(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】モレキュラーシーブSSZ-93、触媒及びそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20240305BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240305BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20240305BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240305BHJP
C10G 71/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J37/08
B01J29/74 M
B01J37/04 102
C10G71/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558896
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022021645
(87)【国際公開番号】W WO2022204347
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オジョ、アデオラ フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーファ
(72)【発明者】
【氏名】レイ、グワン - ダオ
(72)【発明者】
【氏名】ラチェーン、ハワード エス.
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA05
4G073BA10
4G073BA45
4G073BA46
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BB05
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4G169AA03
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4G169BA01A
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4G169BA36C
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4H129AA02
4H129DA20
4H129GA12
4H129KA11
4H129KC19X
4H129KC19Y
4H129KD25X
4H129KD25Y
4H129KD26X
4H129NA17
4H129NA19
4H129NA32
4H129NA37
(57)【要約】
本出願は、SSZ-93と指定された新規な結晶性モレキュラーシーブのファミリーに関する。モレキュラーシーブSSZ-93は、モレキュラーシーブSSZ-93のSSZ-32X、SSZ-32、ZSM-23、EU-13、ISI-4、及びKZ-1ファミリーのようなMTT構造型に含まれるシーブに構造的に類似しており、マグネシウムを有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MTT型の骨格、約20~約72の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、0.005~0.04cc/gの総微細孔体積、及びマグネシウムを含む、モレキュラーシーブ。
【請求項2】
約0.005~約0.4の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項3】
約0.01~約0.25の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項4】
約0.04~約0.22の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項5】
約0.05~約0.2の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項6】
23~35の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比を有する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項7】
約20~約72のSiO
2/Al
2O
3のモル比、約0.02~約0.5のM/SiO
2のモル比、約0.015~約0.5のQ/SiO
2のモル比、約0.07~約1.0のOH/SiO
2のモル比、及び約5~約100のH
2O/SiO
2のモル比を含み、ただし、Mは周期表の第1族及び第2族から選択され、Qはヘキサメトニウムカチオンである、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項8】
約30~約35のSiO
2/Al
2O
3のモル比、約0.15~約0.3のM/SiO
2のモル比、約0.02~約0.25のQ/SiO
2のモル比、約0.2~約0.4のOH/SiO
2のモル比、及び約15~約35のH
2O/SiO
2のモル比を含み、ただし、Mは周期表の第1族及び第2族から選択され、Qはヘキサメトニウムカチオンである、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項9】
パラジウム、白金、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項10】
アンモニア昇温脱着試験において、300℃超で脱着するアンモニアが、マグネシウムを含まない同等のモレキュラーシーブよりも少ない、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項11】
3670cm
-1、及び3700cm
-1にFTIR振動モードを示す、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項12】
ピリジンへの曝露の前にピリジンへの曝露時には存在しない3600cm
-1のFTIR振動モードを示す、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項13】
260~300m
2/gの外表面積及び350~370m
2/gのBET表面積を有する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項14】
(a)少なくとも1つのケイ素源、少なくとも1つのアルミニウム源、少なくとも1つの、周期表の第1族及び第2族から選択される元素源、少なくとも1つのマグネシウム源、水酸化物イオン、ヘキサメトニウムカチオン、及び水を含む反応混合物を調製することと、(b)前記反応混合物を前記モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に曝すことと、を含む、請求項1に記載のモレキュラーシーブを調製する方法。
【請求項15】
炭化水素を転化するためのプロセスであって、炭化水素質原料を炭化水素転化条件下で、モレキュラーシーブを含む触媒と接触させることを含み、前記モレキュラーシーブが、MTT型の骨格、約20~約72の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、0.005~0.04cc/gの総微細孔体積、及びマグネシウムを含む、前記プロセス。
【請求項16】
前記モレキュラーシーブが、約0.005~約0.4の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記モレキュラーシーブが、約0.01~約0.25の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記モレキュラーシーブが、約0.04~約0.22の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
前記モレキュラーシーブが、約0.05~約0.2の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項20】
前記モレキュラーシーブが、23~35の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項21】
前記モレキュラーシーブは、アンモニア昇温脱着試験において300℃超で脱着するアンモニアが、マグネシウムを含まない同等のモレキュラーシーブよりも少ない、請求項15に記載のプロセス。
【請求項22】
マグネシウムを含まない同等の触媒を用いた同等のプロセスと比較して96%の異性化転化率における選択性が少なくとも3%良好である、請求項15に記載のプロセス。
【請求項23】
モレキュラーシーブSSZ-93を調製する方法であって、
(a)
(i)少なくとも1つの活性ケイ素源と、
(ii)少なくとも1つの活性アルミニウム源と、
(iii)少なくとも1つの活性マグネシウム源と、
(iv)少なくとも1つの活性アルカリ金属源と、
(v)水酸化物イオンと、
(vi)下記構造を有する有機鋳型剤:
【化1】
(式中、Rは、C
