(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ハンチントン病を治療するためのRNA送達システム
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20240305BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240305BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240305BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240305BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/113 Z ZNA
A61P25/14
A61K48/00
A61K35/76
A61K31/7105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559683
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2022083992
(87)【国際公開番号】W WO2022206819
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110341397.0
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,チェンユー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シー
(72)【発明者】
【氏名】フー,ヂォン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,シャン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ,シンイェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,リー
(72)【発明者】
【氏名】ユー,モンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】グゥオ,ホンユェン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA52
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4C086MA57
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4C086NA06
4C086NA13
4C086NA14
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4C087NA06
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA22
(57)【要約】
ハンチントン病を治療するためのRNA送達システムを提供する。該システムは、ハンチントン病を治療することができるRNA断片を担持したウイルスベクターであって、宿主の器官組織内で富化し、前記宿主の器官組織内に、ハンチントン病を治療することができるRNA断片を含有する複合構造を内因的に自発的に形成することができ、前記複合構造が、前記RNA断片を標的組織に送達して、ハンチントン病の治療を実現することができるウイルスベクターを含む。前記ハンチントン病を治療するためのRNA送達システムは、安全性及び信頼性が十分に検証されており、創薬性が非常に良好であり、汎用性が高く、経済性及び応用の将来性に優れている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンチントン病を治療することができるRNA断片を担持したウイルスベクターであって、宿主の器官組織内で富化し、前記宿主の器官組織内に、ハンチントン病を治療することができるRNA断片を含有する複合構造を内因的に自発的に形成することができ、前記複合構造が、前記RNA断片を標的組織に送達して、ハンチントン病の治療を実現することができるウイルスベクターを含む、ことを特徴とするハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項2】
前記ウイルスベクターはアデノウイルス関連ウイルスである、ことを特徴とする請求項1に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項3】
前記アデノウイルス関連ウイルスは、アデノウイルス関連ウイルス5型、アデノウイルス関連ウイルス8型、又はアデノウイルス関連ウイルス9型である、ことを特徴とする請求項2に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項4】
前記RNA断片は、医療的に意味のある1つ又は2つ以上の特定のRNA配列を含み、前記RNA配列は、医療的に意味のあるsiRNA、shRNA又はmiRNAである、ことを特徴とする請求項1に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項5】
前記ウイルスベクターは、プロモーターと、宿主の器官組織内に前記複合構造のターゲティング構造を形成することができるターゲティングタグとを含み、前記ターゲティング構造は複合構造の表面に位置し、前記複合構造は、前記ターゲティング構造を介して標的組織を探索し結合し、標的組織に前記RNA断片を送達可能である、ことを特徴とする請求項1に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項6】
前記ウイルスベクターは、プロモーター-RNA断片、プロモーター-ターゲティングタグ、プロモーター-RNA断片-ターゲティングタグのいずれか1つ又は複数の回路の組み合わせを含み、前記ウイルスベクターのそれぞれは、少なくとも1つのRNA断片と1つのターゲティングタグとを含み、前記RNA断片及びターゲティングタグは、同一回路又は異なる回路にある、ことを特徴とする請求項5に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項7】
前記ウイルスベクターは、前記回路を正しい構造に折り畳んで発現させることができるフランキング配列、補償配列、及びループ配列をさらに含み、前記フランキング配列は、5’フランキング配列及び3’フランキング配列を含み、
前記ウイルスベクターは、5’-プロモーター-5’フランキング配列-RNA断片-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列、5’-プロモーター-ターゲティングタグ、5’-プロモーター-ターゲティングタグ-5’フランキング配列-RNA断片-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列のいずれか1つ又は複数の回路の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項6に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項8】
前記5’フランキング配列は、ggatcctggaggcttgctgaaggctgtatgctgaattc又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、
前記ループ配列は、gttttggccactgactgac又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、
前記3’フランキング配列は、accggtcaggacacaaggcctgttactagcactcacatggaacaaatggcccagatctggccgcactcgag又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、
