(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】癌に対する増強された効力を有する操作されたナチュラルキラー細胞の製造のための凍結保存臍帯血ユニットの選択方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240305BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240305BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20240305BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240305BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240305BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240305BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240305BHJP
A61K 35/51 20150101ALN20240305BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0781
C12Q1/02
A61K35/17
A61P35/00
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
A61K35/51
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558274
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 US2022020572
(87)【国際公開番号】W WO2022203920
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レズヴァニ、ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】マリン コスタ、ダビド
(72)【発明者】
【氏名】シュポール、エリザベス
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QS40
4B065AA90
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD09
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB59
4C087BB65
4C087NA05
4C087ZB26
(57)【要約】
【課題】養子細胞療法用のNK細胞などの免疫細胞を産生するための臍帯血ユニットの選択の最適化に関連する方法および組成物を提供する。
【解決手段】本開示の実施形態は、養子細胞療法用のNK細胞などの免疫細胞を産生するための臍帯血ユニットの選択の最適化に関連する方法および組成物に関する。 具体的な実施形態では、臍帯血ユニットの特定の特性および/またはそれに由来する細胞の特性が分析される。 臍帯血ユニットおよび/またはそれに由来する細胞の特性について、1つ以 上の特性に関する閾値が満たされた場合、その臍帯血ユニットは免疫細胞の産生源として利用される。 測定の対象となる特定の特性には、凍結保存前の臍帯血細胞の生存率、全核細胞回収率、有核赤血球含有量、および任意で凍結保存後の免疫細胞の細胞毒性および/または増殖が含まれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯血組成物を選択する方法であって、
下記の(a)~(j):
(a)臍帯血細胞生存率;
(b)必要な場合には総単核細胞(TNC)回収率;
(c)有核赤血球(NRBC)含有量;
(d)前記臍帯血が由来する乳児の体重;
(e)前記臍帯血が由来する乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種;
(f)必要な場合には、前記臍帯血が由来する乳児の在胎齢;
(g)必要な場合には前記臍帯血の子宮内採取;
(h)必要な場合には、前記臍帯血が由来する生物学的雄性の乳児;
(i)必要な場合には、採取された前記臍帯血の体積;
(j)必要な場合には、CD34+である前記抜き取られた臍帯血の細胞の数
を前記臍帯血組成物の凍結保存の前に測定する、または凍結保存前に考慮する工程;および
凍結保存の後、(d)解凍後の前記臍帯血組成物に由来する免疫細胞の細胞傷害性を測定する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記免疫細胞がナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記NK細胞を拡大する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NK細胞を改変する工程をさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記NK細胞が、1つまたは複数の非内因性遺伝子産物を発現するように改変される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非内因性遺伝子産物が1つまたは複数の非内因性受容体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非内因性受容体がキメラ受容体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キメラ受容体がキメラ抗原受容体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非内因性受容体が非天然型T細胞受容体である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記非内因性遺伝子産物が、1つまたは複数の非内因性受容体、1つまたは複数のサイトカイン、1つまたは複数のケモカイン、1つまたは複数の酵素、あるいはそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記NK細胞が、前記NK細胞における1つまたは複数の内因性遺伝子の発現の破壊を有するように改変される、請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
臍帯血組成物を選択する方法であって、
凍結保存前に、
(a)臍帯血細胞生存率が約98%以上または99%以上であること;
(b)必要な場合には、総単核細胞(TNC)回収率が76.3%以上であること;
(c)有核赤血球(NRBC)含有量が約7.5×10
7個~約8.0×10
7個以下であること;
(d)前記臍帯血が由来する乳児の体重が約3650グラム超であること;
(e)前記臍帯血が由来する乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種が白人であること;
(f)必要な場合には、前記臍帯血が由来する乳児の在胎齢が約38週以下であること;
(g)必要な場合には前記臍帯血の子宮内採取;
(h)必要な場合には、前記臍帯血が由来する生物学的雄性の乳児;
(i)必要な場合には、前記採取された臍帯血+抗凝固剤の体積が約120mL以下であること;
(j)必要な場合には、前記抜き取られた臍帯血の細胞は約0.4%超がCD34+であること
のうちの1つまたは複数を有すると判定される臍帯血組成物を特定する工程、および
必要な場合には(k)解凍後の前記臍帯血組成物に由来する免疫細胞の細胞傷害性を測定する工程
を含む方法。
【請求項13】
凍結保存前の前記臍帯血組成物が、(a)、(c)、(d)および(e)を有すると判定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)における前記臍帯血細胞生存率が、99.0%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
(b)における前記TNC回収率が、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上である、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記NRBC含有量が、8.0×10
7個以下、7.9×10
7個以下、7.8×10
7個以下、7.7×10
7個以下、7.6×10
7個以下、7.5×10
7個以下、7.0×10
7個以下、6.0×10
7個以下、5.0×10
7個以下、4.0×10
7個以下、3.0×10
7個以下、2.0×10
7個以下、1.0×10
7個以下、9.0×10
6個以下、8.0×10
6個以下、7.0×10
6個以下、6.0×10
6個以下、5.0×10
6個以下、4.0×10
6個以下、3.0×10
6個以下、2.0×10
6個以下、1.0×10
6個以下、9.0×10
5個以下、8.0×10
5個以下、7.0×10
5個以下、6.0×10
5個以下、5.0×10
5個以下、4.0×10
5個以下、3.0×10
5個以下、2.0×10
5個以下、1.0×10
5個以下、9.0×10
4個以下、8.0×10
4個以下、7.0×10
4個以下、6.0×10
4個以下、5.0×10
4個以下、4.0×10
4個以下、3.0×10
4個以下、2.0×10
4個以下、1.0×10
4個以下、9.0×10
3個以下、8.0×10
3個以下、7.0×10
3個以下、6.0×10
3個以下、5.0×10
3個以下、4.0×10
3個以下、3.0×10
3個以下、2.0×10
3個以下、1.0×10
3個以下、9.0×10
2個以下、8.0×10
2個以下、7.0×10
2個以下、6.0×10
2個以下、5.0×10
2個以下、4.0×10
2個以下、3.0×10
2個以下、2.0×10
2個以下、1.0×10
2個以下、またはそれよりも少ない、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記臍帯血が由来する前記乳児の重量が、約3650グラム超、3700グラム超、3750グラム超、3800グラム超、3850グラム超、3900グラム超、3950グラム超、4000グラム超、4050グラム超、4100グラム超、4150グラム超、4200グラム超、4250グラム超、または4500グラム超である、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記採取される臍帯血+抗凝固剤の前記体積が、約120mL以下、115mL以下、110mL以下、100mL以下、90mL以下、80mL以下、70mL以下、60mL以下、または50mL以下である、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抜き取られた臍帯血の細胞は、0.4%超、0.5%超、1%超、2%超、3%超、4%超、5%超、10%超、15%超、20%超、またはそれ以上がCD34+である、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
免疫細胞を前記解凍された臍帯血組成物から導く工程をさらに含む、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫細胞が、NK細胞、インバリアントNK細胞、NK T細胞、T細胞B細胞、単球、顆粒球、骨髄細胞好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、幹細胞、またはそれらの混合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
解凍後の前記臍帯血組成物に由来する前記免疫細胞がNK細胞であり、前記細胞傷害性が66.7%以上である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞傷害性が、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記臍帯血が、38週以下の在胎齢である胎児または新生児に由来する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記臍帯血が、38週以下、37週以下、36週以下、35週以下、34週以下、33週以下、32週以下、31週以下、30週以下、29週以下、28週以下、27週以下、26週以下、25週以下、または24週以下の在胎齢である胎児または新生児に由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
解凍後の臍帯血細胞の生存率を求めることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
解凍後の臍帯血細胞の前記生存率が86.5%以上である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
解凍後の臍帯血細胞の前記生存率が、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫細胞がNK細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記NK細胞が拡大される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
培養における0日目と6日目との間の前記NK細胞の前記拡大が3倍以上である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
培養における6日目と15日目との間の前記NK細胞の前記拡大が70倍以上である、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
0日目と15日目との間の前記NK細胞の前記拡大が450倍以上である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記NK細胞が改変される、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記NK細胞が、1つまたは複数の非内因性遺伝子産物を発現するように改変される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記非内因性遺伝子産物が非内因性受容体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記非内因性受容体がキメラ受容体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記キメラ受容体がキメラ抗原受容体である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記非内因性受容体が非天然型T細胞受容体である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記非内因性遺伝子産物が、1つまたは複数の非内因性受容体、1つまたは複数のサイトカイン、1つまたは複数のケモカイン、1つまたは複数の酵素、あるいはそれらの組み合わせを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記免疫細胞が、前記細胞における1つまたは複数の内因性遺伝子の発現の破壊を有するように改変される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記臍帯血細胞生存率が98%超または99%超であり、前記TNC回収率が76.3%超であり、前記NRBC含有量が7.5×10
7個超または8.0×10
7個超である、請求項12~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記臍帯血が、39週以下の在胎齢である胎児または新生児に由来し、解凍後の臍帯血細胞の前記生存率が86.5%以上であり、培養における0日目と6日目との間の前記NK細胞の前記拡大が7倍以上であり、かつ、培養における6日目と15日目との間の前記NK細胞の前記拡大が10
5倍以上である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~43に記載の方法のいずれか1つによって特定される臍帯血組成物。
【請求項45】
医薬的に許容され得るキャリアに含まれる、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
1つまたは複数の凍結保護剤とともに配合される、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
請求項1~43のいずれか一項に記載の方法に由来する免疫細胞の集団を含む組成物。
【請求項48】
治療のための免疫細胞の有効性を予測する方法であって、
凍結されていない1つまたは複数の臍帯血組成物を、
(a)臍帯血細胞生存率;
(b)必要な場合には総単核細胞(TNC)回収率;および
(c)有核赤血球(NRBC)含有量;
(d)前記臍帯血が由来する乳児の体重;
(e)前記臍帯血が由来する乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種;
(f)必要な場合には、前記臍帯血が由来する乳児の在胎齢;
(g)必要な場合には前記臍帯血の子宮内採取;
(h)必要な場合には、前記臍帯血が由来する生物学的雄性の乳児;
(i)必要な場合には、採取された前記臍帯血の体積;
(j)必要な場合には、CD34+である前記抜き取られた臍帯血の細胞の数
について測定すること、またはそれらのうちの1つもしくは複数を考慮することを含み、
前記臍帯血組成物が、下記特徴:
(a)臍帯血細胞生存率が98%以上または99%以上であること;
(b)総単核細胞(TNC)回収率が76.3%以上であること;および
(c)有核赤血球(NRBC)含有量が7.5×10
7個以下または8.0×10
7個以下であること;
(d)前記臍帯血が由来する乳児の体重が約3650グラム超であること;
(e)前記臍帯血が由来する乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種が白人であること;
(f)必要な場合には、前記臍帯血が由来する乳児の在胎齢が約38週以下であること;
(g)必要な場合には前記臍帯血の子宮内採取;
(h)必要な場合には、前記臍帯血が由来する生物学的雄性の乳児;
(i)必要な場合には、前記採取される臍帯血および抗凝固剤の体積が、約120mL以下、115mL以下、110mL以下、100mL以下、90mL以下、80mL以下、70mL以下、60mL以下、または50mL以下であること;
(j)必要な場合には、CD34+である前記抜き取られた臍帯血の細胞の数が約0.4%超であること
の1つまたは複数を含むとき、前記免疫細胞が治療のために有効である、方法。
【請求項49】
前記1つまたは複数の血液組成物を凍結する工程をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
解凍時に、(d)前記臍帯血組成物に由来する免疫細胞の細胞傷害性を測定することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞傷害性が66.7%以上である、請求項50に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月22日に出願された米国仮特許出願シリアル番号63/164,379および2021年9月13日に出願された米国仮特許出願シリアル番号63/243,669の優先権を主張するものであり、これら両出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、免疫学、および医学の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
CARを発現するように改変された臍帯血由来ナチュラルキラー(NK)細胞は、癌に対する有効な治療法である。実際、臍帯血由来NK細胞は、複数の悪性腫瘍および感染症を治療するために(遺伝的または非遺伝的方法のいずれかによって)改変することができる。凍結保存された臍帯血はバイオバンクで容易に入手可能であり(幹細胞移植の細胞源として使用されるため)、臨床使用のための複数の細胞療法製品を製造するのに十分な数のNK細胞を提供することができる。NK細胞の供給源として臍帯血ユニットを使用する代わりに、健康なドナーから白血球アフェレーシスという方法で細胞を得る方法がある。この方法は複雑であり、ドナーのリスクも免れない。NK細胞製剤の臨床的有効性は、凍結保存された臍帯ユニットの特性に大きく影響される。本開示は、細胞治療に適した細胞を調達するという、当技術分野における長年のニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、個体に対する細胞療法に関連する方法及び組成物に向けられている。細胞療法はどのような種類のものであってもよいが、特定の実施形態では、細胞療法は、細胞を必要とする個体に投与する前に最終的に改変され得る免疫細胞を少なくとも含む、免疫細胞を用いた養子細胞療法を含む。特定の実施形態において、本開示は、個体に対する養子細胞療法に有効な免疫細胞を産生するのに特に適した臍帯血ユニットの同定(同定がない場合の臍帯血の選択よりも有効であることを含む)に関する。
【0005】
本開示は、少なくとも癌やあらゆる種類の感染症など、あらゆる種類の病状に対する治療を含む患者の治療のために、非常に有効な免疫細胞治療産物を産生する可能性が最も高い臍帯血ユニットを同定するための複数部分からなる戦略に関する。本開示は、(i)臍帯血ユニットの凍結保存前、(ii)解凍後およびGMP施設などでの免疫細胞製造開始時、および(iii)製造中および製造終了時の免疫細胞の特性、を含む一連の選択基準を提供する。
【0006】
特定の実施形態には、臍帯血組成物の凍結保存または使用の前に測定する工程を含む、臍帯血組成物の選択方法が含まれる:(a)臍帯血細胞の生存率;(b)任意選択で、全単核球(TNC)回収率;(c)有核赤血球(NRBC)含有量;(d)臍帯血が由来する乳児の体重;(e)臍帯血が由来する乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種;(f)任意選択で、臍帯血が由来する乳児の妊娠年齢;(g)任意選択で、臍帯血の子宮内採取(ただし、子宮外採取、または子宮内採取と子宮外採取の組み合わせが、本開示のいずれの方法においても使用され得る);(h)任意選択で、臍帯血が由来する生物学的に男の乳児;(i)任意選択で、前処理量(採取された臍帯血の体積+抗凝固剤(一例として、35mlクエン酸リン酸デキストロース(CPD))≦120mL;(j)任意選択で、抽出された臍帯血の細胞が>0.4%CD34+であること;および任意に、凍結保存後に(k)解凍後の臍帯血組成物由来の免疫細胞の細胞傷害性;および(l)解凍後の培養中の臍帯血由来の免疫細胞(NK細胞を含む)の倍数拡大を測定すること。具体的な実施態様において、基準は、特性の少なくとも1つについて定量的な閾値を満たす。
【0007】
具体的な態様では、以下の1つ以上の基準を満たす:(a)臍帯血細胞の生存率が98%または99%以上である;(b)任意の全単核球(TNC)回収率が76.3%以上である;および(c)有核赤血球(NRBC)含量が7.5×107もしくは8.0×107またはその間の量以下である。
【0008】
本開示の実施形態は、以下の工程を含む、臍帯血組成物を選択する方法を包含する:臍帯血組成物の凍結保存前に以下を測定する工程:(a)臍帯血細胞の生存率;(b)任意選択で、全単核球(TNC)回収率;(c)有核赤血球(NRBC)含有量;(d)臍帯血が由来する乳児の体重;(e)臍帯血が由来する乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種;(f)任意選択で、臍帯血が由来する乳児の妊娠年齢;(g)任意選択で、臍帯血の子宮内採取(ただし、子宮外採取、または子宮内採取と子宮外採取の組み合わせが、本開示のいずれの方法においても使用され得る);(h)任意選択で、臍帯血が由来する生物学的に男性の乳児;(i)任意選択で、前処理量(採取された臍帯血の体積+抗凝固剤(35ml CPD))≦120mL;(j)任意選択で、抽出された臍帯血の細胞が>0.4%CD34+であること;および凍結保存後に(d)任意に解凍後の臍帯血組成物由来の免疫細胞の細胞毒性を測定すること。具体的な実施形態において、免疫細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。方法は、NK細胞を増殖させる工程および/またはNK細胞を改変する工程をさらに含み得る。場合によっては、NK細胞は、1つ又は複数の非内在性受容体(1つ又は複数のキメラ抗原受容体及び/又は1つ又は複数の非天然T細胞受容体を含む1つ又は複数のキメラ受容体など)などの1つ又は複数の非内在性遺伝子産物を発現するように改変される。場合によっては、非内在性遺伝子産物は、1つ以上の非内在性受容体、1つ以上のサイトカイン、1つ以上のケモカイン、1つ以上の酵素、またはそれらの組み合わせからなる。NK細胞は、NK細胞における1つ以上の内因性遺伝子の発現が破壊されるように改変されていてもよい。
【0009】
一実施形態では、臍帯血組成物を選択する方法であって、凍結保存前に、以下の1つ以上を有すると決定される臍帯血組成物を同定する工程を含む方法が提供される:(a)臍帯血細胞の生存率が98%または99%以上である;(b)任意に全単核球(TNC)回収率が76.3%以上である;(c)有核赤血球(NRBC)含量が7.5×107または8.0×107またはその間の任意の量;(d)臍帯血の由来となった乳児の体重が3650g以上;(e)臍帯血の由来となった乳児の実母および/または実父の人種が白人;(f)任意で、臍帯血の由来となった乳児の妊娠週数が約38週以下である;(g)任意選択で、臍帯血の子宮内採取(ただし、子宮外採取、または子宮内採取と子宮外採取の組み合わせが、本開示のいずれの方法においても使用され得る);(h)任意選択で、臍帯血の由来となる生物学的に男性の乳児;(i)任意選択で、前処理量(採取された臍帯血の体積+抗凝固剤(35ml CPD))≦120mL;(j)任意選択で、抽出された臍帯血の細胞は、>0.4%CD34+であること;および任意に(k)解凍後の臍帯血組成物由来の免疫細胞の細胞毒性を測定すること。場合によっては、凍結保存前の臍帯血組成物は、少なくとも(a)および(b)を有すると判定され;(b)および(c)を有すると判定され;(a)および(c)を有すると判定され;または(a)、(b)および(c)を有すると判定される。
【0010】
具体的には、(a)の臍帯血細胞生存率は、98.1、98.2、98.3、98.4、98.5、98.6、98.7、98.8、98.9、99.0、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、または99.9%以上である。具体的には、(b)のTNC回収率は77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%以上である。具体的には、NRBC含量は、8.0×107、7.9×107、7.8×107、7.7×107、7.6×107、7.5×107、7.0×107、6.0×107、5.0×107、4.0×107、3.0×107、2.0×107,1.0×107,9.0×106,8.0×106,7.0×106,6.0×106,5.0×106,4.0×106,3.0×106,2.0×106,1.0×106,9.0×105,8.0×105,7.0×105,6.0×105,5.0×105,4.0×105,3.0×105,2.0×105,1.0×105,9.0×104,8.0×104,7.0×104,6.0×104,5.0×104,4.0×104,3.0×104,2.0×104,1.0×104,9.0×103,8.0×103,7.0×103,6.0×103、5.0×103、4.0×103、3.0×103、2.0×103、1.0×103、9.0×102、8.0×102、7.0×102、6.0×102、5.0×102、4.0×102、3.0×102、2.0×102、1.0×102などである。具体的には、臍帯血の元となった乳児の体重が3650g以上である。具体的な態様において、臍帯血の由来となった生物学的母親の人種は白人であり、および/または臍帯血の由来となった乳児の生物学的父親は白人である。特定の実施形態では、臍帯血の由来となる乳児の妊娠週数は約38週以下である。特定の実施形態において、臍帯血は、任意の適切な方法によって得ることができるが、特定の実施形態において、子宮内、子宮外、またはその両方で得られるが、特定の場合、子宮内でのみ得られる。特定の実施形態において、約35mLの抗凝固剤に加えて抽出された臍帯血の体積は≦120mLであり、抽出された臍帯血の体積が約85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、または30mL以下である。
【0011】
