(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240305BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20240305BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/5375 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/585 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P11/04
A61K45/00
A61K31/137
A61K31/5375
A61K31/585
A61K31/216
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558248
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 US2022021462
(87)【国際公開番号】W WO2022204228
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282649
【氏名又は名称】アプニメッド,インコーポレイテッド(デラウェア)
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ローレンス,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】タラント-モンテムッロ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】ファーカス,ロナルド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA32
4C084MA35
4C084MA36
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086DA13
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA32
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA02
4C206FA10
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA43
4C206MA52
4C206MA55
4C206MA56
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
ノルエピネフルトリン再取り込み阻害薬(NRI)及びミネラルコルチコイド拮抗薬を含み、さらにムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を含んでもよい医薬組成物、及び睡眠時無呼吸の治療方法が本明細書に記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象を治療する方法であって、前記方法は、治療を必要とする対象に、有効量の(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及び(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記NRIがノルエピネフリン選択的再取り込み阻害薬(NSRI)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NSRIが、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミン、及びビロキサジン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NRIが、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジン、及びベンラファキシン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害薬(NNRI)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記NRIが、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩及びレボキセチンまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ミネラルコルチコイド拮抗薬が、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン、フィネレノン、メクスレノン、カンレノ酸、ドロスピレノン、プロレノン、アパラレノン、及びエサキセレノン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ミネラルコルチコイド拮抗薬がスピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ミネラルコルチコイド拮抗薬がスピロノラクトンである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記対象に(iii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を投与することをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記MRAが、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記MRAが、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジサイクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾラート、メチキセン、メトスコポラミン、オキシフェンサイクリミン、オキシフェノニウム、プロサイクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジル、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記MRAが(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
利尿薬である追加の有効薬剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記利尿薬が、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロルタリドン、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリアムテレン、フロセミド、エタクリン酸、メトラゾン、ブメタニド、インダパミド、アミロリド、及びトルセミド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩は、約20mg~約200mgの用量で投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩は、約25mg~約100mgの用量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩は、約10mg~約100mgの用量で投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩は、約20mg~約80mgの用量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約15mgの用量で投与される、請求項10~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約2mg~約10mgの用量で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約0.5mg~約10mgの用量で投与される、請求項10~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約5mgの用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記NRI及び前記ミネラルコルチコイド拮抗薬を単一の組成物で投与する、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記NRI、前記MRA、及び前記ミネラルコルチコイド拮抗薬を単一の組成物で投与する、請求項10~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記単一の組成物が経口投与の剤形である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記経口投与の剤形が、シロップ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、または貼付剤である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記咽頭気道の虚脱に関連する疾患が睡眠時無呼吸である、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記咽頭気道の虚脱に関連する疾患が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記咽頭気道の虚脱に関連する疾患がいびきである、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記咽頭気道の虚脱に関連する疾患が単純性いびき症である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、睡眠などの、意識が十分でない状態にある、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が高血圧を有する、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及び(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬を薬学的に許容される担体中に含む、医薬組成物。
