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特表2024-511264対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023548325
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 FI2022050100
(87)【国際公開番号】W WO2022175597
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】20215175
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522490985
【氏名又は名称】ナイチンゲール ヘルス オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ユルクネン ヘリ
(72)【発明者】
【氏名】ウルツ ピーター
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA44
2G045DA77
2G045FA36
2G045JA06
(57)【要約】
対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法が開示される。対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法が開示される。本方法は、対象から得られた生物学的試料において、27のバイオマーカー(アルブミン、総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、ドコサヘキサエン酸、ω-3脂肪酸、高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、酢酸塩等)のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、を含んでもよく、上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象者が消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生物学的試料において、前記生物学的試料の以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・クレアチニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・イソロイシン、
・フェニルアラニン、
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと,
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示し、
前記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルであり、
前記消化器系疾患は、胆嚢の障害である、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記生物学的試料において、複数の前記バイオマーカー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のバイオマーカーの定量値を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、ドコサヘキサエン酸、総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、ω-3脂肪酸、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、ω-6脂肪酸、脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度、
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記消化器系疾患は、胆石症(K80)、胆嚢炎(K81)、及び/又は胆嚢のその他の疾患(K82)を含むか、又はそれらである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記少なくとも1つのバイオマーカー又は前記複数の前記バイオマーカーの前記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクを使用して、前記対象が前記消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクは、少なくとも1つのさらなる尺度、例えば、前記対象の特徴に基づいて計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の前記特徴は、年齢、身長、体重、ボディマス指数、人種若しくは民族、喫煙、及び/又は消化器系疾患の家族歴、又は年齢、性別、喫煙状態、アルコールの使用、ボディマス指数(BMI)、身体活動、低繊維食又は高脂肪食等の食事要因、ストレス、制酸薬、鉄剤、強い鎮痛剤又は便秘剤等の特定の医薬品の使用、遺伝的リスク、及び/又は消化器系疾患及び/又は他の併存疾患の既往歴及び/又は家族歴のうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・クレアチニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・イソロイシン、
・フェニルアラニン、
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消化器系疾患には、消化管や膵臓、胆嚢、食道等の消化器官に関する疾患が含まれる。一般的な消化器系疾患には、例えば、胃食道逆流症、クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患等が含まれる。消化器系の疾患や症状には、急性のものもあれば、慢性的でその影響が長く続くものもあり、症状は軽いものから重いものまで様々である。これらの疾患は、生活の質の低下、合併症、死亡率の原因であり、莫大な医療費の原因となっている。
【0003】
消化器系の重要性と日常生活への直接的な影響から、これらの疾患や関連症状が将来発症するリスクの高い個人を同定することは、予防及び早期治療のアプローチにとって重要であると考えられる。消化器系の悪性新生物、食道、胃及び十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び大腸炎、腸の疾患、腹膜及び後腹膜の疾患、胆嚢、胆道及び膵臓の障害等、広範な消化器系疾患の発症リスクが高いかどうかを予測するには、様々な血液バイオマーカーが有用である。これらの障害の発症を予測するバイオマーカーがあれば、より有効なスクリーニングと、より標的を絞った早期予防をできるようにするのに役立つ。このようなバイオマーカーは、生物学的試料から、例えば、血液試料又は関連する生体液から測定されてもよい。
【発明の概要】
【0004】
対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法が開示される。本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下のバイオマーカー:
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・クレアチニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・イソロイシン、
・フェニルアラニン、
・糖タンパク質アセチル、
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象者が消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付の図面は、実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態を図示する。
【0006】
図1a】27の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、バイオマーカー濃度が絶対濃度及びバイオマーカー濃度の五分位(quintiles)で分析される場合の任意の消化器系疾患(C15-C28,K20-K67及び/又はK80-K87内の任意のICD-10診断を組み合わせたエンドポイントとして定義され、本明細書では「任意の消化器系疾患」と呼ばれる)の将来の発症との関係を示す。結果は、UK Biobankからの約115,000人の概ね健康な個体からの血漿試料に基づく。
図1b】27の血液バイオマーカー濃度の最低、中、及び最高の五分位についての追跡調査中の「消化器系疾患」の累積リスクを示す。
図2a】27の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)7つの異なるカテゴリーの消化器系疾患の将来の発症との関係をヒートマップの形態で示す。結果は、7つの異なる消化器系疾患のサブグループの全てが、概ね健康なヒト由来の血漿試料の核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定された27のバイオマーカーと非常に類似した関連性を有することを実証する。
図2b】ICD-10サブチャプターによって定義される7つの異なるカテゴリーの消化器系の疾患とのバイオマーカーの関連性の一貫性を、「任意の消化器系疾患」との対応するバイオマーカーの関連性の方向と比較して示す。
図3a】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の特定の消化器系の疾患の将来の発症との関係をヒートマップの形態で示す。結果は、3桁のICD-10コードによって定義される特定の消化器系疾患は、全て、概ね健康なヒト由来の血漿試料のNMR分光法によって測定される広範なバイオマーカーパネルと非常に類似した関連性を有することを実証する。
図3b】特定の消化器系の疾患(3桁のICD-10診断によって定義される)とのバイオマーカーの関連性の一貫性を、「任意の消化器系疾患」との関連性の方向と比較して示す。
図4a】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)7つの異なる消化器系疾患カテゴリーの将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図4b】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)7つの異なる消化器系疾患カテゴリーの将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図4c】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)7つの異なる消化器系疾患カテゴリーの将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図4d】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)7つの異なる消化器系疾患カテゴリーの将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5a】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5b】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5c】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5d】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5e】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5f】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5g】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5h】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5i】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5j】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5k】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5l】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5m】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5n】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5o】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5p】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図5q】ベースラインバイオマーカーレベルと、(3桁のICD-10診断によって定義される)34の異なる消化器系疾患の将来の発症との関係を、偶発的な疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
図6】27の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、任意の消化器系疾患による将来の入院及び/又は死亡のリスクと比較した、任意の消化器系疾患による死亡のリスクとの関係を示す。結果は、バイオマーカーが入院よりも致死的事象のより強力な予測因子であることが多いことを実証する。
図7】マルチバイオマーカースコアと、「任意の消化器系疾患」のリスクとの関係の一例を示す。マルチバイオマーカースコアの選択された例は、個々のバイオマーカーと比較して、マルチバイオマーカースコアによって達成される改善された予測を例示するために示される.