本明細書に包含されるいずれの方法も、解凍した臍帯血組成物から免疫細胞を誘導する工程をさらに含むことができる。免疫細胞は、NK細胞、不変NK細胞、NK T細胞、T細胞B細胞、単球、顆粒球、骨髄球好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、幹細胞、またはそれらの混合物であってもよい。具体的には、解凍後の臍帯血組成物由来の免疫細胞はNK細胞であり、細胞傷害性は66.7%以上である。細胞傷害性は、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%以上であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、臍帯血は、妊娠39週または38週以下の胎児または乳児由来である。臍帯血は、妊娠週数39週、38週、37週、36週、35週、34週、33週、32週、31週、30週、29週、28週、27週、26週、25週、または24週以下の胎児または乳児由来であってもよい。場合によっては、本方法は、解凍後の臍帯血細胞の生存率を決定することをさらに含む。具体的な態様において、解凍後の臍帯血細胞の生存率は86.5%以上、例えば87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%以上である。
【0013】
解凍した臍帯血組成物由来の免疫細胞がNK細胞である場合、NK細胞を拡大することができる。拡大パラメータは、ケースバイケースで決定してもしなくてもよい。拡大は、0日目から15日目までの間やその間の任意の範囲など、特定の培養日数後に定量することができる。細胞の拡大倍数は、少なくとも、又は約3倍、5倍、7倍、10倍、20倍、25倍、50倍、75倍、100倍、125倍、150倍、175倍、200倍、225倍、250倍、275倍、300倍、325倍、350倍、375倍、400倍、425倍、450倍、475倍、500倍以上などである。場合によっては、培養0日目から6日目の間のNK細胞の増殖は7倍以上である。場合によっては、培養6日目から15日目の間のNK細胞の増殖は10倍以上である。具体的な態様では、0~15日または6~15日または0~6日(およびその間の任意の範囲)の間の拡大であり、70倍を超える拡大を有する。具体的には、拡大は0~15日(およびその間の任意の範囲)であり、450倍を超える拡大を有する。任意の倍数レベルでの拡大の日数の範囲には、0-15、0-14、0-13、0-12、0-11、0-10、0-9、0-8、0-7、0-6、0-5、0-4、0-3、0-2、0-1、1-15、1-14、1-13、1-12、1-11、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6,1-5,1-4,1-3,1-2,2-15,2-14,2-13,2-12,2-11,2-10,2-9,2-8,2-7,2-6,2-5,2-4,2-3,3-15,3-14,3-13,3-12,3-11,3-10,3-9,3-8,3-7,3-6,3-5,3-4,4-15,4-14,4-13,4-12,4-11,4-10,4-9,4-8,4-7,4-6,4-5,5-15,5-14,5-13,5-12,5-11,5-10,5-9,5-8,5-7,5-6,6-15,6-14,6-13,6-12,6-11,6-10,6-9,6-8,6-7,7-15,7-14,7-13,7-12,7-11,7-10,7-9,7-8,8-15,8-14、8-13、8-12、8-11、8-10、8-9、9-15、9-14、9-13、9-12、9-11、9-10、10-15、10-14、10-13、10-12、10-11、11-15、11-14、11-13、11-12、12-15、12-14、12-13、13-15、13-14、14-15など。
【0014】
NK細胞は、キメラ抗原受容体などのキメラ受容体を含む非内在性受容体、または非内在性受容体が非天然T細胞受容体であるような、1つ以上の非内在性遺伝子産物を発現するように改変されるなど、改変されてもよい。場合によっては、非内在性遺伝子産物は、1つ以上の非内在性レセプター、1つ以上のサイトカイン、1つ以上のケモカイン、1つ以上の酵素、またはそれらの組み合わせからなる。特定の態様において、融解した臍帯血組成物由来の免疫細胞は、細胞内の1つ以上の内因性遺伝子の発現が破壊されるように改変される。
【0015】
具体的な態様において、臍帯血細胞の生存率は98%または99%より大きく、TNC回収率は76.3%より大きく、NRBC含量は7.5×107もしくは8.0×107またはその間の任意の範囲(7.5×107-8.0×107、7.5×107-7.9;7.5×107-7.8×107;7.5×107-7.7×107;7.5×107-7.6×107;7.6×107-8.0×107;7.6×107-7.9×107;7.6×107-7.8×107;7.6×107-7.7×107;7.7×107-8.0×107;7.7×107-7.9×107;7.7×107-7.8×107;7.8×107-8.0×107;7.8×107-7.9×107;7.9×107-8.0×107を含む。具体的な実施形態では、臍帯血は妊娠39週または38週以下の胎児または乳児由来であり、解凍後の臍帯血細胞の生存率は86. 5%(これは任意である)、培養0日目から6日目の間のNK細胞の拡大は3倍以上、培養6日目から15日目の間のNK細胞の拡大は100倍以上、培養0日目から15日目の間のNK細胞の拡大は900倍以上である。具体的な例では、6日目から15日目の間のNK細胞の増殖は70倍以上である。具体的な実施態様では、0日から15日の間のNK細胞の増殖は450倍以上である。
【0016】
本開示の実施形態は、本明細書に包含される方法のいずれか1つによって同定される臍帯血組成物を含む。組成物は、薬学的に受容可能な担体中に含まれ得る。 組成物は、1つ以上の凍結保護剤とともに調製され得る。
【0017】
本開示の実施形態は、本明細書に包含される任意の方法由来の免疫細胞の集団を含む組成物を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、治療のための免疫細胞の有効性を予測する方法であって、凍結されていない1つ以上の臍帯血組成物を、以下について測定することを含む方法がある:(a)臍帯血細胞生存率;(b)任意選択で全単核球(TNC)回収率;(c)有核赤血球(NRBC)含有量;(d)臍帯血が由来する乳児の体重;(e)臍帯血が由来する乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種が白人であること;(f)任意選択で、臍帯血が由来する乳児の妊娠年齢;ここで、免疫細胞は、臍帯血組成物が以下の特徴のうちの1つ以上を含む場合に、治療に有効である: (a)臍帯血細胞の生存率が98%以上または99%以上;(b)全単核球(TNC)回収率が76.3%;(c)有核赤血球(NRBC)含量が8.0×107以下;(d)臍帯血由来の乳児の体重が3650g以上;(e)臍帯血由来の乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種が白人;(f)任意で、臍帯血由来の乳児の妊娠週数が約38週以下である。本方法は、1つ以上の血液組成物を凍結させる工程をさらに含んでいてもよい。本方法は、解凍時に(d)臍帯血組成物由来の免疫細胞の細胞毒性を測定する工程をさらに含んでいてもよい。場合によっては、細胞毒性は66.7%以上である。
【0019】
以上、本開示の特徴および技術的利点をかなり大まかに概説したが、これは、以下の詳細な説明をよりよく理解できるようにするためである。以下、本明細書の特許請求の範囲の主題を形成する追加の特徴および利点を説明する。開示された着想および具体的な実施形態は、本意匠の同じ目的を遂行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者には理解されるべきである。また、そのような等価な構造は、添付の特許請求の範囲に規定された精神および範囲から逸脱しないことも、当業者には理解されるはずである。 本明細書に開示された設計の特徴と考えられる新規な特徴は、組織および操作方法の両方に関して、さらなる目的および利点とともに、添付の図と関連して考慮される場合、以下の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、各図は、例示および説明の目的のみのために提供されており、本開示の限界の定義として意図されていないことを明示的に理解されたい。
【0020】
本開示をより完全に理解するために、次に、添付の図面と併せて取られる以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】凍結前のCBUの特性は、細胞生存率に関連する臨床反応を予測する。
【0022】
【
図2】凍結前CBUの特性は、全単核球(TNC)回収に関する臨床応答を予測する。
【0023】
【
図3】凍結前CBU特性は、有核赤血球(NRBC)含量の減少を指示する臨床応答について予測する。
【0024】
【
図4】3つのCBU特性は、患者の臨床的特性によって調整された場合、多変量モデルにおいて奏効の独立した予測因子である。
【0025】
【
図5】30日目の反応におけるCBUの有利な特性の数(クロス集計)。
【0026】
【
図6】凍結CBからの)非形質転換NK細胞によるRAJI腫瘍細胞の殺傷は、臨床応答(
51Cr放出アッセイにより測定)の独立した予測因子である。
【0027】
【
図7】
図7A-7B。細胞生存率>98%;TNC回収率>76.3%;およびNRBC含量(7A)を使用することと、妊娠週数<39週;臍帯血解凍後生存率>86.5%;培養0日目から6日目までのNK細胞拡大が3倍以上;培養6日目から15日目までのNK細胞拡大が100倍以上;および/または培養0日目から15日目までのNK細胞拡大が900倍以上であることとを比較した、臨床反応性の予測を改善するための追加パラメータの使用。
【0028】
【
図8】
図8Aは、フローサイトメトリーにより測定される臍帯血ユニットの細胞生存率が、完全奏効の達成を予測するために使用され得、奏効を予測するための最適なカットオフとして99%が同定されることを示す。
図8Bは、臍帯血ユニットの細胞生存率に従った+30全奏効(PR/CR)および完全奏効(CR)を示す。生存率99%以上のCBU由来の細胞製剤を投与された患者は、生存率の低いCBU由来の細胞製剤を投与された患者よりも、統計学的に有意に良好な臨床反応を示した。
【0029】
【
図9】臨床応答の達成を予測する臍帯血ユニットの有核赤血球数の実証を提供する。
【0030】
【
図10】
図10Aは、選択された臍帯血ユニットおよび治療反応に関連する人種情報を提供する。
図10Bは、凍結前CBU生存率およびCBU人種に従った30日目の反応を示す。凍結前生存率≧99%であり、白人人種であるCBU由来の細胞産物を受けた患者は、凍結前生存率≧99%であるが白人人種でないCBU由来の細胞産物を受けた患者よりも、統計的に有意なCR率を示した。
【0031】
【
図11】治療の成功に関連する臍帯血の乳児の体重を示す。
【0032】
【
図12】
図12A~12Cは、4つの特定の基準に基づくCBUの選択が、患者の反応を決定する主要な要因であることを示している。
【0033】
【
図13】
図13は、異なるNK細胞製品で治療された19人の患者の独立したサンプルにおける検証を提供する。
【0034】
【
図14】付加的な特性を追加することにより、モデルの予測力が改善されることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
I.定義の例
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1つまたは複数を意味し得る。本明細書において請求項(複数可)において使用される場合、「Comprising」という語と共に使用される場合、「a」または「an」という語は、1つまたは複数を意味し得る。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つ以上の要素、方法ステップ、および/または方法から構成されるか、または本質的に構成され得る。本明細書に記載される任意の方法または組成物が、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して実施され得、異なる実施形態が組み合わされ得ることが企図される。
【0036】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すように明示的に示されない限り、または選択肢が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢および「および/または」のみを指す定義を支持する。例えば、”X、Y、および/またはZ”は、”X”単独、”Y”単独、”Z”単独、”X、Y、およびZ”、”(XおよびY)またはZ”、”Xまたは(YおよびZ)”、または”XまたはYまたはZ”を指すことができる。X、Y、またはZが実施形態から特に除外され得ることが特に企図される。本明細書で使用される「別の」は、少なくとも2番目以上を意味する場合がある。用語「約」、「実質的に」および「およそ」は、一般に、記載された値プラスマイナス5%を意味する。
【0037】
本明細書を通じて、文脈上別段の必要がない限り、「含む」、「含有する」、および「包含する」という語は、記載されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を含むことを意味するが、他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を排除することを意味しないと理解される。「からなる」とは、「~からなる」という語句の後に続くものを含むこと、およびそれらに限定されることを意味する。したがって、「~からなる」という表現は、列挙された要素が必要または必須であり、他の要素が存在しない可能性があることを示す。「から本質的になる」とは、その語句の後に列挙された要素を含むことを意味し、列挙された要素について開示で指定された活性または作用を妨げないか、またはそれに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「本質的にからなる」という語句は、列挙された要素は必須または必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもしなくてもよいことを示す。
【0038】
本明細書で使用する「臍帯血組成物」または「臍帯血ユニット」という用語は、もともと出産後に胎盤からおよび/または付着した臍帯から得られた臍帯血の体積を指す。臍帯血ユニットまたは臍帯血組成物は、採取後、保存施設に保存される場合もあれば、保存されない場合もある。ある場合には、臍帯血ユニットまたは臍帯血組成物は、単一の個体に由来する血液を含むが、別の場合には、臍帯血ユニットまたは臍帯血組成物は、複数の個体に由来する混合物である。
【0039】
本明細書で使用する「凍結保存」という用語は、細胞を凝固点以下の温度で冷却保存するプロセスを指す。具体的な例では、凍結保存の温度は少なくとも-80℃と低い。凍結保存は、凍結前に1つ以上の凍結保護剤を細胞に添加することを含んでも含まなくてもよい。凍結保護剤の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘタスターチ、デキストラン40、またはそれらの組み合わせが挙げられる。ある具体例では、0.9%塩化ナトリウム中の55%ジメチルスルホキシド/5%デキストラン40の5ml中、0.9%塩化ナトリウム中の6%ヘタスターチを利用することができる。
【0040】
本明細書で使用する場合、遺伝子の「破壊」とは、破壊がない場合の遺伝子産物の発現レベルと比較して、対象遺伝子によってコードされる1つ以上の遺伝子産物の細胞内での発現の排除または減少を意味する。例示的な遺伝子産物には、遺伝子によってコードされるmRNAおよびタンパク質産物が含まれる。ある場合には遺伝子破壊は一過性または可逆的であり、他の場合には永続的である。いくつかの場合における破壊は、切断または非機能性産物が産生され得るにもかかわらず、機能的または全長のタンパク質またはmRNAの破壊である。本明細書のいくつかの実施形態では、発現とは対照的に、遺伝子活性または機能が破壊される。遺伝子破壊は、一般に、人為的な方法、すなわち、化合物、分子、複合体、または組成物の添加または導入によって、および/またはDNAレベルなどの遺伝子の核酸の破壊もしくは遺伝子に関連する核酸の破壊によって誘導される。遺伝子破壊のための例示的な方法には、遺伝子サイレンシング、ノックダウン、ノックアウト、および/または遺伝子編集などの遺伝子破壊技術が含まれる。例としては、RNAi、siRNA、shRNA、および/またはリボザイムなどのアンチセンス技術が挙げられ、これらは一般に、一過性の発現低下をもたらすだけでなく、例えば、切断および/または相同組換えの誘導によって、標的化された遺伝子の不活性化または破壊をもたらす遺伝子編集技術が挙げられる。例としては、挿入、突然変異、欠失がある。このような遺伝子破壊は、典型的には、その遺伝子によってコードされる正常または「野生型」産物の発現の抑制および/または完全な欠如をもたらす。このような遺伝子破壊の例としては、遺伝子全体の欠失を含む、遺伝子または遺伝子の一部の挿入、フレームシフト変異およびミスセンス変異、欠失、ノックインおよびノックアウトが挙げられる。このような破壊は、コード領域、例えば、1つ以上のエクソンにおいて起こり得、その結果、全長産物、機能性産物、または停止コドンの挿入などによる任意の産物を産生できない結果につながる。このような遺伝子破壊は、遺伝子の転写を妨げるように、プロモーターやエンハンサー、あるいは転写の活性化に影響する他の領域の破壊によっても起こりうる。遺伝子破壊には、相同組換えによる標的遺伝子の不活性化を含む遺伝子標的化が含まれる。
【0041】
本明細書で使用される用語「操作された」「または「エンジニアリング」は、細胞、核酸、ポリペプチド、ベクターなどを含む、人の手(または同じものを生成するプロセス)によって生成される実体を指す。少なくともいくつかの場合において、操作された実体は合成されたものであり、本開示において利用される態様では天然には存在しない、または構成されていない要素からなる。細胞に関しては、1つ以上の内因性遺伝子の発現が低下しているため、および/または1つ以上の異種遺伝子(合成抗原受容体および/またはサイトカインなど)を発現しているため、細胞が操作されることがあるが、この場合、操作はすべて人の手によって行われる。抗原レセプターに関しては、抗原レセプターは、遺伝学的に組み替えられ、自然界に存在しない方法で構成された複数の構成要素からなるため、例えば、そのように構成された自然界に存在しない構成要素の融合タンパク質の形態であるため、工学的に操作されたと考えられる。
【0042】
本明細書で使用する「異種」という用語は、レシピエントとは異なる細胞型または異なる種に由来することを指す。具体的には、合成された、および/またはNK細胞由来ではない遺伝子またはタンパク質を指す。この用語はまた、合成的に誘導された遺伝子または遺伝子構築物を指す。この用語はまた、合成的に誘導された遺伝子または遺伝子構築物を指す。例えば、サイトカインは、サイトカインをコードする核酸配列を保有するベクターでNK細胞に提供されるなど、遺伝子組換えによって合成的に誘導されたものであるため、サイトカインがNK細胞によって天然に産生される場合であっても、NK細胞に関しては異種とみなされることがある。
【0043】
本明細書で使用する「免疫細胞」という用語は、免疫系の一部であり、身体が感染症や他の病気と闘うのを助ける細胞を指す。免疫細胞には、ナチュラルキラー細胞、不変NK細胞、NK T細胞、あらゆる種類のT細胞(例えば、制御性T細胞、CD4.sup.+T細胞、CD8.sup.+T細胞、またはガンマデルタT細胞)、B細胞、単球、顆粒球、骨髄系細胞好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、および/または幹細胞(例えば、間葉系幹細胞(MSC)または人工多能性幹細胞(iPSC))が挙げられる。また、本明細書には、適切な臍帯血ユニットを選択した後、免疫細胞を産生および工学的に作製する方法、ならびに養子細胞療法のために細胞を使用および投与する方法も提供されるが、この場合、細胞は、臍帯血の供給源および細胞のレシピエントに関して、自己由来であっても同種由来であってもよい。
【0044】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」、又は「更なる実施形態」、又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。 したがって、本明細書を通じて様々な場所に前述の語句が現れるが、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0045】
「治療する」または疾患もしくは状態の治療とは、疾患の徴候または症状を緩和するために、患者に1つまたは複数の薬剤を投与することを含み得るプロトコルを実行することを指す。治療の望ましい効果には、疾患の進行速度の減少、疾患状態の改善または緩和、寛解または予後の改善が含まれる。緩和は、疾患または病態の徴候または症状が現れる前に起こることもあれば、現れた後に起こることもある。したがって、「治療」または「処置」には、疾患または望ましくない状態の「予防」または「防止」が含まれる場合がある。さらに、「治療する」または「処置」は、徴候または症状の完全な緩和を必要とせず、治癒を必要とせず、患者にわずかな効果しか及ぼさないプロトコルを特に含む。
【0046】
本出願を通じて使用される「治療上の利益」または「治療上有効な」という用語は、この状態の医学的治療に関して対象の幸福を促進または増強するものを指す。これには、疾患の徴候または症状の頻度または重症度の減少が含まれるが、これらに限定されない。例えば、癌の治療は、例えば、腫瘍の大きさの減少、腫瘍の浸潤性の減少、癌の成長速度の減少、または転移の防止を含むことができる。また、癌の治療とは、癌に罹患した被験者の生存期間を延長することを指す場合もある。
【0047】
「被験者」及び「患者」並びに「個体」は、交換可能であり、ヒト又は霊長類、哺乳類、脊椎動物などの非ヒトのいずれかを指す場合がある。特定の実施形態では、対象はヒトである。対象は、哺乳動物、例えばヒト、実験動物(例えば、霊長類、ラット、マウス、ウサギ)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、七面鳥、ニワトリ)、家庭用ペット(例えば、イヌ、ネコ、げっ歯類)、ウマ、およびトランスジェニック非ヒト動物を含む、方法または材料の対象である任意の生物または動物対象であり得る。対象は、例えば、1つ以上の感染性疾患、1つ以上の遺伝的障害、1つ以上の癌、またはそれらの任意の組み合わせなどの疾患(病状と称され得る)を有するか、または有する疑いのある患者であり得る。本明細書で使用される「被験者」または「個人」は、医療施設に収容されていてもいなくてもよく、医療施設の外来患者として治療されていてもよい。個人は、インターネットを介して1つまたは複数の医療用組成物を受けることができる。個体は、ヒトまたは非ヒト動物の任意の年齢を含んでよく、したがって、成人および少年(例えば、子供)および乳児の両方を含み、胎内の個体を含む。被験者は、医学的治療の必要性を有していても、有していなくてもよい。個体は、臨床的であろうと基礎科学研究の支援であろうと、自発的であろうと非自発的であろうと、実験に参加することができる。
【0048】
「医薬上または薬理学的に許容される」という語句は、ヒトなどの動物に投与した場合に、有害反応、アレルギー反応、または他の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。抗体または追加の活性成分を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らして当業者に公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与のために、調製物は、FDA生物学的標準局(Office of Biological Standards)が要求する無菌性、発熱原性、一般的安全性、および純度の基準を満たすべきであることが理解されるであろう。
本明細書で使用される用語「任意に」は、本開示の任意の方法において利用されても利用されなくてもよい要素、ステップ、またはパラメータを指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、任意のおよびすべての水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、生理食塩水、塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなどの非経口ビヒクル)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、およびエチロレエートなどの注射可能な有機エステル)、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、体液および栄養補充剤、このような材料およびこれらの組み合わせは、当業者に知られているであろう。医薬組成物中の種々の成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。
【0050】
本明細書で使用される「生存能力」という用語は、特定の細胞または複数の細胞が生存状態を維持する能力を意味する。
I.方法の実施形態
【0051】
II.本願方法の実施形態
本開示の実施形態には、臍帯血細胞に由来する免疫細胞(例えば、NK細胞など)の応答についての予測因子を特定するための方法が含まれる。特定の実施形態において、臍帯血ユニット物が1つまたは様々な予測因子について試験され、ただし、この場合、前記1つまたは様々な予測因子は、当該予測因子の1つまたは複数を欠く臍帯血ユニット物よりも良好に養子細胞療法に適する免疫細胞を産生させ得るものである。そのように試験されていない細胞と比較して臍帯血細胞に由来する免疫細胞の改善された応答について予測することができる試験されている様々なパラメーターは、細胞産生、細胞操作、および/または細胞活性プロセスを含む場合がある。これらのパラメーターは、臍帯血ユニット物そのものを評価する場合があり、あるいはこれらのパラメーターは、どのような細胞であれ当該臍帯血ユニット物に由来する細胞、あるいはその操作または改変に由来する細胞を評価する場合がある。そのようなパラメーターには、臍帯血ユニット物の生存率;当該臍帯血ユニット物の赤血球含有量;当該臍帯血ユニット物からの総単核細胞回収率;解凍された臍帯血ユニット物に由来する免疫細胞の拡大(1つまたは複数の範囲の時点における拡大を含む);様々な材料の体積;当該乳児の性別、年齢および/または体重、当該乳児の1名または複数の生物学的親の人種;当該細胞の1つまたは複数のマーカー;解凍された臍帯血ユニット物に由来する免疫細胞の操作;当該解凍された臍帯血ユニット物に由来する免疫細胞の細胞傷害性;当該臍帯血が由来する母親の在胎齢;当該解凍された臍帯血ユニット物に由来する免疫細胞の細胞傷害性(ガン細胞または病原体感染細胞に対する細胞傷害性を含む);解凍後の臍帯血ユニットの生存率;およびその他が含まれる。
【0052】
本開示の実施形態には、凍結保存された臍帯血ユニット物を、養子細胞療法のための細胞を製造するために選択するための方法であって、前記細胞は、そのように選択されていない細胞よりも、臨床用途を含めた具体的な目的のための、(例えば、細胞傷害性アッセイを使用して測定されること、および応答する患者の割合などによる)高い効力を有する細胞である、方法が含まれる。具体的な実施形態において、本方法は、凍結保存された臍帯血ユニット物を、例えば、ガンの処置のためであることを含めて、そのように選択されていない細胞よりも養子細胞療法のための高い効力を有する操作された免疫細胞を製造するために選択するための方法である。特定の局面において、本方法は、凍結保存された臍帯血ユニット物を、例えば、どのような種類のガンであれその処置のためであることを含めて、そのように選択されていない細胞よりも養子細胞療法のための高い効力を有する操作されたナチュラルキラー細胞を製造するために選択するための方法である。
【0053】
特定の実施形態において、本明細書中に包含される方法には、遺伝子操作されること、拡大されること、および/またはガンの処置などのために臨床的に利用されることにおいて効果的でない、または劣っている免疫細胞(例えば、NK細胞など)を産生するであろう臍帯血ユニット物(これは臍帯血組成物として示されることがある)を選択するリスクが低減される方法が含まれる。具体的な実施形態において、本方法は、養子細胞療法としてのガン療法のためなどの高い効力を欠く免疫細胞を産生するであろう臍帯血ユニット物を選択するリスクを低減させる。具体的な場合において、本明細書中に包含される方法は、1つまたは複数のタイプのガンに対して有効である養子NK細胞療法をもたらす可能性を増大させる。
【0054】
