位は双方で、つまり左から右または右から左に読み取って使用できることが理解される。いくつかの実施形態では、存在する2つの波線
【化4】
を有する特定の部位は、左から右へと読み取られるように使用されると見なされる。
【0042】
「アルキル」とは、示された炭素原子の数を有する、直鎖(線状)または分岐した飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキルには、例えば1~12つの任意の数の炭素を含むことができる。アルキル基の例としては、メチル(Me、-CH3)、エチル(Et、-CH2CH3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH3)3)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(-CH(CH2CH3)2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH3)CH(CH3)2)、3-メチル-1-ブチル(-CH2CH2CH(CH3)2)、2-メチル-1-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-ヘキシル(-CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ヘキシル(-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-ヘキシル(-CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH3)2CH2CH2CH3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH(CH3)2)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH3)(CH2CH3)2)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CH2CH3)CH(CH3)2)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH(CH3)2)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH3)C(CH3)3、1-ヘプチル、1-オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、置換されていても非置換でもよい。「置換アルキル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1つ以上の基で置換することができる。
【0043】
「アルキルジイル」という用語は、二価のアルキル基を意味する。アルキルジイル基の例としては、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)などが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルジイル基は、「アルキレン」基とも呼ばれることがある。
【0044】
「アルケニル」とは、示された炭素原子の数及び少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、spを有する、直鎖(線状)または分岐した不飽和脂肪族ラジカルを指す。アルケニルは、2~約12個以上の炭素原子を含むことができる。アルケニル基は、「シス」及び「トランス」配向、代替的に「E」及び「Z」配向を有するラジカルである。例としては、エチレニルまたはビニル(-CH=CH2)、アリル(-CH2CH=CH2)、ブテニル、ペンテニル、及びこれらの異性体を含むが、これらに限定されない。アルケニル基は、非置換型または置換型であり得る。「置換アルケニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1つ以上の基で置換することができる。
【0045】
「アルケニレン」または「アルケニルジイル」という用語は、直鎖または分岐鎖の二価の炭化水素ラジカルを指す。例としては、エチレニレンまたはビニレン(-CH=CH-)、アリル(-CH2CH=CH-)などがあるが、これらに限定されない。
【0046】
「アルキニル」とは、示された炭素原子の数及び少なくとも1つの炭素-炭素三重結合、spを有する、直鎖(線状)または分岐した不飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキニルは、2~約12個以上の炭素原子を含むことができる。例えば、C2~C6アルキニルには、エチニル(-C≡CH)、プロピニル(プロパルギル、-CH2C≡CH)、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、及びこれらの異性体が含まれるが、これらに限定されない。アルキニル基は置換型または非置換型であり得る。「置換アルキニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1つ以上の基で置換することができる。
【0047】
「アルキニレン」または「アルキニルジイル」という用語は、二価のアルキニルラジカルを指す。
【0048】
「カルボサイクル」、「カルボシクリル」、「炭素環」及び「シクロアルキル」という用語は、3~12個の環原子または示された原子数を含む、飽和もしくは部分的に不飽和の単環式、縮合二環式または架橋多環集合体を指す。飽和単環式炭素環には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが含まれる。飽和二環式及び多環式炭素環には、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン及びアダマンタンが含まれる。炭素環式基は部分的に不飽和であり、環に1つ以上の二重結合または三重結合を有する場合もある。部分的に不飽和である代表的な炭素環式基には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-及び1,5-異性体)、ノルボルネン、及びノルボルナジエンが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
「シクロアルキルジイル」という用語は、二価のシクロアルキルラジカルを指す。
【0050】
「アリール」とは、親の芳香環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することにより誘導される、6~20個の炭素原子(C6~C20)の一価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。アリール基は、単環式である、縮合して二環式もしくは三環式基を形成する、または結合によって連結してビアリール基を形成することができる。代表的なアリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニルが含まれる。他のアリール基には、メチレン連結基を有するベンジルが含まれる。フェニル、ナフタレンまたはビフェニルなど、一部のアリール基には6~12個の環員がある。他のアリール基には、フェニルまたはナフチルなどの6~10個の環員がある。
【0051】
「アリーレン」または「アリールジイル」とは、親の芳香環系の2個の炭素原子から2個の水素原子を除去することにより誘導される、6~20個の炭素原子(C6~C20)の二価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。いくつかのアリールジイル基は、例示的構造で「Ar」と表される。アリールジイルは、飽和環、部分的不飽和環、または芳香族炭素環と縮合した芳香環を含む、二環式ラジカルを含む。典型的なアリールジイル基としては、ベンゼン(フェニレン)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニレン、インデニレン、インダニレン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフチルなどに由来するラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールジイル基は「アリーレン」とも称され、任意選択で、本明細書に記載される1つ以上の置換基で置換される。
【0052】
「複素環」、「ヘテロシクリル」及び「複素環式環」という用語は、本明細書において同義で用いられ、3~約20個の環原子の飽和または部分的に不飽和(すなわち1つ以上の二重及び/または三重結合を環の中に有する)の炭素環式ラジカルを指し、少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素、リン、及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCであり、1つ以上の環原子は、任意選択で、以下に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。複素環は、3~7員環(2~6個の炭素原子ならびにN、O、P、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子)の単環または7~10員環(4~9個の炭素原子ならびにN、O、P、及びSから選択される1~6個のヘテロ原子)の二環、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]、もしくは[6,6]系であってよい。複素環は、Paquette,Leo A.,″Principles of Modern Heterocyclic Chemistry″(W.A.Benjamin,New York,1968)の特に第1章、第3章、第4章、第6章、第7章、及び第9章、″The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs″(John Wiley&Sons,New York,1950~現在)の特に第13巻、第14巻、第16巻、第19巻、及び第28巻、ならびにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載されている。「ヘテロシクリル」は、複素環ラジカルが、飽和環、部分的不飽和環、または芳香族炭素環式環もしくは複素環式環と縮合したラジカルも含む。複素環式環としては、例えば、モルホリン-4-イル、ピペリジン-1-イル、ピペラジニル、ピペラジン-4-イル-2-オン、ピペラジン-4-イル-3-オン、ピロリジン-1-イル、チオモルホリン-4-イル、S-ジオキソチオモルホリン-4-イル、アゾカン-1-イル、アゼチジン-1-イル、オクタヒドロピリド[1,2-a]ピラジン-2-イル、[1,4]ジアゼパン-1-イル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリニルイミダゾリニル、イミダゾリニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H-インドリルキノリジニル、及びN-ピリジルウレアが挙げられるが、これらに限定されない。スピロヘテロシクリル部位も、本定義の範囲内に含まれる。スピロヘテロシクリル部位の例には、アザスピロ[2.5]オクタニル及びアザスピロ[2.4]ヘプタニルが挙げられる。2つの環原子がオキソ(=O)部位で置換された複素環式基の例は、ピリミジノニル及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニルである。本明細書の複素環基は、任意選択で、本明細書に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。
【0053】
「ヘテロシクリルジイル」という用語は、3~約20個の環原子の二価の飽和または部分的に不飽和(すなわち1つ以上の二重及び/または三重結合を環の中に有する)の炭素環式ラジカルを指し、少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素、リン、及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCであり、1つ以上の環原子は、任意選択で、記載される1つ以上の置換基で、独立して置換される。5員及び6員のヘテロシクリルジイルの例としては、モルホリニルジイル、ピペリジニルジイル、ピペラジニルジイル、ピロリジニルジイル、ジオキサニルジイル、チオモルホリニルジイル、及びS-ジオキソチオモルホリニルジイルが挙げられる。
【0054】
「ヘテロアリール」という用語は、5、6または7員環の一価の芳香族ラジカルを指し、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される1つ以上のヘテロ原子を含む5~20個の原子の縮合環系(その少なくとも1つは芳香族である)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば2-ヒドロキシピリジニルを含む)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば4-ヒドロキシピリミジニルを含む)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルである。ヘテロアリール基は、任意選択で、本明細書に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。
【0055】
「ヘテロアリールジイル」という用語は、5、6または7員環の二価の芳香族ラジカルを指し、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される1つ以上のヘテロ原子を含む5~20個の原子の縮合環系(その少なくとも1つは芳香族である)を含む。5員及び6員のヘテロアリールジイルの例には、ピリジルジイル、イミダゾリルジイル、ピリミジニルジイル、ピラゾリルジイル、トリアゾリルジイル、ピラジニルジイル、テトラゾリルジイル、フリルジイル、チエニルジイル、イソオキサゾリルジイル、チアゾリルジイル、オキサジアゾリルジイル、オキサゾリルジイル、イソチアゾリルジイル及びピロリルジイルが含まれる。
【0056】
複素環またはヘテロアリール基は、可能であれば、炭素(炭素結合した)または窒素(窒素結合した)結合してもよい。例として、限定されないが、炭素結合した複素環またはヘテロアリールは、ピリジンの2、3、4、5もしくは6位、ピリダジンの3、4、5もしくは6位、ピリミジンの2、4、5もしくは6位、ピラジンの2、3、5もしくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール、もしくはテトラヒドロピロールの2、3、4もしくは5位、オキサゾール、イミダゾール、もしくはチアゾールの2、4もしくは5位、イソキサゾール、ピラゾール、もしくはイソチアゾールの3、4もしくは5位、アジリジンの2もしくは3位、アゼチジンの2、3もしくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7もしくは8位、またはイソキノリンの1、3、4、5、6、7もしくは8位で結合される。
【0057】
例として、限定されないが、窒素結合した複素環またはヘテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾ-ルまたはβ-カルボリンの9位で結合される。
【0058】
単独または別の置換基の一部としての「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を指す。
【0059】
単独でまたは別の置換基の一部としての「カルボニル」という用語は、C(=O)また-C(=O)-、すなわち、酸素に二重結合し、カルボニルを有する部分の他の2つの基に結合した炭素原子を指す。
【0060】
本明細書で使用する場合、「第四級アンモニウム塩」という語句は、アルキル置換基(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはブチルなどのC1~C4アルキル)で四級化された第三級アミンを指す。
【0061】
「治療する」、「治療」及び「治療すること」という用語は、傷害、病態、状態(例えば、がん)もしくは症状(例えば、認知障害)の治療または寛解における任意の成功の兆候を指し、緩解、寛解、症状の軽減、もしくは症状、傷害、病態もしくは状態を患者にとってより耐えられるものにする、症状の進行速度の減少、症状もしくは状態の頻度、もしくは期間の減少、または状況によっては症状の発症の防止など、任意の客観的または主観的パラメータが含まれる。症状の治療または寛解は、身体検査の結果を含む、任意の客観的または主観的パラメータに基づくことができる。
【0062】
「がん」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は本明細書で、細胞増殖の制御を著しく失うことを特徴とする異常な増殖表現型を示すような、自律的で制御されない増殖を示す細胞を指すために使用される。本発明の文脈において検出、分析、及び/または治療の対象となる細胞には、がん細胞(例えば、がんを有する個体からのがん細胞)、悪性がん細胞、前転移性がん細胞、転移性がん細胞、及び非転移性がん細胞が含まれる。実質的にすべての組織のがんは、知られている。「がん負荷量」という語句は、対象中のがん細胞量またはがん体積を指す。したがって、がん負荷量を減少させることは、対象中のがん細胞数またはがん細胞体積を減少させることを指す。本明細書で使用される「がん細胞」という用語は、がん細胞(例えば、個体を治療することができる任意のがんから、例えば、がんを有する個体から単離された)である、またはがん細胞に由来する任意の細胞(例えば、がん細胞のクローン)を指す。例えば、がん細胞は、確立されたがん細胞株からのものであってもよく、がんを有する個体から単離された初代細胞であってもよく、がんを有する個体から単離された初代細胞からの子孫細胞であってもよい、などである。いくつかの実施形態では、この用語はまた、がん細胞の細胞内部分、細胞膜部分、または細胞溶解物などのがん細胞の一部を指すことができる。細胞腫、肉腫、膠芽腫、メラノーマ、リンパ腫及び骨髄腫などの固形腫瘍、ならびに白血病のような循環癌を含む、多くの種類のがんは、当業者に知られている。
【0063】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、これらに限定されないが、固形腫瘍がん(例えば、皮膚、肺、前立腺、乳房、胃、膀胱、結腸、卵巣、膵臓、腎臓、肝臓、神経膠芽腫、髄芽腫、平滑筋肉腫、頭頸部扁平上皮癌、黒色腫、及び神経内分泌)、及び液状がん(例えば、血液癌);がん腫;軟部組織腫瘍;肉腫;奇形腫;黒色腫;白血病;リンパ腫;ならびに脳癌を含み、微小残存病変を含み、ならびに原発腫瘍と転移腫瘍の両方を含む、任意の形態のがんを含む。
【0064】
「PD-L1発現」とは、細胞表面にPD-L1受容体を有する細胞を指す。本明細書で使用する場合、「PD-L1過剰発現」とは、対応する非がん細胞と比較してより多くのPD-L1受容体を有する細胞を指す。
【0065】
「HER2」とは、タンパク質ヒト上皮成長因子受容体2を指す。
【0066】
「HER2発現」とは、細胞表面にHER2受容体を有する細胞を指す。例えば、細胞は、細胞の表面上に約20,000~約50,000のHER2受容体を有し得る。本明細書で使用する場合、「HER2過剰発現」は、約50,000を超えるHER2受容体を有する細胞を指す。例えば、細胞は、対応する非がん細胞(例えば、約100万または200万のHER2受容体)と比較して、HER2受容体の数の2、5、10、100、1,000、10,000、100,000、または1,000,000倍である。HER2は、乳癌で約25%~約30%過剰発現していると推定される。
【0067】
「TROP2発現」とは、細胞表面にTROP2受容体を有する細胞を指す。本明細書で使用する場合、「TROP2過剰発現」とは、対応する正常な非がん細胞と比較してより多くのTROP2受容体を有する細胞を指す。TROP2は、約74%の乳癌、72%の大腸癌及び64%の肺癌、ならびに他の臓器型のがんで過剰発現していると推定されている。
【0068】
がんの「病態」には、患者の健康状態を損なうすべての現象が含まれる。これには、異常または制御不能な細胞増殖、転移、隣接する細胞の正常な機能の阻害、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌物の放出、炎症または免疫反応の抑制または悪化、新生物、前悪性、悪性腫瘍、及びリンパ節などの周辺または遠隔組織または器官への浸潤が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用する場合、「がん再発」及び「腫瘍再発」という語句、ならびにそれらの文法的変形は、がんの診断後の腫瘍またはがん細胞の更なる増殖を指す。特に、がん組織で更なるがん細胞増殖が起こると再発が起こり得る。同様に「腫瘍の広がり」は、腫瘍の細胞が局所または遠隔組織や臓器に散在するときに発生し、したがって、腫瘍の広がりには腫瘍の転移が含まれる。「腫瘍浸潤」は、腫瘍の増殖が局所的に広がり、正常な臓器機能を圧迫、破壊または阻止することにより関係する組織の機能を損なうときに発生する。
【0070】
本明細書で使用する場合、「転移」という用語は、がん腫瘍のある器官に直接接続していない、器官または身体部分で癌腫瘍が増殖することを指す。転移は、がん腫瘍のある器官に直接接続していない器官または身体部分での検出不可能な量のがん細胞の存在である、微小転移を含むと理解されるであろう。転移は、がん細胞が元の腫瘍部位から離れること、がん細胞が身体の他の部位に移動及び/または浸潤することなど、いくつかの段階のプロセスとして定義することもできる。
【0071】
「有効量」及び「治療上有効な量」という語句は、それが投与される治療効果を生み出す免疫複合体などの物質の投与量または量を指す。実際の投与量は、治療の目的に依存し、また当業者であれば既知の技術を使用して確認可能であろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,11th Edition(McGraw-Hill,2006);and Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,(Pharmaceutical Press,London,2012)を参照)。がんの場合、治療上有効な量の免疫複合体は、がん細胞の数を低下、腫瘍サイズを低下、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍増殖をある程度阻害、及び/またはがんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。免疫複合体が、存在するがん細胞の増殖を阻害し得る、及び/またはそれらを死滅させ得る限り、それは、細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。がん療法に関して、有効性は、例えば、疾患進行までの時間(TTP)の評価及び/または奏効率(RR)の決定によって測定することができる。
【0072】
「レシピエント」「個体」「対象」「宿主」及び「患者」という用語は同じ意味で使用され、診断、処置または治療が所望される任意の哺乳類対象(例えば、ヒト)を指す。治療目的のための「哺乳動物」とは、ヒト、飼育動物及び畜産動物、動物園、競技用、愛玩動物、例えば犬、馬、猫、牛、羊、山羊、豚、ラクダなどを含む哺乳動物に分類される任意の動物を指す。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0073】
本発明の文脈における「相乗的アジュバント」または「相乗的組み合わせ」という語句は、受容体アゴニスト、サイトカイン、及びアジュバントポリペプチドなどの2つの免疫調節因子の組み合わせを含み、これらは組み合わせて、単独で投与される場合と比較して免疫に対する相乗効果を誘発する。特に、本明細書に開示される免疫複合体は、特許請求されたアジュバント及び抗体コンストラクトの相乗的組み合わせを含む。投与時のこれらの相乗的組み合わせは、例えば、抗体コンストラクトまたはアジュバントが他の部分の非存在下で投与される場合と比較して、免疫に対してより大きな効果を誘発する。更に、抗体コンストラクトまたはアジュバントのいずれかと単独で投与した場合と比較して、減少した量の免疫複合体を投与してもよい(免疫複合体の一部として投与される抗体コンストラクトの総数またはアジュバントの総数によって測定される)。
【0074】
本明細書で使用する場合、「投与する」という用語は、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、病巣内、鼻腔内もしくは皮下投与、経口投与、座薬としての投与、局所接触、クモ膜下投与、または徐放出装置、例えば小型浸透ポンプを対象に埋め込むことを意味する。
【0075】
本明細書で数値を修正するために使用される「約」及び「およそ」という用語は、その数値の周囲にある近い範囲を示す。したがって、「X」が値である場合、「約X」または「およそX」は、0.9X~1.1X、例えば、0.95X~1.05X、または0.99X~1.01Xの値を示す。「約X」または「およそX」への言及は特に、少なくとも値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、及び1.05Xを示す。したがって、「約X」及び「およそX」は、例えば「0.98X」のクレーム限定について本明細書のサポートを教示及び提供することを意図している。
【0076】
抗体
本発明の免疫複合体は抗体を含む。本発明の実施形態の範囲に含まれるのは、本明細書に記載の抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインの機能的変異体である。本明細書で使用される「機能的変異体」という用語は、親抗体コンストラクトもしくは抗原結合ドメインと実質的または有意な配列同一性もしくは類似性を有する抗原結合ドメインを有する抗体コンストラクトを指し、この機能的変異体は、それが変異体である抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインの生物学的活性を保持する。機能的変異体は、例えば、PD-L1、HER2、CEAもしくはTROP2を発現する標的細胞を認識する能力を親抗体コンストラクトもしくは抗原結合ドメインと類似する程度、同じ程度またはより高度に保持する、本明細書に記載の抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン(親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン)の変異体を包含する。
【0077】
抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインに関して、機能的変異体は、アミノ酸配列が抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと、例えば少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上同一である。
【0078】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸配列を含むことができる。あるいはまたは更に、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が機能的変異体の生物学的活性を妨害または阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物学的活性を増強し得て、その結果、機能的変異体の生物学的活性は、親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと比較して増加する。
【0079】
本発明の抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当技術分野で公知であり、特定の物理的及び/または化学的特性を有する1つのアミノ酸を、同じまたは類似の化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸に交換するアミノ酸置換が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性/負に帯電した極性アミノ酸に置換された酸性/負に帯電した極性アミノ酸(例えば、AspまたはGlu)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された正に帯電したアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Valなど)、別の塩基性/正に帯電した極性アミノ酸に置換された塩基性/正に帯電した極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Argなど)、極性側鎖を有する他の非荷電性アミノ酸に置換された極性側鎖を有する非荷電性アミノ酸(例えば、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)、ベータ分岐側鎖を有する別のアミノ酸に置換されたベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ile、Thr及びVal)、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸に置換された芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、Phe、Trp及びTyr)などであり得る。
