(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】心房細動及び/又は粗動を発症するリスクを判定するための糖タンパク質アセチルの使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023549810
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 FI2022050099
(87)【国際公開番号】W WO2022175596
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522490985
【氏名又は名称】ナイチンゲール ヘルス オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ユルクネン ヘリ
(72)【発明者】
【氏名】ウルツ ピーター
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA44
2G045DA77
2G045FA36
2G045JA06
(57)【要約】
対象が特定の循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定する方法が開示される。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定する方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、前記生体試料中の以下の少なくとも1つのバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
アルブミン、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
リノール酸、
オメガ-6脂肪酸、
中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
酢酸、
乳酸、
ピルビン酸、
アセト酢酸、
アラニン、
グルタミン、
グリシン、
ヒスチジン、
フェニルアラニン、
チロシン
の定量値を決定する工程と、
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示し、
前記循環器疾患は、心房細動及び/若しくは粗動を含むか又は心房細動及び/若しくは粗動であり、
前記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか又は糖タンパク質アセチルである、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記生体試料において、複数のバイオマーカー、例えば2つ、3つ、4つ、5つ又はこれよりも多い前記バイオマーカーの定量値を決定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
アルブミン
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、オメガ-6脂肪酸、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象は概ね健康であるか、又は前記対象は循環器疾患の既存の形態を有し、別の若しくは再発性の循環器疾患を発症するリスクが判定される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値は核磁気共鳴分光法を使用して測定される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記少なくとも1つのバイオマーカー又は複数の前記バイオマーカーの前記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定することをさらに含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記リスクスコア、ハザード比、オッズ比、並びに/又は予測される相対リスク及び/若しくは絶対リスクは、前記対象の特徴等の少なくとも1つのさらなる指標に基づいて計算されてもよい請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の前記特徴は、年齢、身長、体重、肥満度指数、人種若しくは民族、喫煙、及び/又は循環器疾患の家族歴のうちの1つ以上を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
アルブミン、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
リノール酸、
オメガ-6脂肪酸、
中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
酢酸、
乳酸、
ピルビン酸、
アセト酢酸、
アラニン、
グルタミン、
グリシン、
ヒスチジン、
フェニルアラニン、
チロシン
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、対象が特定の循環器疾患のうちの1つ以上を発症するリスクがあるか否かを判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
循環器疾患は、世界中で入院及び死亡の最も一般的な原因の1つである。循環器疾患を発症するリスクが高い個体の正確な特定は、早期の治療及び予防の努力を支援するために重要である。現在の臨床ツールは、主として冠動脈疾患及び脳卒中のリスクの予測に焦点を当てている。しかしながら、多くの他の種類の循環器疾患のリスク予測も有益である可能性がある。このような疾患には、例えば、慢性リウマチ性心疾患、肺性心、静脈及びリンパ管の疾患、並びに非リウマチ性大動脈弁障害、心停止、及び心房細動等の他の形態の心臓疾患が含まれる。
【0003】
種々のバイオマーカーが、個体が以降の生活でこれらの循環器疾患を発症するリスクが高いか否かを予測するために有用である可能性がある。このようなバイオマーカーは、様々な生体試料(生物学的試料)から、例えば、血液試料又は関連する生体液(生物学的流体)から測定されてもよい。入院又は死亡さえも引き起こすこれらの循環器疾患の最も重篤な症状の提示を予測するバイオマーカーは、より良好な標的スクリーニング、より早期の診断及び予防的処置への支援を提供できると思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
対象が循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定する方法であって、この循環器疾患は、以下の循環器疾患:連合弁膜症(ICD-10診断コードI08);本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)(I10);肺塞栓症(I26);その他の肺性心疾患(I27);心膜のその他の疾患(I31);非リウマチ性大動脈弁障害(I35);心筋症(I42);房室ブロック及び/又は左脚ブロック(I44);その他の伝導障害(I45);心停止(I46);心房細動及び/若しくは粗動(I48);大動脈瘤及び/若しくは解離(I71);動脈の塞栓症及び/若しくは血栓症(I74);動脈及び/若しくは細動脈のその他の障害(I77);静脈炎及び/若しくは血栓(性)静脈炎(I80);並びに/又はリンパ管及び/若しくはリンパ節のその他の非感染性障害(I89)のうちの1つ以上を含む方法が開示される。この方法は、対象から得られた生体試料において、以下の
・アルブミン、
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比
・総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・リノール酸、
・オメガ-6脂肪酸、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・酢酸、
・乳酸、
・ピルビン酸、
・アセト酢酸、
・アラニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・ヒスチジン、
・フェニルアラニン、
・チロシン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定する工程と、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含んでもよく、
対照試料又は対照値と比較した場合の少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、対象が上記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す。
【0005】
上記対象は概ね健康であってもよく、すなわち循環器疾患に罹患していないことが既知であってもよく、又は対象は循環器疾患の既存の形態を有してもよく、別の若しくは再発性の循環器疾患を発症するリスクが判定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、種々の実施形態を例証する。
【0007】
【
図1a】
図1aは、20種の血液バイオマーカーの濃度が絶対濃度及びバイオマーカー濃度の五分位点で分析されたときの、その血液バイオマーカーのベースライン濃度と、特定の循環器疾患(本明細書では、以下の循環器疾患ICD-10診断の複合エンドポイントとして定義される:I08、I10、I26、I27、I31、I35、I42、I44、I45、I46、I48、I71、I74、I77、I80及びI89;本明細書では「特定の循環器疾患」と呼ばれる)の将来の発症との関係を示す。結果は、UK Biobank(UKバイオバンク)からの約115,000人の概ね健康な個体からの血漿試料に基づく。
【
図1b】
図1bは、20種の血液バイオマーカーの濃度の最低、中間、及び最高の五分位点についての追跡調査(フォローアップ)中の「特定の循環器疾患」の累積リスクを示す。
【
図2a】
図2aは、ベースラインバイオマーカーレベルと16種の具体的な循環器疾患(ICD-10 3文字診断により定義される)の将来の発症との関係をヒートマップの形態で示す。結果は、3文字ICD-10コードによって定義される具体的な循環器疾患はすべて、概ね健康なヒト由来の血漿試料のNMR分光法によって測定される広範なバイオマーカーパネルと非常に類似した関連性を有することを実証する。
【
図2b】
図2bは、具体的な循環器疾患(ICD-10 3文字診断によって定義される)とのバイオマーカーの関連性の一貫性を、「特定の循環器疾患」との関連性の方向と比較して示す。
【
図3a】
図3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、及び3hは、ベースラインバイオマーカーレベルと、16種の具体的な循環器疾患の将来の発症との関係を、新規の疾患開始のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図3b】
図3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、及び3hは、ベースラインバイオマーカーレベルと、16種の具体的な循環器疾患の将来の発症との関係を、新規の疾患開始のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図3c】
図3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、及び3hは、ベースラインバイオマーカーレベルと、16種の具体的な循環器疾患の将来の発症との関係を、新規の疾患開始のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図3d】
図3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、及び3hは、ベースラインバイオマーカーレベルと、16種の具体的な循環器疾患の将来の発症との関係を、新規の疾患開始のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図3e】