本開示の方法では、選択が、そのように選択されていない細胞よりも細胞療法において量的および/または質的に良好である養子細胞療法のための細胞について行われる。質的には、細胞はより細胞傷害性である場合があり、能力がより大きくなるまで拡大される場合があり、より高い持続性を有する場合があり、より大きく操作に資する場合があり、応答する患者の割合がより大きくなる場合があり、またはそれらの組み合わせである場合がある。量的には、本方法から得られる選択された臍帯血ユニット物は、本明細書中に包含される選択パラメーターの1つまたは複数の知識を用いることなく選択される臍帯血ユニット物と比較して、少なくとも少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である細胞生存率レベルを有する場合がある。本方法から得られる選択された臍帯血ユニット物は、本明細書中に包含される選択パラメーターの1つまたは複数の知識を用いることなく選択される臍帯血ユニット物と比較して、少なくとも少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、250倍、500倍、750倍、1000倍またはそれ以上である細胞生存率レベルを有する場合がある。本方法から得られる選択された臍帯血ユニット物は、本明細書中に包含される選択パラメーターの1つまたは複数の知識を用いることなく選択される臍帯血ユニット物に比べて、少なくとも10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超またはそれ以上である総単核細胞回収率をもたらす場合がある。本方法から得られる選択された臍帯血ユニット物は、本明細書中に包含される選択パラメーターの1つまたは複数の知識を用いることなく選択される臍帯血ユニット物に比べて、少なくとも10倍超、20倍超、30倍超、40倍超、50倍超、60倍超、70倍超、80倍超、90倍超、100倍超、250倍超、500倍超、750倍超、1000倍超またはそれ以上である総単核細胞回収率をもたらす場合がある。本方法から得られる選択された臍帯血ユニット物は、本明細書中に包含される選択パラメーターの1つまたは複数の知識を用いることなく選択される臍帯血ユニット物に比べて、少なくとも1×103個、1×104個、1×105個、1×106個、1×107個、5×107個またはそれ以下である有核赤血球含有量を有する場合がある。本方法から得られる選択された臍帯血ユニット物は、本明細書中に包含される選択パラメーターの1つまたは複数の知識を用いることなく選択される臍帯血ユニット物に比べて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以下である少ない有核赤血球含有量を有する場合がある。
【0055】
ある特定の実施形態において、臍帯血組織採取時における乳児の体重が、子宮内または子宮外であるか否かにかかわらず、本開示の方法では考慮される場合がある。具体的な実施形態において、乳児の体重は3650グラム超であり、例えば、3650グラム超、3700グラム超、3750グラム超、3800グラム超、3850グラム超、3900グラム超、3950グラム超、4000グラム超、4050グラム超、4100グラム超、4150グラム超、4200グラム超、4250グラム超、4500グラム超、およびその他などである。具体的な実施形態において、これは、凍結保存および/または使用に先立って測定される。
【0056】
具体的な実施形態において、乳児の1人または複数の生物学的親の人種が白人である。いくつかの場合において、乳児の両方の生物学的親が白人であり、いくつかの場合には生物学的母親が白人であり、いくつかの場合には生物学的父親が白人である。
【0057】
具体的な実施形態において、乳児からの臍帯血の採取時期が方法における1つの要因である。具体的な実施形態において、臍帯血が子宮内の乳児の臍帯から得られる。採取工程は、どのような方法であれ好適な方法によってであり得るし、臍帯血を得る関係者は、臍帯血を操作する、貯蔵する、ならびに/あるいは1つまたは複数のパラメーターについて分析する関係者である場合があり、またはそうでない場合がある。具体的な実施形態において、採取時またはその直後において、臍帯血は1つまたは複数の抗凝固剤と組み合わされ、抗凝固剤の体積は標準的な量である場合があり、またはそうでない場合がある。具体的な場合において、前処理体積は、採取される臍帯血+抗凝固剤の体積であり、ある特定の場合には、前処理体積は、採取される臍帯血+一定体積(例えば、35mLまたは約35mLなど)の抗凝固剤の体積である。特定の実施形態において、抜き取られた臍帯血の体積は、体積で約85mL、84mL、83mL、82mL、81mL、80mL、79mL、78mL、77mL、76mL、75mL、74mL、73mL、72mL、71mL、70mL、69mL、68mL、67mL、66mL、65mL、64mL、63mL、62mL、61mL、60mL、59mL、58mL、57mL、56mL、55mL、54mL、53mL、52mL、51mL、50mL、49mL、48mL、47mL、46mL、45mL、44mL、43mL、42mL、41mL、40mL、39mL、38mL、37mL、36mL、35mL、34mL、33mL、32mL、31mLもしくは30mLまたはそれ以下であるに過ぎない。いくつかの場合において、抗凝固剤の体積は、25mL、26mL、27mL、28mL、29mL、30mL、31mL、32mL、33mL、34mL、35mL、36mL、37mL、38mL、39mL、40mL、41mL、42mL、43mL、44mL、45mL、46mL、47mL、48mL、49mLもしくは50mLまたはそれ以上であり、あるいはおよそそのような量である。具体的な場合において、抗凝固剤の体積は35mLであり、または約35mLである。抗凝固剤は、少なくともCPDを含めてあらゆる種類の抗凝固剤であり得る(抗凝固剤は、CDP-A(CDP+アデノシン);クエン酸・リン酸・可溶性デキストロース(CP2D);クエン酸デキストロース(ACD);ヘパリンなどである場合がある)。特定の実施形態において、採取された臍帯血における細胞は1つまたは複数の特定のマーカーを発現する場合がある。具体的な場合において、採取された臍帯血における細胞はCD34を発現していてもよい。ある特定の実施形態において、特定の割合の細胞が、CD34を含めてどのようなマーカーであれマーカーを発現する。ある特定の場合において、採取された血液における0.4%超の細胞がCD34を発現する。ある特定の場合において、採取された血液における0.4%超の細胞、0.5%超の細胞、0.6%超の細胞、0.7%超の細胞、0.8%超の細胞、0.9%超の細胞、1.0%超の細胞、1.5%超の細胞、2%超の細胞、3%超の細胞、4%超の細胞、5%超の細胞、6%超の細胞、7%超の細胞、8%超の細胞、9%超の細胞、10%超の細胞、15%超の細胞、20%超の細胞、25%超の細胞、30%超の細胞、40%超の細胞、50%超の細胞、60%超の細胞、70%超の細胞、75%超の細胞、80%超の細胞、85%超の細胞、90%超の細胞、または95%超の細胞がCD34を発現する。ある特定の場合において、採取された血液における少なくとも0.4%の細胞、少なくとも0.5%の細胞、少なくとも0.6%の細胞、少なくとも0.7%の細胞、少なくとも0.8%の細胞、少なくとも0.9%の細胞、少なくとも1.0%の細胞、少なくとも1.5%の細胞、少なくとも2%の細胞、少なくとも3%の細胞、少なくとも4%の細胞、少なくとも5%の細胞、少なくとも6%の細胞、少なくとも7%の細胞、少なくとも8%の細胞、少なくとも9%の細胞、少なくとも10%の細胞、少なくとも15%の細胞、少なくとも20%の細胞、少なくとも25%の細胞、少なくとも30%の細胞、少なくとも40%の細胞、少なくとも50%の細胞、少なくとも60%の細胞、少なくとも70%の細胞、少なくとも75%の細胞、少なくとも80%の細胞、少なくとも85%の細胞、少なくとも90%の細胞、または少なくとも95%の細胞がCD34を発現する。具体的な実施形態において、これは、凍結保存および/または使用に先立って測定される。
【0058】
方法から得られる選択された臍帯血細胞は、本明細書中に包含される選択パラメーターの1つまたは複数の知識を用いることなく選択される臍帯血細胞から産生される免疫細胞と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上である、細胞傷害性を有する免疫細胞を産生させる場合がある。いくつかの場合において、選択された臍帯血細胞から産生される免疫細胞は、本明細書中に包含される選択パラメーターの1つまたは複数の知識を用いることなく臍帯血細胞から選択される免疫細胞と比較して、少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、250倍、500倍、750倍、1000倍またはそれ以上である細胞傷害性レベルを有し得る。
【0059】
本開示の特定の局面では、選択が、あらゆる種類の凍結前の臍帯血ユニット物の1つまたは複数の製造物特徴について行われ、いくつかの局面では、凍結された臍帯血ユニット物が解凍された後で、選択が1つまたは複数の製造物特徴について行われる。そのような行為(1つまたは複数)は、養子細胞療法のための細胞産物を含めて細胞産物を産生するために(選定が行われる臍帯血ユニット物の集団の中で)最も適する臍帯血ユニット物を選択することを可能にする。解凍後の臍帯血ユニット物の特徴は細胞産物の産生に直接的に関連づけられる場合があり、またはそうでない場合がある。すなわち、いくつかの場合において、臍帯血ユニット物に由来する細胞の操作によって細胞療法がもたらされることが、適切な臍帯血ユニット物を選択することによって増強され、さらなる場合または代替となる場合においては、臍帯血ユニット物に由来する細胞を操作した後での細胞療法の活性が、適切な臍帯血ユニット物を選択することによって増強される(例えば、細胞傷害性(cytoxicity)などの活性、インビボ持続性、およびその他)。
【0060】
本開示の実施形態には、1つまたは複数のパラメーターが、臍帯血ユニット物のどのような種類の貯蔵バンクであれ1つまたは複数の貯蔵バンクからの1つまたは複数の臍帯血ユニット物について特徴づけられる方法が含まれる。具体的な場合において、前記1つまたは複数の臍帯血ユニット物が特徴づけられた後で、1つまたは複数の特定の臍帯血ユニット物が、最適な応答(例えば、治療的投与時の活性)を与えるには不適当であるとして拒絶されることがある。さらなる場合において、1つまたは複数の特定の臍帯血ユニット物が、増強された活性のために、例えば、治療的投与時などにおける増強された活性のために好適であると判定されることがある。いくつかの状況において、2つ以上の臍帯血ユニット物が、選択に値すると本開示の方法によって判定されるときには、それらは解凍前または解凍後に組み合わされてもよく、またはそうでなくてもよい。選択された複数の臍帯血ユニット物から産生される免疫細胞が、当該臍帯血ユニット物からの誘導の後で組み合わされてもよい。
【0061】
具体的な実施形態において、本開示は、ガンの処置のための最大効力を有するNK細胞療法製造物を製造するための臍帯血ユニット物を特定するための新規な一組の基準を提供する。これらの非常に強力な臍帯血ユニット物から生じるNK細胞は、最適な応答をガン患者においてもたらす可能性が最も高い。そのようなものとして、本開示の方法は、最大効力を有する臍帯血ユニット物をNK細胞療法製造物の製造のための材料源として選択するために、また、臨床応答を誘導する可能性がない、もしくは効果のない臨床応答を誘導する可能性がある臍帯血ユニット物の選択および/またはNK細胞の生成を避けるために使用される。特定の実施形態において、本開示の方法によって選択される臍帯血ユニット物から産生される高効力のNK細胞は、寛解を養子注入後のガン患者において誘発する確率が最も高い。具体的な場合において、本開示の方法によって選択される臍帯血ユニット物から産生される高効力のNK細胞は、寛解を養子注入後のガン患者において誘発する確率が、開示された有益な特徴を欠く臍帯血ユニット物から産生されるNK細胞よりも大きい。
【0062】
本開示の実施形態には、臍帯血組成物を選択する方法であって、凍結保存前に、(a)臍帯血細胞生存率が98%以上または99%以上であること;(b)必要な場合には、総単核細胞(TNC)回収率が76.3%以上であること;および(c)有核赤血球(NRBC)含有量が7.5×107個~8.0×107個およびどのような量であれそれらの間の量よりも少ない、またはそれと同等であること;(d)臍帯血が由来する乳児の体重;(e)臍帯血が由来する乳児の生物学的母親および/または生物学的父親の人種が白人であること;(f)必要な場合には、臍帯血が由来する乳児の在胎齢;(g)必要な場合には臍帯血の子宮内採取(だが、子宮外、または子宮内と子宮外との組み合わせが、本開示のどのような方法においてであれ使用される場合がある);(h)必要な場合には、臍帯血が由来する生物学的雄性の乳児;(i)必要な場合には、前処理体積(採取される臍帯血+抗凝固剤(35mlのCPD)の体積)が120mL以下であること;(j)必要な場合には、抜き取られた臍帯血の細胞は0.4%超がCD34+であることのうちの1つまたは複数を有すると判定される臍帯血組成物を特定する工程と、必要な場合には(k)解凍後の前記臍帯血組成物に由来する免疫細胞の細胞傷害性を測定する工程と、必要な場合には(l)培養における前記細胞の拡大を測定する工程とを含む方法が含まれる。いくつかの場合において、凍結保存前の臍帯血組成物は、(a)および(c)の特徴を少なくとも有すると判定される。いくつかの場合において、凍結保存前の臍帯血組成物は、(b)および(c)の特徴を少なくとも有すると判定される。いくつかの場合において、凍結保存前の臍帯血組成物は、(a)および(b)の特徴を少なくとも有すると判定される。いくつかの場合において、凍結保存前の臍帯血組成物は、(a)、(c)、(d)および(e)の特徴の1つ、2つ、3つ、またはすべてを有すると判定され、かつ、それらはどのような組み合わせであってもよい。いくつかの場合において、凍結保存前の臍帯血組成物は、(a)、(b)、(c)および(d)を有すると判定される。いくつかの場合において、凍結保存前の臍帯血組成物は、(a)、(c)、(d)および(e)の特徴の1つ、2つ、3つ、またはすべてを、(b)、(f)、(g)、(h)、(i)および(j)のうちの1つまたは複数に加えて有すると判定される。
【0063】
A.細胞生存率の測定
本開示の実施形態には、臍帯血ユニット物における細胞の生存率が測定され、測定により、臍帯血ユニット物が好適であるか否か、例えば、養子細胞療法のための免疫細胞を誘導するための選択のために好適であるか否かなどの情報が提供される方法が含まれる。生存率について試験されている臍帯血細胞は、臍帯血における様々な細胞(例えば、単核細胞、幹細胞(例えば、造血系または間葉系)、白血球、免疫系細胞(単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、巨核球、樹状細胞、T細胞(Tヘルパー細胞および細胞傷害性細胞を含む)、B細胞、NK細胞)、およびその他など)の混合物である場合がある。臍帯血における細胞の生存率は、これらの細胞の1つもしくは複数の物理的特性および/またはこれらの細胞の1つもしくは複数の活性によって確認することができる。
【0064】
生存率がどのような方法であれ好適な方法(1つまたは複数)によって求められ得るにもかかわらず、具体的な場合において、測定が、フローサイトメトリー、テトラゾリウム還元アッセイ、レサズリン還元アッセイ、プロテアーゼ生存率マーカーアッセイ、ATPアッセイ、ナトリウム-カリウム比、乳酸デヒドロゲナーゼアッセイ、ニュートラルレッド取り込み、ヨウ化プロピジウム、TUNELアッセイ、ホルマザンに基づくアッセイ、エバンスブルー、トリパンブルー、エチジウムホモダイマーアッセイ、またはそれらの組み合わせによって行われる。
【0065】
臍帯血細胞についての細胞生存率が凍結保存前および/または凍結保存後に測定される場合がある。1つの実施形態において、所望の臍帯血ユニット物についての臍帯血細胞生存率が、98.1%以上、98.2%以上、98.3%以上、98.4%以上、98.5%以上、98.6%以上、98.7%以上、98.8%以上、98.9%以上、99.0%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上である。
【0066】
生存率が、1つまたは複数の他の特徴に加えて、例えば、総有核細胞回収率、および有核赤血球含有量の測定などに加えて測定される場合において、細胞生存率は1つまたは複数の他の測定の前であってもよく、またはそうでなくてもよい。具体的な場合において、生存率がTNC回収率およびNRBC測定に先立って測定され、またはTNC回収率およびNRBC測定に続いて測定される。いくつかの場合において、生存率が、TNCの後で、しかしNRBCの前に測定され、またはNRBCの後で、しかしTNC回収率の前に測定される。
【0067】
B.総有核細胞回収率の測定
方法の特定の実施形態において、有核細胞が臍帯血処理後に測定される総有核細胞(TNC)回収率が測定される。TNC回収率により、生死両方の有核細胞が見積もられる。この工程は必要に応じて行われてもよく、またはそうでなくてもよい。
【0068】
TNCを測定するための好適なアッセイはどれも利用されるかもしれず、しかし、具体的な実施形態において、TNC回収率アッセイには、フローサイトメトリー;トリパンブルー;メチレンブルーを伴う3%酢酸;血液学分析計分析;またはそれらの組み合わせが含まれる。TNC回収率アッセイは具体的な場合において自動化されてもよく、または自動化されなくてもよい。
【0069】
1つの実施形態において、TNC回収率は、76.3%以上、76.4%以上、76.5%以上、76.6%以上、76.7%以上、76.8%以上、76.9%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上である。
【0070】
特定の実施形態において、臍帯血ユニット物のTNC回収率が凍結保存に先立って測定される。
【0071】
TNC回収率が、1つまたは複数の他の特徴に加えて、例えば、細胞生存率、およびNRBC含有量の測定などに加えて測定される場合において、TNC回収率は1つまたは複数の他の測定の前であってもよく、またはそうでなくてもよい。具体的な場合において、TNC回収率が細胞生存率およびNRBC測定に先立って測定され、または細胞生存率およびNRBC測定に続いて測定される。いくつかの場合において、TNC回収率が、細胞生存率の後で、しかしNRBCの前に測定され、またはNRBCの後で、しかし細胞生存率の前に測定される。
【0072】
C.有核赤血球数の測定
特定の実施形態において、臍帯血ユニット物が、有核赤血球(NRBC)含有量の測定に基づいて選択される。測定は手作業である場合があり、または自動化される場合がある。特定の実施形態において、NRBC含有量がより少ない臍帯血ユニット物が、有効な免疫細胞を産生させることにおいて、NRBC含有量がより大きい臍帯血ユニット物よりも効果的である。臍帯血ユニット物におけるNRBCのレベルにより、特定の臍帯血ユニット物に由来する免疫細胞(例えば、NK細胞など)を用いて処置される個体の応答率が判定される。NRBC含有量が、密度遠心分離によって、例えば、Sepax(登録商標)装置などでの密度遠心分離によって測定される場合がある。
【0073】
具体的な実施形態において、NRBC含有量は、検出不能なレベルに至るまでを含めて、8.0×107個以下、7.9×107個以下、7.8×107個以下、7.7×107個以下、7.6×107個以下、7.5×107個以下、7.0×107個以下、6.0×107個以下、5.0×107個以下、4.0×107個以下、3.0×107個以下、2.0×107個以下、1.0×107個以下、9.0×106個以下、8.0×106個以下、7.0×106個以下、6.0×106個以下、5.0×106個以下、4.0×106個以下、3.0×106個以下、2.0×106個以下、1.0×106個以下、9.0×105個以下、8.0×105個以下、7.0×105個以下、6.0×105個以下、5.0×105個以下、4.0×105個以下、3.0×105個以下、2.0×105個以下、1.0×105個以下、9.0×104個以下、8.0×104個以下、7.0×104個以下、6.0×104個以下、5.0×104個以下、4.0×104個以下、3.0×104個以下、2.0×104個以下、1.0×104個以下、9.0×103個以下、8.0×103個以下、7.0×103個以下、6.0×103個以下、5.0×103個以下、4.0×103個以下、3.0×103個以下、2.0×103個以下、1.0×103個以下、9.0×102個以下、8.0×102個以下、7.0×102個以下、6.0×102個以下、5.0×102個以下、4.0×102個以下、3.0×102個以下、2.0×102個以下、1.0×102個以下、およびその他である。
【0074】
特定の実施形態において、NRBCが凍結保存に先立って測定される。
【0075】
NRBCが、1つまたは複数の他の特徴に加えて、例えば、総有核細胞回収率および細胞生存率などに加えて測定される場合において、NRBCは1つまたは複数の他の測定の前であってもよく、またはそうでなくてもよい。具体的な場合において、NRBCがTNC回収率および細胞生存率に先立って測定され、またはTNC回収率および細胞生存率に続いて測定される。いくつかの場合において、NRBCが、TNCの後で、しかし細胞生存率の前に測定され、または細胞生存率の後で、しかしTNC回収率の前に測定される。
【0076】
D.乳児の体重
いくつかの実施形態において、臍帯血が由来する乳児の体重が、本開示によって包含されるどのような方法においてであれパラメーターとして利用される。乳児の体重は、臍帯血が採取される直前に、例えば、数日内または数時間内または数分内などにおいて取得される場合がある。いくつかの場合において、乳児の体重が、出生前超音波を使用することによって子宮内で求められる場合がある。いくつかの場合において、乳児の体重が、子宮外で、例えば、標準的な体重計などで求められる。乳児の体重を測定する関係者は、臍帯血を操作する、貯蔵する、ならびに/あるいは1つまたは複数のパラメーターについて分析する関係者である場合があり、またはそうでない場合がある。この工程は、どのような他の工程であれ凍結保存に先立つ他の工程の前に、および/または後で行われる場合がある。具体的な実施形態において、乳児の体重は、ある特定の量よりも大きく、これは一般には在胎齢と相関していてもよく、またはそうでなくてもよい。具体的な場合において、乳児の体重は約3650グラム超であり、例えば、3650グラム超、3700グラム超、3750グラム超、3800グラム超、3850グラム超、3900グラム超、3950グラム超、4000グラム超、4050グラム超、4100グラム超、4150グラム超、4200グラム超、4250グラム超、4500グラム超、およびその他などである。具体的な実施形態において、これは、凍結保存および/または使用に先立って測定される。
【0077】
E.生物学的親の人種
具体的な実施形態において、生物学的親の1人または複数の人種が白人である。いくつかの場合において、生物学的母親は白人であり、かつ、生物学的父親は白人である。いくつかの場合において、生物学的母親は白人であり、しかし生物学的父親は白人でない。いくつかの場合において、生物学的父親は白人であり、しかし生物学的母親は白人でない。
【0078】
F.臍帯血のための採取パラメーター
いくつかの実施形態において、臍帯血が、この技術分野における標準的な方法によって、例えば、乳児が生まれた後の臍帯静脈からニードルを介するなどして得られる。子宮外抜き取りについては、これは胎盤排出後に行われ、臍帯血が、抗凝固剤を含む滅菌採取バッグに入れられ、または抗凝固剤が加えられる場合がある。子宮内抜き取りについては、これは、胎盤が依然として母体内にある間に臍帯静脈を介して行われ、その後で、臍帯血が、抗凝固剤を含む滅菌採取バッグに入れられ、または抗凝固剤が加えられる場合がある。いくつかの場合において、同じ乳児からの臍帯血が、子宮内抜き取りおよび子宮外抜き取りから組み合わされる。具体的な実施形態において、子宮内抜き取りは、子宮外抜き取りよりも好まれる方法である。
【0079】
特定の実施形態において、抜き取られた臍帯血の体積が本開示の方法では考慮される。例えば、前処理用組成物としての臍帯血と抗凝固剤との両方の組み合わせ物の体積が本開示の方法では考慮される。具体的な場合において、臍帯血と抗凝固剤との組み合わせ物の体積は120mL以下である。一例として、抗凝固剤の体積が約35mLであるとき、臍帯血の体積は、体積で約85mL未満、84mL未満、83mL未満、82mL未満、81mL未満、80mL未満、79mL未満、78mL未満、77mL未満、76mL未満、75mL未満、74mL未満、73mL未満、72mL未満、71mL未満、70mL未満、69mL未満、68mL未満、67mL未満、66mL未満、65mL未満、64mL未満、63mL未満、62mL未満、61mL未満、60mL未満、59mL未満、58mL未満、57mL未満、56mL未満、55mL未満、54mL未満、53mL未満、52mL未満、51mL未満、50mL未満、49mL未満、48mL未満、47mL未満、46mL未満、45mL未満、44mL未満、43mL未満、42mL未満、41mL未満、40mL未満、39mL未満、38mL未満、37mL未満、36mL未満、35mL未満、34mL未満、33mL未満、32mL未満、31mL未満、または30mL未満である。
【0080】
G.臍帯血細胞マーカー
具体的な実施形態において、どのようなタイプの細胞であれ臍帯血における細胞の少なくとも一部が集団として、1つまたは複数の特定のマーカーを発現する場合がある。具体的な実施形態において、臍帯血の特定割合の細胞がCD34を発現する。臍帯血細胞タイプの例には、幹細胞、始原体細胞、赤血球、白血球、Bリンパ球、Tリンパ球、NK細胞、単球および血小板が含まれる。いくつかの場合において、採取された臍帯血における0.4%超の細胞がCD34を発現する。ある特定の場合において、採取された血液における0.4%超の細胞、0.5%超の細胞、0.6%超の細胞、0.7%超の細胞、0.8%超の細胞、0.9%超の細胞、1.0%超の細胞、1.5%超の細胞、2%超の細胞、3%超の細胞、4%超の細胞、5%超の細胞、6%超の細胞、7%超の細胞、8%超の細胞、9%超の細胞、10%超の細胞、15%超の細胞、20%超の細胞、25%超の細胞、30%超の細胞、40%超の細胞、50%超の細胞、60%超の細胞、70%超の細胞、75%超の細胞、80%超の細胞、85%超の細胞、90%超の細胞、または95%超の細胞がCD34を発現する。ある特定の場合において、採取された血液における少なくとも0.4%の細胞、少なくとも0.5%の細胞、少なくとも0.6%の細胞、少なくとも0.7%の細胞、少なくとも0.8%の細胞、少なくとも0.9%の細胞、少なくとも1.0%の細胞、少なくとも1.5%の細胞、少なくとも2%の細胞、少なくとも3%の細胞、少なくとも4%の細胞、少なくとも5%の細胞、少なくとも6%の細胞、少なくとも7%の細胞、少なくとも8%の細胞、少なくとも9%の細胞、少なくとも10%の細胞、少なくとも15%の細胞、少なくとも20%の細胞、少なくとも25%の細胞、少なくとも30%の細胞、少なくとも40%の細胞、少なくとも50%の細胞、少なくとも60%の細胞、少なくとも70%の細胞、少なくとも75%の細胞、少なくとも80%の細胞、少なくとも85%の細胞、少なくとも90%の細胞、または少なくとも95%の細胞がCD34を発現する。具体的な実施形態において、これは、凍結保存および/または使用に先立って測定される。
【0081】
H.細胞傷害性の測定
本開示の実施形態には、臍帯血ユニット物に由来するNK細胞を含めて、あらゆる種類の免疫細胞の細胞傷害性の測定が含まれる。具体的な実施形態において、臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来するNK細胞の細胞傷害性の測定が行われる。特定の場合において、臍帯血細胞ユニット物(1つまたは複数)が、生存率、NRBCおよびTNC回収率について特徴づけられ、かつ、この特徴づけに基づく前記臍帯血細胞ユニット物(1つまたは複数)の選択の後で、また、必要な場合には凍結保存および解凍の後で、前記臍帯血ユニット物(1つまたは複数)からの細胞が細胞傷害性について測定されることがある。
【0082】
細胞傷害性アッセイは多くの場合、細胞質内容物の放出または細胞構造内への蛍光色素の浸透を可能にする大きく損なわれた細胞膜を有する瀕死の細胞に依拠する。細胞傷害性を、例えば、生体染色色素(ホルマザン色素)、プロテアーゼバイオマーカーを使用して細胞生存率を測定することなど数多くの異なる方法で、またはATP含有量を測定することによって測定することができる。ホルマザン色素は、細胞死のときに放出されるデヒドロゲナーゼ(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)など)およびレダクターによるテトラゾリウム塩(INT、MTT、MTSおよびXTT)の還元によって形成される発色性産物である。他のアッセイには、ハイスループットスクリーニングのために利用されることがあるスルホローダミンBアッセイおよび水溶性テトラゾリウム塩アッセイが含まれる。細胞傷害性を、Incucyte(登録商標)装置を用いて測定することができる。
【0083】
具体的な実施形態において、死細胞に選択的に浸透する色素を利用することができる(例えば、トリパンブルーなど)。他の場合において、死細胞に浸透する蛍光性のDNA結合色素を利用することができる(例えば、Hoechst 33342、YO-PRO-1、またはCellTox Greenなど)。
【0084】
細胞傷害性であることについて試験されている細胞がT細胞またはNK細胞である具体的な実施形態においては、51Cr放出アッセイが利用される場合がある。
【0085】
I.NK細胞拡大の測定
