(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】PD-1阻害剤を投与することにより免疫抑制または免疫不全患者におけるがんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240305BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240305BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P37/06
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558331
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 US2022071248
(87)【国際公開番号】W WO2022204672
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジガー・デーサーイー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジー・フュリー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・セルジーツキー
(72)【発明者】
【氏名】ニキータ・ピユーシュ・メータ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG01
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、腫瘍の増殖を処置または阻害するための方法であって、がんを伴う免疫抑制または免疫不全患者を選択する工程と、患者へと治療有効量のプログラム死1(PD-1)阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物のような抗PD-1抗体)を投与する工程とを含む方法を提示する。ある特定の実施形態では、がんは、皮膚扁平上皮癌のような皮膚がんである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍の増殖を処置または阻害する方法であって、
(a)がんを伴う免疫抑制または免疫不全患者を選択する工程と;
(b)患者へと治療有効量のプログラム死1(PD-1)阻害剤を投与する工程と
を含む方法。
【請求項2】
がんは、肛門がん、膀胱がん、骨がん、乳がん、脳がん、子宮頚がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、骨髄腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、唾液腺がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、および子宮がんから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がんは皮膚がんである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
皮膚がんは、皮膚扁平上皮癌(CSCC)、基底細胞癌(BCC)、メルケル細胞癌、および黒色腫から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
皮膚がんはCSCCである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
皮膚がんは、転移性または局所進行性CSCCであり、患者は、治癒的手術または治癒的放射線の候補ではない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
皮膚がんはBCCである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
皮膚がんは、転移性または局所進行性BCCであり、患者は、ヘッジホッグ経路阻害剤(HHI)で以前に処置されているか、またはHHIが適切ではないものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
患者は、固形臓器移植の履歴のために免疫不全であるかまたは免疫抑制されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
患者は、自己免疫疾患または障害のために免疫不全であるかまたは免疫抑制されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
患者は、血液悪性腫瘍のために免疫不全であるかまたは免疫抑制されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
血液悪性腫瘍はヘムがんを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ヘムがんは慢性リンパ球性白血病である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
患者は、PD-1阻害剤の投与前に、外科的切除、続いて放射線療法を受けている、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
がんはCSCCであり、患者は、(1)(a)リンパ節節外浸潤および少なくとも1つの≧20mmの結節を伴う、または(b)少なくとも3つの陽性リンパ節を伴う、結節性疾患;(2)イントランジット転移;(3)T4病変;(4)神経周囲侵襲;ならびに(5)少なくとも1つの他の危険因子を有する再発性CSCC;から選択される少なくとも1つの高危険性特性を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
PD-1阻害剤は、PD-1、PD-L1、もしくはPD-L2に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、またはその生物学的同等物である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
PD-1阻害剤は、PD-1に特異的に結合し、配列番号1の重鎖可変領域(HCVR)に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号2の軽鎖可変領域(LCVR)に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む抗体もしくはその抗原結合性断片、またはその生物学的同等物である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1;配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR2;配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3;配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR1;配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2;および配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCVRを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1/2のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
抗PD-1抗体は重鎖および軽鎖を含み、重鎖は配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
抗PD-1抗体は重鎖および軽鎖を含み、軽鎖は配列番号10のアミノ酸配列を有する、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
抗PD-1抗体は重鎖および軽鎖を含み、重鎖は配列番号9のアミノ酸配列を有し、軽鎖は配列番号10のアミノ酸配列を有する、請求項17~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
PD-1阻害剤は、セミプリマブまたはその生物学的同等物である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
PD-1阻害剤は、配列番号1に対する90%の配列同一性を伴うHCVRを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
PD-1阻害剤は、配列番号2に対する90%の配列同一性を伴うLCVRを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
PD-1阻害剤は、配列番号1に対する90%の配列同一性を伴うHCVRと、配列番号2に対する90%の配列同一性を伴うLCVRとを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
PD-1阻害剤は、セミプリマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0608、BI 754048、PF-06371548、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、JNJ-63313240、およびMCLA-134から選択される抗PD-1抗体である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
PD-1阻害剤は、REGN3504、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、LY3300054、FAZ053、STI-1014、CX-031、KN035、およびCK-301から選択される抗PD-L1抗体である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
PD-1阻害剤の投与は、患者における腫瘍の退縮を促進し、腫瘍細胞負荷を軽減し、腫瘍量を低減し、かつ/または腫瘍の再発を防止する、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
PD-1阻害剤の投与は、全奏効率、無進行生存、全生存、完全奏効、部分奏効、および安定疾患の1つまたはそれ以上の増大から選択される少なくとも1つの効果をもたらす、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
PD-1阻害剤の投与は、患者の免疫抑制または免疫不全状態に関連する有害事象を引き起こさない、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
PD-1阻害剤は単剤療法として投与される、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
PD-1阻害剤は、手術、放射線、抗ウイルス療法、光力学療法、HHI療法、イミキモド、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)アゴニスト、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを持つT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD38阻害剤、CD47阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト、CD20阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、CD28活性化因子、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン2(Ang2)阻害剤、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、共刺激受容体に対するアゴニスト、腫瘍特異性抗原に対する抗体、ワクチン、抗原提示を増大させるためのアジュバント、腫瘍溶解性ウイルス、細胞毒素、化学療法剤、プラチナベースの化学療法、チロシンキナーゼ阻害剤、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、サイトカイン、抗体薬物コンジュゲート(ADC)、キメラ抗原受容体T細胞、抗炎症性薬、非ステロイド系抗炎症性薬(NSAID)、ならびに栄養補助食品から選択される追加の治療剤または治療と組み合わせて投与される、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
PD-1阻害剤は、1回またはそれ以上の回数の投与として投与され、各回の投与は、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間ごとに投与される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
PD-1阻害剤は、2回またはそれ以上の回数の投与として投与され、各回の投与は3週間ごとに投与される、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
PD-1阻害剤は、5mg~800mgの用量で投与される、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
PD-1阻害剤は、200mg、250mg、350mg、または700mgの用量で投与される、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
PD-1阻害剤は、患者の体重1kg当たり1mg~20mgの用量で投与される、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
PD-1阻害剤は、患者の体重1kg当たり1mg、3mg、または10mgの用量で投与される、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
PD-1阻害剤は、静脈内投与、または皮下投与される、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
腫瘍の増殖を処置または阻害する方法に使用するためのプログラム死1(PD-1)阻害剤であって、方法が:
(a)がんを伴う免疫抑制または免疫不全患者を選択する工程と;
(b)患者へと治療有効量のプログラム死1(PD-1)阻害剤を投与する工程と
を含む、プログラム死1(PD-1)阻害剤。
【請求項44】
キットであって、免疫抑制または免疫不全がん患者における腫瘍の増殖を処置または阻害するための、プログラム死1(PD-1)阻害剤を治療有効量のPD-1阻害剤を使用するための指示書と組み合わせて含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腫瘍の増殖を処置もしくは阻害する方法であって、それを必要とする、がんを伴う免疫抑制または免疫不全患者を選択する工程と、患者へと治療有効量のプログラム死1(PD-1)阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物のような抗PD-1抗体)を投与する工程とを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム死1(PD-1)は自己免疫、腫瘍免疫、および感染免疫に重要な役割を果たすものであり、よって免疫療法の理想的な標的である。モノクローナル抗体を含めたアンタゴニストでのPD-1の遮断が、がんおよび慢性ウイルス感染症の処置において研究されている。PD-1の遮断はまた、免疫応答を刺激するための効果的かつ忍容性の高い手法であり、黒色腫、腎細胞がん(RCC)、および非小細胞肺がん(NSCLC)を含めた様々なヒトのがんに対して治療上の利点を達成している(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4,非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。
【0003】
PD-1に対するモノクローナル抗体は、当技術分野で公知であり、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、および特許文献13に記載されている。例えば、セミプリマブ(また、REGN2810;LIBTAYO(登録商標)としても公知である)は、PD-1受容体を対象とする高親和性の、完全ヒト、ヒンジ安定化IgG4P抗体であり、PD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を強力に遮断する。
【0004】
皮膚がんは、米国における最も一般的ながんである(非特許文献14)。2012年に米国で診断された、基底細胞癌および扁平上皮癌を含めた非黒色腫皮膚がんの症例は、推定540万である(非特許文献15)。皮膚扁平上皮癌(CSCC)は、基底細胞癌(BCC)に次いで、米国における2番目に一般的な悪性腫瘍である(非特許文献16)。CSCCの危険因子として、UVへの曝露、高齢、および免疫抑制が挙げられる(非特許文献17;非特許文献18)。CSCCまたはBCCと診断された大多数の人は非常に良好な予後を有するが、CSCCはBCCより高悪性度の再発の傾向が高い。(非特許文献19)。
【0005】
外科的切除は、CSCCまたはBCCの臨床管理の中心的存在である。しかし、局所進行性CSCCと転移性CSCCの両方を包含する進行性CSCCを発症している患者には、手術の候補にならないものもいる。そのような一部の患者は、術後放射線療法または化学療法を投与される場合もあるが、安全性および忍容性の懸念から、これらは望ましくない選択肢でありうる。CSCCの外科的治癒率は>95%であるが、免疫状態、原疾患の病期、リンパ節転移の程度、リンパ節節外浸潤(extracapsular extension)の存在、および先行処置によって評価したときに再発の危険性が高い患者もいる。これらの患者には術後放射線療法(RT)が推奨されるが、局所領域での再発または遠隔転移を伴う再発が生じる場合がある。
【0006】
再発性CSCCは、その後の再発の危険性を増大させる。212例の患者の単一施設の後ろ向き試験では、再発性CSCCは、原発性CSCCと比較して切除手術後にまた再発する可能性が2倍であった(非特許文献20)。(非特許文献21;非特許文献20;非特許文献22)。切除不能な進行性CSCCを伴う患者にとって、悪性腫瘍は命を脅かす状態であるが、それでも患者には放射線ベースの療法で持続的病勢コントロールを達成するものもいる。(非特許文献23;非特許文献24)。全身療法に関しては、多くの場合異なる病期を有する不均一なCSCC患者の群を含む単一アーム試験が存在しているが、これらの試験はいずれも治療上の利点を明確に実証するものではなかった(非特許文献25;非特許文献26)。
