(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス、その製造方法および応用
(51)【国際特許分類】
C03C 10/02 20060101AFI20240305BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C03C10/02
C03C21/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559767
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2022139283
(87)【国際公開番号】W WO2023125040
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111654235.9
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521475495
【氏名又は名称】重慶▲シン▼景特種玻璃有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 靖鵬
(72)【発明者】
【氏名】張 延起
(72)【発明者】
【氏名】黄 昊
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC16
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB23
4G062AA01
4G062AA11
4G062BB01
4G062CC09
4G062CC10
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC01
4G062DD01
4G062DE03
4G062DE04
4G062DF01
4G062EA03
4G062EB03
4G062EC01
4G062ED03
4G062EE01
4G062EF01
4G062EG01
4G062EG02
4G062EG03
4G062FA01
4G062FB01
4G062FB02
4G062FB03
4G062FC01
4G062FC02
4G062FC03
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062MM21
4G062MM27
4G062NN29
4G062NN33
4G062QQ20
(57)【要約】
本発明は、高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックスであって、前記強化ガラスセラミックスの結晶相は、スピネル結晶とジルコニア結晶とを含み、かつLi含有結晶を含まなく、前記強化ガラスセラミックスは、その表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を備え、前記圧縮応力層の深さDOL_0が前記強化ガラスセラミックスの厚さの14%以上であり、前記強化ガラスセラミックスの引張応力線密度が25000MPa/mm以上であり、高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックスを開示した。より多くのLiイオンおよびNaイオンをスピネルガラスセラミックス成分に導入することにより、得られた透明スピネルガラスセラミックスを化学強化することができ、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDを有する透明強化ガラスセラミックスが得られ、当該強化ガラスセラミックスは優れた耐落下性を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックスであって、前記強化ガラスセラミックスの結晶相は、スピネル結晶とジルコニア結晶とを含み、かつLi含有結晶を含まなく、
前記強化ガラスセラミックスは、その表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を備え、前記圧縮応力層の深さDOL_0が前記強化ガラスセラミックスの厚さの14%以上であり、前記強化ガラスセラミックスの引張応力線密度CT_LDが25000MPa/mm以上である、ことを特徴とする、
高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項2】
前記強化ガラスセラミックスの結晶相は、石英と石英固溶体とを含まない、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項3】
前記強化ガラスセラミックスは、引張応力線密度CT_LDが25000~40000MPa/mmであり、好ましくは27000~40000MPa/mmである、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項4】
前記強化ガラスセラミックスは、表面圧縮応力CSが650MPa以上であり、好ましくは680MPa以上である、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項5】
前記強化ガラスセラミックスは、平均引張応力CT_AVが35.0MPa以上であり、好ましくは39.0MPa以上である、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項6】
前記強化ガラスセラミックスは、ビッカース硬度が740HV0.3以上である、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項7】
前記強化ガラスセラミックスは、破壊靱性が1.500MPa・m
1/2以上であり、好ましくは1.560MPa・m
1/2以上である、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項8】
前記スピネル結晶は、亜鉛スピネルとマグネシウムスピネルとを含む、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項9】
0.7mmの厚さでは、前記強化ガラスセラミックスの550nmにおける透過率が85.00%より大きい、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項10】
前記強化ガラスセラミックスは、少なくとも30.00wt%の結晶化度を示している、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項11】
前記強化ガラスセラミックス中の結晶の平均大きさは、15.0nm以下である、ことを特徴とする、
請求項1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項12】
前記強化ガラスセラミックスは、表面に位置する圧縮応力層と内部に位置する引張応力層とを含み、前記強化ガラスセラミックスの引張応力層の組成は、酸化物のモル%で、
Li
2O:3.50~6.00モル%
Na
2O:2.00~4.00モル%
の各成分を含む、ことを特徴とする、
請求項1から11のいずれか1項に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項13】
前記強化ガラスセラミックスの引張応力層の組成は、酸化物のモル%で、
SiO
2:50.00~65.00モル%、
Al
2O
3:14.50~25.00モル%、
MgO:3.50~8.00モル%、
ZnO:8.00~16.00モル%、
BaO:0~2.00モル%、
TiO
2+ZrO
2:3.00~5.50モル%
の各成分を含む、ことを特徴とする、
請求項12に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【請求項14】
高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックスの製造方法であって、
(1)レシピに従って原料を配合して混合し、ガラス前駆体を製造するステップと、
(2)得られたガラス前駆体に対して、順に核生成処理および結晶化処理を行って、透明スピネルガラスセラミックスを製造するステップと、
(3)ステップ(2)で得られた透明スピネルガラスセラミックスを、塩浴中で、一段階または複数段階のイオン交換を行うことにより、請求項1から13のいずれか1項に記載の透明強化ガラスセラミックスを製造するステップと、を含む、ことを特徴とする、製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(2)では、
核生成処理を行う時に、核生成温度が700~800℃であり、核生成処理時間が30~1440minであり、
結晶化処理を行う時に、結晶化温度が900~1000℃であり、結晶化処理時間が5~1440minである、ことを特徴とする、
請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ステップ(2)では、結晶化処理を行う時に、20℃/minより大きい昇温速度で結晶化温度まで昇温する、ことを特徴とする、
請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ステップ(2)では、核生成処理を行う時に、5~20℃/minの昇温速度で核生成温度まで昇温する、ことを特徴とする、
請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記ステップ(3)では、一段階のイオン交換を行う時に、前記塩浴組成は、50~100wt%NaNO
3+0~50wt%KNO
3を含み、イオン交換の温度が400~500℃であり、イオン交換の時間が0.5~48hである、ことを特徴とする、
請求項14に記載の製造方法。
【請求項19】
前記ステップ(3)では、二段階のイオン交換を行う時に、
一段階目の塩浴組成は、90~100wt%NaNO
3+0~10wt%KNO
3を含み、イオン交換の温度が400~500℃であり、イオン交換の時間が0.5~48hであり、
二段階目の塩浴組成は、0~10wt%NaNO
3+90~100wt%KNO
3を含み、イオン交換の温度が400~500℃であり、イオン交換の時間が0.5~48hである、ことを特徴とする、
請求項14に記載の製造方法。
【請求項20】
腕時計、透明装甲、ミサイルの窓口、カウリング、基板材料、新型ランプ、高温高圧・腐食性環境における設備のぞき窓、自動車、列車、飛行機、海上航行機、建築材料、携帯型スマート電子機器における、
請求項1から13のいずれか1項に記載の強化ガラスセラミックスの応用。
【請求項21】
消費製品である電子端末であって、
前面、裏面および側面を含むケースと、
一部が前記ケース内に位置する電子部品と、を含み、
前記電子部品は表示デバイスを含み、この表示デバイスは前記ケースの前面に位置し、または前記前面に隣接し、
