IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライフエディット セラピューティクス,インコーポレイティドの特許一覧

特表2024-511131DNA改変酵素とその活性な断片およびバリアント、ならびに利用の方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】DNA改変酵素とその活性な断片およびバリアント、ならびに利用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20240305BHJP
   C12N 9/78 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240305BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240305BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240305BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N9/78 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/113 Z
C12P21/02 C
C12N15/09 110
C12N15/09 100
A61K35/12
A61P3/00
A61P43/00 105
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558569
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 US2022021271
(87)【国際公開番号】W WO2022204093
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,273
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521282169
【氏名又は名称】ライフエディット セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【弁理士】
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】タイソン ディー.ボーウェン
(72)【発明者】
【氏名】アレグザンドラ ブリナー クローリー
(72)【発明者】
【氏名】テッド ディー.エリッチ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA31
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084NA20
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC211
4C084ZC212
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087NA14
4C087NA20
4C087ZB21
4C087ZC21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
標的を絞った核酸編集のためデアミナーゼを含む組成物と方法が提供される。組成物は、デアミナーゼポリペプチドを含む。DNA結合ポリペプチドと本発明の融合タンパク質を含むも提供される。この融合タンパク質は、場合によりガイドRNAとの複合体になったデアミナーゼに融合したRNA誘導型ヌクレアーゼを含む。組成物は、前記デアミナーゼまたは前記融合タンパク質をコードする核酸分子も含む。前記デアミナーゼまたは前記融合タンパク質をコードする核酸分子を含むベクターと宿主細胞も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
デアミナーゼ活性を持つポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
デアミナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、前記デアミナーゼが、
a)配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも80%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
b)配列番号109、111、および113のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
c)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および
d)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる核酸分子。
【請求項4】
前記デアミナーゼが、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記デアミナーゼが、配列番号109、111、および113~119のいずれか1つと100%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記デアミナーゼポリペプチドが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致するアミノ酸配列を持つ、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記ポリペプチドに機能可能に連結された異種プロモータをさらに含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項3~7のいずれか1項に記載の核酸分子または請求項8に記載のベクターを含む細胞。
【請求項10】
医薬として許容可能な基剤を含むとともに、請求項1または2に記載のポリペプチド、請求項3~7のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、または請求項9に記載の細胞を含む医薬組成物。
【請求項11】
デアミナーゼを作製する方法であって、前記デアミナーゼが発現する条件下で請求項9に記載の細胞を培養することを含む方法。
【請求項12】
デアミナーゼを作製する方法であって、請求項3~7のいずれか1項に記載の核酸分子または請求項8に記載のベクターを細胞の中に導入し、前記デアミナーゼが発現する条件下で前記細胞を培養することを含む方法。
【請求項13】
前記デアミナーゼを精製することをさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
DNA結合ポリペプチドを含むとともに、
a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つデアミナーゼ
を含む融合タンパク質。
【請求項15】
前記デアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
前記デアミナーゼがシトシンデアミナーゼである、請求項14または15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記DNA結合ポリペプチドが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性が低下しているか阻害されている、請求項14~16のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
前記DNA結合ポリペプチドが、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドである、請求項14~16のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドが、RNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである、請求項18に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記RGNが、II型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
前記RGNがRGNニッカーゼである、請求項19または20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、請求項19または20に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つを持つアミノ酸配列を持つ、請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
少なくとも1つの核局在化シグナル(NLS)をさらに含む、請求項14~29のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
ウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、請求項14~30のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記USPが配列番号81として示されている配列を持つ、請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
配列番号67、68、146、および147のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
DNA結合ポリペプチドとデアミナーゼを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記デアミナーゼが、
a)配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも80%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
b)配列番号109、111、および113のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
c)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および
d)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、核酸分子。
【請求項35】
前記デアミナーゼが、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる、請求項34に記載の核酸分子。
【請求項36】
前記デアミナーゼのヌクレオチド配列が、配列番号109、111、および113~119のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、請求項34に記載の核酸分子。
【請求項37】
前記デアミナーゼのヌクレオチド配列が、配列番号2、4、6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードする、請求項34に記載の核酸分子。
【請求項38】
前記デアミナーゼがシトシンデアミナーゼである、請求項34~37のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項39】
前記DNA結合ポリペプチドが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性が低下しているか阻害されている、請求項34~38のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項40】
前記DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである、請求項34~38のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項41】
前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである、請求項40に記載の核酸分子。
【請求項42】
前記RGNが、II型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである、請求項41に記載の核酸分子。
【請求項43】
前記RGNがRGNニッカーゼである、請求項41または42に記載の核酸分子。
【請求項44】
前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、請求項43に記載の核酸分子。
【請求項45】
前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、請求項41または42に記載の核酸分子。
【請求項46】
前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項41に記載の核酸分子。
【請求項47】
前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項41に記載の核酸分子。
【請求項48】
前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項41に記載の核酸分子。
【請求項49】
前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項41に記載の核酸分子。
【請求項50】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項43に記載の核酸分子。
【請求項51】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つを持つアミノ酸配列を持つ、請求項43に記載の核酸分子。
【請求項52】
前記融合タンパク質をコードする前記ポリペプチドがその5´末端でプロモータに機能可能に連結されている、請求項34~51のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項53】
前記融合タンパク質をコードする前記ポリペプチドがその3´末端でターミネータに機能可能に連結されている、請求項34~52のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項54】
前記融合タンパク質が1つ以上の核局在化シグナルを含む、請求項34~53のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項55】
前記融合タンパク質が、真核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている、請求項34~54のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項56】
前記融合タンパク質が、原核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている、請求項34~55のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項57】
前記融合タンパク質がウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、請求項34~56のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項58】
前記USPが配列番号81として示されている配列を持つ、請求項57に記載の核酸分子。
【請求項59】
前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ、請求項34に記載の核酸分子。
【請求項60】
請求項34~59のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項61】
標的配列にハイブリダイズすることのできるガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をさらに含む、請求項60に記載のベクター。
【請求項62】
請求項14~33のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む細胞。
【請求項63】
ガイドRNAをさらに含む、請求項62に記載の細胞。
【請求項64】
請求項34~59のいずれか1項に記載の核酸分子を含む細胞。
【請求項65】
請求項60または61に記載のベクターを含む細胞。
【請求項66】
医薬として許容可能な基剤を含むとともに、請求項14~33のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項34~59のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項60または61に記載のベクター、または請求項62~65のいずれか1項に記載の細胞を含む医薬組成物。
【請求項67】
融合タンパク質を作製する方法であって、前記融合タンパク質が発現する条件下で請求項62~65のいずれか1項に記載の細胞を培養することを含む方法。
【請求項68】
融合タンパク質を作製する方法であって、請求項34~59のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項60または61に記載のベクターを細胞の中に導入し、前記融合タンパク質が発現する条件下で前記細胞を培養することを含む方法。
【請求項69】
前記融合タンパク質を精製することをさらに含む、請求項67または68に記載の方法。
【請求項70】
RGN融合リボ核タンパク質複合体を作製する方法であって、細胞の中に、請求項34~59のいずれか1項に記載の核酸分子を導入するとともに、ガイドRNAをコードする発現カセットを含む核酸分子、または請求項60または61に記載のベクターを導入し、前記融合タンパク質と前記gRNAが発現してRGN融合リボ核タンパク質複合体を形成する条件下で前記細胞を培養することを含む方法。
【請求項71】
前記RGN融合リボ核タンパク質複合体を精製することをさらに含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
標的DNA配列を含む標的DNA分子を改変する系であって、
a)融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(ただし前記融合タンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼポリペプチド(RGN)とデアミナーゼを含み、前記デアミナーゼは、
i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)と;
b)前記標的DNA配列にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNA、または前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のヌクレオチド配列
を含み、
前記1つ以上のガイドRNAが前記融合タンパク質と複合体を形成し、前記融合タンパク質が前記標的DNA配列に結合して前記標的DNA分子を改変することを可能にする系。
【請求項73】
前記デアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項72に記載の系。
【請求項74】
前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記ヌクレオチド配列と前記融合タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つがプロモータに機能可能に連結されている、請求項72または73に記載の系。
【請求項75】
前記標的DNA配列が、前記RGNによって認識されるプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する、請求項72~74のいずれか1項に記載の系。
【請求項76】
前記標的DNA分子が細胞内にある、請求項72~75のいずれか1項に記載の系。
【請求項77】
前記融合タンパク質の前記RGNが、II型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである、請求項72~76のいずれか1項に記載の系。
【請求項78】
前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項72~76のいずれか1項に記載の系。
【請求項79】
前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項72~76のいずれか1項に記載の系。
【請求項80】
前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項72~76のいずれか1項に記載の系。
【請求項81】
前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項72~76のいずれか1項に記載の系。
【請求項82】
前記融合タンパク質の前記RGNがRGNニッカーゼである、請求項72~76のいずれか1項に記載の系。
【請求項83】
前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、請求項82に記載の系。
【請求項84】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項82または83に記載の系。
【請求項85】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つである、請求項82または83に記載の系。
【請求項86】
前記融合タンパク質の前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、請求項72~76のいずれか1項に記載の系。
【請求項87】
前記融合タンパク質が1つ以上の核局在化シグナルを含む、請求項72~86のいずれか1項に記載の系。
【請求項88】
前記融合タンパク質がウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、請求項72~87のいずれか1項に記載の系。
【請求項89】
前記USPが配列番号81として示されている配列を持つ、請求項88に記載の系。
【請求項90】
前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ、請求項72に記載の系。
【請求項91】
前記融合タンパク質が、真核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている、請求項72~90のいずれか1項に記載の系。
【請求項92】
前記1つ以上のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列と融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が1つのベクター上に位置する、請求項72~91のいずれか1項に記載の系。
【請求項93】
請求項72~92のいずれか1項に記載の系の前記少なくとも1つのガイドRNAと前記融合タンパク質を含むリボ核タンパク質複合体。
【請求項94】
請求項72~92のいずれか1項に記載の系または請求項93に記載のリボ核タンパク質複合体を含む細胞。
【請求項95】
医薬として許容可能な基剤を含むとともに、請求項72~92のいずれか1項に記載の系、請求項93に記載のリボ核タンパク質複合体、または請求項94に記載の細胞を含む医薬組成物。
【請求項96】
標的DNA配列を含む標的DNA分子を改変する方法であって、請求項72~92のいずれか1項に記載の系または請求項93に記載のリボ核タンパク質複合体を、前記標的DNA分子に、または前記標的DNA分子を含む細胞に送達することを含む方法。
【請求項97】
前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>N変異を含む(ただしNは、A、G、またはTである)、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を含む、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
標的配列を含む標的DNA分子を改変する方法であって、
a)RGN-デアミナーゼ複合体の組み立てを、前記RGN-デアミナーゼ複合体が形成されるのに適した条件下で、
i)前記標的DNA分子にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNAと;
ii)RNA誘導型ヌクレアーゼポリペプチド(RGN)と少なくとも1つのデアミナーゼを含む融合タンパク質(ただし前記デアミナーゼは、
I)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
II)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)をインビトロで組み合わせることによって実施した後;
b)前記標的DNA分子、または前記標的DNA分子を含む細胞を、前記インビトロで組み立てられたRGN-デアミナーゼ複合体と接触させることを含み、
前記1つ以上のガイドRNAが前記標的DNA分子にハイブリダイズすることにより、前記融合タンパク質を前記標的DNA分子に結合させ、前記標的DNA分子の改変を起こさせる方法。
【請求項101】
前記デアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>N変異を含む(ただしNは、A、G、またはTである)、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を含む、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を含む、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記融合タンパク質の前記RGNがII型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記融合タンパク質の前記RGNがRGNニッカーゼである、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項110または111に記載の方法。
【請求項113】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つである、請求項110または111に記載の方法。
【請求項114】
前記融合タンパク質の前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記融合タンパク質が1つ以上の核局在化シグナルを含む、請求項100~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記融合タンパク質がウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、請求項100~115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記USPが配列番号81として示されている配列を持つ、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ、請求項100に記載の方法。
【請求項119】
前記標的DNA配列が、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する、請求項100~118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
前記標的DNA分子が細胞内にある、請求項100~119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記改変されたDNA分子を含む細胞を選択することをさらに含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
請求項121に記載の方法に従う改変された標的DNA配列を含む細胞。
【請求項123】
請求項122に記載の細胞と、医薬として許容可能な基剤を含む医薬組成物。
【請求項124】
遺伝性疾患に関する原因変異の修正がなされた遺伝子改変細胞を作製する方法であって、
a)融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(ただし前記融合タンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)とデアミナーゼを含み、前記デアミナーゼは、
i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)と;
b)標的DNA配列にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNA(gRNA)、または前記gRNAをコードするポリヌクレオチド
を前記細胞に導入することを含み、
そのことによって前記融合タンパク質とgRNAが前記原因変異のゲノム遺伝子座に向かい、前記ゲノム配列を改変して前記原因変異を除去する方法。
【請求項125】
前記デアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記融合タンパク質の前記RGNがII型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである、請求項124または125に記載の方法。
【請求項127】
前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項124~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、請求項124~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記融合タンパク質の前記RGNがRGNニッカーゼである、請求項124~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、請求項129または130に記載の方法。
【請求項132】
前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つである、請求項129または130に記載の方法。
【請求項133】
前記融合タンパク質の前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、請求項124~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項134】
前記融合タンパク質が1つ以上の核局在化シグナルを含む、請求項124~133のいずれか1項に記載の方法。
【請求項135】
前記融合タンパク質がウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、請求項124~134のいずれか1項に記載の方法。
【請求項136】
前記USPが配列番号81として示されている配列を持つ、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ、請求項124に記載の方法。
【請求項138】
前記ゲノム改変が、前記標的DNA配列内で少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を導入することを含む、請求項124~137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項139】
前記ゲノム改変が、前記標的DNA配列内で少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を導入することを含む、請求項124~137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項140】
前記細胞が動物細胞である、請求項124~139のいずれか1項に記載の方法。
【請求項141】
前記原因変異の修正がナンセンス変異の修正を含む、請求項124~140のいずれか1項に記載の方法。
【請求項142】
前記遺伝性疾患が表23に掲載されている疾患である、請求項124~140のいずれか1項に記載の方法。
【請求項143】
疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、請求項14~33のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項34~59のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項60または61に記載のベクター、または請求項62~65、94、および122のいずれか1項に記載の細胞、請求項72~92のいずれか1項に記載の系、請求項93に記載のリボ核タンパク質複合体、または請求項66、95、および123のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項144】
前記疾患が原因変異と関係しており、前記医薬組成物が前記原因変異を修正する、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記疾患が表23に掲載されている疾患である、請求項143または144に記載の方法。
【請求項146】
対象における疾患を治療するための、請求項14~33のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項34~59のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項60または61に記載のベクター、または請求項62~65、94、および122のいずれか1項に記載の細胞、請求項72~92のいずれか1項に記載の系、請求項93に記載のリボ核タンパク質複合体の利用。
【請求項147】
前記疾患が原因変異と関係しており、前記医薬組成物が前記原因変異を修正する、請求項146に記載の利用。
【請求項148】
前記疾患が表23に掲載されている疾患である、請求項146または147に記載の利用。
【請求項149】
疾患の治療に有用な薬を製造するための、請求項14~33のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項34~59のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項60または61に記載のベクター、または請求項62~65、94、および122のいずれか1項に記載の細胞、請求項72~92のいずれか1項に記載の系、請求項93に記載のリボ核タンパク質複合体の利用。
【請求項150】
前記疾患が原因変異と関係しており、前記薬の有効量が前記原因変異を修正する、請求項149に記載の利用。
【請求項151】
前記疾患が表23に掲載されている疾患である、請求項149または150に記載の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2021年3月22日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第63/164,273号の優先権を主張するものであり、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
配列リストに関する宣言
本出願に付随する配列リストは紙のコピーの代わりにASCII形式で提供され、参照によって本明細書に組み込まれている。L103438_1240WO_0134_1_SL.txtと名づけたこのASCIIコピーはサイズが1,310,113バイトであり、2022年3月22に作成され、EFS-Webを通じて電子的に提出されている。
【0003】
本発明は、分子生物学と遺伝子編集の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
標的を絞ったゲノム編集または標的を絞ったゲノム改変が、急速に基礎研究と応用研究のための重要なツールになりつつある。初期の方法は、ヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENなど)を操作することを含んでいたため、それぞれの特定の標的配列に対して特異的な操作されたプログラム可能な配列特異的DNA結合ドメインを持つキメラヌクレアーゼを作製する必要があった。RNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)(クラスター化されて規則的な間隔で配置された短い回文反復(CRISPR)-関連(Cas)細菌系のCRISPR-Casタンパク質など)は、ヌクレアーゼを特定の標的配列に特異的にハイブリダイズするガイドRNAとの複合体にすることにより、特定の配列を標的にすることが可能になる。標的特異的ガイドRNAの作製は、各標的配列のためのキメラヌクレアーゼの作製よりもコストがかからず、より効率的である。このようなRNA誘導型ヌクレアーゼを用いて配列特異的二本鎖切断を導入することによりゲノムを編集することが可能であり、この二本鎖切断は、エラーを起こしやすい非相同末端結合(NHEJ)を通じて修復されるため、変異が特定のゲノム位置に導入される。あるいは相同組み換え修復を通じて異種DNAをそのゲノム部位に導入することができる。
【0005】
それに加え、RGNは、標的を絞ったDNA編集のアプローチに有用である。標的を絞った核酸配列編集(例えば標的を絞った切断)によりゲノムDNAに特定の改変を導入できるため、遺伝子機能と遺伝子発現を研究するための非常に精細なアプローチが可能になる。RGNを用いると、標的を絞った塩基編集にRGNのRNA誘導型活性をDNA改変酵素(デアミナーゼなど)と組み合わせて用いるキメラタンパク質を作製することもできる。標的を絞った編集を利用し、ヒトにおける遺伝性疾患を標的とすること、または作物のゲノムに農業で有益な変異を導入することができる。ゲノム編集ツールの開発により、遺伝子編集に基づく哺乳類治療法と農業バイオテクノロジーへの新たなアプローチが提供される。
【発明の概要】
【0006】
標的DNA分子を改変する組成物と方法が提供される。組成物は興味ある標的DNA分子の改変に利用される。提供される組成物はデアミナーゼポリペプチドを含む。核酸分子結合ポリペプチド(例えばDNA結合ポリペプチド)とデアミナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質と、RNA誘導型ヌクレアーゼとデアミナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質とリボ核酸を含むリボ核タンパク質複合体も提供される。提供される組成物は、デアミナーゼポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子、およびその核酸分子を含むベクターと宿主細胞も含む。本明細書に開示されている方法は、興味ある標的DNA分子の中の興味ある標的配列に結合し、興味ある標的DNA分子を改変することに関する。
【0007】
第1の側面では、本開示により、a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;デアミナーゼ活性を持つポリペプチドが提供される。
【0008】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは単離されている。
【0009】
別の1つの側面では、本開示により、デアミナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、前記デアミナーゼが、a)配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも80%一致する配列を持つヌクレオチド配列;b)配列番号109、111、および113のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列;c)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;およびd)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる核酸分子が提供される。
【0010】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号109、111、および113~119のいずれか1つと100%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼポリペプチドは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼポリペプチドは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致するアミノ酸配列を持つ。
【0011】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記核酸分子は、前記ポリペプチドに機能可能に連結された異種プロモータをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記核酸分子は単離されている。
【0012】
別の1つの側面では、本開示により、上記の核酸分子を含むベクターが提供される。
【0013】
別の1つの側面では、本開示により、上記の核酸分子またはベクターを含む細胞が提供される。いくつかの実施形態では、前記細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記哺乳類細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、前記ヒト細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、前記免疫細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記幹細胞は人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は昆虫細胞または鳥類細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は菌類細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は植物細胞である。
【0014】
別の1つの側面では、本開示により、上記の植物細胞を含む植物または種子が提供される。
【0015】
別の1つの側面では、本開示により、医薬として許容可能な基剤を含むとともに、実施形態11のポリペプチド、核酸分子、ベクター、または上記の細胞を含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、医薬として許容可能な前記基剤は、前記ポリペプチドまたは前記核酸分子にとって異種である。いくつかの実施形態では、医薬として許容可能な前記基剤は天然ではない。
【0016】
別の1つの側面では、本開示により、デアミナーゼを作製する方法として、前記デアミナーゼが発現する条件下で上記の細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0017】
別の1つの側面では、本開示により、デアミナーゼを作製する方法として、上記の核酸分子またはベクターを細胞の中に導入し、前記デアミナーゼが発現する条件下で前記細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0018】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記方法は前記デアミナーゼを精製することをさらに含む。
【0019】
別の1つの側面では、本開示により、DNA結合ポリペプチドを含むとともに、a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つデアミナーゼを含む融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ。
【0020】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記デアミナーゼはシトシンデアミナーゼである。いくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性は低下しているか阻害されている。
【0021】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RGNはII型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RGNはRGNニッカーゼである。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは不活性なRuvCドメインを持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNはヌクレアーゼ不活性なRGNである。いくつかの実施形態では、前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。
【0022】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つを持つアミノ酸配列を持つ。
【0023】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は少なくとも1つの核局在化シグナル(NLS)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ。
【0024】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質はウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPは、配列番号81として示されている配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列は、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ。
【0025】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。
【0026】
