(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】脂肪組成物、脂肪ブレンド、及び油中水型エマルジョン
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240305BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240305BHJP
【FI】
A23D7/00 500
A23D7/00 506
A23L5/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558709
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057618
(87)【国際公開番号】W WO2022200420
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520372869
【氏名又は名称】ブンゲ・ローデルス・クロックラーン・ベー・フェー
(71)【出願人】
【識別番号】523362803
【氏名又は名称】ブンゲ・フィンランド・オサケイフティオ
(71)【出願人】
【識別番号】523362814
【氏名又は名称】ヴァルター・ラウ・レーベンスミッテルヴェルケ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアジア・ドン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス・ミュルデル
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・マ
(72)【発明者】
【氏名】エイヤ・マリエッタ・ピスパ
(72)【発明者】
【氏名】イナ・ジーカー
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG01
4B026DG03
4B026DG04
4B026DH01
4B026DH05
4B026DK01
4B026DP01
4B026DX05
4B035LC03
4B035LE02
4B035LG08
4B035LG09
4B035LG12
4B035LK13
4B035LP21
(57)【要約】
本発明は、少なくとも30重量%のステアリン酸(C18:0)と、少なくとも45重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含む、脂肪組成物に関し、脂肪組成物は、1.0重量%~8.0重量%のSSSトリグリセリドと、多くとも10.0重量%のUUUトリグリセリドと、を含み、かつ6.0~20.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び多くとも30.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。本発明はまた、脂肪組成物をハードストックとして含む脂肪ブレンドに関し、脂肪ブレンドは、マーガリン又はスプレッドなどの油中水型エマルジョン製品において更に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組成物であって、
少なくとも30重量%のステアリン酸(C18:0)と、
少なくとも45重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、
前記酸のパーセンテージは、前記脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、
前記脂肪組成物が、前記脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、1.0重量%~8.0重量%のSSSトリグリセリドと、多くとも10.0重量%のUUUトリグリセリドと、を含み、
前記脂肪組成物が、6.0~20.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び多くとも30.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sが、飽和脂肪酸であり、Uが、不飽和脂肪酸であり、Oが、オレイン酸であり、Lが、リノール酸である、脂肪組成物。
【請求項2】
前記脂肪組成物が、6.0%~25.0%、好ましくは6.0%~22.0%、より好ましくは6.5%~20.0%、更により好ましくは7.0%~19.0%の、総飽和脂肪酸中のトリグリセリドの第2の位置にある飽和脂肪酸のパーセンテージ(SAFA中Sn-2%)を有する、請求項1に記載の脂肪組成物。
【請求項3】
前記脂肪組成物が、
多くとも5重量%、好ましくは0重量%~4重量%、より好ましくは0重量%~3重量%、更により好ましくは0重量%~2重量%のラウリン酸(C12:0)、及び/又は
多くとも30重量%、好ましくは0重量%~29重量%、より好ましくは1重量%~28重量%、更により好ましくは2重量%~27重量%のパルミチン酸(C16:0)、及び/又は
30重量%~60重量%、好ましくは31重量%~55重量%、より好ましくは32重量%~52重量%、更により好ましくは33重量%~50重量%のステアリン酸(C18:0)、及び/又は
20重量%~55重量%、好ましくは23重量%~53重量%、より好ましくは25重量%~50重量%、更により好ましくは28重量%~48重量%のオレイン酸(C18:1)、及び/又は
45重量%~80重量%、好ましくは45重量%~75重量%、より好ましくは45重量%~70重量%、更により好ましくは46重量%~65重量%の飽和脂肪酸(SAFA)を含み、
前記酸のパーセンテージは、前記脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく、請求項1又は2に記載の脂肪組成物。
【請求項4】
前記脂肪組成物が、前記脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、
1.5重量%~7.5重量%、好ましくは2.0重量%~7.0重量%、より好ましくは2.3重量%~6.8重量%、更により好ましくは2.5重量%~6.5重量%のSSSトリグリセリド、及び/又は
0.1重量%~9.9重量%、好ましくは0.2重量%~9.8重量%、より好ましくは0.3重量%~9.7重量%、更により好ましくは0.5重量%~9.5重量%のUUUトリグリセリド、及び/又は
20.0重量%~95.0重量%、好ましくは25.0重量%~90.0重量%、より好ましくは30.0重量%~88.0重量%、更により好ましくは35.0重量%~85.0重量%のS2Uトリグリセリド、及び/又は
2.0重量%~50.0重量%、好ましくは4.0重量%~45.0重量%、より好ましくは5.0重量%~42.0重量%、更により好ましくは6.0重量%~41.0重量%のSU2トリグリセリドを含み、
Sが、飽和脂肪酸であり、Uが、不飽和脂肪酸である、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項5】
前記脂肪組成物が、前記脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、6.5~19.0、好ましくは6.5~18.0、より好ましくは7.0~17.0、更により好ましくは7.0~16.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比を有し、Sが、飽和脂肪酸であり、Uが、不飽和脂肪酸である、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項6】
前記脂肪組成物が、前記脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、
30.0重量%~85.0重量%、好ましくは32.0重量%~82.0重量%、より好ましくは35.0重量%~80.0重量%、更により好ましくは38.0重量%~80.0重量のS2Oトリグリセリド、及び/又は
0.0重量%~20.0重量%、好ましくは1.0重量%~15.0重量%、より好ましくは2.0重量%~12.0重量%、更により好ましくは3.0重量%~10.0重量%のS2Lトリグリセリドを含み、
Sが、飽和脂肪酸であり、Oが、オレイン酸であり、Lが、リノール酸である、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項7】
前記脂肪組成物が、前記脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、1.0~25.0、好ましくは1.5~20.0、より好ましくは2.0~18.0、更により好ましくは2.5~15.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sが、飽和脂肪酸であり、Oが、オレイン酸であり、Lが、リノール酸である、先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項8】
前記脂肪組成物が、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、
10℃で20.0~95.0、好ましくは23.0~93.0、より好ましくは25.0~91.0、更により好ましくは28.0~89.0の固体脂肪含有量、及び/又は
20℃で5.0~65.0、好ましくは6.0~60.0、より好ましくは8.0~55.0、更により好ましくは10.0~52.0の固体脂肪含有量、及び/又は
25℃で2.5~20.0、好ましくは3.0~19.0、より好ましくは4.0~18.0、更により好ましくは4.5~17.5の固体脂肪含有量、及び/又は
30℃で1.5~15.0、好ましくは2.0~13.0、より好ましくは2.5~11.0、更により好ましくは3.0~10.0の固体脂肪含有量、及び/又は
35℃で多くとも10.0、好ましくは1.0~9.0、より好ましくは1.5~8.0、更により好ましくは2.0~7.0の固体脂肪含有量、及び/又は
40℃で多くとも7.0、好ましくは多くとも6.0、より好ましくは0.1~5.5、更により好ましくは0.3~5.0の固体脂肪含有量を有する、
先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項9】
先行請求項のいずれか一項に記載の脂肪組成物を作製するためのプロセスであって、非エステル交換脂肪又は油と、エステル交換脂肪又は油とをブレンドすることを含み、前記脂肪又は油が、ココアバター、シアバター、イリッペバター、サルバター、コクム脂肪、マンゴー脂肪、高ステアリンヒマワリ油、高ステアリン大豆油、高ステアリン菜種油、高ステアリンキャノーラ油、アランブラキア脂肪、ペンタデスマ脂肪、ソンチ脂肪、それらの画分、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記非エステル交換脂肪又は油対前記エステル交換脂肪又は油の重量比が、少なくとも1.0、好ましくは1.1~20.0、より好ましくは1.1~15.0、更により好ましくは1.2~10.0である、プロセス。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪組成物を作製するためのプロセスであって、ココアバター、シアバター、イリッペバター、サルバター、コクム脂肪、マンゴー脂肪、高ステアリン酸ヒマワリ油、高ステアリン酸大豆油、高ステアリン酸菜種油、高ステアリン酸キャノーラ油、アランブラキア脂肪、ペンタデスマ脂肪、ソンチ脂肪、それらの画分、及びそれらの混合物からなる群から選択される脂肪又は油が、部分的にエステル交換されており、前記部分的エステル交換が、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%のリパーゼを使用することによって、50℃~80℃、好ましくは55℃~70℃の温度で、0.5時間~12時間、好ましくは1時間~8時間の期間にわたって実施される、プロセス。