図3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、及び3hは、ベースラインバイオマーカーレベルと、16種の具体的な循環器疾患の将来の発症との関係を、新規の疾患開始のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図3f】
図3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、及び3hは、ベースラインバイオマーカーレベルと、16種の具体的な循環器疾患の将来の発症との関係を、新規の疾患開始のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図3g】
図3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、及び3hは、ベースラインバイオマーカーレベルと、16種の具体的な循環器疾患の将来の発症との関係を、新規の疾患開始のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図3h】
図3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、及び3hは、ベースラインバイオマーカーレベルと、16種の具体的な循環器疾患の将来の発症との関係を、新規の疾患開始のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図4】
図4は、20種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、「特定の循環器疾患」が原因の死亡のリスクとの関係を、「特定の循環器疾患」が原因の将来の入院及び/又は死亡のリスクと比較して示す。結果は、これらのバイオマーカーが、入院よりも致死的な事象のより強力な予測因子であることが多いということを実証する。
【
図5】
図5は、複数バイオマーカースコアと「特定の循環器疾患」のリスクとの関係の例を示す。複数バイオマーカースコアの選択された例は、個々のバイオマーカーと比較して複数バイオマーカースコアによって達成される改善された予測を例証するために示される。
【
図6a】
図6aは、最初に健康なヒトの間で連合弁膜症を発症するリスクを予測するための複数バイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図6b】
図6bは、連合弁膜症を発症するリスクの予測が、異なる人口統計を有する人々に対して有効に機能し、共通のリスク因子について調整する場合に、短期リスク予測について実質的により強い結果を有することを示す。
【
図7a】
図7aは、最初に健康なヒトの間で肺塞栓症を発症するリスクを予測するための複数バイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図7b】
図7bは、肺塞栓症を発症するリスクの予測が、異なる人口統計を有する人々に対して有効に機能し、共通のリスク因子について調整する場合に、短期リスク予測について実質的により強い結果を有することを示す。
【
図8a】
図8aは、最初に健康なヒトの間で非リウマチ性大動脈弁障害を発症するリスクを予測するための複数バイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図8b】
図8bは、非リウマチ性大動脈弁障害を発症するリスクの予測が、異なる人口統計を有する人々に対して有効に機能し、共通のリスク因子について調整する場合に、短期リスク予測について実質的により強い結果を有することを示す。
【
図9a】
図9aは、最初に健康なヒトの間で心房細動及び粗動を発症するリスクを予測するための複数バイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図9b】
図9bは、心房細動及び粗動を発症するリスクの予測が、異なる人口統計を有する人々に対して有効に機能し、共通のリスク因子について調整する場合に、短期リスク予測について実質的により強い結果を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
対象が循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定する方法が開示される。
【0009】
循環器疾患は、以下の循環器疾患のうちの1つ以上であってもよい:連合弁膜症(ICD-10診断コードI08);本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)(I10);肺塞栓症(I26);その他の肺性心疾患(I27);心膜のその他の疾患(I31);非リウマチ性大動脈弁障害(I35);心筋症(I42);房室ブロック及び/若しくは左脚ブロック(I44);その他の伝導障害(I45);心停止(I46);心房細動及び/若しくは粗動(I48);大動脈瘤及び/若しくは解離(I71);動脈の塞栓症及び/若しくは血栓症(I74);動脈及び/若しくは細動脈のその他の障害(I77);静脈炎及び/若しくは血栓(性)静脈炎(I80);並びに/又はリンパ管及び/若しくはリンパ節のその他の非感染性障害(I89)。この方法は、対象から得られた生体試料において、以下の
・アルブミン、
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比
・総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・リノール酸、
・オメガ-6脂肪酸、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・酢酸、
・乳酸、
・ピルビン酸、
・アセト酢酸、
・アラニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・ヒスチジン、
・フェニルアラニン、
・チロシン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定する工程と、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が上記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す。
【0010】
対象は、概ね健康であってもよく、すなわち、循環器疾患に罹患していないことが既知であってもよく、又は対象は、循環器疾患(同じ又は異なる循環器疾患)の既存の形態を有してもよく、又は有したことがあってもよい。後者の場合、別の又は再発性の循環器疾患を発症するリスクが判定されてもよい。言い換えれば、対象が既に有しているかもしれない(若しくは既に有したことがあるかもしれない)ものとは異なる循環器疾患を発症するリスクが判定されてもよく、かつ/又は対象が既に有しているかもしれない(若しくは既に有したことがあるかもしれない)同じ循環器疾患の再発性の形態を発症するリスクが判定されてもよい。
【0011】
様々な血液バイオマーカーが、個体が循環器疾患を発症するリスクが高いか否かを予測するために有用である可能性がある。このようなバイオマーカーは、生体試料から、例えば血液試料又は関連する生体液から測定されてもよい。
【0012】
循環器疾患が原因の入院を予測するバイオマーカーは、より有効なスクリーニング及びより良好な標的化予防的処置を可能にするのに役立つことができよう。
【0013】
一実施形態では、当該方法は、アルブミンの定量値を決定することを含む。
【0014】
一実施形態では、当該方法は、糖タンパク質アセチルの定量値を決定することを含む。
【0015】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対するリノール酸の比の定量値を決定することを含む。
【0016】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比の定量値を決定することを含む。
【0017】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比の定量値を決定することを含む。
【0018】
一実施形態では、当該方法は、脂肪酸不飽和度の定量値を決定することを含む。
【0019】
一実施形態では、当該方法は、リノール酸の定量値を決定することを含む。
【0020】
一実施形態では、当該方法は、オメガ-6脂肪酸の定量値を決定することを含む。
【0021】
一実施形態では、当該方法は、中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリドの定量値を決定することを含む。
【0022】
一実施形態では、当該方法は、低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリドの定量値を決定することを含む。
【0023】
一実施形態では、当該方法は、酢酸の定量値を決定することを含む。
【0024】
一実施形態では、当該方法は、乳酸の定量値を決定することを含む。
【0025】
一実施形態では、当該方法は、ピルビン酸の定量値を決定することを含む。
【0026】
一実施形態では、当該方法は、アセト酢酸の定量値を決定することを含む。
【0027】
一実施形態では、当該方法は、アラニンの定量値を決定することを含む。
【0028】
一実施形態では、当該方法は、グルタミンの定量値を決定することを含む。
【0029】
一実施形態では、当該方法は、グリシンの定量値を決定することを含む。
【0030】
一実施形態では、当該方法は、ヒスチジンの定量値を決定することを含む。
【0031】
一実施形態では、当該方法は、フェニルアラニンの定量値を決定することを含む。
【0032】
一実施形態では、当該方法は、チロシンの定量値を決定することを含む。
【0033】
本明細書に記載される代謝バイオマーカーは、有意に異なることが見出されており、すなわち、それらの定量値(量及び/又は濃度等)は、後に特定の循環器疾患を発症した対象に関して、有意に高いか又は低いことが見出されている。このバイオマーカーは、血液、血清、若しくは血漿、乾燥血液スポット、又は他の適切な生体試料から検出及び定量されてもよく、単独で、又は他のバイオマーカーと組み合わせて、特定の循環器疾患を発症するリスクを決定するために使用されてもよい。
【0034】
さらには、このバイオマーカーは、年齢、性別、喫煙状態、アルコール使用、肥満度指数(BMI)、ウエスト周囲長、身体活動、食事、血圧、血中コレステロール、家族歴、遺伝的リスク、並びに/若しくは循環器疾患及び/若しくは他の併存疾患の以前の病歴等の、スクリーニング並びにリスク予測に現在使用されてもよい確立されたリスク因子と組み合わされ、かつ/又はそれらを考慮する場合でさえ、循環器疾患を発症するリスクがある対象を特定する可能性を大きく改善する可能性がある。本明細書に記載されるバイオマーカーは、単独で、又はリスクスコア(複数バイオマーカーリスクスコア等)、ハザード比、オッズ比、及び/若しくは予測される絶対リスク若しくは相対リスクとして、又は他のリスク因子及び検査と組み合わせて、予測を改善するか、又はさらには他の検査若しくは測定の必要性に取って代わる可能性がある。これは、他のリスク因子及び検査からの予測情報を補完することによって、又はECG(心電図)、冠動脈カルシウムスキャン、並びに/若しくは、例えばLDL、HDL及び/若しくは総コレステロール、トリグリセリド、CRP(C-反応性タンパク質)等の炎症性タンパク質バイオマーカー、NT-proBNP(N末端(NT)-プロホルモンBNP)並びに/若しくはhs-cTnT(高感度心臓トロポニンT)並びに/若しくは循環器疾患のリスクに関する遺伝子スコアについての血液検査等の他の分析の必要性を置き換えることによって、予測精度を改善することを含んでもよい。従って、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に係るバイオマーカー若しくはリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクは、他のリスク因子指標がそれほど実現可能でない条件においても、循環器疾患の将来の発症のリスクを効率的に評価することを可能にする可能性がある。
【0035】
