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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】染色体相互作用マーカー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6816 20180101AFI20240306BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20240306BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240306BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20240306BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240306BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240306BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z
C12Q1/6851 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K35/17
A61K35/15
A61K39/00 H
A61P35/00
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553436
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 GB2022050561
(87)【国際公開番号】W WO2022185062
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/156,659
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/282,284
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517449556
【氏名又は名称】オックスフォード バイオダイナミックス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマダス、アロウル セルバム
(72)【発明者】
【氏名】ハンター、ユアン
(72)【発明者】
【氏名】アクーリチェフ、アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
4B063
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR20
4B063QR32
4B063QR51
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR84
4B063QS25
4B063QS28
4B063QX02
4C085AA03
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085EE01
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA05
4C087NA20
4C087ZB26
(57)【要約】
がんの免疫療法に関する染色体相互作用を分析するためのプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体ががんの免疫療法にどのように応答するかを決定する方法であって、
-表8に示される染色体相互作用のすべての個体における存在または不存在を検出し、それにより個体が免疫療法に応答するかどうかを決定する;および/または
-表2に示される染色体相互作用のすべての個体における存在または不存在を検出し、それにより個体が、個体において免疫療法が疾患を加速させるハイパープログレッサーであるかどうかを決定する
ことを含む方法。
【請求項2】
表1に示される染色体相互作用のすべての個体における存在または不存在を検出し、それにより個体が免疫療法に応答するかどうかを決定することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
染色体相互作用の存在または不存在が、
-個体由来の試料において、および/または
-個体由来のDNA、および/または
-染色体相互作用の部位でのDNAループの存在または不存在を検出することにより、および/または
-染色体コンフォメーションにおいて一体となっている染色体の遠位領域の存在または不存在を検出することにより、および/または
-前記分類の間に生成され、その配列が染色体相互作用で集合している染色体の領域に各々対応する2つの領域を含むライゲートされた核酸の存在を検出することにより、および/または
染色体相互作用で集合する染色体の領域の近さを検出するプロセスにより
決定される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
染色体相互作用の存在または不存在の前記検出が、
(i)存在するエピジェネティックな染色体相互作のインビトロ架橋;
(ii)任意に、架橋したDNAを単離すること;
(iii)前記架橋したDNAを切断すること;
(iv)ライゲートされたDNAを形成するために前記架橋切断したDNA端をライゲーションすること;ならびに
(v)各染色体相互作用に対応するDNA配列の前記ライゲートされたDNAにおける存在または不存在を同定すること
を含み、それにより各染色体相互作用の存在または不存在を決定するプロセスによるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ライゲートされたDNAが、PCRによりまたはプローブの使用により検出される、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
(i)検出がプローブの使用によるものであり、該プローブが好ましくは表1、2、または8に示される任意のプローブと少なくとも70%同一性を有する、または
(ii)検出がPCRの使用によるものであり、PCRが好ましくは表1、2、または8に示される任意のプライマーペアと少なくとも70%同一性を有する、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
(i)方法が、個体が免疫療法を受ける前位に実施されるおよび/または個体ががんのために受けるべき治療がどれか選択するために実施される、および/または
(ii)方法が、がんである、またはがんの疑いのある個体で実施される、および/または
(iii)方法が、身体的特徴、危険因子またはがんの症状の存在に基づき前もって選択された個体において実施される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
個体ががんの初期ステージである;および/または
個体ががん治療、例えばがん免疫療法を受けている、または受けようとしている
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
がんが、
(i)免疫チェックポイント阻害剤PD-1/PD-L1が治療のために使用されるもの;および/または
(ii)メラノーマ、肺がん、肝細胞癌腫(肝臓がん)、膀胱がん、前立腺がん、鼻腔がん、耳下腺がん(唾液腺がん)、胞巣状軟部肉腫(軟組織がん);および/または
(iii)乳がん、子宮頸がん、結腸がん、頭頚部がん、ホジキリンパ腫、腎がん、胃癌、直腸がんまたは固形腫瘍
である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
免疫療法が、
(i)抗体、免疫細胞、好ましくはT細胞または樹状細胞を含む;および/または
(ii)ワクチン、好ましくはがんに対するワクチンを含む;および/または
(iii)免疫チェックポイントを調節、遮断または刺激する、および好ましくはPD-L1、PD-L2またはCTLA4または表3に開示される他の任意のチェックポイント分子を標的または調節する;および/または
(iv)表4~6のいずれかに示される治療を含む;および/または
(v)免疫系によるがん細胞の殺傷を増加させる、好ましくはその殺傷はT細胞によるものである、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
免疫療法が、
(i)PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤であり、および好ましくはPD-1またはPD-L1に特異的な抗体である;および/または
(ii)PD-2阻害剤またはPD-L2阻害剤であり、および好ましくはPD-2またはPD-L2に特異的な抗体である
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
染色体相互作用の分類が、ライゲート産物を増幅可能なプライマーおよびPCR反応中にライゲーション部位に結合するプローブを用いる定量PCR(qPCR)によるライゲート産物の特異的な検出を含み、前記プローブが染色体相互作用において一緒になっている各染色体領域由来の配列に相補的な配列を含み、好ましくは、前記プローブは、
-前記ライゲート産物に特異的に結合するオリゴヌクレオチド、および/または
-オリゴヌクレオチドの5’末端に共有結合される蛍光団、および/または
-オリゴヌクレオチドの3’末端に共有結合される消光団
を含み、および
任意に、
-前記蛍光団がHEX、テキサスレッドおよびFAMから選択され;および/または
-前記プローブが10~40ヌクレオチド塩基長、好ましくは20~30ヌクレオチド塩基長の核酸配列を含む、
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
個体におけるがんを治療する方法における使用のためのがんに対する免疫療法であって、前記治療する方法が、
-請求項1~12のいずれか1項に記載の方法により、個体が免疫療法に応答性であるかどうかを同定すること、および
-免疫療法に応答性であることが同定されている個体に前記免疫療法を投与すること
を含む、免疫療法。
【請求項14】
個体におけるがんを治療する方法における使用のためのがんに対する組み合わせ療法であって、前記治療する方法が、
-請求項1~13のいずれか1項に記載の方法により、個体が免疫療法に応答性であるかどうかを同定すること、および
-免疫療法に非応答性であることが同定されている個体に前記組み合わせ療法を投与することであって、ここで、前記組み合わせ療法が表4~6いずれかに示される治療剤、または表4~6のいずれかに開示される組み合わせ療法を含む、投与すること
を含む、組み合わせ療法。
【請求項15】
個体におけるがんを治療する方法における使用のための免疫療法でない抗がん治療であって、前記治療する方法が、
-請求項1~14のいずれか1項に記載の方法により、個体が免疫療法に対してハイパープログレッサーであるかどうかを同定すること、および
-免疫療法に対してハイパープログレッサーであると同定されている個体に前記抗がん治療を投与すること
を含む、抗がん治療。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは世界中で疾患の大きな負担である。毎年、世界中で数千万の人々ががんと診断されており、その患者の半数より多くの人々が最終的にはがんにより死亡している。多くの国々で、がんは心臓血管疾患に続く2番目に多い死亡原因となっている。心臓血管疾患の治療および予防における顕著な改善により、がんは世界の多くの地域ですでに死亡者数の第1位になっているか、またはまもなく第1位の死亡者数となるであろう。高齢者はがんに最もかかりやすく、高齢化が多くの国で進んでいるため、がんは依然として世界中の主な健康問題であり続けるであろう。
【0003】
免疫系の主な目的は、病原体などの外来因子により引き起こされる感染と闘うことであるが、がん細胞を攻撃し、排除するという重要な機能も有している。がんの免疫療法は、通常、がん細胞と闘うために何らかの方法で免疫系を支援することにより効果を奏する。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、がんの治療に関連している免疫系の状態を定義する染色体コンフォメーションシグネチャを特定した。これにより免疫系の調節におけるこのモダリティの役割が解明され、患者の免疫系がどのように免疫療法に応用するかについての「読み取り」が可能となる。また、免疫療法が適切でなく、かつ実際非常に有害であるレスポンダー集団の特定の類型の同定を可能とした。染色体相互作用により定義されたゲノムの3Dアーキテクチャレベルでのこの分析は、非常に初期に患者の免疫療法への応答の読み取りを提供し、初期疾患ステージで最も適切な治療法を決定することが可能となる。本発明による関連する染色体相互作用の検出は、強力であり、種々の免疫療法およびがんにわたって効果を奏することが見出された。
【0005】
同定されたマーカーは、T細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、B細胞および樹状細胞(DC)における調節解除と一致しており、免疫療法に対する疾患進行(ハイパープログレッサー)および免疫療法に対する応答性を定義するがん-宿主相互作用の一部として、個々の患者における適合免疫系および自然免疫系の細胞レベルでの特異的な設定により果たされる役割を示す。
【0006】
したがって、本発明は、個体ががんの免疫療法にどのように応答するかを決定する方法であって、