前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の任意の1~5位の塩基が欠失されているものである、ことを特徴とする請求項7に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項9】
前記ウイルスベクターに少なくとも2種類の回路が存在する場合、隣接する回路は配列1~3からなる配列で連結され、
配列1はCAGATCであり、配列2は5~80塩基からなる配列であり、配列3はTGGATCである、ことを特徴とする請求項6に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項10】
前記ウイルスベクターに少なくとも2種類の回路が存在する場合、隣接する回路は配列4又は配列4と80%超の相同性を有する配列で連結され、
前記配列4は、CAGATCTGGCCGCACTCGAGGTAGTGAGTCGACCAGTGGATCである、ことを特徴とする請求項9に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項11】
前記器官組織は肝臓であり、前記複合構造はエクソソームである、ことを特徴とする請求項1に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項12】
前記ターゲティングタグは、ターゲティング機能を有するターゲティングペプチド又はターゲティングタンパク質から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項13】
前記ターゲティングペプチドは、RVGターゲティングペプチド、GE11ターゲティングペプチド、PTPターゲティングペプチド、TCP-1ターゲティングペプチド、及びMSPターゲティングペプチドを含み、
前記ターゲティングタンパク質は、RVG-LAMP2B融合タンパク質、GE11-LAMP2B融合タンパク質、PTP-LAMP2B融合タンパク質、TCP-1-LAMP2B融合タンパク質、MSP-LAMP2B融合タンパク質を含む、ことを特徴とする請求項12に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項14】
前記RNA配列の長さが15~25ヌクレオチドである、ことを特徴とする請求項4に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項15】
前記ハンチントン病を治療することができるRNAは、mHTT遺伝子のsiRNA、又は前記配列と80%超の相同性を有するRNA配列、又は前記RNAをコードする核酸分子から選択される、ことを特徴とする請求項14に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項16】
mHTT遺伝子のsiRNAは、UAUGUUUUCACAUAUUGUCAG、AUUUAGUAGCCAACUAUAGAA、AUGUUUUUCAAUAAAUGUGCC、UAUGAAUAGCAUUCUUAUCUG、UAUUUGUUCCUCUUAAUACAA、mHTT遺伝子の発現を阻害する他の配列、及び前記配列と80%超の相同性を有する配列を含む、ことを特徴とする請求項15に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項17】
前記送達システムは、ヒトを含む哺乳動物で使用されるものである、ことを特徴とする請求項1に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システム。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載のハンチントン病を治療するためのRNA送達システムの薬物における使用。
【請求項19】
前記薬物は、ハンチントン病及びその関連疾患を治療する薬物であり、前記薬物の投与方法は、経口投与、吸入投与、皮下注射投与、筋肉注射投与、静脈注射投与を含む、ことを特徴とする請求項18に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物医学の技術分野に関し、特にハンチントン病を治療するためのRNA送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンチントン病(Huntington’s disease、略称HD)は、大舞踏病やハンチントン舞踏症(Huntington’s chorea)とも呼ばれ、常染色体優性遺伝性神経変性疾患の1種である。主な原因は、患者の第4番染色体にあるHuntington遺伝子が変異して、変異したタンパク質ができ、このタンパク質が細胞内で次第に集まり、大きな分子団を形成して脳に蓄積し、神経細胞の機能に影響を与えることでる。一般的な患者は中年に発病し、舞踊様の動作を示し、病状の進展に伴い次第に発話、行動、思考や嚥下の能力を喪失し、病状は約10年から20年持続して進行し、最終的に患者を死亡させる。
【0003】
RNA干渉(RNAi)療法は、発明されて以来、人類の疾患を治療する有望な戦略であると考えられてきたが、臨床的には多くの問題に直面しており、この治療法の進歩は予想よりもはるかに遅れている。
【0004】
RNAは細胞外に長期間安定に存在することはできないと考えられており、RNAは細胞外に豊富に含まれるRNaseに分解されて断片化されるため、RNAi療法の効果を発現するには、RNAを細胞外に安定に存在させ、特定の組織に標的に取り込める方法を見つけることが必要とされる。
【0005】
現在、siRNAと関連する特許は多く、主に以下のいくつの方面に焦点を当てている。1.医学効果を有するsiRNAを設計する。2.siRNAを化学修飾し、生体内でのsiRNAの安定性を高め、収率を高める。3.種々の人工ベクター(例えば、脂質ナノ粒子、カチオン性ポリマーやウイルス)の設計を改善し、siRNAの生体内での伝達効率を向上させる。このうち第3方面についての特許が多く、その根本的な原因は、研究者らが、siRNAを標的組織に安全に、精確に、効率的に送達するための適切なsiRNA伝達システムが不足しており、この問題がRNAi療法を制約する核心的な問題になっていることを認識しているからである。
【0006】
ウイルス(Biological virus)とは、個体が微小で構造が単純で、1種類の核酸(DNA又はRNA)しか含まず、生きた細胞内に寄生して複製的に増殖しなければならない非細胞型の生物である。ウイルスベクターは遺伝物質を細胞に持ち込むことができ、原理は、ウイルスがそのゲノムを他の細胞に送達して感染させる分子機構を持ち、完全な生体(in vivo)又は細胞培養(in vitro)で発生できることを利用しており、ウイルスは、主に基礎研究、遺伝子療法やワクチンに応用される。しかし、現在、ウイルスをベクターとして特殊な自己集合機構を利用してRNA、特にsiRNAを送達する関連研究は少ない。
【0007】
公開番号CN108624590Aの中国特許は、DDR2遺伝子の発現を阻害できるsiRNAを開示している。公開番号CN108624591Aの中国特許は、ARPC4遺伝子をサイレンシングすることができるsiRNAを開示しており、当該siRNAにα-リン-セレン修飾を施している。公開番号CN108546702Aの中国特許は、長鎖非コードRNA DDX11-AS1を標的とするsiRNAを開示している。公開番号CN106177990Aの中国特許は、多種の腫瘍治療に用いることができるsiRNA前駆体を開示している。これらの特許はすべて特定のsiRNAを設計しており、遺伝子の変化によって引き起こされるある疾患を対象としている。
【0008】
公開番号CN108250267Aの中国特許は、ポリペプチド、ポリペプチド-siRNA誘導共集合体を開示しており、ポリペプチドをsiRNAのベクターとして使用している。公開番号CN108117585Aの中国特許は、siRNAを標的に導入して、乳癌細胞のアポトーシスを促進するポリペプチドを開示しており、同様にポリペプチドをsiRNAのベクターとして使用している。公開番号CN108096583Aの中国特許は、化学療法薬を含むと同時に乳癌治療効果を有するsiRNAを搭載することができるナノ粒子ベクターを開示している。これらの特許はすべてsiRNAベクターに関する発明創造であるが、その技術案には共通の特徴があり、それはベクター及びsiRNAがいずれも生体外で予め集合されてから宿主の生体内に導入されることである。実際には、現在設計されているほとんどの送達技術は上記と同様である。しかし、これらの人工的に合成された外因性送達システムは、宿主の循環システムによって容易に除去され、免疫原性反応を引き起こす可能性があり、さらには特定の細胞タイプと組織に有毒であるという共通の問題がある。
