IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウルトラ ハイ テンプリチャー プロセシズ リミテッドの特許一覧

特表2024-511105材料を改変するための装置とプロセス
<>
  • 特表-材料を改変するための装置とプロセス 図1
  • 特表-材料を改変するための装置とプロセス 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】材料を改変するための装置とプロセス
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/64 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H05B6/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558329
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022056759
(87)【国際公開番号】W WO2022200133
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21315049.3
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523295741
【氏名又は名称】ウルトラ ハイ テンプリチャー プロセシズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コングマーク, ニルス
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA02
3K090AA13
3K090AB01
3K090AB20
3K090BA01
3K090NB07
3K090PA03
(57)【要約】
本発明は、材料の体積加熱を行うために材料を高出力の電磁場に曝露するための手段を備えた、材料を改変するための装置に関する。このような装置の特徴は、上記の手段が、互いに垂直に配置された少なくとも2つのトーラス形導波管(1、2、5)を備え、各トーラス形導波管は、一方の側でマグネトロン(3)に関連付けられ、他方の側に垂直に延びる穴を有し、これらの穴は整列され、改変される材料を受け入れるための全体的垂直穴(4)を形成する。本発明は、材料を改変するプロセスおよび改変された材料の使用にも関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を改変するための装置であって、材料の体積加熱を行うために前記材料を高出力の電磁場にさらす手段を備え、
前記手段は、互いに垂直に配置された少なくとも2つのトーラス形導波管(1、2、5)を備え、
各トーラス形導波管は、一方の側でマグネトロン(3)に関連付けられ、他方の側に垂直に延びる穴を有し、
前記穴は整列され、改変される材料を受け入れるための全体的垂直穴(4)を形成することを特徴とする、装置。
【請求項2】
互いに120度の角度でオフセットされた少なくとも3つのトーラス形導波管(1、2、5)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記材料を回転または撹拌する手段、および/または前記全体的垂直穴(4)内で前記材料を垂直に移動させる手段をさらに備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の装置であって、
温度上昇中の前記材料の誘電変化を測定する手段、および、
測定された誘電値および前記材料の性質に前記材料の曝露を適応させるための電子制御手段をさらに備えた装置。
【請求項5】
材料を改変するプロセスであって、
請求項1から4のいずれか一つに記載の装置の前記全体的垂直穴(4)に改変される材料を導入するステップ、および
前記マグネトロン(3)を作動させて前記材料を強力な電磁場にさらし、体積加熱を実行するステップを含む、プロセス。
【請求項6】
前記全体的垂直穴(4)内の前記材料を回転および/または垂直に移動させるステップをさらに含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
曝露に供される前記材料の特性および質量に依存する期間、前記材料に適用される、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
以下のステップをさらに含む、請求項5から7のいずれか一つに記載のプロセス。
温度上昇中の前記材料の誘電変化を測定するステップ、