別の1つの側面では、本開示により、DNA結合ポリペプチドとデアミナーゼを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記デアミナーゼが、a)配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも80%一致する配列を持つヌクレオチド配列;b)配列番号109、111、および113のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列;c)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;およびd)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる核酸分子が提供される。
【0027】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼのヌクレオチド配列は、配列番号109、111、および113~119のいずれか1つと100%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼのヌクレオチド配列は、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼのヌクレオチド配列は、配列番号2、4、6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードする。
【0028】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記デアミナーゼはシトシンデアミナーゼである。いくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性は低下しているか阻害されている。
【0029】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RGNは、II型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RGNはRGNニッカーゼである。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは不活性なRuvCドメインを持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNはヌクレアーゼ不活性なRGNである。
【0030】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。
【0031】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つを持つアミノ酸配列を持つ。
【0032】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質をコードする前記ポリペプチドはその5´末端でプロモータに機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質をコードする前記ポリペプチドはその3´末端でターミネータに機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は1つ以上の核局在化シグナルを含む。
【0033】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は真核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は原核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている。
【0034】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質はウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPは、配列番号81として示されている配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列は、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。
【0035】
別の1つの側面では、本開示により、上記の核酸分子を含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、前記ベクターは、標的配列にハイブリダイズすることのできるガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記gRNAは単一ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、前記gRNAは二重ガイドRNAである。
【0036】
別の1つの側面では、本開示により、上記の融合タンパク質を含む細胞が提供される。いくつかの実施形態では、前記細胞はガイドRNA(gRNA)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記gRNAは単一ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、前記gRNAは二重ガイドRNAである。
【0037】
別の1つの側面では、本開示により、上記の核酸分子またはベクターを含む細胞が提供される。
【0038】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記細胞は原核細胞である。上記の側面のいくつかの実施形態では、前記細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記哺乳類細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、前記ヒト細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、前記免疫細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記幹細胞は人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は昆虫細胞または鳥類細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は菌類細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は植物細胞である。
【0039】
別の1つの側面では、本開示により、上記の細胞を含む植物または種子が提供される。
【0040】
別の1つの側面では、本開示により、医薬として許容可能な基剤を含むとともに、上記の融合タンパク質、核酸分子、ベクター、または細胞を含む医薬組成物が提供される。
【0041】
別の1つの側面では、本開示により、融合タンパク質を作製する方法でとして、前記融合タンパク質が発現する条件下で上記の細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0042】
別の1つの側面では、本開示により、融合タンパク質を作製する方法として、上記の核酸分子またはベクターを細胞の中に導入し、前記融合タンパク質が発現する条件下で前記細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0043】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記方法は前記融合タンパク質を精製することをさらに含む。
【0044】
別の1つの側面では、本開示により、RGN融合リボ核タンパク質複合体を作製する方法として、細胞の中に、上記の核酸分子を導入するとともに、ガイドRNA(gRNA)をコードする発現カセットを含む核酸分子、または上記のベクターを導入し、前記融合タンパク質と前記gRNAが発現してRGN融合リボ核タンパク質複合体を形成する条件下で前記細胞を培養することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記RGN融合リボ核タンパク質複合体を精製することをさらに含む。
【0045】
別の1つの側面では、本開示により、標的DNA配列を含む標的DNA分子を改変する系として、a)融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(ただし前記融合タンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼポリペプチド(RGN)とデアミナーゼを含み、前記デアミナーゼは、i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)と;b)前記標的DNA配列にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNA、または前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含み;前記1つ以上のガイドRNAが前記融合タンパク質と複合体を形成し、前記融合タンパク質が前記標的DNA配列に結合して前記標的DNA分子を改変することを可能にする系が提供される。
【0046】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記ヌクレオチド配列と前記融合タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つはプロモータに機能可能に連結されている。
【0047】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記標的DNA配列は真核細胞の標的DNA配列である。いくつかの実施形態では、前記標的DNA配列は、前記RGNによって認識されるプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する。
【0048】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記標的DNA分子は細胞内にある。いくつかの実施形態では、前記細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は植物細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記哺乳類細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、前記ヒト細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、前記免疫細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記幹細胞は人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は昆虫細胞である。いくつかの実施形態では、前記細胞は原核細胞である。
【0049】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、II型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。
【0050】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNはRGNニッカーゼである。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは不活性なRuvCドメインを持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNはヌクレアーゼ不活性なRGNである。
【0051】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は1つ以上の核局在化シグナルを含む。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ。
【0052】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質はウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPは配列番号81として示されている配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列は、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ。
【0053】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は真核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている。いくつかの実施形態では、前記1つ以上のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列と融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は1つのベクター上に位置する。
【0054】
別の1つの側面では、本開示により、上記の系の前記少なくとも1つのガイドRNAと前記融合タンパク質を含むリボ核タンパク質複合体が提供される。
【0055】
別の1つの側面では、本開示により、上記の系またはリボ核タンパク質複合体を含む細胞が提供される。いくつかの実施形態では、前記細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態では、前記細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記哺乳類細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、前記ヒト細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、前記免疫細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記幹細胞は人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は昆虫細胞または鳥類細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は菌類細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は植物細胞である。
【0056】
別の1つの側面では、本開示により、上記の植物細胞を含む植物または種子が提供される。
【0057】
別の1つの側面では、本開示により、医薬として許容可能な基剤を含むとともに、上記の系、リボ核タンパク質複合体、または細胞を含む医薬組成物が提供される。
【0058】
別の1つの側面では、本開示により、標的DNA配列を含む標的DNA分子を改変する方法として、上記の系またはリボ核タンパク質複合体を、前記標的DNA分子、または前記標的DNA分子を含む細胞に送達することを含む方法が提供される。
【0059】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記改変された標的DNA分子は、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>N変異を含む(ただしNは、A、G、またはTである)。いくつかの実施形態では、前記改変された標的DNA分子は、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を含む。いくつかの実施形態では、前記改変された標的DNA分子は、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を含む。
【0060】
別の1つの側面では、本開示により、標的配列を含む標的DNA分子を改変する方法として、a)RGN-デアミナーゼ複合体の組み立てを、前記RGN-デアミナーゼ複合体が形成されるのに適した条件下で、i)前記標的DNA分子にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNAと;ii)RNA誘導型ヌクレアーゼポリペプチド(RGN)と少なくとも1つのデアミナーゼを含む融合タンパク質(ただし前記デアミナーゼは、I)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;II)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)をインビトロで組み合わせることによって実施した後;b)前記標的DNA分子、または前記標的DNA分子を含む細胞を、前記インビトロで組み立てられたRGN-デアミナーゼ複合体と接触させることを含み、前記1つ以上のガイドRNAが前記標的DNA分子にハイブリダイズすることにより、前記融合タンパク質を前記標的DNA分子に結合させ、前記標的DNA分子の改変を起こさせる方法が提供される。
【0061】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記改変された標的DNA分子は、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>N変異を含む(ただしNは、A、G、またはTである)。いくつかの実施形態では、前記改変された標的DNA分子は、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を含む。いくつかの実施形態では、前記改変された標的DNA分子は、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を含む。
【0063】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNはII型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。
【0064】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNはRGNニッカーゼである。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは不活性なRuvCドメインを持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNはヌクレアーゼ不活性なRGNである。
【0065】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は1つ以上の核局在化シグナルを含む。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ。
【0066】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質はウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPは配列番号81として示されている配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列は、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ。
【0067】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記標的DNA配列は真核細胞の標的DNA配列である。いくつかの実施形態では、前記標的DNA配列は、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する。
【0068】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記標的DNA分子は細胞内にある。いくつかの実施形態では、前記細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は植物細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記哺乳類細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、前記ヒト細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、前記免疫細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記幹細胞は人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は昆虫細胞である。いくつかの実施形態では、前記細胞は原核細胞である。
【0069】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記改変されたDNA分子を含む細胞を選択することをさらに含む。
【0070】
別の1つの側面では、本開示により、上記の方法に従う改変された標的DNAを含む細胞が提供される。いくつかの実施形態では、前記細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では前記真核細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記哺乳類細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、前記ヒト細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、前記免疫細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記幹細胞は人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は昆虫細胞である。いくつかの実施形態では、前記細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は植物細胞である。
【0071】
別の1つの側面では、本開示により、上記の細胞を含む植物または種子が提供される。
【0072】
別の1つの側面では、本開示により、上記の細胞と、医薬として許容可能な基剤を含む医薬組成物が提供される。
【0073】
別の1つの側面では、本開示により、遺伝性疾患に関する原因変異の修正がなされた遺伝子改変細胞を作製する方法として、a)融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(ただし前記融合タンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)とデアミナーゼを含み、前記デアミナーゼは、i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)と;b)標的DNA配列にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNA(gRNA)、または前記gRNAをコードするポリヌクレオチドを前記細胞に導入することを含み、そのことによって前記融合タンパク質とgRNAが前記原因変異のゲノム遺伝子座に向かい、前記ゲノム配列を改変して前記原因変異を除去する方法が提供される。
【0074】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドは、前記細胞の中で活性なプロモータに機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記gRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、前記細胞の中で活性なプロモータに機能可能に連結されている。
【0075】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNはII型またはV型のCRISPR-Casポリペプチドである。
【0076】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNは、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ。
【0077】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNはRGNニッカーゼである。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは不活性なRuvCドメインを持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記RGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の前記RGNはヌクレアーゼ不活性なRGNである。
【0078】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は1つ以上の核局在化シグナルを含む。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記デアミナーゼは前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ。
【0079】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質はウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPは配列番号81として示されている配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列は、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ。
【0080】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記ゲノム改変は、前記標的DNA配列内で少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を導入することを含む。いくつかの実施形態では、前記ゲノム改変は、前記標的DNA配列内で少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を導入することを含む。
【0081】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態では、前記動物細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記細胞は、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、またはヒトに由来する。
【0082】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記原因変異の修正はナンセンス変異の修正を含む。いくつかの実施形態では、前記遺伝性疾患は表23に掲載されている疾患である。いくつかの実施形態では、前記gRNAは、配列番号122~144のいずれか1つを標的とするスペーサ配列、またはその相補体をさらに含む。
【0083】
別の1つの側面では、本開示により、a)DNA結合ポリペプチドとシトシンデアミナーゼを含む融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードする核酸分子と;b)第2のシトシンデアミナーゼ、または前記第2のデアミナーゼをコードする核酸分子(ただし前記第2のデアミナーゼは、i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)を含む組成物が提供される。
【0084】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記第2のシトシンデアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記第2のシトシンデアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ。
【0085】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ。
【0086】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性は低下しているか阻害されている。いくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである。
【0087】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記RGNはRGNニッカーゼである。いくつかの実施形態では、前記RGNはヌクレアーゼ不活性なRGNである。
【0088】
別の1つの側面では、本開示により、融合タンパク質をコードする核酸分子と第2のシトシンデアミナーゼをコードする核酸分子を含むベクター(ただし前記融合タンパク質は、DNA結合ポリペプチドと第1のシトシンデアミナーゼを含み、前記第2のシトシンデアミナーゼは、a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)が提供される。
【0089】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記第2のシトシンデアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記第2のシトシンデアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ。
【0090】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ。
【0091】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性は低下しているか阻害されている。いくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである。
【0092】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記RGNはRGNニッカーゼである。いくつかの実施形態では、前記RGNはヌクレアーゼ不活性なRGNである。
【0093】
別の1つの側面では、本開示により、上記のベクターを含む細胞が提供される。
【0094】
別の1つの側面では、本開示により、a)DNA結合ポリペプチドと第1のシトシンデアミナーゼを含む融合タンパク質;または前記融合タンパク質をコードする核酸分子と;b)第2のシトシンデアミナーゼ、または前記第2のデアミナーゼをコードする核酸分子(ただし前記第2のデアミナーゼは、i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)を含む細胞が提供される。
【0095】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記第2のシトシンデアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記第2のシトシンデアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ。
【0096】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記第1のシトシンデアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ。いくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性は低下しているか阻害されている。いくつかの実施形態では、前記DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである。
【0097】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記RGNはRGNニッカーゼである。いくつかの実施形態では、前記RGNはヌクレアーゼ不活性なRGNである。
【0098】
別の1つの側面では、本開示により、医薬として許容可能な基剤を含むとともに、上記の組成物、ベクター、または細胞を含む医薬組成物が提供される。
【0099】
別の1つの側面では、本開示により、疾患を治療する方法として、それを必要とする対象に、上記の融合タンパク質、核酸分子、ベクター、細胞、系、リボ核タンパク質複合体、組成物、または医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0100】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記疾患は原因変異と関係しており、前記医薬組成物が前記原因変異を修正する。いくつかの実施形態では、前記疾患は表23に掲載されている疾患である。
【0101】
別の1つの側面では、本開示により、対象における疾患を治療するための、上記の融合タンパク質、核酸分子、ベクター、細胞、系、リボ核タンパク質複合体、または組成物の利用が提供される。
【0102】
上記の側面のいくつかの実施形態では、前記疾患は原因変異に関係しており、前記治療は前記原因変異を修正することを含む。いくつかの実施形態では、前記疾患は表23に掲載されている疾患である。
【0103】
別の1つの側面では、本開示により、疾患の治療に有用な薬を製造するための、融合タンパク質、核酸分子、ベクター、細胞、系、リボ核タンパク質複合体、または組成物の利用が提供される。いくつかの実施形態では、前記疾患は原因変異と関係しており、前記薬の有効量が前記原因変異を修正する。いくつかの実施形態では、前記疾患は表23に掲載されている疾患である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明が関係する分野の当業者は、本明細書に記載されている本発明の改変およびそれ以外の実施形態として、これまでの記述に示されている教示の利益を持つものを思いつくであろう。したがってこれらの発明は、開示されている具体的な実施形態に限定されることはなく、改変と他の実施形態は添付の請求項の範囲に含まれることを理解すべきである。特殊な用語を本明細書で使用するが、それらは一般的かつ説明的な意味で用いられているのであり、制限する目的ではない。
【0105】
I.概要
【0106】
本開示により、シトシンデアミナーゼと、核酸分子結合ポリペプチド(DNA結合ポリペプチドなど)とデアミナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質が提供される。ある実施形態では、DNA結合ポリペプチドは、ランダム化されたバックグラウンド配列に結合するよりも大きな頻度で標的配列に結合するという意味で配列特異的DNA結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、DNA結合ポリペプチドは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか、それに由来する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質はRNA誘導型DNA結合ポリペプチドとデアミナーゼポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドは、ガイドRNA(gRNAとも呼ばれる)に結合するRNA誘導型ヌクレアーゼ(CRISPR-Cas(例えばCas9)ポリペプチドなど)であり、それが今度は鎖のハイブリダイゼーションを通じて標的核酸配列に結合する。
【0107】
本明細書に開示されているデアミナーゼポリペプチドは核酸塩基(例えばシトシンなど)を脱アミノ化することができる。デアミナーゼによる核酸塩基の脱アミノ化はそれぞれの残基の位置での点変異につながる可能性があり、それを本明細書では「核酸編集」または「塩基編集」と呼ぶ。したがってRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドとデアミナーゼを含む融合タンパク質を用い、標的を絞った核酸配列編集が可能になる。
【0108】
このような融合タンパク質は、例えば遺伝子が改変された細胞を作製するためインビトロで標的を絞ってDNAを編集するのに有用である。遺伝子が改変されたこれら細胞として、植物細胞または動物細胞が可能である。このような融合タンパク質は、例えば生体外で哺乳類細胞内の遺伝子異常を修正するため標的を絞った変異を導入する(例えば対象から得られた細胞内の遺伝子異常を修正し、その後その細胞を同じ対象または別の対象に再導入する)ことと;哺乳類対象内の疾患関連遺伝子に標的を絞った変異を導入(例えば遺伝子異常の修正または脱活性化変異を導入)することにも有用である可能性がある。このような融合タンパク質は、植物細胞の中に標的を絞った変異を導入する(例えば有益な、または農業で価値のある形質またはアレルを導入する)のにも有用である可能性がある。
【0109】
「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」という用語は本明細書では交換可能に使用され、ペプチド(アミド)結合によって互いに連結されたアミノ酸残基のポリマーを意味する。これらの用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドを意味する。典型的には、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さになろう。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドは、個別のタンパク質、または一群のタンパク質を意味することができる。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドの中のアミノ酸の1つ以上を例えば化学物質(例えば複合体化、機能化、または他の修飾などのための炭水化物基、ヒドロキシル基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、リンカー)の付加によって改変することができる。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドは単一分子であること、または多分子複合体であることも可能である。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドとして、天然のタンパク質またはペプチドの単なる断片が可能である。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドは、天然、組み換え、または合成、またはこれらの任意の組み合わせが可能である。
【0110】
本明細書に提示されているどのタンパク質も本分野で知られている任意の方法によって作製することができる。例えば本明細書に提示されているタンパク質は、組み換えタンパク質の発現と精製によって作製することができ、ペプチドリンカーを含む融合タンパク質に特に適している。組み換えタンパク質の発現と精製のための方法は周知であり、Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州(2012))(その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている方法を含む。
【0111】
II.デアミナーゼ
【0112】
「デアミナーゼ」という用語は、脱アミノ化反応の触媒となる酵素を意味する。本発明のデアミナーゼは核酸塩基デアミナーゼであり、「デアミナーゼ」と「核酸塩基デアミナーゼ」という用語は本明細書では交換可能に使用される。デアミナーゼとして、天然のデアミナーゼ酵素、またはその活性な断片またはバリアントが可能である。デアミナーゼは一本鎖核酸(ssDNAまたはssRNAなど)または二本鎖核酸(dsDNAまたはdsRNAなど)に対して活性である可能性がある。いくつかの実施形態では、デアミナーゼはssDNAを脱アミノ化することだけが可能でdsDNAには作用しない。
【0113】
本開示の方法と組成物は、シトシン、シチジン、またはデオキシシチジンを加水分解で脱アミノ化してウラシルにする触媒となるシトシンデアミナーゼを含む。シトシンデアミナーゼはDNAまたはRNAに作用する可能性があり、典型的には一本鎖核酸分子に作用する。さらなる実施形態では、シトシンデアミナーゼはアポリポタンパク質B mRNA編集複合体(APOBEC)ファミリーのデアミナーゼである。いくつかの実施形態では、デアミナーゼはAPOBEClファミリーのデアミナーゼである。いくつかの実施形態では、シトシンデアミナーゼは、活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)である。いくつかの実施形態では、デアミナーゼはACF1/ASEデアミナーゼである。追加の適切なデアミナーゼ酵素は、本開示に基づくと当業者には明らかであろう。DNA結合ポリペプチドとシトシンデアミナーゼを含む融合タンパク質を本明細書では「C塩基エディタ」、「シトシン塩基エディタ」、または「CBE」と呼ぶ。CBEはシトシンをウラシルに変換することができ、ウラシルをその後DNAの複製または修復を通じてチミジンに変換することができる。いくつかの実施形態では、CBEはシトシンからグアニンに、またはシトシンからアデニンに変換する。作用のいかなる理論または機構にも囚われないと、シトシン塩基エディタによるシトシンからグアニンまたはアデニンへの変換は、シトシンが脱アミノ化によってウラシルになり、その後ウラシル残基が塩基除去修復されている間にウラシルDNAグリコシラーゼの活性によってなされると考えられる。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示のシトシンデアミナーゼはアデニンデアミナーゼと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、アデニンデアミナーゼは、ADATファミリーのデアミナーゼ、またはそのバリアントである。アデニン、アデノシン、またはデオキシアデノシンの脱アミノ化によってイノシンが生じ、それがグアニンとしてポリメラーゼによって処理される。現在のところ、DNAの中のアデニンを脱アミノ化する天然のアデニンデアミナーゼは知られていない。いくつかの方法を利用して、tRNAに作用するアデニンデアミナーゼ(ADAT)タンパク質を進化させ、哺乳類細胞の中のDNA分子に対して活性であるようにされた(Gaudelli et al, 2017;Koblan, L. W. et al, 2018, Nat Biotechnol 36, 843-846;Richter, M. F. et al, 2020, Nat Biotechnol, doi:10.1038/s41587-020-0562-8(それぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれている))。そのような1つの方法は細菌選択アッセイを利用しており、そこではA:T>G:C変換を通じて抗生剤耐性を活性化させる能力を持つ細胞だけが生き延びることができる。いくつかの実施形態では、本開示のシトシンデアミナーゼを含む本開示の組成物と方法はさらに、2020年9月11日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第63/077,089号と2021年2月8日に出願された第63/146,840号、および2021年9月10日に出願されたPCT国際出願第PCT/US2021/049853号(それぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に示されているアデニンデアミナーゼを含む。
【0115】
本発明は、細菌から同定されたシトシンデアミナーゼポリペプチドと、細菌デアミナーゼのトランケーションを通じて生成したシトシンデアミナーゼに関する。シトシンデアミナーゼは本明細書に開示されており、配列番号2、4、および6~12として示されている。本発明のデアミナーゼを用いてDNA分子またはRNA分子を編集することができる。いくつかの実施形態では、本発明のデアミナーゼを用いてssDNA分子またはssRNA分子を編集することができる。本明細書に記載されているシトシンデアミナーゼは、単独のデアミナーゼとして、または融合タンパク質の中の成分として有用である。DNAを標的にするポリペプチドとシトシンデアミナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質を本明細書では「Cに基づくエディタ」、「シトシン塩基エディタ」、または「CBE」と呼び、標的を絞った核酸配列編集に用いることができる。
【0116】
「塩基エディタ」は、DNAターゲティングポリペプチド(RGNなど)とデアミナーゼを含む融合タンパク質である。シトシン塩基エディタ(CBE)は、DNAを標的とするタンパク質(RGNなど)とシトシンデアミナーゼを含む。CBEはDNA標的分子上でシトシンを脱アミノ化してウラシルにすることを通じて機能する。ウラシルはその後、DNAの複製または修復を通じてチミンに変換される。いくつかの実施形態では、本開示のシトシンデアミナーゼ、またはその活性なバリアントまたは断片は、C>N変異をDNA分子に導入する(ただしNは、A、G、またはTである)。いくつかの実施形態では、本開示のシトシンデアミナーゼ、またはそれを含む融合タンパク質は、C>T変異をDNA分子に導入する。いくつかの実施形態では、本開示のシトシンデアミナーゼ、またはそれを含む融合タンパク質は、C>G変異をDNA分子に導入する。
【0117】
デアミナーゼがDNA結合ポリペプチドとの融合を通じて核酸分子の特定の領域に向けられた実施形態では、DNA結合ポリペプチドが結合する標的配列の中、またはその標的配列に隣接するシトシンの変異率は、本分野で知られている任意の方法(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、制限断片長多型(RFLP)、またはDNAシークエンシングが含まれる)を利用して測定することができる。
【0118】
標的DNA分子の中に望むC>N(ただしNは、A、T、またはG)変異(C>TまたはC>G変異など)を導入する効率を大きくするため、本開示のデアミナーゼ、またはデアミナーゼ活性を保持するその活性なバリアントまたは断片を、デアミナーゼ-DNA結合ポリペプチド融合体の一部として細胞の中に導入すること、および/またはDNA結合ポリペプチド-デアミナーゼ融合体と同時に発現させることができる。本開示のデアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれか、またはデアミナーゼ活性を保持しているそのバリアントまたは断片のアミノ酸配列を持つ。いくつかの実施形態では、デアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ。特別な実施形態では、デアミナーゼは、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも80%一致する配列を持つアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、デアミナーゼは、配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を含む。