本開示の方法の具体的な実施形態において、臍帯血ユニット物(本明細書中に包含される基準に基づいて選択される臍帯血ユニット物を含む)の凍結保存および解凍の後におけるNK細胞拡大の度合いが臨床応答の予測因子である。すなわち、臍帯血が解凍された後、解凍された血液が、培養におけるNK細胞の量が増大するような条件のもとで処理され、培養される。本明細書中に包含される選択基準を満たす臍帯血ユニット物がNK細胞の拡大に先立ってプールされてもよく、またはプールされなくてもよい。いくつかの場合にはある特定の時点においてであることを含めて、NK細胞拡大の量的度合いが、いくつかの実施形態においては、ランダムに選択された臍帯血ユニット物に由来するNK細胞と比較してより大きな臨床有効性を有するであろうNK細胞のための選択基準として利用される。
【0086】
特定の場合において、NK細胞が拡大され、拡大レベルが求められる。NK細胞はある特定の時点で、少なくとも特定のレベルに拡大されるとき、NK細胞は、そのようなレベルに拡大され得ないNK細胞と比較してより大きな臨床有効性を有する。少なくともいくつかの場合において、0日目と6日目との間の範囲で臨床有効性を有するであろうNK細胞は、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上(8倍以上、9倍以上、10倍以上、12倍以上、15倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、150倍以上、200倍以上、250倍以上、500倍以上、1000倍以上、1500倍以上、2000倍以上、およびその他を含む)である。少なくともいくつかの場合において、0日目と6日目との間の範囲で拡大が7倍未満(6倍未満、5倍未満、4倍未満、3倍未満または2倍未満を含む)であるならば、NK細胞は不十分な臨床有効性を有するかもしれない。少なくともいくつかの場合において、6日目と15日目との間の範囲で培養における拡大が、102倍以上、103倍以上、104倍以上、105倍以上(106倍以上、107倍以上、108倍以上、109倍以上、1010倍以上、1011倍以上、1012倍以上、1013倍以上、およびその他を含む)であるならば、NK細胞は臨床有効性を有するであろう。少なくともいくつかの場合において、6日目と15日目との間の範囲で培養における拡大が105倍未満(104倍未満、103倍未満、102倍未満、およびその他を含む)であるならば、NK細胞は不十分な臨床有効性を有するかもしれない。少なくともいくつかの場合において、0日目と15日目との間の範囲で臨床有効性を有するであろうNK細胞は、900倍以上、1000倍以上、1100倍以上、1200倍以上、1300倍以上、1400倍以上、1500倍以上、1600倍以上、1700倍以上、1800倍以上、1900倍以上、2000倍以上、2500倍以上、3000倍以上、4000倍以上、5000倍以上、10,000倍以上、またはそれよりも大きい。少なくともいくつかの場合において、6日目と15日目との間の範囲で培養における拡大が900倍未満(例えば、800倍未満、700倍未満、600倍未満、500倍未満、400倍未満、300倍未満、200倍未満、100倍未満、およびその他など)であるならば、NK細胞は不十分な臨床有効性を有するかもしれない。
【0087】
いくつかの実施形態において、NK細胞拡大では、NK細胞を拡大させるための特定のインビトロ方法が利用される。いくつかの場合において、NK細胞の集団の事前活性化が、事前活性化されたNK細胞を得るための効果的な濃度のIL-12、IL-15および/またはIL-18を含む事前活性化培養において行われ、その後、前記事前活性化NK細胞が、CD137リガンドを発現する人工抗原提示細胞(aAPC)を含む拡大培養において拡大される。ある特定の局面において、aAPCはさらに、膜結合型サイトカインを発現する。いくつかの局面において、膜結合型サイトカインは、膜結合型IL-21(mIL-21)および/または膜結合型IL-15(mIL-15)である。いくつかの局面において、aAPCは、内因性のHLAクラスI分子、HLAクラスII分子またはCD1d分子の発現を本質的に有しない。ある特定の局面において、aAPCはICAM-1(CD54)およびLFA-3(CD58)を発現する。いくつかの局面において、aAPCはさらに、白血病細胞由来aAPCとして定義される。ある特定の局面において、白血病細胞由来aAPCはさらに、CD137リガンドおよび/またはmIL-21を発現するように操作されるK562細胞として定義される。K562細胞は、CD137リガンドおよびmIL-21を発現するように操作される場合がある。ある特定の局面において、操作されるはさらに、レトロウイルス形質導入として定義される。特定の局面において、aAPCは放射線が照射される。特定の場合において、事前活性化工程は10~20時間であり、例えば、14~18時間(例えば、約14時間、15時間、16時間、17時間、または18時間)などであり、特に約16時間である。ある特定の局面において、事前活性化培養はIL-18および/またはIL-15を10~100ng/mLの濃度で、例えば、40~60ng/mLなどの濃度で、特に約50ng/mLの濃度で含む。いくつかの局面において、事前活性化培養はIL-12を0.1~150ng/mLの濃度で、例えば、1~20ng/mLなどの濃度で、特に約10ng/mLの濃度で含む。さらなる局面において、拡大培養はさらにIL-2を含む。いくつかの局面において、IL-2は10~500U/mLの濃度で、例えば、100~300U/mLなどの濃度で、特に約200U/mLの濃度で存在する。いくつかの局面において、IL-12、IL-18、IL-15および/またはIL-2は組換えヒトIL-2である。いくつかの局面において、IL-2は、2~3日毎に拡大培養において補充される。いくつかの局面において、aAPCが、少なくとも第2の時間で拡大培養に加えられる。いくつかの局面において、方法は血清非含有培地で実施される。
【0088】
1つの実施形態において、拡大工程は、(1)CD48および/またはCS1(CD319)、(2)膜結合型インターロイキン-21(mbIL-21)、ならびに(3)41BBリガンド(41BBL)を発現するように操作されるユニバーサル抗原提示細胞(UAPC)の効果的な量の存在下でNK細胞を培養することを含む。いくつかの局面において、免疫細胞と、UAPCとは、3:1~1:3の比率で、例えば、3:1、3:2、1:1、1:2、または1:3などの比率で培養される。特定の局面において、免疫細胞と、UAPCとは、1:2の比率で培養される。いくつかの局面において、UAPCは、内因性のHLAクラスI分子、HLAクラスII分子またはCD1d分子の発現を本質的に有しない。ある特定の局面において、UAPCはICAM-1(CD54)およびLFA-3(CD58)を発現する。ある特定の局面において、UAPCはさらに、白血病細胞由来aAPCとして定義される。いくつかの局面において、白血病細胞由来UAPCはさらに、K562細胞として定義される。ある特定の局面において、UAPCが、少なくとも第2の時間で加えられる。
【0089】
いくつかの局面において、拡大はIL-2の存在下で行われる。具体的な局面において、IL-2は10~500U/mLの濃度で、例えば、10~25U/mL、25~50U/mL、50~75U/mL、75~10U/mL、100~150U/mL、150~200U/mL、200~250U/mL、250~300U/mL、300~350U/mL、350~400U/mL、または400~500U/mLなどの濃度で存在する。ある特定の局面において、IL-2は100~300U/mLの濃度で存在する。特定の局面において、IL-2は200U/mLの濃度で存在する。いくつかの局面において、IL-2は組換えヒトIL-2である。具体的な局面において、IL-2は、2~3日毎に、例えば、2日毎または3日毎などで補充される。
【0090】
III.臍帯血由来の免疫細胞
本開示のある特定の実施形態は、本明細書中に包含される1つまたは複数の基準に基づいて処理のために選択される臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来する免疫細胞に関する。免疫細胞は、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、T細胞(例えば、制御性T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはガンマ-デルタT細胞)、単球顆粒球、骨髄系細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球、幹細胞(例えば、間葉系幹細胞(MSC)または人工多能性幹(iPSC)細胞)、およびその他を含めて、あらゆる種類の免疫細胞であり得る。免疫細胞を産生させる方法、および操作する方法、同様にまた、前記細胞を養子細胞療法のために使用する方法、および投与する方法もまた本明細書中に提供され、そのような場合、細胞は、臍帯血が得られた個体に関して自家または同種であり得る。したがって、免疫細胞は、免疫療法として、例えば、ガン胞を標的とするなどのために使用される場合がある。
【0091】
免疫細胞は、ヒト対象からの臍帯血ユニット物から単離される場合がある。臍帯血を、目的とする対象から、例えば、特定の疾患または状態を有すると疑われる対象、特定の疾患または状態に対する素因を有すると疑われる対象、あるいは特定の疾患または状態のための治療を受けている対象などから得ることができる。臍帯血を、臍帯血(それに由来する免疫細胞を含む)が存命中に後で必要とされる場合に備えて臍帯血を預けるという目的のために対象から得ることができる。臍帯血に由来する免疫細胞はそのまま使用される場合があり、または、例えば、凍結することなどによって、一定の期間にわたって貯蔵することができる。臍帯血はプールされてもよく、またはプールされなくてもよく、例えば、2つ以上の供給源から、例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10またはそれ以上の供給源(例えば、ドナー対象)などからプールされてもよく、またはプールされなくてもよい。
【0092】
免疫細胞が由来する臍帯血は、治療を必要としている対象から、または、低下した免疫細胞活性に伴う疾患を含めて、どのような種類の疾患であれ疾患に苦しむ対象から得ることができる。したがって、細胞は、治療を必要としている対象に対して自家であろう。代替において、免疫細胞の集団をドナーから、好ましくは組織適合性一致のドナーから得ることができる。免疫細胞集団を、免疫細胞が前記対象またはドナーにおいて存在する末梢血、臍帯血、骨髄、脾臓、またはどのような臓器/組織であれ他の臓器/組織から採取することができる。免疫細胞を対象および/またはドナーのプールから単離することができ、例えば、プールされた臍帯血などから単離することができる。
【0093】
免疫細胞の集団が、対象とは別個のドナーからの臍帯血ユニット物から得られるとき、得られた細胞が、当該細胞が対象に導入され得るという点で対象適合性であるならば、ドナーは好ましくは同種である。同種ドナー細胞はヒト白血球抗原(HLA)適合性であってもよく、またはそうでなくてもよい。対象適合性にするために、同種細胞は、免疫原性を低下させるように処置することができる。
【0094】
A.NK細胞
いくつかの実施形態において、選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来する免疫細胞はNK細胞である。NK細胞は、様々な腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、ならびに骨髄および胸腺におけるいくつかの正常細胞に対する自発的な細胞傷害性を有するリンパ球の亜集団である。NK細胞は、形質転換細胞およびウイルス感染細胞に対する初期の自然免疫応答の非常に重要なエフェクターである。NK細胞はヒト末梢血におけるリンパ球の約10%を構成する。リンパ球がIL-2の存在下で培養されるとき、強い細胞傷害的反応性が現れる。NK細胞は、そのサイズがより大きく、かつ、特徴的なアズール顆粒がその細胞質に存在するため、大顆粒リンパ球として知られているエフェクター細胞である。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃および胸腺において分化し、成熟する。NK細胞は、特異的な表面マーカーによって、例えば、ヒトにおけるCD16、CD56およびCD8などによって検出することができる。NK細胞は、T細胞抗原受容体、汎TマーカーのCD3、または表面免疫グロブリンB細胞受容体を発現しない。
【0095】
NK細胞の刺激が、細胞表面の活性化受容体および抑制性受容体に由来するシグナルのクロストークを介して達成される。NK細胞の活性化状態が、生殖系列によってコードされた一連の活性化受容体および抑制性受容体から受け取られる細胞内シグナルのバランスによって調節される(Campbell、2006)。NK細胞が、異常な細胞(例えば、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞)に遭遇し、活性化シグナルが優位になったとき、NK細胞は、パーフォリンおよびグランザイムを含有する細胞溶解性顆粒の指向的分泌またはデスドメイン含有受容体の関与を介して標的細胞のアポトーシスを迅速に誘導することができる。活性化されたNK細胞はまた、自然免疫細胞および適応免疫細胞の両方を活性化するI型サイトカイン(例えば、インターフェロン-ガンマ、腫瘍壊死因子-アルファ、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)など)、同様にまた、他のサイトカインおよびケモカインを分泌することができる(Wu他、2003)。初期の自然免疫応答におけるNK細胞によるこれらの可溶性因子の産生は、他の造血細胞の動員および機能に著しい影響を及ぼす。また、物理的接触およびサイトカインの産生を介して、NK細胞は、免疫応答を促進するための、または抑制するための、樹状細胞および好中球との調節性クロストークネットワークにおける中心的役者である。
【0096】
ある特定の局面において、NK細胞が、NK細胞のエクスビボ拡大の以前に記載された方法(Shah他、2013)によって単離され、拡大される。この方法において、CB単核細胞がFicoll密度勾配遠心分離によって単離され、IL-2および人工抗原提示細胞(aAPC)とともにバイオリアクターにおいて培養される。7日後には、細胞培養は、どのような細胞であれCD3を発現する細胞が枯渇し、さらに7日間にわたって再培養される。細胞は、再びCD3枯渇化され、CD56+/CD3-細胞またはNK細胞の割合を求めるために特徴づけられる。他の方法において、臍帯CBが、CD34+細胞の単離、ならびに、SCF、IL-7、IL-15およびIL-2を含有する培地での培養によるCD56+/CD3-細胞への分化によってNK細胞を導くために使用される。
【0097】
B.T細胞
いくつかの実施形態において、選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来する免疫細胞はT細胞である。機能的な抗腫瘍エフェクター細胞の誘導、活性化および拡大のためのいくつかの基本的な取り組みが、過去20年において記載されている。これらは下記の細胞を含む:自家細胞(例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)など);自家DC、リンパ球、人工抗原提示細胞(APC)、またはT細胞リガンドおよび活性化抗体により被覆されるビーズ、あるいは標的細胞膜を捕捉することによって単離される細胞を使用してエクスビボで活性化されるT細胞;抗宿主腫瘍TCRを生来的に発現する同種の細胞;および「T-ボディー」として知られている、抗体様の腫瘍認識能を示す腫瘍反応性のTCR分子またはキメラTCR分子を発現するように遺伝子的に初期化される、または「再命令される」腫瘍非特異的な自家または同種の細胞。これらの取り組みは、本明細書中に記載される方法において使用することができる、T細胞の調製およびT細胞による免疫化のための数多くのプロトコルをもたらしている。
【0098】
いくつかの実施形態において、T細胞の1つまたは複数のサブセットが、選択された臍帯血に由来する:例えば、CD4+細胞、CD8+細胞、およびそれらの亜集団(例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化能、拡大能、再循環能、局在化能および/または持続能についての潜在能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官または区画における存在、マーカーまたはサイトカインの分泌プロフィル、ならびに/あるいは分化度によって定義される亜集団など)など。処置されることになる対象に関して、T細胞が、同種もしくは自家である臍帯血、またはそれらの混合物から得られる場合がある。
【0099】
T細胞のある特定のタイプが、選択された臍帯血に由来する場合がある。T細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+のT細胞)の様々なサブタイプおよび亜集団の中に、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ(例えば、幹細胞メモリーT細胞(TSCM)、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、または最終分化したエフェクターメモリーT細胞など)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在する適応性の制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞(例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞およびデルタ/ガンマT細胞など)が存在する。
【0100】
いくつかの実施形態において、臍帯血に由来するT細胞集団のうちの1つまたは複数が、1つもしくは複数の特異的マーカー(例えば、表面マーカーなど)について陽性である細胞、または1つもしくは複数の特異的マーカーについて陰性である細胞について濃縮され、あるいはそのような細胞が枯渇化される。いくつかの場合において、そのようなマーカーは、T細胞のある特定の集団(例えば、非メモリー細胞など)では存在しないか、または比較的低いレベルで発現し、しかし、T細胞の他のある特定の集団(例えば、メモリー細胞)では存在し、または比較的より高いレベルで発現するものである。
【0101】
いくつかの実施形態において、T細胞が、非T細胞(例えば、B細胞、単球または他の白血球など)で発現されるマーカー(例えば、CD14など)の負の選択によって臍帯血サンプルから分離される。いくつかの局面において、CD4+またはCD8+の選択工程が、CD4+ヘルパー細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+集団およびCD8+集団はさらに、1つまたは複数のナイーブT細胞亜集団、メモリーT細胞亜集団および/またはエフェクターT細胞亜集団で発現される、または比較的より高い程度に発現されるマーカーについての正の選択または負の選択によって亜集団に選別することができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、CD8+T細胞はさらに、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞および/またはセントラルメモリー幹細胞が、例えば、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく正の選択または負の選択などによって濃縮され、または枯渇化される。
【0103】
いくつかの実施形態において、T細胞はインターロイキン-2(IL-2)中で培養され、そして、どのような場合であれ、T細胞は拡大に先立ってプールされることがある。拡大を、この技術分野において知られているような多数の方法のいずれかによって達成することができる。例えば、T細胞を、フィーダーリンパ球およびインターロイキン-2(IL-2)またはインターロイキン-15(IL-15)のどちらかの存在下での非特異的なT細胞受容体刺激を使用して迅速に拡大させることができる。非特異的なT細胞受容体刺激として、30ng/ml前後のOKT3(マウスモノクローナル抗CD3抗体、これはOrtho-McNeil.RTM.(Raritan、N.J.)から入手可能である)を挙げることができる。代替において、T細胞を、末梢血単核細胞(PBMC)をT細胞増殖因子の存在下、例えば、300IU/mlのIL-2またはIL-15などの存在下、必要な場合にはベクターから発現させることができるガンの1つまたは複数の抗原(その抗原性部分(例えば、エピトープなど)を含む、または細胞)により、例えば、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)結合ペプチドなどによりインビトロで刺激することによって迅速に拡大させることができる。インビトロ誘導されたT細胞は、HLA-A2を発現する抗原提示細胞に対してパルス刺激されるガンの同じ抗原(1つまたは複数)による再刺激によって迅速に拡大させられる。代替において、T細胞を、例えば、放射線照射された自家リンパ球により、または放射線照射されたHLA-A2+の同種リンパ球およびIL-2により再刺激することができる。
【0104】
C.幹細胞
いくつかの実施形態において、選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来する免疫細胞は、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(PSC)、間葉系幹細胞(MSC)、または造血幹細胞(HSC)、あるいはそれらの混合物などである場合がある。
【0105】
本明細書中に包含される多能性幹細胞は人工多能性幹(iPS)細胞(これは一般にはiPS細胞またはiPSCと略される)である場合がある。多能性の誘導が元々は、多能性に関連づけられる転写因子の導入を介した体細胞の初期化によって、マウス細胞を使用して2006年に達成され(Yamanaka他、2006)、そしてヒト細胞を使用して2007年に達成された(Yu他、2007;Takahashi他、2007)。iPSCの使用では、ES細胞の大規模な臨床使用に伴う倫理的および実際的な問題のほとんどが回避され、iPSC由来の自己移植片を有する患者は、移植片拒絶を防止するための生涯にわたる免疫抑制処置を必要としない場合がある。
【0106】
体細胞、例えば、臍帯血ユニット物における体細胞などを、当業者には知られている様々な方法を使用してiPS細胞を産生させるために初期化することができる。当業者はiPS細胞を容易に産生させることができる:例えば、公開された米国特許出願第2009/0246875号、公開された米国特許出願第2010/0210014号;公開された米国特許出願第2012/0276636号;米国特許第8,058,065号;同第8,129,187号;PCT公開番号WO2007/069666(A1)、米国特許第8,268,620号、同第8,546,140号;同第9,175,268号;同第8,741,648号;米国特許出願第2011/0104125号、および米国特許第8,691,574号を参照のこと(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)。一般には、核初期化因子が、多能性幹細胞を体細胞から産生させるために使用される。いくつかの実施形態において、Klf4、c-Myc、Oct3/4、Sox2、NanogおよびLin28のうちの少なくとも3つが、またはそれらのうちの少なくとも4つが利用される。他の実施形態において、Oct3/4、Sox2、c-MycおよびKlf 4が利用され、または、Oct3/4、Sox2、NanogおよびLin28が利用される。
【0107】
これらの核初期化物質のマウスcDNA配列およびヒトcDNA配列が、国際公開WO2007/069666号および米国特許第8,183,038号(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)において述べられるNCBIアクセション番号を参照して利用可能である。1つまたは複数の初期化物質、またはこれらの初期化物質をコードする核酸を導入するための様々な方法が、この技術分野では知られており、例えば、米国特許第8,268,620号、同第8,691,574号、同第8,741,648号、同第8,546,140号、公開された米国特許第8,900,871号および同第8,071,369号(これらはともに参照によって本明細書中に組み込まれる)に開示される。
【0108】
ひとたび誘導されると、iPSCは、多能性を維持するために十分である培地で培養することができる。iPSCは、米国特許第7,442,548号および米国特許出願公開第2003/0211603号において記載されるように、多能性幹細胞(より具体的には胚性幹細胞)を培養するために開発される様々な培地および技術とともに使用される場合がある。マウス細胞の場合には、培養が、白血病抑制因子(LIF)を通常の培地に分化抑制因子として加えることにより行われる。ヒト細胞の場合には、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)がLIFの代わりに加えられることが望ましい。当業者に知られているであろうようなiPSCの培養および維持のための他の方法が、本明細書中に開示される方法とともに使用される場合がある。
【0109】
ある特定の実施形態において、定義されていない条件が使用される場合があり、例えば、多能性細胞が、幹細胞を未分化状態で維持するために、線維芽細胞フィーダー細胞の上で、または線維芽細胞フィーダー細胞に曝露された培地で培養される場合がある。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞分裂を終結させるために放射線または抗生物質により処理されるマウス胚性線維芽細胞をフィーダー細胞として共存させて培養される。代替において、多能性細胞が、定義されたフィーダー非依存的培養系(例えば、TESR(商標)培地またはE8(商標)/Essential8(商標)培地など)を使用して、本質的に未分化の状態で培養され、かつ維持される場合がある。
【0110】
様々なプラスミドが、調節された高コピー数を達成すること、および細菌におけるプラスミド不安定性の潜在的原因を回避すること、ならびにヒト細胞を含めて哺乳動物細胞における使用に関して適合性であるプラスミド選択のための手段を提供することなど、いくつかの目的を念頭に置いて設計されている。ヒト細胞における使用のためのプラスミドの二重の要件には特に留意されている。第1には、そのようなプラスミドは大腸菌における維持および発酵のために好適であり、その結果、大量のDNAが産生され、精製されることが可能である。第2には、そのようなプラスミドは安全であり、ヒト患者および動物における使用のために好適である。第1の要件では、細菌発酵の期間中に比較的容易に選択され、かつ安定に維持されることが可能である高コピー数のプラスミドが求められる。第2の要件では、選択マーカーおよび他のコード配列などの様々な要素に対する配慮が求められる。いくつかの実施形態において、マーカーをコードする様々なプラスミドが下記の(1)~(5)から構成される:(1)高コピー数の複製起点、(2)選択マーカー、例えば、限定されないが、カナマイシンによる抗生物質選抜のためのneo遺伝子、(3)チロシナーゼエンハンサーを含めて転写終結配列、および(4)様々な核酸カセットを組み込むためのマルチクローニング部位、ならびに(5)前記チロシナーゼプロモーターに機能的に連結されるマーカーをコードする核酸配列。特定の局面において、プラスミドはチロシナーゼエンハンサーまたはチロシナーゼプロモーターを含まない。タンパク質をコードする核酸を誘導するためのこの技術分野で知られているプラスミドベクターが数多く存在する。これらには、米国特許第6,103,470号、同第7,598,364号、同第7,989,425号、および同第6,416,998号、ならびに米国特許出願第12/478,154号(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)に開示されるベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
エピソーム遺伝子送達システムとして、プラスミド、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に基づくエピソームベクター、酵母に基づくベクター、アデノウイルスに基づくベクター、シミアンウイルス40(SV40)に基づくエピソームベクター、ウシパピローマウイルス(BPV)に基づくベクター、またはレンチウイルスベクターを挙げることができる。ウイルス遺伝子送達システムとして、RNAに基づく、またはDNAに基づくウイルスベクターを挙げることができる。
【0112】
IV.細胞の操作
いくつかの実施形態において、選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来する免疫細胞は、様々な目的のために利用されるために人の手によって操作される。操作は、臨床用途または研究用途のためになされる場合がある。操作された免疫細胞はいくつかの場合において、貯蔵されてもよく、またはそれを必要としている個体に投与されるなど、使用されてもよい。操作は、選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)から免疫細胞を生じさせた同じ人によって行われてもよく、またはそうでなくてもよい。
【0113】