1~C
5アルキル基であり、A
-は、ゼオライトの結晶化に悪影響のないアニオンである)と、を含む反応混合物を調製することと、
(b)前記反応混合物を前記ゼオライトの結晶を形成するのに十分な条件下に維持することであって、前記ゼオライトがアミン成分の非存在下で調製される、前記維持することと、
(c)前記ゼオライトの結晶を回収することと、を含む、前記方法。
【請求項24】
前記反応混合物は、各モル比が以下の範囲内であるような組成を有する、請求項23に記載の方法:
【表1】
(ただし、
Mは、アルカリ金属カチオンであり、
Qは、前記有機鋳型剤である)。
【請求項25】
前記ゼオライトが、か焼された形態で、実質的に下記表に示されるようなX線回折パターンを有する、請求項23に記載の方法:
【表2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月26日出願の米国特許出願第17/214,790号、発明の名称“MOLECULAR SIEVE SSZ-93, CATALYST, AND METHODS OF USE THEREOF”(モレキュラーシーブSSZ-92、触媒及びそれらの使用方法)に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容の全体を参照により本明細書に援用するものである。
【0002】
本開示は、モレキュラーシーブSSZ-93と呼ばれる、酸化マグネシウムを含むMTT型構造を有する触媒及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
結晶性モレキュラーシーブ及びゼオライトは、それらの固有の篩い特性及びそれらの触媒特性のため、炭化水素転化、ガスの乾燥及び分離といった用途で特に有用である。多くの異なる結晶性モレキュラーシーブがこれまでに開示されているが、ガスの分離及び乾燥、炭化水素及び化学物質の転化、ならびに他の用途に望ましい特性を備えた新規なモレキュラーシーブが引き続き求められている。新規なモレキュラーシーブは、新規な内部細孔アーキテクチャ及び酸点特性を有し、これらのプロセスにおける高い選択性及び活性を提供することができる。
【0004】
モレキュラーシーブは、国際ゼオライト学会の構造委員会により、IUPACゼオライト命名委員会の規則に従って分類されている。この分類によれば、ゼオライトの骨格型及び構造が確立されている他の結晶性微多孔質モレキュラーシーブには、3文字のコードが割り当てられ、"Atlas of Zeolite Framework Types" Sixth Revised Edition, Elsevier (2007)に記載されている。モレキュラーシーブは、3次元で周期的な秩序を有している。構造的に無秩序な構造は、3次元未満の次元の周期的秩序を有する(すなわち、2次元、1次元または0次元)。この現象は、構造的に不変の周期的構成単位(PerBuU)の積層無秩序として特徴付けられる。周期的構成単位で構成された結晶構造は、周期的秩序が3つすべての次元で得られる場合に末端要素構造と呼ばれる。無秩序構造とは、周期的構成単位の積層配列が統計的積層配列まで周期的秩序から外れるような構造である。
【0005】
MTT型の骨格コードを有するモレキュラーシーブは、1次元の10環細孔システムを有している。MTT型のモレキュラーシーブ同士は、極めて似通った(しかし同じではない)X線回折パターンを有している。SSZ-32と、その小結晶バリアントであるSSZ-32xは、既知のMTT型のモレキュラーシーブである。
【0006】
SSZ-32xは、標準的なSSZ-32と比較してその固有の小結晶、変化したアルゴン吸着比、大きな外表面積、及びさまざまな触媒プロセスで使用される他の中間的細孔径のモレキュラーシーブに対して低下したクラッキング活性の結果として生じ得る幅広いX線解析ピークを有している。SSZ-32x及びその製造方法は、本明細書に参照によって援用するところの米国特許第7,390,763号、同第7,569,507号、及び同第8,545,805に開示されている。
【0007】
本明細書で以下に記載される製造方法を使用することにより、本明細書でSSZ-93として指定される新規なモレキュラーシーブが実現される。
【0008】
本開示は、本明細書で「モレキュラーシーブSSZ-93」または単に「SSZ-93」と称する、固有の特性及びMTT型トポロジーを備えた結晶性モレキュラーシーブのファミリーに関する。
【0009】
有利な点として、本出願は、一実施形態において、MTT型の骨格、約20~約72の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、0.005~0.04cc/gの総微細孔体積、及びマグネシウムを含むモレキュラーシーブに関する。
【0010】
別の実施形態では、本出願は、炭化水素を転化するためのプロセスであって、炭化水素質原料を炭化水素転化条件下で触媒と接触させることを含む。触媒は、MTT型の骨格、約20~約72の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、0.005~0.04cc/gの総微細孔体積、及びマグネシウムを含むモレキュラーシーブを含む。いくつかの実施形態では、選択性は、マグネシウムを含まない同等の触媒と比較して向上する。
【0011】
開示されるモレキュラーシーブのさらなる特徴及びそれにより提供される利点を、添付の図面に示される具体的な例示的な実施形態を参照しながら以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1のSSZ-93材料のXRD粉末回折を示す。
【
図2】
図2は、実施例1のSSZ-93材料のSEMを示す。
【
図3】
図3は、実施例1のSSZ-93材料のTEMを示す。
【
図4】
図4は、実施例2のSSZ-93材料のXRD粉末回折を示す。
【
図5】
図5は、実施例2のSSZ-93材料のSEMを示す。
【
図6】
図6は、実施例3のSSZ-93材料のSEMを示す。
【
図7】
図7は、実施例4のSSZ-93材料のSEMを示す。
【
図8】
図8は、実施例5のSSZ-93材料のSEMを示す。
【
図9】
図9は、比較例6のSSZ-32x材料のXRD粉末回折を示す。
【
図10】
図10は、実施例1及び比較例6の試料に対するアンモニアTPDの脱着プロファイルを示す。
【
図11】
図11は、比較例6、実施例1、及び実施例3のFTIRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書には、1つ以上の態様の例示的な実施形態が示されているが、開示されるプロセスは、任意の数の方法を用いて実施することができる。本開示は、本明細書に例示及び記載されているいずれの例示的な設計及び実施形態も含め、本明細書に例示されている例示的または具体的な実施形態、図面及び技法に限定されず、均等物の全範囲とともに、添付の請求項の範囲内で改変してよい。
【0014】
特に断らない限り、以下の語句、用語及び定義が本開示に適用できる。ある用語が本開示で使用されているが本明細書に具体的に定義されていない場合、その定義が、本明細書で適用される他のいかなる開示または定義とも矛盾しない限り、またはその定義が適用されるいずれの請求項も不明確または実現不可能とするものでない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd ed(1997)における定義を適用することができる。参照により本明細書に援用されるいずれかの文献に示されるいずれかの定義または用法が、本明細書に示される定義または用法と矛盾する限りにおいては、本明細書に示される定義または用法が適用されるものとする。
【0015】
「API比重」とは、ASTM D4052-11によって測定される、水に対する石油供給原料または製品の比重を指す。
【0016】
「粘度指数」(VI)は、ASTM D2270-10(E2011)によって測定される、潤滑剤の温度依存性を表す。
【0017】
「減圧軽油」(VGO)とは、基油への改質のために水素化処理装置または芳香族抽出装置に送ることができる原油の真空蒸留の副産物である。VGOは一般的に、0.101MPaで343℃(649°F)~593℃(1100°F)の沸点範囲分布を有する炭化水素を含む。
【0018】
「処理」、「処理された」、「改質する」、「改質」及び「改質された」とは、原料油と組み合わせて使用される場合、水素化処理が施されているかもしくは水素化処理を施した供給原料、または得られた材料もしくは粗生成物であって、供給原料の分子量が小さくなっているか、供給原料の沸点範囲が狭くなっているか、アスファルテンの濃度が低下しているか、炭化水素遊離基の濃度が低下しているか、及び/または硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物及び金属のような不純物の量が減少しているものを記述するものである。
【0019】
「水素化処理」とは、望ましくない不純物を除去し、及び/または供給原料を所望の生成物に転化する目的で、炭素質供給原料を高めの温度及び圧力で、水素及び触媒と接触させるプロセスを指す。水素化処理プロセスの例としては、水素化分解、水素化処理、接触脱ろう、及び水素化仕上げが挙げられる。
【0020】