【0119】
III.核酸分子結合ポリペプチド
【0120】
本開示のいくつかの側面により、核酸分子結合ポリペプチドとデアミナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質が提供される。RNA分子への結合と標的を絞ったRNA分子編集が本発明によって考慮されるが、いくつかの実施形態では、融合タンパク質の核酸分子結合ポリペプチドはDNA結合ポリペプチドである。このような融合タンパク質は、インビトロ、生体外、または生体内での標的を絞ったDNA編集に有用である。これら融合タンパク質は哺乳類細胞の中で活性であり、標的を絞ったDNA分子編集に有用である。
【0121】
「融合タンパク質」という用語は、本明細書では、少なくとも2つの異なるタンパク質からのタンパク質ドメインを含むハイブリッドポリペプチドを意味する。融合タンパク質は2つ以上の異なるドメイン(例えばDNA結合ドメインとデアミナーゼ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、核酸(例えばRNA)との複合体であるか、核酸と会合している。
【0122】
いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質はDNA結合ポリペプチドを含む。本明細書では、「DNA結合ポリペプチド」という用語は、DNAに結合することのできる任意のポリペプチドを意味する。ある実施形態では、本開示の融合タンパク質のDNA結合ポリペプチド部分が二本鎖DNAに結合する。特別な実施形態では、DNA結合ポリペプチドは配列特異的にDNAに結合する。本明細書では、「配列特異的な」または「配列特異的に」という用語は、特定のヌクレオチド配列との選択的相互作用を意味する。
【0123】
2つのポリヌクレオチド配列が実質的に相補的であると見なせるのは、それら2つの配列が厳しい条件下で互いにハイブリダイズするときである。同様に、DNA結合ポリペプチドが特定の標的配列に配列特異的に結合すると見なされるのは、そのDNA結合ポリペプチドがその配列に厳しい条件で結合する場合である。「厳しい条件」または「厳しいハイブリダイゼーション条件」とは、それら2つのポリヌクレオチド配列が他の配列よりも大きな程度(例えばバックグラウンドの少なくとも2倍)の検出可能性で互いに結合する(またはポリペプチドがその特定の標的配列に結合する)条件を意味する。厳しい条件は配列に依存しており、環境が異なれば異なるであろう。典型的には、厳しい条件は、塩の濃度が、pH7.0~8.3で約1.5M未満のNaイオン、典型的には約0.01~1.0MのNaイオン(または他の塩)、かつ温度が短い配列(例えば10~50個のヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長い配列(例えば50個超のヌクレオチド)では少なくとも約60℃である条件である。厳しい条件は、脱安定剤(ホルムアミドなど)の添加によって実現することもできる。厳しさの低い代表的な条件には、30~35%のホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液を用いた37℃でのハイブリダイゼーションと、50~55℃の1×~2×SSC(20×SSC=3.0MのNaCl/0.3Mのクエン酸三ナトリウム)の中での洗浄が含まれる。中程度の厳しさの代表的な条件には、40~45%のホルムアミド、1.0MのNaCl、1%SDSの中での37℃でのハイブリダイゼーションと、55~60℃の0.5×~1×SSCの中での洗浄が含まれる。厳しさの程度が高い代表的な条件には、50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%SDSの中での37℃でのハイブリダイゼーションと、60~65℃の0.1×SSCの中での洗浄が含まれる。場合により、洗浄用バッファは、約0.1%~約1%のSDSを含むことができる。ハイブリダイゼーションの時間は一般に約24時間未満であり、通常は約4~約12時間である。洗浄時間は、少なくとも平衡に到達するのに十分な長さの時間になろう。
【0124】
Tmは、相補的な標的配列の50%が、完全に一致した配列に(規定されたイオン強度とpHのもとで)ハイブリダイズする温度である。DNA-DNAハイブリッドに関しては、Tmは、Meinkoth and Wahl (1984) Anal. Biochem. 138:267-284の式から大まかに知ることができ、Tm=81.5℃+16.6 (logM)+0.41(%GC)-0.61(%form)-500/Lとなる(ただしMは1価カチオンのモル数であり、%GCは、DNAの中のグアノシンヌクレオチドとシトシンヌクレオチドの割合であり、%formは、ハイブリダイゼーション溶液に含まれるホルムアミドの割合であり、Lは、塩基対の中のハイブリッドの長さである)。一般に、厳しい条件は、規定されたイオン強度とpHにおける具体的な配列とその相補的配列の融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。しかし極めて厳しい条件は、融点(Tm)よりも1、2、3、または4℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができ;中程度に厳しい条件は、融点(Tm)よりも6、7、8、9、または10℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができ;厳しさが低い条件は、融点(Tm)よりも11、12、13、14、15、または20℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液の厳しさの変動が、上記の式、ハイブリダイゼーション用と洗浄用の組成物、および望むTmを利用して本質的に記述されることを理解しているであろう。核酸のハイブリダイゼーションに関する包括的なガイドは、Tijssen (1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes, Part I, Chapter 2(Elsevier、ニューヨーク);およびAusubel et al., eds. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 2(Greene Publishing and Wiley-Interscience、ニューヨーク) に見いだされる。Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press、プレインヴュー、ニューヨーク州)を参照されたい。
【0125】
ある実施形態では、配列特異的DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型DNA結合ポリペプチド(RGDBP)である。本明細書では、「RNA誘導型DNA結合ポリペプチド」と「RGDBP」という用語は、関連するRNA分子と標的DNA配列のハイブリダイゼーションを通じてDNAに結合することのできるポリペプチドを意味する。
【0126】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のDNA結合ポリペプチドはヌクレアーゼ(配列特異的ヌクレアーゼなど)である。本明細書では、「ヌクレアーゼ」という用語は、核酸分子の中のヌクレオチド間のホスホジエステル結合を切断する触媒となる酵素を意味する。いくつかの実施形態では、DNA結合ポリペプチドは核酸分子内のヌクレオチド間のホスホジエステル結合を切断することのできるエンドヌクレアーゼであるのに対し、ある実施形態では、DNA結合ポリペプチドは、核酸分子のいずれかの末端(5´または3´)の位置でヌクレオチドを切断することのできるエキソヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、配列特異的ヌクレアーゼの選択は、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL-エフェクタDNA結合ドメイン-ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、およびRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)、またはヌクレアーゼ活性が低下しているか阻害されたそのバリアントからなる群からなされる。
【0127】
本明細書では、「メガヌクレアーゼ」または「ホーミングエンドヌクレアーゼ」という用語は、長さが12~40bpの二本鎖DNA内の認識部位に結合するエンドヌクレアーゼを意味する。メガヌクレアーゼの非限定的な例は、保存されたアミノ酸モチーフLAGLIDADG(配列番号85)を含むLAGLIDADGファミリーに属するものである。「メガヌクレアーゼ」という用語は、二量体または一本鎖のメガヌクレアーゼを意味することができる。
【0128】
本明細書では、「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」または「ZFN」という用語は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインとヌクレアーゼドメインを含むキメラタンパク質を意味する。
【0129】
本明細書では、「TAL-エフェクタDNA結合ドメイン-ヌクレアーゼ融合タンパク質」または「TALEN」という用語は、TALエフェクタDNA結合ドメインとヌクレアーゼドメインを含むキメラタンパク質を意味する。
【0130】
ある実施形態では、DNA結合ポリペプチドは、二本鎖DNA分子内に一本鎖領域を生成させることのできるものである。一本鎖領域の一例は、Rループの中に含まれる一本鎖ループであり、Rループは、相補的な鎖が一本鎖のRNA分子またはDNA分子にハイブリダイズすることから生じる二本鎖DNA分子の中に形成される一本鎖DNAの領域を含む三本鎖核酸構造である。Rループの一本鎖領域の中にあるかRループの一本鎖領域に隣接するシトシンは、一本鎖核酸(例えばssDNA)に対する活性を持つシトシンデアミナーゼによって脱アミノ化することができる。これら実施形態のいくつかでは、二本鎖DNA分子内にRループを生じさせることのできるDNA結合ポリペプチドは、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドまたはRGNヌクレアーゼである。本明細書では、「RNA誘導型ヌクレアーゼ」または「RGN」という用語は、ヌクレアーゼ活性を持つRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを意味する。RGNは「RNA誘導型」と見なされる。なぜならガイドRNAはRNA誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成してRNA誘導型ヌクレアーゼを標的配列に結合させ、いくつかの実施形態では、標的配列に一本鎖または二本鎖の切断を導入するからである。
【0131】
ある実施形態では、RGNは、ニッカーゼRGN、またはヌクレアーゼ不活性なRGNである。「RGNポリペプチド」という用語は、標的ヌクレオチド配列の一本鎖だけを切断するRGNポリペプチドを包含し、それを本明細書ではニッカーゼと呼ぶ。このようなRGNは単一機能のヌクレアーゼドメインを持つ。RGNニッカーゼとして、天然のニッカーゼが可能であるか、RGNタンパク質のうちで、1つ以上のヌクレアーゼドメイン内の変異した二本鎖核酸分子の両方の鎖を自然に切断するため、これら変異したドメインのヌクレアーゼ活性が低下するか消失し、ニッカーゼになるものが可能である。
【0132】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のニッカーゼRGNはRGNが核酸二本鎖の塩基編集されていない標的鎖(PAMを含んでいてgRNAと塩基対を形成する鎖)だけを切断できるようにする変異(例えばD10A変異(ただしアミノ酸の番号は、配列番号99として示されている化膿レンサ球菌Cas9配列に基づく)を含む。D10A変異または同等な変異を含むニッカーゼはRuvCヌクレアーゼドメインを不活性にしており、標的となる鎖を切断する。D10ニッカーゼはDNAの非標的鎖、すなわち塩基編集が望ましい鎖を切断することができない。これら実施形態では、RGNが標的鎖にニックを入れる一方で、それと相補的な非標的鎖はデアミナーゼによって改変される。細胞DNA修復機構は、ニックが入れられた標的鎖を、改変された非標的鎖を鋳型として用いて修復することにより、変異をDNAに導入することができる。
【0133】
そこでいくつかの実施形態では、ニッカーゼは不活性なRuvCドメインを含む。RuvCドメインはRNアーゼHフォールド構造を持つ(例えばNishimasu et al. (2014) Cell 156(5): 935-949参照(その全体が参照によって組み込まれている))。RGNのRuvCドメインは、直線状アミノ酸配列の中に2つ以上の非隣接領域を含む分割RuvCドメインであることがしばしばある。例えば化膿レンサ球菌Cas9のRuvCドメインは、配列番号99のアミノ酸残基1~59、718~769、および909~1098を含む。RuvCドメインの中にあってそのヌクレアーゼ活性を不活性化する変異の非限定的な一例は、分割RuvCヌクレアーゼドメインの中の最初のアスパラギン酸残基を変異させるD10A変異である。本出願には、記載されているRGNのD10ニッカーゼバリアントまたは相同ニッカーゼバリアントでRuvCドメインが不活性化されているものがいくつか開示されている。(それぞれ配列番号75と88として示されている)nAPG07433.1とnAPG08290.1は、それぞれ配列番号44と87として示されているAPG07433.1とAPG08290.1のニッカーゼバリアントであり、WO2019/23566(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている。(それぞれ配列番号97と98として示されている)nAPG07433.1-delとnAPG08290.1-delは、それぞれAPG07433.1とAPG08290.1の欠失変異体であり、2020年9月11日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第63/077,089号と2021年2月8日に出願された第63/146,840号、および2021年9月10日に出願されたPCT国際出願第PCT/US2021/049853号に記載されている。(配列番号89として示されている)nAPG00969と(配列番号90として示されている)nAPG09748は、それぞれAPG00969とAPG09748のニッカーゼバリアントであり、WO2020/139783(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている。(配列番号91として示されている)nAPG06646と(配列番号92として示されている)nAPG09882は、それぞれAPG06646とAPG09882のニッカーゼバリアントであり、PCT公開第WO2021/030344号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている。nAPG03850、nAPG07553、nAPG055886、およびnAPG01604はそれぞれ配列番号93~96として示されていて、APG03850、APG07553、APG055886、およびAPG01604のニッカーゼバリアントであり、係属中のアメリカ合衆国仮出願第63/014,970号と第63/077,211号、およびPCT公開第WO2021/21702号(それぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている。
【0134】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のニッカーゼRGNは変異(例えばH840A変異(ただしアミノ酸番号は、配列番号99として示されている化膿レンサ球菌Cas9配列に基づく))を含み、その変異が、RGNが核酸二本鎖の塩基編集された非標的鎖(PAMを含まず、gRNAと塩基対を形成しない鎖)だけを切断できるようにする。これら実施形態のいくつかでは、ニッカーゼは不活性なHNHヌクレアーゼドメインを含む。RGNのHNHヌクレアーゼドメインはββα-金属フォールドを持つ(例えばNishimasu et al. 2014参照)。化膿レンサ球菌Cas9のHNHヌクレアーゼドメインは例えば配列番号99のアミノ酸残基775~908を含む。ヌクレアーゼ活性を不活性化させるHNHドメイン内の変異の非限定的な一例は、HNHヌクレアーゼドメインの最初のヒスチジンを変異させるH840A変異である。不活性化されたHNHドメインを持つデアミナーゼは非標的鎖に作用する。
【0135】
RGNのRuvCドメインおよび/またはHNHドメインを不活性にする方法は本分野で知られており、一般に、分割RuvCドメイン内の最初のアスパラギン酸、および/またはHNHドメインの最初のヒスチジンを変異させることを含む。典型的には、アスパラギン酸残基またはヒスチジン残基が変異してアラニンになる。RuvCドメイン内にあって変異させることでこのドメインのヌクレアーゼ活性を不活性にすることのできる他のアミノ酸残基には、Glu762、His983、およびAsp986(典型的にはアラニンへ)が含まれる(ただしアミノ酸の番号は、配列番号99として示されている化膿レンサ球菌Cas9配列に基づく)。HNHドメインの中で変異させることが可能な他のアミノ酸残基には、D839とN863(典型的にはアラニンへ)が含まれる(ただしアミノ酸の番号は、配列番号99として示されている化膿レンサ球菌Cas9配列に基づく)。
【0136】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のRGNはヌクレアーゼデッドである。本明細書では、変異してヌクレアーゼ不活性または「デッド」になったRGNタンパク質は、RNA誘導型DNA結合ポリペプチド、またはヌクレアーゼ不活性なRGN、またはヌクレアーゼ-デッドRGNと呼ぶことができる。ヌクレアーゼ不活性なRGNを生成させる方法は本分野で知られており、一般に、RGNのヌクレアーゼドメインのヌクレアーゼドメインだけ、またはすべてを変異させてヌクレアーゼドメイン不活性にすることを含む。RGNが単一のヌクレアーゼドメイン(例えばRuvCドメイン)だけを含む実施形態では、ヌクレアーゼ不活性なバリアントはRuvCドメイン内に少なくとも1つの変異を持ち、その結果としてRuvCヌクレアーゼドメインが不活性化するであろう。RGNが2つ以上のヌクレアーゼドメイン(RuvCドメインとHNHドメインなど)を含む実施形態では、RuvCドメインとHNHドメインのそれぞれの中の少なくとも1つの変異が両方のヌクレアーゼドメインを不活性にする。
【0137】
適切な1つの代表的なヌクレアーゼ不活性なRGNは、D10A/H840A Cas9変異体である(例えばQi et al., Cell. 2013; 152(5): 1173-83参照(その全内容が参照によって本明細書に組み込まれている)。それに加え、他の既知のRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)の適切なヌクレアーゼ不活性バリアントを明確にすることができる(例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2019/0367949号(その全内容は参照によって本明細書に組み込まれている)に開示されているRGN APG08290.1またはRGN APG07433.1、または配列番号83として示されているdAPG09298のヌクレアーゼ不活性バリアント)。
【0138】
他の追加の適切な代表的ヌクレアーゼ不活性なRGNバリアントの非限定的な例に含まれるのは、D10A/D839A/H840AとD10A/D839A/H840A/N863Aという変異体ドメインである(例えばMali et al., Nature Biotechnology. 2013; 31(9): 833-838参照(その全内容が参照によって本明細書に組み込まれている))。
【0139】
変異してニッカーゼまたは不活性なヌクレアーゼになる追加の適切なRGNタンパク質は、本開示と本分野の知識に基づき当業者には明らかであろう(例えばPCT公開第WO2019/236566号に開示されているRGNなど(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている))ゆえ、本開示の範囲に含まれる。
【0140】
いくつかの実施形態では、ニッカーゼ活性を保持するRGNニッカーゼは、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%一致するアミノ酸配列を含む。
【0141】
アミノ酸配列に変異を導入するための本分野で知られている任意の方法(PCRを媒介とした突然変異誘発や部位特異的突然変異誘発など)を利用してニッカーゼまたはヌクレアーゼ-デッドRGNを作製することができる。例えばアメリカ合衆国出願公開第2014/0068797号とアメリカ合衆国特許第9,790,490号参照;それぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0142】
RNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)によりゲノム内の単一部位を標的とした操作が可能になるため、治療と研究の用途のための遺伝子ターゲティングの文脈で有用である。RNA誘導型ヌクレアーゼは、哺乳類を含む多彩な生物において、非相同末端結合または相同組み換えを促進することによるゲノム操作に使用されてきた。RGNに含まれるのは、クラスター化されて規則的な間隔で配置された短い回文反復(CRISPR)RNA誘導型ヌクレアーゼ系の一部としてのガイドRNA(gRNA)によって標的配列に向けられるRNA誘導型ヌクレアーゼであるCRISPR-Casタンパク質、またはその活性なバリアントまたは断片である。
【0143】
本開示のいくつかの側面により、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドとデアミナーゼポリペプチド(特にシトシンデアミナーゼポリペプチド)を含む融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドはRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)である。さらなる実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、天然のCRISPR-Casタンパク質、またはその活性なバリアントまたは断片である。CRISPR-Cas系はクラス1または2の系に分類される。クラス2の系は単一のエフェクタヌクレアーゼを含み、II型、V型、およびVI型を含む。クラス1と2の系は複数の型(I型、II型、III型、IV型、V型、VI型)に分類され、いくつかの型はさらに亜型(例えばII-A型、II-B型、II-C型、V-V型-B型)に分類される。
【0144】
ある実施形態では、RGNは、天然のII型CRISPR-Casタンパク質、またはその活性なバリアントまたは断片である。本明細書では、「II型CRISPR-Casタンパク質」、「II型CRISPR-Casエフェクタタンパク質」、または「II型RNA誘導型ヌクレアーゼ」という用語は、トランス活性化RNA(tracrRNA)を必要とするRGNを意味し、それぞれが二本鎖DNA分子の単一の鎖の切断に責任がある2つのヌクレアーゼドメイン(すなわちRuvCとHNH)を含む。いくつかの実施形態では、本発明により、化膿レンサ球菌Cas9(SpCas9)またはSpCas9ニッカーゼ(その配列はそれぞれ配列番号99と100として示されており、アメリカ合衆国特許第10,000,772号と第8,697,359号(それぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている)などのCas9タンパク質に融合された本開示のデアミナーゼを含む融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、本発明により、ストレプトコッカス・サーモフィラスCas9(StCas9)またはStCas9ニッカーゼ(その配列はそれぞれ配列番号101と102として示されており、アメリカ合衆国特許第10,113,167号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に開示されている)に融合された本開示のデアミナーゼを含む融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、本発明により、ストレプトコッカス・アウレウスCas9(SaCas9)またはSaCas9ニッカーゼ(その配列はそれぞれ配列番号103と104として示されており、アメリカ合衆国特許第9,752,132号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に開示されている)に融合された本開示のデアミナーゼを含む融合タンパク質が提供される。
【0145】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Casタンパク質は、天然のV型CRISPR-Casタンパク質、またはその活性なバリアントまたは断片である。本明細書では、「V型CRISPR-Casタンパク質」、「V型CRISPR-Casエフェクタタンパク質」、または「V型RNA誘導型ヌクレアーゼ」という用語は、dsDNAを切断するRGNを意味し、単一のRuvCヌクレアーゼドメインまたは1つの分割RuvCヌクレアーゼドメインを含み、HNHドメインを欠く(Zetsche et al 2015, Cell doi:10.1016/j.cell.2015.09.038;Shmakov et al 2017, Nat Rev Microbiol doi:10.1038/nrmicro.2016.184;Yan et al 2018, Science doi:10.1126/science.aav7271;Harrington et al 2018, Science doi:10.1126/science.aav4294)。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質はCas12(例えばCas12a)を含む。Cas12aはCpf1とも呼ばれ、tracrRNAを必要としないが、他のV型CRISPR-Casタンパク質(Cas12bなど)はtracrRNAを必要とすることに注意されたい。大半のV型エフェクタは、しばしばPAMを必要とせずにssDNA(一本鎖DNA)も標的とすることができる(Zetsche et al 2015;Yan et al 2018;Harrington et al 2018)。「V型CRISPR-Casタンパク質」と「V型RGN」という用語は、分割RuvCヌクレアーゼドメインを含む独自のRGN(2019年12月30日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第62/955,014号と2020年7月29日に出願された第63/058,169号、および2020年12月28日に出願されたPCT国際出願第PCT/US2020/067138号(それぞれの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に開示されているものなど)を包含する。いくつかの実施形態では、本発明により、フランシセラ・ノビシダCas12a(FnCas12a)(その配列は配列番号105として示されていて、アメリカ合衆国特許第9,790,490号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に開示されている)、またはアメリカ合衆国特許第9,790,490号に開示されているFnCas12aのヌクレアーゼ不活性化変異体のいずれかに融合された本開示のデアミナーゼを含む融合タンパク質が提供される。
【0146】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Casタンパク質は、天然のVI型CRISPR-Casタンパク質、またはその活性なバリアントまたは断片である。本明細書では、「VI型CRISPR-Casタンパク質」、「VI型CRISPR-Casエフェクタタンパク質」、または「VI型RGN」という用語は、tracrRNAを必要とせず、RNAを切断する2つのHEPNドメインを含むCRISPR-Casエフェクタタンパク質を意味する。いくつかの実施形態では、本発明により、Cas13に融合された本開示のデアミナーゼを含む融合タンパク質が提供される。
【0147】
特別な実施形態では、本開示の融合タンパク質は、表1に掲載されているRGN、またはニッカーゼ、またはそのヌクレアーゼ-デッドバリアントを含む。表1の各RGNとともに使用できるガイドRNA配列(crRNA反復とtracrRNA配列)のほか、コンセンサスPAM配列も提供される。ある実施形態では、融合タンパク質は、表1に掲載されているRGNの活性なバリアント(核酸分子にRNA誘導型で結合できるもの)で、表1に掲載されているアミノ酸配列のいずれか1つと80%と99%の間、またはそれよりも多く(約80%以上、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれよりも多くが含まれるが、それに限定されない)一致する配列を持つものを含む。特別な実施形態では、融合タンパク質は、表1に開示されているRGNアミノ酸配列と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く一致する配列を持つRGNを含む。他の実施形態では、融合タンパク質は、表1に掲載されているRGNの断片(1~15個という少数のアミノ酸残基、例えば1~10個(6~10個など)という少数、5個という少数、4個という少数、3個という少数、2個という少数、または1個という少数のアミノ酸残基だけ異なるもの)を含む。特別な実施形態では、RGNは、N末端またはC末端のトランケーションを含んでおり、それは、ポリペプチドのN末端またはC末端からの5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60個、またはそれよりも多くのアミノ酸の欠失を少なくとも含む。いくつかの実施形態では、RGNは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60個、またはそれよりも多くのアミノ酸の欠失を少なくとも含む内部欠失を含む。
【0148】
【表1-1】
【表1-2】
【0149】
「ガイドRNA」という用語は、標的ヌクレオチド配列と十分な相補性を有するためにこの標的配列とハイブリダイズし、関連するRNA誘導型ヌクレアーゼを標的ヌクレオチド配列に配列特異的に結合させるヌクレオチド配列を意味する。CRISPR-Cas RGNについては、それぞれのガイドRNAは、RGNに結合してガイドRGNを特定の標的ヌクレオチド配列に結合させることができ、RGNがニッカーゼ活性またはヌクレアーゼ活性を持つ場合には、標的ヌクレオチド配列を切断することもできる1つ以上のRNA分子(一般に1または2個)である。ガイドRNAは、CRISPR RNA(crRNA)と、いくつかの実施形態ではトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの一部はDNAヌクレオチドを含む。ある実施形態では、ガイドRNAは人工的な非天然のヌクレオチド類似体を含む、または1つ以上のヌクレオチドが化学的に修飾されている。
【0150】
CRISPR RNAはスペーサ配列とCRISPR反復配列を含む。「スペーサ配列」は、興味ある標的ヌクレオチド配列に直接ハイブリダイズするヌクレオチド配列である。スペーサ配列を操作し、興味ある標的ヌクレオチド配列と完全に、または部分的に相補的であるようにする。さまざまな実施形態では、スペーサ配列は、約8~約30個、またはそれよりも多いヌクレオチドを含むことができる。例えばスペーサ配列として、長さが約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30個、またはそれよりも多いヌクレオチドが可能である。いくつかの実施形態では、スペーサ配列は、長さが8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、またはそれよりも多いヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサ配列は長さが約10~約26個のヌクレオチド、または長さが約12~約30個のヌクレオチドである。特別な実施形態では、スペーサ配列は長さが約30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサ配列は長さが30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサ配列とそれに対応する標的配列の間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを用いて最適なアラインメントにしたとき、50%と99%の間、またはそれよりも大きく(約50%以上、約60%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれよりも大きい値が含まれるが、それに限定されない)である。特別な実施形態では、スペーサ配列とそれに対応する標的配列の間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを用いて最適なアラインメントにしたとき、50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも大きい値である。特別な実施形態では、スペーサ配列は二次構造が自由であり、それは、本分野で知られている適切な任意のポリヌクレオチド折り畳みアルゴリズムを用いて予測することができる。アルゴリズムの非限定的な例に含まれるのは、mFold(例えばZuker and Stiegler (1981) Nucleic Acids Res. 9:133-148参照)と、RNAfold(例えばGruber et al. (2008) Cell 106(1):23-24参照)である。
【0151】
CRISPR RNA反復配列は、それ自身で、またはハイブリダイズしたtracrRNAと協働してある構造を形成するヌクレオチド配列を含んでおり、それがRGN分子によって認識される。さまざまな実施形態では、CRISPR RNA反復配列は、約8~約30個、またはそれよりも多いヌクレオチドを含む。特別な実施形態では、CRISPR RNA反復配列は、8~30個、またはそれよりも多いヌクレオチドを含む。例えばCRISPR反復配列として、長さが約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30個、またはそれよりも多いヌクレオチドが可能である。特別な実施形態では、CRISPR反復配列は、長さが8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、またはそれよりも多いヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、CRISPR反復配列とそれに対応するtracrRNA配列の間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを用いて最適なアラインメントにしたとき、50%と99%の間、またはそれよりも大きく(約50%以上、約60%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれよりも大きい値が含まれるが、それに限定されない)である。特別な実施形態では、CRISPR反復配列とそれに対応するtracrRNA配列の間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを用いて最適なアラインメントにしたとき、50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも大きい値である。
【0152】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAはtracrRNA分子をさらに含む。トランス活性化CRISPR RNAまたはtracrRNA分子は、crRNAのCRISPR反復配列にハイブリダイズするのに十分な相補性を持つ領域(それを本明細書では抗反復領域と呼ぶ)を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、tracrRNA分子はさらに、二次構造(例えばステム-ループ)を持つ領域を含むか、それに対応するcrRNAにハイブリダイズしたときに二次構造を形成する。特別な実施形態では、tracrRNAのうちでCRISPR反復構造と完全に、または部分的に相補的な領域は、この分子の5´末端に位置し、tracrRNAの3´末端は二次構造を含む。二次構造のこの領域は一般にいくつかのヘアピン構造を含み、その中には抗反復領域に隣接して見られるネクサスヘアピンが含まれる。tracrRNAの3´末端には末端ヘアピンが存在することがしばしばある。それは構造と数がさまざまである可能性があるが、GCリッチでRhoとは独立な転写ターミネータヘアピンと、それに続く3’末端のUのストリングをしばしば含む。例えばBriner et al. (2014) Molecular Cell 56:333-339、Briner and Barrangou (2016) Cold Spring Harb Protoc; doi: 10.1101/pdb.top090902、およびアメリカ合衆国出願公開第2017/0275648号(それぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれている)を参照されたい。
【0153】
さまざまな実施形態では、tracrRNAのうちでCRISPR反復配列と完全に、または部分的に相補的な抗反復配列は、約6~約30個、またはそれよりも多いヌクレオチドを含む。例えばtracrRNA抗反復配列とCRISPR反復配列の間で塩基対を形成する領域として、長さが約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30個、またはそれよりも多いヌクレオチドが可能である。特別な実施形態では、tracrRNA抗反復配列とCRISPR反復配列の間で塩基対を形成する領域は、長さが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、またはそれよりも多いヌクレオチドである。特別な実施形態では、CRISPR反復配列と完全に、または部分的に相補的なtracrRNAの抗反復配列は長さが約10個のヌクレオチドである。特別な実施形態では、tracrRNAのうちでCRISPR反復配列と完全に、または部分的に相補的な抗反復配列は、長さが10個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、CRISPR反復配列とそれに対応するracrRNA抗反復配列の間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを用いて最適なアラインメントにしたとき、50%と99%の間、またはそれよりも大きい(約50%以上、約60%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれよりも大きな値が含まれるが、それに限定されない)。特別な実施形態では、CRISPR反復配列とそれに対応するtracrRNA抗反復配列の間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを用いて最適なアラインメントにしたとき、50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも大きい値である。
【0154】
さまざまな実施形態では、tracrRNA全体は、約60個のヌクレオチド~約210個超のヌクレオチドを含む。特別な実施形態では、tracrRNA全体は、60個のヌクレオチド~210個超のヌクレオチドを含む。例えばtracrRNAとして、長さが約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210個、またはそれよりも多いヌクレオチドが可能である。特別な実施形態では、tracrRNAは、長さが60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、150、160、170、180、190、200、210個、またはそれよりも多いヌクレオチドである。特別な実施形態では、tracrRNAは、長さが約100~約200個のヌクレオチドである(長さが約95、約96、約97、約98、約99、約100、約105、約106、約107、約108、約109、および約100個のヌクレオチドが含まれる)。特別な実施形態では、tracrRNAは、長さが100~110個のヌクレオチド(長さが95、96、97、98、99、100、105、106、107、108、109、および110個のヌクレオチドが含まれる)である。
【0155】
ガイドRNAはRNA誘導型DNA結合ポリペプチドまたはRNA誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、RNA誘導型ヌクレアーゼを標的配列に結合させる。ガイドRNAがRGNと複合体を形成する場合には、その結合したRGNは標的配列の位置に一本鎖または二本鎖の切断を導入する。標的配列が切断された後、この切断を修復することができるため、修復プロセスの間に標的配列のDNA配列が改変される。本明細書で提供されるのは、デアミナーゼに連結されたRNA誘導型ヌクレアーゼ(ヌクレアーゼ不活性またはニッカーゼのいずれか)の変異体バリアントを用いて宿主細胞のDNAの中の標的配列を改変する方法である。ヌクレアーゼ活性が不活性にされるか顕著に低下したRNA誘導型ヌクレアーゼの変異体バリアントはRNA誘導型DNA結合ポリペプチドと呼ぶことができる。というのもこのポリペプチドは標的配列に結合できるが、必ずしも標的配列を切断しないからである。二本鎖核酸分子の単一の鎖だけを切断することのできるRNA誘導型ヌクレアーゼを本明細書ではニッカーゼと呼ぶ。
【0156】
RNA誘導型DNA結合ポリペプチドが結合した標的ヌクレオチド配列は、RGDBPと会合したガイドRNAとハイブリダイズする。RGDBPがヌクレアーゼ活性(ニッカーゼとしての活性が含まれる)を持つ(すなわちRGNである)場合には、標的配列をその後切断することができる。
【0157】
ガイドRNAとして、単一ガイドRNAまたは二重ガイドRNA系が可能である。単一ガイドRNAは、RNAの単一の分子上にcrRNAと場合によりtracrRNAを含むのに対し、二重ガイドRNA系は、2つの別々のRNA分子上に存在していてcrRNAのCRISPR反復配列の少なくとも一部とtracrRNAの少なくとも一部(crRNAのCRISPR反復配列と完全に、または部分的に相補的なものが可能である)を通じて互いにハイブリダイズされたcrRNAとtracrRNAを含む。ガイドRNAが単一ガイドRNAである実施形態のいくつかでは、crRNAと場合によるtracrRNAはリンカーヌクレオチド配列によって分離される。
【0158】
一般に、リンカーヌクレオチド配列は、リンカーヌクレオチド配列のヌクレオチドの中に二次構造が形成されることを避けるため、またはリンカーヌクレオチド配列のヌクレオチドを含む二次構造が形成されることを避けるため、相補的な塩基を含まない配列である。いくつかの実施形態では、crRNAとtracrRNAの間のリンカーヌクレオチド配列は、長さが少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12個、またはそれよりも多いヌクレオチドである。特別な実施形態では、crRNAとtracrRNAの間のリンカーヌクレオチド配列は、長さが3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、またはそれよりも多いヌクレオチドである。特別な実施形態では、単一ガイドRNAのリンカーヌクレオチド配列は、長さが少なくとも4個のヌクレオチドである。特別な実施形態では、単一ガイドRNAのリンカーヌクレオチド配列は、長さが4個のヌクレオチドである。
【0159】
ある実施形態では、ガイドRNAは、標的細胞、オルガネラ、または胚の中にRNA分子として導入することができる。ガイドRNAはインビトロで転写すること、または化学的に合成することができる。いくつかの実施形態では、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列は、細胞、オルガネラ、または胚の中に導入される。いくつかの実施形態では、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列はプロモータ(例えばRNAポリメラーゼIIIプロモータ)に機能可能に連結される。プロモータとして、天然プロモータ、またはガイドRNAをコードするヌクレオチド配列にとって異種のプロモータが可能である。いくつかの実施形態では、プロモータは、2021年6月11日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第63/209,660号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に開示されているプロモータ(配列番号348~357が含まれる)のいずれか1つ、またはその活性なバリアントまたは断片(配列番号348~357のいずれか1つと少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれよりも多く一致する配列を持つプロモータが含まれる)から選択される。
【0160】
さまざまな実施形態では、ガイドRNAはRNA誘導型ヌクレアーゼポリペプチドに結合しており、本明細書に記載されているように、標的細胞、オルガネラ、または胚の中にリボ核タンパク質複合体として導入することができる。
【0161】
ガイドRNAは、会合したRNA誘導型ヌクレアーゼを、標的ヌクレオチド配列へのガイドRNAのハイブリダイゼーションを通じて興味ある特定の標的ヌクレオチド配列に向かわせる。標的ヌクレオチド配列は、DNA、RNA、またはその両者の組み合わせを含むことができ、一本鎖または二本鎖が可能である。標的ヌクレオチド配列として、ゲノムDNA(すなわち染色体DNA)、プラスミドDNA、またはRNA分子(例えばメッセンジャーRNA、リボソームRNA、トランスファーRNA、マイクロRNA、小さな干渉性RNA)が可能である。標的ヌクレオチド配列は、インビトロで、または細胞内でRNA誘導型ヌクレアーゼに結合すること(そしていくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドによって切断すること)ができる。RGDBPが標的とする染色体配列として、核、プラスチド、またはミトコンドリアの染色体配列が可能である。いくつかの実施形態では、標的ヌクレオチド配列は標的ゲノムの中に1つだけである。
