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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】合成ガス混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/36 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
C01B3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023558854
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2022057835
(87)【国際公開番号】W WO2022200532
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21165323.3
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・バーダー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ガル
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA05
(57)【要約】
酸素および二酸化炭素の存在下で炭化水素の無触媒部分酸化によって水素および一酸化炭素を含む合成ガス混合物を製造する方法であって、炭化水素を含む少なくとも1つの反応原料ガス、酸素を含む反応原料ガス、及び二酸化炭素を含む反応原料ガスが部分酸化反応器に供給され、1200~1550℃の範囲の温度で反応して、少なくとも二酸化炭素の一部が生成ガス混合物から分離され、それが部分酸化反応器にリサイクルされることにより、水、一酸化炭素、及び二酸化炭素を含む生成ガス混合物が得られ、部分酸化反応器に供給される二酸化炭素は、導入された追加の二酸化炭素を含み、部分酸化反応器内で水素と一酸化炭素のモル比が0.8:1~1.6:1の範囲の生成ガス混合物が得られる方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素および二酸化炭素の存在下での炭化水素の無触媒部分酸化によって、水素および一酸化炭素を含む合成ガス混合物を製造する方法であって、炭化水素を含む少なくとも1つの反応原料ガス、酸素を含む反応原料ガス、及び二酸化炭素を含む反応原料ガスを部分酸化反応器に供給し、1200~1550℃の範囲の温度において反応させて、好ましくは二酸化炭素の一部を生成ガス混合物から分離し、かつそれを前記部分酸化反応器にリサイクルすることによって、水、一酸化炭素、及び二酸化炭素を含む生成ガス混合物を得て、ここで、前記部分酸化反応器に供給される二酸化炭素は、導入された追加の二酸化炭素を含み、かつ、前記反応原料ガス中の炭化水素:酸素:二酸化炭素の総モル比が、0.19~0.57:0.31~0.70:0.02~0.30であり、水素と一酸化炭素のモル比が0.8:1~1.6:1の範囲の生成ガス混合物が、前記部分酸化反応器内で得られる、方法。
【請求項2】
前記炭化水素が、製造プロセスにおける副生成物として得られ、典型的には熱利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素が、一般に、蒸気を発生させるために焼却される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記導入された二酸化炭素が、製造プロセスで得られるか、又は空気から分離されたものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素が、一般に1~6個の炭素原子を有する少なくとも80重量%のアルカンを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素が含酸素化合物をさらに含んでいてもよい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