【請求項36】
前記NRIがノルエピネフリン選択的再取り込み阻害薬(NSRI)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記NSRIが、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミン、及びビロキサジン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記NRIが、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジン、及びベンラファキシン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害薬(NNRI)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記NRIが、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩及びレボキセチンまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記ミネラルコルチコイド拮抗薬が、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン、フィネレノン、メクスレノン、カンレノ酸、ドロスピレノン、プロレノン、アパラレノン、及びエサキセレノン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項35~40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
前記ミネラルコルチコイド拮抗薬がスピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記ミネラルコルチコイド拮抗薬がスピロノラクトンである、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
(iii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)をさらに含む、請求項35~43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
前記MRAが、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記MRAが、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジサイクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾラート、メチキセン、メトスコポラミン、オキシフェンサイクリミン、オキシフェノニウム、プロサイクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジル、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
前記MRAが(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項47記載の組成物。
【請求項49】
利尿薬である追加の有効薬剤をさらに含む、請求項35~48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
前記利尿薬が、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロルタリドン、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリアムテレン、フロセミド、エタクリン酸、メトラゾン、ブメタニド、インダパミド、アミロリド、及びトルセミド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩は、約20mg~約200mgの量で存在する、請求項35~50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩は、約25mg~約100mgの量で存在する、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩は、約10mg~約100mgの量で存在する、請求項35~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項54】
前記スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩は、約20mg~約80mgの量で存在する、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約15mgの量で存在する、請求項44~54のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項56】
前記オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約2mg~約10mgの量で存在する、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約0.5mg~約10mgの量で存在する、請求項44~54のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項58】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約5mgの量で存在する、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記NRI及び前記ミネラルコルチコイド拮抗薬が単一組成物に製剤化されている、請求項35~58のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
前記NRI、前記MRA、及び前記ミネラルコルチコイド拮抗薬が単一組成物に製剤化されている、請求項44~59のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項61】
前記単一組成物が経口投与の剤形である、請求項59または60に記載の組成物。
【請求項62】
前記経口投与の剤形がシロップ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、または貼付剤である、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用である、請求項35~62のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項64】
前記咽頭気道の虚脱に関連する疾患が、睡眠時無呼吸である、請求項63に記載の治療用組成物。
【請求項65】
前記咽頭気道の虚脱に関連する疾患が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、請求項64に記載の治療用組成物。
【請求項66】
前記咽頭気道の虚脱に関連する疾患が、いびきである、請求項63に記載の治療用組成物。
【請求項67】
前記咽頭気道の虚脱に関連する疾患が、単純性いびき症である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項68】
前記対象が、睡眠などの、意識が十分でない状態にある、請求項63~67のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項69】
前記対象が高血圧を有する、請求項63~68のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項70】
(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及び(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬を含み、さらに(iii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を含んでもよい、キット。
【請求項71】
咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用である、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用であるノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及びミネラルコルチコイド拮抗薬、ならびに必要に応じたムスカリン受容体拮抗薬(MRA)。
【請求項73】
咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用である、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)と、(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬と、必要に応じた(iii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)との治療的組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月24日に出願された米国仮出願63/165,342の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及び(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬を含み、さらに(iii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を含んでもよい医薬組成物を提供し、さらに睡眠時無呼吸を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠中の咽頭気道の虚脱によって引き起こされる一般的な疾患である。OSAは、深刻な健康被害をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様は、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象を治療する方法を提供し、当該方法は、治療を必要とする対象に、有効量の(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及び(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬を投与することを含む。
【0005】
この態様に係る本発明の実施形態は、以下の任意である特徴の1つ以上を含んでもよい。ある実施形態において、当該NRIは、ノルエピネフリン選択的再取り込み阻害薬(NSRI)である。ある実施形態において、当該NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミン、及びビロキサジン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該NRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジン、及びベンラファキシン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害薬(NNRI)である。ある実施形態において、当該NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、及びレボキセチンまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該ミネラルコルチコイド拮抗薬は、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン、フィネレノン、メクスレノン、カンレノ酸、ドロスピレノン、プロレノン、アパラレノン、及びエサキセレノン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該ミネラルコルチコイド拮抗薬は、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該ミネラルコルチコイド拮抗薬はスピロノラクトンである。ある実施形態において、当該方法は、(iii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を対象に投与することをさらに含む。ある実施形態において、当該MRAは、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該MRAは、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジサイクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾラート、メチキセン、メトスコポラミン、オキシフェンサイクリミン、オキシフェノニウム、プロサイクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジル、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該MRAは、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該MRAは、(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩は、約20mg~約200mgの用量で投与される。ある実施形態において、当該アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩は、約25mg~約100mgの用量で投与される。ある実施形態において、当該スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩は、約10mg~約100mgの用量で投与される。ある実施形態において、当該スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩は、約20mg~約80mgの用量で投与される。ある実施形態において、当該オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約15mgの用量で投与される。ある実施形態において、当該オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約2mg~約10mgの用量で投与される。ある実施形態において、当該(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約0.5mg~約10mgの用量で投与される。ある実施形態において、当該(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約5mgの用量で投与される。ある実施形態において、当該NRI及びミネラルコルチコイド拮抗薬は、単一の組成物で投与される。ある実施形態において、当該NRI、MRA、及びミネラルコルチコイド拮抗薬は、単一の組成物で投与される。ある実施形態において、当該単一の組成物は、経口投与の剤形である。ある実施形態において、当該経口投与の剤形は、シロップ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、または貼付剤である。ある実施形態において、当該咽頭気道の虚脱に関連する疾患は、睡眠時無呼吸である。ある実施形態において、当該咽頭気道の虚脱に関連する疾患は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。ある実施形態において、当該咽頭気道の虚脱に関連する疾患は、いびきである。ある実施形態において、当該咽頭気道の虚脱に関連する疾患は、単純性いびき症である。ある実施形態において、当該対象は、意識が十分でない状態にある。ある実施形態において、当該意識が十分でない状態は、睡眠である。ある実施形態において、当該対象は高血圧を有する。
【0006】
本発明の別の態様は、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及び(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬を薬学的に許容される担体中に含む医薬組成物を提供する。
【0007】
