(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】眼色の変更のためのレーザーシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61F9/008 120D
A61F9/008 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558632
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 US2022021564
(87)【国際公開番号】W WO2022204292
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519052879
【氏名又は名称】ストローマ メディカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーマー、グレッグ
(57)【要約】
色変更処置により、患者の眼色を変更する方法であって、ストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらす、最大許容露光量の100倍未満の露光量の送達のためのレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、患者の眼の虹彩内のストロマ色素へ送達するためのレーザーパワーを決定する工程を含み得る、方法が開示されている。レーザーシステムは、レーザー基準の組よりも少ないレーザーパワーでレーザー光を送達するように設定されてもよく、レーザー光はレーザーシステムにより、送達されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色変更処置により、患者の眼色を変更する方法であって、前記方法が、
ストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらす、最大許容露光量の100倍未満の露光量の送達のためのレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、前記患者の眼の虹彩内のストロマ色素へ送達するためのレーザーパワーを決定する工程と、
前記レーザー基準の組よりも小さいレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程と、
前記レーザーシステムにより、前記レーザー光を送達する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記除去が前記ストロマ色素のマクロファージ消化の開始により生じる、または、前記除去が前記ストロマ色素のアブレーションにより生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザーパワーが前記最大許容露光量の75倍未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザーパワーの前記最大許容露光量の20倍未満への低下によって、前記ストロマ色素の変性が生じず、その結果としてのマクロファージ除去および眼色における変更が生じないように、前記レーザーパワーは前記最大許容露光量の少なくとも20倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
温度センサにより、前記ストロマ色素の少なくとも一部分の温度を監視する工程と、
前記温度センサで監視したときに、前記レーザーパワーの送達が温度を115~125℃(両端含む)に上昇させるように、前記レーザーパワーを送達するよう前記レーザーシステムを制御する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記監視する工程は、微小気泡を検出するために虹彩のリアルタイム撮像を行う工程、または、微小気泡を検出するために虹彩のリアルタイム音響モニタリングを行う工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法がさらに、
前記処置の前に、虹彩の複数の画像を生成するために、イメージセンサにより、虹彩を撮像する工程と、
前記画像を画像処理ソフトウェアにより解析する工程と、
画像解析に基づいて、前記虹彩のマッピングを生成する工程であって、前記マッピングは、虹彩のストロマ色素の治療波長の変化する吸収係数に対応する複数の領域を含む、マッピングを生成する工程と、
前記マッピングに基づいて、前記患者の眼の所定の位置へ第1のレーザーパワーでレーザー光を送達するように、前記レーザーシステムを設定する工程であって、前記第1のレーザーパワーは、虹彩のストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である、レーザーシステムを設定する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
光学追跡システムにより、前記色変更処置中に、前記患者の眼を追跡する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記追跡する工程が、
前記光学追跡システムにより、前記虹彩の画像を捕捉する工程と、
虹彩位置における変化が存在しているか否かを判定するために、前記画像を、虹彩の前の画像と比較する工程と、
前記画像および前記前の画像から、位置における変化のデルタを計算する工程と
を含み、
前記レーザー光の送達が、前記デルタに基づいてシフトされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記光学追跡システムは距離測定器を含んでおり、前記方法は、前記距離測定器を利用して、虹彩と、前記光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記距離が少なくとも10ミクロンの分解能で判定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記距離測定器は、
時間領域光コヒーレンストモグラフィシステムもしくはスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィシステムであるか、または、
三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、もしくは光センサの1つもしくは複数を備えている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記基準コンポーネントは、前記光学追跡システムの最後のレンズである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記距離に応じて前記レーザーシステムの自動焦点調整を行う工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記自動焦点調整を行う工程は、
周期的な間隔で虹彩のストロマ色素への距離を測定する工程と、
前記距離に基づいて、前記レーザーシステムを、虹彩の前面と後面との間で実質的に焦点が合っている状態に留まるように制御する工程と
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法がさらに、
引き続く段階が、より少ない色素の除去を引き起こすが、より高いレーザーパワーで送達されるように、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、前記色変更処置の一部として決定する工程と、
送達の現在の段階にさらに基づいて、前記レーザーパワーに前記レーザーシステムを設定する工程と、
前記設定する工程に基づいて前記レーザーパワーを送達する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の段階が少なくとも3つの段階を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法がさらに、
前記レーザーシステムと通信している制御コンピュータによって、免疫応答レベルを表すデータを含む、前記患者の医療記録へアクセスすることに基づいて、患者の免疫応答レベルを判定する工程と、
前記免疫応答レベルを、2つの前記段階の間の時間間隔に関連付けられた免疫応答の範囲と比較する工程と、
前記免疫応答レベルが前記範囲よりも高いことを示す比較に基づいて、前記時間間隔を低減させる工程と
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
色変更処置により、患者の眼色を変更する方法であって、前記方法が、
前記患者の虹彩のストロマ色素への、4~70μm(両端含む)のスポットサイズを有するレーザー光の送達をもたらすレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、前記患者の眼の虹彩のストロマ色素へ送達されるレーザー光のスポットサイズを決定する工程と、
前記スポットサイズで前記レーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程と、
前記レーザーシステムにより、前記レーザー光を送達する工程と
を含む、方法。
【請求項20】
前記スポットサイズと組み合わせたレーザーパワーは、虹彩内の同時の温度変化をもたらし、それにより、ストロマ色素のマクロファージ消化の開始をもたらすのに十分である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法がさらに、
温度センサにより、ストロマ色素を含む、虹彩の少なくとも一部分の温度を判定する工程であって、前記温度センサが、虹彩に対して非侵襲的である、虹彩の少なくとも一部分の温度を判定する工程と、
前記色変更処置中に温度を115~125℃(両端含む)まで上昇させるレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程と
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記方法がさらに、
前記処置の前に、虹彩の複数の画像を生成するために、イメージセンサにより、虹彩を撮像する工程と、
前記画像に基づいて、前記虹彩のマッピングを生成する工程であって、前記マッピングは、虹彩のストロマ色素の治療波長の変化する吸収係数に対応する複数の領域を含む、マッピングを生成する工程と、
前記マッピングに基づいて、前記患者の眼の所定の位置へ第1のレーザーパワーでレーザー光を送達するように、前記レーザーシステムを設定する工程であって、前記第1のレーザーパワーは、虹彩のストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である、レーザーシステムを設定する工程と
を含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
光学追跡システムにより、前記色変更処置中に、前記患者の眼を追跡する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記光学追跡システムは距離測定器を含んでおり、前記方法は、前記距離測定器を利用して、前記眼の虹彩と、前記光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基準コンポーネントは、前記光学追跡システムの最後のレンズである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記距離に応じて前記レーザーシステムの自動焦点調整を行う工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記自動焦点調整を行う工程は、
周期的な間隔で虹彩のストロマ色素への距離を測定する工程と、
前記距離に基づいて、前記レーザーシステムを、ストロマ色素において、実質的に焦点が合っている状態に留まるように制御する工程と
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法がさらに、
引き続く段階が、より少ない色素の除去を引き起こすが、より高いレーザーパワーで送達されるように、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、前記色変更処置の一部として決定する工程と、
送達の現在の段階にさらに基づいて、前記レーザーパワーに前記レーザーシステムを設定する工程と、
前記設定する工程に基づいて前記レーザーパワーを送達する工程
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の段階が少なくとも3つの段階を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記方法がさらに、
前記レーザーシステムと通信している制御コンピュータによって、免疫応答レベルを表すデータを含む、前記患者の医療記録へアクセスすることに基づいて、患者の免疫応答レベルを判定する工程と、
前記免疫応答レベルを、2つの前記段階の間の時間間隔に関連付けられた免疫応答の範囲と比較する工程と、
前記患者の免疫応答が前記範囲よりも高いことを示す比較に基づいて、前記時間間隔を低減させる工程と
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
色変更処置により、患者の眼色を変更する装置であって、前記装置がレーザーシステムおよび制御システムを備え、前記制御システムが、
ストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらす、最大許容露光量の100倍未満の露光量の送達のためのレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、前記患者の眼の虹彩内のストロマ色素へ送達するためのレーザーパワーを決定し、
前記レーザー基準の組よりも小さいレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定し、
前記レーザーシステムにより、前記レーザー光を送達するように構成されている、装置。
【請求項32】
前記装置が、前記ストロマ色素の少なくとも一部分の温度を監視するように構成された温度センサをさらに備え、前記制御システムが、前記温度センサで監視したときに、前記レーザーパワーの送達が温度を115~125℃(両端含む)に上昇させるように、前記レーザーパワーを送達するよう前記レーザーシステムを制御するように構成されている、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記装置がさらに、前記色変更処置中に、前記患者の眼を追跡するように構成された光学追跡システムを備えている、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記制御システムが、
虹彩の画像を捕捉するように前記光学追跡システムを制御し、
虹彩位置における変化が存在しているか否かを判定するために、前記画像を、虹彩の前の画像と比較し、
前記画像および前記前の画像から、位置における変化のデルタを計算し、
前記レーザー光の送達を前記デルタに基づいてシフトする
ように構成されている、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記光学追跡システムは距離測定器を含んでおり、前記光学追跡システムは、前記距離測定器を利用して、虹彩と、前記光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定するように構成されている、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記距離測定器は、
時間領域光コヒーレンストモグラフィシステムもしくはスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィシステムであるか、または、
三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、もしくは光センサの1つもしくは複数を備えている、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記基準コンポーネントは、前記光学追跡システムの最後のレンズである、請求項36に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照により、本出願に援用される、「Laser Systems And Methods For Alteration Of Eye Color」と題する、2021年3月24日に出願された米国仮特許出願第63/165,683号の優先権の利益を主張する、2021年4月22日に出願された米国特許出願第17/238,070号の継続出願である、2021年10月21日に出願された米国特許出願第17/507,572号に対する優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、特定のパワーレベルの、および患者の眼色を変更することに関する医療処置に好適な形状でのレーザー光を送達することに関する。
【背景技術】
【0003】
眼科手術に対する、レーザーの使用が最近増加している。しかし、レーザー眼科手術は、近視、遠視、および乱視などの1つまたは複数の視力問題の矯正に関し、知られている選択肢であるが、視力問題を矯正するための術以外の術にはあまり関心が示されていない。たとえば、レーザー眼科手術における進歩は、レーザーが患者の角膜を再形成し得る術に重点を置いており、患者の眼の複数の他の部分、およびそれらに対する処置は無視されている。
【発明の概要】
【0004】
これに鑑みて、患者の虹彩へレーザー光を送達するための方法およびシステムが本明細書中で述べられている。特に、本明細書中で述べられている上記方法およびシステムは、レーザー光のこの送達により、眼色変更処置を行うためのものである。たとえば、人の眼色を変更することは、眼にその色を与える役割を担う、眼の複数の部分(たとえば、虹彩)へレーザー光を送達することにより、行われ得る。
【0005】
この効果を実現するために、上記方法およびシステムはいくつかの技術的な障害を乗り越えなければならない。たとえば、従来のレーザー眼科手術(たとえば、視力を矯正することを目的とするもの)では、利用されるレーザーパワー量はある程度、任意であり、および/または変動し得る。そうしたシステムが虹彩に(たとえば、眼色変更処置のために)施された場合、これは、結果が一貫しない可能性があり、場合によっては、虹彩への潜在的な損傷につながり得る。眼科手術に対する従来のアプローチでは、眼が均質な構造として扱われる画一的なアプローチを使用しているため、同様の課題が存在している。そうしたアプローチは、眼色変更処置の結果に影響をおよぼす、眼における局所的な違いを見落としている。
【0006】
これらの技術的な障害に鑑みて、本明細書中で述べられている上記方法およびシステムは、有効性を実現するための、眼の虹彩における算出された複数の最小放射露光量(MRE)値、および望ましくない損傷を回避するための、眼の眼底における最大許容露光量(MPE)値に基づいたレーザーパワーでレーザー光を送達する。上記処置中の温度監視を含む診断機能、標的構造への光の適切な送達を確実にするための正確な距離測定、および眼の具体的な領域への、目的に合ったパワー送達をもたらすための虹彩マッピングについても述べられている。
