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特表2024-511164変調された光を放出するための半導体サブアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】変調された光を放出するための半導体サブアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/026 20060101AFI20240305BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01S5/026 616
H01S5/026 618
H01S5/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023558766
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022057383
(87)【国際公開番号】W WO2022200292
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21305377.0
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523164067
【氏名又は名称】アルメ テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,シン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥブレジェ,エレーヌ
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB03
5F173AB13
5F173AD12
5F173AD16
5F173AD30
5F173AP05
5F173AP32
5F173AP33
5F173AR99
5F173SA06
5F173SA14
5F173SE02
5F173SG01
5F173SJ12
(57)【要約】
第1の態様によれば、本開示は、半絶縁性基板(201)と、光を放出するように構成された第1のセクション(210)と、前記第1のセクション(210)によって放出された光を変調するように構成された少なくとも第2のセクション(220)と、を備えた半導体装置を含む半導体サブアセンブリであって、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)は、前記半絶縁性基板(201)上にモノリシック集積され、共通の光導波路(205’)を有し、前記第1のセクション(210)は、前記半絶縁性基板(201)上に、第1の電極(212)および第2の電極(214)を有する第1の縦方向のPIN接合を形成し、前記第2のセクション(220)は、前記半絶縁性基板(201)上に第1の電極(222)と第2の電極(224)とを有する第2の縦方向のPIN接合を形成し、前記第1のセクション(210)の前記第1の電極(212)と前記第2のセクション(220)の前記第1の電極(222)との間の電気抵抗は約50オームより高く、前記第1のセクション(210)の前記第2の電極(214)と前記第2のセクション(220)の前記第2の電極(224)との間の電気抵抗は約50オームより高い、半導体サブアセンブリに関する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半絶縁性基板(201)と、
光を放出するように構成された第1のセクション(210)と、
前記第1のセクション(210)によって放出された光を変調するように構成された少なくとも第2のセクション(220)と、
前記第1のセクション(210)に第1の駆動信号を印加し、前記第2のセクション(220)に第2の駆動信号を印加するように構成された電気ドライバー(100)と、を備える、変調された光を放出するための半導体装置(200)を含む半導体サブアセンブリ(10)であって、
前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)は、前記半絶縁性基板(201)上にモノリシック集積され、前記第1のセクション(210)から前記第2のセクション(220)に前記光を導くように構成された共通の光導波路(205’)を有し、
前記第1のセクション(210)は、前記半絶縁性基板(201)上に、第1の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層(203a)、第2のドープ層(206a)および前記光導波路(205’)を含み、
前記第1セクション(210)は、前記第1のドープ層(203a)に、電気的に接続された第1の電極(212)と、前記第2のドープ層(206a)に電気的に接続された第2の電極(214)とをさらに含み、
前記第2のセクション(220)は、前記半絶縁性基板(201)上に、第2の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層(203b)、第2のドープ層(206b)および前記光導波路(205’)を含み、
前記第2のセクション(220)は、前記第1のドープ層(203b)に電気的に接続された第1の電極(222)と、前記第2のドープ層(206b)に電気的に接続された第2の電極(224)とをさらに含み、
前記第1のセクション(210)の前記第1の電極(212)と前記第2のセクション(220)の前記第1の電極(222)との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第1のセクション(210)の前記第2の電極(214)と前記第2のセクション(220)の前記第2の電極(224)との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第2の駆動信号が、前記第2のセクション(220)の前記電極(222, 224)に印加される差動電圧信号または差動電流信号を含む、半導体サブアセンブリ。
【請求項2】
前記第1のセクション(210)の前記第1のドープ層(203a)および前記第2のセクション(220)の前記第1のドープ層(203b)はNドープ層であり、
前記第1のセクション(210)の前記第2のドープ層(206a)および前記第2のセクション(220)の前記第2のドープ層(206b)はPドープ層である、請求項1に記載の半導体サブアセンブリ(10)。
【請求項3】
前記半導体装置(200)は、前記第2のセクション(210)によって変調された光を受けるように構成された、少なくとも第3のセクションをさらに備え、
前記第1のセクション(210)、前記第2のセクション(220)および前記少なくとも第3のセクションは、前記基板(201)上にモノリシック集積され、前記共通の光導波路(205’)を含み、
前記第3のセクションは、前記半絶縁性基板(201)上に、第3の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層、第2のドープ層および前記光導波路(205’)を含み、
前記第3のセクションは、前記第1のドープ層および前記第2のドープ層にそれぞれ電気的に接続された第1の電極および第2の電極をさらに備え、
前記第2のセクション(220)の前記第1の電極(222)と前記第3のセクションの前記第1の電極との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第2のセクション(220)の前記第2の電極(224)と前記第3のセクションの前記第2の電極との間の電気抵抗が約50オームより高い、請求項1または2に記載の半導体サブアセンブリ(10)。
【請求項4】
前記第2の駆動信号は、少なくとも1つの電圧変調または少なくとも1つの電流変調をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体サブアセンブリ。
【請求項5】
前記第1の駆動信号は、前記第1のセクション(210)の前記電極(212、214)に印加される差動電圧または差動電流を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体サブアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の駆動信号は、少なくとも1つの電圧変調または少なくとも1つの電流変調をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体サブアセンブリ。
【請求項7】
前記電気ドライバーはCMOSドライバーである、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体サブアセンブリ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体サブアセンブリ(10)と、前記半導体装置(200)によって放出された光(20)を少なくとも1つの光学部品に結合するように構成された光結合手段と、を含む光モジュール。
【請求項9】
変調された光を放出するための半導体装置(200)を製造するための方法(300)であって、
(a)半絶縁性基板(201)の上に第1のドープ層(203)、前記第1のドープ層(203)の上にアンドープ活性層(205)および前記アンドープ活性層(205)の上に第2のドープ層(206)を含むPIN接合(302)を、前記基板(201)上に設け、
(b)前記第2のドープ層(206)を少なくとも部分的にエッチングして、第1のセクション(210)と少なくとも第2のセクション(220)との間に電気的絶縁セクション(230)を画定し、その際、
前記第2のドープ層(206)は、前記第1のセクション(210)および前記第2のセクション(220)においてエッチングされずに残るのみで、
(c)前記第1のセクション(210)、前記少なくとも第2のセクション(220)および前記電気的絶縁セクション(230)を部分的に覆う導波路マスク(380)を堆積させ、