この態様に係る本発明の実施形態は、以下の任意である特徴の1つ以上を含んでもよい。ある実施形態において、当該NRIは、ノルエピネフリン選択的再取り込み阻害薬(NSRI)である。ある実施形態において、当該NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミン、及びビロキサジン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該NRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジン、及びベンラファキシン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害薬(NNRI)である。ある実施形態において、当該NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、及びレボキセチンまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該ミネラルコルチコイド拮抗薬は、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン、フィネレノン、メクスレノン、カンレノ酸、ドロスピレノン、プロレノン、アパラレノン、及びエサキセレノン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該ミネラルコルチコイド拮抗薬は、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該ミネラルコルチコイド拮抗薬はスピロノラクトンである。ある実施形態において、当該組成物は、(iii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)をさらに含む。ある実施形態において、当該MRAは、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該MRAは、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジサイクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾラート、メチキセン、メトスコポラミン、オキシフェンサイクリミン、オキシフェノニウム、プロサイクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジル、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ある実施形態において、当該MRAは、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該MRAは、(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩は、約20mg~約200mgの量で存在する。ある実施形態において、当該アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩は、約25mg~約100mgの量で存在する。ある実施形態において、当該スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩は、約10mg~約100mgの量で存在する。ある実施形態において、当該スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩は、約20mg~約80mgの量で存在する。ある実施形態において、当該オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約15mgの量で存在する。ある実施形態において、当該オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約2mg~約10mgの量で存在する。ある実施形態において、当該(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約0.5mg~約10mgの量で存在する。ある実施形態において、当該(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約5mgの量で存在する。ある実施形態において、当該NRI及びミネラルコルチコイド拮抗薬は、単一組成物に製剤化されている。ある実施形態において、当該NRI、MRA、及びミネラルコルチコイド拮抗薬は、単一組成物に製剤化されている。ある実施形態において、当該単一組成物は、経口投与の剤形である。ある実施形態において、当該経口投与の剤形は、シロップ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、または貼付剤である。ある実施形態において、当該組成物は、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用である。ある実施形態において、当該咽頭気道の虚脱に関連する疾患は、睡眠時無呼吸である。ある実施形態において、当該咽頭気道の虚脱に関連する疾患は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。ある実施形態において、当該咽頭気道の虚脱に関連する疾患は、いびきである。ある実施形態において、当該咽頭気道の虚脱に関連する疾患は、単純性いびき症である。ある実施形態において、当該対象は、意識が十分でない状態にある。ある実施形態において、当該意識が十分でない状態は、睡眠である。ある実施形態において、当該対象は高血圧を有する。
【0008】
本発明の別の態様は、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及び(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬を含み、さらに(iii)ムスカリン受容体拮抗薬を含んでもよいキットを提供する。ある実施形態において、当該キットは、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用である。
【0009】
本発明の別の態様は、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用であるノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及びミネラルコルチコイド拮抗薬、ならびに必要に応じたムスカリン受容体拮抗薬を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用である、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)と、(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬と、必要に応じた(iii)ムスカリン受容体拮抗薬との治療的組み合わせを提供する。
【0011】
特に定義しない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書には本発明で使用するための方法及び材料が記載されているが、当該技術分野で知られている他の適切な方法及び材料を使用することもできる。材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及びその他の参考文献は、参照によりその内容がすべて組み込まれる。矛盾が生じた場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面、ならびに特許請求の範囲によって明らかにされる。
【0013】
以下に説明する図は、例示であって、特許請求の範囲に記載される発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】閉塞性無呼吸のグラフを示す図である。一番上のチャネルは、睡眠の脳波(EEG)パターンを示す。次のチャネルは空気の流れを示す。次の3つのチャネルは、胸郭と腹部の動き及び食道内圧の変化による換気努力を示しており、これらはすべて閉塞した上気道に対する呼吸努力を反映している。最後のチャネルはオキシヘモグロビン飽和度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ヒトにおいて、咽頭気道領域は、骨または軟骨の支持がなく、筋肉によって開口した状態に保持される。睡眠中にこれらの筋肉が弛緩すると、咽頭が潰れて空気の流れが止まることがある。
図1に示すように、換気努力が続き、閉塞を克服しようとする試みが増えていく。これは、食道内圧変化の増加によって示される。閉塞した気道に対して横隔膜が収縮し、その結果、胸郭と腹部の動きは反対方向になり、強制的に腹壁を膨らませ、胸壁を内側にへこませる。
【0016】
呼吸努力の増加は、EEG(
図1)において可視化可能な、睡眠からの覚醒をもたらし、気道を開いて正常な呼吸を再開させる。無呼吸中の空気流の欠如は、低酸素症も引き起こす。これはオキシヘモグロビン飽和度の低下によって示される(
図1)。重症度は一般に、無呼吸低呼吸指数(AHI)を用いて測定される。AHIは、睡眠1時間当たりに発生する無呼吸(少なくとも10秒間呼吸が停止)と低呼吸(気流と酸素飽和度の低下)を合わせた平均回数である(Ruehland et al.,The new AASM criteria for scoring hypopneas:Impact on the apnea hypopnea index.SLEEP 2009;32(2):150-157)。
【0017】
図1は、閉塞性無呼吸のグラフを示す図である。一番上のチャネルは、睡眠の脳波(EEG)パターンを示す。次のチャネルは空気の流れを示す。次の3つのチャネルは、胸郭と腹部の動き及び食道内圧の変化による換気努力を示しており、これらはすべて閉塞した上気道に対する呼吸努力を反映している。最後のチャネルはオキシヘモグロビン飽和度を示す。
【0018】
