IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクウス ユーケイ トプコ リミテッドの特許一覧

特表2024-511112アセトアセテート末端封鎖ポリオールを利用するコーティング、接着剤、及びエラストマー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】アセトアセテート末端封鎖ポリオールを利用するコーティング、接着剤、及びエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/16 20060101AFI20240305BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240305BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240305BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08G63/16
C09J167/00
C09D167/00
C09K3/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558434
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022057573
(87)【国際公開番号】W WO2022200400
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】2104081.1
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523354897
【氏名又は名称】エクウス ユーケイ トプコ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ホンクープ、ヴィルヘルムス アドリアヌス ヤコブス
【テーマコード(参考)】
4H017
4J029
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB13
4H017AD01
4J029AA03
4J029AE11
4J029AE13
4J029AE16
4J029BA02
4J029BA05
4J029CA09
4J029HA01
4J029HB01
4J029KD02
4J038DD001
4J038MA14
4J040ED001
4J040LA01
(57)【要約】
本発明は、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール、末端封鎖ポリオールを含むポリマー、及びかかる末端封鎖ポリオール含有材料の使用に関する。本発明はまた、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むポリマー組成物の作製方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールであって、
a)二量体脂肪酸残基、二量体脂肪ジオール残基、及び二量体脂肪ジアミン残基から選択される、少なくとも1つの二量体脂肪残基、並びに/又は
b)直鎖若しくは分岐C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1つの残基を含む、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項2】
少なくとも500の分子量(数平均)を有する、請求項1に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項3】
最大5000の分子量(数平均)を有する、請求項1又は2に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項4】
少なくとも2の官能価を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項5】
最大4の官能価を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項6】
前記アセトアセテート末端封鎖が、以下:メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、tert-ブチルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、イソブチルアセトアセテート、及びケテン誘導体のうちの1つ以上から選択され得る、請求項1~5のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項7】
前記アセトアセテート末端封鎖が、tert-ブチルアセトアセテートである、請求項6に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項8】
少なくとも10重量%のアセトアセテート末端封鎖を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項9】
最大で95重量%のアセトアセテート末端封鎖を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項10】
少なくとも5重量%の成分a)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項11】
最大30重量%の成分a)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項12】
前記二量体脂肪残基が、C10~C30脂肪酸の二量化生成物から誘導される、請求項1~11のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項13】
少なくとも0.10重量%の成分b)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項14】
最大15重量%の成分b)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項15】
成分b)が、4~12個の炭素原子の範囲内の炭素鎖を有する直鎖ジカルボン酸の少なくとも1つの残基を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項16】
成分b)が、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、及びドデカンジカルボン酸のうちの1つ以上を含む、請求項15に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項17】
成分b)が、2~10個の炭素原子を有するジオールの少なくとも1つの残基を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項18】
成分b)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの環状ジオール、及び/又はこれらの混合物を含む、請求項17に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項19】
成分b)が、2より大きいヒドロキシル官能基を有するポリオールの少なくとも1つの残基を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項20】
前記成分b)ポリオールが、グリセロール、ペンタエリスリトール、又はトリメチロールプロパンを含み得る、請求項19に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むポリマー組成物。
【請求項22】
前記組成物が、ポリマー樹脂又はポリマーマトリックスである、請求項21に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
前記ポリマー組成物の二量体脂肪残基含有量が、5~50重量%の範囲内にある、請求項21又は22に記載のポリマー組成物。
【請求項24】
前記ポリマー組成物が、ASTM D6866を使用して判定されるとき、少なくとも50%の再生可能な炭素含有量を有する、請求項21~23のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項25】
前記ポリマー組成物が、イソシアネートを実質的に含まない、請求項21~24のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項26】
前記ポリマー組成物が、前記アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール及びアクリレートを含む、請求項21~25のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項27】
前記アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール対アクリレートのモル比が、1:0.25~4の範囲内にある、請求項26に記載のポリマー組成物。
【請求項28】
発泡剤、触媒、顔料、充填剤、界面活性剤、及び安定剤から選択される1つ以上の他の添加剤を更に含む、請求項20~27のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項29】
