(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】物体の3D印刷のためのハイブリッド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240306BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240306BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240306BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240306BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240306BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/124
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y10/00
C08F220/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023550588
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 IB2022051638
(87)【国際公開番号】W WO2022180566
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519053061
【氏名又は名称】クビキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ、クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4F213
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA43
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4J127CC292
4J127EA05
4J127EA13
4J127FA06
(57)【要約】
物体の3D印刷のためのハイブリッド樹脂組成物であって、反応性希釈剤(RD)として機能する少なくとも1つの単官能性光硬化性成分Aと、靱性改質剤(TNM)として機能する少なくとも1つの単官能性又は多官能性光硬化性成分Bと、Tg上昇剤(TGE)として機能する少なくとも1つの単官能性又は多官能性熱硬化性成分Cと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の3D印刷のためのハイブリッド樹脂組成物であって、成分A、B及びCを含み、
a)成分Aが、式(I):
X-Y 式(I)
を有する少なくとも1つの単官能性光硬化性成分であり、ラジカル重合又はカチオン重合を受けやすい反応種Yと、側基Xと、を含み、前記成分Aが光誘導硬化時にポリマー骨格を形成し、前記骨格が好ましくは25℃超のT
gを有し、
b)成分Bが、成分Aと共重合する、少なくとも1つの単官能性又は多官能性光硬化性成分であり、500gmol
-1超の分子量を有し、前記成分Bが、光誘導硬化時に、好ましくは10%超の破断時の伸び及び0℃超のT
gを有する重合ネットワークを形成し、
c)成分Cが、少なくとも1つの単官能性又は多官能性熱硬化性成分であり、好ましくは100℃超のT
gを有する第2の重合ネットワークを形成し、
成分A、B及びCの総重量に基づき、前記光硬化性成分Aの量が、5重量%~80重量%の範囲であり、前記光硬化性成分Bの量が、10重量%~90重量%の範囲であり、前記熱硬化性成分Cの量が、1重量%~50重量%である、ハイブリッド樹脂組成物。
【請求項2】
前記光硬化性成分Aの前記量が、前記成分A、B及びCの前記総重量に基づき、5重量%~80重量%、好ましくは10重量%~60重量%、より好ましくは15重量%~55重量%、更により好ましくは20重量%~45重量%の範囲であり、
前記光硬化性成分Bの前記量が、前記成分A、B及びCの前記総重量に基づき、10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは25重量%~70重量%、更により好ましくは30重量%~65重量%の範囲であり、
前記熱硬化性成分Cの前記量が、前記成分A、B及びCの前記総重量に基づき、1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%、より好ましくは3重量%~30重量%、更により好ましくは5重量%~25重量%の範囲である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分Bが、成分A及び成分Bと共重合する少なくとも1つの光硬化性架橋剤(CA)である架橋成分Dによって部分的に置換され、
前記架橋成分Dの量が、前記樹脂組成物内の成分B及び成分Dの総重量に基づき、3重量%~70重量%、好ましくは5重量%~60重量%、より好ましくは7重量%~50重量%、更により好ましくは10重量%~40重量%の範囲である、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
成分Aが、単官能性(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル及びN-ビニル化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物、特にイソボルニル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、トリメチル-シクロヘキシル(メタ)アクリラート、グリセロールホルマール(メタ)アクリラート、トリシクロデカンメタノールモノ(メタ)アクリラート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、フェノキシエチル(メタ)アクリラート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリラート、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロペンチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、3-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエステル、2-(アクリロイルオキシ)安息香酸-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸デカヒドロナフタレン-2-イルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1,3,3-トリメチル-2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1,7,7-トリメチル-2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イルメチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-シクロヘキシルエチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸ベンジルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)安息香酸ベンゾアート、3-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-4-イソプロピルベンジルエステル、2-(アクリロイルオキシ)安息香酸ベンジルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸フェネチルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)-3-メトキシ安息香酸-3-メトキシベンジルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1-フェニルエチルエステル、4-((メタクリロイルオキシ)メチル)安息香酸シクロヘプチルエステル及び2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロヘキシルメチルエステルなどのサリチラート(メタ)アクリラート、コレステリル(メタ)アクリラート、ビフェニル(メタ)アクリラート、フェニルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、ビニルシンナマート、ビニルメチルオキサゾリジノン並びに2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルエステル、からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、ことを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
成分Bが、多官能性(メタ)アクリラート、特にエトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリラート、ポリエーテルウレタン(メタ)アクリラート、疎水性ウレタン(メタ)アクリラート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリラート、ポリエステルジ(メタ)アクリラート、変性エポキシジ(メタ)アクリラート及びオリゴマーポリカルボナートジ(メタ)アクリラートからなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
成分Cが、アリル、ビニル、マレイミド、シトラコンイミド、ベンゾオキサジン、エポキシ、フェノール、シアナートエステル、フタロニトリル及びそれらのオリゴマー若しくはポリマー、及び/又はそれらの異性体、及び/又はそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の化合物、特に、式(II)
【化1】
であって、式中、
-nが、1~10の整数であり、
-R
1が、H、CH
3又はCH
2を表し、
-R
2が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸及び対応するエステル、アルキル又は芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-イソブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、サリチル、コレステリル、フェニル、ベンジル、フェネチル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ビス(メチレン)オキシ、ビス(エチレン)オキシ、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)アミノ及びビス(フェニル)スルホンからなる群のうちの1つ以上の直鎖、分岐又は環状C
5-C
40脂肪族残基又は芳香族残基を独立して表し、これらの基のうちの1つ以上が、1つ以上のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6チオエーテル、ハロゲン、-NO
2、-SO
3H、-CF
3、-OH、-NH
2、-SH、-CN、-トリメトキシシリル、-トリエトキシシリルで任意には置換される1つ以上のエステル、アミド、ウレア、ウレタン、カルボナート、エーテル、チオエーテル基、又はマレイミド及びシトラコンイミド化合物並びに/若しくはそれらの異性体、特にイタコンイミドの物質分類由来の重合基を介して独立して結合される、
に記載のマレイミド及びシトラコンイミド誘導体並びにそれらの異性体、特にイタコンイミドの、モノマー、並びに/又はそれらのオリゴマー、並びに/又はそれらのプレポリマーからなる群から選択される1つ以上の化学種を含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
成分Cが、芳香族基、並びに/又は環状脂肪族基、並びに/又は複素環基、並びに/又は反応性基に対して強い分子間力及び/若しくは高い官能価(2超)を呈する基など、必要とされる高いT
gをもたらすポリマー骨格又はポリマーネットワークの形成を担う、固定置換基を含む多官能性アリル化合物、特に、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリルボラート、トリアリル 1,3,5-ベンゼントリカルボキシラート、トリアリルシトラート、トリアリルホスファート、テトラアリルピロメリタート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルプロピルイソシアヌラート、ジアリルイソシアヌラート、ジアリルフタラート、2,2-ビス(4-アリルオキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ジアリルジカルボナート、ジアリルカルボナート、ジアリル 1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート、2,2-ジアリルビスフェノールAジアセタートエーテル、ジアリルテレフタラート、ジアリルイソフタラート、ジエチルジアリルマロナート、1,3-ジアリルウレア、1,3-ジアリル-2-チオウレア、2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン、ジアリルオキシラート、ジアリルマロナート、ジアリルテトラブロモフタラート、2,6-ジアリ-メタ-クレゾール、N,N-ジアリルアニリン、ジアリルシアンアミド、N,N-ジアリルメラミン、2,2’-ジアリルビスフェノールA、N,N’-ジアリルピペラジン、2,2-ジアリルピロリジン、ジアリル-カルバミン酸 tert-ブチルエステル、ジアリルエーテルビスフェノールA、ジアリルフェニルホスホナート、5,5’-ジアリル-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジオール、シクロヘキサノンジアリルアセタール、4,4’-ジアリル-1,1’-ビフェニル及び2,2-ジアリル-4,4-ビフェノールからなる群から選択される1つ以上の化合物、を含む、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
成分Cが、芳香族基、並びに/又は環状脂肪族基、並びに/又は複素環基、並びに/又は反応性基に対して強い分子間力及び/若しくは高い官能価(2超)を呈する基など、必要とされる高いT
gをもたらすポリマー骨格又はポリマーネットワークの形成を担う、固定置換基を含む多官能性エポキシ化合物、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテルなどのビスフェノールA、ビスフェノールF及び/若しくはビスフェノールS誘導体、並びにジグリシジル 1,2-シクロヘキサンジカルボキシラート、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシラート、1,2-エポキシ-4(2-オキシラニル)-シクロヘキサン及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)1-ブタノールの縮合生成物、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、並びにこれらの誘導体のオリゴマー、並びにこれらの誘導体のプレポリマーからなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
成分Dが、
i)多官能性(メタ)アクリラート及び/若しくは多官能性(メタ)アクリラートの混合物、又は
ii)芳香族基若しくは環状脂肪族基、又は
iii)三官能性、四官能性、五官能性及び/若しくは六官能性(メタ)アクリラート、並びに/若しくは更により多くの官能性部位を有する超分岐及び/若しくは樹状メタ(アクリラート)、
を含む、ことを特徴とする、請求項3~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
成分Dが、
i)1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリラート及び1,12-ドデカンジオールジ-(メタ)アクリラート、トリ若しくはテトラエチレングリコール-ジ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリテトラ(メタ)アクリラート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、又は
ii)2-(2-ビフェニルオキシ)-エチル(メタ)アクリラート、ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート((メタ)アクリル酸及びビスフェノールA-ジグリシジルエーテル由来の付加物)、エポキシ-又はプロポキシル化ビスフェノールA-ジ(メタ)アクリラート(例えば、2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ)フェニル]-2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]-プロパン)、2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラート、イソホロンウレタンジ(メタ)アクリラート及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリ(メタ)アクリラート、
からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、ことを特徴とする、請求項3~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
ハイブリッド樹脂配合物が、成分C及びその誘導体と共重合可能である、コモノマー、及び/又はコオリゴマー、及び/又はコプレポリマーを更に含む、ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物が、成分A、B及びDの前記重量に基づき、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%の量で、光励起時に、好ましくは150nm~1000nm、より好ましくは200nm~550nmの波長スペクトル内の光励起時に、ラジカル重合に好適な少なくとも1つの光開始剤を含む、ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記樹脂組成物が、成分Cの前記熱硬化のための少なくとも1つの熱開始剤及び/又は触媒を含み、前記触媒が好ましくは、三級アミン(例えば、トリアルキルアミン)、特にDABCO、DMAP及びトリエチルアミン、他の脂肪族及び芳香族の二級及び三級アミン、有機アルコールのアルカリ塩、ホスフィン、トリフェニルホスホナート、イミダゾール、特に2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール及び/若しくは2-エチル-4-メチルイミダゾール、有機酸並びに/又は過酸化物、特に過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジクミル、tert-ブチルペルベンゾアート、ジ-(tert-ブチル)-ペルオキシド並びに/又は1,1,2,2-テトラフェニル-1,2-エタンジオール並びに/又はジシアンジアミドからなる群から選択される、ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記樹脂組成物が、ラジカル重合の1つ以上の開始剤、特に熱開始剤を含む、ことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記組成物が、好ましくは熱可塑性樹脂、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド、反応性ゴム、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、並びに/又はセルロース及び/若しくはゼラチンなどの天然ポリマーからなる群から選択される、靱性改質剤を含み、
前記靱性改質剤が、好ましくは、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル又はスチレン化合物、エポキシ化合物若しくはオキセタンなどの環状エーテル、並びに/又は可撓性リンカーを有する前記反応性基を含むモノマー、特に脂肪族長鎖及び/若しくはエチレングリコールスペーサ、並びに/又は50%超の破断時の伸び及び0℃未満、好ましくは-30℃未満のT
gを有する重合ネットワークを好ましくは形成する光硬化性成分Bなど、ラジカル重合又はイオン重合を受けやすい1つ又は複数の反応性基で終端又は官能化され、
前記靱性改質剤が、好ましくは、成分A、B、C及びDの前記総重量に基づき、0.5重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、更により好ましくは5重量%~10重量%の量で存在する、ことを特徴とする、請求項1~14に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記樹脂組成物が、重合開始剤、重合禁止剤、溶媒、充填剤、酸化防止剤、顔料、染料、表面改質剤、コアシェル粒子及び/又はそれらの混合物の群から選択される少なくとも1つ又は複数の成分を含む、ことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
光開始剤、熱開始剤、触媒、硬化剤、重合開始剤、重合禁止剤、溶媒、充填剤、酸化防止剤、顔料、染料、表面改質剤、コアシェル粒子及び/若しくはこれらの混合物が、ポリマー性であり、かつ/又は成分A、成分B及び成分D、並びに/若しくは成分Cによって重合を受け得る重合官能基によって追加的に官能化される、ことを特徴とする、請求項12~16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
