IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20240306BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544297
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2021074724
(87)【国際公開番号】W WO2022160351
(87)【国際公開日】2022-08-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、シルン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン、ヨンホア
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ウーイェ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ、リボ
(72)【発明者】
【氏名】レン、シージエ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB282
4J002CL021
4J002CL051
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
ブレンドを含むナイロン組成物であって、ブレンドが、(a)少なくとも1つのポリアミドと、(b)少なくとも1つの改質剤とを含み、改質剤が、少なくとも1つのマレイミド構造で架橋された少なくとも1つの側鎖フラン部分を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーを含む、ナイロン組成物、本組成物を作製するためのプロセス、及び本組成物から作製された物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン組成物であって、
(a)少なくとも1つのポリアミドと、
(b)少なくとも1つの改質剤と、のブレンドを含み、前記改質剤が、少なくとも1つのマレイミド構造で架橋された少なくとも1つの側鎖フラン部分を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである、ナイロン組成物。
【請求項2】
前記組成物が、側鎖フラン部分及び側鎖マレイミド構造を有さない未変性の実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーと比較して、室温耐衝撃強度において少なくとも10パーセントの増加を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーの前記少なくとも1つの側鎖フラン部分が、前記エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーをフルフリルアミンで変性することによって生成され、前記実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーの前記少なくとも1つのマレイミド構造が、前記エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーを1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミドで変性することによって生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(a)前記少なくとも1つのポリアミドの濃度が、成分(a)及び(b)の重量に基づいて、70重量パーセント~98重量パーセントであり、(b)前記少なくとも1つの改質剤の濃度が、成分(a)及び(b)の重量に基づいて、2重量パーセント~30重量パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアミドが、ポリカプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン-アジピン酸縮合生成物を含むポリアミド、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの側鎖フラン部分を有する前記実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーが、前記実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー中に存在する無水マレイン酸基を、少なくとも80パーセントの変換レベルでフラン基に変換することによって作製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記改質剤が、0.900g/cm未満の密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記改質剤が、可逆的架橋ディールス-アルダー型反応を介して前記組成物に熱可逆性特性を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ガラス繊維、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、バライト、アルミナ、水和アルミナ、マイカ、粘土、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸塩、タルク、難燃剤、カーボンブラック又はグラファイト、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される充填剤を、前記組成物に基づいて最大50重量パーセント更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物から製造された、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドと改質剤とのブレンドを含むポリアミド組成物に関し、より具体的には、本発明は、ポリアミドと、ポリアミドを強靭化するための熱可逆的架橋耐衝撃性改質剤との組み合わせ又はブレンドを含むナイロン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロンは、アミド連結(-CO-NH-)の少なくとも85重量パーセントが2つの脂肪族基に直接結合している脂肪族又は半芳香族ポリアミドに基づく周知の合成熱可塑性ポリマーである。ナイロン材料は、様々な用途で使用するための物品/製品及び部品を形成するために、様々な繊維、フィルム、又は形状に溶融加工され得る。例えば、ナイロンポリマーは、車、電気器材などの成形部品などの形状に形成され得る。いくつかの用途では、以前に使用された物品/製品及び部品よりも薄く、同時に、以前に使用された元のより厚い物品/製品及び部品と同じ高い耐衝撃強靭性を維持する物品/製品及び部品に対する需要が増加している。例えば、ナイロン製品のユーザーは、ユーザーがそのような製品を自動車及び電気用途に使用することを可能にするために、製品の高い流動性及び弾性率を維持しながら、高い耐衝撃強靭性を有する薄いナイロン製品を配合業者から提供されることを要求している。自動車産業では、自動車製造業者は、車両重量を低減し、ひいては、自動車の燃費を改善し、かつ/又はカーボンフットプリントを低下することができる、より薄い壁を有するより小型の部品を望んでおり、電気産業では、製造業者は、電気構成要素の重量を低減するために、より薄い壁を有するより小型の構成要素を使用することを望んでいる。
【0003】
ナイロンポリマーは、多種多様な添加剤と混合されて、多くの異なる特性変動を達成することができるが、物品/製品及び部品の耐衝撃強靭性を増加させる1つの方法は、最初に、強靭化添加剤(又は耐衝撃性改質剤)として架橋剤をナイロンポリマーに添加して、ナイロンと改質剤組成物とのブレンドを形成し、次いでブレンドされた組成物を使用して、高い耐衝撃強靭性を有する物品/製品及び部品を作製することである。
【0004】
例えば、出願公開第2014/034615(A)号は、熱可塑性エラストマー、熱可塑性エラストマーを生成するための方法、並びに電線及びケーブルを開示している。出願公開第2014/034615(A)号は、電線及びケーブルに使用される熱可塑性エラストマーを例示しており、このエラストマーは、(1)エラストマーの主鎖中にアミノ基を介して共役ジエン構造が結合しているハロゲン含有エラストマーと、(2)ジエノフィル構造を有する架橋剤との組み合わせである。上記の参考文献は、ワイヤ及びケーブル用のニート材料の形態の絶縁体を開示している。例えば、シースは、絶縁体として機能するエラストマーから形成される。更に、この参考文献は、エラストマーとして使用されるハロゲン化ゴムを開示しているが、非ハロゲン化エラストマーを教示していない。