当該方法は、上記生体試料において、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上等の複数のバイオマーカーの定量値を決定することを含んでもよい。例えば、複数のバイオマーカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20(すなわち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19)、又はすべてのバイオマーカーを含んでもよい。従って、用語「複数のバイオマーカー」は、本明細書内では、(1を超える)任意の数のバイオマーカーを指すものとして理解されてもよい。従って、用語「複数のバイオマーカー」は、(1を超える)任意の数の本明細書に記載されるバイオマーカー及び/又は本明細書に記載されるバイオマーカーの組み合わせ若しくはサブセットを指すものとして理解されてもよい。複数のバイオマーカーを決定することにより、対象が循環器疾患を発症するリスクがあるか否かの予測の精度を高められる場合がある。概して、バイオマーカーの数が多いほど、当該方法はより正確又は予測的になりうる。しかしながら、本明細書に記載される単独のバイオマーカーでさえ、対象が循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定することを可能にするか、又はそれを支援する可能性がある。この複数のバイオマーカーは、同じ生体試料から又は別々の生体試料から、同じ分析方法又は異なる分析方法を使用して測定されてもよい。一実施形態では、複数のバイオマーカーは、複数のバイオマーカーのパネルであってもよい。
【0036】
本明細書の文脈では、語句「バイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する」は、当業者なら理解するように、例えば、単一の(個々の)バイオマーカーの定量値が決定されるか、又は複数のバイオマーカーの定量値が決定されるかに応じて、バイオマーカーの定量値を、個々に、又は複数のバイオマーカーとして(例えば、リスクスコアが複数のバイオマーカーの定量値から計算される場合)、対照試料又は対照値と比較することを指すものとして理解されてもよい。
【0037】
一実施形態では、当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・アルブミン、
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比
・総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・リノール酸、
・オメガ-6脂肪酸、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・酢酸、
・乳酸、
・ピルビン酸、
・アセト酢酸、
・アラニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・ヒスチジン、
・フェニルアラニン、
・チロシン
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカーの定量値(複数可)を対照試料又は対照値(複数可)と比較することと
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記バイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が上記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す。
【0038】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである。当該方法は、本明細書に記載される他のバイオマーカーのうちの少なくとも1つの定量値を決定することをさらに含んでもよい。
【0039】
対象はヒトであってもよい。このヒトは健康であるか、又は既存の循環器疾患等の既存の疾患を有してもよい。具体的には、ヒトは、既に存在する形態の循環器疾患を有してもよく、上記疾患及び/若しくは他の循環器疾患の再発性形態並びに/若しくはより重篤な形態を発症するリスクが判定並びに/又は計算されてもよい。対象は、追加的又は代替的に、動物、例えば哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ又はげっ歯類であってもよい。
【0040】
本明細書の文脈では、用語「バイオマーカー」は、疾患若しくは状態又はその疾患若しくは状態を有するか若しくは発症するリスクと関連すると見出されてもよいバイオマーカー、例えば、化学マーカー又は分子マーカーを指してもよい。それは、臨床の現場において具体的な有効性を有するものとして統計的に十分に検証されるバイオマーカーを必ずしも指さない。バイオマーカーは、代謝産物、化合物、脂質、タンパク質、部分、官能基、組成物、2つ以上の代謝産物及び/若しくは化合物の組み合わせ、それらの(測定可能な又は測定された)量、それらから誘導される比率若しくは他の値、又は原則として、疾患若しくは状態若しくはそれを有する若しくは発症するリスクと関連すると見出されてもよい化学的及び/若しくは生物学的成分を反映する任意の測定値であってもよい。バイオマーカー及びその任意の組み合わせは、任意選択でさらなる分析及び/又は指標と組み合わせて、連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、又は心房細動及び/若しくは粗動等の循環器疾患を発症するリスクを示す生物学的プロセスを測定するために使用されてもよい。
【0041】
上記疾患は、循環器疾患のカテゴリー又はこのカテゴリーにおける具体的な疾患を指してもよい。本明細書の文脈では、用語「循環器疾患」又は「特定の循環器疾患」は、以下の循環器系の疾患のうちの1つ以上を指すものとして理解されてもよい:連合弁膜症(ICD-10診断コードI08);本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)(I10);肺塞栓症(I26);その他の肺性心疾患(I27);心膜のその他の疾患(I31);非リウマチ性大動脈弁障害(I35);心筋症(I42);房室ブロック及び/若しくは左脚ブロック(I44);その他の伝導障害(I45);心停止(I46);心房細動及び/若しくは粗動(I48);大動脈瘤及び/若しくは解離(I71);動脈の塞栓症及び/若しくは血栓症(I74);動脈及び/若しくは細動脈のその他の障害(I77);静脈炎及び/若しくは血栓(性)静脈炎(I80);並びに/又はリンパ管及び/若しくはリンパ節のその他の非感染性障害(I89)。上記の循環器系の疾患は急性状態又は慢性状態であってもよい。慢性状態は、本明細書の文脈では、その効果及び/若しくは経時的に生じる疾患において持続性又は別の態様で長期継続性であると理解されてもよい。循環器疾患の徴候及び症状は、対象の年齢及び/又は全体的な健康状態等の因子に応じて、軽度から重度又は障害性又は生命を脅かす可能性があるものまでの範囲にわたってもよい。
【0042】
一実施形態では、当該方法は、対象が(以降の)3年のうちに上記循環器疾患を発症するか又は循環器疾患が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法である。
【0043】
バイオマーカーの関連性は、異なる循環器疾患について同様であってもよい。それゆえ、同じ個々のバイオマーカー及びバイオマーカーの組み合わせを拡張して、具体的な循環器疾患のリスクも予測されてもよい。このような具体的な循環器疾患の例としては、連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動が挙げられる。
【0044】
本明細書に記載される循環器疾患は、以下のように分類されてもよい。「ICD-10」は、International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems 10th Revision(ICD-10) - WHO Version for 2019(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂(ICD-10) - 2019年のWHOバージョン)を指すものとして理解されてもよい。ICD-9又はICD-11等のICD-10以外の他の疾患分類システムによって分類又は診断された類似の状態も適用されてもよい。
【0045】
用語「特定の循環器疾患」は、ICD-10診断I08、I10、I26、I27、I31、I35、I42、I44、I45、I46、I48、I71、I74、I77、I80又はI89の任意の新規(偶発的な)発生を指すものとして理解されてもよい。
【0046】
具体的な循環器疾患は、循環器疾患についての3文字ICD-10診断(I08、I10、I26、I27、I31、I35、I42、I44、I45、I46、I48、I71、I74、I77、I80、I89)内に分類される疾患を指すと理解されてもよい。
【0047】
一実施形態では、上記循環器疾患は、本明細書に記載される1つ以上のICD-10 3文字コード診断によって定義される疾患等の具体的な疾患である。
【0048】
一実施形態では、上記循環器疾患は、以下のICD10 3文字診断のうちの少なくとも1つの範囲内の疾患である。
・I08:連合弁膜症
・I10:本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)
・I26:肺塞栓症
・I27:その他の肺性心疾患
・I31:心膜のその他の疾患
・I35:非リウマチ性大動脈弁障害
・I42:心筋症
・I44:房室ブロック及び左脚ブロック
・I45:その他の伝導障害
・I46:心停止
・I48:心房細動及び粗動
・I71:大動脈瘤及び解離
・I74:動脈の塞栓症及び血栓症
・I77:動脈及び細動脈のその他の障害
・I80:静脈炎及び血栓(性)静脈炎
・I89:リンパ管及びリンパ節のその他の非感染性障害。
【0049】
一実施形態では、循環器疾患は、本明細書に記載されるいずれかの循環器疾患又は上に列挙されたICD-10コードの1つ以上によって表される疾患等の循環器疾患が原因の死亡を含むか、又はそのような死亡であってもよい。
【0050】
一実施形態では、上記循環器疾患は、連合弁膜症(I08);本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)(I10);肺塞栓症(I26);その他の肺性心疾患(I27);心膜のその他の疾患(I31);非リウマチ性大動脈弁障害(I35);心筋症(I42);房室ブロック及び/若しくは左脚ブロック(I44);その他の伝導障害(I45);心停止(I46);心房細動及び/若しくは粗動(I48);大動脈瘤及び解離(I71);動脈の塞栓症及び/若しくは血栓症(I74);動脈及び/若しくは細動脈のその他の障害(I77);静脈炎及び/若しくは血栓(性)静脈炎(I80);並びに/若しくはリンパ管及び/若しくはリンパ節のその他の非感染性障害(I89)を含んでもよく、又はそれらであってもよい。
【0051】
一実施形態では、上記循環器疾患は、連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、並びに/又は心房細動及び/若しくは粗動を含んでもよく、又はそれらであってもよい。
【0052】
当該方法は、上記少なくとも1つのバイオマーカー又は複数の上記バイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、対象が循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定することをさらに含んでもよい。
【0053】
リスクスコア、ハザード比、並びに/若しくは予測される絶対リスク及び/若しくは相対リスクの増加又は減少は、対象が上記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0054】
リスクスコア及び/又はハザード比及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクは、本明細書に記載されるバイオマーカーの任意の複数、組み合わせ又はサブセットに基づいて計算されてもよい。
【0055】
