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特表2024-511132バイオリアクター糖化種の製造のためのマルチパラメータ材料、方法、及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】バイオリアクター糖化種の製造のためのマルチパラメータ材料、方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240305BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558570
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 US2022021295
(87)【国際公開番号】W WO2022204107
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/165,074
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/165,063
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/165,067
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/165,071
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】オマホニー-ハートネット,ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー,バリー,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロード,クリストファー,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ,ロナン
(72)【発明者】
【氏名】マッデン,フィオナ
(72)【発明者】
【氏名】モウ,ジンジェ
(72)【発明者】
【氏名】マスランカ,フランシス,シー.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】トラウト,ダニエル,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラナ,プシュプラジ
(72)【発明者】
【氏名】グラツィア,エマヌエーラ
(72)【発明者】
【氏名】ラファーティ,カール
(72)【発明者】
【氏名】バルス,カリーン,エム.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029BB11
4B029DG10
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ67
4B063QQ79
4B063QR44
4B063QR49
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
分光分析と計量化学モデリングとの組み合わせの使用を通して、分子上の糖化及び/又はグリコシル化分子上のグリカン構造を決定するための方法が記載される。加えて、非糖化分子を含む所望のレベルの糖化、及び/又はグリコシル化分子上の所望のレベルのグリカン構造を有する分子を産生するための方法及びシステムが記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子上の糖化を決定するための方法であって、
プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、複数の実行の各々について、前記分子上の糖化レベルを取得することであって、前記取得することが、第1の閾値以下の第1の体積を有する1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクター内で行われ、前記PATツールが、スペクトルデータを取得することである、前記取得することと、
前記取得されたスペクトルデータに基づいて、前記分子上の糖化レベルを前記取得されたスペクトルデータと相関させる1つ又は2つ以上の回帰モデルを生成することと、
前記PATツールを使用して、前記分子上の糖化を測定することであって、前記測定することが、第2の閾値以上の第2の体積を有する1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクター内で行われて、測定されたスペクトルデータが得られることである、前記測定することと、
前記生成された1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ前記測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクター内の前記分子上の糖化レベルを決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記取得されたスペクトルデータ及び前記測定されたスペクトルデータの組み合わせに基づいて、前記1つ又は2つ以上の回帰モデルを精緻化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分子上の所望の糖化レベルを産生するために、前記決定されたレベルに基づいて、前記1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを維持することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分子上の所望の糖化レベルを産生するために、前記決定されたレベルに基づいて、前記第2のバイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを選択的に修正することを更に含み、
前記1つ又は2つ以上の動作パラメータが、任意選択的に、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含み、
前記栄養素レベルが、任意選択的に、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択され、
前記グルコースの濃度が、任意選択的に、前記測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記取得することが、異なる体積を有する2つ又は3つ以上のバイオリアクター内で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(a)前記第1の閾値が、
(i)約250リットル以下、
(ii)約100リットル以下、
(iii)約50リットル以下、
(iv)約25リットル以下、
(v)約10リットル以下、
(vi)約5リットル以下、
(vii)約2リットル以下、
(viii)約1リットル以下であり、かつ/又は
(b)前記第2の閾値が、
(i)約1,000リットル以上、
(ii)約2,000リットル以上、
(iii)約5,000リットル以上、
(iv)約10,000リットル以上、
(v)約15,000リットル以上、
(vi)約10,000~約25,000リットル、
(vii)前記第1の閾値よりも少なくとも5倍大きい、
(viii)前記第1の閾値よりも少なくとも10倍大きい、
(ix)前記第1の閾値よりも少なくとも100倍大きい、若しくは
(x)前記第1の閾値よりも少なくとも500倍大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(a)前記第1の体積が、
(i)約0.5~約250リットル、
(ii)約1~約50リットル、
(iii)約1~約25リットル、
(iv)約1~約10リットル、若しくは
(v)約1~約5リットルであり、かつ/又は
(b)前記第2の体積が、
(i)約1,000~約25,000リットル、
(ii)約2,000~約25,000リットル、
(iii)約5,000~約25,000リットル、
(iv)約10,000~約25,000リットル、若しくは
(v)約15,000~約25,000リットルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PATツールが、ラマン分光法を利用するか、又はそうでなければそれを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ又は2つ以上の回帰モデルが、部分最小二乗(PLS)モデルを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記分子が、モノクローナル抗体(mAb)又は非mAbである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記決定するステップが、
(a)オンサイト若しくはオフサイト、及び/又は
(b)インライン、アットライン、オンライン、オフライン、若しくはそれらの組み合わせで行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
所望のレベルの糖化を有する分子を産生する方法であって、
プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、前記分子上の糖化を測定して、スペクトルデータを得ることであって、前記測定することが、1,000リットル以上の体積を有するバイオリアクター内で行われるものである、前記測定することと、
1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ前記測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって、前記バイオリアクター内の前記分子上の糖化のレベルを決定することであって、前記1つ又は2つ以上の回帰モデルが、50リットル以下の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクター及び1,000リットル以上の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクターからの試行実行を使用して生成されるものである、前記決定することと、
前記バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを、
前記分子上の前記糖化のレベルが所定の閾値を下回る場合、維持することと、
前記バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを、
前記分子上の前記糖化のレベルが所定の閾値を上回る場合、選択的に修正することと、を含む、方法。
【請求項13】
測定することが、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
測定することが、
(a)1日2回以上、
(b)約5~60分毎、
(c)約10~30分毎、
(d)約10~20分毎、又は
(e)約12.5分毎に行われる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
測定することが、
(a)約2,000リットル以上、
(b)約5,000リットル以上、
(c)約10,000リットル以上、
(d)約15,000リットル以上、
(e)約10,000リットル~約25,000リットル、又は
(f)約15,000リットルの体積を有するバイオリアクター内で行われる、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記決定するステップが、オンサイト又はオフサイトで行われる、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記測定された糖化が、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせである、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記バイオリアクターが、バッチリアクター、流加リアクター、又は灌流リアクターである、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又は2つ以上の動作パラメータが、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含み、
前記栄養素レベルが、任意選択的に、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択され、
前記グルコースの濃度が、任意選択的に、前記測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正される、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記PATツールが、ラマン分光法を利用するか、又はそうでなければそれを含む、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ又は2つ以上の回帰モデルが、部分最小二乗(PLS)モデルを含む、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記所定の閾値が、前記分子上の約20%未満の糖化である、請求項12~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
非糖化分子を産生するためのシステムであって、
前記非糖化分子を産生することができる細胞株を培養するための手段と、
糖化のレベルを測定するための手段であって、スペクトルデータを生成する、手段と、
前記スペクトルデータに基づいて1つ又は2つ以上の回帰モデルを生成するための手段と、
前記細胞株における糖化のレベルを測定するための手段と、を備える、システム。
【請求項24】
前記細胞株が、哺乳動物細胞株であり、任意選択的に、前記哺乳動物細胞株が、非ヒト細胞株である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記培養することが、バッチ、流加、灌流、又はそれらの組み合わせを含む、請求項23又は24に記載のシステム。
【請求項26】
培養することが、
(a)約2,000リットル以上、
(b)約5,000リットル以上、
(c)約10,000リットル以上、
(d)約15,000リットル以上、
(e)約10,000リットル~約25,000リットル、又は
(f)約15,000リットルの体積を有する、請求項23~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
測定することが、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行われる、請求項23~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
測定することが、
(a)1日2回以上、
(b)約5~60分毎、
(c)約10~30分毎、
(d)約10~20分毎、又は
(e)約12.5分毎に行われる、請求項23~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記測定された糖化が、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせを含む、請求項23~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記非糖化分子の産生を増強するために、1つ又は2つ以上の動作パラメータを選択的に修正するための手段を更に備え、
前記1つ又は2つ以上の動作パラメータが、任意選択的に、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含み、
前記栄養素レベルが、任意選択的に、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択され、
前記グルコースの濃度が、任意選択的に、前記測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正される、請求項23~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
1つ又は2つ以上のグリコシル化分子が、モノクローナル抗体(mAb)又は非mAbを含む、請求項23~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記スペクトルデータが、ラマンスペクトルを含む、請求項23~31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記1つ又は2つ以上の回帰モデルが、部分最小二乗(PLS)モデルを含む、請求項23~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
非糖化分子を産生するためのシステムであって、
前記非糖化分子を産生することができる細胞株を含むバイオリアクターと、
糖化を測定し、スペクトルデータを生成するプロセス分析技術(PAT)ツールと、
1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、糖化のレベルを前記スペクトルデータと相関させるプロセッサと、を備える、システム。
【請求項35】
前記バイオリアクターが、
(a)約2,000リットル以上、
(b)約5,000リットル以上、
(c)約10,000リットル以上、
(d)約15,000リットル以上、
(e)約10,000リットル~約25,000リットル、又は
(f)約15,000リットルである、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記糖化が、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせを含む、請求項34又は35に記載のシステム。
【請求項37】
前記細胞株が、哺乳動物細胞株であり、任意選択的に、前記哺乳動物細胞株が、非ヒト細胞株である、請求項34~36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記PATツールが、ラマン分光法を利用するか、又はそうでなければそれを含む、請求項34~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記1つ又は2つ以上の回帰モデルが、部分最小二乗(PLS)モデルを含む、請求項34~38のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月23日に出願された米国特許出願第63/165,063号、2021年3月23日に出願された米国特許出願第63/165,067号、2021年3月23日に出願された米国特許出願第63/165,071号、及び2021年3月23日に出願された米国特許出願第63/165,074号の優先権を主張するものであり、これらの各々の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、部分的には、強化されたバイオリアクター製造のためのマルチパラメータ材料、方法、及びシステムに関する。具体的には、本開示は、生産プロセス中に治療用タンパク質[例えば、組換えタンパク質及び/又はモノクローナル抗体、(monoclonal antibody、mAb)]の糖化を制御及び監視するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
糖化及びグリコシル化は、治療用タンパク質の生産において考慮されるべき重要品質特性(Critical Quality Attribute、CQA)と考えられてきた。例えば、糖化は、治療用タンパク質の生物活性及び分子安定性に影響を及ぼす可能性がある。更に、治療用タンパク質のグリコシル化は、インビトロ及びインビボの両方で、タンパク質の凝集、溶解性、及び安定性に影響を与える可能性がある。したがって、糖化及び/又はグリコシル化の検出及び特徴付けは、治療用タンパク質の生産の重要な態様である。
【発明の概要】
【0004】
この背景に対して、本開示の発明者らは、生産プロセス中の分子(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)の糖化及び/又はグリコシル化を制御及び監視するための方法及びシステムを発見した。
【0005】
一態様では、本明細書において、分子上の糖化を決定するための方法であって、プロセス分析技術(process analytical technology、PAT)ツールを使用して、複数の実行の各々について、分子上の糖化レベルを取得することであって、前記取得することが、第1の閾値以下の第1の体積を有する1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクター内で行われ、PATツールが、スペクトルデータを取得することである、前記取得することと、取得されたスペクトルデータに基づいて、分子上の糖化レベルを取得されたスペクトルデータと相関させる1つ又は2つ以上の回帰モデルを生成することと、PATツールを使用して、分子上の糖化を測定することであって、前記測定することが、第2の閾値以上の第2の体積を有する1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクター内で行われて、測定されたスペクトルデータが得られることである、前記測定することと、生成された1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクター内の分子上の糖化レベルを決定することと、を含む、方法が提供される。
【0006】
一実施形態では、本方法は、取得されたスペクトルデータと測定されたスペクトルデータとの組み合わせに基づいて、1つ又は2つ以上の回帰モデルを精緻化することを更に含む。
【0007】
一実施形態では、本方法は、分子上の所望の糖化レベルを産生するために、決定されたレベルに基づいて、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを維持することを更に含む。
【0008】
一実施形態では、本方法は、分子上の所望の糖化レベルを産生するために、決定されたレベルに基づいて、第2のバイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを選択的に修正することを更に含む。一実施形態では、1つ又は2つ以上の動作パラメータは、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、栄養素レベルは、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される。一実施形態では、グルコースの濃度は、測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正される。
【0009】
一実施形態では、取得することは、異なる体積を有する2つ又は3つ以上のバイオリアクター内で行われる。一実施形態では、第1の閾値は、約250リットル以下である。一実施形態では、第1の閾値は、約100リットル以下である。一実施形態では、第1の閾値は、約50リットル以下である。一実施形態では、第1の閾値は、約25リットル以下である。一実施形態では、第1の閾値は、約10リットル以下である。一実施形態では、第1の閾値は、約5リットル以下である。一実施形態では、第1の閾値は、約2リットル以下である。一実施形態では、第1の閾値は、約1リットル以下である。一実施形態では、第2の閾値は、約1,000リットル以上である。一実施形態では、第2の閾値は、約2,000リットル以上である。一実施形態では、第2の閾値は、約5,000リットル以上である。一実施形態では、第2の閾値は、約10,000リットル以上である。一実施形態では、第2の閾値は、約15,000リットル以上である。一実施形態では、第2の閾値は、約10,000~約25,000リットルである。一実施形態では、第2の閾値は、約15,000リットルである。一実施形態では、第2の閾値は、第1の閾値よりも少なくとも5倍大きい。一実施形態では、第2の閾値は、第1の閾値よりも少なくとも10倍大きい。一実施形態では、第2の閾値は、第1の閾値よりも少なくとも100倍大きい。一実施形態では、第2の閾値は、第1の閾値よりも少なくとも500倍大きい。一実施形態では、第1の体積は、約0.5~約250リットルである。一実施形態では、第1の体積は、約1~約50リットルである。一実施形態では、第1の体積は、約1~約25リットルである。一実施形態では、第1の体積は、約1~約10リットルである。一実施形態では、第1の体積は、約1~約5リットルである。一実施形態では、第2の体積は、約1,000~約25,000リットルである。一実施形態では、第2の体積は、約2,000~約25,000リットルである。一実施形態では、第2の体積は、約5,000~約25,000リットルである。一実施形態では、第2の体積は、約10,000~約25,000リットルである。一実施形態では、第2の体積は、約15,000~約25,000リットルである。
【0010】
一実施形態では、PATツールは、ラマン分光法を含む。
【0011】
一実施形態では、1つ又は2つ以上の回帰モデルは、部分最小二乗(partial least square、PLS)モデルを含む。
【0012】
一実施形態では、分子は、モノクローナル抗体(monoclonal antibody、mAb)である。一実施形態では、分子は、非mAbである。
【0013】
一実施形態では、決定するステップは、オンサイトで行われる。一実施形態では、決定するステップは、オフサイトで行われる。一実施形態では、決定するステップは、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行われる。一実施形態では、決定するステップは、インラインで行われる。一実施形態では、決定するステップは、オンラインで行われる。一実施形態では、決定するステップは、アットラインで行われる。一実施形態では、決定するステップは、オフラインで行われる。
【0014】
一態様では、本明細書において、所望の糖化のレベルを有する分子を産生する方法であって、プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、分子上の糖化を測定して、スペクトルデータを得ることであって、前記測定することが、1,000リットル以上の体積を有するバイオリアクター内で行われるものである、前記測定することと、1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって、バイオリアクター内の分子上の糖化のレベルを決定することであって、前記1つ又は2つ以上の回帰モデルが、50リットル以下の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクター及び1,000リットル以上の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクターからの試行実行を使用して生成されるものである、前記決定することと、分子上の糖化のレベルが所定の閾値を下回る場合、バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを維持することと、分子上の糖化のレベルが所定の閾値を上回る場合、バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを選択的に修正することと、を含む、方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、測定することは、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、インラインで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、オンラインで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、アットラインで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、オフラインで行われる。
【0016】
いくつかの実施形態では、測定することは、1日2回以上行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、約5~60分毎に行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、約10~30分毎に行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、約10~20分毎に行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、約12.5分毎に行われる。
【0017】
一実施形態では、バイオリアクター体積は、約2,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約5,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約10,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約15,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約10,000リットル~約25,000リットルである。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約15,000リットルである。
