(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光重合性ホログラム用光学素子組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240306BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20240306BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240306BHJP
G03H 1/20 20060101ALI20240306BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08F290/06
G02B5/32
G02B5/18
G03H1/20
G02B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023548802
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2022053415
(87)【国際公開番号】W WO2022171821
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523305095
【氏名又は名称】ゼトス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノッケ,フランク
【テーマコード(参考)】
2H249
2K008
4J127
【Fターム(参考)】
2H249AA13
2H249AA34
2H249AA55
2H249AA58
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4J127FA21
4J127FA24
(57)【要約】
本発明は、光重合性組成物及びそれから作成される素子、並びにそれらの使用に関する。その光重合性組成物は、屈折率変調を用いた光学素子、特にホログラムでの記録材料として、特に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV/VIS照射により硬化可能な光重合性組成物であって、
a)25~74.9重量%の、少なくとも1種の、少なくとも1種のエチレン性不飽和基を含むモノマーM、又は異なったエチレン性不飽和基を含む、少なくとも2種のモノマーMを含むモノマーの混合物
b)25~74.9重量%の、単一の脂肪族ウレタンアクリレート、又は異なった脂肪族ウレタンアクリレートの混合物、
c)0.1~10重量%の、化学線照射に暴露させることにより、前記モノマー及びウレタンアクリレートの重合を活性化させる光重合開始剤;
を含み、
前記光重合性組成物が、標準的な圧力、15℃~150℃の範囲で液状である、
光重合性組成物。
【請求項2】
20℃での、成分a)の屈折率と成分b)の屈折率の間の差が、少なくとも0.02である、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、色素、及び共重合開始剤としてのホウ酸塩を含む、請求項1又は2に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
前記共重合開始剤が、テトラヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニルヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリス-(3-フルオロフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、及びトリス-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
成分a)が、ビスフェノールAジアクリレートを、成分a)の合計重量を基準にして、25重量%より多い量で含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
前記光重合性組成物の20℃での粘度が、少なくとも2000mPa・sである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
成分b)が、脂肪族ウレタンジアクリレート樹脂又は二官能の脂肪族ウレタンジアクリレート樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
素子であって、請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物をUV/VIS放射線、好ましくは活性なUV/VIS放射線に暴露させることによって得られる成分を含む、素子。
【請求項9】
透明及び/又は半透明な領域を有する成分を含む、請求項8に記載の素子。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物を、ホログラム情報を含む変調された放射線に暴露させることにより得ることが可能なホログラムを含む、請求項8又は9に記載の素子。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の前記素子の使用であって、フィルム、レンズ、格子、プリズム、ミラー、ビームスプリッター、ディフューザー、表面レリーフ、光スイッチ、又はセンサーとしての、使用。
【請求項12】
請求項8~10のいずれか1項に記載の前記素子の使用であって、ヘッドアップディスプレイ、積層ガラス、データガラス、光誘導システム、分光計、検出システム、安全用素子、又はラベルのための、使用。
【請求項13】
請求項8~10のいずれか1項に記載の素子、又は請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物を調製するためのプロセスであって、前記素子又は組成物が、100℃より高い温度及び2barよりも高い圧力にかけられる、プロセス。
【請求項14】
基板表面又はコピー原版の上で、光重合性層の中に光安定性のホログラムを形成させる方法であって、請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物の層を、ホログラム情報を担持する変調された放射線に暴露させることを含む、方法。
【請求項15】
プロセスであって、請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物を塗布し、1分以内に露光させる、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性組成物及びそれから作成される素子、並びにそれらの使用に関する。その光重合性組成物は、屈折率変調を用いた光学素子、特にホログラムでの記録材料として、特に好適である。
【背景技術】
【0002】
多くのホログラム、たとえば反射ホログラム、エンボシングホログラム、透過ホログラム、又は体積ホログラムが公知である。
たとえば、体積ホログラムは、同一の波長の二つの光波(物体波及び参照波とも呼ばれる)を干渉させ、ホログラフィック記録媒体(通常は写真用フィルム)を露光させて干渉縞(通常は強弱パターン)を発生させることにより作成される。ホログラムの露光プロセス及びホログラムの複製(再現)は、技術的に複雑な光学プロセスであって、特殊な適用知識が必要とされる。ホログラムの作成方法及びその理論は、次の文献に詳述されている;Howard M.Smith,“Principles of Holography”,Wiley(1969)、Fred Unterseher et al.,“Holography Handbook:Making Holograms the Easy Way”,Ross Books(1982)、Graham Saxby,“Practical Hologaphy”,Inst.of Physics Pub.(2004)。
【0003】
異なった性能プロファイルを有する公知の記録媒体としては、以下のものが挙げられる;ハロゲン化銀のエマルション、硬化される二クロム酸塩ゼラチン、強融電体結晶、フォトクロミックでダイクロイド(dichroid)な物質、及び感光性ポリマー[Howard M.Smith,“Principles of Holography”,Wiley(1969)]。大体積に適用する場合、関心の対象となる物質は、ホログラムの作成及び複製装置に容易に組み込まれて、ホログラムの露光及び現像が容易に可能となるものである。感光性ポリマーは、それらが、高効率性、取扱いの容易性、及び良好な貯蔵安定性を有していれば、特に好ましいと考えられる。最もよく知られている感光性ポリマーは、DuPont製の、たとえば、Omnidex HRF 600である[S.M.Schultz et al.,“Volume grating preferential-order focusing waveguide coupler”,Opt.Lett.,vol.24,pp.1708~1710,Dec.1999]。Omnidex材料は、ラジカル重合及びモノマー拡散に基づく、自己現像性の感光性ポリマーフィルムのタイプに属する(参照;欧州特許出願公開第0324480A2号公報)。
Omnidexの感光性ポリマーは、主として、フィルムの中での屈折率のコントラストを向上させ、高い回折効率を達成することを目的として、長年にわたって、さらなる開発が行われてきた(参照;米国特許第4942112A号公報及び独国特許第69032682T2号公報)。それにも関わらず、塗布に関連した回折効率の優に2/3超は、高い割合の熱可塑性プラスチックバインダーによってもたらされている。
【0004】
フィルムの作成においては、コーティングのためのバインダーは、液状でなければならない。この目的で溶媒が使用され、それが蒸発することで、コーティングの後の層厚が急激に薄くなる。そのため、溶媒含量に依存して、塗布されるウェット層は、得られるフィルム層よりも顕著に厚い。溶媒含量は通常、約80%である。体積ホログラフィーにより露光されることが可能な20μmの層を達成するためには、この場合、100μmのウェット層を塗布しなければならない。ウェット層で必要とされる厚みが厚いことによって、公知の印刷プロセス、たとえばフレキソ印刷又はグラビア印刷が不可能であったり、或いは複雑化される。スクリーン印刷においては、速乾性の溶媒を使用すると、メッシュが相互に貼りつく原因となりうる。