室温での前記樹脂組成物が、2Pa・s超、好ましくは10Pa・s超の粘度を有する、ことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記樹脂組成物が、前記成分A、B、C及びDの前記総重量に基づき、好ましくは0.5重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~25重量%の量で、無機質難燃剤、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化アンチモン、酸化スズ、ホウ砂及び/若しくはホウ酸亜鉛、赤リン、膨張化グラファイト、並びに/又は窒素ドナー及び/若しくはリン含有物質などの有機添加剤、好ましくはポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、有機ホスファート、トリフェニルホスフィン、ホスフィナート、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントラン-10-オキシド、ハロゲン化ホスファート、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化スチレン、ハロゲン化エポキシド、ハロゲン化(メタ)アクリラート及び/若しくはハロゲン化パラフィンなどのハロゲン化有機難燃剤を更に含み、好ましくは前記有機添加剤が、重合基、特に(メタ)アクリラートで官能化される、ことを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
3D印刷によって物体を製造する方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の樹脂組成物が、光誘導造形工程、任意には二次露光を介して後硬化され、続いて熱誘導硬化工程を受ける、方法。
【請求項21】
前記光誘導造形工程が、30℃~150℃、より好ましくは35℃~100℃、更により好ましくは40℃~90℃の前記樹脂組成物の加工温度で実施される、ことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光誘導造形工程が、NIR光源又はUV/Vis光源及び対応する光学系を使用して実施され、前記NIR構成が、二光子光重合を介して3D製造を可能にするために選択され、前記UV/Vis構成が、レーザ/DLP、LED/DLP、レーザ/LCD及びLED/LCDからなる群から選択される、ことを特徴とする、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記光誘導造形工程が、層ごとに構造プラットフォームで前記物体を構築し、構造層のスタックを得ることを含み、各構造層が、
-前記樹脂組成物の所定の厚さの非構造層を形成する工程と、
-所望のパターンに従って前記非構造層上に光を選択的に投射し、それによって前記樹脂組成物を硬化して前記構造層を得る工程と、
によって得られる、ことを特徴とする、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記樹脂組成物の前記非構造層が、前記加工温度で0.01~70Pa・s、好ましくは0.1~30Pa・sの粘度を有する、ことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記熱誘導硬化工程が、前記光誘導造形工程の前記加工温度よりも高い温度で、好ましくは120℃超の温度で実施される、ことを特徴とする、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記熱誘導硬化工程が、オーブンで前記物体を加熱すること、及び/又は前記物体を電磁放射線に供すること、及び/又は前記物体において、熱重合などの二次発熱反応を誘導すること、を含むことを特徴とする、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項20~26のいずれか一項に記載の方法によって、請求項1~19のいずれか一項に記載の樹脂組成物から製造される物体。
【請求項28】
前記物体が、相互侵入網目、特に
i)相互侵入網目、又は
ii)半相互侵入網目、又は
iii)順次相互侵入網目、又は
iv)ポリマーブレンド、
を含む、ことを特徴とする、請求項27に記載の物体。
【請求項29】
i)800MPa以上の引張弾性率、25MPa以上の引張強度、20%以上の破断時の伸び、45℃以上のガラス転移温度及び30℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
ii)1500MPa以上の引張弾性率、35MPa以上の引張強度、5%以上の破断時の伸び、90℃以上のガラス転移温度及び45℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
iii)2000MPa以上の引張弾性率、50MPa以上の引張強度、5%以上の破断時の伸び、100℃以上のガラス転移温度及び60℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
iv)1300MPa以上の引張弾性率、35MPa以上の引張強度、20%以上の破断時の伸び、70℃以上の荷重たわみ温度、又は
v)2000MPa以上の引張弾性率、55MPa以上の引張強度、10%以上の破断時の伸び、85℃以上の荷重たわみ温度、
を呈することを特徴とする、請求項27又は28に記載の物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された靱性及び改善された熱特性を有する、物体を3D印刷するためのハイブリッド樹脂組成物に関する。更には、本発明は、本発明のハイブリッド樹脂組成物により3D印刷することで物体を製造する方法、及び本発明の樹脂組成物から製造された物体に関する。
【0002】
序論
リソグラフィベースの積層造形技術(Lithography-based additive manufacturing technologies、L-AMT)は、部品製造の工業的利用に向け、唯一のプロトタイピング部分から進歩している。多くの新規プロセスソリューション(例えば、ホットリソグラフィ-欧州特許第3284583A1号、CLIP-米国特許出願公開第2015/0072293A1号、HARP-国際公開第2020/185692A2号)は、材料の自由度及び製造キャパシティといった点では本技術分野を推進しており(例えば、速度の増加又は材料スループットの増加による)、こうした技術革新は、多岐にわたる範囲の新規材料技術(例えば、UV硬化エラストマー-DOI:10.1002/adma.201606000、強靱なフォトポリマー-欧州特許第3090722A1号、高温耐性材料-欧州特許第3632941A1号)と同時に起こっており、積層造形(例えば、設計自由度、製造の柔軟性)の潜在性を活かし得る技術分野(例えば、歯科、整形外科、組織工学、再生医学)、モビリティ分野(例えば、航空宇宙、鉄道、自動車)、エレクトロニクス市場、消費財分野(例えば、スポーツ分野、宝飾、化粧品、パーソナルケア製品)など非常に重要な分野における最終用途を現実化する。
【0003】
L-AMT用の光硬化性材料(樹脂又は配合物)は、典型的には光照射時に重合及び硬化する反応性成分(例えば、モノマー、オリゴマー及び光開始剤)と、全体的な材料性能を更に調節する、ある特定の添加剤と、から構成される。典型的には、光開始剤は光照射を介して活性化され、続いてそれぞれの反応性成分(例えば、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミド、N-ビニル化合物、ビニルカルボナート、ビニルカルバマート、マレイミド、イタコナート、フマラート、スチレン化合物、エポキシ化合物又はオキセタン、ベンゾオキサジン、オキサゾリン、シアノアクリラートなどの環状エーテル)と反応可能である反応部位(例えば、ラジカル、カチオン又はアニオン)を生成し、硬化材料を形成する。
【0004】
かかる光硬化性配合物の3Dパーツへの加工は、様々なL-AMTによって実施され得る。これらの非限定的な例は、光造形(stereolithography、SLA)、デジタルライトプロセッシング(digital light processing、DLP)、デジタルインクジェットプリンティング、ホットリソグラフィ、連続液界面製造(continuous liquid interface production、CLIP)、大領域ラピッドプリンティング(high-area rapid printing、HARP)、マルチジェットモデリング、二光子光重合(two photon photopolymerization、TPP)又は他の液体積層造形技術である。上述の技術は、ほとんどが最終的な3Dパーツの層ごとの積層に基づいており、連続的な方法で、及び/又はより大きな印刷領域用に移動DLP又はレーザタイプシステムを使用することで、ボトムアップ又はトップダウンなどの様々な形態で実現され得る。かかる技術に適用される現在の樹脂配合物は、ほぼ排他的に低粘度(5Pa・s未満)のものである。これは、積層品又は積層工程の成功には不可欠のものであり、高い特徴分解能を確保し、加工欠陥を防止する。
【0005】
出願人は、ホットリソグラフィプロセス(欧州特許第3284583A1号)を開発した。これによって、周囲温度(20℃)で典型的には5Pa・s超の高い粘度を有す光硬化性樹脂による、高温でのリソグラフィベースの三次元造形を可能とする。欧州特許第3284583A1号の文脈では、高い粘度は、高分子量(500gmol-1超、好ましくは2000gmol-1超の数平均分子量)及び/若しくは高い溶融温度若しくは軟化温度(35℃超)及び/若しくは強い分子間力を有する、高含有量のモノマー、オリゴマー及び/若しくはプレポリマー(例えば、ウレタン、ウレア、カルボナート、エステル、アミド)、並びに/又は最終材料性能を最適化するために光硬化性樹脂に加えられる高含有量の充填材料(例えば、セラミック、金属及び/若しくはポリマー粒子及び/若しくは繊維)を有する光硬化性樹脂を加工するときに見出されることになる。高い温度と高粘性配合物の加工とを両立させることで、靱性、耐熱性及び衝撃耐性が組み合わせられた光硬化性材料の3次元造形が可能となる。
【0006】
靱性を犠牲にすることなく(例えば、破断時の伸びを維持する)、改善された耐熱性(例えば、増大したTg)を呈し、その逆もまた同じであるフォトポリマー材料を形成するためのリソグラフィベースの3次元造形用の樹脂組成物は、放射線硬化産業全体にとっては重要な関心事である。こうした樹脂組成物の非限定的な例は、コーティング、接着剤、サンドイッチ構造又は材料押出、樹脂注入、樹脂トランスファー成形、L-AMTなどのバルク加工技術による薄層適用である。多くの材料概念が文献にまとめられているが、典型的には靱性を改善するために耐熱性を犠牲にしている。
i)例えば、チオール-エン光重合を介したラジカル若しくはカチオン硬化機構の調節によって、又は付加開裂連鎖移動反応(例えば、ラジカル化学におけるビニルスルホン又はカチオン重合におけるアルコール)を使用することでネットワーク形成機構全体を制御すると、架橋密度が低いフォトポリマーネットワークが生じる。したがって、より高い靱性はTgを著しく損なうことで達成される。
ii)靱性のあるフォトポリマーを実現するための別のアプローチは、高分子量の光硬化性オリゴマーであって、好ましくは周囲条件未満のTgを有する高分子量の光硬化性オリゴマーの使用であり、長い可撓性リンカーを導入することで、目的のフォトポリマーネットワーク靱性が得られる。したがって、かかる高分子量オリゴマーの加工を可能にするため、樹脂配合物内の架橋性モノマーの代わりに単官能性反応性希釈剤を更に大量に使用したときには、靱性が著しく改善されるが、耐熱性及び強度は多くの場合、損なわれる(DOI:10.1002/adma.201606000)。
iii)別の方法では、分子量が更に高いかかる光硬化性オリゴマー化合物はまた、好ましくは周囲条件よりも高いTgを呈するときに使用可能である。これは印刷性能を著しく改善し、目的のフォトポリマーの材料性能を変化させる。Tg、弾性率及び強度などの(熱)機械性能が向上される一方、同時に靱性は損なわれる(米国特許出願公開第2019/0249018A1号及び国際公開第2019/204807A1号)。
【0007】
近年では、L-AMTの光造形工程で使用されるフォトポリマーネットワーク形成とは異なる、1つ以上の更なる材料概念から構成されたハイブリッド樹脂系が大きく注目されている。このように見込みがあるハイブリッド材料概念は、積層造形用の靱性があるフォトポリマー樹脂の形成にとって大きな可能性を示すものであり、高い靱性と耐熱性を同時に併せ持つ光重合材料を得ることができる。ハイブリッド樹脂系は、異なるインパルス(例えば、光硬化工程とそれに続く熱硬化工程-米国特許出願公開第2016/0160077A1号)によって引き起こされる様々な硬化工程を呈する樹脂材料及び/又は複数の硬化機構(例えば、ラジカル硬化機構とカチオン硬化機構を組み合わせたもの、若しくは様々なラジカル硬化機構-国際公開第2016/200972A1号、国際公開第2018/191247A1号)を呈する材料として定義され得る。このように形成されたフォトポリマーネットワークは、第1の成分と第2の、又は複数の更なる成分とから構成されたハイブリッド材料と見なされており、典型的には完全相互侵入網目(Interpenetrating network、IPN)、半IPN、疑似IPN、二重ネットワーク又はポリマーブレンドを表す。光に対する反応性を維持し、それによってL-AMTでの加工適性を確実なものとするためには、十分な生強度を有する材料を得るため、有効量の光硬化性成分を含む配合物が、配合される必要がある。生強度は、光硬化積層造形工程後に受けたそれぞれの材料の機械強度(例えば、引張試験又は曲げ試験による測定されたもの)である。
【0008】
第1の光硬化工程及び当該第1の光硬化工程とは異なる、第2の、又は複数の更なる硬化工程を通し、異なる硬化機構を介したかかるハイブリッド樹脂から形成された材料は、高い靱性と耐熱性を同時に併せ持つ、性能フォトポリマーにとって強力な設計ストラテジーを提供する。当該第2の、又は複数の更なる硬化工程は、第1の光硬化工程(例えば、L-AMTの造形工程)と同時に、又は続いてのいずれかに実施され得る。当該第2の、又は複数の更なる硬化工程の例は、
i)第1の光硬化工程を介して硬化されていない樹脂部分の熱硬化を引き起こす熱硬化工程(例えば、アクリラートマトリックス内でのエポキシ熱硬化性樹脂の熱硬化)、
ii)第1の光硬化工程を介して硬化されていない樹脂部分の硬化を引き起こす湿潤触媒又は有機触媒により触媒された硬化工程(例えば、遊離イソシアナート基又はシラン基を有する樹脂の硬化)及び/又は最初に樹脂部分の分解を引き起こし、続いて第1の光硬化工程を介して硬化されていない樹脂部分の硬化をその後引き起こす硬化工程(例えば、ブロック化イソシアナート基を有する樹脂の硬化及び/又は脱ブロック化)、
iii)第1の光硬化工程を介して硬化されていない樹脂部分の硬化を開始するために、第1の光硬化工程とは異なる硬化機構を引き起こす光硬化工程(例えば、ラジカル及びカチオン光重合を介して硬化されたアクリラート/エポキシ樹脂系)
iv)第1の光硬化工程を介して硬化されていない樹脂部分の硬化を開始するために、第1の光硬化工程とは異なる波長で引き起こされた光硬化工程(例えば、390nm超の波長で硬化されたアクリラート樹脂部分及び380nm未満で硬化されたエポキシ樹脂部分)、である。
【0009】
かかるハイブリッド樹脂は多くの場合、容易な適用及び迅速な硬化を目的として設計されている(例えば、室温及び/又は室内湿度などの周囲条件ですぐに硬化する2Kシステム)ため、かかるハイブリッド樹脂の限定例は、3D印刷用の光硬化性配合物に導入されている。したがって、定義された製造工程における均質かつ制御された樹脂硬化及び制御された後硬化という、好ましくは1Kシステムといった安定した原料配合物による高い加工安定性を決定的に必要とするL-AMTなどのより複雑な部分製造プロセスにとっては、これは理想的ではない。かかるハイブリッド材料系は、第1の光硬化工程を介して硬化されていない樹脂部分の硬化を引き起こす第2の、又は複数の更なる硬化工程を介して材料性能を著しく向上させるが、光硬化工程とは異なる硬化工程は、特にL-AMTなど、樹脂安定性が短く、不均質かつ/又は制御されない硬化及び/又は制御されない材料勾配が典型的には望ましくない適用分野では、製造プロセス中の照射(光硬化)の領域外部では自動的に引き起こされないこと、又はゆっくりと発生することが確実に生じる必要がある。
【0010】
ラジカル硬化成分及びカチオン硬化成分(例えば、アクリラート/エポキシ系)から構成されたハイブリッド樹脂の場合のように、エポキシ系成分を硬化させるためのカチオン開環機構は比較的緩慢であり、積層造形を支援するためには高エネルギー線量の化学線を必要とする。更なる態様では、かかるアクリラート/エポキシ樹脂は、カチオン重合機構のリビング性により生じる不十分な液体安定性を呈する。このリビング性によって、3D印刷プロセス中の部品精度及び分解能に課題が更に生じる。更には、かかる樹脂系は、アンチモン塩から構成されたカチオン光開始剤を使用しなければならないため、生体適合性を著しく欠損しており、得られたポリマー部品は、UV光への長時間露光による黄変といった課題を抱えている。
【発明の概要】
【0011】
したがって、L-AMTでの使用に適合されたハイブリッド樹脂組成物を提供することが本初の目的である。このハイブリッド樹脂組成物により、耐熱性が改善され(例えば、更に高いガラス転移温度Tg又は荷重たわみ温度HDT、温度依存性弾性率低下の低減)、かつ同時に靱性を維持する(例えば、引張試験による破断時の伸びの保持によって示される)、又はその逆も該当する、フォトポリマー材料及び製品の3D印刷が可能となる。
【0012】
この目標を解決するために、重合成分A、B及びC(並びに任意にはD)を含む、物体の3D印刷のためのハイブリッド樹脂組成物が提供される。樹脂組成物は、
反応性希釈剤(reactive diluent、RD)とも称される、式(I)を有する少なくとも1つの単官能性光硬化性成分であり、ラジカル重合又はカチオン重合を受けやすい反応種Yと、側基Xと、を含み、当該成分Aが光誘導硬化時にポリマー骨格を形成し、当該骨格が好ましくは25℃超のTgを有する、成分Aと、
X-Y 式(I)
少なくとも1つの単官能性又は多官能性光硬化性成分であり、対応する硬化機構を介して成分Aと共重合し、500gmol-1超の分子量を有し、靱性改質剤(toughness-modifier、TNM)として機能し、好ましくは破断時の伸びが10%超であり、かつ0℃超のTgを有する重合ネットワークを形成する、成分Bと、
少なくとも1つの単官能性又は多官能性熱硬化性成分であり、好ましくは100℃超のTgを有する第2の重合ネットワークを形成し、Tg上昇剤(Tg-enhancer、TGE)として機能する、成分Cと、を含み、
任意には、光硬化性成分Bのうちの部分的な内容物は、加工適性を向上させるための対応する硬化機構を介し、成分A及びBと共重合する架橋剤(crosslinking agent、CA)とも称される、光硬化性架橋成分Dによって置換され、
光硬化性成分Aの量は、成分A、B及びCの総重量に基づき、5重量%~80重量%の範囲であり、光硬化性成分Bの量は、10重量%~90重量%の範囲であり、熱硬化性成分Cの量は、1重量%~50重量%の範囲であり、任意には、架橋成分Dの量は、成分B及びDの総重量に基づき、3重量%~70重量%の範囲である。
【0013】
好ましい実施形態では、樹脂組成物は、組成物を光硬化性にする光開始系及び組成物を熱硬化性にする熱開始系を含む。別の好ましい実施形態では、樹脂組成物は、周囲条件では貯蔵安定性があり、第2の、又は複数の更なる硬化工程は、潜在的であり、かつ第1の光硬化工程と同時に又はそれに続いて選択的に引き起こされる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、優先的に成分A及びB(並びに存在する場合には、任意にはD)が重合又は共重合する第1の光硬化工程と、優先的に成分Cを硬化させる、第2の、又は複数の更なる熱硬化工程と、を含む、2段階のプロセスを通じて熱特性が改善され、靱性のある材料を形成することができる(
図2及び
図3を参照)。得られた材料は、成分Cを含まないが、代わりに成分A及びBとともに第1の光硬化工程でも優先的に重合される架橋剤Dのみを含むそれぞれのカウンターパートと比較した場合、高い耐熱性(例えば、ガラス転移温度T
gによって測定されたもの)と高い靱性(例えば、破断時の伸びによって測定されたもの)とが両立しているといった点では一際優れている。得られるフォトポリマーネットワークは、相互侵入網目(IPN)として識別することができ、ハイブリッド樹脂配合物の組成に応じて、完全IPN、半IPN、疑似IPN、二重ネットワーク又はポリマーブレンドが得られる。本発明の樹脂組成物の範囲内では、光硬化性成分A、B及び任意にはDは、光硬化工程(例えば、L-AMTを介した加工を可能とする)を介し、靱性のあるフォトポリマーネットワークの形成を担い、更なる耐熱性は、剛性のある二次ネットワークを形成するために、第2の、又は複数の更なる樹脂部分のネットワーク形成を介して得られる(例えば、成分Cの熱硬化工程を介する)。この戦略を使用することで、フォトポリマー材料の耐熱性は、3D印刷における最先端のフォトポリマーに関する重要な課題でもある靱性を損なう必要なく向上し得る。
【0015】
成分Aは、光誘導硬化時にポリマー骨格を形成するために好ましくは選択され、当該骨格は、25℃超のTgを有する。好ましくは、当該骨格は40℃超のTgを有し、更により好ましくは、100℃超のTgを有する。任意の成分Aは、単独で使用された場合、完全重合後にそれぞれの最低Tgを有するポリマーを製造するというこの要件を満たすと考えられている。材料のガラス転移温度Tgは、このガラス転移が発生する温度の範囲を特徴としている。ガラス転移温度は、本願の例の項に記載の動的機械解析(dynamic mechanical analysis、DMA)によって測定される。
【0016】
成分Bは、光誘導硬化時に重合ネットワークを形成するために好ましくは選択され、当該重合ネットワークは、10%超の破断時の伸びと、0℃超のTgを有する。好ましくは、破断時の伸びは20%超である。好ましくは、Tgは25℃超である。任意の成分Bは、単独で使用された場合、完全重合後にそれぞれの破断時の最低の伸び及び最低Tgを有するポリマーを製造するというこの要件を満たすと考えられている。破断時の伸びは、5A試料を使用し、Zwick/Roell製のProLine Z010 TH材料試験機を用いて、国際標準であるISO 527-1(2012年2月公開)で定義されている標準化された引張試験方法に従い測定された。引張試験は、0.05~0.25%の伸びの範囲内で1mm分-1のひずみ速度にて実施され、続いて測定を10mm分-1のひずみ速度で継続する。ガラス転移温度Tgは、上記成分Aについて示されるように測定される。
【0017】