【0005】
米国特許第6,512,051(B2)号は、温度で誘発されるディールス-アルダー(Diels-Alder、DA)型反応の可逆的架橋を形成する官能基を有するエラストマー組成物を開示している。可逆的架橋は、高温(例えば、>150℃)で解離し、低温(例えば、<150℃)で会合することができる架橋構造に関する。上記の特許に開示されているベースポリマー(エラストマー)は、ブタジエンゴムであり、フルフリルメルカプタン及びビスマレイミドジフェニルメタンを採用している。明確な構造は、NMR、FTIR、及びレオロジーによって識別され、機械試験は、この種類のDA変性エラストマーの可逆性を示す。上記の特許は、DA化学と同様の化学を開示しているが、この特許は、エラストマーとしてのゴムの使用を開示しているだけであり、ナイロン化合物又はナイロン化合物用の強靭化剤としてのゴムの使用を教示していない。
【0006】
中国特許第109535626(A)号は、溶液を使用するDA化学と同様の化学を開示しており、溶融物(すなわち、溶融材料)を開示していない。また、上記の参考文献は、エラストマーとしてのゴムの使用を開示しているだけであり、ナイロン化合物又はナイロン化合物用の強靭化剤としてのゴムの使用を教示していない。
【0007】
米国特許第10,100,133(B2)号は、アジド化学を使用する熱可逆性の一般概念を開示しており、DA型変性エラストマーを開示していない。また、上記の特許は、一切の他の種類の強靭化剤を開示していない。
【0008】
したがって、強靭化剤(耐衝撃性改質剤化合物とも呼ばれる)をナイロン材料と組み合わせて、強靭化ナイロンポリマー組成物を形成することによってナイロン材料の強靭性特性を増加させるために、ナイロン材料とともに使用するための強靭化剤を提供することが所望されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施形態は、耐衝撃性改質剤(強靭化剤)化合物とブレンドされたナイロン化合物を含むナイロンポリマー組成物に関し、耐衝撃性改質剤が、ナイロンポリマー組成物に、(1)可逆的架橋ディールス-アルダー(DA、Diels-Alder)型反応を介した熱可逆性特性、及び(2)増加した強靭性特性を提供する。好ましい実施形態において、耐衝撃性改質剤は、少なくとも1つのマレイミド構造で架橋されたフラン部分を含む少なくとも1つの側鎖を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。
【0010】
1つ以上の他の実施形態において、本発明のナイロンポリマー組成物は、例えば、(a)成分(a)及び(b)の重量に基づいて、70重量パーセント(重量%)~98重量%のポリアミドと、(b)成分(a)及び(b)の重量に基づいて、2重量%~30重量%の改質剤とを含むブレンドを含み、改質剤は、少なくとも1つのマレイミド構造で架橋されたフラン部分を含む少なくとも1つの側鎖を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。
【0011】
1つ以上の他の実施形態において、本発明は、上記の耐衝撃性改質剤、並びに熱可逆性特性及び増加した強靭性特性を有する上記のナイロンポリマー組成物を製造するためのプロセスを含む。
【0012】
なおも1つ以上の他の実施形態において、本発明は、上記のナイロンポリマー組成物を使用して生成された物品を含む。上記の物品の1つ以上の好ましい実施形態において、本発明の生成プロセスは、押出プロセスを含む。
【0013】
本発明の実施形態の追加の特徴及び有利な点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、一部はその説明から当業者に容易に明らかになるか、又は発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を含む、本明細書に記載の実施形態を実践することによって認識される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリマーに関して本明細書で使用される「エラストマー性」又は「エラストマー」又は「ポリオレフィンエラストマー(polyolefin elastomer、POE)」は、有益には、1つの一般的な実施形態において約0.920g/cm未満、別の実施形態において約0.900g/cc未満、なおも別の実施形態において約0.895g/cm未満、更に別の実施形態において約0.880g/cc未満、更になおも別の実施形態において約0.875g/cm未満、更に別の実施形態において約0.870g/cm未満である密度、及び1つの一般的な実施形態において33%未満、別の実施形態において29%未満、なおも別の実施形態において約23%未満の結晶化度パーセント(%)を有するエチレン/アルファ(α)-オレフィン(ethylene/alpha(α)-olefin、EAO)ポリマー又はEAOポリマーブレンドを意味する。密度は、一般に、約0.850g/cm超である。結晶化度パーセントは、示差走査熱量測定(differential Scanning calorimetry、DSC)によって決定される。
【0015】
「ポリマー」は、同じ種類であるか異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、及び「インターポリマー」という用語を包含し、これはコポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、及び3つより多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。例えば触媒残留物などの微量の不純物が、ポリマー中に及び/又はポリマー内に組み込まれ得る。それはまた、コポリマーのすべての形態、例えば、ランダム、ブロックなども包含する。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマー又はモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含量を「含有する」などと称されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残基を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものとして言及される。
【0016】
「ディールス-アルダー(DA)反応」は、置換シクロヘキセン誘導体を形成するための共役ジエンと置換アルケンとの間の化学反応である。この反応は、可逆的架橋の方法を使用して、例えば、温度で誘発されるディールス-アルダー(DA)反応を介して、物品/製品及び部品の耐衝撃強靭性を増加させることができる改質剤を生成するために使用される。可逆的架橋は、高温(例えば、>150℃)で解離し、低温(例えば、<150℃)で会合することができる架橋構造に関し、かつそれを提供し、加工中に高い流動性及び組成物を冷却した後に分子量の高い成長を有する組成物を提供し、優れた強靭化を有する組成物をもたらす。DA反応は、ポリマー組成物に適用される場合、熱可逆的である。DA反応は、反応性組成物が比較的速い速度及び穏やかな反応条件を受けることを可能にしながら、可逆的な架橋官能性を提供し得る。
【0017】
本明細書における「熱可逆性」又は「熱可逆的」は、温度によって誘発される可逆的反応を意味する。
【0018】
本明細書における「室温(Room temperature、RT)」及び/又は「周囲温度」は、別途特定されない限り、20℃~26℃の温度を意味する。本明細書で使用される温度は、摂氏温度(℃)である。
【0019】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、並びに組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0020】
本明細書において「ナイロンポリマー組成物」は、耐衝撃性改質剤と溶融ブレンドされて、ナイロンと耐衝撃性改質剤との不均質ブレンドをもたらすナイロンポリマーを意味する。
【0021】