-表8に示される染色体相互作用のすべての個体における存在または不存在を検出し、それにより個体が免疫療法に応答するかどうかを決定する;および/または
-表2に示される染色体相互作用のすべての個体における存在または不存在を検出し、それにより個体が、個体において免疫療法が疾患を加速させるハイパープログレッサーであるかどうかを決定する
ことを含む方法を提供する。
【0007】
個体ががんの免疫療法にどのように応答するかを決定する方法は、表1に示される染色体相互作用のすべての個体における存在または不存在を検出し、それにより個体が免疫療法に応答するかどうかを決定することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】特にEpiSwitch法に基づく、染色体相互作用の分類のための好ましい方法を示す。
図2a】予測的および予後ベースラインの患者プロファイリングを示し、またPD-L1(セカンドライン(2L)におけるアベルマブ)非小細胞肺がん(NSCLC)への応答のためのデータを示す。上のグラフについて、縦軸は0.00~1.00の生存可能性を示し、横軸は0~1200の時間を示し、点線に対するP値は<0.0001である。下の表は、0~1200の時間にわたるグラフの各ラインに対するリスクの対応する数を示す。
図2b】予測的および予後ベースラインの患者プロファイリングを示し、またPD-L1(セカンドライン(2L)におけるアベルマブ)非小細胞肺がん(NSCLC)への応答のためのデータを示す。上のグラフについて、縦軸は0.00~1.00の生存可能性を示し、横軸は0~1200の時間を示し、点線に対するP値は0.76である。下の表は、0~1200の時間にわたるグラフの各ラインに対するリスクの対応する数を示す。
図2c】予測的および予後ベースラインの患者プロファイリングを示し、またPD-L1(セカンドライン(2L)におけるアベルマブ)非小細胞肺がん(NSCLC)への応答のためのデータを示す。上のグラフについて、縦軸は0.00~1.00の生存可能性を示し、横軸は0~1200の時間を示し、点線に対するP値は<0.0001である。下の表は、0~1200の時間にわたるグラフの各ラインに対するリスクの対応する数を示す。
図3】がんの種類およびチェックポイント阻害剤治療にわたり21人の独立したコホートにおけるEpiSwitch抗PD-L1応答マーカーの検証に関連する。
図4】ベースラインEpiSwitchコール、PD-L1発現および観察された臨床応答のあいだの高い一致を示す。
図5】1L、2Lアベルマブ(54)および2Lペムブロリズマブ(36)の混合である80人のNSCLC患者に基づく11マーカーモデルのためのトレーニングセットのデータを示す。
図6】1L、2Lアベルマブ(27)および2Lペムブロリズマブ(11)の混合である38人のNSCLC患者に基づく11マーカーモデルのための試験セットのデータを示す。
図7】チェックポイント阻害剤および腫瘍の混合を対象としたマレーシア人の観察試験のための第2試験セットのデータを示す。
図8】チェックポイント阻害剤および腫瘍の混合を対象としたマレーシア人の観察試験のための第2試験セットのデータを示す。
図9】盲検アジア人試料における長期的なコールを示す。
図10】複数の時点にわたり試料採取された患者に対する実際のEpiSwitchコールを示す。
図11】ハイパープログレッサーに関連する作用のための試料選択および患者の詳細を示す。
図12】ハイパープログレッサーに関連する作用のための試料選択および患者の詳細を示す。
図13】関連する遺伝子の配置でのEpiSwitch染色体コンフォメーションマーカー選択を示す。
図14】遺伝子の配置のパスウェイ分析を示す。
図15】遺伝子の配置のパスウェイ分析を示す。
図16】ハイパープログレッサーのためのトレーニングセットを示す。
図17】ハイパープログレッサーのための試験セットを示す。
図18】パイパープログレッサーのためのトレーニングセットのロジスティックPCA(主成分分析法)を示す。四角はHを示し、円はSを示す。
図19】パイパープログレッサーのための予測された試験試料を有するトレーニングセットのロジスティックPCAを示す。四角はHを示し、円はSを示す。
図20】パイパープログレッサーのためのラベルとしてPFSを有するトレーニングセットのロジスティックPCAを示す。四角はHを示し、円はSを示す。
図21】パイパープログレッサーのためのラベルとしてOSを有するトレーニングセットのロジスティックPCAを示す。四角はHを示し、円はSを示す。
図22】混同行列および統計を示す。トレーニングモデルは78人の患者である。30人がNR(ノンレスポンダー)であった。39人がR(レスポンダー)であった。9人がSD(安定した症状)であった。
図23】混同行列および統計を示す。試験セットは24人の患者である。8人はNRであった。12人はRであった。4人はSDであった。
図24】混同行列および統計を示す。試験セットは、128人の患者である。
図25】種々のマーカーに重要なグローバル変数を示す。上から下へ、結果は(i)obd189_q65-q67_p65、(ii)obd189_q53_q55_p53、(iii)obd189_q81_q83_p81、(iv)obd148_q893_q895_p893、(v)obd189_q49_q51_p49、(vi)obd189_q29_q31_p31、(vii)obd189_q57_q59_p57、(viii)obd189_q05_q07_p05に対するものである。横軸は、上位モデルの特徴を示す。縦軸は0~20までの値を示す。
図26】マーカーの遺伝子配置を示す。
図27図26の遺伝子と関連するパスウェイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
表の説明
表1は、ユニバーサルマーカーセットと、各マーカーが免疫療法への応答性(R)または非応答性(NR)にどのように関連するかを示す。
【0010】
表2は、ハイパープログレッサーの検出のためのマーカーセットと、各マーカーがハイパープログレッション(HS)または安定であること(S)にどのように関連するかを示す。
【0011】
表3は、免疫療法により標的化されるおよび/または調節されることのできる免疫チェックポイント分子を示す。
【0012】
表4~6は、レスポンダー状態を本発明により決定することができ、かつ本発明によるレスポンダー状態の決定の結果に基づき個体に受けさせることのできる治療法であるがん免疫療法の例を示す。
【0013】
表7は、表8に示されるマーカーのセットを開発するための実施例2において実施されたスクリーニングに関連するマーカーを示す。
【0014】
表8は、さらなるユニバーサルマーカーセットと、各マーカーが免疫療法への応答性(R)または非応答性(NR)にどのように関連するかを示す。
【0015】
表9は、実施例2の患者データを提供する。アスタリスク(*)付きで示される患者は、実施例2に説明される第2スクリーニングにおいて研究された。
【0016】
本明細書に使用される用語
本発明の方法は、本明細書において本発明の「プロセス」と称することもある。
【0017】
分類される染色体相互作用は、本明細書において、「マーカー」、「CCS」、「染色体コンフォメーションシグネチャ」、「エピジェネティックな相互作用」または「EpiSwitchマーカー」と称することもある。
【0018】
単語「分類する(type)」は、文脈に応じて解釈され得るが、通常、特定の染色体相互作用が存在するかまたは存在しないかの検出を指す。分類は、通常、染色体相互作用が存在するかどうかの物理的な決定によりなされる。
【0019】
単語「レスポンダー」は、免疫療法への応答に言及するために使用され、免疫療法への応答性(ユニバーサルマーカーセット)とハイパープログレッサーの検出に関する2つの態様を対象とする。用語「レスポンダーグループ」は、本明細書において議論される4つの異なるグループ:
-免疫療法へのレスポンダー
-免疫療法へのノンレスポンダー
-免疫療法を受けた場合のハイパープログレッサー
-免疫療法を受けた場合の安定疾患(ノンハイパープログレッサー)
のすべてを対象とする。
【0020】
本発明の方法において分類される染色体相互作用は、表2および8に定義される。本発明の方法において分類される染色体相互作用は、さらに表1に定義される。それらは、EpiSwitch法(図1参照)により作製されるライゲート産物を検出するプローブ配列により定義される。それらはまた、プローブの名称内にある相互作用の位置番号により定義され、それらはまた、ライゲートされた配列の検出を可能とするプライマー配列により定義される。
【0021】
本発明に関連するエピジェネティックな相互作用
本発明において分類される染色体相互作用は、典型的には、染色体の遠位の領域間の相互作用であり、当該相互作用は動的であり、染色体のその領域の状態に依存して変化、形成、または破壊する。その状態は、受ける免疫療法と免疫系がどのように相互作用し、個体がどのレスポンダーグループに分類されるのかを反映する。
【0022】
染色体相互作用は、例えば、それが転写されているかまたは抑制されているかを反映し得る。本明細書において定義されるレスポンダー「グループ」に特異的である染色体相互作用は、安定であることがわかっており、したがって、グループ間の相違(例えば免疫療法への異なる応答を反映する)を測定する信頼性のある手段を提供する。
【0023】
レスポンダーグループに特異的な染色体相互作用は、普通、例えばメチル化またはヒストンタンパク質の結合への変化などの他のエピジェネティックなマーカーと比較して、疾患プロセスの前または初期ステージにおいて存在する。したがって、本発明のプロセスは、免疫系が初期ステージで反応する方法について価値のある情報を提供することができる。これにより、結果としてより効果的な早期介入(例えば治療)が可能となり、患者に対して適切な治療の種類と使用すべきでない治療の種類の早期の選択も可能となる。染色体相互作用はまた、個体の現在の状態も反映し、したがって疾患状態への変化を評価するために使用することもできる。さらに、同じグループ内の個体間では関連する染色体相互作用にはほとんどばらつきがない。
【0024】
本発明で検出される染色体相互作用は、環境要因、DNAメチル化、非コードアンチセンスRNA転写物、非変異原性発がん物質、ヒストン修飾、クロマチンリモデリングおよび特異的な局所DNA相互作用による、基礎となるDNA配列に対する変化によって影響を受け得る。しかしながら、本明細書において定義される染色体相互作用は、それ自体が調節モダリティ(regulatory modality)であり、任意の遺伝子マーカー(DNA配列変化)または任意の他のエピジェネティックマーカーと1対1で対応しないことに留意する必要がある。
【0025】
染色体相互作用の原因となる変化は、遺伝子産物または遺伝子発現のモードにそれら自体が直接影響しない基礎となる核酸配列の変化により影響を受け得る。そのような変化は、例えば、遺伝子内および/または遺伝子外のSNP、遺伝子融合および/または遺伝子間DNAの欠失、マイクロRNA、および非コードRNAであり得る。例えば、SNPのおよそ20%が非コード領域に存在することが知られているため、説明する本プロセスは非コード状況でも有益である。典型的には、相互作用を形成するために集合し一体となる染色体の領域は、同じ染色体上で5kb、3kb、1kb、500塩基対または200塩基対未満離れている。
【0026】
本発明のプロセス
本発明のプロセスは、レスポンダー状態に関連する染色体相互作用を検出するための分類(typing)システムを含む。任意の好適な分類法、例えば相互作用において染色体の近さが検出されるおよび/または染色体相互作用状態を反映するマーカーが検出される方法などを使用することができる。分類法は、本明細書で言及されるEpiSwitchTMシステムを使用して実施することができ、例えば、以下の工程(例えば対象由来のDNAおよび/または試料において);
(i)染色体相互作用に集合して一体となる染色体の領域を架橋する工程、
(ii)任意に、当該染色体遺伝子座からその架橋されたDNAを単離する工程、
(iii)架橋されたDNAを切断にさらす工程、および
(iv)架橋実体に存在する核酸をライゲートして、染色体相互作用を形成した両方の領域由来の配列を有するライゲートされた核酸を誘導する工程
を含む方法により実施することができる。
【0027】
このライゲートされた核酸の検出は、特定の染色体相互作用の存在または不存在の判定を可能にする。ライゲートされた核酸は、したがって、染色体相互作用の存在に関するマーカーとして作用する。好ましくは、ライゲートされた核酸は、qPCR法などの、PCRまたはプローブに基づく方法により検出される。
【0028】
本方法では、染色体は任意の適切な手段によって、例えば典型的には化合物である架橋剤によって、架橋することができる。好ましい態様では、相互作用は、ホルムアルデヒドを用いて架橋されるが、任意のアルデヒド、またはD-ビオチノイル-e-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-e-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルによっても架橋され得る。パラホルムアルデヒドは、4オングストローム離れたDNA鎖を架橋することができる。好ましくは、染色体相互作用は同じ染色体上にある。通常、染色体相互作用は、2~10オングストローム離れている。
【0029】
架橋は好ましくはインビトロである。切断は好ましくは、TaqIなどの酵素による制限消化による。ライゲートはDNAループを形成し得る。
【0030】
