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特表2024-511092TMEM173saRNA組成物及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】TMEM173saRNA組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
A61P35/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P15/08
A61K31/7105
A61K31/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558251
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 GB2022050757
(87)【国際公開番号】W WO2022200810
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/166,390
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/318,927
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512325200
【氏名又は名称】ミナ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】タン、チュン ピン
(72)【発明者】
【氏名】シニガーリャ、ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス マルティネス、バレンティン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン、ブリッド
(72)【発明者】
【氏名】セトロム、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヘグレ、シブ アニタ
(72)【発明者】
【氏名】デバッカー、アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB26
(57)【要約】
本開示は、標的遺伝子の発現を上方制御するのに有用なsaRNA、及びそのsaRNAを含む治療用組成物に関し、標的遺伝子はTMEM173である。上記saRNA及び治療用組成物の使用方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的遺伝子の発現を上方制御する合成単離低分子活性化RNA(saRNA)であって、前記標的遺伝子はTMEM173であり、
前記saRNAは標的遺伝子の標的配列に少なくとも80%相補的なアンチセンス鎖を含み、前記標的配列は配列番号2~15からなる群から選択され、
前記アンチセンス鎖は14~30ヌクレオチドを有する、saRNA。
【請求項2】
前記アンチセンス鎖は配列番号30~43から選択される配列を含む、請求項1に記載のsaRNA。
【請求項3】
前記アンチセンス鎖は3’オーバーハングを含む、請求項2に記載のsaRNA。
【請求項4】
前記3’オーバーハングは、uu、UU、又はUUUである、請求項3に記載のsaRNA。
【請求項5】
前記アンチセンス鎖は配列番号69~82から選択される配列を含む、請求項4に記載のsaRNA。
【請求項6】
前記saRNAは二本鎖であり、センス鎖をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のsaRNA。
【請求項7】
前記センス鎖は配列番号16~29から選択される配列を含む、請求項6に記載のsaRNA。
【請求項8】
前記センス鎖は3’オーバーハング及び/又は5’オーバーハングを含む、請求項7に記載のsaRNA。
【請求項9】
前記3’オーバーハングは、uu、UU、又はUUUである、請求項8に記載のsaRNA。
【請求項10】
前記5’オーバーハングは、dT、ddT、inv ddT又はinvAbである、請求項8に記載のsaRNA。
【請求項11】
前記センス鎖は、配列番号44~68から選択される配列を含む、請求項8に記載のsaRNA。
【請求項12】
少なくとも1つの修飾を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のsaRNA。
【請求項13】
前記saRNAは、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1又はTMEM173-Pr-70-m1-emod51である、請求項1に記載のsaRNA。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のsaRNA及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
標的遺伝子の発現を上方制御する方法であって、前記標的遺伝子はTMEM173であり、請求項1~13のいずれか一項に記載のsaRNAを投与することを含む、方法。
【請求項16】
前記標的遺伝子の発現は、少なくとも30%、40%、又は50%上昇する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
がんを治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって、治療有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載のsaRNA又は請求項14に記載の医薬組成物を、前記必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項18】
前記がんは固形腫瘍である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんは、肝細胞がん、膵臓がん、又は卵巣がんである、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、電子形式の配列表とともに提出されている。2058_1034PCT_SL.txtというタイトルで提出された配列表は、2022年3月23日に作成され、サイズは34,380バイトである。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野
本開示は、オリゴヌクレオチド、具体的にはsaRNA、遺伝子発現を調節するための組成物、及び診断及び治療用途における前記組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、小さい二本鎖RNAが、遺伝子プロモーターと重複するncRNAを標的とすることによって遺伝子発現を増加させることが発見された(非特許文献1、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。何らかの機構によって標的遺伝子の発現の上方制御をもたらす短いRNAは、短い活性化RNA又は低分子活性化RNA(saRNA)と呼ばれる。
【0004】
多くの固形がんは、機能不全に陥った免疫微小環境を含む。外来病原体に対する免疫応答を開始するモジュレーターは、腫瘍に対する生産的応答を誘導するための有望な治療薬となる可能性がある。saRNAによる免疫刺激遺伝子の標的とする調節のための組成物及び方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Janowski et al.,Nature Chemical Biology,vol.3:166-173(2007)
【発明の概要】
【0006】
開示内容の概要
本開示は、標的遺伝子の発現を上方制御する合成単離低分子活性化RNA(saRNA)を提供し、前記標的遺伝子はTMEM173(STING)である。いくつかの実施形態では、saRNAは標的遺伝子の標的配列上の領域に少なくとも80%相補的なアンチセンス鎖を含み、前記標的配列は配列番号2~15からなる群から選択され、前記アンチセンス鎖は14~30ヌクレオチドを有する。そのようなsaRNAを含む医薬組成物、キット、及びデバイスも提供される。
【0007】
本開示はまた、対象における標的遺伝子の発現を上方制御する方法を提供し、前記標的遺伝子はTMEM173(STING)である。免疫シグナル伝達経路を調節する方法、及びTMEM173に関連する疾患(例えば、がんなどであるがこれに限定されない)を治療する方法も提供される。この方法は、本開示のsaRNAを対象に投与することを含む。
【0008】
本開示の様々な実施形態の詳細は、以下で説明される。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
前述の及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に示されるように、本開示の特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面において、同様の参照符号は異なる図面全体にわたって同じ部分を指す。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに本開示の様々な実施形態の原理を示すことに重点が置かれている。
図1】本開示のsaRNAの機能に関与する核酸部分間の関係を示す概略図である。
図2】TMEM173-saRNAで処理したHepG2細胞におけるTMEM173mRNA発現を示す。
図3】TMEM173-Pr-70、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m2、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-0、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-p1、及びTMEM173-Pr-70-invAb-Se-p2で処理したHepG2細胞におけるTMEM173mRNA発現を示す。
図4】様々なTMEM173-saRNA及び対照で処理したA549細胞におけるTMEM173mRNA発現を示す。
図5図5A~5Cは、TMEM173-saRNAで処理した後のA549細胞におけるTMEM173mRNA及びTMEM173タンパク質レベルの変化を示す。
図6】TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1及びTMEM173-Pr-70-m1-emod51で処理したA549細胞におけるTMEM173mRNA発現を示す。
図7図7A~7Cは、異なる時間における様々な用量のTMEM173-saRNAでの処理後のA549細胞におけるTMEM173mRNAの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本開示は、治療目的で標的遺伝子の発現及び/又は機能を調節するための組成物、方法、及びキットを提供する。これらの組成物、方法、及びキットは、標的遺伝子の発現を上方制御する少なくとも1つのsaRNAを含む。
【0011】
I.saRNAの設計及び合成
本開示の一態様は、saRNAを設計及び合成する方法を提供する。
本開示の文脈における「低分子活性化RNA」、「短い活性化RNA」、又は「saRNA」という用語は、特定の遺伝子の発現を上方制御する、又はそれに対してプラスの効果を有する一本鎖又は二本鎖RNAを意味する。saRNAは、14~30ヌクレオチド、例えば、19、20、21、22、又は23ヌクレオチドの一本鎖であり得る。saRNAは二本鎖であってもよく、各鎖は14~30ヌクレオチド、例えば19、20、21、22、又は23ヌクレオチドを含む。この遺伝子をsaRNAの標的遺伝子と呼ぶ。本明細書において使用される場合、標的遺伝子は、コード鎖及び鋳型鎖を含む二本鎖DNAである。例えば、TMEM173遺伝子の発現を上方制御するsaRNAは「TMEM173-saRNA」と呼ばれ、TMEM173遺伝子はTMEM173-saRNAの標的遺伝子である。標的遺伝子は、関心のある任意の遺伝子であり得る。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、鋳型鎖上にプロモーター領域を有する。
【0012】
遺伝子の「上方制御」又は「活性化」とは、遺伝子の発現レベル、又は遺伝子によってコードされるポリペプチドのレベルもしくはその活性、又は、遺伝子の鋳型鎖から転写されたRNA転写物のレベルの、本開示のsaRNAの非存在下で観察されるレベルを超える上昇を意味する。本開示のsaRNAは、標的遺伝子の発現に対して直接的な上方制御効果を有し得る。
【0013】
本開示のsaRNAは、標的遺伝子の鋳型鎖及び/又は標的遺伝子もしくはmRNAによってコードされるポリペプチドから転写されるRNA転写物に対して間接的な上方制御効果を有し得る。標的遺伝子から転写されたRNA転写物を、以降、標的転写物と呼ぶ。標的転写物は、標的遺伝子のmRNAであってもよい。標的転写物はミトコンドリアに存在し得る。本開示のsaRNAは、生物学的プロセス又は生物学的活性に対して下流効果を有し得る。そのような実施形態では、第1の転写物を標的とするsaRNAは、第2の非標的転写物に対して効果(上方制御又は下方制御)を有し得る。
【0014】
標的配列
いくつかの実施形態では、saRNAは、標的遺伝子の鋳型鎖又はコード鎖上の領域に対して少なくとも80%相補的なアンチセンス鎖を含む。saRNAの鎖がハイブリダイズ又は結合する、鋳型鎖又はコード鎖上のこの領域は、「標的配列」又は「標的部位」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、標的領域はコード鎖上にある。いくつかの実施形態では、標的領域は鋳型鎖上にある。図1は、アンチセンス鎖と鋳型鎖上の標的領域との関係を示している。
【0015】
この文脈における「相補的」という用語は、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズできることを意味する。DNAのチミジンはRNAではウリジンに置き換えられており、この違いは「相補性」という用語の理解を変えるものではないことが理解される。
【0016】
saRNAのアンチセンス鎖(一本鎖又は二本鎖)は、標的配列の逆相補鎖と少なくとも80%、90%、95%、98%、99%又は100%同一であり得る。したがって、saRNAのアンチセンス鎖の逆相補体は、標的配列と高度な配列同一性を有する。標的配列は、saRNA及び/又はsaRNAの逆相補体と同じ長さ、すなわち同じ数のヌクレオチドを有し得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、標的配列は、少なくとも14かつ30未満のヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、標的配列は、19、20、21、22、又は23ヌクレオチドを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、標的配列の位置は、鋳型鎖のプロモーター領域内に位置する。
いくつかの実施形態では、標的配列は、鋳型鎖のTSS(転写開始部位)コア内に位置する。本明細書で使用される「TSSコア」又は「TSSコア配列」は、TSS(transcription start site:転写開始部位)の上流2000ヌクレオチドと下流2000ヌクレオチドとの間の領域を指す。したがって、TSSコアは4001ヌクレオチドを含み、TSSはTSSコア配列の5’末端から2001位に位置する。本明細書で使用される「転写開始部位」(TSS)という用語は、転写開始位置に対応する、又は転写開始位置をマークする遺伝子の鋳型鎖上のヌクレオチドを意味する。TSSは、遺伝子の鋳型鎖上のプロモーター領域内に位置し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSの上流1000ヌクレオチドと下流1000ヌクレオチドとの間に位置する。
いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSの上流500ヌクレオチドと下流500ヌクレオチドとの間に位置する。
【0020】
いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSの上流250ヌクレオチドと下流250ヌクレオチドとの間に位置する。
いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSの上流の100ヌクレオチドと下流の100ヌクレオチドとの間に位置する。
【0021】
いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコア内のTSSの上流に位置する。標的配列は、TSSの上流2000ヌクレオチド未満、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、又は100ヌクレオチド未満であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコア内のTSSの下流に位置する。標的配列は、TSSの下流2000ヌクレオチド未満、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、又は100ヌクレオチド未満であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコアのTSSの周囲+/-50ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコアのTSSと実質的に重複する。いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコアのTSSで始まるか、又はTSSで終わる。いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコアのTSSと、上流方向又は下流方向のいずれかに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19ヌクレオチドだけ重複する。
【0024】
鋳型鎖上の標的配列の位置は、標的配列の5’末端の位置によって定義される。標的配列の5’末端はTSSコアの任意の位置にあってもよく、標的配列はTSSコアの1位から4001位までから選択される任意の位置で開始してもよい。本明細書で参照すると、標的配列の5’末端がTSSコアの1位から2000位の間に位置する場合、標的配列はTSSの上流にあるとみなされ、標的配列の5’末端が2002位から4001までの場合、標的配列はTSSの下流にあるとみなされる。標的配列の5’末端がヌクレオチド2001位にある場合、標的配列はTSS中心配列であるとみなされ、TSSの上流でも下流でもない。
【0025】
さらなる参考として、例えば、標的配列の5’末端がTSSコアの1600位にある場合、すなわち、それがTSSコアの1600番目のヌクレオチドである場合、標的配列はTSSコアの1600位から始まり、TSSの上流にあると考えられる。
【0026】
saRNA設計
一実施形態では、本開示のsaRNAは一本鎖saRNAである。一本鎖saRNAは、少なくとも14ヌクレオチド長、又は少なくとも18ヌクレオチド長、例えば、19、20、21、22もしくは23ヌクレオチド長であり得る。なぜなら、この長さを超えるオリゴヌクレオチド二本鎖は、インターフェロン応答を誘導するリスクを高める可能性があるからである。好ましくは、一本鎖saRNAの長さは30ヌクレオチド未満である。いくつかの実施形態では、一本鎖saRNAの長さは19~25ヌクレオチドである。一実施形態では、一本鎖saRNAは、正確に19ヌクレオチドの長さであり得る。別の実施形態では、一本鎖saRNAは、正確に20ヌクレオチドの長さであり得る。別の実施形態では、一本鎖saRNAは、正確に21ヌクレオチドの長さであり得る。別の実施形態では、一本鎖saRNAは、正確に22ヌクレオチドの長さであり得る。別の実施形態では、一本鎖saRNAは、正確に23ヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、本開示の一本鎖saRNAは、少なくとも14ヌクレオチドかつ30ヌクレオチド未満の配列を含み、これは標的配列に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、99%又は100%の相補性を有する。一実施形態では、標的配列に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、99%又は100%の相補性を有する配列は、長さが少なくとも15、16、17、18又は19ヌクレオチド、又は18~22、又は19~21、又は正確に19である。
【0027】
別の実施形態では、本開示のsaRNAは、二本鎖を形成する2つの鎖を有し、一方の鎖はアンチセンス鎖又はガイド鎖である。saRNA二本鎖は二本鎖saRNAとも呼ばれる。本明細書で使用される二本鎖saRNA又はsaRNA二重鎖は、鎖間ハイブリダイゼーションが二重鎖構造の領域を形成することができる2つ以上の、好ましくは2つの鎖を含むsaRNAである。二本鎖saRNAの2本の鎖は、アンチセンス鎖又はガイド鎖、及びセンス鎖又はパッセンジャー鎖と呼ばれる。
【0028】
二重鎖の各鎖は、長さが少なくとも14ヌクレオチド、又は少なくとも18ヌクレオチド、例えば、19、20、21又は22ヌクレオチドであり得る。二重鎖は、少なくとも12ヌクレオチド、又は少なくとも15ヌクレオチド、又は少なくとも17ヌクレオチド、又は少なくとも19ヌクレオチドの長さにわたってハイブリダイズされ得る。各鎖の長さは正確に19、20、21、22、又は23ヌクレオチドであり得る。好ましくは、saRNAの各鎖の長さは30ヌクレオチド未満である。なぜなら、この長さを超えるオリゴヌクレオチド二重鎖は、インターフェロン応答を誘導するリスクを高める可能性があるからである。一実施形態では、saRNAの各鎖の長さは19~25ヌクレオチドである。saRNA二重鎖を形成する鎖は、長さが等しくても等しくなくてもよい。
【0029】
一実施形態では、本開示のsaRNAのアンチセンス鎖は、少なくとも14ヌクレオチドかつ30ヌクレオチド未満、例えば正確に19、20、21、22、又は23ヌクレオチドの長さの配列を含み、これは標的配列に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、99%又は100%の相補性を有する。一実施形態では、標的配列に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、99%又は100%の相補性を有する配列は、少なくとも15、16、17、18又は19ヌクレオチドの長さ、又は18~22、又は19~21、又は正確に19ヌクレオチドの長さである。
【0030】
アンチセンス鎖は、鋳型鎖上の標的配列と5つ以下、又は4つもしくは3つ以下、又は2つ以下、又は1つ以下のミスマッチを有し得るか、又はミスマッチを有しなくてもよい。したがって、アンチセンス鎖は鋳型鎖上の標的配列に対して高度な相補性を有する。saRNA二重鎖のセンス鎖は、鋳型鎖上の標的配列と高度な配列同一性を有する。
【0031】
saRNA二重鎖、標的遺伝子、標的遺伝子のコード鎖、標的遺伝子の鋳型鎖、標的転写物、標的配列/標的部位、及びTSSの間の関係を図1に示す。
本開示の文脈における「鎖」とは、天然に存在しないヌクレオチド又は修飾されたヌクレオチドを含むヌクレオチドの連続配列を意味する。2つ以上の鎖は、別個の分子であってもよく、又はそれぞれが別個の分子の一部を形成していてもよく、又はそれらは、例えば、ポリエチレングリコールリンカーなどのリンカーによって共有結合されていてもよい。saRNAの少なくとも1つの鎖は、標的遺伝子のガイド鎖上の領域(標的配列)に相補的であり、標的遺伝子のコード鎖上の領域と配列同一性を有する領域を含み得る。そのような鎖は、saRNA二重鎖のアンチセンス鎖又はガイド鎖と呼ばれる。saRNAのアンチセンス鎖に相補的な領域を含むsaRNAの第2の鎖は、センス鎖又はパッセンジャー鎖と呼ばれる。
【0032】
saRNA二重鎖は、少なくとも部分的に自己相補的であり、二重鎖領域を含むヘアピン構造を形成する単一分子から形成され得る。そのような場合、「鎖」という用語は、saRNAの別の内部領域に相補的なsaRNAの領域の1つを指す。saRNAのガイド鎖は、標的遺伝子の鋳型鎖上の領域内の配列(標的配列)と5つ以下、又は4つ又は3つ以下、又は2つ以下、又は1つ以下のミスマッチを有し得るか、又はミスマッチを有しない。
【0033】
いくつかの実施形態では、saRNAのパッセンジャー鎖は、ガイド鎖とのミスマッチと呼ばれる、ガイド鎖上の対応するヌクレオチドに相補的でない少なくとも1つのヌクレオチドを含み得る。ガイド鎖とのミスマッチは、ガイド鎖の優先的なローディングを促進し得る(Wu et all,PLoS ONE,vol.6(12):e28580(2011)、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。一実施形態では、ガイド鎖との少なくとも1つのミスマッチは、パッセンジャー鎖の3’末端にあり得る。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端は、ガイド鎖との1~5個のミスマッチを含み得る。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端は、ガイド鎖と2~3個のミスマッチを含み得る。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端は、ガイド鎖と6~10個のミスマッチを含み得る。
【0034】
saRNA二重鎖は、鋳型鎖上の標的配列に対してsiRNAに似た相補性、すなわち、saRNA二重鎖のガイド鎖の5’末端から2~6番目のヌクレオチドと標的配列上の領域との間の100%の相補性を有し得る。さらに、saRNAの他のヌクレオチドは、標的配列の領域に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、99%、又は100%の相補性を有し得る。例えば、saRNAのヌクレオチド7(5’末端から数えて)から3’末端までは、標的配列の領域に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、99%、又は100%の相補性を有し得る。
【0035】
この文脈における「低分子干渉RNA」又は「siRNA」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路に関与し、特定の遺伝子の発現を干渉又は阻害する、通常20~25ヌクレオチド長の二本鎖RNAを意味する。この遺伝子はsiRNAの標的遺伝子である。siRNAは通常約21ヌクレオチド長であり、2本の鎖の各末端に3’オーバーハング(例えば、2ヌクレオチド)を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、saRNAは、3’オーバーハング又はテールを形成する各鎖の3’末端に多数の不対ヌクレオチドを含み得る。各鎖の3’オーバーハングを形成する不対ヌクレオチドの数は、1~5ヌクレオチド、又は1~3ヌクレオチド、又は2ヌクレオチドの範囲であり得る。
【0037】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のsaRNAは一本鎖であってもよく、(i)標的遺伝子の鋳型鎖上の標的配列に対して少なくとも80%の相補性を有する配列;及び(ii)UU、UUU、又はmUmU(2’-OMe修飾のためのm鎖)などのウラシル残基を含み得る1~5ヌクレオチドの3’テール(オーバーハング)からなる。いくつかの実施形態では、本開示のsaRNAは二本鎖であってもよく、(i)標的遺伝子の鋳型鎖上の標的配列に対して少なくとも80%の相補性を有する第1の配列;及び(ii)1~5ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む第1の鎖;及び(i)第1の配列と二重鎖を形成する第2の配列、及び(ii)1~5ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む第2の鎖からなる。そのような3’テール(オーバーハング)は、saRNAアンチセンス鎖と標的配列との間の相補性の決定に関してミスマッチとはみなされない。本開示のsaRNAは、3’テール(オーバーハング)が存在する場合にはそれを除いて、その全長にわたって標的配列に対して相補性を有し得る。
【0038】
本開示のsaRNAは、フランキング配列を含み得る。フランキング配列は、本開示のsaRNAの3’末端又は5’末端に挿入され得る。一実施形態では、フランキング配列はmiRNAの配列であり、saRNAがmiRNA構造を有するようにし、Drosha及びDicerでプロセシングされ得る。非限定的な例では、本開示のsaRNAは2本の鎖を有し、マイクロRNA前駆体、例えば、miR-30骨格フランキング配列にクローニングされる。
【0039】
本開示のsaRNAは、制限酵素基質又は認識配列を含み得る。制限酵素認識配列は、本開示のsaRNAの3’末端又は5’末端にあり得る。制限酵素の非限定的な例としては、NotI及びAscIが挙げられる。
【0040】
標的遺伝子及びsaRNA
上述したように、saRNAのアンチセンス鎖は、標的配列の逆相補鎖と高度な配列同一性を有する。「標的配列に相補的」の代わりに、本開示のsaRNAのアンチセンス鎖は、標的遺伝子のコード鎖上の領域に対して「同一性」を有すると定義することもできる。したがって、標的遺伝子のゲノム配列を使用してsaRNAを設計することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示のsaRNAの標的遺伝子はTMEM173(STING)である。標的遺伝子、標的遺伝子によってコードされるタンパク質及びmRNA、ならびに標的遺伝子のTSSコアの配列が表1に提供される。
【0042】
【表1】
【0043】
表2は、saRNAの標的配列、標的配列のゲノム位置、及び3’オーバーハングのないsaRNAの相対位置を示している。表2では、標的配列は標的遺伝子の鋳型鎖上の領域として定義される。相対位置は、標的配列の5’末端からTSSまでの距離である。負の数はTSSの上流の位置を表し、正の数はTSSの下流の位置を表す。
【0044】
【表2】
【0045】
saRNAは一本鎖であってもよく、14~30のヌクレオチドを含み得る。一本鎖saRNAの配列は、表3のアンチセンス鎖の配列から選択される配列と少なくとも60%、70%、80%又は90%の同一性を有し得る。一実施形態では、一本鎖saRNAは、表3のアンチセンス鎖の配列から選択される配列を含む。一実施形態では、一本鎖saRNAは3’テール(オーバーハング)を有し得る。3’テール(オーバーハング)を有する一本鎖saRNAの配列は、表4のアンチセンス鎖の配列から選択される配列と少なくとも60%、70%、80%又は90%の同一性を有し得る。一実施形態では、一本鎖saRNAは、表4のアンチセンス鎖の配列から選択される配列を含む。
【0046】
saRNAは二本鎖であってもよい。2本の鎖は二重鎖を形成し、各鎖は14~30個のヌクレオチドを含む。二本鎖saRNAの第1の鎖は、表3のアンチセンス鎖の配列から選択される配列と少なくとも60%、70%、80%又は90%の同一性を有し得る。一実施形態では、二本鎖saRNAの第1鎖は、表3のアンチセンス鎖の配列から選択される配列を含む。二本鎖saRNAの第2の鎖は、表3のセンス鎖の配列から選択される配列と少なくとも60%、70%、80%又は90%の同一性を有し得る。一実施形態では、二本鎖saRNAの第2の鎖は、表3のセンス鎖の配列から選択される配列を含む。一実施形態では、二本鎖saRNAは、各鎖上に3’オーバーハングを有し得る。二本鎖saRNAの第1の鎖は、表4のアンチセンス鎖の配列から選択される配列と少なくとも60%、70%、80%又は90%の同一性を有し得る。一実施形態では、二本鎖saRNAの第1の鎖は、表4のアンチセンス鎖の配列から選択される配列を含む。二本鎖saRNAの第2の鎖は、表4のセンス鎖の配列から選択される配列と少なくとも60%、70%、80%又は90%の同一性を有し得る。一実施形態では、二本鎖saRNAの第2の鎖は、表4のセンス鎖の配列から選択される配列を含む。
