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特表2024-511168リチウム金属セルのサイクル性能向上のための固体電解質界面のin‐situ制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】リチウム金属セルのサイクル性能向上のための固体電解質界面のin‐situ制御
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240305BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240305BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240305BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240305BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0562
H01M4/134
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558793
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2022021677
(87)【国際公開番号】W WO2022204366
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/166,564
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500287732
【氏名又は名称】シオン・パワー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,ジャオホイ
(72)【発明者】
【氏名】スコーディリス-ケリー,チャリクリー
(72)【発明者】
【氏名】ムダリゲ,アクミーマナ アノマ
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,トレイシー アール
(72)【発明者】
【氏名】ミハイリク,ユーリー ブイ
(72)【発明者】
【氏名】クエロ-ミエレス,エニック アザリア
(72)【発明者】
【氏名】ベネガス、フアン ガブリエル
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029CJ16
5H029DJ17
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ08
5H029HJ09
5H029HJ18
5H029HJ19
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA09
5H050EA01
5H050GA18
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
本発明のいくつかの態様は、リチウム電池に関し、より具体的には、リチウム金属電池のサイクル性能を高めるための固体電解質界面のin‐situ制御に関する。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、無機材料(例えば、LiF、LiO、LiCO)リッチの、様々な有利な特性(例えば、改善されたアノード安定性など)を有する固体電解質界面(SEI)層を備える。いくつかの実施形態は、電気エネルギー貯蔵方法および電気化学セルの使用方法に関する。いくつかの場合、この方法は、セルへの異方性力の適用および/または化成電圧の印加、および無機リッチSEI層をin‐situで形成することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含むアノード、
フッ素化有機溶媒を含む電解質、
カソード、および
アノードと電解質との間に配置された固体電解質界面層
を備え、
前記固体電解質界面層が、LiFおよびLiCOを含む無機材料を含み、
前記固体電解質界面層において、前記電解質に隣接する酸素原子に対するフッ素原子の第1の比が、前記アノードに隣接する酸素原子に対するフッ素原子の第2の比よりも高い、電気化学セル。
【請求項2】
アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含むアノード、
フッ素化有機溶媒を含む電解質、
カソード、および
アノードと電解質との間に配置された固体電解質界面層
を備え、
前記固体電解質界面層が、LiFを含み、かつ
(1)0.001GPa以上5GPa以下の硬度、および/または
(2)1%以上90%以下の気孔率
を有し、
電気化学セルが、形成後5回目の充放電サイクルにおける放電容量に対して、100サイクルの充放電後に10%以下の放電容量の減少を示す、電気化学セル。
【請求項3】
アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含むアノード、
フッ素化有機溶媒を含む電解質、
カソード、および
アノードと電解質との間に配置された固体電解質界面層
を備え、
前記固体電解質界面層が、LiFを含み、かつ
(1)0.001GPa以上5GPa以下の硬度、および/または
(2)1%以上90%以下の気孔率
を有し、
電気化学セルが、形成後5回目の充放電サイクルにおける放電抵抗に対して、100サイクルの充放電後に10%以下の放電抵抗の増加を示す、電気化学セル。
【請求項4】
アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含み、表面を有するアノード、
カソード、および
アノードとカソードとの間に配置されたフッ素化有機溶媒を含む電解質
を備え、
前記アノードの前記表面に異方性力を加える工程、
前記セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に化成電圧を印加する工程、および
前記アノードの前記表面に隣接する固体電解質界面層を形成する工程
を実行することを含み、
前記化成電圧が4.35Vより大きく、
前記固体電解質界面層が、LiFおよびLiCOを含む無機材料を含む、電気エネルギーを貯蔵および使用する方法。
【請求項5】
LiFを含む前記固体電解質界面層が、電気化学セルの充電および/または放電中に、in situで形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項6】
LiFを含む前記固体電解質界面層の形成が、電気化学セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、前記アノードの表面に加えられる異方性力の適用に関連する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項7】
前記LiFが、前記固体電解質界面層に少なくとも10重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項8】
前記固体電解質界面層が、前記固体電解質界面層に少なくとも10重量%の量のLiOを更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項9】
前記固体電解質界面層のLiFの少なくとも5%が結晶形態である、請求項1~8のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項10】
前記LiOの少なくとも5%が結晶形態である、請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項11】
前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータを更に備え、前記セパレータは電解質が存在することができる孔を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項12】
前記セパレータに隣接する前記固体電解質界面層が、10nm以上200nm以下のサイズを有する粒子を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項13】
LiFおよびLiCOを含む前記固体電解質界面層が、電気化学セルの充電および/または放電中に、in situで形成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項14】
LiFおよびLiCOを含む前記固体電解質界面層のin situでの形成が、電気化学セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に印加される化成電圧と、電気化学セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、アノードの表面に加えられる異方性力の適用との組み合わせに関連する、請求項1~13のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項15】
LiFおよびLiCOを含む前記固体電解質界面層におけるLiCOの形成が、電気化学セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に印加される化成電圧と関連する、請求項1~14のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項16】
前記化成電圧が4.35Vより大きく4.7V以下、または4.4Vより大きく4.9V以下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項17】
前記化成電圧は、電気化学セルの充放電の少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、または少なくとも3サイクルにわたって印加され、前記化成電圧は、合計で少なくとも10分間印加される、請求項1~16のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項18】
前記化成電圧が、電気化学セルの充放電の3サイクル以下にわたって印加される、請求項1~17のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項19】
LiFおよびLiCOを含む前記固体電解質界面層の、LiCOを含む固体電解質界面層の一部がex situで形成され、LiCOを含む前記固体電解質界面層の一部が、電気化学セルの組み立て前にアノードを予備不動態化することによって形成される、請求項1~18のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項20】
前記LiCOが、前記アノードの表面でのCOとリチウム金属との反応によって形成される、請求項1~19のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項21】
前記固体電解質界面層が、混合されたLiFおよびLiCOを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項22】
前記LiFが、前記固体電解質界面層に少なくとも10重量%の量で存在する、請求項1~21のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項23】
前記LiCOが、前記固体電解質界面層に少なくとも10重量%の量で存在する、請求項1~22のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項24】
前記固体電解質界面層が、0.001GPa以上5GPa以下の硬度を有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項25】
前記固体電解質界面層が、1%以上90%以下の気孔率を有する、請求項1~24のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項26】
前記固体電解質界面層が、リチウムアルコキシド、酸化リチウム、リチウム塩、および電解質の分解生成物の1つ以上を更に含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項27】
前記電解質が溶媒を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項28】
前記溶媒が、環状および直鎖状のフッ素化カーボネート、フッ素化エーテル、およびフッ素化エステルから選択される少なくとも1つのフッ素化有機溶媒を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項29】
前記溶媒が、フルオロエチレンカーボネートおよび/またはジフルオロエチレンカーボネートから選択される少なくとも1つのフッ素化有機溶媒を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項30】
前記溶媒がフッ素化有機溶媒またはフッ素化有機溶媒の混合物である、請求項1~29のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項31】
前記有機溶媒が少なくとも1つの非フッ素化有機溶媒を含み、前記少なくとも1つの非フッ素化有機溶媒がエステル系溶媒を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項32】
フッ素化有機溶媒を含む前記電解質が、環状および直鎖状カーボネートを含む少なくとも1つの非フッ素化有機溶媒を更に含み、前記環状および直鎖状カーボネートが、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジメチルの1つ以上を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項33】
前記フッ素化有機溶媒が、総電解質重量の14重量%以上88重量%以下の量で存在する、請求項1~32のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項34】
フッ素化有機溶媒を含む前記電解質が少なくとも1つの不動態化剤を更に含み、前記不動態化剤がシュウ酸塩を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項35】
前記不動態化剤が、(オキサラト)ボレートおよび/またはジフルオロ(オキサラト)ボレートを含むシュウ酸塩を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項36】
前記電解質がリチウム塩を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項37】
前記カソードが、電気活性遷移金属酸化物およびカルコゲン化物、電気活性伝導性ポリマー、および/または電気活性硫黄含有材料、およびそれらの組み合わせを含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項38】
前記カソードがリチウム‐インターカレーションカソードである、請求項1~37のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項39】
電気活性遷移金属カルコゲン化物を含む前記カソードが、ニッケル、マンガン、コバルト、およびバナジウムの電気活性酸化物、および鉄の電気活性硫化物から成る群から選択される材料を含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項40】
前記固体電解質界面層の厚さにわたるフッ素原子の酸素原子に対する平均比に基づいて、前記固体電解質界面層において、前記電解質に隣接するフッ素原子の酸素原子に対する第1の比が、前記アノードに隣接するフッ素原子の酸素原子に対する第2の比よりも高い、請求項1~39のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項41】
前記固体電解質界面層の厚さにわたるフッ素原子の酸素原子に対する最大比に基づいて、前記固体電解質界面層において、前記電解質に隣接するフッ素原子の酸素原子に対する第1の比が、前記アノードに隣接するフッ素原子の酸素原子に対する第2の比よりも高い、請求項1~40のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項42】
前記固体電解質界面層がナノ結晶LiFを含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項43】
前記固体電解質界面層がナノ結晶LiOを含む、請求項1~42のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項44】
前記固体電解質界面層が、1:5以上2:1以下の重量比でLiFおよびLiOを含む、請求項1~43のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項45】
前記固体電解質界面層が、10nm以上75μm以下の厚さを有する、請求項1~44のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項46】
前記固体電解質界面層が、1g/cm以上3g/cm以下の嵩密度を有する、請求項1~45のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【請求項47】
前記固体電解質界面層が、5nm以上40nm以下のサイズを有するナノ結晶LiFおよび/またはナノ結晶LiOを含む、請求項1~46のいずれか1項に記載の電気化学セルまたは方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してリチウム電池に関し、より具体的には、リチウム金属電池のサイクル性能を向上させるための固体電解質界面のin‐situ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム含有アノードを有する高エネルギー密度充電式電池の開発に大きな関心が寄せられている。このようなセルにおいて、現在の電解質、特に低温用途に使用される電解質は、典型的には、リチウム塩および炭酸塩電解質の溶液をベースとしている。特に、リチウム金属系アノードは、典型的な電解質に対して非常に反応性が高く、その結果、セルの充放電時にこれらの電解質の存在下で急速に劣化する。その結果、このような電解質を用いたリチウム金属系充電式電池は、概して限られたサイクル寿命を示す。従って、サイクル寿命を増加させるための物品および方法、ならびに/または他の改良が有益である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、概してリチウム電池に関し、より具体的には、リチウム金属電池の性能向上のための固体電解質界面のin‐situ制御に関する。本明細書中に開示される主題は、いくつかの場合、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替的な解決策、および/または1つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる用途を含む。
【0004】
いくつかの態様において、電気化学セルが提供される。
【0005】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金またはそれらの組み合わせを含むアノード、フッ素化有機溶媒を含む電解質、カソード、およびアノードと電解質との間に配置された固体電解質界面層(solid electrolyte interphase layer)を備え、固体電解質界面層が、LiFおよびLiCOを含む無機材料を含み、電解質に隣接する酸素原子に対するフッ素原子の第1の比が、固体電解質界面層におけるアノードに隣接する酸素原子に対するフッ素原子の第2の比よりも高い。
【0006】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含むアノード;フッ素化有機溶媒を含む電解質;カソード;およびカソードと電解質との間に配置された固体電解質界面層を備え、固体電解質界面層は、LiFを含み、(1)0.001GPa以上5GPa以下の硬度;および/または(2)1%以上90%以下の気孔率;を有し、電気化学セルが、形成後5回目の充放電サイクルにおける放電容量に対して、100サイクルの充放電後に10%以下の放電容量の減少を示す。
【0007】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含むアノード;フッ素化有機溶媒を含む電解質;カソード;およびカソードと電解質との間に配置された固体電解質界面層を備え、固体電解質界面層は、LiFを含み、(1)0.001GPa以上5GPa以下の硬度;および/または(2)1%以上90%以下の気孔率;を有し、電気化学セルが、形成後5回目の充放電サイクルにおける放電抵抗に対して、100サイクルの充放電後に10%以下の放電抵抗の増加を示す。
【0008】
いくつかの態様において、電気エネルギーを貯蔵および使用する方法が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態において、方法は、アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含むアノードであって、表面を有するアノードと;カカソードと;カソードとアノードとの間に配置されたフッ素化有機溶媒を含む電解質と;を備える電気化学セルにおいて、アノードの表面に異方性力を加える工程と;セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に化成電圧(formation voltage)を印加する工程と;アノードの表面に隣接する固体電解質界面層を形成する工程とを実行することを含み、化成電圧が4.35Vより大きく;固体電解質界面層は、LiFおよびLiCOを含む無機材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の非限定的な実施形態は、概略的であり、一定の縮尺で示すことを意図されていない添付の図面を参照して一例として説明する。図面において、図示の同一またはほぼ同一の各構成要素は、通常、単一の数字で表される。明瞭にするために、必ずしもすべての構成要素は、すべての図においてラベル付け、また図は、当業者が本発明を理解できるようにする必要がない場合に示された本発明の各実施形態の全ての構成要素である。
図1】様々な実施形態に従った、固体電解質界面(SEI)層を含む電気化学セルの断面概略図である。
図2】いくつかの実施形態に従った、LiFを含む固体電解質界面層の断面概略図である。
図3A】様々な実施形態に従った、無機材料(例えば、LiFおよび/またはLiCO)の実質的に不均一な分布を含む固体電解質界面(SEI)層の断面概略図である。
図3B】様々な実施形態に従った、無機材料(例えば、LiFおよび/またはLiCO)の実質的に均質な分布を含む固体電解質界面(SEI)層の断面概略図である。
図4】いくつかの実施形態に従った、LiFリッチSEI層を含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図5】いくつかの実施形態に従った、LiFリッチSEI層を含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図6】いくつかの実施形態に従った、LiFリッチSEI層を含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図7】いくつかの実施形態に従った、LiFリッチSEI層を含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図8A】いくつかの実施形態に従った、LiFリッチSEI層を含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図8B】いくつかの実施形態に従った、図8Aからの電気化学セルの5分間放電抵抗を示すグラフである。
図9】いくつかの実施形態に従った、LiFリッチSEI層を有する電気化学セルのセルサイクル寿命と、LiF含有SEI層を有さない電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図10】いくつかの実施形態に従った、圧力を加えず、LiFリッチSEI層を有する電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加えず、かつLiFリッチSEI層なしの電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図11】いくつかの実施形態に従った、圧力を加え、かつLiFリッチSEI層を有する電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加え、かつLiFリッチSEI層を有しない電気化学セルのセルサイクル寿命との比較を示すグラフである。
図12A】いくつかの実施形態に従った、異なる化成電圧で形成された無機リッチSEI層を含む電気化学セルのセルサイクル寿命を示すグラフである。
図12B】いくつかの実施形態に従った、図12Aの電気化学セルの5分間放電抵抗を示すグラフである。
図13】いくつかの実施形態に従った、LiBOBの存在下、様々な化成電圧でサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命を示すグラフである。
図14】いくつかの実施形態に従った、比較的高いフルオロエチレンカーボネート(FEC)含有量を含み、様々な化成電圧でサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命を示すグラフである。
図15】いくつかの実施形態に従った、高いフルオロエチレンカーボネート(FEC)含有量およびLiBOBを含み、様々な化成電圧でサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命を示すグラフである。
図16】いくつかの実施形態に従った、室温で様々な化成電圧でサイクルを行った、アセテート系溶媒を含む電気化学セルのセルサイクル寿命を示すグラフである。
図17】いくつかの実施形態に従った、0℃で様々な化成電圧でサイクルを行った、アセテート系溶媒を含む電気化学セルのセルサイクル寿命を示すグラフである。
図18】いくつかの実施形態に従った、LiFSIを含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図19】いくつかの実施形態に従った、LiFSIを含み、より高含有量のフルオロエチレンカーボネート(FEC)の存在下で、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命と、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのセルサイクル寿命の比較を示すグラフである。
図20A】いくつかの実施形態に従った、アノードとセパレータとの間に形成されたSEI層の50μmのスケールバーのSEM画像である。
図20B】いくつかの実施形態に従った、図20AからのSEI層のEDSマッピングである。
図20C】いくつかの実施形態に従った、図20Aからのセパレータに隣接するSEI層の500nmのスケールバーの高倍率SEM画像である。
図21】いくつかの実施形態に従った、SEI層の5μmのスケールバーのSEM/EDSライン走査画像である。