【0080】
抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、他の成分、例えば他のアミノ酸が抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン機能的変異体の生物学的活性を実質的に変化させないように、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列(複数可)から本質的になり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、修飾Fc領域を含み、修飾は、1つ以上のFc受容体へのFc領域の結合を調節する。
【0082】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体(例えば、少なくとも2つのアジュバント部分に結合された抗体)は、Fc領域の変異が欠如している天然抗体と比較して、1つ以上のFc受容体(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)及び/またはFcγRIIIB(CD16b))に調節された結合(例えば、結合の増加または結合の減少)をもたらす、Fc領域の1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、抗体のFc領域のFcγRIIBへの結合を減少させる、Fc領域の1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、Fc領域の変異が欠如している天然抗体と比較して、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)及び/またはFcγRIIIA(CD16a)への同じ結合または増加した結合を維持しながら、FcγRIIBへの抗体の結合を減少させる、抗体のFc領域の1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、FcγRIIBへの抗体のFc領域の結合を増加させる、Fc領域の1つ以上の修飾を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、調節された結合は、抗体の天然Fc領域と比較した抗体のFc領域の変異によって提供される。変異は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはこれらの組み合わせにあり得る。「天然Fc領域」は「野生型Fc領域」と同義であり、自然界に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一の、または天然抗体(例えば、セツキシマブ)に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1Fc領域、天然配列ヒトIgG2Fc領域、天然配列ヒトIgG3Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4Fc領域、ならびにこれらの天然に存在する変異型が含まれる。天然配列Fcには、Fcの様々なアロタイプが含まれる(Jefferis et al.,(2009)mAbs,1(4):332-338)。
【0084】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc受容体への調節された結合をもたらすFc領域の変異は、以下の変異:SD(S239D)(SDIE(S239D/I332E)、SE(S267E)、SELF(S267E/L328F)、SDIE(S239D/I332E)、SDIEAL(S239D/I332E/A330L)、GA(G236A)、ALIE(A330L/I332E)、GASDALIE(G236A/S239D/A330L/I332E)、V9(G237D/P238D/P271G/A330R)及びV11(G237D/P238D/H268D/P271G/A330R))及び/または以下のアミノ酸:E233、G237、P238、H268、P271、L328及びA330での1つ以上の変異のうちの1つ以上を含み得る。Fc受容体結合を調節するための更なるFc領域の修飾は、例えば、米国特許第2016/0145350号及び同第7416726号及び同第5624821号に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0085】
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体のFc領域は、天然の非修飾Fc領域と比較して、Fc領域の変更されたグリコシル化パターンを有するように修飾される。
【0086】
ヒト免疫グロブリンは、各重鎖のCγ2ドメインのAsn297残基でグリコシル化される。このN-結合型オリゴ糖は、コア七糖であるN-アセチルグルコサミン4マンノース3(GlcNAc4Man3)からなる。エンドグリコシダーゼまたはPNGaseFによる七糖の除去は、抗体Fc領域の配座変化を引き起こすことが知られており、FcγRの活性化に対する抗体結合親和性を大幅に低下させ、エフェクター機能を低下させる可能性がある。コア七糖は、ガラクトース、バイセクトGlcNAc、フコース、またはシアル酸で修飾されることが多く、活性型FcγR及び抑制型FcγRへのFc結合に異なる影響を与える。更に、α2,6-シアリル化はin vivoで抗炎症活性を増強し、脱フコシル化はFcγRIIIa結合を改善し、ならびに抗体依存性細胞傷害及び抗体依存性食作用の10倍の増加をもたらすことが実証されている。したがって、特定のグリコシル化パターンを使用して、炎症性エフェクター機能を制御することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、グリコシル化パターンを変更するための修飾は、変異である。例えば、Asn297での置換。いくつかの実施形態では、Asn297は、グルタミン(N297Q)に変異されている。FcγR制御シグナル伝達を調節する抗体を用いて免疫応答を制御する方法は、例えば、米国特許7,416,726号ならびに米国特許出願公開第2007/0014795号及び同第2008/0286819号に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、天然に存在しないグリコシル化パターンを有する操作されたFab領域を含むように修飾される。例えば、ハイブリドーマは、FcRγIIIa結合及びエフェクター機能の増加を可能にする特定の変異を有する脱フコシル化mAb、脱シアリル化mAbまたは脱グリコシル化Fcを分泌するように遺伝子操作することができる。いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、脱フコシル化されるように操作される。
【0089】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体の全Fc領域は、異なるFc領域と交換され、その結果、抗体のFab領域は、非天然Fc領域にコンジュゲートされる。例えば、通常はIgG1Fc領域を含むセツキシマブのFab領域は、IgG2、IgG3、IgG4またはIgAにコンジュゲートできる、または通常はIgG4Fc領域を含むニボルマブのFab領域をIgG1、IgG2、IgG3、IgA1またはIgG2にコンジュゲートできる。いくつかの実施形態では、非天然Fcドメインを有するFc修飾抗体はまた、記載されたFcドメインの安定性を調節する、IgG4 Fc内のS228P変異などの1つ以上のアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態では、非天然Fcドメインを有するFc修飾抗体はまた、FcRへのFc結合を調節する、本明細書に記載の1つ以上のアミノ酸修飾を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、Fc領域のFcRへの結合を調節する修飾は、天然の非修飾抗体と比較した場合、抗体のFab領域のその抗原への結合を変化させない。他の実施形態では、Fc領域のFcRへの結合を調節する修飾はまた、天然の非修飾抗体と比較した場合、抗体のFab領域のその抗原への結合を増加させる。
【0091】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、PD-L1を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む、抗体コンストラクトを含む。
【0092】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、分化集団274、CD274、B7-ホモログ1、またはB7-H1)は、B7タンパク質スーパーファミリーに属し、かつプログラム細胞死タンパク質1(PD-1、PDCD1、分化集団279、またはCD279)のリガンドである。PD-L1はまた、B7.1(CD80)と相互作用することができ、そのような相互作用は、T細胞のプライミングを阻害すると考えられている。PD-L1/PD-1軸は、適応免疫応答の抑制に大きな役割を果たす。より具体的には、PD-L1とその受容体であるPD-1との結合は、T細胞の活性化及び増殖を阻害するシグナルをもたらすと考えられている。PD-L1に結合し、リガンドがPD-1受容体に結合するのを防ぐ薬剤は、この免疫抑制を妨げ、したがって、必要に応じて、例えばがんまたは感染症の治療のために、免疫応答を増強することができる。PD-L1/PD-1経路はまた、自己免疫の予防に寄与し、したがって、PD-L1に対するアゴニスト剤、または免疫阻害ペイロードを送達する薬剤は、自己免疫障害の治療に役立ち得る。
【0093】
PD-L1を標的とする複数の抗体、例えば、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))及びアベルマブ(BAVENCIO(商標))を、がんの治療のために開発した。それにもかかわらず、PD-L1に高い親和性で結合し、PD-L1/PD-1シグナル伝達を効果的に阻害する薬剤、及びPD-L1発現細胞に治療ペイロードを送達し得る薬剤を含む、新しいPD-L1結合剤が依然として必要とされている。更に、自己免疫障害及び感染を治療するための新規のPD-L1結合剤が必要とされている。
【0094】
TLRアゴニストである2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンペイロードをPD-L1を発現する細胞に送達する方法であって、前記細胞または前記細胞を含む哺乳動物に、1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンズアゼピン部分に共有結合したリンカーに共有結合した抗PD-L1抗体を含む免疫複合体を投与することを含む、前記方法が提供される。
【0095】
本発明はまた、PD-L1阻害に応答する哺乳動物における免疫応答を増強または低減または阻害する方法、及び哺乳動物の疾患、障害または状態を治療する方法を提供し、前記方法は、哺乳動物にPD-L1免疫複合体を投与することを含む。
【0096】
本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域ポリペプチド及び免疫グロブリン軽鎖可変領域ポリペプチドを含む、PD-L1抗体を提供する。PD-L1抗体は、PD-L1に特異的に結合する。抗体の結合特異性により、PD-L1を発現する細胞を標的とし、例えば、そのような細胞に治療用ペイロードを送達することが可能になる。いくつかの実施形態では、PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に結合する。しかしながら、任意のPD-L1断片、ホモログまたはパラログに結合する抗体も包含される。
【0097】
いくつかの実施形態では、PD-L1抗体は、PD-L1がその受容体であるPD-1に結合することを実質的に阻害または防止することなく、PD-L1に結合する。しかしながら、他の実施形態では、PD-L1抗体は、PD-L1のその受容体であるPD-1への結合を完全にまたは部分的に遮断(阻害または防止)することができ、(例えば、治療目的のために)PD-L1/PD-1シグナル伝達を阻害するために抗体を使用することができる。抗体または抗原結合抗体断片は、PD-L1に対して単一特異的であり得るか、または二重特異的もしくは多重特異的であってよい。例えば、2価または多価の抗体または抗体断片において、結合ドメインは、同じ抗原の異なるエピトープを標的とするか、または異なる抗原を標的とする、異なるものであってもよい。多価結合コンストラクトを構築する方法は、当技術分野で公知である。二重特異性及び多重特異性抗体は、当技術分野で公知である。更に、ポリペプチド鎖の二量体、三量体または四量体である、ダイアボディ、トリアボディまたはテトラボディを提供することができ、それぞれは、同じポリペプチド鎖上のVHとVLの間の対形成を可能にするには短すぎるペプチドリンカーによってVLに接続されたVHを含み、それによって、異なるVH-VLポリペプチド鎖上の相補的ドメイン間の対形成を駆動し、2、3または4個の機能的な抗原結合部位を有する多量体分子を生成する。また、2つの異なる可変領域を有する小さなscFv断片であるビス-scFv断片を生成し、2つの異なるエピトープを結合することが可能な二重特異性ビス-scFv断片を生成することができる。Fab二量体(Fab2)及びFab三量体(Fab3)は、Fab断片に基づく多特異的コンストラクトを作成するために、遺伝子工学法を用いて生成することができる。
【0098】
PD-L1抗体は、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体、または対応する抗体断片であってもよいし、それらから得ることもできる。「キメラ」抗体は、典型的には、ヒト定常領域及び非ヒト可変領域を含む抗体またはその断片である。「ヒト化」抗体は、典型的にはヒト抗体足場を含むが、少なくとも1つのCDR(例えば、1、2、3、4、5または6つのCDRすべて)における非ヒト由来アミノ酸または配列を含む、モノクローナル抗体である。
【0099】
PD-L1抗体は、参照により本明細書に組み込まれるWO2021/150701に記載されるように内部移行することができるか、またはPD-L1抗体は、参照により本明細書に組み込まれるWO2021/150702に記載されるように非内部移行であることができる。
【0100】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、HER2を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む、抗体コンストラクトを含む。
【0101】
いくつかの抗HER2モノクローナル抗体が承認され、臨床開発が行われている(Costa,RLB et al(2020)Breast Cancer6(10):1-11)。
【0102】
特定の実施形態では、本発明の免疫複合体は、実施例201の方法により調製されるものなどの抗HER2抗体を含む。本発明の一実施形態では、本発明の免疫複合体の抗HER2抗体は、参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第5821337号の表3に記載されているように、ヒト化抗HER2抗体、例えば、huMAb4D5-1、huMAb4D5-2、huMAb4D5-3、huMAb4D5-4、huMAb4D5-5、huMAb4D5-6、huMAb4D5-7及びhuMAb4D5-8を含む。これらの抗体には、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域を有するヒトフレームワーク領域が含まれる。ヒト化抗体huMAb4D5-8はトラスツズマブとも呼ばれ、HERCEPTIN(商標)(Genentech,Inc.)の商品名で市販されている。
【0103】
トラスツズマブ(CAS 180288-69-1、HERCEPTIN(登録商標)、huMAb4D5-8、rhuMAb HER2、Genentech)は、細胞ベースのアッセイにおいて、HER2の細胞外ドメインに高親和性で選択的に結合する(Kd=5nM)マウス抗HER2抗体(4D5)のヒト化バージョンである、組換えDNA由来のIgG1κ、モノクローナル抗体である(米国特許第5677171号、同第5821337号、同第6054297号、同第6165464号、同第6339142号、同第6407213号、同第6639055号、同第6719971号、同第6800738号、同第7074404号、Coussens et al(1985)Science230:1132-9、Slamon et al(1989)Science244:707-12、Slamon et al(2001)New Engl.J.Med.344:783-792)。
【0104】
本発明の一実施形態では、抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、トラスツズマブのCDR領域を含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブのフレームワーク領域を更に含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブの一方または両方の可変領域を更に含む。
【0105】
本発明の別の実施形態では、本発明の免疫複合体の抗HER2抗体は、米国特許第7862817号に記載されるように、ヒト化抗HER2抗体、例えば、ヒト化2C4を含む。例示的なヒト化2C4抗体は、ペルツズマブである(CAS登録番号380610-27-5)、PERJETA(商標)(Genentech、Inc.)。ペルツズマブはHER二量体化阻害剤(HDI)であり、他のHER受容体(例えば、EGFR/HER1、HER2、HER3及びHER4)と活性なヘテロ二量体またはホモ二量体を形成する能力を阻害する機能を有する。例えば、Harari and Yarden Oncogene19:6102-14(2000)、Yarden and Sliwkowski.Nat Rev Mol Cell Biol2:127-37(2001)、Sliwkowski Nat Struct Biol10:158-9(2003)、Cho et al.Nature421:756-60(2003)、及びMalik et al.Pro Am Soc Cancer Res44:176-7(2003)を参照のこと。PERJETA(商標)は、乳癌の治療薬として承認されている。
【0106】
本発明の一実施形態では、抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、ペルツズマブのCDR領域を含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、ペルツズマブのフレームワーク領域を更に含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、ペルツズマブの一方または両方の可変領域を更に含む。
【0107】
マルゲツキシマブ(MGAH22、MARGENZA(商標)、Macrogenics,Inc.),CAS登録No.1350624-75-7は、FDA承認の抗HER2モノクローナル抗体である。マルゲツキシマブのFc領域は、活性化FcγRへの結合を増加させるが、免疫エフェクター細胞に対する抑制性Fc.γ.Rへの結合を減少させるように最適化されている(Nordstrom,JL,et al(2011)Breast Cancer Res.13(6):R123;Rugo,HS,et al(2021)JAMA Oncol.;7(4):573-584;Markham,A.(2021)Drugs81:599-604)。マルゲツキシマブは、再発または難治性の進行乳癌で、その腫瘍が免疫組織化学により2+レベルでHER2を発現しており、FISHによるHER2遺伝子増幅の証拠がない患者の治療についてFDAによって承認されている。
【0108】
HT-19は、トラスツズマブまたはペルツズマブのエピトープとは異なるヒトHER2のエピトープに結合する、別の抗HER2モノクローナル抗体である。HT-19は、トラスツズマブに匹敵するHER2シグナル伝達を阻害し、トラスツズマブ及びペルツズマブと組み合わせてHER2の分解を増強することが示された。XMT-1522は、HT-19抗体を含む抗体薬物複合体である(Bergstrom D.A.et al.,(2015)Cancer Res.;75:LB-231)。
【0109】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、CEAを特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む、抗体コンストラクトを含む。がん胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)は、CD66e(分化クラスター66e)としても公知であり、がん胎児性抗原(CEA)遺伝子ファミリーのメンバーである。
【0110】
がん胎児性抗原(CEA、CD66e、CEACAM5)の発現の上昇は、特に腫瘍細胞の接着、転移、細胞免疫機構の遮断、及び抗アポトーシス機能を有するなど、腫瘍の様々な生物学的側面に関係している。CEAは細胞表面抗原であり、また、多くのがん腫の血液マーカーとしても使用されている。MN-14及びhMN14としても公知である、ラベツズマブ(CEA-CIDE(商標)、Immunomedics、CAS登録番号219649-07-7)は、ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、結腸直腸癌の治療のために研究されている(Blumenthal,R.et al(2005)Cancer Immunology Immunotherapy54(4):315-327)。カンプトテシン類似体(ラベツズマブゴビテカン、IMMU-130)にコンジュゲートしたラベツズマブは、CEAを標的とし、再発性または難治性の転移性結腸直腸癌の患者で研究されている(Sharkey,R.et al(2018),Molecular Cancer Therapeutics17(1):196-203;Dotan,E.et al(2017),Journal of Clinical Oncology35(9):3338-3346)。また、131Iにコンジュゲートしたラベツズマブを、大腸癌及び他の固形悪性腫瘍の治療のための臨床試験で評価した(Sharkey,R.et al(1995),Cancer Research(Suppl.)55(23):5935s-5945s;Liersch,T. et al(2005),Journal of Clinical Oncology23(27):6763-6770;Sahlmann,C.-O.et al(2017),Cancer123(4):638-649)。
【0111】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6676924号に開示されているように、hMN-14/ラベツズマブ配列番号1の可変軽鎖(VLκ)を含む。
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVGTSVAWYQQKPGKAPKLLIYWTSTRHTGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQYSLYRSFGQGTKVEIK 配列番号1
【0112】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hMN-14/ラベツズマブ配列番号2~8(米国特許第6676924号)(配列番号1として開示されている完全長配列)の軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表1】
【0113】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6676924号に開示されているように、hMN-14/ラベツズマブ配列番号9の可変重鎖(VH)を含む。
EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCSSSGFDFTTYWMSWVRQAPGKGLEWVAEIHPDSSTINYAPSLKDRFTISRDNSKNTLFLQMDSLRPEDTGVYFCASLYFGFPWFAYWGQGTPVTVSS 配列番号9
【0114】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hMN-14/ラベツズマブ配列番号10~16(米国特許第6676924号)(配列番号9として開示されている完全長配列)の重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表2】
【0115】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8642742号に開示されているように、hPR1A3配列番号17の可変軽鎖(VLκ)を含む。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASAAVGTYVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRKRGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQYYTYPLFTFGQGTKLEIK 配列番号17
【0116】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hPR1A3配列番号18~24(米国特許第8642742号)(配列番号17として開示されている完全長配列)の軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表3】
【0117】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hPR1A3配列番号25~31(米国特許第8642742号)(配列番号130として開示されている完全長配列)の重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表4】
【0118】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7232888号に開示されているように、hMFE-23配列番号32の可変軽鎖(VLκ)を含む。
ENVLTQSPSSMSASVGDRVNIACSASSSVSYMHWFQQKPGKSPKLWIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYSLTISSMQPEDAATYYCQQRSSYPLTFGGGTKLEIK 配列番号32
【0119】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hMFE-23配列番号33~40(米国特許第7232888号)の軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。前記実施形態は、LFR1、配列番号33及び配列番号34の2つの変異体(見かけ順の、それぞれ配列番号32及び配列番号172として開示されている完全長の配列)を含む。
【表5】
【0120】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hMFE-23配列番号41(米国特許第7232888号)の可変重鎖(VH)を含む。
QVKLEQSGAEVVKPGASVKLSCKASGFNIKDSYMHWLRQGPGQRLEWIGWIDPENGDTEYAPKFQGKATFTTDTSANTAYLGLSSLRPEDTAVYYCNEGTPTGPYYFDYWGQGTLVTVSS 配列番号41
【0121】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hMFE-23配列番号42~49(米国特許第7232888号)の重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。前記実施形態は、HFR1、配列番号42及び配列番号43の2つの変異体(見かけ順の、それぞれ配列番号41及び配列番号173として開示されている完全長の配列)を含む。
【表6】
【0122】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、SM3E配列番号50(米国特許第7232888号)の可変軽鎖(VLκ)を含む。
ENVLTQSPSSMSVSVGDRVTIACSASSSVPYMHWLQQKPGKSPKLLIYLTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYSLTISSVQPEDAATYYCQQRSSYPLTFGGGTKLEIK 配列番号50
【0123】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、SM3E配列番号51~56及び38~39(米国特許第7232888号)の軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。前記実施形態は、LFR1、配列番号51及び配列番号52の2つの変異体(見かけ順の、それぞれ配列番号50及び配列番号174として開示されている完全長の配列)を含む。
【表7】
【0124】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、NP-4/アルシツモマブ配列番号57の可変軽鎖を含む。