ポリマー組成物を作製する方法であって、請求項1~20のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールをアクリレートと反応させて、
(i)ポリマー樹脂、又は
(ii)ポリマーマトリックスを形成する、方法。
【請求項30】
前記アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを前記アクリレートと一緒に混合することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ポリマー鎖を架橋して、前記ポリマー組成物(ii)ポリマー組成物マトリックスを形成する工程を更に含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記架橋が、フリーラジカル重合を介して、又はマイケル付加反応を介して達成される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記架橋が、0℃~35℃の温度で達成される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記架橋が、マイケル付加反応を介して達成される、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
ポリマー組成物を形成するための、請求項1~20のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの使用。
【請求項36】
請求項1~20のいずれか一項に記載のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むか、又は請求項20~28のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む、コーティング組成物、接着剤組成物、エラストマー組成物、又はシーラント組成物。
【請求項37】
請求項36に記載のコーティング組成物。
【請求項38】
請求項36に記載の接着剤組成物。
【請求項39】
請求項36に記載のシーラント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトアセテート末端封鎖ポリオール、末端封鎖ポリオールを含むポリマー、及びかかる末端封鎖ポリオール含有材料の使用に関する。本発明はまた、アセトアセテート末端封鎖ポリオールを含むポリマー組成物を作製する方法に関する。特に、ポリマー組成物を作製する方法は、有利には、C-マイケル付加反応を利用し得、その使用は、末端封鎖ポリオールの組成物によって促進される。
【0002】
本発明のアセトアセテート末端封鎖ポリオールは、遊離イソシアネートから調製されるポリウレタンの代替物を作製する際に使用され得る。ポリウレタンは、極めて多用途の材料であり、発泡絶縁体、自動車シート、塗料コーティング、接着剤、シーラント、チューブ類及び配線、エラストマー、並びに耐摩耗性コーティングなどの多種多様な用途において使用されている。ポリウレタンは、保護コーティング(例えば、木材、金属、又はプラスチックに適用される)、剛性基材(例えば、複合材、金属)用接着剤、可撓性基材(織物、プラスチックフィルム)用接着剤、耐湿性を必要とする用途(例えば、屋外使用のための製品、又は、例えば、電子デバイスにおける製品封止)、並びに強靭かつ耐摩耗性のエラストマーにおいて使用され得る。
【0003】
ポリウレタンはまた、多種多様な形態、例えば、エラストマーなどの非多孔質材料、並びに低密度可撓性発砲体、高密度可撓性発泡体、及び微孔質発泡体などの多孔質材料において使用される。
【0004】
ポリウレタンはまた、分散形態及び非分散形態の両方において、接着剤、例えば、ホットメルト接着剤、湿気硬化型接着剤及び2成分反応性接着剤における使途を見出すことが知られている。かかる接着剤は、例えば、家具産業における使途を見出す。
【0005】
ポリウレタンは、鋳型熱硬化性形態及び熱可塑性形態の両方において、複合材における使途を見出すことが知られている。例えば、ポリウレタンは、プレマトリックス、繊維含浸樹脂として、及び炭素、ガラス、又はポリエステルなどの繊維で強化された複合材のバインダ樹脂として、使用され得る。
【0006】
ポリウレタンエラストマーは、配線、チューブ類、ベルト類、スポーツウェア(例えば、スポーツシューズ、ゴーグル、スキーブーツ)、フィルム/シート、自動車内装品(例えば、グリップ、アームレスト、コンソール)、及び多くの他の用途において使用され得る。
【0007】
典型的には、ポリウレタン樹脂(及び後続の対応する硬化ポリウレタンポリマーマトリックス生成物)は、イソシアネートをポリオールと反応させることによって作製され得る。イソシアネートから調製されたかかるポリウレタンは、それらの利点を有するが、イソシアネートの使用及び取り扱いと関連付けられた安全性、環境及び健康要因を考慮するとき、制限をもたらす。かかるポリウレタン中に存在するポリイソシアネート硬化剤中のモノマーイソシアネートの毒性プロファイルは、近年調査の対象になっており、法律によって推進される変化は、ポリウレタン製造業を、新しいポリマー樹脂及びマトリックス、特に、イソシアネートの存在を必要としないが、その意図された最終使途のためのポリマーの性能が損なわれない新しいポリマー樹脂及びマトリックスを探すように導いた。このため、有益なポリウレタンの機械的及び化学的特性を提供するが、イソシアネートを使用しないポリマーを生成するための新しい技術が求められている。かかる新しい技術は、より持続可能であると考えられる。
【0008】
マイケル付加(又はマイケル反応)化学は、有用なポリマーがイソシアネートの不在下で調製され得る代替的な持続可能なプロセスを提供すると考えられる。マイケル付加化学が研究され、いくつかの用途において使用されている(Noomen,A.,Prog.Org.Coat,32,137-142(1997))。
【0009】
マイケル付加系の重要な化学成分は、電子不足C=C二重結合、酸性C-H結合、及びC=C二重結合に付加することができる求核性カルバニオンを提供するこのC-H結合のプロトンを引き抜くのに十分強力な塩基触媒である。このように、炭素-炭素結合は、提供された求核性カルバニオンの反応を介して、2つの分子間に形成される。ドナー分子の第2のプロトンは、同様の後続の反応に利用可能である。
【0010】
【化1】
【0011】
本発明は、イソシアネート誘導ポリウレタンと関連する問題を克服することができるように、ポリマー組成物において有用性を見出し得る、改善されたポリオールを提供しようとするものである。
【0012】
したがって、本発明は、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールであって、
a)二量体脂肪酸残基、二量体脂肪ジオール残基及び二量体脂肪ジアミン残基から選択される少なくとも1つの二量体脂肪残基、並びに/又は
b)直鎖若しくは分岐C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1つの残基を含む、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを提供する。
【0013】
代替的な実施形態では、本発明は、当該アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むポリマー組成物を提供する。
【0014】
更に、ポリマー組成物を作製する方法であって、当該アセトアセテート末端封鎖ポリオールをアクリレートと反応させて、
(i)ポリマー樹脂、又は
(ii)ポリマーマトリックスを形成することを含む方法が提供される。
【0015】
本発明は、ポリマー組成物を形成するための、第1の態様のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの使用を更に提供する。
【0016】
追加的に、本発明は、当該アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール又は当該アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含む当該ポリマー組成物を含むコーティングを提供する。
【0017】
本明細書において記載されるいかなる上限若しくは下限の量又は範囲の限界も、独立して組み合わされ得ることが理解されるであろう。
【0018】
置換基中の炭素原子の数(例えば、「C1~C6」)を説明するとき、その数は、任意の分岐基中に存在する任意のものを含む、置換基中に存在する炭素原子の総数を指すことが、当業者によって理解されるであろう。追加的に、例えば、脂肪酸中の炭素原子の数を説明するとき、これは、カルボン酸における炭素原子、及び任意の分岐基中に存在する任意の炭素原子を含む炭素原子の総数を指す。
【0019】
本発明のポリエステルポリオール又はポリマー組成物を生成するために使用され得る化学物質の多くは、天然源から得られる。かかる化学物質は、典型的には、それらの天然起源に起因する化学種の混合物を含む。かかる混合物の存在に起因して、本明細書において定義される様々なパラメータは、平均値であり得、非整数であり得る。
【0020】
「ポリオール」という用語は、当該技術分野において周知であり、2つ以上のヒドロキシル基を含む分子を指す。
