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特表2024-511136ラクトースに富む液体組成物を製造するために乳タンパク質組成物を加工する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ラクトースに富む液体組成物を製造するために乳タンパク質組成物を加工する方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/142 20060101AFI20240305BHJP
   A23C 21/00 20060101ALI20240305BHJP
   A23C 1/00 20060101ALI20240305BHJP
   A01J 11/06 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A23C9/142
A23C21/00
A23C1/00
A01J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558577
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057834
(87)【国際公開番号】W WO2022200531
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】2103028
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515309704
【氏名又は名称】ユーロディア・アンデュストリ
【氏名又は名称原語表記】EURODIA INDUSTRIE
【住所又は居所原語表記】IMPASSE SAINT MARTIN, ZAC SAINT‐MARTIN, F‐84120 PERTUIS, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】リュタン,フロランス
(72)【発明者】
【氏名】ゴナン,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラージェトー,デニス
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001AC06
4B001BC99
4B001EC99
(57)【要約】
本発明は、乳タンパク質組成物を加工してラクトースに富む液体組成物を得るための方法に関し、該方法は、限外濾過透過物と限外濾過残留物とを得る限外濾過工程(ii)を含み、カチオン性樹脂上でのパーコレーションとそれに続くアニオン性樹脂上でのパーコレーションとを含む少なくとも一回の通過を含むイオン交換樹脂上での加工工程(iv)が続く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトースに富む液体組成物を得るために乳タンパク質組成物を加工する方法であって、
(i)乳タンパク質組成物を提供する工程、
(ii)該乳タンパク質組成物を限外濾過して、限外濾過透過物および限外濾過残留物を得る工程、
(iii)限外濾過工程(ii)の前および/または限外濾過工程(ii)の後に行われる、少なくとも部分的に脱塩する工程、および
(iv)該少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物をイオン交換樹脂上で加工する工程であって、カチオン性樹脂上でのパーコレーション、続いてアニオン性樹脂上でのパーコレーションを含む少なくとも一回の通過を含む工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(iv)が少なくとも二回の通過を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物をイオン交換樹脂上で加工する工程(iv)が、強カチオン性樹脂上でのパーコレーションおよび続く弱アニオン性樹脂上でのパーコレーションを含む少なくとも一回の通過を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(iv)への入口における前記限外濾過透過物(ii)の導電率が3mS/cm以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記限外濾過工程(ii)が、それぞれが1000ダルトン以上、好ましくは10,000ダルトン以下の最小カットオフ閾値を有する一つ以上の限外濾過膜の使用を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
限外濾過工程(ii)の入口における前記乳タンパク質組成物が70%以上の脱塩レベルを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン交換樹脂上における加工工程(iv)の入口における前記限外濾過透過物が、80%以上の脱塩レベルを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも部分的な脱塩工程(iii)が、カチオンを水素イオンHで置換する工程(iiia)を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記カチオン置換工程(iiia)が、それぞれが三つの区画を含むセルを備える電気透析装置上で実行されるカチオン置換の電気透析工程であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記脱塩工程(iii)が、アニオンをヒドロキシルイオンOHで置換する工程(iiib)を含むこと、および、前記工程(iiib)が、それぞれが三つの区画を含むセルを備える電気透析装置において行われることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも部分的な脱塩工程(iii)が、電気透析工程および/またはナノ濾過工程を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
吸収性樹脂上でのパーコレーションを含む少なくとも一回の通過を含む工程であって、工程(iv)の後に行われる工程を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
イオン交換樹脂上で加工する前記工程(iv)の後に実施されるナノ濾過の工程(v)を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
得られるラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対するラクトースの乾燥質量の比が約90%以上、好ましくは95%以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記限外濾過工程(ii)の前に実施される脱塩工程(iii)を含むこと、および、限外濾過工程(ii)の終了時に得られる前記少なくとも部分的に脱塩された限外濾過残留物が100℃以上の温度で安定であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(ii)で得られる前記限外濾過残留物の全乾燥質量に対する全窒素物質(TNM)の乾燥質量の比が、約50%以上である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(ii)で得られる前記限外濾過残留物の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比が6%未満であることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(i)の前記乳タンパク質組成物が、乳、特にスキムミルク、乳清およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記乳タンパク質組成物が、酸性乳清、スイート乳清、天然乳清およびそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
固体のラクトースを得るために、イオン交換樹脂上で加工する前記工程(iv)の後に実施される、蒸発および乾燥による濃縮工程を含むことを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、ラクトースに富む液体組成物。
【請求項22】
前記ラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対する糖、特にラクトースの乾燥質量の比が90%以上、好ましくは95%以上、さらにより好ましくは99%以上であることを特徴とする、請求項21に記載のラクトースに富む液体組成物。
【請求項23】
請求項1~19のいずれか一項に記載のラクトースに富む液体組成物を得るように乳タンパク質組成物を加工する前記方法を実施するための設備であって、該設備は、特に連続的に、
(a)乳タンパク質組成物を受け入れるための第1の入口、限外濾過透過物のための第1の出口、および限外濾過残留物のための第2の出口を含む限外濾過ユニット、
(b)該限外濾過ユニットの上流で前記乳タンパク質組成物を少なくとも部分的に脱塩するための脱塩ユニット、および/または前記限外濾過ユニットの下流で前記限外濾過透過物を少なくとも部分的に脱塩するための脱塩ユニット、および
(c)予め少なくとも部分的に脱塩された前記限外濾過透過物を脱塩するための、前記限外濾過ユニットの下流にある、イオン交換樹脂を含む加工ユニット
を含み、
上記ユニットは、
-カチオン性樹脂を含み、予め少なくとも部分的に脱塩された前記限外濾過透過物を受け入れることを目的とした第1の入口と、前記少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物P1用の第1の出口とを含む少なくとも一つのカラムA、および
-アニオン性樹脂を含み、前記限外濾過透過物P1を受け入れるための第1の入口と、前記少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物P2のための第1の出口とを含む少なくとも一つのカラムB
を含む、ことを特徴とする設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトースに富む液体組成物を製造するための、乳タンパク質組成物、特に乳の乳清または限外濾過透過物の再生の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工産業では毎年大量の副産物が製造され、それらが再生されないと環境に悪影響を与える可能性がある。
【0003】
乳清は、特にチーズ産業における乳の変換の副産物であり、動物の飼料として使用されるか、再生されない場合は廃棄される。今日では、さまざまな再生プロセスの使用を通じて、その使用は複数の分野で大幅に広がっている。実際、乳清はその成分(タンパク質、ラクトース、ミネラル)の原料として求められており、新しい製品の生産の機会を与える。