【0018】
いくつかの実施形態では、決定するステップは、オンサイトで行われる。いくつかの実施形態では、決定するステップは、オフサイトで行われる。
【0019】
いくつかの実施形態では、測定された糖化は、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせである。
【0020】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、バッチリアクター、流加リアクター、又は灌流リアクターである。
【0021】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の動作パラメータは、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、栄養素レベルは、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、グルコースの濃度は、測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正される。
【0022】
いくつかの実施形態では、PATツールは、ラマン分光法を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の回帰モデルは、部分最小二乗(PLS)モデルを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、所定の閾値は、分子上の約20%未満の糖化である。
【0025】
一態様では、本明細書において、非糖化分子を産生するためのシステムであって、非糖化分子を産生することができる細胞株を培養するための手段と、糖化のレベルを測定するための手段と、スペクトルデータを生成する手段と、スペクトルデータに基づいて1つ又は2つ以上の回帰モデルを生成するための手段と、細胞株における糖化のレベルを測定するための手段と、を備える、システムが提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、細胞株は、哺乳動物細胞株である。いくつかの実施形態では、細胞株は、非ヒト細胞株である。
【0027】
いくつかの実施形態では、培養は、バッチ、流加バッチ、灌流、又はそれらの組み合わせを含む。
【0028】
一実施形態では、培養は、約2,000リットル以上の体積を含む。一実施形態では、培養は、約5,000リットル以上の体積を含む。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約10,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約15,000リットル以上である。一実施形態では、培養は、約10,000リットル~約25,000リットルの体積を含む。一実施形態では、培養は、約15,000リットルの体積を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、測定することは、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、オンラインで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、アットラインで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、オフラインで行われる。
【0030】
いくつかの実施形態では、測定することは、1日2回以上行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、約5~60分毎に行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、約10~30分毎に行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、約10~20分毎に行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、約12.5分毎に行われる。
【0031】
いくつかの実施形態では、測定された糖化は、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、システムは、非糖化分子の産生を増強するために、1つ又は2つ以上の動作パラメータを選択的に改変するための手段を更に備える。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の動作パラメータは、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、栄養素レベルは、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、グルコースの濃度は、スペクトルデータに基づいて自動的に修正される。
【0033】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のグリコシル化分子は、モノクローナル抗体(mAb)を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のグリコシル化分子は、非mAbを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、スペクトルデータは、ラマンスペクトルを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の回帰モデルは、部分最小二乗(PLS)モデルを含む。
【0036】
一態様では、本明細書において、非糖化分子を産生するためのシステムであって、非糖化分子を産生することができる細胞株を含むバイオリアクターと、糖化を測定し、スペクトルデータを生成するプロセス分析技術(PAT)ツールと、1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、糖化のレベルをスペクトルデータと相関させるプロセッサと、を備える、システムが提供される。
【0037】
一実施形態では、バイオリアクターは、約2,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクターは、約5,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約10,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクター体積は、約15,000リットル以上である。一実施形態では、バイオリアクターは、約10,000リットル~約25,000リットルである。一実施形態では、バイオリアクターは、約15,000リットルである。
【0038】
一実施形態では、糖化は、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせを含む。
【0039】
一実施形態では、細胞株は、哺乳動物細胞株である。一実施形態では、哺乳動物細胞株は、非ヒト細胞株である。
【0040】
一実施形態では、PATツールは、ラマン分光法を利用するか、又はそうでなければそれを含む。
【0041】
一実施形態では、1つ又は2つ以上の回帰モデルは、部分最小二乗(PLS)モデルを含む。
【0042】
本発明の他の態様、特徴、及び利点は、発明の詳細な説明、並びにその好ましい実施形態及び添付の特許請求の範囲を含む以下の開示より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
図1A】mAbの糖化のためのメイラード反応(図1A)を示す。
図1B】mAbなどの治療用タンパク質のN結合型グリコシル化に関連する一般的なN-グリカン構造(図1B)を示す。
図2】ラマンベースのPLSモデルの開発及び試験のためのプロセスフローを示す。
図3A】縮小スケール(5L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(mono-glycation)(図3A)、非糖化(non-glycation)(図3B)、G0F-GlcNac(図3C)、G0(図3D)、G0F(図3E)、G1F(図3F)、及びG2F(図3G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図3B】縮小スケール(5L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(mono-glycation)(図3A)、非糖化(non-glycation)(図3B)、G0F-GlcNac(図3C)、G0(図3D)、G0F(図3E)、G1F(図3F)、及びG2F(図3G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図3C】縮小スケール(5L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(mono-glycation)(図3A)、非糖化(non-glycation)(図3B)、G0F-GlcNac(図3C)、G0(図3D)、G0F(図3E)、G1F(図3F)、及びG2F(図3G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図3D】縮小スケール(5L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(mono-glycation)(図3A)、非糖化(non-glycation)(図3B)、G0F-GlcNac(図3C)、G0(図3D)、G0F(図3E)、G1F(図3F)、及びG2F(図3G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図3E】縮小スケール(5L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(mono-glycation)(図3A)、非糖化(non-glycation)(図3B)、G0F-GlcNac(図3C)、G0(図3D)、G0F(図3E)、G1F(図3F)、及びG2F(図3G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図3F】縮小スケール(5L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(mono-glycation)(図3A)、非糖化(non-glycation)(図3B)、G0F-GlcNac(図3C)、G0(図3D)、G0F(図3E)、G1F(図3F)、及びG2F(図3G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図3G】縮小スケール(5L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(mono-glycation)(図3A)、非糖化(non-glycation)(図3B)、G0F-GlcNac(図3C)、G0(図3D)、G0F(図3E)、G1F(図3F)、及びG2F(図3G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図4A】モデルから更なるデータを追加又は削除しない、製造スケール(2,000L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(図4A)、非糖化(図4B)、G0F-GlcNac(図4C)、G0(図4D)、G0F(図4E)、G1F(図4F)、及びG2F(図4G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図4B】モデルから更なるデータを追加又は削除しない、製造スケール(2,000L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(図4A)、非糖化(図4B)、G0F-GlcNac(図4C)、G0(図4D)、G0F(図4E)、G1F(図4F)、及びG2F(図4G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図4C】モデルから更なるデータを追加又は削除しない、製造スケール(2,000L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(図4A)、非糖化(図4B)、G0F-GlcNac(図4C)、G0(図4D)、G0F(図4E)、G1F(図4F)、及びG2F(図4G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図4D】モデルから更なるデータを追加又は削除しない、製造スケール(2,000L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(図4A)、非糖化(図4B)、G0F-GlcNac(図4C)、G0(図4D)、G0F(図4E)、G1F(図4F)、及びG2F(図4G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図4E】モデルから更なるデータを追加又は削除しない、製造スケール(2,000L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(図4A)、非糖化(図4B)、G0F-GlcNac(図4C)、G0(図4D)、G0F(図4E)、G1F(図4F)、及びG2F(図4G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図4F】モデルから更なるデータを追加又は削除しない、製造スケール(2,000L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(図4A)、非糖化(図4B)、G0F-GlcNac(図4C)、G0(図4D)、G0F(図4E)、G1F(図4F)、及びG2F(図4G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図4G】モデルから更なるデータを追加又は削除しない、製造スケール(2,000L)バッチ(CTSS)における、モノ糖化(図4A)、非糖化(図4B)、G0F-GlcNac(図4C)、G0(図4D)、G0F(図4E)、G1F(図4F)、及びG2F(図4G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図5A】2000Lスケールバッチ実行からのプロセスデータを補完したモデルを使用する、製造スケール(2000L)バッチ(CTSS)モデルにおける、モノ糖化(図5A)、非糖化(図5B)、G0F-GlcNac(図5C)、G0(図5D)、G0F(図5E)、G1F(図5F)、及びG2F(図5G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図5B】2000Lスケールバッチ実行からのプロセスデータを補完したモデルを使用する、製造スケール(2000L)バッチ(CTSS)モデルにおける、モノ糖化(図5A)、非糖化(図5B)、G0F-GlcNac(図5C)、G0(図5D)、G0F(図5E)、G1F(図5F)、及びG2F(図5G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図5C】2000Lスケールバッチ実行からのプロセスデータを補完したモデルを使用する、製造スケール(2000L)バッチ(CTSS)モデルにおける、モノ糖化(図5A)、非糖化(図5B)、G0F-GlcNac(図5C)、G0(図5D)、G0F(図5E)、G1F(図5F)、及びG2F(図5G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図5D】2000Lスケールバッチ実行からのプロセスデータを補完したモデルを使用する、製造スケール(2000L)バッチ(CTSS)モデルにおける、モノ糖化(図5A)、非糖化(図5B)、G0F-GlcNac(図5C)、G0(図5D)、G0F(図5E)、G1F(図5F)、及びG2F(図5G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図5E】2000Lスケールバッチ実行からのプロセスデータを補完したモデルを使用する、製造スケール(2000L)バッチ(CTSS)モデルにおける、モノ糖化(図5A)、非糖化(図5B)、G0F-GlcNac(図5C)、G0(図5D)、G0F(図5E)、G1F(図5F)、及びG2F(図5G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図5F】2000Lスケールバッチ実行からのプロセスデータを補完したモデルを使用する、製造スケール(2000L)バッチ(CTSS)モデルにおける、モノ糖化(図5A)、非糖化(図5B)、G0F-GlcNac(図5C)、G0(図5D)、G0F(図5E)、G1F(図5F)、及びG2F(図5G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図5G】2000Lスケールバッチ実行からのプロセスデータを補完したモデルを使用する、製造スケール(2000L)バッチ(CTSS)モデルにおける、モノ糖化(図5A)、非糖化(図5B)、G0F-GlcNac(図5C)、G0(図5D)、G0F(図5E)、G1F(図5F)、及びG2F(図5G)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図6】製造スケールのバイオリアクターにおける治療用タンパク質の糖化及び/又はグリコシル化プロファイルのリアルタイム監視を提供するために使用される例示的なシステムを示すプロセスフロー図600の例示的なシステムを示す。
図7】グリコシル化分子上のグリカン構造の決定を示すプロセスフロー図700を示す。
図8】所望のグリカン構造を有するグリコシル化分子の産生を示すプロセスフロー図800を示す。
図9】分子上の糖化の決定を示すプロセスフロー図900を示す。
図10】所望のレベルの糖化を有する分子の産生を示すプロセスフロー図1000を示す。
図11A】(フロー1及びフロー3における)モノ糖化/非糖化(図11A)、G0F-GlcNac(図11B)、G0(図11C)、G0F(図11D)、G1F(図11E)、及びG2F(図11F)についてのPLSモデルの投影変数重要度(variable importance of projection、VIP)スコアについての傾向のオーバーレイを示す。
図11B】(フロー1及びフロー3における)モノ糖化/非糖化(図11A)、G0F-GlcNac(図11B)、G0(図11C)、G0F(図11D)、G1F(図11E)、及びG2F(図11F)についてのPLSモデルの投影変数重要度(variable importance of projection、VIP)スコアについての傾向のオーバーレイを示す。
図11C】(フロー1及びフロー3における)モノ糖化/非糖化(図11A)、G0F-GlcNac(図11B)、G0(図11C)、G0F(図11D)、G1F(図11E)、及びG2F(図11F)についてのPLSモデルの投影変数重要度(variable importance of projection、VIP)スコアについての傾向のオーバーレイを示す。
図11D】(フロー1及びフロー3における)モノ糖化/非糖化(図11A)、G0F-GlcNac(図11B)、G0(図11C)、G0F(図11D)、G1F(図11E)、及びG2F(図11F)についてのPLSモデルの投影変数重要度(variable importance of projection、VIP)スコアについての傾向のオーバーレイを示す。
図11E】(フロー1及びフロー3における)モノ糖化/非糖化(図11A)、G0F-GlcNac(図11B)、G0(図11C)、G0F(図11D)、G1F(図11E)、及びG2F(図11F)についてのPLSモデルの投影変数重要度(variable importance of projection、VIP)スコアについての傾向のオーバーレイを示す。
図11F】(フロー1及びフロー3における)モノ糖化/非糖化(図11A)、G0F-GlcNac(図11B)、G0(図11C)、G0F(図11D)、G1F(図11E)、及びG2F(図11F)についてのPLSモデルの投影変数重要度(variable importance of projection、VIP)スコアについての傾向のオーバーレイを示す。
図12A】細胞株1(図12A)及び細胞株2(図12B)についてのグルコースモデルのCSSのラマングルコース値対オフライングルコース値のプロットを示す。
図12B】細胞株1(図12A)及び細胞株2(図12B)についてのグルコースモデルのCSSのラマングルコース値対オフライングルコース値のプロットを示す。
図13A】細胞株1のバッチA:ボーラス供給(図13A)、バッチB:1g/lへの自動フィードバック制御(図13B)、バッチC:1g/lへの自動フィードバック制御(図13C)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図13B】細胞株1のバッチA:ボーラス供給(図13A)、バッチB:1g/lへの自動フィードバック制御(図13B)、バッチC:1g/lへの自動フィードバック制御(図13C)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図13C】細胞株1のバッチA:ボーラス供給(図13A)、バッチB:1g/lへの自動フィードバック制御(図13B)、バッチC:1g/lへの自動フィードバック制御(図13C)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図14A】細胞株2のバッチD:ボーラス供給(図14A)、バッチE:2g/lへの自動フィードバック制御(図14B)、バッチF:2g/lへの自動フィードバック制御(図14C)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図14B】細胞株2のバッチD:ボーラス供給(図14A)、バッチE:2g/lへの自動フィードバック制御(図14B)、バッチF:2g/lへの自動フィードバック制御(図14C)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図14C】細胞株2のバッチD:ボーラス供給(図14A)、バッチE:2g/lへの自動フィードバック制御(図14B)、バッチF:2g/lへの自動フィードバック制御(図14C)についてのラマンPLSモデル予測(変動する青色の線)対オフライン測定(安定した赤色の線)を示す。
図15A】細胞株1のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図15A)、VCD(図15B)、生存率%(図15C)、LDH(図15D)、pH(図15E)、O2(図15F)、グルコース供給体積(図15G)、力価及び糖化(図15H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図15B】細胞株1のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図15A)、VCD(図15B)、生存率%(図15C)、LDH(図15D)、pH(図15E)、O2(図15F)、グルコース供給体積(図15G)、力価及び糖化(図15H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図15C】細胞株1のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図15A)、VCD(図15B)、生存率%(図15C)、LDH(図15D)、pH(図15E)、O2(図15F)、グルコース供給体積(図15G)、力価及び糖化(図15H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図15D】細胞株1のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図15A)、VCD(図15B)、生存率%(図15C)、LDH(図15D)、pH(図15E)、O2(図15F)、グルコース供給体積(図15G)、力価及び糖化(図15H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図15E】細胞株1のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図15A)、VCD(図15B)、生存率%(図15C)、LDH(図15D)、pH(図15E)、O2(図15F)、グルコース供給体積(図15G)、力価及び糖化(図15H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図15F】細胞株1のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図15A)、VCD(図15B)、生存率%(図15C)、LDH(図15D)、pH(図15E)、O2(図15F)、グルコース供給体積(図15G)、力価及び糖化(図15H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図15G】細胞株1のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図15A)、VCD(図15B)、生存率%(図15C)、LDH(図15D)、pH(図15E)、O2(図15F)、グルコース供給体積(図15G)、力価及び糖化(図15H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図15H】細胞株1のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図15A)、VCD(図15B)、生存率%(図15C)、LDH(図15D)、pH(図15E)、O2(図15F)、グルコース供給体積(図15G)、力価及び糖化(図15H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図16A】細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図16A)、VCD(図16B)、生存率%(図16C)、LDH(図16D)、pH(図16E)、O2(図16F)、グルコース供給体積(図16G)、力価及び糖化(図16H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図16B】細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図16A)、VCD(図16B)、生存率%(図16C)、LDH(図16D)、pH(図16E)、O2(図16F)、グルコース供給体積(図16G)、力価及び糖化(図16H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図16C】細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図16A)、VCD(図16B)、生存率%(図16C)、LDH(図16D)、pH(図16E)、O2(図16F)、グルコース供給体積(図16G)、力価及び糖化(図16H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図16D】細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図16A)、VCD(図16B)、生存率%(図16C)、LDH(図16D)、pH(図16E)、O2(図16F)、グルコース供給体積(図16G)、力価及び糖化(図16H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図16E】細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図16A)、VCD(図16B)、生存率%(図16C)、LDH(図16D)、pH(図16E)、O2(図16F)、グルコース供給体積(図16G)、力価及び糖化(図16H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図16F】細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図16A)、VCD(図16B)、生存率%(図16C)、LDH(図16D)、pH(図16E)、O2(図16F)、グルコース供給体積(図16G)、力価及び糖化(図16H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図16G】細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図16A)、VCD(図16B)、生存率%(図16C)、LDH(図16D)、pH(図16E)、O2(図16F)、グルコース供給体積(図16G)、力価及び糖化(図16H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