前記前面および/又は裏面および/又は側面は、請求項1から13のいずれか1項に記載の強化ガラスセラミックス材料を含み、
前記消費製品である電子端末は、ケースの前面に覆い、又は前記表示デバイスに位置するカバー製品を更に含み、前記カバー製品は請求項1から13のいずれか1項に記載の強化ガラスセラミックス材料を含み、
前記消費製品である電子端末は、携帯電話、タブレット、光起電力装置、又は他の電子端末を含む、ことを特徴とする、
消費製品である電子端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス技術分野に関し、具体的には、高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス、その製造方法および応用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の薄型化に伴い、カバーガラスの性能に対する要求がだんだん高まっており、微結晶ガラス(ガラスセラミックス)は、良好な耐衝撃性、耐傷性、耐摩耗性などの性能を有するため、広く注目されている。透明スピネルセラミックスは、一般的な高性能セラミックスが有する耐高温性、耐腐食性、耐摩耗性、耐衝撃性、高硬度、優れた絶縁性などの性能特徴を有するだけでなく、更に、ホワイトサファイア単結晶体に近似する光学的性能を備え、紫外光、可視光、赤外光帯域において良好な光学透過率を有し、透明装甲、ミサイルの窓口、カウリング、各種類の基板材料、新型ランプ、および高温高圧・腐食性環境における設備のぞき窓によく使用されている。しかし、スピネル微結晶ガラスは、一般的に、化学強化により靱性を増加できないため、硬度が高い特徴を有する一方、靭性が悪く、耐落下性が悪く、特に厚さが小さい(≦1mm)場合、脆性はより顕著に現れ、高い耐衝撃性が要求される電子用カバーガラスとしては適さない。
【0003】
電子用カバーガラスにとって、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDを有することが要求され、特に、優れた耐落下性を達成できるためには、高いCT_LDが必要である。高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDを得るためには、ガラス組成に一定量のLi2OとNa2Oを添加する必要がある。しかし、スピネルガラスセラミックス組成におけるLi2OとNa2Oの添加量の増えに伴い、ガラスセラミックスの光学性能に影響する結晶、例えばβ石英、β石英固溶体、β-スポジュメンなどの結晶相がガラスに析出することをしばしば引き起こし、これらの結晶の析出によりガラスセラミックスが曇りやすく、失透までなってしまい、理想的な透明スピネルガラスセラミックスを得ることが困難である。
【0004】
優れた光学性能を有しながら、化学強化のイオン交換に用いるLiイオンおよびNaイオンをより多く有する新たな透明スピネルガラスセラミックスを開発すること、およびその透明スピネルガラスセラミックスを用いて、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDを有し、優れた耐落下性を達成できる強化ガラスセラミックスを製造することは、当業者が早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い応力深さを有し、優れた耐落下性および優れた透過率を備える透明強化ガラスセラミックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0007】
本発明は、高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックスを提供し、前記強化ガラスセラミックスの結晶相は、スピネル結晶とジルコニア結晶とを含み、かつLi含有結晶を含まなく、
前記強化ガラスセラミックスは、その表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を備え、前記圧縮応力層の深さDOL_0が前記強化ガラスセラミックスの厚さの14%以上で
あり、前記強化ガラスセラミックスの引張応力線密度CT_LDが25000MPa/mm以上である。
【0008】
前記強化ガラスセラミックスの結晶相は、石英と石英固溶体とを含まない。
【0009】
前記強化ガラスセラミックスは、引張応力線密度CT_LDが25000~40000MPa/mmであり、好ましくは27000~40000MPa/mmである。
【0010】
前記強化ガラスセラミックスは、表面圧縮応力CSが650MPa以上であり、好ましくは680MPa以上である。
【0011】
前記強化ガラスセラミックスは、平均引張応力CT_AVが35.0MPa以上であり、好ましくは39.0MPa以上である。
【0012】
前記強化ガラスセラミックスは、ビッカース硬度が740HV0.3以上である。
【0013】
前記強化ガラスセラミックスは、破壊靱性が1.500MPa・m1/2以上であり、好ましくは1.560MPa・m1/2以上である。
【0014】
前記スピネル結晶は、亜鉛スピネルとマグネシウムスピネルとを含む。
【0015】
0.7mmの厚さでは、前記強化ガラスセラミックスの550nmにおける透過率が85.00%より大きい。
【0016】
前記強化ガラスセラミックスは、少なくとも30.00wt%の結晶化度を示している。
【0017】
前記強化ガラスセラミックス中の結晶の平均大きさは、15.0nm以下である。
【0018】
前記強化ガラスセラミックスは、表面に位置する圧縮応力層と内部に位置する引張応力層とを含み、前記強化ガラスセラミックスの引張応力層の組成は、酸化物のモル%で、
Li2O:3.50~6.00モル%、
Na2O:2.00~4.00モル%
の各成分を含む。
【0019】
前記強化ガラスセラミックスの引張応力層の組成は、酸化物のモル%で、
SiO2:50.00~65.00モル%、
Al2O3:14.50~25.00モル%、
MgO:3.50~8.00モル%、
ZnO:8.00~16.00モル%、
BaO:0~2.00モル%、
TiO2+ZrO2:3.00~5.50モル%
の各成分を含む。
【0020】
酸化物のモル%で、前記強化ガラスセラミックスの引張応力層の組成は、
0.40≦(Al2O3+ZnO+MgO+ZrO2+TiO2)/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)≦0.70である。
【0021】
酸化物のモル%で、前記強化ガラスセラミックス引張応力層の組成は、
0.43≦(Al2O3+ZnO+MgO+ZrO2+TiO2)/(Li2O+Na
2O+SiO2+BaO)≦0.68である。
【0022】
酸化物のモル%で、前記強化ガラスセラミックス引張応力層の組成は、
Na2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)≧0.035であり;
および/又は
Li2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)≧0.054である。
【0023】
酸化物のモル%で、前記強化ガラスセラミックス引張応力層の組成は、
0.035≦Na2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)≦0.070であり;
および/又は
0.054≦Li2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)≦0.090である。
【0024】
前記強化ガラスセラミックスの引張応力層の組成は、酸化物のモル%で、
SiO2:50.00~63.00モル%であり、好ましくは50.00~57.00モル%であり;および/又は
Al2O3:14.50~20.00モル%であり、好ましくは15.00~19.00モル%であり;および/又は
MgO:3.90~7.60モル%であり、好ましくは4.00~7.50モル%であり;および/又は
ZnO:8.00~15.50モル%であり、好ましくは9.00~15.20モル%であり;および/又は
BaO:0~1.50モル%であり、好ましくは1.00~1.35モル%であり;および/又は
Li2O:3.50~5.00モル%であり、好ましくは4.00~5.00モル%であり;および/又は
Na2O:2.30~3.60モル%であり、好ましくは3.00~3.60モル%であり;および/又は
TiO2:0~2.00モル%であり、好ましくは0.30~1.30モル%であり;および/又は
ZrO2:2.50~5.00モル%であり、好ましくは2.90~4.20モル%である。
【0025】
本発明は、高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックスの製造方法を提供し、前記方法は、
(1)レシピに従って原料を配合して混合し、ガラス前駆体を製造するステップと、
(2)得られたガラス前駆体に対して、核生成処理と結晶化処理とを順に行って、透明スピネルガラスセラミックスを製造するステップと、
(3)ステップ(2)で得られた透明スピネルガラスセラミックスを、塩浴中で、一段階または複数段階のイオン交換を行うことにより、前記透明強化ガラスセラミックスを製造するステップと、を含む。
【0026】
前記ステップ(2)では、
核生成処理を行う時に、核生成温度が700~800℃であり、核生成処理時間が30~1440minであり、
結晶化処理を行う時に、結晶化温度が900~1000℃であり、結晶化処理時間が5~1440minである。
【0027】
前記ステップ(2)では、結晶化処理を行う時に、20℃/minより大きい昇温速度
で結晶化温度まで昇温し、好ましくは25℃/min以上の昇温速度で結晶化温度まで昇温し、より好ましくは30℃/min以上の昇温速度で結晶化温度まで昇温する。
【0028】
前記ステップ(2)では、核生成処理を行う時に、5~20℃/minの昇温速度で核生成温度まで昇温し、好ましくは10℃/minの昇温速度で核生成温度まで昇温する。
【0029】
前記ステップ(3)では、一段階のイオン交換を行う時に、前記塩浴組成は、50~100wt%NaNO3+0~50wt%KNO3を含み、イオン交換の温度が400~500℃であり、イオン交換の時間が0.5~48hである。
【0030】
前記ステップ(3)では、二段階のイオン交換を行う時に、
一段階目の塩浴組成は、90~100wt%NaNO3+0~10wt%KNO3を含み、イオン交換の温度が400~500℃であり、イオン交換の時間が0.5~48hであり、
二段階目の塩浴組成は、0~10wt%NaNO3+90~100wt%KNO3を含み、イオン交換の温度が400~500℃であり、イオン交換の時間が0.5~48hである。
【0031】