QTVLSQSPAILSASPGEKVTMTCRASSSVTYIHWYQQKPGSSPKSWIYATSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISRVEAEDAATYYCQHWSSKPPTFGGGTKLEIK 配列番号57
【0125】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、NP-4/アルシツモマブ配列番号58~64(配列番号57として開示されている完全長配列)の軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表8】
【0126】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、NP-4/アルシツモマブ配列番号65の可変重鎖(VH)を含む。
EVKLVESGGGLVQPGGSLRLSCATSGFTFTDYYMNWVRQPPGKALEWLGFIGNKANGYTTEYSASVKGRFTISRDKSQSILYLQMNTLRAEDSATYYCTRDRGLRFYFDYWGQGTTLTVSS 配列番号65
【0127】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、NP-4配列番号66~72(配列番号65として開示されている完全長配列)の重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表9】
【0128】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7776330号に開示されているように、M5A/hT84.66配列番号73の可変軽鎖(VLκ)を含む。
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRAGESVDIFGVGFLHWYQQKPGKAPKLLIYRASNLESGVPSRFSGSGSRTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTNEDPYTFGQGTKVEIK 配列番号73
【0129】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、M5A/hT84.66配列番号74~80(米国特許第7776330号)(配列番号73として開示されている完全長配列)の軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表10】
【0130】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、M5A/hT84.66配列番号81(米国特許第7776330号)の可変重鎖(VH)を含む。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYMHWVRQAPGKGLEWVARIDPANGNSKYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAPFGYYVSDYAMAYWGQGTLVTVSS 配列番号81
【0131】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、M5A/hT84.66配列番号82~88(米国特許第7776330号)(配列番号81として開示されている完全長配列)の重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表11】
【0132】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9617345号に開示されているように、hAb2-3配列番号89の可変軽鎖(VLκ)を含む。
DIQMTQSPASLSASVGDRVTITCRASENIFSYLAWYQQKPGKSPKLLVYNTRTLAEGVPSRFSGSGSGTDFSLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIK 配列番号89
【0133】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hAb2-3配列番号90~96(米国特許第9617345号)(配列番号89として開示されている完全長配列)の軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表12】
【0134】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号97(米国特許第9617345号)の可変重鎖(VH)を含む。
EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSS 配列番号97
【0135】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hAb2-3配列番号98~104(配列番号97として開示されている完全長配列)の重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表13】
【0136】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9982063号に開示されているように、A240VL-B9VH/AMG-211配列番号105の可変軽鎖(VLκ)を含む。
QAVLTQPASLSASPGASASLTCTLRRGINVGAYSIYWYQQKPGSPPQYLLRYKSDSDKQQGSGVSSRFSASKDASANAGILLISGLQSEDEADYYCMIWHSGASAVFGGGTKLTVL 配列番号105
【0137】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、A240VL-B9VH/AMG-211配列番号106~112(米国特許第9982063号)(配列番号105として開示されている完全長配列)の軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表14】
【0138】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、B9VH配列番号113(米国特許第9982063号)の可変重鎖(VH)を含む。
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTVSSYWMHWVRQAPGKGLEWVGFIRNKANGGTTEYAASVKGRFTISRDDSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGLRFYFDYWGQGTTVTVSS 配列番号113
【0139】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号114~121(米国特許第9982063号)の重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。前記実施形態は、CDR-H2、配列番号117及び配列番号118の2つの変異体(見かけ順の、それぞれ配列番号113及び配列番号175として開示されている完全長の配列)を含む。
【表15】
【0140】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、E12VH配列番号122(米国特許第9982063号)の可変重鎖(VH)を含む。
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTVSSYWMHWVRQAPGKGLEWVGFILNKANGGTTEYAASVKGRFTISRDDSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGLRFYFDYWGQGTTVTVSS 配列番号122
【0141】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号123~129(米国特許第9982063号)(配列番号122として開示されている完全長配列)の重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表16】
【0142】
本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、PR1A3 VH配列番号130(米国特許第8642742号)の可変重鎖(VH)を含む。
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTEFGMNWVRQAPGQGLEWMGWINTKTGEATYVEEFKGRVTFTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARWDFAYYVEAMDYWGQGTTVTVSS 配列番号130
【0143】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、TROP2を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む、抗体コンストラクトを含む。
【0144】
腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子2(TROP2)は、TACSTD2遺伝子によってコードされる膜貫通糖タンパク質である(Linnenbach AJ,et al.(1993)Mol Cell Biol.13(3):1507~15;Calabrese G,et al(2001)Cytogenet Cell Genet.92(1-2):164-5)。それは、多くのがんで差次的に発現される細胞内カルシウムシグナル伝達因子である。それは、自己複製、増殖、浸潤、及び生存のために細胞にシグナル伝達する。それは、幹細胞に似た性質を有する。TROP2は多くの正常組織で発現するが、対照的に、多くのがんで過剰発現している(Ohmachi T,et al.,(2006)Clin.Cancer Res.,12(10),3057-3063;Muhlmann G,et al.,(2009)J.Clin.Pathol.,62(2),152-158;Fong D,et al.,(2008)Br. J.Cancer,99(8),1290-1295;Fong D,et al.,(2008)Mod. Pathol.,21(2),186-191;Ning S,et al.,(2013)Neurol. Sci.,34(10),1745-1750)。TROP2の過剰発現は、予後的意義がある。TROP2と相互作用するいくつかのリガンドが提案されている。TROP2は、異なる経路を介して細胞にシグナル伝達し、それは、いくつかの転写因子の複雑なネットワークによって転写的に調節されている。
【0145】
ヒトTROP2(TACSTD2:腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子2、GA733-1、EGP-1、M1S1;以下、hTROP2という)は、323アミノ酸残基からなる単回膜貫通1型細胞膜タンパク質である。一方で、免疫抵抗性に関与する細胞膜タンパク質の存在(ヒト栄養細胞及びがん細胞に共通)(Faulk W P,et al.(1978),Proc.Natl.Acad.Sci.75(4):1947-1951)が以前に示唆されており、ヒト絨毛癌細胞株における細胞膜タンパク質に対するモノクローナル抗体によって認識される抗原分子が同定され、ヒト栄養膜細胞で発現する分子の1つとしてTROP2と命名された(Lipinski M,et al.(1981),Proc.Natl.Acad.Sci.78(8),5147-5150)。この分子はまた、胃癌細胞株での免疫によって得られた、マウスモノクローナル抗体GA733(Linnenbach A J,et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.86(1),27-31)によって認識される腫瘍抗原GA733-1と称されるか、または非小細胞肺癌細胞での免疫によって得られたマウスモノクローナル抗体RS7-3G11によって認識される上皮糖タンパク質(EGP-1;Basu A,et al.,Int.J.Cancer,62(4),472-479(1995))と称される。しかしながら、1995年にTROP2遺伝子をクローニングし、これらの分子はすべて同一の分子であることが確認された(Fornaro M,et al.,(1995)Int.J.Cancer,62(5),610-618)。hTROP2のDNA配列及びアミノ酸配列は公開データベースに公開されており、例えば、受託番号NM_002353及びNP_002344(NCBI)で参照することができる。
【0146】
がんとの関連を示唆するこのような情報に対して、これまで複数の抗hTROP2抗体が確立されており、それらの抗腫瘍効果について検討されている。これらの抗体の中でも、例えば、ヌードマウス異種移植片モデルにおいてそれ自体で抗腫瘍活性を示す非コンジュゲート抗体(WO2008/144891;WO2011/145744;WO2011/155579;WO2013/077458号)、及び細胞傷害性薬剤とのADCとして抗腫瘍活性を示す抗体(WO2003/074566;WO2011/068845;WO2013/068946;米国特許第7,999,083号)が開示される。しかしながら、それらの活性の強度または適用範囲は依然として不十分であり、hTROP2を治療標的とする医学的な要求が満たされていない。
【0147】
がん細胞におけるTROP2発現は、薬剤耐性と相関している。いくつかの戦略は、抗体、抗体融合タンパク質、化学阻害剤、ナノ粒子などを含むがん細胞上のTROP2を標的としている。これらの様々な治療的処置を用いたin vitro研究及び前臨床研究により、マウスにおけるin vitro及びin vivoの両方で腫瘍細胞の増殖が有意に抑制された。臨床研究により、予後バイオマーカーとしてのTrop2の適用、及び逆耐性に対する治療標的としてのTrop2の適用の可能性が検討された。
【0148】
サシツズマブゴビテカン(TRODELVY(登録商標)、Immunomedics、IMMU-132)、トポイソメラーゼ阻害剤に結合したTROP2指向性抗体を含む抗体薬物複合体は、少なくとも2回の先行治療を受けた成人患者における転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の治療に適応される。サシツズマブゴビテカン中のTROP2抗体は、イリノテカンの活性代謝物であるSN-38にコンジュゲートされている(米国特許第2016/0297890号;WO2015/098099)。
【0149】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hRS7(ヒト化RS7)、配列番号131~133(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7238785号;米国特許第7420040号)の軽鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表17】
【0150】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hRS7(ヒト化RS7)、配列番号134~136(米国特許第7238785号;同第9797907号;同第9382329号;WO2020/142659、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる)の重鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表18】
【0151】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、AR47A6.4.2、配列番号134、137、138(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7420040号)の重鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表19】
【0152】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、ヒト化KM4097、配列番号139~141(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第2012/0237518号)の軽鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表20】
【0153】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、ヒト化KM4097、配列番号142~144(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第2012/0237518号)の重鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表21】
【0154】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hTINA1-H1L1、配列番号132、133、145(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第10,227,417号)の軽鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表22】
【0155】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hTINA1-H1L1、配列番号146~148(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第10,227,417号)の重鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表23】
【0156】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hTINA1-H1L1、配列番号149~151(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8871908号)の軽鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表24】
【0157】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hTINA1-H1L1、配列番号152~157(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8871908号)の重鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表25】
【0158】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hTINA1-H1L1の配列番号150、151、158(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8871908号)の軽鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表26】
【0159】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hTINA1-H1L1の配列番号152~154、157、159、160(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8871908号)の重鎖CDR(相補性決定領域)配列を含む。
【表27】
【0160】
本発明の一実施形態では、免疫複合体は、配列番号161~163から選択される軽鎖配列を有するシステイン変異抗体を含む。
【表28】
【0161】
本発明の一実施態様では、システイン変異、TROP2標的化抗体は、配列番号164の重鎖(HC)を含む。
QVQLQQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTNYGMNWVKQAPGQGLKWMGWINTYTGEPTYTDDFKGRFAFSLDTSVSTAYLQISSLKADDTAVYFCARGGFGSSYWYFDVWGQGSLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK 配列番号164
【0162】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体の軽鎖(LC)は、配列番号165~167から選択される。
【表29】
【0163】
本発明の一実施形態では、免疫複合体は、配列番号168の重鎖配列を有するシステイン変異抗体を含む。
【表30】
【0164】
本発明の一実施形態では、システイン変異TROP2標的化抗体の軽鎖(LC)は、配列番号169の配列を有する。
DIQLTQSPSSLSASVGDRVSITCKASQDVSIAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYTGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAVYYCQQHYITPLTFGAGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC 配列番号169
【0165】
本発明の一実施形態では、システイン変異TROP2標的化抗体の重鎖(HC)は、配列番号170の配列を有する。
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGDTFTNHYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGHTGYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREAVAGPMDVWGQGTTVTVSSACTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK 配列番号170
【0166】
いくつかの実施形態では、抗体コンストラクトは、Fcドメインを更に含む。特定の実施形態では、抗体コンストラクトは、抗体である。特定の実施形態では、抗体コンストラクトは、融合タンパク質である。抗原結合ドメインは、単鎖可変領域断片(scFv)であり得る。単鎖可変領域断片(scFv)は、合成ペプチドを介して抗体軽鎖のVドメインに結合した抗体重鎖の可変(V)ドメインを含む切断型Fab断片であり、通常の組換えDNA技術技法を使用して生成できる。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製できる。抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、抗PD-L1抗体、抗HER2抗体、または抗CEA抗体の抗原結合ドメインの1つ以上の可変領域(例えば、2つの可変領域)を含むことができ、各可変領域は、CDR1、CDR2及びCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、修飾Fc領域を含み、修飾は、1つ以上のFc受容体へのFc領域の結合を調節する。
【0167】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、TGFβ1に結合することができる、トランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)受容体またはその断片を含めることによって修飾される。例えば、受容体は、TGFβ受容体II(TGFβRII)であり得る。いくつかの実施形態では、TGFβ受容体は、ヒトTGFβ受容体である。いくつかの実施形態では、IgGは、本明細書に組み込まれる米国特許第9676863号に記載されるように、TGFβRII細胞外ドメイン(ECD)へのC末端融合を有する。「Fcリンカー」を使用し、IgGをTGFβRII細胞外ドメイン、例えば、G4S4G Fcリンカーに結合させることができる(配列番号171)。Fcリンカーは、標的への結合特異性を維持しながら、分子の適切な三次元折り畳みを可能にする、短くて可撓性のペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、TGFβ受容体のN末端は、抗体コンストラクトのFcに融合されている(Fcリンカーの有無にかかわらず)。いくつかの実施形態では、抗体コンストラクト重鎖のC末端は、TGFβ受容体に融合されている(Fcリンカーの有無にかかわらず)。いくつかの実施形態では、抗体コンストラクト重鎖のC末端リシン残基は、アラニンに変異されている。
【0168】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、グリコシル化されている。
【0169】
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、操作されたシステインがコンジュゲーションに利用可能である部位でのシステイン置換を通して抗体へのアジュバントの部位特異的コンジュゲーションを提供するが、免疫グロブリンの折り畳み及び組み立てを乱さないか、または抗原結合及びエフェクター機能を改変しない、システイン操作抗体である(Junutula,et al.,2008b Nature Biotech.,26(8):925-932;Dornan et al.(2009)Blood114(13):2721-2729;米国特許第7521541号;同第7723485号;同第2012/0121615号;WO2009/052249)。「システイン操作抗体」または「システイン操作抗体変異体」とは、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている抗体である。システイン操作抗体は、2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物(式II)上のマレイミドなどのチオール反応性求電子基に、均一な化学量論(例えば、単一の操作システイン部位を有する抗体における抗体あたり2つまでの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン部位)でコンジュゲートされ得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、システイン操作抗体は、免疫複合体を調製するために使用される。免疫複合体は、Kabat番号付けにより番号付けされているように、軽鎖上の部位、例えば149-リシン部位(LC K149C)、または重鎖上の部位、例えば122-セリン部位(HC S122C)に導入された反応性システインチオール残基を有し得る。他の実施形態では、システイン操作抗体は、重鎖(HC A118C)の118-アラニン部位(EU番号付け)に導入されたシステイン残基を有する。この部位には、配列番号付けで121、Kabat番号付けで114の番号がつけられている。他の実施形態では、システイン操作された抗体は、(i)Kabat番号付けによるG64C、R142C、K188C、L201C、T129C、S114CもしくはE105Cでの軽鎖、(ii)Kabat番号付けによるD101C、V184C、T205Cもしくは122Cでの重鎖、または(iii)他のシステイン変異抗体に導入され、及びBhakta,S.ら,(2013)“Engineering THIOMABs for Site-Specific Conjugation of Thiol-Reactive Linkers”,Laurent Ducry(ed.),Antibody-Drug Conjugates,Methods in Molecular Biology,vol.1045,pages189-203;WO2011/156328;米国特許第9000130号に記載されるようなシステイン残基を有する。
【0171】
2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンアジュバント化合物
本発明の免疫複合体は、2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンアジュバント部位を含む。本明細書に記載のアジュバント部位は、免疫応答を誘発する化合物(すなわち、免疫刺激剤)である。概ね、本明細書に記載のアジュバント部位は、TLRアゴニストである。TLRは、脊椎動物の自然免疫応答の開始に関与するI型膜貫通タンパク質である。TLRは、細菌、ウイルス及び真菌からの様々な病原体関連分子パターンを認識し、侵入する病原体に対する防御の第一線として機能する。TLRは、細胞発現とそれらが開始するシグナル伝達経路の違いにより、重複しているが異なる生物学的応答を誘発する。作動すると(例えば、自然刺激または合成TLRアゴニストによって)、TLRはシグナル伝達カスケードを開始し、アダプタータンパク質である骨髄分化一次応答遺伝子88(MyD88)を介して核因子κ-B(NF-κB)の活性化、及びIL-1受容体関連キナーゼ(IRAK)の動員をもたらす。そうしてIRAKのリン酸化は、TNF受容体関連因子6(TRAF6)の動員につながり、その結果、NF-κB阻害剤I-κBがリン酸化される。その結果、NF-κBが細胞核に入り、そのプロモーターがサイトカインなどのNF-κB結合部位を含む、遺伝子の転写を開始させる。TLRシグナル伝達の追加の調節モードには、TIRドメイン含有アダプター誘導型インターフェロン-β(TRIF)依存的なTNF受容体関連因子6(TRAF6)の誘導、ならびにTRIF及びTRAF3を介したMyD88非依存経路の活性化が含まれ、インターフェロン応答因子3(IRF3)のリン酸化をもたらす。同様に、MyD88依存経路もIRF及びIRF7を含むいくつかのIRFファミリーメンバーを活性化し、TRIF依存経路もNF-κB経路を活性化する。