本明細書における「耐衝撃強靭性」又は「耐衝撃強度」という用語は、負荷が材料に突然適用されたときに材料が耐えることができるエネルギーの量を意味する。この用語はまた、材料が破断を受ける前の単位面積当たりの力の閾値として定義され得る。
【0022】
本明細書における「耐衝撃性改質剤」又は「改質剤」は、ポリアミドなどの別のポリマーの室温耐衝撃強度を改質するのに有用な実質的に線状の官能化エチレンコポリマーを意味する。
【0023】
本明細書における「室温耐衝撃強度」は、室温(room temperature、RT)条件、例えば、23℃及び50%の相対湿度(relative humidity、RH)で試験した耐衝撃強度を意味する。
【0024】
ポリマー組成物に関する「実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー」は、本明細書において、狭い分子量分布(molecular weight distribution、MWD)及び狭い短鎖分岐分布(short chain branching distribution、SCBD)を特徴とすることを意味する。一実施形態において、実質的に線状の官能化エチレンコポリマーは、例えば、米国特許第5,272,236号及び同第5,278,272号に記載されている手順を使用して調製され得る。
【0025】
ポリマーに関する「実質的に線状」は、本明細書において、ポリマーが主鎖中の1,000個の炭素当たり0.01~3個の長鎖分岐で置換された主鎖を有することを意味する。
【0026】
「POE-g-MAH」化合物又は成分は、本明細書において、少なくとも1つの無水マレイン酸(maleic anhydride、MAH)でグラフトされて、MAHグラフト化POE又はPOE-g-MAHを形成するPOEを意味する。
【0027】
「POE-g-FFA」化合物又は成分は、本明細書において、フルフリルアミン(furfurylamine、FFA)などの少なくとも1つのフラン化合物でグラフトされて、FFAグラフト化POE又はPOE-g-FFAを形成するPOEを意味する。
【0028】
「少なくとも1つのマレイミド構造で架橋されたフラン部分を含む少なくとも1つの側鎖を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー(substantially linear functionalized ethylene/alpha-olefin copolymer、SLFC)」は、本明細書において、DA反応特性を有するポリマーを提供するためにフラン部分及びマレイミド構造を有する変性POE-g-MAHを含む耐衝撃性改質剤を意味する。
【0029】
「フラン」は、式(I)の一般化学構造によって示されるように、4個の炭素原子及び1個の酸素を有する5員芳香環からなる複素環式有機化合物である。そのような環を含有する化学化合物は、フランとも呼ばれる。
【0030】
【化1】
【0031】
ポリマー組成物に関する「フラン変換レベル」は、本明細書において、フルフリルアミンを無水マレイン酸基含有化合物に添加した後の無水マレイン酸からイミド環への変換比率を意味する。
【0032】
「高性能」ポリオレフィンエラストマーは、本明細書において、CHARPY ISO179-1に従ってRT耐衝撃強度の少なくとも≧10%の増加として測定される強靭化性能を意味する。
【0033】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、工程、又は手順が本明細書で具体的に開示されているかにかかわらず、それらの存在を排除するように意図するものではない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、特に反対の記載がない限り、ポリマーであるかその他であるかによらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、又は手順を除く。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の成分、ステップ、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、並びに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は複数形の使用を含み、その逆もまた同様である。
【0034】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値から上限値までの全ての値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0035】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略称は、文脈から別途明確に指示されない限り、以下の意味を有する。「=」は、「等しい」又は「と等しい」を意味し、「<」は、「未満」を意味し、「>」は、「よりも大きい」を意味し、「≦」は、「以下」を意味し、「≧」は、「以上」を意味し、「±」は、「プラス又はマイナス」を意味し、「@」は、「において」を意味し、μm=マイクロメートル、g=グラム、mg=ミリグラム、g/L=1リットル当たりのグラム、「g/cm」又は「g/cc」=1立方センチメートル当たりのグラム、「kg/m=1立方メートル当たりのキログラム、ppm=重量百万分率、pbw=重量部、rpm=1分間当たりの回転数、m=メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、μm=マイクロメートル、min=分、s=秒、ms=ミリ秒、hr=時、Pa=パスカル、MPa=メガパスカル、Pa・s=パスカル秒、mPa-s=ミリパスカル秒、g/mol=1モル当たりのグラム、g/eq=1等価量当たりのグラム、M=数平均分子量、M=重量平均分子量、pts=重量部、1/s又は秒-1=秒の逆数[s-1]、℃=摂氏温度、psig=1平方インチ当たりのポンド、kPa=キロパスカル、%=パーセント、vol%=体積パーセント、モル%=モルパーセント、重量%=重量パーセント、及びKJ/m=1平方メートル当たりのキロジュールである。
【0036】
別途明記されない限り、全てのパーセンテージ、部、比などの量は、重量によって定義される。例えば、本明細書に記載した全てのパーセンテージは、別途指示されない限り、重量パーセンテージ(重量%)である。
【0037】
本発明の具体的な実施形態が本明細書の以下に記載される。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に本発明の主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0038】
一般に、本発明は、自動車部品を生成するためなどの様々な用途のための強靭性が増加したナイロン物品/製品又は部品を生成するのに有用なナイロン配合物又は組成物を含む。ナイロン組成物は、(a)少なくとも1つのポリアミド(すなわち、ナイロン)と、(b)少なくとも1つの耐衝撃性改質剤との組み合わせ、混合物、又はブレンドを含む。1つの好ましい実施形態において、ナイロン組成物は、例えば、(a)成分(a)及び(b)の重量に基づいて、70重量%~98重量%の、ナイロン材料などの少なくとも1つのポリアミド化合物と、(b)成分(a)及び(b)の重量に基づいて、2重量%~30重量%の少なくとも1つの耐衝撃性改質剤とのブレンドを含み、成分(b)である耐衝撃性改質剤は、少なくとも1つのマレイミド構造で架橋されたフラン部分を含む少なくとも1つの側鎖を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。
【0039】
本発明のナイロン組成物は、必要に応じて、(c)1つ以上の他の化合物を更に含み得る。
【0040】
「ナイロン」及び「ポリアミド」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0041】
ナイロン組成物の成分(a)であるポリアミド化合物は、ポリマー主鎖の不可欠な部分として繰り返しアミド基(R-CO-NH-R’)を含有するポリマーである。本発明において有用なポリアミド化合物は、1つ以上のポリアミド化合物を含み得る。例えば、ポリアミドは、Nylon6(自己重合するカプロラクタムから作製されるポリカプロラクタム)、Nylon6,6(ポリマー主鎖内に繰り返しアミド基を有する長鎖合成ポリアミドであるヘキサメチレンジアミン-アジピン酸縮合生成物)、Nylon4、Nylon11、Nylon12、Nylon6,10、Nylon4,6、Nylon6I、Nylon6T、Nylon9T、を含むナイロンポリマーからなる群から選択され得る。1つの好ましい実施形態において、本発明において有用なポリアミド化合物は、Nylon6、Nylon6,6である。