【0007】
これらの方法およびシステムは、カラーコンタクトレンズ、角膜染色および入墨術、ならびに人工虹彩インプラントなどの、眼色変更を得るための従来の方法に対して、数多くの利点をもたらす。たとえば、カラーコンタクトレンズの場合、このような問題には、褐色の眼が青または緑色に見えるようにするために青または緑色のコンタクトレンズが使用される場合の不自然な外見、一時的な色変更にすぎないこと、患者の約50%の耐性が低いこと、眼感染、角膜上皮剥離、および他の眼障害のリスク、ならびに中心の透明部分が眼の瞳孔とともに拡大しないことが理由で夜間視力が低いことが含まれる。最近の文献では、長期間の使用後、カラーコンタクトレンズにおいて使用されている色素が体内に放出され得ることも示唆されている。他の解決策として、角膜色素沈着およびカラー虹彩インプラントが利用可能である。角膜色素沈着の問題点には、カラーコンタクトレンズと同様の、不自然な外見、および夜間視力が低いことに加えて、侵襲的な外科手術に関連付けられた追加リスクが含まれる。カラー虹彩インプラントの問題点には、角膜色素沈着に関連付けられた問題点すべてに加えて、24時間以内の、患者の約50%の、および1年以内の、患者の90%超の耐性が低いことが含まれ、ならびにカラー虹彩インプラントは、外科的侵襲がはるかに大きく、多くの場合、緑内障、および視力の喪失をもたらす。角膜色素沈着もカラー虹彩インプラントも美容目的で承認されていない。
【0008】
上記方法およびシステムは、安全であり、効果的な眼色変更処置を行うために、MPEに基づいたレーザーパワーを送達することにより、従来のシステムのこれらの欠点を解消する。このような送達は、レーザーシステムの設定が、眼へのレーザーパワーの適切な送達につながる場合もつながらない場合もある任意のパラメータに設定されるのではなく、結果に向けられるという点で利点を有する。レーザーパワーが正確に送達されることを確実にするために、距離測定の新規な方法が開示されている。このような方法は、所望のレーザーパワーを、正確に必要な場所に送達するための、眼のレーザー焦点位置におけるミクロンレベルの分解能を含み得る。患者に対する、最適化された、目的に合った処置を提供するために、レーザー処置を段階的に適用する方法も開示されている。そのように段階的に施すことで、ストロマ色素吸収係数、および虹彩前面のトポグラフィ(たとえば、傾斜、ひだ、および窩)におけるばらつきが解消され得る。そのように段階的に適用することは、患者の免疫応答の要素の判定からも、これが上記処置、よって、使用されるレーザーシステムパラメータに対する直接的な影響をおよぼす場合があるので有益である場合もある。
【0009】
患者の眼色の変更を容易にするために、上記システムは、患者の眼の虹彩内のストロマ色素へ送達するためのレーザーパワーを決定することができ、このレーザーパワーはMPEの数分の1である上限を有する。この決定がなされると、レーザーシステムは、必要なレーザーパワーを送達するように設定され得る。さらに、上記システムは、ストロマ色素の位置における、レーザーの最適化されたスポットサイズ(すなわち、1/x2で定義されるスポット径)を決定し得る。この最適化されたスポットサイズの決定は、その後、上記処置の必要なレーザーパワーを決定するために上記システムにより使用され得る。
【0010】
いくつかの態様では、患者の眼色を変更する方法は、眼の虹彩内のストロマ色素へ送達するためのレーザーパワーを決定する工程を含み得る。上記決定する工程は、上記システムが、MPEの100倍未満の露光量の送達のためのレーザー基準の組を取得することで実行され得るが、これはストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらし、それにより、眼色を変更する。上記方法は次いで、上記レーザー基準の組よりも小さいパワーレベルでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程、および上記レーザーシステムにより、上記レーザー光を送達する工程を含み得る。
【0011】
関連した態様では、患者の眼色を変更する方法は、眼の虹彩内のストロマ色素へ送達されるレーザー光のスポットサイズを決定する工程を含み得る。この決定する工程は、上記システムが、少なくとも、患者の虹彩のストロマ色素への4~70μmのスポットサイズを有するレーザー光の送達をもたらし得るレーザー基準の組を取得することにより行われ得る。これらの基準により、上記スポットサイズでのレーザー光により、送達されるレーザーパワーは、ストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である。上記方法は次いで、上記スポットサイズで上記レーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程、および上記レーザーシステムにより、上記レーザー光を送達する工程を含み得る。
【0012】
相互に関連した別の態様は、データ処理装置により実行されると、上記複数の実施形態いずれかのものを備える動作を上記データ処理装置に行わせる命令を記憶し得る、有形の非一時的なマシン可読媒体である。
【0013】
相互に関連したさらに別の態様では、システムは、1つまたは複数のプロセッサと、上記1つまたは複数のプロセッサにより実行されると、上記複数の実施形態のいずれかを含む動作を上記1つまたは複数のプロセッサに実行させる命令を記憶するメモリとを含み得る。
【0014】
本発明の種々の他の態様、特徴、および利点は、本発明の詳細な説明、およびここに添付された図面により、明らかになるであろう。以上の概括的な説明、および以下の詳細な説明がいずれも、例であり、および本発明の範囲を制限するものでないことも、理解されるものとする。本明細書および特許請求の範囲において使用されているように、「a」、「an」、および「the」の単数形は、明らかにそうでないと文脈が示していない限り、複数形を含む。さらに、本明細書および特許請求の範囲において使用されているように、「or」との語は、明らかにそうでないと文脈が示していない限り、「and/or」を意味する。さらに、本明細書で使用される「a portion」は、明らかにそうでないと文脈が示していない限り、特定の項目(たとえば、データ)の一部または全体(すなわち、部分全体)を表す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】1つまたは複数の実施形態による、レーザーシステムおよび患者位置決めシステムの簡略図を示す。
【
図3】1つまたは複数の実施形態による、虹彩のマッピングにおける使用のためのレーザーシステムおよびイメージセンサの簡略図を示す。
【
図4】1つまたは複数の実施形態による、虹彩の複数の領域へ可変レーザーパワーを照射する、
図3のシステムを示す。
【
図5】1つまたは複数の実施形態による、眼色変更処置を行うための例示的なシステムを示す。
【
図6】1つまたは複数の実施形態による、レーザーシステムのレーザーパワーを決定する工程を示す。
【
図7】1つまたは複数の実施形態による、レーザーシステムのスポットサイズを判定する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、説明の目的で、本発明の複数の実施形態の十分な理解をもたらすために数多くの具体的な詳細が記載されている。しかし、これらの具体的な詳細なしで、または同等の配置により、本発明の複数の実施形態が実施され得ることが当業者により、理解されるであろう。他の場合には、本発明の複数の実施形態を不必要に分かりにくくすることを回避するために、周知の構造および装置がブロック図で示されている。
【0017】
序論
本開示には、患者の眼色を変更するための医療処置を容易にするための、改良された方法およびシステムが記載されている。このような医療処置には、眼の色素構造を変更し、それにより、その色を変更する生体反応が生じるように眼の複数の部分へレーザーパワーを送達することが関係し得る。上記処置の必要性、患者への安全性、患者間のばらつき、および(多段階処置の場合の)処置間のばらつきに基づいて、使用するための適切なレーザーパワーを決定することは、成功する結果のために重要であり得る。
【0018】
本開示の多くの実施形態に適用可能な色変更処置について説明する前に、眼の解剖学的構造の簡単な概要が記載されている。
図1に示されるように、眼100は、いくつかの解剖学的構造から構成されており、それらのいくつかについて以下に述べられている。虹彩110は本開示の中心となっており、眼の色の役割を担う。眼の他の複数の部分にはたとえば、角膜120、水晶体130、瞳孔140、および網膜150が含まれる。眼のいかなる部分をも損傷することを回避するために注意が払われるべきであるが、レーザーの安全性の実務では、不必要なレーザー光を、瞳孔を介して、水晶体内へ向けることを回避するために特別な注意が払われるべきである。というのは、眼のこの部分が自然に網膜に光の焦点を調整するからである。既に強いレーザー光のそうした焦点調整は、網膜神経への損傷をもたらし得る。
【0019】
眼の上方の挿入図に示されているのは、虹彩の2つの例である。左の例は、褐色の眼を有する人の虹彩110の描写である。右の例は、青または緑色の眼を備えた人の虹彩110を描いている。知覚される色は、眼に到達する光が、虹彩の中間領域内のストロマ線維(虹彩ストロマ112と呼ぶ)により、その成分波長に分離されることによる。この分離は、光がプリズムを通過すると示される分離と同様のものである。いずれの場合にも、虹彩は、主に青または緑色よりも長い可視光波長を吸収する、かなり厚い(数個の細胞の深さの)色素沈着層を含む後面114を有する。しかし、褐色の眼を有する人の、左の例では、本明細書中、「ストロマ色素」116と表される褐色の色素を含むさらなる前面が存在している。褐色のストロマ色素は、眼に褐色を与える。ストロマ色素のない眼は、上述されたような、大半が青または緑色の光を反射し、眼に青または緑色を与える。
【0020】
本明細書中で参照されるような色変更処置の簡単な要約が記載されている。レーザー光はストロマ色素へ送達されてストロマ色素の温度の増加をもたらし得る。このプロセスは数回、繰り返されて、ストロマ色素の温度を繰り返し、上昇させ、および低下させ得る。温度のこの上昇および低下は、体に複数のマクロファージ(体の自然免疫応答の一部)をストロマ層へ展開させる。これらの複数のマクロファージは次いで、眼にその褐色を与える役割を担うストロマ色素の一部分を除去する。より深い青/緑色に眼を見えさせるようにするために様々の度合いの色変更をもたらすために、処置が繰り返し、行われ得る。レーザー光の送達のパターンは、虹彩全体へ処置を施すために走査パターン(たとえば、瞳孔を取り囲む螺旋パターン、または瞳孔を回避するラスタパターン)であり得る。
【0021】
図2は、1つまたは複数の実施形態による、レーザーシステムおよび患者位置決めシステムの簡略図を示す。全体システム200の一実施形態は、レーザーシステム210および患者位置決めシステム280を含み得る。色変更処置に好適な場所において、患者位置決めシステムにより、支持された、(眼100を有する)患者10の頭が示されている。上記レーザーシステムは、レーザー光214を供給するレーザーヘッド212を含み得る。上記レーザーヘッドは、種々の波長で、たとえば1064nmまたは532nm(Nd:YLFまたはNd:YAG)でレーザー光を生成するためのコンポーネントを含み得る。例示的なパルス幅は5~300ns内であり、繰り返し周波数は5~300kHzであり、およびM
2≦1.2であり得る。
【0022】
上記レーザーヘッドは、エネルギー源(別名、ポンプまたはポンプ源)、利得媒質、および光共振器を形成する2つ以上のミラーを含み得る。例示的なエネルギー源には、放電、フラッシュランプ、アークランプ、別のレーザーからの出力、および化学反応が含まれる。例示的な利得媒質には、液体(たとえば、化学溶媒および化学染料を含む染料)、気体(たとえば、二酸化炭素、アルゴン、クリプトン、およびヘリウムネオン)、不純物(たとえば、クロム、ネオジム、エルビウム、またはチタニウムイオン)でドープされ得、フラッシュランプ、または別のレーザーからの出力により、励起され得る固体(たとえば、結晶およびガラス、たとえばイットリウムアルミニウムガーネット、フッ化リチウムイットリウム、サファイア、チタンサファイア、フッ化リチウムストロンチウムアルミニウム、ネオジムガラス、およびエルビウムガラス)、および均一の、または異なるドーパント分布を備えた半導体(たとえば、レーザーダイオード)が含まれる。
【0023】
レーザーヘッドの実施形態には、光周波数逓倍器(たとえば、周波数倍増器および和周波数発生器)であって、レーザー出力周波数が、非線形結晶または他の材料にそれを通すことにより、増加させられる、光周波数逓倍器が含まれ得る。光周波数逓倍器の利点は、それが、特定の利得媒質から利用可能な周波数/波長の範囲を増加させることである。非線形材料が1段階の周波数逓倍のために光共振器内に挿入される場合があり、または基本(すなわち、非逓倍の)出力ビームが、2段階の周波数逓倍のために光共振器を出た後、非線形材料に通される場合がある。周波数倍増のための例示的な非線形材料には、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、リン酸チタニルカリウム、または三ホウ酸リチウムが含まれ得る。2段階の周波数三倍化は通常、第1段階で、基本出力ビームの一部分を周波数倍増することにより、行われる。基本ビームの倍増化された部分と、基本ビームの倍増化されていない残りの部分が次いで、和周波数混合のために第2段階で第2の非線形周波数三倍化材料に結合される。周波数三倍化のための例示的な非線形材料には、リン酸二水素カリウムが含まれ得る。
【0024】
利得媒質および光周波数逓倍器の組み合わせの1つは、周波数倍増器を備えたNd:YAGである。Nd:YAG利得媒質により、生成されるレーザービームの固有高調波は、波長が1,064nmであり、それは次いで、周波数倍増器により、半分の532nmにされる。この波長は以下のように利用され得る。(a)それは、可視光スペクトル内に収まり(すなわち、緑色)、それにより、吸収がほとんどないか、または全くない状態で透明角膜を通過し、(b)それは、ストロマ色素内で高い吸収係数を有しており、それにより、虹彩の前部ストロマ色素内の選択的光熱分解を行い、および(c)波長は比較的短く、それにより、浸透の深度を制限し、およびIPE(虹彩色素上皮)に対する不必要な損傷を回避する。これら3つの基準を満たす、利得媒質および光周波数逓倍のいずれの他の組み合わせもいくつかの実施形態において実現される場合もある。
【0025】
レーザーパルス幅はナノ秒範囲内(すなわち、1ナノ秒未満から1マイクロ秒までの間)にある場合があり、およびパルス繰り返し周波数はキロヘルツ範囲内(すなわち、1kHz未満から1MHzまでの間)にあり得る。いくつかの実施形態は、5nsと300nsとの間のパルス幅を有している場合があり、それは、改良された色素変性をもたらし得る。Qスイッチングは、それがナノ秒パルス幅に最適に適合する傾向にあるために、好ましいパルス発振方法として利用され得る。いくつかの実施形態には、変調器装置を使用した能動Qスイッチングが含まれる。
【0026】
本明細書中で使用される「レーザー」は、赤外光内、可視光内、または紫外光スペクトル内のいずれでも、光放射のビームを生成することができるいかなるデバイスをも意味する。「レーザー」との語は、(a)単色性またはコヒーレンス(たとえば、発散度もしくは指向性)の観点での光放射の特性、(b)放射が連続的であるか、パルス状であるか、(c)パルス状である場合、具体的なパルス幅(たとえば、ゼプト秒、アト秒、フェムト秒、ピコ秒、ナノ秒、ミリ秒、またはマイクロ秒)、(d)繰り返し周波数、(e)レーザーパワー、(f)ビームの波長もしくは周波数、(g)波長もしくは周波数の数、すなわち単一、対複数周波数出力(たとえば、強いパルス状の光)、(h)ビームの数、すなわち単一の、対複数のビーム(たとえば、単一のビームの分割、もしくは複数のレーザーからの複数のビームの生成)、または(i)利得媒質に制限することが意図されるものでない。
【0027】
本明細書中で使用される「レーザーパワー」は、W/cm2またはJ/cm2いずれかを文脈に応じて意味し得る。というのは、それらは、露光時間により、関連付けられるからである。MPEはそれらの単位いずれかで表され得る。たとえば、MPEには、眼における有害な影響または生物学的変化なしで眼底が露光され得る最大レベルのレーザー放射が含まれ得る。
【0028】
よって、本明細書がMPEでレーザーパワーを表す場合、レーザーパワーの正確な値は、とりわけ、ビームスポットサイズ、パルス持続時間、または波長、およびレーザーがパルス状か、または連続的か等に依存する。よって、MPEの決定は、本明細書中で開示された種々の実施形態において、レーザーパワーを当業者が決定するための基礎を提供する。
【0029】
本明細書中で使用されるように、レーザーパワーを調節することの文脈において、「低減(reducing)」、「低下(lowering)」、「(小さい)less」等に言及する場合、これは、レーザーシステムが、ある観点でレーザー光をなお送達しながら、現在の値から、より低い(非ゼロ)値にレーザーパワーを低減させ得ることを意味していると理解される。これらの定義は、送達されるレーザーパワーが低減させられるように(たとえば、ビームダンプへ)レーザービームを向け直すことも含んでいる。これらの定義は、レーザーシステムをオフにすること(すなわち、レーザーパワーをゼロに低下させること)も含んでいる。最後に、レーザーパワーを低下させることは、繰り返し、上記のいずれかを行い、それにより、レーザービームのデューティサイクルを低下させること、または間欠的に上記のいずれかの組み合わせを行うことも含んでいる。
【0030】
(x-yビーム誘導システムとしても表される)ガルボシステム216は、レーザーシステム内に含まれている場合があり、X-Y平面(通常、レーザー光が通常、焦点調整された、虹彩の平面)上の種々の位置へレーザー光を送達する手段を設けるための調節可能なミラーを含んでいる場合がある。レーザーシステムのさらなる実現形態には、たとえば、レーザーシステムの光軸に対する、眼の中心のX-Y偏差を判定するためのカメラを含み得る距離測定器および/または光学追跡システムを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、x-yビーム誘導システムは、虹彩表面周りでビームスポットを走査し得る。走査パラメータは、標的領域の大きさ、形状、および位置、各ビームスポット間のラインおよびスポット分離、ならびに所定の走査パターンを含み得る。コンピュータイメージングソフトウェアは、x-yイメージングシステムにより、捕捉され、および処理のためにコンピュータへ送信された虹彩画像に基づいて、標的領域の大きさ、形状、および位置を判定し得る。一旦処理されると、大きさ、形状、および位置のデータは、x-yビーム誘導システムを駆動するために走査プログラムに送信され得る。新たな虹彩画像は、所定の間隔で捕捉され、および処置にわたり、処理のためにコンピュータへ送信され得る。捕捉された複数の画像は比較され、およびそれらが虹彩位置における変化を示す場合、コンピュータイメージングソフトウェアは、x-yデルタを算出し、およびシフト座標を走査プログラムへ送信し、それは、今度は、走査位置におけるシフトを実行する。いくつかの処置では、2%ピロカルピン塩酸塩点眼液などの局所コリン作動性アゴニスト(たとえば、スイス、ジュネーブ、Alcon社による2%イソプトカルピン)は、処置前に標的眼内に投与されて瞳孔を収縮させ、虹彩表面を平坦にし、および処置中の虹彩のサイズおよび形状の変化を緩和し得る。各ビームスポット間のラインおよびスポットの分離は、処置前に予め決定され、および走査プログラムにプログラムされ得る。一部の場合には、スポットおよびラインの分離により、標的領域全体で、各ビームスポットを、その他のものと接している状態に配置される。走査パターンは、(スロー-x/ファスト-yおよびスロー-y/ファスト-xを含む)ラスタ、(輪部~瞳孔、および瞳孔~輪部を含む)らせん、ベクトル、ならびにリサージュ走査であり得る。