【0162】
いくつかの実施形態では、標的ヌクレオチド配列はプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)に隣接している。PAMは一般に、標的ヌクレオチド配列から約1~約10個のヌクレオチド以内の位置にあり、その中には、標的ヌクレオチド配列からヌクレオチド約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個が含まれる。特別な実施形態では、PAMは標的ヌクレオチド配列から1~10個のヌクレオチド以内の位置にあり、その中には、標的ヌクレオチド配列からヌクレオチド約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個が含まれる。特に断わらない限り、PAMは一般に、標的ヌクレオチド配列にその5´末端または3´末端の位置で隣接している。いくつかの実施形態では、PAMは標的配列の3´である。一般に、PAMは約2~6個のヌクレオチドからなるコンセンサス配列だが、特別な実施形態では、長さが1、2、3、4、5、6、7、8、9個、またはより多いヌクレオチドである。
【0163】
PAMは、所与のRGDBPまたはRGNがどの配列を標的にできるかを制限する。というのもRGDBPまたはRGNのPAMは標的ヌクレオチド配列の近位である必要があるからである。RGNは、それに対応するPAM配列を認識すると、特定の切断部位で標的ヌクレオチド配列を切断することができる。本明細書では、切断部位は、標的ヌクレオチド配列内の2個の特定のヌクレオチドで構成されており、その間でヌクレオチド配列がRGNによって切断される。切断部位は、PAMから5´方向または3´方向に向かって1番目と2番目、2番目と3番目、3番目と4番目、4番目と5番目、5番目と6番目、7番目と8番目、または8番目と9番目のヌクレオチドを含むことができる。RGNは標的ヌクレオチド配列を切断して粘着末端にすることができるため、いくつかの実施形態では、切断部位は、ポリヌクレオチドのプラス(+)鎖上のPAMからのそれらヌクレオチド2個の距離と、ポリヌクレオチドのマイナス(-)鎖上のPAMからのそれらヌクレオチド2個の距離に基づいて規定される。
【0164】
RGDBPとRGNを使用し、融合されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、または小分子ペイロードを特定のゲノム位置に送達することができる。
【0165】
DNA結合ポリペプチドがメガヌクレアーゼを含む実施形態では、標的配列は、4つの塩基対によって分離された一対の逆転9塩基対「半部位」を含むことができる。一本鎖メガヌクレアーゼの場合には、タンパク質のN末端ドメインが第1の半部位に接触し、タンパク質のC末端ドメインが第2の半部位に接触する。メガヌクレアーゼによる切断で4塩基対の3´オーバーハングが生じる。DNA結合ポリペプチドがコンパクトなTALENを含む実施形態では、認識配列は、I-TevIドメインによって認識される第1のCNNNGN配列を含み、その後に長さが4~16塩基対の非特異的スペーサ、その後にTAL-エフェクタドメインによって認識される長さが16~22bpの第2の配列(この配列は典型的には5´T塩基を持つ)が続く。DNA結合ポリペプチドがジンクフィンガーを含む実施形態では、DNA結合ドメインは典型的には2~10塩基対によって分離された一対の9塩基対「半部位」を含む18-bp認識配列を認識し、ヌクレアーゼによる切断で、平滑末端、または長さがさまざまな(しばしば4塩基対の)5´オーバーハングが生じる。
【0166】
IV.融合タンパク質
【0167】
いくつかの実施形態では、DNA結合ポリペプチド(例えばヌクレアーゼ不活性なRGNまたはニッカーゼRGN)は本発明のデアミナーゼに機能可能に連結される。いくつかの実施形態では、本発明のデアミナーゼに融合したDNA結合ポリペプチド(例えばヌクレアーゼ不活性なRGNまたはニッカーゼRGN)を核酸分子(すなわち標的核酸分子)の特定の位置(いくつかの実施形態では、特定のゲノム遺伝子座)に向かわせて望む配列の発現を変化させることができる。いくつかの実施形態では、標的配列に融合タンパク質が結合すると核酸塩基が脱アミノ化され、その結果として1つの核酸塩基が別の核酸塩基に変換される。いくつかの実施形態では、標的配列にこの融合タンパク質が結合すると標的配列に隣接した核酸塩基が脱アミノ化される。標的配列に隣接していて本開示の組成物と方法を用いて脱アミノ化されて変異する核酸塩基として、標的核酸分子内の(gRNAが結合した)標的配列の5´末端または3´末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100塩基対が可能である。本開示のいくつかの側面により、(i)DNA結合ポリペプチド(例えばヌクレアーゼ不活性なRGNポリペプチドまたはニッカーゼRGNポリペプチド);(ii)デアミナーゼポリペプチド;および場合により(iii)第2のデアミナーゼを含む融合タンパク質が提供される。第2のデアミナーゼは、第1のデアミナーゼと同じでもよいし、異なるデアミナーゼでもよい。いくつかの実施形態では、第1と第2のデアミナーゼの両方が本発明のシトシンデアミナーゼである。
【0168】
本開示により、さまざまな構成の融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、デアミナーゼポリペプチドはDNA結合ポリペプチド(例えばRGNポリペプチド)のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、デアミナーゼポリペプチドはDNA結合ポリペプチド(例えばRGNポリペプチド)のC末端に融合される。
【0169】
いくつかの実施形態では、デアミナーゼとDNA結合ポリペプチド(例えばRNA誘導型DNA結合ポリペプチド)はペプチドリンカーを介して互いに融合される。デアミナーゼとDNA結合ポリペプチド(例えばRNA誘導型DNA結合ポリペプチド)の間のリンカーは融合タンパク質の編集ウインドウを決めることができ、そのことによってデアミナーゼ特異性を増大させ、オフ-ターゲット変異を減らす。特定の用途のためのデアミナーゼ活性に最適な長さと硬さを実現するため、(GGGGS)と(G)の形態の非常に可撓性のあるリンカーから(EAAAK)と(XP)の形態のより堅固なリンカーまでの範囲のさまざまな長さと可撓性のリンカーを使用することができる。「リンカー」という用語は、本明細書では、2つの分子または部分(例えばヌクレアーゼの結合ドメインと切断ドメイン)を連結する化学基または分子を意味する。いくつかの実施形態では、リンカーがRNA誘導型ヌクレアーゼとデアミナーゼを接合する。いくつかの実施形態では、リンカーは、デッドまたは不活性なRGNとデアミナーゼを接合する。さらなる実施形態では、リンカーは2つのデアミナーゼを接合する。いくつかの実施形態では、リンカーはRNA誘導型ヌクレアーゼとUSPを接合する。いくつかの実施形態では、リンカーはデアミナーゼとUSPを接合する。ある実施形態では、リンカーはRNA誘導型ヌクレアーゼデアミナーゼ融合体をUSPと接合する。典型的にはリンカーは、2つの基、分子、または他の部分の間に位置するか、それら2つに隣接し、共有結合によってそれぞれに接続されているため、それら2つを接続する。いくつかの実施形態では、リンカーは1個のアミノ酸または複数のアミノ酸(例えばペプチドまたはタンパク質)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、有機分子、基、ポリマー、または化学部分である。いくつかの実施形態では、リンカーは、長さが3~100個のアミノ酸、例えば長さが3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、30~35、35~40、40~45、45~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、100~150、または150~200個のアミノ酸である。より長いリンカーまたはより短いリンカーも考慮される。いくつかの実施形態では、より短いリンカーは、融合タンパク質またはそのコード配列の全体的なサイズまたは長さを小さくするのに好ましい。
【0170】
いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGGGS)、(G) (EAAAK)、または(XP)というモチーフを含むか、これらの任意の組み合わせを含む(ただしnは、独立に、1と30の間の整数である)。いくつかの実施形態では、nは、独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30であり、2つ以上のリンカー、または2つ以上のリンカーモチーフが存在する場合には、その任意の組み合わせである。追加の適切なリンカーのモチーフとリンカーの構成は当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態では、適切なリンカーのモチーフと構成に含まれるのは、Chenら、2013年(Adv Drug Deliv Rev. 65(10):1357-69(その全内容が参照によって本明細書に組み込まれている))に記載されているものである。追加の適切なリンカー配列は当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を含む。
【0171】
いくつかの場合には、細胞ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)がシトシンの脱アミノ化から生じるU:Gヘテロ二本鎖DNAを認識することで、DNAからウラシルを除去して脱塩基部位を残す触媒となることができ、そのことにより塩基-除去修復を開始させ、主要な一般的な結果としてU:G対をC:G対に戻すが、C>G変異またはC>A変異のほか、indel(挿入または欠失)形成も起こることが知られている。シトシン塩基エディタによって生じたウラシルをシトシンに戻すウラシルDNAグリコシラーゼによる塩基除去修復を阻止するか減らすため、いくつかの実施形態では、シトシン塩基エディタ融合タンパク質はウラシル安定化ポリペプチド(USP)(ウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤(UGI)またはUSP2など)をさらに含む。
【0172】
本明細書では、「ウラシル安定化タンパク質」、「ウラシル安定化ポリペプチド」、および「USP」という用語は、ウラシル安定化活性を持つポリペプチドを意味する。本明細書では、「ウラシル安定化活性」という用語は、ある分子(例えばポリペプチド)が、シトシンデアミナーゼによる核酸分子の中の少なくとも1つのシチジン、デオキシシチジン、またはシトシンからチミジン、デオキシチミジン、またはチミンへの変異率を、その分子(例えばウラシル安定化ポリペプチド)の不在下でのシトシンデアミナーゼによる変異率と比べて大きくする能力を意味する。作用の理論または機構に囚われないと、USPは、複製が起こって望むC>T変異の導入が可能になるのに十分な時間にわたり、シチジン、デオキシシチジン、またはシトシンという塩基の脱アミノ化を通じて生成した一本鎖DNAの中のウラシルの存在を維持することによって機能することができると考えられる。ウラシル安定化活性は、ウラシルDNAグリコシラーゼ、塩基除去修復経路、またはミスマッチ修復機構の阻害を通じて起こる可能性がある。
【0173】
本開示のシトシンデアミナーゼと、本開示のシトシンデアミナーゼとDNA結合ポリペプチドを含む融合タンパク質に融合させることのできるUSPの非限定的な例に含まれるのは、ウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤(UGI)(その一例が配列番号86として示されている)と、PCT公開第WO2021/217002号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に開示されているUSPのいずれか1つ(配列番号81として示されているUSP2が含まれる)である。
【0174】
いくつかの実施形態では、デアミナーゼ-DBD融合タンパク質は、野生型USPであるUSP、またはその活性な断片またはバリアントを含む。例えばいくつかの実施形態では、デアミナーゼ-DBD融合タンパク質は、配列番号81または86を含むUSP、またはその活性な断片またはバリアントを含む。いくつかの実施形態では、USP断片は、配列番号81または86として示されているアミノ酸配列の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%を含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、デアミナーゼ-DBD融合タンパク質は、配列番号81または86として示されているUSPと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれよりも多く一致する配列を持つUSPを含む。
【0175】
追加の適切なUSP配列は当業者に知られており、その中に含まれるのは、例えばWang et al., 1989. J. Biol. Chem. 264: 1163-1171;Lundquist et al., 1997. J. Biol. Chem. 272: 21408-21419;Ravishankar et al., 1998. Nucleic Acids Res. 26:4880-4887;およびPutnam et al., 1999. J. Mol. Biol. 287:331-346(1999)(それぞれの全内容が参照によって本明細書に組み込まれている)に公開されているものである。
【0176】
いくつかの実施形態では、リンカーがデアミナーゼ-DBD融合タンパク質をUSPと接合する。いくつかの実施形態では、リンカーがデアミナーゼとUSPを接合する。いくつかの実施形態では、USPをデアミナーゼまたはデアミナーゼ-DBD融合タンパク質に接合するリンカーは、1個のアミノ酸または複数のアミノ酸(例えばペプチドまたはタンパク質)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、有機分子、基、ポリマー、または化学部分である。いくつかの実施形態では、リンカーは、長さが3~100個のアミノ酸、例えば長さが3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、30~35、35~40、40~45、45~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、100~150、または150~200個のアミノ酸である。より長いリンカーまたはより短いリンカーも考慮される。いくつかの実施形態では、より短いリンカーは、融合タンパク質またはそのコード配列の全体的なサイズまたは長さを小さくするのに好ましい。特別な実施形態では、USPをデアミナーゼまたはデアミナーゼ-DBD融合タンパク質に接合するリンカーは、配列番号120として示されている配列を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される代表的な融合タンパク質の一般的なアーキテクチャは、構造として、[NH]-[デアミナーゼ]-[DBP]-[COOH];[NH]-[DBP]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[DBP]-[デアミナーゼ]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[DBP]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[デアミナーゼ]-[DBP]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[DBP]-[USP]-[COOH];[NH]-[DBP]-[デアミナーゼ]-[USP]-[COOH];[NH]-[USP]-[デアミナーゼ]-[DBP]-[COOH];[NH]-[USP]-[DBP]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[USP]-[DBP]-[COOH];または[NH]-[DBP]-[USP]-[デアミナーゼ]-[COOH]を含む(ただしDBPはDNA結合ポリペプチドであり、USPはウラシル安定化ポリペプチドであり、NHは融合タンパク質のN末端であり、COOHは融合タンパク質のC末端である)。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は3つ以上のデアミナーゼポリペプチドを含む。
【0178】
ある実施形態では、本明細書で提供される代表的な融合タンパク質の一般的なアーキテクチャは、構造として、[NH]-[デアミナーゼ]-[RGN]-[COOH];[NH]-[RGN]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[RGN]-[デアミナーゼ]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[RGN]-[デアミナーゼ]-[COOH];または[NH]-[デアミナーゼ]-[デアミナーゼ]-[RGN]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[RGN]-[USP]-[COOH];[NH]-[RGN]-[デアミナーゼ]-[USP]-[COOH];[NH]-[USP]-[デアミナーゼ]-[RGN]-[COOH];[NH]-[USP]-[RGN]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[USP]-[RGN]-[COOH];または[NH]-[RGN]-[USP]-[デアミナーゼ]-[COOH]を含む(ただしRGNはRNA誘導型ヌクレアーゼであり、USPはウラシル安定化ポリペプチドであり、NHは融合タンパク質のN末端であり、COOHは融合タンパク質のC末端である)。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は3つ以上のデアミナーゼポリペプチドを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、構造として、[NH]-[デアミナーゼ]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[デアミナーゼ]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[COOH];[NH]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[デアミナーゼ]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[USP]-[COOH];[NH]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[デアミナーゼ]-[USP]-[COOH];[NH]-[USP]-[デアミナーゼ]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[COOH];[NH]-[USP]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[USP]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[COOH];または[NH]-[ヌクレアーゼ不活性なRGN]-[USP]-[デアミナーゼ]-[COOH]を含む。「ヌクレアーゼ不活性なRGN」は任意のRGNを表わすと理解すべきであり、その中には変異してヌクレアーゼ不活性になったあらゆるCRISPR-Casタンパク質が含まれる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は3つ以上のデアミナーゼポリペプチドを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、構造として、[NH]-[デアミナーゼ]-[RGNニッカーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[デアミナーゼ]-[RGNニッカーゼ]-[COOH];[NH]-[RGNニッカーゼ]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[RGNニッカーゼ]-[デアミナーゼ]-[COOH];または[NH]-[RGNニッカーゼ]-[デアミナーゼ]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[RGNニッカーゼ]-[USP]-[COOH];[NH]-[RGNニッカーゼ]-[デアミナーゼ]-[USP]-[COOH];[NH]-[USP]-[デアミナーゼ]-[RGNニッカーゼ]-[COOH];[NH]-[USP]-[RGNニッカーゼ]-[デアミナーゼ]-[COOH];[NH]-[デアミナーゼ]-[USP]-[RGNニッカーゼ]-[COOH];または[NH]-[RGNニッカーゼ]-[USP]-[デアミナーゼ]-[COOH]を含む。「RGNニッカーゼ」は、変異してニッカーゼとして活性になったあらゆるRGN(あらゆるCRISPR-Casタンパク質が含まれる)を表わすと理解すべきである。
【0181】
いくつかの実施形態では、上記の一般的なアーキテクチャの中で使用されている「-」は、オプションのリンカー配列が存在することを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に提示されている融合タンパク質はリンカー配列を含まない。いくつかの実施形態では、オプションのリンカー配列の少なくとも1つが存在する。
【0182】
存在していてもよい他の代表的な特徴は、局在化配列(核局在化配列、細胞質局在化配列、輸送配列(核輸送配列など)、または他の局在化配列など)のほか、融合タンパク質の溶解、精製、または検出に有用な配列タグである。本明細書で提供され、非限定的な例に含まれるのが、ビオチンカルボキシラーゼ担体タンパク質(BCCP)タグ、mycタグ、カルモジュリンタグ、FLAGタグ(例えば3XFLAGタグ)、ヘマグルチニン(HA)タグ、ポリヒスチジンタグ(ヒスチジンタグまたはHisタグとも呼ばれる)、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、nusタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ、チオレドキシンタグ、Sタグ、Softags(例えばSoftag 1、Softag 3)、ストレプタグ、ビオチンリガーゼタグ、FlAsH(登録商標)タグ、V5タグ、およびSBPタグである適切な局在化シグナル配列とタンパク質タグの配列。追加の適切な配列は当業者には明らかであろう。
【0183】
ある実施形態では、本開示の融合タンパク質は、細胞への融合タンパク質の取り込みを容易にする少なくとも1つの細胞侵入ドメインを含む。細胞侵入ドメインは本分野で知られており、一般に、正に帯電したアミノ酸残基のストレッチ(すなわちポリカチオン性細胞侵入ドメイン)、極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互になったストレッチ(すなわち両親媒性細胞侵入ドメイン)、または疎水性アミノ酸残基のストレッチ(すなわち疎水性細胞侵入ドメイン)を含む(例えばMilletti F. (2012) Drug Discov Today 17:850-860参照)。細胞侵入ドメインの非限定的な一例は、ヒト免疫不全ウイルス1からのトランス活性化転写アクチベータ(TAT)である。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示されているデアミナーゼまたは融合タンパク質は、核局在化配列(NLS)をさらに含む。核局在化シグナル、プラスチド局在化シグナル、ミトコンドリア局在化シグナル、二重ターゲティング局在化シグナル、および/または細胞侵入ドメインは、アミノ末端(N末端)、カルボキシル末端(C末端)、または融合タンパク質の内部位置に位置させることができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、NLSは融合タンパク質またはデアミナーゼのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは融合タンパク質またはデアミナーゼのC末端に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは融合タンパク質のデアミナーゼのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは融合タンパク質のデアミナーゼのC末端に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは融合タンパク質のDNA結合ポリペプチド(例えばRGNポリペプチド)のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは融合タンパク質のDNA結合ポリペプチド(例えばRGNポリペプチド)のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは融合タンパク質のデアミナーゼポリペプチドのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは融合タンパク質のデアミナーゼポリペプチドのC末端に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは1つ以上のリンカー(非限定的な例として配列番号148が含まれる)を介して融合タンパク質に融合される。いくつかの実施形態では、NLSはリンカーなしで融合タンパク質に融合される。いくつかの実施形態では、NLSは、本明細書に提示されているか本明細書で参照されているNLS配列のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NLSは配列番号76または配列番号80に示されているアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質またはデアミナーゼはそのN末端に配列番号76を含み、そのC末端に配列番号80を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示されている融合タンパク質はデアミナーゼの完全長配列(例えば配列番号2、4、および6~12のいずれか1つ)を含む。しかしいくつかの実施形態では、本明細書に提示されている融合タンパク質はデアミナーゼの完全長配列を含まず、その断片だけを含む。例えばいくつかの実施形態では、本明細書に提示されている融合タンパク質はDNA結合ポリペプチド(例えばRNA誘導型DNA結合)ドメインとデアミナーゼドメインをさらに含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、本発明の融合タンパク質はDNA結合ポリペプチド(例えばRGN)とデアミナーゼを含み、そのデアミナーゼは、配列番号2、4、および6~12のいずれかと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%一致するアミノ酸配列を持つ。このような融合タンパク質の例は本明細書の実施例のセクションに記載されている。
【0188】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は1つのデアミナーゼポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、直接に、またはペプチドリンカーを介して機能可能に連結された少なくとも2つのデアミナーゼポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は1つのデアミナーゼポリペプチドを含み、第2のデアミナーゼポリペプチドが融合タンパク質と同時に発現する。
【0189】
本明細書では、デアミナーゼと、RGDBPと、単一のガイドまたは二重ガイドRNAとしてのガイドRNA(まとめてgRNAとも呼ぶ)を含む融合タンパク質を含むリボ核タンパク質複合体も提供される。
【0190】
V.デアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードするヌクレオチド
【0191】
本開示により、本開示のデアミナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号109、111、および113~119)が提供される。本開示により、デアミナーゼとDNA結合ポリペプチド(例えばメガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALEN)を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドがさらに提供される。本開示により、デアミナーゼとRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドがさらに提供される。このようなRNA誘導型DNA結合ポリペプチドとして、RGNまたはRGNバリアントが可能である。タンパク質バリアントとして、ヌクレアーゼ-不活性、またはニッカーゼが可能である。RGNとして、CRISPR-Casタンパク質、またはその活性なバリアントまたは断片が可能である。配列番号74と75は、それぞれRGNとニッカーゼRGNバリアントの非限定的な例である。CRISPR-Casヌクレアーゼの例は本分野で周知であり、同様の対応する変異が変異体バリアントを創出することができ、それはニッカーゼ、またはヌクレアーゼ不活性でもある。
【0192】
本発明の一実施形態により、RGDBPと本明細書に記載されているデアミナーゼ(配列番号2、4、および6~12、またはそのバリアント)を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、興味あるヌクレオチド配列を標的にするため、RGDBPが必要とするガイドRNAをコードする。いくつかの実施形態では、ガイドRNAと融合タンパク質は同じポリヌクレオチドによってコードされる。
【0193】
「ポリヌクレオチド」という用語の使用は、DNAを含むポリヌクレオチドに本開示を限定する意図はないが、そのようなDNAポリヌクレオチドが考慮される。当業者は、ポリヌクレオチドに、リボヌクレオチド(RNA)(例えばmRNA)と、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの組み合わせを含めることが可能であることを認識しているであろう。このようなデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドには天然分子と合成類似体の両方が含まれる。本明細書に開示されているポリヌクレオチドにはあらゆる形態の配列も包含され、その非限定的な例に含まれるのは、一本鎖形態、二本鎖形態、ステムとループ構造、環状形態(例えば環状RNAを含む)などである。
【0194】
本発明の一実施形態は、配列番号109、111、および113~119のいずれかと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%一致する配列を含む核酸分子であり、その核酸分子はシトシンデアミナーゼ活性を持つデアミナーゼをコードしている。核酸分子は異種のプロモータまたはターミネータをさらに含むことができる。核酸分子は融合タンパク質をコードすることができ、その中のコードされたデアミナーゼは、DNA結合ポリペプチドに、場合により第2のデアミナーゼに、そして場合によりUSPに機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、核酸分子は融合タンパク質をコードし、その中のコードされたデアミナーゼは、RGNに、場合により第2のデアミナーゼに、そして場合によりUSPに機能可能に連結されている。
【0195】
いくつかの実施形態では、本発明のデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子は、興味ある生物の中で発現させるためにコドンが最適化されている。「コドンが最適化された」コード配列は、特定の宿主細胞の好ましいコドンの使用頻度または転写条件を模倣するように設計されたコドン使用頻度を持つ配列をコードするポリヌクレオチドである。核酸レベルで1個以上のコドンが変化しているが翻訳されるアミノ酸配列は変化していない結果として、その特定の宿主細胞または生物における発現が増加する。核酸分子の全体または一部についてコドンを最適化することができる。広い範囲の生物について、好ましい情報を提供するコドン表とそれ以外の参考文献を本分野で入手することができる(植物が好むコドンの利用に関しては、例えばCampbell and Gowri (1990) Plant Physiol. 92:1-11を参照されたい)。本分野では、植物が好む遺伝子を合成するための方法を利用することができる。例えばアメリカ合衆国特許第5,380,831号と第5,436,391号、およびMurray et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17:477-498を参照されたい(参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0196】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているデアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードするポリヌクレオチドを発現カセットに入れて提供し、インビトロで発現させるか、興味ある細胞、オルガネラ、胚、または生物の中で発現させる。カセットは、デアミナーゼをコードするポリヌクレオチドに、および/またはデアミナーゼ、RNA誘導型DNA結合ポリペプチド、および場合により第2のデアミナーゼを含む融合タンパク質に、および/またはポリヌクレオチドの発現を可能にする本明細書に提示のgRNAに機能可能に連結された5´調節配列と3´調節配列を含むことができる。カセットは、その生物に入れて同時形質転換するための少なくとも1つの追加の遺伝子または遺伝子エレメントを追加して含むことができる。追加の遺伝子またはエレメントが含まれている場合には、これらの要素は機能可能に連結されている。「機能可能に連結された」という表現は、2つ以上のエレメントの間の機能的連結を意味することが想定されている。例えばプロモータと興味あるコード領域(例えばデアミナーゼ、RNA誘導型DNA結合ポリペプチド、および/またはgRNAをコードする領域)の間の機能可能な連結は、興味あるコード領域の発現を可能にする機能可能な連結である。機能可能に連結されたエレメントは連続していても不連続でもよい。機能可能に連結されたは、2つのタンパク質コード領域の接合を意味するのに使用されるときには、それらコード領域が同じリーディングフレーム内にあることが想定されている。いくつかの実施形態では、追加の遺伝子またはエレメントは複数の発現カセット上に提供される。例えば本開示のデアミナーゼをコードするヌクレオチド配列は、単独で、または融合タンパク質の一要素として、1つの発現カセット上に存在することができる一方で、gRNAをコードするヌクレオチド配列は別の発現カセット上に存在することができる。別の一例は、第1の発現カセット上の本開示のデアミナーゼだけをコードするヌクレオチド配列、デアミナーゼを含む融合タンパク質をコードする第2の発現カセット、および第3の発現カセット上のgRNAをコードするヌクレオチド配列を持つことができる。調節領域の転写調節下にあるポリヌクレオチドを挿入するため複数の制限部位および/または組み換え部位を持つような発現カセットが提供される。選択マーカー遺伝子を含む発現カセットも存在することができる。
【0197】
発現カセットは、転写の5´→3´方向に向かって、興味ある生物の中で機能する転写(といくつかの実施形態では翻訳)の開始領域(すなわちプロモータ)、興味あるデアミナーゼをコードするポリヌクレオチド、および転写(といくつかの実施形態では翻訳)の終止領域(すなわち終止領域)を含む。本発明のプロモータは、宿主細胞の中でコード配列の発現を命令または駆動することができる。これら調節領域(例えばプロモータ、転写調節領域、および転写終止領域)は、宿主細胞にとって、または互いに、内在性または異種であることが可能である。本明細書では、配列に関する「異種の」は、外来種に由来する配列であるか、同じ種に由来する場合には、人為的な介入によって組成および/またはゲノム遺伝子座の中の天然の形態から実質的に改変されている配列である。本明細書では、キメラ遺伝子は、コード配列として、このコード配列にとって異種の転写開始領域に機能可能に連結されたコード配列を含む。
【0198】
便利な終止領域(例えばオクトピンシンターゼ終止領域とノパリンシンターゼ終止領域)をA.ツメファシエンスのTiプラスミドから入手することができる。Guerineau et al. (1991) Mol. Gen. Genet. 262:141-144;Proudfoot (1991) Cell 64:671-674;Sanfacon et al. (1991) Genes Dev. 5:141-149;Mogen et al. (1990) Plant Cell 2:1261-1272;Munroe et al. (1990) Gene 91:151-158;Ballas et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17:7891-7903;およびJoshi et al. (1987) Nucleic Acids Res. 15:9627-9639も参照されたい。
【0199】
追加の調節シグナルの非限定的な例に含まれるのは、転写開始部位、オペレータ、アクチベータ、エンハンサ、他の調節エレメント、リボソーム結合部位、開始コドン、終止シグナルなどである。例えばアメリカ合衆国特許第5,039,523号と第4,853,331号;EPO0480762A2;Sambrook et al. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, ed. Maniatis et al.(Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州)(今後は「Sambrook 11」と呼ぶ);Davis et al., eds. (1980) Advanced Bacterial Genetics (Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州と、これらの中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0200】
発現カセットを用意する際には、さまざまなDNA断片を操作し、適切な向きと、必要に応じて適切なリーディングフレームにされたDNA配列が提供されるようにする。この目的に向け、アダプタまたはリンカーを用いてDNA断片を接合すること、または便利な制限部位の提供、余分なDNAの除去、制限部位の除去などのための他の操作を含めることができる。この目的で、インビトロの突然変異誘発、プライマーの修復、制限、アニーリング、再置換(例えば転位(トランジション)と転換(トランスバージョン))を含めることができる。
【0201】
本発明を実施するのに多数のプロモータを使用することができる。プロモータは、望む結果に基づいて選択することができる。核酸を、構成的プロモータ、誘導性プロモータ、増殖段階特異的プロモータ、細胞タイプ特異的プロモータ、組織選択的プロモータ、組織特異的プロモータ、または他のプロモータと組み合わせ、興味ある生物の中で発現させることができる。例えばWO99/43838と、アメリカ合衆国特許第8,575,425号;第7,790,846号;第8,147,856号;第8,586832号;第7,772,369号;第7,534,939号;第6,072,050号;第5,659,026号;第5,608,149号;第5,608,144号;第5,604,121号;第5,569,597号;第5,466,785号;第5,399,680号;第5,268,463号;第5,608,142号;および第6,177,611号(これらは参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されているプロモータを参照されたい。
【0202】
植物の中で発現させるため、構成的プロモータには、CaMV 35Sプロモータ(Odell et al. (1985) Nature 313:810-812);イネのアクチン(McElroy et al. (1990) Plant Cell 2:163-171);ユビキチン(Christensen et al. (1989) Plant Mol. Biol. 12:619-632と、Christensen et al. (1992) Plant Mol. Biol. 18:675-689);pEMU(Last et al. (1991) Theor. Appl. Genet. 81:581-588);およびMAS (Velten et al. (1984) EMBO J. 3:2723-2730)も含まれる。
【0203】
誘導性プロモータの例は、低酸素ストレスまたは低温ストレスによって誘導可能なAdh1プロモータ、熱ストレスによって誘導可能なHsp70プロモータ、光によって誘導可能なPPDKプロモータとペプカルボキシラーゼプロモータである。化学的に誘導可能なプロモータも有用であり、それは例えば、薬害軽減剤によって誘導されるIn2-2プロモータ(アメリカ合衆国特許第5,364,780号)、オーキシンによって誘導され、タペート組織特異的だがカルスの中でも活性なAxig1プロモータ(PCT US01/22169)、ステロイド反応性プロモータ(例えばエストロゲンによって誘導されるEREプロモータと、Schena et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10421-10425とMcNellis et al. (1998) Plant J. 14(2):247-257の中のグルココルチコイド誘導性プロモータを参照されたい)、およびテトラサイクリン誘導性プロモータとテトラサイクリン抑制性プロモータ(例えばGatz et al. (1991) Mol. Gen. Genet. 227:229-237と、アメリカ合衆国特許第5,814,618号および第5,789,156号を参照されたい)である(これらは参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0204】
いくつかの実施形態では、特定の組織内で発現コンストラクトを発現させることを目的として組織特異的または組織選択的なプロモータを用いることができる。ある実施形態では、組織特異的または組織選択的なプロモータは、植物組織の中で活性である。植物の中で発生制御下にあるプロモータの例に含まれるのは、所定の組織(例えば葉、根、果実、種子、または花)の中で選択的に転写を開始するプロモータである。「組織特異的」プロモータは、所定の組織の中でだけ転写を開始するプロモータである。組織特異的発現は、遺伝子の構成的発現とは異なり、遺伝子調節の相互作用のレベルがいくつかあることの結果である。そのため、相同な植物種、または近縁の植物種からのプロモータを選択的に用いて特定の組織内で導入遺伝子の効果的かつ信頼性の高い発現を実現することができる。いくつかの実施形態では、発現は、組織選択的プロモータを含む。「組織選択的」プロモータは、選択的に転写を開始するが、必ずしも全面的に所定の組織の中で、または所定の組織の中だけで転写を開始するのではないプロモータである。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているデアミナーゼをコードする核酸分子は、細胞タイプ特異的プロモータを含む。「細胞タイプ特異的」プロモータは、1つ以上の器官内のいくつかのタイプの細胞の中での発現を主に駆動するプロモータである。植物の中で機能する細胞タイプ特異的プロモータが主に活性であることのできる植物細胞のいくつかの例に含まれるのは、例えばBETL細胞、根、葉の中の維管束細胞、茎細胞、および幹細胞である。核酸分子は、細胞タイプ選択的プロモータも含むことができる。「細胞タイプ選択的」プロモータは、たいていは1つ以上の器官内のいくつかのタイプの細胞の中で発現を主に駆動するが、必ずしも全面的に所定の組織の中で、または所定の組織の中だけで発現を駆動するのではないプロモータである。植物の中で機能する細胞タイプ選択的プロモータが選択的に活性であることのできる植物細胞のいくつかの例に含まれるのは、例えばBELT細胞、根、葉の中の維管束細胞、茎細胞、および幹細胞である。
【0206】
いくつかの実施形態では、デアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードする核酸配列は、例えばインビトロでのmRNA合成のため、ファージRNAポリメラーゼによって認識されるプロモータ配列に機能可能に連結される。このような実施形態では、インビトロで転写されたRNAを精製し、本明細書に記載されている方法で使用することができる。例えばプロモータ配列として、T7プロモータ配列、T3プロモータ配列、またはSP6プロモータ配列や、T7プロモータ配列、T3プロモータ配列、またはSP6プロモータ配列のバリエーションが可能である。このような実施形態では、発現したタンパク質および/またはRNAを精製し、本明細書に記載されているゲノム改変の方法で使用することができる。
【0207】
ある実施形態では、デアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードするポリヌクレオチドは、ポリアデニル化シグナル(例えばSV40ポリAシグナルと、植物の中で機能する他のシグナル)および/または少なくとも1つの転写終止配列に連結される。いくつかの実施形態では、デアミナーゼまたは融合タンパク質をコードする配列は、本明細書の別の箇所に記載されているように、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞侵入ドメイン、および/またはタンパク質を特定の細胞内位置に移動させることのできる少なくとも1つのシグナルペプチドをコードする配列に連結される。
【0208】