【0042】
本発明において有用な市販のポリアミド化合物のいくつかの例としては、例えば、Zytel 7304 NC010(Dupontから入手可能)、PA6-YH800(Yueyang Baling Shihua Chemical&Synthetic Fiber Co.Ltd.から入手可能)、を含み得る。
【0043】
本発明のナイロン組成物を調製するのに使用される成分(a)であるポリアミド化合物の濃度は、例えば、一実施形態において、成分(a)及び(b)の重量に基づいて42重量%~97重量%、別の実施形態において、50重量%~90重量%、なおも別の実施形態において、65重量%~84重量%を含む。
【0044】
一実施形態において、成分(b)である耐衝撃性改質剤は、例えば、フラン部分及びマレイミド部分で変性又は官能化されて、少なくとも1つのマレイミド構造で架橋された少なくとも1つの側鎖フラン部分を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーを形成するベースポリマーを含む。少なくとも1つのマレイミド構造で架橋された少なくとも1つの側鎖フラン部分を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーを含む耐衝撃性改質剤は、本明細書において「実質的に線状の官能化コポリマー(substantially linear functionalized copolymer、SLFC)」と呼ばれる。
【0045】
1つの一般的な実施形態において、本発明で使用される耐衝撃性改質剤は、様々な成分、並びに様々なグラフト及び/又は配合技法を使用して、ポリオレフィンエラストマー(POE)などのベースポリマーを変性して、SLFC耐衝撃性改質剤を生成することによって生成される。例えば、好ましい実施形態において、本発明で使用されるSLFC耐衝撃性改質剤は、(bi)少なくとも1つのPOE-g-MAHを、(bii)少なくとも1つのフラン化合物、例えば、フルフリルアミン(FFA)で変性し、FFAをPOE-g-MAHにグラフトして、POE-g-FFAを形成し、次いでPOE-g-FFAを、(biii)少なくとも1つのマレイミド化合物、例えば、1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミドとともに配合し、POE-g-FFAと配合して、SLFCを形成することによって生成される。
【0046】
1つの好ましい実施形態において、SLFC耐衝撃性改質剤を生成するプロセスは、
(A)(1)POEを少なくとも1つの無水マレイン酸(MAH)でグラフトして、MAHグラフト化POE(POE-g-MAH)を形成すること、又は(2)ExxonMobilから入手可能なExxelor VA 1801若しくはExxelor VA 1803などの市販のPOE-g-MAH化合物を調達することのいずれかによって、成分(bi)であるPOE-g-MAHを生成する工程と、
(B)工程(A)からのPOE-g-MAHを、成分(bii)であるFFAなどの少なくとも1つのフラン化合物でグラフトして、フラン部分グラフト化ポリオレフィンエラストマー(例えば、POE-g-FFA)を形成する工程と、
(C)POE-g-FFAの少なくとも1つの側鎖フラン部分がマレイミド化合物の少なくとも1つのマレイミド構造と架橋して、最終SLFC耐衝撃性改質剤を形成するように、工程(B)から得られたPOE-g-FFAを、成分(biii)である少なくとも1つのマレイミド化合物と配合する工程と、を含む。
【0047】
例えば、上記の工程(B)において、POE-g-MAHは、FFAでグラフトされ、FFAグラフト化ポリオレフィンエラストマー又はFFA官能化POE(FFA-grafted polyolefin elastomer、POE-g-FFA)をもたらす。SLFC中に少なくとも1つの側鎖フラン部分を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーを含む最終耐衝撃性改質剤は、一実施形態において、少なくとも80%、別の実施形態において、80%~95%、なおも別の実施形態において、80%~90%のフラン変換レベルを有する。
【0048】
POE-g-MAHをFFAで官能化して、POE-g-FFA生成物を形成するための上記のグラフト化工程(B)は、以下の反応スキーム(I)で例示され得る。
【0049】
【化2】
【0050】
上記のPOE-g-MAHがFFAで官能化され、POE-g-FFA生成物が形成されると、耐衝撃性改質剤生成プロセスは、POE-g-FFAとビスマレイミド(bismaleimide、BMI)化合物などのマレイミド化合物とを配合する上記の工程(C)を含む。例えば、1つの好ましい実施形態において、POE-g-FFAは、以下の一般的な反応スキーム(II)に例示されるように、1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミドなどの成分(biii)であるBMI化合物と配合され得る。
【0051】
【化3】
【0052】
SLFCを形成するために使用されるベースポリマーは、例えば、エラストマーエチレン/アルファ(α)-オレフィン(EAO)ポリマーを含む(「エチレンポリマー」又はポリオレフィンエラストマー(POE)とも呼ばれる。本発明のSLFCを調製するのに有用なPOEポリマーとしては、例えば、インターポリマー及びジエン変性インターポリマーが挙げられる。例示的なベースポリマーとしては、例えば、エチレン/オクテン(ethylene/octene、EO)コポリマー、エチレン/ヘキセン(ethylene/hexene、EH)ポリマー、エチレン/プロピレン/ジエン変性(ethylene/propylene/diene modified、EPDM)インターポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
他の実施形態において、EAOポリマーとしては、例えば、線状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)の均質に分岐した線状EAOコポリマー(例えば、Mitsui PetroChemicals Company Limitedから入手可能なTafmerポリマー及びExxon Chemical Companyから入手可能なExactポリマー)、及び均質に分岐した実質的に線状のEAOポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能なENGAGE(商標)ポリマーなど)が挙げられ得る。好ましい実施形態において、本発明において使用されるEAOポリマーは、一実施形態において、0.85g/cm~0.92g/cm、別の実施形態において、0.85g/cm~0.90g/cmの密度(ASTM D-792に従って測定)、及び一実施形態において、0.01g/10分~30g/10分、別の実施形態において、0.05g/10分~10g/10分のメルトインデックス(MI又はI)(ASTM D-1238(190℃/2.16kg負荷)に従って測定)を有する、均質に分岐した、線状及び実質的に線状のエチレンコポリマーである。
【0054】
一実施形態において、耐衝撃性改質剤を形成するための成分のうちの1つとして有用なPOE-g-MAH化合物は、成分(bi)であるPOE-g-MAHを形成するグラフト技術において既知の従来のグラフト化方法を使用して、無水マレイン酸化合物(MAH)をPOE成分上にグラフトすることによって形成され得る。
【0055】
別の実施形態において、本発明の耐衝撃性改質剤を生成するための成分(bi)として有用なPOE-g-MAH化合物としては、例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能な市販のPOE-g-MAH化合物のいずれか、ExxonMobilから入手可能なExxelor VA 1801若しくはExxelor VA 1803などの市販のPOE-g-MAH化合物のいずれか、及びこれらの混合物が挙げられ得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明において有用なPOE-g-MAH化合物の特性のうちのいくつかとしては、例えば、以下が挙げられる:POE-g-MAH化合物のMAHレベルは、例えば、1つの一般的な実施形態において0.3重量%~1.5重量%、別の実施形態において0.3重量%~1.2重量%、なおも別の実施形態において0.3重量%~0.9重量%、及び更に別の実施形態において0.8重量%~0.9重量%であり得る。