リスクスコア及び/又はハザード比及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクは、例えば、以下の実施例に示されるように計算されてもよい。例えば、適切な方法を用いて、例えばNMR分光法を用いて測定された複数のバイオマーカーが、回帰アルゴリズム及び多変量分析を用いて、並びに/又は機械学習分析を用いて組み合わされてもよい。回帰分析又は機械学習の前に、バイオマーカー中の欠落値があればその欠落値が、データセットに対する各バイオマーカーの平均値で補完されてもよい。上記疾患又は状態の発症と最も関連があると考えられ得るバイオマーカーの数、例えば5が、予測モデルで使用するために選択されてもよい。他のモデリングアプローチを使用して、個々のバイオマーカーの組み合わせ又はサブセット、すなわち複数のバイオマーカーに基づいて、リスクスコア及び/又はハザード比及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクが計算されてもよい。
【0056】
リスクスコアは、例えば、個々のバイオマーカー、すなわち複数のバイオマーカーの加重和として計算されてもよい。加重和は、例えば、Σi[βi
*ci]+β0として定義される複数バイオマーカースコアの形態であってもよく、式中、iは個々のバイオマーカーにわたる和(合計)の添え字(インデックス)であり、βiはバイオマーカーiに帰属される加重係数であり、ciはバイオマーカーiの血中濃度であり、β0は切片項である。
【0057】
例えば、リスクスコアは、β1
*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2
*濃度(総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比)+β3
*濃度(アルブミン)+β0として定義することができ、式中、β1、β2、β3は、循環器疾患のリスクとの関連性の大きさに応じた各バイオマーカーについての乗数であり、β0は切片項である。当業者が理解するように、この例において言及されるバイオマーカーは、本明細書に記載される任意の他のバイオマーカー(複数可)によって置き換えられてもよい。概して、より多くのバイオマーカーがリスクスコアに含まれるほど、予測性能はより強くなる可能性がある。追加のバイオマーカーがリスクスコアに含まれる場合、βi重みは、循環器疾患の予測のための最適な組み合わせに従って、すべてのバイオマーカーについて変化してもよい。
【0058】
リスクスコア、ハザード比、オッズ比、並びに/又は予測される相対リスク及び/若しく絶対リスクは、少なくとも1つのさらなる指標、例えば対象の特徴に基づいて計算されてもよい。そのような特徴は、生体試料が対象から得られる前、得られるのと同時に、又は得られた後に決定されてもよい。当業者が理解するように、その特徴のいくつかは、例えばアンケートを使用して収集された情報、又は以前に収集された臨床データであってもよい。特徴のいくつかは、生化学的測定若しくは臨床的診断測定及び/又は医学的診断によって決定されてもよい(又はすでに決定されていてもよい)。このような特徴は、例えば、年齢、身長、体重、肥満度指数、人種若しくは民族、喫煙、並びに/又は循環器疾患の家族歴のうちの1つ以上を含むことができる。
【0059】
当該方法は、対象における上記循環器疾患を予防又は治療するために、上記循環器疾患を発症するリスクがある対象に治療を施すことによってその対象を治療することをさらに含んでもよい。上記バイオマーカーの1つ以上に基づく循環器疾患のリスク予測は、予防的努力、例えば非喫煙意識、健康な食事、定期的な運動、身体活動、並びに/又は臨床スクリーニング頻度、及び/若しくは薬理学的治療の決定、特に脂質低下及び抗高血圧性の薬物を導くために使用することができる。例えば、循環器疾患の将来のリスクの情報は、例えば、抗凝固剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬、抗血小板薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿薬、ジギタリス薬、硝酸及び/又はコレステロール低下薬、例えばスタチン、エゼチミブ及びフィブラートによる治療を誘導するために使用することができる。
【0060】
本明細書の文脈では、用語「アルブミン」は、血清アルブミン(血液アルブミンと称されることが多い)を指すものとして理解されてもよい。これは、脊椎動物の血液中に見出されるアルブミンである。アルブミンは、65,000ダルトンのおよその分子量の球状水溶性非グリコシル化血清タンパク質である。NMRを用いたアルブミンの測定は、例えば、Kettunenら、2012,Nature Genetics 44、269-276;Soininenら、2015、Circulation:Cardiovascular Genetics 8、212-206(DOI:10.1161/CIRCGENETICS.114.000216)による刊行物に記載されている。アルブミンは、種々の他の方法によって、例えば、臨床化学分析器によっても測定されてもよい。このような方法の例としては、例えば、ブロモクレゾールグリーン及びブロモクレゾールパープル等の色素結合法が挙げられてもよい。
【0061】
本明細書の文脈では、用語「糖タンパク質アセチル」、「糖タンパク質アセチル化」、又は「GlycA」は、循環糖化タンパク質の存在量、及び/又は循環糖化タンパク質、すなわちN-アセチル化糖タンパク質の存在量を表す核磁気共鳴分光法(NMR)シグナルを指してもよい。糖タンパク質アセチルは、例えば、α-1-酸糖タンパク質、α-1アンチトリプシン、ハプトグロビン、トランスフェリン、及び/又はα-1アンチキモトリプシンを含む、複数の異なる糖タンパク質からのシグナルを含んでもよい。心臓代謝バイオマーカーに関する科学文献において、用語「糖タンパク質アセチル」又は「GlycA」は、通常、循環糖化タンパク質のNMRシグナルを指してもよい(例えば、Ritchieら、Cell Systems 2015 1(4):293-301;Connellyら、J Transl Med. 2017;15(1):219)。糖タンパク質アセチル及びそれらを測定する方法は、例えば、Kettunenら、2018、Circ Genom Precis Med. 11:e002234及びSoininenら、2009、Analyst 134、1781-1785に記載されている。NMRシグナルに寄与する個々のタンパク質の測定を上回るリスク予測のために糖タンパク質アセチルのNMRシグナルを使用することの利益、例えば、より良好な分析精度及び経時的な安定性、並びに測定のより低いコスト、並びに多くの他のバイオマーカーと同時にNMRシグナルを測定する可能性、がある場合がある。
【0062】
本明細書の文脈では、用語「オメガ-6脂肪酸」は、全オメガ-6脂肪酸、すなわち全オメガ-6脂肪酸の量及び/又は濃度、すなわち異なるオメガ-6脂肪酸の量及び/又は濃度の合計を指してもよい。オメガ-6脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸である。オメガ-6脂肪酸において、脂肪酸鎖中の最後の二重結合は、メチル末端から数えて6番目の結合である。
【0063】
1つの実施形態では、オメガ-6脂肪酸はリノール酸であってもよい。リノール酸(18:2ω-6)は、最も豊富なタイプのオメガ-6脂肪酸であり、それゆえ、循環器疾患のリスク予測のための全オメガ-6脂肪酸の良好な近似と考えられてもよい。
【0064】
本明細書の文脈では、用語「飽和脂肪酸」(SFA)は、全飽和脂肪酸を指してもよい。飽和脂肪酸は、その構造中に二重結合を有さない脂肪酸であってもよく、又はそれを含んでもよい。パルミチン酸(16:0)及びステアリン酸(18:0)は、ヒト血清中の豊富なSFAの例である。
【0065】
オメガ-6、リノール酸及び/又は飽和脂肪酸を含むすべての脂肪酸指標について、脂肪酸指標は、血液(又は血清/血漿)遊離脂肪酸、結合脂肪酸及びエステル化脂肪酸を含んでもよい。エステル化脂肪酸は、例えば、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、若しくはホスホグリセリドにおけるようにグリセロールに、又はコレステロールエステルにおけるようにコレステロールにエステル化されていてもよい。
【0066】
本明細書の文脈では、用語「脂肪酸不飽和度」又は「不飽和」は、全脂肪酸中の二重結合の数、例えば全脂肪酸中の二重結合の平均数を指すものとして理解されてもよい。
【0067】
本明細書の文脈では、用語「IDL」は、中密度リポタンパク質を指す。
【0068】
本明細書の文脈では、用語「LDL」は、低密度リポタンパク質を指す。
【0069】
本明細書の文脈では、語句「低密度リポタンパク質(LDL)トリグリセリド」、「中密度リポタンパク質(IDL)トリグリセリド」、「LDL(低密度リポタンパク質)中のトリグリセリド」、又は「IDL(中密度リポタンパク質)中のトリグリセリド」は、そのリポタンパク質クラス又はサブフラクション中の総トリグリセリド濃度を指すものとして理解されてもよい。
【0070】
本明細書の文脈では、用語「酢酸」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中の酢酸塩分子若しくは酢酸エステル分子及び/又は酢酸そのものを指してもよい。
【0071】
本明細書の文脈では、用語「クエン酸」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のクエン酸塩分子若しくはクエン酸エステル分子及び/又はクエン酸そのものを指してもよい。
【0072】
本明細書の文脈では、用語「乳酸」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中の乳酸塩分子若しくは乳酸エステル分子及び/又は乳酸そのものを指してもよい。
【0073】
本明細書の文脈では、用語「ピルビン酸」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のピルビン酸塩分子若しくはピルビン酸エステル分子及び/又はピルビン酸そのものを指してもよい。
【0074】
本明細書の文脈では、用語「アセト酢酸」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のアセト酢酸塩分子若しくはアセト酢酸エステル分子及び/又はアセト酢酸そのものを指してもよい。
【0075】
本明細書の文脈では、用語「アラニン」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のアラニンアミノ酸を指してもよい。
【0076】
本明細書の文脈では、用語「グルタミン」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のグルタミンアミノ酸を指してもよい。
【0077】
本明細書の文脈では、用語「グリシン」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のグリシンアミノ酸を指してもよい。
【0078】
本明細書の文脈では、用語「ヒスチジン」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のヒスチジンアミノ酸を指してもよい。
【0079】
本明細書の文脈では、用語「フェニルアラニン」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のフェニルアラニンアミノ酸を指してもよい。
【0080】
本明細書の文脈では、用語「チロシン」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のチロシンアミノ酸を指してもよい。
【0081】
本明細書の文脈では、用語「定量値」は、バイオマーカーの量及び/又は濃度を特徴付ける任意の定量値を指してもよい。例えば、それは、生体試料中のバイオマーカーの量若しくは濃度であるか、若しくはそれを反映してもよく、又は核磁気共鳴分光法(NMR)若しくはバイオマーカーを定量的に検出するのに適した他の方法から導出されるシグナルであるか、若しくはそれを反映してもよい。このようなシグナルは、バイオマーカーの量若しくは濃度を示してもよいし、又はそれと相関してもよい。定量値は、NMR測定又は他の測定から導出される1つ以上のシグナルから計算される定量値であってもよい。定量値は、追加的又は代替的に、様々な技術を用いて測定されてもよい。このような方法としては、質量分析(MS)、MSと組み合わせたガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー単独又はMSと組み合わせた高速液体クロマトグラフィー、免疫比濁測定、超遠心分離、イオン移動度、酵素による分析、比色分析又は蛍光分析、免疫ブロット分析、免疫組織化学的方法(例えば、代謝産物の抗体検出に基づくインサイツ(in situ)法)、及びイムノアッセイ(例えば、ELISA)を挙げてもよい。様々な方法の例が以下に示される。対象における定量値を決定するために使用される方法は、対照対象(複数可)又は対照試料(複数可)における定量値を決定するために使用される方法と同じであってもよい。