図22A】いくつかの実施形態に従った、SEI層中のフッ素含有量(F 1s)のX線光電子分光法(XPS)グラフである。
図22B】いくつかの実施形態に従った、SEI層中のリチウム含有量(Li 1s)のXPSグラフである。
図22C】いくつかの実施形態に従った、SEI層中の炭素含有量(C 1s)のXPSグラフである。
図23】いくつかの実施形態に従った、SEI層の結晶化度を特徴付けるX線回折(XRD)スペクトルである。
図24】いくつかの実施形態に従った、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのサイクル性能と、圧力を加えずにサイクルを行ったセルのサイクル性能との比較を示す図である。
図25】いくつかの実施形態に従った、フッ素化溶媒を含まず、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのSEM/EDSライン走査である。
図26】いくつかの実施形態に従った、フッ素化溶媒を含まず、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのSEM/EDSライン走査である。
図27】いくつかの実施形態に従った、フッ素化溶媒を含み、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セルのSEM/EDSライン走査である。
図28】いくつかの実施形態に従った、フッ素化溶媒を含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セルのSEM/EDSライン走査である。
図29】いくつかの実施形態に従った、フッ素化溶媒を含む、または含まず、圧力を加えてサイクルを行ったセルの残留Liのパーセント(%)を示すグラフである。
図30】いくつかの実施形態に従った、フッ素化溶媒を含む、または含まず、圧力を加えてサイクルを行ったセルのサイクルの関数としての放電容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のいくつかの態様は、リチウム電池用の電気化学セルに関する。いくつかの実施形態において、電気化学セルは、例えば、アノードと電解質との間の相互作用(例えば、反応)の結果として、アノードと電解質との界面に形成される安定な固体電解質界面(SEI)層を備える。固体電解質界面層は、有利には、例えばLiFおよび/またはLiCOなどの、電気化学セルの性能を向上させる特定の無機材料を相当量含んでもよい。例えば、固体電解質界面層は、サイクル中のアノードの安定性の向上(またはアノードの劣化の低減)、典型的な電解質とリチウム金属アノードとの間の適合性の向上、および/またはセルのサイクル寿命の向上に役立つことが可能である。
【0012】
本発明のいくつかの態様は、特定の無機材料リッチの安定なSEI層を含む電気化学セルを形成および使用する方法に関する。例えば、充放電中に電気化学セルへの異方性力の適用および/または高い化成電圧の印加により、無機材料リッチで、セル全体の性能を向上させる制御されたSEI層のin‐situでの形成につながる可能性がある。例えば、セルは、改善された性能、例えば、放電抵抗のより遅い成長、制御されたSEI成長、充放電中のセル分極の抑制、より長いサイクル寿命、および/または改善された低温性能を示すことが可能である。
【0013】
いくつかの実施形態において、電気化学セルが本明細書中に提供される。いくつかのそのような実施形態において、電気化学セルは、第1の電極(例えば、アノード)と、フッ素化有機溶媒を含む電解質と、第2の電極(例えば、カソード)と、第1の電極(例えば、アノード)と電解質との間に配置された固体電解質界面層とを備える。例えば、図1は、そのような実施形態を示す。図示されるように、電気化学セル10は、アノード12と、電解質14と、カソード16と、アノード12と電解質14との間に配置された固体電解質界面層18とを備える。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、非固体電解質を含んでもよい多孔質セパレータ材料を含む。例えば、電解質14は、多孔質セパレータに含浸されてもよい。本明細書中で使用されるように、非固体電解質は、静的なせん断応力に耐えることができず、せん断応力が加えられると、非固体が継続的かつ永久的な歪みを経験する材料を指す場合がある。非固体の例としては、例えば、液体、変形可能なゲルなどが挙げられる。
【0014】
セパレータが存在するいくつかの実施形態において、セパレータは、第1の電極(例えば、アノード)と第2の電極(例えば、カソード)との間に配置されてよく、電解質が存在することができる孔を含む。いくつかのそのような実施形態において、固体電解質界面層は、第1の電極(例えば、アノード)と、電解質で満たされた孔を含むセパレータとの間に配置される。いくつかの実施形態において、アノードは、アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含む。アノード活物質とは、アノードに関連する任意の電気化学的に活性な種を指す。
【0015】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、アノードの安定性を有利に増加させ、それによって電気化学セルのサイクル寿命を増加させることができる1つ以上の無機材料を含む。このような無機材料の非限定的な例としては、これらに限定されないが、LiF、LiCO、LiOなどが挙げられる。いくつかのそのような実施形態において、固体電解質界面層における1つ以上の無機材料の形成は、より詳細に後述されるように、電解質の分解および/または電解質とアノート活物質との相互作用に起因する可能性がある。
【0016】
いくつかの実施形態では、固体電解質界面層はLiFを含む。図2は、いくつかの実施形態による、LiFを含む固体電解質界面層を備える電気化学セル(例えば、図1の電気化学セル10)の一部100の概略断面図である。図示されるように、厚さ19を有するLiFを含む固体電解質界面層18は、アノード12の一部と電解質14の一部との間に配置される。いくつかの実施形態では、固体電解質界面層はLiFリッチであり、例えば、LiFが固体電解質界面層中に比較的高配合量で存在し、および/または固体電解質界面層中の他の無機材料と比べて比較的高配合量で存在する。図2にはLiFのみが示されているが、より詳細に後述されるように、他の無機材料(例えば、LiO)も固体電解質界面層中に存在してもよいことに留意すべきである。
【0017】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、リチウム‐硫黄電気化学セル、リチウムイオン電気化学セル、リチウム金属リチウムイオン電気化学セル、インターカレート型リチウム金属酸化物電気化学セル、またはインターカレート型リン酸リチウム金属電気化学セルなどの、リチウム系の電気化学セルであってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、固体電解質界面層は、LiFおよびLiCOを含む無機材料を含む。図3Aは、いくつかの実施形態による、LiFおよびLiCOを含む固体電解質界面層を含む電気化学セル(例えば、図1の電気化学セル10)の一部200の概略断面図である。図3Aに示すように、混合されたLiFおよびLiCOを含む固体電解質界面層118は、アノード12の一部と電解質14の一部との間に配置される。いくつかの実施形態では、固体電解質界面層は、LiFリッチおよびLiCOリッチの両方であってもよく、例えば、LiFおよびLiCOのそれぞれが、固体電解質界面層中に比較的高い配合量で存在し、および/または固体電解質界面層中の特定の他の無機材料の存在に比べて比較的高い配合量で存在する。無機材料(例えば、LiF、LiCO)は、本明細書中に記載される様々な量のいずれかで存在してもよい。いくらかの態様において、固体電解質界面層は、これらに限定されないが、リチウムアルコキシド、酸化リチウム、リチウム塩、および電解質の他の分解生成物などの、1つ以上の無機材料を更に含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、様々な無機材料および/または原子種の実質的に不均一な分布を含む。例えば、一組の実施形態では、固体電解質界面層において、電解質に隣接する(またはアノードなどの電極に対向する側の)酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電極(例えば、アノード)に隣接する酸素原子に対するフッ素原子の第2の比よりも高い。再び図3Aを参照すると、固体電解質界面層118中のLiCOおよびLiF種は、固体電解質界面層118の厚さ119にわたって固体電解質界面層118内に実質的に均一に分布していない。むしろ、図3Aでは、実質的により高い配合量のLiF種が、電解質14に隣接する固体電解質界面層の表面またはその近傍に局在している。従って、固体電解質界面層の厚さ119にわたって、固体電解質界面層118において、電解質14に隣接する酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、アノード12に隣接する酸素原子に対するフッ素原子の第2の比よりも高い。LiFおよびLiCOに加えて、場合によっては、付加的な無機材料(例えば、LiO、リチウムアルコキシドなど)も存在してもよく、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の比に寄与してもよいと解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、フッ素含有塩および/または添加剤(例えば、LixPFy、LixPOyFzなど)の存在に関連する比較的少量のフッ素含有無機材料を含んでもよい。
【0020】
フッ素原子および酸素原子が固体電解質界面層の厚さにわたって実質的に均一に分布していないいくつかの実施形態において、固体電解質界面層全体にわたる酸素原子に対するフッ素原子の平均比に比べて、固体電解質界面層の厚さの断面内の任意の所定の点における酸素原子に対するフッ素原子の比(フッ素/酸素)は、少なくとも25%(例えば、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%など)変化する。例えば、再び図3Aを参照すると、固体電解質界面層118の断面121の任意の点A(例えば、電解質に隣接する点)における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比、または任意の点B(例えば、アノードに隣接する点)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、固体電解質界面層118全体の酸素原子に対するフッ素原子の平均比と比較して少なくとも25%変化する。例示的な計算として、固体電解質界面層の、酸素原子に対するフッ素原子の平均比が1であり、固体電解質層の厚さを横切る断面内の任意の点(例えば、図3Bの点AまたはB)が、0.75以下または1.25以上の比を有する場合、その固体電解質界面層は、実質的に不活性であると考えられる、図3Bの点AまたはB)が0.75以下または1.25以上の比を有する場合、その固体電解質界面層は、固体電解質界面層中のフッ素原子および酸素原子の平均比に基づいて、固体電解質界面層の厚さにわたってフッ素原子および酸素原子の実質的に不均一な分布を有すると考えられる。
【0021】
いくつかの実施形態において、固体電解質層の厚さにわたって測定された、固体電解質界面層の一方の側(例えば、電解質に隣接する)における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、固体電解質界面層の別の側(例えば、アノードに隣接する)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比よりも高い。いくつかのそのような実施形態において、固体電解質界面層の厚さの断面内の固体電解質界面層の一方の側(例えば、電解質に隣接する、図3Aの点Aなど)の点における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、固体電解質界面層の別の側(例えば、アノードに隣接する、図3Aの点Bなど)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比よりも実質的に高い。例えば、第1の比(例えば、図3Aの点A)は、第2の比(例えば、図3Aの点B)よりも少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも300%高くてもよい。いくつかの実施形態において、第1の比(例えば、図3Aの点A)は、第2の比(例えば、図3Aの点B)よりも400%以下、300%以下、200%以下、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、または50%以下高い。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも25%、400%以下)。他の範囲も可能である。
【0022】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層の厚さにわたって測定された、固体電解質界面層の一方の側(例えば、図3Aの点Aなどの電解質に隣接する点)における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の平均比よりも高い。例えば、第1の比(例えば、図3Aの点A)は、平均比よりも少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも300%高くてもよい。いくつかの実施形態では、第1の比(例えば、図3Aの点A)は、平均比より400%以下、300%以下、200%以下、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、または60%以下高い。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも25%、400%以下)。他の範囲も可能である。
【0023】
追加的にまたは代替的に、いくつかの実施形態において、固体電解質界面層の厚さの断面内のアノードに隣接する点(例えば、図3Aの点B)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の平均比よりも実質的に小さい。例えば、アノードに隣接する点における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、固体電解質界面層内の酸素原子に対するフッ素原子の平均比よりも少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%小さい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層の厚さの断面内のアノードに隣接する点(例えば、図3Aの点B)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、固体電解質界面層内の酸素原子に対するフッ素原子の平均比よりも100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、または60%以下小さい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、25%以上100%以下)。他の範囲も可能である。
【0024】
固体電解質界面層内および固体電解質界面層の任意の断面内のフッ素原子および酸素原子の量は、走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDXまたはEDS)技術の組み合わせを使用して測定してもよい。例えば、以下の手順を実行することができる。フッ素原子と酸素原子の量を測定するために、アノード/SEI層/セパレータのスタック、またはアノード/SEIおよびSEI/セパレータを、サイクル寿命の様々な段階にあるセルから回収してもよい。回収されたアノード/SEI層/セパレータのスタックは、イオンミリング加工して(ion-milled)平滑な断面を生成し、次いでSEM/EDSによって分析してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面に比較的近い位置(例えば、図3Aの点A)に関連する。例えば、いくつかの実施形態において、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面(例えば、図3Aの表面123)から離れた固体電解質界面層の厚さ(例えば、図3AのSEI層118の厚さ119)の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下の位置に存在する。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面から離れた固体電解質界面層の厚さの0%以上、1%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上である位置に関連する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0%以上、50%以下)。他の範囲も可能である。一組の実施形態において、酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面に直接隣接して(例えば、接触して)配置される。
【0026】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、電解質の表面から更に比較的離れた(またはアノードの表面に比較的近い)位置(例えば、図3Aの点B)に関連する。例えば、いくつかの実施形態において、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、電解質の表面(例えば、図3Aの表面123)から離れた固体電解質界面層の厚さ(例えば、図3AのSEI層118の厚さ119)の100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、または60%以下である位置に存在する。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、電解質の表面から離れた固体電解質界面層の厚さの50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上である位置に関連する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、50%以上100%以下)。他の範囲も可能である。
【0027】
例示的な計算として、SEI層が500nmの厚さを有し、酸素原子に対するフッ素原子の第1の比が、電解質の表面から離れた厚さの10%以下であるSEI層内の位置(例えば、図3Aの点A)に関連し、酸素原子に対するフッ素原子の第2の比が、電解質の表面から離れた厚さの60%以上であるSEI層内の位置(例えば、図3Bの点B)に関連する場合、酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面から50nm以下離れている位置に関連しており、酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、電解質の表面から300nm以上離れている位置に関連している。更に、SEI層が1の酸素原子に対するフッ素原子の平均比を有し、酸素原子に対するフッ素原子の第1の比が平均比よりも少なくとも50重量%高く、酸素原子に対するフッ素原子の第2の比が平均比よりも少なくとも50重量%小さい場合、酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は少なくとも1.5であり、酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は0.5以下である。
【0028】
フッ素原子および酸素原子が固体電解質界面層の厚さにわたって実質的に均一に分布していないいくつかの実施形態において、固体電解質界面層の厚さの断面内の任意の所定の点における酸素原子に対するフッ素原子の比は、固体電解質界面層内の酸素原子に対するフッ素原子の最大比から、固体電解質界面層の厚さの断面内の任意の所定の点において、50%以上(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上)変化する。例えば、再び図3Aを参照すると、固体電解質界面層118の断面121の任意の点A(例えば、電解質に隣接する点)における酸素原子に対するフッ素原子の比、または任意の点B(例えば、アノードに隣接する点)における酸素原子に対するフッ素原子の比は、固体電解質界面層118内の酸素原子に対するフッ素原子の最大比に比べて50%以上変化する。例示的な計算として、固体電解質界面層が、酸素原子に対するフッ素原子の最大比が1であり、固体電解質界面層の厚さにわたる断面(例えば、断面121)内の任意の点(例えば、図3Aの点Aまたは点B)が、0.5以下の比を有する場合、その固体電解質界面層は、実質的に不均一であると考えられる、が0.5以下の比を有する場合、その固体電解質界面層は、固体電解質界面層中のフッ素原子および酸素原子の最大比に基づいて、固体電解質界面層の厚さにわたってフッ素原子および酸素原子の実質的に不均一な分布を有すると考えられる。
【0029】
いくつかの実施形態において、電解質の表面に比較的近く、固体電解質界面層の厚さの断面内にある特定の点における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面から比較的離れている点における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比と比較して、酸素原子に対するフッ素原子の最大比より変化が実質的に小さい。例えば、再び図3Aを参照すると、電解質14の表面に比較的近く、固体電解質界面層118の厚さ119の断面内の特定の点(例えば、点A)における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面から比較的離れている特定の点(例えば、点B)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比と比較して、固体電解質界面層118における酸素原子に対するフッ素原子の最大比より変化が実質的に小さい。例えば、いくつかの実施形態では、電解質の表面に比較的近い特定の点(例えば、点A)における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面から更に比較的離れた特定の点(例えば、点B)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比と比較して、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の最大比より少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%変化が小さい。いくつかの実施形態において、電解質の表面に比較的近い特定の点(例えば、点A)における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、電解質の表面から比較的離れている特定の点(例えば、点B)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比と比較して、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の最大比より99%以下、90%以下、70%以下、50%以下、30%以下、または20%以下変化が小さい。上記の範囲の組み合わせが可能である(例えば、少なくとも10%、99%以下)。他の範囲も可能である。
【0030】
いくつかの実施形態において、電解質の表面に比較的近く、固体電解質界面層の厚さの断面内にある特定の点(例えば、図3Aの点A)における酸素原子に対するフッ素原子の第1の比は、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の最大比の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上である値を有してもよい。いくつかの実施形態において、電解質の表面に比較的近く、固体電解質界面層の厚さの断面内にある特定の点(例えば、、図3Aの点A)は、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の最大比の100%以下、99%以下、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、または60%以下である値を有してもよい。上記の値の組み合わせも可能である(例えば、50%以上、100%以下)。他の値も可能である。一組の実施形態において、電解質に隣接して(例えば、直接隣接して)位置する酸素原子に対するフッ素原子の第1の比(例えば、図3Aの点A)は、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の最大比である。
【0031】
いくつかの実施形態において、電解質の表面から比較的離れ(またはアノードの表面に比較的近く)、固体電解質界面層の厚さの断面内にある特定の点(例えば、図3Aの点B)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の最大比の1%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、または45%以上の値を有してもよい。いくつかの実施形態において、特定の点(例えば、電解質の表面に対して相対的に離れ(またはアノードの表面に比較的近く)、固体電解質界面層の厚さの断面内にある特定の点(例えば、図3Aの点B)における酸素原子に対するフッ素原子の第2の比は、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の最大比の50%以下、45%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下の値を有してもよい。上記の値の組み合わせも可能である(例えば、1%以上50%以下)。その他の値も可能である。
【0032】
固体電解質界面層の断面内のフッ素原子と酸素原子および/またはLiFとLiCO(および他の酸素含有無機材料、例えばLiO)の量および比(例えば、最大比、平均比、任意の点における比)は、走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDXまたはEDS)技術の組み合わせを使用して測定してもよい。酸素原子に対するフッ素原子、および/またはLiCO(および他の酸素含有無機材料、例えば、LiO)に対するLiFの特定の比(例えば、第1の比、第2の比など)を含む位置と、電解質の表面および/またはアノードの表面との間の距離は、いくつかの例では、電気化学セルから回収されたイオンミリング加工したSEI断面に対してSEM/EDSを実施することによって決定することができる。
【0033】