【0057】
POE-g-MAH化合物の密度は、例えば、1つの一般的な実施形態において0.84g/cm~0.88g/cm、別の実施形態において0.85g/cm~0.88g/cm、なおも別の実施形態において0.85g/cm~0.87g/cmであり得る。
【0058】
POE-g-MAH化合物のメルトインデックス(melt index、MI)は、例えば、1つの一般的な実施形態において0.2g/10分~30g/10分、別の実施形態において0.2g/10分~20g/10分、なおも別の実施形態において0.2g/10分~10g/10分、更に別の実施形態において0.2g/10分~5g/10分、更になおも別の実施形態において0.2g/10分~3g/10分、更になお別の実施形態において0.2g/10分~2g/10分であり得る。
【0059】
本発明の耐衝撃性改質剤を生成するのに有用な成分のうちの1つである、POE-g-FFAを調製するのに有用な成分(bii)であるフラン化合物(すなわち、フラン部分を含有する化合物)は、例えば、FFAを含む1つ以上の化合物を含み得る。
【0060】
POE-g-FFAを調製するために使用されるFFA化合物の濃度は、例えば、1つの一般的な実施形態において、成分(bi)及び(bii)の総重量に基づいて、0.2重量%~5重量%を含む。
【0061】
本発明は、例えば、POE-g-FFA化合物の動的高分子量を構築し、次いでナイロン組成物中のPOE-g-FFA化合物を使用してナイロン化合物を強靭化するための熱可逆的架橋ツールとしてのDA化学の使用を含む。例えば、POE-g-FFAの反応性は、本組成物の流動性を犠牲にすることなく、ある程度のDA官能基をPOE-g-FFA化合物に導入することを可能にする。POE-g-FFA化合物は、高温(例えば、>150℃)で効果的に解離し、低温(例えば、<150℃)で会合し得る架橋構造を提供する耐衝撃性改質剤を提供することによって、ナイロンの高い強靭性と本組成物の流動性の犠牲との間のトレードオフを緩和し得る可逆的架橋技法を提供すると仮定される。POE-g-FFAは、高温での本組成物の加工中に高い流動性組成物を提供し、本組成物を低温に冷却した後に本組成物の高分子量を成長させる(強靭性を増加させる)。したがって、可逆的架橋技法は、特に物品が本組成物から作製され、より薄い壁を有することを必要とする場合に、ナイロン組成物に首尾よく適用され得る。可逆的架橋技法は、剛性-強靭性-流動性バランスを改善することができ、例えば、減少したPOE-g-FFA負荷は、同様の剛性及び流動性を有する非架橋ナイロン化合物に対して同じ又はより良好な剛性-強靭性-流動性を提供し得る。加えて、DA共有結合の誘発温度が150℃を超えるため、一般に、得られる架橋ポリマーについて、非架橋ポリマーと比較してより高い溶融強度を得ることができる。また、ナイロン組成物のHDT性能は、POE-g-FFAを使用して向上させることができる。
【0062】
成分(biii)であるマレイミド化合物は、例えば、1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド、ビス-マレイミドエタンBM(PEG)3(1,11-ビスマレイミド-トリエチレングリコール)、BM(PEG)2(1,8-ビスマレイミド-ジエチレングリコール)、DTME(ジチオ-ビス-マレイミドエタン)、3,3’-スルフィニルビス(N-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)プロパンアミド)、N,N’-(1,3-フェニレン)ジマレイミド、N,N’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビスマレイミド、1,1’-(3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド、2-[8-(3-ヘキシル-2,6-ジオクチルシクロヘキシル)オクチル]ピロメリト酸ジイミドオリゴマー(マレイミド末端、低粘度)、を含む1つ以上の化合物を含み得る。
【0063】
1つの好ましい実施形態において、本発明において有用なマレイミド化合物は、1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド、BM(PEG)3(1,11-ビスマレイミド-トリエチレングリコール)、及びこれらの混合物であり得る。
【0064】
本発明の耐衝撃性改質剤を調製するのに使用される成分(biii)であるマレイミド化合物の濃度は、例えば、1つの一般的な実施形態において、成分(bii)及び(biii)の総重量に基づいて、0.2重量%~3.0重量%、別の実施形態において、0.5重量%~1.5重量%を含む。
【0065】
本発明の耐衝撃性改質剤化合物によって示されるいくつかの有利な特性の例としては、例えば、一実施形態において、CHARPY ISO179-1に従ってRT耐衝撃強度の少なくとも≧10パーセント(%)超、別の実施形態において10%~15%、なおも別の実施形態において10%~20%、更に別の実施形態において10%~30%、更になおも別の実施形態において10%~40%、更になお別の実施形態において10%~50%、別の実施形態において10%~60%の増加のシャルピー試験による高い耐衝撃強度又は強靭化を有する耐衝撃性改質剤化合物が挙げられる。
【0066】
本発明のナイロン組成物を調製するために成分(a)であるナイロン化合物とブレンドされる成分(b)である耐衝撃性改質剤化合物の濃度は、例えば、一実施形態において、成分(a)及び(b)の重量に基づいて、1重量%~50重量%、別の実施形態において3重量%~30重量%、なおも別の実施形態において5重量%~20重量%を含む。
【0067】
必要に応じて、本発明のナイロン組成物は、ポリマーに従来添加される任意の1つ以上の任意選択の材料、成分、添加剤、又は薬剤と配合され得る。本発明のナイロン組成物において有用な成分(c)である任意選択の化合物としては、例えば、他の非変性EAO、酸化防止剤、強化充填剤、例えば、ガラス繊維、炭酸カルシウム、タルク、シリコン石灰石、マイカなど、難燃剤、紫外線添加剤、顔料、プロセス油、可塑剤、潤滑剤、離型剤など、及びこれらの混合物が挙げられ得る。これらの材料は、本発明のナイロン組成物が耐衝撃性改質剤と混合される前又は後のいずれかに、そのようなナイロン組成物と配合され得る。熟練した職人は、過度の実験をせずに、添加剤と添加量との好適な任意の組み合わせ、並びに配合の適時を容易に選択し得る。
【0068】
例えば、1つの好ましい実施形態において、充填剤は、ナイロン組成物に添加され得る。充填剤は、例えば、ガラス繊維、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、バライト、アルミナ、水和アルミナ、マイカ、粘土、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸塩、タルク、難燃剤、カーボンブラック又はグラファイト、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0069】
一般に、本発明において有用な充填剤は、部品の機械的強度及び剛性に寄与を提供し、部品の収縮を制御するために選択される。本発明のナイロン組成物における剛性/強靭性バランスを改善するために、高アスペクト比(high aspect ratio、HAR)を有するタルクが使用される。HARタルク充填剤は、低減された添加レベルで必要とされる剛性レベルを提供することができ、より低い配合密度に起因して重量低減に更に寄与する。より低い充填剤添加レベルはまた、本発明のナイロン組成物のより良好な流動を可能にする。
【0070】
タルク充填剤は、本発明の耐衝撃性改質剤と組み合わされた場合、その組み合わせは、標準的なTPO化合物と比較して、必要とされるより高い流動において、より薄くゲージを落とした部品に対してより高い剛性/強靭性バランスを提供し得る。更に、そのような高流動ナイロン組成物では、より複雑な形状が可能になる。車の外装部品の金属代替品は、本発明のナイロン組成物を使用する別の利点である。更に、本発明のナイロン組成物を使用する他の利点としては、軽量性及びより良好な製造効率が挙げられる。