【0009】
本発明の研究チームは、内因性細胞がmiRNAsを選択的にエクソソーム(exosome)にカプセル化することができ、エクソソームはmiRNAを受容体細胞に伝達し、その分泌されたmiRNAが比較的低い濃度で、標的遺伝子の発現を強力にブロックすることができることを発見した。エクソソームは宿主免疫系と生体適合性であり、生体内でmiRNAを生物学的バリアを越えて保護及び送達する先天的能力を有するため、siRNA送達に関連する問題を克服する潜在的な解決策となる。例えば、公開番号CN110699382Aの中国特許は、siRNAを送達するエクソソームの製造方法を開示しており、血漿からエクソソームを分離し、siRNAをエレクトロポレーションによりエクソソームにカプセル化する技術を開示している。
【0010】
しかし、生体外でエクソソームを分離又は製造するこのような技術は、細胞培養を通じて大量のエクソソームを取得し、さらにsiRNAカプセル化のステップを追加する必要があり、これは、この製品を大規模に応用する臨床費用が非常に高くなり、一般の患者に負担することができず、さらに、エクソソームの複雑な製造・精製プロセスにより、GMP規格に合致することがほぼ不可能となっている。
【0011】
これまで、エクソソームを有効成分とする薬物はCFDAの承認を受けたことがなく、エクソソーム製品の一貫性が保証されていないことが中心的な問題となっており、このような製品の医薬品製造許可が得られないことに直結している。この問題を解決できれば、ハンチントン病治療へRNAi療法を推進する上で非常に意義がある。
したがって、安全で正確かつ効率的なsiRNA送達システムの開発は、RNAi治療の効果を高め、RNAi療法を推進するために不可欠なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上に鑑み、本願の実施例は、従来技術に存在する技術的欠陥を解決するために、ハンチントン病を治療するためのRNA送達システム及びその使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の1つの発明点は、
ハンチントン病を治療することができるRNA断片を担持したウイルスベクターであって、宿主の器官組織内で富化し、前記宿主の器官組織内に、ハンチントン病を治療することができるRNA断片を含有する複合構造を内因的に自発的に形成することができ、前記複合構造が、前記RNA断片を標的組織に送達して、ハンチントン病の治療を実現することができるウイルスベクターを含む、ハンチントン病を治療するためのRNA送達システムを提供する。RNA断片を標的組織である脳に送達すると、それに対応する遺伝子の発現を阻害し、標的組織における疾患の進行を阻害することができる。
【0014】
さらに、前記ウイルスベクターは、アデノウイルス関連ウイルスである。
【0015】
さらに、前記アデノウイルス関連ウイルスは、アデノウイルス関連ウイルス5型、アデノウイルス関連ウイルス8型又はアデノウイルス関連ウイルス9型である。
【0016】
さらに、前記RNA断片は、医療的に意味のある1つ又は2つ以上の特定のRNA配列を含み、前記RNA配列は、医療的に意味のあるsiRNA、shRNA又はmiRNAである。
【0017】
さらに、前記ウイルスベクターは、プロモーターと、宿主の器官組織内に前記複合構造のターゲティング構造を形成することができるターゲティングタグとを含み、前記ターゲティング構造は複合構造の表面に位置し、前記複合構造は、前記ターゲティング構造を介して標的組織を探索し結合し、標的組織に前記RNA断片を送達可能である。
【0018】
さらに、前記ウイルスベクターは、プロモーター-RNA断片、プロモーター-ターゲティングタグ、プロモーター-RNA断片-ターゲティングタグのいずれか1つ又は複数の回路の組み合わせを含み、前記ウイルスベクターのそれぞれは、少なくとも1つのRNA断片と1つのターゲティングタグとを含み、前記RNA断片及びターゲティングタグは、同一回路又は異なる回路にある。
【0019】
さらに、前記ウイルスベクターは、前記回路を正しい構造に折り畳んで発現させることができるフランキング配列、補償配列、及びループ配列をさらに含み、前記フランキング配列は、5’フランキング配列及び3’フランキング配列を含み、
前記ウイルスベクターは、5’-プロモーター-5’フランキング配列-RNA断片-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列、5’-プロモーター-ターゲティングタグ、5’-プロモーター-ターゲティングタグ-5’フランキング配列-RNA断片-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列のいずれか1つ又は複数の回路の組み合わせを含む。
【0020】
さらに、前記5’フランキング配列は、ggatcctggaggcttgctgaaggctgtatgctgaattc又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、
前記ループ配列は、gttttggccactgactgac又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、
前記3’フランキング配列は、accggtcaggacacaaggcctgttactagcactcacatggaacaaatggcccagatctggccgcactcgag又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、
前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の任意の1~5位の塩基が欠失されているものである。RNA逆相補配列の1~5位の塩基を欠失することは、該配列が発現しないようにすることを目的とする。
【0021】
shRNAと異なり、siRNA及びmiRNA前駆体では、作用鎖の逆相補鎖(例えばsiRNAの逆相補鎖)の9、10位の塩基を欠失するため、siRNA及びmiRNAの作用鎖は突起構造を形成し、以上の構造はより効率的なサイレンシング遺伝子の発現に有利である。以上より、9、10位の塩基の逆相補配列を欠失することにより、サイレンシング効率が向上することが認められている。
【0022】
好ましくは、前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の任意の1~3位の塩基が欠失されている。
【0023】
より好ましくは、前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の任意の1~3位の連続して配列している塩基が欠失されている。
【0024】
最も好ましくは、前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の9位及び/又は10位の塩基が欠失されている。
【0025】
さらに、前記ウイルスベクターに少なくとも2種類の回路が存在する場合、隣接する回路は配列1~3からなる配列(配列1-配列2-配列3)で連結され、
配列1はCAGATCであり、配列2は5~80塩基からなる配列であり、配列3はTGGATCである。
【0026】
さらに、ウイルスベクターに少なくとも2種類の回路が存在する場合、隣接する回路は配列4又は配列4と80%超の相同性を有する配列で連結され、
前記配列4は、CAGATCTGGCCGCACTCGAGGTAGTGAGTCGACCAGTGGATCである。
【0027】
さらに、前記器官組織は肝臓であり、前記複合構造はエクソソームである。
【0028】
