(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光遮断のための構造化保護窓
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558944
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2022057728
(87)【国際公開番号】W WO2022200483
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】507359579
【氏名又は名称】ショット コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2 International Drive,Suite 105,Rye Brook,NY 10573,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ゾーア
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ロイグナー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン テイバー
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス ハン
(72)【発明者】
【氏名】ハウケ エーゼマン
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AC02
5J084DA07
5J084EA33
(57)【要約】
本開示は、高い透過効率を有し、窓のそれぞれ異なる部分間で光を遮断することができる構造化保護窓に関する。構造化保護窓では、LiDAR外装自動車用途において投光部品および受光部品を保護および隔離するために一般的に使用される従来の保護窓と比較して、ガラスが破損しにくい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化保護窓であって、
厚さ、投光部および受光部を有する基材と、
前記基材の前記厚さに配置された湾曲した複数の光遮断チャネルと
を備え、
各光遮断チャネルは、前記厚さに実質的に平行な垂直側壁を有し、
隣接する光遮断チャネルは、式Aの垂直方向の重なりと、式Bの水平方向の重なりとを有し、
前記光遮断チャネルは、前記基材内を前記投光部から前記受光部へ内部透過することによる散乱光を減衰させ、
式A:10μm≦垂直方向の重なり≦小さい方の半径-チャネル幅、
式B:30μm+(2×チャネル幅)≦水平方向の重なり≦小さい方の半径-(2×チャネル幅)である、
構造化保護窓。
【請求項2】
前記垂直方向の重なりが、約50~約500μmである、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項3】
前記水平方向の重なりが、約50~約500μmである、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項4】
隣接する湾曲した光遮断チャネルの半径がそれぞれ異なる、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項5】
前記複数の光遮断チャネルの少なくとも1つの垂直側壁および/または少なくとも1つのチャネル底部に光遮断材料が適用されている、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項6】
前記光遮断材料が、不透明材料、吸収材料、および/または反射材料を含む、請求項5記載の構造化保護窓。
【請求項7】
前記光遮断材料が、光反射材料に適用された光吸収材料を含む、請求項5記載の構造化保護窓。
【請求項8】
前記光遮断材料が、光遮断チャネル底部にも適用されている、請求項5記載の構造化保護窓。
【請求項9】
前記基材が、単一ガラス材料または単一ポリマー材料で構成されている、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項10】
減衰量が、約1~約20dBである、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項11】
減衰量が、約10~約150dBである、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項12】
前記光遮断チャネルが、前記基材の前記厚さの約5%~約100%を通して延在している、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項13】
前記光遮断チャネルが、約10μm~約1mmの幅と、約50μm~約10mmの深さとを有する、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項14】