【0032】
一実施形態では、x-yビーム誘導システムは、レーザービームの制御された偏向により、虹彩表面周りでビームスポットを走査し得る。二次元におけるビームステアリングを利用する実施形態は、虹彩の二次元表面周りでビームスポットを駆動し得る。ビーム運動は、(たとえば、バーコードスキャナおよびガルバノレゾナントスキャナにおけるように)周期的であり、または(たとえば、サーボ制御型ガルバノスキャナにおけるように)自由にアドレス指定可能であり得る。二次元における例示的なビームステアリングには、二軸に沿って1つのミラーを回転させる(たとえば、1つのミラーが一列に沿って一次元で走査し、次いで、隣接するものに沿って一次元で走査するようにシフトする)こと、ならびに直交する軸上に取り付けられた、間隔が近い2つのミラーにレーザービームを反射させることが含まれ得る。
【0033】
機械的および非機械的いずれもの、制御されたビーム偏向のための方法が数多く存在している。例示的な非機械的方法には、ステア可能なエレクトロエバネセント光屈折器またはSEEOR、電気光学ビーム変調、および音響光学ビーム偏向が含まれ得る。例示的な機械的方法には、ピエゾ変換ステージを使用したナノポジショニング、マイクロ電気機械システムまたはMEMS制御可能なマイクロレンズアレイ、および制御された偏向装置が含まれ得る。機械的に制御された偏向装置には、モーションコントローラ(たとえば、モータ、検流計、圧電アクチュエータ、および超磁歪アクチュエータ)、モーションコントローラに取り付けられた光学素子(たとえば、ミラー、レンズ、およびプリズム)、ならびにモーションコントローラを管理するためのドライバボード(別名サーボ)または同様の装置が含まれ得る。光学素子は、種々の大きさ、厚さ、表面品質、形状、複数の光学薄膜を有しており、それらの選択は、ビーム径、波長、パワー、標的領域の大きさおよび形状、ならびに速度要件に依存し得る。いくつかの実施形態は、平面または多角形ミラーである光学素子を利用し得る。モーションコントローラの実施形態には、(トルク効率を管理するための)ロータおよびステータ、ならびに(システム性能を管理するための)位置検出器(PD)を含む検流計が含まれ得る。例示的なPDには、1つまたは複数の照明ダイオード、マスク、および光検出器が含まれ得る。ドライバボードはアナログまたはデジタルであり得る。走査モーション制御は、所望の角度または位相を実現するためにモーションコントローラへ、好適な電流を供給する1つまたは複数のロータリエンコーダおよび制御電子回路を備える場合もある。以上で開示された、導入された走査プログラムは、測定された走査および標的領域データを収集するように構成され得る。
【0034】
x-yビーム誘導システムは、虹彩前面のすべてまたは任意の部分へレーザースポットを適用することができる。虹彩前面の治療される部分は、以下の範囲である(これらは、包括的であり、ラインおよび/またはスポット分離により、残存組織がある場合にそれは考慮に入れない)、すなわち、1/4より大きい、30%より大きい、1/3より大きい、1/2より大きい、3/4より大きい。
【0035】
上記システムは、基準点から標的(たとえば、虹彩表面)までのZ距離を測定するための1つまたは複数のタイプの距離測定装置を含み得る。本明細書中で使用されるZ距離は、X-Y平面(たとえば、虹彩表面)に対して垂直な垂直方向で測られる。本明細書中で光出口220と表される構成要素は、レーザー光の出射が眼に到達することを可能にするために設けられ得る。光出口220には、ウィンドウ、レンズ(たとえば、ダイクロイックレンズ)、ミラー、シャッター、または他の光学部品が含まれ得る。いくつかの実現形態では、上記システムは、X、Y、またはZ方向において粗い調整を(手動で、または自動的なコンピュータ制御で)行うように構成され得るプラットフォーム制御部230を含み得る。プラットフォーム制御部230は、上記と同様の細かい調整を行うように構成されていてもよく、この細かい調整はコンピュータ制御により実現される。いくつかの実施形態には、
図1において構成要素240によって描かれている制御コンピュータおよび電源が含まれる。あるいは、制御コンピュータまたは電子回路、および必要な複数の電源の一部またはすべては、
図1中に描かれたようにシステム200内に含まれていなくてもよく、他の場所において分散させられ、または動作可能に、レーザーシステムに接続されるようにネットワーク化されていてもよい。距離測定装置の例には、三角測量、飛行時間測定等を行うシステムがあり、1つの具体的な例が光コヒーレンストモグラフィシステムであり得る。距離測定および/または追跡装置のさらなる記述は、本出願にわたり、たとえば、
図4Aの記述において行われている。
【0036】
患者位置決めシステム280は、患者支持体282を含むものとして簡略図に示されている。患者支持体の例には、フラットベッド、リクライニングチェア、カウチ、ヘッドまたはネックブレース等が含まれ得る。患者位置決めシステムの制御は、たとえば、X-Yアクチュエータ284および/またはZアクチュエータ286により実現することができ、これらのアクチュエータは、送達されるレーザー光との最適な位置合わせのために、それぞれの方向に患者を移動させるように構成され得る。
【0037】
本開示に含まれているのは、上述の色変更処置を行うための、レーザー光の改良された送達のための方法である。色変更処置を行うのになお効果的な、一貫した、臨床的に安全な量のレーザー光を送達する1つの方法は、上記システムがこの安全な量の観点からレーザー基準を決定することを含み得る。
【0038】
本開示に記載されているような、処置に使用されるレーザー設定は、いくつかのパラメータに基づいて上記システムにより決定され得る。1つのパラメータは、眼の眼底面における最大許容放射露光量限度(「MPE」)であり得る。MPEは、網膜を損傷から保護するための安全パラメータである。第2のパラメータは、眼の虹彩面における最小必要放射露光量(「MRE」)であり得る。MREは、閾値放射露光量値がストロマ色素除去のために実現されることを確実にするための有効性パラメータである。
【0039】
MPEは、国際安全規格に準拠して取得され得る。そうした規格の例には、(a)2021年に、米国国家規格協会(アメリカ合衆国、ニューヨーク州ニューヨーク)により、発行された「American National Standard for Ophthalmics - Light Hazard Protection for Ophthalmic Instruments (ANSI Z80.36-2021)」、および(b)2014年に、国際電気標準会議(スイス、ジュネーブ)により、発行された「Safety of Laser Products - Part 1: Equipment Classification and Requirements (IEC 60825-1)」が含まれる。
【0040】
いくつかの実現形態では、レーザー放射の波長(λ)は305nm~1350nm(両端含む)とすることができ、レーザー放射の単一パルス幅(t)は、100fs~5000s(両端含む)とすることができる。上述の規格の更新に基づいて変わり得る一例を示せば、これらのλおよびtの範囲内で、MPEは、以下のように算出され得る、すなわち、
(a)100fs<t≦10psの場合で、
(i)λ=700nmである場合、MPE=8.0mJ/cm
2である。
(ii)λ≠700nmである場合、MPE=8.0mJ/cm
2÷R(λ)であり、R(λ)は、別表1中の所定のλの場合の熱傷害重みづけ関数と定義される。
(b)10ps<t<3μsの場合で、
(i)λ=700nmである場合、MPE=20.0mJ/cm
2である。
(ii)λ≠700nmである場合、MPE=20.0mJ/cm
2÷R(λ)である。
(c)3μs≦t<5000sである場合、MPEは、以下の式(1)により、表される:
【数1】
ここで、
tは単一パルス幅(単位:秒)であり、
d
rは標準的な眼内のレーザービームの最小網膜像径(単位:mm)であり、
および
d
r≧d
r(max)である場合、d
r=d
r(max)であり、ここで、
3μs≦t<0.25sである場合、d
r(max)=3.4・t
0.5mmであり、
t≧0.25sである場合、d
r(max)=1.7mmであり、
d
r(max)≦0.03mmである場合、d
r=0.03mmである。
【0041】
MREは、主に眼の虹彩の前面に沿って位置する、二次的には、眼の虹彩のストロマ線維内により小さい密度で位置する素細胞(メラノサイト)内の複数の色素顆粒(複数のメラノソーム)を変性させることができる最小放射露光量値である。これらの色素顆粒の変性は、微小気泡が顆粒の表面で最初に発生する温度で、またはその温度周辺で発生する。これらの微小気泡は通常、約120℃で発生する。これらの微小気泡は、長い期間維持されなくても、または複数回繰り返される必要は無い。顆粒の変性を誘発するには、単一の曝露で十分であり得る。特定の細胞内で、これらの顆粒の臨界量が変性すると、その細胞は死滅し、虹彩内および周囲に存在しているマクロファージに信号を送り、細胞を消化し、虹彩の血管系を介してそれを除去する。
【0042】
メラノソーム表面の微小気泡のリアルタイム検出は、上記システムが、処置中に光学的に、または音響的に虹彩前面を監視することにより、実現され得る。光学微小気泡監視システムの一実施形態は、高速画像装置(たとえば、Stanford Computer Optics社(アメリカ合衆国、カリフォルニア州バークレー)による4 Quik E ICCDナノ秒高速カメラ)により、高速フラッシュ写真がそれを通して撮影され得るその標準的な40倍の顕微鏡対物レンズと、フレームグラバ(たとえば、BitFlow社(アメリカ合衆国、マサチューセッツ州ウォーバン)によるCyton-CXP4)と、3~5nsフラッシュ照射光源(たとえば、Spectra-Physics社(アメリカ合衆国、カリフォルニア州サンタクララ)によるVSL-337ND-Sパルス窒素レーザー)とを使用したビデオ顕微鏡を含み得る。光学微小気泡監視システムの別の実施例では、共焦点イメージングを使用して、発生させられた気泡水界面からの増加させられた光反射を光電子倍増管(たとえば、Hamamatsu社(日本、浜松市)によるH7827-001光センサモジュール)へ取り込む。上記システムは次いで、トランジェントレコーダ(たとえば、Licel GmbH(ドイツ、ベルリン)によるTR40-16bit-3U)を使用して出力データを記録し、および記録されたデータを、処理および解析のためにコンピュータ(たとえば、NI社(アメリカ合衆国、テキサス州オースティン)によるTPC-2230)に転送し得る。同様に、上記システムは、(たとえば、リアルタイムかつその場で(in-situ))処置セッション中に虹彩の電子顕微鏡検査を行うように構成された電子顕微鏡システムを含み得る。たとえば、電子顕微鏡システム(たとえば、Bruker AXS Microanalysis GmbH(ドイツ、ベルリン)によるQuantax 70)は、上述のように微小気泡を撮像し、および検出するように構成され得る。
【0043】
音響微小気泡監視システムの一実施形態は、ハイドロフォン(たとえば、Onda社(アメリカ合衆国、カリフォルニア州サニーベール)によるHFO-690光ファイバハイドロフォン)を含み得る。この場合もまた、出力データは、トランジェントレコーダ(たとえば、Licel GmbH(ドイツ、ベルリン)によるTR40-16bit-3U)を使用して記録され、ならびに処理および解析のためにコンピュータ(たとえば、NI社(アメリカ合衆国、テキサス州オースティン)によるTPC-2230)に転送され得る。
【0044】
送達され得る例示的なレーザーパワーの記述は、眼色における所望の変更をもたらす生体作用を引き起こすために使用される。よって、いくつかの実現形態では、レーザーパワーは、ストロマ色素内の同時の温度変化を引き起こすのに十分であり得、次いで、虹彩内のマクロファージに、ストロマ色素の少なくとも一部分を除去させる。このようにして、MREを決定する(たとえば、微小気泡が形成し始める露光量を検出する)ために、上記システムにより、虹彩温度の監視が行われ得る。いくつかの具体的な実現形態では、レーザーパワーの最大許容露光量の20倍未満への低減が、ストロマ色素の変性の緩和、およびその結果生じる、眼色の変更の緩和を引き起こさないように、レーザーパワーは最大許容露光量の少なくとも20倍である。ストロマ色素における十分な温度変化を引き起こすためのレーザーパワーの送達を容易にするために、いくつかの方法は、ストロマ色素を含む、虹彩の少なくとも一部分の温度を温度センサにより判定する工程を含み得る。一部の実施形態では、温度センサは、虹彩に対して非侵襲的なタイプのものであり得る。温度センサの例には、眼を撮像する受動型赤外線検出器などの、より直接的な温度センサ、または微小気泡形成(たとえば、約120℃で発生することが予想され、よって、その閾値を超える温度を近似したもの)を示す音響信号(音または圧力波)を検出する音響モニタリングを利用した、より間接的な温度センサが含まれ得る。虹彩内からの熱伝達は、眼の表面における局所的な加熱として現れ得る。予測された、または事前に知られている熱パターンのコンピュータモデリングは、測定された熱パターンと関連付けられて、活性化されたストロマ色素における熱パターンを導き出し得る。たとえば、赤外線イメージングシステムを利用する実施形態では、受け取られた赤外線放射は、上記イメージングシステム、またはそこからデータを受け取る接続されたコンピュータにより、虹彩の局所温度に変換され得る。このような変換は、黒体近似または他の同様の方法を使用して行われ得る。
【0045】
MREの特定を複雑にしている要因の1つは、それが、放射エネルギーの波長と、メラノソームの色値および/または濃度との間の吸収係数に基づいて1つのメラノソームと次のものとの間で異なり得るという点である。特定のメラノソームについてのMREが低すぎる場合、微小気泡は形成されず、メラノソームは変性させられず、そのメラノソームは消化および除去されるものでない。逆に、特定のメラノソームについてのMREが高すぎる場合、メラノサイト内に発生させられる熱が多すぎることになり、複数のメラノサイトのアブレーションが生じ、それらを破裂させ、眼の前房内にメラノソームを放出し、隣接組織内の炎症、およびそれに関連した悪い状況が潜在的に引き起こされる。特定のメラノソームについてのMREはしたがって、メラノソーム毎に適切でなければならない。
【0046】
例として、3つの色値/濃度、すなわちタン色、ミディアムブラウン色、およびダークブラウン色を有するメラノソームを備えた虹彩を処置するためにレーザーシステムにより、532nm波長が発生され得る。ダークブラウン色のメラノソームを変性させるのに必要なMREは、タン色およびミディアムブラウン色のメラノソームを変性させるのに必要なMREよりも低くなる。(というのは、波長と、ダークブラウンの色値/濃度との間の吸収係数が、より高いからである)。ミディアムブラウン色のメラノソームを変性させるのに必要なMREは、ダークブラウン色のメラノソームを変性させるのに必要なMREよりも高くなり(というのは、波長と、ミディアムブラウンの色値/濃度との間の吸収係数が、より低いからであり)、ミディアムブラウン色のメラノソームを変性させるのに必要なMREはタン色のメラノソームを処置するのに必要なMREよりも低くなる(というのは、波長と、ミディアムブラウンの色値/濃度との間の吸収係数が、より高いからである)。また、タン色のメラノソームを変性させるのに必要なMREは、ミディアムおよびダークブラウン色のメラノソームを変性させるのに必要なMREよりも高くなる(というのは、波長と、タンの色値/濃度との間の吸収係数が、より低いからである)。したがって、この虹彩のストロマメラノソームの変性は、3つの異なるMREを必要とすることになる。
【0047】
メラノソーム表面の微小気泡のリアルタイム検出は、以上の例における各MREを知らせる。一実施形態では、当初の放射露光量値は微小気泡を誘発するには低すぎるが、微小気泡が最初に検出されるまで徐々に増加させられる。これを「MRE I」と呼ぶことにする。次いで、虹彩全体がMRE Iを使用して処置され得る。この処置は複数のダークブラウン色のメラノソームを変性させ、それらの複数のメラノサイトは、次の3~4週間にわたり、消化され、および除去される。4週間後には、処置プロトコルが繰り返され得る。複数のダークブラウン色のメラノソームの大半またはすべてが除去されるため、第1の微小気泡が、より高い放射露光量値で検出される。これを「MRE II」と呼ぶことにする。次いで、虹彩全体がMRE IIを使用して処置され得る。この処置は複数のミディアムブラウン色のメラノソームを変性させ、それらの複数のメラノサイトは、次の3~4週間にわたり、消化され、および除去される。4週間後には、処置プロトコルが繰り返され得る。複数のミディアムブラウン色のメラノソームの大半またはすべてが除去されるため、第1の微小気泡が、より高い放射露光量値で検出される。これを「MRE III」と呼ぶことにする。次いで、虹彩全体がMRE IIIを使用して処置され得る。この処置は複数のタン色のメラノソームを変性させ、およびそれらの複数のメラノサイトは、次の3~4週間にわたり、消化され、および除去される。複数のストロマメラノサイトが虹彩前面上に留まっている場合、処置はMRE IIIを使用して処置され得る。
【0048】
メラノサイトが虹彩ストロマ内に残っている場合、それらは、後方散乱させられた青または緑色光を吸収し、ストロマ線維の灰色をよりよく見えるようにし、灰-青色または灰-緑色に知覚される虹彩色が生成される。多くの患者はこの知覚される色に満足している。というのは、灰色は眼の色値を増加させ、それがより明るく見えるようにするからである。より飽和した青または緑色を好む患者の場合、処置はMRE III値で、しかし、虹彩前面から内部ストロマへレーザービームウェストが移動させられて繰り返され得る。この処置は、虹彩ストロマ内に残っているメラノサイトを変性させ、後方散乱させられた青または緑色光の吸収が無くなるか、または減少させる。
【0049】