【0047】
saRNAは修飾されていても修飾されていなくてもよい。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4-1】
【0050】
【表4-2】
【0051】
2011年6月23日に出願されたUS2013/0164846(saRNAアルゴリズム)に開示された方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)も、saRNAを設計するために使用され得る。saRNAの設計は、Coreyらの米国特許第8,324,181号及び米国特許第7,709,566号、Liらの米国特許出願公開第2010/0210707号、及びVoutila et al.,Mol Ther Nucleic Acids,vol.1,e35(2012)にも開示されており、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
本開示のsaRNAは、任意の適切な方法、例えば合成により、又は当業者に周知の標準的な分子生物学技術を使用した細胞内での発現により生成され得る。例えば、本開示のsaRNAは、当技術分野で知られている方法を使用して、化学的に合成することも、組換えによって生成することもできる。
【0053】
二機能性オリゴヌクレオチド
二機能性又は二重機能性オリゴヌクレオチド、例えば、saRNAは、第1の遺伝子の発現を上方制御し、少なくとも1つの第2の遺伝子の発現を下方制御するように設計され得る。二重機能性オリゴヌクレオチドの一方の鎖は第1の遺伝子の発現を活性化し、他方の鎖は第2の遺伝子の発現を阻害する。各鎖は、ダイサー基質配列をさらに含み得る。
【0054】
saRNAの化学修飾
本明細書では、saRNAにおいて、「修飾」又は必要に応じて「修飾された」という用語は、A、G、U又はCリボヌクレオチドに関する構造的及び/又は化学的修飾を指す。本開示のsaRNA中のヌクレオチドは、非天然ヌクレオチド又は化学合成ヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドを含み得る。本開示のsaRNAは、糖、核酸塩基、又はヌクレオシド間結合(例えば、結合しているリン酸/ホスホジエステル結合/ホスホジエステル主鎖)などに対する任意の有用な修飾を含み得る。ピリミジン核酸塩基の1つ以上の原子は、任意選択で置換されたアミノ、任意選択で置換されたチオール、任意選択で置換されたアルキル(例えば、メチル又はエチル)、又はハロ(例えば、クロロ又はフルオロ)で置換されてもよい。特定の実施形態では、修飾(例えば、1つ以上の修飾)は、糖及びヌクレオシド間結合のそれぞれに存在する。本開示による修飾は、リボ核酸(RNA)からデオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)又はそれらのハイブリッドの修飾であり得る。非限定的な例では、Uの2’-OHは2’-OMeで置換される。
【0055】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、本明細書に記載される少なくとも1つの修飾を含み得る。
別の実施形態では、saRNAはsaRNA二重鎖であり、センス鎖及びアンチセンス配列は独立して少なくとも1つの修飾を含み得る。非限定的な例として、センス配列は修飾を含んでもよく、アンチセンス鎖は修飾されていなくてもよい。別の非限定的な例として、アンチセンス配列は修飾を含むことができ、センス鎖は修飾されていなくてもよい。さらに別の非限定的な例として、センス配列は2つ以上の修飾を含んでもよく、アンチセンス鎖は1つの修飾を含んでもよい。非限定的な例として、アンチセンス配列は2つ以上の修飾を含んでもよく、センス鎖は1つの修飾を含んでもよい。
【0056】
本開示のsaRNAは、糖、核酸塩基、及び/又はヌクレオシド間結合に対する修飾の組み合わせを含むことができる。これらの組み合わせは、本明細書又は2012年10月3日に出願された国際公開第2013/052523号に記載される任意の1つ以上の修飾、特に式(Ia)~(Ia-5)、(Ib)~(If)、(IIa)~(IIp)、(IIb-1)、(IIb-2)、(IIc-1)~(IIc-2)、(IIn-1)、(IIn-2)、(IVa)~(IVl)、及び(IXa)~(IXr)(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を含むことができる。
【0057】
本開示のsaRNAは、分子の全長に沿って均一に修飾されていても、されていなくてもよい。例えば、1つ以上又は全ての種類のヌクレオチド(例えば、プリンもしくはピリミジン、又はA、G、U、Cのいずれか1つもしくは複数もしくは全て)は、本開示のsaRNAにおいて均一に修飾されていても、されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、本開示のsaRNA中のすべてのヌクレオチドXは修飾されており、XはヌクレオチドA、G、U、Cのいずれか1つ、又は組み合わせA+G、A+U、A+C、G+U、G+C、U+C、A+G+U、A+G+C、G+U+C、又はA+G+Cのいずれかであり得る。
【0058】
様々な糖修飾、ヌクレオチド修飾、及び/又はヌクレオシド間結合(例えば、骨格構造)が、saRNA内の様々な位置に存在し得る。当業者は、ヌクレオチドアナログ又は他の修飾が、saRNAの機能が実質的に低下しないように、saRNAの任意の位置に位置し得ることを理解するであろう。本開示のsaRNAは、約1%~約100%の修飾ヌクレオチド(全体のヌクレオチド含量に関して、又は1つ以上のタイプのヌクレオチド、すなわちA、G、U、又はCのいずれか1つ以上に関して)又は任意の介在パーセンテージ(例えば、1%~20%、1%~25%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~95%、10%~20%、10%~25%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~95%、10%~100%、20%~25%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~95%、50%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~95%、70%~100%、80%~90%、80%~95%、80%~100%、90%~95%、90%~100%、及び95%~100%)の修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示のsaRNAは、環状核酸となるように修飾され得る。本開示のsaRNAの末端は、化学試薬又は酵素によって結合され、自由末端を持たない環状saRNAを生成し得る。環状saRNAは、その直鎖状対応物よりも安定であり、RNaseRエキソヌクレアーゼによる消化に対して耐性があると予想される。環状saRNAは、A、G、U、又はCリボヌクレオチドに関する他の構造的及び/又は化学的修飾をさらに含み得る。
【0060】
本開示のsaRNAは、2013年10月10日に公開されたPCT国際公開第2013/151666号の第136~247頁に開示されるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの任意の修飾によって修飾することができ、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0061】
本開示のsaRNAは、修飾の組み合わせを含み得る。saRNAは、各鎖に少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の修飾を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、saRNAは少なくとも50%修飾されており、例えばヌクレオチドの少なくとも50%が修飾されている。いくつかの実施形態では、saRNAは少なくとも75%修飾されており、例えば、ヌクレオチドの少なくとも75%が修飾されている。いくつかの実施形態では、saRNAの両方の鎖が全長にわたって修飾され得る(100%修飾)。ヌクレオチド(糖、塩基及びリン酸部分、例えばリンカー)はそれぞれ修飾され得るため、ヌクレオチド又はヌクレオシドの任意の部分に対する任意の修飾が修飾を構成することを理解されたい。
【0063】
いくつかの実施形態では、saRNAは、ヌクレオチドの1つの構成要素のみにおいて少なくとも10%修飾されており、そのような構成要素は、核酸塩基、糖、又はヌクレオシド間の結合から選択される。例えば、saRNAの修飾は、前記saRNAの核酸塩基、糖、又は結合の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%まで行われ得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、saRNAは少なくとも1つの糖修飾を含む。糖修飾の非限定的な例には、以下が含まれ得る:
【0065】
【化1-1】
【0066】
【化1-2】
【0067】
いくつかの実施形態では、saRNAのヌクレオチドの糖の2’位(RNAにおけるOH又はDNAにおけるH)の少なくとも1つが-OMeで置換されており、2’-OMeと呼ばれる。
【0068】
【化2】
【0069】
いくつかの実施形態では、saRNAのヌクレオチドの糖の2’位(RNAにおけるOH又はDNAにおけるH)の少なくとも1つが-Fで置換されており、2’-Fと呼ばれる。
【0070】
【化3】
【0071】
いくつかの実施形態では、saRNAは、ヌクレオチド間に少なくとも1つのホスホロチオエート結合又はメチルホスホネート結合を含む。
いくつかの実施形態では、saRNAは、3’及び/又は5’キャッピング又はオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、本開示のsaRNAは、少なくとも1つの反転(inverted)デオキシリボヌクレオシド又はジデオキシリボヌクレオシドオーバーハング(例えば、dT又はddT)を含み得る。反転オーバーハング、例えばdTは、パッセンジャー(センス)鎖の5’末端又は3’末端にあってもよい。いくつかの実施形態では、本開示のsaRNAは、パッセンジャー鎖上に反転脱塩基(invAb)修飾を含み得る。少なくとも1つの反転脱塩基修飾は、パッセンジャー鎖の5’末端、3’末端、又は両端にあってもよい。反転脱塩基修飾は、ガイド(アンチセンス)鎖の優先的なローディングを促進し得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、saRNAは、少なくとも1つの5’-(E)-ビニルホスホナート(5’-E-VP)修飾を含む。
【0073】
【化4】
【0074】
いくつかの実施形態では、saRNAは、修飾として非環式核酸アナログである少なくとも1つのグリコール核酸(GNA)を含む。
【0075】
【化5】
【0076】
saRNAコンジュゲート及び組み合わせ
コンジュゲーションは、安定性及び/又は半減期を増す可能性があり、本開示のsaRNAを細胞、組織又は生物内の特定の部位に標的化するのに特に有用であり得る。本開示のsaRNAは、他のポリヌクレオチド、色素、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌレアーゼ、タンパク質、例えば、糖タンパク質、又はペプチド、例えば、共リガンドに対して特異的親和性を有する分子、又は抗体、例えば、がん細胞、内皮細胞、骨細胞などの特定の細胞種に結合する抗体、ホルモン及びホルモン受容体、非ペプチド種、例えば、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補因子、又は薬物にコンジュゲーションするように設計することができる。核酸分子に適したコンジュゲートは、2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号に開示されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
本開示によれば、本開示のsaRNAは、様々な機能を達成するために、RNAi剤、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、エンハンサーRNA、エンハンサー由来RNA又はエンハンサー駆動RNA(eRNA)、マイクロRNA(miRNA)、miRNA結合部位、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒DNA、tRNA、三重らせん形成を誘導するRNA、アプタマー又はベクターなどのうちの1つ以上とともに投与されてもよいし、これらをさらに含んでもよい。1つ以上のRNAi剤、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、マイクロRNA(miRNA)、miRNA結合部位、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒DNA、tRNA、三重らせん形成を誘導するRNA、アプタマー又はベクターは、少なくとも1つの修飾又は置換を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、修飾は、糖位置での核酸の化学置換、リン酸位置での化学置換、及び塩基位置での化学置換から選択される。他の実施形態では、化学修飾は、修飾ヌクレオチドの組み込み;3’キャッピング;高分子量の非免疫原性化合物へのコンジュゲーション;親油性化合物へのコンジュゲーション;及びリン酸骨格へのホスホロチオエートの組み込みから選択される。一実施形態では、高分子量の非免疫原性化合物は、ポリアルキレングリコール、又はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0079】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、RNAポリメラーゼIIプロモーターから共発現されることができるように、導入遺伝子に結合され得る。非限定的な例では、本開示のsaRNAは、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)に結合される。
【0080】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、DNA又はRNAアプタマーに結合され得、それによって、saRNA-アプタマーコンジュゲートが生成される。アプタマーは、高い選択性、親和性、及び安定性を備えたオリゴヌクレオチド又はペプチドである。それらは特定の安定した三次元形状をとるため、標的分子に対する高度に特異的で強固な結合を提供する。アプタマーは、小分子、タンパク質、核酸、さらには細胞、組織及び生物などの様々な分子標的に結合するように、in vitro選択又は同等のSELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化))の繰り返しを通して操作された核酸種であり得る。核酸アプタマーは、古典的なワトソンクリック塩基対以外の相互作用を通じて分子に対して特異的結合親和性を有する。核酸アプタマーは、ファージディスプレイやモノクローナル抗体(mAb)によって生成されるペプチドと同様に、選択された標的に特異的に結合することができ、結合を通じて、標的が機能する能力をブロックする。場合によっては、アプタマーはペプチドアプタマーであってもよい。任意の特定の分子標的について、核酸アプタマーは、例えばSELEXによって核酸の組み合わせライブラリから同定され得る。ペプチドアプタマーは、酵母ツーハイブリッド(yeast two hybrid)システムを使用して同定され得る。したがって、当業者は、肝細胞などの標的細胞に本開示のsaRNA又は細胞を送達するための適切なアプタマーを設計することができる。DNAアプタマー、RNAアプタマー、及びペプチドアプタマーが考えられる。肝臓特異的アプタマーを使用した肝臓への本開示のsaRNAの投与が好ましい。
【0081】
本明細書で使用される場合、典型的な核酸アプタマーは、約10~15kDa(20~45ヌクレオチド)のサイズであり、少なくともナノモルの親和性でその標的に結合し、近い関係にある標的から区別する。核酸アプタマーは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、又はリボ核酸とデオキシリボ核酸の混合物であり得る。アプタマーは、一本鎖リボ核酸、デオキシリボ核酸、又はリボ核酸とデオキシリボ核酸の混合物であり得る。アプタマーは、少なくとも1つの化学修飾を含み得る。
【0082】
アプタマーの適切なヌクレオチド長は、約15~約100ヌクレオチド(nt)の範囲であり、他の様々な実施形態では、15~30nt、20~25nt、30~100nt、30~60nt、25~70nt、25~60nt、40~60nt、25~40nt、30~40nt、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ntのいずれか、又は40~70ntの長さである。しかしながら、配列は、本明細書に記載の距離にある2つの標的とアプタマーの相互作用に適応できるように、十分な柔軟性を持って設計することができる。アプタマーは、ヌクレアーゼ及び他の酵素活性からの保護を提供するようにさらに修飾され得る。アプタマー配列は、当技術分野で知られている任意の適切な方法によって修飾することができる。
【0083】
saRNA-アプタマーコンジュゲートは、直接化学結合形成、ストレプトアビジンなどのリンカーを介した結合などの、2つの部分を結合するための任意の既知の方法を使用して形成され得る。
【0084】
一実施形態において、本開示のsaRNAは、抗体に結合され得る。標的細胞表面受容体に対する抗体を生成する方法はよく知られている。本開示のsaRNAは、既知の方法、例えばRNAキャリアタンパク質を使用して、そのような抗体に結合され得る。次いで、得られた複合体を対象に投与し、受容体媒介エンドサイトーシスを介して標的細胞に取り込ませることができる。
【0085】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、コレステロール部分(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acid.Sci.USA,1989,86:6553-6556)、コール酸(Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1994,4:1053-1060)、チオエーテル、例えばベリル-5-トリチルチオール(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306-309;Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765-2770)、チオコールステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20:533-538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al.,EMBO J,1991,10:1111-1118;Kabanov et al.,FEBS Lett,1990,259:327-330;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロール又はトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-Hホスホネート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651-3654;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777-3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides&Nucleotides,1995,14:969-973)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229-237)、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノカルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923-937)などの脂質部分とコンジュゲートされ得、そのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
一実施形態では、本開示のsaRNAはリガンドとコンジュゲートされている。1つの非限定的な例において、リガンドは、ManoharanらのUS20130184328に開示されている任意のリガンドであってよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このコンジュゲートは、リガンド-[リンカー]オプション-[テザー]オプション-オリゴヌクレオチド剤の式を有する。オリゴヌクレオチド剤は、ManoharanらのUS20130184328によって開示された式(I)を有するサブユニットを含んでもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の非限定的な例では、リガンドは、AkincらのUS20130317081に開示されている、脂質、タンパク質、ホルモン、又は式II~XXVIの炭水化物リガンドなどの任意のリガンドであってもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。リガンドは、Akincに開示されている式XXXI~XXXVの二価又は三価の分岐リンカーを用いてsaRNAと結合され得る。
【0087】
そのような核酸/脂質コンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許としては、限定するものではないが、米国特許第4,828,979号;第4,948,882号;第5,218,105号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,578,717号,第5,580,731号;第5,591,584号;第5,109,124号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,414,077号;第5,486,603号;第5,512,439号;第5,578,718号;第5,608,046号;第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号,第5,391,723号;第5,416,203号,第5,451,463号;第5,510,475号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号及び第5,688,941号が挙げられ、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
本開示のsaRNAは、考慮されている特定の方法において効果を有することが知られている他の活性成分と組み合わせて提供され得る。他の活性成分を、本開示のsaRNAと同時に、別々に、又は順番に投与することができる。一実施形態では、本開示のsaRNAは、異なる標的遺伝子を調節するsaRNAとともに投与される。
【0089】
一実施形態では、saRNAは、Manoharanらの米国特許第8106022号及び同第8828956号に開示されている任意の炭水化物リガンドなどの炭水化物リガンドとコンジュゲートされ(Alnylam Pharmaceuticals)、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、炭水化物リガンドは、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、又は多糖であり得る。これらの炭水化物にコンジュゲートされたRNA剤は、肝臓の実質細胞を標的とし得る。一実施形態では、saRNAは、2つ以上、好ましくは2つ又は3つの炭水化物リガンドとコンジュゲートされる。一実施形態では、saRNAは、1つ以上のガラクトース部分とコンジュゲートされる。別の実施形態では、saRNAは、少なくとも1つ(例えば、2つ又は3つ以上)のラクトース分子とコンジュゲートされる(ラクトースは、ガラクトースに結合したグルコースである)。別の実施形態では、saRNAは、少なくとも1つ(例えば、2つ又は3つ以上)のN-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GluNAc)、又はマンノース(例えば、マンノース-6-リン酸)とコンジュゲートされる。一実施形態では、saRNAは少なくとも1つのマンノースリガンドとコンジュゲートされ、コンジュゲートされたsaRNAはマクロファージを標的とする。
【0090】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、遺伝子の発現を阻害する低分子干渉RNA又はsiRNAとともに投与される。
一実施形態では、本開示のsaRNAは、治療目的で1つ以上の薬物とともに投与される。
【0091】
II.本開示の組成物
本開示の一態様は、標的遺伝子を上方制御する低分子活性化RNA(saRNA)と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0092】
製剤、送達、投与、及び用量
医薬製剤は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよく、本明細書で使用される場合、これには、限定するものではないが、所望の特定の剤形に適したあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散助剤又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤などが含まれる。医薬組成物を製剤化するための様々な賦形剤及び組成物を調製するための技術は当技術分野で知られている(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21stEdition,A.R.Gennaro,Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006を参照;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。従来の賦形剤媒体の使用は、本開示の範囲内で考慮され得る。ただし、任意の従来の賦形剤媒体が、例えば、望ましくない生物学的効果を生み出すことによって、又は医薬組成物の他の成分と有害な相互作用をすることによって、物質又はその誘導体と適合しない可能性がある場合を除く。
【0093】
いくつかの実施形態では、組成物はヒト、ヒト患者又は対象に投与される。本開示の目的上、「活性成分」という語句は総じて、本明細書に記載のように送達されるsaRNAを指す。
【0094】
本明細書に提供される医薬組成物の説明は主にヒトへの投与に適した医薬組成物を対象とするが、そのような組成物は一般に他の動物、例えば非ヒト動物、例えばヒト以外の哺乳類への投与にも適していることが当業者には理解されるであろう。ヒトへの投与に適した医薬組成物を様々な動物への投与に適したものにするための修飾はよく理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者は、通常の実験程度でそのような修飾を設計及び/又は実施することができる。医薬組成物の投与が想定される対象には、限定するものではないが、ヒト及び/又は他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、及び/又はラットなどの商業関連の哺乳類を含む哺乳類;及び/又は、家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/又はシチメンチョウなどの商業関連の鳥類を含む鳥類が挙げられる。
【0095】
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で既知の方法、又は今後開発される任意の方法によって調製され得る。通常、そのような調製方法は、活性成分を賦形剤及び/又は1つ以上の他の副成分と組み合わせ、その後、必要な場合及び/又は望ましい場合には、製品を所望の単回又は複数回投与単位に分割、成形及び/又は包装するステップを含む。
【0096】
本開示による医薬組成物は、単一の単位用量として、及び/又は複数の単一の単位用量として、バルクで調製、包装、及び/又は販売され得る。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、通常、対象に投与される活性成分の用量及び/又はそのような用量の都合のよい部分量、例えば、そのような用量の2分の1又は3分の1に等しい。
【0097】
本開示による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/又は任意の追加成分の相対量は、治療される対象の属性、大きさ、及び/又は状態に応じて、さらには組成物が投与される経路に応じて様々であろう。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、少なくとも1つのsaRNAを含み得る。非限定的な例として、製剤は、異なる配列を有する1、2、3、4又は5つのsaRNAを含み得る。一実施形態では、製剤は、異なる配列を有する少なくとも3つのsaRNAを含む。一実施形態では、製剤は、異なる配列を有する少なくとも5つのsaRNAを含む。
【0099】
本開示のsaRNAは、(1)安定性を高めるため;(2)細胞トランスフェクションを高めるため;(3)(例えば、saRNAのデポー製剤からの)徐放又は遅延放出を可能にするため;(4)生体内分布を変更する(例えば、saRNAを特定の組織又は細胞種に標的化する)ため;(5)コードされたタンパク質の翻訳をin vivoで増加させるため;及び/又は(6)コードされたタンパク質の放出プロファイルをin vivoで変更するための1つ以上の賦形剤を使用して製剤化することができる。
【0100】
あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクルなどの従来の賦形剤、分散助剤又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤に加えて、本開示の賦形剤としては、限定するものではないが、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、saRNAをトランスフェクトした細胞(例えば、対象への移植用)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。したがって、本開示の製剤は、それぞれが一緒になってsaRNAの安定性を高め、及び/又はsaRNAによる細胞トランスフェクションを増加させる量で、1つ以上の賦形剤を含むことができる。さらに、本開示のsaRNAは、自己集合核酸ナノ粒子を使用して製剤化され得る。本開示のsaRNAとの製剤化に使用され得る、薬学的に許容される担体、賦形剤、及び核酸の送達剤は、2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号に開示されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0101】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、アニーリングされて活性成分として二本鎖saRNAを形成する、それぞれが21ヌクレオチドの長さの2つの一本RNA鎖を含む。組成物は、50mM Tris-HCl、pH8.0、100mM NaCl及び5mM EDTAから構成される塩緩衝液をさらに含む。
