(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】オリスミラストによる化膿性汗腺炎の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4436 20060101AFI20240305BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240305BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K31/4436
A61P17/00
A61K47/38
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558591
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057472
(87)【国際公開番号】W WO2022200339
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517415609
【氏名又は名称】ユニオン・セラピューティクス・アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】モルテン・ゾマー
(72)【発明者】
【氏名】キム・ショレール
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】アンネ・ヴァイス
(72)【発明者】
【氏名】エリサべト・ヤルデム・タウドルフ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・ビー・イー・ジェメック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
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4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC75
(57)【要約】
対象において化膿性汗腺炎(HS)の治療に使用するための式(I):
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において化膿性汗腺炎(HS)の治療に使用するための式(I):
【化1】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【請求項2】
軽度又は中程度のHSを有する対象において疾患の進行を予防するのに使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【請求項3】
HSに起因するか又はHSに関連する痛みを低減するのに使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【請求項4】
HSに起因するか又はHSに関連する炎症を低減するのに使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【請求項5】
前記治療が、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の経口投与、局所投与及び/又は静脈内投与を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物が少なくとも4週間、任意選択的に少なくとも8週間投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記化合物が、20週間以下、任意選択的に16週間以下で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記治療が、120mg以下、任意選択的に80mg以下の総1日用量で式(I)の化合物を投与することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記化合物が1日2回投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記治療が、10~60mg、例えば30~40mgの用量の式(I)の化合物を投与することを含み、任意選択的に前記治療が、
(i)30mgの用量の前記化合物を1日2回投与すること;又は
(ii)40mgの用量の前記化合物を1日2回投与すること
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記化合物が経口投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記化合物が放出調節製剤内に含まれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記放出調節製剤が、Ph.Eur.2.9.3 Apparatus II及び75rpmのパドル速度を用いて、0.1NのHCl中0.5%のドデシル硫酸ナトリウムの溶解媒体900ml中に置かれたときに、45分後に約11%~約65%の平均量の式(I)の化合物を放出し、180分後に80%超の式(I)の化合物を放出する、請求項12に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記放出調節製剤が、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物と、親水性マトリックス形成剤とを含み、
任意選択的に、前記親水性マトリックス形成剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項12又は13に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
前記放出調節製剤が、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物と、15%w/w~25%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロースとを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
前記化合物が、任意選択的に錠剤又はカプセルの形態で、経口投与用に製剤化される、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
前記化合物が局所投与用に製剤化される、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
前記対象がヒト又は動物であり、任意選択的に、前記対象がヒトである、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
前記対象が軽度のHSを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
前記対象が中程度のHSを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項21】
前記対象が重度のHSを有する、請求項1、3、4、又は請求項1、3若しくは4に従属する場合の請求項5~18のいずれか一項に記載の使用のための化合物、
【請求項22】
前記対象が、肥満症、メタボリック症候群、炎症性腸疾患、脊椎関節症、又はこれらの任意の組合せから選択される併存疾患を患っている、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項23】
前記対象が以前に、HSの生物学的療法(例えば、抗体療法又はTNF-α阻害薬)で治療されたことがない、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項24】
前記対象が、HSの生物学的療法に対して非反応性又は難治性である、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項25】
前記治療が、HSに対するさらなる療法と組み合わせて行われる、請求項1~24のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項26】
HSに対するさらなる療法が、抗アンドロゲン剤、ホルモン、抗生物質(例えば、ダプソン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、リファンピン又はカルバペネム)、レチノイド、抗炎症薬(ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬及びコルヒチンを含む)、鎮痛薬、免疫抑制薬、抗体、手術、メトホルミン、栄養サプリメント(例えば、グルコン酸亜鉛)、HSの生物学的療法(例えば、TNF-a阻害薬(例えば、アダリムマブ、又はインフリキシマブ)、IL-1阻害薬(例えば、アナキンラ)、抗IL-17薬(例えば、セクキヌマブ)、抗IL-23薬(例えば、リサンキズマブ)、又は抗IL-12/23薬(例えば、ウステキヌマブ))、補体C5a阻害薬(例えば、アバコパン)、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(例えば、トファシチニブ、INCB054707又はウパダシチニブ)、ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ阻害薬(例えば、LYS006)、IRAK4デグレーダー(例えば、KT-474)、IRAK4阻害薬(例えば、PF-06650833)、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬(例えば、PF-06826647)若しくはTYK2/JAK1阻害薬(例えば、PF-06700841)、又はこれらの任意の組合せから選択される、請求項25に記載の使用のための化合物。
【請求項27】
前記治療がPDE4D及び/又はPDE4Bの選択的阻害を提供し、任意選択的に、前記治療が、PDE4D3及び/又はPDE4B2の選択的阻害を提供する、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象において化膿性汗腺炎(HS)の1つ又は複数の臨床徴候又は症状を治療することにおける、PDE4阻害薬、特にオリスミラストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
反対型ざ瘡としても知られている化膿性汗腺炎(HS)は、慢性で反復性且つ衰弱性の皮膚状態である(Jemec G,N Engl J Med.2012,366(2):158-64)。これは濾胞上皮の炎症性障害であり、一般的に、腋窩、乳房下部のひだ、及び鼠径部で発生する。HSは通常、炎症性小結節、膿瘍、面皰、サイナストラクト(sinus tract)、又は瘢痕化を示す。軽度の不快感、紅斑、灼熱、そう痒、及び多汗から始まり、潜行性に発症する。これは進行して、圧痛性又は深在性の小結節を形成し、それらは拡大及び癒合して、有痛性の大きい膿瘍を形成する。これらの膿瘍の破裂により、悪臭のある膿性分泌物が放出される。反復性又は持続性のHSは、両端(double-ended)面皰、サイナストラクト、及び瘢痕化の形成をもたらす。二次細菌感染が起こることも多い。
【0003】
HSの合併症は苦痛を伴う。局所的には、HSは、四肢の可動性の制限を伴う瘢痕化、慢性炎症による肛門及び尿道の狭窄又は瘻孔、並びに外観の損傷を引き起こし得る。まれに、HSの部位に扁平上皮癌も報告されている。全身的には、重篤な感染を伴うHSは、発熱及び敗血症を示し得る。貧血もHSに関連している。
【0004】
HSの初期病変は他の皮膚状態と類似しており、したがって、反復性のフルンケル症又はおできと誤診されることが多い。HSの診断の遅れは、12年以上であることもある。診断は、典型的な病変(小結節、膿瘍、サイナストラクト)、位置(皮膚のひだ)、並びに再発及び慢性化の性質に基づいて臨床的に行われる。肥満症、メタボリック症候群、炎症性腸疾患、及び脊椎関節症を含む複数の併存疾患がHSに関連している。効果的な対症的管理の選択肢は存在するが、治癒的療法の欠如及び反復する性質により、HS治療は困難になる。
【0005】
迅速な認識及び治療の開始により、HSが衰弱性の末期疾患に進行するリスクを低下させることができる。HSの心理社会的影響は、関連の痛み、悪臭のある分泌物、及び瘢痕化のために壊滅的である。実際、HSは、乾癬及びアトピー性皮膚炎などの他の慢性皮膚状態よりも大きい、生活の質及び職業活動の障害に関連する。
【0006】
HSの有病率は欧州では約1%~4%であり、北米ではより低い。化膿性汗腺炎は女性により多く見られ、女性対男性の比率は4:1である。発症年齢は通常、思春期後から40歳前であり、10歳代及び20歳代にピークとなる。思春期前の小児のHSはまれであるが、報告された最も早い発症年齢は6歳である。
【0007】
HSの原因は不明であるが、恐らく多因子性である。HS患者の最大40%は家族歴陽性であるため、遺伝学が関与しているが、HSについての一卵性の一致研究は存在していない。HSにおける常染色体優性の遺伝様式は、まれであるが報告されている。
【0008】
いくつかの外因性因子がHSに関連している。その思春期後及び閉経前の発症パターンを考えると、ホルモンが関与している。具体的には、アンドロゲン含有薬物はHSを促進又は悪化させ、HSを治療するために抗アンドロゲン剤が使用される。加えて、肥満症は、恐らく間擦性皮膚上の機械的ストレスの増大のために、疾患を悪化させ得る。肥満症もHSでより一般的に見られるが、肥満度指数とHS重症度との間の相関関係は議論の余地がある。最後に、喫煙と及びHSとの間の関連性は十分に実証されており、非喫煙者よりも喫煙者の方がHSの発生率が高い。
【0009】
HS治療への一般的なアプローチには、非医学的介入、局所的及び全身的な薬物療法、並びに手術が含まれる。疾患を制御し、症状を改善するためにいくつかの介入が利用可能である。HS治療の目標には、新しい病変の予防、新たに形成された病変の早期且つ効果的な治療、並びに既存の小結節及びサイナストラクトの除去が含まれる。
【0010】
局所レゾルシノール、経口及び局所的な抗生物質、ホルモン療法、レチノイド及び免疫抑制薬などの多くの薬物療法が、新しい病変を予防し、既存の小結節及びサイナストラクトを除去し、症状を改善することによってHSを治療するために使用される。しかしながら、症例シリーズ及び報告、RCT、並びに遡及研究(Lee Y E et al.,Canadian Family Physician February 2017,63(2)114-120)で報告されるように、一部の既存の薬物療法は有効性が限られており、高い再発率に関連し、重大な副作用を有することが多い。
【0011】
抗TNF-α(腫瘍壊死因子-α)特性を有する生物学的薬剤のインフリキシマブ及びアダリムマブは、有効であることが実証されている(Lim S Y D and Oon H.,Biologics.2019 13:53-78による総説を参照)。アダリムマブは最近、米国食品医薬品局及び欧州医薬品庁により、中程度~重度のHSの治療用に承認された。
【0012】
最近、中程度のHSを有する患者が登録された2つの第II相研究において、乾癬の治療用に承認された薬物であるホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬のアプレミラストでの治療により、治療された患者の50%超が肯定的なHS臨床応答(HiSCR)を示すのに対して、プラセボ群の患者はだれも示さないことが示された(Vossen ARJV et al.,J Am Acad Dermatol.2019 80(1):80-88;Kerdel FR et al.,J Drugs Dermatol.2019 18(2):170-176)。しかしながら、アプレミラストによる患者の治療は、有害作用、主に、悪心、下痢、及び嘔吐などの、PDE4阻害薬に典型的である胃腸(GI)副作用に関連した。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療用に承認された別のPDE4阻害薬のロフルミラストも、忍容性の問題、主に、悪心、嘔吐及び下痢を含むGI作用を示すことが見出された。
【0013】
ホスホジエステラーゼ(PDE)は、cAMPを加水分解及び分解する唯一の酵素である。PDE4は、造血細胞(例えば、骨髄性、リンパ系)、非造血細胞(例えば、平滑筋、ケラチノサイト、内皮)、及び感覚/記憶ニューロンにおいて広く発現されるcAMPホスホジエステラーゼである。4つのPDE4遺伝子(A、B、C、及びD)は、別個の標的及び制御特性を示す。これらの遺伝子のそれぞれは、mRNAスプライスバリアントのために複数のタンパク質産物を生成することができ、結果として、短いアイソフォーム又は長いアイソフォームのいずれかのカテゴリーに分類される約19種の異なるPDE4タンパク質がもたらされる。長いアイソフォームは、PKA活性化部位を含有する付加的な上流保存領域(UCR)によって、短いアイソフォームと区別される。これらのUCR配列は、PKA及び細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)のリン酸化を介して、PDE4の制御において重要な役割を果たす。例えば、白血球で発現される主要なPDE4アイソフォームは、PDE4B2(短いアイソフォーム)並びにPDE4D3及びD5(長いアイソフォーム)である。長いPDE4Dアイソフォームは単球において優勢であるが、短いPDE4Bアイソフォームはマクロファージにおいて優勢である。PDE4B2の触媒活性はERKリン酸化によって活性化されるが、D3及びD5バリアントの触媒機能は、ERK活性化によって阻害される。したがって、UCRモジュールは、ERKリン酸化の機能的結果を決定することができる。これは、単球の炎症促進性メディエーターがPDE4活性の全体的な低下を誘発するのに対して、マクロファージの炎症促進性メディエーターがPDE4活性の全体的な増大を誘発することを意味する。
【0014】
cAMPは炎症反応の調節における重要なセカンドメッセンジャーであるため、PDE4は、TNF-a、IL-2、IFN-y、GM-CSF及びLTB4などの炎症性促進性サイトカインを調節することにより、炎症細胞の炎症反応を制御することが見出された。したがって、PDE4の阻害は、重大な副作用、特に悪心及び嘔吐に関連するが、炎症性疾患の療法の魅力的な標的となっている(Lagente V et al.,Mem Inst Oswaldo Cruz,Rio de Janeiro,2005 v.100(Suppl.I):131-136;Shett G et al.,Ther Adv Musculoskel Dis,2010,v2(5)271-278)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
HSは治療するのが困難であり、この状態の治癒は存在しない。したがって、治療的に有効且つ安全である医学的介入が非常に望ましい。HSの効果的な治療が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によると、対象において化膿性汗腺炎(HS)の治療に使用するための式(I):
【化1】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物が提供される。式(I)の化合物は、オリスミラストとしても知られている2-(3,5-ジクロロ-1-オキシド-ピリジン-4-イル)-1-(7-ジフルオロメトキシ-2’,3’,5’,6’-テトラヒドロ-スピロ[1,3-ベンゾジオキソール-2,4’-(4H)-チオピラン-1’,1’-ジオキシド]-4-イル)エテノンである。
【0017】
いくつかの実施形態では、治療は、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の使用を含む。
【0018】
本発明の第2の態様によると、軽度又は中程度のHSを有する対象において疾患の進行を予防するのに使用するための、本明細書に定義される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物が提供される。
【0019】
本発明の第3の態様によると、HSに起因するか又はHSに関連する炎症を低減するのに使用するための、本明細書に定義される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物が提供される。
【0020】
治療は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の経口投与、局所投与及び/又は静脈内投与を含み得る。いくつかの実施形態では、治療は経口投与を含む。いくつかの実施形態では、治療は局所投与を含む。いくつかの実施形態では、治療は、経口及び局所投与を含む。
【0021】
治療は、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間又は少なくとも8週間行うことができる。いくつかの実施形態では、治療は、20週間以下、16週間以下、12週間以下又は10週間以下で行われる。
【0022】
治療は、120mg以下、100mg以下、80mg以下、60mg以下、又は40mg以下の総1日用量の式(I)の化合物を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、治療は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、少なくとも50mg又は少なくとも60mgの総1日用量を投与することを含む。例えば、投与される総1日用量は、約5~約120mg、約10~約120mg、約20~約110mg、約30~約100mg、約40~約90mg、約50~約80mg、又は約60~約70mgであり得る。いくつかの実施形態では、投与される式(I)の化合物の総1日用量は、約50~約90mg、約60~約80mgである。いくつかの実施形態では、治療は、約40mgの総1日用量の式(I)の化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約10mgの総1日用量の式(I)の化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約20mgの総1日用量の式(I)の化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約60mgの総1日用量の式(I)の化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約80mgの総1日用量の式(I)の化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約100mgの総1日用量の式(I)の化合物を投与することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、治療は、約10~約60mg、約20~約50mg、又は約30~約40mgの用量を投与することを含む。
