(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】環境に優しい水系エンジニアリングポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 179/08 20060101AFI20240305BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240305BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240305BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C09D179/08 B
C09D7/63
C09D7/20
C08G73/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558572
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2022057611
(87)【国際公開番号】W WO2022200416
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222287
【氏名又は名称】エランタス ヨーロッパ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ ロッジ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ スピネッリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンナ ビオンディ
【テーマコード(参考)】
4J038
4J043
【Fターム(参考)】
4J038DJ051
4J038HA156
4J038JB04
4J038JB27
4J038KA06
4J038MA08
4J038MA09
4J038NA11
4J038PA19
4J038PC02
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA11
4J043SA47
4J043SB01
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4J043TA21
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA122
4J043UA131
4J043YB32
4J043ZA22
4J043ZB03
(57)【要約】
【課題】水性組成物の提供。
【解決手段】水;適切な出発物質をN-n-ブチルピロリドン中で80~120℃の範囲の温度で10000~40000g/mol(ダルトン)のMw及び1.1~2のMw/Mn比を有するポリマーが形成されるまで反応させることによって得ることができるポリアミドイミドポリマーと、アミン化合物とを反応させることによって得られる反応生成物;任意選択的に、アミン化合物;及びN-n-ブチルピロリドンを含む、水性組成物、並びにコーティング組成物中でのその使用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.水;
b.以下を反応させることによって得られる反応生成物
b1.適切な出発物質をN-n-ブチルピロリドン中で80~120℃の範囲の温度で10000~40000g/mol(ダルトン)のMw及び1.1~2のMw/Mn比(ここで、Mw及びMnは、DIN 55672-2に従って測定されるものである)を有するポリマーが形成されるまで反応させることによって得ることができるポリアミドイミドポリマーと、
b2.アミン化合物;
c.任意選択的に、アミン化合物;及び
d.N-n-ブチルピロリドン
を含む、水性組成物。
【請求項2】
前記適切な出発物質が、2つのカルボキシル基が隣接位置にあるトリカルボン酸又はその無水物と、ジイソシアネートと、低分子量モノカルボン酸と、を含む混合物を含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水溶液を含む、コーティング組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のコーティング組成物であって、
a.20~30質量%のポリアミック酸アミン塩(すなわち、ポリアミドイミドポリマーとアミン化合物との反応生成物);
b.30~40質量%のNBP
c.15~20質量%のアミン;
d.15~25質量%の水、及び
e.0~10質量%の他の成分
を含み、ここで、質量%は前記組成物の総含有量に基づくものである、コーティング組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のコーティング組成物であって、
他の成分として、
a.前記組成物の固形分に基づいて、0.5~20質量%の乾燥した潤滑剤;
b.前記組成物の固形分に基づいて、0.0質量%~50質量%の1種又はそれより多くの顔料;
c.前記コーティング組成物の総含有量に基づいて、0.0~20質量%の追加の溶媒;
d.前記コーティング組成物の固形分に基づいて、0.0質量%~50質量%の機能性充填材;
e.前記コーティング組成物の固形分に基づいて、0.0質量%~20質量%の機能性添加剤;