さらには、そのフィルムは、溶媒が完全に蒸発してやっと、さらなる加工や巻き上げが可能となる。したがって、その作成においては、健康に配慮し、環境に優しいと同時に、防塵及び防爆環境を有する抽出システムを備えた、長い乾燥ラインを設置しなければならない。このような苦労は、フィルムの作成とホログラム露光とを、通常別の場所で、時間を変えて実施するということを意味している。
【0005】
バインダー含有物質の場合においては、最大の屈折率コントラストを達成しようとすると、露光され、UV-定着された感光性ポリマーの加熱後処理(「アニリーング」)もまた必要である(参照;独国特許第68905610T2号公報)。アニリーングは、追加の時間がかかる加工ステップであって、時間がかかるフィルム作成に加えて、ホログラム作成の速度を落とし、複雑化させ、そしてコストアップさせ、さらには、基板材料の選択を、温度の影響を受けにくいものに限定してしまう。
体積ホログラフィーのためのその他の感光性ポリマー物質は、次の各社で製造されている;Polaroid(参照:米国特許第5759721A号公報)、富士フイルム(参照:欧州特許出願公開第1 510 862A2号公報)、コニカミノルタメディカルアンドグラフィック(参照:米国特許出願公開第200505891A1号公報)、大日本印刷(参照:欧州特許出願公開第123151A1号公報)、日本ペイント(参照:欧州特許出願公開第21 1615A2号公報)、日産化学(株)(参照:米国特許出願公開第20050068594A1号公報)、Bayer(参照:国際公開第2010091795A1号パンフレット、Xetos(参照:国際公開第2003036389A1号パンフレット)、及びInPhase Technologies(参照:米国特許出願公開第2002142227A1号公報)。その従来技術は、それらのホログラフィック性能又は加工法の点で、Omnidexとは異なる感光性ポリマーを特徴としている。記載されている技術的進歩は、以下のものである:酸素感度の低減、露光の際の材料の収縮の低減、分光感度、溶媒フリーでのフィルムの形成、アニリーングなしでの高い回折効率、及び/又はより良好な温度及び貯蔵安定性。
【0006】
より新しい、市販されているホログラフィック感光性ポリマーは、Bayer Materialscienceによって開発された、「Bayfol HX」フィルムである。このものは、熱可塑性プラスチックバインダーは含まず、代わりに、ポリウレタンをポリマーマトリックスとして含んでいて、それが、ホログラフィック的に露光可能な書込み用モノマーを保持している。ポリウレタンは、ポリイソシアネートとポリオール混合物とから、重付加反応により形成される。それらの反応成分を、コーティングの直前に混ぜ合わせ、キャリヤーフィルムの上で硬化させる。それらは、前述のバインダー含有材料に比較して、高い溶媒含量を有している訳ではないものの、1時間にもおよぶ硬化時間は、塗装システムにおいて、十分に長い、ダストフリーな乾燥及び硬化セクションを備えなければならないという、同じ問題を呈している。
市販されている感光性ポリマーフィルム全体に共通することであるが、ユーザーが、自身で、キャリヤー物質を自由に選択して、それをコーティングするということは不可能で、供給されるフィルム構造を加工しなければならない。キャリヤーフィルムに加えて、付着及び汚染を防止する目的で、光の影響を受けやすいフィルム層の上に積層フィルムも存在している。このフィルムを剥がすときに、静電気が発生する可能性があり、それが、ダスト性の粒子を引きつける。そのフィルムは、露光のためのガラス又は原版(master)に積層させなければならず、いかなるダストの粒子も欠陥の原因となるので、クリーンで欠陥のない加工のためには、極端にダストフリーな環境が必要となる。
【0007】
ポリマー性バインダー又はポリマー性マトリックスを含む感光性ポリマーシステムは、実質的に固体のフィルム層を形成する。それとは対照的に、露光されるまでは実質的に液体であるバインダーを含まないシステムもまた提示されている(参照:たとえば、米国特許第3,993,485A号公報、又はN.Smirnova,“Optics in Information Systems”,February 2004,p.9、又はXetos(参照:国際公開第2003036389A1号パンフレット))。
ほとんど実質的に固体のモノマー-バインダー/マトリックス感光性ポリマーにおいては、暗い干渉ラインの領域に位置する未露光の書込み用モノマーは、ホログラフィック的なレーザー露光の後では、露光され、重合された領域の中に拡散していく。このことが、屈折率の違いを作り出し、その空間的な変調が、記録される干渉縞に相当する。しかしながら、固体のマトリックスの中での書込み用モノマーの拡散には、時間がかかる。温度を高くすれば、このプロセスを加速することができる。先に述べたOmniDex(登録商標)材料に関しては、DuPontは、120℃で1時間のアニリーング時間を指定している。Bayfol HX材料の場合には、その特許出願(欧州特許出願公開第2 372 454A1号公報,p.13,[0127]、欧州特許出願公開第2 219 073A1号公報,p.15,[0102])で、その材料がUV光で最終的に完全に硬化するまで、5分の待ち時間を指定している。
しかしながら、ホログラムの作成に関しては、多くの作成プロセスで、可能な最小時間又は可能な最大処理量、そして、単純で費用効率の高いプロセス制御が必要とされており、そのため、取扱いが難しく、時間がかかる後処理や待ち時間は不都合である。
この理由から、欧州特許第1 779 196B1号公報に記載されているような、レーザー露光の際にすでに効果的な屈折率変調を形成し、UV光を用いて直ちに定着させることが可能な光重合性組成物が開発された。ここでは、各種のトリグリセリド、たとえばヒマシ油が使用された。
【0008】
ヒマシ油は不活性成分であり、露光の際に架橋することはない。このことは、それが、後ほど、その層から移行することができるということを意味している。これを確実に防止するためには、通常、次いでUVワニス層を用いて、そのホログラム層をシールする。
しかしながら、ヒマシ油含量が高すぎる場合には、露光の途中又は直後に、このことが起こりうる。比率が高すぎると、濁りも起きる。ヒマシ油含量が高いほど、クリアな層を確保するためには、露光温度を高くしなければならない。しかしながら、温度を高くすると、その光重合性組成物の粘度が低下し、そのことは、ホログラフィックな露光性には、逆効果となる。したがって、ヒマシ油含量及び露光温度には上限が存在し、ホログラム露光の際には、それを越えてはならない。
【0009】
ヒマシ油が滲み出すことを防止するために、UVワニスを用いて、その露光された層を比較的速やかにシールしなければならないという欠点に加えて、それらの光重合性組成物は、比較的に高い濁り度を有している。その層が厚いほど、そしてトリグリセリド含量が高いほど、その物質のヘーズが目立つようになる。
不透明な基板に塗布された安全用の素子及びラベルの場合には、これは、それほど目立たない。しかし、特にホログラム用光学素子(holographic optical element=HOE)の場合、たとえば、そのホログラムを、ヘッドアップディスプレイにおいて、又は拡張現実感(augmented reality)/複合現実感(mixed reality)眼鏡において使用しようとすると、遮ることがない視野が、望ましく、そして多くの場合必要とされる。20μm未満の極めて薄い層が望まれる安全用ホログラム素子とは対照的に、HOEの場合の層厚はもっと厚く、100μmを超える範囲の厚みとなり得る。厚い層では、多くの場合、ホログラム層と組み合わされたり、又は接着されたりする光学材料の許容差を補償することがさらに望まれる。極めて狭い光のスペクトル領域だけを反射させようとすると、厚い層が、さらに必要とされることも多い。しかしながら、液状の光重合性組成物のみは、それらの粘度に依存して、ある程度の層厚までは、もっぱら高い屈折率差を形成する。厚みがある程度以上になると、その液体の動力学及び硬化の際の収縮が、単純に大きすぎて、その光の波長の範囲内でパターンを効果的且つ均質に記録できなくなる。このことは、ホログラムデュアルビーム露光又は原版露光の場合に、特にあてはまる。それとは対照的に、20μmを超える層厚を有する、実質的に固体のフィルム材料を大規模に製造することは、極めて高コストであり、現在のところ需要が少ないために、意味がない。CovestroからのBayfol-HX 200材料は、16μmの膜厚で提供されている。そのヘーズ値は、2%未満と規程されている(製品情報シート-Bayfol HX 200、2018-03-01版)。
【0010】
ヘーズ値を可能な限り低くすることに加えて、ヘッドアップディスプレイのために自動車のフロントガラスに一体化されるホログラム素子は、それ以外の要件にも適合しなくてはならない。製造の際に、積層ガラスを、オートクレーブの中で、温度140℃、圧力12barに90分間まで暴露させる(国際公開第03033583A1号パンフレット)。ホログラム用材料及びそれを含むホログラムもまた、損傷や品質ロスを受けることなく、この条件に耐えなければならない。
体積ホログラムの回折効率(「Beugungswirkungsgrad」=BWG)ηは、それらの層厚d及びΔnに依存する。Δnは、ホログラム層の内部での屈折率変調の大きさを表している。Kogelnikの結合波理論によれば、Δnの値が大きいほど、より薄い層で、高いBWG値が達成できる(参照;H.Kogelnik,The Bell System Technical Journal,Volume 48,November 1969,Number 9,p.2909~2947)。屈折率変調が表面に対して平行である、表面ミラーからの反射ホログラム又はLippmann-Braggホログラムでは、次式の関係が成立する;
【数1】
[式中、λは、光の波長である]。したがって、同一の回折効率を達成しようとすると、厚い層では、そのホログラム記録材料のΔn値は、薄い層の場合よりも小さくすることができる。
【0011】
光重合性組成物を用いた場合、透過及び反射の両方のホログラムを記録することができる。100μmを超える層厚を有するLippmann-Braggホログラム(その格子ラインは、表面と平行に走っている)での、達成可能な屈折率変調Δnの大きさは、したがって、0.001より大、好ましくは0.002より大、特に好ましくは0.003より大である。
垂直透過照明のときに分光計で測定した吸収ピークからの波長λ、回折効率η(BWG)及び層厚dを使用して、そのホログラムのΔnは、次式で計算することができる。