【0007】
BCCの最も一般的な臨床サブタイプは結節型BCCである(非特許文献27)。殆どのBCC患者は手術によって治癒するが、ごく一部の患者は再発病変を経験するか、または切除不能な局所進行性もしくは転移性疾患を発症する。BCCにおけるGタンパク質受容体スムーズンド(SMO)の発がんの役割が認識されたことにより、一般にヘッジホッグ阻害剤(HHI)と称される、経口で利用可能なSMOの阻害剤であるビスモデギブおよびソニデジブが開発された。HHIの有害な副作用に加えて、1つのHHI(ビスモデギブ)で進行する患者では、その後別のHHI(ソニデジブ)で処置しても腫瘍の阻害が得られなかったことが見出された(非特許文献28)。
【0008】
さらに、一部のCSCC患者は、非特許文献29を使用したがんの病期分類、免疫状態、リンパ管または静脈侵襲、リンパ節転移の程度、リンパ節節外浸潤の存在、および処置歴を含めた幾つもの因子を使用して評価したときに高危険性CSCCを有すると考えられる。高危険性の場合には術後放射線療法が推奨される(非特許文献30)(非特許文献31)。しかし、高危険性の患者は、局所領域での再発または遠隔転移を伴って再発する場合がある(非特許文献32)。
【0009】
免疫抑制および/または免疫不全患者は、固形腫瘍および皮膚悪性腫瘍の危険性が増大しており、非黒色腫皮膚がんの危険性は10~250倍増大すると推定される(非特許文献33)。これらの患者はICIの臨床試験から除外されることが多いために、これらの患者における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の安全性および有効性に関して存在するデータは限られている。加えて、移植レシピエントは、他のいかなる腫瘍型よりもCSCCの危険性が高いことが知られている(非特許文献34)。CSCCはまた、移植患者では、免疫能力を有するCSCC患者と比較して悪性度の高い臨床経過を有する(非特許文献35)。移植患者にPD-1阻害剤を全身投与すると、高危険性の同種移植片拒絶または傷害が生じる(非特許文献36;非特許文献37;非特許文献38)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US9987500
【特許文献2】US8008449
【特許文献3】US8168757
【特許文献4】US20110008369
【特許文献5】US20130017199
【特許文献6】US20130022595
【特許文献7】WO2006121168
【特許文献8】WO20091154335
【特許文献9】WO2012145493
【特許文献10】WO2013014668
【特許文献11】WO2009101611
【特許文献12】EP2262837
【特許文献13】EP2504028
【非特許文献】
【0011】
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【非特許文献3】Chenら、2013、Nat.Rev.Immunol.、13:227~242
【非特許文献4】Riley、2009、Immunol.Rev.、229:114~125
【非特許文献5】Dongら、1999、Nature Med.、5(12):1365~1369
【非特許文献6】Zou、2008、Nat.Rev.Immunol.、8:467~77
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【非特許文献34】Euvardら、New Engl.J.Med.、348(17):1681~91、2003
【非特許文献35】Manyamら、Cancer、123(11):2054~60、2017
【非特許文献36】Lipsonら、New Engl.J.Med.、374(9):896~98、2016
【非特許文献37】Aguirreら、The Oncologist、24:394~401、2018年11月9日
【非特許文献38】Starkeら、Kidney Int.、78(1):38~47、2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、免疫抑制または免疫不全患者におけるがんを処置するための安全かつ効果的な治療を提示することが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様では、開示される技術は、腫瘍の増殖を処置または阻害する方法であって、(a)がんを伴う免疫抑制または免疫不全患者を選択する工程と;(b)患者へと治療有効量のプログラム死1(PD-1)阻害剤を投与する工程とを含む方法に関する。一部の実施形態では、がんは、肛門がん、膀胱がん、骨がん、乳がん、脳がん、子宮頚がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、骨髄腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、唾液腺がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、および子宮がんから選択される。一部の実施形態では、がんは皮膚がんである。一部の実施形態では、皮膚がんは、皮膚扁平上皮癌(CSCC)、基底細胞癌(BCC)、メルケル細胞癌、および黒色腫から選択される。一部の実施形態では、皮膚がんはCSCCである。一部の実施形態では、皮膚がんは、転移性または局所進行性CSCCであり、患者は、治癒的手術または治癒的放射線の候補ではない。
【0014】
一部の実施形態では、皮膚がんはBCCである。一部の実施形態では、皮膚がんは転移性または局所進行性BCCであり、患者は、ヘッジホッグ経路阻害剤(HHI)で以前に処置されているか、またはHHIが適切ではないものである。一部の実施形態では、患者は、固形臓器移植の履歴のために免疫不全であるかまたは免疫抑制されている。一部の実施形態では、患者は、自己免疫疾患または障害のために免疫不全であるかまたは免疫抑制されている。一部の実施形態では、患者は、血液悪性腫瘍のために免疫不全であるかまたは免疫抑制されている。一部の実施形態では、血液悪性腫瘍はヘムがんを含む。一部の実施形態では、ヘムがんは慢性リンパ球性白血病である。一部の実施形態では、がんはCSCCであり、患者は、(1)(a)リンパ節節外浸潤および少なくとも1つの≧20mmの結節を伴う、または(b)少なくとも3つの陽性リンパ節を伴う、結節性疾患;(2)イントランジット転移(in-transit metastases);(3)T4病変;(4)神経周囲侵襲;ならびに(5)少なくとも1つの他の危険因子を伴う再発性CSCC;から選択される少なくとも1つの高危険性特性を有する。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1、PD-L1、もしくはPD-L2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片、またはその生物学的同等物である。
【0015】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1に特異的に結合し、配列番号1の重鎖可変領域(HCVR)に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号2の軽鎖可変領域(LCVR)に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む抗体もしくはその抗原結合性断片、またはその生物学的同等物である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1;配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR2;配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3;配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR1;配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2;および配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1/2のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を有し、軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、セミプリマブまたはその生物学的同等物である。
【0016】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、配列番号1に対する、90%の配列同一性を伴うHCVRを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、配列番号2に対する、90%の配列同一性を伴うLCVRを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、配列番号1に対する、90%の配列同一性を伴うHCVRと、配列番号2に対する、90%の配列同一性を伴うLCVRとを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、セミプリマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0608、BI 754048、PF-06371548、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、JNJ-63313240、およびMCLA-134から選択される抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、REGN3504、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、LY3300054、FAZ053、STI-1014、CX-031、KN035、およびCK-301から選択される抗PD-L1抗体である。
【0017】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、患者における腫瘍の退縮を促進し、腫瘍細胞負荷を軽減し、腫瘍量を低減し、かつ/または腫瘍の再発を防止する。一部の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、全奏効率、無進行生存、全生存、完全奏効、部分奏効、および安定疾患の1つまたはそれ以上の増大から選択される少なくとも1つの効果をもたらす。一部の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、患者の免疫抑制または免疫不全状態に関連する有害事象を引き起こさない。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は単剤療法として投与される。
【0018】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、手術、放射線、抗ウイルス療法、光力学療法、HHI療法、イミキモド、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)アゴニスト、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを持つT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD38阻害剤、CD47阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト、CD20阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、CD28活性化因子、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン2(Ang2)阻害剤、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、共刺激受容体に対するアゴニスト、腫瘍特異性抗原に対する抗体、ワクチン、抗原提示を増大させるためのアジュバント、腫瘍溶解性ウイルス、細胞毒素、化学療法剤、プラチナベースの化学療法、チロシンキナーゼ阻害剤、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、サイトカイン、抗体薬物コンジュゲート(ADC)、キメラ抗原受容体T細胞、抗炎症性薬、非ステロイド系抗炎症性薬(NSAID)、ならびに栄養補助食品から選択される追加の治療剤または治療と組み合わせて投与される。
【0019】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、1回またはそれ以上の回数の投与として投与され、各回の投与は、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間ごとに投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、2回またはそれ以上の回数の投与として投与され、各回の投与は3週間ごとに投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、5mg~800mgの用量で投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、200mg、250mg、350mg、または700mgの用量で投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、患者の体重1kg当たり1mg~20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、患者の体重1kg当たり1mg、3mg、または10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、静脈内投与、または皮下投与される。
【0020】
別の態様では、開示される技術は、腫瘍の増殖を処置または阻害する方法に使用するためのプログラム死1(PD-1)阻害剤であって、該方法が、(a)がんを伴う免疫抑制または免疫不全患者を選択する工程と;(b)患者へと治療有効量のプログラム死1(PD-1)阻害剤を投与する工程とを含む、プログラム死1(PD-1)阻害剤に関する。
【0021】
別の態様では、開示される技術は、免疫抑制または免疫不全がん患者における腫瘍の増殖を処置または阻害するための、プログラム死1(PD-1)阻害剤を治療有効量のPD-1阻害剤を使用するための指示書と組み合わせて含むキットに関する。
【0022】
本開示の他の実施形態は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例2に記載されるCemiplimabAb-rwlc Survivorship and Epidemiology試験の概略図である。略語:NRS、数値的評価スケール;PRO、患者報告転帰;QLQ-C30、生活の質の質問票-コア30;QLQ-ELD14、高齢患者用生活の質の質問票;SCI、スキンケア指標(skin care index);SEBI、日光曝露行動評価尺度(sun exposure behavior inventory)の概略図である。
【
図2】実施例2に記載される試験に含まれる患者の曝露の持続期間を示す棒グラフである。
【
図3】実施例3に記載される試験の第1部のデザインの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、そのような方法および条件は、変動しうるので、記載される、特定の方法および実験条件に限定されないことが理解されるものとする。また、本開示の範囲は、付属の特許請求の範囲だけにより限定されるので、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態だけについて記載することを目的とするものであり、限定的であることを意図されるものではないことも理解されるものとする。そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される、全ての技術用語および学術用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本開示の実施または試験では、本明細書で記載される方法および材料と同様または同等である、任意の方法および材料を使用することができるが、ここでは、好ましい方法および材料について記載される。そうでないことが言明されない限りにおいて、本明細書で言及される全ての刊行物を、参照によってそれらの全体において本明細書に組み入れる。
【0025】
がんの増殖を処置または阻害する方法
一般に、臓器移植を施された患者のような免疫抑制または免疫不全がん患者は、多くの場合臨床試験から除外される非主流の亜集団を成している。例えば、移植レシピエントは、試験されている治療の投与中に移植が拒絶される可能性を回避するために特に密接なモニタリングが必要とされる。しかし、本開示は、がんを伴う免疫抑制または免疫不全患者における腫瘍の増殖を処置または阻害するための効果的な方法であって、それを必要とする患者へとセミプリマブまたはその生物学的同等物のようなPD-1阻害剤を投与することによる方法を含む。驚くべきことに、開示される方法は、PD-1阻害剤が全身投与されたときであっても免疫抑制または免疫不全がん患者において抗腫瘍効能を達成する。そのような効能が、患者の安全性または生活の質を下げることなく、例えば、患者の免疫抑制または免疫不全状態から生じる有害事象の発生率の増加を引き起こすことなく達成されることは、さらに驚くべきことである。例えば、一部の実施形態では、開示される方法は、臓器移植を施された免疫抑制または免疫不全がん患者における腫瘍の増殖を、移植拒絶反応またはそれに関連する有害事象を引き起こすことなく効果的に処置または阻害するために使用することができる。患者の免疫抑制または免疫不全状態に関連する有害事象を回避することによって患者の安全性プロファイルおよび生活の質を増大させることは、開示される方法の特に有利な側面であり、この脆弱な患者集団における今まで満たされなかった長年にわたる切実な必要性を満たすものである。
【0026】