(d)前記第1のセクション(210)、前記少なくとも第2のセクション(220)および前記電気的絶縁セクション(230)の、前記導波路マスク(380)で覆われていない領域をエッチングして、
前記第1のドープ層(203)および前記アンドープ活性層(205)が、前記電気的絶縁セクション(230)の前記導波路マスク(380)で覆われていない領域において除去され、
前記第2のドープ層(206)および前記アンドープ活性層(205)が、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)の、前記導波路マスク(380)で覆われていない領域において除去され、
前記アンドープ活性層(205)の残りが光導波路(205’)を形成するようにして、
(e)前記電気的絶縁セクション(230)において前記導波路マスク(380)を除去し、
(f)前記電気的絶縁セクション(230)と、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)の、前記導波路マスク(380)で覆われていない領域とに、半絶縁性エピタキシー層(290)を設け、
(g)前記導波路マスク(380)を除去して、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)の、前記第2のドープ層(206a、206b)を少なくとも部分的に露出させ、
(i)前記導波路の外側の領域において、前記少なくとも第2のセクション(220)および前記第1のセクション(210)の前記半絶縁性エピタキシー層(290)を少なくとも部分的に除去し、前記領域において、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)の、前記第1のドープ層(203a、203b)を露出させることを含む、方法。
【請求項10】
(j)前記第1のセクション(210)の前記第1のドープ層(203a)および前記第2のセクション(220)の前記第1のドープ層(203b)とそれぞれ接触する2つのN電極(212、222)を堆積させ、
前記第1のセクション(210)の前記第2のドープ層(206a)および前記第2のセクション(220)の前記第2のドープ層(206b)とそれぞれ接触する2つのP電極(214、224)を堆積させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(h)前記第2のセクション(220)の前記第2のドープ層(203b)と接触するキャパシタンスパッド(228)を堆積させることをさらに含み、前記少なくとも1つのキャパシタンスパッド(228)は、前記第2のセクション(224)の前記P電極の電気キャパシタンスを減少させるように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(b’)前記導波路の外側の少なくとも1つの領域において、前記第2のセクション(220)および前記第1のセクション(210)の前記第2のドープ層(206)を少なくとも部分的に除去することをさらに含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記半絶縁性基板(201)は、鉄ドープリン化インジウムを含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記半絶縁性エピタキシー層(290)は、鉄ドープリン化インジウムまたはルテニウムドープリン化インジウムを含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アンドープ活性層(205)は多量子井戸を含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記多量子井戸は、三元化合物または四元化合物の半導体材料を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、変調された光を放出するように構成された半導体サブアセンブリに関し、さらに、当該半導体サブアセンブリに使用される半導体装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムおよびデータセンターには、一般に、データを伝送するために、変調光信号を生成することが可能な半導体装置が含まれる。このような装置には通常、光を放出するレーザーセクションと、当該光を変調する変調セクションすなわち変調器という少なくとも2つのセクションが含まれる。レーザーセクションまたは変調セクションは各々、そのセクションの一対の電極に駆動信号(例えば電圧または電流)を印加することによって起動される。このような半導体装置では、各セクションは通常、ヘテロ構造すなわちバンドギャップの異なる半導体材料の集合体を含む。
【0003】
レーザーセクションには、例えば分布帰還型(DFB)レーザーを含むことが可能であり、変調セクションには、25Gb/s、50Gb/s、100Gb/sなどの非常に高いデータレートに適した電界吸収型変調器(EAM)を含むことが可能である。
【0004】
EAMでは、フランツ・ケルディッシュ効果または量子閉じ込めシュタルク効果を利用して、光信号の振幅の変化を生じさせている。EAMは、外部の電気ドライバーから変調器の一対の電極に供給される、時間とともに変化する駆動信号によって制御される。EAMには通常、ピーク・ツー・ピーク電圧(Vpp)が1.5V~2.5Vの駆動信号が必要である。
【0005】
利用可能な電気ドライバーのうち、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)ドライバーでは、変調速度が最大で64Gボーに達する。しかしながら、このドライバーの駆動信号は約0.8Vppに制限されており、EAMを直接駆動するには低すぎる。
【0006】
このため、ドライバーの駆動信号が変調器の電圧要件に適合するように、通常は電気増幅器を使用して駆動信号を増幅している。このような増幅器は、電気ノイズ、設置面積、コスト、消費電力を増加させる。このため、駆動信号がCMOSドライバーによって提供される駆動信号に適合し、電気増幅器が不要な変調器に関心が集まっている。
【0007】
第1の手法が、例えば、Nakaiらによる文献(“Uncooled Operation of 53-GBd PAM4 (106-Gb/s) EA/DFB Lasers With Extremely Low Drive Voltage With 0.9 Vpp”. Journal of Lightwave Technology, 2019, vol. 37, no 7, p. 1658-1662)に開示されている。この文書には、0.9Vppまでの低い駆動電圧に適合する最適化された縦方向のPIN接合を有するレーザーセクションと変調器セクションとを含む半導体装置が開示されている。縦方向のPIN接合は、基板面を画定する基板上にドーピングの異なる半導体材料を少なくとも3層積層したヘテロ構造の一種である。これらの3層には通常、Pドープ層と、アンドープ活性層と、Nドープ層が含まれる。
【0008】
前記先行技術の半導体装置では、変調器とレーザーセクションとが同一の基板上にモノリシック集積され、電極を共有している。2つのセクション間の電気的クロストークを防ぐ、すなわち、あるセクションの駆動信号が他のセクションに影響を与えるのを防止するために、各セクションの駆動信号がそのセクションの残りの未使用の電極を介して供給されている間、共有電極が電気的に接地される。この構成は、シングルエンド駆動構成と呼ばれ、この構成により、例えば変調器の時間とともに変化する駆動信号によってレーザーセクションが乱れるのを防ぐことが可能である。これは、レーザーセクションに一定の駆動が必要な場合に特に有利である。このような従来技術の半導体装置では、パラメータ間のトレードオフによって低い駆動信号が達成されている。特に、このような低い駆動信号は、消光比の低さと挿入損失の高さという犠牲を払って、非常に急激に消光する変調器設計にすることによって得られる。
【0009】
Adachiらによる文献(“53-Gbaud PAM4 Differential Drive of a Conventional EA/DFB toward Driver-amplifier-less Optical Transceivers.” Optical Fiber Communications Conference and Exhibition OFC p. 1-3, 2019)では、差動駆動構成において、2つのセクションで電極を共有する半導体装置を駆動するためのチップキャリアが提案されている。このような構成では、共有電極を接地してセクションの残りの1つの電極だけを使用する代わりに、駆動信号をセクションの2つの電極で均等に分けることによって、変調セクションに必要な駆動信号が低減される。
【0010】
Adachiらによる文献では、変調セクションを駆動している信号がレーザーセクションを乱すこと(クロストーク)を防ぐために、レーザーセクションに並列に接続されたバイパスコンデンサが使用されている。しかしながら、上記の解決策は、半導体装置の寸法を大幅に増やす、嵩の大きな部品を意味するため、集積化にはほとんど対応することができない。さらに、この解決策は、複数の変調セクションを含むシステムへの拡張ができず、それにより、この技術の利点が制限される。
【0011】
Hasebeらによる文献(“Push-pull driven electro-absorption modulator integrated with DFB laser using selectively doped lateral pin diode structure.” in : International Semiconductor Laser Conference. IEEE, 2014. p. 54-55)に開示されたもうひとつの手法では、横方向のPIN接合すなわち、基板面上に複数の層が並置された接合に基づくレーザーと変調器とを含む半導体装置が提案されている。横方向のPIN接合によって、レーザーセクションの電極を変調セクションの電極から電気的に絶縁することが可能になる。従って、半導体装置を差動駆動構成で直接使用することができる。しかしながら、横方向のPIN接合がゆえ、このような半導体装置は、利用可能な電気ドライバーとは互換性がないそれぞれの電極で3.5Vの高いVppの駆動信号が必要になる(変調器PIN接合で7Vppになる)。