【数2】
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の光重合性組成物からシールされたホログラフィック接触転写物を作成するためのロール-トゥ-ロールマシンの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって、本発明は、公知の記録材料の欠点を回避し、20μmより大、好ましくは50μmより大、特に好ましくは100μmより大の厚い層のホログラム露光を有利に可能とする光重合性組成物を提供するという目的をベースとしている。欧州特許第1779196B1号公報から公知の液状ホログラム用材料と同様に、大量生産に適した極めて迅速な加工が可能であるべきである。光重合性組成物から作成されたホログラム素子はさらに、高い長期間の保存性、熱的及び機械的安定性を有しているべきである。さらには、追加のシーリングが、完全に不要であるべきである。特に好ましくは、その硬化された材料及びその中に記録されたホログラムが、積層ガラスを製造するためのオートクレーブプロセスでも、損傷を受けることなく耐えられるべきである。好ましくは、その光重合性組成物が、5barを超える圧力及び100℃を超える温度、特に好ましくは10barを超える圧力及び120℃を超える温度がその光重合性組成物又はそれから作成された素子に作用するようなプロセスに、適応可能であるべきである。
驚くべきことには、欧州特許第1 779 196B1号公報に記載されている配合の中のヒマシ油のような不活性成分を、やはり露光により架橋し、そのため浸みだすことができない適切な脂肪族ウレタンアクリレートによって有利に置き換えることが可能であることが見出された。
したがって、その目的は、本発明において、UV/VISの照射により硬化することが可能な、以下のものを含む光重合性組成物によって解決される:
a)25~74.9重量%の、少なくとも1種のエチレン性不飽和基を含む少なくとも1種のモノマーM、又は異なったエチレン性不飽和基を含む、少なくとも2種のモノマーM及びM1を含むモノマーの混合物、
b)25~74.9重量%の、単一の脂肪族ウレタンアクリレート、又は異なった脂肪族ウレタンアクリレートの混合物、
c)0.1~10重量%の、化学線照射に暴露させることにより、それらのモノマー及びウレタンアクリレートの重合を活性化させる光重合開始剤;
ここで、前記光重合性組成物は、標準的な圧力、15℃~150℃の範囲で液状である。
【0014】
重量%での数字は、特に断らない限り、その光重合性組成物の合計重量に対するものである。
さらに好ましい実施態様は、従属請求項に定義されている。
アクティニティ(化学線照射)は、各種の波長の電磁放射の光化学的効果と理解されたい。
その用語は、たとえば、各種の色のレーザー光の生理学的影響、又は写真用フィルム及び紙の分光感度を評価する際に使用される。光化学においては、アクティニックな化学薬品とは、光又は放射線の影響を受けやすいものである。
成分a)が、この成分の中に、成分a)の合計重量を基準にして、25重量%より大、好ましくは50重量%より大、特に好ましくは90重量%より大のビスフェノールAジアクリレートを含んでいるのが好ましい。
【0015】
成分b)として特に好ましいのは、脂肪族ウレタンジアクリレート樹脂、特にはEbecryl 230(Allnex製)、又は二官能脂肪族ウレタンジアクリレート樹脂、特にはCN9002(Sartomer製)である。
その脂肪族ウレタンアクリレート又はウレタンアクリレートの混合物が、モノマー又はモノマーの混合物よりも、はるかに遅い架橋速度を有しているのが好ましい。ホログラム露光の際に、反応の遅い成分が、干渉縞の明るい領域から追い出される。この分離が原因で、ウレタンアクリレート含量が、干渉縞の明るい領域よりは暗い領域での方が高くなる。ウレタンアクリレート又はウレタンアクリレートの混合物が、モノマー又はモノマーの混合物とは異なった屈折率を有しているので、層の中の屈折率が干渉縞に従って変調され、ホログラムが生成する。それら二つの成分の屈折率の差が、20℃で、少なくとも0.02、好ましくは少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.07であるべきである。成分a)の屈折率と成分b)の屈折率の間の差が、20℃で、少なくとも0.02であるのが好ましい。
屈折率は、たとえばアナログアッベ屈折計のような屈折計を用いて測定することができる。
【0016】
アッベ屈折計は、液体の屈折率nを求めるための光学デバイスである。その測定原理は、全反射のための臨界角の測定に基づいている。この目的のために、その液体を、2枚のガラスプリズムの間に封入し、20℃温度で、標準として589nmの波長の光(ナトリウムのD線)を用いて透過照明する。臨界角を設定した後で、目盛を利用して屈折率を読み取ることができる。
好ましくは、そのウレタンアクリレートが、(メタ)アクリル酸、ポリオール、及び多官能イソシアネートの反応生成物であるのがよい。ウレタンアクリレートは、たとえば、(メタ)アクリロイル基を含むアルコールとジ-若しくはポリイソシアネートとから作成される。ウレタンアクリレートの製造プロセスは、原理的には公知であり、たとえば以下の特許に記載されている:独国特許出願公開第A-1 644 798号公報、独国特許出願公開第A-2 115 373号公報、又は独国特許出願公開第A-2 737 406号公報。(メタ)アクリロイル基を含むアルコールは、アクリル酸又はメタクリル酸の、遊離のヒドロキシル基で二価のアルコールとのエステル、たとえば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-若しくは3-ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸2-、3-、4-、ヒドロキシブチル、さらにはそのような化合物の各種の混合物である。それに加えて、(メタ)アクリロイル基を含む一価アルコール又はそのようなアルコールから実質的になる反応生成物(n価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られたもの及び任意の他のジカルボン酸)もまた可能であり、アルコールとして複数のアルコールの混合物を使用することもまた可能であり、ここでnは、整数であるか又は統計的平均値に基づく分数であって、2~4より大、好ましくは3であり、そして特には、上述のアルコールの1モル当たり、(n-1)モルの(メタ)アクリル酸を使用するのが好ましい。
【0017】
驚くべきことには、露光された層のクリアさが、それを露光すなわち硬化させるのに用いられた露光時間及び強度に依存するということもまた見出された。層を、十分な強度を用い、1秒未満ですばやく露光させると、その層は、より弱い入力で数秒間かけて露光させた場合よりは、濁りが少ない。濁り度(ヘーズ)は、測定可能であり、ヘーズ値として、パーセントの単位で表される。露光温度21℃、フィルム厚み1mmでの、ASTM D1003の標準的な手順にしたがって測定した、高速露光領域と低速露光領域との間の差は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%には達する筈である。温度もまた、濁り度に影響する。温度が低いほど、より高い乳白色となる。このようにして、異なった温度で異なった領域を露光すると、強度依存の効果で、差を付けたり、さらに大きくしたりすることができる。
光重合性組成物の感度は、150mJ/cm2より良、好ましくは100mJ/cm2より良、特に好ましくは50mJ/cm2より良とするのがよい。
【0018】
感度は、ホログラムを作成するのに必要とされる、最小の照射線量を表している。レーザーは、その重合開始剤系で使用される色素に合わせた波長を有していなければならない。たとえば、波長633nmの赤色レーザーを使用する場合には、メチレンブルーが使用され、532nmの緑色レーザーでは、サフラニン-Oが使用される。そのレーザーの波長を、相当する色素のスペクトルの吸収極大の近くにするべきである。その感度は、感光されたホログラムを比較することによって、決めることができる。同じ層厚で、照射線量を増大させても、測定された回折効率がそれ以上改良されなくなったら、必要とされる最小線量に達したか、又は超えている。
本発明における組成物が、基板又はコピー原版に塗布した後での、揮発性溶剤の蒸発、化学反応、又は加熱処理の時間を必要としないのが好ましい。基板又はコピー原版に対して、組成物を塗布した直後に、露光を実施することができる。その組成物の基板への湿式塗布は、スキージー、ドクターブレード、又はスロットダイコーティングにより実施することができる。この層が、20μmより薄い場合には、公知の印刷プロセスたとえば、スクリーン印刷、グラビア印刷、凹版印刷、パッド印刷、又はフレキソ印刷もまた使用可能である。透明でクリアなフィルムを使用して、複写される原版の上に光重合性組成物を直接積層させるのが好ましい。その層厚は、接触圧力及び積層速度によるか、スリット幅によるかのいずれかで調節する。厚く、硬質の基板、たとえばガラス板にコーティングする場合には、スピンコーティングプロセスを使用することもできる。インクジェット印刷プロセスを用いるか、或いはCNC制御された分散装置を用いて塗布することもまた可能である。キャビティの中に直接注入することも可能である。
【0019】
特に、この光重合性組成物は、曲面に塗布するのにも適している。二つの対応体の間で圧力をかけて、同時にキット又は接着剤として使用することもできる。
そのコーティングが、露光ユニットの中で実施されるので、ユーザーは、使用するキャリヤー物質及び層状構造を自由に選択できる。揮発性有機溶剤を実質的に含まず、それを好ましくは5重量%未満、より好ましくは多くとも1重量%しか含まない、その光重合性組成物は、塗布した直後に露光させることができる。同じ原理に従って、硬化の後で新規な層を塗布し、ホログラフィックに露光させることができるので、多層露光でも何の問題もない。これを使用して、たとえば、レッド、グリーン、及びブルーの原色のための3層から、トゥルーカラー(true-colour)のホログラムを作り上げることもできる。
【0020】