部分酸化のための炭化水素を含む前記反応原料ガスが、メタン、好ましくは少なくとも80重量%のメタンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生成ガス混合物中の水素と一酸化炭素のモル比が、0.8:1~1.2:1、特に0.9:1~1.1:1の範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記部分酸化からの反応原料ガス中のメタン:酸素:二酸化炭素の総モル比が、0.39~0.57:0.30~0.40:0.05~0.30である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記部分酸化からの反応原料ガス中のメタン:酸素:二酸化炭素の総モル比が、0.39~0.57:0.31~0.38:0.05~0.30である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
炭化水素を含む反応原料ガスが、水蒸気分解装置で得られ、好ましくは、CO排出量を伴わない電力又は低減されたCO排出量の電力の使用によって置き換えられている水蒸気分解装置で得られ、かつ物理的利用に利用可能にされた、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
炭化水素を含む反応原料ガスが、プロパンの脱水素化における副生成物として得られる、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
導入された二酸化炭素が、アンモニア合成において得られる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
導入された二酸化炭素が、エチレンオキシド合成において得られる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガス混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業規模で行われる多くの化学合成では、価値のある生成物だけでなく、炭素を含有する副生成物も得られる。これらは熱的手段によってのみ、例えば反応原料を予熱するためまたは蒸気を発生させるために利用される。副生成物は燃焼させるとCO2が発生する。これまで副生成物を熱利用することによって供給されていたエネルギー需要が、再生可能エネルギー源の利用によって利用可能になるのであれば、副生成物を物理的に利用することにより、温室効果ガスであるCO2の形成を削減することができる。
【0003】
副生成物流の物理的利用は、副生成物流をガス化手段、例えば純粋な酸素、蒸気および/またはCO2などと一緒に反応させて、一酸化炭素(CO)および水素(H2)を価値のある成分として含む合成ガスを得る、特定のガス化技術によって可能にすることができる。既知のガス化方法では、化石エネルギー担体、例えば石炭、精製残渣(HVR-重真空残渣)もしくは天然ガスなど、または生物起源物質、例えば木材または藁などが、ガス化装置で合成ガスに変換される。欠点は、この変換がCO2の形成と共に達成されることである。
【0004】
しかし、ガス化により形成されたCO2を分離した後、CO2をリサイクルすることは可能である。これは同時に、結果として得られる生成物である合成ガスのH2/CO比に影響を及ぼす。
【0005】
石炭などの炭素含有原料、精製残渣、または天然ガスなどのガス状物質は、ガス化装置(POX法)での無触媒水熱高温高圧法で部分的に酸化される。これにより、存在する炭素の大部分が一酸化炭素および二酸化炭素に変換される。二酸化炭素は価値のある生成物の1つであり、水素はもう1つの生成物である。生成される量は、原料中の結合した水素の量と、添加される蒸気の量に依存する。水素および一酸化炭素から本質的になる精製された生成ガス流は、合成ガスと呼ばれる。H2/CO比は変化し得る。これは使用する原料と選択したガス化方法によって決まり、石炭の場合は0.6~0.8、HVRの場合は0.8~1.0、天然ガスの場合は1.5~1.9であり得る。
【0006】
工業的に適切なH2/CO比は、例えば、オキソプロセス(ヒドロホルミル化)の場合はH2/CO=1.0:1であり、メタノール合成の場合はH2/CO=2.1:1である。ガス化装置がH2/COが<1.0:1の合成ガスを生成する必要がある場合、下流のCOシフトプロセス(CO+H2O → CO2+H2)によって比率を上げることができる。これにより、かなりの量の追加のCO2が生成される。ガス化装置が必要以上に高いH2/CO比を生成する必要がある場合は、過剰のH2は、低温蒸留分離、圧力スイング吸着または膜によって分離することができる。