図16H】細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチ(図16A)、VCD(図16B)、生存率%(図16C)、LDH(図16D)、pH(図16E)、O2(図16F)、グルコース供給体積(図16G)、力価及び糖化(図16H)についてのプロセス傾向の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
糖化及びグリコシル化プロファイルを測定するための現在の方法には、ボロン酸親和性クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、比色アッセイ、及び液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography mass spectrometry、LC/MS)が含まれる。これらの方法は、精密で正確な結果を提供することができるが、時間及び資源の両方を消費する。更に、サンプリングは、多くの場合、バイオリアクターから取り出される製品を犠牲にし、かつ汚染のより大きなリスクを伴う。現在の方法の別の欠点は、バッチが完了した後に製品の品質試験を必要とすることである。
【0045】
したがって、治療用タンパク質の生産全体を通した糖化及び/又はグリコシル化を正確に監視することができ、ユーザが生産プロセス中にリアルタイムで糖化及び/又はグリコシル化を制御することができるようにする方法及びシステムに対する必要性が満たされていない。
【0046】
本開示は、部分的には、生産プロセス中の分子(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)の糖化及び/又はグリコシル化を制御及び監視するための方法及びシステムに関する。例えば、プロセス分析技術(PAT)ツールと計量化学モデリングとを組み合わせて、個々のグリコフォーム(微小不均一性)を含む糖化及びグリコシル化プロファイルを監視することができる予測モデルを開発することを伴う、特に製造スケールプロセスに焦点を当てた方法及びシステムが、本明細書に記載される。本開示はまた、部分的に、計量化学モデリングに製造スケールデータを含めることによって、モデルの予測力及び堅牢性を改善することができるという発見を対象とする。そのような方法及びシステムは、治療用タンパク質の生産プロセスにおける潜在的な品質問題がバッチに影響を与える前に特定されることを可能にし、また、プロセス変動性を低減し、収率の改善に起因して供給コストを低減し、製品のリアルタイムリリースを実行し、リードタイムを低減し、分析方法の転送及び検証プロセスの低減に起因して製品の技術移転タイムラインにプラスの影響を与えるのに役立ち得る。
【0047】
いくつかの態様では、本明細書において、ラマン分光法などのPATツールを使用してグリコシル化分子上のグリカン構造を決定し、コンピューティングデバイスによって使用され得る回帰モデルを生成して、バイオリアクター内の治療用タンパク質上の1つ又は2つ以上のグリカン構造のレベルを決定するための方法が提供される。他の態様では、本明細書において、スペクトルデータを生成するPATツールを使用して所望のグリカン構造を有するグリコシル化分子を産生し、1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用することによって、バイオリアクター内の治療用タンパク質上の1つ又は2つ以上のグリカン構造のレベルを決定するための方法が提供される。次いで、所望のグリカン構造及び/又は望ましくないグリカン構造のレベルに基づいて、1つ又は2つ以上の動作パラメータを維持するか、又は選択的に修正することができる。本開示はまた、1つ又は2つ以上のグリコシル化分子を産生するためのシステムを提供する。システムは、グリコシル化分子を産生することができる細胞株を含むバイオリアクターと、1つ又は2つ以上のグリカン構造を測定し、スペクトルデータを生成するPATツールと、1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して1つ又は2つ以上のグリカン構造のレベルをスペクトルデータと相関させるプロセッサと、を備えることができる。
【0048】
いくつかの態様では、本明細書において、ラマン分光法などのプロセス分析技術(PAT)ツールを使用して分子上の糖化を決定し、コンピューティングデバイスによって使用され得る回帰モデルを生成して、バイオリアクター内の分子上の糖化レベルを決定するための方法が提供される。他の態様では、本明細書において、スペクトルデータを生成するPATツールを使用して分子上の糖化を測定することによって、所望の糖化レベルを有する分子を生成するし、1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用することによって分子上の糖化のレベルを決定する方法が提供される。次いで、糖化のレベルに基づいて、1つ又は2つ以上の動作パラメータを維持するか、又は選択的に修正することができる。本開示はまた、非糖化分子を産生するためのシステムも提供する。システムは、非糖化分子を産生することができる細胞株を含むバイオリアクターと、糖化を測定し、スペクトルデータを生成するPATツールと、1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して糖化のレベルをスペクトルデータと相関させるプロセッサと、を備えることができる。
【0049】
「背景技術」において、また、本明細書全体を通して各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載し、これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0050】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。本明細書に引用される全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、あたかも本明細書に完全に記載されているように参照により組み込まれる。
【0051】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0052】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、指定の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外するものではないことを意味すると理解されるであろう。本明細書に使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」又は「含む(including)」という用語に置き換えることができ、又は場合によって本明細書に使用される場合、「有する(having)」という用語に置き換えることもできる。
【0053】
本明細書に使用される場合、「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲の要素において指定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書に使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップは除外しない。本出願の態様又は実施形態に関連して本明細書で使用するとき、本開示の範囲を変化させるために、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び「有する」という上記用語のいずれかを、「からなる」又は「から本質的になる」という用語に置き換えることができる。
【0054】
本明細書に使用される場合、複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続的な用語は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書に使用される場合、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「分子」という用語は、一般に、タンパク質又はその断片をいう。例示的な分子は、治療用タンパク質(例えば、組換えタンパク質若しくはmAb)又はその断片である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「バイオリアクター」という用語は、一般に、生物学的に活性なプロセス(例えば、細胞の培養)を支持するデバイスをいう。例示的なバイオリアクターとしては、ステンレス鋼撹拌タンクバイオリアクター、エアリフトリアクター、及び使い捨てバイオリアクターが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「スペクトルデータ」という用語は、一般に、分光法を使用して取得される分析出力を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「閾値」という用語は、一般に、特定の範囲又はレベルの下限又は上限などの少なくとも1つの限界を定義する量を指す。閾値は、経験的に決定され得るか、又は先験的に設定される所定の閾値であってもよい。
【0059】
本明細書で使用される場合、「選択的に修正する」という用語は、動作パラメータに関して使用される場合、一般に、所望の製品の最適な生産を促進し、かつ/又は望ましくない製品の生産を減少させるための1つ又は2つ以上の条件の意図的な調整を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「自動的に修正される」という用語は、一般に、ユーザが動作パラメータを手動で調整する必要なく動作パラメータが調整されることを意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「オンサイト」という用語は、一般に、測定又は決定が、生産が行われる同じ施設で行われることを意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「オフサイト」という用語は、一般に、測定又は決定が、生産が行われる場所とは異なる施設で行われることを意味する。
【0063】
本明細書で使用される場合、「オフライン」という用語は、一般に、生産プロセスが完了した後、測定又は決定が行われ、試料の回収が手動であることを意味する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「アットライン」という用語は、一般に、測定又は決定が生産領域内で行われ、試料の回収が手動であることを意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「オンライン」という用語は、一般に、測定又は決定が生産領域内で行われ、試料の回収が自動化されていることを意味する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「インライン」という用語は、一般に、測定又は決定が、バイオリアクター内に配置されたプローブによって生産領域内でリアルタイムで行われ、試料の回収が必要とされないことを意味する。
【0067】
本明細書に提供される実施形態の実施は、別段の指示がない限り、当業者の技能の範囲内である分子生物学、微生物学、及び免疫学の従来の技術を用いる。このような技術は、文献に十分に記載されている。参照に特に好適なテキストの例としては、以下が挙げられる:Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)、Glover,ed.,DNA Cloning,Volumes I and II(1985)、Freshney,ed.,Animal Cell Culture:Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986)、Kallen et al,Plant Molecular Biology - A Laboratory Manual(Ed.by Melody S.Clark;Springer-Verlag,1997)、Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London)、Scopes,Protein Purification:Principles and Practice(Springer Verlag,N.Y.,2d ed.1987)、National Research Council(US)Committee on Methods of Producing Monoclonal Antibodies.Monoclonal Antibody Production.Washington(DC):National Academies Press(US);1999、及びClausen H,et al.Glycosylation Engineering.2017.In:Varki A,Cummings RD,Esko JD,et al.,editors.Essentials of Glycobiology.3rd edition.Cold Spring Harbor(NY):Cold Spring Harbor Laboratory Press;2015-2017、及びNational Research Council(US)Committee on Revealing Chemistry through Advanced Chemical Imaging.Visualizing Chemistry:The Progress and Promise of Advanced Chemical Imaging.Washington(DC):National Academies Press(US);2006.3,Imaging Techniques:State of the Art and Future Potential。
【0068】
本出願の読者を助けるため、明細書の記載は、様々な段落若しくは節に分けられているか、又は本出願の様々な実施形態に向けられている。これらの分離は、段落又は節又は実施形態の実体を別の段落又は節又は実施形態の実体から切り離すものとみなされるべきではない。反対に、当業者であれば、本明細書の記載が広範な用途を有し、想到され得る様々な段落、パラグラフ、及び文章の全ての組み合わせを包含することを理解するであろう。いかなる実施形態の考察も、単なる例示であることを意味するものであり、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がこれらの実施例に限定されることを示唆することを意図するものではない。本出願は、特定の組み合わせが明示的に記載されているか否かにかかわらず、適用可能な構成要素の任意のものを、任意の組み合わせで使用することを企図する。
【0069】
5.1.治療用タンパク質
本開示は、部分的には、分子の糖化及び/又はグリコシル化を決定及び/又は測定することに関する。特定の実施形態では、分子は、治療用タンパク質である。治療用タンパク質の非限定的な例としては、例えば、抗体ベースの薬物(例えば、ポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体(mAb))、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、操作されたタンパク質足場、酵素、増殖因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、組換えタンパク質、及び血栓溶解剤が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、分子は、mAbである。いくつかの実施形態では、分子は、組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、分子は、Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、分子は、抗凝固剤である。いくつかの実施形態では、分子は、血液因子である。いくつかの実施形態では、分子は、骨形成タンパク質である。いくつかの実施形態では、分子は、操作されたタンパク質足場である。いくつかの実施形態では、分子は、酵素である。いくつかの実施形態では、分子は、増殖因子である。いくつかの実施形態では、分子は、ホルモンである。いくつかの実施形態では、分子は、インターフェロンである。いくつかの実施形態では、分子は、インターロイキンである。いくつかの実施形態では、分子は、血栓溶解剤である。
【0070】
5.2.糖化
本開示は、部分的には、治療用タンパク質(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)の糖化を決定及び/又は測定することに関する。タンパク質の糖化は、タンパク質のアミン基上の非酵素的グリコシル化であり、これは一般に、リジン側鎖上のアルファアミン末端及びイプシロンアミン基上で生じる。糖化は、非酵素反応において、グルコース、フルクトース、及びガラクトースなどの還元糖がタンパク質に共有結合するプロセスを伴う。アミノ酸と還元糖との間の反応は、1912年にMaillard(メイラード)によって最初に記載された。感受性の高いアミン基は、還元糖のアルデヒド基と可逆的に縮合して不安定なシッフ塩基中間体を形成する。これは、自発的な多段階アマドリ転位を起こして、より安定な共有結合ケトアミンを形成することができる。この反応は、タンパク質における生物物理学的及び構造的変化を引き起こす不可逆的製品をもたらす。
【0071】
糖化は、治療用タンパク質の生物活性及び/又は分子安定性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、本開示の例示的な治療用タンパク質を表すmAbの場合、糖化は、生物学的機能部位を遮断し、かつ/又はmAbの分解を引き起こすことができる。分解は、mAbの凝集を更にもたらし得る。結果として、治療用タンパク質の糖化は、生産プロセスに対する潜在的な重要品質特性(CQA)を表す。
【0072】
5.3.グリコシル化
本開示はまた、部分的には、治療用タンパク質(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)の、特定のグリカン構造を含むグリコシル化を決定及び/又は測定することに関する。
【0073】
グリコシル化は、治療用タンパク質上の特定の部位へのグリカンの結合(例えば、N結合型及び/又はO結合型グリコシル化)を伴う複雑な翻訳後修飾である。mAbのN結合型グリコシル化は、例えば、一般に、mAb重鎖のFc部分のAsn-X-Ser/Thr配列でのグリカンの結合を伴い、式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸であり得る(Ghaderi et al.,2012)。例えば、治療用タンパク質は、2つの重鎖の各々においてAsn297での単一のN結合型グリカンを含有するIgG1分子を含むことができる。N-グリコシル化はまた、各重鎖の可変領域において生じ得る(例えば、セツキシマブ)。O結合型タンパク質のグリコシル化は、一般に、単糖N-アセチルガラクトサミンとアミノ酸のセリン又はスレオニンとの間の結合を伴う。
【0074】
治療用タンパク質の特定の領域に共有結合した炭水化物部分の配置に応じて、これらの炭水化物のクラス(「グリカン」と呼ばれる)を誘導することができる。例えば、N-グリカンには、構造がわずかに異なるG0、G0F、G0F-GlcNac、G1F、及びG2Fが含まれる(図1Bを参照)。これらのグリカンの構造におけるバリエーションは、構造におけるわずかな変化をもたらし、タンパク質活性、コンフォメーション、安全性、及び有効性に対して重大な影響を与える可能性がある。結果として、治療用タンパク質のグリコシル化は、免疫原性を含むそれらの安全性及び有効性において極めて重要な役割を有し、適切なグリコシル化は、規制当局の承認の前にmAbなどの市販の治療用タンパク質の安全性及び効力を確保するために実証されなければならない重要品質特性(CQA)の1つである。
【0075】
5.4.プロセス分析技術(PAT)
糖化及びグリコシル化プロファイルを測定するための現在の方法には、ボロン酸親和性クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、比色アッセイ、及び液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)が含まれる。これらの方法は、精密で正確な結果を提供することができるが、時間及び資源の両方を消費する。更に、これらの方法を使用するサンプリングは、多くの場合、バイオリアクターから取り出される製品を犠牲にし、かつ汚染のより大きな危険性を伴う。現在の方法の別の欠点は、バッチが完了した後に製品の品質試験を必要とすることである。
【0076】
本明細書に提供されるように、本開示は、部分的には、プロセス分析技術(PAT)を使用した糖化及び/又はグリコシル化の測定に関する。PATは、バッチが完了する前に生産プロセスを制御及び監視するために使用することができるため、有利である。例えば、PATは、試料が、インラインで測定することなどによってリアルタイムで測定されることを可能にし得るか、又はそうでなければ、生産プロセス中に、例えば、アットライン若しくはオンラインで測定されることなどによって測定され得る。リアルタイム監視は、例えば、潜在的な品質問題を、それらがバッチに影響を与える前に特定する機会を提供するため、プロセス制御を増加させることができ、プロセス変動を低減し、収率改善に起因して供給コストを低減し、製品のリアルタイムリリースを実行し、リードタイムを低減し、分析方法の転送及び検証プロセスの低減に起因して製品の技術移転タイムラインにプラスの影響を与える。対照的に、オフライン試料が測定される頻度に依存する複雑で時間のかかる方法は、糖化及びグリコシル化などのこれらのCQAの限定された理解を与えるのみであり、多くの場合、バイオリアクタープロセスが完了した後にのみ評価される。したがって、生産プロセス中にPATを適用することによって、製品の品質をより慎重に監視することができ、生産された最終製品は、それらの仕様外である製品を選り分けるためにエンド・オブ・ライン試験に依存する製品と比較して、品質がより高くなるであろう。
【0077】
5.4.1.PATツール
本明細書に提供されるように、糖化及び/又はグリコシル化を検出及び/又は測定することは、例えば、蛍光分光法、拡散反射分光法、赤外分光法(例えば、近赤外、又は中赤外)、テラヘルツ分光法、透過及び吸収分光法、ラマン分光法(表面増強ラマン分光法(Surface Enhanced Raman Spectroscopy、SERS)、空間オフセットラマン分光法(Spatially Offset Raman spectroscopy、SORS)、透過ラマン分光法、及び/又は共鳴ラマン分光法を含む))の分光技術を伴うPATツールを使用して実行することができる。
【0078】
例として、ラマン分光法は、計量化学モデリング(例えば、節5.4.2に記載される計量化学モデリング)と提携することができるデータを提供することができるPATツールである。これは、明瞭で鋭いスペクトルを提供し、任意選択的に、生産プロセス中にインサイツプローブを使用して、バイオリアクター内(例えば、インサイツ)で記録することができる。ラマン分光法は、レーザー技術を使用して物質の化学的フィンガープリントを提供する、振動分光技術である。
【0079】
更に、それは、PATツールとして使用されており、代謝産物、増殖プロファイル、製品レベル、製品品質特性、栄養素供給、及びより最近では培養pHを含むいくつかのバイオ治療プロセス変数の非破壊的リアルタイム測定を提供している。しかしながら、他の分光技術もまた、本明細書に提供される方法及びシステムとともに使用することができ、ラマン分光法が単に例示的なPATツールであることを理解されたい。
【0080】
本明細書に記載されるPATツールのいずれかから取得されるスペクトルは、バイオリアクター内にあるプローブを用いて(すなわち、インサイツで)、又はバイオリアクターから試料を回収し、バイオリアクターの外側で試料を測定することによって収集することができる。スペクトルを多変量解析(multivariate analysis、MVA)と組み合わせて、糖化及び/又はグリコシル化に加えて、他の動作パラメータ(例えば、代謝産物及び/又は細胞濃度)の監視を可能にすることもできる。例えば、1つ又は2つ以上の動作パラメータ(例えば、pH、温度、圧力、溶存酸素、光学密度、酸素取り込み速度など)に関するデータを、支援情報(原材料分析、供給のタイミング及び持続時間、手動細胞計数、代謝産物レベルなど)と組み合わせて、化学計量モデリング法(第5.4.2節に記載の化学計量モデリング)によって扱うことができる生産プロセスに関する大量の高次元データを生成することができる。スペクトルは、グルコース供給の前後で収集することもできる。
【0081】
したがって、分光分析を計量化学モデリング法(例えば、第5.4.2節に記載の計量化学モデリング)と組み合わせることによって、糖化及び/又はグリコシル化のリアルタイム監視、並びに任意選択的に、生産プロセスに関する追加情報を達成することができる。したがって、ラマン分光法などの分光法は、実行が完了した後ではなく、生産プロセス中にバイオプロセスを監視する能力を提供する。結果として、分光法は、糖化及び/又はグリコシル化を測定するためのPATツールとして使用することができ、1つ又は2つ以上の動作パラメータ(例えば、栄養素供給)を制御するフィードバックループとして測定結果を実装する選択肢を有し、それによって、治療用タンパク質上の所望の量の糖化及び/又はグリコシル化、並びに任意選択的に、特定のグリカン構造がもたらされる。
【0082】
5.4.2.計量化学モデリング
本明細書に提供される分光法は、大量の高次元データを生成することができる。一般に、データは、例えば、部分最小二乗法(PLS)、古典的最小二乗法(classic least square、CLS)、又は主成分分析(principle component analysis、PCA)などの既知の技術を使用して、化学計量モデリング法によって処理される。次いで、捕捉された吸収スペクトルと、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)などによってオフラインで取得された参照レベルとを用いてモデルを構築する。スペクトルは、前処理方法(いくつか例を挙げると、一次及び二次又は導関数、拡張乗算的散乱補正、平均センタリング、及び自動スケーリングなど)にかけることができる。前処理方法を使用して、流体の濁り又は光透過率、機器ドリフト、及び流体と接触しているレンズ上に蓄積した汚染物質などの干渉を軽減するのを助けることができる。前処理方法はまた、ノイズフィルターとして機能して、結果として生じる液体の蒸気圧に影響を及ぼし得る流体中の実際の組成変化にモデルが焦点を当てることを可能にする。その後、計量化学モデルを較正曲線としてPATツール分析器に実装して、糖化及び/又はグリコシル化をリアルタイムで予測する。
【0083】
したがって、いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の回帰モデルは、部分最小二乗(PLS)、古典的最小二乗(CLS)、及び主成分分析(PCA)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の回帰モデルは、部分最小二乗(PLS)モデルを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の回帰モデルは、古典的最小二乗(CLS)モデルを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の回帰モデルは、主成分分析(PCA)を含む。
【0084】
5.4.3.測定パラメータ。
本明細書に提供されるように、糖化及び/又はグリコシル化は、生産プロセス中にラマン分光法などのPATツールを使用して(例えば、アットライン、オンライン、及び/若しくはインライン)、又は生産プロセスが完了した後(例えば、オフライン)で測定することができる。したがって、いくつかの実施形態では、測定することは、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、インラインで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、アットラインで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、オンラインで行われる。いくつかの実施形態では、測定することは、オフラインで行われる。
【0085】
糖化及び/又はグリコシル化はまた、任意選択的に、オンサイト又はオフサイトで測定され得る。いくつかの実施形態では、測定することは、オンサイトで行われる。いくつかの実施形態では、それはオフサイトで行われる。
【0086】
スペクトルを提供する本明細書に開示されるPATツールは、生産プロセス中に頻繁な測定を提供することができる。例えば、ラマン分光法を使用することによって、通常15分毎に1回の頻度で1日1回のオフライン測定に限定されたプロセス変数の範囲について予測値を提供する可能性があり、単一のプローブが使用される場合、16日間のプロセスについて1日1回のオフライン測定に対して最大360倍の情報量を生成する。
【0087】
したがって、いくつかの実施形態では、測定は、1日2回以上行うことができる。より頻繁な測定が所望される場合、測定することは、約5~60分毎、約10~30分毎、約10~20分毎、又は約12.5分毎に行われ得る。一般に、より頻繁な測定は、糖化及び/又はグリコシル化レベルのより正確な予測を可能にすることができる。次に、これは、ユーザが分子の糖化及び/又はグリコシル化レベルをより良好に制御することを可能にする。
