(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】シリコーンゴムの熱可塑性物質への接着
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240305BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240305BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20240305BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20240305BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C09J183/05
C09J183/07
C09J11/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558634
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 US2022022245
(87)【国際公開番号】W WO2022212304
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ガイヤー、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】バッカー、ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP121
4J002CP141
4J002GH01
4J040EK041
4J040EK081
4J040HD43
4J040JB02
4J040KA14
4J040MA11
(57)【要約】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物から作製されたシリコーンエラストマーの熱可塑性基材、特にポリオレフィン基材への接着に使用するための接着媒介物質組成物、及び上述の接着媒介物質組成物を使用して当該シリコーンエラストマーを当該熱可塑性基材に接着させるプロセスが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着媒介物質組成物であって、
(i)式Si(OR)
3R
1のトリアルコキシシランであって、式中、各Rが、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基であり、各R
1が、同じであっても、異なっていてもてよく、アルケニル基又はアルキニル基から選択される不飽和基であり、トリアルコキシシランが、前記組成物の20~45重量%の量で存在する、トリアルコキシシランと、
(ii)白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒であって、白金族金属が、前記組成物の0.1~1.5重量%の量で存在する、白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒と、
(iii)1~10重量%の量の2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物と、
(iv)式Si(OR
2)
4のテトラアルコキシシランであって、式中、各R
2が、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基であり、テトラアルコキシシランが、前記組成物の5~20重量%の量である、テトラアルコキシシランと、
(v)
(a’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有し、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有する、ポリオルガノシロキサン、又は
(b’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有する2つ以上のポリオルガノシロキサンの混合物であって、混合物が、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有する、混合物のいずれかであって、
前記成分(v)が、前記組成物の25~60重量%の量で存在する、ポリオルガノシロキサン又は混合物のいずれかと、を含む、接着媒介物質組成物。
【請求項2】
成分(i)が、式Si(OR)
3R
1を有し、式中、各Rが、同じであっても、異なっていてもてよく、エチル、プロピル、n-ブチル イソブチル、又はt-ブチルから選択され、各R
1が、ビニル、プロペニル、n-ブテニル、ペンテニル、又はヘキセニルから選択される同じであっても、異なっていてもてよいアルケニル基である、請求項1に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項3】
成分(ii)が、白金の1つ以上の配位化合物である、請求項1又は2に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項4】
成分(iii)が、式Ti(OR
3)
4、Ti(OR
3)
3R
4、Ti(OR
3)
2R
4
2の1つ以上のアルコキシチタン化合物、又はキレート化アルコキシチタン分子であり、式中、R
3が、1~20個の炭素を有する直鎖又は分岐アルキル基であり、存在する場合、R
4が、有機基、例えば、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、2~10個の炭素原子を有するアルキニル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有する芳香族基、又はこれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項5】
成分(iii)が、構造Ti(OR
3)
4、Ti(OR
3)
3R
4、Ti(OR
3)
2R
4
2のチタネートから選択され、式中、各R
3が、イソブチル基、t-ブチル基、又はn-ブチル基であるか、又は成分(iii)が、チタン酸のエステル及びアセト酢酸エステルのエノラートである、請求項4に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項6】
成分(iv)が、式Si(OR
2)
4のテトラアルコキシシランであり、式中、各R
2が、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、又はヘキシルから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項7】
シリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法であって、
(a)任意選択的に、熱可塑性基材表面を活性化する工程と、
(b)前記任意選択的に活性化された熱可塑性基材表面を、請求項1~6のいずれか一項に記載の接着媒介物質組成物を用いて処理する工程と、
(c)ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を、工程(b)から得られた前記処理された表面上に塗布する工程と、
(d)前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させる工程と、を含む、方法。
【請求項8】
前記熱可塑性基材が、プラズマ処理、コロナ放電処理、UV-C/オゾン又は真空-UV照射、非晶質二酸化ケイ素の火炎熱分解堆積、又は火炎処理のうちの1つによって活性化される、請求項7に記載のシリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法。
【請求項9】
工程(c)及び/又は(d)が、射出成形又は3D印刷を伴う、請求項7又は8に記載のシリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法。
【請求項10】
工程(d)において、前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物が、前記熱可塑性基材の溶融温度より低い温度で硬化する、請求項7~9に記載のシリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法。
【請求項11】
前記熱可塑性物質が、ポリオレフィンである、請求項7~9のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法。
【請求項12】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物が、工程(b)において塗布された接着媒介物質の層が硬化又は固化する前に、工程(c)において塗布される、請求項7~11のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマーと無機基材との複合物の調製のための方法。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか一項に記載の方法によって得られた又は得られ得る、複合物品又は部品。
【請求項14】
1kg当たり最大50mgの白金を含有する、請求項13に記載の複合物品。
【請求項15】
シリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の前記調製における、請求項1~6のいずれか一項に記載の接着媒介物質組成物の使用。
【請求項16】
前記シリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物が、ヒトが消費するための家庭用製品並びに/又は食品及び飲料製品の輸送、包装、貯蔵、処理、生成、調製、加工、消費、及び成形に使用される、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物から作製されたシリコーンエラストマーの熱可塑性基材、特にポリオレフィン基材への接着における接着媒介物質組成物及びその使用、並びに上述の接着媒介物質組成物を使用して当該シリコーンエラストマーを当該熱可塑性基材に接着させるプロセスに関する。
【0002】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、ヒドロシリル化(付加)硬化プロセスを介して、硬化して、シリコーンエラストマー材料(さもなければ、シリコーンゴムと称される)を提供する。
【0003】
当該ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させることによって得られるシリコーンエラストマーは、信頼性の高い特性を有するため、例えば、電気供給、例えば、高電圧電気絶縁、エレクトロニクス、自動車用途、及び例えば、食品接触用途を含む消費者用途を含む幅広い種類の用途において使用され得る。
【0004】
多くのこのような用途において、シリコーンエラストマー及び他の材料、例えば熱可塑性物質、例えばポリオレフィンを含む成形複合部品を製造することがますます望ましくなってきている。しかしながら、このような複合物の調製は、シリコーンエラストマーと、多くの熱可塑性物質、特に化学的に不活性であり、任意の極性官能基を有さず、疎水性であり、その結果として低い表面エネルギーを有するポリオレフィンとの間の接着の欠如のために困難であることが証明されている。これらの官能性が存在しないことに起因して、一般的な接着剤は、好適な様式で予備活性化されない限り、双極子及び/又は水素結合などの極性相互作用、並びにほとんどの場合、ラジカルグラフトなどのプロセスを通す以外の化学結合を通して、当該熱可塑性物質との接着を構築し得ない。その結果として、シリコーンエラストマー材料とポリオレフィンなどの当該熱可塑性基材との複合物を提供する能力は、2つの間に十分に強い接着結合を形成し得ないことに起因して制限されてきた。
【0005】
熱可塑性基材をシリコーンエラストマーに対してより化学的な反応性にするために、様々な解決策が提案されており、例えば国際公開第2016103170号においては、熱可塑性材料を最初に反応性基を有するオリゴマーと混合し、次いでその上にシリコーン層を塗布させる。その意図は、シリコーンエラストマー表面と、典型的には付加硬化触媒を使用して触媒作用が及ぼされるオリゴマーの反応性基との間の化学的相互作用を有することである。しかしながら、このようなプロセスは、利用される熱可塑性物質の物理的特性に悪影響を及ぼすことが見出されている。
【0006】
基材表面上へのプライマーの塗布は、基材の事前の活性化の有無にかかわらず、この接着の欠如の問題を克服するために最初に利用された。プライマーは、基材上に塗布され、乾燥及び/又は硬化されて、基材と、この場合、その後にその上に塗布されるヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物との間の改善された接着を提供する予備コーティングであり、これは、当該基材とヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物との間の強化された接着を提供する。しかしながら、プライマーを必要とする方法の使用には、いくつかの問題が生じている。複合部品/物品のためのプライマーの使用は、それらが信頼され得ず、品質管理及び信頼性の問題を有し得、従来より、乾燥/硬化プロセス中に蒸発して、多くの場合望ましくない揮発性有機化合物(volatile organic compound、VOC)環境問題をもたらす高い割合の有機溶媒を含有するため、一般に好ましくない。