【請求項11】
脂肪ブレンドであって、
5重量%~95重量%、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは15重量%~85重量%、更により好ましくは20重量%~80重量%、最も好ましくは25重量%~75重量%の請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪組成物と、
5重量%~95重量%、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは15重量%~85重量%、更により好ましくは20重量%~80重量%、最も好ましくは25重量%~75重量%の、ココナッツ油、ヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、高オレイン菜種油、高オレインキャノーラ油、高オレイン大豆油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、チア油、亜麻仁油、トウモロコシ油、紅花油、オリーブ油、キャノーラ油、ブドウ種子油、カボチャ油、ゴマ油、クルミ油、ヘーゼルナッツ油、それらの画分、及びそれらの混合物からなる群から選択される油と、を含む、脂肪ブレンド。
【請求項12】
前記脂肪ブレンドが、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、
10℃で8.0~55.0、好ましくは9.0~50.0、より好ましくは10.0~48.0、更により好ましくは11.0~45.0、最も好ましくは17.0~44.0の固体脂肪含有量、及び/又は
20℃で2.0~30.0、好ましくは3.0~25.0、より好ましくは3.5~22.0、更により好ましくは4.0~20.0、最も好ましくは11.0~18.0の固体脂肪含有量、及び/又は
25℃で多くとも15.0、好ましくは1.0~12.0、より好ましくは2.0~10.0、更により好ましくは2.5~9.0の固体脂肪含有量、及び/又は
30℃で多くとも10.0、好ましくは多くとも8.0、より好ましくは0.5~7.0、更により好ましくは1.0~6.0、最も好ましくは1.5~4.5の固体脂肪含有量、及び/又は
35℃で多くとも8.0、好ましくは多くとも7.0、より好ましくは0.5~6.0、更により好ましくは0.5~5.0、最も好ましくは1.0~2.5の固体脂肪含有量、及び/又は
40℃で多くとも5.0、好ましくは多くとも4.0、より好ましくは多くとも3.0、更により好ましくは0.1~2.5の固体脂肪含有量を有する、
請求項11に記載の脂肪ブレンド。
【請求項13】
前記脂肪ブレンドが、
12.0重量%~50.0重量%、より好ましくは14.0重量%~45.0重量%、更により好ましくは15.0重量%~35.0重量%のステアリン酸(C18:0)、及び/又は
30.0重量%~70.0重量%、より好ましくは35.0重量%~65.0重量%、更により好ましくは45.5重量%~60.0重量%のオレイン酸(C18:1)、及び/又は
5.0重量%~30.0重量%、より好ましくは7.0重量%~25.0重量%、更により好ましくは8.6重量%~20.0重量%のリノール酸(C18:2)を含み、前記酸のパーセンテージは、前記脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく、請求項11又は12に記載の脂肪ブレンド。
【請求項14】
油中水型エマルジョンであって、
5重量%~95重量%、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは15重量%~85重量%の、請求項11~13のいずれか一項に記載の脂肪ブレンドと、
5重量%~95重量%、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは15重量%~85重量%の水相と、を含む、油中水型エマルジョン。
【請求項15】
前記油中水型エマルジョンが、食用スプレッダブルエマルジョン、好ましくは、マーガリン又はスプレッドである、請求項14に記載の油中水型エマルジョン。
【請求項16】
前記油中水型エマルジョンが、5重量%~75重量%、好ましくは10重量%~70重量%、より好ましくは15重量%~65重量%、更により好ましくは20重量%~60重量%の、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪組成物を含む、請求項14又は15に記載の油中水型エマルジョン。
【請求項17】
前記油中水型エマルジョンが、乳化剤、フレーバー、ミルク、ミルク粉末、着色剤、塩、pH調整剤、糖、シロップ、穀物、豆果、種子、果実、堅果、植物抽出物、野菜ジュース、植物性ミルク、植物性タンパク質、抗酸化剤、防腐剤、デンプン、修飾デンプン、繊維、増粘剤、安定化剤、プロバイオティクス、及びビタミンから選択される1つ以上の成分を更に含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の油中水型エマルジョン。
【請求項18】
請求項14~17のいずれか一項に記載の油中水型エマルジョンを作製するためのプロセスであって、
a)好ましくは、乳化剤、脂溶性フレーバー、及び脂溶性着色剤などの、脂肪に可溶性の成分を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の脂肪ブレンドを調製するステップと、
b)好ましくは、ミルク、ミルク粉末、pH調整剤、塩、植物性ミルク、及び糖などの水に可溶性の成分を含む、水相を調製するステップと、
c)前記脂肪ブレンド及び前記水相を乳化して、エマルジョンを得るステップと、
d)前記得られたエマルジョンを結晶化するステップと、
e)任意に、ステップd)の間又は後に、前記エマルジョン中にガスをポンピングするステップであって、前記ガスが、好ましくは、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、ステップと、を含む、プロセス。
【請求項19】
菓子製品、ベーカリー製品、又は調理製品における、請求項14~17のいずれか一項に記載の油中水型エマルジョンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組成物、脂肪ブレンド、油中水型エマルジョン、油中水型エマルジョンの使用、脂肪組成物を作製するプロセス、及び油中水型エマルジョンを調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪及び油は、食品製品の重要な成分であり、食品業界において広く使用されている。脂肪及び油は、例えば、連続相である脂肪相と、連続相に分布される分散相である水相と、を含む、マーガリン又はスプレッドなどの油中水型エマルジョンにおいて使用される。
【0003】
水相は、一般に、水、ミルク、ミルクタンパク質、ミルク粉末、植物性ミルク、塩、防腐剤、フレーバー、pH調整剤、及び着色料を含む。脂肪相は、脂肪ブレンドとも呼ばれ、一般に、液体又は半液体油又は脂肪と、一般的にはハードストックとも呼ばれる構造形成脂肪組成物と、を含む。脂肪ブレンド中の構造形成脂肪組成物の特性は、マーガリン又はスプレッドなどの油中水型エマルジョンの構造、質感、及び感覚刺激特性に強く影響する。加えて、モノ-及びジグリセリド、蒸留モノグリセリド、並びにレシチンは、一般的には、そのような油中水型エマルジョンにおいて乳化剤として使用される。
【0004】
EP-A-3100613は、油中水型エマルジョンにおける調質剤としてのシアステアリンの使用に関する。WO2015/110388はまた、マーガリン又はスプレッドにおいてシアステアリンを使用することに関する。しかしながら、シアステアリン、シアバター、又はココアバターなどの脂肪の使用は、そのようなものとして脂肪ブレンドにおける任意の修飾なしに、マーガリン又はスプレッドにおいて著しい後結晶化効果を有し、保存及び使用中に望ましくない硬度、不十分なスプレッド性及び質感を引き起こすことが一般に知られている。
【0005】
EP-A-3245876は、エステル交換ココアバターをハードストックとして含む、スプレッダブル食品組成物を開示する。しかしながら、そのような完全にエステル交換されたハードストックを使用することによって、マーガリン製品は、望ましくない脆性、不規則な構造、及び更に粒状性傾向を有し、最終的には不十分なスプレッド性及び感覚刺激特性をもたらすことが観察される。
【0006】
EP-A-3466278は、ココアバター及びエステル交換ココアバターを使用するホイッピングクリームなどの水中油型食品エマルジョンを開示する。ホイップクリームなどの水中油型エマルジョンは、マーガリン又はスプレッドなどの油中水型エマルジョンとは異なる技術分野に関する。
【0007】
WO2019/020714は、パフペーストリー用途の菓子製品又はショートニングにおいて使用されるシアバター及びシアオレインに由来する非水素化脂肪組成物に関する。しかしながら、油中水型エマルジョン製品に関する開示は存在しない。
【0008】
WO2019/166598は、高ステアリン油種子ステアリン脂肪及びそれを調製するためのプロセスを開示する。しかしながら、それは、増加したレベルの二飽和及び三飽和トリグリセリド、ステアリン酸、アラキジン酸、並びにベヘン酸を有する固体ステアリンを提供する方法論を提供するだけである。油中水型エマルジョン製品に関する開示は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP-A-3100613
【特許文献2】WO2015/110388
【特許文献3】EP-A-3245876
【特許文献4】EP-A-3466278
【特許文献5】WO2019/020714
【特許文献6】WO2019/166598
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
不快な脆性、粒状性傾向、不規則な構造、不十分なスプレッド性、及び望ましくない後硬化が大幅に制限及び抑制されながら、改善された外観、望ましい質感及び硬度、並びに優れた感覚刺激特性を有する、マーガリン又はスプレッドなどのスプレッダブル油中水型エマルジョンにおいて使用されるのに好適な脂肪組成物及び脂肪ブレンドの必要性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、少なくとも30重量%のステアリン酸(C18:0)と、少なくとも45重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含む、脂肪組成物が提供され、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、1.0重量%~8.0重量%のSSSトリグリセリドと、多くとも10.0重量%のUUUトリグリセリドと、を含み、脂肪組成物は、6.0~20.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び多くとも30.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0012】