「水素化分解」とは、水素化及び脱水素に、炭化水素のクラッキング/分解が伴うプロセス、例えば、より重質の炭化水素をより軽質の炭化水素に転化すること、あるいは芳香族化合物及び/または環状パラフィン(ナフテン)を非環状分枝パラフィンに転化することを指す。
【0021】
「水素化処理」とは、通常、水素化分解と組み合わせて、硫黄及び/または窒素含有炭化水素原料を、硫黄及び/または窒素含有量が低減された炭化水素生成物に転化し、(それぞれ)硫化水素及び/またはアンモニアを副生成物として生成するプロセスを指す。水素の存在下で行われるそのようなプロセスまたは工程としては、炭化水素供給原料の成分(例えば不純物)の水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、及び/または水素化脱芳香族、及び/または供給原料中の不飽和化合物の水素化が含まれる。水素化処理の種類及び反応条件に応じて、水素化処理プロセスの生成物では、例えば、粘度、粘度指数、飽和分含有率、低温特性、揮発性及び脱分極の改善が見られる場合がある。「ガード層」及び「ガード床」という用語は、本明細書では同義的かつ互換的に使用され、水素化処理触媒または水素化処理触媒層を指し得る。保護層は、炭化水素脱ろう用触媒システムの成分であってもよく、少なくとも1つの水素異性化触媒の上流に配置されてもよい。
【0022】
「接触脱ろう」または水素異性化とは、水素の存在下で触媒と接触させることによりノルマルパラフィンをより分枝したパラフィンに異性化するプロセスを指す。
【0023】
「水素化仕上げ」とは、微量の芳香族化合物、オレフィン、有色体及び溶媒を除去することにより、水素化仕上げ製品の酸化安定性、UV安定性及び外観を改善することを意図したプロセスを指す。UV安定性とは、UV光及び酸素に曝露される際の試験される炭化水素の安定性を指す。不安定性は、通常はHocまたは曇りと見なされる視認される沈殿物が形成される場合、または紫外光及び空気に曝露される際に濃い色が生じる場合に示される。水素化仕上げの一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び同第4,673,487号に見ることができる。
【0024】
「水素(Hydrogen)」または「水素(hydrogen)」という用語は、水素そのもの、及び/または水素源を与える1乃至複数の化合物を指す。
【0025】
「カットポイント」とは、所定の分離度に達する真沸点(TBP)曲線上の温度を指す。
【0026】
「流動点」とは、制御された条件下で油が流動し始める温度を指す。流動点は、ASTM D5950により測定することができる。
【0027】
「曇り点」とは、潤滑基油試料が指定された条件下で冷却される際に、ヘイズの発生が始まる温度を指す。潤滑基油の曇り点は、その流動点と補完的である。曇り点は、ASTM D5773により測定することができる。
【0028】
「TBP」とは、ASTM D2887-13による模擬蒸留法(SimDist)によって測定される炭化水素質原料または製品の沸点を指す。
【0029】
「炭化水素質」、「炭化水素」及びこれに類する用語は、炭素原子と水素原子のみを含む化合物を指す。炭化水素中に特定の基が存在する場合には、他の識別語を用いてその特定の基の存在を示すことができる(例えば、ハロゲン化炭化水素とは、炭化水素中の等しい数の水素原子と置き換わっているハロゲン原子が1つ以上存在することを示す)。
【0030】
「周期表」とは、the IUPAC Periodic Table of the Elements dated Jun. 22, 2007版を指し、周期表の族番号の表記法は、Chem.Eng.News,63(5),26-27(1985)に記載されているとおりである。「第2族」とは、IUPAC第2族元素を指し、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、マグネシウム、(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びそれらの組み合わせを指す。「第6族」とは、IUPAC第6族元素を指し、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)を指す。「第7族」とは、IUPAC第7族元素を指し、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおけるマンガン(Mn)、レニウム(Re)及びそれらの組み合わせを指す。「第8族」とは、IUPAC第8族元素を指し、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)及びそれらの組み合わせを指す。「第9族」とは、IUPAC第9族元素を指し、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)及びそれらの組み合わせを指す。「第10族」とは、IUPAC第10族元素を指し、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)及びそれらの組み合わせを指す。「第14族」とは、IUPAC第14族元素、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びそれらの組み合わせを指す。
【0031】
「担体」という用語は、特に、「触媒担体」という用語で使用される場合には、触媒材料を担持する、通常、表面積の大きな固体である従来の材料を指す。担体材料は不活性であってもよく、または触媒反応に関与してもよく、また、多孔質もしくは非多孔質であってよい。典型的な触媒担体としては、さまざまな種類の炭素、アルミナ、シリカ及びシリカ-アルミナ、例えば、非晶質シリカアルミネート、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニアならびに他のゼオライト及びその他の複合酸化物を添加することによって得られる材料が挙げられる。
【0032】
「モレキュラーシーブ」とは、フレームワーク構造内に分子サイズの均一な細孔を有し、モレキュラーシーブの種類に応じて、ある特定の分子のみがそのモレキュラーシーブの細孔構造に到達できる一方で、その他の分子は、例えば分子のサイズ及び/または反応性により排除されるようになっている材料を指す。「モレキュラーシーブ」と「ゼオライト」という用語は同義であり、(a)中間体、及び(b)最終または目的のモレキュラーシーブならびに(1)直接合成または(2)結晶化後処理(二次変性)により製造されたモレキュラーシーブが含まれる。二次合成法は、ヘテロ原子格子置換またはその他の方法による中間体材料からの目的材料の合成を可能にする。例えば、アルミノケイ酸塩は、BのAlへの結晶化後ヘテロ原子格子置換によって、中間ホウケイ酸塩から合成することができる。かかる技術は、例えば米国特許第6,790,433号に記載されてるように周知のものである。ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩、及び結晶性シリコアルミノリン酸塩は、モレキュラーシーブの代表例である。
【0033】
「MTT型モレキュラーシーブ」という用語には、the Atlas of Zeolite Framework Types, eds. Ch. Baerlocher, L. B. McCusker and D. H. Olson, Elsevier, 6.sup.th revised edition, 2007に記載される国際ゼオライト学会骨格コードMTTが割り当てられたすべてのモレキュラーシーブ及びそれらのアイソタイプが含まれる。
【0034】
本開示では、組成物、及び方法またはプロセスが、各種の成分または工程を「含む」という観点で説明されている場合が多いが、その組成物及び方法は、別段の記載のない限り、その各種の成分もしくは工程「から本質的になっても」よいし、またはその各種の成分もしくは工程「からなっても」よい。
【0035】
「a」、「an」及び「the」という用語は、複数の選択肢、例えば、少なくとも1つを含むことを意図している。例えば、「a transition metal」(遷移金属)または「an alkali metal」(アルカリ金属)の開示は、特に断らない限り、1つの、または複数の遷移金属またはアルカリ金属の混合物または組み合わせを包含することを意味する。
【0036】
本明細書における詳細な説明及び請求項内のいずれの数値も、示されている値が「約」または「およそ」によって修飾されており、当業者であれば予測されるであろう実験的誤差及び変動を考慮している。
【0037】