図3Aは、フッ素原子および酸素原子が固体電解質界面層の厚さにわたって実質的に均一に分布していない実施形態を示すが、フッ素原子および酸素原子が固体電解質界面層の厚さにわたって実質的に均一に分布している実施形態も可能である。図3Bは、フッ素原子および酸素原子が固体電解質界面層の厚さにわたって実質的に均一に分布している実施形態の断面概略図である。図3Bにおいて、固体電解質界面層128は、固体電解質界面層128の厚さ129にわたって固体電解質界面層128内に実質的に均一に分布するLiCOおよびLiF種を含む。従って、電解質14に隣接する酸素原子に対するフッ素原子の比は、固体電解質界面層128の厚さ129にわたって、固体電解質界面層128内のアノード12に隣接する酸素原子に対するフッ素原子の第2の比から実質的に変化しない。LiFおよびLiCOに加えて、場合によっては、更なる無機材料(例えば、LiOなど)も存在しても、固体電解質界面層における酸素原子に対するフッ素原子の全体的な比に寄与してもよいと解されるべきである。
【0034】
フッ素原子および酸素原子が固体電解質界面層の厚さにわたって実質的に均一に分布しているいくつかの実施形態では、固体電解質界面層の厚さの断面内の任意の所定の点における酸素原子に対するフッ素原子の比は、25%以下(例えば、の厚さにわたって測定された酸素原子に対するフッ素原子の平均比から、固体電解質界面層の厚さの断面内の任意の点で、25%以下(例えば、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下など)変化する。例えば、再び図3Bを参照すると、固体電解質界面層128の断面122の任意の点C、または任意の点Dにおける酸素原子に対するフッ素原子の比は、固体電解質層128における酸素原子に対するフッ素原子の平均比と比較して25%以下だけ変化する。例示的な計算として、固体電解質界面層が1の酸素原子に対するフッ素原子の平均比を有し、固体電解質界面層の厚さを横切る断面内の任意の点(例えば、図3Bの点CまたはD)が0.75以上または1.25以下の比を有する場合、その固体電解質界面層は、固体電解質界面層中のフッ素原子および酸素原子の平均比に基づいて、固体電解質界面層の厚さにわたってフッ素原子および酸素原子の実質的に均質な分布を有すると考えられる。
【0035】
フッ素原子および酸素原子が固体電解質界面層の厚さにわたって実質的に均一に分布しているいくつかの実施形態において、固体電解質界面層の厚さの断面内の任意の所定の点におけるフッ素原子対酸素原子の比は、固体電解質界面層の厚さの断面内の任意の点で、固体電解質界面層内の酸素原子に対するフッ素原子の最大比から、50%以下(例えば、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下など)変化する。例えば、再び図3Bを参照すると、固体電解質界面層128の断面122の任意の点Cにおける酸素原子に対するフッ素原子の比、または任意の点Dにおける酸素原子に対するフッ素原子の比は、固体電解質界面層128内の酸素原子に対するフッ素原子の最大比と比較して50%以下だけ変化する。例示的な計算として、固体電解質界面層が、酸素原子に対するフッ素原子の最大比が1であり、固体電解質界面層の厚さにわたる少なくともいくつかの断面(例えば、断面122)内のすべての点(例えば、図3Bの点D)が、0.5以上の比を有する場合、その固体電解質界面層は、実質的に均質であると考えられる、断面122)が0.5以上の比を有する場合、その固体電解質界面層は、固体電解質界面層中のフッ素原子および酸素原子の最大比に基づいて、固体電解質界面層の厚さにわたってフッ素原子および酸素原子の実質的に均質な分布を有すると考えられる。
【0036】
いくつかの実施形態において、電気化学セルの電気エネルギーを貯蔵および使用する方法が本明細書中に開示される。いくつかの実施形態において、方法は、以下により詳細に記載されるように、セルに異方性力を加えることと、セルに化成電圧を印加することと、セル内に本明細書中に記載されるSEI層を形成することとを含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、電気化学セルの電気エネルギーを貯蔵および使用する方法は、アノードの表面(例えば、活性表面)に異方性力を加えることを含む。いくつかのそのような実施形態において、電気化学セルは、アノード活物質としてリチウム金属、リチウム合金またはそれらの組合せを含むアノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置されたフッ素化有機溶媒を含む電解質とを備える。いくつかの実施形態において、アノードは、例えば、電気化学反応が起こる可能性のある電極の活性表面などの、電解質に隣接する表面を有する。例えば、図1に示すように、電気化学セル10は、表面24を有するアノード12と、カソード16と、アノード12とカソード16との間に配置されたフッ素化有機溶媒を含む電解質14とを備える。いくつかのそのような実施形態において、アノードの表面(例えば、活性表面)への異方性力の適用は、本明細書中の他の箇所に記載されるように、電気化学セルの性能(例えば、放電抵抗、サイクル寿命など)を高めることができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、アノードの表面(例えば、活性表面)に異方性力を加えることは、充電サイクルおよび放電サイクル中の少なくとも1つの期間中に異方性力を加えることを含む。いくつかの実施形態において、上記力は、連続的に、1つの期間にわたって、または持続時間および/または周期が変化する複数の期間にわたって加えられてもよい。異方性力は、場合によっては、1つ以上の予め決められた位置で加えられてもよく、任意選択でアノードの表面上に分散されてもよい。いくつかの実施形態では、異方性力は、アノードの表面(例えば、活性表面)上に均一に加えられる。
【0039】
例えば、少なくとも1つの期間は、初期形成サイクル(例えば、安定な固体電解質界面層がセルに形成される間の充放電サイクル)および/または後続の充放電サイクルを含んでもよい。一組の実施形態において、アノードの表面への異方性力の適用は、サイクルの全期間(例えば、全ての形成サイクルおよび次いでの充放電サイクル)を通じて持続する。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記力は、アノードの表面(例えば、活性表面)に垂直な成分を有する異方性力を含む。平面の場合、上記力は、上記力が加えられる点における表面に垂直な成分を有する異方性力を含んでもよい。例えば、図1を参照すると、力は矢印26の方向に加えられてもよい。矢印28は、アノード12の表面24に垂直な力の成分を示す。図示されているように、アノード12の表面24は、アノード集電体22に対向し、カソード16に面するように構成された表面である。曲面、例えば凹面または凸面の場合、力は、力が加えられる点において曲面に接する平面に垂直な成分を有する異方性力を含んでもよい。
【0041】
いくつかの場合、セルに加えられる1つ以上の力は、アノードの表面(例えば、活性表面)に対して垂直でない成分を有する。例えば、図1では、力26はアノード表面24に垂直ではなく、力26はアノード表面24に実質的に平行な成分30を含む。更に、場合によっては、アノード表面24に実質的に平行な力25がセルに加えられてもよい。一組の実施形態では、アノード表面に垂直な方向に加えられるすべての異方性力の成分の和は、アノード表面に垂直でない方向のどの成分の和よりも大きい。いくつかの実施形態において、アノード表面に垂直な方向におけるすべての加えられた異方性力の成分の合計は、アノード表面に平行な方向における成分の任意の合計よりも少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%大きい。
【0042】
いくつかの実施形態において、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中の異方性力の適用は、アノードおよび電解質界面における特定の有利な特性のセットを有する固体電解質界面層(例えば、LiF、LiCO、LiOなどのうちの1つ以上を含む)の形成に関連する。例えば、一組の実施形態において、異方性圧力の適用は、例えば、固体電解質界面層がアノードを有害な反応および/または劣化から効率的に保護することができるように、アノード表面に対する比較的高い適合性を有する安定かつ制御された固体電解質界面層(例えば、図1のSEI層18)の形成をもたらす可能性がある。更に、サイクル中の異方性力の適用は、サイクル中の抵抗性SEI蓄積の成長を調節することを補助し、それによって放電抵抗の増加速度を低減し、サイクル中のセルの分極を抑制することが可能である。その結果、セルは強化されたサイクル寿命を示すことが可能である。
【0043】
いくつかの実施形態において、アノードの表面(例えば、活性表面)に垂直な成分を有する異方性力は、電気化学デバイスの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、異方性力がない場合の表面積の増加に対するアノード表面(例えば、活性表面)の表面積の増加を抑制するのに有効な程度に適用される。
【0044】
いくつかの実施形態において、電極の表面(例えば、活性表面)に垂直な異方性力の成分は、少なくとも約1kg/cm、少なくとも約2kg/cm、少なくとも約4kg/cm、少なくとも約6kg/cm、少なくとも約6kg/cm、少なくとも約7kg/cm、少なくとも約8kg/cm、少なくとも約10.kg/cm、少なくとも約12kg/cm、少なくとも約14kg/cm、少なくとも約16kg/cm、少なくとも約18kg/cm、少なくとも約20.kg/cm、少なくとも約22kg/cm、少なくとも約24kg/cm、少なくとも約26kg/cm、少なくとも約28kg/cm、少なくとも約30kg/cm、少なくとも約32kg/cm、少なくとも約34kg/cm、少なくとも約36kg/cm、少なくとも約38kg/cm、少なくとも約40kg/cm、少なくとも約42kg/cm、少なくとも約44kg/cm、少なくとも約46kg/cm、または少なくとも約48kg/cmの圧力を規定する。いくつかの実施形態において、表面に垂直な異方性力の成分は、例えば、約50kg/cm未満、約48kg/cm未満、約46kg/cm未満、約44kg/cm未満、約42kg/cm未満、約40kg/cm未満、約38kg/cm未満、約36kg/cm未満、約34kg/cm未満、約32kg/cm未満、約30kg/cm未満、約28kg/cm未満、約26kg/cm未満、約24kg/cm未満、約22kg/cm未満、約20kg/cm未満、約18kg/cm未満、約16kg/cm未満、約14kg/cm未満、約12kg/cm未満、約10kg/cm未満、約8kg/cm未満、約7kg/cm未満、約6kg/cm未満、約4kg/cm未満、または約2kg/cm未満の圧力を規定してもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも約7kg/cm以上約50kg/cm未満、少なくとも約8kg/cm約30kg/cm未満、少なくとも約10kg/cm約25kg/cm未満)。他の範囲も可能である。
【0045】
力および圧力は、一般に、それぞれ単位面積当たりのニュートンおよびニュートンの単位で記載されるが、力および圧力は、それぞれ単位面積当たりのキログラム‐力およびキログラム‐力(即ち、kgf/cmまたはkg/cm)の単位で表すことも可能である。当業者であれば、キログラム‐力ベースの単位に精通しており、1キログラム‐力が約9.8ニュートンに相当すると解する。
【0046】
いくつかの実施形態では、電気化学セルの電気エネルギーを貯蔵および使用する方法は、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に化成電圧を印加することを含む。いくつかのそのような実施形態において、充電および/または放電中の少なくとも1つの期間は、形成サイクル、即ち、安定した固体電解質界面層の形成に関連する初期の充電および/または放電サイクルに関連する。例えば、いくつかの実施形態において、形成サイクルは、セルの充電および放電の少なくとも(最初の)1サイクル、少なくとも(最初の)2サイクル、少なくとも(最初の)3サイクル、少なくとも(最初の)4サイクル、または少なくとも(最初の)5サイクルに対して生じる。いくつかの実施形態では、形成サイクルは、セルの充電および放電の(最初の)6サイクル以下、(最初の)5サイクル以下、(最初の)4サイクル以下、(最初の)3サイクル以下、または(最初の)2サイクル以下に対して生じる。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1サイクル以上5サイクル以下、1サイクル以上4サイクル以下、1サイクル以上3サイクル以下)。他の範囲も可能である。
【0047】
いくつかの実施形態に従って、化成電圧は、形成サイクル中に印加される電圧である。例えば、一組の実施形態において、化成電圧は、セルの充電および放電の1サイクル以上、2サイクル以上、3サイクル以上、4サイクル以上、または5サイクル以上の間印加される。いくつかの実施形態では、化成電圧は、セルの充電および放電の6サイクル以下、5サイクル以下、4サイクル以下、3サイクル以下、または2サイクル以下の間印加される。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1サイクル以上5サイクル以下、1サイクル以上4サイクル以下、1サイクル以上3サイクル以下)。他の範囲も可能である。
【0048】
いくつかの実施形態において、(例えば、図3Aに示されるように)固体電解質界面層におけるLiCOの形成は、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に印加される比較的高い化成電圧に関連する。いくつかのそのような実施形態において、比較的高い化成電圧は、SEI層中にLiCOを形成する反応を有利に開始させ、および/またはLiCOの形成速度を増加させ、その結果、固体電解質界面層中に相当量のLiCOの存在をもたらす可能性がある。固体電解質界面層中に比較的高い配合量のLiCOが存在すると、電気化学セルの改善された性能(例えば、アノード安定性、サイクル寿命など)をもたらす可能性がある。
【0049】
いくつかの実施形態において、比較的高い化成電圧は、4.35V以上、4.4V以上、4.45V以上、4.5V以上、4.55V以上、4.6V以上、4.65V以上、4.7V以上、4.75V以上、4.8V以上、4.85V以上、4.9V以上、または4.95Vである。いくつかの実施形態では、比較的高い化成電圧は、5V以下、4.95V以下、4.9V以下、4.85V以下、4.8V以下、4.75V以下、4.7V以下、4.65V以下、4.6V以下、4.55V以下、4.5V以下、または4.45V以下である。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、4.4V以上5V以下、4.5V以上4.9V以下、または4.55V以上4.75V以下)。他の範囲も可能である。
【0050】
いくつかの実施形態において、比較的高い化成電圧は、様々な持続時間のいずれかにわたって印加されてもよい。例えば、一組の実施形態において、化成電圧は、合計1分以上、5分以上、10分以上、20分以上、30分以上、60分以上、120分以上、180分以上、360分以上、540分以上、720分以上、900分以上、1080分以上、または1260分以上である。いくつかの実施形態において、化成電圧は、合計1440分以下、1260分以下、1080分以下、900分以下、720分以下、540分以下、360分以下、180分以下、120分以下、60分以下、30分以下、20分以下、15分以下、10分以下、または5分以下印加されてもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1分以上1440分以下、5分以上720分以下、または10分以上360分以下)。他の範囲も可能である。
【0051】
いくつかの実施形態において、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中の異方性力の適用および高い化成電圧の印加は、有利な特性を有するLiFおよびLiCOを含む固体電解質界面層(例えば、図3Aに示されるような)の形成に関連する。これらの特性には、これらに限定されないが、アノードへの高い適合性、高い安定性、高いイオン伝導性などが挙げられる。形成中および/または後続の放電および/または充電サイクル中の異方性力の適用は、電気化学セルの性能(例えば、抵抗性SEIの蓄積および放電抵抗の成長の速度低下、改善されたサイクル寿命など)を更に向上させることが可能である。
【0052】
いくつかの実施形態において、電気化学セルの電気エネルギーを貯蔵および使用する方法は、アノードの表面(例えば、活性表面)に隣接して固体電解質界面層を形成することを含む。いくつかのそのような実施形態において、1つ以上の無機材料(例えば、LiF、LiCO、LiOなど)を含む固体電解質界面層は、電気化学セルの充電および/または放電中にin situで形成される。例えば、再び図1を参照すると、電気化学セル100は、充電および/または放電を受けると、アノード12の表面24に隣接する固体電解質界面層18のin situでの形成をもたらす。いくつかのそのような実施形態において、制御された固体電解質界面層の形成は、少なくとも部分的に、充電および/または放電サイクル中の異方性力の適用および/または化成電圧の印加に関連する。
【0053】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、LiFおよび/またはLiCOを含む無機材料を含む(例えば、図2図3に示すように)。無機材料の種類に応じて、これらの無機材料が形成される経路は異なり得る。例えば、一組の実施形態では、LiFは、充電および/または放電中の1つ以上のフッ素化電解質溶媒の分解の結果としてin situで形成される(例えば、図2図3に示すように)。
【0054】
一組の実施形態において、LiCOは、COとアノード表面上のリチウム金属との反応によってin situで形成される(例えば、図3に示すように)。例えば、COは、セルの様々な構成要素、例えば、電解質溶媒(例えば、エステル系、カーボネート系溶媒)の分解、および/またはサイクル中のカソード(例えば、NCMカソード内の不純物)からのガス発生などから、充電および/または放電中に発生する可能性がある。前述のようにおよび図3に関して記載したように、比較的高い配合量のLiCOを含む固体電解質界面層のin‐situ形成は、少なくとも部分的には、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間(例えば、形成サイクル)に印加される高い化成電圧によって引き起こされる可能性がある。固体電解質界面層は、セルの充電および/または放電の結果として、1つ以上の無機材料(例えば、リチウムアルコキシド、酸化リチウム、リチウム塩、および電解質の他の分解生成物)を更に含んでもよい。
【0055】
本開示は、概して、充電および/または放電中の固体電解質界面層のin‐situ形成を記載するが、いくつかの場合、固体電解質界面層の少なくとも一部がex situで形成されてもよい。いくつかのそのような実施形態において、LiCOを含む固体電解質界面層の一部は、電気化学セルの組立前に、COを用いたアノード(例えば、アノードの電気活性層)のプレパッシベーションによって形成される。いくつかのそのような実施形態では、プレパッシベーションされたアノードを電気化学セルに組み立てた後、LiFおよび/またはLiCOを含む付加的な固体電解質界面層を、前述の方法でin situで形成してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、固体電解質界面層は、比較的高い配合量の無機材料を含む。いくつかのそのような実施形態において、固体電解質界面層は、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上の合計量の無機材料を含む。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、または20重量%以下の合計量の無機材料を含む。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、10重量%以上100重量%以下)。他の範囲も可能である。
【0057】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、比較的高い量のフッ素含有無機材料(例えば、LiF)を含む。いくつかのそのような実施形態において、固体電解質界面層は、フッ素含有無機材料(例えば、LiF)を10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上の量で含む。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、フッ素含有無機材料(例えば、LiF)を100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、または20重量%以下の量で含んでもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、10重量%以上100重量%以下)。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態において、SEI層は、フッ素含有塩および/またはフッ素含有添加剤(例えば、LixPFy、LixPOyFzなど)の存在に関連する追加のフッ素含有無機材料を含んでもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、比較的高い量のLiCOを含む。いくつかのそのような実施形態において、固体電解質界面層は、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上の量のLiCOLiCOを含む。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、または20重量%以下の量のLiCOを含む。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、10重量%以上100重量%以下)。他の範囲も可能である。
【0059】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、比較的高い量のLiFおよびLiCOの両方を含む。いくつかのそのような実施形態において、LiFおよびLiCOは、独立して、前述した任意の量で、または組み合わせて存在してもよい。
【0060】
固体電解質界面層は、様々な適切な重量比のいずれかでLiFおよびLiCOを含んでよい。いくつかの実施形態において、LiFのLiCOに対する重量比は、1:100以上、1:50以上、1:10以上、1:5以上、1:2以上、1:1以上、2:1以上、3:1以上、5:1以上、10:1以上、25:1以上、50:1以上、または75:1以上であってもよい。いくつかの実施形態において、LiCOに対するLiFの重量比は、100:1以下、75:1以下、50:1以下、25:1以下、10:1以下、5:1以下、3:1以下、2:1以下、1:1以下、1:2以下、1:5以下、1:10以下、または1:50以下であってもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1:100以上、100:1以下)。他の範囲も可能である。
【0061】
いくつかの実施形態では、他の無機材料、例えばLiOが、様々な適切な量のいずれかでSEI層に形成されてもよい。例えば、LiOの形成は、フッ素化溶媒(例えば、フルオロエチレンカーボネート)および/または不動態化剤(例えば、LiBOB)の存在に関連してもよい。いくつかのそのような実施形態において、LiOは、様々な好適な量のいずれかで形成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、または50重量%以上の量のLiOを含む。いくつかの実施形態では、固体電解質界面層は、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、または10重量%以下の量のLiOを含む。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、10重量%以上50重量%以下、または5重量%以上50重量%以下)。他の範囲も可能である。
【0062】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、様々な適切な重量比のいずれかでLiFおよびLiOを含んでよい。いくつかの実施形態において、LiFのLiOに対する重量比は、1:5以上、1:4以上、1:3以上、1:2以上、1:1以上、2:1以上、3:1以上、5:1以上、10.1以上、25:1以上、50.1以上、または75:1以上であってよい。いくつかの実施形態において、LiOに対するLiFの重量比は、10.01以下、75:1以下、50.1以下、25:1以下、10.1以下、5:1以下、3:1以下、2:1以下、1:1以下、1:2以下、1:3以下、または1:4以下であってよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1:5以上100:1以下、または1:5以上2:1以下)。他の範囲も可能である。
【0063】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層中の無機材料(例えば、LiF、LiO、LiCOなど)の少なくとも一部は、結晶形態であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、無機材料の少なくとも一部は、ナノ結晶形態であってもよい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、5nm以上、7.5nm以上、10nm以上、12.5nm以上、15nm以上、20nm以上、25nm以上、30nm以上、または35nm以上のサイズ(例えば、直径、幅、長さなど)を有するナノ結晶性無機材料を含んでよい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、40nm以下、35nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、12.5nm以下、または10nm以下、または7.5nm以下のサイズ(例えば、直径、幅、長さなど)を有するナノ結晶性無機材料を含んでよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、5nm以上40nm以下、または10nm以上25nm以下)。他の範囲も可能である。
【0065】
例えば、一組の実施形態では、固体電解質界面層中のLiFの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が結晶形態である。例えば、いくつかの実施形態では、固体電解質界面層中のLiFの100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下が結晶形態である。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、5%以上、100%以下)。他の範囲も可能である。
【0066】
一組の実施形態では、固体電解質界面層中のLiOの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が結晶形態である。例えば、いくつかの実施形態では、固体電解質界面層中のLiOの100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下が結晶形態である。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、5%以上、100%以下)。他の範囲も可能である。