【0024】
治療は、1日に1~4回、例えば1日に2~3回行うことができる。いくつかの実施形態では、治療は、1日1回行われる。いくつかの実施形態では、治療は、1日2回行われる。
【0025】
本明細書に定義される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物は、組成物又は製剤内に含まれ得る。したがって、本発明は、HSの治療に使用するための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む組成物又は製剤も提供する。組成物又は製剤は、所望の投与経路に従って製剤化され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物、又は化合物を含む組成物若しくは製剤は、経口投与用に製剤化される。適切には、化合物、組成物又は製剤は、錠剤又はカプセルの形態で製剤化される。いくつかの実施形態では、化合物は、放出調節製剤内に含まれる。
【0027】
対象は、ヒト又は動物であり得る。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象はヒト男性である。いくつかの実施形態では、対象はヒト女性である。
【0028】
対象は、軽度、中程度又は重度のHSを有し得る。いくつかの実施形態では、対象は軽度のHSを有する。いくつかの実施形態では、対象は中程度のHSを有する。いくつかの実施形態では、対象は重度のHSを有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、対象は、肥満症、メタボリック症候群、炎症性腸疾患、脊椎関節症、又はこれらの任意の組合せから選択される併存疾患を患っている。
【0030】
いくつかの実施形態では、対象は以前に、HSに対する抗体又は他の生物学的療法で治療されたことがない。いくつかの実施形態では、対象は以前に、TNF-α阻害薬(例えば、アダリムマブ)で治療されたことがない。
【0031】
他の実施形態では、対象は以前に、HSに対する抗体又は他の生物学的療法で治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は以前に、抗炎症抗体で治療されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は以前に、TNF-α阻害薬(例えば、アダリムマブ)で治療されたことがある。対象は、抗体療法によるHSの事前治療に対して非反応性又は難治性である可能性があり、例えば、対象が、TNF-α阻害薬(例えば、アダリムマブ)による治療に対して非反応性又は難治性である場合である。
【0032】
治療は、さらなる療法と組み合わせて行うことができる。さらなる療法は、抗アンドロゲン剤、ホルモン、抗生物質、レチノイド、抗炎症薬(ステロイド及び非ステロイド系抗炎症薬を含む)、鎮痛薬、免疫抑制薬、抗体、手術又はこれらの任意の組合せから選択され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、治療は、PDE4D及び/又はPDE4Bの選択的阻害を提供する。特定の実施形態では、治療は、PDE4B2、PDE4B3、PDE4D2、PDE4D3、PDE4D4、PDE4D5及び/又はPDE4D7の選択的阻害を提供する。さらなる実施形態では、治療は、PDE4D3及び/又はPDE4B2の選択的阻害を提供し得る。
【0034】
詳細な説明
本発明は次に、例として、添付図面を参照しながら説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】放出調節製剤の溶解標的領域を説明するチャートである。溶解方法:パドル75rpm、900mlの0.1NのHCI+0.5%のSDS、37℃、HPLC検出。
【
図2】式(I)の化合物又はアプレミラストが投与されたマウスの耳厚のAUCを示す。
【
図3】式(I)の化合物又はアプレミラストが投与されたマウスの血清中の化合物の濃度を示す。
【
図4】式(I)の化合物による実施例9の対象の治療過程におけるベースラインからの変化%を示す。この図は、国際HS重症度スコア(IHS4)、痛みの視覚的アナログ尺度(VAS痛み)、HS特異的な生活の質(HiSQOL)及び皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)における、ベースラインに対する変化%を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
他に明言されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、下に記載される以下の意味を有する。
【0037】
「治療する」又は「治療」という用語は、緩解;寛解;症状の減少、或いは病態又は状態が対象にとってより許容できるものになること;変性又は減退の速度の低下;変性の最終点の衰弱を少なくすること;対象の身体的又は精神的な幸福の改善などの任意の客観的又は主観的なパラメータを含む、疾患、病態又は状態の治療又は改善における成功の任意の証拠を指す。例えば、HSに関しては、「治療」は、以下のうちの1つ又は複数を含み得る:炎症性小結節、膿瘍、面皰及び/又はサイナストラクトの重症度、広がり及び/又は数を除去又は低減すること;痛み、炎症、灼熱、腫脹、発赤、かゆみ及び/又は不快感を低減又は除去すること;分泌物を低減又は除去すること;瘢痕化及び/又は外観の損傷を予防又は低減すること;二次感染(例えば、細菌感染)、癌(例えば、扁平上皮癌)、敗血症及び/又は貧血の可能性及び/又は重症度を予防又は低減すること;抑うつ及び他の心理的効果の発生を予防又は最小限にすること;軽度から中程度、又は中程度から重度のHSへの疾患の進行を予防又は遅延させること;医師による疾患重症度の包括的評価(Physician’s Global Assessment of disease severity)(HS-PGA)に従う疾患重症度の低減;並びに化膿性汗腺炎による対象のスコア、皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)、欧州生活の質-5次元(European quality of life-5 Dimensions)(EQ-5D)スケール、国際HS重症度スコア(IHS4)、HS特異的な生活の質(HiSQOL)、皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)、McGill痛み質問表(McGill Pain questionnaire)、痛みの視覚的アナログ尺度(VAS痛み)、作業生産性及び活動障害質問表:特定の健康問題(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire: Specific Health Problem)V2.0(WPAI:SHP)、不安及び抑うつ(HADS)質問表及び/又は多次元疲労一覧(Multidimensional Fatigue Inventory)20(MFI-20)における改善。式(I)の化合物は作用の発現が迅速であり、したがって、HSの1つ又は複数の症状及び/又は臨床的特徴の急速な緩和を提供し得る。例えば、HSを有する対象への式(I)の化合物の投与は、HSに関連する痛みの急速な緩和を提供し得る。
【0038】
本明細書に記載される化合物又は塩、溶媒和物若しくは水和物が障害を治療するために投与される場合、「治療的に有効な量」は、障害の症状又は他の有害作用を低減又は完全に軽減する;障害を治癒させる;障害の進行を逆転させる、完全に停止する、又は遅らせる;或いは障害が悪化するリスクを低減するのに十分な量である。
【0039】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載される化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的又はその他の点で望ましくないものではない塩を指す。化合物(I)の薬学的に許容される塩は、当業者によく知られている。本明細書における化合物(I)の塩への言及は、化合物(I)の薬学的に許容される塩を指すことがある可能性がある。本発明は、全ての結晶変態、多形形態、及びそれらの混合物を含める。いくつかの実施形態では、治療は、式(I)の化合物の多形形態Eの投与を含む。
【0040】
「溶媒和物」という用語は、化合物、例えば式(I)の化合物と、溶媒、例えばアルコール、グリセロール又は水との間の相互作用によって形成される種を示すことが意図され、前記種は固体の形態である。水が溶媒である場合、前記種は「水和物」と称される。
【0041】
本明細書で使用される「ホスホジエステラーゼ」という語句は、cAMPに対して選択的であるホスホジエステラーゼ(PDE)、PDE4、PDE7及びPDE8のうちの1つ又は複数を指す。PDE4は、cAMPの最も重要なモジュレータである。PDE4はcAMP特異的であり、炎症細胞において優性なPDEである。PDE4酵素は4つの遺伝子(PDE4A、PDE4B、PDE4C及びPDE4D)によってコードされ、そのそれぞれは、mRNAスプライシングと、異なるプロモーターの使用とによっていくつかのアイソフォームを生成することができる。特定のPDE4サブファミリー内の各PDE4アイソフォームは、触媒ユニット及びC末端部分からなる共通コア領域を含み、その特有のN末端領域によって定義される。PDE4アイソフォームはさらに、2つの高度に保存された配列:上流保存領域1(UCR1)及び上流保存領域2(UCR2)の有無(又はトランケーション)に応じて、長いアイソフォーム、短いアイソフォーム、又は超短いアイソフォームに分類される。「長い」アイソフォームはUCR1及びUCR2の両方を含み、「短い」アイソフォームはUCR1を欠いており、「超短い」アイソフォームはUCR1を欠くと共に、切断型UCR2を有する。
【0042】
本明細書で使用される「PDE阻害薬」という語句は、PDEを阻害する物質を指す。
【0043】
「局所治療」又は「局所投与」への言及は、化合物又は化合物を含む製剤の皮膚、軟部組織又は粘膜への適用を指す。
【0044】
本明細書における「対象」への言及は、ヒト又は動物対象を意味する。好ましくは、対象は温血哺乳類である。より好ましくは、対象はヒトである。
【0045】
他に明記されない限り、本明細書における「式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の重量%」への言及は、化合物の非塩形態の量を指すことが意図される。例えば、「5重量%の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物」を含む組成物への言及は、5重量%の非塩形態の化合物を含む組成物を指す。したがって、このような組成物が化合物の薬学的に許容される塩を含む場合、組成物中の塩の絶対量は、組成物中に同様に存在し得る塩の対イオンを考慮して、5重量%よりも多くなる。
【0046】
数値との関連での「約」への言及は、値+/-10%を包含することが意図される。例えば、約20%は、18%~22%の範囲を含む。
【0047】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」という語並びにこれらの変化形は、「含むが、これらに限定されない」を意味し、これらは、他の部分、添加剤、成分、整数又はステップを排除することは意図されない(そして、排除しない)。本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、文脈が他に必要としない限り、単数形は複数形を包含する。特に、文脈が他に必要としない限り、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、単数と同様に複数も企図すると理解されるべきである。
【0048】
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分又は基は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面のいずれも含む)に開示される特徴の全て、及び/又はそのように開示される任意の方法又はプロセスのステップの全ては、このような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わせることができる。本発明は、前述のいずれの実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面のいずれも含む)に開示される特徴の任意の新規のもの又は任意の新規の組合せ、或いはそのように開示される任意の方法又はプロセスのステップの任意の新規のもの又は任意の新規の組合せにまで及ぶ。
【0049】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時に又は本明細書に先立って出願され、本明細書と共に公衆の閲覧に供される全ての論文及び文書に向けられ、全てのこのような論文及び文書の内容は参照によって本明細書中に援用される。
【0050】
式(I)の化合物
本発明は、式(I):
【化2】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む製剤に関する。
【0051】
本明細書において「オリスミラスト」とも称される式(I)の化合物、2-(3,5-ジクロロ-1-オキシド-ピリジン-4-イル)-1-(7-ジフルオロ-メトキシ-2’,3’,5’,6’-テトラヒドロ-スピロ[1,3-ベンゾジオキソール-2,4’-(4H)-チオピラン-1’,1’-ジオキシド]-4-イル)エタノンは、真皮の疾患又は状態、例えば、増殖性及び炎症性皮膚障害、皮膚炎、乾癬、尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、接触性皮膚炎、癌、上皮炎症、脱毛症、円形脱毛症、皮膚萎縮症、ステロイド誘発性の皮膚萎縮症、皮膚の老化、光による皮膚の老化、ざ瘡、じんま疹、そう痒症、並びに湿疹などの様々な疾患の治療、予防又は軽減において使用するためのPDE4阻害薬として有用であるベンゾジオキソール及びベンゾジオキセペン複素環式化合物に関連する、国際公開第2011/160632号パンフレットに開示されている。
【0052】
式(I)の化合物は、化合物の薬学的に許容される任意の形態及び塩、水和物又は溶媒和物を含むと理解されるべきである。化合物は、結晶形態又は非晶質形態で存在し得る。式(I)の化合物は、難溶性化合物であると考えられる。式(I)の化合物及びその塩、並びに化合物の合成方法は、国際公開第2011/160632号パンフレット、国際公開第2015/197534号パンフレット、国際公開第2017/103058号パンフレット、及び国際公開第2018/234299号パンフレットに開示されている。
【0053】
本発明の態様のいずれかにおいて、式(I)の化合物は、結晶形態で存在し得る。例えば、式(I)の化合物は、化合物の多形形態Eであり得る。式(I)の化合物の形態Eは、その参照によって本明細書中に援用される国際公開第2018/234299号パンフレットに記載されており、国際公開第2018/234299号パンフレットの
図1に実質的に示されるようなXRPDディフラクトグラムパターンを有する。形態Eは、窒素雰囲気下、100℃/分の加熱速度でDSCにより測定したときに約217℃~約219℃の開始温度で融解吸熱を有することを特徴とする。形態Eは、適切な溶媒、例えばエタノール又はアセトンから式(I)の化合物を結晶化させることによって調製され得る。
【0054】
オリスミラスト(式(I)の化合物)は、PDE4の選択的且つ効率的な阻害薬である。オリスミラストは、PDE4D及びPDE4Bの選択的阻害薬であることが見出されている。いくつかの実施形態では、オリスミラストは、PDE4B1、PDE4B2、PDE4B3、PDE4D1、PDE4D2、PDE4D3、PDE4D4、PDE4D5及び/又はPDE4D7の選択的阻害薬である。いくつかの実施形態では、オリスミラストは、PDE4B2、PDE4B3、PDE4D2、PDE4D3、PDE4D4、PDE4D5及び/又はPDE4D7の選択的阻害薬である。いくつかの実施形態では、オリスミラストは、PDE4B2、PDE4B3、PDE4D5及びPDE4D7の選択的阻害薬である。いくつかの実施形態では、オリスミラストは、PDE4B3、PDE4D5及びPDE4D7の選択的阻害薬である。特に、オリスミラストは、PDE4アイソフォームPDE4D3及びPDE4B2の選択的阻害薬であることが見出されている。加えて、オリスミラストは、炎症に大きく関連する2つのサイトカインであるTNF-α及びIL-1βの分泌を強力に阻害することが見出されている。この化合物は、IFN-γも阻害する。IFN-γは、Th1免疫応答に関与するT細胞由来のTh1サイトカインである。炎症、特にHSに関連する炎症に関与するサイトカインを阻害するオリスミラストの能力は、HSの治療におけるオリスミラストの使用を支持する。重要なことに、ヒト全血からのLPS及びSEB誘発性のTNF-α分泌の両方において、オリスミラストは、モル基準でアプレミラストよりも平均で23倍強力であることが示されている。
【0055】
医薬組成物
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物は、製剤内に含まれ得る。したがって、本発明は、HSの治療に使用するための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む製剤又は組成物も提供する。組成物及び製剤は、例えば、所望の投与様式、例えば、経口投与、局所投与又は静脈内投与に従って調製され得る。
【0056】
本化合物を含む組成物及び製剤は、任意選択的に、1つ又は複数の粘度調整剤、担体(例えば、マンニトール、ラクトース、微結晶セルロース又はトレハロース)、乳化剤、界面活性剤、保湿剤、油、ワックス、ポリマー、防腐剤、pH調整剤(例えば、適切な酸又は塩基、例えば、有機酸又は有機アミン塩基)、緩衝剤、安定剤、電解質酸化防止剤(例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール又はブチル化ヒドロキシトルエン)、結晶化阻害剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルピロリドンなどのセルロース誘導体)、着色剤、香料及び風味マスキング剤をさらに含み得る。例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients,7th Edition,Rowe et alに記載されるように、このような賦形剤はよく知られている。
【0057】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物は、固体製剤の約0.01~50重量%の量で製剤中に存在する。したがって、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物は、約0.05~40%、0.1~30%、0.2~20%、0.3~15%、0.4~12%、0.5~11%、1~10%、1.5~9.5%、2~9%、2.5~8.5%、3~8%、3.5~7.5%、4~7%、4.5~6.5%、又は約5~6%、例えば約5.5%の量で固体製剤中に存在する可能性がある。
【0058】
局所投与用の製剤
いくつかの実施形態では、化合物は、対象への局所投与用に製剤化される。例えば、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む製剤は、例えば、製剤を直接HS病変に局所適用することにより、HSに冒された部位において皮膚に局所適用され得る。局所投与に適した製剤には、リニメント、ローション、ゲル、スプレー若しくはフォームなどの液体若しくは半液体調製物;クリーム、軟膏若しくはペーストなどの水中油若しくは油中水エマルション;又はドロップ若しくはスプレーなどの溶液若しくは懸濁液が含まれる。
【0059】
局所投与の場合、式Iの化合物は通常、組成物の0.01~20重量%の量で製剤中に存在し得る。例えば、化合物は、組成物の0.02~18重量%、0.03~15重量%、0.04~15重量%、0.05~10重量%、0.06~9重量%、0.07~8重量%、0.08~6重量%、0.09~5重量%、0.1~4.5重量%、0.15~4重量%、0.2~3.5重量%、0.3~3重量%、0.4~2.5重量%、0.5~2重量%、0.6~1.5重量%又は0.7~1重量%の量で製剤中に存在し得る。いくつかの実施形態では、化合物は、0.01~5%、又は0.02~2%の量で製剤中に存在し得る。
【0060】
経口投与用の製剤
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む経口投与に適した製剤は、所定量の式(I)の化合物をそれぞれが含有する、カプセル、サシェ(sachet)、錠剤又はロゼンジなどの別個の単位の形態であり得る。別個の単位は、粉末若しくは顆粒の形態、エタノール若しくはグリセロールなどの水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液の形態、又は水中油エマルション若しくは油中水エマルションの形態の製剤を含有し得る。このような油は、例えば、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油又はピーナッツ油などの食用油であり得る。水性懸濁液に適した分散剤又は懸濁化剤には、トラガカント、アルギネート、アカシア、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー及びポリビニルピロリドンなどの合成又は天然ガムが含まれる。また製剤は、ボーラス、舐剤又はペーストの形態で投与されてもよい。