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)が、ライゲートされた核酸を検出または識別するために使用される場合、生成されるPCR産物のサイズが、存在する特異的な染色体相互作用の指標となり得、それゆえ、遺伝子座の状態を同定するために使用され得る。好ましい態様では、本明細書の任意の表に示されるプライマーが使用され、例えば表2または8に示されるプライマーペアが(検出されるべき染色体相互作用に対応して)使用される。表1に示されるプライマーが使用されてもよい。そのようなプライマーまたはプライマーペアの相同体も使用することができ、それらは元の配列に少なくとも70%の同一性を有し得る。
【0031】
プローブが、ライゲートされた核酸を検出または識別するために使用される場合、これは遺伝的に、プローブとライゲートされた核酸との間のワトソン-クリックに基づく塩基対形成による。本明細書の任意の表に示されるようなプローブ配列を使用することができ、例えば表2または8に示されるプローブ配列が(検出されるべき染色体相互作用に対応して)使用される。表1に示されるプローブ配列が使用されてもよい。そのようなプローブ配列の相同体も使用することができ、それらは元の配列に少なくとも70%の同一性を有し得る。
【0032】
本発明のプロセスによる分類は、例えば疾患の進行をモニターするために、複数の時点で行われ得る。これは、1つまたは複数の定義された時点、例えば、少なくとも1、2、5、8または10の異なる時点で行われ得る。少なくとも1、2、5または8の時点間の期間は、少なくとも5、10、20、50、80または100日とすることができる。通常、少なくとも50日の間隔をあけた3時点である。
【0033】
試験および/または治療される個体
本発明の方法において試験される個体は、好ましくは、真核生物、動物、鳥または哺乳類である。最も好ましくは、個体はヒトである。個体は男性であっても女性であってもよい。ヒト個体の場合、それらは典型的には65歳以上である。
【0034】
本発明は、典型的にはそれらのレスポンダー状態、例えば免疫療法へのそれらの応答において相違する、集団中の特定のグループを検出および治療することを含む。本発明者らは、染色体相互作用が、これらのグループ間で相違し、これらの違いを同定することにより、医者は集団の特定のグループの一部として患者を分類することが可能となる。本発明は、したがって、それらのエピジェネティックな染色体相互作用に基づき個体に合わせて医療を個別化するプロセスを医者に提供する。このような試験は、その後の患者の治療のやり方、例えば投与する薬物の種類を選択するために使用することができる。本発明のプロセスは、個体のための治療を選択するため、例えば本明細書に記載される任意の特定の治療を個体に投与するか否かを選択するために実施してもよい。
【0035】
本発明のプロセスにおいて試験される個体は、いくつかの方法で、例えばリスク因子、症状または身体的特徴に基づいて、選択されていてもよい。個体は、がんの症状を有しているおよび/または、またはがんの初期ステージにある、に基づいて選択されていてもよい。
【0036】
個体は、本明細書に記載されている任意のがんに罹患し易くてもよく、および/または本明細書に記載されている任意の治療を必要としていてもよい。個体は、本明細書に記載されている任意の治療を受けていてもよい。特に、個体は、がん、例えば、本明細書において言及されている任意の特定のがんであるか、またはその疑いがあってもよい。
【0037】
がんの種類
本発明に関連する願は、本明細書において言及されている任意のがんを含むことができ、好ましくはメラノーマ、肺がん、非小細胞肺癌種(NSCLC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓がん、肝細胞癌腫、前立腺がん、乳がん、白血病、急性骨髄性白血病、膵臓がん、甲状腺がん、鼻腔がん、脳腫瘍、膀胱がん、子宮頸がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、結腸直腸がんまたは腎臓がんである。がんは、免疫療法、例えば本明細書において言及されている任意の特定の免疫療法により治療することのできるものであり得る。
【0038】
免疫療法の種類
本発明は、免疫療法への応答を決定することに関し、特に個体が免疫療法に応答性であるかどうか、および/または個体が、免疫療法が疾患の進行の原因となるハイパープログレッサーであるかどうかを決定することに関する。
【0039】
好ましくは、決定される応答は、免疫系に関連する分子または細胞、例えば、抗体または免疫細胞(例えば、T細胞または樹状細胞)または本明細書において言及される任意の治療物質を含む組成物を含む治療に対するものである。それは、ワクチン療法などの免疫系を調節または刺激する物質への応答であってもよい。免疫療法は、免疫チェックポイントを調節、遮断または刺激することができ、したがって、PD-L1、PD-L2またはCTLA4または本明細書に開示される任意の他の免疫チェックポイント分子を標的とするかまたは調節することができ、よって好ましくは免疫チェックポイント療法である。好ましくは、応答は、抗体療法に対する、または本明細書に開示される任意の特定の療法に対する応答性である。その療法は、組み合わせ療法、例えば本明細書に開示される任意の特定の組み合わせであってもよい。
【0040】
一実施態様において、応答は、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体を含むPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤に対するものである。PD-1は、「プログラムされた細胞死タンパク質」であり、PD-L1は、「プログラムされた死のリガンド1」である。
【0041】
用語「抗体」は、抗原に結合する能力を保持する抗体のすべてのフラグメントおよび誘導体、例えば一本鎖SCFV’sまたはFab’である。
【0042】
治療は、単独治療または、例えばPD-1およびまたはそのリガンドPD-L1に対する免疫チェックポイントモジュレーター(好ましくは阻害剤)との組み合わせ治療であり得る。治療は、少なくとも1つの免疫チェックポイントモジュレーター、例えば、任意の表、図または実施例など、本明細書に開示されたものを投与することを含むことができる。治療は、CTLA4(イピリムマブ/ヤーボイ)または小分子などのチェックポイントを標的とする他の薬物と組み合わせた抗PD-1または抗PD-L1の組み合わせであってもよい。PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)またはニボルマブ(オプジーボ)であり得る。PD-L1のモジュレーターまたは治療薬は、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)、デュルバルマブ(イミフィンジ)、CA-170、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS935559、GVAXMPDL3280A、MEDI4736、MSB001078C、MDX-1105/BMS-936559、AMP-224、MEDI0680であり得る。
【0043】
治療は、インターフェロンガンマまたはJAK-START経路を標的とするおよび/または調節する薬剤を投与することを含んでもよい。
【0044】
治療薬は、本明細書の任意の表に開示される任意のそのような薬剤であってもよく、または本明細書に開示される任意の「標的」を標的化してもよく、本明細書に開示される任意のタンパク質を含む。組み合わせにおいて開示される任意の薬剤は、単独投与のためにも開示されているとして理解されるべきである。
【0045】
ハイパープログレッサー
がんのハイパー進行(hyper progression)は、当業者により直接的に認識でき、それは、好ましくは、がんを有する個体における、免疫治療の投与時のがんにおける疾患進行の増加および/または免疫療法への有害反応である。これは、疾患のための任意の適切なパラメータ、例えば腫瘍サイズの2倍増加などを用いて測定される。典型的には、免疫治療の投与の60日以内に腫瘍量が50%よりも増加する。一態様では、ハイパープログレッサーは、免疫治療の投与後の無憎悪期間が60日未満および/または免疫治療後の全生存期間が150日未満として定義することができる。
【0046】
治療の選択
本発明の方法による試験の結果に基づき、決定は、何の治療を個体に投与するかまたは投与しないかについてなすことができる。
【0047】
ヒトが免疫治療に応答性であることが見出される場合、それらには本明細書に言及されている任意の免疫療法が与えられ得る。一態様において、個体が非応答性であることが見出された場合、本明細書に挙げられる任意の組み合わせ療法などの組み合わせ治療が与えられ得る。典型的には、組み合わせ療法は、抗体と小分子を含む。
【0048】
本明細書に提供される表におけるデータ
表1、2および8は、レスポンダー状態を検出するために使用することのできる特定のマーカーを示す。それらの存在または不存在は、そのような検出において使用することができる(すなわち、それらは「拡散(disseminating)」マーカーである)。表1および8は、免疫療法への応答性が検出されるマーカーを示し、表は、どれが応答性に関連し、どれが非応答性に関連するのかを示す。表2は、パイパープログレッサーを検出するマーカーを示し、表は、どれがハイパープログレッサーであることに関連し、どれが安定疾患に関係しているかを示す。
【0049】
マーカーは、プローブ配列(これは本明細書において定義されるライゲート産物を検出する)を用いて定義される。Start-End位置の第1の二組はプローブ位置を示し、Start-End位置の第2の二組は関連4kb領域を示す。
【0050】
以下の情報はプローブデータの表に提供される。
RP-Rsum 各染色体相互作用について評価されたランク積統計。
FC-相互作用の頻度(陽性または陰性)。
Pfp-偽陽性予測の推定パーセンテージ(pfp)、陽性と陰性の両方の染色体相互作用を考慮。
P値-陽性および陰性である各CCSについての推定p値。
調整P値(FDR)-偽発見率調整p値。
類型-ループが発見される状態。
【0051】
単純な順列に基づく推定は、所定のRP値またはそれ以上がランダム実験において観察される可能性を決定するために使用される。これは、以下の工程を有する。
1.長さnのランクkのリストの順列pを作成。
2.p順列におけるn番目のCCSのランク積を計算。
3.順列におけるCCSのランク積が観測されたランク積よりも小さいかまたは等しくなる回数を計数。この値をcに設定。
4.Erp(g)=c/pによりランク積の平均期待値を計算。
5.偽陽性のパーセンテージを次のように計算:pfp(g)=Erp(g)/ランク(g)、式中、ランク(g)は、RPの昇順でソートされた全n個のCCSのリストにおけるCCSgのランク。
【0052】
ランク積の統計は、各マイクロアレイ内の強度に従って染色体相互作用をランク付けし、複数のマイクロアレイを横断してこれらのランクの積を計算する。この技術は、多数の複製されたマイクロアレイにおける最も異なる染色体相互作用のうち一貫して検出される染色体相互作用を同定することができる。p値が0の場合、これは試料間のCCSのランク積にほとんど変動がないことを示し、シグナル対ノイズおよびCCSのエフェクトサイズの良好な例である。p値が0であり、かつpfpが0の場合、これは順列ランク積が実際に観測されたランク積と相違しないことを意味する。これらの方法は、Breitling R and Herzyk P (2005) Rank-based methods as a non-parametric alternative of the t-test for the analysis of biological microarray data. J Bioinf Comp Biol 3, 1171-1189に説明されている。
【0053】
FCは、各比較におけるマーカーの有病率を示し、2は平均試験の2倍、1.5は平均試験の1.5倍などを示し、このためFCは、表現型/グループに対するマーカーの重みを示す。FC値は、極めて効率的な試験のために必要とされるマーカーの数の指標を与えるために使用することができる。
【0054】
プローブは、Taq1部位から30bp離れるように設計されている。PCRの場合、PCRプライマーは典型的に、ライゲートされた産物を検出するように設計されているが、Taq1部位からの位置は様々である。
プローブ位置:
Start1-フラグメント1上のTaqI部位の上流の30の塩基
End1-フラグメント1上のTaqI制限部位
Start2-フラグメント2上のTaqI制限部位
End2-フラグメント2上のTaqI部位の下流の30塩基
4kb配列位置:
Start1-フラグメント1上のTaqI部位の上流の4000塩基
End1-フラグメント1上のTaqI制限部位
Start2-フラグメント2上のTaqI制限部位
End2-フラグメント2上のTaqIの下流4000塩基
【0055】
検出のタイプ
検出がプローブを用いて行われる場合、典型的には、プローブの両方の領域からの(すなわち、染色体相互作用の両方の部位からの)配列が検出され得る。好ましい態様では、任意の表に示されるプローブと同じまたは相補的な配列を含むか、またはそれからなるプローブがそのプロセスで使用される。いくつかの態様では、表に示されるプローブ配列のいずれかに相同である配列を含むプローブが使用される。
【0056】
マーカーおよびマーカーのパネルを同定するために採用されるアプローチ