比較的に低い反応速度及び高い可撓性を有する脂肪族ウレタンアクリレートが、好ましい。硬化された層の可撓性は、露光されたホログラムを、たとえばガラスや金属のような硬質の表面から除去するのに役立つ。この容易且つクリーンな除去は、大量生産では極めて好ましいが、その理由は、接触転写物(コンタクト・コピー)を作成するために、薄いガラスを用いてシールされた微細なホログラム表面構造又は体積ホログラムを用いて、摩耗フリーなコピー原版たとえば、慣用されるニッケルシムを使用することが可能となるからである。非接着性層で、残留物が残ることなく除去されるために、クリーニングの労力は低く抑えられる。
その光重合性組成物は、接触転写物を作成するのに、特に好適である。液状の光重合性組成物を直接原版の上に印刷するという事実のために、屈折率の調節(マッチング)の必要がなくなる。これは、原版とホログラム層との間に、その二つの層とほぼ同じ屈折率を有する液体を塗布しているのである。フィルム材料を用いた通常の接触転写法では、屈折率の調節で、妨害的な干渉現象(ニュートンリング)の発生を防止する。それらの原因は、たとえば、ダストの混在物のため、又は気泡又は空気の混在の結果の微少な凹凸のために、その二つの層がぴったりと接触していない場所で起きる反射のためである。それに加えて、基板及び原版での擦り傷やその他の凹凸が埋め合わされるために、複写の光学的品質が改良される。層厚よりも小さい寸法を有する微少なダスト粒子は、その液体の中に埋没されるので、フィルム材料の場合のような、顕著な印刷や欠陥の汚点を作ることもない。このことは、製造環境での廃棄物やクリーンルームの必要性を大幅に低下させる。
【0021】
したがって、好都合なことには、その液状の光重合性組成物は、ホログラフィックフィルム材料の露光のための指数マッチ物質(index match material)としても、使用することができる。露光の際にそれが硬化するために、クリーニングや蒸発させる必要がない。それに加えて、それら二つのホログラム記録材料を組み合わせることで、ホログラフィック記録が保持され、強化されるが、その理由は、両方の層にホログラムが作成されるからである。
その液状物質が、どのような表面にも適応するために、フィルム材料の場合とは異なって、ホログラムの露光と同時に表面構造を成形することが可能であり、複雑な形状の表面を使用することできる。その表面構造は、具体的には、エンボスホログラム又はフレネル構造であってよい。このことにより、単一の加工ステップで、表面構造及び原版の体積ホログラフィック情報又は光学情報の両方を、物理的及びホログラフィック的に複写することが可能となる。
このようにして、一体化されたホログラム構造を有する、プリズム又はレンズのような光学素子を作成することもまた可能である。
【0022】
その光重合性組成物は、塗布した直後に露光させることができるので、コーティング及び露光の二つのステーションの間を、極めて短い距離及び時間にコンパクト化することが、実現可能である。これで、周囲の光が原因の、望ましくない前露光の危険性が抑制される。そのため、暗所環境の必要性が、それほど大きくない。その光重合性組成物は、1分以内、好ましくは20秒以内、特に好ましくは5秒以内に、塗布且つ露光させることが可能である。
本発明は、本発明による光重合性組成物が1分間以内に塗布され露光されるプロセスに関する。
本発明における光重合性組成物には、少なくとも1種のエチレン性不飽和基を含む少なくとも1種のモノマーMが含まれるが、モノマーMが、少なくとも2種のエチレン性不飽和基を含んでいるのが好ましい。
特に好ましくは、その光重合性組成物が、少なくとも1種のエチレン性不飽和基を含む少なくとも1種のモノマーMと、少なくとも2種のエチレン性不飽和基を含むモノマーM1とを含むが、ここでM1は、好ましくは、第二のエチレン性不飽和基だけがMとは異なっている。
少なくとも1種のエチレン性不飽和基を含むモノマーは、下記の一般構造単位を有している。
【0023】
【0024】
【化2】
(式中、n及びm=0~12、好ましくは1~12であり;o=0、1であり、そしてArは、単核又は多核で置換又は非置換の芳香族又はヘテロサイクリック芳香族基である)
基R
1は、H、メチル、又はエチルであり、そして、
基R
2及びR
3は、独立して、以下のものからなる群より選択される:アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アシル、及びアシルオキシ基(それらは、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換されていてもよい)、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換の芳香族基又はヘテロサイクリック基、非置換又は置換の脂環族炭化水素基、脂肪族、芳香族及び脂肪族-芳香族のアミノ、カルボン酸、アミド、及びイミド基、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、ハロゲン原子又は水素原子、並びに上述の基の組合せ、ここで、その置換された基は、C
1~C
12アルキル、C
1~C
12アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、カルボニル、アミノ、アミド、イミド基、ハロゲン原子、芳香族基、又はそれらの組合せで、置換されていてもよい。
好適なモノマーMの例としては、以下のものが挙げられる:置換又は非置換のスチレンモノマー、アクリル酸、α-アルキルアクリル酸、アクリル酸エステル、α-アルキルアクリル酸エステル(そのアルコール成分は、2~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の脂肪族又は芳香族基であってよい)、アクリルアミド、α-アルキルアクリルアミド(ここで、アルキルは、上で定義されたもの)、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、及び2~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の脂肪族又は芳香族基を用いて置換された、他の置換ビニルモノマー。
【0025】
好適なモノマーMの好ましい例としては、以下のものが挙げられる:(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルエステル、(メタ)アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル、アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチルエステル、アクリル酸エトキシエトキシエチルエステル、アクリル酸2-(p-クロロフェノキシ)エチルエステル、アクリル酸p-クロロフェニル、(メタ)アクリル酸2-フェニルエチル、アクリル酸ペンタクロロフェニル、アクリル酸フェニル、p-クロロスチレン、N-ビニルカルバゾール、1-ビニル-2-ピロリドン、2-クロロスチレン、2-ブロモスチレン、メトキシスチレン、フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2-(p-クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸2-(1-ナフチルオキシ)エチル、ヒドロキノンモノメタクリレート、及びアクリル酸2-[β-(N-カルバゾリル)プロピオニルオキシ]エチル。
【0026】
特に好ましいモノマーMとしては、以下のものが挙げられる;N-ビニルカルバゾール、アクリル酸エトキシエトキシエチル、アクリル酸2-ナフチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、メタクリル酸2-フェノキシエチル、フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2-(p-クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸p-クロロフェニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2-フェニルエチル、アクリル酸2-(1-ナフチルオキシ)エチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、アクリルアミド、アクリル酸エトキシエトキシエチル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル、及びアクリル酸ペンタフルオロエチル。
そのモノマーMが、少なくとも2種のエチレン性不飽和基を含むのが好ましく、したがって、そのモノマーは、好ましくは二官能である。
【0027】
二官能エチレン性不飽和モノマーは、その分子の中に2個のC=C二重結合を有している、すなわちそれらは、たとえば、上で示した構造単位2個を含んでいる。二官能エチレン性不飽和モノマーには、たとえば、2個のアクリレート基又はメタクリレート基を含んでいてよい。
本発明における光重合性組成物の中のモノマーMには、1個又は複数の二官能又はより高級官能性のモノマーだけからなっている、すなわち、その組成物が、単官能のエチレン性不飽和モノマーを含まないのがよい。本発明における組成物の中での、少なくとも2種のエチレン性不飽和基を有するモノマーMの含量は、組成物の総重量に基づき10重量%より大、好ましくは20重量%より大、特に好ましくは30重量%より大である。
【0028】
二官能又はより高級官能性のモノマーを使用することによって、具体的には、それにより作成されたホログラム素子の熱的安定性及び機械的安定性が特に高くなり、これは、鏡映(reflexion)ホログラムの作成では、特に有利である。
少なくとも2種のエチレン性不飽和基を有する好ましいモノマーMは、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、具体的には、次式の化合物である:
【化3】
(式中、R
1、Q.及びArは、先に挙げた意味合いを有する)。
【0029】
特に好ましいモノマーMは、次の構造式の化合物である:
【化4】
モノマーM又はモノマー混合物の粘度が、室温で少なくとも900mPa・sであるのが好ましい。
【0030】
本発明における光重合性組成物には、単一の脂肪族ウレタンアクリレート又は複数の脂肪族ウレタンアクリレートの混合物が含まれる。
好適なウレタンアクリレートは、一般的に、次の一般構造式の化合物である;
【化5】
(式中、Rは、長鎖のポリオールセグメントであり、そしてNHCOOはウレタン化合物である)。特に好ましい脂肪族ウレタンアクリレートは、市販製品のEbecryl 230(Allnex製)及びCN 9002(Sartomer製)であり、そしてn