一態様では、本発明は、SSZ-93モレキュラーシーブを含む触媒組成物を含む、基油/潤滑油を含む脱ろう製品の製造に有用な水素異性化触媒系である。触媒組成物は他の触媒と組み合わせて配置することにより、炭化水素供給原料を最初に水素異性化触媒組成物と接触させて第1の生成物を得た後、第1の生成物を他の触媒組成物(複数可)と接触させて第2の生成物を得るか、または最初に他の触媒組成物(複数可)と接触させた後、そのような他の触媒からの1つ以上の生成物流を水素異性化触媒と接触させることができる。水素異性化触媒組成物は、一般に、SSZ-93モレキュラーシーブを、例えば、マトリックス(担体)材料及び周期表の第6~10族及び第14族から選択される少なくとも1つの改質剤及びマグネシウムなどの他の成分とともに含む。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、基油を含む脱ろう生成物の製造に有用な水素異性化プロセスであって、炭化水素供給原料を、水素異性化条件下で水素異性化触媒系と接触させて、基油生成物または生成物流を製造することを含む、方法に関する。上記のように、供給原料を最初に水素異性化触媒組成物と接触させて第1の生成物を得た後、第1の生成物を必要に応じて1つ以上の他の触媒組成物と接触させて第2の生成物を得てもよく、または必要に応じて最初にそのような他の触媒組成物と接触させた後、そのような触媒組成物からの1つ以上の生成物流を水素異性化触媒と接触させてもよい。このような装置からの第1及び/または第2の生成物はそれ自体が基油生成物である場合もあり、または基油生成物を製造するために使用される場合もある。
【0039】
マグネシウムを含むSSZ-93モレキュラーシーブ
本明細書で使用されるSSZ-93モレキュラーシーブは、SSZ-93が、マグネシウムをモレキュラーシーブ形成後に含浸させる代わりに、反応混合物の一部としてマグネシウムを含む点以外は、SSZ-32xと同様に製造される。「SSZ-32x」という用語は、SSZ-32の構造のゼオライトであって、100nM未満の結晶子サイズ(結晶子サイズとは結晶の最長の寸法を指す)を有するものとして特徴付けられるものを一般に指す。結晶子サイズは、当該技術分野で利用可能な手順及び機器を使用したXRD解析により測定することができる。
【0040】
SSZ-32Xモレキュラーシーブ及びプロセスは、本明細書にそれぞれを参照により援用する米国特許第10,160,657号及び同第9,677,016号に記載されている。本明細書で有用なモレキュラーシーブは一般に、MTT型の骨格、約20~約72の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、0.005~0.04cc/gの総微細孔体積、及びマグネシウムを含む。モレキュラーシーブSSZ-93は、モレキュラーシーブのSSZ-32x、SSZ-32、ZSM-23、EU-13、ISI-4、及びKZ-1ファミリーのようなMTT構造型に含まれるシーブと構造的に類似しており、マグネシウムを含むものとして特徴付けられる。
【0041】
マグネシウムの量及び添加
上述したように、SSZ-93とSSZ-32Xとの主な違いは、SSZ-93がマグネシウムを含むことである。マグネシウムは、モレキュラーシーブの製造プロセスの間の任意の好都合な時点で添加することができる。いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブを形成するために酸化マグネシウムが反応混合物に添加されるが、他のマグネシウム源を使用することもできる。マグネシウム源は、マグネシウムがモレキュラーシーブの一部をなし、モレキュラーシーブに所望の特性を与える限り、さほど重要ではない。例えば、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、さらにはマグネシウム塩とカルシウム塩の混合物などのマグネシウム塩を使用することができる。
【0042】
マグネシウムの量は、所望の選択性、転化率、及び/または、例えば潤滑油収率、粘度指数、ガス組成などの基油特性に応じて異なり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブは、少なくとも約0.005、または少なくとも約0.01、または少なくとも約0.04、または少なくとも約0.05~約0.4以下、または約0.25以下、または約0.22以下、または約0.2以下の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する。
【0044】
SSZ-93反応混合物成分
反応混合物成分の典型的かつ好ましいモル比を、以下の表に記載する。Mは、周期表の1族及び2族から選択され、Qは、ヘキサメトニウムカチオンである。各混合物は、上記に参照により援用されるMTT構造の参考文献及び以下の実施例に記載されるように加熱、撹拌、濾過、洗浄及び乾燥される。
【表1】
【0045】
いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブはさらに、パラジウム、白金またはそれらの混合物を含む。このモレキュラーシーブでは、以下に記載されるようなアンモニア昇温脱着試験において300℃よりも高い温度で脱着するアンモニアは、マグネシウムを含まない同等のモレキュラーシーブよりも多くなり得る。場合により、モレキュラーシーブは、3670cm-1及び3700cm-1にFTIR振動モードを示す。モレキュラーシーブは、上記に加えてまたは上記に代えて、ピリジンへの曝露時には存在しない3600cm-1のFTIR振動モードをピリジンへの曝露前に示す。
【0046】
マトリックス及び改質剤
触媒組成物のSSZ-93モレキュラーシーブは、一般的にマトリックス材料と組み合わされて基材を形成する。基材は、例えば、モレキュラーシーブをマトリックス材料と組み合わせ、混合物を押出して成形押出物を形成した後、押出物を乾燥及びか焼することによりベース押出物として形成することができる。触媒組成物はまた、一般的に、周期表の第6~10族及び第14族から選択される少なくとも1つの改質剤をさらに含み、場合により第2族金属をさらに含む。改質剤は、改質剤化合物を含む含浸溶液の使用によって添加することができる。
【0047】
触媒組成物に適したマトリックス材料としては、アルミナ、シリカ、セリア、チタニア、酸化タングステン、ジルコニア、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、触媒組成物及びプロセスのためのアルミナは、2020年11月11日出願の米国特許出願第17/095,010号に記載されるような「高ナノポア体積」アルミナ(「HNPV」アルミナと略記される)としてもよい。適当なアルミナは市販されており、例えば、Sasol(登録商標)より販売されるCatapal(登録商標)アルミナ及びPural(登録商標)アルミナ、またはUOP(登録商標)より販売されるVersal(登録商標)アルミナが挙げられる。一般に、アルミナは、触媒ベースのマトリックス材料としての使用が知られている任意のアルミナであってよい。例えば、アルミナは、ベーマイト、バイヤライト、γ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ、χ-アルミナまたはそれらの混合物とすることができる。
【0048】
適当な改質剤は周期表(IUPAC)の第6~10族及び第14族から選択される。適当な第6族の改質剤は、第6族元素、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおけるクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)、ならびにそれらの組み合わせを含む。適当な第7族の改質剤は、第7族元素、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおけるマンガン(Mn)、レニウム(Re)及びそれらの組み合わせを含む。適当な第8族の改質剤は、第8族元素、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)及びそれらの組み合わせを含む。適当な第9族の改質剤は、第9族元素、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)及びそれらの組合せを含む。適当な第10族の改質剤は、第10族元素、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)及びそれらの組み合わせを含む。適当な第14族の改質剤は、第14族元素、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びそれらの組み合わせを含む。さらに、任意の第2族の改質剤が存在してもよく、例えば、それらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかにおける、マグネシウム、(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びそれらの組み合わせなどの第2族の元素が挙げられる。
【0049】
改質剤は、1つ以上の第10族の金属を含むことが有利である。第10族金属は、例えば、白金、パラジウム、またはそれらの組み合わせであってよい。白金は、いくつかの態様では、別の第6族~第10族及び第14族の金属とともに適当な第10族金属である。第6族~第10族及び第14族の金属は、これらに限定されるものではないが、Pt、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Snまたはそれらの組み合わせから、より狭く選択されてもよい。第1及び/または第2の触媒組成物中の第1の金属としてのPtと併せて、触媒組成物中の任意の第2の金属もまた、例えば、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Snまたはそれらの組み合わせなどの第6族~第10族及び第14族の金属からより狭く選択されてもよい。より具体的な例では、触媒は、第10族金属としてのPtを、0.01~5.0重量%または0.01~2.0重量%または0.1~2.0重量%、より詳細には0.01~1.0重量%または0.3~0.8重量%の量で含むことができる。6~10族及び第14族の金属としてのPd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される任意の第2の金属が、0.01~5.0重量%または0.01~2.0重量%または0.1~2.0重量%、より詳細には0.01~1.0重量%及び0.01~1.5重量%の量で存在してもよい。