【0061】
粉末は、周知の方法を用いて、例えば、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む溶液を摩砕、ブレンド、微量沈殿、凍結乾燥若しくは噴霧乾燥、又は噴霧凍結乾燥することによって調製され得る。
【0062】
各経口剤形(例えば、錠剤、カプセル、サシェ又はロゼンジ)中の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の量は、約1mg~約100mgの範囲であり得る。化合物の量は、例えば、5mg~80mg、10mg~60mg、15mg~50mg、20~40mg又は25~30mgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、各経口剤形(例えば、錠剤、カプセル、サシェ又はロゼンジ)中の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の量は、約10mg~約40mg、例えば約10~約30mgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、各経口剤形(例えば、錠剤、カプセル、サシェ又はロゼンジ)中の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の量は、1mg、2mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg又は100mgである。
【0063】
特定の実施形態では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む粒子は、化合物及び適切な担体を含む溶液を沈殿、凍結乾燥若しくは噴霧乾燥、又は噴霧凍結乾燥して、複合粒子として式(I)の化合物及び担体を含む粉末粒子を提供することによって調製され得る。適切な担体には、デンプン、糖(例えば、マンニトール、ラクトース、微結晶セルロース又はトレハロース)などの不活性担体が含まれる。
【0064】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物は、微粉化粉末、例えば微粉化結晶性粉末(例えば、式(I)の化合物の微粉化結晶性形態E)として製剤中に存在する。したがって、製剤中の化合物の粒径分布は、D50≦25μm、例えば、D50≦20μm、D50≦10μm、D50≦5μm、又はD50≦3μmを有する可能性がある。
【0065】
本明細書に記載される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む粉末は、投与前、例えば、スプレー又はゲルの適用前に、適切な溶媒(好ましくは、水)中に溶解又は懸濁され得る。
【0066】
錠剤は、任意選択的に1つ又は複数の補助成分と共に、製剤を圧縮又は成形することによって製造され得る。圧縮錠剤は、例えば、ラクトース、グルコース、デンプン、ゼラチン、アカシアガム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどの結合剤;オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの潤滑剤;デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンなどの崩壊剤、又はポリソルベート80などの分散剤と任意選択的に混合された、粉末又は顆粒などの自由流動形態の製剤を適切な機械で圧縮することによって調製され得る。
【0067】
成形錠剤は、成形によって製造され得る。錠剤を成形するのに適した技術は当該技術分野においてよく知られている。例えば、適切な機械において、粉末活性成分及び適切な担体の混合物は、不活性液体希釈剤で湿潤され得る。いくつかの実施形態では、成形錠剤は、水、アルコール又は有機溶媒(例えば、アセトン、炭化水素)などの適切な溶媒中に粉末活性成分と共に水溶性賦形剤を分散させることによって製造され得る。或いは、成形錠剤は、不活性液体希釈剤を用いずに、熱可塑性ポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド又はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー)を用いて製造され得る。
【0068】
放出調節製剤
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物は、放出調節製剤、例えば経口投与用の放出調節製剤内に含まれる。したがって、化合物は、経口投与用の放出調節錠剤製剤内に含まれ得る可能性がある。放出調節製剤を使用すると、治療薬の放出が制御され、したがって消化管からの薬物吸収が制御され得る。PDE4阻害薬を放出調節錠剤製剤中に製剤化することによって、胃腸の有害事象に対する忍容性の改善及び全身曝露の維持に関して有益な効果が達成可能であることは、以前に本出願人(国際公開第2020/148271号パンフレットとして公開されたPCT出願)によって記載されており、ここで、インビトロでの放出は、典型的な放出調節プロファイルと比較すれば速いが、主要な忍容性問題が見られた即時放出錠剤の場合ほど速くはない。
【0069】
放出調節製剤の溶解速度は、いくつかの因子、例えば、親水性マトリックス形成剤、賦形剤(充填剤及びコーティング)の種類及び量、並びに原薬の粒径によって決定され得ることが認識されるであろう。
図1の溶解標的領域は、最適な領域を説明する。好ましくは、放出調節製剤は、最適領域内の式(I)の化合物の放出及び溶解を提供する。所与の製剤の溶解プロファイルは、国際公開第2020/0148271号パンフレットに記載される方法を用いて決定することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、オリスミラストは、その参照によって本明細書中に援用される国際公開第2020/0148271号パンフレットに記載される放出調節製剤として製剤化される
【0071】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、12分後に40%未満の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、30分後に40%未満の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、30分後に35%未満の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、30分後に約20%~約40%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、30分後に約25%~約35%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、45分後に約11%~約65%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、45分後に約25%~約60%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、45分後に約30%~約45%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、60分後に約35%~約55%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、60分後に約60%超の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、60分後に約35%~約50%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、60分後に約40%~約50%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、90分後に約50%~約60%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、120分後に約60%~約80%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、120分後に約60%~約70%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、180分後に約70%超の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、180分後に約80%超の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、180分後に約70%~約100%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、180分後に約80%~約100%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、180分後に約85%~約100%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、180分後に約90%~約100%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、180分後に約95%~約100%の式(I)の化合物を放出する。特定の実施形態では、放出調節製剤は、45分後に約11%~約65%の式(I)の化合物を放出し、180分後に80%超の式(I)の化合物を放出する。特定の実施形態では、放出調節製剤は、45分後に約25%~約65%の式(I)の化合物を放出し、180分後に少なくとも75%の式(I)の化合物を放出する。特定の実施形態では、放出調節製剤は、45分後に約30%~約50%の式(I)の化合物を放出し、180分後に少なくとも75%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、45分後に約30%~約55%の式(I)の化合物を放出し、180分後に少なくとも85%の式(I)の化合物を放出する。特定の実施形態では、放出調節製剤は、45分後に約30%~約50%の式(I)の化合物を放出し、180分後に約80%~約100%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、約60分~100分の間に約50%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、約120分~180分の間に約80%の式(I)の化合物を放出する。いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、30分後に40%未満の式(I)の化合物を放出し;60分~100分の間に50%の式(I)の化合物が放出され;そして115分~180分の間に80%の式(I)の化合物が放出される。放出調節組成物は、例えば、本明細書に記載される放出調節組成物のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、放出調節組成物は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物と、薬学的に許容される親水性マトリックス形成剤(例えば、HPMC)とを含む。いくつかの実施形態では、放出調節組成物は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物と、薬学的に許容される親水性マトリックス形成剤(例えば、HPMC)と、充填剤(例えば、ラクトース一水和物)とを含む。いくつかの実施形態では、放出調節組成物は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物と、15%w/w~30%w/wの薬学的に許容される親水性マトリックス形成剤(例えば、HPMC)とを含む。いくつかの実施形態では、放出調節組成物は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物と、15%w/w~25%w/wのHPMCとを含む。
【0072】
上の段落において、「式(I)の化合物の放出」への言及は、特定の時点で溶解媒体中に放出される、放出調節製剤中に最初に存在する式(I)の化合物の重量%を指し、ここで、溶解は、Ph.Eur.2.9.3 Apparatus IIを使用し、0.1NのHCl中0.5%のドデシル硫酸ナトリウムの溶解媒体900ml及び75rpmのパドル速度を用いて決定される。溶解媒体中に存在する式(I)の化合物の量は、C18カラム及び272nmでのUV検出を用いる逆相アイソクラティックHPLCによって決定され得る。適切には、式(I)の化合物の放出%値は、2つ以上の放出調節製剤のサンプルの放出プロファイルを測定し、それにより、バッチ間又はバッチ内のばらつきの効果を低減することによって得られる平均値である。平均放出%は、例えば6、12又は24個の放出調節製剤のサンプルからの放出を測定することによって得ることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、放出調節錠剤製剤は、
(i)式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物;
(ii)1つ又は複数の薬学的に許容される親水性マトリックス形成剤;
(iii)任意選択的に、充填剤、流動化助剤及び潤滑剤からなる群から選択される1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤;並びに
(iv)任意選択的に、薬学的に許容されるコーティング系
を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロース、又はこれらの混合物を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、HPMCからなる。いくつかの実施形態では、HPMCは、30~150mPa.sの粘度を有する。いくつかの実施形態では、HPMCは、35~130mPa.sの粘度を有する。いくつかの実施形態では、HPMCは、40~60mPa.sの粘度を有する。いくつかの実施形態では、HPMCは、80~120mPaの粘度を有する。本明細書におけるHPMCの粘度への言及は、米国薬局方(USP XXIII)に従って、HPMCの2%(w/w)水溶液の20℃での粘度を指す。
【0076】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、約5%~約35%のメトキシル置換を有するHPMCを含む。いくつかの実施形態では、HPMCは、約15%~約30%のメトキシル置換を有する。いくつかの実施形態では、HPMCは、約19%~約24%のメトキシル置換を有する。いくつかの実施形態では、HPMCは、約25%~約35%のメトキシル置換を有する。いくつかの実施形態では、HPMCは、約28%~約30%のメトキシル置換を有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、約4%~約15%のヒドロキシプロピル置換を有するHPMCを含む。いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、約4%~約12%のヒドロキシプロピル置換を有するHPMCを含む。いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、約7%~約12%のヒドロキシプロピル置換を有するHPMCを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、約19%~約24%のメトキシル置換と、約4%~約12%のヒドロキシプロピル置換とを有するHPMCを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、約19%~約24%のメトキシル置換と、約7%~約12%のヒドロキシプロピル置換とを有するHPMCを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤中の親水性マトリックス形成剤は、約28%~約30%のメトキシル置換と、約7%~約12%のヒドロキシプロピル置換とを有するHPMCを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ヒプロメロース2910、ヒプロメロース2208、又はこれらの混合物である。
【0082】
適切には、親水性マトリックス形成剤は、約10%w/w~約30%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度で存在する。したがって、親水性マトリックス形成剤は、約15%w/w~約25%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度で存在する可能性がある。例えば、親水性マトリックス形成剤が、17.5%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度で存在する場合である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、例えば、本明細書に開示されるヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、ヒプロメロース2910、ヒプロメロース2208、又はこれらの混合物)のグレードのいずれであってもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤中に存在する1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤は、ラクトース一水和物及び微結晶セルロース、並びにこれらの混合物から選択される充填剤を含む。いくつかの実施形態では、充填剤は、約30%~約78%w/wのラクトース一水和物、及び0%~約40%w/wの微結晶セルロースの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、充填剤はラクトース一水和物である。いくつかの実施形態では、充填剤はラクトース一水和物であり、約30%~約78%w/wの濃度で存在する。したがって、ラクトース一水和物は、約71%w/wの濃度で存在する可能性がある。
【0084】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤はコーティングを含む。例えば、PVAベースのコーティング系である。
【0085】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、
(i)式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物;
(ii)親水性マトリックス形成剤(親水性マトリックス形成剤は、約15%w/w~約25%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度で存在する);
(iii)約30%w/w~約78%w/wのラクトース一水和物;
(iv)任意選択的に、流動化助剤及び潤滑剤からなる群から選択される1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤;並びに
(v)任意選択的に、薬学的に許容されるコーティング系
を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、式(I)の化合物と、約0.5%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、約1.0%w/wのステアリン酸マグネシウムと、任意選択的にPVAベースのコーティング系とを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、放出調節製剤は、式(I)の化合物と、約17.5%w/wのヒプロメロースと、約71.0%w/wのラクトース一水和物と、約0.5%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、約1.0%w/wのステアリン酸マグネシウムと、任意選択的にPVAベースのコーティング系とを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約1%w/w~約40%w/w、例えば約1%w/w~約30%w/w、約1%w/w~約20%w/w、又は約2%w/w~約15%w/wの量で放出調節製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約2%w/w~約5%w/wの量で放出調節製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約8%w/w~約12%w/wの量で放出調節製剤中に存在する。
【0089】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約5mg~約60mg;約10mg~約50mgの量で放出調節製剤中に存在する。例えば、約10mg、又は約30mgである。
【0090】
いくつかの実施形態では、化合物は、放出調節錠剤製剤中に均等に分配され得る。化合物は、微粉化されてもよい。いくつかの実施形態では、化合物は結晶性である。いくつかの実施形態では、化合物は結晶性であり、微粉化されている。
【0091】
いくつかの実施形態では、製剤は、式(I)の化合物の多形形態Eを含む。いくつかの実施形態では、化合物の多形形態Eは微粉化されている。いくつかの実施形態では、化合物の多形形態Eは結晶性であり、微粉化されている。
【0092】
親水性マトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又はこれらの混合物であり得る。例えば、親水性マトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びその混合物であり得る。親水性マトリックス形成剤は、約10%w/w~約30%w/wのHPMCの種々の濃度及び組合せで存在し得る。いくつかの実施形態では、親水性マトリックス形成剤は、約15%w/w~約25%w/wのHPMCの量で存在する。いくつかの実施形態では、親水性マトリックス形成剤は、約15%w/w~約20%w/wのHPMCの量で存在する。いくつかの実施形態では、親水性マトリックス形成剤は、17.5%w/wのHMPCの量で存在する。