【0067】
固体電解質界面層は、様々な好適な気孔率のいずれかを有してもよい。いくつかの実施形態において、SEI層は、SEI層がSEI層を横切る効率的なイオン輸送を促進することが可能であるように、比較的高い気孔率を有してもよい。いくつかのそのような実施形態において、LiFを含む固体電解質界面層は、1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、または80%以上の気孔率を有する。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下の気孔率を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、10%以上、90%以下)。他の範囲も可能である。
【0068】
固体電解質界面層は、様々な好適な硬度値のいずれかを有してもよい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、0.001GPa以上、0.005GPa以上、0.01GPa以上、0.05GPa以上、0.1GPa以上、0.5GPa以上、1GPa以上、1.5GPa以上、2GPa以上、2.5GPa以上、3GPa以上、3.5以上、4GPa以上、または5GPa以上の硬度を有する。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、10GPa以下、5GPa以下、4.5GPa以下、4GPa以下、3.5GPa以下、3GPa以下、2.5GPa以下、2GPa以下、1.5GPa以下、1GPa以下、0.5GPa以下、0.1GPa以下、0.05GPa以下、0.01GPa以下、または0.005GPa以下の硬度を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.001GPa以上、5GPa以下)。その他の範囲も可能である。
【0069】
硬度値は、Berkovitchチップを使用したナノ硬度計で測定することができる。SEI層内への侵入深さを維持するために、0.5N~2.5Nの荷重を使用してもよい。硬度値は、ASTM E2546およびISO 14577‐4に開示されている方法に従って測定してもよい。硬度の測定方法としては、Rockwell、Vickers、Martens等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
例えば、固体電解質界面層は、種々の好適Vickers Pyramid Number(HV)値のいずれかを有してもよい。例えば、固体電解質界面層は、0.1以上、1以上、5以上、10以上、20以上、30以上、50以上、または70以上のビッカースピラミッド数を有することができる。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、90以下、70以下、50以下、30以下、10以下、5以下、または1以下のVickers Pyramid Number(HV)を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1以上、90以下)。他の範囲も可能である。
【0071】
例えば、固体電解質界面層は、種々の好適なマルテンス硬度数(Martens hardness number)のいずれかを有してもよい。例えば、固体電解質界面層は、0.0003以上、0.0005以上、0.001以上、0.005以上、0.01以上、0.05以上、0.1以上、または0.3以上のマルテンス硬度数を有することができる。いくつかの実施形態では、固体電解質界面層は、0.5以下、0.3以下、0.1以下、0.05以下、0.01以下、0.005以下、0.001以下、または0.0005以下のマルテンス硬度数を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.0003以上0.5以下)。他の範囲も可能である。
【0072】
固体電解質界面層は、様々な適切な厚さのいずれかを有してもよい。例えば、固体電解質界面層は、10nm以上、20nm以上、50nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、2μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、50μm以上、75μm以上、または100μm以上の厚さ(例えば、図1図3の厚さ19、119および129によって示されるような)を有してもよい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、200μm以下、100μm以下、75μm以下、50μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下、2μm以下、1μm以下、500nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下、または20nm以下の厚さを有してもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、10nm以上200μm以下、10nm以上75μm以下、または10nm以上50μm以下)。他の範囲も可能である。
【0073】
固体電解質界面層は、様々な好適な嵩密度のいずれかを有してもよい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、比較的高い嵩密度を有してもよい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、0.5g/cm以上、1.0g/cm以上、1.5g/cm以上、2.0g/cm以上、2.5g/cm以上、3.0g/cm以上、4.0g/cm以上、5.0g/cm以上の嵩密度を有してもよい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、7.5g/cm以下、5.0g/cm以下、4.0g/cm以下、3.0g/cm以下、2.5g/cm以下、2.0g/cm以下、1.5g/cm以下、または1g/cm以下の嵩密度を有してもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.5g/cm以上7.5g/cm以下、または1g/cm以上3g/cm以下)。他の範囲も可能である。
【0074】
固体電解質界面層は、様々な好適な弾性率の値のいずれかを有してもよい。例えば、固体電解質界面層は、0.003GPa以上、0.005GPa以上、0.01GPa以上、0.05GPa以上、0.1GPa以上、0.5GPa以上、1GPa以上、1.5GPa以上、2GPa以上、2.5GPa以上、3GPa以上、3.5GPa以上、または4GPa以上の弾性率を有してもよい。いくつかの実施形態において、固体電解質界面層は、5GPa以下、4.5GPa以下、4GPa以下、3.5GPa以下、3GPa以下、2.5GPa以下、2GPa以下、1.5GPa以下、1GPa以下、0.5GPa以下、0.1GPa以下、0.05GPa以下、0.01GPa以下、または0.005GPa以下の弾性率を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.003GPa以上、5GPa以下)。他の範囲も可能である。
【0075】
いくつかの実施形態において、固体電解質界面層(例えば、電解質および/または電解質を含侵させたセパレータに隣接する)は、様々な適切なサイズのいずれかを有する粒子(例えば、結晶粒子)を含む。いくつかの実施形態において、電解質に隣接する固体電解質界面層は、10nm以上、20nm以上、40nm以上、60nm以上、80nm以上、100nm以上、125nm以上、150nm以上、175nm以上、または200nm以上のサイズを有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、電解質に隣接する固体電解質界面層は、250nm以下、200nm以下、175nm以下、150nm以下、125nm以下、100nm以下、80nm以下、60nm以下、40nm以下、または20nm以下のサイズを有する粒子を含む。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、10nm以上200nm以下)。他の範囲も可能である。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される固体電解質界面層を含む電気化学セルは、そのような固体電解質界面層を含まないが、その他の点では同等の電気化学セルと比較して、放電容量の減少速度が遅い。放電容量Cは、以下の式(1):
C=Idch・t (1)
に従って、電流Idchにサイクル後に放電電圧カットオフに達するまでの時間tを乗じることによって計算することができる。サイクルが継続するにつれて、放電容量が後続の各サイクルについて決定されることが可能である。
【0077】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、形成後5回目の充放電サイクル(例えば、形成サイクル)における放電容量に対して、100サイクルの充放電後、0%以上、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、または15%以上の放電容量の減少を示す。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、5回目の充放電時の放電容量に対して、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、0.05%以下、または0.01%以下の放電容量の減少を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0%以上20%以下)。他の範囲も可能である。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される固体電解質界面層を含む電気化学セルは、そのような固体電解質界面層を含まないが、その他の点では同等の電気化学セルと比較して、より遅い放電抵抗の増加速度を示す。サイクル中の電気化学セルの放電抵抗は、以下の一般的な手順(またはプロトコル)によって測定してもよい。まず、電気化学セルを、電気化学セルにメーカー指定の電流および電圧を供給することができるバッテリ・サイクラー・チャンネル(battery cycler channel)に接続することができる。セルはまずメーカー指定の電流でメーカー指定の電圧まで放電され、次いで一定時間(例えば、少なくとも2分間)休止された。次に、セルをメーカー指定の電流でメーカー指定の電圧まで充電し、電流が特定の値まで減衰するまで電圧を指定の電圧に保ち、セルを一定時間(例えば、少なくとも2分間)再び休止させた。休止時の電圧(V)は、この休止期間の終わりに測定された。次いで、メーカー指定の電流でセルを指定の電圧まで再び放電させた。この放電の5分後に電圧(V)を測定することが可能である。放電抵抗、別称5分間放電抵抗Rは、以下の式(2):
R=(V-V)/Idch (2)
(式中、Vは放電前の休止終了時の電圧であり、Vは放電開始5分後に測定された電圧であり、Idchは放電電流(A)である。)
を用いて計算することが可能である。サイクルが継続するにつれて、放電抵抗は、後続の各サイクルについて決定することが可能である。
【0079】
いくつかのそのような実施形態では、電気化学セルは、形成後5回目の充放電サイクルにおける放電抵抗に対して、100サイクルの充放電後、0%以上、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、または15%以上の放電抵抗の増加を示す。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、形成後5回目の充放電サイクルにおける放電抵抗に対して、100サイクルの充放電後、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、0.05%以下、または0.01%以下の放電抵抗の増加を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0%以上20%以下)。他の範囲も可能である。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される固体電解質界面層(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)を含む電気化学セルは、向上したサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、100サイクル以上、150サイクル以上、200サイクル以上、250サイクル以上、300サイクル以上、350サイクル以上、400サイクル以上、450サイクル以上、500サイクル以上、1000サイクル以上、または1500サイクル以上のサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、2000サイクル以下、1500サイクル以下、1000サイクル以下、500サイクル以下、450サイクル以下、400サイクル以下、350サイクル以下、300サイクル以下、250サイクル以下、200サイクル以下、または150サイクル以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、100サイクル以上、2000サイクル以下)。他の範囲も可能である。
【0081】
いくつかの実施形態において、(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)本明細書中に記載される固体電解質界面層を含む電気化学セルは、そのような固体電解質界面層を含まないが、その他の点では同等の電気化学セルと比較して、向上したサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を含まないが、その他の点では同等の電気化学セルのサイクル寿命の2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、100倍以上、200倍以上、300倍以上、または400倍以上のサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を含まないが、その他の点では同等の電気化学セルのサイクル寿命の500倍以下、400倍以下、300倍以下、200倍以下、100倍以下、50倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、10倍以下、または3倍以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2倍以上、500倍以下)。他の範囲も可能である。
【0082】
いくつかの実施形態において、少なくとも充放電サイクルの期間中に異方性力の適用を伴う(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)固体電解質界面層を含む電気化学セルは、異方性力の適用を伴わない固体電解質界面層を含むセルと比較して、向上した物理的特性を示す。いくつかの実施形態において、少なくとも充放電サイクルの期間中に異方性力の適用を伴う(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を備えるが、圧力を加えずに形成されたその他の点では同等の電気化学セルのサイクル寿命の2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上のサイクル寿命を示す、30倍以上、40倍以上、50倍以上、100倍以上、200倍以上、300倍以上、または400倍以上のサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態では、少なくとも充放電サイクルの期間中に異方性力の適用を伴う、本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を備えるが、圧力を加えずに形成されたその他の点では同等の電気化学セルのサイクル寿命の500倍以下、400倍以下、300倍以下、200倍以下、100倍以下、50倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、10倍以下、または3倍以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2倍以上、500倍以下)。その他の範囲も可能である。適用される異方性力の大きさは、本明細書中に記載される範囲の1つ以上であってもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、フッ素化電解質溶媒の存在下で形成され、(例えば、フッ素化電解質溶媒の存在下で形成され、少なくとも充放電サイクルの期間中に適用された異方性力を受ける(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)固体電解質界面層を含む電気化学セルは、非フッ素化電解質溶媒の存在下で形成され、同じ適用された異方性力を受ける固体電解質界面層を含むその他の点では同等のセルと比較して、向上した物理的特性を示す。例えば、非フッ素化電解質を含み、異方性力を受けるセルの固体電解質界面層と比較して、フッ素化電解質溶媒を含み、同じ異方性力を受ける電気化学セルの固体電解質界面層は、充放電サイクルにわたって、より緩やかな厚みの増加および/またはより緩やかな嵩密度の減少を示す可能性がある。物理的特性におけるこれらの違いは、少なくとも部分的には、サイクル寿命の改善に寄与する可能性がある。
【0084】
いくつかの実施形態において、高化成電圧下で形成される(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を含むが、高化成電圧を用いずに形成されたその他の点では同等の電気化学セルと比較して、向上した物理的特性を示す。いくつかの実施形態において、高化成電圧下で形成される(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を含むが、高化成電圧を用いずに形成されたその他の点では同等の電気化学セルのサイクル寿命の2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、100倍以上、200倍以上、300倍以上、または400倍以上のサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態において、高化成電圧下で形成される固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を含むが、高化成電圧を用いずに形成されたその他の点では同等の電気化学セルのサイクル寿命の500倍以下、400倍以下、300倍以下、200倍以下、100倍以下のサイクル寿命を示す、50倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、10倍以下、または3倍以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2倍以上、500倍以下)。他の範囲も可能である。
【0085】
いくつかの実施形態では、(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上リッチの)固体電解質界面層を含む電気化学セルは、比較的低温(例えば、0℃以下、-25℃以下、-40℃以下など)で電気化学セル内の充放電容量を保持するのに役立つ。いくつかのそのような実施形態では、比較的低温での充放電時に、本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、60サイクル以上、80サイクル以上、90サイクル以上、100サイクル以上、125サイクル以上、150サイクル以上、250サイクル以上、500サイクル以上、または750サイクル以上の向上したサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態では、比較的低温での充放電時に、本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、1000サイクル以下、750サイクル以下、500サイクル以下、250サイクル以下、175サイクル以下、150サイクル以下、125サイクル以下、100サイクル以下、90サイクル以下、80サイクル以下、または70サイクル以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、60サイクル以上、1000サイクル以下)。他の範囲も可能である。
【0086】
いくつかの実施形態では、電解質は溶媒を含む。一組の実施形態において、溶媒は、少なくとも1つのフッ素化有機溶媒を含む。いくつかの実施形態において、フッ素化有機溶媒および/またはフッ素化有機溶媒の混合物は、電解質中の唯一の溶媒として使用される。いくつかの実施形態において、フッ素化有機溶媒および/またはフッ素化有機溶媒の混合物は、充電サイクルおよび放電サイクル中に一定期間さらされると、比較的高い配合量の無機材料(例えば、LiF、LiCO、LiOなど)を含む固体電解質界面層の形成をもたらす。いくつかの実施形態では、非フッ素化溶媒が存在してもよい。
【0087】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフッ素化有機溶媒は、環状および直鎖状フッ素化カーボネート、フッ素化エーテル、およびフッ素化エステル(例えば、フッ素化アルキルエステル)の群から選択される。例えば、1つの実施形態において、溶媒は、フルオロエチレンカーボネートおよび/またはジフルオロエチレンカーボネートから選択される少なくとも1つのフッ素化有機溶媒を含む。フッ素化有機溶媒の更なる非限定的な例としては、これらに限定されないが、メチル、2,2,2,‐トリフルオロエチルカーボネート、1,1,2,2,‐テトラフルオロエチル2,2,2‐トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2‐テトラフルオロエチル‐2,2,3,3‐テトラフルオロプロピルエーテル、ジフルオロ酢酸メチル、ジフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、およびトリフルオロ酢酸エチルが挙げられる。
【0088】
フッ素化有機溶媒は、電解質中に様々な好適な量のいずれかで存在してもよい。いくつかの実施形態において、フッ素化有機溶媒(例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC))は、電解質の総重量に対して、10重量%以上、11重量%以上、12重量%以上、13重量%以上、14重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、または88重量%以上の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、フッ素化有機溶媒は、電解質の総重量に対して、90重量%以下、88重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、17重量%以下、15重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、または11重量%以下の量で存在してもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、10重量%以上90重量%以下、14重量%以上88重量%以下、または17重量%以上44重量%以下)。他の範囲も可能である。
【0089】
いくつかの実施形態において、溶媒は、少なくとも1つの非フッ素化有機溶媒を更に含む。いくつかの実施形態において、非フッ素化溶媒(またはその分解生成物)は、充電サイクルおよび放電サイクル中に一定時間さらされると、固体電解質界面層中に1つ以上の無機材料(例えば、LiCO、LiO)の形成をもたらす。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの非フッ素化有機溶媒は、エステル系溶媒を含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、カルボン酸のエステル、リン酸のエステル、直鎖状および環状エーテルおよびアセタール、硫酸のエステル、スルホン酸のエステル、カルボン酸とハロゲン化アルコールとから形成されるエステル、およびアルキルエステルのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの非フッ素化有機溶媒は、環状および/または直鎖状カーボネートを含む。いくつかのそのような実施形態において、非フッ素化溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、およびエチレンカーボネートから成る群から選択される1つ以上のカーボネート系溶媒を含んでもよい。追加的にまたは代替的に、少なくとも1つの非フッ素化有機溶媒は、アセテート(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、アルキルエステル(例えば、酪酸エチル)、ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン)などを含んでもよい。
【0091】
非フッ素化有機溶媒は、電解質中に様々な好適な量のいずれかで存在してもよい。いくつかの実施形態において、非フッ素化有機溶媒は、電解質の総重量の0重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、または70重量%以上の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、非フッ素化有機溶媒は、電解質の総重量の75重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、または5重量%以下の量で存在してもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0重量%以上75重量%以下)。他の範囲も可能である。
【0092】
電解質溶媒は、フッ素化有機溶媒および非フッ素化有機溶媒を、様々な適切な重量比のいずれかで含んでもよい。いくつかの実施形態において、フッ素化有機溶媒(例えば、フルオロエチレンカーボネートなど)の非フッ素化有機溶媒に対する重量比は、いくつかの場合、1:10以上、1:8以上、1:5以上、1:4以上、1:3以上、1:2以上、1:1以上、2:1以上、3:1以上、5:1以上、10:1以上、30:1以上、50:1以上、70:1以上、または90:1以上であってもよい。いくつかの実施形態において、フッ素化有機溶媒と非フッ素化有機溶媒との重量比は、100:1(例えば、99:1)以下、90:1以下、70:1以下、50:1以下、30:1以下、10:1以下、5:1以下、3:1以下、2:1以下、1:1以下、1:2以下、1:3以下、1:4以下、1:5以下、1:8以下、1:10以下、または1:15以下である。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1:10以上100:1以下、1:10以上2:1以下、1:4以上1:1以下、または1:3以上1:1以下)。他の範囲も可能である。