具体的な実施形態において、免疫細胞は、1つまたは複数の非天然型受容体を発現するように、例えば、抗原受容体などを発現するように操作される。抗原はどのような種類のものであってもよく、抗原を発現するように免疫細胞を操作することにより、少なくともいくつかの場合には、細胞を臨床用途のために使用することが容易になる。抗原はガン抗原(腫瘍抗原または造血細胞抗原を含む)である場合があり、または抗原は、細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生虫性、およびその他を含めて、どのような種類の病原体であれ病原体に関してである場合がある。
【0114】
選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)からの免疫細胞(例えば、自己または同種のT細胞(例えば、制御性T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはガンマ-デルタT細胞)、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、幹細胞(例えば、MSCまたはiPS細胞)は、抗原受容体(例えば、操作されたTCRおよび/またはCARなど)を発現するように遺伝子操作することができる。例えば、免疫細胞は、ガン抗原についての抗原特異性を有するTCRを発現するように改変される場合がある。特定の実施形態において、NK細胞が、TCRを発現するように操作される。NK細胞は代替として、またはさらに、CARを発現するように操作される場合がある。異なる抗原に対するなどの多数のCARおよび/またはTCRが、T細胞またはNK細胞などのただ1つの細胞タイプに加えられる場合がある。
【0115】
様々な好適な細胞改変方法および組換え試薬がこの技術分野では知られている。例えば、SambrookおよびAusubel(上掲)を参照のこと。例えば、細胞は、Heemskerk他(2008)およびJohnson他(2009)において記載される形質導入技術を使用して、ガン抗原について抗原特異性を有するTCRを発現するように形質導入される場合がある。
【0116】
いくつかの実施形態において、細胞は、1つまたは複数の抗原受容体をコードする、遺伝子操作により導入される1つまたは複数の核酸、およびそのような核酸の遺伝子操作された産物を含む。いくつかの実施形態において、核酸は異種であり、すなわち、通常の場合、細胞または細胞から得られるサンプルには存在しておらず、例えば、別の生物または細胞から得られるもので、例えば、操作中の細胞、および/またはそのような細胞が由来する生物において通常は見出されないものなどである。いくつかの実施形態において、核酸は天然に存在しておらず、例えば、自然界において見出されない核酸(例えば、キメラ)などである。
【0117】
いくつかの実施形態において、CARは、抗原に特異的に結合する細胞外の抗原認識ドメインを含有する。いくつかの実施形態において、抗原は、細胞の表面に発現するタンパク質である。いくつかの実施形態において、CARはTCR様CARであり、抗原は、TCRのようにであるが、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子との関連で細胞表面において認識されるプロセシングされたペプチド抗原、例えば、細胞内タンパク質のペプチド抗原などである。
【0118】
CARおよび組換えTCRを含めて様々な例示的な抗原受容体、同様にまた、受容体を操作し、細胞に導入するための様々な方法には、例えば、国際特許出願公開番号WO2000/14257、同WO2013/126726、同WO2012/129514、同WO2014/031687、同WO2013/166321、同WO2013/071154、同WO2013/123061、米国特許出願公開第2002131960号、同第2013287748号、同第20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号および同第8,479,118号、ならびに欧州特許出願番号EP2537416に記載される抗原受容体および方法、ならびに/あるいはSadelain他(2013)、Davila他(2013)、Turtle他(2012)、Wu他(2012)によって記載される抗原受容体および方法が含まれる。いくつかの局面において、遺伝子操作された抗原受容体には、米国特許第7,446,190号に記載されるようなCAR、および国際特許出願公開番号WO/2014055668(A1)に記載されるものが含まれる。
【0119】
TCRが利用される実施形態において、全長TCRのアルファ鎖およびベータ鎖(またはガンマ鎖およびデルタ鎖)についてコードするRNAのエレクトロポレーションを、レトロウイルスにより形質導入されたTCR鎖と内因性TCR鎖との対形成によって引き起こされる自己反応性に関する長期の問題を克服するための代替として使用することができる。そのような代わりの対形成がたとえ、一過性トランスフェクション戦略において生じるとしても、導入されたTCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖は一過性にしか発現されないため、生じたかもしれない自己反応性T細胞は、時間が経つと、この自己反応性を失うであろう。導入されたTCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖の発現が低下すると、正常な自家T細胞のみが残る。このことは、全長のTCR鎖が、導入されたTCR鎖を決して喪失させず、これにより、常に存在する自己反応性を患者において引き起こすであろう安定なレトロウイルス形質導入によって導入されるときには当てはまらない。
【0120】
遺伝子改変の後、免疫細胞は直ちに送達される(例えば、注入などされる)場合があり、または貯蔵される場合がある。ある特定の局面において、遺伝子改変の後、細胞は、細胞内への遺伝子移入の後で約1日、2日、3日、4日、5日またはそれ以上のうちにバルク集団としてエクスビボで数日間、数週間または数ヶ月間にわたって増やされる場合がある。さらなる局面において、トランスフェクタントがクローン化され、ただ1つの組み込まれた、またはエピソームで維持された発現カセットまたはプラスミドの存在、および(一例として)キメラ受容体の発現を明らかに示すクローンが、エクスビボで拡大される。拡大のために選択されるクローンにより、抗原を発現している標的細胞を特異的に認識し、かつ溶解する能力が明らかにされる。組換え免疫細胞が、IL-2、または共通のガンマ鎖と結合する他のサイトカイン(例えば、IL-7、IL-12、IL-15およびIL-21など)によるなどの刺激によって拡大される場合がある。組換え免疫細胞が、人工抗原提示細胞による刺激によって拡大される場合がある。さらなる局面において、遺伝子改変細胞が凍結保存される場合がある。
1.キメラ抗原レセプター
【0121】
A.キメラ抗原受容体
一部の実施形態では、免疫細胞は、CARを発現するように操作され、CARは、a)1又はそれ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、およびc)所望の抗原に特異的に結合する場合を含む。
【0122】
一部の実施形態では、操作された抗原受容体には、活性化または刺激性CAR、共刺激性CAR(国際公開第2014/055668号を参照)、および/または抑制性CAR(iCAR、Fedorovら、2013を参照)を含むCARが挙げられる。CARは、一般に、一部の態様ではリンカーおよび/または1つまたは複数の膜貫通ドメインを介して、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結された細胞外抗原(またはリガンド)結合ドメインを含む。そのような分子は、一般に、天然の抗原受容体を介したシグナル、共刺激受容体と組み合わせたそのような受容体を介したシグナル、および/または共刺激受容体のみを介したシグナルを模倣するかまたは近づく。
【0123】
本開示の特定の実施形態は、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数のシグナル伝達モチーフを含む細胞外ドメインを含む、免疫原性を低減するためにヒト化されたCAR(hCAR)を含む、抗原特異的CARポリペプチドをコードする核酸をはじめとする、核酸の使用に関する。特定の実施形態では、CARは、1つまたは複数の抗原間で共有された空間を含むエピトープを認識し得る。特定の実施形態では、結合領域は、モノクローナル抗体の相補決定領域、モノクローナル抗体の可変領域、および/またはそれらの抗原結合フラグメントを含み得る。もう一つの実施形態では、その特異性は、受容体に結合するペプチド(例えば、サイトカイン)に由来する。
【0124】
ヒトCAR核酸は、ヒト患者の細胞免疫療法を増強するために使用されるヒト遺伝子であり得ると想定される。具体的な実施形態では、本発明は、全長CARのcDNAまたはコード領域を含む。抗原結合領域またはドメインは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,190,304号に記載されているものなどの特定のヒトモノクローナル抗体に由来する単鎖可変フラグメント(scFv)のVH鎖およびVL鎖のフラグメントを含み得る。フラグメントは、ヒト抗原特異的抗体の任意の数の異なる抗原結合ドメインでもあり得る。より具体的な実施形態では、フラグメントは、ヒト細胞での発現のためのヒトコドン使用のために最適化された配列にコードされる抗原特異的scFvである。
【0125】
配置は、二重特異性抗体または多量体などの多量体であり得る。多量体は、軽鎖と重鎖の可変部分の交差対合によってジアボディを形成している可能性が最も高い。構造体のヒンジ部分は、完全に削除されているものから、第一システインが維持されているもの、セリンではなくプロリンで置換されているもの、第一システインまで切断されているものなど、複数の選択肢を有し得る。Fc部分は削除することができる。安定している、および/または二量体化するタンパク質は、この目的を果たすことができる。Fcドメインの1つだけ、例えば、ヒト免疫グロブリンのCH2またはCH3ドメインのいずれかだけを使用することができる。二量体化を改善するために修飾されたヒト免疫グロブリンのヒンジ、CH2およびCH3領域を使用することもできる。免疫グロブリンのヒンジ部分だけを使用することもできる。CD8αの部分を使用することもできる。
【0126】
一部の実施形態では、CAR核酸は、膜貫通ドメインおよび修飾されたCD28細胞内シグナル伝達ドメインなどの他の共刺激受容体をコードする配列を含む。他の共刺激受容体には、限定されるものではないが、CD28、CD27、OX-40(CD134)、DAP10、DAP12、および4-1BB(CD137)の1つまたは複数が含まれる。CD3ζによって開始される一次シグナルに加えて、ヒトCARに挿入されたヒト共刺激受容体によって提供される追加のシグナルは、NK細胞の完全な活性化に重要であり、インビボ持続性および養子免疫療法の治療的成功を改善するのに役立ち得る。
【0127】
一部の実施形態では、CARは、特定の抗原(またはマーカーまたはリガンド)、例えば、養子療法によって標的化される特定の細胞型に発現する抗原、例えば癌マーカーなど、および/または正常または非疾患細胞型で発現する抗原などの減衰応答を誘導することを意図する抗原などに対する特異性を持って構築される。したがって、CARは、一般に、その細胞外部分に1つまたは複数の抗原結合分子、例えば、1つまたは複数の抗原結合フラグメント、ドメイン、または部分、あるいは1つまたは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。一部の実施形態では、CARには、抗体分子の1または複数の抗原結合部分、例えば、モノクローナル抗体(mAb)の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)鎖に由来する単鎖抗体フラグメント(scFv)が含まれる。
【0128】
キメラ抗原レセプターの特定の実施形態では、レセプターの抗原特異的部分(抗原結合領域を構成する細胞外ドメインとして共参照され得る)は、腫瘍関連抗原または病原体特異的抗原結合ドメインを含む。抗原には、Dectin-1などのパターン認識受容体によって認識される糖鎖抗原が含まれる。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の細胞表面で発現される限り、どのようなものでもよい。腫瘍関連抗原の例示的な実施形態としては、CD19、CD20、カルチノ胚性抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、CD56、EGFR、c-Met、AKT、Her2、Her3、上皮性腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異rasなどが挙げられる。特定の実施形態において、CARは、腫瘍関連抗原の量が少ない場合に持続性を改善するためにサイトカインと共発現させることができる。例えば、CARはIL-15と共発現させることができる。
【0129】
キメラ受容体をコードするオープンリーディングフレームの配列は、ゲノムDNA源、cDNA源から得ることができるか、または(例えば、PCRを介して)合成することができるか、またはそれらの組み合わせであり得る。ゲノムDNAのサイズとイントロンの数によっては、イントロンがmRNAを安定化させることがわかっているため、cDNAまたはその組合せを使用することが望ましい場合がある。また、内因性または外因性の非コード領域を使用してmRNAを安定化することがさらに有利であり得る。
【0130】
キメラ構築物は、裸のDNAとして、または適切なベクターで免疫細胞に導入することができると想定される。裸のDNAを使用してエレクトロポレーションによって細胞を安定的にトランスフェクトする方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号を参照されたい。裸のDNAは、一般に、プラスミド発現ベクターに発現に適切な方向で含まれるキメラ受容体をコードするDNAを指す。
【0131】
あるいは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)を使用して、キメラ構築物を免疫細胞に導入することができる。本開示の方法に従って用いるのに適したベクターは、免疫細胞で非複製性の適したベクターである。細胞内に維持されるウイルスのコピー数が、細胞の生存能力を維持ほど十分に低い、ウイルスに基づく多数のベクターが公知であり、例えば、HIV、SV40、EBV、HSV、またはBPVに基づくベクターなどがある。
【0132】
一部の態様では、抗原特異的結合、または認識成分は、1つまたは複数の膜貫通型および細胞内シグナル伝達ドメインに連結されている。一部の実施形態では、CARには、CARの細胞外ドメインと融合した膜貫通ドメインが含まれる。一実施形態では、CAR内のドメインの1つに自然に関連付けられている膜貫通ドメインが使用される。一部の例では、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化するために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとそのようなドメインとの結合を回避するアミノ酸置換によって選択または修飾される。
【0133】
一部の実施形態の膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合、一部の態様のドメインは、膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域には、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS/CD278、GITR/CD357、NKG2D、およびDAP分子に由来する(すなわち、少なくともそれらの1つまたは複数の膜貫通領域を含む)ものが含まれる。あるいは、一部の実施形態での膜貫通ドメインは合成である。一部の態様では、合成膜貫通ドメインは、主に疎水性の残基、例えば、ロイシンおよびバリンなどを含む。一部の態様では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。
【0134】
特定の実施形態では、NK細胞などの免疫細胞を遺伝子改変するために本明細書に開示されるプラットフォーム技術は、(i)エレクトロポレーションデバイス(例えば、ヌクレオフェクター)を使用する非ウイルス遺伝子移入、(ii)エンドドメイン(例えば、CD28/CD3-ζ、CD137/CD3-ζ、または他の組合せ)を介してシグナルを送るCAR、(iii)抗原認識ドメインと細胞表面を接続する可変長の細胞外ドメインを有するCAR、および、一部の例では、(iv)CARsup+免疫細胞を強固にかつ数値的に拡大できるK562由来の人工抗原提示細胞(aAPC)(Singhら、2008;Singhら、2011)を含む。
【0135】
B.T細胞受容体(TCR)
一部の実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体には、組換えTCRおよび/または天然に存在するT細胞からクローン化されたTCRが含まれる。「T細胞受容体」または「TCR」とは、可変aおよびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとして公知)または可変γおよびδ鎖(それぞれTCRγおよびTCRδとしても公知)を含み、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合できる分子を指す。一部の実施形態では、TCRは、αβ型である。
【0136】
一般に、αβ型およびγδ型で存在するTCRは一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は異なる解剖学的位置または機能を持っている場合がある。TCRは、細胞の表面に、または可溶性の形で見出すことができる。一般に、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見出され、そこでは一般に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識を担っている。一部の実施形態では、TCRは、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質側末端も含み得る(例えば、Janewayら、1997を参照)。例えば、一部の態様では、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端に短い細胞質側末端を有することができる。一部の実施形態では、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変タンパク質に関連している。特に明記しない限り、「TCR」という用語は、その機能的なTCRフラグメントを包含すると理解されるべきである。この用語は、αβ型またはγδ型のTCRを含む無傷または全長TCRも包含する。
【0137】
したがって、本明細書において、TCRへの言及は、任意のTCRまたは機能的フラグメント、例えば、MHC分子に結合した特定の抗原ペプチド、すなわちMHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合部分などを含む。同義的に使用することができる、TCRの「抗原結合部分」または「抗原結合フラグメント」とは、TCRの構造ドメインの一部を含むが、完全なTCRが結合する抗原に結合する分子(例えば、MHC-ペプチド複合体)を指す。場合によっては、抗原結合部は、一般に各鎖が3つの相補性決定領域を含むなどの、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変a鎖および可変β鎖などのTCRの可変ドメインを含む。
【0138】
一部の実施形態では、TCR鎖の可変ドメインは、TCR分子の結合部位を形成し、ペプチド特異性を決定することにより、抗原認識を付与し、ペプチド特異性を決定する、免疫グロブリンに類似したループまたは相補性決定領域(CDR)を形成するために結合する。一般に、免疫グロブリンのように、CDRはフレームワーク領域(FR)によって分離される(例えば、Joresら、1990;Chothiaら、1988;Lefrancら、2003を参照)。一部の実施形態では、CDR3は処理された抗原の認識を担う主なCDRであるが、アルファ鎖のCDR1は抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することも示されており、一方で、ベータ鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2はMHC分子を認識すると考えられている。一部の実施形態では、β鎖の可変領域は、さらなる超可変性(HV4)領域を含むことができる。
【0139】
一部の実施形態では、TCR鎖は定常ドメインを含む。例えば、免疫グロブリンのように、TCR鎖(例えば、a鎖、β鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリンドメイン、すなわちN末端の可変ドメイン(例えば、VaまたはVp;一般に、Kabat番号付けに基づくアミノ酸1~116である。Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、US Dept.Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991、第5版)と、細胞膜に隣接する1つの定常ドメイン(例えば、a鎖定常ドメインまたはCa、一般にKabatに基づくアミノ酸117~259、β鎖定常ドメインまたはCP、一般にKabatに基づくアミノ酸117~295)を含み得る。例えば、一部の例では、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインと、CDRを含む2つの膜遠位可変ドメインを含む。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、2つの鎖間を連結する短い接続配列が含まれている。一部の実施形態では、TCRは、TCRが定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含むように、α鎖およびβ鎖のそれぞれに追加のシステイン残基を有していてもよい。
【0140】
一部の実施形態では、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含むことができる。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは正に帯電している。一部の例では、TCR鎖は細胞質側末端を含む。一部の例では、この構造により、TCRはCD3のような他の分子と会合することが可能になる。例えば、膜貫通領域をもつ定常ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し、CD3シグナル伝達装置または複合体の不変サブユニットと会合することができる。
【0141】
一般に、CD3は、哺乳類で3つの異なる鎖(γ、δ、およびε)と、ζ鎖を持つことができる多タンパク質複合体である。例えば、哺乳類では、この複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖と、CD3ζ鎖のホモ二量体を含むことができる。CD3γ、CD3δ、およびCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連した細胞表面タンパク質である。CD3γ、CD3δ、およびCD3ε鎖の膜貫通領域は負に帯電している。これは、これらの鎖が正に帯電したT細胞受容体鎖と会合することを可能にする特性である。CD3γ、CD3δ、およびCD3ε鎖の細胞内テールは、それぞれ、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフすなわちITAMとして公知の保存されたモチーフを1つ含むが、各CD3ζ鎖は3つ有する。一般に、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与している。これらのアクセサリー分子は負に帯電した膜貫通領域を有し、TCRから細胞にシグナルを伝播する役割を果たす。
【0142】
一部の実施形態では、TCRは、2つの鎖αおよびβ(または任意選択でγおよびδ)のヘテロ二量体であってもよく、またはそれは単鎖TCR構築物であってもよい。一部の実施形態では、TCRは、例えば、1つまたは複数のジスルフィド結合によって連結された2つの別個の鎖(αおよびβ鎖またはγおよびδ鎖)を含むヘテロ二量体である。一部の実施形態では、標的抗原(例えば、癌抗原)のTCRが特定され、細胞に導入される。一部の実施形態では、TCRをコードする核酸は、公開されているTCRのDNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などにより、多様な供給源から得ることができる。一部の実施形態では、TCRは、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマ、または他の公開されている供給源などの細胞などの生物学的供給源から得られる。一部の実施形態では、T細胞は、インビボで分離された細胞から得ることができる。一部の実施形態では、高親和性T細胞クローンを患者から分離し、TCRを分離することができる。一部の実施形態では、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであってよい。一部の実施形態では、標的抗原のTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、すなわちHLA)で操作されたトランスジェニックマウスで生成されたものである。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurstら、2009およびCohenら、2005を参照)。一部の実施形態では、ファージディスプレイを使用して標的抗原に対するTCRを分離する(例えば、Varela-Rohenaら、2008およびLi、2005参照)。一部の実施形態では、TCRまたはその抗原結合部分は、TCRの配列の知識から合成によって生成することができる。
【0143】
C.抗原
具体的な場合において、選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来する免疫細胞は、抗原を標的とするタンパク質を発現するように、例えば、抗原を標的とする受容体などを発現するように操作される。具体的な場合において、受容体は、異なる供給源からのキメラな成分を含むように遺伝子操作される。遺伝子操作された抗原受容体によって標的とされる抗原の中には、養子細胞療法を介して標的とされることになる疾患、状態または細胞タイプに関連して発現される抗原がある。このような疾患および状態の中には、血液学的ガン、免疫系のガン(例えば、リンパ腫、白血病および/または骨髄腫など、例えば、B、Tおよび骨髄性の白血病、リンパ腫、ならびに多発性骨髄腫など)を含めて様々なガンおよび腫瘍を含めた、増殖性、新生物性および悪性の疾患および障害がある。いくつかの実施形態において、抗原は、正常な、または標的とならない細胞または組織と比較した場合、疾患または状態の細胞の表面で、例えば、腫瘍細胞または病原性細胞の表面で選択的に発現し、または過剰発現する。他の実施形態において、抗原は正常な細胞の表面で発現し、かつ/または操作された細胞の表面で発現する。
【0144】
好適な抗原はどれも、用途が本発明の方法において見出される場合がある。例示的な抗原には、感染性病原体、自己抗原/自身の抗原、腫瘍関連抗原/ガン関連抗原、および腫瘍のネオ抗原からの抗原性分子が含まれるが、これらに限定されない(Linnemann他、2015)。特定の局面において、抗原には、NY-ESO、EGFRvIII、Muc-1、Her2、CA-125、WT-1、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A10、TRAIL/DR4およびCEAが含まれる。特定の局面において、2つ以上の抗原受容体についての抗原には、CD19、EBNA、WT1、CD123、NY-ESO、EGFRvIII、MUC1、HER2、CA-125、WT1、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A10、TRAIL/DR4、および/またはCEAが含まれるが、これらに限定されない。これらの抗原についての配列がこの技術分野では知られている:例えば、CD19(アクセション番号NG_007275.1)、EBNA(アクセション番号NG_002392.2)、WT1(アクセション番号NG_009272.1)、CD123(アクセション番号NC_000023.11)、NY-ESO(アクセション番号NC_000023.11)、EGFRvIII(アクセション番号NG_007726.3)、MUC1(アクセション番号NG_029383.1)、HER2(アクセション番号NG_007503.1)、CA-125(アクセション番号NG_055257.1)、WT1(アクセション番号NG_009272.1)、Mage-A3(アクセション番号NG_013244.1)、Mage-A4(アクセション番号NG_013245.1)、Mage-A10(アクセション番号NC_000023.11)、TRAIL/DR4(アクセション番号NC_000003.12)および/またはCEA(アクセション番号NC_000019.10)。
