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  • 特表-非特異的吸着防止用水溶性重合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】非特異的吸着防止用水溶性重合体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/531 20060101AFI20240305BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240305BHJP
   C08F 230/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G01N33/531 B
G01N33/543 501J
C08F230/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558963
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 SG2022050158
(87)【国際公開番号】W WO2022203603
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10202103164U
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522176470
【氏名又は名称】エヌ-ラブ・テクノロジー・センター・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】N-lab Technology Center Pte. Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ホンレイ
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100AL09Q
4J100AM21R
4J100BA15P
4J100BA29R
4J100BA32P
4J100BA64P
4J100CA05
4J100JA53
(57)【要約】
本発明は、タンパク質などの生体物質の非特異的吸着を防止する水溶性共重合体に関する。本発明の水溶性共重合体は、臨床診断、生化学実験、医療機器などで使用される試薬や粒子に主に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1重合体鎖を、ポリカルボン酸を含む第2重合体鎖に架橋して形成された水溶性架橋共重合体であって、
架橋前の前記第1重合体鎖は、双性イオンホスホリルコリン基を含む構成単位(a)と、アミン基を含む構成単位(b)と、水酸基を含む構成単位(c)とを含み、
該水溶性架橋共重合体は、前記第2重合体鎖のカルボン酸基と前記第1重合体鎖のアミン基との間に形成された1つ以上の架橋を含み、
任意で、前記第1重合体鎖のアミン基が一級アミン基である、水溶性架橋共重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の水溶性架橋共重合体であって、
該水溶性架橋共重合体は、
下記にその式を示す構成単位(A’)及び/若しくは(A’’)と、構成単位(B)と、構成単位(C)とを含む第1重合体鎖と、
構成単位(D)を含む第2重合体鎖と、を含む水溶性架橋共重合体であり、
前記第1重合体鎖と前記第2重合体鎖との間に1つ以上の架橋を含む、水溶性架橋共重合体。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、
Xは、O又はNHを示し、
R1は、1~5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキレン基を示し、
Eは、共有結合、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)-、又は-C(O)NH-を示し、
Rcは、水酸基含有基を示し、
各R4は、それぞれ独立して、メチル基又は水素原子を示し、
R6は、アミン基(例えば、一級アミン基)を含む部分を示し、R6bは、-COOH 又は-C(O)O-Y-COOHを示し(Yは、C1-5アルキレン基を示し、前記第1重合体鎖の少なくとも1つのR6と第2重合体鎖のR6bとが、当該R6のアミン基と当該R6bのカルボン酸との間に形成されたアミド結合を介して共有結合している)、
各R7は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、メトキシエチル基、ヒドロキシメチル基、及びヒドロキシエチル基からなる群から選択されたものであり、
R8は、カルボキシル基又は水素原子を示し、
R9は、共有結合、1~10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン、又は、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びメトキシエチル基からなる群から選択される1~3個の置換基を有する、1~5個の炭素原子を有する直鎖アルキレンを示し、
w、x、y、及びzは、それぞれ独立して、1から50までの整数である。)
【請求項3】
請求項1又2に記載の水溶性架橋共重合体であって、
該水溶性架橋共重合体の重量平均分子量が2,000から1,000,000ダルトン、好ましくは5,000から500,000ダルトン、より好ましくは10,000から250,000ダルトンである、水溶性架橋共重合体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の水溶性架橋共重合体であって、
前記第1重合体鎖が、構成単位(A’)及び/若しくは(A’’)と、構成単位(B)と、構成単位(C)とを含むランダム共重合体である、水溶性架橋共重合体。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
前記第1重合体鎖が、構成単位(A’)(式中XはOであり、R1はメチレンであり、Eは共有結合である)を含む、又は
前記第1重合体鎖が、構成単位(A’’)を含む、水溶性架橋共重合体。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(B)が、アリルアミン塩酸塩、4-ビニルアニリン、メタクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、アクリル酸2-アミノエチル、アミノアクリレート、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩、及び、メタクリル酸2-アミノエチルフェノチアジンからなる群から選択されたひとつ(例えば、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩)を重合して形成される構成単位を示す、水溶性架橋共重合体。
【請求項7】
請求項2~5のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(B)が下記の式を有する、水溶性架橋共重合体。
【化6】
(式中、R3は、O又はNHを示し、R4は請求項2に定義されたものであり、R6aは-Y-CH2-NH2、又は-Z-NH2(式中、YはC1-5アルキレン基を示し、ZはC6-12アリール基を示す。))
【請求項8】
請求項2~7のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、構成単位(C)が下記の式を有する、水溶性架橋共重合体。
【化7】
(式中、
R2は、1~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキレン基、構成単位数が1~20個のポリオキシアルキレン基、又は6~18個の炭素原子を有するアリーレン基を示し、
R3は、O又はNHを示し、
R4は、請求項2に定義されたものであり、
R5は、CnH2n-m+1(OH)m(式中、nは1から5の整数を示し、mは1、2、又は3である。))
【請求項9】
請求項8に記載の水溶性架橋共重合体であって、mは1である、水溶性架橋共重合体。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の水溶性架橋共重合体であって、R2が、繰り返し単位が1~20個である、エチレングリコール又はプロピレングリコールを示す、水溶性架橋共重合体。
【請求項11】
請求項2~7のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(C)が、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ヒドロキシポリエトキシ(10)アリルエーテル、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、モノメタクリル酸グリセロール、メタクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、メタクリル酸ポリ(エチレングリコール)、メタクリル酸ポリ(プロピレングリコール)、及び、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミドからなる群から選択されたひとつ(例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)の重合から形成される構成単位である、水溶性架橋共重合体。
【請求項12】
先行する請求項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、前記第1重合体鎖の重量平均分子量が、500から100,000ダルトン、好ましくは2,000から50,000ダルトンである、水溶性架橋共重合体。
【請求項13】
請求項2~12のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(D)が、ポリ(アクリル酸)、ポリメタクリル酸、ポリスチレン-block-ポリ(アクリル酸)、ポリマレイン酸、ポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ(D,L-ラクチド-block-アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-co-アクリル酸)、及び、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)からなる群から選択されたひとつの重合から形成された構成単位である、水溶性架橋共重合体。
【請求項14】
請求項13に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(D)が、アクリル酸、メタクリル酸、及び、アクリル酸2-カルボキシエチルからなる群から選択されたひとつの重合から形成された構成単位である、水溶性架橋共重合体。
【請求項15】
先行する請求項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
前記第2重合体鎖の重量平均分子量が、2,000から700,000ダルトン、好ましくは5,000から350,000ダルトン、より好ましくは10,000から250,000ダルトンである、水溶性架橋共重合体。
【請求項16】
先行する請求項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、前記第2重合体鎖のカルボン酸基の5%から75%が前記第1重合体鎖のアミン基に架橋されており、好ましくは、前記第2重合体鎖のカルボン酸基の10%から50%が前記第1重合体鎖のアミン基に架橋されている、水溶性架橋共重合体。
【請求項17】
先行する請求項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体を調製する製造方法あって、
(a)構成単位(1)に対応する単量体と、構成単位(2)に対応する単量体と、構成単位(3)に対応する単量体とを溶媒(例えば、水)に混合する工程と、
(b1)前記単量体混合物を重合する工程であって、任意で、開始剤の添加と、55℃から90℃までの温度に5時間から24時間加熱することとを行って重合する工程と、
(c1)工程(b1)で得られた重合体とポリカルボン酸とを共役させて水溶性架橋共重合体を形成する工程であって、任意で、前記共役をpH4.5から8.5の緩衝剤の存在下で行う工程と、を含む製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の製造方法であって、
(d)工程(c1)で得られた前記水溶性架橋共重合体を基材に共役させる工程を更に含む、製造方法。
【請求項19】
請求項17に記載の製造方法であって、
(b2)工程(b1)で得られた前記重合体を、工程(c1)の前に、基材に共役させる工程、又は
(c0)工程(c1)の前記ポリカルボン酸を、工程(b1)で得られた前記重合体を前記ポリカルボン酸に共役させる前に、基材に共役させる工程を更に含む、製造方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の製造方法であって、
前記基材が、粒子、中空フィルター、プラスチックチューブ、ガラスファイバー、ガラススライド、マイクロプレート、およびマイクロ流体装置から選択されたものである(例えば、前記基材が、粒子、中空フィルター、マイクロプレート、およびマイクロ流体装置から選択されたものである)、製造方法。
【請求項21】
請求項18~20のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記基材の材料が、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート、カーボンファイバー、セルロース系材料、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリ(4-メチルブテン)、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリシロキサン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、強磁性物質、シリカ、又は、これらのいずれかの混合物若しくは複合材などの重合体系材料、有機材料、又は複合材料から選択されたものである、製造方法。
【請求項22】
請求項18~21のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記基材が、一級アミン、エポキシド基、トシル基、および、アルデヒド基からなる群から選択された1つ又は複数のもので機能化されている、製造方法。
【請求項23】
前記基材が一級アミンで機能化されている、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1~16のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体を有する基材。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
イムノアッセイは、抗体と抗原間の特異的な化学的相互作用を利用して、特異なプロテオームの「バイオマーカー」シグネチャを発現するというもので、生物的プロセスの発見、検出、およびモニタリングについて有用である。イムノアッセイは、医療ツール及び研究ツールの両方として、また、分析化学、薬理学、分子細胞生物学、および臨床生化学などのさまざまな科学分野でその重要性を増してきている。現在では、イムノアッセイは、世界中の多くの研究室において使用され、多数の企業が、公害物質、ホルモン、疾病マーカー、病原体などの特異的な分析対象の定量をするにイムノアッセイを採用した診断ツールや検出ツールを販売している。
【0002】
しかし、イムノアッセイには、バイオマーカーの濃度レベルが相対的に低い検出初期段階において信号雑音比(SN比)が低いことが多いという問題がある。SN比が低いとアッセイの信用度が悪化し、偽陽性や偽陰性の結果につながるので、高感度検査が必要とされる。これは、標的分子と非標的分子の両方がアッセイプラットフォームに非特異的に吸着することによってバックグラウンドノイズが高くなることによって生じうる。結果、バックグラウンドノイズが高くなり、感度の向上を妨げることになる。さまざまイムノアッセイ技術のなかでも、化学発光が、比色や蛍光と比べて最も高い検出限界を提示する。しかし、化学発光イムノアッセイのSN比にも改善の余地がある。
【0003】
化学発光イムノアッセイ(CLIA)において、高ノイズレベルの潜在的原因のひとつは、アクリジニウムエステル又はイソルミノール誘導体、アルカリリン酸塩、及びホースラディッシュペルオキシダーゼなどで標識された抗体などのシグナル発生体と共役する二次抗体が非特異的に吸着することである。臨床試料における診断の場合、抗原のような特異物質を、共存する生体分子において検出する。生体分子と共存する血清などの物質は、粒子の表面上に吸着される傾向がある。そして粒子の表面を、シグナル発生体で標識された二次抗体がより非特異的に吸着され易いものにしてしまう。その結果、ノイズが高くなり、SN比の向上の妨げとなる。
【0004】
CLIAのSN比を向上させるための一般的なアプローチは、アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどの生物由来の物質を添加剤として用いて非特異的吸着を防ぐというものである。しかし、これらの添加剤を使用した後でも、非特異的吸着は残る。また、これら生物由来の添加物には、バッチごとのばらつきが大きい場合がある。例えば、良好な結果をもたらすアルブミンのバッチもあれば、全く効果がないバッチもあるというようなことが起こりうる。有効なバッチの選別は、試してみないとわからないので、選別作業の負担が大きくなる。さらに、生体由来の添加剤を使用した場合、生物汚染も問題となりうる。また、このような添加剤によって非特異的吸着を防止しても、酸やアルカリ、表面活性剤の水溶液などで洗浄を行うと、その効果が阻害され、耐久性が悪化してしまう。合成物質を使用して表面を不動態化する試みがなされている。非特異的吸着を防止するために調製された合成重合体の例としては、ポリオキシエチレン(JP-A-5-103831、JP-A-2006-177914、及びJP-A-2006-299045)やホスホリルコリン基を有する共重合体(JP-A-2006-176720及びJP-A-2006-258585)などが挙げられる。しかし、その非特異的吸着防止効果は十分ではない。原因としては、(1)共重合体の構造は通常直鎖状であるため、直鎖重合体を用いて広範囲をカバーすることが困難でありえることと、(2)このようなブロック共重合体の分子量は通常低く、目標とする表面上に厚いコーティング膜を形成するのが困難でありうることとが考えられる。その他の重合体としては、さまざまな分子量のアミノデキストラン類や修飾デキストラン類(EP2230515A1)が挙げられる。これらの重合体は、負荷電したタンパク質や生体物質に対しては非特異的吸着を防止することが可能であり得るが、正荷電したタンパク質や生体物質に対してはそれ程効果的ではない。生体試料は、通常、抗原と抗体の混合物であり、ひとつの試料内に様々に荷電した生体分子を含んでいる場合があるので、これらの重合体は多くの生体試料に対して有効でない可能性がある。よって、複合的な混合物に対する非特異的吸着を防止することができる重合体についての必要性が満たされていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、本明細書に規定する重合体を基材の表面に共役させることで、生体分子/生体物質の非特異的吸着を最小限に抑制することができるという驚くべきことを見出した。これにより、バックグラウンド結合を最小限に抑制し、アッセイのSN比を向上して、より正確で信頼性の高い検出をすることができるという効果を奏する。
【0006】
本発明の態様と実施形態を以下の数字を付した項に記す。
1.第1重合体鎖を、ポリカルボン酸を含む第2重合体鎖に架橋して形成された水溶性架橋共重合体であって、
架橋前の前記第1重合体鎖は、双性イオンホスホリルコリン基を含む構成単位(a)と、アミン基を含む構成単位(b)と、水酸基を含む構成単位(c)とを含み、
該水溶性架橋共重合体は、前記第2重合体鎖のカルボン酸基と前記第1重合体鎖のアミン基との間に形成された1つ以上の架橋を含み、
任意で、前記第1重合体鎖のアミン基は一級アミン基である、水溶性架橋共重合体。