【0004】
乳清(血清ラクタス(Serum Lactus))は、一般的に「乳の漿液(milk serum)」と呼ばれ、特に乳の凝固中にカゼインと脂肪を分離した後の、チーズ製造中の乳の凝固から、または乳精密濾過のような乳の膜濾過の方法から生じる乳製品副産物である。これは液体部分である。固形部分はカードと呼ばれる。これは水っぽく半透明で、黄緑色が特徴である。
【0005】
乳清には三つのタイプ:すなわち、カゼインまたはフレッシュチーズの酸性培地での製造に由来するもの(酸性乳清);レンネットおよびハードまたはセミハードプレスチーズを使用したカゼイン生産に由来するもの(スイート乳清);および、理想または天然乳清と呼ばれる、乳の精密濾過に由来するもの(これは乳の精密濾過透過物である)、がある。
【0006】
乳清は、主に水、ラクトース、タンパク質、特に血清タンパク質、ミネラルで構成されている。乳清は、前記ラクトースとタンパク質を単離することで再生することができる。乳清タンパク質は、多くの食品産物の製造のため、例えば栄養飲料やタンパク質飲料の製造のための原料として再生することもできる。
【0007】
限外濾過残留物に由来する乳清タンパク質濃縮物(WPC)を製造するために、限外濾過(UF)によって非脱塩乳清を加工することが知られている。限外濾過透過物自体は、動物の飼料、メタン化、または乳清プラントで使用される。これらの透過物はタンパク質が少なく、ラクトースとミネラルが豊富で、再生するのが困難である。これらのUF透過物の製造コストは、多くの場合、副産物である非脱塩WPCの高い付加価値によって支えられている。
【0008】
したがって、目的の化合物が最大限に再生されるために、特に新規の出口を開発することにより、および処理すべき廃液をほとんど発生しない効率的な加工方法を調整することにより、乳副産物、特に乳清または乳限外濾過透過物の再生を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、第1の態様によれば、上記の問題に対処するラクトースに富む液体組成物を得るために乳タンパク質組成物を加工する方法に関し、該方法は:
(i)乳タンパク質組成物を提供する工程、
(ii)該乳タンパク質組成物を限外濾過して、限外濾過透過物および限外濾過残留物を得る工程、
(iii)限外濾過工程(ii)の前および/または限外濾過工程(ii)の後に行われる、少なくとも部分的に脱塩する工程、および
(iv)該少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物をイオン交換樹脂上で加工する少なくとも一つの工程であって、カチオン性樹脂上でのパーコレーション(percolation)、続いてアニオン性樹脂上でのパーコレーションを含む少なくとも一回の通過を含む工程
を含む。
【0010】
有利には、前記乳タンパク質組成物が前記限外濾過ユニットを通過する間、血清タンパク質が前記限外濾過残留物中に保持され、したがって溶液中の水および低分子量分子が限外濾過膜を通過する間にこの残留物中に濃縮される。ミネラルの浸透はラクトースの浸透と同等ではない。実際、特定のミネラルが前記血清タンパク質に結合し、その結果前記残留物中に保持される。
【0011】
本明細書において、「所定の樹脂上でのパーコレーションに続く別の所定の樹脂上でのパーコレーション」とは、前記二つのパーコレーションが、前記二つのパーコレーションの間に脱塩中間工程が起こらずに直接相互に続くことが理解される。
【0012】
前記限外濾過(ii)の工程と、脱塩(iii)の工程と、工程(iv)中のイオン交換樹脂上での少なくとも一回の通過との組み合わせにより、工程(i)の前記乳タンパク質組成物から脱塩されたラクトースに富む液体組成物を得ることが可能になる。
【0013】
本発明は、特に90%以上のラクトースの乾燥質量分率を有するラクトースに富む液体組成物を得ることが可能である。
【0014】
ラクトースの乾燥質量分率が90%以上、特に95%以上の場合、これは液体ラクトースである。
【0015】
ラクトースは従来技術において固体形態(例えば粉末)で存在し、本発明で得られるものよりも低いラクトースの乾燥質量分率を含む液体組成物を乳清プラントで加工した後に得られる。
【0016】
液体の形でラクトースを提供することは新しい。この形態は、その使用、特に乳製品の配合において多くの利点を有する。さらに、これにより、前記乳タンパク質組成物(i)を使用する製造業者は、高価で使用が複雑な乳清プラントの使用から解放される。
【0017】
本発明による前記方法によって得られた前記ラクトースは、(水を蒸発させて乾燥させる工程を実施することによって)液体または固体の形態で再生することができる。
【0018】
脱塩工程(iii)
【0019】
脱塩工程(iii)は、限外濾過工程(ii)の前の乳タンパク質組成物(i)の、および/または、イオン交換樹脂上において加工する工程(iv)の前の限外濾過透過物(ii)の、導電率(μジーメンス/cm)および/またはミネラルおよび/または灰分の乾燥質量分率の低減を可能にする、当業者に知られている任意の脱塩工程であり得る。この脱塩の強さは、工程(i)における前記乳タンパク質組成物のミネラルの乾燥質量分率の関数である。この脱塩工程(iii)は、UF工程(ii)の前に行って、UF工程(ii)への入口で前記乳タンパク質組成物を少なくとも部分的に脱塩させる、および/または、UF工程(ii)の後で行って、イオン交換樹脂上を少なくとも一回通過させることを含む工程(iv)への入口において前記限外濾過透過物を少なくとも部分的に脱塩させることができる。
【0020】
最後に、得られるラクトースに富む液体組成物中のラクトースの乾燥質量分率を増加させるために、前記限外濾過透過物を、前記イオン交換樹脂上の工程(iv)への入口において強力に脱塩しなければならない。
【0021】
この脱塩工程は、本明細書に記載されているような、あるいは特許EP 1.053.685 B1もしくはWO 2020/207894に記載されているような非限定的な方法で行うことができる。
【0022】
得られるラクトースに富む液体組成物は、工程(iv)の出口において、または、以下に説明する脱色工程または特にガラクトースを除去するための以下に説明する工程(v)の後に、回収/収集される組成物を意味すると理解されるべきである。
【0023】
工程(i)におけるおよび/または工程(ii)への入口における乳タンパク質組成物の、および/または、工程(ii)において得られるUF透過物および/または工程(ii)において得られるUF残留物、および/または工程(iv)におけるUF透過物および/または得られるラクトースに富む液体組成物の温度は、好ましくは0℃より高く、より具体的には40℃以下、さらにより具体的には30℃以下、特に20℃以下である。
【0024】
限外濾過工程(ii)および/または脱塩工程(iii)および/またはイオン交換樹脂上での工程(iv)は、好ましくは(すなわち、加工された製造物を維持するように)、0℃より高い温度、より具体的には40℃以下、さらにより具体的には30℃以下、特に20℃以下で行われる。
【0025】
乳タンパク質組成物
【0026】
工程(i)における乳タンパク質組成物は、任意に部分的に脱塩されている、乳、特にスキムミルク、乳清、およびそれらの混合物からなる群より選択することができ、特に選択される。本発明による乳清は、スイート乳清;酸性乳清;理想または天然乳清、特に乳の精密濾過透過物;およびそれらの混合物からなる群より選択することができ、特に選択される。
【0027】
スイート乳清は、特にレンネットを使用した乳の物理化学的加工(例えば、沈殿および/または凝固)によって得ることができ、カゼインおよびスイート乳清の回収を可能にする。
【0028】
理想または天然乳清は、特に精密濾過または限外濾過を使用した乳の物理的膜加工によって得ることができ、カゼインおよび理想乳清の回収を可能にする。
【0029】
酸性乳清は、特に乳酸および/または塩酸を使用した乳の酸加工によって得られることが好ましく、カゼインおよび酸性乳清の回収を可能にする。
【0030】
一つの実施形態において、工程(i)におけるDPCは、乳、スイート乳清、理想または天然乳清、または酸性乳清である。
【0031】
一つの実施形態において、工程(i)におけるDPCは乳であり、本方法は、特に本明細書に記載される実施形態の一つに従って、工程(ii)の後に乳限外濾過透過物に対して実行される脱塩工程(iii)を含む。
【0032】
本明細書では、UF工程(ii)の後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物により、工程(i)におけるDPCの限外濾過透過物、すなわち脱塩工程(iii)を受けた該透過物が理解される。
【0033】
工程(i)における乳タンパク質組成物、またはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の前または後の乳タンパク質組成物は、その全乾燥質量分率を増加させるために、機械的(例えば逆浸透またはナノ濾過またはそれらの組み合わせによる)および/または熱的(例えば水の蒸発による)に、予め濃縮させることができる。
【0034】
工程(i)における乳タンパク質組成物は、部分的に脱塩されてもよいし、そうでなければ、換言すれば未加工であってもよい。
【0035】
すなわち、脱塩工程(iii)は、工程(i)における乳タンパク質組成物が事前に脱塩を受けていない場合には第1の脱塩工程となり、または工程(i)における乳タンパク質組成物が既に部分的に脱塩されている場合には第2またはn回目の脱塩工程となり得る。
【0036】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物、好ましくはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物は、前記乳タンパク質組成物の全乾燥質量に対して計算された灰分の質量分率が、0%を超え6%以下、好ましくは約2.5%以下である。
【0037】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物、またはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物は、乾燥抽出物が5%以上かつ35%以下、より好ましくは10%以上かつ30%以下である。
【0038】
工程(i)における乳タンパク質組成物は、使用中は液体である。これは、粉末および/または混合液体に基づく液体溶液を再構成することによって、例えば、場合により部分的に脱塩された乳清粉末、または場合により部分的に脱塩されたスキムミルク粉末およびそれらの混合物を水に分散させることによって得ることができる。