【0012】
米国特許出願公開第20050275053号には、互いに電気的に絶縁された2つのセクションを含む光集積回路が開示されている。この2つのセクションは、共通の1つの電源によってシングルエンド構成で駆動される。さらに、2つのセクションの電極間の電気的な絶縁は、イオン注入またはバットジョイント(butt-joint)によって得られる絶縁領域を介して達成される。
【0013】
特開平5-102615号には、SiO薄膜に基づく素子間絶縁構造を介して互いに電気的に絶縁された2つのセクションを含む半導体装置が開示されている。しかしながら、電気的駆動構成は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、縦方向のPIN接合のある変調器を有する半導体装置を含み、追加の電気部品を必要とせずに差動駆動構成において直接駆動することが可能な半導体サブアセンブリが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、「含む(comprise)」という用語は、「含む(include)」および「含む(contains)」と同義(同じ意味)であり、包括的かつオープンであり、言及されていない他の要素を除外するものではない。また、本開示において、数値に言及する場合、「約」および「実質的に」という表現は、数値の80%~120%、好ましくは90%~110%に含まれる範囲と同義(同じ意味)である。
【0016】
第1の態様によれば、本明細書は、
半絶縁性基板と、
光を放出するように構成された第1のセクションと、
前記第1のセクションによって放出された光を変調するように構成された少なくとも第2のセクションと、
前記第1のセクションに第1の駆動信号を印加し、前記第2のセクションに第2の駆動信号を印加するように構成された電気ドライバーと、を備える半導体装置を含む半導体サブアセンブリであって、
前記第1のセクションおよび前記少なくとも第2のセクションは、前記半絶縁性基板上にモノリシック集積され、前記第1のセクションから前記第2のセクションに前記光を導くように構成された共通の光導波路を有し、
前記第1のセクションは、前記半絶縁性基板上に、第1の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層、第2のドープ層および光導波路を含み、
前記第1セクションは、前記第1のドープ層に電気的に接続された第1の電極と、前記第2のドープ層に電気的に接続された第2の電極とをさらに含み、
前記第2のセクションは、前記半絶縁性基板上に、第2の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層、第2のドープ層および光導波路を含み、
前記第2のセクションは、前記第1のドープ層に電気的に接続された第1の電極と、前記第2のドープ層に電気的に接続された第2の電極とをさらに含み、
前記第1のセクションの前記第1の電極と前記第2のセクションの前記第1の電極との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第1のセクションの前記第2の電極と前記第2のセクションの前記第2の電極との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第2の駆動信号が、前記第2のセクションの前記電極に印加される差動電圧信号または差動電流信号を含む、半導体サブアセンブリに関する。
【0017】
本明細書において、半絶縁性基板は、抵抗率が約1.10Ω.cmより高い基板である。1つ以上の実施形態によれば、半絶縁性基板は鉄ドープInPで作られている。
【0018】
1つ以上の実施形態によれば、前記第1のセクションの前記第1の電極と前記第2のセクションの前記第1の電極との間の電気抵抗は、約100オームより高く、約500オームであると都合がよい。
【0019】
1つ以上の実施形態によれば、前記第1のセクションの前記第2の電極と前記第2のセクションの前記第2の電極との間の電気抵抗は、約100オームより高く、約500オームであると都合がよい。
【0020】
本明細書において、第2の駆動信号は、第2のセクションの電極に印加される差動電圧信号または差動電流信号を含み、このような駆動信号が、第2のセクションの2つの電極を介して供給される2つの信号に均等に分割されることを意味する。このような駆動構成は、差動駆動構成と呼ばれている。
【0021】
このような独自の配置により、2つのセクション間でクロストークを発生させることなく2つのセクションが差動構成で駆動され、先行技術の半導体装置で必要とされる駆動信号よりも低い駆動信号で駆動信号を使用することが可能である。結果的に、半導体装置の消費電力を低減することができる。特に、縦方向のPIN接合と差動構成との組み合わせにより、電気増幅器を使用せずにCMOSドライバーで変調セクションとレーザーセクションを直接駆動することが可能である。
【0022】
さらに、このような独自の配置は、レーザーセクションを変調器セクションから絶縁するための追加の電子部品(例えば、バイパスコンデンサなど)を必要とすることなく、差動駆動構成にそのまま適合する。従って、この配置はフォトニック集積回路での集積に適合する。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、このようなサブアセンブリでは、電気増幅器を必要とすることなく、変調を含む駆動信号で半導体装置の変調セクションを差動構成で駆動することができる。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、半導体サブアセンブリは電気増幅器を必要とせず、その消費電力は、電気増幅器を含む半導体サブアセンブリに比べて低減される。
【0025】
さらなる実施形態の1つによれば、前記第1のセクションの前記第1のドープ層および前記第2のセクションの前記第1のドープ層はNドープ層であり、前記第1のセクションの前記第2のドープ層および前記第2のセクションの前記第2のドープ層はPドープ層である。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、Pドープ層は互いに実質的に電気的に絶縁されている。実質的な電気的絶縁とは、電気抵抗が約50オームより高いことを意味する。1つ以上の実施形態によれば、Pドープ層は物理的に離れている。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、Nドープ層は互いに実質的に電気的に絶縁されている。実質的な電気的絶縁とは、電気抵抗が約50オームより高いことを意味する。しかしながら、いくつかの実施形態では、接続が前記電気的絶縁を妨げない限り、それらが例えば製造工程に起因したNドープ層間の物理的な接続であってもよい。
【0028】
あるいは、他のいくつかの実施形態によれば、前記第1のセクションの前記第1ドープ層および前記第2のセクションの前記第1ドープ層はPドープ層であり、前記第1のセクションの前記第2ドープ層および前記第2のセクションの前記第2ドープ層はNドープ層である。
【0029】
1つ以上の実施形態によれば、Nドープ層は互いに実質的に電気的に絶縁されている。実質的な電気的絶縁とは、電気抵抗が約50オームより高いことを意味する。1つ以上の実施形態によれば、Nドープ層は物理的に離れている。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、Pドープ層は互いに実質的に電気的に絶縁されている。実質的な電気的絶縁とは、電気抵抗が約50オームより高いことを意味する。しかしながら、そのような接続が前記電気的絶縁を妨げない限り、Pドープ層は物理的に接続されていてもよい。
【0031】
1つ以上の実施形態によれば、第1の態様による半導体サブアセンブリの半導体装置は、前記第2のセクションによって変調された光を受けるように構成された、少なくとも第3のセクションをさらに備え、
前記第1のセクション、前記第2のセクションおよび前記少なくとも第3のセクションは、前記基板上にモノリシック集積され、前記共通の光導波路を含み、
前記第3のセクションは、前記半絶縁性基板上に第3の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層、第2のドープ層および光導波路を含み、
前記第3のセクションは、前記第1のドープ層および前記第2のドープ層にそれぞれ電気的に接続された第1の電極および第2の電極をさらに備え、
前記第2のセクションの前記第1の電極と前記第3のセクションの前記第1の電極との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第2のセクションの前記第2の電極と前記第3のセクションの前記第2の電極との間の電気抵抗が約50オームより高い。
【0032】
前記第3のセクションを、第2のセクションから受光した光の特性を変更するように構成することが可能である。光の前記特性は、例えば、強度、振幅、位相、偏光であってもよい。第3のセクションは、例えば、増幅器、位相変調器または振幅変調器であってもよい。
【0033】
1つ以上の実施形態によれば、第2の駆動信号は、少なくとも1つの電圧変調または少なくとも1つの電流変調をさらに含む。
【0034】
1つ以上の実施形態によれば、第1の駆動信号は、前記第1のセクションの前記電極に印加される差動電圧または差動電流を含む。
【0035】
このため、第1のセクション、例えばレーザーセクションを差動構成で駆動して、第1のセクションを駆動する電気ドライバーの消費を低減することが可能である。
【0036】
1つ以上の実施形態によれば、第1の駆動信号は、少なくとも1つの電圧変調または少なくとも1つの電流変調をさらに含む。