前記湾曲した複数の光遮断チャネルが、それぞれ同じ寸法を有する光遮断チャネルの第1の列と、それぞれ同じ寸法を有する光遮断チャネルの別の列とを互いに対向させて含む、請求項1記載の構造化保護窓。
【請求項15】
前記第1の列が、光遮断チャネルの第2の列によって少なくとも部分的に囲まれている、請求項14記載の構造化保護窓。
【請求項16】
請求項1記載の構造化保護窓と、光源と、光センサーとを備える、光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の背景
1.開示の分野
本開示は、高い透過効率を有し、窓のそれぞれ異なる部分間で光を遮断することができる構造化保護窓に関する。構造化保護窓では、LiDAR外装自動車用途において投光部品および受光部品を保護および隔離するために一般的に使用される従来の保護窓と比較して、ガラスが破損しにくい。
【0002】
2.開示の背景
現在利用可能なLiDAR投光器およびセンサー用の保護窓は、ポリマー材料を使用して側面で一緒に融着された2枚のガラスで構成されている。ポリマー材料は投光器(transmitter)とセンサーとを光学的に分離し、透過光が近くのセンサーを汚染するのを防ぐ。これらの従来の保護窓には、融着ポリマー接続部で破損する可能性があるという欠点がある。
【0003】
開示の概要
本開示の構造化保護窓は、窓の固体ガラス部を通して光を透過させ、投光部と受光部とを物理的に保護することができ、同時に光源による光検出センサーの光汚染を排除または最小化する。
【0004】
いくつかの実施形態では、構造化保護窓は、厚さを有する基材と、投光部と、受光部と、複数の光遮断(optical isolation)チャネルとを備える。複数の光遮断チャネルは、基材の厚さに配置された開口部とし得、各光遮断チャネルは、基材の厚さに実質的に平行な垂直側壁を有し得る。隣接する光遮断チャネルは、ある一定の水平方向の重なりと、ある一定の垂直方向の重なりとを有し得る。構造化保護窓は光を透過させ得る一方、光遮断チャネルは基材内を投光部から受光部へ内部透過することによる散乱光を減衰させ得る。複数の光遮断チャネルのうちの少なくとも1つの垂直側壁に光遮断材料を適用して光減衰を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明の実施形態による構造化保護窓を有する光学系を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による湾曲した複数の光遮断チャネルを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による湾曲した複数の光遮断チャネルを示す図である。
【
図3B】本発明の実施形態による2列の湾曲した光遮断チャネルを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による垂直方向の重なりを示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による水平方向の重なりを示す図である。
【
図6】複数の光遮断材料が適用された湾曲した光遮断チャネルを示す図である。
【
図7】一連の直線状の光遮断チャネルを示す図である。
【0006】
開示の詳細な説明
図1は、構造化保護窓1が、厚さ2と、投光部3と、投光部3に概ね対向する受光部4と、投光部3と受光部4との間に配置された湾曲した複数の光遮断チャネル5とを有する板状の基材である実施形態を示す。
図1にはまた、投光部3の後方に光源6と、受光部4の後方に光検出センサー7とが示されているとともに、透過および反射される光ビーム6Aの出射および入射方向も示されている。
【0007】
複数の光遮断チャネル5は、基材内を投光部3から受光部4へ内部透過することによる散乱光を減衰させ得る。散乱光は、入射光ビームが構造化保護窓を通過する際に誤って方向付けられた光である可能性がある。このような構造化保護窓は、例えば、隣接する光源から放射される光から光検出センサーの汚染を遮断し、防止することが望ましい用途において有用であり得る。
【0008】
投光部は、ターゲットに向けて出射光ビームを投光し、受光部は、光検出センサーに向けて入射反射光ビームを投光する。光ビームが投光部に入り、投光部から出る際に、複数の光遮断チャネルは、基材内を投光部から受光部へ内部透過することによる散乱光を減衰させる。この減衰により、感度の高い光検出センサーが光汚染から保護される。いくつかの実施形態では(構造化保護窓が光遮断材料を含まない場合)、散乱光の減衰量は、約1~約20dBまたは約3~約10dBである。いくつかの実施形態では(構造化保護窓が本明細書に記載の光遮断材料を含む場合)、散乱光の減衰量は、約10~約150dB、約10~約90dB、または約30~約65dBであり得る。こうしたものなどの保護窓は、LiDAR外装自動車用途や、光源が隣接する光検出センサーを汚染するのを防ぐことが望ましい他の用途で使用され得る。