2.第1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
該水溶性架橋共重合体は、
下記にその式を示す構成単位(A’)及び/若しくは(A’’)と、構成単位(B)と、構成単位(C)とを含む第1重合体鎖と、
構成単位(D)を含む第2重合体鎖と、を含む水溶性架橋共重合体であり、
前記第1重合体鎖と前記第2重合体鎖との間に1つ以上の架橋を含む、水溶性架橋共重合体。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、
Xは、O又はNHを示し、
R1は、1~5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキレン基を示し、
Eは、共有結合、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)-、又は-C(O)NH-を示し、
Rcは、水酸基含有基を示し、
各R4は、それぞれ独立して、メチル基又は水素原子を示し、
R6は、アミン基(例えば、一級アミン基)を含む部分を示し、R6bは、-COOH 又は-C(O)O-Y-COOHを示し(Yは、C1-5アルキレン基を示し、前記第1重合体鎖の少なくとも1つのR6と第2重合体鎖のR6bとが、当該R6のアミン基と当該R6bのカルボン酸との間に形成されたアミド結合を介して共有結合している)、
各R7は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、メトキシエチル基、ヒドロキシメチル基、及びヒドロキシエチル基からなる群から選択されたものであり、
R8は、カルボキシル基又は水素原子を示し、
R9は、共有結合、1~10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン、又は、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びメトキシエチル基からなる群から選択される1~3個の置換基を有する、1~5個の炭素原子を有する直鎖アルキレンを示し、
w、x、y、及びzは、それぞれ独立して、1から50までの整数である。)