【0071】
本組成物中の充填剤の濃度は、本組成物に基づいて最大50重量%であり得る。一般に、成分(c)である任意選択の成分の濃度は、本組成物中で使用される場合、例えば、一実施形態において0重量%~50重量%、別の実施形態において0.1重量%~40重量%、なおも別の実施形態において1重量%~35重量%、更に別の実施形態において1重量%~10重量%であり得る。
【0072】
耐衝撃性改質剤は、ナイロン組成物の耐衝撃性能を向上させ、ナイロン組成物に可撓性を追加し、ナイロン組成物中の充填剤容量を増加させるように設計される。耐衝撃性改質剤は、ナイロン組成物のための強靭化剤として有利に機能し、すなわち、POE-g-FFA/マレイミド構造は、ナイロン及びナイロン組成物などの様々なポリマー化合物の低温強靭性を増加させるための有効な耐衝撃性改質剤であり得る。一実施形態において、例えば、耐衝撃性改質剤は、(1)ナイロン化合物に高い強靭化効率を提供し、(2)ナイロン化合物の強靭性-流動性バランスを改善し得る。
【0073】
一般的な実施形態において、耐衝撃性改質剤としてSLFCを含有するナイロン組成物は、有利には、側鎖フラン部分及び側鎖マレイミド構造を有さない未変性の実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーを含有するナイロン組成物と比較して、RT耐衝撃強度において少なくとも10%の改善を示す。別の実施形態において、耐衝撃性改質剤は、RT耐衝撃強度において少なくとも15%の改善を示し、なおも別の実施形態において、耐衝撃性改質剤は、RT耐衝撃強度において少なくとも20%の改善を示す。
【0074】
上記の改善されたRT耐衝撃強度のために、ナイロン組成物は、より薄い壁を有し、より少ない組成物を使用する軽量物品/製品又は部品を製造するために使用され得る。本発明の組成物のいくつかの他の有利な特性及び/又は利点としては、例えば、より良好な高温耐性、より良好な屈曲、及びより良好な流動性が挙げられる。
【0075】
本発明のナイロン組成物を生成するための一般的な方法は、(a)少なくとも1つのポリアミドと、(b)SLFC耐衝撃性改質剤とを混合、組み合わせ、又はブレンドする工程を含む。一実施形態において、成分(a)として使用されるポリアミドは、ナイロン化合物又はナイロン組成物であり、成分(b)として使用される耐衝撃性改質剤は、少なくとも1つのマレイミド構造で架橋されたフラン部分を含む少なくとも1つの側鎖を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。
【0076】
好ましい実施形態において、ナイロン組成物を製造するプロセスは、(a)成分(a)及び(b)の重量に基づいて70重量%~98重量%のポリアミドと、(b)成分(a)及び(b)の重量に基づいて2重量%~30重量%の本発明の改質剤とをブレンドする工程を含み、改質剤は、少なくとも1つの側鎖フラン部分及び少なくとも1つの側鎖マレイミド構造を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。例えば、本プロセスは、成分(a)と(b)とを混合することを含み、成分の各々は、230℃~350℃の温度で溶融状態にあり、均一又は均質な混合物を形成する。混合分野の当業者によって使用される従来の混合器材が、上記の混合工程において使用される。
【0077】
本発明の強靭化ナイロン組成物の成分(a)及び(b)が上記のように完全かつ均一に混合されると、得られた溶融混合物を使用して、従来のプロセス及び器材を使用して物品/製品又は成形部品を形成することができる。例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形、又はブロー成形プロセスを使用して、本組成物から物品/製品又は成形部品を形成することができる。1つの好ましい実施形態において、物品/製品又は成形部品は、例えば、射出成形プロセス及び当該技術分野において周知の二軸スクリュー押出機などの押出器材を使用して生成及び加工される。上記のプロセスを使用して生成され得られた物品は、一実施形態において44KJ/m~75KJ/m、別の実施形態において40KJ/m~65KJ/m、なおも別の実施形態において50KJ/m~80KJ/mのRT耐衝撃強度(強靭性特性)を有する。
【0078】
本発明の強靭化ナイロン組成物を使用して、様々な用途のための物品/製品又は成形部品を形成することができる。例えば、ナイロン組成物から生成された強靭化物品/製品又は部品は、内装及び外装用途のための優れた低温耐衝撃性能を有する自動車用剛性物品又は部品などの自動車用途、向上された物理的特性を有するワイヤ及びケーブルコーティングなどの電気的用途、包装、玩具、又は家庭用器具などの成形物品用途、可撓性かつ透明である管などのプロファイル押出物品用途、可撓性かつ強靭である屋根膜、オートバイ構成要素、ボート構成要素、飛行機構成要素、ツール、スポーツ用品、安全ヘルメットなどの個人用保護用品、スポーツウェア、電子器材、機械ハウジング、旅行鞄、キャスターホイール、ギア、並びにベアリングを含むが、これらによって限定されない用途に使用することができる。
【0079】
一般に、本発明のナイロン組成物は、従来のコポリマーから作製された部品よりも高い耐衝撃強度(すなわち、増加した強靭性及び耐久性)を有する部品が必要とされる用途において使用される。1つの好ましい実施形態において、上記のような本発明のナイロン組成物から生成される物品/製品は、例えば、バンパーフェイシア、機器パネル、ボディパネル、及びエアバッグカバーなどの自動車用剛性物品又は部品を含む自動車用途において使用される。
【0080】
本発明のナイロン組成物はまた、自動車産業においても有用であるが、なぜなら、本組成物を使用することによって、Original Equipment Manufacturers(OEM)は、本組成物から作製された既存のプラスチック部品の重量を更に低減することができ、かつ/又は金属部品を置き換えることができるためである。
【0081】
より薄く、したがってより軽い部品を作り出すためには、ナイロン組成物がより薄い壁を通って流れることが必要である。本発明のナイロン組成物を使用すると、流動特性及び強靭性の両方の改善が得られる。そのような高い性能は、優れた耐衝撃特性を必要とする車の内装部品及び外装部品のゲージを落とすことを可能にする。
【実施例
【0082】
以下の本発明の実施例(本発明の実施例)及び比較例(比較例)(まとめて「実施例」とする)は、本発明の特徴を更に例示するために本明細書で提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして、明示的又は示唆的のいずれによっても解釈されることを意図していない。本発明の実施例はアラビア数字によって識別され、比較例はアルファベット文字によって表される。以下の実験で、本明細書に記載の組成物の実施形態の性能を分析した。別途明記されない限り、全ての部及びパーセンテージは、総重量に基づく重量による。
【0083】
実施例で使用する様々な原材料又は原料を以下のように表1で説明する:
【0084】
【表1】
【0085】
改質剤を生成するための一般的なプロセス
実施例で使用した耐衝撃性改質剤組成物(「改質剤1、2、3、及び4」と呼ぶ)の成分を表IIに記載する。POE-g-MAH1及びPOE-g-MAH2は、The Dow Chemical Companyに所有権があり、The Dow Chemical Companyから入手可能である無水マレイン酸(MAH)グラフト化ポリオレフィンエラストマー化合物である。
【0086】
【表2】
【0087】
表IIに記載した成分を使用する改質剤を、以下の一般的な手順に従って調製した。
【0088】
L/D=48及びD=27mmを有するLeistritz二軸スクリュー押出機、ZSE27を反応押出のために使用した。POE-g-MAH化合物(POE-g-MAH1又はPOE-g-MAH2)を、押出機のメインポートを通して押出機に供給した。樹脂が溶融した後、液体ポンプを使用してフルフリルアミンを押出機に供給した。二軸スクリュー押出機の速度を250rpmに設定した。押出機へのPOE-g-MAH樹脂の供給速度を10kg/時間に設定し、押出機のバレル温度を120℃~180℃の範囲に設定して、一実施形態において120℃~250℃、別の実施形態において150℃~250℃、なおも別の実施形態において180℃~250℃の溶融温度を得た。フルフリルアミンを、フルフリルアミンとPOE-g-MAH化合物のMAH基との間の反応を介してPOE-g-MAH(POE-g-MAH1又はPOE-g-MAH2)にグラフトした。押出後、押出機から得られたPOE-g-FFA生成物をペレット化して、ペレットを形成した。POE-g-FFAペレットをペレタイザーから収集し、次いで40℃で12時間、除湿システムにおいて乾燥させた。