本発明の脂肪組成物は、改善された外観及び良好な感覚特性を有する、マーガリン又はスプレッドなどの油中水型エマルジョンにおける使用のための脂肪ブレンドを製造するために特に有用であることが見出された。具体的には、本発明の脂肪組成物において定義されるトリグリセリド組成物によって、本発明による脂肪組成物及び脂肪ブレンドを使用するスプレッダブル油中水型エマルジョン製品は、典型的には、著しく低減した望ましくない脆性、制限された粒状性傾向を有し、望ましい硬度及び優れたスプレッド性を有すると考えられる。
【0013】
「脂肪」という用語は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド脂肪及び油を指し、いずれの特定の融点も意味しない。「油」という用語は、「脂肪」と同義的に使用される。
【0014】
「トリグリセリド」という用語は、グリセロール分子に共有結合した3つの脂肪酸鎖からなるグリセリドを指す。本明細書で特定されるトリグリセリドの量は、別段に記載されない限り、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づく重量パーセンテージである。トリグリセリドXYZという表記は、トリグリセリドの1、2、及び3位のいずれかに脂肪酸アシル基X、Y、及びZを有するトリグリセリドを表す。A2Bという表記は、AAB及びABAの両方を含み、AB2は、ABB及びBABの両方を含む。トリグリセリド組成物は、例えば、GC(ISO 23275)によって決定され得る。
【0015】
「SSS」という用語は、トリグリセリドが3つの飽和脂肪酸を含有する、三飽和トリグリセリドを指す。「UUU」という用語は、トリグリセリドが3つの不飽和脂肪酸を含有する、三不飽和トリグリセリドを指す。「S2U」という用語は、トリグリセリドが、トリグリセリドの1位、2位、及び3位のいずれかに、よってトリグリセリドにおけるそれらの位置に関係なく、2つの飽和脂肪酸及び1つの不飽和脂肪酸を含有する、二飽和-一不飽和トリグリセリドを指す。「SU2」という用語は、トリグリセリドが、トリグリセリドの1位、2位、及び3位のいずれかに、よってトリグリセリドにおけるそれらの位置に関係なく、1つの飽和脂肪酸及び2つの不飽和脂肪酸を含有する、一飽和-二不飽和トリグリセリドを指す。「S2O」という用語は、トリグリセリドが、トリグリセリドの1位、2位、及び3位のいずれかに、よってトリグリセリドにおけるそれらの位置に関係なく、2つの飽和脂肪酸及び1つのオレイン酸を含有する、モノオレイン酸塩-二飽和トリグリセリドを指す。「S2L」という用語は、トリグリセリドが、トリグリセリドの1位、2位、及び3位のいずれかに、よってトリグリセリドにおけるそれらの位置に関係なく、2つの飽和脂肪酸及び1つのリノール酸を含有する、モノリノール酸塩-二飽和トリグリセリドを指す。その中で、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0016】
「脂肪酸」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖飽和又は不飽和(一不飽和及び多不飽和を含む)カルボン酸を指す。x個の炭素原子及びy個の二重結合を有する脂肪酸は、Cx:yと表され得る。例えば、パルミチン酸は、C16:0と表され得、オレイン酸は、C18:1と表され得る。脂肪酸プロファイルは、ISO 12966-2及びISO 12966-4に従ってガスクロマトグラフィーを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定され得る。よって、本明細書で言及される組成物中の脂肪酸(例えば、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)など)のパーセンテージは、トリ-、ジ-、及びモノ-グリセリドなどのアシル基及び遊離脂肪酸の両方を含み、C8~C24脂肪酸残基の総重量に基づく。
【0017】
本発明による脂肪組成物は、本明細書で定義される要件を満たす、天然に存在する若しくは合成脂肪、天然に存在する若しくは合成脂肪の画分、又はそれらの混合物から作製され得る。好ましくは、脂肪組成物は、1つ以上の植物性脂肪又は動物性脂肪であるか、又はそれに由来する。より好ましくは、脂肪組成物は、1つ以上の植物性脂肪であるか、又はそれに由来する。本発明による脂肪組成物が、非水素化脂肪であるか、又はそれに由来することも好ましい。「非水素化」という用語は、脂肪組成物が、不飽和脂肪アシル基を飽和脂肪アシル基に変換する水素化に供された脂肪から調製されないことを意味する。
【0018】
「SAFA中SN-2%」という用語は、脂肪試料中の飽和脂肪酸(SAFA)のパーセンテージと比較した、トリグリセリドの2位に存在する飽和脂肪酸(SAFA)のパーセンテージを指す。トリグリセリド中の脂肪酸の分布は、共同JOCS/AOCS公式方法Ch 3a-19に基づいて決定され得る。それはまた、当該技術分野で周知のグリニャール試薬での化学分解後に決定され得る。2位におけるSAFA残基のパーセンテージは、(a)GC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)による脂肪試料の総SAFA含有量と、(b)固定化リパーゼによるエタノールとのトリアシルグリセロールのエステル交換反応及び分取直相HPLCでの単離後の2-モノグリセリド中のGC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)による2位のSAFA含有量と、を求めることによって決定される。よって、SAFA中Sn-2%は、((b)×100)/((a)×3)%である。
【0019】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、6.0%~25.0%、より好ましくは6.0%~22.0%、更により好ましくは6.5%~20.0%、最も好ましくは7.0%~19.0%の、総飽和脂肪酸中のトリグリセリドの第2の位置にある飽和脂肪酸のパーセンテージ(SAFA中Sn-2%)を有する。
【0020】
本発明の脂肪組成物は、好ましくは、多くとも5重量%、より好ましくは0重量%~4重量%、更により好ましくは0重量%~3重量%、最も好ましくは0重量%~2重量%のラウリン酸(C12:0)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0021】
本発明の脂肪組成物は、好ましくは、多くとも30重量%、より好ましくは0重量%~29重量%、更により好ましくは1重量%~28重量%、最も好ましくは2重量%~27重量%のパルミチン酸(C16:0)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0022】
本発明の脂肪組成物は、少なくとも30重量%、好ましくは30重量%~60重量%、より好ましくは31重量%~55重量%、更により好ましくは32重量%~52重量%、最も好ましくは33重量%~50重量%のステアリン酸(C18:0)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0023】
本発明の脂肪組成物は、好ましくは、20重量%~55重量%、より好ましくは23重量%~53重量%、更により好ましくは25重量%~50重量%、最も好ましくは28重量%~48重量%のオレイン酸(C18:1)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0024】
本発明の脂肪組成物は、少なくとも45重量%、好ましくは45重量%~80重量%、より好ましくは45重量%~75重量%、更により好ましくは45重量%~70重量%、最も好ましくは46重量%~65重量%の飽和脂肪酸(SAFA)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、多くとも5重量%のラウリン酸(C12:0)と、多くとも30重量%のパルミチン酸(C16:0)と、30重量%~60重量%のステアリン酸(C18:0)と、20重量%~55重量%のオレイン酸(C18:1)と、45重量%~80重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、6.0%~25.0%の総飽和脂肪酸中のトリグリセリドの第2の位置にある飽和脂肪酸(SAFA中SN-2)のパーセンテージを有する。
【0026】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、0重量%~4重量%のラウリン酸(C12:0)と、0重量%~29重量%のパルミチン酸(C16:0)と、31重量%~55重量%のステアリン酸(C18:0)と、23重量%~53重量%のオレイン酸(C18:1)と、45重量%~75重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、6.0%~22.0%の総飽和脂肪酸中のトリグリセリドの第2の位置にある飽和脂肪酸(SAFA中SN-2)のパーセンテージを有する。
【0027】
更により好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、0重量%~3重量%のラウリン酸(C12:0)と、1重量%~28重量%のパルミチン酸(C16:0)と、32重量%~52重量%のステアリン酸(C18:0)と、25重量%~50重量%のオレイン酸(C18:1)と、45重量%~70重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、6.0%~20.0%の総飽和脂肪酸中のトリグリセリドの第2の位置にある飽和脂肪酸(SAFA中SN-2)のパーセンテージを有する。
【0028】
最も好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、0重量%~3重量%のラウリン酸(C12:0)と、1重量%~28重量%のパルミチン酸(C16:0)と、32重量%~52重量%のステアリン酸(C18:0)と、25重量%~50重量%のオレイン酸(C18:1)と、45重量%~70重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、6.0%~20.0%の総飽和脂肪酸中のトリグリセリドの第2の位置にある飽和脂肪酸(SAFA中SN-2)のパーセンテージを有する。
【0029】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、2重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満、更により好ましくは1.0重量%未満のトランス脂肪酸残基の含有量を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0030】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、25~60、より好ましくは28~55、更により好ましくは30~53、最も好ましくは31~52のヨウ素価を有する。「ヨウ素価」という用語は、100gの油に添加され得るヨウ素のグラム数を指す。ヨウ素価は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した総酸に基づいて、AOCS Cd 1c-85に従って計算され得る。代替的に、ヨウ素価は、AOCS法Cd 1-25によって測定され得る。
【0031】
本発明による脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、1.0重量%~8.0重量%、好ましくは1.5重量%~7.5重量%、より好ましくは2.0重量%~7.0重量%、更により好ましくは2.3重量%~6.8重量%、最も好ましくは2.5重量%~6.5重量%のSSSトリグリセリドを含み、Sは、飽和脂肪酸である。