【0102】
別の実施形態では、本開示のsaRNAは、デンドリマーとともに送達され得る。デンドリマーは高度に分岐した高分子である。一実施形態では、本開示のsaRNAは、標的化されたin vivo送達のために、構造的に柔軟なポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーと複合体化される。この複合体はsaRNA-デンドリマーと呼ばれる。デンドリマーは、高度な分子均一性、狭い分子量分布、特定のサイズ及び形状特性、及び高度に官能化された末端表面を有する。製造プロセスは、中心のイニシエーターコアから始まる一連の繰り返しステップである。その後の各成長ステップは、前の世代よりも分子直径と分子量が大きく、より反応性の高い表面部位を備えた新世代のポリマーを表す。
【0103】
PAMAMデンドリマーは、表面に第一級アミン基を有し、構造の内部にも第三級アミン基を有する効率的なヌクレオチド送達システムである。第一級アミン基はヌクレオチドの結合に関与し、細胞への取り込みを促進する一方で、埋め込まれた第三級アミノ基はエンドソーム内でプロトンスポンジとして機能し、細胞質への核酸の放出を促進する。これらのデンドリマーは、デンドリマーによって運ばれるsaRNAをリボヌレアーゼ分解から保護し、効率的な遺伝子ターゲティングのためにエンドサイトーシスを介して長期間にわたってsaRNAの実質的な放出を達成する。これらのナノ粒子のin vivo有効性は以前に評価されており、生体内分布研究により、デンドリマーが末梢血単核細胞に優先的に蓄積し、識別可能な毒性なしに生存することが示されている(Zhou et al.,Molecular Ther.2011 Vol.19,2228-2238を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。PAMAMデンドリマーは、トリエタノールアミン(TEA)コア、ジアミノブタン(DAB)コア、シスタミンコア、ジアミノヘキサン(HEX)コア、ジアモノドデカン(diamonododecane)(DODE)コア、又はエチレンジアミン(EDA)コアを含み得る。一実施形態では、PAMAMデンドリマーは、TEAコア又はDABコアを含む。
【0104】
リピドイド
リピドイドの合成は広範囲に記載されており、これらの化合物を含む製剤は、オリゴヌクレオチド又は核酸の送達に特に適している(Mahon et al.,Bioconjug Chem.2010 21:1448-1454;Schroeder et al.,J Intern Med.2010 267:9-21;Akinc et al.,Nat Biotechnol.2008 26:561-569;Love et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2010 107:1864-1869;Siegwart et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2011 108:12996-3001;これらはすべて、その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0105】
これらのリピドイドは、げっ歯類や非ヒト霊長類に二本鎖低分子干渉RNA分子を効果的に送達するために使用されており(Akinc et al.,Nat Biotechnol.2008 26:561-569;Frank-Kamenetsky et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2008 105:11915-11920;Akinc et al.,Mol Ther.2009 17:872-879;Love et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2010 107:1864-1869;Leuschner et al.,Nat Biotechnol.2011 29:1005-1010を参照;これらすべてはその全体が本明細書に組み込まれる)、本開示は、saRNAの送達におけるそれらの製剤及び使用を想定している。これらのリピドイドを含む複合体、ミセル、リポソーム、又は粒子を調製することができるため、局所的及び/又は全身的な投与経路を介したリピドイド製剤の注射後、saRNAを効果的に送達することができる。saRNAのリピドイド複合体は、静脈内、筋肉内、又は皮下経路を含むがこれらに限定されない様々な手段で投与できる。
【0106】
核酸のin vivo送達は、製剤組成、粒子PEG化の性質、負荷の程度、オリゴヌクレオチドと脂質の比、粒子径(Akinc etal.,Mol Ther.2009 17:872-879;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を含むがこれに限定されない生物物理学的パラメーターなどを含むがこれらに限定されない多くのパラメーターによって影響を受け得る。一例として、ポリ(エチレングリコール)(PEG)脂質のアンカー鎖長の小さな変化が、in vivoでの有効性に重大な影響を与え得る。ペンタ[3-(1-ラウリルアミノプロピオニル)]-トリエチレンテトラミン塩酸塩(TETA-5LAP;別名98N12-5、Murugaiah et al.,Analytical Biochemistry,401:61(2010)を参照;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、C12-200(誘導体及びバリアントを含む)、及びMD1を含むがこれに限定されない様々なリピドイドとの製剤を、in vivo活性について試験することができる。
【0107】
本明細書において「98N12-5」と呼ばれるリピドイドは、Akinc et al.,Mol Ther.2009 17:872-879に開示されており、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【0108】
本明細書において「C12-200」と呼ばれるリピドイドは、Love et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2010 107:1864-1869及びLiu and Huang,Molecular Therapy.2010 669-670に開示されており;両方の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。リピドイド製剤は、saRNAに加えて、3つ又は4つ又はそれ以上の成分を含む粒子を含むことができる。一例として、特定のリピドイドを含む製剤には、98N12-5が含まれるが、これに限定されず、42%のリピドイド、48%のコレステロール及び10%のPEG(C14アルキル鎖長)を含み得る。別の例として、特定のリピドイドを含む製剤には、C12-200が含まれるが、これに限定されず、50%のリピドイド、10%のジステロイルホスファチジルコリン、38.5%のコレステロール、及び1.5%のPEG-DMGを含み得る。
【0109】
一実施形態では、全身静脈内投与のためにリピドイドとともに製剤化されたsaRNAは、肝臓を標的とすることができる。例えば、saRNAを用い、42%の98N12-5、48%のコレステロール、及び10%のPEG脂質の脂質のモル組成を含み、総脂質対saRNAの最終重量比が約7.5対1であり、PEG脂質上のアルキル鎖長がC14であり、約50~60nmの平均粒径を有する最終的な最適化静脈内投与製剤は、肝臓への分布が90%を超える製剤をもたらし得る。(Akinc et al.,Mol Ther.2009 17:872-879を参照;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。別の例では、C12-200(公開された国際公開第2010129709号を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)リピドイドを使用する静脈内投与製剤は、C12-200/ジステロイルホスファチジルコリン/コレステロール/PEG-DMGが50/10/38.5/1.5のモル比、総脂質対核酸の重量比7:1、及び平均粒径80nmを有し得、saRNAの送達に効果的であり得る(Love et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2010 107:1864-1869を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0110】
別の実施形態では、MD1リピドイド含有製剤は、in vivoで肝細胞にsaRNAを効果的に送達するために使用され得る。筋肉内経路用又は皮下経路用に最適化されたリピドイド製剤の特性は、標的細胞の種類と細胞外マトリックスを通って血流に拡散する製剤の能力に応じて大きく異なり得る。内皮細胞小孔のサイズのため、効果的な肝細胞送達には150nm未満の粒径が望ましい場合があるが(Akinc et al.,Mol Ther.2009 17:872-879を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、内皮細胞、骨髄細胞、及び筋細胞を含むがこれらに限定されない他の細胞種に製剤を送達するためのリピドイドと製剤化されたsaRNAの使用は、同様のサイズ制限をされなくてもよい。
【0111】
骨髄細胞及び内皮などの他の非肝細胞にin vivoでsiRNAを送達するためのリピドイド製剤の使用が報告されている(Akinc et al.,Nat Biotechnol.2008 26:561-569;Leuschner et al.,Nat Biotechnol.2011 29:1005-1010;Cho et al.Adv.Funct.Mater.2009 19:3112-3118;8th International Judah Folkman Conference,Cambridge,Ma October 8-9,2010;それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。単球などの骨髄細胞への効果的な送達では、リピドイド製剤は同様の成分モル比を有し得る。ジステロイルホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-DMGを含むがこれらに限定されないリピドイド及び他の成分の異なる比率を使用して、肝細胞、骨髄細胞、筋肉細胞などを含むがこれらに限定されない様々な細胞種への送達のためにsaRNAの製剤を最適化することができる。例えば、成分のモル比としては、50%のCl2-200、10%のジステロイルホスファチジルコリン、38.5%のコレステロール、及び1.5%のPEG-DMGが挙げられるが、これに限定されない(Leusehner et al.,Nat Biotechnol 2011 29:1005-1010参照;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。皮下送達又は筋肉内送達のいずれかを介して細胞(脂肪細胞及び筋細胞など、ただしこれらに限定されない)に核酸を局所送達するためのリピドイド製剤の使用において、全身送達に望ましい製剤成分のすべてが必要という訳ではない場合があり、したがって、リピドイド及びsaRNAのみを含み得る。
【0112】
リポソーム、リポプレックス、及び脂質ナノ粒子
本開示のsaRNAは、1つ以上のリポソーム、リポプレックス、又は脂質ナノ粒子を使用して製剤化することができる。一実施形態では、saRNAの医薬組成物はリポソームを含む。リポソームは、人工的に調製された小胞であり、主に脂質二重層で構成されており、栄養素及び医薬製剤を投与するための送達媒体として使用され得る。リポソームは、限定するものではないが、直径が数百ナノメートルであり得、狭い水性区画によって分離された一連の同心二重層を含むことがある多重薄層小胞(multilamellar vesicle:MLV)、直径が50nm未満であり得る小さい単細胞小胞(small unicellular vesicle:SUV)、直径が50~500nmの間であり得る大きい単層小胞(large unicellular vesicle:LUV)など、様々なサイズのものがあり得る。リポソームの設計には、不健康な組織へのリポソームの付着を改善するため、又はエンドサイトーシスなどのイベント(これに限定されない)を活性化するために、オプソニン又はリガンドが含まれ得るが、これらに限定されない。リポソームは、医薬製剤の送達を改善するために、低い又は高いpHを有し得る。
【0113】
リポソームの形成は、閉じ込められた医薬製剤やリポソーム成分、脂質小胞が分散する媒体の性質、閉じ込められた物質の有効濃度及びその潜在的な毒性などであるがこれらに限定されない物理化学的特性、小胞の適用及び/又は送達中に関与する追加プロセス、目的の用途に対する小胞の最適化サイズ、多分散性及び保存期間、及びバッチ間の再現性及び安全で効率的なリポソーム製品の大規模な製造の可能性に依存し得る。
【0114】
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、限定するものではないが、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、Marina Biotech(ワシントン州ボセル)製のDiLa2リポソーム、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、及びMC3(US20100324120;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)及び、小分子薬物、例えば、限定するものではないが、Janssen Biotech,Inc.(ペンシルベニア州ホーシャム)のDOXIL(登録商標))を送達することができるリポソームから形成されるものなどのリポソームを含み得る。
【0115】
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、これまでに記載され、in vitro及びin vivoでのオリゴヌクレオチド送達に適切であることが示されている(Weeler etal.Gene Therapy.1999 6:271-281;Zhang et al.Gene Therapy.1999 6:1438-1447;Jeffs et al.Pharm Res.2005 22:362-372;Morrissey et al.,Nat Biotechnol.2005 2:1002-1007;Zimmermann et al.,Nature.2006 441:111-114;Heyes et al.J Contr Rel.2005 107:276-287;Semple et al.Nature Biotech.2010 28:172-176;Judge et al.J Clin Invest.2009 119:661-673;deFougerolles Hum Gene Ther.2008 19:125-132を参照;それぞれの内容は、その全体が本明細書に組み込まれる)安定化プラスミド脂質粒子(SPLP)又は安定化核酸脂質粒子(SNALP)の合成から形成されるものなどのリポソームを制限なく含み得る。Wheelerらによる独自の製造方法は洗剤透析法であり、後にJeffsらによって改良された。これは自発的小胞形成法と呼ばれる。リポソーム製剤は、saRNAに加えて3~4つの脂質成分から構成され得る。一例として、リポソームは、Jeffsらによって説明されているように、55%のコレステロール、20%のジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、10%のPEG-S-DSG、及び15%の1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)を含み得るが、これに限定されない。別の例では、特定のリポソーム製剤は、48%のコレステロール、20%のDSPC、2%のPEG-c-DMA、及び30%のカチオン性脂質を含み得るが、これに限定されない。ここで、カチオン性脂質は、Heyesらによって説明されているように、1,2-ジステアロキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、DODMA、DLin-DMA、又は1,2-ジリノレニルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)であり得る。別の例では、核酸-脂質粒子は、MaclachlanらのWO2009127060(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、粒子中に存在する全脂質の約50mol%~約85mol%を構成するカチオン性脂質;粒子中に存在する総脂質の約13mol%~約49.5mol%を構成する非カチオン性脂質;及び粒子中に存在する総脂質の約0.5mol%~約2mol%を構成する、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質を含み得る。別の例では、核酸-脂質粒子は、MaclachlanらのUS2006008910に開示されている任意の核酸-脂質粒子であってもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、核酸-脂質粒子は、式1のカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質を含み得る。
【0116】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、官能化脂質二重層間に架橋を有し得る脂質小胞内に製剤化され得る。
一実施形態では、リポソームは、BallyらのUS5595756に開示されている糖修飾脂質を含んでもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。脂質は、約10モルパーセントの量のガングリオシド及びセレブロシドであり得る。
【0117】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、カチオン性脂質を含むリポソーム中に製剤化され得る。リポソームは、国際公開第2013006825号に記載されているように、カチオン性脂質中の窒素原子:saRNA中のリン酸のモル比(N:P比)が1:1~20:1であってもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、リポソームは、20:1を超える、又は1:1未満のN:P比を有し得る。
【0118】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、脂質-ポリカチオン複合体に製剤化され得る。脂質-ポリカチオン複合体の形成は、当技術分野で知られている方法、及び/又は米国特許出願公開第20120178702号に記載されている方法によって達成され得、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、ポリカチオンには、ポリリジン、ポリオルニチン及び/又はポリアルギニンなどであるがこれらに限定されないカチオン性ペプチド又はポリペプチド、及び国際公開第2012013326号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているカチオン性ペプチドが含まれ得る。別の実施形態では、saRNAは、コレステロール又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)などであるがこれらに限定されない中性脂質をさらに含み得る脂質-ポリカチオン複合体に製剤化され得る。
【0119】
リポソーム製剤は、カチオン性脂質成分の選択、カチオン性脂質の飽和度、PEG化の性質、全成分の比率、及びサイズなどの生物物理学的パラメーター(ただし、これらに限定されない)によって影響を受け得る。Sempleらによる一例では(Semple et al.Nature Biotech.2010 28:172-176;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、リポソーム製剤は、57.1%のカチオン性脂質、7.1%のジパルミトイルホスファチジルコリン、34.3%のコレステロール、及び1.4%のPEG-c-DMAで構成されていた。
【0120】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)製剤中のPEGの比率を高め又は低下させることができ、及び/又はPEG脂質の炭素鎖長をC14からC18に改変することで、LNP製剤の薬物動態及び/又は体内分布を変化させることができる。非限定的な例として、LNP製剤は、カチオン性脂質、DSPC及びコレステロールと比較して、PEG-c-DOMGの脂質モル比1~5%を含み得る。別の実施形態では、PEG-c-DOMGは、PEG-DSG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)又はPEG-DPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)などであるがこれらに限定されないPEG脂質で置換することができる。カチオン性脂質は、DLin-MC3-DMA、DLin-DMA、C12-200及びDLin-KC2-DMAなどであるがこれらに限定されない当技術分野で知られている任意の脂質から選択され得る。
【0121】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2012170930号に記載の脂質ナノ粒子などの脂質ナノ粒子中に製剤化され得る。
【0122】
一実施形態では、本開示の製剤に使用され得るカチオン性脂質は、国際公開第2012040184号、第2011153120号、第2011149733号、第2011090965号、第2011043913号、第2011022460号、第2012061259号、第2012054365号、第2012044638号、第2010080724号、第201021865及び第2008103276号、米国特許第7,893,302号、第7,404,969号及び第8,283,333号、ならびに米国特許出願公開第20100036115号及び第20120202871号(それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のカチオン性脂質(ただしこれらに限定されない)から選択され得る。別の実施形態では、カチオン性脂質は、国際公開第2012040184号、第2011153120号、第2011149733号、第2011090965号、第2011043913号、第2011022460号、第2012061259号、第2012054365号及び第2012044638号(それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の式A(ただし、これらに限定されない)から選択され得る。さらに別の実施形態では、カチオン性脂質は、国際公開第2008103276号の式CLI-CLXXIX、米国特許第7,893,302号の式CLI-CLXXIX、米国特許第7,404,969号の式CLI-CLXXXXII、及び米国特許出願公開第20100036115号の式I~VI(それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)(ただし、これらに限定されない)から選択され得る。さらに別の実施形態では、カチオン性脂質は、Gaucheronらの米国特許第7223887号に開示されているカチオン性脂質などの多価カチオン性脂質であってもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。カチオン性脂質は、Gaucheronらの米国特許第7223887号に記載されているように、2つの第四級アミン基を含む正に帯電した頭部基と、4つの炭化水素鎖を含む疎水性部分とを有し得、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに別の実施形態では、カチオン性脂質は、MaierらのUS20130195920に開示されている生分解性脂質のように生分解性であり得、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。カチオン性脂質は、MaierらのUS20130195920号の式I~IVに記載されているように、カチオン性脂質の脂質部分に位置する1つ以上の生分解性基を有してもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0123】
非限定的な例として、カチオン性脂質は、(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメミルヘキサコサ-17,20-ジエン-9-アミン、(1Z,19Z)-N5N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-8-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘニコサ-12,15-ジエン-4-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-9-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン、(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン、(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン、(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン、(18Z)-N、N-ジメチルヘプタコス-18-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコス-17-エン-9-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン、N,N-ジメチルヘプタコサン-10-アミン、(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、1-[(11Z,14Z)-1-ノニリコサ-11,14-ジエン-1-イル]ピロリジン、(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-20-エン-10-アミン、(15Z)-N,N-ジメチルエプタコス-15-エン-10-アミン、(14Z)-N,N-ジメチルノナコス-14-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルノナコス-17-エン-10-アミン、(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコント-24-エン-10-アミン、(20Z)-N,N-ジメチルノナコス-20-エン-10-アミン、(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコント-22-エン-10-アミン、(16Z)-N,N-ジメチルペンタコス-16-エン-8-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘニコサ-12,15-ジエン-1-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]エプタデカン-8-アミン、1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-21-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘニコサン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン、N,N-ジメチル-[(1R,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン、N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン、1-[(1R,2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-N,N-ジメチルオクタデカン-9-アミン、1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン、R-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、S-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}ピロリジン、(2S)-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-[(5Z)-オクト-5-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}アゼチジン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘプチルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(ノニルオキシ)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-[(9Z)-オエタデカ-9-エン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン;(2S)-N,N-ジメチル-1-[(6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-3-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z)-ドコス-13-エン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(13Z))-ドコス-13-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン,1-[(9Z)-ヘキサデカ-9-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2R)-N,N-ジメチル-H(1-メトイルオクチル)オキシ]-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2R)-1-[(3,7-ジメチルオクチル)オキシ]-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(オクチルオキシ)-3-({8-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]オクチル}オキシ)プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-{[8-(2-オクリルシクロプロピル)オクチル]オキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン及び(11E,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-11,20,2-トリエン-10-アミン又はその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体から選択され得る。
【0124】
一実施形態では、脂質は、国際公開第2012170889号に記載されているような切断可能な脂質であってもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
一実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子は、本明細書に記載の、及び/又は当技術分野で知られている少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含み得る。