1=0~1000、好ましくは0~100、より好ましくは1~12である。
そのウレタンアクリレートの混合物には、それらの反応生成物の一方が25%、好ましくは50%より大の量で含まれるか、又は特に好ましくは、それら2種の製品の一方のみが含まれる。
【0031】
光重合性組成物の粘度はさらに、20℃で、少なくとも2000mPa・s、好ましくは10000mPa・s、特に好ましくは少なくとも20000mPa・sである。
その粘度は、プレート-プレート回転式レオメーター(たとえば、Haake製、タイプ006-2805)を用いて測定することができる。材料を、2枚の同軸の円形プレートの間に置き、一方のプレートを回転させる。それらのプレート間の距離は、たとえば1mmであり、直径は35mmである。粘度は、そのトルク及び速度(たとえば、10回転/秒)の測定から求めることができる(DIN53018、ISO3210)。
【0032】
本発明における光重合性組成物には、好ましくは、(化学線)照射に露光させると、モノマーM及び脂肪族ウレタンアクリレートの重合を活性化させる、少なくとも1種の光重合開始剤を含む。このものは、好ましくは、ラジカル形成性重合開始剤である。
ラジカル形成性重合開始剤は公知であり、たとえば以下の文献を参照されたい:H.J.Timpe and S.Neuenfeld,“Dyes in Photoinitiator Systems”.Kontakte(1990),p.28~35、及びJ.Jakubiak and J.F.Rabek,“Photoinitiators for visible light polymisation”,Polimery(Warsaw)(1999),44,p.447~461。
【0033】
UV照射により活性化可能で、一般的には185℃までの温度では不活性な、好適なラジカル形成性重合開始剤としては、置換又は非置換の多核のキノンが挙げられるが、これらは、共役炭素環式環系の中に、2個の環内炭素原子を有する化合物であって、たとえば、以下のものが挙げられる:9,10-アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントレンキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロナフトキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2,3-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アントラキノン-α-スルホン酸のナトリウム塩、3-クロロ-2-メチルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10-テトラヒドロナフタセンキノン、及び1,2,3,4-テトラヒドロベンズ[a]アントラセン-7,12-ジオン。やはり有用であるその他の光重合開始剤(但し、それらの内のいくつかは、85℃程度の低い温度で熱的に活性化される)が、米国特許第2,760,663号公報に記載されており、たとえば、以下のものが挙げられる;ビシナルケトアルドニルアルコールたとえば、ベンゾイン、ピバロイン、アシロインエーテルたとえば、ベンゾインのメチル及びエチルエーテル、α-ヒドロカーボン-置換された芳香族アシロインたとえば、α-メチルベンゾイン、α-アリルベンゾイン、及びα-フェニルベンゾイン。
【0034】
光重合開始剤として、使用可能なのは、以下のものである:光還元性色素及び還元剤たとえば、米国特許第2,850,445号公報、2,875,047号公報、米国特許第3,097,096号公報、米国特許第3,074,974号公報、米国特許第3,097,097号公報、米国特許第3,145,104号公報、及び米国特許第3,579,339号公報に開示されているもの;さらにはフェナジン、オキサジン、及びキノンのクラスからの色素;米国特許第3,427,161号公報、米国特許第3,479,185号公報、米国特許第3,549,367号公報、米国特許第4,311,783号公報、米国特許第4,622,286号公報、及び米国特許第3,784,557号公報に記載されているような、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン、水素供与体を有する2,4,5-トリフェニルイミダゾリルダイマー、及びそれらの混合物。色素増感光重合についての有用な考察が、次の文献に見出される;D.F.Eaton,“Dye Sensitized Photopolymerization”,Adv.in Photochemistry,vol.13(D.H.Volman、G.S.Hammond and K.Gollnick、eds,Wiley-Interscience,New York,1986),p.427~487。同様にして、米国特許第4,341,860号公報のシクロヘキサジエノン化合物も、重合開始剤として有用である。好適な光重合開始剤としては、以下のものも挙げられる:CDM-HABI、すなわち、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ビス(m-メトキシフェニル)-イミダゾールダイマー;o-Cl-HABI、すなわち、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,1’-ビイミダゾール;及びTCTM-HABI、すなわち、2,5-ビス(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-1H-イミダゾールダイマー、それぞれ典型的には、水素供与体、たとえば、2-メルカプトベンズオキサゾールと共に使用される。
【0035】
特に好ましい光重合開始剤は、たとえば以下のようなUV光重合開始剤である;IRGACURE(登録商標)OXE-01(1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、及びIRGACURE(登録商標)OXE-02(1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム(BASF AG製)、さらにはOMNIRAD-MBF(ギ酸メチルベンゾイル)、OMNIRAD-TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド)、OMNIRAD-TPO-L(エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネート)、OMNIRAD-1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン)、OMNIRAD 1000(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(80%)と1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(20%)との混合物)、OMNIRAD 184(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)、OMNIRAD 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)、OMNIRAD 2022(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートの混合物)、及びOMNICAT 440(4,4’-ジメチル-ジフェニル-ヨードニウム-ヘキサフルオロホスフェート)、これらは、IGM Resinsから入手可能で、好ましくは0.1~10重量%の量で使用される。
【0036】
【0037】
上述の光重合開始剤は、単独で使用しても、或いは組み合わせて使用してもよい。
好ましくは、光重合性開始剤には色素、及び光重合開始剤又は共光重合開始剤としてホウ酸塩が含まれる。「光重合開始剤」及び「共光重合開始剤」は、本発明の文脈では同じ用語として用いられる。
特に好ましい光重合開始剤には、以下のものが含まれる;下記の構造式I(共光重合開始剤)の化合物及び色素(増感剤)たとえばメチレンブルー、並びに、米国特許第3,554,753A号公報、米国特許第3,563,750A号公報、米国特許第3,563,751A号公報、米国特許第3,647,467A号公報、米国特許第3,652,275A号公報、米国特許第4,162,162A号公報、米国特許第4,268,667A号公報、米国特許第4,454,218A号公報、米国特許第4,535,052A号公報、及び米国特許第4,565,769A号公報に開示されている増感剤、さらには国際公開第2012062655A2号パンフレットに引用されている色素及び共光重合開始剤(それらは、本明細書にも、明示的に引用されている)。特に好ましい増感剤としては、以下のものが挙げられる;DBC、すなわち、2,5-ビス[(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)メチレン]シクロペンタノン;DEAW、すなわち、2,5-ビス[(4-ジエチルアミノフェニル)メチレン]シクロペンタノン;ジメトキシ-JDI、すなわち、2,3-ジヒドロ-5,6-ジメトキシ-2-[(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-9-イル)メチレン]-1H-インデン-1-オン;及びサフラニン O、すなわち、3,7-ジアミノ-2,8-ジメチル-5-フェニル-フェナジニウムクロリド。
【0038】
構造式Iを有する化合物(Ciba Specialty Chemicals Inc.により、「CGI 7460」の製品名で開発され、現在は、BASF AGから、SEC LCA 1460の製品名で入手可能)は、次式で表される;
【化7】
【0039】
特に好ましくは、それらの色素は、色素濃縮物(参照:第2表及び第3表)として、揮発性溶剤を含まない混合物の形で得ることができる。このものにより、光重合性組成物の調製が簡略化されるが、その理由は、揮発性物質の蒸発除去がもはや不要であり、計量も、より容易で、より正確になるからである。
本発明における光重合性組成物の中の色素が、以下のものからなる群より選択されるのが好ましい:アクリフラビン、ジアミノアクリジン、ローダミンB、サフラニン-O、ジエチルサフラニン、及びメチレンブルー。