さらに、前記ターゲティングタグは、ターゲティング機能を有するターゲティングペプチド又はターゲティングタンパク質から選択される。
【0029】
さらに、前記ターゲティングペプチドは、RVGターゲティングペプチド、GE11ターゲティングペプチド、PTPターゲティングペプチド、TCP-1ターゲティングペプチド、及びMSPターゲティングペプチドを含み、
前記ターゲティングタンパク質は、RVG-LAMP2B融合タンパク質、GE11-LAMP2B融合タンパク質、PTP-LAMP2B融合タンパク質、TCP-1-LAMP2B融合タンパク質、MSP-LAMP2B融合タンパク質を含む。
【0030】
前記ターゲティングタグは、脳組織を正確に標的化できるRVGターゲティングペプチド又はRVG-LAMP2B融合タンパク質であることが好ましい。
【0031】
さらに、前記RNA配列の長さが15~25ヌクレオチドである。例えば、前記RNA配列の長さが、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25ヌクレオチドであってもよい。好ましくは、前記RNA配列の長さが18~22ヌクレオチドである。
【0032】
さらに、ハンチントン病を治療することができる前記RNAは、mHTT遺伝子のsiRNA、又は前記配列と80%超の相同性を有するRNA配列、又は前記RNAをコードする核酸分子から選択される。なお、ここで「前記RNA配列をコードする核酸分子」中のRNA配列には、それぞれのRNAの相同性が80%超のRNA配列も含まれる。
【0033】
mHTT遺伝子のsiRNAは、UAUGUUUUCACAUAUUGUCAG、AUUUAGUAGCCAACUAUAGAA、AUGUUUUUCAAUAAAUGUGCC、UAUGAAUAGCAUUCUUAUCUG、UAUUUGUUCCUCUUAAUACAA、mHTT遺伝子の発現を阻害する他の配列、及び前記配列と80%超の相同性を有する配列を含む。
【0034】
なお、上記の「80%超の相同性を有する配列」は、相同性が85%、88%、90%、95%、98%などであってもよい。
【0035】
任意選択に、前記RNA断片は、RNA配列本体と、RNA配列本体をリボース修飾した修飾RNA配列とを含む。すなわち、RNA断片は、少なくとも1つのRNA配列本体のみから構成されていてもよいし、少なくとも1つの修飾RNA配列のみから構成されていてもよいし、RNA配列本体と修飾RNA配列とから構成されていてもよい。
【0036】
本発明において、前記単離された核酸は、そのバリアント及び誘導体をさらに含む。当業者であれば、一般的な方法を用いて前記核酸を修飾することができる。修飾方式には、メチル化修飾、ヒドロカルビル修飾、グリコシル修飾(例えば、2-メトキシ-グリコシル修飾、ヒドロカルビル-グリコシル修飾、糖環修飾など)、核酸化修飾、ペプチドセグメント修飾、脂質修飾、ハロゲン修飾、核酸修飾(例えば、「TT」修飾)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の一実施形態では、前記修飾は、ヌクレオチド間結合、例えば、ホスホロチオエート、2’-Oメトキシエチル(MOE)、2’-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミデート、カルバメート、カーボネート、リン酸トリエステル、アセトアミドエステル、カルボキシメチルエステルおよびそれらの組み合わせから選択される。本発明の一実施形態では、前記修飾はヌクレオチドの修飾であり、例えば、ペプチド核酸(PNA)、鎖核酸(LNA)、アラビノース-核酸(FANA)、アナログ、誘導体、及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、前記修飾は、2’フルオロピリミジン修飾である。2’フルオロピリミジン修飾はRNA上のピリミジンヌクレオチドの2’-OHを2’-Fで置換し、2’-FはRNAを体内のRNA酵素に認識されにくくすることができ、それによってRNA断片の体内送達の安定性を高める。
【0037】
さらに、前記送達システムは、ヒトを含む哺乳動物で使用されるものである。
【0038】
本願のもう1つの発明点は、上記のハンチントン病を治療するためのRNA送達システムの薬物における使用を提供することである。
【0039】
前記薬物は、ハンチントン病及びその関連疾患を治療するための薬物であり、ここで関連疾患とは、上記ハンチントン病の発症又は進行の過程で発生する関連疾患、合併症、後遺症など、又はハンチントン病と一定の関連性を有する他の疾患をいう。
【0040】
さらに、前記薬物は、上記ウイルスベクターを含み、具体的には、ここでのウイルスベクターは、RNA断片を担持した、又はRNA断片及びターゲティングタグを担持したウイルスベクターを表し、宿主体内に入って、肝臓部位で富化し、自己集合して複合構造エクソソームを形成することができ、この複合構造は、標的組織にRNA断片を送達し、RNA断片を標的組織で発現させ、それに対応する遺伝子の発現を阻害し、疾患を治療する目的を達成することができる。
【0041】
前記薬物の剤形は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸薬、座薬、軟膏剤、溶液剤、懸濁剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤などであってもよい。
【0042】
さらに、前記薬物の投与方法は、経口投与、吸入投与、皮下注射投与、筋肉注射投与、静脈注射投与を含む。
【発明の効果】
【0043】
本願の技術的効果は次のとおりである。
本願によるハンチントン病を治療するためのRNA送達システムは、ウイルスをベクターとし、ウイルスベクターを成熟した注入物とし、その安全性及び信頼性が十分に検証されており、創薬性が非常に良好である。最終的に効果を発揮するRNA配列は内因性エクソソームに包み込まれて送達され、免疫反応は一切存在せず、このエクソソームの安全性を検証する必要はない。この送達システムは、各種の小分子RNAを送達することができ、汎用性が高い。またウイルスベクターの製造はエクソソームやタンパク質、ポリペプチドなどの物質の製造よりも安価で経済的である。本願によるハンチントン病を治療するためのRNA送達システムは、生体内で自己集合された後、AGO2と緊密に結合して富化して複合構造(エクソソーム)になることができ、これにより、その早期分解を防止し、循環中の安定性を維持することができるだけではなく、受容体細胞による吸収、細胞質内での放出、及びリソソームの脱出に有利であり、必要な用量は低い。
本願によるハンチントン病を治療するためのRNA送達システムは、薬物に使用されると、ハンチントン病の治療効果を大幅に向上させることができる薬物送達プラットフォームを提供するとともに、このプラットフォームを通じてより多くのRNA系薬物の研究開発基盤が提供され得、RNA系薬物の研究開発及び使用に極めて大きな推進効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本願の実施例によるマウスハンチントン病の治療状況の比較図である。
【
図2】本願の一実施例によるマウスの降下潜伏期の比較図である。
【
図3】本願の一実施例によるsiRNAを担持したレンチウイルスベクターの生体内での富化の効果図である。
【
図4】本願の一実施例によるsiRNAを担持したレンチウイルスベクターの生体内での自己集合の効果図である。
【
図5】本願の一実施例によるsiRNAを担持したレンチントン病の治療効果の電気泳動結果図である。
【
図6】本願の一実施例によるsiRNAを担持したアデノウイルス関連ウイルス1型、4型、及び7型ベクターの生体内での富化の効果図である。
【
図7】本願の一実施例によるsiRNAを担持したアデノウイルス関連ウイルス1型、2型、7型ベクターのハンチントン病の治療効果の電気泳動結果図である。
【
図8】本願の一実施例によるsiRNAを担持したアデノウイルス関連ウイルス1型、2型、及び7型ベクターのハンチントン病の治療効果のデータグラムであり、データグラムでは、HTT mRNAレベルで比較されている。
【
図9】本願の一実施例による、6種類の個別のRNA配列を担持したアデノウイルス関連ウイルス8型ベクターの生体内での富化の効果図である。