【0039】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物、好ましくはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物は脱塩レベルが70%以上、より好ましくは80%以上、好ましくは85%以上、特に90%以上である。
【0040】
一般に、乳タンパク質組成物は乳に由来し、その乳はどの乳畜雌から得ることもできる。
【0041】
好ましくは、乳タンパク質組成物は、牛乳、ヤギ乳、羊乳、ロバ乳、水牛乳、雌馬乳、ラクダ乳、およびそれらの混合物から選択される乳に由来し、より好ましくは牛乳、ヤギ乳、羊乳およびそれらの混合物から選択され、特に牛乳である。
【0042】
乳清は血清タンパク質を含み、好ましくは、乳の変換中に固化した(凝固した)部分の中および/または乳の精密濾過残留物の中に残留カゼインを含まない。
【0043】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物、またはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物は、前記乳清の全乾燥質量に対するラクトースの乾燥質量の比が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、特に85%以上である乳清である。
【0044】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物、またはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物は、前記乳清の全乾燥質量に対するラクトースの乾燥質量の比が90%以下の乳清である。
【0045】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物、またはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物は、前記乳清の全乾燥質量に対する全窒素物質(TNM)の乾燥質量の比が0%を超える、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、好ましくは5%以上である乳清である。
【0046】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物、またはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物は、前記乳清の全乾燥質量に対する全窒素物質(TNM)の乾燥質量の比が30%以下、好ましくは25%以下、好ましくは20%以下である乳清である。
【0047】
好ましくは、工程(i)における乳タンパク質組成物、またはUF工程(ii)の前または後に実施される脱塩工程(iii)の後に得られる乳タンパク質組成物は導電率が0.10mS/cm以上、好ましくは0.80mS/cm以上、より好ましくは15mS/cm以下である。好ましくは、工程(i)における、またはUF工程(ii)の入口における乳タンパク質組成物は、以下のカチオン:カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムを含む。
【0048】
好ましくは、工程(i)における、またはUF工程(ii)への入口における乳タンパク質組成物は、以下のアニオン:塩化物、リン酸塩、硫酸塩、乳酸塩およびクエン酸塩を含み、これらは特に、本発明による脱塩方法の標的となるアニオンである。
【0049】
本明細書において、UF工程(ii)への入口における乳タンパク質組成物は、必要に応じて脱塩工程(iii)を経た乳タンパク質組成物を指す。
【0050】
スイート乳清/天然乳清
【0051】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物は、場合により(例えば、限外濾過工程(ii)前の工程(iii)中に)少なくとも部分的に脱塩されたスイート乳清、天然乳清、またはそれらの混合物であり、あるいは工程(ii)における乳限外濾過透過物であり、以下の特性の一つを単独または組み合わせて有する。
【0052】
-pHが4.7~6.9である;
-スイート乳清または天然乳清の全乾燥質量に対するラクトースの乾燥質量の比が、70%または80%以上、特に90%または85%以下である;
-スイート乳清または天然乳清の全乾燥質量に対する全窒素物質(TNM)の乾燥質量の比が10%以上、好ましくは12%以上、特に20%以下である;
-スイート乳清または天然乳清の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比が0.1%以上、特に0.3%以上である;
-前記スイートまたは天然乳清が部分的に脱塩されている場合、スイートまたは天然乳清の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比が4%または3%以下である;または
-スイートまたは天然乳清の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比が5%以上、特に7%以上、特に13%以下である(前記スイートまたは天然乳清が脱塩されていない場合)。
【0053】
酸性乳清
【0054】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物は、場合により(例えば、限外濾過工程(ii)前の工程(iii)中に)少なくとも部分的に脱塩されている酸性乳清であり、以下の特性のうちの一つを単独または組み合わせて有する。
【0055】
-pHが6.5以下、特に4以上、より具体的に6.1以下である;
-酸性乳清の全乾燥質量に対するラクトースの乾燥質量の比が、50%または60%または70%または80%以上、特に90%以下、特に85%以下であり、例えば、酸性媒体中でのチーズ、または酸性媒体中でのカゼインの生産に由来する乳清である;
-酸性乳清の全乾燥質量に対する全窒素物質(TNM)の乾燥質量の比が5%以上、特に20%以下、特に15%以下である;
-前記酸性乳清が少なくとも部分的に脱塩されている場合、酸性乳清の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比が1.5%以上、特に5%以下である;または
-酸性乳清の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比が5%以上、特に7%以上、特に13%以下である(前記酸性乳清が脱塩されていない場合)。
【0056】
限外濾過工程(ii)
【0057】
有利には、乳清、特に部分的に脱塩された乳清の限外濾過は、透過物中のラクトースの質量分率を増加させる。さらに、工程(ii)で得られる限外濾過残留物の灰分の質量分率は、乳清タンパク質単離物(WPI)の質量分率に近い。
【0058】
有利には、少なくとも部分的に脱塩された乳清のUF残留物の全乾燥質量に対して計算されたカルシウムおよびリンの質量分率が減少することが観察される。この規定により、工程(ii)中の濃縮の過程での膜上のリン酸カルシウムまたはタンパク質の沈殿を制限する、または除去することさえ可能になる。
【0059】
有利には、タンパク質は、工程(ii)の前に行われた脱塩工程(iii)中の事前のカルシウム抽出により、限外濾過残留物中で熱的に安定化される。
【0060】
灰分と有機酸は、その後の乳清タンパク質濃縮物の使用や、時間の経過とともに限外濾過膜の汚染の問題となる可能性があるため、これらの効果は有利である。
【0061】
さらに、浸透流が改善され、洗浄時間に対して生産時間が最適化される。
【0062】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物の全乾燥質量に対するラクトースの乾燥質量の比、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後における比は、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、好ましくは75%または80%以上、より好ましくは85%または90%以上である。
【0063】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物の全乾燥質量に対するラクトースの乾燥質量の比、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後における比は、96%以下である。
【0064】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物の全乾燥質量に対するラクトースの乾燥質量の比、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後における比は、96%以上である。
【0065】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物の全乾燥質量に対する全窒素物質(TNM)の乾燥質量の比、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後における比は、0%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上である。
【0066】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物の全乾燥質量に対する全窒素物質(TNM)の乾燥質量の比、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後における比は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、好ましくは5%以下である。
【0067】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後に得られる限外濾過透過物の脱塩レベルは70%以上であり、特に75%以上、特に80%以上、より特に85%以上である。
【0068】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後に得られる限外濾過透過物の脱塩レベルは90%以上であり、特に95%以上である。
【0069】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後における比は、0.1%以上であり、特に0.3%以上である。
【0070】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後における比は、特に工程(iv)の入口では、4%以下、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下、さらにより好ましくは1%以下である。
【0071】
本明細書において、イオン交換樹脂を通過する工程(iv)への入口におけるUF透過物(ii)は、場合により脱塩工程(iii)を受けたUF透過物を指すものとする。
【0072】
