(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・プランタルムGB104株及びそれを含むがんの予防又は処置のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240306BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240306BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240306BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240306BHJP
A23K 10/18 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C12N1/20 E
A23L33/135
A23K10/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549033
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 KR2022003890
(87)【国際公開番号】W WO2022203303
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036881
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522207143
【氏名又は名称】ジーアイ バイオーム
【氏名又は名称原語表記】GI BIOME
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ミュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ボ‐ギー
(72)【発明者】
【氏名】キム, ア‐ラム
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150AC06
4B018MD86
4B018ME08
4B065AA30X
4B065AC20
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本発明は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104株(受託番号:KCTC 14107BP)及び活性成分としてそれを含むがんの予防又は処置のための組成物に関する。本発明によるラクトバチルス・プランタルムGB104株は、INF-γ及びグランザイムBの産生を増加させ、並びに細胞傷害性T細胞及びNK細胞などの免疫細胞を活性化し、それによって、腫瘍の形成及び成長を最終的に阻害することができる。したがって、活性成分として本発明のラクトバチルス・プランタルムGB104株を含む組成物は、身体における免疫活性を増加させ、したがって、がん疾患の処置のために有効に利用することができ、高度に工業的に適用可能である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを予防又は処置するための医薬組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104(L.plantarum(L.プランタルム)GB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記株又はその培養産物が、腫瘍形成に対する阻害効果を示す、請求項1に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項3】
前記株が、免疫賦活効果を示す、請求項1に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項4】
前記がんが、大腸がん、胃がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、咽頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、黒色腫、膀胱がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん及びリンパ腫からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項5】
がんを予防又は阻害するための食品組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、食品組成物。
【請求項6】
がんを予防又は阻害するための飼料組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、飼料組成物。
【請求項7】
がんを予防又は処置するための方法であって、ラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を人間以外の対象に投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104株(受託番号:KCTC 14107BP)及び活性成分としてそれを含むがんを予防又は処置するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に、がんは、主要な健康上の問題の1つと考えられる。がんの中でも、大腸がんは、世界的に最も一般的な悪性腫瘍の第4位であり、がん死亡の原因の第3位である。韓国における大腸がんの統計を見ると、これは1970年代以前には一般的な疾患ではなかったが、大腸がんの発生率は、食事が現代において西洋化するにつれて徐々に増加している。現在、外科手術は、他の消化器系がんと同様に大腸がんのための最も有効な処置方法である。早期ステージ1からステージ3までの生存率は、70~90%の範囲であるが、生存率は、末期ステージ4では15%に急激に低下する。