一実施形態では、カチオン性脂質は、当技術分野で知られている方法によって、及び/又は国際公開第2012040184号、同第2011153120号、同第2011149733号、同第2011090965号、同第2011043913号、同第2011022460号、同第2012061259号、同第2012054365号、同第2012044638号、同第2010080724号及び同第201021865号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法によって合成され得る。
【0126】
一実施形態では、saRNAのLNP製剤は、3%の脂質モル比でPEG-c-DOMGを含有し得る。別の実施形態では、saRNAのLNP製剤は、1.5%の脂質モル比でPEG-c-DOMGを含有し得る。
【0127】
一実施形態では、saRNAの医薬組成物は、国際公開第2012099755号に記載されているPEG化脂質のうちの少なくとも1つを含んでもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0128】
一実施形態では、LNP製剤は、PEG-DMG2000(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)を含み得る。一実施形態では、LNP製剤は、PEG-DMG2000、当技術分野で知られているカチオン性脂質、及び少なくとも1つの他の成分を含有し得る。別の実施形態では、LNP製剤は、PEG-DMG2000、当技術分野で知られているカチオン性脂質、DSPC、及びコレステロールを含有し得る。非限定的な例として、LNP製剤はPEG-DMG2000、DLin-DMA、DSPC及びコレステロールを含み得る。別の非限定的な例として、LNP製剤は、PEG-DMG2000、DLin-DMA、DSPC及びコレステロールを2:40:10:48のモル比で含有し得る(例えば、Geall et al.,Nonviral delivery of self-amplifying RNA vaccines(自己増幅RNAワクチンの非ウイルス送達),PNAS 2012;PMID:22908294を参照;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。別の非限定的な例として、本明細書に記載されるsaRNAは、米国特許出願公開第20120207845号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、非経口経路によって送達されるナノ粒子中に製剤化され得る。カチオン性脂質はまた、ManoharanらのUS20130156845及びManoharanらのUS20130129785、WasanらのWO2012047656、ChenらのWO2010144740、AnsellらのWO2013086322、又はManoharanらのWO2012016184(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているカチオン性脂質であり得る。
【0129】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、HopeらのUS20130017223に記載されているような第1及び第2のカチオン性脂質などの複数のカチオン性脂質を用いて製剤化することができ、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。第1のカチオン性脂質は第1の特性に基づいて選択することができ、第2のカチオン性脂質は第2の特性に基づいて選択することができ、それらの特性はUS20130017223に概説されているように決定することができ、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一実施形態では、第1及び第2の特性は相補的である。
【0130】
別の実施形態では、saRNAは、1つ以上のカチオン性脂質及び1つ以上の第2の脂質、ならびに1つ以上の核酸を含む脂質粒子とともに製剤化することができ、ここで、脂質粒子は、Cullisらの米国特許出願公開第20120276209号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、固体コアを含む。
【0131】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、SatishchandranらのEP2298358に記載されているように、水中油型(o/w)エマルション中でカチオン性両親媒性物質と複合体化されてもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。カチオン性両親媒性物質は、カチオン性脂質、修飾又は未修飾のスペルミン、ブピバカイン、又は塩化ベンザルコニウムであってもよく、油は植物油又は動物油であってもよい。非限定的な例として、核酸-カチオン性両親媒性物質複合体の少なくとも10%が水中油型エマルションの油相中にある(例えば、Satishchandranらの欧州特許出願公開第2298358号に記載の複合体を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0132】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、カチオン性化合物及び中性脂質の混合物を含む組成物を用いて製剤化され得る。非限定的な例として、カチオン性化合物は、AnsellらのWO1999010390に開示されている式(I)であってもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、中性脂質は、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、及びスフィンゴミエリンからなる群から選択され得る。別の非限定的な例では、脂質製剤は、AkineらのUS20120101148に開示されている式Aのカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、及びPEG又はPEG修飾脂質を含んでもよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
一実施形態では、LNP製剤は、国際公開第2011127255号又は同2008103276号に記載の方法によって製剤化することができ、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、本開示のsaRNAは、WO2011127255及び/又はWO2008103276に記載されている脂質ナノ粒子(LNP)製剤のいずれかにカプセル化され得る。それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
一実施形態では、本明細書に記載のLNP製剤は、ポリカチオン性組成物を含み得る。非限定的な例として、ポリカチオン性組成物は、米国特許出願公開第20050222064号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の式1~60から選択され得る。別の実施形態では、ポリカチオン性組成物を含むLNP製剤は、本明細書に記載されるsaRNAのin vivo及び/又はin vitroの送達に使用され得る。
【0135】
一実施形態では、本明細書に記載のLNP製剤は、透過性増強剤分子をさらに含んでもよい。非限定的な透過性増強剤分子は、米国特許出願公開第20050222064号に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0136】
一実施形態では、医薬組成物は、DiLa2リポソーム(Marina Biotech、ワシントン州ボセル)、SMARTICLES(登録商標)/NOV340(Marina Biotech、ワシントン州ボセル)、中性DOPC(1、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)ベースのリポソーム(例えば、卵巣がんに対するsiRNA送達(Landen et al.Cancer Biology&Therapy 2006 5(12)1708-1713);その内容は参照によりその全体ga本明細書に組み込まれる)及びヒアルロン酸でコーティングされたリポソーム(Quiet Therapeutics、イスラエル)などであるがこれらに限定されないリポソーム中に製剤化され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、PanznerのWO2008043575及びEsslerら(Marina Biotech)のUS8580297(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている任意の両性リポソームを用いて製剤化され得る。両性リポソームは、カチオン性両親媒性物質、アニオン性両親媒性物質、及び任意の1つ以上の中性両親媒性物質を含む脂質の混合物を含み得る。両性リポソームは、頭部基が1つ以上の両性基で置換されている両親媒性分子に基づく両性化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、Esslerら(Marina Biotech)のUS20140227345(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているように、医薬組成物は、4~9の間の等電点を有する1つ以上の両性基を含む両性脂質を用いて製剤化され得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、Panznerら(Novosom)のUS7312206(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているように、ステロール誘導体を含むリポソームを用いて製剤化され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの両親媒性カチオン性脂質、少なくとも1つの両親媒性アニオン性脂質、及び少なくとも1つの中性脂質を含む両性リポソームを用いて製剤化され得るか、又はリポソームは、正電荷及び負電荷の両方を有する少なくとも1つの両親媒性脂質、及び少なくとも1つの中性脂質を含み、Panznerら(Novosom)の米国特許第7780983号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているように、このリポソームはpH4.2及びpH7.5で安定である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、PanznerらのUS20110076322(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に教示されている脂質の血清安定性混合物を含むリポソームを用いて製剤化され得る。それらは、本開示のsaRNAをカプセル化することができる。脂質混合物は、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンを約0.5~約8の範囲の比率で含む。脂質混合物はまた、混合物が両性であり、pH7.4で負に帯電又は中性であり、pH4で正に帯電するように、pH感受性のアニオン性及びカチオン性両親媒性物質を含み得る。薬物/脂質比を調整することで、リポソームを体内の特定の器官又は他の部位に向けることができる。いくつかの実施形態では、カーゴとして本開示のsaRNAがロードされたリポソームは、PanznerらのUS20120021042(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された方法によって調製される。この方法は、ポリアニオン性活性剤の水溶液と1つ以上の両親媒性物質のアルコール溶液とを混合するステップと、前記混合物を酸性pHに緩衝するステップとを含み、上記1つ以上の両親媒性物質は酸性pHで両性リポソームを形成しやすく、それによって、上記活性剤を封入した懸濁液中で両性リポソームを形成する。
【0139】
ナノ粒子製剤は、炭水化物担体及び核酸分子(例えば、saRNA)を含む炭水化物ナノ粒子であり得る。非限定的な例として、炭水化物担体には、限定するものではないが、無水物修飾フィトグリコーゲン又はグリコーゲン型材料、フィトグリコーゲンオクテニルコハク酸塩、フィトグリコーゲンβデキストリン、無水物修飾フィトグリコーゲンβデキストリンが含まれ得る。(例えば、国際公開第2012109121号を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0140】
脂質ナノ粒子製剤は、カチオン性脂質を急速除去(rapidly eliminated)脂質ナノ粒子(reLNP)として知られる生分解性カチオン性脂質に置き換えることによって改善され得る。DLinDMA、DLin-KC2-DMA、DLin-MC3-DMAなどであるがこれらに限定されないイオン化可能なカチオン性脂質は、時間の経過とともに血漿及び組織に蓄積することが示されており、潜在的な毒性源となる可能性がある。急速に除去される脂質の急速な代謝により、ラットにおける脂質ナノ粒子の忍容性と治療指数が、1mg/kg用量から10mg/kg用量まで一桁改善される。酵素的に分解されたエステル結合を含めることで、reLNP製剤の活性を維持しながら、カチオン性成分の分解及び代謝プロファイルを改善することができる。エステル結合は脂質鎖の内部に位置することも、脂質鎖の末端に位置することもある。内部のエステル結合は、脂質鎖内の任意の炭素を置き換えることができる。
【0141】
一実施形態では、saRNAは、Silence Therapeutics(ロンドン、英国)のATUPLEX(商標)システム、DACCシステム、DBTCシステム及び他のsiRNA-リポプレックス技術、STEMGENT製のSTEMFECT(商標)などであるがこれらに限定されないリポプレックスとして製剤化され得る。(マサチューセッツ州ケンブリッジ)、及びポリエチレンイミン(PEI)又はプロタミンに基づく核酸の標的化及び非標的化送達(Aleku et al.Cancer Res.2008 68:9788-9798;Strumberg et al.Int J Clin Pharmacol Ther 2012 50:76-78;Santel et al.,Gene Ther 2006 13:1222-1234;Santel et al.,Gene Ther 2006 13:1360-1370;Gutbier et al.,Pulm Pharmacol.Ther.2010 23:334-344;Kaufmann et al.Microvasc Res 2010 80:286-293Weide et al.J Immunother.2009 32:498-507;Wide et al.J Immunother.2008 31:180-188;Pascolo Expert Opin.Bios.Ther.4:1285-1294;Fotin-Mleczek et al.,2011 J.Immunother.34:1-15;Song et al.,Nature Biotechnol.2005,23:709-717;Peer et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2007 6;104:4095-4100;deFougerolles Hum Gene Ther.2008 19:125-132;それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0142】
一実施形態では、このような製剤は、肝細胞、免疫細胞、腫瘍細胞、内皮細胞、抗原提示細胞、及び白血球を含むがこれらに限定されない様々な細胞種に、in vivoで受動的又は能動的に向けられるように構築又は組成物を変更することもできる。Akinc et al.Mol Ther.2010 18:1357-1364;Song et al.,Nat Biotechnoi.2005 23:709-717;Judge et al.,J Clin Invest.2009 119:661-673;Kaufmann et al.,Microvasc Res 2010 80:286-293;Santel et al.,Gene Ther 2006 13:1222-1234;Santel et al.,Gene Ther 2006 13:1360-1370;Gutbier et al.,Pulm Pharmacol.Ther.2010 23:334-344;Basha et al.,Mol.Ther.2011 19:2186-2200;Fenske and Cullies,Expert Opin Drug Deliv.2008 5:25-44;Peer et al.,Science.2008 319:627-630;Peer and Lieberman,Gene Ther.2011 18:1127-1133;それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。肝細胞に対する製剤の受動的ターゲティングの一例には、in vivoでアポリポタンパク質Eに結合し、肝細胞へのこれらの製剤の結合と取り込みを促進することが示されているDLin-DMA、DLin-KC2-DMA、及びDLin-MC3-DMAベースの脂質ナノ粒子製剤が含まれる(Akinc et al.Mol Ther.2010 18:1357-1364;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。製剤はまた、葉酸、トランスフェリン、N-アエチルガラクトサミン(GalNAc)、及び抗体標的化アプローチによって例示されるがこれらに限定されない、その表面上の異なるリガンドの発現を通じて選択的に標的化することができる(Kolhatkar et al.,Curr Drug Discov Technol.2011 8:197-206;Musacchio and Torchilin,Front Biosci.2011 16:1388-1412;Yu et al.,Mol Membr Biol.2010 27:286-298;Patil et al.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.2008 25:1-61;Benoit et al.,Biomacromolecules.2011 12:2708-2714;Zhao et al.,Expert Opin Drug Deliv.2008 5:309-319;Aking et al.,Mol Ther.2010 18:1357-1364;Srinivasan et al.,Methods Mol Biol.2012 820:105-116;Ben-Arie et al.,Methods Mol Biol.2012 757:497-507;Peer 2010 J Control Release.20:63-68;Peer et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2007 104:4095-4100;Kim et al.,Methods Mol Biol.2011 721:339-353;Subramanya et al.,Mol Ther.2010 18:2028-2037;Song et al.,Nat Biotechnol.2005 23:709-717;Peer et al.,Science.2008 319:627-630;Peer and Lieberman,Gene Ther.2011 18:1127-1133;それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0143】
一実施形態では、saRNAは固体脂質ナノ粒子として製剤化される。固体脂質ナノ粒子(SLN)は、平均直径が10~1000nmの球形であってもよい。SLNは、親油性分子を可溶化できる固体脂質コアマトリックスを有しており、界面活性剤及び/又は乳化剤で安定化できる。さらなる実施形態では、脂質ナノ粒子は、自己集合脂質ポリマーナノ粒子であってもよい(Zhang et al.,ACS Nano,2008,2(8),pp1696~1702を参照;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0144】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、制御放出及び/又は標的送達のために製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「制御放出」とは、治療結果をもたらすために特定の放出パターンに従う医薬組成物又は化合物の放出プロファイルを指す。一実施形態では、saRNAは、制御放出及び/又は標的化送達のために、本明細書に記載の及び/又は当技術分野で公知の送達剤にカプセル化され得る。本明細書で使用される場合、「カプセル化する」という用語は、封入する、取り囲む、又は包み込むことを意味する。本開示の化合物の製剤に関連する場合、カプセル化は、実質的、完全又は部分的であり得る。「実質的にカプセル化された」という用語は、本開示の医薬組成物又は化合物の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.9%超、又は99.999%超が、送達剤に封入され、取り囲まれ、又は包み込まれ得ることを意味する。「部分的にカプセル化された」とは、本開示の医薬組成物又は化合物の10未満、10、20、30、40、50以下が送達剤に封入され、取り囲まれ、又は包み込まれ得ることを意味する。有利には、カプセル化は、蛍光及び/又は電子顕微鏡写真を使用して、本開示の医薬組成物又は化合物の放出又は活性を測定することによって決定され得る。例えば、本開示の医薬組成物又は化合物の少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.99、又は99.99%超が送達剤にカプセル化される。
【0145】
別の実施形態において、saRNAは、脂質ナノ粒子又は急速に除去される脂質ナノ粒子にカプセル化され得、その後、脂質ナノ粒子又は急速に除去される脂質ナノ粒子は、本明細書に記載され、及び/又は当技術分野で知られているポリマー、ヒドロゲル及び/又は外科用シーラントにカプセル化され得る。非限定的な例として、ポリマー、ヒドロゲル、又は外科用シーラントは、PLGA、エチレン酢酸ビニル(EVAc)、ポロキサマー、GELSITE(商標)(Nanotherapeutics,Inc.フロリダ州アラチュア)、HYLENEX(登録商標)(Halozyme Therapeutics、カリフォルニア州サンディエゴ)、フィブリノーゲンポリマー(Ethicon Inc.ジョージア州コーネリア)、TISSELL(商標)(Baxter International,Inc.イリノイ州ディアフィールド)、PEGベースのシーラント、及びCOSEAL(登録商標)(Baxter International,Inc.イリノイ州ディアフィールド)などの外科用シーラントであり得る。
【0146】
別の実施形態では、脂質ナノ粒子は、対象に注射されたときにゲルを形成し得る、当技術分野で知られている任意のポリマーにカプセル化され得る。別の非限定的な例として、脂質ナノ粒子は、生分解性であり得るポリマーマトリックスにカプセル化され得る。
【0147】
一実施形態では、制御放出及び/又は標的送達のためのsaRNA製剤は、少なくとも1つの制御放出コーティングも含み得る。制御放出コーティングには、限定するものではないが、OPADRY(登録商標)、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、EUDRAGIT RL(登録商標)、EUDRAGIT RS(登録商標)、及びエチルセルロース水性分散液(AQUACOAT(登録商標)及びSURELEASE(商標)などのセルロース誘導体が含まれる。
【0148】
一実施形態では、制御放出及び/又は標的送達製剤は、ポリカチオン性側鎖を含み得る少なくとも1つの分解性ポリエステルを含み得る。分解性ポリエステルには、限定するものではないが、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、及びそれらの組み合わせが含まれる。別の実施形態では、分解性ポリエステルは、PEG化ポリマーを形成するためのPEG結合体を含み得る。
【0149】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、ManoharanらのUS20130202652(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示される標的化部分などの標的化部分を有する標的化脂質とともに製剤化され得る。非限定的な例として、ManoharanらのUS20130202652の式Iの標的化部分は、脂質が所望の器官、組織、細胞、細胞種又はサブタイプ、又は細胞小器官に局在化するのを助けるために選択され得る。本開示において想定される非限定的な標的化部分には、トランスフェリン、アニサミド、RGDペプチド、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、フコース、抗体、又はアプタマーが含まれる。
【0150】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、治療用ナノ粒子にカプセル化され得る。治療用ナノ粒子は、本明細書に記載される方法、及び、例えば、国際公開第2010005740号、同第2010030763号、同第2010005721号、同第2010005723号、同第2012054923号、米国特許出願公開第20110262491号、同第20100104645号、同第20100087337号、同第20100068285号、同第20110274759号、同第20100068286号及び同第20120288541号、ならびに米国特許第8,206,747号、同第8,293,276号、同第8,318,208号及び同第8,318,211号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)などの当技術分野で知られている方法(ただし、これらに限定されない)によって製剤化され得る。別の実施形態では、治療用ポリマーナノ粒子は、米国特許出願公開第20120140790号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって同定され得る。
【0151】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、徐放用に製剤化され得る。本明細書で使用される場合、「徐放」とは、特定の期間にわたる放出速度に従う医薬組成物又は化合物を指す。上記期間には、数時間、数日、数週、数月、数年が含まれるが、これらに限定されない。非限定的な例として、徐放性ナノ粒子は、ポリマーと、本開示のsaRNAなどであるがこれらに限定されない治療薬とを含み得る(国際公開第2010075072号及び米国特許出願公開第20100216804号、同第20110217377号及び同第20120201859号を参照。それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0152】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、標的特異的となるように製剤化され得る。非限定的な例として、治療用ナノ粒子には、コルチコステロイドが含まれ得る(国際公開第2011084518号を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。一実施形態では、治療用ナノ粒子は、がん特異的となるように製剤化され得る。非限定的な例として、治療用ナノ粒子は、国際公開第2008121949号、同第2010005726号、同第2010005725号、同第2011084521号、及び米国特許出願公開第20100069426号、同第20120004293号及び同第201001046号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているナノ粒子として製剤化され得る。
【0153】
一実施形態では、本開示のナノ粒子は、ポリマーマトリックスを含み得る。非限定的な例として、ナノ粒子は、2つ以上のポリマー、例えば、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピレンフマル酸塩、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0154】
一実施形態では、治療用ナノ粒子はジブロックコポリマーを含む。一実施形態では、ジブロックコポリマーは、PEGを、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフマル酸塩、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、又はそれらの組み合わせなどのポリマーとの組み合わせで含み得る。
【0155】
非限定的な例として、治療用ナノ粒子は、PLGA-PEGブロックコポリマーを含む(米国特許出願公開第20120004293号及び米国特許第8,236,330号を参照。それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。別の非限定的な例では、治療用ナノ粒子は、PEGとPLA、又はPEGとPLGAのジブロックコポリマーを含むステルスナノ粒子である(米国特許第8,246,968号及び国際公開第2012166923号を参照。それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0156】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、米国特許第8,263,665号及び同第8,287,910号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているマルチブロックコポリマーなどであるがこれらに限定されないマルチブロックコポリマーを含み得る。
【0157】
一実施形態では、本明細書に記載のブロックコポリマーは、非ポリマーミセルとブロックコポリマーとを含むポリイオン複合体に含まれ得る(例えば、米国特許出願公開第20120076836号を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0158】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、少なくとも1つのアクリルポリマーを含み得る。アクリルポリマーとしては、限定するものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリシアノアクリレート及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0159】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー、ポリ(ベータアミノエステル)など(例えば、米国特許第8,287,849号を参照。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及びそれらの組み合わせであるがこれらに限定されない少なくとも1つのアミン含有ポリマーを含み得る。
【0160】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、ポリカチオン性側鎖を含み得る少なくとも1つの分解性ポリエステルを含み得る。分解性ポリエステルには、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、分解性ポリエステルは、PEG化ポリマーを形成するためのPEG結合体を含み得る。
【0161】