【0050】
触媒組成物中の金属含有量は、有用な範囲で異なってよく、例えば、触媒における全改質金属含有量は、0.01~5.0重量%、または0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%(全触媒重量基準)であってよい。場合によっては、触媒組成物は、改質金属の一つとして0.1~2.0重量%のPuと0.01~1.5重量%の第6族~10族及び第14族から選択される第2の金属、または0.3~1.0重量%のPuと0.03~1.0重量%の第2の金属、または0.3~1.0重量%のPuと0.03~0.8重量%のPuを含む。場合により、第1の第10族金属と、第6族~10族及び第14族から選択される任意の第2金属との比は、5:1~1:5、または3:1~1:3、または1:1~1:2、または5:1~2:1、または5:1~3:1、または1:1~1:3、または1:1~1:4の範囲であってよい。より具体的な場合では、触媒組成物は、0.01~5.0重量%の改質金属、1~99重量%のマトリックス材料、及び0.1~99重量%のモレキュラーシーブを含む。
【0051】
ベース押出物は、任意の好適な方法に従って製造することができる。例えば、ベース押出物を形成した後、乾燥及びか焼し、次いでベース押出物に任意の改質剤を充填することができる。適当な含浸法を使用して改質剤をベース押出物上に分散させることができる。しかしながら、ベース押出物の製造方法は、特定のプロセス条件または技術に従って特に限定されることを意図していない。
【0052】
これらに限定されるものではないが、例示的なプロセス条件としては、SSZ-93モレキュラーシーブ、添加されたマトリックス材料及び添加された液体を約20~80℃で約0.5~30分間、互いに混合し;押出物を約20~80℃で形成し、約90~150℃で0.5~8時間乾燥し;押出物を260~649℃(500~1200°F)で十分な空気流の存在下で0.1~10時間か焼し;押出物を少なくとも1つの改質剤を含有する金属含浸溶液と約20~80℃の範囲の温度で0.1~10時間にわたり接触させることによって改質剤を含浸させ;金属充填された押出物を約90~150℃で0.1~10時間乾燥させ、260~649℃(500~1200°F)で十分な空気流の存在下で0.1~10時間か焼するような場合が挙げられる。
【0053】
炭化水素を転化するためのプロセス
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載されるSSZ-93モレキュラーシーブを含む触媒を使用して炭化水素を転化するためのプロセスに関する。一般に、このプロセスは、炭化水素質原料を炭化水素転化条件下でSSZ-93モレキュラーシーブを含む触媒と接触させることを含む。すなわち、モレキュラーシーブは、SZ-32x、SSZ-32、ZSM-23、EU-13、ISI-4、及びKZ-1のようなゼオライトのMTT構造型ファミリーに属する。SSZ-93モレキュラーシーブは、MTT型の骨格、約20~約72の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、0.005~0.04cc/gの総微細孔体積、及びマグネシウムを含む。
【0054】
SSZ-93を使用することには多くの利点があり、例えば、マグネシウムを含まないSSZ-32Xまたは他のMTTモレキュラーシーブのような同等の触媒を使用する同等のプロセスよりも、異性化転化率96%で少なくとも約1.5%、または少なくとも約3%、または少なくとも約3.5%、または少なくとも約4.5%、または少なくとも約6%、または少なくとも約8%またはより良好な選択率が挙げられる。このような驚くべき予想外の選択性に加えて、SSZ-93を用いるプロセスは、マグネシウムを含まないSSZ-32Xのような同等の触媒を使用する同等のプロセスよりも改善された潤滑油収率(約0.3重量%超、または約0.45重量%超、または0.6重量%超~最大約0.8重量%以上)、より良好な粘度指数(少なくとも約1、または少なくとも約2、または少なくとも約3、~最大約4、または最大約5重量%以上)、及び改善されたガス組成(少なくとも約0.2重量%、または少なくとも約0.3重量%~最大約0.4、または最大1重量%以上減少したガス)を提供することができる。
【0055】
炭化水素原料
炭化水素原料は、一般的に各種の基油供給原料から選択されるものであってよく、軽油、真空軽油、ロングレジデュー(long residue)、真空残渣、大気圧留出物、重質燃料、油、ろう及びパラフィン、使用済み油、脱アスファルト残渣または原油、熱または触媒転化工程から得られるチャージ(charge)、シェールオイル、サイクルオイル、動物及び植物由来の脂肪、油及びろう、石油及びスラックワックス、またはそれらの組み合わせを含むことが有利である。炭化水素原料はまた、400~1300°F、または500~1100°F、または600~1050°Fの蒸留範囲の原料炭化水素留分を含んでもよく、及び/または炭化水素原料は、約3~30cStまたは約3.5~15cStの範囲でKV100(100℃での動粘度)を有する。
【0056】
場合により、プロセスは、SSZ-92触媒組成物がPt改質金属またはPtと別の改質剤との組み合わせを含む場合、炭化水素原料としての真空軽油(VGO)などの軽質または重質の中性基油原料に有利に使用することができる。
【0057】
生成物(複数可)または生成物流は、1つ以上の基油製品の製造、例えば、約2~30cStの範囲でKV100を有する複数のグレードの製造に使用され得る。場合により、そのような基油製品は、約-12℃、または-15℃、または-20℃以下の流動点を有し得る。
【0058】
水素異性化触媒及びプロセスはまた、さらなるプロセス工程、またはシステム構成要素と組み合わせることもでき、例えば、供給原料を、必要に応じて炭化水素供給原料を水素異性化触媒組成物と接触させる前に、水素化処理触媒を用いた水素化処理条件に曝すことができ、この場合、水素化処理触媒は、約0.1~1重量%のPtと約0.2~1.5重量%のPdを含有する耐火性無機酸化物材料を含むガード層触媒を含む。
【0059】
実際には、水素化脱ろうは主に、基油からろう分を除去することによって基油の流動点を低下させるため、及び/または基油の曇り点を低下させるために使用される。脱ろうは通常、ろう分を処理するために触媒プロセスを使用し、脱ろう剤原料は一般的に、粘度指数を高め、芳香族及びヘテロ原子含有量を低減し、脱ろう剤原料中の低沸点成分の量を低減させるように脱ろう前に改質される。一部の脱ろう触媒は、ろう状分子をより低分子量の分子にクラッキングすることにより、ろう転化反応を行う。他の脱ろうプロセスは、炭化水素原料中に含まれるろう分をろう分異性化によるプロセスに変換し、異性化されていない対応する分子よりも低い流動点を有する異性化分子を生成することができる。本明細書で使用する場合、異性化には、接触水素異性化条件下でのろう分子の異性化に水素を使用するための水素異性化方法が包含される。
【0060】
適当な水素脱ろう条件は一般に、使用される原料、使用される触媒、所望の収率、及び基油の所望の特性に依存する。典型的な条件としては、500°F~775°F(260℃~413℃)の温度、300psig~3000psig(2.07MPa~20.68MPaゲージ)の圧力、0.25時間-1~20時間-1のLHSV、及び2000SCF/bbl~30,000SCF/bbl(356~5340m3H2/m3原料)の水素/原料比が挙げられる。一般に、水素は、生成物から分離され、異性化ゾーンへ再循環される。一般に、本発明の脱ろうプロセスは水素の存在下で行われる。典型的には、炭化水素に対する水素の比率は、炭化水素1バレル当たり約2000~約10,000標準立方フィートH2の範囲内であり、通常、炭化水素1バレル当たり約2500~約5000標準立方フィートH2である。上記の反応条件は、第1及び第2の触媒の水素化異性化条件だけでなく、水素化処理ゾーンの水素化処理条件にも適用することができる。適当な脱ろう条件及びプロセスは、例えば、米国特許第5,135,638号、同第5,282,958号、及び同第7,282,134号に記載されている。
【0061】
触媒系及びプロセスを、SSZ-93モレキュラーシーブを含む水素異性化触媒組成物に関して一般的に説明したが、例えば、水素化処理触媒(複数可)/工程、ガード層、及び/または水素化仕上げ触媒(複数可)/工程を含む、層状触媒を含むさらなる触媒及び処理工程が存在してもよいことが理解されるべきである。
【0062】