f.前記コーティング組成物の総含有量に基づいて、0.0~5質量%の酸性又はアルカリ性の添加剤
をさらに含む、コーティング組成物。
【請求項6】
基材が、請求項3~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物を用いてコーティングされる、基材をコーティングする方法。
【請求項7】
前記コーティング組成物が、基材に適用され、次いで、40℃~130℃の範囲の乾燥温度で乾燥される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基材を請求項3~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物を用いてコーティングし、次いで、40℃~130℃の範囲の乾燥温度で乾燥させることによって得られる、前記基材上のコーティング層であって、乾燥膜厚(DFT)が5ミクロン未満から60ミクロンの範囲である、コーティング層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジニアリングポリマーを含む水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
US2015/0018466において、コーティング系のための水溶液が開示されており、この水溶液は、a)水と、b)ポリアミドイミド又はポリエーテルイミドと、c)アミンと、d)溶媒とを含む。従来の組成物では、N-メチルピロリドン(NMP)が、そのようなコーティング系のための溶媒として用いられていた。US2015/0018466では、代替溶媒が、NMPの使用に関連した一定の毒性の問題を克服するために示されている。代替溶媒としては、アセトアセトアミド、グアニジン、有機ホスフェート、ピペリドン、フタレート、スルホラン、ジメチルスルホン、ジアルキルスルホキシド、ジパントテニル、n-アセチル-カプロラクタム、又はこれらの混合物が挙げられる。ポリアミドイミド(PAI)の水溶液は、固体のPAI粉末を、高温で水と代替溶媒との混合物中でアミンと反応させてポリアミック酸-アミン塩を形成し、次いで、この塩を水に溶解させることによって得られる。得られた溶液は、≦10質量%のPAIの固形分を有するため、これらの溶液を例えばコーティングに使用するのはあまり魅力的ではない。なぜならば、大量の溶媒を、乾燥/硬化時に除去する必要があるからである。
【0003】
WO2017/011250において、機能性コーティング組成物が開示され、この組成物は、極性の非プロトン性溶媒に溶解したエンジニアリングポリマーを含む。既知の組成物において、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルホルムアミド、及びフルフリルアルコールなどの溶媒が用いられている。しかし、NMPの使用に関連した毒性の問題を考慮して、WO2017/011250では、β-アルコキシプロピオンアミドが、これらのタイプの組成物においてNMPに置き換わる代替溶媒として示されている。この文献において開示されたコーティング組成物の固形分は<30質量%であり、このことは、コーティングの適用後、大量の有機溶媒を乾燥/硬化時に除去する必要があることを意味する。
【0004】
US2017/349782において、ポリアミドイミドを含む水性組成物の調製のためのプロセスが開示される。このプロセスでは、ポリアミドイミド又はポリアミドアミック酸の樹脂粉末を、N-ホルミルモルホリン(NFM)と第二の溶媒とを含む第一の溶媒混合液に溶解させる。次いで、PAI樹脂をこの溶液から沈殿させ、さらなるステップにおいて、PAI樹脂を、N-ブチルピロリドン(NBP)と、エチレングリコールと、水とを含む第二の溶媒混合物に再び溶解させる。このプロセスはかなり複雑であり、最終的には、様々な有機溶媒と少量の水とを含むPAI樹脂溶液が得られる。
【0005】
JP2019026769において、溶媒としてN-ブチルピロリドン(NBP)を用いる、ポリアミドイミド樹脂の調製のためのプロセスが開示される。第二の有機溶媒をこの溶液に加えることができ、組成物は、優れた耐湿性を有するコーティングとして用いることができる。この文献は、PAI樹脂を含む水性組成物の調製を開示しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
>20質量%、好ましくは>25質量%の固形分を有する水性のポリアミドイミド溶液であって、種々のタイプの(特殊)コーティング用途に用いることができるポリアミドイミド溶液に対する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下を含む水溶液に関する:
a.水;
b.以下を反応させることによって得られる反応生成物
b1.適切な出発物質をN-n-ブチルピロリドンピロリドン中で80~120℃の範囲の温度で10000~40000g/mol(ダルトン)のMw及び1.1~2のMw/Mn比を有するポリマーが形成されるまで反応させることによって得ることができるポリアミドイミドポリマーと、
b2.アミン化合物;
c.任意選択的に、アミン化合物;及び
d.N-n-ブチルピロリドン。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリアミドイミドポリマーの調製