図8a】最初に健康なヒトの間で消化器官の悪性新生物を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
図8b】消化器官の悪性新生物を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
図9a】最初に健康なヒトの間で食道、胃、十二指腸の疾患を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
図9b】食道、胃、十二指腸の疾患を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
図10a】最初に健康なヒトの間でヘルニアを発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
図10b】ヘルニアを発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
図11a】最初に健康なヒトの間で非感染性腸炎及び大腸炎を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
図11b】非感染性腸炎及び大腸炎を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
図12a】最初に健康なヒトの間でその他の腸の病気を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
図12b】その他の腸の病気を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
図13a】最初に健康なヒトの間で腹膜と後腹膜の病気を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
図13b】腹膜と後腹膜の病気を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
図14a】最初に健康なヒトの間で胆嚢、胆道及び膵臓の障害を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
図14b】胆嚢、胆道及び膵臓の障害を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
対象が消化器系の疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法が開示される。
【0008】
本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下のバイオマーカー:
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・クレアチニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・イソロイシン、
・フェニルアラニン、
・糖タンパク質アセチル、
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象者が上記消化器系の疾患を発症するリスクが高いことを示す。
【0009】
様々なバイオマーカーは、個々のヒトが広範囲の消化器系疾患を発症するリスクが高いかどうかを予測するために有用なことがある。このようなバイオマーカーは、生物学的試料から、例えば、血液試料又は関連する生体液から測定されてもよい。
【0010】
消化器系疾患を予測するバイオマーカーは、より有効なスクリーニングと、より標的を絞った予防的処置をできるようにするのに役立ち得る。
【0011】
一実施形態では、本方法は、アルブミンの定量値を決定するステップを含む。
【0012】
一実施形態では、本方法は、糖タンパク質アセチルの定量値を決定するステップを含む。
【0013】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0014】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対するリノール酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0015】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0016】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0017】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0018】
一実施形態では、本方法は、脂肪酸不飽和度の定量値を決定するステップを含む。
【0019】
一実施形態では、本方法は、ドコサヘキサエン酸の定量値を決定するステップを含む。
【0020】
一実施形態では、本方法は、リノール酸の定量値を決定するステップを含む。
【0021】
一実施形態では、本方法は、一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の定量値を決定するステップを含む。
【0022】
一実施形態では、本方法は、ω-3脂肪酸の定量値を決定するステップを含む。
【0023】
一実施形態では、本方法は、ω-6脂肪酸の定量値を決定するステップを含む。
【0024】
一実施形態では、本方法は、高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリドの定量値を決定するステップを含む。
【0025】
一実施形態では、本方法は、中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリドの定量値を決定するステップを含む。
【0026】
一実施形態では、本方法は、低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリドの定量値を決定するステップを含む。
【0027】
一実施形態では、本方法は、超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリドの定量値を決定するステップを含む。
【0028】
一実施形態では、本方法は、高密度リポタンパク質(HDL)粒径の定量値を決定するステップを含む。
【0029】
一実施形態では、本方法は、低密度リポタンパク質(LDL)粒径の定量値を決定するステップを含む。
【0030】
一実施形態では、本方法は、超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径の定量値を決定するステップを含む。
【0031】
一実施形態では、本方法は、酢酸塩の定量値を決定することを含む。
【0032】
一実施形態では、本方法は、クエン酸塩の定量値を決定するステップを含む。
【0033】
一実施形態では、本方法は、クレアチニンの定量値を決定するステップを含む。
【0034】
一実施形態では、本方法は、グルタミンの定量値を決定するステップを含む。
【0035】
一実施形態では、本方法は、グリシンの定量値を決定するステップを含む。
【0036】
一実施形態では、本方法は、イソロイシンの定量値を決定するステップを含む。
【0037】
一実施形態では、本方法は、フェニルアラニンの定量値を決定するステップを含む。
【0038】
本明細書に記載される代謝バイオマーカーは、有意に異なることが見出されており、すなわち、それらの定量値(量及び/又は濃度等)は、後に消化器系の疾患を発症した対象に関して、有意に高いこと、又は低いことが見出されている。バイオマーカーは、血液、血清もしくは血漿、乾燥血液スポット、又は他の適切な生物学的試料から検出及び定量化されてもよく、単独で、又は他のバイオマーカーと組み合わせて、消化器系疾患を発症するリスクを決定するために使用されてもよい。
【0039】
さらに、バイオマーカーは、年齢、性別、喫煙状態、アルコールの使用、ボディマス指数(BMI)、身体活動、低繊維食又は高脂肪食等の食事要因、ストレス、制酸薬、鉄剤、強力な鎮痛剤又は便秘剤等の特定の薬の使用、遺伝的リスク、及び/又は消化器系疾患及び/又は他の併存疾患の既往歴及び/又は家族歴のように、現在スクリーニング及びリスク予測に使用さ得る確立されたリスク因子と組み合わせても、及び/又は、リスク因子を考慮した場合でも、消化器系疾患のリスクを有する対象を同定する可能性を著しく改善することができる。本明細書に記載されるバイオマーカーは、単独で、又はリスクスコア(マルチバイオマーカースコア等)、ハザード比、オッズ比として、及び/又は予測される絶対的若しくは相対リスクとして、あるいは他のリスク因子及び試験と組み合わせて、予測を改善してもよいし、さらには他の試験又は測定の必要性に取って代わってもよい。これは、他のリスク因子からの予測情報を補完することによって、あるいは全血球数(CBC)及び/又は白血球数の血液検査、C反応性タンパク質(CRP)等の炎症性タンパク質バイオマーカーの血液検査、糞便カルプロテクチンの測定、及び/又は検査(例えば、結腸内視鏡検査、食道胃十二指腸内視鏡検査、カプセル内視鏡検査、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)及び/又は内視鏡超音波検査等)他の分析の必要性を置き換えることによって、予測精度を改善することを含んでもよい。したがって、本明細書に記載される1つ以上の実施形態によるバイオマーカー又はリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対的若しくは相対リスクによって、他のリスク因子尺度がそれほど実現可能でない状態においても、消化器系の疾患の将来の発症のリスクを効率的に評価することが可能になり得る。
【0040】
一実施形態では、本方法は、対象が消化器系疾患により死亡するリスクがあるかどうかを決定するための方法である。換言すれば、本方法は、対象が消化器系疾患の致死的形態に罹患するリスクがあるかどうかを決定するための方法であってもよい。
【0041】
一実施形態では、本方法は、対象が、(これから)3年以内に消化器系疾患を発症するか、あるいは消化器系疾患で死亡するリスクがあるかどうかを決定するための方法である。
【0042】
本方法は、生物学的試料において、複数のバイオマーカー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のバイオマーカーの定量値を決定するステップを含んでもよい。例えば、複数のバイオマーカーは、バイオマーカーのうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26又は27(すなわち、バイオマーカーの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26)又は全てを含んでもよい。したがって、「複数のバイオマーカー」という用語は、本明細書内では、任意の数(1つ超)のバイオマーカーを意味するものとして理解されてもよい。したがって、「複数のバイオマーカー」という用語は、本明細書に記載されるバイオマーカーの任意の数(1つ超)及び/又は組合せ若しくはサブセットを意味するものとして理解されてもよい。複数のバイオマーカーを決定することにより、対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかの予測の精度を高めてもよい。一般に、バイオマーカーの数が多いほど、方法は、より正確又は予測的になり得る。しかしながら、本明細書に記載される単一のバイオマーカーであっても、対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定することが可能になるか、又はその決定を支援し得る。複数のバイオマーカーは、同じ生物学的試料又は別々の生物学的試料から、同じ分析方法又は異なる分析方法を使用して測定されてもよい。一実施形態では、複数のバイオマーカーは、複数のバイオマーカーのパネルであってもよい。
【0043】
本明細書の文脈において、「バイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する」という文言は、当業者であれば、1つ又は複数のバイオマーカーの1つ又は複数の定量値を、対照試料又は対照値と、個別に又は複数のバイオマーカー(例えば、複数のバイオマーカーの定量値からリスクスコアを算出する場合)として、例えば、単一の(個々の)バイオマーカーの定量値が決定されるか、複数のバイオマーカーの定量値が決定されるかに応じて、比較することを意味するものと理解するであろう。
【0044】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下のバイオマーカー:
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・クレアチニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・イソロイシン、
・フェニルアラニン、
・糖タンパク質アセチル、
の定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す。
【0045】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである。本方法は、本明細書に記載される他のバイオマーカーのうちの少なくとも1つの定量値を決定するステップをさらに含んでもよい。
【0046】