いくつかの実施形態では、デアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードするポリヌクレオチドは、1つのベクター、または複数のベクターの中に存在する。「ベクター」は、核酸を宿主細胞の中に移す、送達する、または導入するためのポリヌクレオチド組成物を意味する。適切なベクターに含まれるのは、プラスミドベクター、ファージミド、コスミド、人工/ミニ-染色体、トランスポゾン、およびウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター)である。いくつかの実施形態では、ベクターは、追加の発現制御配列(例えばエンハンサ配列、コザック配列、ポリアデニル化配列、転写終止配列)、選択マーカー配列(例えば抗生剤耐性遺伝子)、複製起点などを含む。追加情報は、“Current Protocols in Molecular Biology” Ausubel et al., John Wiley & Sons、ニューヨーク、2003、または“Molecular Cloning: A Laboratory Manual” Sambrook & Russell, Cold Spring Harbor Press、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州、3rd edition, 2001に見いだすことができる。
【0209】
いくつかの実施形態では、ベクターは、形質転換された細胞を選択するための選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子は、形質転換された細胞または組織を選択するために使用される。マーカー遺伝子に含まれるのは、抗生剤耐性をコードする遺伝子(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)とハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)をコードする遺伝子など)のほか、除草化合物(グルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノン、および2,4-ジクロロフェノキシ酢酸塩(2,4-D)など)に対する耐性を与える遺伝子である。
【0210】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチド(RGNなど)を含む融合タンパク質をコードする配列を含む発現カセットまたはベクターは、gRNAをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、gRNAをコードする配列は、興味ある生物または宿主細胞の中でgRNAを発現させるための少なくとも1つの転写制御配列に機能可能に連結される。例えばgRNAをコードするポリヌクレオチドは、RNAポリメラーゼIII(Pol III)によって認識されるプロモータ配列に機能可能に連結させることができる。適切なPol IIIプロモータの非限定的な例に含まれるのは、哺乳類のU6プロモータ、U3プロモータ、H1プロモータ、および7SL RNAプロモータと、イネのU6プロモータおよびU3プロモータである。
【0211】
示されているように、デアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトを用いて興味ある生物を形質転換することができる。形質転換の方法は、ヌクレオチドコンストラクトを興味ある生物の中に導入することを含む。「導入する」とは、ヌクレオチドコンストラクトを宿主細胞の中に導入し、このコンストラクトが宿主細胞の内部にアクセスできるようにすることを意味する。本発明の方法は、ヌクレオチドコンストラクトを宿主生物の中に導入する特別な方法を必要とせず、ヌクレオチドコンストラクトが宿主生物の少なくとも1個の細胞の内部にアクセスできるだけでよい。いくつかの実施形態では、デアミナーゼまたは融合タンパク質をコードするmRNAが宿主細胞に導入される。融合タンパク質がRGDBPを含むいくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードするmRNAが細胞に導入されて、gRNAがその細胞に導入される。宿主細胞として真核細胞または原核細胞が可能である。特別な実施形態では、真核細胞は、植物細胞、哺乳類細胞、または昆虫細胞である。ヌクレオチドコンストラクトを植物と他の宿主細胞に導入する方法は本分野で知られており、その非限定的な例に含まれるのは、安定に形質転換する方法、一過性に形質転換する方法、およびウイルスを媒介とする方法である。
【0212】
これらの方法により、形質転換された生物(例えば植物であり、その中には植物体全体のほか、植物の器官(例えば葉、幹、根など)、種子、植物細胞、むかご、およびこれらの胚と子孫が含まれる)が得られる。植物細胞は、分化していること、または未分化であることが可能である(例えばカルス、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉細胞、根細胞、師管細胞、花粉)。
【0213】
「トランスジェニック生物」または「形質転換された生物」または「安定に形質転換された」生物または細胞または組織は、本発明のデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドが組み込まれているか一体化している生物を意味する。他の外来性または内在性の核酸配列またはDNA断片も宿主細胞の中に組み込めることが知られている。アグロバクテリウムを媒介とした形質転換とバイオリスティックを媒介とした形質転換は、植物細胞を形質転換するのに相変わらず利用されている2つの主要なアプローチである。しかし宿主細胞の形質転換は、感染、トランスフェクション、微量注入、電気穿孔、マイクロプロジェクション、バイオリスティックまたは粒子衝突、電気穿孔、シリカ/炭素繊維、超音波を媒介とすること、PEGを媒介とすること、リン酸カルシウム共沈降、ポリカチオンDMSO技術、DEAEデキストラン手続き、およびウイルスを媒介とすること、リポソームを媒介とすることなどによって実現できる。ウイルスを媒介としてデアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードするポリヌクレオチドを導入することに含まれるのは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスを媒介とした導入および発現のほか、カリモウイルス(例えばカリフラワーモザイクウイルス)、ジェミニウイルス(例えばマメ黄斑モザイクウイルス、またはトウモロコシ条斑ウイルス)、およびRNA植物ウイルス(例えばタバコモザイクウイルス)の利用である。
【0214】
形質転換のプロトコルのほか、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列を植物の中に導入するプロトコルは、形質転換の標的にされる宿主細胞のタイプ(例えば単子葉植物の細胞または双子葉植物の細胞)によって異なる可能性がある。形質転換の方法は本分野で知られており、その中に含まれるのは、アメリカ合衆国特許第8,575,425号;第7,692,068号;第8,802,934号;第7,541,517号(これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている方法である。Rakoczy-Trojanowska, M. (2002) Cell Mol Biol Lett. 7:849-858;Jones et al. (2005) Plant Methods 1:5;Rivera et al. (2012) Physics of Life Reviews 9:308-345;Bartlett et al. (2008) Plant Methods 4:1-12;Bates, G.W. (1999) Methods in Molecular Biology 111:359-366;Binns and Thomashow (1988) Annual Reviews in Microbiology 42:575-606;Christou, P. (1992) The Plant Journal 2:275-281;Christou, P. (1995) Euphytica 85:13-27;Tzfira et al. (2004) TRENDS in Genetics 20:375-383;Yao et al. (2006) Journal of Experimental Botany 57:3737-3746;Zupan and Zambryski (1995) Plant Physiology 107: 1041-1047;Jones et al. (2005) Plant Methods 1:5も参照されたい;
【0215】
形質転換により、細胞の中に核酸を安定に、または一過性に組み込むことができる。「安定な形質転換」は、宿主細胞の中に導入されたヌクレオチドコンストラクトがその宿主細胞のゲノムに組み込まれ、その子孫によって遺伝させることができることを意味する。「一過性の形質転換」は、ポリヌクレオチドが宿主細胞の中に導入されるがこの宿主細胞のゲノムには組み込まれないことを意味する。
【0216】
葉緑体を形質転換する方法は本分野で知られている。例えばSvab et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8526-8530;Svab and Maliga (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:913-917;Svab and Maliga (1993) EMBO J. 12:601-606を参照されたい。この方法は、選択マーカーを含有するDNAを粒子銃で送達することに頼っており、相同組み換えを通じてそのDNAをプラスチドのゲノムに向かわせる。それに加え、プラスチドの形質転換は、プラスチドが運ぶサイレントな導入遺伝子を、核がコードするプラスチド誘導型RNAポリメラーゼの組織選択的発現によって交差活性化することによって実現できる。このような系は、McBride et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:7301-7305に報告されている。
【0217】
形質転換された細胞は従来のやり方に従ってトランスジェニック生物(植物など)の中に入れて増殖させることができる。例えばMcCormick et al. (1986) Plant Cell Reports 5:81-84を参照されたい。次いでこれらの植物を成長させ、同じ形質転換された株、または異なる株を用いて受粉させ、得られたハイブリッドの中からデアミナーゼまたは融合タンパク質ポリヌクレオチドを持つものを同定する。2世代以上増殖させてそのデアミナーゼまたは融合タンパク質ポリヌクレオチドが安定に維持されて遺伝することを確認した後、種子を回収してそのデアミナーゼまたは融合タンパク質ポリヌクレオチドの存在を確認することができる。このようにして、本発明により、本発明のヌクレオチドコンストラクト(例えば本発明の発現カセット)がゲノムの中に安定に組み込まれた形質転換種子(「トランスジェニック種子」とも呼ばれる)が提供される。
【0218】
いくつかの実施形態では、形質転換された細胞は生物の中に導入される。これらの細胞はその生物に由来してもよく、その場合には、細胞は生体外アプローチで形質転換される。
【0219】
本明細書に提示されている配列を用いて任意の植物種(その非限定的な例に、単子葉植物と双子葉植物が含まれる)を形質転換することができる。興味ある植物の非限定的な例に含まれるのは、コーン(トウモロコシ)、モロコシ、コムギ、ヒマワリ、トマト、アブラナ科植物、コショウ、ジャガイモ、木綿、イネ、ダイズ、テンサイ、サトウキビ、タバコ、オオムギ、およびナタネ、アブラナ属の種、アルファルファ、ライムギ、雑穀、ベニバナ、ピーナツ、サツマイモ、キャッサバ、コーヒー、ココナツ、パイナップル、柑橘類、ココア、茶、バナナ、アボカド、イチジク、グアバ、マンゴ、オリーブ、パパイヤ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、アーモンド、エンバク、野菜、装飾植物、および針葉樹である。
【0220】
野菜の非限定的な例に含まれるのは、トマト、レタス、グリーンピース、ライマメ、エンドウマメ、およびキュウリ属のメンバー(キュウリ、カンタループ、およびマスクメロンなど)である。装飾植物の非限定的な例に含まれるのは、アザレア、アジサイ、ハイビスカス、バラ、チューリップ、ラッパズイセン、ペチュニア、カーネーション、ポインセチア、およびキクである。本発明の植物は、作物(例えばトウモロコシ、モロコシ、コムギ、ヒマワリ、トマト、アブラナ科植物、コショウ、ジャガイモ、木綿、イネ、ダイズ、テンサイ、サトウキビ、タバコ、オオムギ、ナタネなど)であることが好ましい。
【0221】
本明細書では、植物という用語に含まれるのは、植物細胞、植物プロトプラスト、植物を再生させることのできる植物細胞組織培養物、植物カルス、植物の集団、および植物内で完全であるか植物の一部(胚、花粉、胚珠、種子、葉、花、枝、果実、仁、穂、穂軸、殻、茎、根、根冠、葯など)である植物細胞である。穀粒は、農作物栽培者が増殖または生殖以外の目的で生産した成熟した種子を意味する。再生した植物の子孫、バリアント、および変異体も本発明の範囲に含まれるが、これらの部分が、導入されたポリヌクレオチドを含んでいることが条件である。さらに、本明細書に開示されている配列を保持している加工された植物製品または副生成物(例えば大豆粕)も提供される。
【0222】
いくつかの実施形態では、デアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードするポリヌクレオチドを用いて任意の真核生物種を形質転換する。真核生物種の非限定的な例に含まれるのは、動物(例えば哺乳類、昆虫、魚類、鳥類、および爬虫類)、菌類、アメーバ、藻類、および酵母である。いくつかの実施形態では、デアミナーゼ、融合タンパク質、および/またはgRNAをコードするポリヌクレオチドを用いて任意の原核生物種を形質転換する。原核生物種の非限定的な例に含まれるのは、古細菌と細菌(例えばバシラス属の種、クレブシエラ属の種、ストレプトマイセス属の種、リゾビウム属の種、大腸菌属の種、シュードモナス属の種、サルモネラ属の種、赤痢菌属の種、ビブリオ属の種、エルシニア属の種、マイコプラズマ属の種、アグロバクテリウム属の種、およびラクトバシラス属の種)である。
【0223】
いくつかの実施形態では、ウイルスと非ウイルスに基づく従来からの遺伝子導入法を利用して核酸を哺乳類の細胞または標的組織に導入する。このような方法を利用して、本発明のデアミナーゼまたは融合タンパク質をコードする核酸と、場合によりgRNAを培養物または宿主生物の中の細胞に投与することができる。非ウイルスベクター送達系に含まれるのは、DNAプラスミド、RNA(例えば本明細書に記載されているベクターの転写産物)、裸の核酸、および送達ビヒクル(リポソームなど)との複合体にされた核酸である。ウイルスベクター送達系に含まれるのはDNAウイルスとRNAウイルスであり、これらのウイルスは細胞に送達された後にエピソーマルゲノムまたは組み込まれたゲノムを持つ。非限定的な例に含まれるのは、カリモウイルス(例えばカリフラワーモザイクウイルス)、ジェミニウイルス(例えばマメ黄斑モザイクウイルス、またはトウモロコシ条斑ウイルス)、およびRNA植物ウイルス(例えばタバコモザイクウイルス)を用いたベクターである。遺伝子療法の手続きの総説に関しては、Anderson, Science 256: 808- 813 (1992);Nabel & Feigner, TIBTECH 11:211-217 (1993);Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993);Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993);Miller, Nature 357:455-460 (1992);Van Brunt, Biotechnology 6(10): 1149-1154 (1988);Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995);Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995); Current Topics in Microbiology and Immunology, Doerfler and Bohm (eds) (1995)の中のHaddada et al.;およびYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994) を参照されたい。
【0224】
核酸の非ウイルス送達法に含まれるのは、リポフェクション、アグロバクテリウムを媒介とした形質転換、ヌクレオフェクション、微量注入、バイオリスティック、ウイロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸の複合体、裸のDNA、人工ビリオン、およびDNAの薬剤増強式取り込みである。リポフェクションは、例えばアメリカ合衆国特許第5,049,386号、第4,946,787号;および第4,897,355号)に記載されており、リポフェクション試薬が市販されている(例えばTransfectam(商標)とLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質と中性脂質に含まれるのは、FeignerによるWO91/17424;WO91/16024の脂質である。送達は、細胞(例えばインビトロまたは生体外の投与)または標的組織(例えば生体内投与)に対してなすことができる。脂質:核酸複合体の調製は、標的とされるリポソーム(イムノ脂質複合体など)の調製を含め、当業者に周知である(例えばCrystal, Science 270: 404-410 (1995);Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995);Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994);Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994);Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995);Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992);アメリカ合衆国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および第4,946,787号を参照されたい)。
【0225】
核酸の送達にRNAウイルスまたはDNAウイルスに基づく系を用いるというのは、ウイルスを体内の特定の細胞に向かわせてウイルスのペイロードを核に輸送するための高度に進化した方法を利用することである。ウイルスベクターは患者に直接投与することができる(生体内)。あるいはウイルスベクターを用いてインビトロで細胞を処理し、この改変された細胞を場合によっては患者に投与することができる(生体外)。ウイルスに基づく従来の系には、遺伝子を輸送するためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターを含めることができよう。宿主のゲノムへの組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスによる遺伝子輸送法を用いることによって可能になり、その結果として挿入された導入遺伝子がしばしば長期にわたって発現する。それに加え、大きな遺伝子導入効率が、異なる多くのタイプの細胞と標的組織で観察されてきた。
【0226】
レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的な標的集団を増殖させることによって変えることができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に遺伝子導入または感染することのできるレトロウイルスベクターであり、典型的には高いウイルス力価を生み出す。したがってレトロウイルス遺伝子輸送系の選択は、標的組織に依存すると考えられる。レトロウイルスベクターは、シス作用性の長い末端反復からなり、6~10kbまでの外来配列をパッケージする能力を持つ。ベクターの複製とパッケージングには最小のシス作用性LTRで十分であり、このベクターを用いて治療遺伝子を標的細胞の中に組み込み、導入遺伝子を恒久的に発現させる。広く使用されているレトロウイルスベクターに含まれるのは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、ギボン白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくベクターと、これらの組み合わせである(例えばBuchscher et al., J. Virol. 66:2731-2739 (1992);Johann et al., J. Virol. 66:1635-1640 (1992);Sommnerfelt et al., Virol. 176:58-59 (1990);Wilson et al., J. Virol. 63:2374-2378 (1989);Miller et al., J. Virol. 65:2220-2224 (1991);PCT/US94/05700を参照されたい)。
【0227】
一過性発現が好ましい用途では、アデノウイルスに基づく系を用いることができる。アデノウイルスに基づくベクターは、多くのタイプの細胞で非常に高い遺伝子導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。このようなベクターを用いて高力価と高い発現レベルが得られている。このベクターは、比較的簡単な系の中で大量に作製することができる。例えば核酸とペプチドをインビトロで作製するため、そして生体内と生体外の遺伝子治療手続きのため、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターを用いて細胞に標的核酸を導入することもできる(例えばWest et al., Virology 160:38-47 (1987);アメリカ合衆国特許第4,797,368号;WO93/24641;Katin, Human Gene Therapy 5:793-801 (1994);Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351 (1994)を参照されたい)。組み換えAAVベクターの構築は多数の刊行物に記載されており、そうした刊行物に含まれるのは、アメリカ合衆国特許第5,173,414号;Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985);Tratschin, et al., Mol. Cell. Biol. 4: 2072-2081 (1984);Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466-6470 (1984);およびSamulski et al., J. Virol. 63:03822-3828 (1989)である。典型的にはパッケージング細胞を用い、宿主細胞に感染することのできるウイルス粒子を形成する。このような細胞に含まれるのは、293細胞(アデノウイルスをパッケージする)と、ψJ2細胞またはPA317細胞(レトロウイルスをパッケージする)である。
【0228】
遺伝子療法で用いられるウイルスベクターは、通常は、核酸ベクターをウイルス粒子の中にパッケージする細胞系を生成させることによって作製する。ベクターは、典型には、パッケージングとその後の宿主への組み込みに必要な最小ウイルス配列を含有しており、他のウイルス配列は、発現させるポリヌクレオチドのための発現カセットによって置き換えられる。失われるウイルス機能は、典型的には、パッケージング細胞系によってトランスで供給される。例えば遺伝子療法で用いられるAAVベクターは、典型的には、パッケージングと宿主ゲノムへの組み込みに必要なAAVゲノムからのITR配列だけを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子(すなわちrepとcap)をコードするがITR配列を欠くヘルパープラスミドを含有している細胞系の中にパッケージされる。
【0229】
細胞系には、ヘルパーとしてアデノウイルスを感染させることもできる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製と、ヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列が欠けているため大量にはパッケージされない。アデノウイルスでの汚染は、例えばアデノウイルスのほうがAAVよりも感受性である熱処理によって減らすことができる。核酸を細胞に送達する追加の方法が当業者に知られている。例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2003/0087817号を参照されたい(参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0230】
理想的には、本発明のRGN-デアミナーゼ融合タンパク質のコード配列と、その融合タンパク質を標的とする対応するガイドRNAをすべて、単一のAAVベクターにパッケージすることができる。AAVベクターの一般に受け入れられているサイズ制限は4.7 kbだが、パッキング効率が低下する犠牲を払ってより大きなサイズを考慮することができる。融合タンパク質とそれに対応するガイドRNAの両方のための発現カセットをAAVベクターに確実にフィットさせることができるようにするため、RGNの新しい活性な欠失バリアント(配列番号97、98、106、および107として示されているものなど)、またはデアミナーゼの活性な欠失バリアント(配列番号2、4、および6として示されている本明細書に記載のものなど)を用いることができる。アミノ酸配列、したがってRGNおよび/または融合タンパク質のデアミナーゼのコード配列を短くすることに加え、RGNとデアミナーゼを連結するペプチドリンカーも短くすることができる。USP(存在する場合)と、そのUSPとRGN-デアミナーゼ融合タンパク質を接続するリンカーを短くすることができる。最後に、遺伝子エレメント(プロモータ、エンハンサ、および/またはターミネータなど)も欠失分析を通じて操作し、それぞれが機能するのに必要な最小サイズを求めることができる。本発明は、AAVベクター送達を通じたインビトロでの標的を絞った塩基編集のために前記融合タンパク質を用いる方法も教示する。
【0231】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は本明細書に記載されている1つ以上のベクターを用いて一過性または非一過性にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、細胞は、対象で自然に起こるようにトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、トランスフェクトされる細胞は対象から採取される。
【0232】
いくつかの実施形態では、トランスフェクトされる細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は動物細胞(例えば哺乳類、昆虫、魚類、鳥類、および爬虫類)である。いくつかの実施形態では、トランスフェクトされる細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、トランスフェクトされる細胞は、造血系起源の細胞である免疫細胞(すなわち自然免疫系または適応免疫系の細胞)などであり、その非限定的な例に含まれるのは、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞である。
【0233】
いくつかの実施形態では、細胞は、対象から採取された細胞に由来する(細胞系など)。いくつかの実施形態では、細胞または細胞系は原核細胞である。いくつかの実施形態では、細胞または細胞系は真核細胞である。さらなる実施形態では、細胞または細胞系は、昆虫、鳥類、植物、または菌類の種に由来する。いくつかの実施形態では、細胞または細胞系として、哺乳類(例えばヒト、サル、マウス、ウシ、ブタ、ヤギ、ハムスター、ラット、ネコ、またはイヌなど)が可能である。組織培養のための多彩な細胞系が本分野で知られている。細胞系の非限定的な例に含まれるのは、C8161、CCRF-CEM、MOLT、mIMCD-3、NHDF、HeLaS3、Huhl、Huh4、Huh7、HUVEC、HASMC、HEKn、HEKa、MiaPaCell、Panel、PC-3、TFl、CTLL-2、CIR、Rat6、CVI、RPTE、AlO、T24、182、A375、ARH-77、Calul、SW480、SW620、SKOV3、SK-UT、CaCo2、P388Dl、SEM-K2、WEHI-231、HB56、TIB55、lurkat、145.01、LRMB、Bcl-1、BC-3、IC21、DLD2、Raw264.7、NRK、NRK-52E、MRC5、MEF、Hep G2、HeLa B、HeLa T4。COS、COS-1、COS-6、COS-M6A、BS-C-1サル腎臓上皮、BALB/3T3マウス胚線維芽細胞、3T3 Swiss、3T3-Ll、132-d5ヒト胎児線維芽細胞;10.1マウス線維芽細胞、293-T、3T3、721、9L、A2780、A2780ADR、A2780cis、A172、A20、A253、A431、A-549、ALC、B16、B35、BCP-I細胞、BEAS-2B、bEnd.3、BHK-21、BR 293、BxPC3、C3H-10Tl/2、C6/36、Cal-27、CHO、CHO-7、CHO-IR、CHO-Kl、CHO-K2、CHO-T、CHO Dhfr-/-、COR-L23、COR-L23/CPR、COR-L235010、CORL23/R23、COS-7、COV-434、CML Tl、CMT、CT26、D17、DH82、DU145、DuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、EMT6/AR10.0、FM3、H1299、H69、HB54、HB55、HCA2、HEK-293、HeLa、Hepalclc7、HL-60、HMEC、HT-29、lurkat、lY細胞、K562細胞、Ku812、KCL22、KGl、KYOl、LNCap、Ma-Mel 1-48、MC-38、MCF-7、MCF-l0A、MDA-MB-231、MDA-MB-468、MDA-MB-435、MDCKII、MDCKII、MOR/0.2R、MONO-MAC 6、MTD-lA、MyEnd、NCI-H69/CPR、NCI-H69/LX10、NCI-H69/LX20、NCI-H69/LX4、NIH-3T3、NALM-1、NW-145、OPCN/OPCT細胞系、Peer、PNT-lA/PNT 2、RenCa、RIN-5F、RMA/RMAS、Saos-2脂肪、Sf-9、SkBr3、T2、T-47D、T84、THPl細胞系、U373、U87、U937、VCaP、Vero細胞、WM39、WT-49、X63、YAC-1、YAR、およびこれらのトランスジェニックな変種である。当業者に知られている多彩な供給源からの細胞系を利用することができる(例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC)(マナサス、ヴァージニア州)を参照されたい)。
【0234】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている1つ以上のベクターをトランスフェクトされた細胞を用い、1つ以上のベクター由来配列を含む新たな細胞系を確立する。いくつかの実施形態では、本明細書の融合タンパク質と場合によりgRNAを、または本発明のリボ核タンパク質複合体を一過性にトランスフェクトされて融合タンパク質またはリボ核タンパク質複合体の活性を通じて改変された細胞を用い、改変を含有するが他の外来性配列は完全に欠けた新たな細胞系を確立する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている1つ以上のベクターを一過性または非一過性にトランスフェクトされた細胞、またはそのような細胞に由来する細胞系を用いて1つ以上の試験化合物を評価する。
【0235】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている1つ以上のベクターを用いて非ヒトトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物を作製する。いくつかの実施形態では、トランスジェニック動物は昆虫である。さらなる実施形態では、昆虫は害虫(蚊またはダニなど)である。いくつかの実施形態では、昆虫は植物の害虫(トウモロコシの害虫(corn rootworm)またはツマジロクサヨトウなど)である。いくつかの実施形態では、トランスジェニック動物は鳥類(ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、またはアヒルなど)である。いくつかの実施形態では、トランスジェニック動物は哺乳類(ヒト、マウス、ラット、ハムスター、サル、類人猿、ウサギ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、またはイヌなど)である。
【0236】
VI.ポリペプチドとポリヌクレオチドのバリアントと断片
【0237】
本開示により、配列番号2、4、および6~12として示されているアミノ酸配列を持つDNA分子、その活性なバリアントまたは断片、およびそれをコードするポリヌクレオチドに対して活性なシトシンデアミナーゼが提供される。
【0238】
バリアントまたは断片の活性は興味あるポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比べて変化していてもよいが、そのバリアントと断片は、興味あるポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能を保持していなければならない。例えばバリアントまたは断片は、興味あるポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比べたとき、活性が増大している可能性、活性が低下している可能性、活性のスペクトルが異なっている可能性、または活性が他の何らかの変化をしている可能性がある。
【0239】
シトシンデアミナーゼ活性を持つ本発明のデアミナーゼの断片とバリアントは、DNA結合ポリペプチドまたはその断片をさらに含む融合タンパク質の一部である場合に前記活性を保持するであろう。
【0240】
「断片」という用語は、本発明のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の一部を意味する。「断片」または「生物活性な部分」には、生物活性(すなわち核酸に対するデアミナーゼ活性)を保持するのに十分な数の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドが含まれる。「断片」または「生物活性な部分」には、生物活性を保持するのに十分な数の連続したアミノ酸残基を含むポリペプチドが含まれる。本明細書に開示されているデアミナーゼの断片には、代わりの下流開始部位を使用しているため完全長配列よりも短いものが含まれる。いくつかの実施形態では、デアミナーゼの生物活性な部分は、配列番号2、4、および6~12のいずれかの例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160個、またはそれよりも多い連続したアミノ酸残基を含むポリペプチド、またはそのバリアントである。このような生物活性な部分は組み換え技術によって調製し、活性を評価することができる。
【0241】
一般に、「バリアント」は、実質的に似ている配列を意味する。ポリヌクレオチドに関しては、バリアントは、天然ポリヌクレオチド内の1つ以上の内部部位に1つ以上のヌクレオチドの欠失および/または付加、および/または天然ポリヌクレオチド内の1つ以上の部位に1つ以上のヌクレオチドの置換を含む。本明細書では、「天然」または「野生型」ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、天然のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列をそれぞれ含む。ポリヌクレオチドに関しては、保存的バリアントに、遺伝暗号の縮重が理由で興味ある遺伝子の天然アミノ酸配列をコードしている配列が含まれる。このような天然のアレルバリアントは、周知の分子生物学の技術(例えば下に概略を記載するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)やハイブリダイゼーション技術)を利用して同定することができる。バリアントポリヌクレオチドには、合成に由来する(例えば部位特異的突然変異誘発によって生成した)が興味あるポリペプチドまたはポリヌクレオチドをやはりコードしているポリヌクレオチドも含まれる。一般に、本明細書に開示されている1つの特定のポリヌクレオチドのバリアントは、本明細書の別の箇所に記載されている配列アラインメントプログラムとパラメータによって調べると、その特定のポリヌクレオチドと少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれよりも多く一致する配列を持つであろう。
【0242】
本明細書に開示されているある特定のポリヌクレオチド(すなわち参照ポリヌクレオチド)のバリアントは、バリアントポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと、参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの間の配列一致の割合を比較することによって評価することもできる。任意の2つのポリペプチドの間の配列一致の割合は、本明細書の別の箇所に記載されている配列アラインメントプログラムとパラメータを用いて計算することができる。本明細書に開示されているポリヌクレオチドの任意の所与のペアを、これらポリヌクレオチドがコードする2つのポリペプチドが共有する配列の一致率の比較によって評価する場合、コードされるこれら2つのポリペプチド間の配列一致の割合は、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれよりも多い配列一致である。
【0243】
特別な実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号2、4、および6~12のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれよりも多く一致するアミノ酸配列を含むシトシンデアミナーゼをコードする。
【0244】
本発明のシトシンデアミナーゼの生物活性なバリアントは、1~15個という少数のアミノ酸残基、1~10個という少数、例えば6~10個、5個という少数、4個という少数、3個という少数、2個という少数、または1個という少数のアミノ酸残基が異なっている可能性がある。特別な実施形態では、これらポリペプチドはN末端またはC末端のトランケーションを含み、そこにはポリペプチドのN末端またはC末端からの5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60個、またはそれよりも多くのアミノ酸の欠失が少なくとも含まれる可能性がある。いくつかの実施形態では、これらポリペプチドは内部欠失を含み、そこには1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60個、またはそれよりも多くのアミノ酸の欠失が少なくとも含まれる可能性がある。
【0245】
いくつかの実施形態では、配列番号2の生物活性なポリペプチドバリアントは、配列番号1のアミノ酸残基1~12または195~230を含まない。ある実施形態では、配列番号4の生物活性なバリアントは、配列番号3のアミノ酸残基1~12または198~201を含まない。特別な実施形態では、配列番号6の生物活性なポリペプチドバリアントは、配列番号5のアミノ酸残基1~15を含まない。ある実施形態では、デアミナーゼは、配列番号2と少なくとも90%一致するアミノ酸配列を持ち、配列番号1のアミノ酸残基1~12または195~230を含まない。いくつかの実施形態では、デアミナーゼは、配列番号4と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を持ち、配列番号3のアミノ酸残基1~12または198~201を含まない。いくつかの実施形態では、デアミナーゼは、配列番号6と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を持ち、配列番号5のアミノ酸残基1~15を含まない。
【0246】
本明細書に提示されているデアミナーゼを改変し、バリアントタンパク質とポリヌクレオチドを作製できると認識されている。ヒトが設計した変化は、部位特異的突然変異誘発技術を適用して導入することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている配列と構造および/または機能が関連した天然の、だがまだ知られていないかまだ同定されていないポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドで、本発明の範囲に入るものを同定することもできる。シトシンデアミナーゼなどのポリペプチドの機能を変化させない保存的アミノ酸置換を、保存されていない領域で実現することができる。いくつかの実施形態では、デアミナーゼのシトシンデアミナーゼ活性を改善する改変がなされる。
【0247】
バリアントポリヌクレオチドとバリアントタンパク質には、突然変異と組み換えを起こさせる手続き(DNAシャッフリングなど)から得られる配列とタンパク質も包含される。このような手続きを利用して本明細書に開示されている1つ以上の異なるデアミナーゼ(例えば2、4、および6~12)を操作し、望む特性を持つ新たなシトシンデアミナーゼを作り出す。このようにして、実質的に一致した配列を持つ配列領域を含んでいるためインビトロまたは生体内での相同組み換えが可能な関連配列ポリヌクレオチドの集団から、組み換えポリヌクレオチドのライブラリを生成させる。例えばこのアプローチを用いると、興味あるドメインをコードする配列モチーフを、本明細書に提示されているデアミナーゼ配列とその後同定される他のデアミナーゼ遺伝子の間でシャッフルし、興味ある特性が改善された(例えば酵素の場合にはKが増大した)タンパク質をコードする新たな遺伝子を得ることができる。このようなDNAシャッフリングのための戦略は本分野で知られている。例えばStemmer (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10747-10751;Stemmer (1994) Nature 370:389-391;Crameri et al. (1997) Nature Biotech. 15:436-438;Moore et al. (1997) J. Mol. Biol. 272:336-347;Zhang et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4504-4509;Crameri et al. (1998) Nature 391:288-291;およびアメリカ合衆国特許第5,605,793号と第5,837,458号を参照されたい。「シャッフルされた」核酸は、シャッフル手続き(例えば本明細書に示されている任意のシャッフル手続き)によって生成した核酸である。シャッフルされた核酸は、2つ以上の核酸(または文字列)を例えば人工的に、そして場合によっては回帰的に(物理的または仮想的に)組み換えることによって生成する。一般に、シャッフリングプロセスでは1つ以上のスクリーニング工程を利用して興味ある核酸を同定する。このスクリーニング工程は、任意の組み換え工程の前または後に実施することができる。シャッフリングのいくつかの(だがすべてではない)実施形態では、選択の前に組み換えを多数回実施し、スクリーニングするプールの多様性を大きくすることが望ましい。組み換えと選択のプロセス全体を場合によっては回帰的に繰り返す。文脈に応じ、シャッフリングは、組み換えと選択のプロセス全体を意味するか、プロセス全体の組み換え部分だけを意味することができる。
【0248】
本明細書では、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の文脈における「配列一致(一致する配列)」または「一致」は、指定された比較ウインドウ上で対応が最大になるようにアラインメントしたとき、それら2つの配列の中で同じである残基を意味する。配列一致の割合がタンパク質に関して用いられているときには、同じではない残基位置は、保存されたアミノ酸置換の違いであることがしばしばあり、その位置ではアミノ酸残基が似た化学的特性(例えば電荷または疎水性)の別のアミノ酸残基で置換されているため、分子の機能的特性は変化しないと認識されている。配列が保存的置換に関して異なっているときには、その置換の保存的性質に関して修正するため配列一致の割合を上方に調節することができる。そのような保存的置換が異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を持つと言われる。この調節を行なう手段は当業者に周知である。典型的には、この手段は、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとして点数化することで、配列一致の割合を大きくすることを含む。したがって例えば一致するアミノ酸には1点を与え、保存されていない置換には0点を与えた場合、保存された置換には0と1の間の点数が与えられる。保存された置換の点数は、例えばプログラムPC/GENE(Intelligenetics、マウンテン・ヴュー、カリフォルニア州)の中に実装されているようにして計算される。
【0249】
本明細書では、「配列一致の割合」は、比較ウインドウ上で最適なアラインメントにされた2つの配列を比較することによって求まる値を意味する。その場合、ポリヌクレオチド配列のうちで比較ウインドウの中にある部分は、2つの配列の最適なアラインメントのための(付加または欠失を含まない)参照配列と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含んでいる可能性がある。この割合は、両方の配列で核酸塩基またはアミノ酸残基が同じである位置の数を明らかにすることによって一致した位置の数を取得し、この一致した位置の数を、比較ウインドウ内の位置の総数で割り、100を掛けることによって計算され、配列一致の割合が得られる。
【0250】