【0021】
本明細書において使用される際、「ポリエステル」という用語は、2つ以上のエステル結合を有する分子又は基を指す。
【0022】
本明細書において使用される際、「二量体脂肪残基」という用語は、別段の定義がない限り、二量体脂肪酸(二量体脂肪二酸とも称される)の残基、又は二量体脂肪ジオール若しくは二量体脂肪ジアミンなどの二量体脂肪酸誘導体の残基を指す。
【0023】
分子又は分子の一部に関して本明細書において使用される際、「官能価」という用語は、その分子又は分子の一部における官能基の数を指す。「官能基」は、化学反応に関与し得る分子中の基を指す。例えば、カルボン酸基、ヒドロキシル基及びアミン基は、全て官能基の例である。例えば、二酸(2つのカルボン酸基を有する)及びジオール(2つのヒドロキシル基を有する)は、両方とも2の官能価を有し、三酸及びトリオールは、両方とも3の官能価を有する。
【0024】
「二量体脂肪酸」(二量体脂肪二酸とも称される)という用語は、当該技術分野において周知であり、モノ若しくはポリ不飽和脂肪酸及び/又はそのエステルの二量化生成物を指す。関連する用語である三量体脂肪酸は、同様に、モノ若しくはポリ不飽和脂肪酸及び/又はそのエステルの三量体化生成物を指す。
【0025】
本発明のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、
a)二量体脂肪酸残基、二量体脂肪ジオール残基及び二量体脂肪ジアミン残基から選択される少なくとも1つの二量体脂肪残基、並びに/又は
b)直鎖若しくは分岐C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1つの残基を含む。
【0026】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも2つの成分を含むと考えることができ、一方は、アセトアセテート末端封鎖成分であり、他方は、少なくとも上で定義されたa)又はb)である。好ましくは、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、3つの成分を含み、1つはアセトアセテート末端封鎖成分であり、他の2つは上で定義されたa)及びb)である。
【0027】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも2つのエステル結合、好ましくは、少なくとも3つのエステル結合、より好ましくは、少なくとも4つのエステル結合、更により好ましくは、少なくとも5つのエステル結合を含み得る。
【0028】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、最大でも10のエステル結合、好ましくは、最大8つのエステル結合、より好ましくは、最大7つのエステル結合を含み得る。
【0029】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも1つのエーテル結合を含み得る。このため、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、ポリエステルエーテルであり得る。代替的に、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、エーテル結合を含まない場合がある。
【0030】
あまり好ましくない実施形態では、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも1つのアミド結合を含み得る。代替的に、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、アミド結合を含まない場合がある。このため、あまり好ましくない実施形態では、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、ポリエステルアミドであり得る。代替的に、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、ポリエステルアミドではない場合がある。
【0031】
好ましくは、末端封鎖前のアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも2のヒドロキシル官能価、より好ましくは、最大4の官能価を有する。これらの官能基のうちの1つ以上は、アセトアセテートによって末端封鎖され得、好ましくは、末端封鎖前にポリオール中に存在するヒドロキシル官能基の全てが末端封鎖されるが、いくらかの量のヒドロキシ官能価の保持は、いくつかの用途及び使途に有利であり得る。
【0032】
好適には、末端封鎖前、ポリオールは、ジオール、トリオール、テトロール、ペントール又はヘキソールであり得る。好ましくは、ポリオールは、ジオール、トリオール又はテトロールであり、より好ましくは、ジオール又はトリオールである。最も好ましくは、末端封鎖前、ポリオールは、ジオールである。
【0033】
末端封鎖前のポリオールは、好ましくは、10~100、より好ましくは、30~90、特に好ましくは、40~70、及び具体的に好ましくは、50~60mgKOH/gの範囲内にあるヒドロキシル価(本明細書において説明されるように測定される)を有する。
【0034】
加えて、末端封鎖前のポリオールは、好ましくは、2未満、より好ましくは、1.7未満、特に好ましくは、1.3未満、及び具体的に好ましくは、1.0mgKOH/g未満の酸価(本明細書において説明されるように測定される)を有する。
【0035】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも500、好ましくは、少なくとも800、より好ましくは、少なくとも1000、更により好ましくは、少なくとも1500、具体的に好ましくは、少なくとも1800の分子量(数平均)を有し得る。
【0036】
アセトアセテート末端封鎖ポリオールは、最大5000、好ましくは、最大4000、より好ましくは、最大3000、更により好ましくは、最大2500、具体的に好ましくは、最大2200の分子量(数平均)を有し得る。
【0037】
アセトアセテート末端封鎖ポリオールのアセトアセテート末端封鎖成分は、以下:メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、tert-ブチルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、及びイソブチルアセトアセテートのうちの1つ以上から選択され得る。好ましくは、アセトアセテート末端封鎖は、tert-ブチルアセトアセテートである。
【0038】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオールの総重量の少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも40重量%、より好ましくは50重量%のアセトアセテート末端封鎖を含み得る。アセトアセテート末端封鎖ポリオールは、ポリエステルポリオールの総重量の最大100重量%、好ましくは、90重量%、より好ましくは、最大90重量%のアセトアセテート末端封鎖を含み得る。
【0039】
好適には、ポリエステルポリオール中のa)対b)の重量比は、100:0~30:70の範囲内、好ましくは、85:15~45:55の範囲内にあり得る。アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール中のa)の重量%は、少なくともb)の重量%であり得る。アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール中のa)及びb)のこれらの相対量は、以下で更に説明されるように、ポリエステルポリオールから形成されるポリマーマトリックスにおいて、可撓性、引張強度、硬度、及び耐加水分解性の有利なバランスを提供し得る。
【0040】
成分
a)アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの二量体脂肪酸残基、二量体脂肪ジオール残基及び二量体脂肪ジアミン残基から選択される少なくとも1つの二量体脂肪残基が、
ここでより詳細に説明される。
【0041】
概して、少なくとも1つの二量体脂肪残基は、以下に詳述されるような二量体脂肪酸、二量体脂肪ジオール又は二量体脂肪ジアミンに関して本明細書において説明される特徴又は選好のいずれかを含み得る。
【0042】
好適には、少なくとも1つの二量体脂肪残基は、飽和又は不飽和であり得る。しかしながら、好ましくは、少なくとも1つの二量体脂肪残基は、飽和されている。
【0043】
二量体脂肪残基は、本質的に脂肪であり、これがポリオールの疎水性を増加させ得る。二量体脂肪残基の存在は、ポリオールをより非晶質、非結晶性又は実質的に非結晶性にし得る。ポリオールの非晶質性は、以下に更に説明されるように、ポリオールを含むポリマーマトリックスの可撓性を増加させ、及び/又は引張強度を減少させ得る。
【0044】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%の二量体脂肪残基を含み得る。アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、最大90重量%の二量体脂肪残基、好ましくは、85重量%の二量体脂肪残基、より好ましくは、最大80重量%の二量体脂肪残基を含み得る。