【0082】
少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの定量値又は初期定量値は、核磁気共鳴(NMR)分光法、例えば1H-NMRを用いて測定されてもよい。少なくとも1つの追加のバイオマーカー又は複数の追加のバイオマーカーも、NMRを使用して測定されてもよい。NMRは、多数のバイオマーカーを含むバイオマーカーを同時に測定するための特に効率的で迅速な方法を提供してもよく、それらについての定量値を提供することができる。しかもNMRは、典型的には、試料の前処理又は調製をほとんど必要としない。NMRで測定されるバイオマーカーは、Soininenら、2015、Circulation:Cardiovascular Genetics 8、212-206(DOI:10.1161/CIRCGENETICS.114.000216)、Soininenら、2009、Analyst 134、1781-1785、及びWuertzら、2017、American Journal of Epidemiology 186(9)、1084-1096(DOI:10.1093/aje/kwx016)によって以前に公開された血液(血清又は血漿)NMRメタボロミクスについてのアッセイを使用して、大量の試料について効果的に測定することができる。これは、上記の科学論文に詳細に記載されているように、試料あたり250個のバイオマーカーに関するデータを提供する。
【0083】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの(初期)定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される。
【0084】
しかしながら、本明細書に記載される様々なバイオマーカーの定量値は、NMR以外の技術によっても実施されてもよい。例えば、バイオマーカーに応じて、質量分析(MS)、酵素的方法、抗体ベースの検出方法、又は他の生化学的若しくは化学的方法が企図されてもよい。
【0085】
例えば、糖タンパク質アセチルは、(例えば、Ritchieら、2015、Cell Syst. 28;1(4):293-301に記載されているように)α-1-酸糖タンパク質、ハプトグロビン、α-1-アンチトリプシン、及びトランスフェリンの免疫比濁測定によって測定又は近似することができる。
【0086】
例えば、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸及びオメガ-6脂肪酸は、(例えば、Julaら、2005、Arterioscler Thromb Vasc Biol 25、2152-2159に記載されているように)ガスクロマトグラフィーを用いて血清総脂肪酸組成によって定量することができる(すなわち、それらの定量値が決定されてもよい)。
【0087】
本明細書の文脈では、用語「試料」又は「生体試料」は、対象又は対象の群若しくは集団から得られる任意の生体試料を指してもよい。試料は、新鮮なもの、凍結したもの、又は乾燥したものであってもよい。
【0088】
生体試料は、例えば、血液試料、血漿試料、血清試料、又はそれに由来する試料を含んでもよく、又はそれらであってもよい。この生体試料は、例えば、空腹時血液試料、空腹時血漿試料、空腹時血清試料、又はそれから得ることができる画分であってもよい。しかしながら、生体試料は、必ずしも空腹時試料である必要はない。血液試料は静脈血試料であってもよい。
【0089】
血液試料は、乾燥血液試料であってもよい。この乾燥血液試料は、乾燥全血試料、乾燥血漿試料、乾燥血清試料、又はそれらに由来する乾燥試料であってもよい。
【0090】
当該方法は、少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定する前に、対象から生体試料を得ることを含んでもよい。対象又は患者の血液試料又は組織試料を採取することは、通常の臨床診療の一部である。集められた血液又は組織試料を調製することができ、血清又は血漿を当業者に周知の技術を用いて分離することができる。血液試料又は組織試料等の生体試料から1つ以上の画分を分離する方法も、当業者に利用可能である。用語「画分」は、本明細書の文脈では、1つ以上の物理的特性、例えば、溶解度、親水性若しくは疎水性、密度、又は分子サイズに従って分離された生体試料の一部分又は成分をも指してもよい。
【0091】
本明細書の文脈では、用語「対照試料」は、対象から得られ、上記疾患若しくは状態に罹患していないか、又は上記疾患若しくは状態を有するか若しくは発症するリスクがないことが既知である試料を指してもよい。この対照試料はマッチしたものであってもよい。一実施形態では、対照試料は、健常個体又は健常個体の一般化集団に由来する生体試料であってもよい。用語「対照値」は、対照試料から得ることができる値及び/又はそれから導出可能な定量値として理解されてもよい。例えば、上回るか又は下回ると疾患又は状態を発症するリスクが上昇するという閾値を、対照試料及び/又は対照値から計算することが可能であってもよい。言い換えれば、(バイオマーカー、リスクスコア、ハザード比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクに応じて)上記閾値より高い又は低い値は、対象がその疾患又は状態を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0092】
対照試料又は対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカー若しくは複数のバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、対象が疾患若しくは状態を有するか又は発症するリスクが高いことを示してもよい。対象が疾患又は状態を発症するリスクが高いことを増加が示すか又は減少が示すかは、バイオマーカーに依存してもよい。
【0093】
対照試料又は対照値と比較した場合の少なくとも1つのバイオマーカーの(又は複数のバイオマーカーの個々のバイオマーカーにおける)定量値の1.2倍、1.5倍、若しくは例えば2倍、若しくは3倍の増加又は減少が、対象が疾患又は状態を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0094】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のアルブミンの定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0095】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の糖タンパク質アセチルの定量値の増加は、前記対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0096】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の総脂肪酸に対するリノール酸の比の定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0097】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸及び/又はリノール酸の比の定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0098】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比の定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0099】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の脂肪酸不飽和度の定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0100】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のリノール酸の定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0101】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のオメガ-6脂肪酸の定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0102】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリドの定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0103】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリドの定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0104】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の酢酸の定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0105】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の乳酸の定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0106】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のピルビン酸の定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0107】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のアセト酢酸の定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0108】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のアラニンの定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0109】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のグルタミンの定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0110】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のグリシンの定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0111】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のヒスチジンの定量値の減少は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0112】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のフェニルアラニンの定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0113】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のチロシンの定量値の増加は、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0114】
一実施形態では、β0+β1