【0089】
固体粉末形態の化合物1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミドを上記のPOE-g-FFAペレットと配合し、次いで得られた配合混合物をペレット化して、ペレット形態の本発明のSLFC耐衝撃性改質剤を形成した。改質剤を配合及びペレット化するためのプロセス条件は、上記と同じであった。上記のプロセスに従って生成した本発明の耐衝撃性改質剤は、可逆的架橋エラストマーを含む。
【0090】
上記のプロセスに従って生成された耐衝撃性改質剤を、下記のフーリエ変換赤外(Fourier-transform infrared、FTIR)分光法を使用して分析して、改質剤の化学構造を確認した。表IIIは、POE-g-MAH1を使用した耐衝撃性改質剤についてのFTIRデータを記載し、表IVは、POE-g-MAH2を使用した耐衝撃性改質剤についてのFTIRデータを記載する。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
試験方法及び測定
本組成物の試料及び上記の組成物から作製し、実施例で使用した試験検体を以下の試験方法に供した。
【0094】
FTIR特性評価
フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を実施例で使用して、試験試料の発光又は吸収のいずれかの赤外スペクトルを生成する。減衰全反射(attenuated total reflection、ATR)のサンプリング技法を、FTIR分光法と並行して使用し、これは、最終的に、追加の調製なしに、固体状態又は液体状態のいずれかで直接観察される試料を認定する。
【0095】
ATR-FTIR分析のための実施例において使用する機器は、Smart DuraSamplIR Diamond ATR(Perkin Elmerから入手可能)を有するPerkin Elmer Spectrum Spotlight200である。分析する試料を、ダイヤモンド/ZnSe結晶上に配置し、最適な接触を得るために適切な圧力を試料に適用し、次いでATR-FTIRスペクトルを、4,000cm-1と650cm-1との間で収集する。分析した試料の各々を8回走査した。次いで、FTIRスペクトルデータを分析する。
【0096】
耐衝撃性方法
CHARPY ISO179(「ISO」は「International Organization for Standardization」を表す)に記載されている手順を使用して、実施例の試料組成物の耐衝撃性能を試験した。ISO179は、定義された条件下でプラスチックのシャルピー耐衝撃強度を決定するための方法を特定している。この試験で使用する検体は、以下の寸法:長さ63.5mm×幅10mm×厚さ4mmを有する表Vの組成物から作製された平坦な試験検体である。
【0097】
CHARPY ISO179-1は、適切にサイズ決めされたハンマーアームを有する振り子システムを使用して、3点曲げ構成で衝撃を受けたときの破壊に対するプラスチックの耐性を決定するために使用される方法を定義している。試験は機器を用いず、検体を破壊するのに必要なエネルギーを決定するために使用される。異なる試験パラメータを、検体が作製されている材料の種類、並びに検体におけるノッチカットの種類に従って特定する。
【0098】
検体を水平に取り付け、検体の両端を固定せずに支持する。ハンマーアームを解放し、検体を貫通させる。使用する第1のハンマーアームで検体の破壊が生じない場合、第1のハンマーアームより重い後続の個々のハンマーアームを、検体の破損/破壊が生じるまで順次使用する。次いで、得られたエネルギー及び破壊の種類を記録する。RTでの耐衝撃性試験の前に、試験検体を最初に23℃及び50%RHで少なくとも40時間コンディショニングする。続いて、試験検体を、コンディショニング期間の直後に23℃で試験する。耐衝撃性試験を、4ジュールの振り子容量で行う。
【0099】
-30℃での耐衝撃性試験の場合、試験検体を最初に少なくとも40時間の第1のコンディショニング期間にわたって23℃及び50%RHでコンディショニングし、続いて、1時間を超える(湿度が制御されない)-30℃での別の第2のコンディショニング期間にわたってコンディショニングする。続いて、第2のコンディショニング期間の直後に、試験検体を-30℃で試験する。耐衝撃試験条件について、振り子容量は、4ジュールである。
【0100】
引張方法
実施例の試料組成物を、ISO527に記載されている手順を使用して、引張特性について試験した。試験に使用される試験検体は、以下の寸法:長さ165mm×幅10mm×厚さ4mmを有する組成物から作製された平坦な試験検体である。
【0101】
試験検体を、検体が破断するまでか、又は応力(負荷)若しくは歪み(伸び)が所定の値に達するまで、一定速度で検体の主縦軸に沿って伸ばす。この手順の間、検体によって支持された負荷及び伸びを測定する。Instron5566機器を使用して、試験検体の引張特性を以下のように測定する:(1)試験パラメータは、23.0℃±2℃の温度及び50%±10%RHであり、(2)負荷セルは、50mm/分の試験速度で10KNである。
【0102】
屈曲方法
プラスチック材料から作製した試験検体の応力と歪みとの間の関係(検体が曲げられているか、又は屈曲されている間)、すなわち、検体の屈曲特性は、ISO178に記載されている試験方法を用いて測定することができる。ISO178試験法を使用して、万能試験システムで「3点曲げ試験」を行うことによって、実施例の組成物から作製された屈曲特性試験検体を決定した。3点曲げ試験は、いずれかの端部で自由に支持されている長方形の検体の中点に力を適用する。使用した長方形の検体の寸法は、長さ80mm×10mm×厚さ4mmであった。適用された力を負荷セルによって測定し、得られた撓みを、システムのクロスヘッド変位又は直接歪み測定デバイスのいずれかによって測定する。撓み計を使用して、弾性率を測定した。使用した試験機械は、Instron5566機器であり、1mm/分~500mm/分の一定の試験速度に維持する。
【0103】
2つの支持体上に載置された長方形断面の試験検体を、支持体間の中間で検体に作用する負荷エッジによって偏向させる。試験検体を、破砕が検体の外側表面で生じるまでか、又は5%の最大歪みに達するまでか、最初にいずれかが生じるまで、このようにしてスパン中央で、一定速度で偏向させる。この手順の間、検体に適用された力、及び得られた検体のスパン中央での撓みを測定する。Instron5566機器を試験に使用し、試験を、以下のパラメータを使用して行う:23.0℃±2℃の温度及び50%±10%RH。更に、負荷セルを1KN、かつ1.3mm/分の試験速度で使用した。
【0104】
メルトインデックス方法
メルトインデックス(MI)を決定するために実施例において使用する試験方法は、押出可塑度計を使用して溶融熱可塑性樹脂の押出物のメルトフローレートを決定するためのプロセスを記載しているASTM-D1238である。
【0105】
特定の予熱時間の後、溶融樹脂を、温度、負荷、及びバレル内のピストン位置の所定の条件下で、特定の長さ及びオリフィス直径を有するダイを通して押出す。実施例で使用した機器は、Tinus Olsen MP600Nであった。使用したパラメータは、235℃の温度及び5kgの負荷重量であった。
【0106】
HDT方法
ISO75に記載されている試験方法を実施例で使用して、特定の最大外側繊維応力で3点曲げで負荷をかけたときに、試験検体の特定の量が撓む温度を決定した。上記の方法によって決定されるようなプラスチック検体の負荷の下の撓みの温度(3点負荷の下の屈曲応力)は、熱撓み温度(heat deflection temperature、HDT)と呼ばれる。HDTを使用して、検体の短期耐熱性を決定することができる。
【0107】
検体の試験において、試験検体を、検体の長手方向軸が支持体に対して垂直になるように支持体上に配置する。次いで、負荷アセンブリを加熱浴に配置し、試験検体に屈曲応力0.45MPa(圧力単位)を与えるように計算された力を、ISO-75の関連部分に特定されているように試験検体に適用する。検体に最初に力を適用してから5分後、撓み測定機器の読みをゼロに設定する。次いで、浴の温度を(120℃/時間±10℃/時間の均一速度で上昇させる。棒の初期撓みが標準撓みだけ増加した温度を記録する。