成分Cは、熱誘導硬化時に重合ネットワークを形成するために好ましくは選択され、当該重合ネットワークは、100℃超のTgを有する。任意の成分Cは、単独で使用された場合、完全重合後に100℃超のTgを有するポリマーを製造するというこの要件を満たすと考えられている。ガラス転移温度Tgは、上記成分Aについて示されるように測定される。
【0018】
更なる態様によれば、物体の3D印刷のための本発明の樹脂組成物は、以下の重合成分A、B及びCを含む。
A)反応性希釈剤又はRDとも称される、式(I)を有する単官能性光硬化性成分Aであり、ラジカル重合又はカチオン重合を受けやすい反応種Yと、側基Xと、を含み、当該成分Aは、光誘導硬化時に、25℃超のTg、好ましくは40℃超のTg、更により好ましくは100℃超のTgを有するポリマー骨格を形成し、
X-Y 式(I)
であって、式中、
-Yは、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミド、N-ビニル化合物、ビニルカルボナート、ビニルカルバマート、マレイミド、イタコナート、フマラート、スチレン化合物、エポキシ化合物又はオキセタン、オキサゾリン、ベンゾオキサジン、シアノアクリラートなどの環状エーテル及びそれらの誘導体の群から選択される化学種であり、任意には1つ以上のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6チオエーテル、ハロゲン、-NO2、-SO3H、-CF3、-OH、-NH2、-SH、-CN、-トリメトキシシリル又はトリエトキシシリルで置換され、
-Xは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸及び対応するエステル、アルキル又は芳香族エステル、フェニル、ベンジル、フェネチル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-イソブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、サリチル及びコレステリルからなる群のうちの1つ以上の直鎖、分岐又は環状、二環又は多環のC5-C40脂肪族残基、複素環残基又は芳香族残基を表し、これらの群のうちの1つ以上は、エステル、アミド、ウレア、ウレタン、カルボナート、エーテル又はチオエーテル基を介して独立して結合されて成分Aを形成することができ、これらは任意には、1つ以上のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C3-C7シクロアルキル、C6-C10アリール、C1-C6チオエーテル、ハロゲン、-NO2、-SO3H、-CF3、-OH、-NH2、-SH、-CN、-トリメトキシシリル又はトリエトキシシリルで置換される。
【0019】
好ましい成分Aは、環状、二環又は多環のC5-C40脂肪族残基、複素環残基又は芳香族残基などの固定基を含む、硬化時にホモポリマー及び/又はポリマー骨格を形成するモノマーである。
【0020】
好ましい成分Aは、40℃よりも高い、又は60℃よりも高い、又は80℃よりも高い、又は100℃よりも高い、又は50℃~100℃、又は80℃~120℃、又は100℃~150℃、又は120℃~160℃、又は150℃~200℃のTgでの硬化時にホモポリマー又はポリマー骨格を形成するモノマーである。それぞれのポリマー骨格は、当業者に公知である重合方法である熱硬化反応又は光化学硬化反応を介して形成され得る。例えば、熱開始剤として、過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物は、0.1~5重量%の量で使用することができ、又は光開始種として、0.2~5重量%の量である1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのラジカル光開始剤若しくは0.5~10重量%の量である、ホウ酸塩、リン酸塩、ヒ素、アンチモン酸塩、テトラキスボラートなどのアニオンを有するトリフェニルスルホニウム若しくはジフェニルヨードニウム塩などのカチオン光開始剤を使用することができる。熱重合については、反応温度は使用されるそれぞれの熱開始剤に調節される、又は光硬化の場合には、適用される光インパルスは、実行される光開始系に調節される。ポリマーサンプルは、成形、積層又は3D印刷技術を介して薄層又は塊のサンプルとして硬化することができる。形成されるポリマー骨格は、5000gmol-1超の数平均分子量を呈するという点を特徴としている。
【0021】
成分Aについてのいくつかの好ましいが非限定的な例としては、イソボルニル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、トリメチル-シクロヘキシル(メタ)アクリラート、グリセロールホルマール(メタ)アクリラート、トリシクロデカンメタノールモノ(メタ)アクリラート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、フェノキシエチル(メタ)アクリラート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリラート、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロペンチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、3-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエステル、2-(アクリロイルオキシ)安息香酸-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸デカヒドロナフタレン-2-イルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1,3,3-トリメチル-2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1,7,7-トリメチル-2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イルメチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-シクロヘキシルエチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸ベンジルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)安息香酸ベンゾアート、3-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-4-イソプロピルベンジルエステル、2-(アクリロイルオキシ)安息香酸ベンジルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸フェネチルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)-3-メトキシ安息香酸-3-メトキシベンジルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1-フェニルエチルエステル、4-((メタクリロイルオキシ)メチル)安息香酸シクロヘプチルエステル及び2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロヘキシルメチルエステルなどのサリチラート(メタ)アクリラート、コレステリル(メタ)アクリラート、ビフェニル(メタ)アクリラート、フェニルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、ビニルシンナマート、ビニルメチルオキサゾリジノン及び2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルエステルなどの単官能性(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、N-ビニル化合物が挙げられる。
【0022】
成分Aはまた、式Iによって記載される2つ、3つ又は複数の異なる成分を含む組成物から構成されてもよい。
【0023】
B)対応する硬化機構を介して、成分Aと共重合する、単官能性又は多官能性光硬化性成分Bであり、500gmol-1超、好ましくは1000gmol-1超の数平均分子量を有し、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミド、N-ビニル化合物、ビニルカルボナート、ビニルカルバマート、マレイミド、イタコナート、フマラート、スチレン化合物、エポキシ化合物又はオキセタン、オキサゾリン、ベンゾオキサジン、シアノアクリラートなどの環状エーテル及びそれらの誘導体及び/又はそれらの組合せから構成された群から選択される1つ以上の化学種を有し、成分Bは、少なくとも1つの、任意には(ポリ)エーテル、(ポリ)エステル、(ポリ)カルボナート、(ポリ)ウレタン、(ポリ)シロキサン、(ポリ)アミド、(ポリ)イソプレン、1つ以上のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C3-C7シクロアルキル、C6-C10アリール、C1-C6チオエーテル、ハロゲン、-NO2、-SO3H、-CF3、-OH、-NH2、-SH、-CN、-トリメトキシシリル又はトリエトキシシリルで任意には置換された変性エポキシ官能化オリゴマーであり、靱性改質剤(TNM)として機能し、好ましくは、10%超、好ましくは20%超の破断時の伸び及び/又は0℃超、好ましくは25℃超のTgを有する重合ネットワークを形成する。
【0024】
好ましい成分Bは、平均反応性基官能価が1.3超、好ましくは1.5超、より好ましくは1.9超、又は平均官能価が0.9~2.1、又は0.9~3.1、又は2.9~3.1、又は1.9~2.1である、多官能性オリゴマー、プレポリマー及び/又はポリマーである。
【0025】
好ましい成分Bは、数平均分子量が500gmol-1超、好ましくは1000gmol-1超、より好ましくは5000gmol-1超、更により好ましくは10000gmol-1超又は数平均分子量が、700gmol-1~50000gmol-1、又は1000gmol-1~30000gmol-1、又は1000gmol-1~20000gmol-1、又は2000gmol-1~50000gmol-1、又は2000gmol-1~30000gmol-1、又は2000gmol-1~20000gmol-1である、多官能性オリゴマー、プレポリマー及び/又はポリマーである。
【0026】
好ましい成分Bは、25℃よりも高い、若しくは40℃よりも高い、若しくは60℃よりも高い、若しくは80℃よりも高い、若しくは100℃よりも高い、若しくは0℃~30℃、若しくは10℃~40℃、若しくは30℃~60℃、若しくは40℃~80℃のTg、及び/又は10%よりも高い、若しくは20%よりも高い、若しくは30%よりも高い、若しくは50%よりも高い、若しくは80%よりも高い、若しくは10%~30%、若しくは20%~40%、若しくは30%~50%、若しくは80%~120%、若しくは150%~200%の破断時の伸びを有する、硬化時にホモポリマー又は架橋ポリマーネットワークを形成する、多官能性オリゴマー、プレポリマー及び/又はポリマーである。それぞれの架橋ポリマーネットワークは、当業者に公知である重合方法である熱硬化反応又は光化学硬化反応を介して形成され得る(上記説明を参照)。ポリマーサンプルは、成形、積層又は3D印刷技術を介して薄層又は塊のサンプルとして硬化することができる。
【0027】
成分Bについてのいくつかの好ましい例は、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート(例えば、Miramer 2200、Miramer 2301)、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリラート(例えば、Ebecryl 8811、Ebecryl 8809、Ebecryl 8409、Ebecryl 246、Miramer PU2100、Miramer SC2404、Miramer SC2565、Miramer PU2564、BR-571 MB、BR-7432GB、CN9001、CN965、CN981、CN8881 NS)、ポリエーテルウレタン(メタ)アクリラート(例えば、CAとして10~25%の成分Dを既に含むBR-541 MB,BR-582H15)、疎水性ウレタン(メタ)アクリラート(例えば、RDとして5~15%の成分Aを既に含むBRC-443D)、ポリエステルウレタン(メタ)アクリラート(例えば、BR-744BT)、ポリエステルジ(メタ)アクリラート(例えば、CN2608A、CN704、CN790)、変性エポキシジ(メタ)アクリラート(例えば、CN2003EU)、オリゴマーポリカルボナートジ(メタ)アクリラート、などの多官能性(メタ)アクリラートである。
【0028】
成分Bはまた、記載の2つ、3つ又は複数の異なる成分Bを含む組成物から構成されてもよい。
【0029】
C)単官能性及び/又は多官能性熱硬化性成分Cであり、Tg上昇剤(TGE)として機能し、好ましくは、100℃超、好ましくは150℃超、更により好ましくは200℃超のTgで有する第2の重合ネットワークを形成し、アリル、ビニル、マレイミド、シトラコンイミド、ベンゾオキサジン、エポキシ、フェノール、シアナートエステル、フタロニトリルから構成された群から選択され1つ以上の化学種、及びそれらのオリゴマー若しくはポリマー、及び/又はそれらの異性体、及び/又はそれらの組合せを有し、更には潜在的であり、第1の光硬化工程と同時に、又はそれに続いて選択的に引き起こされる第2の、又は更に複数の硬化工程を用いて、周囲条件で最終配合物を貯蔵安定性のある状態にする。それぞれの架橋ポリマーネットワークは、当業者に公知である重合方法である熱硬化反応を介して形成され得る(上記説明を参照)。ポリマーサンプルは、成形、積層又は3D印刷技術を介して薄層又は塊のサンプルとして硬化することができる。
【0030】
好ましい成分Cは、100℃超、好ましくは150℃超、より好ましくは180℃超、更により好ましくは200℃超のTg、又は80℃~120℃、若しくは120℃~150℃、若しくは150℃~180℃、若しくは180℃~220℃、若しくは220℃~250℃、若しくは250℃~300℃のTgを有する第2の重合ネットワークの形成を担う、単官能性及び/又は多官能性熱硬化性成分であり、したがって当該成分は、最終フォトポリマーネットワークの靱性(例えば、破断時の伸びにより測定される)を維持しながらも、改善された耐熱性(例えば、Tg又は荷重たわみ温度HDTにより測定される)を提供する。
【0031】
好ましい成分Cは、
i)芳香族基、及び/若しくは環状脂肪族基、及び/若しくは複素環基、及び/若しくは強い分子間力を呈する基など、必要とされる高いTgをもたらし、更に重合収縮に対する傾向性が低いポリマー骨格又はポリマーネットワークの形成を担う固定置換基を含み、かかる成分が好ましくは、より高い分子量(500gmol-1超の数平均分子量)を有するオリゴマー及び/若しくはプレポリマーであり、並びに/又は
ii)より高い架橋密度が生じる、低い分子量(500gmol-1未満の数平均分子量)のものであり、したがって全体的により高い耐熱性が生じ、並びに/又は
iii)より高い架橋密度が生じる、反応性基に対する高い官能価(2超)のものであり、したがって全体的により高い耐熱性が生じる、単官能性及び/又は多官能性熱硬化性成分である。
【0032】
好ましい成分Cは、成分A、B及び任意にはDの光硬化工程に続いて実施される熱硬化工程を介して効率的に硬化され得る。熱硬化工程は、好ましくは100℃超、より好ましくは120℃超、更により好ましくは140℃超である、光硬化工程の初期加工温度よりも高い温度で、及び形成された材料が、好ましくは250℃未満、より好ましくは200℃未満、更により好ましくは180℃未満の十分な熱安定性を更に呈する温度で、実施される。
【0033】
好ましい成分Cは、成分A、B及び任意にはDの光硬化工程に続いて実施される熱硬化工程を介して効率的に硬化され得る。熱硬化工程は、オーブン(例えば、電気オーブン、ガスオーブン又はソーラーオーブン)での能動的加熱を介して直接的に、又はマイクロ波照射、他の光インパルス(赤外線など)若しくは熱重合などの二次発熱反応及び/若しくはそれらの組合せを介して間接的に、熱を印加することで実施される。
【0034】
いくつかの他の好ましい成分Cは、第1の光硬化工程と同時に、又はそれに続いて実施される第2の硬化工程を介して効率的に硬化され得る。樹脂成分は、異なる硬化機構(例えば、カチオン硬化対ラジカル硬化)を介し、光で同時に、又は第1の光硬化工程とは異なる波長の光による第2の硬化工程(例えば、390nm超の波長でのラジカル硬化及び380nm未満の波長でのカチオン硬化)と同時に、若しくはそれに続いて硬化される。
【0035】
成分Cについてのいくつかの更に好ましい例は、30~150℃、より好ましくは30~120℃である、ホットリソグラフィ用の加工範囲内の軟化温度若しくは溶融温度を呈し、かつ/又は30~150℃、より好ましくは30~120℃の範囲である加工温度で0.5~1000Pa・sの粘度を呈する。
【0036】
好ましい実施形態では、熱硬化性成分Cは、続いて引き起こされる熱硬化工程時に二次ポリマーネットワークの形成を担う。これは、
図2及び
図3に示唆されているように、ネットワーク不均一性を改善する。このようにして、硬化材料は、
i)相互侵入網目、又は
ii)半相互侵入網目、又は
iii)順次相互侵入網目、又は
iv)ポリマーブレンド、
を構成する。
【0037】
成分Cについてのいくつかの好ましい例は、式(II)
【化1】
であって、式中、
-nは、1~10の整数であり、
-R
1は、H、CH
3又はCH
2を表し、
-R
2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸及び対応するエステル、アルキル又は芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-イソブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、サリチル及びコレステリル、フェニル、ベンジル、フェネチル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ビス(メチレン)オキシ、ビス(エチレン)オキシ、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)アミノ及びビス(フェニル)スルホンからなる群のうちの1つ以上の直鎖、分岐又は環状C
5-C
40脂肪族残基又は芳香族残基を独立して表し、これらの基のうちの1つ以上が、1つ以上のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6チオエーテル、ハロゲン、-NO
2、-SO
3H、-CF
3、-OH、-NH
2、-SH、-CN、-トリメトキシシリル、-トリエトキシシリルで任意には置換されるエステル、アミド、ウレア、ウレタン、カルボナート、エーテル、チオエーテル基、又はマレイミド及びシトラコンイミド化合物並びに/若しくはそれらの異性体、特にイタコンイミドの物質分類由来の重合基を介して独立して結合される、
に記載のマレイミド及びシトラコンイミド誘導体並びにそれらの異性体、特にイタコンイミドの、モノマー、並びに/又はそれらのオリゴマー、並びに/又はそれらのプレポリマーからなる群から選択される1つ以上の化学種を有する熱硬化性成分である。
【0038】
成分Cのいくつかのより好ましい例は、式IIであって、R
2は、固定分子構造、高い架橋度に起因してより高い耐熱性をもたらし、光硬化性を低下させる芳香族残基を表す、式IIの単官能性及び多官能性マレイミド種である。これは、
図2及び
図3に示唆されているように、ネットワーク不均一性を改善する。したがって、成分Cは、nが1~10の整数であり、直接的に、又はメチレンスペーサを介してのいずれかでマレイミド環のN原子に結合された芳香族残基を有する、式IIの種を含むことが好ましい。成分Cのかかる好ましい種は、以下の式:
【化2-1】
【化2-2】
並びに/又はこれらの誘導体のオリゴマー及び/若しくはプレポリマー、並びにそれらの異性体、特にイタコンイミドによって特に表される。
【0039】
好ましい成分Cについてのいくつかの他の好ましい例は、芳香族基、及び/若しくは環状脂肪族基、及び/若しくは複素環基、及び/若しくは強い分子間力を呈する基など、必要とされる高いTgをもたらし、更に重合収縮に対して傾向性が低いポリマー骨格又はポリマーネットワークの形成を担う固定置換基を含み、かつかかる成分は、より高い分子量(500gmol-1超の数平均分子量)を有する、好ましくは既にオリゴマー及び/若しくはプレポリマーであり、又は低い分子量(500gmol-1未満の数平均分子量)、並びに/又はより高い架橋密度が生じる、反応性基に対する高い官能価(2超)のものであり、したがって全体的により高い耐熱性が両方とも生じる、多官能性アリル化合物である。
【0040】
成分Cとしての多官能性アリル化合物のいくつかの好ましい例は、
1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリルボラート、トリアリル1,3,5-ベンゼントリカルボキシラート、トリアリルシトラート、トリアリルホスファート、テトラアリルピロメリタート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルプロピルイソシアヌラート、ジアリルイソシアヌラート、ジアリルフタラート、2,2-ビス(4-アリルオキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ジアリルジカルボナート、ジアリルカルボナート、ジアリル 1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート、2,2-ジアリルビスフェノールAジアセタートエーテル、ジアリルテレフタラート、ジアリルイソフタラート、ジエチルジアリルマロナート、1,3-ジアリルウレア、1,3-ジアリル-2-チオウレア、2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン、ジアリルオキシラート、ジアリルマロナート、ジアリルテトラブロモフタラート、2,6-ジアリ-メタ-クレゾール、N,N-ジアリルアニリン、ジアリルシアンアミド、N,N-ジアリルメラミン、2,2’-ジアリルビスフェノールA、N,N’-ジアリルピペラジン、2,2-ジアリルピロリジン、ジアリル-カルバミン酸 tert-ブチルエステル、ジアリルエーテルビスフェノールA、ジアリルフェニルホスホナート、5,5’-ジアリル-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジオール、シクロヘキサノンジアリルアセタール、4,4’-ジアリル-1,1’-ビフェニル、2,2-ジアリル-4,4-ビフェノールである。