本明細書に説明される本発明は、表現型に密接に結び付けられるそれ自体の調節モダリティとしての染色体相互作用プロファイルおよび3Dアーキテクチャに関する。バイオマーカーの発見は、表現型の違いを表す臨床試料の代表的なコホートでのパターン認識およびスクリーニングによる注釈に基づいた。本発明者らは、例えば、オープンリーディングフレームの内側(イントロンの)または外側の非コード部位につなぎ止める、統計学的に拡散している(disseminating)一貫した条件付き拡散性染色体コンフォメーションを同定するために、コーディング部分および非コーディング部分にわたってかつ既知の遺伝子の非コード5’および3’の大きな揺れの全てにわたりゲノムの重要な部分に注釈をつけ、スクリーニングした。
【0057】
最適なマーカーの選択において、本発明者らは、マーカーリードについての統計学的データおよびp値により動かされる。選択され検証されたシグネチャ内の染色体コンフォメーションは、参照に使用される遺伝子の発現プロファイルに関係なく、それ自体に層別化エンティティを拡散している。さらに、アンカー部位でのSNP、遺伝子転写プロファイルにおける変化、H3K27acのレベルの変化などの関連する調節モダリティでも研究が行われ得る。
【0058】
我々は、例えば調節のネットワークのフレームワークからなど、表現型に対する基礎生物学およびエピジェネティック制御の基礎から、臨床の表現型の違いとそれらの層別化の問題を取り上げる。そのため、層別化を支援するために、ネットワークの変化を捉えることができ、好ましくは、いくつかのバイオマーカーのシグネチャを通して、例えば、最小ノイズの検査コホートを層別化するためにマーカーの最適な数を評価することを含むマーカー削減のための続く機械学習アルゴリズムによりなされる。これにより、3~20個のマーカーで終わる場合がある。
【0059】
パネルのためのマーカーの選択は、(例えば、参照名に使用される隣接遺伝子の機能関連性によってではなく)相互検証統計学的性能によりなされてもよい。
【0060】
マーカーのパネル(隣接する遺伝子の名前が付けられた)は、ゲノムの重要な部分にわたる14,000~60,000の注釈付きEpiSwitch部位を超える統計学拡散力を分析する偏りのない方法で、ゲノムの重要部分にわたるスクリーニングからクラスター化された選択の産物である。これは、層別化の問題について機能的価値が分かっている遺伝子の染色体コンフォメーションのテイラードキャプチャとして理解されるべきではない。染色体相互作用に関する部位の総数は、120万であり、可能な組み合わせの数は120万の120万乗である。それにもかかわらず、我々がしたがったアプローチは、関連する染色体相互作用を特定することを可能とする。
【0061】
本出願により提供される特異的なマーカーは選抜を通過し、状態またはサブグループと統計学的に(有意に)関連付けられる。これは、関連する表のデータが証明しているものである。各マーカーは、関連する状態において明らかになるネットワークの調節解除(deregulation)の一部として生物学的にエピジェネティックな事象を表しているとみることができる。実際、これらのマーカーは対照と比較して、患者のグループ全体に拡散しているということを意味する。例として、平均して、個々のマーカーは、典型的には関連するレスポンダー群の80%と対照の10%に存在し得、したがって、本発明の方法による試験の結果は、解釈が単純であり、本質的には「バイナリ読み取り」に相当する。
【0062】
全てのマーカーの単純な追加では、いくつかの調節解除間のネットワークの相互関係を直接的に表すことはできない。ここでは標準的な多変量バイオマーカー分析GLMNET(Rパッケージ)が導入される。GLMNETパッケージは、疾患の表現型につながる調節解除を達成するうえでの共同の役割を反映する、いくつかのマーカー間の相互依存を同定する助けとなる。モデリングと、その後の最も高いGLMNETスコアを有するマーカーの検査は、患者のコホートを正確に同定するマーカーの最小の数を同定するのみならず、対照グループにおける低い有病率というバックグラウンドの統計学的ノイズのため、患者の対照グループにおける最も少ない偽陽性の結果を示す最小の数をも同定する。典型的には、選択されたマーカー(3~11個など)のグループ(組み合わせ)は、検出の感度と特異度の両方の間の最も良好なバランスを提供し、条件に対して選択された全ての統計学的に有意なマーカーの個々の性質からの多変量解析との関連で明らかになる。
【0063】
本明細書の表は、アレイ分析のためのアレイプローブ(60mer)の参照名を示し、長距離相互作用部位間の接合点、染色体番号、および並置される2つの染色体フラグメントのStartおよびEndが重複する。
【0064】
好ましい態様において、表1の11個すべてのマーカーが分類される。別の好ましい態様において、表2の11個すべてのマーカーが分類される。別の好ましい態様において、表8の8個すべてのマーカーが分類される。
【0065】
試料および試料処置
本発明のプロセスは、通常、試料上で行われる。試料は、定義された時点で、例えば本明細書において定義された任意の時点で得ることができる。試料は、通常、個体由来のDNAを含有すると考えられる。試料は、通常、細胞を含有すると考えられる。一態様において、試料は、最小限に侵襲的な手段によって獲得され、例えば血液試料であり得る。DNAが抽出されてもよく、標準的な制限酵素で細かく切断されてもよい。これは、どの染色体コンフォメーションが保持されかつEpiSwitchTMプラットフォームで検出されるかをあらかじめ判定し得る。水平移動を含めた、組織と血液との間での染色体相互作用の同期により、血液試料を用いて、疾患に関連した組織などの組織における染色体相互作用を検出することができる。
【0066】
試料調製および染色体相互作用の検出のための好ましい態様
試料を調製する方法および染色体コンフォメーションを検出する方法が、本明細書に記載されている。これらのプロセスの最適化された(従来とは異なる)バージョンは、例えばこのセクションで説明されているように使用することができる。
【0067】
典型的に、試料は少なくとも2×105の細胞を含む。試料は最大5×105の細胞を含んでよい。一態様では、試料は2×105から5.5×105の細胞を含む。
【0068】
染色体遺伝子座に存在するエピジェネティックな染色体相互作用の架橋が、本明細書において説明される。これは細胞溶解が起こる前に行われ得る。細胞溶解は、4~6分間または約5分間など、3~7分間行われ得る。いくつかの態様では、細胞溶解は、少なくとも5分間かつ10分間未満行われる。
【0069】
制限酵素によるDNAの消化が本明細書において説明される。典型的に、DNAのリストリクションは、約20分など、約10~30分の期間、約65℃など、約55~約70℃で行われる。
【0070】
好ましくは、フリークウェントカッター制限酵素が使用され、結果として最大4000塩基対の平均フラグメントサイズを有するライゲートされたDNAのフラグメントがもたらされる。任意には、制限酵素により、結果として、ライゲートされたDNAのフラグメントは、約256塩基対などの約200~300塩基対の平均フラグメントサイズを有する。一態様では、典型的なフラグメントサイズは、400~2,000または500~1,000塩基対など、200塩基対~4,000塩基対である。
【0071】
EpiSwitchプロセスの一態様では、DNA制限消化工程とDNAライゲーション工程との間でDNA沈殿工程は行われない。
【0072】
DNAライゲーションが本明細書において説明される。典型的に、DNAライゲーションは、約10分間など、5~30分間行われる。
【0073】
試料中のタンパク質は、例えばプロテイナーゼ、任意にはプロテイナーゼKを使用して、酵素的に消化され得る。タンパク質は、約30分~1時間、例えば約45分間酵素的に消化され得る。一態様では、タンパク質の消化、例えばプロテイナーゼK消化後、架橋反転またはフェノールDNA抽出工程はない。
【0074】
一態様では、PCR検出は、好ましくはライゲートされた核酸の存在/不存在に対するバイナリ読み取り値を用いて、ライゲートされた核酸の単コピーを検出することができる。
【0075】
図1は、染色体相互作用を検出する好ましいプロセスを示している。
【0076】
本発明のプロセスおよび使用
本発明のプロセスは、様々な方法で説明することができる。これは、1つまたは複数のライゲートされた核酸を作製するプロセスとして説明することができ、当該方法は、(i)染色体相互作用で集まっている染色体領域をインビトロで架橋する工程;(ii)上記架橋されたDNAを切断または制限消化切断にさらす工程;および(iii)上記架橋され切断されたDNA端をライゲートして、ライゲートされた核酸を形成する工程を含み、任意には、そのライゲートされた核酸の検出を、遺伝子座での染色体状態を決定するために使用することができ、好ましくは、染色体相互作用は、表1または2の1、3、5、8またはすべての染色体相互作用であり得る。このプロセスにおいて、染色体相互作用は、表8の1、3、5または8個の染色体相互作用であってもよい。
【0077】
相同体
ポリヌクレオチド/核酸(例えばDNA)配列の相同体が本明細書で参照される。そのような相同体は、典型的に、例えば、少なくとも10、15、20、30、100またはそれより多くの連続したヌクレオチドの領域にわたって、または染色体相互作用に関与する染色体の領域に由来する核酸の部分にわたって、少なくとも70%の相同性、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する。相同性は、ヌクレオチド同一性(「ハード相同性」と呼ばれることもある)に基づいて計算され得る。
【0078】
したがって、特定の態様では、ポリヌクレオチド/核酸(例えばDNA)配列の相同体は、パーセンテージ配列同一性を参照することによって本明細書で言及される。典型的には、そのような相同体は、例えば、少なくとも10、15、20、30、100またはそれより多くの連続したヌクレオチドの領域にかけて、または染色体相互作用に関与する染色体の領域に由来する核酸の部分にわたって、少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。相同体は、プローブ、プライマーまたはプライマーペアの全体にわたって少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0079】
例えば、UWGCGパッケージは、相同性および/または%配列同一性(例えば、そのデフォルト設定で使用される)を計算するために使用することができるBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36: 290-300;Altschul, S, F et al (1990) J Mol Biol 215: 403-10に記載されるように、相同性および/または%配列同一性を計算する、および/または配列を整列させる((典型的にはそれらのデフォルト設定で)同等または対応する配列を同定するなど)ために使用することができる。
【0080】
BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公開されている。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列内の同じ長さの単語と整列したときに一部の正の値の閾値スコアTに一致するかまたはそれを満たす照合配列内の長さWの短い単語を同定することによって高スコアの配列ペア(HSP)を同定することを含む。Tは近隣単語スコア閾値と呼ばれる(上記のAltschul et al)。これらの初期の近隣単語ヒットは、それらを含むHSPを見つけるために検索を開始するためのシードとして機能する。単語ヒットは、累積アラインメントスコアを増やすことができる限り、各配列に沿って両方向に拡張される。各方向の単語ヒットの拡張は、次の場合に停止される:累積アラインメントスコアがその最大達成値から数量Xだけ低下する;1つまたは複数の負のスコアの残基アラインメントの累積により、累積スコアがゼロ以下になる;またはいずれかの配列の終わりに到達する。BLASTアルゴリズムパラメータW5 TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11の語長(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919を参照)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両方のストランドの比較を使用する。
【0081】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのポリヌクレオチド配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、第1の配列と第2の配列との比較における最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、配列は別の配列と類似していると見なされる。
【0082】
相同配列は、典型的には、(ヌクレオチドの置換、欠失、または付加であり得る)10、15または20塩基未満など、1、2、3、4またはそれ以上の塩基だけ異なる。これらの変化は、相同性および/または%配列同一性の計算に関連して、上述の領域のいずれかにわたって測定され得る。
【0083】
「プライマーペア」の相同性は、例えば、後に別のプライマーペアと比較する(これも単一の配列として見なされる)目的で、(2つの配列が一緒に結合されているかのように)2つの配列を単一の配列と見なすことによって計算することができる。
【0084】
検出の閾値
本明細書において開示されるマーカーは、レスポンダー状態を決定することのできる「拡散(disseminating)マーカー」であることが見出され、表1および2は各マーカーがどのレスポンダーグループ(免疫療法に対するレスポンダー/ノンレスポンダー、またはハイパープログレッサー/安定疾患)に存在するかを示す。