【0003】
多くの抗がん剤が、大腸がんの処置のために臨床的に開発されているが、その長期使用は、多くの副作用を引き起こす。例えば、フルオロウラシルが、好中球減少症、口内炎及び下痢を引き起こすこと、イリノテカンが、骨髄抑制、悪心及び脱毛症を引き起こすこと、並びにオキサリプラチンが、感覚異常及び腎臓機能障害を引き起こすことが報告されている。この状況において、がんの早期の予防及び処置を可能にすることによって、ヒトの健康の改善、健康的な生活の質の改善、及びヒトの幸福の促進に寄与し得る抗がん物質を作出する緊急の必要性が存在する。
【0004】
他方で、乳酸菌は、ヒト及び動物の口腔、腸、膣及び糞便、並びにキムチなどの発酵食品に広く分布しており、ヒト及び動物の健康に密接に関連している。乳酸菌は、整腸、有害細菌の抑制、免疫調節、血液コレステロールの低下及び抗がん効果などのさまざまな健康促進効果を示す。
【0005】
現在、韓国特許出願公開第10-2015-0068061号は、ラクトバチルス・プランタルムPNU(KCCM11352P)又はラクトバチルス・メゼンテロイデス(Lactobacillus mesenteroides)PNU(KCCM11353P)の抗がん活性を開示しており、韓国特許登録第10-1287120号は、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムDSR CK10(受託番号:KFCC-11433P)又はラクトバチルス・プランタルムDSR M2(受託番号:KFCC-11432P)を含有するがんを処置するための医薬組成物を開示している。しかしながら、その効果は、商業的成功のレベルに達していない。
【0006】
したがって、優れた抗がん効果を有する新たな株に対する継続的な研究に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明者らは、優れた抗がん効果を有する新たな株を開発するために研究し、その結果として、ラクトバチルス・プランタルムGB104株(受託番号:KCTC 14107BP)が、優れた抗がん効果を示したことを見出した。上記に基づいて、本発明者らは、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様において、がんを予防又は処置するための医薬組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルム(L.plantarum)GB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明の別の態様において、がんを予防又は阻害するための食品組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、食品組成物が提供される。
【0010】
本発明の別の態様において、がんを予防又は阻害するための飼料組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、飼料組成物が提供される。
【0011】
本発明の別の態様において、がんを予防又は処置するための方法であって、ラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を人間以外の対象に投与するステップを含む、方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるラクトバチルス・プランタルムGB104株(受託番号:KCTC 14107BP)は、がん細胞株又はがん細胞株を移植されたマウスモデルにおいて、INF-γ及びグランザイムBの産生を増加させ、並びに細胞傷害性T細胞及びNK細胞などの免疫細胞を活性化し、それによって、腫瘍の形成及び腫瘍の成長に対する阻害効果を最終的に示す。したがって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104株を含む本発明の組成物は、がん疾患を予防、改善又は処置するために有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】それぞれヒト大腸がん細胞株HCT116及びHT-29において、L.プランタルムGB104株又は一般的な乳酸菌1(L.Fermentum(L.ファーメンタム)GB102)での処置後、コロニー形成能力を確認することによって得られた結果を図示する。ここで、(-)は、陰性対照群として任意の株で処置されていない群である。
【
図2】それぞれヒト大腸がん細胞株HCT116及びHT-29において、L.プランタルムGB104株又は一般的な乳酸菌1(L.ファーメンタムGB102)での処置後、陰性対照群に対するパーセンテージ(%)でのコロニー形成能力を示すグラフである。
**P<0.01
【
図3】それぞれヒト大腸がん細胞株HCT116及びHT-29において、L.プランタルムGB104株又は一般的な乳酸菌1(L.ファーメンタムGB102)の培養溶液での処置後、コロニー形成能力を確認することによって得られた結果を図示する。
【
図4】それぞれヒト大腸がん細胞株HCT116及びHT-29において、L.プランタルムGB104株又は一般的な乳酸菌1(L.ファーメンタムGB102)の培養溶液での処置後、陰性対照群に対するパーセンテージ(%)でのコロニー形成能力を示すグラフである。
**P<0.01;
***P<0.001
【
図5】マウス由来大腸癌CT-26動物モデルにおいて、一般的な乳酸菌1(L.ファーメンタムGB102)、一般的な乳酸菌2(L.ファーメンタムGB103)又はL.プランタルムGB104株のがん予防効果を確認するための実験スケジュールを示す図である。
【
図6】マウス由来大腸癌CT-26動物モデルにおいて、それぞれ一般的な乳酸菌1(L.ファーメンタムGB102)、一般的な乳酸菌2(L.ファーメンタムGB103)及びL.プランタルムGB104株による投与後に腫瘍サイズ及び成長の度合いを測定することによって得られた結果を示すグラフである。