一つの実施形態において、工程(ii)において得られた限外濾過透過物の導電率、または前記UF透過物(ii)への工程(ii)の後に行われた脱塩工程(iii)の後における導電率は、特に工程(iv)への入口において、3mS/cm以下である。
【0073】
工程(ii)のUF透過物は、機械的に(例えば逆浸透またはナノ濾過またはそれらの組み合わせによって)予備濃縮することができ、および/または例えば水の蒸発によって熱的に予備濃縮することができる。この濃縮工程は、乾燥物質の質量含有量を増加させ、工程(ii)の後に行われる脱塩工程(iii)の前または後に行うことができる。
【0074】
イオン交換樹脂上での工程(iv)
【0075】
有利には、工程(iv)は、イオン交換樹脂上を少なくとも一回通過することを含み、工程(ii)の限外濾過透過物の脱塩および場合により脱酸を可能にする。この工程(iv)では、残留窒素物質も除去される。
【0076】
工程(iv)は、限外濾過工程(ii)から生じるUF透過物中のラクトースの乾燥質量分率を増加させる。このUF透過物が脱塩されていないか、または脱塩が不十分である場合には、工程(iv)の後に脱塩工程(iii)を行う必要がある。
【0077】
カチオン性樹脂上でのパーコレーションはまた、好ましくはアニオン性樹脂上を通過する前に、UF透過物(ii)を酸性化し、これにより透過物のpHが上昇する。
【0078】
カチオン性樹脂上のパーコレーションは、有利には、カチオン置換工程、特に水素イオンHによる二価および/または一価カチオンの置換工程である。特に、この工程は酸性化工程である(換言すれば、UF透過物(ii)のpHは、カチオン性樹脂上を通過した後に低下する)。
【0079】
アニオン性樹脂上のパーコレーションは、有利にはアニオン置換工程、特にヒドロキシルイオンによる二価および/または一価アニオンの置換工程であり、特にこの工程は中和工程である(換言すれば、UF透過物(ii)のpHは、アニオン樹脂上を通過した後に上昇する)。
【0080】
工程(iv)中のカチオン性樹脂は強い場合もあれば弱い場合もある。
【0081】
工程(iv)中のアニオン性樹脂は強い場合もあれば弱い場合もある。
【0082】
好ましくは、カチオン性樹脂上のパーコレーションは、カチオン性樹脂をアニオン性樹脂と混合することなく実施される。
【0083】
好ましくは、アニオン性樹脂上のパーコレーションは、アニオン性樹脂をカチオン性樹脂と混合することなく実施される。
【0084】
本明細書において、カチオン性またはアニオン性樹脂上のパーコレーションは、カチオン性またはアニオン性樹脂を含む少なくとも一つのカラムにわたるパーコレーション、好ましくは、カチオン性またはアニオン性樹脂を含む粒子(特にビーズ)の床上で加工される製造物の加工、特に循環を意味すると理解される。
【0085】
好ましい実施形態では、少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物をイオン交換樹脂上で処理する工程(iv)は、強カチオン性樹脂上でのパーコレーション、その後の弱アニオン性樹脂上でのパーコレーションを含む少なくとも一回の通過を含む。
【0086】
特に、弱アニオン性樹脂または強アニオン性樹脂は、限外濾過透過物が前記弱アニオン性樹脂または強アニオン性樹脂を通過する前に酸性である場合、そのpHを上昇させる。
【0087】
前記強カチオン性樹脂は、スルホン酸基SO を含むことが好ましい。
【0088】
の形態の前記強カチオン性樹脂は、強または弱アニオンに結合したカチオンを固定する。
【0089】
の形態の弱カチオン性樹脂は、弱酸に結合したカチオンのみを固定できる。
【0090】
特に強カチオン性樹脂は、1.8当量/リットル以上の交換能力を有することが好ましい。
【0091】
特に強カチオン性樹脂、特に強カチオン性スチレン樹脂の床は、好ましくは、そのサイズが0.45mm以上のビーズを含む。
【0092】
特に弱アニオン性樹脂、特に弱アニオン性スチレン樹脂の床は、好ましくは、そのサイズが0.40mm以上のビーズを含む。
【0093】
特に弱アニオン性樹脂は、1.6当量/リットル以上の交換能力を有することが好ましい。
【0094】
好ましくは、特に弱アニオン性樹脂の少なくとも一つのカラム、または特に強カチオン性樹脂の少なくとも一つのカラムの水の質量含有量は、65%以下、特に60%以下である。
【0095】
第1の通過中、および場合により第2の通過および/またはその後の通過中の強カチオン性樹脂は、好ましくは、高い多孔性を有する強カチオン性樹脂である。
【0096】
前記弱アニオン性樹脂は、特に酸性pHの溶液中でアニオンを固定するために、好ましくは第三級アミン基を含む。対照的に、強アニオン性樹脂は、前記溶液のpHに関係なく、溶液中のアニオンを固定する。
【0097】
第1の通過中、および場合により第2の通過および/またはその後の通過中の弱アニオン性樹脂は、好ましくは、高い多孔性を有する弱アニオン性樹脂である。
【0098】
本発明の方法に従って得られるラクトースに富む液体組成物
【0099】
一つの実施形態において、得られるラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対する糖(類)の全乾燥質量の比は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、特に99%以上である。
【0100】
一つの実施形態において、前記糖はラクトースである。
【0101】
本明細書において、糖は、乳単糖類および乳多糖類、特にラクトースおよびガラクトースを意味すると理解される。
【0102】
本明細書において、多糖類には二糖類およびオリゴ糖が含まれる。
【0103】
一つの実施形態において、糖は、イオン的に荷電していない単糖類および/または多糖類である。
【0104】
一つの実施形態において、得られるラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対する全窒素物質の全乾燥質量の比は、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、特に0.5%以下である。
【0105】
一つの実施形態において、得られるラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対するグリコマクロペプチドの乾燥質量の比は、2%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以上、特に0.5%以下である。
【0106】
一つの実施形態において、得られたラクトースに富む液体組成物は脱塩レベルが、90%以上、好ましくは95%以上、特に96%、または97%、または98%、または99%以上である。
【0107】
一つの実施形態において、前記ラクトースに富む液体組成物の全質量に対する、得られたラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量の比は、0%より大きく、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。
【0108】
一つの実施形態において、前記ラクトースに富む液体組成物の全質量に対する、得られたラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量の比は、30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。
【0109】
ラクトースに富む液体組成物は、好ましくは水を含み、特にその全質量に対する質量分率が70%~95%である。
【0110】
定義-測定方法
【0111】
灰分、特に場合により脱塩工程(iii)後の工程(i)における乳タンパク質組成物、場合により脱塩工程(iii)後のUF残留物(ii)、またはUF透過物(ii)、または得られた前記ラクトースに富む液体組成物の質量含有量(または灰分の乾燥質量分率)は、規格化された方法であるNF V04-208、1989年10月、タイトル「Milk. Determination of ash. Reference method」を用いて、特に、525℃で焼却する方法を実施して決めることができる。
【0112】
本明細書において、抽出物乾燥質量または全乾燥質量は、特に大気圧において、例えば、乳タンパク質組成物、UF残留物(ii)、UF透過物、またはラクトースに富んだ液体組成物の総質量に対する、安定した全乾燥質量が得られるまで水を蒸発させた後に得られる、乳タンパク質組成物、UF残留物(ii)、またはUF透過物の乾燥質量、または、ラクトースに富んだ液体組成物の乾燥質量を意味すると理解される。
【0113】
乾燥抽出物の質量は、規格化された方法ISO6731:2011年1月「乳、クリームおよび蒸発乳-全固形分含有量の決定(参照方法)」を使用して決定できる。
【0114】
本明細書において、ラクトースは、コーデックス委員会、コーデックススタン212-1999で定義されているラクトースを意味すると理解される:通常、乳清から得られる乳の天然成分であり、特に無水ラクトース含量が乾燥ベースで99.0%質量/質量以上である。
【0115】
ラクトースまたは糖の質量含有量(または乾燥質量分率)の決定は、高速液体クロマトグラフィー、特に2007年11月付けの規格NFISO22662を使用して行うことができる。
【0116】
乳のカチオンとアニオン(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リン/リン酸塩、クエン酸塩)を定量するために使用できる方法は、次の方法から選択できる:分子吸光分析、滴定/錯分法、電気化学的方法、原子分光分析、キャピラリー電気泳動、イオンクロマトグラフィー/電気伝導度検出、31P用核磁気共鳴、酵素法/UV検出。
【0117】
全窒素物質(TNM)の乾燥質量分率は、2014年5月発行の規格NF EN ISO 8968-1(ケルダール法)を使用して決めることができる。
【0118】
次の基準を使用して質量含有量を決めることができる;塩化物の例:電位差滴定法(NF ISO 21422、2019年2月);全リンの例:分子吸光分析法(NF ISO 9874、2008年4月);カルシウムの例:滴定法(規格 ISO 12081:2010);カルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの例:原子吸光分析法(規格 ISO 8070:2007)またはイオンクロマトグラフィー;例えば、2005年発行の規格ISO 8069による乳酸/乳酸塩。
【0119】
本明細書において、DPCは、本発明による乳タンパク質組成物を指す。
【0120】
本明細書において、UFは限外濾過を指す。
【0121】
本明細書において、脱塩のレベルは、次の式に基づいて測定されるミネラル(カチオンおよびアニオンを含む)の質量の減少レベルを意味すると理解される:
((非脱塩DPCの灰分またはミネラルの乾燥質量分率-少なくとも部分的に脱塩した対象DPCの灰分またはミネラルの質量による含有量)/非脱塩DPCの灰分の含有量)*100)。
【0122】
脱塩のレベルは、ミネラルまたは灰分の乾燥質量分率を導電率測定(mS/cm)に置き換えることによっても評価できる。
【0123】
これらの計算方法は、UF透過物、UF残留物、および得られるラクトースに富む液体組成物にも適用される。
【0124】
本明細書において、一つ以上の所与の成分の乾燥質量分率は、前記成分を含む液体組成物の全乾燥質量に対して計算される。
【0125】
第1の代替例では、工程iv)は少なくとも二回の通過を含む。
【0126】
この規定は、ラクトースの乾燥質量分率を増加させ、灰分および/またはミネラル含有量を低下させ、残留窒素物質を除去するのに最適である。
【0127】
第2の代替法では、限外濾過工程(ii)は、それぞれが約1000ダルトン以上、好ましくは約3000ダルトン以上、より好ましくは4000ダルトン以上の最小カットオフ閾値を有する一つ以上の限外濾過膜の使用を含む。
【0128】
限外濾過工程(ii)は、好ましくは、それぞれが約10,000ダルトン以下、好ましくは約8000ダルトン以下、より好ましくは7000ダルトン以下、選択的に6000ダルトン以下の最小カットオフ閾値を有する一つ以上の限外濾過膜の使用を含む。
【0129】
本発明者らは、本発明の条件下での限外濾過においてそのような膜を使用すると、より多くの窒素物質が残留物中に保持され、したがってそれを透過物から除去できること、および真のタンパク質の漏出を回避し、特に工程(iv)で下流で使用される樹脂の飽和容量を増加させるグリコマクロペプチド(GMP)の漏出を回避する、ことを発見した。
【0130】
第三の代替実施形態では、限外濾過工程(ii)への入口における乳タンパク質組成物の脱塩レベルが、70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、選択的には85%または90%以上である。
【0131】
一つの実施形態において、乳タンパク質組成物(i)は乳清であり、本方法は、目標とする脱塩レベルに達するまで、乳タンパク質組成物(i)を少なくとも部分的に脱塩するために、UF工程(ii)の前に行われる少なくとも一つの脱塩工程(iii)を含む。
【0132】
この実施形態において、本方法は、UF工程(ii)の後、かつ工程(iv)の前に行われる脱塩工程(iii)を含まないことが好ましい。限外濾過の上流の脱塩は十分に進行するため、UF工程(ii)と工程(iv)での樹脂上パーコレーションを組み合わせることで、ラクトースの乾燥質量分率を90%~100%、特に95%~100%にすることが可能になる。
【0133】
第4の代替実施形態では、樹脂上で加工する工程(iv)への入口における限外濾過透過物の脱塩レベルは、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
【0134】
脱塩は、樹脂が急速に飽和しないように、また前記樹脂がすでに開始された脱塩を完了させ、ラクトースの乾燥質量分率を増加させるように、樹脂を通過する前に十分でなければならない。
【0135】
一つの実施形態において、工程(i)における乳タンパク質組成物は、乳または場合により非脱塩乳清であり、本方法は、脱塩の目標レベルに達するまでUF透過物を脱塩するように限外濾過工程(ii)の後に実施される脱塩工程(iii)を含む。
【0136】
第5の実施形態において、少なくとも部分的な脱塩工程(iii)は、カチオンを水素イオンHで置換する工程(iiia)を含む。
【0137】
この規定により、乳タンパク質組成物または工程(ii)のUF透過物のpHが、特に2~4のpH、より具体的には2~3のpH(上限および下限を含む)に低下する。
【0138】
pHの低下および脱塩は、収率を改善し、加工される組成物を安定化することによって、下流でのナノ濾過および/または電気透析の一つまたは複数の任意の工程を促進する。
【0139】
置換されたカチオンは、二価カチオンおよび/または一価カチオンであり得る。
【0140】
一つの実施形態において、水素イオンHによってカチオンを交換する工程(iiia)は、カチオン性樹脂、特に弱カチオン性樹脂またはカルボン酸カチオン性樹脂を含む(からなる)少なくとも一つのカラムに渡って、工程(i)における乳タンパク質組成物または工程(ii)のUF透過物を少なくとも一回パーコレーションすることを含む。
【0141】
カチオン性樹脂は強いこともあれば弱いこともあり、特に弱カチオン性樹脂である。
【0142】
一つの実施形態において、脱塩工程(iii)は、特に工程(iiia)の下流に、アニオン(iiib)をヒドロキシルイオンまたは塩化物イオンで置換する工程を含む。
【0143】
置換アニオンは、二価アニオンおよび/または一価アニオンであり得る。
【0144】
一つの実施形態において、アニオンを塩化物イオンによって交換する工程(iiib)は、特にカチオン性樹脂、特に弱カチオン性またはカルボン酸カチオン性樹脂を使用する工程(iiia)の下流に、特に強アニオン性樹脂を場合により特に強カチオン性樹脂と混合したもの(言い換えれば、混合床を含む)(からなる)少なくとも一つのカラムに渡って、工程(i)の乳タンパク質組成物または工程(ii)のUF透過物をパーコレーションする少なくとも一つの工程を含む。
【0145】
第6の実施形態では、カチオンを置換する工程(iiia)は、それぞれが三つの区画を含む(からなる)セルを含む電気透析装置で実行される、特にもっぱらカチオン置換の電気透析工程である。
【0146】
乳タンパク質組成物(i)またはUF透過物(ii)は、好ましくは、二つのカチオン性膜の間に区切られた一つの区画、特に中央区画内を循環する。
【0147】
第7の実施形態において、脱塩工程(iii)は、特にもっぱらアニオンをヒドロキシルイオンで置換する工程(iiib)を含み、前記工程(iiib)は、それぞれが三つの区画を含む(からなる)セルを含む電気透析装置において行われる。
【0148】
前記工程(iiib)は、工程(iiia)の後に実行されることが好ましい。
【0149】
乳タンパク質組成物(i)またはUF透過物(ii)は、好ましくは、二つのアニオン性膜の間に区切られた一つの区画、特に中央区画内を循環する。
【0150】
一つの実施形態において、脱塩工程(iii)は以下を含む:
-特にもっぱら水素イオンHによりカチオンを置換する工程(iiia)、特に、それぞれが三つの区画を含むセルを含む(からなる)電気透析装置上で実行されるカチオン置換の電気透析工程;
-次いで、任意選択で、セルが二つの区画を含む(からなる)電気透析装置上で実行される、特にアニオンおよびカチオンを抽出するための電気透析工程;
-次いで、特にもっぱらヒドロキシルイオンによるアニオンの置換の工程(iiib)であって、それぞれが三つの区画(からなる)を含むセルを含む電気透析装置で実行される前記工程(iiib)。
【0151】
第8の実施形態では、少なくとも部分的な脱塩工程(iii)は、特に工程(iiia)の後および/または工程(iiib)の後に実行される、電気透析工程および/またはナノ濾過工程を含む。
【0152】
この電気透析工程により、アニオンとカチオンの抽出が有利に可能になる。
【0153】
電気透析工程および/またはナノ濾過工程の間の選択は、好ましくは、工程(i)における乳タンパク質組成物のまたは工程(ii)のUF透過物の抽出物乾燥質量に従って行われる。
【0154】
一つの実施形態において、脱塩工程は、乳タンパク質組成物またはUF透過物の抽出物乾燥質量が15%以下である場合、ナノ濾過の工程を含む。
【0155】
一つの実施形態において、脱塩工程(iii)は、好ましくは、特に、セルが二つの区画を含む(からなる)電気透析装置上で実行される電気透析工程のみを含み、より好ましくは限外濾過工程(ii)の後に実行される。
【0156】
一つの実施形態において、脱塩工程(iii)は、カチオンを水素イオンHで置換する工程(iiia)の後に、特に、セルが二つの区画を含む(からなる)電気透析装置で実行される電気透析工程を含み、好ましくは、特にもっぱらカチオンを置換する工程(iiia)は、それぞれが三つの区画を含む(からなる)セルを含む電気透析装置で実行されるカチオン置換の電気透析工程である。乳タンパク質組成物(i)またはUF透過物(ii)は、好ましくは、二つのカチオン性膜の間に区切られた一つの区画、特に中央区画内を循環する。
【0157】
一つの実施形態において、脱塩工程(iii)は、カチオンを水素イオンHで置換する工程(iiia)の後に、および特にもっぱらアニオンを置換する工程(iiib)の後に、特に、セルが二つの区画を含む(からなる)電気透析装置で実行される電気透析工程を含む。工程(iiia)および(iiib)は、好ましくは、上述したようなイオン交換樹脂上でのパーコレーション工程である。
【0158】
アニオンを置換する前記工程(iiib)は、特にもっぱら、上述したように、イオン交換樹脂上または、セルがそれぞれ三つの区画を含む(からなる)電気透析装置上で実施することができる。
【0159】
カチオンを置換する前記工程(iiia)は、特にもっぱら、上述したように、イオン交換樹脂上または、セルがそれぞれ三つの区画を含む(からなる)電気透析装置上で実施することができる。
【0160】
一つの実施形態において、脱塩工程(iii)は、工程(i)のDPC、または工程(i)のDPCの限外濾過により得られた透過物を、弱カチオン性樹脂上でパーコレーションさせることを含む少なくとも一回の通過を含み、次にナノ濾過工程が続き、次いで、特に、セルが二つの区画を含む(からなる)電気透析装置上で前記ナノ濾過残留物に対して電気透析工程が行われる。
【0161】
好ましくは、工程(i)のDPCは5.5%以上の乾燥物質を有するスイート乳清であり、より好ましくは工程(iii)はUF(ii)の前にDPC(i)上で実行される。
【0162】
有利には、この工程(iii)により、70%以上の脱塩率に達することが可能になる。
【0163】
一つの実施形態において、脱塩工程(iii)は、工程(i)のDPC、または工程(i)のDPCの限外濾過により得られた透過物のナノ濾過工程と、その後、特に、セルが二つの区画を含む(からなる)電気透析装置において前記ナノ濾過残留物に対して実行される電気透析工程とを含む。
【0164】
好ましくは、工程(i)のDPCは5.5%以上の乾燥物質を有する酸性乳清であり、より好ましくは工程(iii)はUF(ii)の前にDPC(i)上で実行される。
【0165】
有利には、この工程(iii)により、70%以上の脱塩率に達することが可能になる。
【0166】
一つの実施形態において、脱塩工程(iii)は、工程(i)のDPC、または工程(i)のDPCの限外濾過により得られた透過物を弱カチオン性樹脂上でパーコレーションさせることを含む少なくとも一回の通過、その後、強カチオン性樹脂と強アニオン性樹脂との混合床上でのパーコレーション、その後のナノ濾過工程、次いで、特に、セルが二つの区画を含む(からなる)電気透析装置上で前記ナノ濾過工程に対して実施される電気透析工程を含み、最後に、前記工程(iii)は、アニオン性樹脂、特に弱アニオン性樹脂上でのパーコレーションを含む。