【
図10】本願の一実施例による、6種類の個別のRNA配列を担持したアデノウイルス関連ウイルス9型ベクターの生体内での富化の効果図である。
【
図11】本願の一実施例による、6種類の個別のRNA配列を担持したアデノウイルス関連ウイルス9型ベクターのハンチントン病の治療効果の電気泳動結果図である。
【
図12】本願の一実施例による、任意の2種類のRNA配列のRNA断片を担持したアデノウイルス関連ウイルス8型ベクターのハンチントン病の治療効果のデータグラムであり、データグラムでは、HTT mRNAレベルで比較されている。
【
図13】本願の一実施例による、任意の2種類のRNA配列のRNA断片を担持したアデノウイルス関連ウイルス9型ベクターのハンチントン病の治療効果の電気泳動結果図である。
【
図14】本願の一実施例による、任意の3種類のRNA配列のRNA断片を担持したアデノウイルス関連ウイルス8型ベクターのハンチントン病の治療効果のデータグラムであり、データグラムでは、HTT mRNAレベルで比較されている。
【
図15】本願の一実施例による、任意の3種類のRNA配列のRNA断片を担持したアデノウイルス関連ウイルス9型ベクターのハンチントン病の治療効果の電気泳動結果図である。
【
図16】本願の一実施例によるアデノウイルス関連ウイルス9型の配列がsiRNA及びRVGを含有する場合の、それらが有する生体内での富化のデータグラムである。
【
図17】本願の一実施例によるアデノウイルス関連ウイルス9型の配列がsiRNA及びRVGを含有する場合の、HTT mRNAの発現データによるハンチントン病の治療の効果図である。
【
図18】本願の一実施例による、アデノウイルスベクター上でのハンチントン病の治療効果に関するRVG-LAMP2B融合タンパク質及び他の融合タンパク質のデータの比較図であり、このデータはHTT mRNAの相対的なレベルによって示される。
【
図19】本願の一実施例による、アデノウイルスベクター系に、HTT遺伝子のsiRNA配列と80%超の相同性を有する3つのRNA配列が含まれている場合の、それらが有する生体内での富化のデータグラムである。
【
図20】本願の一実施例による、アデノウイルスベクター系に、HTT遺伝子のsiRNA配列と80%超の相同性を有する3つのRNA配列が含まれる場合の、ハンチントン病の治療効果に関するデータの比較図であり、データはHTT mRNAの相対的なレベルによって示される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して、本願の具体的な実施形態について説明する。
【0046】
本発明に係るsiRNAレベル、タンパク質含有量及びmRNA含有量の検出は、いずれも、マウスの生体内にRNA送達システムを注射することにより、マウス幹細胞の生体外モデルを構築する。細胞、組織におけるmRNA及びsiRNAの発現レベルをqRT-PCRを用いて検出する。siRNAの絶対定量は標準品を用いて検量線を作成することにより決定する。内部参照に対する各siRNA又はmRNAの発現量は2-ΔCTで表すことができ、ΔCT=Cサンプル-C内部参照である。siRNAを増幅する場合、内部参照遺伝子はU6 snRNA(組織中)又はmiR-16(血清、エクソソーム中)分子であり、mRNAを増幅する場合、遺伝子はGAPDH又は18s RNAである。Western blotting実験を用いて細胞、組織におけるタンパク質の発現レベルを検出し、ImageJソフトウェアを用いてタンパク質の定量分析を行う。
【0047】
本発明による図面において、「*」はP<0.05、「**」はP<0.01、「***」はP<0.005を表す。
【0048】
本発明において、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、別段の記載がない限り、当業者に一般に理解される意味を有する。また、本明細書で使用される試薬、材料や操作ステップは、すべて、当該分野で広く使用されている試薬、材料や通常のステップである。
【0049】
(実施例1)
本実施例は、ハンチントン病を治療することができるRNA断片を担持したウイルスベクターであって、宿主の器官組織内で富化し、前記宿主の器官組織内に、ハンチントン病を治療することができるRNA断片を含有する複合構造を内因的に自発的に形成することができ、前記複合構造が、前記RNA断片を標的組織に送達して、ハンチントン病の治療を実現することができるウイルスベクターを含む、ハンチントン病を治療するためのRNA送達システムを提供する。
【0050】
アデノウイルス以外に、他のウイルスベクターも生体内での富化、自己集合、ハンチントン病の治療効果があり、例えば、レンチングウイルスのように、レンチングウイルスのデータは
図3~5に示され、ここで、CTXは皮質(cortex)を表し、STRは線条体(Striatum)を表す。
【0051】
前記ウイルスベクターは、好ましくは、アデノウイルス関連ウイルスであり、より好ましくは、アデノウイルス関連ウイルス5型、アデノウイルス関連ウイルス8型又はアデノウイルス関連ウイルス9型である。
【0052】
アデノウイルス関連ウイルス5型、8型、及び9型以外に、他のウイルスベクターも生体内での富化、自己集合、及びハンチントン病の治療効果があり、例えば、アデノウイルス1型、2型、4型、及び7型であり、そのデータは
図6~8に示される。
【0053】
本実施例では、ウイルスベクターは、プロモーター及びターゲティングタグをさらに含む。前記ウイルスベクターは、プロモーター-RNA配列、プロモーター-ターゲティングタグ、プロモーター-RNA配列-ターゲティングタグのいずれか1つ又は複数の組み合わせを含み、ウイルスベクターのそれぞれは、少なくとも1つのRNA断片と1つのターゲティングタグを含み、前記RNA断片及びターゲティングタグは、同一回路又は異なる回路にある。換言すれば、ウイルスベクターには、プロモーター-RNA配列-ターゲティングタグのみが含まれていてもよいし、プロモーター-RNA配列、プロモーター-ターゲティングタグの組み合わせ、又はプロモーター-ターゲティングタグ、プロモーター-RNA配列-ターゲティングタグの組み合わせが含まれていてもよい。
【0054】
さらに、前記ウイルスベクターは、前記回路を正しい構造に折り畳んで発現させることができるフランキング配列、補償配列、及びループ配列をさらに含み、前記フランキング配列は、5’フランキング配列及び3’フランキング配列を含み、前記ウイルスベクターは、5’-プロモーター-5’フランキング配列-RNA断片-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列、5’-プロモーター-ターゲティングタグ、5’-プロモーター-ターゲティングタグ-5’フランキング配列-RNA断片-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列のいずれか1つ又は複数の回路の組み合わせを含んでもよい。
【0055】
ウイルスベクターに5’-プロモーター-ターゲティングタグ-5’フランキング配列-RNA断片-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列が含まれている場合、そのRNA送達システムが有する生体内での富化及びハンチントン病の治療効果は
図16~17に示され、ターゲティングタグはRVGであり、RNA断片は治療効果を有するsiRNAである。
【0056】
ここで、前記5’フランキング配列は、好ましくは、ggatcctggaggcttgctgaaggctgtatgctgaattc又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、ggatcctggaggcttgctgaaggctgtatgctgaattcと85%、90%、92%、95%、98%、99%の相同性を有する配列などを含む。
【0057】
前記ループ配列は、好ましくは、gttttggccactgactgac又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、gttttggccactgactgacと85%、90%、92%、95%、98%、99%の相同性を有する配列などを含む。