【0032】
本発明による脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも10.0重量%、好ましくは0.1重量%~9.9重量%、より好ましくは0.2重量%~9.8重量%、更により好ましくは0.3重量%~9.7重量%、最も好ましくは0.5重量%~9.5重量%のUUUトリグリセリドを含み、Uは、不飽和脂肪酸である。
【0033】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、20.0重量%~95.0重量%、より好ましくは25.0重量%~90.0重量%、更により好ましくは30.0重量%~88.0重量%、最も好ましくは35.0重量%~85.0重量%のS2Uトリグリセリドを含み、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸である。
【0034】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、2.0重量%~50.0重量%、より好ましくは4.0重量%~45.0重量%、更により好ましくは5.0重量%~42.0重量%、最も好ましくは6.0重量%~41.0重量%のSU2トリグリセリドを含み、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸である。
【0035】
本発明による脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、6.0~20.0、好ましくは6.5~19.0、より好ましくは6.5~18.0、更により好ましくは7.0~17.0、最も好ましくは7.0~16.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸である。
【0036】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、30.0重量%~85.0重量%、より好ましくは32.0重量%~82.0重量%、更により好ましくは35.0重量%~80.0重量%、最も好ましくは38.0重量%~80.0重量のS2Oトリグリセリドを含み、Sは、飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸である。
【0037】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、0.0重量%~20.0重量%、より好ましくは1.0重量%~15.0重量%、更により好ましくは2.0重量%~12.0重量%、最も好ましくは3.0重量%~10.0重量%のS2Lトリグリセリドを含み、Sは、飽和脂肪酸であり、Lは、リノール酸である。
【0038】
本発明による脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも30.0、好ましくは1.0~25.0、より好ましくは1.5~20.0、更により好ましくは2.0~18.0、最も好ましくは2.5~15.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、1.5重量%~7.5重量%のSSSトリグリセリドと、0.1重量%~9.9重量%のUUUトリグリセリドと、20.0重量%~95.0重量%のS2Uトリグリセリドと、2.0重量%~50.0重量%のSU2トリグリセリドと、30.0重量%~85.0重量%のS2Oトリグリセリドと、0.0重量%~20.0重量%のS2Lトリグリセリドと、を含み、6.5~19.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び1.0~25.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0040】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、2.0重量%~7.0重量%のSSSトリグリセリドと、0.2重量%~9.8重量%のUUUトリグリセリドと、25.0重量%~90.0重量%のS2Uトリグリセリドと、4.0重量%~45.0重量%のSU2トリグリセリドと、32.0重量%~82.0重量%のS2Oトリグリセリドと、1.0重量%~15.0重量%のS2Lトリグリセリドと、を含み、6.5~18.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び1.5~20.0のS2Oトリグリセリド対S2Lの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0041】
更により好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、2.3重量%~6.8重量%のSSSトリグリセリドと、0.3重量%~9.7重量%のUUUトリグリセリドと、30.0重量%~88.0重量%のS2Uトリグリセリドと、5.0重量%~42.0重量%のSU2トリグリセリドと、35.0重量%~80.0重量%のS2Oトリグリセリドと、2.0重量%~12.0重量%のS2Lトリグリセリドと、を含み、7.0~17.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び2.0~18.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0042】
最も好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、2.5重量%~6.5重量%のSSSトリグリセリドと、0.5重量%~9.5重量%のUUUトリグリセリドと、35.0重量%~85.0重量%のS2Uトリグリセリドと、6.0重量%~41.0重量%のSU2トリグリセリドと、38.0重量%~80.0重量%のS2Oトリグリセリドと、3.0重量%~10.0重量%のS2Lトリグリセリドと、を含み、7.0~16.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び2.5~15.0のS2Oトリグリセリド対S2Lの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0043】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも20.0重量%、より好ましくは多くとも18.0重量%、更により好ましくは多くとも16.0重量%、及び0.0重量~15.0重量%のPOPトリグリセリドを含み、Pは、パルミチン酸であり、Oは、オレイン酸である。
【0044】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも45.0重量%、より好ましくは0.1重量%~42.0重量%、更により好ましくは1.0重量%~40.0重量%、最も好ましくは3.0重量%~38.0重量%のPOStトリグリセリドを含み、Pは、パルミチン酸であり、Oは、オレイン酸であり、Stは、ステアリン酸である。
【0045】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、15.0重量%~60.0重量%、より好ましくは20.0重量%~55.0重量%、更により好ましくは20.0重量%~50.0重量%、最も好ましくは22.0重量%~45.0重量%のStOStトリグリセリドを含み、Oは、オレイン酸であり、Stは、ステアリン酸である。
【0046】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも10.0重量%、より好ましくは多くとも6.0重量%、更により好ましくは0.1重量%~4.0重量%、最も好ましくは0.5重量%~3.0重量%のAOStトリグリセリドを含み、Aは、アラキジン酸であり、Oは、オレイン酸であり、Stは、ステアリン酸である。
【0047】
好ましい実施形態では、脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、30重量%~60重量%のステアリン酸(C18:0)と、45重量%~80重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、脂肪組成物は、1.5重量%~7.5重量%のSSSトリグリセリドと、0.1重量%~9.9重量%のUUUトリグリセリドと、を含み、6.5~19.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び1.0~25.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0048】
より好ましい実施形態では、脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、31重量%~55重量%のステアリン酸(C18:0)と、45重量%~75重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、脂肪組成物は、2.0重量%~7.0重量%のSSSトリグリセリドと、0.2重量%~9.8重量%のUUUトリグリセリドと、を含み、6.5~18.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び1.5~20.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0049】
更により好ましい実施形態では、脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、32重量%~52重量%のステアリン酸(C18:0)と、45重量%~70重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、脂肪組成物は、2.3重量%~6.8重量%のSSSトリグリセリドと、0.3重量%~9.7重量%のUUUトリグリセリドと、を含み、7.0~17.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び2.0~18.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0050】
最も好ましい実施形態では、脂肪組成物は、脂肪組成物中に存在する総トリグリセリドに基づいて、33重量%~50重量%のステアリン酸(C18:0)と、46重量%~65重量%の飽和脂肪酸(SAFA)と、を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づいており、脂肪組成物は、2.5重量%~6.5重量%のSSSトリグリセリドと、0.5重量%~9.5重量%のUUUトリグリセリドと、を含み、7.0~16.0のS2Uトリグリセリド対SSSトリグリセリドの重量比、及び2.5~15.0のS2Oトリグリセリド対S2Lトリグリセリドの重量比を有し、Sは、飽和脂肪酸であり、Uは、不飽和脂肪酸であり、Oは、オレイン酸であり、Lは、リノール酸である。
【0051】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で20.0~95.0、より好ましくは23.0~93.0、更により好ましくは25.0~91.0、最も好ましくは28.0~89.0の固体脂肪含有量を有する。