3.第1又は第2項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
該水溶性架橋共重合体の重量平均分子量が2,000から1,000,000ダルトン、好ましくは5,000から500,000ダルトン、より好ましくは10,000から250,000ダルトンである、水溶性架橋共重合体。

4.第2又は第3項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
前記第1重合体鎖が、構成単位(A’)及び/若しくは(A’’)と、構成単位(B)と、構成単位(C)とを含むランダム共重合体である、水溶性架橋共重合体。

5.第2~第4項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
前記第1重合体鎖が、構成単位(A’)(式中XはOであり、R1はメチレンであり、Eは共有結合である)を含む、又は
前記第1重合体鎖が、構成単位(A’’)を含む、水溶性架橋共重合体。

6.第2~第5項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(B)が、アリルアミン塩酸塩、4-ビニルアニリン、メタクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、アクリル酸2-アミノエチル、アミノアクリレート、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩、及び、メタクリル酸2-アミノエチルフェノチアジンからなる群から選択されたひとつ(例えば、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩)を重合して形成される構成単位を示す、水溶性架橋共重合体。

7.第2~第5項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(B)が下記の式を有する、水溶性架橋共重合体。
【化6】
(式中、R3は、O又はNHを示し、R4は第2項に定義されたものであり、R6aは-Y-CH2-NH2、又は-Z-NH2(式中、YはC1-5アルキレン基を示し、ZはC6-12アリール基を示す。))

8.第2~第7項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、構成単位(C)が下記の式を有する、水溶性架橋共重合体。
【化7】
(式中、
R2は、1~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキレン基、構成単位数が1~20個のポリオキシアルキレン基、又は6~18個の炭素原子を有するアリーレン基を示し、
R3は、O又はNHを示し、
R4は、第2項に定義されたものであり、
R5は、CnH2n-m+1(OH)m(式中、nは1から5の整数を示し、mは1、2、又は3である。))

9.第8項に記載の水溶性架橋共重合体であって、mは1である、水溶性架橋共重合体。

10.第8又は第9項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
R2が、繰り返し単位が1~20個である、エチレングリコール又はプロピレングリコールを示す、水溶性架橋共重合体。

11.第2~第7項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(C)が、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ヒドロキシポリエトキシ(10)アリルエーテル、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、モノメタクリル酸グリセロール、メタクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、メタクリル酸ポリ(エチレングリコール)、メタクリル酸ポリ(プロピレングリコール)、及び、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミドからなる群から選択されたひとつの重合から形成される構成単位である、水溶性架橋共重合体。

12.先行する項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、前記第1重合体鎖の重量平均分子量が、500から100,000ダルトン、好ましくは2,000から50,000ダルトンである、水溶性架橋共重合体。

13.第2~第12項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、
構成単位(D)が、ポリ(アクリル酸)、ポリメタクリル酸、ポリスチレン-block-ポリ(アクリル酸)、ポリマレイン酸、ポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ(D,L-ラクチド-block-アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-co-アクリル酸)、及び、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)からなる群から選択されたひとつの重合から形成された構成単位である、水溶性架橋共重合体。