【0172】
通常、本明細書に記載のアジュバント部位は、TLR7及び/またはTLR8アゴニストである。TLR7及びTLR8は、どちらも単球及び樹状細胞で発現する。ヒトでは、TLR7は形質細胞様樹状細胞(pDC)及びB細胞でも発現する。TLR8は、主に骨髄由来の細胞、すなわち単球、顆粒球及び骨髄樹状細胞で発現する。TLR7及びTLR8は、ウイルスの侵入に応答する手段として、細胞内の「外来」一本鎖RNAの存在を検出することができる。TLR8アゴニストによるTLR8発現細胞の治療は、高レベルのIL-12、IFN-γ、IL-1、TNF-α、IL-6及び他の炎症性サイトカインの産生をもたらすことができる。同様に、TLR7アゴニストによるpDCなどのTLR7発現細胞の刺激は、高レベルのIFN-α及び他の炎症性サイトカインの産生をもたらすことができる。TLR7/TLR8関与とその結果としてのサイトカイン産生は、樹状細胞及び他の抗原提示細胞を活性化し、腫瘍破壊につながる多様な自然免疫応答メカニズム及び後天的な免疫応答メカニズムを促進する。
本発明の例示的な化合物(2Am4CBza)を表1に示す。各化合物は、質量分析によって特徴付けられ、示された質量を有することが示されている。ヒトTLR7またはヒトTLR8を発現するHEK293NFKBレポーター細胞に対する活性を、実施例203に従って測定した。
【表31】
【0173】
2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物
本発明の免疫複合体は、抗体を2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物とのコンジュゲーションによって調製される。2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物は、リンカー単位L及び反応性求電子基Qに共有結合した2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン(2Am4CBza)部分を含む。リンカー単位は、免疫複合体の安定性、透過性、溶解性、ならびに他の薬物動態、安全性、及び有効性の特性に影響を及ぼす、官能基ならびにサブユニットを含む。リンカーユニットは、抗体の反応性官能基と反応する、すなわち、コンジュゲートする反応性官能基を含む。例えば、抗体のリシン側鎖アミノなどの求核基は、2Am4CBzaリンカー化合物の求電子反応性官能基と反応して、免疫複合体(IC)を形成する。また、例えば、抗体のシステインチオールは、2Am4CBzaリンカー化合物のマレイミドまたはブロモアセトアミド基と反応して、免疫複合体を形成する。
【0174】
2Am4CBzaリンカー化合物に適した反応性求電子官能基(式IIのQ)には、N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステル及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジル(スルホ-NHS)エステル(アミン反応性);カルボジイミド(アミン及びカルボキシル反応性);ヒドロキシメチルホスフィン(アミン反応性);マレイミド(チオール反応性);N-ヨードアセトアミド(チオール反応性)などのハロゲン化アセトアミド;アリールアジド(一級アミン反応性);フッ化アリールアジド(炭素-水素(C-H)挿入を介した反応性);ペンタフルオロフェニル(PFP)エステル(アミン反応性);テトラフルオロフェニル(TFP)またはスルホテトラフルオロフェニル(SulfoTFP)エステル(アミン反応性);イミドエステル(アミン反応性);イソシアネート(ヒドロキシル反応性);ビニルスルホン(チオール、アミン、及びヒドロキシル反応性);ピリジルジスルフィド(チオール反応性);及びベンゾフェノン誘導体(C-H結合挿入を介した反応性)が含まれるが、これらに限定されない。更なる試薬には、Hermanson,Bioconjugate Techniques2nd Edition,Academic Press,2008に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0175】
本発明は、免疫複合体の設計、調製及び使用に対する、制限ならびに課題に対する解決策を提供する。いくつかのリンカーは、血流中で不安定であり、それにより、標的細胞での内部移行前に許容できない量のアジュバント/薬物を放出する可能性がある(Khot,A.et al(2015)Bioanalysis7(13):1633-1648)。他のリンカーは、血流中では安定性を提供し得るが、細胞内放出の有効性に悪影響が及ぼされ得る。所望の細胞内放出を提供するリンカーは通常、血流中での安定性に乏しい。あるいは、血流安定性及び細胞内放出は通常、反比例関係にある。更に、標準的なコンジュゲーションプロセスで、抗体上に負荷されたアジュバント/薬物部分の量(すなわち、薬物負荷)、コンジュゲーション反応で形成される凝集体の量、及び得ることができる最終精製コンジュゲートの収率は、相関する。例えば、凝集体の形成は一般に、抗体にコンジュゲートされるアジュバント/薬物部分及びその誘導体の当量数に正相関する。高い薬物負荷下では、形成された凝集体は、治療用途では除去されなければならない。結果として、薬物負荷媒介凝集体形成は、免疫複合体の収率を減少させ、プロセスの規模拡大を困難にする場合がある。
【0176】
2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、式II:
【化5】
を含み、
X
2及びX
3は、それぞれ独立して、結合、C(=O)、C(=O)N(R
5)、O、N(R
5)、S、S(O)
2、及びS(O)
2N(R
5)からなる群から選択され、
R
1a、R
1b及びR
2は、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル、及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択され、
R
3は、
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O)*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O)O-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-S(O
2)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-O-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
6~C
20アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
6~C
20アリール)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
6~C
20アリール)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-NR
5-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-O-*;及び
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*からなる群から選択され、
アスタリスク*は、リンカーLの結合部位を示し、
R
5は、H、C
6~C
20アリール及びC
1~C
12アルキルからなる群から選択されるか、または2つのR
5は一緒になって、5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、
R
5aは、C
6~C
20アリール及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択され、
L-Qは、
Q-C(=O)-PEG-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
Q-C(=O)-PEG-O-;
Q-C(=O)-PEG-O-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N
+(R
6)
2-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-;
Q-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O);
Q-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-;及び
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-からなる群から選択され、
R
6は、独立して、HまたはC
1~C
6アルキルであり、
PEGは、式:-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-を有し、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、
Glucは、式:
【化6】
を有し、
PEPは、式:
【化7】
を有し、AAは、天然もしくは非天然アミノ酸側鎖から独立して選択されるか、またはAA及び隣接する窒素原子のうちの1つ以上は5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示しており、
Cycは、F、Cl、NO
2、-OH-、OCH
3及び構造:
【化8】
を有するグルクロン酸選択される1つ以上の基で任意選択で置換されている、C
6~C
20アリールジイル及びC
1~C
20ヘテロアリールジイルから選択され、
R
7は、-CH(R
8)O-、-CH
2-、-CH
2N(R
8)-及び-CH(R
8)O-C(=O)-からなる群から選択され、R
8は、H、C
1~C
6アルキル、C(=O)-C
1~C
6アルキル及び-C(=O)N(R
9)
2から選択され、R
9は、独立して、H、C
1~C
12アルキル及び-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-OHからなる群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR
9基は一緒になって、5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、
yは2~12の整数であり、
zは0または1であり、
Qは、F、Cl、NO
2及びSO
3
-から独立して選択される1つ以上の基で置換された、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル、マレイミド、ならびにフェノキシからなる群から選択され、
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール及びヘテロアリールジイルは、独立してかつ任意選択で、F、Cl、Br、I、-CN、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH=CH
2、-C-CH、-C-CCH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、-CH
2CH
2OH、-C(CH
3)
2OH、-CH(OH)CH(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CH
2OH、-CH(OH)CH
2OH、-CH
2CH
2SO
2CH
3、-CH
2OP(O)(OH)
2、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2CF
3、-CH
2CHF
2、-CH(CH
3)CN、-C(CH
3)
2CN、-CH
2CN、-CH
2NH
2、-CH
2NHSO
2CH
3、-CH
2NHCH
3、-CH
2N(CH
3)
2、-CO
2H、-COCH
3、-CO
2CH
3、-CO
2C(CH
3)
3、-COCH(OH)CH
3、-CONH
2、-CONHCH
3、-CON(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CONH
2、-NH
2、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、-NHCOCH
3、-N(CH
3)COCH
3、-NHS(O)
2CH
3、-N(CH
3)C(CH
3)
2CONH
2、-N(CH
3)CH
2CH
2S(O)
2CH
3、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH
3、-NHC(=NH)NH
2、-NHC(=O)NH
2、-NO
2、=O、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2OCH
3、-OCH
2CH
2OH、-OCH
2CH
2N(CH
3)
2、-O(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
mCO
2H、-O(CH
2CH
2O)
nH、-OCH
2F、-OCHF
2、-OCF
3、-OP(O)(OH)
2、-S(O)
2N(CH
3)
2、-SCH
3、-S(O)
2CH
3、及び-S(O)
3Hから独立して選択される1つ以上の基で置換される。
【0177】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、Ra及びR1bが、任意選択で置換されたC6~C20アリール、C2~C9ヘテロシクリル及びC1~C20ヘテロアリールからなる群から独立して選択されることを含む。
【0178】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態では、R1aが任意選択で置換されたC6~C20アリールであり、R1bがHであることを含む。.
【0179】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施態様では、X2及びX3のそれぞれが結合であり、R2及びR3が、C1~C8アルキル、-O-(C1~C12アルキル)、-(C1~C12アルキルジイル)-OR5、-(C1~C8アルキルジイル)-N(R5)CO2R5、-(C1~C12アルキル)-OC(O)N(R5)2、-O-(C1~C12アルキル)-N(R5)CO2R5、及び-O-(C1~C12アルキル)-OC(O)N(R5)2から独立して選択されることを含む。
【0180】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、X2が結合であり、R2がC1~C12アルキルであることを含む。
【0181】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、X3がOであり、R3が-(C1~C12アルキルジイル)-N(R5)-*であることを含む。
【0182】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、R3が-CH2CH2CH2NH-であることを含む。
【0183】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、Lが-C(=O)-PEG-C(=O)-であることを含む。
【0184】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、AA1及びAA2が、天然に存在するアミノ酸の側鎖から独立して選択されることを含む。
【0185】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、隣接する窒素原子を有するAA1またはAA2が5員環プロリンアミノ酸を形成することを含む。
【0186】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、AA1及びAA2が、H、-CH3、-CH(CH3)2、-CH2(C6H5)、-CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2NHC(NH)NH2、-CHCH(CH3)CH3、-CH2SO3H、及び-CH2CH2CH2NHC(O)NH2から独立して選択されることを含む。
【0187】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、AA1が-CH(CH3)2であり、AA2が-CH2CH2CH2NHC(O)NH2であることを含む。
【0188】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、Qが、
【化9】
から選択されることを含む。
【0189】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、Qが、1つ以上のFで置換されたフェノキシであることを含む。
【0190】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、Qが2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシであることを含む。
【0191】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、Qが2,3,5,6-テトラフルオロ,4-スルホネート-フェノキシであることを含む。
【0192】
式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、式IIaを有する。
【化10】
【0193】
2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー化合物の例示的な実施形態は、表2から選択される。それぞれの化合物は、質量分析によって特徴付けされ、示された質量を有することが示された。
【表32】
【表33-1】
【表33-2】
【表33-3】
【表33-4】
【表33-5】
【表33-6】
【表33-7】
【表33-8】
【0194】
免疫複合体
免疫複合体の例示的な実施形態は、1つ以上の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン(2Am4CBza)部分にリンカーによって共有結合され、式I:
【化11】
を有する抗体、またはその薬学的に許容される塩を含み、
Abは、PD-L1、HER2、CEAまたはTROP2からなる群から選択される標的に結合する抗体である、抗体であり、
pは、1~8の整数であり、
X
2及びX
3は、独立して、結合、C(=O)、C(=O)N(R
5)、O、N(R
5)、S、S(O)
2、及びS(O)
2N(R
5)からなる群から選択され、
R
1a、R
1b及びR
2は、独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル、及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択されるか、またはR
1a及びR
1bは、5員または6員のヘテロシクリル環を形成し、
R
3は、
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O)*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O)O-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-S(O
2)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-O-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
6~C
20アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
6~C
20アリール)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリルジイル)-NR
5-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリルジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-O-*;及び
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-C(=NR
5a)-N(R
5)-*からなる群から選択され、
アスタリスク*は、リンカーLの結合部位を示し、
または、R
2及びR
3は一緒になって、5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、
R
5は、独立して、H、C
6~C
20アリール、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリールジイル、C
1~C
12アルキル、及びC
1~C
12アルキルジイルからなる群から選択されるか、または2つのR
5基は一緒になって、5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、
R
5aは、C
6~C
20アリール及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択され、
Lは、
-C(=O)-PEG-;
-C(=O)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1-C
12 alkyldiyl)-C(=O)-Gluc-;
-C(=O)-PEG-O-;
-C(=O)-PEG-O-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N
+(R
6)
2-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O);
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-N(R
6)-PEG-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-;及び
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-からなる群から選択され、
R
6は、独立して、HまたはC
1~C
6アルキルであり、
PEGは、式:-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-を有し、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、
Glucは、式:
【化12】
を有し、
PEPは、式:
【化13】
を有し、AAは、天然もしくは非天然アミノ酸側鎖から独立して選択されるか、またはAA及び隣接する窒素原子のうちの1つ以上は5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示しており、
Cycは、F、Cl、NO
2、-OH-、OCH
3及び構造:
【化14】
を有するグルクロン酸から選択される1つ以上の基で任意選択で置換されている、C
6~C
20アリールジイル及びC
1~C
20ヘテロアリールジイルから選択され、
R
7は、-CH(R
8)O-、-CH
2-、-CH
2N(R
8)-及び-CH(R
8)O-C(=O)-からなる群から選択され、R
8は、H、C
1~C
6アルキル、C(=O)-C
1~C
6アルキル及び-C(=O)N(R
9)
2から選択され、R
9は、独立して、H、C
1~C
12アルキル及び-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-OHからなる群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR
9基は一緒になって、5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、
yは2~12の整数であり、
zは0または1であり、
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール及びヘテロアリールジイルは、独立してかつ任意選択で、F、Cl、Br、I、-CN、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH=CH
2、-C-CH、-C-CCH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、-CH
2CH
2OH、-C(CH
3)
2OH、-CH(OH)CH(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CH
2OH、-CH(OH)CH
2OH、-CH
2CH
2SO
2CH
3、-CH
2OP(O)(OH)
2、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2CF
3、-CH
2CHF
2、-CH(CH
3)CN、-C(CH
3)
2CN、-CH
2CN、-CH
2NH
2、-CH
2NHSO
2CH
3、-CH
2NHCH
3、-CH
2N(CH
3)
2、-CO
2H、-COCH
3、-CO
2CH
3、-CO
2C(CH
3)
3、-COCH(OH)CH
3、-CONH
2、-CONHCH
3、-CON(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CONH
2、-NH
2、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、-NHCOCH
3、-N(CH
3)COCH
3、-NHS(O)
2CH
3、-N(CH
3)C(CH
3)
2CONH
2、-N(CH
3)CH
2CH
2S(O)
2CH
3、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH
3、-NHC(=NH)NH
2、-NHC(=O)NH
2、-NO
2、=O、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2OCH
3、-OCH
2CH
2OH、-OCH
2CH
2N(CH
3)
2、-O(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
mCO
2H、-O(CH
2CH
2O)
nH、-OCH
2F、-OCHF
2、-OCF
3、-OP(O)(OH)
2、-S(O)
2N(CH
3)
2、-SCH
3、-S(O)
2CH
3、及び-S(O)
3Hから独立して選択される1つ以上の基で置換される。
【0195】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、抗体が、PD-L1に結合する抗原結合ドメインを有する、抗体コンストラクトであることを含む。
【0196】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、抗体が、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブ、またはそれらのバイオシミラーまたはバイオベターからなる群から選択されることを含む。
【0197】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、抗体が、HER2に結合する抗原結合ドメインを有する、抗体コンストラクトであることを含む。
【0198】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、抗体が、トラスツズマブ及びペルツズマブ、またはそれらのバイオシミラーまたはバイオベターからなる群から選択されることを含む。
【0199】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、抗体が、CEAに結合する抗原結合ドメインを有する、抗体コンストラクトであることを含む。
【0200】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、抗体がラベツズマブ、またはそのバイオシミラーもしくはバイオベターであることを含む。
【0201】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、抗体が、TROP2に結合する抗原結合ドメインを有する、抗体コンストラクトであることを含む。
【0202】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、Trop2抗体がモノクローナル抗体であることを含む。
【0203】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、R1a及びR1bが、任意選択で置換されたC6~C20アリール、C2~C9ヘテロシクリル及びC1~C20ヘテロアリールからなる群から独立して選択されることを含む。
【0204】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態では、R1aが任意選択で置換されたC6~C20アリールであり、R1bがHであることを含む。.