リアルタイムの微小気泡検出には、高感度の方法および装置が使用されるべきである。検出の感度が十分でなく、微小気泡が最初に出現した際に検出されない場合、放射エネルギーが高すぎることになり、メラノサイトのアブレーション、および前房組織の炎症を引き起こす。「アルゴンレーザー線維柱帯形成術」(「ALT」)および「選択的レーザー線維柱帯形成術」(「SLT」)という2つのレーザー虹彩処置の放射照射値は、「複数のシャンパンバブル」が線維柱帯(「TM」)上で見えるようになるまで放射エネルギーを増加させることにより確立され、次いで、わずかに低減される。これらのシャンパンバブルは、複数の微小気泡よりもかなり大きく、それらは、より高い放射露光量値で発生する。ALTおよびSLTの処置は虹彩色素上皮に由来し、およびTMに留まっているメラノサイトの散在するクラスタに限定されるので、過剰な放射露光量値の送達、およびこれらのクラスタのアブレーションは、眼に深刻な炎症または損傷を引き起こすのに十分な量のメラノソームを放出する可能性は低い。しかし、過剰な放射露光量値、およびストロマメラノサイトのアブレーションは、深刻な炎症を引き起こす場合があり、理論的には、長期的な損傷を引き起こす場合がある。
【0050】
一実現形態では、以下の例示的なMRE範囲が、以下のメラノソーム色値/濃度毎に与えられ、ここで、λ=532nmであり、t=11.475nsであり、パルス繰り返し周波数(prr)=135kHzであり、虹彩面に対する、ビームの入射角(θi)=0°である。
【0051】
【0052】
上記MRE範囲は上述のレーザー放射パラメータ固有のものであるが、これらのパラメータにおける変化により変動し得る。しかし、MPEを決定する方法は、関連する複数のパラメータを考慮に入れる。したがって、複数のMRE範囲はこれら複数のパラメータを、それらがMPEの倍数で表された場合、必然的に考慮に入れることになる。
【0053】
λ=532nmであり、およびt=11.475nsである場合に、別表1に示された重みづけ係数としてR(λ)=2.10を使用すれば、MPEは9.52mJ/cm2(すなわち、20mJ/cm2/2.10)である。例示的な実施形態において使用されるパラメータのMPEはしたがって、約9.52mJ/cm2であり、MREは、以下のMPE倍数により、表され得る。
【0054】
【0055】
以上のMPE倍数によって示されるように、MREはMPEよりもかなり高い。虹彩は、過剰な放射露光量に対する感度がはるかに低く、過剰な放射虹彩露光量の影響はいかなる場合においてもそれほど深刻でない。さらに、眼底のメラノサイト(「網膜色素上皮」すなわち「RPE」として知られている)は一般に、前部虹彩のものよりも濃く、密度が高く、よって、眼底内の吸収係数は、より高い。さらに、水晶体は眼底にビームを集光し、それにより、眼底におけるそのエネルギー密度を増加させる。しかしながら、MREは、ビームが誤って瞳孔(または虹彩内のいずれかの他の開口)を通って眼底へ進んだ場合に、MPEを超えることなく、実現されなければならない。
【0056】
ほとんどの場合、瞳孔を通して発射され、および眼底に焦点を合わせたパルスは「パルス列」を表す。パルス列は、連続する2つ以上のパルスが標的平面に完全に、または部分的に重なる場合に発生する。これは、上記処置中、θiが0°または0°周囲に留まる好ましい実施形態の場合に特にあてはまる。(想定通り)ビームが上記処置中に移動した場合にも、水晶体は眼底上の単一のスポットにパルスを集束させる。
【0057】
具体的な虹彩走査パターンにかかわらず、ビーム経路は、瞳孔と虹彩との間を循環する可能性が高い。虹彩のサイクルは、独立したパルス列に瞳孔のサイクルを分離するのに十分な持続時間を有するものである可能性が高い。これらの状況下では、パルス列における最大パルス数(以下、Nで表される)は、処置前の瞳孔の径(単位:mm)をスポット分離(単位:mm)で割ったものになる。施術者が、2%ピロカルピンを処置前に3回投与する、以下の好ましい実施形態に従った場合、瞳孔径は≦1.0mmになるはずである。(1/e2での)スポット径がたとえば0.05mmであり、スポット分離が0.05mmである(すなわち、複数のスポットが接している)場合、N=1/0.05=20パルスとなる。特に別途示されない限り、1/e2が、ビームウェストを定義するために使用される。
【0058】
パルスがパルス列の構成要素である場合、以上で算出されるMPEは、以下のように算出される減衰係数C
Pで乗算される場合もある。
(a)t≧3μsである場合、C
Pは、以下の式(2)で表される。
【数2】
ここで、
Nはパルス列内のパルスの数であり、
tは単一パルス幅(単位:秒)であり、
tpは単一パルスの周期(単位:秒)であり、
Tは、パルス列の持続時間(単位:秒)であり、値N×tpに等しく、
Dは、パルスのデューティサイクルであり、t/tpに等しく、
dr(t)は、持続時間tのパルスのdr(単位:秒)であり、最大dr(t)=3.4t
0.5であり、
dr(T)は、Tについてのdr(単位:秒)であり、最大dr(T)=3.4T
0.5である。
(b)t<3μsである場合には、MPEが単位J/cm
2で表されるとき、C
Pは以下の式(3)で表される。
【数3】
(c)C
P>1.0である場合、C
Pは1.0に設定する。
【0059】
よって、以上に基づいた方法は、上記ストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらす、最大許容露光量の100倍未満の露光量の送達のためのレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、ストロマ色素へ送達するレーザーパワーを、トラッキングと同時にまたは順次、決定するシステムを含み得る。上記ストロマ色素の除去は好ましくは、ストロマ色素のマクロファージ消化の開始により行われる。しかし、いくつかの実現形態では、除去は、ストロマ色素のアブレーションによりもたらされ得る。通常、アブレーションは、マクロファージ消化を開始するために使用されるものよりも高いレーザーパワーによりもたらされる。
【0060】
レーザー基準には、レーザーシステムの任意の設定、たとえば、パルス当たりのエネルギー、スポットサイズ、パルス持続時間、パルス幅、繰り返し周波数、ビームプロファイル、ビーム角度、ビーム位置等が含まれ得る。よって、上述された露光量に対する制限を満たすようなレーザー基準が複数組、存在する場合があることが想定される。上記倍数は一例であるが、露光量がたとえば、MPEの50倍未満、MPEの75倍未満等であり得ることがさらに想定される。
【0061】
いくつかの実現形態では、上記の差は、ビームの発散角によるものである(すなわち、焦点が合っていないビームは、眼底において、より低いパワー密度をもたらす)場合がある。種々の実現形態は、少なくとも一部分が虹彩の後方で(後で)発散して、虹彩の前方で(手前で)収束し得るガウシアンビームの生成を含み得る。したがって、焦点面(すなわち、ビームウェストの位置)は、虹彩自体内にあるが、任意には、さらに虹彩の手前にあるなど、この範囲内のどこにあってもよい。本開示により、ストロマ色素においてレーザーパワーの焦点を合わせることに言及される場合、これは、上記レーザーパワーが、虹彩の前面または後面を含み得る特定の位置において、または虹彩、もしくはその中のストロマ色素層内の特定の細胞層において焦点が合わせられ得ることを意味する。
【0062】
ビームの発散、ならびにビームウェストの大きさおよび位置が、標的におけるスポットサイズを設定する。たとえば、ビームウェストが標的にある場合、スポットサイズはビームウェストである。しかし、ビームウェストが標的の手前または後にある場合、スポットサイズは、ビームの収束または発散に基づいて大きくなる。スポットサイズは、鋭利なエッジを有していないので、測定は、具体的な測定規約により、定義されなければならない。例示的な規約は、FWHM、1/e、1/e2、D4σ、10/90または20/80ナイフエッジ、およびD86を含む。本明細書中で特に別途示されない限り、スポットサイズは、1/e2規約により、定義されるようなスポット幅を表す。いくつかの方法は、患者の眼の虹彩のストロマ色素へ送達するためのレーザー光のスポットサイズを決定する工程を含み得る。この決定は、ストロマ色素への、4~70ミクロン(両端含む)のスポットサイズを有するレーザー光の送達をもたらす、レーザー基準の組を取得する工程を含み得る。レーザー基準の組のうち利用可能な組から、特定のレーザー基準が、所望のスポットサイズを有するレーザーを生成するようにレーザーシステムを制御するように選択され得る。レーザーシステムは、上記スポットサイズでレーザー光を送達し、次いでレーザー光を送達するように設定され得る。いくつかの実施形態では、上記システムは、スポットサイズが4~50、10~60、20~30、25~30、20~60、または30~60ミクロンであり得ることを決定し得る。このような複数のスポットサイズは、少なくとも1つの正レンズを利用して作成され得る。虹彩面において有効なフルエンスを送達するが、眼底においてMPEに準拠するために、そうした高い発散角の形成により、ピークフルエンスの90%~100%がその中で実現されるその焦点範囲として本明細書中で定義される短い焦点深度(「DOF」)がもたらされる。DOFは、スポットサイズおよび関連した発散角のみならず、ビームの波長にも依存する。一般に、他の事情が同じならば、波長が長いほど、DOFは長くなる。よって、本開示は、レーザーパワーと組み合わせたスポットサイズが、虹彩内の同時の温度変化(および/または考えられる音響効果)をもたらし、それにより、患者にとって安全でありながらストロマ色素のマクロファージ消化の開始をもたらすのに十分であるように選択され得ることを想定している。いくつかの実現形態では、レーザーシステムのスポットサイズは、(処置を行うが、眼底における露光量がなおMPE未満であるようにするために)レーザーパワーが本明細書中で記載されたように調整された状態で設定される(およびほぼ一定である)場合がある。
【0063】
上記はビームウェスト/スポットサイズの決定に好適な1つの実施可能な実施例として記載されているが、これは、算出の詳細が個々の処置計画に応じて変わり得るので、限定的なものとみなされるものでない。
【0064】
MPEを超えることなく、MREを実現するために、相対的に高いビーム発散角が使用され得る。その結果、ビームの、その焦点面(w0)における半径は、眼底面(w(z))におけるビームウェストの半径と比較して相対的に小さくなり得る。
【0065】
式(4)は、w(z)
2のw
0
2に対する比(S)を表す:
【数4】
ここで、分母0.02は、λ=700nmの場合の、J/cm
2に換算された基準MPE20mJ/cm
2であり、
R(λ)は、別表1からの、λの場合の熱傷害重みづけ関数である。
【0066】
例示的な実施形態からのレーザーパラメータを使用すれば、R(λ)=2.10である。式(4)はよって、以下のS範囲を表す。
【0067】
【0068】
患者/処置毎のw0の変更の必要性を回避するために、好ましい実施形態では、MREすべてについてw0がMPEを満たすように、予想される最高のMREにw0を設定する。上記例では、予想される最高のMREは、0.850mJ/cm2である。これにより、Sが89.25になり、これは、最高のMREがMPEを超えないようにするために、w(z)2が少なくとも、w0
2の89.25倍でなければならないことを意味している。
【0069】
Sからw
0を求めるために、以下の式(5)を使用し得る:
【数5】
ここで、
λ=0.000532mm(532nmから換算)であり、
zはw
0からw(z)までのmm単位の距離であり、
nはビームが通る媒質の屈折率である。
【0070】
虹彩面から眼底面までの平均zとして20mmを、ならびに眼の房水および硝子体液のnとして1.336を使用すれば、式(5)により、w0=0.0164mmとなる。
【0071】
以下の式(6)が、w(z)を求めるために使用され得る:
【数6】
【0072】
式(6)により、w(z)=0.15519155mmとなる。
【0073】
w0およびw(z)がビームの、そのウェストでの、および眼底での半径であることが想起される。したがって、ビームの、そのウェストでの(1/e2としての)直径(d0)は0.0328mmであり、およびビームの、眼底での(1/e2としての)直径(d(z))は0.31038mmである。
【0074】
ビームのDOFは、そのビームウェストからの合計距離(+/-z)である。距離zは、以下の式(7)で表される:
【数7】
ここで、
S=1/[ウェストフルエンスの所望の割合]であり、
λ=0.000532mmである。
【0075】
DOFは、ビームのフルエンスがビームウェストにおけるフルエンスの少なくとも90%である、すなわちS=1/0.9である、ビーム軸の部分として定義され得る。これと、開示された例からのその他のレーザーパラメータとを使用すれば、式(7)により、z=0.707312185mm、およびDOF=1.41462437mmとなる。
【0076】
この比較的短いDOFは、初期焦点面の位置を特定し、初期焦点面に対する所望の位置にビームウェストを配置するためのかなり高い分解能の距離測定と、焦点面に対するビームウェストの所望の位置を維持するためのかなり高い分解能のオートフォーカスとが必要となる。これらの高分解能システムは本明細書中で述べられている。一実現形態では、ビームウェストは、ストロマ色素層内に、または虹彩前面のやや前方に位置していてもよい。
【0077】
図3は、1つまたは複数の実施形態による、虹彩のマッピングにおける使用のためのレーザーシステム210およびイメージセンサ310の簡略図を示す。適切なレーザーパワーの決定は、ストロマ色素層の領域330、332、334内の不均一性による、送達されたレーザーパワーの吸収におけるばらつきに依存し得る。このようなばらつきはたとえば、ストロマ色素の密度のばらつき、ストロマ色素細胞の大きさのばらつき、ストロマ色素の種類および組成等により、もたらされ得る。したがって、ストロマ色素がより高い吸収係数を有する虹彩の領域は、所定のレーザーパワーに対して、より高い温度に(または、より速く目標温度に)到達する。これらの差は、考慮されない場合、不均一な色変更を、または場合によっては眼に対する損傷ももたらし得る。この問題に対処するために、開示された方法のいくつかの実現形態は、虹彩の画像を生成するために上記処置前に、コンピュータ312に、動作可能に接続されたイメージセンサにより、虹彩を撮像する工程を含み得る。イメージセンサの例には、照射光源320とともに使用されるCCD、CMOS、またはカメラを含まれていてもよく、センサの波長範囲は、照射光源の波長を含んでいる。例示的な波長には、近および中赤外、可視光、または処置レーザービームの具体的な波長が含まれる。実施形態には、捕捉された画像からデジタルカラーモデルを作成し、上記モデルに基づいて処置波長に対してストロマ色素係数をマッピングし、またはその他のやり方で解析することができるソフトウェアプログラムも含まれ得る。例示的なデジタルカラーモデルには、RGB(赤色-緑色-青色の略)、HSI(色相-彩度-強度の略)、HSL(色相-彩度-輝度の略)、HSV(色相-彩度-明度の略)、CMY(シアン-マゼンタ-イエローの略)、およびYIQ(輝度-同相クロミナンス-直交クロミナンスの略)が含まれる。
【0078】
イメージセンサの、既存のレーザーシステムとの一体化を容易にするために、イメージセンサは、虹彩から反射された入射光を、光学系の反射または屈折側へ逸らし、出射レーザー光が処置のために虹彩表面へ光学系を介して通ることを可能にする一方で、それをイメージセンサへ誘導するためのダイクロイック光学系314(たとえば、ダイクロイックレンズ、ミラー、またはプリズム)を導入し得る。このような実施形態は、レーザーシステムと同じ光軸上に光が集光され得るという利点を有する。これは、レーザーシステムの形状に対するマッピングの生成の単純化および一層の正確化いずれもの利点を有する。というのは、それが、軸外イメージセンサを考慮する必要性を回避できるからである。
【0079】
上記画像に基づいて、虹彩のマッピングが上記システムにより、生成されてもよく、虹彩のマッピングは、虹彩のストロマ色素において、処置波長の異なる吸収係数に対応する複数の領域を含んでいてもよい。
図3に示されるように、領域330、332、334が、異なる吸収係数を示すために、描かれている。マッピングはたとえば、撮像された虹彩のピクセルまたは複数のボクセルであって、各ピクセルまたはボクセルが、対応する算出された吸収係数を有する、ピクセルまたはボクセルを有する2D(または3D)データであり得る。マッピングは、ピクセル/ボクセルレベルにおいて記憶されなくてよいが、より大きな領域(たとえば、同様の吸収係数を有し得るピクセル/ボクセルを(たとえば、ウォーターシェッドアルゴリズムを利用して)組み合わせる)の観点でのものでもよい。他の実施形態では、領域は、隣接するピクセル/ボクセルの2D(または3D)補間を行うことにより、サブピクセル/ボクセルレベルで特定され得、ピクセル/ボクセルにわたる、吸収の連続した関数が提供される。
【0080】
上述したように、マッピングを生成する工程は、虹彩の様々な領域における、レーザー光の波長での吸収係数を算出する工程を含み得る。本開示は、吸収係数を算出するための数多くの実施形態を想定している。たとえば、イメージセンサ(またはそれにより得られたデータ)は、虹彩の画像内の所定の波長における吸収率または反射率を測定して、吸収係数を決定し得る。標的ストロマ色素内の温度を増加させ、それにより、標的色素を除去するのに必要な生体反応を開始するのに必要なフルエンスは、上記色素内のレーザー光のエネルギーの吸収の直接的な関数である。よって、所定の波長について、特定の領域におけるストロマ色素の吸収係数を決定することにより、システムは、色素除去に必要なレーザーパワーを正確に決定し、送達し得る。
【0081】
上記システムは、ハイパースペクトルイメージング(「HSI」);レーザー波長に適切なフィルタを使用したカラーモデリング(たとえば、RBG、HSI、HSL、HSV、CMY、およびYIQ)による走査型電子顕微鏡(「SEM」)画像に使用されるものなどの、吸収係数を決定するための種々の装置を含み得る。
【0082】
色素濃度をマッピングするために、様々な種類の光、たとえば赤外光または可視光がシステムにより使用され得る。いくつかの実現形態では、虹彩画像の彩度チャネルは、ストロマ色素濃度の非常に良好な推定を与え得る。他の実施形態では、システムは、画像の青または緑色チャネルを使用し得る。さらに他の実施形態では、システムは、ストロマ色素の近似のために、単色赤外光を使用し得る。
【0083】
具体的には、いくつかの実施形態では、画像の反射率は、画像内の彩度の逆数に基づく。システムは、ピクセル単位で、または画像のより広い領域にわたり、反射率、彩度等を決定し得る。たとえば、イメージセンサでの、受け取られた光の強度の解析に基づいて、システムは類似の強度の複数の領域(たとえば、1%以内、5%以内、10%以内等の)に虹彩を分割し得る。システムは、その領域内の光の送達の箇所すべてについての吸収係数を決定するために、これらの領域の平均反射率および/または彩度を判定し得る。
【0084】
吸収係数を決定するために、より正確な測定を得ることを支援するため、いくつかの任意の特徴が開示されている。第1に、照射光源は、レーザーシステムにより、送達される波長と同じ(またはほぼ同じ、たとえば5%または10%以内の)波長を有し得る。たとえば、計画されている処置が1064nmレーザーを導入している場合、照射光源は、その波長をカバーする赤外光を供給し得る。同様に、レーザー波長が532nm(緑色)となる場合、照射光源は緑色光を供給し得る。さらに、特定の実現形態では、このイメージングは、レーザー光および/または照射光源に対応する波長を通すように構成されたバンドパスフィルタを介してイメージセンサでストロマ色素から受け取られた反射光をフィルタリングすることをさらに含み得る。なお他の実現形態では、システムは、照射光源において同様のバンドパスフィルタを、たとえば、そのような光源が、必要であるよりも広帯域である場合に含み得る。