14.第13項に記載の水溶性架橋共重合体であって、構成単位(D)が、アクリル酸、メタクリル酸、及び、アクリル酸2-カルボキシエチルからなる群から選択されたひとつの重合から形成された構成単位である、水溶性架橋共重合体。

15.先行する項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、前記第2重合体鎖の重量平均分子量が、2,000から700,000ダルトン、好ましくは5,000から350,000ダルトン、より好ましくは10,000から250,000ダルトンである、水溶性架橋共重合体。

16.先行する項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体であって、前記第2重合体鎖のカルボン酸基の5%から75%が前記第1重合体鎖のアミン基に架橋されており、好ましくは、前記第2重合体鎖のカルボン酸基の10%から50%が前記第1重合体鎖のアミン基に架橋されている、水溶性架橋共重合体。

17.先行する項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体を調製する製造方法あって、
(a)構成単位(1)に対応する単量体と、構成単位(2)に対応する単量体と、構成単位(3)に対応する単量体とを溶媒(例えば、水)に混合する工程と、
(b1)前記単量体混合物を重合する工程であって、任意で、開始剤の添加と、55℃から90℃までの温度に5時間から24時間加熱することとを行って重合する工程と、
(c1)工程(b1)で得られた重合体とポリカルボン酸とを共役させて水溶性架橋共重合体を形成する工程であって、任意で、前記共役をpH4.5から8.5の緩衝剤の存在下で行う工程と、を含む製造方法。

18.第17項に記載の製造方法であって、(d)工程(c1)で得られた前記水溶性架橋共重合体を基材に共役させる工程を更に含む、製造方法。

19.第17項に記載の製造方法であって、
(b2)工程(b1)で得られた前記重合体を、工程(c1)の前に、基材に共役させる工程、又は
(c0)工程(c1)の前記ポリカルボン酸を、工程(b1)で得られた前記重合体を前記ポリカルボン酸に共役させる前に、基材に共役させる工程を更に含む製造方法。

20.第18項又は第19項に記載の製造方法であって、
前記基材が、粒子、中空フィルター、プラスチックチューブ、ガラスファイバー、ガラススライド、マイクロプレート、およびマイクロ流体装置から選択されたものである(例えば、前記基材が、粒子、中空フィルター、マイクロプレート、およびマイクロ流体装置から選択されたものである)、製造方法。

21.第18項~第20項のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記基材の材料が、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート、カーボンファイバー、セルロース系材料、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリ(4-メチルブテン)、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリシロキサン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、強磁性物質、シリカ、又は、これらのいずれかの混合物若しくは複合材などの重合体系材料、有機材料、又は複合材料から選択されたものである、製造方法。

22.前記基材が、一級アミン、エポキシド基、トシル基、および、アルデヒド基からなる群から選択された1つ又は複数のもので官能化されている第18項~第21項のいずれか1項に記載の製造方法。