【0205】
式Iの免疫複合体の例示的な実施態様では、X2及びX3のそれぞれが結合であり、R2及びR3が、C1~C8アルキル、-O-(C1~C12アルキル)、-(C1~C12アルキルジイル)-OR5、-(C1~C8アルキルジイル)-N(R5)CO2R5、-(C1~C12アルキル)-OC(O)N(R5)2、-O-(C1~C12アルキル)-N(R5)CO2R5、及び-O-(C1~C12アルキル)-OC(O)N(R5)2から独立して選択されることを含む。
【0206】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、X2が結合であり、R2がC1~C12アルキルであることを含む。
【0207】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、X3がOであり、R3が-(C1~C12アルキルジイル)-N(R5)-*であることを含む。
【0208】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、R3が-CH2CH2CH2NH-であることを含む。
【0209】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、Lが-C(=O)-PEG-C(=O)-であることを含む。
【0210】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、LがPEGを含み、nが10であり、mが1であることを含む。
【0211】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、AA1及びAA2が、天然に存在するアミノ酸の側鎖から独立して選択されることを含む。
【0212】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、隣接する窒素原子を有するAA1またはAA2が5員環プロリンアミノ酸を形成することを含む。
【0213】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、AA1及びAA2が、H、-CH3、-CH(CH3)2、-CH2(C6H5)、-CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2NHC(NH)NH2、-CHCH(CH3)CH3、-CH2SO3H、及び-CH2CH2CH2NHC(O)NH2から独立して選択されることを含む。
【0214】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、AA1が-CH(CH3)2であり、AA2が-CH2CH2CH2NHC(O)NH2であることを含む。
【0215】
免疫複合体の例示的な実施形態は、式Iaを有する。
【化15】
【0216】
式Iaの免疫複合体の例示的な実施形態は、R1aが、任意選択で置換されたC6~C20アリール、C2~C9ヘテロシクリル、及びC1~C20ヘテロアリールから選択された群であることを含む。
【0217】
式Iaの免疫複合体の例示的な実施形態は、R1aがピリミジニルまたはピリジルであることを含む。
【0218】
式Iaの免疫複合体の例示的な実施形態は、X2が結合であり、R2がC1~C12アルキルであることを含む。
【0219】
式Iaの免疫複合体の例示的な実施形態は、R3が-(C1~C12アルキルジイル)-N(R5)-*であることを含む。
【0220】
式Iaの免疫複合体の例示的な実施形態は、X
3-R
3-Lが、
【化16】
からなる群から選択されることを含み、波線はNへの結合点を示す。
【0221】
本発明は、式Iの実施形態のすべての合理的かつ操作可能な組み合わせ、及び特徴の並べ替えを含む。
【0222】
特定の実施形態では、本発明の免疫複合体化合物は、免疫刺激活性を有するものを含む。本発明の抗体薬物複合体は、有効用量の2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン剤を腫瘍組織に選択的に送達させ、それによって、非複合型2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンと比較して、治療指数(「治療域」)を増加させながら、より高い選択性(すなわち、より低い効果的用量)を達成し得る。
【0223】
薬物負荷は、式Iの免疫複合体内の1抗体あたりの2Am4CBza部分の数である、pによって表される。薬物(2Am4CBza)負荷は、1抗体あたり1~約8個の薬物部分(D)の範囲であり得る。式Iの免疫複合体は、1~約8個の範囲の薬物部分にコンジュゲートされた抗体の混合物または集団を含む。いくつかの実施形態では、抗体にコンジュゲートされ得る薬物部分の数は、リシン及びシステインなどの反応性または利用可能なアミノ酸側鎖残基の数によって制限される。いくつかの実施形態では、遊離システイン残基は、本明細書に記載される方法によって抗体アミノ酸配列中に導入される。そのような態様では、pは、1、2、3、4、5、6、7または8、及びその範囲、例えば、1~8または2~5であり得る。そのような態様では、p及びnは等しい(すなわち、p=n=1、2、3、4、5、6、7もしくは8、またはその間のいくつかの範囲)。式Iの例示的な抗体薬物複合体には、1、2、3または4個の操作されたシステインアミノ酸を有する抗体が含まれるが、これらに限定されない(Lyon,R.et al.(2012)Methods in Enzym.502:123-138)。いくつかの実施形態では、1個以上の遊離システイン残基が、遺伝子操作を使用することなく、鎖内ジスルフィド結合を形成する抗体にすでに存在しており、その場合、既存の遊離システイン残基を使用して、抗体を薬物にコンジュゲートし得る。。いくつかの実施形態では、抗体は、1個以上の遊離システイン残基を生成するために、抗体のコンジュゲーション前に還元条件に曝露される。
【0224】
いくつかの免疫複合体について、pは、抗体上の結合部位の数によって制限され得る。例えば、本明細書に記載される特定の例示的な実施形態におけるように、結合がシステインチオールである場合、抗体は、1個のみもしくは限定された数のシステインチオール基を有し得るか、または1個のみもしくは限定された数の反応性が十分なチオール基を有し得、それに、薬物が結合され得る。他の実施形態では、抗体中の1つ以上のリシンアミノ基が利用可能であり、式IIの2Am4CBzaリンカー化合物とのコンジュゲーションに対して反応性であり得る。特定の実施形態では、より高い薬物負荷、例えば、5超のpは、特定の抗体薬物複合体において凝集、不溶性、毒性、または細胞透過性の喪失を引き起こし得る。特定の実施形態では、免疫複合体の平均薬物負荷は、1~約8、約2~約6または約3~約5の範囲である。特定の実施形態では、抗体は、リシンまたはシステインなどの反応性求核基を明らかにするために変性条件に供される。
【0225】
免疫複合体の負荷(薬物/抗体比)は、異なる方法で、ならびに例えば、(i)抗体と比較してモル過剰の2Am4CBzaリンカー中間体化合物を制限すること、(ii)コンジュゲーション反応時間または温度を制限すること、及び(iii)最適化された抗体反応性のための部分的または制限的還元変性条件によって制御され得る。
【0226】
抗体の2つ以上の求核基が薬物と反応する場合、結果として生じる産生物は、抗体に結合した1つ以上の薬物部分が分布する抗体薬物複合体化合物の混合物であることを理解されたい。1抗体あたりの平均数薬物は、抗体に特異的及び薬物に特異的である、二重ELISA抗体アッセイによって混合物から算出され得る。個々の免疫複合体分子は、質量分析法によって混合物中で特定され、HPCL、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、分離されてもよい(例えば、McDonagh et al.(2006)Prot.Engr.Design&Selection19(7):299-307;Hamblett et al.(2004)Clin.Cancer Res.10:7063-7070;Hamblett,K.J.,et al.“Effect of drug loading on the pharmacology,pharmacokinetics,and toxicity of an anti-CD30 antibody-drug conjugate,”AbstractNo.624,American Association for Cancer Research,2004Annual Meeting,March27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume45,March2004;Alley,S.C.,et al.“Controlling the location of drug attachment in antibody-drug conjugates,”AbstractNo.627,American Association for Cancer Research,2004Annual Meeting,March27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume45,March2004を参照されたい)。特定の実施形態では、単一の負荷値を有する均一の免疫複合体は、電気泳動またはクロマトグラフィーによって複合混合物から単離されてもよい。
【0227】
式Iの免疫複合体の例示的な実施形態は、表3a及び表3bの免疫複合体から選択される。がん細胞とcDC富化された初代細胞単離株の共培養において、表3a及び表3bの特定の免疫複合体は、がんに免疫応答を開始させることに関連するサイトカインIL-12p70の分泌を誘導する。クロストリジウム・ディフィシル毒素Bを標的とし、ベズロトックス(ベズロトクマブ)IC-28及びIC-33を含む免疫複合体を、アイソタイプの非腫瘍結合対照として検討した。in vitroでの免疫複合体活性の評価は、実施例203の方法に従って行った。
【表34】
【表35-1】
【表35-2】
【0228】
免疫複合体の医薬組成物
本発明は、本明細書に記載の複数の免疫複合体及び任意選択でそのための担体、例えば、薬学的または薬理学的に許容される担体を含む、組成物、例えば、薬学的または薬理学的に許容される組成物または製剤を提供する。免疫複合体は、組成物が同じであっても異なっていてもよく、すなわち、組成物は、抗体コンストラクト上の同じ位置に連結された同じ数のアジュバントを有する免疫複合体を含み得る、及び/または抗体コンストラクトの異なる位置に連結された同じ数の2Am4CBzaアジュバントを有する、抗体コンストラクトの同じ位置に連結された異なる数のアジュバントを有する、もしくは抗体コンストラクトの異なる位置に連結した異なる数のアジュバントを有する免疫複合体を含み得る。
【0229】
例示的な実施形態では、免疫複合体化合物を含む組成物は、免疫複合体化合物の混合物を含み、免疫複合体化合物の混合物中の1抗体当たりの平均薬物(2Am4CBza)負荷は、約2~約5である。
【0230】
本発明の免疫複合体の組成物は、約0.4~約10のアジュバント対抗体コンストラクトの平均比を有することができる。当業者であれば、抗体コンストラクトにコンジュゲートした2Am4CBzaアジュバントの数が、免疫複合体から本発明の複数の免疫複合体を含む組成物中の免疫複合体まで変化し得て、したがって、アジュバント対抗体コンストラクト(例えば、抗体)比を平均として測定できることを認識するであろう。これは薬物対抗体の比率(DAR)と呼ばれ得る。アジュバント対抗体コンストラクト(例えば、抗体)の比率は、任意の適切な手段によって評価することができ、その多くは当技術分野で公知である。
【0231】
コンジュゲーション反応から免疫複合体を調製する際の1抗体当たりのアジュバント部分の平均数(DAR)は、質量分析法、ELISAアッセイ、及びHPLCなどの従来の手段によって特徴付けることができる。pの観点から組成物中の免疫複合体の定量的分布もまた、決定することができる。いくつかの事例で、pが特定の値である均一の免疫複合体の、他の薬物負荷を有する免疫複合体からの分離、精製、及び特性評価は、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって達成され得る。
【0232】
いくつかの実施形態では、組成物は更に、1つ以上の薬学的にまたは薬理学的に許容される賦形剤を含む。例えば、本発明の免疫複合体は、IV投与または体腔もしくは臓器の内腔への投与などの非経口投与用に調製されることができる。あるいは、免疫複合体を腫瘍内に注射することができる。注射用の組成物は、一般に、薬学的に許容される担体に溶解された免疫複合体の溶液を含むであろう。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、及び塩化ナトリウムなどの1つ以上の塩の等張液、例えばリンゲル溶液がある。更に、減菌された固定油を、溶媒または懸濁媒質として従来どおり使用することができる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を使用できる。更に、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製において同様に使用され得る。これらの組成物は、望ましくは滅菌されており、一般に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌され得る。組成物は、生理学的条件に近似させるために必要とされる、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤などの薬学的に許容される補助物質、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有してもよい。
【0233】
組成物は、任意の適切な濃度の免疫複合体を含むことができる。組成物中の免疫複合体の濃度は大きく変動する可能性があり、選択された特定の投与様式及び患者のニーズに従って、主に流体量、粘度、体重などに基づいて選択される。特定の実施形態では、注射用の溶液製剤中の免疫複合体の濃度は、約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である。
【0234】
免疫複合体によるがんを治療する方法
本発明は、がんを治療するための方法を提供する。前記方法は、治療上有効な量の本明細書に記載の免疫複合体(例えば、本明細書に記載の組成物)を、それを必要とする対象、例えば、がんを有し、がんの治療を必要とする対象に投与することを含む。前記方法は、表3から選択される治療上有効な量の免疫複合体(IC)を投与することを含む。
【0235】
本発明の免疫複合体は、様々な過剰増殖性疾患または障害、例えば、腫瘍抗原の過剰発現を特徴とするものを治療するために用いることができる。例示的な過剰増殖性障害としては、良性または悪性の固形腫瘍、ならびに血液疾患(白血病及びリンパ系腫瘍など)が挙げられる。
別の態様では、薬物として使用するための免疫複合体が提供される。特定の実施形態では、本発明は、有効量の免疫複合体を個体に投与することを含む、個体を治療する方法で使用するための免疫複合体を提供する。そのような一実施形態では、この方法は、例えば、本明細書に記載される、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。
【0236】
更なる態様では、本発明は、薬物の製造または調製での、免疫複合体の使用を提供する。一実施形態では、薬物は、がんの治療のためのものであり、その方法は、がんを有する個体に有効量の薬物を投与することを含む。そのような一実施形態では、この方法は、例えば、本明細書に記載される、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。
【0237】
がん腫とは、上皮組織から生じる悪性腫瘍である。上皮細胞は、体の外側表面を覆い、内部空洞を覆い、かつ腺組織の内層を形成する。がん腫の例として、腺癌(腺(分泌)細胞、例えば、乳、膵臓、肺、前立腺、胃、胃食道接合部及び結腸で始まる癌);副腎皮質癌;肝細胞癌;腎細胞癌;卵巣癌;上皮内癌;腺管癌;乳癌;基底細胞癌;扁平上皮癌;移行細胞癌;結腸癌;鼻咽頭癌;多房嚢腫性腎細胞癌;燕麦細胞癌;大細胞肺癌;小細胞肺癌;非小細胞肺癌などを含むが、これらに限定されない。がん腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(通常、二次転移として)、肺、乳、皮膚などに見られることがある。いくつかの実施形態では、非小細胞肺癌を治療するための方法は、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベター)を含む免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、乳癌を治療するための方法は、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベター)を含む免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、トリプルネガティブ乳癌を治療するための方法は、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベター)を含む免疫複合体を投与することを含む。
【0238】
軟部組織腫瘍は、結合組織に由来する非常に多様なまれな腫瘍の群である。軟部腫瘍の例としては、胞状軟部肉腫、類血管腫型線維性組織球腫、軟骨粘液線維腫、骨格軟骨肉腫、骨外性粘液型軟骨肉腫、明細胞肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫、子宮内膜間質腫瘍、ユーイング肉腫、線維腫症(デスモイド)、乳児性線維腫腫、消化管間質腫瘍、骨巨細胞腫、腱鞘巨細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、子宮筋腫、平滑細胞腫、脂肪芽細胞腫、典型的な脂肪腫、紡錘細胞または多形脂肪腫、異型脂肪腫、軟骨様脂肪腫、高分化脂肪肉腫、粘液様/円形細胞脂肪肉腫、多形脂肪肉腫、粘液型悪性線維性組織球腫、高悪性線維組織球腫、粘液線維肉腫、悪性末梢神経鞘腫、中皮腫、神経芽細胞腫、骨軟骨腫、骨肉腫、原始神経外胚葉性腫瘍、胞巣状横紋筋肉腫、胎児性横紋筋肉腫、良性または悪性シュワン腫、滑膜肉腫、エヴァンズ腫瘍、結節性筋膜炎、デスモイド型線維腫症、孤立性線維性腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、腱鞘巨細胞腫(TGCT)、色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)、線維性骨異形成症、粘液線維肉腫、滑膜肉腫、悪性末梢神経鞘腫、神経線維腫、軟組織の多形腺腫、ならびに線維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞及び神経鞘細胞に由来する腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0239】
肉腫は、間葉起源の細胞で、例えば骨で、または軟骨、脂肪、筋肉、血管、線維組織、もしくは他の結合組織もしくは支持組織を含む体の軟部組織で生じる、まれなタイプのがんである。異なる種類の肉腫は、がんが形成する場所に基づく。例えば、骨肉腫は骨に形成し、脂肪肉腫は脂肪に形成し、横紋筋肉腫は筋肉に形成する。肉腫の例は、アスキン腫瘍;ブドウ状肉腫;軟骨肉腫;ユーイング肉腫;悪性血管内皮腫;悪性神経鞘腫;骨肉腫;及び軟部組織肉腫(例えば、胞状軟部肉腫;血管肉腫;葉状嚢肉腫;隆起性皮膚線維肉腫(DFSP);類腱腫;線維形成性小円形細胞腫;類上皮肉腫;骨外性軟骨肉腫;骨外性骨肉腫;線維肉腫;胃腸間質腫瘍(GIST);血管外皮細胞腫;血管肉腫(より一般的には「血管肉腫」と呼ばれる);カポジ肉腫;平滑筋肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST);神経芽肉腫;滑膜肉腫;及び未分化多形性肉腫)を含むが、これらに限定されない。
【0240】
奇形腫は、例えば、髪、筋肉、及び骨を含むいくつかの異なる種類の組織を含有し得る(例えば、3つの胚葉:内胚葉、中胚葉、及び外胚葉のうちのいずれか及び/またはすべてに由来する組織を含むことができる)生殖細胞腫瘍の一種である。奇形腫は、女性においては卵巣に、男性においては精巣に、及び小児においては尾骨に、最もよく発生する。
【0241】
黒色腫は、メラノサイト(色素メラニンを作る細胞)で発生するがんの形態である。黒色腫は、ほくろ(皮膚黒色腫)において始まる場合があるが、眼の中または腸の中などの他の色素組織でも始まる場合がある。
【0242】
メルケル細胞癌はまれなタイプの皮膚癌であり、通常、顔、頭もしくは首に肉色または青みがかった赤色の結節として現れる。メルケル細胞癌は、皮膚の神経内分泌癌とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、メルケル細胞癌を治療するための方法は、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベター)を含む免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、メルケル細胞癌は、投与が行われるときに転移している。
【0243】
白血病は、骨髄などの血液形成組織から発生し、多数の異常血球の生成及び血流への侵入を引き起こすがん細胞である。例えば、白血病は、通常であれば血流中で成熟する骨髄由来の細胞で発生する可能性がある。白血病は、病気の発生と進行の速さ(例、急性と慢性)、及び影響を受ける白血球の種類(例、骨髄性とリンパ性)にちなんで名付けられる。骨髄性白血病は、骨髄性白血病または骨髄芽球性白血病とも呼ばれる。リリンパ性白血病は、リンパ芽球性白血病またはリンパ球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病細胞はリンパ節に集まり、腫れることがある。白血病の例としては、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)を含むが、これらに限定されない。
【0244】
リンパ腫は、免疫系の細胞から始まるがんである。例えば、リンパ腫は、通常であればリンパ系で成熟する骨髄由来細胞に発生する可能性がある。リンパ腫には2つの基本的なカテゴリーがある。リンパ腫の1つのカテゴリーはホジキンリンパ腫(HL)であり、リードステルンベルク細胞と呼ばれる種類の細胞の存在によって特徴付けられる。現在、HLには6つの認識されている種類がある。ホジキンリンパ腫の例としては、結節性硬化型古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、混合細胞型CHL、リンパ球減少型CHL、リンパ球豊富型CHL、及び結節性リンパ球優位型HLが挙げられる。
【0245】
リンパ腫の他のカテゴリーは非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、これには免疫系細胞のがんの大規模で多様な群が含まれる。非ホジキンリンパ腫は更に、緩徐な(成長の遅い)経過をたどる癌と、攻撃的な(成長の速い)経過をたどる癌に分けることができる。現在、NHLには61つの認識されている種類がある。非ホジキンリンパ腫の例は、AIDS関連リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血液免疫芽細胞性リンパ腫、芽細胞性NK細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫(小型非開裂細胞性リンパ腫)、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、肝脾ガンマ・デルタT細胞リンパ腫、T細胞白血病、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、鼻T細胞リンパ腫、小児リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、形質転換リンパ腫、処置関連T細胞リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含むが、これらに限定されない。
【0246】
脳腫瘍には、脳組織の癌が含まれる。脳腫瘍の例には、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫など)、髄膜腫、下垂体腺腫、及び前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽細胞腫)が含まれるが、これらに限定されない。
【0247】
本発明の免疫複合体は、治療にて、単独で、または他の薬剤と組み合わせてのいずれかで使用することができる。例えば、本発明の免疫複合体は、化学療法剤などの少なくとも1つの追加の治療剤と共に同時投与され得る。このような併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別個の製剤中に含まれる)、及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、免疫複合体の投与は、追加の治療剤及び/またはアジュバントの投与の前、それと同時、及び/またはその後に生じ得る。免疫複合体はまた、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0248】
本発明の免疫複合体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、ならびに局所療法のために所望される場合、病変内投与を含む、任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短期であるか、または長期であるかに部分的に依存して、任意の適した経路、例えば、静脈内または皮下注入などの注入によることができる。限定されないが、様々な時点での単回または複数回投与、ボーラス投与、及びパルス点滴を含む様々な投薬スケジュールが本明細書において企図される。
【0249】
アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、及びそれらのバイオベターは、がん、特に乳癌、特にトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質の検査で陰性)乳癌、膀胱癌、及びメルケル細胞癌の治療に有用であることが知られている。本明細書に記載の免疫複合体は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオ類似体、及びそれらのバイオベターとして同じ種類のがん、特に乳癌、特にトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質の検査で陰性)乳癌、膀胱癌、及びメルケル細胞癌の治療に使用できる。
【0250】
免疫複合体は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、及びそれらのバイオベターに利用される投薬レジメンなどの任意の適切な投薬レジメンを使用して、治療上有効な量でそれを必要とする対象に投与される。例えば、この方法は、約100ng/kg~約50mg/kgの用量を対象に提供するために免疫複合体を投与することを含むことができる。免疫複合体の用量は、約5mg/kg~約50mg/kg、約10μg/kg~約5mg/kg、または約100μg/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。免疫複合体の用量は、約100、200、300、400、または500μg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、特定の複合体、及び治療される癌の種類と重症度に応じて、これらの範囲外になることもある。投与の頻度は、1週当たり単回投与から複数回投与まで、またはより頻繁に及び得る。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、月に約1回から週に約5回まで投与される。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、週に1回投与される。
【0251】
別の態様では、本発明は、がんを防ぐための方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の免疫複合体を(例えば、上記のような組成物として)対象に投与することを含む。特定の実施形態では、対象は、予防されるべき特定のがんに感受性である。例えば、この方法は、約100ng/kg~約50mg/kgの用量を対象に提供するために免疫複合体を投与することを含むことができる。免疫複合体の用量は、約5mg/kg~約50mg/kg、約10μg/kg~約5mg/kg、または約100μg/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。免疫複合体の用量は、約100、200、300、400、または500μg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、特定の複合体、及び治療される癌の種類と重症度に応じて、これらの範囲外になることもある。投与の頻度は、1週当たり単回投与から複数回投与まで、またはより頻繁に及び得る。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、月に約1回から週に約5回まで投与される。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、週に1回投与される。
【0252】
本発明のいくつかの実施形態は、上記のようながんを治療するための方法を提供し、そこでがんは乳癌である。乳癌は乳房の様々な領域から生じる可能性があり、様々な種類の乳癌が特性評価されている。例えば、本発明の免疫複合体は、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌(例えば、乳房の管状癌、髄様癌、粘液癌、乳頭癌、または篩状癌);非浸潤性小葉癌;浸潤性小葉癌;炎症性乳癌;トリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質の検査で陰性)乳癌などの他の形態の乳癌を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、乳癌を治療するための方法は、HER2に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベター)、及びPD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベター)を含む免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、結腸癌、肺癌、腎癌、膵臓癌、胃癌、及び食道癌を治療するための方法は、CEA、またはCEAを過剰発現する腫瘍に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、ラベツズマブ、バイオシミラー、またはそのバイオベター)を含む免疫複合体を投与することを含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、がんは、TLR7及び/またはTLR8によって誘発される炎症誘発性応答に感受性である。
【実施例】
【0254】
2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン化合物(2Am4CBza)及び中間体の調製
実施例1 4-[3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノイルオキシ]-2,3,5,6-テトラフルオロ-ベンゼンスルホン酸、2Am4CBza-L-1の合成
【化17】
エチル2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキシラート、2Am4CBza-1bの調製
DMF(20mL)中のエチル2-アミノ-8-ブロモ-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキシラート、2Am4CBza-1a(2g、6.47mmol(ミリモル)、1当量)及びアニリン(3.01g、32.3mmol、2.95mL、5当量)の溶液に、Pd(OAc)
2(218mg、970umol(マイクロモル)、0.15当量)、DPPF(610mg、1.10mmol、0.17当量)及びTEA(3.27g、32.3mmol、4.50mL、5当量)をN
2下にて添加した。懸濁液を真空下で脱気し、一酸化炭素ガス(CO)で数回パージした。混合物を、CO(50psi)下にて80℃で12時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をH
2O(60mL)で希釈し、EtOAc(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL×3)で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=1/0~0/1)、次いで(SiO
2、EtOAc/MeOH=1/0~10/1)で精製し、2Am4CBza-1b(0.82g、2.35mmol、収率36.28%)を黄色固体として得た。
【0255】
2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボン酸、2Am4CBza-1cの調製
EtOH(8mL)中の2Am4CBza-1b(810mg、2.32mmol、1当量)の溶液に、H2O(2mL)中のLiOH.H2O(486.40mg、11.59mmol、5当量)の溶液を添加した。混合物を20℃にて3時間撹拌し、次に1N HClでpH=6~7に調整し、真空下で濃縮した。残渣を分取HPLC(カラム:Phenomenex luna C18 250*50mm*10um;移動相:[水(0.05%HCl)-ACN];B%:5%~35%、10分)で精製し、2Am4CBza-1c(180mg、560.17umol、収率24.16%)を白色固体として得た。1H NMR(DMSO-d4,400MHz)δ12.43(s,1H),10.49(s,1H),10.09(s,1H),9.07(br s,1H),7.99(d,J=8.4Hz,1H),7.96-7.93(m,2H),7.87-7.83(m,1H),7.79(d,J=7.6Hz,2H),7.38(t,J=7.6Hz,2H),7.16-7.11(m,1H),3.52(s,2H).