特に断わらない限り、本明細書に提示されている配列一致/類似性の値は、GAP Version 10を用いて得られる値(以下のパラメータを用いる:ヌクレオチド配列に関しては、GAP Weightを50、Length Weightを3にし、nwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを用いて得られる%一致と%類似性;アミノ酸配列に関しては、GAP Weightを8、Length Weightを2にし、BLOSUM62スコアリングマトリックスを用いて得られる%一致と%類似性)、またはこれと同等な任意のプログラムを用いて得られる値を意味する。「同等なプログラム」とは、問題の任意の2つの配列について、GAP Version10によって生成させた対応するアラインメントと比較したとき、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の一致が同じで、配列一致の割合が同じアラインメントを生じさせる任意の配列比較プログラムを意味する。
【0251】
2つの配列が「最適なアラインメントである」のは、類似性スコアを求めるためにそれら2つの配列を、所定のアミノ酸置換マトリックス(例えばBLOSUM62)、ギャップ存在ペナルティ、およびギャップ延長ペナルティを用いてアラインメントさせ、そのペアの配列に関して可能な最高スコアに到達したときである。アミノ酸置換マトリックスと、それを利用して2つの配列の間の類似性を定量化することは、本分野で周知であり、例えば“Atlas of Protein Sequence and Structure,” Vol. 5, Suppl. 3(ed. M. O. Dayhoff)の中のDayhoff et al. (1978) 、「タンパク質における進化的変化のモデル」、pp. 345-352と、Henikoff et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919に記載されている。BLOSUM62マトリックスは、配列アラインメントプロトコルにおいてデフォルトのスコアリング置換マトリックスとしてしばしば用いられる。ギャップ存在ペナルティは、アラインメントされた配列の1つに単一のアミノ酸ギャップを導入するために課され、ギャップ延長ペナルティは、すでに設けられているギャップの中にそれぞれ追加の空のアミノ酸位置を導入するために課される。アラインメントは、各配列の中で、このアラインメントが始まるアミノ酸位置と終わるアミノ酸位置によって規定され、場合によっては一方または両方の配列に1つまたは複数のギャップを挿入して、可能な最高スコアが得られるようにする。最適なアラインメントと点数化は手作業で実現することができるが、このプロセスは、コンピュータで実現されるアラインメントアルゴリズム(例えばAltschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されているギャップ付きBLAST 2.0があり、National Center for Biotechnology Information Website(www.ncbi.nlm.nih.gov)で公開されているため入手できる)を用いると容易になる。最適なアラインメントは、多数のアラインメントを含め、例えばPSI-BLAST(Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されており、www.ncbi.nlm.nih.govから入手することができる)を用いて用意することができる。
【0252】
参照配列と最適なアラインメントにされたアミノ酸配列に関しては、1個のアミノ酸残基が、アラインメントの中でこの残基とペアになる参照配列中の位置に「対応する」。「位置」は、参照配列の中でN末端に対する相対的な位置に基づいて逐次的に同定される各アミノ酸の番号によって表わされる。最適なアラインメントを求めるときに考慮すべき欠失、挿入、トランケーション、融合などがあるため、一般に、N末端から単純に数えることによって求めたときの試験配列中のアミノ酸残基の番号は、参照配列の中の対応する位置の番号と必ずしも同じにならない。例えばアラインメントされた試験配列の中に欠失が1つ存在している場合には、参照配列の中でその欠失部位の位置に対応するアミノ酸は存在しない。アラインメントされた試験配列の中に挿入が1つ存在している場合には、その挿入は、参照配列の中のどのアミノ酸位置にも対応しない。トランケーションまたは融合がある場合には、参照配列またはアラインメントされた配列の中に、対応する配列中のどのアミノ酸にも対応しない一連のアミノ酸が存在する可能性がある。
【0253】
VII.抗体
【0254】
本発明のデアミナーゼ、融合タンパク質、またはデアミナーゼを含むリボ核タンパク質(配列番号2、4、および6~12のいずれか1つに示されているアミノ酸配列を持つものが含まれる)、またはその活性なバリアントまたは断片に対する抗体も包含される。抗体を作製する方法は本分野で周知である(例えばHarlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州と;アメリカ合衆国特許第4,196,265号を参照されたい)。これらの抗体は、本明細書に記載されているデアミナーゼ、または融合タンパク質、またはデアミナーゼを含むリボ核タンパク質を検出して単離するためのキットで用いることができる。したがって本開示により、本明細書に記載されているポリペプチドまたはリボ核タンパク質(例えば配列番号2、4、および6~12のいずれかと少なくとも85%一致する配列を含むポリペプチドが含まれる)に特異的に結合する抗体を含むキットが提供される。
【0255】
VIII.興味ある標的配列の結合および/または改変のための系とリボ核タンパク質複合体、およびそれを作製する方法
【0256】
本開示により、核酸配列を標的としてその標的核酸配列を改変する系が提供される。いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチド(RGNなど)とgRNAは、リボ核タンパク質複合体を興味ある核酸配列に向かわせるのに重要である;RGDBPに融合されたデアミナーゼポリペプチドは、標的となる核酸配列をCからNに改変するのに重要である。いくつかの実施形態では、デアミナーゼはCをTに変換する。いくつかの実施形態では、デアミナーゼはCをGに変換する。ガイドRNAは興味ある標的配列にハイブリダイズした後、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドと複合体も形成し、そのことによってRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを標的配列に結合させる。RNA誘導型DNA結合ポリペプチドは、本明細書に記載されているデアミナーゼも含む融合タンパク質の一部である。いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドはRGN(Cas9など)である。RNA誘導型DNA結合ポリペプチドの他の例には、RGN(国際特許出願公開第WO2019/236566号と第WO2020/139783号(それぞれの全体が参照によって組み込まれている)に記載されているRGNなど)が含まれる。いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドは、II型CRISPR-Casポリペプチド、またはその活性なバリアントまたは断片である。いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドは、V型CRISPR-Casポリペプチド、またはその活性なバリアントまたは断片である。いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドはVI型CRISPR-Casポリペプチドである。いくつかの実施形態では、融合タンパク質のDNA結合ポリペプチドは、RNAガイド(ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、またはメガヌクレアーゼポリペプチドなど)を必要としない。いくつかの実施形態では、DNA結合ポリペプチドのヌクレアーゼ活性は部分的に、または完全に不活性化されている。さらなる実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドは、RGNのアミノ酸配列(例えばAPG07433.1(配列番号74)など)、またはその活性なバリアントまたは断片(ニッカーゼnAPG07433.1(配列番号75)または他のニッカーゼRGNバリアント(配列番号75と88~98)など)を含む。
【0257】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示されている興味ある標的配列の結合と改変のための系は、少なくとも1つのタンパク質に結合したRNAの少なくとも1つの分子であるリボ核タンパク質複合体である。本明細書に提示されているリボ核タンパク質複合体は、RNA成分として少なくとも1つのガイドRNAを含むとともに、タンパク質成分として、本発明のデアミナーゼとRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを含む融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、リボ核タンパク質複合体は、融合タンパク質とガイドRNAをコードするポリヌクレオチドで形質転換した後にその融合タンパク質とガイドRNAの発現を可能にする条件下で培養した細胞または生物から精製する。
【0258】
デアミナーゼ、融合タンパク質、または融合タンパク質リボ核タンパク質複合体を作製する方法が提供される。このような方法は、デアミナーゼ、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、いくつかの実施形態ではガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む細胞を、そのデアミナーゼまたは融合タンパク質(といくつかの実施形態ではガイドRNA)が発現する条件下で培養することを含む。デアミナーゼ、融合タンパク質、または融合リボ核タンパク質はその後、培養された細胞のライセートから精製することができる。
【0259】
デアミナーゼ、融合タンパク質、または融合リボ核タンパク質複合体を生物サンプルのライセートから精製する方法は本分野で知られている(例えばサイズ排除クロマトグラフィおよび/またはアフィニティクロマトグラフィ、2D-PAGE、HPLC、逆相クロマトグラフィ、免疫沈降)。特別な方法では、デアミナーゼまたは融合タンパク質は組み換えで作製され、その精製を助けるため精製タグを含んでいる。精製タグの非限定的な例に含まれるのは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティ精製(TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、HA、nus、Softag 1、Softag 3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、6×His、ビオチンカルボキシル担体タンパク質(BCCP)、およびカルモジュリンである。一般に、タグ付きデアミナーゼ、融合タンパク質、または融合リボ核タンパク質複合体は、免疫沈降、または本分野で知られている他の同様の方法を利用して精製される。
【0260】
「単離された」または「精製された」ポリペプチド、またはその生物活性な部分は、天然の環境で見いだされたポリペプチドに通常は付随する構成成分、またはこのポリペプチドと相互作用する構成成分を実質的または本質的に含んでいない。したがって単離または精製されたポリペプチドは、組み換え技術によって作製されるときには他の細胞材料または培地を実質的に含んでおらず、化学合成されるときには化学的前駆体または他の化合物を実質的に含んでいない。細胞材料を実質的に含んでいないタンパク質には、汚染タンパク質が(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%、または1%よりも少ないタンパク質調製物が含まれる。本発明のタンパク質、またはその生物活性のある部分が組み換えによって作製されるとき、最適には、培地は、化学的前駆体を、または興味あるタンパク質なしの化学物質を、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%、または1%よりも少なく含む。
【0261】
興味ある標的配列に結合させるための、および/または興味ある標的配列を切断するための本明細書に提示されている特別な方法は、インビトロで組み立てられたリボ核タンパク質複合体の使用を含む。リボ核タンパク質複合体のインビトロでの組み立ては、本分野で知られている任意の方法を用いて実施することができ、その方法では、RGDBPポリペプチド、またはそれを含む融合タンパク質を、RGDBPポリペプチド、またはそれを含む融合タンパク質がガイドRNAに結合できる条件下でガイドRNAに接触させる。本明細書では、「接触」、「接触している」、「接触した」は、望む反応の構成要素をまとめ、望むその反応の実施に適した条件下に置くことを意味する。RGDBPポリペプチド、またはそれを含む融合タンパク質は、生物サンプル、細胞ライセート、または培地から精製すること、インビトロで転写すること、または化学的に合成することができる。ガイドRNAは、インビトロでの転写、または化学合成を通じて生成したものを、生物サンプル、細胞ライセート、または培地から精製することができる。RGDBPポリペプチド、またはそれを含む融合タンパク質と、ガイドRNAを溶液(例えば緩衝化生理食塩溶液)中で接触させてリボ核タンパク質複合体をインビトロで組み立てることができる。
【0262】
IX.標的配列を改変する方法
【0263】
本開示により、興味ある標的核酸分子(例えば標的DNA分子)を改変する方法が提供される。前記方法は、DNA結合ポリペプチドと本発明の少なくとも1つのデアミナーゼを含む融合タンパク質、またはそれをコードするポリヌクレオチドを標的配列、または標的配列を含む細胞、オルガネラ、または胚に送達することを含む。ある実施形態では、前記方法は、少なくとも1つのガイドRNAまたはそれをコードするポリヌクレオチドと、本発明の少なくとも1つのデアミナーゼとRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質、またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む系を、標的配列、または標的配列を含む細胞、オルガネラ、または胚に送達することを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2、4、および6~12のアミノ酸配列のいずれか1つ、またはその活性なバリアントまたは断片を含む。
【0264】
いくつかの実施形態では、前記方法は、DNA分子を、(a)デアミナーゼとRNA誘導型DNA結合ポリペプチド(例えばヌクレアーゼ不活性なRGNまたはニッカーゼRGNなど)を含む融合タンパク質;および(b)(a)の融合タンパク質を前記DNA分子の標的ヌクレオチド配列に向かわせるgRNAと接触させることを含み;そのとき前記DNA分子は、融合タンパク質およびgRNAと、有効な量かつ核酸塩基の脱アミノ化に適した条件下で接触させる。いくつかの実施形態では、標的DNA分子は疾患または障害に関係する配列を含み、核酸塩基が脱アミノ化される結果として疾患または障害に関係しない配列になる。いくつかの実施形態では、疾患または障害は動物に影響を与える。さらなる実施形態では、疾患または障害は、哺乳類(ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、サル、ラット、マウス、またはハムスターなど)に影響を与える。いくつかの実施形態では、標的DNA配列は作物のアレルの中にあり、興味ある形質に関するこのアレルが特別である結果として農業的価値がより低い植物になる。核酸塩基が脱アミノ化する結果として、その形質を改善するアレルになり、植物の農業的価値が上昇する。
【0265】
前記方法がガイドRNAおよび/または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達することを含む実施形態では、細胞または胚をその後、前記ガイドRNAおよび/または融合タンパク質が発現する条件下で培養することができる。さまざまな実施形態では、前記方法は、標的配列を、gRNAと(本発明のデアミナーゼとRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを含む)融合タンパク質を含むリボ核タンパク質複合体と接触させることを含む。ある実施形態では、前記方法は、標的配列を含む細胞、オルガネラ、または胚の中に本発明のリボ核タンパク質複合体を導入することを含む。本発明のリボ核タンパク質複合体として、生物サンプルから精製されたもの、組み換え産生されてその後精製されたもの、および本明細書に記載されているようにしてインビトロで組み立てられたものが可能である。標的配列または細胞オルガネラまたは胚と接触させるリボ核タンパク質複合体がインビトロで組み立てられた実施形態では、前記方法はさらに、標的配列、細胞、オルガネラ、または胚と接触させる前に複合体をインビトロで組み立てることを含むことができる。
【0266】
精製されるかインビトロで組み立てられた本発明のリボ核タンパク質複合体は、本分野で知られている任意の方法(その非限定的な例に電気穿孔が含まれる)を利用して細胞、オルガネラ、または胚の中に導入することができる。いくつかの実施形態では、本発明のデアミナーゼとRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを含む融合タンパク質と、ガイドRNAをコードするか含むポリヌクレオチドを、本分野で知られている任意の方法(例えば電気穿孔)を利用して細胞、オルガネラ、または胚の中に導入する。
【0267】
ガイドRNAは、標的配列に、またはこの標的配列を含む細胞、オルガネラ、または胚に送達されるか接触すると、融合タンパク質を配列特異的に前記標的配列に結合させる。標的配列はその後、融合タンパク質のデアミナーゼによって改変することができる。いくつかの実施形態では、この融合タンパク質が標的配列に結合すると、その標的配列に隣接したヌクレオチドが改変される。デアミナーゼによって改変される標的配列に隣接する核酸塩基として、標的配列の5´末端または3´末端からの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100塩基対が可能である。本発明のデアミナーゼとRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを含む融合タンパク質は、標的となるDNA分子内の特定の位置にC>N変異を導入することができる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、標的となるDNA分子内の特定の位置にC>T変異を導入する。ある実施形態では、融合タンパク質は、標的となるDNA分子内の特定の位置にC>G変異を導入する。
【0268】
標的配列への融合タンパク質の結合を測定する方法は本分野で知られており、その方法に含まれるのは、クロマチン免疫沈降アッセイ、ゲル移動度シフトアッセイ、DNAプル-ダウンアッセイ、レポータアッセイ、マイクロプレート捕獲・検出アッセイである。同様に、標的配列の切断または改変を測定する方法は本分野で知られており、その方法に含まれるのはインビトロまたは生体内での切断アッセイである。この切断アッセイでは、分解産物の検出を容易にするため標的配列に適切な標識(例えば放射性同位体、蛍光物質)を付着させて、または付着させずに、PCR、シークエンシング、またはゲル電気泳動を利用して切断を確認する。いくつかの実施形態では、切れ目トリガー式指数的増幅反応(NTEXPAR)アッセイを利用する(例えばZhang et al. (2016) Chem. Sci. 7:4951-4957参照)。生体内切断は、Surveyorアッセイ(Guschin et al. (2010) Methods Mol Biol 649:247-256)を利用して評価することができる。
【0269】
いくつかの実施形態では、前記方法は、2つ以上のガイドRNAとの複合体にされた融合タンパク質の一部としてのRNA結合DNA誘導型ポリペプチドの使用を含む。その2つ以上のガイドRNAは、単一の遺伝子の異なる領域を標的にすること、または多数の遺伝子を標的にすることができる。この多重ターゲティングにより、融合タンパク質のデアミナーゼが核酸を改変し、そのことによって複数の変異を興味ある標的核酸分子(例えばゲノム)に導入することが可能になる。
【0270】
前記方法が、ニッカーゼRGNなどのRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)の使用を含む(すなわち二本鎖ポリヌクレオチド(例えばnAPG07433.1(配列番号75または配列番号88~98))の単一の鎖だけを切断できる実施形態では、前記方法は、同じ標的配列または重複する標的配列を標的としていてポリヌクレオチドの異なる鎖を切断する2つの異なるRGNまたはRGNバリアントを導入することを含むことができる。例えば二本鎖ポリヌクレオチドのプラス(+)鎖だけを切断するRGNニッカーゼを、二本鎖ポリヌクレオチドのマイナス(-)鎖だけを切断する第2のRGNニッカーゼとともに導入することができる。いくつかの実施形態では、2つの異なる融合タンパク質が提供される。そのときそれぞれの融合タンパク質は、異なるPAM認識配列を持つ異なるRGNを含むため、ヌクレオチド配列のより大きな多様性を変異の標的にすることができる。
【0271】
当業者は、本開示の方法のいずれかを利用して単一の標的配列または複数の標的配列を標的にできることがわかるであろう。したがって方法は、単一のRNA誘導型DNA結合ポリペプチドを、単一遺伝子および/または複数遺伝子の中の複数の異なる配列を標的にすることができる複数の異なるガイドRNAと組み合わせて含む融合タンパク質の使用を含む。その後、融合タンパク質のデアミナーゼが、標的となる配列のそれぞれに変異を導入することになろう。本明細書には、複数の異なるガイドRNAが複数の異なるRNA誘導型DNA結合ポリペプチドと組み合わせて導入される方法も包含される。そのようなRNA誘導型DNA結合ポリペプチドとして、複数のRGNまたはRGNバリアントが可能である。これらガイドRNAとガイドRNA/融合タンパク質系は、単一の遺伝子および/または複数の遺伝子の中の複数の異なる配列を標的にすることができる。
【0272】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型DNA結合ポリペプチドと本発明のデアミナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質を用い、興味ある遺伝子の中にあって標的となる遺伝子または標的となる領域に変異を生じさせることができる。いくつかの実施形態では、本発明の融合タンパク質を、標的遺伝子、または興味ある標的遺伝子の領域の飽和突然変異誘発に使用した後、ハイ-スループット順方向遺伝子スクリーニングで新規な変異および/または表現型を同定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている融合タンパク質を用いて標的となるゲノム位置に変異を生じさせることができる。そのゲノム位置にはコードDNA配列が含まれている可能性、または含まれていない可能性がある。上述の標的突然変異誘発によって生成した細胞系のライブラリは遺伝子機能または遺伝子発現の研究にも有用である可能性がある。
【0273】
X.標的ポリヌクレオチド
【0274】
1つの側面では、本発明により、生体内、生体外、またはインビトロで真核細胞の中の標的ポリヌクレオチドを改変する方法が提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、ヒト、または非ヒト動物、または植物(微細藻類を含む)からの1個の細胞、または細胞の集団をサンプリングし、その1個または複数個の細胞を改変することを含む。培養は、任意の段階で生体外にて実施することができる。その1個または複数個の細胞は、非ヒト動物または植物(微細藻類を含む)に再導入することさえできる。
【0275】
植物栽培者は、望ましい品質(例えば収量、品質、一様性、丈夫さ、および病原体に対する抵抗性)を探すため、天然の変動性を利用して非常に有用な遺伝子を組み合わせる。これらの望ましい品質には、成長、日照時間の好み、温度条件、開花または生殖発生の開始日、脂肪酸含量、昆虫抵抗性、疾患抵抗性、線虫抵抗性、真菌抵抗性、除草剤抵抗性、さまざまな環境因子(旱魃、熱、湿度、寒さ、風、および不利な土壌状態(高塩分を含む))に対する寛容性も含まれる。有用なこれら遺伝子の供給源には、在来種または外来種、家宝種、野生植物の親戚、および誘導変異(例えば突然変異誘発剤で植物材料を処理する)が含まれる。植物栽培者は、本発明を利用することで、変異を誘導するための新たなツールを提供される。したがって当業者は、ゲノムを分析して有用な遺伝子を探し、望む特徴または形質を持つ品種の中で本発明を利用して有用な遺伝子の増加を以前の突然変異誘発剤よりも正確に誘導し、したがって植物栽培プログラムの加速と改良を実現することができる。
【0276】
本発明のデアミナーゼまたは融合タンパク質の標的ポリヌクレオチドとして、真核細胞にとって内在性または外来性の任意のポリヌクレオチドが可能である。例えば標的ポリヌクレオチドとして、真核細胞の核の中に存在するポリヌクレオチドが可能である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、遺伝子産物(例えばタンパク質)をコードする配列、または非コード配列(例えば調節ポリヌクレオチドまたはジャンクDNA)である。いくつかの実施形態では、本発明の融合タンパク質のための標的配列はPAM(プロトスペーサ隣接モチーフ);すなわちRNA誘導型DNA結合ポリペプチドによって認識される短い配列と関係する。PAMに必要な正確な配列と長さは使用するRNA誘導型DNA結合ポリペプチドに応じて異なるが、PAMは典型的にはプロトスペーサ(すなわち標的配列)に隣接した2~5塩基対の配列である。
【0277】
本発明の融合タンパク質の標的ポリヌクレオチドは、多数の疾患関連遺伝子とポリヌクレオチドのほか、シグナル伝達生化学経路に関係する遺伝子とポリヌクレオチドを含んでいる可能性がある。標的ポリヌクレオチドの例に、シグナル伝達生化学経路と関係する配列(例えばシグナル伝達生化学経路に関係する遺伝子またはポリヌクレオチド)が含まれる。標的ポリヌクレオチドの例に、疾患関連の遺伝子またはポリヌクレオチドが含まれる。「疾患関連の」遺伝子またはポリヌクレオチドは、疾患でない対照の組織または細胞と比べたとき、疾患に冒された組織に由来する細胞の中では異常なレベル、または異常な形態になった転写産物または翻訳産物を生じさせる任意の遺伝子またはポリヌクレオチドを意味する。それは、異常な高レベルで発現するようになる遺伝子である可能性、異常な低レベルで発現するようになる遺伝子である可能性があり、変化した発現は、疾患の発生および/または進行と相関している。疾患関連の遺伝子は、疾患の起源(例えば原因変異)に直接の責任がある変異または遺伝的バリエーションを有する遺伝子、または疾患の起源に責任がある遺伝子と連鎖平衡にある変異または遺伝的バリエーションを有する遺伝子も意味する。転写または翻訳された産物は、既知であるか未知である可能性があり、さらに、正常なレベルまたは異常なレベルである可能性がある。
【0278】
本開示の方法と組成物を用いて標的にできる疾患関連の遺伝子の非限定的な例が表23に提示されている。いくつかの実施形態では、標的にされる疾患関連の遺伝子は、表23に開示されていてT>C変異またはG>C変異を持つものである。疾患関連の遺伝子とポリヌクレオチドの追加例は、マキューズィック-ネイサンズ遺伝医学研究所、ジョンズ・ポプキンズ大学(バルティモア、メリーランド州)とアメリカ国立生物工学情報センター、国立医学図書館(ベセスダ、メリーランド州)からWorld Wide Webで入手することができる。
【0279】
いくつかの実施形態では、前記方法は、標的DNA配列を含むDNA分子を本発明のDNA結合ポリペプチド-デアミナーゼ融合タンパク質と接触させることを含み、そのときDNA分子は、融合タンパク質と、有効な量かつ核酸塩基の脱アミノ化に適した条件下で接触させる。ある実施形態では、前記方法は、標的DNA配列を含むDNA分子を、(a)本発明のRGN-デアミナーゼ融合タンパク質;および(b)(a)の融合タンパク質をDNA分子の標的ヌクレオチド配列に向かわせるgRNAと接触させることを含み;そのときDNA分子は、融合タンパク質およびgRNAと、有効な量かつ核酸塩基の脱アミノ化に適した条件下で接触させる。いくつかの実施形態では、標的DNA配列は疾患または障害に関係する配列を含み、核酸塩基が脱アミノ化される結果として疾患または障害と関係しない配列になる。いくつかの実施形態では、標的DNA配列は作物のアレルの中にあり、興味ある形質の特定のアレルの結果として農業的価値がより低い植物になる。核酸塩基が脱アミノ化する結果として、その形質を改善するアレルになり、植物の農業的価値が上昇する。
【0280】
いくつかの実施形態では、標的DNA配列は疾患または障害に関係するT>CまたはG>Cという点変異を含んでおり、変異体のC塩基が脱アミノ化する結果として、疾患または障害に関係しない配列になる。いくつかの実施形態では、脱アミノ化は疾患または障害に関係する配列の中の点変異を修正する。
【0281】
いくつかの実施形態では、疾患または障害と関係する配列はタンパク質をコードしており、脱アミノ化によって疾患または障害に関係する配列に終止コドンが導入され、その結果として、コードされるタンパク質のトランケーションが起こる。いくつかの実施形態では、接触操作は、疾患または障害を持つ可能性が大きい対象、疾患または障害を持つ対象、または疾患または障害を持つと診断された対象の生体内で実施される。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、ゲノムの中の点変異または単一塩基変異と関係する疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は、遺伝性疾患、がん、代謝疾患、またはライソゾーム病である。
【0282】
XI.医薬組成物と治療の方法
【0283】
治療を必要とする対象における疾患を治療する方法が本明細書で提供される。この方法は、それを必要とする対象に、本開示の融合タンパク質、またはそれをコードするポリヌクレオチド、本開示のgRNA、またはそれをコードするポリヌクレオチド、本開示の融合タンパク質系、またはこれら組成物のいずれか1つによって改変される細胞、またはこれら組成物のいずれか1つを含む細胞を有効な量で投与することを含む。
【0284】
いくつかの実施形態では、治療は、治療を必要とする対象に、本開示の融合タンパク質、gRNA、または本開示の融合タンパク質系、またはそれをコードするポリヌクレオチドを投与することによる生体内遺伝子編集を含む。いくつかの実施形態では、治療は生体外遺伝子編集を含み、この場合には細胞は、本開示の融合タンパク質、gRNA、または本開示の融合タンパク質系、またはそれをコードするポリヌクレオチドを用いて生体外で遺伝子改変された後、その改変された細胞が対象に投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変された細胞は対象に由来し、その後改変された細胞がその対象に投与される。移植されたこの細胞を本明細書では自家と呼ぶ。いくつかの実施形態では、遺伝子改変された細胞は、この改変された細胞を投与される対象(すなわちレシピエント)と同じ種の中の異なる対象(すなわちドナー)に由来し、移植された細胞を本明細書では同種異系と呼ぶ。本明細書に記載されているいくつかの実施例では、細胞を培地の中で増殖させた後、それを必要とする対象に投与することができる。
【0285】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物を用いて治療する疾患は、免疫療法(キメラ抗原受容体(CAR)T細胞など)を用いて治療できる疾患である。そのような疾患の非限定的な例に含まれるのはがんである。
【0286】
いくつかの実施形態では、標的核酸塩基が脱アミノ化される結果として、遺伝子異常の修正、または遺伝子産物の機能喪失につながる点変異の修正がなされる。いくつかの実施形態では、遺伝子異常は疾患または障害(例えばライソゾーム病または代謝疾患(例えばI型糖尿病など))に関係する。そこでいくつかの実施形態では、本開示の組成物で治療する疾患は、その疾患または障害を治療するために、またはその疾患または障害に付随する症状を軽減するために変異させる配列(すなわちその疾患または障害の原因、またはその疾患または障害に付随する症状の原因となる配列)と関係している。
【0287】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物で治療される疾患は原因変異と関係している。本明細書では、「原因変異」は、ゲノムの中にあって対象における疾患または障害の重症度または存在に寄与する特定の1つのヌクレオチド、複数のヌクレオチド、またはヌクレオチド配列を意味する。原因変異の修正は、疾患または障害から生じる少なくとも1つの症状の改善につながる。いくつかの実施形態では、原因変異の修正は、疾患または障害から生じる少なくとも1つの症状の改善につながる。いくつかの実施形態では、原因変異は、本明細書に開示されているデアミナーゼに融合されたRGDBP(例えばRGN)によって認識されるPAM部位に隣接している。原因変異は、RGDBP(例えばRGN)と本開示のデアミナーゼを含む融合ポリペプチドを用いて修正することができる。原因変異に関係する疾患の非限定的な例に含まれるのは、嚢胞性線維症、ニーマン-ピック病、スプライス部位破壊によって起こる疾患、および表23に掲載されている疾患である。疾患に関係する遺伝子と変異の追加の非限定的な例は、マキューズィック-ネイサンズ遺伝医学研究所、ジョンズ・ポプキンズ大学(バルティモア、メリーランド州)とアメリカ国立生物工学情報センター、国立医学図書館(ベセスダ、メリーランド州)からWorld Wide Webで入手することができる。
【0288】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法を利用して、脱活性化点変異を、疾患または障害と関係する遺伝子産物をコードする遺伝子またはアレルに導入する。例えばいくつかの実施形態では、(例えば増殖性疾患の治療において)脱活性化点変異をがん遺伝子に導入するのに融合タンパク質を用いる方法が本明細書で提供される。脱活性化変異は、いくつかの実施形態ではコード配列の中に早すぎる終止コドンを生じさせ、その結果として短縮型遺伝子産物(例えば完全長タンパク質の機能が欠けた短縮型タンパク質)が発現する可能性がある。いくつかの実施形態では、本明細書に提示されている方法の目的は、機能不全の遺伝子の機能をゲノム編集によって回復させることである。本明細書で提供される融合タンパク質は、例えばヒト細胞培養物の中で疾患関連変異を修正することにより、インビトロでの遺伝子編集に基づくヒト治療薬であることを検証できる。当業者は、本明細書で提供される融合タンパク質(例えばRNA誘導型DNA結合ポリペプチドとデアミナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質)を用いて任意の単一のT>CまたはG>Cという点変異を修正できることがわかるであろう。CからTまたはGへの変異体の脱アミノ化は変異の修正につながる。
【0289】
本明細書では、「治療」または「治療する」、または「緩和する」または「改善する」は交換可能に使用される。これらの用語は、有益な結果または望む結果(その非限定的な例に治療の利益および/または予防の利益が含まれる)を得るためのアプローチを意味する。治療の利益は、治療中の1つ以上の疾患、状態、または症状の治療上重要なあらゆる改善、または治療中の1つ以上の疾患、状態、または症状に対する治療上重要なあらゆる効果を意味する。予防の利益を得るため、組成物を、特定の疾患、状態、または症状が進展するリスクのある対象に投与すること、または疾患の生理学的症状の1つ以上を、その疾患、状態、または症状がまだ出現していなくとも報告している対象に投与することができる。
【0290】
「有効な量」または「治療に有効な量」という用語は、有益な結果または望む結果を得るのに十分な薬剤の量を意味する。治療に有効な量は、対象と治療する疾患状態、対象の体重と年齢、疾患状態の重症度、投与の様式などのうちの1つ以上に依存して変化する可能性があるが、当業者は容易に決定することができる。具体的な用量は、選択した具体的な薬剤、従う投与計画、他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、および薬剤の担体となる送達系のうちの1つ以上に依存して変化する可能性がある。
【0291】
「投与」という用語は、ある方法または経路によって対象の中に活性成分を配置することを意味し、その結果として望む部位(損傷または修復の部位など)に導入された活性成分の少なくとも部分的な局在化が起こり、望む効果が生じる。細胞が投与される実施形態では、細胞を適切な任意の経路で投与して対象内の望む位置に送達し、移植された細胞の少なくとも一部、またはこの細胞の成分がその場所で生存した状態に留まるようにすることができる。対象に投与された後の細胞の生存期間は、数時間(例えば24時間)という短期間から、数日まで、数年という長期間まで、それどころか患者の一生、すなわち長期定着までが可能である。例えば本明細書に記載されているいくつかの側面では、光受容体細胞または網膜前駆細胞の有効量が全身投与経路(腹腔内または静脈内の経路など)を通じて投与される。
【0292】
いくつかの実施形態では、投与は、ウイルス送達による投与を含む。いくつかの実施形態では、投与は、電気穿孔による投与を含む。いくつかの実施形態では、投与は、ナノ粒子送達による投与を含む。いくつかの実施形態では、投与は、リポソーム送達による投与を含む。有効な任意の投与経路を用いて本明細書に記載されている医薬組成物を有効な量で投与することができる。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経口投与、直腸投与、エアロゾルによる投与、非経口投与、眼投与、肺投与、経皮投与、膣投与、耳投与、鼻投与、および局所投与によって、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される方法によって投与することを含む。いくつかの実施形態では、細胞を送達するため、注射または輸液による投与を利用する。
【0293】
本明細書では、「対象」という用語は、診断、処置、または治療が望まれる任意の個体を意味する。いくつかの実施形態では、対象は動物である。いくつかの実施形態では、対象は哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0294】
治療の有効性は熟練した臨床医師が判断することができる。しかし治療が「有効な治療」と見なされるのは、疾患または障害の徴候または症状の任意の1つまたはすべてが有益なやり方で変化する(例えば少なくとも10%の減少)か、疾患に関して臨床的に受け入れられている他の症状またはマーカーが改善または向上する場合である。有効性は、入院または医学的介入の必要性によって評価される悪化を示さない(例えば疾患の進行が停止するか、少なくとも遅延する)ことによっても測定できる。これらの指標を測定する方法は当業者に知られている。治療に含まれるのは、(1)疾患の抑制(例えば症状の進行の停止または遅延);または(2)疾患の緩和(例えば症状の後退の誘導)と;(3)症状が進行する可能性の阻止または低減である。
【0295】
本開示のRGNポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド、本開示のgRNA、またはそれをコードするポリヌクレオチド、本開示のデアミナーゼ、またはそれをコードするポリヌクレオチド、本開示の融合タンパク質、本開示の系(融合タンパク質を含む系など)を含むか、前記のRGNポリペプチド、またはRGNをコードするポリヌクレオチド、前記のgRNA、またはgRNAをコードするポリヌクレオチド、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または前記系のいずれかを含む細胞を含むとともに、医薬として許容可能な基剤を含む医薬組成物が提供される。
【0296】
本明細書では、「医薬として許容可能な基剤」は、生物を顕著に刺激せず、活性成分(例えばデアミナーゼまたは融合タンパク質、またはそれをコードする核酸分子)の活性と特性を損なわない材料を意味する。基剤は、治療中の対象への投与に適しているようにするため、十分に高純度で十分に毒性が低くなければならない。基剤は不活性であること、または医薬としての利益を持つことが可能である。いくつかの実施形態では、医薬として許容可能な基剤は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適した1つ以上の適合した固体または液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル化物質を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、医薬として許容可能な非天然の基剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬として許容可能な基剤と活性成分は自然界で合わさって見いだされることはないため、異種である。
【0297】
本開示の方法で使用される医薬組成物は、適切な基剤、賦形剤、および他の薬剤で適切な移動、送達、寛容性などを提供するものとともに製剤化することができる。多くの適切な製剤が当業者に知られている。例えばRemington, The Science and Practice of Pharmacy (21st ed. 2005)を参照されたい。非限定的な例に含まれるのは、減菌希釈剤(注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒など);抗菌剤(ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど);抗酸化剤(アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸など);バッファ(酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩など)、および等張性を調節する薬剤(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)である。静脈内投与される具体的な基剤は生理食塩水またはリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)である。経口または非経口で使用するための医薬組成物は、1用量の活性成分に適した単位用量の剤型に調製することができる。単位用量にされたこのような剤型に含まれるのは、例えば錠剤、ピル、カプセル、注射液(アンプル)、座薬などである。これら組成物は、アジュバント(保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤が含まれる)も含むことができる。微生物の作用の阻止は、さまざまな抗菌剤と抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって保障することができる。等張剤(例えば糖、塩化ナトリウムなど)を含めることも望ましい可能性がある。注射可能な医薬形態の遅延吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウムとゼラチン)を使用することによって実現できる。
【0298】
本開示のRGN、gRNA、デアミナーゼ、融合タンパク質、系(融合タンパク質を含む系が含まれる)、またはそれをコードするポリヌクレオチドを用いて改変された細胞を対象に投与するいくつかの実施形態では、細胞は、医薬として許容可能な基剤を含む懸濁液として投与される。当業者は、細胞組成物の中で使用される医薬として許容可能な基剤が、バッファ、化合物、凍結保存剤、保存剤、または他の薬剤を、対象に送達される細胞の生存に実質的に干渉する量で含むことはないことを認識しているであろう。細胞を含む製剤は、例えば細胞膜の完全性の維持を可能にする浸透バッファを含み、場合により、投与後に細胞の生存を維持するか定着を増強するための栄養素を含むことができる。このような製剤と懸濁液は、当業者に知られている、および/または定型的な実験を利用して本明細書に記載の細胞とともに使用するのに適応させることができる。
【0299】
細胞組成物は、乳化すること、またはリポソーム組成物として提供することもできるが、乳化手続きが細胞の生存に悪影響を与えないことが条件である。細胞と他のあらゆる活性成分は、医薬として許容可能で活性成分との適合性がある賦形剤と、本明細書に記載の治療法で用いるのに適した量で混合することができる。
【0300】
細胞組成物の中に含まれる追加の薬剤は、その中の成分の医薬として許容可能な塩を含むことができる。医薬として許容可能な塩には(ポリペプチドの遊離アミノ基とで形成される)酸添加塩が含まれ、無機酸(例えば塩酸またはリン酸など)または有機酸(酢酸、酒石酸、マンデル酸など)とで形成される。遊離カルボキシル基とで形成される塩は、無機塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄など)と有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)に由来することも可能である。
【0301】
塩基編集を利用して原因変異を改変する
【0302】
本発明のRGN-デアミナーゼ融合タンパク質に基づくアプローチを利用して修正できる可能性がある遺伝性疾患の一例はニーマン-ピック病C型である。ニーマン-ピック病(NPC)は、NPC1遺伝子またはNPC2遺伝子(NPC1遺伝子の配列は配列番号121として示されている)の中の変異によって起こる常染色体劣性ライソゾーム病であり、その結果としてコレステロールと糖スフィンゴ脂質(GSL)が異常に蓄積する。NPCを持つ患者は典型的には4~7歳の間に発症する。主要な症状に含まれるのは、肝臓と肺の疾患、筋緊張低下、嚥下障害、精神運動発達遅滞、小脳性運動失調症、進行性認知障害、認知症、および他の神経機能障害である。若年性神経疾患発症に関係する1つの共通するバリアントはエキソン21の中のNM_000271.5(NPC1):c.3182T>C (p.Ile1061Thr)であり、シトシン塩基編集を利用して修正することができる。本発明は、本発明の融合タンパクをさまざまな疾患の原因変異へと導く潜在的な標的配列も開示しており、その中には、ニーマン-ピック病C型を引き起こすことが知られているエキソン21の中のNM_000271.5(NPC1):c.3182T>C (p.I1061T)変異が含まれる。