23.前記基材が一級アミンで機能化されている、第22項に記載の製造方法。

24.第1項~第16項のいずれか1項に記載の水溶性架橋共重合体を有する基材。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、様々なタイプのビーズに対するタンパク質の吸着を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載する水溶性架橋共重合体を使用することで、前記の課題をすべて又は一部解決できるという驚くべきことを見出した。
【0009】
通常、生体試料は、脂質、抗原、抗体などの複合混合物である。これらは同じ環境において正反対に荷電している場合があるので、複合混合物の非特異的吸着を阻害するように表面が構成されていることが重要である。例えば、β-HCGの等電点は6.2~6.6であり、チロトロピン受容体(TSHR)の等電点は8~10である。これは、pHが中性の場合、β-HCGはプラスに荷電し、チロトロピン受容体(TSHR)はマイナスに荷電するということである。生体物質の非特異的吸着を防ぐには、表面が、同じ緩衝pHにおいてどちらの生体物質も吸着しないものであることが理想的である。驚くべきことに、本発明の重合体を基材の表面に共役することで、非特異的吸着を最小限にすることが分かった。このコーティングを用いた化学発光イムノアッセイは、SN比が改善され、バックグラウンド結合が最小限に抑制されるので、正確且つ信頼性の高い検出をもたらすと考えられる。本発明の重合体が、(例えば、タンパク質などの生体分子の)非特異的吸着が望ましいその他の材料のコーティングにも有益である場合があることは、当業者は理解するであろう。
【0010】
本明細書に記載の実施形態において、「含む(comprising)」という用語は、
記載している構成を含むと解釈されるべきものだが、その他の構成の存在を制限すると解釈されるべきではない。また、「含む(comprising)」という用語は、挙げられている成分/構成のみが存在していることを意図した場合にも関係する場合もある(例えば、「含む(comprising)」という用語は、「からなる(consists of)」、又は「本質的にからなる(consists essentially of)」という表現で置き換えることもできる)。本発明の全ての態様と実施形態に対しては、この広い解釈と狭い解釈のどちらも適用可能であることは、明示的に意図されている。つまり、「含む(comprising)」という用語とその類義語は、「からなる(consists of)」、又は「本質的にからなる(consists essentially of)」という表現、又はその類似表現により置き換えることができ、その逆も可能である。
【0011】
本明細書に記載の実施形態において、様々な構成が単数形又は複数形で記載されている。本明細書では、そのような解釈が技術的に非論理的である場合を除き、単数形にて言及されていても複数の場合も包含すると理解され、複数形にて言及されていても、単数の場合も包含すると理解されることを明示的に意図している。
【0012】
本発明の水溶性架橋共重合体は、本明細書において、(本発明の)重合体、(本発明の)共重合体、(本発明の)水溶性共重合体、(本発明の)水溶性重合体、又はその他の表現で言及される場合がある。
【0013】
基材における生体物質の非特異的吸着を防止する表面を実現するための前記水溶性架橋共重合体と、それに関連する方法の利点のいくつかとして、以下のものが挙げられる。
-本水溶性架橋共重合体は、最も一般的な生体共役反応メカニズムのみを利用して、基材の表面に共役する。その条件は穏やかであり、抗体やストレプトアビジンなどのリガンドの構成に影響しない。
-本水溶性架橋共重合体は、添加剤として、アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどの生物由来の物質の良好な代替物である。水溶性架橋共重合体を添加剤として使用すれば、生物汚染のリスクを緩和することができる。
-アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどの添加剤が物理的吸着により基材表面に付着している従来の方法と違い、本水溶性架橋共重合体は前記表面に共有結合している。この構成は、表面活性剤緩衝液での繰り返し洗浄時の耐久性を示す。
-本水溶性架橋共重合体は、広いpH範囲において優れた性能を呈し、また、様々な等電点を有するタンパク質に対して耐性を示す。
-本水溶性架橋共重合体は、化学発光イムノアッセイにおけるSN比を向上し、バックグラウンド結合を最小限化するのに役立ち、正確で信頼性の高い検出と精製収率の向上をもたらす。
【0014】
本水溶性架橋共重合体は、脂質、タンパク質、糖、又は核酸などの物質や、細胞などの非特異的吸着を防止するのに有用である。本発明によれば、本水溶性架橋共重合体は、第1重合体鎖を、ポリカルボン酸を含む第2重合体鎖に架橋することで形成された水溶性架橋共重合体であって、
架橋前の前記第1重合体鎖は、双性イオンホスホリルコリン基を含む構成単位(a)と、アミン基(例えば、一級アミン基)を含む構成単位(b)と、水酸基を含む構成単位(c)と、を含み、
該水溶性架橋共重合体は、前記第2重合体鎖のカルボン酸基と前記第1重合体鎖の(一級)アミン基との間に形成された1つ以上の架橋を含む構成であってもよい。
【0015】
本発明の水溶性架橋重合体は、
下記にその式を示す構成単位(A’)及び/若しくは(A’’)と、構成単位(B)と、構成単位(C)とを含む第1重合体鎖と、
構成単位(D)を含む第2重合体鎖と、を含み、
前記第1重合体鎖と前記第2重合体鎖との間に1つ以上の架橋を含む水溶性架橋共重合体であってもよい。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(式中、
Xは、O又はNHを示し、
R1は、1~5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキレン基を示し、
Eは、共有結合、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHC(O)-、又は-C(O)NH-を示し、
Rcは、水酸基含有基を示し、
各R4は、それぞれ独立してメチル基又は水素原子を示し、
R6は、アミン基(例えば、一級アミン基)を含む部分を示し、R6bは、-COOH 又は-C(O)O-Y-COOHを示し(Yは、C1-5アルキレン基を示し、前記第1重合体鎖の少なくとも1つのR6と第2重合体鎖のR6bとが、当該R6の(一級)アミン基と当該R6bのカルボン酸との間に形成されたアミド結合を介して共有結合している)、
各R7は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、メトキシエチル基、ヒドロキシメチル基、及びヒドロキシエチル基からなる群から選択されたものであり、
R8は、カルボキシル基又は水素原子を示し、
R9は、共有結合、1~10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン、又は、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びメトキシエチル基からなる群から選択される1~3個の置換基を有する、1~5個の炭素原子を有する直鎖アルキレンを示し、
w、x、y、及びzは、それぞれ独立して、1から50までの整数である。)
【0016】
本発明の水溶性架橋共重合体の重量平均分子量は、2,000から1,000,000ダルトン、好ましくは5,000から500,000ダルトン、より好ましくは10,000から250,000ダルトンである。水溶性架橋共重合体の重量平均分子量が2,000ダルトン未満の場合、生体物質の非特異的吸着を防止する顕著な効果が得られない。一方、水溶性架橋共重合体の重量平均分子量が1,000,000ダルトンを超えると、重合体溶液が増粘するので、溶液の調製が実行不可能になる。
【0017】