【0093】
いくつかの実施形態では、放出調節錠剤製剤は、1つ又は複数の充填剤及び/又は結合剤を含む。本明細書で使用される「充填剤」という用語は、結合剤としても機能し得る。充填剤又は結合剤は、ラクトース一水和物、含水又は無水ラクトース、微結晶セルロース、マンニトール、イソマルト、及びこれらの混合物から選択され得る。例えば、充填剤は、ラクトース一水和物であり得る。充填剤は、約30%w/w~約78%w/wの種々の濃度で存在し得る。例えば、充填剤は、約30%w/w~約78%w/wのラクトース一水和物と、約0~約40%w/wの微結晶セルロースとを含み得る。例えば、充填剤は、約71%w/wの量のラクトース一水和物であり得る。
【0094】
ある実施形態では、放出調節錠剤製剤は、1つ又は複数の流動化助剤を含む。本明細書で使用される「流動化助剤」という用語は、コロイド状二酸化ケイ素、タルクなどを含む。例えば、流動化助剤は、コロイド状二酸化ケイ素であり得る。流動化助剤は、約0.1%w/w~約2%w/w、例えば約0.2%w/w~約1%w/w、例えば約0.5%w/wの種々の濃度で存在し得る。
【0095】
ある実施形態では、放出調節錠剤製剤はさらに、1つ又は複数の潤滑剤を含む。本明細書で使用される「潤滑剤」という用語は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクなどを含む。例えば、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムであり得る。潤滑剤は、約0.1%w/w~約2%w/w、例えば約0.5%w/w~約1.5%w/w、例えば約1.0%w/wの種々の濃度で存在し得る。
【0096】
適切には、本明細書に記載される放出調節錠剤を構成する成分(例えば、式(I)の化合物、親水性マトリックス形成剤、充填剤、流動化助剤及び/又は潤滑剤)の%w/wは、任意選択的なコーティングを錠剤に添加する前の%w/wを指す。したがって、当業者には理解されるように、放出調節錠剤が被覆される実施形態では、被覆錠剤の全重量に基づいた被覆錠剤中の各成分の%w/wは、コーティングの追加重量に起因して、非被覆錠剤コアに基づいた%w/wよりも低くなる。
【0097】
いくつかの実施形態では、放出調節錠剤製剤は、錠剤コアのフィルムコーティングを含み得る。適切なコーティングは、PVAベースのコーティング系であり得る。「コーティング系」という用語は、本明細書で使用される場合、HPMCベースのコーティング系、PVAベースのコーティング系(ポリビニルアルコール)、PVA-PEGベースのコーティング系(ポリエチレングリコール)、又はエチルセルロースベースの機能性隔膜コーティング系を含む。例えば、コーティング系は、PVAベースのコーティング系であり得る。例えば、コーティング系は、Opadry(登録商標)IIであり得る。例えば、コーティング系は、錠剤製剤の約3%~約5%の重量増加、例えば4%重量増加の量で存在し得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、錠剤製剤中の化合物の粒径分布は、D50≦25μm、例えば、D50≦20μm、D50≦10μm、D50≦5μm、又はD50≦3μmであり得る。
【0099】
各錠剤中の式(I)の化合物の量は、約1mg~約100mg、又は約5mg~約60mgの範囲であり得る。化合物の量は、例えば、10mg~50mg、20mg~45mg、及び30mg~40mgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、各錠剤中の化合物の量は、約10~約30mgであり得る。いくつかの実施形態では、各錠剤中の式(I)の化合物の量は、1mg、2mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg又は100mgである。
【0100】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物は、顆粒状ブレンド製剤内に含まれる。顆粒状ブレンド製剤は、
- 式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物;及び
- 薬学的に許容される親水性マトリックス形成剤の1つ又は複数;
- 充填剤、結合剤、流動化助剤及び潤滑剤からなる群から選択される1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤;及び
- ハードカプセルシェル材料
を含み得る。
【0101】
親水性マトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又はこれらの混合物であり得る。親水性マトリックス形成剤は、約10%w/w~約20%w/wのHPMCの種々の濃度及び組合せで存在し得る。
【0102】
充填剤/結合剤は、ラクトース一水和物、含水ラクトース又は微結晶セルロース、及びこれらの混合物から選択され得る。充填剤/結合剤は、約20%w/w~約75%w/wのラクトース一水和物、及び0~約50%w/wの微結晶セルロースの種々の濃度で存在し得る。流動化助剤は、約0.1%w/w~約2%w/wの種々の濃度で存在し得るコロイド状二酸化ケイ素であり得る。
【0103】
潤滑剤は、約0.1%w/w~約2%w/wの種々の濃度で存在し得るステアリン酸マグネシウムであり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約1%w/w~約40%w/w、例えば約1%w/w~約30%w/w、約1%w/w~約20%w/w、又は約2%w/w~約15%w/wの量で顆粒状ブレンド製剤中に存在する。
【0105】
ブレンド製剤は、ハードカプセル中に分注され得る。ハードカプセルのためのカプセルシェル材料は、いくつかの材料で作ることができ、例えば、ゼラチン(ブタ、ウシ、魚など)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール、デンプン及びプルランが適用され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、顆粒状ブレンド製剤は、単位剤形(例えば、カプセル製剤)として製剤化される。各単位剤形中の式(I)の化合物の量は、約1mg~約100mg、又は約5mg~約60mgの範囲であり得る。化合物の量は、例えば、10mg~50mg、20mg~45mg、及び30mg~40mgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、顆粒状ブレンド製剤を含む単位剤形中の化合物の量は、約10~約30mgであり得る。いくつかの実施形態では、各単位剤形中の式(I)の化合物の量は、1mg、2mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg又は100mgである。
【0107】
顆粒状ブレンド製剤の製造プロセスは、原薬及び賦形剤のブレンドステップ及びふるい分けステップと、それに続く顆粒化、例えばローラー圧縮、並びにカプセル化からなり得る。
【0108】
別の態様では、本発明は、HSを治療する方法に関し、本方法は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む放出調節錠剤製剤を、それを必要としている対象に投与することを含む。
【0109】
非経口投与用の製剤
非経口(例えば、静脈内、筋肉内又は皮下)投与に適した本発明の製剤は、顆粒、粉末又は濃縮液(例えば、溶液又は懸濁液)の形態であってもよく、これらは、使用前に水性液体(例えば、水又は生理食塩水)などの液体の添加により再構成又は希釈されて、溶液中に溶解された製剤を含む本質的に透明で安定した液体を形成することができる。再構成又は希釈された溶液も本発明の一部を形成する。
【0110】
化膿性汗腺炎の治療
本発明は、HSの治療に使用するための式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を提供する。またHSを治療するための方法も提供され、本方法は、治療的に有効な量の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を、それを必要としている対象に投与することを含む。
【0111】
HSはアポクリン腺の慢性炎症媒介疾患であり、腋窩、並びに鼠径大腿及び肛門生殖器領域における両側性有痛性小結節、膿瘍、サイナストラクト、及び瘢痕化として臨床的に現れる。HSの世界的な推定有病率は1~4%である。女性は男性よりも罹患する可能性が3倍高いが、男性はより重度の疾患を有する傾向がある(Napolitano et al.Clin Cosmet Investig Dermatol.2017;10:105-15)。HSは、生活の質及び精神的健康に著しい影響を与える。HSの病因は完全に理解されてはいないが、多因子性であり、喫煙及びメタボリック症候群などの変更可能な因子に加えて、毛嚢脂腺(folliculopilosebaceous)の解剖学的異常、遺伝子変異、免疫調節異常、内分泌の影響、並びに表面及び付属器の細菌叢の不均衡が含まれる。
【0112】
いくつかの炎症性メディエーターが、HSの病態形成に関与している。HS病変の生検により、豊富な好中性顆粒球、Tヘルパー1T細胞(Th1)、Tヘルパー17T細胞(Th17)、マクロファージ、及び樹状細胞が明らかにされた。関与するサイトカインには、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、及びインターロイキン(IL-1β、IL10、IL-17A、及びIL-23)が含まれる。特に、自然免疫細胞及び適応免疫細胞によって産生される炎症促進性サイトカインのTNF-αはいくつかの自己炎症性疾患において重要な役割を果たしており、HS皮膚におけるmRNA及びタンパク質レベルでの高レベルのTNF-αの存在が、いくつかの研究で示された(Mozeika et al.,Acta Derm Venereol.2013 May;93(3):301-4)。これは、インフリキシマブ及びアダリムマブ療法で報告される臨床的改善と一致している。HS病変中のIL-1β、IL-23、及びIL-17の存在は、HSの病態形成におけるIL-1β-IL-23/TH17/IL-17経路を示している(Schlapbach et al.,J Am Acad Dermatol.2011 Oct;65(4):790-798)。
【0113】
PDE4は、TNF-α、IL-17、IL-23、及びIL10を含む、HS患者の血清及び/又は病変内で上昇するサイトカインの産生を刺激する炎症促進性分子である、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)のレベルを低下させる酵素である。T細胞、B細胞、好酸球、好中球、樹状細胞、単球、及びマクロファージを含む、全部ではないがほとんどの免疫細胞及び炎症細胞において、PDE4が優勢なcAMP分解アイソザイムである(Torphy,Am J Respir Crit Care Med 1998;157:351-70)。これらの細胞では3つのPDE4サブタイプ、PDE4A、PDE4B及びPDE4Dが発現されるが、PDE4Cは、最小限であるか又は存在しない(Press et al.,Prog Med Chem 2009;47:37-74)。マクロファージTNF-αの産生に対するPDE4阻剤薬の薬理学的効果は、PDE4Bの阻害によって独占的に媒介されることが実証されている(Jin et al.,J Immunol 2005;175:1523-31;Jin et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2002;99:7628-33)。PDE4Dは、IFN-γ及びIL-5の放出及び増殖などの「長期的」リンパ球応答を実行する優勢なサブタイプである(Peter et al.,J Immunol 2007;178:4820-31)。PDE4AではなくPDE4D又はPDE4Bの除去は、好中球の機能に対して大きな効果があることも示されている(Ariga et al.,J Immunol 2004;173:7531-8)。
【0114】
PDE4阻害薬に関連する副作用は、4つのPDE4サブタイプ全てに対するその非選択性の結果であると考えられ、したがって、サブタイプ選択性を有する新しいPDE4阻害薬の生成は、副作用を低減しながら治療有効性を維持することにより、臨床的有用性を提供し得る(Manning et al.,Br J Pharmacol 1999;128:1393-8)。この概念は、個々のPDE4サブタイプの機能を定義するためにPDE4遺伝子を標的としたマウスを使用した一連の研究によって支持される(Jin et al.,Cyclic Nucleotide Phosphodiesterases in Health and Disease Boca Raton,FL:CRC Press,2007:323-46)。
【0115】
インビトロの薬理学研究により、式(I)の化合物は、強力且つ選択的なPDE4阻害薬、特に、PDE4B及びPDE4Dサブタイプの阻害薬であることが実証された。また本化合物は、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、並びにインターロイキン(IL)-1、-2及び-4の分泌を阻害することも見出された。さらに、化合物の経口投与及び局所投与はいずれも、マウスモデルにおいて抗炎症効果を示すことが示された。これらの特徴により、式(I)の化合物はHSの治療に特に適している。理論により束縛されるものではないが、炎症に関連するPDE4アイソフォームのPDE4B及びPDE4Dを特異的に阻害する式(I)の化合物の能力は、PDE4の広範な非特異的阻害薬であることが知られているアプレミラスト及びロフルミラストなどの他のPDE4阻害薬と比較して、改善された治療ウインドウを提供し得ると考えられる。最近の研究では、抗炎症効果の重要性の順序は、PDE4B>PDE4D>PDE4Aの阻害であると思われ、PDE4Cの阻害による有益な効果は全くないか非常に限られていることが示されているので、サブタイプの特異性は重要であり得る。さらに、脳内のPDE4B2の発現は低いので、理論的観点から、これは全身的に生じる可能性のある有害事象を低減するために良好な標的である。したがって、式(I)の化合物は、抗炎症効果と忍容性とのバランスを保ち、特に治療に関連する望ましくない副作用を低減し、それにより、既知のPDE4阻害薬を上回る利点を提供する、PDE4の阻害へのより光学的なアプローチを提供する。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、HSの症状を治療するのに使用するためのものである。例えば、本化合物は、炎症性小結節、膿瘍、面皰及び/又はサイナストラクトの数、重症度及び/又は広がりを除去又は低減するのに使用するためのものであり得る。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、HSに起因するか又はHSに関連する膿瘍、小結節及び/又は排出瘻孔を除去又は低減するのに使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、HSに起因するか又はHSに関連する膿瘍及び/又は小結節を除去又は低減するのに使用するためのものである。
【0117】
いくつかの実施形態では、本化合物は、HSに起因するか又はHSに関連する炎症を低減するのに使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本化合物は、HSに起因するか又はHSに関連する炎症を低減するのに使用するためのものであり、本化合物は、対象においてHSに関連する1つ又は複数の炎症性バイオマーカーを低減する。例えば、本発明の化合物は、化合物による治療前のベースラインレベルに対して、以下のうちの1つ又は複数を低減し得る:C反応性タンパク質(例えば、高感受性C反応性タンパク質(hs-CRP));赤血球沈降速度;白血球数;又は血小板数。
【0118】
いくつかの実施形態では、本化合物は、HSに起因するか又はHSに関連するそう痒症を除去又は低減するのに使用するためのものである。
【0119】
いくつかの実施形態では、本化合物は、HSに起因するか又はHSに関連する腫脹を除去又は低減するのに使用するためのものである。例えば、式(I)の化合物は、HS病変の腫脹を低減し得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、本化合物は、HSに起因するか又はHSに関連する瘢痕化を除去又は低減するのに使用するためのものである。
【0121】
いくつかの実施形態では、本化合物は、HSに関連する病変のサイズを低減するのに使用するためのものである。例えば、本化合物は、HSに関連する病変を低減又は除去するのに使用するためのものである可能性がある。
【0122】
いくつかの実施形態では、本化合物は、HSに起因するか又はHSに関連する痛みを低減するのに使用するためのものである。痛みは、患者の皮膚の痛みの包括的評価(Patient’s Global Assessment of Skin Pain)(0=痛みなし、10=考えられる最悪の痛み)の0~10の数値評価スケール(NRS)に従って評価され得る(Newton et al.,J Patient Rep Outcomes.2019;3(1):42)。適切には、NRSは、ベースラインと比較して少なくとも30%低下される。他の周知の痛みのスコアリングシステムを使用して、HSに関連する痛みの低減を評価することができる。例えば、痛みの低減は、痛みの視覚的アナログ尺度(VAS痛み)を用いて評価することもでき、これは、痛みを0(痛みなし)~10(考えられる最悪の痛み)の視覚的スケールでも評価する。
【0123】
また痛みは、McGill痛み質問表に従って評価することもできる。McGill痛み質問表は、経験した痛みの感覚、強度及び経時変化を評価するために使用することができる。これは、痛みを経時的にモニターする、或いは治療介入の有効性を決定することができる(Melzack,Pain:September 1975,Volume 1,Issue 3,p277-299)。
【0124】
いくつかの実施形態では、HSに関連する痛みは、適切な痛みスコアリング法(例えば、本明細書に記載されるスコアリング方法の1つ)を用いて、式(I)の化合物によるHSの治療前のベースラインの痛みレベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%低下される。
【0125】
いくつかの実施形態では、本化合物により治療される患者の化膿性汗腺炎の生活の質(Hidradenitis Suppurativa Quality of Life)(HisQoL)合計スコアは、治療期間中に低下される。いくつかの実施形態では、対象のHisQoLは、本化合物によるHSの治療前のベースラインレベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%低下される。適切には、患者のHisQoLは、少なくとも50%、例えば少なくとも75%、又は例えば少なくとも90%低下される。
【0126】
HiSQOLは、Hidradenitis SuppuraTiva cORe outcomes set International Collaboration(HISTORIC)の研究に基づく。HiSQOLは系統的に開発及び検証されており、より一般的な皮膚特有の項目に加えて、ドレナージ及び臭気などのHS特有の項目を含有する17項目の質問表である。HiSQOLは、臨床試験においてHRQOLを評価するために設計されたHS特有の質問表である(Thorlacius et al.,Skin Appendage Disord.2019 Jun;5(4):221-229;Kirby et al.,Br J Dermatol.2020 Aug;183(2):340-348)。7日間の想起期間を有し、3つのドメイン:4つの症状の質問、5つの心理社会的質問、及び8つの活動適応の質問に分類される17項目からなる。各項目に対して0~4のスコアが与えられ、スコアが高いほど、HRQOLに対する悪影響が大きいことを表す。いくつかの実施形態では、対象のHRQOLは、本化合物によるHSの治療前のベースラインレベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%低下される。
【0127】
いくつかの実施形態では、本化合物により治療される患者の化膿性汗腺炎の臨床応答(HiSCR)は、治療期間中に低下される。いくつかの実施形態では、対象のHiSCRは、本化合物によるHSの治療前のベースラインレベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%低下される。いくつかの実施形態では、患者のHiSCRは、少なくとも50%、例えば少なくとも75%、又は例えば少なくとも90%低下される。
【0128】
HiSCRは、病変数の変化とPROM(痛み及びHRQoL)との間の相関関係に基づいた治療標的である。化膿性汗腺炎の臨床応答(HiSCR;膿瘍及び炎症性小結節数のベースラインからの50%以上の低下、及び膿瘍又は排出瘻孔数の増大なし)(Kimball et al.,Ann Intern Med.2012 Dec 18;157(12):846-55;Kimball et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol.2016 Jun;30(6):989-94)。その後、さらに区別するために変更される:HiSCR75;膿瘍及び炎症性小結節数のベースラインからの75%以上の低下、及び膿瘍又は排出瘻孔数の増大なし)、並びにHiSCR-90;膿瘍及び炎症性小結節数のベースラインからの90%以上の低下、及び膿瘍又は排出瘻孔数の増大なし)。
【0129】
いくつかの実施形態では、本化合物により治療される患者の、医師による疾患重症度の包括的評価(HS-PGA)は、治療期間中に低下される。適切には、治療中又は治療後の患者のHS-PGAは、0又は1のスコアまで低下される。
【0130】
HS-PGAは、クリアから非常に重度までの範囲である(Kimball et al.,Ann Intern Med.2012 Dec 18;157(12):846-55)。臨床試験において、炎症性小結節、膿瘍、及び排出瘻孔の臨床的改善を測定するために使用される。6つの段階は次の通りである;