【0058】
前記3’フランキング配列は、好ましくは、accggtcaggacacaaggcctgttactagcactcacatggaacaaatggcccagatctggccgcactcgag又はそれと80%超の相同性を有する配列であり、accggtcaggacacaaggcctgttactagcactcacatggaacaaatggcccagatctggccgcactcgagと85%、90%、92%、95%、98%、99%の相同性を有する配列などを含む。
【0059】
前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の任意の1~5位の塩基が欠失されている。前記補償配列は、RNA断片に1つのRNA配列のみが含まれる場合、このRNA配列の逆相補配列であってもよく、その中の任意の1~5位の塩基が欠失されている。
【0060】
好ましくは、前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の任意の1~3位の塩基が欠失されている。前記補償配列は、RNA断片に1つのRNA配列のみが含まれる場合、このRNA配列の逆相補配列であってもよく、その中の任意の1~3位の塩基が欠失されている。
【0061】
より好ましくは、前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の任意の1~3位の連続して配列した塩基が欠失されている。前記補償配列は、RNA断片に1つのRNA配列のみが含まれる場合、このRNA配列の逆相補配列であってもよく、その中の任意の1~3位の連続して配列した塩基が欠失されている。
【0062】
最も好ましくは、前記補償配列は、前記RNA断片の逆相補配列であって、その中の9位及び/又は10位の塩基が欠失されている。前記補償配列は、RNA断片に1つのRNA配列のみが含まれる場合、このRNA配列の逆相補配列であってもよく、その中の9位及び/又は10位が欠失されている。9位と10位の塩基の欠失が最も効果的である。
【0063】
なお、上記のフランキング配列、補償配列、ループ配列はすべて勝手に選択したのではなく、大量の理論研究と試験に基づいて決定したので、上記の特定のフランキング配列、補償配列、ループ配列の協力の下で、RNA断片の発現率を最大限に高めることができる。
【0064】
ウイルスベクターが2つ以上の回路を担持する場合、隣接する回路は、配列1-配列2-配列3で連結されてもよく、ここで、配列1はCAGATCであることが好ましく、配列2は5~80塩基からなる配列、例えば10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75塩基からなる配列、好ましくは、10~50塩基からなる配列、より好ましくは20~40塩基からなる配列であってもよく、配列3はTGGATCであることが好ましい。
【0065】
【0066】
より好ましくは、ウイルスベクターが2つ以上の回路を担持する場合、隣接する回路は、配列4又は配列4と80%超の相同性を有する配列で連結され、ここで、配列4はCAGATCTGGCCGCACTCGAGGTAGTGAGTCGACCAGTGGATCである。
【0067】
【0068】
上記のRNA断片は、医療的に意味のある1つ又は2つ以上の特定のRNA配列を含み、前記RNA配列は、対象受容体において発現可能であり、前記補償配列は対象受容体において発現不可能である。RNA配列は、siRNA配列、shRNA配列、miRNA配列であってもよく、siRNA配列であることが好ましい。
【0069】
1つのRNA配列の長さが、15~25ヌクレオチド(nt)、好ましくは18~22nt、例えば、18nt、19nt、20nt、21nt、22ntであってもよい。この配列の長さの範囲はランダムに選択されたものではなく、試験を繰り返すことによって決定されたものである。大量の試験により、RNA配列の長さが18ntよりも短く、特に15ntよりも短い場合、このRNA配列はほとんど無効で、作用を発揮しないが、RNA配列の長さが22ntよりも長く、特に25ntよりも長い場合、回路のコストが大幅に向上するだけでなく、効果も長さが18~22ntのRNA配列より優れておらず、経済効果が悪いことが証明された。したがって、RNA配列の長さが15~25nt、特に18~22ntの場合、コストと作用の両立が最も効果的である。
【0070】
ハンチントン病を治療することができる前記RNAは、mHTT遺伝子のsiRNA又は上記RNAをコードする核酸分子から選択される。
【0071】
AUUUAGUAGCCAACUAUAGAAを例にとると、AUUUAGUAGCCAACUAUAUGA (85%),AUUUAGUAGCCAACUAUAACC (90%)及びAUUUAGUAGCCAACUAUAGAC (98%)のいずれも良好な遺伝子サイレンシング作用を持ち、それぞれsiRNAの3つの相同配列を搭載した送達システムが設計され、その生体内での富化とハンチントン病の治療効果が
図19~20に示されている。
【0072】
ハンチントン病を治療することができるRNAの有効配列の数は、1、2又はそれ以上である。
【0073】
同一ウイルスベクターに「siRNA1」と「siRNA2」を併用する例では、このウイルスベクターの機能構造領域は、(プロモーター-siRNA1)-連結配列-(プロモーター-siRNA2)-連結配列-(プロモーター-ターゲティングタグ)、又は(プロモーター-ターゲティングタグ-siRNA1)-連結配列-(プロモーター-ターゲティングタグ-siRNA2)、又は(プロモーター-siRNA1)-連結配列-(プロモーター-ターゲティングタグ-siRNA2)などと表現することができる。
【0074】
より具体的には、このウイルスベクターの機能構造領域は、(5’-プロモーター-5’フランキング配列-siRNA1-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列)-連結配列-(5’-プロモーター-5’フランキング配列-siRNA2-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列)-連結配列-(5’-プロモーター-ターゲティングタグ)、又は(5’-プロモーター-ターゲティングタグ-5’フランキング配列-siRNA1-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列)-連結配列-(5’-プロモーター-ターゲティングタグ-5’フランキング配列-siRNA2-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列)、又は(5’-プロモーター-5’フランキング配列-siRNA1-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列)-連結配列-(5’-プロモーター-ターゲティングタグ-5’フランキング配列-siRNA2-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列)、(5’-プロモーター-ターゲティングタグ-5’フランキング配列-siRNA1-siRNA2-ループ配列-補償配列-3’フランキング配列)などと表現することができる。その他の場合は同様に類推することができるので、ここでは詳しく説明しない。上記連結配列は、「配列1-配列2-配列3」又は「配列4」としてもよく、1つの括弧は完全な回路(circuit)を表す。
【0075】
好ましくは、上記RNAは、その中のRNA配列(siRNA、shRNA、又はmiRNA)をリボース修飾することによって得られてもよく、2’フルオロピリミジン修飾が好ましい。2’フルオロピリミジン修飾はsiRNA、shRNA又はmiRNA上のピリミジンヌクレオチドの2’-OHを2’-Fで置換することであり、2’-Fは、人体内のRNA酵素をsiRNA、shRNA又はmiRNAを識別しにくくすることができ、このようにRNAの体内送達の安定性を高めることができる。
【0076】