【0088】
5.5.生産
本明細書に提供されるように、本開示は、部分的には、バイオリアクター(例えば、第5.5.1節に記載されているバイオリアクター)で生物学的に活性な生物を培養することによって(例えば、第5.5.2節に記載されている細胞培養方法を使用することによって)生産される治療用タンパク質(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)上の糖化及び/又はグリコシル化を測定することに関する。
【0089】
5.5.1.バイオリアクター
本明細書に提供されるように、本開示は、部分的には、バイオリアクターで増殖させた治療用タンパク質(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)上の糖化及び/又はグリコシル化を測定することに関する。様々なタイプのバイオリアクターを、治療用タンパク質の生産に使用することができる。例えば、バイオリアクターは、ステンレス鋼撹拌槽型バイオリアクター(stirred tank bioreactor、STR)、エアリフトリアクター、使い捨てバイオリアクター、又はそれらの組み合わせ(例えば、STRと組み合わせた使い捨てバイオリアクター)であり得る。
【0090】
バイオリアクターは、治療用タンパク質(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)を生産することができる生体細胞の培養及び増殖を可能にする任意の好適な体積を有することができる。例えば、バイオリアクターの体積は、約0.5リットル(L)~約25,000Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約250L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約0.5リットル(L)~約250Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約50L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約1L~約50Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約25L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約1L~約25Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約10L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約5L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約1L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約1Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約2Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約5L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約10L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約25L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約50L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約100L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約250L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、1,000L以上であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約1,000L~約25,000Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約10,000L~約25,000Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約1,000Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約2,000Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約5,000L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約10,000L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約15,000L以下であり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの体積は、約25,000L以下であり得る。
【0091】
本明細書に提供されるように、本開示の特定の態様では、計量化学モデルは、まず、縮小スケールのバイオリアクター(例えば、250L未満)から取得されたデータを使用して生成することができ、計量化学モデルの堅牢性及び予測力は、製造スケールでの糖化及び/又はグリコシル化の予測に使用するための製造スケールのバイオリアクター(例えば、2,000L以上、及び好ましくは10,000L~25,000L)から取得されたデータを使用してモデルを精緻化することによって増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及びシステムは、異なる体積を有する2つ又は3つ以上のバイオリアクターを伴う。
【0092】
製造スケールのバイオリアクターから取得されたデータの追加は、モデルの予測能力(ability to predict)を改善する。これは、縮小スケールのプロセスではなく、製造スケールのバイオリアクターで生じるバイオリアクター培養の変化に起因し得る。例えば、培養混合時間、CO除去、及び酸素移動速度は、製造スケールによって異なり得る。例として、製造スケールプロセスにおける酸素移動の減少は、縮小スケールでは見られないように、mAb製品の糖化(具体的には、グリコシル化)プロファイルに影響を及ぼす可能性を有する。減少した酸素移動は、酸素が短期間存在しないバイオリアクターにおける「デッドゾーン」領域が存在する可能性をもたらす(Ast et al.,2019)。これは、バイオリアクターにおける宿主細胞に対する酸化ストレスの増加をもたらす。酸化ストレスは、mAbのグリコシル化に影響を及ぼすことが報告されている。このストレスは、アセチル-CoAの形成を減少させ、次に、G0F-GlcNacとは別に、本明細書に記載のグリコシル化標的の骨格構造の一部を形成する重要なアミドであるN-アセチルグルコサミン(GlcNac)の減少をもたらす(Lewis et al.,2016)。したがって、製造スケールのプロセスから取得されたデータを組み込むことによって、これらの変動をモデルにおいて説明することができ、モデルの予測可能性を改善するのに役立つ。
【0093】
したがって、いくつかの実施形態では、計量化学モデルは、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターから生成されたデータ、並びに1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターから生成されたデータを伴う。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約250L以下の最大閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約100L以下の最大閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約50L以下の最大閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約25L以下の最大閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約10L以下の最大閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約5L以下の最大閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約2L以下の最大閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約1L以下の最大閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約250L以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約100L以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約50L以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約25L以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約10L以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約5L以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約2L以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々は、約1L以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積は、約0.5リットル(L)~約250Lであり得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクターの各々の体積は、約1L~約50Lであり得る。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積は、約1L~約25Lであり得る。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積は、約1L~約10Lであり得る。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積は、約1L~約5Lであり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約1,000L以上の最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約2,000L以上の最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約5,000L以上の最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約10,000L以上の最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約15,000L以上の最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約20,000L以上の最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約25,000L以上の最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約2,000L~約25,000Lの最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約5,000L~約25,000Lの最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約10,000L~約25,000Lの最小閾値体積を有する。好ましい実施形態では、1つ又は2つ以上のバイオリアクターの各々は、治療用タンパク質を製造するために使用されるバイオリアクターの体積に等しい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約1,000L以上の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約2,000L以上の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約5,000L以上の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約10,000L以上の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約15,000L以上の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約20,000L以上の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約25,000L以上の体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約1,000L~約25,000Lの体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約2,000L~約25,000Lの体積を有する。いくつかの実施形態では、第2のバイオリアクターの各々は、約5,000L~約25,000Lの体積を有する。いくつかの実施形態では、第2のバイオリアクターの各々は、約10,000L~約25,000Lの体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、約15,000L~約25,000Lの体積を有する。好ましい実施形態では、1つ又は2つ以上のバイオリアクターの各々は、治療用タンパク質を製造するために使用されるバイオリアクターの体積に等しい体積を有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の最大閾値体積よりも少なくとも5倍(5×)大きい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の最大閾値体積よりも少なくとも10倍大きい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の最大閾値体積よりも少なくとも25倍大きい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の最大閾値体積よりも少なくとも50倍大きい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の最大閾値体積よりも少なくとも100倍大きい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の最大閾値体積よりも少なくとも250倍大きい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の最大閾値体積よりも少なくとも500倍大きい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の最大閾値体積よりも少なくとも1,000倍大きい最小閾値体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積よりも少なくとも5倍(5×)大きい体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積よりも少なくとも10倍大きい体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積よりも少なくとも25倍大きい体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積よりも少なくとも50倍大きい体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積よりも少なくとも100倍大きい体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積よりも少なくとも250倍大きい体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積よりも少なくとも500倍大きい体積を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの各々は、1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクターの各々の体積よりも少なくとも1,000倍大きい体積を有する。
【0096】
5.5.2.細胞培養方法
本開示の治療用タンパク質(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)の生産は、治療用タンパク質を生産することができる当該技術分野で既知の任意の好適な生物学的に活性な宿主細胞型を用いて行うことができる。例えば、哺乳動物細胞及び非哺乳動物細胞は、治療用タンパク質の生産のためのプラットフォームとして使用され得る。治療用タンパク質の生産のための哺乳動物宿主細胞株の非限定的な例としては、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)細胞、マウス骨髄腫由来NS0及びSp2/0細胞、ヒト胎児腎臓細胞(HEK293)、並びにヒト胎児網膜芽細胞由来PER.C6細胞が挙げられる。非哺乳動物宿主の非限定的な例としては、例えば、Pichia pastoris、Arabidopsis thaliana、Nicotiana benthamiana、Aspergillus niger、及びEscherichia coliが挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、治療用タンパク質生産細胞株は、哺乳動物細胞株である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞株は、非ヒト細胞株である。
【0097】
異なる宿主系は、治療用タンパク質のグリコシル化プロファイルにおける特異性及び不均一性に寄与する、様々なグリコシル化酵素及び輸送体を発現することができる。同様に、異なる宿主系は、治療用タンパク質の糖化レベルに対して異なる効果を有することができる。したがって、例えば、特定のグリカン構造及び/又は糖化レベルを有する所望の治療用タンパク質を生成することができる宿主細胞株を操作又は特異的に選択することが可能である。
【0098】
生物学的に活性な細胞の培養及び増殖は、当該技術分野で既知の様々な方法、例えば、バッチプロセス、流加プロセス、連続培養、又はそれらの組み合わせ(例えば、流加と灌流との間のハイブリッド)を使用して行うことができる。
【0099】
バッチ法では、全ての栄養素が培養の開始時に供給され、その後のバイオプロセスにおいてそれ以上添加されない。バイオプロセス全体の間、追加の栄養素は添加されないが、任意選択的に、ガス、酸、及び塩基などの制御要素が添加されてもよい。次いで、バイオプロセスは、栄養素が消費されるまで続く。
【0100】
流加法では、設定された時点で、又は栄養素が枯渇したら、栄養素が大きなボーラスとしてバイオリアクターに添加される。一般に、最初の培養で使用されたものと同じ培地が供給にも使用されるが、より濃縮されたものである。供給溶液組成物は、例えば、より大きな速度で消費されている使用済み培地栄養素を分析及び特定することなどによって、異なる培養段階におけるそれらの代謝状態に基づいて細胞を供給するように設計することができる。加えて、流加法において使用される培地は、細胞培養の必要性に適応するように、又は治療用タンパク質の生産を促進するように(例えば、細胞増殖を促進するように若しくは治療用タンパク質の生産を刺激するように)改変することができる。例えば、いくつかの実施形態では、培地は、治療用タンパク質の糖化を低減又は排除するように改変することができる。
【0101】
連続培養では、栄養素がバイオリアクターに連続的に添加され、一般に、等量の変換された栄養素溶液が同時に系から取り出される。3つの最も一般的な種類の連続培養は、ケモスタット、タービドスタット、及び灌流である。灌流法は、増殖中の培養物を通して培地を循環させ、同時に廃棄物の除去、栄養素の供給、及び製品の回収を可能にする。
【0102】
本明細書に提供されるように、いくつかの実施形態では、供給が自動化される。特定の態様では、供給が自動化され、自動化は、1つ又は2つ以上の動作パラメータ(例えば、第5.5.3節に記載の動作パラメータ)を制御する。
【0103】
5.5.3.動作パラメータ
治療用タンパク質の糖化は、生産プロセス中に起こり得、ここで、グルコースなどの還元糖が、生物学的に活性な生物(例えば、治療用タンパク質を生産する細胞培養物)のエネルギー源として使用される。糖化のレベルは、哺乳動物細胞培養プロセス中に細胞培養物に添加される糖の量によって影響され得る。加えて、pHレベル、栄養素レベル、時間(例えば、培養培地の添加の頻度間隔)、温度、及びイオン強度などの他の要因が、糖化の動態及び程度に影響を及ぼし得る。更に、例えば、ヘキソース糖などの細胞培養培地で使用される特定の種類の糖、及びアクセス可能なアミノ基の特定の反応性は、タンパク質糖化に影響を及ぼし得る。
【0104】
例えば、溶存酸素(dissolved oxygen、DO)レベル、バイオリアクターの培養温度、宿主細胞型、及び栄養素又はサプリメントの利用可能性などの多くのプロセスパラメータが、治療用タンパク質のグリコシル化を形成することができる。
【0105】
したがって、いくつかの実施形態では、バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータは、許容可能な量の糖化及び/又はグリコシル化を有する治療用タンパク質を生産するために、決定された糖化及び/又はグリコシル化レベルに基づいて維持されるか、又は選択的に修正される。いくつかの実施形態では、動作パラメータは、温度、pHレベル、溶存酸素(DO)レベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、動作パラメータは、温度を含む。例えば、治療用タンパク質が望ましい量の糖化及び/又はグリコシル化を有する場合、バイオリアクターの温度は、糖化及び/又はグリコシル化のレベルを測定するときのバイオリアクターにおける温度又はその付近で維持することができる。代替的に、治療用タンパク質が望ましくない量の糖化及び/又はグリコシル化を有する場合、バイオリアクターの温度は、所望の量の糖化及び/又はグリコシル化を達成するために、生産プロセスの一部又は全体について調整され得る。いくつかの実施形態では、温度は、生理学的温度である。いくつかの実施形態では、温度は、約25℃~42℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約35℃~39℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約35.5℃~37.5℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約35℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約35.5℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約36℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約36.5℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約37℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約37.5℃の温度に維持又は調整される。特定の実施形態では、バイオリアクターにおける温度は、非生理学的温度である。いくつかの実施形態では、温度は、25℃未満の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約4℃~約25℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約4℃~約10℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約4℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約5℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約6℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約7℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約8℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約9℃の温度に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、温度は、約10℃の温度に維持又は調整される。
【0107】
いくつかの実施形態では、動作パラメータは、pHレベルを含み、治療用タンパク質上の糖化及び/又はグリコシル化の測定されたレベルに応じて、維持又は修正される。例えば、治療用タンパク質が望ましい量の糖化及び/又はグリコシル化を有する場合、バイオリアクターのpHは、糖化及び/又はグリコシル化のレベルを測定するときのバイオリアクターにおけるpHレベル又はその付近で維持することができる。高pH(≧7.0)は、初期の細胞増殖期に有益であり得る。しかしながら、高pH、高乳酸、及び高浸透圧カスケードは、多くの場合、細胞増殖の遅延及び細胞死の加速を引き起こす。したがって、pHレベルはまた、生物学的に活性な細胞がどの増殖期にあるのかに依存して、生産プロセスの間に調整される必要があり得る。例えば、pHは、二酸化炭素及び/又は炭酸ナトリウムの添加を使用して維持又は調整することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、pHは、生理学的pHである。いくつかの実施形態では、pHは、4.0~9.0である。いくつかの実施形態では、pHは、5.0~8.0である。いくつかの実施形態では、pHは、6.0~7.0である。いくつかの実施形態では、pHは、4.0~6.0である。いくつかの実施形態では、pHは、5.0~7である。いくつかの実施形態では、pHは、6.0~8.0である。いくつかの実施形態では、pHは、約4.0に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約4.5に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約5.0に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約5.5に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約6.0に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約6.5に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約6.6に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約6.7に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約6.8に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約6.9に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.0に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.1に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.2に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.3に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.4に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.5に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.6に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.7に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.8に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約7.9に維持又は調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約8.0に維持又は調整される。
【0109】