本明細書で使用される、「免疫抑制(されている)」または「免疫不全(である)」とは、弱くなった免疫系を有することを指し、患者の疾患および感染症と戦う能力は低減している。免疫不全状態は、ある特定の疾患または病気(例えば、ヘムがんを含めたがん、AIDS、糖尿病、ウイルス感染症)、栄養不良、ストレス、および遺伝障害のような種々の状況によって引き起こされる可能性がある。免疫不全状態はまた、例えば、患者の免疫系が抗原に応答しないようにすることが意図される免疫抑制によって作り出される場合もある。免疫抑制または免疫不全患者の非限定例として、移植レシピエント、自己免疫疾患と診断され、かつ/またはそのための治療を受けている患者、血液悪性腫瘍(例えば、慢性リンパ球性白血病(CLL)を含めた白血病のようなヘムがん)を伴う患者、および化学療法を受けている患者が挙げられる。一般に、移植レシピエントは、ドナーから患者が施された移植細胞(例えば、骨髄、皮膚細胞、内皮細胞など)、組織または臓器(例えば、固形臓器)の拒絶反応を防止するために免疫抑制されている。本開示によれば、免疫抑制または免疫不全患者は、免疫抑制されているか、免疫不全であるか、またはその両方でありうる。
【0027】
本明細書で使用される、「~を処置すること」、「~を処置する」などの用語は、少なくとも1つの症状もしくは徴候の重症度を緩和もしくは低減すること、一時的に、もしくは恒常的に、症状の因果関連を消失させること、腫瘍の増殖を遅延させるか、もしくは阻害すること、腫瘍細胞の負荷または腫瘍量を低減すること、腫瘍の退縮を促進すること、腫瘍の縮小、壊死、および/もしくは消失を引き起こすこと、腫瘍の再発を防止すること、転移を防止もしくは阻害すること、転移性腫瘍の増殖を阻害すること、手術に対する必要を消失させること、ならびに/または対象の生存期間を延長することを意味する。多くの実施形態では、「腫瘍」、「病変」、「腫瘍病変」、「がん」、および「悪性腫瘍」という用語は、互換的に使用され、1つまたはそれ以上のがん性増殖を指す。
【0028】
本明細書で使用される、「再発性」という用語は、患者における頻繁なもしくは繰り返されるがんの診断、または以前の腫瘍の再発を表しうる原発腫瘍および/もしくは新たな腫瘍などの個々の腫瘍の頻繁なもしくは繰り返される出現を指す。ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、患者におけるがん腫瘍の再発を阻害する。
【0029】
本明細書で使用される、「それを必要とする対象」という表現は、免疫抑制されているかまたは免疫不全であり、がんの1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候を呈し、かつ/またはがんを伴うと診断され、このための処置を必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物を意味する。多くの実施形態では、「対象」および「患者」という用語は互換的に使用される。この表現は、移植レシピエントである患者、例えば、ドナーから移植細胞(例えば、骨髄、皮膚細胞、内皮細胞など)、組織、もしくは臓器(例えば、固形臓器)を施された患者、または固形臓器移植の履歴を有する患者を含む。この表現はまた、自己免疫障害、血液悪性腫瘍(例えば、CLLを含めた白血病のようなヘムがん)、または対象の免疫系を弱めることになる他の状態もしくは疾患を伴う患者を含む。この表現はまた、原発性、定着性、転移性、または再発性腫瘍(進行性悪性腫瘍)を伴う患者、例えば、原発性もしくは転移性腫瘍を伴うと診断され、ならびに/または、限定するものではないが、説明できない体重減少、全身の脱力感、持続的な疲労感、食欲減退、発熱、寝汗、骨痛、息切れ、腹部膨満、胸痛/胸部圧迫感、脾臓肥大、およびがん関連バイオマーカー(例えば、CA125)のレベルの上昇を含めた1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候を有すると診断される、ヒト患者を含む。この表現はまた、原発性または定着性腫瘍を伴う対象を含む。この表現はまた、固形腫瘍、例えば、肛門がん、膀胱がん、骨がん、乳がん、脳がん、子宮頚がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、骨髄腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、唾液腺がん、皮膚がん(例えば、BCC、CSCC、メルケル細胞癌、および黒色腫)、胃がん、精巣がん、および子宮がんを伴い、かつ/またはそれらの処置を必要とする免疫不全のヒト対象を含む。
【0030】
ある特定の実施形態では、「それを必要とする対象」という表現は、先行治療(例えば、抗がん剤での処置)に耐性もしくは不応性であるか、またはそれにより不適切に制御される液性または固形腫瘍を伴う、免疫抑制または免疫不全患者を含む。例えば、この表現は、化学療法(例えば、カルボプラチンまたはドセタキセル)、手術、および/または放射線での処置のような、第一選択またはそれ以上の先行治療で処置されてきた対象を含む。この表現はまた、第一選択またはそれ以上の先行治療で処置されてきたが、その後再発または転移した液性または固形腫瘍を伴う患者を含む。例えば、液性または固形腫瘍を伴う患者であって、腫瘍の退縮を導く1つまたはそれ以上の抗がん剤での処置を施されてきたが、その後1つまたはそれ以上の抗がん剤に耐性のがん(例えば、化学療法に耐性のがん、HHIに耐性のがん)が再発した患者が、本開示の方法で処置される。この表現は、例えば毒性副作用のために、従来の抗がん治療が推奨されない、液性または固形腫瘍を伴う対象も含む。例えば、この表現は、1回またはそれ以上の毒性副作用を有するHHIを施されてきた患者を含む。具体的な実施形態では、この表現は、局所進行性または転移性がんを有し、かつ/またはそれらの処置を必要とするヒト対象を含む。ある特定の実施形態では、この表現は、先行治療(例えば、手術、化学療法、放射線、異なる抗がん剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物以外の抗がん剤)での処置、またはそれらの組み合わせ)に耐性もしくは不応性であるか、またはそれにより不適切に制御される液性または固形腫瘍を伴う患者を含む。ある特定の実施形態では、この表現は、外科的切除または限定的な放射線化学治療の候補ではない、がん(例えば、皮膚がん)を伴う対象を含む。ある特定の実施形態では、この表現は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはそれらの組み合わせのようなウイルスにより引き起こされる慢性ウイルス感染症を伴うがん患者を含む。ある特定の実施形態では、この表現は、病歴に以下の診断のうちの1つまたはそれ以上を有する患者を含む:同種骨髄移植、固形臓器移植、HIV、炎症性腸疾患、白血病、ループス、リンパ腫、多発性骨髄腫、多発性硬化症、乾癬または乾癬性関節炎、関節リウマチ、真性多血球血症、骨髄増殖性疾患、およびプレドニゾンを用いた慢性閉塞性肺疾患(COPD)。
【0031】
本明細書で使用される、「皮膚がん」とは、基底細胞癌(BCC)、皮膚扁平上皮癌(CSCC)、メルケル細胞癌、および黒色腫のような皮膚のがんを指す。一部の実施形態では、皮膚がんは、非黒色腫皮膚がん、例えば、BCC、CSCC、またはメルケル細胞癌である。一部の実施形態では、皮膚がんは、皮膚扁平上皮癌(CSCC)または基底細胞癌(BCC)である。一部の実施形態では、皮膚がんは、転移性CSCC(mCSCC)または局所進行性CSCC(laCSCC)、例えば、切除不能なlaCSCCである。一部の実施形態では、皮膚がんはlaCSCCであり、患者は治癒的手術または治癒的放射線の候補ではない。一部の実施形態では、皮膚がんは、転移性BCC(mBCC)または局所進行性BCC(laBCC)である。一部の実施形態では、皮膚がんはlaBCCであり、患者は、ヘッジホッグ経路阻害剤で以前に処置されているか、またはヘッジホッグ経路阻害剤が適切ではないものである(例えば、laBCCがヘッジホッグ阻害剤(HHI)療法で進行したか、またはlaBCC患者がヘッジホッグ阻害剤(HHI)療法に非忍容性であった)。
【0032】
本明細書で使用される場合、「肺がん」とは、非小細胞肺癌(NSCLC)(例えば、進行性NSCLC、ステージIIIB、ステージIIIC、またはステージIVの扁平上皮または非扁平上皮NSCLC、腺癌、扁平上皮癌、または大細胞癌)、腺扁平上皮癌、および肉腫様癌のような肺のがんを指す。一部の実施形態では、肺がんは非小細胞肺がんである。一部の実施形態では、肺がん扁平上皮非小細胞肺がんである。一部の実施形態では、肺がんは非扁平上皮非小細胞肺がんである。一部の実施形態では、肺がんは、局所進行性、再発性、または転移性肺がんである。一部の実施形態では、患者は肺がんを有し、腫瘍は、≧50%の腫瘍細胞においてPD-L1を発現する。一部の実施形態では、患者は肺がん(例えば、非小細胞肺がん)を有し、腫瘍は、≧50%、≧60%、≧70%、≧80%、または≧90%の腫瘍細胞においてPD-L1を発現する。一部の実施形態では、患者は、肺がんのための処置(例えば、化学療法、放射線、またはそれらの組み合わせのような抗腫瘍治療)で以前に処置されている。
【0033】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、固形腫瘍を伴う対象を処置するために使用される。本明細書で使用される、「固形腫瘍」という用語は、通常、嚢胞または液体部分を含まない、異常な組織塊を指す。固形腫瘍は、良性(がんではない)であっても、悪性(がん)であってもよい。本開示の目的に関して、「固形腫瘍」という用語は、悪性の固形腫瘍を意味する。この用語は、それらを形成する細胞型から名づけられた異なるタイプの固形腫瘍、すなわち、肉腫、癌腫、および芽細胞腫を含む。ある特定の実施形態では、「固形腫瘍」という用語は、限定するものではないが、肛門がん、血管肉腫、基底細胞癌、膀胱がん、骨がん、脳がん、乳がん、子宮頚がん、胆管癌、軟骨肉腫、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚扁平上皮癌、子宮内膜がん、食道がん、多形性神経膠芽細胞腫、頭頸部扁平上皮癌、肝細胞癌、腎臓癌、肝臓がん、肺がん、メルケル細胞癌、黒色腫、骨髄腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、唾液腺がん、皮膚がん、軟部肉腫、胃がん、精巣がん、および子宮がんを含めたがんを指す。
【0034】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、液性腫瘍を伴う対象を処置するために使用される。本明細書で使用される、「液性腫瘍」という用語は、血液または骨髄のような体液または軟組織中に存在するがん細胞を指す。「液性腫瘍」という表現は、結合または支持組織(例えば、骨または筋肉)から生じるがん(肉腫と称される)、体の腺細胞および体組織に沿って並ぶ上皮細胞から生じるがん(癌腫と称される)、ならびにリンパ器官、例えば、リンパ節、脾臓、および胸腺のがん(リンパ腫と称される)を含む。リンパ系細胞は体の殆ど全ての組織に存在し、したがってリンパ腫は多種多様な臓器に発症しうる。一部の実施形態では、開示される方法は、リンパ腫または白血病を含む液性腫瘍を伴う対象を処置するために使用される。
【0035】
ある特定の実施形態では、開示される方法は、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)を追加の治療剤または治療と組み合わせて投与する工程を含む。追加の治療剤または治療は、抗腫瘍効能を増大させるために、1つもしくはそれ以上の治療の毒性作用を軽減するために、かつ/または1つもしくはそれ以上の治療の投与量を低減するために投与することができる。多様な実施形態では、追加の治療剤または治療は、手術、放射線、抗ウイルス療法(例えば、シドフォビル)、光力学療法、HHI療法(例えば、ビスモデギブ、ソニデジブ)、イミキモド、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤(例えば、US2015/0203580に開示される通りの抗PD-L1抗体またはアテゾリズマブ)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤(例えば、イピリムマブ)、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)アゴニスト(例えば、抗GITR抗体)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを持つT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD38阻害剤、CD47阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160、またはVISTAに対する抗体)、CD20阻害剤(例えば、抗CD20抗体、または二重特異性CD3/CD20抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、CD28活性化因子、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトのような「VEGF-トラップ」、またはUS7087411に明示される通りの他のVEGF阻害融合タンパク質、または抗VEGF抗体またはその抗原結合性断片(例えば、ベバシズマブ、またはラニビズマブ)、またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、またはラムシルマブ))、アンジオポエチン2(Ang2)阻害剤、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、共刺激受容体に対するアゴニスト(例えば、CD28、4-1BB、またはOX40に対するアゴニスト)、腫瘍特異性抗原(例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、がん胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍M2-PK、前立腺特異性抗原(PSA)、ムチン1、MART-1、およびCA19-9)に対する抗体、ワクチン(例えば、カルメット-ゲラン桿菌またはがんワクチン)、抗原提示を増大させるためのアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、腫瘍溶解性ウイルス、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ペメトレキセド、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、トポテカン、イリノテカン、ビノレルビン、およびビンクリスチン)、プラチナベースの化学療法(例えば、プラチナダブレット化学療法)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、レンバチニブ、レゴラフェニブ、およびカボザンチニブ)、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、サイトカイン、例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、およびIL-15、抗体薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、キメラ抗原受容体T細胞(例えば、CD19標的化T細胞)、抗炎症性薬、例えば、コルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症性薬(NSAID)、および抗酸化剤のような栄養補助食品のうちの1つまたはそれ以上を含みうる。
【0036】
本明細書で使用される、「抗ウイルス療法」という用語は、宿主対象におけるウイルス感染症を処置、予防、または改善するために使用される任意の薬剤、薬物、または治療を指し、これらには、限定するものではないが、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリン、鎮痛薬、コルチコステロイド、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
ある特定の実施形態では、がんを伴う免疫不全対象への治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)の投与は、処置される対象における腫瘍増殖の阻害の増大(例えば、腫瘍の退縮、腫瘍の縮小、および/または消失)をもたらす。
【0038】
ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、以下のうちの1つまたはそれ以上をもたらす:(i)腫瘍の増殖および発症の遅延、例えば、腫瘍の増殖は、処置された対象において、非処値対象または異なる抗がん治療もしくは薬剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物以外の抗がん治療)で処置された対象と比較して、約3日、3日超、約7日、7日超、15日超、1カ月超、3カ月超、6カ月超、1年超、2年超、または3年超遅延しうる;(ii)非処値対象または異なる抗がん治療もしくは薬剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物以外の抗がん治療)で処置された対象と比較して、処置日から腫瘍の再発または死亡までの無病生存(DFS)の延長;および(iii)非処値対象または異なる抗がん治療もしくは薬剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物以外の抗がん治療)で処置された対象と比較して、全奏効率(ORR)、完全奏効(CR)、または部分奏効(PR)の向上。
【0039】
ある特定の実施形態では、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)を免疫不全がん患者へ投与することは、腫瘍の再発を防止し、かつ/または対象の生存期間を延長し、例えば、非処値対象または異なる抗がん治療もしくは薬剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物以外の抗がん治療)で処置された対象と比較して、生存期間を15日間超、1カ月間超、3カ月間超、6カ月間超、12カ月間超、18カ月間超、24カ月間超、36カ月間超、または48カ月間超延長する。
【0040】