【0041】
好ましい成分Cについてのいくつかの他の好ましい例は、芳香族基、及び/若しくは環状脂肪族基、及び/若しくは複素環基、及び/若しくは強い分子間力を呈する基など、必要とされる高いTgをもたらし、更に重合収縮に対して傾向性が低いポリマー骨格又はポリマーネットワークの形成を担う固定置換基を含み、かつかかる成分は、より高い分子量(500gmol-1超の数平均分子量)を有する、好ましくは既にオリゴマー及び/若しくはプレポリマーであり、又は低い分子量(500gmol-1未満の数平均分子量)、並びに/又はより高い架橋密度が生じる、反応性基に対する高い官能価(2超)のものであり、したがって全体的により高い耐熱性が両方とも生じる、多官能性エポキシ化合物である。
【0042】
成分Cとしての多官能性エポキシ化合物についてのいくつかの好ましい例は、
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテルなどのビスフェノールA、ビスフェノールF及び/若しくはビスフェノールS誘導体、並びに/又はジグリシジル 1,2-シクロヘキサンジカルボキシラート、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシラート、1,2-エポキシ-4(2-オキシラニル)-シクロヘキサン及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)1-ブタノールの縮合生成物、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(例えば、SU-8樹脂)並びに/又はこれらの誘導体のオリゴマー、並びに/又はこれらの誘導体のプレポリマーである。
【0043】
成分Cはまた、上記の2つ、3つ又は複数の異なる成分Cを含む組成物から構成されてもよい。
【0044】
ハイブリッド樹脂組成物内の成分A、B及びCの相対量は、
光硬化性成分Aの量が、成分A、B及びCの総重量に基づき、5重量%~80重量%、好ましくは10重量%~60重量%、より好ましくは15重量%~55重量%、更により好ましくは20重量%~45重量%の範囲であり、
光硬化性成分Bの量が、成分A、B及びCの総重量に基づき、10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは25重量%~70重量%、更により好ましくは30重量%~65重量%の範囲であり、
熱硬化性成分Cの量が、成分A、B及びCの総重量に基づき、1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%、より好ましくは3重量%~30重量%、更により好ましくは5重量%~25重量%の範囲であるように、選択されてもよい。
【0045】
例として、ハイブリッド樹脂組成物内の成分A~Cについての範囲の好ましい組合せは、以下の表から、又は本明細書に開示された非限定的な例から導き出すことができる:
【表A】
【0046】
樹脂配合物の反応性希釈剤である成分Aは、反応性基から構成された1つ以上の単官能性物質から構成されている。これは、かかる成分が、光により引き起こされるラジカル硬化機構又はカチオン硬化機構のいずれかを介して重合反応を受けることができることを意味している。成分Aは、積層造形プロセスにおいて本発明の樹脂配合物のより良好な加工適性を得るため、加工温度にて、好ましくは750gmol-1未満の低分子量及びオリゴマー成分Bよりも低い粘度、好ましくは5Pa未満を有する。
【0047】
好ましい実施形態では、反応性希釈剤は、25℃超のTgを有するポリマー骨格を形成し、光硬化フォトポリマーについてより迅速なゲル化及びより高い生強度がもたらされる。好ましい実施形態では、単官能性反応性希釈剤によって、最終フォトポリマーネットワークにおいてより低い架橋密度が得られる。これによって、より高い靱性及びより高い延性挙動がもたらされる。好ましい実施形態では、成分Aの反応種Yは、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミド、N-ビニル化合物、ビニルカルボナート、ビニルカルバマート、マレイミド、イタコナート、フマラート及びスチレン化合物などではあるがこれらに限定されない、ラジカル重合基を含む。
【0048】
更に好ましい実施形態では、かかる反応性希釈剤は環化重合を受け、より高い生強度及びより高いTgをもたらす固定環状ポリマー骨格を形成することができる。例として、かかる環化重合反応性希釈剤は、2つの反応性基から構成されている。これらはラジカル攻撃を受けやすいが、それ自体による単独重合を受けない(例えば、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルエステル)。
【0049】
好ましくは、樹脂組成物は、成分Bが(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミド、N-ビニル化合物、ビニルカルボナート、ビニルカルバマート、マレイミド、イタコナート、フマラート及びスチレン化合物などのラジカル重合基を含むような様式で考案されている。より好ましくは、成分Bは、平均分子量が1000gmol-1超である、多官能性(メタ)アクリラート若しくは(メタ)アクリルアミド、及び/又は単官能性若しくは多官能性(メタ)アクリラート及び/若しくは(メタ)アクリルアミドの混合物を含む。かかる(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドオリゴマーは、オリゴマー上に2つ以上のラジカル重合基又は少なくとも平均数が1.3超の反応性官能価を有する成分である。高分子量オリゴマーは、かかる高分子量オリゴマー及び反応性末端基が、鎖可撓性及び鎖のもつれによって最終フォトポリマーネットワーク内に靱性をもたらすことから、靱性のあるフォトポリマーネットワークの形成を担っている。
【0050】
より好ましい実施形態では、成分Bは、架橋成分D(架橋剤CA)で補完又は置換されり、これはまた、光硬化性であり、対応する硬化機構を介して成分A及びBと共重合し、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミド、N-ビニル化合物、ビニルカルボナート、ビニルカルバマート、マレイミド、イタコナート、フマラート、スチレン化合物、エポキシ化合物若しくはオキセタンなどの環状エーテル、オキサゾリン、ベンゾオキサジン、シアノアクリラート、並びにそれらの誘導体、並びに/又はそれらの組合せから構成された群から選択される1つ以上の化学種を有し、必要な場合には、より良好な加工適性及びより高い生強度のために、成分Dが加えられる。成分Dを構成する多官能性モノマーはことによれば、三官能性、四官能性、五官能性及び/若しくは六官能性CA、並びに/又は更により多くの官能性部位を有する超分岐CA及び/若しくは樹状CAである。これらは、迅速な反応速度及び高い架橋密度の理由としては好適であり、耐熱性を改善(例えば、より高いTg)するが、典型的には靱性を低下させる。
【0051】
より好ましい実施形態では、成分Bは、本発明に関連する配合物が、少なくとも1つの二官能性及び/若しくは多官能性(メタ)アクリラート、又は二官能性及び/若しくは多官能性(メタ)アクリラートの混合物から構成されるように、架橋成分D(架橋剤CA)によって補完又は置換される。この成分Dは、1つ又は複数のラジカル重合オリゴマー、したがって光によって重合可能なオリゴマーから構成されることができ、したがって光硬化性成分マトリックスの一部として、かつ本発明の樹脂組成物の成分Bへの添加物として特に好ましい。成分Dを構成する多官能性モノマーはことによれば、三官能性、四官能性、五官能性及び/若しくは六官能性(メタ)アクリラート、並びに/又は更により多くの官能性部位を有する超分岐及び/若しくは樹状(メタ)アクリラートである。これらは、迅速な反応速度及び高い架橋密度の理由としては好適であり、耐熱性を改善(例えば、より高いTg)するが、典型的には靱性を損なわせる。
【0052】
本発明の樹脂組成物の成分Dのいくつかの好ましい化合物は、多官能性(メタ)アクリラート及び/又は多官能性(メタ)アクリラートの混合物である。これらは、複雑な薄肉構造物の3次元造形を支援するため、3D印刷したパーツの生強度をより高いものにする。当該架橋成分は、低分子量(500gmol-1未満)又はより高い官能性(2超)のいずれかを有し、より高い架橋密度、ひいては全体的により高い生強度をもたらすことから、成分Bとは異なる。
【0053】
かかる架橋成分Dは特に、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリラート又は1,12-ドデカンジオールジ-(メタ)アクリラート、1,6-ビス-[2-(メタ)-アクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ]-2,2,4-トリメチルヘキサン、ペンタエリスリテトラ(メタ)アクリラート、ジ-、トリ若しくはテトラエチレングリコール-ジ(メタ)アクリラート及び/又はトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラートである。
【0054】
更には、好ましい成分Dは、硬化樹脂の重合収縮への傾向性が低く、生強度が高く、かつ耐熱性が高いという理由から、芳香族基又は環状脂肪族基などの固定基から構成されている。いくつかの好ましい架橋成分Dは、2-(2-ビフェニルオキシ)-エチル(メタ)アクリラート、ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート((メタ)アクリル酸及びビスフェノールA-ジグリシジルエーテル由来の付加物)、エポキシ-又はプロポキシル化ビスフェノールA-ジ(メタ)アクリラート(例えば、2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ)フェニル]-2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]-プロパン)又は2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラート、イソホロンウレタンジ(メタ)アクリラート又はトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリ(メタ)アクリラートである。
【0055】
好ましくは、
単官能性成分Aの量は、成分A、B、C及びDの総重量に基づき、5重量%~80重量%、好ましくは10重量%~60重量%、より好ましくは15重量%~55重量%、更により好ましくは20重量%~45重量%の範囲であり、
光硬化性成分Bの量は、成分A、B、C及びDの総重量に基づき、10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは25重量%~70重量%、更により好ましくは30重量%~65重量%の範囲であり、
主に熱硬化性成分Cの量は、成分A、B、C及びDの総重量に基づき、1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%、より好ましくは3重量%~30重量%、更により好ましくは5重量%~25重量%の範囲であり、
架橋成分Dの量は、成分B及びDの総重量に基づき、3重量%~70重量%、好ましくは5重量%~60重量%、より好ましくは7重量%~50重量%、更により好ましくは10重量%~40重量%の範囲である。
【0056】
例として、ハイブリッド樹脂組成物内の成分A~Dについての範囲の好ましい組合せは、以下の表から、又は本明細書に開示された非限定的な例から導き出すことができる:
【表B】
【0057】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の樹脂組成物は、成分A、B及びDの総重量に基づき、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%の量で、光励起時に、好ましくは150nm~1000nm、より好ましくは200nm~550nmの波長スペクトル内の光励起時のラジカル重合に好適な少なくとも1つの光開始剤を含む。これは、光開始剤が光によって活性化することができ、配合物の光硬化性成分の重合を開始させることができることを意味する。
【0058】
光開始重合(光重合)は、適用された露光が光開始剤の活性化に好適な波長であり、十分な出力であるときに成功する。光開始剤に適切である露光は別として、全ての配合物(任意には、光吸収モノマー又は添加剤を含む)は、放射光と光開始剤との相互作用を妨げなくてもよい。本明細書に適用される露光は、任意の波長及び重合を開始させることができる能力を含む。好ましい光の波長は150nm~1000nmであり、更により好ましくは200nm~550nmである。レーザ又はLED源又は広帯域Hgランプを含むがこれらに限定されない、任意の好適なNIR、UV又は可視光源を使用してもよい。光源は、広帯域又は狭帯域光スペクトル、又はそれらの組合せを発することができる。光源は、単回露光期間又は反復露光期間中に連続光又はパルス光を発することができる。これは、露光の時間又は強度により追加で変更することができる。好適かつ高いプロセス温度によってシステムの反応性が上昇する。したがって、光誘導造形プロセスを向上させる。上記パラメータ及び変数を調節することによって、所望の光重合反応を実施するための最適化されたプロトコルがもたらされ、L-AMTによる最適な3D加工が得られる。
【0059】
好ましい実施形態では、光誘導硬化工程は、NIR(近赤外線)光源又はUV/Vis(紫外可視)光源及び対応する光学系を使用して実施され、NIR構成は、二光子光重合を介して3D製造を可能にするために選択され、UV/Vis構成は、レーザ/DLP、LED/DLP、レーザ/LCD及びLED/LCDからなる群から選択される。
【0060】
好ましい光開始剤は、単独で、又は互いに組み合わせたNorrishタイプI光開始剤であり、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、α-アミノケトン、モノ-若しくはビスアシルホスフィン、-ホスフィンオキシド、モノ-、ビス-若しくはテトラアシルシラン、-ゲルマン、-スタンナン、メタロセンからなる群から選択されてもよい。いくつかの好ましい例は、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシラート、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾアート、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセタート、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzoyldiphenylphosphine oxide、TPO)、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(ethyl-(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenyl phosphinate、TPO-L)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide、BAPO)、エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニル)ホスフィナート、ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマン(bis(4-methoxybenzoyl)diethylgermane、BMDG)及びビス(シクロペンタジエニル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1-ピリル)フェニル]チタニウム及び/又はOminpol TPなどのポリマーI型光開始剤である。
【0061】
好ましい光開始剤はまた、NorrishタイプII光開始剤であってもよい。いくつかの好ましい例は、ベンゾフェノン(例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾイン、ジケトン(例えば、9,10-フェナントレンキノン、1-フェニル-プロパン-1,2-ジオン、ジアセチル又は4,4’-ジクロロベンジル及び/又はそれらの誘導体)、並びにチオキサントン(例えば、クロロプロポキシチオキサントン、イソプロピルサントン又は2,4-ジエチル-9H-チオキサテン-9-オン)である。かかるタイプII光開始剤は、三級アミン(例えば、N,N-ジアルキルアニリンなどの芳香族三級アミン、-p-トルイジン又は-3,5-キシリジン、p-N,N-ジアルキルアミノ-フェニルエタノール、-安息香酸誘導体、-ベンゾアルデヒド又はトリエタノールアミン)などの共開始剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0062】
更に好ましい実施形態では、当該タイプI及び/又はタイプII光開始剤の組合せが使用されてもよい。
【0063】
本発明のタイプの樹脂組成物は、高温でのリソグラフィベースでの3D印刷用途で加工され得る。本発明の樹脂組成物は、加熱され、続いて層ごとに光誘導積層工程に供され、本発明の樹脂組成物の光硬化性成分は、光硬化により構造化され、リソグラフィベースの積層造形方法により3D物体を得るが、これによって靱性が維持(例えば、破断時の伸びにより測定される)されるとともに温度耐性が改善(例えば、Tgにより測定される)した、又はその逆といった、上述の熱特性及び機械特性が望ましい形で両立されている材料がもたらされる。
【0064】
好ましい実施形態では、ホットリソグラフィは、高い靱性(例えば、10%超の破断時の伸び)、及び従来のL-AMTにとって、比較的高い樹脂配合物の粘度(室温では15Pa・s超であり、加工温度では0.01~40Pa・s、好ましくは0.1~25Pa・s)を通常では特徴とする、そのオリゴマー、又はそのプレポリマーである、高含有量の成分Bを含む樹脂の3次元造形を可能とする加工方法として使用される。好ましい実施形態では、ホットリソグラフィは、最終材料の高い軟化温度又は溶融温度及び高い耐熱性(例えば、100℃超のTg)並びに従来のL-AMTにとって比較的高い樹脂配合物の粘度(室温では15Pa・s超であり、加工温度では0.01~40Pa・s、好ましくは0.1~25Pa・s)を通常には特徴とする、剛性化合物、及び/又はそのオリゴマー、及び/又はそのプレポリマーである、高含有量の成分Cを含む樹脂の3次元造形を可能とする加工方法として使用される。得られた材料は、靱性を維持しながら改善された耐熱性を提供する。又はその逆も提供する。これは、L-AMTを介して製造された3D試料について本明細書に開示された(熱)機械特性によって実証される。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態では、熱硬化性成分Cは、50℃超の温度を意味する熱に供されるまでは硬化せず、熱硬化システムを潜在的なものとし、室温での貯蔵安定性がある樹脂配合物を本質的に形成し、3ヶ月超、又は更には6ヶ月超、又は更には12ヶ月超の貯蔵安定性を有する(例えば、10%未満の粘度の上昇によって測定される)ことを意味しており、3D物体はホットリソグラフィのプロセスによって製造される。
【0066】
好ましい実施形態では、当該熱硬化工程は、オーブン(例えば、電気オーブン、ガスオーブン又はソーラーオーブン)での能動的加熱を介して又はマイクロ波照射、他の光インパルス(赤外線など)若しくは熱重合などの二次発熱反応を介して間接的に達成されてもよい。好ましくは、熱硬化性成分Cは周囲条件及び光硬化工程の加工条件では安定しており、そのため、潜在的な硬化反応は、誘導を必要とする。
【0067】
いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1つの熱開始剤及び/又は触媒は、成分C及び/又はそのコモノマーの熱硬化のために使用されてもよい。好適な触媒は、成分Cの重量に基づき、好ましくは0.01重量%~20重量%の量で、好ましくは0.1重量%~15重量%の量で、より好ましくは0.2重量%~10重量%の量である、三級アミン(例えば、トリアルキルアミン)、特にDABCO及び/若しくはDMAP及び/若しくはトリエチルアミン及び/若しくは他の脂肪族及び芳香族二級及び三級アミン、有機アルコールのアルカリ塩、ホスフィン、トリフェニルホスホナート、イミダゾール、特に2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール及び/若しくは2-エチル-4-メチルイミダゾールなどの置換イミダゾール、有機酸、並びに/又は過酸化物、並びに/又はジシアンジアミドからなる群から好ましくは選択されてもよい。
【0068】
成分Cとして好ましいマレイミド化合物については、かかる熱開始剤及び/又は触媒は、成分Cの重量に基づき、好ましくは0.01重量%~20重量%の量で、好ましくは0.1重量%~15重量%の量で、より好ましくは0.2重量%~10重量%の量である、三級アミン(例えば、トリアルキルアミン)、特にDABCO及び/若しくはDMAP、及び/若しくはトリエチルアミン、及び/若しくは他の脂肪族及び芳香族二級及び三級アミン、有機アルコールのアルカリ塩、トリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン、イミダゾール、特に2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール、及び/若しくは2-エチル-4-メチルイミダゾールなどの置換イミダゾール、有機酸、並びに/又は過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジクミル、tert-ブチルペルベンゾアート、及び/若しくはジ-(tert-ブチル)-ペルオキシドなどの過酸化物、並びに/又は1,1,2,2-テトラフェニル-1,2-エタンジオールなどのアニオン性触媒からなる群から選択されてもよい。任意には、シトラコンイミド系成分Cの場合には、トリアリルシアヌラート又はビスマレイミドなど、最大2重量%の助剤が使用され得る。
【0069】