【0093】
有用な電解質の更なる非限定的な例としては、これらに限定されないが、例えば、N‐メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル(例えば、炭酸のエステル)、カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート)、スルホン、サルファイト(亜硫酸塩)、スルホラン、スルホンイミド(例えば、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩)、脂肪族エーテル類、非環式エーテル類、環式エーテル類、グライム類、ポリエーテル類、リン酸エステル類(例えば、ヘキサフルオロホスフェート)、シロキサン類、ジオキソラン類、N‐アルキルピロリドン類、ニトレート含有化合物、前記の置換形態、およびこれらのブレンド物が挙げられる。使用可能な非環式エーテルの例としては、これらに限定されないが、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、1,2‐ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2‐ジメトキシプロパン、および1,3‐ジメトキシプロパンが挙げられる。使用できる環状エーテルの例としては、これらに限定されないが、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサン、1,3‐ジオキソラン、トリオキサンなどが挙げられる。使用可能なポリエーテルの例としては、これらに限定されないが、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、高級グライム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびブチレングリコールエーテルが挙げられる。使用できるスルホンの例としては、これらに限定されないが、スルホラン、3‐メチルスルホラン、3‐スルホレンなどが挙げられる。前述のフッ素化誘導体も液体電解質溶媒として有用である。
【0094】
一組の実施形態において、溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と非フッ素化カーボネート溶媒(例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、またはそれらの組み合わせ)との混合物を含む。いくつかのそのような実施形態において、有機溶媒中のフルオロエチレンカーボネートの非フッ素化カーボネート溶媒に対する重量比は、いくつかの場合、1:10以上(例えば、1:9)、1:8以上、1:5以上、1:4以上、1:3以上、1:2以上、または1:1以上であってよい。いくつかの実施形態において、フルオロエチレンカーボネートの非フッ素化カーボネート溶媒に対する重量比は、2:1以下、1:1以下、1:2以下、1:3以下、1:4以下、1:5以下、または1:8以下であってよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(1:10以上2:1以下、または1:4以上1:1以下、または1:3以上1:1以下)。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態において、フッ素化溶媒(例えば、FEC)の非フッ素化溶媒(例えば、DMC)に対する重量比は、1:4以上1:1以下である。
【0095】
いくつかの実施形態において、電解質は、少なくとも1つの不動態化剤を含む。いくつかの実施形態において、不動態化剤は、電極(例えば、リチウム金属電極などのアノード、および/またはリチウムインターカレーション電極などのカソード)上に不動態化層を形成することができる。いくつかのそのような実施形態において、結果として生じる不動態化層は、本明細書中に記載される固体電解質界面層の一部である。いくつかの実施形態において、不動態化剤の存在下で形成された固体電解質界面層を含んでなる電気化学セルは、不動態化剤の非存在下で形成された固体電解質界面層を含んでなる、他の要因が全ての等しいセルと比較して、向上した物理的特性(例えば、アノード安定性、サイクル寿命、放電抵抗および放電容量)を示す可能性を有する。
【0096】
例えば、いくつかの実施形態において、不動態化剤の存在下で形成された(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)固体電解質界面層を含む電気化学セルは、不動態化剤の非存在下で固体電解質界面層を含むその他の点では同等のセルと比較して、向上した物理的特性を示す。いくつかの実施形態において、不動態化剤の存在下で形成される(例えば、LiF、LiCO、LiOなどの1つ以上を含む)本明細書中に記載の固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を含むが不動態化剤を含まずに形成されたその他の点では同等の電気化学セルのサイクル寿命の2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、100倍以上、200倍以上、300倍以上、または400倍以上のサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態において、不動態化剤の存在下で形成された固体電解質界面層を含む電気化学セルは、固体電解質界面層を含むが不動態化剤の非存在下で形成されたその他の点では同等の電気化学セルのサイクル寿命の500倍以下、400倍以下、300倍以下、200倍以下、100倍以下、50倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、10倍以下、または3倍以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2倍以上500倍以下)。他の範囲も可能である。
【0097】
好適な不動態化剤としては、これらに限定されないが、ホウ素含有化合物、例えば、(オキサラト)ボレート基を含む化合物が挙げられる。オキサラト)ボレート基は、例えば、ビス(オキサラト)ボレートアニオンおよび/またはジフルオロ(オキサラト)ボレートアニオンを含んでもよい。いくらかの実施形態によれば、不動態化剤は、塩(例えば、シュウ酸塩)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、塩を含む不動態化剤は、リチウム陽イオンを含んでよい。例えば、リチウム塩は、ホウ酸ビス(オキサラト)リチウム(LiBOB)および/またはホウ酸ジフルオロ(オキサラト)リチウム(LiDFOB)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)を含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、電気化学セル中の不動態化剤(例えば、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)および/またはリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートなどの(オキサラト)ボレート基)の総重量は、電解質の総重量に対して、約30重量%以下、約28重量%以下、約25重量%以下、約22重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、約8重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、または約1重量%以下であってもよい。いくらかの実施形態では、電気化学セル中の不動態化剤の総重量は、電解質の総重量に対して、約0.2重量%より大きく、約0.5重量%より大きい、約1重量%より大きい、約2重量%より大きい、約3重量%より大きい、約4重量%より大きい、約6重量%より大きい、約8重量%より大きい、約10重量%より大きい、約15重量%より大きい、約18重量%より大きい、約20重量%より大きい、約22重量%より大きい、約25重量%より大きい、または約28重量%より大きい。上記の範囲の組合せも可能である(例えば、約0.2重量%と約30重量%の間、約0.2重量%と約20重量%の間、約0.5重量%と約20重量%の間、約1重量%と約8重量%の間、約1重量%と約6重量%の間、約4重量%と約10重量%の間、約6重量%と約15重量%の間、または約8重量%と約20重量%の間)。他の範囲も可能である。
【0099】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、2つ以上の不動態化剤を含んでもよい。2つ以上の不動態化剤は、相乗的に相互作用して、いずれかの不動態化剤が個々に電気化学セルに及ぼす影響から予想される程度を超えて、電気化学セルの1つ以上の特性を高めることが可能である。
【0100】
不動態化剤の更なる例としては、これらに限定されないが、スルトン(例えば、1,3プロパンスルトン(PS)、プロプ‐1‐エン‐1,3‐スルトン(PES))、スルホネート(例えば、メチレンメタンスルホネート(MMDS))、ビニレンカーボネート、ホスファイト、リチウム塩(例えば、LiBF))、キサンテート基(例えば、キサンテートリチウム、キサンテートカリウム、エチルキサンテートリチウム、エチルキサンテートカリウム、イソブチルキサンテートリチウム、イソブチルキサンテートカリウム、tert‐ブチルキサンテートリチウム、tert‐ブチルキサンテートカリウム)、ポリキサンテート基、カルバメート基(例えば、ジチオカルバミン酸リチウム、ジチオカルバミン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸リチウム、およびジエチルジチオカルバミン酸カリウム)、ポリカルバメート基、N‐O基(例えば、硝酸リチウム、硝酸マグネシウム)、シランなどが挙げられる。不動態化剤およびその使用方法の更なる例は、例えば、参照によりその全体が本明細書中に援用される米国特許出願公開第2018-0351158号明細書に詳細に記載されている。
【0101】
いくつかの実施形態において、電解質は、少なくとも1つのリチウム塩を含む。一組の実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO)のうちの1つ以上を含んでよい、リチウムヘキサフルオロアルセネート(LiAsF)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiCFSO)、およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)。リチウムの更なる例としては、LiSCN、LiBr、LiI、LiSOCH、LiNO、LiPF、LiBF、LiB(Ph)、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、トリス(オキサラト)ホスフェートアニオンを含む塩(例えば、これらに限定されないが、トリス(オキサラト)リン酸リチウム)、LiC(SOCF)、LiCFSO、LiN(SOF)、LiN(SOCF)、LiC(C2n+1SO)(nは1~20の範囲の整数である)、および(C2n+1SO)XLi(nは1~20の範囲の整数である、Xが酸素または硫黄から選択される場合、mは1であり、Xが窒素またはリンから選択される場合、mは2であり、Xが炭素またはケイ素から選択される場合、mは3である。有用であってよい他の電解質塩としては、リチウムポリスルフィド(LiSx)、および有機ポリスルフィドのリチウム塩(LiSxR)が挙げられ、ここで、xは1~20の整数であり、nは1~3の整数であり、Rは有機基であり、Leeらの米国特許第5,538,812号に開示されているものが挙げられ、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書中に援用される。
【0102】
存在する場合、リチウム塩は、様々な好適な濃度で電解質中に存在してもよい。いくつかの実施形態において、リチウム塩は、0.01M以上、0.02M以上、0.05M以上、0.1M以上、0.2M以上、0.5M以上、1M以上、2M以上、または5M以上の濃度で電解液中に存在する。リチウム塩は、10M以下、5M以下、2M以下、1M以下、0.5M以下、0.2M以下、0.1M以下、0.05M以下、または0.02M以下の濃度で電解質中に存在してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.01M以上10M以下、または0.01M以上5M以下)。他の範囲も可能である。
【0103】
いくつかの実施形態では、電解質は1つ以上の室温イオン液体を含む。室温イオン液体は、存在する場合、典型的には、1つ以上のカチオンおよび1つ以上のアニオンを含む。好適なカチオンの非限定的な例としては、リチウムカチオンおよび/またはイミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、およびトリゾリウムカチオンなどの1つ以上の第4級アンモニウムカチオンが挙げられる。好適なアニオンの非限定的な例としては、トリフルオロメチルスルホネート(CFSO )、ビス(フルオロスルホニル)イミド(N(FSO) )、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CFSO))、ビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド((CFCFSO))およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CFSO))が挙げられる。好適なイオン液体の非限定的な例としては、N‐メチル‐N‐プロピルピロリジニウム/ビス(フルオロスルホニル)イミドおよび1,2‐ジメチル‐3‐プロピルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、電解質は、室温イオン液体とリチウム塩の両方を含む。他のいくつかの実施形態では、電解質は室温イオン液体を含み、リチウム塩を含まない。
【0104】
第1の電極(例えば、本明細書中に記載の電気化学セルのアノードおけるアノード活電極種として)に使用するのに好適な活電極材料としては、これらに限定されないが、リチウム箔や基板上に付着したリチウムなどのリチウム金属、リチウム合金(例えば、リチウム‐アルミニウム合金やリチウム‐錫合金)が挙げられる。リチウムは、セラミック材料や本明細書中に記載のイオン伝導性材料などの保護材料によって任意に分離された、1つの膜として、または複数の膜として含有してもよい。好適なセラミック材料としては、シリカ、アルミナ、および/またはリチウム含有ガラス質材料が挙げられ、例えば、リン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ケイ酸リチウム、炭酸リチウム、酸化リチウム、リン酸酸窒化リチウム、タンタル酸化リチウム、リチウムアルミノスルフィド、チタン酸化リチウム、リチウムシルコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムボロスルフィド、リチウムホスホスルフィド、および前述の2つ以上の組み合わせなどが挙げられる。本明細書中に記載の実施形態に使用するのに好適なリチウム合金としては、リチウムとアルミニウム、マグネシウム、シリシウム(ケイ素)、インジウム、銀、および/またはスズとの合金が挙げられる。いくつかの実施形態では、これらの材料が好ましいが、他のセル化合物も企図される。いくつかの実施形態において、第1の電極は、1つ以上のバインダ材料(例えば、ポリマーなど)を含んでもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、第1の電極(例えば、アノード)の厚さは、例えば、約1~約200μmまで変化してもよい。例えば、第1の電極(例えば、アノード)は、約200μm未満、約100μm未満、約50μm未満、約25μm未満、約10μm未満、または約5μm未満の厚さを有してもよい。いくつかの実施形態において、第1の電極(例えば、アノード)は、約1μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約25μm以上、約50μm以上、約100μm以上、または約150μm以上の厚さを有してもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、約1μmと約200μmの間、約1μmと約100μmの間、約5μmと約50μmの間、約5μmと約25μmの間、または約10μmと約25μmの間)。他の範囲も可能である。厚さの選択は、所望のリチウム過剰量、サイクル寿命、第2の電極の厚さなどのセル設計パラメータに依存する場合がある。
【0106】
負極材料(例えば、リチウムなどのアルカリ金属アノード)を基板上に付着させる方法としては、熱蒸着、スパッタリング、ジェット蒸着、レーザーアブレーションなどの方法が挙げられる。あるいは、アノードがリチウム箔、またはリチウム箔と基板とを含む場合、これらを当技術分野で公知のラミネーション法によってラミネートしてアノードを形成してもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、第2の電極(例えば、本明細書中に記載される電気化学セルのカソードにおけるカソード活性電極種)内の電気活物質は、金属酸化物を含んでよい。いくつかの実施形態では、インターカレーション電極(例えば、本明細書ではリチウムイオンインターカレーションカソードとも呼ばれるリチウムインターカレーションカソード)が(例えば、第2の電極として)使用されてもよい。電気活物質(例えば、アルカリ金属イオン)のイオンをインターカレートすることが可能である好適な材料の非限定的な例としては、酸化物、硫化チタン、および硫化鉄が挙げられる。いくつかの実施形態において、第2の電極(例えば、カソード)は、リチウム遷移金属酸化物またはリチウム遷移金属リン酸塩を含むインターカレーション電極を含んでよい。更なる例としては、LiCoO(本明細書中ではコバルト酸化リチウムとも呼ばれる;例えば、Li1.1CoO)、LiNiO、LiMnO、LiMn(例えば、Li1.05Mn)、LiCoPO、LiMnPO、LiCoNi(1-x)、およびLiCoNiMn(1-x-y)が挙げられる、Li1.05Mn)、LiCoPO、LiMnPO、LiCoNi(1-x)、およびLiCoNiMn(1-x-y)(本明細書中では、リチウム‐ニッケル‐マンガン‐コバルト酸化物とも呼ばれる;例えば、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNi3/5Mn1.5Co1.5、LiNi4/5Mn1/10Co1/10、LiNi1/2Mn3/10Co1.5)などが挙げられる。X(例えば、本明細書中の他の箇所に記載されるような化学組成Liを有するインターカレーションカソードの場合、Mは金属または金属の組み合わせである)は、0以上、2以下であってよい。Xは、典型的には、電気化学セルが完全に放電される場合、1以上、2以下であり、電気化学セルが完全に充電される場合、1未満である。いくつかの実施形態では、完全に充電された電気化学セルは、1以上1.05以下、1以上1.1以下、または1以上1.2以下であるxの値を有してもよい。更なる例としては、(0<x≦1)であるLiNiPO、(x+y=2)であるLiMnNi(例えば、LiMn1.5Ni0.5)、(x+y+z=1)であるLiNiCоAl、LiFePOおよびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、カソード内の電気活物質は、リチウム遷移金属リン酸塩(例えば、LiFePO)を含み、これは、いくらかの実施形態では、ホウ酸塩および/またはケイ酸塩で置換されることができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、第2の電極(例えば、本明細書中に記載される電気化学セルのカソードにおけるカソード活性電極種)内の電気活物質は、電気活性遷移金属カルコゲン化物(またはカルコゲニド;chalcogenide)、電気活性伝導性(または導電性;conductive)ポリマー、および/または電気活性硫黄含有材料、ならびにそれらの組み合わせを含んでよい。本明細書中で使用される用語「カルコゲン化物」は、酸素、硫黄、およびセレンの元素の一つ以上を含む化合物に関する。好適な遷移金属カルコゲン化物の例としては、それらに限定されないが、Mn、V、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、およびIrからなる群から選択される遷移金属の電気活性酸化物、硫化物、およびセレン化物があるが、これに限定はしない。1つの実施形態では、遷移金属カルコゲン化物は、ニッケル、マンガン、コバルト、およびバナジウムの電気活性酸化物、並びに鉄の電気活性硫化物からなる群から選択される。1つの実施形態では、カソードは、二酸化マンガン、ヨウ素、クロム酸銀、酸化銀および五酸化バナジウム、酸化銅、オキシリン酸銅、硫化鉛、硫化鉄、ビスマス酸鉛、三酸化ビスマス、二酸化コバルト、塩化銅、二酸化マンガンおよび炭素のうちの1つ以上の材料を含んでいる。別の実施形態では、カソード活性層は、電気活性導電性ポリマーを含んでいる。好適な電気活性導電性ポリマーの例には、これらに限定されるものではないが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなる群から選択される電気活性および電子伝導性ポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリピロール類、ポリアニリン類、およびポリアセチレン類を伝導性ポリマーとして使用することが望ましい。
【0109】
いくらかの実施形態によれば、様々なカソード活物質が、本明細書中に記載の電気化学セルのカソードに使用するのに好適である。いくつかの実施形態において、カソード活物質は、リチウムインターカレーション化合物(例えば、格子サイトおよび/または格子間サイトにリチウムイオンを可逆的に挿入することができる化合物)を含む。いくらかの場合、カソード活物質は層状酸化物を含む。層状酸化物は、一般に、ラメラ構造(例えば、互いに積層された複数のシートまたは層)を有する酸化物を指す。好適な層状酸化物の非限定的な例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、およびマンガン酸リチウム(LiMnO)が挙げられる。いくつかの実施形態では、層状酸化物は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiMnCo、「NMC」または「NCM」とも呼ばれる)である。例えば、好適なNMC化合物の非限定的な例として、LiNi1/3Mn1/3Co1/3(NCM333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、およびLi1+X(Ni0.85Co0.10Mn0.05)1-X(NCM851005)であり、ここでxは約0.01である。いくつかの実施形態において、層状酸化物は、式(LiMnO)x(LiMO)(1-X)を有し得、ここでMは、Ni、Mn、およびCoのうちの1つ以上である。例えば、層状酸化物は、(LiMnO)0.25(LiNi0.3Co0.15Mn0.55)0.75であってもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、層状酸化物は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAl、「NCA」とも呼ばれる)である。例えば、好適なNCA化合物の非限定的な例は、LiNi0.8Co0.15Al0.05である。
【0111】
いくらかの実施形態において、カソード活物質は、遷移金属ポリアニオンオキシド(例えば、遷移金属、酸素、および/または絶対値が1より大きい電荷を有するアニオンを含む化合物)を含む。適切な遷移金属ポリアニオン酸化物の非限定的な例は、リン酸鉄リチウム(LiFePO、「LFP」とも呼ばれる)である。適切な遷移金属ポリアニオンオキシドの別の非限定的な例は、リチウムマンガン鉄ホスフェート(LiMnFe1-xPO、「LMFP」とも呼ばれる)である。適切なLMFP化合物の非限定的な例は、LiMn0.8Fe0.2POである。いくつかの実施形態において、カソード活物質はスピネル(例えば、AがLi、Mg、Fe、Mn、Zn、Cu、Ni、Ti、またはSiであってもよく、BがAl、Fe、Cr、Mn、またはVでであってもよい構造ABを有する化合物)を含む。好適なスピネルの非限定的な例は、リチウムマンガン酸化物(LiMn、「LMO」とも呼ばれる)である。別の非限定的な例は、リチウムマンガンニッケル酸化物(LiNi2-x、「LMNO」とも呼ばれる)である。好適なLMNO化合物の非限定的な例は、LiNi0.5Mn1.5である。場合によっては、電気活物質は、Li1.14Mn0.42Ni0.25Co0.29(「HC-MNC」)、炭酸リチウム(LiCO)、炭化リチウム(例えば、Li、LiC、Li、Li、Li、Li、Li)、酸化バナジウム(例えば、V、V、V13)、および/またはリン酸バナジウム(例えば、Li(PO)などのリン酸バナジウムリチウム)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、カソード活物質は、変換化合物を含む。例えば、カソードは、リチウム変換カソードであってもよい。変換化合物を含むカソードは、比較的大きな比容量を有し得ることが認識されている。特定の理論に拘束されることを望まないが、遷移金属ごとに複数の電子移動が生じる変換反応を通じて化合物のすべての可能な酸化状態を利用することによって、比較的大きな比容量を達成することができる(例えば、インターカレーション化合物において0.1~1電子移動に比べて)。適切な変換化合物には、遷移金属酸化物(例えば、Co)、遷移金属水素化物、遷移金属硫化物、遷移金属窒化物、および遷移金属フッ化物(例えば、CuF、FeF、FeF)が含まれるが、これらに限定されない。遷移金属とは、一般に、原子が部分的に充填されたd‐亜殻を持つ元素(例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、Sg、Bh、Hs)を指す。
【0113】
本明細書中に記載の電極は、バッテリ(例えば、充電式バッテリ)に組み込まれる電気化学セルの一部であってよい。いくつかの実施形態において、電気化学セル(本明細書中に記載される1つ以上の電極を含む)は、電気自動車に電力を供給するために使用され得るか、またはそうでなければ電気自動車に組み込まれてもよい。非限定的な例として、本明細書中に記載の電気化学セルは、場合によっては、電気自動車の駆動系に電力を供給するために使用することができる。車両は、陸上、海上、および/または空中を移動するために適合された、任意の好適な車両であってもよい。例えば、車両は、自動車、トラック、オートバイ、ボート、ヘリコプター、飛行機、および/または他の任意の好適なタイプの車両であってもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される電気化学セルは、少なくとも1つの集電体を備える。例えば、再び図1を参照すると、電気化学セル10は、カソード集電体20とアノード集電体22とを備える。集電体の材料は、いくつかの場合、金属(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、不動態化金属、および他の好適な金属)、金属化ポリマー、導電性ポリマー、その中に分散された導電性粒子を含むポリマー、および他の好適な材料から選択されてもよい。いくらかの実施形態では、集電体は、物理蒸着、化学蒸着、電気化学蒸着、スパッタリング、ドクターブレード法、フラッシュ蒸着、または選択された材料のための任意の他の好適な付着技術を用いて、電極層上に付着される。いくつかの場合、集電体は、別々に形成され、電極構造体に結合する。しかしながら、いくつかの実施形態では、電気活性層とは別個の集電体が必要とされないかもしれないことが、理解されるべきである。