【0007】
このようなプライマーの使用によって、皮膚接触及び食品接触用途などの高度に規制された用途で使用するためのシリコーンエラストマー/ポリオレフィン複合部品/物品の調製に関して、特に問題があることが証明されている。
【0008】
1つ以上の熱可塑性物質、例えばポリオレフィン、及び1つ以上のシリコーンエラストマーから作製される複合部品/物品は、多くの場合、オーバーモールド(例えば、熱可塑性基材上へのヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物の射出成形、又は2液射出成形機を使用することによって、熱可塑性物質とヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物との両方を、1つの複合シリコーンエラストマー/ポリオレフィン物品又は部品に成形することを指す場合に使用される2液射出成形プロセス)を含む射出成形プロセスによって調製される。歴史的に、このことは、その原料、特に揮発性有機溶媒のために、大多数のプライマーが利用されることを妨げてきた。
【0009】
本開示の目的は、シリコーンエラストマーを熱可塑性基材、特にポリオレフィン基材に接着させるのに好適である接着媒介物質組成物を提供することである。
【0010】
接着媒介物質組成物であって、
(i)式Si(OR)3R1のトリアルコキシシランであって、式中、各Rが、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基であり、各R1が、同じであっても、異なっていてもてよく、アルケニル基又はアルキニル基から選択される不飽和基であり、トリアルコキシシランが、組成物の20~45重量%の量で存在する、トリアルコキシシランと、
(ii)白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒であって、白金族金属が、組成物の0.1~1.5重量%の量で存在する、白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒と、
(iii)組成物の1~10重量%の量の2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物と、
(iv)式Si(OR2)4のテトラアルコキシシランであって、式中、各R2が、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基であり、テトラアルコキシシランが、組成物の5~20重量%の量で存在する、テトラアルコキシシランと、
(v)
(a’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有し、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有する、ポリオルガノシロキサン、又は
(b’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有する2つ以上のポリオルガノシロキサンの混合物であって、混合物が、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有する、混合物のいずれかであって、
当該成分(v)が、組成物の25~60重量%の量で存在する、ポリオルガノシロキサン又は混合物のいずれかと、を含む、接着媒介物質組成物が提供される。
【0011】
任意の組み合わせにおける組成物の総重量%(重量%)は、100重量%である。
【0012】
また、シリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製における、本明細書で上記のような接着媒介物質組成物の使用も提供される。
【0013】
本明細書では、シリコーンエラストマーとポリオレフィンなどの熱可塑性物質との複合物の調製のための方法であって、
(a)任意選択的に、熱可塑性基材表面を活性化する工程と、
(b)任意選択的に活性化された熱可塑性基材表面を、本明細書で上記のような接着媒介物質組成物を用いて処理する工程と、
(c)ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を、工程(b)から得られた処理された表面上に塗布する工程と、
(d)当該ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させる工程と、を含む、方法も提供される。
【0014】
シリコーンエラストマーとポリオレフィンなどの熱可塑性物質との複合物の調製のための方法によって得られた又は得られ得る、複合部品又は物品であって、方法が、
(a)任意選択的に、熱可塑性基材表面を活性化する工程と、
(b)任意選択的に活性化された熱可塑性基材表面を、本明細書で上記のような接着媒介物質組成物を用いて処理する工程と、
(c)ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を、工程(b)から得られた処理された表面上に塗布する工程と、
(d)当該ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させる工程と、を含む、複合部品又は物品も提供される。
【0015】
有益なことには、本明細書で提供される接着媒介物質組成物は、直ちにオーバーモールドされ得、有機溶媒などの主要な揮発性有機化合物(VOC)を有さないように設計される。したがって、本接着媒介物質組成物を利用するプロセスは、プライマーのプレ硬化処理又は溶媒の蒸発に依存せず、したがって、本明細書の接着媒介物質組成物は、それが異なって機能するため、プライマーではない。標準的なプライマーは、基材上に塗布される予備コーティングであり、次いで、不可欠な工程において、次の層の付加の前に乾燥及び/又は硬化させる。この開示では、接着媒介物質組成物は、基材とシリコーンエラストマーとの間の改善された接着を提供するために不可欠な乾燥/硬化工程を受けない。更に、乾燥プロセスの一部として蒸発されるように設計された組成物中に含有する有害又は有毒な溶媒は存在しない。一実施形態では、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、工程(b)において塗布された接着媒介物質の層が硬化又は固化する前に、工程(c)において塗布される。
【0016】
これは、プライマーの使用に多くの場合関連する揮発性有機化合物(VOC)の放出から生じる環境問題、並びに皮膚接触及び食品接触用途のような規制問題を有意に低減する。代わりに、不揮発性である反応性希釈剤(成分(v))が用いられる。接着媒介物質は全体として反応し、LSR/成形物品中に組み込まれる。接着媒介物質組成物が熱可塑性基材上に塗布されると、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、接着媒介物質組成物の上部に直ちに塗布され得、その後、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、適切な温度及び圧力で硬化して、複合部品/物品を形成する。乾燥工程が不要であるという事実は、一般的なプライマー溶液と比較して、より短い加工時間及びより高い生産性という追加的な効果を有する。
【0017】
接着媒介物質組成物の成分(i)は、式Si(OR)3R1のトリアルコキシシランであり、
式中、各Rは、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素、あるいは1個の基当たり少なくとも2~20個の炭素、あるいは1個の基当たり少なくとも2~15個の炭素、あるいは1個の基当たり少なくとも2~10個の炭素を有するアルキル基であり、あるいは、各R基は、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル、又はヘキシル、あるいはエチル、プロピル、n-ブチル イソブチル、又はt-ブチル、あるいは、エチル、又はプロピルなどの、1個の基当たり2~6個の炭素を有するアルキル基から選択され得、
各R1は、同じであっても、異なっていてもてよく、アルケニル基又はアルキニル基から選択される不飽和基であり、あるいは各R1は、同じであっても、異なっていてもてよく、いずれの場合も1個の基当たり2~20個の炭素、あるいは1個の基当たり2~15個の炭素、あるいは1個の基当たり2~10個の炭素を有するアルケニル基又はアルキニル基から選択される不飽和基であり、あるいは、各R1は、ビニル、プロペニル、n-ブテニル、ペンテニル、又はヘキセニルから選択される同じであっても、異なっていてもてよいアルケニル基である。
【0018】
一実施形態では、成分(i)であるトリアルコキシシランは、接着媒介物質組成物の20~40重量%、あるいは接着媒介物質組成物の25重量%~38重量%、あるいは接着媒介物質組成物の25重量%~35重量%の量で存在する。
【0019】
好ましい実施形態では、成分(i)であるトリアルコキシシランは、式Si(OR)3R1のトリアルコキシシランであり、式中、各Rは、エチル、プロピル、n-ブチル イソブチル、又はt-ブチル、あるいはエチル、又はプロピルなどの1個の基当たり2~4個の炭素を有するアルキル基であり、各R1は、ビニル、プロペニル、n-ブテニル、ペンテニル、又はヘキセニルなどの、1個の基当たり2~6個の炭素を有する、同じであっても、異なっていてもよいアルケニル基であり、あるいは、各R1は、ビニル基である。
【0020】
接着媒介物質組成物の成分(ii)は、白金族金属系ヒドロシリル化硬化触媒である。それらは、通常、白金族の金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)、又はこのような金属のうちの1つ以上の化合物の触媒から選択される。代替的に、白金及びロジウム化合物は、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の高い活性レベルに起因して好ましく、白金化合物が、最も好ましい。ヒドロシリル化(又は付加)反応において、本明細書における成分(ii)などのヒドロシリル化触媒は、不飽和基、通常はアルケニル基、例えばビニルとSi-H基との間の反応に触媒作用を及ぼす。
【0021】
触媒(ii)は、白金族金属、担体、例えば活性炭、酸化アルミニウム若しくは二酸化ケイ素などの金属酸化物、シリカゲル若しくは粉末状木炭上に堆積された白金族金属、又は白金族金属の化合物若しくは錯体であり得る。好ましくは、白金族金属は、白金である。
【0022】
好ましいヒドロシリル化触媒(ii)の例は、白金系触媒、例えば白金黒、酸化白金(Adams触媒)、様々な固体支持体上の白金、塩化白金酸、例えばヘキサ塩化白金酸(Pt酸化状態IV)(Speier触媒)、アルコール、例えばイソオクタノール又はアミルアルコールの溶液中の塩化白金酸(Lamoreaux触媒)、並びに塩化白金酸とエチレン性不飽和化合物、例えばオレフィン、及びエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体、例えばテトラ-ビニル-テトラメチルシクロテトラシロキサン-白金錯体(Ashby触媒)である。使用可能な可溶性白金化合物としては、例えば、式(PtCl2(オレフィン)2及びH(PtCl3.オレフィン)の白金-オレフィン錯体を挙げることができ、この文脈では、エチレン、プロピレンなど、2~8個の炭素原子を有するアルケン、ブテンの及びオクテンの異性体、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、及びシクロヘプテンなど、5~7個の炭素原子を有するシクロアルカンの使用が優先される。他の可溶性白金触媒は、例えば、式(PtCl2C3H6)2の白金-シクロプロパン錯体であり、ヘキサクロロ白金酸の、アルコール、エーテル、及びアルデヒド、若しくはこれらの混合物との反応生成物、又はヘキサクロロ白金酸及び/若しくはその変換生成物と、メチルビニルシクロテトラシロキサンなどのビニル含有シロキサンとのエタノール溶液中の重炭酸ナトリウムの存在下での反応生成物である。リン、硫黄、及びアミン配位子を有する白金触媒、例えば、(Ph3P)2PtCl2、及びsym-ジビニルテトラメチルジシロキサンなど、ビニルシロキサンとの白金の錯体も、使用することができる。
【0023】
したがって、好適な白金系触媒の具体的な例としては、
(i)塩化白金酸の、米国特許第3,419,593号に記載されている、エチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体、
(ii)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸、
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む、方法によって得られる白金含有触媒、
(iv)(COD)Pt(SiMeCl2)2(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体、及び/又は
(v)典型的にはビニルシロキサンポリマー中に、典型的には約1重量%の白金を含有する、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である、Karstedtの触媒が挙げられる。トルエンなどの有機溶媒のような溶媒は、歴史的に代替物として使用されてきたが、ビニルシロキサンポリマーの使用がはるかに好ましい選択である。これらは、米国特許第3,715,334号及び米国特許第3,814,730号に記載されている。好ましい一実施形態では、成分(ii)は、白金の配位化合物から選択され得る。一実施形態では、ヘキサクロロ白金酸及びビニル含有シロキサンとのその変換生成物、Karstedtの触媒、並びにSpeier触媒が好ましい。