クリア:炎症性又は非炎症性小結節なし。
最小:非炎症性小結節の存在のみ。
軽度:5個未満の炎症性小結節又は1個の膿瘍若しくは排出瘻孔、及び炎症性小結節なし。
中程度:5個未満の炎症性小結節、又は1個の膿瘍若しくは排出瘻孔及び1個以上の炎症性小結節、又は2~5個の膿瘍若しくは排出瘻孔及び10個未満の炎症性小結節。
重度:2~5個の膿瘍又は排出瘻孔及び10個以上の炎症性小結節。
非常に重度:5個超の膿瘍又は排出。
【0131】
いくつかの実施形態では、本化合物は、HSの重症度を低下させるのに使用するためのものである。例えば、本化合物は、HS-PGAの1以上(例えば、1、2又は3)レベルだけ重症度を低下させる可能性がある。したがって、本化合物は、HSの重症度を非常に重度から重度、中程度又は軽度のHSへ低下させる可能性がある。
【0132】
いくつかの実施形態では、本化合物は、本化合物で治療される患者のC反応性タンパク質(例えば、高感受性C反応性タンパク質(hs-CRP))の量を低減する。適切には、患者のC反応性タンパク質(例えば、hs-CRP)の量は、本化合物によるHSの治療前のベースラインレベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%低減される。例えば、C反応性タンパク質(例えば、hs-CRP)の量は、少なくとも50%、例えば少なくとも75%、又は例えば少なくとも90%低減される。
【0133】
いくつかの実施形態では、本化合物で治療される患者の皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)は、治療期間中に低下される。いくつかの実施形態では、対象のDLQIは、本化合物によるHSの治療前のベースラインレベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%低下される。いくつかの実施形態では、患者のDLQIは、少なくとも50%、例えば少なくとも75%、又は例えば少なくとも90%低下される。
【0134】
DLQIは、過去1週間にわたるその健康関連の生活の質の様々な態様に対する皮膚疾患の影響についての患者の認識に関する10の質問の質問表である。各質問は4点スケール(0~3)でスコア化され、0~30点(0=疾患は生活の質に全く影響を与えない、30=疾患は生活の質に最大の影響を与える)の範囲になる。検証されたスケールは、Finlay and Khan,Clin.Exp.Dermatol.,19(1994),pp.210-216)によって最初に導入された。
【0135】
いくつかの実施形態では、本化合物により治療される患者の作業生産性及び活動質問表(WPAI)の障害の割合は、治療期間中に低下される。適切には、患者の障害スコアは、少なくとも50%、例えば少なくとも75%、又は例えば少なくとも90%低下される。
【0136】
WAPIは、特定の疾患による作業障害を説明する質問表である。結果は障害の割合として表され、数値が大きいほど障害が大きく、生産性が低いことを示す(Reilly et al.,Pharmacoeconomics.1993 Nov;4(5):353-65)。
【0137】
いくつかの実施形態では、本化合物により治療される患者の不安及び抑うつ(HADS)スコアは、治療期間中に低下される。適切には、患者のHADSスコアは、少なくとも50%、例えば少なくとも75%、又は例えば少なくとも90%低下される。
【0138】
HADSは、不安に関する7つの質問及び抑うつに関する7つの質問を含む質問表である。各質問は4つの回答に関連され、0~3点が得られる。各状態について、0~7点は正常な場合に対応し;8~10点は境界域の異常な場合に対応し;そして11~21点は異常な場合に対応する(Zigmond and Snaith,Acta Psychiatrica Scandinavica(1983),67(6):361-370)。
【0139】
いくつかの実施形態では、本化合物により治療される患者の欧州生活の質-5次元(EQ-5D)スコアは、治療期間中に上昇される。適切には、患者のEQ-5Dスコアは、少なくとも50%、例えば少なくとも75%、又は例えば少なくとも90%上昇される。
【0140】
EQ-5Dは、5つの次元:可動性、セルフケア、日常活動、痛み/不快感、及び不安/抑うつに関して一般的な健康状態を測定するための標準手段である。各次元は1~5の値を受け取り、55 55)の異なる健康状態が示される。スコアは、0~100の患者の全体的な健康評価と組み合わせられる。ここで、0は考えられる最悪の健康であり、100は考えられる最良の健康である。このスケールは、Herdman et al.,Qual Life Res.2011 Dec;20(10):1727-36により最初のEQ-5Dからさらに開発されたものである。
【0141】
いくつかの実施形態では、本化合物により治療される患者の多次元疲労一覧20(MFI-20)応答は、治療期間中に改善される。
【0142】
MFI-20は、Smets et al.,J Psychosom Res 1995;39:315-25によって発明された。これは、疲労の5つのサブスケール:全身疲労(GF)、身体的疲労(PF)、モチベーションの低下(RM)、活動の低下(RA)、及び精神的疲労(MF)を説明する20項目からなる。項目のそれぞれについて、回答者は、特定の記載がどの程度自身に関連するかを、イエス(真実である)からノー(真実でない)までの範囲の5点スケールで特定しなければならない。
【0143】
HSを有する対象は、HSの重症度が増大する疾患の再燃を起こす傾向があり、例えば、膿瘍及び小結節数が、ベースラインと比較して少なくとも25%増大する場合である。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、対象におけるHSの再燃を予防又は低減するのに使用するためのものである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、対象におけるHSの再燃の重症度を低下させるのに使用するためのものである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、対象におけるHSの再燃の頻度を低下させるのに使用するためのものである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、対象におけるHSの再燃の頻度及び重症度を低下させるのに使用するためのものである。
【0144】
さらなる態様では、本発明は、HSを有する対象を治療する方法を提供し、本方法は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を対象に投与することを含む。本方法は、HSに関連する炎症を低減することを含み得る。
【0145】
別の態様では、本発明は、HSの治療での使用のための薬剤を製造するための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の使用を提供する。
【0146】
HSは、軽度、中程度又は重度であり得る。重症度(病状又は進行とも称される)は、検証された国際クリニメトリック(clinimetric)スケールである国際化膿性汗腺炎重症度スコアシステム(IHS4)に従って定義される(Zouboulis et al.,Br J Dermatol.2017;177(5):1401-1409)。スコアは、炎症病変の数に基づく。得られるIHS4スコアは、小結節の数(1倍)+膿瘍の数(2倍)+排出トンネル(draining tunnel)の数(4倍)によって到達される。3以下の合計スコアは軽度を示し、4~10は中程度を示し、11以上は重度の疾患を示す。
【0147】
いくつかの実施形態では、対象は軽度のHSを有する。いくつかの実施形態では、対象は中程度のHSを有する。いくつかの実施形態では、対象は重度のHSを有する。
【0148】
いくつかの実施形態では、本化合物は、HSの重症度を低下させるのに使用するためのものである。治療は、重症度を重度から中程度のHS、又は中程度から軽度のHSへ低下させるためのものである可能性がある。いくつかの実施形態では。いくつかの実施形態では、治療は、HSのIHS4スコアを低下させるためのものである。
【0149】
いくつかの実施形態では、本化合物は、軽度から中程度のHS、又は中程度から重度のHSへのHSの進行を予防するのに使用するためのものである。
【0150】
また対象は、肥満症、メタボリック症候群、炎症性腸疾患、脊椎関節症、又はこれらの任意の組合せから選択される併存疾患を患っていることもある。
【0151】
対象は以前に、抗体療法で治療されたことがない可能性がある。付加的又は代替的に、対象は以前に、TNF-α阻害薬で治療されたことがない可能性がある。対象は以前に、HSの生物学的療法で治療されたことがない可能性がある。
【0152】
さらなる実施形態では、対象は以前に、HSの生物学的療法で治療されたことがある。対象は、HSの生物学的療法による治療に対して非反応性又は難治性である可能性がある。
【0153】
別の実施形態では、対象は、式(I)の化合物以外の1つ又は複数のHS療法に対して非反応性又は難治性である。いくつかの実施形態では、対象は、抗生物質(例えば、ダプソン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、リファンピン又はカルバペネム(例えば、エルタペネム))及びHSの生物学的療法(例えば、本明細書に開示されるHSの生物学的療法のいずれか)から選択される1つ又は複数のHS療法に対して非反応性又は難治性である。
【0154】
本明細書における「HSの生物学的療法」への言及には、抗TNF-α生物製剤(例えば、アダリムマブ、セルトリズマブ インフリキシマブ、エタネルセプト、又はゴリムマブ);抗IL-17生物製剤(例えば、ビメキズマブ、ブロダルマブ、CJM112、イキセキズマブ又はセクキヌマブ);抗IL-12/23生物製剤(例えば、ウステキヌマブ)、抗IL-23生物製剤(例えば、グセルクマブ、リサンキズマブ、又はチルドラキズマブ);抗IL-1生物製剤(例えば、アナキンラ、ベルムキマブ(bermkimab)又はカナキヌマブ);抗CD(例えば、イスカリマブ);若しくは抗IL-36生物製剤(例えば、スペソリマブ又はイスミドリマブ(ismidolimab));抗CXCR1/CXCR2生物製剤(例えば、LY3041658)、若しくは補体C5a阻害薬、又はこれらの任意の組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、HSの生物学的療法は、抗TNF-α生物製剤(例えば、アダリムマブ又はインフリキシマブ)である。いくつかの実施形態では、HSの生物学的療法はアダリムマブである。
【0155】
対象は、ヒト又は動物であり得る。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。対象は、10~50歳、15~40歳、又は20~30歳であり得る。いくつかの実施形態では、対象は喫煙者であるか、或いは以前に喫煙者だったことがある。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも30、少なくとも40又はそれ以上のBMIを有する。
【0156】
組合せ療法
本発明の化合物、又は化合物を含む製剤若しくは組成物は、治療効果を提供するために単独で使用され得る。また本発明の化合物、又は化合物を含む製剤若しくは組成物は、さらなる療法と組み合わせて使用され得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、さらなる療法は、抗アンドロゲン剤、ホルモン、抗生物質(例えば、ダプソン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、リファンピン又はカルバペネム(例えば、エルタペネム))、レチノイド、抗炎症薬(ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬及びコルヒチンを含む)、鎮痛薬、免疫抑制薬、抗体、手術、メトホルミン、栄養サプリメント(例えば、グルコン酸亜鉛)、HSの生物学的療法(例えば、TNF-a阻害薬(例えば、アダリムマブ又はインフリキシマブ)、IL-1阻害薬(例えば、アナキンラ)、抗IL-17薬(例えば、セクキヌマブ)、抗IL-23薬(例えば、リサンキズマブ)、又は抗IL-12/23薬(例えば、ウステキヌマブ))、補体C5a阻害薬(例えば、アバコパン)、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(例えば、トファシチニブ、INCB054707又はウパダシチニブ)、ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ阻害薬(例えば、LYS006)、IRAK4デグレーダー(例えば、KT-474)、IRAK4阻害薬(例えば、PF-06650833)、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬(例えば、PF-06826647)若しくはTYK2/JAK1阻害薬(例えば、PF-06700841)、又はこれらの任意の組合せから選択される。したがって、さらなる療法は、抗アンドロゲン剤、ホルモン、抗生物質(例えば、ダプソン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、リファンピン又はカルバペネム(例えば、エルタペネム))、レチノイド、抗炎症薬(ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬及びコルヒチンを含む)、鎮痛薬、免疫抑制薬、抗体、手術、メトホルミン、栄養サプリメント(例えば、グルコン酸亜鉛)、TNF-a阻害薬(例えば、アダリムマブ)、並びに及びIL-1阻害薬(例えば、アナキンラ)、抗IL-17薬(例えば、セクキヌマブ)、及び抗IL-23薬(例えば、リサンキズマブ)、及び抗IL-12/23薬(例えば、ウステキヌマブ)、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(例えば、トファシチニブ)、又はこれらの任意の組合せから選択される可能性がある。
【0158】
このような組合せ治療は、治療の個々の成分の同時投与、連続投与又は個別投与によって達成され得る。このような組合せ製品は、上記に記載される治療的に有効な投薬量範囲内の本発明の製剤と、その承認された投薬量範囲内の他の薬学的活性剤とを使用する。
【0159】
本明細書において「組合せ」という用語が使用される場合、これは同時投与、個別投与又は連続投与を指すことを理解すべきである。本発明の一態様では、「組合せ」は同時投与を指す。本発明の別の態様では、「組合せ」は個別投与を指す。本発明のさらなる態様では、「組合せ」は連続投与を指す。投与が連続又は個別である場合、第2の成分の投与の遅れは、組合せの有益な効果を失わせるようなものであってはならない。
【0160】
組合せ治療が使用されるいくつかの実施形態では、本発明の化合物の量及び他の薬学的活性剤の量は、組み合わせたときに患者の標的障害を治療するために治療的に有効である。これに関連して、組み合わせたときに、障害の症状又は他の有害作用を低減又は完全に軽減する;障害を治癒させる;障害の進行を逆転させる、完全に停止する、又は遅らせる;或いは障害が悪化するリスクを低減するのに十分であれば、組み合わせた量は「治療的に有効な量」である。通常、このような量は、例えば、本発明の製剤中に存在する式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物について本明細書に記載される投薬量範囲と、承認されるか又は他の方法で公表された他の薬学的活性剤の投薬量範囲とから開始することによって、当業者により決定され得る。
【0161】
投薬量及び投薬計画
本発明の製剤の投薬量及び投薬計画は、医師によって容易に決定され得るいくつかの因子、例えば、疾患又は状態の重症度、初期治療に対する応答性、投与様式、及び治療される特定の疾患又は状態に依存し得る。適切な用量、投与容量及び頻度の例は、上記の開示の簡単な概要に記載されている。
【0162】
適切な投与様式には、経口、鼻腔内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮下又は皮内)、局所、吸入(口腔内又は鼻腔内)、又はこれらの組合せが含まれる。1つ又は複数の用量は、複数の投与様式によって対象に送達されてもよい。
【0163】
対象に投与される式(I)の化合物の総1日用量は、1つ又は複数の単位用量を含み得る。総1日用量は、120mg以下、100mg以下、80mg以下、60mg以下、又は40mg以下の式(I)の化合物であり得る。いくつかの実施形態では、治療は、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも80mg、又は少なくとも100mgの総1日用量の式(I)の化合物を投与することを含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、投与される総1日用量は、約10~約120mg、約20~約110mg、約30~約100mg、約40~約90mg、約50~約80mg、又は約60~約70mgの式(I)の化合物又はその塩、溶媒和物若しくは水和物である。
【0165】
いくつかの実施形態では、治療は、約1mg~約100mg、約5mg~約70mg、約8mg~約65mg、約10mg~約60mg、約15mg~約50mg、約20mg~約45mg、又は約30~約40mgの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約1mg~約50mg、約5mg~約40mg、又は約10mg~約30mgの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約5mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約10mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約20mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約30mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約40mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約50mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約60mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約70mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約80mgからの単位用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、約100mgからの単位用量を投与することを含む。
【0166】
治療は、1日に1~4回、例えば1日に2~3回行うことができる。いくつかの実施形態では、治療は、1日1回行われる。いくつかの実施形態では、治療は、1日2回行われる。
【0167】
したがって、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、5mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、10mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、20mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、30mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、40mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、50mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、60mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、70mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、80mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、90mgの用量で1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、100mgの用量で1日1回投与される。
【0168】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、5mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、10mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、20mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、30mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、40mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、50mgの用量で1日2回投与される。
【0169】