【0007】
精製残渣(HVR)のガス化では、液体原料を蒸気と共に霧化し、純酸素で部分的に酸化して、大体H2/CO=1:1の合成ガスが形成される。形成された副生成物は、合成ガス1トン当たり約0.3トンのCO2であり、排出物として放出される。これらの条件下での部分酸化は、反応器出口で1200~1550℃、例えば1300~1500℃の温度に達し、反応器出口でのメタン含有量が1.5体積%未満の完全なメタン変換をもたらす。下流プロセスでメタン含有量が過度に大きいと困難が生じる可能性があるため、この低いメタン濃度は、合成ガスの本質的な品質特性である。
【0008】
天然ガス(NG)のガス化では、天然ガスを純酸素と一緒に部分的に酸化し、水蒸気で炎を穏やかにして、H2/CO比が約1.9:1の合成ガスを形成する。これはまた、合成ガス1トン当たり約0.2トンのCO2も形成し、これはCO2排出物として放出される。この部分酸化も反応器出口の温度が1200~1550℃に達し、反応器出口でのメタン含有量が1.5体積%未満の実質的に完全なメタン転化をもたらす。
【0009】
天然ガスのガス化では、副生成物として形成されたすべてのCO2をリサイクルして、CO2排出物が放出されないようにすることも可能である。これにより、反応器出口でH2/CO=1.5:1の合成ガスが得られる。その後のH2の除去により、所望のH2/CO比を確立することができ、したがって、例えば、H2/CO=1:1の合成ガスを得ることができる。
【0010】
天然ガスのガス化では、CO2リサイクルに加えて、いわゆるATR(自己熱改質)法を介して追加のCO2を導入することも可能である。ここでは、CO2排出物を放出することなく、H2/CO比を0.9~1.5:1の範囲に設定することが可能である。ATR運転モードでは、変換を補助するために触媒床が使用される。しかし、触媒床の温度は最高1000℃までしか許容されない。そうでなければ触媒が損傷してしまうからである。それに比べて温度が低いと、メタン転化が不完全となり、反応器出口ガス中に2~4体積%のメタンがなお存在することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、オキソ法に適したH2/CO比を有する合成ガスが得られる合成ガスの製造方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、副生成物として得られ、そうでなければ熱利用されるであろう炭素含有物質流を物理的に利用し、したがって全体的にCO2排出を削減することである。さらに、本発明の目的は、CO2シンク(sink)として機能することができる合成ガスを生成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、酸素および二酸化炭素の存在下での炭化水素の無触媒部分酸化によって水素および一酸化炭素を含む合成ガス混合物を生成する方法によって達成され、この方法では、炭化水素を含む少なくとも1つの反応原料ガス、酸素を含む反応原料ガスおよび二酸化炭素を含む反応原料ガスが部分酸化反応器に供給され、1200~1550℃の範囲の温度で反応して、少なくとも二酸化炭素の一部が生成ガス混合物から分離され、それが部分酸化反応器にリサイクルされることにより、水、一酸化炭素および二酸化炭素を含む生成ガス混合物が得られ、部分酸化反応器に供給される二酸化炭素は、導入された追加の二酸化炭素を含み、部分酸化反応器内で水素と一酸化炭素のモル比が0.8:1~1.6:1の範囲の生成ガス混合物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明との関連において、炭化水素は、炭素を含む化合物および水素を含む化合物であり、含酸素化合物、例えばメタノール、エタノールおよびジメチルエーテルなども炭化水素に含まれ得る。これらは、炭化水素含有反応物流中に二次成分として存在することが多い。一般に、反応原料炭化水素は、CおよびHのみを含む炭化水素、例えばアルカン、シクロアルカン、アルケンおよび芳香族炭化水素などを少なくとも80体積%含む。それらは、好ましくは、一般に1~6個の炭素原子を有する少なくとも80重量%のアルカン(直鎖、分枝鎖、および場合により環状アルカン)を含む。
【0014】