【0024】
触媒は、単一種として、又は2つ以上の異なる種の混合物として添加され得る。典型的には、触媒が提供される形態/濃度に依存して、存在する白金族金属の量、あるいは存在する白金金属の量は、組成物の0.1~1.5重量%、あるいは0.1~1.0重量%、あるいは組成物の0.1~0.5重量%の範囲内であろう。
【0025】
接着媒介物質組成物の成分(iii)は、2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物、例えばTi(OR3)4、Ti(OR3)3R4、Ti(OR3)2R4
2、又はキレート化アルコキシチタン分子、例えば、チタン酸のエステル及びアセト酢酸エステルのエノラートであり、式中、R3は、1~20個の炭素、あるいは1~15個の炭素、あるいは1~10個の炭素、あるいは1~6個の炭素を有する直鎖又は分岐アルキル基である。R3の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、分岐二級アルキル基、例えば2,4-ジメチル-3-ペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、R4は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、2~10個の炭素原子を有するアルキニル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、若しくは6~20個の炭素原子を有する芳香族基、例えばフェニル基、又はこれらの混合物などの有機基である。各R4は、同じか又は異なってもよく、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基、あるいはいずれの場合においても、1個の基当たり最大10個の炭素、あるいは最大6個の炭素を有するアルキル基、アルケニル基、あるいはアルキニル基から選択される。R4の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、シクロヘキシル、フェニル、トリル基が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0026】
Ti(OR3)4、Ti(OR3)3R4、又はTi(OR3)2R4
2である場合、成分(iii)の好適な例としては、例えば、チタン酸テトラメチル、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトラn-プロピル、チタン酸テトラn-ブチル、チタン酸テトラt-ブチル、チタン酸テトライソブチル、チタン酸テトライソプロピルが挙げられる。成分(iii)がTi(OR3)3R4である場合、例としては、トリメトキシアルキルチタン、トリエトキシアルキルチタン、トリn-プロポキシアルキルチタン、トリn-ブトキシアルキルチタン、トリt-ブトキシアルキルチタン、及びチタン酸トリイソプロポキシアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。成分(iii)がキレート化チタンである場合、それは、チタン酸のエステル及びアセト酢酸エステルのエノラートを含み得る。
【0027】
一実施形態では、成分(iii)は、構造Ti(OR3)4、Ti(OR3)3R4、Ti(OR3)2R4
2のチタネートから選択され得、式中、各R4は、上記の通りであり得、R3は、イソブチル基若しくはn-ブチル基であるか、又は成分(iii)は、チタン酸のエステル及びアセト酢酸エステルのエノラートである。
【0028】
接着媒介物質組成物の成分(iii)、すなわち2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物は、組成物の1~10重量%、あるいは2~8重量%、あるいは組成物の2~7重量%の量で存在し得る。
【0029】
接着媒介物質組成物の成分(iv)は、式Si(OR2)4のテトラアルコキシシランであり、式中、各R2は、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基、あるいは1個の基当たり2~20個の炭素、あるいは1個の基当たり2~15個の炭素、あるいは1個の基当たり2~10個の炭素を有するアルキル基、あるいはエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、又はヘキシル、あるいはエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチルであり、成分(iv)は、接着媒介物質組成物中に、組成物の5~20重量%、あるいは5~15重量%、あるいは7~15重量%の量で存在する。
【0030】
成分(v)
接着媒介物質組成物の成分(v)は、
(a’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有し、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有する、ポリオルガノシロキサン、又は
(b’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有する2つ以上のポリオルガノシロキサンの混合物であって、混合物が、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有する、混合物のいずれかであって、
当該成分(v)が、組成物の25~60重量%の量で存在する。
【0031】
(v)(a’)における、アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有するポリオルガノシロキサン、並びに(v)(b’)における、アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有する2つ以上のポリオルガノシロキサンの混合物の両方は、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで100mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで100mPa・s~8000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで100mPa・s~7500mPa・sの範囲の粘度、あるいは、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで100mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで200mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで300mPa・s~5000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0032】
(v)(b’)の場合では、混合物は、アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有し、25℃で50mPa・s~60,000mPa・s、あるいは25℃で50mPa・s~25,000mPa・s、あるいは25℃で100mPa・s~25,000mPa・s、あるいは25℃で100mPa・s~15,000mPa・s、あるいは25℃で100mPa・s~10,000mPa・sの範囲の粘度を有し、得られた混合物の粘度が、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有することを条件とし、組成物の25~60重量%の量、あるいは組成物の30~60重量%の量、あるいは組成物35~55重量%の量で、ポリオルガノシロキサンを含み得る。25℃で測定された10,000mPa・sを超える粘度を有する(v)(b’)中の個々のポリマーの粘度は、(10,000~2,000,000mPa・sの範囲の粘度用に設計された)スピンドルLV-4を備えたBrookfield(商標)回転式粘度計を使用して、ポリマー粘度に従って速度を例えば6rpmに適合させて測定され得る。
【0033】
成分(v)の各ポリオルガノシロキサンは、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンであり、この不飽和基は、アルケニル基又はアルキニル基から選択される。代替的に、成分(v)の各ポリオルガノシロキサンは、1分子当たり少なくとも3個の不飽和基を有する。
【0034】
成分(v)の各ポリオルガノシロキサンの不飽和基は、末端、ペンダント、又は両方の位置にあり得る。アルケニル基は、2~30個、代替的に2~24個、代替的に2~20個、代替的に2~12個、代替的に2~10個、代替的に2~6個の炭素原子を有してもよい。アルケニルは、ビニル基、アリル基、メタリル基、プロペニル基、及びヘキセニル基、及びシクロヘキセニル基によって例示されるが、これらに限定されない。アルキニルは、エチニル基、プロピニル基、及びブチニル基によって例示されてもよいが、これらに限定されない。アルキニル基は、2~30個、代替的に2~24個、代替的に2~20個、代替的に2~12個、代替的に2~10個、代替的に2~6個の炭素原子を有してもよい。
【0035】
成分(v)の各ポリオルガノシロキサンは、式(I)の複数の単位を有し、
R’aSiO(4-a)/2 (I)
式中、各R’は、独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、又は脂肪族非ハロゲン化オルガニル基(官能基の種類に関係なく、炭素原子に1つの自由原子価を有する任意の脂肪族有機置換基である)から選択される。飽和脂肪族ヒドロカルビルは、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、並びにシクロヘキシルなどのシクロアルキル基によって例示されるが、これらに限定されない。不飽和脂肪族ヒドロカルビルは、上記のアルケニル基及びアルキニル基によって例示されるが、これらに限定されない。脂肪族非ハロゲン化オルガニル基は、アミド基、イミド基などの好適な窒素含有基、ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基が例示されるが、それらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、ホウ素含有基が挙げられてもよい。下付き文字「a」は0、1、2、又は3である。
【0036】
シロキシ基は、R’が、上記の通り、あるいはアルキル基、典型的にはメチル基である場合、略記(略称)命名法、すなわち-「M」、「D」、「T」、及び「Q」によって記載され得る(シリコーン命名法に関する更なる教示は、Walter Noll,Chemistry and Technology of Silicones,dated 1962,Chapter I,pages 1-9において見出され得る)。M単位は、式中、a=3であるシロキシ単位、すなわち、R’3SiO1/2に相当し、D単位は、式中、a=2であるシロキシ単位、すなわち、R’2SiO2/2に相当し、T単位は、式中、a=1であるシロキシ単位、すなわち、R’1SiO3/2に相当し、Q単位は、式中、a=0であるシロキシ単位、すなわち、SiO4/2に相当する。成分(v)の各ポリジオルガノシロキサンは、実質的に直鎖であるが、分子内に(上記のような)T単位の存在に起因して分岐の割合を含有し得、したがって構造(I)のaの平均値は、約2である。
【0037】
上記のような成分(v)の各ポリオルガノシロキサン上の典型的な基の例としては、アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基、典型的にはアルケニル基が挙げられ、上記のような範囲の粘度を有するものとしては、主にアルケニル基、アルキニル基、及び/又はアルキル基、あるいはアルケニル基、及び/又はアルキル基が挙げられる。基は、ペンダント位置(D又はTシロキシ単位上)であってもよい、又は末端(Mシロキシ単位上)であってもよい。
【0038】
成分(v)の各ポリオルガノシロキサンは、例えばアルケニル基及び/又はアルキニル基を含有する、ポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はこれらのコポリマーから選択され得(アルキルへの言及は、任意の好適なアルキル基、あるいは2個以上の炭素を有するアルキル基を意味する)、任意の好適な末端基を有し得、それらは、例えば、トリアルキル末端、アルケニルジアルキル末端、アルキニルジアルキル末端であり得るか、又は各ポリマーが1分子当たりアルケニル基及びアルキニル基から選択される少なくとも2個の不飽和基を含有するという条件で、任意の他の好適な末端基の組み合わせで末端化され得る。一実施形態では、このようなポリマーの末端基は、シラノール末端基を含まない。
【0039】
したがって、成分(v)の各ポリオルガノシロキサンは、例えば、以下のものであり得る。
【0040】
ジアルキルアルケニル末端ポリジメチルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、ジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマー、ジアルキルビニル末端メチルフェニルポリシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、又はトリメチル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン。