ある特定の実施形態では、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)を免疫不全のがん患者へ投与することは、非処値対象または異なる抗がん治療もしくは薬剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物以外の抗がん治療)で処置された対象と比較して、対象の全生存(OS)または無進行生存(PFS)の延長をもたらす。ある特定の実施形態では、PFSは、化学療法単独で処置された対象と比較して、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも7カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも9カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも11カ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも3年間延長される。ある特定の実施形態では、OSは、非処値対象または異なる抗がん治療もしくは薬剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物以外の抗がん治療)で処置された対象と比較して、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも7カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも9カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも11カ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも3年間延長される。
【0041】
PD-1阻害剤
本明細書で開示される方法は、治療有効量のPD-1阻害剤を投与する工程を含む。本明細書で使用される、「PD-1阻害剤」とは、PD-1の活性または発現を阻害するか、遮断するか、妨げるか、またはこれに干渉することが可能な、任意の分子を指す。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、抗体、低分子化合物、核酸、ポリペプチド、またはこれらの機能的断片もしくは変異体でありうる。適切なPD-1阻害剤抗体の非限定例は、抗PD-1抗体およびその抗原結合性断片、抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片、ならびに抗PD-L2抗体およびその抗原結合性断片を含む。適切なPD-1阻害剤の、他の非限定例は、抗PD-1 RNAi分子、抗PD-L1 RNAi、および抗PD-L2 RNAiのようなRNAi分子、抗PD-1アンチセンスRNA、抗PD-L1アンチセンスRNA、および抗PD-L2アンチセンスRNAのようなアンチセンス分子、ならびにPD-1ドミナントネガティブタンパク質、PD-L1ドミナントネガティブタンパク質、およびPD-L2ドミナントネガティブタンパク質のようなドミナントネガティブタンパク質を含む。前出のPD-1阻害剤の一部の例については、例えば、US9308236、US10011656、およびUS20170290808において記載されている。
【0042】
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互接続された、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖である、4つのポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)の他、その多量体(例えば、IgM)またはその抗原結合性断片を指すことを意図する。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)と、重鎖定常領域(ドメインである、CH1、CH2、およびCH3から構成される)とから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」または「VL」)と、軽鎖定常領域(CL)とから構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存的な領域を散在させた、相補性決定領域(CDR)と称する、超可変性領域へと、さらに細分することができる。各VHおよび各VLは、アミノ末端から、カルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された、3つのCDRと、4つのFRとから構成される。ある特定の実施形態では、抗体(またはその抗原結合性断片)のFRは、ヒト生殖細胞系列配列と同一である場合もあり、天然で、または人工的に修飾されている場合もある。アミノ酸のコンセンサス配列は、2つまたはそれ以上のCDRについての比較対照解析に基づき、規定することができる。本明細書で使用される、「抗体」という用語はまた、完全抗体分子の抗原結合性断片も含む。
【0043】
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合性断片」、抗体の「抗原結合性部分」などの用語は、抗原に特異的に結合して、複合体を形成する、任意の、天然に存在するか、酵素により得られるか、合成によるか、または遺伝子操作される、ポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、タンパク質分解性酵素、または抗体の可変ドメインと、場合により、定常ドメインとをコードするDNAの操作(manipulation)および発現を伴う、組換え遺伝子操作(engineering)法のような、任意の適切な標準的技法を使用して、完全抗体分子から導出することができる。このようなDNAは、公知であり、かつ/または例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から、たやすく入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、シーケンシングし、化学的に操作するか、または分子生物学法を使用することにより操作して、例えば、1つもしくはそれ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを、適切な立体配置へと配置するか、またはコドンを導入するか、システイン残基を創出するか、アミノ酸を修飾するか、付加するか、もしくは欠失させるなどすることができる。
【0044】
抗原結合性断片の非限定例は、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる、最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような、単離相補性決定領域(CDR))、またはFR3-CDR3-FR4ペプチドを含む。ドメイン特異性抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ミニボディー、ナノボディー(例えば、一価ナノボディー、二価ナノボディーなど)、低分子モジュラー型免疫医薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような、他の操作分子もまた、本明細書で使用される、「抗原結合性断片」という表現の内に包含される。
【0045】
抗体の抗原結合性断片は、典型的に、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であることが可能であり、一般に、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列と隣接するか、またはこれとインフレームの位置にある、少なくとも1つのCDRを含む。VHドメインを、VLドメインと会合させた、抗原結合性断片内では、VHドメインと、VLドメインとを、互いと比べて、任意の適切な配置に置くことができる。例えば、可変領域は、二量体であることが可能であり、VH-VH二量体を含有する場合もあり、VH-VL二量体を含有する場合もあり、VL-VL二量体を含有する場合もある。代替的に、抗体の抗原結合性断片は、単量体のVHドメインを含有する場合もあり、単量体VLドメインを含有する場合もある。
【0046】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインへと、共有結合的に連結された、少なくとも1つの可変ドメインを含有しうる。本開示の抗体の抗原結合性断片内で見出すことができる、可変ドメインおよび定常ドメインの、非限定で例示的な構成は、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLを含む。上記で列挙された例示的構成のうちのいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの、任意の立体配置では、可変ドメインと、定常ドメインとは、互いと、直接連結することもでき、完全ヒンジ領域もしくは完全リンカー領域、または部分的ヒンジ領域もしくは部分的リンカー領域により連結することもできる。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子内で隣接する、可変ドメインおよび/または定常ドメインの間に、可撓性の連結または半可撓性の連結を結果としてもたらす、少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上の)アミノ酸からなりうる。さらに、本開示の抗体の抗原結合性断片は、互いと、かつ/または1つもしくはそれ以上の、単量体VHドメインもしくは単量体VLドメインと、非共有結合的に(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)会合させた、上記で列挙された可変ドメイン/定常ドメイン構成のうちのいずれかの、ホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含みうる。
【0047】
本明細書で開示される方法で使用される抗体は、ヒト抗体でありうる。本明細書で使用される、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を指す。それにもかかわらず、本開示のヒト抗体は、例えば、CDR内、特に、CDR3内に、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroにおいて、ランダム突然変異誘発もしくは部位特異性突然変異誘発により導入された突然変異、またはin vivoにおける体細胞突然変異)を含む。しかし、本明細書で使用される、「ヒト抗体」という用語は、マウスのような、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列へとグラフトされた抗体を含むことを意図しない。
【0048】
本明細書で開示される方法で使用される抗体は、組換えヒト抗体でありうる。本明細書で使用される、「組換えヒト抗体」という用語は、宿主細胞へとトランスフェクトされた組換え発現ベクター(下記でさらに記載される)を使用して発現される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(下記でさらに記載される)から単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)(例えば、Taylorら(1992)、Nucl.Acids Res.20:6287~6295を参照されたい)から単離される抗体、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライシングを伴う、他の任意の手段により調製されるか、発現されるか、創出されるか、もしくは単離される抗体のような組換え手段により、調製されるか、発現されるか、創出されるか、または単離される、全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかし、ある特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体を、in vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用する場合は、in vivo体細胞突然変異誘発)にかけるので、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH配列およびVL配列に由来し、これらと類縁であるが、in vivoのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に、天然では存在することができない配列である。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用されるPD-1阻害剤は、PD-1に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片である。「~に特異的に結合する」などという用語は、抗体またはその抗原結合性断片が、抗原と共に、生理学的条件下で、比較的安定な複合体を形成することを意味する。当技術分野では、抗体が、抗原に特異的に結合するのかどうかを決定するための方法が周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、本開示の文脈で使用される、PD-1「に特異的に結合する」抗体は、PD-1またはその一部に、表面プラズモン共鳴アッセイで測定される通り、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のKDで結合する抗体を含む。しかし、ヒトPD-1に特異的に結合する単離抗体は、他の(非ヒト)種に由来するPD-1分子のような、他の抗原との交差反応性を有する場合がある。
【0050】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片の生物学的同等物である。本明細書で使用される、「生物学的同等物」という用語は、単回投与であれ、複数回投与であれ、同じモル用量、同様の実験条件下で投与される場合に、その吸収の速度および/または範囲が、参照抗体(例えば、セミプリマブ)の吸収の速度および/または範囲と、著明な差違を示さない、医薬同等物または医薬代替物である、抗PD-1抗体もしくはPD-1結合性タンパク質またはこれらの断片を指す。本開示の文脈では、「生物学的同等物」という用語は、PD-1に結合し、安全性、純度、および/または効能に関して、参照抗体(例えば、セミプリマブ)と、臨床的に有意味な差違を有さない、抗原結合性タンパク質を含む。
【0051】
ある特定の実施形態に従い、PD-1阻害剤は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む、抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブ)である。ある特定の実施形態に従い、抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブ)は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、この場合、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブ)は、配列番号1を含むHCVRと、配列番号2を含むLCVRとを含む。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブ)は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。開示される方法に使用するための例示的な抗PD-1抗体は、セミプリマブである。
【0052】
本開示の方法の文脈で使用することができる、他の抗PD-1抗体は、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、MEDI0608、ピジリズマブ、BI 754091、スパルタリズマブ(また、PDR001としても公知である)、カムレリズマブ(また、SHR-1210としても公知である)、JNJ-63723283、MCLA-134と称し、当技術分野でも公知の抗体、または米国特許第6808710号、同第7488802号、同第8008449号、同第8168757号、同第8354509号、同第8609089号、同第8686119号、同第8779105号、同第8900587号、および同第9987500号、ならびに特許公報第WO2006/121168号、同第WO2009/114335号で明示されている抗PD-L1抗体のうちのいずれかを含む。抗PD-1抗体を同定する、前述の公報の一部または全部を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0053】
ある特定の実施形態に従い、セミプリマブの生物学的同等物は、配列番号1に対する90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するHCVRを含む抗PD-1抗体である。ある特定の実施形態に従い、セミプリマブの生物学的同等物は、配列番号2に対する90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するLCVRを含む抗PD-1抗体である。ある特定の実施形態に従い、セミプリマブの生物学的同等物は、配列番号1に対する90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するHCVRと、配列番号2に対する90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するLCVRとを含む抗PD-1抗体である。配列同一性は、当技術分野で公知の方法(例えば、GAP、BESTFIT、およびBLAST)により測定することができる。
【0054】
ある特定の実施形態に従い、セミプリマブの生物学的同等物は、1~15またはそれ以上のアミノ酸置換を有する配列番号1のアミノ酸配列を含むHCVRを含む抗PD-1抗体である。ある特定の実施形態に従い、セミプリマブの生物学的同等物は、1~10またはそれ以上のアミノ酸置換を有する配列番号2のアミノ酸配列を含むLCVRを含む抗PD-1抗体である。ある特定の実施形態に従い、セミプリマブの生物学的同等物は、1~15またはそれ以上のアミノ酸置換を有する配列番号1のアミノ酸配列を含むHCVRと、1~10またはそれ以上のアミノ酸置換を有する配列番号2のアミノ酸配列を含むLCVRとを含む抗PD-1抗体である。
【0055】
本開示はまた、1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する、本明細書で開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかの変異体を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片の使用も含む。例えば、本開示は、本明細書で開示される、HCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、例えば、10以下、8つ以下、6つ以下、4つ以下などの保存的アミノ酸置換を有する、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片の使用を含む。