本発明における光重合性組成物の中の共光重合開始剤は、テトラヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニルヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリス-(3-フルオロフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、及びトリス-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、又はそれらの混合物からなる群より選択するのが、好ましい。
【0040】
化学線照射に露光させると、モノマー及びウレタンアクリレートの重合を活性化させる光重合開始剤系は、光重合開始剤、又は共光重合開始剤及び色素からなっている。上述の成分三つを全て含んでいるのが好ましい。
選択された加工方法又は適用分野に光重合性組成物を適合させ、印刷適性、表面接着性、粘度、フィルム形成性、可撓性、硬度、耐寒性、耐熱性、及び耐候性を改良するためには、その組成物に、自体公知の各種の添加剤を含ませてもよい。
したがって、その光重合性組成物には、場合によっては、添加剤が含まれる。
【0041】
添加剤としては、以下のものが挙げられる;溶媒、充填剤、色素、可塑剤、界面活性剤、感光性ポリマー系で使用される一般的な成分、ポリマー性バインダー、湿潤剤、レベリング剤、消泡剤、接着促進剤、表面添加剤、ナノスケールの粒子、蛍光増白剤、又はそれらの混合物。
それらは、容易に混ぜ込むことが可能であり、そして回折効率を悪化させるようなことがあってはならない。非揮発性物質が、特に、光重合性組成物の、エチレン性不飽和モノマーとその他の成分との間の屈折率の差を増大させる添加剤を選択することによって、薄膜における回折効率を恒久的に改良することが可能である。そのウレタン成分が、そのエチレン性不飽和モノマー成分よりも低い屈折率を有している場合には、その添加剤は、可能な限り低い屈折率を有しているべきである。したがって、この場合には、低い屈折率を有する公知のポリマーたとえば、ポリ酢酸ビニルに加えて、フッ素化又はシラン化されたポリマーが、特に好適である。良好な拡散性能を達成させるためには、考慮されている添加剤の分子量が、高すぎてはならない。
上で述べ、以下でも説明する添加剤は、一般的に、組成物の合計重量を基準にして、0.01~20重量%、好ましくは0.01~10重量%の量で使用することができる。
【0042】
光重合性組成物には、画像化された組成物の屈折率の変調を高めるための可塑剤が含まれていてもよい。可塑剤は、組成物の合計重量を基準にして、約0.01重量%~約10重量%、好ましくは5重量%~約10重量%の範囲の量で使用するのがよい。好適な可塑剤としては、以下のものが挙げられる;トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールメチルエーテル、イソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ポリプロピレングリコール、グリセリルトリブチレート、ジエチルアジペート、ジエチルセバシネート、ジブチルスベリネート、トリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、Brij(登録商標)30[C12H25(OCH2CH2)4OH]、Brij(登録商標)35[C12H25(OCH2CH2)20OH]、及び酢酸n-ブチル。
特に好ましい可塑剤は、次のものである:ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールジエチルヘキサノエート(3G8)、トリエチレングリコールジカプリレート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルアジペート、Brij(登録商標)30、及びトリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート。
【0043】
所望により、感光性ポリマー系で使用される一般的なその他の成分を、本発明の組成物及び素子と共に使用してもよい。そのような成分としては、以下のものが挙げられる;蛍光増白剤、紫外線吸収物質、熱安定剤、水素供与体、酸素捕捉剤、及び剥離剤。それらの添加剤に、ポリマー又はコポリマーがさらに含まれてもよい。
有用な蛍光増白剤としては、米国特許第3,854,950A号公報に開示されているものが挙げられる。好ましい蛍光増白剤は、7-(4’-クロロ-6’-ジエチルアミノ-1’,3’,5’-トリアジン-4’-イル)アミノ-3-フェニルクマリンである。本発明において有用な紫外線吸収物質はさらに、米国特許第3,854,950A号公報にも開示されている。
【0044】
有用な熱安定剤としては、以下のものが挙げられる;ヒドロキノン、フェニドン、p-メトキシフェノール、アルキル-及びアリール-置換されたヒドロキノン及びキノン、tert-ブチルカテコール、ピロガロール、樹脂酸銅、ナフチルアミン、β-ナフトール、塩化銅(I)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、フェノチアジン、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-トルキノン、及びクロラニル。米国特許第4,168,982A号公報に記載されているジニトロソ-ダイマーもまた、有用である。典型的には、光重合性組成物を貯蔵する際の安定性を向上させるために、熱重合禁止剤も存在させる。
連鎖移動剤として有用な水素供与体化合物としては、以下のものが挙げられる;2-メルカプトベンズオキサゾール、2-メルカプトベンゾチオアゾールなど、さらには米国特許第3,390,996A号公報(ここで、特別に参照する)の第12カラム、18~58行に開示されているような、各種のタイプの化合物、たとえば、(a)エーテル、(b)エステル、(c)アルコール、(d)アリル性又はベンジル性水素を含む化合物たとえばクメン、(e)アセタール、(f)アルデヒド、及び(g)アミド。
剥離剤として有用であることが見出された化合物が、米国特許第4,326,010A号公報に記載されている。好ましい剥離剤は、ポリカプロラクトンである。
【0045】
光重合性組成物は、以下のものを含む群から選択される1種又は複数のポリマー性バインダーがさらに含まれていてもよい:ポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、ポリビニルエステルたとえば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル/アクリレート、ポリ酢酸ビニル/メタクリレート、及び部分加水分解されたポリ酢酸ビニル、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル/カルボン酸エステルコポリマー、塩化ビニル/アクリル酸エステルコポリマー、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール、ブタジエン及びイソプレンのポリマー及びコポリマー、並びに約1,000~1,000,000g/molの平均分子量を有するポリグリコールのポリエチレンオキシド、エポキシドたとえば、アクリレート又はメタクリレート残基を含むエポキシド、ポリスチレン、セルロースエステルたとえば、セルロースアセテート、セルロースアセテートスクシネート、及びセルロースアセテートブチレート、セルロースエーテルたとえば、メチルセルロース及びエチルセルロース、重縮合物たとえば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドたとえばN-メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド、ポリイミド、ポリウレタン。上述のポリマー性バインダーは、たとえば、その組成物の合計重量を基準にして、0.001~10重量%の量で使用することができる。
【0046】
その光重合性組成物にはさらに、1種又は複数の以下のものが含まれていてもよい:湿潤剤(具体的には、フルオロカーボンポリマー、たとえばSchwego-Fluor 8038(商標)、又はフルオロ界面活性剤たとえば、3M Fluorad FC-4430(商標))、レベリング剤(具体的には、グリコール酸n-ブチルエステル、又はポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンたとえば、ADDID 130(商標))、消泡剤(具体的には、フルオロシリコーンオイルをベースとする消泡剤たとえば、ADDID 763(商標))、接着促進剤(具体的には、ジアミノ-トリメトキシ官能性シラン接着促進剤たとえば、ADDID 900(商標)、又はグリシジルトリメトキシ三官能シランカップリング剤たとえば、ADDID 911(商標)、ビニルトリエトキシシラン、又は3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)、又は表面添加剤(具体的には、ポリエーテル変性アクリル官能性ポリジメチルシロキサンたとえば、BYK-UV 3500(商標)、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンたとえば、BYK-UV 3510(商標)、又はポリエーテル変性アクリル官能性ポリジメチルシロキサンたとえば、BYK-UV 3530(商標))。「ADDID」又は「BYK」の商品名を付けた製品は、それぞれ、Wacker Chemie及びBYK Chemieから入手可能である。
その光重合性組成物にはさらに、ナノスケールの粒子たとえば、TiO2、SiO2、又はAuを含んでいてもよいが、それらは、モノマーと結合されていてもよい(そのような物質は、たとえば、商品名「Nanocryl」として入手可能である)。
【0047】
好ましくは、その添加剤をアミン相乗剤とすることも可能である。アミン相乗剤を他の光重合開始剤と組み合わせると、UVコーティングの硬化速度を高めることができる(参照:独国特許第60216490T2号公報)。
好ましくは、その添加剤をペルオキシドとすることができる。加熱活性化が可能なペルオキシドは、他の光重合開始剤と組み合わせて、特に影の領域(shaded area)でのUVコーティングの硬化性を改良することができる(参照:米国特許第5017406A号公報又は独国特許第60030223T2号公報)。