【0052】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、20℃で5.0~65.0、より好ましくは6.0~60.0、更により好ましくは8.0~55.0、最も好ましくは10.0~52.0の固体脂肪含有量を有する。
【0053】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、25℃で2.5~20.0、より好ましくは3.0~19.0、更により好ましくは4.0~18.0、最も好ましくは4.5~17.5の固体脂肪含有量を有する。
【0054】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、30℃で1.5~15.0、好ましくは2.0~13.0、より好ましくは2.5~11.0、更により好ましくは3.0~10.0の固体脂肪含有量を有する。
【0055】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、35℃で多くとも10.0、好ましくは1.0~9.0、より好ましくは1.5~8.0、更により好ましくは2.0~7.0の固体脂肪含有量を有する。
【0056】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、40℃で多くとも7.0、好ましくは多くとも6.0、より好ましくは0.1~5.5、更により好ましくは0.3~5.0の固体脂肪含有量を有する。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で20.0~95.0の固体脂肪含有量、20℃で5.0~65.0の固体脂肪含有量、25℃で2.5~20.0の固体脂肪含有量、30℃で1.5~15.0の固体脂肪含有量、35℃で多くとも10.0の固体脂肪含有量、40℃で多くとも7.0の固体脂肪含有量を有する。
【0058】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で23.0~93.0の固体脂肪含有量、20℃で6.0~60.0の固体脂肪含有量、25℃で3.0~19.0の固体脂肪含有量、30℃で2.0~13.0の固体脂肪含有量、35℃で1.0~9.0の固体脂肪含有量、40℃で多くとも6.0の固体脂肪含有量を有する。
【0059】
更により好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で25.0~91.0の固体脂肪含有量、20℃で8.0~55.0の固体脂肪含有量、25℃で4.0~18.0の固体脂肪含有量、30℃で2.5~11.0の固体脂肪含有量、35℃で1.5~8.0の固体脂肪含有量、40℃で0.1~5.5の固体脂肪含有量を有する。
【0060】
最も好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物は、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で28.0~89.0の固体脂肪含有量、20℃で10.0~52.0の固体脂肪含有量、25℃で4.5~17.5の固体脂肪含有量、30℃で3.0~10.0の固体脂肪含有量、35℃で2.0~7.0の固体脂肪含有量、40℃で0.3~5.0の固体脂肪含有量を有する。
【0061】
本発明による脂肪組成物は、好ましくは、多くとも10.0%、より好ましくは1.0%~9.5%、更により好ましくは1.5%~9.0%、最も好ましくは2.0%~8.5%のジグリセリド含有量を有する。「ジグリセリド」という用語は、グリセロール分子に共有結合した2つの脂肪酸鎖からなるグリセリドを指し、必ずしもグリセロールバックボーン上の特定の位置(1,3位又は2位)に限定されない。ジグリセリド含有量は、例えば、ISO 18395:2005(E)に従って、直相HPLCによって、又は高速サイズ排除クロマトグラフィーによって決定され得る。
【0062】
本発明はまた、非エステル交換脂肪又は油と、エステル交換脂肪又は油とをブレンドすることを含み、脂肪又は油が、ココアバター、シアバター、イリッペバター、サルバター、コクム脂肪、マンゴー脂肪、高ステアリンヒマワリ油、高ステアリン大豆油、高ステアリン菜種油、高ステアリンキャノーラ油、アランブラキア脂肪、ペンタデスマ脂肪、ソンチ脂肪、それらの画分、及びそれらの混合物からなる群から選択される、本発明による脂肪組成物を調製するプロセスに関する。非エステル交換脂肪又は油対エステル交換脂肪又は油の重量比は、少なくとも1.0、好ましくは1.1~20.0、より好ましくは1.1~15.0、更により好ましくは1.2~10.0である。「エステル交換」という用語は、そのグリセロール部分に対するトリグリセリド油中に存在する脂肪酸部分のランダムな非特異的再分布に供された油又は脂肪を指す。
【0063】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物を調製するプロセスは、シアバターとエステル交換シアバターとのブレンドを含み、シアバター対エステル交換シアバターの重量比は、1.1~20.0、より好ましくは1.1~15.0、更により好ましくは1.2~10.0である。
【0064】
別の好ましい実施形態では、本発明による脂肪組成物を調製するプロセスは、ココアバターとエステル交換ココアバターとのブレンドを含み、ココアバター対エステル交換ココアバターの重量比は、1.1~20.0、より好ましくは1.1~15.0、更により好ましくは1.2~10.0である。
【0065】
本発明による脂肪組成物を作製するためのプロセスの代替実施形態では、ココアバター、シアバター、イリッペバター、サルバター、コクム脂肪、マンゴー脂肪、高ステアリンヒマワリ油、高ステアリン
大豆油、高ステアリン菜種油、高ステアリンキャノーラ油、アランブラキア脂肪、ペンタデスマ脂肪、ソンチ脂肪、それらの画分、及びそれらの混合物からなる群から選択される脂肪又は油は、部分的にエステル交換される。
【0066】
部分的エステル交換は、反応させる脂肪又は油の総量に基づいて、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%、より好ましくは0.5重量%~3重量%のリパーゼを使用することによって実施される。リパーゼは、好ましくは、固定化リパーゼである。好ましくは、リパーゼは、Rhizomucor miehei、Candida antarctica、Thermomyces lanuginosus、Rhizopus oryzae、又はそれらの組み合わせから選択される。例えば、Novozym(登録商標)40086は、微孔性アニオン性樹脂上に固定化されたRhizomucor miehei由来の市販の固定化リパーゼである。Novozym(登録商標)435は、微孔性アクリル樹脂上に固定化されたCandida antarctica由来の市販の固定化リパーゼである。Lipozyme(登録商標)TL IMは、非圧縮シリカゲル担体上に固定化されたThermomyces lanuginosus由来の市販の固定化リパーゼである。
【0067】
反応は、バッチ反応器などにおける不連続プロセスとして、又は充填床反応器などにおける連続プロセスとして実施され得る。部分エステル交換は、50℃~80℃、好ましくは55℃~70℃、より好ましくは55℃~65℃の温度で実施される。部分エステル交換は、0.5時間~12時間、好ましくは1時間~8時間、より好ましくは1.5時間~7.5時間の期間にわたって実施される。期間は、バッチ反応器における反応時間を指す。充填床反応器では、期間は、滞留時間を指す。これらのパラメータの組み合わせは、反応器の結果によって本発明による所望の脂肪組成物に基づいて選択することができる。例えば、期間がより長い場合、エステル交換の変換は、典型的には、より高い。反応に使用されるリパーゼの量がより高い場合、典型的には、より高い反応速度がもたらされるであろう。
【0068】
本発明はまた、脂肪相としての油中水型エマルジョンにおける使用に好適な脂肪ブレンドに関し、脂肪ブレンドは、5重量%~95重量%、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは15重量%~85重量%、更により好ましくは20重量%~80重量%、最も好ましくは25重量%~75重量%の本発明による脂肪組成物と、5重量%~95重量%、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは15重量%~85重量%、更により好ましくは20重量%~80重量%、最も好ましくは25重量%~75重量%の、ココナッツ油、ヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、高オレイン菜種油、高オレインキャノーラ油、高オレイン大豆油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、チア油、亜麻仁油、トウモロコシ油、紅花油、オリーブ油、キャノーラ油、ブドウ種子油、カボチャ油、ゴマ油、クルミ油、ヘーゼルナッツ油、それらの画分、及びそれらの混合物からなる群から選択される油と、を含む。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、20重量%~80重量%の本発明による脂肪組成物と、80重量%~20重量%の、菜種油、ヒマワリ油、キャノーラ油、大豆油、高オレインヒマワリ油、又はそれらの組み合わせから選択される油と、2重量%~12重量%のココナッツ油と、を含む。
【0070】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、60重量%~80重量%の本発明による脂肪組成物と、10重量%~30重量%の、菜種油、ヒマワリ油、キャノーラ油、大豆油、高オレインヒマワリ油、又はそれらの組み合わせから選択される油と、2重量%~12重量%のココナッツ油と、を含む。
【0071】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、60重量%~80重量%の本発明による脂肪組成物と、10重量%~30重量%の、菜種油、ヒマワリ油、キャノーラ油、大豆油、高オレインヒマワリ油、又はそれらの組み合わせから選択される油と、2重量%~12重量%のココナッツ油と、から本質的になるか、又はそれらからなる。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、30重量%~70重量%の本発明による脂肪組成物と、70重量%~30重量%の、菜種油、ヒマワリ油、キャノーラ油、大豆油、高オレインヒマワリ油、又はそれらの組み合わせから選択される油と、を含む。
【0073】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、32重量%~68重量%の本発明による脂肪組成物と、68重量%~32重量%の、菜種油、ヒマワリ油、キャノーラ油、大豆油、高オレインヒマワリ油、又はそれらの組み合わせから選択される油と、を含む。
【0074】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、32重量%~68重量%の本発明による脂肪組成物、及び68重量%~32重量%の菜種油、ヒマワリ油、キャノーラ油、大豆油、高オレインヒマワリ油、又はそれらの組み合わせから選択される油から本質的になるか、又はそれらからなる。
【0075】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で8.0~55.0、より好ましくは9.0~50.0、更により好ましくは10.0~48.0、最も好ましくは11.0~45.0、特に最も好ましくは17.0~44.0の固体脂肪含有量を有する。