少なくとも1つのバイオマーカーが糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである実施形態において、消化器系の疾患は、食道、胃及び十二指腸の疾患(K20-K31)、ヘルニア(K40-K46)、非感染性腸炎及び大腸炎(K50-K52)、腸のその他の疾患(K55-K64)、腹膜及び後腹膜の疾患(K65-K68)、及び/又は胆嚢、胆道及び膵臓の障害(K80-K87)を含んでも、又はそれらであってもよい。このような実施形態において、消化器系の疾患は、食道の悪性新生物(C15)、胃の悪性新生物(C16)、直腸S状結腸移行部の悪性新生物(C19)、膵臓の悪性新生物(C25)、食道炎(K20)、胃食道逆流症(K21)、食道のその他の疾患(K22)、胃潰瘍(K25)、十二指腸潰瘍(K26)、胃炎及び/又は十二指腸炎(K29)、胃及び十二指腸のその他の疾患(K31)、臍ヘルニア(K42)、腹壁ヘルニア(K43)、横隔膜ヘルニア(K44)、クローン病[限局性腸炎](K50)、潰瘍性大腸炎(K51)、その他及び特定不能の非感染性胃腸炎及び/又は大腸炎(K52)、腸の血行障害(K55)、麻痺性イレウス及び/又は腸閉塞、ヘルニアを伴わない(K56)、腸の憩室性疾患(K57)、過敏性腸症候群(K58)、肛門部及び/又は直腸部の裂(溝)及び/又は瘻(孔)(K60)、肛門部及び/又は直腸部の膿瘍(K61)、肛門部及び/又は直腸部のその他の疾患(K62)、腸のその他の疾患(K63)、腹膜炎(K65)、腹膜のその他の障害(K66)、胆石症(K80)、胆嚢炎(K81)、胆嚢のその他の疾患(K82)、胆道のその他の疾患(K83)、急性膵炎(K85)、及び/又はその他の膵疾患(K86)を含んでも、又はそれらであってもよい。
【0047】
対象は、ヒトであってもよい。ヒトは、健康であってもよいし、あるいは既存の疾患、例えば、既存の消化器系疾患を有してもよい。具体的には、ヒトは、既存の形態の消化器系疾患を有してもよく、より重篤な形態の上記疾患、及び/又は1つ以上の他の消化器系疾患を発症するリスクを決定及び/又は計算してもよい。対象は、追加又は代替として、哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、又はげっ歯類等の動物であってもよい。
【0048】
本明細書の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、疾患もしくは状態又はその罹患もしくは発症のリスクと関連することが見出され得るバイオマーカー、例えば、化学マーカー又は分子マーカーを意味してもよい。バイオマーカーは、臨床設定において特定の有効性を有するものとして統計的に完全に検証されるバイオマーカーを必ずしも意味しない。バイオマーカーは、代謝産物、化合物、脂質、タンパク質、部分、官能基、組成物、2つ以上の代謝産物及び/又は化合物の組み合わせ、それらの(測定可能な又は測定された)量、それらから導出される比率又は他の値、あるいは原則として、疾患もしくは状態又はそれを有するもしくは発症するリスクと関連して見出され得る化学的及び/又は生物学的成分を反映する任意の測定値であってもよい。バイオマーカー及びその任意の組合せは、任意選択でさらなる分析及び/又は測定と組み合わせて、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、他の腸の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の障害等の消化器系の疾患を発症するリスクを示す生物学的プロセスを測定するために使用してもよい。
【0049】
障害又は疾患とは、消化器系疾患のカテゴリー、又はこのカテゴリーにおける特定の障害を意味することがある。本明細書の文脈において、「消化器系疾患」という用語は、胃腸管及び/又は膵臓、胆嚢及び/又は食道等の他の消化器官を含む消化器系に影響を及ぼす疾患、障害及び/又は状態を意味するものとして理解されてもよい。障害又は疾患は、急性又は時折であっても、慢性状態であってもよく、慢性状態とは、本明細書の文脈において、その影響が持続的なもの、さもなければ長期間続くもの、及び/又は時間の経過とともに発症する「疾患」として理解されてもよい。消化器系疾患の徴候及び症状は、対象の年齢及び/又は全体的な健康等の因子に応じて、軽度から重度まで、あるいは身体障碍を伴うものまで変動してもよい。
【0050】
バイオマーカーの関連性は、異なる消化器系疾患について同様であってもよい。したがって、同じ個々のバイオマーカー及びバイオマーカーの組合せを拡張して、特定の消化器系疾患のリスクも予測することができる。このような特定の消化器系の疾患の例には、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、その他の腸の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の障害が含まれる。
【0051】
本明細書に記載される消化器系疾患は、以下のように分類されてもよい。「ICD-10」とは、疾病及び関連保健問題の国際統計分類の第10回改訂(ICD-10)(WHOによる2019年版)を意味するものとして理解されてもよい。ICD-9又はICD-11等、ICD-10以外の疾患分類システムによって分類又は診断される同様の疾患も適用してもよい。
【0052】
「任意の消化器系疾患」という用語は、任意の消化器系の疾患、障害又は状態を意味するものとして理解されてもよい。任意の消化器系の疾患は、ICD-10診断C15-C28、K20-K67及び/又はK80-K87の任意の偶発的発生を意味するものとして理解されてもよい。
【0053】
消化器系疾患サブグループは、消化器系疾患のICD-10サブチャプター診断(C15-C26、K20-K31、K40-K46、K50-K52、K55-K64、65-K68、K80-K87)内に分類される疾患及び/又は状態を意味するものとして理解されてもよい。
【0054】
特定の消化器系疾患とは、消化器系疾患の3桁のICD-10診断(C15、C16、C18、C19、C25、K20、K21、K22、K25、K26、K29、K31、K42、K43、K44、K50、K51、K52、K55、K56、K57、K58、K60、K61、K62、K63、K65、K66、K80、K81、K82、K83、K85、K86)内に分類される疾患を意味するものと理解されてもよい。
【0055】
一実施形態では、消化器系疾患は、本明細書に記載される1つ以上のICD-10サブチャプターによって定義されるような、消化器系疾患のサブグループである。
【0056】
一実施形態では、消化器系疾患は、3桁のICD-10診断コードによって定義されるような特定の疾患である。
【0057】
一実施形態では、消化器系疾患は、以下の消化器系疾患サブグループのうちの1つの疾患である。
・C15-C26:消化器の悪性新生物
・K40-K46:ヘルニア
・K50-K52:非感染性腸炎及び大腸炎
・K55-K64:腸のその他の疾患
・K65-K68:腹膜及び後腹膜の疾患
・K80-K87:胆嚢、胆道及び膵臓の障害
【0058】
一実施形態では、消化器系疾患は、以下の3桁のICD10診断のうちの少なくとも1つである。
・C15:食道の悪性新生物
・C16:胃の悪性新生物
・C18:結腸の悪性新生物
・C19:直腸S状結腸移行部の悪性新生物
・C25:膵臓の悪性新生物
・K20:食道炎
・K21:胃食道逆流症
・K22:食道のその他の疾患
・K25:胃潰瘍
・K26:十二指腸潰瘍
・K29:胃炎及び/又は十二指腸炎
・K31:胃及び十二指腸のその他の疾患
・K42:臍ヘルニア
・K43:腹壁ヘルニア
・K44:横隔膜ヘルニア
・K50:クローン病[限局性腸炎]
・K51:潰瘍性大腸炎
・K52:その他の非感染性胃腸炎及び非感染性大腸炎
・K55:腸の血行障害
・K56:麻痺性イレウス及び腸閉塞、ヘルニアを伴わないもの
・K57:腸の憩室性疾患
・K58:過敏性腸症候群
・K60:肛門部及び直腸部の裂(溝)及び瘻(孔)
・K61:肛門部及び直腸部の膿瘍
・K62:肛門及び直腸のその他の疾患
・K63:腸のその他の疾患
・K65:腹膜炎
・K66:腹膜のその他の障害
・K80:胆石症
・K81:胆嚢炎
・K82:胆嚢のその他の疾患
・K83:胆道のその他の疾患
・K85:急性膵炎
・K86:その他の膵疾患
【0059】
一実施形態では、消化器系疾患は、上に列挙したICD-10コードによって示される疾患等の消化器系の疾患を含んでもよいし、あるいはそれによる死亡であってもよい。
【0060】
一実施形態では、消化器系疾患は、消化器の悪性新生物(C15-C26)、食道、胃及び十二指腸の疾患(K20-K31)、ヘルニア(K40-K46)、非感染性腸炎及び大腸炎(K50-K52)、腸のその他の疾患(K55-K64)、腹膜及び後腹膜の疾患(K65-K68)、及び/又は胆嚢、胆道及び膵臓の障害(K80-K87)を含んでもよいし、あるいはそれらであってもよい。
【0061】
一実施形態では、消化器系疾患は、食道の悪性新生物(C15)、胃の悪性新生物(C16)、結腸の悪性新生物(C18)、直腸S状結腸移行部の悪性新生物(C19)、膵臓の悪性新生物(C25)、食道炎(K20)、胃食道逆流症(K21)、食道のその他の疾患(K22)、胃潰瘍(K25)、十二指腸潰瘍(K26)、胃炎及び/又は十二指腸炎(K29)、胃及び十二指腸のその他の疾患(K31)、臍ヘルニア(K42)、腹壁ヘルニア(K43)、横隔膜ヘルニア(K44)、クローン病[限局性腸炎](K50)、潰瘍性大腸炎(K51)、その他の非感染性胃腸炎及び大腸炎(K52)、腸の血行障害(K55)、麻痺性イレウス及び腸閉塞、ヘルニアを伴わないもの(K56)、腸の憩室性疾患(K57)、過敏性腸症候群(K58)、肛門部及び/又は直腸部の裂(溝)及び/又は瘻(孔)(K60)、肛門部及び/又は直腸部の膿瘍(K61)、肛門及び直腸のその他の疾患(K62)、腸のその他の疾患(K63)、腹膜炎(K65)、腹膜のその他の障害(K66)、胆石症(K80)、胆嚢炎(K81)、胆嚢のその他の疾患(K82)、胆道のその他の疾患(K83)、急性膵炎(K85)、及び/又はその他の膵疾患(K86)を含んでもよく、あるいはそれらであってもよい。
【0062】
一実施形態では、消化器系疾患は、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、他の腸の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の障害を含んでもよく、あるいはそれらであってもよい。
【0063】
一実施形態では、消化器系疾患は、食道の悪性新生物、胃の悪性新生物、結腸の悪性新生物、直腸S状結腸移行部の悪性新生物、膵臓の悪性新生物、食道炎、胃食道逆流症、食道のその他の疾患、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎及び十二指腸炎、胃及び十二指腸のその他の疾患、臍ヘルニア、腹壁ヘルニア、横隔膜ヘルニア、クローン病(限局性腸炎としても周知)、潰瘍性大腸炎、その他の非感染性胃腸炎及び大腸炎、腸の血行障害、麻痺性イレウス及び腸閉塞、ヘルニアを伴わないもの、腸の憩室性疾患、過敏性腸症候群、肛門部及び直腸部の裂(溝)及び瘻(孔)、肛門部及び直腸部の膿瘍、肛門及び直腸のその他の疾患、腸のその他の疾患、腹膜炎、腹膜のその他の障害、胆石症、胆嚢炎、胆嚢のその他の疾患、胆道のその他の疾患、急性膵炎、及び/又はその他の膵疾患を含んでもよく、あるいはそれらであってもよい。
【0064】
本方法は、少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、対象が消化器系の疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するステップをさらに含んでもよい。
【0065】
リスクスコア、ハザード比、及び/又は予測される絶対リスク及び/又は相対リスクの増加又は減少は、対象が消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0066】
リスクスコア、ハザード比、オッズ比及び/又は予測される絶対リスク又は相対リスクは、本明細書に記載されるバイオマーカーの任意の複数、組み合わせ又はサブセットに基づいて計算されてもよい。
【0067】
リスクスコア、ハザード比、オッズ比及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクは、例えば、以下の実施例に示すように計算されてもよい。例えば、適切な方法を用いて、例えば、NMR分光法を用いて測定された複数のバイオマーカーは、回帰アルゴリズム及び多変量分析を用いて、及び/又は機械学習分析を用いて組み合わせてもよい。回帰分析又は機械学習の前に、バイオマーカー中の任意の欠落値を、データセットに対する各バイオマーカーの平均値で補完してもよい。疾患又は状態の発症と最も関連があると考えられ得るいくつかのバイオマーカー、例えば、5つを、予測モデルで使用するために選択してもよい。他のモデリングアプローチを使用して、個々のバイオマーカーの組合せ又はサブセット、すなわち、複数のバイオマーカーに基づいて、リスクスコア及び/又はハザード比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを計算してもよい。
【0068】
リスクスコアは、例えば、個々のバイオマーカー、すなわち、複数のバイオマーカーの加重和として計算してもよい。加重和は、例えば、
【数1】
として定義されるマルチバイオマーカースコアの形態であってもよく、式中、iは個々のバイオマーカーにわたる合計の指数であり、βはバイオマーカーiに帰属する加重係数であり、cはバイオマーカーiの血中濃度(又は生物学的試料中の濃度)であり、βは切片項である。
【0069】