いくつかの実施形態では、動作パラメータは、培養培地のグルコース濃度を含む。例えば、治療用タンパク質が望ましいレベルの糖化及び/又はグリコシル化を有する場合、流加培養若しくは灌流培養などによってバイオリアクターに添加される培養培地のグルコース濃度、又はハイブリッド流加及び灌流のグルコース濃度は、糖化及び/又はグリコシル化レベルを測定するときに使用される標的濃度又はその付近で維持することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、動作パラメータは、培養培地のグルコース添加のための内部頻度を含む。例えば、治療用タンパク質が望ましいレベルの糖化及び/又はグリコシル化を有する場合、流加培養若しくは灌流培養、又はハイブリッド流加及び灌流のグルコース濃度などにおける、バイオリアクターへの培養培地のグルコース添加の頻度間隔は、糖化及び/又はグリコシル化レベルを測定するときの頻度又はその付近で維持することができる。いくつかの実施形態では、頻度は、培養培地の添加が連続的であるように維持又は調整される。いくつかの実施形態では、頻度は、培養培地の添加が分割間隔、例えば、6時間であるように維持又は調整される。いくつかの実施形態では、頻度は、培養培地の添加が分割間隔、例えば、12時間であるように維持又は調整される。いくつかの実施形態では、頻度は、培養培地の添加が毎日のボーラス、例えば、24時間であるように維持又は調整される。いくつかの実施形態では、頻度は、培養培地の添加が24時間毎より長くなるように維持又は調整される。
【0111】
いくつかの実施形態では、動作パラメータは、栄養素レベルを含む。いくつかの実施形態では、栄養素レベルは、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、動作パラメータは、グルコースの濃度を含む。いくつかの実施形態では、動作パラメータは、乳酸塩の濃度を含む。いくつかの実施形態では、動作パラメータは、グルタミンの濃度を含む。いくつかの実施形態では、動作パラメータは、アンモニウムイオンの濃度を含む。
【0112】
特定の実施形態では、グルコース濃度は、細胞密度に応じて、約0.5g/L~約40g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約0.5g/L~約30g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約0.5g/L~約20g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約0.5g/L~約10g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約0.5g/L~約5g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約5g/L~約40g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約10g/L~約40g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約20g/L~約40g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約30g/L~約40g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約35g/L~約40g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約10g/L~約30g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約10g/L~約20g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約5g/L~約10g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約10g/L~約15g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約15g/L~約20g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約20g/L~約25g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約25g/L~約30g/Lに維持又は調整される。特定の実施形態では、グルコース濃度は、約30g/L~約35g/Lに維持又は調整される。
【0113】
例として、許容可能なレベルの糖化を有する治療用タンパク質は、グルコースなどの還元糖の濃度を維持することができる。代替的に、更なる例として、望ましくない量の糖化を有する治療用タンパクは、還元糖の濃度などの栄養素レベルを有することができ、かつ/又は培養培地添加の頻度を低減することができる。動作パラメータをどの程度調整すべきであるか否かを理解することは、当業者の技能の範囲内である。更に、他の代替的な動作パラメータを糖化レベルに従って調整することができ、上記の例は単なる例示であることが意図されていることを理解されたい。
【0114】
同様に、許容可能なレベルの特定のグリカン構造を有する治療用タンパク質は、維持された1つ又は2つ以上の動作パラメータを有し得る。代替的に、望ましくないレベルの特定のグリカン構造を有する治療用タンパク質は、特定のグリカン構造を制御するように調整された1つ又は2つ以上の動作パラメータを有することができる。
【0115】
特定の態様では、1つ又は2つ以上の動作パラメータは、測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正される。例えば、糖化及び/又はグリコシル化は、PATツール(例えば、第5.4.1節に記載されているPATツール)を使用して測定することができ、1つ又は2つ以上の動作パラメータは、所望のグリカン構造のレベルが所定の閾値を上回るか又は望ましくないグリカン構造のレベルが所定の閾値を下回る場合、バイオリアクターにおいて自動的に維持され得る。代替的に、1つ又は2つ以上の動作パラメータは、所望のグリカン構造のレベルが所定の閾値を下回るか、又は望ましくないグリカン構造のレベルが所定の閾値を上回る場合、バイオリアクターにおいて自動的に修正され得る。
【0116】
治療用タンパク質上の糖化の許容可能なレベルの閾値は、一般に、経験的に決定される。いくつかの実施形態では、糖化の所定の閾値は、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の50%未満であろう。いくつかの実施形態では、糖化の所定の閾値は、40%未満であろう。いくつかの実施形態では、糖化の所定の閾値は、30%未満であろう。いくつかの実施形態では、糖化の所定の閾値は、25%未満であろう。いくつかの実施形態では、糖化の所定の閾値は、20%未満であろう。いくつかの実施形態では、糖化の所定の閾値は、15%未満であろう。いくつかの実施形態では、糖化の所定の閾値は、10%未満であろう。
【0117】
したがって、いくつかの実施形態では、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の少なくとも90%が糖化されていないであろう。いくつかの実施形態では、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の少なくとも85%が糖化されていないであろう。いくつかの実施形態では、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の少なくとも80%が糖化されていないであろう。いくつかの実施形態では、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の少なくとも75%が糖化されていないであろう。いくつかの実施形態では、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の少なくとも70%が糖化されていないであろう。いくつかの実施形態では、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の少なくとも60%が糖化されていないであろう。いくつかの実施形態では、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の少なくとも50%が糖化されていないであろう。
【0118】
治療用タンパク質上の糖化のレベルの閾値もまた、一般に、経験的に決定されるであろう。例えば、生産設定におけるバッチ間のグリコフォーム含有量におけるあるレベルの変動性が予想され、一般に、閾値は、グリコフォーム含有量においてあまりにも大きな変動性を生じない許容可能な限界であろう。したがって、いくつかの実施形態では、望ましくないグリカン構造の所定の閾値は、バイオリアクターにおける治療用タンパク質の50%未満であろう。いくつかの実施形態では、望ましくないグリカン構造の所定の閾値は、40%未満であろう。いくつかの実施形態では、望ましくないグリカン構造の所定の閾値は、30%未満であろう。いくつかの実施形態では、望ましくないグリカン構造の所定の閾値は、25%未満であろう。いくつかの実施形態では、望ましくないグリカン構造の所定の閾値は、20%未満であろう。いくつかの実施形態では、望ましくないグリカン構造の所定の閾値は、15%未満であろう。いくつかの実施形態では、望ましくないグリカン構造の所定の閾値は、10%未満であろう。
【0119】
5.5.4.精製。
一般に、治療用タンパク質(例えば、第5.1節に開示されている治療用タンパク質)は、生産プロセス中に増殖した細胞から分泌される。生産プロセスが完了した後、治療用タンパク質を細胞から分離し、タンパク質精製(FDA規格に従う精製を含む)に好適な当該技術分野の任意の技術を使用して精製することができる。好ましくは、精製は、宿主細胞タンパク質、核酸、及び/又は脂質などのプロセス不純物を除去するであろう。
【0120】
精製プロセスは、1つ又は2つ以上のステップを伴うことができる。例えば、治療用タンパク質の精製は、一次回収、精製、及び/又は最終精製(polishing)ステップを伴い得る。一般に、一次回収ステップは、培養ブロスから細胞及び細胞破片を除去するための遠心分離及び/又は深層濾過、並びに治療用タンパク質製品を含有する細胞培養上清の清澄化からなる。一次回収プロセスを改善するために、当該技術分野で既知の追加の技術を更に含めることができる。例えば、単純な酸、二価カチオン、ポリカチオン性ポリマー、カプリル酸、及び刺激応答性ポリマーなどの凝集剤の使用は、細胞培養清澄化を増強し、細胞、細胞破片、DNA、宿主細胞タンパク質(host cell protein、HCP)、及び/又はウイルスのレベルを低減する一方、製品流内に治療用タンパク質を保持することができる。
【0121】
精製はまた、1つ又は2つ以上のクロマトグラフィー技術(例えば、親和性、イオン交換、疎水性相互作用)、レクチンベースの精製、ボロン酸ベースの精製、及び/又は濾過技術(例えば、限外濾過)を伴ってもよく、これらは、より小さな不純物から製品を分離する際の捕捉ステップとして、及び/又は全体的に体積を減少させる際の濃縮ステップとして使用される。
【0122】
任意選択的に、最終精製ステップはまた、治療用タンパク質を保存する前に、例えば、ウイルス、凝集タンパク質、及び任意の他の不純物を除去するために行われ得る。最終精製ステップは、例えば、ウイルス濾過、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及び/又は濾過ステップ(例えば、限外濾過/透析濾過及び/又は滅菌濾過)を含んでもよい。
【0123】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法及びシステムは、治療用タンパク質を精製することを伴う。
【0124】
5.6.グリコシル化及び/又は糖化を決定するための方法及びシステム。
図6図600を参照すると、本主題は、プロセス分析技術(PAT)ツール610を利用することができ、これは、バイオリアクター620内で起こる反応の態様を監視するか又はそうでなければそれを特徴付けるために、バイオリアクター620の内部にあるか又はその中に延びるプローブ612を有することができる。PATツール610は、1つ又は2つ以上のデータプロセッサと、データプロセッサによって命令をロードし実行することができるメモリと、を備える。PATツール610は、様々な形態をとることができ、場合によっては、バイオリアクター620内で起こる反応の態様を特徴付けるために、ラマン分光法を利用するか、又はそうでなければそれを含む。場合によっては、PATツール610は、ネットワーク630を介して、以下に記載される様々なアルゴリズムを実行することができる1つ又は2つ以上のコンピューティングシステム640(例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ、タブレット、IoTデバイス、携帯電話、専用制御ユニットなど)と通信する。コンピューティングシステム640はまた、バイオリアクター620に関連付けられた1つ又は2つ以上の動作パラメータを変化させるように機能することができる。場合によっては、バイオリアクター620はまた、1つ又は2つ以上の遠隔コンピューティングシステム640と通信することができるように、ネットワーク接続性を有することができ、これは次に、バイオリアクター620の1つ又は2つ以上の動作パラメータを変化させることができる。
【0125】
PATツール610は、上述のように、(例えば、バイオリアクター620における)生産プロセスをインライン又はリアルタイムでオンラインで制御及び監視するために使用され得る。PATツール610は、分光技術(例えば、近赤外分光法、蛍光分光法、及びラマン分光法)を利用することができる。ラマン分光法は、近赤外分光法における水干渉及びスペクトルをあまり鋭くないものにし得る他の干渉などの他の技術のいくつかの欠点に悩まされることなく、明瞭で鋭いスペクトルを提供するので、それ自体、バイオリアクター生産プロセスにおける使用に特に好適な技術として存在する。PATツール610は、物質の化学的フィンガープリントを提供する振動分光技術であるラマン分光法を実装するためのレーザーを含んでもよい。本文脈におけるPATツール610は、代謝産物、増殖プロファイル、製品レベル、製品品質特性、栄養素供給、培養pHなどを含むいくつかのバイオ治療プロセス変数の非破壊的リアルタイム測定を提供することができるという点で技術的に有利である。
【0126】
コンピューティングシステム640は、PATツール610からのラマン分光分析を計量化学モデリングと組み合わせて、これらの変数のリアルタイム監視を提供することができる。ラマン分光法によって取得されたスペクトルピークは、計量化学モデリングソフトウェアを使用して、(オフライン分析によって予め定義するかつ/又は測定することができる)目的の1つ又は2つ以上のプロセス変数と関連付けられる。様々なシグナル処理技術は、PATツール610によって生成されたスペクトルピークを特定し、定量化することができる。シグナル処理技術の1つのタイプは、部分最小二乗(PLS)回帰モデルであり、これは、ラマンシグナル対分析物濃度の線形性を考慮して、ラマンデータをモデル化するために用いられ得る。いくつかの実施形態では、線形PLSモデルが用いられ得る。特定の実施形態では、非線形PLSモデルが用いられ得る。
【0127】
PATツール610を使用して、バイオリアクター620における大きな治療用タンパク質(例えば、mAbタンパク質)に関する態様を測定することができるか、又はそうでなければそれを特徴付けることができる。具体的には、いくつかのバリエーションにおいて、PATツール610を使用して、製造スケールのバイオリアクターにおける治療用タンパク質の糖化及び/又はグリコシル化プロファイルのリアルタイム監視を提供することができる。製造スケールは、複雑な環境条件に対処する必要があるという点で、より小規模の実験室バイオリアクターとは対照的に、多くの技術的困難を提示する。本主題は、利用されるPATツール610、及び場合によってはラマンベースのPLSモデルの使用によって、これらの技術的困難、並びに糖タンパク質形成の複雑な性質に対処する。
【0128】
本明細書のPATツール610、バイオリアクター620、及び/又はコンピューティングシステム640の態様は、デジタル電子回路、集積回路、特に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はこれらの組み合わせで実現され得る。これらの様々な実装は、少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能及び/又は解釈可能である1つ又は2つ以上のコンピュータプログラムの実装が含まれてもよく、このプロセッサは、記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、それらへデータ及び命令を送信するように接続された専用又は汎用プロセッサとすることができる。
【0129】
これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション又はコードとしても知られる)は、プログラマブルプロセッサのための機械命令を含み、高レベル手続き型及び/若しくはオブジェクト指向プログラミング言語で、並びに/又はアセンブリ/機械言語で実装され得る。本明細書で使用される場合、「機械可読媒体」という用語は、機械命令及び/又はデータをプログラマブルプロセッサに提供するために使用される、機械可読シグナルとしての機械命令を受信する機械可読媒体を含む、任意のコンピュータプログラム製品、装置、及び/又はデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、ソリッドステートドライブ、メモリ、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device、PLD))を指す。「機械可読信号」という用語は、プログラム可能なプロセッサに機械命令及び/又はデータを提供するために使用される任意の信号を指す。
【0130】
コンピューティングシステム640は、バックエンドコンポーネント(例えば、データサーバとして)、ミドルウェアコンポーネント(例えば、アプリケーションサーバ)、又はフロントエンドコンポーネント(例えば、グラフィカルユーザインターフェース若しくはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータであって、それを介してユーザが本明細書に記載される主題の実装と相互作用することができるコンピュータ)、あるいはそのようなバックエンド、ミドルウェア、又はフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含むことができる。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形態又は媒体(例えば、通信ネットワーク)によって相互接続され得る。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「local area network、LAN」)、広域ネットワーク(「wide area network、WAN」)、及びインターネットが挙げられる。コンピューティングシステム640は、クライアント及びサーバを含んでもよい。クライアント及びサーバは、一般に、互いに隔たっており、典型的には、通信ネットワークを介して相互作用する。クライアント及びサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、かつ互いにクライアントサーバ関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。
【0131】
図7は、グリコシル化分子上のグリカン構造の決定を示すプロセスフロー図700であり、710では、スペクトルデータを取得するか、又はそうでなければそれを生成する、プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、複数の実行の各々について、グリコシル化分子上の1つ又は2つ以上のグリカン構造のレベルが取得される。レベルは、第1の閾値以下の体積を有する1つ又は2つ以上のバイオリアクター内で起こるプロセスに基づいて取得される。その後、720では、取得されたスペクトルデータに基づいて、グリコシル化分子上の1つ又は2つ以上のグリカン構造のレベルを取得されたスペクトルデータと相関させる1つ又は2つ以上の回帰モデルが生成される。その後、730では、グリコシル化分子上の1つ又は2つ以上のグリカン構造は、PATツールを使用して、第2の閾値以上の体積を有する1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクター内で測定されて、測定されたスペクトルデータが得られる。次いで、少なくとも1つのコンピューティングデバイスは、740で、生成された1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ測定されたスペクトルデータに基づいて、1つ又は2つ以上のバイオリアクター内のグリコシル化分子上の1つ又は2つ以上のグリカン構造のレベルを決定する。
【0132】
1つ又は2つ以上の回帰モデルは、取得されたスペクトルデータと測定されたスペクトルデータとの組み合わせに基づいて精緻化され得る。
【0133】
所望のグリコシル化分子を産生するために、決定されたレベルに基づいて、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを維持する、かつ/又は選択的に修正する(すなわち、変更する)ことができる。1つ又は2つ以上の動作パラメータは、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む。栄養素レベルは、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される。バイオリアクターにおけるグルコースの濃度は、測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正することができる。
【0134】
いくつかの変形形態では、グリコシル化分子が精製され得る。
【0135】
グリカン構造は、G0F-GlcNac、G0、G0F、G1F、及びG2F、又はそれらの組み合わせを含む様々な形態をとることができる。
【0136】
いくつかの変形形態では、測定は、異なる体積を有する2つ又は3つ以上のバイオリアクターを使用して行うことができる。
【0137】
第1の閾値は、約25リットル以下を含む異なる体積であってもよい。
【0138】
第2の閾値は、約1,000リットル以上(2,000リットルを含む)、10,000~約25,000リットル、及び10,000~約15,000リットルを含む異なる体積に対応することができる。
【0139】
第2の閾値は、第1の閾値よりも少なくとも5倍大きく、場合によっては、第1の閾値よりも少なくとも10倍大きく、場合によっては、第1の閾値よりも少なくとも100倍大きく、他の場合では、第1の閾値よりも少なくとも500倍大きくてもよい。
【0140】
PATツールは、ラマン分光法を含む分光技術を利用することができる。
【0141】
1つ又は2つ以上の回帰モデルは、部分最小二乗(PLS)モデルを含むことができるか、又はそうでなければそれを使用することができる。
【0142】
グリコシル化分子は、モノクローナル抗体(mAb)を含むことができる。代替的に、グリコシル化分子は、非mAbを含む。
【0143】
決定は、オンサイト及び/又はオフサイトで行うことができる。更に、測定及び/又は決定は、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行うことができる。
【0144】
図8は、所望のグリカン構造を有するグリコシル化分子の産生を示すプロセスフロー図800である。810では、プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、1つ又は2つ以上のグリカン構造を測定して、スペクトルデータを得る。かかる測定することは、1,000リットル以上の体積を有するバイオリアクター内で行われる。その後、820では、バイオリアクター内の1つ又は2つ以上のグリカン構造のレベルが、1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって決定される。1つ又は2つ以上の回帰モデルは、50リットル以下の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクター及び1,000リットル以上の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクターからの試行実行を使用して生成される。830では、所望のグリカン構造のレベルが所定の閾値を上回るか又は望ましくないグリカン構造のレベルが所定の閾値を下回る場合、バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータが維持される。更に、840では、所望のグリカン構造のレベルが所定の閾値を下回る場合、又は望ましくないグリカン構造のレベルが所定の閾値を上回る場合、バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータが修正される。
【0145】
図9は、分子上の糖化を決定するためのプロセスフロー図900である。910では、プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、複数の実行の各々について、分子上の糖化レベルが取得される。取得することは、第1の閾値以下の体積を有する1つ又は2つ以上のバイオリアクター内で行うことができる。PATツールは、スペクトルデータを取得することができるか、又はそうでなければそれを生成することができる。920では、取得されたスペクトルデータに基づいて、分子上の糖化レベルを得られたスペクトルデータと相関させる1つ又は2つ以上の回帰モデルが生成される。次いで、930では、PATツールを使用して、分子上の糖化を測定することができる。測定することは、第2の閾値以上の体積を有する1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクター内で行って、測定されたスペクトルデータを得ることができる。その後、940では、生成された1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって、1つ又は2つ以上のバイオリアクター内の分子上の糖化レベルが決定される。
【0146】
1つ又は2つ以上の回帰モデルは、取得されたスペクトルデータと測定されたスペクトルデータとの組み合わせに基づいて精緻化され得る。
【0147】
1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータは、分子上の糖化レベルを生成するために、決定されたレベルに基づいて維持及び/又は選択的に修正(すなわち、変更)され得る。1つ又は2つ以上の動作パラメータは、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む。栄養素レベルは、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される。バイオリアクターにおけるグルコースの濃度は、測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正することができる。
【0148】
いくつかの変形形態では、測定は、異なる体積を有する2つ又は3つ以上のバイオリアクターを使用して行うことができる。
【0149】
第1の閾値は、約25リットル以下を含む異なる体積であってもよい。
【0150】
第2の閾値は、約1,000リットル以上(2,000リットルを含む)、10,000~約25,000リットル、及び10,000~約15,000リットルを含む異なる体積に対応することができる。
【0151】
第2の閾値は、第1の閾値よりも少なくとも5倍大きく、場合によっては、第1の閾値よりも少なくとも10倍大きく、場合によっては、第1の閾値よりも少なくとも100倍大きく、他の場合では、第1の閾値よりも少なくとも500倍大きくてもよい。
【0152】
PATツールは、ラマン分光法を含む分光技術を利用することができる。
【0153】
1つ又は2つ以上の回帰モデルは、部分最小二乗(PLS)モデルを含むことができるか、又はそうでなければそれを使用することができる。
【0154】
分子は、mAbを含み得るか、又はmAbであり得る。代替的に、分子は、非mAbを含むか、又は非mAbである。
【0155】
決定は、オンサイト及び/又はオフサイトで行うことができる。更に、測定及び/又は決定は、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行うことができる。
【0156】