本発明において用いられるポリアミドイミド樹脂は、2つのカルボキシル基が隣接位置にありかつ少なくとも1つのさらなる官能基が必ず存在するポリカルボン酸又はその無水物などの様々な出発物質と、イミド環を形成することができる少なくとも1つの1級アミノ基を有するポリアミン、又は少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物とから調製することができる。ポリアミドイミドは、ポリアミドと、少なくとも2つのNCO基を含有するポリイソシアネートと、縮合又は付加による反応に関与することができる少なくとも1つのさらなる基を含有する環式ジカルボン酸無水物とを反応させることによっても得ることができる。
【0009】
さらに、成分のうちの1種が既にイミド基を含有している場合には、ジイソシアネート又はジアミンと、ジカルボン酸とからポリアミドイミドを調製することも可能である。例えば、初期段階でトリカルボン酸無水物とジ1級ジアミンとを反応させて、対応するジイミドカルボン酸を与えることが可能であり、それを、次いで、ジイソシアネートと反応させることによりポリアミドイミドが形成される。
【0010】
ポリアミドイミドの調製については、2つのカルボキシル基が隣接位置にあるトリカルボン酸又はその無水物の使用が好ましい。好ましくは、対応する芳香族トリカルボン酸無水物、例えば、無水トリメリット酸、ナフタレントリカルボン酸無水物、ビスフェニルトリカルボン酸無水物、及び分子中に2つのベンゼン環と2つの隣接カルボキシル基とを有する他のトリカルボン酸、例えばDE-A 19 56 512に与えられた例などである。特に好ましくは、無水トリメリット酸の使用である。アミン成分として、ポリアミドカルボン酸に関連して既に記載されたジ1級ジアミンを用いることが可能である。チアジアゾール環を含有する芳香族ジアミンの使用の可能性はさらに、例えば、2,5-ビス(4-アミノフェニル)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(3-アミノフェニル)-3,3,4-チアジアゾール、2-(4-アミノフェニル)-5-(3-アミノフェニル)-1,3,4-チアジアゾール、及び様々な異性体の混合物にもある。
【0011】
ポリアミドイミドの調製に適しているジイソシアネートは、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-ジイソシアネート、及びジシクロヘキシル-メタン4,4’-ジイソシアネート;芳香族ジイソシアネート、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネート、及びさらに置換芳香族系、例えば、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルフィドジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネート;混合芳香族-脂肪族ジイソシアネート、及び芳香族-ヒドロ芳香族ジイソシアネート、例えば、4-イソシアナトメチルフェニルイソシアネート、テトラヒドロナフチレン1,5-ジイソシアネート、及びヘキサヒドロベンジジン4,4’-ジイソシアネートである。好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-及び2,6-トリレンジイソシアネート、並びにヘキサメチレンジイソシアネートの使用である。
【0012】
水に溶解性であるポリアミドイミドポリマーを調製するために、ポリアミドイミドをアミンと反応させて、ポリアミック酸-アミン塩を形成させる。通常、これは、50℃~80℃の温度で4~6時間にわたって行われ、あるいは、所望の固形分に到達するまで行われる。
【0013】
ポリアミック酸-アミン塩を調製するために用いることができる適切なアミンの例としては、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、エチル2-ヒドロキシエチルアミン、トリブチルアミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン、N,N-ジメチルアニリン、モルホリン、ピリジン、N-メチルピロール、エチルビス(2-ヒドロキシエチルアミン、テトラメチルグアニジン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
本発明に係る水溶液を調製するために、ポリアミック酸-アミン塩に水を加えるか、代わりに、アミンを含有する水溶液を加える。
【0015】
本発明に係る水溶液中に任意選択的に存在するアミンは、上に示されたポリアミック酸-アミン塩を調製するために用いられるアミンと、同じであってよく、異なっていてもよい。
【0016】
特殊な特性を有する機能性コーティングとしての資格を得るのに必要な有益な特性を示すポリアミドイミド樹脂に基づいた本発明の水性組成物は、ポリアミドイミド樹脂が十分に定義された反応条件の下でNBP中で調製される場合にだけ得ることができることがわかった。反応温度は、高すぎないのがよく、好ましくは、80~130℃の範囲、より好ましくは80~120℃の範囲であるのがよいことがわかった。反応温度が130℃超である場合、反応は速すぎ、制御されないため、少なくとも10000g/molのMw、及び1.1~2のMw/Mn比を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができないことがわかった。反応温度が80℃未満である場合、反応は起こったとしても非常に遅く、実際のポリアミドイミド樹脂の製造には有用でない。