【0085】
レーザーシステムは、決定されたマッピングに基づいてレーザーパワーを変えるためのパワー変調器318を含んでいてもよい。例示的な光パワー変調器には、音響光学変調器、電気光学強度変調器、電界吸収型変調器、半導体光変調器、および液晶変調器が含まれ得る。例示的な音響光学変調器には、レーザービームを部分的に回折させる音波を発生させる変換器が含まれ得る。例示的な電気光学強度変調器の構造的な実施形態には、2つの偏光子間にポッケルスセルが含まれ得る。ポッケルスセルはビームの位相を変調し、2つの偏光子は位相変調を強度変調に変換する。ポッケルスセルは、単一の結晶、または2つ以上の結晶を、そのパワー要件を低減させるために有し得る。2つの偏光子は、マッハツェンダ変調器の場合におけるように干渉計により置き換えられ得る。例示的な電界吸収型変調器の構造的な実施形態には、フランツケルディッシュ効果で動作する1つまたは複数の半導体デバイスが含まれ得る。そのような変調器は、導波管内の光に作用する場合があり、および光ファイバに結合され、またはレーザーダイオードなどの他のコンポーネントとともにチップ上に配置されて電気通信送信器を形成し得る。強度変調器として使用される例示的な半導体光増幅器には、駆動電流の有無にかかわらず、半導体光増幅器が含まれ得る。駆動電流がない場合、増幅器は、負の利得としてある程度の減衰をもたらす。ポンプ電流が供給されると、減衰が正の利得として実現される。例示的な結晶変調器は、液晶材料に電圧を印加して光の偏光を変調し、偏光子を加えることにより、強度変調を得る。
【0086】
図4は、1つまたは複数の実施形態による、虹彩の複数の領域へ可変レーザーパワーを送達する、
図3のシステムを示す。本明細書中で記載されたように導出されたマッピングにより、パワー変調器は、異なる吸収係数を有する複数の領域を考慮したレーザーパワーの送達を制御し得る。レーザー光が虹彩の標的領域を走査する際、異なる吸収係数を有する領域に到達すると、システムは、レーザーパワーを相応に調整するようにパワー変調器を制御し得る。たとえば、システムは、より高い吸収係数の領域が、より低い吸収係数の領域よりも低いレーザーパワーを受け取るように、マッピングに基づいてレーザーパワーを設定し得る。これは、領域330、332、334に対応する例示的なレーザービーム420、422、および424により、描かれている。システムは、上述されたパワー変調器を利用してそうしたビームにより、伝達されたレーザーパワーを変調し得る。
【0087】
システムは、ストロマ色素がほとんど存在しないか、または全く存在しない場合にビームを遮断するように構成されてもよい。ビーム遮断は、レーザーを非活性化すること、プリズムまたはミラーなどの光学系を使用してビームダンプ内にビームを偏向させること、または本出願書類中の他の箇所に開示されたエネルギー変調器を使用して無症状のレベルまで放射パワーを低減させることを含むいくつかのやり方で実現され得る。レーザーを非活性化することは、場合によっては、再活性化時の時間遅延および他の潜在的な問題が理由で利用されないことがあり得る。
【0088】
一実施形態では、前部虹彩領域は、前部虹彩を照射し、CCDまたは他のカメラを使用して虹彩前面の画像を捕捉し、画像解析ソフトウェアプログラム(たとえば、Thermo Fisher Scientific Inc.(アメリカ合衆国、マサチューセッツ州ウォルサム)によるCelleste Image Analysis Software)により、コンピュータへ画像を送信し、色素沈着領域を特定し、色素沈着領域の座標範囲を備えるルックアップテーブルを生成し、ならびにビーム誘導ソフトウェアおよびエネルギー妨害または変調ソフトウェアと連携して、色素沈着領域外側のどこでも処置ビームを遮断することにより、自動的に遮断するために選択され、または選択解除される。
【0089】
代替的な実施形態では、前部虹彩領域は、システムが、前部虹彩を照射し、CCDまたは他のカメラにより、静止または動画像を捕捉し、ユーザインタフェースタッチスクリーン上に画像を表示し、遮断または照射したい領域の輪郭を描くように施術者に促し、輪郭が描かれた領域が処置されるか、または遮断されるかを施術者が(たとえば、同じスクリーン上に表示されたGUI上のアイコンを介して)選択することを促すことにより、手動で、または自動的に遮断するために選択され、または選択解除され得る。表示コンピュータおよびソフトウェアは、施術者が描写した輪郭をディスプレイ上に表示し、輪郭の座標範囲を備えるルックアップテーブルを生成し、ならびにビーム誘導ソフトウェアおよびエネルギー妨害または変調ソフトウェアと連携して、輪郭が描かれた領域の内部の、または(選択されたように)外部のどこでも処置ビームを遮断し得る。
【0090】
これらの選択的ビーム遮断の実施形態の利点の1つは、それなしでは、色素が除去された後、虹彩前面を再処置することにより、虹彩ストロマ内からのさらなるストロマ色素が除去され、それが、本明細書中で述べられているように、彩度を増加させる可能性を増加させ、それは患者の好みに反するものである場合がある。
【0091】
開示された方法のいくつかの実施形態には、眼内の標的位置への正確な距離を提供するために、光学追跡システムの一部として距離測定器を利用することを含み得る。たとえば、距離測定器は、虹彩と、光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定し得る。基準コンポーネントの例には、レーザーシステム内の最後の光学コンポーネント(たとえば、患者に最も近いウィンドウもしくはレンズ)、ミラーもしくはガルボ、または距離測定のための基準点を提供するために既知の位置にあるレーザーシステム内の任意の他のコンポーネントもしくは位置が含まれ得る。
【0092】
判定された距離に基づいて、上記システムは、虹彩の前面と後面との間で、除去の標的とされたストロマ色素において、または開示された考えられる複数の焦点平面のいずれかにおいて実質的に焦点が合っている状態に留まるようにレーザービームの焦点を移動させるように制御し得る。距離測定器の例には、たとえば、三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、または光センサが含まれ得る。
【0093】
三角測量は、距離測定のためにレーザーを利用し得る。例示的な三角測量方法の構造的な実施形態には、3つの要素、すなわち、イメージング装置、照射光源、およびさらなるイメージング装置またはさらなる照射光源が含まれ得る。(複数の)照射光源には、虹彩、強膜、または患者の他の野に光画像を投影する画像投影器が含まれ得る。例示的な光画像は円および線を含む。一実施形態では、レーザービームは、標的の表面上の箇所(たとえば、虹彩、強膜、または患者の顔上の特定の他の箇所)を照射し得る。照射された箇所からの拡散または鏡面反射は、レーザー光源、標的箇所、および検出器が三角形を形成するようにレーザー光源から所定の距離に配置され得る位置感応型検出器により、監視され得る。標的へのビーム入射角が0°であり、位置感応型検出器が、標的への、検出器の入射角を特定し、およびレーザー光源と検出器との間の距離が分かっていると仮定すれば、レーザー光源から標的までの距離は、適切な三角関数により、判定され得る。
【0094】
飛行時間またはパルス測定は、測定装置から標的まで、および再び戻ってくる放射パルスの飛行時間を測定し得る。放射の例示的な形態には、光(たとえば、近赤外レーザー)および超音波が含まれる。例示的な飛行時間装置には、放射光源、放射センサ、およびタイマが含まれる。飛行時間は、時限パルス、または振幅変調波の位相シフトに基づいて測定され得る。時限パルスの場合、放射の速度は既に分かっているので、タイマは各パルスのターンアラウンドタイムを測定して距離を判定し、ここで、距離=(放射の速度×飛行時間)/2である。
【0095】
位相シフト方法は、強度変調されたレーザービームを利用し得る。強度変調の位相シフトは飛行時間に関係し得る。干渉計法と比較すれば、その精度はより低いが、それは、より大きな距離にわたり明確な測定を可能にし、拡散反射を有する標的により好適である。小さな距離については、超音波飛行時間法が使用される場合があり、装置は、距離測定自体のためではなく、超音波センサの方向を確立するための照準レーザーを含み得る。
【0096】
周波数変調方法には、たとえば反復的な線形周波数ランプを備えた、周波数変調されたレーザービームが含まれ得る。測定されるべき距離は、送信された、および受信されたビームのビート音を介して測定され得る周波数オフセットに変換され得る。
【0097】
干渉計は、使用される光の波長よりもはるかに良好な精度での距離測定のために実現され得る。
【0098】
距離測定のための種々のシステムは、たとえば少なくとも10~20μmの分解能で距離を判定する、非常に正確な測定をもたらし得る。そうしたシステムはたとえば、時間領域光コヒーレンストモグラフィシステムまたはスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィシステムを含み得る。
【0099】
開示された距離測定を利用すれば、いくつかの方法は、判定された距離における変化、およびビームの焦点における対応するシフトに応じてレーザーシステムの焦点を自動調整することを含めるように同じ構造を利用し得る。レーザーシステムと通信するコンピュータシステムは自動的に、レーザーシステムの焦点を自動調整し、周期的な間隔で(たとえば、約1kHz、10kHz、100kHz等で)虹彩のストロマ色素への距離を測定し得る。
【0100】
レンズの焦点調整のための例示的な方法は、手動で、または電子的に、(a)1つまたは複数の焦点レンズの位置を移動させる工程(たとえば、ビームアクセスに沿って移動させるためにモータステージ上に取り付けられたレンズ)、(b)1つまたは複数の焦点ミラーの位置を、(たとえば、ガルボビームステアリングシステムに第3のミラーを追加することにより、)移動させる工程、(c)1つまたは複数の焦点レンズまたはミラーの形状を変更する工程、(d)音響光学または電気光学装置により、ビームを偏向し、または屈折させる工程、または(e)静電または電磁レンズまたはミラーを使用して、ビームの焦点位置を移動させる工程を含んでいる。
【0101】
z軸に沿った、患者の頭部および眼の移動は、正確な距離測定および自動焦点調整を阻止し得る。頭部が支持され、首の筋肉が緩み得るように患者を位置付けることにより、z軸方向の頭部位置の変化が最小にされ得る。
【0102】
虹彩前面の、トポグラフィの変動も、正確な距離測定および自動焦点調整を阻止し得る。これらのばらつきは主に、3つの要素、すなわち虹彩の傾斜、虹彩ひだ、および虹彩窩により生じる。虹彩の傾斜は、自然に発生する現象である。その結果、虹彩面は、ビーム軸に対して垂直な状態で存在することはほとんどない。虹彩面は、その水平および垂直軸いずれにも対して傾斜し、および最大5°傾斜する場合があり、その結果、(水平方向の虹彩径が約11mmと仮定すれば)虹彩の一方の縁部から他方の縁部まで最大700μmのz軸方向の変動が生じる。虹彩傾斜系は、この虹彩表面の変動を大幅に低減させ、または除去するために利用され得る。
【0103】
虹彩ひだも、自然に発生する現象である。虹彩が散大するにつれ、それは、瞳孔に対して同心円状に、およびそれから離れる方向にドレープのように折り重なる。これらひだは、虹彩トポグラフィにおける大幅なz方向の変動をもたらし得る。虹彩ひだを大幅に低減させ、または除去するために、いくつかの方法は、局所縮瞳剤溶液、たとえばピロカルピン点眼液の導入を含み得る。一実施形態では、患者には、上記処置中に虹彩散大筋前方の虹彩にレーザー光を照射することの潜在的な散大効果に対する耐性がある、一滴の2%ピロカルピン点眼液が、高い縮瞳を実現するために上記処置の15分前、10分前、および5分前に投与される場合がある。各患者には、アセトアミノフェン500mg(経口)が、毛様体の緊張による頭痛に対する予防として上記処置の30分前に投与される場合もある。
【0104】
虹彩窩は、別の一般的な現象である。それらは、虹彩ストロマ線維間の空間により生じる。褐色の眼では、これらの窩は通常、色素で満たされており、したがって、最初の処置セッションの目的では無視され得る。ストロマ色素が一旦、窩の外側でおおむね除去された後であっても、ストロマ色素は虹彩窩の深部に残存し得る。明るい眼では色素斑が自然に発生するので、この残存している窩の色素は不自然に見えることはなく、ほとんど目立たないはずである。
【0105】
残存している複数の色素斑が患者を悩ませる場合、システムは、ビームウェストを、ストロマへと後方にわずかに移動させ、この移動したウェスト位置を使用して虹彩を再走査することにより、残存している窩の色素を除去し、または低減させ得る。この移動したウェスト設定は、タッチスクリーンインタフェース上に、施術者による選択のために表示されるオプションであってもよい。ビームウェストの移動の距離は、色素のある窩で高いフルエンスの送達を確実にするために、ビームDOFの約80%に等しいものとすることができる。窩の色素が、この後方へのウェスト移動による処置の3~4週間後に残存している場合、このウェスト移動処置は、窩の色素が十分除去されるまで毎回、さらにDOFの約80%だけ、ビームウェストを後方に移動させて、繰り返され得る。
【0106】
本明細書中に記載された色変更処置は、異なる時点で異なる量またはタイプのストロマ色素を除去するために複数の治療段階に分割され得る。前述したように、ストロマ色素は、送達されたレーザーパワーに対するその応答に影響をおよぼす、変化する物理特性を有し得る。特定のストロマ色素は、マクロファージ消化により、それが除去され得るようにその温度を上昇させるために、より高いレーザーパワーを必要とし得る。よって、より低いパワーでの最初の治療後、除去する必要があり、そのためにより高いレーザーパワーを必要とする特定のストロマ色素が存在し得る。このようにして、治療のいくつかの方法は、引き続く段階が、より少ない色素の除去を引き起こすが、より高いレーザーパワーで送達されるような、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、色変更処置の一部として、決定する工程を含み得る。よって、所定の治療セッションは、送達の現在の段階にさらに基づいた、必要なレーザーパワーへのレーザーシステムの設定、および上記設定に基づいた、レーザーパワーの送達を含み得る。1つの治療セッションは任意の数の送達段階を含んでいてもよいが、通常、変性させられたストロマ色素の除去に数日または数週が必要であり得るので、1つの治療セッションには1の送達段階のみが含まれる。
【0107】
いくつかの実施形態では、システムは、色素変性のより細かい制御を可能にするために、複数のステップにわたり、レーザーパワーを送達し得る。これは、アブレーションを回避するために、最高の吸収係数を備えた細胞に、最低パワーが印加されること、有効性を実現するために、最低の吸収係数を備えた細胞に最高パワーが印加されること、ならびに、アブレーションを回避し、および有効性を実現するために、中間の吸収係数を備えた細胞に中間パワーが印加されることを確実にするための、システムの安全機能であり得る。
【0108】
たとえば、以下に示されるように、MPEの上述された倍数に基づいた1つの例示的な実施形態では、任意の数の部分範囲が設定され、レーザーパワーがその部分範囲内で送達され得る。以下の表では、「全範囲」が上述から再現される。複数の眼色毎に、5つの部分範囲の例が示されているが、上記システムは、任意の数(たとえば2、3、7、10等)の部分範囲のレーザーパワーを送達し得る。以下の例に反映されている別の任意的な特徴は、複数の部分範囲が、隣接する部分範囲と重なるように選ばれるという点である。以下の例では、重なりは20%であるが、これは、他の実施形態では変わっていてもよい(たとえば、5%、10%、30%等)。
【0109】
【0110】
よって、一実施形態では、システムは、少なくとも3つの段階が存在している多段階送達を行うように構成され得る。(ダークブラウン色の眼の場合の)この例では、3つの段階のうち、第1の段階はMPEの約26倍をストロマ色素へ送達し、第2の段階はMPEの約30倍をストロマ色素へ送達し、第3の段階はMPEの約34倍をストロマ色素へ送達し得る。
【0111】
本開示のいくつかの方法は、患者の免疫応答に基づいて送達するための適切な量のレーザーパワーを決定する工程をさらに含み得る。マクロファージ消化はストロマ色素を除去する一方法であり、マクロファージの活性化は免疫応答であるので、ストロマ色素の除去は、患者の免疫応答に比例する。よって、いくつかの方法は、ストロマメラノサイトのレーザー破壊に対する自分のマクロファージ応答の効率または攻撃性を判定するために、患者の事前スクリーニングを行い、それにより、MPEおよびMREをさらに通知する工程を含み得る。マクロファージ応答データは、ベースラインフルエンス設定についての調整を計算するために、システムコンピュータへ入力され得る。
【0112】
システムは、免疫応答に基づいて、複数の治療段階間の時間間隔を特定の人に合わせることができる。これは、免疫応答レベルを、2つの段階間の時間間隔に関連付けられた免疫応答の範囲と比較する工程を含み得る。たとえば、2つの段階は、通常の免疫応答(たとえば、10が最高の免疫応答であるとき、1~10の尺度上で5である)に基づいて3~4週の間隔がとられ得る。治療処置は、8~10と評価された免疫応答を備えた患者について2~3週、および1~3と評価された免疫応答を備えた患者について5~6週の処置間隔を有し得る。上記方法は次いで、たとえば、免疫応答レベルが上記範囲よりも高いことを示す比較に基づいて、時間間隔を低減させる工程を含み得る。システムは、患者の炎症反応の知識に基づいて上記間隔に対する同様の調整を行い得る。考えられる炎症反応検査の例には、アレルギー反応を引き起こすと予想される物質に患者が曝露される皮膚テストが含まれ得る。炎症反応レベルを表すデータは、皮膚テストの結果を定量化するものであり、上述されたように使用され得る。同様に、いくつかの実施形態では、免疫応答の定量化は、任意の所定の治療セッションにおけるレーザーパワーを低減させ、もしくは増加させるために、および/または複数の処置間の時間を低減させ、または拡大させるために使用され得る。たとえば、免疫応答が、(たとえば、通常の免疫応答についての)所定のベースラインよりも50%速く、色素の除去が行われることを示す場合、セッション間の時間が50%だけ低減させられ得る。
【0113】
さらに、炎症は、眼の前房内の遊離メラニンに対する免疫応答でもある。よって、患者の事前スクリーニングを、遊離メラニンに対するそれらの免疫応答の攻撃性を判定するために行うことはMPEおよびMREの調整または決定のためにシステムにより利用されてもよく、炎症反応データは、ベースラインフルエンス設定についての調整の計算のためにシステムにより利用されてもよい。ストロマ色素の熱破壊に対するマクロファージ応答については、切断されたカスパーゼ-1 p20(インフラマソーム活性化のマーカ)、ならびに炎症誘発性サイトカインIL-1βおよびIL-6の、ベースラインでの、おそらく何らかの摂動に応答してのいずれもの有病率を検査して反応性を試験することが、システムにより、使用され得る。システムは、前房(AC)内の遊離メラニンに対する免疫応答を判定するうえで、CD4+ T細胞、アンギオゲニン(AG)、および炎症誘発性サイトカイン(たとえば、IL-1α、IL-Iβ、TNF-α、MMP-9、IL-2、IL-17)の、この場合もまた、ベースラインでの、任意的には治療に応答してのいずれもの有病率を検査し、またはその検査の結果を使用し得る。