この新規な方法は、CO2を消費するとともに合成ガスの生成を可能にする。
【0015】
外部供給源由来のさらなるCO2の追加導入により、H2/CO比を最適化することが可能になる。オキソ法に必要な約1:1のH2/CO比を、下流での濃縮段階または低減段階なしに合成ガス生成段階において直接設定することさえ可能である。1200~1550℃、好ましくは1250~1400℃の範囲の温度におけるこのプロセスの無触媒実施により、実質的に完全なメタン転化が達成される。合成ガス反応器からの出口におけるメタン含有量は、一般に、1.5体積%未満、好ましくは0.2体積%未満、また、さらには0.05体積%未満である。
【0016】
本発明の方法は、炭素含有副生成物流と、任意の他の製造プロセスにおいて放出されたCO2の物理的利用を可能にし、これが合成ガス内で最大量の炭素を結び付けている。必要とされるプロセス熱または機械的プロセスエネルギーが再生可能エネルギー源によって供給される場合、熱利用された炭素含有副生成物流は、物理的利用のために放出される。そうでなければ熱の生成または蒸気の発生のためにCO2の放出を伴って焼却されるはずだった炭素含有物質流は、本発明に従って合成ガス製造のための原料として使用することができる。炭素に対して水素の比率が高いと反応原料炭化水素において有利である、なぜなら大量の二酸化炭素がプロセスに導入され、物理的に利用することができるからである。最適な反応原料炭化水素は、水素と炭素の比が4:1のメタンである。
【0017】
気体または液体の炭化水素含有反応原料と、さらなる反応原料としてのガス化剤の酸素および二酸化炭素は、本発明に従って使用される高温部分酸化反応器を通って流れる。反応は、一般に、ハイスループットで実施するために高圧下で、一般に1~100バール、好ましくは10~60バール、より好ましくは20~60バールの圧力で行われる。部分酸化反応器の内部は一般に円筒形であり、外面には1つ以上のバーナーが存在する。酸素入力(炎)の領域では、2000℃を超える局所温度が可能である。
【0018】
吸熱ガス改質反応(乾式改質、実験式:CH4+CO2 → 2CO+2H2)は、気相を冷却し、反応器出口温度は1200~1550℃に達する。1200~1550℃、好ましくは1250~1400℃のこのガス改質反応により、高い合成ガス収率と実質的に完全な炭化水素転化(特にメタン転化)が達成される。
【0019】
部分酸化の際にガス化装置(部分酸化反応器、合成ガス反応器)で発生した二酸化炭素は、その後、ガススクラビングによって粗合成ガスから分離され、ガス化装置にリサイクルされる。ガススクラビングは、従来技術に従って行うことができる。粗合成ガスは、スクラビング塔内でアミン含有スクラビング剤を用いて向流でスクラビングされ、粗合成ガス中に存在するCO2はアミンによって実質的に完全に吸収される。この目的のために、粗合成ガスは、アミンへの熱応力を回避するために、スクラビング塔に入る前に30~70℃に冷却される。CO2富化スクラビング剤は、その後、熱を供給しながら脱着塔内で再生される。再生されたスクラビング剤は、循環モードのスクラビング塔で再び使用することができる。CO2は、脱着塔の頂部で一般に周囲圧力で塔を出る。CO2を部分酸化反応器に再循環(リサイクル)させるために、CO2は、圧縮機内で予めシステム圧力にされる。
【0020】
本発明によれば、必要なH2/CO比に応じて、追加のCO2が外部供給源から導入される。所望の合成ガスがCOに富むほど、すなわち所望のH2/CO比が低いほど、より多くのCO2を外部供給源から使用し、物理的に利用することができる。使用される炭化水素含有副生成物流の水素が多いほど、特定のH2/CO比を確立するために外部供給源からより多くのCO2を導入することができる。
【0021】
一般に、反応原料炭化水素流中のH/C比に依存する、部分酸化プロセスへ供給されるCxHy/CO2/O2反応原料(リサイクルされたCO2を含む)のモル比は、粗合成ガス中の所望のH2/CO比に応じて、0.19~0.57/0.02~0.30/0.31~0.70である。CxHy/CO2/O2の例示的なモル比(mol/Σmol;合計1.0)を、反応器出口温度1250℃から1450℃、圧力10、46、100バール(a)の、様々な反応物炭化水素と様々なH2/CO比について、以下の表1~表9に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