前記材料の曝露を、測定された誘電値および前記材料の性質に適応させるステップ。
【請求項9】
セラミック材料を少なくとも2000°Cの超高温セラミック(UHTC)に改変するための、請求項5から8のいずれか一つに記載のプロセスの使用。
【請求項10】
ミルクを、UHTが138~142°Cである、超高温(UHT)殺菌ミルクに改変するための、請求項5または6に記載のプロセスの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を高出力の電磁場にさらして体積加熱を行うことによって材料を改変させる装置に関する。
本発明は、材料を改変するプロセスおよび改変された材料の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
EP 3 293 478として公開された欧州特許出願は、向流セラミック熱交換器アセンブリおよびその製造方法を開示している。引用されたセラミックスは、少なくとも 800°Cの温度に耐えることが知られている窒化アルミニウム、アルミナおよび窒化ケイ素である。
【0003】
WO 2014206905として公開された国際特許出願は、食品調理機械における飲料用の体積加熱装置に関するものであり、
- 電磁放射線を放出し、そのエネルギーを少なくとも部分的に放出源を取り囲む液体に伝達するように設計された放出源、
- 液体の導管、および
- 放出スペクトル内の電磁放射に対して本質的に透明であり、放出源を液体から電気的に隔離するように設計された隔離手段、を備えたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、超高温に耐えることができる材料、または超高温にさらされた材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、発明者は、材料を処理または改変するための装置を着想した。この装置は、材料を高出力の電磁場にさらして材料の体積加熱を行うための手段を備える。この装置の特徴は、前記手段が互いに垂直に配置された少なくとも2つのトーラス形導波管を備え、各トーラス形導波管が一方の側でマグネトロンと関連付けられ、他方の側に垂直に延びる穴を有し、穴は整列しており、改変される材料を受け入れるための全体的垂直穴を形成していることである。
【0006】
別の態様によれば、本発明は、以下のステップを含む、材料を改変するプロセスに関する。
- 上記の装置の全体的垂直穴に改変する材料を導入し、
- マグネトロンを作動させて材料を強力な電磁場にさらし、体積加熱を実行する。
【0007】
本発明の他の態様は、本発明のプロセスの使用および本発明に従って改変された材料の使用に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のその他の特徴および利点については、概略的に示す添付の図を参照しながら、以下の説明で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による装置の上面図。
図2図1の装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<材料を改変するための装置>
体積加熱とは、材料が固有の加熱を受けることを理解する必要がある。これは、誘電体材料の場合、双極子分極とイオン伝導を通じて、電磁場への曝露により材料内の電荷が反応するときに得られる。誘電加熱では、電気エネルギーが運動エネルギーに変換され、最終的に熱に変換される。言い換えれば、熱は材料自体によって生成され、その材料の機械的、熱的、誘電的特性、および電磁場に依存する。
【0011】
本発明の装置およびプロセスは、任意の2点間の温度変動が約2°Cに制限されている非常に良好な加熱均一性を提供する。
【0012】
本発明の装置の一実施形態を図1および図2に示す。それは、互いに垂直に配置された少なくとも2つのトーラス形導波管1、2を備える。各トーラス形導波管は、一方の側でマグネトロン3に関連付けられ、他方の側を垂直に貫通する穴を有する。穴の内部にはチューブ6が挿入される。チューブ6は金属製であってもよい。その場合、それらは、一般に金属で作られる支持構造7との電気的接触を避けるために、必要に応じて絶縁されることが好ましい。
【0013】
導波管の穴は整列され、それらは全体的垂直穴4を形成し、そのチューブ6も整列され、改変される材料を受け入れるように設計されている。
1500°Cを超える処理温度の場合、チューブ6は、その温度に適合したセラミック材料で作製されることが好ましい。チューブ6を保持する手段はまた、その形状を維持するために、処理温度より少なくとも200°C高い温度に耐えることができなければならない。さらに、保持手段は本質的に電磁波に対して透明でなければならない。