【0256】
tert-ブチルN-[2-[[2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチル]カルバメート、2Am4CBza-1の調製
DCM(3mL)及びDMA(1.5mL)中の2Am4CBza-1c(100mg、311umol、1当量)及びtert-ブチルN-[2-(プロピルアミノオキシ)エチル]カルバメート(88.3mg、405umol、1.3当量)の混合物に、EDCI(238mg、1.24mmol、4当量)を25℃でN2にて添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、DCMを除去した。残渣をH2O(10mL)で希釈し、次に混合物のpHをNaHCO3水溶液で約8に調節し、酢酸エチル(20mL*3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。残渣を分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um、移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:15%~45%,8分)で精製し、2Am4CBza-1(80mg、153umol、収率49.28%)を白色固体として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ8.03-7.93(m,2H),7.77(d,J=8.0Hz,1H),7.74-7.67(m,2H),7.52(s,1H),7.39(t,J=8.0Hz,2H),7.24-7.14(m,1H),3.95(t,J=5.2Hz,2H),3.76(t,J=7.2Hz,2H),3.43(s,2H),3.27(t,J=5.2Hz,2H),1.78(sxt,J=7.2Hz,2H),1.37(s,9H),1.00(t,J=7.2Hz,3H).
【0257】
2-アミノ-N4-(2-アミノエトキシ)-N8-フェニル-N4-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4,8-ジカルボキサミド、2Am4CBza-L-1aの調製
EtOAc(1mL)中の2Am4CBza-1(80mg、153umol、1当量)の混合物に、HCl/EtOAc(4M、3mL、78.0当量)を25℃で一度に添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、2Am4CBza-L-1a(70mg、152.85umol、収率99.66%、HCl)を白色固体として得た。
【0258】
tert-ブチル3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシエトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノアート、PNC-PEG10-CO2tBuの調製
【化18】
DCM(20mL)中のtert-ブチル3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノアート、HO-PEG10-CO2tBu(1g、1.70mmol、1.0当量)及び(4-ニトロフェニル)カルボノクロリダート(378mg、1.87mmol、1.1当量)の混合物に、ピリジン(202mg、2.56mmol、206uL、1.5当量)を0℃で添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。混合物のpHを1M HClで約4に調節した。残渣を氷水(w/w=1/1)(100mL)に注ぎ入れ、10分間撹拌した。水相をDCM(50mL×3)で抽出した。合わせた有機相を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(カラム高さ:250mm、直径:100mm、100-200メッシュシリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル=1/0:0/1、酢酸エチル/メタノール=1/0:2/1)で精製し、PNC-PEG10-CO2tBu(650mg、865umol、収率50.73%)を無色の油状物として得た。
1H NMR(MeOD,400MHz)δ8.38-8.27(m,2H),7.54-7.45(m,2H),4.47-4.42(m,2H),3.80-3.53(m,40H),2.53-2.44(m,2H),1.50-1.41(m,9H).
【0259】
tert-ブチル3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノアート、2Am4CBza-L-1bの調製
DMF(2.5mL)中の2Am4CBza-L-1a(70mg、153umol、1当量、HCl)及びPNC-PEG10-CO2tBu(126mg、168umol、1.1当量)の混合物に、Et3N(38.7mg、382umol、2.5当量)を25℃でN2下で添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を濾過し、分取-HPLC(カラム:Phenomenex luna C18 100*40mm*5um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:15%-55%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-1b(70mg、67.7umol、収率44.28%)を無色の油状物として得た。
【0260】
3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパン酸、2Am4CBza-L-1cの調製
CH3CN(1mL)及びH2O(1mL)中の2Am4CBza-L-1b(70mg、67.7umol、1当量)の混合物に、TFA(77.2mg、677umol、10当量)を25℃でN2下にて添加し、次に80℃で2時間撹拌した。混合物のpHをNaHCO3水溶液で0℃にて約5に調節し、次にDCM/i-PrOH=3/1(10mL*3)で抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮し、2Am4CBza-L-1c(65mg、66.46umol、収率98.18%)を淡黄色の油状物として得た。
【0261】
2Am4CBza-L-1の調製
DCM(2mL)及びDMA(0.5mL)中の2Am4CBza-L-1c(60mg、61.34umol、1当量)及びナトリウム;2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-ベンゼンスルホナート、STP(49.3mg、184umol、3当量)の混合物に、EDCI(35.3mg、184umol(マイクロモル)、3当量)を25℃でN2下にて添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、次に分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:15%~40%、8分)で精製して、2Am4CBza-L-1(40mg、33.16umol、収率54.06%)を白色固体として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ8.06-7.95(m,2H),7.73(dd,J=5.0,7.6Hz,3H),7.49-7.43(m,1H),7.45(s,1H),7.38(t,J=8.0Hz,2H),7.23-7.13(m,1H),3.98(t,J=5.0Hz,2H),3.85(t,J=5.6Hz,2H),3.80(br d,J=4.4Hz,2H),3.75(t,J=7.2Hz,2H),3.66-3.54(m,38H),3.51-3.42(m,4H),2.96(t,J=6.0Hz,2H),1.77(sxt,J=7.2Hz,2H),1.00(t,J=7.2Hz,3H).HPLC:99.47%(220nm),99.31%(254nm).LC/MS[M+H]1206.4(計算値);LC/MS[M+H]1206.7(測定値).LC/MS[M+H]1206.4(計算値);LC/MS[M+H]1206.7(測定値).
【0262】
実施例4 4-[3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-[(3S)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノイルオキシ]-2,3,5,6-テトラフルオロ-ベンゼンスルホン酸、2Am4CBza-L-4の合成
【化19-1】
【化19-2】
tert-ブチル(3S)-3-アニリノピペラジン-1-カルボキシラート、2Am4CBza-L-4bの調製
トルエン(10.0mL)中のtert-ブチル(3S)-3-アミノピペラジン-1-カルボキシラート、2Am4CBza-L-4a(1.00g、4.99mmol、1.0当量)及びブロモベンゼン(780mg、4.99mmol、526uL、1.0当量)の溶液に、ナトリウムtert-ブトキシド、NaOtBu(580mg、5.99mmol、1.2当量)、2-(2-ジシクロヘキシルホスファニルフェニル)-N,N-ジメチル-アニリン(140mg、349umol、0.07当量)、及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、Pd
2(dba)
3、CAS登録番号51364-51-3(230mg、249umol、0.05当量)を20℃でN
2下にて添加した。混合物を100℃で24時間撹拌した。混合物を水(30mL)で希釈し、EtOAc(30mL×3)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO;12g SepaFlashシリカフラッシュカラム、0~50%酢酸エチル/石油エーテル勾配の溶離液:45mL/分)で精製し、2Am4CBza-L-4b(1.2g、4.34mmol、収率86.9%)を淡黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl
3,400MHz)δ7.18(dd,J=7.6,8.4Hz,2H),6.77-6.60(m,3H),4.09-3.95(m,1H),3.83-3.62(m,2H),3.45-3.33(m,1H),3.09(br d,J=9.6Hz,1H),2.98-2.78(m,1H),2.04-1.94(m,1H),1.80-1.71(m,1H),1.65-1.53(m,2H),1.46(s,9H).LC/MS[M+H]277.2(計算値);LC/MS[M+H]277.2(測定値).
【0263】
(3S)-N-フェニルピペリジン-3-アミン、2Am4CBza-L-4cの調製
EtOAc(5.00mL)中の2Am4CBza-L-4b(1.20g、4.34mmol、1.0当量)の溶液に、HCl/EtOAc(4M、18.0mL、17.0当量)を添加した。混合物を20℃で1時間撹拌した。混合物を濃縮し、2Am4CBza-L-4c(900mg、3.61mmol、収率83.1%、2HCl)を白色固体として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ7.59-7.52(m,2H),7.49-7.41(m,3H),3.94(tt,J=4.0,10.8Hz,1H),3.62-3.54(m,1H),3.40(d,J=12.0Hz,1H),3.20(t,J=11.6Hz,1H),3.04(dt,J=3.2,12.4Hz,1H),2.26-2.07(m,2H),1.93-1.78(m,2H).LC/MS[M+H]177.2(計算値);LC/MS[M+H]177.2(測定値).
【0264】
2Am4CBza-L-4eの調製
DMF(1.00mL)中の2-アミノ-4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エトキシ-プロピル-カルバモイル]-3H-1-ベンゾアゼピン-8-カルボン酸、2Am4CBza-L-4d(250mg、559umol、1.0当量)の溶液に、HATU(210mg、559umol、1.0当量)、DIEA(290mg、2.24mmol、390uL、4.0当量)及び(3S)-N-フェニルピペリジン-3-アミン、2Am4CBza-L-4c(130mg、603umol、1.08当量、HCl)を添加し、次に0℃で1時間撹拌した。混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:5%~50%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-4e(160mg、222umol、収率39.7%、TFA)を白色固体として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ7.76-7.38(m,3H),7.36-7.15(m,2H),7.11-6.90(m,2H),6.63-6.42(m,2H),3.95-3.92(m,2H),3.89-3.61(m,4H),3.60-3.32(m,4H),3.28-3.23(m,2H),3.08-2.96(m,1H),2.20-1.94(m,2H),1.84-1.67(m,4H),1.38(s,9H),0.99(t,J=7.6Hz,3H).LC/MS[M+H]605.3(計算値);LC/MS[M+H]605.3(測定値).
【0265】
2-アミノ-N-(2-アミノエトキシ)-8-[(3S)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-N-プロピル-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキサアミド、2Am4CBza-L-4fの調製
EtOAc(5.00mL)中の2Am4CBza-L-4e(90.0mg、125umol、1.0当量、TFA)の溶液に、HCl/EtOAc(4M、10.0mL、319.0当量)を添加した。混合物を20℃で1時間撹拌し、次に濃縮して、2Am4CBza-L-4f(78.0mg、粗、2HCl)を白色固体として得た。LC/MS[M+H]505.3(計算値);LC/MS[M+H]505.3(測定値).
【0266】
tert-ブチル3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-[(3S)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノアート、2Am4CBza-L-4gの調製
DMF(1.00mL)中の2Am4CBza-L-4f(70.0mg、121umol、1.0当量、2Hcl)の溶液に、Et3N(50.0mg、484umol、70.0uL、4.0当量)及びtert-ブチル3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシエトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノアート(90.0mg、121umol、1.0当量)を添加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、次に水(10mL)で希釈し、EtOAc(20mL×3)で抽出した。
【0267】
有機層をブライン(10mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、2Am4CBza-L-4g(200mg、粗)を淡黄色の油状物として得た。LC/MS[M+H]1117.6(計算値);LC/MS[M+H]1117.6(測定値).
【0268】
3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-[(3S)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパン酸、2Am4CBza-L-4hの調製
CH3CN(1.00mL)及びH2O(1.00mL)中の2Am4CBza-L-4g(200mg、179umol、1.0当量)の溶液に、TFA(200mg、1.79mmol、130uL、10.0当量)を添加し、次に80℃で1時間撹拌した。混合物を濃縮し、残渣を得た。残渣を、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:5%~40%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-4h(50mg、42.5umol、収率23.7%、TFA)を無色の油状物として得た。LC/MS[M+H]1061.5(計算値);LC/MS[M+H]1061.5(測定値).
【0269】
2Am4CBza-L-4の調製
DCM(2.00mL)及びDMA(0.20mL)中の2Am4CBza-L-4h(40.0mg、34.0umol、1.0当量、TFA)及び2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-ベンゼンスルホン酸(33.5mg、136umol、4.0当量)の溶液に、EDCI(30.0mg、136umol、4.0当量)を添加し、次に20℃で1時間撹拌した。混合物を濃縮し、残渣を得た。残渣を、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:15%~50%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-4(21mg、14.9umol、収率43.9%、TFA)を白色固体として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ7.67-7.24(m,5H),7.17-6.96(m,2H),6.71-6.41(m,2H),3.99-3.94(m,2H),3.90-3.80(m,6H),3.77-3.71(m,4H),3.65-3.58(m,38H),3.54-3.47(m,4H),2.97(t,J=6.0Hz,2H),2.22-1.95(m,2H),1.85-1.68(m,4H),1.03-0.97(m,3H).LC/MS[M+H]1289.5(計算値);LC/MS[M+H]1289.5(測定値).
【0270】
実施例6 1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザペンタトリアコンタン-35-イル(2-((2-アミノ-8-(ジメチルカルバモイル)-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)オキシ)エチル)カルバメート、2Am4CBza-L-6の合成
【化20】
tert-ブチル(2-((2-アミノ-8-(ジメチルカルバモイル)-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)オキシ)エチル)カルバメート、2Am4CBza-L-6の調製
2-アミノ-4-((2-((tert-太きしカルボニル)アミノ)エトキシ)(プロピル)カルバモイル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-8-カルボン酸、2Am4CBza-L-12dを、ジメチルアミン及びHATUと反応させ、2Am4CBza-L-6aを得た。LC/MS[M+H]474.27(計算値);LC/MS[M+H]474.45(測定値).
【0271】
2-アミノ-N4-(2-アミノエトキシ)-N8,N8-ジメチル-N4-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4,8-ジカルボキサミド、2Am4CBza-L-6bの調製
2Am4CBza-L-6aをメタンスルホン酸と反応させ、2Am4CBza-L-6bを得た。LC/MS[M+H]374.22(計算値);LC/MS[M+H]374.36(測定値).
【0272】
2Am4CBza-L-6の調製
DMF中の2Am4CBza-L-6bの溶液に、DIEA及び2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル(4-ニトロフェニル)カルボナートを添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を、pH=約6になるまでTFAでクエンチした。次に混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:5%~35%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-6を得た。LC/MS[M+H]1038.52(計算値);LC/MS[M+H]1038.63(測定値).
【0273】
実施例7 1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザペンタトリアコンタン-35-イル(2-((2-アミノ-N-プロピル-8-(ピロリジン-1-カルボニル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)オキシ)エチル)カルバメート、2Am4CBza-L-7の合成
【化21】
tert-ブチル(2-((2-アミノ-N-プロピル-8-(ピロリジン-1-カルボニル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)オキシ)エチル)カルバメート、2Am4CBza-L-7aの調製
2-アミノ-4-((2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エトキシ)(プロピル)カルバモイル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-8-カルボン酸、2Am4CBza-L-12dをピロリジン及びHATUと反応させ、2Am4CBza-L-7aを得た。LC/MS[M+H]500.29(計算値);LC/MS[M+H]500.48(測定値).
【0274】
2-アミノ-N-(2-アミノエトキシ)-N-プロピル-8-(ピロリジン-1-カルボニル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド、2Am4CBza-L-7bの調製
2Am4CBza-L-7aをメタンスルホン酸と反応させ、2Am4CBza-L-7bを得た。LC/MS[M+H]400.23(計算値);LC/MS[M+H]400.39(測定値).
【0275】
2Am4CBza-L-7の調製
DMF中の2Am4CBza-L-7bの溶液に、DIEA及び2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル(4-ニトロフェニル)カルボナートを添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を、pH=約6になるまでTFAでクエンチした。次に混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:5%~35%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-7を得た。LC/MS[M+H]1064.54(計算値);LC/MS[M+H]1064.67(測定値).