前記水溶性架橋共重合体の第1重合体鎖は、構成単位(A’)及び/若しくは(A’’)と、構成単位(B)と、構成単位(C)と、を含むランダム共重合体であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、前記水溶性架橋重合体の第1重合体鎖は、構成単位(A’)と、構成単位(B)と、構成単位(C)と、を含むランダム共重合体であってもよい。いくつかの実施形態において、前記水溶性架橋重合体の第1重合体鎖は、構成単位(A’’)と、構成単位(B)と、構成単位(C)と、を含むランダム共重合体であってもよい。
【0018】
前記第1重合体鎖のアミン基に架橋されている前記第2重合体鎖のカルボン酸基の割合は、5%から75%であってもよく、例えば、10%から50%であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記第1重合体鎖は、式中XがO、R1がメチレン、Eが共有結合である構成単位(A’)を有している。いくつかの実施形態において、前記第1重合体鎖は、構成単位(A’’)を有している。
【0020】
いくつかの実施形態において、構成単位(B)は、アリルアミン塩酸塩、4-ビニルアニリン、メタクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、アクリル酸2-アミノエチル、アミノアクリレート、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩、及び、メタクリル酸2-アミノエチルフェノチアジンからなる群から選択されたひとつを重合して形成される構成単位を示す。
【0021】
いくつかの実施形態において、構成単位(B)は、アリルアミン塩酸塩、メタクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、アクリル酸2-アミノエチル、アミノアクリレート、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩、及び、メタクリル酸2-アミノエチルフェノチアジンからなる群から選択されたひとつ(例えば、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩)を重合して形成される構成単位を示す。
【0022】
いくつかの実施形態において、構成単位(B)は、アリルアミン塩酸塩、メタクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、アクリル酸2-アミノエチル、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩、及び、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩からなる群から選択されたひとつを重合して形成される構成単位を示す。
【0023】
いくつかの実施形態において、構成単位(B)は、アリルアミン塩酸塩を重合して形成される構成単位を示す。
【0024】
いくつかの実施形態において、構成単位(B)は、上記に定義した構成単位で、一級アミン基を含むものであってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、構成単位(B)は、下記の式を有し:
【化13】
(式中、R3は、O又はNHを示し、R4は上記に規定のものであり、R6aは-Y-CH2-NH2、又は-Z-NH2(式中、YはC1-5アルキレン基(例えばC1-3アルキレン基)を示し、ZはC6-12アリール基を示す)である。
【0026】
複数の実施形態では、R6aは-Y-CH2-NH2であって、R6aは一級アミンを含む。いくつかの実施形態において、YはC1-3アルキレン基を示す。
【0027】
いくつかの実施形態において、構成単位(C)は、下記の式を有し:
【化14】
式中、
R2は、1~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキレン基、構成単位数が1~20個のポリオキシアルキレン基、又は6~18個の炭素原子を有するアリーレン基を示し、
R3は、O又はNHを示し、
R4は、上記に規定のものであり、
R5は、CnH2n-m+1(OH)m(式中、nは1から5の整数を示し、mは1、2、又は3である)を示す。
【0028】
いくつかの実施形態において、R2は、繰り返し単位が1~20個である、エチレングリコール又はプロピレングリコールを示す。いくつかの実施形態において、R2は、1~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレン基を示す。
【0029】
いくつかの実施形態において、R2は、単位数が1から20、例えば、単位数が3から10のポリオキシアルキレン基(例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコール)である。
【0030】
いくつかの実施形態において、mは1である。いくつかの実施形態において、nは1、2、又は3であり、例えば、1、又は2である。
【0031】
いくつかの実施形態において、構成単位(C)は、
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ヒドロキシポリエトキシ(10)アリルエーテル、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、モノメタクリル酸グリセロール、メタクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、メタクリル酸ポリ(エチレングリコール)、メタクリル酸ポリ(プロピレングリコール)、及び、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)からなる群から選択されたひとつの重合から形成される構成単位である。
【0032】
いくつかの実施形態において、構成単位(C)は、ヒドロキシポリエトキシ(10)アリルエーテル、メタクリル酸ポリ(エチレングリコール)、および、メタクリル酸ポリ(プロピレングリコール)からなる群から選択されたひとつの重合から形成される構成単位である。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記第1重合体鎖の重量平均分子量は、500から100,000ダルトン、好ましくは2,000から50,000ダルトンである。
【0034】
いくつかの実施形態において、構成単位(D)は、ポリ(アクリル酸)、ポリメタクリル酸、ポリスチレン-block-ポリ(アクリル酸)、ポリマレイン酸、ポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ(D,L-ラクチド-block-アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-co-アクリル酸)、及び、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)からなる群から選択されたひとつの重合から形成された構成単位であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びアクリル酸2-カルボキシエチルからなる群から選択されたひとつの重合から形成された構成単位である。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記第2重合体鎖の重量平均分子量は、2,000から700,000ダルトン、好ましくは5,000から350,000ダルトン、より好ましくは10,000から250,000ダルトンである。
【0036】
また、本発明は、本発明の水溶性架橋共重合体の調製を行う製造方法であって、
(a)構成単位(1)に対応する単量体と、構成単位(2)に対応する単量体と、構成単位(3)に対応する単量体とを溶媒(例えば、水)に混合する工程と、
(b1)前記単量体混合物を重合する工程であって、任意で、開始剤の添加と、55℃から90℃までの温度に5時間から24時間加熱することとを行って重合する工程と、
(c1)工程(b1)で得られた重合体とポリカルボン酸とを共役させて水溶性架橋共重合体を形成する工程であって、任意で、前記共役をpH4.5から8.5の緩衝剤の存在下で行う工程と、を含む製造方法を提供する。
【0037】
本方法は、(d)工程(c1)で得られた前記水溶性架橋共重合体を基材に共役させる工程を更に含んだ構成であってもよい。