【0041】
したがって、本明細書に記載されるような接着媒介物質組成物は、
(i)式Si(OR)3R1のトリアルコキシシランであって、式中、各Rが、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基であり、各R1が、同じであっても、異なっていてもてよく、アルケニル基又はアルキニル基から選択される不飽和基であり、トリアルコキシシランが、組成物の20~40重量%、あるいは接着媒介物質組成物の25重量%~38重量%、あるいは接着媒介物質組成物の25重量%~35重量%の量で存在する、トリアルコキシシランと、
(ii)組成物の0.1~1.5重量%、あるいは0.1~1.0重量%、あるいは組成物の0.1~0.5重量%の量の白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒と、
(iii)1~10重量%、あるいは2~8重量%、あるいは組成物の2~7重量%の量の、2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物と、
(iv)式Si(OR2)4のテトラアルコキシシランであって、式中、各R2が同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有し、テトラアルコキシシランが、組成物の5~20重量%、あるいは5~15重量%、あるいは7~15重量%の量で存在する、テトラアルコキシシランと、
(v)
(a’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有し、いずれの場合において、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~8000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~7500mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは200mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、300mPa・s~5000mPa・sの範囲の粘度を有するポリオルガノシロキサン、又は
(b’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有する2つ以上のポリオルガノシロキサンの混合物であって、混合物が、いずれの場合において、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~8000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~7500mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは200mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、300mPa・s~5000mPa・sの範囲の粘度を有する、混合物のいずれかであって、
成分(v)が、組成物の25~60重量%の量、あるいは組成物の30~60重量%の量、あるいは組成物35~55重量%の量で存在する、ポリオルガノシロキサン又は混合物のいずれかと、を含む。
【0042】
成分(i)~(v)の任意の好適な組み合わせは、添加剤とともに又は添加剤なしで利用され得るが、組成物の総重量%は、添加剤が含まれるか否かにかかわらず、100重量%である。
【0043】
本明細書の開示の一実施形態では、接着媒介物質組成物は、
(i)式Si(OR)3R1のトリアルコキシシランであって、式中、各Rが、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基であり、各R1が、同じであっても、異なっていてもてよく、アルケニル基又はアルキニル基から選択される不飽和基であり、トリアルコキシシランが、組成物の20~40重量%、あるいは接着媒介物質組成物の25重量%~38重量%、あるいは接着媒介物質組成物の25重量%~35重量%の量で存在する、トリアルコキシシランと、
(ii)組成物の0.1~1.5重量%、あるいは組成物の0.1~1.0重量%、あるいは0.1~0.5重量%の量の、白金の1つ以上の配位化合物から選択される、白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒と、
(iii)Ti(OR3)4、Ti(OR3)3R4、Ti(OR3)2R4
2から選択される2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物であって、式中、各R4が、同じであっても、異なっていてもてよく、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基から選択され、各R3が、イソブチル又はn-ブチル基から選択されるか、又は成分(iii)が、チタン酸のエステル及びアセト酢酸エステルのエノラートであり、1~10重量%、あるいは2~8重量%、あるいは組成物の2~7重量%の量である、アルコキシチタン化合物と、
(iv)式Si(OR2)4のテトラアルコキシシランであって、式中、各R2が同じであっても、異なっていてもてよく、組成物の5~20重量%、あるいは5~15重量%、あるいは7~15重量%の量のアルキル基である、テトラアルコキシシランと、
(v)
(a’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有し、いずれの場合において、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~8000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~7500mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは200mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、300mPa・s~5000mPa・sの範囲の粘度を有するポリオルガノシロキサン、又は
(b’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有する2つ以上のポリオルガノシロキサンの混合物であって、混合物が、いずれの場合において、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~8000mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~7500mPa・sの範囲の粘度、あるいは100mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは200mPa・s~7000mPa・sの範囲の粘度、あるいは、300mPa・s~5000mPa・sの範囲の粘度を有する範囲の粘度を有する、混合物のいずれかであって、
成分(v)が、組成物の25~60重量%の量、あるいは組成物の30~60重量%の量、あるいは組成物35~55重量%の量で存在する、ポリオルガノシロキサン又は混合物のいずれかと、を含む。
【0044】
成分(i)~(v)の任意の好適な組み合わせは、添加剤とともに又は添加剤なしで利用され得るが、組成物の総重量%は、添加剤が含まれるか否かにかかわらず、100重量%である。
【0045】
接着媒介物質組成物は、任意の好適な混合手段を使用して均質に混合され得、実際、実験室目的のために、組成物は、スプーン又はスパチュラなどを使用して、適切なサイズの容器内で手で混合された。
【0046】
上記のように、本明細書では、シリコーンエラストマーとポリオレフィンなどの熱可塑性物質との複合物の調製のための方法であって、
(a)任意選択的に、熱可塑性基材表面を活性化する工程と、
(b)任意選択的に活性化された熱可塑性基材表面を、本明細書で上記のような接着媒介物質組成物を用いて処理する工程と、
(c)ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を、工程(b)から得られた処理された表面上に塗布する工程と、
(d)当該ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させる工程と、を含む、方法も提供される。
【0047】
任意の好適な熱可塑性基材が利用され得る。一実施形態では、熱可塑性基材は、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン(high-density polyethylene、HDPE)、又は低密度ポリエチレン(low-density polyethylene、LDPE)などのポリオレフィン、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリウレタン、スチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、例えばナイロン、及びポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PBT)、並びにこれらの好適なコポリマーから選択される。一実施形態では、熱可塑性物質は、ポリオレフィンである。
【0048】
所望の場合、熱可塑性基材の表面を活性化する任意の好適な手段が利用され得る。これらは、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、UV-C/オゾン又は真空-UV照射、非晶質二酸化ケイ素の火炎熱分解堆積、又は火炎処理によるものが挙げられる。
【0049】
「プラズマ」という用語は、密度及び温度が桁違いに変化する広範なシステムを包含する。プラズマには非常に熱いプラズマがあり、それらの全ての微視的種(イオン、電子等)はほぼ熱平衡状態にあり、そのシステムへのエネルギー入力は原子/電子レベルの衝突によって広範に分配される。しかしながら、他のプラズマ、特に衝突が比較的まれである室温及び質圧又は真空下で利用されるプラズマは、広く異なる温度でそれらの構成種を有し、自由電子が数千ケルビンの温度で非常に熱く、一方で中性種及びイオン種は低温のままである「非熱平衡」プラズマと称される。自由電子の質量はごくわずかであるので、システムの総熱含有量は低く、プラズマ、例えば大気圧誘電体バリア放電及び大気圧グロー放電などの大気圧プラズマ放電は、室温に近い温度で動作するため、プラスチック又はポリマーなどの温度に敏感な材料の加工を、それらを損なう熱負荷をその試料にかけることなく可能にする。しかしながら、高温の電子は、高エネルギー衝突を通して、強い化学的及び物理的反応性が可能な高い化学的電位エネルギーを有するラジカル及び励起種の豊富な供給源を生成し、したがって、この場合の表面活性化などの多くの技術的用途に好適である。
【0050】
コロナ放電は、高電圧を搬送する導体を取り囲む空気などの流体のイオン化によって引き起こされる放電である。それは、空気(又は他の流体)が電気的絶縁破壊を受け、導電性になり、電荷が導体から空気中に連続的に漏れることを可能にし、活性化目的に有用であり得る局所領域を表す。
【0051】
UV-C照射は、特に有益なことには、100nm~280nm、好ましくは150nm~260nm、特に好ましくは170nm~260nmの波長で提供され、ポリオレフィン基材などの好適な熱可塑性基材の表面を活性化して、熱可塑性表面を活性化し、本明細書で上記のような接着媒介物質組成物のコーティングの塗布後にその表面上でのシリコーンの接着を改善するために使用され得る。
【0052】
非晶質二酸化ケイ素の火炎熱分解堆積は、Sura Instruments GmbH(Jena、Germany)の「PYROSIL(商標)プロセス」などの任意の好適なプロセスによって行われ得、基材は、ケイ素含有前駆体材料(PYROSIL(商標))でドープされたガス火炎を通して供給され、前駆体は、火炎中で燃焼し、非常に薄いが、高密度で、強固に接着する酸化ケイ素コーティング(5~100nm)で表面上に堆積する。
【0053】
使用される各照射/活性化プロセスの場合では、当該照射/活性化は、好ましくは照射源によって引き起こされ、照射源は、照射中に熱可塑性物質の表面上を移動する。代替的に、照射/活性化源は、静止様式であり得、かつ/又は例えば、基材は、それに対して移動し得る。
【0054】
UV-C照射による熱可塑性物質の表面の照射は、オゾンを形成しながら、更に有益に実行され、オゾンは、照射中に表面と相互作用する。UV-C照射を用いて熱可塑性材料を照射すると、空気雰囲気との相互作用によってオゾンが形成され、オゾンが熱可塑性物質の表面と相互作用して、その結果表面の活性化を実質的に改善することが判明した。その結果として、形成されたオゾンは、熱可塑性物質の表面上へのシリコーンの接着の改善をもたらすために追加的に使用される。
【0055】
照射が閉鎖空間内、特に外部が暗くなった照射チャンバ内で実行される場合、オゾンが表面付近の熱可塑性物質の領域に留まり、表面との対応する相互作用に入り得る利益が、オゾンと併せて特に達成される。追加的に、オゾンと表面との可能な限り強い相互作用を確実にするために、照射チャンバを対応して最適化するために、この効果を増幅するための準備が行われ得る。照射チャンバは、例えば、熱可塑性物質の表面上のオゾン濃度ができるだけ高く存在するように、小さなサイズで選択される。