【0085】
具体的には、これらのマーカーは、対照(例えば、FC値によって示される)と比較した場合、関連するレスポンダーグループ全体に拡散していることを意味する。例として、平均して、個々のマーカーは通常、関連するレスポンダーグループの80%と対照の10%に存在する可能性がある。個体を検査する場合、結果は表1または2に示す各マーカーに対して「存在」染色体相互作用と「不存在」染色体相互作用との組み合わせとなり、その個体についてのレスポンダーグループの決定を可能とする。通常、表に示される「理想的な」結果と比較して11個のうち少なくとも8個のマーカーの存在/不存在を、個体をレスポンダーグループに割り当てるために使用することができる。
【0086】
治療薬
この節は、個体のレスポンダーグループを定義する免疫療法に、および本発明の試験方法の結果に基づき個体に投与され得る治療の療法に関する。
【0087】
本発明は、本明細書において言及された任意の状態を予防または治療する際に使用するための治療薬を提供する。これは、治療上有効な量のその薬剤を必要としている個体に投与することを含み得る。本発明は、例えば、本発明の方法により試験された個体における、状態を予防または治療するための医薬品の製造におけるその薬剤の使用を提供する。
【0088】
薬剤の処方は薬剤の性質に依存する。薬剤は、薬剤および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物の形態で提供される。適切な担体および希釈剤には、等張食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水が含まれる。典型的な経口剤形には、錠剤、カプセル、液体溶液および液体懸濁液が含まれる。薬剤は、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、または経口投与用に製剤され得る。
【0089】
薬剤の用量は、様々なパラメータにしたがって、特に使用される物質;治療を受ける個体の年齢、体重および状態;投与経路;および必要なレジメンにしたがって決定され得る。医師は、任意の特定の薬剤に必要な投与経路および投与量を決定することができる。しかし、適切な用量は、例えば、1日1回から3回摂取される、1~40mg/kg体重など、0.1~100mg/kg体重であり得る。
【0090】
本発明は、免疫療法に応答性であることが特定された個体を治療する方法における使用のための、免疫治療薬、好ましくは表4~6のいずれかから選択される免疫治療薬を提供する。任意には、当該方法は、
-本発明の方法により個体が免疫療法に応答性であるかどうかを同定すること、および
-免疫療法に応答性であると同定された任意の個体に該薬剤を投与すること
を含む。
【0091】
本発明は、免疫療法に非応答性であることが特定された個体を治療する方法における使用のための、(i)組み合わせ免疫療法、または(ii)免疫療法でない治療薬を提供し、任意には、該方法は、
-本発明の方法により個体が免疫療法に応答性であるかどうかを同定すること、および
-免疫療法に非応答性であると同定された任意の個体に(i)および/または(ii)を投与すること
を含み、ここで、任意には、(i)の組み合わせ療法が、表4に示される任意の組み合わせ療法であるか、または表4および5から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。
【0092】
治療薬のスクリーニング
本発明は、候補薬剤が表1および/または表2に示される染色体相互作用の全てに変化を引き起こすことができるかどうかを決定することを含む眼の治療薬を同定するためのスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法は、候補物質が表8に示される染色体相互作用の全てに変化を引き起こすことができるかどうかを決定することを含んでもよい。
【0093】
本発明の核酸
本発明は、プローブおよびプライマーを含む、ある核酸を提供する。好ましくは、核酸はDNAである。特定の配列が提供される場合、本発明は特別な態様において要求されるような相補配列を使用してもよい。
【0094】
表1または2に示されるプライマーまたはプローブは、本発明において使用することができる。一態様において、プローブまたはプライマーは、表1または2に示される配列;または表1または2に示される任意の配列のフラグメントおよび/またはホモログのいずれかを含むものが使用される。表8に示されるプライマーまたはプローブは、本発明において使用することができる。一態様において、プローブまたはプライマーは、表8に示される配列;または表8に示される任意の配列のフラグメントおよび/またはホモログのいずれかを含むものが使用される。
【0095】
標識核酸およびハイブリダイゼーションのパターン
本明細書に言及される核酸は、好ましくは、成功したハイブリダイゼーションの検出を支援するフルオロフォア(蛍光分子)または放射性標識などの独立した標識を使用して標識化され得る。特定の標識はUV光の下で検出することができる。
【0096】
本明細書に言及される物質の形態
本明細書に言及される、核酸または治療薬などの物質はいずれも、精製または単離された形態であり得る。それらは自然界に見られるものとは異なる形態であってもよく、例えば、それらは自然界に生じない他の物質と組み合わせて存在してもよい。核酸(本明細書で定義される配列の部分を含む)は、自然界に見られるものとは異なる配列を有してもよく、例えば、相同性に関するセクションに記載されるように配列において少なくとも1、2、3、4またはそれより多くのヌクレオチドの変化を有する。核酸は5’または3’末端に異種配列を有し得る。核酸は自然界に見られるものと化学的に異なっていてもよく、例えば、それらは何らかの方法で修飾され得るが、それでもワトソン・クリック塩基対形成が可能であることが好ましい。適切な場合に、核酸は二本鎖または一本鎖の形態で提供される。本発明は、本明細書に言及される特異的な核酸配列の全てを一本鎖または二本鎖の形態で提供し、したがって、開示される任意の配列に対する相補鎖を含む。
【0097】
本発明は、予後に関連する染色体相互作用の検出を含む、本発明の任意のプロセスを実行するためのキットを提供する。そのようなキットは、本発明のプロセスによって産生されたライゲートされた核酸を検出することができる薬剤などの、関連する染色体相互作用を検出することができる特異的結合剤を含むことができる。キットに存在する好ましい薬剤には、例えば本明細書に記載されるように、PCR反応においてライゲートされた核酸を増幅することができる、ライゲートされた核酸またはプライマーペアにハイブリダイズすることができるプローブが含まれる。好ましい薬剤は、本明細書に開示される特定のプライマーおよびプローブのいずれかおよび/またはそのようなプライマーおよびプローブのホモログのいずれかを含む。
【0098】
本発明は、関連する染色体相互作用を検出することができるデバイスを提供する。デバイスは、好ましくは、染色体相互作用を検出することができる任意の特異的結合剤、プローブまたはプライマーペア、例えば本明細書に記載される任意のそのような薬剤、プローブまたはプライマーペアなどを含む。
【0099】
検出プロセス
一態様では、染色体相互作用に関連するライゲートされた配列の定量的検出が、PCR反応中の活性化で検出可能であるプローブを使用して実行され、上記ライゲートされた配列は、エピジェネティックな染色体相互作用で集合している2つの染色体領域由来の配列を含み、上記プロセスは、PCR反応中にライゲートされた配列をプローブと接触させる工程、およびプローブの活性化の程度を検出する工程を含み、上記プローブがライゲーション部位に結合する。当該プロセスは、典型的には、二重標識蛍光加水分解プローブを使用してMIQEに準拠した方法で特定の相互作用を検出することができる。
【0100】
プローブは概して、不活性状態と活性状態を有する検出可能なラベルで標識されているため、活性化された場合にのみ検出される。活性化の程度は、PCR反応に存在するテンプレート(ライゲート産物)の程度に関連する。検出は、PCRの全てまたは一部のあいだ、例えば、PCRのサイクルの少なくとも50%または80%のあいだに実行され得る。
【0101】
プローブは、オリゴヌクレオチドの一端に共有結合したフルオロフォア、およびヌクレオチドの他端に結合した消光剤を含むことができ、その結果、フルオロフォアの蛍光は消光剤によってクエンチされる。一態様では、フルオロフォアはオリゴヌクレオチドの5’末端に結合され、消光剤はオリゴヌクレオチドの3’末端に共有結合される。本発明のプロセスで使用することができるフルオロフォアには、FAM、TET、JOE、Yakima Yellow、HEX、Cyanine 3、ATTO 550、TAMRA、ROX、Texas Red、Cyanine 3.5、LC 610、LC 640、ATTO 647N、Cyanine 5、Cyanine 5.5およびATTO 680が含まれる。適切なフルオロフォアと共に使用することができる消光剤には、TAM、BHQ1、DAB、Eclip、BHQ2およびBBQ650が含まれ、任意には、上記フルオロフォアは、HEX、Texas RedおよびFAMから選択される。フルオロフォアと消光剤の好ましい組み合わせには、FAMとBHQ1、およびTexas RedとBHQ2が含まれる。
【0102】
qPCRアッセイでのプローブの使用
本発明の加水分解プローブは、典型的には、濃度が一致した陰性対照で温度勾配が最適化されている。好ましくは、一段階のPCR反応が最適化される。より好ましくは、標準曲線が計算される。ライゲートされた配列の接合部にわたって結合する特異的なプローブを使用することの利点は、ネステッドPCRアプローチを使用せずにライゲートされた配列に対する特異度を達成することができることである。本明細書に記載されるプロセスは、低コピー数の標的の正確かつ精密な定量化を可能にする。温度勾配の最適化の前に、標的のライゲートされた配列は精製することができ、例えば、ゲル精製することができる。標的のライゲートされた配列は配列決定することができる。好ましくは、PCR反応は、約10ng、または5~15ng、または10~20ng、または10~50ng、または10~200ngのテンプレートDNAを使用して実施される。フォワードおよびリバースプライマーは、例えば、配列に相補的であることによって、一方のプライマーがライゲートされたDNA配列で表される染色体領域のうちの1つの配列に結合し、もう一方のプライマーがライゲートされたDNA配列で表される他の染色体領域に結合するように設計されている。
【0103】
ライゲートされたDNA標的の選択
本発明は、ライゲートされた配列に結合および増幅するそれらの能力に基づいてプライマーを選択すること、およびそれが結合する標的配列の特性、特に標的配列の曲率に基づいてプローブ配列を選択することを含む、本明細書において定義されるようなPCRプロセスにおける使用のためのプライマーおよびプローブを選択する工程を含む。
【0104】
プローブは典型的に、制限部位にまたがる並置された制限フラグメントであるライゲートされた配列に結合するように設計/選択される。本発明の一態様では、特定の染色体相互作用に関連する可能性のあるライゲートされた配列の予測される曲率が、例えば、本明細書で参照される特定のアルゴリズムを使用して計算される。曲率は、例えば、らせん回転あたり10.5°など、らせん回転あたりの度数として表すことができる。ライゲートされた配列は、ライゲートされた配列が、らせん回転あたり少なくとも5°、典型的には、らせん回転あたり少なくとも10°、15°または20°、例えばらせん回転あたり5°~20°の曲率傾向ピークスコアを有する場合に標的化のために選択される。好ましくは、らせん回転あたりの曲率傾向ピークスコアは、ライゲートされた部位の上流および/または下流の20~400塩基など、少なくとも20、50、100、200または400塩基に対して計算される。したがって、一態様では、ライゲート産物における標的配列は、これらのレベルの曲率のいずれかを有する。標的配列は、最低の熱力学的構造の自由エネルギーに基づいて選択することもできる。
【0105】
特別な態様
特別な態様において、ある染色体相互作用、例えば本明細書において言及されている言及されていない任意の特定の相互作用、は分類されない。いくつかの態様では、表1または表2のマーカーのみが分類され、他のマーカーは分類されない。いくつかの態様では、表2または表8のマーカーのみが分類され、他のマーカーは分類されない。いくつかの態様では、表1および表2のマーカーのみが分類され、他のマーカーは分類されない。いくつかの態様では、表2および表8のマーカーのみが分類され、他のマーカーは分類されない。
【0106】
本発明を説明するパラグラフ
本発明は、以下の番号が振られたパラグラフに説明される態様を含む。
【0107】
1.個体ががんの免疫療法にどのように応答するかを決定する方法であって、
-表1に示される染色体相互作用のすべての個体における存在または不存在を検出し、それにより個体が免疫療法に応答するかどうかを決定する;および/または
-表2に示される染色体相互作用のすべての個体における存在または不存在を検出し、それにより個体が、個体において免疫療法が疾患を加速させるハイパープログレッサーであるかどうかを決定する
ことを含む方法。
【0108】
2.染色体相互作用の存在または不存在が、
-個体由来の試料において、および/または
-個体由来のDNA、および/または
-染色体相互作用の部位でのDNAループの存在または不存在を検出することにより、および/または