【0167】
好ましくは、工程(i)のDPCは5.5%以上の乾燥物質を有する乳清であり、より好ましくは工程(iii)はUF(ii)の前にDPC(i)上で実行される。
【0168】
有利には、この工程(iii)により、90%以上の脱塩率に達することが可能になる。
【0169】
一般に、電気透析中、塩、酸、塩基などの溶解した無機または有機のイオン化種は、電流の作用下でイオン膜を通って輸送される。電気透析ユニットは、平行かつ交互に配置されたカチオン性膜(カチオン透過性の膜)CECおよび/またはアニオン性膜(アニオン透過性)AMEを備え得る。アノードとカソードを使用して印加される電場の作用下では、CMEはアニオンをブロックしてカチオンの通過を許可するが、AMEはカチオンをブロックしてアニオンの通過を許可する。
【0170】
次に、濃縮区画(濃縮物)と脱塩区画が作成される。この最も一般的なタイプの電気透析は、基本単位セルが二つの区画を含む電気透析である。単位セルは、最小の繰り返しパターンとして、濃縮および脱塩操作(濃縮または脱塩に対応する区画)を含む。溶液は、膜の面に平行な循環によって区画内で更新される。
【0171】
電流の印加は、膜の面に平行で電気透析装置の端に配置された二つの電極によって確実に行われる。
【0172】
第9の実施形態では、この方法は、工程(iv)の後に行われ、吸収性樹脂上でのパーコレーションを含む少なくとも一回の通過を含む工程を含む。
【0173】
通過は少なくとも1本の吸着性樹脂カラムで実行される。
【0174】
有利には、この規定により、加工されたUF透過物、特にリボフラビン(ビタミンB2)の色が除去される。
【0175】
吸収性樹脂は官能化されていてもよい。
【0176】
この吸収性樹脂は、特に小さい有機分子を吸収する、10Åと1000Å(オングストローム)の間の多孔度を有する樹脂であることが好ましい。
【0177】
第10の実施形態では、本方法は、イオン交換樹脂上で加工する工程(iv)の後に実施されるナノ濾過の工程(v)を含む。
【0178】
ナノ濾過工程(v)は、吸収性樹脂上での加工の後または前に実施することができ、好ましくは吸収性樹脂上での加工の後に実施することができる。
【0179】
このナノ濾過工程(v)は、ラクトースから様々な糖類、特にガラクトースのような単糖類を除去するために行われる。
【0180】
このナノ濾過工程(v)は、工程(iv)の終わりに得られるラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対するガラクトースの乾燥質量分率が1%以上、特に15%以下である場合に実施することができる。このガラクトースの乾燥質量分率は、特定の酸性乳清の加工中に発生する可能性がある。
【0181】
ナノ濾過膜は、好ましくは、150ダルトン以上、350ダルトン以下のカットオフ閾値を有する。
【0182】
有利には、ナノ濾過工程(v)の後に得られるラクトースに富む液体組成物は、その全乾燥質量に対して98%または99%以上のラクトースの乾燥質量分率を含む。
【0183】
第11の実施形態では、得られるラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対する糖、特にラクトースの乾燥質量の比は、約90%以上、好ましくは約95%以上である。
【0184】
この比は96%、97%、98%、または99%以上になる可能性がある。
【0185】
この比が99%以上であれば、ラクトースに富む液体組成物は、食用ラクトースとして、または精製ラクトースとして使用することができる。
【0186】
これは、工程(iv)またはナノ濾過工程(v)の後に得られるラクトースに富む液体組成物である。
【0187】
第12の実施形態では、本方法は、糖、特にラクトースを固体の形で入手するために、イオン交換樹脂上での加工の工程(iv)の後に行われる、(特にラクトースに富む液体組成物に含まれる水の)蒸発による濃縮および乾燥の工程を含む。
【0188】
ラクトースに富む液体組成物を固体に変換するこの工程は、工程(iv)の直後、または吸収性樹脂上での加工後および/または工程(v)の後に行うことができる。
【0189】
一つの実施形態において、ラクトースに富む液体組成物は、蒸発による濃縮工程を経た後、粉末ラクトースを製造するために、特に噴霧塔内での乾燥および噴霧工程を経る。
【0190】
有利なことに、得られる液体組成物はラクトースが非常に豊富であり、乳清プラントを通過することなくラクトースの製造を可能にする。
【0191】
この規定により、乳清生産者は、再生が非常に難しい結晶化母液を大量に製造する乳清プラントに投資することなく、乳清を再生することができる。
【0192】
第13の実施形態では、この方法は、限外濾過工程(ii)の前に実施される脱塩工程(iii)を含み、限外濾過工程(ii)の終了時に得られる少なくとも部分的に脱塩された限外濾過残留物は、100℃以上の温度で安定である。
【0193】
限外濾過残留物のタンパク質は、好ましくは、100℃以上、110℃以上、特に120℃または130℃以上の温度で少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、特に少なくとも20分間安定である。
【0194】
限外濾過残留物(ii)は、好ましくは6.5以上、特に7.0以上に調整されたpHを有する。
【0195】
第14の実施形態では、工程(ii)で得られる限外濾過残留物の全乾燥質量に対する全窒素物質(TNM)の乾燥質量の比は、約50%以上、好ましくは60%または70%または80%または90%以上である。
【0196】
第15の実施形態では、工程(ii)で得られる限外濾過残留物の全乾燥質量に対する灰分の乾燥質量の比は、約6%未満、特に約5%以下である。
【0197】
この比は4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
【0198】
第15の代替法では、工程(i)における乳タンパク質組成物は、乳、特にスキムミルク、乳清、およびそれらの混合物の中から選択される。
【0199】
第16の代替法では、工程(i)における乳タンパク質組成物は、酸性乳清、スイート乳清、天然乳清およびそれらの混合物の中から選択される。
【0200】
上述の実施形態および代替法1~16は、特に指定しない限り、互いに独立して組み合わせることができる。
【0201】
第2の態様による本発明の目的は、代替実施形態1~16のいずれか一つによって本発明の第1の態様を参照する方法により得ることができるラクトースに富む液体組成物である。
【0202】
あるいは、前記ラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対する糖、特にラクトースの全乾燥質量の比は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%または97%または98%または99%以上である。
【0203】
第3の態様によれば、本発明の目的は、特に、本発明の第1の態様を参照する代替実施形態のいずれか一つに従って、ラクトースに富む液体組成物を得るために乳タンパク質組成物を加工する方法を実施するための設備であり、この設備は、特に連続して、
(a)乳タンパク質組成物を受け入れるための第1の入口、限外濾過透過物のための第1の出口、および限外濾過残留物のための第2の出口を含む限外濾過ユニット、
(b)限外濾過ユニットの上流で乳タンパク質組成物を少なくとも部分的に脱塩するための脱塩ユニット、および/または限外濾過ユニットの下流で限外濾過透過物を少なくとも部分的に脱塩するための脱塩ユニット、および
(c)予め少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物を脱塩するための、限外濾過ユニットの下流にある、イオン交換樹脂を含む加工ユニット
を含んでおり、該ユニットは、
-カチオン性樹脂を含んでおり、予め少なくとも部分的に脱塩された前記限外濾過透過物を受け入れることを目的とした第1の入口と、少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物P1用の第1の出口とを含む少なくとも一つのカラムAと、
-アニオン性樹脂を含んでおり、前記限外濾過透過物P1を受け入れるための第1の入口と、少なくとも部分的に脱塩された限外濾過透過物P2用の第1の出口とを含む少なくとも一つのカラムBと、を含んでいる。
【0204】
一つの実施形態において、限外濾過ユニットは、乳タンパク質組成物の乾燥質量分率(本明細書で定義される)を増加させるための濃縮サブユニットと、濃縮サブユニットの下流のダイアフィルトレーションサブユニットとを含む。
【0205】
一つの実施形態において、限外濾過ユニット、特にダイアフィルトレーションユニットは、それぞれが約1000ダルトン以上、好ましくは約3000ダルトン以上、より好ましくは4000ダルトン以上である最小カットオフ閾値を有する一つ以上の限外濾過膜を含む。
【0206】
限外濾過ユニット、特にダイアフィルトレーションユニットは、好ましくは、それぞれが約10,000ダルトン以下、好ましくは約8000ダルトン以下、より好ましくは7000ダルトン以下、選択的に6000ダルトン以下の最小カットオフ閾値を有する一つ以上の限外濾過膜を含む。
【0207】
限外濾過ユニットにより、工程(ii)の実行が可能になる。
【0208】
一つの実施形態において、加工ユニットは、(強いまたは弱い)カチオン性樹脂、好ましくは強カチオン性樹脂を含む(からなる)少なくとも一つのカラム、それに続く、(強いまたは弱い)アニオン性樹脂、好ましくは弱アニオン性樹脂を含む(からなる)少なくとも一つのカラムを、特に連続して含む少なくとも一つの連鎖を含むイオン交換樹脂を含む。
【0209】
加工ユニットは、工程(iv)の実行を可能にするイオン交換樹脂を含む。
【0210】
一つの実施形態において、脱塩ユニットは、二つの区画を含む(からなる)セルを含む電気透析装置を含む(からなる)。
【0211】
一つの実施形態において、脱塩ユニットは、特に連続して、
-好ましくは加工すべき産物(乳タンパク質組成物/限外濾過透過物)がその中を循環する中央区画を各セルが含む、三つの区画を含む(からなる)セルを含んでいる電気透析装置であって、前記中央区画は、(一価および/または二価の)カチオンの交換のために膜の間に区切られており、特にそれは、特に排他的に上記のようなカチオン置換である、装置;
-任意選択で、二つの区画を含む(からなる)セルを含む電気透析装置;および
-好ましくは加工すべき産物(乳タンパク質組成物/限外濾過透過物)がその中を循環する中央区画を各セルが含む、三つの区画を含む(からなる)セルを含んでいる電気透析装置であって、前記中央区画は、(一価および/または二価の)アニオンの交換のために膜の間に区切られており、特にそれは、特に排他的に上記のようなアニオン置換である、装置を含んでいる。