*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2
*濃度(アルブミン)として定義され、β0は切片項であり、β1は糖タンパク質アセチルの濃度に帰属される加重係数であり、β2はアルブミンの濃度に帰属される加重係数であるリスクスコアが、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0115】
一実施形態では、β0+β1
*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2
*濃度(脂肪酸指標)として定義され、β0は切片項であり、β1は糖タンパク質アセチルの濃度に帰属される加重係数であり、β2は脂肪酸指標に帰属される加重係数であるリスクスコアが、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。上記脂肪酸指標は、以下の脂肪酸のうちの1つであるか、又は総脂肪酸に対するそれらの比であってもよい:リノール酸、オメガ-6脂肪酸、飽和脂肪酸、及び/又は脂肪酸不飽和度。
【0116】
一実施形態では、β0+β1
*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2
*濃度(アルブミン)+β3
*濃度(脂肪酸指標)として定義され、β0は切片項であり、β1は糖タンパク質アセチルの濃度に帰属される加重係数であり、β2はアルブミンの濃度に帰属される加重係数であり、β3は脂肪酸指標の濃度に帰属される加重係数であるリスクスコアが、対象が連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。上記脂肪酸指標は、以下の脂肪酸のうちの1つであるか、又は総脂肪酸に対するそれらの比であってもよい:リノール酸、オメガ-6脂肪酸、飽和脂肪酸、及び/又は脂肪酸不飽和度。
【0117】
用語「組み合わせ」は、少なくともいくつかの実施形態では、当該方法が、バイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用することを含むように理解されてもよい。例えば、糖タンパク質アセチル及びアルブミンの両方の定量値が決定される場合、両方のバイオマーカーの定量値は、対照試料若しくは対照値と別々に比較されてもよいし、又は両方のバイオマーカーの定量値に基づいてリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/若しくは予測される絶対リスク若しくは相対リスクが計算され、このリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/若しくは予測される絶対リスク若しくは相対リスクが対照試料又は対照値と比較されてもよい。
【0118】
一実施形態では、当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含んでもよく、
対照試料又は対照値と比較した場合の上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値の増加又は減少は、対象が循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合の糖タンパク質アセチルの定量値の増加及びアルブミンの定量値の減少は、対象が循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0119】
一実施形態では、当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・以下の脂肪酸又は総脂肪酸に対するそれらの比、リノール酸、オメガ-6脂肪酸、飽和脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度という少なくとも1つの脂肪酸指標
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含んでもよく、
対照試料又は対照値と比較した場合の上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値の増加又は減少は、対象が循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合の糖タンパク質アセチルの定量値の増加、並びにリノール酸及び/若しくはオメガ-6脂肪酸及び/若しくは脂肪酸不飽和度並びに/若しくは総脂肪酸に対するそれらの比の定量値の減少、並びに/又は飽和脂肪酸及び/若しくは総脂肪酸に対するその比の定量値の増加は、対象が循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0120】
一実施形態では、当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・アルブミン、
・以下の脂肪酸又は総脂肪酸に対するそれらの比という少なくとも1つの脂肪酸指標:リノール酸、オメガ-6脂肪酸、飽和脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含んでもよく、
対照試料又は対照値と比較した場合の上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値の増加又は減少は、対象が循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合のアルブミンの定量値の減少、並びにリノール酸及び/若しくはオメガ-6脂肪酸及び/若しくは脂肪酸不飽和度並びに/若しくは総脂肪酸に対するそれらの比の定量値の減少、並びに/又は飽和脂肪酸及び/若しくは総脂肪酸に対するその比の定量値の増加は、対象が循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0121】
一実施形態では、当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・以下の脂肪酸又は総脂肪酸に対するそれらの比という少なくとも1つの脂肪酸指標:リノール酸、オメガ-6脂肪酸、飽和脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含んでもよく、
対照試料又は対照値と比較した場合の上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値の増加又は減少は、対象が循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合の糖タンパク質アセチルの定量値の増加、アルブミンの定量値の減少、並びにリノール酸及び/若しくはオメガ-6脂肪酸及び/若しくは脂肪酸不飽和度並びに/若しくは総脂肪酸に対するそれらの比の定量値の減少、並びに/又は飽和脂肪酸及び/若しくは総脂肪酸に対するその比の定量値の増加は、対象が循環器疾患を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0122】
以下の実施形態が開示される。
【0123】
1. 対象が循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定する方法であって、上記循環器疾患は、以下の循環器疾患:連合弁膜症(I08);本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)(I10);肺塞栓症(I26);その他の肺性心疾患(I27);心膜のその他の疾患(I31);非リウマチ性大動脈弁障害(I35);心筋症(I42);房室ブロック及び/若しくは左脚ブロック(I44);その他の伝導障害(I45);心停止(I46);心房細動及び/若しくは粗動(I48);大動脈瘤及び/若しくは解離(I71);動脈の塞栓症及び/若しくは血栓症(I74);動脈及び/若しくは細動脈のその他の障害(I77);静脈炎及び/若しくは血栓(性)静脈炎(I80);並びに/又はリンパ管及び/若しくはリンパ節のその他の非感染性障害(I89)の1つ以上を含み、
この方法は、上記対象から得られた生体試料において、その生体試料中の以下の少なくとも1つのバイオマーカー
・アルブミン、
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・リノール酸、
・オメガ-6脂肪酸、
・中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・酢酸、
・乳酸、
・ピルビン酸、
・アセト酢酸、
・アラニン、
・グルタミン、
・グリシン、
・ヒスチジン、
・フェニルアラニン、
・チロシン
の定量値を決定する工程と、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が上記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す、方法。
【0124】
2. 上記方法は、上記生体試料において、複数の上記バイオマーカー、例えば2つ、3つ、4つ、5つ又はこれよりも多い上記バイオマーカーの定量値を決定することを含む実施形態1に記載の方法。
【0125】
3. 上記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0126】
4. 上記方法は、上記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記バイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が上記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す
実施形態1から実施形態3のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
5. 上記方法は、上記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、オメガ-6脂肪酸、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記バイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が上記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す
実施形態1から実施形態4のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
6. 上記循環器疾患は、連合弁膜症(I08);本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)(I10);肺塞栓症(I26);その他の肺性心疾患(I27);心膜のその他の疾患(I31);非リウマチ性大動脈弁障害(I35);心筋症(I42);房室ブロック及び/若しくは左脚ブロック(I44);その他の伝導障害(I45);心停止(I46);心房細動及び/若しくは粗動(I48);大動脈瘤及び/若しくは解離(I71);動脈の塞栓症及び/若しくは血栓症(I74);動脈及び/若しくは細動脈のその他の障害(I77);静脈炎及び/若しくは血栓(性)静脈炎(I80);並びに/若しくはリンパ管及び/若しくはリンパ節のその他の非感染性障害(I89)を含むか又はそれらである実施形態1から実施形態5のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
7. 上記循環器疾患は、連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/若しくは粗動を含むか、又はこれらである実施形態1から実施形態6のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
8. 上記対象は概ね健康であるか、又は上記対象は循環器疾患の既存の形態を有し、別の若しくは再発性の循環器疾患を発症するリスクが判定される実施形態1から実施形態7のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
9. 上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される実施形態1から実施形態8のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