*P<0.05
【
図7】マウス由来大腸癌CT-26動物モデルにおいて、陰性対照群及びL.プランタルムGB104株で処置された群からの個々の実験動物の腫瘍サイズ及び成長の度合いを測定することによって得られた結果を示すグラフである。
【
図8】マウス由来大腸癌CT-26動物モデルにおいて、一般的な乳酸菌3(L.ヘルベティカス(L.Helveticus)MG585)又はL.プランタルムGB104株の抗がん活性を確認するための実験スケジュールを示す図である。
【
図9】マウス由来大腸癌CT-26動物モデルにおいて、それぞれ一般的な乳酸菌3(L.ヘルベティカスMG585)及びL.プランタルムGB104株による投与後に腫瘍サイズ及び成長の度合いを測定することによって得られた結果を示すグラフである。
**P<0.01
【
図10】マウス由来大腸癌CT-26動物モデルにおいて、陰性対照群及びL.プランタルムGB104株で処置された群からの個々の実験動物の腫瘍サイズ及び成長の度合いを測定することによって得られた結果を示すグラフである。
【
図11】マウス由来大腸癌CT-26動物モデルにおいて、L.プランタルムGB104株での処置後の腫瘍重量を測定することによって得られた結果を示すグラフ(左)、及び陰性対照群と比較した腫瘍サイズを示す写真(右)である。
*P<0.05
【
図12】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、L.プランタルムGB104株の抗がん活性を確認するための実験スケジュールを示す図である。
【
図13】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、L.プランタルムGB104株による投与後に腫瘍サイズ及び成長の度合いを測定することによって得られた結果を示すグラフである。
**P<0.01
【
図14】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、L.プランタルムGB104株での処置後に腫瘍重量を測定することによって得られた結果を示すグラフである。
*P<0.05
【
図15】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、陰性対照群及びL.プランタルムGB104株で処置された群からの個々の実験動物の腫瘍サイズ及び成長の度合いを測定することによって得られた結果を示すグラフである。
【
図16】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、L.プランタルムGB104株による投与後の早期ステージの腫瘍組織及び末梢血における免疫細胞の変化を確認するための実験スケジュールを示す図である。
【
図17】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、L.プランタルムGB104株による投与後に早期ステージの腫瘍組織における免疫細胞の変化を分析することによって得られた結果を示すグラフである。
*P<0.05;
****P<0.0001
【
図18】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、L.プランタルムGB104株による投与後に早期ステージの末梢血における免疫細胞の変化を分析することによって得られた結果を示すグラフである。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001
【
図19】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、それぞれ一般的な乳酸菌4(L.プランタルムGBCC_f0057)及びL.プランタルムGB104株による投与後の後期ステージの腫瘍組織における免疫細胞の変化を確認するための実験スケジュールを示す図である。
【
図20】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、それぞれ一般的な乳酸菌4(L.プランタルムGBCC_f0057)及びL.プランタルムGB104株による投与後に腫瘍サイズ及び成長の度合いを測定することによって得られた結果を示すグラフである。
*P<0.05
【
図21】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、陰性対照群及びL.プランタルムGB104株で処置された群からの個々の実験動物の腫瘍サイズ及び成長の度合いを測定することによって得られた結果を示すグラフである。
【
図22】マウス由来大腸癌MC-38動物モデルにおいて、それぞれ一般的な乳酸菌4(L.プランタルムGBCC_f0057)及びL.プランタルムGB104株による投与後の後期ステージの腫瘍組織における免疫細胞の変化を分析することによって得られた結果を示すグラフである。
*P<0.05;
**P<0.01
【発明を実施するための形態】
【0014】
L.プランタルムGB104株又はその培養産物を含む医薬組成物
本発明の一態様において、がんを予防又は処置するための医薬組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、医薬組成物が提供される。
【0015】
本明細書において使用される場合、「ラクトバチルス(Lactobacillus)」という用語は、天然に広く分布するバチルス(Bacillus)属の好気性又は通性嫌気性のグラム陽性微生物であり、ラクトバチルス属に属する微生物は、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)などを含む。
【0016】