別の実施形態では、治療用ナノ粒子は、少なくとも1つの標的化リガンドの結合体を含み得る。標的化リガンドは、モノクローナル抗体などであるがこれに限定されない当技術分野で知られている任意のリガンドであり得る(Kirpotin et al,Cancer Res.2006 66:6732-6740;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0162】
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、がんを標的とするために使用され得る水溶液中に製剤化され得る(国際公開第2011084513号及び米国特許出願公開第20110294717号を参照。それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0163】
一実施形態では、saRNAは、合成ナノキャリア内にカプセル化され、合成ナノキャリアに連結され、及び/又は合成ナノキャリアと組み合わせられ得る。合成ナノキャリアとしては、限定するものではないが、国際公開第2010005740号、同第2010030763号、同第201213501号、同第2012149252号、同第2012149255号、同第2012149259号、同第2012149265号、同第2012149268号、同第2012149282号、同第2012149301号、同第2012149393号、同第2012149405号、同第2012149411号、同第2012149454号及び同第2013019669号、ならびに米国特許出願公開第20110262491号、同第20100104645号、同第20100087337号、及び同第20120244222号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。合成ナノキャリアは、当技術分野で知られている方法及び/又は本明細書に記載されている方法を使用して製剤化され得る。非限定的な例として、合成ナノキャリアは、国際公開第2010005740号、同第2010030763号、及び同第20121350号、ならびに米国特許出願公開第20110262491号、同第20100104645号、同第20100087337号、及び同第2012024422号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって製剤化され得る。別の実施形態では、合成ナノキャリア製剤は、国際公開第2011072218号及び米国特許第8,211,473号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって凍結乾燥され得る。
【0164】
一実施形態では、合成ナノキャリアは、本明細書に記載のsaRNAを放出するための反応性基を含有し得る(国際公開第20120952552号及び米国特許出願公開第20120171229号を参照。それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0165】
一実施形態では、合成ナノキャリアは、標的化放出のために製剤化され得る。一実施形態では、合成ナノキャリアは、特定のpHで、及び/又は所望の時間間隔後にsaRNAを放出するように製剤化され得る。非限定的な例として、合成ナノ粒子は、24時間後及び/又はpH4.5でsaRNAを放出するように配合することができる(国際公開第2010138193及び同第2010138194、及び米国特許出願公開第20110020388号及び同第20110027217号を参照。それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0166】
一実施形態では、合成ナノキャリアは、本明細書に記載されるsaRNAの制御放出及び/又は持続放出のために製剤化され得る。非限定的な例として、持続放出用の合成ナノキャリアは、当技術分野で知られている方法、本明細書に記載される方法、及び/又は国際公開第2010138192号及び米国特許出願公開第20100303850号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される方法によって製剤化され得る。
【0167】
一実施形態では、ナノ粒子は経口投与用に最適化され得る。ナノ粒子は、キトサン又はその誘導体などであるがこれらに限定されない少なくとも1つのカチオン性生体高分子を含み得る。非限定的な例として、ナノ粒子は、米国特許出願公開第20120282343号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって製剤化され得る。
【0168】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、ManoharanらのUS8575123(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなモジュラー組成物に製剤化され得る。非限定的な例として、モジュラー組成物は、核酸、例えば、本開示のsaRNA、少なくとも1つのエンドソーム溶解成分、及び少なくとも1つの標的化リガンドを含み得る。モジュラー組成物は、ManoharanらのUS8575123(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている任意の式などの式を有し得る。
【0169】
一実施形態では、本開示のsaRNAを脂質製剤中にカプセル化することで、de Fougerollesらに対するUS8546554(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているような安定な核酸脂質粒子(SNALP)を形成することができる。脂質はカチオン性であっても非カチオン性であってもよい。1つの非限定的な例において、脂質対核酸の比(質量/質量比)(例えば、脂質対saRNA比)は、約1:1~約50:1、約1:1~約25:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、又は約6:1~約9:1、又は5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、又は11:1の範囲となる。別の例では、SNALPは、40%の2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(脂質A)、10%のジオレオイルホスファチジルコリン(DSPC)、40%のコレステロール、10%のポリエチレングリコール(PEG)-C-DOMG(モルパーセント)を含み、粒径63.0±20nm及び核酸/脂質比0.027である。別の実施形態では、本開示のsaRNAは、Lamらに対するUS7189705に開示されているように、エンドソーム膜不安定化剤を含む核酸-脂質粒子とともに製剤化することができ、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、エンドソーム膜不安定化剤はCa2+イオンであり得る。
【0170】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、AkincらのUS8148344(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている配合脂質粒子(FLiP)を用いて製剤化され得る。Akincらは、FLiPが、親油性物質にコンジュゲートされた一本鎖又は二本鎖オリゴヌクレオチドの少なくとも1つと、コンジュゲートされたオリゴヌクレオチドが凝集、混合、又は結合されたエマルション又はリポソームの少なくとも1つとを含み得ることを教示している。これらの粒子は、驚くべきことに、AkincらのUS8148344(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている、心臓、肺、及び筋肉にオリゴヌクレオチドを効果的に送達することが示されている。
【0171】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、TamらのUS6086913(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、脂質製剤中に発現ベクターを含む組成物を使用して細胞に送達され得る。Tamによって開示された組成物は血清安定であり、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来の第1及び第2の逆位反復配列、AAV由来のrep遺伝子、及び核酸断片を含む発現ベクターを含む。Tamの発現ベクターは脂質と複合体を形成している。
【0172】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、de FougerollesらのUS20120270921(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示される脂質製剤を用いて製剤化され得る。1つの非限定的な例において、脂質製剤は、US20120270921(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている式Aを有するカチオン性脂質を含み得る。別の非限定的な例では、US20120270921(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の表Aに開示される例示的な核酸-脂質粒子の組成物は、本開示のsaRNAとともに使用され得る。
【0173】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、MaurerらのUS20120276207(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示される脂質粒子中に完全にカプセル化され得る。粒子は、予め形成された脂質小胞、荷電した治療薬、及び不安定化溶媒中で予め形成された小胞と治療薬の混合物を形成するための不安定化剤を含む脂質組成物を含んでもよく、ここで、不安定化溶媒は、予め形成された脂質小胞の膜を、小胞を破壊することなく不安定化するのに有効である。
【0174】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、コンジュゲートされた脂質とともに製剤化され得る。非限定的な例において、コンジュゲートされた脂質は、LinらのUS20120264810(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているような式を有し得る。コンジュゲート脂質は、カチオン性脂質、中性脂質、及び凝集を減少させることができる脂質をさらに含む脂質粒子を形成し得る。
【0175】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、FitzgeraldらのUS20120244207(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているような中性リポソーム製剤に製剤化され得る。「中性リポソーム製剤」という語句は、生理学的pHでほぼ中性又は中性の表面電荷を有するリポソーム製剤を指す。生理学的pHは、例えば約7.0~約7.5、又は例えば約7.5、又は例えば7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、もしくは7.5、又は例えば7.3、又は例えば7.4であり得る。中性リポソーム製剤の例は、イオン化可能な脂質ナノ粒子(iLNP)である。中性リポソーム製剤には、イオン化可能なカチオン性脂質、例えば、DLin-KC2-DMAが含まれ得る。
【0176】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、荷電脂質又はアミノ脂質とともに製剤化され得る。本明細書で使用される場合、「荷電脂質」という用語は、1つ又は2つの脂肪アシル又は脂肪アルキル鎖、及び第4級アミノ頭部基を有する脂質を含むことを意味する。第4級アミンは永久的な正電荷を帯びている。頭部基は、生理学的pHでプロトン化され得る第一級、第二級、又は第三級アミンなどのイオン化可能な基を任意に含むことができる。第四級アミンの存在は、第四級アミンを欠く構造的に類似した化合物における基のpKaと比較して、イオン化可能な基のpKaを変化させることができる(例えば、第四級アミンが第三級アミンによって置き換えられる)。いくつかの実施形態において、荷電した脂質は「アミノ脂質」と呼ばれる。非限定的な例において、アミノ脂質は、HopeらのUS20110256175に記載されている任意のアミノ脂質であってよく、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、アミノ脂質は、構造(II)、DLin-K-C2-DMA、DLin-K2-DMA、DLin-K6-DMAなどのHopeの表3~7に開示されている構造を有し得る。得られた医薬製剤は、Hopeに従って凍結乾燥することができる。別の非限定的な例において、アミノ脂質は、HopeらのUS20110256175(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている任意のアミノ脂質、例えば、構造(I)、DLin-K-DMA、DLin-C-DAP、DLin-DAC、DLin-MA、DLin-S-DMAなどであり得る。別の非限定的な例では、アミノ脂質は、ManoharanらのWO2009132131(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているような構造(I)、(II)、(III)、もしくは(IV)、又は4-(R)-DUn-K-DMA(VI)、4-(S)-DUn-K-DMA(V)を有し得る。別の非限定的な例では、本明細書に記載の製剤のいずれかで使用される荷電脂質は、ManoharanらのEP2509636(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている任意の荷電脂質であり得る。
【0177】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、脂質、リポソーム、又はリポプレックスを含む会合複合体とともに製剤化され得る。非限定的な例では、会合複合体は、ManoharanらのUS8034376(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている式(I)で定義される構造をそれぞれ有する1つ以上の化合物、式(XV)で定義される構造を有するPEG脂質、ステロイド、及び核酸を含む。saRNAは、US8034376(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている任意の会合複合体とともに製剤化され得る。
【0178】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、逆頭部基脂質とともに製剤化され得る。非限定的な例として、saRNAは、正電荷がアシル鎖領域の近くに位置し、負電荷が頭部基の遠位端に位置する頭部基を含む両性イオン性脂質、例えば、LeungらのWO2011056682(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている構造(A)又は構造(I)を有する脂質とともに製剤化され得る。
【0179】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、脂質二重層担体中に製剤化され得る。非限定的な例として、saRNAは、約5モル%~約20モル%の量の凝集防止剤、約0.5モル%~約50モル%の量のカチオン性脂質、及び融合性脂質及び界面活性剤の脂質混合物を含む脂質-界面活性剤混合物と組み合わせることで、核酸-脂質-界面活性剤混合物を提供すること;次いで、核酸-脂質-界面活性剤混合物を緩衝塩溶液に対してダイアライズすることで界面活性剤を除去し、核酸を脂質二重層担体にカプセル化し、脂質二重層-核酸組成物を提供することができる。緩衝塩溶液は、核酸の約40%~約80%をカプセル化するのに十分なイオン強度を有する。これはCullisらのWO1999018933に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0180】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、saRNAを心臓、肝臓、又は腫瘍組織部位に選択的に標的化することができる核酸-脂質粒子中に製剤化され得る。例えば、核酸-脂質粒子は、CuilisらのEP1328254(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、(a)核酸;(b)1.0モル%~45モル%のカチオン性脂質;(c)0.0モル%~90モル%の別の脂質;(d)1.0モル%~10モル%の二重層安定化成分;(e)0.0モル%~60モル%のコレステロール;及び(f)0.0モル%~10モル%のカチオン性ポリマー脂質を含み得る。Cuilisは、カチオン性脂質、二重層安定化成分、別の脂質、コレステロール、及びカチオン性ポリマー脂質のそれぞれの量を変えることで、心臓、肝臓、又は腫瘍組織部位への組織選択性を与えることができ、それによって核酸を心臓、肝臓、又は主要組織部位に選択的に標的化できる核酸-脂質粒子を同定することができると教示している。
【0181】
ポリマー、生分解性ナノ粒子、及びコアシェルナノ粒子
本開示のsaRNAは、天然ポリマー及び/又は合成ポリマーを使用して製剤化することができる。送達に使用され得るポリマーの非限定的な例としては、限定するものではないが、MIRUS Bio(ウィスコンシン州マディソン)製のDYNAMIC POLYCONJUGATE(商標)(Arrowhead Research Corp.、カリフォルニア州パサデナ)製剤及びRoche Madison(ウィスコンシン州マディソン)のPHASERX(商標)ポリマー製剤、例えば、限定するものではないが、SMARTT POLYMER TECHNOLOGY(商標)(PHASERX、ワシントン州シアトル)、DMRI/DOPE、ポロキサマー、Vical(カリフォルニア州サンディエゴ)のVAXFECTFN(商標)アジュバント、Calando Pharmaceuticals(カリフォルニア州パサデナ)のキトサン、シクロデキストリン、デンドリマー、及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ポリマー、RONDEL(商標)(RNAi/オリゴヌクレオチドナノ粒子送達)ポリマー(Arrowhead Research Corporation、カリフォルニア州パサデナ)及びpH応答性コブロックポリマー、例えば、限定するものではないが、PHASERX(商標)(ワシントン州シアトル)などが挙げられる。
【0182】
キトサン配合物の非限定的な例には、正に帯電したキトサンのコアと負に帯電した基材の外側部分が含まれる(米国特許出願公開第20120258176号。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。キトサンとしては、限定するものではないが、N-トリメチルキトサン、モノ-N-カルボキシメチルキトサン(MCC)、N-パルミトイルキトサン(NPCS)、EDTA-キトサン、低分子量キトサン、キトサン誘導体、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0183】
一実施形態において、本開示で使用されるポリマーは、細菌などであるがこれに限定されない不要な物質のポリマーの表面への付着を低減及び/又は阻害するための処理を受けている。ポリマーは、公知の方法、及び/又は当技術分野で記載され、及び/又は国際公開第2012150467号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法によって処理され得る。
【0184】
PLGA製剤の非限定的な例には、限定するものではないが、PLGA注射用デポ剤(例えば、PLGAを66%N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(残りが水性溶媒及びロイプロリドである)に溶解することによって形成されるELIGARD(商標)。注射されると、PLGA及びロイプロリドペプチドは皮下空間に沈殿する)が含まれる。
【0185】
これらのポリマーアプローチの多くは、オリゴヌクレオチドをin vivoで細胞細胞質に送達する際の有効性を実証している(de Fougerolles Hum Gene Ther.2008 19:125-132でレビューされている。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。核酸の強力なin vivo送達を実現する2つのポリマーアプローチ(この場合は低分子干渉RNA(siRNA)を使用)は、動的ポリコンジュゲートとシクロデキストリンベースのナノ粒子である。これらの送達アプローチのうちの1つ目は、動的ポリコンジュゲートを使用しており、マウスにおいてin vivoで効果的にsiRNAを送達し、肝細胞において内因性標的mRNAをサイレンシングすることが示されている(Rozema et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2007 104:12982-12887;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。この特定のアプローチは、多成分ポリマーシステムであり、その主な特徴には、核酸(この場合はsiRNA)がジスルフィド結合を介して共有結合している膜活性ポリマーが含まれており、PEG(電荷マスキング用)基とN-アセチルガラクトサミン(肝細胞用)基の両方が、pH感受性結合を介して結合している(Rozema et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2007 104:12982-12887;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。肝細胞に結合してエンドソームに侵入すると、ポリマー複合体は低pH環境で分解し、ポリマーは自身の正電荷を露出し、エンドソーム脱出をもたらし、ポリマーからsiRNAが細胞質に放出される。N-アセチルガラクトサミン基をマンノース基に置換することにより、アシアロ糖タンパク質受容体発現肝細胞から類洞内皮細胞及びクッパー細胞へと標的化を変更できることが示された。別のポリマーアプローチには、トランスフェリンを標的としたシクロデキストリン含有ポリカチオンナノ粒子の使用が含まれる。これらのナノ粒子は、トランスフェリン受容体を発現するユーイング肉腫腫瘍細胞におけるEWS-FLI1遺伝子産物の標的化サイレンシングを実証しており(Hu-Lieskovan et al.,Cancer Res.2005 65:8984-8982;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、及びこれらのナノ粒子中に配合されたsiRNAは、非ヒト霊長類において良好に忍容された(Heidel et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2007 104:5715-21;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらの送達戦略はどちらも、標的送達とエンドソーム回避メカニズムの両方を使用した合理的なアプローチを組み込んでいる。
【0186】
ポリマー製剤は、saRNAの持続的又は遅延放出を可能にすることができる(例えば、筋肉内又は皮下注射後)。saRNAの放出プロファイルの変化により、例えば、コードされたタンパク質が長期間にわたって翻訳される可能性がある。生分解性ポリマーは、核酸を分解から保護するために以前に使用されており、in vivoでペイロードの持続放出をもたらすことが示されている(Rozema et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2007 104:12982-12887;Sullivan et al.,Expert Opin Drug Deliv.2010 7:1433-1446;Convertine et al.,Biomacromolecules.2010 Oct 1;Chu et al.,Acc Chem Res.2012 Jan 13;Manganiello et al.,Biomaterials.2012 33:2301-2309;Benoit et al.,Biomacromolecules.2011 12:2708-2714;Singha et al.,Nucleic Acid Ther.2011 2:133-147;de Fougerolles Hum Gene Ther.2008 19:125-132;Schaffert and Wagner,Gene Ther.2008 16:1131-1138;Chaturvedi et al.,Expert Opin Drug Deliv.2011 8:1455-1468;Davis,Mol Pharm.2009 6:659-668;Davis,Nature 2010 464:1067-1070;これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0187】
一実施形態では、医薬組成物は徐放性製剤であり得る。さらなる実施形態では、徐放性製剤は皮下送達用であり得る。徐放性製剤は、限定するものではないが、PLGAミクロスフェア、エチレン酢酸ビニル(EVAc)、ポロキサマー、GELSITE(商標)(Nanotherapeutics,Inc.フロリダ州アラチュア)、HYLENEX(登録商標)(Halozyme Therapeutics、カリフォルニア州サンディエゴ)、フィブリノーゲンポリマーなどの外科用シーラント(Ethicon Inc.ジョージア州コーネリア)、TISSELL(商標)(Baxter International,Inc イリノイ州ディアフィールド)、PEGベースのシーラント、及びCOSEAL(登録商標)(Baxter International,Inc イリノイ州ディアフィールド)を含み得る。
【0188】
非限定的な例として、saRNAは、調節可能な放出速度(例えば、数日及び数週間)でPLGAミクロスフェアを調製し、カプセル化プロセス中にsaRNAの完全性を維持しながらPLGAミクロスフェア中にsaRNAをカプセル化することによって、PLGAミクロスフェア中に製剤化され得る。EVAcは非生分解性で生体適合性のポリマーであり、前臨床の徐放性インプラント用途(例えば、徐放性製品、緑内障用ピロカルピン眼科用インサートのOcusert又は徐放性プロゲステロン子宮内デバイスのプロゲスタサート、経皮送達システムのTestoderm、Duragesic及びセレギリン、カテーテル)に広く使用される。ポロキサマーF-407NFは、5℃未満の温度で低粘度を示し、15℃を超える温度で固体ゲルを形成する、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンの親水性非イオン性界面活性剤トリブロックコポリマーである。PEGベースの外科用シーラントは、送達デバイス内で混合された2つの合成PEG成分を含み、1分で調製でき、3分でシールでき、30日以内に再吸収される。GELSITE(商標)及び天然ポリマーは、投与部位のその場でゲル化することができる。これらは、イオン相互作用を通じてタンパク質及びペプチドの治療候補と相互作用し、安定化効果をもたらすことが示されている。ポリマー製剤は、限定するものではないが、葉酸、トランスフェリン、及びN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)によって例示されるような、様々なリガンドの発現を通じて選択的に標的とすることもできる(Benoit et al.,Biomacromolecules.2011 12:2708-2714;Rozema et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2007 104:12982-12887;Davis,Mol Pharm.2009 6:659-668;Davis,Nature 2010 464:1067-1070;これらのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0189】
本開示のsaRNAは、ポリマー化合物とともに、又はポリマー化合物中で製剤化され得る。ポリマーは、ポリエテン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(1-リジン)(PLL)、PLLにグラフトされたPEG、カチオン性リポポリマー、生分解性カチオン性リポポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)、架橋分岐ポリ(アルキレンイミン)、ポリアミン誘導体、変性ポロキサマー、生分解性ポリマー、弾性生分解性ポリマー、生分解性ブロックコポリマー、生分解性ランダムコポリマー、生分解性ポリエステルコポリマー、生分解性ポリエステルブロックコポリマー、生分解性ポリエステルブロックランダムコポリマー、マルチブロックコポリマー、直鎖状生分解性コポリマー、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸)(PAGA)、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフマル酸塩、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、アクリルポリマー、アミン含有ポリマー、デキストランポリマー、デキストランポリマー誘導体、又はそれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない少なくとも1つのポリマーを含み得る。
【0190】
非限定的な例として、本開示のsaRNAは、米国特許第6,177,274号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、PLLをグラフトしたPEGのポリマー化合物とともに製剤化され得る。この製剤は、in vitroで細胞をトランスフェクションするために、又はsaRNAをin vivoで送達するために使用され得る。別の例では、saRNAは、カチオン性ポリマーとともに溶液又は媒体中に、乾燥医薬組成物中に、又は米国特許出願公開第20090042829号及び同第20090042825号(それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように乾燥可能な溶液中に懸濁され得る。
【0191】
別の非限定的な例として、本開示のsaRNAは、PLGA-PEGブロックコポリマー(米国特許出願公開第20120004293号及び米国特許第8,236,330号を参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)又はPLGA-PEG-PLGAブロックコポリマー(米国特許第6,004,573号を参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を用いて製剤化され得る。非限定的な例として、本開示のsaRNAは、PEGとPLA、又はPEGとPLGAのジブロックコポリマーを用いて製剤化され得る(米国特許第8,246,968号を参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0192】