【0303】
XII.ポリヌクレオチド遺伝子改変を含む細胞
【0304】
本明細書で提供されるのは、本明細書に記載されているように、場合によりgRNAを有する融合タンパク質によって媒介される方法を利用して改変された興味ある標的核酸分子を含む細胞および/または生物である。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むデアミナーゼポリペプチド、またはその活性なバリアントまたは断片を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2、4、および6~12のいずれかと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%一致するアミノ酸配列を含むシトシンデアミナーゼを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質はデアミナーゼとDNA結合ポリペプチド(例えばRNA誘導型DNA結合ポリペプチド)を含む。さらなる実施形態では、融合タンパク質は、デアミナーゼと、RGNまたはそのバリアント(例えばAPG07433.1(配列番号74)またはそのニッカーゼバリアントnAPG07433.1(配列番号75)など)を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、デアミナーゼと、Cas9またはそのバリアント(例えばdCas9またはニッカーゼCas9など)を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、II型CRISPR-Casポリペプチドのヌクレアーゼ不活性なバリアントまたはニッカーゼバリアントを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、V型CRISPR-Casポリペプチドのヌクレアーゼ不活性なバリアントまたはニッカーゼバリアントを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、VI型CRISPR-Casポリペプチドのヌクレアーゼ不活性なバリアントまたはニッカーゼバリアントを含む。
【0305】
改変された細胞として、真核細胞(例えば哺乳類、植物、昆虫、鳥類の細胞)または原核細胞が可能である。本明細書に記載されている融合タンパク質を用いる方法によって改変された少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むオルガネラと胚も提供される。遺伝子改変された細胞、生物、オルガネラ、および胚は、改変されたヌクレオチド配列にとってヘテロ接合性またはホモ接合性であることが可能である。融合タンパク質のデアミナーゼによって変異が導入された結果として、タンパク質産物または組み込まれた配列の発現変化(上方調節または下方調節)、不活性化、または発現が起こる可能性がある。変異の結果として遺伝子が不活性化するか、機能しないタンパク質産物が発現する場合には、遺伝子改変された細胞、生物、オルガネラ、または胚は「ノックアウト」と呼ばれる。ノックアウト表現型は、欠失変異(すなわち少なくとも1つのヌクレオチドの欠失)、挿入変異(すなわち少なくとも1つのヌクレオチドの挿入)、またはナンセンス変異の(すなわち少なくとも1つのヌクレオチドが置換されて終止コドンが導入された)結果である可能性がある。
【0306】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のデアミナーゼによって導入された変異の結果としてバリアントタンパク質産物が産生する。発現したバリアントタンパク質産物は、少なくとも1つのアミノ酸の置換、および/または少なくとも1つのアミノ酸の付加または欠失を持つ可能性がある。バリアントタンパク質産物は、野生型タンパク質と比べたときに変化した特徴または活性を示す可能性がある(その非限定的な例に、変化した酵素活性または基質特異性が含まれる)。
【0307】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のデアミナーゼによって変異が導入された結果としてタンパク質の発現パターンが変化する。非限定的な一例として、タンパク質産物の発現を制御する調節領域の中に変異がある結果として、タンパク質産物が過剰発現するか下方調節される可能性、または組織発現パターンまたは時間的発現パターンが変化する可能性がある。
【0308】
形質転換された細胞は従来のやり方に従ってトランスジェニック生物(植物など)の中に入れて増殖させることができる。例えばMcCormick et al. (1986) Plant Cell Reports 5:81-84を参照されたい。次いでこれらの植物を成長させ、同じ形質転換された株、または異なる株を用いて受粉させると、遺伝子改変を持つハイブリッドが得られる。本発明により、遺伝子改変された種子が提供される。再生された植物の子孫、バリアント、および変異体も本発明の範囲に含まれるが、これらの部分が遺伝子改変を含んでいることが条件である。さらに提供されるのは、本明細書に開示されている配列を保持している加工された植物製品または副生成物(大豆粕が含まれる)である。
【0309】
本明細書に提示されている方法を用いて任意の植物種(その非限定的な例に単子葉植物と双子葉植物が含まれる)を改変することができる。興味ある植物の非限定的な例に含まれるのは、コーン(トウモロコシ)、モロコシ、コムギ、ヒマワリ、トマト、アブラナ科植物、コショウ、ジャガイモ、木綿、イネ、ダイズ、テンサイ、サトウキビ、タバコ、オオムギ、およびナタネ、アブラナ属の種、アルファルファ、ライムギ、雑穀、ベニバナ、ピーナツ、サツマイモ、キャッサバ、コーヒー、ココナツ、パイナップル、柑橘類、ココア、茶、バナナ、アボカド、イチジク、グアバ、マンゴ、オリーブ、パパイヤ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、アーモンド、エンバク、野菜、装飾植物、および針葉樹である。
【0310】
野菜の非限定的な例に含まれるのは、トマト、レタス、グリーンピース、ライマメ、エンドウマメ、およびキュウリ属のメンバー(キュウリ、カンタループ、およびマスクメロンなど)である。装飾植物の非限定的な例に含まれるのは、アザレア、アジサイ、ハイビスカス、バラ、チューリップ、ラッパズイセン、ペチュニア、カーネーション、ポインセチア、およびキクである。本発明の植物は、作物(例えばトウモロコシ、モロコシ、コムギ、ヒマワリ、トマト、アブラナ科植物、コショウ、ジャガイモ、木綿、イネ、ダイズ、テンサイ、サトウキビ、タバコ、オオムギ、ナタネなど)であることが好ましい。
【0311】
本明細書に提示されている方法を用いて任意の原核生物種を遺伝子改変することもできる。原核生物種の非限定的な例に含まれるのは、古細菌と細菌(例えばバシラス属の種、クレブシエラ属の種、ストレプトマイセス属の種、リゾビウム属の種、大腸菌属の種、シュードモナス属の種、サルモネラ属の種、赤痢菌属の種、ビブリオ属の種、エルシニア属の種、マイコプラズマ属の種、アグロバクテリウム、およびラクトバシラス属の種)である。
【0312】
本明細書に提示されている方法を用いて任意の真核生物種、またはそれに由来する細胞を遺伝子改変することができる。真核生物種の非限定的な例に含まれるのは、動物(例えば哺乳類、昆虫、魚類、鳥類、および爬虫類)、菌類、アメーバ、藻類、および酵母である。いくつかの実施形態では、本開示の方法によって改変される細胞には、免疫細胞(すなわち自然免疫系または適応免疫系の細胞)などの造血系起源の細胞が含まれ、その非限定的な例に含まれるのは、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞である。
【0313】
改変された細胞は生物の中に導入することができる。これらの細胞は生体外アプローチで改変されており、自家細胞移植の場合には同じ生物(例えばヒト)に由来した可能がある。いくつかの実施形態では、細胞は、同種異系細胞移植の場合には、同じ種の別の生物(例えば別のヒト)に由来した。
【0314】
XIII.キット
【0315】
本開示のいくつかの側面により、本発明のデアミナーゼを含むキットが提供される。ある実施形態では、本開示により、本発明のデアミナーゼとDNA結合ポリペプチド(例えばRNA誘導型DNA結合ポリペプチド(RGNポリペプチド、例えばヌクレアーゼ不活性なRGNまたはニッカーゼRGNなど))、および場合により、DNA結合ポリペプチドとデアミナーゼの間に位置するリンカーを含む融合タンパク質を含むキットが提供される。それに加えていくつかの実施形態では、キットは、適切な試薬、バッファ、および/または融合タンパク質を例えばインビトロまたは生体内でのDNAまたはRNAの編集に使用するための指示を含む。いくつかの実施形態では、キットは、標的を絞った核酸配列編集に適したgRNAの設計と使用に関する指示を含む。
【0316】
冠詞「1つの(a)」と「1つの(an)」は、本明細書では、文法的対象となる1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)の物体を意味するのに用いられる。例として「1つのポリペプチド」は、1つ以上のポリペプチドを意味する。
【0317】
本明細書で言及されているあらゆる刊行物と特許出願は、本開示が関係する分野の当業者のレベルを示している。すべての刊行物と特許出願が、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照によって組み込まれていることが示されているかのようにして、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0318】
明確な理解を目的として説明と例によって上記の本発明をいくらか詳細に記載してきたが、添付の請求項の範囲内でいくつかの変更と改変を実施できることは明らかであろう。
【0319】
非限定的な実施形態に含まれるのは、以下のものである。
【0320】
1.a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
デアミナーゼ活性を持つポリペプチド。
【0321】
2.a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
デアミナーゼ活性を持つ単離されたポリペプチド。
【0322】
3.配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を含む、実施形態1または2に記載のポリペプチド。
【0323】
4.配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を含む、実施形態1または2に記載のポリペプチド。
【0324】
5.デアミナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、前記デアミナーゼが、
a)配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも80%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
b)配列番号109、111、および113のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
c)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および
d)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる核酸分子。
【0325】
6.デアミナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、前記デアミナーゼが、
a)配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも80%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
b)配列番号109、111、および113のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
c)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および
d)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる単離された核酸分子。
【0326】
7.前記デアミナーゼが、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態5または6に記載の核酸分子。
【0327】
8.前記デアミナーゼが、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態5または6に記載の核酸分子。
【0328】
9.前記デアミナーゼが、配列番号109、111、および113~119のいずれか1つと100%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態5または6に記載の核酸分子。
【0329】
10.前記デアミナーゼポリペプチドが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態5または6に記載の核酸分子。
【0330】
11.前記デアミナーゼポリペプチドが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致するアミノ酸配列を持つ、実施形態5または6に記載の核酸分子。
【0331】
12.前記ポリペプチドに機能可能に連結された異種プロモータをさらに含む、実施形態5~11のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0332】
13.実施形態5~12のいずれか1つに記載の核酸分子を含むベクター。
【0333】
14.実施形態5~12のいずれか1つに記載の核酸分子または実施形態13に記載のベクターを含む細胞。
【0334】
15.原核細胞である、実施形態14に記載の細胞。
【0335】
16.真核細胞である、実施形態14に記載の細胞。
【0336】
17.前記真核細胞が哺乳類細胞である、実施形態16に記載の細胞。
【0337】
18.前記哺乳類細胞がヒト細胞である、実施形態17に記載の細胞。
【0338】
19.前記ヒト細胞が免疫細胞である、実施形態18に記載の細胞。
【0339】
20.前記免疫細胞が幹細胞である、実施形態19に記載の細胞。
【0340】
21.前記幹細胞が人工多能性幹細胞である、実施形態20に記載の細胞。
【0341】
22.前記真核細胞が昆虫細胞または鳥類細胞である、実施形態16に記載の細胞。
【0342】
23.前記真核細胞が菌類細胞である、実施形態16に記載の細胞。
【0343】
24.前記真核細胞が植物細胞である、実施形態16に記載の細胞。
【0344】
25.実施形態24に記載の細胞を含む植物。
【0345】
26.実施形態24に記載の細胞を含む種子。
【0346】
27.医薬として許容可能な基剤を含むとともに、実施形態1~4のいずれか1つに記載のポリペプチド、実施形態5~12のいずれか1つに記載の核酸分子、実施形態13に記載のベクター、または実施形態14~24のいずれか1つに記載の細胞を含む医薬組成物。
【0347】
28.医薬として許容可能な前記基剤が、前記ポリペプチドまたは前記核酸分子にとって異種である、実施形態27に記載の医薬組成物。
【0348】
29.医薬として許容可能な前記基剤が天然でない、実施形態27または28に記載の医薬組成物。
【0349】
30.デアミナーゼを作製する方法であって、前記デアミナーゼが発現する条件下で実施形態14~24のいずれか1つに記載の細胞を培養することを含む方法。
【0350】
31.デアミナーゼを作製する方法であって、実施形態5~12のいずれか1つに記載の核酸分子、または実施形態13に記載のベクターを細胞の中に導入し、前記デアミナーゼが発現する条件下で前記細胞を培養することを含む方法。
【0351】
32.前記デアミナーゼを精製することをさらに含む、実施形態30または31に記載の方法。
【0352】
33.DNA結合ポリペプチドを含むとともに、
a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つデアミナーゼ
を含む融合タンパク質。
【0353】
34.前記デアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ、実施形態33に記載の融合タンパク質。
【0354】
35.前記デアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、実施形態33に記載の融合タンパク質。
【0355】
36.前記デアミナーゼがシトシンデアミナーゼである、実施形態33~35のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0356】
37.前記DNA結合ポリペプチドが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性が低下しているか阻害されている、実施形態33~36のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0357】
38.前記DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである、実施形態33~36のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0358】
39.前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドが、RNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである、実施形態38に記載の融合タンパク質。
【0359】
40.前記RGNがII型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態39に記載の融合タンパク質。
【0360】
41.前記RGNがV型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態39に記載の融合タンパク質。
【0361】
42.前記RGNがRGNニッカーゼである、実施形態39~41のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0362】
43.前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、実施形態42に記載の融合タンパク質。
【0363】
44.前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、実施形態39~41のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0364】
45.前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態39に記載の融合タンパク質。
【0365】
46.前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態39に記載の融合タンパク質。
【0366】
47.前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態39に記載の融合タンパク質。
【0367】
48.前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態39に記載の融合タンパク質。
【0368】
49.前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態39に記載の融合タンパク質。
【0369】
50.前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態39に記載の融合タンパク質。
【0370】
51.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態42に記載の融合タンパク質。
【0371】
52.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態42に記載の融合タンパク質。
【0372】
53.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つを持つアミノ酸配列を持つ、実施形態42に記載の融合タンパク質。
【0373】
54.少なくとも1つの核局在化シグナル(NLS)をさらに含む、実施形態33~53のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0374】
55.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている、実施形態33~54のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0375】
56.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている、実施形態33~54のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0376】
57.前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態33~56のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0377】
58.前記リンカー配列が、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態57に記載の融合タンパク質。
【0378】
59.ウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、実施形態33~58のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0379】
60.前記USPが、配列番号81として示されている配列を持つ、実施形態59に記載の融合タンパク質。
【0380】
61.前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態59または60に記載の融合タンパク質。
【0381】
62.前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列が、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態61に記載の融合タンパク質。
【0382】
63.配列番号67、68、146、および147のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態33に記載の融合タンパク質。
【0383】
64.DNA結合ポリペプチドとデアミナーゼを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記デアミナーゼが、
a)配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも80%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
b)配列番号109、111、および113のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列;
c)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および
d)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、核酸分子。
【0384】
65.前記デアミナーゼが、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態64に記載の核酸分子。
【0385】
66.前記デアミナーゼが、配列番号114~119のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態64に記載の核酸分子。
【0386】
67.前記デアミナーゼのヌクレオチド配列が、配列番号109、111、および113~119のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、実施形態64に記載の核酸分子。
【0387】
68.前記デアミナーゼのヌクレオチド配列が、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードする、実施形態64に記載の核酸分子。
【0388】
69.前記デアミナーゼのヌクレオチド配列が、配列番号2、4、6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列をコードする、実施形態64に記載の核酸分子。
【0389】
70.前記デアミナーゼがシトシンデアミナーゼである、実施形態64~69のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0390】
71.前記DNA結合ポリペプチドが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性が低下しているか阻害されている、実施形態64~70のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0391】
72.前記DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである、実施形態64~70のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0392】
73.前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである、実施形態72に記載の核酸分子。
【0393】
74.前記RGNがII型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態73に記載の核酸分子。
【0394】
75.前記RGNがV型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態73に記載の核酸分子。
【0395】
76.前記RGNがRGNニッカーゼである、実施形態73~75のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0396】
77.前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、実施形態76に記載の核酸分子。
【0397】
78.前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、実施形態73~75のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0398】
79.前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態73に記載の核酸分子。
【0399】
80.前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態73に記載の核酸分子。
【0400】
81.前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態73に記載の核酸分子。
【0401】
82.前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態73に記載の核酸分子。
【0402】
83.前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態73に記載の核酸分子。
【0403】
84.前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態73に記載の核酸分子。
【0404】
85.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態76に記載の核酸分子。
【0405】
86.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態76に記載の核酸分子。
【0406】
87.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つを持つアミノ酸配列を持つ、実施形態76に記載の核酸分子。
【0407】
88.前記融合タンパク質をコードする前記ポリペプチドがその5´末端でプロモータに機能可能に連結されている、実施形態64~87のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0408】
89.前記融合タンパク質をコードする前記ポリペプチドがその3´末端でターミネータに機能可能に連結されている、実施形態64~88のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0409】
90.前記融合タンパク質が1つ以上の核局在化シグナルを含む、実施形態64~89のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0410】
91.前記融合タンパク質が、真核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている、実施形態64~90のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0411】
92.前記融合タンパク質が、原核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている、実施形態64~90のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0412】
93.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている、実施形態64~92のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0413】
94.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている、実施形態64~92のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0414】
95.前記融合タンパク質が、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態64~94のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0415】
96.前記リンカー配列が、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態95に記載の核酸分子。
【0416】
97.前記融合タンパク質がウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、実施形態64~96のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0417】
98.前記USPが、配列番号81として示されている配列を持つ、実施形態97に記載の核酸分子。
【0418】
99.前記融合タンパク質が、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態97または98に記載の核酸分子。
【0419】
100.前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列が、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態99に記載の核酸分子。
【0420】
101.前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態64に記載の核酸分子。
【0421】
102.実施形態64~101のいずれか1つに記載の核酸分子を含むベクター。
【0422】
103.標的配列にハイブリダイズすることのできるガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をさらに含む、実施形態102に記載のベクター。
【0423】
104.前記gRNAが単一ガイドRNAである、実施形態103に記載のベクター。
【0424】
105.前記gRNAが二重ガイドRNAである、実施形態102に記載のベクター。
【0425】
106.実施形態33~63のいずれか1つに記載の融合タンパク質を含む細胞。
【0426】
107.ガイドRNA(gRNA)をさらに含む、実施形態106に記載の細胞。
【0427】
108.前記gRNAが単一ガイドRNAである、実施形態107に記載の細胞。
【0428】
109.前記gRNAが二重ガイドRNAである、実施形態107に記載の細胞。
【0429】
110.実施形態64~101のいずれか1つに記載の核酸分子を含む細胞。
【0430】
111.実施形態102~105のいずれか1つに記載のベクターを含む細胞。
【0431】
112.原核細胞である、実施形態106~111のいずれか1つに記載の細胞。
【0432】
113.真核細胞である、実施形態106~111のいずれか1つに記載の細胞。
【0433】
114.前記真核細胞が哺乳類細胞である、実施形態113に記載の細胞。
【0434】
115.前記哺乳類細胞がヒト細胞である、実施形態114に記載の細胞。
【0435】
116.前記ヒト細胞が免疫細胞である、実施形態115に記載の細胞。
【0436】
117.前記免疫細胞が幹細胞である、実施形態116に記載の細胞。
【0437】
118.前記幹細胞が人工多能性幹細胞である、実施形態117に記載の細胞。
【0438】
119.前記真核細胞が昆虫細胞または鳥類細胞である、実施形態113に記載の細胞。
【0439】
120.前記真核細胞が菌類細胞である、実施形態113に記載の細胞。
【0440】
121.前記真核細胞が植物細胞である、実施形態113に記載の細胞。
【0441】
122.実施形態121に記載の細胞を含む植物。
【0442】
123.実施形態121に記載の細胞を含む種子。
【0443】
124.医薬として許容可能な基剤を含むとともに、実施形態33~63のいずれか1つに記載の融合タンパク質、実施形態64~101のいずれか1つに記載の核酸分子、実施形態102~105のいずれか1つに記載のベクター、または実施形態114~118のいずれか1つに記載の細胞を含む医薬組成物。
【0444】
125.融合タンパク質を作製する方法であって、実施形態106~121のいずれか1つに記載の細胞を、前記融合タンパク質が発現する条件下で培養することを含む方法。
【0445】
126.融合タンパク質を作製する方法であって、実施形態64~101のいずれか1つに記載の核酸分子、または実施形態102~105のいずれか1つに記載のベクターを細胞の中に導入し、前記融合タンパク質が発現する条件下で前記細胞を培養することを含む方法。
【0446】
127.前記融合タンパク質を精製することをさらに含む、実施形態125または126に記載の方法。
【0447】
128.RGN融合リボ核タンパク質複合体を作製する方法であって、細胞の中に、実施形態72~87のいずれか1つに記載の核酸分子を導入するとともに、ガイドRNA(gRNA)をコードする発現カセットを含む核酸分子、または実施形態103~105のいずれか1つに記載のベクターを導入し、前記融合タンパク質と前記gRNAが発現してRGN融合リボ核タンパク質複合体を形成する条件下で前記細胞を培養することを含む方法。
【0448】
129.前記RGN融合リボ核タンパク質複合体を精製することをさらに含む、実施形態128に記載の方法。
【0449】
130.標的DNA配列を含む標的DNA分子を改変する系であって、
a)融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(ただし前記融合タンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼポリペプチド(RGN)とデアミナーゼを含み、前記デアミナーゼは、
i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)と;
b)前記標的DNA配列にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNA、または前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のヌクレオチド配列
を含み、
前記1つ以上のガイドRNAが前記融合タンパク質と複合体を形成し、前記融合タンパク質が前記標的DNA配列に結合して前記標的DNA分子を改変することを可能にする系。
【0450】
131.前記デアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態130に記載の系。
【0451】
132.前記デアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態130に記載の系。
【0452】
133.前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記ヌクレオチド配列と前記融合タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つがプロモータに機能可能に連結されている、実施形態130~132のいずれか1つに記載の系。
【0453】
134.前記標的DNA配列が真核細胞の標的DNA配列である、実施形態130~133のいずれか1つに記載の系。
【0454】
135.前記標的DNA配列が、前記RGNによって認識されるプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する、実施形態130~134のいずれか1つに記載の系。
【0455】
136.前記標的DNA分子が細胞内にある、実施形態130~135のいずれか1つに記載の系。
【0456】
137.前記細胞が真核細胞である、実施形態136に記載の系。
【0457】
138.前記真核細胞が植物細胞である、実施形態137に記載の系。
【0458】
139.前記真核細胞が哺乳類細胞である、実施形態137に記載の系。
【0459】
140.前記哺乳類細胞がヒト細胞である、実施形態139に記載の系。
【0460】
141.前記ヒト細胞が免疫細胞である、実施形態140に記載の系。
【0461】
142.前記免疫細胞が幹細胞である、実施形態141に記載の系。
【0462】
143.前記幹細胞が人工多能性幹細胞である、実施形態142に記載の系。
【0463】
144.前記真核細胞が昆虫細胞である、実施形態137に記載の系。
【0464】
145.前記細胞が原核細胞である、実施形態136に記載の系。
【0465】
146.前記融合タンパク質の前記RGNがII型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0466】
147.前記融合タンパク質の前記RGNがV型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0467】
148.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0468】
149.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0469】
150.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0470】
151.前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0471】
152.前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0472】
153.前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0473】
154.前記融合タンパク質の前記RGNがRGNニッカーゼである、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0474】
155.前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、実施形態154に記載の系。
【0475】
156.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態154または155に記載の系。
【0476】
157.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態154または155に記載の系。
【0477】
158.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つである、実施形態154または155に記載の系。
【0478】
159.前記融合タンパク質の前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、実施形態130~145のいずれか1つに記載の系。
【0479】
160.前記融合タンパク質が1つ以上の核局在化シグナルを含む、実施形態130~159のいずれか1つに記載の系。
【0480】
161.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている、実施形態130~160のいずれか1つに記載の系。
【0481】
162.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている、実施形態130~160のいずれか1つに記載の系。
【0482】
163.前記融合タンパク質が、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態130~162のいずれか1つに記載の系。
【0483】
164.前記リンカー配列が、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態163に記載の系。
【0484】
165.前記融合タンパク質がウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、実施形態130~164のいずれか1つに記載の系。
【0485】
166.前記USPが配列番号81として示されている配列を持つ、実施形態165に記載の系。
【0486】
167.前記融合タンパク質が、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態165または166に記載の系。
【0487】
168.前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列が、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態167に記載の系。
【0488】
169.前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態130に記載の系。
【0489】
170.前記融合タンパク質が、真核細胞の中で発現させるためにコドンが最適化されている、実施形態130~169のいずれか1つに記載の系。
【0490】
171.前記1つ以上のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列と融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が1つのベクター上に位置する、実施形態130~170のいずれか1つに記載の系。
【0491】
172.実施形態130~171のいずれか1つに記載の系の前記少なくとも1つのガイドRNAと前記融合タンパク質を含むリボ核タンパク質複合体。
【0492】
173.実施形態130~171のいずれか1つに記載の系または実施形態172に記載のリボ核タンパク質複合体を含む細胞。
【0493】
174.原核細胞である、実施形態173に記載の細胞。
【0494】
175.真核細胞である、実施形態173に記載の細胞。
【0495】
176.前記真核細胞が哺乳類細胞である、実施形態175に記載の細胞。
【0496】
177.前記哺乳類細胞がヒト細胞である、実施形態176に記載の細胞。
【0497】
178.前記ヒト細胞が免疫細胞である、実施形態177に記載の細胞。
【0498】
179.前記免疫細胞が幹細胞である、実施形態178に記載の細胞。
【0499】
180.前記幹細胞が人工多能性幹細胞である、実施形態179に記載の細胞。
【0500】
181.前記真核細胞が昆虫細胞または鳥類細胞である、実施形態175に記載の細胞。
【0501】
182.前記真核細胞が菌類細胞である、実施形態175に記載の細胞。
【0502】
183.前記真核細胞が植物細胞である、実施形態175に記載の細胞。
【0503】
184.実施形態183に記載の細胞を含む植物。
【0504】
185.実施形態183に記載の細胞を含む種子。
【0505】
186.医薬として許容可能な基剤を含むとともに、実施形態130~171のいずれか1つに記載の系、実施形態172に記載のリボ核タンパク質複合体、または実施形態175~180のいずれか1つに記載の細胞を含む医薬組成物。
【0506】
187.標的DNA配列を含む標的DNA分子を改変する方法であって、実施形態130~171のいずれか1つに記載の系、または実施形態172に記載のリボ核タンパク質複合体を、前記標的DNA分子、または前記標的DNA分子を含む細胞に送達することを含む方法。
【0507】
188.前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>N変異を含む(ただしNは、A、G、またはTである)、実施形態187に記載の方法。
【0508】
189.前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を含む、実施形態188に記載の方法。
【0509】
190.前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を含む、実施形態188に記載の方法。
【0510】
191.標的配列を含む標的DNA分子を改変する方法であって、
a)RGN-デアミナーゼ複合体の組み立てを、前記RGN-デアミナーゼ複合体が形成されるのに適した条件下で、
i)前記標的DNA分子にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNAと;