【0009】
構造化保護窓は、意図された用途に所望される任意の形状を有し得る。
図1には、正方形の板状材料、例えば、平らなガラス板の形態の構造化保護窓1が示されているが、他の任意の形状も可能である。光遮断チャネルは、光源およびセンサーに対向する側の基材の表面から基材内に延在してもよいし、付加的にまたは代替的に、光源およびセンサーと同じ側の基材の表面から基材内に延在したり、基材の厚さ全体を通して延在したりしてもよい。いくつかの実施形態では、2つの構造化保護窓を一緒に接着して、組み合わされた構造化保護窓ユニットを形成することができる。このような実施形態では、個々の構造化保護窓の光遮断チャネルの位置は、光源およびセンサーの方を向いていてもよいし、光源およびセンサーの方を向いていなくてもよい。いくつかの実施形態では、最も内側の構造化保護窓の光遮断チャネルは、光源およびセンサーに対向する表面から基材内に延在する一方、最も外側の構造化保護窓の光遮断チャネルは、光源およびセンサーに最も近い表面から基材内に延在し、その結果、組み合わされた構造化保護窓ユニットは、組み合わされた構造化保護窓ユニットの内部内に一連の光遮断チャネルを有する一方、組み合わされた構造化保護窓の最も外側の表面は、いかなる表面構造化もされることなく実質的に平滑である。他の実施形態では、3つ以上の構造化保護窓が、本明細書に記載される方向のいずれかに延在する光遮断チャネルと共に接着される。
【0010】
基材は、光検出センサー性能で対象となる波長において高い透過率(例えば90%超)を有する任意の材料から作ることができ、例えば、単一のガラス材料または単一のポリマー材料で構成される板状材料から作ることができる。光検出センサーで対象となる典型的な透過波長範囲は約350~2,500nmであり、典型的な905nm、1,310nm、1,550nmのレーザー発光波長を透過させるのに理想的である。可視および近赤外スペクトルにおいて約97~99%のバルク透過率を有する光学ガラスが適切な例である。基材は、意図された用途に適した任意の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、厚さは、約100μm~約10mmまたは約1~約3mmとすることができる。
【0011】
光遮断チャネルは、例えばレーザー加工またはエッチングによって基材の出発材料の一部が除去された後に残る、基材の厚さ内の開放セグメントとすることができる。光遮断チャネル5の各々は、例えば
図2に示すように、構造化保護窓1の側面9に実質的に平行な垂直側壁8を有し得る。光遮断チャネルは、湾曲したものから直線状のものまで様々な形状を有していてもよい。
【0012】
複数の光遮断チャネル5は、例えば
図3に示すように、連続した、非線形および/または不均一な一連の個々の隣接する湾曲した光遮断チャネル5とすることができる。個々の湾曲した光遮断チャネルの各々は、隣接する個々の湾曲した光遮断チャネルと比較して、同じ曲率、深さまたは他の寸法を有する必要はない。個々の湾曲した光遮断チャネルのランダム化された寸法分布は、各々が全く同じ寸法を有する一連の同一の光遮断チャネルとは対照的に、湾曲した光遮断チャネルの反対側に到達するために亀裂断層線が移動しなければならない迂回経路を作製することによって、構造化保護窓の機械的安定性と耐破損性とを向上させることができる。しかしながら、少なくとも製造を容易にするために、レーザー加工およびエッチングプロセスでは、例えば
図3に示すように、各々が同じ寸法を有する1つの列の光遮断チャネルを、それぞれ同じ寸法を有する別の列の光遮断チャネルと対向させて生成することが効率的であり得、この場合、上の列のチャネルの半径は、下の列のチャネルの半径よりも小さいか、またはその逆である。これにより形成プロセスが容易になり、この場合、同じレーザー加工およびエッチングパラメータを使用して、基材を材料全体にわたって実質的に直線で加工して光遮断チャネルの第1の列を生成することができ、次に材料を実質的に第2の直線で加工して光遮断チャネルの第2の列を生成することができる。
【0013】
図3Bに示すように、個々の湾曲した光遮断チャネル5の1つ以上が、追加の湾曲した光遮断チャネル5Bによって少なくとも部分的に囲まれ得る。これらの追加の光遮断チャネルの全ては、本明細書に記載される他の光遮断チャネルと同じ方法で形成され得、本明細書に記載される他の光遮断チャネルと同じ寸法を有し得、囲まれている光遮断チャネルと組み合わせて、組み合わされた第1の列と第2の列との構造は、視覚的にタマネギの薄層に類似して見え得る。この組み合わされた同心円構造は、機能性コーティングの適用のためにより大きな表面積を提供することができ、また、本明細書に記載される光学的および機械的特性を高めることができる。
図3Bに示される第1および第2の列の光遮断チャネルも同様に、追加の列の光遮断チャネルによって少なくとも部分的に囲まれ得る。いくつかの実施形態における各列間の距離は25μm~1,000μmである。