【0014】
図1に示すように、本発明の装置は、好ましくは、互いに120度の角度でオフセットされた少なくとも3つのトーラス形導波管1、2、5を備える。
穴およびそれぞれのマグネトロン3は、導波管の対向する位置に対称的に配置されることが好ましい。
トーラス形導波管は、厳密にはトーラス形でなくてもよい。それらは、添付の図のように細長いトーラス形の形状を有していてもよく、各マグネトロンおよびそれぞれの穴は、細長い導波管のそれぞれの長方形の部分、好ましくはその中央にあることが好ましい。
【0015】
全体的垂直穴4内の材料を垂直に、好ましくは下から上に移動させるための手段が設けられることが好ましい。
材料が固体である場合、特に粉末状である場合には、材料を回転させる手段を設けることもできる。
液体材料の流れは乱流または層流であるがポンプの使用によりほとんどが乱流になるため、撹拌する必要はない。
好ましくは、窒素のような不活性ガスを全体的垂直穴4を通って、好ましくは下から上に流すための手段も設けられる。
【0016】
本発明の装置を使用すると、材料の多くの種類の改変または処理を検討することができる。
たとえば、改変はミルクのような液体の超高温(UHT)殺菌で構成される場合がある。ミルク殺菌のUHTは138~142°Cが好ましい。
改変は、粉末材料の溶融、材料の焼結、結晶構造の変化のような原子の配列変化、または再配列のような分子構造の変化であってもよい。この場合、UHTは、好ましくは2000°Cを超える温度、より好ましくは3000°Cを超える温度を意味する。
【0017】
好ましい実施形態では、改変は、セラミック材料のような固体材料、好ましくは粉末の形態のUHT改変である。
この場合、装置は、好ましくは以下を備えることができる:
- 体積加熱による温度上昇中の材料の誘電変化を測定する手段、および、
- 測定された誘電値および材料の性質に材料の曝露を適応させるための電子制御手段。
【0018】
材料の誘電変化を測定するための手段は、好ましくは各導波管にそれぞれ垂直に配置されたセンサーであってもよい。
【0019】
電子制御手段は一般に、それぞれの測定された誘電率および改変中の材料の種類に基づいて、各マグネトロンによって供給されるエネルギー量を連続的に計算および適応させる適切なコンピュータプログラムを備えたコンピュータを備える。
【0020】
導波管は、マグネトロンによって生成された電磁波を導波管のそれぞれの穴に向ける。モノモードと電磁波のHベンドとEベンドの組み合わせを使用することにより、曝露が完全に均一であることが保証される。
【0021】
材料が全体的垂直穴6内にあるとき、材料はその誘電特性によりエネルギーを吸収し、それを熱エネルギーに改変する。ここでの誘電特性とは、誘電率と損失係数(つまり、吸収されたエネルギーのうち熱に改変される部分)の両方である。
たとえば、セラミック材料の場合、最高2200°C以上の温度に達する可能性がある。
【0022】
垂直運動は、例えば30回/分の上下運動であってもよく、および/または回転速度は例えば30回転/分であってもよい。これにより、曝露の均一性が向上する。
【0023】
マグネトロンは通常、水または他の液体または気体冷媒によって冷却される。
【0024】
一般に「体積的」と呼ばれる加熱を行う曝露が特定されている。これは、材料の質量全体が瞬時に温度上昇にさらされることを意味する。これは、マグネトロンからの電力注入と温度変化により変化する材料の誘電特性の両方に関連し、適応される。コンピュータプログラムは、誘電特性、すなわち材料の誘電率および損失係数を測定する全体的垂直穴6全体にわたるセンサーに関連する変動を制御する。誘電特性(誘電率および損失係数)は、好ましくは、改変されてコンピュータプログラムに供給される分光器またはネットワークアナライザを用いて決定される。
このようにして、迅速かつ正確な調整を行うことができ、特にセラミックの場合、亀裂や亀裂のリスクが軽減される。
【0025】
<材料を改変させるプロセス>
本発明の装置は、材料を改変するためのプロセスを実行するために有利に使用することができ、以下のステップを含む:
- 装置の全体的垂直穴に材料を導入し、
- マグネトロンを作動させて材料を強力な電磁場にさらし、体積加熱を実行する。
このようなプロセスは、好ましくは、全体的垂直穴4内の材料を、好ましくは下から上へ移動させるステップをさらに含むことが好ましい。
また、材料が固体である場合に、材料を回転させるステップを含むことが好ましい。
材料を高出力の電磁場にさらす時間は、材料の特性および質量に依存することが好ましい。
【0026】