例えば、リスクスコアは、β*濃度(糖タンパク質アセチル)+β*濃度(総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸比)+β*濃度(アルブミン)+βのように定義することができ、式中、β、β、βは、消化器系の疾患のリスクとの関連性の大きさによる各バイオマーカーの乗数であり、βは、切片項である。当業者が理解するように、この実施例において言及されるバイオマーカーは、本明細書において記載される任意の他のバイオマーカーによって置き換えてもよい。一般に、より多くのバイオマーカーがリスクスコアに含まれるほど、予測性能はより強くなり得る。追加のバイオマーカーがリスクスコアに含まれる場合、β重みは、消化器系疾患の予測のための最適な組合せに従って、全てのバイオマーカーについて変化することがある。
【0070】
リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測相対リスク及び/又は絶対リスクは、少なくとも1つのさらなる尺度、例えば、対象の特徴に基づいて計算してもよい。そのような特徴は、生物学的試料を対象から得る前、同時に、又は後に決定してもよい。当業者が理解するように、特徴のいくつかは、例えば、アンケートを使用して収集された情報であっても、以前に収集された臨床データであってもよい。特徴のいくつかは、生化学的又は臨床的診断測定及び/又は医学的診断によって決定されてもよい(又は決定されたものであってもよい)。このような特徴には、例えば、年齢、身長、体重、ボディマス指数、人種若しくは民族、喫煙、及び/又は消化器系の疾患の家族歴のうちの1つ以上を含んでもよい。このような特徴には、代替又は追加として、年齢、性別、喫煙、アルコールの使用、ボディマス指数(BMI)、身体活動、低繊維食又は高脂肪食等の食事要因、ストレス、制酸薬、鉄剤、強い鎮痛剤又は便秘剤等の特定の医薬品の使用、遺伝的リスク、及び/又は消化器系疾患及び/又は他の併存疾患の既往歴及び/又は家族歴が含まれる。
【0071】
本方法は、消化器系疾患を発症するリスクがある対象に処置を施すことによって、対象における疾患を予防又は処置するために、対象を処置するステップをさらに含んでもよい。バイオマーカーの1つ以上に基づいて導かれた消化器系疾患のリスク予測は、心理療法、アルコールと喫煙への意識、健康的な食事、食物繊維及び水の摂取量の増加、身体活動、及び/又は臨床スクリーニングの頻度、及び/又は薬理学的治療の決定等の予防努力を導くために使用することができる。例えば、消化器系疾患の将来的なリスクに関する情報は、例えば、制酸薬、アルギン酸、ヒスタミンH2受容体拮抗薬及び/又はサブサリチル酸ビスマスによる食事介入及び/又は治療の指針として用いることができる。
【0072】
本明細書の文脈において、「アルブミン」という用語は、血清アルブミン(しばしば、血液アルブミンと称される)を意味するものと理解されてもよい。これは、脊椎動物の血液中に見出されるアルブミンである。アルブミンは、約65,000ダルトンの分子量の球状水溶性非グリコシル化血清タンパク質である。NMRを用いたアルブミンの測定は、例えば、刊行物Kettunen et al., 2012, Nature Genetics 44, 269-276と、Soininen et al., 2015, Circulation: Cardiovascular Genetics 8, 212-206 (DOI: 10.1161/CIRCGENETICS.114.000216)とに記載されている。アルブミンは、また、様々な他の方法によって、例えば、臨床化学分析器によって測定されてもよい。このような方法の例には、例えば、ブロモクレゾールグリーン及びブロモクレゾールパープル等の色素結合方法を含んでもよい。
【0073】
本明細書の文脈において、「糖タンパク質アセチル」、「糖タンパク質アセチル化」、又は「GlycA」という用語は、循環する糖化タンパク質の存在量、及び/又は循環する糖化タンパク質、すなわちN-アセチル化糖タンパク質の存在量を表す核磁気共鳴分光法(NMR)シグナルを意味してもよい。糖タンパク質アセチルは、例えば、α-1-酸糖タンパク質、α-1-アンチトリプシン、ハプトグロビン、トランスフェリン、及び/又はα-1-アンチキモトリプシンを含む、複数の異なる糖タンパク質からのシグナルを含んでもよい。心臓代謝バイオマーカーに関する科学文献において、「糖タンパク質アセチル」又は「GlycA」という用語は、通常、循環糖化タンパク質のNMRシグナルを意味してもよい(例えば、Ritchie et al, Cell Systems 2015 1(4):293-301と、Connelly et al, J Transl Med. 2017;15(1):219)。糖タンパク質アセチル及びそれらを測定するための方法は、例えば、Kettunen et al.,2018,Circ Genom Precis Med. 11:e002234と、Soininen et al., 2009, Analyst 134, 1781-1785とに記載されている。糖タンパク質アセチルのNMRシグナルをリスク予測に利用することには、NMRシグナルに寄与する個々のタンパク質の測定よりもメリットがあると考えられる。例えば、分析精度や経時安定性が向上し、測定コストが低減し、他の多くのバイオマーカーと同時にNMRシグナルを測定できる可能性がある。
【0074】
本明細書の文脈において、「ω-3脂肪酸」という用語は、総ω-3脂肪酸、すなわち総ω-3脂肪酸の量及び/又は濃度、すなわち異なるω-3脂肪酸の合計を意味してもよい。ω-3脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸である。ω-3脂肪酸において、脂肪酸鎖の最後の二重結合は、メチル末端から数えて3番目の結合である。ドコサヘキサエン酸は、ω-3脂肪酸の一例である。
【0075】
本明細書の文脈において、「ω-6脂肪酸」という用語は、総ω-6脂肪酸、すなわち総ω-6脂肪酸の量及び/又は濃度、すなわち異なるω-6脂肪酸の量及び/又は濃度の合計を意味してもよい。ω-6脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸である。ω-6脂肪酸において、脂肪酸鎖の最後の二重結合は、メチル末端から数えて6番目の結合である。
【0076】
一実施形態では、ω-6脂肪酸は、リノール酸であってもよい。リノール酸(18:2ω-6)は、最も豊富なタイプのω-6脂肪酸であり、したがって、消化器系疾患のリスク予測のための総ω-6脂肪酸の良好な近似と考えてもよい。
【0077】
本明細書の文脈において、「一価不飽和脂肪酸」(MUFA)という用語は、総一価不飽和脂肪酸、すなわち、総MUFAの量及び/又は濃度を意味してもよい。一価不飽和脂肪酸は、ヒト血清中で最も豊富な一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を意味してもよい。一価不飽和脂肪酸は、それらの脂肪酸鎖中に1つの二重結合を有する。一価不飽和脂肪酸は、ω-9及びω-7脂肪酸を含んでもよい。オレイン酸(18:1ω-9)、パルミトレイン酸(16:1ω-7)及びシス-バクセン酸(18:1ω-7)は、ヒト血清中の一般的な一価不飽和脂肪酸の例である。
【0078】
一実施形態では、一価不飽和脂肪酸は、オレイン酸であってもよい。オレイン酸は、最も豊富な一価不飽和脂肪酸であり、したがって、消化器系疾患のリスク予測のための総一価不飽和脂肪酸の良好な近似と見なされてもよい。
【0079】
ω-6、ドコサヘキサエン酸、リノール酸及び/又は一価不飽和脂肪酸を含む全ての脂肪酸尺度について、脂肪酸尺度は、血液(又は血清/血漿)遊離脂肪酸、結合脂肪酸及びエステル化脂肪酸を含んでもよい。エステル化脂肪酸は、例えば、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、又はホスホグリセリドのようにグリセロールに、あるいはコレステロールエステルのようにコレステロールにエステル化されてもよい。
【0080】
本明細書の文脈において、「脂肪酸不飽和度」又は「不飽和」という用語は、全脂肪酸中の二重結合の数、例えば、全脂肪酸中の二重結合の平均数を意味するものとして理解されてもよい。
【0081】
本明細書の文脈において、「HDL」という用語は、高密度リポタンパク質を意味する。
【0082】
本明細書の文脈において、「IDL」という用語は、中密度リポタンパク質を意味する。
【0083】
本明細書の文脈において、「LDL」という用語は、低密度リポタンパク質を意味する。
【0084】
本明細書の文脈において、「VLDL」という用語は、超低密度リポタンパク質を意味する。
【0085】
本明細書の文脈において、「超低密度リポタンパク質(VLDL)トリグリセリド」、「中密度リポタンパク質(IDL)トリグリセリド」、「低密度リポタンパク質(LDL)トリグリセリド」、「高密度リポタンパク質(HDL)トリグリセリド」、「超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド」、「中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド」、「LDL(低密度リポタンパク質)中のトリグリセリド」、又は「HDL(高密度リポタンパク質)中のトリグリセリド」は、前記リポタンパク質クラス又はサブフラクション中の総トリグリセリド濃度を意味するものとして理解されてもよい。
【0086】
本明細書の文脈において、「高密度リポタンパク質(HDL)粒径」、「低密度リポタンパク質(LDL)粒径」、又は「超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径」という用語は、前記リポタンパク質クラス又はサブフラクション中の粒子の平均直径を意味するものとして理解されてもよい。
【0087】
本明細書の文脈において、「酢酸塩」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中の酢酸塩分子及び/又は酢酸を意味し得る。
【0088】
本明細書の文脈において、「クエン酸塩」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のクエン酸塩分子及び/又はクエン酸を意味し得る。
【0089】
本明細書の文脈において、「クレアチニン」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のクレアチニン分子を意味し得る。
【0090】
本明細書の文脈において、「グルタミン」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のグルタミンアミノ酸を意味し得る。
【0091】
本明細書の文脈において、「グリシン」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のグリシンアミノ酸を意味し得る。
【0092】
本明細書の文脈において、「イソロイシン」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のイソロイシンアミノ酸を意味し得る。
【0093】
本明細書の文脈において、「フェニルアラニン」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のフェニルアラニンアミノ酸を意味し得る。
【0094】
本明細書の文脈において、「定量値」という用語は、バイオマーカーの量及び/又は濃度を特徴付ける任意の定量値を意味し得る。例えば、生物学的試料中のバイオマーカーの量もしくは濃度であってもよく、あるいは核磁気共鳴分光法(NMR)又はバイオマーカーを定量的に検出するのに適した他の方法に由来するシグナルであってもよい。このようなシグナルは、バイオマーカーの量又は濃度を示し得るか、又はそれと相関し得る。それは、また、NMR測定又は他の測定に由来する1つ以上のシグナルから計算される定量値であってもよい。定量値は、追加又は代替として、様々な技術を用いて測定してもよい。このような方法には、質量分析(MS)、MSと組み合わせたガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー単独又はMSと組み合わせた高速液体クロマトグラフィー、免疫比濁測定、超遠心分離、イオン移動度、酵素分析、比色分析又は蛍光分析、免疫ブロット分析、免疫組織化学的方法(例えば、代謝産物の抗体検出に基づくin situ法)、及び免疫アッセイ(例えば、ELISA)を含んでもよい。様々な方法の例を以下に示す。対象における定量値を決定するために使用される方法は、対照対象又は対照試料における定量値を決定するために使用されるのと同じ方法であってもよい。
【0095】
少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの定量値又は初期定量値は、核磁気共鳴(NMR)分光法、例えば、1H-NMRを用いて測定してもよい。少なくとも1つの追加のバイオマーカー又は複数の追加のバイオマーカーは、NMRを使用して測定してもよい。NMRは、多数のバイオマーカーを同時に含むバイオマーカーを測定するための特に効率的で迅速な方法を提供することができ、それらについての定量値を提供することができる。NMRは、また、典型的には、試料の前処理又は調製をほとんど必要としない。NMRで測定されるバイオマーカーは、Soininen et al., 2015, Circulation: Cardiovascular Genetics 8, 212-206 (DOI: 10.1161/CIRCGENETICS.114.000216)と、Soininen et al., 2009, Analyst 134, 1781-1785と、 Wuertz et al., 2017, American Journal of Epidemiology 186 (9), 1084-1096 (DOI: 10.1093/aje/kwx016)とで以前に公開された血液(血清又は血漿)NMRメタボロミクスのアッセイを使用して、大量の試料について効果的に測定することができる。これは、上記の科学論文に詳細に記載されているように、1試料当たり250のバイオマーカーに関するデータを提供する。