化合物は、連続して数日間又は数週間にわたって対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、化合物は、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも20週間、又は少なくとも6か月間にわたって1日1回又は複数回投与される。いくつかの実施形態では、治療は、12か月以下、10か月以下、9か月以下、8か月以下、6か月以下、24週間以下、20週間以下、16週間以下、12週間以下又は10週間以下で行われる。例えば、化合物は、10日間~20週間、14日間~16週間、21日間~14週間、4~12週間、5~10週間又は6~8週間にわたって投与され得る。いくつかの実施形態では、化合物は、4、6、10、16又は20週間までの間、1日2回対象に投与される。或いは、治療は、例えば軽症のHSにおいて、例えば維持のために、より長い期間行われる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、治療は、6か月~5年、12か月~4年、15か月~3年、又は18~24か月間にわたって行われる。投与期間は、治療される疾患の種類及び重症度によって決定され得ることが認識されるであろう。治療は、対象の炎症性小結節、膿瘍、面皰及び/又はサイナストラクトの数が実質的に減少又は除去されるまで継続される可能性がある。治療は、対象のIHS4スコアが、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3又はそれ以上の整数だけ減少されるまで継続される可能性がある。治療は、HSの重症度が、非常に重度から重度に、非常に重度から中程度に、重度から中程度に、又は中程度から軽度に低下するまで継続される可能性がある。
【0170】
一実施形態では、投与される化合物の用量は、治療の最初の2週間にわたって増大される。適切には、用量は、2週間にわたって、1日2回10mgから、1日2回30mgまで増大される。いくつかの実施形態では、化合物は、約5mg~20mgの初期総1日用量で投与され、総1日用量は、1又は2週間にわたって増大される。例えば、初期1日用量は、5mg~20mgであり得るが、これは1又は2週間にわたって、50~100mgの1日用量まで増大される。いくつかの実施形態では、初期総1日用量は約5mg~20mgであり、総1日用量は、1又は2週間にわたって、約60~80mg/日の総1日用量まで増大される。これらの実施形態では、1日用量は、化合物の単回の1日用量として投与され得る。しかしながら、適切には、総1日用量は、一定の間隔で投与される分割用量として投与される。例えば、総1日用量は、1日2~4回、実質的に等しい分割用量として投与され得る。適切には、総1日用量は、1日2回、実質的に等しい分割用量として投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、本明細書中の実施例の表15の「用量設定スキーム」に記載されるように、実質的に、治療の最初の2週間投与される。
【0171】
製剤の用量及び/又は投薬計画は、限定はされないが、疾患の重症度、対象の年齢及び/又は任意の基礎症状の存在などのいくつかの因子に応じて、当業者により選択され得ることが認識されるであろう。
【実施例】
【0172】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【0173】
実施例1:組成物
式(I)の化合物を含む経口投与用の組成物の実施形態は、表1に示される。
【0174】
【0175】
実施例2:PDE酵素の阻害
PDE4酵素活性は、精製ヒト組換えPDE4Dタンパク質を用いたシンチレーション近接アッセイで測定した。結果は表2に示される。
【0176】
【0177】
式(I)の化合物によるPDE4サブタイプの阻害は、ナノ粒子上の固定化された金属配位化合物によるリン酸の高親和性結合に基づくIMAP技術を用いて試験した。結合試薬は、ホスホジエステラーゼを介して環状ヌクレオチド(cAMP/cGMP)から生成されるヌクレオチド一リン酸上のリン酸基と複合体を形成する。蛍光偏光検出では、結合はリン酸含有分子の分子運動速度の変化を生じさせ、結果として、基質に結合した蛍光標識について観察される蛍光偏光値が増大する。
【0178】
式(I)の化合物のストックを100%のDMSO中で調製した。IMAPアッセイについては、全てのアッセイを3%(最終)のDMSO中で実施した。PDEアイソフォームパネルに対して様々な濃度(10-10、10-9、10-8、10-7M)で化合物をデュプリケートで試験した。アッセイの結果は、表3に示される。
【0179】
【0180】
式(I)の化合物はPDE4B及びPDE4Dを最も強力に阻害したが、程度は低いがPDE4Aも阻害した。PDE4Cは、試験した最高用量100nMにおいて、有意に阻害されなかった。式(I)の化合物は、表3に示されるPDE4Dの阻害よりもいくらか高いEC50値でPDE4Dスプライスバリアント3を阻害した。この違いは、使用されるアッセイ技術が異なることに起因する可能性が最も高い。理論により束縛されるものではないが、特定のPDE4サブタイプに対する式(I)の化合物の選択性は、例えば、副作用を低減することにより有益であり得ると考えられる。
【0181】
放射PDEアッセイにおけるPDE酵素の阻害
ヒトPDE4アイソフォームのパネル(PDE4A1、PDE4A4、PDE4A10、PDE4B1、PDE4B2、PDE4B3、PDE4C2、PDE4D1、PDE4D2、PDE4D3、PDE4D4、PDE4D5及びPDE4D7)を用いた放射PDEアッセイにおいて、式(I)の化合物(オリスミラスト)並びにPDE阻害薬のアプレミラスト及びロフルミラストを評価した。
【0182】
酵素の調製:部分的に精製されたヒト組換えホスホジエステラーゼ(PDE)は、cDNAをクローニングし、バキュロウイルス発現系を用いてS.フルギペルダ(S.frugiperda)昆虫細胞で発現させることによって得られた。細胞は、400xgで5分間遠心分離することによって培養物から回収される。細胞ペレットは、20mlのRIPA緩衝液(150mMのNaCl、10mMのTris、0.1%のNP-40、pH8.3)、4ml/200mlの培養物、及びプロテアーゼ阻害薬(100μl/10ml)中に再懸濁され、氷上で10~20分間インキュベートされてから、4℃において3500xgで10分間回転される。上清を保持し、ペレットは捨てられる。
【0183】
放射PDEアッセイ:アッセイは、2段階手順からなる。トリチウム標識環状AMPは、PDEによって加水分解されて、5’-AMP oになる。次に5’-AMPは、ヘビ毒のヌクレオチダーゼによってさらに加水分解されてアデノシンになる。アニオン交換樹脂は全ての荷電ヌクレオチドに結合し、液体シンチレーションによってカウントされる唯一の標識化合物として[3H]アデノシンが残る。放射アッセイ法は、96ウェルプレート形式に適応された、Thompson et al.,Biochemistry 10;311-316;1971に記載される2段階方法の修正版である。
【0184】
50μlの希釈PDE酵素を、50μlの[3H]-cAMP(比活性25Ci/mmol)及び11μlの50%DMSO(又は化合物希釈物)と共に30℃で20分間インキュベートした。酵素を20mMのTris HCl pH7.4(最終濃度x2.2)中に希釈し、[3H]-cAMPを10mMのMgCl2、40mMのTris HCl pH7.4(最終濃度x2.2)中に希釈した。反応は、Greiner 96ディープウェル1mlマスターブロック(master-block)において行った。プレートを9秒間遠心分離した後、20分間のインキュベーションを行った。PDE酵素を変性させることにより反応を終了させ(70℃で2分間、プレートを氷上で10分間冷却させた)、その後、25μlのヘビ毒ヌクレオチダーゼ(最終濃度225μg/ml)を添加し、10分間インキュベートし(30℃)、プレートを9秒間遠心分離した後、インキュベーションを行った。インキュベーションの後、200μlのDowex樹脂(1x8、200~400メッシュ)を添加し、プレートを20分間振とうさせてから、1000xgで3分間遠心分離した。50μlの上清を除去し、白色プレート(Greiner 96ウェルOptiplate)中の200μlのMicroScint-20に添加し、30分間振とうさせた後、Perkin Elmer TopCountシンチレーションカウンターで読み取った。GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8)を用いてIC50値を計算した。
【0185】
結果
Ic50値(nM)は、表4に示される。
【0186】
【0187】
実施例3:細胞ベースのTNF-α放出アッセイ
TNF-α、無血清、hPBMC、LPS
バフィーコートから単離されたヒトPBMCの培養物をリポ多糖で刺激して、単球を活性化し、TNF-αを放出した。PBMCは新鮮なバフィーコートから単離し、後で使用するために凍結させた。アッセイの当日、細胞を解凍し、無血清培地(25mMのHEPES、1%pen/strep、200mMのLグルタミン及び0.5%ヒト血清アルブミンを含むRPMI1640)中で洗浄し、生細胞をカウントした。試験化合物をDMSO中に希釈し、さらに無血清培地中に希釈し、384ウェルの組織培養プレートのウェル内にピペットで移した。LPSを細胞に添加し、その後すぐ、用量設定された試験化合物を含むウェルに添加し、37℃で18時間インキュベートした。翌日、均一時間分解蛍光(HTRF)により培養上清中のTNF-αのレベルを定量した。ここで、FRETを665nmで測定し、620nmのユウロピウムクリプテートの蛍光に対して正規化した。試験化合物の効果(TNF-α放出の阻害)は、式1:
効果%=100
*(Sx-So)/(Sc-So)
を用いて計算した。665nm及び620nmで測定された蛍光強度を用いて、分泌TNF-αのレベルの推定値として665/620比を計算した。Sxは、試験化合物に関連する665/620比を示す。So及びScはそれぞれ、0.1%のDMSO及び1E-05Mの化合物(II)に関連する665/620比を示す。
【化3】
【0188】
生存率、無血清、hPBMC、LPS
TNF-αアッセイからの細胞の生存率は、ATP vialight キット(Perkin Elmer、ATP-lite M、カタログ番号6016949)を用いて、ウェル内で測定される。このアッセイでは、以下の反応:
【化4】
に従って、ATP及びルシフェリンから光の形成を触媒する酵素であるルシフェラーゼを利用する生物発光法を用いて、ATPの量が検出される。放射光の強度はATP濃度と直線的に関係しており、ルミノメーターを用いて測定される。試験化合物の効果(生存率の阻害)は、式1:
効果%=100
*(Sx-So)/(Sc-So)
を用いて計算した。式中、
So=0.1%DMSOの存在下でATP濃度を反映する放射光の強度
Sc=0.1%DMSO中10μMのアクチノマイシンの存在下でATP濃度を反映する放射光の強度、及び
Sx=0.1%DMSO中の試験化合物の存在下でATP濃度を反映する放射光の強度。
【0189】
データ分析
正の対照に関連される、最大可能「阻害」応答の50%を生じる阻害薬のモル濃度(EC50値)は、ヒルスロープ、a~dを有する一般的なシグモイド曲線の式に従って計算される。このモデルは、調整可能なベースラインaを有するシグモイド曲線を説明する。この式を使用して曲線を適合させることができ、応答は、独立変数Xに関して増大又は減少している。
【数1】
式中、
C=試験化合物の濃度
効果%=式1に記載されるように計算されて正規化された応答
Emin=化合物濃度が0に接近したときの最小応答
Emax=試験化合物の濃度が増大しているときの最大応答
EC50=Emin及びEmaxの中間の応答を与える試験化合物の濃度
nH=ヒル係数又は曲線の傾き。
【0190】
結果
式(I)の化合物は、表5に示されるように、単球由来(リポ多糖誘発性)のTNF-αの強力な阻害薬であることが見出された。
【0191】
【0192】
実施例4:ヒト全血からのTNF-αの分泌に対するPDE4阻害薬の効果
式(I)の化合物及び2つの他のPDE4阻害薬のアプレミラスト及びロフルミラストN-オキシドの効果は、全血TNF-α分泌アッセイにおいて研究した。JAK阻害薬のトファシチニブを非PDE4阻害薬参照化合物として含めた。試験したPDE4阻害薬は、種々のドナー及びアッセイにおいて同様のEmaxを示したが、異なるEC50値を示した。式(I)の化合物は、ヒト全血からのLPS及びSEB誘発性TNF-α分泌の両方において、ロフルミラスト-N-オキシドと同等に強力であるか又はそれよりもわずかに強力であり、モル基準でアプレミラストよりも平均23倍強力であることが示された。
【0193】
材料及び方法
第1の実験では、いくつかのセットアップを試験した。ヘパリンで安定化した新たに採取したヒト末梢血をX-vivo-15培地又はRPMI1640のいずれかで希釈し、種々の時点で種々の濃度のリポ多糖(LPS)又はスタフィロコックス・エンテロトキシン(Staphylococcus enterotoxin)B(SEB)で刺激した。異なるアッセイセットアップの全てにおいて3つの異なる濃度で式(I)の化合物を試験した。
【0194】
第2の実験では、2ドナーにおいて全用量設定で、4つ全ての化合物を試験した。血液を希釈するためにXvivo15を使用し、以下の4つのアッセイバージョンを実行した:
LPS1μg/mLで24時間
LPS1μg/mLで48時間
SEB1μg/mLで24時間
SEB1μg/mLで48時間
【0195】
試験化合物をDMSO中で希釈し、384ウェルプレートにデュプリケートで添加し、ウェル内で0.1%DMSOの最終濃度を得た。血液をX-vivo15培地で希釈し、ウェルに添加して、80μL/ウェルの容積及び50%血液/50%培地の最終希釈度を得た。プレートをインキュベーター内のウォーターバスボックスに24時間又は48時間入れた。alpha-LISAキット(Perkin Elmerカタログ番号AL208F)によって上清中のTNF-αを測定した。
【0196】
結果
表6は、4つの異なるアッセイバージョンにおいて4つの化合物により得られたEC50値及びEmax値を示す。Emaxは、刺激されていないウェル内のTNF-αのレベルとして定義された。
【0197】
3つのPDE4阻害薬のEmaxは、1ドナー及び1アッセイバージョンにおいて非常に類似していたが、化合物の異なる効力を反映して、C50値は大きく異なった。JAK阻害薬のトファシチニブは、LPS刺激アッセイバージョンではTNF-α分泌の増大を誘発したが、SEB刺激による分泌を阻害した。
【0198】
【0199】
表7は、8つ全ての全血TNF-α試験からの結果をプールしたときの平均EC50値を示す。
【0200】
【0201】
表7に示される平均EC50値に基づいて、式(I)の化合物は、アプレミラストよりもモル濃度基準で23倍強力であり、ng/mL濃度基準で21倍強力である。式(I)の化合物は、ロフルミラストよりも1.7倍(M)/1.4倍(ng/mL)強力である。
【0202】
実施例5:ヒト全血サイトカイン分泌アッセイ
20nMの式(I)の化合物を添加した、又は添加しない新鮮なヒト全血を用いて、TruCulture血液採取及びインキュベーション管を試験した。ヘパリン安定化血液及び抗CD3/CD28試験管を用いて、最良の結果が得られた。IFN-γ、IL-1β、IL.-2、IL-4及びTNF-αの分泌は式(I)の化合物によって阻害された(表8)が、IL-8及びIL-13は、明確には阻害されなかった。
【0203】
【0204】
式(I)の化合物のサイトカイン阻害プロファイルは、炎症性皮膚疾患の治療に有益であり得ることを示唆する。この化合物は、炎症に大きく関連する2つのサイトカインであるTNF-α及びIL-1βの分泌を強力に阻害する。この化合物は、IFN-γ、IL-2及びIL-4も阻害する。IFN-γは、例えばHSにおいて、Th1免疫応答に関与するT細胞由来のTh1サイトカインである。
【0205】
実施例6:BALB/cAマウスの慢性オキサゾロンモデルにおけるPDE4阻害薬
この研究の目的は、慢性オキサゾロンモデルにおいて、3つの異なる経口用量の式(I)の化合物、及び1用量の参照化合物のアプレミラストを評価することであった。
【0206】
材料及び方法
調製物の投与
治療群(群3~5)につき4つのバイアルを送達した。3日ごとに、投与前に溶媒(1%のメチルセルロース)を適切なバイアルに添加した(以下の表9を参照)。溶液は少なくとも7日間は安定であったが、3日ごとに新しくした。治療群6に対してバイアルを送達した。毎日、投与の直前に溶媒(1%メチルセルロース)を添加した。投与前に化合物が完全に溶解していることが保証された。全ての群の投与容量は、10ml/kg又は0.01ml/g体重であった。
【0207】
【0208】
投与の直前に、0.3mlのデキサドレソンvet(2mg/ml)を2.7mlの溶媒(1%メチルセルロース)中に懸濁させることにより、デキサドレソン(Dexadresone)を毎日調製した。最終濃度は0.2mg/mlであった。投与前に化合物を完全に懸濁させた。
【0209】
使用した動物は、7週齢のメスBALB/cABomTacマウスであった。
【0210】
群2~7のマウスは、-7日目に右耳の両側に10μlの溶液を適用することにより、アセトン中のオキサゾロン(0.8%)で感作させた。さらに、-7日目に、群1のマウスに、左及び右耳の両側に10μlのアセトンを投与した。0.8%オキサゾロン溶液は、以下の表10に示されるように調製される。
【0211】
【0212】
感作の1週間後に、群2~7のマウスに、アセトン中0.4%のオキサゾロンを初めて負荷した。具体的には、マウスの右耳の両側に10μlを投与した。投与は、以下の日に行った:0日目、3日目、5日目、7日目、10日目、12日目、14日目、16日目、18日目及び20日目。全く同じ日に、群1のマウスの左及び右耳の両側に10μlのアセトンを投与した。0.4%のオキサゾロン溶液は、以下の表11に示されるように調製した。
【0213】
【0214】
10日目に測定された耳厚に従って、マウスをランダム化した。目的は、同様の平均耳厚及び標準偏差を有する群を作成することであった。以下の表12に示されるように、誘発された表現型を試験化合物で経口的に処置した。群2~6では、メチルセルロース中に溶解された10ml/kg体重の化合物(又は、群2についてはメチルセルロースのみ)を1日1回経口投与した。群1の動物には、10ml/kgのメチルセルロースを経口投与した。全てのマウスは、10日目から21日目まで(両方の日を含む)処置される。
【0215】
【0216】
サンプリング
全ての動物から血液及び右耳を採取した。血液は、イソフルラン(酸素中3%)で麻酔した動物から心臓穿刺により採取した。マウスが完全に麻酔されたら(指間反射が存在しない)、25G針及び1mlシリンジで血液を採取し、2.5mlのBD SST Vacutainer(登録商標)管に移した。採血の後、バイアルを氷上に30分間置いた後、4℃において1000Gで10分間遠心分離した。その直後、血清を1.4mlの非コード化u底バルクMicronics管(noncoded u-bottom bulk Micronics tube)に移し、-80℃で保管した。血液採取の直後に、まだ完全に麻酔された状態で頸椎脱臼によりマウスを安楽死させた。
【0217】
耳のA側からの組織をNuncクライオチューブに入れ、液体窒素中で急速凍結した。サンプルを-80℃で保管し、及び/又は薬物濃度の分析のためにDMPKに送付した。処置化合物の最後の適用の2時間後にサンプルを採取した。
【0218】
耳のB側からの組織をNunc丸底クライオチューブに入れ、液体窒素中で急速凍結した。サンプルを-80℃で保管し、及び/又はサイトカイン分析のためにMolecular Biomedicine(Lili Rohde/Paola Lovato)に送付した。試験化合物の最後の適用の2時間後にサンプルを採取した。
【0219】
耳厚は、10日目、12日目、14日目、17日目、19日目及び21日目に、Absolute Digimaticマイクロメーター(Mitutoyo,Aurora,IL、ID-C1012CBコード543-274B)によりオンラインで(直接、エクセルのスプレッドシートに)取得された。群1の動物では右耳及び左耳を測定し、群2~7の動物では右耳のみを測定した。最後の投与の2時間後に耳を測定した終了の日を除いて、耳の測定は投与前に実施した。群2~7の動物の測定された耳厚から群1の平均耳厚を差し引くことにより、相対的な耳厚を計算した。
【0220】
血清中の化合物濃度は、群2~6の動物から測定した。
【0221】
統計的方法:ダネットの事後検定を伴う一元配置ANOVA(溶媒群=群2と比較);有意水準0.05。
【0222】
結果
図2に示されるように、全ての投与群の耳厚AUCは、溶媒群のAUCよりも有意に低かった。期待されるCmaxにおける最後の投与の1時間後に、動物から血液を採取した。
図3に示されるように、式(I)の化合物はアプレミラストと比較して、はるかに低い用量(30倍)を使用して同様の耳厚の減少に到達し、はるかに低い血清中濃度(>20倍)が達成された。理論により束縛されるものではないが、これは、化合物(I)が、20倍低い全身曝露を有し、したがってより少ない用量を用いて、同様の効果的な結果に到達し得ることを示すであろう。
【0223】
実施例7:フェレットにおける嘔吐研究
本研究の目的は、意識のある非拘束フェレットにおいて、式(I)の化合物及びロフルミラストの嘔吐特性を評価することであった。単回経口投与後の全血中で、LPS誘発性TNF-αをエキソビボで分析することにより、フェレットにおける有効性も測定した。化合物の経口投与の1.5時間後に大腸菌(E.coli)LPS(3mg/kg)を腹腔内注射し、LPS注射の1時間後及び3時間後にTNF-αを測定した。市販のELISAキットを用いて血清中でTNF-αレベルを決定した。
【0224】
溶媒として水中1%(w/v)のメチルセルロース400センチポアズを用いて、化合物を1、3、10及び30mg/kgの用量で経口投与した。2回のセッションの間に最低4日間の休薬期間を置いて、絶食させた動物に投与し、観察した。処置の後、動物を単独で収容し、嘔吐エピソード及び関連の前駆徴候(なめる、口を引っかく、あくび、「ウェットドック(wet dog)」震え、後ろ向き歩行)を約3時間カウントした。嘔吐実験に続いて、血清臨床化学及び薬力学のために、選択された時点で血液採取を実施した。
【0225】
結果
式(I)の化合物は、フェレットの健康状態又は体重増加に影響を与えないことが見出された。嘔吐特性は、1及び3mg/kgの用量レベルでは見られず、10及び30mg/kgでは、用量に関連して観察された。したがって、意識のある非拘束フェレットにおける式(I)の化合物の「無有害作用量(no observable adverse effect level)」(NOAEL)は、3mg/kgである。
【0226】