【0017】
低分子量モノカルボン酸など、反応混合物中に存在する少量の減速化合物を有することが有益であることがさらにわかった。適切な低分子量モノカルボン酸の例としては、(C1~C10)モノカルボン酸又はC4~C6分岐状モノカルボン酸、たとえばギ酸、酢酸、プロピオン酸などが挙げられる。反応混合物中の低分子量モノカルボン酸の量は少ないのがよく、例えば、ポリアミドイミド樹脂が出発物質として無水物を用いて調製される場合、無水物の量に基づいて、2~4mol%であるのがよい。
【0018】
本発明はさらに、コーティング組成物に関し、このコーティング組成物は、ノンスティック性(非粘着性)又は低減された摩擦特性を提供する機能性コーティングとして用いることができる。そのようなコーティングは、バインダー媒体に埋め込まれているか結合されている乾燥した潤滑剤であって、フルオロポリマー、グラファイト、グラフェン、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、シリコーンなどの1種又はそれより多くの乾燥した潤滑剤を組成物に加えることによって調製することができる。典型的には、これらの乾燥した潤滑剤は、組成物の固形分に基づいて、0.5~20質量%の量で組成物中に存在する。
【0019】
コーティング組成物は、任意選択的に、顔料、追加の溶媒、機能性充填剤、添加剤、及び酸性又はアルカリ性の添加剤などの1種又はそれより多くの追加成分を含むことができる。
【0020】
顔料がコーティング組成物中に存在する場合、それらは、組成物の固形分に基づいて0.1質量%~50質量%の範囲の量、代わりに、組成物の固形分に基づいて0.5~20質量%の範囲の量で存在する。
【0021】
コーティング組成物は、NBP溶媒に加えて、追加の溶媒を含有してもよい。他のそのような溶媒は、コーティング組成物の総含有量に基づいて0.1~20質量%の量、代わりに、コーティング組成物の総含有量に基づいて0.5~10質量%の範囲で存在することができる。
【0022】
コーティング組成物は、1種又はそれより多くの機能性充填剤を含有してもよい。そのような機能性充填材は、腐食防止、より高い充填率、表面テクスチャリング、改善された硬度又は他の特徴を提供することができる。例示的な機能性充填材としては、炭化ケイ素、硫酸バリウム、焼成シリカ、珪灰石、アルミナ、タルク、マイカ、シリカ、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、ワックスなどが挙げられる。
【0023】
そのような機能性充填材が存在する場合、それらは、典型的には、コーティング組成物の固形分に基づいて0.1質量%~50質量%の量、代わりに、コーティング組成物の固形分に基づいて0.5~20質量%の範囲で存在する。
【0024】
コーティング組成物は、消泡剤、表面湿潤剤、流動剤、顔料湿潤添加剤、増粘剤、フィラー、及び電気伝導率又は他の特徴を変更する添加剤などのさらなる機能性添加剤を含有してもよい。
【0025】
そのような機能性添加剤が存在する場合、それらは、典型的には、コーティング組成物の固形分に基づいて0.1質量%~20質量%の量、代わりに、コーティング組成物の固形分に基づいて0.5~10質量%の範囲で存在する。
【0026】
コーティング組成物は、ジメチルエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アミノメトキシプロパノール、ジイソプロピルアミン、アンモニア、酢酸、ギ酸、クエン酸などの酸性又はアルカリ性の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤は、pH補正剤又はフラッシュ防錆剤として働くことができる。そのような酸性又はアルカリ性の添加剤が組成物中に存在する場合、それらは、典型的には、コーティング組成物の総含有量に基づいて0.5~20質量%の量、代わりに、コーティング組成物の総含有量に基づいて1~10質量%の量で存在する。
【0027】
典型的には、本発明に係るコーティング組成物は、以下の組成を有する(質量%は、組成物全体の質量に基づく)。
- 20~30質量%のポリアミック酸アミン塩(すなわち、ポリアミドイミドとアミンとの反応生成物);
- 30~40質量%のNBP
- 15~20質量%のアミン;
- 15~25質量%の水、及び
- 0~10質量%の他の成分
【0028】
上記の組成を有する本発明に係るコーティング組成物は、典型的には、500~4000mPa.s(500~4000センチポイズ)の範囲の粘度を有し、ここで粘度は、HAAKE VISCOTESTER 550を用いて、剪断速度160s-1及び同軸円筒測定システムにて、2分間にわたって22℃で測定されるものである。
【0029】
本発明に係るコーティング組成物は、通常、基材に適用される。基材は、金属、セラミック材料、プラスチック、コンポジット、及び鉱物からなる群から選択される。
【0030】
本発明に係るコーティングのための基材として用いられる金属としては、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ブリキ、及び炭素鋼由来の基材が挙げられる。