【0145】
腫瘍関連抗原は、前立腺、乳房、結腸直腸、肺、膵臓、腎臓、中皮腫、卵巣またはメラノーマの各種ガンに由来する場合がある。例示的な腫瘍関連抗原または腫瘍細胞由来抗原には、MAGE1、3およびMAGE4(または他のMAGE抗原、例えば、国際特許出願公開番号WO99/40188に開示されるMAGE抗原など);PRAME;BAGE;RAGE、Lage(これはまた、NY ESO 1として知られている);SAGE;およびHAGEまたはGAGEが含まれる。腫瘍抗原のこれらの限定されない例が、広範囲の様々な腫瘍タイプにおいて、例えば、メラノーマ、肺ガン、肉腫および膀胱ガンなどにおいて発現する。例えば、米国特許第6,544,518号を参照のこと。前立腺ガンの腫瘍関連抗原には、例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ、NKX3.1、および前立腺の6回膜貫通上皮抗原(STEAP)が含まれる。
【0146】
他の腫瘍関連抗原には、Plu-1、HASH-1、HasH-2、CriptoおよびCriptinが含まれる。加えて、腫瘍抗原は、多くのガンの処置において有用である自分自身のペプチドホルモン、例えば、完全長のゴナドトロピンホルモン放出ホルモン(GnRH)(短い10アミノ酸長のペプチド)などである場合がある。
【0147】
腫瘍抗原には、腫瘍関連抗原の発現(例えば、HER-2/neu発現など)によって特徴づけられるガンに由来する腫瘍抗原が含まれる。対象となる腫瘍関連抗原には、系譜特異的な腫瘍抗原、例えば、メラノサイト-メラノーマ系譜抗原のMART-1/Melan-A、gp100、gp75、mda-7、チロシナーゼおよびチロシナーゼ関連タンパク質などが含まれる。例示的な腫瘍関連抗原には、下記のいずれか1つもしくは複数に由来する腫瘍抗原、または下記のいずれか1つもしくは複数を含む腫瘍抗原が含まれるが、そのような腫瘍抗原に限定されない:p53、Ras、c-Myc、細胞質セリン/トレオニンキナーゼ(例えば、A-Raf、B-RafおよびC-Raf、サイクリン依存性キナーゼ)、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、MART-1、BAGE、DAM-6、DAM-10、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-8、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、NA88-A、MART-1、MC1R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、TRK受容体、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、ウィルムス腫瘍抗原(WT1)、AFP、-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CEA、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、BCR-ABL、インターフェロン調節因子4(IRF4)、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RAR、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子1(TACSTD1)TACSTD2、受容体チロシンキナーゼ(例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)(特にEGFRvIII)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR))、細胞質チロシンキナーゼ(例えば、srcファミリー、syk-ZAP70ファミリー)、インテグリン結合キナーゼ(ILK)、シグナル伝達・転写活性化因子STAT3、STATS、およびSTATE、低酸素誘導因子(例えば、HIF-1およびHIF-2)、核因子-カッパB(NF-B)、Notch受容体(例えば、Notch1~4)、c-Met、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)、WNT、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)およびその調節サブユニット、PMSA、PR-3、MDM2、メソテリン、腎細胞ガン-5T4、SM22-アルファ、炭酸脱水酵素I(CAI)およびIX(CAIX)(これはG250としてもまた知られている)、STEAD、TEL/AML1、GD2、プロテイナーゼ3、hTERT、肉腫転位ブレークポイント、EphA2、ML-IAP、EpCAM、ERG(TMPRSS2とETSとの融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、GD3、フコシルGM1、メソテリアン、PSCA、sLe、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GLoboH、NY-BR-1、RGsS、SART3、STn、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン(legumain)、TIE2、Page4、MAD-CT-1、FAP、MAD-CT-2、fos関連抗原1、CBX2、CLDN6、SPANX、TPTE、ACTL8、ANKRD30A、CDKN2A、MAD2L1、CTAGiB、SUNC1、LRRN1およびイディオタイプ。
【0148】
抗原には、正常細胞と比較される腫瘍細胞において変異する遺伝子または異なるレベルで転写される遺伝子に由来するエピトープ領域またはエピトープペプチド、例えば、テロメラーゼ酵素、サバイビン、メソテリン、変異ras、bcr/abl再編成、Her 2/neu、変異p53または野生型p53、シトクロームP450 1B1、および異常に発現したイントロン配列(例えば、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVなど)などに由来するエピトープ領域またはエピトープペプチド;特有のイディオタイプを骨髄腫およびB細胞リンパ腫において生み出す免疫グロブリン遺伝子のクローン再編成;オンコウイルスのプロセスに由来するエピトープ領域またはエピトープペプチドを含む腫瘍抗原、例えば、ヒトパピローマウイルスタンパク質E6およびE7など;エプスタイン・バーウイルスタンパク質LMP2;腫瘍選択的発現を有する非変異型腫瘍胎児性タンパク質、例えば、ガン胎児性抗原およびアルファ-フェトプロテインなどが含まれる。
【0149】
他の実施形態において、抗原が、病原性微生物から、または日和見病原性微生物(これはまた、本明細書中では感染性疾患微生物と呼ばれる)、例えば、ウイルス、真菌、寄生生物および細菌などから得られ、あるいはそれらに由来する。ある特定の実施形態において、そのような微生物に由来する抗原には、全長のタンパク質が含まれる。
【0150】
本明細書中に記載される方法における使用のためにその抗原が意図される例示的な病原性生物には、SARS-CoVおよびSARS-CoV2を含めてあらゆる種類のコロナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、A型、B型およびC型インフルエンザ、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルスおよびJCウイルス)、アデノウイルス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むブドウ球菌属菌種、および肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を含む連鎖球菌属菌種が含まれる。当業者によって理解されるであろうように、本明細書中に記載されるような抗原として使用されるためのこれらの病原性微生物および他の病原性微生物に由来するタンパク質、ならびに当該タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、刊行物において、また、公開されているデータベースにおいて、例えば、GENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)およびTREMBL(登録商標)などにおいて特定される場合がある。
【0151】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来する抗原には、HIVビリオン構造タンパク質(例えば、gp120、gp41、p17、p24)、プロテアーゼ、逆転写酵素、またはtat、rev、nef、vif、vprおよびvpuによってコードされるHIVタンパク質のどれもが含まれる。
【0152】
単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV1およびHSV2)に由来する抗原には、HSV後期遺伝子から発現されるタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。後期の遺伝子群は主に、ビリオン粒子を形成するタンパク質をコードする。そのようなタンパク質には、ウイルスカプシドを形成する5つのタンパク質(UL)(UL6、UL18、UL35、UL38および主要キャプシドタンパク質UL19)、UL45、およびUL27が含まれ、これらのそれぞれが、本明細書中に記載されるような抗原として使用される場合がある。本明細書中において抗原としての使用のために意図される他の例示的なHSVタンパク質には、ICP27(H1、H2)、糖タンパク質B(gB)および糖タンパク質D(gD)の各タンパク質が含まれる。HSVゲノムは、抗原として使用される可能性があり得るかもしれないタンパク質をそれぞれがコードする少なくとも74個の遺伝子を含む。
【0153】
サイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原には、CMV構造タンパク質、ウイルス複製の前初期段階および初期段階の期間中に発現されるウイルス抗原、糖タンパク質Iおよび糖タンパク質III、カプシドタンパク質、コートタンパク質、下部(lower)マトリックスタンパク質pp65(ppUL83)、p52(ppUL44)、IE1およびIE2(UL123およびUL122)、UL128~UL150からの遺伝子クラスターに由来するタンパク質産物(Rykman他、2006)、エンベロープ糖タンパク質B(gB)、gH、gN、ならびにpp150が含まれる。当業者によって理解されるであろうように、本明細書中に記載されるような抗原として使用されるためのCMVタンパク質が、公開されているデータベースにおいて、例えば、GENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)およびTREMBL(登録商標)などにおいて特定される場合がある(例えば、Bennekov他(2004)、Loewendorf他(2010)、Marschall他(2009)を参照のこと)。
【0154】
ある特定の実施形態において使用のために意図されるエプスタイン・バン(Epstein-Ban)ウイルス(EBV)由来の抗原には、EBV溶解性タンパク質のgp350およびgp110、エプスタイン・バン核抗原(EBNA)-1、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、EBNAリーダータンパク質(EBNA-LP)を含む潜伏周期感染(latent cycle infection)の期間中に産生されるEBVタンパク質、ならびに潜在性膜タンパク質(LMP)-1、LMP-2AおよびLMP-2Bが含まれる(例えば、Lockey他(2008)を参照のこと)。
【0155】
本明細書中における使用のために意図される呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の抗原には、RSVゲノムによってコードされる11個のタンパク質のいずれか、またはその抗原性フラグメントが含まれる:NS1、NS2、N(ヌクレオカプシドタンパク質)、M(マトリックスタンパク質)SH、GおよびF(ウイルスコートタンパク質)、M2(第2のマトリックスタンパク質)、M2-1(伸長因子)、M2-2(転写調節)、RNAポリメラーゼ、ならびにリンタンパク質P。
【0156】
使用のために意図される水疱性口内炎ウイルス(VSV)由来の抗原には、VSVゲノムによってコードされる5つの主要なタンパク質のいずれか1つ、およびその抗原性フラグメントが含まれる:ラージタンパク質(L)、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、リンタンパク質(P)およびマトリックスタンパク質(M)(例えば、Rieder他(1999)を参照のこと)。
【0157】
ある特定の実施形態において使用のために意図されるインフルエンザウイルス由来の抗原には、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質M1およびM2、NS1、NS2(NEP)、PA、PB1、PB1-F2、ならびにPB2が含まれる。
【0158】
例示的なウイルス抗原にはまた、アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリシウイルスポリペプチド(例えば、カリシウイルスカプシド抗原)、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド(B型肝炎コア抗原もしくは表面抗原、C型肝炎ウイルスのE1糖タンパク質もしくはE2糖タンパク質、コアタンパク質または非構造タンパク質)、ヘルペスウイルスポリペプチド(単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質を含む)、感染性腹膜炎ウイルスポリペプチド、白血病ウイルスポリペプチド、マールブルグウイルスポリペプチド、オルソミクソウイルスポリペプチド、パピローマウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド(例えば、血球凝集素ポリペプチドおよびノイラミニダーゼポリペプチド)、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド(例えば、ポリオウイルスカプシドポリペプチド)、ポックスウイルスポリペプチド(例えば、ワクシニアウイルスポリペプチド)、狂犬病ウイルスポリペプチド(例えば、狂犬病ウイルス糖タンパク質G)、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、およびロタウイルスポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0159】
ある特定の実施形態において、抗原は細菌抗原である場合がある。ある特定の実施形態において、対象となる細菌抗原は分泌型ポリペプチドである場合がある。他のある特定の実施形態において、細菌抗原には、ポリペプチドの一部分(1つまたは複数)が細菌の外側細胞表面に露出している抗原が含まれる。
【0160】
使用のために意図される、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むブドウ球菌属菌種に由来する抗原には、様々なビルレンス制御因子、例えば、Agr系、SarおよびSae、Arl系、Sarホモログ(Rot、MgrA、SarS、SarR、SarT、SarU、SarV、SarX、SarZおよびTcaR)、Srr系およびTRAPなどが含まれる。抗原として役立ち得る他のブドウ球菌タンパク質には、Clpタンパク質、HtrA、MsrR、アコニターゼ、CcpA、SvrA、Msa、CfvAおよびCfvBが含まれる(例えば、Staphylococcus:Molecular Genetics(2008、Caister Academic Press、編者:Jodi Lindsay)を参照のこと)。黄色ブドウ球菌の2つの種(N315およびMu50)についてのゲノムが配列決定されており、例えば、PATRICにおいて公開されている(PATRIC:The VBI PathoSystems Resource Integration Center、Snyder他、2007)。当業者によって理解されるであろうように、抗原として使用されるためのブドウ球菌タンパク質がまた、他の公開されているデータベースにおいて、例えば、GenBank(登録商標)、Swiss-Prot(登録商標)およびTrEMBL(登録商標)などにおいて特定される場合がある。
【0161】
本明細書中に記載されるある特定の実施形態において使用のために意図される肺炎連鎖球菌由来の抗原には、ニューモリシン、PspA、コリン結合タンパク質A(CbpA)、NanA、NanB、SpnHL、PavA、LytA、Pht、およびピリンタンパク質(RrgA;RrgB;RrgC)が含まれる。肺炎連鎖球菌の抗原性タンパク質もまた、この技術分野では知られており、いくつかの実施形態において抗原として使用される場合がある(例えば、Zysk他(2000)を参照のこと)。肺炎連鎖球菌の毒性株の完全なゲノム配列が配列決定されており、また、当業者によって理解されるであろうように、本明細書中における使用のためのS.pneumoniaeタンパク質もまた、他の公開されているデータベースにおいて、例えば、GENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)およびTREMBL(登録商標)などにおいて特定される場合がある。本開示による抗原のための特に興味深いタンパク質には、ビルレンス因子、および連鎖球菌の表面に露出することが予測されるタンパク質が含まれる(例えば、Frolet他(2010)を参照のこと)。
【0162】
抗原として使用され得る細菌抗原の例には、アクチノミセス(Actinomyces)ポリペプチド、バチルス(Bacillus)ポリペプチド、バクテロイデス(Bacteroides)ポリペプチド、ボルデテラ(Bordetella)ポリペプチド、バルトネラ(Bartonella)ポリペプチド、ボレリア(Borrelia)ポリペプチド(例えば、B.burgdorferiのOspA)、ブルセラ(Brucella)ポリペプチド、カンピロバクター(Campylobacter)ポリペプチド、カプノシトファガ(Capnocytophaga)ポリペプチド、クラミジア(Chlamydia)ポリペプチド、コリネバクテリウム(Corynebacterium)ポリペプチド、コクシエラ(Coxiella)ポリペプチド、デルマトフィルス(Dermatophilus)ポリペプチド、腸球菌(Enterococcus)ポリペプチド、エーリキア(Ehrlichia)ポリペプチド、大腸菌(Escherichia)ポリペプチド、フランシセラ(Francisella)ポリペプチド、フソバクテリウム(Fusobacterium)ポリペプチド、ヘモバルトネラ(Haemobartonella)ポリペプチド、ヘモフィルス(Haemophilus)ポリペプチド(例えば、b型H.influenzaeの外膜タンパク質)、ヘリコバクター(Helicobacter)ポリペプチド、クレブシエラ(Klebsiella)ポリペプチド、L型細菌ポリペプチド、レプトスピラ(Leptospira)ポリペプチド、リステリア(Listeria)ポリペプチド、マイコバクテリア(Mycobacteria)ポリペプチド、マイコプラズマ(Mycoplasma)ポリペプチド、ナイセリア(Neisseria)ポリペプチド、ネオリケッチア(Neorickettsia)ポリペプチド、ノカルジア(Nocardia)ポリペプチド、パスツレラ(Pasteurella)ポリペプチド、ペプトコッカス(Peptococcus)ポリペプチド、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)ポリペプチド、肺炎球菌(Pneumococcus)ポリペプチド(すなわち、S.pneumoniaeのポリペプチド)(本明細書中の説明を参照のこと)、プロテウス(Proteus)ポリペプチド、シュードモナス(Pseudomonas)ポリペプチド、リケッチア(Rickettsia)ポリペプチド、ロシャリメア(Rochalimaea)ポリペプチド、サルモネラ(Salmonella)ポリペプチド、赤痢菌(Shigella)ポリペプチド、ブドウ球菌(Staphylococcus)ポリペプチド、A群連鎖球菌ポリペプチド(例えば、S.pyogenesのMタンパク質)、B群連鎖球菌(S.agalactiae)ポリペプチド、トレポネマ(Treponema)ポリペプチド、およびエルシニア(Yersinia)ポリペプチド(例えば、Y pestisのF1抗原およびV抗原)が含まれるが、これらに限定されない。
【0163】
真菌抗原の例には、アブシジア(Absidia)ポリペプチド、アクレモニウム(Acremonium)ポリペプチド、アルテルナリア(Alternaria)ポリペプチド、アスペルギルス(Aspergillus)ポリペプチド、バシジオボルス(Basidiobolus)ポリペプチド、ビポラリス(Bipolaris)ポリペプチド、ブラストミセス(Blastomyces)ポリペプチド、カンジダ(Candida)ポリペプチド、コクシジオイデス(Coccidioides)ポリペプチド、コニジオボルス(Conidiobolus)ポリペプチド、クリプトコッカス(Cryptococcus)ポリペプチド、クルバラリア(Curvalaria)ポリペプチド、エピデルモフィトン(Epidermophyton)ポリペプチド、エクソフィアラ(Exophiala)ポリペプチド、ゲオトリクム(Geotrichum)ポリペプチド、ヒストプラズマ(Histoplasma)ポリペプチド、マズレラ(Madurella)ポリペプチド、マラセジア(Malassezia)ポリペプチド、ミクロスポルム(Microsporum)ポリペプチド、モニリエラ(Moniliella)ポリペプチド、モルチエレラ(Mortierella)ポリペプチド、ケカビ(Mucor)ポリペプチド、ペシロミセス(Paecilomyces)ポリペプチド、ペニシリウム(Penicillium)ポリペプチド、フィアレモニウム(Phialemonium)ポリペプチド、フィアロフォラ(Phialophora)ポリペプチド、プロトテカ(Prototheca)ポリペプチド、シュードアレシェリア(Pseudallescheria)ポリペプチド、シュードミクロドキウム(Pseudomicrodochium)ポリペプチド、フィチウム(Pythium)ポリペプチド、リノスポリジウム(Rhinosporidium)ポリペプチド、リゾプス(Rhizopus)ポリペプチド、スコレコバシジウム(Scolecobasidium)ポリペプチド、スポロトリクス(Sporothrix)ポリペプチド、ステムフィリウム(Stemphylium)ポリペプチド、白癬菌(Trichophyton)ポリペプチド、トリコスポロン(Trichosporon)ポリペプチド、およびキシロヒファ(Xylohypha)ポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0164】
原生動物寄生虫抗原の例には、バベシア(Babesia)ポリペプチド、バランチジウム(Balantidium)ポリペプチド、ベスノイチア(Besnoitia)ポリペプチド、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)ポリペプチド、エイメリア(Eimeria)ポリペプチド、エンセファリトゾーン(Encephalitozoon)ポリペプチド、エントアメーバ(Entamoeba)ポリペプチド、ジアルジア(Giardia)ポリペプチド、ハモンジア(Hammondia)ポリペプチド、ヘパトゾーン(Hepatozoon)ポリペプチド、イソスポラ(Isospora)ポリペプチド、リーシュマニア(Leishmania)ポリペプチド、微胞子虫(Microsporidia)ポリペプチド、ネオスポラ(Neospora)ポリペプチド、ノセマ(Nosema)ポリペプチド、ペンタトリコモナス(Pentatrichomonas)ポリペプチド、プラスモジウム(Plasmodium)ポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。蠕虫寄生虫抗原の例には、アカントケイロネマ(Acanthocheilonema)ポリペプチド、アエルロストロンギルス(Aelurostrongylus)ポリペプチド、アンシロストーマ(Ancylostoma)ポリペプチド、住血線虫(Angiostrongylus)ポリペプチド、回虫(Ascaris)ポリペプチド、ブルギア(Brugia)ポリペプチド、ブノストムム(Bunostomum)ポリペプチド、キャピラリア(Capillaria)ポリペプチド、シャベルチア(Chabertia)ポリペプチド、クーペリア(Cooperia)ポリペプチド、クレノソーマ(Crenosoma)ポリペプチド、ジクチオカウルス(Dictyocaulus)ポリペプチド、ジオクトフィメ(Dioctophyme)ポリペプチド、ジペタロネマ(Dipetalonema)ポリペプチド、ジフィロボトリウム(Diphyllobothrium)ポリペプチド、ジプリジウム(Diplydium)ポリペプチド、イヌ糸状虫(Dirofilaria)ポリペプチド、ドラクンクルス(Dracunculus)ポリペプチド、蟯虫(Enterobius)ポリペプチド、フィラロイデス(Filaroides)ポリペプチド、ヘモンクス(Haemonchus)ポリペプチド、ラゴキルアスカリス(Lagochilascaris)ポリペプチド、ロア糸状虫(Loa)ポリペプチド、マンソネラ(Mansonella)ポリペプチド、ミューレリウス(Muellerius)ポリペプチド、ナノフィエツス(Nanophyetus)ポリペプチド、アメリカ鉤虫(Necator)ポリペプチド、ネマトジルス(Nematodirus)ポリペプチド、エソファゴストムム(Oesophagostomum)ポリペプチド、オンコセルカ(Onchocerca)ポリペプチド、オピストルキス(Opisthorchis)ポリペプチド、オステルタギア(Ostertagia)ポリペプチド、パラフィラリア(Parafilaria)ポリペプチド、肺吸虫(Paragonimus)ポリペプチド、パラアスカリス(Parascaris)ポリペプチド、フィサロプテラ(Physaloptera)ポリペプチド、プロトストロンギルス(Protostrongylus)ポリペプチド、セタリア(Setaria)ポリペプチド、スピロセルカ(Spirocerca)ポリペプチド、スピロメトラ(Spirometra)ポリペプチド、ステファノフィラリア(Stephanofilaria)ポリペプチド、ストロンギロイデス(Strongyloides)ポリペプチド、円虫(Strongylus)ポリペプチド、テラジア(Thelazia)ポリペプチド、トキサスカリス(Toxascaris)ポリペプチド、トキソカラ(Toxocara)ポリペプチド、旋毛虫(Trichinella)ポリペプチド、毛様線虫(Trichostrongylus)ポリペプチド、鞭虫(Trichuris)ポリペプチド、ウンシナリア(Uncinaria)ポリペプチド、およびウケレリア(Wuchereria)ポリペプチド、(例えば、P.falciparumのスポロゾイト周囲(PfCSP))、スポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓状態抗原1のカルボキシル末端(PfLSA1 c-term)、および輸出タンパク質1(PfExp-1)、ニューモシスチス(Pneumocystis)ポリペプチド、サルコシスチス(Sarcocystis)ポリペプチド、住血吸虫(Schistosoma)ポリペプチド、タイレリア(Theileria)ポリペプチド、トキソプラズマ(Toxoplasma)ポリペプチド、およびトリパノソーマ(Trypanosoma)ポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
外部寄生虫抗原の例には、ノミ;マダニ(カタダニおよびヒメダニを含む);ハエ(例えば、ユスリカなど)、蚊、スナバエ、ブユ、ウマバエ、ノサシバエ、メクラアブ、ツェツェバエ、サシバエ、ハエ幼虫症発症ハエ、およびヌカカ(biting gnat);アリ、クモ、シラミ;コダニ;ならびに半翅目昆虫(例えば、トコジラミおよびサシガメなど)からのポリペプチド(抗原、同様にまたアレルゲンを含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
D.サイトカイン
いくつかの場合において、選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来する免疫細胞は、1つまたは複数の異種サイトカインを含めて1つまたは複数のサイトカインを発現するように操作される。サイトカインはどのような種類のものであってもよく、しかし、具体的な実施形態において、異種サイトカイン(1つまたは複数)が、IL-4、IL-10、IL-7、IL-2、IL-15、IL-12、IL-18、IL-21およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0167】