具体的には、肝臓は外因性のウイルスを飲み込み、99%までの外因性ウイルスは肝臓に入るため、ウイルスをベクターとする場合、特異性設計をする必要がなく、ウイルスは肝臓組織中に富化することができ、その後ウイルスベクターが開かれ、RNA分子(siRNA、shRNA又はmiRNA)が放出され、肝臓組織は上記のRNA分子をエクソソーム内に自発的に包み込み、これらのエクソソームはRNA送達機構になる。
【0077】
好ましくは、このRNA送達機構(エクソソーム)に「正確な誘導」能力を持たせるために、生体内に注入されたウイルスベクターにターゲティングタグが設計され、このターゲティングタグも肝臓組織によってエクソソームに組み込まれ、特にある特定のターゲティングタグを選択すると、ターゲティングタグはエクソソームの表面に挿入され、それによってエクソソームを誘導することができるターゲティング構造となり、これは本発明に記載されたRNA送達機構の正確性を大幅に向上させ、一方では導入する必要のあるウイルスベクターの使用量を大幅に減少させることができ、他方では潜在的な薬物送達効率を大幅に向上させることができる。
【0078】
ターゲティングタグはターゲティング機能を有するペプチド、タンパク質又は抗体から選択され、ターゲティングタグの選択は創造的な労力を必要とするプロセスであり、一方では標的組織に応じて利用可能なターゲティングタグを選択する必要があり、他方ではそのターゲティングタグがターゲティング機能を達成するためにエクソソームの表面に安定的に出現することを保証する必要がある。現在、すでに選別されたターゲティングタグは、ターゲティングペプチド、ターゲティングタンパク質、抗体を含む。その中でも、ターゲティングペプチドには、RVGターゲティングペプチド(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:1で示される)、GE11ターゲティングペプチド(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:2で示される)、PTPターゲティングペプチド(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:3で示される)、TCP-1ターゲティングペプチド(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:4で示される)、MSPターゲティングペプチド(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:5で示される)が含まれるが、これらに限定されない。ターゲティングタンパク質には、RVG-LAMP2B融合タンパク質(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:6で示される)、GE11-LAMP2B融合タンパク質(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:7で示される)、PTP-LAMP2B融合タンパク質(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:8で示される)、TCP-1-LAMP2B融合タンパク質(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:9で示される)、MSP-LAMP2B融合タンパク質(ヌクレオチド配列がSEQ ID No:10で示される)が含まれるが、これらに限定されない。本実施例において、ターゲティングタグは、脳組織を正確に標的化することができるRVGターゲティングペプチド又はRVG-LAMP2B融合タンパク質であることが好ましい。
【0079】
RVG-LAMP2B融合タンパク質のアデノウイルスベクター上での生体内での富化及びハンチントン病の治療効果は
図18に示され、その治療効果はHTT mRNAレベルで示されている。
【0080】
そのほか、正確な送達の目的を達成するために、多種のウイルスベクターの組み込み形態を実験した結果、以下の別の最適化形態を得た。すなわち、前記ウイルスベクターはまた異なる構造を持つ多種のウイルスで構成されてもよく、その中の1つのウイルスはプロモーターとターゲティングタグを含み、その他のウイルスはプロモーターとRNA断片を含む。すなわち、ターゲティングタグとRNA断片を異なるウイルスベクターに組み込み、2種類のウイルスベクターを体内に注入し、この場合、そのターゲティング効果は同じターゲティングタグとRNA断片を1つのウイルスベクターに組み込むことによるターゲティング効果に相当する。
【0081】
より好ましくは、2種類の異なるウイルスベクターを宿主に注入する際に、まず、RNA配列を組み込んだウイルスベクターを注入し、1~2時間後に、ターゲティングタグを含有するウイルスベクターを注入してもよく、これにより、より優れたターゲティング効果を達成することができる。
【0082】
上記の送達システムは、いずれも、ヒトを含む哺乳動物で使用され得る。
【0083】
本実施例によるハンチントン病を治療するためのRNA送達システムは、ウイルスをベクターとし、ウイルスベクターを成熟した注入物とし、その安全性及び信頼性が十分に検証されており、創薬性が非常に良好である。最終的に効果を発揮するRNA配列は内因性エクソソームに包み込まれて送達され、免疫反応は一切存在せず、このエクソソームの安全性を検証する必要はない。この送達システムは、各種の小分子RNAを送達することができ、汎用性が高い。またウイルスベクターの製造はエクソソームやタンパク質、ポリペプチドなどの物質の製造よりも安価で経済的である。本実施例によるハンチントン病を治療するためのRNA送達システムは、生体内で自己集合された後、AGO2と緊密に結合して富化して複合構造(エクソソーム)になることができ、これにより、その早期分解を防止し、循環中の安定性を維持することができるだけではなく、受容体細胞による吸収、細胞質内での放出、及びリソソームの脱出に有利であり、必要な用量は低い。
【0084】
(実施例2)
実施例1に基づいて、本実施例は薬物を提供する。この薬物は、ハンチントン病を治療することができるRNA断片を担持したウイルスベクターであって、宿主の器官組織内で富化し、前記宿主の器官組織内に、ハンチントン病を治療することができるRNA断片を含有する複合構造を内因的に自発的に形成することができ、前記複合構造が、前記RNA断片を標的組織に送達して、ハンチントン病の治療を実現することができるウイルスベクターを含む。
【0085】
任意選択に、前記RNA断片は、医療的に意味のある1つ又は2つ以上の特定のRNA配列を含み、前記RNA配列は、医療的に意味のあるsiRNA、shRNA又はmiRNAである。
【0086】
アデノウイルス関連ウイルス8型及び9型はウイルスベクターとされており、それは1つ又は複数のRNA断片を担持した場合、生体内での富化、自己集合、及びハンチントン病の治療効果を有し、
図9~11は、6種類の個別のRNA配列のRNA断片を担持したベクターによるデータ結果を示している。
図12~13は、任意の2つのRNA配列を含む4組のRNA断片を担持したベクターによるデータ結果を示している。
図14~15は、任意の3種類のRNA配列を含む3組のRNA断片を担持したベクターによる治療データ結果を示している。
【0087】
【0088】
任意選択に、前記ウイルスベクターは、プロモーターと、宿主の器官組織内に前記複合構造のターゲティング構造を形成することができるターゲティングタグとを含み、前記ターゲティング構造は複合構造の表面に位置し、前記複合構造は、前記ターゲティング構造を介して標的組織を探索し結合し、標的組織に前記RNA断片を送達可能である。
【0089】
本実施例における上記ウイルスベクター、RNA断片、ターゲティングタグなどの説明は、いずれも実施例1を参考にすることができるので、ここでは詳しく説明しない。
【0090】
該薬物は、経口、吸入、皮下注射、筋肉注射又は静脈注射により人体に投与された後、実施例1に記載のRNA送達システムを介して標的組織に送達され、治療効果を発揮することができる。
【0091】