【0114】
図5は、1つまたは複数の実施形態による、眼色変更処置を行うための例示的なシステムを示す。たとえば、システム500は、眼色変更処置を行うために使用されるコンポーネントを表し得る。たとえば、システム500は、必要な決定(たとえば、従うべきパターン、送達するためのレーザーパワー、患者の特定等)が遠隔で、および/またはクラウドで決定される、眼色変更処置を行うための局所装置に給電し得る。
図5に示されるように、システム500は、ユーザ端末522およびユーザ端末524を含み得る。パソコンとして示されているが、
図5では、限定でないがラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、「スマート」、無線、ウェアラブル、および/またはモバイル装置を含む他のコンピュータ機器(たとえば、サーバ)を含む任意のコンピュータ装置であり得ることに留意されるものとする。
図5は複数のクラウドコンポーネント510も含んでいる。複数のクラウドコンポーネント510は、代替的には、上述されたようないずれかのコンピューティング装置であってもよく、いずれかのタイプのモバイル端末、固定端末、または他の装置を含み得る。たとえば、複数のクラウドコンポーネント510は、クラウドコンピューティングシステムとして実現される場合があり、1つまたは複数のコンポーネント装置を特徴としてもよい。システム500が3つの装置に限定されるものでないことにも留意されるものとする。ユーザはたとえば、1つまたは複数の他の装置を利用して、互いに、1つまたは複数のサーバ、またはシステム500の他のコンポーネントと相互作用し得る。1つまたは複数の動作が本明細書中でシステム500の特定のコンポーネントにより、行われるとして記載されているが、そうした動作は、いくつかの実施形態では、システム500の他のコンポーネントにより、行われ得ることに留意されるものとする。例として、1つまたは複数の動作が本明細書中でユーザ端末522のコンポーネントにより行われるとして記載されているが、そうした動作は、いくつかの実施形態では、複数のクラウドコンポーネント510のコンポーネントにより、行われてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載された種々のコンピュータおよびシステムは、記載された機能を行うようにプログラムされた1つまたは複数のコンピューティング装置を含み得る。追加または代替的には、複数のユーザは、システム500、および/またはシステム500の1つまたは複数のコンポーネントと相互作用してもよい。たとえば、一実施形態では、第1のユーザおよび第2のユーザ(たとえば、専門技術者および医師)は、異なる2つのコンポーネントを使用してシステム500と相互作用し得る。
【0115】
ユーザ端末522、ユーザ端末524、およびクラウドコンポーネント510のコンポーネントに関しては、これらの装置それぞれは、入出力(以降、「I/O」)経路を介してコンテンツおよびデータを受け取り得る。これらの装置それぞれは、コマンド、要求、および他の好適なデータをI/O経路を使用して送出し、および受け取るためのプロセッサおよび/または制御回路を含む場合もある。上記制御回路は、任意の好適な処理回路を備え得る。これらの装置それぞれは、データを受け取り、および表示するうえで使用するためのユーザ入力インタフェースおよび/またはユーザ出力インタフェース(たとえば、ディスプレイ)を含んでいてもよい。たとえば、
図5に示されるように、ユーザ端末522およびユーザ端末524はいずれも、データ(たとえば、眼色変更処置に関する情報)をその上に表示するそのディスプレイを含む。
【0116】
さらに、ユーザ端末522およびユーザ端末524はタッチスクリーンスマートフォンとして示されているので、これらのディスプレイはユーザ入力インタフェースとしても機能する。いくつかの実施形態では、装置がユーザ入力インタフェースも、ディスプレイも有していない場合があり、そのかわりに、別の装置(たとえば、コンピュータ画面などの専用ディスプレイ装置、および/またはリモコン、マウス、音声入力等などの専用入力装置)を使用してコンテンツを受け取り、および表示し得ることに留意されるものとする。さらに、システム500内の装置は、アプリケーション(または別の好適なプログラム)を実行し得る。上記アプリケーションは、プロセッサおよび/または制御回路に、眼色変更処置に関する動作を実行させ得る。
【0117】
これら複数の装置それぞれは、複数の電子記憶装置も含み得る。上記複数の電子記憶装置は、情報を電子的に記憶する一時的でない複数の記憶媒体を含み得る。上記複数の電子記憶装置の上記複数の記憶媒体は、(i)サーバもしくはクライアント装置と一体的に(たとえば、ストロマ的に取り外し不可能に)設けられたシステム記憶装置、または(ii)たとえばポート(たとえば、USBポート、ファイヤワイヤポート等)もしくはドライブ(たとえば、ディスクドライブ等)を介してサーバまたはクライアント装置に、取り外し可能に接続された取り外し可能な記憶装置の一方または両方を含み得る。電子記憶装置は、光学的に読み取り可能な記憶媒体(たとえば、光ディスク等)、磁気的に読み取り可能な記憶媒体(たとえば、磁気テープ、磁気ハードドライブ、フロッピードライブ等)、電荷ベースの記憶媒体(たとえば、EEPROM、RAM等)、ソリッドステート記憶媒体(たとえば、フラッシュドライブ等)、および/または他の電子的に読み取り可能な記憶媒体の1つまたは複数を含み得る。電子記憶装置は、1つまたは複数の仮想記憶リソース(たとえば、クラウドストレージ、仮想専用ネットワーク、および/または他の仮想記憶リソース)を含み得る。電子記憶装置は、ソフトウェアアルゴリズム、プロセッサにより、判定された情報、サーバから取得された情報、クライアント装置から取得された情報、または本明細書中で記載されたような機能を実施可能にする他の情報を記憶し得る。
【0118】
図5は、通信経路528、530、および532も含んでいる。通信経路528、530、および532は、インターネット、携帯電話ネットワーク、モバイル音声もしくはデータネットワーク(たとえば、5GもしくはLTEネットワーク)、ケーブルネットワーク、公衆交換電話ネットワーク、もしくは他のタイプのネットワーク、または複数の通信ネットワークの組み合わせを含み得る。通信経路528、530、および532は、1つまたは複数の通信経路、たとえば、衛星経路、光ファイバ経路、ケーブル経路、インターネット通信をサポートする経路(たとえば、IPTV)、(たとえば、放送もしくは他の無線信号のための)自由空間接続、もしくは任意の他の好適な有線もしくは無線通信経路、またはそうした複数の経路の組み合わせを別個に、または一緒に含み得る。複数のコンピューティング装置は、一緒に動作する複数のハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアコンポーネントを接続するさらなる通信経路を含み得る。たとえば、コンピューティング装置は、共にコンピューティング装置として動作する、コンピューティングプラットフォームのクラウドにより、実現され得る。
【0119】
クラウドコンポーネント510は、ユーザ用のユーザデータを記憶するように構成されたデータベースであり得る。たとえば、データベースは、先行する操作および/または処置により、ユーザに関してシステムが収集したユーザデータを含み得る。追加または代替的に、上記システムは、ユーザに関する複数の情報源のクリアリングハウスとして機能し得る。クラウドコンポーネント510は、眼色変更処置を行うのに必要な種々の動作を行うように構成された制御回路を含む場合もある。
【0120】
クラウドコンポーネント510は機械学習モデル502を含んでいる。機械学習モデル502は複数の入力504を受け取り、および複数の出力506を供給し得る。入力は、訓練データセットおよびテストデータセットなどの複数のデータセットを含み得る。上記複数のデータセット(たとえば、入力504)のそれぞれは、ユーザデータ、眼色変更処置、患者の進捗状況、および/または結果に関するデータサブセットを含み得る。いくつかの実施形態では、出力506は、機械学習モデル502を訓練するための入力として機械学習モデル502へ(たとえば、単独で、または複数の出力506の精度のユーザ指示、複数の入力に関連付けられたラベルとともに、または他の参照フィードバック情報とともに)フィードバックされ得る。別の実施形態では、機械学習モデル502は、その構成(たとえば、重み、バイアス、または他のパラメータ)をその予測(たとえば、出力506)の評価および参照フィードバック情報(たとえば、精度の指示、処置の結果、参照ラベル、および/または他の情報)に基づいて更新し得る。別の実施形態では、機械学習モデル502がニューラルネットワークである場合、結合荷重が、ニューラルネットワークの予測と、参照フィードバックとの間の差異を一致させるように調整され得る。さらなる使用例では、ニューラルネットワークの1つもしくは複数のニューロン(またはノード)は、更新プロセス(たとえば、誤差のバックプロパゲーション)を容易にするために、それらそれぞれの誤差がニューラルネットワークを介して後方に送出されることを必要とし得る。結合荷重に対する更新はたとえば、前方パスが完了した後に後方に伝播させられた誤差の大きさを反映し得る。このようにして、たとえば、機械学習モデル502は、より良好な予測(たとえば、従うべき適切なパターン、レーザーパワー、眼色変更のレベル、処置の数、処置の長さ等に関する予測)を生成するように訓練され得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、機械学習モデル502は人工ニューラルネットワークを含み得る。そうした実施形態では、機械学習モデル502は、入力層、および1つまたは複数の隠れ層を含み得る。機械学習モデル502の各ニューラルユニットは、機械学習モデル502の多くの他のニューラルユニットと結合され得る。そうした複数の結合は、結合されたニューラルユニットの活性化状態へのそれらの影響において強制的であり、または抑制的であり得る。いくつかの実施形態では、個々のニューラルユニットそれぞれは、その入力すべての値を一緒に組み合わせる和関数を有し得る。いくつかの実施形態では、各結合(またはニューラルユニット自体)は、信号が、それが他のニューラルユニットに伝播する前に超えなければならないような閾値関数を有し得る。機械学習モデル502は、明示的にプログラムされるのではなく、自己学習的であり、および訓練される場合があり、および、従来のコンピュータプログラムと比較して、問題解決の特定の領域において、著しく優れた性能を発揮し得る。訓練中、機械学習モデル502の出力層は機械学習モデル502の分類に対応する場合があり、およびその分離に対応することが知られている入力は、訓練中に機械学習モデル502の入力層に入力される場合がある。テスト中に、知られている分類なしの入力は入力層に入力される場合があり、および判定された分類が出力される場合がある。
【0122】
いくつかの実施形態では、機械学習モデル502は、(たとえば、信号経路が前層から後層に横断する)複数の層を含み得る。いくつかの実施形態では、バックプロパゲーション手法が機械学習モデル502により、利用され、そこでは、前方刺激が「前方」ニューラルユニット上の重みをリセットするために使用され得る。いくつかの実施形態では、機械学習モデル502の刺激および抑制は、結合が、より混沌としており、および複雑に相互作用して、より自由に流れ得る。テスト中、機械学習モデル502の出力層は、所定の入力が機械学習モデル502の分類(たとえば、要求された眼色変更、従うべきパターン、送達されるレーザーパワー等)に対応するか否かを示し得る。
【0123】
図6は、レーザーシステムのレーザーパワーを決定する工程を示す。たとえば、プロセス600は、
図1~5に示されるような1つまたは複数の装置により、眼色変更処置を行う際に取られる工程を表し得る。たとえば、プロセス600は、(たとえば、
図2~4で述べられているように)レーザーシステムを給電するためにシステム500によりなされる決定を表し得る。
【0124】
工程610では、プロセス600は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して)眼を追跡し得る。たとえば、システムは(たとえば、制御回路を介して)、色変更処置中に患者の眼を光学追跡システムにより追跡し得る。いくつかの実施形態では、システムは、上記処置前にイメージセンサにより、虹彩を撮像して虹彩の複数の画像を生成し得る。システムは、画像に基づいて、虹彩のマッピングを生成してもよく、マッピングは、虹彩のストロマ色素の治療波長の変化する吸収係数に対応する複数の領域を有する。マッピングに基づいて、システムは、患者の眼の所定の位置へ第1のレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定してもよく、第1のレーザーパワーは、虹彩のストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である。
【0125】
いくつかの実施形態では、光学追跡システムは距離測定器を含み、プロセス600は、距離測定器が虹彩と、光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定することを含み得る。システムは、距離を少なくとも10ミクロンの分解能で判定し得る。距離測定器は、時間領域光コヒーレンストモグラフィシステムまたはスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィシステムであり得る。基準コンポーネントは、光学追跡システム内の最後のレンズであり得る。いくつかの実施形態では、システムは距離に応じてレーザーシステムの自動焦点調整を行い得る。自動焦点調整は、周期的な間隔で虹彩のストロマ色素への距離を測定する工程と、当該距離に基づいて、虹彩の前面と後面との間でおおむね焦点が合っている状態にレーザーシステムが留まるようにシステムによって制御する工程とを含み得る。いくつかの実施形態では、上記距離測定器は、三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、または光センサの1つまたは複数を含み得る。
【0126】
工程620では、プロセス600は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して)送達するレーザーパワーを決定し得る。たとえば、システムは(制御回路を介して)レーザー基準の組を取得することにより、虹彩内のストロマ色素へ送達するレーザーパワーを決定し得る。レーザー基準は、最大許容露光量の100倍未満の露光量の送達を特定し、それは、虹彩または眼底が損傷することなく、ストロマ色素の少なくとも一部の除去をもたらし得る。システムは、ユーザ固有の情報を記憶するデータベースから上記レーザーパワーを取得し、(たとえば、機械学習モデル502(
図5)および/または眼色変更処置に関する他の情報を介して)最適なレーザーパワーを決定し得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、レーザーパワーのMPEの20倍未満への低下によって、ストロマ色素の緩みが生じず、その結果としての眼色の変更が生じないように、レーザーパワーはMPEの少なくとも20倍であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、除去はストロマ色素のマクロファージ消化の開始、およびストロマ色素のアブレーションにより生じてもよく、システムは、ストロマ色素のマクロファージ消化の開始、およびストロマ色素のアブレーションについて監視してもよい。いくつかの実施形態では、レーザーパワーは、虹彩内の同時の温度変化を引き起こし、患者のマクロファージに、ストロマ色素の少なくとも一部分を除去させるのに十分であり得る。
【0129】
工程630では、プロセス600は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して、)レーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定し得る。たとえば、システムは(たとえば、制御回路を介して)、レーザー基準の組により特定されたレーザーパワー未満のレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定し得る。システムは、工程620でデータベースから取り出されたデータに基づいてレーザーパワーを設定し得る。追加または代替的に、システムは、上記処置中に従うべきパターンまたはルートを決定し得る。たとえば、システムは、虹彩全体へ所定の走査パターン(たとえば、上記処置の長さを増加させ、眼に対する刺激/損傷の可能性を増加させ、および/または不均一な印加の危険を冒し得る、鋭角、および方向における急激な変化を制限する、瞳孔を取り囲む螺旋パターン)でレーザー光を送達することを決定し得る。
【0130】
工程640では、プロセス600は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して、)レーザー光を送達し得る。たとえば、システムは(たとえば、制御回路を介して)、レーザーシステム(たとえば、システム200(
図2))により、レーザー光を送達し得る。たとえば、システムは、虹彩の前境界層またはストロマ深層(たとえば、虹彩ストロマ112(
図1))へレーザー光を送達し得る。いくつかの実施形態では、プロセス600は数回、繰り返されて、ストロマ色素の温度を繰り返し上昇させ、低下させ得る。温度のこの上昇および低下は、ストロマメラノサイトに複数のマクロファージ(体の自然免疫応答の一部)をストロマ層へ展開させる。これらの複数のマクロファージは次いで、眼にその褐色を与える役割を担うストロマ色素の一部分を消化し、虹彩血管系を介して除去する。システムは、眼がより深い青/緑色に見えるようにするために様々の度合いの色変更を行うために、プロセス600を繰り返し得る。いくつかの実施形態では、システムは、ストロマ色素の少なくとも一部分の温度を温度センサにより監視し、レーザーパワーの送達を、当該送達がストロマ色素の温度を、温度センサで監視されるように125℃超まで上昇させないように行うように上記レーザーシステムを制御し得る。いくつかの実施形態では、目標温度120℃がシステムにより設定され得る。よって、いくつかの実施形態では、温度センサは、温度を115~125℃まで上昇させる、レーザーパワーの送達を監視するように構成され得る。
【0131】