1、3及び10mg/kgの用量レベルで投与された式(I)の化合物は、1時間で観察されるTNF-αレベルの増大を、明らかに用量に関連して減弱させた。ベースライン値への戻りは、LPS投与の3時間後に観察された。
【0227】
1、3、10及び30mg/kgの用量レベルで投与されたロフルミラストは、フェレットの健康状態又は体重増加に影響を与えなかった。嘔吐特性は、1mg/kgの用量レベルでは見られず、3~30mg/kgの用量レベルでは用量に依存して観察された。したがって、意識のある非拘束フェレットにおけるロフルミラストの「無有害作用量」(NOAEL)は、1mg/kgである。
【0228】
1及び3mg/kgの用量レベルで投与されたロフルミラストは、1時間で観察されるTNF-αレベルの増大を用量に関連して減弱させた。ベースライン値への戻りは、LPS投与の3時間後に観察された。
【0229】
全体として、この研究からの結論は、フェレットにおける安全域がロフルミラストよりも3倍高いので、式(I)の化合物がロフルミラストよりも好ましいプロファイルを有するということである。
【0230】
実施例8:臨床試験プロトコル、第2相
以下の臨床試験は、式(I)の化合物を用いて実施され得る。適切には、式(I)の化合物は、放出調節組成物、例えば国際公開第2020/148271号パンフレットに記載される放出調節製剤の形態で、或いは上記の実施例1に記載される組成物として、対象に経口投与される。
【0231】
この実施例に記載される臨床試験で使用される10mg及び30mgのオリスミラスト錠剤は、表13に記載される放出調節錠剤である。
【0232】
【0233】
目的及び評価項目
主要評価項目:
・ 16週目のAN(膿瘍及び小結節)数のベースラインからの変化パーセント。
【0234】
副次的評価項目:
・ 16週目の膿瘍、小結節、及び排出瘻孔の数のベースラインからの変化。
・ 16週目のIHS4値のベースラインからの変化。
・ 16週目の患者の皮膚の痛みの包括的評価(NRS)のベースラインからの変化。
・ 16週目のHiS-QoL合計スコアのベースラインからの変化。
【0235】
安全性評価項目:
・ 治療中に発現した有害事象(AE)の発生。
・ 臨床検査パラメータ(血液学及び生化学)の変化。
・ バイタルサインの変化。
・ 体重の変化。
【0236】
治験責任医師により評価される評価項目:
・ 16週目にHiSCRを達成する患者。
・ 16週目にHiSCR75を達成する患者。
・ 16週目にHiSCR90を達成する患者。
・ 16週目に0又は1のHS-PGAスコアを達成する患者。
・ 全膿瘍及び炎症性小結節数の少なくとも50、75、90、又は100パーセントの経時的な低下。
・ 高感受性C反応性タンパク質(hs-CRP)のベースラインからの経時的な変化。
・ 経時的なHiSCR。
・ IHS4値の経時的なベースラインからの変化。
・ IHS4カテゴリーの経時的な変化。
・ 経時的な0又は1のHS-PGAスコア。
レスキュー治療の使用(積極的治療中、必要に応じてフォローアップ中に最大2回)。
【0237】
患者により評価される評価項目:
・ 16週目の患者の皮膚の痛みの包括的評価における少なくとも30%のベースラインからの低下(NRS30)。
・ 経時的な患者包括的評価スコア。
・ 16週目に評価される、各訪問時に再燃のある患者、及び治療中に少なくとも1回の再燃のある患者(再燃は、AN数の少なくとも25%の増大として定義され、ベースラインに対して最低2の増大である)。
・ 16週目のDLQIスコアのベースラインからの変化。
・ そう痒NRSのベースラインからの経時的な変化。
・ 分泌物NRSのベースラインからの経時的な変化。
・ 患者の皮膚の痛みの包括的評価における少なくとも30%の経時的なベースラインからの低下(NRS30)。
・ HiSQOL合計スコアのベースラインからの経時的な変化。
・ 疲労、DLQI、WPAI、McGill痛み、HADS、及びEQ-5Dのベースラインからの変化。
・ IMPの終了後の寛解の持続期間。
【0238】
略語:DLQI=皮膚疾患の生活の質指標;EQ-5D=欧州生活の質-5次元;HADS=病院不安及び抑うつスケール;HiSCR=化膿性汗腺炎の臨床応答;HiSQOL=化膿性汗腺炎の生活の質;HS=化膿性汗腺炎;Hs-CRP=高感受性C反応性タンパク質;HS-PGA=医師による包括的評価;IHS4=国際化膿性汗腺炎重症度スコアシステム;IMP=治験薬;NRS=数値評価スケール;WPAI=作業生産性及び活動障害。
【0239】
全体的な治験デザイン
これは、IHS4スコア(スコア3以下は軽度の疾患を示し、スコア4~10は中程度の疾患を示し、スコア11以上は重度の疾患を示す)で定義される軽度、中程度、又は重度のHS患者においてオリスミラストの有効性及び安全性を評価する、第2相単一施設前向き非盲検シングルアーム探索的臨床試験である。
【0240】
インフォームドコンセントに署名した後、全ての適格性基準を満たした場合、患者は類別され、重症度群に割り当てられる。全ての群は同じ治療介入を受けることになる。
【0241】
適格患者は、オリスミラスト錠剤による治療を1日2回、16週間にわたって受けることになる。治療用量は、所定の用量設定スキームに従い、各患者の観察された忍容性に適応され得る。
【0242】
24人の成人患者(男女)が含まれ、8人は軽度、8人は中程度、8人は重度のHSを有する。
【0243】
患者は、スクリーニング及び研究終了時の訪問を含む10回の訪問治験に参加し、そのうちの6回は現場訪問であり、4回は電話相談になる。最大4週間のスクリーニング期間及び14週間のフォローアップ期間を考慮すると、治験の最大持続期間は34週間である。
【0244】
各患者について、治験の持続期間は3つの期間からなる:
- スクリーニング期間(最大4週間)
- 治療期間(16週間)
- フォローアップ(14週間)
研究終了時の訪問は、最後のオリスミラスト投与の14週間後に予定され得る。
【0245】
治験実施施設で行われる標準的な現場訪問に加えて、この治験は、電話相談(TC)を導入する。これらのTCは、頻繁な現場訪問の負担を低減しながら、患者の綿密な安全性のモニタリングを保証することを目的として、強制的な電話によって実施され得る。
【0246】
標準的な現場訪問は、スクリーニング時、ベースライン時、2週目、8週目、16週目(治療の終了)、及び最後のIMP投与の14週間後(研究の終了)に行われる。標準的な現場訪問のそれぞれにおいて、治験責任(分担)医師はIMPを投与し、必要に応じて、リターン及びコンプライアンスチェックが行われる。
【0247】
TCは、1週目、4週目、12週目、及びフォローアップ(最後の薬物投与の42日後)に行われる。患者は、評価を収集する治験責任(分担)医師から連絡を受ける。
【0248】
個々の期間
スクリーニング期間:任意の治験関連手順の実施の前に、署名入りのインフォームドコンセントを患者から得なければならない。スクリーニング期間は、1回のスクリーニング訪問(訪問1)からなる。
【0249】
治療期間:治療期間は、用量が10mg BIDから30mg BIDまで漸進的に増大する、最初の2週間の用量設定からなる(0週目[訪問2]、1週目[訪問3;電話相談]、及び2週目[訪問4])(「BID」は、bis in die、すなわち1日2回を意味する)。
【0250】
2週目(訪問4)に、治験責任医師及び患者は、40mg BIDに達するさらなる用量漸増を開始すべきかどうかを決定することになる。さらなる用量漸増が開始される場合、患者は、次の2日間、朝の用量を40mgに増大し、夜の用量を30mgで維持する。2週目の訪問後の3日目に、用量は40mg BIDに増大され、この用量は、治療期間の終了(16週目)まで維持され得る。治療期間のこの部分において、患者は、4週目(訪問5)及び12週目(訪問7)に電話相談を受け、8週目(訪問6)及び16週目(訪問8[治療の終了])に治験実施施設に戻ることが求められることになる。
【0251】
治療有効性の評価は以下を用いて行うことになる:
1.治験責任医師の評価:
a.各訪問日における、膿瘍、炎症性小結節、及び排出瘻孔の数。
b.各現場訪問日における、国際化膿性汗腺炎重症度スコアシステム(IHS4)。
c.各現場訪問日における、医師による疾患重症度の包括的評価(HS-PGA)。
2.患者の評価
a.スクリーニング、ベースライン、2週目(訪問4)、8週目(訪問6)、12週目(訪問7)、16週目(EoT、訪問8)、FU(訪問9)、及びEoS(訪問10)における、患者による疾患重症度の包括的評価。
b.スクリーニング、ベースライン、2週目(訪問4)、8週目(訪問6)、12週目(訪問7)、16週目(EoT)、FU、及びEoSにおける、皮膚関連の生活の質DLQIを対象とした質問表の完成。
c.スクリーニング、ベースライン、2週目(訪問4)、8週目(訪問6)、12週目(訪問7)、16週目(EoT)、FU、及びEoSにおける、HS特異的な生活の質(HiSQOL)を対象とした質問表の完成。
d.各訪問日における、皮膚の痛み(患者の皮膚の痛みの包括的評価)を対象とした質問表の完成。
e.ベースライン、16週目(EoT)、及びEoSにおける、作業生産性に対する影響(WPAI)、不安及び抑うつ(HADS)、疲労(MFI-20)、生活の質(EQ-5D)、及びMcGill痛み質問表を対象とした質問表の完成。
【0252】
安全性及び忍容性は、AE記録、バイタルサイン(血圧、心拍数、体温)、身体検査、ECG、及び臨床検査(血液及び尿)によって評価され得る。
【0253】
以下を含むバイオマーカー評価
- 炎症の代替尺度として温度を評価し、生物物理学的バイオマーカーとしての方法の有用性を探索するための、選択領域のサーモグラフィー
- ベースラインで臨床的に特定される標的病変を評価するための、治療前及び治療後の超音波であって、後での認識を容易にするために注意深く記載(位置)されると共に写真撮影されたもの
- 炎症性バイオマーカー(CRP及び好中球(neutrophilocyte)/リンパ球比)
- 炎症マーカー(サイトカイン)を評価するための、治療前及び治療後の皮膚生検
- 簡単な皮膚スワブにより採取される皮膚微生物叢
【0254】
16週目(訪問8)の前に治療を早期に中止した場合は、治療の終了時に、訪問8に予定された評価を行わなければならない。早期中止の評価は、できるだけ早く実施すべきである。
【0255】
フォローアップ期間:16週目に、患者は30週目までの無治療観察期間に移行することになる。従来の治療法は、患者の判断で開始され得る。フォローアップ訪問(TC)は最後のIMP投与の6週間後に予定され(訪問9)、研究終了時の訪問(訪問10)は、最後のIMP投与の14週間後に予定される。重篤な有害事象(SAE)については、最終結果までフォローアップを継続すべきである。研究終了時の訪問(訪問10)の前にフォローアップを早期中止した場合、訪問10に予定された評価をできるだけ早く実施すべきである。
【0256】
治験終了の定義:治験の終了は、最後の患者の最後の訪問日として定義される。
【0257】
治験集団:採用及び登録基準に対するプロトコルの逸脱(プロトコルの免除又は除外としても知られる)の前向きな承認は許可されない。軽度~重度のHSを有する成人男性及び女性患者は、選択基準の全てを満たし、且つ除外基準をいずれも示さない場合に、治験に含まれることになる。
【0258】
選択基準:
- 18歳以上の男性又は女性の成人患者。
- 参加者の問診及び/又は病歴の審査を通して治験責任医師により決定される、ベースライン訪問より前の少なくとも1年間、軽度~重度のHSを有すること。
- 少なくとも2つの別個の解剖学的領域(右/左腋窩、鼠径部、乳房下部、腹部、会陰)においてHS病変を有すること。
- 全炎症性病変(AN)数が2以上であること。
- 全排出瘻孔数が30以下であること。
- ベースラインよりも前の2週間の安定した鎮痛薬用量。
- 妊娠の可能性のある女性(WOCBP)は、一貫して正しく使用したときに年間1%未満の低い失敗率となるICH M3に従う非常に有効な避妊方法を、治験期間及び最後の投与後16週間使用する準備ができており、使用することができなければならない。これらの基準を満たす避妊方法のリストは、患者情報において提供される。
- 任意のスクリーニング手順の開始前に、GCP及び地域の法律に従って書面によるインフォームドコンセントに署名し、日付を記入すること。
【0259】
除外基準:
1.HSの評価を妨害し得る、HS以外の活動性皮膚病変の存在。
2.ベースライン訪問(訪問2)前の7日以内に、HSの処方局所療法を受けたこと。
3.ベースライン訪問前の28日以内に、HSの全身療法を受けたこと。
4.ベースライン訪問前の28日以内の任意の経口抗生物質。
5.スクリーニング前の14日以内に生ワクチンを受けたこと。
6.ベースライン前の最低30日以内又は薬物の5半減期以内のいずれか長い方の期間の、HS以外の徴候に対する生物製剤の使用
7.ベースライン前の最低30日以内又は薬物の5半減期以内のいずれか長い方の期間の、化学的又は生物学的性質を有する任意の治験薬による治療。
8.免疫抑制された患者又は免疫抑制効果を有し得る薬物を摂取している患者。
9.妊娠中、授乳中、又は治験中に妊娠を計画している女性。研究薬物の投与前に授乳を中止する女性は、参加から除外しなくてもよい。
10.最初の薬物投与前の最後の2週間の活動性全身感染及び/又は発熱、或いは局所感染の臨床徴候(刺痛、痛み(soreness)の増大、灼熱感、病変周囲の紅斑性ハロー又は他の感染徴候)。
11.全身投与された治験薬剤又はその賦形剤に対するアレルギー/過敏症の病歴。
12.移植臓器を有する(スクリーニングの12週間前よりも以前の角膜移植を除外する)患者、或いはこれまでに幹細胞療法(例えば、Remestemcel-L)を受けたことのある患者。
13.適切に治療された皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、又は子宮頸部の上皮内癌を除く、スクリーニング訪問前の5年以内に確認された任意の活動性悪性腫瘍若しくは悪性腫瘍の疑い、又は悪性腫瘍の病歴。
14.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はウイルス性肝炎を含む、治験責任医師により決定される関連の慢性又は急性感染(除外:風邪)。患者が急性感染の治療を受けて治癒した場合、患者は再度スクリーニングを受けることができる。
a.C型肝炎抗体検査が陽性の場合、C型肝炎RNA PCRの陽性反射検査が陽性であると考えられる。
15.最初の研究薬物投与前の12週間以内に実施されたか又は研究中に計画された大手術(治験責任医師によると大手術)(例えば、人工股関節置換、動脈瘤除去、胃結紮)。
16.AST又はALT又はアルカリホスファターゼの正常上限(ULN)の3倍超の上昇、及びアルカリホスファターゼのULNの2倍超の上昇として定義される、重度、進行性、又は制御不能な肝臓疾患。
17.現在又は過去の疾患の証拠、HS以外の医学的状態(慢性のアルコール若しくは薬物の乱用、又は任意の状態を含む)、外科手術、精神医学的又は社会的な問題、健康診断の所見(バイタルサイン及びECGを含む)、又はスクリーニングにおける基準範囲外の臨床検査値であり、これは、治験責任医師の意見において、臨床的に重要であると共に、患者の安全性を損なうか又はデータの品質を損ない得るものであり、プロトコルを忠実に実行する、全ての研究訪問/手順に応じる、又は治験を完了するために研究参加者を信頼できなくなる。
18.治験期間中に予定されるHS患部にわたるレーザー又は他の脱毛手順の使用。
19.治験期間中に予定されるHS手術。
20.任意の禁止薬物(表16を参照)の使用が示される任意の状態。
【0260】
実施される治療
表14は、治験を用いて調査され得る医薬品の例を示す。
【0261】
【0262】
患者は、1日2回自宅でIMPの錠剤を服用することが指示される。朝1用量及び晩1用量で1日目から始めて用量設定スキームに従って進められる、エラー!参照元が見つからず.5。
【0263】
患者には、IMPを服用する際に従うさらなるガイダンス及び注意を含む治療指示書が提供される。
【0264】
最初の2週間、患者の用量が30mg BIDになる2週目(訪問4)まで、用量は漸進的に増大する。この訪問では、治験責任医師及び患者は、40mg BIDに達するさらなる用量漸増を開始すべきかどうかを決定することになる。さらなる用量漸増が開始される場合、患者は、次の2日間、朝の用量を40mgに増大し、夜の用量を30mgで維持する。2週目の訪問後の3日目に、用量は40mg BIDに増大され、この用量は、治療期間の終了(16週目)まで維持され得る。
【0265】
不確実なことがある場合、又は有害事象(AE)が開始した場合、患者は主に、スタディナースに電話でアクセスすることができる。患者がそれを望む場合、又はAEの症状が発現した場合、患者は、十分に忍容性であった最後の用量まで1日用量を減少させることについて治験責任医師と話し合うことができる。この新しい用量が十分に忍容性であれば、用量の新たな増大は、患者及び治験責任医師の裁量に任される。
【0266】
【0267】
禁止薬物:患者が治験の治療を受けている間、及び以下の表16に指定される訪問2前の期間中は、制限薬物は許可されない。患者は、最後の治療後のフォローアップ期間に、制限薬物が許可される。
【0268】
【0269】
有効性評価:治療有効性の評価は、以下を用いて行うことができる:
治験責任医師の評価:
・ 膿瘍、炎症性小結節、及び排出瘻孔の数。病変は、汎欧州コンセンサスペーパー(Daxhelet et al.,Dermatology.2020;236(5):431-438)において定義される。小結節は、固形内容物を含み、尖っているのではなく丸く、直径が10mmを超える触知できる病変として定義される;通常、深部に存在し、隆起していない;有痛性(内発的に又は触診で)を問わない;炎症性を問わない。膿瘍は、液体内容物(膿)を含み、変動性、触診で柔らかく、直径が10mmを超え、通常深部に存在する、触知できる病変として定義される;急性で非常に有痛性の現象である。瘻孔は、2つ(又はそれ以上)の化膿性の腔及び/又は皮膚の開口部を接続する1つ又は複数の長い透過性のチャネルとして定義され、排出を問わない。
・ 化膿性汗腺炎の臨床応答(HiSCR):病変数の変化とPROM(痛み及びHRQoL)との間の相関関係に基づいた治療標的。化膿性汗腺炎の臨床応答(HiSCR;膿瘍及び炎症性小結節数のベースラインからの50%以上の低下、及び膿瘍又は排出瘻孔数の増大なし)(Kimball et al.,Ann Intern Med.2012 Dec 18;157(12):846-55;Kimball et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol.2016 Jun;30(6):989-94)。その後、さらに区別するために変更される:HiSCR75;膿瘍及び炎症性小結節数のベースラインからの75%以上の低下、及び膿瘍又は排出瘻孔数の増大なし)、並びにHiSCR-90;膿瘍及び炎症性小結節数のベースラインからの90%以上の低下、及び膿瘍又は排出瘻孔数の増大なし)。
・ 国際化膿性汗腺炎重症度スコアシステム(IHS4):検証された国際クリニメトリックスケール(Zouboulis et al.,Br J Dermatol.2017 Nov;177(5):1401-1409)。スコアは、炎症病変の数に基づく。得られるIHS4スコアは、小結節の数(1倍)+膿瘍の数(2倍)+排出トンネルの数(4倍)によって到達される。3以下の合計スコアは軽度を示し、4~10は中程度を示し、11以上は重度の疾患を示す。
・ 医師による疾患重症度の包括的評価(HS-PGA):6点の化膿性汗腺炎の医師の包括的評価(PGA)は、クリアから非常に重度までの範囲である(Kimball et al.,Ann Intern Med.2012 Dec 18;157(12):846-55)。臨床試験において、炎症性小結節、膿瘍、及び排出瘻孔の臨床的改善を測定するために使用される。6つの段階は次の通りである;
クリア:炎症性又は非炎症性小結節なし。
最小:非炎症性小結節の存在のみ。
軽度:5個未満の炎症性小結節又は1個の膿瘍若しくは排出瘻孔、及び炎症性小結節なし。
中程度:5個未満の炎症性小結節、又は1個の膿瘍若しくは排出瘻孔及び1個以上の炎症性小結節、又は2~5個の膿瘍若しくは排出瘻孔及び10個未満の炎症性小結節。
重度:2~5個の膿瘍又は排出瘻孔及び10個以上の炎症性小結節。
非常に重度:5個超の膿瘍又は排出瘻孔。
【0270】
患者の評価:
・ 固定された(0=疾患なし、10=考えられる最悪の疾患重症度)0~10の数値評価スケール(NRS)を使用した、患者による疾患重症度の包括的評価。
・ 患者による皮膚の痛みの包括的評価(0=痛みなし、10=考えられる最悪の痛み)0~10の数値評価スケール(NRS)の皮膚の痛みを対象とした質問表の完成。
加えて、患者は、以下の質問表を完成し得る:
・ HS特異的な生活の質(HiSQOL)を対象とした質問表の完成。
・ 皮膚関連の生活の質DLQIを対象とした質問表の完成。
・ 生活の質EQ-5Dを対象とした質問表の完成。
・ McGill痛み質問表の痛みを対象とした質問表の完成。
・ 作業生産性に対する影響(WPAI)を対象とした質問表の完成。
・ 疲労(MFI-20)を対象とした質問表の完成。
・ 不安及び抑うつ(HADS)を対象とした質問表の完成。
・ 化膿性汗腺炎の生活の質(HiSQOL):HiSQOLは、Hidradenitis SuppuraTiva cORe outcomes set International Collaboration(HISTORIC)の研究に基づく。HiSQOLは系統的に開発及び検証されており、より一般的な皮膚特有の項目に加えて、ドレナージ及び臭気などのHS特有の項目を含有する17項目の質問表である。HiSQOLは、臨床試験においてHRQOLを評価するために設計されたHS特有の質問表である(Thorlacius et al.,Skin Appendage Disord.2019 Jun;5(4):221-229;Kirby et al.,Br J Dermatol.2020 Aug;183(2):340-348)。7日間の想起期間を有し、3つのドメイン:4つの症状の質問、5つの心理社会的質問、及び8つの活動適応の質問に分類される17項目からなる。各項目に対して0~4のスコアが与えられ、スコアが高いほど、HRQOLに対する悪影響が大きいことを表す。スコアは全ての項目について合計される(最大スコア:68)1。DLQIとの相関関係は0.9であり、非常に強い収束的妥当性が示された。