【0038】
または、基材上への固定化を水溶性架橋共重合体の合成を完了する前に行ってもよい。例えば、本方法は:
(b2)工程(b1)で得られた前記重合体を、工程(c1)の前に、基材に共役させる工程、又は
(c0)工程(c1)の前記ポリカルボン酸を、工程(b1)で得られた前記重合体を前記ポリカルボン酸に共役させる前に、基材に共役させる工程を更に含む構成であってもよい。
【0039】
より具体的な本発明の共重合体を調製する製造方法を下記に示す。
(a)前記単量体を、例えば水などの溶媒に混合する工程と、
(b)典型的には55℃から99℃の範囲の所望の温度で開始剤を添加することで、重合を開始する工程と、
(c)反応を加熱下で5時間から24時間継続する工程と、
(d)反応物を、再析出、抽出、透析などで精製する工程と、
(e)工程(d)において得られた重合体(三元共重合体)を、緩衝剤(例えば、pH4.5~8.5の緩衝剤)中で、カルボジイミド共役メカニズムなどで、ポリ酸骨格に共役させる工程と、
(f)未反応の三元共重合体を透析やカラムなどを介して除去する工程と、を含む。
任意で、前記三元共重合体を、基材上にコーティングされたポリ酸骨格に共役させる構成であってもよく、その場合、工程(f)は不要である。
【0040】
上記基材は、粒子、中空フィルター、プラスチックチューブ、ガラスファイバー、ガラススライド、マイクロプレート、およびマイクロ流体装置から選択されたものであってもよい(例えば、前記基材が、粒子、中空フィルター、マイクロプレート、およびマイクロ流体装置、例えば、粒子、中空フィルター、およびマイクロ流体装置から選択されたものであってもよい)。
【0041】
前記基材の材料は、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート、カーボンファイバー、セルロース系材料、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリ(4-メチルブテン)、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリシロキサン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、強磁性物質、シリカ、又は、これらのいずれかの混合物若しくは複合材などの重合体系材料、有機材料、又は複合材料の少なくとも1つから選択されたものであってもよい。
【0042】
さらに、前記基材は、本実施形態の水溶性共重合体と更に反応することができる、一級アミン、エポキシド基、トシル基、および、アルデヒド基からなる群から選択されたアンカー基で機能化されていてもよい。
【0043】
本発明の水溶性共重合体の基材への共役は、(1)pHが4.5~8.5の緩衝剤に水溶性分岐共重合体を溶解し、(2)前記水溶性分岐共重合体を活性化させ、(3)活性化後の前記水溶性分岐共重合体を前記基材と混合し、(4)結合していない水溶性分岐共重合体を洗浄して除去することで行ってもよい。
【0044】
任意で、本実施形態の水溶性共重合体の基材への共役は、(1)pHが4.5~8.5の緩衝剤に前記三元共重合体を溶解し、(2)前記基材表面を活性化させ、(3)前記基材を前記三元共重合体溶液と混合し、(4)結合していない水溶性分岐共重合体を洗浄して除去することで行ってもよい。
【0045】
任意で、本実施形態の水溶性共重合体の基材への共役は、(1)pHが4.5~8.5の緩衝剤に水溶性分岐共重合体を溶解し、(2)エポキシド基、トシル基、および、アルデヒド基から選択された官能基を有する基材と混合することで行ってもよい。
【実施例
【0046】
材料および装置:
材料は、以下の供給元より購入した。
スチレン:東京化成工業株式会社(TCI)、TBC(4-tert-ブチルカテコール)にて安定化、>99.0%(GC)
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):シグマアルドリッチ社(アセトン溶液、12wt%)
過硫酸ナトリウム(Na2S2O8、SPS):アルファ・エイサー社、結晶、98%
ポリビニルピロリドン(PVP、K30、MW=40,000):TCI、総窒素量 12.0%~12.8%(無水物換算);最大含水量7.0%、K値 26.0~34.0
ジビニルベンゼン(DVB、m体およびp体の混合物):TCI、50.0%(GC)(エチルビニルベンゼン、ジエチルベンゼンを含有)(4-tert-ブチルカテコールで安定化)
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル:シグマアルドリッチ社、≧99.0%
アクリル酸2-カルボキシエチルオリゴマー:シグマアルドリッチ社、阻害剤として2000ppm MEHQを含有
N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、>98%、TCI
エタノール:99%、Aik Moh社
アクリルアミド単量体(約50%水溶液)、TCI
1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、>98%、TCI
脱イオン(DI)水:ELGA Ultrapure Water Treatment Systems社より入手(PURELABオプション)
10リン酸緩衝生理食塩水、シグマアルドリッチ社
MES水和物、>99.5%、シグマアルドリッチ社
アミン-PEG-カルボン酸塩酸塩、ポリサイエンス社
2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、シグマアルドリッチ社
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、シグマアルドリッチ社
ウシ血清アルブミン、シグマアルドリッチ社
リゾチーム、シグマアルドリッチ社
撹拌機:Wiggens社、WB2000-Mオーバーヘッド型撹拌機
クラシックチューブローラー:SCILOGEX MX-T6-S
【0047】
全ての重合プロセスにおいて、機械的撹拌(200rpm)を使用した。使用前に脱イオン水とエタノールを20分間窒素でバブリングし、酸素を除去した。全ての化学薬品は、精製せずに、入手した状態のまま使用した。全ての重合と反応は、標準的なシュレンクライン技術を用いて窒素の保護下で実施した。
【0048】
実施例1
三元共重合体の合成
撹拌機を備えた100mLの三口丸底ガラス反応器に、水を50g、単量体(1)として2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを0.5g、単量体(2)としてN-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩を0.01g、及び、単量体(3)としてメタクリル酸2-ヒドロキシエチルを1g加え、窒素をひとつの注入口から注入して酸素を除去した。窒素を10分間流した後、ガラス反応器を75℃まで加熱した。ガラス反応器の温度が75℃で安定した後に、開始剤として5mgの過硫酸ナトリウムを加えた。この混合物を24時間撹拌して、重合を完了した。得られた溶液を透析にて精製した。
【0049】
実施例2
ポリ酸骨格の合成
撹拌機を備えた100mLの三口丸底ガラス反応器に、水を50g、及び、単量体(4)としてアクリル酸2-カルボキシエチルを1g加え、窒素をひとつの注入口から注入して酸素を除去した。窒素を10分間流した後、ガラス反応器を75℃まで加熱した。ガラス反応器の温度が75℃で安定した後に、開始剤として5mgの過硫酸ナトリウムを加えた。この混合物を24時間撹拌して、重合を完了した。得られたポリカルボン酸溶液を、MES緩衝剤を用いた透析により精製した。
【0050】
実施例3
水溶性共重合体の調製
EDCとNHSを25mMのMES緩衝剤に別々に溶解して50mg/mLの濃度の溶液とした。ポリカルボン酸骨格1mgに対して20μlの割合でEDC溶液を添加し、その後20μlのNHS溶液を加えた。この溶液を30分間撹拌し、その後1mgのポリカルボン酸に対して25mgの三元共重合体を含む割合となるように三元共重合体溶液に加えた。この混合物を更に2時間撹拌した。得られた水溶性共重合体溶液を透析にて精製した。
【0051】
実施例4