【0096】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの(初期)定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される。
【0097】
しかしながら、本明細書に記載される様々なバイオマーカーの定量値は、NMR以外の技術によっても実施されてもよい。例えば、バイオマーカーに応じて、質量分析(MS)、酵素的方法、抗体ベースの検出方法、又は他の生化学的若しくは化学的方法を企図してもよい。
【0098】
例えば、糖タンパク質アセチルは、α-1-酸糖タンパク質、ハプトグロビン、α-1-アンチトリプシン、及びトランスフェリンの免疫比濁測定によって測定又は概算することができる(例えば、Ritchie et al., 2015, Cell Syst. 28;1(4):293-301に記載されているように)。
【0099】
例えば、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、ω-3脂肪酸及びω-6脂肪酸は、ガスクロマトグラフィー(例えば、Jula et al., 2005, Arterioscler Thromb Vasc Biol 25, 2152-2159に記載されているように)を使用して、血清総脂肪酸組成によって、定量化することができる(すなわち、それらの定量値を決定してもよい)。
【0100】
本明細書の文脈において、「試料」又は「生物学的試料」という用語は、対象又は対象の群若しくは集団から得られる任意の生物学的試料を意味し得る。試料は、新鮮なものでも、凍結したものでも、あるいは乾燥したものでもよい。
【0101】
生物学的試料は、例えば、血液試料、血漿試料、血清試料、又はそれらから得られる画分又はそれらに由来する試料を含んでもよいし、又はそれらであってもよい。生物学的試料は、例えば、空腹時血液試料、空腹時血漿試料、空腹時血清試料、又はそれから得ることができる画分であってもよい。しかしながら、生物学的試料は、必ずしも空腹時試料である必要はない。血液試料は、静脈血試料であってもよい。
【0102】
血液試料は、乾燥血液試料であってもよい。乾燥血液試料は、乾燥全血試料、乾燥血漿試料、乾燥血清試料、又はそれらに由来する乾燥試料であってもよい。
【0103】
本方法は、少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定する前に、対象から生物学的試料を得るステップを含んでもよい。対象又は患者の血液試料又は組織試料を採取することは、通常の臨床診療の一部である。集められた血液又は組織試料を調製して、血清又は血漿を当業者に周知の技術を用いて分離することができる。血液試料又は組織試料等の生物学的試料から1つ以上の画分を分離する方法も、当業者に利用可能である。「画分」という用語は、本明細書の文脈では、1つ以上の物理的特性、例えば、溶解度、親水性若しくは疎水性、密度、又は分子サイズに従って分離された生物学的試料の一部分又は成分をも意味してもよい。
【0104】
本明細書の文脈では、「対照試料」という用語は、対象から得られ、疾患若しくは状態に罹患していないか、又は疾患若しくは状態を有するリスク若しくは発症するリスクがないことが既知である試料を意味してもよい。この対照試料は、マッチしたものであってもよい。一実施形態では、対照試料は、1つの健常個体又は健常個体の一般化集団からの生物学的試料であってもよい。「対照値」という用語は、対照試料から得ることができる値及び/又はそれから導出可能な定量値として理解されてもよい。例えば、対照試料及び/又は対照値から閾値を計算することが可能であってもよく、その閾値を上回るか又は下回ると、疾患又は状態を発症するリスクが高くなる。言い換えれば、(バイオマーカー、リスクスコア、ハザード比、及び/又は予測される絶対リスク又は相対リスクに応じて)閾値より高い又は低い値は、対象がその疾患又は状態を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0105】
対照試料又は対照値と比較した場合に少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの定量値が増加又は減少すれば、対象が疾患又は状態を有するか又は発症するリスクが高いことを示してもよい。対象が疾患又は状態を発症するリスクが高いことを増加が示すか、又は減少が示すかは、バイオマーカーに依存してもよい。
【0106】
対照試料又は対照値と比較した場合に少なくとも1つのバイオマーカー(又は複数のバイオマーカーの個々のバイオマーカー)における定量値の増加又は減少が1.2倍、1.5倍、又は、例えば、2倍、若しくは3倍であれば、対象が疾患又は状態を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0107】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、アルブミンの定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0108】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、糖タンパク質アセチルの定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0109】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸比の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0110】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対するリノール酸比の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0111】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比の定量値が増加すれば、減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0112】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0113】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0114】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、脂肪酸不飽和度の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0115】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、ドコサヘキサエンの定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0116】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、リノール酸比の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0117】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0118】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、ω-3脂肪酸の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0119】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、ω-6脂肪酸の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0120】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド酸の定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0121】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド酸の定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0122】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド酸の定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0123】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド酸の定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0124】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、高密度リポタンパク質(HDL)の粒径の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0125】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、低密度リポタンパク質(LDL)の粒径の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0126】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、超低密度リポタンパク質(VLDL)の粒径の定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0127】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、酢酸塩の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0128】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、クエン酸塩の定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0129】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、クレアチニンの定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0130】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、グルタミンの定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0131】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、グリシンの定量値が減少すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0132】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、イソロイシンの定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0133】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、フェニルアラニンの定量値が増加すれば、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0134】
一実施形態では、リスクスコアは、β+β*濃度(糖タンパク質アセチル)+β*濃度(アルブミン)のように定義され、βは切片項であり、βは糖タンパク質アセチルの濃度に起因する加重係数であり、βはアルブミンの濃度に起因する加重係数であり、このリスクスコアは、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0135】
一実施形態では、リスクスコアは、β+β*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2*濃度(脂肪酸尺度)のように定義され、βは切片項であり、βは糖タンパク質アセチルの濃度に起因する加重係数であり、βは脂肪酸尺度に起因する加重係数であり、このリスクスコアは、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。脂肪酸尺度は、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの1つ以上であってもよい。
【0136】
一実施形態では、リスクスコアは、β+β*濃度(糖タンパク質アセチル)+β*濃度(脂肪酸尺度)のように定義され、βは切片項であり、βは糖タンパク質アセチルの濃度に起因する加重係数であり、βは脂肪酸尺度に起因する加重係数であり、このリスクスコアは、対象が、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の疾患等の消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。脂肪酸尺度は、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの1つ以上であってもよい。