塩浴の寿命を向上させるために、塩浴に占める質量%が0.1~5wt%である塩浴保護剤を塩浴に加えてよく、前記塩浴保護剤は、Li+を不活性化、沈殿、または吸収するための物質を含む。
【0032】
本発明は、さらに、消費製品である電子端末を提供し、前記電子端末は、
前面、裏面および側面を含むケースと、
一部が前記ケース内に位置する電子部品と、を含み、
前記電子部品は表示デバイスを含み、この表示デバイスは前記ケースの前面に位置し、または前記前面に隣接し、
前記前面および/又は裏面および/又は側面は、前記強化ガラスセラミックス材料を含み、
前記電子端末は、ケースの前面に覆い、又は前記表示デバイスに位置するカバー製品を更に含み、前記カバー製品は前記強化ガラスセラミックス材料を含み、
前記消費製品である電子端末は、携帯電話、タブレット、光起電力装置、又は他の電子端末(例えば電子腕時計等)を含む。
【0033】
本発明の透明スピネルガラスセラミックス材料および強化ガラスセラミックス材料は、いずれも優れた性能を備え、他の製品に含まれる/応用されることができ、例えば、腕時計、透明装甲、ミサイルの窓口、カウリング、基板材料、新型ランプ、高温高圧・腐食性環境における設備のぞき窓、携帯型スマート電子機器の表示保護材および外観筐体保護材(携帯型スマート電子機器は携帯電話、タブレット、電子腕時計等を含む)、建築製品、輸送製品(例えば、自動車、列車、飛行機、海上航行機等)、器具製品、又は、一定の透明度、耐傷性、耐衝撃性、耐摩耗性又はそれらの組み合わせが要求されている任意の製品である。
【0034】
従来技術に比べて、本発明は以下のような有益な効果を有する。
【0035】
1、本発明は、スピネルガラスセラミックス材料の成分を最適化し、化学強化のためのイオン交換に用いられるLiイオンおよびNaイオンをスピネルガラスセラミックスにより多く導入し、不純物結晶相(例えば、Li含有結晶相、石英、石英固溶体等の不純物結晶相)が無いスピネルガラスセラミックスが得られ、ガラスセラミックスには曇りおよび失透等の現象がなく、ガラスセラミックス材料が優れた透過率を有することが確保された
。
LiイオンおよびNaイオンをスピネルガラスセラミックス成分により多く導入することにより、得られたスピネルガラスセラミックスを化学強化することができ、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDを有する透明強化ガラスセラミックスが得られ、当該強化ガラスセラミックスは優れた耐落下性を示している。
【0036】
2、本発明で得られたガラスセラミックス材料に対して性能試験を行った結果、本発明の透明スピネルガラスセラミックス材料は高い結晶化度を有することにより、ガラスセラミックス材料に優れた機械的性能を寄与することを見出した。
【0037】
3、本発明は、更に、スピネルガラスセラミックスの製造方法を提供し、本発明で提供されたプロセス方法は、結晶化過程および核生成過程のプロセスパラメータを制御し、昇温速度パラメータの要求を設定することにより、最終的に、不純物結晶相(例えばLi含有結晶相、石英、石英固溶体等不純物結晶相)が無いスピネルガラスセラミックスが得られ、ガラスセラミックス材料が優れた光学性能を有することが確保された。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は完成品落下実験の効果を示すグラフである。
【0039】
【
図2】
図2はLi
2Oの含有量とCT_LDとの関係を示すグラフであり、Dは比較例を表し、Sは実施例を表す。
【0040】
【
図3】
図3はLiの含有量が異なるガラス前駆体のDSCグラフである。
【0041】
【
図4】
図4は結晶化処理の時に、異なる昇温速度で得られたガラスセラミックスのXRDグラフである。
【0042】
【
図5】
図5は結晶化処理の時に、異なる昇温速度で得られたガラスセラミックスの写真であり、 (a)は熱処理を行っていないガラスであり、 (b)は結晶化処理の時に5℃/minの昇温速度で得られたガラスセラミックスであり、 (c)は結晶化処理の時に20℃/minの昇温速度で得られたガラスセラミックスであり、 (d)は結晶化処理の時に30℃/minの昇温速度で得られたガラスセラミックスである。
【0043】
【
図6】
図6は結晶化処理の時に、異なる昇温速度で得られたガラスセラミックスの550nm波長の光に対する透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、実施例および図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0045】
一、本発明に関連する専用名称および測定方法は以下の通りである。
【0046】
ガラスセラミックス:微結晶ガラスにも称され、基礎ガラスに対して目標まで制御された結晶化を行って得られた、ガラス相および微結晶相を同時に含む固体複合材料である。
【0047】
強化ガラスセラミックス:ガラスセラミックスに対して化学強化処理を行って得られた固体複合材料である。高温化学強化処理を行う時に、塩浴において、イオン半径が大きいアルカリ金属イオン(例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン)がガラスセラミックス中のイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン)を置換したので、交換イオンの体積差が生じ、ガラスセラミックス表面に圧縮応力が生じる。
【0048】
表面圧縮応力CS:ガラスセラミックスが化学強化された後、表面半径が小さいアルカリ金属イオンが半径は大きいアルカリ金属イオンに置換され、半径が大きいアルカリ金属イオンのスクイズ効果により、ガラス表面に生じた圧縮応力は、表面圧縮応力と称される。
【0049】
圧縮応力層の深さDOL_0:強化ガラスセラミックス表面から圧縮応力がゼロである位置までの距離である。
【0050】
引張応力線密度CT_LD:SLP応力計による試験に基づいて得られる引張応力の合計の、ガラスセラミックスの厚さに対する比の値である。化学強化された後、強化ガラスセラミックスの内部に1つの引張応力層が形成されており、引張応力層は、強化ガラスセラミックスの上面から一定の間隔で離れた1つの上境界と、強化ガラスセラミックスの下面から一定の間隔で離れた1つの下境界を備え、引張応力層内において、上境界と下境界と同時に垂直し、かつ上端点および下端点がそれぞれ上境界と下境界にある線分上の点における引張応力の大きさをY軸とし、対応する点から上境界までの距離をX軸として描いた曲線は引張応力曲線と記される。引張応力曲線の定積分の、強化ガラスセラミックスの厚さに対する比の値、すなわち、SLP-2000応力計で測定された強化ガラスセラミックスの引張応力の合計の、前記ガラス厚さに対する比の値は、引張応力線密度と記される。
【0051】
化学強化ガラスにおける圧縮応力と引張応力とが平衡的に等しい関係であり、SLP-2000応力計によるガラスの引張応力領域の試験がより精確であるため、厚さに対する引張応力積分の比の値を用いて、ガラスセラミックスの単位厚さ当たりの収容される応力の大きさを表し、それより化学強化ガラスセラミックスの応力程度を表す。
【0052】
CT_AV:引張応力領域におけるすべての引張応力の平均値である。
【0053】
核生成温度:結晶核が生成する温度である。
【0054】
結晶化温度:目標結晶の成長速度が制御可能な温度である。
【0055】
透過率:一定の波長の光がガラス表面に照射した場合、光は反射、吸収および透過が発生し、入射する光の強度に対する透過部分の強度の比の値が透過率である。
【0056】
曇り:ガラスセラミックス中の結晶が大きいか分相しているため、半透過状態を示し、透明と失透との間の状態になる。
【0057】
失透:ガラスセラミックス中の結晶が大きいか分相しているため、ガラスの透明特性が完全に失われ、ガラスを通って裏面の画面が何も見えない。
【0058】
示差走査熱量分析法(DSC)の試験:
サンプルを粉に粉砕した後に、200メッシュの篩にかけて、
試験条件:室温~1100℃、10℃/min昇温速度であり、
試験装置はMETTLER TOLEDO社製のTGA/DSC3+示差熱・熱重量同時測定装置である。
【0059】
透過率の試験:
結晶化されたガラス片を超音波洗浄機で洗浄し、その洗浄条件は、
洗浄時間:5-10minであり、
使用する洗浄剤:よく使われる洗剤を10倍に希釈したものであり、
洗浄温度:45℃-65℃であり
洗浄周波数:20KHZ-40KHZである。
【0060】
そして、ヘイズメーターによりガラスの異なる波長における透過率を測定し、『GB/T 7962.12-2010 無色光学ガラスの測定方法第12部分:スペクトル内透過
率』の基準に従って試験を行い、
本発明に使用されるヘイズメーターはコニカミノルタの分光測色計CM-3600A。
【0061】
完成品落下試験:
まず、120目のサンドペーパーを160gのファーウェイP30模型機に貼り付け、50*50*0.7mmの試験対象である強化ガラスセラミックス片を模型機の真下に置き、そして、模型機を所定の高さ位置から衝撃の形態で落下させる。
各ロットから少なくとも10枚以上のサンプルを試験し、落下高さが0.4mから、サンプルに対して1回落下衝撃を行い、砕けない場合、毎回0.1mの高さで上げて再び落下させ、ガラスが砕けるまで続け、砕けた場合の前回の高さの平均値を耐落下高さとする。
【0062】
本発明では、応力測定は、Orihara社製のFSM6000およびSLP2000を用いて、表層の高圧応力領域および深層の低圧応力領域をそれぞれ測定することができ、PMCソフトを用いて応力曲線をフィッティングして、対応する試験結果を得た。もちろん、表層の高圧応力領域と深層の低圧応力領域を測定し得る他の応力測定装置を使用することもできる。
【0063】
二、本発明は、透明スピネルガラスセラミックスを提供し、酸化物のモル%で、前記ガラスセラミックスは、
Li2O:3.50~6.00モル%、
Na2O:2.00~4.00モル%
の各成分を含み、
前記ガラスセラミックスの結晶相は、スピネル結晶とジルコニア結晶とを含み、かつLi含有結晶を含まない。
【0064】
本発明は、ガラスセラミックス材料の成分を注目して研究したものであり、ガラスセラミックス材料は、化学強化により靱性が増加され、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDが得られ、抗衝撃落下性を向上するためには、成分にアルカリ金属酸化物の添加する必要があり、特に、Li
2O(酸化リチウム)およびNa
2O(酸化ナトリウム)両者を添加する必要があるが、Li
2OおよびNa
2Oの添加量が増えると、常に、例えば、β石英、β石英固溶体、β-スポジュメン等のガラスセラミックスの光学性能に影響を与える不純物結晶がガラス中に析出する原因となる。
図3はこの点をよく実証しており、Li
2Oの含有量の増えに伴い、