表面上に一級アミン部分を有するマイクロスフィア表面への水溶性共重合体の共役
撹拌機を備えた250mLの三口丸底ガラス反応器に、AIBN溶液(2g、12wt%アセトン溶液)を加え、窒素をひとつの注入口から注入して、アセトン溶媒を除去した。窒素を10分間流した後、乾燥した粉状のAIBNが反応器の底にて観察された。その後、PVP(0.2g)、エタノール(80mL)、および脱イオン水(20mL)を加えた。この混合物を室温にて5分間撹拌し、透明な溶液を得て、そしてこの溶液をオイルバスにて60℃まで加熱し、その後スチレン(7.5mL)を加えた。4時間後に白色のコロイド溶液となり、スチレンが重合化したことを示した。その後、DVBの溶液(7mLのエタノール中に3mLのDVB)を定圧滴下漏斗にて30分かけてゆっくりと加えた。DVB溶液の滴下が終了した後、反応(架橋重合)を3時間続けた。その後、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルの単量体溶液(5mLのエタノール中に0.75g)と、アクリルアミド単量体(5mLエタノール中に0.75g、アンモニア溶液にて中性化、25%W/W)を、注射器を用いて加えた。反応(重合)を6時間続け、ミルク状のコロイド溶液を得た。得られたビーズを「A-1」と称す。このビーズを、7000Gの遠心力の遠心分離を9分間行ってエタノールで洗浄した。上澄み液を破棄し、マイクロスフィアを25mMのMES緩衝剤に再懸濁した。
【0052】
EDCとNHSを25mMのMES緩衝剤に別々に溶解して50mg/mLの濃度の溶液とした。水溶性共重合体1mgに対して20μlの割合でEDC溶液を添加し、その後20μlのNHS溶液を加えた。この懸濁液を3mgのビーズA-1と混合し、10mg/mlの濃度とした。この混合物を更に2時間撹拌した。結果得られたビーズA-2を、9000rpmの遠心分離を11分間行ってトリス緩衝剤で洗浄した。上澄み液を破棄し、マイクロスフィアを1PBS緩衝剤に再懸濁した。
【0053】
実施例5
表面上にポリ酸骨格を有するマイクロスフィア表面への三元共重合体の共役
表面上にポリカルボン酸を有するマイクロスフィア表面への水溶性共重合体の共役
撹拌機を備えた250mLの三口丸底ガラス反応器に、AIBN溶液(2g、12wt%アセトン溶液)を加え、窒素をひとつの注入口から注入して、アセトン溶媒を除去した。窒素を10分間流した後、乾燥した粉状のAIBNが反応器の底にて観察された。その後、PVP(0.2g)、エタノール(80mL)、および脱イオン水(20mL)を加えた。この混合物を室温にて5分間撹拌し、透明な溶液を得て、そしてこの溶液をオイルバスにて60℃まで加熱し、その後スチレン(7.5mL)を加えた。4時間後に白色のコロイド溶液となり、スチレンが重合化したことを示した。その後、DVBの溶液(7mLのエタノール中に3mLのDVB)を定圧滴下漏斗にて30分かけてゆっくりと加えた。DVB溶液の滴下が終了した後、反応(架橋重合)を3時間続けた。その後、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルの単量体溶液(5mLのエタノール中に0.75g)と、アクリル酸カルボキシエチルオリゴマー(5mLエタノール中に0.75g、アンモニア溶液にて中性化、25%W/W)を、注射器を用いて加えた。反応(重合)を6時間続け、ミルク状のコロイド溶液を得た。得られたビーズを「B-1」と称す。このビーズを、7000Gの遠心力の遠心分離を用いて9分間エタノールで洗浄した。上澄み液を破棄し、マイクロスフィアを25mMのMES緩衝剤に再懸濁した。
【0054】
EDCとNHSを25mMのMES緩衝剤に別々に溶解して50mg/mLの濃度の溶液とした。3mgのビーズB-1に対して20μlの割合でEDC溶液を添加し、その後20μlのNHS溶液を加えた。この混合物を30分間撹拌した。結果得られた活性化ビーズを7000Gの遠心力の遠心分離で9分間処理して上澄み液を除去した。その後、三元共重合体溶液(20mg/ml)を活性化ビーズに加え、2時間撹拌した。結果得られたビーズB-2を9000rpmの遠心分離を用いてトリス緩衝剤で11分間洗浄した。上澄み液を破棄し、マイクロスフィアを1PBS緩衝剤に再懸濁した。
【0055】
実施例6
比較例6-1
水溶性共重合体(II)を実施例1、2、3の各工程を行って合成した。ただし、単量体(1)を2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシドに変更した。マイクロスフィア試料C-1を実施例4の各工程を行って調製した。
【0056】
比較例6-2
水溶性共重合体(III)を、前記各工程を行って合成した。ただし、単量体(3)を工程1の三元共重合体合成の際に加えなかった。マイクロスフィア試料C-2を実施例4の各工程を行って調製した。
【0057】
比較例6-3
マイクロスフィア試料B-1を、実施例5と同様のプロトコルでアミン-PEG-カルボン酸塩酸塩(Mn2000ダルトン)と共役させた。EDCとNHSを25mMのMES緩衝剤に別々に溶解して50mg/mLの濃度の溶液とした。3mgのビーズB-1に対して20μlの割合でEDC溶液を添加し、その後20μlのNHS溶液を加えた。この混合物を30分間撹拌した。結果得られた活性化ビーズを、9000rpmの遠心分離で11分間処理して上澄み液を除去した。その後、三元共重合体溶液(20mg/ml)を活性化ビーズに加え、2時間撹拌した。結果得られたビーズC-3を9000Gの遠心分離を11分間行ってトリス緩衝剤で洗浄した。上澄み液を破棄し、マイクロスフィアを1PBS緩衝剤に再懸濁した。
【0058】
実施例7
非特異的吸着試験
BSAとリゾチームは異なる等電点を有する。BSA(等電点5.5)とリゾチーム(等電点11)は、モデルタンパク質として研究で通常使用されている。本評価では、両者を用いて異なるタイプのビーズ表面の非特異的吸着効果を評価した。
【0059】
BSAとリゾチームをそれぞれ1PBS緩衝剤溶液に溶解して、濃度が0.2mg/mlのストック溶液をそれぞれ調製した。タンパク質を、ビーズ試料の乾燥質量1mgあたり総乾燥質量0.1mgとなるように加えた(10mg/ml、0.1ml)。実施例4、5、及び6にて調製した各ビーズ試料を試験した。
【0060】
ビーズ-タンパク質懸濁液を25℃で2時間撹拌し、吸着平衡を得た。試料を11分間9000rpmにて遠心分離し、粒子を沈降させた。上澄み液のタンパク質含有量を、280nmにてUV-Vis分光法を行って測定した。ビーズ表面上のタンパク質の吸着量を式(1)にて算出した。
【数1】
式中、yadは、ビーズ表面上に吸着したタンパク質のパーセンテージ(%)を示し、
Ptotは、添加したタンパク質の総量(mg)を示し、
Psは、上澄み液中のタンパク質の量(mg)を示す。
【0061】
図1に示すように、本実施形態の水溶性共重合体をビーズ表面にコーティングした場合(A-2およびB-2を参照)、BSAとリゾチームのどちらも吸着は見られない。ポリ酸骨格のみをビーズ表面にコーティングした場合(B1参照)、リゾチームの吸着は、BSAよりも顕著に多かった。これは、1PBS緩衝剤中においてBSAは負に荷電する一方でリゾチームは正に荷電しており、負に荷電している表面に吸着され易いためと考えられる。2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルとの組み合わせは、BSAとリゾチームの吸着のどちらも防止することができた。この結果は、2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシドのみ、又は2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのみの場合よりも良好であった。また、非特異的吸着を防止するために通常使用される防汚ブラシである直鎖PEGは、両方のタンパク質について最も高い非特異的吸着を示した(つまり、最も結果が悪かった)。
【0062】
よって、本発明が表面への生体分子の非特異的吸着を防止するための改良されたコーティングを提供するものであることは明らかである。本発明は、正に荷電した表面(アミン、実施例4)と、負に荷電した表面(カルボン酸、実施例5)のどちらに対しても非特異的吸着を防止することができる。
図1
【国際調査報告】