【0037】
このため、電気増幅器を必要とすることなく、第1のセクションと第2のセクションの両方で光を変調することが可能である。第1のセクションと第2のセクションの作用を組み合わせて光を変調することを利用して、半導体装置から放出される光の変調を最適化すること、例えば、変調された光のパワーを高めることができる。
【0038】
1つ以上の実施形態によれば、前記電気ドライバーはCMOSドライバーである。
【0039】
第2の態様によれば、本明細書は、本明細書の第1の態様による半導体サブアセンブリと、前記半導体装置によって放出された光を少なくとも1つの光学部品に結合するように構成された光結合手段と、を含む光モジュールに関する。
【0040】
光結合手段は、例えば、光学レンズ、光ファイバ、光アイソレータ、波長板、ビームスプリッタ、光回折格子、光減衰器などの光学素子またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
先行技術で知られているサブアセンブリと比較して、半導体サブアセンブリの消費電力が低いことにより、コストを増加させることなく、本明細書の第2の態様による光モジュールをデータセンターなどの大規模システムに統合することも容易である。
【0042】
第3の態様によれば、本発明は、
半絶縁性基板と、
光を放出するように構成された第1のセクションと、
前記第1のセクションによって放出された光を変調するように構成された少なくとも第2のセクションと、を備え、
前記第1のセクションおよび前記少なくとも第2のセクションは、前記半絶縁性基板上にモノリシック集積され、前記第1のセクションから前記第2のセクションに前記光を導くように構成された共通の光導波路を有し、
前記第1のセクションは、前記半絶縁性基板上に第1の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層、第2のドープ層および光導波路を含み、
前記第1セクションは、前記第1のドープ層に電気的に接続された第1の電極と、前記第2のドープ層に電気的に接続された第2の電極とをさらに備え、
前記第2のセクションは、前記半絶縁性基板上に第2の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層、第2のドープ層および光導波路を含み、
前記第2セクションは、前記第1のドープ層に電気的に接続された第1の電極と、前記第2のドープ層に電気的に接続された第2の電極とをさらに備え、
前記第1のセクションの前記第1の電極と前記第2のセクションの前記第1の電極との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第1のセクションの前記第2の電極と前記第2のセクションの前記第2の電極との間の電気抵抗が約50オームより高い、変調された光を放出するための半導体装置に関する。
【0043】
第4の態様によれば、本明細書は、第1の態様による半導体サブアセンブリの半導体装置または第3の態様による半導体装置を製造するための方法に関する。
【0044】
1つ以上の実施形態において、半導体装置を製造するためのこのような方法は、
半絶縁性基板の上に第1のドープ層、前記第1のドープ層の上にアンドープ活性層および前記アンドープ活性層の上に第2のドープ層を含むPIN接合を、前記基板上に設け、
前記第2のドープ層を少なくとも部分的にエッチングして、第1のセクションと少なくとも第2のセクションとの間に電気的絶縁セクションを画定し、その際、前記第2のドープ層は、前記第1のセクションおよび前記第2のセクションにおいてエッチングされずに残るのみで、
前記第1のセクション、前記少なくとも第2のセクションおよび前記電気的絶縁セクションを部分的に覆う、好ましくは帯状の導波路マスクを堆積させ、
前記第1のセクション、前記少なくとも第2のセクションおよび前記電気的絶縁セクションの、前記導波路マスクで覆われていない領域をエッチングして、
前記第1のドープ層および前記アンドープ活性層が前記電気的絶縁セクションの前記導波路マスクで覆われていない領域において除去され、
前記第2のドープ層および前記アンドープ活性層が前記第1のセクションおよび前記少なくとも第2の、セクションの導波路マスクで覆われていない領域において除去され、
前記アンドープ活性層の残りが光導波路を形成するようにして、
前記電気的絶縁セクションにおいて前記導波路マスクを除去し、
前記電気的絶縁セクションに含まれる前記光導波路の領域を埋めるために、前記電気的絶縁セクションと、前記第1のセクションおよび前記少なくとも第2のセクションの、前記導波路マスクで覆われていない領域とに、半絶縁性エピタキシー層を設け、
前記導波路マスクを除去して、前記少なくとも第2のセクションおよび前記第1のセクションの前記第2のドープ層を少なくとも部分的に露出させ、
前記導波路の外側の領域において、前記少なくとも第2のセクションおよび前記第1のセクションの前記半絶縁性エピタキシー層を少なくとも部分的に除去し、前記領域において、前記少なくとも第2のセクションおよび前記第1のセクションの前記第1のドープ層を露出させることを含む。
【0045】
第4の態様による方法によって、第1のセクションの第1のドープ層と第2のセクションの第1のドープ層は、ストリップを介して単に物理的に接続されているだけであり、ストリップは、第1のセクションの第1のドープ層と第2のセクションの第1のドープ層との間に実質的な電気絶縁を与えるのに十分な薄さと狭さを有する。
【0046】
さらに、第1のセクションの第2のドープ層と第2のセクションの第2のドープ層は、互いに物理的に離れているか、あるいは、ストリップを介して単に物理的に接続されているだけであり、ストリップは、第1のセクションの第2のドープ層と第2のセクションの第2のドープ層との間に実質的な電気絶縁を与えるのに十分な薄さと狭さを有する。
【0047】
このため、前記第1のセクションの前記第1の電極と前記第2のセクションの前記第1の電極との間の電気抵抗は約50オームより高く、前記第1のセクションの前記第2の電極と前記第2のセクションの前記第2の電極との間の電気抵抗は約50オームより高い。
【0048】
先行技術に開示された方法と比較して、第4の態様による方法を用いることで、複雑さを抑えた状態でドープ層同士が実質的に絶縁された2つのセクションを有する半導体装置が得られる。実際のところ、バットジョイント技術を使用する場合に要求されるような追加の再成長は必要なく、複雑なプロセスであるイオン注入も必要ない。
【0049】
1つ以上の実施形態によれば、本方法はさらに、
前記第1のセクションの前記第1のドープ層および前記第2のセクションの前記第1のドープ層とそれぞれ接触する2つのN電極を堆積させ、
前記第1のセクションの前記第2のドープ層および前記第2のセクションの前記第2のドープ層とそれぞれ接触する2つのP電極を堆積させることを含む。
【0050】
このように、第1のセクションのN電極およびP電極は、第1のセクションの一対の電極を形成する。第2のセクションのN電極およびP電極は、第2のセクションの一対の電極を形成する。
【0051】
1つ以上の実施形態によれば、第1のセクションおよび第2のセクションのN電極およびP電極には、同一の材料、好ましくは導電性材料、例えば金属を含むことができる。
【0052】
前記電極によって、前記第1のセクションおよび前記少なくとも第2のセクションのそれぞれの前記第1のドープ層および前記第2のドープ層に外部のドライバーを電気的に接続することが可能である。
【0053】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、第2のセクションで前記電極を堆積させる前に、前記第2のセクションの第2のドープ層と接触するキャパシタンスパッドを堆積させることをさらに含み、前記少なくとも1つのキャパシタンスパッドは、第2のセクションのP電極の電気キャパシタンスを減少させるように構成されている。
【0054】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、第1のセクションで前記電極を堆積させる前に、前記第1のセクションの第2のドープ層と接触するキャパシタンスパッドを堆積させることをさらに含み、前記少なくとも1つのキャパシタンスパッドは、第1のセクションのP電極の電気キャパシタンスを減少させるように構成されている。
【0055】
あるセクションの電極のキャパシタンスが減少することで、半導体装置の当該セクションの変調特性が改善される。特に、より広い光変調帯域幅を確保することができる。
【0056】
特に、2つのセクションの組み合わせで光の変調を最適化するために、第1セクションと第2セクションの両方でキャパシタンスパッドを堆積させることが可能である。
【0057】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、前記導波路マスクを堆積させる前に、導波路の外側の少なくとも1つの領域において、前記第1のセクションおよび/または前記第2のセクションの前記第2のドープ層を少なくとも部分的に除去することを含む。
【0058】
この実施形態によって、前記第1のセクションおよび/または前記第2のセクションの前記半絶縁性エピタキシー層の一部が前記半絶縁性基板と接触している半導体装置を得ることができる。これにより、第1のセクションおよび/または第2のセクションの第2のドープ層に接続された電極の電気キャパシタンスが低減される。このため、前記第1のセクションおよび/または前記第2のセクションにおけるキャパシタンスパッドの堆積を回避することができ、変調帯域幅を増大させることができる。
【0059】
1つ以上の実施形態によれば、前記半絶縁性基板は、鉄ドープリン化インジウムを含む。
【0060】
1つ以上の実施形態によれば、前記半絶縁性エピタキシー層は、鉄ドープリン化インジウムまたはルテニウムドープリン化インジウムを含む。
【0061】
1つ以上の実施形態によれば、前記アンドープ活性層は多量子井戸を含む。
【0062】