図3におけるスピネルが形成する単峰がだんだん多峰(スピネルのピーク+他の不純物結晶相)に変わっている。これらの不純物結晶の析出は、結晶化後のガラスが曇り、失透までなってしまう原因となり、ガラスセラミックスの光学性能にひどく影響を与える。
【0065】
この問題に対して、従来技術では、通常、Li2OおよびNa2Oの添加量を減少することで、過剰なβ石英、β石英固溶体、β-スポジュメン等の結晶相の析出を避けることにより、ガラスセラミックスの曇りや失透を回避する。しかし、このような方法は、ガラスセラミックスの強化で得られたCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDが低下になり、耐落下性が優れたレベルに達することは困難である。
【0066】
本発明は、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDを有する透明強化スピネルガラスセラミックスが得られ、スピネルガラスセラミックスの耐落下性を向上するために、成分を最適化した。
【0067】
本発明は、Li2OおよびNa2Oをより多くに導入した場合、不純物結晶相(例えば、Li含有結晶相、石英、石英固溶体等不純物結晶相)が無いスピネルガラスセラミックスを得ることができ、ガラスセラミックスには曇りおよび失透等の現象が表れなく、ガラスセラミックス材料が優れた透過率を有することが確保された。スピネルガラスセラミックス成分により多くのLiイオンおよびNaイオンを導入することにより、得られたスピネルガラスセラミックスを化学強化することができ、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDを有する透明強化ガラスセラミックスが得られ、この透明強化ガラスセラミックスは優れた耐落下性を有する。
【0068】
本発明で提供される透明スピネルガラスセラミックスには、
Li2Oの含有量は3.50~6.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば3.50~5.00モル%、4.50~5.00モル%、4.50~5.50モル%、3.50~4.50モル%、4.00~5.00モル%、4.50~6.00モル%、5.00~6.00モル%、5.50~6.00モル%、3.50~4.00モル%、3.50~4.40モル%、3.80~5.50モル%、3.90~4.00モル%、3.60~4.40モル%、4.80~5.90モル%等であり、いくつかの実施形態では、Li2Oの含有量は、3.50モル%、3.60モル%、3.70モル%、3.80モル%、3.90モル%、4.00モル%、4.10モル%、4.20モル%、4.30モル%、4.40モル%、4.50モル%、4.60モル%、4.70モル%、4.80モル%、4.90モル%、5.00モル%、5.10モル%、5.20モル%、5.30モル%、5.40モル%、5.50モル%、5.60モル%、5.70モル%、5.80モル%、5.90モル%、6.00モル%等であってよい。
【0069】
Na2Oの含有量は2.00~4.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば2.30~3.60モル%、3.00~3.60モル%、2.5~3.00モル%、2.40~3.80モル%、2.00~2.60モル%、2.00~2.80モル%、2.50~3.20モル%、2.50~3.60モル%、2.50~3.10モル%、2.50~3.40モル%、2.50~3.80モル%、2.80~3.50モル%、2.10~3.90モル%等であり、いくつかの実施形態では、Na2Oの含有量は2.00モル%、2.10モル%、2.20モル%、2.30モル%、2.40モル%、2.50モル%、2.60モル%、2.70モル%、2.80モル%、2.90モル%、3.00モル%、3.10モル%、3.20モル%、3.30モル%、3.40モル%、3.50モル%、3.60モル%、3.70モル%、3.80モル%、3.90モル%、4.00モル%等であってよい。
【0070】
いくつかの実施例では、前記ガラスセラミックスの結晶相は、石英と石英固溶体とを含まない。石英および石英固溶体が存在することは、スピネルガラスセラミックスの光学性能に影響を与え、結晶化後のガラスが曇りやすく、失透までなってしまう。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記ガラスセラミックスは少なくとも30.00wt%の結晶化度を示し、前記ガラスセラミックス中の結晶の平均大きさは、15.0nm以下である。十分に高い結晶化度が得られるように制御することにより、ガラスセラミックスの固有強度を著しく向上することができ、同時に結晶大きさを制御することにより、結晶大きさを十分に小さくすることが確保され、ガラスセラミックスの透光性を著しく向上することができ、ガラスセラミックスが優れた光学性能を有することが確保される。本発明のガラスセラミックスは少なくとも30.00wt%の結晶化度を示し、30.00wt%以
上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば30.00~50.00wt%、30.00~40.00wt%、40.00~50.00wt%、35.00~40.00wt%、30.00~44.00wt%、31.00~35.00wt%、42.00~45.00wt%、31.00~37.00wt%、30.00~38.00wt%、30.00~39.00wt%等であり、いくつかの実施形態では、本発明のガラスセラミックスの結晶化度は30.00wt%、31.00wt%、32.00wt%、33.00wt%、34.00wt%、35.00wt%、36.00wt%、37.00wt%、38.00wt%、39.00wt%、40.00wt%、41.00wt%、42.00wt%、43.00wt%、44.00wt%、45.00wt%、46.00wt%、47.00wt%、48.00wt%、49.00wt%、50.00wt%等であってよい。同時に、本発明のガラスセラミックス中の結晶の平均大きさは15.0nm以下であり、15.0nm以下およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば5.0~10.0nm、5.0~11.0nm、5.0~13.0nm、4.0~10.0nm、3.0~15.0nm、6.0~13.0nm、7.0~12.0nm、2.0~10.0nm、5.0~14.0nm、4.0~9.0nm等であり、いくつかの実施形態では、本発明のガラスセラミックスの結晶の平均大きさは2.0nm、3.0nm、4.0nm、5.0nm、6.0nm、7.0nm、9.0nm、10.0nm、11.0nm、12.0nm、13.0nm、14.0nm、15.0nm等であってよい。
【0072】
いくつかの実施例では、前記スピネル結晶は、亜鉛スピネル、マグネシウムスピネル、および/又は亜鉛スピネル(ZnAl2O4)とマグネシウムスピネル(MgAl2O4)の固溶体を含む。亜鉛スピネル(ZnAl2O4)は、立方晶系の鉱物であり、モース硬度によると、スピネル硬度は7.5 ~ 8であり、測定密度は4.38 ~ 4.60
g/cm3であり、環境圧力下で、亜鉛スピネルのヤング率は290 GPaであり、せ
ん断弾性率は146 GPaであり、屈折率は1.79-1.80である。亜鉛スピネル
(ZnAl2O4)とマグネシウムスピネル(MgAl2O4)とが固溶体を形成し、固溶スピネルの性質は亜鉛スピネル(ZnAl2O4)とほぼ同じである。それらの違いは(マグネシウムスピネルに対する亜鉛スピネル):(a)低い屈折率(マグネシウムスピ
ネル:1.72 vs亜鉛スピネル:1.79- 1.80);(b)低い密度(マグネシウ
ムスピネル:3.6-4.1 g/cm3 vs亜鉛スピネル:4.4-4.6 g/cm3
)(c)低いヤング率(マグネシウムスピネル:283 GPa vs亜鉛スピネル:290
GPa);(d)高いせん断弾性率(マグネシウムスピネル:155 GPa vs亜鉛ス
ピネル:146 GPa)を含む。亜鉛マグネシウムスピネルが高硬度、高密度および高弾性定数を有することにより、複合微結晶ガラスは、前駆体ガラスによりもより良い力学的性能を有し、それは複合微結晶ガラスが各成分相の力学的性能の関数であるからである。亜鉛マグネシウムスピネル微結晶ガラスは、優れた耐亀裂進展性および耐傷性を示している。
【0073】
いくつかの実施例では、0.7mmの厚さでは、前記ガラスセラミックスの波長550nmにおける透過率が85.00%より大きい。本発明のガラスセラミックスは、可視光の範囲では透明であり、波長550nmでは、少なくとも約85.00%の透過率を示した。本発明のガラスセラミックスは、波長550nmにおける透過率が85.00%より大きい、85.00%より大きい範囲およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば86.00%、87.00%、88.00%、89.00%、90.00%、91.00%、92.00%、93.00%等である。
【0074】
いくつかの実施例では、酸化物のモル%で、本発明の前記ガラスセラミックスは、
SiO2:50.00~65.00モル%、
Al2O3:14.50~25.00モル%、
MgO:3.50~8.00モル%、
ZnO:8.00~16.00モル%、
BaO:0~2.00モル%、
TiO2+ZrO2:3.00~5.50モル%
の各成分を更に含む。
【0075】
更に、酸化物のモル%で、本発明の前記ガラスセラミックスは、
SiO2:50.00~63.00モル%、好ましくは50.00~57.00モル%;および/又は
Al2O3:14.50~20.00モル%、好ましくは15.00~19.00モル%;および/又は
MgO:3.90~7.60モル%、好ましくは4.00~7.50モル%;および/又は
ZnO:8.00~15.50モル%、好ましくは9.00~15.20モル%;および/又は
BaO:0~1.50モル%、好ましくは1.00~1.35モル%;および/又は
Li2O:3.50~5.00モル%、好ましくは4.00~5.00モル%;および/又は
Na2O:2.30~3.60モル%、好ましくは3.00~3.60モル%;および/又は
TiO2:0~2.00モル%、好ましくは0.30~1.30モル%;および/又は
ZrO2:2.50~5.00モル%、好ましくは2.90~4.20モル%を更に含む。
【0076】
本発明では、
SiO2(二酸化ケイ素)およびAl2O3(三酸化アルミニウム)はガラスネットワーク構造を構成する主な成分であり、十分なSiO2およびAl2O3を有することにより、ガラスが高いネットワーク構造強度を有することを確保することができ、ガラスが高い固有強度および熱安定性を有することを確保することに有利である。SiO2およびAl2O3の含有量が高過ぎると、ガラスの溶融に困難である。Al2O3はスピネル結晶の析出にAl元素を提供するだけでなく、化学強化処理時の面圧応力を高めることもできる。