【0076】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、20℃で2.0~30.0、より好ましくは3.0~25.0、更により好ましくは3.5~22.0、最も好ましくは4.0~20.0、特に最も好ましくは11.0~18.0の固体脂肪含有量を有する。
【0077】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、25℃で多くとも15.0、より好ましくは1.0~12.0、更により好ましくは2.0~10.0、最も好ましくは2.5~9.0の固体脂肪含有量を有する。
【0078】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、30℃で多くとも10.0、好ましくは多くとも8.0、より好ましくは0.5~7.0、更により好ましくは1.0~6.0、最も好ましくは1.5~4.5の固体脂肪含有量を有する。
【0079】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、35℃で多くとも8.0、好ましくは多くとも7.0、より好ましくは0.5~6.0、更により好ましくは0.5~5.0、最も好ましくは1.0~2.5の固体脂肪含有量を有する。
【0080】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、40℃で多くとも5.0、好ましくは多くとも4.0、より好ましくは多くとも3.0、更により好ましくは0.1~2.5の固体脂肪含有量を有する。
【0081】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で8.0~55.0の固体脂肪含有量、20℃で2.0~30.0の固体脂肪含有量、25℃で多くとも15.0の固体脂肪含有量、30℃で多くとも10.0の固体脂肪含有量、35℃で多くとも8.0の固体脂肪含有量、40℃で多くとも5.0の固体脂肪含有量を有する。
【0082】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で9.0~50.0の固体脂肪含有量、20℃で3.0~25.0の固体脂肪含有量、25℃で1.0~12.0の固体脂肪含有量、30℃で多くとも8.0の固体脂肪含有量、35℃で多くとも7.0の固体脂肪含有量、40℃で多くとも4.0の固体脂肪含有量を有する。
【0083】
更により好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で10.0~48.0の固体脂肪含有量、20℃で3.5~22.0の固体脂肪含有量、25℃で2.0~10.0の固体脂肪含有量、30℃で0.5~7.0の固体脂肪含有量、35℃で0.5~6.0の固体脂肪含有量、40℃で多くとも3.0の固体脂肪含有量を有する。
【0084】
最も好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で11.0~45.0の固体脂肪含有量、20℃で4.0~20.0の固体脂肪含有量、25℃で2.5~9.0の固体脂肪含有量、30℃で1.0~6.0の固体脂肪含有量、35℃で0.5~5.0の固体脂肪含有量、40℃で0.1~2.5の固体脂肪含有量を有する。
【0085】
特に最も好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、ISO 8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、10℃で17.0~44.0の固体脂肪含有量、20℃で11.0~18.0の固体脂肪含有量、25℃で2.5~9.0の固体脂肪含有量、30℃で1.5~4.5の固体脂肪含有量、35℃で1.0~2.5の固体脂肪含有量、40℃で0.1~2.5の固体脂肪含有量を有する。
【0086】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも5.0重量%、より好ましくは多くとも4.0重量%、更により好ましくは0.1重量%~3.0重量%、最も好ましくは0.2重量%~2.0重量%のCN48トリグリセリドを含む。
【0087】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも15.0重量%、より好ましくは0.5重量%~13.0重量%、更により好ましくは1.0重量%~12.0重量%、最も好ましくは1.2重量%~11.0重量%のCN50トリグリセリドを含む。
【0088】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、5.0重量%~45.0重量%、より好ましくは6.0重量%~40.0重量%、更により好ましくは7.0重量%~38.0重量%、最も好ましくは8.0重量%~35.0重量%のCN52トリグリセリドを含む。
【0089】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、45.0重量%~85.0重量%、より好ましくは48.0重量%~80.0重量%、更により好ましくは50.0重量%~79.0重量%、最も好ましくは52.0重量%~78.0重量%のCN54トリグリセリドを含む。
【0090】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、少なくとも2.0重量%、より好ましくは少なくとも2.5重量%、更により好ましくは2.5重量%~5.0重量%、最も好ましくは2.5重量%~4.5重量%のCN56トリグリセリドを含む。
【0091】
トリグリセリド組成は、例えば、GC(AOCS Ce 5-86)による分子量差(炭素数(CN))に基づいて決定され得る。トリグリセリドCNxxという表記は、脂肪アシル基にxx個の炭素原子を有するトリグリセリドを表し、例えば、CN54は、トリステアリンを含む。当該技術分野における慣用語であるように、各炭素数(CN)で特定されたトリグリセリドの量は、脂肪組成物中に存在するCN26~CN62の総トリグリセリドに基づく重量パーセンテージである。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも5.0重量%のCN48トリグリセリドと、多くとも15.0重量%のCN50トリグリセリドと、5.0重量%~45.0重量%のCN52トリグリセリドと、45.0重量%~85.0重量%のCN54トリグリセリドと、少なくとも2.0重量%のCN56トリグリセリドと、を含む。
【0093】
より好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、多くとも4.0重量%のCN48トリグリセリドと、0.5重量%~13.0重量%のCN50トリグリセリドと、6.0重量%~40.0重量%のCN52トリグリセリドと、48.0重量%~80.0重量%のCN54トリグリセリドと、少なくとも2.5重量%のCN56トリグリセリドと、を含む。
【0094】
更により好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、0.1重量%~3.0重量%のCN48トリグリセリドと、1.0重量%~12.0重量%のCN50トリグリセリドと、7.0重量%~38.0重量%のCN52トリグリセリドと、50.0重量%~79.0重量%のCN54トリグリセリドと、2.5重量%~5.0重量%のCN56トリグリセリドと、を含む。
【0095】
最も好ましい実施形態では、本発明による脂肪ブレンドは、脂肪ブレンド中に存在する総トリグリセリドに基づいて、0.2重量%~2.0重量%のCN48トリグリセリドと、1.2重量%~11.0重量%のCN50トリグリセリドと、8.0重量%~35.0重量%のCN52トリグリセリドと、52.0重量%~78.0重量%のCN54トリグリセリドと、2.5重量%~4.5重量%のCN56トリグリセリドと、を含む。
【0096】
本発明の脂肪ブレンドは、好ましくは、12.0重量%~50.0重量%、より好ましくは14.0重量%~45.0重量%、更により好ましくは15.0重量%~35.0重量%のステアリン酸(C18:0)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0097】
本発明の脂肪ブレンドは、好ましくは、30.0重量%~70.0重量%、より好ましくは35.0重量%~65.0重量%、更により好ましくは45.5重量%~60.0重量%のオレイン酸(C18:1)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0098】
本発明の脂肪ブレンドは、好ましくは、5.0重量%~30.0重量%、より好ましくは7.0重量%~25.0重量%、更により好ましくは8.6重量%~20.0重量%のリノール酸(C18:2)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0099】
本発明の脂肪ブレンドは、好ましくは、10重量%~55重量%、より好ましくは15重量%~50重量%、更により好ましくは16重量%~45重量%、最も好ましくは18重量%~43重量%の飽和脂肪酸(SAFA)を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0100】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、2重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満、更により好ましくは1.0重量%未満のトランス脂肪酸残基の含有量を含み、当該酸のパーセンテージは、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0101】
本発明による脂肪ブレンドは、好ましくは、40~95、より好ましくは45~93、更により好ましくは50~92、最も好ましくは55~91のヨウ素価を有する。「ヨウ素価」という用語は、100gの油に添加され得るヨウ素のグラム数を指す。ヨウ素価は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく、脂肪組成物中のグリセリドにおけるアシル基として結合した総酸に基づいて、AOCS Cd 1c-85に従って計算され得る。代替的に、ヨウ素価は、AOCS法Cd 1-25によって測定され得る。
【0102】
本発明はまた、5重量%~95重量%の本発明による脂肪ブレンドと、5重量%~95重量%の水相と、を含む、油中水型エマルジョンに関する。好ましくは、本発明の油中水型エマルジョンは、10重量%~90重量%の本発明による脂肪ブレンドと、10重量%~90重量%の水相と、を含む。より好ましくは、本発明の油中水型エマルジョンは、15重量%~85重量%の本発明による脂肪ブレンドと、15重量%~85重量%の水相と、を含む。
【0103】
「油中水型エマルジョン」という用語は、当該技術分野で周知のように、分散相としての水が連続相として油中に分配されるエマルジョンを指す。水相は、一般に、水並びに/又は他の成分、例えば、ミルク、ミルク誘導体、例えば、ホエイ、バターミルク、若しくはクリーム、又は植物性ミルク、例えば、ライスミルク、ソイミルク、オーツミルク、若しくはアーモンドミルク、及びそれらの誘導体を含むか、又はそれらから(本質的に)なる。
【0104】
本発明による油中水型エマルジョンは、好ましくは、食用スプレッダブルエマルジョンである。より好ましくは、本発明による油中水型エマルジョンは、マーガリン又はスプレッドである。これらの製品は、一般に、菓子、ベーカリー、又は調理用途などの様々な食品用途においてバターと同じ方法で使用される植物性又はビーガンバター代替又は置換とみなされる。