1つ以上の実施形態によれば、前記多量子井戸は、三元化合物または四元化合物の半導体材料を含む。
【0063】
第5の態様によれば、本明細書は、
第3の態様による半導体装置を設け、
電気ドライバーを用いて、半導体装置の第1のセクションに第1の駆動信号を印加し、半導体装置の第2のセクションに第2の駆動信号を印加することを含み、
第2の駆動信号は、前記第2のセクションの電極に印加される差動電圧信号または差動電流信号を含む、変調された光を放出するための方法に関する。
【0064】
1つ以上の実施形態によれば、第3の態様による前記半導体装置は、第4の態様による方法を用いて製造される。
【0065】
本発明の上記以外の利点および特徴については、以下の図面によって示される説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は、一実施形態による、本明細書による半導体サブアセンブリのブロック図を示す。
図2A図2Aは、本明細書の一実施形態による半導体装置の上面図を示す。
図2B図2Bは、図2Aに示す半導体装置の断面図を示す。
図2C図2Cは、図2Aに示す半導体装置の断面図を示す。
図2D図2Dは、図2Aに示す半導体装置の断面図を示す。
図2E図2Eは、図2Aに示す半導体装置の断面図を示す。
図3A図3Aは、一実施形態による、本明細書による半導体装置を製造するための方法の複数の工程を示す。
図3B図3Bは、一実施形態による、本明細書による半導体装置を製造するための方法の複数の工程を示す。
図3C図3Cは、一実施形態による、本明細書による半導体装置を製造するための方法の複数の工程を示す。
図4A図4Aは、一実施形態による、本明細書による半導体装置を製造するための方法の複数の工程を示す。
図4B図4Bは、一実施形態による、本明細書による半導体装置を製造するための方法の複数の工程を示す。
図4C図4Cは、一実施形態による、本明細書による半導体装置を製造するための方法の複数の工程を示す。
図5図5は、一実施形態による、本明細書による半導体装置を製造するための方法の変形工程を示す。
図6図6は、一実施形態による、変形製造方法によって得られる例示的な半導体装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、本開示の一実施形態による半導体サブアセンブリ10のブロック図を示す。
【0068】
半導体サブアセンブリ10は、半導体装置200とドライバー回路100とを含む。半導体装置200は、ドライバー回路100から駆動信号110、111、120、121を受信したときに、変調された光20を放出するように構成されている。
【0069】
より具体的には、電気ドライバー回路100は、第1の駆動信号を第1のセクションに印加し、第2の駆動信号を第2のセクションに印加する。
【0070】
第2の駆動信号は、第2のセクションの電極に印加される差動電圧信号または差動電流信号を含み、このような駆動信号が、第2のセクション220の2つの電極224、222を介して供給される2つの信号120、121に均等に分割されることを意味する。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、第1の駆動信号は、第1のセクションの電極に印加される差動電圧信号または差動電流信号を含み、このような駆動信号が、第1のセクション210の2つの電極214、212を介して供給される2つの信号110、111に均等に分割されることを意味する。
【0072】
図1に示す実施形態において、半導体装置200は、光を放出するための第1のセクション210と、前記第1のセクション210によって放出された光を変調するための第2のセクション220とを含む。
【0073】
1つ以上の実施形態(図示せず)によれば、半導体装置200には、3つ以上のセクションが含まれていてもよく、特に、光を放出するための第1のセクションと、第1のセクションによって放出された光を変調するための第2のセクションと、前記変調された光を受光し、前記変調された光の少なくとも1つの特性を変化させるように構成された第3のセクション、例えば半導体光増幅器とが含まれていてもよい。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のセクションを、電極ごとに一定の駆動信号を用いて連続波モードで駆動してもよい。
【0075】
あるいは、本開示の他の実施形態によれば、第1のセクション210を、変調モードで(すなわち、少なくとも1つの電極で一定ではない駆動信号を用いて)駆動してもよい。例えば、半導体装置200から放出される光の変調を最適化するために、これを使用することが可能である。このような場合、第1のセクションの光変調帯域幅を広げるために、第1のセクションには、任意に、キャパシタンスパッド(図示せず)が含まれていてもよい。
【0076】
第1のセクション210は、一対の電極212、214を含み、電極212、214間に電圧信号または電流信号が印加されると、光を放出するように構成されている。同様に、第2のセクション220は、一対の電極222、224を含み、電極222、224間に電圧信号または電流信号が印加されると、前記第1のセクションによって放出された光を変調するように構成されている。
【0077】
本明細書による半導体装置において、一セクションの電極はいずれも、他のセクションのどの電極からも実質的に電気的に絶縁されている。
【0078】
図2A図2Eは、本開示の一実施形態による半導体装置200の異なる図を示し、前記半導体装置200は、光を放出するように構成された第1のセクション210と、第1のセクション210によって放出された光を変調するように構成された第2のセクション220とを含む。図2A図2Eに示す例では、第1のセクションと第2のセクションとは、第1のセクション210を第2のセクション220から絶縁するように構成された電気的絶縁セクション230によって隔てられている。
【0079】
より具体的には、図2Aは、半導体装置200の上面図を示し、図2B図2Eは、図2Aに示す半導体装置を異なる断面図(A-A’、B-B’、C-C’、D-D’)で示している。A-A’断面図は、光の伝搬方向に沿った、半導体装置の断面図を示す。B-B’断面図は、電気的絶縁セクション230における、第1のセクションと第2のセクションとの間の半導体装置の断面図を示す。C-C’断面図は第1のセクション210の断面図、D-D’断面図は第2のセクション220の断面図を示す。
【0080】
第1のセクション210(本明細書では、レーザーセクションともいう)は、例えば、分布帰還型レーザー(DFB)、分布ブラッグ反射型(DBR)、サンプル回折格子分布ブラッグ反射型(SG-DBR)、およびデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射型(DS-DBR)などの異なるタイプのレーザーを形成することができる。
【0081】
第2のセクション220(本明細書では変調セクションとも称する)は、例えば電界吸収型変調器(EAM)など、異なるタイプの変調器を構成することができる。
【0082】
図2A図2Eに示す実施形態において、第1のセクション210および第2のセクション220は、共通の基板201上にモノリシック集積されて同じ光導波路205’を共有する2つの縦方向のPIN接合を含む。基板201および光導波路205’は、(PIN接合の中に配置されているため)図2Aでは見えないが、図2B図2Eでは見えている。半導体装置は、一部が半絶縁性エピタキシー層290で覆われている。
【0083】
本開示のいくつかの実施形態によれば、2つの縦方向のPIN接合の集積は、例えば、バットジョイント技術、選択領域成長、量子井戸インターミキシングまたは量子井戸オフセット技術を使用して行うことができる。
【0084】
本開示のいくつかの実施形態によれば、縦方向のPIN接合の2つのセクションは、単一の縦方向のPIN接合からの2つの領域であってもよい。
【0085】
図2A図2Eに示す半導体装置200の実施形態では、第1のセクション210は、光導波路205’と、基板201に接するNドープ層203aと、Pドープ層206aとを含む縦方向のPIN接合である。
【0086】
図2A図2Eに示す半導体装置200の実施形態では、第1のセクション210は、Pドープ層206aおよびNドープ層203aにそれぞれ電気接続を提供するように構成されたP電極214およびN電極212をさらに備える。電極214、212は、第1のセクションの電極とも呼ばれ、レーザーセクション210が光を放出するように外部の駆動信号で当該レーザーセクションを駆動するのに使用可能な導電層である。
【0087】
図2A図2Eに示す半導体装置の一実施形態では、第2のセクション220は、光導波路205’と、基板201に接するNドープ層203bと、Pドープ層206bとを含む縦方向のPIN接合である。
【0088】
図2A図2Eに示す半導体装置の実施形態では、第2のセクション220は、Pドープ層206bおよびNドープ層203bにそれぞれ電気接続を提供するように構成されたP電極224およびN電極222をさらに備える。電極224、222は、第2のセクションの電極とも呼ばれ、レーザーセクション210によって放出された光を変調セクション220が変調するように外部の駆動信号で変調セクション220を駆動するのに使用可能な導電層である。
【0089】
図2A図2Eに示す半導体装置200の実施形態では、電気的絶縁セクション230は、光導波路205’と、基板201に接するNドープ層203cとを含む。
【0090】
第2のセクション220には、任意に、P電極224と半絶縁性エピタキシー層290との間に配置されたキャパシタンスパッド228が含まれていてもよい。キャパシタンスパッド228は、P電極のキャパシタンスを減少させることにより、第2のセクションの光変調帯域幅を大きくすることができる。
【0091】