【0056】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用されるPD-1阻害剤は、PD-L1に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片である。例えば、本開示の文脈で使用される、PD-L1「に特異的に結合する」抗体は、PD-L1またはその一部に、約1×10-8M以下のKD(例えば、より小さなKDは、より緊密な結合を表す)で結合する抗体を含む。「高アフィニティー」の抗PD-L1抗体とは、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)または液体アフィニティーELISAにより測定される、少なくとも10-8M、好ましくは10-9M、より好ましくは10-10M、さらにより好ましくは10-11M、さらにより好ましくは10-12MのKDとして表される、PD-L1に対する結合アフィニティーを有するmAbを指す。しかし、ヒトPD-L1に特異的に結合する単離抗体は、他の(非ヒト)種に由来するPD-L1分子のような、他の抗原との交差反応性を有する場合がある。
【0057】
開示される方法に使用される例示的な抗PD-L1抗体は、REGN3504である。開示される方法に使用することができる他の抗PD-L1抗体として、例えば、MDX-1105、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))、アベルマブ(BAVENCIO(商標))、LY3300054、FAZ053、STI-1014、CX-072、KN035(Zhangら、Cell Discovery、3、170004(2017年3月))、CK-301(Gorelikら、American Association for Cancer Research Annual Meeting(AACR)、2016年4月4日、抄録、4606)と称され、当技術分野で公知の抗体、または特許公報US7943743、US8217149、US9402899、US9624298、US9938345、WO2007005874、WO2010077634、WO2013181452、WO2013181634、WO2016149201、WO2017034916、またはEP3177649に明示される他の抗PD-L1のうちのいずれかが挙げられる。
【0058】
医薬組成物および投与
本開示は、本明細書で開示されるPD-1阻害剤を含む、治療用医薬組成物を提示する。このような医薬組成物は、適切な移入、送達、許容量耐性などをもたらす、適切な、薬学的に許容される担体、賦形剤、緩衝剤、および他の薬剤と共に製剤化することができる。全ての創薬化学者に公知の処方集:「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Company、Easton、PAでは、多数の適切な製剤を見出すことができる。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、蝋、油、脂質、小胞を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)(LIPOFECTIN(商標)のような)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油エマルジョンおよび油中水エマルジョン、エマルジョンであるCarbowax(多様な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびCarbowaxを含有する半固体混合物を含む。また、Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA、J Pharm Sci Technol、52:238~311(1998)も参照されたい。
【0059】
PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)の用量は、投与される対象の年齢および体格、標的の疾患、状態、投与経路などに応じて変動しうる。本開示のPD-1阻害剤が、がんの増殖を処置もしくは阻害するために使用される場合、PD-1阻害剤を、体重1kg当たり約0.1~約100mgの単回投与で投与することが有利でありうる。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続期間を調整することができる。ある特定の実施形態では、本開示のPD-1阻害剤は、少なくとも約0.1mg~約800mg、約1~約600mg、約5~約500mg、または約10~約400mgの初回投与として投与することができる。ある特定の実施形態では、初回投与に続き、PD-1阻害剤の、2回目または後続する複数回の投与を、ほぼ初回投与の量以下の量で行うことができ、この場合、後続の投与は、少なくとも1日間~3日間;少なくとも1週間、少なくとも2週間;少なくとも3週間;少なくとも4週間;少なくとも5週間;少なくとも6週間;少なくとも7週間;少なくとも8週間;少なくとも9週間;少なくとも10週間;少なくとも12週間;または少なくとも14週間隔てられる。
【0060】
多様な送達システム、例えば、リポソーム内、マイクロ粒子内、マイクロカプセル内の封入、突然変異体ウイルスを発現させることが可能な組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら(1987)、J.Biol.Chem.、262:4429~4432を参照されたい)が公知であり、本開示の医薬組成物を投与するのに使用することができる。導入の方法は、皮内経路、経皮経路、筋内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路を含むがこれらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜の内膜(例えば、経口粘膜、直腸内粘膜、腸粘膜など)を介する吸収により投与することができ、他の生物学的に活性の薬剤と併せて投与することができる。医薬組成物はまた、小胞、特に、リポソームによっても送達することができる(例えば、Langer(1990)、Science、249:1527~1533を参照されたい)。
【0061】
本明細書では、本開示のPD-1阻害剤を送達するための、ナノ粒子の使用もまた想定される。抗体コンジュゲートナノ粒子は、治療適用および診断的適用のいずれにも使用することができる。抗体コンジュゲートナノ粒子ならびに調製法および使用法については、Arrueboら、2009、「Antibody-conjugated nanoparticles for biomedical applications」、J.Nanomat.、2009巻、論文ID:439389、24頁により、詳細に記載されている。ナノ粒子は、細胞をターゲティングするように開発し、医薬組成物中に含有される抗体へとコンジュゲートさせることができる。薬物送達のためのナノ粒子についてもまた、例えば、US8257740またはUS8246995において記載されている。
【0062】
ある特定の状況では、医薬組成物は、制御放出システムにより送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、組成物の標的の近傍に設置することができるので、全身用量のうちの一部しか要求しない。
【0063】
注射用調製物は、静脈内注射、皮下注射、頭蓋内注射、および筋内注射、点滴注入などのための剤形を含みうる。これらの注射用調製物は、一般に公知の方法により調製することができる。
【0064】
本開示の医薬組成物は、標準的な注射針およびシリンジにより、皮下送達することもでき、静脈内送達することもできる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本開示の医薬組成物の送達において、たやすく適用される。このようなペン型送達デバイスは、再使用可能な場合もあり、ディスポーザブルの場合もある。再使用可能ペン型送達デバイスは、一般に、交換可能な医薬組成物を含有するカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になったら、空のカートリッジは、たやすく廃棄し、医薬組成物を含有する、新たなカートリッジで交換することができる。次いで、ペン型送達デバイスを、再使用することができる。ディスポーザブルのペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジが存在しない。そうではなく、ディスポーザブルのペン型送達デバイスは、デバイス内のレザバーに保持された医薬組成物をあらかじめ充填される。レザバーの医薬組成物が空になったら、全デバイスが廃棄される。
【0065】
上記で記載された経口使用または非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適合するように、適切な単位用量の剤形へと調製されると有利である。単位用量にある、このような剤形は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤などを含む。一部の実施形態では、含まれる抗体の量は、一般に、剤形当たり単位用量に約5~約600mg、例えば、約5~約350mg、または約10~約300mgである。
【0066】
ある特定の実施形態では、本開示は、治療量のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物または製剤を提示する。本開示の文脈で使用することができる、本明細書で提示される抗PD-1抗体を含む医薬組成物の非限定例は、US2019/0040137において開示されている。
【0067】
本開示はまた、本明細書で記載される治療的使用のための、PD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)を含むキットも提示する。キットは、典型的に、キットの内容物の意図される使用を表示するラベルと、使用のための指示書とを含む。本明細書で使用される、「ラベル」という用語は、任意の書面、またはキット上で、キット内に、もしくはキットと共に供給されるか、もしくは他の形でキットに付随する記録素材を含む。したがって、本開示は、がんに罹患した免疫抑制または免疫不全患者を処置するためのキットであって、(a)治療有効投与量のPD-1阻害剤抗体(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)と;(b)本明細書で開示される方法のうちのいずれかにおいてPD-1阻害剤を使用するための指示書とを含むキットを提示する。
【0068】
投与レジメン
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法は、例えば、具体的な治療用投与レジメンの一部としての、それを必要とする対象の腫瘍への、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)の複数回投与を含む。例えば、治療用投与レジメンは、PD-1阻害剤の、対象への、およそ毎日1回、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、8週間ごとに1回、12週間ごとに1回、毎月1回、2カ月間ごとに1回、3カ月間ごとに1回、4カ月間ごとに1回、毎日2回、2日ごとに2回、3日ごとに2回、4日ごとに2回、5日ごとに2回、6日ごとに2回、毎週2回、2週間ごとに2回、3週間ごとに2回、4週間ごとに2回、5週間ごとに2回、6週間ごとに2回、8週間ごとに2回、12週間ごとに2回、毎月2回、2カ月間ごとに2回、3カ月間ごとに2回、4カ月間ごとに2回、毎日3回、2日ごとに3回、3日ごとに3回、4日ごとに3回、5日ごとに3回、6日ごとに3回、毎週3回、2週間ごとに3回、3週間ごとに3回、4週間ごとに3回、5週間ごとに3回、6週間ごとに3回、8週間ごとに3回、12週間ごとに3回、毎月3回、2カ月間ごとに3回、3カ月間ごとに3回、4カ月間ごとに3回の頻度、もしくはそれ未満の頻度、または治療応答が達成される限りで必要に応じた頻度における、1回またはそれ以上の回数の投与を含みうる。
【0069】
ある特定の実施形態では、1回またはそれ以上の回数の投与は、少なくとも1回の処置サイクル、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回の処置サイクルで投与される。ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤の各回の投与は、患者の体重1kg当たり0.1、1、0.3、3、4、5、6、7、8、9、または10mgを含む。ある特定の実施形態では、各回の投与は、約5~800mgのPD-1阻害剤、例えば、約5、10、15、20、25、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750mgまたはそれ以上のPD-1阻害剤を含む。
【0070】
投与量
本明細書で開示される方法に従い、対象へと投与されるPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)の量は、一般に、治療有効量である。本明細書で使用される、「治療有効量」という用語は、がんを処置するために免疫不全患者へと投与されるPD-1阻害剤の量であって、非処値対象または異なる抗がん治療もしくは薬剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物以外の抗がん治療)で処置された対象と各々比較して、以下のうちの1つまたはそれ以上を結果としてもたらす量を意味する:(a)腫瘍増殖の阻害、または腫瘍壊死、腫瘍縮小、および/もしくは腫瘍消失の増大;(b)がんの症状または徴候、例えば、腫瘍病変の重症度の軽減または持続期間の短縮;(c)腫瘍の増殖および成長の遅延;(d)腫瘍転移の阻害;(e)腫瘍増殖の再発の防止;(f)がんを伴う対象の生存の延長;ならびに/または(g)手術の遅延。ある特定の実施形態では、この用語は、がんを処置するために免疫不全患者へと投与されるPD-1阻害剤の量であって、前出の効果のうちの1つまたはそれ以上を結果としてもたらし、かつ患者の免疫抑制または免疫不全状態に関する患者の安全性または生活の質も維持する量を指す。例えば、前出の効果のうちの1つまたはそれ以上に加えて、「治療有効量」は、PD-1阻害剤が全身投与されたときであっても、患者の安全性プロファイルを維持し、免疫抑制または免疫不全患者の臓器移植、自己免疫疾患、血液悪性腫瘍(例えば、CLLを含めた白血病のようなヘムがん)、化学療法、または患者の免疫系を弱める他の状態もしくは処置に関連する有害事象または有害な副作用を引き起こさない。
【0071】
ある特定の実施形態では、治療有効量のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)は、約0.05mg~約800mg、約1mg~約600mg、約10mg~約550mg、約50mg~約400mg、約75mg~約350mg、または約100mg~約300mgの抗体でありうる。例えば、多様な実施形態では、PD-1阻害剤の量は、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mg、約610mg、約620mg、約630mg、約640mg、約650mg、約660mg、約670mg、約680mg、約690mg、約700mg、約710mg、約720mg、約730mg、約740mg、約750mg、約760mg、約770mg、約780mg、約790mg、または約800mgである。
【0072】
個々の投与内に含有されるPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)の量は、対象の体重1キログラム当たりの抗体ミリグラム(すなわち、mg/kg)との関係で表すことができる。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用されるPD-1阻害剤は、対象へと、対象の体重1kg当たり約0.0001~約100mgの用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、患者の体重1kg当たり約0.1mg~約20mgの用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、本開示の方法は、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)の、患者の体重1kg当たり約1mg~3mg、1mg~5mg、1mg~10mg、1mg、3mg、5mg、または10mgの用量における投与を含む。
【0073】
ある特定の実施形態では、患者に投与されるPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)の個々の投与量は、治療有効量より少なくてもよい。すなわち、治療量以下の用量であってもよい。例えば、治療有効量のPD-1阻害剤が3mg/kgを含むのであれば、治療量以下の用量は、3mg/kg未満の量、例えば、2mg/kg、1.5mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、または0.3mg/kgを含む。本明細書で定義される、「治療量以下の用量」とは、それ自体では治療効果をもたらさないPD-1阻害剤の量を指す。しかし、ある特定の実施形態では、PD-1阻害剤の治療量以下の用量が複数投与されて、対象において治療効果が集合的に達成される。
【0074】
ある特定の実施形態では、各回の投与は、対象の体重に基づいて0.1~10mg/kg(例えば、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kg)のPD-1阻害剤(例えば、セミプリマブまたはその生物学的同等物)を含む。ある特定の他の実施形態では、各回の投与は、5~800mgのPD-1阻害剤、例えば、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mg、45mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、または800mgを含む。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、当業者に、本開示の方法および組成物を、どのようにして作り、使用するのかについての、完全な開示および記載を与えるために明示されるものであり、本発明者らが、それらの発明であると考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書で記載される、任意の特定の好ましい実施形態に限定されない。実際、本明細書を読めば、当業者には、実施形態の改変および変形形態が明らかな場合があり、その精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、これらを行うことができる。使用される数(例えば、量、温度など)に関して、精度を確認するように努めているが、一部の実験の誤差および偏差については、説明するものとする。そうでないことが指し示されない限りにおいて、部分比は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、摂氏度であり、室温は、約25℃であり、圧力は、大気圧であるか、または大気圧近傍の圧力である。