【0276】
実施例8 1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザペンタトリアコンタン-35-イル(3-(2-アミノ-8-(ジメチルカルバモイル)-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)プロピル)カルバメート、2Am4CBza-L-8の合成
【化22】
tert-ブチル(3-(2-アミノ-8-(ジメチルカルバモイル)-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)プロピル)カルバメート、2Am4CBza-L-8bの調製
2-アミノ-4-((3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)(プロピル)カルバモイル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-8-カルボン酸、2Am4CBza-L-8aを、ジメチルアミン及びHATUと反応させ、2Am4CBza-L-8bを得た。LC/MS[M+H]472.29(計算値);LC/MS[M+H]472.56(測定値).
【0277】
2-アミノ-N4-(3-アミノプロピル)-N8,N8-ジメチル-N4-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4,8-ジカルボキサミド、2Am4CBza-L-8cの調製
2Am4CBza-L-8bをメタンスルホン酸と反応させ、2Am4CBza-L-8cを得た。.LC/MS[M+H]372.24(計算値);LC/MS[M+H]372.34(測定値).
【0278】
2Am4CBza-L-8の調製
DMF中の2Am4CBza-L-8cの溶液に、DIEA及び2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル(4-ニトロフェニル)カルボナートを添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を、pH=約6になるまでTFAでクエンチした。次に混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;イル:[水(TFA)-ACN];B%:5%~35%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-8を得た。LC/MS[M+H]1036.54(計算値);LC/MS[M+H]1036.60(測定値).
【0279】
実施例9 1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザペンタトリアコンタン-35-イル(3-(2-アミノ-N-プロピル-8-(ピロリジン-1-カルボニル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)プロピル)カルバメート、2Am4CBza-L-9の合成
【化23】
tert-ブチル3-(2-アミノ-N-プロピル-8-(ピロリジン-1-カルボニル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)プロピル)カルバメート、2Am4CBza-L-9aの調製
2-アミノ-4-((3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)(プロピル)カルバモイル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-8-カルボン酸、2Am4CBza-L-8aを、ピロリジン及びHATUと反応させ、2Am4CBza-L-9aを得た。LC/MS[M+H]498.31(計算値);LC/MS[M+H]498.44(測定値).
【0280】
2-アミノ-N-(3-アミノプロピル)-N-プロピル-8-(ピロリジン-1-カルボニル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド、2Am4CBza-L-9bの調製
2Am4CBza-L-9aをメタンスルホン酸と反応させ、2Am4CBza-L-9bを得た。LC/MS[M+H]398.26(計算値);LC/MS[M+H]398.37(測定値).
【0281】
1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザペンタトリアコンタン-35-イル(3-(2-アミノ-N-プロピル-8-(ピロリジン-1-カルボニル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)プロピル)カルバメートの調製
DMF中の2Am4CBza-L-9bの溶液に、DIEA及び2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル(4-ニトロフェニル)カルボナートを添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を、pH=約6になるまでTFAでクエンチした。次に混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:5%~35%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-9を得た。LC/MS[M+H]1062.56(計算値);LC/MS[M+H]1062.20(測定値).
【0282】
実施例10 4-[3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-[(3R)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノイルオキシ]-2,3,5,6-テトラフルオロ-ベンゼンスルホン酸、2Am4CBza-L-10の合成
【化24-1】
【化24-2】
tert-ブチル(3R)-3-アニリノピペリジン-1-カルボキシラート、2Am4CBza-L-10bの調製
トルエン(10mL)中のtert-ブチル(3R)-3-アミノピペリジン-1-カルボキシラート、2Am4CBza-L-10a(1g、4.99mmol、1.0当量)及びブロモベンゼン(784mg、4.99mmol、526uL、1.0当量)の溶液に、2-(2-ジシクロヘキシルホスファニルフェニル)-N,N-ジメチル-アニリン(138mg、349umol、0.07当量)、ナトリウム2-メチルプロパン-2-オラート、ナトリウムtert-ブトキシド(576mg、5.99mmol、1.2当量)及びPd
2(dba)
3(228mg、250umol、0.05当量)をN
2下で添加した。懸濁液を真空下で脱気し、N
2で数回パージし、次に100℃で10時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して残渣を得、残渣をH
2O(30mL)で希釈し、EtOAc(30mL×3)で抽出し、合わせた有機相をブライン(15mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:0~0:1で溶離)で精製し、2Am4CBza-L-10b(900mg、3.26mmol、収率65.2%)を無色の油状物として得た。
1H NMR(CDCl
3,400MHz)δ7.22-7.17(m,2H),6.77-6.67(m,3H),4.09-3.96(m,1H),3.77-3.70(m,1H),3.42-3.34(m,1H),3.12-2.82(m,1H),3.02-2.82(m,1H),2.04-1.98(m,1H),1.79-1.71(m,1H),1.63-1.52(m,4H),1.46(s,9H).LC/MS[M+H]277.2(計算値);LC/MS[M+H]277.2(測定値).
【0283】
(3R)-N-フェニルピペリジン-3-アミン、2Am4CBza-L-10cの調製
EtOAc(5mL)中の2Am4CBza-L-10b(900mg、3.26mmol、1.0当量)の溶液に、HCl/EtOAc(4M、16.3mL、20.0当量)を添加し、次に20℃で2時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、2Am4CBza-L-10c(650mg、2.61mmol、収率80.1%、2HCl)を白色固体として得た。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ7.52-7.47(m,2H),7.43-7.32(m,3H),3.96-3.85(m,1H),3.56(br d,J=12.0Hz,1H),3.43-3.36(m,1H),3.19-3.10(m,1H),3.03(dt,J=2.8,12.2Hz,1H),2.25-2.08(m,2H),1.92-1.77(m,2H).
【0284】
tert-ブチルN-[2-[[2-アミノ-8-[(3R)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチル]カルバメート、2Am4CBza-L-10dの調製
DMF(3mL)中の2-アミノ-4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エトキシ-プロピル-カルバモイル]-3H-1-ベンゾアゼピン-8-カルボン酸、2Am4CBza-L-4d(250mg、560umol、1.0当量)、HATU(234mg、616umol、1.1当量)及びDIEA(290mg、2.24mmol、390uL、4.0当量)の溶液に、(3R)-N-フェニルピペリジン-3-アミン(209mg、840umol、1.5当量、2HCl)をN2下にて0℃で添加した。混合物を20℃で3時間撹拌した。反応混合物を濾過し、真空下で濃縮した。残渣を分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:10%~45%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-10d(220mg、306umol、収率54.7%、TFA)を白色固体として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ7.58-7.52(m,1H),7.52-7.43(m,1H),7.43-7.38(m,1H),7.36-7.30(m,1H),7.24-7.16(m,1H),6.97(br t,J=7.2Hz,1H),6.91-6.76(m,1H),6.58-6.49(m,1H),6.44(br d,J=7.4Hz,1H),3.93(br s,2H),3.84-3.57(m,4H),3.55-3.35(m,4H),3.28-3.23(m,2H),3.07-2.97(m,1H),2.22-1.97(m,2H),1.86-1.65(m,4H),1.38(s,9H),1.01-0.96(m,3H).LC/MS[M+H]605.3(計算値);LC/MS[M+H]605.3(測定値).
【0285】
2-アミノ-N-(2-アミノエトキシ)--8-[(3R)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-N-プロピル-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキサアミド、2Am4CBza-L-10eの調製
EtOAc(3mL)中の2Am4CBza-L-10d(220mg、364umol、1.0当量)の溶液に、HCl/EtOAc(4M、1.82mL、20.0当量)を添加し、次に20℃で2時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、2Am4CBza-L-10e(170mg、294umol、収率80.9%、2HCl)を白色固体として得た。LC/MS[M+H]505.3(計算値);LC/MS[M+H]505.2(測定値).
【0286】
tert-ブチル3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-[(3R)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノアート、2Am4CBza-L-10fの調製
DMF(2mL)中の2Am4CBza-L-10e(90mg、156umol、1.0当量、2HCl)及びDIEA(80.6mg、623umol、109uL、4.0当量)の溶液に、tert-ブチル 3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシエトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパノアート(117mg、156umol、1.0当量)を0℃で添加し、次に20℃で2時間撹拌した。反応混合物を濾過し、真空下で濃縮しし、残渣をH2O(10mL)で希釈し、EtOAc(10mL×3)で抽出し、合わせた有機相をブライン(10mL×3)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮し、2Am4CBza-L-10f(160mg、143umol、収率91.9%)を白色固体として得た。LC/MS[M+H]1117.6(計算値);LC/MS[M+H]1117.6(測定値).
【0287】
3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-アミノ-8-[(3R)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチルカルバモイルオキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパン酸、2Am4CBza-L-10gの調製
DCM(2mL)中の2Am4CBza-L-10f(130mg、116umol、1.0当量)の溶液に、メタンスルホン酸(111mg、1.16mmol、82.8uL、10.0当量)を添加し、N2下にて20℃で2時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮し、残渣を得た。残渣を分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:15%~45%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-10g(80mg、75.4umol、収率64.8%)を明るい無色の油状物として得た。LC/MS[M+H]1061.6(計算値);LC/MS[M+H]1061.6(測定値).
【0288】
2Am4CBza-L-10の調製
DCM(1.5mL)及びDMA(0.5mL)中の2Am4CBza-L-10g(70mg、65.9umol、1.0当量)及びナトリウム2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-ベンゼンスルホナート(70.7mg、264umol、4.0当量)の溶液に、EDCI(50.6mg、264umol、4.0当量)を添加し、次に20℃で1時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得た。残渣を、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:15%~45%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-10(25.1mg、19.5umol、収率29.5%)を白色固体として得た。1H NMR(MeOD-d4,400MHz)δ7.73-7.63(m,1H),7.60-7.42(m,3H),7.41-7.25(m,3H),7.15-7.03(m,1H),6.72-6.60(m,1H),4.00-3.94(m,2H),3.90-3.82(m,4H),3.74(br t,J=7.2Hz,2H),3.65-3.57(m,40H),3.51(br d,J=4.0Hz,2H),3.45-3.38(m,2H),3.27-3.14(m,2H),3.00-2.96(m,2H),2.21-2.08(m,1H),1.81-1.69(m,4H),0.99(t,J=7.6Hz,3H).LC/MS[M+H]1289.5(計算値);LC/MS[M+H]1289.5(測定値).
【0289】
実施例11 2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチルN-[2-[[2-アミノ-8-[(3R)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル]-プロピル-アミノ]オキシエチル]カルバメート、2Am4CBza-L-11の合成
【化25】
DMF(1.00mL)中の2-アミノ-N-(2-アミノエトキシ)-8-[(3R)-3-アニリノピペリジン-1-カルボニル]-N-プロピル-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキサミド、2Am4CBza-L-10e(50.0mg、86.5umol、1.0当量、2Hcl)の溶液に、DIEA(50.0mg、346umol、60.0uL、4.0当量)及び2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル(4-ニトロフェニル)カルボナート(70.0mg、86.5umol、1.0当量)を添加し、次に20℃で1時間撹拌した。混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:15%~40%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-11(23mg、17.9umol、収率20.7%、TFA)を淡黄色の油状物として得た。
1H NMR(MeOD,400MHz)δ7.75-7.16(m,4H),7.07-6.79(m,4H),6.62-6.39(m,2H),4.17(s,2H),4.04-3.85(m,4H),3.81-3.72(m,4H),3.72-3.56(m,38H),3.56-3.51(m,4H),3.48-3.34(m,6H),3.17-3.05(m,1H),2.26-1.93(m,2H),1.85-1.65(m,4H),1.00(t,J=7.6Hz,3H).LC/MS[M+H]1169.6(計算値);LC/MS[M+H]1169.6(測定値).
【0290】
実施例12 1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザペンタトリアコンタン-35-イル(2-((2-アミノ-8-カルバモイル-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)オキシ)エチル)カルバメート、2Am4CBza-L-12の合成
【化26】
tert-ブチルN-[2-[(2-アミノ-8-ブロモ-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボニル)-プロピル-アミノ]オキシエチル]カルバメート、2Am4CBza-L-12bの調製
DCM(50mL)中の2-アミノ-8-ブロモ-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボン酸、2Am4CBza-L-12a(8.08g、28.7mmol、1.0当量)及びDMA(50mL)の混合物に、メタンスルホン酸(2.76g、28.7mmol、2.05mL、1.0当量)、tert-ブチルN-[2-(プロピルアミノオキシ)エチル]カルバメート(6.9g、31.6mmol、1.1当量)及びEDCI(22.0g、115mmol、4.0当量)を0℃でN
2下にて添加し、次にこの温度で2時間撹拌した。混合物を濃縮してDCMを除去し、water(100mL)で希釈した。そうして混合物のpHを、Na
2CO
3水溶液を添加することで約8に調整した。水相をEtOAc(100mL×3)で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をMTBE(15mL)及び石油エーテル(100mL)で0℃にて0.5時間、粉砕し、2Am4CBza-L-12b(11g、22.85mmol、収率79.52%)を黄色固体として得た。
1H NMR(DMSO-d
6,400MHz)δ7.27(d,J=8.4Hz,1H),7.14(d,J=2.0Hz,1H),7.08-7.01(m,2H),7.01-6.87(m,2H),6.85-6.82(m,1H),3.80(t,J=5.6Hz,2H),3.57(t,J=7.2Hz,2H),3.09-3.05(m,2H),2.76(s,2H),1.67-1.56(m,2H),1.31(s,9H),0.87(t,J=7.6Hz,3H).LC/MS[M+H]481.1(計算値);LC/MS[M+H]481.1(測定値).
【0291】
メチル2-アミノ-4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エトキシ-プロピル-カルバモイル]-3H-1-ベンゾアゼピン-8-カルボキシラート、2Am4CBza-L-12cの調製
MeOH(100mL)中の2Am4CBza-L-12b(8g、16.6mmol、1.0当量)の溶液に、Pd(dppf)Cl2(1.22g、1.66mmol、0.1当量)及びEt3N(5.04g、49.9mmol、6.94mL、3.0当量)をN2下で添加した。懸濁液を真空下で脱気し、COで数回パージした。混合物をCO(50psi)下にて80℃で12時間撹拌した。混合物を濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(カラム高さ:250mm、直径:100mm、100-200メッシュシリカゲル、酢酸エチル/MeOH=1/0,10/1)で精製し、2Am4CBza-L-12c(5g、10.86mmol、収率65.33%)を黄色固体として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ7.81(d,J=1.6Hz,1H),7.63(dd,J=1.6,8.0Hz,1H),7.46(d,J=8.0Hz,1H),7.27(s,1H),3.94-3.86(m,5H),3.73-3.69(m,2H),3.31(s,2H),3.23(t,J=5.2Hz,2H),1.81-1.70(m,2H),1.35(s,9H),0.97(t,J=7.6Hz,3H).LC/MS[M+H]461.2(計算値);LC/MS[M+H]461.1(測定値).
【0292】
2-アミノ-4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エトキシ-プロピル-カルバモイル]-3H-1-ベンゾアゼピン-8-カルボン酸、2Am4CBza-L-12dの調製
THF(30mL)及びH2O(30mL)中の2Am4CBza-L-12c(4g、8.69mmol、1.0当量)の混合物に、LiOH.H2O(547mg、13.0mmol、1.5当量)を25℃で一度に添加し、次にこの温度で2時間撹拌した。混合物を、pH=約6になるまでHCl(1M)水溶液でクエンチした。次に混合物を水(30mL)で希釈し、EtOAc(50mL×3)で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。混合物を分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:5%~40%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-12d(3.3g、7.39mmol、収率85.09%)を黄色固体として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ8.13(s,1H),7.92(d,J=7.6Hz,1H),7.59(d,J=8.0Hz,1H),7.46(s,1H),3.97-3.92(m,2H),3.75(t,J=7.2Hz,2H),3.31-3.30(m,2H),3.26(t,J=5.2Hz,2H),1.83-1.71(m,2H),1.35(s,9H),0.99(t,J=7.6Hz,3H).LC/MS[M+H]447.2(計算値);LC/MS[M+H]447.2(測定値).
【0293】
tert-ブチル(2-((2-アミノ-8-カルバモイル-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)オキシ)エチル)カルバメート、2Am4CBza-L-12eの調製
2Am4CBza-L-12dを、塩化アンモニウム及びHATUと反応させ、2Am4CBza-L-12eを得た。LC/MS[M+H]446.24(計算値);LC/MS[M+H]446.43(測定値).
【0294】
2-アミノ-N4-(2-アミノエトキシ)-N4-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4,8-ジカルボキサミド、2Am4CBza-L-12fの調製
2Am4CBza-L-12eを酢酸エチル中の塩酸と反応させ、2Am4CBza-L-12fを得た。LC/MS[M+H]346.19(計算値);LC/MS[M+H]346.35(測定値).
【0295】
2Am4CBza-L-12の調製
DMF中の2Am4CBza-L-12fの溶液に、DIEA及び2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル(4-ニトロフェニル)カルボナートを添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を、pH=約6になるまでTFAでクエンチした。次に混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:5%~35%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-12を得た。LC/MS[M+H]1010.49(計算値);LC/MS[M+H]1010.71(測定値).
【0296】
実施例13 1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザペンタトリアコンタン-35-イル(3-(2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)プロピル)カルバメート、2Am4CBza-L-13の合成
【化27】
2-アミノ-N4-(2-アミノエトキシ)-N8-フェニル-N4-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4,8-ジカルボキサミド、2Am4CBza-L-13bの調製
tert-ブチル(2-((2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)オキシ)エチル)カルバメート、2Am4CBza-L-13aを、メタンスルホン酸と反応させ、2Am4CBza-L-13bを得た。LC/MS[M+H]422.22(計算値);LC/MS[M+H]422.39(測定値).
【0297】
1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザペンタトリアコンタン-35-イル(3-(2-アミノ-8-(フェニルカルバモイル)-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド)プロピル)カルバメートの調製
DMF中の2Am4CBza-L-13bの溶液に、DIEA及び2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル(4-ニトロフェニル)カルボナートを添加し、次に25℃で1時間撹拌した。混合物を、pH=約6になるまでTFAでクエンチした。次に混合物を濾過し、分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:5%~35%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-13を得た。LC/MS[M+H]1086.52(計算値);LC/MS[M+H]1086.73(測定値).
【0298】
実施例17 2-アミノ-N4-((40-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-4,39-ジオキソ-8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-デカオキサ-3,5,38-トリアザテトラコンチル)オキシ)-N8,N8-ジメチル-N4-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4,8-dicarboxamide、2Am4CBza-L-17の合成
【化28】
tert-ブチル(32-イソシアナート-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサドトリアコンチル)カルバメート、2Am4CBza-L-17bの調製
DCM中のtert-ブチル(32-アミノ-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30-デカオキサドトリアコンチル)カルバメート、2Am4CBza-L-17a(0.15g、0.25mmol、1当量)の溶液に、TEA(0.348ml、2.5mmol、10当量)を添加し、続いてホスゲン(トルエン中の1.4M溶液として0.892ml、0.25mmol、1当量)を添加した。反応混合物をLCMSで監視し、濃縮し、逆相HPLCで精製して、2Am4CBza-L-17b(78mg、0.125mmol、50%)を得た。LC/MS[M+H]627.37(計算値);LC/MS[M+H]627.64(測定値).