好ましくは、その添加剤を、蛍光顔料又はランタニド化合物から選択されるマーカーとすることも可能である。たとえば、ユウロピウム又はテルビウムのトリスジピコリネート錯体を、ランタニド化合物として使用することもできる。
【0048】
本発明の目的では、マーカーとは、追跡の目的で(forensically)検出可能な実体であり、それを使用して、製品の信憑性又は出所又はそのメーカー又は販売業者を求めることができると理解されたい。作成される層が十分に厚くて、相当するミクロ粒子を埋め込めるようならば、小さな個別認識用(individualised)の粒子、着色したミクロプラスチック(追跡用添加物として知られている)を導入することもまた可能である。
その光重合性組成物が、標準的な圧力、20℃~150℃、より好ましくは25℃~120℃の範囲で、液状であるのが好ましい。
【0049】
さらなる実施態様においては、本発明には、本発明における光重合性組成物を(化学線)UV/VIS照射に露光させることにより得ることが可能な成分を含む素子が含まれる。
本発明における素子に、透明な及び/又は半透明領域を有する成分が含まれているのが好ましい。
光重合性組成物を、最大で50mW/cm2の光源に、少なくとも1秒~5分、好ましくは2秒~2分の時間露光させると、それを乳白色にさせることができる。そのようにして得られる結果が、艶消し(frosted)スクリーンであって、その散乱性能は、選択される露光方法(時間、強度、温度など)によって、特異的且つ局所的に変えることができる。露光のために、コヒーレントなレーザー光(スペックル)を使用するか、或いは白色光又はUV光を使用するかででも、差を付けることができる。そのスペックルのサイズを使用して、たとえば、粒状性を選択的に調節することができる。達成可能な分解能は、極めて高い。したがって、透明及び/又は半透明な領域を含む成分を、好ましくは、備えることができる。
したがって、マスク露光を用いると、各種のストラクチャー、テキスト、及びイメージを作成することが可能であり、それらは、ホログラフィック複製とは独立して、それらの艶消し度を介して認識することができる。
【0050】
さらなる実施態様においては、本発明は、フィルム、レンズ、格子、プリズム、ミラー、ビームスプリッター、ディフューザー、表面レリーフ、光学スイッチ、又はセンサーとしての、本発明における素子の使用に関する。
指向性のビーム及びラインパターンを用いて露光させることにより、層の中で、垂直又は斜めに規則的な間隔を有する乳白色ラメラを露光させて、ルーバー状のフィルムを作り出すことができる。このフィルムは、露光の角度に相当する方向では透明であるが、それ以外では乳白色である。そのようなフィルムは、たとえば、スクリーンのための目の保護フィルムとして使用することができる。
【0051】
まだ露光されていない領域を、ホログラム的な方法で、すばやく且つ透過的に光線に露光させることによって、全体を、ホログラフィック的な性質と組み合わせることができる。そのようにして得られたフィルムを、次いで、たとえば、ある種の角度の照明に反応させる。ビームの屈折と散乱とを協調させることができる。次々と塗布され、別々に露光された複数の層を使用することも考えられる。
それに加えて、表面、たとえばレンズ構造を同時に成形することも可能である。このようにすると、たとえば、一つのLEDアレイからの光を束ね、それを指向性の光束とし、そしてレンズ形のアレイにはないLEDからの他の光を散乱光として、再生させたような構造を作り出すことができる。この散乱は、レンズビームの経路の外側の艶消し領域によって増幅させることができる。艶消しの壁を有するハニカム構造を使用することも、一つの可能な実施態様であろう。
【0052】
一つの用途は、天然の空を模して、直接的な、指向性のホワイト-イエローの日光と同時にブルーの散乱光を放出する光源であろう。この人工的な「スカイライト」のLEDアレイは、言うまでもないことであるが、スクリーンの場合のように、その輝度と色彩をさらに変化させて、各種の照明モード、1日での時刻、曇り空、流れていく雲などを模することできるであろう。
反射ホログラムによって、指向性の白色光ビームからブルー光をフィルターにかけて、散乱中心又は表面に向かわせることも可能であろう。重合性組成物を用い、単回の露光プロセス又は、複数の層で塗布と露光の繰り返しを組み合わせることによって、これらの全部、すなわち、インプレッション、光束化、散乱、及びホログラムを実現させることができる。
【0053】
指向光及び拡散光は、自動車においても必要である。道路を照らすヘッドライトのための指向光、及び、たとえば、ウインカー、ブレーキランプ、又は後退ランプのための、広い角度範囲で、他の道路使用者に見えるようにする拡散光である。先に挙げ、説明したような特定のフィルムを使用することによって、たとえば、ヘッドランプの全表面上で、指示器の役割も果たせるように、ヘッドランプを構築することも可能であろう。ヘッドランプが、指向性のヘッドランプ光と、必要があれば、それと同時に、全方向に拡散するイエローライトとを放出することができるであろう。
特に好ましいのは、本発明における光重合性組成物を、ホログラム情報を担持する変調された放射線に暴露させることにより得ることが可能な、ホログラムを含む本発明による素子である。
【0054】
ホログラムは、一般的には、キャリヤー基板又は複写テンプレートの上に塗布された光重合性組成物の層を、ホログラム情報を担持する変調された放射線に暴露させることによって、作成される。本発明における素子を作成するためのキャリヤー基板は、ガラス、プラスチック、特には、PET、PP、PMMA、ポリカーボネート、又はセルロースのジ-若しくはトリアセテート、又は紙であってよい。露光の際には、その光重合性組成物は、たとえば、2枚のガラス板の間に位置させるのがよい。
本発明は、本発明における素子又は本発明における光重合性組成物を調製するためのプロセスに関し、そこでは、その素子又は組成物が、100℃よりも高い温度及び2barよりも高い圧力にかけられる。
【0055】
本発明はさらに、基板表面又はコピー原版の上の光重合性層の中に光安定性のホログラムを形成させる方法にも関し、本発明における光重合性組成物の層を、ホログラム情報を含む変調された放射線に暴露させることを含む。
特に好ましいのは、そのホログラムが、膨潤剤を用いて処理される、ホログラムを含む素子である。膨潤剤は、本発明においては、拡散の手段であり、そして反射ホログラムの場合においては、反射光をより高い波長へスペクトル的にシフトさせることによって、ホログラムの膨潤を起こさせる物質である。
たとえば、グリーンの反射ホログラムを、レッドのものに転換させることができる。
同じ方法を、フラッシュライトの場合にも使用することができる。塗布された物質が蒸発し、電光のように、層に浸透する。驚くべきことには、この現象は、その感光性ポリマー層がすでに、UVワニス層によってシールされる時でも起きる。
【0056】
驚くべきことには、これを使用して、次いで、仕上がったホログラムを個別認識することができる。膨潤剤は、たとえば、一般的なインクジェット印刷方式を使用して塗布される。それに続けての強烈なUVフラッシュのために、その有効物質が蒸発して、それが塗布された所で浸透することによって、そのホログラムの中で、膨潤と局所的な色の変化をもたらす。その導入される情報は、たとえば、画像、数字、刻印(inscription)であってよい。これらの変化は、逆戻りはできず、ホログラムのみに影響するので、この迅速で単純なプロセスは、IDカード、シール、又はビネットの偽造防止を進める良い方法である。特に、発行の時点で個別認識されている製品の場合、これを実施するのが容易でなければならない。
【0057】
インクジェットプリンター及びフラッシュに代えて、色素-昇華型プリンターでも使用可能であるが、そこでは、適切なプリンターリボンにより、膨潤物質を蒸発させる。
厚い層の場合、濃度勾配が起こりうる。そうなると、浸透させた物質が、奥の方の層よりも上側の層で膨潤する。このことは、吸収スペクトルにおける吸収ピークの広がりをもたらす。膨潤領域が突然終わり、膨潤の強度が、徐々に低下しないような場合には、二重ピークも起こりうる。
ピークが広がるということは、より長い波長範囲が反射されること、そしてある種の波長での再現角度が、より広くなるということを意味している。ホログラムのこれら重要なパラメーターを後になって変化させることが可能であるということは、多くの技術用途、たとえば、より大きな再現角度又は観察角度で機能しなければならないHUDで有用である。
【0058】
ホログラム層を、膨潤剤を含む物質と接触状態にすることもまた可能である。これが、たとえば、可塑剤、たとえばトリエチレングリコールジエチルヘキサノエート(3G8)の高い含量を有するPVBフィルムであってもよい。使用される膨潤剤及びその膨潤剤を含み、放出することが可能な、ホログラムに塗布された層に依存して、ホログラム層の中へ拡散させた後に、温度に応じて、その濃度を変化させることが可能であるのは、その二つの層間の拡散平衡及び濃度勾配には、温度依存性があるからである。吸収ピークのシフトに伴い、ある波長での再現角度も変化し、そのためこの可逆効果を、センサー又は光スイッチとして利用することができる。
この影響が望ましくないのならば、たとえば、積層ガラスの中で、好ましくは、そのホログラムにシーラントたとえばUVワニスを、塗布することも可能であって、それが拡散してくる物質に対する保護及びバリヤー層として機能する。
特に好ましいのは、ヘッドアップディスプレイ、積層ガラス、データガラス、光誘導システム、分光計、検出システム、安全用素子、又はラベルでの本発明における素子の使用である。
【実施例】
【0059】
【0060】
以下において、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。第1表に記載の組成物は、従来技術から公知のものである。
【0061】
【0062】
上記組成物は、欧州特許1779196B1号公報からも公知である。
本発明による実施例
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
サンプルA、B、及びCの露光のために、先に示したモノマー含有混合物及び色素濃縮物から、以下の光重合性組成物を調製した。サフラニン-Oを抜いた第1表記載の公知の配合物を、比較例として使用した。サフラニン-Oに代えて、メチレンブルーを含む色素濃縮物FK2を、混合物Aに添加した。