成分Cとして好ましいアリル化合物については、成分Cの重量に基づき、好ましくは0.01重量%~20重量%の量で、好ましくは0.1重量%~15重量%の量で、より好ましくは0.2重量%~10重量%の量である、かかる熱開始剤及び/又は触媒は、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジクミル、tert-ブチルペルベンゾアート、及び/若しくはジ-(tert-ブチル)-ペルオキシドなどの過酸化物、並びに/又は1,1,2,2-テトラフェニル-1,2-エタンジオールからなる群から選択されてもよい。任意には、ビスマレイミドなど、最大10重量%の助剤が使用され得る。
【0070】
成分Cとして好ましいエポキシ化合物については、成分Cの重量に基づき、好ましくは0.01重量%~20重量%の量で、好ましくは0.1重量%~15重量%の量で、より好ましくは0.2重量%~10重量%の量である、かかる熱開始剤及び/又は触媒は、ジシアンジアミド、及び/若しくは三級アミン(例えば、ベンジルジメチルアミン)、イミダゾール、特に2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール、及び/若しくは2-エチル-4-メチルイミダゾールなどの置換イミダゾール、並びに/又はアリールジメチルウレア化合物などのウレア(例えば、Diuron、Fenuron又はMonuronである3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)などの促進剤、並びに/又はカルボン酸無水物(例えば、無水コハク酸、無水フタル酸)、並びに/又はコバルト(III)、ニッケル(II)若しくは銅(II)アセチルアセトナート、並びに/又は二塩基酸ジヒドラジド、並びに/又は三フッ化ホウ素アミン付加物などの促進剤からなる群から選択されてもよい。
【0071】
更に好ましい実施形態では、本発明の樹脂組成物は、ラジカル重合用の1つ以上の開始剤、特に熱開始剤を含み、成分Cの熱硬化に好適である。いくつかの好ましい例は、成分A~Dの総重量に基づき、好ましくは0.01重量%~5重量%の量で、好ましくは0.1重量%~4重量%の量で、より好ましくは0.2重量%~3重量%の量である、アゾ化合物、より好ましくは2,2’アゾビス(イソブチロニトリル)(azobis(isobutyronitrile)、AIBN)及び/若しくはアゾビス-(4-シアノ吉草酸)並びに/又は過酸化物、より好ましくは過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジクミル、tert-ブチルペルベンゾアート及び/若しくはジ-(tert-ブチル)-ペルオキシドなどの有機過酸化物、並びに/又は1,1,2,2-テトラフェニル-1,2-エタンジオールである。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態では、ハイブリッド樹脂配合物は、成分C及びその誘導体と共重合可能である、コモノマー、及び/又はコオリゴマー、及び/又はコプレポリマーを更に含む。
【0073】
成分Cの好ましいマレイミド化合物については、成分Cの重量に基づき、好ましくは0.5重量%~50重量%の量で、好ましくは1重量%~30重量%の量で、より好ましくは5重量%~25重量%の量である、かかるコモノマーは、アルケニルフェノール、アルケニルフェニルエーテル、アルケニルフェノールエーテル、ポリアミン、アミノフェノール、アミノ酸ヒドラジン、シアナートエステル、ジアリルフタラート、トリアリルイソシアヌラート、トリアリルシアヌラート、ビニル及び/又はスチレン官能基のモノマー、及び/又はオリゴマー、及び/又はプレポリマーから構成される群から好ましくは選択され得る。
【0074】
成分Cの好ましいアリル化合物については、成分Cの重量に基づき、好ましくは0.5重量%~50重量%の量で、好ましくは1重量%~30重量%の量で、より好ましくは5重量%~25重量%の量である、かかるコモノマーは、マレイミド誘導体、シトラコンイミド誘導体、ポリアミン、アミノフェノール、アミノ酸ヒドラジン、シアナートエステル、ビニル及び/又はスチレン官能基のモノマー、及び/又はオリゴマー、及び/又はプレポリマーから構成される群から好ましくは選択され得る。
【0075】
成分Cの好ましいエポキシ化合物については、成分Cの重量に基づき、好ましくは0.5重量%~50重量%の量で、好ましくは1重量%~30重量%の量で、より好ましくは5重量%~25重量%の量である、かかるコモノマーは、ポリエステルジオール、ポリブタジエンジオール、ポリカルボナートジオールなどの多官能性アルコール若しくはジオール、及び/若しくはJeffamineなどの多官能性アミン、及び/若しくはピロメリト酸二無水物などの多官能性無水物のモノマー、並びに/又はオリゴマー、並びに/又はプレポリマーから構成される群から好ましくは選択され得る。
【0076】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の樹脂組成物は、成分A~Dの総重量に基づき、好ましくは0.001重量%~1重量%の量で、好ましくは0.005重量%~0.5重量%の量で、より好ましくは0.01重量%~0.1重量%の量で、少なくとも1つの重合禁止剤、好ましくは、ハイドロキノン及び/若しくはベンゾキノンなどのキノン、フェノチアジン、ジエチルヒドロキシアミン、4-tert-ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ピロガロール、TEMPO並びに/又は4-ヒドロキシ-TEMPOからなる群から選択される重合禁止剤を含む。
【0077】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の樹脂組成物は、成分A~Dの総重量に基づき、好ましくは0.001重量%~2重量%の量で、好ましくは0.01重量%~1重量%の量で、より好ましくは0.02重量%~0.5重量%の量で、顔料又は染料などの少なくとも1つの光吸収剤、好ましくは二酸化チタン及び/若しくはカーボンブラックなどの無機粒子、並びに/又はベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、チオキサントン、Chimassorb、Tinuvin及び/若しくはUvinul製品などのヒンダードアミン光安定化剤などの有機UV光吸収剤からなる群から選択される光吸収剤を含む。
【0078】
上述の光開始剤、熱開始剤、触媒、禁止剤、光吸収剤及び他の添加剤は、ポリマー性のものであってもよく、並びに/又は重合官能基で追加的に官能化されてもよく、本発明の好ましい実施形態に関連しているように、光硬化性成分A、B、D及び/又は熱硬化性成分Cと重合することができる。
【0079】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂からなる群から選択される追加の靱性改質剤を含む。例として、かかる熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシド、反応性ゴム、特にブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、並びに/又はセルロース及び/若しくはゼラチンなどの天然ポリマーであり得、かかる成分は、ラジカル重合又はイオン重合を受けやすい1つ若しくは複数の反応性基(例えば(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル又はスチレン化合物、エポキシ化合物若しくはオキセタンなどの環状エーテル)、並びに/又は可撓性リンカーを有する反応性基を含むモノマー、特に脂肪族長鎖及び/若しくはエチレングリコールスペーサ、並びに/又は50%超の破断時の伸び及び0℃超、好ましくは-30℃超のTgを有し、又は好ましくは、成分A~Dの総重量に基づき、0.5重量%~30重量%、好ましくは2重量%~15重量%、より好ましくは5重量%~10重量%の量で存在する、重合ネットワークを好ましくは形成する光硬化性成分Bなどで、好ましくは終端又は官能化される。
【0080】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の樹脂組成物は、良好な難燃性、低い煙毒性又は煙形成を生じさせる添加剤を更に含有する。かかる難燃剤又は煙抑制添加剤は、ポリマー産業で知られている物質の群から選択される。例として、かかる難燃剤又は煙抑制添加剤は、成分A~Dの総重量に基づき、好ましくは0.5重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~25重量%の量である、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化アンチモン、酸化スズ、ホウ砂及び/若しくはホウ酸亜鉛、赤リン、膨張化グラファイト、窒素ドナー及び/若しくはリン含有物質などの有機添加剤(例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、有機ホスファート、トリフェニルホスフィン、ホスフィナート、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントラン-10-オキシド)、ハロゲン化ホスファート、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化スチレン、ハロゲン化エポキシド、ハロゲン化(メタ)アクリラート及び/若しくはハロゲン化パラフィンなどのハロゲン化有機難燃剤などの無機充填剤又は無機質難燃剤である。別の好ましい実施形態では、かかる有機難燃剤添加剤は、(メタ)アクリラートなどの重合基で官能化される。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の樹脂組成物は、有機充填剤及び/又は無機充填剤を含む。かかる混合物は、成分A~Dの総重量に基づき、好ましくは0.5重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~25重量%の量である複合材料として一般には記載される。
【0082】
好ましい有機充填剤は、コアシェル粒子、ブロックコポリマー、PTFE、高性能ポリマー、熱可塑性物質、特にポリアミド、ポリカルボナート、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリ(エーテルイミド)、ポリエーテルスルホン又はポリスルホン、ゴムなどであり得るが、これらに限定されない。
【0083】
好ましい無機充填剤は、金属、酸化金属及び/又はセラミック(例えば、1~100μmの平均粒子径を有する、SiO2、ZrO2、TiO2、ZnO若しくはそれらの混合物、及び/又は10nm~1000nmの平均粒子径を有する好ましいナノ充填剤若しくはマイクロ充填剤)、タルク、クレイ、シリカ及び/又はマイカなどのケイ酸塩、ガラス粉末(特に、0.01~100μmの平均粒子径を有する好ましいナノ充填剤又はマイクロ充填剤)、カーボンブラック、グラフェン、グラファイトであってもよい。充填剤の平均粒子径は、平均粒子径及び粒子径分布決定のためのDIN/ISO 13320によるMie理論を使用し、静的光散乱法によって決定されてもよい。第2の態様では、かかる有機充填剤又は無機充填剤は、球形、プレートレット並びに/又は繊維(例えば、ナノファイバー、ウィスカー及び/若しくはそれらの混合物、球形、破砕及び/若しくは定義された三次元構造(特にグラファイト)、及び/若しくは二次元構造(特にグラフェンの単層))であってもよい。
【0084】
好ましくは、充填剤はその表面上で改質(例えば、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのラジカル重合シランによるシラン化)されてもよい。ZrO2又はTiO2などの無機充填剤の表面改質については、官能化酸性リン酸塩(例えば、10-メタクリロイルオキシデシルジヒドロゲンホスファート)が使用されてもよい。こうした修飾は、凝集、混合物の安定性、ポリマーマトリックスへの粒子結合などの現象を制御、かつ/又はこれに影響を与える。
【0085】
本発明の樹脂組成物は、安定化剤(UV安定化剤若しくはエージング防止剤など)、酸化防止剤、着色剤(染料若しくは顔料など)、抗菌剤、帯電防止剤、軟化剤若しくは可塑剤若しくは滑剤、湿潤剤、つや消し剤、接着促進剤、レオロジー改質剤、チキソトロピー剤、分散剤、蛍光染料、乳白剤、消泡剤及び/又はUV吸収剤といった成分を単独で、又は互いに組み合わせて追加で含んでもよい。
【0086】
本発明の樹脂組成物は、コーティング、接着剤、シーラント、インクを含む任意の物体を形成するために硬化されてもよく、又は好ましくは光造形などの3D印刷プロセスにより3Dパーツを形成するために層ごとの様式で硬化され、続いて二次又は複数の更なる熱硬化工程により後硬化されてもよい。
【0087】
本明細書に開示された成分A~Dの混合物は、様々な比率で、上記の追加成分と混合されてもよい。配合物を混合するのに好ましい比率は、
・式Iに記載の少なくとも1つの単官能性成分A(光硬化性反応性希釈剤):成分A、B、C及びDの総重量に基づき、5重量%~80重量%、好ましくは10重量%~60重量%、より好ましくは15重量%~55重量%、更により好ましくは20重量%~45重量%
・少なくとも1つの成分B(光硬化性靱性改質剤、好ましくはオリゴマー):成分A、B、C及びDの総重量に基づき、10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは25重量%~70重量%、更により好ましくは30重量%~65重量%
・少なくとも1つの成分C(熱硬化性Tg上昇剤):成分A、B、C及びDの総重量に基づき、1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%、より好ましくは3重量%~30重量%、更により好ましくは5重量%~25重量%
・少なくとも1つの光開始剤:成分A、B及びDの重量に基づき、0.01~10重量%、好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.2~5重量%
・任意には、成分A及びBと共重合し、架橋剤(CA)として作用し、良好な加工適性を得る、好適なコモノマーとしての成分D:成分B及びDの総重量に基づき、3重量%~70重量%、好ましくは5重量%~60重量%、より好ましくは7重量%~50重量%、更により好ましくは10重量%~40重量%
・任意には、成分C用の好適な硬化剤:成分Cに基づき、0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~15重量%、より好ましくは0.2重量%~10重量%、であってもよい。
【0088】
単官能性反応性希釈剤(成分A)の存在により、架橋密度が低下し、より高い靱性(例えば、破断時の伸びにより測定される)を生じるが、ポリマー骨格の形成を担う、好ましくは40℃超のTg、更により好ましくは100℃超のTgを有する、芳香族基又は環状基などの置換基により好ましくは生じる剛性ポリマー骨格により、耐熱性が維持されている硬化材料がもたらされる。
【0089】
500gmol-1超、好ましくは1000gmol-1超の分子量を有する、靱性改質剤としての多官能性光硬化性成分Bの存在は、靱性が改善(例えば、破断時の伸びが上昇している)した重合ネットワークの形成を担っている。
【0090】
成分A及びBは、光により引き起こされる造形工程を担っており、配合物の十分な生強度及び好ましくは30~150℃の積層工程での温度を使用するホットリソグラフィによる3次元造形を提供するために選択される。任意には、架橋成分Dの存在により、配合物の生強度及び好ましくは30~150℃の積層工程での温度を使用するホットリソグラフィによる3次元造形が更に改善される。光硬化工程後に形成されたフォトポリマーは、好ましくは25℃超のTg及び10%超の破断時の伸びを呈する靱性フォトポリマーとして特徴付けられる。
【0091】
多官能性熱硬化性成分Cの存在は優先的に100℃超のTgを有する第2の重合ネットワークの形成を担っており、したがって、靱性を維持(例えば、破断時の伸びにより測定される)しながらも、最終フォトポリマーネットワークの耐熱性の改善(例えば、Tgにより測定される)がもたらされる。任意には、成分Cはまた、異なる硬化機構(例えば、カチオン硬化若しくはラジカル硬化)による光硬化性であり、又は異なる波長(例えば、390nm超の波長でのラジカル硬化及び380nm未満の波長でのカチオン硬化)での光硬化性であり得る。
【0092】
好ましくは、室温(20℃)での樹脂組成物は、5Pa・s超の粘度を有する。これらの粘度は、その高分子量により本発明の樹脂組成物から形成された材料の非常に高い靱性をもたらす、特に高含有量の成分Bから生じる。高い樹脂粘度はまた、特に、高いTgを有する二次ネットワークを形成する傾向がある、高い軟化温度又は溶解温度を有する成分Cからも生じる。
【0093】
更なる態様によれば、本発明は、本発明の樹脂組成物から物体を製造する方法に関し、樹脂組成物は光誘導造形工程、続いて熱誘導硬化工程に供される。好ましい実施形態では、光誘導造形工程の後に光誘導後硬化工程が続く。当業者には明らかであるが、光による硬化プロセスは、積層造形プロセスであってもよく、より好ましくは、それぞれの熱後加工工程を伴う3D印刷プロセスであってもよく、所望の化学特性、機械特性及び熱特性を有する最終製品を得る。本発明の樹脂配合物はしたがって、積層造形により3D物体を作製するための樹脂配合物として使用されてもよい。得られた3Dパーツは、高い靱性を呈しながらもガラス転移温度と耐熱性とのバランスが一際優れている。当該材料が由来である、かかる積層造形された3D物体の考えられる用途は、治具及び取付具、自動車用部品(例えば、ハウジング及び内装、コネクタなど燃料と接触する部品)、電子コネクタ、プリント回路基板用の部品、エレクトロニクス用のパッケージング及び冷却アーキテクチャ、チップ取り付け、ロボットハンド、電池貯蔵エンクロージャ、ヘルスケア用途(例えば、滅菌のために高温に曝露される部品)、手術用器具(例えば、開創器、拡張器、解剖用器具)、歯科用途の手術用ガイドなどの口腔用デバイス又は50℃超の温度での機械耐久性及び熱安定性が求められる他の例であってもよい。
【0094】
方法の好ましい実施形態によれば、光誘導造形工程は、NIR光源又はUV/Vis光源及び対応する光学系を使用して実施され、NIR構成は、二光子光重合を介して3D製造を可能にするために選択され、UV/Vis構成は、レーザ/DLP、LED/DLP、レーザ/LCD及びLED/LCDからなる群から選択される。
【0095】
典型的には、周囲条件で、又は35℃未満のわずかに高い温度で粘度が1Pa・s未満である配合物は、従来のL-AMTに必要とされており、35℃超の温度に達することはほぼなく、又はこれは好適でもない。35℃よりも高い温度での1Pa・sよりも高い樹脂粘度については、高温での高粘度樹脂向けのL-AMT(例えば、ホットリソグラフィ)が最適な印刷プロセスとなる。
【0096】
好ましい実施形態では、光誘導造形工程は、樹脂組成物の高い加工温度で、好ましくは35℃~120℃、より好ましくは40℃~100℃、更により好ましくは40℃~90℃で実施される。これは、造形工程中に、高分子量を有する高含有量の成分B及び高い軟化温度又は溶融温度を有する成分Cに加工適性をもたらす目的で行われ、本発明の樹脂組成物の粘度を低下させる。
【0097】
好ましい実施形態では、樹脂組成物の層は、例えばリコーターブレードを用いてキャリアプレート上で形成される。樹脂組成物は好ましくは、0.01~70Pa・s、好ましくは0.1~30Pa・sの当該加工温度での粘度を有し、形成された層は好ましくは2mm未満、より好ましくは1mm未満、更により好ましくは0.8mm未満の厚さを有する。
【0098】
光誘導造形工程は、3D印刷により物体を構築するために好ましくは実施され、当該物体の層は、プレート、キャリアフィルム又はタンクなどの透明又は少なくとも部分的に透明なキャリアと、機械的に調節可能な構造プラットフォーム又は構造プラットフォーム上に少なくとも部分的に形成された物体との間に、所定の厚さの樹脂組成物の材料層をそれぞれ形成することで交互に積層され、このように定義された材料層は、位置選択的な様式、特に透明な、又は少なくとも部分的に透明なキャリアを通る照射により硬化され、所望の形状の層をもたらす。
【0099】
好ましい実施形態によれば、光誘導造形工程は、第1の放射線源を使用することで実施され、第1の放射線源の放射線は、透明なキャリアプレートを通して樹脂組成物に照射され、構造化される樹脂組成物の層の加熱は、第2の放射線源を使用することで実施され、キャリアプレートは、第2の放射線源の放射線には本質的には不透過性である。このようにして、キャリアプレートは、樹脂組成物の層に本質的には入らない第2の放射線源の放射線によって加熱され、したがって、キャリアプレートを介して間接的に加熱された樹脂組成物は、第1の放射線源の放射線によって構造化される。特に、熱硬化性成分Cは、当該第2の放射線源によって熱硬化されない。
【0100】
好ましい実施形態では、樹脂組成物の層は、キャリアプレート(例えば、リコーターブレードによる)上に形成され、層は第1の光硬化工程により硬化され、形成された層の厚さは、10μm超、好ましくは25μm超、より好ましくは50μm、更により好ましくは80μmであり、1000μmよりも小さく、好ましくは800μmよりも小さく、より好ましくは500μmよりも小さく、更により好ましくは400μmよりも小さい。硬化厚さは、3D印刷プロセスの層高さの1.1倍超に低下する。
【0101】
好ましい実施形態では、物体は本発明の樹脂組成物から製造され、光誘導造形工程は、積層造形プロセス及び/又は3D印刷プロセスであり、好ましくは光造形、デジタルライトプロセッシング、材料噴射法又はインクジェット印刷、より好ましくはホットリソグラフィ技術に基づいたものである。
【0102】
本発明の樹脂の光硬化工程が実施された後、熱硬化工程が実施されて更なる硬化が得られる。加熱工程は、100~300℃の温度範囲内で、好ましくは100~250℃の温度範囲内で実施されてもよく、それぞれ定義された温度及び定義された加熱速度(例えば、10K分-1)で定義された時間間隔で1つ以上の個々の硬化工程に分割されてもよい。かかる熱硬化工程の非限定的な例は、
方法A→160℃で10時間、
方法B→170℃で0.5時間及び150℃で2時間、
方法C→200℃で0.5時間及び160℃で10時間、
方法D→120℃で2時間及び150℃で2時間、
であり得る。
【0103】
好ましい実施形態では、当該熱誘導硬化工程は、光造形3D印刷工程に続いて実施され、成形された3D物体は、好ましくは100℃超、より好ましくは120℃超、更により好ましくは140℃超である光造形工程の初期加工温度よりも高い温度で、及び好ましくは250℃未満、より好ましくは200℃未満、更に好ましくは180℃未満など、成形材料が十分な熱安定性を更に呈する温度で、硬化される。
【0104】