・ 皮膚疾患の生活の質指標(DLQI):過去1週間にわたるその健康関連の生活の質の様々な態様に対する皮膚疾患の影響についての患者の認識に関する10の質問の質問表。各質問は4点スケール(0~3)でスコア化され、0~30点(0=疾患は生活の質に全く影響を与えない、30=疾患は生活の質に最大の影響を与える)の範囲になる。検証されたスケールは、Finlay and Khan,Clin.Exp.Dermatol.,19(1994),pp.210-216)によって最初に導入された。
・ 欧州生活の質-5レベルスケールにおける5次元(EQ-5D-5L):EQ-5Dは、5つの次元:可動性、セルフケア、日常活動、痛み/不快感、及び不安/抑うつに関して一般的な健康状態を測定するための標準手段である。各次元は1~5の値を受け取り、55 55)の異なる健康状態が示される。スコアは、0~100の患者の全体的な健康評価と組み合わせられる。ここで、0は考えられる最悪の健康であり、100は考えられる最良の健康である。このスケールは、Herdman et al.,Qual Life Res.2011 Dec;20(10):1727-36により最初のEQ-5Dからさらに開発されたものである。
・ McGill痛み質問表:これは、経験した痛みの感覚、強度及び経時変化を評価するために使用することができる。痛みを経時的にモニターする、或いは治療介入の有効性を決定することができる(Melzack,Pain:September 1975,Volume 1,Issue 3,p277-299)。
・ 生産性及び活動障害質問表:特定の健康問題V2.0(WPAI:SHP):特定の疾患による作業障害を説明する質問表。結果は障害の割合として表され、数値が大きいほど障害が大きく、生産性が低いことを示す(Reilly et al.,Pharmacoeconomics.1993 Nov;4(5):353-65)。
・ 不安及び抑うつ(HADS):不安に関する7つの質問及び抑うつに関する7つの質問を含む質問表。各質問は4つの回答に関連され、0~3点が得られる。各状態について、0~7点は正常な場合に対応し;8~10点は境界域の異常な場合に対応し;そして11~21点は異常な場合に対応する(Zigmond and Snaith,Acta Psychiatrica Scandinavica(1983),67(6):361-370)。
・ 多次元疲労一覧20(MFI-20):MFI-20は、Smets et al.,J Psychosom Res 1995;39:315-25によって発明された。これは、疲労の5つのサブスケール:全身疲労(GF)、身体的疲労(PF)、モチベーションの低下(RM)、活動の低下(RA)、及び精神的疲労(MF)を説明する20項目からなる。項目のそれぞれについて、回答者は、特定の記載がどの程度自身に関連するかを、イエス(真実である)からノー(真実でない)までの範囲の5点スケールで特定しなければならない。
【0271】
バイオマーカー:バイオマーカーの研究のためのサンプルは、全ての患者から収集され得る。以下のバイオマーカーを評価して、軽度、中程度、又は重度のHSを有する患者において可能性のある差異を探索し、オリスミラストに対して観察される臨床応答との関連性を評価することができる:
・ 選択領域のサーモグラフィー。
・ 標的病変の超音波。
・ CRP(血漿)。
・ 好中球/リンパ球比(血漿)。
・ 皮膚の炎症マーカー(サイトカイン)(治療前及び治療後の生検)。皮膚生検は、0日目及び16週目に標準的な4mmパンチ生検として得ることができる。サンプルは、分析(最後の患者の最後の訪問の後に実施される)のためにZeeland University Hospital,Roskildeのバイオバンクに保管され、分析後に破棄され得る。
・ 簡単な皮膚スワブによる治療前及び治療後の皮膚微生物叢。
【0272】
有効性分析
主要有効性評価項目の分析
主要有効性評価項目である、ベースラインから16週目までのAN数の変化パーセントは、フルアナリシスセット及びパープロトコルセットに対して分析され得る。
各訪問時及び各重症度群のAN数は要約され得る。ベースラインから16週目までの変化及び変化パーセントも含まれ得る。16週目の訪問については、観察データ及び完成データ(LOCF補完を用いて補完された欠測データを含む)の両方が提示され得る。
主要評価項目である、16週目のAN数の変化パーセントは、ノンパラメトリックなマンホイットニーのU検定により捕捉されるt検定を用いて、重症度群間でペアワイズ比較され得る。
サンプル全体に対して、ベースラインから16週目までの変化がないという帰無仮説、H0:μ=0は、1サンプルt検定を用いて検定され得る。変化率の95%信頼区間が推定され得る。
【0273】
副次的有効性評価項目の分析
全ての副次的有効性評価項目は、フルアナリシスセットに対して分析され得る。
膿瘍、小結節、及び排出瘻孔の数、IHS4、患者包括的評価の痛み(NRS)並びにHiSQOL合計スコアは、各訪問に対して作表され得る。ベースラインから16週目までの変化も含まれ得る。
膿瘍、小結節、及び排出瘻孔の数、IHS4、患者包括的評価の痛み(NRS)、並びにHiSQOL合計スコアのベースラインから16週目までの変化は、ノンパラメトリックなマンホイットニーのU検定により捕捉されるt検定を用いて、重症度群間でペアワイズ比較され得る。
サンプル全体に対して、ベースラインから16週目までの変化がないという帰無仮説、H0:μ=0は、1サンプルt検定を用いて検定され得る。変化率の95%信頼区間が推定され得る。
【0274】
治験責任医師及び患者により評価される他の評価項目の分析
他の全ての評価項目は、フルアナリシスセットに対して分析され得る。データの作表は、グラフィック表示によって補足され得る。一般に、正式な有意性検定は適用されないであろう。
【0275】
16週目にHiSCRを達成した患者、16週目にHiSCR75を達成した患者、及び16週目にHiSCR90を達成した患者
これらの評価項目のそれぞれを達成した患者の数及び割合は、各重症度群に対して作表され得る。加えて、HiSCRを達成した患者の数及び割合は、各訪問において、各重症度群に対して作表される。
サンプル全体に対して、16週目で治療に対する応答がないという帰無仮説、H0:p=0は、二項検定を用いて検定され得る。HiSCRを達成した患者の割合の95%信頼区間は、二項分布を用いて推定され得る。
【0276】
治験責任医師による疾患重症度の包括的評価(HS-PGA)
HS-PGA(スコア0又は1)に従って「治療成功」を達した患者の数及び割合は、各訪問において、各重症度群に対して作表され得る。
【0277】
全膿瘍及び小結節数(AN数)が経時的にベースラインから少なくとも50%、75%、90%、又は100%低下した患者
これらの評価項目を達成した対象の数及び割合は、各訪問において、各重症度群に対して作表され得る。
【0278】
高感受性C反応性タンパク質(hs-CRP)のベースラインからの変化は、各訪問において、各重症度群に対して要約され得る。
【0279】
患者による疾患重症度の包括的評価及びHiSQOL合計スコア及びベースラインからの変化は、各訪問において、各重症度群に対して要約され得る。
【0280】
IHS4スコア及びベースラインからの変化は、各訪問において、各重症度群に対して要約され得る。
【0281】
IHS4カテゴリーの経時的な変化
IHS4カテゴリー(軽度、中程度、重度)は、各訪問に対して作表され得る。カテゴリーの変化は、各訪問について、重症度カテゴリーの悪化、変化なし及び改善のように、状態が変化した患者の割合として重症度群に対して要約され得る。
【0282】
患者の皮膚の痛みの包括的評価が経時的にベースラインから少なくとも30%低下した患者。この評価項目を達成した対象の数及び割合は、各訪問において、各重症度群に対して作表され得る。
【0283】
NRSにより評価されるそう痒及び分泌物のベースラインからの変化は、各訪問において、各重症度群に対して要約され得る。
【0284】
欧州生活の質-5次元(EQ-5D)
「可動性」、「セルフケア」、「日常活動」、「痛み/不快感」、及び「不安/抑うつ」の5次元の指標スコアのそれぞれは、各訪問において、各重症度群に対して要約され得る。
【0285】
皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)
合計DLQIスコア及びDLQIの変化は、各訪問において、各重症度群に対して要約され得る。
【0286】
病院不安及び抑うつスケール(HADS)
合計HADSスコア及びHADSスコアの変化は、ベースライン及び16週目において、各重症度群に対して要約され得る。
【0287】
WPAI、McGill痛み、及びMFI-20により評価される疲労
合計スコアは、ベースライン及び16週目において、各重症度群に対して要約され得る。ベースラインから16週目までの変化も要約され得る。
【0288】
寛解の持続期間
寛解期間はEoTと再発日との間の時間であり、再発日は、AN数の変化%で評価される、治療期間に患者が得た利益の少なくとも50%が損失され得る最初の日として定義される。
ベースラインからEoTまでにAN数の減少を経験した患者については、Kaplan-Meier生存率分析を用いて、寛解時間の中央値が推定され得る。
【0289】
再燃のある患者
再燃は、AN数の少なくとも25%の増大として決定され、ベースラインに対して最低2の増大である。
再燃のある患者の割合は、各訪問において、各重症度群に対して作表され得る。
加えて、ベースラインから16週目までの治療期間中に少なくとも1回の再燃を経験した患者の割合は、各重症度群に対して作表され得る。
【0290】
実施例9:臨床、第2相-第2A相治験からの最初のHS患者のオリスミラスト(式(I)の化合物)治療の初期応答。
方法:実施例8の通り。
患者:腋窩、鼠径部及び臀部に重度のHSを有する34歳の男性。患者は若いころから喫煙者であり、HS、ざ瘡又はIBDの家族歴はなかった。患者は、テトラサイクリン、リファンピシン-クリンダマイシン、アダリムマブ、セクキヌマブ、及び静脈内エルタペネムにより、以前に治療されたことがあるが、HSに対する有効性は全くないか、或いは一時的なものに過ぎなかった。
患者は、オリスミラストを1週目に1日2回10mgから1日2回30mgまでの用量設定を受け、その後1日30mgを継続して受けた。ベースライン時、15日目及び57日目に、国際HS重症度スコア(IHS4)、痛みの視覚的アナログ尺度(VAS痛み)、HS特異的な生活の質(HiSQOL)、皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)、医師及び患者による包括的評価、及び血液サンプルの評価を行った。
【0291】
結果
患者は即時の臨床的改善を経験し、組織浮腫及び痛みが低減すると共に、可動性が向上された。IHS4、VAS痛み、HiSQOL、DLQIについて、ベースラインから15日目までの疾患活動性の低下は広く知覚でき、57日目まで継続した:表17及び
図4。
【0292】
【0293】
ベースラインから57日目までの血液炎症性バイオマーカーの減少も観察された:C反応性タンパク質(89対84);赤血球沈降速度(94対88);白血球(14.0対11.5);及び血小板(402対365(14日目))。
【0294】
医師による疾患活動性の包括的評価は、非常に重度のままであった。患者による包括的評価は、15日目に非常に重度であったが、57日目に重度まで低下した。
【0295】
結論
オリスミラストは、従来のHS療法に難治性であったこの患者において、非常に重度のHSの炎症の急速的な臨床的及びパラクリニカルな改善を誘発した。特に、患者は、HSに関連する腫脹及び痛みの急速且つ顕著な減少を経験した。
【0296】
実施例10:臨床、第2相-第2A相治験からの最初のHS患者のオリスミラスト治療の初期応答。
方法:実施例8の通り。
結果
治験は進行中である。実施例8に記載されるプロトコルに従ってオリスミラストにより治療される治験に登録した最初の4人のHS患者は、事前の生物学的HS治療に非反応性であった患者を含め、HSの改善の初期徴候を示した。
【0297】
さらなる実施形態
本発明は、以下の番号付けされた条項によってさらに説明される:
【0298】
P1. 対象において化膿性汗腺炎(HS)の治療に使用するための式(I):
【化5】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【0299】
P2. 軽度又は中程度のHSを有する対象において疾患の進行を予防するのに使用するための、条項P1で定義される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【0300】
P3. 前記治療が、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の経口投与、局所投与及び/又は静脈内投与を含む、条項P1又は条項P2の使用のための化合物。
【0301】
P4. 治療が、少なくとも4週間、任意選択的に少なくとも8週間行われる、条項P1~P3のいずれか1つの使用のための化合物。
【0302】
P5. 治療が、20週間以下、任意選択的に16週間以下で行われる、条項P1~P4のいずれか1つの使用のための化合物。
【0303】
P6. 治療が、120mg以下、任意選択的に80mg以下の総1日用量を投与することを含む、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0304】
P7. 治療が1日2回行われる、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0305】
P8. 治療が、10~60mg、例えば30~40mgの用量を投与することを含む、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0306】
P9. 化合物が放出調節製剤内に含まれる、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0307】
P10. 化合物が、任意選択的に錠剤又はカプセルの形態で、経口投与用に製剤化される、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0308】
P11. 化合物が局所投与用に製剤化される、条項P1~P9のいずれか1つの使用のための化合物。
【0309】
P12. 対象がヒト又は動物であり、任意選択的に、対象がヒトである、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0310】
P13. 対象が軽度のHSを有する、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0311】
P14. 対象が中程度のHSを有する、条項P1~P12のいずれか1つの使用のための化合物。
【0312】
P15. 対象が重度のHSを有する、条項P1、又は条項1に従属する場合の条項P3~P12のいずれかの使用のための化合物。
【0313】
P16. 対象が、肥満症、メタボリック症候群、炎症性腸疾患、脊椎関節症、又はこれらの任意の組合せから選択される併存疾患を患っている、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0314】
P17. 対象が以前に、抗体療法又はTNF-α阻害薬で治療されたことがない、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0315】
P18. 治療が、さらなる療法と組み合わせて行われる、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0316】
P19. さらなる療法が、抗アンドロゲン剤、ホルモン、抗生物質(例えば、ダプソン)、レチノイド、抗炎症薬(ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬及びコルヒチンを含む)、鎮痛薬、免疫抑制薬、抗体、手術、メトホルミン、栄養サプリメント(例えば、グルコン酸亜鉛)、TNF-a阻害薬(例えば、アダリムマブ)、及びIL-1阻害薬(例えば、アナキンラ)、抗IL-17薬(例えば、セクキヌマブ)、及び抗IL-23薬(例えば、リサンキズマブ)、及び抗IL-12/23薬(例えば、ウステキヌマブ)、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(例えば、トファシチニブ)、又はこれらの任意の組合せから選択される、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0317】
P20. 前記治療がPDE4D及び/又はPDE4Bの選択的阻害を提供し、任意選択的に、前記治療が、PDE4D3及び/又はPDE4B2の選択的阻害を提供する、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0318】
1. 対象において化膿性汗腺炎(HS)の治療に使用するための式(I):
【化6】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【0319】
2. 軽度又は中程度のHSを有する対象において疾患の進行を予防するのに使用するための、条項1で定義される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物。
【0320】
3. 前記治療が、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の経口投与、局所投与及び/又は静脈内投与を含む、条項1又は条項2の使用のための化合物。
【0321】
4. 治療が、少なくとも4週間、任意選択的に少なくとも8週間行われる、条項1~3のいずれか1つの使用のための化合物。
【0322】
5. 治療が、20週間以下、任意選択的に16週間以下で行われる、条項1~4のいずれか1つの使用のための化合物。
【0323】
6. 治療が、120mg以下、任意選択的に80mg以下の総1日用量を投与することを含む、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0324】
7. 治療が1日2回行われる、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0325】
8. 治療が、10~60mg、例えば30~40mgの用量を投与することを含む、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0326】
9. 化合物が放出調節製剤内に含まれる、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0327】
10. 化合物が、任意選択的に錠剤又はカプセルの形態で、経口投与用に製剤化される、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0328】
11. 化合物が局所投与用に製剤化される、条項1~9のいずれか1つの使用のための化合物。
【0329】
12. 対象がヒト又は動物であり、任意選択的に、対象がヒトである、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0330】
13. 対象が軽度のHSを有する、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0331】
14. 対象が中程度のHSを有する、条項1~12のいずれか1つの使用のための化合物。
【0332】
15. 対象が重度のHSを有する、条項1、又は条項1に従属する場合の条項3~12のいずれかの使用のための化合物。
【0333】
16. 対象が、肥満症、メタボリック症候群、炎症性腸疾患、脊椎関節症、又はこれらの任意の組合せから選択される併存疾患を患っている、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0334】
17. 対象が以前に、HSの生物学的療法(例えば、抗体療法又はTNF-α阻害薬)で治療されたことがない、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0335】
18. 対象が、HSの生物学的療法に対して非反応性又は難治性である、条項1~16のいずれか1つの使用のための化合物。
【0336】
19. 治療が、さらなる療法と組み合わせて行われる、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0337】
20. さらなる療法が、抗アンドロゲン剤、ホルモン、抗生物質(例えば、ダプソン)、レチノイド、抗炎症薬(ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬及びコルヒチンを含む)、鎮痛薬、免疫抑制薬、抗体、手術、メトホルミン、栄養サプリメント(例えば、グルコン酸亜鉛)、HSの生物学的療法(例えば、TNF-a阻害薬(例えば、アダリムマブ)、IL-1阻害薬(例えば、アナキンラ)、抗IL-17薬(例えば、セクキヌマブ)、抗IL-23薬(例えば、リサンキズマブ)、又は抗IL-12/23薬(例えば、ウステキヌマブ))、補体C5a阻害薬(例えば、アバコパン)、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(例えば、トファシチニブ、INCB054707又はウパダシチニブ)、ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ阻害薬(例えば、LYS006)、IRAK4デグレーダー(例えば、KT-474)、IRAK4阻害薬(例えば、PF-06650833)、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬(例えば、PF-06826647)若しくはTYK2/JAK1阻害薬(例えば、PF-06700841)、又はこれらの任意の組合せから選択される、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【0338】
21. 前記治療がPDE4D及び/又はPDE4Bの選択的阻害を提供し、任意選択的に、前記治療が、PDE4D3及び/又はPDE4B2の選択的阻害を提供する、先行するいずれかの条項の使用のための化合物。
【国際調査報告】