【実施例1】
【0076】
CSCCの処置に関するセミプリマブの試験
本試験は、リアルワールドの臨床環境(すなわち、介入臨床試験以外)において市販のセミプリマブで処置を施されている、CSCCを伴う成人患者の多施設、非介入、縦断的サバイバーシップコホート試験である。患者は、試験に登録された後、最長3年間追跡される。本試験は、セミプリマブを施されているCSCCを伴う成人患者の特徴およびサバイバーシップに関する長期データを収集し、リアルワールドの使用パターンおよびCSCCに対するセミプリマブの有効性を特徴付けるようにデザインされる。
【0077】
セミプリマブは、PD-1の、PD-L1およびPD-L2との相互作用を強力に遮断する、PD-1受容体に対する、高アフィニティーの、ヒンジ安定化IgG4ヒトモノクローナル抗体である。セミプリマブは、本明細書で記載される、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖;配列番号1/2を含む、HCVR/LCVRアミノ酸配列対;ならびに配列番号3~8を含む、重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3)をそれぞれ含む。また、US9987500も参照されたい。
【0078】
治癒的手術または治癒的放射線の候補ではなかった転移性(リンパ節または遠隔)CSCCまたはlaCSCCを伴う患者におけるセミプリマブの先行試験(NCT012383212およびNCT01760498)は、5年以内に免疫抑制剤での全身療法を必要とする自己免疫疾患;固形臓器移植の履歴;およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)での感染症、B型肝炎、またはC型肝炎を伴う患者を除外するものであった。結果的に、これらの患者を承認申請用試験から除外していたこと(例えば、慢性リンパ球性白血病[CLL]、免疫不全)から、進行性CSCCを伴う主要集団におけるデータがこれまで不足しており;よって、進行性CSCCに関する処置転帰についての利用可能な臨床エビデンスを拡大する必要性が存在する。
【0079】
目的:本試験の目的は、以下を含む:(i)リアルワールドの臨床環境で進行性CSCCを伴う患者を処置するために3週間ごと(Q3W)に投与されるセミプリマブ350mgの有効性を記載すること;(ii)リアルワールドの臨床環境でセミプリマブ処置を施されている進行性CSCCを伴う患者における免疫関連有害事象(irAE)、注入に伴う反応(IRR)、および処置関連の重篤な有害反応(SAR)の発生率に基づいて、セミプリマブの安全性を評価すること;(iii)CSCCを伴う患者についてのリアルワールドの環境での患者報告の生活の質(QOL)および機能状態、ならびに医師報告のパフォーマンスステータスを含めた患者経験価値を記載すること;(iv)セミプリマブでの処置を受けているCSCCを伴う患者についての健康関連転帰に潜在的に関連しうると思われるベースラインの特徴を記載すること;(v)リアルワールドの環境でCSCCに対する処置としてセミプリマブを施される患者を記載すること;(vi)CSCCに対するセミプリマブのリアルワールドの使用パターンを記載すること;(vii)CSCC患者におけるセミプリマブの長期の作用および有効性を調査すること;(viii)病因にかかわりなく、利用可能なデータに従って、進行性CSCCを伴う免疫抑制または免疫能力を有する患者におけるセミプリマブの有効性を記載すること;(ix)利用可能なデータに従って、CSCCに対する先行放射線療法への曝露後のセミプリマブの有効性を記載すること;ならびに(x)病因にかかわりなく、利用可能なデータに従って、進行性CSCCを伴う患者における第一選択(1L)またはそれ以降の全身治療としてのセミプリマブの有効性を記載すること。
【0080】
試験の説明:有効性患者集団は、セミプリマブを投与されており、応答(安定疾患[SD]、部分奏効[PR]、完全奏効[CR]、進行性疾患[PD])について医師により評価されているものである。試験における各患者の追跡の持続期間は最長36カ月間である。各参加施設で、リアルワールドの環境でセミプリマブを現在施されている、またはリアルワールドの環境でセミプリマブでの処置を開始しようとする全てのCSCC患者がスクリーニングされ、登録目標が達成されるまで試験に参加する機会が与えられる。最低限250例の患者、目標350例の患者が、最大100箇所の試験施設で登録される。登録は、患者500例を超えない。各患者は、3年間の追跡が完了した時点または死亡の時点で試験を完了したと見なされる。
【0081】
試験対象集団:本試験における患者には、リアルワールドの環境でCSCCに対して市販のセミプリマブでの処置を最近開始したか、または開始する予定の≧18歳の男女が含まれる。参加施設は、介入臨床試験以外のリアルワールドの環境でセミプリマブの処置を施される患者を登録する。全ての組入れ基準を満たし、いずれの除外基準(以下参照)も満たしておらず、インフォームドコンセントに署名した患者が試験に含まれる。
【0082】
組入れ基準:患者は、試験への組入れに適格であるためには以下の基準の全てを満たさなければならない:(1)18歳;(2)承認された処方情報に従った、進行性CSCCに対するセミプリマブおよび処方されたセミプリマブでの処置に適格であること、(a)R2810-ONC-1540臨床試験でのセミプリマブ処置を完了した後にセミプリマブでの処置を継続している患者は、リアルワールドの環境でセミプリマブでの処置を開始した時点で本試験に参加するのに適格である;(b)前向きデータ収集の完全性および容易性のために、患者は、セミプリマブの3回目の投与の前に登録されることが推奨される;(3)進行性CSCCに対する標準的な臨床ケアを遵守する意思および能力があること;(4)試験関連の質問票を理解し、記入する能力があること;(5)署名したインフォームドコンセントを提供すること。
【0083】
除外基準:患者は、以下の基準のうちのいずれかを満たすならば試験に適格ではない:(1)CSCC以外の適応でセミプリマブを施されている;(2)意図される処置計画の遵守を制限することまたは患者がQOL評価を適正に記入することを妨げることが予測されると思われる、試験に参加する患者の能力に支障をきたす可能性がある任意の状態、(例えば、不安定な社会的状況、例えば、無住居、または追跡を信用できないものにする精神医学的状態、例えば、統合失調症、進行性うつ病、作用物質の乱用、または重度の認知障害もしくは他の併存症);(3)いずれかの治験薬(セミプリマブが含まれる)の投与または手順(生存の追跡が含まれる)を含む、いずれかの試験に同時に参加している患者。
【0084】
患者経験価値の評価:
機能状態および疾患に関連する症状を含む健康関連の生活の質は、ベースラインおよび追跡来院時に以下の尺度により取得する:European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Quality of Life Questionnaire Core Module 30(EORTC QLQ-C30)およびModule for Elderly Cancer Patients(EORTC QLQ-ELD14);Skin Care Index(SCI);Pain Numerical Rating Scale(NRS)によって測定される疼痛;およびSun Exposure Behaviour Inventory(SEBI)。試験の適格性を決定するため、またはベースライン集団を特徴付けるために、以下の情報を収集する:人口学的特徴、病歴/手術歴、およびSEBI質問票の記入。
【0085】
SEBIは、皮膚がんの発生率および危険性軽減の試験に使用される、過去および現在の日光曝露、ならびに現在の日焼け行動(sun behavior)の有用な尺度を提供する簡潔な自己記入式質問票である(Jenningsら、J Eur Acad Dermatol Venereol、2013;27(6):706~15)。患者は、本試験をベースライン時のみ記入する。
【0086】
SCIは、頭頚部の非黒色腫皮膚癌(NMSC)を伴う患者について検証される、15項目の疾患特異的QOL評価尺度である。それは、NMSCを伴う患者における行動修正および危険性認識を評価するために使用される(Rheeら、Arch Facial Plast Surg、2006;8(5):314~8)。患者は、インフォームドコンセントの時点でこの評価に記入し、次いで第3、5、および8サイクルの1日目、次いで最初の2年間に3カ月ごと、そして3年目の間に6カ月ごとに記入する。SCIでの評価の尺度は以下を含む:3つのスケール(心理、社会、外観)。
【0087】
Pain NRSは、患者が過去一週間の最悪時および平均の疼痛を報告するために記入する簡単な評価ツールである。患者は、処置前、他の検査または手順の投与前、および彼らの健康状態についてのいずれかの話し合いの前にPain NRS質問票に記入する(ウィリアムソンら、J Clin Nurs、2005;14(7):798~804)。疼痛は、患者のベースライン来院時、次いで以降で概要を述べる処置サイクルの1日目にPain NRSにより繰り返し測定する。
【0088】
患者のQOLは、患者のベースライン来院時、次いで以降で概要を述べる処置サイクルの1日目にEORTC QLC-C30およびEORTC QLQ-ELD14により繰り返し測定する。EORTC QLQ-C30での評価の尺度は、全般的健康、5つの機能スケール(身体、役割、心理、認知、社会)、3つの症状スケール、6つの個々の症状を含む。EORTC QLQ-ELD14での評価の尺度は、5つのスケールを含む(移動、他人についての心配、将来についての心配、目的の維持、病気の負担)。
【0089】
SCI、Pain NRS、EORTC QLQ-C30、およびEORTC QLQ-ELD14について、全ての質問票は、第3、5、8、13、17、21、25、29、33、41、および49サイクルでの処置的投与の前に患者によって記入されなくてはならない。患者がセミプリマブを中断するが試験に残留するならば、質問票は、約3カ月ごとのSOCの追跡来院時に記入されなければならない。セミプリマブの各注入は、第1サイクルの処置と見なされる。
【0090】
他の手順および評価:本試験で実施予定の他の手順および評価には、以下が含まれる:身体検査;Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)評価;標的とする履歴/システムレビュー(ROS);およびセミプリマブIV投与(少なくとも1回の投与が必要とされる)。本試験で実施することができる追加の手順および評価には、以下が含まれる:血液学および血液化学;X線撮影の疾患評価(RECIST 1.1またはWHO基準を使用するCT、PET、もしくはMRIスキャン、またはX線);医学写真;臨床的疾患評価;併用医薬品;セミプリマブ開始後の他のCSCC介入;ならびにSAR/irAE/IRR。
【0091】
有害事象および有害反応:
有害事象(AE)は、試験薬との因果関係を問わず、試験薬を投与され患者における何らかの不都合な医療上の出来事である。したがって、AEは、試験薬に関連があると考えられるかどうかにかかわらず、試験薬の使用に時間的に関連する何らかの意図されない好ましくない兆候(異常な検査所見が含まれる)、症状、または疾患である(ICH E2A Guideline.Clinical Safety Data Management:Definitions and Standards for Expedited Reporting、1994年10月)。
【0092】
有害反応は、その医薬品と関連することが疑われるAEとして定義される。これは、医薬品とAEとの間の因果関係には少なくとも合理的な可能性があることを意味している。(ICH E2A Guideline.Clinical Safety Data Management:Definitions and Standards for Expedited Reporting、1994年10月)。
【0093】
重篤な有害事象(SAE)は、何らかの不都合な医療上の出来事であって、いかなる用量であっても:(i)死をもたらすものである-全ての死亡が含まれ、試験薬に完全に関連がないと思われるもの(例えば、患者が同乗者である交通事故)であっても含まれる;(ii)命を脅かすものである-事象の時点で患者に差し迫った死亡の危険性がある。これは、より重症型で生じた場合に死を引き起こすおそれがあるAEは含まない;(iii)患者入院期間または既存の入院期間の延長を必要とするものである。患者入院期間とは、病院または救急室への24時間より長い入院と定義される。既存の入院期間の延長とは、その事象に対して当初予想されたより長い院内滞留時間、またはそれが新たなAEの発症により延長されることとして定義される;(iv)持続的なまたは相当な能力障害/無能力(通常の生活機能を遂行する能力の実質的な崩壊)をもたらすものである;(v)先天性異常/先天性欠損である;(vi)重要な医学的事象である。重要な医学的事象とは、直ちに命を脅かすか、または死亡もしくは入院をもたらすものではないが、患者を危うくするか、または上に列挙した他の重篤な転帰のうちの1つを防止するために介入が必要とされるもの(例えば、アレルギー性気管支痙攣のための救急室または家庭での集中処置;入院をもたらさない血液異混和症もしくは痙攣;または薬物依存もしくは薬物乱用の発症)である。しかし、事前(ICFに署名する前)に計画された手順、重症度が悪化しない既存の状態のために入院を必要とする処置、および緩和または社会的ケアのための入院はSAEではなく;そして根底にある悪性腫瘍の典型的な進行に一致する徴候にのみ起因する入院または死亡はSAEではない。
【0094】
重篤な有害反応(SAR)は、処置に関連し、かつSAEの重篤基準のいずれかを満たす薬物有害反応(ADR)である。
【0095】
免疫関連有害事象(irAE)は、抗PD-1/PD-L1(セミプリマブが含まれる)および他の免疫チェックポイント阻害剤治療での処置に関連する他の既知の病因がなく;かつ免疫現象に一致したAEである。重度または致命的になるおそれのある免疫関連AEは、いずれの臓器系または組織にも生じうる。irAEは、通常、PD-1/PD-L1遮断抗体での処置中に現れるが、irAEは、PD-1/PD-L1遮断抗体を中断した後に現れることもある。irAEの例として、限定するものではないが、肺臓炎、大腸炎、肝炎、免疫皮膚反応、免疫内分泌疾患(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、副腎不全、甲状腺炎、下垂体炎、1型真性糖尿病)、腎炎、脳炎、髄膜炎、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症などが挙げられる。詳細については、承認されたUSPIを参照されたい。
【0096】
注入に伴う反応(IRR)とは、セミプリマブ注入中または注入が完了した後24時間以内に生じる何らかのADRとして定義される。兆候および症状は、通常、薬物注入中または薬物注入後24時間以内に発症し、一般に、開始から24時間以内に完全に消散する。IRRの一般的症状として、発熱、悪寒、咳、頻拍症、低血圧、喘鳴、および発疹が挙げられる。他の重症型のIRRとして、アナフィラキシーおよびショックを挙げることができる。AEおよびIRRの重症度は、現行のNCI-CTCAE v5.0評定システムを使用して評定するか、または、NCI-CTCAE v5.0に列挙されていなければ、表1に従い評定する。
【0097】
【0098】
有効性転帰は、ORR、DCR、DOR、応答までの時間、PFS、OS、TTTF、およびDSDに関して評価される(表2)。ORR、DCR、DSD、CR、PR、およびSDは、患者の例数および百分率に関して95%CIと共に報告される。DORおよびTTTFは、中央値および範囲で要約され、カプラン-マイヤー手法により表示される。PFSおよびOSは、中央値(観察された場合)で要約され、カプラン-マイヤー手法により表示される。PFSおよびOS率は、節目の時点(3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、およびその後36カ月まで6カ月ごと)で報告される。
【0099】
【0100】
サブグループ解析:ORR、PFS、DOR、およびOSの転帰について、解析は、以下のサブグループについて実施される:(i)進行性CSCCを伴う免疫抑制患者、病因は問わない;(ii)進行性CSCCを伴う非免疫抑制患者、病因は問わない;(iii)進行性CSCCを伴う免疫不全の患者、病因は問わない;(iv)第一選択(1L)処置としてのセミプリマブで処置された患者;(v)第二選択(2L)処置としてのセミプリマブで処置された患者(2L);(vi)放射線療法に先行曝露された患者。
【実施例2】
【0101】
進行性CSCCを伴う免疫抑制および/または免疫不全患者におけるセミプリマブ処置の試験の結果
本実施例は、進行性CSCCを伴う免疫抑制および/または免疫不全(IS/IC)患者のCemiplimabAb-rwlc Survivorship and Epidemiology(C.A.S.E.)試験からの結果を示す。そのような患者は、固形腫瘍および皮膚悪性腫瘍の危険性が増大している。これらの患者は、臨床試験から除外されることが多いため、これらの患者における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の安全性および有効性に関して存在するデータは限られている。本実施例は、C.A.S.E.試験(NCT03836105)に登録された進行性CSCCを伴う免疫抑制および/または免疫不全患者のコホートからの安全性および有効性の結果について記載する。
【0102】
本試験の目的は、以下を含む:(i)リアルワールドの臨床環境で進行性CSCCを伴う患者を処置するために3週間ごと(Q3W)に投与されるセミプリマブ350mgの有効性を記載すること;(ii)リアルワールドの臨床環境での進行性CSCCを伴う患者における処置関連の免疫関連有害事象(irAE)、注入に伴う反応(IRR)、および処置関連の重篤な有害反応(TSAR)の発生率に基づいて、セミプリマブの安全性を評価すること;ならびに(iii)CSCCを伴う患者におけるセミプリマブの長期の有効性および生活の質(QoL)を調査すること。
【0103】