10. 上記方法は、上記少なくとも1つのバイオマーカー又は複数の上記バイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、上記対象が上記循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定することをさらに含む実施形態1から実施形態9のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0133】
これより様々な実施形態を詳細に参照する。それらの実施形態の例は添付の図面に示されている。以下の説明は、当業者が本開示に基づいて実施形態を利用することができる程度に詳細にいくつかの実施形態を開示する。工程又は特徴の多くは本明細書に基づいて当業者に明白となるので、実施形態のすべての工程又は特徴が詳細に論じられるわけではない。
【0134】
図において使用される略語
LA%:総脂肪酸に対するリノール酸の比
オメガ-6%:総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比
SFA%:総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比
不飽和:脂肪酸不飽和度
LA:リノール酸
オメガ-6:オメガ-6脂肪酸
IDL:中密度リポタンパク質
LDL:低密度リポタンパク質
IDL-TG:中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド
LDL-TG:低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド
CI:信頼区間
SD:標準偏差
BMI:肥満度指数
【0135】
実施例1
核磁気共鳴(NMR)によって定量したバイオマーカー指標を、それらが連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動等の特定の循環器疾患を予測することができるか否かに関して調べた。すべての分析は、UK Biobank(UKバイオバンク)に基づいて、NMR分光法からの血液バイオマーカーデータを利用可能である約115,000人の研究参加者を用いて行った。
【0136】
研究集団
UK Biobankの設計の詳細は、Sudlowら、2015、PLoS Med. 2015;12(3):e1001779によって報告されている。簡単に述べると、UK Biobankは、英国全体にわたる22ヶ所の評価センターで37~73歳の502,639人の参加者を募集した。すべての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを提供し、倫理的承認は、North West Multi-Center Research Ethics Committee(ノースウェストマルチセンター研究倫理委員会)から得られた。血液試料は、2007年から2010年の間にベースラインで採取した。選択基準はこのサンプリングに適用しなかった。
【0137】
バイオマーカープロファイリング
UK Biobank集団全体から、118,466人の個体からのベースライン血漿試料のランダムなサブセットを、Nightingale(ナイチンゲール)NMRバイオマーカープラットフォーム(Nightingale Health Ltd(ナイチンゲール・ヘルス)、フィンランド)を使用して測定した。この血液分析方法は、リポタンパク質脂質、循環脂肪酸、並びにアミノ酸、ケトン体及び糖新生関連代謝産物を含む種々の低分子量代謝産物を含む多くの血液バイオマーカーのモル濃度単位での同時定量を提供する。技術的詳細及び疫学的応用が概説されている(Soininenら、2015、Circ Cardiovasc Genet;2015;8:192-206;Wuertzら、2017、Am J Epidemiol 2017;186:1084-1096)。中央値から4四分位間の範囲外の値を外れ値とみなし、除外した。
【0138】
特定の循環器疾患のリスクとのバイオマーカーの関連の疫学的分析
特定の循環器疾患についてのリスクとの血液バイオマーカーの関連付けを、UK Biobankデータに基づいて行った。個々のバイオマーカーが、特定の循環器疾患の将来の発症のリスクに関連するか否かを判定するために、分析は、血液試料を収集した後の特定の循環器疾患の発生に対するバイオマーカーの関係に焦点を当てた。バイオマーカーの加重和の形態の複数バイオマーカースコアを使用する例も、それらが各個々のバイオマーカーよりもさらに強く予測できるか否かを調べるために、検討した。
【0139】
すべての研究参加者の血液サンプリング後に起こった疾患事象に関する情報は、UK Hospital Episode Statistics(英国病院エピソード統計)データ及び死亡登録から記録した。すべての分析は、診断の最初の発生に基づいており、従って、血液サンプリング前に所与の疾患の診断が記録された個体は、統計分析から除外した。ICD-10診断I08、I10、I26、I27、I31、I35、I42、I44、I45、I46、I48、I71、I74、I77、I80又はI89の任意の新規発生に基づいて、特定の循環器疾患の複合エンドポイントを定義した。特定の循環器疾患のより精緻化(細分化)されたサブタイプは、表1に列挙するICD-10診断に従って定義した。
【0140】
登録に基づく追跡調査は、2007~2010年の血液サンプリングから2020年までであった(およそ1100000人・年)。追跡調査中に150未満の疾患事象しか記録されなかった具体的な疾患は、範囲外にした。
【0141】
バイオマーカー関連性検定のために、年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整したコックス(Cox)比例ハザード回帰モデルを使用した。結果を各バイオマーカー指標の標準偏差当たりの大きさでプロットして、関連性の大きさの直接比較を可能にした。
【0142】
結果の概要
バイオマーカー分析のための研究集団のベースライン特徴に対する特定の循環器疾患の将来のリスクを表1に示す。血液サンプリング後に起こった疾患事象の新規発生数を、分析したすべての状態について列挙する。
【0143】
【0144】
図1aは、特定の循環器疾患(以下の循環器疾患ICD-10診断の複合エンドポイントとして定義される:I08、I10、I26、I27、I31、I35、I42、I44、I45、I46、I48、I71、I74、I77、I80及びI89;本明細書では「特定の循環器疾患」と呼ぶ)の将来のリスクに関する20種の血液バイオマーカーのハザード比を示す。図の左側は、バイオマーカーを絶対濃度で分析した場合のハザード比を、研究集団の標準偏差にスケーリングして示す。右側は、バイオマーカー濃度の最も高い五分位点にある個体を最も低い五分位点にある個体と比較したときの対応するハザード比を示す。これらの結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、そのうち27,090人が、約10年間の追跡調査の間に、循環器疾患(病院登録における、又は死亡記録における以下の循環器疾患ICD-10診断のうちの1つ:I08、I10、I26、I27、I31、I35、I42、I44、I45、I46、I48、I71、I74、I77、I80及びI89)を発症した。分析は、コックス比例ハザード回帰モデルにおいて年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整した。P値は、すべての関連性についてP<0.0001(多重試験補正に対応する)であった。これらの結果は、上記20種の個々のバイオマーカーが、一般集団設定における特定の循環器疾患のリスクを予測することを実証する。
【0145】
図1bは、バイオマーカー濃度の最低、中間、及び最高の五分位点による、上記20種の血液バイオマーカーの各々についての「特定の循環器疾患」の累積リスクのカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)プロットを示す。これらの結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、そのうち27,090人が、特定の循環器疾患を発症した。これらの結果はさらに、上記20種の個々のバイオマーカーが、一般集団設定における特定の循環器疾患のリスクを予測することを実証する。
【0146】
図2aは、3文字ICD-10診断コードによって定義される16種の具体的な循環器疾患の将来の発症についての20種の血液バイオマーカーのハザード比を示す。これらの結果は、バイオマーカーの関連性のパターンが、17種の具体的な障害すべてについて高度に一貫性があることを明らかにする。
【0147】
図2bは、「特定の循環器疾患」定義と比較した、上記16種の具体的な循環器疾患(3文字ICD-10診断コードによって定義される)とのバイオマーカーの関連性の一貫性を示す。概して、バイオマーカーの関連性はすべて、「特定の循環器疾患」の場合と同じ関連性方向であるか、又は不一致の方向では統計的に有意ではない。それゆえ、「特定の循環器疾患」を強く予測するいずれのバイオマーカーの組み合わせも、列挙されたすべての具体的な循環器疾患を予測するであろう。
【0148】
図3a~hは、本研究で検討した16種の具体的な循環器疾患(ICD 3文字診断コードによって定義される)の各々の将来の発症に関する20種の血液バイオマーカーのハザード比を示す。このハザード比は、各バイオマーカーの標準偏差にスケーリングして、絶対濃度で示してある。これらの結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づいており、およそ10年間の追跡調査中に上記具体的な疾患を発症した個体の数を各プロットの上部に示す。黒丸は関連性のP値がP<0.0001(多重検定補正に対応する)であり、白丸は関連性のP値がP>0.0001であったことを表す。分析は、コックス比例ハザード回帰モデルを用いて年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整した。
【0149】
図4は、「特定の循環器疾患」が原因の死亡に関連する20種の血液バイオマーカーについてのハザード比(黒色)を示す。比較のために、特定の循環器疾患の発生率のハザード比(すなわち、組み合わされた非致死的事象及び致死的事象。灰色)も示す。ハザード比は、絶対濃度で分析し、研究集団の標準偏差にスケーリングしたバイオマーカーについて示す。これらの結果は、これらのバイオマーカーが致死的な循環器疾患事象のより強力な予測因子であることが多いといいうことを実証する。結果は、バイオマーカーと、3文字ICD-10診断コードによって定義される具体的な循環器疾患に起因する致死的事象との関連性について同様であった。
【0150】
図5は、2つ以上のバイオマーカーを組み合わせた場合の「特定の循環器疾患」とのより強い関連性結果の例を示す。「特定の循環器疾患」の将来のリスクに関する伴うハザード比を、バイオマーカーの対の選択した組み合わせ、及びバイオマーカースコアの例について示す。これらの結果は、多くの他の組み合わせ、特に、アルブミン及び糖タンパク質アセチルに加えて異なる脂肪酸指標を含むものに関して同様であった。複数バイオマーカースコアは、Σ
i[β
i
*c
i]+β
0の形態で組み合わされ、式中、iは個々のバイオマーカーにわたる和の添え字であり、β
iはバイオマーカーiに帰属される加重係数であり、c
iはバイオマーカーiの血中濃度であり、β
0は切片項である。β
i乗数は、バイオマーカーのそれぞれの組み合わせについてのUK Biobank研究の統計分析において調べられた、「特定の循環器疾患」のリスクとの多変量関連性の大きさに従って定義される。関連性の大きさの増強は、表1に列挙する17種の特定の種類の「特定の循環器疾患」についてここに示されるものと同様であった。
【0151】
意図される使用の説明:特定の循環器疾患のリスク予測についての複数バイオマーカースコア
特定の循環器疾患の予測に関連する意図される応用を例示するために、さらなる疫学的分析を以下に説明する。これらの応用は、連合弁膜症、肺塞栓症、非リウマチ性大動脈弁障害、心房細動及び/又は粗動のリスクの予測について例示される。同様の結果が、表1に列挙される他の循環器疾患にも当てはまる。結果は、