OSAの厳密な定義(1時間当たり15回を超えるAHI、または日中の眠気を伴う1時間当たり5回を超えるAHI)を用いた場合、推定有病率は男性で約15%、女性で5%である。米国では推定3000万人がOSAであり、そのうち約600万人が診断されている。米国におけるOSAの有病率は、高齢化と肥満率の増加により増加しているようである。OSAは、高血圧、糖尿病、心血管疾患、自動車事故、労働災害、疲労/生産性低下など、深刻な合併症と経済的コストに関係している(Young et al.,WMJ 2009;108:246;Peppard et al.,Am J Epidemiol 2013;177:1006)。
【0019】
現在の主要な治療法は、持続的気道陽圧法(CPAP)である。CPAPは、ほとんどすべての患者に有効であり、診断された患者の約85%がCPAPを処方されているが、コンプライアンスは低い。患者はCPAPを不快に感じ、しばしば耐えられない。少なくとも30%の患者(最大80%)は、通常、非服従であり、したがって未治療である(Weaver,Proc Am Thorac Soc.2008 Feb 15;5(2):173-178)。成功率にばらつきのある他の治療法には、口腔装置(10%)及び手術(5%)が含まれるが、どちらも一般の人々に有効であるとは考えられない。
【0020】
眠っているヒトの咽頭筋を活性化させる薬を探しても期待外れだった。セロトニン再取り込み阻害薬、三環系抗うつ薬、鎮静薬などの薬剤は、すべてヒトで試験され、OSAの重症度を軽減する効果がないことが示されている。例えば、Proia and Hudgel,Chest.1991 Aug;100(2):416-21、Brownell et al.,N Engl J Med 1982,307:1037-1042、Sangal et al.,Sleep Med.2008 Jul;9(5):506-10.Epub 2007 Sep 27、Marshall et al.p.2008 Jun;31(6):824-31、Eckert et al.,Clin Sci (Lond).2011 Jun;120(12);505-14、Taranto-Montemurro et al.,Sleep.2017 Feb 1;40(2)を参照のこと。
【0021】
最近の研究において「アトオキシ」と呼ばれるアトモキセチンとオキシブチニンの組み合わせを就寝前に投与することにより、幅広い重症度の患者においてOSAが軽減されることが示された。アトオキシの組み合わせは、一晩の投与で、任意抽出OSA患者群において、閉塞事象の数を減少させ、一晩の酸素飽和度の低下を改善し、オトガイ舌筋の活動を向上させた。概念実証試験で収集したデータは、特定の神経伝達物質プロファイルを有する薬剤を全身投与することにより、OSAを改善または消失させることが可能であることを示した。Taranto-Montemurro,Luigi et al.“The Combination of Atomoxetine and Oxybutynin Greatly Reduces Obstructive Sleep Apnea Severity.A Randomized,Placebo-controlled,Double-Blind Crossover Trial.”American journal of respiratory and critical care medicine vol.199,10(2019):1267-1276を参照のこと。
【0022】
睡眠時無呼吸のような咽頭気道の虚脱に関連する疾患を治療するためのさらなる治療法の必要性が依然として存在する。
【0023】
治療方法
【0024】
本明細書に記載の方法は、睡眠中の咽頭気道筋の虚脱に関連する疾患の治療方法を含む。ある実施形態において、当該疾患は、睡眠時無呼吸(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA))またはいびき(例えば、単純性いびき症)である。一般に、本方法は、当該技術分野において知られておりかつ/または本明細書に記載されている、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及びミネラルコルチコイド拮抗薬、ならびに必要に応じてムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を、治療上有効な量で、治療を必要としている対象または治療を必要としていると判定された対象に投与することを含む。ある実施形態において、本方法は、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩及びスピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩を、さらに必要に応じてオキシブチニン(例えば(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩を、治療上有効な量で、治療を必要としている対象または治療を必要としていると判定された対象に投与することを含む。
【0025】
本文脈で用いられる「治療」という用語は、咽頭気道の虚脱に関連する疾患の少なくとも1つの症状を改善することを意味する。多くの場合、睡眠中の咽頭気道の虚脱は、いびき及び/または呼吸の中断(無呼吸または低呼吸)、睡眠からの覚醒、及び酸素供給の減少(低酸素血症)をもたらす。したがって、治療により、いびき、無呼吸/低呼吸、睡眠の断片化、及び低酸素血症の減少をもたらすことができる。OSAを有する対象の治療のために、治療上有効な量の本明細書に記載の化合物を投与すると、AHIの減少をもたらす可能性がある。OSA疾患及び症状の測定は、例えば、睡眠ポリグラフ検査(PSG)により行うことができる。
【0026】
一般に、化合物の「有効量」とは、所望の生物学的応答を引き出すのに十分な量、例えば、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を治療するのに十分な量、例えば、睡眠時無呼吸またはいびきを治療するのに十分な量を指す。当業者に明らかなとおり、本発明の化合物の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、治療される疾患、投与様式、及び対象の年齢、体重、健康状態などの因子によって変わる可能性がある。有効量は、治療的処置及び予防的処置を包含する。
【0027】
有効量は、1回以上の投与、塗布または投薬で提供することができる。組成物は、1日1回以上から1週間に1回以上(1日おきに1回を含む)投与することができる。ある実施形態において、組成物は毎日投与される。ある実施形態において、組成物は、睡眠時間の前、例えば、睡眠時間の直前または睡眠時間の15~60分前に毎日投与される。当業者に明らかなとおり、対象の効果的な治療に必要な用量及びタイミングに影響し得る要因があり、そのような要因には、疾患または障害の重篤度、以前の治療、対象の一般的な健康状態及び/または年齢、ならびに存在するその他の疾患があるが、これらに限定されるものではない。さらに、本明細書に記載される治療上有効な量の治療化合物による対象の治療は、単一の治療または一連の複数の治療を含み得る。
【0028】
特に断りがない限り、本明細書で用いられる、化合物の「治療上有効な量」という用語は、病気、障害、または疾患の治療において治療上有益な効果をもたらすのに十分な量、または病気、障害または疾患に伴う1つ以上の症状について進行を遅らせるまたはできるだけ抑えるのに十分な量を指す。治療上有効な量の化合物とは、病気、障害または疾患の治療において、単独でまたは他の療法と組み合わせて治療上有益な効果をもたらす量の治療剤を意味する。「治療上有効な量」という用語は、治療全体を改善する量、病気または疾患の症状または原因を減らしまたは取り除く量、あるいは別の治療薬の治療効果を増強する量を包含し得る。
【0029】
本明細書で用いられる「対象」及び「患者」という用語は、同義的に使用される。「対象」及び「患者」という用語は、動物(例えば、ニワトリ、ウズラ、七面鳥などの鳥類、または哺乳動物)、具体的には、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌ、及びマウス)及び霊長類(例えば、サル、チンパンジー、及びヒト)を含む「哺乳動物」を指し、より具体的にはヒトを指す。一実施形態において、当該対象は、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、またはヒツジ)、ペット(例えば、イヌ、ネコ、モルモット、またはウサギ)などの非ヒト動物である。好ましい実施形態において、当該対象はヒトである。
【0030】
本明細書で用いられる「薬学的に許容される」という用語は、米国連邦政府もしくは州政府の規制機関、または米国以外の国の対応する機関によって承認されているかまたは承認可能であることを意味するか、あるいは、動物、より具体的にはヒトでの使用のために米国薬局方または他の一般に承認されている薬局方に記載されていることを意味する。
【0031】
本明細書で用いられる「単位剤形」という用語は、化合物が対象に投与される形態を指すものと定義される。具体的には、単位剤形は、例えば、丸剤、カプセル剤、または錠剤であり得る。ある実施形態において、単位剤形はカプセル剤である。
【0032】
本明細書で用いられる「固体剤形」という用語は、固体の医薬投与形態(複数可)を意味し、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、小袋剤、再構成可能な粉末剤、乾燥粉末吸入剤及びチュアブル剤がある。
【0033】