【0137】
「組合せ」という用語は、少なくともいくつかの実施形態では、本方法が、バイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用するステップを含むように理解されてもよい。例えば、糖タンパク質アセチル及びアルブミンの両方の定量値が決定される場合、両方のバイオマーカーの定量値は、対照試料又は対照値と別々に比較されてもよいし、あるいは両方のバイオマーカーの定量値に基づいて、リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを計算してもよく、これらのリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクが、対照試料又は対照値と比較されてもよい。
【0138】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下のバイオマーカー:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン
の定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値及び/又はその組合せを対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの定量値及び/又はその組合せに増加又は減少があれば、対象が、消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す。上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、糖タンパク質アセチルの上記定量値に増加があり、アルブミンの上記定量値に減少があれば、対象が、消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0139】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下のバイオマーカー:
・糖タンパク質アセチル、
・ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値及び/又はその組合せを対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの定量値及び/又はその組合せに増加又は減少があれば、対象が、消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合に、糖タンパク質アセチルの定量値に増加があれば、ドコサヘキサエン酸及び/又はリノール酸及び/又はω-3脂肪酸及び/又はω-6脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に減少があれば、及び/又は一価不飽和脂肪酸及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に増加があれば、対象が、消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0140】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下のバイオマーカー:
・アルブミン、
・ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値及び/又はその組合せを対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの定量値及び/又はその組合せに増加又は減少があれば、対象が、消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合に、アルブミンの定量値に減少があれば、ドコサヘキサエン酸及び/又はリノール酸及び/又はω-3脂肪酸及び/又はω-6脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に減少があれば、及び/又は一価不飽和脂肪酸及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に増加があれば、対象が、消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0141】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下のバイオマーカー:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値及び/又はその組合せを対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの定量値及び/又はその組合せに増加又は減少があれば、対象が、消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合に、糖タンパク質アセチルの定量値に増加があれば、アルブミンの定量値に減少があれば、ドコサヘキサエン酸及び/又はリノール酸及び/又はω-3脂肪酸及び/又はω-6脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に減少があれば、及び/又は一価不飽和脂肪酸及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に増加があれば、対象が、消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0142】
以下の実施形態が開示される。
【0143】
(実施形態1)
対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法であって、
上記方法は、上記対象から得られた生物学的試料において、上記生物学的試料の以下:
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・クレアチニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・イソロイシン、
・フェニルアラニン、
・糖タンパク質アセチル、
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、方法。
【0144】
(実施形態2)
上記方法が、上記生物学的試料において、複数の上記バイオマーカー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のバイオマーカーの定量値を決定するステップを含む、実施形態1に記載の方法。
【0145】
(実施形態3)
上記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0146】
(実施形態4)
上記方法は、上記対象から得られた上記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、実施形態1~3のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0147】
(実施形態5)
上記方法は、上記対象から得られた上記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、ドコサヘキサエン酸、総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、ω-3脂肪酸、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、ω-6脂肪酸、脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度、
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、実施形態1~4のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0148】
(実施形態6)
上記消化器系疾患は、消化器の悪性新生物(C15-C26)、食道、胃及び十二指腸の疾患(K20-K31)、ヘルニア(K40-K46)、非感染性腸炎及び大腸炎(K50-K52)、腸のその他の疾患(K55-K64)、腹膜及び後腹膜の疾患(K65-K68)、及び/又は胆嚢、胆道及び膵臓の障害(K80-K87)を含むか、又はそれらである、実施形態1~5のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0149】
(実施形態7)
上記消化器系疾患は、食道の悪性新生物(C15)、胃の悪性新生物(C16)、結腸の悪性新生物(C18)、直腸S状結腸移行部の悪性新生物(C19)、膵臓の悪性新生物(C25)、食道炎(K20)、胃食道逆流症(K21)、食道のその他の疾患(K22)、胃潰瘍(K25)、十二指腸潰瘍(K26)、胃炎及び/又は十二指腸炎(K29)、胃及び十二指腸のその他の疾患(K31)、臍ヘルニア(K42)、腹壁ヘルニア(K43)、横隔膜ヘルニア(K44)、クローン病(K50)、潰瘍性大腸炎(K51)、その他の非感染性胃腸炎及び大腸炎(K52)、腸の血行障害(K55)、麻痺性イレウス及び腸閉塞、ヘルニアを伴わないもの(K56)、腸の憩室性疾患(K57)、過敏性腸症候群(K58)、肛門部及び/又は直腸部の裂(溝)及び瘻(孔)(K60)、肛門部及び/又は直腸部の膿瘍(K61)、肛門及び/又は直腸のその他の疾患(K62)、腸のその他の疾患(K63)、腹膜炎(K65)、腹膜のその他の障害(K66)、胆石症(K80)、胆嚢炎(K81)、胆嚢のその他の疾患(K82)、胆道のその他の疾患(K83)、急性膵炎(K85)、及び/又はその他の膵疾患(K86)を含むか、又はそれらである、実施形態1~6のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0150】
(実施形態8)
上記消化器系疾患は、消化器の悪性新生物、食道、胃及び十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び大腸炎、腸のその他の疾患、腹膜及び後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び膵臓の障害を含むか、又はそれらである、実施形態1~7のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0151】
(実施形態9)
上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される、実施形態1~8のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0152】
(実施形態10)
上記方法は、上記少なくとも1つのバイオマーカー又は上記複数のバイオマーカーの上記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクを使用して、上記対象が上記消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するステップをさらに含む、実施形態1~9のいずれか一実施形態に記載の方法。
【実施例
【0153】
ここで、様々な実施形態を詳細に参照し、それらの実施形態の実施例を添付の図面に示す。以下の説明は、当業者が本開示に基づいて実施形態を利用することができるように詳細にいくつかの実施形態を開示する。実施形態のステップ又は特徴の多くは、本明細書に基づいて当業者に明白になるので、それらの全てのステップ又は特徴が詳細に論じられるわけではない。
【0154】
(図において使用される略語)
DHA%:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比
LA%:総脂肪酸に対するリノール酸の比
MUFA%:総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸の比
ω-3%:総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比
ω-6%:総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比
DHA:ドコサヘキサエン酸
LA:リノール酸
MUFA:一価不飽和脂肪酸
ω-6:ω-6脂肪酸
ω-3:ω-3脂肪酸
不飽和:脂肪酸不飽和度
HDL:高密度リポタンパク質
LDL:低密度リポタンパク質
IDL:中密度リポタンパク質
VLDL:超低密度リポタンパク質
HDL-TG:高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド
LDL-TG:高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド
IDL-TG:中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド
VLDL-TG:超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド
CI:信頼区間
SD:標準偏差
BMI:ボディマス指数
【0155】
(実施例1)