【表7】
【0029】
【表8】
【0030】
【表9】
【0031】
本発明によれば、部分酸化による生成ガス混合物中の水素と一酸化炭素のモル比は、0.8:1~1.6:1の範囲である。水素と一酸化炭素のモル比は、好ましくは0.8:1~1.2:1、より好ましくは0.9:1~1.1:1である。
【0032】
CxHy/CO2/O2のモル比(mol/Σmol;合計1.0)を示す以下の表10~表18は、部分酸化プロセスに導入されたCO2の量のみを考慮している(リサイクルCO2は含まない)。反応原料炭化水素中のH/C比が大きいほど、設定された反応出口温度が低くなり、システム圧力が低いほど、より多くのCO2を外部供給源からプロセスへ導入することができる。
【0033】
炭素含有成分は、メタンであることが好ましい。例えば、リサイクルされたCO2なしで部分酸化プロセスに供給されるCH4/CO2/O2反応原料のモル比は、0.50/0.13/0.37である。メタンは反応原料炭化水素であり、したがって、合成ガス中のH2/CO比1:1において最大のCO2導入が可能になる。これは、下流の合成(オキソ法、ヒドロホルミル化)において、直接、すなわちさらなる濃縮または低下段階なしに使用することができる。純粋なメタンを反応原料炭化水素として用いると、合成ガス1トン当たり0.30トンの導入されたCO2を物理的に利用することが可能である(H2:CO = 1:1)。この量は、反応原料炭化水素の鎖長の増加と共に減少し、エタンではなお0.20 t CO2/t、プロパンでは0.13 t CO2/t、ブタンでは0.10 t CO2/t、ペンタンでは0.08 t CO2/tである。
【0034】
【表10】
【0035】
【表11】
【0036】
【表12】
【0037】
【表13】
【0038】
【表14】
【0039】
【表15】
【0040】
【表16】
【0041】
【表17】
【0042】
【表18】
【0043】
部分酸化のための炭化水素を含む反応原料ガスは、好ましくはメタンを含む。ここでの合成ガス中の水素と一酸化炭素のモル比は、好ましくは0.8:1~1.2:1、より好ましくは0.9:1~1.1:1である。純粋なメタンを用いると、合成ガス1トン当たり0.30トンの導入された、すなわち非リサイクルCO2を結合することが可能である(H2:CO = 1:1)。
【0044】
主にメタンからなる炭化水素反応原料ガス、好ましくは少なくとも80重量%程度、より好ましくは少なくとも90重量%程度までメタンからなる炭化水素反応原料ガスが使用される場合、プロセス全体の、すなわち導入されたCO2とリサイクルされたCO2を含む反応ガス中のメタン:酸素:二酸化炭素の総モル比は、好ましくは0.39~0.57:0.30~0.40:0.05~0.30、より好ましくは0.39~0.57:0.31~0.38:0.05~0.30である。
【0045】
部分酸化のための反応原料ガス中に存在するメタンは、好ましくは水蒸気分解装置で得られる。
【0046】
水蒸気分解プロセスに使用される反応原料混合物は、多くの場合、鉱油精製所で得られるナフサである。実際の分解装置は、クロム/ニッケル合金製のパイプコイルを有する管状反応器であり、かつ、炎によって加熱される炉内にある。反応原料混合物は、例えば約12バールにおいて、炉の対流ゾーン中で550~600℃に予熱される。このゾーンにおいて、180~200℃のプロセス蒸気も添加される。これにより、個々の反応に関与するものの分圧が低下し、さらに反応生成物の重合が防止される。対流ゾーンの後、完全にガス状の反応原料混合物は放射ゾーンに到達する。そこではそれは例えば1050℃で分解され、低分子量炭化水素が得られる。滞留時間は、例えば約0.2~0.4秒である。これにより、エテン、プロペン、1,2-および1,3-ブタジエン、n-およびi-ブテン、ベンゼン、トルエン、キシレンが生成される。また、水素およびメタンも例えば約16重量%というかなりの量で形成され、その他、その一部が分解副生成物、例えば、エチン、プロピン(微量)、プロピレン(微量)など、および熱分解ガソリンの成分としてn-、i-およびシクロ-パラフィンおよび-オレフィン、C9およびC10芳香族化合物も形成される。最も重い留分は、いわゆるエチレン分解装置残渣であり、沸点範囲は例えば210~500℃である。
【0047】