【0077】
MgO(酸化マグネシウム)およびZnO(酸化亜鉛)はガラスセラミックス中に形成されるスピネル結晶に必要なMg元素およびZn元素を提供することができる。MgOはガラス液の高温粘度を向上し、結晶化傾向および結晶化速度を減少し、ガラスの化学的安定性および機械的強度を向上することができる。 ZnOはネットワーク中間体として、
ガラスにおける遊離酸素を消耗して [ZnO4]を形成し、ガラスのネットワーク構造に
入り、ガラスの構造をより安定させることができるが、使用量が多すぎると、ガラスが晶析しやすくなる。そのため、MgOとZnOの割合を調整することにより、結晶の析出速度を制御することができる。
【0078】
BaO(酸化バリウム)はガラスの溶解を加速することができるが、含有量が多すぎると、二次気泡が発生しやすく、清澄が困難になる。
【0079】
成核剤として、TiO2(酸化チタン)およびZrO2(ジルコニア)が使用される。ZrO2はガラスの粘度、化学安定性能を向上することができ、含有量が多すぎると、ガラスの溶解が困難になる。TiO2はガラスの化学安定性を向上することができるとともに、ガラスの均一性を向上することができるが、含有量が多すぎると、ガラスを発色させ、ガラスの屈折率を高める。TiO2およびZrO2を組み合わせて使用することは優れた核形成効果を発揮することができる。
【0080】
SiO2の含有量は、50.00~65.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば50.00~63.00モル%、50.00~65.00モル%、50.00~60.00モル%、51.00~63.00モル%、52.00~65.00モル%、53.00~65.00モル%、55.00~65.00モル%、50.00~57.00モル%、52.00~57.00モル%等である。いくつかの実施形態では、SiO2の含有量は50.00モル%、51.00モル%、52.00モル%、53.00モル%、54.00モル%、55.00モル%、56.00モル%、57.00モル%、58.00モル%、59.00モル%、60.00モル%、61.00モル%、62.00モル%、63.00モル%、64.00モル%、65.00モル%等であってよい。
【0081】
Al2O3の含有量は14.50~25.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば14.50~20.00モル%、15.00~19.00モル%、14.50~20.00モル%、15.50~20.00モル%、15.00~24.00モル%、14.90~23.00モル%、16.00~24.00モル%、17.00~25.00モル%、18.00~25.00モル%等である。いくつかの実施形態では、Al2O3の含有量は14.50モル%、14.90モル%、15.00モル%、15.50モル%、16.00モル%、17.00モル%、18.00モル%、19.00モル%、20.00モル%、23.00モル%、24.00モル%、25.00モル%等であってよい。
【0082】
MgOの含有量は3.50~8.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば4.00~7.50モル%、3.90~7.60モル%、3.50~4.00モル%、3.50~5.00モル%、3.50~6.00モル%、3.50~7.00モル%、4.50~6.00モル%、5.50~8.00モル%、6.50~8.00モル%等である。いくつかの実施形態では、MgOの含有量は3.50モル%、3.90モル%、4.00モル%、4.50モル%、5.00モル%、5.50モル%、6.00モル%、6.50モル%、7.00モル%、7.50モル%、7.60モル%、8.00モル%等であってよい。
【0083】
ZnOの含有量は8.00~16.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば8.00~15.50モル%、9.00~15.20モル%、8.00~13.00モル%、9.00~16.00モル%、10.00~16.00モル%、8.00~10.00モル%、8.00~11.00モル%、8.00~12.00モル%、9.00~14.00モル%、9.00~12.00モル%等である。いくつかの実施形態では、ZnOの含有量は8.00モル%、9.00モル%、10.00モル%、11.00モル%、12.00モル%、13.00モル%、14.00モル%、15.20モル%、15.50モル%、16.00モル%等であってもよい。
【0084】
BaOの含有量は0~2.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば0~1.50モル%、1.00~1.40モル%、0~1.00モル%、1.00~2.00モル%、1.10~2.00モル%、1.20~2.00モル%、1.10~1.50モル%、1.20~1.80モル%等である。いくつかの実施形態では、BaOの含有量は0モル%、1.00モル%、1.10モル%、1.20モル%、1.40モル%、1.50モル%、1.80モル%、2.00モル%等であってよい。
【0085】
TiO2+ZrO2の含有量は3.00~5.50モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば3.00~5.00モル%、3.50~5.00モル%、4.50~5.00モル%、3.10~4.50モル%、3.30~4.70モル%、3.7
0~4.50モル%、3.10~4.80モル%、4.00~5.00モル%、3.00~4.20モル%、3.20~5.10モル%、3.40~5.40モル%、3.70~5.20モル%、3.00~4.00モル%等である。いくつかの実施形態では、TiO2+ZrO2の含有量は3.00モル%、3.10モル%、3.20モル%、3.30モル%、3.40モル%、3.50モル%、3.70モル%、4.00モル%、4.20モル%、4.50モル%、4.70モル%、4.80モル%、5.00モル%、5.10モル%、5.20モル%、5.40モル%、5.50モル%等であってよい。
【0086】
TiO2の含有量は0~2.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば0.10~1.00モル%、0.50~1.00モル%、0.20~1.90モル%、0.40~1.20モル%、0.60~1.50モル%、0.80~1.00モル%、0.30~1.80モル%、0.20~1.50モル%、0.30~1.30モル%、0.10~1.70モル%等である。いくつかの実施形態では、TiO2の含有量は0モル%、0.10モル%、0.20モル%、0.30モル%、0.40モル%、0.50モル%、0.60モル%、0.80モル%、0.90モル%、1.00モル%、1.20モル%、1.30モル%、1.50モル%、1.70モル%、1.80モル%、1.90モル%、2.00モル%等であってよい。
【0087】
ZrO2の含有量は2.50~5.00モル%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば2.60~4.50モル%、2.70~4.50モル%、2.90~4.20モル%、2.90~3.50モル%、2.80~3.70モル%、2.50~3.10モル%、2.60~4.60モル%、3.50~5.00モル%、4.50~5.00モル%、3.10~4.50モル%、3.20~4.30モル%、2.90~3.80モル%、2.70~3.80モル%等である。いくつかの実施形態では、ZrO2の含有量は2.50モル%、2.60モル%、2.70モル%、2.80モル%、2.90モル%、3.10モル%、3.20モル%、3.50モル%、3.70モル%、3.80モル%、4.20モル%、4.30モル%、4.50モル%、4.60モル%、5.00モル%等であってよい。
【0088】
原料の配合が完成した後に、混合物に清澄剤を添加する必要があり、前記清澄剤は、特に限定はされないが、塩化ナトリウム(NaCl)、酸化スズ等を使用することができる。清澄剤の使用量は混合物重量の2wt%以下であり、例えば、レシピに従って配合した混合物の重量が1kgであれば、添加する清澄剤の使用量は20g以下である。清澄剤は原料を配合する時に追加に添加される補助成分である。
【0089】
いくつかの実施例では、酸化物のモル%で、前記ガラスセラミックスは、
0.40≦(Al2O3+ZnO+MgO+ZrO2+TiO2)/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)≦0.70である。本発明では、結晶化可能なガラスをこのような所定の比の値を有するように配置することにより、これらの結晶化可能なガラスで製造されるガラスセラミックスが、本発明に記載される特性を有することができる。前記特性は、亜鉛スピネルとマグネシウムスピネルの組成および/又は量および/又は構造を含む。例えば、ガラスセラミックスの成分が上記モル比に満たすように規定することで、ガラスセラミックスが亜鉛スピネル、マグネシウムスピネルおよびガラス相を含むことができ、それにより、製造されるガラスセラミックスの性質および/又は特性に影響を与える。例えば、ガラスセラミックスの結晶化度を向上することができ、より優れた固有強度を有するとともに、より高い透過率が得られ、かつ、イオン交換を速くて有効に行うことができる。結晶化可能なガラスに対して上記のように配置することで、このような比は、実際の変換プロセス(例えば核生成および結晶化温度および/又は時間)を行うことを可能にするとともに、必要な優れた光学性能および固有強度が再現可能で確実に実現されることを特徴とするガラスセラミックスを形成することができる。(Al2O3+ZnO+M
gO+ZrO2+TiO2)/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)の比の値は0.40~0.70およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば0.41~0.51、0.43~0.68、0.42~0.60、0.43~0.55、0.44~0.58、0.42~0.68、0.45~0.69、0.46~0.62、0.41~0.54、0.43~0.54、0.44~0.59、0.49~0.70等である。いくつかの実施形態では、(Al2O3+ZnO+MgO+ZrO2+TiO2)/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)の比の値は0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70等であってもよい。
【0090】
いくつかの実施例では、酸化物のモル%で、前記ガラスセラミックスは、