優れた抗がん効果を有する新たな株を開発するための研究の結果として、本発明者らは、抗がん候補株として、ラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)を選択した。株は、KCTC 14107BPの受託番号で、2020年1月14日に、Korean Collection for Type Cultures、韓国生命工学研究院に寄託され、新たな株の特許出願は、韓国特許出願第10-2020-0186738号として出願された。株は、生菌株であり、ヒトの身体に対して無害であり、副作用なく使用することができる。
【0017】
本明細書において使用される場合、「ラクトバチルス・プランタルムGB104」という用語は、L.プランタルムGB104、ラクトバチルス・プランタルムGB104又はラクトバチルス・プランタルムGB104株(受託番号:KCTC 14107BP)として互換的に記載することができる。
【0018】
L.プランタルムGB104株(受託番号:KCTC 14107BP)は、上記に記載されたものと同じである。この場合において、株は、生存細胞、死細胞、又は株を破壊することによって得られた細胞質画分であってもよく、株は、好ましくは、生存細胞であってもよい。
【0019】
本明細書において使用される場合、「培養産物」という用語は、公知の培地中で生菌株を培養することによって得られた産物を指し、産物は、株自身を含んでいてもよく、又は含んでいなくてもよい。培地は、公知の液体培地又は固体培地から選択され得る。例えば、培地は、MRS液体培地、GAM液体培地、MRS寒天培地、GAM寒天培地、BL寒天培地であってもよいが、これらに限定されない。
【0020】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、治療有効量又は栄養有効濃度で、活性成分としてL.プランタルムGB104株又はその培養産物を含む。組成物は、104~1016CFU/g、好ましくは106~1012CFU/gの量の活性成分を含むか、又は等しい数の生存細胞を含有する培養産物を含む。一般に、成人患者に対して、1×106CFU/g以上、好ましくは1×108~1×1012CFU/gの量の生存細胞が、1回又はいくつかの分割用量で投与されてもよい。
【0021】
本発明の株は、腫瘍形成を阻害することができる。加えて、株は、免疫細胞を活性化する。
【0022】
本明細書において使用される場合、「免疫」という用語は、生物において病原体及び腫瘍細胞を検出及び無能力化することによって疾患から生きている生物を保護する機構を指す。「免疫賦活」は、がん及び炎症などのさまざまな疾患に対する身体の防御機構を増強する一連の治療的又は予防的戦略の全てを含み得る。
【0023】
本発明の一実施形態において、大腸がん細胞株が、株又は株が除去された培養溶液で処置された場合、腫瘍細胞コロニーの形成は、陰性対照群と比較して、有意に低減された(
図1~4)。加えて、マウス由来大腸がん細胞株がマウスに皮下移植された時から株を投与することによる腫瘍形成の度合いを調べた結果として、腫瘍形成が、陰性対照群と比較して阻害されたことを確認した(
図5~7)。加えて、ある特定のサイズを有する腫瘍が形成された腫瘍動物モデルにL.プランタルムGB104株を投与することによる腫瘍の成長を調べた結果として、腫瘍成長速度が、陰性対照群と比較して有意に低減されたことを確認した(
図8~22)。この場合において、腫瘍組織及び血液における細胞傷害性T細胞及びNK細胞の数が有意に増加し、免疫細胞におけるIFN-γ及びグランザイムBの分布が増加した(
図17、18及び22)。上記の一連の結果を通して、株が、免疫賦活効果、並びに腫瘍形成及び腫瘍成長に対する阻害効果を有していたことを見出した。
【0024】
医薬的使用
活性成分としてL.プランタルムGB104株又はその培養産物を含む本発明によるがんを予防又は処置するための医薬組成物は、がんの処置及び/又は予防の有効性を増加させることができる。ここで、L.プランタルムGB104株及びその培養産物は、上記に記載されたものと同じである。
【0025】
がんは、大腸がん、胃がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、咽頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、黒色腫、膀胱がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん及びリンパ腫からなる群から選択されてもよいが、それらに限定されない。
【0026】
本発明によるがんを予防又は処置するための医薬組成物において、活性成分は、それが抗がん活性を示し得る限り、使用、製剤、配合目的などに応じて任意の量(有効量)で含まれ得る。典型的には、L.プランタルムGB104株の有効量は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~20.0重量%の範囲内で決定される。ここで、「有効量」は、抗がん効果を誘導することができる活性成分の量を指す。このような有効量は、当業者の一般的な技能内で実験的に決定することができる。
【0027】
本明細書において使用される場合、「処置」という用語は、治療的処置及び予防的処置の両方を含めるために使用され得る。この場合において、予防は、対象における病態又は疾患を軽減又は低減する意味で使用され得る。一実施形態において、「処置」という用語は、人間を含む哺乳動物において疾患を処置するための投与又は適用の任意の形態を含む。加えて、「処置」という用語は、疾患若しくは疾患の進行を阻害又は遅延させることを含み、損傷した若しくは失った機能を回復又は修復し、それによって、疾患を部分的又は完全に軽減する、或いは非効率的なプロセスを刺激する、或いは重篤な疾患を軽減する意味を含む。
【0028】
本明細書において使用される場合、「有効性」という用語は、1年、5年又は10年などのある一定の期間にわたる生存期間又は無病生存期間などの1つ又は複数のパラメーターによって決定することができる。加えて、パラメーターは、対象における少なくとも1つの腫瘍のサイズの阻害を含み得る。