【0014】
固体基材と光遮断チャネルの開放内部との間の屈折率差に一部起因する、光遮断材料を有する、または光遮断材料を有しない光遮断チャネルの各々によって提供される光減衰に加えて、光遮断チャネルはまた、亀裂伝播を軽減するのを助けることによって保護窓の機械的安定性に寄与することができる。例えば、光遮断チャネルの各々の形状および近接性は、特定の位置で発生した亀裂が隣接する位置まで伝播するのを阻止するのに役立ち得る。また、チャネルが湾曲している場合、チャネルの曲率により圧縮応力および引張応力が生じることがあり、これは亀裂伝播に影響を及ぼす可能性がある。対照的に、湾曲した光遮断チャネルがいかなる曲率も有しない一連の直線チャネルである場合、光が通過する可能性があり、保護窓に亀裂が入りやすくなり得る断層線が形成されることになる。
【0015】
機械的安定性と、複数の光遮断チャネルの対向する2つの側の間の散乱光信号の減衰とに寄与するために、各湾曲した光遮断チャネルは、隣接する光遮断チャネルとある程度の重なりを有している必要がある。この重なりは、例えば
図3および
図4に示すように、連続した一連の絡み合う湾曲した光遮断チャネルを形成することができ、ここで、1つの湾曲した光遮断チャネル5の終点10が、隣接する湾曲した光遮断チャネル5の始点と終点との間に引かれた仮想線を二分し、ここで、終点10は、隣接する湾曲した光遮断チャネル5の凹状の内部側に向いている。湾曲した光遮断チャネルに光が接触すると、隣接するチャネル間で光がチャネルの一方の側から他方の側へ透過するための任意の空間がなくても、反射または吸収されることができる。それによって、一連の光遮断チャネルは、基材内を投光部から受光部へ、そして光検出センサーへと内部透過することによる出射光ビームからの散乱光を減衰させることができる。
【0016】
本明細書では、隣接する湾曲した光遮断チャネル間のこの関係を垂直方向の重なりおよび水平方向の重なりと呼ぶ。垂直方向の重なりは、隣接する湾曲した光遮断チャネルの終点と始点との間の距離(
図4の「距離A」)である。いくつかの実施形態における垂直方向の重なりは、10μmの最小値から、小さい方の湾曲した光遮断チャネルの半径(一方がより小さい場合、そうでない場合はいずれかの半径)からチャネル幅を引いた最大値までである。これは、10μm≦垂直方向の重なり≦小さい方の半径-チャネル幅(「式A」)で表すことができる。いくつかの実施形態では、垂直方向の重なりは、約50~約500μm、約100~約400μm、または約200~約300μmである。垂直方向の重なりは、湾曲した光遮断チャネルを形成する構造化プロセス中に、湾曲した光遮断チャネルの曲率および他の寸法を調整することによって達成することができる。
【0017】
水平方向の重なりは、隣接する湾曲した光遮断チャネルの最外周縁の距離である(「
図5の距離B」)。いくつかの実施形態における水平方向の重なりは、30μmにチャネル幅の2倍を加えた最小値から、小さい方の湾曲した光遮断チャネルの半径(一方が小さい場合、そうでない場合はいずれかの半径)からチャネル幅の2倍を引いた最大値までである。これは、30μm+(2×チャネル幅)≦水平方向の重なり≦小さい方の半径-(2×チャネル幅)(「式B」)で表すことができる。いくつかの実施形態では、水平方向の重なりは、約50~約500μm、約100~約400μm、または約200~約300μmである。水平方向の重なりは、湾曲した光遮断チャネルを形成する構造化プロセス中に、湾曲したセグメントの曲率および他の寸法を調整することによって達成することができる。
【0018】
垂直方向の重なりと、水平方向の重なりとは、構造化保護窓の機械的および光学的特性に重要な役割を果たす。
【0019】
湾曲した光遮断チャネルの寸法は、意図された用途に依存する。いくつかの実施形態では、湾曲した光遮断チャネルの各々の半径は、約25μm~約10mm、約50μm~約3mm、約200μm~約3mm、または約500μm~約3mmである。いくつかの実施形態では、隣接する湾曲した光遮断チャネルの半径は異なっており、例えば
図3に示すように、例えば一方の半径が他方の半径よりも大きい。湾曲した光遮断チャネルの各々は、互いに非平行であってもよい。このような異なる寸法および位置の分布は、上述したように機械的安定性を向上させるのに役立ち得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、
図7に示すように、光遮断チャネルが湾曲している代わりに、一連の直線チャネルであることが適している場合がある。
図7はまた、隣接する2セットの光遮断チャネルのチャネルが互いにオフセットされ得ることを示している。湾曲した光遮断チャネルと同様に、これらの光遮断チャネルも、基材内を投光部から受光部へ内部透過することによる散乱光を減衰させることができる。
【0021】