【0212】
一つの実施形態において、脱塩ユニットは、特に連続して、
-特に弱いまたはカルボン酸のカチオン性樹脂を含む少なくとも一つのカラム、および
-特に強カチオン性樹脂と任意に混合されている特に強アニオン性樹脂を含む(換言すれば、混合床を有する)少なくとも一つのカラム;および
-任意選択で、ナノ濾過ユニットまたは、二つの区画を含む(からなる)セルを含む電気透析装置
を含んでいる。
【0213】
脱塩ユニットにより、工程(iii)の実行が可能になる。
【0214】
一つの実施形態において、設備は、特に、イオン交換樹脂(c)を含む加工ユニットの下流に、吸収性樹脂を含む加工ユニットを含む。
【0215】
一つの実施形態において、設備は、特にイオン交換樹脂(c)を含む加工ユニットの下流、特に同様に吸収性樹脂を含む加工ユニットの下流または上流に、ナノ濾過ユニットを含む。
【0216】
第1の態様による代替例、実施形態および定義は、互いに独立して、また任意に本発明の第2または第3の態様による代替例および実施形態と組み合わせることができる。
【0217】
本発明は、結晶化による処理を必要としない単純な固体形態で、直接または変換工程を介してすぐに使用できるラクトースに富む液体組成物を有利に得ることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0218】
本発明は、添付の図面を参照しながら、非限定的な例としてのみ示される本発明の実施形態に関する以下の説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【0219】
図1】本発明による乳タンパク質組成物を加工する方法を示す図である。
図2】イオン交換樹脂上での図1の限外濾過透過物を加工する工程(iv)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0220】
図1において、乳タンパク質組成物10が、血清タンパク質に富むUF残留物30とラクトースに富むUF透過物40を形成するために、特に濃縮サブユニットおよびダイアフィルトレーションサブユニットを含む限外濾過ユニット20に供給される。この例では、UF膜は、1000ダルトンと10000ダルトンの間、好ましくは4000ダルトンと6000ダルトンの間の正確に一つのカットオフレベルを有する。
【0221】
乳タンパク質組成物(DPC)10は、限外濾過工程(ii)前の脱塩工程(iii)中に少なくとも部分的に脱塩することができる。
【0222】
工程(ii)で得られるUF透過物40は、UF工程(ii)の前に実施される脱塩工程の代替として、またはそれに加えて、UF工程(ii)の後でかつイオン交換樹脂上での工程(iv)の前に実施される脱塩工程(iii)中に脱塩することができ、満足できるレベルの脱塩が達成され、工程(iv)の後にラクトースに富む液体組成物の回収が可能になり、特に、全乾燥質量に対する糖類、特にラクトースの乾燥質量分率が90%以上となる。
【0223】
本発明による方法はまた、UF透過物(ii)の乾燥質量分率を増加させるために、好ましくは脱塩工程(iii)の後に実行される逆浸透工程を含むこともできる。
【0224】
UF透過物40は、図2に示すように、特に二回の通過80および90において、イオン交換樹脂を含むカラムでパーコレーションされる。最初の通過80中、部分的に脱塩されたUF透過物40は、好ましくは強カチオン性樹脂50を含むカラムでパーコレーションされ、次いで、好ましくは弱アニオン性樹脂60を含むカラムでパーコレーションされる。第2の通過中に、第1の通過80を出た部分的に脱塩されたUF透過物40は、再び、好ましくは強カチオン性樹脂55を含むカラムでパーコレーションされ、続いて、好ましくは弱アニオン性樹脂65を含むカラムでパーコレーションされる。二回の通過80および90を出たUF透過物40はまた、UF透過物40の着色を除去する、特に着色の原因となるリボフラビンを除去するために、吸収性樹脂70を含むカラムでパーコレーションを受けることもできる。この工程では、ラクトースの質量分率は大きく変わらない。
【0225】
吸収性樹脂は、例えば、スルホン酸基を有する高多孔質スチレンジビニルベンゼンマトリックスを有する吸収性樹脂であり、その細孔径は350Å以上であり、1程度の交換容量を有する。
【0226】
ラクトースに富む液体組成物は、工程(iv)の終わりに回収され、この特定の例では、吸収性樹脂上での加工後に回収される。このラクトースに富み、一般に糖に富む液体組成物は、その全乾燥質量に対してラクトースの非常に大きな質量分率を有する。特定の場合には、この組成物は、最初の乳タンパク質組成物に応じて、ガラクトースをさらに含むことができる。次いで、ラクトースに富む液体組成物は、ガラクトースの質量分率を除去または減少させるために、ナノ濾過工程(v)を受け、それによりラクトースの質量分率が増加する。このナノ濾過工程(v)は、吸収性樹脂上での加工後に行うことができる。
【0227】
強カチオン性樹脂50および55は、例えば、ビーズサイズが最小0.45mm、含水量が58%以下、交換容量が1.8当量/リットルの多孔質強スチレンカチオン性樹脂とすることができる。それは、三菱、ダウまたはプロライトによって供給される樹脂であってよい。
【0228】
弱アニオン性樹脂60および65は、例えば、ビーズサイズが最小0.40mm、含水量が58%以下、交換容量が最小1.6当量/リットルの多孔質弱スチレンアニオン性樹脂とすることができる。
【0229】
乳タンパク質組成物は、スイート乳清、酸性乳清、または天然乳清であり得る。
【0230】
乳タンパク質組成物は、乳、特にスキムミルクであり得る。この場合、工程(ii)の限外濾過残留物40は、血清タンパク質およびカゼインに富む。
【0231】
非限定的な例において、強カチオン性樹脂、特に、工程(iv)を実施するのに適したものは、三菱またはダウまたはプロライトによって販売され、特に、ReliteRPS型、またはFPC22型、またはPPC150S型であり得る。
【0232】
非限定的な例において、弱アニオン性樹脂、特に、工程(iv)を実施するのに適したものは、三菱またはダウまたはプロライトによって販売され、特に、RAM1S型、またはFPA54型、またはA133S型であり得る。
【0233】
非限定的な例において、吸着性樹脂、特に、本方法を実施するのに特に適したものは、三菱またはダウまたはプロライトによって販売され、特に、ReliteRAD/F型またはMN500型であり得る。
【0234】
UF工程(ii)の前に部分的脱塩(iii)により酸性乳清を加工するための本発明による実施例1
【0235】
(a)工程(i)の酸性乳清は、限外濾過工程(ii)の前に脱塩工程(iii)を受けている。部分的に脱塩された酸性乳清は、限外濾過工程(ii)の入口において、pHが約6であり;導電率が5mS/cm以下であり、脱塩レベルが74%であり、抽出物乾燥質量が約18%であり、TNMの乾燥質量分率が約13%であり、灰分の質量分率が約2%であり、ラクトースの乾燥質量分率が86%程度であり、カチオン(Na、K、NH 、Mg2+、Ca2+)の質量分率が1.5%以下であり、アニオン(Cl、NO 、PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.5%以下である。
【0236】
この部分的に脱塩された酸性乳清は、UF工程(ii)を受け、次いで、得られたUF透過物は、工程(iv)においてイオン交換樹脂上でパーコレーションされる。工程(ii)におけるUF中の乳清の供給圧力は4バール程度である。UF工程(ii)への入口における部分的に脱塩された乳清の温度は10℃程度であり、この温度は、UF工程(ii)中およびイオン交換樹脂上での工程(iv)中に維持される。前述の質量分率は、UF工程(ii)への入口における部分的に脱塩された酸性乳清の全乾燥質量に対して計算される。
【0237】
(b)前記UF工程(ii)の出口において得られる部分的に脱塩された酸性乳清の前記UF透過物は、pHが約6であり;抽出物乾燥質量が約13%であり、導電率が2mS/cm以下であり、TNMの乾燥質量分率が約4%であり、灰分の質量分率が2%未満であり、カチオン(Na、K、NH 、Mg、Ca2+)の質量分率が0.9%以下であり、アニオン(Cl、NO 、PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.2%以下であり、ラクトースの質量分率が93%程度である。前述の質量分率は、UF工程(ii)の出口におけるUF透過物の全乾燥質量に対して計算される。
【0238】
(c)UF工程(ii)の出口において得られる部分的に脱塩された酸性乳清のUF残留物は、pHが5.5~5.9であり;抽出物乾燥質量が約15%であり、TNMの乾燥質量分率が約50%であり、灰分の質量分率が約2.8%未満であり、カチオン(Na、K、NH 、Mg2+、Ca2+)の質量分率が1.5%以下であり、アニオン(Cl、NO 、PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.3%以下であり、およびラクトースの質量分率が50%程度である。前述の質量分率は、UF工程(ii)の出口におけるUF残留物の全乾燥質量に対して計算される。
【0239】
(d)工程(iv)中にUF透過物がイオン交換樹脂上を二回通過、例えば、二回通過(80、90)した後において、工程(iv)の後、および任意に吸収性樹脂の少なくとも一つのカラムを通過した後に回収されるラクトースに富む液体組成物は、pHが6.8程度であり、抽出物乾燥質量が約10%であり、導電率が10μS/cm以下であり、TNMの乾燥質量分率が約0.3%未満であり、灰分の質量分率が0.1%以下であり、カチオン(Na、K、NH 、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.001%以下であり、アニオン(Cl、NO 、PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.001%以下であり、ラクトースの質量分率が99.5%程度である。前述の質量分率は、得られたラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対して計算される。
【0240】
UF工程(ii)の前に部分的脱塩(iii)によりスイート乳清を加工するための本発明による実施例2
【0241】
(a)工程(i)の前記スイート乳清は、限外濾過工程(ii)の前に脱塩工程(iii)を受けている。限外濾過工程(ii)の入口において部分的に脱塩され、それ以降用いられるスイート乳清は、pHが6.8であり;脱塩レベルが90%であり、抽出物乾燥質量が約20%であり、TNMの乾燥質量分率が約13%であり、非タンパク質窒素物質の質量分率が2%未満であり、灰分の質量分率が約1%であり、ラクトースの質量分率が80%である。前述の質量分率は、UF工程(ii)への入口における部分的に脱塩されたスイート乳清の全乾燥質量に対して計算される。