【0029】
生物学的利用率などの薬物動態パラメーター及びクリアランス速度などの基礎パラメーターも有効性に影響を及ぼし得る。したがって、「増強された有効性」(例えば、有効性の改善)は、増強された薬物動態パラメーター及び増強された有効性に寄与し得、試験動物又はヒト対象においてクリアランス速度及び腫瘍成長を比較することによって、又は生存期間、再発率若しくは無病生存期間などのパラメーターを比較することによって測定することができる。
【0030】
ここで、「治療有効量」又は「薬学的有効量」は、標的疾患を予防若しくは処置するために有効な化合物又は組成物の量を指し、これは、医学的処置に適用可能な合理的な効果/リスク比で疾患を処置するのに十分であり、副作用を引き起こさない量である。有効量のレベルは、患者の健康状態、疾患の種類及び重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与の方法、投与の回数、投与の経路及び排泄率、処置の期間、組み合わせて又は併用して使用される薬物、並びに医学分野において周知の他の要因を含む要因に応じて決定することができる。一実施形態において、治療有効量は、がんを処置するために有効な薬物の量を指す。
【0031】
この場合において、医薬組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容できる担体をさらに含んでいてもよい。ここで、「薬学的に許容できる」は、適用される(処方される)物質が、活性成分の活性を阻害することなく、耐容レベルを超える毒性を示さないことを意味する。薬学的に許容できる担体は、それが患者への送達のために好適な非毒性材料である限り、任意の担体であってもよい。蒸留水、アルコール、脂質、ワックス及び不活性固体が担体として含まれていてもよい。加えて、薬理学的に許容できるアジュバント(緩衝剤、分散剤)が医薬組成物に含まれていてもよい。
【0032】
具体的には、凍結保護物質は、グリセロール、トレハロース、マルトデキストリン、スキムミルク粉末及びデンプンからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。加えて、賦形剤は、グルコース、デキストリン及びスキムミルク粉末からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0033】
凍結保護物質は、組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~20重量%、0.01重量%~10重量%の量で含まれていてもよく、具体的には、組成物に、グリセロールは、5重量%~20重量%の量で含まれていてもよく、トレハロースは、2重量%~10重量%の量で含まれていてもよく、マルトデキストリンは、2重量%~10重量%の量で含まれていてもよく、スキムミルク粉末は、0.5重量%~2重量%の量で含まれていてもよく、デンプンは、0.1重量%~1重量%の量で含まれていてもよい。加えて、賦形剤は、組成物の総重量に基づいて、75重量%~95重量%、又は85重量%~95%の量で含まれていてもよい。
【0034】
医薬組成物に含まれていてもよい担体及び希釈剤としては、アカシアガム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油が挙げられ得る。製剤化される場合、これは、一般的に使用されるフィラー、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤及び界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調製される。
【0035】
本発明による医薬組成物が本発明の効果を示す限り、その剤形、投与の経路及び投与の方法は、特に限定されない。本発明の組成物は、任意の方法によって人間を含む哺乳動物に投与され得る。例えば、これは、経口投与されてもよい。
【0036】
本発明の医薬組成物は、上記に記載される投与の経路による経口投与のための調製物として製剤化されてもよい。経口投与のための調製物の場合において、本発明の組成物は、当技術分野において公知の方法を使用して、散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに製剤化されてもよい。
【0037】
医薬組成物が経口投与のために調製される場合、これは、経口投与のための担体をさらに含んでいてもよい。経口投与のための担体としては、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが挙げられ得る。好適な安定剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの抗酸化剤が挙げられる。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル又はプロピルパラベン、及びクロロブタノールが挙げられる。本発明の医薬組成物は、上記の構成成分に加えて、抗凝集剤、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁化剤などをさらに含んでいてもよい。
【0038】
例えば、経口投与のための調製物は、活性成分を固体賦形剤と混ぜ合わせること、それを粉砕すること、好適な補助剤を添加すること、及び次いでそれを顆粒の混合物に処理して、錠剤又は糖衣錠を得ることによって得てもよい。好適な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール及びマルチトールなどの糖、コーンスターチ、コムギデンプン、コメデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース、並びにゼラチン及びポリビニルピロリドンなどのフィラーが挙げられ得る。加えて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどが、所望により、崩壊剤として添加されてもよい。