【0115】
本明細書中に記載される一組の実施形態は、スラリーの形成と集電体へのスラリーの塗布(または適用)との間の期間にわたって流体のような特性を維持する電極スラリーなどの電極スラリーの形成に関する。これらのスラリーは、流体のような性質を維持しないスラリー(例えば、ゲル化および/または固化した少なくとも一部分を有するスラリー)よりも加工が容易(例えば、混合が容易、塗布が容易、均一に塗布することが容易)である場合がある。スラリーは、粒子状電気活物質および溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態において、スラリーは、バインダおよび/または1つ以上の添加剤を更に含んでもよい。スラリー内の粒子状電気活物質は、ゲル化を促進する傾向のある1つ以上の特徴(例えば、小さい平均粒径を有してもよく、ある一定量のニッケルを含んでもよい)を有していてもよいが、それでもなお、流体のような特性を有するスラリーの成分であってもよい。いくつかの実施形態において、粒子状電気活物質の表面に存在する1つ以上の反応性基(例えば、‐OH基、‐COOH基)は、スラリー形成の前に不動態化されてもよい(例えば、本明細書中に記載されるような第2の不動態化剤への曝露によって、シラン化合物への曝露によって)。
【0116】
本明細書で使用されるように、スラリーは、典型的には、常にではないが、少なくとも1つの液体成分と少なくとも1つの固体成分とを含む材料である。固体成分は、液体中に少なくとも部分的に懸濁されてもよく、および/または液体中に少なくとも部分的に溶解されてもよい。
【0117】
本明細書中に記載されるように、いくつかの実施形態において、電気化学セルはセパレータを含む。セパレータは、一般に、ポリマー材料(例えば、電解液に曝されると膨潤するポリマー材料、または膨潤しないポリマー材料)を含む。いくつかの実施形態において、セパレータは、電解質と電極との間(例えば、電解質と第1の電極との間、電解質と第2の電極との間、電解質とアノードとの間、または電解質とカソードとの間)に位置する。
【0118】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、カソードとアノードとの間に介在するセパレータを更に含んでもよい。セパレータは、アノードとカソードとを互いに分離または絶縁して短絡を防止し、アノードとカソードとの間のイオンの輸送を可能にする固体の非導電性または絶縁性の材料であってもよい。一部の実施形態では、多孔質セパレータは電解液に対して透過性であってもよい。
【0119】
セパレータの孔は、部分的または実質的に電解液で満たされていてもよい。セパレータは、セルの製造時にアノードおよびカソードに挟まれた多孔質自立膜として供給されてもよい。あるいは、多孔質セパレータ層は、例えば、Carlsonらの国際公開第99/33125号およびBagleyらの米国特許第5,194,341号に記載されているように、電極の内の一方の表面に直接塗布してもよい。
【0120】
セパレータは様々な材料で作ることができる。セパレータは、ある場合にはポリマー製であってもよいし、ある場合には無機材料(例えば、ガラス繊維ろ紙)で形成されていてもよい。好適なセパレータ材料の例としては、これらに限定されないが、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリ(ブテン-1)、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66));ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリール、ポリ(ピロメリットイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(「Kapton(登録商標)」)(「NOMEX(登録商標)」)(「KEVLAR(登録商標)」);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート));ポリアセタール;ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO));ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)、およびポリ(フッ化ビニリデン));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノテレフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT));ポリ複素環式化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノールポリマー(例えば、フェノールホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエン、シスまたはトランス-1,4-ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));および無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリアミド(例えば、ポリニトリール、およびポリ(ピロメリットイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(「Kapton(登録商標)」)(「NOMEX(登録商標)」)(「KEVLAR(登録商標)」))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0121】
セパレータは、様々な材料(例えば、セラミック)によってコーティングされてもよい。いくつかの実施形態において、セパレータはセラミックコーティングされたセパレータである。セラミックの非限定的な例としては、アルミナ、ベーマイト、および/またはシリカが挙げられる。いくつかの実施形態において、前述のポリマー材料(例えば、ポリオレフィン)を含むセパレータは、本明細書中に記載したセラミックによってコーティングされていてもよい。
【0122】
液体電解質溶媒は、ゲルポリマー電解質、即ち、半固体ネットワークを形成する1つ以上のポリマーを含む電解質の可塑剤としても有用である。有用なゲルポリマー電解質の例としては、それらに限定されないが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、パーフルオロ膜(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、それらの誘導体、それらのコポリマー、それらの架橋構造体およびネットワーク構造体、ならびにそれらのブレンド、ならびに任意選択で1種以上の可塑剤から成る群から選択される1種以上のポリマーを含むものが挙げられる。いくつかの実施形態において、ゲルポリマー電解質は、10~20体積%、20~40体積%、60~70体積%、70~80体積%、80~90体積%、または90~95体積%の不均質電解質を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、1つ以上の固体ポリマーを、電解質を形成するために使用してもよい。有用な固体ポリマー電解質の例としては、これらに限定されないが、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、それらの誘導体、それらのコポリマー、それらの架橋構造体およびネットワーク構造体、ならびにそれらのブレンドから成る群から選択される1つ以上のポリマーを含むものが挙げられる。
【0124】
電解質を形成するための当該技術分野で公知の電解質溶媒、ゲル化剤、およびポリマーに加えて、電解質は、イオン伝導性を高めるために、やはり当該技術分野で公知の1つ以上のイオン性電解質塩を更に含んでもよい。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、充電および/または放電中に、本明細書中に記載の電気化学セルに異方性力を加えることが有利になる場合がある。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される電気化学セルおよび/または電極は、それらの構造的完全性を維持しながら、適用される異方性力(例えば、セル内の電極の形態を強化するために加えられる力)に耐えるように構成されてもよい。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の電極のいずれかは、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、電気化学セル内の電極(例えば、リチウム金属および/またはリチウム合金を含むアノード)の表面(例えば、活性表面)垂直な成分を有する異方性力がセルに加えられるように構築および配置された電気化学セルの一部であってもよい。1組の実施形態では、適用される異方性力は、電極(例えば、リチウム金属および/またはリチウム合金アノードなどのアノード)の形態を強化するように選択されてもよい。
【0127】
「異方性力」は、当該技術分野における通常の意味であり、すべての方向において等しくない力を意味する。全方向に等しい力とは、例えば、物体の内部ガス圧のような流体または物質内の内部圧力である。全方向に等しくない力の例としては、例えば、テーブル上の物体が重力を介してテーブルに加える力のように、特定の方向に向けられる力が挙げられる。異方性力の別の例としては、物体の周囲に配置されたバンドによって加えられる力がある。例えば、ゴムバンドやターンバックルは、巻き付けられた物体の周囲に力を加えることができる。しかしながら、バンドは、バンドと接触していない物体の外面のいかなる部分にも直接力を加えてはならない。更に、バンドが第1の軸に沿って第2の軸よりも大きく広げられると、バンドは、第2の軸に平行に加えられる力よりも第1の軸に平行な方向に大きな力を加えることができる。
【0128】
このような場合、異方性力は、電気化学セル内の電極の表面(例えば、活性表面)に垂直な成分を含む。本明細書において、「活性表面」という用語は、電気化学反応が起こり得る電極の表面を表すために使用される。表面に対する「法線成分」を持つ力には、当業者であれば理解できる通常の意味が与えられ、例えば、少なくとも一部が表面に対して実質的に垂直な方向に作用する力が含まれる。例えば、水平なテーブルの上に物体が載り、重力の影響のみを受ける場合、物体はテーブルの表面に対して実質的に完全に垂直な方向に力を及ぼす。物体が水平なテーブルの表面を横切って横方向にも付勢されている場合、物体はテーブルに力を及ぼし、この力は水平な表面に対して完全には垂直ではないが、テーブルの表面に対して垂直な成分を含む。当業者であれば、これらの用語の他の例、特に本書の説明の中で適用される例を理解することができる。曲面(例えば、凹面または凸面)の場合、電極の表面(例えば、活性表面)に垂直な異方性力の成分は、異方性力が加えられる点において曲面に接する平面に垂直な成分に対応することが可能である。異方性力は、場合によっては、アノードの表面(例えば、活性表面)上に任意に分布する、1つ以上の予め決定された位置で加えられてもよい。いくつかの実施形態では、異方性力は、第1の電極(例えば、アノードの)の表面(例えば、活性表面)上に均一に加えられる。
【0129】
本明細書中に記載される電気化学セルの特性および/または性能測定基準のいずれかは、充電および/または放電中に(例えば、セルの充電および/または放電中に)電気化学セルに異方性力が適用されている間に、単独で、または互いに組み合わせて、達成されてもよい。いくらかの実施形態では、電極に、電気化学セルに(例えば、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に)加えられる異方性力は、電極(例えば、電気化学セル内のリチウム金属および/またはリチウム合金アノードなどのアノード)の表面(例えば、活性表面)に垂直な成分を含んでもよい。
【0130】
本明細書中に記載されるように、いくつかの実施形態において、アノードの表面は、外部から加えられる(いくつかの実施形態において、一軸)圧力の適用によって、サイクル中に強化されてもよい(例えば、リチウムの場合、リチウムの苔状または粗い表面の発生が低減または排除されてもよい)。外部から加えられる圧力は、いくつかの実施形態において、アノードを形成する材料の降伏応力よりも大きくなるように選択されてもよい。例えば、リチウムを含むアノードの場合、セルは、少なくとも約8kgf/cm、少なくとも約9kgf/cm、少なくとも約10kgf/cm、少なくとも約20kgf/cm、少なくとも約30kgf/cm、少なくとも約40kgf/cm、または少なくとも約50kgf/cmの圧力を規定する成分を有する外部から加えられる異方性力下にあってもよい。これは、リチウムの降伏応力が約7~8kgf/cmであるからである。従って、この値よりも大きな圧力(例えば、一軸圧力)では、苔状のLi、または表面粗さが少しでも低減または抑制される可能性がある。リチウムの表面粗さは、それを押し付けている表面を模倣する可能性がある。従って、少なくとも約8kgf/cm、少なくとも約9kgf/cm、少なくとも約10kgf/cm、少なくとも約20kgf/cm、少なくとも約30kgf/cm、少なくとも約40kgf/cm、または少なくとも約50kgf/cmの外部から加えられる圧力下でサイクルを行う場合、押圧面が滑らかであると、リチウム表面はサイクルを行うことでより滑らかになる可能性がある。本明細書中に記載されているように、カソードとアノードの間に配置される適切な材料を選択することによって、押圧面を変更することができる。
【0131】
本明細書中に記載されるように、充電および/または放電中に加えられる異方性力は、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて加えられてもよい。いくつかの実施形態では、力は、圧縮バネを用いて加えられてもよい。力は、これらに限定されないが、Bellevilleワッシャー、機械ネジ、空気圧装置、および/または重りなどを含む他の要素(封じ込め構造体の内側または外側のいずれか)を用いて加えてもよい。場合によっては、セルは封じ込め構造体に挿入される前にあらかじめ圧縮され、封じ込め構造体に挿入されると膨張してセルに正味の力を発生させる。このような力を加えるための好適な方法は、例えば米国特許第9,105,938号明細書に詳細に記載されており、参照によりその全体が本明細書中に援用される。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される電気化学セルは、リチウム金属に対して適度な電圧を有する電気活物質(例えば、本明細書中に記載される電気化学セルのカソードにおけるカソード活性電極種)を有する第2の電極を含むように設計される。リチウム金属に対する電気活物質の電圧は、まず、電気活物質とリチウム金属とを含む電気化学セルをC/5の速度で少なくとも4回(例えば、5回、6回、8回、10回)サイクルを行い、次いで、電気化学セルをC/5の速度で放電し、セルの放電としての電圧を測定することによって測定することができる。次いで、放電プロセスにわたって測定された平均電圧が決定され、この値がリチウム金属に対する電圧とみなされる。いくつかの実施形態において、第2の電極内の電気活物質は、2.8V以上、3V以上、3.2V以上、3.4V以上、3.6V以上、3.8V以上、4.0.V以上、4.2V以上、または4.4V以上のリチウム金属に対する電圧を有する。2V以上、または4.4V以上である。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、4.5V以下、4.2V以下、4.0V以下、3.8V以下、3.6V以下、3.4V以下、3.2V以下、または3V以下のリチウム金属に対する電圧を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2.8V以上4.5V以下)。他の範囲も可能である。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の電気化学セルは、リチウム金属に対して適度な開回路電圧を有する電気活物質(例えば、本明細書中に記載の電気化学セルのカソードにおけるカソード活性電極種)を有する第2の電極を含むように設計される。リチウム金属に対する電気活物質の開回路電圧は、電気活物質とリチウム金属を含むバッテリをその容量の半分まで充電したときの開回路電圧を決定することによって測定されてもよい。これは、まずバッテリのサイクルを行うことによって、バッテリの容量を決定することによって達成されてもよい。次いで、バッテリをその測定容量の半分まで充電し、2分間休止させてもよい。これらの工程の後、開回路電圧を測定してもよい。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、2.8V以上、3V以上、3.2V以上、3.4V以上、3.6V以上、3.8V以上、4.0V以上、4.2V以上、または4.4V以上のリチウム金属に対する開回路電圧を有する。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、4.5V以下、4.2V以下、4.0V以下、3.8V以下、3.6V以下、3.4V以下、3.2V以下、または3V以下のリチウム金属に対する開回路電圧を有する。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、2.8V以上4.5V以下)。その他の範囲も可能である。
【0134】
リチウムに対するそれらの電圧および開回路電圧以外の電気活物質(例えば、第2の電極用)の特性も、いくつかの実施形態において、関連する可能性がある。例えば、いくつかの実施形態において、電気化学セルは、充電および/または放電中のサイクル寿命の関数として、リチウムに関する電圧の値に1つ以上のプラトー(または平坦部)を示す電気活物質(例えば、本明細書中に記載される電気化学セルのカソードにおけるカソード活性電極種)を含む第2の電極を含んでもよく、プラトーの値は、リチウム金属に関する物質の電圧に関連する1つ以上の前述の値であってもよい。本明細書で使用されるように、電気活物質は、充電および/または放電手順の少なくとも一部の間、リチウムに対して一定または実質的に一定の電圧(例えば、10%以下、または5%以下で変化する)を示す場合に、プラトー(即ち、プラトー電圧)を示す。電気活物質に対してプラトーが発生する電圧(即ち、プラトー電圧)は、リチウム金属に対する電気活物質の電圧を決定するために使用されるのと同じ手順を採用し、プラトーと一致する領域が観察されるかどうかを評価し、存在する場合にはそれらの領域の平均電圧を決定することによって決定してもよい。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、2.8V以上、3V以上、3.2V以上、3.4V以上、3.6V以上、3.8V以上、4.0V以上、4.2V以上、4.4V以上のリチウム金属に対するプラトー電圧を有する。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、4.5V以下、4.2V以下、4.0V以下、3.8V以下、3.6V以下、3.4V以下、3.2V以下、または3V以下のリチウム金属に対するプラトー電圧を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2.8V以上4.5V以下)。他の範囲も可能である。
【0135】
別の例として、電気化学セルは、通常の動作条件下で5V未満、4.5V未満、4V未満、または3.5V未満に充電するのに適した電気活物質を含む第2の電極を含んでもよい(例えば、第2の電極を例えば5V、4.5V、4V、または3.5V以上にそれぞれ充電する場合、典型的には濫用(abuse)試験とみなされ、製造者によって推奨されず、および/または安全上の懸念が出てくる)。
【0136】
いくつかの実施形態では、リチウム金属電極を含むセルにおける充電および/または放電プロセス中に測定される1つ以上の電圧(例えば、最大電圧、最小電圧、中央値電圧、モード電圧)は、平均電圧に関連して、1つ以上の前述の値を有してもよい。いくつかの実施形態において、第2の電極内の電気活物質は、2.8V以上、3V以上、3.2V以上、3.4V以上、3.6V以上、3.8V以上、4.0V以上、4.2V以上、または4.4V以上のリチウム金属に対する最大電圧を有する。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、4.5V以下、4.2V以下、4.0V以下、3.8V以下、3.6V以下、3.4V以下、3.2V以下、または3V以下のリチウム金属に対する最大電圧を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2.8V以上4.5V以下)。他の範囲も可能である。
【0137】
いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、2.8V以上、3V以上、3.2V以上、3.4V以上、3.6V以上、3.8V以上、4.0V以上、4.2V以上、4.4V以上のリチウム金属に対する最小電圧を有する。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、4.5V以下、4.2V以下、4.0V以下、3.8V以下、3.6V以下、3.4V以下、3.2V以下、または3V以下のリチウム金属に対する最小電圧を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2.8V以上4.5V以下)。他の範囲も可能である。
【0138】
いくつかの実施形態において、第2の電極内の電気活物質は、2.8V以上、3V以上、3.2V以上、3.4V以上、3.6V以上、3.8V以上、4.0V以上、4.2V以上、または4.4V以上のリチウム金属に対する中央値(median)電圧を有する。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、4.5V以下、4.2V以下、4.0V以下、3.8V以下、3.6V以下、3.4V以下、3.2V以下、または3V以下のリチウム金属に対する中央値電圧を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2.8V以上4.5V以下)。他の範囲も可能である。
【0139】
いくつかの実施形態において、第2の電極内の電気活物質は、2.8V以上、3V以上、3.2V以上、3.4V以上、3.6V以上、3.8V以上、4.0V以上、4.2V以上、または4.4V以上のリチウム金属に対するモード(modal)電圧を有する。いくつかの実施形態では、第2の電極内の電気活物質は、4.5V以下、4.2V以下、4.0V以下、3.8V以下、3.6V以下、3.4V以下、3.2V以下、または3V以下のリチウム金属に対するモード電圧を有する。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2.8V以上4.5V以下)。その他の範囲も可能である。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される電気化学セルには更なる層が存在してもよい。いくつかの実施態様では、図1のアノード12と電解質14との間に、1つ以上の介在層(例えば、イオン伝導性層)が存在してもよい。一組の実施形態では、イオン伝導性層(例えば、単一イオン伝導性層)は、電気化学セル内の(電解質内の)1つ以上の望ましくない成分からアノード電気活物質層を保護する形状または構造を有してよい。いくつかのそのような実施形態において、アノード電気活物質層は、イオン伝導性層によって少なくとも部分的に封入されていてもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、イオン伝導性層は、様々な適切な方法のいずれかによって形成されてもよく、様々な適切な材料のいずれかを含んでよい。いくつかの方法は、エアロゾル沈着法によってイオン伝導性層を形成することに関する。エアロゾル沈着法は当該技術分野で知られており、一般に、粒子(例えば、無機粒子、ポリマー粒子)を表面上に比較的高速で付着(例えば、噴霧)させることを含む。本明細書中に記載されるようなエアロゾル沈着は、一般に、複数の粒子の少なくとも一部の衝突および/または弾性変形をもたらす。いくつかの態様において、エアロゾル沈着は、複数の粒子の少なくとも一部と複数の粒子の少なくとも別の部分との融着を引き起こすのに十分な条件下(例えば、速度を用いて)で実施され得る。例えば、いくつかの実施形態において、複数の粒子は、複数の粒子の少なくとも一部が融着する(例えば、保護層の一部および/または保護層の副層(またはサブレイヤー)を形成する)ように、比較的高い速度で電気活物質(および/またはその上に配置された任意の副層)上に付着される。粒子の融着に必要な速度は、粒子の材料組成、粒子のサイズ、粒子のヤング率、および/または粒子もしくは粒子を形成する材料の降伏強度などの要因に依存する場合がある。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるイオン伝導性層は、無機材料を含む。無機材料は、セラミック材料(例えば、ガラス、ガラス‐セラミック材料)を含んでよい。無機材料は、結晶性、非晶質、または部分的に結晶性および部分的に非晶質であってもよい。いくつかの実施形態では、イオン伝導層はLixMPySzを含む。このような無機材料の場合、x、yおよびzは整数(例えば、32未満の整数)であってもよく、および/またはMはSn、Ge、および/またはSiを含んでよい。一例として、無機材料は、Li22SiP18、Li24MP19(例えば、Li24SiP19)、LiMP12(例えば、M=Sn、Ge、Si)、および/またはLiSiPSを含んでよい。好適な無機材料の更なる例としては、ザクロ石、硫化物、ホスフェート、ペロブスカイト、抗ペロブスカイト、他のイオン伝導性無機材料および/またはそれらの混合物が挙げられる。LixMPySz粒子がそのイオン伝導性層に採用される場合、それらは、例えば、原料成分LiS、SiSおよびP(または代替的にLiS、Si、SおよびP)を使用して形成されてもよい。