Na2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)≧0.035;および/又はLi2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)≧0.054である。Na2OおよびLi2Oと他の成分との間の関係について検討すると、Na2OおよびLi2Oと他の成分との間の使用量を、上記のような所定の比の値の範囲内に抑えることにより、ガラスセラミックスが優れたイオン交換の能力を有することを確保でき、得られる透明スピネルガラスセラミックスが化学強化のイオン交換により、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDが得られることが確保できることを見出した。
【0091】
Na2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)の比の値は0.035以上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば0.035~0.070、0.039~0.058、0.035~0.051、0.035~0.052、0.035~0.055、0.040~0.060、0.055~0.060、0.038~0.052等である。いくつかの実施形態では、Na2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)の比の値は0.035、0.036、0.037、0.038、0.039、0.040、0.043、0.045、0.048、0.050、0.051、0.052、0.055、0.058、0.060、0.063、0.065、0.068、0.070等であってよい。
【0092】
Li2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)の比の値は0.054以上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば0.054~0.090、0.055~0.080、0.056~0.074、0.058~0.073、0.056~0.071、0.059~0.077、0.055~0.065、0.055~0.075等である。いくつかの実施形態では、Li2O/(Li2O+Na2O+SiO2+BaO)の比の値は0.054、0.055、0.056、0.058、0.059、0.060、0.063、0.065、0.068、0.070、0.071、0.073、0.074、0.075、0.077、0.080、0.083、0.085、0.088、0.090等であってよい。
【0093】
三、本発明は、透明スピネルガラスセラミックスの製造方法を提供し、当該方法は以下のステップを含む。
(1)レシピに従って原料を配合して混合し、ガラス前駆体を製造する。
(2)得られたガラス前駆体に対して、核生成処理と結晶化処理とを順に行って、透明スピネルガラスセラミックスを製造する。
【0094】
本発明では、上記レシピに従って原料を配合して30分間混合し、均一になった後に、必要に応じて清澄剤を添加し、1650℃の白金坩堝で20時間溶解させて、成形金型に入れて成形し、900℃まで冷却した後、600℃のアニール炉に入れて6時間アニール
し、その後、室温まで炉冷することにより、ガラス前駆体が得られる。ガラス前駆体に対して、核生成処理と結晶化処理とを順に行って、透明スピネルガラスセラミックスを製造する。
【0095】
本発明の透明スピネルガラスセラミックス製品を得るためには、核生成処理を行う時に、核生成温度が700~800℃であり、核生成処理時間が30~1440minであり、結晶化処理を行う時に、結晶化温度が900~1000℃であり、結晶化処理時間が5~1440minである。ここで、核生成処理時間とは、結晶化炉を、設定された昇温速度に従って設定された核生成温度まで昇温した後、保温する時間を指す。ここで、結晶化処理時間とは、結晶化炉を、設定される昇温速度に従って設定された結晶化温度まで昇温した後、保温する時間を指す。
【0096】
ガラス前駆体を結晶化炉内に入れて、まず、5~20℃/minの昇温速度で核生成温度まで昇温し、30~1440min保温して核生成処理を行い、十分な数の結晶核を形成し、ガラスセラミックスの結晶化度を確保し、核生成処理が完成した後、20℃/minより大きい昇温速度で結晶化温度まで昇温し、5~1440min保温して結晶化処理を行い、必要な亜鉛スピネルとマグネシウムスピネルとを析出するとともに、不純物結晶相の析出を有効的に抑制する。結晶化処理後には、炉冷で室温まで降温する。異なる処理段階の昇温速度、温度および時間を調整することにより、上記の範囲内のガラスセラミックス組成に合わせて、スピネルガラスセラミックスの透過率に影響を与える不純物結晶相が析出しないことが確保でき、ガラスセラミックスが曇りおよび失透等の現象を防ぐことができる。
【0097】
核生成温度は、700~800℃およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば710~790℃、700~720℃、700~730℃、700~740℃、700~750℃、700~760℃、730~800℃、740~800℃、750~800℃、760~800℃等である。核生成処理時間は、30~1440minおよびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば30~300min、30~200min、30~700min、30~500min、60~120min、80~144min、90~1200min、100~1100min、300~440min、100~500min、200~600min、300~540min、100~440min、300~440min等である。
【0098】
結晶化温度は、900~1000℃およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば900~980℃、900~960℃、900~950℃、900~930℃、920~950℃、910~1000℃、920~1000℃、930~1000℃、940~1000℃等である。結晶化処理時間は、5~1440minおよびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば5~100min、5~150min、5~200min、50~300min、100~440min、90~340min、200~1240min、800~1040min、500~740min、900~1040min、200~340min、100~300min、500~1440min等である。
【0099】
いくつかの実施例では、結晶化過程中の昇温速度がガラスセラミックス中の結晶相の組成に影響し、最終的に、ガラスセラミックス製品の性能に影響し、異なる昇温速度によりガラスセラミックス製品に異なる構造と特性を付与することができる。本発明のレシピに従って得られたガラス前駆体は、結晶化処理を行う時に、昇温速度を0~20℃/minの範囲内に収めると、ガラスセラミックスには、例えば、Li含有結晶相(β-スポジュメン等)、石英および石英固溶体等の不純物結晶相が析出しやすくなる。発明者は研究により、スピネル微結晶のシステムでは、β石英、β石英固溶体、β-スポジュメン等の不純物結晶相の存在が、スピネルガラスセラミックス材料の光学性能にひどく影響を与え、
結晶化後のガラスセラミックス材料が曇り、失透までなってしまい、得られたガラスセラミックス製品の透過率が大幅に低下することを見出した。カバーガラス製品として、このような状況は望ましくない。昇温速度が20℃/minより大きいと、好ましくは25℃/min以上であり、より好ましくは30℃/minであり、ガラス成分に導入されるLiイオンは、常にイオン交換しやすいガラス相に残り、他のガラスセラミックス光学性能に影響する不純物結晶相も析出しなく、スピネルガラスセラミックスの透過率に影響しない。この部分は、具体的に、
図4と
図5を参照することができる。
【0100】
図4から分かるように、結晶化処理を行う時に、昇温速度を0~20℃/minの範囲内に収めると、ガラスには不純物結晶が析出し(XRDグラフでは明らかに余分な特徴ピークを示し)、主にβ石英、β石英固溶体、β-スポジュメン等の結晶相であり、
図5と併せて見ると、ガラスに析出したこれらの不純物結晶相がガラスの光学性能にひどく影響を与え、ガラスが曇り、失透までなってしまうことが分かる。結晶化処理を行う時に、昇温速度は20℃/minより大きく、30℃/minであると、不純物結晶が析出しなく、ガラスが透明状態に維持される。本発明では、結晶化処理を行う時に、昇温速度は、20℃/minより大きい35℃/min以下およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば21~30℃/min、22~25℃/min、25~30℃/min、23~28℃/min、22~30℃/min、23~30℃/min、24~30℃/min、25~28℃/min、21~35℃/min等である。いくつかの実施形態では、結晶化処理を行う時に、昇温速度は21℃/min、22℃/min、23℃/min、24℃/min、25℃/min、28℃/min、30℃/min、35℃/min等であってよい。
【0101】
核生成過程中における昇温速度は、結晶核の生成、結晶核の量を影響し、最終的には、ガラスセラミックスの結晶化度を影響し、ガラスセラミックスの固有強度を影響する。本発明では、核生成処理を行う時に、昇温速度は、5~20℃/minおよびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば5~10℃/min、10~20℃/min、11~20℃/min、12~15℃/min、9~20℃/min、13~20℃/min、10~19℃/min、9~17℃/min等である。いくつかの実施形態では、核生成処理を行う時に、昇温速度は5℃/min、9℃/min、10℃/min、11℃/min、12℃/min、13℃/min、15℃/min、16℃/min、17℃/min、19℃/min、20℃/min等であってよい。
【0102】
三、本発明は、強化ガラスセラミックスを提供する。本発明にかかる強化ガラスセラミックスは、上記の透明スピネルガラスセラミックスが化学強化のイオン交換されることにより製造されものであり、前記強化ガラスセラミックスは、その表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を有する。前記強化ガラスセラミックスは、表面に位置する圧縮応力層と内部に位置する引張応力層とを含む。圧縮応力層は化学強化で形成される圧縮応力領域であり、引張応力層はイオン交換がされなかった領域である。前記強化ガラスセラミックスの引張応力層の組成は上記の透明スピネルガラスセラミックスと同じである。