反応生成物がオリゴマー化しないように、高温の分解ガスは、熱移動で約350~400℃に急激に冷却される。続いて、高温の分解ガスは、その後の分留のためにクエンチオイルでさらに150~170℃まで冷却される。
【0048】
炉の出口の生成物流は、その後、互いに分離される多数の物質を含んでいる。価値のある生成物であるエテンおよびプロペンは、一般に非常に高い純度で得られる。生成物として得ることを望まない物質は、一部は分解装置にリサイクルされ、一部は焼却される。
【0049】
後処理は、オイルスクラビングおよびウォータスクラビングから始まり、そこではまだ熱いガスがさらに冷却され、かつ、コークスおよびタールなどの重質不純物が分離される。これに続いて、分解ガスを段階的に冷却し、炭化水素混合物を異なる炭素数の留分に分割する一連の処理が行われる。個々の留分は、さらなる蒸留において飽和炭化水素と不飽和炭化水素に分離される。軽質炭化水素の分離には、高圧での低温精留が必要である。この目的のために、分解ガスはまず、例えば約30バールまで段階的に圧縮される。酸性ガスはアルカリ性スクラブに吸収される。吸着乾燥機は、水を除去する。
【0050】
以前は蒸気で駆動していた圧縮機を駆動するために再生可能エネルギー源からの電気エネルギーを使用することにより、蒸気を生じさせるための炭化水素含有副生成物の燃焼を省くことが可能になる。したがって、これらの炭化水素含有副生成物は、本発明の合成ガス製造のための原料として利用可能である。
【0051】
微量のエチンを除去することは非常に困難でありうるので、エチンを代わりに触媒的に水素化してエテンにする。同様に、C3留分が分離された後、プロパン-プロペンを分離する前に、プロピンとアレン留分は、選択的水素化によってそれぞれプロペンとプロパンに変換される。
【0052】
メタンは、例えば13バールおよび-115℃で、エチン、エテンおよびエタンから分離することができる。
【0053】
主な生成物、特にエテンおよびプロペンは純粋な形態で得られる。ブテン異性体は、様々な石油化学プロセスに使用することができ、例えばiso-ブテンはMTBEおよびETBEの製造に、n-ブテンはアルキレートの製造に使用することができる。熱分解ガソリンは、ベンゼンおよびトルエンを得るための出発材料である。
【0054】
生成物として望ましくない留分、特にアルカンは、分解装置にリサイクルすることができる。分解に適さない留分、特に水素およびメタンは、これまで通常、分解炉で焼却され、プロセスのエネルギー需要を満たす必要があった。タール状残渣は、発電所で焼却されるか、グラファイト電極を製造するための結合剤として販売されるか、または工業用カーボンブラックの製造に使用される。
【0055】
本発明のさらなる実施形態では、メタンはプロパン脱水素化における副生成物として得られる。
【0056】
本発明のさらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの反応原料ガス流中に存在する二酸化炭素は、アンモニア合成において得られる。アンモニアの生産は、水素と窒素との平衡反応(N2+3H2 → 2NH3)によって行われる。水素は、天然ガスの水蒸気改質によって工業規模で製造され、第1段階においてH2とCOとの合成ガス混合物が生成される。次の水-ガスシフト段階(CO+H2O → H2+CO2)において、COは水を用いて水素および二酸化炭素に変換される。この経路によって製造された水素は、水素1トン当たり約10トンの二酸化炭素を生成する。CO2は、酸性ガススクラビングによって除去され、圧縮段階の後、本明細書に記載した部分酸化プロセスのための反応原料として純粋な形態で利用可能である。
【0057】
本発明のさらに好ましい実施形態では、部分酸化反応器に導入された二酸化炭素は、エチレンオキシド合成において得られる。
【0058】
エチレンオキシドは、温度230~270℃および圧力10~20バールで、酸素によるエテンの接触酸化によって工業規模で製造される。使用される触媒は、酸化物担体、好ましくはアルミナに適用された微粉化銀粉末である。その反応はシェルアンドチューブ反応器内で行われ、反応器内で、かなりの反応熱が溶融塩の助けをかりて除去されて、過熱高圧蒸気を発生させるために利用される。純粋なエチレンオキシドの収率は、例えば85%である。生じる副反応は、二酸化炭素および水へのエテンの完全な酸化である。
【国際調査報告】