【0045】
選択される少なくとも1つの二量体脂肪残基は、二量体脂肪酸残基であり得る。
【0046】
好適には、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%の二量体脂肪酸残基を含み得る。アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、最大30重量%、好ましくは、最大20重量%の二量体脂肪酸残基を含み得る。
【0047】
二量体脂肪酸は、J.I.Kroschwitz(ed.),Kirk-Othmer Encyclopaedia of Chemical Technology,4th Ed.,Wily,New York,1993,Vol.8,pp.223-237内のT.E.Breuer,’Dimer Acids’に記載されている。それらは、加圧下で脂肪酸を重合し、次いで、蒸留によって未反応の脂肪酸出発材料の大部分を除去することによって調製される。最終生成物は、通常、いくらかの少量のモノ脂肪酸及び三量体脂肪酸を含有するが、大部分は二量体脂肪酸から作製される。結果として得られる生成物は、所望に応じて様々な割合の異なる脂肪酸で調製することができる。
【0048】
二量体脂肪酸対三量体脂肪酸の比は、当業者に既知であるように、処理条件及び/又は不飽和脂肪酸供給原料を改質することによって変化させることができる。二量体脂肪酸は、当該技術分野において既知の精製技術を使用して、生成物混合物から実質的に純粋な形態で単離され得るか、又は代替的に、二量体脂肪酸及び三量体脂肪酸の混合物が用いられ得る。
【0049】
本発明において使用される二量体脂肪酸又は二量体脂肪残基は、好ましくは、C10~C30脂肪酸、より好ましくは、C12~C24脂肪酸、特に、C14~C22脂肪酸、更に好ましくは、C16~C20脂肪酸、及び具体的には、C18脂肪酸の二量化生成物から誘導される。このため、得られる二量体脂肪酸は、好ましくは、20~60個、より好ましくは、24~48個、特に28~44個、更に好ましくは、32~40個の範囲内にあり、及び具体的には、36個の炭素原子を含む。
【0050】
好適には、二量体脂肪酸が誘導される脂肪酸は、直鎖又は分岐不飽和脂肪酸から選択され得、直鎖脂肪酸が好ましい。不飽和脂肪酸は、シス/トランス配置のいずれかを有する脂肪酸から選択され得、1つ以上の不飽和二重結合を有し得る。しかしながら、一価不飽和脂肪酸が、特に好ましい。最も好ましくは、脂肪酸は、直鎖一価不飽和脂肪酸である。
【0051】
好適には、二量体脂肪酸は、水素化されていないか、水素化されているか、又は部分的に水素化され得る。水素化二量体脂肪残基(二酸、ジオール、又はジアミンに由来するかどうかにかかわらず)は、より良好な酸化安定性又は熱安定性を有する場合があり、ポリオールを含むポリマーにおいて望ましい可能性があり、このため、好ましくは、二量体脂肪酸は、水素化されるか、又は部分的に水素化される。
【0052】
好適な二量体脂肪酸は、好ましくは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、又はエライジン酸の二量化生成物から誘導される(すなわち、その二量体等価物である)。特に、好適な二量体脂肪酸は、好ましくは、オレイン酸から誘導される。
【0053】
二量体脂肪酸は、天然油脂、例えば、ヒマワリ油、ダイズ油、オリーブ油、ナタネ油、綿実油、又はトール油の加水分解から得られる不飽和脂肪酸混合物の二量化生成物であり得る。
【0054】
二量体脂肪酸の分子量(重量平均)は、好ましくは、450~690(g/mol)、より好ましくは、500~640(g/mol)、特に、530~610(g/mol)、及び具体的には、550~590(g/mol)の範囲内である。
【0055】
更に、二量体脂肪酸に加えて、二量化は、通常、様々な量の三量体脂肪酸(いわゆる「三量体」)、オリゴマー脂肪酸、及びモノマー脂肪酸(いわゆる「モノマー」)の残基、又はそれらのエステルが存在することをもたらす。モノマーの量は、例えば、蒸留によって低減させることができる。二量体脂肪酸生成物の蒸留は、製造コストを増加させるので、これらの任意選択的な二量化反応生成物の存在は許容されるが、しかしながら、二量体脂肪酸の蒸留による精製は、いくつかのニッチ用途に好ましい場合がある。
【0056】
好適には、三量体脂肪酸は、好ましくは二量体脂肪酸に関して言及した材料の三量体化生成物から誘導され、好ましくはC10~C30、より好ましくはC12~C24、特にC14~C22、更に好ましくはC16~C20脂肪酸、及び特にC18脂肪酸の三量体である。このため、三量体脂肪酸は、好ましくは、30~90個、より好ましくは、36~72個、特に42~66個、更に好ましくは、48~60個の範囲内にあり、及び具体的には、54個の炭素原子を含有する。
【0057】
三量体脂肪酸の分子量(重量平均)は、好ましくは、750~950(g/mol)、より好ましくは、790~910(g/mol)、特に、810~890(g/mol)、及び具体的には、830~870(g/mol)の範囲内にある。
【0058】
追加的に、又は代替的に、四量体脂肪酸及びより高次のオリゴマー(以下、両方ともオリゴマー酸と称される)は、二量体脂肪酸の生成中に形成され得る。したがって、かかるオリゴマー酸は、上記で言及したように、三量体脂肪酸及び/又は二量体脂肪酸及び/又はモノ脂肪酸モノ酸と組み合わせて、本発明で使用される二量体脂肪酸中に存在し得る。
【0059】
オリゴマー酸は、好ましくは、C10~C30、より好ましくは、C12~C24、特に、C14~C22、及び具体的には、C18脂肪酸から誘導される4つ以上の単位を含有するオリゴマーである。オリゴマー酸の分子量(重量平均)は、好適には、1000(g/mol)より大きく、好ましくは、1200~1800(g/mol)、より好ましくは、1300~1700(g/mol)、特に、1400~1600(g/mol)、及び具体的には、1400~1550(g/mol)の範囲内にある。
【0060】
本発明において使用される二量体脂肪酸は、好ましくは、60重量%超、より好ましくは、70重量%超、特に、80重量%超、及び具体的には、85重量%超の二量体脂肪酸(又は二量体)含有量を有し得る。最も好ましくは、二量体脂肪酸の二量体含有量は、90重量%~99重量%の範囲内にある。
【0061】
代替的な実施形態では、二量体脂肪酸は、好ましくは、70重量%~96重量%の範囲内の二量体脂肪酸(又は二量体)含有量を有する。これは、特に、2成分(2K)又は架橋ポリマー組成物系であると考えられる当該アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むポリマー組成物に適用可能であり得る。
【0062】
追加的に、又は代替的に、特に好ましい二量体脂肪酸は、40重量%未満、より好ましくは、30重量%未満、特に、20重量%未満、及び具体的には、15重量%未満の三量体脂肪酸(又は三量体)含有量を有し得る。三量体脂肪酸含有量は、4重量%未満であり得る。
【0063】
更に、二量体脂肪酸は、好ましくは、10重量%未満、より好ましくは、5重量%未満、特に、4重量%未満、及び具体的には、2.5重量%未満のモノ脂肪モノ酸(又はモノマー)を含む。
【0064】
上記の重量百分率の値は全て、二量体脂肪酸中に存在する重合脂肪酸及びモノ脂肪酸の総重量に基づく。
【0065】
追加的に、又は代替的に、選択される少なくとも1つの二量体脂肪残基は、二量体脂肪ジオール残基であり得る。
【0066】
好適な二量体脂肪ジオールは、対応する二量体脂肪酸の水素化によって形成され得る。二量体脂肪酸(又は二量体脂肪二酸)は、当該技術分野において既知であるように、二量体脂肪ジオールに変換され得る。二量体脂肪ジオールは、二量体脂肪酸中の酸基が二量体脂肪ジオール中のヒドロキシル基と置換されていることを除いて、二量体脂肪酸(又は二量体脂肪二酸)に関して本明細書において説明されているような特性を有し得る。同様の様式において、三量体脂肪三酸は、三量体脂肪三酸に関して本明細書において説明されるような特性を有し得る、三量体脂肪トリオールに変換され得る。このため、二量体脂肪酸に関して本明細書において詳述される同じ好ましい実施形態は、ポリエステルポリオールの二量体脂肪ジオール残基成分の対応する好ましい実施形態に適用され得る。
【0067】
好適には、末端封鎖される前に、ポリエステルポリオールは、少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも60重量%の二量体脂肪ジオール残基を含み得る。ポリオールは、最大90重量%、好ましくは、最大80重量%の二量体脂肪ジオール残基を含み得る。二量体脂肪残基のこれらの量は、ポリエステルポリオールを含むポリマーマトリックスの引張強度又は硬度を過度に減少させることなく、最終ポリエステルポリオールに好適な量の疎水性及び/又は非晶質性を提供し得る。
【0068】
好適には、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの総重量に基づいて、少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも10重量%の二量体脂肪ジオール残基を含み得る。ポリオールは、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの総重量に基づいて、最大30重量%、好ましくは、最大20重量%の二量体脂肪ジオール残基を含み得る。