【0103】
実際に実施すると、上記の透明スピネルガラスセラミックスを、塩浴中で、一段階または複数段階のイオン交換を行うことにより、前記透明強化ガラスセラミックスを製造する。
【0104】
上記透明スピネルガラスセラミックスを化学強化することができ、ガラスセラミックスに対して化学強化のイオン交換を行う過程中において、ガラスセラミックスは段階的にまたは同時にK+-Na+、Na+-Li+の二元イオン交換を行うことにより、ガラスセラミックスがイオン交換後に複合圧縮応力層が得られ、強化された強化ガラスセラミックスは、その表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を有する。
【0105】
上記透明スピネルガラスセラミックスは、ガラスセラミックスの性能を向上するように、複数のイオン交換過程を行うことができる。異なるイオン濃度のイオン交換塩浴を使用することにより、選定される深さで応力曲線が生じ、得られた強化ガラスセラミックスが優れた応力性能を有する。
【0106】
本発明で提供される強化ガラスセラミックスの結晶相は、スピネル結晶とジルコニア結晶とを含み、かつLi含有結晶を含まなく、石英と石英固溶体とを含まなく、前記スピネル結晶は、亜鉛スピネルとマグネシウムスピネル、および/又は亜鉛スピネル(ZnAl2O4)とマグネシウムスピネル(MgAl2O4)の固溶体を含む。前記強化ガラスセラミックスは、少なくとも30.00wt%の結晶化度を示し、前記強化ガラスセラミックス中の結晶の平均大きさは、15.0nm以下である。0.7mmの厚さでは、前記強化ガラスセラミックスの550nmにおける透過率が85.00%より大きい。
【0107】
本発明にかかる強化ガラスセラミックスの圧縮応力層の深さDOL_0は前記強化ガラスセラミックスの厚さの14%以上であり、Li2OおよびNa2Oの含有量の増えにより、ガラスセラミックスには、イオン交換に使用されるNaイオンおよびLiイオンがより多く存在し、より高い圧縮応力層の深さを形成することができる。
【0108】
ガラスセラミックスの厚さは0.7mmであると、DOL_0の範囲は100.0μm以上であり、DOL_0は100.0μm以上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、100.0~125.0μm、100.0~127.0μm、100.0~135.0μm、100.0~140.0μm、100.0~112.0μm、100.0~115.0μm、100.0~116.0μm、100.0~112.0μm、104.0~120.0μm、106.0~111.0μm、108.0~120.0μm、104.0~120.0μm、108.0~120.0μm等である。いくつかの実施形態では、DOL_0は100.0μm、104.0μm、106.0μm、108.0μm、111.0μm、112.0μm、115.0μm、116.0μm、120.0μm、125.0μm、127.0μm、135.0μm、140.0μm等であってよい。
【0109】
本発明にかかる強化ガラスセラミックスの引張応力線密度CT_LDは25000MPa/mm以上であり、25000MPa/mm以上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば25000~40000MPa/mm、27000~40000MPa/mm、25000~38000MPa/mm、25000~37000MPa/mm、25000~39000MPa/mm、27000~38000MPa/mm、27000~39000MPa/mm、28000~38000MPa/mm等である。いくつかの実施形態では、CT_LDは25000MPa/mm、27000MPa/mm、28000MPa/mm、37000MPa/mm、38000MPa/mm、39000MPa/mm、40000MPa/mm等であってよい。
【0110】
本発明にかかる強化ガラスセラミックスの表面圧縮応力CSは650MPa以上であり、CSは650MPa以上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、好ましくは680MPa以上であり、好ましくは700MPa以上であり、好ましくは750MPa以上であり、好ましくは800MPa以上であり、好ましくは900MPa以上であり、好ましくは1000MPa以上であり、好ましくは700~800MPaであり、好ましくは750~800MPaであり、好ましくは760~870MPaであり、好ましくは710~860MPaであり、好ましくは700~900MPaであり、好ましくは800~1000MPaであり、好ましくは850~1000MPa等である。いくつかの実施形態では、CSは650MPa、680MPa、700MPa、710MPa、
750MPa、760MPa、800MPa、850MPa、860MPa、870MPa、900MPa、1000MPa等であってよい。
【0111】
本発明にかかる強化ガラスセラミックスの平均引張応力CT_AVは35.0MPa以上であり、CT_AVは35.0MPa以上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、好ましくは39.0MPa以上であり、好ましくは40.0MPa以上であり、好ましくは45.0MPa以上であり、好ましくは50.0MPa以上であり、好ましくは55.0MPa以上であり、好ましくは60.0MPa以上であり、好ましくは65.0MPa以上であり、好ましくは70.0MPa以上であり、好ましくは75.0MPa以上であり、好ましくは39.0MPa~65.0MPaであり、好ましくは35.0MPa~65.0MPaであり、好ましくは35.0MPa~55.0MPaであり、好ましくは35.0MPa~70.0MPa等である。いくつかの実施形態では、CT_AVは35.0MPa、39.0MPa、40.0MPa、45.0MPa、50.0MPa、55.0MPa、60.0MPa、65.0MPa、70.0MPa、75.0MPa等であってよい。
【0112】
本発明にかかる強化ガラスセラミックスのビッカース硬度は、740HV0.3以上であり、740HV0.3における740はビッカース硬度であり、0.3は測定に使用される荷重値が0.3kgであり、740HV0.3以上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、好ましくは760HV0.3以上であり、好ましくは770HV0.3以上であり、好ましくは780HV0.3以上であり、好ましくは790HV0.3以上であり、好ましくは800HV0.3以上であり、好ましくは820HV0.3以上であり、好ましくは830HV0.3以上であり、好ましくは740HV0.3~780HV0.3であり、好ましくは740HV0.3~830HV0.3等である。いくつかの実施形態では、ビッカース硬度は740HV0.3、760HV0.3、770HV0.3、780HV0.3、790HV0.3、800HV0.3、820HV0.3、830HV0.3等であってよい。
【0113】
本発明にかかる強化ガラスセラミックスの破壊靱性は1.500MPa・m1/2以上であり、前記強化ガラスセラミックスの破壊靱性は1.500MPa・m1/2以上およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、好ましくは1.560MPa・m1/2以上であり、好ましくは1.500~1.560MPa・m1/2であり、好ましくは1.600~1.700MPa・m1/2であり、好ましくは1.500~1.590MPa・m1/2であり、好ましくは1.540~1.600MPa・m1/2であり、好ましくは1.500~1.610MPa・m1/2であり、好ましくは1.500~1.630MPa・m1/2であり、好ましくは1.500~1.700MPa・m1/2等である。いくつかの実施形態では、強化ガラスセラミックスの破壊靱性は1.500MPa・m1/2、1.540MPa・m1/2、1.560MPa・m1/2、1.590MPa・m1/2、1.600MPa・m1/2、1.610MPa・m1/2、1.630MPa・m1/2、1.700MPa・m1/2等であってよい。
【0114】
本発明では、前記透明スピネルガラスセラミックスは、イオン交換が1回と複数回にかかわらず、ガラスセラミックスは既に固有強度の向上が得られるため、イオン交換されることにより、より性能の良い強化ガラスセラミックス製品を得ることができる。
【0115】
本発明で使用される塩浴は、カリウム塩、ナトリウム塩の少なくとも1種を含む。イオン交換に用いる塩として、硝酸塩は通常のものであるが、任意の適切な塩または塩の組み合わせを使用することもできる。
【0116】
一段階のイオン交換を行うと、前記塩浴の組成は50~100wt%NaNO3+0~
50wt%KNO3を含み、イオン交換の温度は400~500℃であり、イオン交換の時間は0.5~48hである。ここで、「イオン交換の時間」とは、ガラスセラミックスを指定される温度と調合比の塩浴に入れて、化学強化を行う時間である。
【0117】
イオン交換の温度は400~500℃およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、400~500℃、400~410℃、400~420℃、400~430℃、400~440℃、400~450℃、400~460℃、400~470℃、410~450℃、430~500℃、440~500℃等であり、イオン交換時間は0.5~48hおよびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、0.5~46h、1~10h、1~5h、1~40h、7~30h、9~29h、10~41h、6~32h、9~27h、4~33h、5~27h、6~38h等である。
【0118】
塩浴の組成は、NaNO3は50~100wt%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、50~60wt%、50~70wt%、50~80wt%、50~90wt%、60~100wt%、70~100wt%、80~100wt%、50~89wt%、64~88wt%、90~100wt%等であり、KNO3は0~50wt%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、0~40wt%、0~30wt%、0~20wt%、0~10wt%、0~14wt%、0~15wt%、0~35wt%、0~45wt%、5~40wt%、20~30wt%等である。
【0119】
二段階のイオン交換を行うと、一段階目の塩浴組成は、90~100wt%NaNO3+0~10wt%KNO3を含み、イオン交換の温度が400~500℃であり、イオン交換の時間が0.5~48hであり、