好ましい実施形態では、熱誘導硬化工程は、光造形3D印刷工程に続いて実施され、成形された3D物体が光造形工程の初期加工温度よりも高い温度で硬化され、熱が、オーブン(例えば、電気オーブン、ガスオーブン又はソーラーオーブン)での能動的加熱を介して直接的に、又はマイクロ波照射、他の光インパルス(赤外線など)若しくは熱重合などの二次発熱反応及び/若しくはそれらの組合せを介して間接的に、印加される。
【0105】
好ましい実施形態では、
i)相互侵入網目、又は
ii)半相互侵入網目、又は
iii)順次相互侵入網目、又は
iv)ポリマーブレンド、
である硬化材料が形成される。
【0106】
本発明の材料及び/又は本発明の樹脂組成物を光誘導造形工程、続いて熱誘導硬化工程に供することで生じる物体は、物体が以下の材料特性:
i)800MPa以上の引張強度、25MPa以上の引張弾性率、20%以上の破断時の伸び、45℃以上のガラス転移温度及び30℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
ii)1500MPa以上の引張弾性率、35MPa以上の引張強度、5%以上の破断時の伸び、90℃以上のガラス転移温度及び45℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
iii)2000MPa以上の引張弾性率、50MPa以上の引張強度、5%以上の破断時の伸び、100℃以上のガラス転移温度及び60℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
iv)1300MPa以上の引張弾性率、35MPa以上の引張強度、20%以上の破断時の伸び、70℃以上の荷重たわみ温度、又は
v)2000MPa以上の引張弾性率、55MPa以上の引張強度、10%以上の破断時の伸び、85℃以上の荷重たわみ温度、
を呈することを好ましくは特徴とする。
【0107】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」といった用語は、共有化学結合で接続された繰り返し構造単位から構成され、実質的に多くの繰り返し単位(例えば、10以上の繰り返し単位、及び多くの場合、50以上の繰り返し単位、及び多くの場合100以上の繰り返し単位)及び高分子量(例えば、5000Da、10000Da又は20000Da以上)と特徴とする分子を指す。ポリマーは、一般には、1つ以上のモノマー前駆体の重合生成物である。「ポリマー」といった用語は、ホモポリマー又は単一の繰り返しモノマーサブユニットから本質的になるポリマーを含む。「ポリマー」といった用語はまた、2つ以上の異なるタイプのモノマーが、同一のポリマーに連結されるときに形成されるコポリマーも含む。コポリマーは、2つ以上のモノマーサブユニットを含んでもよく、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互コポリマー、セグメント化コポリマー、グラフト化コポリマー、テーパー化コポリマー及び他のコポリマーを含んでもよい。
【0108】
本明細書で使用される場合、「オリゴマー」といった用語は、共有化学結合で接続された繰り返し構造単位から構成され、ポリマーの繰り返し単位よりも少ない数の繰り返し単位(例えば、10以下の繰り返し単位)及びポリマーよりも低い分子量(例えば、20,000Da又は10,000Da未満)を特徴とする分子を指す。オリゴマーは、1つ以上のモノマー前駆体の重合生成物であってもよい。一実施形態では、オリゴマー又はモノマーは、それ自体がポリマーであると考えることはできない。
【0109】
「プレポリマー」は、ポリマー又はオリゴマー、反応性基を介して更なる重合に入ることが可能であるそれらの分子を指す。
【0110】
オリゴマー及びポリマー混合物は、追加で架橋を形成し、これによってポリマーネットワークを生成してもよい。
【0111】
オリゴマー及びポリマー混合物は特徴付けられ、分子量及び分子量分布を測定することで、オリゴマーとポリマーの他の混合物と区別することができる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「分子量」といった用語は、好適な溶媒(典型的にはテトラヒドロフラン)中にてポリスチレン標準で較正された、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される数平均分子量を指す。
【実施例】
【0113】
本発明に開示された実施形態は、以下の非限定的な例を参照することで、更に詳細に記載される。これらの例は、例示のみを目的として提示されており、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0114】
本明細書で使用される全ての化学試薬は商業的供給源から購入し、更に精製することなく使用した。
【0115】
30~60℃の温度で、IKA製のアンカーアジテータ又はHauschild Engineering製のスピードミキサDAC 150 FVZを用いて、ビーカー中でそれぞれの化合物を混合することで、本発明に記載の硬化組成物を調製した。樹脂が均質な配合物となるまでこれを混合した。
【0116】
Anton Paar製のMCR102レオメータにてLEDカップリングを使用し、光レオロジー実験を実施した。これによって、市販のホットリソグラフィプリンタであるCaligma 200の照射条件を模倣することが可能となる。LED波長が400nmであるOmniCure製のLX500 LEDスポット源を使用し、出力強度を約45mWcm-2に設定した。全てのサンプルを振動モード(PP-10、10Hzの周波数、0.1%の振幅、温度は30℃に設定、0.1mmの測定ギャップ)で測定し、30秒の初期測定工程後、サンプルを300秒間照射した。
【0117】
MCR 102レオメータで、例示的な材料の更なるレオロジー測定を実施した。熱重合の開始を評価するための実験を、振動モード(PP-10、1Hzの周波数、0.5%の振幅、2K分-1の加熱速度の温度プログラム100~200℃、0.5mmの測定ギャップ)で測定した。樹脂粘度の評価については回転モード(PP-25、50秒-1のせん断速度、2K分-1の加熱速度の温度プログラム25~70℃、1mmの測定ギャップ)でそれぞれの樹脂配合物を測定した。
【0118】
本発明に記載の最終材料の(熱)機械試験試料を、開発中のCaligma DLPプリンタ(CE1-6.3、E1-6.3、E13~E14及びE17~E19については、365nmのLED)及び市販のCaligma200プリンタ(CE7、E7~E12、E15~E16及びE20~E23については、405nmのダイオードレーザ)で、Cubicure GmbH社製のホットリソグラフィ技術を介して例示的な樹脂組成物から製造した。配合物と接触する全てのプリンタ部品(すなわち、材料タンク、再コーティングユニット、再コーティングブレード及びビルディングプラットフォーム)を、各配合物の調節された印刷温度に応じて、30℃~60℃の範囲の温度に加熱した。Caligma DLPで製造された全ての3Dパーツを、約45mWcm-2の光出力強度、100μmの層厚さ(E6.3については25μm)並びに約0.8秒(CE4-5、E4-5、CE6.1-6.3、E6.1、E6.3、E13-14及びE17-19について)、約1.6秒(CE1-3及びE1-3について)及び約2.4秒(E6.2について)の照射時間で印刷した。材料タンクの上面で、ピクセルサイズを約50μmに設定した。Caligma200で印刷された全ての3Dパーツを、12000mm・s-1のレーザ走査強度、170mWのレーザ強度及び100μmのレーザ厚さで構造化した。ハッチ距離を一方向に15μmに設定した。材料タンクの上面においては、レーザスポットは約20μm(FWHM)の直径を有していた。1層あたり1回、レーザ照射を繰り返した。これはそれぞれの樹脂配合物の高い反応性を示している。
【0119】
各印刷ジョブの後、3D印刷した試料をブレードを用いてビルディングプラットフォームから機械的に取り外し、余剰の樹脂をワイプを用いて、及び/又はイソプロパノールによる溶媒洗浄を介して取り除いた。UV後硬化工程を、100%強度(約150mWcm-2、約280~550nmの広域幅)で、Uvitron IntelliRay 600にて3D印刷した全ての試料を用いて2×5分間実施し、露光サイクル間でサンプルを反転させ、光硬化工程が完了したことを確認した。熱による後加工(第2のネットワーク形成工程)を、列挙された方法(加熱速度を10K分-1)に記載の温度プロトコル:
方法A→CE1-3、E1-3、CE6.2~6.3及びE6.2~6.3については160℃で10時間
方法B→CE4~5及びE4~5については170℃で0.5時間及び150℃で2時間
方法C→CE6.1及びE6.1については200℃で0.5時間及び160℃で10時間
方法D→CE7及びE7~23については120℃で2時間及び150℃で2時間、
を使用し、Thermo Scientific製のHeratherm OMH60オーブンで実施した。
【0120】
3D印刷した試料の引張試験には、Zwick/Roell製のProLine Z010 TH材料試験機を使用した。5A試料を使用し、DIN EN ISO 527に従って試験を実施した。1mm分-1のひずみ速度にて、0.05~0.25%の伸びの範囲内で引張弾性率を測定し、続いて測定を10mm分-1のひずみ速度で測定を継続する。
【0121】
貯蔵弾性率プロット及びガラス転移温度Tgを評価するためのDMA測定を、設定温度プログラム(30℃~200℃)及び2K分-1の加熱速度で、動的粘弾性測定計(DMA 8000、Perkin Elmer製)で実施した。25×4×2mm3のボックス形状を有するサンプルを、3点曲げモードで測定した。試験条件を、1Hzの周波数、50μmのひずみ及び0Nのプレロード力に設定した。損失係数プロットの最大値(tanδ)からガラス転移温度Tgを導出する。
【0122】
HDT/Vicat 3-300標準で、荷重たわみ温度(HDT)測定を実施した。DIN EN ISO 75に従ってHDT(B)試験を実施した。HDT(B)については、0.45MPaの負荷力で、平面にてサンプル試料(80×10×4mm3の長方形形状)を試験した。それぞれの測定についての出発温度を26℃に設定し、それぞれ5分間にわたり、それぞれの負荷力をサンプルに供した。続いて、120K分-1の温度勾配を実施した。
【0123】
予備試験:
MCR102レオメータにてLEDカップリングを使用し、熱硬化性成分Cの低い光反応性を検証した。これによって、市販のホットリソグラフィプリンタであるCaligma 200の照射条件を模倣することが可能となる。
図4からは、比較例3(CE3)などの光硬化性樹脂は、Caligmaプリンタでの3次元造形を支持するのに十分な光硬化性(3秒未満のゲル化)を示したが、アリル化合物TAIC又はDAPなどの熱硬化性成分Cは、露光時の反応性が非常に低い、又は全くないことを示す(10秒超のゲル化、3次元造形中にはCaligma DLP又はCaligma 200プリンタ上で設定された光出力の範囲外)。これにより、前述の成分Cは、光硬化工程である3次元造形工程中、Caligmaプリンタにて設定された光インパルスを介した反応性がなくなる。
【0124】
更には、本開示の例の範囲内で使用され、それぞれの熱開始剤又は触媒の例(トリアリルイソシアヌラート(triallyl isocyanurate、TAIC)、ジアリルフタラート(diallyl phthalate、DAP)及び0.5phrの過酸化ジクミルとの1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンのオリゴマー(oligomer of 1,3-bis(citraconimidomethyl)benzene、OBCI)、2phrの2-エチル-4-メチルイミダゾールとの4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン(bismaleimidodiphenylmethane、BMIDPM)、5phrジシアンジアミドとの多官能性エポキシ樹脂ビスフェノールAジグリシジルエーテル(bisphenol A diglycidyl ether、BADGE))と組み合わせられた例示的な熱硬化性成分Cを、熱重合用の開始温度に関して特徴付けた。全てのサンプルを、100~200℃の温度範囲内で、振動モードのMCR102レオメータ上で測定した。当該熱硬化性成分Cについては、周囲条件で良好な貯蔵安定性を呈し、30~120℃のホットリソグラフィ印刷用の典型的な加工温度での熱安定性を更に呈することが求められる。好ましくは、熱硬化性成分Cの熱硬化の開始は、120~200℃の温度ウィンドウ内である。評価された成分Cの全ての例は、周囲条件では良好な貯蔵安定性を示し(少なくとも3ヶ月超)ており、これはそれぞれの原料供給業者によっても確認されている。更には、それぞれの成分Cの熱硬化は、120~200℃の温度範囲内で確認されており(
図5を参照)、これは本発明の3Dフォトポリマーパーツの熱後加工にとって有益である。アリル系成分C(約145℃のTAIC及び約165℃のDAP)並びにイミド系成分C(約140℃のOBCI及び約155℃のBMIDPM)は、190℃をわずかに超える開始温度を有するエポキシ系成分BADGEと比較した場合、140~180℃の範囲の更に好ましい熱開始温度を呈する。ただし、エポキシ系成分のこの開始温度は、本開示に記載の代替の最先端の硬化剤については、140~180℃の好ましい温度範囲に分類されるように調節され得、これは、当業者に公知の方法を構成する。
【0125】
例1~例3
本発明の樹脂組成物の例である例1~3は、熱硬化性成分Cと組み合わせた光硬化性成分A及びBから構成され、比較例1~3は、成分A及びB(CE3用)及び任意には熱硬化性成分Cの代わりに架橋成分D(CE1~2用)を含む、それぞれの光硬化性樹脂組成物を作製する。
【0126】
【0127】
樹脂配合物の調製:
CE1:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A18.9g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B44.1g、及びCAとして、ビスフェノールA-グリシジルジメタクリラートである多官能性架橋成分D7gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)0.7g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(dicumyl peroxide、DCP)0.35g(0.5phr)とともに均質化した。
【0128】
CE2:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A18.9g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B44.1g、及びCAとして、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートである多官能性架橋成分D7gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)0.7g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.35g(0.5phr)とともに均質化した。
【0129】
CE3:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A21g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B49gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)0.7g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.35g(0.5phr)とともに均質化した。
【0130】
E1:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A18.9g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B44.1g、及びTGEとして、ジアリルフタラートである熱硬化性成分C7gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)0.7g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.35g(0.5phr)とともに均質化した。
【0131】
E2:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A18.9g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B44.1g、及びTGEとして、トリアリルイソシアヌラートである熱硬化性成分C7gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)0.7g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.35g(0.5phr)とともに均質化した。
【0132】
E3:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A19.95g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B46.55g、及びTGEとして、トリアリルイソシアヌラートである熱硬化性成分C3.5gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)0.7g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.35g(0.5phr)とともに均質化した。
【0133】
【0134】
考察
TGEとして熱硬化性成分Cを光硬化性マトリックスに配合したとき、靱性を維持し(例えば、破断時の伸び)、又は同様に光硬化性にはするが二次ネットワークの形成を支援しない同等の成分(例えば、架橋成分D)を著しく超えるのと同時に、強度、弾性率及びT
gの増大が予想される。例E1は、破断時の伸びは約19%しか損なわれなかったものの、成分A及びBからのみ構成されている比較例CE3と比較した場合、強度(+23%)、弾性率(+10%)及び熱特性(+20%)の著しい改善が生じる(表2並びに
図6a及び
図6b)ただし、比較例CE1は、破断時の伸びは50%と大幅に損なわれているものの、CE3と比較した場合、強度(+54%)、弾性率(+39%)及び熱特性(+30%)の改善とともに、非常に高い硬度を示す。例E1は、破断時の伸びによって測定される靱性を大幅に犠牲にせずとも、全体的な熱特性を改善することによって比較例CE1を超えたことが明らかである(CE1の+30%の熱特性及び-50%の靱性を超える、E1の+20%の熱特性及び-19%の靱性、
図6bを参照)。これは、ハイブリッド樹脂系の性能が更に高いことに関する第1の強力な指標であるが、ビスフェノールA-グリシジルジメタクリラートが、E1との比較においては、より高い全体的な強度及び熱性能を担う架橋間に非常に多くの芳香族部分を含むことから、E1における成分CとしてのDAP及びCE1における成分DとしてのビスフェノールA-グリシジルジメタクリラートの比較は理想的ではない。
【0135】
例E2は、破断時の伸びは約40%損なわれたものの、成分A及びBからのみ構成されている比較例CE3と比較した場合には、強度(+42%)、弾性率(+23%)及び熱特性(+37%)の著しい改善が生じる(表2並びに
図6c及び
図6d)比較例であるCE2とCE3を測定すると、強度(+38%)及び弾性率(+27%)の改善とともに、硬度はむしろ同程度であったが、CE3に対してE2と比較した場合、熱特性(わずか+16%)の改善が非常に低いことが記録されている。CE2とCE3を更に比較すると、破断時の伸びは、同様に約40%も損なわれる。例E2が、破断時の伸びによって測定される靱性を大幅に犠牲にせずとも、全体的な熱特性を改善することによって比較例CE2を超えたことが明らかである(CE1の+16%の熱特性及び-40%の靱性を超える、E2の+37%の熱特性及び-40%の靱性、
図6dを参照)。
【0136】
第2の例であるE2と比較例CE2とを直接比較するとき、TGEとしてトリアリルイソシアヌラートであるE2における熱硬化性成分Cは、CAとしてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートであるCE2における光硬化性架橋成分Dと比較した場合、非常に類似する分子構造を有することから、より理想的な比較が実施され得る。得られたデータから導出可能であるように、E2及びCE2は、ほぼ同一の機械性能(CE2に対し、E2については5%未満の偏差)を示したが、E2は、本発明の材料系の潜在的な用途といった点では非常に有益である、熱特性の大幅な改善(CE2と比較した場合、+18%)を示す(表2及び
図6c及び
図6d)。加えて、E3について示されるように、熱硬化性成分Cの含有量が2倍減少するとき、熱性能に関する影響は依然として明らか(CE2と比較した場合、T
gはより高いが、温度に対する弾性率が低下している)であり、破断時の伸びはCE2よりも+18%で高い状態を維持している(表2及び
図6c)。
【0137】
例4~例5
本発明の樹脂組成物の例である例4~5は、熱硬化性成分Cと組み合わせた光硬化性成分A、B及びDから構成され、比較例4~5は、成分A、B、D及び例4~5に関して熱硬化性成分Cを作製する追加の架橋成分Dを含む、それぞれの光硬化性樹脂組成物を作製する。
【0138】
【0139】
樹脂配合物の調製:
CE4:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A25g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B45g、及びCAとして、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートである多官能性架橋成分D30gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)2g(2phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0140】