反応混合物成分の典型的かつ好ましいモル比を、以下の表に記載する。各混合物は、上記に参照により援用される参考文献及び下記の実施例に記載されるように加熱、撹拌、濾過、洗浄及び乾燥される。すなわち、適当な方法は、(a)少なくとも1つのケイ素源、少なくとも1つのアルミニウム源、少なくとも1つの、周期表の第1族及び第2族から選択される元素源、少なくとも1つのマグネシウム源、水酸化物イオン、ヘキサメトニウムカチオン、及び水を含む反応混合物を調製することと、(b)反応混合物をモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に曝すことと、を含むことができる。適当な反応混合物は以下の通りである。Mは周期表の第1族及び第2族から選択され、Qはヘキサメトニウムカチオンである。
【表2】
【0063】
例示的実施形態
1.MTT型の骨格、約20~約72の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、0.005~0.04cc/gの総微細孔体積、及びマグネシウムを含む、モレキュラーシーブ。
【0064】
2.約0.005~約0.4の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、実施形態1に記載のモレキュラーシーブ。
【0065】
3.約0.01~約0.25の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0066】
4.約0.04~約0.22の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0067】
5.約0.05~約0.2の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0068】
6.23~35の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比を有する、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0069】
7.約20~約72のSiO2/Al2O3のモル比、約0.02~約0.5のM/SiO2のモル比、約0.015~約0.5のQ/SiO2のモル比、約0.07~約1.0のOH/SiO2のモル比、及び約5~約100のH2O/SiO2のモル比を含み、ただし、Mは周期表の第1族及び第2族から選択され、Qはヘキサメトニウムカチオンである、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0070】
8.約30~約35のSiO2/Al2O3のモル比、約0.15~約0.3のM/SiO2のモル比、約0.02~約0.25のQ/SiO2のモル比、約0.2~約0.4のOH/SiO2のモル比、及び約15~約35のH2O/SiO2のモル比を含み、ただし、Mは周期表の第1族及び第2族から選択され、Qはヘキサメトニウムカチオンである、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0071】
9.パラジウム、白金、またはそれらの混合物をさらに含む、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0072】
10.アンモニア昇温脱着試験において、300℃未満で脱着するアンモニアが、マグネシウムを含まない同等のモレキュラーシーブよりも多い、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0073】
11.3670cm-1、及び3700cm-1にFTIR振動モードを示す、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0074】
12.ピリジンへの曝露の前に、ピリジンへの曝露時には存在しない3600cm-1のFTIR振動モードを示す、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0075】
13.260~300m2/gの外表面積及び350~370m2/gのBET表面積を有する、先行する実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブ。
【0076】
14.(a)少なくとも1つのケイ素源、少なくとも1つのアルミニウム源、少なくとも1つの、周期表の第1族及び第2族から選択される元素源、少なくとも1つのマグネシウム源、水酸化物イオン、ヘキサメトニウムカチオン、及び水を含む反応混合物を調製することと、(b)前記反応混合物を前記モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に曝すことと、を含む、先行実施形態のいずれかに記載のモレキュラーシーブを調製する方法。
【0077】
15.炭化水素を転化するためのプロセスであって、炭化水素質原料を炭化水素転化条件下で、モレキュラーシーブを含む触媒と接触させることを含み、前記モレキュラーシーブが、MTT型の骨格、約20~約72の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比、0.005~0.04cc/gの総微細孔体積、及びマグネシウムを含む、前記プロセス。
【0078】
16.前記モレキュラーシーブが、約0.005~約0.4の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、先行する実施形態5のいずれかに記載のプロセス。
【0079】
17.前記モレキュラーシーブが、約0.01~約0.25の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、実施形態15または後続の実施形態のいずれかに記載のプロセス。
【0080】
18.前記モレキュラーシーブが、約0.04~約0.22の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、実施形態15または後続の実施形態のいずれかに記載のプロセス。
【0081】
19.前記モレキュラーシーブが、約0.05~約0.2の酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との比を有する、実施形態15または後続の実施形態のいずれかまたは後続の実施形態のいずれかに記載のプロセス。
【0082】
20.前記モレキュラーシーブが、23~35の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとのモル比を有する、実施形態15または後続の実施形態のいずれかに記載のプロセス。
【0083】
21.前記モレキュラーシーブは、アンモニア昇温脱着試験において300℃超で脱着するアンモニアが、マグネシウムを含まない同等のモレキュラーシーブよりも少ない、実施形態15または後続の実施形態のいずれかに記載のプロセス。
【0084】
22.マグネシウムを含まない同等の触媒を用いた同等のプロセスと比較して96%の異性化転化率における選択性が少なくとも3%良好である、実施形態15または後続の実施形態のいずれかに記載のプロセス。
【0085】
23.モレキュラーシーブSSZ-93を調製する方法であって、
(a)
(i)少なくとも1つの活性ケイ素源と、
(ii)少なくとも1つの活性アルミニウム源と、
(iii)少なくとも1つの活性マグネシウム源と、
(iv)少なくとも1つの活性アルカリ金属源と、
(v)水酸化物イオンと、
(vi)下記構造を有する有機鋳型剤:
【化1】
(式中、Rは、C
1~C
5アルキル基であり、A
-は、ゼオライトの結晶化に悪影響のないアニオンである)と、を含む反応混合物を調製することと、
(b)前記反応混合物をゼオライトの結晶を形成するのに十分な条件下に維持することであって、前記ゼオライトがアミン成分の非存在下で調製される、前記維持することと、
(c)前記ゼオライトの結晶を回収することと、を含む、前記方法。
【0086】
24.前記反応混合物が、各モル比が以下の範囲であるような組成を有する、実施形態23に記載の方法:
【表3】
(ただし、
Mは、アルカリ金属カチオンであり、
Qは、有機鋳型剤である)。
【0087】
25. 前記有機鋳型剤が、N-メチル-N’-イソプロピルイミダゾリウムヒドロキシドである、実施形態23または後続の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0088】
26. 前記有機鋳型剤が、N,N’-ジイソプロピルイミダゾリウムヒドロキシドである、実施形態23または後続の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0089】
27. 前記ゼオライトが、合成時のままの形態で、20:1~40:1未満の酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの比を有する、実施形態23または後続の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0090】
28. 前記ゼオライトが、10~40ナノメートルの結晶子サイズを有する、実施形態23または後続の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0091】
29. 前記ゼオライトが、か焼された形態で、実質的に下記表に示されるようなX線回折パターンを有する、実施形態23または後続の実施形態のいずれかに記載の方法:
【表4】
【0092】
実施例1
SSZ-93の合成用の反応混合物を、脱イオン水に以下のもの、すなわち、45%KOH(M)水溶液、0.47Mの水酸化N,N’-ジイソプロピルイミダゾリウム(Q)、及びNALCOより販売されるアルミナ被覆シリカゾルDVSZN007(固形分25重量%、SiO2/Al2O3比=35、対イオンとしてアセテート)及びSSZ-32xスラリーシード、及び酸化マグネシウムを順番に加えることにより調製した。反応混合物の各成分のモル比は以下の通りとした。
【0093】
【0094】
反応混合物を170℃に8時間加熱し、150rpmで継続的に撹拌した。反応混合物のpHを反応過程の全体を通じて監視して反応のエンドポイントを測定した。エンドポイントは58時間であった。生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、95℃(203°F)で乾燥した。合成時のままの生成物をXRD粉末回折(
図1)により測定したところ、MgO回折線が2θ=約38°にあるSSZ-93型材料であった。合成時のままの生成物のSEM(
図2)は、生成物が極めて小さい結晶の凝集粒子で構成されていることを示した。ICPによるAl、K、Si及びMgの分析によると、それぞれ、2.38%、1.40%、29.9%及び5.97%であり、Mg/Siのモル比は0.23、SiO
2/Al
2O
3のモル比は24.1であった。
【0095】
合成時のままの生成物を、最初に空気中で545℃で3時間、次いで595℃で3時間か焼した後、95℃の硝酸アンモニウム溶液と少なくとも4時間、2回のイオン交換を行って95℃(203°F)で乾燥させることにより、アンモニウム型に転化した。か焼した材料はそのX線結晶化度を維持した。得られたアンモニウム交換生成物は、3.16%のMgを含有し、Mg/Siモル比は0.103、SiO2/Al2O3のモル比は26.2、細孔容積は0.0316cc/g、外表面積は279.8m2/g、及びBET表面積は352.6m2/gであった。
【0096】
実施例1の生成物を透過型電子顕微鏡法(TEM)で分析した。TEM測定法は、A.W. Burton, et al. in Microporous and Mesoporous Materials 117, 75-90, 2009に開示されている。
図3は、生成物が均一に分布したSSZ-93の小結晶のみを含んでいることを示した。
【0097】
実施例2
SSZ-93の合成用の反応混合物を実施例1に従って調製した。反応混合物の各成分のモル比は、実施例1と同じであった。結晶化は実施例1の手順に従う。エンドポイントは51時間であった。生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、95℃(203°F)で乾燥した。合成時のままの生成物をXRD粉末回折(
図4)により測定したところ、MgO回折線が2θ=約38°にあるSSZ-93であった。合成時のままの生成物のSEM(
図5)は、生成物が極めて小さい結晶の凝集粒子で構成されていることを示した。ICPによるAl、K、Si及びMgの分析によると、それぞれ、2.86%、0.68%、34.3%及び4.95%であり、Mg/Siのモル比は0.17、SiO
2/Al
2O
3のモル比は23.0であった。
【0098】
合成時のままの生成物を、最初に空気中で545℃で3時間、次いで595℃で3時間か焼した後、95℃の硝酸アンモニウム溶液と少なくとも4時間、2回のイオン交換を行って95℃(203°F)で乾燥させることにより、アンモニウム型に転化した。か焼した材料はそのX線結晶化度を維持した。得られたアンモニウム交換生成物は、3.60%のMgを含有し、Mg/Siモル比は0.12、SiO2/Al2O3のモル比は25.7、細孔容積は0.0288cc/g、外表面積は288.7m2/g、及びBET表面積は355.6m2/gであった。
【0099】
実施例3
SSZ-93の合成用の反応混合物を実施例1に従って調製した。反応混合物の各成分のモル比は、実施例1と同じであった。結晶化は実施例1の手順に従う。エンドポイントは77時間であった。生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、95℃(203°F)で乾燥した。合成時のままの生成物をXRD粉末回折によって測定したところ、SSZ-93であった。合成時のままの生成物のSEM(
図6)は、生成物が極めて小さい結晶の凝集粒子で構成されていることを示した。
【0100】
合成時のままの生成物を、最初に空気中で545℃で3時間、次いで595℃で3時間か焼した後、95℃の硝酸アンモニウム溶液と少なくとも4時間、2回のイオン交換を行って95℃(203°F)で乾燥させることにより、アンモニウム型に転化した。か焼した材料はその完全なX線結晶化度を維持した。得られたアンモニウム生成物は、4.1%のMgを含有し、Mg/Siモル比は0.15、SiO2/Al2O3のモル比は23.6、細孔容積は0.0267cc/g、外表面積は300.1m2/g、及びBET表面積は363.5m2/gであった。
【0101】
実施例4
SSZ-93の合成用の反応混合物を実施例1に従って調製した。反応混合物の各成分のモル比は以下の通りとした。
【表6】
【0102】
結晶化は実施例1の手順に従う。エンドポイントは68.7時間であった。生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、95℃(203°F)で乾燥した。合成時のままの生成物をXRD粉末回折によって測定したところ、SSZ-93であった。合成時のままの生成物のSEM(
図7)は、生成物が極めて小さい結晶の凝集粒子で構成されていることを示した。
【0103】
実施例5
SSZ-93の合成用の反応混合物を実施例1に従って調製した。反応混合物の各成分のモル比は以下の通りとした。
【表7】
【0104】
結晶化は実施例1の手順に従う。エンドポイントは68.7時間であった。生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、95℃(203°F)で乾燥した。合成時のままの生成物をXRD粉末回折によって測定したところ、SSZ-93であった。合成時のままの生成物のSEM(
図8)は、生成物が極めて小さい結晶の凝集粒子で構成されていることを示した。
【0105】
実施例6(比較例)
酸化マグネシウムを含まない製品の例を調製した。
【0106】
酸化マグネシウムの非存在下で実施例1に従ってSSZ-32Xの合成用の反応混合物を調製した。反応混合物の各成分のモル比は以下の通りとした。
【表8】
【0107】
結晶化は実施例1の手順に従う。エンドポイントは64.2時間であった。生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、95℃(203°F)で乾燥した。合成時のままの生成物をXRD粉末回折によって測定したところ(
図9)、SSZ-32xであった。ICPによるAl及びSiの分析によると、それぞれ、2.27%及び35.4%であり、SiO
2/Al
2O
3のモル比は30.0であった。
【0108】
合成時のままの生成物を、最初に空気中で545℃で3時間、次いで595℃で3時間か焼した後、95℃の硝酸アンモニウム溶液と少なくとも4時間、2回のイオン交換を行って95℃(203°F)で乾燥させることにより、アンモニウム型に転化した。か焼した材料はそのX線結晶化度を維持した。か焼した材料はその完全なX線結晶化度を維持した。得られたアンモニウム交換生成物は、SiO2/Al2O3のモル比は32.7、細孔容積は0.035cc/g、外表面積は215.6m2/g、及びBET表面積は296m2/gであった。
【0109】
酸性度の特性評価
実験手順1
アンモニア昇温脱着(NH3 TPD)実験を、Autochem II系(Micromeritics, Inc.)で行った。TPDプロファイル及びピーク最高温度は試料の質量とガス流量との比に影響を受けやすいため、300mgをペレット化、粉砕及び篩別して得られた25~60メッシュ粒子で分析を行った。各試料を、500℃の50sccmのAr中で3時間、10℃/分の昇温速度で加熱することにより乾燥させた。次いで、試料を120℃に冷却し、25sccmの5%NH3/Arの流動流に0.5時間曝露し、その後、流れを50sccmのArに変更し、弱く結合したNH3を3時間脱着した。温度を10℃/mの速度で500℃に上昇させ、500℃に1時間保持した。
【0110】
実験手順2
Nicolet 6700 FTIR分光計を使用して振動スペクトルを測定した。ゼオライトを圧縮成形して薄い自立型ウェーハ(5~10mg/cm2)とし、CaF窓を備えたスチールセル中で、真空中、450℃で1時間、脱水した。MCTB検出器を用いて400cm-1~4000cm-1まで128回のスキャンを行って透過モードで80℃でスペクトルを記録した。単一反射ダイヤモンド-ATR及びDTGS検出器を使用して骨格モードを300cm-1~4000cm-1まで記録した。
【0111】
実験手順3