【0056】
照射の持続時間は、例えば、0.1秒~最大で15分、あるいは、0.1秒~最大で10分、あるいは、3秒~最大で7分、あるいは、3秒~最大で5分、あるいは、0.1秒~最大で1分、あるいは、0.4秒~30秒であり得る。
【0057】
本活性化工程について、UV-C又は特にコロナ放電は、本明細書に記載されるプロセスの工程(a)における好ましい活性化方法である。
【0058】
工程(a)の活性化が完了すると、必要に応じて、本明細書で上記のような接着媒介物質組成物の層は、工程(b)に従って基材表面上に塗布される。任意の好適な方法、例えば、上記の方法、すなわち、噴霧、ブラッシング、ローリング、フラッディング、及びスキージング、ナイフコーターを用いる塗布、又はスポンジ若しくはスタンピングなどを用いるワイピング若しくは転写印刷による方法が使用され得るか、又は特定の状況では、基材のサイズ及び形状に応じて、基材は、接着媒介物質組成物の浴に浸漬させることによってディップコーティングされ得る。実験室では、接着媒介物質組成物は、ピペットなどによって塗布されると、熱可塑性物質の表面をワイピングするだけで完全に十分であることが見出された。基材上への塗布後の接着媒介物質組成物コーティングは、典型的には、0.001~3mmの厚さ、あるいは0.001~2mmの厚さ、あるいは0.001~1mm厚さの領域である。
【0059】
工程(c)において、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、工程(b)において接着媒介物質組成物で処理された基材上に塗布される。これは、接着媒介物質組成物が活性化された基材上に塗布されるとすぐに行われ得る。この工程を直ちに行うことによって、接着媒介物質組成物は、熱可塑性物質/ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物の界面でヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物表面に浸透することができ、その結果、接着媒介物質組成物及びヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、工程(d)の間に熱可塑性物質の表面で一緒に効果的に「硬化」する。
【0060】
任意の好適なヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、接着媒介物質組成物でコーティングされた基材上に塗布され得る。接着媒介物質組成物で処理された基材上への塗布に使用される標準的なヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム(又はLSR)組成物は、
(I)1つ以上のポリオルガノシロキサンポリマー、例えば、上記の接着媒介物質組成物の成分(v)に記載されているような化学構造を有し、25℃で1000~100,000mPa・sの粘度を有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマーと、
(II)任意選択的に、1つ以上の微細化補強性充填剤、あるいは組成物の5~40重量%の量の1つ以上の微細化補強性充填剤と、
(III)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(IV)上記の接着媒介物質組成物の成分(ii)に記載されているような白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒と、任意選択的に、
(V)硬化抑制剤と、を含み得る。
【0061】
成分(I)は、1つ以上のポリオルガノシロキサンポリマー、例えば、上記の接着媒介物質組成物の成分(v)に記載されているような化学構造を有するが、25℃で1000~100,000mPa・sの粘度を有し得る1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマーである。成分(I)の場合では、ポリマーは、組成物中に組成物の35~85重量%の量で存在する。
【0062】
成分(II)は、1つ以上の微細化補強性充填剤である。
【0063】
成分(II)の補強性充填剤は、微細化ヒュームドシリカ、及び/又は微細化沈降性シリカ、及び/又は好適なシリコーン樹脂によって例示され得る。
【0064】
沈降性シリカヒュームドシリカ及び/又はコロイダルシリカが、一般的に少なくとも50m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)というそれらの比較的高い表面積から特に好ましい。一般的には、50~450m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)、あるいは50~300m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する充填剤を使用する。これらの種類のシリカは全て市販されている。
【0065】
補強性充填剤(II)が本来親水性である場合(例えば、未処理のシリカ充填剤)、それは、典型的には、処理剤を用いて処理されて、それを疎水性にする。これらの表面改質された補強性充填剤(II)は、凝集せず、表面処理によって、充填剤がポリジオルガノシロキサンポリマー(v)によって容易に湿潤することから、以下に記載されるポリジオルガノシロキサンポリマー(v)に均質に組み込まれ得る。
【0066】
典型的には、補強性充填剤(II)は、加工中のLSR組成物のクレーピングを防止するために、適用可能な当技術分野で開示されている任意の低分子量オルガノケイ素化合物を用いて表面処理され得る。例えば、充填剤を疎水性にして、ひいては取り扱いをより容易にし、他の原料との均質な混合物を得るようにする、オルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、又はオルガノシラザン、例えば、ヘキサアルキルジシラザン、短鎖シロキサンジオールである。具体例としては、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、シラノール末端ビニルメチル(vinyl methyl、ViMe)シロキサン、シラノール末端メチルフェニル(methyl phenyl、MePh)シロキサン、各分子中に平均2~20個のジオルガノシロキサンの繰り返し単位を含有する液体ヒドロキシルジメチル末端ポリジオルガノシロキサン、ヒドロキシルジメチル末端フェニルメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンなどのヘキサオルガノジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane、HMDZ)、ジビニルテトラメチルジシラザン、及びテトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザンなどの、ヘキサオルガノジシラザン;ヒドロキシルジメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、並びに限定されないが、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシランを含むシランが挙げられる。
【0067】
一実施形態では、処理剤は、シラノール末端ビニルメチル(ViMe)シロキサン、各分子中に平均2~20個のジオルガノシロキサンの繰り返し単位を含有する液体ヒドロキシルジメチル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンなどのヘキサオルガノジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)などのヘキサオルガノジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン;並びにヒドロキシルジメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、並びにメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及び/又はビニルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されないシランから選択され得る。少量の水が、加工助剤としてシリカ処理剤と一緒に添加され得る。
【0068】
未処理の補強性充填剤(II)の表面処理は、組成物中に導入する前に、又はin situで(すなわち、本明細書の組成物の他の原料の少なくとも一部の存在下で、充填剤が完全に処理されるまで、これらの原料を一緒に室温以上でブレンドすることによって)行われ得る。典型的には、未処理の補強性充填剤(II)は、ポリジオルガノシロキサンポリマー(I)の存在下、in situで、処理剤を用いて処理され、それによって、その後に他の原料と混合され得るシリコーンゴム系材料の調製がもたらされる。
【0069】
補強性充填剤(II)は、任意選択的に、組成物の最大40重量%、あるいは組成物の1.0~40重量%、あるいは組成物の5.0~35重量%、あるいは組成物の10.0~35重量%の量で存在する。
【0070】
成分(III)は、1分子当たり少なくとも2個又は3個のケイ素結合水素原子を含有するポリオルガノシロキサンの形態の架橋剤である。通常、成分(III)は、3個以上のケイ素結合水素原子を含有し、その結果水素原子がポリマー(I)の不飽和のアルケニル基又はアルキニル基と反応して、それらと網目構造を形成して、それによって組成物を硬化させ得る。代替的に、ポリマー(I)が1分子当たり2個を超える不飽和基を有する場合、成分(III)のいくつか又は全ては、1分子当たり2個のケイ素結合水素原子を有し得る。
【0071】
1分子(III)当たり少なくとも2個又は3個のケイ素結合水素原子を含有するポリオルガノシロキサンの分子構成は、特に制限されず、直鎖、一部分岐を有する直鎖、環状、又はシリコーン樹脂系であり得る。
【0072】
成分(III)の分子量は、特に制限されないが、粘度は、典型的には、25℃で15~50,000mPa・sであり、1000mPa・s未満の粘度については、(1,000~2,000,000mPa・sの範囲の粘度用に設計された)スピンドルLV-4を備えたBrookfield(商標)回転式粘度計、又は(15~20,000mPa・sの範囲の粘度用に設計された)スピンドルLV-1を備えたBrookfield(商標)回転式粘度計のいずれかに依存し、ポリマー(I)との良好な混和性を得るために、ポリマー粘度に従って速度を適合させる。
【0073】
成分(III)において使用されるケイ素結合有機基は、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのアルキル基と、フェニル、トリル、キシリルなどのアリール基と、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのハロゲン化アルキル基と、によって例示され得、好ましくはメチル基及びフェニル基である。好ましくは、成分(III)において使用されるケイ素結合有機基は、アルキル基、あるいはメチル基、エチル基、又はプロピル基である。
【0074】
1分子(III)当たり少なくとも2個又は3個のケイ素結合水素原子を含有するポリオルガノシロキサンの例としては、
(a’’)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(b’’)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(c’’)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンのコポリマー、
(d’’)ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンの環状コポリマー、
(e’’)(CH3)2HSiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(f’’)(CH3)2HSiO1/2単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(g”)1分子当たり3~10個のケイ素原子を有するメチルハイドロジェンシロキサン環状ホモポリマーが挙げられるが、これらに限定されず、
あるいは、架橋剤である成分Bは、充填剤、例えば、上記のうちの1つを用いて処理されたシリカ、及びこれらの混合物であり得る。
【0075】
成分(III)は、以下の化合物:分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン;分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖ジメチルシロキサン;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;分子鎖両末端がジメチルフェニルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとメチルフェニルシロキサンとのコポリマー;環式メチルハイドロジェンポリシロキサン;(CH3)2HSiO1/2シロキサン単位及びSiO4/2単位からなるコポリマー;(CH3)2HSiO1/2シロキサン単位、(CH3)3SiO1/2シロキサン単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマーであって、上述のポリオルガノシロキサンの一部又は全てのメチル基が、エチル基、プロピル基などのアルキル基で置換された、コポリマー;フェニル、トリルなどのアリール基で置換されたもの;3,3,3-トリフルオロプロピルなどのハロゲン化アルキル基で置換されたもの;又は上述のポリオルガノシロキサンのうちの2つ以上の混合物によって例示され得る。一実施形態では、成分(III)は、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン;分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖ジメチルシロキサン;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマーから選択される。