【0069】
二量体脂肪ジオールは、水素化され得る。二量体脂肪ジオールは、水素化されていない場合がある。
【0070】
追加的に、又は代替的に、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、少なくとも1つの二量体脂肪族ジアミン残基を含み得、そのため選択される少なくとも1つの二量体脂肪族残基は、二量体脂肪族ジアミン残基であり得る。しかしながら、この実施形態は、あまり好ましくなく、ポリオールは、二量体脂肪族ジアミン残基を含まない場合があり、したがって、ポリエステルポリオールの成分a)中に関連アミン基を含まない場合がある。
【0071】
成分
b)アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの直鎖若しくは分岐C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1つの残基は、
ここでより詳細に説明される。
【0072】
末端封鎖される前に、好ましくは、C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1つの残基は、カルボン酸基、ヒドロキシル基及びこれらの混合物から選択される少なくとも2つの官能基を有する。いくつかの実施形態では、二酸又はジオールは、好ましくは、カルボン酸基、ヒドロキシル基及びそれらの混合物から選択される2つの官能基のみを有する。これらの官能基は、好ましくは、最終ポリエステルポリオール生成物において全て末端封鎖されることが理解されるべきである。
【0073】
好適には、末端封鎖される前に、ポリエステルポリオールは、ポリオールの総重量に基づいて、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、より好ましくは、少なくとも20重量%の成分b)を含み得る。末端封鎖される前のポリオールは、最大50重量%、好ましくは、最大40重量%のb)を含み得る。末端封鎖ポリオール中の成分b)のレベルは、少なくとも0.10重量%、好ましくは、少なくとも0.15重量%、より好ましくは、少なくとも0.20重量%であることが理解されるであろう。更に、末端封鎖ポリオール中の成分b)のレベルは、最大15重量%、好ましくは、最大8重量%の二量体脂肪ジオール残基を含み得ることが理解されるであろう。b)のこれらの量は、ポリオールを含むポリマーマトリックスの柔軟性を過度に減少させることなく、ポリオールに好適な量の結晶化度を提供し得る。
【0074】
成分b)は、非二量体二酸又はジオールであり、成分a)について上で説明された二量体脂肪酸及びジオールとは異なることを理解すべきである。
【0075】
好適な非二量体二酸は、脂肪族又は芳香族(フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸など)であり得、ジカルボン酸及びそれらのエステル、好ましくは、それらのアルキルエステルが挙げられる。
【0076】
好ましくは、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールは、直鎖若しくは分岐C2~C36二酸又はジオールの少なくとも2つの残基を含み、いくつかの実施形態では、直鎖若しくは分岐C2~C36二酸又はジオールの少なくとも3つの残基を含み得、各々独立して、以下に詳述する好ましい実施形態から選択される。直鎖若しくは分岐C2~C36二酸又はジオールの1つの残基の2つ以上のタイプを含めることにより、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むポリマーの物理的特性をその特定の最終使途に合わせることが可能になる。
【0077】
特に好ましい一実施形態では、b)は、直鎖若しくは分岐C6~C36ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1つの残基を含む。ポリエステルポリオール中のb)の存在は、C6~C36直鎖若しくは分岐ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1つの残基中に存在する長い脂肪族炭素鎖に起因して、ポリオールをより結晶性にし得る。増加した結晶化度は、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むポリマーマトリックスの引張強度及び/又は硬度を増加させ得る。ポリエステルポリオール中のb)の存在はまた、かかるアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール含有ポリマーから形成される接着剤のグリーン強度を増加させ得る。C6~C36直鎖又は分岐二酸の少なくとも1つの残基は、それらのエステル、好ましくは、アルキルエステル、より好ましくは、ジメチルエステルを含み得る。
【0078】
C6~C36直鎖若しくは分岐ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1つの残基は、直鎖であり得る。ポリエステルポリオールの末端封鎖の前に、末端カルボキシル基又はヒドロキシル基を含み得、末端カルボキシル基又はヒドロキシル基は、アルキル基又はアルケニル基によって架橋される。
【0079】
C6~C36直鎖若しくは分岐ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1つの残基は、分岐鎖であり得る。C6~C36直鎖若しくは分岐二酸又はジオールの少なくとも1つの残基は、少なくとも1つのメチル分岐を含み得る。C6~C36直鎖若しくは分岐二酸又はジオールの少なくとも1つの残基は、少なくとも1つのエチル分岐を含み得る。
【0080】
C6~C36直鎖若しくは分岐ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1つの残基は、飽和されるか又は不飽和であり得、好ましくは、飽和され得る。
【0081】
好ましくは、C6~C36ジカルボン酸又はジオールは、直鎖ジカルボン酸である。
【0082】
C6~C36ジカルボン酸又はジオールは、好ましくは、C18~C32ジカルボン酸又はジオール、より好ましくは、C18~C26ジカルボン酸又はジオールであり得る。C6~C36ジカルボン酸又はジオールは、好ましくは、C18ジカルボン酸であり得る。C6~C36ジカルボン酸又はジオールは、好ましくは、C26ジカルボン酸であり得る。
【0083】
C6~C36二酸又はジオールは、メタセシス反応、好ましくは、自己メタセシス反応によって得られる、C6~C36二酸又はジアルキルエステルから誘導され得る。メタセシス反応は、触媒の存在下で発生し得る。好適なメタセシス触媒は、国際公開第2008/065187号及び国際公開第2008/034552号に開示されており、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
追加的に、又は代替的に、成分b)は、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、及びドデカンジカルボン酸などの、4~12個の炭素原子の範囲内の炭素鎖を有する直鎖ジカルボン酸の少なくとも1つの残基を含む。より好ましくは、b)は、5~10個の炭素原子を有する直鎖ジカルボン酸の少なくとも1つの残基を含む。アジピン酸が、特に好ましい。この実施形態は、成分b)が当該C2~C36二酸又はジオールの少なくとも2つ以上の残基を含む場合に特に好ましい。
【0085】
好ましくは、b)は、2~10個の炭素原子、より好ましくは、5~8個の炭素原子を有するジオールの少なくとも1つの残基を含み得る。この実施形態は、成分b)がC2~C36二酸又はジオールの少なくとも2つ以上の残基を含む場合に特に好ましい。
【0086】
好適な非二量体ジオールは、直鎖状脂肪族ジオール若しくは分岐脂肪族ジオール、又はそれらの組み合わせから独立して選択され得る。
【0087】
好適な非二量体ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール(ヘキサンジオールとしても知られる)及びこれらの混合物などの直鎖状脂肪族ジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタングリコール、1,2-プロピレングリコール及びこれらの混合物などの分岐ジオール、並びに1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,4-シクロヘキサンジメタノール及びこれらの混合物などの環状ジオールが挙げられる。ヘキサンジオールが、特に好ましい。
【0088】
直鎖状脂肪族ジオールは、独立して、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール(1,3-プロパンジオールとしてより知られている)、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールから選択され得る。かかる材料が、特に好ましい。
【0089】
分岐脂肪族ジオールは、独立して、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及び1,3-ブタンジオールから選択され得る。
【0090】