Nドープ層203a、203bおよびPドープ層206a、206bには、例えば、(Pドープ層にはベリリウムまたは亜鉛、Nドープ層にはケイ素またはスズをドープした)リン化インジウム、(Pドープ層には炭素、ベリリウムまたは亜鉛、Nドープ層にはケイ素またはテルルをドープした)ガリウムヒ素または(Pドープ層にはケイ素、Nドープ層にはテルルをドープした)ガリウムアンチモンなど、それぞれNドープ、Pドープされた半導体材料が含まれていてもよい。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態によれば、電気的絶縁セクション230と、第1のセクション210および第2のセクション220の一部は、半絶縁性エピタキシー層290で覆われている。半絶縁性エピタキシー層290は、屈折率がPドープ層206a、206bの屈折率に近い、すなわち屈折率間の差が例えば約0.01未満である電気的に絶縁性の材料、例えば鉄ドープリン化インジウムまたはルテニウムドープリン化インジウムを含む。従って、半絶縁性エピタキシー層290は、第1のセクション210と第2のセクション220との間を電気的に絶縁するとともに、光が光導波路内を第1のセクションから第2のセクションまで伝わる際の光損失を防止するために電気的絶縁セクション230内の光導波路205’の周囲と第1のセクション210および第2のセクション220内の光導波路205’の周囲とで屈折率を確実に整合させる。
【0093】
図2A図2Eに示す半導体装置の実施形態では、第1のセクション210のNドープ層203aと第2のセクション220のNドープ層203bとは、電気的絶縁セクション230のNドープ層ストリップ203c(「ストリップ」と称する)を介して単に物理的に接続されているだけである。特に、Nドープ層203a、203bおよびストリップ203cは、同じNドープ層203の一部である。
【0094】
ストリップは、Nドープ層203a、203bの間に実質的な電気的絶縁を与えるのに十分な薄さと狭さである。従って、N電極212、222は互いに実質的に絶縁されている。実際には、ストリップの厚さが約2μm未満であるとき、ストリップは十分に薄いとみなされる。また、実際には、ストリップの幅が約2μm未満であるとき、ストリップは十分に狭いとみなされる。
【0095】
図2B図2Eに示す実施形態では、第1のセクション210のPドープ層206aは、第2のセクション220のPドープ層206bから離され、実質的に絶縁されている。従って、P電極214、224は互いに実質的に絶縁されている。
【0096】
場合によっては、Pドープ層(206a、206b)を離さずにストリップを介して物理的に接続することも可能であり、その場合、ストリップは第1のセクション210のPドープ層206aと第2のセクション220のPドープ層206bとの間を実質的に絶縁するのに十分な薄さと狭さである。
【0097】
本明細書による半導体装置では、第1のセクションの一対の電極(212、214)は、第2のセクションの一対の電極(222、224)から実質的に電気的に絶縁されている。このため、第1のセクションと第2のセクションとを独立して駆動することが可能である。
【0098】
特に、本出願人は、第1のセクションのいずれかの電極と第2のセクションのいずれかの電極との間の電極間電気抵抗が約2000オームより大きいと、第1のセクション210と第2のセクション220との間に電気的クロストークがない、すなわち、第2のセクション220を駆動する信号が第1のセクション210に影響せず、逆もまたしかりであることを、実験的に示した。
【0099】
しかしながら、本出願人は、過剰なアクセス抵抗を回避するために、Nドープ層が薄くなりすぎないようにすべきであることを示した。アクセス抵抗は、接合の底部でのNドープ層203a、203bとの電気接触が光導波路205’の真下ではなく側面でなされた結果(図2D図2E参照)、導波路205’と電極212、222の位置との間にNドープ層203a、203bの抵抗寄与が存在する事実に由来する。
【0100】
本出願人は、Nドープ層203の最適な垂直方向の厚さは、第1のセクション210および第2のセクション220のNドープ層203a、203b間の十分に低いアクセス抵抗と十分に高い電気絶縁性との間のトレードオフとして選択可能であることを示した。
【0101】
非限定的な例として、ドーピングレベルが約1018cm-3のNドープInP材料で作られたNドープ層203の抵抗率は約0.002Ω.cmであり、絶縁セクション230は長さが約75μmであり、光導波路205’(および層ストリップ203c)は幅が約1.5μmであり、Nドープ層203は厚さが約1μmである。このため、Nドープ層203a、203b間の電極間抵抗(すなわち、Nドープ層ストリップ203cの抵抗)の値は、約1kΩになり得る。これは、Nドープ層203a、203bを実質的に絶縁するのに十分に高いと考えられる。
【0102】
一般に、NドープInP材料で作られたNドープ層203の抵抗率は、約0.001Ω.cm~約0.01Ω.cmの範囲になり得る。絶縁セクション230は、長さが25~100μmの間であってもよい。導波路の幅については、1~2.5μmの範囲にすることが可能である。Nドープ層の厚さは、0.5~3μmの範囲にすることが可能である。
【0103】
図2A図2Eに示す本開示の実施形態によれば、PIN接合は、Nドープ層203a、203bが基板201に面し、Pドープ層206a、206bが半導体装置200の基板201とは反対側に向くように配置されている。本明細書では、この配置を「通常配置」と称する。
【0104】
本明細書による半導体装置200の他の実施形態には、Pドープ層206a、206bが基板201に面し、Nドープ層203a、203bが半導体装置の基板201とは反対側に向く、逆に配置された縦方向のPIN接合が含まれていてもよい。この別の配置を、本明細書では「逆配置」と称する。例えば、逆配置では、第1のセクションおよび第2のセクションのNドープ層は物理的に離れていてもよく、第1のセクションおよび第2のセクションのPドープ層は、薄いPドープ層ストリップを介して接続されていてもよい。逆配置では、第1のセクションの電極も、第2のセクションの電極から絶縁されている。
【0105】
本発明の一般的な目的および技術的効果を変えることなく、2つの配置のいずれかを選択することができる。それぞれの配置は、例えば、ドープ層を作るために使用される材料に応じて、特定の利点を有する場合がある。
【0106】
一例として、PドープInPはNドープInPよりも抵抗率が高いため、逆配置では、基板201に近いドープ層間の電極間抵抗が通常配置よりも大きくなる場合がある。しかしながら、この場合、アクセス抵抗は通常配置の場合よりもはるかに高くなる。アクセス抵抗を低減するには、一般に通常配置が好ましい場合がある。
【0107】
図3A図3Cおよび図4A図4Cは、本明細書の一実施形態による半導体装置200を製造するための製造方法300を示す。特に、図3A図3Cおよび図4A図4Cは、本明細書の一実施形態による半導体装置の製造方法の異なる工程(a)~(j)を複数の断面図(A-A’、B-B’、C-C’、D-D’)で示している。A-A’断面図は、光の伝搬方向に沿った、半導体装置の断面図を示す。B-B’断面図は、電気的絶縁セクション230の断面図を示す。C-C’断面図およびD-D’断面図は、それぞれ第1のセクション210の断面図および第2のセクション220の断面図を示す。
【0108】
工程(a)では、半絶縁性基板201の上にPIN接合302を設ける。図3A~3図Cおよび図4A図4Cに示す実施形態によれば、PIN接合は、Nドープ層203、アンドープ活性層205およびPドープ層206の3層を重ねたスタックを含む縦方向のPIN接合302である。
【0109】
図3A図3Cおよび図4A図4Cに示す実施形態では、Nドープ層203が基板201に面し、Pドープ層206は基板とは反対側に向いている。1つ以上の実施形態では配置が逆であり、Pドープ層203が基板201に面し、Nドープ層206が基板とは反対側を向いている。
【0110】
また、工程(a)で使用される縦方向のPIN接合には、Pドープ層と接触するトップコンタクト層(図3A図3Cおよび図4A図4Cには示されていない)が含まれていてもよい。トップコンタクト層は、Pドープ層(206a、206b)と後述する工程(j)で堆積されるP電極(214、224)との間の電気接触を改善する。
【0111】
半絶縁性基板201には、鉄ドープリン化インジウムのような材料が含まれていてもよい。
【0112】
1つ以上の実施形態によれば、縦方向のPIN接合302は、例えば、バットジョイント技術、選択領域成長、量子井戸インターミキシングまたは量子井戸オフセット技術を使用して2つ以上の縦方向のPIN接合を並置することによって得られるものであってもよい。
【0113】
図3A図3Cおよび図4A図4Cに示す実施形態によれば、縦方向のPIN接合302は、光を放出するように構成された第1のPIN接合と、光を変調するように構成された第2のPIN接合とをバットジョイント技術で並置することで得られる。
【0114】
1つ以上の実施形態によれば、縦方向のPIN接合302の3つの層のそれぞれの組成および構造を、長手方向に変化させることが可能である。ここで、長手方向とは、半導体装置における光の伝搬に平行な方向として理解される。
【0115】
特に、アンドープ活性層205は、装置の複数のセクションにおいて異なる光学的機能を提供するために、長手方向に異なる構造で構造化されていてもよい。このような構造には、例えば、光を変調する目的と光を放出する目的とで異なるように最適化された多量子井戸を含むことが可能である。また、このような構造には、例えば分布帰還型レーザーを構成するために、光回折格子を含むことも可能である。
【0116】
1つ以上の実施形態によれば、半導体装置200によって放出される光のパワーを最適化するために、アンドープ活性層205には、所定の波長で主に吸収性である材料がレーザーセクション210に、同じ所定の波長で主に透明である材料が変調セクション220に含まれていてもよい。
【0117】