【0076】
ポリオルガノシロキサン架橋剤(III)は、一般に、成分(III)中のケイ素結合水素原子の総数と、ポリマー(v)中のアルケニル基及び/又はアルキニル基の総数とのモル比が、0.5:1~20:1となるように、硬化性シリコーンエラストマー組成物中に存在する。この比が0.5:1未満である場合、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1を超える場合、加熱された場合に、硬化した組成物の硬度が増加する傾向がある。好ましくは、成分(III)のケイ素結合水素原子のモル数と、成分(I)のアルケニル基のモル数との比が、0.7:1.0~5.0:1.0、好ましくは0.9:1.0~2.5:1.0、最も好ましくは0.9:1.0~2.0:1.0の範囲となるような量である。
【0077】
成分(III)のケイ素結合水素(Si-H)の含有量は、ASTM E168に準拠して定量的赤外線分析を使用して決定される。本発明において、ケイ素結合水素のアルケニル(ビニル)及び/又はアルキニルに対する比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合に重要である。一般に、これは、組成物中のアルケニル基の総重量%、例えば、ビニル[V]と、組成物中のケイ素結合水素[H]の総重量%とを計算することによって決定され、ここで、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27として、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。
【0078】
典型的には、成分(I)中の不飽和基の数、及び成分(III)中のSi-H基の数に応じて、成分(III)は、LSR組成物の0.1~25重量%、あるいはLSR組成物の0.1~20重量%、あるいはLSR組成物の0.1~15重量%、更にあるいはLSR組成物の0.5%~10重量%の量で存在する。
【0079】
成分(IV)は、上記の接着媒介物質組成物の成分(ii)に記載されているような白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒である。典型的には、反応性原料である成分(I)及び(III)の重量に対して、0.1~500ppm(100万分の1)を提供する白金原子の量で存在する。触媒は、単一種として、又は2つ以上の異なる種の混合物として添加され得る。典型的には、触媒が提供される形態/濃度に依存して、存在する触媒の量は、組成物の0.05~1.5重量%、あるいは組成物の0.05~1.0重量%、あるいは組成物の0.1~1.0重量%、あるいは組成物の0.1~0.5重量%の範囲内であり、ここで白金触媒は、上記の(I)及び(v)などのポリマーのマスターバッチ中に提供される。
【0080】
一実施形態では、ヒドロシリル化触媒は、白金の配位化合物であり、最終複合物は、1kg当たり最大50mgの白金を含有し、典型的には、上記の接着媒介物質及び熱可塑性基材上に塗布されるシリコーンゴム材料中に存在する白金の累積合計であり、本明細書では、接着媒介物質の含有量である。
【0081】
LSR組成物の成分(V)は、1つ以上の任意選択的な硬化抑制剤である。硬化阻害剤は、必要に応じて、特に保管中に付加反応硬化プロセスを防止又は遅延するために使用される。白金系触媒の任意選択的な付加反応抑制剤は、当該技術分野において周知であり、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、マレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン、ヒドロペルオキシド、ニトリル、並びにジアジリジンが挙げられる。米国特許第3989667号に記載されているようなアルケニル置換シロキサンを使用してもよく、その環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0082】
既知のヒドロシリル化反応抑制剤の1つの種類は、米国特許第3445420号に開示されているアセチレン化合物である。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレンアルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する好ましい種類の抑制剤を構成する。典型的には、これらの抑制剤を含有する組成物は、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度に加熱する必要がある。
【0083】
アセチレンアルコール及びその誘導体の実施例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(1-ethynyl-1-cyclohexanol、ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、1-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びこれらの混合物が挙げられる。アセチレンアルコールの誘導体としては、少なくとも1個のケイ素原子を有するこれらの化合物が挙げられてもよい。
【0084】
場合によっては、存在するとき、触媒の金属1モル当たり抑制剤1モル程度の低い抑制剤濃度は、満足な保管安定性及び硬化速度を付与するであろう。他の場合では、触媒の金属1モル当たり最大500モルの抑制剤という抑制剤濃度が必要である。所与の組成物における、所与の抑制剤に対する最適な濃度は、日常的な実験によって容易に決定される。選択された抑制剤が商業的に提供/市販されている濃度及び形態に応じて、組成物中に存在する場合、抑制剤は、一般的には、組成物の0.0125~10重量%の量で存在する。
【0085】
一実施形態では、阻害剤は、存在する場合、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)及び/又は2-メチル-3-ブチン-2-オールから選択され、組成物の0超~0.1重量%の量で存在する。
【0086】
このような組成物はまた、意図される用途に依存して、1つ以上の任意選択的な添加剤を含み得る。例としては、離型剤、非補強性充填剤、接着触媒、過酸化物、顔料、導電性充填剤、熱伝導性充填剤、ポットライフ延長剤、難燃剤、潤滑剤、離型剤、UV光安定剤、殺菌剤、湿潤剤、熱安定剤、圧縮永久歪み添加剤、及び可塑剤などが挙げられる。一実施形態では、組成物は、上記の成分(V)以外の任意選択的な添加剤を含有しない。
【0087】
上記のヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、通常、2液以上で使用前に貯蔵される。2液型組成物の場合では、2液は、通常、液(A)及び液(B)と称される。
液(A)は、典型的には、ポリオルガノシロキサン(I)、及び存在する場合充填剤(II)に加えて、触媒(IV)を含有し、
液(B)は、通常、成分(III)を含み、存在する場合、成分(V)抑制剤、並びに残りのポリオルガノシロキサン(I)及び/又は充填剤(II)を含む。
【0088】
触媒(IV)は、保管中の早期硬化を防止するために、架橋剤(III)とは別々に保管されることが重要である。
【0089】
任意の任意選択的な添加剤は、それぞれの部分に存在する必須原料のいずれかの貯蔵に悪影響を及ぼさない条件で、液(A)若しくは液(B)のいずれか、又は両方の液に存在し得る。
【0090】
幅広い種類のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が市場で市販されている。これらとしては、例えば、Silastic(商標)RBL-9200-20(-70)LSR、Xiameter(商標)RBL 2004-20(-75)LSR、Silastic(商標)NPC 9300-40/-50/-70LSR、Silastic(商標)LTC 9400-40/-50LSR、及びSilastic(商標)3D 3335LSRは、全てDow Silicones Corporation(Midland、Michigan)から入手可能である。本明細書で上記のような接着媒介物質とともに利用され得る他のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物としては、米国特許第8,691,910(B2)号、同第8,853,332(B2)号、及び同第8,859,693(B2)号に記載されているものなどの成形可能なシリコーンが挙げられる。
【0091】
本明細書で使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物の成分の均質な混合は、ニーダーミキサ、液状射出成形機のスタティックミキサ、Zブレードミキサ、2本ロールミル(オープンミル)、3本ロールミル、Haake(商標)Rheomix OS Labミキサ、スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機などの好適な混合手段を使用して行われ得る。例えば、Hauschildから販売されている、DC150.1FV、DAC400FVZ、又はDAC600FVZのようなスピードミキサが、代替的に使用され得る。
【0092】
最後に、工程(d)において、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、熱可塑性基材の溶融温度未満、例えば、好ましくは150℃未満、あるいは130℃未満、あるいは120℃未満の温度で硬化する。これらが選択されるのは、ポリオレフィンなどの熱可塑性物質が、ある温度を超えると、このような高温で柔軟又は成形可能になる程度まで「溶融」し、その後、冷却すると再び固化するからである。ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物が高温で硬化する場合、ポリオレフィン基材などの熱可塑性基材に接着される、本明細書で使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、室温と熱可塑性基材の溶融温度との間の温度で硬化する能力を有することが非常に好ましい。
【0093】
基材上のヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物の硬化は、例えば、成形型内で行われて、硬化プロセスから得られるシリコーンエラストマーが、例えばポリオレフィン基材に接着された成形複合部品を形成し得る。このポリオレフィン基材の場合では、本明細書で使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、例えば、ポリオレフィン材料が接着媒介物質組成物でコーティングされた後に、ポリオレフィン材料に接着された物品を形成するために射出成形され得るか、又は組成物は、ポリオレフィン材料が接着媒介物質組成物でコーティングされた後に、このようなポリオレフィン基材若しくは物品の周囲又はポリオレフィン基材の上に射出成形することによってオーバーモールドされ得る。
【0094】
したがって、本明細書で使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、任意の好適なプロセスによって、例えば射出成形によって、例えば2液型射出成形、プレス成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、又はカレンダリングを使用して、処理された基材上に塗布及び硬化され得る。一実施形態では、複合物は、2液型射出成形ユニットを使用して射出成形することによって調製される。
【0095】
熱過敏性基材の存在下で硬化させる場合、本明細書で上記のようなヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、熱過敏性基材などとの機械的接着の発現を可能にするこのような条件下で、より具体的には、熱過敏性基材が変形、溶融、又は変性されない温度及び硬化時間を使用して硬化され得る。
【0096】
本明細書で上記のようなヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、熱可塑性材料が、圧延、展延、3D印刷などの任意の好適な手段によって接着媒介物質組成物でコーティングされた後に、ポリオレフィン基材などの熱可塑性基材の表面に塗布され得、上記のように硬化され得る。
【0097】