二段階目の塩浴組成は、0~10wt%NaNO3+90~100wt%KNO3を含み、イオン交換の温度が400~500℃であり、イオン交換の時間が0.5~48hである。
【0120】
イオン交換の温度は400~500℃およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、400~500℃、400~410℃、400~420℃、400~430℃、400~440℃、400~450℃、400~460℃、400~470℃、410~450℃、430~500℃、440~500℃等であり、イオン交換時間は0.5~48hおよびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、0.5~46h、1~10h、1~5h、1~40h、7~30h、9~29h、10~41h、6~32h、9~27h、4~33h、5~27h、6~38h等である。
【0121】
一段階目の塩浴組成は、NaNO3とKNO3とを含み、NaNO3は90~100wt%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、91~100wt%、92~100wt%、93~100wt%、94~100wt%、95~100wt%、96~100wt%、97~100wt%、98~100wt%、99~100wt%等であり、KNO3は0~10wt%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、0~1wt%、0~2wt%、0~3wt%、0~4wt%、5~10wt%、2~10wt%、6~9wt%、3~8wt%、2~9wt%、1~8wt%等である。
【0122】
二段階目の塩浴組成は、NaNO3とKNO3とを含み、NaNO3は0~10wt%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、0~1wt%、0~2wt%、0~3wt%、0~4wt%、2~10wt%、3~5wt%、5~10wt%、6~10wt%、2~7wt%、3~7wt%等であり、KNO3は90~100wt%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、91~100wt%、92~100wt%、93~100wt%、94~100wt%、95~100wt%、96~100wt%、97~100wt%、98~100wt%等である。
【0123】
塩浴の寿命を向上させるために、塩浴に占める質量%が0.1~5wt%である塩浴保護剤を塩浴に加えてよく、前記塩浴保護剤は、Li+を不活性化、沈殿、または吸収するための物質を含む。例えば、Li+を不活性化、沈殿、または吸収するための物質として、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩等を使用することにより、塩浴中で交換されたLi+濃度が上昇し、塩浴で提供可能なイオン交換性能と塩浴の寿命に影響を与えることを回避できる。塩浴保護剤は0.1~5.0wt%およびその間のすべての範囲と部分範囲を含み、例えば、0.1~4.0wt%、0.1~3.0wt%、0.1~2.0wt%、0.1~1.0wt%、0.2~5.0wt%、0.5~5.0wt%、4.1~5.0wt%、3.1~5.0wt%、2.6~4.5wt%、0.7~3.5wt%、0.8~2.5wt%、0.9~1.5wt%、0.8~2.5wt%等である。
【0124】
四、本発明は、消費製品である電子端末を提供し、本発明で提供される消費製品である電子端末は、
前面、裏面および側面を含むケースと、
一部が前記ケース内に位置する電子部品と、を含み、
前記電子部品は表示デバイスを含み、この表示デバイスは前記ケースの前面に位置し、または前記前面に隣接し、
前記前面および/又は裏面および/又は側面は、前記強化ガラスセラミックス材料を含み、
前記電子端末は、ケースの前面に覆い、又は前記表示デバイスに位置するカバー製品を更に含み、前記カバー製品は前記強化ガラスセラミックス材料を含み、
前記消費製品である電子端末は、携帯電話、タブレット、光起電力装置、又は他の電子端末(例えば電子腕時計)を含む。
【0125】
本発明の透明スピネルガラスセラミックス材料および強化ガラスセラミックス材料は、いずれも優れた性能を備え、他の製品に含まれる/応用されることができ、例えば、腕時計、透明装甲、ミサイルの窓口、カウリング、基板材料、新型ランプ、高温高圧・腐食性環境における設備のぞき窓、携帯型スマート電子機器の表示保護材および外観筐体保護材(携帯型スマート電子機器は携帯電話、タブレット、電子腕時計等を含む)、建築製品、輸送製品(例えば、自動車、列車、飛行機、海上航行機等)、器具製品、又は、一定の透明度、耐傷性、耐衝撃性、耐摩耗性又はそれらの組み合わせが要求されている任意の製品である。
【0126】
五、以下、具体的な実施例により本発明を説明する。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
実施例1を例として、配合案1のレシピに従って原料を30分間混合し、混合物の総計の量は1000gであり、均一になった後に、清澄剤(NaCl)5gを添加し、1650℃の白金坩堝で20時間溶解させて、成形金型に入れて成形し、900℃まで冷却した後、600℃のアニール炉に入れて6時間アニールし、その後、室温まで炉冷することにより、ガラス前駆体が得られる。上記表における対応するプロセス条件に従って、ガラス前駆体に対して、核生成処理と結晶化処理とを順に行って、ガラスセラミックス製品が得られる。上記表における対応する強化プロセス条件に従って、得られたガラスセラミック
スに対して化学強化を行い、強化ガラスセラミックス製品を製造する。
【0136】
表1~6と併せて見ると、比較例13-16のガラスレシピでは、Li2OおよびNa2Oの含有量が実施例1~12より低いため、得られたガラスセラミックスは強化処理後に、得られるCT_LDが実施例1~12よりはるかに低く、一部が20000MPa/mmにも達していないことが分かる。実施例1~12のガラスセラミックスで製造されて得られる強化ガラスセラミックスの耐落下高さは比較例13-16よりも明らかに優れる。
【0137】
比較例13、15および実施例5、6、11、12の強化ガラスセラミックスによって完成品落下実験を行い、サンプルごとに10枚を取り、試験結果は
図1に示す。
図1から分かるように、比較例13および比較例15の落下効果が悪く、落下高さは0.7~1.7mの間に集中しており、実施例5、6、11、12では、レシピにおけるLi
2Oの含有量が高いため、強化処理された後に、引張応力線密度CT_LDが明らかに増え、応力深さDOL_0も明らかに増え、落下高さが著しく向上する。同時に、実施例12および実施例6のCT_LDがほぼ同じレベルであることから分かるように、結晶化度が高い実施例12の落下高さは明らかに高く、落下した10枚のガラスのうち2枚だけでは落下高さが2mより低い。これから分かるように、強化ガラスセラミックスでは、落下高さは結晶化度とCT_LDと両方に関係しており、本発明は結晶化度を保証したとともに、多くのLi2Oを添加することで、強化後のCT_LDが高い、落下に耐える効果がよいことを確保できる。
【0138】
表7~8と併せて分かるように、結晶化過程における昇温速度がガラスセラミックスの結晶相の種類にひどく影響を与え、比較例1~12では、結晶化昇温速度が20℃/min未満であり、ガラスセラミックス材料の結晶相には不純物結晶相である石英固溶体を示し、かつ結晶粒子の大きさが明らかに大きい、結晶化度が向上する一方で、透過率が大幅に減り、屈折率の計測ができないまでなってしまい、このようなガラスセラミックスは被せ板材料である要求を満たすことができない。
【0139】
方案8のレシピで製造されて得られるガラス前駆体を、異なる結晶化昇温速度(5℃/min、20℃/min、30℃/min)で微結晶化処理を行い、製造されて得られるガラスセラミックスの写真を
図5に示し、製造されて得られるガラスセラミックスのXRDグラフを
図4に示し、
図6を製造するガラスセラミックスの550nm波長の光に対する透過率を示すグラフである。
図4-6から分かるように、結晶化処理を行う時に、昇温速度が0~20℃/minの範囲内であると、ガラスには不純物結晶が析出し(XRDグラフでは明らかに余分な特徴ピークを示し)、ガラスセラミックスは曇り、失透までなってしまう。結晶化処理を行う時に、昇温速度が30℃/minであると、不純物結晶が析出しない、ガラスが透明状態に維持される。
【0140】
本発明は、スピネルガラスセラミックス材料の成分を最適化し、スピネルガラスセラミックスにより多くの化学強化のイオン交換に使用されるLiイオンおよびNaイオンを導入することにより、不純物結晶相(例えば、Li含有結晶相、石英、石英固溶体等不純物結晶相)が無いスピネルガラスセラミックスが得られ、ガラスセラミックスには曇りおよび失透等の現象がなく、ガラスセラミックス材料が優れた透過率を有することが確保された。
【0141】
より多くのLiイオンおよびNaイオンをスピネルガラスセラミックス成分に導入することにより、得られたスピネルガラスセラミックスを化学強化することができ、高いCS、DOL_0、CT_AVおよびCT_LDを有する透明強化ガラスセラミックスが得られ、当該強化ガラスセラミックスは優れた耐落下性を示している。
【0142】
本発明で得られたガラスセラミックス材料に対して性能試験を行った結果、本発明の透明スピネルガラスセラミックス材料が高い結晶化度を有することにより、ガラスセラミックス材料へ優れた機械的性能を寄与できることを見出した。
【0143】
本発明は、スピネルガラスセラミックスの製造方法を更に提供し、本発明で提供されたプロセス方法は、結晶化過程および核生成過程におけるプロセスパラメータを制御し、かつ昇温速度パラメータの要求を設置し、最終的に、不純物結晶相(例えばLi含有結晶相、石英、石英固溶体等不純物結晶相)が無いスピネルガラスセラミックスが得られ、ガラスセラミックス材料が優れた光学性能を有することが確保された。
【0144】
最後に説明すべきことは、以上の実施例は本発明の技術案を説明するためのものに過ぎず、技術案を限定するものではない。当業者は、本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、本発明の技術的手段を修正または同等に置き換えるものは、本発明の特許請求の範囲に含まれるべきであることを理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
前記強化ガラスセラミックスは、表面に位置する圧縮応力層と内部に位置する引張応力層とを含み、前記強化ガラスセラミックスの引張応力層の組成は、酸化物のモル%で、
Li
2O:3.50~6.00モル%
Na
2O:2.00~4.00モル%
の各成分を含む、ことを特徴とする、
請求項
1に記載の高い応力深さを有する透明強化ガラスセラミックス。
【国際調査報告】