具体的な実施形態において、サイトカインはIL-15である。IL-15は組織限定的であり、病的状態のもとでのみ、どのようなレベルであれ血清中に、または全身に認められる。IL-15は、養子療法のために望ましい属性をいくつか持っている。IL-15は、ナチュラルキラー細胞の発達および細胞増殖を誘導し、確立された腫瘍の根絶を、腫瘍常在細胞の機能的抑制を緩和することにより促進し、かつAICDを阻害する恒常性サイトカインである。
【0168】
1つの実施形態において、本開示は、CARを発現する免疫細胞、および/またはTCR免疫細胞を、IL-15を含めて1つまたは複数のサイトカインにより共改変することに関する。IL-15に加えて、他のサイトカインが想定される。これらには、ヒト適用のために使用される細胞の活性化および増殖に寄与するサイトカイン、ケモカインおよび他の分子が含まれるが、これらに限定されない。IL-15を発現するNK細胞またはT細胞は、注入後のその生存にとって非常に重要である途切れない支持的サイトカインシグナル伝達を行うことができる。
【0169】
E.自殺遺伝子
臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来する本開示の免疫細胞は1つまたは複数の自殺遺伝子を含む場合がある。用語「自殺遺伝子」は、本明細書中で使用される場合、プロドラッグが投与されたとき、その宿主細胞を殺す化合物への遺伝子産物の移行をもたらす遺伝子として定義される。使用され得る自殺遺伝子/プロドラッグの組み合わせの例には、単純ヘルペスウイルス-チミジンキナーゼ(HSV-tk)およびガンシクロビル、アシクロビルまたはFIAU;オキシドレダクターゼおよびシクロヘキシミド;シトシンデアミナーゼおよび5-フルオロシトシン;チミジンキナーゼチミジル酸キナーゼ(Tdk::Tmk)およびAZT;ならびにデオキシシチジンキナーゼおよびシトシンアラビノシドがある。
【0170】
大腸菌のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ、これは、プロドラッグの6-メチルプリンデオキシリボシドを毒性プリンの6-メチルプリンに変換するいわゆる自殺遺伝子である。プロドラッグ療法とともに使用される自殺遺伝子の他の例として、大腸菌のシトシンデアミナーゼ遺伝子およびHSVのチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。
【0171】
例示的な自殺遺伝子には、CD20、CD52、EGFRv3、または誘導性カスパーゼ9が含まれる。1つの実施形態において、EGFRバリアントIII(EGFRv3)の短縮型が、セツキシマブによって除去することができる自殺抗原として使用される場合がある。本開示において使用され得るこの技術分野において知られているさらなる自殺遺伝子には、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、シトクロームp450酵素(CYP)、カルボキシペプチダーゼ(CP)、カルボキシルエステラーゼ(CE)、ニトロレダクターゼ(NTR)、グアニンリボシルトランスフェラーゼ(XGRTP)、グリコシダーゼ酵素、メチオニン-アルファ,ガンマ-リアーゼ(MET)、およびチミジンホスホリラーゼ(TP)が含まれる。
【0172】
F.遺伝子破壊
いくつかの実施形態において、免疫細胞は、1つまたは複数の内因性遺伝子の発現の破壊を有するように操作される。破壊は具体的な場合においてノックアウトまたはノックダウンであり得る。破壊は、CRISPR、アンチセンス技術(例えば、発現の一過性の低下を一般にはもたらすRNAi、siRNA、shRNA、および/またはリボザイムなど)、同様にまた、標的化された遺伝子の不活性化または破壊を、例えば、切断および/または相同的組換えの誘導によってもたらす遺伝子編集技術を含めて、どのような方法であれ好適な方法によって細胞において引き起こされることがある。
【0173】
特定の場合において、免疫細胞の1つまたは複数の内因性遺伝子が改変され、例えば、発現において破壊され、この場合には発現が部分的または完全に低下させられる。具体的な場合において、1つまたは複数の遺伝子がノックダウンされ、またはノックアウトされる。具体的な場合において、多数の遺伝子が、同じ工程において、または多数の工程においてノックダウンされ、またはノックアウトされる。免疫細胞において編集される遺伝子は、どのような種類のものであってもよい。具体的な場合において、免疫細胞において編集される遺伝子は、免疫細胞が腫瘍微小環境においてより効果的に働くことを可能にする。具体的な場合において、遺伝子は、NKG2A、SIGLEC-7、LAG3、TIM3、CISH、FOXO1、TGFBR2、TIGIT、CD96、ADORA2、NR3C1、PD1、PDL-1、PDL-2、CD47、SIRPA、SHIP1、ADAM17、RPS6、4EBP1、CD25、CD40、IL21R、ICAM1、CD95、CD80、CD86、IL10R、TDAG8、CD5、CD7、SLAMF7、CD38、LAG3、TCR、beta2-ミクログルブリン(microglubulin)、HLA、CD73およびCD39のうちの1つまたは複数である。ある特定の実施形態において、CRISPRによって破壊される内因性遺伝子がTIGITであり、具体的な場合において、このために利用されるgRNAがGACAGGCACAATAGAAACAA(配列番号1)である。いくつかの実施形態において、CRISPRによって編集される内因性遺伝子がCD38であり、具体的な場合において、このために利用されるgRNAがTGAGTTCCCAACTTCATTAG(配列番号2)および/またはGCGGGACATGTTCACCCTGG(配列番号3)である。
【0174】
V.使用方法
臍帯血ユニット物(1つまたは複数)が選択されると、それに由来する免疫細胞は操作されてもよく、または操作されなくてもよく、そして貯蔵されてもよく、または貯蔵されなくてもよい。いずれにせよ、免疫細胞の操作の有無にかかわらず、治療効果的な免疫細胞が、それを必要としている個体に送達される場合がある。免疫細胞は、本明細書中に記載されるように、1つまたは複数の選択基準を満たしているという明白な理由から選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)に由来しているので、特に効果的である。
【0175】
いくつかの実施形態において、本開示は、免疫療法のための方法であって、本開示の方法によって産生される免疫細胞の効果的な量を投与することを含む方法を提供する。1つの実施形態においては、医学的な疾患または障害が、免疫応答を誘発する免疫細胞集団の移入によって処置される。本開示のある特定の実施形態において、ガンまたは感染症が、免疫応答を誘発する産生された免疫細胞集団の移入によって処置される。本明細書中には、個体においてガンを処置するための、または個体においてガンの進行を遅らせるための方法であって、効果的な量の抗原特異的細胞療法を個体に施すことを含む方法が提供される。本方法は、免疫障害、固形ガン、血液学的ガンおよびウイルス感染症を処置するために適用される場合がある。
【0176】
本処置方法が有用である腫瘍には、どのような細胞タイプであれ悪性の細胞タイプ、例えば、固形腫瘍または血液学的悪性腫瘍において見出される悪性の細胞タイプなどが含まれる。例示的な固形腫瘍には、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、メラノーマ、前立腺および乳房からなる群から選択される器官の腫瘍が含まれ得るが、そのような腫瘍に限定されない。例示的な血液学的腫瘍には、骨髄の腫瘍、T細胞またはB細胞の悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、骨髄腫、および同類のものが含まれる。本明細書中において提供される方法を使用して処置され得るガンのさらなる例には、肺ガン(小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、肺の腺ガン、および肺の扁平上皮ガンを含む)、腹膜のガン、胃部または胃のガン(胃腸ガンおよび消化管間質ガンを含む)、膵臓ガン、子宮頸ガン、卵巣ガン、肝臓ガン、膀胱ガン、乳ガン、結腸ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜ガンまたは子宮ガン、唾液腺ガン、腎臓または腎臓部のガン、前立腺ガン、外陰部ガン、甲状腺ガン、様々なタイプの頭頸部ガン、およびメラノーマが含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
ガンは具体的には下記の組織学的タイプのものである場合があり、だが、それらに限定されない:新生物、悪性;ガン腫;ガン腫、未分化型;巨細胞ガンおよび紡錘細胞ガン;小細胞ガン;乳頭ガン;扁平上皮ガン;リンパ上皮性ガン;基底細胞ガン;毛母ガン(pilomatrix carcinoma);移行上皮ガン;乳頭状移行上皮ガン;腺ガン;ガストリノーマ、悪性;胆管ガン;肝細胞ガン;肝細胞ガンと胆管ガンとの混合型;小柱状腺ガン;腺様嚢胞ガン;腺腫性ポリープにおける腺ガン;腺ガン、家族性大腸ポリポーシス;固形ガン;カルチノイド腫瘍、悪性;鰓肺胞(branchiolo-alveolar)腺ガン;乳頭状腺ガン;嫌色素性ガン;好酸性(acidophil)ガン;好酸性(oxyphilic)腺ガン;好塩基性ガン;明細胞腺ガン;顆粒細胞ガン;濾胞腺ガン;乳頭状濾胞腺ガン;非被包性硬化性ガン;副腎皮質ガン;類内膜ガン(endometroid carcinoma);皮膚付属器ガン;アポクリン腺ガン;皮脂腺ガン;耳垢腺ガン;粘表皮ガン;嚢胞腺ガン;乳頭状嚢胞腺ガン;乳頭状漿液性嚢胞腺ガン;粘液性嚢胞腺ガン;粘液性腺ガン;印環細胞ガン;浸潤性乳管ガン;髄様ガン;小葉ガン;炎症性ガン;パジェット病、乳房;腺房細胞ガン;腺扁平上皮ガン;扁平上皮化生を伴う腺ガン;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞ガン;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;クロム親和性細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;悪性黒子型メラノーマ;末端黒子型メラノーマ;結節性メラノーマ;巨大色素性母斑における悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;ガン肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎児性ガン;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛ガン;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣細胞腫;星状膠細胞腫;原形質性星状膠細胞腫;原線維性星状膠細胞腫;星状膠芽細胞腫;神経膠芽細胞腫;乏突起膠腫;乏突起膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の指定された非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;悪性組織球腫;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病:好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;ヘアリー細胞白血病;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);および慢性骨髄芽球性白血病。
【0178】
特定の実施形態が白血病の処置方法に関する。白血病は血液または骨髄のガンであり、血液細胞、通常の場合には白色血液細胞(白血球)の異常な増殖(倍増による異常な産生)によって特徴づけられる。白血病は、血液学的新生物と呼ばれる幅広い一群の疾患の一部である。白血病は、広範な疾患を含む幅広い用語である。白血病は臨床的および病理学的にはその急性型および慢性型に分けられる。
【0179】
本開示のある特定の実施形態において、免疫細胞が、それを必要としている個体に、例えば、ガンまたは感染症を有する個体などに送達される。細胞はその後、個体の免疫システムを増強して、それぞれのガン細胞または病原性細胞を攻撃する。いくつかの場合において、個体には、1回または複数回の免疫細胞が与えられる。個体に2回以上の免疫細胞が与えられる場合、投与間の期間は、個体における伝播のための時間を許すために十分でなければならず、具体的な実施形態において、服用間の期間が、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日またはそれ以上である。
【0180】
本開示のある特定の実施形態は、免疫媒介障害を処置するための、または防止するための方法を提供する。1つの実施形態において、対象は自己免疫疾患を有する。自己免疫疾患の限定されない例には、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性の卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアクスパーテ(celiac spate)-皮膚炎、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少症紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、若年性関節炎、扁平苔癬、紅斑性狼瘡(lupus erthematosus)、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型または免疫媒介の糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群(例えば、微小変化群、巣状糸球体硬化症または膜性腎症など)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎(例えば、結節性多発動脈炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、または疱疹状皮膚炎血管炎など)、白斑、ならびにヴェーゲナー肉芽腫症が含まれる。したがって、本明細書中に開示される方法を使用して処置することができる自己免疫疾患のいくつかの例には、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、クローン病;潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、血管炎または乾癬が含まれるが、これらに限定されない。対象はまた、アレルギー性障害、例えば、喘息などを有する可能性がある。
【0181】
さらに別の実施形態において、対象は、移植された器官または幹細胞のレシピエントであり、免疫細胞が、拒絶を防止するために、かつ/または処置するために使用される。特定の実施形態において、対象は移植片対宿主病を有するか、または移植片対宿主病を発症する危険性がある。GVHDは、血縁ドナーまたは非血縁ドナーのどちらからでも由来する幹細胞を使用する、または含有するどのような移植片であれその起こり得る合併症である。GVHDには、急性型および慢性型の2種類が存在する。急性GVHDが移植後の最初の3ヶ月以内に現れる。急性GVHDの徴候には、広がり、かつより重症になることがある手足における赤みがかった皮膚発疹が、皮膚の剥離または水疱形成を伴って含まれる。急性GVHDはまた、胃および腸に影響を及ぼす可能性があり、そのような場合には、痙攣、悪心および下痢が存在する。皮膚および眼の黄変(黄疸)は、急性GVHDにより肝臓が冒されたことを示している。慢性GVHDがその重篤度に基づいてランク付けされる:ステージ/グレード1は軽度であり、ステージ/グレード4は重症である。慢性GVHDが移植後3ヶ月以降において発症する。慢性GVHDの症状は急性GVHDの症状と類似しており、しかし、加えて、慢性GVHDではまた、眼における粘液腺、口における唾液腺、ならびに胃の内張りおよび腸を潤滑する腺が冒される場合がある。本明細書中に開示される免疫細胞の集団のどれも利用することができる。移植臓器の例には、実質臓器移植片、例えば、腎臓、肝臓、皮膚、膵臓、肺および/または心臓など、あるいは細胞性の移植片、例えば、膵島、肝細胞、筋芽細胞、骨髄、または造血細胞もしくは他の幹細胞などが含まれる。移植片は、複合移植片、例えば、顔の組織などであることが可能である。免疫細胞を移植前に、移植と同時に、または移植後に投与することができる。いくつかの実施形態において、免疫細胞は移植片に先立って投与され、例えば、移植片の少なくとも1時間前、少なくとも12時間前、少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも1週間前、少なくとも2週間前、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前、または少なくとも1ヶ月前などにおいて投与される。1つの具体的な限定されない例において、治療効果的な量の免疫細胞の投与が移植の3~5日前に行われる。
【0182】
いくつかの実施形態において、対象には、骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法を免疫細胞療法の前に施すことができる。骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法は、どのような経路であれ好適な経路によって施すことができる好適なそのような治療法がどれも可能である。骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法は、例えば、特にガンがメラノーマ(これは転移性である可能性がある)であるならば、シクロホスファミドおよびフルダラビンの投与を含むことができる。シクロホスファミドおよびフルダラビンを投与する例示的な経路が静脈内である。同様に、どのような用量であれシクロホスファミドおよびフルダラビンの好適な用量を投与することができる。特定の局面において、60mg/kg前後のシクロホスファミドが2日間にわたって投与され、その後で、25mg/m2前後のフルダラビンが5日間にわたって投与される。
【0183】
ある特定の実施形態において、免疫細胞の成長および活性化を促進させる増殖因子が、免疫細胞と同時に、または免疫細胞に続いてそのどちらでも対象に投与される。免疫細胞増殖因子は、免疫細胞の成長および活性化を促進させる好適な増殖因子がどれも可能である。好適な免疫細胞増殖因子の例には、IL-2、IL-7、IL-15およびIL-12が含まれ、これらは単独で使用することができ、または様々な組み合わせで使用することができ、例えば、IL-2およびIL-7、IL-2およびIL-15、IL-7およびIL-15、IL-2、IL-7およびIL-15、IL-12およびIL-7、IL-12およびIL-15、またはIL-12およびIL2などの組み合わせで使用することができる。
【0184】
治療効果的な量の免疫細胞を、非経口投与、例えば、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射もしくは関節内注射、または注入を含めて多くの経路によって投与することができる。
【0185】
養子細胞療法における使用のための免疫細胞の治療効果的な量は、所望の効果を処置が行われている対象において達成するそのような量である。例えば、これは、自己免疫疾患もしくは同種免疫疾患の進行を抑制するために、またはその退行を引き起こすために必要である免疫細胞の量、あるいは自己免疫疾患によって引き起こされる症状、例えば、疼痛および炎症などを軽減することができる免疫細胞の量とすることができる。それは、炎症に伴う症状、例えば、疼痛、浮腫および体温上昇などを軽減するために必要である量とすることができる。それはまた、移植臓器の拒絶を軽減させるために、または防止するために必要である量とすることができる。
【0186】
免疫細胞集団は、疾患と矛盾しない治療計画で、例えば、疾患状態を改善するために1日から数日にわたって1回または数回の服用で、あるいは疾患進行を抑制し、疾患再発を防止するために長期間にわたって定期的な服用で投与することができる。配合において用いられるための正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度にもまた依存するであろうし、医師の判断およびそれぞれの患者の状況に応じて決定されなければならない。免疫細胞の治療効果的な量は、処置を受けている対象、苦痛の重篤度およびタイプ、ならびに投与様式に依存しているであろう。いくつかの実施形態において、ヒト対象の処置において使用され得るであろう用量は、1m2あたりの免疫細胞が少なくとも3.8×104個、少なくとも3.8×105個、少なくとも3.8×106個、少なくとも3.8×107個、少なくとも3.8×108個、少なくとも3.8×109個、または少なくとも3.8×1010個からの範囲である。ある特定の実施形態において、ヒト対象の処置において使用される用量は、1m2あたりの免疫細胞が約3.8×109個から約3.8×1010個までの範囲である。さらなる実施形態において、免疫細胞の治療効果的な量は約5×106細胞/kg体重から約7.5×108細胞/kg体重まで変化させることができ、例えば、体重1kgあたり約2×107個の細胞から約5×108個の細胞まで、または体重1kgあたり約5×107個の細胞から約2×108個の細胞まで変化させることができる。免疫細胞の正確な量は、対象の年齢、体重、性別および生理学的状態に基づいて当業者によって容易に決定される。効果的な用量を、インビトロ試験系または動物モデル試験系から導かれる用量応答曲線から外挿することができる。
【0187】
免疫細胞は、免疫媒介障害を処置するための1つまたは複数の他の治療剤との併用で投与される場合がある。併用療法には、1つまたは複数の抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤および抗真菌剤)、抗腫瘍剤(例えば、フルオロウラシル、メトトレキサート、パクリタキセル、フルダラビン、エトポシド、ドキソルビシンまたはビンクリスチン)、免疫枯渇化剤(例えば、フルダラビン、エトポシド、ドキソルビシンまたはビンクリスチン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、あるいはグルココルチコイド、例えば、デキサメタゾンまたはプレドニゾンなど)、抗炎症剤(例えば、グルココルチコイド、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾンまたはプレドニゾンなど、あるいは非ステロイド性抗炎症剤、例えば、アセチルサリチル酸、イブプロフェンまたはナプロキセンナトリウムなど)、サイトカイン(例えば、インターロイキン-10またはトランスフォーミング増殖因子ベータ)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、またはワクチンが含まれ得るが、これらに限定されない。加えて、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリンおよびタクロリムス)、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン)、ミコフェノール酸モフェチル、抗体(例えば、CD3、CD4、CD40、CD154、CD45、IVIGまたはB細胞を認識する抗体)、化学療法剤(例えば、メトトレキサート、トレオスルファン、ブスルファン)、照射、あるいはケモカイン、インターロイキンまたはそれらの阻害剤(例えば、BAFF、IL-2、抗IL-2R、IL-4、JAKキナーゼ阻害剤)(これらに限定されない)を含めて様々な免疫抑制剤または免疫寛容原性剤を投与することができる。そのようなさらなる医薬剤は、所望の効果に依存して、免疫細胞の投与前に、投与期間中に、または投与後に投与することができる。細胞および薬剤のこの投与は、同じ経路によって、または異なる経路によって可能であり、また、同じ部位において、または異なる部位においてどちらでも可能である。
【0188】
ある特定の実施形態において、本実施形態の組成物および方法では、免疫細胞集団が、少なくとも1つのさらなる治療法との組み合わせで伴う。さらなる治療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘤摘出術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述の組み合わせである場合がある。さらなる治療法はアジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態である場合がある。
【0189】
いくつかの実施形態において、さらなる治療法は小分子酵素阻害剤または転移抑制剤の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は、副作用制限剤(例えば、処置の副作用の発生および/または重篤度を軽減するために意図される薬剤(例えば、制吐剤など)など)の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は放射線療法である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は手術である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は放射線療法と手術との組み合わせである。いくつかの実施形態において、さらなる治療法はガンマ線照射である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は、PBK/AKT/mTOR経路を標的とする治療、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、および/または化学予防剤である。さらなる治療法は、この技術分野において知られている化学療法剤の1つまたは複数である場合がある。
【0190】
免疫細胞療法が、さらなるがん療法(例えば、免疫チェックポイント療法など)の前に、その期間中に、その後で、またはそれに対して様々な組み合わせで施される場合がある。施すことが、同時から、数分にまで、数日にまで、数週間にまで及ぶ間隔である場合がある。免疫細胞療法がさらなる治療作因とは別に患者に与えられる実施形態においては一般に、意味のある期間がそれぞれの送達時の後で終了せず、その結果、2つの化合物が依然として、好都合な併用効果を患者に及ぼすことができるであろうことが保証されるであろう。そのような場合、患者には抗体療法および抗ガン療法が互いに約12時間~24時間または72時間の範囲内で、より具体的には互いに約6時間~12時間の範囲内で与えられ得ることが意図される。いくつかの状況では、処置のための期間を著しく延長することが望ましい場合があり、この場合、数日(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)までがそれぞれの投与の間において経過する。
【0191】
本実施形態の化合物または細胞療法をどのようなものであれ患者に施すことは、もし存在するならば作用因の毒性を考慮して、そのような化合物の投与のための一般的プロトコルに従うであろう。したがって、いくつかの実施形態において、併用療法に起因し得る毒性をモニターする工程が存在する。
【0192】
幅広い種類の化学療法剤が、調製された免疫細胞と共に使用され得る。「化学療法」という用語は、癌を治療するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、癌の治療において投与される化合物または組成物を暗示するために使用される。これらの薬剤または薬物は、細胞内でのそれらの活性モード、例えば、それらが細胞周期に影響を与えるかどうか、およびどの段階で影響を与えるかによって分類される。あるいは、薬剤は、DNAを直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、または核酸合成に影響を与えることによって染色体分裂および有糸分裂の異常を誘発する能力に基づいて特徴付けることができる。
【0193】
化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)をはじめとするエチレンイミンおよびメチルメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体のトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、およびウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine)などのニトロソウレア(nitrosureas);エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特にカリチアマイシンγIIおよびカリチアマイシンωI1)などの抗生物質;ダイネマイシンAをはじめとするダイネマイシン;クロドロン酸などのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アウトラルニシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、プテロプテリン、およびトリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、およびフロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトンなどのアンドロゲン;ミトタンおよびトリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシンおよびアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベルカリンA(verracurin A)、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチンなどの白金錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリカマイシン、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0194】