3D印刷方法を使用する場合では、3次元(3-D)物品を形成する典型的な方法は、複数の工程を含み得る。例えば、接着媒介物質組成物が熱可塑性物質、例えばポリオレフィン基材表面上に塗布された後、本方法は、(i)第1のヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を3Dプリンタで印刷して、処理された基材の上部に層を形成することを含み得る。本方法は、(ii)層を加熱して、少なくとも部分的に硬化した層を形成することを更に含んでもよい。また、本方法は、(iii)第2の熱硬化性シリコーン組成物を、少なくとも部分的に硬化した層上に3-Dプリンタによってプリンティングして、後続の層を形成することを含み得る。本方法は、(iv)後続の層を加熱して、少なくとも部分的に硬化した後続の層を形成することを更に含んでもよい。任意選択的に、任意の追加の層について、独立して選択されたヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を用いて、工程iii)及びiv)を繰り返して、3-D複合物品を形成し得る。必要に応じて、熱可塑性基材は、工程(i)の前に活性化又は部分的に活性化され得る(例えば、基材表面の一部をマスキングして、その結果マスキングされていない領域のみが活性化されることに起因して)。
【0098】
上記で定義されたプロセスの一実施形態では、本プロセスの工程(c)は、本明細書に記載されるような接着媒介物質組成物で予備処理された熱可塑性物質、例えばポリオレフィン基材上にヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を3D印刷することによって行われ得る。このような場合では、工程(c)及び(d)は以下の通りであり得る。
本明細書で上記のような第1のヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を3Dプリンタで印刷して、工程(a)及び(b)から得られた接着媒介物質組成物で処理された任意選択的に活性化された熱可塑性物質、例えばポリオレフィン基材上に層を形成すること、
i.層を加熱して、少なくとも部分的に硬化した層を形成すること、
ii.第2のヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を少なくとも部分的に硬化した層上に3-Dプリンタで印刷して、後続の層を形成すること、
iii.後続の層を加熱して、少なくとも部分的に硬化した後続の層を形成すること、及び
iv.任意選択的に、任意の追加の層のために独立して選択される熱硬化性シリコーン組成物を用い、工程iii)及びiv)を繰り返して、3-D物品を形成すること。
【0099】
また、上記方法から得られる又は得られ得る物品又は物品の複合部品も提供される。
【0100】
本明細書の一実施形態では、本明細書で上記のようなヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物から硬化されたシリコーンエラストマーからなるか、又は上記の種類などの剛性又は可撓性の熱可塑性物質、例えばポリオレフィン基材上のヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物から硬化されたシリコーンエラストマーからなる物品複合部品であって、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を塗布する前に、剛性又は可撓性基材が、接着媒介物質組成物の層でコーティングされていることを条件とする、物品複合部品が提供される。一実施形態では、基材は、ポリオレフィンである。
【0101】
別の実施形態では、本明細書で上記のようなヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を塗布する前に、基材が接着媒介物質組成物の層でコーティングされていることを条件として、3-D印刷法を使用して加工される基材の表面に塗布され得る。
【0102】
このような物品又は複合部品の例は、上記の全ての場合において、自動車用途、産業用途、電子用途、並びに家庭用製品、食品接触、食器洗浄機互換性、又は飲料/流体のコンプライアンス(例えば、機械における熱湯、コーヒー、茶の接触)などの必要な規制を満たしていれば、人間が消費するための食品及び飲料製品の包装、貯蔵、処理、生成、調製、加工、消費、及び成形などの消費者用途を含むが、これらに限定されない様々な産業において見出され得る。自動車用途では、これは、シリコーンシール又はガスケット、プラグ及びコネクタ、様々なセンサの構成要素、膜、ダイアフラム、気候換気構成要素などを有する筐体を含み得る。電子用途としては、携帯電話カバーシール、携帯電話付属品、精密電子機器、電気スイッチ及びスイッチカバー、腕時計及びリストバンド、ウェアラブル器具、例えば、フェースマスク、ウェアラブル電子デバイスなどが挙げられてもよい。
【0103】
複合部品はまた、モバイル電話、モバイル通信機器、ゲーム機、時計、画像受信機、DVD機器、MD機器、CD機器、及び他の精密電子機器、テレビ、液晶テレビ及びプラズマテレビの薄型ディスプレイ、様々な家電製品、複写機、プリンタ、ファクシミリ機、及び他のオフィス機器、コネクタシール、スパークプラグキャップ、様々なセンサの構成要素、及び他の自動車構成要素の部品からも選択され得る。
【0104】
家庭用製品及び/又はヒトが消費するための食品及び飲料製品の輸送、包装、貯蔵、処理、生成、調製、加工、消費、及び成形に使用されるシリコーンゴム及びポリオレフィンなどの熱可塑性物質を含むか又はそれらからなる複合物品及び/又は部品は、食品の生成、調製、成形、及び加工のための機械の部品、ベーキング器具、例えばベーキング型、キッチン機器、並びに/又は食品及び飲料加工装置、例えばドリンクメーカー、ケトル、カトラリー、陶器類、調理器具、酒器、飲料容器、例えば乳幼児用哺乳瓶、他の種類の容器、トレイ、食品型、並びに電子レンジを含むオーブン、冷蔵庫、パン製造器、炊飯器、及び/又は食器洗浄機の部品、並びに輸送に使用される容器、及びヒトが消費するための水と接触する材料などを含み得る。
【実施例】
【0105】
以下の実施例では、別段の指示がない限り、全ての粘度は、10,000mPa・s未満の粘度についてスピンドルRV-4を備えたBrookfield(商標)回転式粘度計を使用して、いずれの場合においても、20rpmの速度で、25℃で測定した。
【0106】
別段の指示がない限り、ポリプロピレン基材を各実施例において使用した。Rocholl市販試験プレートを、Simona AG(Kirn、Germany)のSIMONA(商標)DWST PPから作製した。実施例において使用される基材は、25mm×100mm(3mmの厚さ)の寸法を有し、イソプロパノールを用いて洗浄された。典型的には、イソプロパノールは、直ちに蒸発したが、基材を室温で約10分間放置して、活性化前に乾燥させた。
【0107】
各活性化された基材を、ピペットを使用して、本明細書で上記のような接着媒介組成物又はそれぞれの表に示されるような比較のコーティング組成物の層でコーティングして、接着媒介物質組成物又はそれぞれの表に示されるような比較のコーティング組成物を塗布し、次いで基材の表面上の組成物をワイピングし、基材上に当該組成物の連続層を提供した。次いで、コーティングされた基材を3mmのLSR層でオーバーモールドし、300bar(30MPa)、120℃、5分間の圧縮成形によって硬化させた。層の厚さを、3mmである型の高さによって決定した。
【0108】
試験を実施する前に、得られた試験片を少なくとも24時間保管した。剥離強度試験を、ASTM D3167-10(2017)に準拠したフローティングローラー剥離試験を使用し、300mm/分の試験速度で実行し、剥離実験中の平均力(剥離強度)を(N/mmで)記録した。
【0109】
実施例1
実施例1では、いくつかの接着媒介物質組成物及び比較を、表1aの組成に従って調製し、活性化方法、及び活性化の持続時間、並びにその後の剥離強度の結果を表1bに示す。
【0110】
【0111】
ポリマー1は、25℃で約450mPa・sのおよその粘度の粘度、及び0.46重量%のVi含有量のビニル含有量を有するビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサンであった。Karstedtの触媒は、ポリマー1マスターバッチ中に提供される。
【0112】
非晶質二酸化ケイ素のUV-C、コロナ放電、及び火炎熱分解堆積の3つの代替的活性化方法を使用した。
【0113】
UV-C処理をDinies Technologies GmbHのUV-C処理チャンバ(ELG100S)を使用して実施した。チャンバは、Dinies Technologies GmbHの2つの11ワットUVランプ(U11W-215オゾン)を用いた。
【0114】
コロナ放電処理をAgrodyn Hochspannungstechnik GmbHのプラズマ発生器(Generator FG1001)を使用して実施した。発生器は、コロナ放電トーチを発生させる回転ヘッドを有していた。イソプロパノールを使用してポリマープレートを洗浄し、ステッパモータを備えたマウントを使用してコロナプラズマを通して移動させた。ステッパモータの速度を変化させることによって、異なる露光時間を実現した。
【0115】
非晶質二酸化ケイ素の火炎熱分解堆積をSura Instruments GmbH(Jena、Germany)の「PYROSIL(商標)プロセス」(https://www.sura-instruments.de/en/technologies/pyrosilr-process)を使用して実行し、そこで、基材をケイ素含有前駆体材料(PYROSIL(商標))でドープされたガス火炎を通して供給し、前駆体を火炎中で燃焼させ、非常に薄いが、高密度で、強固に接着する酸化ケイ素コーティング(5~100nm)で表面上に堆積させる。
【0116】
例1-1~例1-5、及び比較1-1において使用される各SIMONA(商標)DWST PP基材のための活性化方法を、表1bに示す。活性化に続いて、表1aに定義されたそれぞれの組成物を、各々、上記のようにそれぞれの活性化された基材上に塗布した。それぞれの基材を活性化し、接着媒介物質組成物をその上にコーティングすると、液体シリコーンゴム組成物(LSR1)、Dow Silicones CorporationのSilastic(商標)3D 3335LSRの層を上記のように塗布(オーバーモールド)し、硬化させて複合材料を生成した。
【0117】
得られた複合物を約24時間貯蔵した後、ASTM D3167に準拠してフローティングローラー剥離試験を使用して、300mm/分の試験速度で剥離接着試験を実施し、剥離実験中の平均力を(N/mmで)記録した。
【0118】
【0119】
比較1-1は、活性化されていないポリプロピレンは、試験を行うのに十分な剥離強度を提供することができないことを示すが、活性化された基材の全て、すなわち、例1-1~例1-5においては、接着をもたらすことがわかる。例1-3及び例1-4からの結果は、UV-C/オゾン照射及びPYROSIL(商標)プロセスと比較して、コロナ放電活性化を使用して優れた性能が達成されることを示唆する。
【0120】
実施例2
実施例2では、接着媒介物質組成物のいくつかの例を調製した。例2-1~2-4の組成を表2aに示し、例2-5~2-9の組成を表2bに示し、それらを4つの比較と比較し、その組成を表2cに示す。
【0121】
【0122】
【0123】
表2bにおいて、例2-7及び2-8では、
ポリマー2は、25℃でそれぞれおよそ450及び2000mPa・sの粘度を有する2つのビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサンの1:1(重量)比の混合物であり、混合物の平均ビニル含有量は、0.34重量%ビニル(vinyl、Vi)であった。混合物の粘度は、1190mPa・sであった。
【0124】
ポリマー3は、25℃でそれぞれおよそ450及び9000mPa・sの粘度を有する2つのビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサンの1:1の混合物であり、混合物の平均ビニル含有量は、0.28重量%Viであった。混合物の粘度は、2440mPa・sであった。
【0125】
ポリマー2がポリマー1を置換した場合、Karstedtの触媒をポリマー2マスターバッチ中に提供し、同様に、ポリマー3がポリマー1を置換した場合、Karstedtの触媒をポリマー3マスターバッチ中に提供した。
【0126】
【0127】
表2cにおいて、ポリマー4は、25℃でおよそ450及び約55,000mPa・sの粘度を有する2つのビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサンの1:1の混合物であり、後者の粘度を、それぞれ(10,000~2,000,000mPa・sの範囲の粘度用に設計された、6rpmの速度での)スピンドルLV-4を備えたBrookfield(商標)回転式粘度計を使用して決定し、混合物の平均ビニル含有量は、0.27重量%Viであった。混合物の粘度は、9250mPa・sであり、ポリマー4がポリマー1を置換した場合、Karstedtの触媒をポリマー4マスターバッチ中に提供した。
【0128】
実施例1と同様に、同じ基材及びLSR1を使用した複合材料を、表2a、2b、及び2cに特定された代替及び比較の接着媒介物質組成物を利用して上記のように調製した。それぞれの活性化方法及び持続時間及び剥離強度の結果を、表2d、2e、及び2fに開示する。
【0129】
【0130】
【0131】
表2d及び2eにおいて、全ての実施例2-1~2-9は、比較と比較して良好な剥離強度結果を与えたことがわかる。
【0132】
【0133】