【0299】
tert-ブチル(39-(2-アミノ-8-(ジメチルカルバモイル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボニル)-34-オキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,38-ウンデカオキサ-33,35,39-トリアザドテトラコンチル)カルバメート、2Am4CBza-L-17cの調製
DMF中の2-アミノ-N4-(2-アミノエトキシ)-N8,N8-ジメチル-N4-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4,8-ジカルボキサミド、2Am4CBza-L-6b(1当量)及び2Am4CBza-L-17b(1当量)の混合物に、TEA(10当量)を添加した。反応物を室温で撹拌し、次に水で希釈し、逆相HPLCで精製して2Am4CBza-L-17cを得た。LC/MS[M+H]1000.58(計算値);LC/MS[M+H]1000.91(測定値).
【0300】
2-アミノ-N4-((37-アミノ-4-oxo-8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-デカオキサ-3,5-ジアザヘプタトリアコンチル)オキシ)-N8,N8-ジメチル-N4-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4,8-ジカルボキサミド、2Am4CBza-L-17dの調製
2Am4CBza-L-17c(48mg、0.052mmol、1当量)を最小限のTFAに溶解させた。15分後、反応混合物を濃縮し、2Am4CBza-L-17dをTFA塩として得た。.LC/MS[M+H]900.53(計算値);LC/MS[M+H]900.83(測定値).
【0301】
2Am4CBza-L-17の調製
DMF中の2Am4CBza-L-17c(1当量)の溶液に、TEA(12.8当量)を添加し、続いて2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)アセタート(1.28当量)を添加した。反応混合物を濃縮し、水中の1%TFAで希釈し、逆相HPLCで精製して、2Am4CBza-L-17を得た。LC/MS[M+H]1037.54(計算値);LC/MS[M+H]1037.84(測定値).
【0302】
実施例19 2-アミノ-N4-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[[2-(2,5-ジオキソピロール-1-イル)アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]-N8,N8-ジメチル-N4-プロピル-3H-1-ベンゾアゼピン-4,8-ジカルボキサミド、2Am4CBza-L-19の合成
【化29】
エチル8-ブロモ-2-(トリチルアミノ)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキシラート、2Am4CBza-L-19bの調製
DCM(20mL)中のエチル2-アミノ-8-ブロモ-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキシラート、2Am4CBza-L-19a(3g、9.70mmol、1当量)の溶液に、TrtCl(4.06g、14.6mmol、1.5当量)及びEt
3N(2.95g、29.1mmol、4.05mL、3当量)を添加した。混合物を50℃で12時間撹拌した。得られた混合物を氷水(w/w=1/1)(30mL)に注ぎ入れ、10分間撹拌した。水相をDCM(20mL×3)で抽出した。合わせた有機相を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粗生成物を25℃で5分間、MTBEで粉砕し、2Am4CBza-L-19b(4g、7.25mmol、収率74.75%)を黄色固体として得た。LC/MS[M+H]551.1(計算値);LC/MS[M+H]551.1(測定値).
【0303】
エチル8-(ジメチルカルバモイル)-2-(トリチルアミノ)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキシラート、2Am4CBza-L-19cの調製
DMF(30mL)中の2Am4CBza-L-19b(2g、3.63mmol、1当量eq)、N-メチルメタンアミン、ジメチルアミン(1.48g、18.2mmol、1.66mL、5当量、HCl)、Et3N(3.67g、36.3mmol、5.05mL、10当量)、Pd(dppf)Cl2(266mg、363umol、0.1当量)の混合物を脱気し、一酸化炭素、CO(3.63mmol、1当量)で3回パージし、次に混合物を80℃で12時間、CO(50psi)雰囲気下にて撹拌した。混合物を氷水(w/w=1/1)(30mL)に注ぎ入れ、10分間撹拌した。水相を酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。合わせた有機相をブライン(20mL×3)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(カラム高さ:250mm、直径:100mm、100-200メッシュシリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル=1/0,1/1)で精製し、2Am4CBza-L-19c(900mg、1.66mmol、収率45.61%)を黄色固体として得た。LC/MS[M+H]544.2(計算値);LC/MS[M+H]544.4(測定値).
【0304】
8-(ジメチルカルバモイル)-2-(トリチルアミノ)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボン酸、2Am4CBza-L-19dの調製
EtOH(15mL)及びH2O(8mL)中の2Am4CBza-L-19c(800mg、1.47mmol、1当量)の溶液に、LiOH.H2O(247mg、5.89mmol、4当量)を添加した。混合物を20℃で12時間撹拌した。混合物のpHをHCl(1M)で約6に調節し、次に真空下で濃縮してEtOHを除去した。水(20mL)を添加し、混合物から析出した目的の白色固体を濾過し、2Am4CBza-L-19d(750mg、1.45mmol、収率98.85%)を白色固体として得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.19(s,1H),7.69(s,1H),7.35(d,J=8.4Hz,1H),7.29-7.19(m,12H),7.17-7.09(m,3H),6.83(dd,J=1.6,1.6Hz,1H),6.35(d,J=1.6Hz,1H),3.00(s,2H),2.91(s,3H),2.80(s,3H).LC/MS[M+H]516.2(計算値);LC/MS[M+H]516.4(測定値).
【0305】
2-アミノ-8-(ジメチルカルバモイル)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボン酸、2Am4CBza-L-19eの調製
DCM(10mL)中のAm4CBza-L-19d(750mg、1.45mmol、1当量)にTFA(1.66g、14.6mmol、1.08mL、10当量)を添加し、次に50℃で12時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮した。粗生成物をMTBEで20℃にて5分間、粉砕し、2Am4CBza-L-19e(550mg、1.42mmol、収率97.62%、TFA)を白色固体として得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.90(s,1H),7.73(d,J=8.0Hz,1H),7.44-7.36(m,2H),3.50(s,2H),3.00(s,3H),2.93(s,3H).LC/MS[M+H]274.1(計算値);LC/MS[M+H]274.1(測定値).
【0306】
2Am4CBza-L-19の調製
DCM(3mL)及びDMA(1mL)中の2Am4CBza-L-19e(52.3mg、191umol、0.8当量)及び2-(2,5-ジオキソピロール-1-yl)-N-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(プロピルアミノオキシ)エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチル]アセトアミド(200mg、239umol、1.0当量、MsOH)の溶液に、EDCI(229mg、1.20mmol、5.0当量)を添加した。混合物を25℃で0.5時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、DCMを除去した。残渣を濾過し、分取HPLC(TFA条件;カラム:Phenomenex Luna80*30mm*3um;移動相:[水(TFA)-ACN];B%:10%~35%、8分)で精製し、2Am4CBza-L-19(59.3mg、59.6umol、収率24.9%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(MeOD,400MHz)δ7.65(d,J=8.4Hz,1H),7.48-7.44(m,2H),7.36(s,1H),6.89(s,2H),4.17(s,2H),4.07-4.03(m,2H),3.75(t,J=7.2Hz,2H),3.68-3.53(m,40H),3.50-3.45(m,2H),3.44-3.35(m,4H),3.28-3.23(m,2H),3.13(s,3H),3.05(s,3H),1.78(sxt,J=7.2Hz,2H),1.01(t,J=7.6Hz,3H).LC/MS[M+H]995.5(計算値);LC/MS[M+H]995.5(測定値).
【0307】
実施例201:免疫複合体(IC)の調製
リシンがコンジュゲートした免疫複合体を調製するには、抗体は、G-25 SEPHADEX(登録商標)脱塩カラム(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)またはZeba(商標)スピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、pH8.3で、100mMのホウ酸、50mMの塩化ナトリウム、1mMのエチレンジアミン四酢酸を含有する、コンジュゲーション緩衝液に緩衝液交換する。次に前記緩衝液を使用して、溶出液をそれぞれ約1~10mg/mlの濃度に調整し、次いで滅菌濾過する。抗体を20~30℃に予熱し、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルアセトアミド(DMA)中に5~20ΜMの濃度に溶解したテトラフルオロフェニル(TFP)、またはスルホン酸テトラフルオロフェニル(スルホTFP)エステル、式IIの2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー(2Am4CBza-L)化合物の2~20(例えば、7~10)モル当量とすぐに混合する。反応を30℃で約16時間進行させ、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で平衡化した連続する2つのG-25脱塩カラムまたはZeba(商標)スピン脱塩カラム上を通過させることによって、免疫複合体(IC)を反応物から分離し、表3a及び表3bの免疫複合体(IC)を得る。アジュバント-抗体比(DAR)を、XEVO(商標)G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続された、ACQUITY(商標)UPLC H-class(Waters Corporation,Milford,MA)のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって決定する。
【0308】
システインがコンジュゲートした免疫複合体を調製するために、Zeba(商標)スピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、抗体を、2mMのEDTAで、pH7.2のPBSを含むコンジュゲーション緩衝液に緩衝液交換する。鎖間ジスルフィドを、2~4モル過剰のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)またはジチオスレイトール(DTT)を用いて37℃で30分~2時間にわたり還元する。過剰なTCEPまたはDTTを、コンジュゲーション緩衝液で予め平衡化したZeba(商標)スピン脱塩カラムを使用して除去した。緩衝液交換抗体の濃度は、コンジュゲーション緩衝液を使用して、約5~20mg/mlに調整し、滅菌濾過した。マレイミド-2Am4CBza-L化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルアセトアミド(DMA)のいずれかに5~20mMの濃度まで溶解させる。コンジュゲーションのために、抗体を、10~20モル当量のマレイミド-2Am4CBza-Lと混合する。場合によっては、20%(v/v)までの追加のDMAまたはDMSOを添加し、コンジュゲーション緩衝液中でのマレイミド-2Am4CBza-Lの溶解度を改善した。反応を、20℃で約30分~4時間進行させる。得られた複合体を、2つの連続するZeba(商標)スピン脱塩カラムを使用して、未反応のマレイミド-2Am4CBza-Lから精製する。カラムを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2で予め平衡化する。アジュバント-抗体比(DAR)を、XEVO(商標)G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続された、ACQUITY(商標)UPLC H-class(Waters Corporation,Milford,MA)のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって推定する。
【0309】
コンジュゲーションにおいて、抗体は、抗体の安定性または抗原結合特異性に悪影響を及ぼさない、当技術分野で既知の水性緩衝液系に溶解させることができる。リン酸緩衝生理食塩水を使用することができる。2Am4CBza-L化合物は、本明細書の別の箇所に記載される少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒を含む溶媒系に溶解される。いくつかのそのような態様では、2Am4CBza-Lは、トリス緩衝液pH8(例えば、50mM Tris)中に、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、または約50mM、及びこれらの範囲内、例えば、約5mM~約50mMまたは約10mM~約30mMの濃度まで溶解される。いくつかの態様では、2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピンリンカー中間体は、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、アセトニトリル、または別の適切な双極性非プロトン性溶媒に溶解する。
【0310】
あるいはコンジュゲーション反応において、当量過剰の2Am4CBza-L溶液を希釈し、抗体溶液と合わせてもよい。2Am4CBza-L溶液は、好ましくは、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒及び少なくとも1つの極性プロトン性溶媒で希釈され得、これらの例には、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及び酢酸が含まれる。抗体に対する2Am4CBza-L中間体のモル当量は、約1.5:1、約3:1、約5:1、約10:1、約15:1または約20:1、及びこれらの範囲内、例えば、約1.5:1~約20:1、約1.5:1~約15:1、約1.5:1~約10:1、約3:1~約15:1、約3:1~約10:1、約5:1~約15:1、または約5:1~約10:1であり得る。反応の完了は、LC-MSなどの当技術分野で知られている方法で好適に監視することができる。コンジュゲーション反応は、通常、約1時間~約16時間の範囲内で完了する。反応が完了した後、試薬を反応混合物に添加して、反応を停止させ得る。抗体チオール基が2Am4CBza-Lリンカー中間体のマレイミドなどのチオール反応性基と反応する場合、未反応の抗体チオール基は、キャッピング試薬と反応し得る。好適なキャッピング試薬の例は、エチルマレイミドである。
【0311】
コンジュゲーション後に、免疫複合体は、例えば、これらに限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロマト分画、限外濾過、遠心限外濾過、接線濾過、及びこれらの組み合わせなどの当技術分野で既知の精製方法によって精製され、コンジュゲートされていない反応物質及び/またはコンジュゲート凝集体から分離され得る。例えば、精製の前に、免疫複合体を20mMコハク酸ナトリウム、pH5などで希釈することができる。希釈した溶液を陽イオン交換カラムに適用した後、例えば少なくとも10カラム容量の20mMコハク酸ナトリウム、pH5で洗浄する。免疫複合体は、PBSなどの緩衝液で適切に溶出できる。
【0312】
実施例202 HEKレポーターアッセイ
ヒトTLR7またはヒトTLR8を発現するHEK293レポーター細胞は、Invivogenから購入し、ベンダープロトコルに従って細胞増殖と実験を行った。簡潔に説明すると、細胞は、10%のFBS、ゼオシン及びブラストサイジンを添加したDMEM中にて、5%CO2で80~85%コンフルエンスまで増殖した。次に、細胞を、HEK検出媒質と免疫刺激性2-アミノ-4-カルボキサミド-ベンゾアゼピン化合物(表1のものなど)を含む基質を用いて、96ウェル平プレートに4×104細胞/ウェルで播種した。プレートリーダーを使用して、620~655nmの波長で活性を測定した。
【0313】
実施例203:In Vitroでの免疫複合体活性の評価
この実施例は、表3a及び表3bのものを含む、本発明の免疫複合体が免疫活性化を誘発するのに有効であり、したがってがんの治療に有用であることを示している。
【0314】
a)ヒト抗原提示細胞の単離:ヒト骨髄性抗原提示細胞(APS)は、CD14、CD16、CD40、CD86、CD123及びHLA-DRに対するモノクローナル抗体を含むROSETTESEP(登録商標)ヒト単球濃縮カクテル(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada)を使用した密度勾配遠心分離により、健康な献血者(Stanford Blood Center,Palo Alto,California)から得たヒト末梢血液からネガティブに選択された。その後、CD14、CD16、CD40、CD86、CD123及びHLA-DRに対するモノクローナル抗体を含む、CD16欠失を伴わない、EASYSEP(登録商標)ヒト単球エンリッチメントキット(Stem Cell Technologies)を用いてネガティブ選別を行い、純度90%を超える未熟APCを精製した。
【0315】
b)骨髄性APC活性化アッセイ:2×105のAPCを、10%FBS、100U/mLペニシリン、100μg/mL(マイクログラム/ミリリットル)ストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、ならびに示されている場合には、様々な濃度の非コンジュゲート(裸の)抗体、ならびに表3a及び表3bのものを含む本発明の免疫複合体(IC)(上記の実施例に従って調製したもの)を添加したiscove改変ダルベッコ培地、IMDM(Lonza)を含有する、96ウェルプレート(Corning,Corning,NY)でインキュベートする。無細胞上清をELISAを介して18時間後に分析し、炎症誘発性応答の読み取りとしてTNFα分泌を測定する。
【0316】
c)PBMC活性化アッセイ:ヒト末梢血単核細胞を、密度勾配遠心分離により、健康な血液ドナー(Stanford Blood Center,Palo Alto,California)から得られたヒト末梢血から単離した。PBMCを、CEA発現腫瘍細胞(例えば、MKN-45、HPAF-II)と共培養物中で10:1のエフェクター対標的細胞比で96ウェルプレート(Corning,Corning,NY)中でインキュベートした。細胞を、(上記の実施例に従って調製された)様々な濃度の未コンジュゲート(裸の)抗体及び本発明の免疫複合体で刺激した。無細胞上清を、製造業者のガイドライン(BioLegend(登録商標),San Diego,CA)に従って、LegendPlex(商標)キットを使用してサイトカインビーズアレイにより分析した。
【0317】
d)ヒト通常型樹状細胞の単離:ヒト通常型樹状細胞(cDC)は、密度勾配遠心分離によって健康な血液ドナー(Stanford Blood Center,Palo Alto,California)から得られたヒト末梢血からネガティブに選択された。簡単に説明すると、細胞を最初に、ROSETTESEP(商標)ヒトCD3枯渇カクテル(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada)を使用して富化し、細胞調製物からT細胞を除去する。次にcDCを、EASYSEP(商標)ヒト骨髄 DC富化キット(Stem Cell Technologies)を使用して、ネガティブ選択によって更に富化する。
【0318】
e)cDC活性化アッセイ:8×104個のAPCを、ISAC標的抗原を発現する腫瘍細胞と共に10:1のエフェクター(cDC)対標的(腫瘍細胞)比で共培養した。細胞を、10%のFBSを補充したRPMI-1640培地を含有する96ウェルプレート(Corning,Corning,NY)中で、示される場合には、本発明の指示された免疫複合体(上記の実施例に従って調製)の様々な濃度でインキュベートした。約18時間、一晩インキュベートした後、無細胞上清を収集し、BioLegend LEGENDPLEXサイトカインビーズアレイを使用して(TNFαを含む)サイトカイン分泌について分析した。
【0319】
骨髄細胞型の活性化を、様々な骨髄集団を利用する記載のアッセイに加えて、様々なスクリーニングアッセイを用いて測定することができる。これらは、健康なドナー血液から単離された単球、M-CSF分化マクロファージ、GM-CSF分化マクロファージ、GM-CSF+IL-4単球由来樹状細胞、健康なドナー血液から単離された従来の樹状細胞(cDC)、及び免疫抑制状態に分極した骨髄細胞(骨髄由来抑制細胞またはMDSCとも呼ばれる)を含み得る。MDSC分極細胞としては、例えばM2aΜΦ(IL4/IL13)、M2cΜΦ(IL10/TGFb)、GM-CSF/IL6MDSC、腫瘍教育単球(TEM)などの免疫抑制状態に向けて分化した単球が挙げられる。TEM分化は、腫瘍馴化培地(例えば、786.O、MDA-MB-231、HCC1954)を用いて行うことができる。原発性腫瘍関連骨髄細胞はまた、解離した腫瘍細胞懸濁液に存在する初代細胞を含み得る(Discovery Life Sciences)。
【0320】
骨髄細胞の記載された集団の活性化の評価は、単培養として、または免疫複合体(IC)が抗体のCDR領域を介して結合し得る目的の抗原を発現する細胞との共培養として行うことができる。18~48時間のインキュベーション後に、フローサイトメトリーを用いた細胞表面共刺激分子の上方制御、または分泌された炎症性サイトカインの測定により活性化を評価することができる。サイトカイン測定の場合、無細胞上清を採取し、フローサイトメトリーを用いてサイトカインビーズアレイ(例えば、Biolegend製LegendPlex)により分析する。
【0321】
本明細書において引用されている、刊行物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、参照することにより、それらの参考文献のそれぞれが参照することにより組み込まれるべき旨の個別具体的な表示があるかのように、かつ、その全体が本明細書に規定されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】