【0039】
本発明の医薬組成物は、薬学的有効量で投与されてもよい。本明細書において使用される場合、「薬学的有効量」という用語は、医学的処置又は予防に適用可能な合理的な効果/リスク比で疾患を処置又は予防するのに十分な量を指す。有効用量レベルは、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康及び性別、患者の薬物に対する感受性、使用される本発明の組成物の投与の回数、投与の経路及び排泄率、処置の期間、使用される本発明の組成物と組み合わせて又は併用して使用される薬物、並びに医学分野において周知の他の要因を含む要因に応じて決定することができる。
【0040】
医薬組成物の好ましい投薬量は、患者の状態、体重、性別及び年齢、疾患の重症度、並びに投与の経路に応じて、1日あたり0.01μg/kg~10g/kg、又は0.01mg/kg~1g/kgの範囲であってもよい。投与は、1日1回又はいくつかの分割用量で行うことができる。これらの投薬量は、任意の態様における本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0041】
医薬組成物が適用(処方)され得る対象は、哺乳動物及び人間であり、特に、対象は、好ましくは、人間である。
【0042】
活性成分に加えて、本発明の医薬組成物は、抗がん活性を増加又は増強するために、その安全性が既に検証されており、抗がん活性を有することが公知である任意の化合物又は天然抽出物をさらに含んでいてもよい。本発明の医薬組成物が、他の治療剤と組み合わせて投与される場合、これは、従来の治療剤と連続して又は同時に投与されてもよい。加えて、これは、単回用量又は複数回用量で投与されてもよい。全ての上記の要因を考慮して、副作用なく、最小の量で最大の効果を提供することができる量で投与することが重要である。
【0043】
L.プランタルムGB104株又はその培養産物を含む食品組成物
本発明の別の態様において、がんを予防又は阻害するための食品組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、食品組成物が提供される。
【0044】
L.プランタルムGB104株(受託番号:KCTC 14107BP)は、上記に記載されたものと同じである。
【0045】
がんを予防又は阻害するための食品組成物は、機能性食品、栄養サプリメント、健康食品及び食品添加物などの全ての形態を含み、この種類の食品組成物は、当技術分野において公知の従来の方法に従ってさまざまな形態で調製され得る。
【0046】
L.プランタルムGB104株又はその培養産物が食品添加物として使用される場合、株又は培養産物は、そのまま添加されてもよく、又は他の食品若しくは食品成分と一緒に使用されてもよい。
【0047】
これは、従来の方法に従って適切に使用することができる。活性成分の混合量は、使用の目的(予防、健康維持又は治療的処置)に従って適切に決定することができる。一般に、これは、0.0001重量%~1重量%、具体的には0.001重量%~0.1重量%の量で、食品又は飲料を調製するときに株を含む原材料組成物に添加されてもよい。しかしながら、健康及び衛生の目的又は健康管理の目的のために長期摂取する場合において、上記の範囲を下回る量も使用されてもよい。
【0048】
L.プランタルムGB104株又はその培養産物を含む飼料組成物
本発明の別の態様において、がんを予防又は阻害するための飼料組成物であって、活性成分としてラクトバチルス・プランタルムGB104(L.プランタルムGB104)株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を含む、飼料組成物が提供される。
【0049】
L.プランタルムGB104株(受託番号:KCTC 14107BP)は、上記に記載されたものと同じである。
【0050】
がんを予防又は阻害するための飼料組成物は、当技術分野において公知の飼料を調製するためのさまざまな方法に従って、L.プランタルムGB104株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養産物を適切な有効濃度範囲で添加することによって調製することができる。
【0051】
L.プランタルムGB104株又はその培養産物を含む組成物の使用
本発明の別の態様において、がんの処置のための、L.プランタルムGB104株又はその培養産物を含む医薬組成物の使用が提供される。ここで、L.プランタルムGB104株、がん及び処置は、上記に記載されたものと同じである。
【0052】
本発明の別の態様において、がんに対する治療効果を増強するための、L.プランタルムGB104株又はその培養産物を含む医薬組成物の使用が提供される。ここで、L.プランタルムGB104株、がん及び処置は、上記に記載されたものと同じである。
【0053】
本発明の別の態様において、がんを処置するための方法及び/又は治療効果を増強するための方法であって、ラクトバチルス・プランタルムGB104株又はその培養産物を対象に投与するステップを含む、方法が提供される。ここで、L.プランタルムGB104株、がん及び処置は、上記に記載されたものと同じである。
【0054】
対象は、がんを患っている対象であってもよい。加えて、対象は、哺乳動物、好ましくは人間であってもよい。
【0055】
L.プランタルムGB104株又はその培養産物の投与の経路、投薬量及び投与の頻度は、患者の状態及び副作用の存在又は非存在に応じて変更されてもよく、したがって、これは、さまざまな方法及び量で対象に投与されてもよい。最適な投与方法、投薬量、及び投与の頻度は、当業者によって、適切な範囲で選択されてもよい。加えて、上記の活性成分は、がんに対する治療効果を有することが公知の他の薬物(例えば、上記に記載される抗がん剤)又は予防的に活性な物質と組み合わせて投与されてもよく、或いは他の薬物との組み合わせ調製物の形態で製剤化されてもよい。