成分b)は、ポリエーテルジオール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラヒドロフラン(ポリテトラメチレンエーテルグリコール又はPTMEG(polytetramethylene ether glycol)としても知られている)の少なくとも1つの残基を含み得る。PTMEGは、200~2000、好ましくは、200~1000、より好ましくは、200~500の分子量(数平均)を有し得る。この実施形態は、成分b)がC2~C36二酸又はジオールの少なくとも2つ以上の残基を含む場合に特に好ましい。
【0091】
成分b)は、2より大きいヒドロキシル官能基を有するポリオールの少なくとも1つの残基を含み得る。かかるポリオールとしては、グリセロール、ペンタエリスリトール、又はトリメチロールプロパンが挙げられ得る。
【0092】
成分b)は、好ましくは、再生可能な及び/又はバイオベースの供給源から誘導される。b)の再生可能炭素含有量のレベルは、14C放射性炭素年代測定法を使用して試料のバイオベース含有量を判定するための標準化された分析方法としてのASTM D6866によって判定可能であり得る。ASTM D6866は、バイオベース源から生じる炭素を、化石ベース源から誘導される炭素と区別する。この標準を使用して、再生可能資源からの炭素のパーセンテージを、試験試料中の総炭素から計算することができる。好適には、成分b)は、ASTM D6866を使用して判定されるとき、少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも65重量%、より好ましくは、少なくとも80重量%の再生可能な炭素含有量を有し得る。
【0093】
追加的に、又は代替的に、本発明は、上で説明されたようなアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むポリマー組成物を提供する。かかるポリマー組成物は、1つ以上の所望の物理的特性を有し得、それらの意図される最終使途に特に適し得る。
【0094】
好適には、ポリマー組成物は、樹脂(すなわち、中間形態の硬化前ポリマー材料)又はポリマーマトリックス(すなわち、その最終形態の硬化後ポリマー材料)であり得る。このため、ポリマー組成物は、2つの別個の実施形態を包含すると考えることができ、第1の実施形態は樹脂であり、第2の実施形態はポリマーマトリックスである。ポリマーマトリックス最終生成物の意図された使用又は処理に必要な添加剤は、後処理又は取り扱いを容易にするためにポリマー樹脂の製造中に導入され得るので、2つのポリマー組成物実施形態の間には大量の重複が存在する。このため、「ポリマー組成物」に言及する以下の実施形態は、ポリマー樹脂及びポリマーマトリックスの実施形態に等しく適用される。
【0095】
ポリマー組成物は、樹脂として提供され得、その後、樹脂は、硬化を介してポリマーマトリックスに変換され得る。ポリマー樹脂とポリマーマトリックスとの間の違いは、当業者によって理解されるように、ポリマー鎖の架橋がポリマーマトリックス中に存在することである。ポリマー鎖を架橋するための硬化は、任意の適切な手段によって達成され得るが、好ましい手段は、以下に更に説明される。
【0096】
ポリマー組成物の二量体脂肪残基含有量は、好ましくは、5~50重量%、より好ましくは、8~40重量%、特に、12~30重量%、及び具体的には、15~20重量%の範囲内にある。
【0097】
ポリマー組成物は、好ましくは、再生可能な及び/又はバイオベースの供給源から誘導される。このレベルは、本明細書において簡単に説明されるように、ASTM D6866によって判定され得る。好ましくは、ポリマー組成物は、ASTM D6866を使用して判定されるとき、少なくとも50%の再生可能な炭素含有量を有する。より好ましくは、少なくとも65%である。最も好ましくは、少なくとも80%である。
【0098】
本発明のポリマー組成物の特別な利点は、イソシアネートを含まないことである。このため、ポリマー組成物は、イソシアネートを含有しない。ポリマー組成物は、イソシアネートを実質的に含まない。
【0099】
好ましくは、ポリマー組成物は、上で説明されたアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールとアクリレートとの反応生成物である。このため、ポリマー組成物は、当該アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール及びアクリレートを含む。
【0100】
好適には、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオール対アクリレートのモル比は、1:0.2~4、好ましくは、1:0.25~3、より好ましくは、1:0.25~2.5、及び最も好ましくは、1:0.25~1.8の範囲内にある。
【0101】
好適には、アクリレートは、1つ以上のアクリレート、多官能性アクリレート、オリゴマーアクリレート又はそれらの誘導体から選択され得る。
【0102】
好ましくは、アクリレートは、オリゴマーアクリレート又はその誘導体によって提供される。特に好ましいオリゴマーアクリレートは、ウレタンアクリレート及びエポキシアクリレートである。かかるオリゴマーアクリレートは、好ましくは、以下に更に詳述するようなオリゴマーアクリレート樹脂であり得る。市販のオリゴマーアクリレート樹脂としては、とりわけ、IGM Resins製Photomer(登録商標)、BASF製Laromer(登録商標)、Allnex製Ebecryl(登録商標)が挙げられる。
【0103】
好ましい多官能アクリレート又はその誘導体は、2以上の官能価を有する。好適には、多官能性アクリレート誘導体は、アクリレート、メタクリレート、エチルアクリレート、及びこれらの組み合わせを有する任意のモノマー分子又はオリゴマー分子からなる群から選択され得る。
【0104】
好ましくは、アクリレート誘導体は、六官能性ウレタンアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、二官能性ウレタンアクリレート、テトラアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0105】
特に好ましい一実施形態では、多官能性アクリレート誘導体は、ウレタンアクリレートオリゴマーである。
【0106】
代替的な特に好ましい実施形態では、アクリレートは、オリゴマーエポキシアクリレート樹脂、又はオリゴマーポリエーテルアクリレート樹脂、又はオリゴマーポリエステルアクリレート、又はこれらの組み合わせから選択される多官能性アクリレートオリゴマーである。
【0107】
ポリマー組成物は、任意選択的に、発泡剤、触媒、顔料、充填剤、界面活性剤、及び安定剤などの1つ以上の他の添加剤を含有し得る。
【0108】
ポリマー組成物は、任意選択的に、発泡剤を含み得、発泡剤としては、水、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン及びトリクロロジフルオロエタンなどのフルオロカーボン、又はこれらの混合物が挙げられ得る。
【0109】
ポリマー組成物は、任意選択的に、触媒を含み得る。触媒は、後処理を補助するためにポリマー樹脂中に存在し得るか、又は処理中にポリマーマトリックス中に固定化されることに起因して、ポリマーマトリックス中に存在し得る。かかる触媒は、均一系触媒である傾向がある。好ましい均一系触媒は、塩基性アニオン基の塩である。有用なカチオンの例としては、無機カチオン、好ましくは、アルカリ若しくはアルカリ土類金属カチオン、より好ましくは、K+、Na+及びLi+、又はテトラアルキルアンモニウム及びテトラアルキルホスホニウム塩のような有機カチオンが挙げられるが、またプロトンを有するが極めて非酸性であるカチオン、例えば、強塩基性有機塩基のプロトン化種、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene、DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(1,5-Diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene、DBN)又はテトラメチルグアニジンも挙げられる。
【0110】
ポリマー組成物は、任意選択的に、界面活性剤を含み得る。好ましい界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール変性ジメチルポリシロキサン、及びアルキレングリコール変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン界面活性剤、並びに/又は脂肪酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、及びスルホネートなどのアニオン界面活性剤のうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0111】
ポリマー組成物は、任意選択的に、安定剤を含み得る。好適には、安定剤は、ラジカル捕捉剤、抗酸化剤、又は紫外線吸収剤から選択され得る。好適な安定剤は、ポリマー組成物の意図される最終使途に応じて、当業者によって選択され得る。安定剤の例としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びイソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのヒンダードフェノールラジカル捕捉剤、トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、及びトリフェニルホスフィンなどの亜リン酸化合物などの酸化防止剤、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収剤、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物が挙げられる。