【0031】
本発明に係るコーティングのための基材として用いられるセラミック材料としては、ホウケイ酸ガラスなどのガラス、ほうろう、様々な焼成粘土、及び他の耐火材料が挙げられる。
【0032】
本発明に係るコーティングのための基材として用いられるプラスチック及びコンポジットとしては、高融点のプラスチック及びコンポジットが挙げられ、たとえば、コーティング配合物の硬化温度より高い融点を有するプラスチックなどであり、その例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ABS、ポリエチレン、炭素繊維エポキシコンポジット、及びガラス繊維エポキシコンポジットが挙げられる。本発明に係るコーティングのための基材として用いられる鉱物としては、マイカ、玄武岩、アルミナ、シリカ、及び珪灰石、大理石、及び花コウ岩が挙げられる。
【0033】
基材は、鍋又は他の調理器具などの物品の一部であってよい。
【0034】
基材は、硬質基材であっても可撓性基材であってもよい。硬質基材の例としては、調理器具、耐熱皿、缶、コイル、型、小型電気器具、ファスナー、リプログラフィーローラー、ベアリング、エンジンピストンスカート、及び他の適切な基材が挙げられる。可撓性基材の例としては、例えば、連続オーブン用の食品コンベアベルト、競技場の屋根及びレーダードームにおいて用いられるタイプの建築用ファブリック、ヒートシールベルト、回路ボード、クッキングシート、並びにテント向けファブリックなどの用途において一般的に用いられているタイプのガラスクロスが挙げられる。「ガラスクロス」又は「ガラスクロス」は、例えば、リネン、ガラス、又は綿などの織物繊維でできたテキスタイル材料である。本コーティング組成物でコーティングすることができる他の可撓性基材としては、天然又は合成の、繊維又はフィラメント(ステープル繊維、ファイバーフィル、ヤーン、糸、テキスタイル、不織布、ワイヤークロス、ロープ、ベルト、コード、メンブレン、及びウェビングなど)などのあらゆる材料が挙げられる。本コーティング組成物でコーティングすることができる例示的な繊維状材料としては、植物繊維、動物繊維、及び鉱物繊維などの天然繊維(綿、綿デニム、ウール、シルク、セラミック繊維、及び金属繊維など)、並びに合成繊維(ニット炭素ファブリック、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維(たとえばRoyal DSM NVから入手可能なDyneema(商標))、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)繊維、パラ-アラミド繊維(Teijin Aramidから入手可能なTwaron(商標)などのポリパラフェニレンテレフタルアミドなど)、レーヨン繊維(たとえばCordenka GmbH & Co KGから入手可能なCORDENKA(商標)繊維)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリル系繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維、ポリアミド繊維(ナイロン)、及びナイロン-ポリエステル繊維など)が挙げられる。
【0035】
コーティングの方法
コーティング組成物は、単純な添加及び低剪断混合などの任意の標準的な配合技術によって調製することができる。コーティング組成物は、スプレーコーティング、カーテンコーティング、及びローラーコーティングなどの任意の既知技術によって、ベース層又はプライマーとして基材に直接適用してもよく、ベースコート若しくはプライマー及び/又は中間コートの上に適用してもよく、次いで、硬化することによって、光沢、ノンスティック性、耐摩耗性、及び耐引っかき性が改善されたコーティングを有する、コーティングされた基材が提供される。典型的には、ベースコートは、スプレーコーティング、カーテンコーティング、及びローラーコーティングによって適用され、一方で中間コート及びトップコートは、ローラーコーティングによって適用される。プライマー及び/又は中間コートの特定の組成物は、種々様々であってよく、本開示に開示されたコーティングによって示される改善された特性に対して重要であると考えられない。
【0036】
1つの例示的な実施態様において、コーティング組成物は、基材に適用され、次いで乾燥される。例示的な実施態様において、乾燥は、40℃~130℃の範囲、代わりに、75~115℃の範囲の乾燥温度で行うことができる。例示的な実施態様において、乾燥は、30秒~10分、又はそれより長い間乾燥温度で乾燥することを含むことができる。1つの例示的な実施態様において、コーティング組成物は、雰囲気温度で空気乾燥することによって乾燥される。1つの例示的な実施態様において、コーティング組成物は、基材に対して熱硬化される。例示的な実施態様において、硬化は、3~20分又はそれより長い時間にわたって220℃~450℃の範囲の硬化温度で行うことができる。
【0037】
コーティング組成物は、典型的には、用途に応じて、5ミクロン未満から60ミクロンまたはそれより厚い範囲の乾燥膜厚(DFT)に適用される。
【0038】