【実施例】
【0056】
本明細書の以下で、本発明を、以下の実施例によってより詳細に記載する。しかしながら、以下の実施例は、本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
実施例1.L.プランタルムGB104株又はその培養溶液での処置による腫瘍形成に対する阻害効果の確認
ヒト大腸がん細胞株を使用して、L.プランタルムGB104株(受託番号:KCTC 14107BP)又はその培養溶液での処置によって、腫瘍形成に対する阻害効果を確認した。株培養上清(無細胞上清、CFS)について、MRS培地中で約6時間培養した指数(積極的)成長段階の株を採取し、株が遠心分離により除去された上清のみを取得した。上清を、0.22μmフィルターで濾過することによって調製した。
【0058】
具体的には、ヒト大腸がん細胞株HCT116及びHT-29を、2mLのMcCoy’s 5A培地にそれぞれ希釈し、次いで、細胞1.5×10
3個/ウェルで6ウェル細胞培養プレートに分注し、24時間安定化した。24時間後、培地を除去し、新鮮な培地と一緒にそれぞれの試料で処置を行った。一般的な乳酸菌1(L.ファーメンタムGB102)(受託番号:KCTC14105BP)又はL.プランタルムGB104株を試料として使用した。大腸がん細胞株を株で直接処置したか(
図1及び2)、又は濾過することによって調製された株培養上清(CFS)の形態の株で処置した(
図3及び4)。細胞株が株で直接処置された場合、処置は、1×10
7CFU/mLの濃度で行った。加えて、細胞株がCFSで処置された場合、処置は、1:100(20μL/2mL)の1ウェルあたりのCFSの培地に対する比で行った。
【0059】
培地を、2~3日の間隔で株又は株培養上清を含有する新鮮な培地で交換し、10日間培養した。培養されたプレートをDPBSで2回洗浄し、細胞を4%のホルマリンで固定した。固定された細胞をDPBSで2回洗浄し、0.5%のクリスタルバイオレット溶液で5分間染色した。その後、細胞を蒸留水で洗浄し、コロニー形成能力を確認した。
【0060】
結果として、細胞株が株で直接処置された場合、ヒト大腸がん細胞株HCT116及びHT-29の両方における腫瘍形成が、一般的な乳酸菌1で処置された群と比較して、L.プランタルムGB104株で処置された群において有意に阻害されたことを確認した(
図1及び2)。加えて、細胞株が株培養上清で処置された場合でさえ、腫瘍形成が、一般的な乳酸菌1の培養溶液で処置された群と比較して、L.プランタルムGB104株の培養溶液で処置された群において阻害されたことを確認した(
図3及び4)。上記の結果を通して、L.プランタルムGB104株が腫瘍形成の阻害に直接的及び間接的に関与したことを確認した。
【0061】
実施例2.動物モデルにおけるGB104株のがん予防効果の確認:CT-26モデル
マウス由来大腸癌CT-26動物モデルを使用して、L.プランタルムGB104株のがん予防効果を確認した。
【0062】
6週齢のBalb/cマウス(ORIENT BIO、韓国)を購入し、1週間順化した。7週齢で、マウスの右脇腹の周囲の領域を剪毛し、次いで、Balb/cマウス由来大腸がん細胞株CT-26細胞を、マウス1頭あたり細胞5×105個/100μLで皮下注射して、腫瘍動物モデルを確立した。
【0063】
一般的な乳酸菌1(L.ファーメンタムGB102)、一般的な乳酸菌2(L.ファーメンタムGB103)(受託番号:KCTC14106BP)又はL.プランタルムGB104株を、腫瘍細胞注射の時から開始して試験の終了の直前まで継続して毎日、1×10
9CFU/マウスで動物モデルに経口投与した(
図5)。腫瘍サイズを、デジタルキャリパーを使用して測定し、腫瘍体積を以下の[式1]を使用して算出した。
[式1]
腫瘍体積(mm
3)=(短軸(幅)
2×長軸(長さ))/2
【0064】
結果として、一般的な乳酸菌1(L.ファーメンタムGB102)又は一般的な乳酸菌2(L.ファーメンタムGB103)を投与された群の場合において、腫瘍成長速度における有意差は、陰性対照群と比較して観察されなかった。他方で、L.プランタルムGB104株を投与された群の場合において、腫瘍成長速度が、陰性対照群(対照)と比較して有意に阻害されたことを確認した(
図6及び7)。上記の結果を通して、L.プランタルムGB104株による投与が、腫瘍形成に対する腫瘍予防効果を示したことを確認した。
【0065】
実施例3.動物モデルにおけるGB104株のがん処置効果の確認:CT-26モデル
マウス由来大腸癌CT-26動物モデルを使用して、L.プランタルムGB104株による投与によって、腫瘍処置効果を確認した。
【0066】
腫瘍動物モデルを実施例2と同じ方法で確立し、形成された腫瘍を測定した。腫瘍細胞注射の5日目に、30~50mm
3の範囲内の腫瘍サイズを有するマウスのみを選択し、各群を無作為に設定した。一般的な乳酸菌3(L.ヘルベティカスMG585)(受託番号:KCTC14110BP)又はL.プランタルムGB104株を試料として使用し、6日目から開始して試験の終了の直前まで継続して毎日、1×10
9CFU/マウスで動物モデルに経口投与した(
図8)。
【0067】
結果として、一般的な乳酸菌3(L.ヘルベティカスMG585)を投与された群の場合において、腫瘍成長速度における有意差は、陰性対照群と比較して観察されなかった。他方で、L.プランタルムGB104株を投与された群の場合において、腫瘍成長速度が、陰性対照群と比較して有意に阻害されたことを腫瘍サイズ及び重量を測定することによって確認した(
図9~11)。上記の結果を通して、L.プランタルムGB104株による投与が、腫瘍形成後に腫瘍処置効果を示したことを確認した。