ポリアミン誘導体は、核酸を送達するために、又は疾患を治療及び/又は予防するために、又は植込み可能なもしくは注射可能なデバイスに含めるために使用され得る(米国特許出願公開第20100260817号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。非限定的な例として、医薬組成物は、米国特許出願公開第20100260817号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているsaRNA及びポリアミン誘導体を含み得る。非限定的な例として、本開示のsaRNAは、ポリアミドポリマー、例えば、限定するものではないが、炭水化物ジアジドモノマーとオリゴアミンを含むジルキンユニットとを組み合わせることによって調製される1,3-双極子付加ポリマーを含むポリマー(米国特許第8,236,280号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を使用して送達され得る。
【0193】
一実施形態では、本開示のsaRNAは、国際公開第2011115862号、同第2012082574号、及び同第2012068187号、ならびに米国特許出願公開第20120283427号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている少なくとも1つのポリマー及び/又はその誘導体とともに製剤化され得る。別の実施形態では、本開示のsaRNAは、WO2011115862号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、式Zのポリマーとともに製剤化され得る。さらに別の実施形態では、saRNAは、国際公開第2012082574号又は同第2012068187号及び米国特許出願公開第2012028342号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、式Z、Z’、又はZ’’のポリマーとともに製剤化され得る。本開示のsaRNAとともに製剤化されるポリマーは、国際公開第2012082574号又は同第2012068187号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって合成することができる。
【0194】
本開示のsaRNAは、少なくとも1つのアクリルポリマーとともに製剤化され得る。アクリルポリマーとしては、限定するものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリシアノアクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0195】
本開示のsaRNAの製剤は、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー又はそれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない少なくとも1つのアミン含有ポリマーを含み得る。
【0196】
例えば、本開示のsaRNAは、ポリ(アルキレンイミン)、生分解性カチオン性リポポリマー、生分解性ブロックコポリマー、生分解性ポリマーもしくは生分解性ランダムコポリマー、生分解性ポリエステルブロックコポリマー、生分解性ポリエステルポリマー、生分解性ポリエステルランダムコポリマー、直鎖状生分解性コポリマー、PAGA、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー、又はそれらの組み合わせを含む医薬品化合物中に製剤化され得る。生分解性カチオン性リポポリマーは、当技術分野で知られている方法、及び/又は米国特許第6,696,038号、米国特許出願第20030073619号及び同第20040142474号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法によって製造することができる。ポリ(アルキレンイミン)は、当技術分野で知られている方法、及び/又は米国特許出願公開第20100004315号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を使用して作製され得る。生分解性ポリマー、生分解性ブロックコポリマー、生分解性ランダムコポリマー、生分解性ポリエステルブロックコポリマー、生分解性ポリエステルポリマー、又は生分解性ポリエステルランダムコポリマーは、当技術分野で知られている方法、及び/又は米国特許第6,517,869号及び同第6,267,987号(それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を使用して作製され得る。直鎖状生分解性コポリマーは、当技術分野で知られている方法、及び/又は米国特許第6,652,886号に記載されている方法を使用して作製され得る。PAGAポリマーは、当技術分野で知られている方法、及び/又は米国特許第6,217,912号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を使用して作製され得る。PAGAポリマーは、ポリ-L-リジン、ポリアルギン、ポリオルニチン、ヒストン、アビジン、プロタミン、ポリラクチド、及びポリ(ラクチド-co-グリコリド)などであるがこれらに限定されないポリマーとコポリマー又はブロックコポリマーを形成するように共重合され得る。生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、当技術分野で知られている方法、及び/又は米国特許第8,057,821号又は米国特許出願公開第2012009145号(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法で作製され得る。例えば、マルチブロックコポリマーは、分岐状ポリエチレンイミンと比較して異なるパターンを有する直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)ブロックを使用して合成することができる。さらに、組成物又は医薬組成物は、当技術分野で知られている方法、本明細書に記載の方法、又は米国特許出願公開第20100004315号又は米国特許第6,267,987号及び同第6,217,912号(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって作製され得る。
【0197】
本開示のsaRNAは、ポリカチオン性側鎖を含み得る少なくとも1つの分解性ポリエステルとともに製剤化され得る。分解性ポリエステルには、限定するものではないが、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、及びそれらの組み合わせが含まれる。別の実施形態では、分解性ポリエステルは、PEG化ポリマーを形成するためのPEG結合体を含み得る。
【0198】
本開示のsaRNAは、少なくとも1つの架橋性ポリエステルとともに製剤化され得る。架橋性ポリエステルとしては、当技術分野で知られているもの、及び米国特許出願公開第20120269761号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。
【0199】
一実施形態において、本明細書に記載されるポリマーは、脂質終結(lipid-terminating)PEGにコンジュゲートされ得る。非限定的な例として、PLGAは、PLGA-DSPE-PEGを形成する脂質終結PEGにコンジュゲートされ得る。別の非限定的な例として、本開示で使用されるPEGコンジュゲートは、国際公開第2008103276号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ポリマーは、リガンドコンジュゲート、例えば、限定するものではないが、米国特許第8,273,363号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のコンジュゲートを使用してコンジュゲートされ得る。
【0200】
一実施形態では、本明細書に記載のsaRNAは、別の化合物とコンジュゲートされ得る。コンジュゲートの非限定的な例は、米国特許第7,964,578号及び同第7,833,992号(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。別の実施形態では、本開示のsaRNAは、米国特許第7,964,578号及び同第7,833,992号(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている式1~122のコンジュゲートと結合され得る。本明細書に記載されるsaRNAは、金などであるがこれに限定されない金属とコンジュゲートされてもよい。(例えば、Giljohann et al.Journ.Amer.Chem.Soc.2009 131(6):2072-2073参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。別の実施形態では、本明細書に記載のsaRNAは、金ナノ粒子にコンジュゲート及び/又はカプセル化され得る。(国際公開第201216269号及び米国特許出願公開第20120302940号。それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0201】
米国特許出願公開第20100004313号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、遺伝子送達組成物は、ヌクレオチド配列及びポロキサマーを含み得る。例えば、本開示のsaRNAは、米国特許出願公開第20100004313号に記載されているポロキサマーとともに遺伝子送達組成物において使用され得る。
【0202】
一実施形態では、本開示のポリマー製剤は、カチオン性担体を含み得るポリマー製剤を、コレステロール及びポリエチレングリコール基に共有結合し得るカチオン性リポポリマーと接触させることによって安定化され得る。ポリマー製剤は、米国特許出願公開第20090042829号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法を用いてカチオン性リポポリマーと接触させてもよい。
【0203】
カチオン性担体としては、限定するものではないが、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)、ポリ(テトラメチレンイミン)、ポリプロピレンイミン、アミノグリコシドポリアミン、ジデオキシ-ジアミノ-b-シクロデキストリン、スペルミン、スペルミジン、ポリ(2-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ポリ(リジン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(アルギニン)、カチオン化ゼラチン、デンドリマー、キトサン、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1-[2-(オレオイルオキシ)エチル]-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、3B-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC-コレステロールHCl)ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン(DOGS)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリドDODAC)及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0204】
本開示のsaRNAは、1つ以上のポリマーのポリプレックスとして製剤化され得る(米国特許出願公開第20120237565号及び同第20120270927号。それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。一実施形態では、ポリプレックスは2つ以上のカチオン性ポリマーを含む。カチオン性ポリマーは、直鎖状PEIなどのポリ(エチレンイミン)(PEI)を含み得る。
【0205】
本開示のsaRNAは、ポリマー、脂質、及び/又はリン酸カルシウムなど(ただしこれに限定されない)の他の生分解性薬剤の組み合わせを使用してナノ粒子として製剤化することもできる。構成要素は、コアシェル、ハイブリッド、及び/又はレイヤーバイレイヤーアーキテクチャで組み合わせることができ、saRNAの送達を強化するためにナノ粒子の微調整を可能にすることができる(Wang et al.,Nat Mater.2006 5:791-796;Fuller et al.,Biomaterials.2008 29:1526-1532;DeKoker et al.,Adv Drug Deliv Rev.2011 63:748-761;Endres et al.,Biomaterials.2011 32:7721-7731;Su et al.,Mol Pharm.2011 Jun 6;8(3):774-87;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。非限定的な例として、ナノ粒子は、親水性-疎水性ポリマー(例えば、PEG-PLGA)、疎水性ポリマー(例えば、PEG)及び/又は親水性ポリマーなどであるがこれらに限定されない複数のポリマーを含み得る(国際公開第20120225129号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0206】
生分解性リン酸カルシウムナノ粒子を脂質及び/又はポリマーと組み合わせて使用することで、in vivoでsaRNAを送達することができる。一実施形態では、アニサミドなどの標的化リガンドも含み得る脂質被覆リン酸カルシウムナノ粒子を、本開示のsaRNAを送達するために使用することができる。例えば、マウス転移性肺モデルにsiRNAを効果的に送達するために、脂質でコーティングされたリン酸カルシウムナノ粒子が使用された(Li et al.,J Contr Rel.2010 142:416-421;Li et al.,J Contr Rel.2012 158:108-114;Yang et al.,Mol Ther.2012 20:609-615;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この送達システムは、siRNAの送達を向上させるために、標的ナノ粒子と、エンドソーム脱出を促進する成分であるリン酸カルシウムとの両方を組み合わせる。
【0207】
一実施形態では、リン酸カルシウムとPEG-ポリアニオンブロックコポリマーとを使用して、saRNAを送達することができる(Kazikawa et al.,J Contr Rel.2004 97:345-356;Kazikawa et al.,J Contr Rel.2006 111:368-370;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0208】
一実施形態では、PEG-電荷変換ポリマー(Pitella et al.,Biomaterials.2011 32:3106-3114)を使用して、本開示のsaRNAを送達するためのナノ粒子を形成することができる。PEG-電荷変換ポリマーは、酸性pHでポリカチオンに切断されることにより、PEG-ポリアニオンブロックコポリマーを改良し、エンドソーム脱出を促進し得る。
【0209】
コアシェルナノ粒子の使用は、カチオン性架橋ナノゲルコア及び様々なシェルを合成するためのハイスループットアプローチにさらに焦点を当てている(Siegwart et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2011 108:12996-13001)。ポリマーナノ粒子の複合体形成、送達、及び内部移行は、ナノ粒子のコア成分とシェル成分の両方の化学組成を変更することによって正確に制御できる。例えば、コアシェルナノ粒子は、ナノ粒子にコレステロールを共有結合させた後、マウス肝細胞にsaRNAを効率的に送達し得る。
【0210】
一実施形態では、PLGAの中間層と、PEGを含有する外側の中性脂質層とを含む中空脂質コアを、本開示のsaRNAの送達に使用することができる。非限定的な例として、ルシフェラーゼ発現腫瘍を有するマウスにおいて、脂質-ポリマー-脂質ハイブリッドナノ粒子は、従来のリポプレックスと比較してルシフェラーゼ発現を有意に抑制することが確認された(Shi et al,Angew Chem Int Ed.2011 50:7027-7031;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0211】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に開示されるsaRNAのコア及びポリマーシェルを含み得る。ポリマーシェルは、本明細書に記載されているポリマー及び当技術分野で知られているポリマーのいずれであってもよい。さらなる実施形態では、ポリマーシェルを使用して、コア内の修飾された核酸を保護することができる。
【0212】
本開示のsaRNAとともに使用するためのコアシェルナノ粒子は、米国特許第8,313,777号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって形成され得る。
【0213】
一実施形態では、コアシェルナノ粒子は、本明細書に開示されるsaRNAのコア及びポリマーシェルを含み得る。ポリマーシェルは、本明細書に記載されているポリマー及び当技術分野で知られているポリマーのいずれであってもよい。さらなる実施形態において、ポリマーシェルは、コア内のsaRNAを保護するために使用され得る。非限定的な例として、コアシェルナノ粒子は、目の病気又は障害を治療するために使用され得る(例えば、米国特許出願公開第20120321719号を参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0214】
一実施形態では、本明細書に記載の製剤とともに使用されるポリマーは、国際公開第2011120053号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような修飾ポリマー(変性ポリアセタールなどであるがこれに限定されない)であり得る。
【0215】
送達
本開示は、薬物送達の科学における進歩の可能性を考慮した、任意の適切な経路による、治療、予防、薬学的、診断又は画像化のいずれかのためのsaRNAの送達を包含する。送達は裸のまま(naked)の場合もあれば、調合された場合もある。
【0216】
本開示のsaRNAは、裸のままで細胞に送達され得る。本明細書で使用される場合、「裸の」とは、トランスフェクションを促進する薬剤を伴わずにsaRNAを送達することを指す。例えば、細胞に送達されるsaRNAは修飾を含まなくてもよい。裸のsaRNAは、当技術分野で知られている投与経路及び本明細書に記載される投与経路を使用して細胞に送達され得る。
【0217】
本開示のsaRNAは、本明細書に記載の方法を使用して製剤化され得る。製剤は、修飾され及び/又は修飾されていないsaRNAを含み得る。製剤はさらに、限定するものではないが、細胞浸透剤、薬学的に許容される担体、送達剤、生侵食性又は生体適合性ポリマー、溶媒、及び徐放性送達デポーを含み得る。製剤化されたsaRNAは、当技術分野で知られている投与経路及び本明細書に記載される投与経路を使用して細胞に送達され得る。
【0218】
組成物はまた、直接浸漬又は直接浴、カテーテルの使用、ゲル、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、及び/又は滴下によるもの、組成物をコーティングし又は含浸させたファブリック又は生分解性材料などの基材を使用することによるものなどを含むがこれらに限定されない、当技術分野におけるいくつかの方法のいずれかで器官又は組織に直接送達するために製剤化され得る。本開示のsaRNAはまた、レトロウイルス複製ベクター(RRV)にクローニングされ、細胞に形質導入され得る。
【0219】
投与
本開示のsaRNAは、治療的に有効な結果をもたらす任意の経路によって投与され得る。これらには、限定するものではないが、経腸、胃腸、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(硬膜外)、脳内(大脳内)、脳室内(脳室内)、皮上(皮膚への適用)、皮内(皮膚そのものへ)、皮下(皮膚の下)、経鼻投与(鼻から)、静脈内(静脈へ)、動脈内(動脈へ)、筋肉内(筋肉へ)、心臓内(心臓へ)、骨内注入(骨髄へ)、くも膜下腔内(脊柱管へ)、腹腔内、(腹膜への注入又は注射)、膀胱内注入、硝子体内、(目を通して)、海綿体腔注射、(陰茎の根元へ)、膣内投与、子宮内、羊水外投与、経皮(全身に分布させるための無傷の皮膚を通した拡散)、経粘膜(粘膜を通した拡散)、注入(鼻から吸う)、舌下、口唇下、浣腸、点眼(結膜上へ)、又は点耳薬による投与が含まれる。特定の実施形態では、組成物は、血液脳関門、血管関門、又は他の上皮関門を通過できる方法で投与され得る。2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示される投与経路を、本開示のsaRNAを投与するために使用することができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、本開示のsaRNAは腫瘍内に送達される。
剤形
本明細書に記載の医薬組成物は、局所用、鼻腔内用、気管内用、又は注射用(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、皮下)などの本明細書に記載の剤形に製剤化することができる。2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている液体剤形、注射用製剤、経肺剤形、及び固体剤形は、本開示のsaRNAのための剤形として使用され得る。
【0221】
III.使用方法
本開示の一態様は、本開示のsaRNA、及びsaRNA及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を使用する方法を提供する。本開示のsaRNAは、その標的遺伝子の発現を調節する。一実施形態では、本開示のsaRNAを投与することを含む、in vitro及び/又はin vivoで標的遺伝子の発現を調節する方法が提供される。一実施形態では、標的遺伝子の発現は、本開示のsaRNAの非存在下での標的遺伝子の発現と比較して、本開示のsaRNAの存在下で少なくとも5、10、20、30、40%、又は少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、又は少なくとも80%増加する。さらなる実施形態では、標的遺伝子の発現は、本開示のsaRNAの非存在下での標的遺伝子の発現と比較して、本開示のsaRNAの存在下で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、又は少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、又は少なくとも60、70、80、90、100倍増加する。
【0222】
STING(TMEM173)遺伝子
本出願の一態様は、本開示のTMEM173-saRNAを投与することを含む、STING(インターフェロン応答刺激因子CGAMPインタラクター(Stimulator Of Interferon Response CGAMP Interactor);STING1;TMEM173)遺伝子の発現を調節する方法を提供する。一実施形態では、TMEM173遺伝子の発現は、本開示のTMEMI73-saRNAの非存在下でのTMEM173遺伝子の発現と比較して、本開示のTMEMI73-saRNAの存在下で少なくとも20、30、40%、又は少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、又は少なくとも80%増加する。さらなる実施形態では、TMEM173遺伝子の発現は、本開示のTMEMI73-saRNAの非存在下でのSTING遺伝子の発現と比較して、本開示のTMEMI73-saRNAの存在下で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、又は少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、又は少なくとも60、70、80、90、100倍増加する。TMEM173遺伝子の発現の調節は、TMEM173mRNAレベルの変化によって反映又は決定され得る。
【0223】
TMEM173遺伝子は、自然免疫シグナル伝達に重要な小胞体アダプタータンパク質をコードする。これはサイクリックGMP-AMP(cGAMP)によって活性化されることで、下流の自然免疫シグナル伝達を引き起こす。cGAMPは、cGASが細胞内外来DNAを検出すると合成され、cGAMP-STING経路の活性化は腫瘍免疫療法にとって重要である。STINGは、プロモーターの過剰メチル化によって様々な種類の腫瘍で下方制御されることが注目されている。DNAメチル化阻害剤によるSTING発現の回復により、腫瘍増殖の制御が改善される(Kitajima et al.,Cancer Discovery,vol.9(1):34(2019))。本開示のTMEM173-saRNAは、STINGに関連する疾患又は障害を予防又は治療するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示のTMEM173-saRNAは、がん、TMEM173関連血管障害、乳児期発症及び家族性凍瘡状狼瘡などの疾患を予防又は治療するために使用される。
【0224】
いくつかの実施形態では、本発明のsaRNAは、TMEM173遺伝子に関連する任意の疾患を治療するために使用され得る。様々な実施形態において、対象を治療するための方法が提供され、この方法は、がんを有する対象、がんを有する疑いのある対象、又はがんの素因を有する対象に、治療有効量の本開示のsaRNAを投与することを含む。本開示によれば、がんは、制御されない細胞増殖、例えば過剰増殖を特徴とする任意の疾患又は疾病を包含する。がんは、腫瘍、例えば固形腫瘍又は任意の新生物を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍である。
【0225】
さらに、いくつかの実施形態では、本発明のsaRNAは、サイズ(重量、表面積又は体積)の正味値として測定しても、経時的な速度として測定しても、複数の種類の腫瘍において腫瘍増殖を阻害するのに有効である。
【0226】
いくつかの実施形態では、本発明のsaRNAでの治療後に、腫瘍のサイズが約60%以上減少する。いくつかの実施形態では、腫瘍のサイズは、重量及び/又は面積及び/又は体積で測定して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%減少する。
【0227】
様々な実施形態において、がんとしては、限定するものではないが、聴神経腫瘍、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(単球性、骨髄芽球性、腺がん、血管肉腫、星状細胞腫、骨髄単球性及び前骨髄球性)、急性T細胞白血病、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、気管支がん、子宮頸がん、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛がん、慢性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺がん、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、増殖異常変化(異形成及び化生)、胎児がん、子宮内膜がん、内皮肉腫、上衣腫、上皮がん、赤白血病、食道がん、エストロゲン受容体陽性乳がん、本態性血小板血症、ユーイングの腫瘍、線維肉腫、卵胞リンパ腫、生殖細胞精巣がん、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、肝腫、肝細胞がん、ホルモン感覚性前立腺がん、平滑筋腫、脂肪肉腫、肺がん、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ芽球性白血病、リンパ腫(ホジキン及び非ホジキン)、膀胱、乳房、結腸、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、子宮の悪性腫瘍及び過剰増殖性疾患、T細胞又はB細胞由来のリンパ性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、髄様がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄性白血病、骨髄腫、粘液肉腫、神経芽腫、非小細胞肺がん、乏突起膠腫、口腔がん、骨原性肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭状腺がん、乳頭がん、松果体腫、真性赤血球増加症、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、脂腺がん、精上皮腫、皮膚がん、小細胞肺がん、固形腫瘍(がん腫及び肉腫)、小細胞肺がん、胃がん、扁平上皮がん、滑膜腫、汗腺がん、甲状腺がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、精巣腫瘍、子宮がん、及びウィルムス腫瘍が挙げられる。他のがんには、原発がん、転移がん、中咽頭がん、下咽頭がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、小腸がん、尿路がん、腎臓がん、尿路上皮がん、女性生殖器がん、子宮がん、妊娠性絨毛性疾患、男性生殖器がん、精嚢がん、精巣がん、胚細胞腫瘍、内分泌腺腫瘍、甲状腺がん、副腎がん、下垂体がん、血管腫、骨軟組織から生じる肉腫、カポジ肉腫、神経がん、眼がん、髄膜がん、膠芽腫、神経腫、神経芽腫、神経鞘腫、白血病などの造血系悪性腫瘍から生じる固形腫瘍、転移性黒色腫、再発又は持続性の卵巣上皮がん、卵管がん、原発性腹膜がん、消化管間質腫瘍、結腸直腸がん、胃がん、黒色腫、多形神経膠芽腫、非扁平上皮非小細胞肺がん、悪性神経膠腫、上皮性卵巣がん、原発性腹膜漿液性がん、転移性肝がん、神経内分泌がん、難治性悪性腫瘍、トリプルネガティブ乳がん、HER2増幅乳がん、上咽頭がん、口腔がん、胆道、肝細胞がん、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)、非髄様甲状腺がん、再発性多形神経膠芽腫、神経線維腫症1型、中枢神経系がん、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、唾液腺がん、粘膜黒色腫、先端/ほくろ黒色腫、傍神経節腫、褐色細胞腫、進行転移がん、固形腫瘍、トリプルネガティブ乳がん、結腸直腸がん、肉腫、黒色腫、腎がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、横紋筋肉腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、神経膠芽腫、消化管間質腫瘍、マントル細胞リンパ腫、及び難治性悪性腫瘍が挙げられる。
【0228】
いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍である。
いくつかの実施形態では、がんは、肝細胞がんなどの肝臓がん、膵臓がん、又は卵巣がんである。
【0229】
本開示の方法によって治療可能ながんは、一般に哺乳類に発生する。哺乳類としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びウシが挙げられる。
【0230】
IV.キット及びデバイス
キット
本開示は、本開示の方法を便利に及び/又は効果的に実施するための様々なキットを提供する。典型的には、キットは、使用者が対象の複数の治療を行うこと、及び/又は複数の実験を行うことを可能にするのに十分な量及び/又は数の成分を含む。
【0231】
一実施形態では、本開示は、本開示のsaRNA、又は本開示のsaRNA、他の遺伝子を調節するsaRNA、siRNA、miRNA、又は他のオリゴヌクレオチド分子の組み合わせを含む、in vitro又はin vivoで遺伝子の発現を調節するためのキットを提供する。