好ましい実施形態によれば、本発明のプロセスはさらに、以下の工程を含む。
- 温度上昇中の材料の誘電変化を測定し、
- 材料の曝露を、測定された誘電値および材料の性質に適応させる。
本発明のプロセスによって処理または改変された材料を分析したところ、処理/改変されただけでなく、新しいことが判明した。さらに、それらは、本発明による処理/改変前よりも優れた特性を有する。
【0027】
<本発明のプロセスの用途>
上で説明したように、本発明のプロセスは、ミルクを超高温殺菌ミルクに改変するために有利に使用することができる。
実験的パイロットでは、図1および2の装置を用いてミルクが改変された。マグネトロンは空気で冷却された。ミルクの流れは250リットル/時で、マグネトロンに供給される総電力は12kWであった。ミルクに142°Cの温度を適用したところ、ミルクの熱回収は117°Cであった。言い換えれば、設定温度142°Cに到達したが、156°Cで起こるメイラード反応が活性化され得るようには超えていない。したがって、デルタTはわずか25°C(つまり142-117)であった。
【0028】
比較すると、従来のUHTミルク殺菌方法では、通常142°Cの温度を確実に達成するために、温度を200°Cまで上昇させる。ただし、このような高温はミルク中の多くのタンパク質を破壊するという欠点がある。
対照的に、本発明のプロセスは、処理温度を142°Cに維持することを可能にする。
本発明に従って改変されたミルクでは、細菌は検出されず、従来のUHTミルクと比較して34%多い可溶性タンパク質が検出された。さらに、プロセスチューブ内に堆積物/汚れは観察されず、このことからタンパク質の重大な破壊が発生していないことが確認された。
【0029】
本発明のプロセスは、セラミック材料を超高温セラミック(UHTC)に改変するために使用することもできる。
実験では、2400°Cの温度が得られ、本発明のプロセスでγ-アルミナを処理するために使用された。室温の通常の空気中に置かれたハロゲンランプのガラスカバーとして使用した場合、2400°Cの温度に耐えることができる新しい形状のアルミナが得られた。
【0030】
<温室効果ガスの排出を削減するためのプロセス>
本発明に従って改変されたセラミックは高温に耐えるので、それをバーナーに使用することによって、そのバーナーの作動温度を高めることが可能になる。
バーナーに空気の代わりに純粋な酸素を供給すると、バーナーの作動温度が上昇する。
また、純粋な酸素を使用すると、未燃ガスと二酸化炭素の生成が最大75%減少する。
全体的な結果として、温室効果ガスの排出が削減される。
また、同じ体積の純酸素を得るには通常5倍の空気が必要となるため、装置の小型化も可能である。
【0031】
<ミサイル、ロケット、航空機の移動速度を高めるプロセス>
本発明に従って改変されたセラミックは高温に耐えるので、それをミサイルの機首、ロケットの先端、または航空機の翼前縁に使用することにより、そのミサイル、ロケットまたは飛行機の移動速度を高めることが可能になる。
【0032】
<揚力を向上させたり、ミサイル、ロケット、航空機の大気との摩擦に抵抗したりするためのプロセス>
本発明に従って改変されたセラミックはより高い温度に耐えることができるため、より高いガス(空気)摩擦、したがってより高いガス速度に耐えることができ、これはミサイル、ロケット、または航空機の揚力を増強できることを意味する。
次いで、改変された材料は、ミサイルの機首、ロケット先端の先端、または航空機の翼の前縁に有利に配置され得る。
【0033】
<本発明による熱交換器>
本発明のプロセスによって改変されたセラミック材料は、熱交換器に有利に使用することができ、2250°Cのような超高温で、酸素または水蒸気の雰囲気などの腐食性媒体、液体または気体中で作動できる熱交換器を製造することが可能になる。
このような熱交換器は、上記の米国特許第7、935、254号に開示されているような、水の熱分解によって水を水素と酸素に分解する装置に有利に使用することができる。
改変されたセラミック材料は、出願人によって2021年2月4日に出願番号EP21315016.2のもとで提出された欧州特許出願に記載されている装置およびプロセスで使用されることが最も好ましい。
特に、混合イオン電子伝導(MIEC)セラミック材料から得られる改変セラミック材料は、酸素または水素用のフィルタとして有利に使用され得る。
【0034】
<加熱ユニット>
本発明のプロセスによって改変されたセラミック材料は、例えば出願人が2021年2月5日に出願番号EP21315017.0の下で出願した欧州特許出願に記載されている加熱ユニットのような加熱ユニットに有利に使用することができる。
&#8195;

図1
図2
【国際調査報告】