隣接する直線、平行およびオフセットされた光遮断チャネルのセットは、湾曲の代わりに直線であること以外に、本明細書に記載される湾曲した光遮断チャネルと同じ寸法および他の特性を有していてもよいし有していなくてもよい。いくつかの実施形態では、隣接する平行な光遮断チャネル間の距離は同じであっても異なっていてもよく、約25μm~約1,000μmであってもよい。
【0022】
湾曲した光遮断チャネルは、垂直方向および水平方向の重なりにより、比較的互いに接近しているため、デバイスの投光部と受光部との間に配置されていてもよい。しかしながら、隣接する直線、平行およびオフセットされた光遮断チャネルは、隣接する各チャネル間の距離が、デバイスの投光部と受光部との間の距離よりも大きい可能性があるため、これは不可能な場合がある。このような場合、隣接する2つの光遮断チャネルのうちの1つは、第1の投光部とその隣接する受光部との間にあることができ、2つの光遮断チャネルのうちの第2の光遮断チャネルは、その隣接する受光部と第2の投光部との間にあることができる。言い換えれば、隣接する順序は、1つ以上の投光部、1つ以上の直線、平行およびオフセットされた光遮断チャネル、1つ以上の受光部、次いで1つ以上の直線、平行、オフセットされた光遮断チャネルとすることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、基材の厚さに対する光遮断チャネルの側壁8の深さは、約50μm~約10mmまたは約200μm~約2mmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、光遮断チャネルの幅11は、約10μm~約1mmまたは約20μm~約200μmの範囲であり得る。
【0024】
光遮断チャネルを形成するのに適したプロセスには、レーザーフィラメント形成とそれに続くエッチングとが含まれる。このようなプロセスでは、任意の光遮断チャネルを有しない前駆体基材、例えば平坦なガラス板にレーザーが適用される。レーザー加工とそれに続く化学エッチングプロセスとにより、ガラス前駆体材料の選択部分が正確な方法で除去され、複数の光遮断チャネルが作製される。複数の光遮断チャネルは、前駆体材料の一部を除去することによって作製される実質的に空の空間である。
【0025】
光遮断チャネルの各々は、一連の連続フィラメントを生成することによって形成することができ、これらのフィラメントを一緒にエッチングして各フィラメントを接続し、個々の光遮断チャネルを形成する。
【0026】
光遮断チャネルが構造化保護窓の厚さ全体を通して完全に延在する必要はないが、いくつかの実施形態では、光遮断チャネルが厚さ全体を通して完全に延在することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、光遮断チャネルは、基材の光入口側または光出口側のいずれかから、構造化保護窓の厚さの約5%~約100%、約50%~約100%、約5%~約95%、または約50%~約95%を通して延在する。
【0027】
作製される個々の光遮断チャネルの総数は特に限定されない。さらに、構造化保護窓は、1つ以上の複数の光遮断チャネル、例えば、窓のある位置に第1の部分、別の位置に第2の部分を有していてもよい。
【0028】
構造化保護窓は平行な面を有する必要はない。面は湾曲していてもよく、これは三次元表面上に光検出センサーを収容するのに特に有用であり得る。
【0029】
レーザーの動作および適切なレーザーの仕様は当業者に知られており、特に限定されない。適切な波長は、400~1,600nm、好ましくは1064/532nm(Nd:YAG)または1030/515nm(Er:YAG)である。パルス持続時間は、1ns>t>50fsで1~8バーストの超短パルス(UKP)とすることができる。繰り返し速度は、10kHz~2MHzであり得る。出力は、平均して5~200Wであり得る。エネルギーは、50μJ~40mJであり得る。生ビームは、ガウシアン、フラットトップ、ドーナツまたはエアリーであり得る。装置類は、XY軸速度100~2,000mm/s、スキャナー速度500~5,000mm/sのデュアル(またはマルチ)ビームパス(1つの固定光学系+1つのスキャナー)を備えた<5μmの精度/再現性のXYZモーションドライブであり得る。
【0030】
適切なエッチングプロセスは当業者に知られており、特に限定されない。例えば、液体エッチングを、アルカリ液、酸および他の添加剤の有無にかかわらず使用することができる。プラズマおよびスチームアシストによるドライエッチングも使用することができる。
【0031】