図10は、所望のレベルの糖化を有する分子の産生を示すプロセスフロー図1000である。1010では、プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、分子上の糖化を測定して、スペクトルデータを得る。測定することは、1,000リットル以上の体積を有するバイオリアクター内で行うことができる。その後、1020では、1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって、バイオリアクター内の分子上の糖化のレベルを決定する。1つ又は2つ以上の回帰モデルは、50リットル以下の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクター及び1,000リットル以上の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクターからの試行実行を使用して生成することができる。1030では、分子上の糖化のレベルが所定の閾値を下回る場合、バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータが維持される。加えて、1040では、分子上の糖化のレベルが所定の閾値を上回る場合、バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータが選択的に修正される。
【0157】
6.実施形態
A1.分子上の糖化を決定するための方法であって、
プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、複数の実行の各々について、分子上の糖化レベルを取得することであって、前記取得することが、第1の閾値以下の第1の体積を有する1つ又は2つ以上の第1のバイオリアクター内で行われ、前記PATツールが、スペクトルデータを取得することである、前記取得することと、
取得されたスペクトルデータに基づいて、分子上の糖化レベルを取得されたスペクトルデータと相関させる1つ又は2つ以上の回帰モデルを生成することと、
PATツールを使用して、分子上の糖化を測定することであって、前記測定することが、第2の閾値以上の第2の体積を有する1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクター内で行われて、測定されたスペクトルデータが得られることである、前記測定することと、
生成された1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクター内の分子上の糖化レベルを決定することと、を含む、方法。
A2.取得されたスペクトルデータ及び測定されたスペクトルデータの組み合わせに基づいて、1つ又は2つ以上の回帰モデルを精緻化することを更に含む、実施形態A1に記載の方法。
A3.分子上の所望の糖化レベルを産生するために、決定されたレベルに基づいて、1つ又は2つ以上の第2のバイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを維持することを更に含む、実施形態A1又はA2に記載の方法。
A4.分子上の所望の糖化レベルを産生するために、決定されたレベルに基づいて、第2のバイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを選択的に修正することを更に含む、実施形態A1又は実施形態A2に記載の方法。
A5.1つ又は2つ以上の動作パラメータが、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態A4に記載の方法。
A6.栄養素レベルが、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される、実施形態A5に記載の方法。
A7.グルコースの濃度が、測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正される、実施形態A6に記載の方法。
A8.取得することが、異なる体積を有する2つ又は3つ以上のバイオリアクター内で行われる、実施形態A1~A7のいずれか1つに記載の方法。
A9.第1の閾値が、約250リットル以下である、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
A10.第1の閾値が、約100リットル以下である、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
A11.第1の閾値が、約50リットル以下である、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
A12.第1の閾値が、約25リットル以下である、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
A13.第1の閾値が、約10リットル以下である、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
A14.第1の閾値が、約5リットル以下である、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
A15.第1の閾値が、約2リットル以下である、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
A16.第1の閾値が、約1リットル以下である、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
A17.第2の閾値が、約1,000リットル以上である、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A18.第2の閾値が、約2,000リットル以上である、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A19.第2の閾値が、約5,000リットル以上である、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A20.第2の閾値が、約1,0000リットル~約25,000リットルである、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A21.第2の閾値が、約15,000リットルである、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A22.第2の閾値が、第1の閾値よりも少なくとも5倍大きい、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A23.第2の閾値が、第1の閾値よりも少なくとも10倍大きい、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A24.第2の閾値が、第1の閾値よりも少なくとも100倍大きい、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A25.第2の閾値が、第1の閾値よりも少なくとも500倍大きい、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
A26.第1の体積が、約0.5~約250リットルである、実施形態A1~A25のいずれか1つに記載の方法。
A27.第1の体積が、約1~約50リットルである、実施形態A1~A25のいずれか1つに記載の方法。
A28.第1の体積が、約1~約25リットルである、実施形態A1~A25のいずれか1つに記載の方法。
A29.第1の体積が、約1~約10リットルである、実施形態A1~A25のいずれか1つに記載の方法。
A30.第1の体積が、約1~約5リットルである、実施形態A1~A25のいずれか1つに記載の方法。
A31.第2の体積が、約1,000~約25,000リットルである、実施形態A1~A30のいずれか1つに記載の方法。
A32.第2の体積が、約2,000~約25,000リットルである、実施形態A1~A30のいずれか1つに記載の方法。
A33.第2の体積が、約5,000~約25,000リットルである、実施形態A1~A30のいずれか1つに記載の方法。
A34.第2の体積が、約10,000~約25,000リットルである、実施形態A1~A30のいずれか1つに記載の方法。
A35.第2の体積が、約15,000~約25,000リットルである、実施形態A1~A30のいずれか1つに記載の方法。
A36.PATツールが、ラマン分光法を利用するか、又はそうでなければそれを含む、実施形態A1~A35のいずれか1つに記載の方法。
A37.1つ又は2つ以上の回帰モデルが、部分最小二乗(PLS)モデルを含む、実施形態A1~A36のいずれか1つに記載の方法。
A38.分子が、モノクローナル抗体(mAb)である、実施形態A1~A37のいずれか1つに記載の方法。
A39.分子が、非mAbである、実施形態A1~A38のいずれか1つに記載の方法。
A40.決定するステップが、オンサイトで行われる、実施形態A1~A39のいずれか1つに記載の方法。
A41.決定するステップが、オフサイトで行われる、実施形態A1~A39のいずれか1つに記載の方法。
A42.決定するステップが、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行われる、実施形態A1~A41のいずれか1つに記載の方法。
A43.決定するステップが、インラインで行われる、実施形態A1~A42のいずれか1つに記載の方法。
A44.決定するステップが、オンラインで行われる、実施形態A1~A42のいずれか1つに記載の方法。
A45.決定するステップが、アットラインで行われる、実施形態A1~A42のいずれか1つに記載の方法。
A46.決定するステップが、オフラインで行われる、実施形態A1~A42のいずれか1つに記載の方法。
A47.取得することが、スペクトルデータを特徴付けるデータをPATツールから受信することを含む、実施形態A1~A46のいずれか1つに記載の方法。
A48.生成することが、1つ又は2つ以上のコンピューティングデバイスによって実行される、実施形態A1~A47のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
B1.所望のレベルの糖化を有する分子を産生する方法であって、
プロセス分析技術(PAT)ツールを使用して、分子上の糖化を測定して、スペクトルデータを得ることであって、前記測定することが、1,000リットル以上の体積を有するバイオリアクター内で行われるものである、前記測定することと、
1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、かつ測定されたスペクトルデータに基づいて、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって、バイオリアクター内の分子上の糖化のレベルを決定することであって、前記1つ又は2つ以上の回帰モデルが、50リットル以下の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクター及び1,000リットル以上の体積を有する少なくとも1つのバイオリアクターからの試行実行を使用して生成されるものである、前記決定することと、
バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを、
分子上の糖化のレベルが所定の閾値を下回る場合、維持することと、
バイオリアクターの1つ又は2つ以上の動作パラメータを、
分子上の糖化のレベルが所定の閾値を上回る場合、選択的に修正することと、を含む、方法。
B2.測定することが、インライン、アットライン、オンライン、オフライン、又はそれらの組み合わせで行われる、実施形態B1に記載の方法。
B3.測定することが、インラインで行われる、実施形態B1又はB2に記載の方法。
B4.測定することが、オンラインで行われる、実施形態B1又はB2に記載の方法。
B5.測定することが、アットラインで行われる、実施形態B1又はB2に記載の方法。
B6.測定することが、オフラインで行われる、実施形態B1又はB2に記載の方法。
B7.測定することが、1日2回以上行われる、実施形態B1~B5のいずれか1つに記載の方法。
B8.測定することが、約5~60分毎に行われる、実施形態B1~B5のいずれか1つに記載の方法。
B9.測定することが、約10~30分毎に行われる、実施形態B1~B5のいずれか1つに記載の方法。
B10.測定することが、約10~20分毎に行われる、実施形態B1~B5のいずれか1つに記載の方法。
B11.測定することが、約12.5分毎に行われる、実施形態B1~B5のいずれか1つに記載の方法。
B12.バイオリアクター体積が、約2,000リットル以上である、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
B13.バイオリアクター体積が、約5,000リットル以上である、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
B14.バイオリアクター体積が、約10,000リットル以上である、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
B15.バイオリアクター体積が、約15,000リットル以上である、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
B16.バイオリアクター体積が、約10,000リットル~約25,000リットルである、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
B17.バイオリアクター体積が、約15,000リットルである、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載の方法。
B18.決定するステップが、オンサイトで行われる、実施形態B1~B17のいずれか1つに記載の方法。
B19.決定するステップが、オフサイトで行われる、実施形態B1~B17のいずれか1つに記載の方法。
B20.測定された糖化が、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせである、実施形態B1~B19のいずれか1つに記載の方法。
B21.バイオリアクターが、バッチリアクター、流加リアクター、又は灌流リアクターである、実施形態B1~B20のいずれか1つに記載の方法。
B22.1つ又は2つ以上の動作パラメータが、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態B1~B21のいずれか1つに記載の方法。
B23.栄養素レベルが、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される、実施形態B22に記載の方法。
B24.グルコースの濃度が、測定されたスペクトルデータに基づいて自動的に修正される、実施形態B23に記載の方法。
B25.PATツールが、ラマン分光法を利用するか、又はそうでなければそれを含む、実施形態B1~B24のいずれか1つに記載の方法。
B26.1つ又は2つ以上の回帰モデルが、部分最小二乗(PLS)モデルを含む、実施形態B1~B25のいずれか1つに記載の方法。
B27.所定の閾値が、分子上の約20%未満の糖化である、実施形態B1~B26のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
C1.非糖化分子を産生するためのシステムであって、
非糖化分子を産生することができる細胞株を培養するための手段と、
糖化のレベルを測定するための手段であって、スペクトルデータを生成する、手段と、
スペクトルデータに基づいて1つ又は2つ以上の回帰モデルを生成するための手段と、
細胞株における糖化のレベルを測定するための手段と、を備える、システム。
C2.細胞株が、哺乳動物細胞株である、実施形態C1に記載のシステム。
C3.哺乳動物細胞株が、非ヒト細胞株である、実施形態C2に記載のシステム。
C4.培養することが、バッチ、流加、灌流、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態C1~C3のいずれか1つに記載のシステム。
C5.培養することが、約2,000リットル以上の体積を含む、実施形態C1~C4のいずれか1つに記載のシステム。
C6.培養することが、約5,000リットル以上の体積を含む、実施形態C1~C4のいずれか1つに記載のシステム。
C7.培養することが、約10,000リットル以上の体積を含む、実施形態C1~C4のいずれか1つに記載のシステム。
C8.培養することが、約15,000リットル以上の体積を含む、実施形態C1~C4のいずれか1つに記載のシステム。
C9.培養することが、約10,000リットル~約25,000リットルの体積を含む、実施形態C1~C4のいずれか1つに記載のシステム。
C10.培養することが、約15,000リットルの体積を含む、実施形態C1~C4のいずれか1つに記載のシステム。
C11.測定することが、インサイツで行われる、実施形態C1~C10のいずれか1つに記載のシステム。
C12.測定することが、オンラインで行われる、実施形態C1~C11のいずれか1つに記載のシステム。
C13.測定することが、アットラインで行われる、実施形態C1~C11のいずれか1つに記載のシステム。
C14.測定することが、オフラインで行われる、実施形態C1~C11のいずれか1つに記載のシステム。
C15.測定することが、1日2回以上行われる、実施形態C1~C14のいずれか1つに記載のシステム。
C16.測定することが、約5~60分毎に行われる、実施形態C1~C14のいずれか1つに記載のシステム。
C17.測定することが、約10~30分毎に行われる、実施形態C1~C14のいずれか1つに記載のシステム。
C18.測定することが、約10~20分毎に行われる、実施形態C1~C14のいずれか1つに記載のシステム。
C19.測定することが、約12.5分毎に行われる、実施形態C1~C14のいずれか1つに記載のシステム。
C20.測定された糖化が、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態C1~C19のいずれか1つに記載のシステム。
C21.非糖化分子の産生を増強するために、1つ又は2つ以上の動作パラメータを選択的に修正するための手段を更に備える、実施形態C1~C20のいずれか1つに記載のシステム。
C22.1つ又は2つ以上の動作パラメータが、pHレベル、栄養素レベル、培養培地の濃度、培養培地の添加の頻度間隔、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態C21に記載のシステム。
C23.栄養素レベルが、グルコースの濃度、乳酸塩の濃度、グルタミンの濃度、及びアンモニウムイオンの濃度からなる群から選択される、実施形態C22に記載のシステム。
C24.グルコースの濃度が、スペクトルデータに基づいて自動的に修正される、実施形態C23に記載のシステム。
C25.1つ又は2つ以上のグリコシル化分子が、モノクローナル抗体(mAb)を含む、実施形態C1~C24のいずれか1つに記載のシステム。
C26.1つ又は2つ以上のグリコシル化分子が、非mAbを含む、実施形態C1~C24のいずれか1つに記載のシステム。
C27.スペクトルデータが、ラマンスペクトルを含む、実施形態C1~C26のいずれか1つに記載のシステム。
C28.1つ又は2つ以上の回帰モデルが、部分最小二乗(PLS)モデルを含む、実施形態C1~C27のいずれか1つに記載のシステム。
【0160】
D1.非糖化分子を産生するためのシステムであって、
非糖化分子を産生することができる細胞株を含むバイオリアクターと、
糖化を測定し、スペクトルデータを生成するプロセス分析技術(PAT)ツールと、
1つ又は2つ以上の回帰モデルを使用して、糖化のレベルをスペクトルデータと相関させるプロセッサと、を備える、システム。
D2.バイオリアクターが、約2,000リットル以上である、実施形態D1に記載のシステム。
D3.バイオリアクターが、約5,000リットル以上である、実施形態D1に記載のシステム。
D4.バイオリアクターが、約10,000リットル以上である、実施形態D1に記載のシステム。
D5.バイオリアクターが、約15,000リットル以上である、実施形態D1に記載のシステム。
D6.バイオリアクターが、約10,000リットル~約25,000リットルである、実施形態D1に記載のシステム。
D7.バイオリアクターが、約15,000リットルである、実施形態D1に記載のシステム。
D8.糖化が、モノ糖化、非糖化、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態D1~D7のいずれか1つに記載のシステム。
D9.細胞株が、哺乳動物細胞株である、実施形態D1~D8のいずれか1つに記載の系。
D10.哺乳動物細胞株が、非ヒト細胞株である、実施形態D9に記載のシステム。
D11.PATツールが、ラマン分光法を利用するか、又はそうでなければそれを含む、実施形態D1~D10のいずれか1つに記載のシステム。
D12.1つ又は2つ以上の回帰モデルが、部分最小二乗(PLS)モデルを含む、実施形態D1~D11のいずれか1つに記載のシステム。
【0161】
7.実施例
本出願の以下の実施例は、本出願の本質を更に説明するためのものである。当業者は、広い発明概念から逸脱することなく、上で説明される実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本明細書によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0162】
実施例1:糖化及びグリコシル化のリアルタイム監視のための実験設計
この研究の目的は、製造スケールでの代表的なCHO細胞培養物における糖化及びグリコシル化(両方のCQA)のリアルタイム監視のためのラマンスペクトルのPLSモデルを開発することであった。
【0163】
最初に、縮小スケールデータからのモデル開発を評価した。次いで、縮小スケールデータを製造スケールデータで補完することによって、モデル堅牢性の開発を検討した。ラマン分光法を使用することによって、製品の品質を、バイオ治療用mAb製品の製造プロセス全体通して考慮して、上流の生産プロセス全体通してリアルタイムでCQAを監視することによって、これを達成した。
【0164】
実験設計では、18バッチのmAb産生CHO細胞株を使用した。撹拌バイオリアクタースケールは、単回使用バッグ(single use bag、SUB)2000L(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)、5Lガラス(Applikon Inc.,Schiedam,Netherlands)、及び1Lガラス(Eppendorf,Hamburg,Germany)であり、流加プロセスは16~18日間続いた。合計で、9つの1Lバッチ、7つの5Lバッチ、及び2つの2000Lバッチが含まれた。0日目に、市販のシードトレインを使用して、各2000Lバッチに接種した。2000Lバッチからの1日目の細胞培養物を使用して、10の縮小スケールバイオリアクターに接種した。また、0日目に、実験室シードトレインを使用して、6つの縮小スケールバイオリアクターに接種した。基本培地及び毎日の供給培地を、実行された各バッチについて使用し、全てについてプロセス制御を実装した。
【0165】
バイオリアクター実行の実行中に2つの供給戦略を用い、各々が2つの複合供給からなり、3日目に開始して各バイオリアクターに供給した。12バッチ(2×2000L、7×5L、3×1L)に、容器体積の規定された割合に基づいて、両方の複合供給を毎日供給した。他の6つのバッチ(6×1L)には、容器の規定された割合に基づいて、第1の複合供給を供給し、第2の複合供給を1日に複数回送達して、供給戦略研究の一部としてバイオリアクターにおけるグルコースの所定の目標レベルを維持した。全てのバイオリアクターを、同じ播種密度限界内で接種した。
【0166】
各バッチは、溶存酸素(DO)、pH、及び温度について同一の制御目標を有していた。DOは、通気及び酸素散布によって40%に制御した。6.95のpH目標は、二酸化炭素及び2.0M炭酸ナトリウムの添加を使用して維持した。温度は、細胞培養全体を通して36.5℃(35.5℃~37.5℃)の設定点に制御した。スケール依存性のプロセスパラメータの撹拌は、体積当たりの電力値を使用してスケールにわたって伝達された。オフライン試料を、各バイオリアクターから毎日採取し、Vi-CELL MetaFLEX(Beckman Coulter,Brea,CA)、Vi-CELL XR細胞生存率アナライザ(Beckman Coulter)、及びCedex Bio(Roche Holding AG,Switzerland)オフラインアナライザを使用して、グルコース、乳酸塩、力価、生細胞密度、及び%生存率を含む代謝産物のパネルについて測定した。各バッチが完了したら、更なる試験のために、毎日の各培養試料を保持し、-70℃で凍結した。
【0167】
糖化及びグリコシル化の分析
mAbの糖化及びグリコシル化を、LC/MS分析によってオフラインで特徴付けた。簡潔には、最初に、糖化分析のためのタンパク質試料をEndoS酵素で前処理して、N結合型炭水化物を除去し、グリコフォームに基づく試料の不均一性を排除した。次いで、タンパク質試料を、高性能液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)によって分離し、オンラインエレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間型質量分析によって分析した。次いで、クロマトグラフィーピークにわたって収集された質量/電荷データを合計し、Empowerソフトウェア(Waters Corp,Milford,MA)を使用してデコンボリューションした。検出された糖化アイソフォームを、デコンボリューションされた質量スペクトル分析に基づいて割り当て、それらの相対存在量を、中心デコンボリューション質量スペクトルのピーク強度を使用して計算した。グリコシル化のためのタンパク質試料を、最初に、1Mジチオスレイトールで前処理して、個々のmAb重鎖及び軽鎖を分離した。次いで、タンパク質試料を、LC/MSによって以前のように分析し、グリコシル化アイソフォームを、以前に記載されているように割り当て、定量した。
【0168】
バイオリアクターバッチ中のラマンスペクトルの取得
全てのバッチについて2つの機器を使用して、ラマンスペクトルを収集した。各々、-40℃での785nmレーザー源を含むマルチチャネルラマンRXN2システム(Kaiser Optical Systems Inc.,Ann Arbor,MI)及び電荷結合素子(charge-coupled device、CCD)を使用した。検出器を、光ファイバー励起ケーブル及び光ファイバー収集ケーブル(Kaiser Optical Systems Inc.)からなるMRプローブに接続した。滅菌バイオリアクターに挿入されたbIO-Optic-220ステンレス鋼プローブ(Kaiser Optical Systems Inc.)に取り付けられたMRプローブによってデータを収集した。iCRamanソフトウェア4.1.(Mettler Toledo Autochem,Columbia,MD)を使用して、全ての縮小スケールバッチ(1L、5L)についてスペクトルを取得するために、ラマンRXN2を制御した。ラマンランタイムHMI(Kaiser Optical Systems Inc.)を、全ての2000Lバッチにおけるスペクトルを取得するために使用した。全てのラマンスペクトルデータの収集は、75スキャンについて10秒間の露光のシステム設定を使用した。これは、2.5分間のオーバーヘッド時間を含む15分後のプローブについてのスペクトルをもたらした。ラマンスペクトルの取得は、波数100~3,425cm-1に及んだ。縮小スケールの容器は、アルミホイルによって光干渉から保護した。(製造スイートにおいて設定された単回使用バイオリアクターのため、ステンレス鋼に封入されていたので、これは必要とされなかった)。システムの各使用前に、Hololab Calibration Accessory(HCA)(Kaiser Optical Systems Inc.)を用いて機器の強度較正を行い、バイオリアクタープロセス全体を通して24時間毎に内部較正が行われるように設定した。
【0169】
実施例2:縮小スケールでの糖化及びグリコシル化のためのラマン分光法に基づくPLSモデルの開発(フロー1)
本実施例は、ラマン分光法に基づくPLSモデルが、バイオリアクターにおける生産中の例示的な治療用タンパク質生産細胞株の糖化及びグリコシル化プロファイルのために開発され得ることを実証する。
【0170】
この実施例では、縮小スケール(1L及び5L)での細胞培養プロセスからのラマンデータ及びオフラインデータの両方を使用して、mAbの糖化及びグリコシル化プロファイルのための7つの計量化学PLSモデルのパネルを開発した。糖化(モノ糖化、非糖化)について、2つのモデルを検討し、グリコシル化プロファイル(G0F-GlcNac、G0、G0F、G1F、G2F)について、5つのモデルを検討した。Simca15.1(Umetrics Inc.,San Jose,CA)を用いて計量化学モデリングを行った。
【0171】
糖化及びグリコシル化についてのオフライン測定を、各バッチにおいて5日目に開始して、それらが取られた時間に基づいて、ラマンスペクトルに適合させた。この時点からモデルを構築する決定は、プロセスの経験的知識と、HPLCによる検出可能なレベルでのmAb製品の生産とに基づいた。5日目より前の全てのデータ、ラマンスペクトル、及びオフライン測定は、モデルの構築及び試験から除外した。
【0172】