工程(b)では、PIN接合の3つのセクションすなわち、第1のセクション210(レーザーセクション)、第2のセクション(変調セクション)220および電気的絶縁セクション230を画定するために、第1のエッチング手順が適用される。エッチング手順には、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチングまたはウェットエッチングとドライエッチングとの組み合わせが含まれていてもよい。
【0118】
図3A図3Cおよび図4A図4Cに示す例において、第1のエッチング手順(工程b)には、第1のセクション210および第2のセクション220のそれぞれでPドープ層206a、206bの一部だけを残しつつ電気的絶縁領域230のPドープ層206を除去するように構成されたエッチング液によるウェットエッチングを含む。この例では、ウェットエッチングは、エッチング液がアンドープ活性層205に達したら材料の除去を停止するように構成されている。
【0119】
他の実施形態(図示せず)によれば、ウェットエッチングは、エッチング液がPドープ層206の中にあらかじめ配置されたストップエッチング層に到達したときに停止するように構成されている。従って、この場合、Pドープ層206の一部が電気的絶縁セクション230に残る。
【0120】
1つ以上の実施形態によれば、電気的絶縁セクション230と第1のセクション210および第2のセクション220との間に、A-A’方向に滑らかな斜面を提供するために、ウェットエッチングは一般に約30°~約40°の間、好ましくは約35°の滑らかなエッチング角度で行われる。
【0121】
1つ以上の実施形態によれば、PIN接合にトップコンタクト層が含まれる場合には、ウェットエッチングの前にドライエッチングを実施して、そのようなトップコンタクト層を選択的に除去してもよい。
【0122】
1つ以上の実施形態によれば、エッチング手順は、全体的にドライエッチングによってなされてアンドープ活性層205の上で停止してもよい。
【0123】
工程(c)では、酸化ケイ素導波路マスク380をPIN接合302上に選択的に堆積させ、光導波路205’の形状をあらかじめ画定する。非限定的な例として、マスクは、幅が約1μm~2.5μmの矩形であってもよく、マスクは、厚さが約400nm~1000nmであってもよい。
【0124】
好都合なことに、ウェットエッチングの場合に工程(b)で作られる光導波路205’がA-A’方向に沿った滑らかなエッチングの角度であることにより、電気的絶縁セクション230における導波路マスク380の連続性と完全性の達成が容易になる。
【0125】
工程(d)では、導波路マスク380によって予め画定された形状に沿ってアンドープ活性層205に光導波路205’をエッチングするために、3つの領域210、220、230にわたって均一なエッチング手順を適用することができる。均一なエッチングは、3つのセクション210、220、230の導波路マスク380で覆われていない部分にわたって均一な厚さの材料を除去するように構成される。
【0126】
本開示のいくつかの実施形態によれば、Pドープ層206が電気的絶縁性セクション230において先にエッチングされるのみで第1のセクション210および第2のセクション220ではエッチングされずに残る事実に起因して、工程(c)の後に得られる構造は厚さが不均一になり、電気的絶縁セクション230より第1のセクション210および第2のセクション220のほうが厚くなる。
【0127】
図3B図3C、工程(d)に見られるように、本出願人は、一方では、第1のセクション210および第2のセクション220の導波路マスク380で覆われていない部分において少なくともPドープ層206およびアンドープ活性層205を除去した後、他方では、電気的絶縁セクション230の導波路マスク380で覆われていないがゆえに基板201に到達する部分において少なくともアンドープ活性層205およびNドープ層203を除去した後に、均一なエッチング手順が同時に停止するように、3つのセクション210、220、230での厚さの不均一性を使用してもよいことを示している。
【0128】
工程(b)の後に電気的絶縁セクション230でPドープ層206が完全にはエッチングされない他の実施形態(図示せず)によれば、均一なエッチング手順はさらに、半絶縁性InP基板201を露出させるために、電気的絶縁セクション230と、導波路マスク380の外側において、(アンドープ活性層205およびNドープ層203に加えて)Pドープ層206の残りを除去するように構成されていてもよい。
【0129】
所定のエッチング時間経過後にエッチングを停止することによって、あるいは(例えば、レーザー干渉に基づく終点検出器を用いて)エッチングの状態をその場でモニタリングし、導波路マスク380で覆われていないすべてのセクション210、220、230からアンドープ活性層205が除去されたのを確認することによって、工程(d)の均一なエッチング手順で除去される材料の均一な厚さを制御してもよい。
【0130】
本開示のいくつかの実施形態によれば、図3C(d)の例に具体的に示されるように、光導波路205’の側壁が滑らかになるようにするために、均一なエッチングはさらに、第1のセクション210および第2のセクション220の導波路マスク380で覆われていない部分でも所定の厚さのNドープ層203が除去された後に停止するように構成されている。
【0131】
工程(e)では、電気的絶縁セクション230において、例えばドライエッチングで導波路マスク380を除去する。
【0132】
工程(f)では、半絶縁性エピタキシー層290のレイヤーを3つのセクション210、220、230の上に選択的に再成長させる。本出願人は、酸化ケイ素上に選択的な有機金属気相成長法(MOVPE)を用いて再成長を有利に行い得ることを示した。MOVPEの選択性は、半絶縁性エピタキシー層290が3つのセクション210、220、230の酸化ケイ素で覆われていない部分、すなわち導波路マスク380の工程(e)の後に残る部分で覆われていない部分でのみ成長することを意味する。
【0133】
従って、半絶縁性エピタキシー層290は、光導波路205’を電気的絶縁セクション230内に埋め込む。この技術によって、電気的絶縁セクション230における光導波路205’の実効屈折率の変動が最小限に抑えられる。
【0134】
図4A図4Cに示すように、工程(g)では、導波路マスク280の残りを、例えば酸化ケイ素の選択的化学エッチングによって、第1のセクション210および第2のセクション220から除去する。
【0135】
工程(g)の後、製造方法300は、第1のセクション210と第2のセクション220との間で異なっていてもよい。その結果、工程(g)の後、2つのセクション210、220におけるプロセスの理解を容易にするために、C-C’軸およびD-D’軸に沿った2つの異なる断面図が図4Cに示されている。
【0136】
任意に、工程(h)において、図4A図4Cに示すように、第2のセクション220のP電極の寄生キャパシタンスを減少させるために、厚いキャパシタンスパッド228を第2のセクション220上に堆積させる(図4C、D-D’断面を参照)。キャパシタンスの減少により、半導体装置200の第2のセクション220の光変調機能のための一層大きな光帯域幅が保証される。
【0137】
P電極の寄生キャパシタンスは、導電層(Nドープ層203b)上に配置された半絶縁性エピタキシー層290の上にP電極が配置され、それによってキャパシタンスを有するPIN接合が形成されるという事実に起因する場合がある。
【0138】
工程(i)では、図4Cに示すように、導波路の外側の領域において半絶縁性エピタキシー層290の一部が第1のセクション210および第2のセクション220においてエッチングされる。これによって、Nドープ層203a、203bを外部のドライバーに接続するために、Nドープ層203a、203bが露出され、Nドープ層203a、203bへのアクセスが与えられる。
【0139】
工程(j)では、N電極212、222が第1のセクション210および第2のセクション220のNドープ層203a、203b上に堆積され、P電極214、224がそれぞれ第1のセクション210および第2のセクション220のPドープ層206a、206b上に堆積される。電極は、例えば白金、チタン、金またはそれらの組み合わせなどの導電性材料を含む。
【0140】
図5は、本明細書において(b’)と称する、工程(b)の変形例を示す。変形工程(b’)において、第1のエッチング手順は、(電気的絶縁セクション230におけるPドープ層に加えて)第1のセクション210および第2のセクション220におけるPドープ層206の一部をさらに除去するように構成されてもよい。正確には、工程(b’)において、工程(c)において導波路マスクが堆積される領域を除いて、第1のセクション210および第2のセクション230の領域で選択的にエッチングが行われる。工程(b’)の後、一般に製造方法の他の工程が実行される。
【0141】
図6は、工程(a、b’、c、d、e、f、g、i、j)を含む変形製造方法で得られる例示的な半導体装置の図を示す。
【0142】
図6に示す実施形態によれば、工程(a,b’,c,d,e,f,g,i,j)を含む変形製造方法を実行した後、第1のセクション210および第2のセクション220の半絶縁性エピタキシャル層290の一部を、半絶縁性基板201に接触させることが可能である。従って、(主に、半絶縁性基板201とP電極214/224との間にPドープ層203a/203bの一部が存在することに起因する)P電極の寄生キャパシタンスは、例えばキャパシタンスパッドを必要とすることなく低減される(または無効にされる)。この場合、工程(h)を有利に回避することができる。
【0143】
以上、限られた数の実施形態に関して本発明を説明してきたが、本開示の利益を有する当業者であれば、本明細書に開示した本発明の意図から逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A-3C】
図4A-4C】
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半絶縁性基板(201)と、
光を放出するように構成された第1のセクション(210)と、