方法:C.A.S.E.は、セミプリマブで処置される進行性CSCCを伴う患者における有効性、安全性、生活の質、およびサバイバーシップを評価する、前向き、リアルワールド、多施設、非介入、縦断的試験である。本試験のデザインの概略図を
図1に示す。慣例的な標準治療に従って患者に3週間ごとにセミプリマブ350mgを静脈内に施した。患者の人口学的特徴、疾患の特徴、免疫抑制、および関連する病歴を収集した。免疫抑制レジメンは、患者によって異なっていた。客観的奏効率(ORR)、安全性、および忍容性についての治験責任医師の評価を行った。
【0104】
臨床上の判断に従って進行性CSCCに対して処置される全員を本試験に組み入れた。IS/IC患者は、病歴に以下の診断の1つまたはそれ以上を有するとして特定した:同種骨髄移植、固形臓器移植、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、炎症性腸疾患、白血病、ループス、リンパ腫、多発性骨髄腫、多発性硬化症、乾癬もしくは乾癬性関節炎、関節リウマチ、真性多血球血症、骨髄増殖性疾患、およびプレドニゾンを用いた慢性閉塞性肺疾患(COPD)。臨床活性および安全性評価項目は、客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、処置関連irAE、IRR、およびTSARを含む。
【0105】
結果:138例の患者がC.A.S.E.試験に登録され、そのうち30例の患者が、臨床報告された併存症および/または医薬品の使用に基づいたIS/ICであった。30例のIS/IC患者について、年齢中央値は75.7歳[範囲:50~90]であり、80%は男性であった(表3)。
【0106】
【0107】
試験対象集団は、固形臓器移植を施された6例のIS/IC患者(n=6、20%)、血液悪性腫瘍を伴う14例の患者(n=14、47%)、および自己免疫障害を伴う10例の患者(n=10、33%)を含んでいた(表4)。
【0108】
9例の患者は、≧48週間の曝露の持続期間を有していた(
図2)。セミプリマブ曝露の持続期間中央値は21.6週間(四分位数間範囲:9.9~48.1、範囲:0~83)であった。
【0109】
【0110】
処置サイクルの数の中央値は6.5であった(表5)。
【0111】
【0112】
表6に示すように、ORRは45.5%(95%信頼区間[CI]:24.4~67.8)であった。DCRは63.6%(95%CI:40.7~82.8)であった。
【0113】
【0114】
緩徐進行型CLLを伴う6例の患者のうち2例が部分奏効を有し、さらなる2例が安定疾患を有し、2例の患者の応答評価はまだ完了していなかった。1例の患者は有害事象のために処置を中断し、8例の患者は何らかの理由(死亡または試験からの離脱が含まれる)のために処置を中断した。4例の死亡が報告されたが;いずれもセミプリマブに関連するまたは帰属するとは見なされなかった(1例の死亡は敗血症、1例は低酸素症、1例は肺炎に起因するものであり、1例は原因不明の理由に起因するものであった)。
【0115】
合計して、6例の患者(20%)が、帰属にかかわりなくいずれかのグレードの処置関連irAEを経験した。患者が経験したirAEには、疲労感、前頭部および胸部のそう痒症、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、血中クレアチニンの増加、リンパ球数の減少、甲状腺機能低下症、および急性腎不全が含まれる。1例のTSARが報告された。IRRはなかった。処置関連の死亡は報告されなかった。
【0116】
結論:リアルワールドの臨床環境での進行性CSCCを伴う免疫抑制および/または免疫不全患者のこのコホートにおけるセミプリマブの安全性、忍容性、および有効性は、これらの患者が除外された臨床試験で観察されたものと一致する。このコホートでは、ORRは45.5%であった(セミプリマブの3回目の投与後に登録された患者は除外する)。
【実施例3】
【0117】
高危険性CSCCを伴う患者における手術および放射線療法後のアジュバントセミプリマブ対プラセボのC-POST第3相、無作為化、二重盲検試験
本実施例は、手術および術後RT(最小総線量50Gy、無作為化前10週間以内)を完了した高危険性CSCCを伴う患者のためのアジュバント処置としてのセミプリマブを、外科的および臨床病理学的所見に基づいて評価するための計画試験に関する(NCT03969004)。本試験は、登録受付中である。
【0118】
以下から選択される少なくとも1つの高危険性特性を有する患者が適格である:(1)(a)リンパ節節外浸潤および少なくとも1つの≧20mmの結節を伴う、または(b)リンパ節節外浸潤にかかわりなく外科病理報告で陽性である少なくとも3つのリンパ節を伴う、結節性疾患;(2)イントランジット転移;(3)T4病変;(4)神経周囲侵襲;ならびに(5)少なくとも1つの他の危険因子を伴う再発性CSCC。少なくとも3つのリンパ節にCSCCが関与する(特性1b)患者は、適格基準に含まれる。これらの基準により、積極的処置を受けていない慢性リンパ球性白血病(CLL)を伴う患者が登録されることが可能になる。
【0119】
本試験には、南北アメリカ、ヨーロッパ、およびアジア太平洋地域における約100の施設からの412例の患者が登録されることが予想されている。試験の主要目的は、手術および放射線療法(RT)後の、アジュバントセミプリマブで処置された高危険性CSCCを伴う患者の無病生存(DFS)を、プラセボで処置されたものに対して比較することである。副次目的は以下を含む:手術およびRT後の、アジュバントセミプリマブで処置された高危険性CSCCを伴う患者の全生存(OS)を、プラセボで処置されたものに対して比較すること;手術およびRT後の患者の局所領域での再発までの期間(FFLRR)に及ぼすアジュバントセミプリマブの効果をプラセボのものと比較すること;手術およびRT後の患者の遠隔再発までの期間(FFDR)に及ぼすアジュバントセミプリマブの効果をプラセボのものと比較すること;ならびに手術およびRT後の続発性原発CSCC腫瘍(SPT)の累積発生率に及ぼすアジュバントセミプリマブの効果をプラセボのものと比較すること;手術およびRT後の高危険性CSCC患者におけるアジュバントセミプリマブの安全性およびプラセボのものを評価すること;ならびにヒト血清におけるセミプリマブの薬物動態および免疫原性を評価すること。
【0120】
試験デザイン:本試験は、手術および術後RTを完了している、高危険性の再発性疾患に関連する特性を有するCSCC患者に対するアジュバント処置としてセミプリマブをプラセボに対して比較する、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、多施設、第3相試験である。理想的には、術後RTは、実現可能であれば手術後4~6週頃に開始するべきである。試験対象集団は、外科病理で高危険性特性を有する、手術および術後RTを完了しているCSCC患者を含む。
【0121】
本試験は2部からなる。第1部(盲検化)では、最長28日間のスクリーニング期間の後、患者を無作為に1:1に割り当てて、セミプリマブ350mgまたはプラセボを静脈内に3週間ごとに12週間、続いてセミプリマブ700mgまたはプラセボを6週間ごとに36週間、最長48週間の総治療期間で施す。患者は、疾患の再発または試験の終了まで処置後の追跡を受ける。試験の第1部は、主要評価項目を裏付ける。任意の第2部(非盲検化)では、疾患再発を経験するプラセボアーム中の患者、および第1部での48週間の処置完了後≧3カ月での疾患再発を経験するセミプリマブアーム中の患者が、オープンラベルのセミプリマブ350mgをQ3Wで最長96週間施されるのに適格である。
図3は、試験の盲検化部分のデザインの概要を示す(第1部)。第2部は、再発後の追加のセミプリマブ処置の機会を提供するが、主要評価項目であるDFSには影響を及ぼさない。
【0122】
第1部において割り当てられる処置:術後RTを完了しており、スクリーニング評価後に適格である、外科病理で高危険性特性を有する患者をセミプリマブまたはプラセボに1:1に無作為化する。処置スケジュールは、いずれの処置群でもQ3Wで12週間、続いてQ6Wで36週間である。セミプリマブに無作為化された患者は、セミプリマブ350mg、IV、Q3Wで12週間、続いて700mg、Q6Wで36週間処置する。プラセボに無作為化された患者は、同じ計画頻度で、Q3Wで12週間、続いてQ6Wで36時間処置する。いずれの群も、48週間の総持続期間、または許容できない毒性、疾患再発、死亡、もしくは同意の撤回まで処置する。セミプリマブまたはプラセボの初回の投与は、無作為化から5日間以内に投与される(無作為化の日は含まない)。無作為化は、RTの完了後2~10週間の間に行われる。患者は、各セミプリマブまたはプラセボ処置前に診療所内で評価する。
【0123】
第1部における処置後追跡:追跡期間は、計画された48週間の処置期間の完了または何らかの他の理由による処置の早期中断(例えば、疾患再発、または中断が必要とされる有害事象(AE))のいずれかに起因する処置の中断後に開始する。追跡の最初の2年間に、患者は4カ月ごとに臨床的および放射線学的評価を受ける。追跡の3年目およびそれ以降に、患者は6カ月ごとに臨床的および放射線学的評価を受ける。
【0124】
第2部(後続セミプリマブ処置):試験の第1部の間に疾患再発を経験する患者には、疾患再発についての要件が満たされるならば、第2部における任意の後続のセミプリマブ治療の可能性がある。第1部でプラセボに割り当てられた患者には、第2部でセミプリマブに「クロスオーバー」する選択肢がある。第1部でセミプリマブに割り当てられた患者には、第2部でセミプリマブ「再処置」の選択肢がある。第2部でのセミプリマブ処置は、試験での患者の初めての再発のみに許可される。第2部に入った患者には、セミプリマブ350mgをQ3Wで最長96週間、または疾患進行、許容できない毒性、同意の撤回、死亡、もしくは追跡不能まで施すことができる。セミプリマブ処置の完了後≧3カ月で疾患再発を経験するセミプリマブアームの患者は、以下の条件が満たされるならば、後続のセミプリマブ処置に関して考慮される:計画された48週間のセミプリマブ処置の完了後≧3カ月(90日間±3日間)での疾患再発の記録(計画されたセミプリマブ処置の1回またはそれ以上の投与が48週間の処置期間中で欠落した場合であっても);先行するセミプリマブが許容できない毒性のために中断されなかった;スクリーニング手順を繰り返し、引き続き試験の適格基準を満たす(選択適格基準は除外する)。
【0125】
試験対象集団:標的患者集団は、外科的切除に続いてRTを受けている成人の高危険性CSCC患者からなる。
【0126】
組入れ基準:患者は、試験への組入れに適格であるためには以下の基準を満たさなければならない:(1)≧18歳の男女(日本の場合のみ、≧21歳の男女);(2)病理学的に確認されたCSCC(原発性CSCC病変のみ、またはリンパ節転移を伴う原発性CSCC、または流入領域リンパ節エシュロン(draining lymph node echelon)内で以前に処置された、既知の原発性CSCC病変を伴うCSCCリンパ節転移)を、全ての疾患の巨視的な肉眼的切除で切除した患者;(3)以下のうちの少なくとも1つにより定義される高危険性CSCC:(a)以下を伴う結節性疾患(i)外科病理報告でのリンパ節節外浸潤(ECE)*および少なくとも1つの≧20mmの結節、ならびに/または(ii)ECEにかかわりなく、外科病理報告で陽性の≧3のリンパ節(ここで、ECEは、間質反応に関連するしないにかかわらず、リンパ節被膜を通り抜けた周囲の結合組織への進展として定義される。肉眼的なECEの明白なエビデンス(臨床検査での皮膚の侵襲、筋系の浸潤/隣接する構造物への固着として定義される)は、これらをECE陽性として分類するのに十分に高い閾値である(AJCC、2017));(b)イントランジット転移(ITM)、原発病変から>2cmであるが、所属リンパ節領域(regional nodal basin)を超えない皮膚または皮下転移として定義される(Leitenberger、2016);(c)HN病変(AJCC、2017)および非HN病変(UICC、Manual of Clinical Oncology、O’Sullivan Bら、第9版、2015)を含む、T4病変;(d)神経周囲侵襲(PNI)、指定された神経の臨床的および/または放射線学的関与として定義される(UICC、2015);(e)再発性CSCC、以前に切除された腫瘍の領域内に生じるCSCCであり、以下の追加の特性のうちの少なくとも1つが加わるものとして定義される(AJCC、2017):再発病変に関連する≧N2bの疾患;公称≧T3(直径≧4cmの再発病変、または軽微な骨びらん、または正常な隣接する上皮の顆粒層から測定される>6mmの深い侵襲);低分化組織像および直径≧20mmの再発病変。再発腫瘍は、元々の手術創の推定される中心から測定される最終的な欠損の最も大きい半径の半径測定値により、以前に切除されたCSCCの領域内であることが記録されていなければならない;(4)無作為化から2~10週間以内の治癒目的の術後RTの完了(同時の化学放射線療法は許容される)。患者は、50Gyの(頭頚部原発部位および非頭頚部原発部位に対して)最小の生物学的等効果線量(BED)を以前の肉眼的疾患の部位に施されていなければならない;(5)Eastern Cooperative Oncology Groupパフォーマンスステータス(ECOG PS)≦1;(6)適切な肝機能:(a)総ビリルビン≦1.5×正常値の上限(ULN);(b)トランスアミナーゼ(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]およびアラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT])≦3×ULN;(c)アルカリホスファターゼ(ALP)≦2.5×ULN;(7)適切な腎機能:血清クレアチニン≦1.5×ULNまたはCockcroftおよびGaultの方法に従う推定クレアチニンクリアランス(CrCl)>30mL/分;(8)適切な骨髄機能:(a)ヘモグロビン≧9.0g/dL;(b)絶対好中球数(ANC)≧1.0×109/L;(c)血小板数≧75×109/L;(9)保健当局および機関のガイドラインにより指定される場合、試験患者または法的に許容される代理人により署名されたインフォームドコンセントを提供する意思があり、可能でなくてはならない;(10)放射線療法からの毒性が、グレード1以下に消散されていなければならないが、但し、以下の毒性:味覚異常、疲労感、口内乾燥、開口障害、脱毛症、線維化、口腔咽頭粘膜炎、皮膚炎、皮膚潰瘍形成、または放射線照射野における浮腫は除外し、これらはグレード2以下に消散されていなければならない;(11)診療所への来院および試験関連手順の遵守を行う意思があり、可能である;(12)試験関連の質問票を理解し、記入することができる。
【0127】
除外基準:以下の基準のいずれかを満たす患者は、試験から除外される:(1)非皮膚部位(例えば、乾燥した赤い唇[赤唇]、口腔、口腔咽頭、副鼻腔、咽頭、下咽頭、鼻咽頭、唾液腺、鼻粘膜、肛門生殖器領域、または原発不明のSCCリンパ節転移)から生じる扁平上皮癌(SCC)。耳下腺SCCの患者の場合、現在の耳下腺疾患が以前の皮膚病変から生じたというのが治験責任医師の所見であれば、そのような患者は「原発不明」とは見なされない。そのような患者は、本試験で選別することができる;(2)限局性CSCC以外の併発悪性腫瘍および/または無作為化日から3年以内の限局性CSCC以外の悪性腫瘍の履歴、但し、転移または死亡の危険性が無視できる腫瘍、例えば、適切に処置された皮膚の(BCC)、子宮頚部上皮内癌、または乳管内癌、または管理計画が積極的監視である低危険性の早期前立腺腺癌(T1-T2aN0M0およびグリーソンスコア≦6および前立腺特異抗原(PSA)≦10ng/mL)、または管理計画が積極的監視である、記録されるPSA倍加時間が>12カ月である生化学的のみの再発を伴う前立腺腺癌(D’Amico、2005;Pham、2016)を除外する;(3)血液悪性腫瘍を伴う患者(注:慢性リンパ球性白血病[CLL]を伴う患者は、登録から6カ月以内にCLLに対する全身療法を必要としていなかったならば除外されない);(4)無病期間が少なくとも3年間でなければ、遠隔性転移CSCC(内臓または遠隔の結節)の履歴を有する患者(除外基準2に従って、登録前に切除および照射された流入領域リンパ節領域中の疾患の所属リンパ節転移は、除外されない);(5)免疫関連有害事象(irAE)の危険性を示唆する可能性がある、進行中または最近の(無作為化日から5年以内)、全身的な免疫抑制処置での処置が必要とされる相当な自己免疫疾患のエビデンス。以下は除外されない:白斑、消散している小児喘息、1型糖尿病、ホルモン補充のみを必要とする残存甲状腺機能低下症、または全身処置を必要としない乾癬;(6)無作為化日から4週間または5半減期(どちらか長い方)以内に治験薬または治験デバイスの試験に参加していたこと。しかし、免疫PET治験試薬で処置に関与する試験を施されていたまたは登録していた患者は除外されない;(7)無作為化日から28日以内に生ワクチンを施されていること;(8)CSCCに対する全身的な先行抗がん免疫療法を受けていること;免疫調節剤の例として、限定するものではないが、CTLA-4、4-1BB(CD137)、またはOX-40の遮断薬、治療ワクチン、抗PD-1/PD-L1またはPI3Kδ阻害剤が挙げられる;(9)初回のセミプリマブ/プラセボ投与前4週間以内の免疫抑制性コルチコステロイドの投与(毎日>10mgのプレドニゾンまたは等価物)。短期間のステロイド(例えば、造影剤に対して過敏であることによる、イメージング評価の予防)を必要とする患者は除外されない。生理的補充(例えば、副腎不全)のためにステロイドを摂取する人は除外されない;(10)無作為化日から4週間以内に、承認された抗がん全身療法で処置を施されているか、または組入れ基準6~8に記載する通りの検査値の変化を除き、何らかの急性毒性からまだ回復していない(すなわち、≦グレード1またはベースライン)。ビスホスホネートまたはデノスマブが施されている患者は除外されない;(11)先行する同種幹細胞移植または自家幹細胞移植;(12)薬物関連毒性のために抗がん免疫調節療法を永続的に中断している患者;(13)スクリーニング/登録の前年の脳炎、髄膜炎、または制御されない発作;(14)無作為化日前6カ月以内の心筋梗塞を伴う患者;(15)無作為化日から2週間以内の入院および/または静脈内抗生物質療法を必要とする何らかの感染症;(16)活動性結核;(17)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎もしくはC型肝炎ウイルス(HBVまたはHCV)感染での制御されない感染症;または免疫欠損の診断。感染症を(自然にまたは安定な抗ウイルスレジメンでのいずれかで)制御した(検出不可能なウイルス量(HIV RNA PCR)および350を上回るCD4カウント)、既知のHIV感染症を伴う患者は許可される。