CE5:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A25g、TNMとして、二官能性ポリエーテルウレタンメタクリラートである光硬化性成分B45g、及びCAとして、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートである多官能性架橋成分D30gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)2g(2phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0141】
E4:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A25g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B45g、CAとして、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートである多官能性架橋成分D15g、及びTGEとして、トリアリルイソシアヌラートである熱硬化性成分C15gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)2g(2phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0142】
E5:RDとして、イソボルニルメタクリラートである単官能性光硬化性成分A25g、TNMとして、二官能性ポリエーテルウレタンメタクリラートである光硬化性成分B45g、CAとして、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートである多官能性架橋成分D15g、及びTGEとして、トリアリルイソシアヌラートである熱硬化性成分C15gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)2g(2phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0143】
【0144】
考察
例E4及び例E5は、熱性能といった点では比較カウンターパートであるCE4及びCE5よりも著しく超えた(例えば、温度及びT
gに対する弾性率-
図7a及び
図7bを参照)が、材料E4及びE5は、CE4及びCE5それぞれと比較した場合、ほぼ同一の機械性能を示す(表4の引張試験結果を参照)。両方の例は、CAとしてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートである光硬化性成分Dの代わりに、TGEとしてトリアリルイソシアヌラートである熱硬化性成分Cを含み、CE4及びCE5でそれぞれ同量で表されている。加えて、熱硬化性成分Cは、比較例で証明されているように、破断時の伸びで測定された靱性への悪影響は比較的少ないが、TGEとして作用することで熱性能に著しい影響を与えることが証明されている。
【0145】
例6.1~例6.3
本発明の樹脂組成物の例である例6.1~6.3は、熱硬化性成分Cと組み合わせた光硬化性成分A及びBから構成され、比較例6.1~6.2は、同一の樹脂組成物から作製するが、異なる方法(CE6.1については方法C及びCE6.2については方法A)を介して後加工され、成分A、B及び熱硬化性成分Cの代わりに架橋成分Dを含む、それぞれの光硬化性樹脂組成物を作製する。比較例6.3は、成分A及びBを含むそれぞれの光硬化性樹脂組成物から構成される。
【0146】
【0147】
樹脂配合物の調製:
CE6.1及びCE6.2:RDとして、N-アクリロイルモルホリンである単官能性光硬化性成分A27g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B63g、及びCAとして、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートである多官能性架橋成分D10gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)1g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0148】
CE6.3:RDとして、N-アクリロイルモルホリンである単官能性光硬化性成分A30g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B70gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)1g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0149】
E6.1:RDとして、N-アクリロイルモルホリンである単官能性光硬化性成分A27g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B63g、TGEとして、多官能性エポキシ樹脂ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)である熱硬化性成分C10gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)1g(1phr)、熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)、及び潜在的な熱硬化剤であるジシアンジアミド0.5g(BADGEの重量に対して5phr)とともに均質化した。
【0150】
E6.2:RDとして、N-アクリロイルモルホリンである単官能性光硬化性成分A27g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B63g、及びTGEとして、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンのオリゴマー(OBCI)である熱硬化性成分C10gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)1g(1phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0151】
E6.3:RDとして、N-アクリロイルモルホリンである単官能性光硬化性成分A27g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートであるEbecryl 8811である光硬化性成分B63g、TGEとして、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン(BMIDPM)である熱硬化性成分C10gを、光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)1g(1phr)、熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)、及び熱触媒2-エチル-4-メチルイミダゾール0.2g(BMIDPMの重量に対して2phr)とともに均質化した。
【0152】
【0153】
考察
例6.1では、TGEとして、多官能性エポキシ樹脂であるビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)といった熱硬化性成分Cを、成分A及びBの光硬化性マトリックスに配合するときには、強度及び弾性率といった点での機械性能、及び更にはT
gといった点での熱特性は、おおよそ約5~15%だけわずかに低下したが、破断時の伸びで測定される靱性は、架橋成分Dを含有せず、単に光硬化性成分A及びBから構成されている比較例CE6.3と直接比較した場合、劇的に改善する(約+50%)(表6並びに
図8a及び
図8b)。この場合の多官能性エポキシ樹脂であるビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)は、適切なT
g上昇剤として作用するのに好ましい量で存在していないが、フォトポリマーの靱性は、得られた二重ネットワーク構造によって大幅に改善される。約125~160℃の範囲のT
gについては、BADGEはまた、例E1~5のアリル誘導体と比較した場合、低い熱特性も呈する。ただし、当業者には、BADGE含有量を変更すること又は硬化条件を適合させること(例えば、熱硬化剤であるジシアンジアミドの含有量、アミン、ウレア又はイミダゾールなどの追加の促進剤)によって、E6.1又は類似の配合物に由来するフォトポリマーの熱特性を大幅に改善させることは明らかである。
【0154】
比較例CE6.1は、CAとしての成分Dであるトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートの高い官能性により、E6.1に対する理想的な比較ではない。ただしこの場合(
図8bを参照)、CE6.1は、機械性能及び熱性能(全体で約10~25%)においてはわずかな改善を呈したが、破断時の伸びによって測定される靱性を大幅に損なっている(約30%)ため、E6.1はCE6.1よりも優れていることが明らかである。加えてこれも、本明細書に開示された本発明の樹脂配合物にとっては明らかに有利であることを証明している。
【0155】
例6.2及び6.3はそれぞれ、シトラコンイミド系及びマレイミド系の成分Cである、高温熱硬化性樹脂に分類されるTGEから構成される。どちらの例も、成分A及び成分Bのみを含む比較例CE6.3と比較した場合、熱性能において高い上昇を示す(温度に対するより高い弾性率プロット及びtanδにより測定されるより高いT
g、
図8cを参照)。シトラコンイミド系オリゴマーであるOBCIを含むE6.2については、CE6.3と比較した場合、靱性はほぼ維持された(損失は10%未満、表6及び
図8cを参照)が、熱特性は明らかに向上している(
図8dを参照)。ビスマレイミド系モノマーであるBMIDPMを含むE6.3については、架橋度が高く、最終フォトポリマーネットワーク構造内部の固定芳香族部分の量が多いことにより、熱特性及び機械特性は著しく向上(約20~40%)している(
図8eを参照)が、本明細書では、靱性は著しく損なわれ(約40%)、この場合、成分Cはその好ましい量を超過しており、熱特性は大幅に改善したものの、靱性を完全に維持することができなかったことを示している。ただし、破断時の伸びは20%超を維持しており、これは100℃超のT
gを有するフォトポリマーネットワークにとっては一際優れた値である。
【0156】
例7:
本発明の樹脂組成物の例である例7は、熱硬化性成分Cと組み合わせた光硬化性成分A、B及びDから構成され、比較例7は、成分A、B、D及び熱硬化性成分Cの代わりに追加の単官能性成分Aを含む、それぞれの光硬化性樹脂組成物を作製する。
【0157】
【0158】
樹脂配合物の調製:
CE7:RDとして、N-アクリロイルモルホリンである単官能性光硬化性成分A27g、TNMとして、二官能性ポリエーテルウレタンメタクリラートである光硬化性成分B46g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートである光硬化性成分B16g、及びCAとして、イソホロンウレタンジメタクリラートである多官能性架橋成分D11gを、光開始剤であるフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)1.5g(1.5phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0159】
E7:RDとして、N-アクリロイルモルホリンである単官能性光硬化性成分A10g、TNMとして、二官能性ポリエーテルウレタンメタクリラートである光硬化性成分B46g、TNMとして、二官能性脂肪族ウレタンアクリラートである光硬化性成分B16g、CAとして、イソホロンウレタンジメタクリラートである多官能性架橋成分D11g、及びTGEとして、トリアリルイソシアヌラートである熱硬化性成分C17gを、光開始剤であるフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)1.5g(1.5phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0160】
【0161】
考察
例7は、改善された強度、弾性率及び高い熱性能を有するフォトポリマー材料に達するために、RDとしての成分AとTGEとしての熱硬化性成分Cとを置き換えることに高い可能性が存在することを示している(表8)が、この場合、破断時の伸びは、他の樹脂の例では成分A及びBから作製された樹脂配合物に成分Cが加えられるときには、更に劇的に犠牲となる。それにもかかわらず、この例は、どれだけ本発明の樹脂ツールボックスが最終3Dパーツ全体の熱性能を改善し、かつ靱性を維持する大きな可能性を与えるかを示している。
【0162】
例8~例23
本発明の樹脂組成物の例である例8~23は、複数の光硬化性成分A、B及び任意には熱硬化性成分Cと組み合わせたDから構成される。
【0163】
【0164】
【0165】
樹脂配合物の調製:
E8~23:それぞれの重量比で表9~10の成分を混合することで、それぞれの樹脂配合物100gを調製した。全ての配合物を、光開始剤であるフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)1.5g(1.5phr)及び熱開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.5g(0.5phr)とともに均質化した。
【0166】
【0167】
【0168】
考察
例8~23は、ホットリソグラフィ及び熱後加工を介し、高いTgと同時に高い破断時の伸びを有する材料に加工された本発明の樹脂組成物である。
【0169】
本発明の樹脂組成物を、光誘導造形工程、続いて熱誘導硬化工程に供することで得られた結果により、以下の材料特性:
i)1300MPa以上の引張弾性率、35MPa以上の引張強度、20%以上の破断時の伸び、70℃以上の荷重たわみ温度(E8、E11~E16、E20~E21)、又は
ii)2000MPa以上の引張弾性率、55MPa以上の引張強度、10%以上の破断時の伸び、85℃以上の荷重たわみ温度(E9~10、E17~19、E22~23)、
を呈する材料が得られる。
【0170】
例E8~10は、より高い官能性(この場合には四官能性)を含むより高含有量の成分Bを含む樹脂組成物が、高い機械特性及び熱特性を有するものの破断時の伸びが低下した材料をどれだけ得るのかを示す。同様の効果は、E8~10の四官能性成分Bと比較した場合に低い機械性能及び熱性能を有する、二官能性脂肪族ウレタンメタクリラートである成分Bを実施することにより、例E11~14で観察される。
【0171】
例E15~19では、どれだけ成分Aが破断時の伸びである靱性に主に寄与し、かつどれだけ成分CがTgである熱性能に主に寄与するかが明らかになる。例E20~23は、より高い(熱)機械性能を生じるが、靱性が低下するといった、成分Bと置き換えられる成分Dを増加させる効果を示す。
【0172】
これらの非限定的な例は、どれだけ本発明の樹脂ツールボックスが、熱性能を改善させ、かつ最終3Dパーツ全体内部で靱性を維持する大きな可能性を与えるかを示す。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【
図1】3D印刷プロセスにより、本発明に従って硬化組成物を光硬化するために使用される、高温積層造形装置の概略的構成を示す。
【
図2】成分A(RD)及びB(TNM)を用いる第1の光硬化工程並びに成分C(TGE)を用いるその後の熱硬化工程を介したネットワーク形成についての概略的な例を表す。
【
図3】成分A(RD)、B(TNM)及びD(CA)を用いる第1の光硬化工程並びに成分C(TGE)を用いるその後の熱硬化工程を介したネットワーク形成についての概略的な例を表す。
【
図4】比較例樹脂CE3及び熱硬化性成分C(TAIC及びDAPであるTGE)を用いた光レオロジー実験(光硬化工程)から回収されたデータを示す。
【
図5】成分C(TAIC、DAP、OBCI、BMIDPM及びBADGEであるTGE)を用いた熱レオロジー実験(熱硬化工程を模倣)から回収されたデータを示す。
【
図6a】CE1及びCE3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE1のDMAから回収されたデータを示す(貯蔵弾性率プロット頂部、tanδプロット-底部)。
【
図6b】CE3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE1の(熱)機械性能を示し、それらのパーセンテージ偏差に関してCE1及びCE3を比較している。
【
図6c】CE2及びCE3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE2及びE3のDMAから回収されたデータを示す(貯蔵弾性率プロット頂部、tanδプロット-底部)。
【
図6d】CE2及びCE3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE2の(熱)機械性能を示し、それらのパーセンテージ偏差に関してCE2及びCE3を比較している。
【
図7a】CE4と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE4のDMAから回収されたデータを示す(貯蔵弾性率プロット頂部、tanδプロット-底部)。
【
図7b】CE5と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE5のDMAから回収されたデータを示す(貯蔵弾性率プロット頂部、tanδプロット-底部)。
【
図8a】CE6.1及びCE6.3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE6.1のDMAから回収されたデータを示す(貯蔵弾性率プロット頂部、tanδプロット-底部)。
【
図8b】CE6.1及びCE6.3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE6.1の(熱)機械性能を示し、それらのパーセンテージ偏差に関してCE6.1及びCE6.3を比較している。
【
図8c】CE6.2及びCE6.3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE6.2及びE6.3のDMAから回収されたデータを示す(貯蔵弾性率プロット頂部、tanδプロット-底部)。
【
図8d】CE6.2及びCE6.3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE6.2の(熱)機械性能を示し、それらのパーセンテージ偏差に関してCE6.2及びCE6.3を比較している。
【
図8e】CE6.2及びCE6.3と比較した、印刷され(光硬化工程)、後硬化された(熱硬化工程)フォトポリマーE6.3の(熱)機械性能を示し、それらのパーセンテージ偏差に関してCE6.2及びCE6.3を比較している。
【0174】
図1では、参照符号1は、材料層11が配置される材料支持体を示す。材料支持体1と離間されており、z方向に高さを調節可能であり、軸4の周りに傾動可能に取り付けられている、構造プラットフォーム8が配置される。構造プラットフォーム8と材料支持体1との間に、いくつかの材料層11が既に構築されている。材料支持体1は、z材料と垂直なx方向に沿って並進移動可能である。
【0175】
更には、第1のリコーターブレード5及び第2のリコーターブレード6を備える材料導入装置3が提供される。第1のリコーターブレード5は、リコーターモータ10によってz方向に高さ調節可能であり、第2のリコーターブレード6は、材料支持体1とz方向に隣接する第2のリコーターブレード6を保持するばね7を有する。2つのリコーターブレード5及び6との間に、コンベア9により本発明の樹脂組成物を供給することができる材料容器2が形成される。
【0176】
図1に示される方法の段階では、材料支持体1は第2の位置にある。構造プラットフォーム8は、材料支持体1の方向に下げられ、その結果、本発明の樹脂組成物の新規材料層11が材料層11により形成することができ、かつ下方から材料支持体1を通り、放射線源(図示せず)によって材料支持体1上に選択的に照射され、それによって構造化かつ固化される。材料層11は、第1のリコーターブレード5により、第2の位置で材料支持体1の移動中に塗布された。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の3D印刷のためのハイブリッド樹脂組成物であって、成分A、B及びCを含み、
a)成分Aが、式(I):
X-Y 式(I)
を有する少なくとも1つの単官能性光硬化性成分であり、ラジカル重
合を受けやすい反応種Yと、側基Xと、を含み、前記成分Aが光誘導硬化時にポリマー骨格を形成し、前記骨格が好ましくは25℃超のT
gを有し、
b)成分Bが、成分Aと共重合する、少なくとも1つの単官能性又は多官能性光硬化性成分であり、500gmol
-1超の分子量を有し、前記成分Bが、光誘導硬化時に、好ましくは10%超の破断時の伸び及び0℃超のT
gを有する重合ネットワークを形成し、
c)成分Cが、少なくとも1つの単官能性又は多官能性熱硬化性成分であり
、100℃超のT
gを有する第2の重合ネットワークを形成し、
成分A、B及びCの総重量に基づき、前記光硬化性成分Aの量が、5重量%~80重量%の範囲であり、前記光硬化性成分Bの量が、10重量%~90重量%の範囲であり、前記熱硬化性成分Cの量が、1重量%~50重量%であ
り、
成分Cが、アリル、ビニル、マレイミド、シトラコンイミド、ベンゾオキサジン、エポキシ、フェノール、シアナートエステル、フタロニトリル及びそれらのオリゴマー若しくはポリマー、及び/又はそれらの異性体、及び/又はそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の化合物、特に、式(II)
【化1】
であって、式中、
-nが、1~10の整数であり、
-R
1
が、H、CH
3
又はCH
2
を表し、
-R
2
が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸及び対応するエステル、アルキル又は芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-イソブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、サリチル、コレステリル、フェニル、ベンジル、フェネチル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ビス(メチレン)オキシ、ビス(エチレン)オキシ、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)アミノ及びビス(フェニル)スルホンからなる群のうちの1つ以上の直鎖、分岐又は環状C