光遮断チャネルは、投光部と受光部との間の散乱光の減衰を補助するために、その表面、例えば少なくとも1つの側壁および/または少なくとも1つのチャネル底部に適用された光遮断材料を有し得る。光遮断材料は、例えば、不透明材料、吸収材料、および/または反射材料とすることができる。光学材料を適用することもできる。この材料はまた、ねじれおよび曲げの低減を提供することによって、構造化保護窓の機械的安定化剤として作用することができる。他の適切な材料としては、反射防止(AR)コーティングおよびバンドパス(BP)コーティングが挙げられる。材料は既知の技術を介して適用することができる。光遮断材料は、1つ以上の層の組み合わせで、かつ/または光遮断チャネルの充填材として適用することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、光遮断材料は、関連波長の光が隣接する光検出センサーを汚染しないように、ターゲット光検出センサーによって感知される波長領域で高い吸光度を有することが望ましい。適切な光遮断材料は、ガラスフリット、好ましくは黒色ガラスフリット、グラファイト、カーボンブラック、金属、および/または関連波長において0.01を超える吸光係数(k値)を有するものを含む他の吸収材料、例えばSiC、TiN、およびシリコンオキシカーバイドのような吸収材料であり得る。この材料は、マンガンフェライトスピネルなどのブラックスピネル、カーボンブラックおよび/またはグラファイトなどの吸収顔料を含有し得る。吸収顔料に適したバインダーとしては、シリコーン、有機バインダー(例えば、エポキシ、ポリウレタン、アクリル樹脂)、および/または無機有機ハイブリッドバインダー(例えば、ormocer)が挙げられる。
【0033】
吸収材料に加えて、または吸収材料の代替として、反射材料を光遮断チャネルに適用することができる。
図6は、光遮断チャネル5の垂直側壁8およびチャネル底部13に適用された反射コーティング12と、反射コーティング12に適用され光遮断チャネル5の大部分を充填する吸収コーティング14と、基材の表面に適用されたバンドパスフィルターコーティング15と、バンドパスフィルターコーティング15に適用された反射防止コーティング16とを有する実施形態を示す。他の実施形態では、これらの光遮断材料の1つ以上が1つ以上の異なる表面に適用されてもよい。これらの材料の一部は、安定性を高め、破損することなく、構造化保護窓全体の機械的強度を維持しながら、完全な平面またはほぼ完全な平面になるように基材の表面を容易に研磨することを可能にする光遮断チャネルを充填することができる。記載された材料は全て、液体コーティング、気相堆積、ならびにCVD、PE CVD、ALDおよびPE ALDなどの物理的堆積技術を含む既知の技術によって適用することができる。
【0034】
適切な吸収材料としてはまた、関連波長の光を吸収し、同時に構造化保護窓全体の安定性をサポートする高誘電率材料(例えば、低融点金属またはソルダーペースト;関連波長の光を吸収する顔料で構造化保護窓の安定性をサポートするバインダー系;および光遮断チャネルを充填し、充填後に不活性雰囲気中での急速レーザー加熱または焼戻しによって炭化され得る有機基を含有するバインダー系)が挙げられる。適切なバインダー系としては、有機ポリマー(例えばエポキシ、ポリウレタンおよびアクリル樹脂)、シリコーン系ポリマー(例えばシルセスキオキサンおよび架橋度の低いシリコーン)、無機有機ハイブリッド材料(例えばormocer)ならびにガラスフリットが挙げられる。
【0035】
適切な反射材料としては、関連波長で高い反射率を有する材料(例えば、金属銀、アルミニウム、インジウムドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛)、および反射する特定の波長用のブラッグ反射板を構築する低屈折率材料層と高屈折率材料層とを、特定の層厚で交互に形成する材料(例えば、SiO2 TiO2 SiO2の交互層)が挙げられる。
【0036】
構造化保護窓は、例えば、自動車、トラック、およびドローンなどの空飛ぶ乗り物における人間が運転するかまたは自律的な乗り物の衝突回避におけるクロストーク防止装置として、衝突回避が必要なあらゆる場所で有用である。それらはまた、スマートフォンなどの多波長光信号を選択的に分析するための(マルチ)分光カメラにも有用であり、高解像度医療用途や宇宙・自動車用途にも有用である。構造化保護窓は、LiDARシステムに、かつX線イメージングフェースプレート、X線コリメーションアレイ、バイオメトリックセンサーにおいて有用である。構造化保護窓は、構造化保護窓と、光源と、光センサーとを備える、光学システムの構成要素であってもよい。
【0037】
本開示は、1つ以上の例示的な実施形態を参照して説明したが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を等価物に置き換えられることが当業者には理解されよう。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの修正を行うことができる。したがって、本開示は、企図される最良の態様として開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示は、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】