酸点の濃度測定を、約20mgの試料を用いてTGAマイクロバランス(Q5000IR,TA Instruments)で行った。材料を25sccmのN2中、500℃まで5℃/分で加熱し、1時間保持することにより乾燥させた。試料を120℃に冷却し、室温のバブラーにN2を流通させ、次いでこの試料にIPAM/N2流を10分間通すことによってイソプロピルアミン(IPAM)に曝露した。次に、ガス流を純N2に変更して、弱く結合したIPAMを除去した後、N2中、昇温脱着を10℃/分の速度で最高温度500℃まで1時間かけて行った。1)物理吸着されたIPAMからの脱着と、2)ゼオライト骨格内のブレンステッド酸点に吸着されたIPAMからの脱着の2つの大きな脱着があった。ブレンステッド酸点に対応する高温ピークの面積を用いて酸点濃度を推定した。
【0112】
実施例7
実施例1及び実施例6の試料のアンモニアTPDを実験手順1に従って測定した。脱着プロファイルを
図10に示す。実線:実施例6のSSZ-32x、破線:実施例1のSSZ-93。実施例6には、200℃付近のピークと、390℃付近に中心のある高温のピークの2つの極大値が存在している。200℃付近に中心のあるピークは、物理吸着したアンモニアであり、高温ピークは強酸点から生じるものである(Ref. book chapter by Auroux, Aline, Ch. 3, in A.W. Chester, E.G. Derouane (eds.), Zeolite Characterization and Catalysis, p. 107-166, Springer Science and Business Media, 2009)。これに対して、マグネシウムを含む実施例1のSSZ-93は300℃よりも高い温度により強度の低い高温ピークを有している。実施例1はまた、150~300℃の低温領域により大きな重量損失を有しており、これは非酸性または弱酸性の酸点と考えられる。
【0113】
実施例8
実施例1、実施例3、及び実施例6は、赤外線スペクトルを
図11に示す。実施例6のSSZ-32x(下)、実施例1のSSZ-93(中間)及び実施例3のSSZ-93(上)について、ピリジンへの曝露の前(実線)及び後(破線)が示されている。マグネシウムを有さない実施例6は、3740及び3600cm
-1に振動モードを有している。3740cm
-1のモードは、材料中の非酸性のSiOH基に由来するものであり、3600cm-1のモードは酸性のSi-OH-Al基を表している。マグネシウム含有材料であるSSZ-93である実施例1及び実施例3は、マグネシウム不含材料にみられるすべてのピークと、3700及び3670cm
-1にさらなるピークを有している。各試料は、実験手順3を用いて測定した場合に酸性度(表4)を、0.26~0.31mmol/gの範囲に有していた。ピリジンの吸着によって、3600cm-1のピークはほとんどまたは完全に消失したが、ピリジンは非酸性である3670、3700及び3740cm
-1の水酸基には吸着しなかった。
【表1】
【0114】
触媒の調製及び評価
水素化処理試験:n-ヘキサデカン異性化
実施例9
本明細書に記載される本発明に関する驚くべき情報は、本発明の実施例1、2及び3の生成物において原料としてn-ヘキサデカンとPd金属を使用した異性化選択性の試験から得られたものである。
【0115】
実施例1~3及び6のアンモニウム交換された各試料について、硝酸テトラアンミンパラジウム(II)(0.5重量%のPd)を用いてパラジウムイオン交換を行った。イオン交換後、各試料を95℃で乾燥させ、次いで空気中で482℃で3時間か焼して、硝酸テトラアンミンパラジウム(II)を酸化パラジウムに転化した。
【0116】
実施例1~3のパラジウム交換された各試料0.5gを、長さ23インチ、外径0.25インチのステンレス鋼反応管の中心に装填し、原料を予熱するために触媒の上流にアランダムを装填した(全圧1200psig;160mL/分のダウンフロー水素速度(1気圧及び25℃で測定した場合);1mL/分のダウンフロー液体供給速度)。すべての材料を最初に、約315℃で流れる水素中で1時間還元した。生成物を、30分ごとに1回、オンラインキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。GCからの生データを、自動データ収集/処理システムによって収集し、炭化水素転化率を生データから計算した。
【0117】
触媒を最初に約260℃で試験して、次の測定セットの温度範囲を決定した。全温度範囲により、最大転化率が96%をわずかに下回り、かつ96%を超える広範囲のヘキサデカン転化率が得られる。各温度で、少なくとも7回のオンラインGC注入を収集した。転化率は、反応して他の生成物(イソ-n-C16異性体を含む)を生成するヘキサデカンの量として定義された。収率は、n-C16以外の生成物の重量パーセントとして表され、収量生成物としてイソ-C16を含む。
【0118】
結果を表2に要約する。本発明のマグネシウム含有モレキュラーシーブSSZ-93(実施例1、2及び3)の転化率96%の異性化選択率は、マグネシウムを含まない比較例6の異性化選択率と比較して驚くほど良好である。同様に重要な点として、SSZ-93阻害剤の望ましい低いC
4クラッキング、ガス組成が比較例よりも良好であることがある。SSZ-93のゼオライト合成時の反応混合物中の酸化マグネシウムの存在を示すことは、SSZ-93が示す改善された性能特性を実現するうえで必要である。
【表2】
【0119】
実施例10
比較用の水素異性化結合触媒Aを以下のようにして調製した。すなわち、SSZ-32x(実施例6)をCatapalアルミナと加え合わせて、45重量%の32xゼオライトを含む混合物を得た。混合物を押出し、乾燥及びか焼し、乾燥及びか焼後の押出物に白金を含む溶液を含浸した。全体的な白金の充填量は0.325重量%であった。
【0120】
水素異性化結合触媒Bを触媒Aについて記載したように調製し、45重量%のSSZ-93(実施例2)及び55重量%のCatapalアルミナを含む混合物を得た。乾燥及びか焼した押出物に白金を含浸し、全体の白金充填量を0.325重量%とした。
【0121】
水素異性化性能試験条件
ろう状の原料「軽中性」(LN)を使用して、本発明の各触媒を評価した。原料の特性を下記表3に示す。
【表3】
【0122】
反応は、2つの固定床反応器を備えたマイクロユニットで行った。実験は2100psigの全圧下で実施した。原料を、触媒AまたはBを設置した水素異性化反応器に液空間速度(LHSV)2で通過させ、次いで、水素異性化生成物を、水素化仕上げ触媒を充填した第2の反応器で水素化仕上げし、潤滑油製品の品質をさらに改善した。水素化仕上げ触媒は、Pt、Pd、及び担体で構成される。水素異性化反応温度は、-15℃に達するように580~680°Fの範囲で調節した。油に対する水素の比率は、約3000scfbであった。潤滑油製品は、蒸留部を通して燃料から分離された。
【0123】
試験結果を表4に示す。触媒Bは、改善された潤滑油収率及び粘度指数を有することが明らかに実証された。それに応じて、ガス組成は0.4重量%減少した。
【表4】
【0124】
本出願の開示内容は、異なる側面を例示することを目的とした、本出願に記載される特定の実施形態に関して限定されるものではない。自明のとおり、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの改変及び変更を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に同等の方法及びシステムは、前述の代表的な説明から明らかであろう。かかる改変及び変更は、添付の代表的な請求項の範囲内に含まれるものとする。本開示は、かかる代表的な請求項が権利を有する等価物の全範囲とともに、添付の代表的な請求項の文言によってのみ限定されるべきである。本明細書で使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明する目的のものに過ぎず、これを限定しようとするものではない点も理解されるべきである。
【0125】
前述の説明は、その関連する実施形態と共に、あくまで例示のみを目的として示されるものである。説明は網羅的なものではなく、本発明を開示される厳密な形態に限定するものではない。当業者であれば、上記の説明から、上記の教示に照らして改変及び変更が可能であること、または開示される実施形態を実施することにより改変及び変更を行えることが認識されよう。例えば、記載される各ステップは、説明された同じ順序でまたは同じ程度の間隔で行われる必要はない。同様に、同じまたは類似の目的を実現するため、異なるステップを、必要に応じて、省略、繰り返しまたは組み合わせることができる。したがって、本発明は、上述した実施形態に限定されず、代わりに、均等物の完全な範囲に照らして添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0126】
上記の明細書では、異なる好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら説明した。しかしながら、以下の特許請求の範囲に記載される本発明のより広い範囲から逸脱することなく、本発明にさまざまな改変及び変更を行い得ること、また、さらなる実施形態を実施し得ることが明らかである。従って、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的なものとみなされるべきである。
【国際調査報告】