表2fにおいて、比較2-1では、ビニルトリメトキシシランの使用は、不十分な剥離強度をもたらし、これは、その増加した反応性が不安定な接着媒介物質をもたらすことに起因すると考えられることがわかる。同様に、存在するPt触媒の量の有意な低減は、比較2-3が他の原料に対してポリマー1の量の増加を示すのと同様の剥離強度結果を与える。
【0134】
実施例3
実施例3では、上記の表2aにおいて、例2.1として示された組成物を有し、上記の表2dによる(かつ表3aにおいて重ねて示された)ポリプロピレン上に塗布された接着媒介物質を、2つの異なるポリエチレン基材上に同じ接着媒介物質組成物を使用して比較した。
【0135】
表3aにおいて、利用された高密度ポリエチレン(HDPE)は、Dow(商標)HDPE 25055Eであり、低密度ポリエチレン(LDPE)は、Rocholl KunststoffprufkorperのSimona PEWであった。
【0136】
【0137】
ASTM D3167に準拠したフローティングローラー剥離試験を重ねて利用して、表2dにおける例2-1で行った試験との直接比較として、HDPE基材上での例3-2を試験した。しかしながら、この試験は、LDPE基材に関しては使用することができなかったが、その理由は、LDPEプレートが柔軟過ぎて、曲がって、ローラーを通って滑るからである。代わりに、ASTM D3163に準拠したラップ剪断試験を行い、表2aにおける例2-1の接着媒介物質を、活性化されたポリマープレート(100×25×2mm3)の一端に塗布した。その後、スパチュラを使用して、LSR1を、活性化されコーティングされたプレートの一端に塗布した。第2の活性化されコーティングされたプレートを、ラップ剪断試験構成でLSR1層の上部に配置した(LSR1で充填された2つのプレート間の間隔は、2mmであり、プレート間の重なりは、15mmであった)。別段の指示がない限り、ラップ剪断試験試料を105℃で35分間硬化させた。接着媒介物質は、用いられたポリオレフィンに関係なく、高い剥離/剪断強度及び凝集破壊を示した。
【0138】
実施例4
実施例4では、表2dに示されたような例2.1のエージングされていない生成物を、熱エージング後に同様に調製された試料と比較した。表2dに特定されたようなSIMONA(商標)DWST PPポリプロピレン基材組成物を活性化するための同じ活性化方法を使用した。表4a及び4bにおける初期剥離強度は、例2-1のものであり、エージングされた試料は、表4a及び4bに示されるように調製された複合物の熱エージング及び熱/湿度曝露後に試験された初期剥離強度を有していた。熱エージングを、標準換気オーブンを使用して行い、加熱/湿潤試験を、Weiss Umwelttechnik GmbHのSimulationsanlage Messtechnik WK3-340/70気候チャンバ内で行った。
【0139】
【0140】
【0141】
これらの結果は、表4aにおいて、熱エージング後に剥離強度が維持され、わずかに改善されることを示した。表4bの剥離強度結果は、剥離強度値が過酷な熱/湿度処理後も維持され、複合物が熱/水/水蒸気に曝露される家庭用途に有望であることを示す。
【0142】
実施例5
実施例5では、表2aにおける例2-1に示されたような同じ接着媒介物質組成物を、表2dにおける例2-1と同じ様式において、SIMONA(商標)DWST PP基材上に塗布したが、この場合、LSR1の代わりに、代替的な市販の液体シリコーンゴム組成物を、例5-2~例5-5において使用した。
【0143】
【0144】
表5では、
LSR1は、Silastic(商標)3D 3335LSRであり、
LSR2は、Silastic(商標)LTC 9400-50LSRであり、
LSR3は、Silastic(商標)NPC 9300-50LSRであり、
LSR4は、Dowsil(商標)MS-1002 Moldable Siliconeであった。
【0145】
全ての試験されるLSRは、Dow Silicones Corporation(Midland Michigan、USA)から市販されている。例5-4及び5-5を、それらを手で引き離すことを試みることによって、定性的(Q)にのみ試験したが、分離可能ではなかった。
【0146】
いずれの場合においても、達成された剥離強度値を考慮すると、許容可能なレベルの接着が達成されていることがわかることがわかる。
【0147】
実施例6
実施例6では、表2bの例2.9に示された接着媒介物質を利用して、LSR1の3つの更なる熱可塑性基材への接着を補助する能力を評価した。使用された基材は、Rocholl GmbH(Eschelbronn、Germany)から購入された3つの市販の試験プレートであった。
【0148】
利用された試験プレート基材は、ポリアミド6(Sustamid(商標)6)(150×25×2mm3)、A-PET(ポリエチレンテレフタレート)(Makroform(商標))(60×25×2mm3)、及びポリカーボネート(Makrolon(商標)(60×25×2mm3)であった。
【0149】
まず、熱可塑性基材をイソプロパノールを用いて洗浄した。典型的には、イソプロパノールは、直ちに蒸発したが、基材を室温で約10分間放置して、使用前に乾燥させた。ポリカーボネートの場合では、各試験プレート基材を、先の実施例において記載されたように4秒間コロナ放電活性化に供した。その後、各基材の第1の試験プレートを、次いでピペットを使用して、表2bにおいて例2-9組成として示された、接着媒介物質組成物の層でコーティングした。次いで、基材の表面上に組成物をワイピングすることによって、連続層を提供した。各基材の第2の試験プレートを、接着媒介物質が表面上にコーティングされていない比較として試験した。次いで、各基材の第1及び第2の試験プレートを2~3mmのLSR層でコーティングし、次いで、これを120℃で15分間硬化させて、複合物を形成した。得られた複合物を、接着について試験する前に、少なくとも24時間貯蔵した。LSRと基材とを手で引き離すことを試みることによって、各複合物を定性的に試験した。いずれの場合においても、試験プレートが接着媒介物質の層を受けた場合、それらは、分離されなかったが、比較すると、接着媒介物質が塗布されていない試験プレート複合物上の硬化したLSRは、試験プレート基材から容易に剥離した。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着媒介物質組成物であって、
(i)式Si(OR)
3R
1のトリアルコキシシランであって、式中、各Rが、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基であり、各R
1が、同じであっても、異なっていてもてよく、アルケニル基又はアルキニル基から選択される不飽和基であり、トリアルコキシシランが、前記組成物の20~45重量%の量で存在する、トリアルコキシシランと、
(ii)白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒であって、白金族金属が、前記組成物の0.1~1.5重量%の量で存在する、白金族金属系ヒドロシリル化反応触媒と、
(i)1~10重量%の量の2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物と、
(ii)式Si(OR
2)
4のテトラアルコキシシランであって、式中、各R
2が、同じであっても、異なっていてもてよく、1個の基当たり少なくとも2個の炭素を有するアルキル基であり、テトラアルコキシシランが、前記組成物の5~20重量%の量である、テトラアルコキシシランと、
(iii)
(a’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有し、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有する、ポリオルガノシロキサン、又は
(b’)アルケニル基及びアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2個の不飽和基を含有する2つ以上のポリオルガノシロキサンの混合物であって、混合物が、RV-4スピンドルを備えたBrookfield(商標)粘度計を使用して、25℃において20rpmで50mPa・s~9000mPa・sの範囲の粘度を有する、混合物のいずれかであって、
前記成分(v)が、前記組成物の25~60重量%の量で存在する、ポリオルガノシロキサン又は混合物のいずれかと、を含む、接着媒介物質組成物。
【請求項2】
成分(i)が、式Si(OR)
3R
1を有し、式中、各Rが、同じであっても、異なっていてもてよく、エチル、プロピル、n-ブチル イソブチル、又はt-ブチルから選択され、各R
1が、ビニル、プロペニル、n-ブテニル、ペンテニル、又はヘキセニルから選択される同じであっても、異なっていてもてよいアルケニル基である、請求項1に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項3】
成分(ii)が、白金の1つ以上の配位化合物である、請求項1に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項4】
成分(iii)が、式Ti(OR
3)
4、Ti(OR
3)
3R
4、Ti(OR
3)
2R
4
2の1つ以上のアルコキシチタン化合物、又はキレート化アルコキシチタン分子であり、式中、R
3が、1~20個の炭素を有する直鎖又は分岐アルキル基であり、存在する場合、R
4が、有機基、例えば、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、2~10個の炭素原子を有するアルキニル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有する芳香族基、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項5】
成分(iii)が、構造Ti(OR
3)
4、Ti(OR
3)
3R
4、Ti(OR
3)
2R
4
2のチタネートから選択され、式中、各R
3が、イソブチル基、t-ブチル基、又はn-ブチル基であるか、又は成分(iii)が、チタン酸のエステル及びアセト酢酸エステルのエノラートである、請求項4に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項6】
成分(iv)が、式Si(OR
2)
4のテトラアルコキシシランであり、式中、各R
2が、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、又はヘキシルから選択される、請求項1~4に記載の接着媒介物質組成物。
【請求項7】
シリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法であって、
(a)任意選択的に、熱可塑性基材表面を活性化する工程と、
(b)前記任意選択的に活性化された熱可塑性基材表面を、請求項1に記載の接着媒介物質組成物を用いて処理する工程と、
(c)ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を、工程(b)から得られた前記処理された表面上に塗布する工程と、
(d)前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させる工程と、を含む、方法。
【請求項8】
前記熱可塑性基材が、プラズマ処理、コロナ放電処理、UV-C/オゾン又は真空-UV照射、非晶質二酸化ケイ素の火炎熱分解堆積、又は火炎処理のうちの1つによって活性化される、請求項7に記載のシリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法。
【請求項9】
工程(c)及び/又は(d)が、射出成形又は3D印刷を伴う、請求項7又は8に記載のシリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法。
【請求項10】
工程(d)において、前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物が、前記熱可塑性基材の溶融温度より低い温度で硬化する、請求項7又は8に記載のシリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法。
【請求項11】
前記熱可塑性物質が、ポリオレフィンである、請求項7又は8に記載のシリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の調製のための方法。
【請求項12】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物が、工程(b)において塗布された接着媒介物質の層が硬化又は固化する前に、工程(c)において塗布される、請求項7又は8に記載のシリコーンエラストマーと無機基材との複合物の調製のための方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法によって得られた又は得られ得る、複合物品又は部品。
【請求項14】
1kg当たり最大50mgの白金を含有する、請求項13に記載の複合物品。
【請求項15】
シリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物の前記調製における、請求項1に記載の接着媒介物質組成物の使用。
【請求項16】
前記シリコーンエラストマー及び熱可塑性複合物が、ヒトが消費するための家庭用製品並びに/又は食品及び飲料製品の輸送、包装、貯蔵、処理、生成、調製、加工、消費、及び成形に使用される、請求項15に記載の使用。
【国際調査報告】