【0108】
本発明の実施例1~3及び比較例A~C
表Vに記載したナイロン組成物を調製し、試験した。
【0109】
【表5】
【0110】
ナイロンブレンド組成物を生成するための一般的な手順
表Vに記載したナイロン組成物を以下の一般的な手順を使用して調製した:ペレット形態のNylon6樹脂及び上記のように生成した改質剤ペレットを二軸スクリュー押出機で配合して、強靭化ナイロン組成物を形成した。押出機のバレル温度を220℃~250℃の範囲に設定した。押出機のスクリュー速度を250rpmに設定した。押出機の出力速度を10kg/時間に設定した。
【0111】
本発明の実施例4及び比較例D
表Vに記載したナイロン組成物を使用して、ナイロン組成物の性能を試験するために、表VIに記載した成形検体を調製した(本発明の実施例4及び比較例D)。表Vに記載したPA6-YH800化合物のペレットを105℃で4時間乾燥させた後、ペレットを射出成形に使用した。表Vに記載したPA6-YH800系化合物を使用して、成形試験検体を製作するためにFANUC ROBOSHOT S-2000Ib射出成形機械を使用した。以下の成形プロセス条件を使用して、表VIに記載した成形検体の試験結果を得た:バレル温度を50℃/250℃/260℃/260℃/260℃/260℃に設定し、成形温度は、60℃であり、射出速度は、30mm/秒であり、射出圧力は、25MPaであり、注入時間は、1.2秒であり、保持圧力は、20MPaであり、冷却時間は、10秒であった。試験方法及び測定の項の上記の試験方法を使用して、成形検体を試験した。
【0112】
表VIは、比較例D及び本発明の実施例4を含む成形検体の一般的な機械的性能を記載する。RT及び-30℃耐衝撃強度を、CHARPY ISO179を使用して試験した。ISO178を使用して屈曲性能を試験し、ASTM-D1238を使用してメルトインデックスを試験した。引張試験をISO527に従って行い、HDTを上記のようにISO75に従って求めた。表VIは、本発明の実施例4(本発明の実施例1の組成物から作製)の成形検体が、比較例D(比較例Aの組成物から作製)の比較成形検体よりも、著しくより高い耐衝撃強度(RT及び-30℃の両方で)、並びに降伏点でより高い屈曲強度及びより高いHDTを示すことを示す。表VIの結果はまた、降伏点での引張強度が本発明の実施例4及び比較例Dの両方の成形検体について同様のレベルで維持されることを示す。
【0113】
表VIの結果はまた、本発明の実施例4の成形検体が、比較例Dの成形検体よりも良好な全体的な機械的特性及び耐熱特性を有することを示す。加えて、表VIに記載したメルトインデックスの結果はまた、本発明の実施例1の組成物(本発明の実施例4の試験成形検体を作製するために使用される)が比較例A(比較例Dの試験成形検体を作製するために使用される)の組成物よりも良好な流動性を有することを示す。したがって、表VIの結果は、DA特徴を有するSLFCが、POE-g-MAHから作製された従来の耐衝撃性改質剤よりも高効率の耐衝撃性改質剤であることを支持する。
【0114】
【表6】

表VIの注釈:本組成物から作製されたペレットのMIを測定したが、成形検体のMIは測定しなかった。
【0115】
本発明の実施例5、並びに比較例E及びF
PA6-YH800化合物及びNylon6化合物を耐衝撃性改質剤と配合して、表Vに記載したナイロン組成物を形成し、配合した材料を使用して、ナイロン組成物の性能を試験するための試料成形検体を調製した。本発明の実施例4及び比較例Dの上記と同じ成形プロセスを使用して、成形検体を成形し、試験方法及び測定の項の上記の試験方法を使用して、成形検体を試験した。成形検体の試験結果を表VIIに記載する。
【0116】
表VIIは、両方の比較例E及びF、並びに本発明の実施例5を含むPA6-YH800系ナイロン組成物の一般的な機械的性能を記載する。CHARPY ISO179を使用してRT及び-20℃耐衝撃強度を試験し、ISO178を使用して屈曲性能を試験した。メルトインデックスをASTM-D1238に従って試験し、引張試験及びHDTを上記のようにそれぞれISO527及びISO75に従って行った。表VIIは、本発明の実施例5(本発明の実施例2の組成物から作製)の試験成形検体が、比較例E(比較例Bの組成物から作製)の試験成形検体よりも著しくより高い耐衝撃強度(RT及び-20℃の両方で)を示し、これは、本発明の実施例2の成形検体が、比較例Eの成形検体よりも良好な機械的特性を有することを支持する。一方、メルトインデックスの結果はまた、本発明の実施例5の成形検体が、比較例Eの成形検体よりもわずかに良好な流動性を有することを示す。
【0117】
【表7】

表VIIの注釈:本組成物から作製されたペレットのMIを測定したが、成形検体のMIは測定しなかった。
【0118】
上記の全ての結果に基づいて、本発明の実施例1~5で使用した改質剤は、比較例A~Fで使用した改質剤と比較して、著しく良好な強靭化効率を有する。したがって、より良好な流動を有する本発明のより強靭なナイロン組成物を、例えば、自動車用途で使用するために自動車産業に提供することができる。
【0119】
他の実施形態
本発明の強靭化ナイロン組成物の一実施形態は、SLFCを作製するために使用されるベースポリオレフィンエラストマーのためのエチレン-オクテン高性能低密度ポリオレフィンエラストマーの使用を含む。
【0120】
別の実施形態において、強靭化ナイロン組成物を作製するための本発明の方法は、(A)少なくとも1つのフラン化合物を少なくとも1つのMAHグラフト化ポリオレフィンエラストマー上にグラフトして、フラン部分グラフト化ポリオレフィンエラストマー(例えば、POE-g-FFA)を形成する工程と、(B)工程(A)から得られたフラン部分グラフト化ポリオレフィンエラストマーを少なくとも1つのマレイミド化合物と配合して、SLFC改質剤を形成する工程と、次いで(C)成分(b)であるSLFC改質剤を、成分(a)である少なくとも1つのポリアミドと混合する工程と、を含む。好ましい実施形態において、成分(b)である少なくとも1つの改質剤は、少なくとも1つの側鎖フラン部分及び少なくとも1つの側鎖マレイミド構造を有する実質的に線状の官能化エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。
【0121】
他の実施形態において、ナイロン組成物を製造する方法において使用される成分の濃度は、例えば、成分(a)及び(b)の重量に基づいて、70重量%~98重量%の成分(a)である少なくとも1つのポリアミド、及び2重量%~30重量%の成分(b)である少なくとも1つの改質剤を含む。
【0122】
なおも他の実施形態において、本発明のSLFC耐衝撃性改質剤は、(bi)少なくとも1つのMAHですり合わされたポリオレフィンエラストマー化合物と、(bii)少なくとも1つのフランですり合わされたポリオレフィンエラストマー化合物と、(biii)少なくとも1つのマレイミド化合物と、の混合物を含み、ナイロン組成物を製造する方法は、上記のSLFC改質剤を使用する。
【0123】
更に別の実施形態において、本発明のナイロン組成物を製造する方法は、(A)(bi)少なくとも1つのMAHですり合わされたポリオレフィンエラストマー化合物(例えば、POE-g-MAH)を、(bii)少なくとも1つのフラン化合物とグラフトして、フラン部分グラフト化ポリオレフィンエラストマー(例えば、POE-g-FFA)を形成する工程と、次いで、(B)工程(A)から得られたフラン部分グラフト化ポリオレフィンエラストマーを、(biii)少なくとも1つのマレイミド化合物と、少なくとも1つの側鎖フラン部分がマレイミド化合物の少なくとも1つのマレイミド構造と架橋して、SLFC改質剤を形成するように配合する工程と、次いで、(C)SLFC改質剤をポリアミドとブレンドする工程と、を含む。
【0124】
更になおも他の実施形態において、本発明のSLFC改質剤を生成する方法は、(1)フラン部分グラフト化ポリオレフィンエラストマー(例えば、POE-g-FFA)及び架橋剤ビスマレイミド(BMI)化合物をエチレンコポリマーと配合する工程、又は(2)フラン部分グラフト化ポリオレフィンエラストマー(例えば、POE-g-FFA)及びBMIをエチレンコポリマー中に浸漬する工程のいずれかの代替的な工程を含み得る。
【国際調査報告】