いくつかの実現形態では、プロセス600は、システムが、引き続く段階が、より少ない色素の除去をもたらすが、より高いレーザーパワーで送達されるような、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、色変更処置の一部として決定することを含み得る。システムは、送達の現在の段階にさらに基づいて、レーザーパワーにレーザーシステムを設定し、次いで、上記設定に基づいてレーザーパワーを送達し得る。3つの段階が存在している場合があり、いくつかの実施形態では、3つの段階のうち第1の段階はMPEの約26倍をストロマ色素へ送達し、3つの段階のうち第2の段階はMPEの約30倍をストロマ色素へ送達し、3つの段階のうち第3の段階はMPEの約34倍をストロマ色素へ送達する。システムは、患者の免疫応答レベルを、免疫応答レベルを表すデータを含んでいる、患者の医療記録にレーザーシステムと通信している制御コンピュータによりアクセスすることに基づいて判定し得る。システムは、2つの段階の間の時間間隔に関連付けられた、免疫応答の範囲と、免疫応答レベルを比較し、免疫応答レベルが当該範囲よりも高いことを示す比較に基づいて時間間隔を低減させ得る。データは、免疫応答レベルを表し得るものであり、患者に対して行われた炎症誘発性サイトカイン検査の結果を定量化する。
【0132】
図7は、レーザーシステムのスポットサイズを判定する工程を示す。たとえば、プロセス700は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して)眼色変更処置を行う際に、
図1~5に示されるような1つまたは複数の装置により、取られる工程を表し得る。たとえば、プロセス700は、(たとえば、
図2~4で述べられているように)レーザーシステムを給電するためにシステム500によりなされる決定を表し得る。いくつかの実施形態では、除去はストロマ色素のマクロファージ消化の開始、および/またはストロマ色素のアブレーションにより生じてもよく、システムはストロマ色素のマクロファージ消化の開始、およびストロマ色素のアブレーションについて監視してもよい。いくつかの実施形態では、レーザーパワーは、虹彩内の同時の温度変化を引き起こし、患者のマクロファージに、ストロマ色素の少なくとも一部分を除去させるのに十分であり得る。いくつかの実施形態では、システムは、処置前に虹彩をイメージセンサにより撮像して虹彩の複数の画像を生成し得る。システムは、画像に基づいて、虹彩のマッピングを生成してもよく、マッピングは、虹彩のストロマ色素の治療波長の変化する吸収係数に対応する領域を有する。マッピングに基づいて、システムは、患者の眼の1の位置へ第1のレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定してもよく、第1のレーザーパワーは、虹彩のストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である。
【0133】
工程710では、プロセス700は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して、)眼を追跡し得る。たとえば、システムは(たとえば、制御回路を介して)、色変更処置中に眼を光学追跡システムにより追跡し得る。いくつかの実施形態では、光学追跡システムは距離測定器を含み、プロセス600は、距離測定器が虹彩と、光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定することを含み得る。システムは、距離を少なくとも10ミクロンの分解能で判定し得る。距離測定器は、時間領域光コヒーレンストモグラフィシステムまたはスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィシステムであり得る。基準コンポーネントは、光学追跡システム内の最後のレンズであり得る。いくつかの実施形態では、システムは距離に応じてレーザーシステムの自動焦点調整を行い得る。自動焦点調整は、周期的な間隔で虹彩のストロマ色素への距離を測定する工程と、当該距離に基づいて、虹彩の前面と後面との間でおおむね焦点が合っている状態にレーザーシステムが留まるようにシステムによって制御する工程とを含み得る。いくつかの実施形態では、距離測定器は、三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、または光センサの1つまたは複数を含み得る。
【0134】
工程720では、プロセス700は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して、)スポットサイズを判定する。たとえば、システムは(制御回路を介して)ストロマ色素へ送達されるレーザー光のスポットサイズを判定し得る。この実施形態は、虹彩へ、10~40ミクロンのスポットサイズを有するレーザー光の送達をもたらす、レーザー基準の組を取得する工程を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、スポットサイズは25~30μmであってもよい。
【0135】
工程730では、プロセス700は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して)レーザーシステムを設定する。たとえば、システムは、上記スポットサイズでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを(たとえば、制御回路を介して)設定し得る。
【0136】
いくつかの実現形態では、システムは、温度センサにより、ストロマ色素を含んでいる、虹彩の少なくとも一部分の温度を判定してもよく、温度センサは、虹彩に対して非侵襲的であり得る。レーザーシステムは、任意のレーザーパワーでレーザー光を送達するようにシステムにより設定され、それにより、色変更処置中に温度140℃を超えさせない。
【0137】
工程740では、プロセス700は(たとえば、
図1~5の1つまたは複数のコンポーネントを介して)レーザー光を送達し得る。たとえば、システムは(たとえば、制御回路を介して)、レーザーシステム(たとえば、システム200(
図2))により、レーザー光を送達し得る。
【0138】
いくつかの実現形態では、プロセス700は、システムが、引き続く段階が、より少ない色素の除去をもたらすが、より高いレーザーパワーで送達されるような、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、色変更処置の一部として決定することを含み得る。システムは、送達の現在の段階にさらに基づいて、レーザーパワーにレーザーシステムを設定し、上記設定に基づいてレーザーパワーを送達し得る。3つの段階が存在している場合があり、いくつかの実施形態では、3つの段階の第1の段階はMPEの26倍をストロマ色素へ送達し、3つの段階の第2の段階はMPEの30倍をストロマ色素へ送達し、3つの段階の第3の段階はMPEの34倍をストロマ色素へ送達する。システムは、患者の免疫応答レベルを、レーザーシステムと通信している制御コンピュータにより、免疫応答レベルを表すデータを含んでいる、患者の医療記録にアクセスすることに基づいて判定し得る。システムは、2つの段階の間の時間間隔に関連付けられた、免疫応答の範囲と、免疫応答レベルを比較し、免疫応答レベルが当該範囲よりも高いことを示す比較に基づいて上記時間間隔を低減させ得る。データは、免疫応答レベルを表し得るものであり、患者に対して行われた炎症誘発性サイトカイン検査の結果を定量化する。
【0139】
本開示の上述された実施形態は、限定目的ではなく、例示の目的で提示されている。さらに、任意の1つの実施形態に記載された特徴および限定が本明細書中の任意の他の実施形態に適用される場合があり、および一実施形態に関するフローチャートまたは例が、好適なやり方で任意の他の実施形態と組み合わせられ、異なる順序で行われ、または並列に行われる場合があることに留意されるものとする。さらに、本明細書中で記載されたシステムおよび方法はリアルタイムで行われ得る。上述されたシステムおよび/または方法が、他のシステムおよび/または方法に適用され、または他のシステムおよび/または方法に応じて使用され得ることにさらに留意されるものとする。
【0140】
本手法は、列挙された以下の実施形態を参照して、より良く理解されるであろう。
【0141】
実施形態 1:色変更処置により、患者の眼色を変更する方法であって、上記方法が、光学追跡システムにより、上記色変更処置中に、上記患者の眼を追跡する工程と、ストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらす、最大許容露光量の100倍未満の露光量の送達のためのレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、上記患者の眼の虹彩内のストロマ色素へ送達するためのレーザーパワーを決定する工程と、上記レーザー基準の組よりも小さいレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程と、上記レーザーシステムにより、上記レーザー光を送達する工程と
を含む、方法。
【0142】
実施形態 2:上記除去が上記ストロマ色素のマクロファージ消化の開始により生じる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0143】
実施形態 3:上記除去が上記ストロマ色素のアブレーションにより生じる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0144】
実施形態 4:上記レーザーパワーが上記最大許容露光量の75倍未満である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0145】
実施形態 5:上記レーザーパワーが上記最大許容露光量の50倍未満である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0146】
実施形態 6:上記レーザーパワーは、虹彩内の同時の温度変化を引き起こし、それにより、患者のマクロファージに、ストロマ色素の少なくとも一部分を除去させるのに十分である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0147】
実施形態 7:上記レーザーパワーの上記最大許容露光量の20倍未満への低下によって、上記ストロマ色素の変性が生じず、その結果としてのマクロファージ除去および眼色における変更が生じないように、上記レーザーパワーは上記最大許容露光量の少なくとも20倍である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0148】
実施形態 8:温度センサにより、上記ストロマ色素の少なくとも一部分の温度を監視する工程と、上記温度センサで監視したときに、上記レーザーパワーの送達が温度を115~125℃(両端含む)に上昇させるように、上記レーザーパワーを送達するよう上記レーザーシステムを制御する工程とをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0149】
実施形態 9:上記監視する工程は、微小気泡を検出するために虹彩のリアルタイム撮像を行う工程を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0150】
実施形態 10:上記監視する工程は、微小気泡を検出するために虹彩のリアルタイム音響モニタリングを行う工程を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0151】
実施形態 11:上記方法がさらに、上記処置の前に、虹彩の複数の画像を生成するために、イメージセンサにより、虹彩を撮像する工程と、上記画像を画像処理ソフトウェアにより解析する工程と、画像解析に基づいて、上記虹彩のマッピングを生成する工程であって、上記マッピングは、虹彩のストロマ色素の治療波長の変化する吸収係数に対応する複数の領域を含む、マッピングを生成する工程と、上記マッピングに基づいて、上記患者の眼の所定の位置へ第1のレーザーパワーでレーザー光を送達するように、上記レーザーシステムを設定する工程であって、上記第1のレーザーパワーは、虹彩のストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である、レーザーシステムを設定する工程とを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0152】
実施形態 12:光学追跡システムにより、上記色変更処置中に、上記患者の眼を追跡する工程をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0153】
実施形態 13:上記追跡する工程が、上記光学追跡システムにより、上記虹彩の画像を捕捉する工程と、虹彩位置における変化が存在しているか否かを判定するために、上記画像を、虹彩の前の画像と比較する工程と、上記画像および上記前の画像から、位置における変化のデルタを計算する工程とを含み、上記レーザー光の送達が、上記デルタに基づいてシフトされる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0154】
実施形態 14:上記光学追跡システムは距離測定器を含んでおり、上記方法は、上記距離測定器を利用して、虹彩と、上記光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定する工程をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0155】
実施形態 15:上記距離が少なくとも10ミクロンの分解能で判定される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0156】
実施形態 16:上記距離測定器は、時間領域光コヒーレンストモグラフィシステムもしくはスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィシステムである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0157】
実施形態 17:上記基準コンポーネントは、上記光学追跡システムの最後のレンズである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0158】
実施形態 18:上記距離に応じて上記レーザーシステムの自動焦点調整を行う工程をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0159】
実施形態 19:上記自動焦点調整を行う工程は、周期的な間隔で虹彩のストロマ色素への距離を測定する工程と、上記距離に基づいて、上記レーザーシステムを、虹彩の前面と後面との間で実質的に焦点が合っている状態に留まるように制御する工程とを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0160】
実施形態 20:上記距離測定器は、三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、もしくは光センサの1つもしくは複数を備えている、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0161】
実施形態 21:上記方法がさらに、引き続く段階が、より少ない色素の除去を引き起こすが、より高いレーザーパワーで送達されるように、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、上記色変更処置の一部として決定する工程と、送達の現在の段階にさらに基づいて、上記レーザーパワーに上記レーザーシステムを設定する工程と、上記設定する工程に基づいて上記レーザーパワーを送達する工程を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0162】
実施形態 22:上記複数の段階が少なくとも3つの段階を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0163】
実施形態 23:少なくとも3つの段階のうち、第1の段階はMPEの約25.4~26.6倍をストロマ色素へ送達し、上記少なくとも3つの段階のうち、第2の段階はMPEの約29.4~30.6倍をストロマ色素へ送達し、3つの段階のうち、第3の段階はMPEの約33.4~34.6倍をストロマ色素へ送達する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0164】
実施形態 24:上記方法がさらに、上記レーザーシステムと通信している制御コンピュータによって、免疫応答レベルを表すデータを含む、上記患者の医療記録へアクセスすることに基づいて、患者の免疫応答レベルを判定する工程と、上記免疫応答レベルを、2つの上記段階の間の時間間隔に関連付けられた免疫応答の範囲と比較する工程と、上記免疫応答レベルが上記範囲よりも高いことを示す比較に基づいて、上記時間間隔を低減させる工程とを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0165】
実施形態 25:免疫応答レベルを表すデータは、患者に対して行われた炎症誘発性サイトカイン検査の結果を定量化する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0166】
実施形態 26:色変更処置により、患者の眼色を変更する方法であって、上記方法が:光学追跡システムにより、上記色変更処置中に、上記患者の眼を追跡する工程と、上記患者の虹彩のストロマ色素への、4~70ミクロン(両端含む)のスポットサイズを有するレーザー光の送達をもたらすレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、上記患者の眼の虹彩のストロマ色素へ送達されるレーザー光のスポットサイズを決定する工程と、上記スポットサイズで上記レーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程と、上記レーザーシステムにより、上記レーザー光を送達する工程とを含む、方法。
【0167】
実施形態 27:上記スポットサイズが10~40ミクロン(両端含む)である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0168】
実施形態 28:上記スポットサイズが25~30ミクロン(両端含む)である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0169】
実施形態 29:上記スポットサイズと組み合わせたレーザーパワーは、虹彩内の同時の温度変化をもたらし、それにより、ストロマ色素のマクロファージ消化の開始をもたらすのに十分である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0170】
実施形態 30:上記方法がさらに、温度センサにより、ストロマ色素を含む、虹彩の少なくとも一部分の温度を判定する工程であって、上記温度センサが、虹彩に対して非侵襲的である、虹彩の少なくとも一部分の温度を判定する工程と、上記色変更処置中に温度が140度を超えないレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程とを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0171】