制御されたHIV感染症を伴う患者については、現地の標準に従ってモニタリングが実施される。患者は、スクリーニング時にHBVおよびHCVについて検査される。感染症を制御した(検出限界を下回る血清HBV DNA PCR、およびHBVに対する抗ウイルス療法が施されている)、HBVを伴う患者(B型肝炎表面抗原陽性;HepBsAg+)は許可される。制御された感染症を伴う患者は、HBV DNAの定期的なモニタリングを受けなければならない。患者は、治験薬の最終投与から少なくとも6カ月を超えて抗ウイルス療法を続けなければならない。感染症を(自然にまたは成功した先行する一連の抗HCV療法に応答して)制御した(PCRにより検出不可能なHCV RNA)、HCV抗体陽性(HCV Ab+)である患者は許可される;(18)過去5年以内の免疫関連肺臓炎の履歴;(19)管理を支援するために免疫抑制用量のグルココルチコイドを必要とする、間質性肺疾患(例えば、発性肺線維症、器質化肺炎)または活動性の非感染性肺臓炎の履歴。放射線照射野における放射線肺臓炎の履歴は、肺臓炎が無作為化日前≧6カ月に消散されているならば許可される;(20)抗体処置に帰属する記録されたアレルギー反応または急性過敏症反応の履歴;(21)セミプリマブ薬物製品中の賦形剤のいずれかに対する既知の過敏症またはアレルギー;(22)固形臓器移植の履歴を有する患者(先行する角膜移植(複数可)を有する患者は除外されない);(23)治験責任医師の判断で、安全上の高危険性および/または本試験の結果の解釈に影響を及ぼす可能性があることから、患者の臨床試験への参加を不適切にする、何らかの医学的併存症、身体検査所見、もしくは代謝機能障害、または臨床検査異常;(24)試験の要件での参加を妨げると思われる既知の精神医学的または物質乱用障害;(25)臨床施設の試験チームのメンバーまたはその肉親;(26)スクリーニング/ベースライン来院時に血清β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)妊娠検査が陽性の女性。陽性ならば、患者が適格となるには超音波によって妊娠が除外されなければならない;(27)授乳中の女性;(28)試験治療の初回投与前、試験中、および最終投与後少なくとも180日間、効果の高い避妊を実践する意思がない、妊娠可能な女性(WOCBP)*、またはパートナーがWOCBPである性的に活動的な男性**。*効果の高い避妊対策として、女性の場合以下が挙げられる:(a)スクリーニング前の2回またはそれ以上の月経周期で開始する、排卵の阻害に関連する併用(エストロゲンおよびプロゲストゲンを含む)ホルモン避妊(経口、膣内、経皮)もしくはプロゲストゲンのみのホルモン避妊(経口、注射剤、埋め込み式)の安定的な使用;(b)子宮内避妊器具(IUD);子宮内ホルモン放出システム(IUS);(c)卵管結紮;(d)精管切除されたパートナー¥および/または;(e)性的禁欲†‡。*妊娠可能な女性とは、1回の月経の出現があり、月経閉止に達しておらず、または後述するように手術的に不妊になっている女性として定義される。閉経後の状態とは、他の医学的理由なく12カ月間月経がないこととして定義される。閉経後の高い卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルは、ホルモン避妊またはホルモン補充療法を使用していない女性における閉経後の状態を確認するために使用することができる。しかし、12カ月の無月経の非存在下では、単一のFSH測定では閉経後の状態の発生を決定するのに不十分である。上の定義は、Clinical Trial Facilitation Group(CTFG)のガイダンスに従うものである。妊娠検査および避妊は、子宮摘出または卵管結紮が記録された女性には必要とされない。**WOCBPのパートナーがいる男性の試験参加者は、精管切除されていなければ¥、または性的禁欲†‡を実践していなければ、コンドームを使用することが必要とされる。性的禁欲は、試験処置に関連する危険性のある全期間中で異性間性交を控えることと定義される場合に限り、効果の高い方法だと考えられる。定期的な禁欲(カレンダー法、症状体温法、排卵後法)、膣外射精(中絶性交)、殺精子薬のみ、および授乳性無月経法(LAM)は、許容できない避妊方法である。女性用コンドームと男性用コンドームは一緒に使用するべきではない。¥精管切除されたパートナーまたは精管切除された試験参加者は、手術の成功についての医学的評価を受けていなければならない。
【0128】
試験処置:セミプリマブは、滅菌、単回使用バイアル中の液体として供給する。各バイアルは、50mg/mLの濃度でセミプリマブを含む。プラセボは、セミプリマブに使用されるものと同じ製剤を使用して、活性物質を添加せずに調製する。プラセボは、滅菌、単回使用バイアル中の液体として供給し、セミプリマブと同様に投与する。セミプリマブ350mgまたはプラセボは、外来環境で30分間(±10分間)のIV注入として3週間ごとに投与する。サイクルの長さは12週間(Q3Wサイクルで4回の試験処置)である。初回のサイクル後(12週間後)、レジメンを30分間(±10分間)のIV注入としてプラセボQ6Wまたはセミプリマブ700mgIV(Q6Wで36週間)に変更し、合計で最長48週間行う。試験の第1部における計画処置期間は48週間である。
【0129】
処置の割り当て方法:約412例の患者を、中央無作為化スキームに従ってセミプリマブまたはプラセボのいずれかを施すように盲検方式で1:1の比率に無作為化する。無作為化は、以下によって層別化する:切除された高危険性腫瘍の解剖学的領域:HN対非HN;地理的領域:北アメリカ対オーストラリア/ニュージーランド対その他の諸国(ROW);高危険性特性(結節性対非結節性のみ)。例えば、患者が結節性の特性と非結節性の特性の両方を有する高危険性水準を満たすならば、彼らは結節性層と見なされる;ECOG PS:0対1;CLLの履歴:存在または非存在。層別化因子である「高危険性特性」、「ECOG PS」および「CLLの履歴」は、処置の割り当ての釣り合いを取るために使用されるにすぎず、主要評価項目の解析のための統計モデルには含まれない。
【0130】
併用医薬品および手順:インフォームドコンセントの時点から最終試験処置(セミプリマブまたはプラセボ)の90日後までに投与されるいずれの処置も併用医薬品と見なされる。これには、試験前に開始された医薬品、試験中に継続している医薬品だけでなく、AEに関連する処置を処置するために追跡期間に開始される何らかの治療も含まれる。
【0131】
禁止される医薬品および手順:本試験に参加している間に(生存の追跡は含まない)、インフォームドコンセントの時点から追跡期間の終了まで、以降に別段の指定がない限り、患者に以下のうちのいずれも施すことはできない:セミプリマブまたはプラセボ以外の腫瘍の処置のための標準薬または治験薬、但し、以降で許可されているものは除外する;PD-1/PD-L1経路を遮断する薬剤(本試験でセミプリマブを施すように割り当てられた患者以外);放射線療法;試験薬の最終投与後少なくとも3カ月間の生ワクチン。
【0132】
許可される医薬品および手順:以下の医薬品および手順は、以下の条件下で許可される:全身的コルチコステロイドを含めた、AEおよび/またはirAEを処置するために必要とされる任意の医薬品;生理学的補充のための全身的コルチコステロイド(>10mg/日のプレドニゾン等価物であっても);非自己免疫状態を予防または処置するための短期間のコルチコステロイド;経口避妊薬、ホルモン補充療法、または他の維持療法は継続してもよい;前がん病変またはBCC病変の外科的切除;他の医薬品および手順は、治験責任医師によって治験依頼者との相談の上で個別に許可される場合がある;これはアジュバント試験であるため、手術は計画されない。しかし、何らかの緊急の医学的問題(複数可)のための手術が個々の患者に対して治験責任医師の判断で臨床的に必要である場合、これは許可される。
【0133】
試験手順
スクリーニング/ベースラインで実施される手順:以下の手順は、試験適格性を決定することまたはベースライン集団を特徴付けることのみを目的として実施される:血清β-HCG(検査は初回投与の≦72時間前に行わなくてはならない);HBV、HCV、およびHIVスクリーニング;凝固検査(国際標準化比[INR]および活性化部分トロンボプラスチン時間[aPTT]);身長測定;病歴/腫瘍歴および術後RTの情報の記録;ベースライン放射線学的腫瘍評価:ベースラインイメージングは試験中の腫瘍評価に従って実施される;ベースライン循環腫瘍DNA(ctDNA)の検出;術後放射線療法。
【0134】
効能手順:患者は、スクリーニング時および約1年間(48週間)の計画処置期間中の各12週サイクルの終了時にイメージング評価を受ける。各イメージング評価中に、胸部、腹部、および骨盤の放射線イメージングが必要とされる。切除された病変がHN中であった患者については、頸部のイメージングを得る。選択肢は以下の通りである:胸部/腹部/骨盤のCTスキャン(またはCT胸部およびMRI腹部/骨盤);HN原発性の場合:頸部CTおよび/またはMRI;臨床的に必要である場合、他のCTおよび/またはMRI。
【0135】
再発とは、局所領域または遠隔の1つまたはそれ以上の新たなCSCC病変(SPTを除外する)の出現と定義される。イメージングでの再発のエビデンスは、生検が許容できない安全上の危険性をもたらさない限り、疑わしい疾患再発の全ての症例においてCSCCの組織学的または細胞学的エビデンスを得るための生検で確認するべきである。
【0136】
局所領域での再発:以下の疾患再発部位のいずれか:HN CSCCの場合、鎖骨より上の結節または軟組織の再発;非HN CSCCの場合、切除された腫瘍の最初の流入領域リンパ節領域(または最初の流入領域リンパ節領域内に関連する軟組織)内の再発;原発病変から>2cmであるが、所属リンパ節領域を超えない皮膚または皮下転移と定義される、イントランジット転移。
【0137】
遠隔再発:以下の疾患再発部位のいずれか:HN CSCCの場合、鎖骨より下の結節の再発;非HN CSCCの場合、切除された腫瘍床の最初の流入領域リンパ節領域を超えた再発。2つのリンパ節領域における再発は、連続していても(すなわち、2つの縦隔リンパ節領域、2つの骨盤リンパ節領域)、遠隔再発と見なされる;非結節組織(限定するものではないが、肺、肝臓、骨、脳が挙げられる)における再発;表皮の関与を伴わない真皮における遠隔病変(複数可)と定義される、表皮向性転移。
【0138】
再発疾患または新たな皮膚病変を記録するための生検:CSCCの組織学的または細胞学的エビデンスを得るための生検を、治験責任医師の判断で生検が許容できない安全上の危険性(例えば、脳の病変)をもたらさないと見なされる限り、疑わしい再発または疑わしいSPTの全ての症例において試みるべきである。SPTの場合、生検がCSCCについて陽性ならば、可能であれば病変の外科的除去が推奨される(生検が切除術でない限り)。
【0139】
新たな皮膚病変の特徴付け:CSCCでは、最も一般的な転移部位はリンパ節および肺である(Hillenら、Eur J Cancer 2018;96:34~43)。皮膚における新たなCSCC病変は、通常、転移性病変ではない。稀な例外を除いて、皮膚における新たなCSCC病変は、慢性のUV媒介性皮膚損傷からの広域発がんに起因する新たな原発腫瘍である(Christensen、F1000Res;7:2018)。進行性CSCCにおける以前の無作為化試験では、再発性皮膚疾患およびSPTは別個のものとして認識されていた(Brewsterら、J Clin Oncol 2007;25(15):1974~78)。本試験では、SPTは、慣例的な臨床診療の一部としての局所モダリティ療法によって管理することができる、皮膚における非転移性CSCC病変である。しかし、CSCC患者における新たな皮膚病変が転移性疾患を表す可能性があると思われる2つの状況がある:(1)表皮の関与を伴わない真皮における遠隔病変(複数可)と定義される、表皮向性転移(EDM)(Skalaら、Histopathology 2018;72(3):472~480;Weidnerら、Arch Dermatol 1985;121(8):1041~1043)。EDMは黒色腫の文献にはよく記載されているが、これはCSCC患者には極めて非定型な再発パターンであろう。しかし、内臓に生じた扁平上皮がんからの皮膚転移が記載されていることから、EDMはCSCC患者に生じうると思われる(Bornkesselら、Am J Dermatopathol 2006;28(3):220~222.;Plataniotisら、Br J Dermatol 1999;141(3):579~580)。
【0140】
イントランジット転移は、原発腫瘍とは異なる皮膚結節(複数可)であって、最初のリンパ節領域の近位に生じるものと定義される(Xuら、Head Neck 2018;40(7):1406~14)。注目すべきは、最初のリンパ節領域の近位の皮膚に生じる全てのCSCC病変がITMであるとは限らないことである。慢性的な日光曝露により、日光に曝露された皮膚における新たな病変がSPTと表される場合もある。そのような病変をSPTと呼ぶかまたはITMと呼ぶかについての決定は、病変の全体的な臨床症状に基づくこととなる。これらのITMは、大抵の場合、ときどき外方増殖性の特性を有する皮下または真皮の丘疹である(Carucciら、Dermatol Surg 2004;30(4 Pt 2):651~655)。
【0141】
本試験では、試験期間中に皮膚に生じる新たなCSCC病変は、病変がITMまたはEDMを表さない限り、SPTとして分類される。続発性原発CSCC腫瘍は、DFS評価項目の事象としてカウントされない。ITMまたはEDMを発症する患者は、DFS事象を経験したと見なされる。試験期間中に生じる続発性原発CSCC腫瘍は、手術または許可される別の局所モダリティで処置されるべきである。本試験で許可されるSPTの非外科的局所モダリティは以下の通りである:局所5-フルオロウラシル、局所イミキモド、および局所アミノレブリン酸またはアミノレブリン酸メチルでの光力学療法(Christensen、2018)。試験期間中に切除されたいずれの皮膚病変についても、以下の情報が記録される:組織学的診断、最大径、および病変がSPTを表しているのかまたは疾患再発を表しているのか(ITMまたはEDMのいずれか)に関する治験責任医師の所見。
【0142】
患者報告転帰:健康関連の生活の質は、検証された自己記入式患者質問票であるEORTC QLQ-C30およびEQ-5D-3Lを使用して測定される。EORTC QLQ-C30は、全般的健康状態/生活の質、機能スケール(身体、役割、心理、認知、および社会)、および症状スケール(疲労感、悪心および嘔吐、疼痛、呼吸困難、不眠症、食欲減退、便秘、下痢、および経済的困窮)のドメインを網羅する。EQ-5D-3Lは、5つの項目(移動の程度、身の回りの管理、普段の活動、疼痛/不快感、不安症/ふさぎ込み)および1つの視覚的アナログスケールを網羅する検証された尺度である。患者は、所与の試験来院時に実施される何らかの試験手順の前に両方の質問票に記入することが求められる。
【0143】
統計解析:本試験の結果は、セミプリマブがプラセボと比較してDFSを延長させることを示すことが予想される。最大の解析対象集団(FAS)は、全ての無作為化患者を含むものである。これは処置意図集団である。FASは、割り付けられた処置に基づいている(無作為化された通り)。効能評価項目は、FASを使用して解析される。安全性解析対象集団(SAF)は、いずれかの試験薬を施された全ての無作為化患者を含むものである;それは、施された処置に基づいている(処置された通り)。処置コンプライアンス/投与および全ての臨床的安全性変数は、SAFを使用して解析される。PK解析対象集団は、いずれかの試験薬を施され、かつ初回の試験薬の投与後に少なくとも1回の非欠測結果を有していた全ての患者を含むものである。抗薬物抗体(ADA)解析対象集団は、いずれかの試験薬を施され、かつ初回の試験薬の投与後に少なくとも1回の非欠測ADA結果を有していた全ての患者を含むものである。
【実施例4】
【0144】
リアルワールドの環境での進行性皮膚扁上皮癌(CSCC)を伴う患者におけるセミプリマブの試験
本実施例は、実施例2に記載されたC.A.S.E.試験(NCT03836105)に登録された進行性CSCCを伴う患者におけるセミプリマブの追加的な人口学的特徴、有効性、および安全性の結果について記載する。
【0145】
方法:C.A.S.E.は、セミプリマブで処置された進行性CSCC患者の有効性、安全性、疾患発生、サバイバーシップ、および生活の質を評価する前向き、リアルワールド、多施設試験である。患者にはセミプリマブ350mgを静脈内に3週間ごとに慣例的な標準治療に従って施した。人口学的特徴、疾患の特徴、効能、および生活の質のデータを収集した。客観的奏効率(ORR)、生存率、および安全性についての治験責任医師の評価を行った。セミプリマブで処置された進行性CSCCを伴う患者のリアルワールドの母集団からのデータを提示する。
【0146】
結果:188例の患者がC.A.S.E.試験に登録され;年齢中央値は76.0歳(範囲:33.0~98.0)であり;76.9%は男性であり;90.9%は白人であり:36例(19.1%)の患者は免疫不全である(IC)または免疫抑制されている(IS)と見なされた。全ての患者についてのセミプリマブ曝露の持続期間中央値は22.1週間(四分位数[Q]1~Q3:9.1~46.4、範囲:0~117)であった。効能は、明確な処置転帰を確立することが可能であった第3サイクル前に登録された患者(n=164)で評価した。ORRは42.1%(95%信頼区間[CI]:34.4%~50.0%)であった。IC/IS集団(n=27)についてのORRは44.4%(95%CI:25.5%~64.7%)であり、したがって効能は母集団のものと同様であるようであった。安全性は試験に含まれる全ての患者で評価し;8例(4.3%)の患者が処置関連の重篤な有害事象を経験し;47例(25.3%)の患者が処置関連の免疫関連有害事象を経験した。合計して、95例(48.2%)の患者が処置を中断し、その最も多い理由は、医師の決定であった(22例[11.2%])。死に至る処置関連AEは観察されなかった。セミプリマブは、IC/IS患者において忍容性が高かった。
【0147】
進行性CSCCを伴う患者のこのリアルワールド試験におけるセミプリマブの安全性、忍容性、および有効性は、登録臨床試験で観察された結果と一致する。(NCT02383212およびNCT02760498)。
【0148】
参考文献
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【0149】
本開示は、本明細書で記載される、具体的な実施形態により、範囲を限定されない。実際、当業者には、前出の記載および任意の付属の図面から、本明細書で記載される実施形態に加えて、本発明の多様な改変が明らかとなろう。このような改変は、付属の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】