図1~5において取り上げた20種のバイオマーカーを組み合わせた複数バイオマーカースコアについて示す。わずかに弱いが類似の結果は、2つ又は3つの個々のバイオマーカーのみの組み合わせで得られる。
【0152】
図6aは、20種のバイオマーカーの加重和からなる複数バイオマーカースコアのレベルの上昇に伴う連合弁膜症(ICD-10コードI08)のリスクの増加を示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに追跡調査中に連合弁膜症を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、複数バイオマーカースコアの選択した分位点についての追跡調査中の連合弁膜症の累積リスクを示す。両方のプロットは、リスクが複数バイオマーカースコアの分布の上端において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、複数バイオマーカースコアの導出には含まれなかった50%(n=63597)について示す。
【0153】
図6bは、研究参加者の関連するリスク因子特徴を考慮するときの、連合弁膜症(ICD-10コードI08)の将来の発症に関する同じ複数バイオマーカースコアのハザード比を示す。最初の2つのパネルは、リスク予測が、男性及び女性の両方について、並びに血液サンプリング時の異なる年齢の人々について有効に機能することを実証する。第3のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいて肥満度指数及び喫煙状態を考慮するときにわずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、結果が、短期リスク予測に対して実質的により強いことを示す。
【0154】
図7aは、20種のバイオマーカーの加重和からなる複数バイオマーカースコアのレベルの上昇に伴う肺塞栓症(ICD-10コードI26)のリスクの増加を示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに追跡調査中に肺塞栓症を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、複数バイオマーカースコアの選択した分位点についての追跡調査中の肺塞栓症の累積リスクを示す。両方のプロットは、リスクが複数バイオマーカースコアの分布の上端において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、複数バイオマーカースコアの導出には含まれなかった50%(n=63392)について示す。
【0155】
図7bは、研究参加者の関連するリスク因子特徴を考慮するときの、肺塞栓症(ICD-10コードI26)の将来の発症に関する同じ複数バイオマーカースコアのハザード比を示す。最初の2つのパネルは、リスク予測が、男性及び女性の両方について、並びに血液サンプリング時の異なる年齢の人々について有効に機能することを実証する。第3のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいて肥満度指数及び喫煙状態を考慮するときにわずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、結果が、短期リスク予測に対して実質的により強いことを示す。
【0156】
図8aは、20種のバイオマーカーの加重和からなる複数バイオマーカースコアのレベルの上昇に伴う非リウマチ性大動脈弁障害(ICD-10コードI35)のリスクの増加を示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに追跡調査中に非リウマチ性大動脈弁障害を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、複数バイオマーカースコアの選択した分位点についての追跡調査中の非リウマチ性大動脈弁障害の累積リスクを示す。両方のプロットは、リスクが複数バイオマーカースコアの分布の上端において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、複数バイオマーカースコアの導出には含まれなかった50%(n=63512)について示す。
【0157】
図8bは、研究参加者の関連するリスク因子特徴を考慮するときの、非リウマチ性大動脈弁障害(ICD-10コードI35)の将来の発症に関する同じ複数バイオマーカースコアのハザード比を示す。最初の2つのパネルは、リスク予測が、男性及び女性の両方について、並びに血液サンプリング時の異なる年齢の人々について有効に機能することを実証する。第3のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいて肥満度指数及び喫煙状態を考慮するときにわずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、結果が、短期リスク予測に対して実質的により強いことを示す。
【0158】
図9aは、20種のバイオマーカーの加重和からなる複数バイオマーカースコアのレベルの上昇に伴う心房細動及び粗動(ICD-10コードI48)のリスクの増加を示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカーレベルのパーセンタイルにビニングしたときに追跡調査中に心房細動及び粗動を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、複数バイオマーカースコアの選択した分位点についての追跡調査中の心房細動及び粗動の累積リスクを示す。両方のプロットは、リスクが複数バイオマーカースコアの分布の上端において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、複数バイオマーカースコアの導出には含まれなかった50%(n=62756)について示す。
【0159】
図9bは、研究参加者の関連するリスク因子特徴を考慮するときの、心房細動及び粗動(ICD-10コードI48)の将来の発症に関する同じ複数バイオマーカースコアのハザード比を示す。最初の2つのパネルは、リスク予測が、男性及び女性の両方について、並びに血液サンプリング時の異なる年齢の人々について有効に機能することを実証する。第3のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいて肥満度指数及び喫煙状態を考慮するときにわずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、結果が、短期リスク予測に対して実質的により強いことを示す。
【0160】
当業者には、技術の進歩とともに、基本的なアイデアが様々な方法で実行されてもよいことが明らかである。従って、実施形態は上記の例に限定されない。代わりに、実施形態は請求項の範囲内で様々であってよい。
【0161】
上述の実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用されてもよい。実施形態のうちのいくつかは、さらなる実施形態を形成するようにともに組み合わされてもよい。本明細書に開示される方法は、本明細書の上記の実施形態のうちの少なくとも1つを含んでもよい。上記の利益及び利点は、1つの実施形態に関連してもよいし、又はいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されよう。実施形態は、記載された課題のいずれか若しくはすべてを解決するもの、又は記載された利益及び利点のいずれか若しくはすべてを有するものに限定されない。「ある」項目への言及は、1つ以上のこれらの項目を指すことがさらに理解されるであろう。用語「comprising(含む)」は、本明細書において、1つ以上の追加の特徴又は行為の存在を排除することなく、その語句に続く特徴又は行為を含むこと(including)を意味するために使用される。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定する方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、前記生体試料中の以下の少なくとも1つのバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
アルブミン、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
リノール酸、
オメガ-6脂肪酸、
中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
酢酸、
乳酸、
ピルビン酸、
アセト酢酸、
アラニン、
グルタミン、
グリシン、
ヒスチジン、
フェニルアラニン、
チロシン
の定量値を決定する工程と、
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示し、
前記循環器疾患は、心房細動及び/若しくは粗動を含むか又は心房細動及び/若しくは粗動であり、
前記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか又は糖タンパク質アセチルであ
り、糖タンパク質アセチルは、循環糖化タンパク質の存在量を表す核磁気共鳴分光法シグナルを指す、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記生体試料において、複数のバイオマーカー、例えば2つ、3つ、4つ、5つ又はこれよりも多い前記バイオマーカーの定量値を決定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
アルブミン
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、オメガ-6脂肪酸、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象は概ね健康であるか、又は前記対象は循環器疾患の既存の形態を有し、別の若しくは再発性の循環器疾患を発症するリスクが判定される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象は、循環器疾患に罹患していないことが既知である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値は核磁気共鳴分光法を使用して測定される請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記少なくとも1つのバイオマーカー又は複数の前記バイオマーカーの前記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクがあるか否かを判定することをさらに含む請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記リスクスコア、ハザード比、オッズ比、並びに/又は予測される相対リスク及び/若しくは絶対リスクは、前記対象の特徴等の少なくとも1つのさらなる指標に基づいて計算されてもよい請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の前記特徴は、年齢、身長、体重、肥満度指数、人種若しくは民族、喫煙、及び/又は循環器疾患の家族歴のうちの1つ以上を含む請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
アルブミン、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
リノール酸、
オメガ-6脂肪酸、
中密度リポタンパク質(IDL)中のトリグリセリド、
低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
酢酸、
乳酸、
ピルビン酸、
アセト酢酸、
アラニン、
グルタミン、
グリシン、
ヒスチジン、
フェニルアラニン、
チロシン
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前記循環器疾患を発症するリスクが高いことを示す
請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】