各モデルは、モデル開発のための15バッチ(9×1L及び6×5L)の較正試料セット(calibration sample set、CSS)と、各CQAについて生成されたPLSモデルを用いて試験するためのブラインドデータセットとして使用される1バッチ(5L)の較正試験試料セット(calibration test sample set、CTSS)と、からなった。このバッチを、利用可能な5Lバッチデータから無作為にCTSSとして選択した。このフローにおける各モデルについてのX変数は、ラマンスペクトル(中心)であり、Y変数は、モノ糖化、非糖化、G0F-GlcNac、G0、G0F、G1F、及びG2Fの割合(%)についてのオフライン値(一変量スケール)であった。全てのモデルについてのラマンスペクトルの波数選択は、415~1800cm-1及び2800~3100cm-1であった。全てのPLSモデルに適用されたスペクトルフィルターは、Savitsky-Golay一次導関数二次(31cm-1点)及び標準正規変量(SNV;データは示さず)であった。
【0173】
各PLSモデルを構築し、リーブ・バッチ・アウト(leave-batch-out)交差検証(モデル開発において各バッチを1回省略する)の方法を使用することによって誤差について評価した。モデル誤差を、省略されたバッチに対するモデルの予測に基づいて平均して、交差検証の二乗平均平方根(root mean square of cross-validation、RMSEcv)を特定した。RMSEcvは、モデルを構築するために使用されるデータに基づくモデルの予測力を示す。より低い平均誤差(RMSEcv)は、改善されたモデルを示した。これにより、ブラインドデータセットに対する試験のために生成されたモデルに対してどの成分番号が使用されるべきかについてのより良い情報に基づく意思決定が可能になった。Simca15.1における予測関数を使用して、モデルの予測能力対CTSSを試験することにより、予測の二乗平均平方根誤差(root mean square error of prediction、RMSEP)が特定された。これは、モデルの予測力対未知のデータセットを示す。各PLSモデルについて、回帰(R2)値、変動係数を記録した。このR2値は、モデル予測子(X変数)が説明し得るY変数の変化量を決定するために使用される。R2値が1に近いほど、モデルがY変数をより適切に説明したことになる。各モデルのそれぞれのRMSEcv、RMSEP、及びR2値に基づいて、モデルの性能を評価した。各モデルの投影の変数重要度(VIP)も考慮した。これは、Y変数を予測する際のモデルにおけるX変数の重要性を要約するパラメータである。1より大きい値を有するX変数は、Y変数を説明するのに最も関連していると考えられる。
【0174】
フロー1は、PLSモデル構築のための較正データセットとしての縮小スケールデータのみの使用を評価した。開発された7つのモデル(糖化(モノ糖化、非糖化)について2つのモデル、及びグリコシル化プロファイル(G0F-GlcNac、G0、G0F、G1F、G2F)について5つのモデル)の各々を、縮小スケールバッチデータのブラインドデータセットに対して予測することによって試験した。フロー1における各モデルは、CSSにおける縮小スケールプロセスデータの15バッチからなり、1つの完全なバッチ(5L)がブラインドCTSSとして試験に使用された。
【0175】
リーブ・バッチ・アウト交差検証を使用して、各モデルの最適成分数を決定した。これは、最低のマッチングRMSEcv値を有する成分の最小数として決定された。各モデルを、最適成分数について個別に評価した。交差検証からの平均R2結果は、各モデルにおける強い程度の変動性を示す。これは、検討中のモデルの各々について報告された>0.8のR2値によって説明される(表1)。各モデルの精度の許容基準は、モデルCSSで観察された測定値の範囲に基づいて決定された。精度の許容基準は、JSIでの計量化学モデル開発標準に従って、較正データセットにおいて使用される値の範囲の10%として設定した。これは、オフライン分析で用いた方法の許容誤差を含む、各モデルについての誤差の潜在的な原因に基づいて、適切な許容基準であると決定された。各モデルにおける誤差を、計算された許容基準(表1)に対して二乗平均平方根誤差(RMSEcv、RMSEP)を比較することによって評価した。RMSEcvは、最適成分数を通知する。この値はまた、較正データセットに基づいて目的の変数を予測するモデルの能力を示す。各モデルについて選択された成分数は、予測誤差についての許容基準内に入るRMSEcvを与え、したがって、モデル開発に適切であるとみなされた。
【0176】
【表1】
【0177】
各モデルの予測精度をブラインドデータセット(5Lバッチ)で試験した場合、相補的な結果が観察された(表1)。Rは、モノ糖化、非糖化、G0F、G1F、G2F、G0について>0.85、及びG0F-GlcNacについて<0.7であった。全てのR値は、ブラインドデータセットに対して試験した場合に減少を示した。しかしながら、G0、モノ糖化、及び非糖化を除く全てのモデルについてのRMSEP値は、RMSEcvについて観察された値よりも低い予測誤差を示した。>0.9のRは、必ずしもより良好なモデルを示すわけではなく、モデル評価中にR値と併せてRMSEcv及びRMSEPを含む複数の因子を考慮する必要性を強化する。
【0178】
縮小スケールでのブラインドデータセットに対する試験は、G0、モノ糖化、及び非糖化モデルについて観察されたRの減少及びモデル誤差のわずかな増加を示したが、これらのモデルは依然として許容基準内にあり、したがって、縮小スケールでグリコシル化を予測する際の使用に好適であるとみなすことができることに留意されたい。予測試験について観察された傾向(図3A図3G)は、使用のためのモデルの好適性を確認し、モノ糖化及び非糖化の傾向は、オフラインデータの傾向に厳密に従い、予想されるように、プロセス持続時間について互いに相補的である。G0F-GlcNac、G0、G0F、G1F、及びG2Fは、同様にオフライン傾向に従い、各々においてわずかな偏差が観察されたが、全てが許容可能な誤差基準内であった。
【0179】
各モデルにおいてVIPスコア>1を有すると特定されたラマンスペクトル領域は、許容可能な程度のモデル特異性を示した(図11A図11F)。糖化モデル(モノ糖化、非糖化)は、以前にグルコースPLSモデルについて特定されたものと同様のラマンスペクトル領域の関連性を示したが、ある程度の二次相関は糖化タンパク質の構造に起因する可能性が高く、これらのモデルについてのグルコースとの望ましくない相関は、モデルCSSにおいて使用されるデータがグルコース供給の前及び後の両方の間隔で取得されることを確実にすることによって回避された。望ましくないグルコース相関を断つために、データ収集のためにバイオリアクターバッチを実行する場合、異なるグルコース供給戦略も使用した。グリコシル化プロファイルモデル(G0F-GlcNac、G0、G0F、G1F、及びG2F)は、以前にグリカン成分(例えば、マンノース、フコース、n-アセチルグルコサミン)と関連付けられていた領域において>1のVIPスコアを示した。これは、各グリカンに関連するラマンスペクトルにおけるピークを特定するモデルを示唆する。
【0180】
各モデルの内部関係プロットの初期評価は、モデル評価で進行するのに十分なレベルの線形性を示したが、製品力価との二次相関を考慮すると、将来の研究では、非線形PLS法がモデル精度を潜在的に改善し得る可能性がある。いずれの場合も、モデル性能は許容可能であり、予想されるプロファイルを有する毎日のオフライン試料との密接な一致は、このフローにおいて行われるモデル開発の決定を支持する。
【0181】
バイオリアクターのプロセス中に糖化及びグリコシル化などのCQAをリアルタイムで監視する能力は、QbDの重要な目標に適合し、品質の評価がプロセスに組み込まれる(PDA.,2012)。プロセス内CQA監視を使用して、重要プロセスパラメータ(critical process parameter、CPP)と製品品質との間の因果関係を確立することができる。プロセスの特徴付けがまだ完全に完了していない製品開発の初期にこのアプローチを確立することにより、開発及びスケールアップに必要な時間を短縮することができ(Kozlwoski.,2006)、製造の非効率性を低減して、製品の品質のより厳密な制御及び収率の改善を可能にすることができる(Yu et al.,2014)。
【0182】
ここに提示された結果は、モデル開発においてなされた決定を支持し、ラマン分光法に基づくPLSモデルが、CHO mAb産生バイオリアクタープロセスの糖化プロファイル及びグリコシル化の両方を、グリカンプロファイルに特に焦点を当てながら予測することができることを示す。
【0183】
実施例3:縮小スケールデータを用いて開発されたモデルを使用する製造スケールでの糖化及びグリコシル化の予測(フロー2)
この実施例では、実施例2で上述したCSSを使用して開発されたモデルの各々を、製造スケールで正確に予測する能力について調査した。この実施例では、モデルを開発するために、調整も追加データも使用しなかった。
【0184】
各モデル(モノ糖化、非糖化、G0F-GlcNac、G0、G0F、G1F、及びG2F)を試験し、この細胞培養プロセスのための単一の製造スケールバッチ(2000LバッチA)からのデータからなる新しいCTSSに対してSimca15.1における予測関数を使用することによって評価した。このバッチを、利用可能な2000Lバッチデータから無作為にCTSSとして選択した。次いで、CTSSを使用して、縮小スケールデータ(1L、5L)のみを使用して開発されたラマンモデルが、製造スケールでのCQAを予測する能力を調査した。モデルに変更が加えられず、したがって、RMSEcvの変更が観察されなかったので、リーブ・バッチ・アウト交差検証は繰り返さなかった。7つのモデルのRMSEP及びR2値の各々を、実施例2において生成されたモデルの出力と比較して、PLSモデルの開発には縮小スケールのデータのみで十分であるかどうかを決定した。
【0185】
フロー2では、モデルの堅牢性を製造スケールデータ(2000L)に対して試験した。実施例IIで上述したフロー1からの各モデルを、2000Lバッチからのプロセスデータから構成される新しいブラインドCTSSに対して予測することによって試験した。RMSEcvのモデル統計は、追加データがモデルに追加又はモデルから除去されなかったので、フロー1で観察されたものと同様であった。2000Lブラインドデータセットに対して予測された場合、全てのモデルの場合で>0.80の平均R値が観察された(表2)。これは、各モデル内の良好な変動性を示す。
【0186】
【表2】
【0187】
糖化モデルは両方とも良好に機能し、各モデル(モノ糖化及び非糖化)の場合に0.3553%のRMSEPが観察された。驚くべきことに、ここで観察されたRMSEP値は、フロー1(実施例2に記載)で観察されたものよりも低かった。これは、治療用タンパク質(例えば、mAb)プロセスの糖化プロファイルを監視するためのモデルを開発するのに、縮小スケールのデータのみで十分であり得ることを示す。タンパク質の糖化をもたらす相互作用は、還元糖のレベル、バイオリアクターにおける温度及び時間に依存する(Quan et al.,2008)。特定の糖化部位の占有率を制御することは困難であり得るが(Wei et al.,2017)、糖化の全体的なレベルは、生産のスケールアップ中に、特定のレベルに維持することができる。したがって、糖化に典型的に寄与するプロセス変数は、全てのバイオリアクターのスケールにわたって同等のレベルで維持される。このため、縮小スケールのデータを使用することは、堅牢な糖化モデルを開発するのに十分であり得る。
【0188】
グリコシル化モデルに関する統計量は、製造スケールのデータに対して試験した場合、より多様な応答を示す。G2FモデルについてのRMSEP値は0.4074%であることが観察された。これは、許容基準外であり、したがって、モデルは、製造スケールでの監視における使用に好適ではないとみなされた。興味深いことに、このモデルのR値は>0.85であった。これは、PLSモデルを評価する場合、複数の統計量を参照することの重要性を更に強調している。
【0189】
2000Lバッチでは、それが進行するにつれて、ラマンモデル予測対オフライン値を示す傾向(図4A図4G)は、モデル統計量を確認する。G2Fは、バッチ全体にわたってオフライン測定の傾向から逸脱している(図4G)。G0F-GlcNac、G0、G0F、G1Fのモデルは許容基準を満たし、見た目には、オフライン測定の傾向に従うようであった。G0及びG0F-GlcNacは、フロー1で取得されたRMSEP値と同等か又はそれよりも低いRMSEP値で最良に機能した。G0F及びG1Fは、RMSEP値の顕著な増加を示し、その傾向(それぞれ、図4E及び図4F)から、これらのモデルの予測能力がプロセスの7日目を過ぎて低下し始めることが観察された。既存の知識は、このプロセスが7日目/8日目に指数増殖期から定常期に移行することを示す。CHO細胞の培養が進行し、増殖の定常期に移行するにつれて、それらは抗体産生のピークに達する。細胞のサイズ及び代謝率は、指数増殖期における速度の2倍も細胞の産生量が増加するにつれて変化する(Templeten et al.,2013、Xiao et al.,2017)。
【0190】
フロー2に提示されたモデルは、この時点で生じるプロセスの変化が、縮小スケール対製造スケールでグリコシル化プロファイルに対して異なる効果を有することを示す。複数のスケール(1L及び5L)、異なるラマンプローブ/光学系、異なるグルコース供給戦略(6×1L)、及びグルコーススパイク(1×5L)でのスペクトルを使用して、モデルに変動性を導入した後でさえ、縮小スケールのデータのみに基づくモデルの予測能力は、製造スケールで堅牢ではないことが分かった。
【0191】
モデルを組み合わせたプロファイルとして考えると、縮小スケールのデータを使用して構築されたグリコシル化モデルは、製造データに対して予測する場合、機能がより悪く、G0、G1F、及びG2Fにおいて観察される予測誤差が増加する。具体的には、G2Fは、予測誤差が有意に増加し(79%)、予測誤差の許容限界(RMSEP)を超えた。縮小スケールのバイオリアクタープロセスは、製造プロセスを表すように設計されているが、製造スケールでのグリコシル化動態は、縮小スケールのデータだけでは堅牢なPLSモデルの開発には十分ではないほど異なることがここで明らかである。
【0192】
実施例4:製造スケールでの糖化及びグリコシル化を予測するためのラマン分光法に基づくPLSモデルへの製造スケールデータの組み込み(フロー3)
この実施例は、実施例2で上述した小規模実験からのCSSデータから構成され、各PLSモデルを構築するために単一の製造スケールバッチ(2000LバッチB)からのデータを補完した更新されたCSSの使用を説明する。フロー1(実施例2で上述)で開発されたモデルの較正データセットに、製造スケールデータ(2000L)の単一バッチを補完し、同じ2000LブラインドCTSSを使用して、フロー2(実施例3で上述)に従って予測試験を行った。
【0193】
次いで、16バッチ(9×1L、6×5L、及び1×2000L)のCSSを使用して、実施例2に従って7つの更新されたモデルを開発した。完了したら、次いで、各モデルについての更新されたRMSEcv及び成分数を導出するために、7つのモデルの各々を、リーブ・バッチ・アウト交差検証によって評価した。Simca15.1における予測関数を使用して、モデルの予測能力対新しいCTSSを試験することにより、更新されたモデルについて、予測の二乗平均平方根誤差(RMSEP)及びR2値が特定された。前のフローと同様に、各モデルから出力されたRMSEcv、RMSEP、R2、及びVIP値を評価して、製造スケールでのモデルの予測能力を特定した。また、それらを使用して、フロー1及びフロー2で開発及び使用されたモデルに対して予測能力を比較して、糖化及びグリコシル化のためのラマンPLSモデルのCSSに製造スケールのデータを含める必要性を決定した。
【0194】
ここでのモデル(フロー3)は、フロー1(実施例2で上述)で構築されたモデルの予測力及び堅牢性に対するスケールデータの影響を調査しようとした。フロー1からのモデルは、2000Lスケールバッチランからのプロセスデータを補完した。この2000Lバッチデータの追加は、各モデルを開発するために16バッチが使用されたことを意味した。ここで再び交差検証を使用して、モデル開発及び予測試験のための最適成分数を決定した。全てのモデルについて、>0.8の平均R値が交差検証で観察され、各モデルはまた、許容基準内のRMSEcvを有していた(表3)。
【0195】
【表3】
【0196】
このフローの場合、予測試験は、フロー2からの製造スケールのブラインド試験データセットを使用して完了した。各モデルについて、>0.80の平均Rが観察された。注目すべきことに、全てのモデルがRMSEP値の減少を示した。これは、全てのモデルにわたって予測誤差の減少を示す。また、各モデルのRMSEcvは、各モデルについて同様であるか、又はわずかに減少していることが観察された。これは、これらのモデルへの製造スケールデータの追加が小規模でのモデルの予測能力に影響を与えないことを示す。G2Fモデルは、CSSに製造スケールデータを補完した場合、大きく改善され、これは、RMSEPの0.4074%から0.0919%への減少(77.5%の予測誤差の相対的改善)によって証明される。更に、図5A図5Gに見られる傾向は、フロー2(図4A図4Gを参照)で観察された偏差が考慮されており、モデルが製造スケールのプロセス全体を通して正確に予測することができることを示す。
【0197】
>1のVIPスコアを有する各モデルの領域を、フロー1において作成されたモデルと比較した。各モデルは、モデルに対する有意な寄与因子として類似又は同一の領域を指定した。場合によっては、特定された領域についてのスコアは、製造スケールデータ追加の結果として変化し、これは、モデル開発中になされた決定を更に支持した(図11A図11F)。この作業中に、モノ糖化及び非糖化の両方のモデルが開発され、各モデルは3つのフロー全てにわたって同じ結果を共有していたことに留意すべきである。結果として、単一のモデルを作成することができ、相補的な結果を推論することができる。この研究の目的のために、モデル開発においてなされた決定を支持し、かつ各々の場合で未知のデータセットに対して試験した場合に許容可能な値が得られたことを示すために、両方のモデルを作成した。
【0198】
まとめると、ここに提示された結果は、モデルの堅牢性の重要性と、モデル較正データセットを設計するときに考慮しなければならない考慮事項とを強調する。更に、この研究において、製造スケールのデータは、CSSで使用するために利用可能な全データ観察の4.4%を表すにすぎないが、それを含めることで、モデルの予測力が大幅に改善され、確実に堅牢なモデルを開発するのに役立つ。
【0199】
実施例5:細胞バイオリアクタープロセス開発に対するラマンベースのグルコースフィードバック制御の影響の評価
この研究の目的は、GMP対応PAT管理ツールを使用した連続ラマンベースのフィードバック制御戦略が細胞バイオリアクタープロセス(例えば、CHO細胞バイオリアクタープロセス)に及ぼす影響を調査することであった。例示的なモデルとして、2つのCHO細胞バイオリアクタープロセスを、それらのそれぞれの開発段階及び開発戦略に基づいて選択した。各CHO細胞のバイオリアクタープロセスに対するラマンベースのフィードバック制御戦略の影響を、細胞増殖、代謝、及び生産性、並びにボーラス供給バイオリアクタープロセスと比較した場合のいくつかの重要なプロセスパラメータ及び品質特性に関して考慮した。これらの結果は、ラマン分光法がプロセス開発及び最適化において有効なPATツールであることを実証する。
【0200】
実施例5.1:材料及び方法
バイオリアクター操作。2つのmAb産生CHO細胞株(細胞株1、細胞株2)を実験設計において使用した。細胞株1の3つのバイオリアクターバッチ(バッチA、バッチB、バッチC)及び細胞株2の3つのバイオリアクターバッチ(バッチD、バッチE、バッチF)を、遮光された1Lバイオリアクター(Eppendorf,Hamburg,Germany)において実行し、各細胞株についてのプロセスを14~15日間続けた。各バッチを、0日目に、同じ播種密度限界内で、培地及び標的を使用して増殖させたシードトレインから接種した。基本培地及び供給培地を、各バッチ及びプロセス制御に使用した。細胞株1を、正常な収率のための標準細胞株として使用した。細胞株2を、より高い増殖速度及び資源需要を有する高出力細胞株として使用した。
【0201】
バイオリアクター実行の各々の間に2つの供給戦略を用いた。細胞株1の供給戦略は、複合供給及びグルコース供給からなった。バッチAは、容器体積の規定された割合に基づいて、3日目に開始して、1日1回、複合供給及びグルコース供給の両方をボーラス供給した。バッチB及びバッチCは、容器の規定された割合に基づいて、3日目に開始して、1日1回、複合供給を供給し、グルコース供給は自動化され、必要に応じて、ラマングルコース値に基づいて送達されて、バイオリアクターにおいて1g/lグルコースの所定の目標レベルを維持した(これは事後に決定された)。細胞株2の供給戦略は、2つの複合供給及びグルコース供給からなった。バッチDは、3日目に開始して、1日1回、複合供給及びグルコース供給の両方をボーラス供給した。複合供給は、容器体積の規定された割合を使用して送達され、グルコース供給は、その日の規定されたグルコース目標濃度を達成することに基づいた。バッチE及びバッチFは、容器の規定された割合として、3日目に開始して、1日1回、両方の複合供給を供給され、グルコース供給は、自動化され、必要に応じて、ラマングルコース値に基づいて送達されて、バイオリアクターにおいて2g/lグルコースの所定の標的レベルを維持した(これもまた事後に決定された)。各バッチは、溶存酸素(DO)、pH、及び温度について同一の制御目標を有していた。DOは、通気及び酸素散布によって40%に制御した。6.95のpH目標は、二酸化炭素及び2.0M炭酸ナトリウムの添加を使用して維持した。温度は、細胞培養全体を通して36.5℃(35.5℃~37.5℃)の設定点に制御した。
【0202】
バイオリアクター性能の評価:オフライン試料分析及びオンラインパラメータ傾向。オフライン試料を、各バイオリアクターから毎日採取し、Vi-CELL MetaFLEX(Beckman Coulter,Brea,CA)、Vi-CELL XR Cell Viability Analyzer(Beckman Coulter)、及びCedex Bio(Roche Holding AG,Switzerland)オフライン分析器を使用して、グルコース、乳酸塩、力価、生細胞密度、及び生存率(%)について測定した。各バッチが完了したら、更なる試験のために、毎日の各培養試料を保持し、-70℃で凍結した。
【0203】
グルコースフィードバック制御の影響を評価する場合、糖化を考慮した。6つのバイオリアクターバッチの各々について4日目~14/15日目からのオフライン試料を、バッチ全体を通して生産されたmAbの製品品質分析のために解凍した。mAbの糖化を、LC/MS分析によってオフラインで特徴付けた。簡潔には、全ての試料を、最初に、プロテインA精製を使用して精製した。次いで、糖化分析のためのタンパク質試料を、グリコフォームに基づく試料不均一性を排除するために、EndoS酵素で前処理して、N結合型炭水化物を除去した。次いで、トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの勾配を使用する逆相カラム上で、Waters Acquity UPLCシステム(Waters Corp,Milford,MA)を使用して、超高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によってタンパク質試料を分離し、オンラインエレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間型質量分析によってXevo G2-XS質量分析計(Waters Corp,Milford,MA)で分析した。次いで、クロマトグラフィーピークにわたって収集された質量/電荷データを合計し、Masslynx(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)又はUNIFIソフトウェア(Waters Corp,Milford,MA)を使用してデコンボリューションした。検出された糖化アイソフォームを、デコンボリューションされた質量スペクトル分析に基づいて割り当て、それらの相対存在量を、中心デコンボリューション質量スペクトルのピーク強度を使用して計算した。
【0204】
Dasware制御ソフトウェア(Hamburg,Germany)をバイオリアクター環境及びバイオリアクターにおけるプロセス条件の重要な指標として使用して、pH及びO2送達の両方のオンライン傾向を傾向付けし、両方の細胞株についてバッチ実行全体を通して比較した。オンラインデータ及びオフラインデータの両方の評価は、グルコースの自動フィードバック制御を使用した場合、観察された任意のプロセス差異についての指標を提供した。
【0205】
ラマンスペクトルの取得。-40℃で785nmレーザー源及び電荷結合素子(CCD)を含むマルチチャネルラマンRXN2システム(Kaiser Optical Systems Inc.,Ann Arbor,MI)を使用して、各バッチについてラマンスペクトルを収集した。検出器を、光ファイバー励起ケーブル及び光ファイバー収集ケーブル(Kaiser Optical Systems Inc.)からなるMRプローブに接続した。滅菌バイオリアクターに挿入されたbIO-Optic-220ステンレス鋼プローブ(Kaiser Optical Systems Inc.)に取り付けられたMRプローブによってデータを収集した。ラマンランタイムHMI(Kaiser Optical Systems Inc.)を、全てのバッチにおいて、スペクトルの取得のために使用した。全てのラマンスペクトルデータの収集は、10秒露光を75スキャンのシステム設定を使用し、15分後(2.5分のオーバーヘッド時間を含む)、プローブについてスペクトルを得た。ラマンスペクトルの取得は、波数100~3,425cm-1に及んだ。縮小スケールの容器は、アルミホイルによって光干渉から保護した。システムの各使用前に、Hololab Calibration Accessory(Kaiser Optical Systems Inc.)を用いて機器の強度較正を行い、バイオリアクターのプロセス全体を通して、24時間毎に内部較正が行われるように設定した。
【0206】
グルコースについてのラマンベースPLSモデルの開発。細胞株特異的ラマンベースのグルコースPLSモデルを、この研究では、細胞株1及び細胞株2について開発して、バイオリアクターにおけるグルコース濃度のリアルタイム生成を容易にし、グルコースについてのリアルタイムフィードバック制御の実行を容易にした。全ての計量化学モデリングは、SIMCA15.0(Umetrics Inc.,San Jose,CA)を用いて行った。グルコースについてのオフライン測定を、それらが取られた時間に基づいて、ラマンスペクトルに適合させた。各モデルは、利用可能な場合、縮小スケール及び製造スケールのデータの較正試料セット(CSS)からなっていた。モデル開発のための12バッチ(6×5L、3×2000L、及び3×1L)からなる細胞株1のモデルCSS、及び1バッチ(1L)の較正試験試料セット(CTSS)を、PLSモデルで試験するためのブラインドデータセットとして使用した。このバッチを、1Lスケールで入手可能なバッチデータから無作為にCTSSとして選択した。モデル開発のための7バッチ(3×5L及び4×1L)からなる細胞株2のモデルCSS、及び1バッチ(1L)の較正試験試料セット(CTSS)を、PLSモデルで試験するためのブラインドデータセットとして使用した。このバッチを、1Lスケールで入手可能なバッチデータから無作為にCTSSとして選択した。両方のモデルがリアルタイムフィードバック制御のために展開されるスケールであるため、CTSSを1Lバッチとして選択した。全てのモデル開発データは、以前に実行された実験室スケールの研究及び製造スケールのバッチから収集された。生成されたPLSモデルの各々について、CSS内の堅牢性は、プロセス及び技術の変動性の両方を含めることによって保証された。バッチ進行との偽相関を断つために、CSSに含まれるいくつかのバッチにおいて、様々なサンプリング戦略を用いた。
【0207】
各モデルのX変数は、ラマンスペクトル(中心)であり、Y変数は、グルコースのオフライン値(一変量スケール)であった。各モデルのラマンスペクトルの波数選択は、415~1800cm-1及び2800~3100cm-1であった。各PLSモデルに適用されたスペクトルフィルターは、Savitsky Golay一次導関数二次(15cm-1点)及び標準正規変量(SNV;データは示さず)であった。各PLSモデルを構築し、リーブ・バッチ・アウト(leave-batch-out)交差検証(モデル開発において各バッチを1回省略する)の方法を使用することによって誤差について評価した。モデル誤差を、省略されたバッチに対するモデルの予測に基づいて平均して、交差検証の二乗平均平方根誤差(RMSEcv)を特定した。RMSEcvは、モデルを構築するために使用されるデータに基づくモデルの予測力を示す。より低い平均誤差(RMSEcv)は、改善されたモデルを示した。これにより、ブラインドデータセットに対する試験のために生成されたモデルに対してどの成分番号が使用されるべきかについてのより良い情報に基づく意思決定が可能になった。各モデルはまた、推定の二乗平均平方根誤差(RMSEE)、CSSにおけるデータ点の残差に関連するモデル性能指標(すなわち、モデルの適合)を使用して評価した。Simca15.1における予測関数を使用して、モデルの予測能力対CTSSを試験することにより、予測の二乗平均平方根誤差(RMSEP)が特定された。これは、モデルの予測力対未知のデータセットを示す。各PLSモデルについて、回帰(R2)値、変動係数を記録した。このR2値は、モデル予測子(X変数)が説明し得るY変数の変化量を決定するために使用される。R2値が1に近いほど、モデルがY変数をより適切に説明したことになる。モデル性能を、各モデルのそれぞれのRMSEE、RMSEcv、RMSEP、及びR2値に基づいて評価した。