【0232】
キットはさらに、包装及び説明書及び/又は製剤組成物を形成するための送達剤を含み得る。送達剤は、生理食塩水、緩衝溶液、リピドイド、デンドリマー、又は本明細書に開示される任意の送達剤を含み得る。
【0233】
1つの非限定的な例において、緩衝液は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸塩及び/又はEDTAを含み得る。別の非限定的な例では、緩衝液には、限定するものではないが、生理食塩水、2mMカルシウムを含む生理食塩水、5%スクロース、2mMカルシウムを含む5%スクロース、5%マンニトール、2mMカルシウムを含む5%マンニトール、乳酸リンゲル液、塩化ナトリウム、2mMのカルシウム及びマンノースを含む塩化ナトリウムが含まれ得る(米国特許出願公開第20120258046号。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。さらに別の非限定的な例では、緩衝液を沈殿させてもよく、又は凍結乾燥させてもよい。各成分の量は、一貫した再現可能な高濃度の生理食塩水又は単純な緩衝液の配合を可能にするために変化させてもよい。成分はまた、一定期間にわたって及び/又は様々な条件下で緩衝液中のsaRNAの安定性を高めるために変化させてもよい。
【0234】
デバイス
本開示は、本開示のsaRNAを組み込むことができるデバイスを提供する。これらのデバイスは、人間の患者など、それを必要とする対象に即座に送達できる安定した製剤を含む。
【0235】
デバイスの非限定的な例としては、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧嗅覚送達デバイス、イオン導入デバイス、多層マイクロ流体デバイスが挙げられる。デバイスは、単回、複数回又は分割投薬計画に従って本開示のsaRNAを送達するために使用され得る。デバイスは、本開示のsaRNAを生体組織全体、腎内、皮下、又は筋肉内に送達するために使用され得る。オリゴヌクレオチドの送達に適したデバイスのさらなる例は、2012年12月14日に出願された国際公開第2013/090648号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0236】
定義
便宜上、明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語及び語句の意味を以下に示す。本明細書の他の部分での用語の使用とこのセクションで提供されるその定義との間に明らかな不一致がある場合は、このセクションの定義が優先される。
【0237】
約:本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載された値の+/-10%を意味する。
組み合わせて投与される:本明細書で使用される場合、「組み合わせて投与される」又は「組み合わせ投与」という用語は、2つ以上の薬剤が同時に又はある間隔内で対象に投与され、患者への各薬剤の効果の重複があり得ることを意味する。いくつかの実施形態では、それらは互いに約60、30、15、10、5、又は1分以内に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤の投与は、組み合わせ効果(例えば、相乗効果)が得られるように十分に近い間隔で投与される。
【0238】
アミノ酸:本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、すべての天然に存在するL-アルファ-アミノ酸を指す。アミノ酸は、次のように1文字又は3文字の指定によって識別される:アスパラギン酸(Asp:D)、イソロイシン(lie:I)、スレオニン(Thr:T)、ロイシン(Leu:L)、セリン(Ser:S)、チロシン(Tyr:Y)、グルタミン酸(Glu:E)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、ヒスチジン(His:H)、グリシン(Gly:G)、リジン(Lys:K)、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、システイン(Cys:C)、トリプトファン(Trp:W)、バリン(Val:V)、グルタミン(Gln:Q)メチオニン(Met:M)、アスパラギン(Asn:N)。最初にアミノ酸名、続いて括弧内にそれぞれ3文字と1文字のコードを記す。
【0239】
動物:本明細書で使用される場合、「動物」という用語は、動物界のあらゆるメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階にあるヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、発生の任意の段階にある非ヒト動物を指す。特定の実施形態では、非ヒト動物は哺乳類(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、又はブタ)である。いくつかの実施形態では、動物には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及び虫が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、又はクローンである。
【0240】
およそ:本明細書で使用される場合、「およそ」又は「約」という用語は、対象とする1つ以上の値に適用される場合、記載された基準値に類似した値を指す。特定の実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、特に明記されていない限り、又は文脈から明らかな場合を除き、記載された基準値のいずれかの方向(より大きい又はより小さい)の25%以内、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満の範囲内に該当する値の範囲を指す(ただし、そのような数値が可能な範囲である100%を超える場合を除く)。
【0241】
~と結びついた:本明細書で使用される場合、「~と結びついた」、「コンジュゲートされた」、「連結した」、「結合された」、及び「係留された」という用語は、2つ以上の部分に関して使用する場合、それらの部分が、直接的に、又は結合剤として機能する1つ以上の追加部分を介して互いに物理的に結びつけられ又は結合されることで、十分に安定な構造を形成し、その構造が使用される条件、例えば生理学的条件下で上記部分が物理的に結びついたままとなっていることを意味する。「結びつき」は、厳密に直接の共有結合による化学結合である必要はない。また、イオン結合又は水素結合、又はハイブリダイゼーションに基づくつながりが、「結びつけられた」実体が物理的に結びついたままであるように十分に安定していることを示唆する場合もある。
【0242】
二機能又は二機能性:本明細書で使用される場合、「二機能」及び「二機能性」という用語は、少なくとも2つの機能を可能にし又は維持できる任意の物質、分子又は部分を指す。機能は、同じ結果に影響を与える場合もあれば、異なる結果に影響を与える場合もある。機能を生じさせる構造は同じである場合もあれば、異なる場合もある。例えば、本開示の二機能性saRNAは、細胞傷害性ペプチド(第1の機能)を含み得る一方で、このsaRNAを含むヌクレオシドは、それ自体で細胞傷害性である(第2の機能)。
【0243】
生体適合性:本明細書で使用される場合、「生体適合性」という用語は、傷害、毒性、又は免疫系による拒絶反応の危険性がほとんど又は全くなく、生きた細胞、組織、器官又は系と適合することを意味する。
【0244】
生分解性:本明細書で使用される場合、「生分解性」という用語は、生物の作用によって無害な生成物に分解できることを意味する。
生物学的に活性な:本明細書で使用される場合、「生物学的に活性な」という語句は、生物学的システム及び/又は生物において活性を有する任意の物質の特性を指す。例えば、生物に投与されたときにその生物に対する生物学的効果を有する物質は、生物学的に活性であると考えられる。特定の実施形態では、本開示のsaRNAは、saRNAの一部であっても生物学的に活性であるか、又は生物学的に関連すると考えられる活性を模倣する場合、生物学的に活性であると考えられ得る。
【0245】
がん:本明細書で使用される場合、個体における「がん」という用語は、制御されない増殖、不死性、転移能、急速な成長及び増殖速度、及び特定の特徴的な形態学的特徴など、がんを引き起こす細胞に典型的な特徴を有する細胞の存在を指す。多くの場合、がん細胞は腫瘍の形態をとるが、そのような細胞は個体内に単独で存在することもあれば、白血病細胞などの独立した細胞として血流中を循環することもある。
【0246】
細胞増殖:本明細書で使用される場合、「細胞増殖」という用語は、主に細胞数の増加に関連しており、これは、細胞再生(すなわち、増殖)の速度が細胞死(例えば、アポトーシス又は壊死によるもの)の速度より大きい場合に起こり、細胞集団のサイズの増加を生じる。しかし、特定の状況では、その増殖の小さな要素は、個々の細胞の細胞サイズ又は細胞質容積の増加にも起因する可能性がある。したがって、細胞増殖を阻害する薬剤は、増殖を阻害するか細胞死を刺激するか、あるいはその両方によって細胞増殖を阻害することができ、その結果、これら2つの相反するプロセス間の平衡が変化する。
【0247】
細胞種:本明細書で使用される場合、「細胞種」という用語は、所与の供給源(例えば、組織、器官)からの細胞、又は所与の分化状態にある細胞、又は所与の病状もしくは遺伝子構造に関連する細胞を指す。
【0248】
染色体:本明細書で使用される場合、「染色体」という用語は、細胞内に見られるDNAとタンパク質の組織化された構造を指す。
相補的:本明細書で使用される場合、核酸に関する「相補的」という用語は、ヌクレオチド間又は核酸間、例えば、二本鎖DNA分子の2本の鎖の間又はオリゴヌクレオチドプローブと標的との間などのハイブリダイゼーション又は塩基対合が相補的であることを指す。
【0249】
状態:本明細書で使用される場合、「状態」という用語は、任意の細胞、器官、器官系又は生物の状態を指す。状態は、病気の状態を反映する場合もあれば、単に実体の生理学的症状や状況を反映する場合もある。状態は、疾患の巨視的症状などの表現型状態、又は状態に関連する基礎となる遺伝子又はタンパク質発現プロファイルなどの遺伝子型状態として特徴付けられる場合がある。状態は良性又は悪性の場合がある。
【0250】
制御放出:本明細書で使用される場合、「制御放出」という用語は、治療結果をもたらす特定の放出パターンに従う医薬組成物又は化合物の放出プロファイルを指す。
細胞増殖抑制:本明細書で使用される場合、「細胞増殖抑制」とは、細胞(例えば、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、寄生虫、プリオン、又はそれらの組み合わせの成長、分裂、又は増殖を、阻害し、減少させ、又は抑制することを指す。
【0251】
細胞毒性:本明細書で使用される場合、「細胞毒性」とは、細胞(例えば、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、寄生虫、プリオン、又はそれらの組み合わせを殺す、又はそれらに対して有害な、毒性のある、又は致命的な影響を引き起こすことを指す。
【0252】
送達:本明細書で使用される場合、「送達」とは、化合物、物質、実体、部分、カーゴ、又はペイロードを送達する行為又は方法を指す。
送達剤:本明細書で使用される場合、「送達剤」は、標的細胞への本開示のsaRNAのin vivo送達を少なくとも部分的に促進する任意の物質を指す。
【0253】
不安定化:本明細書で使用される場合、「不安定な」、「不安定化する」、又は「不安定化領域」という用語は、同じ領域又は分子の出発形態、野生型又は天然型よりも安定性が低い領域又は分子を意味する。
【0254】
検出可能な標識:本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」は、ラジオグラフィー、蛍光、化学発光、酵素活性、吸光度などを含む当技術分野で知られている方法によって容易に検出される別の実体と結合され、組み込まれ、又は結びついている1つ以上のマーカー、シグナル、又は部分を指す。検出可能な標識には、放射性同位体、蛍光団、発色団、酵素、色素、金属イオン、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン及びハプテンなどのリガンド、量子ドットなどが含まれる。検出可能な標識は、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド内の任意の位置に位置し得る。それらはヌクレオチド内に存在することも、5’末端又は3’末端に存在することもある。
【0255】
カプセル化する:本明細書で使用される場合、「カプセル化する」という用語は、封入する、取り囲む、又は包み込むことを意味する。
操作された:本明細書で使用される場合、本開示の実施形態は、構造的であろうと化学的であろうと、出発時の、野生型又は天然型の分子から異なる特徴又は特性を有するように設計される場合、「操作された」とされる。
【0256】
同等の対象:本明細書で使用される場合、「同等の対象」とは、例えば、同様の年齢、性別、及び健康状態(例えば、肝臓の健康状態又はがんの段階)の対象、又は本開示による治療前の同じ対象であり得る。同等の対象は、本開示によるsaRNAによる治療を受けていないという点で「未治療」である。しかしながら、本開示のsaRNAで治療される対象が同一又は同等の従来の抗がん治療を受けることを条件として、同等の対象は従来の抗がん治療を受けてもよい。
【0257】
エキソソーム:本明細書で使用される場合、「エキソソーム」は、哺乳類細胞によって分泌される小胞である。
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象の1つ以上を指す:(1)DNA配列からのRNA鋳型の生成(例えば、転写による);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/又は3’末端プロセシングによる);(3)RNAのポリペプチド又はタンパク質への翻訳;及び(4)ポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾。
【0258】
特徴:本明細書で使用される「特徴」とは、特徴、特性、又は特徴的な要素を指す。
製剤:本明細書で使用される場合、「製剤」には、本開示の少なくとも1つのsaRNA及び送達剤が含まれる。
【0259】
断片:本明細書で使用される「断片」とは、一部分を指す。例えば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離された全長タンパク質を消化することによって得られるポリペプチドを含み得る。オリゴヌクレオチドの断片は、ヌクレオチド又はヌクレオチドの領域を含み得る。
【0260】
機能的:本明細書で使用される場合、「機能的」生体分子は、それを特徴付ける特性及び/又は活性を示す形態の生体分子である。
遺伝子:本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチド又は前駆体の生成に必要な制御配列及びほとんどの場合コード配列を含む核酸配列を指す。しかし、遺伝子は翻訳されず、代わりに制御性又は構造RNA分子をコードする場合がある。
【0261】
遺伝子は、植物、真菌、動物、細菌のゲノム又はエピソーム、真核生物、核又はプラスミドDNA、cDNA、ウイルスDNA、又は化学合成DNAを含む、当技術分野で知られている任意の供給源に全体又は部分的に由来し得る。遺伝子は、生物活性又は発現生成物の化学構造、発現速度、又は発現制御の方法に影響を与える可能性のあるコード領域又は非翻訳領域に1つ以上の改変を含み得る。このような改変には、1つ以上のヌクレオチドの突然変異、挿入、欠失、及び置換が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子は、途切れのないコード配列を構成することも、適切なスプライス接合部によって結合された1つ以上のイントロンを含むこともできる。
【0262】
遺伝子発現:本明細書で使用される場合、「遺伝子発現」という用語は、核酸配列が転写、及びほとんどの場合翻訳を問題なく受けてタンパク質又はペプチドを生成するプロセスを指す。明確にするために、「遺伝子発現」の測定に言及する場合、これは、転写の核酸産物(例えば、RNA又はmRNA)、又は翻訳のアミノ酸産物(例えば、ポリペプチド又はペプチド)の測定であってもよいことを意味すると理解されるべきである。RNA、mRNA、ポリペプチド及びペプチドの量又はレベルを測定する方法は、当技術分野でよく知られている。
【0263】
ゲノム:「ゲノム」という用語は、核DNA成分、染色体又は染色体外DNA、及び細胞質ドメイン(例えば、ミトコンドリアDNA)を含む、生物の完全なDNA相補体を含むことを意図している。
【0264】
相同性:本明細書で使用される場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間、例えば核酸分子(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)間及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%同一又は類似である場合、互いに「相同」であるとみなされる。「相同」という用語は必然的に、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列)間の比較を指す。本開示によれば、2つのポリヌクレオチド配列は、それらがコードするポリペプチドが、少なくとも1つのひとつながりの少なくとも約20個のアミノ酸について少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、さらには99%である場合に相同であるとみなされる。いくつかの実施形態では、相同ポリヌクレオチド配列は、少なくとも4~5個の固有に特定されたひとつながりのアミノ酸をコードする能力によって特徴付けられる。長さが60ヌクレオチド未満のポリヌクレオチド配列の場合、相同性は、少なくとも4~5個の固有に特定されたひとつながりのアミノ酸をコードする能力によって決定される。本開示によれば、2つのタンパク質配列は、タンパク質が少なくとも1つのひとつながりの少なくとも約20個のアミノ酸について少なくとも約50%、60%、70%、80%、又は90%同一である場合、相同であるとみなされる。
【0265】
「過剰増殖細胞」という用語は、同等の健康な細胞(「対照」と呼ばれる場合がある)の増殖速度と比較して異常に高い速度で増殖している任意の細胞を指し得る。「同等の健康な」細胞は、細胞の正常かつ健康な対応物である。したがって、それは、比較細胞と同じ機能を果たす、同じ種類の、例えば同じ器官に由来する細胞である。例えば、過剰増殖性肝細胞の増殖は、健康な肝細胞を参照して評価されるべきであり、過剰増殖性前立腺細胞の増殖は、健康な前立腺細胞を参照して評価されるべきである。
【0266】
「異常に高い」増殖速度とは、過剰増殖細胞の増殖速度が、同等の健康な(過剰増殖していない)細胞の増殖速度と比較して、少なくとも20、30、40%、又は少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、又は少なくとも80%上昇することを意味する。「異常に高い」増殖速度は、同等の健康な細胞の増殖速度と比較して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、又は少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、又は少なくとも60、70、80、90、100倍上昇する速度を指す場合もある。
【0267】
過剰増殖性障害:本明細書で使用される場合、「過剰増殖性障害」は、上記で定義した過剰増殖性細胞が関与する任意の障害であり得る。過剰増殖性疾患の例には、がんなどの腫瘍性疾患、乾癬性関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患などの胃の過剰増殖性疾患、乾癬、ライター症候群、毛孔性紅斑性粃糠疹を含む皮膚疾患、及び角化疾患の過剰増殖性変異体が含まれる。
【0268】
当業者は、過剰増殖細胞を同定する方法を十分に認識している。動物内の過剰増殖細胞の存在は、X線、MRI、又はCTスキャンなどのスキャンを使用して特定され得る。また、MTT、XTT、MTS又はWST-1アッセイなどの細胞増殖アッセイを使用してin vitroで試料を培養することによっても過剰増殖細胞を特定することができ、又は細胞の増殖をアッセイすることができる。in vitroでの細胞増殖は、フローサイトメトリーを使用して測定することもできる。
【0269】
同一性:本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、オリゴヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)間及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のために2つの配列をアライメントすることによって行うことができる(例えば、最適なアライメントのために、第1及び第2の核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、同一でない配列は比較目的では無視できる)。特定の実施形態では、比較目的でアライメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドが比較される。第1の配列内の位置が第2の配列内の対応する位置と同じヌクレオチドによって占められている場合、これらの分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップの数と、2つの配列を最適にアライメントするために導入する必要がある各ギャップの長さとを考慮した、これらの配列によって共有される同一位置の数の関数である。配列の比較と2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して実行できる。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような方法を使用して決定することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重量残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用するALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、MeyersとMillerのアルゴリズム(CABIOS,1989,4:11-17)を使用して決定できる。あるいは、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdnaCMPマトリックスを使用するGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して決定することもできる。配列間の同一性パーセントを決定するために一般的に使用される方法としては、限定するものではないが、Carillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J Applied Math.,48:1073(1988)(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものが挙げられる。同一性を特定するための技術は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列間の相同性を決定するためのコンピュータソフトウェアの例には、限定するものではないが、GCGプログラムパッケージ、Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research,12(1),387(1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA Altschul,S.F.et al.,J Molec.Biol,215、403(1990))が挙げられる。
【0270】
遺伝子の発現を阻害する:本明細書で使用される場合、「遺伝子の発現を阻害する」という語句は、遺伝子の発現産物の量の減少を引き起こすことを意味する。発現産物は、遺伝子から転写されたRNA(例えば、mRNA)、又は遺伝子から転写されたmRNAから翻訳されたポリペプチドであり得る。典型的には、mRNAのレベルの低下は、そこから翻訳されるポリペプチドのレベルの低下をもたらす。発現レベルは、mRNA又はタンパク質を測定するための標準的な技術を使用して決定され得る。
【0271】
in vitro:本明細書で使用される場合、「in vitro」という用語は、生物体内(例えば、動物、植物、又は微生物)ではなく、人工環境、例えば、試験管又は反応容器、細胞培養、ペトリ皿などで起こる事象を指す。
【0272】
in vivo:本明細書で使用される場合、「in vivo」という用語は、生物体内(例えば、動物、植物、又は微生物又はそれらの細胞もしくは組織)で起こる事象を指す。
【0273】
単離された:本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、(自然界又は実験環境を問わず)関連する成分の少なくとも一部から分離された物質又は実体を指す。単離された物質は、それらが結び付けられている物質と比較して、様々なレベルの純度を有し得る。単離された物質及び/又は実体は、最初にそれが結び付けられていた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、約80%以上、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%以上の純度である。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分を実質的に含まない場合に「純粋」である。実質的に単離された:「実質的に単離された」とは、化合物がそれが形成又は検出された環境から実質的に分離されていることを意味する。部分的分離物には、例えば、本開示の化合物が豊富な組成物が含まれ得る。実質的な分離には、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、又は少なくとも約99重量%の本開示の化合物又はその塩を含有する組成物を含むことができる。化合物及びその塩を単離する方法は、当技術分野では日常的である。
【0274】
標識:「標識」という用語は、物質、化合物、又は物体が検出可能となるように物体に組み込まれる物質又は化合物を指す。
リンカー:本明細書で使用される場合、リンカーは、原子のグループ、例えば、10~1,000個の原子を指し、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、及びイミンなどであるがこれらに限定されない原子又は基を含み得る。リンカーは、第1の末端で核酸塩基又は糖部分上の修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドに結合することができ、第2の末端でペイロード、例えば検出可能な薬剤又は治療薬に結合することができる。リンカーは、核酸配列への組み込みに干渉しないように十分な長さであり得る。リンカーは、本明細書に記載されるように、saRNAコンジュゲートを形成するためや、ペイロードを投与するためなど、任意の有用な目的に使用することができる。
【0275】
リンカーに組み込むことができる化学基の例としては、限定するものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、又はヘテロシクリルが挙げられ、これらはそれぞれ、本明細書に記載されるように、任意選択で置換される。リンカーの例には、限定するものではないが、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレン又はプロピレングリコールのモノマー単位、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、又はテトラエチレングリコール)、及びデキストランポリマー及びその誘導体が挙げられる。他の例としては、限定するものではないが、リンカー内の切断可能部分、例えば、還元剤又は光分解を使用して切断できるジスルフィド結合(-S-S-)又はアゾ結合(-N=N-)などが挙げられる。選択的に切断可能な結合の非限定的な例には、例えばトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、又は他の還元剤、及び/又は光分解の使用によって切断できるアミド結合、ならびに、例えば酸性又は塩基性加水分解によって切断できるエステル結合が挙げられる。
【0276】
転移:本明細書で使用される場合、「転移」という用語は、がんが原発腫瘍として最初に発生した場所から体内の離れた場所に浸潤して広がるプロセスを意味する。転移とは、原発腫瘍の広がりによって生じるがんも指す。例えば、乳がんに罹患している人は、リンパ系、肝臓、骨、又は肺に転移を示すことがある。
【0277】
修飾された:本明細書で使用される場合、「修飾された」とは、本開示の分子の変化した状態又は構造を指す。分子は、化学的、構造的、機能的などを含む、様々な方法で修飾され得る。一実施形態では、本開示のsaRNAは、非天然ヌクレオシド及び/又はヌクレオチドの導入によって修飾される。
【0278】
天然に存在する:本明細書で使用される場合、「天然に存在する」とは、人工的な援助なしに自然界に存在することを意味する。
核酸:本明細書で使用される「核酸」という用語は、1つ以上のヌクレオチド、すなわち、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はそれらの両方を含む分子を指す。この用語には、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドのモノマー及びポリマーが含まれ、ポリマーの場合、リボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチドは、5’対3’結合を介して互いに結合している。リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドポリマーは一本鎖であっても二本鎖であってもよい。しかし、結合には、例えば、5’対3’結合を含む核酸を含む、当技術分野で知られている任意の結合が含まれ得る。ヌクレオチドは、天然に存在するものであってもよく、又は天然に存在する塩基対と塩基対関係を形成できる合成的に生成されたアナログであってもよい。塩基対合関係を形成することができる非天然塩基の例には、限定するものではないが、アザ及びデアザピリミジンアナログ、アザ及びデアザプリンアナログ、及び他の複素環式塩基アナログが挙げられ、ピリミジン環の炭素原子及び窒素原子のうちの1つ以上は、酸素、硫黄、セレン、リンなどのヘテロ原子によって置換されている。
【0279】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」とは、治療を求めている、又は治療を必要としている、治療を必要としている、治療を受けている、治療を受ける予定の対象、又は特定の疾患又は状態に関して訓練を受けた専門家による治療を受けている対象を指す。
【0280】
ペプチド:本明細書で使用される場合、「ペプチド」は、50アミノ酸長以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50アミノ酸長である。
【0281】
薬学的に許容される:「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、その他の問題や合併症がなく、合理的な利益/リスク比に見合ったヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書で使用される。
【0282】