核磁気共鳴(NMR)によって定量したバイオマーカー尺度を、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、その他の腸の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の障害等の消化器系疾患を予測し得るかどうかに関して調べた。全ての分析は、UK Biobankに基づいて、NMR分光法からの血液バイオマーカーデータを入手可能な約115,000人の研究参加者を用いて行った。
【0156】
(研究集団)
UK Biobankの設計の詳細は、Sudlowらによって、2015年に、PLoS Med. 2015;12(3):e1001779で報告されている。簡単に述べると、UK Biobankは、英国全体にわたる22ヶ所の評価センターで37~73歳の502,639人の参加者を募集した。全ての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを提供し、倫理的承認は、North West Multi-Center Research Ethics Committee(ノースウェストマルチセンター研究倫理委員会)から得られた。血液試料は、2007年~2010年の間にベースラインで採取した。選択基準は、サンプリングに適用しなかった。
【0157】
(バイオマーカープロファイリング)
UK Biobank集団全体から、118,466人の個体からのベースライン血漿試料のランダムなサブセットを、Nightingale NMRバイオマーカープラットフォーム(Nightingale Health Ltd、フィンランド)を使用して測定した。この血液分析方法は、モル濃度単位で、リポタンパク質脂質、循環脂肪酸、並びにアミノ酸、ケトン体及び糖新生関連代謝産物を含む種々の低分子量代謝産物を含む、多くの血液バイオマーカーの同時定量を提供する。技術的詳細及び疫学的応用は、概説されている(Soininen et al 2015,Circ Cardiovasc Genet;2015;8:192-206と、Wuertz et al 2017,Am J Epidemiol 2017;186:1084-1096)。中央値から4四分位範囲外の値を外れ値とみなし、除外した。
【0158】
(バイオマーカーと消化器系疾患のリスクとの関係の疫学的分析)
UK Biobankデータに基づいて、血液バイオマーカーの消化器系疾患のリスクとの関連付けを実施した。分析は、血液試料を採取した後に、バイオマーカーと消化器系疾患の発生との関係に焦点を当てて、個々のバイオマーカーが消化器系疾患の将来の発症のリスクと関連するかどうかを決定した。バイオマーカーの加重和の形態のマルチバイオマーカースコアを使用する例も調査して、それらが各個々のバイオマーカーよりも、はるかに強力に予測できるかどうかも調べた。
【0159】
全ての研究参加者について血液サンプリング後に起こる疾患事象に関する情報は、UK Hospital Episode Statistics(英国病院エピソード統計)のデータ及び死亡レジストリから記録した。全ての分析は、診断の最初の発生に基づき、血液サンプリング前に所与の疾患の診断が記録された個体は、統計分析から除外されるようにした。任意の消化器系疾患の複合エンドポイントを、ICD-10の診断C15-C28、K20-K67及び/又はK80-K87の任意の偶発的発生に基づいて定義した。消化器系疾患のより洗練されたサブタイプを、表1に列挙したICD-10の診断に従って定義した。
【0160】
レジストリベースの追跡調査は、2007~2010年から2020年にかけての血液サンプリング(約1100000人・年)で行った。特定の疾患で、追跡調査中に記録された疾患事象が150未満のものは、範囲外にした。
【0161】
バイオマーカー関連性試験のために、年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整されたCox比例ハザード回帰モデルを使用した。結果を各バイオマーカー尺度の標準偏差当たりの大きさでプロットすることで、関連性の大きさの直接比較が可能になった。
【0162】
(結果の概要)
バイオマーカー分析対消化器系疾患の将来のリスクについての研究集団のベースライン特性を表1に示す。血液サンプリング後に起こる疾患事象の数を、分析した全ての状態について列挙する。
【0163】
表1:研究参加者の臨床的特徴及び分析した偶発的な疾患事象の数
【表1(1)】
【表1(2)】
【0164】
図1aは、任意の消化器系疾患(ICD-10コードC15-C28、K20-K67及び/又はK80-K87)の将来のリスクを有する27の血液バイオマーカーのハザード比を示す。図の左側は、バイオマーカーを絶対濃度で分析し、研究集団の標準偏差にスケーリングしたときのハザード比を示す。右側は、バイオマーカー濃度の最高五分位の個体を最低五分位の個体と比較したときの対応するハザード比を示す。結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、そのうち27,219人が約10年間の追跡調査の間に消化器系疾患(病院レジストリ又は死亡記録において診断C15-C28、K20-K67及び/又はK80-K87として定義される)を発症した。分析は、Cox比例ハザード回帰モデルにおける年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整した。P値は、全ての関連性についてP<0.0001(多重試験補正に対応する)であった。これらの結果は、27の個々のバイオマーカーが、一般的な集団設定における消化器系疾患のリスクを予測することを実証する。
【0165】
図1bは、バイオマーカー濃度の最低、中間及び最高の五分位による27の血液バイオマーカーのそれぞれについての消化器系疾患の累積リスクのカプラン-マイヤー(Kaplan-Meier)プロットを示す。結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、そのうち27,219人が消化器系疾患を発症した。これらの結果は、27の個々のバイオマーカーが、一般的な集団設定における消化器系疾患のリスクを予測することをさらに実証する。
【0166】
図2aは、ICD-10のサブチャプターによって定義される、消化器系疾患の7つのサブグループの将来の発症についての27の血液バイオマーカーのハザード比を示す。結果は、バイオマーカー関連性のパターンが、消化器系疾患の7つの異なるサブタイプについて、非常に一貫性があることを示す。
【0167】
図2bは、「任意の消化器系疾患」の定義と比較した、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)7つの消化器系疾患サブグループとのバイオマーカーの関連性の一貫性を示す。バイオマーカーの関連性は、「任意の消化器系疾患」の場合と、全て同じ関連性の方向であったか、又は不一致の方向では統計的に有意ではなかった。したがって、「任意の消化器系疾患」を強力に予測する任意のバイオマーカーの組合せも、列挙された全ての消化器系疾患サブグループを予測することになる。
【0168】
図3aは、3桁のICD-10診断コードによって定義される34の特定の消化器系疾患の将来の発症についての27の血液バイオマーカーのハザード比を示す。結果は、バイオマーカー関連性のパターンが、34の特定の疾患全てについて、非常に一貫性があることを示す。
【0169】
図3bは、「任意の消化器系疾患」定義と比較した、(3桁のICD-10診断コードによって定義される)34の特定の消化器系疾患とのバイオマーカー関連性の一貫性を示す。バイオマーカーの関連性は、「任意の消化器系疾患」の場合と、全て同じ関連性の方向であるか、又は不一致の方向では統計的に有意ではない。したがって、「任意の消化器系疾患」を強力に予測する任意のバイオマーカーの組合せも、列挙された全ての特定の消化器系疾患を予測することになる。
【0170】
図4a~dは、ここで研究した7つの消化器系疾患サブグループ(ICD-10サブチャプターによって定義される)のそれぞれの将来の発症に対する27の血液バイオマーカーのハザード比を示す。ハザード比は、各バイオマーカーの標準偏差に対してスケーリングされた絶対濃度で示されている。結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、約10年間の追跡調査の間に疾患を発症した個体の数は、各プロットの上部に示す。黒丸は、関連性についてのP値がP<0.0001(多重試験補正に対応する)であったことを示し、白丸は、関連性についてのP値がP≧0.0001であったことを示す。分析は、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整した。
【0171】
図5a~qは、ここで研究した34の特定の消化器系疾患(3桁のICD-10診断コードによって定義される)のそれぞれの将来の発症に対する27の血液バイオマーカーのハザード比を示す。ハザード比は、各バイオマーカーの標準偏差に対してスケーリングされた絶対濃度で示されている。結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、約10年間の追跡調査の間に特定の疾患を発症した個体の数は、各プロットの上部に示す。黒丸は、関連性についてのP値がP<0.0001(多重試験補正に対応する)であったことを示し、白丸は、関連性についてのP値がP≧0.0001であったことを示す。分析は、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整した。
【0172】
図6は、「任意の消化器系疾患」による将来の死亡に対する27の血液バイオマーカーのハザード比を(黒色で)示す。比較のために、消化器系疾患の発生率のハザード比も示されている(つまり、非致死的事象と致死的事象の組合せ、灰色で)。絶対濃度で分析されたバイオマーカーのハザード比が、研究集団の標準偏差にスケーリングされて表示される。これらの結果は、バイオマーカーが多くの場合、致死的な消化器系疾患事象のより強力な予測因子であることを実証している。結果は、3桁のICD-10診断コードによって定義される特定の循環器疾患による致死的事象とバイオマーカーの関連性についても同様であった。
【0173】
図7は、2つ以上のバイオマーカーを組み合わせた場合、任意の消化器系疾患との関連性の結果がより強力になる例を示す。任意の消化器系疾患(ICD-10コードC15-C28、K20-K67及び/又はK80-K87の複合エンドポイント)の将来リスクとのハザード比は、バイオマーカーのペアの選択された組合せと、マルチバイオマーカースコアの例で示されている。結果は、他の多くの組合せでも、特にアルブミンと糖タンパク質アセチルに加えて異なる脂肪酸の測定値を含めても同様であった。マルチバイオマーカースコアは、
【数2】
の形態で組み合わされ、式中、iは個々のバイオマーカーにわたる合計の指数であり、βiはバイオマーカーiに帰属する加重係数であり、cはバイオマーカーiの血液濃度であり、βは切片項である。β乗数は、バイオマーカーのそれぞれの組合せについてのUK Biobank研究の統計分析において調べられる、任意の消化器系疾患のリスクとの多変量関連性の大きさに従って定義される。関連性の大きさの増強は、表1に列挙した34の特定の型の消化器系疾患については、任意の消化器系疾患について、ここに示したものと同様であった
【0174】
(意図される使用の説明:消化器系疾患のリスク予測のためのマルチバイオマーカースコア)
消化器系疾患の予測に関連する意図される用途を説明するために、さらなる疫学的分析を以下に示す。これらの用途は、消化器官の悪性新生物、食道、胃及び/又は十二指腸の疾患、ヘルニア、非感染性腸炎及び/又は大腸炎、その他の腸の疾患、腹膜及び/又は後腹膜の疾患、及び/又は胆嚢、胆道及び/又は膵臓の障害のリスクを予測するために例示される。同様の結果が、表1に列挙される他の消化器系疾患にも当てはまる。結果は、図1~7において特徴付けられた27のバイオマーカーを組み合わせたマルチバイオマーカースコアについて示される。同様の結果は、わずかに弱いとはいえ、2つ又は3つの個々のバイオマーカーのみの組合せでも得られる。
【0175】
図8aは、27のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、消化器官の悪性新生物(ICD-10サブチャプターC15-C26)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に消化器官の悪性新生物を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の消化器官の悪性新生物の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=63696の個体)。
【0176】
図8bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、消化器官の悪性新生物(ICD-10サブチャプターC15-C26)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一及び第二のパネルは、男女ともに、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能することを実証する。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測について、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0177】