ii)RNA誘導型ヌクレアーゼポリペプチド(RGN)と少なくとも1つのデアミナーゼを含む融合タンパク質(ただし前記デアミナーゼは、
I)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
II)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)をインビトロで組み合わせることによって実施した後;
b)前記標的DNA分子、または前記標的DNA分子を含む細胞を、前記インビトロで組み立てられたRGN-デアミナーゼ複合体と接触させることを含み、
前記1つ以上のガイドRNAが前記標的DNA分子にハイブリダイズすることにより、前記融合タンパク質を前記標的DNA分子に結合させ、前記標的DNA分子の改変を起こさせる方法。
【0511】
192.前記デアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態191に記載の方法。
【0512】
193.前記デアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態191に記載の方法。
【0513】
194.前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>N変異を含む(ただしNは、A、G、またはTである)、実施形態191~193のいずれか1つに記載の方法。
【0514】
195.前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を含む、実施形態194に記載の方法。
【0515】
196.前記改変された標的DNA分子が、前記標的DNA分子内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を含む、実施形態194に記載の方法。
【0516】
197.前記融合タンパク質の前記RGNがII型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態191~196のいずれか1つに記載の方法。
【0517】
198.前記融合タンパク質の前記RGNがV型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態191~196のいずれか1つに記載の方法。
【0518】
199.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態191~198のいずれか1つに記載の方法。
【0519】
200.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態191~198のいずれか1つに記載の方法。
【0520】
201.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態191~198のいずれか1つに記載の方法。
【0521】
202.前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態191~198のいずれか1つに記載の方法。
【0522】
203.前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態191~198のいずれか1つに記載の方法。
【0523】
204.前記融合タンパク質の前記RGNが、配列番号74、82、87、106、および107のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態191~198のいずれか1つに記載の方法。
【0524】
205.前記融合タンパク質の前記RGNがRGNニッカーゼである、実施形態191~198のいずれか1つに記載の方法。
【0525】
206.前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、実施形態205に記載の方法。
【0526】
207.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態205または206に記載の方法。
【0527】
208.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態205または206に記載の方法。
【0528】
209.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つである、実施形態205または206に記載の方法。
【0529】
210.前記融合タンパク質の前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、実施形態191~198のいずれか1つに記載の方法。
【0530】
211.前記融合タンパク質が1つ以上の核局在化シグナルを含む、実施形態191~210のいずれか1つに記載の方法。
【0531】
212.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている、実施形態191~211のいずれか1つに記載の方法。
【0532】
213.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている、実施形態191~211のいずれか1つに記載の方法。
【0533】
214.前記融合タンパク質が、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態191~213のいずれか1つに記載の方法。
【0534】
215.前記リンカー配列が、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態214に記載の方法。
【0535】
216.前記融合タンパク質がウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、実施形態191~215のいずれか1つに記載の方法。
【0536】
217.前記USPが配列番号81として示されている配列を持つ、実施形態216に記載の方法。
【0537】
218.前記融合タンパク質が、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態216または217に記載の方法。
【0538】
219.前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列が、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態218に記載の方法。
【0539】
220.前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態191に記載の方法。
【0540】
221.前記標的DNA配列が真核細胞の標的DNA配列である、実施形態191~220のいずれか1つに記載の方法。
【0541】
222.前記標的DNA配列が、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する、実施形態191~221のいずれか1つに記載の方法。
【0542】
223.前記標的DNA分子が細胞内にある、実施形態191~222のいずれか1つに記載の方法。
【0543】
224.前記細胞が真核細胞である、実施形態223に記載の方法。
【0544】
225.前記真核細胞が植物細胞である、実施形態224に記載の方法。
【0545】
226.前記真核細胞が哺乳類細胞である、実施形態224に記載の方法。
【0546】
227.前記哺乳類細胞がヒト細胞である、実施形態226に記載の方法。
【0547】
228.前記ヒト細胞が免疫細胞である、実施形態227に記載の方法。
【0548】
229.前記免疫細胞が幹細胞である、実施形態228に記載の方法。
【0549】
230.前記幹細胞が人工多能性幹細胞である、実施形態229に記載の方法。
【0550】
231.前記真核細胞が昆虫細胞である、実施形態224に記載の方法。
【0551】
232.前記細胞が原核細胞である、実施形態223に記載の方法。
【0552】
233.前記改変されたDNA分子を含む細胞を選択することをさらに含む、実施形態223~232のいずれか1つに記載の方法。
【0553】
234.実施形態233に記載の方法に従う改変された標的DNAを含む細胞。
【0554】
235.真核細胞である、実施形態234に記載の細胞。
【0555】
236.前記真核細胞が植物細胞である、実施形態235に記載の細胞。
【0556】
237.実施形態236に記載の細胞を含む植物。
【0557】
238.実施形態236に記載の細胞を含む種子。
【0558】
239.前記真核細胞が哺乳類細胞である、実施形態235に記載の細胞。
【0559】
240.前記哺乳類細胞がヒト細胞である、実施形態239に記載の細胞。
【0560】
241.前記ヒト細胞が免疫細胞である、実施形態240に記載の細胞。
【0561】
242.前記免疫細胞が幹細胞である、実施形態241に記載の細胞。
【0562】
243.前記幹細胞が人工多能性幹細胞である、実施形態242に記載の細胞。
【0563】
244.前記真核細胞が昆虫細胞である、実施形態235に記載の細胞。
【0564】
245.原核細胞である、実施形態234に記載の細胞。
【0565】
246.実施形態293~243のいずれか1つに記載の細胞と、医薬として許容可能な基剤を含む医薬組成物。
【0566】
247.遺伝性疾患に関する原因変異の修正がなされた遺伝子改変細胞を作製する方法であって、
a)融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(ただし前記融合タンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)とデアミナーゼを含み、前記デアミナーゼは、
i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)と;
b)標的DNA配列にハイブリダイズすることのできる1つ以上のガイドRNA(gRNA)、または前記gRNAをコードするポリヌクレオチド
を前記細胞に導入することを含み、
そのことによって前記融合タンパク質とgRNAが前記原因変異のゲノム遺伝子座に向かい、前記ゲノム配列を改変して前記原因変異を除去する方法。
【0567】
248.前記融合タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、前記細胞の中で活性なプロモータに機能可能に連結されている、実施形態247に記載の方法。
【0568】
249.前記gRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、前記細胞の中で活性なプロモータに機能可能に連結されている、実施形態247または248に記載の方法。
【0569】
250.前記デアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態247~249のいずれか1つに記載の方法。
【0570】
251.前記デアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態247~249のいずれか1つに記載の方法。
【0571】
252.前記融合タンパク質の前記RGNがII型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態247~251のいずれか1つに記載の方法。
【0572】
253.前記融合タンパク質の前記RGNがV型CRISPR-Casポリペプチドである、実施形態247~251のいずれか1つに記載の方法。
【0573】
254.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態247~253のいずれか1つに記載の方法。
【0574】
255.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態247~253のいずれか1つに記載の方法。
【0575】
256.前記融合タンパク質の前記RGNが、表1の中のRGN配列のいずれか1つのアミノ酸配列を持つ、実施形態247~253のいずれか1つに記載の方法。
【0576】
257.前記融合タンパク質の前記RGNがRGNニッカーゼである、実施形態247~253のいずれか1つに記載の方法。
【0577】
258.前記RGNニッカーゼが不活性なRuvCドメインを持つ、実施形態257に記載の方法。
【0578】
259.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態257または258に記載の方法。
【0579】
260.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列を持つ、実施形態257または258に記載の方法。
【0580】
261.前記RGNニッカーゼが、配列番号75と88~98のいずれか1つである、実施形態257または258に記載の方法。
【0581】
262.前記融合タンパク質の前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、実施形態247~253のいずれか1つに記載の方法。
【0582】
263.前記融合タンパク質が1つ以上の核局在化シグナルを含む、実施形態247~262のいずれか1つに記載の方法。
【0583】
264.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのアミノ末端に融合されている、実施形態247~263のいずれか1つに記載の方法。
【0584】
265.前記デアミナーゼが前記DNA結合ポリペプチドのカルボキシル末端に融合されている、実施形態247~263のいずれか1つに記載の方法。
【0585】
266.前記融合タンパク質が、前記DNA結合ポリペプチドと前記デアミナーゼの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態247~265のいずれか1つに記載の方法。
【0586】
267.前記リンカー配列が、配列番号78または79として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態266に記載の方法。
【0587】
268.前記融合タンパク質がウラシル安定化タンパク質(USP)をさらに含む、実施形態247~267のいずれか1つに記載の方法。
【0588】
269.前記USPが配列番号81として示されている配列を持つ、実施形態268に記載の方法。
【0589】
270.前記融合タンパク質が、前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間にリンカー配列をさらに含む、実施形態268または269に記載の方法。
【0590】
271.前記USPと前記デアミナーゼまたは前記DNA結合ポリペプチドの間の前記リンカー配列が、配列番号120として示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態270に記載の方法。
【0591】
272.前記融合タンパク質が、配列番号67、68、146、および147のいずれか1つとして示されているアミノ酸配列を持つ、実施形態247~249のいずれか1つに記載の方法。
【0592】
273.前記ゲノム改変が、前記標的DNA配列内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>T変異を導入することを含む、実施形態247~272のいずれか1つに記載の方法。
【0593】
274.前記ゲノム改変が、前記標的DNA配列内に少なくとも1つのヌクレオチドのC>G変異を導入することを含む、実施形態247~272のいずれか1つに記載の方法。
【0594】
275.前記細胞が動物細胞である、実施形態247~274のいずれか1つに記載の方法。
【0595】
276.前記動物細胞が哺乳類細胞である、実施形態275に記載の方法。
【0596】
277.前記細胞が、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、またはヒトに由来する、実施形態276に記載の方法。
【0597】
278.前記原因変異の修正がナンセンス変異の修正を含む、実施形態247~277のいずれか1つに記載の方法。
【0598】
279.前記遺伝性疾患が表23に掲載されている疾患である、実施形態247~278のいずれか1つに記載の方法。
【0599】
280.前記gRNAが、配列番号122~144のいずれか1つを標的とするスペーサ配列、またはその相補体をさらに含む、実施形態279に記載の方法。
【0600】
281.a)DNA結合ポリペプチドとシトシンデアミナーゼを含む融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードする核酸分子と;
b)第2のシトシンデアミナーゼ、または前記第2のデアミナーゼをコードする核酸分子(ただし前記第2のデアミナーゼは、
i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)
を含む組成物。
【0601】
282.前記第2のシトシンデアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ、実施形態281に記載の組成物。
【0602】
283.前記第2のシトシンデアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、実施形態281に記載の組成物。
【0603】
284.前記第1のシトシンデアミナーゼが、
a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ、実施形態281~283のいずれか1つに記載の組成物。
【0604】
285.前記第1のシトシンデアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ、実施形態281~284のいずれか1つに記載の組成物。
【0605】
286.前記第1のシトシンデアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、実施形態281~284のいずれか1つに記載の組成物。
【0606】
287.前記DNA結合ポリペプチドが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性が低下しているか阻害されている、実施形態281~286のいずれか1つに記載の組成物。
【0607】
288.前記DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである、実施形態281~286のいずれか1つに記載の組成物。
【0608】
289.前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである、実施形態288に記載の組成物。
【0609】
290.前記RGNがRGNニッカーゼである、実施形態289に記載の組成物。
【0610】
291.前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、実施形態289に記載の組成物。
【0611】
292.融合タンパク質をコードする核酸分子と第2のシトシンデアミナーゼをコードする核酸分子を含むベクター(ただし前記融合タンパク質は、DNA結合ポリペプチドと第1のシトシンデアミナーゼを含み、前記第2のシトシンデアミナーゼは、
a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)。
【0612】
293.前記第2のシトシンデアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ、実施形態292に記載のベクター。
【0613】
294.前記第2のシトシンデアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、実施形態292に記載のベクター。
【0614】
295.前記第1のシトシンデアミナーゼが、
a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ、実施形態292~294のいずれか1つに記載のベクター。
【0615】
296.前記第1のシトシンデアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ、実施形態292~294のいずれか1つに記載のベクター。
【0616】
297.前記第1のシトシンデアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、実施形態292~294のいずれか1つに記載のベクター。
【0617】
298.前記DNA結合ポリペプチドが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性が低下しているか阻害されている、実施形態292~297のいずれか1つに記載のベクター。
【0618】
299.前記DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである、実施形態292~297のいずれか1つに記載のベクター。
【0619】
300.前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである、実施形態299に記載のベクター。
【0620】
301.前記RGNがRGNニッカーゼである、実施形態300に記載のベクター。
【0621】
302.前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、実施形態300に記載のベクター。
【0622】
303.実施形態292~302のいずれか1つに記載のベクターを含む細胞。
【0623】
304.a)DNA結合ポリペプチドと第1のシトシンデアミナーゼを含む融合タンパク質;または前記融合タンパク質をコードする核酸分子と;
b)第2のシトシンデアミナーゼ、または前記第2のデアミナーゼをコードする核酸分子(ただし前記第2のデアミナーゼは、
i)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
ii)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ)
を含む細胞。
【0624】
305.前記第2のシトシンデアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ、実施形態304に記載の細胞。
【0625】
306.前記第2のシトシンデアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、実施形態304に記載の細胞。
【0626】
307.前記第1のシトシンデアミナーゼが、
a)配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも90%一致する配列を持つアミノ酸配列と;
b)配列番号4または6と少なくとも95%一致する配列を持つアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つ、実施形態304~306のいずれか1つに記載の細胞。
【0627】
308.前記第1のシトシンデアミナーゼが、配列番号2と7~12のいずれか1つと少なくとも95%一致する配列を持つ、実施形態304~306のいずれか1つに記載の細胞。
【0628】
309.前記第1のシトシンデアミナーゼが、配列番号2、4、および6~12のいずれか1つと100%一致する配列を持つ、実施形態304~306のいずれか1つに記載の細胞。
【0629】
310.前記DNA結合ポリペプチドが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENであるか;メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質、またはTALENのバリアントであり、前記ヌクレアーゼ活性が低下しているか阻害されている、実施形態304~309のいずれか1つに記載の細胞。
【0630】
311.前記DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型DNA結合ポリペプチドである、実施形態304~309のいずれか1つに記載の細胞。
【0631】
312.前記RNA誘導型DNA結合ポリペプチドがRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドである、実施形態311に記載の細胞。
【0632】
313.前記RGNがRGNニッカーゼである、実施形態312に記載の細胞。
【0633】
314.前記RGNがヌクレアーゼ不活性なRGNである、実施形態312に記載の細胞。
【0634】
315.医薬として許容可能な基剤を含むとともに、実施形態281~291のいずれか1つに記載の組成物、実施形態292~302のいずれか1つに記載のベクター、または実施形態303~314のいずれか1つに記載の細胞を含む医薬組成物。
【0635】
316.疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、実施形態33~63のいずれか1つに記載の融合タンパク質、実施形態64~101のいずれか1つに記載の核酸分子、実施形態102~105と292~302のいずれか1つに記載のベクター、実施形態113~118、239~243、および303~314のいずれか1つに記載の細胞、実施形態130~171のいずれか1つに記載の系、実施形態172に記載のリボ核タンパク質複合体、実施形態281~291のいずれか1つに記載の組成物、または実施形態124、186、246、および315のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【0636】
317.前記疾患が原因変異と関係しており、前記医薬組成物が前記原因変異を修正する、実施形態316に記載の方法。
【0637】
318.前記疾患が表23に掲載されている疾患疾患である、実施形態316または317に記載の方法。
【0638】
319.対象における疾患を治療するための、実施形態33~63のいずれか1つに記載の融合タンパク質、実施形態64~101のいずれか1つに記載の核酸分子、実施形態102~105と292~302のいずれか1つに記載のベクター、実施形態113~118、239~243、および303~314のいずれか1つに記載の細胞、実施形態130~171のいずれか1つに記載の系、実施形態172に記載のリボ核タンパク質複合体、または実施形態281~291のいずれか1つに記載の組成物の利用。
【0639】
320.前記疾患が原因変異に関係しており、前記治療が前記原因変異を修正することを含む、実施形態319に記載の利用。
【0640】
321.前記疾患が表23に掲載されている疾患である、実施形態319または320に記載の利用。
【0641】
322.疾患の治療に有用な薬を製造するための、実施形態33~63のいずれか1つに記載の融合タンパク質、実施形態64~101のいずれか1つに記載の核酸分子、実施形態102~105と292~302のいずれか1つに記載のベクター、実施形態113~118、239~243、および303~314のいずれか1つに記載の細胞、実施形態130~171のいずれか1つに記載の系、実施形態172に記載のリボ核タンパク質複合体、または実施形態281~291のいずれか1つに記載の組成物の利用。
【0642】
323.前記疾患が原因変異と関係しており、前記薬の有効量が前記原因変異を修正する、実施形態322に記載の利用。
【0643】
324.前記疾患が表23に掲載されている疾患である、実施形態322または323に記載の利用。
【0644】
以下の実施例は説明のために提供されているのであり、限定のためではない。
【0645】
実験
【0646】
実施例1:哺乳類細胞におけるC塩基編集の実証
【0647】
配列番号1、3、および5として示されているデアミナーゼが両端から短縮され、その短縮型デアミナーゼが配列番号2、4、および6として示されている。細菌に由来するシトシンデアミナーゼRGNが配列番号7~12として示されている。
【0648】
【表2】
【0649】
表2のデアミナーゼが哺乳類細胞の中でシトシン塩基編集を実施できるかどうか明らかにするため、各デアミナーゼをRGNニッカーゼに機能可能に融合させて融合タンパク質を作製した。(PCT公開第WO 2019/236566号(参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている)RGN APG07433.1(配列番号74)のRuvCドメインを脱活性化すると予測される残基を同定し、RGNを改変してニッカーゼバリアントにした(nAPG07433.1;配列番号75)。RGNのニッカーゼバリアントを本明細書では「nRGN」と呼ぶ。RGNの任意のニッカーゼバリアントを用いて本発明の融合タンパク質を作製できることを理解すべきである。
【0650】
デアミナーゼと、哺乳類での発現にコドンが最適化されたnRGNヌクレオチド配列を、N末端核局在化タグを持つ融合タンパク質として合成し、pTwist CMV(Twist Biosciences)発現プラスミドにクローニングした。それぞれの融合タンパク質は、アミノ末端から出発すると、SV40 NLS(配列番号76)、そのC末端に機能可能に連結された3×FLAGタグ(配列番号77)、そのC末端に機能可能に連結されたデアミナーゼ、そのC末端に機能可能に連結されたペプチドリンカー(L16またはL32;それぞれ配列番号78または79として示される)、そのC末端に機能可能に連結されたnRGN(例えば配列番号75のnAPG07433.1)、最後にそのC末端に機能可能に連結されたヌクレオプラスミンNLS(配列番号80)を含む。表3は、作製して活性を調べた融合タンパク質を示す。すべての融合タンパク質が、上に記載したように、少なくとも1つのNLSと3×FLAGタグを含む。表3の中のAPG05840.1-nAPG07433.1-USP2融合タンパク質は、(配列番号81として示されている)ウラシル安定化タンパク質USP2をnRGNとヌクレオプラスミンNLSの間にさらに含む。この融合タンパク質は、配列番号120として示されている配列を持つペプチドリンカーもnAPG07433.1とUSP2の間に含む。
【0651】
【表3】
【0652】
sgRNAをコードする発現カセットを含む発現プラスミドも作製した。ヒトゲノム標的配列と、融合タンパク質をゲノム標的に導くsgRNA配列は、表4に示されている。
【0653】
【表4】
【0654】
表3に示されている各融合タンパク質のコード配列を含む発現カセットを含む500ngのプラスミドと、表4に示されているsgRNAをコードする発現カセットを含む500ngのプラスミドを同時に、24ウエルのプレートの中で75~90%の集密度になったHEK293FT細胞にLipofectamine 2000試薬(Life Technologies)を用いてトランスフェクトした。その後、細胞を37℃で72時間インキュベートした。インキュベーションの後、NucleoSpin 96 Tissue(Macherey-Nagel)を製造者のプロトコルに従って用いてゲノムDNAを抽出した。標的とするゲノム部位に隣接するゲノム領域を、表4のプライマーを用いてPCRで増幅し、産物を、ZR-96 DNA Clean and Concentrator(Zymo Research)を製造者のプロトコルに従って用いて精製した。その後、精製したPCR産物を次世代シークエンシングのためIllumina MiSeq(2×250)に送った。結果を、INDELの形成、または特異的シトシン変異の導入に関して分析した。
【0655】
表5は、表3からの融合タンパク質と表4からのガイドRNAのそれぞれの組み合わせに関するすべてのシトシン塩基編集を示す。表6~11は、選択された代表的サンプルに関する具体的なヌクレオチド変異プロファイルを示す。標的配列内の各ヌクレオチドの位置を求めた。例えば「C17」は、標的配列の17位のシトシンを示す。標的配列内の各ヌクレオチドの位置は、標的配列内でPAMに最も近い最初のヌクレオチドを1位にすることによって求め、位置番号はPAM配列から3´方向に離れるにつれて増加する。表6~11は、シトシンがどのヌクレオチドへとどれだけの割合で変化したかも示す。例えば表6は、APG30127-nAPG07433.1融合タンパク質について、17位のシトシンがチミジンへと0.2%の割合で変異したことを示す。
【0656】
【表5-1】
【表5-2】
【0657】
【表6】
【0658】
APG30127は、C17位で主にC>G変換を示した。
【0659】
【表7】
【0660】
APG30127は複数の位置(C10、C12、およびC17が含まれる)でC>T変換を示す。C17位にはC>G変換とC>A変換も存在する。
【0661】
【表8】
【0662】
APG30129は、C10位、C12位、およびC17位でC>T変換を示す。
【0663】
【表9】
【0664】
APG30125は、C10位、C12位、およびC17位でC>T変換を示す。すべての位置で、C>G変換とC>A変換がAPG30129サンプルとAPG30127サンプルよりも少ない。
【0665】
【表10】
【0666】
16アミノ酸リンカー(L16)とウラシル安定化タンパク質(USP2)を持つ短縮型APG05840(APG05840.1)を調べた。このコンストラクトは、標的SGN000169内のいくつかの位置(C9、C13、C15、C20、およびC23が含まれる)で高レベルの特異的C>T編集を示した。これは、部位特異的単一ヌクレオチド編集を生じさせるのに短縮されたデアミナーゼとより短いリンカーを相変わらず使用できることを実証している。
【0667】
【表11】
【0668】
16アミノ酸リンカー(L16)とウラシル安定化タンパク質(USP2)を持つ短縮型APG05840(APG05840.1)を調べた。このコンストラクトは、標的SGN000173内のいくつかの位置(C7、C8、C10、およびC17が含まれる)で高レベルの特異的C>T編集を示した。
【0669】
実施例2:RGNとは独立なシトシンデアミナーゼ駆動オフ-ターゲット効果アッセイ
【0670】
シトシンデアミナーゼがssDNAに対して何らかの変異効果を及ぼすかどうかを明らかにするため、RGNとは独立なオフ-ターゲット変異アッセイを実施した。(PCT公開第WO2021/217002号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている)RGN APG09298(配列番号82)のRuvCドメインとHNHドメインを脱活性化することが予想される残基を同定し、RGNを改変してデッドバリアント(dAPG09298;配列番号83)にした。
【0671】
発現のためコドンが最適化されたdRGNヌクレオチド配列を、N末端核局在化タグを持つ融合タンパク質として合成し、pTwist CMV(Twist Biosciences)発現プラスミドにクローニングした。このdRGN融合タンパク質は、アミノ末端から出発すると、SV40 NLS(配列番号76)、そのC末端に機能可能に連結された3×FLAGタグ(配列番号77)、そのC末端に機能可能に連結されたdRGN(例えば配列番号83であるdAPG09298)、最後にそのC末端に機能可能に連結されたヌクレオプラスミンNLS(配列番号80)を含んでおり、NLS-dAPG09298-NLS(配列番号84)を構成している。このコンストラクトを用い、Rループ内にあってシトシンデアミナーゼ塩基エディタによって編集される標的配列とは無関係の位置にssDNAを創出した。
【0672】
sgRNAをコードする発現カセットを含む発現プラスミドを作製した。ヒトゲノム標的配列と、融合タンパク質をゲノム標的へと導くsgRNA配列は、表4に示されている。
【0673】
【表12】
【0674】
表3に示されている融合タンパク質のコード配列を含む発現カセットを含む500ngのプラスミドと、表4に示されているsgRNAをコードする発現カセットを含む500ngのプラスミドと、NLS-dAPG09298-NLSのコード配列を含む発現カセットを含む500ngのプラスミドと、表12に示されているdAPG09298のためのsgRNAをコードする発現カセットを含む500ngのプラスミドを同時に、24ウエルのプレートの中で75~90%の集密度になったHEK293FT細胞にLipofectamine 2000試薬(Life Technologies)を用いてトランスフェクトした。その後、細胞を37℃で72時間インキュベートした。インキュベーションの後、NucleoSpin 96 Tissue(Macherey-Nagel)を製造者のプロトコルに従って用いてゲノムDNAを抽出した。標的となるゲノム部位に隣接するゲノム領域を、表4または表12の中のプライマーを用いてPCRで増幅し、ZR-96 DNA Clean and Concentrator(Zymo Research)を製造者のプロトコルに従って用いて産物を精製した。その後、精製したPCR産物を次世代シークエンシングのためIllumina MiSeq(2×250)に送った。結果を、INDELの形成または特異的シトシン変異に関して分析した。オン-ターゲットの結果は、表4の中のアンプリコンによって同定されたものであった。RGNとは独立なオフ-ターゲットの結果は、表12の中のアンプリコンによって同定されたものであった。
【0675】
【表13】
【0676】
各サンプルで想定されるオン-ターゲット部位は高レベルのシトシン特異的変異を示した。SGN001165においてdAPG09298が結合したオフ-ターゲット部位は、6つのサンプルのうちの5つで変異したリードを示さなかった。調べた1つの標的はオフ-ターゲット位置で低い変異率を示し、リードの0.99%が変異を持っていた。これらはRGNとは独立でデアミナーゼによって駆動される変異効果である可能性があるが、サンプル中の割合が少ないことによるシークエンシングのエラーである可能性もある。
【0677】
実施例3:哺乳類細胞におけるC>G塩基編集の実証
【0678】
これらの研究では、融合タンパク質の中のデアミナーゼとRGNの互いに対する向きが、得られたC塩基エディタによって起こる塩基編集のタイプに影響を与えるかどうかを評価した。
【0679】
RuvCドメイン(配列番号74;PCT公開第WO2019/236566号(参照によって本明細書に組み込まれている))を脱活性化すると予測される残基を同定し、RGNを改変してニッカーゼバリアント(nAPG07433.1;配列番号75)にした。
【0680】
デアミナーゼ(APG09980とAPG05840;それぞれ配列番号1と3として示されている)と、発現のためコドンが最適化されたnAPG07433.1ヌクレオチド配列を、N末端核局在化タグを持つ融合タンパク質として合成し、pTwist CMV(Twist Biosciences)発現プラスミドにクローニングした。それぞれの融合タンパク質は、アミノ末端から出発すると、SV40 NLS(配列番号76)、そのC末端に機能可能に連結された3×FLAGタグ(配列番号77)、そのC末端に機能可能に連結されたnRGN-デアミナーゼ、ペプチドリンカー(配列番号79)によって接続されたデアミナーゼ-nRGN-USP2またはデアミナーゼ-nRGN融合タンパク質、最後にそのC末端に機能可能に連結されたヌクレオプラスミンNLS(配列番号80)を含む。表14は、作製して活性を調べた融合タンパク質を示す。すべての融合タンパク質が、上に記載したように、少なくとも1つのNLSと3×FLAGタグを含む。表14の中の融合タンパク質APG09980-nAPG07433.1-USP2とAPG05840.1-nAPG07433.1-USP2は、(配列番号81として示される)ウラシル安定化タンパク質USP2をnRGNとヌクレオプラスミンNLSの間にさらに含む。融合タンパク質APG09980-nAPG07433.1-USP2とAPG05840.1-nAPG07433.1-USP2は、配列番号120として示される配列を持つペプチドリンカーもnAPG07433.1とUSP2の間に含む。
【0681】
【表14】
【0682】
sgRNAをコードする発現カセットを含む発現プラスミドも作製した。ヒトゲノム標的配列と、融合タンパク質をゲノム標的に導くsgRNA配列は、表15に示されている。
【0683】
【表15】
【0684】
表14に示されている融合タンパク質のコード配列を含む発現カセットを含む500ngのプラスミドと、表15に示されているsgRNAをコードする発現カセットを含む500ngのプラスミドを同時に、24ウエルのプレートの中で75~90%の集密度になったHEK293FT細胞にLipofectamine 2000試薬(Life Technologies)を用いてトランスフェクトした。その後、細胞を37℃で72時間インキュベートした。インキュベーションの後、NucleoSpin 96 Tissue(Macherey-Nagel)を製造者のプロトコルに従って用いてゲノムDNAを抽出した。標的となるゲノム部位に隣接するゲノム領域を、表15の中のプライマーを用いてPCRで増幅し、ZR-96 DNA Clean and Concentrator(Zymo Research)を製造者のプロトコルに従って用いて産物を精製した。その後、精製したPCR産物を次世代シークエンシングのためIllumina MiSeq(2×250)に送った。結果を、INDEL形成または特異的シトシン変異に関して分析した。
【0685】
表16~20は、表14からの融合タンパク質と表15からのガイドRNAの各組み合わせに関するシトシン塩基編集を示す。標的配列内の各ヌクレオチドの位置を求めた。「C16」は、例えば標的配列の16位にあるシトシンを示す。標的配列内の各ヌクレオチドの位置は、標的配列内でPAMに最も近い最初のヌクレオチドを1位にすることによって求め、位置番号はPAM配列から3´方向に離れるにつれて増加する。表16~20は、シトシンがどのヌクレオチドへとどれだけの割合で変化したかも示す。例えば表16は、APG05840-nAPG07433.1-USP2融合タンパク質について、16位のシトシンがチミジンへと11%の割合で変異したことを示す。
【0686】
【表16】
【0687】
コンストラクトAPG05840-nAPG07433.1-USP2全体の中でデアミナーゼがN末端上にある向きでは、SGN000928内のC16位とC21位で高レベルの特異的C>T変換が明らかである。
【0688】
【表17】
【0689】
コンストラクトAPG05840-nAPG07433.1-USP2全体の中でデアミナーゼがN末端上にある向きでは、SGN000930内のC17位とC22位で高レベルの特異的C>T変換が明らかである。いくらかのC>G変換がC17位で明らかである。
【0690】
【表18】
【0691】
ニッカーゼにつながれたデアミナーゼの向きが逆転し、デアミナーゼがC末端につながれているとき、主要な編集結果は、標的SGN000928内のC16位のC>G変換である。N末端にある構成と比べて非常に少ないC>T変換が明らかである。
【0692】
【表19】
【0693】
デアミナーゼがニッカーゼのC末端につながれているとき、主要な編集結果は、標的SGN000930内のC17位のC>G変換である。
【0694】
【表20】
【0695】
第2のデアミナーゼモジュールAPG09980を用いると、ニッカーゼのC末端につながれているときに優勢な変異結果はC17位のC>G変換であるという同じ傾向が明らかである。
【0696】
【表21】
【0697】
APG05840がnAPG07433.1のN末端につながれているとき、主要な変異結果はガイドSGN000930を用いたC17位のC>G変換である。
【0698】
【表22】
【0699】
この表の中のデータは多数回の編集実験の平均である。変異したリードの割合は、各サンプル中の塩基編集率の推定値である。欠失を持つリードの割合は、サンプル中の欠失率の推定値である。nAPG07433.1へのAPG09980のC末端融合体は、USPありとUSPなしのN末端融合体よりも低い欠失率を持つ。
【0700】
APG05840-nAPG07433.1-USP2は、ガイドSGN000930の中のC17位と、SGN000928の中のC16位とC21位の位置で主にC>T変換を示した。nAPG07433.1-APG09980とnAPG07433.1-APG05840は、これら同じ位置で主にC>G変換を示した。すべてのコンストラクトが同じウインドウ内で編集を示した。
【0701】
実施例4:疾患原因変異を修正するための標的を絞った塩基編集
【0702】
world wide webを通じてNCBI ClinVarウェブサイトで入手できるNCBI ClinVarデータベースから臨床バリアントのデータベースを取得した。病原性単一ヌクレオチド多型(SNP)をこのリストから同定した。ゲノム遺伝子座の情報を利用して、各SNPと重複するか各SNPを取り囲む領域内のCRISPR標的を同定した。原因変異を標的とするためにRGN(例えばAPG07433.1またはそのバリアントなど)と組み合わせた塩基編集を利用して修正できる一群のSNPが表23に掲載されている。下記の表23には、各疾患の1つの通称だけが掲載されている。「RS#」は、NCBIウェブサイトのSNPデータベースにおけるRSアクセッション番号に対応する。「名称」の列は、遺伝子座の識別子、遺伝子名、遺伝子内の変異の位置、および変異から生じた変化を含有する。
【0703】
【表23】
【0704】
実施例5:植物細胞における遺伝子編集活性の実証
【0705】
Liら、2013年(Nat. Biotech. 31:688-691)から改変したプロトコルを用いて本発明のRGN-デアミナーゼ融合タンパク質の塩基編集活性を植物細胞で実証する。簡単に述べると、SV40核局在化シグナル(配列番号76)に機能可能に連結されたRGN-デアミナーゼ融合タンパク質を植物細胞の中で発現させることのできる発現カセットと、植物PDS遺伝子の中にあって適切なPAM配列に隣接した1つ以上の部位を標的とするガイドRNAをコードする第2の発現カセットを含む発現ベクターを、PEGを媒介とする形質転換を利用してベンサミアナタバコ葉肉プロトプラストに導入する。形質転換されたプロトプラストを暗所で36時間までインキュベートする。DNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いてゲノムDNAをプロトプラストから単離する。RGN標的部位に隣接するゲノム領域をPCRで増幅し、産物を精製し、精製したPCR産物をIllumina MiSeqで次世代シークエンシングを利用して分析する。典型的には、アンプリコンごとに100,000個の250bpのペアード-エンドリード(2×100,000リード)が生成する。CRISPResso(Pinello, et al. 2016 Nature Biotech, 34:695-697)を用いてリードを分析し、編集率を計算する。出力アラインメントをINDEL情報、または特定のシトシン変異の導入に関して分析する。
【配列表】
2024511131000001.app
【国際調査報告】