実施形態 31:上記方法がさらに、上記処置の前に、虹彩の複数の画像を生成するために、イメージセンサにより、虹彩を撮像する工程と、上記画像に基づいて、上記虹彩のマッピングを生成する工程であって、上記マッピングは、虹彩のストロマ色素の治療波長の変化する吸収係数に対応する複数の領域を含む、マッピングを生成する工程と、上記マッピングに基づいて、上記患者の眼の所定の位置へ第1のレーザーパワーでレーザー光を送達するように、上記レーザーシステムを設定する工程であって、上記第1のレーザーパワーは、虹彩のストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である、レーザーシステムを設定する工程とを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0172】
実施形態 32:光学追跡システムにより、上記色変更処置中に、上記患者の眼を追跡する工程をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0173】
実施形態 33:上記光学追跡システムは距離測定器を含んでおり、上記方法は、上記距離測定器を利用して、上記眼の虹彩と、上記光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定する工程をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0174】
実施形態 34:上記基準コンポーネントは、上記光学追跡システムの最後のレンズである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0175】
実施形態 35:上記距離に応じて上記レーザーシステムの自動焦点調整を行う工程をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0176】
実施形態 36:上記自動焦点調整を行う工程は、周期的な間隔で虹彩のストロマ色素への距離を測定する工程と、上記距離に基づいて、上記レーザーシステムを、ストロマ色素において、実質的に焦点が合っている状態に留まるように制御する工程とを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0177】
実施形態 37:上記距離測定器は、三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、もしくは光センサの1つもしくは複数を備えている、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0178】
実施形態 38:上記方法がさらに、引き続く段階が、より少ない色素の除去を引き起こすが、より高いレーザーパワーで送達されるように、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、上記色変更処置の一部として決定する工程と、送達の現在の段階にさらに基づいて、上記レーザーパワーに上記レーザーシステムを設定する工程と、上記設定する工程に基づいて上記レーザーパワーを送達する工程を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0179】
実施形態 39:上記複数の段階が少なくとも3つの段階を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0180】
実施形態 40:少なくとも3つの段階のうち、第1の段階はMPEの25.4~26.6倍をストロマ色素へ送達し、上記少なくとも3つの段階のうち、第2の段階はMPEの29.4~30.6倍をストロマ色素へ送達し、3つの段階のうち、第3の段階はMPEの33.4~34.6倍をストロマ色素へ送達する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0181】
実施形態 41:上記方法がさらに、上記レーザーシステムと通信している制御コンピュータによって、免疫応答レベルを表すデータを含む、上記患者の医療記録へアクセスすることに基づいて、患者の免疫応答レベルを判定する工程と、上記免疫応答レベルを、2つの上記段階の間の時間間隔に関連付けられた免疫応答の範囲と比較する工程と、上記患者の免疫応答が上記範囲よりも高いことを示す比較に基づいて、上記時間間隔を低減させる工程とを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0182】
実施形態 42:免疫応答レベルを表すデータは、患者に対して行われた炎症誘発性サイトカイン検査の結果を定量化する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0183】
実施形態 43:データ処理装置により実行されると、実施形態1~42の方法のいずれかのものを含む動作を上記データ処理装置に行わせる命令を記憶する、有形の非一時的マシン可読媒体。
【0184】
実施形態 44:1つまたは複数のプロセッサと、上記プロセッサにより実行されると、実施形態1~42の方法のいずれかのものを含む動作を上記プロセッサに実行させる命令を記憶するメモリとを備えるシステム。
【0185】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色変更処置により、患者の眼色を変更する方法であって、前記方法が、
ストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらす、最大許容露光量の100倍未満の露光量の送達のためのレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、前記患者の眼の虹彩内のストロマ色素へ送達するためのレーザーパワーを決定する工程と、
前記レーザー基準の組よりも小さいレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程と、
前記レーザーシステムにより、前記レーザー光を送達する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記除去が前記ストロマ色素のマクロファージ消化の開始により生じる、または、前記除去が前記ストロマ色素のアブレーションにより生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザーパワーが前記最大許容露光量の75倍未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザーパワーの前記最大許容露光量の20倍未満への低下によって、前記ストロマ色素の変性が生じず、その結果としてのマクロファージ除去および眼色における変更が生じないように、前記レーザーパワーは前記最大許容露光量の少なくとも20倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
温度センサにより、前記ストロマ色素の少なくとも一部分の温度を監視する工程と、
前記温度センサで監視したときに、前記レーザーパワーの送達が温度を115~125℃(両端含む)に上昇させるように、前記レーザーパワーを送達するよう前記レーザーシステムを制御する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記監視する工程は、微小気泡を検出するために虹彩のリアルタイム撮像を行う工程、または、微小気泡を検出するために虹彩のリアルタイム音響モニタリングを行う工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法がさらに、
前記処置の前に、虹彩の複数の画像を生成するために、イメージセンサにより、虹彩を撮像する工程と、
前記画像を画像処理ソフトウェアにより解析する工程と、
画像解析に基づいて、前記虹彩のマッピングを生成する工程であって、前記マッピングは、虹彩のストロマ色素の治療波長の変化する吸収係数に対応する複数の領域を含む、マッピングを生成する工程と、
前記マッピングに基づいて、前記患者の眼の所定の位置へ第1のレーザーパワーでレーザー光を送達するように、前記レーザーシステムを設定する工程であって、前記第1のレーザーパワーは、虹彩のストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である、レーザーシステムを設定する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
光学追跡システムにより、前記色変更処置中に、前記患者の眼を追跡する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記追跡する工程が、
前記光学追跡システムにより、前記虹彩の画像を捕捉する工程と、
虹彩位置における変化が存在しているか否かを判定するために、前記画像を、虹彩の前の画像と比較する工程と、
前記画像および前記前の画像から、位置における変化のデルタを計算する工程と
を含み、
前記レーザー光の送達が、前記デルタに基づいてシフトされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記光学追跡システムは距離測定器を含んでおり、前記方法は、前記距離測定器を利用して、虹彩と、前記光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記距離が少なくとも10ミクロンの分解能で判定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記距離測定器は、
時間領域光コヒーレンストモグラフィシステムもしくはスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィシステムであるか、または、
三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、もしくは光センサの1つもしくは複数を備えている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記基準コンポーネントは、前記光学追跡システムの最後のレンズである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記距離に応じて前記レーザーシステムの自動焦点調整を行う工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記自動焦点調整を行う工程は、
周期的な間隔で虹彩のストロマ色素への距離を測定する工程と、
前記距離に基づいて、前記レーザーシステムを、虹彩の前面と後面との間で実質的に焦点が合っている状態に留まるように制御する工程と
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法がさらに、
引き続く段階が、より少ない色素の除去を引き起こすが、より高いレーザーパワーで送達されるように、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、前記色変更処置の一部として決定する工程と、
送達の現在の段階にさらに基づいて、前記レーザーパワーに前記レーザーシステムを設定する工程と、
前記設定する工程に基づいて前記レーザーパワーを送達する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の段階が少なくとも3つの段階を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法がさらに、
前記レーザーシステムと通信している制御コンピュータによって、免疫応答レベルを表すデータを含む、前記患者の医療記録へアクセスすることに基づいて、患者の免疫応答レベルを判定する工程と、
前記免疫応答レベルを、2つの前記段階の間の時間間隔に関連付けられた免疫応答の範囲と比較する工程と、
前記免疫応答レベルが前記範囲よりも高いことを示す比較に基づいて、前記時間間隔を低減させる工程と
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
色変更処置により、患者の眼色を変更する方法であって、前記方法が、
前記患者の虹彩のストロマ色素への、4~70μm(両端含む)のスポットサイズを有するレーザー光の送達をもたらすレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、前記患者の眼の虹彩のストロマ色素へ送達されるレーザー光のスポットサイズを決定する工程と、
前記スポットサイズで前記レーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程と、
前記レーザーシステムにより、前記レーザー光を送達する工程と
を含む、方法。
【請求項20】
前記スポットサイズと組み合わせたレーザーパワーは、虹彩内の同時の温度変化をもたらし、それにより、ストロマ色素のマクロファージ消化の開始をもたらすのに十分である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法がさらに、
温度センサにより、ストロマ色素を含む、虹彩の少なくとも一部分の温度を判定する工程であって、前記温度センサが、虹彩に対して非侵襲的である、虹彩の少なくとも一部分の温度を判定する工程と、
前記色変更処置中に温度を115~125℃(両端含む)まで上昇させるレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定する工程と
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記方法がさらに、
前記処置の前に、虹彩の複数の画像を生成するために、イメージセンサにより、虹彩を撮像する工程と、
前記画像に基づいて、前記虹彩のマッピングを生成する工程であって、前記マッピングは、虹彩のストロマ色素の治療波長の変化する吸収係数に対応する複数の領域を含む、マッピングを生成する工程と、
前記マッピングに基づいて、前記患者の眼の所定の位置へ第1のレーザーパワーでレーザー光を送達するように、前記レーザーシステムを設定する工程であって、前記第1のレーザーパワーは、虹彩のストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらすのに十分である、レーザーシステムを設定する工程と
を含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
光学追跡システムにより、前記色変更処置中に、前記患者の眼を追跡する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記光学追跡システムは距離測定器を含んでおり、前記方法は、前記距離測定器を利用して、前記眼の虹彩と、前記光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基準コンポーネントは、前記光学追跡システムの最後のレンズである、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
前記距離に応じて前記レーザーシステムの自動焦点調整を行う工程をさらに含む、請求項
24に記載の方法。
【請求項27】
前記自動焦点調整を行う工程は、
周期的な間隔で虹彩のストロマ色素への距離を測定する工程と、
前記距離に基づいて、前記レーザーシステムを、ストロマ色素において、実質的に焦点が合っている状態に留まるように制御する工程と
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法がさらに、
引き続く段階が、より少ない色素の除去を引き起こすが、より高いレーザーパワーで送達されるように、虹彩へのレーザーパワーの送達の複数の段階を、前記色変更処置の一部として決定する工程と、
送達の現在の段階にさらに基づいて、前記レーザーパワーに前記レーザーシステムを設定する工程と、
前記設定する工程に基づいて前記レーザーパワーを送達する工程
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の段階が少なくとも3つの段階を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記方法がさらに、
前記レーザーシステムと通信している制御コンピュータによって、免疫応答レベルを表すデータを含む、前記患者の医療記録へアクセスすることに基づいて、患者の免疫応答レベルを判定する工程と、
前記免疫応答レベルを、2つの前記段階の間の時間間隔に関連付けられた免疫応答の範囲と比較する工程と、
前記患者の免疫応答が前記範囲よりも高いことを示す比較に基づいて、前記時間間隔を低減させる工程と
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
色変更処置により、患者の眼色を変更する装置であって、前記装置がレーザーシステムおよび制御システムを備え、前記制御システムが、
ストロマ色素の少なくとも一部分の除去をもたらす、最大許容露光量の100倍未満の露光量の送達のためのレーザー基準の組を少なくとも取得することにより、前記患者の眼の虹彩内のストロマ色素へ送達するためのレーザーパワーを決定し、
前記レーザー基準の組よりも小さいレーザーパワーでレーザー光を送達するようにレーザーシステムを設定し、
前記レーザーシステムにより、前記レーザー光を送達するように構成されている、装置。
【請求項32】
前記装置が、前記ストロマ色素の少なくとも一部分の温度を監視するように構成された温度センサをさらに備え、前記制御システムが、前記温度センサで監視したときに、前記レーザーパワーの送達が温度を115~125℃(両端含む)に上昇させるように、前記レーザーパワーを送達するよう前記レーザーシステムを制御するように構成されている、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記装置がさらに、前記色変更処置中に、前記患者の眼を追跡するように構成された光学追跡システムを備えている、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記制御システムが、
虹彩の画像を捕捉するように前記光学追跡システムを制御し、
虹彩位置における変化が存在しているか否かを判定するために、前記画像を、虹彩の前の画像と比較し、
前記画像および前記前の画像から、位置における変化のデルタを計算し、
前記レーザー光の送達を前記デルタに基づいてシフトする
ように構成されている、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記光学追跡システムは距離測定器を含んでおり、前記光学追跡システムは、前記距離測定器を利用して、虹彩と、前記光学追跡システムの基準コンポーネントとの間の距離を判定するように構成されている、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記距離測定器は、
時間領域光コヒーレンストモグラフィシステムもしくはスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィシステムであるか、または、
三角測量レーザー、飛行時間検出器、位相シフト検出器、超音波検出器、周波数変調検出器、干渉計、カメラ、もしくは光センサの1つもしくは複数を備えている、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記基準コンポーネントは、前記光学追跡システムの最後のレンズである、請求項36に記載の装置。
【国際調査報告】