前記第1のセクション(210)によって放出された光を変調するように構成された少なくとも第2のセクション(220)と、
前記第1のセクション(210)に第1の駆動信号を印加し、前記第2のセクション(220)に第2の駆動信号を印加するように構成された電気ドライバー(100)と、を備える、変調された光を放出するための半導体装置(200)を含む半導体サブアセンブリ(10)であって、
前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)は、前記半絶縁性基板(201)上にモノリシック集積され、前記第1のセクション(210)から前記第2のセクション(220)に前記光を導くように構成された共通の光導波路(205’)を有し、
前記第1のセクション(210)は、前記半絶縁性基板(201)上に、第1の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層(203a)、第2のドープ層(206a)および前記光導波路(205’)を含み、
前記第1セクション(210)は、前記第1のドープ層(203a)に電気的に接続された第1の電極(212)と、前記第2のドープ層(206a)に電気的に接続された第2の電極(214)とをさらに含み、
前記第2のセクション(220)は、前記半絶縁性基板(201)上に第2の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層(203b)、第2のドープ層(206b)および前記光導波路(205’)を含み、
前記第2のセクション(220)は、前記第1のドープ層(203b)に電気的に接続された第1の電極(222)と、前記第2のドープ層(206b)に電気的に接続された第2の電極(224)とをさらに含み、
前記第1のセクション(210)の前記第1の電極(212)と前記第2のセクション(220)の前記第1の電極(222)との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第1のセクション(210)の前記第2の電極(214)と前記第2のセクション(220)の前記第2の電極(224)との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記電気ドライバー(100)は、前記第2のセクションを差動駆動構成で駆動するように構成され、前記第2の駆動信号が、前記第2のセクション(220)の前記電極(222, 224)に印加される差動電圧信号または差動電流信号である、半導体サブアセンブリ。
【請求項2】
前記第1のセクション(210)の前記第1のドープ層(203a)および前記第2のセクション(220)の前記第1のドープ層(203b)はNドープ層であり、
前記第1のセクション(210)の前記第2のドープ層(206a)および前記第2のセクション(220)の前記第2のドープ層(206b)はPドープ層である、請求項1に記載の半導体サブアセンブリ(10)。
【請求項3】
前記半導体装置(200)は、前記第2のセクション(210)によって変調された光を受けるように構成された、少なくとも第3のセクションをさらに備え、
前記第1のセクション(210)、前記第2のセクション(220)および前記少なくとも第3のセクションは、前記基板(201)上にモノリシック集積され、前記共通の光導波路(205’)を含み、
前記第3のセクションは、前記半絶縁性基板(201)上に第3の縦方向のPIN接合を形成する、第1のドープ層、第2のドープ層および前記光導波路(205’)を含み、
前記第3のセクションは、前記第1のドープ層および前記第2のドープ層にそれぞれ電気的に接続された第1の電極および第2の電極をさらに備え、
前記第2のセクション(220)の前記第1の電極(222)と前記第3のセクションの前記第1の電極との間の電気抵抗が約50オームより高く、
前記第2のセクション(220)の前記第2の電極(224)と前記第3のセクションの前記第2の電極との間の電気抵抗が約50オームより高い、請求項1に記載の半導体サブアセンブリ(10)。
【請求項4】
前記第2の駆動信号は、少なくとも1つの電圧変調または少なくとも1つの電流変調をさらに含む、請求項1に記載の半導体サブアセンブリ。
【請求項5】
前記電気ドライバー(100)は、前記第1のセクションを差動駆動構成で駆動するように構成され、前記第1の駆動信号は、前記第1のセクション(210)の前記電極(212、214)に印加される差動電圧または差動電流である、請求項1に記載の半導体サブアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の駆動信号は、少なくとも1つの電圧変調または少なくとも1つの電流変調をさらに含む、請求項1に記載の半導体サブアセンブリ。
【請求項7】
前記電気ドライバーはCMOSドライバーである、請求項1に記載の半導体サブアセンブリ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体サブアセンブリ(10)と、前記半導体装置(200)によって放出された光(20)を少なくとも1つの光学部品に結合するように構成された光結合手段と、を含む光モジュール。
【請求項9】
変調された光を放出するための半導体装置(200)を製造するための方法(300)であって、
(a)半絶縁性基板(201)の上に第1のドープ層(203)、前記第1のドープ層(203)の上にアンドープ活性層(205)および前記アンドープ活性層(205)の上に第2のドープ層(206)を含むPIN接合(302)を、前記基板(201)上に設け、
(b)前記第2のドープ層(206)を少なくとも部分的にエッチングして、第1のセクション(210)と少なくとも第2のセクション(220)との間に電気的絶縁セクション(230)を画定し、その際、
前記アンドープ活性層(205)はエッチングされずに残り、
前記第2のドープ層(206)は、前記第1のセクション(210)および前記第2のセクション(220)においてのみエッチングされずに残り
(c)前記第1のセクション(210)、前記少なくとも第2のセクション(220)および前記電気的絶縁セクション(230)を部分的に覆う導波路マスク(380)を堆積させ、
(d)前記第1のセクション(210)、前記少なくとも第2のセクション(220)および前記電気的絶縁セクション(230)の、前記導波路マスク(380)で覆われていない領域をエッチングして、
前記第1のドープ層(203)および前記アンドープ活性層(205)が、前記電気的絶縁セクション(230)の前記導波路マスク(380)で覆われていない領域において除去され、
前記第2のドープ層(206)および前記アンドープ活性層(205)が、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)の、前記導波路マスク(380)で覆われていない領域において除去され、
前記アンドープ活性層(205)の残りが光導波路(205’)を形成するようにして、
(e)前記電気的絶縁セクション(230)において前記導波路マスク(380)を除去し、
(f)前記電気的絶縁セクション(230)と、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)の、前記導波路マスク(380)で覆われていない領域とに、半絶縁性エピタキシー層(290)を設け、
(g)前記導波路マスク(380)を除去して、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)の前記第2のドープ層(206a、206b)を少なくとも部分的に露出させ、
(i)前記導波路の外側の領域において、前記少なくとも第2のセクション(220)および前記第1のセクション(210)の前記半絶縁性エピタキシー層(290)を少なくとも部分的に除去し、前記領域において、前記第1のセクション(210)および前記少なくとも第2のセクション(220)の、前記第1のドープ層(203a、203b)を露出させることを含む、方法。
【請求項10】
(j)前記第1のセクション(210)の前記第1のドープ層(203a)および前記第2のセクション(220)の前記第1のドープ層(203b)とそれぞれ接触する2つのN電極(212、222)を堆積させ、
前記第1のセクション(210)の前記第2のドープ層(206a)および前記第2のセクション(220)の前記第2のドープ層(206b)とそれぞれ接触する2つのP電極(214、224)を堆積させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(h)前記第2のセクション(220)の前記第2のドープ層(203b)と接触するキャパシタンスパッド(228)を堆積させることをさらに含み、前記少なくとも1つのキャパシタンスパッド(228)は、前記第2のセクション(224)の前記P電極の電気キャパシタンスを減少させるように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(b’)前記導波路の外側の少なくとも1つの領域において、前記第2のセクション(220)および前記第1のセクション(210)の、前記第2のドープ層(206)を少なくとも部分的に除去することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記半絶縁性基板(201)は、鉄ドープリン化インジウムを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記半絶縁性エピタキシー層(290)は、鉄ドープリン化インジウムまたはルテニウムドープリン化インジウムを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記アンドープ活性層(205)は多量子井戸を含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記多量子井戸は、三元化合物または四元化合物の半導体材料を含む、請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】