サンプルD、E、及びFは、UV光のみを用いて硬化させた。したがって、色素濃縮物に代えて、UV光重合開始剤のOmnirad 1173のみを添加した。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
光重合性組成物A、B、及びCを、20℃~21℃の温度範囲で、577nmの波長を有するレーザーに露光させた。その光重合性組成物を、オーブン中、80℃で保存し、塗布後直ぐに露光させた。レーザー露光及びUV硬化の後で、分光計を使用し、そのスペクトル吸収曲線に基づいて、回折効率(BWG)を求めた。その層の厚みは、デジタルマイクロメーターを用い、マイクロメーターゲージの外側で測定した。
露光依存性のヘーズ効果を示すために、サンプルD、E、及びFを、UV光源を用い、各種の強度で硬化させた。高速硬化のためには、上述のUVブリッジをここでも使用した。硬化させるには、もっと短い時間でも十分ではあるが、サンプルを30秒間照射した。低速露光のためには、HamamatsuのUVスポット光源のLC6を使用した。そのUV光は、フレキシブルな光導波路の末端で、3.5W/cm2の強度で放射される。出口から6cmの距離のところで、120秒間サンプルを露光させた。その後で、安全を見て、UVブリッジの下で、それらをさらに30秒間、後硬化させた。
【0076】
【0077】
UV露光のための光重合性組成物は、21℃の室温に保った。第一の露光の場合のみ、標準物質Dを26℃に保ち、加工した。物質Dを用いた21℃での第二の露光が、急速露光にも関わらず70%の高いヘーズ値を有しているが、その理由は、この温度では、その液体配合物が、既に乳白色であるからである。
【0078】
露光の構成
1.43Wの実測出力を有するレーザービームを、多面鏡スキャナーを用いて水平に拡張させ、円柱レンズにより集束させて、それが23cmの露光幅をカバーするようにした。
図2に、露光装置を模式的に示す。
図2での参照符号:
1 レーザー 577nm
2 ミラー
3 多面鏡スキャナー
4 円柱レンズ
5 走査ビーム
6 スキャナーミラー
それぞれのサンプルを、このラインで、可動ミラーを用いてスキャンし、露光させた。移動速度は、9mm/秒に設定した。レーザービームは、サンプル表面上に、22度~垂直の角度で当たった。
【0079】
図3に、ビームの経路を示す。
図3での参照符号:
1 走査ビーム 577nm
2 スキャナーミラー
3 露光方向
4 露光角度、22度
5 基板、ガラス又はフォイル
6 感光性ポリマー(光重合性組成物)
7 原版、ミラープレート
反射ホログラムを作成するために、サンプル物質を、レーザー光を反射するミラープレートに塗布した。入射ビームと反射ビームとの干渉により、ミラーの表面に対して平行に、明と暗のスポットのラインパターンが形成される。この干渉縞が、屈折率変調の形式でその物体に記録され、いわゆるLippmann-Braggホログラムが作り出される。
【0080】
レーザー露光を使用する場合、その感光性ポリマー層は、ミラープレートと、透明な基板たとえば、PETフィルム又はガラスとの間にある。それらの例では、目的とするガラス基板を使用した。そのガラスを使用して、ミラープレートに塗布された液滴を覆った。層厚は、その液滴の量及びその液滴の広がりで決まる。その円形の広がりの大きさは、接触圧、温度、及び流動時間で調節することができる。所望の層厚を達成するために、スペーサーを使用することも可能である。レーザー露光の後で、UV光を使用してその物質を硬化させる。第一の硬化ステップでは、本発明者らは、出力3000WSのUVフラッシュを使用する。そのプレートから、キャリヤーと共にホログラムを取り外すには、これで十分である。ガラスに対する接着性を確保するためには、プライマーを用いた前処理をするべきである。
サンプルを最終的に硬化させるために、本願発明者らは、アーク長さ70mm、出力120W/cmを有するUVブリッジを、露光時間30秒で使用する。
【0081】
測定装置
それらのサンプルを、透過光中で、分光計(CAS 140B、Instrument Systems製)を用いて測定した。これは、垂直照明を用いて実施した。ホログラムは、Bragg条件を満たす波長のみを反射するので、この時点では、スペクトル曲線には、クリアな吸収ピークが認められる。
ピーク値TPeakと、近傍の上側ベースラインの参照値TRefとから、回折効率(BWG)ηが、次式で計算される;
η=(TRef-TPeak)/TRef
【0082】
図4に、サンプルCの、相当する測定点での測定曲線を示す。
露光の表の値(第12表)の示すところでは、全部のサンプルが、100μmを超える層厚では、80%よりも高い回折効率を達成している。本発明における光重合性組成物B及びCの露光では、比較混合物Aよりもさらに高い値が達成されている。
UV露光サンプルD、E、及びFのヘーズ値を、ASTM D1003の標準的な手順に従い、ヘーズ計(haze-gard i、BYK製)で、4mmの開口絞りを使用して測定した。表の値(第13表)は、露光強度を変えると、異なった濁り度が達成されるということを示している。層厚が約0.9mmの場合、その差を、70%よりも大きくすることができる。比較サンプルDの二つの測定は、露光温度もまた影響するということを示している。本発明組成物のE及びFとは対照的に、液状の比較混合物Dは、21℃でクリアではない。
【0083】
作成
図1に、本請求項記載の光重合性組成物から、シールされたホログラフィック接触転写物を作成するための、コンパクトなロール-トゥ-ロールマシンの、模式的な構成を示す。
【符号の説明】
【0084】
図1での参照符号:
1 貯蔵容器
2 フィルター及び脱気器
3 計量供給ユニット
4 支持フォイル
5 感光性ポリマー(光重合性組成物)
6 ホログラム付きの支持フォイル
7 フォイルの巻出し
8 レーザー光
9 原版
10 UV光
11 フォイル巻上器
【手続補正書】
【提出日】2023-03-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV/VIS照射により硬化可能な光重合性組成物であって、
a)25~74.9重量%の、少なくとも1種の、少なくとも1種のエチレン性不飽和基を含むモノマーM、又は異なったエチレン性不飽和基を含む、少なくとも2種のモノマーMを含むモノマーの混合物
b)25~74.9重量%の、単一の脂肪族ウレタンアクリレート、又は異なった脂肪族ウレタンアクリレートの混合物、
c)0.1~10重量%の、化学線照射に暴露させることにより、前記モノマー及びウレタンアクリレートの重合を活性化させる光重合開始剤;
を含み、
前記光重合性組成物が、標準的な圧力、15℃~150℃の範囲で液状であ
り、屈折率変調光学素子のための記録材料として適している、
光重合性組成物。
【請求項2】
20℃での、成分a)の屈折率と成分b)の屈折率の間の差が、少なくとも0.02である、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、色素、及び共重合開始剤としてのホウ酸塩を含む、請求項1又は2に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
前記共重合開始剤が、テトラヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニルヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリス-(3-フルオロフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、及びトリス-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
成分a)が、ビスフェノールAジアクリレートを、成分a)の合計重量を基準にして、25重量%より多い量で含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
前記光重合性組成物の20℃での粘度が、少なくとも2000mPa・sである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
成分b)が、脂肪族ウレタンジアクリレート樹脂又は二官能の脂肪族ウレタンジアクリレート樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
素子であって、請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物をUV/VIS放射線、好ましくは活性なUV/VIS放射線に暴露させることによって得られる成分を含む、素子。
【請求項9】
透明及び/又は半透明な領域を有する成分を含む、請求項8に記載の素子。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物を、ホログラム情報を含む変調された放射線に暴露させることにより得ることが可能なホログラムを含む、請求項8又は9に記載の素子。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の前記素子の使用であって、フィルム、レンズ、格子、プリズム、ミラー、ビームスプリッター、ディフューザー、表面レリーフ、光スイッチ、又はセンサーとしての、使用。
【請求項12】
請求項8~10のいずれか1項に記載の前記素子の使用であって、ヘッドアップディスプレイ、積層ガラス、データガラス、光誘導システム、分光計、検出システム、安全用素子、又はラベルのための、使用。
【請求項13】
請求項8~10のいずれか1項に記載の素子、又は請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物を調製するためのプロセスであって、前記素子又は組成物が、100℃より高い温度及び2barよりも高い圧力にかけられる、プロセス。
【請求項14】
基板表面又はコピー原版の上で、光重合性層の中に光安定性のホログラムを形成させる方法であって、請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物の層を、ホログラム情報を担持する変調された放射線に暴露させることを含む、方法。
【請求項15】
プロセスであって、請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物を塗布し、1分以内に露光させる、プロセス。
【国際調査報告】