-染色体コンフォメーションで集合して一体となっている染色体の遠位領域の存在または不存在を検出することにより、および/または
-前記分類の間に生成され、その配列が染色体相互作用で集合している染色体の領域に各々対応する2つの領域を含むライゲートされた核酸の存在を検出することにより、および/または
染色体相互作用で集合する染色体の領域の近さを検出するプロセスにより
決定されるパラグラフ1記載の方法。
【0109】
3.染色体相互作用の存在または不存在の前記検出が、
(i)存在するエピジェネティックな染色体相互作のインビトロ架橋;
(ii)任意に、架橋したDNAを単離すること;
(iii)前記架橋したDNAを切断すること;
(iv)ライゲートされたDNAを形成するために前記架橋切断したDNA端をライゲーションすること;ならびに
(v)各染色体相互作用に対応するDNA配列の前記ライゲートされたDNAにおける存在または不存在を同定すること
を含み、それにより各染色体相互作用の存在または不存在を決定するプロセスによるものである、パラグラフ1または2に記載の方法。
【0110】
4.前記ライゲートされたDNAが、PCRによりまたはプローブの使用により検出される、パラグラフ2または3記載の方法。
【0111】
5.(i)検出がプローブの使用によるものであり、該プローブが好ましくは表1または2に示される任意のプローブと少なくとも70%同一性を有する、または
(ii)検出がPCRの使用によるものであり、PCRが好ましくは表1または2に示される任意のプライマーペアと少なくとも70%同一性を有する、
パラグラフ4記載の方法。
【0112】
6.(i)方法が、個体が免疫療法を受ける前位に実施されるおよび/または個体ががんのために受けるべき治療がどれか選択するために実施される、および/または
(ii)方法が、がんである、またはがんの疑いのある個体で実施される、および/または
(iii)方法が、身体的特徴、危険因子またはがんの症状の存在に基づき前もって選択された個体において実施される、
パラグラフ1~5のいずれかに記載の方法。
【0113】
7.個体ががんの初期ステージである;および/または
個体ががん治療、例えばがん免疫療法を受けている、または受けようとしている
パラグラフ1~6のいずれかに記載の方法。
【0114】
8.がんが、
(i)免疫チェックポイント阻害剤PD-1/PD-L1が治療のために使用されるもの;および/または
(ii)メラノーマ、肺がん、肝細胞癌腫(肝臓がん)、膀胱がん、前立腺がん、鼻腔がん、耳下腺がん(唾液腺がん)、胞巣状軟部肉腫(軟組織がん);および/または
(iii)乳がん、子宮頸がん、結腸がん、頭頚部がん、ホジキリンパ腫、腎がん、胃癌、直腸がんまたは固形腫瘍
であるパラグラフ1~7のいずれかに記載の方法。
【0115】
9.免疫療法が、
(i)抗体、免疫細胞、好ましくはT細胞または樹状細胞を含む;および/または
(ii)ワクチン、好ましくはがんに対するワクチンを含む;および/または
(iii)免疫チェックポイントを調節、遮断または刺激する、および好ましくはPD-L1、PD-L2またはCTLA4または表3に開示される他の任意のチェックポイント分子を標的または調節する;および/または
(iv)表4~6のいずれかに示される治療を含む;および/または
(v)免疫系によるがん細胞の殺傷を増加させる、好ましくはその殺傷はT細胞によるものである、
パラグラフ1~8のいずれかに記載の方法。
【0116】
10.免疫療法が、
(i)PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤であり、および好ましくはPD-1またはPD-L1に特異的な抗体である;および/または
(ii)PD-2阻害剤またはPD-L2阻害剤であり、および好ましくはPD-2またはPD-L2に特異的な抗体である
パラグラフ1~9のいずれかに記載の方法。
【0117】
11.染色体相互作用の分類が、ライゲート産物を増幅可能なプライマーおよびPCR反応中にライゲーション部位に結合するプローブを用いる定量PCR(qPCR)によるライゲート産物の特異的な検出を含み、前記プローブが染色体相互作用において一緒になっている各染色体領域由来の配列に相補的な配列を含み、好ましくは、前記プローブは、
-前記ライゲート産物に特異的に結合するオリゴヌクレオチド、および/または
-オリゴヌクレオチドの5’末端に共有結合される蛍光団、および/または
-オリゴヌクレオチドの3’末端に共有結合される消光団
を含み、および
任意に、
-前記蛍光団がHEX、テキサスレッドおよびFAMから選択され;および/または
-前記プローブが10~40ヌクレオチド塩基長、好ましくは20~30ヌクレオチド塩基長の核酸配列を含む、
パラグラフ1~10のいずれかに記載の方法。
【0118】
12.個体におけるがんを治療する方法における使用のためのがんに対する免疫療法であって、前記治療する方法が、
-パラグラフ1~11のいずれかに記載の方法により、個体が免疫療法に応答性であるかどうかを同定すること、および
-免疫療法に応答性であることが同定されている個体に前記免疫療法を投与すること
を含む免疫療法。
【0119】
13.個体におけるがんを治療する方法における使用のためのがんに対する組み合わせ療法であって、前記治療する方法が、
-パラグラフ1~12のいずれかに記載の方法により、個体が免疫療法に応答性であるかどうかを同定すること、および
-免疫療法に非応答性であることが同定されている個体に前記組み合わせ療法を投与することであって、ここで、前記組み合わせ療法が表4~6いずれかに示される治療剤、または表4~6のいずれかに開示される組み合わせ療法を含む、投与すること
を含む、組み合わせ療法。
【0120】
14.個体におけるがんを治療する方法における使用のための免疫療法でない抗がん治療であって、前記治療する方法が、
-パラグラフ1~13のいずれかに記載の方法により、個体が免疫療法に対してハイパープログレッサーであるかどうかを同定すること、および
-免疫療法に対してハイパープログレッサーであると同定されている個体に前記抗がん治療を投与すること
を含む、抗がん治療。
【0121】
刊行物および先願における開示
本明細書で言及される全ての刊行物の内容は、引用により本明細書に組み込まれ、本発明に関連する特徴をさらに定義するために使用され得る。全ての優先権の基礎となる出願の内容は、引用により本明細書に組み込まれ、本発明に関連する特徴を定義する為に使用され得る。
【0122】
具体的な関連染色体相互作用を同定するために使用される技術
EpiSwitchTMプラットフォーム技術により、遺伝子座での正常な状態と異常な状態との間の調節変化のエピジェネティックな調節シグネチャを検出する。EpiSwitchTMプラットフォームは、染色体コンフォメーションシグネチャとしても知られるヒト染色体の高次構造の調節に関連付けられた遺伝子調節の基本的なエピジェネティックレベルを同定およびモニターする。染色体シグネチャは、遺伝子調節解除のカスケードにおける別個の主要な工程である。これらは、DNAメチル化やRNAプロファイリングなどの、後期エピジェネティックおよび遺伝子発現バイオマーカーを利用するバイオマーカープラットフォームに対する利点の固有のセットを備えた高次バイオマーカーである。
【0123】
EpiSwitchTMアレイアッセイ
カスタムEpiSwitchTMアレイスクリーニングプラットフォームには、15K、45K、100K、および250Kの固有の染色体コンフォメーションの4つの密度があり、各キメラフラグメントはアレイ上で4回繰り返され、有効密度を、それぞれ60K、180K、400K、および100万にする。
【0124】
カスタム設計されたEpiSwitchTMアレイ
15KのEpiSwitchTMアレイは、EpiSwitchTMBiomarker発見技術で照合された約300の遺伝子座を含むゲノム全体をスクリーニングすることができる。EpiSwitchTMアレイは、Agilent SurePrint G3 Custom CGHマイクロアレイプラットフォーム上に構築され、この技術は、4つの密度、60K、180K、400K、および100万のプローブを提供する。各EpiSwitchTMプローブが4つ組として表示されるため、アレイあたりの密度は15K、45K、100K、および250Kまで減少し、それゆえ、再現性の統計的評価が可能になる。遺伝子座ごとに照合される潜在的なEpiSwitchTMマーカーの平均数は50であり、そのため調査することができる遺伝子座の数は300、900、2000、および5000である。
【0125】
EpiSwitchTMカスタムアレイパイプライン
EpiSwitchTMアレイは、EpiSwitchTMライブラリの生成後、Cy5において標識された試料の1つのセット、およびCy3において標識された比較/分析されるべき試料(対照)のもう1つのセットを備えたデュアルカラーシステムである。アレイはAgilent SureScan Scannerを使用してスキャンされ、結果として生じる特徴がAgilent Feature Extractionソフトウェアを使用して抽出される。その後、データはRでのEpiSwitchTMアレイ処理スクリプトを使用して処理される。アレイは、R:Limma*でのBioconductorにおける標準デュアルカラーパッケージを使用して処理される。アレイの正規化は、Limma*でのnormalizedWithinArrays機能を使用して実行われ、これは、オンチップのAgilent陽性対照およびEpiSwitchTM陽性対照に対して行われる。Limma*を使用して分析するために、データはAgilent Flag呼び出しに基づいてフィルタリングされ、Agilent対照プローブは取り外され、テクニカルレプリケートプローブは平均化される。プローブは、比較されている2つのシナリオ間の違いに基づいてモデル化され、偽発見率を使用して修正される。≦-1.1または≧1.1であり、p≦0.1FDRのp値をパスする変動係数(CV)≦30%のプローブが、さらなるスクリーニングに使用される。プローブセットを減らすために、RでのFactorMineRパッケージを使用してさらなる複数因子分析が実施される。
【0126】
*注:LIMMAは、マイクロアレイ実験で差次的発現を評価するための線形モデルおよび経験ベイズプロセスである。Limmaは、マイクロアレイまたはRNA-Seqから生じる遺伝子発現データを分析するためのRパッケージである。
【0127】
プローブのプールは、最初に、調整されたp値、FCおよびCV<30%(任意のカットオフポイント)パラメータに基づいて選択され、最終的にピッキングが行われる。さらなる分析および最終的なリストは、最初の2つのパラメータ(調整されたp値;FC)のみに基づいて作成される。
【0128】
統計パイプライン
EpiSwitchTMスクリーニングアレイは、EpiSwitchTMPCRプラットフォームに変換するための高価値のEpiSwitchTMマーカーを選択するために、RでのEpiSwitchTM分析パッケージを使用して処理される。
【0129】
工程1
プローブを、修正された線形回帰モデルの積である、それらの修正されたp値(偽発見率、FDR)に基づいて選択する。p値≦0.1未満のプローブを選択し、その後、エピジェネティック比(ER)によってさらに減少させ、さらなる分析に選択するためにプローブERは≦-1.1または≧1.1でなければならない。最終的なフィルタは変動係数(CV)であり、プローブは≦0.3未満でなければならない。
【0130】
工程2
統計リストからの上位40のマーカーを、PCR変換に対するマーカーとして選択するためのそれらのERに基づいて選択する。負のER負荷が最も高い上位20のマーカーおよび正のER負荷が最も高い上位20のマーカーがリストを形成する。
【0131】
工程3
工程1から結果として得たマーカー、統計的に有意なプローブは、超幾何学的エンリッチメント(HE)を使用したエンリッチメント分析の基礎を形成する。この分析によって、有意なプローブリストからのマーカー減少が可能になり、工程2からのマーカーとともに、EpiSwitchTMPCRプラットフォームに変換されたプローブのリストが形成される。
【0132】
統計プローブは、どの遺伝的位置が統計的に有意なプローブのエンリッチメントを有しているかを決定するためにHEによって処理され、これは、どの遺伝的位置がエピジェネティックな違いのハブであるかを示している。
【0133】
補正されたp値に基づく最も有意なエンリッチメント遺伝子座がプローブリストの作成のために選択される。0.3または0.2のp値未満の遺伝的位置が選択される。工程2からのマーカーを用いる、これらの遺伝子位置にマッピングされる統計プローブは、EpiSwitchTMPCR変換に対する高価値マーカーを形成する。
【0134】
アレイの設計および処理
アレイ設計
遺伝子座を、SIIソフトウェア(現在はv3.2)を使用して次のように処理する。
-これらの特異的な遺伝子座でゲノムの配列を引き出す(50kb上流および20kb下流の遺伝子配列)。
-この領域内の配列がCCに関与する確率を定義する。
-特異的なREを使用して配列をカットする。
-どの制限フラグメントが特定の配向で相互作用する傾向にあるかを決定する。
-異なるCCが一緒に相互作用する可能性をランク付けする。
-アレイサイズを決定し、したがって利用可能なプローブ位置の数(x)を決定する。
-x/4の相互作用を引き出す。
-各相互作用に対して、パート1から制限部位までの30bpおよびパート2の制限部位までの30bpの配列を定義する。それらの領域がリピートではないことを確認し、リピートである場合は、除外して次の相互作用をリスト上に書き取る。両方の30bpを結合してプローブを定義する。
-x/4プローブ+定義された対照プローブのリストを作成し、4回複製して、アレイ上に作成されるべきリストを作成する。