本発明のコーティング組成物は、アンダーコートとして用いることができる。アンダーコートはベースコートであってよく、これは、下にある基材に直接適用されるコーティング(プライマーと呼ばれることもある)である。本コーティング組成物は、オーバーコートであってもよく、これは、下にあるアンダーコートに対して適用されるものである。これらの実施態様において、本コーティング組成物は、コーティングが、下にあるアンダーコートの上かつカバーコーティング又はトップコートの下に適用される中間コートの形態をとってもよく、本コーティング組成物は、コーティングが、下にあるアンダーコートに対して適用され、外部環境に曝露されたままの状態であるトップコートの形態をとってもよい。他の実施態様において、本コーティング組成物は、基材に直接適用されて、基材と直接接触した単層コーティングを形成することができ、これによって、コーティングは、アンダーコートの上には適用されておらず、外部環境に曝露されたままの状態である。
【実施例】
【0039】
例
例1:ポリアミドイミドの調製
18.08質量部(pbw)の無水トリメリット酸、23.5pbwの4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、0.12pbwのギ酸、及び58.29pbwのNBPが反応容器に投入され、85℃まで加熱された。この混合物は85℃で2時間保持され、次いで、100℃までゆっくり加熱された。反応容器の温度は、2時間にわたってこの温度で維持された。その後、反応容器の加熱は停止され、ポリアミドイミドのNBP溶液が得られた。得られたポリアミドイミドのMw及びMnがDIN 55672-2に従って測定され、それぞれ16000g/mol及び10000g/molであった。したがって、溶液中のポリアミドイミドのMw/Mn比は1.6であった。
【0040】
例2:ポリアミドイミド水溶液の調製
例1に従って製造されたポリアミドイミドのNBP溶液62.62pbwを5.52pbwのジメチルエタノールアミンと50~80℃の温度で4~6時間反応させた。得られたポリアミック酸アミン塩(PAAA塩)を、7.37pbwの水に溶解させ、完全に均一な溶液が得られるまで、70~75℃で撹拌し続けた。25.0%の固形分が得られるまで、50質量%のジメチルエタノールアミンを含有する水溶液を加えた。固形分は、2.5グラムの生成物を直径5cmのディスクに量り、次いでこれを250℃で20’にわたってオーブンに入れることによって測定した。このPAAA塩の水溶液は、22℃で2420mPa.sの粘度を有する。これは、HAAKE VISCOTESTER 550を用いて、剪断速度160s-1及び同軸円筒測定システムにて、2分間にわたって測定されるものである。得られた生成物の最終組成は、25質量%のPAAA塩、37質量%のNBP、18質量%のDMEA、及び20質量%の水であり、ここで質量%は、組成物の全質量に基づく。
【0041】
例3:低粘度ポリアミドイミド水溶液の調製
例1に従って製造されたポリアミドイミドのNBP溶液62.62pbwを5.52pbwのジメチルエタノールアミンと50~80℃で6~8時間反応させた。得られたポリアミック酸アミン塩(PAAA塩)を、7.37pbwの水に溶解させ、完全に均一な溶液が得られるまで、70~75℃で撹拌し続けた。25.0%の固形分が得られるまで、50質量%のジメチルエタノールアミンを含有する水溶液を加えた。このPAAA塩の水溶液は、22℃で1550mPa.sの粘度を有する。これは、HAAKE VISCOTESTER 550を用いて、剪断速度160s-1及び同軸円筒測定システムにて、2分間にわたって測定されるものである。得られた生成物の最終組成は、25%のPAAA塩、37%のNBP、18%のDMEA、及び20%の水であり、ここで質量%は、組成物の全質量に基づく。
【0042】
例4 高固形分ポリアミドイミド水溶液の調製
例1に従って製造されたポリアミドイミドのNBP溶液62.62pbwを5.52pbwのジメチルエタノールアミンと50~80℃で4~6時間反応させた。得られたポリアミック酸アミン塩(PAAA塩)を、7.37pbwの水に溶解させ、完全に均一な溶液が得られるまで、70~75℃で撹拌し続けた。28.5%の固形分が得られるまで、50質量%のジメチルエタノールアミンを含有する水溶液を加えた。このPAAA塩の水溶液は、22℃で2420mPa.sの粘度を有する。これは、HAAKE VISCOTESTER 550を用いて、剪断速度160s-1及び同軸円筒測定システムにて、2分間にわたって測定されるものである。得られた生成物の最終組成は、28.4%のPAAA塩、42%のNBP、13.6%のDMEA、及び16%の水であり、ここで質量%は、組成物の全質量に基づく。
【0043】
例5:ポリアミドイミド水溶液の調製(比較例)
例1に従って製造されたポリアミドイミドのNBP溶液62.62pbwを用いて、非溶媒(エタノール)を用いることにより溶液からPAIを沈殿させた。得られた微粉を乾燥させた。その後、22.54pbwのPAI粉末を4.97pbwのジメチルエタノールアミンと反応させた。得られたポリアミック酸アミン塩を、6.66pbwの水に溶解させ、完全に均一な溶液が得られるまで、70~75℃で撹拌し続けた。50質量%のジメチルエタノールアミンを含有する水溶液を加えることにより、コーティング用途に通常用いられる粘度を有する水溶液を得た。溶液の固形分は約10%であった。
【国際調査報告】