図9aは、27のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、食道、胃及び十二指腸の疾患(ICD-10サブチャプターK20-K31)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に食道、胃及び十二指腸の疾患を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の消化器官の悪性新生食道、胃及び十二指腸の疾患の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=55652の個体)。
【0178】
図9bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、食道、胃及び十二指腸の疾患(ICD-10サブチャプターK20-K31)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一のパネルは、男女ともにリスク予測が効果的に機能することを実証する。第二のパネルは、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能するが、より若い個体に対して、やや強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0179】
図10aは、27のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、ヘルニア(ICD-10サブチャプターK40-K46)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間にヘルニアを発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中のヘルニアの累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=58330の個体)。
【0180】
図10bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、ヘルニア(ICD-10サブチャプターK40-K46)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一のパネルは、男女ともにリスク予測が効果的に機能するが、女性に対して、やや強い結果が得られることを実証する。第二のパネルは、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能するが、より若い個体に対して、やや強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0181】
図11aは、27のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、非感染性腸炎及び大腸炎(ICD-10サブチャプターK50-K52)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に非感染性腸炎及び大腸炎を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の非感染性腸炎及び大腸炎の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=61255の個体)。
【0182】
図11bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、非感染性腸炎及び大腸炎(ICD-10サブチャプターK50-K52)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一及び第二のパネルは、男女ともに、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が効果的に機能することを実証する。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、依然として強いことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0183】
図12aは、27のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、腸のその他の疾患(ICD-10サブチャプターK55-K64)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に腸のその他の疾患を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の腸のその他の疾患の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=56030の個体)。
【0184】
図12bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、腸のその他の疾患(ICD-10サブチャプターK55-K64)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。最初の2つのパネルは、男女ともに、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が効果的に機能することを実証する。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0185】
図13aは、27のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、腹膜及び後腹膜の疾患(ICD-10サブチャプターK65-K68)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に腹膜及び後腹膜の疾患を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の腹膜及び後腹膜の疾患の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=63750の個体)。
【0186】
図13bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、腹膜及び後腹膜の疾患(ICD-10サブチャプターK65-K68)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一のパネルは、男女ともに、リスク予測が効果的に機能することを実証する。第二のパネルは、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能し、より若い個体に対して、強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0187】
図14aは、27のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、胆嚢、胆道及び膵臓の障害(ICD-10サブチャプターK80-K87)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に胆嚢、胆道及び膵臓の障害を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の胆嚢、胆道及び膵臓の障害の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=61565の個体)。
【0188】
図14bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、胆嚢、胆道及び膵臓の障害(ICD-10サブチャプターK80-K87)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一のパネルは、男女ともに、リスク予測が効果的に機能するが、女性に対して、やや強い結果が得られることを実証する。第二のパネルは、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能し、より若い個体に対して、やや強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が高まることを実証する。
【0189】
当業者には、技術の進歩に伴って、基本的なアイデアが様々な方法で実行され得ることが明らかである。したがって、実施形態は、上記の例に限定されることなく、その代わりに、特許請求の範囲内で変化し得る。
【0190】
上述の実施形態は、互いに任意の組合せで使用されてもよい。実施形態のうちのいくつかは、さらなる実施形態を形成するように、一緒に組み合わされてもよい。本明細書に開示される方法は、本明細書の上記の実施形態のうちの少なくとも1つを含んでもよい。上記の利益及び利点は、1つの実施形態に関連してもよいし、あるいはいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されよう。実施形態は、記載された課題のいずれか若しくは全てを解決するもの、又は記載された利益及び利点のいずれか若しくは全てを有するものに限定されない。「1つの」アイテムへの言及は、これらのアイテムの1つ以上を意味することがさらに理解されるであろう。「含む(comprising)」という用語は、本明細書において、1つ以上の追加の特徴又は行為の存在を排除することなく、その語句に続く特徴又は行為を含むことを意味するために使用される。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図5h
図5i
図5j
図5k
図5l
図5m
図5n
図5o
図5p
図5q
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図13a
図13b
図14a
図14b
【手続補正書】
【提出日】2022-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生物学的試料において、前記生物学的試料の以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・クレアチニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・イソロイシン、
・フェニルアラニン、
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと,
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示し、
前記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルであり、糖タンパク質アセチルとは、循環する糖化タンパク質の存在量を表す核磁気共鳴分光法シグナルを意味し、
前記消化器系疾患は、胆石症(ICD-10診断コードK80)、胆嚢炎(ICD-10診断コードK81)、及び/又は胆嚢のその他の疾患(ICD-10診断コードK82)である、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記生物学的試料において、複数の前記バイオマーカー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のバイオマーカーの定量値を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、ドコサヘキサエン酸、総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、ω-3脂肪酸、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、ω-6脂肪酸、脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度、
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記少なくとも1つのバイオマーカー又は前記複数の前記バイオマーカーの前記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクを使用して、前記対象が前記消化器系疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するステップをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクは、少なくとも1つのさらなる尺度、例えば、前記対象の特徴に基づいて計算される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象の前記特徴は、年齢、身長、体重、ボディマス指数、人種若しくは民族、喫煙、及び/又は消化器系疾患の家族歴、又は年齢、性別、喫煙状態、アルコールの使用、ボディマス指数(BMI)、身体活動、低繊維食又は高脂肪食等の食事要因、ストレス、制酸薬、鉄剤、強い鎮痛剤又は便秘剤等の特定の医薬品の使用、遺伝的リスク、及び/又は消化器系疾患及び/又は他の併存疾患の既往歴及び/又は家族歴のうちの1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・クレアチニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・イソロイシン、
・フェニルアラニン、
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記消化器系疾患を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】