-カスタムCGHアレイ用のAgilent Sure設計のウェブサイトにプローブのリストをアップロードする。
-プローブ群を使用して、AgilentカスタムCGHアレイを設計する。
【0135】
アレイ処理
-テンプレート作成にEpiSwitchTM標準操作手順(SOP)を使用して試料を処理する。
-アレイ処理ラボによってエタノール沈殿でクリーンアップする。
-Agilent SureTag完全DNAラベリングキット-Agilent Oligonucleotide Array-based CGH for Genomic DNA Analysis Enzymatic labelling for Blood,Cells or Tissuesにしたがって試料を処理する。
-Agilent特徴抽出ソフトウェアを用いるAgilent C Scannerを使用してスキャンする。
【0136】
EpiSwitchTMバイオマーカーのシグネチャは、複雑な疾患表現型の層別化において高いロバスト性、感度および特異度を実証する。この技術は、エピジェネティクスの科学における最新のブレークスルー、非常に有益なクラスのエピジェネティックバイオマーカーとしての染色体コンフォメーションシグネチャのモニタリングおよび評価を利用する。学術環境で展開されている現在の研究方法では、CCSを検出するために、細胞材料の生化学的処理に3~7日を要する。それらの手順は、感度および再現性が限定されており、さらに、設計段階でEpiSwitchTM分析パッケージによって提供される標的化された洞察の恩恵を有していない。
【0137】
EpiSwitchTMアレイのインシリコのマーカー同定
ゲノム全体のCCS部位は、関連する全ての層別リードバイオマーカーの同定のために試験コホートからの臨床試料のEpiSwitchTMアレイによって直接評価される。EpiSwitchTMアレイプラットフォームは、その高いスループット能力、および多数の遺伝子座を迅速にスクリーニングするその能力が要因で、マーカーの同定に使用される。使用したアレイはAgilentカスタムCGHアレイであったが、これにより、インシリコのソフトウェアで同定されたマーカーを照合することが可能になる。
【0138】
EpiSwitchTMPCR
その後、EpiSwitchTMアレイによって同定された潜在的なマーカーが、EpiSwitchTMPCRまたはDNAシーケンサー(すなわち、Roche 454、Nanopore MinIONなど)のいずれかによって検証される。統計的に有意で、最良の再現性を示す上位のPCRマーカーが、最終的なEpiSwitchTMシグネチャセットへのさらなる減少のために選択され、独立した試料のコホートで検証される。EpiSwitchTMPCRは、確立された標準化された操作手順プロトコルにしたがって、訓練を受けた技術者が実施することができる。全てのプロトコルおよび試薬の製造は、研究の質およびプロトコルを転送する能力を確かなものとするために、ISO 13485および9001認定の下で実施される。EpiSwitchTMPCRおよびEpiSwitchTMアレイバイオマーカープラットフォームは、全血および細胞株の両方の分析と互換性がある。試験は、少量の血液を使用して非常に少ないコピー数で異常を検出するのに十分な感度がある。
【0139】
分類器の使用
本発明の方法は、個体において同定された染色体相互作用の分析を含み、例えば、感度または特異度などの性能を向上させることのできる分類器の使用を含む。分類器は通常、集団からの試料上で「トレーニング」されたものであり、そのようなトレーニングは、分類器が本明細書において言及される任意のレスポンダーグループを検出することを支援し得る。
【0140】
本発明は以下の実施例により説明される。
【実施例
【0141】
実施例1.ユニバーサルマーカーセットの開発およびハイパープログレッサーを検出するためのマーカーセット
がんに対する免疫療法を受けている患者の集団に対する作業において、2つの異なるマーカーセットを開発した。第1のマーカーセットは、治療に対する応答性をがんと特定の治療の範囲に渡って検出することが可能なユニバーサルマーカーセットであり、第2のマーカーセットは免疫療法の特定のタイプで決して治療すべきでないハイパープログレッサーを検出するマーカーセットである。
【0142】
我々は、現在、オリジナルのアレイスクリーニングで同定され、その後、患者の特定のコホートで試験される数百から11個のバイオマーカーの特殊かつ最適化されたパネル(ユニバーサルセット)を明確にした。これら11個のマーカーの各々の固有の特徴は、それら各々が、すべての試験されたがんの指標におけるすべてのPD-1/PD-L1症例に渡り(発見されたコアの一部として)統計学的に有意であるということであり、PD-1/PD-L1による治療に応答/非応答のユニバーサルコアを定義する。これら11個のマーカーを用いる分類器は、すべての試験された患者コホートに渡り別個の能力実体として非常に堅強に作用する。
【0143】
本研究への背景として、図1は、試験されたマーカーの大きなセットに基づくNSCLCにおけるアベルマブ(PD-L1)に対する応答/非応答のベースライン予測の能力を示す。
【0144】
対照的に、ユニバーサルの11個のマーカーセットについて、我々が取り組んできた様々な治療アセットPD-1/PD-L1および様々な腫瘍学的摘要によるすべての治療のリストが以下のリストAに示されている:-PD-1およびPD-L1アセット、メラノーマ、NSCLC、肺、HCC、膀胱、NPC、耳下腺、胞巣状軟部肉腫におけるペムブロリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブなど。ユニバーサルの11個のマーカー分類器は、これらすべてのコホートにわたって良好に機能し、正確にPD-1またはPD-L1治療のどちらが調べられたか、および正確にどの種類のがんが検査されたかに関係なく、応答/非応答の堅牢なベースライン分類を提供するユニバーサルプロファイルを特定する。我々は、免疫チェックポイント療法の結果を定義する特徴の非常に特異的な誘導/非誘導エピジェネティック全身ネットワーク設定を11個のマーカーで捕捉する。
【0145】
第2のマーカーセットに目を向けると、がん免疫療法における非常に深刻な問題は、PD-1/PD-L1療法で治療すべきではない患者のサブグループが一貫して存在することである。それらはハイパープログレッサー(またはスーパープログレッサー)と呼ばれ、プログレッサーとは病気への進行を意味する。これらの患者は、治療を受けると非常に異なった反応をし、腫瘍の増殖速度が急激に高まり、また非常に早く、基本的に数週間で死亡する。
【0146】
ハイパープログレッサーは、(薬物治療に対する生存の尺度としての)無増悪生存期間(PFS<60日)または全生存期間(OS<150日)のいずれかの有意な減少を示すことにより、免疫チェックポイント免疫腫瘍学治療に不利に反応する患者として定義することができる。
【0147】
平均的な試験では、患者の8~15%がスーパープログレッサーのプロファイルを示すことが証明されている。現時点では、免疫療法による重篤な副作用を防ぐために、これらの患者を特定して除外する手段はない。ほとんどの研究では、ハイパープログレッサーはノンレスポンダーのより大きなグループに分類され、プログレッサー/進行性疾患(PD)とも呼ばれる。ノンレスポンダーのほとんどは、免疫療法の恩恵を受けられない患者である。今日、チェックポイント阻害剤の使用は、免疫療法に反応する患者の割合(10~70%)のあいだでの総合的な利益によって正当化されている。
【0148】
ここでは、免疫療法コホートの患者を利用し、ハイパープログレッサーの範囲内のPFS/OSを有する患者と、それらの生存期間の限界を超えている患者(スライドと表では「標準」をSとマーク)に焦点を当てた。ハイパープログレッサーマーカーは、治療時に短いPFS/OSを示すと予測される患者プロファイルを特定する。治療前に検査を受けた32人の患者グループ(HとSの同等群)について、治療後のPFSおよびOSと比較した場合、11個のスーパープログレッサーマーカーが17個中15個のH(感度0.88)、14/15(特異度0.93)、15/16(PPV0.94)、14/16(0.875)を正確に予測した。
【0149】
これらのマーカーは、免疫療法の結果として予想される生存率の大幅な低下に基づいて、治療前に患者を特定し、かつ除外するために特異的に選択される。これは、ユニバーサル11マーカーセットによって特定および予測できる、ノンレスポンダーのより大きなコホートのサブグループと見なすことができる。
【0150】
現在の研究は、メラノーマ、肺がん、肝細胞がん(肝臓がん)、膀胱がん、前立腺がん、鼻がん、耳下腺がん(唾液腺がん)、胞巣状軟部肉腫(軟部組織がん)の患者に対して行われているが、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、腎臓がん、胃がん、直腸がん、およびあらゆる固形腫瘍など、免疫チェックポイント阻害剤PD-1/PD-L1が治療に使用される他のがんにも適用される。
【0151】
検出機序
同定されたマーカーセットは、細胞3Dゲノミクスのレベルでの調節解除のネットワークを捕捉し、これは、病理学的または生理学的表現型を維持および進行させるために連携して作用する調節解除された細胞型のネットワークを反映している。これまでのところ、これまでのところ、細胞のサブタイピングCD遺伝子座と関連した調節解除の証拠として統計的に有意な染色体コンフォメーションを観察することで、観察されたユニバーサルシグネチャはT細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、B細胞、および樹状細胞(DC)における調節解除を含みかつそれらを表していると言うことができる。これは、疾患の進行(ハイパープログレッサー)と免疫チェックポイント阻害剤PD-1/PD-L1に対する応答性を定義する、がんと宿主の相互作用の一部として、個々の患者における適応免疫系と自然免疫系の細胞レベルでの特定のセットアップが果たす役割を強調している。
【0152】
方法
染色体相互作用の初期の研究は、次の集団で実施された(図1に示す作業)。
[リストA-初期作業]
-16抗PD-1(ペムブロリズマブ)メラノーマコホート
-16抗PD-L1 NSCLCコホート
-99抗PD-L1 NSCLCコホート
-49抗PD-1 NSCLCコホート
-50抗PD-1および組み合わせ療法 NSCLCコホート
-48抗PD-1(ペムブロリズマブ)メラノーマコホート(ハイパープログレッサーを含む)
-550抗PD-L1 尿道がん
[長期観察]
-抗PD-L1(デュルバルマブ、アテゾリズマブ)および抗PD-1(ペムブロリズマブ)
-肺、HCC、膀胱、NPC、耳下腺、胞巣状軟部肉腫
【0153】
マーカーセットは次の患者を用いて開発された。
[トレーニング80人の患者すべてNSCLC]
1L、2Lアテゾリズマブ(54)および2Lペムブロリズマブ(36)の混合
[試験:38人の患者すべてNSCLC]
1L、2Lアテゾリズマブ(27)および2Lペムブロリズマブ(11)の混合
[試験:20の試料混合物]
異なるチェックポイント阻害剤および異なる固形腫瘍を有する2L患者の混合
アテゾリズマブ(7)、デュルバルマブ(3)、およびペムブロリズマブ(10)
肺(13)、NPC(2)、HCC(2)、膀胱(1)、胞巣状肉腫(1)、および耳下腺(1)
合計138試料
【0154】
ユニバーサルマーカーを試験するために、盲検コホートをノンレスポンダーの特徴を試験するために集められた。このコホートはマレーシアで集められ、全員が免疫療法前のベースラインで血液試料を提供した21人の患者で構成されていた。すべての患者は以前に一連の治療を受けていた。3つのチェックポイントが使用された:アテゾリズマブ(抗PD-L1)、デュルバルマブ(抗PD-L1)、およびペムブロリズマブ(抗PD-1)。肺、HCC、膀胱、前立腺、NPC、耳下腺および胞巣状軟部肉腫の7つの疾患の適応があった。患者のうち11人は2~4回の複数回採取した。3人の患者は、最大4回採取した。患者の民族性は漢民族またはインドネシア人のいずれかであった。
【0155】
図4は、ベースラインEpiSwitchコール、PD-L1発現および観察された臨床応答のあいだの高い一致を示す。
【0156】
図5は、1L、2Lアベルマブ(54)および2Lペムブロリズマブ(36)の混合である80人のNSCLC患者に基づく11マーカーモデルのためのトレーニングセットのデータを示す。
【0157】
図6は、1L、2Lアベルマブ(27)および2Lペムブロリズマブ(11)の混合である38人のNSCLC患者に基づく11マーカーモデルのための試験セットのデータを示す。
【0158】
図7は、チェックポイント阻害剤および腫瘍の混合を対象としたマレーシア人の観察試験のための第2試験セットのデータを示す。
【0159】
図9は、複数回採取した患者のコールを示す。時点を超えたコールは大部分一貫して一致している。
【0160】
デュルバルマブの患者12は、4回の採取に対するレスポンダーのプロファイル、およびグレーゾーンR/NRに入る第2回採取に対するスコアを示す。実際、レスポンダーの確率の全体的なプロファイルは、時間経過とともに強化される。
【0161】
アテゾリズマブの患者1は、興味深い初期の非応答を示し、しかし後にレスポンダーとなる。
【0162】
ペムブロリズマブの患者17は、NPC患者であり、両サンプリングに対して応答プロファイルを示す。
【0163】
これは、EpiSwitchTMマーカーがノンレスポンダーおよびレスポンダーを見出し、多様な腫瘍学的条件下でマルチチェックポイント阻害剤の宿主応答プロファイルの共通の特徴を捕捉する能力を強調している。
【0164】