該薬物はまた、テトラキナジン、オランザピン、リスペリドン、チアプリド、バクロフェン、ベンゾジアゼピン、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルタザピン、アマンタジン、バルプロ酸ナトリウム、ボツリヌス毒素など、ハンチントン病の他の治療薬と併用することにより、治療効果を増強することができる。
【0092】
本実施例の薬物は、希釈剤、緩衝剤、乳剤、カプセル化剤、賦形剤、充填剤、バインダ、スプレー剤、経皮吸収剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、着色剤、矯味剤、アジュバント、乾燥剤、吸着担体などを含むがこれに限定されない、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。
【0093】
本実施例による薬物の剤形は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸薬、座薬、軟膏剤、溶液剤、懸濁剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤などであってもよい。
【0094】
本実施例による薬物は、ウイルスをベクターとし、ウイルスベクターを成熟した注入物とし、その安全性及び信頼性が十分に検証されており、創薬性が非常に良好である。最終的に効果を発揮するRNA配列は内因性エクソソームに包み込まれて送達され、免疫反応は一切存在せず、このエクソソームの安全性を検証する必要はない。この薬物は、各種の小分子RNAを送達することができ、汎用性が高い。またウイルスベクターの製造はエクソソームやタンパク質、ポリペプチドなどの物質の製造よりも安価で経済的である。本願による薬物は、生体内で自己集合された後、AGO2と緊密に結合して富化して複合構造(エクソソーム)になることができ、これにより、その早期分解を防止し、循環中の安定性を維持することができるだけではなく、受容体細胞による吸収、細胞質内での放出、及びリソソームの脱出に有利であり、必要な用量は低い。
【0095】
(実施例3)
実施例1又は2に基づいて、本実施例は、ハンチントン病の治療薬である薬物へのRNA送達システムの使用を提供する。本実施例では、ハンチントン病の治療におけるRNA送達システムの使用を以下の試験と組み合わせて具体的に説明する。
【0096】
この試験では、HTT siRNAシステム(AAV-CMV-siRmHTT/AAV-CMV-RVG-siRmHTT)を肝臓親和性の高いAAV-5型アデノ随伴ウイルスで包み込み、力価1012V.g/mlのAAV溶液をマウスに100μL尾静脈注射した。小動物生体によるAAVシステムの生体内発現をモニタリングした結果、3週間後に、AAVシステムが生体内、特に肝臓で安定に発現していることが認められた。
【0097】
その後、マウスを選択してモデル化を行い、モデル化が完了したマウスにPBS緩衝液/AAV-CMV-scrR/AAV-CMV-siRmHTT/AAV-CMV-RVG-siRmHTTを注射し、PBS群/AAV-CMV-scrR群/AAV-CMV-siRmHTT群/AAV-CMV-RVG-siRmHTT群を作成した。上記溶液を尾静脈注射した後、血漿エクソソームを分離し、PKH26染料で標識した後、細胞と共培養し、細胞のエクソソームの吸収状況を観察し、結果を以下に示す。
【0098】
図1Aに示すように、この図は、各群のマウスの血漿エクソソーム中のsiRNAレベルの比較図であり、AAV-CMV-siR
mHTT群及びAAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスでは、血漿のエクソソーム中のsiRNAレベルは高かった。
【0099】
図1Bに示すように、この図は、マウスの血漿エクソソームと細胞を共培養した後の各群のマウスの相対mHTT mRNAレベルの比較図であり、AAV-CMV-siR
mHTT群及びAAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスでは、相対mHTT mRNAレベルは低く、これは、AAV-CMV-siR
mHTT及びAAV-CMV-RVG-siR
mHTTは、HTT mRNAレベルを下げることができ、すなわち、エクソソームに組み込まれたsiRNAは依然として遺伝子サイレンシング機能を発揮することができることが分かった。
【0100】
図1Cに示すように、この図は、マウスの肝臓siRNAの絶対レベルの比較図であり、AAV-CMV-siR
mHTT群及びAAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスでは、絶対siRNAレベルが高いことが分かった。
【0101】
図1Dに示すように、この図は、マウスの血漿siRNAの絶対値の比較図であり、AAV-CMV-siR
mHTT群及びAAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスでは、絶対siRNAレベルが高いことが分かった。
【0102】
図1Eに示すように、この図は、野生型マウス(WT)、AAV-CMV-scrR群、AAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスの降下潜伏期の比較図であり、0週では、3群のマウスの降下潜伏期が一致し、4週目と8週目では、CMV-scrR群のマウスでは、降下潜伏期が最も短いことが分かった。
【0103】
図1Fに示すように、この図は、AAV-CMV-scrR群、AAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスの皮質及び線条体における相対mHTT mRNAレベルの比較図であり、皮質でも線条体でも、AAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスでは、mHTT mRNAレベルはAAV-CMV-scrR群よりも低いことが分かった。
【0104】
8週齢のN17182Qマウスを用いてモデル化を行い、モデル化が完了したマウスにAAV-CMV-scrR/AAV-CMV-RVG-siRmHTTを注射し、AAV-CMV-scrR群/AAV-CMV-RVG-siRmHTT群を作成した。0日目と14日目にローテーションテストを行い、14日後にマウスを殺して分析した。
【0105】
図2に示すように、この図は、野生型マウス、AAV-CMV-scrR群、AAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスの降下潜伏期の比較図であり、0日では、AAV-CMV-scrR群、AAV-CMV-RVG-siR
mHTT群のマウスの降下潜伏期は一致し、14日目では、AAV-CMV-scrR群のマウスの降下潜伏期は有意に減少したことが分かった。
【0106】
以上の試験から、AAV-CMV-RVG-siRmHTTの静脈注射が線条体及び皮質のmHTTタンパク質と毒性凝集体の減少に寄与し、ハンチントン舞踏症に対する治療効果を発揮することが示唆された。
【0107】
本明細書では、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」などは、関連部分間の相対的な位置関係を表すためにのみ用いられ、これらの関連部分の絶対位置を限定するものではない。
【0108】
本明細書では、「第1」、「第2」などは、互いを区別するためのものであって、重要度や順序、相互の存在の前提などを示すものではない。
【0109】
本明細書では、「等しい」、「同じ」などは、厳密には数学的及び/又は幾何学的な意味での制限ではなく、当業者に理解可能であり、製造又は使用などによって許容される誤差も含む。
【0110】
別段の記載がない限り、本明細書における数値範囲は、その2つの端点内の範囲全体だけでなく、その中に含まれるいくつかのサブ範囲も含む。
【0111】
以上、本願の好ましい具体的な実施形態及び実施例については、図面を参照して詳細に説明したが、本願は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、当業者が有する知識の範囲内で、本願の構想を逸脱することなく、様々な変更も可能である。
【国際調査報告】