【0208】
グルコースのラマンベースのフィードバック制御の実装。グルコース供給の自動化は、PAT管理ツール、synTQ(Optimal Industrial Automation Limited、UK)によって容易にした。簡潔には、synTQ内で作成されたオーケストレーション(レシピ)は、フィードバック制御を実行するために、ラマン機器をグルコースPLSモデル及びバイオリアクターシステムにリンクさせた。synTQにおけるオーケストレーションの開始を合図に、ラマン機器は、オープンプラットフォーム通信(Open Platform Communication、OPC)接続を介したスペクトルデータの取得を開始した。次いで、生成されたスペクトルデータが、synTQに送信され、その後、オーケストレーションのSIMCA Qエンジンブロックに含まれるグルコースPLSモデルに供給された。スペクトルデータは、スペクトルデータが生成される各点のグルコース読み取り値に変換され、その後、オーケストレーション内で送達されるグルコース供給を計算するために使用される。次いで、結果として得られたグルコース供給の計算を、synTQからDaswareバイオリアクター制御ソフトウェア(Eppendorf,Germany)に通信して、供給が送達された後、OPC接続を介して、バイオリアクターシステム上のグルコース供給ポンプを開始及び停止した。グルコースの目標濃度は、ラマン及びグルコースモデルデータがバイオリアクターにおけるグルコース濃度が目標値未満に低下したことを示すたびに、目標濃度にグルコース供給を開始することによって、維持された。このプロセスを、バッチの期間中、生成された各ラマンスペクトルについて繰り返した。
【0209】
実施例5.2:結果
グルコースについてのラマンベースPLSモデルの開発。グルコースフィードバック制御バッチの実行前、以前に完了したバッチから収集されたラマンスペクトル及びオフライングルコースデータを使用して、ラマンベースのPLSモデルを開発した。細胞株特異的グルコースモデルを、細胞株1及び細胞株2について開発した。細胞株1のモデルは、そのCSSに170個のデータ点を含有し、細胞株2のモデルは、そのCSSに169個のデータ点を含有した。各モデルについて最適な成分数を決定するために、リーブ・バッチ・アウト交差検証アプローチを使用した。
【0210】
図12A及び図12Bは、各細胞株についての最終モデルを要約したものである。細胞株1のグルコースモデルについてのRMSEEは、0.1845g/lであり、細胞株2のグルコースモデルについては、0.3532g/lであった。両方のモデルについて>0.95のR2値と組み合わせたRMSEE値は、各モデル内に強い変動があることを示し、各モデルのCSSに含まれるデータにおいてなされた決定を支持するのに役立つ。各モデルの予測についての許容可能な精度基準は、≦0.5g/lであると決定された。これは、各細胞株のバイオリアクタープロセスで用いられる現在のグルコース供給目標に関連して決定された。
【0211】
プロセス制御の目的のために、この範囲外のグルコース測定値は、バイオリアクターの過剰供給又は過少供給をもたらす可能性があるので、プロセスに悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、各モデルについての精度を、各グルコースモデルのRMSEcv及びRMSEPの許容基準への適合に関して更に検証した。細胞株1及び細胞株2のモデルのいずれも、6の最適成分数を有すると決定され、それぞれ0.2695g/l及び0.3895g/lの対応するRMSEcv値を有した。各モデルについて選択された成分数は、較正データセットに基づいて目的の変数を予測するモデルの能力を示す予測誤差についての許容基準内に入るRMSEcvを与え、したがって、モデル開発に適切であるとみなされた。モデルの各々をそれぞれのCTSSに対して試験した場合、相補的なRMSEP値が観察された。細胞株1のグルコースモデルは、0.2926g/lのRMSEPを有し、細胞株2のモデルは、0.2573g/lのRMSEPを有した。これらの値はいずれも、モデル開発のために確立された許容基準内(≦0.5g/l)であった。モデル統計量間の良好な一致は、両方のモデルの開発においてなされた設計検討が正当化され、各モデルが堅牢であり、各細胞株のバイオリアクタープロセスにおけるグルコースレベルを正確に予測し、制御することを確実にしたことを示した。
【0212】
細胞株1及び細胞株2のモデルCSSは、各細胞株のプロセス開発段階の違いにより、モデル作成時のデータの利用可能性が異なる。細胞株1のモデルでは、製造スケールのバッチを含めるのに利用可能であったが、細胞株2のモデルでは、実験室スケールのデータのみが利用可能であった。これにもかかわらず、両方のモデルは、この研究の目的のために許容可能な程度の精度で開発された。細胞株1のモデルは、その現在の状態においてより容易にスケールアップされ得るが、細胞株2のモデルは、更なるデータ及びモデル調整を必要とし得る。製造スケールで収集された追加データの利用可能性は、これらのモデルを大規模なインライン展開に向けて改善することができる。
【0213】
グルコースのラマンベースのフィードバック制御の実装。この研究の場合、グルコースを所定の設定点濃度に維持する自動フィードバック制御戦略を検討した。この戦略を試験するために2つの細胞株を選択し、各戦略を二重に実行し、各細胞株について現在用いている戦略(両方の細胞株における1日1回のボーラス供給であった)と比較した。各研究は、単一のラマン機器を使用して実行され、したがって、スペクトルの取得は、約45分毎に1回に限定された。これは、検討中の細胞株の各々についてのプロセス設定点及びグルコース消費速度について生成された以前のデータに基づいて、グルコースの自動フィードバック制御についての許容可能な間隔であると決定された。
【0214】
細胞株1のバッチについてのグルコース傾向を、図13A図13Cに概説する。図13Aは、細胞株1のバッチAのボーラス供給バッチについてのラマングルコース傾向を示す。バッチ全体を通してグルコースのラマン測定値は、0.2917g/lの観察されたRMSEPで良好に機能した。ラマン測定値は、このバッチ全体を通してグルコース傾向及び消費への非常に優れた洞察を提供し、これを、グルコースの手動送達が各供給事象の目標に十分に達したかどうかを示すために使用した。バッチAでは、グルコースについてのボーラス供給戦略が、3日目に開始して供給が行われる場合、毎日グルコースの大きなスパイクをもたらすことが観察されたが、これは、毎日オフライン測定のみを使用する場合は観察されないであろう。これは、ラマンをPATツールとして使用する場合、プロセス開発チームが利用できないであろう供給送達を制御していない場合であっても、追加のプロセス情報が利用可能であることを示す。バッチA全体を通してグルコース濃度は、1~3g/lの間で変動する。
【0215】
対照的に、細胞株1のバッチB及びバッチCについての自動フィードバック制御バッチ(図13A及び図13C)は、はるかに厳密な供給プロファイルを示し、各バッチ全体を通してグルコース濃度を1g/lに維持した。供給の開始は、各自動フィードバック制御バッチにおいて3日目に始まり、これは、バッチAの最初のボーラス供給のタイミングに相当する。濃度の大きなスパイクは観察されず、一貫したグルコース濃度が12日間維持された。バッチB及びCについてのRMSEPは、それぞれ0.2887g/l及び0.2940g/lであった。低いRMSEPは、ここではいずれの場合も細胞株1のグルコースモデルが強力であり、良好に機能したことを示すのに更に役立つ。低いRMSEPは、いずれの場合も、モデルが+/-0.5g/Lの確立された許容基準内で、プロセスのためのグルコース濃度の正確な指標を提供し、十分に供給送達を知らせることができることを示した。
【0216】
細胞株2のグルコース傾向は、細胞株1のものと同様の結果を示し、図14A図14Cに見ることができる。バッチDの傾向(図14A)は、細胞株2についてのボーラス供給プロセスの典型的な軌跡を示し、1回の供給送達からのグルコースの予想された大きな毎日のピークを有する。更に、ラマン監視は、はるかに情報に富んだプロセスを示し、1日1回のオフライン測定値と比較した場合、グルコース傾向をより反映する。細胞株2はグルコースに対する需要が大きいので、濃度範囲の広がりは細胞株1よりも広く、プロセス範囲が0.5~4.5g/lである。バッチDにおけるグルコースモデルのRMSEPは0.2369g/lであり、これは、性能の許容基準内であり、モデルによって提供されるデータが実際のプロセス値を正確に反映していることを示す。バッチE及びF(それぞれ、図14B及び図14C)は、2g/lの設定点に11日間制御された。
【0217】
これらのバッチにおいて観察された重要な差は、供給の制御が3日目に開始したが、手動ボーラス供給バッチがグルコースレベルが更に減少した4日目に開始したことであった。バッチE及びバッチFの両方がグルコースを良好に制御し、それぞれ0.2516g/l及び0.2119g/lのRMSEPは、モデル性能がいずれの場合も強力であったことを示す。バッチFのグルコース設定点が、プロセスの9日目から2g/lの目標から上方にドリフトし始めたことが注目された。これは、グルコース供給を送達するために使用されるポンプによる較正の問題に起因すると考えられた。これにも関わらず、バッチFは、厳密なグルコース制御範囲を有し、プロセスの最終日に目標の+/-0.5g/lの許容基準を外れただけであった。
【0218】
細胞株1及び細胞株2の両方についてのグルコースのラマンベースのフィードバック制御は、バイオリアクター環境にグルコースのより安定な供給を提供し、ボーラス供給バッチにおいて見られるようなグルコース濃度の劇的なシフトを防止した。mAbバイオリアクタープロセスの開発及び最適化は、明確に制御された製品品質プロファイルを有する高い製品力価の産生に焦点を当てている。ここに提示されたフィードバック制御のメカニズムは、反復可能で、一貫しており、細胞株1及び細胞株2の両方について明確な供給プロファイルを提供した。
【0219】
ラマン分光法を含むPATツールは、初期投資以外のプロセス開発に比較的低コストで組み込まれる。高スループット及び実験計画バイオリアクターバッチの実行によって、プロセス開発の初期段階で、大量のプロセスデータが非常に迅速に収集される。これらのように、初期開発バッチにおいてデータ収集のためにラマンプローブを含めることにより、強力なデータ収集が可能になり、モデル作成段階が非常に早まる。これは、プロセス開発(例えば、mAbプロセス開発)の厳しい時間的制約を妨げず、細胞株1及び細胞株2について提示されたものなど、高度なフィードバック制御戦略の実装を可能にするであろう。この研究で示されたように、この技術は、監視ツールとして豊富な追加のプロセス情報を提供することができ、バッチA及びバッチDは両方とも、1日1回のオフライン測定の傾向を示す場合、そうでなければ気付かなかったであろうグルコース傾向におけるピーク及び強みを特定した。このデータに富んだアプローチとプロセス制御戦略との組み合わせにより、プロセスの開発及び強化において取られるアプローチを変更及び改善することができる。
【0220】
バイオリアクター性能の評価:オフライン試料分析及びオンラインパラメータ傾向。この研究の目的は、2つの例示的な細胞株のプロセスに対してラマンベースの自動フィードバック制御を展開し、各プロセスに対するこのフィードバック制御の影響を評価することであった。両方のプロセスは、バイオリアクターの健全性、生産性、及び環境条件に関連するプロセス変数に対する自動フィードバック制御の影響に関して考慮された。観察された影響が、各プロセスの開発段階と、この段階でのPATに焦点を当てたアプローチがプロセスの開発及び強化をどのように支援するのかということとに関連して、論じられる。
【0221】
図15A図15Hは、細胞株1についてのボーラス供給及び自動フィードバック制御バッチのプロセス傾向を示す。図15A図15B、及び図15CにおけるVCD、生存率、及びLDHの傾向によって示されるように、各バイオリアクターバッチの増殖及び健全性が同等であったことを観察することができる。各バッチのVCD傾向は、7日目/8日目に8.00~8.75×10^6細胞/mlの間でピークに達し、残りのプロセスでは徐々に減少した。各バッチについて、最終日に観察された生存率は、70~75%であり、最終日に観察されたLDHは、1400~1450IU/mlであった。これらの傾向及び各バッチ間で観察された低度の変動性は、ラマンベースのフィードバック制御が細胞株1のプロセスに悪影響を及ぼさないことを示した。
【0222】
バイオリアクター環境における変動性は、どの供給戦略が細胞株1に対して用いられたかに依存して観察された。バッチA、B、及びCについてのpH傾向(図15D)は、ボーラス供給バッチAがpH7.3まで増加し続けた7日目まで同様であり、それによって、7日目~12日目までこのバッチの設定点内にpHを維持するために、一定のCO2添加を必要とした。ラマン制御されたバッチB及びCは、バッチAとは異なる傾向を示し、プロセス全体を通して、7日目~12日目の間、pHが設定点の範囲内に維持され、特に、約pH7.2に維持された。図15Eに見られるように、バッチA、B、及びCのオンラインO2トレンドは、互いに異なる。二重のバッチB及びCは、0日目~15日目に送達されるO2に対する需要が徐々に増加することを示す。バッチAに対するO2の需要は、O2の要求性がバイオリアクタープロセス全体を通して増加及び減少するので異なる。O2及びpHの両方について、7日目に傾向の違いが現れ始め、これはプロセスがピークVCDに達する時間と一致する。ボーラス供給のバッチAに対してフィードバック制御のバッチB及びCで観察されたこれらの傾向の違いは、ピークVCD後のボーラスバッチ及びフィードバック制御バッチの細胞代謝の違いを示す可能性がある。制御上限に達しないpH傾向とともにフィードバック制御のバッチB及びC全体を通して観察されたO2の需要が徐々に増加することは、フィードバック制御バッチにおいて維持される環境が、グルコース供給のより一貫した送達に潜在的に起因する細胞代謝に関してより好ましいことを示す可能性がある。
【0223】
細胞株1についての自動フィードバック制御バッチにおいて送達されたグルコース供給の総量は、ボーラス供給バッチよりも少なかった。図15Fは、バッチAについての59mlの最終日グルコース供給体積と比較した、バッチB及びCについての51.5ml及び54.5mlの最終日グルコース供給体積を示す。これは、バッチB及びCにおいて、それぞれ12.7%及び7.6%少ないグルコース供給が送達されることを示す。フィードバック制御のバッチB及びCは、ラマン測定値が取得される間隔毎に自動的に1g/Lの目標濃度を維持しているので、ボーラス供給のバッチAに対してバイオリアクターにおけるグルコース濃度に対する高いレベルの制御が存在する。ここでは、自動グルコース送達が、リアルタイム測定に基づいており、バイオリアクターにおけるグルコースの需要が、1日1回のオフライン試料よりも正確に捕捉される。グルコースのボーラス送達は、以前のバッチ実行から確立された供給目標に基づいており、グルコース濃度をオフラインで測定することによって行われる。このアプローチは、バイオリアクターの現在の性能を考慮に入れておらず、バッチAにおいてここで特定されるように、グルコース要求性の過大評価につながる可能性がある。
【0224】
細胞株1についての自動フィードバック制御は、ボーラス供給戦略と比較した場合に匹敵する製品力価をもたらした。図15Gは、予想どおり、各バッチについて2.2~2.5g/Lの最終日の力価を示す。ボーラス供給のバッチAと比較した場合、バッチB及びバッチCの両方において、製品の糖化の全体的な減少が観察された。図15Hに見られるように、バッチAについての最終日の糖化は、6.68%で観察され、一方、バッチBは3.78%、バッチCは2.81%で観察され、それぞれ43.4%及び57.9%の糖化の減少を表した。細胞株1の3つのバッチ全てにおける同等の最終日の力価は、ラマンベースのフィードバック制御を使用した場合、このプロセスに対して負の影響が観察されないことを更に支持するのに役立つ。注目すべきことは、製品の糖化の顕著な改善であり、これは、ラマンベースのフィードバック制御の結果として、バッチB及びCの両方におけるより低い総グルコース量に起因している可能性がある。バイオリアクターにおけるグルコースの全体的な濃度は、糖化のレベルに直接影響を与え、このCQAの制御は、そうでなければプロセス開発中に達成することができなかったPATアプローチに関連する重要なプロセスの改善を特定する。
【0225】
プロセス変動の同様の評価を、細胞株2のボーラス供給バッチ及び自動フィードバック制御バッチについて検討した。図16A図16Hは、各バッチの比較を要約する。VCD、生存率、及びLDHの傾向は、バッチD、E、及びFの増殖プロファイルにおける差を示す。図16Aは、ボーラス供給のバッチD及び自動フィードバック制御のバッチEの両方が、プロセスの8日目に10~10.5×10^6細胞/mlのピークVCDに達したが、自動フィードバック制御のバッチFは、10日目に11.97×10^6細胞/mlでピークに達したことを示す。VCDの低下は、ボーラス供給のバッチDよりも自動フィードバック制御のバッチE及びFにおいて低く、最終日のVCDは、バッチDにおける3.65×10^6細胞/mlと比較して、バッチE及びFでは、それぞれ4.81×10^6細胞/ml及び8.07×10^6細胞/mlであった。生存率及びLDHの傾向は、図16B及び図16Cに見られるように、バイオリアクターの健全性の差を更に強調する。バイオリアクター生存率は、自動フィードバック制御の両方のバッチにおいてボーラス供給のバッチよりも高いままであり、プロセスの最終日では、バッチE(56%)及びF(72.5%)は、バッチD(44.9%)よりも11.1%及び27.6%高い生存率を示した。LDHは、8日目から14日目までのボーラス供給のバッチにおいて、自動化フィードバック制御のバッチよりも高いことが観察され、14日目では、バッチE(6053IU/ml)及びF(4834.5IU/ml)は、バッチD(7694IU/ml)よりも21%及び37%低いことが観察された。より低いLDHとともにバッチE及びFについてのVCD及び生存率の両方のあまり深刻でない低下は、2g/Lのグルコース設定点へのラマンベースのフィードバック制御戦略が、バイオリアクターにおける細胞増殖及び健全性に対して正の効果を有することを示す。バイオリアクター環境におけるより安定したグルコース濃度は、バッチDにおいて見られるようなボーラス供給に関連する毎日のピーク及びトラフよりも、細胞株2のプロセスに対してはるかに好ましいようである。同じ長期の増殖レベルが従来の開発戦略では達成できない可能性があるので、プロセスを存続させ、より長く製品の生産高を生成する能力は、プロセス開発段階でPATを含めるための別の正当化として役立つ。
【0226】
バイオリアクターのpH、O2流量、及びグルコース供給体積を、各プロセスについて13日目までオンラインで追跡したが、接続の問題で、残りのプロセスデータがいずれの場合も記録されなかった。各バッチのpH傾向は類似していることが観察され(図16D)、毎日最大pH7.1のスパイクを示し、これは、毎日の複合供給の添加と一致した。図16Eは、O2の需要も3つのバッチ全てにわたって一貫していたことを示し、各々、10日目まで、O2の需要が徐々に増加した。10日目以降、バッチのO2要求性が異なり、バッチE及びFのO2流量の両方が>0.5sl/hで維持されるのに対して、バッチDのO2流量は0.5sl/h未満に徐々に減少する。図15Fは、約26mlのバッチD、E、及びFについての同様の最終日のグルコース供給体積を示す。これらのパラメータの一貫性は、細胞株2のプロセスについてのラマンベースのフィードバック制御に関連する悪影響がないことを示す。ボーラスのバッチDにおけるO2需要の低下は、10日目以降のこのバッチにおけるより少量の生存細胞に起因する可能性が高い。興味深いことに、ボーラス供給のバッチD並びにラマンベースのフィードバック制御のバッチE及びFの両方において送達された総グルコースは同等であった。これは、バイオリアクターの健全性に対する以前に観察された影響が、より少量の供給送達によるものではなく、代わりにグルコース供給の送達システム、1日1回のボーラスに対する1日複数回のより少ない供給によるものであったことを示す。
【0227】
グルコースの自動フィードバック制御を使用した場合、細胞株2のプロセスの生産性が増加した。図16Gは、バッチE(5.75g/L)及びバッチF(5.77g/L)についての最終日の力価が、ボーラス供給のバッチD(4.6g/L)よりも25%高かったことを示す。製品力価の品質はまた、自動フィードバック制御のバッチにおいて改善された(図16H)。ここで、ボーラス供給のバッチDの最終日の製品の糖化は3.06%であることが観察されたが、バッチE及びFは、それぞれ2.13%及び2.37%でより低いことが観察された。3つのバッチ全てが、添加されたグルコースの同様の総体積を示す一方で、糖化の結果は、設定点濃度への連続制御が、製品の品質に関してより好ましい戦略であることを示す。増殖、製品の生産高、及び品質の改善は、細胞株2のものなどのより強化されたプロセスのためのPAT開発戦略の採用が、開発を更に駆動し、従来のバイオリアクタープロセスでは到達不可能であり得る結果をもたらすことができることを示す。
【0228】
1日1回、プラットフォーム供給戦略としてのグルコースのボーラス送達は、増殖及び製品の生産高を促進するためにバイオリアクターに栄養素を適切に送達することが示されているので、mAbバイオリアクタープロセス開発において広く考慮されている。栄養素送達に対するこのアプローチの主な懸念は、製品品質に対する影響である。グルコース濃度における大きな毎日の変動は、この研究におけるボーラス供給のバッチにおいて観察され得る(図13A及び図14A)。製品の品質に対するグルコースの影響は、主に製品の糖化の促進に見られる。糖化は、mAbバイオリアクタープロセスの重要品質特性であり、mAbに対する糖化の直接的な影響は変動し、その影響は、糖化されるmAb部位及び存在する糖化の総量に依存する可能性が最も高い。
【0229】
このプロセスの自動化は、より頻繁なバイオリアクター供給スケジュールの余分な資源要件を取り除き、現在の開発方法を補完する技術を使用してなされる更なる改善を可能にすることができるプロセス開発にQbDは検討に値する。この研究において示されるようなラマンベースのPLSモデルを使用する設定点グルコース濃度への自動フィードバック制御は、任意の追加の資源要件なしに、各細胞株のプロセスに対して直接的な正の影響を有した。細胞株1についての自動フィードバック制御は、ボーラス供給のバッチAと比較した場合、バッチB及びバッチCの両方で、同等の増殖プロファイル及び製品の生産高を維持ながら、全体的な製品の糖化の減少をもたらした。この改善は、自動フィードバック制御のバッチB及びCに必要とされるグルコース供給の一貫した送達及び全体的な体積の減少に起因している可能性がある。細胞株1は、後期開発段階におけるプラットフォームプロセスを表す。この細胞株に対してかなりのプロセス開発が完了しているが、ラマンベースの自動フィードバック制御などのPATツールの導入は、この時点までに設計されたプロセスに対して予想される悪影響なしに、プロセス開発に利益をもたらすことができる。
【0230】
細胞株2は、細胞株1よりも開発の初期段階においてより強化されたプロセスを表す。mAb産生バイオリアクターにおけるプロセス強化は、主にプロセスの生物学的限界に依存する。より高いVCD、細胞代謝、及び強化されたプロセスの生産性を維持するには、培地の組成及び濃縮並びに供給戦略の最適化が重要である。細胞株2に対するグルコース供給の自動化により、より最適化された供給戦略を試験することができるようになった。送達されたグルコースの総体積は、ボーラスバッチ及び自動フィードバック制御バッチの両方で同様であったが、いくつかのプロセスの改善が観察された。細胞株2についての両方の自動化フィードバック制御バッチにおけるより大きな製品の生産高及び改善された製品の品質と併せて、改善された増殖及び生存率のプロファイルは、PATツールが開発プロセスにおいていかに有効であり得るかを強調する。プロセス開発において製品の品質及び生産高に直接影響を及ぼす能力は、QbDイニシアチブの目標に適合する。
【0231】
開発の初期又は後期段階におけるラマン分光法などのPAT技術の実装は、プロセス開発、スケールアップ、及び生産プロセスの堅牢性に大きな影響を及ぼす可能性がある。ここで、2つのCHO細胞株のバイオリアクタープロセスには、開発段階でPAT法を用いる場合、それらの現在のプロセスの効率における改善の徴候が見えた。
【0232】
開発段階におけるラマンを用いた自動フィードバック制御などの方法の採用は、貴重なデータを生成することができ、伴われるリスクは低い。プロセス開発においてPATを標準化する能力は、より効率的で費用効果の高い製造プロセスにつながる可能性がある。より効率的な開発の直接の結果として、製造スケールでの製品の生産高の増加及び/又は製品の品質の改善は、患者のための投薬量要件に影響を及ぼし得る(これにより、バッチ当たりの生成される製品の用量がより多くなり、コスト及び時間の大幅な節約につながる可能性がある)。商業的製造における開発及び実装でこのような技術を考慮することにより、プロセス効率が最大化され、新規のmAb療法に対する需要を満たすエンド・ツー・エンドのQbDアプローチが創出される。
【0233】
本明細書に提供された結果は、プロセス開発においてラマン分光法をPATツールとして含めることが、製品の生産高を改善し、全体的な製品の糖化を減少させることができることを実証した。例えば、細胞株1のプロセスは、バイオリアクターへの総グルコース送達を減少させ、次に、同等の増殖プロファイル及び製品の生産高を維持しながら、ラマンベースのフィードバック制御のバッチにおいて全体的な製品の糖化を43.7%及び57.9%減少させることによって改善された。加えて、細胞株2のプロセスも改善され、プロセスが進行するにつれて細胞の健全性が長く維持され、細胞の生存率の低下が大幅に減少した。この改善は、このプロセスの製品の生産高を最大25%増加させるノックオン効果を有していた。したがって、プロセス開発においてラマン分光法をPATツールとして含めることにより、プロセス開発、スケールアップ、及び製造プロセスの堅牢性に大きな影響を及ぼす可能性がある。
【0234】
上記の説明及び特許請求の範囲において、「~のうちの少なくとも1つ」又は「~のうちの1つ又は2つ以上」などの語句が、その前に記載される要素又は特徴の接続的なリストとともに用いられる場合がある。「及び/又は」という用語もまた、2つ又は3つ以上の要素又は特徴のリストで用いられる場合がある。それが使用される文脈によって別途暗黙的又は明示的に矛盾しない限り、そのような語句は、列挙された要素若しくは特徴のうちのいずれかを個別に、又は列挙された要素若しくは特徴のうちのいずれかを他の列挙された要素若しくは特徴のいずれかと組み合わせて意味することが意図されている。例えば、「A及びBのうちの少なくとも一方」、「A及びBのうちの1つ又は2つ以上」、及び「A及び/又はB」という語句は各々、「A単独、B単独、又はA及びBを一緒に」を意味することが意図されている。また、3つ又は4つ以上の項目を含むリストについても同様の解釈が意図されている。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1つ又は2つ以上」、及び「A、B、及び/又はC」という語句は各々、「A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、又はA及びB及びCを一緒に」を意味することが意図されている。上記及び特許請求の範囲における「~に基づいて」という用語の使用は、列挙されていない特徴又は要素も許容可能であるように、「~に少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図している。
【0235】
本明細書で述べた主題は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法、及び/又は物品として実施することができる。上記の説明に記載した実現形態は、本明細書で述べた主題と一致する全ての実現形態を表すものではない。むしろ、それらは単に、説明した主題に関連する態様と一致するいくつかの例にすぎない。いくつかの変形形態について上で詳細に説明してきたが、他の改変形態又は追加形態も考えられる。具体的には、更なる特徴及び/又は変形が、本明細書に記載したものに加えて提供され得る。例えば、上述した実現形態は、開示した特徴の様々な組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに/又は上で開示したいくつかの更なる特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせに関するものとなり得る。加えて、添付の図面に示しかつ/又は本明細書で説明した論理の流れは、望ましい結果を達成するために、示した特定の順序、又は逐次的な順序を必ずしも必要としない。他の実施形態が以下の特許請求の範囲に含まれ得る。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
【国際調査報告】