5
-C
40
脂肪族残基又は芳香族残基を独立して表し、これらの基のうちの1つ以上が、1つ以上のC
1
-C
6
アルキル、C
1
-C
6
アルコキシ、C
1
-C
6
チオエーテル、ハロゲン、-NO
2
、-SO
3
H、-CF
3
、-OH、-NH
2
、-SH、-CN、-トリメトキシシリル、-トリエトキシシリルで任意には置換される1つ以上のエステル、アミド、ウレア、ウレタン、カルボナート、エーテル、チオエーテル基、又はマレイミド及びシトラコンイミド化合物並びに/若しくはそれらの異性体、特にイタコンイミドの物質分類由来の重合基を介して独立して結合される、
に記載のマレイミド及びシトラコンイミド誘導体並びにそれらの異性体、特にイタコンイミドの、モノマー、並びに/又はそれらのオリゴマー、並びに/又はそれらのプレポリマーからなる群から選択される1つ以上の化学種を含む、ことを特徴とする、
ハイブリッド樹脂組成物。
【請求項2】
前記光硬化性成分Aの前記量が、前記成分A、B及びCの前記総重量に基づき、5重量%~80重量%、好ましくは10重量%~60重量%、より好ましくは15重量%~55重量%、更により好ましくは20重量%~45重量%の範囲であり、
前記光硬化性成分Bの前記量が、前記成分A、B及びCの前記総重量に基づき、10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは25重量%~70重量%、更により好ましくは30重量%~65重量%の範囲であり、
前記熱硬化性成分Cの前記量が、前記成分A、B及びCの前記総重量に基づき、1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~40重量%、より好ましくは3重量%~30重量%、更により好ましくは5重量%~25重量%の範囲である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分Bが、成分A及び成分Bと共重合する少なくとも1つの光硬化性架橋剤(CA)である架橋成分Dによって部分的に置換され、
前記架橋成分Dの量が、前記樹脂組成物内の成分B及び成分Dの総重量に基づき、3重量%~70重量%、好ましくは5重量%~60重量%、より好ましくは7重量%~50重量%、更により好ましくは10重量%~40重量%の範囲である、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
成分Aが、単官能性(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル及びN-ビニル化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物、特にイソボルニル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、トリメチル-シクロヘキシル(メタ)アクリラート、グリセロールホルマール(メタ)アクリラート、トリシクロデカンメタノールモノ(メタ)アクリラート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、フェノキシエチル(メタ)アクリラート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリラート、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロペンチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、3-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエステル、2-(アクリロイルオキシ)安息香酸-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸デカヒドロナフタレン-2-イルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1,3,3-トリメチル-2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1,7,7-トリメチル-2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イルメチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-2-シクロヘキシルエチルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸ベンジルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)安息香酸ベンゾアート、3-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-4-イソプロピルベンジルエステル、2-(アクリロイルオキシ)安息香酸ベンジルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸フェネチルエステル、4-(メタクリロイルオキシ)-3-メトキシ安息香酸-3-メトキシベンジルエステル、2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸-1-フェニルエチルエステル、4-((メタクリロイルオキシ)メチル)安息香酸シクロヘプチルエステル及び2-(メタクリロイルオキシ)安息香酸シクロヘキシルメチルエステルなどのサリチラート(メタ)アクリラート、コレステリル(メタ)アクリラート、ビフェニル(メタ)アクリラート、フェニルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、ビニルシンナマート、ビニルメチルオキサゾリジノン並びに2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルエステル、からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、ことを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
成分Bが、多官能性(メタ)アクリラート、特にエトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリラート、ポリエーテルウレタン(メタ)アクリラート、疎水性ウレタン(メタ)アクリラート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリラート、ポリエステルジ(メタ)アクリラート、変性エポキシジ(メタ)アクリラート及びオリゴマーポリカルボナートジ(メタ)アクリラートからなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
成分Cが、芳香族基、並びに/又は環状脂肪族基、並びに/又は複素環基、並びに/又は反応性基に対して強い分子間力及び/若しくは高い官能価(2超)を呈する基など、必要とされる高いT
gをもたらすポリマー骨格又はポリマーネットワークの形成を担う、固定置換基を含む多官能性アリル化合物、特に、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリルボラート、トリアリル 1,3,5-ベンゼントリカルボキシラート、トリアリルシトラート、トリアリルホスファート、テトラアリルピロメリタート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルプロピルイソシアヌラート、ジアリルイソシアヌラート、ジアリルフタラート、2,2-ビス(4-アリルオキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ジアリルジカルボナート、ジアリルカルボナート、ジアリル 1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート、2,2-ジアリルビスフェノールAジアセタートエーテル、ジアリルテレフタラート、ジアリルイソフタラート、ジエチルジアリルマロナート、1,3-ジアリルウレア、1,3-ジアリル-2-チオウレア、2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン、ジアリルオキシラート、ジアリルマロナート、ジアリルテトラブロモフタラート、2,6-ジアリ-メタ-クレゾール、N,N-ジアリルアニリン、ジアリルシアンアミド、N,N-ジアリルメラミン、2,2’-ジアリルビスフェノールA、N,N’-ジアリルピペラジン、2,2-ジアリルピロリジン、ジアリル-カルバミン酸 tert-ブチルエステル、ジアリルエーテルビスフェノールA、ジアリルフェニルホスホナート、5,5’-ジアリル-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジオール、シクロヘキサノンジアリルアセタール、4,4’-ジアリル-1,1’-ビフェニル及び2,2-ジアリル-4,4-ビフェノールからなる群から選択される1つ以上の化合物、を含む、ことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
成分Cが、芳香族基、並びに/又は環状脂肪族基、並びに/又は複素環基、並びに/又は反応性基に対して強い分子間力及び/若しくは高い官能価(2超)を呈する基など、必要とされる高いT
gをもたらすポリマー骨格又はポリマーネットワークの形成を担う、固定置換基を含む多官能性エポキシ化合物、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテルなどのビスフェノールA、ビスフェノールF及び/若しくはビスフェノールS誘導体、並びにジグリシジル 1,2-シクロヘキサンジカルボキシラート、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシラート、1,2-エポキシ-4(2-オキシラニル)-シクロヘキサン及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)1-ブタノールの縮合生成物、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、並びにこれらの誘導体のオリゴマー、並びにこれらの誘導体のプレポリマーからなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、ことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
成分Dが、
i)多官能性(メタ)アクリラート及び/若しくは多官能性(メタ)アクリラートの混合物、又は
ii)芳香族基若しくは環状脂肪族基、又は
iii)三官能性、四官能性、五官能性及び/若しくは六官能性(メタ)アクリラート、並びに/若しくは更により多くの官能性部位を有する超分岐及び/若しくは樹状メタ(アクリラート)、
を含む、ことを特徴とする、請求項3~
7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
成分Dが、
i)1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリラート及び1,12-ドデカンジオールジ-(メタ)アクリラート、トリ若しくはテトラエチレングリコール-ジ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリテトラ(メタ)アクリラート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、又は
ii)2-(2-ビフェニルオキシ)-エチル(メタ)アクリラート、ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート((メタ)アクリル酸及びビスフェノールA-ジグリシジルエーテル由来の付加物)、エポキシ-又はプロポキシル化ビスフェノールA-ジ(メタ)アクリラート(例えば、2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ)フェニル]-2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]-プロパン)、2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラート、イソホロンウレタンジ(メタ)アクリラート及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリ(メタ)アクリラート、
からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、ことを特徴とする、請求項3~
8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
ハイブリッド樹脂配合物が、成分C及びその誘導体と共重合可能である、コモノマー、及び/又はコオリゴマー、及び/又はコプレポリマーを更に含む、ことを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物が、成分A、B及びDの前記重量に基づき、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%の量で、光励起時に、好ましくは150nm~1000nm、より好ましくは200nm~550nmの波長スペクトル内の光励起時に、ラジカル重合に好適な少なくとも1つの光開始剤を含む、ことを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物が、成分Cの前記熱硬化のための少なくとも1つの熱開始剤及び/又は触媒を含み、前記触媒が好ましくは、三級アミン(例えば、トリアルキルアミン)、特にDABCO、DMAP及びトリエチルアミン、他の脂肪族及び芳香族の二級及び三級アミン、有機アルコールのアルカリ塩、ホスフィン、トリフェニルホスホナート、イミダゾール、特に2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール及び/若しくは2-エチル-4-メチルイミダゾール、有機酸並びに/又は過酸化物、特に過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジクミル、tert-ブチルペルベンゾアート、ジ-(tert-ブチル)-ペルオキシド並びに/又は1,1,2,2-テトラフェニル-1,2-エタンジオール並びに/又はジシアンジアミドからなる群から選択される、ことを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記樹脂組成物が、ラジカル重合の1つ以上の開始剤、特に熱開始剤を含む、ことを特徴とする、請求項1~
12のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記組成物が、好ましくは熱可塑性樹脂、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド、反応性ゴム、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、並びに/又はセルロース及び/若しくはゼラチンなどの天然ポリマーからなる群から選択される、靱性改質剤を含み、
前記靱性改質剤が、好ましくは、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル又はスチレン化合物、エポキシ化合物若しくはオキセタンなどの環状エーテル、並びに/又は可撓性リンカーを有する前記反応性基を含むモノマー、特に脂肪族長鎖及び/若しくはエチレングリコールスペーサ、並びに/又は50%超の破断時の伸び及び0℃未満、好ましくは-30℃未満のT
gを有する重合ネットワークを好ましくは形成する光硬化性成分Bなど、ラジカル重合又はイオン重合を受けやすい1つ又は複数の反応性基で終端又は官能化され、
前記靱性改質剤が、好ましくは、成分A、B、C及びDの前記総重量に基づき、0.5重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、更により好ましくは5重量%~10重量%の量で存在する、ことを特徴とする、請求項1~
13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記樹脂組成物が、重合開始剤、重合禁止剤、溶媒、充填剤、酸化防止剤、顔料、染料、表面改質剤、コアシェル粒子及び/又はそれらの混合物の群から選択される少なくとも1つ又は複数の成分を含む、ことを特徴とする、請求項1~
14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
光開始剤、熱開始剤、触媒、硬化剤、重合開始剤、重合禁止剤、溶媒、充填剤、酸化防止剤、顔料、染料、表面改質剤、コアシェル粒子及び/若しくはこれらの混合物が、ポリマー性であり、かつ/又は成分A、成分B及び成分D、並びに/若しくは成分Cによって重合を受け得る重合官能基によって追加的に官能化される、ことを特徴とする、請求項
11~15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
室温での前記樹脂組成物が、2Pa・s超、好ましくは10Pa・s超の粘度を有する、ことを特徴とする、請求項1~
16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記樹脂組成物が、前記成分A、B、C及びDの前記総重量に基づき、好ましくは0.5重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~25重量%の量で、無機質難燃剤、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化アンチモン、酸化スズ、ホウ砂及び/若しくはホウ酸亜鉛、赤リン、膨張化グラファイト、並びに/又は窒素ドナー及び/若しくはリン含有物質などの有機添加剤、好ましくはポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、有機ホスファート、トリフェニルホスフィン、ホスフィナート、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントラン-10-オキシド、ハロゲン化ホスファート、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化スチレン、ハロゲン化エポキシド、ハロゲン化(メタ)アクリラート及び/若しくはハロゲン化パラフィンなどのハロゲン化有機難燃剤を更に含み、好ましくは前記有機添加剤が、重合基、特に(メタ)アクリラートで官能化される、ことを特徴とする、請求項1~
17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
3D印刷によって物体を製造する方法であって、請求項1~
18のいずれか一項に記載の樹脂組成物が、光誘導造形工程、任意には二次露光を介して後硬化され、続いて熱誘導硬化工程を受ける、方法。
【請求項20】
前記光誘導造形工程が、30℃~150℃、より好ましくは35℃~100℃、更により好ましくは40℃~90℃の前記樹脂組成物の加工温度で実施される、ことを特徴とする、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記光誘導造形工程が、NIR光源又はUV/Vis光源及び対応する光学系を使用して実施され、前記NIR構成が、二光子光重合を介して3D製造を可能にするために選択され、前記UV/Vis構成が、レーザ/DLP、LED/DLP、レーザ/LCD及びLED/LCDからなる群から選択される、ことを特徴とする、請求項
19又は
20に記載の方法。
【請求項22】
前記光誘導造形工程が、層ごとに構造プラットフォームで前記物体を構築し、構造層のスタックを得ることを含み、各構造層が、
-前記樹脂組成物の所定の厚さの非構造層を形成する工程と、
-所望のパターンに従って前記非構造層上に光を選択的に投射し、それによって前記樹脂組成物を硬化して前記構造層を得る工程と、
によって得られる、ことを特徴とする、請求項
19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記樹脂組成物の前記非構造層が、前記加工温度で0.01~70Pa・s、好ましくは0.1~30Pa・sの粘度を有する、ことを特徴とする、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱誘導硬化工程が、前記光誘導造形工程の前記加工温度よりも高い温度で、好ましくは120℃超の温度で実施される、ことを特徴とする、請求項
19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記熱誘導硬化工程が、オーブンで前記物体を加熱すること、及び/又は前記物体を電磁放射線に供すること、及び/又は前記物体において、熱重合などの二次発熱反応を誘導すること、を含むことを特徴とする、請求項
19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項
19~25のいずれか一項に記載の方法によって、請求項1~
18のいずれか一項に記載の樹脂組成物から製造される物体。
【請求項27】
前記物体が、相互侵入網目、特に
i)相互侵入網目、又は
ii)半相互侵入網目、又は
iii)順次相互侵入網目、又は
iv)ポリマーブレンド、
を含む、ことを特徴とする、請求項
26に記載の物体。
【請求項28】
i)800MPa以上の引張弾性率、25MPa以上の引張強度、20%以上の破断時の伸び、45℃以上のガラス転移温度及び30℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
ii)1500MPa以上の引張弾性率、35MPa以上の引張強度、5%以上の破断時の伸び、90℃以上のガラス転移温度及び45℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
iii)2000MPa以上の引張弾性率、50MPa以上の引張強度、5%以上の破断時の伸び、100℃以上のガラス転移温度及び60℃以上の1GPaの貯蔵弾性率における温度値、又は
iv)1300MPa以上の引張弾性率、35MPa以上の引張強度、20%以上の破断時の伸び、70℃以上の荷重たわみ温度、又は
v)2000MPa以上の引張弾性率、55MPa以上の引張強度、10%以上の破断時の伸び、85℃以上の荷重たわみ温度、
を呈することを特徴とする、請求項
26又は
27に記載の物体。
【国際調査報告】