【0105】
本発明による油中水型エマルジョンは、好ましくは、5重量%~75重量%、より好ましくは10重量%~70重量%、更により好ましくは15重量%~65重量%、最も好ましくは20重量%~60重量%の本発明による脂肪組成物を含む。
【0106】
好ましくは、本発明による油中水型エマルジョンは、乳化剤、フレーバー、ミルク、ミルク粉末、着色剤、塩、pH調整剤、糖、シロップ、穀物、豆果、種子、果実、堅果、植物抽出物、野菜ジュース、植物性ミルク、植物性タンパク質、抗酸化剤、防腐剤、デンプン、修飾デンプン、繊維、増粘剤、安定化剤、プロバイオティクス、及びビタミンから選択される1つ以上の成分を更に含む。
【0107】
好ましくは、本発明による油中水型エマルジョンは、0.05重量%~5.0重量%、より好ましくは0.1重量~3.0重量%、更により好ましくは0.2重量%~2.0重量%の少なくとも1つの乳化剤を含む。少なくとも1つの乳化剤は、好ましくは、脂肪酸のモノ及び/又はジグリセリド、蒸留モノグリセリド、レシチン、脂肪酸のモノ及び/又はジグリセリドの有機エステル、ポリグリセロールエステル、ポリグリセロールポリリシノレエート、スクロースエステル及びスクログリセリド、ステアロイル-ラクチレート、1-2プロパンジオールエステル、ソルビタンエステル、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0108】
着色剤は、好ましくは、カロテン、アナトー、及びそれらの混合物、より好ましくはベータ-カロテンからなる群から選択される。抗酸化剤は、好ましくは、茶又はオレガノ由来などの、トコフェロール及び/又は天然抽出物である。防腐剤は、好ましくは、ソルビン酸、ソルビン酸塩、安息香酸塩、又はそれらの混合物である。植物性タンパク質は、好ましくは、ヒマワリタンパク質、ファヴァタンパク質、ファバタンパク質、レンズ豆タンパク質、ヒヨコ豆タンパク質、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、キャノーラタンパク質、小麦タンパク質、菜種タンパク質、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0109】
「植物性ミルク」という用語は、植物ベースの液体、代替ミルク、ナッツミルク、又はビーガンミルクとも呼ばれ、これは、ミルクの色に似た植物ジュースであり、風味及び芳香のために水ベースの植物抽出物から作製された製造された非乳製品飲料を指す。好ましくは、植物性ミルクは、アーモンドミルク、ソイミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、オーツミルク、ヘンプミルク、ピーミルク、ピーナッツミルク、カシューミルク、ライ小麦ミルク、小麦ミルク、大麦ミルク、スペルトミルク、雑穀ミルク、それらの誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0110】
好ましい実施形態では、本発明の油中水型エマルジョンは、50重量%~90重量%の本発明による脂肪ブレンドと、10重量%~50重量%の水と、0.1重量%~0.5重量%のレシチン又はモノ-及びジグリセリドなどの乳化剤と、0.2重量%~0.7重量%の塩と、任意に0.2重量%~0.7重量%のミルク粉末と、を含む。
【0111】
本発明はまた、本発明による油中水型エマルジョンを作製するためのプロセスであって、a)好ましくは、乳化剤、脂溶性フレーバー、及び脂溶性着色剤などの脂肪に可溶性の成分を含む、本発明による脂肪ブレンドを調製するステップと、b)好ましくは、ミルク、ミルク粉末、pH調整剤、塩、植物性ミルク、及び糖などの水に可溶性の成分を含む、水相を調製するステップと、c)脂肪ブレンド及び水相を乳化して、エマルジョンを得るステップと、d)得られたエマルジョンを結晶化するステップと、e)任意に、ステップd)の間又は後に、エマルジョン中にガスをポンピングするステップであって、ガスが、好ましくは、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、ステップと、を含む。
【0112】
本発明はまた、菓子製品、ベーカリー製品、又は調理製品における本発明による油中水型エマルジョンの使用に関する。
【0113】
本明細書における明らかに以前に公開された文書のリスト又は議論は、必ずしも、その文書が最新技術の一部であるか又は通常の一般的な知識であることを認めているとみなされるべきではない。
【0114】
本発明の所与の態様、実施形態、特徴、又はパラメータについての選好及び選択肢は、文脈が別段に指示しない限り、本発明の全ての他の態様、実施形態、特徴、及びパラメータについてのいずれか及び全ての選好及び選択肢と組み合わせて開示されたものとみなされるべきである。
【0115】
以下の非限定的な例は、本発明を例示するものであり、その範囲をいずれの方法でも限定するものではない。例において、及び本明細書全体を通して、別段に指示されない限り、全てのパーセンテージ、部、及び比は、重量による。
【発明を実施するための形態】
【0116】
実施例
これらの例全体を通して、
US-Nxは、x℃での非安定化脂肪についてのNMRによって決定された固体脂肪含有量を指し(ISO 8292-1)、
Cx:yは、x個の炭素原子及びy個の二重結合を有する脂肪酸を指し、レベルは、GC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)によって決定され、
SAFAは、飽和脂肪酸を指し、
MUFAは、一不飽和脂肪酸を指し、
PUFAは、多不飽和脂肪酸を指し、
IV FAMEは、AOCS Cd 1c-85に従って計算されたヨウ素価を指し、
TRANSは、トランス脂肪酸、トランス配列において二重結合を有する不飽和脂肪酸を指し、
O、P、St、L、及びAは、それぞれ、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、及びアラキジン酸を指し、
トリグリセリド組成物:POSt、及び他のトリグリセリドは、GC(ISO 23275)によって決定され、各GCピークは、異なる位置において同じ脂肪酸を有するトリグリセリドを含み、例えば、POStは、PStO及びStOPと同じシグナルピークにあり、
Sは、飽和脂肪酸を指し、
Uは、不飽和脂肪酸を指し、
SSSは、トリグリセリドが3つの飽和脂肪酸を含有する、三飽和トリグリセリドを指し、
UUUは、トリグリセリドが3つの不飽和脂肪酸を含有する、三不飽和トリグリセリドを指し、
S2Uは、トリグリセリドが、トリグリセリドにおけるそれらの位置に関係なく、2つの飽和脂肪酸及び1つの不飽和脂肪酸を含有する、二飽和-一不飽和トリグリセリドを指し、
SU2は、トリグリセリドが、トリグリセリドにおけるそれらの位置に関係なく、1つの飽和脂肪酸及び2つの不飽和脂肪酸を含有する、一飽和-二不飽和トリグリセリドを指し、
S2Oは、トリグリセリドが、トリグリセリドにおけるそれらの位置に関係なく、2つの飽和脂肪酸及び1つのオレイン酸を含有する、モノオレイン酸塩-二飽和トリグリセリドを指し、
S2Lは、トリグリセリドが、トリグリセリドにおけるそれらの位置に関係なく、2つの飽和脂肪酸及び1つのリノール酸を含有する、モノリノール酸塩不飽和トリグリセリドを指し、
ジグリセリドは、直相HPLCによって測定された組成物中のジグリセリドのパーセンテージを指し、
SAFA中SN-2%は、脂肪試料中の飽和脂肪酸(SAFA)のパーセンテージと比較した、トリグリセリドの2位に存在する飽和脂肪酸(SAFA)のパーセンテージを指す。トリグリセリド中の脂肪酸の分布は、共同JOCS/AOCS公式方法Ch 3a-19に基づいて決定される。2位におけるSAFA残基のパーセンテージは、(a)GC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)による脂肪試料の総SAFA含有量と、(b)固定化リパーゼによるエタノールとのトリアシルグリセロールのエステル交換反応及び分取直相HPLCでの単離後の2-モノグリセリド中のGC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)による2位にあるSAFA含有量と、を求めることによって決定される。よって、SAFA中Sn-2%は、((b)×100)/((a)×3)%であり、
CNxxは、xx個の炭素原子を有する(標準的手法と同様に、グリセロールからの炭素原子を除く)トリグリセリドを指し、レベルは、最終的にジグリセリドを除去する前処理を伴うGCによって決定される(AOCS Ce 5-86)。
【0117】
実施例1-脂肪組成物の調製
精製シアバターを、ナトリウムメトキシドを触媒として使用することによって化学的にエステル交換した。化学的エステル交換後、エステル交換シアバターを物理的に精製した。精製ココアバターを、ナトリウムメトキシドを触媒として使用することによって化学的にエステル交換した。化学的エステル交換後、エステル交換ココアバターを物理的に精製した。
【0118】
脂肪組成物1は、87.7重量%の精製シアバターと、12.3重量%のエステル交換シアバターと、のブレンドであった。脂肪組成物2は、57.7重量%の精製シアバターと、42.3重量%のエステル交換シアバターと、のブレンドであった。脂肪組成物3は、81.8重量%の精製シアバターと、18.2重量%のエステル交換シアバターと、のブレンドであった。脂肪組成物4は、71.4重量%の精製シアバターと、28.6重量%のエステル交換シアバターと、のブレンドであった。
【0119】
2つの比較脂肪組成物を調製した。比較脂肪組成物1は、100重量%の精製シアバターであった。比較脂肪組成物2は、100重量%のエステル交換シアバターであった。
【0120】
脂肪組成物1、脂肪組成物2、脂肪組成物3、脂肪組成物4、比較脂肪組成物1、及び比較脂肪組成物2の分析結果を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0121】
本発明による4つの追加の脂肪組成物を、部分的エステル交換によって生成した。100gの精製シアバターを、250rpmの回転速度下で混合された60℃のガラスボトルにおいて調製した。反応を、シリカ支持体(Lipozyme(登録商標)TL-IM)上に固定されたThermomyces lanuginosusに由来する2重量%の固定化リパーゼによって触媒した。2時間後に反応を停止し、濾過後に反応した脂肪組成物を得た。同じ反応を繰り返したが、それぞれ、3時間、6時間、及び7時間後に反応を停止した。脂肪組成物5は、2時間の反応時間での反応後の脂肪生成物であり、脂肪組成物6は、3時間の反応時間での反応後の脂肪生成物であり、脂肪組成物7は、6時間の反応時間での反応後の脂肪生成物であり、脂肪組成物8は、7時間の反応時間での反応後の脂肪生成物である。
【0122】
脂肪組成物5、脂肪組成物6、脂肪組成物7、及び脂肪組成物8の分析結果を表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0123】
脂肪組成物5及び脂肪組成物6は、脂肪組成物1及び脂肪組成物7とかなり類似した組成を有し、脂肪組成物8は、脂肪組成物1及び2と比較してこれらの脂肪組成物5~8を生成するために使用される異なるプロセスにもかかわらず、脂肪組成物2とかなり類似した組成を有することが観察される。加えて、脂肪組成物5は、8.3%のSAFA中SN-2%を有し、脂肪組成物6は、9.1%のSAFA中SN-2%を有し、これはまた、脂肪組成物1のそれに近い。本発明による脂肪組成物は、所望の技術的効果を達成するために、異なるプロセスによって得ることができると結論付けられる。本明細書に示されるように、部分的エステル交換は、本発明による油中水型エマルジョンで使用される脂肪組成物を生成する代替の有利なプロセス経路を提供する。このプロセス経路は、異なる脂肪成分のブレンドを伴うプロセスと比較して、より効率的で簡素化されている。