【0242】
この部分的に脱塩されたスイート乳清は、UF工程(ii)を受け、次いで、得られたUF透過物は、工程(iv)においてイオン交換樹脂上でパーコレーションされる。
【0243】
工程(ii)におけるUF中の乳清の供給圧力は4バール程度である。
【0244】
UF工程(ii)への入口における部分的に脱塩された乳清の温度は10℃程度であり、この温度は、UF工程(ii)中およびイオン交換樹脂上での工程(iv)中に維持される。
【0245】
(b)UF工程(ii)の出口において得られる部分的に脱塩された酸性乳清の前記UF透過物は、pHが約6.5であり;抽出物乾燥質量が約13%であり、導電率が600μS/cm程度であり、TNMの乾燥質量分率が約1%であり、非タンパク質窒素物質の質量分率が1%未満であり、灰分の質量分率が0.6%以下であり、カチオン(Na、K、NH 、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.3%以下であり、アニオン(Cl、NO 、PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.1%以下であり、ラクトースの質量分率が91%である。UF透過物の脱塩レベルは99%程度である。前述の質量分率は、UF工程(ii)の出口におけるUF透過物の全乾燥質量に対して計算される。
【0246】
(c)UF工程(ii)の出口において得られる部分的に脱塩されたスイート乳清の前記UF残留物は、pHが7以下であり;抽出物乾燥質量が約20%であり、TNMの乾燥質量分率が約50%であり、非タンパク質窒素物質の質量分率が5%以下であり、灰分の質量分率が約0.5%以下である。前述の質量分率は、UF工程(ii)の出口におけるUF残留物の全乾燥質量に対して計算される。
【0247】
(d)UF透過物がイオン交換樹脂上を二回通過、例えば二回通過(80、90)した後において、工程(iv)の後、および任意に吸収性樹脂の少なくとも一つのカラムを通過にした後に得られるラクトースに富む液体組成物は、pHが5~6であり、抽出物乾燥質量が約13%であり、導電率が5μS/cm以下であり、TNMの乾燥質量分率が約0.4%未満であり、非タンパク質窒素物質の質量分率が0.1%以下であり、灰分の質量分率が0.1%以下であり、カチオン(Na、K、NH 、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.012%以下であり、アニオン(Cl、NO 、PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.015%以下であり、ラクトースの質量分率が99.8%程度である。樹脂80上を一回通過した後、ラクトースの質量分率は99%程度であり、これは二回通過した後に得られる99.8%の値よりも低い。グリコマクロペプチドとリボフラビンの除去レベルは100%に近い。前述の質量分率は、得られたラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対して計算される。
【0248】
UF工程(ii)後に脱塩(iii)により天然乳清を加工するための本発明による実施例3
【0249】
(a)天然乳清(工程i)は、限外濾過工程(ii)を経て、次に逆浸透により予め濃縮される。予め濃縮された天然乳清の限外濾過透過物は、pHが6.0であり;導電率が10.5mS/cm以下であり、抽出物乾燥質量が約15%であり、TNMの乾燥質量分率が約3%であり、灰分の質量分率が約9%であり、ラクトースの乾燥質量分率が84%程度であり、全乾燥質量に対して計算されたカチオン(Na、K、Mg2+、Ca2+)の質量分率が3.6%以下であり、アニオン(Cl、P-PO 3-、S-SO 2-)の質量分率が2.3%以下である。この限外濾過透過物(40)は、電気透析(iii)(そのセルは二つの区画を含む)による脱塩工程(iii)を受け、次いで工程(iv)においてイオン交換樹脂上でパーコレーションされる。電気透析工程(iii)中の限外濾過透過物の温度は30℃程度であるが、この温度は、イオン交換樹脂上における工程(iv)中に10℃に低下する。前述の質量分率は、脱塩工程(iii)の入口における限外濾過透過物の全乾燥質量に対して計算される。
【0250】
(b)電気透析工程(iii)の出口において得られる部分的に脱塩された天然乳清の前記UF透過物は、pHが約5であり;抽出物乾燥質量が約14%であり、導電率が0.4mS/cm以下であり、TNMの乾燥質量分率が約2%であり、灰分の質量分率が1%未満であり、カチオン(Na、K、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.13%以下であり、アニオン(Cl、P-PO 3-、S-SO 2-)の質量分率が0.27%以下であり、ラクトースの乾燥質量分率が97%程度である。工程(iii)後のUF透過物の脱塩レベルは96%程度である。前述の質量分率は、脱塩工程(iii)の出口におけるUF透過物の全乾燥質量に対して計算される。
【0251】
(c)工程(iv)中に前記UF透過物が前記イオン交換樹脂上を二回通過、例えば、二回通過(80、90)した後において、工程(iv)の後、および任意に吸収性樹脂の少なくとも一つのカラムを通過した後に得られるラクトースに富む液体組成物は、pHが5程度であり、抽出物乾燥質量が約13%であり、導電率が5μmS/cm以下であり、TNMの乾燥質量分率が約0.8%未満であり、灰分の質量分率が0.1%以下であり、カチオン(Na、K、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.001%以下であり、アニオン(Cl、PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.001%以下であり、およびラクトースの乾燥質量分率が99.5%程度である。前述の質量分率は、得られたラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対して計算される。
【0252】
UF工程(ii)後に脱塩(iii)により天然乳清を加工するための本発明による実施例4
【0253】
(a)前記天然乳清(i)は、限外濾過工程(ii)および逆浸透を受けて、予備濃縮される。前記予備濃縮された天然乳清の限外濾過透過物は、pHが約6であり;導電率が10.5mS/cm以下であり、抽出物乾燥質量が約17%であり、TNMの乾燥質量分率が約3%であり、灰分の質量分率が約9%であり、ラクトースの乾燥質量分率が84%程度であり、全乾燥質量に対して計算されたカチオン(Na、K、Mg2+、Ca2+)の質量分率が3.6%以下であり、アニオン(Cl、P-PO 3-、S-SO 2-)の質量分率2.3%以下である。この限外濾過透過物(40)は、酸電気透析(iii)による脱塩工程を受け、次いで工程(iv)においてイオン交換樹脂上でパーコレーションされる。脱塩工程(iii)は、三つの電気透析の連鎖:すなわち、三つの区画での水素イオンHによるカチオンのカチオン置換電気透析(CSE)(iiia)、続いて二つの脱塩区画による電気透析、その後に、三つの区画におけるヒドロキシルイオンによるアニオンのアニオン置換電気透析(ASE)(iiib)を含む。電気透析工程(iii)中の限外濾過透過物の温度は30℃程度であるが、この温度は、イオン交換樹脂での工程(iv)中に10℃に低下する。前述の質量分率は、脱塩工程(iii)の入口における限外濾過透過物の全乾燥質量に対して計算される。
【0254】
(b)乳清の前記UF透過物は、最初のCSE電気透析(iiia)を受け、これにより、カチオンがプロトンに置換され、酸加工で機能することが可能になる。CSE(iiia)の出口における前記乳清は、pHが約1.5であり;抽出物乾燥質量が約16%であり、導電率が約12mS/cmであり、TNMの乾燥質量分率が約2%であり、カチオン(Na、K、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.8%以下であり、アニオン(Cl、P-PO 3-、SO 2-)の質量分率が1.9%以下であり、ラクトースの質量分率が95%程度である。酸性化された乳清は、次に、二つの区画を備えた従来の電気透析EDによって約90%の脱塩を受ける。EDの出口における前記乳清は、pHが約2.6であり;抽出物乾燥質量が約16%であり、導電率が約1mS/cmであり、TNMの乾燥質量分率が約2%であり、カチオン(Na、K、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.13%以下であり、アニオン(Cl、P-PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.19%以下であり、ラクトースの乾燥質量分率が97%程度である。前記部分的に脱塩された乳清は、次に、アニオン置換電気透析ASE(iiib)によって約96%の脱塩を受ける。ASE(iiib)の出口における前記乳清は、pHが約8であり;抽出物乾燥質量が約16%であり、導電率が約0.4mS/cmであり、TNMの乾燥質量分率が約2%であり、カチオン(Na、K、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.13%以下であり、アニオン(Cl、P-PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.15%以下であり、ラクトースの乾燥質量分率が98%程度である。
【0255】
(c)工程(iv)中に前記UF透過物がイオン交換樹脂上を二回通過、例えば、二回通過(80、90)した後において、工程(iv)の後、および任意に少なくとも吸収性樹脂上を通過した後に得られるラクトースに富む液体組成物は、pHが5程度であり、抽出物乾燥質量が約13%であり、導電率が5μmS/cm以下であり、TNMの乾燥質量分率が約0.8%未満であり、灰分の質量分率が0.1%以下であり、カチオン(Na、K、Mg2+、Ca2+)の質量分率が0.001%以下であり、アニオン(Cl、PO 3-、SO 2-)の質量分率が0.001%以下であり、ラクトースの乾燥質量分率が99.5%程度である。前述の質量分率は、得られたラクトースに富む液体組成物の全乾燥質量に対して計算される。
【0256】
実施例1および2において行われる脱塩工程(iii)は、イオン交換樹脂上を少なくとも一回通過することを含む工程(iv)の入口における前記UF透過物のミネラル乾燥質量分率を下げるようにUF工程(ii)の入口および/またはUF工程(ii)の後に乳タンパク質組成物の脱塩を可能にする当業者に公知の任意の脱塩工程であり得る。この脱塩工程は、本明細書に記載されるような非限定的な方法で、または特許EP1.053.685B1もしくはWO2020/207894に記載されるような非限定的な方法で、または実施例3および4に記載されるように行うことができる。
図1
図2
【国際調査報告】