ある実施形態では、本明細書で産生される免疫細胞に加えて、個体に放射線療法が提供される。放射線療法は、一般にγ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位元素の指向性送達が含まれる。マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号および第4,870,287号)、およびUV照射などのその他の形態のDNA損傷因子も想定される。これらの要因はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製と修復、および染色体の組み立てと維持に対する広範囲の損傷に影響を与えている可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)の一日線量の50~200レントゲンから、単回線量の2000~6000レントゲンに及ぶ。放射性同位元素の線量範囲は幅広く変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強度と種類、および腫瘍細胞による取り込みに依存する。
【0195】
当業者は、さらに追加の免疫療法が、本明細書に含まれる方法によって産生される免疫細胞と組み合わせて、またはそれとともに使用されてよいことを理解するであろう。癌治療の状況において、免疫療法は、一般に癌細胞を標的にして破壊する免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存する。リツキシマブはそのような一例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上の一部のマーカーに特異的な抗体であってよい。抗体は単独で治療のエフェクターとして機能することもあれば、他の細胞を動員して実際に細胞の死滅に影響を与えることもある。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)と結合されて、標的化薬剤としての機能を果たすこともある。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的にまたは間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってよい。さまざまなエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0196】
抗体薬物複合体は、癌治療薬の開発への画期的なアプローチとして登場した。癌は世界の主な死因の一つである。抗体薬物複合体(ADC)は、細胞殺傷薬に共有結合されたモノクローナル抗体(MAb)を含む。このアプローチは、その抗原標的に対するMAbの高い特異性と、非常に強力な細胞傷害性薬物を組み合わせて、濃縮レベルの抗原を有する腫瘍細胞にペイロード(薬物)を送達する、「武装した」MAbをもたらす。薬物の標的化送達も、正常組織でのその曝露を最小限に抑えるので、毒性が低下し、治療指数が改善される。2011年のADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)と2013年のKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシンまたはT-DM1)の2つのADC薬がFDAに承認されたことにより、このアプローチは有効になった。現在、癌治療の臨床試験のさまざまな段階で30を超えるADC薬の候補がある(Lealら、2014)。抗体工学とリンカー・ペイロードの最適化がますます成熟していく中で、新しいADCの発見と開発は、このアプローチに適した新しい標的の特定と検証、および標的化MAbの生成にますます依存している。ADC標的の2つの判定基準は、腫瘍細胞における発現の増加/高レベルの発現と、強固な内部移行である。
【0197】
免疫療法の一態様では、腫瘍細胞は、標的化に適した、つまり、他の細胞の大部分には存在しないマーカーを有していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらうちのいずかが、本発明の実施形態の状況において標的化に適している可能性がある。一般的な腫瘍マーカーには、CD20、癌胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erb B、およびp155が含まれる。免疫療法の別の態様は、抗癌効果と免疫刺激効果を組み合わせることである。免疫刺激分子も存在し、それには、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、およびFLT3リガンドなどの成長因子が含まれる。
【0198】
現在調査中または使用中の免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、マイコバクテリウム・ボビス、熱帯熱マラリア原虫、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号および同第5,739,169号;HuiおよびHashimoto、1998;Christodoulidesら、1998);サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、βおよびγ、IL-1、GM-CSF、およびTNF(Bukowskiら、1998;Davidsonら、1998;Hellstrandら、1998);遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、およびp53(Qinら、1998;Austin-Ward and Villaseca、1998;米国特許第5,830,880号および同第5,846,945号);ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185(Hollander、2012;Hanibuchiら、1998;米国特許第5,824,311号)である。1つまたは複数の抗癌療法が、本明細書に記載される抗体療法とともに使用され得ることが想定される。
【0199】
一部の実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、シグナルを下げる。免疫チェックポイント封鎖によって標的化され得る抑制性免疫チェックポイントには、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276としても公知)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、CD152としても公知)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)およびT細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサー(VISTA)が含まれる。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸および/またはCTLA-4を標的とする。
【0200】
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子、リガンドまたは受容体の組換え体などの薬物であり得るか、または特に、ヒト抗体などの抗体であってよい(例えば、国際公開公報WO2015016718号;Pardoll、Nat Rev Cancer、12(4):252~64、2012;両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。免疫チェックポイントタンパク質またはその類似体の既知の阻害剤を使用することができる、特に、キメラ化、ヒト化、またはヒト型の抗体を使用することができる。当業者であれば分かるように、本開示で言及される特定の抗体には、代替の名称および/または同等の名称が使用されていることがある。そのような代替の名称および/または同等の名称は、本開示の文脈において互いに交換可能である。例えば、ランブロリズマブは、MK-3475およびペンブロリズマブという代替の名称および同等の名称でも知られていることが知られている。
【0201】
いくつかの場合において、手術が、本開示の免疫細胞を受けるであろう個体のために、またはそれらを受けたことがある個体のために行われる。ガンを有する人のおよそ約60%が、予防的、診断的または病期分類、治療的および緩和的な手術を含めて、何らかのタイプの手術を受けるであろう。治療的手術は、ガン性組織のすべてまたは一部が物理的に除かれ、切除され、かつ/または破壊される摘出を含んでおり、他の治療法との併用で、例えば、本実施形態の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などとの併用で使用される場合がある。腫瘍摘出は、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除くことを示す。腫瘍摘出に加えて、手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術および顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。ガン性細胞、組織または腫瘍の一部またはすべてを切除すると、空洞が体内に形成される場合がある。処置が、さらなる抗ガン療法による当該区域への灌流、直接注入または局所適用によって達成される場合がある。そのような処置が、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎もしくは7日毎に、または1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎および5週間毎に、または1か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、6か月毎、7か月毎、8か月毎、9か月毎、10か月毎、11か月毎もしくは12か月毎に繰り返される場合がある。これらの処置は同様に、様々な適用量のものである場合がある。
【0202】
他の薬剤が、処置の治療有効性を改善するために本実施形態のある特定の局面との組み合わせで使用され得ることが意図される。これらのさらなる薬剤には、細胞表面受容体およびGAP結合のアップレギュレーションに影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤および分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導剤に対する過剰増殖性細胞の感受性を増大させる薬剤、または他の生物学的薬剤が含まれる。GAP結合の数を増加させることによる細胞間シグナル伝達における増大は、近隣の過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増大させるであろう。他の実施形態において、細胞増殖抑制剤または分化剤を、処置の抗過剰増殖有効性を改善するために本実施形態のある特定の局面との組み合わせで使用することができる。細胞接着の阻害剤が、本実施形態の有効性を改善するために意図される。細胞接着阻害剤の例には、フォーカルアドヒージョンキナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンがある。アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を増大させる他の薬剤(例えば、抗体c225など)が、処置有効性を改善するために本実施形態のある特定の局面との組み合わせで使用され得るであろうことがさらに意図される。
【0203】
VI.製造品またはキット
選択された臍帯血ユニット物(1つまたは複数)から産生される免疫細胞を含む製造品またはキットもまた本明細書中において提供される。製造品またはキットはさらに、個体においてガンを処置するために、またはその進行を遅らせるために、あるいはガンを有する個体の免疫機能を増強するために免疫細胞を使用するための指図を含む添付文書を含むことができる。本明細書中に記載される抗原特異的免疫細胞のいずれかが製造品またはキットに含められる場合がある。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、バッグおよびシリンジが含まれる。容器は様々な材料から、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニルまたはポリオレフィンなど)または金属合金(例えば、ステンレス鋼またはハステロイなど)などから形成される場合がある。いくつかの実施形態において、容器は配合物を収容し、容器上の標識、または容器に付随する標識により、使用のための指示が示される場合がある。製造品またはキットにはさらに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、ニードル、シリンジ、および使用のための指図を伴う添付文書を含めて、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料が含まれる場合がある。いくつかの実施形態において、製造品にはさらに、1つまたは複数の別の薬剤(例えば、化学療法剤および抗腫瘍剤)が含まれる。そのような1つまたは複数の薬剤のための好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、バッグおよびシリンジが含まれる。
【0204】
具体的な実施形態において、製造品は、本明細書中に記載される方法によって産生される凍結保存された免疫細胞を含む。凍結保存された細胞は、細胞を凍結時または解凍時の損傷から防止するために適する特定の凍結保護剤とともに凍結される場合がある。
【実施例】
【0205】
下記の実施例は、本開示の特定の実施形態を明らかにするために含まれる。下記の実施例において開示される技術は、本開示の実施形態の実施において十分に機能することが本発明者らによって見出される技術を表しており、したがって、その実施のための特定の態様を構成するとみなされ得ることが、当業者によって理解されなければならない。しかしながら、当業者は本開示に照らして、多くの変化を、開示される具体的な実施形態において行うことができ、また、多くの変化が依然として、同じ結果または類似する結果を、本開示の精神および範囲から逸脱することなくもたらし得ることを理解しなければならない。
【0206】
実施例1
凍結前のCBUの特徴は臨床的応答を予測する
本実施例における研究は、凍結前の臍帯血ユニット物(CBU)の特徴が、臨床的に有効な細胞産物をもたらす可能性がより大きいそのようなCBUを特定するために使用することができるかを特徴づける。
【0207】
本発明者らは操作受信者特性(ROC)曲線を利用して、目的とするCBU特徴の予測値を特徴づけ、それぞれの個々のCBUを、臨床応答を患者において誘導する可能性が高い(「良好」)として、またはその見込みがない(「不良」)として分類することを可能にする適切なカットオフ値を特定した。例えば、
図1では、CBU細胞生存率を調べた。ROC曲線上の矢印は、CBUを最良の感度および特異性により「良好または不良」として分類するために使用することができるCBU細胞生存率での値(これは、100%の感度に最も近い点および100%の感度[1-特異性=0]によって決定される)を示している。この場合、値が98%である。その後、患者がCAR-NK細胞に対して有する応答を調べた。生存率が98%超であるCBUから産生されるCAR-NK細胞を受ける患者は81.8%の応答を示し、しかし、生存率が98%未満である複数のCBUから製造されるCAR-NK細胞を受ける患者は、20%に過ぎない応答を有した。この結果は統計学的に有意である(フィッシャーの正確検定、p=0.004)。その後、ロジスティック回帰モデルを利用して、この結果が患者の臨床的特徴(例えば、寛解状態など)とは無関係であることを確認した。
【0208】
上記に記載されるこの方法論を、他の変数、例えば、総単核細胞(TNC)回収率などを詳しく調べるために適用した。応答の予測のための最適なカットオフが76.3%である(
図2)。この場合、TNCが73.6超である複数のCBUから製造されるCAR-NK細胞を受ける患者と、TNCが73.6未満である複数のCBUから製造されるCAR-NK細胞を受ける患者との間での応答における差(58.8%対22.2%)は統計学的に有意でない(p=0.11)。しかしながら、多変量ロジスティック回帰モデルは、成績に対するTNCの影響が、困惑させる臨床的変数(例えば、寛解状態など)の影響を考慮に入れたときには統計学的に有意であることを示す。
【0209】
この方法論をまた、他のCBU特徴に関して上記のように用いた。一例において、CBUの有核赤血球(NRBC)含有量を特徴づけた。細胞含有量が低い(NRBCが7.5×10e7個未満である)複数のCBUから製造されるCAR-NKにより処置される患者は、NRBC含有量がより高いCBUから製造されるCAR-NK細胞により処置される患者よりも高い応答率を有する(62.5%対20%、p=0.05)。再度ではあるが、多変量ロジスティックモデルを用いて、この効果が臨床的変数とは無関係であることを明らかにした。
【0210】
実施例2
凍結前のCBUの特徴は、「スーパーCBU」を特定するために組み合わせることができる
実施例1に記載される3つのCBU特徴は、臨床特徴について調整されるロジスティック多変量モデルにおける応答についての独立予測因子である。この理由から、これら3つは、「最適なCBU」のための基準を定義するために組み合わせることができる。
図4は、実施例1で参照される3つのCBU特徴についての多変量統計学的有意性を示す。その後、ROC曲線(右側パネル)を利用して、注入されたCAR-NK細胞産物に対する応答に関してのCBU基準の予測値を見積もった。0.932の曲線下面積(AUC)は、これら3つの基準(98%超の生存率、76.3%超のTNC回収率、および7.5×10e7個未満のNRBC含有量)を満たすことが応答についての優れた予測因子であることを示している。
図5は、CAR-NK細胞により処置される患者の応答であって、CAR-NK細胞が、本実施例および実施例1で参照される3つの基準を満たすCBUユニット物から製造される場合における応答(100%)、2つの基準を満たすCBUユニット物から製造される場合における応答(62.5%)、および2未満の基準を満たすCBUユニット物から製造される場合における応答(8.3%)を示す。これらの差は統計学的に有意である(p=0.00009)。好都合な臍帯特徴の数が、様々な臨床特徴を含む多変量モデルにおける応答についての唯一の独立予測因子である。
【0211】
臍帯選択時には知られていないであろう、しかし、細胞産物の製造期間中に解明され得るであろう他のCBU関連変数の予測値を特徴づけた。具体的な実施形態において、そのような変数は解凍後に判定されるであろう。このことを利用して、製造後の細胞産物を、細胞産物が適切な基準を満たさないならば無視した。
図6では、凍結されたCBUから得られるNK細胞の細胞傷害性がCAR-NK細胞に対する臨床応答を予測し得るかどうかを調べた。上記で帰される方法論を使用したとき、複数のCBUから産生されるCAR-NK細胞で、20:1の比率でのRaji細胞株に対するNK細胞の細胞傷害性が18.2超であるCAR-NK細胞により処置される患者は、複数のCBUに由来するCAR-NK細胞で、細胞傷害性がより低いCAR-NK細胞により処置される患者よりも高い応答率を有することが示された(66.7%対12.5%、p=0.03)。再度ではあるが、多変量ロジスティックモデルを使用して、この効果が他の変数とは無関係であることを明らかにした。
【0212】
特定の実施形態において、他の変数が、臨床応答についての予測を改善するために考慮される場合がある。例には、以下が含まれる:(1)臍帯血が得られた胎児または新生児の在胎齢が39週未満である;(2)臍帯血細胞の解凍後の生存率が86.5%超である;(3)培養における0日目と6日目との間でのNK細胞拡大が7倍以上である;および/または(4)培養における6日目と15日目との間でのNK細胞拡大が10
5倍以上である。
図7A~
図7Bは、93.2%の臨床応答を有する3基準のセット(98%超の生存率、76.3%超のTNC回収率、および7.5×10
7個未満のNRBC含有量)の予測値を示す(
図7A)。これは、直前に記載される4つの変数を加えることによって99.6%に増大させることができる(
図7B)。
【0213】
実施例3
凍結保存された臍帯血ユニット物を、ガンに対する最大効力を有する操作されたナチュラルキラー細胞を製造するために選択するための方法
本実施例は、好適な臍帯血ユニット物(CBU)の選択に関連づけられる基準を考慮する治療のために応答についての予測因子を特定することに関する。本発明者らは、凍結前のCBUの特徴が、臨床的に有効な細胞産物をもたらす可能性がより大きいそのようなCBUを特定するために使用することができるかを詳しく調べた。産物特徴には、(細胞産物を製造するための最良のCBUを選択する)凍結前のCBUの特徴が含まれてもよく、かつ/または具体的な場合には最適な応答をもたらす見込みがないと考えられる産物を拒絶するために使用されることがある解凍後および産生時の産物特徴が含まれてもよい。本実施例は、成績が30日において完全奏効(CR)および部分奏効(PR)/CRであるCD19-CAR-NK治験で処置される37名の患者に基づく分析に関する。
【0214】
操作受信者特性(ROC)曲線を利用して、目的とするCBU特徴の予測値を特徴づけ、それぞれの個々のCBUを、臨床応答を患者において誘導する可能性が高い(「良好」)として、またはその見込みがない(「不良」)として分類することを可能にするであろう適切なカットオフ値を特定した。例えば、
図8では、CBU細胞生存率を調べた。ROC曲線上の矢印は、CBUを最良の感度および特異性により「良好または不良」として分類するために使用することができるCBU細胞生存率での値(これは、100%の感度に最も近い点および100%の感度[1-特異性=0]によって決定される)を示している。この場合、値が99%である。その後、患者がCAR-NK細胞に対して有する応答を検討した。生存率が99%以上であるCBUから産生されるCAR-NK細胞を受ける患者は、40.9%のCR率および68.2%のCR/PR率を有した。一方で、生存率が99%未満である複数のCBUから製造されるCAR-NK細胞を受ける患者は、6.7%のCR率および20%のCR/PR率を有するに過ぎなかった。これらの結果は統計学的に有意である(フィッシャーの正確検定、それぞれ、p=0.028およびp=0.007)。その後、ロジスティック回帰モデルを使用して、この結果が患者の臨床的特徴(例えば、寛解状態など)とは無関係であることを確認した。
【0215】
図8における同じ方法論を
図9における他のCBU特徴に関して適用した。この場合には、CBUの有核赤血球(NRBC)含有量を調べた。細胞含有量が低い(NRBCが8.0 10e7個未満である)複数のCBUから製造されるCAR-NKにより処置される患者は、NRBC含有量がより高いCBUから製造されるCAR-NK細胞により処置される患者よりも高い応答率を有する(35.7%対0%、p=0.079、CR率;および60.7%対11.1%、p=0.019、PR/CR率)。再度ではあるが、多変量ロジスティックモデルを使用して、この効果が臨床的変数とは無関係であることを明らかにした。
【0216】
白人人種の複数のCBUから製造されるCAR-NKにより処置される患者は、他の民族性に由来するCBUから製造されるCAR-NKにより処置される患者よりも高い応答率を有した(
図10A)。CBU民族性は、臨床応答をもたらす可能性がより高いCBUの選択を改善するために他のCBU特徴と組み合わせることができる。
図10Bは、CBU人種をCBU生存率と組み合わせることの結果を示す。両方の因子の組み合わせはCR率を生存率単独についての40.9%から、両方の基準が組み合わされるときには61.5%に増大させる(p=0.031)。
【0217】
体重が3650グラム超である乳児に由来する複数のCBUから製造されるCAR-NKにより処置される患者は、より低体重の乳児に由来するCBUから製造されるCAR-NKにより処置される患者よりも高い応答率を有する(
図11の左側のパネル)。
図10の場合と同様に、乳児の体重は、臨床応答をもたらす可能性がより高いCBUをより良好に選択するために他のCBU特徴と組み合わせることができる。
図11の右側のパネルは、乳児の体重をCBU生存率と組み合わせることの結果を示す。両方の因子の組み合わせはCR率を生存率単独についての40.9%から、両方の基準が組み合わされるときには72.7%に増大させる(p=0.008)。
【0218】
本実施例において上記で記載される4つのCBU特徴は、臨床特徴について調整されるロジスティック多変量モデルにおける応答についての独立予測因子である。この理由から、いくつかの実施形態において、これら4つは、「最適なCBU」のための基準を定義するために組み合わせることができる(
図12A)。その後、本発明者らは、CAR-NK細胞産物に対する応答に関しての最適なCBU基準を満たす予測値を、ROC曲線(
図12A)を使用して調べた。0.893の曲線下面積(AUC)は、これらの4つの基準(99%以上の生存率、8.0未満のNRBC含有量、3650グラム超の乳児体重、および白人民族性)を満たすことが応答についての優れた予測因子であることを示している。
【0219】
図12Cは、患者が受けたNK細胞産物が有する「最適な」CBU特徴の数に応じた応答率(CR(上段パネル)およびCR/PR(下段パネル))を示す。例えば、CR率が、1つの基準を満たしただけである複数のCBUに由来する産物を受けた患者についての0%から、これら4つの基準を満たした複数のCBUに由来する細胞産物を受けた患者についての100%の応答率にまで及ぶ(p<0.001)。同様に、PR/CR率が、所望の特徴の1つ、2つ、3つまたは4つを有した複数のCBUに由来する細胞産物を受けた患者について12.5%、30.%、58.3%および100%であった(p=0.003)。
図12Aは、CBU特徴の数に応じた生存確率を示す。1つ、2つ、3つまたは4つの特徴を有した複数のCBUに由来する細胞産物を受けた患者についての12ヶ月生存確率がそれぞれ、37.5%、57.1%、79.5%、および100%であった(p=0.02)。
【0220】
これらの結果を、非常に類似した結果を有する異なるNK細胞産物により処置される19名の患者の独立したサンプルにおいて検証した。この場合、+30日目でのCR率が、2つ以下、3つまたは4つの特徴を有した複数のCBUに由来する細胞産物を受けた患者についてそれぞれ、0%、33.3%、および75%であった(p=0.029)(
図13)。
【0221】
いくつかの実施形態において、臨床応答についての予測を改善するためのさらなるパラメーターが存在する:例えば、在胎齢が38週以下であること;子宮内採取方法;雄性乳児;前処理体積が120ml以下であること;CD34%が0.4%超であること;培養における0日目と15日目との間でのNK細胞拡大が450倍以上であること;および培養における6日目と15日目との間でのNK細胞拡大が70倍以上であること。
【0222】
先に示されたように、臨床応答に関しての4基準のセット(99%以上の生存率、8未満のNRBC含有量、白人民族性、および3650グラム超の乳児体重)の予測値が89.3%である。これは、上記で記載される変数を加えることによって97.0%に増大させることができる(
図14)。
【0223】
本開示およびその利点が詳しく説明されているが、様々な変化、置換および変更が、添付された請求項によって規定されるような設計の精神および範囲から逸脱することなく本明細書中において行われ得ることを理解しなければならない。そのうえ、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることは意図されない。当業者は本開示から容易に理解するであろうように、本明細書中に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たす、または実質的に同じ結果を達成するプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法または工程は、現在存在するものであろうと、または後に開発されることになるものであろうと、本開示に従って利用される場合がある。したがって、添付された請求項は、そのようなプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法または工程をその範囲内に含むことが意図される。
【国際調査報告】