【0112】
ポリマー組成物は、任意選択的に、顔料又は染料を含み得る。好適な顔料としては、遷移金属塩などの無機顔料、アゾ化合物などの有機顔料、及びカーボン粉末が挙げられる。
【0113】
ポリマー組成物は、任意選択的に、充填剤を含み得る。好適な充填剤としては、粘土、チョーク、及びシリカなどの無機充填剤が挙げられる。
【0114】
ポリマー組成物は、任意選択的に、鎖延長剤成分を含み得る。鎖延長剤成分は、鎖延長剤組成物の形態にあり得る。鎖延長剤組成物は、好ましくは、例えば、鎖延長剤、(上で説明されたような)アクリレート、並びに(上で説明されたような顔料及び/又は充填剤などの)他の添加剤の単純な予備混合によって調製される。少なくとも1つのアクリレートオリゴマーは、ポリマー組成物を形成するために、鎖延長剤成分と一緒に添加されて、プレポリマーと反応され得る。有利には、形成は、以下に更に説明されるように、C-マイケル付加を介して行われ、C-マイケルポリマーを提供する。
【0115】
ポリマー中で利用される鎖延長剤成分は、好適には、2つ以上の活性アクリル官能基を有する低分子化合物を含む。かかるアクリル官能基含有化合物の例としては、六官能性ウレタンアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、二官能性ウレタンアクリレート、及びテトラアクリレートモノマーからなるアクリレート群が挙げられる。
【0116】
本発明で用いられる第1の態様の鎖延長剤対アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールのモル比は、好ましくは、1~10:1、より好ましくは、1.5~8:1、特に、2~5:1、及び具体的には、2.5~4:1の範囲内にある。
【0117】
本発明はまた、
(i)ポリマー樹脂、又は
(ii)ポリマーマトリックスを形成するために、当該アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールをアクリレートと共に含むポリマー組成物を作製する方法を提供する。
【0118】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの好ましい特徴及びアクリレートの好ましい特徴は、組成物の実施形態に関して上で説明した通りである。
【0119】
好適には、本方法は、i)ポリマー樹脂を形成し、次いで、任意選択的に、続いて樹脂からii)ポリマーマトリックスを形成する工程を含む。i)ポリマー樹脂を形成する工程は、1つの地理的場所で実施され得、次いで、ポリマー樹脂からii)ポリマーマトリックスを形成する後続の工程は、第2の地理的に異なる場所で実施され得ることが想定される。
【0120】
ポリマー組成物を作製する方法は、アセトアセテート末端封鎖ポリオールをアクリレートと一緒に混合することを含み得る。これは、2つの反応物が密接に接近して均質なポリマー組成物をもたらすことを確実にするためである。
【0121】
上記で示唆したように、ポリマー組成物樹脂とポリマー組成物マトリックスとの間の主な違いは、マトリックスが更に処理されて、ポリマー鎖間の架橋を達成するという事実である。このため、ポリマー組成物を(ii)ポリマーマトリックスにする方法において、方法は、ポリマー鎖を架橋する工程を含まなければならない。ポリマー樹脂を架橋して、ポリマーマトリックスを提供する方法は、ポリマー製造の当該技術分野において既知であり、概して、硬化方法と称される。本発明の方法において、ポリマー鎖の架橋は、任意の好適な手段によって達成され得る。しかしながら、フリーラジカル重合を介する架橋又はマイケル付加反応を介する架橋が、特に好適である。
【0122】
好ましくは、フリーラジカル重合又はマイケル付加反応を介するポリマー架橋の工程は、周囲温度で、より望ましくは、室温で達成され得る。特に、フリーラジカル重合を介する架橋又はマイケル付加反応を介する架橋は、有利には、0℃~120℃の温度、好ましくは、15℃~60℃の温度、より好ましくは、20℃~25℃の温度で達成され得る。
【0123】
より具体的には、マイケル付加反応を介する架橋が好ましく、かかる材料は、炭素-マイケル反応ポリマー、又は略してC-マイケルポリマーと称され得る。このため、この特に好ましい方法を介して形成される末端封鎖ポリエステルポリオール含有ポリマー組成物マトリックス生成物は、本明細書において好都合にC-マイケルポリマーと称され得る。
【0124】
本発明の重要な利点は、マイケル付加反応による炭素架橋によって架橋を達成することができることである。炭素-炭素結合を達成するためにマイケル付加反応法を利用する能力は、本明細書において説明されるようにポリエステルポリオールに導入されるアセトアセテート末端封鎖の存在によって促進される。炭素-炭素結合を達成する比較的穏和な方法を利用することができるという事実は、イソシアネートを反応体として利用するポリマー製造方法が、イソシアネートを利用して調製されたポリマーと比較して、ポリマーマトリックスがその意図された最終用途において利用されるときに、意外にも製品性能の損失なしに置き換えられ得ることを意味する。かかるイソシアネートを含まないポリマー製造方法は、従来のイソシアネートポリマー製造方法よりも明らかに健康及び環境上の利点を有する。追加的に、マイケル付加反応を介するポリマー架橋が、周囲温度及び/又は室温で達成され得るという事実は、製造の容易さという利益を提供する。
【0125】
本発明は、ポリマー組成物を形成するための、本明細書において説明されたようなアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの使用を更に提供する。本明細書において説明されたポリマー組成物、より具体的には、C-マイケルポリマーは、多くの用途において使用され得る。本発明のポリマーは、好ましくは、コーティング組成物、接着剤組成物、シーラント組成物、接着剤組成物、又はエラストマー組成物において使用され得る。特に、ポリマーは、コーティング組成物、接着剤組成物、又はシーラント組成物において、及びより好ましくは、コーティング組成物又は接着剤組成物において、及び最も好ましくは、コーティング組成物において用途を見出し得る。
【0126】
追加的に、本発明は、上で説明されたアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールを含むコーティング組成物又はシーラント組成物を提供する。より具体的には、コーティング組成物、接着剤組成物、又はシーラント組成物は、好ましくは、本明細書において説明されたポリマー組成物マトリックスを含む。有利には、コーティング組成物、接着剤組成物又はシーラント組成物は、本明細書において説明されたC-マイケルポリマーを含む。
【0127】
好適には、本明細書において提供されるコーティング組成物は、ハイソリッド又はソリッドコーティングであり得る。コーティング組成物は、着色コーティング又はクリアコーティングであり得る。
【0128】
本明細書において説明される特徴の全ては、任意の組み合わせで、上記態様のいずれかと組み合わされ得る。
【実施例
【0129】
ここで、以下の実施例を参照して、単なる例として本発明を更に説明する。全ての部及びパーセンテージは、別段の指示がない限り、重量によるものである。
【0130】
列挙された全ての試験及び物理的特性は、本明細書において別段の記載がない限り、又は参照された試験方法及び手順において別段の記載がない限り、大気圧及び室温(すなわち、約20℃)で判定されていることが理解されるであろう。
【0131】
以下の実施例において使用される材料は、以下のように識別される。
【0132】
■BASF製1,6-ヘキサンジオール
■BASF製1,4-ブタンジオール
■Verdezyneから入手可能なアジピン酸(Cジカルボン酸)-バイオベースバージョン
■Croda製Pripol(商標)2033二量体脂肪ジオール-C36ジオール(官能価2)
■Croda製Pripol(商標)2043二量体脂肪ジオール-C36ジオール(官能価2.2)
■Croda製Pripol(商標)1006二量体脂肪二酸-水素化C36ジカルボン酸
■Croda製Pripol(商標)1013二量体脂肪二酸-非水素化C36ジカルボン酸
■Perstorp製トリメチロールプロパン
■Perstorp製カプロラクトン-CAPA-モノマー
■Eastman製Tert-ブチルアセトアセテート-tBAA
■Invista製PTMEG-Terathane(商標)-数平均分子量2000
■Sigma-Alderich製PPG-数平均分子量1000
■IGM Resins製Photomer(商標)3016-60G-エポキシアクリレート
■IGM Resins製Photomer(商標)4335-アクリレート
■IGM Resins製Photomer(商標)4028-アクリレート
■IGM Resins製Photomer(商標)6210-アクリレート
試験方法:
■数平均分子量を、水酸基価を参照して末端基分析により判定した。