薬学的に許容される賦形剤:「薬学的に許容される賦形剤」という語句は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載の化合物以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁又は溶解できるビヒクル)、及び患者において実質的に無毒で非炎症性の特性を有する任意の成分を指す。賦形剤には、例えば、付着防止剤、酸化防止剤、結合剤、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、染料(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、皮膜形成剤又はコーティング、香料、芳香剤、滑剤(流動促進剤)、潤滑剤、防腐剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤又は分散剤、甘味料、及び水分補給水が含まれる。賦形剤の例としては、限定するものではないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、ナトリウムグリコール酸デンプン、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトールが含まれる。
【0283】
薬学的に許容される塩:本開示には、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩も含まれる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」とは、既存の酸又は塩基部分をその塩の形態に変換することによって(例えば、遊離塩基基を適切な有機酸と反応させることによって)親化合物が修飾されている、開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、限定するものではないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩;アルカリ又はカルボン酸などの酸性残基の有機塩などが挙げられる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの他に、非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むがこれらに限定されないアミンカチオンが含まれる。本開示の薬学的に許容される塩には、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が含まれる。本開示の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含む親化合物から従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、水中又は有機溶媒中、又はその2つの混合物中で、化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルバニア州、1985、p.1418、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,P.H.Stahl and C.G.Wermuth(編)、Wiley-VCH、2008、及びBerge et al.,Journal of Pharmaceutical Science,66,1-19(1977)に見いだされ、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0284】
薬学的に許容される溶媒和物:本明細書で使用される「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、適切な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれている本開示の化合物を意味する。適切な溶媒は、投与される用量において生理学的に許容できるものである。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、又はそれらの混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶、又は沈殿によって調製され得る。適切な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物、及び三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジル等である。水が溶媒である場合、溶媒和物は「水和物」と呼ばれる。
【0285】
薬理効果:本明細書で使用される場合、「薬理効果」とは、生物又は系が外因性因子と接触又は外因性因子に曝露された後に生じる、生物又は系における測定可能な生物学的現象である。薬理効果は、治療、1つ以上の症状の改善、診断、予防、及び疾患、障害、状態又は感染の発症の遅延などの治療上有効な結果をもたらし得る。そのような生物学的現象の測定は、定量的、定性的、又は別の生物学的現象との相対的なものであり得る。定量的測定は統計的に有意であり得る。定性的測定は程度又は種類によるものであり、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上異なり得る。それらは、存在するか存在しないか、良いか悪いか、大きいか小さいかとして観察され得る。外因性因子とは、薬理学的効果に言及する場合、全体的又は部分的に、生物又は系にとって異物である因子を指す。例えば、野生型生体分子に対する修飾は、構造的であれ化学的であれ、外因性因子を生成し得る。同様に、生物又は系において天然には見出されない化合物、分子又は物質への野生型分子の組み込み又はそれらとの組み合わせも、外因性因子を生成するであろう。
【0286】
本開示のsaRNAは、外因性因子を含む。薬理効果の例には、限定するものではないが、細胞数の変化、例えば、好中球、網赤血球、顆粒球、赤血球、巨核球、血小板、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、破骨細胞、樹状細胞、ミクログリア細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、又は網赤血球などの増加又は減少が挙げられる。薬理効果には、血液化学、pH、ヘモグロビン、ヘマトクリットの変化、肝酵素AST及びALTなどの(これらに限定されない)酵素レベルの変化、脂質プロファイル、電解質、代謝マーカー、ホルモン又は他の当業者に既知のマーカー又はプロファイルの変化も挙げられる。
【0287】
物理化学的:本明細書で使用される場合、「物理化学的」とは、物理的及び/又は化学的特性を、又は物理的及び/又は化学的特性に関することを意味する。
予防する:本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、感染、疾患、障害及び/又は状態の発症を部分的又は完全に遅らせること;特定の感染症、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状、特徴、又は臨床症状の発症を部分的又は完全に遅らせること;特定の感染症、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状、特徴、又は発現の発症を部分的又は完全に遅らせること;感染症、特定の疾患、障害及び/又は症状の進行を部分的又は完全に遅らせること;及び/又は感染症、疾患、障害、及び/又は状態に関連する病状を発症するリスクを減少させることを指す。
【0288】
プロドラッグ:本開示には、本明細書に記載の化合物のプロドラッグも含まれる。本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」とは、化学的又は物理的変化の際に治療薬として作用する、その物質、分子又は実体に対する述語(predicate)の形態にある任意の物質、分子又は実体を指す。プロドラッグは、いくつかの方法で共有結合又は封鎖されてもよく、哺乳類対象への投与前、投与時、又は投与後に活性薬剤部分を放出するか、又は活性薬剤部分に変換される。プロドラッグは、日常的な操作又はin vivoで修飾が切断されて親化合物になるような方法で、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグには、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基が、哺乳類対象に投与されると切断されてそれぞれ遊離のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基を形成する任意の基に結合している化合物が含まれる。プロドラッグの調製及び使用については、A.C.S.シンポジウムシリーズのVol.14,T.Higugi and V.Stella,“Pro-drugs as Novel Delivery Systems,”及びBioreversible Carriers in Drug Design,EdwardB.Roche編、American Pharmaceutical Association and PergamonPress,1987(両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に述べられている。
【0289】
予後判定:本明細書で使用される場合、「予後判定」という用語は、特定の生物学的事象が将来起こるか、又はその可能性が非常に高いという声明又は主張を意味する。
進行:本明細書で使用される場合、「進行」又は「がんの進行」という用語は、疾患又は状態が進むこと又は悪化すること、又は疾患又は状態に向かって進むこと又は悪化することを意味する。
【0290】
増殖:本明細書で使用される場合、「増殖」という用語は、成長、拡張もしくは増加すること、又は急速な成長、拡張もしくは増加を生じさせることを意味する。「増殖性」とは、増殖する能力を有することを意味する。「抗増殖性」とは、増殖特性に対抗する、又は増殖特性に適さない特性を有することを意味する。
【0291】
タンパク質:「タンパク質」とは、ペプチド結合によって結合したアミノ酸残基のポリマーを意味する。本明細書で使用されるこの用語は、任意のサイズ、構造、又は機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。ただし、通常、タンパク質は少なくとも50アミノ酸の長さになる。場合によっては、コードされるタンパク質は約50アミノ酸よりも小さい。この場合、ポリペプチドはペプチドと呼ばれる。タンパク質が短いペプチドである場合、その長さは少なくとも約10アミノ酸残基になる。タンパク質は、天然のもの、組換え体、合成のもの、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。タンパク質はまた、天然に存在するタンパク質又はペプチドの断片を含み得る。タンパク質は単一分子であっても、多分子複合体であってもよい。タンパク質という用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学的アナログであるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0292】
タンパク質発現:「タンパク質発現」という用語は、検出可能なレベルのアミノ酸配列又はタンパク質が発現されるように、核酸配列が翻訳を受けるプロセスを指す。
精製された:本明細書で使用される場合、「精製する」、「精製された」、「精製」は、実質的に純粋にすること、又は望ましくない成分、物質の汚れ、混合物又は不完全さを除去することを意味する。
【0293】
退行:本明細書で使用される場合、「退行」又は「退行の程度」という用語は、がんの進行の、表現型又は遺伝子型のいずれかでの逆転を指す。がんの進行を遅らせたり止めたりすることは、退行とみなされる場合がある。
【0294】
試料:本明細書で使用される場合、「試料」又は「生体試料」という用語は、その組織、細胞、又は構成部分(例えば、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜血液、尿、膣液及び精液を含むがこれらに限定されない体液)のサブセットを指す。試料はさらに、生物体全体、又はその組織、細胞もしくは構成部分のサブセット、又はそれらの分画もしくは部分(例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚の外部部分、呼吸器、腸管、及び泌尿生殖器管、涙、唾液、乳、血球、腫瘍、臓器を含むがこれらに限定されない)から調製されたホモジネート、溶解物、又は抽出物を含み得る。試料はさらに、タンパク質又は核酸分子などの細胞成分を含み得る、栄養ブロス又はゲルなどの培地を指す。
【0295】
シグナル配列:本明細書で使用される場合、「シグナル配列」という語句は、タンパク質の輸送又は局在化を指示することができる配列を指す。
単回単位用量:本明細書で使用される場合、「単回単位用量」は、1回用量/1回/単一経路/単一接触点、すなわち、単一投与事象で投与される任意の治療薬の用量である。
【0296】
類似性:本明細書で使用される場合、「類似性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。ポリマー分子の互いに対する類似性パーセントの計算は、当技術分野で理解されているように、類似性パーセントの計算が保存的置換を考慮に入れることを除いて、同一性パーセントの計算と同じ方法で行うことができる。
【0297】
分割用量:本明細書で使用される場合、「分割用量」とは、単一の単位用量又は1日の合計用量を2つ以上の用量に分割することである。
安定:本明細書で使用される場合、「安定」とは、反応混合物から有用な純度まで単離しても生き残るのに十分に堅牢であり、一実施形態では、有効な治療薬に製剤化できる化合物を指す。
【0298】
安定化:本明細書で使用される場合、「安定化する」、「安定化された」、「安定化領域」という用語は、安定にする、又は安定になることを意味する。
対象:本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」という用語は、例えば実験、診断、予防、及び/又は治療の目的で、本開示による組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳類)及び/又は植物が含まれる。
【0299】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、対象とする特徴又は特性の全体的又はほぼ全体的な程度又は度合いを示す定性的な状態を指す。生物学的技術の当業者であれば、生物学的及び化学的現象は、たとえあったとしても、めったに完成に至らないこと、及び/又は完全に進まないこと、又は絶対的な結果を達成すること又は回避することはまれであることを理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捉えるために本明細書で使用される。
【0300】
実質的に同等:投与間の時間差に関連して本明細書で使用される場合、この用語はプラス/マイナス2%を意味する。
実質的に同時に:本明細書で使用される場合、及び複数回の用量に関連する場合、この用語は2秒以内を意味する。
【0301】
罹患している:疾患、障害、及び/又は状態に「罹患している」個体は、疾患、障害、及び/又は状態と診断されているか、又は疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状を示している。
【0302】
罹患しやすい:疾患、障害、及び/又は状態に「罹患しやすい」個体は、その疾患、障害、及び/又は状態と診断されていない、及び/又はその疾患、障害、及び/又は状態の症状を示さないことがあるが、疾患又はその症状を発症する傾向を抱えている。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態(例えば、がん)に罹患しやすい個体は、以下のうちの1つ以上によって特徴付けられ得る:(1)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子変異;(2)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する遺伝子多型;(3)疾患、障害、及び/又は状態に関連するタンパク質及び/又は核酸の発現及び/又は活性の上昇及び/又は低下;(4)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する習慣及び/又はライフスタイル;(5)疾患、障害、及び/又は状態の家族歴;及び(6)疾患、障害、及び/又は状態の発症に関連する微生物への曝露及び/又は感染。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態に罹患しやすい個体は、その疾患、障害、及び/又は状態を発症することになる。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/又は状態に罹患しやすい個体は、その疾患、障害、及び/又は状態を発症しない。
【0303】
徐放性:本明細書で使用される場合、「徐放性」という用語は、特定の期間にわたる放出速度に従う医薬組成物又は化合物の放出プロファイルを指す。
合成:「合成」という用語は、人の手によって生成、調製、及び/又は製造されることを意味する。本開示のポリヌクレオチド又はポリペプチド又は他の分子の合成は、化学的又は酵素的であり得る。
【0304】
標的細胞:本明細書で使用される場合、「標的細胞」とは、任意の1つ以上の目的の細胞を指す。細胞は、in vitro、in vivo、in situ、又は生物の組織又は器官内で見出され得る。生物は、動物、一実施形態では哺乳類、又はヒト、一実施形態では患者であり得る。
【0305】
治療剤:「治療剤」という用語は、対象に投与されると、治療、診断、及び/又は予防効果を有し、及び/又は所望の生物学的及び/又は薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。
【0306】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、送達される薬剤(例えば、核酸、薬物、治療薬、診断薬、予防薬など)の、感染症、疾患、障害、及び/又は状態に罹患している、又はそれらに罹りやすい対象への投与時に、感染症、疾患、障害、及び/又は状態に罹患している、又はそれらに罹りやすい対象に対して、その感染症、疾患、障害、及び/又は状態を治療し、症状を改善し、診断し、予防し、及び/又は発症を遅延させるのに十分な量を意味する。
【0307】
治療上有効な転帰:本明細書で使用される場合、「治療上有効な転帰」という用語は、感染症、疾患、障害、及び/又は状態に罹患している、又は罹患しやすい対象において、その感染症、疾患、障害、及び/又は状態を治療、症状を改善、診断、予防、及び/又は発症を遅らせるのに十分な転帰を意味する。
【0308】
1日の総用量:本明細書で使用される場合、「1日の総用量」とは、24時間以内に与えられる、又は処方される量である。それは、単一の単位用量として投与され得る。
転写因子:本明細書で使用される場合、「転写因子」という用語は、例えば転写の活性化又は抑制によって、DNAからRNAへの転写を調節するDNA結合タンパク質を指す。いくつかの転写因子は単独で転写の制御に影響を与えるが、他の転写因子は他のタンパク質と協調して作用する。一部の転写因子は、特定の条件下で転写を活性化することも抑制することもできる。一般に、転写因子は、特定の標的配列、又は標的遺伝子の調節領域内の特定のコンセンサス配列に非常に類似した配列に結合する。転写因子は、単独で、又はそれ自体との複合体で(ホモ二量体として)、又は他の分子との複合体で(ヘテロ二量体として)、標的遺伝子の転写を調節し得る。これらの複合体形成はそれぞれ、単一の転写因子から複数の調節機能を誘導することができる。
【0309】
治療する:本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、特定の感染症、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状又は特徴の部分的又は完全に軽減、好転、改善、緩和、発症の遅延、進行の阻害、重症度の軽減、及び/又は発生率の低下を指す。例えば、がんを「治療する」とは、腫瘍の生存、増殖、及び/又は広がりを阻害することを指し得る。治療は、疾患、障害、及び/又は状態に関連する病状が発症するリスクを低減する目的で、疾患、障害、及び/又は状態の兆候を示さない対象、及び/又は疾患、障害、及び/又は状態の初期の兆候のみを示す対象に施され得る。
【0310】
「治療方法」又はその同等の語句は、例えばがんに適用される場合、個体のがん細胞の数を減少させ、除去し、又は予防し、又はがんの症状を緩和するように設計された手順又は行動方針を指す。がん又は他の増殖性疾患の「治療方法」は、がん細胞又は他の疾患が実際に完全に除去されること、細胞又は疾患の数が実際に減少すること、又はがん又は他の疾患の症状が実際に軽減されることを必ずしも意味するわけではない。多くの場合、がんの治療方法は、成功の可能性が低くても実施されるが、個人の病歴と推定生存予想を考慮すると、全体的に有益な行動方針であると考えられる。
【0311】
腫瘍増殖:本明細書で使用される場合、「腫瘍増殖」又は「腫瘍転移増殖」という用語は、別段の指示がない限り、腫瘍学で一般的に使用されるように使用され、この用語は主に腫瘍細胞の増殖の結果としての腫瘍又は腫瘍転移の質量又は体積の増加に関連する。
【0312】
腫瘍負荷:本明細書で使用される場合、「腫瘍負荷」という用語は、対象が有する直径3mmを超えるすべての腫瘍結節の総腫瘍体積を指す。
腫瘍体積:本明細書で使用される場合、「腫瘍体積」という用語は、腫瘍のサイズを指す。mm単位の腫瘍体積は、次の式で計算される:体積=(幅)×長さ/2。
【0313】
未修飾:本明細書で使用される場合、「未修飾」とは、何らかの方法で変更される前の任意の物質、化合物、又は分子を指す。未修飾とは、常にではないが、生体分子の野生型又は天然型を指す場合がある。分子は一連の修飾を受けることがあり、それによって修飾された各分子は、その後の修飾のための「未修飾」開始分子として機能し得る。
【0314】
同等物及び範囲
当業者は、本明細書に記載の開示による特定の実施形態と多くの同等物を認識するか、日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。本開示の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【0315】
特許請求の範囲において、「1つ」、「その」、及び「前記」などの冠詞は、反対の指示がない限り、又は文脈から明らかでない限り、1つ又は複数を意味し得る。グループの1つ以上のメンバー間に「又は」を含む請求項又は説明は、反対の指示がない限り、又は文脈から明らかでない限り、グループメンバーの1つ、複数、又はすべてが所与の製品又は方法において存在するか、採用されるか、又はその他の態様で関連している場合に充足するとみなされる。本開示には、グループの厳密に1つのメンバーが所与の製品又は方法において存在するか、採用されるか、又はその他の態様で関連している実施形態が含まれる。本開示には、グループメンバーの2つ以上、又はすべてが所与の製品又は方法において存在するか、採用されるか、又はその他の態様で関連している実施形態が含まれる。
【0316】
また、「含む」という用語はオープンであることを意図しており、追加の要素又は工程を含めることを許容することにも留意されたい。
範囲が指定されている場合は、上限値、下限値も含まれる。さらに、別段の指示がない限り、又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現される値は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、本発明の様々な実施形態において、記載された範囲内の、範囲の下限値の単位の10分の1までの任意の特定の値又は部分範囲を想定し得ることを理解されたい。
【0317】
さらに、従来技術に該当する本開示の特定の実施形態は、いずれか1つ以上の請求項から明示的に除外され得ることを理解されたい。そのような実施形態は当業者には既知であると考えられるため、本明細書に除外が明示的に記載されていなくても、除外することができる。本開示の組成物の特定の実施形態(例えば、任意の核酸又はそれによってコードされるタンパク質、任意の製造方法、任意の使用方法など)は、理由を問わず、又は従来技術の存在と関係するか否かを問わず、任意の1つ以上の請求項から除外することができる。
【0318】
本明細書で引用される参考文献、出版物、データベース、データベースエントリ、及び技術などのすべての引用情報源は、引用文に明示的に記載されていない場合でも、参照により本願に組み込まれる。引用情報源と本願の記述が矛盾する場合には、本願の記述が優先されるものとする。
【0319】
本開示は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
実施例
材料及び手順:
saRNAのトランスフェクション
saRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖を合成した。最初に、これらをTris-EDTAベースのバッファー中でアニーリングし、続いて90℃での変性ステップ、続いて室温まで徐々にアニーリングステップを行った。細胞を24ウェルプレートに1ウェル当たり0.25~1×10で播種し、リポフェクタミン2000(Life Technologies)を使用してトランスフェクションした。トランスフェクションは、播種した直後に、1uLのリポフェクタミン2000を使用して、示されたオリゴヌクレオチド濃度で行った。24時間後に細胞をトランスフェクションし、播種後48時間及び72時間後に分析のために収集した。
【0320】
RT-PCR
各実験で示されているように、播種後48時間から96時間で全RNAを収集した。メーカーの推奨に従ってRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を使用してRNAを回収し、QIAxpertマシン(QIAGEN)を使用して定量した。RNA試料を正規化し、メーカーの推奨に従ってQuantitech逆転写キット(Qiagen)を使用して逆転写した。相対発現レベルは、PowerUp SYBR Green Master Mix(QIAGEN)とQIAGENの検証済みQuantiTech SYBRプライマーを使用したリアルタイムPCRによって決定された。
【0321】
ウエスタンブロット
プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(Fisher Scientific)を添加した放射免疫沈降アッセイ(RIPA)バッファーを使用して細胞を溶解し、溶解物を氷上で10分間インキュベートし、30秒で3回超音波処理した。総タンパク質レベルを、Rapid Gold BCA Protein Assay Kit(Pierce)によって測定し、溶解物をローディング前の総タンパク質含有量によって正規化した。標的タンパク質の発現レベルを、12~230kDa Wes分離モジュール及び抗ウサギ検出モジュールを使用するWesシステム(Biotechne)によって決定した。標的を、TMEM173特異的抗体(Cell Signaling)で検出した。総タンパク質含有量を、総タンパク質検出モジュールを使用して確認した。
【0322】
実施例1.in vitroでのsaRNAによるTMEM173mRNA発現の上方制御
この研究では、ヒトHepG2細胞(肝細胞がん)に、10nMの対照FLucオリゴ又はTMEM173(STING)を標的とするsaRNAの様々なバリアントをトランスフェクトした。72時間目にRNAを抽出し、TMEM173mRNAの発現レベルをRT-qPCRによって測定した(図2及び図3)。
【0323】
図2に示すように、TMEM173-Pr-1、TMEM173-Pr-32、TMEM173-Pr-48、TMEM173-Pr-70、TMEM173-Pr-89、TMEM173-Pr-121、TMEM173-Pr-161、及びTMEM173-Pr-164は、TMEM173mRNAを上方制御した。
【0324】
図3に示すように、TMEM173-Pr-70、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m2、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-0、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-p1及びTMEM173-Pr-70-invAb-Se-p2はすべてTMEM173mRNAを上方制御した。
【0325】
別の研究では、ヒトA549細胞(肺腺がん)に、10nMの対照FLucオリゴ又はTMEM173(STING)を標的とするsaRNAの様々なバリアントをトランスフェクトした。72時間目にRNAを抽出し、TMEM173mRNAの発現レベルをRT-qPCRによって測定した(図4)。対照saRNAの配列を表5に示す。
【0326】
図4に示すように、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1はTMEM173mRNAを上方制御し、TMEM173-Pr-70-invAb-As-m1の活性はより低かった。陰性対照TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1-seedmutは、TMEM173mRNAを上方制御しなかった。
【0327】
【表5】
【0328】
別の研究では、未処理のA549細胞(UNTR)、A549細胞に10nMの対照FLucオリゴ又はTMEM173(STING)を標的とするsaRNAをトランスフェクトした。RNA及びタンパク質を72時間で抽出し、TMEM173mRNA及びTMEM173タンパク質の発現レベルをそれぞれRT-qPCR及びWesProtein Simpleアッセイによって測定した(図5)。
【0329】
図5に示すように、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1は、TMEM173mRNA(図5A)及びTMEM173タンパク質(図5B)を上方制御した。総タンパク質の定量化により、Wes分析用の3つの試料すべてに等しいローディングが示された。
【0330】
別の研究では、ヒトA549細胞に10nMの対照FLucオリゴ又はTMEM173(STING)を標的とするsaRNAの様々なバリアントをトランスフェクトした。72時間目にRNAを抽出し、TMEM173mRNAの発現レベルをRT-qPCRによって測定した(図6)。
【0331】
図6に示すように、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1及びTMEM173-Pr-70-m1-emod51は両方ともTMEM173mRNAを上方制御した。
【0332】
別の研究では、ヒトA549細胞に、様々な濃度(0.37~50nM)の対照FLucオリゴ又はTMEM173(STING)を標的とするsaRNAの様々なバリアントをトランスフェクトした。RNAを指定の時点で抽出し、TMEM173mRNAの発現レベルをRT-qPCRによって測定した(図7)。
【0333】
図7に示すように、TMEM173-Pr-70-invAb-Se-m1及びTMEM173-Pr-70-m1-emod51は両方とも、すべての時点で用量依存的にTMEM173mRNAを上方制御した。
【0334】
他の実施形態
本開示をその詳細な説明と併せて説明したが、上記の説明は例示を目的とするものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び修正は、以下の特許請求の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024511092000001.app
【国際調査報告】