【0143】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載のイオン伝導性層は、リチウム、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、スズ、バナジウム、ジルコニウム、マグネシウム、および/またはインジウムの酸化物、窒化物、および/または酸窒化物、および/またはそれらの合金を含む。好適な酸化物の非限定的な例としては、LiO、LiO、LiO、Rが希土類金属であるLiRO(例えば、リチウムランタン酸化物)、リチウムチタン酸化物、Al、ZrO、SiO、CeO、およびAlTiOが挙げられる。採用され得る好適な材料の更なる例としては、硝酸リチウム(例えば、LiNO)、ケイ酸リチウム、ホウ酸リチウム(例えば、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム、ジフルオロ(シュウ酸)ホウ酸リチウム)、アルミン酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム(例えば、LiPO、LiPO)、酸窒化リチウムリン、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、リチウムフルオライド(例えば、LiF、LiBF、LiAlF、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiSiF、LiSOF、LiN(SOF)、LiN(SOCF))、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムホスホスルフィド、オキシスルフィド(例えば、リチウムオキシスルフィド)、および/またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、複数の粒子は、Li-Al-Ti-PO(LATP)を含む。
【0144】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるイオン伝導性層は、少なくとも部分的に融着した複数の粒子、および/またはエアロゾル沈着によって付着した粒子を示す構造を有する複数の粒子が無機材料を含む。例えば、少なくとも部分的に融着した複数の粒子、および/またはエアロゾル沈着によって付着した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、無機材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも部分的に融着した複数の粒子、および/またはエアロゾル沈着によって付着した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、2種類以上の無機材料を含む。複数の粒子は、前述の任意の適切な材料を含んでよい。
【実施例
【0145】
以下の実施例および比較例において、セルは以下の方法で作製した。アノードは、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に配置された集電体としての200nmのCu上に配置された真空蒸着Li(VDLi)(厚さ約15~25μm)、またはRockwood Lithium社から市販されているLi箔(2mil)(厚さは1mil/カソード)のいずれかであった。VDLiはCOによる不動態化の程度が異なり、HP VDLiまたはLP VDLiと表記した。不動態化の程度は、Konica Minolta Color Reader CR-10 Plus 10.01575、L色空間によって測定されたリチウム外観の明度によって示された。一般的に、Liは重不動態化(heavily passivated)とみなされ、Lが40未満の場合はHP VDLiと表記され、Lが60を超える場合は、Liは低不動態化(less passivated)とみなされ、LP VDLIと表記された。Lの色空間が40~60の範囲内であれば通常の不動態化Liとみなし、VDLiと表記した。
【0146】
使用した多孔質セパレータは、25μmのポリオレフィン(Celgard 2325)または9μmのポリエチレン(Entek EP)であり、使用したカソードには、12~20μmのアルミニウム基板にコーティングしたNCM622、NCM721、またはNCM811が含まれ、ACMの担持量は約19.3~22mg/cm/面であった。上記のコンポーネントは、アノード/セパレータ/カソード/セパレータ/アノードの積層3層構造で組み立てられた。総活性カソード表面積は100cmであった。セルコンポーネントをホイルパウチに密封した後、0.5mLから0.55mLの適切な電解質を加えた。次いで、セルパッケージを真空シールした。これらのセルを24~72時間無拘束で電解液に浸漬し、次いで10~12kg/cmの圧力を加えた。特に断りのない限り、すべてのセルをこのような圧力下でサイクルを行った。すべてのセルは、特に断りのない限り、最初の3サイクルは、C/12(30mA)まででカットオフされた4.35Vの充電電圧でサイクルを行い、3mAまで徐々に下げて、C/3(120mA)で放電した。後続の充放電サイクルは、特に断りのない限り、以下の条件で行った:0.2C(75mA)で4.35Vまで充電し、次いで4.35Vで3mAまで徐々に下げて、0.8C(300mA)で3.2Vまで放電した。
【0147】
以下の実施例および比較例において、サイクル中の電気化学セルの放電容量を測定するために使用した具体的な手順は以下の通りである。まず、セルを、メーカー指定の電流および電圧を供給できるバッテリ・サイクラー・チャンネル(Maccor、ArbinまたはBitrode社など)に接続した。セルをまず推奨電流(例えばCレート)で推奨電圧(例えば3.2V)まで放電し、次いで、5分間休止させた。次いで、推奨電流(例えばC/4)で推奨電圧(例えば4.35V)まで充電し、電流が特定の値(例えばC/20)まで減衰するまで推奨電圧(例えば4.35V)を維持し、再び5分間休止させた。休止時の電圧(V)は、この5分間の休止の終わりに測定された。次いで、セルを推奨電流(例えば、Cレート)で推奨電圧(例えば、3.2V)まで再び放電させた。この放電開始5分後に電圧(V)が測定された。
【0148】
放電容量Cは、以下の式(1):
C=Idch・t (1)
に従って、電流Idchにサイクル後に放電電圧カットオフに達するまでの時間tを乗じることによって計算することができる。
放電抵抗R(例えば、5分間放電抵抗)は、以下の式(2):
R=(V-V)/Idch (2)
(式中、Vは放電前の休止終了時の電圧であり、Vは放電開始5分後に測定された電圧であり、Idchは放電電流(A)である。)
を用いて計算することが可能である。前述の手順に従ってサイクルを続けると、放電容量と放電抵抗が後続の各サイクルについて計算された。特に断りのない限り、すべてのセルは室温でサイクルを行った。
【0149】
(実施例1~5および比較例1~5)
これらの実施例および比較例は、圧力適用下で形成されたLiFリッチSEI層を含むセルのサイクル寿命を、圧力適用のないその他の点では同等のセルと比較した。
【0150】
以下の実施例および比較例において、セルは、前述の方法によって作製され、組み立てられ、サイクルを行った。具体的には、アノードは、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に配置された集電体としての200nmのCu上に配置された真空蒸着Li(HP VDLi)(厚さ約15~25μm)であった。使用したカソードは、ACMの担持量は約19.3~22mg/cm/面で、12~20μmのアルミニウム基板上にコーティングしたNCM811であった。セルの具体的な構成要素と特性を表1に示す。
【0151】
(比較例1)上記のセルは、フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)の重量比1:1.5:1.5の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて作製した。電解液溶媒混合物には、更に1重量%のLiBOBが含まれていた。このセルは、圧力適用下でのサイクルは行わなかった。
【0152】
(比較例2)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC):酢酸メチル(MA)の重量比1:2:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。電解質溶媒混合物は、更に1重量%のLiBOBを含んでいた。このセルは、圧力適用下でのサイクルは行わなかった。
【0153】
(比較例3)フルオロエチレンカーボネート(FEC):エチルメチルカーボネート(EMC):酢酸メチル(MA)の重量比1:2:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。この電解質溶媒混合物には、更に1重量%のLiBOBが含まれていた。このセルは、圧力適用下でのサイクルは行わなかった。
【0154】
(比較例4)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC):酢酸エチル(EA)の重量比1:2:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。この電解質溶媒混合物には、更に1重量%のLiBOBが含まれていた。このセルは、圧力適用下でのサイクルは行わなかった。
【0155】
(比較例5)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:3の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。電解液の溶媒混合物には、更に1重量%のLiBOBが含まれていた。このセルは、圧力適用下でのサイクルは行わなかった。
【0156】
(実施例1)電気化学セルは、実施例1のセルを圧力適用下でサイクルを行った以外は、比較例1のセルと同一であった。
【0157】
(実施例2)電気化学セルは、実施例2のセルを圧力適用下でサイクルを行った以外は、比較例2のセルと同一であった。
【0158】
(実施例3)電気化学セルは、実施例3のセルを圧力適用下でサイクルを行った以外は、比較例3のセルと同一であった。
【0159】
(実施例4)電気化学セルは、実施例4のセルを圧力適用下でサイクルを行った以外は、比較例4のセルと同一であった。
【0160】
(実施例5)電気化学セルは、実施例5のセルを圧力適用下でサイクルを行った以外は、比較例5のセルと同一であった。
【0161】
【0162】
圧力適用がサイクル寿命に及ぼす影響
LiFリッチSEI層(比較的高い配合量のLiFを含むSEI層)を含む電気化学セルのサイクル寿命に及ぼす圧力適用の影響を調べた。図4図8Aは、様々な電解質系について、圧力を加えたセル(実施例1~5)と圧力を加えないセル(比較例1~5)とを比較したサイクル数の関数としての放電容量を示す。表1に示すように、圧力を加えることの有無にかかわらず、サイクルを行った両方のセルのサイクル中のFEC劣化の結果として、LiFリッチSEI層が形成された。図示されるように、圧力適用下で形成されたLiFリッチSEI層を含むセルは、圧力を加えずに形成されたLiFリッチSEI層を含むセルと比較して、(図4図8Aに示されるように)より長いサイクル寿命を示した。電解質(例えば、FEC)の劣化に関連する付加的な無機材料(例えば、LiO)も、実施例1~5のSEI層において観察された。
【0163】
図4図8Aに示すように、不動態化剤(例えば、LiBOB)の存在下では、圧力を加えないセル(比較例1~5)のサイクル寿命は約20~50サイクルであったが、12kg/cmの圧力下でサイクルを行ったセルのサイクル寿命は250サイクルを超えた。このように、圧力を加えずに形成されたLiFリッチSEI層を含むセルは、圧力を加えて形成されたLiFリッチSEI層を含むセルを大幅に下回った。この結果は、圧力を加えることによりサイクリング中のSEI成長をin‐situで制御し、その結果、セルサイクルの寿命が延びたことを示唆した。
【0164】
サイクル中に成長し続ける抵抗性SEIの形成は、分極の蓄積に起因するセルの故障につながる主な原因の一つであった。サイクル中の抵抗性SEIのin‐situ形成への圧力適用の影響を調べるために、式(2)に従って、放電抵抗(即ち、5分間の放電抵抗)を実施例5について計算し、比較例5の放電抵抗と比較した。図8Bは、圧力を加えたセルと加えないセルの5分間放電抵抗を、それぞれのセルの充放電の5サイクル目における5分間放電抵抗に対して正規化したものである。図8Bに示すように、圧力を加えたセル(実施例5)は、圧力を加えていないセル(比較例5)に比べて、5分間放電抵抗の増加が緩やかであった。この結果は、サイクル中の圧力適用がSEI抵抗の成長を抑制し、従ってセルの分極蓄積を遅らせ、サイクル性能を約20サイクル(比較例5)から約250サイクル(実施例5)までかなり増加させたことを示唆した。
【0165】
(実施例6および比較例6~10)
これらの実施例および比較例は、LiFリッチSEI層を含むセルのサイクル寿命を、LiFリッチSEI層を含まず、その他の点では同等のセルと比較したものである。
【0166】
以下の実施例および比較例において、セルは、前述の方法によって作製し、組み立て、およびサイクルを行った。具体的には、アノードは、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に配置された集電体としての200nmのCu上に配置された真空蒸着Li(HP VDLi)(厚さ約15~25μm)であった。使用したカソードは、ACMの担持量約19.3~22mg/cm/面で、12~20μmのアルミニウム基板上にコーティングしたNCM811であった。セルの具体的な構成要素と特性を表2に示す。
【0167】
(比較例6)上記のセルは、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)(BASF社LP57)の重量比3:7の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて作製した。
【0168】
(比較例7)エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)(BASF社LP47)の3:7の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記セルを作製した。
【0169】
(比較例8)エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)の重量比1:1の電解質溶媒混合物(BASF社LP50)中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記セルを作製した。
【0170】
(比較例9)エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)(BASF社LP40)の重量比1:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記セルを作製した。
【0171】
(比較例10)エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:1の重量比の電解質溶媒混合物(BASF社LP30)中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記セルを作製した。
【0172】
(実施例6)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:4の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。
【0173】
【0174】
図9に示すように、EC系の電解質を含むセル(比較例6~10)は、サイクル中の圧力適用下でも、約30~110サイクル(定格容量の80%)の寿命を示し、FECを共溶媒として用いたセル(実施例6)を大幅に下回った。図示されるように、電解質混合物中の共溶媒としてFECを含むセルは、約190サイクルのサイクル寿命を示し、比較例6~10のセルでは形成されなかったLiFリッチSEI層(比較的高い配合量のLiFを含むSEI層)の形成を示した(表1)。この結果は、無機リッチSEI層(例えば、LiF)の形成が、Li金属セルのサイクル寿命を向上させるために重要であることを示した。LP30、LP40、LP50、LP47、およびLP57は、Liイオンバッテリに一般的に使用される標準的な電解質であることに留意すべきである。
【0175】
(実施例7および比較例11~15)
これらの実施例および比較例は、電気化学セルのサイクル寿命に対する圧力適用、添加剤、カソードタイプ、およびフッ素系電解質溶媒(例えば、FEC)の個々の影響を比較したものである。
【0176】
以下の実施例および比較例では、前述の方法でセルを作製し、組み立て、サイクルを行った。具体的には、アノードは、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に配置された集電体としての200nmのCu上に配置された真空蒸着Li(HP VDLiまたはLP VDLi)(厚さ約15~25μm)であった。使用したカソードは、12~20μmのアルミニウム基板上に、ACMの担持量約19.3~22mg/cm/面でコーティングしたNCM622であった。セルの具体的な構成要素と特性を表3に示す。
【0177】
(比較例11)上記のセルは、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)(BASF社LP30)の重量比1:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて作製した。このセルは、圧力適用下でのサイクルは行わなかった。
【0178】
(比較例12)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:4の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記セルを作製した。このセルは、圧力適用下でのサイクルは行わなかった。
【0179】
(比較例13)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:4の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記セルを作製した。この電解質溶媒混合物には、更に1重量%のLiBOBが含まれていた。このセルは、圧力適用下でのサイクルは行わなかった。
【0180】
(比較例14)エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)(BASF社LP30)の重量比1:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。このセルを圧力適用下でサイクルを行った。
【0181】
(比較例15)フルオロエチレンカーボネート(FEC):エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:10:10の電解質溶媒混合物(4重量%のFECを有するBASF社LP30)中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。このセルを圧力適用下でサイクルを行った。
【0182】
(実施例7)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:4の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記セルを作製した。このセルを圧力適用下でサイクルを行った。
【0183】
【0184】
図10に示すように、圧力を加えずにサイクルを行ったセル(比較例11~13)は、LiFリッチSEIの存在下およびLiBOB添加剤の存在下であっても、サイクル寿命が限られていた。Li金属セルにおける圧力適用の欠如に起因するこの劣悪なサイクル性能は、セルのカソードタイプ、例えば、比較例11~13のNCM622または比較例1~5のNCM811に関係なく観察された。
【0185】
更に、図11に示すように、電解質中に4%のFECを含有するセル(比較例15)は、電解質中にFECを含有しないセル(比較例14)と比較してわずかに改善されたサイクル性能を示したものの、表3によれば、LiFリッチSEI層の形成をもたらすより高い配合量のFECを含むセル(実施例7)を依然としてかなり下回っていた。更に、図11は、カソードNCM622およびLi金属(LP VDLI)を有するセルについて、LiFリッチSEI層および圧力適用の組み合わせが、セルサイクル中に蓄積される分極を遅くするため、電気化学セルのサイクル寿命の向上をもたらしたことを示している。
【0186】
(実施例8~16)
これらの実施例は、LiFとLiCOリッチのSEI層を含むセルのサイクル寿命を、LiFのみリッチのSEI層を含み、その他の点では同等のセルと比較したものである。
【0187】
以下の実施例および比較例において、セルは、前述の方法によって作製し、組み立て、サイクルを行った。具体的には、使用したアノードは、Rockwood Lithium社から市販されているLi箔(2mil)を(厚さは1mil/カソード)。使用したカソードは、ACMの担持量約19.3~22mg/cm/面で、12~20μmのアルミニウム基板にコーティングしたNCM811であった。セルの具体的な構成要素と特性を表4に示す。
【0188】
(実施例8)上記のセルは、フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:4の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて作製した。このセルの化成電圧は4.35Vであった。
【0189】
(実施例9)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:4の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記のセルを作製した。このセルの化成電圧は4.6Vであった。
【0190】
(実施例10)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:4の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記のセルを作製した。このセルの化成電圧は4.7Vであった。
【0191】
(実施例11)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:4の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記のセルを作製した。セルの化成電圧は4.4Vであった。電解質溶媒混合物は、更に1重量%のLiBOBを含んでいた。
【0192】
(実施例12)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:4の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記のセルを作製した。セルの化成電圧は4.6Vであった。電解質溶媒混合物は、更に1重量%のLiBOBを含んでいた。
【0193】
(実施例13)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:3の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。このセルの化成電圧は4.35Vであった。
【0194】
(実施例14)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:3の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記のセルを作製した。このセルの化成電圧は4.6Vであった。
【0195】
(実施例15)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:3の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記のセルを作製した。セルの化成電圧は4.4Vであった。電解質溶媒混合物は、更に1重量%のLiBOBを含んでいた。
【0196】
(実施例16)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の1:3の重量比の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて、上記のセルを作製した。セルの化成電圧は4.7Vであった。電解質溶媒混合物には、更に1重量%のLiBOBが含まれていた。
【0197】
【0198】
実施例8~10では、化成電圧を高くした場合の影響を調べた。表4に示すように、化成電圧を高くすると、LiFに加えてLiCOリッチ無機SEI層が形成された(実施例9~10)。LiFおよびLiCOリッチのSEI層は、LiFおよびLiCOを比較的高い配合量で含んでいた。更に、図12Aに示すように、より高い化成電圧は、更に、350サイクルを超えるセルサイクル性能の増加をもたらした(実施例10)。より高い化成電圧におけるセルサイクル性能の同様の増加は、より高いFEC含有量を有する電解質を有するセルにおいて観察された(図14に示されるような、実施例13~14)。
【0199】
サイクル中の抵抗性SEIのin‐situ形成への高い化成電圧の影響を調べ、図12Bに示した。放電抵抗(即ち、5分間の放電抵抗)が、実施例8~10について計算された。図12Bは、それぞれのセルの5サイクル目の5分間放電抵抗に対して正規化したセルの5分間放電抵抗をプロットしたものである。図示されるように、高い化成電圧を有するセル(実施例10)は、低い化成電圧を有するセル(実施例8)と比較して、サイクル時に5分間放電抵抗の緩慢な増加を示した。これは、高い化成電圧の印加が、SEI層のin‐situ形成に影響を与え、SEI抵抗の成長を抑制したことを示唆している。その結果、図12Aに示すように、4.7V形成(実施例10)を行ったセルのサイクル性能は、通常の4.35V形成(実施例8)を行ったセルと比較して100サイクルを超えて向上した。
【0200】
高い化成電圧に加えて添加剤(LiBOB)の影響を調べ、図13に示した。図示されるように、LiBOBを用いた高電圧(4.6V)でのサイクル性能は、サイクル寿命を350サイクルまで更に改善した(実施例12)。より高い化成電圧におけるLiBOBを用いたセルサイクル性能の同様の増加は、より高いFEC含有量を有する電解質を用いるセルにおいて観察された(図15に示すような実施例15~16)。
【0201】
これらの実施例は、より高い化成電圧(例えば、4.4、4.6および4.7V)で発生したCOによるin‐situのLi不動態化が、SEI層の無機含有量を増加させたことを実証した。このようなSEI層の高い無機化合物含有量(LiFおよびLiCO)は、圧力適用によるSEI成長のin‐situ制御とともに、FECおよびより高い化成電圧からもたらされ、セルインピーダンスの蓄積を著しく抑制し、サイクル性能を大幅に改善した。
【0202】
(実施例17~20)
これらの実施例は、様々な温度(例えば、0℃、室温(RT))および様々な化成電圧における、アセテート系の電解質共溶媒を含むセルのサイクル寿命を示している。
【0203】
以下の実施例および比較例において、セルは、前述した方法によって作製、組み立て、およびサイクルを行った。具体的には、カソードは、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に配置された集電体としての200nmのCu上に配置された真空蒸着Li(HP VDLi)(厚さ約15~25μm)であった。アノードには、12~20μmのアルミニウム基板上にコーティングしたNCM811を使用し、ACMの担持量は約19.3~22mg/cm/面であった。セルの具体的な構成要素と特性を表5に示す。
【0204】
(実施例17)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC):酢酸メチル(MA)の重量比1:2:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記のセルを作製した。このセルの化成電圧は4.35Vであり、室温でサイクルを行った。
【0205】