【0124】
実施例2-調製された脂肪組成物を使用することによる脂肪ブレンドの調製
スプレッダブルエマルジョン製品を調製するために使用される脂肪ブレンドは、調製された脂肪組成物を使用することによって調製した。脂肪ブレンド1は、71.0重量%の脂肪組成物1と、22.3重量%の菜種油と、6.7重量%のココナッツ油とをブレンドすることによって調製した。脂肪ブレンド2は、71.0重量%の脂肪組成物2と、22.3重量%の菜種油と、6.7重量%のココナッツ油とをブレンドすることによって調製した。脂肪ブレンド3は、55.0重量%の脂肪組成物3と、45.0重量%の菜種油とをブレンドすることによって調製した。脂肪ブレンド4は、37.1重量%の脂肪組成物4と、62.9%の菜種油とをブレンドすることによって調製した。
【0125】
比較脂肪ブレンド1は、71.0重量%の比較脂肪組成物1と、22.3重量%の菜種油と、6.7重量%のココナッツ油とをブレンドすることによって調製した。比較脂肪ブレンド2は、71.0重量%の比較脂肪組成物2と、22.3重量%の菜種油と、6.7重量%のココナッツ油とをブレンドすることによって調製した。比較脂肪ブレンド3は、51.2重量%の比較脂肪組成物1と、48.8重量%の菜種油とをブレンドすることによって調製した。参照脂肪ブレンド1は、EP-A-3245876に従って、20重量%のエステル交換ココアバターと、80重量%の大豆油とをブレンドすることによって調製した。
【0126】
脂肪ブレンド1、脂肪ブレンド2、脂肪ブレンド3、脂肪ブレンド4、比較脂肪ブレンド1、比較脂肪ブレンド2、比較脂肪ブレンド3、及び参照脂肪ブレンド1の分析結果を表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0127】
実施例3-約80%の脂肪を含有するスプレッダブルエマルジョン製品の製造及びレシピ
スプレッダブルエマルジョン製品(表4に列挙される製品1、製品2、製品3、比較製品1、及び比較製品2)をパイロットスケールで調製した。
【表4】
【0128】
エマルジョン製品を調製する第1のステップは、脂溶性成分混合物及び水溶性成分混合物の調製であった。スプレッダブルエマルジョン製品のレシピを表5に提示する。脂溶性成分は、脂肪ブレンド、ヒマワリレシチン、バターフレーバー、及びベータ-カロテンであった。水溶性成分は、水、バターミルク粉末、塩、及びクエン酸であった。
【表5】
【0129】
脂肪相及び水相を、エマルジョンを作製する前に別々に低温殺菌した。エマルジョンタンクにおいて加熱された水混合物(55℃)を加熱された脂肪混合物(60℃)に混合することによって、エマルジョンを形成した。スプレッダブルエマルジョン製品を、3つの冷却チューブのうちの2つの後に追加の中間結晶器を含む、3つの冷却チューブ、及び静止チューブを含む、プロセス設定を備えたGerstenberg&Aggerパイロットパーフェクターを使用して調製した。スプレッダブルエマルジョン製品を、静止チューブの後にブリックパックに装填した。生産速度及び冷却設定は、全ての製品について一定に保った。生産速度は、45kg/時間であり、結晶器スクレイピングブレード速度は、352rpmであった。5つのスプレッダブルエマルジョン製品を得て、5℃で保存した。
【0130】
実施例4-プロセスにおけるスプレッダブルエマルジョン製品(製品1、製品2、比較製品1、及び比較製品2)性能の評価
パイロットパーフェクタープロセスにおけるスプレッダブルエマルジョン脂肪結晶化の程度は、掻き取られた表面ブレードの滞留時間及び回転速度、並びに脂肪の結晶化速度に依存する。全ての製品(製品1、製品2、比較製品1、及び比較製品2)の性能及び得られた製品特徴を比較するために、パイロット設定を一定に保った。製品1及び製品2は、プロセスにおける結晶化挙動に対応する同じ所望の冷却速度を有したことが観察された。しかしながら、比較製品は、プロセスにおいて速すぎる(比較製品1)又は遅すぎる(比較製品2)冷却速度を有し、不十分な感覚特徴をもたらし得る望ましくない結晶化挙動を示した。
【0131】
比較製品2の場合のように、冷却速度が遅すぎ、多すぎる結晶化がプロセスにおいて早期に起こる場合、加工のせん断力は、望ましくない外観及び感覚刺激特性、例えば、脆性をもたらす構造を破壊するほど過剰になる。一方、比較製品1の場合のように、冷却速度が速すぎ、プロセス中に適切な結晶化が達成されない場合、パッケージング後及び貯蔵寿命中に得られたエマルジョン製品において制御されない結晶化が起こり、これは、後硬化、予測不能な質感、及び粒状性傾向などの望ましくない感覚特徴をもたらす。プロセスにおける結晶化挙動は、脂肪ブレンドにおいて使用され、最終的には油中水型エマルジョン製品において使用される脂肪組成物のトリグリセリド組成及び対応する特性に強く関連すると考えられる。
【0132】
実施例5-スプレッダブルエマルジョン製品(製品1、製品2、比較製品1、及び比較製品2)の評価
味覚パネル(n=11)によって、製品1及び製品2が比較製品2と比較して有意により低い脆性を有したが、比較製品2のような顕著な脆性が不十分な感覚特徴を引き起こしたことが観察された。製品1及び製品2において形成された結晶ネットワークが特に好ましいことも示され、これは実施例4に言及される製造中の観察と一致する。加えて、製品1及び製品2は、有意により良好な融解挙動を有したが、比較製品2の融解は、口内で不快に遅かったことが味覚パネルによって認められた。不十分な融解挙動に加えて、比較製品2は、製品1及び製品2と比較して有意により低い硬度を有し、口内で粘着性となり、融解する感覚を与えなかった。
【0133】
口内での硬度、可塑性、及び融解の差を、比較製品1と製品1との間で観察した。製品1は、それほど硬くなく、より低い可塑性を有し、口内でより速く融解した。可塑性は、バター状融解製品の負の属性であり、より遅い融解を示し、口内での融解する結果は、製品1が比較製品1としてより良好な感覚特性を有したことを確認した。
【0134】
質感特性はまた、硬度を測定することによって決定した。スプレッダブルエマルジョン製品を4℃で3日間保存した。次いで、それぞれ、(i)保存から出してそのままの、及び(ii)保存から取り出した後、20℃で45分間安定化させた製品の硬度を、Brookfieldテクスチャーアナライザー(プローブTA40、2mm/秒での5mmの侵入深さ)を使用して測定した。圧縮で測定された最大の力を記録し、硬度として言及した。各製品を3回測定し、平均結果を表6に示す。
【表6】
【0135】
比較製品は、製品1及び製品2よりも低い硬度を有したことが観察された。試料が室温で45分間安定化されたとき、比較製品2は、最小の変化(出発値464gと比較して2.8%低い測定硬度)を示し、不良な融解挙動及び不十分な感覚特徴を示した。
【0136】
比較製品1は、保存後に最も高い硬度を有し、これは望ましくなく、室温での安定化後の比較製品1の硬度は、高いままであったことが更に観察された。製品1及び製品2は、低温のときにより柔らかく、それらはまた、室温での45分間の保存後により大きく変化し、硬度は、それぞれ、12.7%及び7.4%低減し、スプレッダブルエマルジョン製品の本質的な感覚特徴としての良好な融解挙動を示した。
【0137】
実施例6-スプレッダブルエマルジョン製品(製品3)の評価
得られた製品(製品3)は、製品1及び製品2よりも柔らかく、これはまたスプレッドし易くする。製品3は、比較製品2と比較するときに容易に見ることができる非常に良好な融解挙動を有した。製品3及び比較製品2は、感覚評価において同等の硬度を有したが、製品3は、有意により良好な融解特徴を有した。
【0138】
質感特性はまた、硬度を測定することによって決定した。スプレッダブルエマルジョン製品、製品3を4℃で3日間保存した。次いで、それぞれ、(i)保存から出してそのままの、及び(ii)保存から取り出した後、20℃で45分間安定化させた製品の硬度を、Brookfieldテクスチャーアナライザー(プローブTA40、2mm/秒での5mmの侵入深さ)を使用して測定した。圧縮で測定された最大の力を記録し、硬度として言及した。製品を3回測定し、平均結果を表7に示す。
【表7】
【0139】
製品3は、室温での安定化後にスプレッドとして使用されるのに望ましい硬度を有したことが観察された。また、製品3の硬度は、室温での45分間の保存後に適切に低減し、それによって良好な融解特性を示した。
【0140】
実施例7-約60%の脂肪を含有するスプレッダブルエマルジョン製品の製造及びレシピ
スプレッダブルエマルジョン製品(表8に列挙される製品4及び比較製品3)をパイロットスケールで製造した。
【表8】
【0141】
エマルジョンを調製する第1のステップは、脂溶性成分混合物及び水溶性成分混合物の調製であった。スプレッダブルエマルジョン製品のレシピを表9に提示する。脂溶性成分は、脂肪ブレンド、並びにモノ及びジグリセリドであった。水溶性成分は、水、塩、及びクエン酸であった。
【表9】
【0142】
脂肪相(60℃)及び水相(55℃)を混合して、エマルジョンを形成した。エマルジョンを低温殺菌し(78℃)、低温殺菌後に50℃に冷却した。スプレッダブルエマルジョン製品を、3つの冷却チューブを含むプロセス設定を有するGerstenberg&Schroderパイロットパーフェクターを使用して調製した。第2の冷却チューブの後に、1つの追加の中間結晶器があった。スプレッダブルエマルジョン製品を、タブパックに装填した。生産速度及び冷却設定は、両方の製品について一定に保った。生産速度は、100kg/時間であり、結晶器スクレイピングブレード速度は、1000rpmであった。2つのスプレッダブルエマルジョン製品を得て、5℃で保存した。
【0143】
実施例8-プロセスにおけるスプレッダブルエマルジョン製品(製品4及び比較製品3)性能の評価
パイロットパーフェクタープロセスにおけるスプレッダブルエマルジョン脂肪結晶化の程度は、掻き取られた表面ブレードの滞留時間、冷却能力、及び回転速度、並びに脂肪の結晶化速度に依存する。製品(製品4及び比較製品3)の性能及び得られた製品特徴を比較するために、パイロット設定を一定に保った。比較製品3は、遅すぎる結晶化挙動を有し、これは、不十分な感覚特徴をもたらし得る。
【0144】
比較製品3の場合のように、冷却速度が速すぎ、プロセス中に適切な結晶化が達成されない場合、パッケージング後及び貯蔵寿命中に得られたエマルジョン製品において制御されない結晶化が起こり、これは、後結晶化、予測不能な質感、及び粒状性傾向などの望ましくない感覚特徴をもたらす。プロセスにおける結晶化挙動は、脂肪ブレンドにおいて使用され、最終的には油中水型エマルジョン製品において使用される脂肪組成物のトリグリセリド組成及び対応する特性に強く関連すると考えられる。
【0145】
実施例9-スプレッダブルエマルジョン製品(製品4及び比較製品3)の評価
製品4及び比較試料3は、両方とも5℃で固体であった。製品4は、比較試料3よりもかなり良好なスプレッド性及び融解特徴を示したことが、味覚パネルによって観察された。これは、均質な脂肪結晶構造を有する製品におけるより良好な結晶化を示し、これは、改善した感覚特徴につながる。更に、比較試料3は、望ましくない砂状性及び粒状性を引き起こす後結晶化挙動を示した。したがって、製品4は、改善された感覚特性を考慮して明らかに高く評価され、好まれた。
【国際調査報告】