本明細書に開示された化合物について、単一の立体化学的異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、シス/トランス配座異性体、及び回転異性体、ならびにそれらのラセミ混合物及び非ラセミ混合物は、本発明の範囲内である。特に断りがない限り、本明細書に開示された化合物のすべての互変異性型は、本発明の範囲内である。
【0034】
アトモキセチンは、化学名が(-)-N-メチル-3-フェニル-3-(o-トリルオキシ)-プロピルアミンである医薬物質及びその医薬塩の一般名である。アトモキセチンは、X線回折により決定されるR(-)異性体である。ある実施形態において、アトモキセチンは、アトモキセチン塩酸塩であってもよい。
【0035】
スピロノラクトンは、化学名が7α-アセチルチオ-17α-ヒドロキシ-3-オキソプレグン-4-エン-21-カルボン酸γ-ラクトンまたはS-[(7R,8R,9S,10R,13S,14S,17R)-10,13-ジメチル-3,5’-ジオキソスピロ[2,6,7,8,9,11,12,14,15,16-デカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17,2’-オキソラン]-7-イル]エタンチオエートである医薬物質及びその医薬塩の一般名である。
【0036】
オキシブチニンは、化学名が4-ジエチルアミノ-2-ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートまたは4-(ジエチルアミノ)ブタ-2-イニル2-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセテートである医薬物質及びその薬学的に許容される塩の一般名である。種々の実施形態において、オキシブチニンは、R-エナンチオマーとS-エナンチオマーのラセミ混合物、または単離されたエナンチオマー、例えばR-エナンチオマーであってもよい。種々の実施形態において、オキシブチニンは、塩化オキシブチニンまたは塩化(R)-オキシブチニンであってもよい。
【0037】
ある実施形態において、本方法は、約20mg~約200mgの用量のアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩(または別のNRIの相当用量)を投与することを含む。ある実施形態において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約25mg~約100mgである。ある実施形態において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約40mg~約80mgである。ある実施形態において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約20mg~約50mgである。ある実施形態において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約50mg~約100mgである。ある実施形態において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約40mgである。ある実施形態において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約80mgである。
【0038】
ある実施形態において、本方法は、約10mg~約200mgの用量のスピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩(または別のミネラルコルチコイド拮抗薬の相当用量)を投与することを含む。ある実施形態において、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約15mg~約100mgである。ある実施形態において、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約20mg~約80mgである。ある実施形態において、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約20mg~約40mgである。ある実施形態において、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約40mg~約80mgである。ある実施形態において、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約25mgである。ある実施形態において、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約50mgである。
【0039】
オキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩(または別のMRA)を投与することを含む方法において、オキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約1mg~約25mg(または別のMRAのその相当用量)とすることができ、あるいは、ある実施形態において、約2mg~約15mgとすることができる。ある実施形態において、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約2.5mg~約10mg、例えば、5mgである。ある実施形態において、(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約1mg~約5mg、例えば、2.5mgである。ある実施形態において、オキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約1mg~約10mgである。
【0040】
ある実施形態において、本方法は、40mgのアトモキセチン塩酸塩及び25mgのスピロノラクトンを投与することを含む。ある実施形態において、本方法は、40mgのアトモキセチン塩酸塩及び50mgのスピロノラクトンを投与することを含む。ある実施形態において、本方法は、80mgのアトモキセチン塩酸塩及び25mgのスピロノラクトンを投与することを含む。ある実施形態において、本方法は、80mgのアトモキセチン塩酸塩及び50mgのスピロノラクトンを投与することを含む。
【0041】
ある実施形態において、本方法は、(iv)利尿薬である追加の有効薬剤を投与することをさらに含む。当該(iv)利尿薬は、MRAと併用してもしなくてもよい。ある実施態様において、当該利尿薬は、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロルタリドン、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリアムテレン、フロセミド、エタクリン酸、メトラゾン、ブメタニド、インダパミド、アミロリド、及びトルセミド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0042】
ある実施形態において、当該対象は高血圧を有する。ある実施形態において、当該対象は、体液うっ滞状態にある。例えば、当該体液うっ滞状態は、高血圧、心不全、または末期腎不全に起因し得る。
【0043】
医薬組成物
【0044】
また、医薬組成物が本明細書において提供され、当該医薬組成物は、有効成分としてノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及びミネラルコルチコイド拮抗薬を含み、さらに有効成分としてムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を含んでもよい。当該有効成分は、単一の組成物中に存在してもよく、あるいは別々の組成物中に存在してもよい。ある実施形態において、当該医薬組成物は、有効成分として、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩及びスピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩を含むものであり、さらに有効成分としてオキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。
【0045】
具体的なノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)には、選択的NRI、例えば、アメダリン(UK-3540-1)、アトモキセチン(ストラテラ(Strattera))、CP-39,332、ダレダリン(UK-3557-15)、エディボキセチン(LY-2216684)、エスレボキセチン、ロルタラミン(LM-1404)、ニソキセチン(LY-94,939)、レボキセチン(エドロナックス(Edronax)、ベストラ(Vestra))、タロプラム(Lu 3-010)、タルスプラム(Lu 5-005)、タンダミン(AY-23,946)、及びビロキサジン(ビバラン(Vivalan))、ならびに非選択的NRI、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン(GW-320659)、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン(GW-353,162)、タペンタドール(ヌシンタ(Nucynta))、テニロキサジン(ルセラン(Lucelan)、メタトーン(Metatone))及びベンラファキシン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩がある。
【0046】
ある実施形態において、当該NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である。
【0047】
具体的なミネラルコルチコイド拮抗薬には、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン、フィネレノン、メクスレノン、カンレノ酸、ドロスピレノン、プロレノン、アパラレノン、及びエサキセレノン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩がある。
【0048】
ある実施形態において、当該ミネラルコルチコイド拮抗薬は、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩である。
【0049】
具体的なムスカリン受容体拮抗薬(MRA)には、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩があり、これらはM2受容体に対して活性を有する。他の具体的な抗ムスカリン薬には、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジサイクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾラート、メチキセン、メトスコポラミン、オキシフェンサイクリミン、オキシフェノニウム、プロサイクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジル、ならびにそれらの薬学的に許容される塩がある。
【0050】
ある実施形態において、当該ムスカリン受容体拮抗薬は、オキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニン、またはその薬学的に許容される塩である。本明細書で用いられる「(R)-オキシブチニン」という用語は、オキシブチニンの他の立体異性体を実質的に含まない(R)-オキシブチニン立体異性体を指す。ある実施形態において、当該ムスカリン受容体拮抗薬は、フェソテロジンである。
【0051】
ある実施形態において、当該医薬組成物は、(iv)利尿薬である追加の有効薬剤をさらに含む。(iv)利尿薬を含む当該組成物は、MRAを含んでも含まなくてもよい。ある実施形態において、当該利尿薬は、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロルタリドン、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリアムテレン、フロセミド、エタクリン酸、メトラゾン、ブメタニド、インダパミド、アミロリド、及びトルセミド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0052】
医薬組成物は、典型的に、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」という用語は、生理食塩水、溶媒、分散媒、希釈剤、充填剤、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤など、医薬の投与に適合するものを包含する。
【0053】
本発明に用いられる有効成分は、薬学的に許容される塩として提供してもよい。例えば、ある実施形態において、オキシブチニンは塩化オキシブチニンである。ある実施形態において、(R)-オキシブチニンは、塩化(R)-オキシブチニンである。ある実施形態において、アトモキセチンはアトモキセチン塩酸塩である。
【0054】
医薬組成物は、典型的に、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の具体例には、全身投与、経口投与または経皮投与が含まれる。
【0055】
適切な医薬組成物を製剤化する方法は、当該技術分野で知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,2005、及びDrugs and the Pharmaceutical Sciencesシリーズの書籍であるa Series of Textbooks and Monographs(Dekker,NY)を参照のこと。例えば、経口組成物は一般的に不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療投与の目的のために、有効化合物(複数可)を賦形剤と合わせて丸剤、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤(例えばゼラチンカプセル剤)の形態で使用することができる。また、経口組成物は、流体の担体を使用して調製することもできる。ある実施形態において、本発明による組成物は、単位剤形であってもよい。ある実施形態において、本発明による組成物は、固体剤形、例えば、錠剤またはカプセル剤であってもよい。
【0056】
薬学的に適合性の結合剤及び/または添加剤が、当該組成物の一部として含まれていてもよい。当該錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分またはそれに類似する性質を有する化合物のいずれかを含んでもよい。微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなどの結合剤、デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)またはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes)などの滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料などの香味剤。
【0057】
本明細書に記載される化合物の全身投与は、経皮的手段、例えば、皮膚に適用する貼付剤、ゲル剤、またはローション剤を使用して行うこともできる。経皮投与の場合、表皮バリアの透過に適切な浸透剤を製剤に使用することができる。このような浸透剤は、当技術分野で一般に知られている。例えば、経皮投与の場合、有効化合物は、当該技術分野で一般的に知られているように、軟膏剤、膏薬、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化することができる。ゲル剤及び/またはローション剤は、個々の小袋で、または毎日使用される定量ポンプを介して提供することができる。例えば、Cohn et al.,Ther Adv Urol.2016 Apr;8(2):83-90を参照のこと。
【0058】
一実施形態において、治療用化合物は、それが体内から急速に排除されるのを防ぐような担体、例えば、制御放出製剤(インプラントやマイクロカプセル化送達システムを含む)を用いて製剤化される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸など、生分解性で生体適合性のあるポリマーを使用することができる。このような製剤は、標準的な技術を用いて調製することができ、あるいは、例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として用いることができる。これは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に知られた方法に従って調製することができる。
【0059】
当該医薬組成物は、本明細書に記載の方法において投与または使用するための説明書とともに、容器、パック、またはディスペンサーに入れることができる。
【0060】
ある実施形態において、当該医薬組成物は、咽頭気道の虚脱に関連する疾患の治療用である。ある実施形態において、当該疾患は、睡眠時無呼吸(例えば、OSA)またはいびき(例えば、単純性いびき症)である。ある実施形態において、睡眠時無呼吸(例えば、OSA)またはいびき(例えば、単純性いびき症)の治療用の医薬組成物が本明細書において提供され、当該医薬組成物は、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩及びスピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩を含むものであり、さらにオキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩を含んでもよいものである。
【0061】
キット及び組み合わせ
【0062】