(実施例18)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC):酢酸メチル(MA)の重量比1:2:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記セルを作製した。このセルの化成電圧は4.6Vであり、室温でサイクルを行った。
【0206】
(実施例19)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC):酢酸メチル(MA)の重量比1:2:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記セルを作製した。このセルの化成電圧は4.35Vで、0℃でサイクルを行った。
【0207】
(実施例20)フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC):酢酸メチル(MA)の重量比1:2:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて上記のセルを作製した。セルの化成電圧は4.6Vで、0℃でサイクルを行った。
【0208】
【0209】
高い化成電圧がサイクル寿命に及ぼす影響を実施例17~18で調べ、図16に示した。図示されるように、4.6Vでの高い化成電圧(実施例18)は、LiFおよびLiCOリッチSEI層を含み、共溶媒として酢酸メチル(MA)を含む室温でサイクルを行ったセルのサイクル寿命の増加をもたらした。LiFおよびLiCOリッチSEI層を含み、共溶媒としてMAを含む0℃でサイクルを行ったセルにおいて、4.6Vでより高い化成電圧に対して同様のプラスの効果(例えば、サイクル寿命の増加)が示された(図17の実施例19~20)。
【0210】
(実施例21~22および比較例16~17)
これらの実施例は、LiFSIとLiFリッチSEI層とを含むセルのサイクル寿命を、圧力を加えてサイクルを行った場合と、圧力を加えずにサイクルを行った場合とで比較したものであり、他の要因は全て同じである。
【0211】
以下の実施例および比較例において、セルを、前述の方法によって作製し、組み立て、サイクルを行った。具体的には、アノードは、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に配置された集電体としての200nmのCu上に配置された真空蒸着Li(HP VDLi)(厚さ約15~25μm)であった。使用したカソードは、ACMの担持量約19.3~22mg/cm/面で、12~20μmのアルミニウム基板上にコーティングしたNCM811であった。セルの具体的な構成要素と特性を表6に示す。
【0212】
(比較例16)上記のセルは、フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:4の電解質溶媒混合物中に0.8MのLiFSIを含む電解質を用いて作製した。セルは、圧力を加えた状態ではサイクルを行わなかった。電解質溶媒混合物は更に、1重量%のLiBOBを含んでいた。
【0213】
(比較例17)上記のセルは、フルオロエチレンカーボネート(FEC):エチルメチルカーボネート(EMC)の重量比1:3の電解質溶媒混合物中に0.8MのLiFSIを含む電解質を用いて作製した。セルは、圧力を加えた状態ではサイクルを行わなかった。電解質溶媒混合物は更に、1重量%のLiBOBを含んでいた。
【0214】
(実施例21)電気化学セルは、実施例21のセルを加圧下でサイクルを行ったことを除いて、比較例16のセルと同一であった。
【0215】
(実施例22)電気化学セルは、実施例22のセルを加圧下でサイクルを行ったことを除いて、比較例17のセルと同一であった。
【0216】
【0217】
これらの実施例は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)系の電解質において、FEC溶媒によって生成される無機(例えば、LiF)リッチのSEI層、および圧力の適用がサイクル性能の向上をもたらすことを実証した(例えば、図18図19に示す実施例21および22)。この傾向は、塩としてLiPFを使用した前の実施例(実施例1~20)と一致した。
【0218】
図18図19に示されるように、各実施例および比較例におけるSEI層は、FECの存在による無機化合物(例えば、LiFリッチの)の形成を示した。しかしながら、圧力を加えなかったセルは概して20サイクル未満であり、250サイクルを超える12kg/cmの圧力下でサイクルを行ったセル(実施例21~22)をかなり下回った。この結果は、圧力によるSEI成長のin‐situ制御が、LiFSI系の電解質において重要であることを示唆した。
【0219】
更に、これらのLiFSIをセルに使用した場合、有望な結果が観察された。Al腐食を引き起こすことが知られている塩であるLiFSIは、通常、Al腐食を防ぐために、Al腐食防止剤であるLiPFとの共塩として使用される。しかしながら、実施例21~22の結果が示すように、LiFSIを単塩として用いた場合でも、Al腐食は抑制された。LiFSIを電気化学セル内で単塩として使用すると、その高い熱安定性により高温用途に有利となる可能性がある。
【0220】
(実施例23)
この実施例では、電気化学セル内に形成されたSEI層の物理的特性を示す。
【0221】
セルは、前述の方法によって作製し、組み立て、サイクルを行った。具体的には、使用したアノードは、Rockwood Lithium社から市販されているLi箔(2ミル)であった(厚さは1ミル/カソード)。使用した多孔質セパレータは25μmのポリオレフィン(Celgard 2325)で、使用したカソードにはACM担持量約19.3~22mg/cm/面で12~20μmのアルミニウム基板上にコーティングされたNCM622を
含む。上記の構成要素を、アノード/セパレータ/カソード/セパレータ/アノードの積層3層構造に組み立てた。セルは、フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:4の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて作製された。電解質溶媒混合物は更に、1重量%のLiBOBを含んでいた。
【0222】
最初の3回の形成サイクルでは、セルを30mAで4.35Vまで充電し、10mAまで徐々に下げて、120mAで放電した。次いでの充電および放電サイクルは、次の条件で実行された。200mAで4.35Vまで充電し、10mAまで徐々に下げて、次いで、800mA、1秒のパルス放電を行い、各パルス間に3秒の休止を挟み、電圧が3.2Vに達するまで行った。カットオフは定格容量の60%であった。圧力を加えながらセルにサイクルを行った。
【0223】
SEIのSEM/EDS特性評価を行った(図20A図20B)。サイクルを行ったアノードを寿命が終了したセル(123サイクルの充電と放電後)から回収し、炭酸ジメチルで濯ぎ、SEM/EDSで分析した。図示されるように、図20A図20Bは、異なる原子含有量を有する2つの領域、即ちセパレータに隣接するSEI層の第1の領域と、アノードに隣接するSEI層の第2の領域とを含むSEI層の存在を示し、セパレータに隣接するSEI層の第1の領域は、フッ素原子リッチである。更に、図20Cは、セパレータに隣接するSEI層の部分がナノサイズの粒子を含んでいることを示している。
【0224】
(実施例24)
この実施例では、電気化学セル内に形成されたSEI層の化学組成を示す。
【0225】
セルは、前述の方法によって作製し、組み立て、サイクルを行った。具体的には、アノードは、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に配置された集電体としての200nmのCu上に配置された真空蒸着Li(HP VDLi)(厚さ約20μm)であった。使用した多孔質セパレータは9μmポリエチレン(Entek EP)であり、使用したカソードは、ACM担持量約19.3~22mg/cm/面で12~20μmアルミニウム基板上にコーティングされたNCM721であった。上記の構成要素を、アノード/セパレータ/カソード/セパレータ/アノードの積層3層構造に組み立てた。セルは、フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:4の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて作製された。電解質溶媒混合物は更に、1重量%のLiBOBを含んでいた。
【0226】
最初の3回の形成サイクルでは、セルを30mAで4.4Vまで充電し、10mAまで徐々に下げて、120mAで放電した。後続の充電および放電サイクルは、次の条件で行った:75mAで4.4Vまで充電し、10mAまで徐々に充電し、次いで300mAで3.2Vまで充電した。セルは、圧力を加えながらサイクルを行った。
【0227】
SEM/EDSを、SEI層/セパレータ界面の断面に対して行った(図21)。試料は、断面上に極薄の導電性パラジウム層をスパッタ・コーティングすることによって作製した。SEI層の組成は、イオンミリング加工した断面のEDSライン走査によって示された(5KVで線幅0.1μm)。EDSライン走査で示されるように、セパレータに隣接するSEI層の領域はフッ素リッチであった。
【0228】
SEI層中のフッ素の化学組成を図22Aに示す。図示されているように、SEI層の総フッ素含有量の少なくとも70%はLiFに由来している。
【0229】
SEI層中のリチウムの化学組成を図22Bに示す。図示されるように、LiFに加えて、他の無機材料(例えば、LiO)もSEI層中に存在した。
【0230】
SEI層中の炭素の化学組成を図22Cに示す。炭酸アルキル(ROCOLi)やおそらくアルコキシド(ROLi)やポリエーテル(‐CHO‐)などの他の炭素含有種もSEI層に存在した。
【0231】
SEI層の結晶化度を測定し、図23に示した。図示されるように、XRD結果は、SEI層中に結晶質LiFおよびLiOが存在することを示した。
【0232】
(実施例25~26および比較例18~19)
この実施例では、圧力を加えて形成されたSEI層を含むセルと、圧力を加えずに形成されたSEI層を含むセルとのサイクル寿命を比較したものであり、他の要因は全て同じである。
【0233】
以下の実施例および比較例では、セルは前述の方法によって作製および組み立てられた。具体的には、アノードは、真空蒸着されたLi(HP VDLi)(厚さ約15~25μm)であった。使用したカソードはNCM811であった。使用した多孔質セパレータは、9μmポリエチレン(Entek EP)セパレータであった。上記の構成要素を、アノード/セパレータ/カソード/セパレータ/アノードの積層3層構造に組み立てた。セルコンポーネントをホイルパウチに密封した後、電解質を加えた。次いで、セルパッージを真空シールした。これらのセルを24~72時間無拘束で電解液に浸漬し、次いで、12kg/cmの圧力を加えた。特に断りのない限り、すべてのセルはこのような圧力下でサイクルを行った。各セルのセル容量は370mAhであった。すべてのセルは、特に断りのない限り、最初の3回の形成サイクルでは、C/12(30mA)まででカットオフされた4.35Vの充電電圧でサイクルを行い、10mAまで徐々に下げて、C/3(120mA)レートで放電した。後続の充電および放電サイクルは、特に断りのない限り、以下の条件で行った:0.2C(75mA)で4.35Vまで充電し、10mAまで徐々に下けて、0.8C(300mA)で3.2Vまで放電した。
【0234】
(比較例18)上記のセルは、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて作製した。圧力を加えた状態ではセルのサイクルを行わなかった。セルの化成電圧は4.35Vであった。
【0235】
(比較例19)上記のセルは、フルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)の重量比1:1の電解質溶媒混合物中に1MのLiPFを含む電解質を用いて作製した。圧力を加えた状態ではセルのサイクルを行わなかった。セルの化成電圧は4.35Vであった。
【0236】
(実施例25)電気化学セルは、実施例25のセルを12kg/cmの圧力を加えてサイクルを行ったことを除いて、比較例18のセルと同一であった。セルの化成電圧は4.35Vであった。
【0237】
(実施例26)電気化学セルは、実施例26のセルを12kg/cmの圧力を加えてサイクルを行ったことを除いて、比較例19のセルと同一であった。セルの化成電圧は4.35Vであった。
【0238】
図24は、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セル(実施例25および26)と圧力を加えずにサイクルを行ったセル(比較例18および19)とのサイクル性能を示す。図24に示す各実施例および比較例において、2つの同一のセルを試験した(n=2)。図24に示すように、圧力を加えてサイクルを行ったセル(実施例25および26)は、圧力を加えずにサイクルを行ったセル(比較例18および19)よりかなり長いサイクル寿命を示した。フッ素化溶媒を含まないセル(比較例18)は、圧力を加えずにサイクルを行った場合、サイクル寿命が低かった。更に、サイクル中に圧力を加えた場合でも、フッ素化溶媒を含まないセル(実施例25)は、フッ素化溶媒を含み、他の要因は全て同じであるセル(実施例26)よりも性能が劣っていた(即ち、サイクル寿命がより短かった)。最も長いサイクル寿命は、フッ素化溶媒を含み、圧力を加えてサイクルを行ったセルについて観察された(実施例26)。
【0239】
セパレータ界面/SEI層/アノード界面の断面について、XRD、SEM、およびEDS測定を実施した。25回目の放電後、各試料が開かれ、SEIを備えたLiアノードを含むセクションが回収された。各実施例についてイオンミリング加工した断面が得られた。SEI層の組成は、イオンミリング加工した断面のEDSライン走査によって示された。図25図28は、それぞれ、比較例18、実施例25、比較例19、および実施例26からの電気化学セルのSEM/EDSライン走査である。
【0240】
図25のEDSライン走査によって示されるように、非フッ素化溶媒を含み、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セル(比較例18)では、セル内のSEI層はSEIの厚さ全体にわたって酸素リッチであった。同様に、図26のEDSライン走査によって示されるように、非フッ素化溶媒を含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セル(実施例25)では、セル内のSEI層は、SEIの厚さ全体にわたって依然として酸素リッチであった。また、図27に示すように、フッ素化溶媒を含み、圧力を加えずにサイクルを行った電気化学セル(比較例19)では、セル内のSEI層は、SEIの厚さ全体にわたって酸素リッチであった。しかしながら、図28に示すように、フッ素化溶媒を含み、圧力を加えてサイクルを行った電気化学セル(実施例26)では、セパレータに隣接するSEI層の領域はフッ素リッチであった。
【0241】
XDRを実施して、実施例25~26および比較例18~19の試料における様々なSEI層の結晶化度および組成を測定した。表7に示すように、試料が圧力を加えてサイクルを行ったかどうかにかかわらず、FEC含有電解質を含む試料(比較例19および実施例26)においてナノ結晶LiFが観察された。更に、比較例19および実施例26からの試料中の電解質は、ナノ結晶LiFおよびLiOの両方を含む無機リッチのSEIの形成を誘導した。更に、圧力を加えてサイクルを行ったセル(実施例26)は、LiF/LiO比0.2を示し、圧力を加えずにサイクルを行ったセル(比較例19)のLiF/LiO比2.1よりも低かった。表7および図24に示すように、サイクル性能は、例えば圧力を加えて有利なLiF/LiO比を達成するなど、様々なSEI成分の存在を制御することによって改善することが可能であった。SEI層において検出された他の無機種の存在を表7に示す。
【0242】
【0243】
SEI抵抗率(または分極)の増加およびLi保護能力は、CレートLiストリッピング技術(例えば、図29に示されるような)を利用して、実施例25~56および比較例18~19の様々なセルについて測定された。Liストリッピング技術は、以下のように実行された:25回目の放電(Q25)、100回目の放電(Q100)、および75%のカットオフ容量(EOL)でのセルを、300mA、50mA、25mA、10mA、5mAおよび2mAでそれぞれ0Vまで放電した。実現した容量を、理論容量(3862mAh/g)および密度(0.534g/cc)に基づいて、リチウムの厚さに変換した。表8および表9に示すように、SEI層の物理的特性と成長を評価するために、Q25およびQ100でSEIの厚さと密度を測定した。特に、圧力を加えなかったセル(比較例18および19)は、25サイクルの前にEOLに達した。SEI層の重量は、サイクルアノード重量とLiストリッピングによって測定された姉妹セルの残留金属Liの差に基づいて計算された。
【0244】
図29は、フッ素系溶媒を含まず、圧力を加えてサイクルを行ったセル(実施例25)の、フッ素系溶媒を含み、圧力を加えてサイクルを行ったセル(実施例26)に対する残留Liのパーセンテージ(%)を示す。Cレートでの残留Liのパーセンテージ(%)は、(Cレートで除去されたLi)/(すべての速度で除去された合計Li)に等しい。Cレートで除去されたLiのパーセンテージ(%)を使用して、SEIの抵抗率を示すことができた。除去されたLiのパーセンテージ(%)が高いほど(残留Liのパーセンテージ(%)が低いことに対応する)、分極が少ないセルと相関し、低い抵抗性SEIを示す。図29に示されるように、フッ素化溶媒を含まないセル(実施例25)のSEI抵抗率と比較して、フッ素化溶媒を含むセル(実施例26)のSEI抵抗率は、サイクル寿命の経過にわたってより遅い速度で増加した。フッ素リッチのSEIを含むセル(実施例26)は、分極の減少を示した。
【0245】
表8および表9に示すように、得られるSEI層の厚さおよび密度への圧力適用の影響は、フッ素化電解質溶媒を含むセル(実施例26)とフッ素化電解質溶媒を含まないセル(実施例25)とで異なることが観察された。圧力適用下では、フッ素化電解質溶媒を含まないセル(実施例25)では、厚さおよび嵩密度の増加の大幅な減少が観察されたが、フッ素化電解質溶媒を使用したセル(実施例26)では、厚さおよび嵩密度の実質的な変化は観察されなかった。この結果は、フッ素化溶媒とサイクル中の圧力適用の組み合わせを使用してSEI化学組成を調整し、サイクル性能を向上させることができることを示しており、これは表7に示されているXRD結果と一致している。更に、フッ素化電解質溶媒を含まないセル(実施例25)と比較して、フッ素化電解質溶媒と圧力適用の組み合わせにより、SEI厚さの増加とSEI嵩密度の減少が遅くなることが観察された。
【0246】
【0247】
【0248】
図30は、フッ素化溶媒の有無にかかわらず、圧力を加えてサイクルを行ったセル(実施例25および26)のサイクル数の関数としての放電容量を示す。表10は、図30のセルに対するリチウムストリッピングの影響を示す。実施例25および26のそれぞれについて、2つの同一のセルを試験した(n=2)。表10に示すCレートで剥離されるリチウムのかなり多い量が示すように、フッ素リッチのSEI層を含むセル(実施例26)は、フッ素リッチのSEI層を含まないセル(実施例25)と比較して、より導電性が高かった。更に、フッ素リッチのSEI層を含むセル(実施例26)は、より優れた保護能力を有し、従って、サイクル数当たりのリチウム損失および蓄積容量当たりのリチウム損失が少なかった。
【0249】
【0250】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書中に記載および例示されたが、当業者は、機能を実行し、および/または結果および/または前述の1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造体を容易に予測し、そのような変形および/または改良はそれぞれ、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的に、当業者は、本明細書中に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味することを容易に理解し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、そのために本発明の教示が用いられる特定の用途に依存することを容易に理解する。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書中に記載された本発明のいくらかの態様に対する多くの同等物を認識し、または確認することができる。従って、前述の態様は、例示のためだけに示され、かつ添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、本発明は、具体的に説明され、特許請求の範囲に記載された以外の方法で実施することができると理解されるべきである。本発明は、本明細書中に記載された、個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。また、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない場合には、本発明の範囲内に包含されている。
【0251】
すべての定義は、本明細書中で定義され、使用されるように、辞書の定義、参照により組み込まれた文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味を管理すると解されるべきである。
【0252】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、不定冠詞「a」および「an」は、明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると解されるべきである。
【0253】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、句「および/または」は、結合した要素、即ち、ある場合には結合して存在し、他方で分離して存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると解されるべきである。明確に示されない限り、具体的に識別されたそれらの要素に関連するかまたは関連しないかを、「および/または」の文節によって具体的に識別された要素以外に、他の要素が任意に存在してもよい。従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」は、「~を含む」などのオープンエンドの語と合わせて使用される場合、1つの態様において、BなしのA(任意にB以外の要素を含む);別の態様において、AなしのB(任意にA以外の要素を含む);更に別の態様において、AおよびBの両方(任意に他の要素を含む);などを意味する。
【0254】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、「または」は、上記定義した「および/または」と同じ意味を有すると解されるべきである。例えば、1つのリスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は包括的である、即ち、
多くの要素または要素のリストの、1つより多いも含む少なくとも1つ、任意に、リストに挙げられていない更なる項目を含むと解釈されるべきである。明確に示されている項目のみ、例えば、「~のうちの1つのみ」または「~のうちの正確に1つ」、或いは特許請求の範囲において使用される場合の「~を含む」は、多くの要素または要素のリストのうちの正確に1つを含むことを意味する。一般的に、本明細書中で用いられる用語「または」は、「どちらか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」または「~のうちの正確に1つ」などの排他性を有する用語が先行する場合、排他的選択肢(即ち、「一方、または両方でない他方」)を示すものとして解釈されるのみである。特許請求の範囲において使用される場合の「本質的に~を含む」は、特許法の分野で使用されるようなその通常の意味を有する。
【0255】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、1つ以上の要素の1つのリストに関する語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的に挙げられたそれぞれの要素の少なくとも1つを必ずしも含んでおらず、かつ要素のリスト中の要素どうしの組み合わせを必ずしも除外しない。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が、具体的に識別されたそれらの要素に関連するかまたは関連しないかを意味する要素のリスト内で具体的に識別された要素以外に、要素が任意に存在してもよいことを可能にする。従って、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、或いは同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの態様において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Bが存在しないA(任意にB以外の要素を含む);別の態様において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Aが存在しないB(任意にA以外の要素を含む);更に別の態様において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Aおよび任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、B(任意に他の要素を含む);などを意味することができる。
【0256】
また、反対のことが明確に示されていない限り、複数の工程または行為を含む本明細書中に記載の方法において、方法の工程または行為の順序は、必ずしも工程または行為の順序に限定されないと解されるべきである。
【0257】
明細書中と同様に特許請求の範囲において、このような「~を含有する(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(containing)」、「~を含む(involving)」、「~を含む(holding)」などのすべての移行句は、オープンエンドである、即ち、それらに限定されないが含むことを意味すると解される。移行句「~を含む」および「本質的に~を含む」だけは、「United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03」に記載されているように、それぞれクローズまたはセミクローズな移行句である。
【符号の説明】
【0258】
10、100 … 電気化学セル
12 … アノード
14 … 電解質
16 … カソード
18、118 … 固体電解質界面層
20 … カソード集電体
22 … アノード集電体
24 … アノード表面
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22A
図22B
図22C
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【国際調査報告】