■数平均分子量を、水酸基価を参照して末端基分析により判定した。
■ヒドロキシル価は、試料1gのヒドロキシル含有量に相当する水酸化カリウムのmg数として定義され、アセチル化、続いて過剰の無水酢酸の加水分解によって測定した。次いで、形成された酢酸を、エタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
■酸価は、試料1g中の遊離脂肪酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数として定義され、標準水酸化カリウム溶液で直接滴定することによって測定した。
■Buchholz硬度を、ISO 2815-2003に従って試験した。
■耐衝撃性を、ISO 62772-1に従って試験した。
■(vii)耐薬品性を、DIN 12720に従って評価し、コーティング試料を、所定の時間スポット試験し、5=損傷なしから0=完全な損傷までの評点を与えた。
■ショアA硬度を、DIN 53505に従って測定した。
■接着強度を、ISO4587に従って測定した。
【0133】
実施例1:アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの調製及び実施例
P1-二量体脂肪酸及びジオール含有ポリエステルポリオール
撹拌機、温度計、ガス入口、及び凝縮器を備えた反応器内に、100重量部のPripol 1006及び21部のブタンジオールを充填した。続いて、反応器の温度を、窒素雰囲気下、常圧下で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下でエステル化反応を行って、ポリエステルポリオールを得た。エステル化反応は、所望の酸/ヒドロキシル価が観察されるまで行い、この実施例では、得られたポリエステルポリオールは、1mgKOH/g未満の酸価及び56mgKOH/gのヒドロキシル価を有した。得られたポリエステルポリオールは、約2000g/molの計算された数平均分子量及び85%の再生可能含有量及び2の官能価を有した。
【0134】
P2-二量体脂肪酸、トリオール及びポリオール含有ポリエステルポリオール
撹拌機、温度計、ガス導入口、及び凝縮器を備えた反応器内に、100重量部のPripol1006及び47部のトリメチロールプロパンを充填した。続いて、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧下で、周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、所望の酸/ヒドロキシル価が観察されるまでエステル化反応を行った。この実施例では、得られたポリエステルポリオールは、1mgKOH/g未満の酸価及び282mgKOH/gのヒドロキシル価を有していた。得られたポリエステルポリオールを、反応器中に保持し、以下の方法工程に従って、CAPAポリオールの導入によって更に変性した。
【0135】
反応器の温度を160℃まで下げ、その後、60部のカプロラクトン(CAPA-モノマー、Perstorp製)及び重合触媒として0.05部のスズ(II)オクトエートを充填した。これらの条件下で、開環重合反応を、所望の酸/ヒドロキシル価が観察されるまで行った。得られた最終ポリエステルポリオールは、1mgKOH/g未満の酸価及び210mgKOH/gのヒドロキシル価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約1000の計算された数平均分子量、55%の再生可能含有量及び4の官能価を有していた。
【0136】
P3-二量体脂肪酸及びジオール含有ポリエステルポリオール
撹拌機、温度計、ガス導入口、及び凝縮器を備えた反応器内に、100重量部のPripol 1006及び87部のヘキサンジオールを充填した。続いて、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧下で、周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、所望の酸/ヒドロキシル価が観察されるまでエステル化反応を行った。この実施例では、得られたポリエステルポリオールは、1mgKOH/g未満の酸価及び37mgKOH/gのヒドロキシル価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約2000g/molの計算された数平均分子量及び83%の再生可能な含有量、2の官能価を有していた。
【0137】
アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールへの変換のための一般的方法
続いて、上記で調製したポリエステルポリオール及びPripols 2033、Pripol 2043及びPTMEGの各々を変性して、本発明に従って、それらをアセトアセテート末端封鎖した。
【0138】
撹拌機、温度計、ガス導入口、及び凝縮器を備えた反応器内に、100重量部の上記で調製したポリオールの各及び15.8重量部のtert-ブチルアセトアセテート(Eastman(商標)t-BAA)を充填した。
【0139】
反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧下で150~160℃まで上昇させた。これらの条件下で、理論量の三級ブタノール留出物が達成されるまで反応を継続する。
【0140】
必要な場合、反応の完了を確実にするために真空を適用することができる。
反応の完了を識別するために、ゲルクロマトグラフィを使用することができる。
【0141】
実施例2:実施例ポリオール及び比較ポリオールを含有するコーティング組成物の調製及び分析
様々なクリアコーティング組成物を、以下の表1に詳述されるように調製した。室温で実施されたC-マイケル付加反応は、上で説明されたような例示的なアセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールの利用可能なアクリレート系オリゴマーを利用するときに、用いられた。コーティングは、2成分(2K)プロセスを使用して調製した。ポリマーマトリックス内で達成されるC-マイケル架橋は、所望される場合、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)のような有機塩基触媒の存在によって加速され得る。
【0142】
以下の表1に示されるように、アセトアセテート末端封鎖ポリエステルポリオールとアクリレート系オリゴマーを、1:1のモル比で反応させた。試験した2つの市販のアクリレート系オリゴマーは、Photomer(商標)3016-60G)及びPhotomer 4335であった。したがって、得られるコーティングは、2つの成分(2K)ベースの製品であるが、イソシアネートの不在下で有利に調製されるものである。コーティング組成物を、基材としてのガラス上に適用し、コーティング組成物の100μmフィルムを、アプリケーターフレーム(BYKPA-2030)を用いて適用し、その後、硬度及び耐薬品性について試験した。ショアA硬度については、0.6mmの鋳造厚さを評価のために使用した。
【0143】
硬化したコーティング特性を評価し、結果を表1及び2に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
表1に詳述される機械的及び化学的データを考慮するとき、アクリレートオリゴマーと組み合わせた本発明のアセトアセテート末端封鎖ポリオールから室温で形成されるC-マイケルポリマーマトリックス材料は、実施例2に基づくコーティングと比較するとき、実施例1よりも改善された圧入硬度が存在するコーティングを提供する。実施例2において使用されたPripol 2043のより高い官能価は、より高い架橋密度を与え、圧入硬度を助ける。コーティング実施例3において使用されるポリオール2は、より高い官能価を有し、これは、より高い圧入硬度で示される。この硬度に加えて、実施例3のコーティング組成物は、200cm.kgの直接衝撃及び150cm.kgの間接衝撃を吸収する能力を依然として呈する。硬質であるが可撓性のコーティングを作成する。コーティング例3の高い架橋密度は、耐薬品性を追加的に提供する(5=損傷なし)。
【0146】
【表2】
【0147】
表2に詳述される機械的性質を考慮するとき、アクリレートオリゴマーと組み合わせた本発明のアセトアセテート末端封鎖ポリオールから室温で形成されるC-マイケルポリマーマトリックス材料は、実施例1、2、及び3に基づくコーティング/シーラントを比較するとき、ショアA硬度が、実施例において使用されるポリオールの官能価の増加と共に増加するコーティング/シーラントを提供する。
コーティング/シーラント組成物4及び5において使用されるポリオールP1及びP3の数平均によるより高い分子量は、より低いショアA硬度を提供する。
【0148】
【表3】
*)ガラス充填エポキシ樹脂
**)基材破損
【0149】
表3に詳述される接着強度を考慮するとき、アクリレートオリゴマーと組み合わせた本発明のアセトアセテート末端封鎖ポリオールから室温で形成されるC-マイケルポリマーマトリックス材料は、実施例2に基づく接着剤配合物を比較すると、1及び3よりも接着強度が高い接着剤を提供する。実施例5に基づく接着剤配合物は、4及び6よりも接着強度が高い。より高い官能価によって与えられる接着強度は、アクリレートオリゴマーとは無関係である。
【国際調査報告】