図10は、ユニバーサル応答マーカーを表すOBD.261.263およびOBD.301.303ならびにユニバーサル非応答マーカーを表すBD.029.031、OBD.045.047、OBD.645.647、OBD.753.755およびOBD.8.69.871で、複数の時点にわたり試料採取された患者に対するEpiSwitchコールを示す。
【0165】
ハイパープログレッサーに関連する研究について、図11は、PFS≦60日(2ヵ月)およびOS≦150日(4.5ヵ月)を有することに基づき選択されるハイパープログレッサーでの試料選択を示し、生存グループ(S)は、ほとんどすべてPFS1年超を有するとして選択された。
【0166】
図13は、合計60個から選択された11個のEpiSwitchCCSを示し、マーカーはバイナリ差、OSおよびPFSランク対数分析に基づき選択された。関連遺伝的位置も示される。図10および11は、遺伝的位置のパスウェイ分析を示す。
【0167】
図16は、ハイパープログレッサーのためのトレーニングセットに関するデータを示す:XGBoost 11マーカーモデル。図17は、マーカー選択から除外された6個の試料を有するハイパープログレッサーのための試験セットを示す。図18は、トレーニングセットのロジスティック主成分分析法(PCA)を示す。図19は、予測された試験試料を有するトレーニングセットのロジスティックPCAを示す。これは、第2の分類アプローチであり、XGBoostと一致する。図20は、ラベルとしてPFSを有するトレーニングセットのロジスティックPCAを示す。図21は、ラベルとしてOSを有するトレーニングセットのロジスティックPCAを示す。
【0168】
患者分析のアプローチ
患者集団の分析方法には特定のアプローチが採用された。関連する患者コホートは、事前に治療(シスプラチンベースの化学療法を1回)を受けているか、またはチェックポイント阻害剤のみでの治療を受けているかのいずれかであった。また、定義された応答、完全応答、部分応答、または非応答のいずれか、のみで患者を調べた。我々は、疾患が安定している患者を分析から除外した。
【0169】
EpiSwitchTMネステッドPCRプラットフォームのデータ出力は、確立された単変量(Fishers Exact 検定)および多変量(順列GLMNET、SHapley Additive exPlanations値(SHAP)を使用したランダム フォレスト)手順を含むがこれらに限定されない、複数の統計手法を使用して分析した。
【0170】
診断および予後EpiSwitchTM分類器の開発には、次の統計分析が使用された。(i)XGBoost:勾配ブースト決定ツリーアルゴリズム。弱いデシジョンツリーモデルのアンサンブルが生成され、結合されて1つの強力な分類モデル(レベルごとのツリー成長)が生成される。(ii)ロジスティック主成分分析(PCA):バイナリデータを使用するために最適化された主成分分析。(iii)GLMNET:ペナルティ付き最尤法を介して当てはめた一般化線形モデル。(iv)LightGBM:ツリーベースの学習アルゴリズム(垂直リーフツリー成長)を使用する勾配ブースティングフレームワーク。
【0171】
ユニバーサルマーカーセットのSHAP分析を以下に示す。
【0172】
マーカーはそれらのSHAPスコアによってランク付けされ、最良のマーカーはOBD117_029_0.31であった。SHAP(SHApley Additive exPlanations)値は、任意の機械学習モデルの出力を説明するための統一されたアプローチである。3つの重要な利点がある。
【0173】
第1の利点はグローバルな解釈の可能性である。集合的なSHAP値は、各予測変数が標的変数にどれだけ正または負で寄与しているかを示すことができる。これは変数重要度プロットに類似するが、各変数と標的との正または負の関係を示すことができる。
【0174】
第2の利点は、ローカルな解釈の可能性である。各観測は独自のSHAP値のセットを取得する。これにより、その透明性が大幅に向上する。我々は、ケースがその予測と予測者の貢献を受け取る理由を説明することができる。従来の変数重要度アルゴリズムは、母集団全体の結果のみを表示し、個々のケースについては表示しない。ローカルで解釈できるため、要因の影響を正確に特定し、対比することができる。
【0175】
第3の利点は、SHAP値は任意のツリーベースモデル(我々のモデルはXGboost、ブーストされたツリーベースモデルである)に対して計算できるが、他の方法では線形回帰またはロジスティック回帰モデルを代理モデルとして使用する。
【0176】
これは、マーカー選択のための分析パイプラインを表す。2つのマーカーセットの高いパフォーマンスが図と表に示されている。特に、ユニバーサルマーカーセットでは、図3に示す7種類のがんすべてが長期的(longitudinally)に観察された21人の患者に現れ、コホート全体の特異度および陽性的中率のパフォーマンスは100%であった。
【0177】
実施例2.表8に示すマーカーのセットの開発につながるさらなる研究
免疫チェックポイント阻害剤は、患者のT細胞などの免疫細胞、およびいくつかのがん細胞に存在する特異的調節ネットワークにおける狭いタンパク質セットを標的とする薬物の一種である。チェックポイントタンパク質の標的とそれらが制御するネットワークは、免疫反応が強くなり過ぎるのを防ぎ、自己免疫状態からさらに保護するのに役立つが、がんの場合には、T細胞ががん細胞を殺すのを防ぐことになる。免疫チェックポイント阻害剤の使用は、がん患者の免疫反応を再活性化するのに役立ち、有効な転帰と患者の生存率の向上をもたらす。
【0178】
免疫チェックポイント阻害剤は、1)PD-1(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、ティスレリズマブ、ササンリマブ);または2)PD-L1と呼ばれるPD-1リガンド(アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)のいずれかを標的とすることにより免疫応答をリセットおよび活性化することによって作用する。
【0179】
現在の研究では、免疫チェックポイント阻害剤に対する反応の成功において患者の免疫系が果たす役割や、治療の標的の限られた数、特にPD-1受容体とそのリガンドであるPD-L1を考慮に入れるかどうかなど、いくつかの疑問が投げかけられており、使用されるチェックポイント阻害剤の種類や腫瘍学的症状の範囲に関係なく、治療に対する応答/非応答を事前に普遍的に予測する、ベースライン患者の検出のqPCR形式でのEpiSwitchバイオマーカーを発見および検証できる。
【0180】
MIQE準拠のqPCR形式は、臨床のPCR系検査の標準である。この形式は、プライマーやプローブ配列設計と、伝統的にCqサイクル数によって測定される連続検出範囲に制限があるため、ネステッドPCRまたはアレイ形式とは大きく異なる。
【0181】
これらのバイオマーカーの発見と検証の一環として、次の手順が実行された(表9は患者データを示す)。
【0182】
ステージ1.アレイによって同定された以前のマーカーから、染色体コンフォメーションの検出のためのqPCRプライマーおよびプローブの配列設計の初期の理論的制限および要件、つまり、検出のための固有配列、プライマーおよびプローブのアニーリングの正しいアニーリング温度、重複する3C結合点、を満たす上位24個のマーカーが同定された。実験段階では、20個のマーカーの設計は品質管理と温度勾配に関する満足のいく最適化に合格した。
【0183】
ステージ2.qPCR形式のマーカーリードを使用して、広範な腫瘍学的条件:黒色腫、非小細胞肺がん、尿道、HCC、膀胱、前立腺、NPC、耳下腺、胞巣状軟部肉腫、上咽頭癌、外陰癌、結腸癌、乳癌、骨癌、脳癌、矢状洞癌、リンパ腫、喉頭癌、子宮頸癌、口腔癌から3つの標的(PD-1、PD-L1)のいずれかに対して、免疫チェックポイント阻害剤-ペンブロリズマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブで治療された患者の広範なコホート全体で応答と非応答を予測するための強力な層別化能力を有するシグネチャとなる最小限の数のバイオマーカーがあるかどうかを特定した。
【0184】
ステージ3.スクリーニング1では、最初に3人の患者の臨床転帰カテゴリー(レスポンダー、ノンレスポンダー、安定疾患)からプールしたDNAテンプレートで20個のマーカーすべてを評価した。試料コホートは、単剤療法としてさまざまな免疫チェックポイント阻害剤(アベルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、およびデュルバルマブ)を受けたさまざまなタイプのがん患者(添付の注釈を参照)を表した。
【0185】
ステージ4.スクリーニング2では、スクリーニング1で最終候補リストに挙げられた上位13個のマーカーが、スクリーニング1で使用されたのと同じ患者由来の個々の試料で評価された:合計24人の患者/試料(表9を参照、患者はアスタリスクで示されている)。
【0186】
ステージ2および3での最良のマーカーの選択は、線形モデルを使用して実行された。線形モデルは、PR対PD、PR対SD、およびPD対SDを比較して、各マーカーのCq値に適合される。近似されたモデルの係数は、各比較におけるCCS間の差異を説明する。次に、線形モデルを使用して、標準誤差を全体的な値(0対数または1線形)に向けて経験的にベイズ調整することにより、差分CCSの調整されたt統計量の対数オッズを計算する。次に、マーカーは、調整されたp値とグループ間のそれらCCS存在量の差によってランク付けされる。PRとPDの間のマーカーには、より大きな重みが与えられる。
【0187】
ステージ5.スクリーニング3では、上位8個のマーカー(スクリーニング2で最終候補リストに挙げられたもの)が、次の臨床転帰を有する患者で構成されるIO試料で検証された:55%NR(ノンレスポンダー)、24%SD(安定疾患、規制上の裁定と臨床実務にしたがう、SDは潜在的レスポンダーのグループと同様にIO療法の対象となるべきである)、20%R(レスポンダー、部分レスポンダーのPRとも呼ばれる)および1%CR(完全レスポンダー)。8個のマーカーに基づくモデルによる層別化の有効性を図22~24に示す。予測値(PPV)=100×TP/(TP+FP)。陰性的中率(NPV)=100×TN/(FN+TN)。
【0188】
免疫療法チェックポイント分類子は、CatBoostを使用して構築されている。Catboostは、Gradient Boosted Decision Trees(GBDT)の機械学習アンサンブル技術のメンバーである(Hancock and Khoshgoftaar; J. Big Data (2020) 7:94を参照)。
【0189】
[試験のためのフォーマットの種類]
ネステッドPCRフォーマットとqPCRフォーマットの両方は、どのアレイベースのマーカーリードをどちらかのフォーマットに正常に変換できるかについて厳しい制限が課される。これは特に、3C結合点上で2つのプライマーと1つの蛍光プローブ(これはアレイプローブと同様)を使用できるかどうかを判断する必要があるqPCRフォーマットの場合に当てはまり、1)特異的検出のための全ゲノムにわたる固有配列を有する、2)アニーリング温度が非常に類似している、3)ネステッドPCRで必要とされる2回の連続反応(最初は1つのプライマーペア、2回目は別のプライマーペア)での有効性ではなく、単一のPCR手順での増幅の有効性を示す。qPCRの要件ははるかに厳しく、選択的である。
【0190】
[結論]
血液ベースの調節バイオマーカーとしての8つの条件付きクロマチンコンフォメーションのqPCR評価に基づいて、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)単剤療法に対する応答の可能性について個体を評価できる。患者の腫瘍微小環境と患者の免疫系の間のクロストークにおいて、受容体プログラム死1(Pd-1)とそのリガンドPD-L1を含むPD-1経路は、腫瘍微小環境における局所免疫抑制を媒介する。本研究は、PD-1(ペンブロリズマブ)またはそのリガンドであるPD-L1(アテゾリズマブ、アベルマブ&デュルバルマブ)を標的とするアンタゴニストであったICIに直接関係する。8つのマーカー分類子に基づく層別化により、治療を適用する前に、患者をICI単独療法に対する期待できるレスポンダーまたはノンレスポンダーのグループに分類する。この分類は、ICI単独療法において使用されるすべての腫瘍学的適応症に関連して、PD-L1およびそのリガンドPD-L1に対するすべてのICI単独療法に適用される。
【0191】
図25から27は、同定された染色体相互作用マーカーの特徴を説明する。図25は、モデルにおけるマーカーの検出力の観点から、マーカーの重要性を示す。図26は遺伝的位置を示す。図27は、遺伝子が関連する経路を示す。これらはチェックポイント応答に関係する経路である。これはモデルが予測的であることを示しており、モデル内のマーカーが生物学的関連性を有していることは注目に値する。実際、マーカーの1つはPD-L1とPD-L2の間に位置する(q057_q059)。
【0192】
【表1】






【0193】
【表2】






【0194】
【表3】
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
【表6】
【0198】
【表7】














【0199】
【表8】


【0200】
【表9】














図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
2024511292000001.app
【国際調査報告】