さらにキットが本明細書において提供され、当該キットは、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及び(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬を含むものであり、さらに(iii)ムスカリン受容体拮抗薬を含んでもよいものである。例えば、当該キットは、それぞれ単一の有効成分を含む複数の医薬組成物を別々に含んでもよい。当該キットは、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用とすることができる。キットの様々な実施形態は、本明細書に記載される詳細な説明から明らかである。ある実施形態において、当該キットは、利尿薬(例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロルタリドン、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリアムテレン、フロセミド、エタクリン酸、メトラゾン、ブメタニド、インダパミド、アミロリド、もしくはトルセミド、またはそれらの薬学的に許容される塩)である追加の有効薬剤をさらに含む。
【0063】
また、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用である、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)及びミネラルコルチコイド拮抗薬、ならびに必要に応じたムスカリン受容体拮抗薬が本明細書において提供される。さらに、咽頭気道の虚脱に関連する疾患を有する対象の治療用である、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)と、(ii)ミネラルコルチコイド拮抗薬と、必要に応じた(iii)ムスカリン受容体拮抗薬との治療的組み合わせが本明細書において提供される。組み合わせ及び治療的組み合わせの様々な実施形態は、本明細書に記載される詳細な説明から明らかである。本発明のキット及び組み合わせの、ある実施形態において、当該NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、当該ミネラルコルチコイド拮抗薬は、スピロノラクトンまたはその薬学的に許容される塩であり、かつ当該MRAは、それが使用される場合、オキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、当該組み合わせまたは治療的組み合わせは、利尿薬(例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロルタリドン、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリアムテレン、フロセミド、エタクリン酸、メトラゾン、ブメタニド、インダパミド、アミロリド、もしくはトルセミドまたはそれらの薬学的に受容可能な塩)である追加の有効薬剤をさらに含む。
【実施例】
【0064】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、以下の実施例は特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
実施例1
高血圧を有するOSA患者におけるアトモキセチン+スピロノラクトン対アトモキセチンの有効性及び安全性を評価するための無作為化二重盲検2期反復投与クロスオーバー試験
【0066】
実施例1の試験は、中等度から重度のOSA患者を対象とした、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、2期、クロスオーバー試験である。この試験は、高血圧とOSAの両方を有する集団において、アトモキセチンにスピロノラクトンを追加することにより有効性が増加するかどうかを評価するように設計されている。スクリーニング検診と睡眠ポリグラフ(PSG)検査が実施され、各参加者が試験参加基準を満たすことが確認される。その後、各参加者に、ランダムに以下からなる組み合わせを、10夜、摂取してもらう。
アトモキセチン40mg+スピロノラクトン25mgの3日間の低用量導入期間ののち、アトモキセチン80mg+スピロノラクトン50mgの7日間の全用量投与期間。
アトモキセチン40mg+スピロノラクトンに対応するプラセボの3日間の低用量導入期間ののち、アトモキセチン80mg+スピロノラクトンに対応するプラセボの7日間の全用量投与期間。
【0067】
各治療期間の治療9日目(全用量投与6日目)に自宅でウォッチパット(WatchPAT)検査と24時間血圧測定が実施される。各治療期間の治療10日目(全用量投与7日目)に入院でのPSG検査とウォッチパット検査が実施される。2つの治療期間の間には、少なくとも3週間の休薬期間(ウォッシュアウト期間)が設けられる。
【0068】
【0069】
参加基準をすべて満たした患者は、以下の実験的治療を10日間受ける群に、無作為に振り分けられる。10日間のうち、9日間は自宅で投与が行われ、最後の1日は、PSG検査の夜の前に検査室で投与が行われる。
アトモキセチン40mg+スピロノラクトン25mgの3日間の低用量導入期間ののち、アトモキセチン80mg+スピロノラクトン50mgの7日間の全用量投与期間。
アトモキセチン40mg+スピロノラクトンに対応するプラセボの3日間の低用量導入期間ののち、アトモキセチン80mg+スピロノラクトンに対応するプラセボの7日間の全用量投与期間。
【0070】
無作為化後、訪問2回目(V2)の際、1回目の投薬期間の試験薬が患者に渡される。試験薬は、3日間の導入用量分と7日間の全用量分とからなる。訪問2回目の際、ウォッチパットと携帯型血圧計も同様に患者に渡される。訪問3回目(V3)の際、未使用の試験薬があればそれと、ウォッチパット及び血圧計を返却してもらう。訪問3回目の際、2回目の投薬期間のために、自宅用の試験薬及び装置類が同様に渡され、訪問4回目(V4)の際、同様に研究施設に返却してもらう。
【0071】
試験治療薬の投与は、自宅での夜間と入院PSG検査の夜間の両方において、毎晩、患者の通常の就寝時刻に行われる。投薬9日目に、在宅ウォッチパット検査と24時間血圧測定が行われ、研究施設の職員がビデオ通話(ビデオ通話が不可能な場合は音声)で患者に連絡し、装置の適切な使用を支援・確認する。ウォッチパットは、朝、患者が外すが、24時間血圧計は、患者がPSG検査の夜(訪問3回目と4回目)診療所に到着するまで使用されている。
【0072】
クロスオーバー期間中、各入院患者のPSG検査の夜、ESS、PGI-S、SAQLI、及びPROMISの装置による測定が行われる。各PSG検査の夕方には、座位血圧(3回)、脈拍、呼吸数を含むバイタルサイン及び体重も測定される。各治療期間は、少なくとも3週間の休薬期間で区切られる。
【0073】
【0074】
試験治療では、アトモキセチンとスピロノラクトンまたはスピロノラクトンに対応するプラセボとの錠剤を、参加者の就寝予定時刻の直前に服用してもらう。スピロノラクトンとプラセボとの錠剤、ならびにアトモキセチンの錠剤は、マスキングのためにオーバーカプセル化される。
【表2】
【0075】
試験の手順及び時期は、以下の試験スケジュール(SOA)にまとめられている。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0076】
試験中、以下の評価が行われる。
【0077】
睡眠ポリグラフ検査
標準的な一晩のPSG記録とデータ解釈が、米国睡眠医学会(AASM)の採点マニュアルに従って実施される。参加者に、標準的なPSG電極が装着される。消灯時刻は、参加者の習慣的なスケジュールに従って設定され、PSG検査の夜を通して一定に保たれる。参加者には8時間の就寝時間が与えられる。すべてのPSG検査(スクリーニングPSG検査を含む)は、治療の割り付けに対してブラインドがかけられた現場のPSG検査技師によって採点される。採点は米国睡眠医学会マニュアルの採点基準に従って行われる。
【0078】
ウォッチパット(WatchPAT)検査
標準的なウォッチパットによる記録が、OSAである成人のためのAASM HSATクリニカルプラクティスガイドラインに従って、PSG V2、V3、V4において自宅及び検査室内で実施される。参加者は、標準的なウォッチパット装置とセンサー類(指プローブ及びいびき/体位センサー)を装着する。参加者は自宅で通常通り睡眠をとり、検査室ではフルPSGのための装置も装着する。ウォッチパット検査すべての採点は、治療の割り付けに対してブラインドがかけられた資格を有する現場の検査技師によって行われる。採点は、検証されたエビデンスに基づくガイドラインに従って行われる。ウォッチパット検査は、末梢動脈信号(PAT)を利用する睡眠時無呼吸検査である。ウォッチパット検査では、3点接触により最大7チャネル(PAT信号、心拍数、オキシメトリ、アクチグラフィ、体位、いびき、及び胸部運動)が測定される。ウォッチパット検査は、真の睡眠時間と睡眠ステージ分類に基づいて、AHI、AHIc、RDI、及びODIを提供する。ウォッチパット検査は、臨床的に検証されており、PSGとの相関性は89%である。ウォッチパット(WatchPAT)は、Itamar Medical Ltd.の登録商標である。
【0079】
その他の評価には、安全性、身体検査、バイタルサイン、心電図、臨床的安全性の検査室評価、有害事象、及び重篤有害事象が含まれる。
【0080】
その他の実施形態
本発明の説明を詳細な説明と併せて行ってきたが、当然のことながら、これまでの説明は、本発明の範囲を限定するものではなく、具体的に説明するものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に規定されている。以下の特許請求の範囲には、その他の態様、利点、及び変更も包含される。
【国際調査報告】