【0068】
実施例4.動物モデルにおけるGB104株のがん処置効果の確認:MC-38モデル
マウス由来大腸癌MC-38動物モデルを使用して、L.プランタルムGB104株による投与によって、腫瘍処置効果を確認した。
【0069】
6週齢のC57BL/6マウス(ORIENT BIO、韓国)を購入し、1週間順化した。7週齢で、マウスの右脇腹の周囲の領域を剪毛し、次いで、C57BL/6マウス由来大腸がん細胞株MC-38細胞を、マウス1頭あたり細胞5×105個/100μLで皮下注射して、腫瘍動物モデルを確立した。腫瘍サイズを、実施例2と同じ方法で、測定及び算出した。
【0070】
腫瘍細胞注射の5日目に、30~50mm
3の範囲内の腫瘍サイズを有するマウスのみを選択し、各群を無作為に設定した。L.プランタルムGB104株を、6日目から開始して試験の終了の直前まで継続して毎日、1×10
9CFU/マウスで動物モデルに経口投与した(
図12)。
【0071】
結果として、L.プランタルムGB104株を投与された群の場合において、腫瘍成長速度が、陰性対照群と比較して有意に阻害されたことを腫瘍サイズ及び重量を測定することによって確認した(
図13~15)。上記の結果を通して、L.プランタルムGB104株による投与が、腫瘍形成後に腫瘍処置効果を示したことを確認した。
【0072】
実施例5.GB104株による投与後の早期ステージの腫瘍組織及び末梢血における免疫細胞の変化の確認:MC-38モデル
マウス由来大腸癌MC-38動物モデルを使用して、L.プランタルムGB104株による投与によって、早期ステージの腫瘍組織及び早期ステージの末梢血における免疫細胞の変化を確認した。
【0073】
具体的には、腫瘍モデルを、C57BL/6マウス由来大腸がん細胞株MC-38細胞を、マウス1頭あたり細胞2×10
5個/100μLで皮下注射することによって、実施例4と同じ方法で確立し、マウスに、7日目から開始して毎日、L.プランタルムGB104株を1×10
9CFU/マウスで経口投与した。投与の開始の6日後(13日目)、腫瘍組織及び血液をマウスから収集し、免疫細胞を単離した(
図16)。単離された免疫細胞を、それぞれの免疫細胞マーカーに結合する蛍光抗体で染色し、次いで、FACSymphony装置を使用して分析した。抗体の情報を表1に示す。
【0074】
【0075】
結果として、早期ステージの腫瘍組織における免疫細胞の場合において、NK細胞から分泌されたグランザイムBが、陰性対照群と比較して、L.プランタルムGB104株を投与された群において有意に増加した。加えて、腫瘍特異的免疫応答を阻害し、免疫抑制性腫瘍微小環境を確立することによって腫瘍の免疫回避を可能にすることが公知である調節性T細胞(Treg細胞)の比が、L.プランタルムGB104株を投与された群において有意に低減された(
図17)。
【0076】
末梢血における免疫細胞の場合において、がんの成長を直接阻害する免疫細胞であることが公知である細胞傷害性T細胞(CD8
+T細胞)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)の比が、陰性対照群と比較して、L.プランタルムGB104株を投与された群において有意に増加した。加えて、これらの細胞から分泌されたIFN-γも有意に増加した。加えて、がん細胞の増殖を助けることが公知であるM2マクロファージが、L.プランタルムGB104株を投与された群において有意に低減されたことを確認した(
図18)。
【0077】
実施例6.GB104株による投与後の後期ステージの腫瘍組織における免疫細胞の変化の確認:MC-38モデル
マウス由来大腸癌MC-38動物モデルを使用して、L.プランタルムGB104株による投与によって、後期ステージの腫瘍組織における免疫細胞の変化を確認した。
【0078】
具体的には、腫瘍モデルを実施例5と同じ方法で確立し、マウスに、7日目から開始して毎日、一般的な乳酸菌4(L.プランタルムGBCC_f0057;GI Biome自身が単離及び特定した細菌)又はL.プランタルムGB104株を1×10
9CFU/マウスで経口投与した。投与13日後(20日目)、試験を終了し、腫瘍組織をマウスから収集し、免疫細胞を単離した(
図19)。単離された免疫細胞を、実施例5と同じ方法で、蛍光抗体で染色し、次いで、FACSymphony装置を使用して分析した。表1に示した抗体を使用した。
【0079】
結果として、陰性対照群のものと類似のサイズの腫瘍が、陰性対照群と比較して、一般的な乳酸菌4(L.プランタルムGBCC_f0057)を投与された群において観察された一方、腫瘍のサイズが、陰性対照群と比較して、L.プランタルムGB104株を投与された群において有意に低減された(
図20及び21)。
【0080】
加えて、後期ステージの腫瘍組織における細胞傷害性T細胞(CD8
+T細胞)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)の数が、陰性対照群から収集された腫瘍組織と比較して、L.プランタルムGB104株を投与された群において有意に増加したことを確認した。加えて、これらの細胞から分泌されたIFN-γ及びグランザイムBも有意に増加したことを確認した。他方で、一般的な乳酸菌4(L.プランタルムGBCC_f0057)を投与された群が、陰性対照群のものと類似の結果を示したことを確認した(
図22)。
【0081】
上記の結果を通して、抗腫瘍免疫に関与する免疫細胞の数が、L.プランタルムGB104株による投与によって増加したことを確認し、免疫細胞の変化が、抗がん活性に関連したことを確認した。
【受託番号】
【0082】
寄託機関の名称:Korean Collection for Type Cultures(KCTC)、韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14107BP
寄託日:2020年1月14日
【国際調査報告】